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1982-04-28 第96回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十八日(水曜日)    午後三時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大鷹 淑子君     理 事                 伊江 朝雄君                 中村 啓一君                 丸谷 金保君                 宮崎 正義君     委 員                 板垣  正君                 稲嶺 一郎君                 岩崎 純三君                 志村 愛子君                 仲川 幸男君                 堀江 正夫君                目黒今朝次郎君                 山崎  昇君                 立木  洋君                 三治 重信君                 田  英夫君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        外 務 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        北方対策本部審        議官       橋本  豊君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       松田 慶文君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省条約局長  栗山 尚一君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        防衛庁防衛局運        用第一課長    萩  次郎君        防衛施設庁施設        部施設対策第二        課長       杉本 康治君        外務省国際連合        局審議官     小宅 庸夫君        海上保安庁警備        救難部救難課長  藤原 康夫君        自治省行政局振        興課長      浜田 一成君     —————————————   本日の会議に付した案件沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (北方領土問題に関する件)  (北方領土問題等解決促進のための特別措  置に関する件)  (北方水域における漁業問題に関する件)  (竹島問題に関する件)  (沖縄の基地問題に関する件)     —————————————
  2. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 丸谷金保

    丸谷金保君 北方領土問題に入る前に、外務大臣に、最初フォークランド諸島の問題についてお伺いをいたしたいと思うのです、緊急にでございますけれども。  きょう昼のニュースで、OAS外相会議が何らかの結論を出す調停案ができかかっているということと、それからヘイグ国務長官調停案をそれぞれイギリスアルゼンチンに提示をしたというふうなことが報道されておるのです。一方で非常に緊迫した状態の中で一方ではそういう和平工作に向けての努力がされておるわけです。これらに対応する日本国政府としての態度がどうも余り明確に報道されておらないという感じがいたしますので、この機会にひとつ大臣からわが国のこの紛争に対する対応の態度というふうなことをまず最初に御説明願いたい。
  4. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 英国南ジョージア島に対して実力行使をされたということで事態を憂慮いたしておるのでございますが、ただいま御指摘のような一方におきましては和平努力が行われておると思うのであります。ただ、いまお尋ねのOECDで何か動きというのは——失礼いたしました。わかりました。ちょっと私聞き違えました。  OASあるいはヘイグ長官、それぞれ活発な動きがあることを承知しておりますが、日本といたしましては四月三日の安保理決議第五〇二号にのっとりまして敵対行為即時停止、そしてアルゼンチン軍の撤退を望んでおるわけであります。そして和平交渉をするように、話し合いをするようにというのが日本の一貫した姿勢でございまして、その点からいたしますならばヘイグ長官OASにおけるそういう話し合いのための行動あるいは協議というものについては大きく期待するものでございまして、フォークランドに対して実力行使の行われるような事態が避けられまして、速やかな和平打開の行われることを日本としては希望するものでございます。
  5. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の質問の仕方が間接的だったのでそういう御答弁になると思うのだが、実はちょうど日本北方領土問題、これと当初における経緯というのはきわめて似ているのじゃないかというように思うのです。それで、そういう角度からの日本としての基本的な態度どうなんだということをお聞きしたかったのです。  と申しますのは、北方領土に対しましてもソ連は上陸すると同時にどんどんと日本の在島住民日本へ送り返してしまっております。フォークランド諸島においても、話は古くなりますけれども、同じように当時アルゼンチン国籍の島の人々を本国の方へ送り返したというような経緯は、全く同じような、時間差を除けば実は発生の仕方としてはきわめてよく似ているのじゃないか。そういうことを踏まえて北方領土返還促進交渉し続けるわが国としてのこの紛争に対する基本的な態度、これが明確でない。国際機関決議に基づいてということはわかりますが、そのことと別に私はこれ北方領土ときわめて類似する案件というものに対するわが国の対応する態度、これが明確になってない、こう申し上げておりますので、その点について外務大臣からひとつはっきりした御答弁をお伺いしたい。
  6. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいまおっしゃるような見方も私理解ができますが、ただ日本としての北方領土、これは一度も他国の領域になったことのない固有の領土である、これはもうだれも否定することができない事実だと思うのであります。遺憾ながら第二次大戦の終末におけるソ連軍の侵略ということから北方領土の問題が起きておるのでありますが、フォークランドの場合は英国アルゼンチンとも領土主権主張して今日に至っておる、そういうことで一番の基本のところが違っておると思うのであります。  ですから、日本北方四島につきましてはあくまでも返還を求める、どういう事態があってもそのことは日ソ両国の間の安定的な関係を得るためには最前提であるとして努力をしておるわけであります。そしてその上に、ここでもう一つ違いますことは、日本国際紛争戦争手段に訴えないということを憲法で約束しておりますので、どんなことがあっても話し合いでいかなければならない、そのことに徹底をしておるわけであります。  フォークランドにおきましては残念ながら実力行使がまずアルゼンチン側から行われたということで、安保理事会構成員理事国である日本も、この理事会における決議について先ほど申し上げたような即時撤兵、それから話し合いによる解決というその決議に賛成をして本日に至りました。またその決議に基づく日本政府態度を明らかにしておるわけであります。しかも両国にそれぞれ日本政府としては折から調停努力をされておるヘイグ国務長官のその調停に謙虚に応ずるようにということも言っておるような次第でございまして、現在の日本立場からいたしまして、かかる主張をする立場をとっておるということで私は日本姿勢ははっきりしておるものと思うのであります。
  7. 丸谷金保

    丸谷金保君 アルゼンチン国際紛争に対する実力行使に対しての国連安保理決議日本も同意しているということ、そのことは、それ私はお伺いしていることではないのです。  そのことと、それからフォークランド諸島はもともと両方の国が領有権主張をしたのでなくて、当初はスペイン領土だったということでございまして、イギリスも決してもともと領有権を持っていなかったのです。そこへ実力イギリスが入っていってアルゼンチンスペイン系統人たちを、全部住民を出してしまって、イギリスから一つずつ入れた、この経緯はきわめて似ているのではないか。どうですか、その点については。
  8. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) ただいま御指摘のように、確かにアルゼンチンスペインからの権利を継承した、これはアルゼンチン主張でございます。英国英国なりに十八世紀に自分たちが先占し、あそこにそれなりの地歩を占めておった、これをやはり領有権主張の根拠にいたしておるわけでございます。したがいまして、わが国といたしましては、こういう第三国間の領有権の問題でございますので、これについては立場を明らかにする立場にないということで一貫してきておるわけでございます。  このことは領有権問題についてのわが方の立場でございますけれども、これと今回の紛争に対する立場というものは違うわけでございまして、これは大臣からお話し申し上げているように、まずアルゼンチン側が武力を行使したということはわが国の外交の基本姿勢から見ても容認できるところでないということでああいう立場をとっているわけでございます。  なお、その領有権の方の問題、先生の御指摘の点は確かに表面的に類似しているようなところもあるいはあろうかと思うのでございますが、これも大臣が御指摘申し上げましたように、本質的に違うところ、これは日本北方領土というものは疑いもなく常に日本領土でありかつて外国の領土であったところでない、これが私ども主張基本でございまして、これをやはり自信を持って維持していく、ほかに例を求めるというようなことよりもその方が重要ではないかと思うわけでございます。
  9. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、かつて他国に属したことがないという北方領土というのは、地域はどこまでが属したことがないのですか。
  10. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 一八五五年の日魯通好条約、一八七五年の樺太千島交換条約に明記されておりますとおり、日本と当時のロシア帝国との境は得撫島と択捉島の間というふうに定められております。したがいまして、法的にも歴史的にも常に日本領土であったと申しますのは北方四島、詳しくは国後、択捉、歯舞、色丹、この四つを指すものと認識しております。
  11. 丸谷金保

    丸谷金保君 旧ロシアとの交換公文、その場合には、しかしそれから以北の地といえどもそれぞれが入り合っていた樺太千島と交換したのであって、その段階で確実に当時の帝政ロシア領土だということにはなっていた地域ではないのじゃないですか。どうなんです。
  12. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 人種がお互いに混在しておったというような観点からは先生指摘のような事実はあったかと思います。しかしここではやはり二国間の国際条約あるいは国際法という観点から申し上げているわけでございまして、そういう法的な観点からいたしますと、一八五五年の条約以来のことを私どもとしては取り上げて考えている次第でございます。
  13. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっとそのことについては非常に重要な問題だと思うのです。たとえば本委員会においても、参議院の決議として北方領土については四島等という表現をいたしております。これは国会決議です。で、それを明確にいまのように四島だというふうな方針にそうすると政府は転換したのですか、そこのところは。
  14. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 国会決議でございまして、これは国会で採択された決議である、かように認識しております。  各政党におきましてこの北方領土の問題について若干の立場の相違のあるということは了解しております。これ私の推測でございますが、国会決議が採択される過程においてそういう事情が考慮されて、現在見られるような決議表現になったのではないかと推察する次第でございます。
  15. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、そういう国会決議については、それは外務省はいまあずかり知らぬというようなことなんですが、それでよろしいのですか。
  16. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはあくまでも歴史的経緯やあるいは条約上の関係から先ほど局長の方からお答えしたのでありまして、国会決議決議なりにそれはわれわれとして尊重しなければならないと思います。
  17. 丸谷金保

    丸谷金保君 それでは、樺太千島交換条約によって全千島日本領有になっているにもかかわらず、何でサンフランシスコ条約でもって放棄したということで請求権がないということになるのですか。  たとえば、この前に外務省答弁で、サンフランシスコ条約調印をしていないソ連に対しては日本放棄はしておりませんでしょう。放棄の効力ございませんよね。ございませんという答弁も前にいただいております。それなぜソ連との交渉の中でそれが主張できないのですか。
  18. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 従来から申し上げておるところでございますが、先生承知のように千島列島、すなわちクリル諸島につきましては平和条約によって連合国に対して放棄をした。それから国際法的に申し上げますと、もちろん平和条約当事国でないソ連というものはこの条約に基づいて千島列島あるいはクリル諸島に対する権利主張することは条約当事国でございませんから当然できないわけでありますが、領土というものの性質上ある一国に対して放棄をして、放棄をしたものを他の国に対しては自分のものだといって主張することは、これは司法的に申しますと物件的な性格のものと全く同じでございますので、そういう意味平和条約当事国でない国に対しては、これは依然として日本のものであるとかあるいは日本権利があるとかというようなことは、これは国際法的に言って主張できないであろう、これが政府が従来から申し上げているところでございます。
  19. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはおかしいと思うのですよ。たとえば条約調印国に対して放棄した、しかし調印していない国に対しては請求はできますよね。しかし請求をして返してもらってからのその後の処分、これは昔の委任統治とかいろいろな形がありましたけれども、これをどうしますかという二段になる問題じゃないですか。ストレートに結びつく問題じゃないでしょう。いかがですか、それは。
  20. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 先ほど私が申し上げたことの繰り返しになりますが、やはり領有権というものの性格上、これを一定条約に基づきまして放棄した以上、たとえ条約当事国ではなくとも第三国に対して何らかの領有権に基づく権利主張するということは、これは法的にはできないことであろうというふうに私どもは考えております。
  21. 丸谷金保

    丸谷金保君 この問題はちょっと私はそれでは納得できませんけれども、それから国会決議等もございますので、ちょっとそういういまの御答弁ではどうも納得できないということを申し上げておきます。  それから、次に海上保安庁おいでになっていると思うのですが、SAR条約——海上捜査救難に関する国際条約ですね。これに日本も加盟したいということで国会にもそういうことの説明がございましたけれども、現在でもやはりそのような態度に変わりはございませんですか。
  22. 藤原康夫

    説明員藤原康夫君) 海上保安庁といたしましては現在でもそのように考えております。
  23. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省、これまだわが国は未署名なんですが、これはどういうわけなんでしょう。
  24. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) お答えいたします。  この条約趣旨にかんがみまして、私どもといたしましても早い機会にこれを締結することが望ましいと考えている次第ではございます。しかしこの条約の中身、またこの条約締結国となることに伴いまして、どういう国内的な体制整備が要るかという点につきましてなお引き続き関係省庁と目下鋭意検討を重ねているという段階でございまして、この作業を終えてからでないと国会へなかなか提出はできないという現状にございます。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省の方から条約概要とそれから本文とをいただいたのですが、この概要だけじゃちょっとはっきりしないので、本文の中のうちの特にこの問題はどう考えているのかなという点を別に翻訳をさせてみたのですが、多少の訳のニュアンスはおたくの方がこれからおやりになるのと違うと思うのですが、まず第一に、この英文からまだ外務省翻訳してないという答えが実はきのう来て、概要だけしかいただけなかったのですが、これも大分前から問題になっているのにこれまだ英文から日本文への翻訳ができてないのですが、このこと自体一体事務的にどうなっているのかという感じがするのですが、どうなんですか、これ。
  26. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいまお答えいたしましたとおり、わが方といたしましてもこの条約にはいずれ加入をする必要が生じますので、これから翻訳作業に入って一日も早く公定訳といいますかちゃんとした訳文をつくりたいと思っております。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 各省庁とも連絡をとるというし、海上保安庁はもう五十七年度の予算の中でも見てほしいということで具体的な予算要求も出したりしておるわけです。だからもう相当たっているのに、まだ条約翻訳もできていないでどうやって相談していたのですか。そうすると、この原文でおまえたち勝手にそれぞれ省庁翻訳をして検討せいということでこの原文省庁に回していたのですか。どうなんです。
  28. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) すでに海上保安庁におきまして英文条約に基づきまして仮訳をつくってございます。この仮訳に基づきまして関係省庁間での事務的な作業は進んでいるわけでございます。外務省といたしましてもその作業を踏まえて正式の公定訳といいますか、そういうものを今後確定していきたいと思っております。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、ちょっと逆でないかと思うのですよ。条約文原文外務省が持って、こういう条約文だという案文の翻訳外務省がやって海上保安庁なりほかへ回すならわかるのですが、最終的にこれの批准をするなり署名をするということになったら外務省の方が所管でしょう。それをまだ何にもできてない。海上保安庁仮訳やって、それでやっているのだと。そんなばかなことで、この翻訳の違いが途中で出てきたらどうするのです。
  30. 小宅庸夫

    説明員小宅庸夫君) ただいま申し上げましたとおり、関係省庁間の作業といいますのはこの国際条約の正式のテキスト、英文でございますが、こういうものに基づきまして行われております。その作業を行う過程におきまして海上保安庁仮訳というものを参考にしておるわけでございます。そういう作業を経て初めて正式に定訳というものが確定していくというふうにわれわれ考えております。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、海上保安庁の方はおたくからもらったきわめて簡単な要訳よりはやや進んだことでこの条約説明がなされておるのです。しかしそれでも肝心なところがやはりわれわれのところに説明材料として来ないのですよ。来てないので、この本文からあれしてみますとこういう点なんです。  船位通報制度を設ける、こういうことに簡単に書いてありますけれども、内容に入ってみますと、これは捜査救難区域において遭難事故が発生した場合に捜査救護作業を容易にするため船舶の動静に関する最新情報提供する制度なんですね、最新状況を。そうすると常にこの条約に入ると最新状況、いま船がどこにいるのだどこにいるのだということをずっとそれぞれが相互情報提供をしていくということになっているし、保安庁はそういう点での情報提供システム予算化したい、こういうことなんです。で、たまたまこれはイギリスアルゼンチンが加盟しているのですよ、一番早い方に。  それで、私これふっと考えたのですが、宣戦布告のない形のままでいろいろな国籍不明艦潜水艦が出没するというふうな状況になってきたときに、自国の船舶をこういう条約によっていまどこにいるのだということをお互い情報提供をし合うということは一体防衛上できるのか。防衛庁来ておると思うのですが、どうなんですか。困りませんかそれじゃ、防衛庁としては。
  32. 萩次郎

    説明員萩次郎君) ただいまのお話でございますが、まだ正式な訳ではございませんけれども、このSAR条約の六の四の一というところを見てみますと、この船位通報制度というのは「捜索救難目的のために」位置通報するように「加盟国に勧奨する」ということになっておりまして、必ずしも強制的な義務ではないというふうに考えられます。  したがいまして、海軍同士戦闘行為を行っている、あるいは作戦運用を行っているというようなものについての船位通報というのは、ちょっと常識的にはこの中に入ってこないのではないかというふうに考えております。
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは戦争状態であればそういうことが言えるのですよ。しかし戦争状態にない段階で国籍不明の潜水艦なんていうようなことは、シーレーンの対象としてはいろいろ言われておりますわね。そういうときに遭難してから位置をこれは知らせるのじゃないでしょう。遭難しない前に大体の位置相互に知らせ合っておけば、遭難したときにすぐ近くの国が救助活動できるということですわね。ですからこれ遭難してからの問題じゃないのです。  遭難しない前に、たとえば日本なら日本の船がいまどこへどんなのが走っている、全部をそれぞれ条約加盟国の間で通知しているというふうなことが——いや、いいんですよ、防衛庁はそれは差し支えないということであれば。いいのですか、それで。
  34. 萩次郎

    説明員萩次郎君) そのような場合にはいろいろな形態があると考えられますが、この条約では「捜索救難目的のため」ということでありますので、戦闘がないというのは普通の状態で、たとえばある国の軍艦が救助を求めているというようなことになれば、あるいはそういう特殊な場合には該当することがあるかもしれませんけれども、先ほど先生からいみじくも潜水艦はどうするのだというお話がありましたように、隠密行動を旨とするような軍艦のような場合には、ちょっと事前に位置通報するというようなことはどこの国でも行わないだろうというふうに考えます。
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは潜水艦をどうするのだじゃないですよ。国籍不明の潜水艦によって攻撃を受けて遭難するという場合を言うので、わからないところの海の下にもぐっている潜水艦対象に私質問したのじゃないですよ。それらによって被害を受けたもののことを言っているのですがね。ですから、そういう場合を想定しても攻撃を受けるまではどこにどういうのがいるというお互い通報し合う、そういうことが差し支えないのかということを言っているのです、貨物船を。
  36. 萩次郎

    説明員萩次郎君) 先生の御質問を完全に理解しているかどうかはわかりませんが、この条約は大体平時における一般的な漁船とか商船遭難事故をなるべく被害を少なくしようということであろうと思います。したがいまして、潜水艦民間商船攻撃された場合とかそういうような事態はこの条約対象にするにはちょっと無理があろうかというふうに考えております。
  37. 丸谷金保

    丸谷金保君 今回のフォークランド諸島紛争状態は、これは外務省、どこら辺に入りますか。まだ宣戦布告していないから戦時とは言えないし、平時とも言えないですわね。
  38. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 先生の御質問趣旨は必ずしも十分理解できたかどうかわかりませんが、アルゼンチンイギリスとの間で全面的な法的な意味戦争状態になっているというふうには一般的には認識されておりませんし、それから当事国同士もそういう認識ではないと思います。  ただ、御承知のように、一定水域につきましては、たとえばイギリスの側で申し上げれば排他水域というものをフォークランド島を中心に二百海里の範囲で設定いたしまして、その中に入ってくるアルゼンチン軍艦に対してはイギリスとしては実力を行使するという可能性があるということを宣言しておりますが、他方これはあくまでもアルゼンチン軍艦のみを対象としたものでございまして、一般の商船その他あるいは第三国船舶というものは一切対象から外しておりますので、そういう意味ではいわゆる伝統的な国際法、戦時法規で申し上げます戦争水域というようなものではないというふうに認識しております。
  39. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、いまの北方四島と外務省は言っているのですが、私たちは北方四島等ですけれども、これらに対して明らかに日本の固有の領土に対するソ連実力行使が行われてやはり排除されますわね。これらは一体どういうことなんですか。  これはやっぱりけしからぬということで外務省は抗議をいたしておると思うのですが、そしてそれで、そういう立場外務省は今度外交青書の中でも、わが国外交の主要課題の一つである日ソ関係の安定化のために「日ソ間の最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結すること」が基本的な課題、こういうことをうたっております。  こういう北方領土問題を解決して平和条約を結ぶのが基本的な課題だと言っておりながら、北方領土解決促進について一体どれだけ努力しているかということになるのですが、一体これは本当に解決促進のためにどれだけやっているのですか。何かちっとも解決促進というものが見えてこないのですが。
  40. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 外交青書——「わが外交の近況」のところで書いてあります表現では「ソ連側は依然この問題の解決促進に誠意ある態度を示さなかった。」、こういうことでございます。先生御案内のとおり、本件に関するソ連側の主張はほぼ一貫して領土問題は解決済みあるいは領土問題は存在しない、こういう態度でございます。  それに対して私どもは、一九五六年の日ソ共同宣言、さらに近くは一九七三年の当時の田中総理訪ソの際の共同声明に基づきまして、戦後未解決に残されている諸問題、それは当然領土問題でございますが、これを解決して平和条約交渉を進めなければならない、こういうことを一貫して先方に申し入れているわけでございます。  日本側の問題解決促進努力という点でございますが、やはりまず第一には国論の統一ということ、これがまず一番緊要なことではないかと思っております。そのために北方領土問題に関するいろいろな知識啓発あるいは国民の理解促進のために諸種の広報活動、講演会その他を行っております。  第二に、国際的な理解の促進という観点から国連総会における一般討論の演説等にこの問題を取り上げまして国際的な理解の促進に努めております。同時に諸種の文献を翻訳いたしまして諸外国にこれを配るということで、外国の世論の啓発ということも進めております。  しかし根本はあくまでも二国間の交渉ということでございますので、これは機会あるごとにわが方の立場を繰り返し繰り返しソ連側に申し入れていくこと、これも先生御案内のとおりでございます。一番近くの事例といたしましては、去る一月の二十日から二十二日まで行われました日ソ第二回の事務レベル協議におきましてこの点を再び強くソ連側に申し入れている、かように日本側としては本件の解決のために絶えず全力を傾注している次第でございます。
  41. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういうことで促進のために一生懸命やっているとおっしゃるのですよね。それから世論の喚起等についても五十七年度にも三千四百八十九万ですか、期成同盟に対する補助金を計上して民間の世論形成にも努めておりますわね。  ところが率直に言ってどうも外務省のそのやり方が余りぱっとしないので、いまここではやっているやっていると言うけれども、それでたまりかねてだと思うのですよ。今度議員立法で北方領土問題等解決促進のための特別措置法を出そう、こういう動きがあることを御存じだと思うのです。これ鈴木総理が根室地域に行ったときには、むしろ地域が非常に困っていることの地域振興のためにもう少し積極的に国も協力しよう、こうおっしゃっていたのですが、ところがそういう法案が議員立法として出されようとしている状況の中で、解決促進のための特別立法というような形になってきているのです。  これはやっぱり外務省に任しておいたのじゃ世論形成から何からどうもうまくない、こういうことになるのじゃないですか。どうなんですか。どういう受けとめ方をしていますか。
  42. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 北方領土隣接地域の振興のために議員立法の動きがあるということはよく存じております。また外務省といたしましても、できる限りこの動きには協力したいという基本的な姿勢でございます。  しかしながら、隣接地域の振興ということになりますと、これは外務省の所管事項に限るものではなく、広く関係所管庁の所管事項にもまたがるものであろうかと思っております。議員立法の動きが出てきたというのもまさにそういう観点からであろうかと思いますが、外務省としてはその所管事項に関する範囲内においてできる限りこれに御協力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 丸谷金保

    丸谷金保君 あなた上手に答弁すりかえるけれども、そうでないのだよ。だから地域振興のためにならそれは結構だと、僕もそう思うのですよ。ところがそうでなくて、法律の表題そのものが北方領土問題等解決促進のための特別措置に対する法律案。解決促進のために努力する所管官庁は外務省でないのですか。どうなんです。
  44. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 領土問題は、繰り返しになりますが、最終的には日ソの外交交渉によって解決されるべきものでございます。そういう意味においてはこの問題の解決に最も重大な責任を担っておるのは外務省であろうかと考えております。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、そういう外交交渉を成功に導くためにはやはり国内世論の統一あるいは国際世論の理解というようなことが必要でございまして、こういう問題につきましては別に御質問をすりかえているわけではなく、外務省だけではできかねる面もある、こういう点についてほかの所管庁の御協力を得たい、このように私どもは理解しております。
  45. 丸谷金保

    丸谷金保君 だから、ほかのいろいろなことのためにというのはわかるの。ただし大上段に解決促進のための特別立法ということになると、やっぱり外務省は一方では復帰期成同盟に対して相当の補助金もしている。当然そういう世論喚起とかそういうふうなことについても外務省が主たる柱にならなければならないと思うのです。それをいまの話を聞いていると、いや、ほかの方も応援してくれるの結構だ、こういう感じで、どうもここのところぴんとこないのですよ。それでいいのかなと。外務省はそれでいいということなんですね。  こういう議員立法の大上段——地域振興でないのですよ、解決促進。外交交渉によって当然外務省がやらなければならないものです、北方領土解決促進と言ったら。それが屋上屋を重ねることにならないのか。それから外務省はそれの外交交渉の当面の主管官庁でないのかということなんです。
  46. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 外務省領土返還に対しての最も重要な立場を持っておることは言うまでもございません。  今回議員の間で丸谷委員のおっしゃるような解決促進のための何か特別措置法と申しましょうか、そういう立法の動きがあるということにつきましては、少なくとも私としてはこれは非常にバックアップをしていただき御激励をちょうだいしておるものである、一層領土問題解決のために努力をしなければならない、そのように受けとめておるわけでありますが、先ほどから局長の方の御答弁にもございますように、内容としてはこの返還促進あるいは解決促進の上にその実現までの間の何か特別措置あるいは地域振興というようなものが含まれておる中で取り上げられておるのではないか、このように思うのであります。そうでありますと、その範囲については関係各省の御協力もちょうだいをする、しかし基本的な外交交渉についての責任はそれは私どもが痛感しておる次第でございます。
  47. 丸谷金保

    丸谷金保君 解決促進についての主たる任務を持っているのは外務省だけれども、それに付随して現在地域振興その他いろいろな問題が持ち上がってきている、それはそれぞれの役所がそれぞれの立場でバックアップをしてくれるのは結構だ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  48. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そのとおりでございます。
  49. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、まだ出てない法案ですから、この問題余り突っ込んでも、いずれ法案が出てきたところでやることなので、まあその程度にしておきたいと思うのです。  思うのですが、一つ気がかりなのは、この種の問題の場合に北方領土からの島民の数の確認ということが大変むずかしい問題で、従来は何か居住者連盟ですかというふうなものを通じて吸い上げた数字を使っているようです。これは漁業者に対する特別交付金のときにもそういう数字で一万二千六百十七名というふうな人数がはじき出されておりますが、自治省としてはこういうことについて、こういう何か外部の団体の調査したものを援用して国の資金が使われるということでなくて、何かもう少しぴしっとしたものを整備していく必要はないのですか、何事につけても。
  50. 浜田一成

    説明員(浜田一成君) お答えいたします。  現在、いま御指摘のありましたように、漁業関係の援護等につきましては北方領土問題対策協会の方で在島事実の確認等を行っているようでございますが、全般的な問題として公的に把握する方法があるかというお尋ねでございますが、自治省が所管いたしております住民基本台帳の制度は昭和四十二年に制定施行されたわけでございます。またそれの前身でございますところの住民登録法は、これは当時法務省の所管でございますが、二十七年に施行されているわけでございまして、したがいましてこれらの制度によっては旧島民の戦前の在島事実の確認というのはできないわけでございます。  で、今後の取り扱いといたしましてどの程度その確認が必要なのか、あるいはどういう方式で確認をしたらいいのかという問題につきましては、それぞれの所管の取り扱いの問題になってまいると思いますので、その辺の所管のところで御検討いただくようにお願いしたいと思っております。
  51. 丸谷金保

    丸谷金保君 この問題は所管官庁などもどうもはっきりしないのですが、まだこれから論議される法案なので、この問題はいまはそう突っ込んでもあれですが、ただちょっとそういう点だけはやはり事前にもう整備しておく必要があるのじゃないか。漁業の問題だけでなくて、今度基金を積むというふうなことになればいろいろな問題も出てきますから、あらかじめやっぱり自治省としてはそういう準備をきちっと行う必要があると思うのです。  それで、最後に実はこの促進なんですが、今度の議員立法でも促進とうたっているのです。解決促進。それから外務省解決促進のために努力している、それからそれぞれ補助金等を出して期成同盟に対する世論喚起、こういうふうなこともやっている。いろいろやっているのですが、促進のために私は非常に大事な視点が一つ落ちていると思うのです。  実は外務大臣ね、いまのこの国際情勢の中で日米安保がありますでしょう。日米安保がある形の中ですと、あれをもし日本返還した場合、あそこに沖繩並みの軍事基地をアメリカ空軍がつくるというふうなことになってもできますわね。どうなんですか。できますでしょう。
  52. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 日ソ間の当面の課題はやはりいかにしてこの北方四島を日本に復帰させるかという問題でございます。その北方四島の復帰の後にこれをどうするかというような話をするのは時期尚早であろうかと思っております。
  53. 丸谷金保

    丸谷金保君 しかし現況のままでもし復帰になれば、それはできるのでしょうと聞いているのです。現行の日本の国内法、それから日米安保条約等から言えばできないのですか、できるのですか。
  54. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 理論的にはできます。
  55. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣ね、いまお聞きになったように、理論的には、法的にはできるのです、そういうことがやろうと思えば。そういう状態をそういう状態のままにしておいて復帰促進復帰促進とどんなに言ったって、それはなかなか進まない。私はやっぱりここら辺にもわが国として本当に返してもらいたいというための姿勢としてはもう一歩踏み込まないと、これはもう本当に口頭禅になってしまいまして、言っているだけの話。  で、どうですか。外務大臣ね、ひとつ北方領土返してくれ、返した場合にはここだけは非武装地帯にするというくらいの大胆な提言、日本としてできないですか。こういうものがなければ促進にならないですよ。沖繩並みの基地でもできるというような状態のまま返してくれ返してくれ。たてまえとしてはわかるけれども、本音かということになりませんか。それでなければ促進促進といろいろな形でもって言ったって、何も促進する具体的な一歩を踏み出したそういう提言になってないじゃないですか。いかがですか。
  56. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいまの丸谷委員の御意見は御意見として承っておきたいと思います。  また、できるかできないかということについては、それは地位協定なり何なり結べばできるわけでありますが、しかし領土返還につきまして相手側は解決済みとか、領土問題はない、こういう姿勢をとっておる現況におきまして、私どもが戻ったらどうかというような、そういういわば条件つきの話ですね。これは丸谷委員のおっしゃるように、もう一歩突っ込んでいろいろ考えられるのではないか、こういう御提言かと思うのでありますが、私はこの領土問題解決の上には、日ソ共同宣言、あるいは一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明、そういうものを踏まえまして、やはり四つに組んでの交渉をしていく、それが最も妥当な姿勢ではないか、しかしいまおっしゃったようなことにつきましては御意見として拝聴しておきたいと思います。
  57. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣ね、四つに組んで交渉していきたいと言うけれども、仕切りだけでちっとも組まないのですよね。だから、たてまえとして促進促進ということは言うし、いろいろな形で、これたくさん促進促進と言っております。だけれども四つに組むようなところまでいけない。いつも仕切りの段階だけで、仕切り直しばかりしておって、踏み込んでいかなきゃ仕切りだけでは相撲にならないですわ。だから本気にやる気があるというふうに私はどうも感じられないのですよ。たてまえとしてはこれは言っていく、それも必要ですよ。百五十年間がんばってきて、いまでもああいう実力行使がいいとは思いませんけれど、実力行使のいい悪いは別にして、領土権の主張というのはそういうものだと思います。  しかし現実のいまの国際社会の中で、だれが考えたって、返した、沖繩並みの米軍基地も理論的にはできるのだという日本とアメリカとの条約あるいは国内法、そういうふうなものをそのままにしておいて本気で返せと。返ると思って言っているという感じがしないのですが、これは感じの問題だから、いや、それでもいまのようにやっていけば、いつかは仕切りから本相撲になって返るのだと、別なそれはファクターが出てきたら別ですが、現状の段階でやっぱり一歩踏み込む、日本も本気だな、こういうものを外務大臣やっぱり真剣に考えていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。それを聞いて終わりにしたいと思いますので。
  58. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほども申し上げましたように、御意見は私もよく承って参考にしたいと思います。  いま私が一番期待しておりますのは、本年一月の実務者レベルの協議におきましても、あるいは魚本大使が帰国するに際しましても、日本側が次はグロムイコ外相が日本に来て外相会議を持つべきではないかということにつきまして実務者レベルのときには首脳部と相談をする、魚本大使に対してはまだ結論を得ておらない、こういうことで、昨年の九月の国連総会で当時の園田外務大臣外相会議を再開しようと言ったことが懸案に残っております。で、外相会議が実現すればその際皆様の意を体して私としてのベストを尽くしたい、こういう心境にあることをつけ加えさせていただきます。
  59. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いま大臣がお答えになられました大臣の今後のソ連に対する日ソ間における考え方の一つの打開方法といいますか、何とかして打開していこうというお話のようにも受けとめましたのですが、大体何といいましても大臣もおっしゃるように、わが国の外交の主要な課題の一つはどうしても日ソ関係であると言われ、そしてまたそれを改善していくのだと言われて、改善されなければならないというふうにおっしゃっておられるわけです。  いまのお話を伺いましても何だか現状は非常に冷却化しているというふうにしか思えないわけですが、こういう中で、いまいろいろ一つの考え方、四つに組んでの考え方というものをお述べになりましたけれども、私は確認の意味でもう一度大臣のこの打開をどうしていくのかという、その一点をまず最初にお伺いをしてみたいと思います。
  60. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先般漁業交渉が比較的スムーズに進みまして、本日サケ・マスの議定書の国会での御承認をちょうだいしましたが、現在ソ連との間では非常に困難な問題が幾多ございますが、このような実務的な関係におきましては互恵の立場で物事が進んでおるわけでございます。  ただ、私どもとして忘れてはならないことは、アフガニスタン問題、ポーランド問題によりまして、自由と民主主義を共有し価値観を共有する立場の諸国では現在ソ連に自制を求めておる、これは一つの問題だと思うのです。そして日本としては戦後終始一貫領土問題というものを未解決で持っておる。日ソ間の真の安定的な関係を結ぶという上におきましては、これらの問題が解決されて初めて真の友好親善関係にいけるものではないか。しかしそういう非常にむずかしい中にあっても漁業問題のようなことについては対話をしておる。この米ソの大きな対立の中におきましてもなお中距離核戦力の削減交渉が行われる、近くはSTARTの交渉もやろう、こういうさなかでありますので、そういう対話のことも念頭に置きながら、しかし基本的に最も重要な領土問題については粘り強くこれが実現のために交渉をしなければならないというのが現在の私の立場でございます。
  61. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大臣のいまの何としても少しでも粘り強くやっていこうということの所信にも明らかなように、二月十七日の当委員会北方領土に関する問題について所信を述べられた。そのさきに政府演説で一月二十五日でしたか、「わが国の重要な隣国であるソ連との関係につきましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立するため、今後ともあらゆる機会をとらえてソ連側と粘り強く話し合ってまいる所存であります。」と述べておられます。いま御答弁なさいましたその漁業交渉の問題につきましても、このあらゆるものの中の一つだと思うのでありますが、またそのほか文化交流とかいろいろな面についてもそのあらゆるものの一つになっているのじゃないかと思います。  今回民間レベルではありますけれども、日ソ円卓会議に来日したグジェンコ海運相、この方が見えましたときに、私は大臣がお会いされればよかったのじゃなかろうか、そういうようなことが先ほどの御答弁にありました互恵というような面からも将来の日本ソ連との友好を深めていける一つの道ではなかったのか、こういうふうにも思うわけですが、この辺のことについてお考えをお伺いしておきたいと思います。
  62. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日ソ円卓会議が民間レベルで持たれまして、グジェンコ海運大臣を初めとして非常に多数の代表団の方がお出かけになったとのことであります。民間レベルとはいいながら関係諸団体有力な方々が代表であり、また国会議員の方でそれぞれの責任者になられておりましたので、この円卓会議における対話というものはそれなりの評価もし関心を持っておった次第でございます。  私が会ったらよかったのではないか、それはそのように御意見として受けとめるわけでありますが、現在の政府立場といたしましては、ポーランド問題、アフガニスタン問題以来のソ連に対しての対ソ措置の中に、政府間レベルにおける要人の行き来は遠慮をしておるというようなことで私も遠慮を申し上げておるわけでありますが、昨日この円卓会議に御出席の代表の皆さんがお見えになりまして詳細御報告を受け、日ソ両国の上にこの対話が有益であったという印象を私は持った次第でございます。
  63. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いま大臣の昨日代表の方々とお会いされて日ソ関係改善には評価されたということで、私も同感でございます。  それで、確かに領土問題等には言及されておられませんでしたけれども、昨日お会いになりましたのですから皆様から共同コミュニケの問題なんかもお聞きになったと思いますが、この辺の点につきまして大臣はどう受けとめておられますか。  その共同コミュニケの中に「両国政府がただちにテーブルにつき、国際関係上すでに広く認められている政治体制の異なる国家間の原則を確立し、両国平和条約の締結に向かって前進することに役立つ協議を開始することを呼びかける」と、こういうふうな現状打開の面も発表されておるようであります。こうした問題点もきのうは出たのじゃないかと思いますが、これらの点なんかも大変大事なことじゃなかろうか、こう思うわけですが、こういう点につきましてもどんなふうにお考えになっておられますか。
  64. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 発表されました共同コミュニケの中には確かに先生指摘のとおり双方がテーブルを挟んで話し合いをしたいということが書いてございます。それ自体は非常に結構なんでございますが、テーブルを挟んで話し合う目的、その中身といたしまして、日ソ間に基本原則あるいは政治原則のようなものをつくってはどうか、あるいは善隣協力条約を考えてはどうか、さらには平和条約という言葉もございますが、こういうことが目的として挙げられているわけでございます。  そのうちの基本原則につきましては、確かにソ連はアメリカその他の諸国と基本原則という名前の文書を交わしておることは私どもも存じておりますが、日ソ間にはすでに先般来しばしば話が出ております一九五六年の共同宣言がございます。一九七三年の共同声明もございます。こういうものが現在の日ソ関係基本原則を構成しているのであって、いまさら改めて新しい基本原則をつくる必要はない、むしろ必要なことは五六年及び七三年のそういう基本文——共同宣言、共同声明に立ち返ることであるというふうに私どもは考えております。  また、善隣協力条約につきましては、善隣協力の関係を進めたいという気持ちは日本側においてもソ連に負けず劣らずあるわけでございますが、一方において領土問題は解決済み、あるいは存在しない、こういうことを言っておいて、それで善隣協力条約ということであれば、これは明らかに領土問題を棚上げにして協力関係の枠組みをつくろうということであり、これは過去二十六年間日本が一貫して主張してきた立場、すなわち北方領土の問題を解決して平和条約をつくるということと背馳するものではないか、かように考えているわけでございます。  最後に、平和条約という言葉も出てはおりますが、そこには領土問題を解決してという表現がございません。そのコミュニケ全体を通じまして領土問題という表現がどこにも出てきておらない。そこから見まするに、やはり基本的な考え方は領土問題は解決済みというソ連主張がそこににじみ出ているのじゃないか、そういう前提のもとでは、やはり平和条約というようなところに、日本側の考えている平和条約とは違うわけでございますからすぐには乗れない、このように判断いたしております。
  65. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私も日本立場というものは、はっきりいま御説明がありましたことはよく存じているつもりです。  で、その上で何とかして玄関に入ったら奥へ入っていって話し合いを深めていこう、いまもう玄関まで入ってきていて、そしてその奥に入っていって、これからいよいよ本物の話をしようじゃないかというのを、そういうふうな短絡的な言葉でそう言ってみれば、このときに新聞社の記者の方々と会見をやりましたね。そのときのことも御存じだと思うのですが、記者の方の質問の中に、北方領土を軍事力増強以前の状態に引き戻す原状回復を行うべきではないかという質問に対して、日ソ間の相互信頼措置の強化を含めて解決することができると思う、こういうふうに言われているわけなんですが、これはいろいろとり方あると思うのですが、私どもはいま局長答弁なさいましたことはよく承知の上でこのことを聞いているわけですが、これはどういうふうに受けとめられましたですか。日ソ間の相互信頼措置の強化を含めて解決することができると思うということ、この点についての御見解をお伺いしたいのですが。
  66. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 信頼醸成措置あるいは信頼強化措置はすでに昨年二月の共産党二十六回大会の際にブレジネフ書記長から提案されたものでございまして、これが去る三月タシケントにおける同書記長の発言で再確認された。それを受けて恐らくグジェンコ代表が言われたのだろうと思っております。  ただ、この極東信頼醸成措置と申しますのは、そういうことで従来ソ連が言っていたことの繰り返しであるという事実が一方にございますし、さらにソ連がわが北方四島において軍事構築を進めておる、極東にはSS20の配備を初め極東の軍備強化を続けておる、さらにアジア地域ではアフガニスタンに侵攻する、こういう情勢のもとでは、幾ら信頼醸成措置というかけ声をかけても本当にそれを進める基盤はないのではないかと私どもは判断しているわけです。やはり必要なことはまずソ連行動をもって示すこと、それが先に立たない限り信頼醸成の話は進めても意味がない、むしろ進める条件がない、かように判断しているわけでございます。  原状回復ということは恐らく北方四島から兵を引くということでございましょうが、それと信頼醸成措置を結びつけるということは実は本末転倒ではないか、やはりソ連側が行動でそういう態度を示すということ、それが先になっていろいろな話し合いがあるいは進められる条件が出てくるかもしれない、まずソ連行動をもって誠意を示してほしい、こういうのが私どもの受けとめ方でございます。
  67. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 一貫した行き方というものは当然そこに根をおろしていかなければならないと思うのですけれども、何とかして北方領土返還するための手だてとして、向こうのソ連側の方の考えをこちらに向けるようにどこまでも粘り強く呼びかけ続けていかなければ、これはこちら側がそうなんだからと決めておるだけじゃなくて、常に呼びかけ常に呼びかけ、大臣が所信表明でおっしゃった「あらゆる」というのはもろもろのこと、一切のいろいろな手だてでやっていかなければならないという上から、私はその線ははっきりしていながらやはりその線を戻すために話し合いを進めていくということが、やはり向こうが来なければこっちは頑として応じないのだというのじゃなくて、少しでも話し合いをしていかなければならないのじゃないか、こういうふうに思うのです。  そういうわけで私は申し上げているわけですが、また御答弁をお願いしたいということを言えば同じ答えが返ってくるのじゃなかろうかと思いますが、大臣いかがですか。
  68. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日ソ円卓会議の対話というものは、分科会あるいは本会議を通じて従来と多少変わった雰囲気あるいは相互の言動について従来とはニュアンスの違うものもあるように受けとめております。  そこで、なおよく円卓会議の模様も検討し参考にしたいと思っておりますが、こういうような対話というものがわれわれの目指す領土問題の解決、あるいは現在のアフガニスタン、ポーランド問題に対してのソ連行動が自制されるというようなことが、これが一つずつ実っていくということによりまして、終局的には何としても領土問題の解決の上に真の友好親善関係を樹立したいということを目指しておるわけでございます。
  69. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 ちょっと立場を変えて、今度は互恵という意味も含めてでございますが、租税条約締結交渉の再開についてお伺いをしたいのです。  私が申し上げるまでもなく、ソ連政府わが国は五十五年十月にモスクワで第一回の締結交渉が行われていましたのですが、いまは中断している。それで租税条約交渉をできるだけ早く再開して、最終的には締結に入りたいという要請をソ連の方からしているように報道されているわけでありますが、この中断している現状の理由ということの説明、この辺からひとつ入っていきたいと思いますが、この点についてよろしく。
  70. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) ただいま先生指摘のとおり、第一回の交渉は一九八〇年の秋にソ連で行いました。日ソ両国非常に租税体系も違っておりますので、第一回の交渉お互い制度、考え方、そういうものを知り合うということにもっぱら中心が置かれたわけでございます。  この検討の結果を踏まえまして、第二回目の会合をできるだけ早い時期に進めたいと思って、現在関係省庁、特に大蔵省、外務省の間で協議をとり進めております。したがいまして交渉が中断されているという表現は必ずしも妥当ではないので、いま第二回の交渉の準備中である、このように御理解いただきたいと思っております。  いつ始めるかということにつきましては、双方の外交経路を通じてその時期を打ち合わせるということになっております。準備整い次第できるだけ早い機会に第二回の交渉を進めたい、かように考えております。
  71. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 確かにわが国ではチェコ、ルーマニアなど社会主義の国を含めて三十四カ国と租税条約を結んでいるわけでありますが、大体これらの大半のところはOECDが公表している条約に従って、ソ連も米国とは一九七三年に租税条約を締結して、西側とは余りしないような慎重な態度をとっておったのが最近になって積極的になってきたということで、昨年の十月はスウェーデン、十一月には西ドイツというふうに言われておりまして、大体西ドイツもそのOECDの条約に準じて決められたということなんで、ソ連の他の西欧諸国ともだんだん順次に締結をしていこうという中において、いま御答弁がありましたようにいま準備中で、できれば早い時期にという御答弁がありましたが、そうしませんとこれはソ連の方の西側諸国との条約締結がどんどん進んでいきますと、わが国の在留邦人に対してどうしても課税をしていかなければならないというような問題点なんかが起きてくると思うのです。  こういうことから考えて、大体現在わが国には、報道されているところによりますとモスクワに二百五十人の在留邦人がおるということです。そうしますと、在留邦人に対する二重課税、この二重課税を防止するという意味においてもこれは早く進めなければならないというふうに私は思うのですが、こういう点についてはどんなふうにとらえておられますか。
  72. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 御指摘のとおり最近ソ連は西側諸国とこの種の条約の締結交渉を進めております。現在私の承知しているところでは、フランス、イギリス交渉中であるというふうにも聞いております。  先ほど申し上げましたとおり、これは非常に実務的あるいは専門的な協定ではございますが、これが締結されることによって相互の在留邦人の所得あるいは課税という問題について適当な保護が与えられることになりますし、お互いの在留邦人の経済的な安定という面には資するところあると考えております。このような観点から、繰り返しになりますが、できるだけ早くこの交渉を再開してその妥結を急ぐよう外務省といたしましては積極的前向きに取り組んでいきたい、かように考えております。
  73. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これらも改善していく一つの行き方だとも思います。  もう一つ、ソ連に対する金融制裁といいますか、先般鈴木総理と米国のブッシュ米副大統領とたしかこの件で会談がなされて、パリで開かれる六月のサミットでこれを提唱していこうというような話し合いがなされたということなんでございますが、こういうことはまた違った意味で一つの経済制裁といいますか、そういう強い議論の反発を活発化させてくるのじゃないか、こう思うわけです。  この辺、わが国はアメリカ、西ドイツなど西側各国がソ連に対するOECDガイドラインの区分、これまでの中所得を今度は高所得国に扱いをするということで、ソ連向けの輸出信用金利を〇・二五%から〇・五%引き上げるという金融制裁強化について合意をして、わが国も現行の九・二五%を〇・二五%から〇・五%引き上げて、九・五〇%から九・七五%にするという考えを固めたようだと承っておりますが、これらについての日本側の考えというか、その点と、先ほど申し上げました二点について御答弁を願いたいと思います。
  74. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 昨年のオタワ・サミットにおきまして、その際に採択されたオタワ宣言の中に含まれているとおり、今後の東西経済関係を進めるに当たっては西側の安全保障の問題についての考慮と関連させて考えるべきである、こういう表現がございます。また最近はポーランドの事態その他を踏まえまして、アメリカのバックレー国務次官が西ヨーロッパを訪問いたしまして、ソ連に対する信用供与を抑制することについて意見を交換した、こういう事実がございます。  アメリカの考え方は、結局西側、特にアメリカを中心とする西側がソ連に金融的な援助を与えることによってソ連の軍備増強を助けているのじゃないか、さらに言えば西側の納税者の負担においてソ連を助けている、ソ連の軍備増強を助けている、こういう事態はやはり回避すべきではないかということが発想の根源にあるというふうに考えております。こういうアメリカの考え方はそれなりに理解ができるところでございます。しかしながらこの問題について西側あるいはOECD諸国の間で確たる結論が得られたという事実はございません。  次回のベルサイユ・サミットにおきましても恐らく対ソ信用供与の問題は議論されると思いますが、これはあくまでも推測でございますが、それは議論されるといたしましても、前回のオタワ・サミットの考え方のフォローアップと申しますか、その延長線上において行われるものである、かように認識しております。  他方OECD経済協力開発機構の場におきまして、ガイドラインの問題をめぐってソ連を従来の中間所得国という分類から経済的な理由に基づいて高所得国の分類に上げてはどうかという意見がございます。ソ連がそういうふうにカテゴリーを一段上に位させられることによって、西側諸国からの信用供与の利率はただいま先生がお示しになったように若干上がる結果になります。しかし、この点につきましても現在までのところOECDの場において合意ができた、全会一致の合意ができたという事実はございません。したがってソ連を高所得国に位置づけて、その結果として利率を高めるということについては結論はまだ出ていない状況と、かように承知しております。
  75. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これは大変な論議になってくると思いますが、大体いまソ連の方の東欧圏の対西側債務の現況というものは相当なもので、果たしてその債務がどうなるのかなという心配もあるのじゃなかろうかと私は思うのですが、この現況について、時間もございませんので結論的に大体この一、二年のところをとらえて、現在どのぐらいの債務があるか、この辺のことを御説明願いたいと思います。
  76. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 非常に大きな御質問でございますし、若干いいかげんなことは申し上げたくないと思います。同時に各国で握っている情報が必ずしも公表された情報ではないということもありますので、もしお許しいただければ後刻できるだけ正確な数字を集めて御報告させていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。
  77. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 結構です。じゃこの問題もっと私——どうも外務委員会の癖が出て座ってしゃべる癖がついているものですから、つい座ってしまったのですけれども、やはり外務委員会の座ってやる方がしっくりしていていいと思うのですが。——失礼しました。これはつまらないことを申し上げましたけれども。  いずれにしましてもこの問題は相当大きな論議になると思うのです。そういう意味でこの点を取り上げて大臣のお考えもこの際伺いながらこの問題に切りをつけたいと思うのですが。
  78. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 宮崎委員の御指摘のように、東欧諸国の西側に対する債務が相当額に上がっておるということは、これは各国がその前途に危惧の念を持っておるところだと思います。ことにポーランドとの関係における西側への債務というものについて、一体ポーランドがどうなるかというようなことは現実の問題でございまして、きょう東側全体の西に対する債務がどうか、これは相当額に上っておるし、この処理については大きな問題をはらんでおる、今後この問題に対してどう対応するかはこれはベルサイユ・サミットの場合でも恐らく大きな問題点になるのではないかと思います。
  79. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 その経過の流れを私もじっと見ていたいと思います。  そういうもの等をひっくるめまして、ある面においては早く進めなければならない、ある面においてはこれがまた一つの離反策といいますか、そういうふうな形のものになるかというようないろいろな諸問題を抱えてのソ連との今後のあり方と私は思うわけですが、いずれにいたしましても北方領土というものは固有の領土であるという観点をやはり言うのには、いろいろなそういう立場の中から大臣のおっしゃる「あらゆる」というその中で北方領土の本当の返還を訴えることが、こういったある面においてはこちらがプラス、ある面においてはソ連が苦しくなっていくというようないろいろな形の面があるだろうと思います。そういう中においていつもいつも口に出るのは、やはり玄関口じゃなくて中へ入っていって、そしてじっくりと話して返還を求めながらこういう問題を処理していくというように私はやっていただきたいということを要請をいたしたいと思います。  時間があと少ししかございませんので、本当にわずかしかありませんので、簡単にソ連による北方周辺の水域における日本漁船の拿捕の数と抑留者の状況、それから罰金徴収状況、船上でのあるいは裁判での罰金徴収状況、そしてもう一つは現在までの未帰還者は何人いるか、この状態がどうか、これらの人が速やかに帰還できるように考えなければならぬ、この未帰還の中には長期にわたる未帰還の人は何人ぐらいいるのか、何年ごろからの未帰還なのか、また長期にわたる未帰還隻数もあるわけでありますが、この船の点についても御説明を願いたいと思います。
  80. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 北方水域において不当に拿捕された件数、過去数年にさかのぼって申し上げます。  昭和五十二年が十四隻、同五十三年も十四隻、五十四年は十七隻、五十五年は十八隻、五十六年は十隻でございます。現在本年に入りまして五十七年でございますが、本年に入りましてからは二隻、六名でございます。昨年及び一昨年のこの十隻及び十八隻の中でまだ帰還しておられない船員が五名おります。したがいまして現時点におきまして依然として抑留されております船員数は十一名となっております。
  81. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 隻数。
  82. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 現在は二隻でございます。二隻で十一名。
  83. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間が参りましたので、最後に大臣にお願いをしたいのですが、こうした未帰還者の方々の留守家族の人は、どんな思いで帰還してくるのか、わが家に帰ってくるのかという、そのことを考えますと胸の痛む思いがするわけでありますが、これらの人たちに対して速やかに帰還のできるように大臣の方から交渉をしていただいて、この家族の方々を安心させてやっていただきたい、この点をお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。
  84. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 大臣の御答弁の前に一言、罰金額のお尋ねについて即答できませんでしたので。  五十七年の額が総計二億一千六百万円でございます。ただしこれはソ連水域内ということ全部でございますので、必ずしも北方四島における拿捕の問題についての罰金だけではございません。内訳等につきましては別途詳細調査の上、御報告させていただきます。
  85. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまの罰金の方は私も大分調べておるのですけれども、相当巨額になってきているのですね。その巨額になってきているという趨勢というもの、それらもひとつ御留意を願っておいてもらいたい、こう思います。大臣の御答弁を伺いたい。
  86. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 北方水域における漁船拿捕が発生いたしました都度、ソ連側にその不当性につき抗議するとともに船舶及び乗組員の早期釈放を要求しております。  また、さらに抑留が長期化される、こういう場合には機会あるごとにその早期釈放及び抑留者の現状につき照会をしておるところでございまして、本年一月の実務者レベルの会合におきましてもこの問題を取り上げて早期釈放を要求いたしました。また本年四月十三日にハバロフスクにおきまして行われた在ソ日本国大使館員と抑留漁船員との面会について、これは引き続き行っていく、こういうような心組みで臨んでおる次第でございます。
  87. 立木洋

    ○立木洋君 領土問題をお尋ねする前にちょっと二、三点お聞きしておきたいのですが、対韓経済援助の問題で、あした二十九日に柳谷外務審議官が訪韓するということをきょう政府が決定されたというお話ですが、これは事実でしょうか。
  88. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 柳谷外務審議官の訪韓を検討しておるのは事実でございます。  なお、訪韓の目的は、四月一日に韓国側の回答を得ておりますが、それを検討した結果につきわが方の国内事情を現地の前田大使とともに先方に十分説明をしたい、こういうことで柳谷審議官の訪韓を内定した次第でございます。
  89. 立木洋

    ○立木洋君 それは相手側に伝えて相手側も受け入れるということになっているのでしょうか。会うとするとだれと会うのか。そこらあたりはどうでしょうか。
  90. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私の考えでは、私の意を体して行っていただくのでありますから、できるならば盧外務部長官に会って忌憚のない話をしてもらいたいと思っておりますが、現在まだ柳谷審議官の訪韓を応諾をしてまいっておる、そういうことは聞いておりません。夕刊で報道が行われておるということでありますので、内定しておるということをここで明らかにする次第でございます。
  91. 立木洋

    ○立木洋君 持っていく、大臣御自身の意思を持っていってもらうということなんですが、内容的にはいろいろもめておったのですけれども、どういうふうな具体的な内容になるか、もしかよろしかったらお話しいただきたいのですが。
  92. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはすでに委員会で韓国の方から一日に当方の回答に対しての意見が来たということは申し上げておるところでございます。  商品借款を考え直してもらえぬかとか、あるいはもう少しソフトなローンにしてもらいたいとか、いろいろございましたので、それらにつきましては、たとえば商品借款については日本としては考えられないということもすでに委員会を通じて申し上げておりますが、これらの点について柳谷審議官に先方と率直に話し合ってもらおう、こういうことで、これは韓国側の立場もあることでございまして、いままで委員会でいろいろ申し上げた範囲はこの際も触れることができますが、それ以上はこれは協議事項でありますのでこの際はいろいろ申し上げることを遠慮さしていただきたいと思います。
  93. 立木洋

    ○立木洋君 まあ話し合いをする前からこういうことをお尋ねするのもどうかと思いますが、大変なかなか難航するというふうなことが新聞でもいろいろ言われておりますけれども、何としてでも妥結に導くようなやり方を考えておられるのか、それとも様子を見てくるというふうなことなのか、あるいは大臣の訪韓との絡み合いではどのような大体お見通しを持っておられるのか。その点について。
  94. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) この経済協力の要請は御承知のように私が就任した直後からのことでございまして、先般総理からも相当長期にわたっておることで各省庁間これが妥結について努力をするようにと、こういうことでございました。しかし先方からの内意などを聞いてみますと、相当われわれの考えとの懸隔もありなかなか厳しい情勢にある。  こういうことも衆参の委員会を通じて申し上げてきたところでありますが、私が柳谷審議官を派遣することに決意をいたしましたのは、最後までひとつ誠意を尽くして、また先方の真意を十分つかんでそして結論を得たい、その結論はあるいは双方が満足するようなことでないかもしれませんが、両国関係が今後に悪くないように何とか話し合ってみたい、こういうことでございます。
  95. 立木洋

    ○立木洋君 この点についてはもちろん私は繰り返しこの委員会でも批判的な見地を述べてきたわけですが、あえてここでもう申し述べませんけれども、この事態は私たちはきわめて重大であるのでよく見守っていきたいというふうに考えております。  さて、じゃ領土の問題に関してですが、きょうはもう御承知のようにサンフランシスコ条約、それに基づく日米安全保障条約が発効された四月二十八日、まあ三十周年になるわけですけれども、しかし戦後の日本の歴史を見てみますと、やはりあそこで全面講和を選ぶべきか単独講和であったかということは、戦後の日本の選択としては私は非常に重要な問題だったというふうに思うのです。その点から今日の領土問題を見た場合に、依然としてやっぱり千島問題、歯舞、色丹等々の問題がいまだに解決されないということはきわめて重要な問題があるというふうに思います。  そこで、この点で最初にお伺いいたしたいのですが、先日の外務大臣の所信を述べられた中で「北方領土問題は基本的には日ソ間の交渉により解決すべき問題ではありますが、本問題について国際世論の正しい理解を求めることもきわめて重要であると考えております。」というふうに述べておいでになります。この本問題についての国際世論、これは一体どういうふうになっているでしょうか。たとえば資本主義国、開発途上国あるいは社会主義の国が日本政府が述べておるような立場に完全な理解と支持をしているのか、あるいはどういうふうな状況になっているのか、そういうふうなもしか国の数等々がわかれば御説明いただきたいのですが。
  96. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) まずサンフランシスコ条約関係の諸国について申し上げますと、アメリカはかねがねわが国サンフランシスコ条約二条(c)項で放棄した千島列島北方四島が含まれないという見解には全く同感である、これを支持しているということは先生御案内のとおりでございます。  最近における進展といたしましては、英国政府ソ連による戦後長期にわたる北方領土の占拠は正当化し得ない、またそう主張をする日本立場は十分支持し得る、そして北方領土返還を求める日本の要求には理解を示す、こういう態度を示してきております。  その他幾つかの国から日本領土問題についての理解を示す徴候はいろいろな場で受けておりますが、その国の政府の正式の見解という形で私どもも表明を求めているわけでは必ずしもございませんし、何カ国がこれを支持し何カ国がこれに支持を示していないかという数字はいますぐ先生にお答えすることは遺憾ながらできない状況でございます。
  97. 立木洋

    ○立木洋君 いま加藤さんが述べられたつまりソ連が占有しているということについての不当性という点については、国際的にもう比較的理解を得られることのできる私は内容だと思うのですよ、つまりソ連がああいう形で占有しているのはこれはけしからぬという考え方は。  ただ問題になるのは、放棄した千島がどこまでかという問題に関してはやっぱり若干いろいろ異論があるのではないか。たとえば吉田全権大使があのサンフランシスコ条約の中で述べた中でも、確かに北千島と南千島の違いがあるということはあの発言の中でも述べていますけれども、しかし放棄した千島の中には南千島は入らないというふうに述べたのではなくて、やはり南千島という表現をいずれにしろ吉田茂さんは使っていたということから、放棄した千島の中には依然として南千島が入っているのではないかというふうな考え方をとっておる国際的な世論というのもやっぱりないわけではない。  ですから、私はこれは大臣にお聞きしたいのですが、歯舞、色丹、これはもう千島ではないわけですから、だから日本政府立場としてもその議論はどうあるかは一応おくとしても、放棄したことは一回もないわけですから、千島という島ではないのですから、だから歯舞、色丹は直ちに返せと、日本政府はいかなる条約、条件に置いたってこれは放棄してないという形で二島だけを直ちに返せという、そしてそれについてはたとえば歯舞、色丹の返還協定みたいな形にして、そして平和条約についてはこれは明確な国境問題最終的に解決する段階で結ぶべき問題ですから、さらには南千島全体に関しての返還を求めるときに平和条約は結ぶとしても、歯舞、色丹に対しては直ちに返還を求めるというふうな形で交渉を展開するというふうなことはお考えになってみるお気持ちはございませんか。
  98. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 一九五六年の日ソ共同宣言で「平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」と、そういうことがたしかこの共同宣言の中で明記されておると思うのですね。そういうことが一つございます。ですから、平和条約を締結によらずして二島を返せということはこの共同宣言からすると非常に困難性がございます。  それから、この歯舞、色丹の二島のみを返還を求めるということは事実上国後択捉両島の返還への足がかりを失うということになるのではないか、そういうおそれがありますから、そこで私どもは常に北方四島の一括返還ということを繰り返し申し上げておりますし、またそういう立場ソ連に対しての粘り強い交渉をしておる、こういうことでございます。
  99. 立木洋

    ○立木洋君 粘り強い交渉をやっても、ソ連がああいう立場をとっておるということ自身がきわめて不当なわけですが、私はもう繰り返し言っているのですけれども、この問題よくやっぱり考えてみる必要があるのではないか。  北千島にしたってあれは武力で何もわれわれが手に入れたわけではないわけで、言うならば日本領土ですから、領土不拡大の原則に基づく第二次世界大戦の戦後の処理という点から言うならば、あの北千島放棄すべきではなかったということも、当然われわれの領土として確保すべきであるという点から考えてこれは何ら不都合がないわけで、この点でもソ連のやっているやり方は誤りだということにも私はなるだろうと思うのですが、いまの点私は異論がございますけれども、これ時間がないのでそれ以上述べません。  ただもう一つの点では、ソ連側の最近の発言を見てみますと、平和条約が締結されていないということは日ソ両国間の国境が確定されていないということである、つまりこの日ソ両国間の国境が確定されていないということは、言葉をかえて言えばこれは領土問題が存在しているということですね。つまりソ連としては平和条約が締結されていない限り国境は未確定であるというところまで述べている。もちろんその後、だからといって領土問題があるわけではないと言っていますけれども、この論理について少しやっぱり検討してみる必要があるのではないかと思いますが、大臣どのようにお受けとめになっておられるでしょうか。
  100. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 国境線の確定という言葉がソ連側から過去において数回言及されたことは私も承知しております。ソ連のような大陸国家、特に陸を隔てて隣国と接しているという国にとっては、国境線あるいは国境線の確定ということが非常に大切な概念であることは私どもも理解し得る点でございます。  同時にソ連側は、一九七〇年代に結ばれました独ソ協定その他によって現国境の尊重というそういう保証を取りつけた、これを足がかりといたしまして、同じような考え方を日本の場合にも当てはめてくるというようなそぶりを見せた、少なくともそういうふうに解釈できる行動をとったことはございます。これはソ連という国の伝統的な物の考え方に由来することではないかと思っております。  それから、先生御自身で御指摘なさいましたとおり、領土問題は存在しないあるいは領土問題は解決済みといっておきながら国境の確定あるいは国境確定して平和条約というのは、明らかに北方四島の返還を前提としない議論でございます。こういう議論にはわれわれとしては軽々に乗れないことは申すまでもないことだと思います。
  101. 立木洋

    ○立木洋君 加藤さん、確かにそういう面はあるだろうと思うのですよ。  つまり国境が未確定ということといまの状態を変えるということは別だということだと思うのですけれども、しかしわれわれはあらゆる可能性をやっぱり追求して論理を展開していくということは私は必要なことではないかと思うのです。それで国境問題、これは戦後もう大変な三十七年間たっているわけだし、サンフランシスコ条約が発効されて三十年ですから、まあ粘り強くということはよくわかるわけですけれども、これはやはりよく検討してみる時期に来ているのではないかということを述べておきたいのです。  それからもう一つ竹島の問題ですが、これについては近々強力に韓国に竹島問題について申し入れるお考えがおありでしょうか。
  102. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 竹島問題につきましても繰り返し抗議を申し入れ、また口上書を渡したりしておることは御承知のところでございます。  ただいまのお尋ねは近々に竹島問題について私が何かするかという意味合いに取れましたが、私も外相会議でも持つということになりますれば、そういう機会には、重大な懸案事項でありますからその際には現在の状況についての不当性、またそれに対する抗議、また返還ということは必ず申すつもりでございます。
  103. 立木洋

    ○立木洋君 この問題もやはりよく考えて、どういうふうにして解決していくかということは考えていただきたいと思うのですが、もちろんこれは何も武力で云々なんというようなことは考えているわけではありません。  平和的な話し合いによって解決するということが基本ですが、しかしこれも同じようにやはり国際的な世論の正しい理解を得るということは私は必要だろうと思うのですけれども、こうした問題に関して海外的な広報活動だとか資料だとか、パンフだとか、そういうものをつくって外国にも出しておるのかどうなのか。あるいは日本国内でもそういうものをどれぐらいつくって、どれぐらい配られているのか。ひとついかがでしょう。
  104. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 竹島問題につきましても国際世論の支持を得ていくということが重要であるということは御指摘のとおりでございます。  で、そのためにじみちな努力をしておるわけでございまして、たとえば領土問題を専門とする内外の著名な国際法学者に依頼いたしまして竹島問題に関する調査を委託すると同時に、その際その学者に対してわが国立場を理解してもらうということ等をやってまいったことが一つでございます。  それから、各国で使用されている地図において竹島がどのように記載されているかという調査を行ってきております。この結果につきましては竹島というものが比較的小さい面積でございますので、各国によって違いますけれども、かなりの国ははっきり地図の上ではあらわれていないということでございますが、他方かなりの国は竹島を日本領土というふうな地図を販売しておるわけでございます。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、これは余り竹島の方は宣伝されていないのですよね。あすこは大臣の県でしょう、竹島はもともと帰属すれば。帰属すればそういうことだろうと私は思うので、こういう問題についてやはり国際的な理解を得るということは非常に私は大切なことだろうと思うのです。  それで、こういう問題については、アメリカなどに対してちゃんときちっと述べているのかどうなのか。そしてアメリカ側としては日本主張に理解を示しているのかどうなのか。その点はいかがでしょう。
  106. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) アメリカの国防省が出しております地図によりますと、竹島は日本領土ということになっております。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間が参りましたから終わりますけれども、先ほども言いましたように、やはり領土の問題というのはわが国の主権の問題でありますし、こういう民族の主権がいつまでもこうした事態で放置されているということは、これは全くわれわれ日本の国民として重大な問題だということを感ぜざるを得ないわけで、何としてもこれを早急に解決するように、きょうは時間が短くていろいろ論点を展開することができませんでしたけれども、お考えいただきたいということを要望して私の質問を終わります。
  108. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 きょうはくしくも三十年前の今月今日サンフランシスコ平和条約が発効して、そして祖国は主権を回復し沖繩は祖国から断ち切られてアメリカの施政権下に入った。こういった悲劇の日だったことをとらえて四・二八という合い言葉でずっと今日まで復帰をかち取るべくがんばってきた、そういうきょうは悲劇の思い出の日であります。くしくもその日に私は非常に胸に響くものがございます。  そこで、国際外交には主体性とそういった相互理解ということをよく言われるのでありますが、そういった立場から外務大臣に一、二まずお尋ねいたしたいと思います。  まず最初にお聞きしたいことは、真の相互理解ということは、主体性を持ちながらも相手の立場を常に理解していく中から本当の相互理解というものが生まれるわけでありますが、そこで、いま世界的に二大陣営だと言われておる対米対ソのこのことと結びつけて、北方領土の問題と関連してお尋ねいたしたいと思うのでありますが、北方領土の問題を解決をしてそうしてソ連平和条約を締結したい、こう述べておられます。ところが対米姿勢立場をとらえますと日本は極東最大の米軍基地を受け入れておる。もちろんこれは安保のつながりがあるわけでありますが、そうすると、その極東最大の基地ということは、わけても沖繩の基地に集約しておるわけですが、これは一体脅威はどこに与えておるかということを考えた場合に、私はそこから次のことが考えられるのです。  まず安保条約を破棄して、そうして平和憲法を盾にして平和外交で対ソ交渉に臨むべきである、こういう考え方を持つわけなんです。それに対して外務大臣の御見解いかがでしょう。
  109. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 喜屋武さんが言われるまでもなく、きょうはサンフランシスコ平和条約を結んで三十年、その日に当たるわけでございまして、私どもは喜屋武さんのいまの御質問とは立場が違いまして、戦後平和条約を結び安保条約を結んで、そうして本日まで努力をしてまいってきておるわけでございます。そういう立場でございますので現在安保を破棄してどうということについては、私どもはその考えには同感ができません。
  110. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 きょうの新聞にも出ておりますように「なお残る戦後処理」、「沖繩にひずみ集中  個人の被害、冷たい対応」、こういった見出しで報じられております。  そこで、沖繩基地に関してお尋ねいたします。私は、たびたびこの沖特の場でも、政府は安保軍事基地を継続して、そして県民生活を軽視してそういった態度を続けてこられたということを機会あるごとに指摘してきたわけなんです。ところがその指摘に対して私が思うことは、県民の生命財産を重視する立場に改めてもらいたいという、改めるべきであるというこの主張が、一貫して政府の県民軽視の姿勢は一向に改まってこない、こういう焦りを持ちながら今日まで私指摘してまいったのですが、これに対して大臣はいかがお考えでしょう。
  111. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 戦争という不幸な事態平和条約が結ばれたとは言いながらも沖繩が引き続き占領下にあったという不幸な事態は返す返すも遺憾でございます。  本年はくしくも沖繩の返還後十年、こういうことになりました。戦争で取られた領土話し合いのうちに平和裏に戻ってきたということは日本国民挙げて喜んだのでありますが、県民の置かれた立場、戦争後の苦難な道、また返還後におきましても生活の上に種々困難を来し、また五三%を基地として引き続き米軍の使用に供しておるという実情、そういうことにつきましてはひとしく日本国民である私どもが深い理解を持たなければならない、そして及ばずながらそのために何かする方途はないかというのが現在の沖繩に対する特別措置法ではないか。  これは喜屋武さんのように沖繩の御出身の方から見ると不十分な御批判がございましょうが、日本国民全体として考えます場合には、これらの措置によって多少なりとも県民のお立場について御同情申し上げ御理解を持ちたい、こういうことでまいっておる次第でございまして、この気持ちは、沖繩の皆様方に対してはこれからも一層この気持ちで対処してまいりたいと思っております。
  112. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いろいろと、激励、同情も励ましもあるわけでありますが、先ほど大臣もおっしゃったようにことし十年の節目を迎える、それで過去十年間に一体沖繩に対してどれだけの予算が、特にこれは防衛施設庁に求めたデータでありますが、沖繩復帰後における本土沖繩別駐留軍関係経費、こういう表が出されておるわけですが、これに基づいて私十年の足跡を分析して見たのですね。  そうすると、この一項目ごとに質疑を交わしたいのですが、そういう時間がありませんのではしょって申し上げたいのですが、これは特に防衛施設庁長官きょうおいでを願いたいと思ったのですが、所用で見えないようですから、大変残念に思いますが、この十年のデータの中で特に基地周辺対策、こういう項目がございます。基地周辺対策、この面から結論を申し上げたいと思います。この基地周辺対策は、全体で年平均約二百八十五億に対して沖繩分は三二・五四%の九十二億弱であるのですね。こういうアンバランス不公平がこの数字にあらわれておるわけなんですね。  そこで、さらにこれについても内容を分析してまいりたいのですが、きょうは一つの問題だけ取り上げたいと思うのですが、しかもこのように三二・五四%、九十二億、二百八十五億のうち九十二億弱である。しかもその中には周辺対策整備費の中でも最も重要な騒音防止事業におけるいわゆる電気料というものが含まれていないと聞いておるわけなんですね。含まれていないと聞いておる。ところが同じ防音対策にしましても運輸省に関係する民間空港は公団からそれぞれの補助がなされておる。こういうことを思いますときに、私はこの十年間の統計に出た不公平をどうしてもこれを修正して沖繩に流す必要があると思うが、これに対して防衛施設庁どう思っておられるか。そうして今度はそれをそのままでいいのか、修正する必要があればいつどのように修正していこう、こういうことまでひとつ関連して。
  113. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) 住宅部門の電気料のことでございますが、私ども、自衛隊等の施設、飛行場関係の住宅防音につきましては非常に膨大な戸数を抱えておりまして、まず住宅防音の工事をやるというところに重点を置いていままでやってまいったわけでございます。沖繩の置かれました立地条件等からしまして、電気料がかさむことは理解するわけでございますけれども、電気料の補助につきましては今後の検討課題ということにさせていただきたいと思います。
  114. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、念を押しますが、私のこの十年間のデータの統計から、どうしても沖繩に対するいわゆる特殊事情という配慮、それから基地の面と質の立場からも本土と違うべき立場があるということはお認めになると思います。それはノーとはおっしゃらぬはずです。私それは信頼します。それならばそれに即応する応ずるところの公平な予算が流れておるかどうか。流れていないということもはっきりしています。それをいつどのように修正していくか、バランスをとっていくか、こういうことなんです。もう一遍確認したいと思います。
  115. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) 周辺対策費でございますけれども、これまでに現在五十七年度で申し上げますと本土が一千二百二十七億円でございます。それに対しまして沖繩は二百二十三億円が補助されておるわけでございます。これは復帰当時の伸び率で申し上げますと、四十七年に比較いたしますと四・五倍というふうに、逐次増大しておりまして、沖繩に重点的に施工してきたということは数字でもあらわれているところではないかと存じます。
  116. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 漸次増大する、これはもう当然の話。現状維持ではいかぬのです。漸次増大していることはわかります。  だから、いま一例にしぼって、たとえば防音施設はだんだんやってもらうようになった。ところが民間空港はちゃんと公団が補助もあるのに、なぜ軍施設にかかわる防音装置には一文の補助もないのか。また、これ後で結論を私言いますが、こういうゼロと民間空港はそれらに補助がある、このことに対する何らの反省も感じないかどうか。
  117. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) 住宅防音の実施後のクーラーの電気料の補助につきましては、公団のことにつきましては私つまびらかにしておりませんけれども、私どもとしましては沖繩が南方にございまして夏場の期間が長いということは十分承知しておるわけでございます。今後その実現方について努力していきたいとは存じまするけれども、現下の情勢でまいりますとなかなか困難ではないかと存じます。
  118. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今後検討してもらって、その不公平を是正していく、こう受けとめていいですね。
  119. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) 今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  120. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、沖繩の場合、北谷町の一例だと要請決議出ているのを受けられただろうと思うのですが、全額クーラー施設に対しては電気料を政府が負担すべきであるという強い要望、筋の通る要望が出ておりますが、これはどう受けとめておられますか。
  121. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) 御要望の趣旨につきましては今後検討させていただきます。
  122. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そんな回答では私承知しませんよ、それがいわゆる善処するとか検討するとかいうことじゃ。どのように検討しますか。
  123. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) 私どもとしてはここ数年まず生活保護世帯の方々に対する補助からクーラーの補助をいたしたいということで要望はしておるわけでございますが、なかなか実現に至っていないわけでございます。
  124. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 聞いておりますと、どうも本当の認識の仕方にずれがあるということ。こういうことを私指摘したい、それに答えてもらいたい。  まず復帰十年にして沖繩の県民所得は本土の七割以下でしょう。そういった所得水準が低いということもまずその一つの根拠。二つは、民間空港もその防音被害に対して当然だということで出しておる。ところが民間空港という場合には被害者であると同時に受益もあり得る、民間空港の飛行機を利用するわけですから。ところが米軍の基地から派生する爆音というのは、すべて県民は被害者でしょう。受益というのは一文もないでしょう。びた一文も受益はないでしょう。すべてが被害立場でぐんぐん浴びせられておる。こういう立場の根本的な相違をしっかりわきまえてもらわなければいけない。  次に、聞くところによると、あなたは具体的にはおっしゃらぬけれども私は聞いておりますよ。だから長官来てもらいたかったわけだ。あなたでは間に合わないという結論になるわけだ。そんないいかげんな返事をしてもらうために来てもらいたくはない。こういう生活が困っておる者か、いわゆる生活救済のより困っておる者を先にするとか、金のある者を後回しという、この本質からしてこんなばかな話はないですよ。詳しくは申し上げませんが、爆音は百ホン以上のデータが出ておりますよ。金があろうがなかろうが同じように爆音の被害というのにさらされておる。だのに、あなたは貧乏だから先にやってやろう、あなたは金持ちだから自分でやりなさい、こんな理屈は通りませんよ。加害者がだれであるか、そしてそれは受益もあるのかないのか、こういう本質に立って理解、認識せぬというと、金がある者は自分でやれ、ない者は国がやろう、これが根本的に認識の相違なんです。そういう姿勢で国民を、県民を手なずけていく。やがて行革や財政再建で金がないからちょっと待ちなさいと、こういうことにもなりかねない。こういうものこそ国が責任を持って安全に暮らせるようにすべきでありましょう。  ところが、その北谷というのは大変深刻な問題があるでしょう。一たん移って浜川小学校という学校もできた。もう爆音騒音がたまらないものだから一人移住し二人移住し、ぼつぼつ町外に抜けていった。文化の町づくりをする計画でやったが、町の計画もだんだん先細りになってきておるのですね。なぜこういうことをあなた方は黙認するのか。それならば国としてちゃんと責任を持ってやるべきことをきちんとやっていくならば別だが、こういうこともしないで、今日まで要望して初めて次第次第につけるというそのいきさつ。  防音装置の部屋も五人以上は一間、四人以下はさらに小さい。最近台所も選んでいいことになっておるが、この前言っていましたよ。爆音が来たら戦争中に防空ごうに避難するようなものだと言っておりましたよ。一軒の中に、ある寝室だけあるいは勉強室だけ防音装置をして、そうしてふだんはハウスの中におる。ところが爆音が来るとたまらぬものだから寝室に飛び込んでいく。あるいは勉強室に飛び込んでいく。ちょうど戦争中に空襲があれば防空ごうに飛び込んでいくようなもので、そういう生活をしておりますということを訴えておりましたよ。こういう深刻な問題があることに対して、だから個人の被害冷たい対応という、このようにずばり言われるのです。そのとおりですよ。  私の質問にはっきり言ってください。この防音施設に対する電気料全額国が負担する、こういう前提に立って今後の措置をすべきだと思うが、どうか。
  125. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) クーラーの電気料につきましては今後とも積極的に取り組んでいく所存でございます。
  126. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間来ましたのでこれで終わりますが、たくさん資料を持って、具体的な、たとえばこの北谷に関連しますが、これは問題点として提示しておきます。  ハンビー飛行場が解放された、復元補償の問題。そこから最近遺骨の収集が始まった。そして防音の問題、こういった戦後処理がこれからという問題ですよ。  それからお隣りの嘉手納町。嘉手納町にはこれまたひどいことが起こっておりますよ。嘉手納町は海がここだけしかないことを御存じだと思う。そこを町に相談をして、ここは米軍のヨットハーバーなんですね。嘉手納町民にとっても一つしか海がない、海岸がない。ヨットハーバー。ところがこれを相談するまでには町民も一緒にこの施設を使うからひとつやろうじゃないかという。それをそのまま受けてオーケーしたら、町当局と相談したら、ちゃんとフェンスを張りめぐらして、立入禁止をしてここは使わせない。  ところがここは門を最近まで通って——ここには野国総管という沖繩で芋を普及した偉人がおられますが、その総管の墓とかレジャー施設、それから黄菜園芸、こういった耕作もしレジャー施設もあり遺跡のある土地なんですよ。ここを家族連れで行っておったら、いつの間にか町当局にも何の連絡もなしに、相談もなしにすぐここを封鎖して、午後になって帰ろうとして車で行ったらもう門は封鎖されておる。大騒ぎをしてやっとこさ封鎖のそばから抜け出して行ったというのが最近の実情なんですね。  これこそ全くもう許されない治外法権の軍事優先、こういうことがいま平気でなされておるのですよ。このことに対しても一体政府として、担当局としてはどういう手を打っておられるのか。これしかくいま現地では出先でいろいろ折衝しておるようでありますが、このようなことが、あなた、いま行われておる。やらかしておるのですよ。そのことも時間がありませんので問題提示をして、いずれ次の機会に具体的に私ただします。  終わります。
  127. 杉本康治

    説明員(杉本康治君) ちょっと訂正お願いします。  先ほど四十七年に比べまして、沖繩県の周辺対策費の補助額を四・五倍と申し上げましたけれども、二十五倍の間違いでございましたので訂正さしていただきます。
  128. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会