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1982-04-22 第96回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十二日(木曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 大石 武一君                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 秦野  章君                 細川 護熙君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        防衛庁参事官   石崎  昭君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       松田 慶文君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      澤田 和彦君        防衛庁防衛局調        査第二課長    三井 康有君        外務省国際連合        局審議官     小宅 庸夫君        農林水産省農蚕        園芸局種苗課長  谷垣 孝次君        運輸省海運局総        務課長      山本 直巳君        運輸省船員局船        舶職員課長    小和田 統君        海上保安庁警備        救難部航行安全        課長       鈴木 正明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百七十八年の船員訓練及び資格証明並び  に当直基準に関する国際条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○千九百七十六年の海事債権についての責任の制  限に関する条約締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年  十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百  六十一年十二月二日の植物の新品種保護に関  する国際条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百七十八年の船員訓練及び資格証明並び当直基準に関する国際条約締結について承認を求めるの件、千九百七十六年の海事債権についての責任制限に関する条約締結について承認を求めるの件、千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種保護に関する国際条約締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  三件についてはすでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 ただいまの条約について、まず最初に御質問をさしていただきたいと思うんですが、海事債権についての責任制限条約、これについて、第三条の(a)(b)(c)(d)(e)と項目がありますけれども、その中の(b)と(c)ですね、これについて他に関係する国際条約等の問題がこれは含まれていると思うんです。その(b)についての「同条約の改正又は議定書で効力を有しているもの」というのがほかに関連する国際条約として挙がっていますけれども、これはどういう条約なのか、それをちょっと説明していただきたいんです。
  4. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) この条約の三条は責任制限ができる場合の例外を定めているわけでございますけれども、御指摘の(b)につきましては、これは油を掲載中のタンカー等につきましては別途できております油濁民事責任条約にゆだねることとして、そのようなタンカーについての責任についてはその制限を認めない、適用除外とするという趣旨内容でございます。具体的には油濁民事責任条約がこれに該当するわけでございます。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 それから同じく三条の(c)の項目で、「原子力損害についての責任制限を規律し又は禁止する国際条約」これとの関連もまたあるし、さらに「国内法適用を受ける債権」という問題がここに提起されておるわけですね。これについてもちょっと説明をしていただければと思うんですが。
  6. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) お答えいたします。  この第三条(c)に書かれております「原子力損害についての責任制限を規律し又は禁止する国際条約」といたしましては、原子力船運航者責任に関する条約というのがございます。この条約はいまだに発効しておりません。他方国内法といたしまして、わが国には原子力損害賠償に関する法律、俗に原賠法と普通言われている法律がございます。いずれにいたしましても、この条約の立て方といたしましては、この種の原子力損害につきましては一応この条約適用から除外をしている、そういうことでございます。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 それからもう一つ、同じ条約の中で、これはまた元へ戻りますが第一章第一条の2ですね、その中に「海上航行船舶」という用語が使われているわけなんですね。これは原文を見ますとただ海という表現、シーという表現になっていると思うんですけれども、この海を航行する船舶というものの種類ですね、この対象となるもの、これについて、たとえば艦船等いわゆる軍事目的の船ですね、こういうものについては例外規定その他幾ら見ても出てこないんですけれども、そういうものも含まれるのかどうか、その辺。この条約だけ見ると、どうもそういうものに対して除外するなら除外するということが入っていないと思いますけれども、その点どうでしょう。
  8. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 確かにこの条約の条項を見ますと公用船等についての適用関係が明確にされておりませんけれども、この条約趣旨から  いきまして、これは民間船舶船主の経済的な利益擁護するという面が一方ございますので、その観点から責任制限という形でその経済利益擁護するということ、他方において被害者救済を万全なものとするということ、この二つの利益を均衡させるための条約でございますので、その条約趣旨から言いまして、これは軍艦等、あるいは非商業目的に運用される公用船等についてはこれは適用ないという解釈をとっておりますし、これは国際的にも受け入れられている解釈でござ  います。  その理由は、公用船につきましてはむしろこれはそういう私的経済利益を守る必要がないという側面があると同時に、そのような公用目的の船につきましてはむしろ国家が求償の対象になるわけでございますが、各国ともそのような公用船については特別の損害補償体制をとっておる。わが国について見ますとたとえば国家賠償法でそれを手当てすることになっているということで、そういう公用船についてはこのような船主責任制限という形で救済を図る必要がないという実態的な背景がございます。  そのようなことがございまして、この条約には確かに公用船について何ら規定が置かれていないわけでございますけれども、各国の慣行におきましても、またわが国解釈といたしましても、公用船軍艦等はこれに含まれないという立場をとっております。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、大まかに言っていわゆる民間の船というふうなことで見たらいいかもしれませんが、いわゆる軍艦といいますか、そういったものがお互いにぶつかるのはいざ知らず、軍艦とかそういった軍事用船舶民間船舶がぶつかったりした場合、それによって生じたいろいろな問題、そういうものに関しては、これはちょうど日昇丸事件等もありましたが、そういうものについてはこの条約が何らかの担保をするのですか。
  10. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) いまのような場合には、たとえば軍艦等公用船加害者であったような場合には、その加害者の国の法律に従って通常解決されるということが多いと思いますので、その場合にはこの条約で言う責任制限を行うというたてまえにはなっていないわけでございますので、むしろその国の国内法に従って、たとえば日本の場合ですと国家賠償法と先ほど申し上げましたけれども、各国にそれぞれそのような場合を予想した国内法体系が整っておりますので、それに従って解決されるということでございますので、そのような事例はこの条約の枠外の問題であるということになるわけでございます。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 それじゃ、もうちょっと関連しますけれども、日本領海内で外国の軍用の艦船日本の商船が何か問題があった、事故があったというような場合、これは日本法律の及ぶ範囲内ですから当然日本国内法で処理をする、いろんな要求その他はですね、そういうことになってくるんじゃないかと思うんですけれども、この前のたとえば日昇丸あたりだとどうもその辺がはっきりしなかったのですが、その辺どうでしょうか。
  12. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 日本領海内で起きた事件でたとえば加害船側公船軍艦であったというような場合におきましても、これは国際私法の問題にもなり得ると思うのでございますけれども、やはり加害船国側補償体制というものがそこに入ってきて、たとえば日本国家賠償法によって解決するという事例にはならないと思うわけでございます。  それから日昇丸の場合には公海における事件でございましたので、いまの先生御指摘事例とは性質を異にするのではないかと考えます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 じゃ、領海内で起こるとまたちょっと問題がいろいろあるんじゃないかと思うんですけれどもね、その他の問題が出てきますから。  それでは次に、植物の新品種保護に関する国際条約、これについて質問さしていただきますが、この中の育成者利益擁護というのが、この目的の主流だと思うんですね。その目的対象となる育成者というものの定義がどうも私読んでみてもはっきりしないんですが、それをどういうふうに解釈されているか、それについてお答えいただきたいと思います。
  14. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) お答えいたします。  この条約の一条(1)におきまして、植物の新品種育成した者またはその承継人というのを育成者というふうに規定しておりますが、ここで言う育成者といいますのは、植物の新品種育成した自然人、法人すべてを含むと思います。したがいまして、具体的には種苗業者あるいは個人の育種家というものはこれに当てはまるかと考えられます。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、そういう人たち育成した成果を得て、それを対象にいろいろとこの条約にあるような問題で擁護保護が行われてくる、こういうふうになるわけですね。  ところで、これから非常に問題になると思うのは、いままでの品種育成というのは、品種改良をしながら、たとえば突然変異とかそういうものも含めてそれを抽出する中で次の新しい品種育成していくというやり方で非常に時間のかかったやり方をやっていたのじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、最近、どうももっと簡単に遺伝子の組みかえをやってしまって、たとえば一年間に実が二回なるような植物がつくられるとか、まあこういうことがあるかどうかは別として、そういうふうな根本的な品種改良、新しい品種をつくるという作業がこれからどんどん行われていくのじゃないか。動物ではいまもうすでに行われておりますが、これが植物にも恐らく適用されていくはずだと私は思うんですね。というのは、日本の場合、耕地二八%程度しかないところに能率よく農産物を生産しようとすれば当然そういうことが将来考えられるわけなんで、そういったようなものについてはどうもちょっと古いような感じがするんですね。この条約が、こういうものが対象にはなってないようでありますが、そういう問題については何かこの条約のときに議論されたり問題になったことはありますか。
  16. 谷垣孝次

    説明員谷垣孝次君) お答え申し上げます。遺伝子組みかえ技術につきましては、現在基礎的な研究段階でございまして、特に高等植物につきましては実用化にはさらに相当の年月が必要と思われます。しかし将来、研究蓄積がなされるに従いまして、急速に発展する可能性を有しております技術分野でございまして、このような技術を利用した育種法によって品種育成されてくる可能性が高まってまいるかと思います。条約では、これについて育種方法のいかんを問わずあらゆる種類植物適用することができる、こういうことになっております。したがいまして、遺伝子組みかえ技術により育成された新品種につきましても、保護要件を満たしている限りこの条約保護対象となる、こういうようになっております。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことだとは思いますが、たとえば登録の問題がありますね、そうするとちょっと違った物ができるたびにそれをぼんぼん登録されてくる、そういう登録というのはこの場合にはどういう段階ですか。たとえば遺伝子組みかえがもしかうまくいったとして、新しい品種ができたと。その品種ワンゼネレーションとにかく一つ育成に成功した、その段階登録するのか、それからもう新しい物ができたということの確認をした時点登録しちゃうのか、新しいものができたと確認した時点登録するとすると、物すごい量になると思うんですね。特許と似たようなものだと思いますが、そういうふうなものについては別にまだこの中では考えられていないと思いますけれども、まあ考えられていないんならもう仕方ありませんが、その点いかがでしょうか。
  18. 谷垣孝次

    説明員谷垣孝次君) お答え申し上げます。  この条約も、またこれに対応する国内法である種苗法でも全く同じことでございますけれども、品種要件というのを定めておりまして、他の植物体と区別されること、それから同一の世代において安定しておること、それから均一であること、それから異なる世代、子孫においても形質が安定しておることという要件を定めておりまして、これらの要件に当てはまる限り新品種として認定されると、こういう扱いになっております。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 その辺が恐らく今後どんどん急速に発展すると大分いろんな問題が出てきますので、これは何もこの条約だけではなくて国内の問題としてもあると思いますので、ちょっとその点をお伺いしたかったわけです。  植物品種保護に関してはこれで終わりますので、どうぞお帰りいただいて結構です。  それで次に、ちょうどいま日ソ円卓会議等も行われておるわけですが、ソビエト日本との関係というものが最近非常に冷え切った関係に、恐らくこれ以上冷え切ったらまずいんじゃないかと思うぐらい冷えた関係にあると私は思いますけれども、その中で、この前も私実は質問をしたような記憶がありますが、ソビエトに対する問題の一つとして、軍事的な問題の中でソビエト脅威というものが盛んに言われておるわけです。これはアメリカが言っている脅威については、この前この委員会で私が質問さしていただいたのですが、わが国としてソビエト脅威というものを一体どういうふうに認識しているのかという問題、これはある程度はっきりさしておいてソビエトに立ち向かうと言っちゃおかしいのですが、ソビエト関連の問題のときにその認識が必要だと思いますので、そういう意味できょうお伺いしたいと思うんですが、ソビエト脅威というのは、外務省また同時に防衛庁としてはどういうふうに脅威として認識しているか、その問題を一つお伺いしたいと思います。
  20. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 最近におきますソ連軍事力増強並びに第三世界に対する進出等のもとに東西関係が若干緊張の度合いを高めております。こういう背景のもとで、特にわが国近接地域におきましてソ連軍増強が顕著でございます。端的な例といたしましては、極東地域におけるSS20中距離ミサイル配備、それからわが北方領土におけるソ連軍軍備構築、こういう事態がございます。このような事実を踏まえて、現在、ソ連軍の動向はわが国に対する潜在的な脅威であると、かように認識しております。ただ、これをもっていたずらにソ連に対し敵対関係をとる、あるいはソ連を敵視するというものではなく、あくまでも潜在的脅威として認識しておると、かような次第でございます。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 いま外務省の方から認識について御説明があったわけですが、これは恐らく防衛庁の方がもうちょっとはっきり具体的な内容をつかんでおられると思うんで防衛庁の方からいかがでしょうか。
  22. 三井康有

    説明員三井康有君) ただいま外務省の方から御答弁がありましたことと基本的には同じでございますが、私どもソ連軍事力の存在を潜在的脅威と呼び、その増大潜在的脅威増大と呼んでおるわけでございます。  具体的に申し上げますと、これは核戦力通常戦力の両方に分かれるわけでございますが、核戦力につきましてはいわゆる戦略核戦力というものと戦域核戦力というものに大きく分かれようかと思います。  まず戦略核戦力でございますが、ソ連はICBMとかSLBMといったものを多数保有しておるわけでございますが、そのうち、全ソで保有しておるもののうち約三〇%程度のものを極東地域配備しておるというふうに考えております。内容的にはSSの17とかあるいは18といったような種類ミサイルでございます。  戦域核でございますが、これは現在注目されておりますのはSS20それからバックファイアといったものでございまして、SS20は射程が約五千キロメーター程度、数百キロトンの弾頭威力を持つ、三つのMIRV化された多弾頭弾頭を装着しておりまして、それ自体移動式命中精度も非常に高いわけでございます。このSS20を現在全ソで約三百基保有しておると見られておりますが、そのうち四分の一あるいはそれを少し上回る程度のものを極東地域配備しておるというふうに考えております。  それからバックファイアにつきましては、これは可変翼中型爆撃機でございまして、最高速度がマッハ二・五程度行動半径が約四千キロ余りでございまして、AS4というようなミサイルを積んでおるわけでございますが、このバックファイアを全ソで約百五十機以上保有しておると見ておりますけれども、そのうちの三分の一程度をシベリアの内陸部及び沿海地方配備しておるというふうに考えております。これらはすべてわが国全土射程内におさめておるというものでございます。  次に通常戦力でございますけれども、地上軍につきましては全ソで百八十四個師団保有しておるところのうち五十一個師団を中ソ国境周辺配備しておりまして、うち三十九個師団極東——ここで申し上げます極東といいますのは、極東軍管区ザバイカル軍管区、それからモンゴルのことを指しておるわけでございますが、この地域配備いたしております。  それから海軍につきましては、全ソで二千七百四十隻、五百八十万トンの艦艇の勢力を保有しておりますが、うち約三分の一の八百隻、百五十八万トンが太平洋艦隊に所属しておるわけでございます。  空軍につきましては、全ソで九千三百機余り作戦機を保有しておりまして、そのうち二千二百機程度極東配備しておる。その内訳としましては爆撃機が四百五十機、戦闘機が千六百機、哨戒機が百六十機といったところでございます。  このような軍事力背景といたしまして、わが国周辺におきますソ連軍行動も活発なものがございまして、これを艦艇航空機に分けて申し上げますと、まず艦艇でございますが、これは対馬海峡とか津軽海峡あるいは宗谷海峡いわゆる三海峡の通峡状況が、七五年当時には二百四十件でありましたものが、昨年は四百七十件というふうにふえておりますし、航空機につきましても、これはたとえば東京急行といったようないろんなパターンがあるわけでございますけれども、その周辺におきます行動は、七五年に百六十件であったものが、昨年は二百九十件にふえておるといったような実情でございます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、大体全体的な像はつかめるんですけれども、北方領土といいますか北方四島における軍事力ですね、これについての認識はどういうふうにされていますか。
  24. 三井康有

    説明員三井康有君) 北方領土につきましては、一九七八年以来、国後島及び択捉島に、その後おくれまして色丹島にソ連地上軍配備したわけでございますが、その後逐次増強を図ってこられました結果、昨年の時点では、私ども師団規模に達したというふうに推定いたしております。しかしその後、ことしにかけましては特段の変化はないというふうに見ております。この師団規模と申しますと、その内容でございますが、人員数については確定いたしておりませんが、装備は戦車でございますとか装甲兵員輸送車でございますとか、火砲とかミサイルのたぐい、あるいはハインドと呼ばれます攻撃ヘリコプターといったような一線級のものをそろえておるというふうに見ております。このほか国境警備隊が約三千人、それから警備艇が十数隻配備されておるというふうに見ております。しかし海軍につきましては、北方領土には配備がされておらない、また海軍基地もない、このように考えております。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、その脅威というものに対抗するといいますか、そういうふうな認識のもとに日ソの軍事的な問題が議論として展開されていままで来ているというふうな面があるわけですね。やはり、いま、たとえばミサイルとか、そういうものの配備も含めて考えた場合に、たとえば今度の日ソ円卓会議等でも出てきておりますが、ソ連側としては日本国民の不安は理解できると。そのぐらい配備しているということになろうと思うのですが、しかし、それと同時に、日本の領土とその周辺にもソ連を目標としたアメリカミサイル配備されている、と。これは核であるかどうかは別として、そういうふうなことをソ連側が言っておりますし、ソ連側は、米側極東での軍事力強化というものがあるからこれに対応しているので、決して日本対象としていない、裏ではそういうふうなことを言いたいんだろうと思うのですが、そういうふうなことを述べて力説している、こういうふうに報道されているんですね。しかも、その結果として、必要であればいつでも、いかなる場合でも、日本ソビエト側トップレベル会談というものを行うことができる、こういうふうなことまで言っているし、外相会談等についても、すぐというわけじゃないけれども準備をすればやれる可能性があるんだ、こういうことをソ連側が言っておるわけです。そういうふうな問題についてソ連側としては、ある程度アクチブに具体的な内容日本側に提案もしてきつつある。そういう状況ですから、わが国の方としても今後これにある程度の対応をしていくのかどうか。仕方がいろいろあると思いますが、していくのかどうか。この辺について外務大臣、ひとつ今後の問題として日ソ間の関係をどういうふうに具体的に改善を図っていこうとするのか、それについての見通しなどお持ちでしたらひとつお聞かせいただきたいと思うんです。
  26. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 昨年九月の国連総会で当時の園田外務大臣がグロムイコ外相と話し合われて、それで実務者レベルの協議、また外相会談をしようじゃないかということで、原則的にこれについてソ連が応ぜられたと思うのであります。そこで、一月に実務者レベルの会議を持ちまして、日本は柳谷審議官がモスコーに赴いて相当突っ込んだ話し合いをしておるわけであります。またその折に、外相会議を持つことになっておるが今度はソ連外相が日本を訪問する順序ではないか、日本に来られて外相会議をやろうじゃないかということを言ったのでありますが、その件については上部の方と相談をする、こういうことで、その後魚本大使の帰国に際して、この外相会議のことが話題にはなっておると思うんであります。そういうことで、外相会議をいつでも持ちたいとは思っております。  ところで、日本としての基本姿勢がございます。それは領土問題を解決して、本当の日ソ間の安定した姿を求めよう、ソ連側が善隣友好条約のようなことを申しますが、一見よさそうでありますが、それは領土問題を棚上げしてしまうのでありますから一そういうことでなく、まず領土問題を解決しようじゃないか、こういうことを日本としては言っておりますが、しかし互恵の立場で、相互で必要のあることについては、たとえば漁業交渉のごときはこれは行われておるわけでありますから、そういうことで日本側としてソ連に対して門戸を閉ざしておるわけではないのであって、ソ連が外相会議に応じてくれば、その際懸案事項についても十分話し合いたいと思いますし、またそのほかの漁業問題のような相互に必要な問題については、これは話し合っていきたい。一昨年のアフガニスタン問題、ポーランド問題等で国際的に批判があって、これについてはやはりソ連行動の自制を求めなきゃいけないということで、ある程度の措置もとってきておるということが一方にはございますが、しかしいま申し上げたような日ソ間でいろいろ行き来のあるということも事実でございます。
  27. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、日ソの懸案の問題としての領土問題についてはこれはもうらちがあかないぐらい、解決済みであるということで処理をする、そういうふうな返答しか返ってこない、そういう状況なわけですね。これを解決をするのがまず最初であって、その次にいわゆる平和条約とかそういう問題に入っていくんだという考え方だと、これはいつまでたっても進まないんじゃないかと思うんですね。ですから、その辺の絡み合いをもうちょっとうまく絡み合わせて、これは話し合いをやっている中でそういう問題が徐々に取り上げられていくというふうなやり方というものはないものかと私は思うんですけれども、その辺がやはり、私、大分前にここでも質問さしていただいたのですが、平和条約締結するという動きの中で領土問題を解決するのか、あるいは領土問題がまず最初にあって、それがある程度のめどをつけない限りは絶対平和条約に入らないのか、これは非常に大きな問題だと思うんですね、交渉の過程からいきますと。そういうふうな選択があると思うんですね。私は平和条約と同時に、あるいはその中で領土問題というのを提示していく、もしそれが解決つかなかったら平和条約やめればいいんですから。そういうふうな方法で、やはり俎上に上せていくということがまず最初の作業じゃないか、こういうふうに考えておるわけなんで、その点非常にむずかしい問題ではありますけれども、ソビエトとの問題というのは非常にこれから重要な問題として提起をされてまいりますから、その辺も一つ十分検討していただきたい、かように思うんですけれど、その点はどうでしょうか、外務大臣お願いいたします。
  28. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) いまのような平和条約の話し合いをしながら、その中で領土問題の解決と。まあ平和条約をやると言えばそれはもう問題点は領土問題と、こういうことになりますから、交渉を始めるといっても、やはり領土問題の交渉と同じことではないかとこう思うんです。日本としては、一九七三年のブレジネフとその当時の田中首相との話し合いで、ひとつ未解決の問題については継続して話そうということでありますので、本来言えばこれを実行してもらえばいいんじゃないか。あるいはさかのぼって日ソ共同宣言で国交回復したときに、やはり領土問題についてどこでその問題がつかえたかということが明白になっておると思うので、そこで、いま申し上げたような一方で互恵的に必要な問題は話し合っておりますから、やはり領土問題、平和条約というものは先頭に出して常に忘れずに迫っていくという、そういう必要があるのではないか。現に国交はあるし、いろいろな問題についての交渉は行われておるという状況ですから、いま日本が何か基本的な姿勢を考え直していく、そういうことは考える必要はないんじゃないか、こう思います。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、いまちょっと大臣のお言葉にも出ました日ソ共同宣言、一九五六年ですね、それとさらに同じ日ソ共同声明、一九七三年、これに基づいて、これを基本として両国の間で基本原則を検討していこうということですね。そういう提案を日本側としてはやっているわけですね。ですから、その時点まで一度戻ってそこからまず再出発しようという提案ですね、これがまあある程度日本側の提案を向こう側が認めたとすると少しは希望がつなげてくるわけなんですけれども、そういうことを言うと、ソ連側としては要するにすべての条件というものを取る、これは領土問題のことを言っているんだと思うんですが、そういう条件なしに話し合いに入るということについては歓迎するような、そういうことをソ連側は言っておると思うんですが、いま申し上げた日ソ共同声明、これらに基づいて基本原則をお互いに討議をしていくというふうな方針というものについては、大臣、そういう方針でいかれるということですか。
  30. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 御指摘のとおり、ソ連は若干の外国との間にいわゆる基本原則というような名前の文書を交換している例はございます。ただわが国の場合、この基本原則というのは、ただいま先生が御指摘になりました一九五六年の日ソ共同宣言、これにすべて尽きていると思います。この共同宣言の中で領土問題解決をして平和条約を結ぼうということが明記されているわけでございます。したがって、改めて基本原則のようなものをつくる必要は全くない、必要なことは五六年の共同宣言に立ち返ることであるというのが私どもの基本的な認識でございます。先ほどからのお話で、いろいろ中間的な何かできるのではないかというふうな感じのお話でございますが、やはりソ連が、領土問題は存在しない、あるいは領土問題は解決済みである、こういう前提のもとで条件なしの話し合いというのはやはり成り立ち得ないのではないかと考えております。その点で一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明に書かれているような出発点、つまり戦後の未解決の問題を解決して——この中には領土問題が含まれるわけですが、平和条約交渉を進める、こういう認識に立ち返った上でいろいろな話し合いができるのではないか、かように意識している次第でございます。
  31. 松前達郎

    松前達郎君 その辺が出発点からいってすでにソビエト側の見解というのは非常にかたくなな面が一つあるわけですね、領土問題という問題に関して。実は昨年の九月十一日、モスクワでチーホノフ首相との会談に私立ち会ったわけなんですけれども、そのときのチーホノフ首相の発言のメモを私いまここに持っているわけですが、その中でも同じようなことを言っているんですね。日ソ間の国家問題の基本的原則の提案、いま申し上げたような提案をわれわれもしたわけですが、それに対して、残念ながらその表現の中で領土問題について述べられている点は賛成できないと、これはっきり言っているわけですね。ですから、どうしてもその領土問題というのがまず最初に出てきてしまう。いつまで立ってもそれがどうも並行線のままで続いてきていると、こういうふうなことになろうと思うんです。また同時に、その中でチーホノフ首相が言っていることは、日本と同盟諸国がソ連を敵視しない限り、これは今回のシンポジウムでも同じことを言っていると思うんですが、敵視しない限りソ連日本を攻撃しない点については今日まで一貫して、ある一国または諸国のグループに対して攻撃的意思なしとの表明をしている、こういう間接的な表現をしておるんですね。それと、さらにソ連の防衛についてブレジネフが言ったように、ソ連の戦略ドクトリンは防衛であると。これも常に言っている問題ですから、新しいことではないわけです。それから、極東における先ほど来の脅威という問題を基本にしたお互いの軍事的な考え方、これらについては二国間だけでも相互信頼のためにその問題に関しての協定を交渉をする用意がある、これも今回また同じようなことを言っている。そういうことがその当時の、九月十一日のチーホノフ首相の発言の中にあったわけなんです。  ですから、こういうことを見てみますと、やはりどうも日ソ間の平和条約、これは平和条約を結ばなくても、いまお互いにそれぞれいろんな関係があるわけなんですが、平和条約を結ぶとすれば、その前提となってくるのは、日本側としては北方領土の問題解決であると。ソビエト側としては今度は基本原則の提案はしてもらってもいいんだけれども、その中に領土問題入れてもらっちゃ困る。だから、それに関しては白紙の提案であるべきだというんで、これはもう完全な並行線だということになりますので、今後恐らくこの問題はそう簡単に解決できる問題ではない、かように思っておるわけです。ですから逆に考えて、それはそれにしてこれから先の交渉を粘り強くやるというふうに政府がおっしゃっておる、これも結構だと思いますが、また同時に、その他の文化交流とか人的交流、たとえば議員団の交流というものも、ソビエトに議員というのがあるのかどうか知りませんが、ソビエト側から日本に来る問題については、まだこれが実現されていないのは非常に残念であるということも言っておりますし、これは恐らく、ソビエト側から日本にそういう人たちが来ても特別に問題はないと私は思っているんですけれども、そういった交流ですね。それからさらに経済的な面での交流という問題もあると思うんです。  先ほど大臣が、いろいろ漁業問題ですとかその他の問題を含めて常にソビエトとの関係は保たれているんだと、いろいろ議論はあるところですが、一応の交渉は行われている、こういうことをおっしゃったわけですが、まあポーランド問題に端を発して、ソビエトに対する経済制裁的な措置というもの、これがいろいろ行われておったわけなんですが、それについて今回円卓会議等では、特に通商条約に違反するという問題まで持ち出してきておるわけですね。経済制裁について非難をすると。日本政府がことしの二月にポーランド事件を口実にして経済制裁を声明し、対ソ貿易政策を強化する方針をとったことに対する遺憾であるとする表明、この行為というのがソ連に対する敵対行為であると、彼らはそうとると。一九五七年に締結しました日ソ通商条約と八一年五月の現行貿易支払協定の精神と条文に違反するものだというようなことを新しくソ連側が言い出してきている、こういうことなんですね。これについてはいかがでしょうか。ソビエトとの経済交流というのはいろいろ問題があるようでありますけれども、いま申し上げたようなことに関連して政府としてどういう見解をお持ちか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) まずソ連側日本のとっている措置を制裁措置と呼んでいるのは、必ずしも正確な表現ではございません。私どもの呼んでいる名前は対ソ措置ということで、制裁という言葉は含んでいないこと、これは先生御承知のとおりでございます。  この措置の目的とするところは、特にポーランドの事件関連いたしましてソ連側の自制を求めること、そしてポーランドに直接の軍事介入等を行わない、抑止というその効果をねらって一連の措置を、これは西側の協調と連帯という枠の中でとっているわけでございます。この措置について、ソ連側がいろいろなことを言っていることは私どもも承知しております。  ただいま御指摘のありました通商条約との関係でございますが、日ソ通商条約の第七条には輸出入の産品について無差別待遇という表現がございます。ソ連側が言っているのは日本のとっている信用供与のケース・バイ・ケースの判断、これが通商条約に違反であるというようなことを申しているやにうかがわれますが、通商条約で決めているのは産品自体に対する無差別の取り扱いということでございまして、信用供与の問題には何ら触れておりません。したがって、日本側が現在とっているような措置、すなわち対ソ輸出信用をケース・バイ・ケースに判断して、必要とあらば抑制を加えると、こういうことは日ソ間の条約関係には何ら違反しない、何ら条約上の問題にはならないと、かように認識している次第でございます。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、第七条は信用供与については規定されてないから、それについては日本側としてどう措置をしようが、これについては触れないんだというふうなことでございますか。
  34. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) さようでございます。
  35. 松前達郎

    松前達郎君 ソ連の方が恐らくこれを言ったのは初めてだと思うんですね、今回。ですから先ほどおっしゃったように、経済制裁という言葉は内容的にはそういうものではないというふうにおっしゃるのもわかるわけですが、いろいろな面で、ただその言葉だけとか行動だけを一つ一つ取り上げて考えてみますと、確かにそのとおりかもしれませんが、やはり全体的な国際的な雰囲気といいますか、そういうものからいくと、やはり受ける方からすると経済制裁と受け取るのかもしれません。その辺は一応受け取り方の問題なんで、ここでとやかく言う心要はないと私は思いますが、いずれにしましても日ソ間の問題というのはこれから何とかして冷却された状態を脱却をする、この仕方については、領土問題を最初にぶちかましてそれを解決しようとしても、これは当然並行線をたどるだろうと思う。ですから、その他の方法で何らかの対応をしながら適当にそれを崩していくというやり方ですね、こういうやり方が必要だと思うんです。これはどういうふうにやれということは私もわかりませんけれども、その辺の外交戦略的な計画はある程度頭に置いてやっていかないとなかなかうまくいかないんじゃないか。しかも、それは恐らくここ数年間で解決できる問題ではなくて、大分時間がかかるのじゃなかろうか。特に領土問題などはソビエトに言わしますと、北方領土の問題もあるけれども、ヨーロッパにおいても三十カ所ぐらいそんなような問題があるんだと、こういうことも言っておりますし、彼らの立場も、本音を言えばそっちもあるからなかなかそう簡単にいかないんだというのが彼らの考え方ですね。それを彼らが言ってしまったらおしまいになりますけれども。  そういうことなんで、そこももう十分おわかりになっておられるはずですから、そういったような全体の国際的な流れというものを見ながら、やはりこれから日ソ間の問題を取り扱っていかなければならない、かように思うわけで、今回の日ソ円卓会議というのは、これは民間会議だから政府としては関与しないというようなことをどこかで私見たのですけれども、立場として恐らくそうだと思います。しかし、ここで行われているいろいろな発言、議論というもの、これらについてはやはりある程度慎重に分析をしていかなければならないんじゃないか。日ソ円卓会議の評価という問題になると思いますが、この点大臣いかがでしょうか。
  36. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 民間レベルでの御協議とは言いながらも、五団体の顔ぶれを拝見して有力な方々も名を連ね現実に動かれておることでございますから、それなりのお話し合いがあるものと思います。政府として円卓会議についてとやかく言う立場ではない、これが松前委員のおっしゃるとおりに民間レベルで日ソ間のこういう交流が行われておる、それに伴って何か政府の方に日本側の代表の方が御要望されればそれはまた承るとか、あるいはその経緯を参考にするということがございますが、円卓会議そのものについてどうこういま言う立場ではないと、こう思うのであります。
  37. 松前達郎

    松前達郎君 その辺の情報等も十分入れながら、参考にしながらやっていかれたらいいんじゃないかと私は思うんですが、特にメンツの問題がずいぶんあります。ソ連側というのは案外メンツが、日本もメンツを重要視するところですけれども。たとえば要人が日本に来ることについてビザを発行する、いわゆる外交ビザの問題等いろいろあると思うんですね。こっちから呼ぶのか向こうから押しかけるのか、そういうふうなどっちが言い出すのかという問題もあろうし、いろいろありますけれども、たとえば民間のそういった動きを利用して彼らを日本に来させる面もなきにしもあらず、いろいろとその作戦はあるんじゃないかと思います、ここではもうこれ以上申し上げませんが。  そういった面でこういった動きというものも十分見ていただきながら、今後の参考にしていただければと、これを最後に要望しまして質問を終わらしていただきます。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 きょうは伸びたり縮んだり、結局は五十分の質問ということになっております。きょうの午後には日ソ関係のミーティングに出て、外交、防衛の問題に対して一言だけソ連側にも言いたいと思いまして、改めてそれは文書にして政府にも質問したいと思います。  すでに松前さんが先ほど質問の中に率直に述べましたとおり、この日ソ並びに日米関係というのはきわめて微妙な三角関係みたいなものになって、まともな人には表づらから見たのでは見られない不可思議な現象を呈している。領土問題においてもしかり、それから国際連合とヤルタ体制との矛盾の問題。そういうものが戦後約三十七年たちまして外交文書等において問題点がだんだんアメリカにおいても正確に出てきておりまするが、私は一番心配なのは、大体ヤルタ秘密協定というものが日米間において平和条約締結された折に、ソ連を排除して全面平和条約でなく、とりあえず日本を占領しているアメリカとの関係において、日本が占領政策から脱却できる独立への方向づけとして必要であるという形において、平和条約がサンフランシスコにおいて結ばれたのですが、あのときにも吉田さんは委任の全権としてサンフランシスコ平和条約締結するために署名しておりますが、あのときの行政協定の問題に対してはやはり吉田さんの一個の見識を持って、長い間における外交の独立というものはその国の独立を意味することであって、そういう軍事的な協定と思われるようなものに対していろいろな諸般の事情から日本アメリカの占領政策から解放される独立への第一歩として踏まなければならないのではないかということを考えながらも、やっぱり吉田見識において自分ひとり単独でアメリカの兵隊屋敷に行ってこの問題を調印しているものであります。  この事実を見ても、後で吉田さんも大分いろいろな形においてダレス圧力のもとに体勢が崩れてきておりまするが、ちょうどフェビアンソサエティーのメンバーであった正金のロンドン支店長をやった加納さんが、吉田さんとは親戚でもあるが教養と見識において吉田さんよりは私は上だと見ておりました人で、吉田さんには非常に天才的なひらめきがあるが、基礎的な学問体系というものがなかったところに吉田さんの失敗と、並びに現実政治家としての取り巻きに支配されなければならない、吉田政権を持続することによって自分たちの存在が明らかになると思うような人たち——後年は大分変わっておりますが、自由党の総裁になった緒方さんなんかも、憲政常道論の上に立った政権交代が必要であるという一貫した理論に対して吉田側近から反撃を加えた一人であり、後では変わった模様でありまするが、このように日本の政治家というものは外国でもそういう風向きがありますが、政権をとると取り巻きに誤られて高い見識を失う場合が往々にしてあるのであります。  そういう問題は別にして、防衛大学校の学長になられた猪木さんは多元的国家論をも理解し、実証主義的な政治学者としては私は一流な人だと思っております。アメリカで出たデータを基礎としてダレスに屈服した過程における吉田さんのやはり言行不一致な点、変化の点、そういった点を実証的にやはり後で憲法理論の展開の過程において示しておりますが、これに対して、何だ猪木は敵か味方かわからないというような改憲論者から議論も出て、猪木さんは特殊な雑誌から、きのうまでは彼らの味方と思った者がきょうは敵であると言わんばかりに袋だたきになったことを私は覚えておりますが、いかに政治の上における実証主義的な政治学というものが、科学としての政治学の確立というものが骨であるかということはこの猪木さんの例を見ても明らかなことであります。  現在、憲法改正の問題に対して、これはきわめて重要なものであって、自民党の中においては党の綱領にまで入れておって、それを直ちにいろいろな動きのとれないような議論を発しておって、いざというときには憲法改正は党議によって決定したものだという開き直りをしておりまするけれども、自民党の中においてならばそれが通用するかもしれませんが、今日国連を母体としてあの再び戦争はしまいという誓いのもとにできた日本憲法の九条、国連憲章の精神を精神とし、平和維持機構の国連をつくったあの当時の全世界の人々の支持のもとに日本憲法というものはできているんで、マッカーサー憲法じゃありません。マッカーサーはそれを伝達した程度にすぎないのであって、いま私は日本の憲法を、解釈にはいろいろあるにしても、国家基本法としての憲法を崩すことは明らかに、国連をして国連の機能を果たさせないようにするための外堀を埋めるようなものであって、ヤルタ体制における戦時中の軍事謀略協定、それを生かして、米、英、ソのあの軍部が必要とした戦時中における謀略協定、それを守って、うるさい国連から今日脱出してわれわれだけの核の問題を中心としてもっと問題を煮詰めていこうというような甘い考え方、これはソ連だけを日本の右翼は攻撃しておりますが、これは明らかにアメリカの特使としてルーズベルトの補佐役でもあったエレノア夫人の乱れの中から、とにかく戦争はもうこりごりだ、やめだという形において無惨にもウッドロー・ウィルソンのように共和党にとどめを刺されない前に、やはり一つのどういう形においても戦争を終結に導かなけりゃならぬというエレノアさんのルーズベルトの最後を飾りたいという一念と健康ということを非常に気にして、しまいにはやはり、いろいろな資料を私はいままで集めておりますが、エレノアさんのルーズベルトを思う念は強いことはわかるけれども、大切な問題を実はチャーチルにも相談しないで、そうしてあの軍事秘密協定の基本的な方向づけを決めてしまったときにはチャーチルも当惑したようであります。しかし、ぼろを外に出すことはできない。しかも、そういう先走った聡明な女性であったけれども、夫ルーズベルトの命は短いと見て、亡くなる前にせめてもこの平和への役割りを果たしたという、名誉ある死によって夫をかばいたいとも思ったのでしょうけれども、エレノアの出しゃばりに対して非常な不快感を持ったシカゴ・トリビューンのマコーミックがシカゴ・トリビューンを通じて、真珠湾攻撃も大統領がすべて承知の上であった、日本側から真珠湾攻撃をしかけてくるならば、それに災害が多少出ても、そういうことがなければ戦争への道を踏み切ることができないという謀略が真珠湾攻撃の中にもひそんでおったということを秘密記録は暴露しております。それは事実です、いまになってみては。  真珠湾攻撃のことだけをアメリカは攻撃して、パールハーバーを忘れるなということにおいて問題をすりかえておりまするけれども、日本海軍は反対で、山本五十六さんもあるいはあの当時における大将であったお方も聡明な人たちはほとんど全部戦争をやったら日本は敗ける、しかし憲法によって、天皇の詔勅によって出されたときにはどうにもならないという、伊藤博文のつくった明治憲法の天皇の軍隊であり、宣戦布告は天皇がし得る、また軍備の削減は勝手に国会でもできない。そういう形において進むことも退くこともできなかった明治憲法、ドイツのプロシア憲法よりも、ビスマルク憲法といわれるものよりももっとひどい、神がかり的憲法によって、無条件降伏にまでいってもだれも責任を持てないようなぶざまな無責任体制の憲法をつくり上げ、天皇をして慟哭せしめて、人間天皇を宣言し、その上で国民に訴えて再び戦争はしないという誓いを立ててつくったのが、敗戦によってもたらされた日本の平和憲法です。同じようなことを二度も三度も天皇に恥をかかせたり信義を偽るようなことをさせたならば、天皇というものは自分の意思を持たないで特殊な戦争推進者によって勝手に引きずり回される存在になってしまうのであって、象徴天皇としての象徴の文字は、やはり禅の山本玄峰氏が苦労に苦労をかけて憲法草案のできかけたときに、民族統合の象徴として天皇制を否定しながらつくり上げた苦心の作であります。聖徳太子の憲法十七条の十条の中に組まれているところの維摩経から暗示を受けているような近代憲法に相通ずるようなりっぱな憲法であります。天皇は民族の象徴であると言いながら、天皇をそこへ封じ込んでおきながら、再び天皇をして無責任な——最終的には恥をしのんで、面目をしのんで、民族のために自分の命をもささげて裁かれてもよろしいという気持ちで敗戦によってやっともたらされたいまの民主憲法というものをつくり上げることに同意したのが天皇の存在であり、天皇自身というものは、その後私はずっと天皇とおつき合いを明治天皇のお孫さんの時代から、御用邸の時代から知っておりまするけれども、行き過ぎのないように、民族の統合の象徴として政治的な過ちを犯さないように、あれほど謙虚に行動している人は私はないと思うんです。  しかし、われわれは天皇制は否定である。民族統合の象徴としての天皇というものの存在がどういうふうに定着するかは歴史の流れの中において定むべきであって、再び天皇をして慟哭せしめるようなひどい無責任な目に遭わせるようなことをして、国会の周囲に、天皇をしてあれだけの無責任な敗戦外交になっても何らの責任をとらない軍部官僚の手によって伊藤の銅像だけが保護されているようなばかげたことは、日本にいかに官僚軍閥の亡霊が主権者としての国民を乗り越えて、日本の幽霊は足のない幽霊であるということが昔から西洋の幽霊と違う特徴であるが、ちゃんと足まで立てて伊藤博文の銅像が立っているということは、明らかに官僚軍閥、いつの日か自分たちが伊藤博文がつくったような憲法を復活さしてみせるという執念が宿っているからだと思います。私が恐ろしいのはこの執念です。日本だけでなく世界のために新しい道を開こうというだけの謙虚さを持って、東西南北の人々の苦悩を代表して、日本は国連憲章を舞台として生まれたモデル的な国家であるから、これを守り抜くというだけの信念がないのか、この点が非常に私は疑問とされるところであります。  私は天皇誕生日の日に、鈴木さんは非常な苦悩を経たと思いますが、私は答弁は必要ないという質問をやったときに、総理大臣として私が内閣の首班である限りにおいては憲法は改正しませんということを断言しました。憲法を改正しないというのは、憲法の中に流れている魂を変更しないということを意味することであって、憲法改正への外堀を埋めさせて平気でいるようなごまかしであっては、憲法改正というものはしませんということには通じないのであります。大阪城における外堀を埋められてしまって、あのざまは何ですか。  いま、全国区の議員をどうやったらふやせるかというので、自民党と社会党とが話し合って、そして国の最高機関としての国会で多数決において決定するならば、憲法を改正しなくても最高機関としての国民の意思を代表する国会の多数決によって、憲法改正をしなくても事実上の憲法違反行為でないということを証明できるというような、哲学のないへ理屈はだれが考えたんですか。人民一人一人の直接独立した自由の精神というものを基調として近代憲法は生まれておるのであって、国の最高機関が国民の意思を形式的に代表すると称して、多数決によって決めれば、それによって憲法改正しなくても同様の成果を上げることができるというようなへ理屈は、政治哲学を無視した属僚的な見解であって、それこそ禍乱のもとはここから生まれるのであります。  社会党自身からいっても、特殊な人々が、われわれから言えば浅薄な考え方をもって、党のためを思い将来を思ってやったのかもしれないが、そういうことは取り返しのつかないことでありまして、逆手にそれがとられたときには、社会党がそういう慣例をつくったがゆえにということによって、国の基本法としての憲法は国会の多数決主義によって、憲法改正の手続を経なくともやれるようなでたらめな慣習をつくって、果たしてこの憲法というものが守り抜けるかどうか。こういう形式的な哲学のない取り引き、従属的と言っては失礼だが、実際的に党を思い、または党の行き悩みを考えての一つの試みかとも思えますが、憲法を守るのは野党の社会党だけの意思によって決定するものでありません。一人一人の人民の意思を結集し、批判し、憲法改正に必要な手続をとるのでなくて、このような便法において悪慣例をつくるということは、自民党たりと社会党たりとも、後世においてかくのごとくして日本の議会政治は形骸と化して、精神は滅びたという記録が記せられるときに、自民党の総理大臣でも国会議員でももって可とすることができるか。これは、私は重要なことだと思います。  簡単に社会党でも委員長周辺の人なんかは考えておられるようでありますが、委員長は何も独裁政治家ではないのであります。謙虚に人民の意思を代表し、徒党の掛け引きの上に立って一党を支配するというようなやり方でなく、思いつきの発想によって行動するのでなく、われわれは領土問題に関しても、自民党の思いつき的な北方領土の問題でなく、社会党たりと自民党たりとを問わず、戦争中に他国の主権を無視し、その領土を自分のところでは何らの被害を受けずして、ソ連に与えてやったというルーズベルト周辺におけるところのエレノアさんもその張本人の一人であるが、こういう形の平和条約の前提というものは、原則的に国際法の理念の中にも明らかなように、他国の主権を無視して戦争に勝ったから負けたからといってこれを取ったり奪ったりできるものではないというのが、第一次世界大戦以後のベルサイユ体制下においての、原則的において確立した国際法の理念じゃありませんか。それをみずから目的のためには手段を選ばずという形において——迷いに迷っていろいろな予言者を集めたり、あるいはソ連を納得させるにはどういうことだというふうな苦悩を経たでありましょうが、そういう形において出たヤルタ体制そのものを、あたかもダレスに押しつけられて黙認していかざるを得なかった吉田体制、いままでの外務省の物の考え方、日本政府の受けとめ方、そんなことによってどうやって日本は独立の外交ができるのか。社会党においてもそうである。  ソ連の言うなりになって第五列的な役割りを果たすとしか思えないような領土問題に対しても、敗戦にかかわらずあのヤルタ体制ができる一九四五年二月十一日、あの時点における日本の領土はいずれにしても返還するのが原則ではありませんか。米英ソの軍事謀略協定によって、秘密協定によって他国の主権を無視し、他国の領土をつまんで相手に与えるというような卑劣な行動によって行われたヤルタ秘密協定は、ソ連だけの問題ではない。そのたくらみの中心は、ルーズベルト周辺のエレノアさんや何かを中心としての迷いに迷い抜いた一つやり方であって、この点はやがて資料が明らかにされるに従って、ああいうものはやはり清算さるべきが本当であって、アメリカ、イギリス、ソ連の軍部の軍事謀略的な要請を受けての勝てる国々の脱落行為、こういうものは戦争中にはかつてはよくあったことであるし、ウイーン会議において神聖ローマ帝国を代表し帝政ロシアやドイツ、オーストリアの王室を手玉にとって、そうして謀略的なナポレオン封鎖のためのウィーン会議を開いたメッテルニッヒはキッシンジャーの尊敬する人物であるが、メッテルニッヒがいかに謀略をやってもオーストリアは滅びていったではありませんか。帝政ロシアも滅びていったではありませんか。カイザーといえども滅びていったじゃありませんか。  この幾多の歴史の流れを見るならば、マキャベリの哲学を理解しないでメッテルニッヒ的な権謀術策をよしとした謀略外交が成功したためしなしでしょう。ばかなこともいいかげんにしてもらいたい。私はいま、本当に日本だけの戦争を食いとめ、安全を図ろうというような安泰な気持ちで物を考えているのじゃない。日本以上にもっとさいなまれたナチスには虐殺され、ソビエト・ロシアに頼っても、スターリンは強制労働をあえてポーランド人に要請して、奴隷、使役等によってこれをひどい目に遭わせた。このヤルタ協定によって、ナポレオンにおいて国民革命の余波を受けて独立を敢行していったポーランドが、逆にメッテルニッヒの権謀術策によって罪なきポーランドがなぜ民族として最悪の被害を受けなけりゃならないのか。私はミッテランが来ての大演説の中にもほの見えたのでありますが、ポーランドの悲劇というものをわれわれが見過ごして、ヤルタ協定の清算を帝政ロシアの大国主義を踏襲するとしか思えないこのいままでのソ連の海に出るもがきのための一つの権謀術策なりそういうものは、やはりみずから自主的に解消するというだけの謙虚な反省なしにソ連アメリカの言うことも世界は腹の中では聞いてない。力がないから、無理して戦争をやってまでひどい目に遭うのよりは、じっと時が来るまで待とうと言うが、いまの核戦争反対、事実がわかってくるに従ってアメリカのど真ん中のフィラデルフィアやボストンにおいても、最もアメリカの健全な精神を代表するところにおいてもそれが燃え上がってきた、内から燃え上がってきた。  あした副大統領が来られるそうですが、経済摩擦の問題だけではないと思います。ソ連が、ブレジネフの命短しと言われているかもしれないが、生きている間にみずからの責任においてヤルタ協定を清算しなけりゃならない。ソ連アメリカとの競争を避けるために、力の均衡によって、その均衡維持によって不安定ながらも平和を維持しようと考えたのも事実でありましょう。しかし、均衡ということはなかなかむずかしいことであって、均衡というのは主観的な見方の均衡が多いのであります。アメリカソ連は正面衝突はしない。しかしながら、核の競争はせざるを得ないというのは、優位に立って後は城下の誓いをさせようという方向にきているのが今日でありましょう。しかし、こんなことをやっていたら、本当にアメリカソ連とはお互いにぶつかり合ってしまえば最後だからお互いの正面衝突はしまい、そのかわり近所迷惑は考えないで核の分散をやって、ぎりぎりのところまでいって相手をやっつけよう、気違いに刃物というのはこれです。本当にこんな不安定な中に世界が揺すぶられて、アメリカソ連のために明日がはかり知れないというような目にいつまでも世界ががまんしていると思ったら大間違いです。  私はこの運動はアメリカからも本当の悲惨さを広島、長崎において見た。宇宙航空士が地球を離れて地球を見たとき緑の楕円形の地球を見ることができたということは非常な喜びかもしれないが、広島、長崎以上の原爆戦が行われたときに、アメリカソ連だけにそれが及ばないということはあり得ない。両方ともわかってきているようである。地球が客観的に見て緑の楕円形と思ったものが広島、長崎の何百倍というような破壊力を持って瓦れきの原爆投下された後の広島や長崎のような目に遭ったら、世界の人々は皆ほかの世界に生き延びようとするつもりかどうか。そんな哲学のないその場限りのような物の考え方では際限なく人類は破滅への道を行くだけであり、どんな危険を冒してもこれをぶち切ろうという考え方が今度のサミットの会においては盛り上がるかもしれない。ソ連アメリカが簡単に応じるとは思えない限りにおいては、ソ連アメリカの核兵器によってコントロールされ、戦力が弱ったからといって連合国の最も被害の大きかったフランスと中国が除外されたが、これがためにフランスなり中国は犠牲を払って核開発をやったのです。ソ連アメリカと組んでの打算による一つの核の恫喝による世界支配には屈しられないという悲願がその中には込められております。  言葉は外交辞令できれいな言葉を述べておりますが、私はこの来るべき世界サミットの会は非常な世界の平和を維持するための質的転換のときが来たんだと思いまして、いままで外務大臣にも言いましたが、言っても答えを求めてはいけないと思うが、このごろの様子だとどうも何が何やらさっぱりわからない。本当に関東は昔は開拓地であって、夜ばいが発達して筑波でも何でも夜ばいの都とされましたが、あんまの夜ばいよりもひどいようなもので、どこが味方でどこが敵で、どこが愛国者で、どこが何だか、みんな疝気筋ばかりを気にしておって本当のことをだれも言えない。議会があって議会なきに等しく、総理大臣あって本当のことをうっかり言ったら揺すぶられてつぶされてしまう。私は、いまのエール大学の鴨教授、いまアメリカに呼ばれておりますが、国際法の博士をとる前に来て、日本の派閥に対して実証的な研究をしたいというので三十幾人の国会議員を訪ねて一つ一つアンケートをもらったが納得ができないというので、彼は実証主義的な政治学の立場から、それを細かく分析して調べました。  私は、君は派閥次元の政治というものを過重評価しているけれども、あれは政党以前の原始的形態であって、一つの政治責任を持たない三好、松永の殿、少なくとも細川、山名の時代までは足利幕府の一つのコントロールのもとに一応とにかく問題が処理されておったが、だんだん三好、松永というような徒党が天下を乱してしまって収拾がつかないところに武家政治の崩壊というか、公家政治と同じような建武中興というようなものの崩壊が導かれたので、いま政界再編成の方向づけが行われるときであって、いい悪いは別問題として、政治責任を持たない派閥次元の徒党によって天下の政治が支配されるような変則的な政治というものは長く続くものではないという形で、やはり長期政権というものは必ず腐敗を生む。  緒方竹虎氏のようなまじめな議会政治信奉者も吉田さんにかかっちゃ手に負えなかった。吉田も当初は和田博雄なんかを追っかけ、社会党を強化しなければやはり議会政治というのはできないのだと本当に考えた時期もあった。しかし、政権をとると、官僚は政権を長期にわたって壟断していると権力を利用していろいろなうまいことがやれるという卑しい品性に周りの者が崩れてしまって、そうしてウォルポールがイギリスにおいて内閣制度を創立した相当な人物でありますが、二十年の長期政権の中に勲章をもらいたいというやつには勲章をやる。勲一等が欲しいというやつには勲一等をやるというようなぐあいの、勲章、名誉、利権、賄賂、そういうもので、人間の弱点でもって操る方が楽だというふうにウォルポールは考えて手もつけられないような二十年政権の腐敗を生んだのです。いずれにしても金でクルクルパーにするのが一番手っ取り早いということを考えてしまった結果、収拾つかなくなったときに、ピットは不可能を可能ならしめ、徹底的に世論に訴え、言論に訴え、気違い扱いにされたけれどもウォルポールの腐敗政権をぶっ倒してしまった。この献身的な、人民の声を代表して、内閣制度の中に安座して長期政権をむさぼった政権はピットの死力を尽くしての捨て身の闘い、言論の闘いの中に埋没してしまった。日本にはこずるいやつばかりがいて、このピットが持っているような気力がない。だから、相当な財力なんかを持つやつも、うっかり変な金を使ってつまづくよりも、くそ度胸があって金を使える人が、国のためならという名目のもとに必要な金をつくってくれるところに集まっていった方が、早く大臣にもなれるし政権もとれるんじゃないか、ばかな考えというものは三好、松永の徒である。  そこで、ピットは宰相で偉かったけれども、子供のピットは二十四ぐらいで宰相になったのは、ナポレオンが大陸封鎖をやったということはナポレオンの失敗だけれども、これに抗して屈しないだけのイギリスの人民の力によって祖国を守ろうとする悲願が、ピットの根性がやはりしみ通っておったからこそイギリスの独立はかち得たのであります。いまのようなざまでだれかがつまづき、だれかが死ぬようなときには、金や名誉や悪いことをやっても自分はひっかからないで、ほかの人が犠牲になってくれるくそ度胸のある人がやっぱり国のためには必要だと思っているような考え方のもとに政治力学が構成されると思っても、歴史の現実の怒りというものは、さようなことであっては歴史の流れを食いとめることはできないんです。こわいです。便宜主義的な内閣温存策を講じても、前向きの姿勢で人民に対して、人民に対してやはり一つの憂いを憂いとして食いとめて、議会政治にもいろんな欠陥がありますけれども、政権交代ということを無視しない、長期政権は弊害があるというウォルポールの実例を見ながらやはり政権交代の可能なような状態、可能じゃなくても人民がさせてみせる、その怒りに燃えたときに、もって進退は、ただ単に私はいまの鈴木内閣だけの進退じゃないと思う。  そういう意味において、きょうはほかの質問をじみにやりたいと思いましたが、いま一番心配なのは、依然として遠慮した外交辞令で物を言っているけれども、ミッテランの演説を聞いて私は百二十点と思った。高い理想を掲げながらも現実を忘れない、また祖国の利害、打算ということも軽視できない、しかしながらそれだけに拘束されないで、世界が変わればそれに対処するだけのものを持たなくちゃならないという、あの流れの中におけるダイナミックなこの瞬間を逸してはいけないというだけの決意があの中にはひらめいておったと思います。私はそういう意味において、とにかく戦争反対をやりながらも、韓国に恫喝されるならば、韓国が日本の防衛を守ってくれるその代償として韓国の借款はそのまま受け入れるべきであるというような議論をやっても平気な一貫性のない政治哲学——哲学じゃない。こういう形において野党も与党もよろめいている限りにおいてはだめだと思います。  で、私は実際、きょうは一番心配なのは、植物品種保護条約の問題でしたが、それはいま松前さんも全部触れてきましたからあれですけれども、この問題でもっと当局あたりはしっかり外務大臣にぶち込んで、ただ単に保護するという名目でなくて、発明や発見の篤農家ほど本当のことを秘密にしている人はないんです。この人たちが安心して世界に奉仕できるような、安心してそれを全体的な人類に奉仕できるような奨励、こういうようなものにこそ金の裏づけをすべきであって、勲章や表彰で、保護するという名目で変な後ろ向きの保護をされては困ると思うんです。それをやっぱりもう少し、農林省の熱心、外務省の熱心もよく知っておりますが、当局あたりはもっと先取りをして、いかなる場合においてもわれわれが生き残ることができるというだけのやはり先取りの具体的な問題を、私はこういう篤農家や発明家から、その人たちをして感激して協力できるような奨励金なり資金、研究継続の保障なりをしていくような形で、よろいかぶとだけを着せられて名誉の名によって動きのとれないような後ろ向きの保護政策、表彰政策には御免だから、もう少し世界に貢献し得るような特許の新しい科学技術、躍動を私は促進させるための意見を、外務大臣は苦労人でよく心得ているからやってもらいたい。いままでのようなどんぶり勘定で、百姓をおだてて名誉さえ与えれば、勲章ぐらいやれば、表彰すればというような形の後ろ向きの農政というものはもうよしてもらいたい。  そういうわけで私は、もうこの二、三日を見て、とにかくこれは政治というものは力なりと思うかしらないけれども、一人のピットが欲しいですよ。一人でも信念を持って、世界にこの人のある限りは議会政治は守れるというような、ミッテランでも尾崎行雄以外にだれも引用しないじゃないですか。明治憲法の中にあっても、天皇の玉座の中から人民に攻撃を加えるようなやつらは許さないというだけの熱烈たる国会の中に闘いの記録を残しているじゃないですか。あれが政治家です。あれが本物です。うろちょろしないことです。人民をだますことを考えないで、人民とともに苦悩し、模索し、そしてタイミングを逸せずに私は世界の人々の心をかち取ることが必要だと思うので、あえて私は、どうも危なくなって信用しないというのは悪いけれども、信用していいのか悪いのか。やっぱり余り議会政治の経験を持ち過ぎちゃったから、議運族の人にもりっぱな人もあるし、国会対策の人にもあるけれども——別に御返事も答弁も必要としません。  しかし、一つだけ言いたいのは、民の憤りはとんでもないときに発するということだけはお忘れないように。人民をなめるなという言葉が人民の中から出ていることは否めない事実であるということ。やっぱり、民衆とともに苦悩し、経験した人たちの心得なければならないものだと思うんで、あえて私心配で夜も眠れないから、きょうだけは小さな問題で大きな問題の品種改良の問題、この問題に限って、実際はソ連でいままでやってきたうそのこともソ連の参事官に私は暴露して、改めてソチの植物園における経験で、日露戦争の後に恐らくは愛媛県から持っていった果樹——私はこのために死のうと思っているんですから、死に場所を探しているんですから真剣勝負で対決しますよ、人民の名によって。政府に干渉はしません、外交権は政府にある。しかし、恥を万代にまで残していかないように、政治家としては心して一つの議会政治を守ってもらいたい。哲学のないインチキ憲法は滅びる。そういう意味において、残念ながら議会政治を守るより仕方がありませんから、そのことだけはあえて通告し、私は外交権に対しては内閣において責任を持つものですから関与しません。しかし、ごまかしにはわれわれは応じないということだけを——自民党の中でも志士仁人は生まれる——議会政治を否定するなら別だけれども、否定しないでごまかしていこうというようなもってのほかの措置に対しては、議会政治を守るためには命を賭して闘うことをあえて宣言しておきます。  以上、終わり。
  39. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  40. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、千九百七十八年の船員訓練及び資格証明並び当直基準に関する国際条約締結について承認を求めるの件、千九百七十六年の海事債権についての責任制限に関する条約締結について承認を求めるの件、千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種保護に関する国際条約締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  41. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 条約案件の質疑に入ります前に若干国際情勢の問題についてお尋ねをしておきたいと存じます。  第一点は、サケ・マスの日ソ交渉がいよいよ大詰めに来ているようでございますけれども、その一方において伝え聞くところによりますと大変交渉が難航したと、日程的にもあるいはずれ込むのではないだろうかというような判断もあるようでございますが、五月一日からの操業までこれが間に合うのか間に合わないのか、その見通し等についてまず最初にお伺いしておきたいというふうに思います。
  42. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 日ソサケ・マス交渉は去る四月の十三日から開始されておりまして、十七日には松浦水産庁長官が現地に赴きまして交渉を継続しております。日本側からは当初の要求として四万五千トン、それから規制の諸条件は昨年並みという要求を出しております。これに対しましてソ連側は漁獲総量三万七千トン、取り締まりは従来よりも強化すると、こういう対応で現在まで四つに組んできておる状況でございます。ことしは不漁年ということでもございますし、ソ連側は三万七千トンということを当初非常に強く主張しておったのでございますが、ごく最近入りました情報によりますと、この点については次第に譲歩の姿勢を示してきているということでございます。取り締まりの面につきましては従来よりも厳しくということで、たとえば陸揚げ港にソ連側の監視員を置くということ、あるいは日本側の船にソ連の監視員を乗船させるというような二条件を出してきております。わが方としては、この取り締まりの強化という点は非常に重要な問題でございますので、わが国の権限を侵さないように細心注意をして交渉を進めている次第でございます。  一番最近の情報によりますと、漁獲量及び経費の負担、これは漁業協力費という名前で呼んでおりますが、このおのおのについてはほぼ昨年並みの実績を獲得できるという見通しが浮かび上がってきております。いずれにいたしましても、五月一日からの操業開始ということを念頭におきまして、近日中にこの交渉をまとめ上げるために鋭意努力を進めているところでございますし、多分そのようにまとまり得るという心証を抱いております。
  43. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま述べられた中で、大変われわれとして不可解に思いますことは、日本の漁船にソビエトの監視員を乗せるという、これは大変無謀なやり方ではなかろうかという感じがしますが、恐らく日本側としてもそういった面の排除を頭の中に入れながら交渉に臨んでいるのだろうと思いますけれども、いままでの交渉経過の中で、今回、以前よりもその監視体制が厳しくなるのではあるまいかというそういう予測がいまあるようなお話でございましたけれども、どうでしょう、この予測というものが完全に排除できる方向へ向けられた結論が出るのでしょうか。間違いなく五月一日から操業ができるということが、断定というのはなかなか相手の国のあることですからむずかしいだろうと思います。心証ということは、間違いなくできるというふうに受けとめていいのかどうなのか、その辺いかがですか。
  44. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 取り締まりの強化という点につきましては、昨年あたり特に違反の件数がふえてきたという事実がございます。それを踏まえて、そういうことがないようにということから、ソ連側が今回取り締まりの強化という要求を出してきたというふうに承知しております。ただし、先生御指摘のとおり、わが方の取り締まり権限というものが侵されないために極力努力をしております。したがって、ほぼ昨年並みの基準で本件は実現できるのではないかというふうに期待をしている次第でございます。  また、五月一日という日限が守れるかというお話でございますが、これは交渉でございますし、相手方のあることでございますので、一〇〇%そうだというふうに断言することはできかねますけれども、私は心証という表現で申し上げましたけれども、ほぼそうなることを信じている次第でございます。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外務大臣、御承知のとおり、この日ソサケ・マス漁業交渉というのはもう毎年毎年、ときには背筋の寒い思いをしながら臨まなければならないという長い歴史的な経過があることは篤と御存じだろうと思うんですね。それにつけても漁民の生活ということを考えた場合には、何としてもやはり期日に間に合わせるという、そういう今後スケジュールというものを十分頭に描きながら、相手国ソビエトもこれは十分わかっているはずなんですね。わかっていることをいたずらに引き延ばし、どういう理由があるかわかりませんけれども、いろんな折衝というものはむずかしい場面もございますでしょう。しかし、一方においては一日延びればそれだけ暮らしに影響する、これはもう常識でございます。そういう点を毎年毎年繰り返すようなことのないようにお取り組みをいただきたいと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  46. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 本年は交渉開始がおくれまして、ただいまお話しのように、漁民の皆様方がはらはらしておられる状況だと推察をいたします。しばしばこういうようなことについて御批判も受け、改善の余地がないかということでございますが、相手側が単年度ごとにやるという従来の方針についてこれを変える意思がないようで、まことにこの点は残念であります。そうであれば、ことしも本来であれば交渉の時期はもっと早く、いまごろは妥結するぐらいなそういう心組みであったのでありますが、漁民の皆さんに心配をかけないような、交渉開始時期をせめて早目に早目にやる必要があるのではないかと。しかし基本的には、二年とか三年とかまとめて話し合いができるとか、そのほかの工夫を日本としては強く要望したいところでございます。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、対韓経済協力の問題に少し触れさしていただきたいと思います。  政府間でようやく決着がついたようでございますけれども、一見すると外務省と大蔵省との調整と、なるほどそれは調整に違いございません。しかし、金額的に当初予定していたよりもふえていることは事実でありますし、また伝えるところによりますと、さらに二億ドルの上乗せが今後考えられるかもしれないというようなことも聞いております。そこまでやはり踏み込まなければならなかった理由とその背景は一体何であったのでしょう。
  48. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいま渋谷委員御指摘の数字は新聞を通じて把握された数字かと存じますが、実はまだそこまで決着を見ておる段階にございませんで、依然としまして関係省庁との調整に、率直に申し上げて手間取っておるという状況でございます。韓国側にはまだそういう意味での接触は持たれておりませんで、これは今後の問題になるかと思います。余り長引かせてもいかがなものかということで、総理からもなるべく早く決着をつけるようにという御指示はございますが、交渉の状況は先ほど申し述べたとおりの状況でございます。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは、いま述べられたように総理からの指示もあり、できるだけ早く日韓関係の決着をつけた方が望ましいという判断に立つものなのか、それに基づいて外務大臣の訪韓というものを急ぐのか、その辺はどうなんでしょう。
  50. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私が訪韓するにつきましては、言うまでもないそれなりの見通しがなければいかがかと思うのであります。ただいま木内局長の方からお答えを申し上げたとおりに、新聞がいろいろと書きますけれども、各省庁間の意見というものはいまだ十分まとまっておらない段階でございます。実際は日本の中間回答に対して韓国側のいろいろ意見を持ってきてそれを検討をしておるというのが現実の姿でございまして、どういうものか、大変懇切丁寧な報道が行われて、毎日新聞を見る都度戸惑っておるのがこれはもう本当に偽らざるところでございますが、総理が私に対して、余り長引くのはどうかと、連休ぐらいまでにまとまることがいいんではないかと、そういうお話のあったことは、これは間違いはございません。それから私も、連休後の外交日程あるいは国会の関係、すべてを考えてみまして、まあこの連休中に訪韓ができれば好ましいとは思っておるのですが、新聞の報道のようなふうには進んでおらないということをはっきり申し上げておきます。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ何回かこの問題については当委員会においてもやりとりがなされてきたわけでございますけれども、日本の財政的な問題もあり、さりとて韓国側が日本の提示する考え方に大変な反発を示していることも事実であります。  そうした点を整理して考えてみた場合に、果たしてこれが円満というのか、まあ不満は残るけれどもやむを得ず決着ができるかもしれない、まあ相手もですね。という、そういう見通しに立っているのか。確かに早くこの決着をつけることがあるいは望ましいのかもしれません。けれども、あくまでも相手国側が日本の考えていることに対して強い不満を示すことになれば、これはどこまで行っても平行線でまとまりがつかないのではないかという一つの要素がやはり考えられる。この点はどのように判断されておるでしょうか。
  52. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 当初来、私どもは誠意をもって臨んでおるのでありますが、なかなか相手側の理解を得るということにつきまして見通しが出てこないと、こういうことでございます。最後まで誠意を尽くして、そして相手が理解してくれることを期待はしておるのでありますが、まあ、その辺の展望がなかなかできないのが実情でございます。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ、これはここで幾らやりとりをしても決着のつく問題ではなかろうというふうにも思いますが……。  さて、この日韓の経済協力関係の問題、いろいろそれに関連する問題があるわけですが、まずそれはさておきまして、私も過去において何回かここで指摘を申し上げ、御質問申し上げた記憶がございますのは、竹島の領有権の問題であります。  恐らく外務省としては、昨年のたしか十一月ごろに文書をもって抗議をしているということも私なりにつかんでいるわけですが、これも大変息の長い恐らく交渉になるであろう。たまたまフォークランド諸島の問題が火を噴きまして、もう一遍この領有権の問題をめぐる世界の情勢というものに目を移した場合に、相当数があるんですね、あちらこちらに、百とも言われる。その中に竹島も恐らく入るのであろう、北方領土は言うに及ばずであります。これをこのままにしておいていいのかどうなのかは、これはもう政府としても、いまさらここで私が繰り返し申し上げる必要は毛頭ないと思うのであります。しかし、このまままた手をこまねいて黙って見過ごすというわけにもまいらないのではあるまいか。確かに竹島そのものは、何か面積にしても日比谷公園をちょっと大きくしたぐらいのものだそうでございますので、島それ自体の利用価値というものはあるいはないかもしれません。しかし、その周辺のいわゆる海底自源であるとかというものを考えますと、これはやっぱりどうでもいいというわけに放置しておく問題ではなかろう。どうなんでしょうね、一方においては経済協力をせいとこういうふうに言っておいて、今度日本の竹島を返還してくれというこの問題が一向にらちが明かない。返還は別だ、協力は別だという、こういう問題では私はあるまいと思うんですよ。この点については外務大臣としてどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  54. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日韓国交回復の折に交換公文で紛争問題については今後話し合うということにいたしたわけで、その両国間の紛争と言えばこの竹島問題であります。日本はそういう場合にあくまでも話し合いでいこう、こういうことで、先ほども御質問にありましたように、もう数え切れないぐらい韓国側に竹島の問題についての抗議とか口上書とかいろいろやっておるわけでございます。一方において経済協力の問題がございますが、政府としては経済協力は経済協力、領土問題は領土問題として本日まで参っておるわけでございまして、これを絡めて交渉ということについては現在考えないところでございます。しかし、仮に私が経済協力問題で韓国に行くという場合に、この竹島の領土問題を別個に話し合うということについては、私として当然そういう責務があると思っております。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにおっしゃるとおり、領土は領土、経済協力は経済協力だという一つの方向が考えられるとするならば、ちょっと中身的には相違があるとはいうものの、北方四島の返還問題と日ソ経済協力の問題はどうなるんだと。なるほど、アフガンの問題、ポーランドの問題がございます。経済措置をとらざるを得なかったという面もございましょう。しかし、一つの基本的なそういう方向というものをこれから堅持しようとするならば、やはりその辺も整理して取り組む必要があるのではあるまいか。しかし、従来政府の考え方は、北方四島について申し上げれば、あくまでも平和条約締結のための大前提は北方四島の問題が解決しなければということになっている。そうすると、この経済協力の問題でもぎくしゃくしてなかなか進まぬ等々のいろんな不協和音というものが今後も続くのではあるまいか。それは韓国においても同じことが言えるのではないだろうかというふうに思えてならないわけですね。やはり何らかの話し合いというものは、絶えずつながりを持ちながらしなければならないことは言うまでもありませんし、ときには、ワンパッケージでもってそれを一緒にしてやるということは非常に技術的に無理な場合があるかもしれません、しかしチャンスだと思うんですね。やはりチャンスがあった場合には、そのせっかくの手がかりを大事にしながら解決の方向へ道を開くというのはこれは当然政府としても取り組んでいただかなければならない姿勢であってよろしいのではないかと思うんですけれども、いまの御答弁をもう一遍確認をさしていただきまするならば、近々訪韓された場合に、この竹島についても何らかの具体的な話をお進めになるという用意はお持ちになっていらっしゃるわけですか。
  56. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 領土問題につきましては、これはもう機会あるごとに粘り強く話し合っていかなければならない、このように思っております。領土は領土、経済協力は経済協力、こういうふうにはっきり区分けして申し上げておるわけでございますが、訪韓をいたした折には別途領土問題についても日本の立場を主張する、また、現にとられておる韓国側の竹島に対しての具体的な行動について、日本としては固有の領土のことでありますからこれについて抗議を申す、返還を求めるということはこれは当然の私の責務だと、こういうふうに認識しておるわけであります。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 少々質問が細切れになって恐縮でございますが、次に、前にも委員会で申し上げたようにブッシュ副大統領の訪日が決まりました。いま話し合われるその課題というものが、経済摩擦をどうするか、防衛問題をどうするか、できればベルサイユ・サミットまでの間に意見交換をしながら考え方をうまく取りまとめる、というところまでいくかどうかわかりませんけれども、いろんなことがわずかな日程の間に話し合われるのだろうと私は期待をしているわけであります。そういったこの話し合いの中身にまで私は触れようと思いませんけれども、もうすでにこの柱というものがお決まりになっているのでしょうか。何と何と何を意見交換をしておく必要があるのかという問題です。
  58. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ブッシュ副大統領が明日から二十五日まで公賓として訪日されるわけでございますが、副大統領が滞日中に鈴木総理と会談をされます。これはいわば両国最高首脳レベルの会談でございまして、共通に関心を有する諸問題について大所高所からの話し合いが行われるものと思います。国際問題、二国間問題ということで意見交換があることと思いますが、別段両国の間で、この最高首脳会談においてはこれこれを議題としようと、そういうような準備はしておらないのであります。最高首脳の大所高所からの腹蔵のない意見交換、こういうことになっております。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 前回の委員会で私が触れました点、つまり台湾への武器の売却という問題、その後一応静まったような気配があるようでありますけれども、今回に限りという中国側の声明等もあり、その辺は弾力的に中国側はとらえたようであります。しかし、これが継続的に将来繰り返されてまいりますと、やはり主権侵害というような問題にも発展いたしますでしょう。アジア地域における不穏なあえて対立を招くような情勢に発展しないとも限らない。その点もアメリカ側とよく話し合った上で調整をとることが必要ではあるまいかという趣旨質問を私は申し上げました。そのときの外務大臣からの答弁も記憶をしております。  私はやはりこういう機会は大変いいときではないかと思うんですね。何もぎすぎすした話し合いじゃなくて結構なんです。日本としていま置かれた立場、日中の関係、米中の関係、やはり従来のような関係というものを持続することが現状においては好ましい。それが水をかけられるといいますか、そういう状況になりますと一つの大きな波乱を巻き起こしかねない。ソビエトとの関係もある等々大変いろんな問題が絡み合っているわけですね。したがって、こうしたことを余り神経を逆なでするようなことはやっぱりこの際慎重にやってもらいたい。かつてワインバーガーが来られたときにも総理はその点について提言をされているそうですが、何の応答もないといった方がいいのか、反応がないままに帰られた。ブッシュ副大統領も相当の立場の方でございますので一この機会をとらえてその辺の調整を図っておくことも必要ではあるまいかと。なるほど大所高所からいろんなお話し合いされるでございましょう。しかし、何にもテーマがなくて大所高所ということはないわけでございまして、何かやはりそこに日本がいま抱えている問題で、この際十分また新たな認識をしてもらいたい、理解を深めてもらいたいというものが必ずあるはずであります。それを前提としてベルサイユに臨むということにスケジュール的にはなるんだろうと思うのです。このわずかな日程でも、外交展開の上では大変大事な話し合いの場というものになるのではないか。そういう点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  60. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日米両国の年来の友好関係を基礎に、不断の対話の一環として総理と副大統領の会談が行われるのでありますから、いま御指摘のような問題も話題になるということは予想ができるかと思うのであります。アジアの諸情勢の中で米中関係に亀裂が生ずるということは、これはそれなりに大きな影響のあることでありますから、鈴木総理もそういう見地から、まあ全くの想像でございますけれども御指摘のような問題にも触れられるかと、こう思いますが、しかし、両首脳の会談でこういうものを取り上げますということを申し上げることはいかがかと思うのであります。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に日ソ関係について、これは日米関係にもわたると私は思うのでありますが、いよいよ国連の軍縮特別総会が迫っていることは前にも申し上げたとおりであります。何か具体的な、そして効果の上がるそういう結論が出ることを願望するわけでありますが、考えてみると、ソビエト側からも平和提言というのでしょうか、軍縮に関する提言といった方がいいのでしょうか、いろいろ打ち上げられる。それを信頼するかどうかは別問題としても、その受けとめ方、最近だけでもいろんなやりとりがありました。いわゆるブレジネフ書記長が公表したものだけでも幾つかあるわけです。ことしに入ってからもあるわけです。それはいま申し述べる必要はないだろうと思います。特にいま、先ほど午前中もお話がございましたように、私もメンバーの一人として日ソ円卓会議に出ているのですが、全面的にソ連側の基調報告を私は認めるわけではございません。大変一方的なというそういう内容が至るところにちりばめられていることも私なりの認識で受けとめました。ただ、その中でじゃ全部が全部だめなのかという問題が今度一方においてあるわけですね。  これは恐らくブレジネフ書記長の言ったことを援用しながら、さらに日ソ関係について触れている問題が一つあるわけです。たとえば、極東地域の信頼を回復する一環として、あくまでも日本が非核三原則というものを維持するならばいわゆる核不使用の協定を結んでもいいと、聞きようによってはまことに結構だなという提案なんですね。しかし、そういうような内容については大同小異ということもありますけれども、いろいろな内容のこういう提案がされていることはもう外務省としても篤と御存じのはずだと私は思うんです。そういった中で特に日ソという関係、いまSS20がこっちを向いていると、それ自体がもう対ソ脅威を呼ぶ大きな背景になっているというようなことの議論がしばしば繰り返されているわけですね。そういうようなことを排除する一環からも、何かしらそういう提案に対して話し合いというものができないものかどうなのか、そしてまたソ連側の真意というものは一体どこにあるのか、それをうのみにできるのかどうなのか等々、いろいろなことが今日までの歴史的な経過の中で試行錯誤をしながらあったことも事実でしょう。たてまえと本音が違うんだと、原則は変えないんだと、だから果たしてどうなんだろうと。しかし、いつまでもそういう疑惑を持っていたのでは平和に対する道しるべというものもなかなか見出せないでありましょうし、軍縮への突破口というものも開けていかないのではないだろうか。  かつてそういう提言をされたときに日本ソビエトとの間において具体的に話し合いがなされてきたことがあるのかどうなのか。あるいは今後においてそういう問題提起があった場合に、たとえそれが民間レベルであろうとも、私はああいう体制の国柄でございますので政府の方針をゆがめてまでも自分自身の発想というものをもとにしてそういう意見が述べられたとは私は思いません、必ず国の方針というものを土台にしたそういう提言であろうということはいまさら申し上げるまでもございません。したがって、そういう場合に一体政府としてはどういう対応の仕方というものをお考えになっていらっしゃるのかということであります。
  62. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) 二十日から開催されております二回目の日ソ円卓会議で、具体的にどのような議論がされたかということは私ども十分その詳細は承知しておりませんが、基本的な考え方といたしまして、政府といたしましては核の惨禍というものが二度と繰り返されてはいけないと。この目的に資することであればあらゆる手段を尽くすべきだろうと基本的にはそう考えております。しかし、核兵器を使用しない、核兵器不使用という約束をすることにつきましては、たとえば核兵器の生産の停止とか、あるいは貯蔵の削減とかいいますような具体的な軍縮措置による裏づけのない限り実効性は確保し得ないのではないかというふうに考えております。また、このように実効性を確保し得ないような約束をするということにつきましては、私どもといたしましてはその安全保障上の意味合いにもかんがみまして、かつ現下の国際社会の平和と安全というものが核の抑止力に依存しているという事実にもかんがみまして、こういう現実を踏まえて慎重に配慮していくべきではないかと考えております。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは私もいまおっしゃったことは常識的に心得ているつもりなんです。なるほどそういう提言をする前に具体的に実行しろと、確かにそのとおりだと思うんですね。ただ、それが直ちにできる場合と段階的にできる場合と、いろいろ経過措置としては考えられる場合もありましょう。しかし、いまおっしゃったとおり、それは全くできないという判断に立って門戸を閉ざした場合に一向に進まないのではないかということでいま申し上げているわけです。だから、過去においても私は結論をそこで持たなければならぬということを言っているわけではないんです、日ソ間において話し合いをした場合に。何でもかんでも話し合ったからそれは結論まで持っていかなきゃ、協定まで結ばなきゃならぬということじゃなくて、そういう話し合いをどこまで詰められるのか、ソ連側としての真意は何なのか、極東地域配備されているものを本当に具体的に削減するのか、いろんなそういう技術的な問題があるだろうと思うんです。けれども、全然話し合いもしないで、具体的にそれは証拠がなければという門前払いのような行き方では私は進まない。これはアメリカ側についても言えると思うんですね。  しかし、いまたまたま日ソ関係の問題を議題としましたので、あえて日ソ関係のそういう不協和音というものを取り除く一環としても私は必要ではあるまいか。大変むずかしいことかもしれませんよ。しかし、むずかしいことかもしれないけれども、やはり何回も私申し上げているように、何か手がかりをつくらなければそれは広がらない。向こうは向こうでの言い分がありますでしょう。われわれはこういう提言をしております、しかしそれに対して全然ボイコットしております、これじゃ話になりませんという。また向こうには向こうのそういう主張があるでしょうし、向こうの言い分が正当化されるような議論の展開も出てくるだろうと思うんです。こういったことはいつまでもこんなふうになっていたんじゃ交わらない。どうでしょうね、外務大臣、その辺はやはり今後真剣に考え取り組んでいくのが軍縮、平和への道を開く一助になるのではないだろうか。具体的に一つでもいいからやってみるという。
  64. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 本委員会でも御披露申し上げたことがあると思うんですが、一月の日ソの実務者レベルの会議を持ったそのときに、柳谷審議官からソ連に対してSS20の配置などについて、核兵器の問題について率直にそういう配置の撤退などを求めておる、そういう日本側の働きかけもある。今度円卓会議で核不使用の働きかけがある。いろいろ両国の間のやりとりがございますが、また御承知のジュネーブの軍縮委員会において非核保有国、日本のような国についての安全保障についてこれをどうするかという作業部会も持たれておると思うんですね。だから、核不使用についてはただいま御答弁申し上げたようなことで、なかなか実効性の上がらぬことをしてもどうかということもございますから、私はジュネーブの軍縮委員会で核保有国が非核保有国の安全保障について合意をしてもらうということが現実的には非常にいいんではないかというふうに思いますけれども、さしあたっての円卓会議で出たことにつきましては、実効性の上がらないことについてはいかがかと、こういう考えを持つ次第でございます。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま直ちに実効性となると大変むずかしい問題が潜在するだろうと思います。この問題ばかりやっておりますと条約審議に入れませんので、しかしこれはまた今後どうしても避けては通れない問題でありますだけに、またその時点時点で政府の考え方を問うてまいりたいというふうに思います。  国際情勢についてもう一点だけ確認をしておきたい問題があるのですが、先回すず協定のときに私触れさしていただいた中で、深海底資源開発に絡む問題を申し上げました。一口に言えばアメリカが中心になって、何かこちらの方、日本あるいはソビエトはらち外に置かれている。ソビエト側としてはその対抗手段としてソ連中央幹部会決定というんでしょうか、それによって新たに独自の立場で新海洋法成立までの間、深海底資源の開発を進めていくんだと。こうなりますと、世界のそうした秩序というものがだんだん混乱をして、新海洋法成立ということが大変怪しげな雲行きになっていくんじゃないか。ここには一つの米国側の独断というものも、これは公平に考えてみた場合にあるのではないか。日本としても決して影響なしとしない問題でありますだけに、こういった一連の対抗手段に絡む今後の趨勢というものについて、外務省としてはどういうふうに分析をされているのか。
  66. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  深海底開発の問題については、私どもとしては二つの側面があるだろうというふうに認識しておる次第でございます。  一つは、現在海洋法会議で審議されております交渉の対象になっております海洋法条約そのものの中でどういうふうな規則、レジームで深海底開発をやっていくかという問題。  それから第二の問題は、条約発効に至るまでの間のいわば一種の経過措置といたしまして、その間の各国の深海底開発——これはもっぱら探査でございますが、探査活動について一定の国際的なルールをつくる必要がある。こういう二つの側面があろうかと思います。  現在、海洋法会議におきまして、その両方の側面に関しまして最終的な大詰めの交渉が行われておるということでございまして、その経過措置の国際的ルールにつきましても、昨今、この数日の間にかなり先進国側と発展途上国側との間に歩み寄りが見られまして、ある種の国際的なルールというものができるという、これはまだ最終的な判断を、楽観的なことを申し上げるには若干時期尚早かと思いますが、そういう空気がかなり出てきたという状況だろうと思います。  それで、御指摘ソ連の幹部会令につきましては、私ども十七日付でそのような、いわばソ連国内法の制定というものが行われたという事実を確認してございますが、これも内容的に見ますると、これまでアメリカその他一部の西欧諸国で行われました国内立法とほぼ同じような内容のものというふうに判断いたすことができますが、そういう国連海洋法会議の動きを見つつ、ソ連としても国内法体制を整備する必要があると、こういう認識で今回のような措置をとるに至ったものというふうに私どもは認識しております。  そこでわが国といたしましても、これまで一般的にはそういう国内法体制を整備するということの必要性というものは十分認識してまいったわけでございますが、何分にもアメリカその他の若干の国の国内法制定の動きに対しまして、発展途上国は非常に一種の疑惑というか、これは先進国の深海底開発独占のための動きではないかということで、非常に警戒の念を持って見ておったと、こういう事情もございまして、そういうことに対する配慮もわが国としては必要であろう、こういうことで、国内法制定の時期につきましては政府としてはこれは非常に慎重に対応しなければならないと、こういう判断で今日まで至ってきておるわけでございますが、いま私が御答弁申し上げましたような海洋法会議状況に照らしまして、わが国といたしましても早急に国内法体制の整備を図っていく、そういう時期に差しかかってきているというふうに認識しております。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これも大変時間がかかった問題でありますだけに、いま述べられたような方向に向かってその善処方を強力に推進をしていただきたい、こう思いますね。  それじゃ、条約に少々入らしていただきましょう。  今回の船員訓練及び資格証明並び当直基準に関する国際条約その他二点ほどあるわけですが、いまわが国の海運事業というものが傾斜的に悪い方向に向いているのではあるまいか、それはもういろんな費用がかさんで、そのかさんだ費用を消化し切れないということで、要するに赤字という、海運事業としては非常にピンチに立たされておる。これは海上保安庁の白書なんかを読んでもそのとおりであります。この点、現状はどうなっていますか。——お答えになれないですか。いいです、おいでにならなければ。時間がもったいないですから——  まあそういう状況のようです。したがって、税金あるいは人件費等々で自分の国よりももっと安価にということになりましょうか、あるいは種々の便宜を与えてくれる国にその船籍を登録するという傾向が非常に高まっている。それを専門用語では便宜置籍船というんだそうですね。一体、そういったような種類船舶というのは日本全体の船舶の何%ぐらいになるんでしょうか。これもわからないですかな。答えようがないですか。ここまで僕は丁寧に質問申し上げたはずなんだけれども。
  68. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) 外務省では必ずしもその辺の全貌はつかんでおりませんが、私の手元にある資料でお答えいたしますと、わが国関係する便宜置籍船が全体として何隻あるかということは必ずしも明確ではありません。ただしかし、その多くが便宜置籍船であると言われているいわゆる仕組み船というのがございます。仕組み船といいますのは、日本の海運企業が長期間用船する目的で、日本の造船所の船台を外国の船主にあっせんして建造させた船舶と、こういうふうに言われておりますが、この仕組み船を中核の六社について見ますと、昭和五十五年の半ばで百八十四隻あるということが外務省の資料でわかっております。これが全体でどれくらいになるかということにつきましては、遺憾ながら私のところには詳細な資料はございません。ただ、かなりあるということは事実でございます。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それと対照的に、これも小宅さんの御答弁をいただくことになるんでしょうか、マルシップ、これもきちんとした数字をいまここで述べてくださいというようなことは言いませんから、概数で結構、きわめて多いとか、きわめて少ないとか、まあほどほどだというぐらいのことで述べてくだされば結構です。
  70. 小和田統

    説明員(小和田統君) マルシップにつきましては、正確な数字ではございませんけれども、昨年十二月時点で私どもで調べました総トン数二千トン以上の船についてのデータでございますが、約三百隻ほどございます。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまこの二点の問題を通じて考えますと、これは今度海上保安庁になるんだろうと思うんですよ、海難事故ですから。特に便宜置籍船というものの海難事故が非常に多いというデータが出ているんですね。これはもう恐らくマルシップにも当てはまる。いい例が、この間あっち「へっぐ」なんかこの例に当てはまるだろうと私思うんです。  こういったことが今後こうした条約締結されることによってどうなるのか、ふえる傾向を示すのかあるいは減少する方向に行くのかということも一つの大きな問題点であろうというふうに思えるわけです。この点はどういうふうに御判断になっていらっしゃいますか。
  72. 鈴木正明

    説明員(鈴木正明君) 私の方でお答え申し上げる点は、現状での海難の状況でございますが、私どもでつかまえております海難は日本周辺での海難ということでございます。これの最近の状況を申し上げますと、最近の五年間で申し上げますと、漁船を除きまして、五十二年が千二百五件、五十三年が千百六十六件、五十四年が千百二十二件、五十五年千二百七十六件、五十六年千百十一件、こんな状況でございます。このうち、これを国別に申し上げますと、日本船を除きまして五年間の合計でございますが、パナマ船が百四十七隻、韓国船が百十二隻、リベリア七十一隻、中国二十四隻、ギリシャが二十二隻、こんな状況でございます。  それで条約との関連でございますが、私の方で申し上げるのはいかがかと思いますが、大ざっぱな感じでは、これによって非常に有効に海難が減るようなかっこうになるんではなかろうか。ただ、いまの話の前提として申し上げますのは、これだけの外国船ございますが、これが便宜置籍船、マルシップによって起こったものであるかどうか、この辺の要因については私どもそこまで調査をやっておりませんので判断できないところでございます。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただ、今回の条約によってもそうでありますけれども、日本船籍を持っている場合には、言うまでもなくキャプテンを初めとして船員の資格というものが非常に厳格になる、国内法で厳しく律せられる、それはきちんとしたルールのもとに確立されていくだろうと思うんですね。余り厳し過ぎると今度便宜置籍船に置きかえられたり、今度はマルシップが便宜置籍船になる可能性がありはしまいかという心配が出てくるわけです。この辺の展望はどういうふうに考えていますか。これはどなたにお聞きしたらいいのかな。
  74. 小和田統

    説明員(小和田統君) 現在のわが国船舶職員法は、日本籍の船でございましても外国に貸し付けられた船については適用されないということになっておりまして、そういう形をとって外国に貸し渡されて外国人が乗り込んでいる船、これが先生のおっしゃるマルシップでございます。今回の条約を批准するに当たりまして、船舶職員法の適用関係につきましても法律の改正をしているわけでございまして、今後は従来適用のなかった、外国に貸し渡された船についても日本船舶職員法が適用されることになります。したがいまして、その際先生がおっしゃるように厳しい日本法律適用されることになれば、従来マルシップだったようなものが今後は便宜置籍船になっていくのではないかという可能性もないとは申し上げられないと思いますけれども、私どもとしては、現在約三百隻ほどあるマルシップにつきまして、今後法律が実施されるまでの間によく実情を調べまして、極力日本船としてとどまるような形へしかも制度実施に当たって混乱の起きないような対策を考えていく必要があると考えております。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 だから、先ほど冒頭に申し上げたことは、これは白書そのものを読みますと、日本船舶船員費を中心とするコストの上昇により国際競争力が低下し、これに伴って外国用船が増加した。外国船舶は五十四年には六万三百隻を数え、四十五年の約六〇%増加になっているという、こういう指摘が実際調査の結果明らかにされているわけです。いまの海運業界の実態から考えると、確かに船員そのものの資質は向上すると思うんです、今度の条約加盟によって、国内法もそれによって整備されていくわけですから。ただ、条約に加盟してない国の中で海難事故を起こしているのが非常に目立つんですね。先ほど答えていただきましたように、その中にはパナマが入るんです。批准国の中でリベリアが入っているだけで、シンガポールやその他の国は入ってない。しかもまた、そういう国に限って非常に海難事故が多い、あるいは海洋汚染をする等々のことがずっと今日まで続いているという、こういったことが排除されない限りは、果たして条約の持つ精神というものが生かされるのかどうなのかという心配もないではないんですけれども、この辺はどのように整理して考えればよろしいのでしょうか。
  76. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) お答えいたします。  渋谷先生御承知のとおり、この条約は便宜置籍船を含みますいわゆるサブスタンダード船、これがもたらすいろいろな問題を国際的に解決をしていこうという努力の一環としてIMCOの枠内でつくられてきたものでもございます。したがってわが国といたしましては、日本自身が主要海運国としてこれに早く入るということに加えまして、できるだけ多くの国がこの条約締結国となる、そういうことによりまして少なくとも船員のレベルにつきましては、それが便宜置籍船であろうとなかろうと、一定の水準を満たすということによりまして便宜置籍船が有する弊害というものを除去していかなければならないと考えております。したがって、そういう方向で日本といたしましてはできるだけ多くの国がこの条約を早期に締結するということを期待して、国際的にも努力をしてまいりたいと考えております。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは確かにそうでなければならないのは言うまでもありません。  これは運輸省から出していただいた資料によると、すでに批准を終わった国が十六カ国、これから早期批准が見込まれるであろうという国が十三カ国、それから条約署名国が六カ国、こうあるわけです。この中にはいま触れましたパナマやなんか入ってないんですよね。要するに問題が一番多いというところが入ってない。しかもこれから入る見込みもないというようなことが言われているわけであります。そういった国もあわせて吸収していくような方向に何らかの手だてがないものだろうか。全くなければ、批准した国はお互いそのルールを守ってやるからいいものの、それ以外の国がもし海難事故やあるいは海洋汚染というものをやった場合に、一体その損害補償というものをめぐってどうなるんだろうというのは当然起こる問題じゃないだろうかというふうに思えるわけですけれども、いかがなものでしょうか。その辺も大丈夫、解消されていくというふうに判断をされているのかどうなのか。
  78. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) この条約一つの特徴といたしましては、資格証明を非常に厳しくし、それから当直基準等を厳しくすることによって船舶の安全基準を高めたということ以外に、港に入ってきたときにその港湾当局に監督の義務を負わしているというところがございます。そしてさらに、この監督をする際に、「締約国でない国を旗国とする船舶が締約国を旗国とする船舶よりいかなる有利な取扱いも受けることのないよう、必要な場合にはこの条の規定を準用する。」ということが十条に規定されてございます。このようなメカニズムを通じまして、そういう意味では入ってくる船舶をこの条約の締約国の船舶基準に合わせて監督を行うということにより、そのような水準を広めていくという仕組みは一応この中に盛られておりますので、これが十分に生かされることにより、徐々にそういうような問題が解決する方向に役立つのではないかと期待している次第でございます。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうあっていただければ大変望ましいことだと思うんですがね。これはきわめて短絡的な物の見方かもしれませんけれども、やはりそれぞれの国がいろんな利害を持っておりますね。だからやっぱりその国の内容によっても富める国、貧しい国いろいろございましょう。条約を批准することによって、まあ不利になるという言い方はいかがかと思いますけれども、余り早くやらない方が自国のために、権益擁護の一環としてしばらくやはり模様を見る必要があるんじゃないかというようなことになりますと、これはもういつまでたっても、いま都甲さん言われたような願わしい方向に向かうのかなという、しかも海難事故やなんかが実際、最近はふえているんですよ。しかもそれは、割合は急速にふえている。こういうことを考えると、この辺にも何とか、いわゆる便宜置籍船を持っている国と言った方がいいのかもしれません、そういった国々が早く批准できるような方向へ、政府としてもそういう国に対しての話し合いというものがあってもよろしいのではないのかなと。それも自主外交の一環として私は当然取り上げてみても一向に差し支えない、こんなふうに思えるんですが、どうでしょうか。
  80. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) 最後に渋谷委員が言われたことは全くそのとおりだと思います。現在、この条約はすでに十六カ国が締約国となっておりまして、その商船の船腹量は世界全体の四四%、発効要件が二十五カ国以上で五〇%ということでございますから、わが国がこれに入るということは、この条約の発効に向けて非常に大きな一歩になるということだと思います。ですから、一日も早くこの条約自身を発効せしめまして、その締約国が一丸となって、少しでも多くこれに対する加盟国をふやしていく、そういう努力が必要であろうと思います。また、国連のIMCOにおきましては、この種の海事問題についてのいわば国際的な話し合いの場になっておりますが、私どもといたしましてはそういう会合の場なども利用いたしまして、できるだけ多くの国がこの条約に入るよう働きかけていくのが適当ではないかと考えております。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう時間もありませんので、外務大臣はいまやりとりをお聞きになって、日本政府としてもこれはただ傍観してるわけにいかんなと、実はお隣りの韓国の船にもあるんですよ、いまパナマだけを表に出しましたけれども。これはいま答弁されたような方向へ向かって努力をすべきではないかというふうに感じますけれども、やはりこの辺は政治判断を求める必要がありますので、外務大臣としての所信を伺っておきたいと思います。
  82. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) この条約が多数の国、なかんずく従来より船員の技能の基準が必ずしも高くなかった国も含め締結されることは、海上における航行の安全の確保、海洋環境の保護を図る上できわめて重要であると考えております。わが国としては、多くの国がこの条約を早期に締結することを強く期待しておる次第でございます。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 限られた時間が参りまして、きょうは農林水産省の方も来ておられると思うんですが、植物品種保護に関する条約、これをやろうと思ったのですけれど時間がございません、まことに農林水産省の方御迷惑をかけましたけれども、以上で私の質問を終わらせていただきます。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 まず防衛庁の方に、条約の問題に入ります前に若干お尋ねしたいことがありますが、先日から中部太平洋で行われておるリムパック82に関して、海上自衛艦が強襲上陸作戦あるいは対地艦砲射撃訓練等々に参加したのかどうかという問題をめぐっていろいろと問題になっているようでありますが、まずこの事実関係、参加したのかどうなのか、この点について最初にお答えいただきたいと思います。
  85. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 海兵隊の上陸訓練については、海上自衛隊は全然これに参加しておりません。それから、いわゆる艦砲射撃、これは実はまだやっておりませんけれども、これから射撃を行う予定であります。この両者は、何らの関連も有しておりません。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 実は去る十九日に、アメリカの海兵隊輸送部隊の第七両用戦隊のジェサップ中佐が、日本の海上自衛艦も参加している、海上自衛隊の三隻の護衛艦が演習が始まった当初から強襲上陸作戦部隊である戦艦上陸輸送船との行動をサポートしてきたということも述べたと、さらに海上自衛隊の護衛艦三隻も一部参加という表現もありますが、いずれにしろ参加をしたというこのジェサップ中佐の発言、これは報道されて明確に発表されているわけですが、これはどういう意味なんでしょうか。
  87. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 先ほど申し上げましたとおりアメリカの海兵隊の上陸訓練には海上自衛隊は一切かかわり合いを持っておりません。そこで、ジェサップ中佐なる人がかかわり合いを持っているようなことを述べたというふうに報道もありましたし、われわれの方にもそういう報告が来ましたので、これはおかしいではないか、海上自衛隊と米海軍の間ではそういう計画は一切なかったはずなのでそんなことはあり得ないことだと、おかしいではないかと思いまして、海上自衛隊側から米海軍に、そのジェサップ中佐の発言の事実関係の確認をいたしましたところ、米側はジェサップ中佐の発言の間違っておることを認めて、その後米側が訂正いたしました。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 その訂正なんですがね、訂正されたのは、本来ならばジェサップ中佐かあるいはそのジェサップ中佐が所属しておる組織のさらに上司なら上司が述べるなり何らかの釈明があってしかるべきだと思うんですが、釈明したのがコペランド少佐といういわゆる報道担当官で、部隊としては別の部隊である。しかもこの海兵隊の幹部が、海上自衛隊もこの作戦の一部に参加していると説明したがこれは誤りだと、きわめて簡単なもので、そしてジェサップ中佐の発言が誤っていたのかという質問に対しては全くノーコメントで、そして本人もいらいらして、どうしてわれわれがこんな弁明までしなくてはならないのかという不快感まであらわした。あるいはジェサップ中佐の所属しておる部隊の方では、われわれの部隊の幹部の発言を他の部隊の幹部が否定するのは不合理ではないかという問題まで出てきておる。ここらあたりの事実関係はどうなっているんですか。
  89. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 私どもが聞いておるところによると、ジェサップ中佐なる人は両用部隊の方の何らかの役割りを持った将校のようであります。後刻米海軍として訂正を発言した人は第三艦隊の広報担当の将校でありまして、このリムパックというのはそもそも米第三艦隊が主催する五カ国共同の訓練であって、全体を統括してアレンジしているのは第三艦隊でありまして、外に向かってリムパックを説明する立場にあるのは第三艦隊であります。したがって、ジェサップ中佐の発言を他の部隊の人が訂正したというようなものではないのであって、そもそも外に向かって公式に物を言うべき立場の第三艦隊の広報担当の将校が、その衝にない米海軍将校の発言を訂正したのでありますから、何らおかしい点はないと私どもは思っております。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 まあ、あなたの説明を聞くと事実関係がわからなければ、なるほどそうかということにもなりかねないわけですが、いろいろ考えてみますと、当初からやっぱり参加はしていたと、参加しないという形にしておくということになっていたのがたまたま某中佐によってそのことが表ざたにされたので、これは約束が違うじゃないかと言ってその訂正を求めた結果訂正されたというふうにも考えることができるわけですね。問題は、それが実際に参加したのかどうかということは事実によってはっきりさせるより私は仕方がないだろうと思う。ですから、この三隻の海上自衛艦がいつどこの地点からどこの地点へどういう行動を行ったのか。艦砲射撃訓練を行うとするといつどこからどこに対する艦砲射撃を行うのか。その場所と時間と、これをひとつ述べてもらいたいんですが、いかがでしょうか。
  91. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) まず、わかりやすい艦砲射撃の方から申し上げますと、艦砲射撃はこれから数日後に行われる予定であります。何日の何時からどこの場所で射撃が行われるかどうかは現場の部隊運用上の都合で決まってくると思いますので、何日の何時何分から何時何分というようなことまではまだわかっておりません。いずれにしても、これから多分数日以内に行われるだろうと思います。したがって、これは米海兵隊の上陸訓練とは全く関係がないのであって、米海兵隊の上陸訓練はすでに終わっておりますから、それとは全く別個の射撃が行われる予定であります。そこで、何月何日何時何分、これはいま申し上げた理由でわかりません。  それから、わが方の船がいつどこをどういうふうに通ったか、これは同じような理由で何時何分にどこを通過したというような細かい点まで一々リアルタイムで掌握しているわけではありませんけれども、海上自衛隊と米海軍の間で詳細なプログラムを調整いたしまして、それに基づいて行われている予定であります。  なお、実際にどういう航跡をたどったかというような細部は、いずれ部隊が帰ってから詳細な報告を受けますので、そのときにつかめるだろうと思います。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 石崎さん、そうするとちょうど米軍のリムパック82が行われておったときのいわゆる問題にされています海上自衛艦三隻が、どういう航路を通ってどういうふうにしたかというふうなことは後刻お知らせいただけますか。
  93. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) リムパックの御説明はたびたびいままでも国会でやってきたどおりで、私どもは総論については逐一国会で詳細御説明してきました。ただし、各論の部分については申し上げられないということでやってきました。そこで、ある船がある時間にどの場所にいる、どういう行動をしたと、こういうようなことはその各論の詳細な部分に当たりますので、仮に部隊が帰国して詳細な報告を私ども受けたとしても、そういう細部については申し上げる予定はありません。
  94. 立木洋

    ○立木洋君 石崎さん、この問題というのは集団自衛権にかかわっているかどうかという重大な問題なんですよ、憲法上の。あなたがそうでないと言うならば、事実こうこうこういう航路で実際にかかわっておりませんと明確にそれをする必要があるんですよ、国会に対して。ただ口先でそんなこと言えません、言えませんで隠しておいて、実際に集団自衛権にかかわるようなそういうような集団行動をやっておったらどうなるんですか。そういうことに危機を感じるからこそやっぱり平和の問題に関して国民自身の前に明らかにして、そういうかかわりはございませんということを明確にする義務があるんじゃないですか。私はこれは非常に大切な問題だと思うんですがね。大臣いかがでしょうか。やっぱりはっきりさしていただきたいと思うんです、あいまいに済まさないで。だからどういう航路を通ってどうしたのかというようなことは、全くアメリカとかかわりがないならば、自衛艦三隻のことは明らかにすることができるわけです。事故が起こった場合だってその航路が明確にされているわけですから、それが、このことに限って明らかにできないというのはやっぱり問題があるからじゃないですか。そういうふうに言わざるを得なくなる。だから、私はやっぱりはっきりさしていただきたい。外務大臣いかがでしょうか、お聞きになって。
  95. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 外務大臣がお答えする前に部隊の訓練でありますから私から事実関係を申し上げますと、アメリカ海軍とどういうかかわり合いがあるなしにかかわらず、海上自衛隊だけ単独で走っている場合であっても、私どもはどの時点でどこをどういうかっこうで走っておったというようなことを申し上げる気はありません。なぜならば、部隊がどういうふうに行動しておるか細部を申し上げないのは、たびたびこれも国会でも申し上げましたけれども、まさに戦術戦法の手のうちを明らかにするという問題になりますので、防衛力の持っている抑止力というものを傷つけないために、この抑止力が低下するということは結局国民の損害になる問題であると思いますのでわれわれは申し上げないわけでありまして、アメリカとかかわり合いがあるなしにかかわらず、総論については国民の理解を得るために逐一申し上げてきましたけれども、各論の細部については申し上げない、これはアメリカとのかかわり合いの有無にかかわらず一貫した態度であります。
  96. 立木洋

    ○立木洋君 私が言っているのは、その三隻の海上自衛艦の全航程を全部明らかにせよということを言ってるわけじゃないんですよ。つまり、この米軍の上陸作戦が行われたとき、その時点でどこの航路をどういうふうにしておったか、それだけなんですよ。それが明らかにできないというのは、問題の結びつきがあるから明らかにできないということにならざるを得なくなるんじゃないか。その点は明確にさせておく必要がある。今後のためにも、防衛庁が実際集団自衛権にかかわりがない、そういう行動は一切ないということであるならば、それはやっぱり国民の前に明らかにしておく必要があると私は思うので、大臣の御所見をお伺いしたいんです。
  97. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどから防衛庁の方からお答えを申し上げておるわけでございますが、私は防衛庁のお答えで適切ではないかと、外務省の方から防衛庁のその方針に対してとやかく申し上げることはいかがかと、こう思うのであります。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 これは非常に重大な問題だと思うんですね。私は極東有事の際にかかわるあり方の問題についても先日お尋ねをいたしました。やはり日本が憲法があり、憲法の枠内でという立場を明確にされているならば、そういうような強襲上陸作戦等々に加担をする、事実共同で訓練を行うということは、まさに集団自衛権にかかわる、憲法に違反する行為につながるわけですから、こういう点を厳密にしておく必要が私はあるだろうと思う。政府としては憲法を守るというたてまえであるならば、それはやっぱり明確にしておく。そういうことがない限り、結局は事実は裏で何をやられているかわからないという国民に重大な疑惑を与える、そういう結果になる、私はそのことをはっきりもう一遍ここで指摘をしておきたいと思うんです。石崎さん、また別の機会にいろいろお尋ねすることがあるかもしれませんが、きょうは何かお仕事があるそうで、これで結構です。  次に、これも関連がありますけれども、防衛の範囲の問題について澤田さんの方にちょっとお尋ねしますが、これまで防衛庁としては再々、わが国に武力攻撃がある場合には、自衛隊はわが国の防衛に必要な限度において、わが国の領土、領海、領空ばかりでなく、自衛権の行使に必要な限度内での公海、公空に及ぶことができるという趣旨のことを述べられていますが、今日の時点でも防衛に対する態度はこれで変わりないでしょうか。
  99. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) 今日の時点においてもその方針は変わりございません。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 この自衛隊の行動に関して、わが国の防衛に必要な限度においてという必要な限度とはどういうふうな意味でしょうか。
  101. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) これはわが国が武力侵略、武力攻撃を受けます場合のいわゆる侵略の事態、そのときの状況によりまして一概に申し上げることは困難でございますが、わが国を防衛するために憲法で定めておりますように必要最小限度、そのとき判断される範囲ということで、具体的に一概に申し上げることは困難でございます。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 この考え方の中には、やはり何といいますか、自衛権を行使する場合に、自衛権の行使であるからといって決して乱用してはならない、そういう乱用は慎むべきである、また厳密な意味でいわゆる自衛権を行使するという、こういう考え方がこの内容には含められているのかどうなのか、その点はどうでしょうか。
  103. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) 自衛権の行使につきましては、いわゆる自衛権発動の三要件というものがございます。すなわち、わが国に対しまして急迫不正の侵害がある。そしてこの侵害からわが国を守るために他にとるべき方法がない、手段がないという場合。そしてその自衛権の行使の限度が必要最小限度の範囲にとどまるべきこと。この自衛権行使発動の三要件というものがございますが、これが憲法の許容する自衛権の行使の大要であると考えておりまして、この考え方は終始一貫変わりないわけでございます。
  104. 立木洋

    ○立木洋君 最近ずっと言われています周辺数百海里、航路帯千海里、この公海、公空に自衛力が及び得ると。この周辺数百海里それから航路帯一千海里の公海、公空に自衛力が及び得るというのは、具体的にはどういう形、どういう場合に及び得るのか。及び得るというのはどういう形態を言うのでしょうか。
  105. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) いま先生、シーレーンと関連づけられて御質問なされておりますが、それをお答えします前に一般的に申し上げますと、自衛権が及ぶ範囲内、わが国の領土、領空、領海のみならず、必要な限度においてその外側の公海、公空にも及び得るといいますことは、現在の軍事技術の進歩によりまして、わが国に対する侵略者がありました場合に、その侵略国の艦船なり航空機、こういうものがわが国領海あるいはその上の領空に侵入してから初めてこれを迎え撃つのでは、わが国を防衛することができない、その外側でこれを防衛しなければわが国の防衛を全うできないという場合に、その必要な限度で公海、公空に及び得ると言うわけでございます。  それで、次にいま先生がおっしゃいましたわが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度といいますのは、これはしばしば国会でお答え申し上げておりますように、わが国の海上交通の安全を保護するために、その範囲内でそういう海上交通の安全を確保し得るようにという防衛力整備の目標としているところでございます。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと外務省のお考えを聞いておきたいんですが、これは防衛庁に聞く筋合いかもしれませんが、わが国がつまり憲法上自衛権があるということについては、統一見解で政府が述べられてきているところですね。この憲法の解釈で自衛権の、つまり日本が守るべき、防衛すべき範囲というのは、憲法上の解釈からどういうふうに考えておられますか。守るべき範囲、防衛の範囲、つまり自衛権を行使する守るべき範囲というのはどういうふうに考えていますか。
  107. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いまの先生の御質問が、憲法上自衛権が行使し得る地理的な範囲ということについての御質問であれば、従来から国会答弁あるいは質問主意書がございましたときの政府の答弁書等の機会に累次申し上げているとおりでございまして、先ほども防衛庁の方から御答弁ありましたように、地理的範囲につきましては必ずしもわが国の領土、領海、領空に限られるものではない、これが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので一概には言えない、これが政府の見解と、そういうふうに私どもは理解しております。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 私はそれを厳密に分けて、さっき澤田さんの方にお尋ねしたんですよ、つまり、守るべき範囲と言う場合にどこまでを言うのか。それからその及び得る範囲、条件ですね。これは必ずしも自衛力が及び得るというのは、いま言ったように外国から攻撃がかけられてきた場合、入ってくるまで待っていてやるというのではなくて、事前にそれを防ぐというようなこともあり得ると。そうすると及び得る範囲というのはさらに広いかもしれない。しかし、厳密な意味で守る対象は何か。これはあくまで領海、領空、領域、領土、憲法上の解釈はこれではないか。それが侵される危険性に対して及び得る範囲は起こり得るのであって、そもそもがその主体があるからこそ及び得る範囲が問題になるのであって、それを防衛の範囲を拡大していくと、公海上どこにでもこれは防衛の範囲、これも防衛の範囲といってどんどん拡大していくと公海上全部防衛の範囲になる。防衛の対象になる。これはやっぱり憲法上許されないことだと思う。両方お答えしていただきたい。
  109. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) 先生御承知のように、わが国の憲法は独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではございませんで、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められているところであると私どもはもう一貫して解釈しているわけでございます。このために有事の際の自衛隊が守るべき対象、いま先生がおっしゃいました守るべき対象ということは、これは自衛隊法第三条でございますけれども、それから国防会議及び閣議で決定されました国防の基本方針と、こういうものに明示されておりますように民主主義を基調とするわが国の独立と平和であると。これを別の言葉で言いますと、いま先生おっしゃいましたわが国の領土、領海、領空というようなわが国の領域、そこに住んでおりますわが国の国民の生命、財産、それから憲法に定められた民主主義を基調とするわが国体制というような、すなわち日本というわが国そのものが防衛の対象であるわけでございます。  それで、いま先生の御質問趣旨は、わが国周辺数百海里、航路帯を設けます場合にはおおむね千海里という関係だと思いますが……
  110. 立木洋

    ○立木洋君 それはいいんです。及び得る範囲。条約局長いかがですか、それは。
  111. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ただいま防衛庁の方から御答弁申し上げた点について強いて補足いたしますれば、仮に先生の御質問の御趣旨が自衛権の対象が領土、領海、領空だけに、すなわち一般的に申し上げましてわが国の領域だけに限定されるかという御質問であれば、これは従来から政府が申し上げていることでございますが、必ずしもそれには限定されないであろうと。すなわち、たとえば公海上にある日本船舶あるいはその船舶に乗っております日本の国民というものを……
  112. 立木洋

    ○立木洋君 それは全然別。それは全然別です。
  113. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 自衛権の当然守るべき対象になるだろうと、こういうことは従来から政府が申し上げているところでございます。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 その問題を論じるとまた大変別の問題になるんですよ。そんなややこしい問題を持ち出したら時間がなくなるんですよ、条約局長。それはまた別の機会に私はやりますよ、公海上の問題は。  大臣、お疲れのところ申しわけありませんけれども、最後にこ 問題で一言だけお伺いしておきたいんですが、かつて岸首相が述べられているのでは、日本の自衛権の範囲をどこまでと考えていますかという質問に対して岸総理が言われたのは、かつての自衛権のように自衛のためなら何でもできるという考え方はしていない。日米安保条約第五条にもあるように、わが国の施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合、われわれは本来持っている自衛権を発動してこれを排除するということであって、日本の自衛のために必要な線を領土以外に拡大して、そこで武力攻撃を受けた場合においても自衛権が発動するという性質のものではない、こういうふうに明確に述べておられたわけです。私が危惧しているのは、最近の鈴木総理が言われている数々の発言の中で、どうもこの自衛権の行使の範囲が拡大されているんではないかという懸念がありますものですから、この岸総理のお考え方で変わりないのかどうなのか、この自衛権の範囲、守るべきものは何かという防衛の対象というもの、この考え方はやっぱり公海上どこまでも線を引いて拡大していくというふうなことは憲法では認めていないのだ、こういう自衛権の乱用は慎む、こういう国際法的にも考えられている範囲として岸総理が述べられているこの考え方でいまでもよろしいのでしょうかということだけお尋ねしておきたい。
  115. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私の承知しておるのでは、統一的見解によりますと、自衛権を行使することのできる地理的範囲は、わが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使する範囲で、それは必ずしもわが国の領土、領海、領空に限られるものではない、こういうことを政府の統一見解として再三申し上げておるところだと思うんです。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 それがやっぱりこう拡大につながっていくんですね。守るというのはやっぱり日本の領土を守るのであって、それを守るために必要な行動をとることが問題になるのであって、最初から公海を守る対象にしてしまうと、現在の自衛隊の能力が及び得る範囲が航路帯一千海里だと、だから今度そこまでを含めてそれが守る対象にされてしまうと、今度行動が及ぶ範囲がどんどん広がれば守る対象がどんどんどんどん広がってしまう。これは事実上自衛権の拡大解釈につながっていって、これは大変なことになるという考えがどうしてもするんですが、大臣、その点明確に区別してお答えいただきたいと思いますけれどもいかがでしょうか。
  117. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 澤田防衛課長
  118. 立木洋

    ○立木洋君 もう澤田さんいいですよ、もうあなたのお考えはわかりました。大臣にこれ一つお尋ねしてもうこの問題は終わりますから。
  119. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 公海を自衛権の対象として守るという概念は、これは先生の御質問にそのままお答えすることになるかどうかちょっと私自信ございませんが、一定の公海の範囲を自衛権の対象として守るということは、これは国際法的にも存在しない概念でございまして、いわんやわが国の憲法のもとにおきましてそのような意味での自衛権というものは存在しないだろうというふうに私は考えております。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 そこ、そこを大臣、ちょっとひとつ、それでよろしいですか、大臣。
  121. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) この表現が……
  122. 立木洋

    ○立木洋君 表現が大切なんです。
  123. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 適切かどうかはわかりませんが、この自衛の範囲内でわが国船舶の海上交通の保護を行うということはこれは認められておると私は思うんです。その場合に、しばしば申し上げておるように航路帯を設ける場合はおおむね一千海里程度の海域で自衛の範囲内でわが国船舶の海上交通の保護を行うと、こういうことを言っておるわけでございます。
  124. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、またこの問題は改めてお尋ねしますよ、その公海上の問題も含めて。もう時間がないので、どうも大臣のいい御答弁をいただくには時間がきょうは足らないから。これは非常に大切な問題なんです。つまり言葉をどう使うかというニュアンスの問題ではなくて、厳密な意味で自衛権の行使という問題を考える上で非常に基本的な問題なので、私はその厳密さが求めたかったわけなんです。この点については、大臣もお忙しいでしょうがよく一度お考えいただいて、次の機会に明快な御答弁がいただけるようにひとつしていただきたいと思って、この問題については終わらしていただきます。  それで、もうわずかしか時間がございませんのであれですが、海事債権責任制限に関する条約の問題ですが、前回の海上航行船舶の所有者の責任制限に関する国際条約の審議を行ったときに私がお尋ねしたのは、これはすでに一九五七年の条約で損害の限度額が人損にしても物損にしてもトン当たりきわめて低いと、これでは問題ではないかということをお尋ねしましたし、それからもう一点は、それまでわが国としてはやっぱり無限責任という状態であったのが、この条約が行われると結局責任が軽減される、このことによって人命をそういう災難に遭った場合に、そうした人々を完全に救済するという観点から見るならば問題ではないかというふうなことをお尋ねした経緯があります。今回のこの改正された内容を見ますと、確かに限度額は引き上げられていますけれども、加害船主責任制限ができるケースがやっぱりふえておるというふうな問題で、どうしても災難を受けた場合の被害者の人命を完全に救済する、こういう観点から見るならば、どうしても問題が残されているというふうに感じざるを得ないのですが、この点についてはどのように外務省はお考えになっておりますか。
  125. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) お答えいたします。  ただいま立木委員から御指摘ありましたとおり、一九五七年の条約におきましては、船舶所有者に対してたとえば過失というものを責任制限の阻却事由として挙げていたわけでございます。ところが、この過失の具体的な適用につきましては、結局各国の裁判所の判断に任せられていたわけでございます。したがって、一種の紛争の一因ともなっていたことはこれは事実でございます。今度の改正条約におきましては、この故意、過失の面をもう少し厳格に規定をしたわけでございます。また他方、この船主責任制限制度というのは、結局保険の問題とは全く無関係でありませんので、保険市場の引き受け能力というものを考えますと、船舶所有者の責任が全く制限されないままいくという事態はできるだけ避けねばならぬ。こういう観点から、最初に申し上げましたとおり責任制限の阻却事由というものは狭めたということでございます。しかし、この見返りとして責任限度額というものはかなり大幅に引き上げられておりますし、船の大きさ等々にもよりますけれども、一・四倍から一・六倍くらいに引き上げられておりますし、また旅客に対しては別個のシーリングも設けられております。そのほかいろいろな改善が行われておりまして、全体としてはこの条約は一九五七年条約に比して改善をされていると考えております。
  126. 立木洋

    ○立木洋君 やっぱり船主中心的な考え方になっているから、問題がどうしても残されているというふうな感じをぬぐうことができないわけです。  時間がないのでもう一問だけ、済みませんが。これは先日行われました第三回海運委員会、これは便宜置籍船の問題で、先ほど渋谷委員の方からも詳しく質問されたので私はそれ以上言いませんが、この問題に関しては便宜置籍船をなくしていく方向で努力すべきだというふうな問題が提起されておるこの会議で、日本政府は反対をしたというんですね。これは強行採決された、いわゆる括弧づきですか、強行採決されたかのような状態があったようではありますが、しかし内容を見ると私は非常にいい点ではないだろうかと思うんです。私はかつて五十二年にこの便宜置籍船の問題でいろいろお尋ねしたときに、これは日本の国だけでいろいろ規制をしようとしても他国が全然規制する動きがない、だからやはり問題がどうしても残るんですというふうな御答弁があったのに対して、そのとき私は、これは国際的に十分に協議をして、国際的な規制措置ということはもちろん重要だから、そういう場合においては積極的に、日本がいままで調査研究し対策等を練ったものを国際的にもそうした会議で出してやっていけるように努力してはどうかという質問をいたしましたら、当時外務大臣でした鳩山大臣の方から、「むずかしい問題を含んでおると思います。しかし、御指摘の点は大事な問題と思いまして、関係の御当局とともに努力をいたしたいと思います。」ということが述べられています。いまこの便宜置籍船の問題で政府間準備会合が行われていますが、この席上において、私はどうしてもやはりこの便宜置籍船をなくしていく方向で努力するという点を日本政府としてはやっていただきたい。このことだけを要望してそれの御答弁をいただきたい。  あと新品種の問題は時間がなくて大変申しわけありませんが、質問を終わらしていただきます。
  127. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいま御指摘いただきました便宜置籍船の問題は、IMCO、ILO等でも幅広く議論されていることは先生御承知のとおりでございます。他方国連のUNCTADでは、ただいま御指摘ありましたように、主として経済的といいますか、政治経済的な側面からこの便宜置籍船の問題が南北問題の一環として取り上げられております。開発途上国の主張はこれを廃止するべしということであるのは先生御案内のとおりであります。しかし、翻って考えてみますと、この便宜置籍船というものが何がしかの役割りを果たしていることはこれはやはり否定し得ないところであります。それからまた、いろいろそういう経済的、政治的な側面から便宜置籍船について問題があるということが仮にあるといたしましても、これを排除するべき実態というものをまず十分に解明していくことが必要だと考えます。あるいはたとえ排除しても、それが開発途上国の経済にかえってプラスになるかどうかは必ずしも明らかではないということが言えるかと思います。  不幸なことに、先生御指摘ありました昨年のUNCTADの第三回海運委員会特別会議におきましては、こういったいろんな問題について十分な審議が行われないままに、事務局が準備をいたしました決議案が開発途上国の支持を得て多数で採択をされたわけでございます。わが国を含む先進国の大多数がこれに反対をしたということであります。ただいまこのUNCTADの海運委員会の決定に基づきましてジェネーブで準備会合というものが行われておりますが、この準備会合には反対投票はいたしましたが、わが国は参加しております。先進国のうちには出席をしていない国もあります。それから、私どもといたしましてはこの準備会合及び今後に予想される会合を通じまして、この便宜置籍船の問題が経済的にも技術的にも十分解明されて、南北問題の一環としてUNCTADは取り上げていくわけですから、そういう角度から、何といいますか、国際的にも建設的な方向で議論が進むということを期待しております。一概にこれを廃止するとかいう、そういうふうなかっこうで議論が進むということは、必ずしもわれわれとしては望ましいことではないと考えております。
  128. 木島則夫

    ○木島則夫君 最初に条約関係について若干の質問をして、その後一般国際情勢について伺いたいと思います。  まず外国船、特に便宜置籍船の監督強化について、STCW条約はトリー・キャニオン号の海難に端を発し、船員の資格やあるいは当直体制の向上を図るためにつくられたもので、アーゴ・マーチャント号あるいはアモコ・カジス号など、一連の便宜置籍船の海難により、タンカーには一層厳しい規定が設けられることになった。日本近海でも、一連の便宜置籍船の海難により、タンカーには一層厳しい規定が設けられることになったと。日本近海でも第十雄洋丸など便宜置籍船が絡む海難事故は後を絶たないで、いまも千葉県の外房海岸でアカデミー・スター号が座礁して、海産物にはかり知れない損害を与えているという現状を厳しく認識をすべきだと思います。  こういった経過を考えるならば、経済性だけを優先をさせ、安全性がなおざりになっているこの便宜置籍船というものは特に注意して監督をする。日本近海はもとより、世界の海において海難を減らし、海洋環境を守るために最大の努力を払うことが先進海運国の日本としては当然すぎる当然の責務であると思いますけれど、まずこの認識から伺いたい。簡潔で結構です。
  129. 小和田統

    説明員(小和田統君) 先生御指摘のとおり、海上の安全と環境の保護につきましては、世界じゅうの国のレベルがある基準以上になるということによって初めて達成されるものでございますので、この条約にも締約国でない国の船を含めて、条約並みのレベルが維持されるように監督をするという趣旨規定が設けられているわけでございます。したがいまして、この条約規定を受けまして、今回国内法であります船舶職員法と船員法を改正いたしまして、外国船を含めて監督ができるような根拠を条文として設けたわけでございます。新しい法制度が実施されましたら、この監督規定に基づきまして、わが国に参ります外国船を一含め、十分な監督をしていきたいと考えております。
  130. 木島則夫

    ○木島則夫君 先ほどからこの問題については、政府の便宜置籍船に対する認識がどういうものであるかという根本的な問いがなされておりますね。ずばり伺いまずけれど、必要悪と見るのか、好ましくないと見るのか、もう一つ前進をさして減らしていくべきだと、こういう段階があるはずですね。当局の認識はどうですか、ここが一番大事なところです。
  131. 山本直巳

    説明員山本直巳君) お答えいたします。  まず、便宜置籍船についての認識でございますけれども、われわれ海運局でございますけれども、便宜置籍船は外国船でありますけれども、経済安全保障の観点から、これに余り過度に依存するということは望ましくないというふうにまず基本的に考えております。しかしながら、海運業といいますのは市況変動幅が非常に大きく、運賃が三倍になったり三分の一になったりいろいろ大きいわけでございますけれども、そういう影響を大きく受けるために、海運企業がこれに弾力的に対処するためには外国用船にある程度頼る、それを含む商船隊というものを日本として構成するということが必要の面があるというふうに思っております。それで、便宜置籍船もこの外国用船の一種でございますけれども、オペレートする日本の船会社との関係は、他の外国用船に比べましてより安定的でございますので、私どもはそれなりのいわば経済安全保障ということで、日本船がむろん一番望ましいわけでございますけれども、それに次ぐ外国用船の中では、いわば日本がいざというときに支配できる余地が強いということで、一定の評価は下しておるわけでございます。ただ前にも述べましたように、それに過度に依存するということは決して望ましくない、そのように考えております。
  132. 木島則夫

    ○木島則夫君 どうも歯切れが悪いんですね、その辺が。必要悪か、好ましくない、もうちょっと前進をして減らしていくという、私の質問に対する端的なお答えをちょうだいをしたい。
  133. 山本直巳

    説明員山本直巳君) いまいろいろ申し上げましたけれども、必要悪かという点につきましては必要悪というふうなとらえ方はしておりません。ただ、いま申し上げましたように、これは一定以上になると非常に困る。だから、いま私どもが依存しております程度、その程度につきましてはわれわれは一定の評価を下しているというふうに考えております。
  134. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょっとおかしい。おかしいというのは減っていない、むしろふえている傾向にある。そういう中でいまの答弁というのはおかしいですね。必要悪というふうには見ないのならば、やっぱり好ましくないというふうな当然お答えがあってしかるべきだと思うんだけれど、どうですか、減ってないんですよ。
  135. 山本直巳

    説明員山本直巳君) お答えいたします。  ですから、何度も申しますように量の問題、要するにオール・オア・ナッシングではなくてどの程度までならいいと考えるか、あるいはどこまで超したら困ると考えるかということだと思っております。それで現在程度のものについては適当であるという認識を下しているということでございます。あくまでもオール・オア・ナッシングでなくて、どの程度までならいいとする、あるいはどこを超したら問題だということでございますので、そのように申し上げております。
  136. 木島則夫

    ○木島則夫君 ここで一つ確認できたことは、必要悪ではないと、こういうことですね。
  137. 山本直巳

    説明員山本直巳君) はい、そのように考えております。
  138. 木島則夫

    ○木島則夫君 私が冒頭申し上げたような見地から、監督体制の抜本的な強化を図って便宜置籍船の段階的な縮小を国際会議で主張をすべきであると思う。これは同僚委員からも御指摘がございましたけれど、どんなものでしょうか。積極的に推進をすべきだと思います。どうですか、国際会議において積極的に主張すべきである。
  139. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) お答えいたします。  先ほど立木先生の御質問に対して私も一部お答えしたことでありますが、この便宜置籍船というものが開発途上国を含む非便宜置籍船海運の発展に影響を与えているということは確かに配慮すべきであると思います。しかしまた反面、この便宜置籍船が現実にありまして、世界海運の中で果たしている役割りというものもこれは無視し得ないところであります。必要悪であるか否かということをさておきましても、一応役割りは果たしているということであります。したがって、いまの段階でこの存在を一方的に否定してしまうということにはやはり問題があるのでありまして、その経済的な影響というものを相当慎重に詰めて検討していくということが必要なんだろうと思います。ですから、こういう形の国際間の検討というものにはわが国としても今後十分積極的に参加していくべきだと思いますし、そういう考え方に立ちまして、ただいまジュネーブで行われているUNCTADの作業にも参加しているわけであります。それからまた、そういう経済的、政治的な側面を離れても、技術的な側面からの検討、いわゆるサブスタンダード船の問題の解決ということに関しましては、そういう方向で行われておりますIMCOとかILOにおける作業にわが国としてもできるだけ今後積極的に協力をしていきたいと考えております。
  140. 木島則夫

    ○木島則夫君 後段のお答えは結構だと思いますけれど、一つ気になるのは、必要悪かどうかは別としてというのはこれはちょっと気になる。どうですか、そこのところは私は気に入らない。どんなものですか。
  141. 山本直巳

    説明員山本直巳君) いま国際会議に臨む御方針につきまして外務省から答弁があったわけですけれども、私どもとしてもまずそれについては同じでございますが、いまの必要悪かどうか、これは悪という言葉が適当かどうか、まずそこが問題なんですけれども、要するに悪というのはやめてしまえという意味をもし悪とするならば、そういう意味の必要悪とは考えていないということをおっしゃったのだと思います。
  142. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) 必要悪かどうかということですけれども、少しその点は舌足らずでしたので御説明いたしますと、先ほど来運輸省からも御説明ありますとおり、この便宜置籍船というものは、やはり少なくとも現在においては日本経済にとってある程度必要なものであろうと思います。したがって、こういうものを一概に悪と言っていいかどうかというのは問題がある。しかし他方、これは悪だ、これを廃止するべきだという考え方があることもこれまた事実でございます。しかし、そういう事実を踏まえてこの便宜置籍船の問題を国際的に検討していくという作業にはわが国も参加していこう、特に開発途上国が南北問題の一環としてこれを持ち出しているのであれば、そういう角度からの検討には応じようというのが現時点における政府の考え方だと思います。
  143. 木島則夫

    ○木島則夫君 この辺の言葉のやりとりを詰めていきますと、もうこれだけでも三十分ぐらいすぐたってしまいますから、とにかく前向きにひとつやっていただきたいということを確認をさしていただきたい。  で、マルシップへの法の適用について少し伺いたいんですけれど、現行船舶職員法では日本船舶を所有できない者に貸し付けた日本船、いわゆるマルシップが適用除外になっております。今回条約を批准する必要から旗国主義を導入してマルシップにも船舶職員法が適用されることになるわけでありますが、この場合、政府は何らかの緩和措置をとる意向を示しておりますね。マルシップを排除することは私どもはもちろんでありますけれど、私どもの盟友団体である海員組合の長年の願望でもあり、日本船員の雇用確保の上からも緩和措置をとることには大きな問題があることは当然過ぎるほど当然でございます。政府は三百十四隻のマルシップが存在をすると答弁しているけれど、これらを新法施行と同時に一挙に日本船員にかえることが困難であるならば、いまから順次日本船員にかえていくよう指導すべきであると思いますが、この辺はどうでしょうか。
  144. 小和田統

    説明員(小和田統君) その三百十四隻ありますマルシップにつきまして、制度実施と同時に必要な日本人の職員を全部乗せるということは実際問題として非常にむずかしい問題があろうかと思います。したがいまして、新しい制度いつごろから実施される見込みであるというようなことにつきましては、私どもとしてもなるべく前広に関係者に対し周知徹底いたしまして、できる限りの事前の準備ができるようにしたいとは考えております。
  145. 木島則夫

    ○木島則夫君 いまのでお答え大変結構だと思うんですけれど、もう一つつけ加えさしていただくならば、どうしてもその緩和措置なり経過措置が必要であるとなると、しかるべき審議機関で労働側の委員の意見を十分に尊重して納得のできる方法をとっていただきたい。船員中央労働委員会などで話し合う用意があるか、いまはむしろ逆で、地方でいろいろ言っている。ところが、中央ではそれを必ずしもがえんじないというか、肯定をしないというような状況にあるようでございます。したがって、もう一度申し上げるならば、どうしても緩和措置なり経過措置が必要となるならば、しかるべき審議機関で労働側委員の意見を十分に尊重して納得できる方法をとるべきだ、こう私は思うんでありますけれど、お答えをいただきたい。
  146. 小和田統

    説明員(小和田統君) マルシップにつきまして、制度実施に当たって私どもとしては極力混乱の起きないようにしたいという基本的な考えがございます。現在三百十四隻という隻数からいたしますと、日本の商船隊の中でも相当のウエートを持っていることでもございますので、その辺につきまして実施までに具体的なマルシップの実情、あるいはその実施に当たってどのような問題が生ずるのかといったようなことにつきまして今後十分調査いたしまして、関係者の意見も徴しながら問題の起きないような手当てを考えていきたいというふうに考えております。
  147. 木島則夫

    ○木島則夫君 もうちょっと具体的に言わしていただけるならば、たとえば船員中央労働委員会などでこういうことを話し合う、実質的な詰めの話をここで行えば、今度は船員地方労働委員会でももっともっとそれを具体的に詰めるというような前向きな詰めが行われていけるわけですから、こういったところでのお話し合いが必要だと私は思うんですけれど、もう少しこの辺については具体的に触れてもらえませんか。
  148. 小和田統

    説明員(小和田統君) 船員中央労働委員会の方はむしろ船員の雇用条件なり、船員法についての審議機関でございまして……
  149. 木島則夫

    ○木島則夫君 などでというふうに申し上げましたがね。
  150. 小和田統

    説明員(小和田統君) 失礼をいたしました。  マルシップの問題はどちらかというと船舶職員法関係の問題でございますが、具体的にどのような問題が考えられ、それに対してどのような手当てが必要かということを検討いたしまして、それが審議会において関係者の意見を聞かなければいけないというようなたぐいのものであれば、やはりそのようにするということになるかと思います。
  151. 木島則夫

    ○木島則夫君 その場合、労働側委員の意見も十分にしんしゃくをしながら、納得できる方法でということもひとつ御了解いただけますか。
  152. 小和田統

    説明員(小和田統君) 審議会にはもちろん労働側の委員も入っておりますし、その点は問題ないだろうと思います。
  153. 木島則夫

    ○木島則夫君 次に、安全配員についての原則に関する勧告についてお伺いをいたしますが、STCW条約採択後、引き続いて国連事項をIMCOで検討してきたわけですが、このほど、安全な配員についての原則に関する勧告が決議をされました。日本もこの決議に賛成をしており、勧告は強制ではないというものの、それを尊重する道義的責任があるはずでございます。政府はこの勧告に従って、法律では決められていない機関部部員の定員についても基準を定めて日本船に守らせるよう指導すべきであると思いますが、どうか。私も専門家ではございませんので、詳しいことはよく存じませんけれど、聞くところによると、甲板部の定員は七百トン以上の場合にははっきりと決まっているけれど、機関部の場合それがない。つまり、私が申し上げたいことは、船の中には機関部の人間もはっきり必要なんだということへの明確な表現をしてもらえないかと、はっきり言えばこういうことであります。どうでしょう。
  154. 小和田統

    説明員(小和田統君) 先生御指摘のとおり、現在の船員法には、具体的な人数として決めておりますのは七百トン以上の船についての甲板部の部員でございまして、機関部につきましては、機関の種類なり航行の形態等によりまして、具体的にどのような人数が必要になるかということが相当バラエティーに富んでおりますので、必ずしも法律では一律の員数を決めていないということでございます。したがいまして、この配員に関する原則の勧告に当たりましても、私どもとしては、現在のわが国法律制度の中でこの勧告に対して特に抵触があり、したがって新しく勧告に沿って制度改正をしなければならないような問題点があるというふうには考えておりません。
  155. 木島則夫

    ○木島則夫君 なるほど。そうすると、もう一度聞きますけれど、政府はこの勧告に従って、法律では決められていない機関部員の定員についても基準を定めて、日本船に守らせるよう指導をすべきではないかという端的なお答えはどういうことになりますか。前向きに考えるということですか、それともそれはできないということですか。
  156. 小和田統

    説明員(小和田統君) 現在の船員法の考え方といたしましては、船員法で定められております労働時間というものが規定されておりますが、その労働時間の規定を守る上で必要な員数の乗組員を乗せなければいけないということでございまして、具体的にどのような人数を乗せるかというような点につきましては、機関の種類あるいは機関のメインの部分以外にどのような補機がついているかというようなことをあわせ考えまして、現実には船主が決めているわけでございますけれども、就業規則などにおいて個別の定員を決める場合に、何か問題があるというようなことでございましたら、そういうケースについては、船員法上船員労務官がチェックをする、所定の就業規則に定められたとおりの乗組員が乗っているかどうかについてチェックをするという体制が現在とられているわけでございます。
  157. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうすると、日本船に守らせるように指導すべきであるというこの辺のお答えはもう一つ言うとどういうことになりますか。
  158. 小和田統

    説明員(小和田統君) 先生のおっしゃいます配員に関する勧告と申しますのは、船舶にどのような基準、考え方で個別船舶の配員を決めていくか。その際の原則を国際的に勧告として決めたということでございまして、個々の船にどのような人数を乗せるかということについては、これは各国主管庁がそういう勧告の考え方に沿って決めていくという趣旨のものでございます。したがいましてわが国の場合に、いま申し上げましたような船員法の考え方で、機関部員について特段法律上の員数が決められていないからといいまして、これが勧告との間に問題を起こすというふうには考えていない、そういうことでございます。
  159. 木島則夫

    ○木島則夫君 それではポート・ステート・コントロールについてお尋ねをしたいんですけれど、欧州十四カ国では本年の七月から厳しいポート・ステート・コントロールを実施しようとしております。特にILO百四十七号条約、海洋汚染防止条約は早急にこれを批准し、日本船の運航が阻害されないように措置すべきだと思いますが、まず、その基本的な考え方について伺います。
  160. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいま木島委員から御指摘ありましたとおり、ことしの一月パリに欧州十四カ国の海上安全問題を担当する閣僚が集まりまして、覚書といいますか、メモランダム・オブ・アンダースタンディングというものを採択いたしました。この覚書といいますのは、簡単に申し上げますとポート・ステート・オーソリティーといいますか寄港国の監督、寄港国による監督に関するいろいろな手続及びそれにかかわる各国政府間の情報交換及び協議の手続、こういうものを定めたものでございます。七つのそれに関連する条約が挙げられておりまして、この七つの条約関連する諸条項を、その監督の面でしっかりとやっていこうという、そういう趣旨の覚書と了解しております。その七つのうちには、ただいま御審議いただいているSTCWも入っているわけでございます。ただいま先生御指摘もありましたが、そのうち二つ、一九七三年の海洋汚染防止条約及びILOの第百四十七号条約、これにつきましては、わが国はまだ締約国となっておりません。外務省といたしましては、これらの条約には早く参加できるよう今後引き続き関係省庁と話し合いを続けていきたいと考えております。
  161. 木島則夫

    ○木島則夫君 これらの条約についての批准は早急にというふうに確認さしていただいてよろしゅうございますね。早急に批准をするんだということで確認をさしていただいてよろしいですね。
  162. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) 一九七三年の海洋汚染防止条約あるいはILOの第百四十七号条約、そのいずれにつきましても国内法との整合性の問題がありますので、関係省庁と今後さらに作業を続ける必要がありますが、外務省としてはできるだけ早く早期にこれを国会に提出できるよう関係省庁との話し合いを続けていきたいと考えております。
  163. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは仮定の場合でございますけれどね、もしそういうものが締約をされていないで取り締まりを受けた場合、たとえば出航停止などの事態が起こった場合に、これにどう対応するかというようなことも当然考えておかなければいけないことなんだけれど、この辺はどういうふうに考えておりますか。
  164. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいま御質問受けましたとおり、この二つの条約に可及的速やかに加入をしたいと考えているわけでございますが、この条約わが国が批准するまでの間、相手国における船舶の検査等によりまして、日本船舶の円滑な運航が不当に妨げられることのないように、今後とも関係省庁とお打ち合わせをしながら、必要に応じ外交ルート等通じまして適切に対処していきたいと考えます。
  165. 木島則夫

    ○木島則夫君 条約関係する質問はこれで終わりまして、朝鮮半島の非武装地帯での事件について外務省はどう把握をしておるか、報告をしていただけますか。
  166. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいまの説明うち一点だけちょっと訂正させていただきますが、欧州十四カ国ポート・ステート・オーソリティーの対象となっている条約わが国が入っていない条約として一九七三年の海洋汚染防止条約と申しましたが、これは不正確でありまして、一九七三年の海洋汚染防止条約に関する一九七八年の議定書と、こういうことでございます。ですから、記録の点よろしくお願いいたします。
  167. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 二十一日午前二時二十五分ごろでございますが、中部戦線の華川北方二十六キロメートルの非武装地帯で四名の北朝鮮兵士が川沿いに越境を図りました。北朝鮮側はこれを阻止するため南側の歩哨所、ガードポストでございますが、に対して八十二ミリ無反動砲を含む八百余発の銃弾を浴びせた。朝七時三十分ごろ軍事境界線の北六百メートルで北側の地雷が爆発するのが観測された。その際、北側の四名が死傷した模様であります。確認はされておりません。南側韓国側は鉄条網の一部が破壊されたほか損害はないというのが昨日未明に起きました事件でございます。
  168. 木島則夫

    ○木島則夫君 その後今日まで、この事件についての経過はございますか。
  169. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) その後国連軍の側は、本件につきまして、北に対しまして本件は休戦協定の違反であるという理由で抗議を伝達するということになっておるということでございます。
  170. 木島則夫

    ○木島則夫君 この経過も慎重に見なければいけませんけれど、とにかく私残された時間があと七分ぐらいしかございません。対韓経済協力の問題について私の考え方を申し上げて、外務大臣の御所見もあわせて伺いたいんでありますけれど、韓国の過去二十年間の対外借款の累計が二百五十億ドル、このうち日本分は三十九億ドルでアメリカ、ECに次いでこれは第三位ですね。今般の五カ年計画の所要総経費が千二百八十二億ドルで外貨依存分が三百三十三億ドルだが、日本への要請は問題の六十億ドルです。日韓条約以来日本への輸出の累計が二百十八億ドル、輸入が四百十八億ドル、対日赤字が二百億ドルでなお年次十億ドルの輸入超過だという、こういう見込みであります。しかも、韓国の国内経済は相当な困難に直面をしていると聞いております。そうであるならば隣国の友邦としてわが国が韓国の経済再建に協力を惜しんではいけない、当然であろうと思います。韓国の経済の現状をどう把握をしているか、これは簡明率直に答えていただきたい、もう時間がないものだから。お願いいたします。
  171. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 韓国の経済の状況は、一言にして申しますればきわめて困難に逢着しているということでございます。経済成長率は七九年の第二次オイルショックを契機に七九年には六・四%とダウンいたしまして、八〇年にはマイナス六・二%というマイナス成長を記録しております。昨年は韓国側の発表によりますと七・一%と比較的高い数字になっておりますけれども、これは主として八〇年の米不作がマイナス二二%という農林水産部門のマイナス成長をもたらしたわけでございますが、それが八一年には平年作に回復したことによるものでございまして、輸出の成長率は八〇年、八一年を通じまして〇・五%程度というふうに考えております。なお、韓国のGNPの四〇%を占めます輸出でございますけれども、本年に入っても依然として輸出の伸びがきわめて鈍化しておりまして、本年の一、二月の輸出は前年同期の三・三%増というふうにきわめて低くなっております。
  172. 木島則夫

    ○木島則夫君 第五共和国の政治体制のスピリットとその構えを篤と見詰めますと、全斗煥体制によって韓国の国内体制は一新したというふうに私どもは受け取っております。国際的にも対米あるいは対ASEAN外交、オリンピック招致の成功などによって着実に評価を高めつつある、こういった状況下で新興工業国として発展するためには多額の資金を必要とする、当然のことであろうと思います。そこで、日韓経済協力問題はいよいよ大詰めにまいりました。外務省のお答えが慎重であればあるほどこの感を深くいたしております。両国間の見解の隔たりの厳しいことも私はよく認識をしているつもりです。この隔たり、対立と言った方がいいかもしれない。この対立は日本と韓国との新しい関係はどうあるべきかという点について日韓両国の認識の差が端的に表明されたと、こういうふうに私は申し上げたい。率直に言うならば、日本外交の世界観の中で、韓国をどう位置づけるかという問題に帰着をする、これに日本政府がどうこたえるか、もはやそろばん勘定の段階を越えて政治決断のときである、タイミングとテクニックは一本、手あかのついた料理は食えたものではないと主張をいたしますが、外務大臣の率直なお答えをいただきたい。
  173. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 先ほど御説明申し上げたような韓国が経済的、社会的困難に直面しながら建国に最大限の努力を傾注しておるわけでございまして、日本として隣国のこういう状況に対して協力を惜しまないということは言うまでもないわけで、そういう基本的な方針で臨んでおるわけでございます。
  174. 木島則夫

    ○木島則夫君 外交は生き物ですね。したがって、原則論とか形式論にこだわって後悔を残してはいけないというふうに思います。もう何というか、剣が峰と申しますかね、背水の陣、後がない。もう本当に時期的にも連休と申しますか、この機会を逃がしてタイミングはない。その中で政治決断がきちっと行われ、日韓両国の関係が前向きに前進をする、つまりそのことは新しい韓国を日本外交の世界観の中で日本がどうとらえるかという表現になると思うんでありますが、この辺についても外務大臣の御認識を率直に伺いたい。
  175. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) おっしゃるとおりの気持ちを持って、誠意を持ってこれを解決したい、こういうふうに対処しておりますが、御承知のような日本の財政状況というもの、あるいは経済協力の基本方針というものもございまして、それらを勘案しながらぎりぎりの線を考慮しておるわけでありますが、なかなか両国の意向が一致するに至っておらないと、こういうことでございます。
  176. 木島則夫

    ○木島則夫君 最後に、タイミングを逸することは今後の日韓両国の間に好ましからざる状況を生むという私の認識についてはいかがでございましょうか。
  177. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) おっしゃるとおりでございまして、総理もその辺を心配されまして、何とかこの連休の期間に解決ができないものかと、こういうことでそれを目標として最後の努力をいたしておるところでございます。
  178. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間が参りました。これでやめます。
  179. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 ただいま同僚議員から質問がありましたが、韓国に対する経済協力、経済援助の問題が進展している。新聞などによりますると、六十億ドルという要求を四十億ドルとして、それに二億円くらい上出しをして次官を派遣するというようなことですが、数字は向こうの韓国側に提示しているわけですか。
  180. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 新聞にはいろいろな数字が出ておりますけれども、まず第一に、日本政府内部の意思統一と申しますか、調整はまだ済んでおりませんで、いまそれを鋭意やっておる最中でございます。したがいまして、ただいまの御質問にございますように、韓国側と数字をつき合わせるというようなことはいたしておりません。
  181. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は、日韓条約締結のときにこの条約についていろいろ疑問を持って質問したのですが、基本的には朝鮮半島の平和という問題になりますると、北に人為的に分断された朝鮮民族の国家がある。その民族の国家と南の国家とが非常に軍事的に対立している状況にある。これは朝鮮民族に対する不幸ばかりでなく、日本の安全という観点からいってもまことに残念な問題だと思うんですね。それで北朝鮮というものを絶えず目に入れて韓国の問題を考える、こう私は言っているんですが、そのことに対して外務大臣、どう考えられますか。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  182. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 韓国が第二次石油ショック後の国内の民生安定あるいは経済再建の上に困難を来しておる、そのことに対して日本が経済協力を要請によってしようと、こういうことでありまして、このことは北朝鮮の将来の発展に対して損なうものではないと、こういうふうに思います。
  183. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 韓国問題、朝鮮問題に対して基本的に二つ違った意見があります。それは、朝鮮半島全体を視野に入れて、その半島の平和安定を図るという考え方と、それから北と韓国の対立は不可避であって、北の脅威が絶えずあるから韓国に経済援助をした方がいい、仲よくした方がいい、こういういわば安保絡みといいますか、そういう考え方と二つありますが、大臣はどういうお考えをとられますか。
  184. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま御説明申し上げたとおり、北の脅威があるから云々というようなことは念頭にないわけでございます。私の就任後に要請されておることは、全く先ほど申し上げたとおりの経済的な困難、民生の安定の上から協力をしてもらいたい、また韓国自身が持っておる五カ年計画というものが明らかにされておりまして、その中で日本に対してこういう範囲では協力できないものかということが前提で本日まで検討いたしまして、全部希望するとおりにはいかないが、こういう範囲ではどうかということを従来中間回答として申し上げておるようなわけであります。
  185. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 非常に朝鮮問題は重要なんですが、とにかく二つの分断国家があって異なった体制の国が二つある、それが絶えず対立している。この分断についても大体日本の植民地が大国の都合によって二つに分けられてそして不幸な分断、不幸な対立、これがあるわけですからね。私どもは朝鮮半島のそういう基本的な不幸をいかにして除くかということは、日本の政治家が韓国問題あるいは北の問題を考えるときの基本的な立場だと思います。日韓条約で問題だったのは、つまりいわゆる韓国政府の主権は朝鮮半島の北にも及んでいるというような文言がございますけれども、そういう姿勢でしばしば韓国は日本側に、あの条約は北にも及んでいて、自分たちこそ朝鮮半島の唯一の合法政府なんだと、こういう言い方をしていますが、こういう言い方はいまでも南の韓国の政府はいたしますが。これは条約局長でもいいですが。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕
  186. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 韓国との基本条約第三条におきまして、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」という規定がございます。したがいまして、これが韓国政府の立場でもあり、日本政府の立場でもございます。しかしながら、いま御指摘の御質問、最近特に韓国政府がこういうことを取り上げているかということでございますれば、最近このことについて韓国政府と話したことはございません。
  187. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 朴正煕時代に南北の話し合いが行われて以来、事実上そういう姿勢はとっていないと私は思いますけれども、そうではありませんか。
  188. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 南北対話が推進されることにつきましては、日本政府といたしましてこれを大いに期待しておるわけでございます。最近特に韓国及び北からそれぞれいろいろな提案が出ておりますので、提案が出ておるということは歓迎されるわけでございますが、直ちにこれが具体的な措置につながるかと申せば、そういう状況にはないのではないかというふうに推測されます。
  189. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私の伺ったのは、朴政権時代にすでに南北対話、共同声明がなされていますね。それから最近も南の方がいろんな申し入れをしているということを聞いています。ですから、日韓基本条約第三条の唯一の合法的な政府という主張は事実上放棄しているわけですね、韓国は。
  190. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) これは放棄しているということはないと存じます。南北対話は韓国側から見ますれば、あくまで現在の体制を前提といたしまして南と北が話し合うということでございまして、その結果としての将来の姿は別といたしまして、対話の過程それ自体におきましては、韓国があくまで北朝鮮と話し合うということでございます。
  191. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 とにかくこの問題は非常にむずかしい問題ですけれども、そういうきわめて変態的な状態である、つまり南は北にある自分の国を認めない、自分の民族の国を認めない、これは外国のいわば干渉でできたような国ですけれども、そういう状況の中で日韓条約ができたわけですが、その際、いまのそういう第三条の問題とそれから竹島の問題ですね。これはやはり非常に問題だったわけです。私どもは竹島は当然日本のものであるかということを条約審議の際にしばしば聞きまして、政府はこの日韓条約において竹島は日本領であるということを委員会で明言されたことを聞きましたが、現在、この問題に対して政府はどういうふうにお考えですか。
  192. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 竹島は日本の固有の領土でございます。不幸にして韓国によって占拠されておりますが、これに対しましては随時、しばしば韓国政府に対しましていろいろなレベルで抗議を行っております。
  193. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 北方領土と竹島とは、大きさとかそういう意味で重要性に対するいろんな解釈がありますけれども、とにかく悪い意味では日本の本土に非常に近接しているだけに、この領土権は相当な重要性を持っていると思います。これに対する条約上の合意というものは最後まで成立しないで条約が調印されたものですか、どうなんですか。  皆さんはこれは日本の固有の領土だ、こう言われるけれども、もうすでにあの条約のときに、いろいろこれは紛争があったわけですよね、この条約の過程において。私ら驚いたのは、当然これは日本のものであろうと思って、私は日韓条約に反対だったけれども、その点ははっきりそう理解していたのですが、その後韓国の新聞の方で、いや、あれはおれのものだという主張が非常に強く出て、その後何度か質問等をしたのですけれども、今度の援助というものはやっぱりあの日韓条約が結ばれたときの韓国に渡した金額、これは一種の植民地時代の補償みたいな意味を漠然と含んで有償無償五億ドル、それからそのほかに非常に政治的な意味のある借款を三億ドル以上出すということで決まったのですが、その総計が八億ドルですね、もっとも三億ドル以上というのだから幾らでも出せるわけだけれども、そういうことで決まった。それと比べますと非常に大きな経済援助が行われるわけですね。そういう画期的な援助を行う場合に、重大な竹島の主権の問題なるものを私はそのままにしていいとは思わないんですが、櫻内大臣はどう思われますか。
  194. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 竹島問題は日韓の国交回復の際に解決をしなかった、そういうことから交換公文を交わして、こういう紛争問題については今後話し合う、しかし現実は韓国側が施設を設け、警備兵を置いておる、こういうことでありますから、これについては繰り返し抗議を申し込んできておるという、そういう実情にあるわけでございます。  領土問題は領土問題、経済協力問題は経済協力問題、こういうことで事は分けて話をしていきたい。現在、解決を見ずにおることはまことに遺憾なことでありますが、今後とも繰り返し、機会あるごとに韓国との間でこの竹島問題については協議を進めてまいり、固有の領土の返還が実現するように、あるいは固有の領土が明白になるようにいたしたいと思っておる次第でございます。
  195. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 別だといいますけれども、相手は一つなんですからね、ですから、やっぱり機会というものがありますよ、いまも機というものがあるという話があったけれどもね。それで日本の一般の国民、一納税者の感覚は今度の六十億ドルという借款は何か突如吹っかけられたという感じを持っている、それから借りる方がばかにいばる、われわれは借りるときぺこぺこするのに、ばかにいばるじゃないかという感覚を正直のところ持っていますが、そういうふうにいばられるという韓国に対する外交姿勢、金大中事件なんかのときもそうですけれども、そういう外交姿勢というものはどこから出てきているかわかりませんけれども、私はこれは日本のために非常に残念だと思っております。今後、韓国と仲よくしていこうというなら、やっぱり双方が相当折り目というものをきちっとしませんと危ないですね、実際。どんなに盟邦とかなんとか言ったって。これはきちっとした癖をつけないと危ないです。こういう大きな日韓基本条約が結ばれて賠償的なお金が出されたときよりも何倍かの、まあ十五年ほど前のことですけれども、それより何倍かのお金が出されるというときに、やっぱりこういうことをきちっとけじめをつける方針を政府としてはとったらどうなんですか。
  196. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) これはやはり明白に領土問題は領土問題、経済協力は経済協力としておかないと、これをするからそれはおれの方だというその観念の中には何か向こうに認めるような感覚が出てくるので、私はこれはおもしろくないと思うんですね。それから先ほどから申すように、隣国の経済困難あるいは民生の安定に欠くるところがあると、こういうことで借款を与える、これは何か金を払ってということでないのですからね。いろいろな条件があって、その条件がソフトかハードかというようなことはございますが、困っておるので、それにそういう援助をしようと、こういうことで何か金払ってどうのと、こういう感覚のものでは私はないと思うんですね。
  197. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 竹島の問題は、これは歴代内閣の責任といえば責任で、あなたの責任じゃないわけだけれども、しかしとにかく日韓基本条約を結んだとき、やっぱりお金の問題というのはある意味では露骨な問題ですよ。やっぱり相当日本の国民の税金から出すのですからこっちもしっかりしなければいかぬわけで、向こうはできる限り取った方がいいというこういう関係ですね、やむを得ないのです。特に国家間の関係にちゃんとした節度がないと幾らでも欲しくなるという問題ですからね。それで領土問題と絡ませるというのは、貿易問題と軍事問題絡ませるのと同じようなことでよくない。よくないことはわかっているけれども、しかし日本がとにかく国民の税金を相当出すわけですね、一つの国の政府に。そのときに重大な領土問題という懸案事項があるということは、何もこれやるからこれよこせというわけでなく、当然の権利を主張するわけですからね、ある意味では非常に主張しやすい立場にある、そういうときに向こうだって欣然として解決したら私はいいと思いますね、日韓関係よくなりますよ、それは。やっぱり日韓の今後の親善ということを求めてお金も出すわけでしょう、国民の税金をね。日韓基本条約締結したときよりも何倍かのお金を出すわけですね、けじめのときですよ、これは本当に。そういうときに遠慮する必要は何もない、つまり国民に対するやっぱり責任がありますからね。  で、条約局長に聞きますが、北方領土問題とそれから竹島問題は、国際法の関係とかいままでのいきさつとか、そういうふうに考える場合にどういう違いがありますか。やはり、同じ領土問題でも違うでしょう。
  198. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 北方領土も竹島も相手の国が国際法上法律的な根拠がないにもかかわらず占拠をしておる、すなわち端的に申し上げれば不法占拠を行って、そういう状態が継続していると、そういう意味におきましては、北方領土も竹島も法的には変わらない状態だろうと思います。  ただ、もちろんそういう状況が起こった背景につきましてはいろいろ違いがある、ここで詳細申し上げる必要はないかと思いますけれども、北方領土の問題、竹島の問題、それぞれ違いがあるということはそのとおりだろうと思います。
  199. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この竹島の問題が北方領土の問題と違うのは、領土をどうするか、放棄するとかなんとかいう、そういう問題が、北方領土の問題のときにはサンフランシスコ条約ソ連が参加しないという状態で調印されたわけですね。竹島の問題は、相対国と合って、以前から問題があったのをこれは日本のものだといって、日本の主張が通ったと思ってわれわれはあの条約を本当は批准したわけです。そこが違うんですね。当事国、その相手がその席に座って、それで日本の外交は、竹島は日本のものだと、こう言って調印したということを国会に報告した。それが違います。ですから大分これは違うんですね。  それで、こういう何といいますか、けじめというものはちょっとしっかりしないと困る問題がたくさん起こると思うから、特に巨額な債権の問題もあるから。仲よくするということは何もお金を出すから仲よくなるというわけじゃない。向こうとこっちが本当に精神的に共鳴するところがなければならぬ。それは幾らお金を出したって、仲よくするというのは二つの国民の問題ですからね、もらう方はそれはほくほくするでしょう、特に政府が。しかし国民と国民との問題になると、やはり相手がけじめをきちっとしてもらわなけりゃ困るわけですね。だから、こういう機会に竹島の問題なんかはけじめをしっかりする、日本の外交がきちっとしているならば、これは私は当然のことと思いますけれども、外務大臣どう考えられますか。
  200. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどから申し上げるように、経済協力は経済協力、領土問題は領土問題でないと、宇都宮委員のおっしゃることも一つの理論だと思いますけれども、これはうかつなことは私はできないと、したがって領土問題については国交回復のときにこれは合意したものですね、交換公文を交わしておるんですから、紛争問題を話し合いによって解決しようと。それによってあくまでも努力することが至当ではないか、こう思うのであります。
  201. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 もう一度伺いますが、両国民、これは朝鮮半島というのはいろんな傷がありますけれども、それは別に考えずに、近接した一つ国家、国民として考えた場合に、この友好というものは決して単なる援助とかなんとかいうものじゃできませんよ。やはりその相手を両方の国民が信用するということが大事であって、領土問題と援助は別だというけれども、援助にしたって何も向こうから、おれはお金が要るからくれといったって出すべきものじゃないです。両国の友好あるいは平和とかそういうことのために出すのです。ですから別だと言うけれども、しかしともに友好のために必要なんであって、私はこういう機会に十分言うべきことは言うという姿勢が日本の外交にとっては必要である、何もお金を出して文句を言うというわけじゃないのだから。やっぱり外交上のけじめですから、何も自分のポケットマネーで出すんじゃないのだから、国民の税金出すのですから、それも相当巨額のものを出すのですから、やっぱりこのけじめはつけるという姿勢は私は外交当局になきゃいかぬと思いますね。それはまたソ連なんかの場合だって、何かやっぱりこういう機会があれば当然これは主張しなきゃならぬことであると私は思いますよ。ですから、ただ向こうがかわいそうだ、経済が困っている、それから日本の借款がまだ少ない、日本の貿易額が多いなんといっても、これは世界経済全体の中の動きであって、やっぱり援助というものは、同時に私は申し上げたいのは、要するに韓国に対する援助にしても何にしても、国際の平和とかあるいは日本との友好親善関係とかそういうものを進め、また大きく見ると世界全体の平和、繁栄、こういうものにつながる、そういう意味で経済援助等をするのだと思います。一つの国に対する経済援助というものがいろんな意味できちっとした説明がつかないと、つまり、同じような条件の国家がたくさんあるわけですよ、アジアだって。そういう国に、あるところは非常に大きなおもちがいく、あるところはこういう要求しているのにおもちが半分もこない、三分の一もこない。つまり、一億ドルと十億ドルと大分違いますからね、これは。また、十億ドルと四十億ドル、大分違う。そういうものを十分全体的な公正に説明のできる配慮というものを持たずに出すと、これは私は日本の経済援助というものに将来後を引く。あそこにあれだけ出しているじゃないかという主張がやっぱり通ってきますから、私は外交当局それから大蔵当局の配慮なんかもよくわかりますが、これは十分外交当局が配慮をしてもらわぬと困る。出せばいいなんというものじゃないです、その線の問題はね。たとえば、時期を失するととんでもないことになるぞなんというのもおかしな話であって、もっと全体に節度がないといけませんよ。時期を失してとんでもないことになるぞというなら、時期を失したら攻めてくるとでも言うんですかね、私はおかしいと思う、そんなことは。だから、竹島の問題なんかやっぱりきちっと折り目正しく解決しないで、だらだらだらだら援助を出すと、これはやっぱり日本の経済援助にきずをつけるだけじゃなくて、日本の安全のためにだって私は将来よくないというふうに考えています。大臣に伺う必要はもうないですよ。お答えにならなくても結構だけれども、これは重大な問題ですから、ひとつ心に入れておいていただきたいと私は思います。  それから、もう時間がないんですが、大臣もとにかくこれから忙しいそうですからこれでやめますが、今度は国連の軍縮総会が開かれて、鈴木首相も行かれるということです。非常に結構なことだと思う。大臣、ひとつ知っておいていただきたいのは、宗教団体などの反核、平和ということに対する署名が意外に集まっておるということですね。非常にそういう署名が取りやすいということです。ですから日本国民はやっぱり平和を望んでいる。現在の軍拡傾向に対しては批判的である。核戦争は困る、こう思っている。そういう世論というものは国民の底辺に非常に大きく幅広いということだけは、私はひとつ署名簿でもごらんになって十分国民の意思として心に入れておいていただきたいということを申し上げます。もう時間でございますからやめます。
  202. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 以上で三件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  千九百七十八年の船員訓練及び資格証明並び当直基準に関する国際条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  203. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  千九百七十六年の海事債権についての責任制限に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  204. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種保護に関する国際条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  205. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会