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1982-08-10 第96回国会 参議院 安全保障特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月十日(火曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動  八月九日     辞任         補欠選任      小野  明君     瀬谷 英行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤 武徳君     理 事                 野呂田芳成君                 堀江 正夫君                 渋谷 邦彦君                 上田耕一郎君                 柳澤 錬造君     委 員                 板垣  正君                 岩本 政光君                 大木  浩君                 大坪健一郎君                 源田  実君                 戸塚 進也君                 夏目 忠雄君                 村上 正邦君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁装備局長  木下 博生君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        外務省アジア局        外務参事官    長谷川和年君        通商産業省貿易        局為替金融課長  広海 正光君        海上保安庁警備        救難部長     森  孝顕君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の安全保障に関する調査  (対ソ経済制裁問題に関する件)  (日本周辺海域防衛に関する件)  (米ソ間の核兵器削減交渉に関する件)  (わが国防衛日米関係に関する件)  (日米安全保障体制に関する件)  (近隣諸国との平和友好関係の維持と教科書検  定問題に関する件)  (日本海における日米共同演習に関する件)  (日米安全保障事務レベル協議に関する件)  (日米軍事技術協力に関する件)  (対中、対ソ関係に関する件)  (わが国インドシナ諸国との関係に関する  件)     —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  昨九日、小野明君が委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。     —————————————
  3. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、国の安全保障に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  4. 大木浩

    大木浩君 本日は外務大臣もお見えでございますので、私ども非常に関心を持っております国の安全保障背景となる国際情勢について大臣から若干の御見解をお伺いしたいと思っております。  いささか旧聞になりますけれども、先般六月のベルサイユサミットあるいはその直後に引き続いて行われました、まあこれ日本は入っていないわけですけれどもNATO諸国首脳会議、こういったところでいろいろ現在の軍事情勢とも関連のある国際情勢について日米欧あるいは米欧の間にいろいろと意見交換、情報の交換というものが行われたというふうに私ども理解しておるわけでございますけれども、どうもその後の状況というのを見ますと、せっかくそういった首脳会議が開かれたにもかかわらず、各国首脳あるいは各国政府国際情勢軍事情勢についての認識というのにずれがあるのではないかというような感じもいたします。  そこで、みずからサミットにも御出席いただきました大臣から、そういった会議において一体どういう現在の国際情勢についての認識が行われたのか、果たしてそこで意見の一致があったのかなかったのか、その辺の状況についてまず大臣の全般的なお考えをお伺いしたいと思います。
  5. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ベルサイユサミットは御承知のように経済問題中心論議が展開したわけでありますが、政治問題につきましては首脳間で食事をともにしながら自由な論議が行われる、あるいは外務大臣も同席した昼食の席上などで国際情勢の話が出ておったことは事実でございます。  たまたまベルサイユサミット当時におきましてはフォークランドの問題に大きな関心が寄せられておるときでございまして、これに対しての各国意見が相当出たようでございますが、鈴木首相はそれらの意見を踏まえまして、こういう問題については各国歩調をともにする必要があるのではないか、こういうことと、それから当時の情勢からいたしまして英国の軍事的な対応が一段落するならばアルゼンチンに対する経済制裁については西側は配慮をしていいのではないかというような論議があったと思います。  また、いま中東で非常な紛争が展開しておるわけでありますが、当時イスラエルがレバノンに対して兵を進めましたので、これに対しましては各国ともこのことには即時対応する必要がある、こういうことでイスラエル行動に対して自制を求める、そういう発言が本会議場においても行われたような次第であります。  東西関係につきましては経済問題を中心ではございましたが、ソ連に対して軍事力中心とした力を与えるような措置というものはどうか、こういうことから信用供与の問題が非常に話題になりまして、これはベルサイユサミットの本会議を通じ当初から最後までこの問題についてはそれぞれ各国意見が出てこれが調整に非常に困難を来たしたわけでございますが、これもまた出席各国意思統一の必要がある、こういうことから、恐らくこの制裁を強く主張いたしましたアメリカとしては不満ではあったが非常に低いレベルでの意思統一をいたした、こういうようなことがございました。  政治問題については、オタワ・サミットの例をごらんになってもおわかりのように、主宰国議長責任においてそれらの問題が記者会見で公表されるのでありますが、今回の場合にはミッテラン大統領議長としての会見でフォークランド問題について若干触れられたということでございます。  いずれにしても、この西欧諸国が、このベルサイユ参加国共同歩調をとってそして行動をとろう、そういう国際情勢軍事情勢に対応するその方向としては基本的には認識が一致しておった、このように私は見る次第でございます。
  6. 大木浩

    大木浩君 ただいま大臣お話にもございましたけれどもベルサイユ会議でも対ソ経済制裁と申しますか、その問題が出ておるわけですけれども、どうもその後の米欧間のこの問題についての足並みがそろっていないということでございますけれども、これはどういうふうに認識したらいいのか。つまり経済制裁背景となります国際情勢の判断あるいはその直接の原因になりましたアフガンあるいはポーランドといった情勢についての見方について米欧間に差異があるのか、あるいはそうではなくて、たまたまその経済制裁方法論について議論をしておるのか、その辺について御見解を伺いたいと思います。
  7. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま申し上げた信用供与の場合でも、フランス、イタリーは、論議の中で公的信用供与について相当制限を加えようというアメリカ姿勢に対して、そうでなくてむしろ民間の信用供与について主張をされたというような、そういう差異がございますが、私の見解から申し上げますと、アメリカヨーロッパ諸国では対ソ関係については経済問題で関係度合いというものが大分違うように思いました。  それはヤンブルグのパイプラインの問題について、これについて制約を加えるということはイギリスにしてもフランスにしてもあるいは西独にしてもそれぞれすぐ大きい影響がある、こういうようなことからアメリカ主張に対して相当批判的であった。物事の性格が若干違いますが、日本もまたサハリンの石油開発につきましては日本自身が相当な影響を受ける、こういうことでアメリカ意見にはにわかにくみし得なかったのでありますが、そういうような経済関係度合いというものが相当影響しておったのではないか。したがいましてベルサイユサミット後におきましても西独アメリカ、あるいはフランスまたイギリス等がそれぞれアメリカとの関係でこのヤンブルグパイプライン問題を中心にして意見の相違が表面化しておるということは事実だと思うのであります。  また、一般的な論議といたしましては、そういう各国にいろいろ制約を求めておるがアメリカ自身はどうなのか、穀物輸出のように引き続いて輸出をしょう、それは相手に力をつけることでは同様ではないかという批判ヨーロッパ諸国からございます。しかしこれについてアメリカは、そういう供給をしなければ他の国において供給が行われて別にソ連に対して何らかの制約を与えるというようなことにならぬというような、そういう論拠のもとに穀物輸出は継続をするという状況でございますから、これは心情的にはヨーロッパ諸国としてはやはり批判の残るところではないか、このように見ておるわけでございます。  ただ、軍事的な面につきましては、これはベルサイユサミットを離れますが、NATO会議などを通じてみますと現在のヨーロッパにおける軍事力状況というものにつきまして、核を除いた一般的な軍事力についてソ連が優位であるということの認識ヨーロッパ諸国は持っておるようでございまして、したがってミッテラン大統領にしてもサッチャー首相にしても核の抑止力必要性はこれを認めておる、またそういう立場で論議をしておるということで、軍事面における歩調は一致しておるように見受けておる次第でございます。
  8. 大木浩

    大木浩君 ちょっと話題を変えまして、先般来アメリカ議会におきまして防衛関連予算審議というようなものがいろいろ行われておったと承知しておりますが、その過程、あるいはそれとは別かもしれませんけれども、いろいろと日米防衛関係と申しますかについてアメリカ議会筋の方からのいろいろな意見も出ておるということでございますが、これは局長でも結構ですけれども、一体どういう議論が行われたのか、それから最終的にどういう形でその防衛予算論議がおさまっておるのか、その辺をちょっと簡単に御説明願いたいと思います。
  9. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま御指摘のありましたアメリカ上院及び下院における審議の中で日米防衛関係安全保障関係に特に触れたのは、三月一日の下院外交委員会委員会ソラーズ委員会、それから上院外交委員会パーシー委員会、この二つであるわけです。特にソラーズ委員会においては数回、十数回と言った方がいいかと思いますけれどもにわたって日米関係一般について公聴会を開いております。  その公聴会ではもちろん安全保障の面にかかわらず経済関係その他日米関係全般ということを議論しておりますけれども大筋として次のことが言えるのではないかと思います。  いろいろな証人が出てきております。その中には日米安保条約の改定を求める、あるいはGNP一%は少ないという意見がございましたけれども大筋意見としては、日本にいまアメリカ期待しているのは日本の憲法あるいは政治的な制約の中で日本がもっと防衛に努力してほしいということではないかと思います。それとの関連で、防衛力増強だけでなくて日本在日米軍に払っている経費負担の問題、それから日本アメリカで行っている防衛協力の問題、あるいは共同訓練の問題についても意見が出ておりまして、日本がこの点についてもより積極的な姿勢をとってほしいという議論が出てきているわけです。  さらに、下院あるいは上院軍事予算審議過程の中で、アメリカ側が犠牲を払って国防費に多大の支出をしているという状況のもとでやはり同盟国に対してもそれ相応の負担を求めるという中で、たとえば現在横須賀を母港にしている艦船が幾つかございますが、その母港化をやめろとか、あるいは日本との間の軍事装備品の契約について一定金額のものはやめなさいというような決議が出てきたわけですけれども、これらはいずれもアメリカの国益に沿わないということで撤回ないし否決されているわけです。  したがって、今後アメリカ下院あるいは上院で残っているのはいわゆるレビン決議案日本に対して防衛力増強を求める、少なくとも一%の防衛力増強を求めるということ、それと下院において同趣旨ザブロツキ決議案、これが残っているわけです。しかしそのレビン決議案にしても、アメリカの議員の中で日本に対して具体的な数字を挙げて防衛力増強を迫るというのがいいのかどうかということで、この案についても対案が出されようということでございます。  いずれにしても、八月二十日に大体アメリカ議会は夏休みに入るわけでございますが、それまでにこのレビンあるいはザブロツキ決議が議決に付されるかどうかということについてはもう少しアメリカ議会の動きというものを見きわめる必要があるというふうに考えます。
  10. 大木浩

    大木浩君 アメリカとの関係につきましては、いずれ今月末でございますか、ハワイでまたいろいろ防衛関係事務レベルお話もあると思いますので、これはひとつ十分にアメリカ側の意向もただすとともに日本側としての状況ということも御説明を願いたいと思う次第でございます。  次に、日本自体日本周辺水域防衛ということについてちょっと御質問をしたいのですけれども、きのう在日米軍司令官ドネリーあたりがいろいろ発言をしておりまして、極東における日本に対する脅威というようなものはむしろ増強という状況もあるやに承知しておるわけでございますけれども、残念ながら現在日本周辺と申しますか日本自体の一部が占領されているわけでありますから、決して状態は平穏とは言えないし、脅威がないなどとはとても言えない状況だと思いますが、特に私ども非常に関心ございます北方領土について、これはかなり前からでございますけれども北方領土における軍備といいますか、軍備増強というような状況もあるやに聞いておりますけれども、その辺をどういうふうに防衛庁認識しておられるか御説明いただきたいと思います。
  11. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) お答え申し上げます。  大木先生にくどくど御説明申し上げるのはまさに蛇足かと存じますけれども、御質問でございますのでお答えいたしますと、御承知のとおりソ連が最初に北方領土に兵を進めたのは終戦の年の八月の後半、要するにアメリカ北方領土を占拠していないという事実を確認の上、兵力北方領土に進めた、その後一九六〇年に一たん撤去したわけでございますけれども、一九七八年に至りまして再び兵力北方領土配備した、この規模は約一個師団相当というふうにわれわれ認識しております。  それで、過去一年の推移を見ますと、その兵力規模内容等においては特に変化は認められません。内容を若干つまびらかにいたしますと、戦車あるいは装甲車、火砲、対空ミサイル、さらに通常の師団には配備されていない百三十ミリカノン砲あるいは攻撃型ヘリ、ミル24等が現実に配備されておりまして、さらに警備艇あるいはヘリコプター等ございまして、実際問題として訓練等も盛んに行われているという状況でございます。  ただ、一年間を通じまして大きな変化はないと申し上げましたけれども、一点御報告いたしますと、北方領土に従来ミグ17フレスコが十数機配備されていたわけでございますが、これ昨年本土に撤収しております。その後どうなるかということでございますけれども一つの観測としてはいずれ新世代の航空機にかえられるのではなかろうかという見方もございますが、いずれにしろ私どもは今後の推移を注意深く見守っているという状況でございます。
  12. 大木浩

    大木浩君 そういう状況でいろいろ脅威と申しますか、まあ脅威の定義の仕方でしょうが、あるということで日本側としても対応しなければいかぬと思うのですが、日本周辺水域の広い意味での警備、あるいは哨戒と申しますか、そういった面について私先般来多少疑問に思っておりますのは、平生の警備については少なくとも海上保安庁もある程度の警備作業をしておられるわけでございますし、もちろん防衛庁もしておられるわけで、有事の際には海上保安庁防衛庁長官指揮下に入られるという状況も想定されておるわけですね。  そこで、現在の状況におきまして、海上保安庁なりあるいは防衛庁日本周辺水域警備ないしは哨戒と申しますか、どういう言葉が一番いいのかわかりませんが、そういった面について両方でお互いに協調して遺憾なきを期しておられると思いますが、その辺の状況をちょっと御説明いただきたいと思います。
  13. 森孝顕

    説明員(森孝顕君) 海上保安庁といたしましては、まずわが国の領海内におきましては外国船舶の無害でない通航あるいはまた外国漁船の不法な操業、こういったものに対する監視、取り締まり、あるいはまた二百海里に及ぶ漁業水域における外国漁船監視、取り締まり、あるいはまたわが国周辺海域における外国調査船監視とか、あるいはそのような海域における海洋汚染監視、取り締まり、あるいはまた海難救助、こういった仕事を行っておるわけでございます。  また、海上保安庁海上自衛隊におきましては、従来から海難救助その他の業務につきまして海上における災害派遣に関する協定だとか、あるいは海上における警備行動または治安出動に関する協定だとか、あるいは海上自衛隊海上保安庁との間の電気通信協力に関する協定、このような協定を結びまして密接な連絡を図りながら協力をしているという状況で、ございます。
  14. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 平素におきますところの海上警備というものの第一義的な責任は、いま海上保安庁からも御答弁がありましたように海上保安庁の任務になっておるわけでございますが、事態が海上保安庁の能力では及ばないような場合、困難な場合等につきましては、自衛隊法第八十二条によりまして海上自衛隊が主としてですが自衛隊海上における警備行動として活動することがあり得るわけでございます。  また、自衛隊法の第八十条におきましても、自衛隊海上保安庁は常に密接な連絡をとらなければならないというふうな形になっておりますし、ただいまの自衛隊法の八十条におきましても、防衛出動もしくは治安出動が発令された場合には総理大臣海上保安庁の一部もしくは全部をその統制下に入れる、そしてその指揮防衛庁長官にさせるというふうな決まりになっております。  これに基づきます平時における連絡協議のあり方として、ただいま海上保安庁から御答弁がありましたように、各種の協定を結び、あるいは連絡、施設の連接というようなものを踏まえていろいろ御協力体制を組んでいるというのが実情でございます。
  15. 大木浩

    大木浩君 いま一般的な御答弁があったわけでございますけれども平時体制有事体制に切りかわるようないろいろなつなぎと申しますか、一定の条件について私必ずしも現状が十分ではないというような感触を持っておりますけれども、時間もございませんので一応その辺について今後ともひとつ十分に御整備願いたいという要望だけ述べて、ただいまの質問は終わらしていただきます。  次に、最近国内でもあるいは国外でも反核集会というようなものが非常に行われておりまして、その性格についてはいろいろ議論があるわけでございますけれども、何といっても核軍縮というものが現在国際的に非常に大きな関心になっておるということはこれは否定しがたいと思うわけでございます。  そこで、先般来アメリカがいろいろ言っておりますのでソ連に対する軍事的なバランスというものは十分に考えなければならぬけれども、同時にソ連と可能な限り軍縮交渉も進めていくというのがアメリカ側の言い方であるわけです。そこで現在いろいろ軍縮交渉が進行しあるいは停滞していると思いますけれども、いわゆるSTART交渉ないしはその他の戦域核交渉等々について現状はどうなっておるか、ひとつ概略を御説明願いたいと思います。局長で結構ですから。
  16. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  ただいま大木委員から御質問のございました米ソ間の核兵器に関する削減交渉は、大別いたしましてSTARTつまり戦略核削減交渉及びINFつまり戦域核削減交渉、この二つがジュネーブにおいて実施されております。  INF交渉は昨年十一月末から開始されておりまして、同年暮れに第一回会合を終えまして、本年に入りましてさらに春及び夏の二回にわたって会合をいたし、ただいま休会中でございます。  INF交渉につきましてはアメリカ側はいわゆるゼロオプションを提案いたしております。その内容は、ソ連側SS20あるいはSS4、SS5と申します戦域核兵器を撤去するのであれば、NATOが計画いたしておりますところのパーシングII及び巡航ミサイル配備、これを撤回するというものでございます。他方ソ連側におきましては、一つにはいわゆる凍結案というものを提案いたしておるのでございます。その趣旨は、西側パーシングII及び巡航ミサイル配備を行わないということを条件づけまして、その場合にはソ連側におきましてもただいまのレベルでの凍結を行うということ、あわせまして段階的な削減案というものも提案いたしております。  両国間におきましては、この前提に基づきましてただいま専門的な技術的な角度からの話し合いを行っているというふうに承知いたしております。  戦略核削減交渉つまりSTARTにつきましては六月二十九日から交渉を始めているのでございます。この戦略核削減交渉につきまして、アメリカ側からはレーガン大統領段階的提案が明らかにされているのでございます。  大要を申し上げますと、まずは弾道ミサイルのうち特に地上発射ミサイルに重点を置いたものでございまして、まず弾頭数削減する、現状レベルの三分の一以上の削減内容を持った削減を実施するということ、しかる後におきまして弾頭投射重量、いわば弾頭の大きさ、重さ、これを小さくしていくというこの二つ提案をいたしておるのでございます。他方ソ連側は、まず現状凍結ということと、あわせまして核兵器近代化、これを行わない、また量の点におきましてもふやさない、つまり現状でフリーズをいたしまして、そこから双方下げていく、こういう提案をいたしているのでございます。  で、私ども承知いたしておりますところでは、削減交渉は非常にむずかしい内容また機微な内容を持っているというものでございますが、双方代表の間の話し合いはにもかかわらず一応円滑な状態で進んでいるというふうに理解いたしております。
  17. 大木浩

    大木浩君 ちょっと時間ございませんので、一言だけお聞きしますが、アメリカソ連との交渉はこれは当然ヨーロッパ諸国にも何といいますかその影響が出てくるわけですけれども西欧諸国は現在の交渉についてどういう態度を示しておるのか一言一言で結構ですから。
  18. 門田省三

    政府委員門田省三君) 非常に大きな期待を持っております。特に国内政治的にも大きな深い意味合いがあるという点で大きな関心期待、これを寄せているというふうに了解しております。
  19. 大木浩

    大木浩君 時間もあと一分しかございませんので、最後に外務大臣にお願いしたいのですけれども、いよいよハワイでまた事務交渉も行われますし、いろいろその後日本の国内においても防衛問題さらに予算審議等の関連もあって議論されると思いますけれども、現在の状況におきまして防衛問題についてひとつ外務大臣から、まとめで、今後どういうふうにお取り組みいただくのか、一分でひとつお答え願いたいと思います。
  20. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 八月末の概算要求を控えまして、防衛費についてはある程度の別枠、こういうことになっておるわけでございますが、また御質問にもありましたように、米議会日本防衛に対する非常に関心が寄せられておるという、そういう状況下にありますが、日本はあくまでも自主的に防衛大綱をどう進めていくか、そういう見地から先般五六中業について案ができたというようなわけでありますが、この案に基づきまして財政を勘案しながら国際情勢、特に日本を包むところの軍事状況を勘案しながら日本としての判断を下していくべきではないか、このように思っておる次第でございます。
  21. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いま同僚委員がいろいろ御質問になりましたので、重複を避けて質問したいと思います。  外務大臣、東西奔走されまして大変御苦労さまでございます。この特別委員会が開催されましたときに外務大臣は積極的外交の展開を宣明されたわけです。「外交努力を通じわが国をめぐる国際環境をできるだけ良好で安定的なものとすることが、わが国の平和と安全を脅かす事態の発生を未然に防止する」、こういうことで、特に「近隣諸国を初めとする諸外国との間で友好・協力関係の構築に努める」ということを言われたわけなんですが、どうも最近の状況を見ておりますと、わが国をめぐる近隣諸国状況はおっしゃったこととは反対の方に動いているように思われてしょうがない。特に総合安全保障政策というものの中では防衛努力とともに各国と協調をとる外交の意義が非常に重要だと思うのでございます。  しかし、昨今のたとえば教科書問題をめぐります中国並びに韓国、あるいはこれに触発されたと言うと問題があるかもしれませんが、ASEAN諸国の対日批判の動向などを見ておりますと、どうもわが国近隣諸国の国民の底流、国民の中にわだかまっておる感情、そういうものを十分酌み取って理解しないで、いわばオーバーフレッヒェといいますか、上の方にかぶさっておる、そういうこと等の状況だけを見て外交を進めておるのではないかという心配を実は私はしておるわけでございますが、近隣諸国との外交関係の調整ということについて米ソの非常に厳しい対立にかまけて少し努力を怠られておるのではないかということを、与党ではありますけれどもあえてひとつ御質問申し上げたいと思うのです。特に教科書問題が出ました後の解決の仕方が大変ぎくしゃくとしておりまして、必要以上に外国の反発を招いておるという感じがいたします。  これに関連して、実は先ほど淺尾さんから説明がありましたアメリカ下院の外交委員会のアジア太平洋小委員会、いわゆるソラーズ委員会でデマリー議員が、最近どうも日本の軍国主義復活への近隣諸国の懸念が生じておるようだが、こういう状況の中でアメリカ日本防衛努力を要請するということはどうなのかという質問をしているのですね。ということは、日本の軍国主義復活、私は軍国主義復活とは毛頭思いません。この間防衛庁長官に申し上げましたように、これは誤解に基づくものであると思いますけれども、しかしそういう近隣諸国の懸念があったということはアメリカの国会ですでに指摘されておる問題であります。  そういう状況の中でこの教科書問題がこういう拙劣な仕方で出たということは、政局の担当者として一言なかるべからずというところではないかと思うのですが、外務大臣の御所見をひとつ伺わせていただきたいと思います。
  22. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 近隣諸国関係をずっとごらんいただきまして、私は、ASEAN拡大外相会議へ行って、その折のASEAN諸国の動向、あるいは趙紫陽首相がお見えになり昨年来中国との間で閣僚会議を持ったその経験、また韓国との間におきましては経済協力問題で接触をしてきておる、こういういろいろな現実直面しておる会議、問題等を通じて考えますときに、決して日本が非常に近隣諸国との間で悪いというそういう認識ではなく、日本としてもっと各国に対しての相互理解を求める努力をすべきである、こういうことを感じておる次第でございます。  米欧との間でいわゆる経済摩擦ということで昨年来種々問題を醸してまいったわけでありますが、これは日本の経済状況が昨年まではきわめて順調である、そういう日本に対して米欧がいろいろ意見がある、その中でも特に市場開放を求める、こういうようなことで米欧との間で種々行き来したわけでありますが、この日本の経済状況については、またアジア諸国においてもそれぞれの批判あるいは懸念を持っておるのではないか。ASEAN諸国では保護貿易主義化することを恐れる、日本の市場開放を求めるということがございました。中国、韓国においては日本に特段の経済協力を求める、こういうようなことがございまして、そういうような一般的な概況の中に今回非常に残念なことでありますが教科書問題が起きて、そして果たして日本は戦後本当に責任を痛感し反省しておるのかどうかというような方向に次第に議論が発展してきておると思うのであります。  また、そのことにつきましては日本としても批判を受けるようないろいろな問題も含んでおる、こういうことで現に非常に外交面においては苦慮をいたしておるところでございますが、これらの問題を中心として近隣諸国との間で理解を求めるものは十分理解を求め、また先方の批判についてはこれを受けとめて反省し、努力をしてこのような事態を速やかに解決すべきではないかと現在非常な苦慮、努力をしておるというのが状況でございます。
  23. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 余りこの問題ぎくしゃくした議論したくありませんけれども、この秋に総理が中国においでになるわけでございます。それで問題を十分こなしておきませんと、やはりこの底流にある中国民衆あるいは韓国の民衆の対日批判の要素というものは消えておるわけではないわけでございますから、私はこの問題の対処に際して、事務官僚に答弁をかわりにやってもらうというような形の解決の仕方を当初にとったということは政府の姿勢として非常にまずかったと思うのです。やはり政治家がまず第一声を放つべきであって、政治家の覚悟なり決意というものが第一声にあれば後の事務官僚の説明は了とされるというのが中国のような大国の態度ではないかと思うのですが、どうも事態を逆な形で出した、これは非常に日本的な対応、国会対策の名手ばかりそろっていますから、国会対策的対応だったと思いますけれども、私は大変それはまずかったのじゃないかということをここで申し上げておきたいと思うのです。  それで、対米関係についても同じようなことがないかということを実は申し上げたい。いま日米間では経済関係の相互性が主題になっておりますけれども、しかし日本の外交が経済に引きずられているのではないかという感じがどうもある。その底流にあるアメリカ国民の感情というものをもう少ししっかりつかまえておかないと、われわれはまたこの教科書問題に似たような失敗をやるのではないか。日本は外交が下手ですから、外務省にそう言っちゃ申しわけないけれども、しかしこの辺で少し達者な外交をしなくてはならぬ。そういう意味で言えば底流にあるアメリカの国民感情を酌み取った外交関係の調整に十分力が尽くされているかどうか。  たとえば安保ただ乗り論というような議論が国会の質疑の席ではなくなってきておりますけれどもどうもアメリカの国民の気持ちの中にはある。あるいは日本防衛努力の不足についてどうもアメリカの国民の気持ちの中にはわだかまりがある。そういった点は最近たとえば昨日の在日米軍司令官のドネリーさんの言明のように、あるいはアメリカの国会におけるいろいろな国会議員の意見の中で見られる議論のように、五六中業について日本の努力を非常に多とする、そういった議論もありますけれども、しかしその裏側にやはりもう少し日本は何とかならないのかという気持ち、いら立ちがどうもあるような感じがいたします。  そういうものについてまあ日本のジャーナリズムも盛んに取り上げてはおりますけれども、どうも隔靴掻痒の感じで日本の国民に訴えていない。日本の国民の中にある気持ちとアメリカの国民の気持ちとの食い違い、ギャップというようなものがほっておかれますと私は余り好ましい結果にならないのではないかという感じがいたします。  そこで、大臣に特にアメリカ政府の北東アジア情勢認識あるいはソ連の極東配備、そういったものに対する考え方と日本との間にコンセプションギャップといわれるものがないのかどうか、こういった点をまずお尋ね申し上げます。
  24. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) レーガン大統領が誕生後におきまして相当政策の転換があって、一言で言うなら強いアメリカを目指しておられる、それに対するほうはいとした国民の支持があった、こういうことが背景レーガン大統領の施策というものが遂行されておるわけであります。大統領としてはこのまま放置すればこの八〇年代半ばにはソ連軍事力で非常に優位になり東西間のバランスが崩れるのではないか、そういうことから西欧諸国日本に対してそれなりの軍備増強について要請をしてきておるということは大統領就任後の一連の会議やまた御所見ではっきりしておると思うのであります。  そういう大統領の方針のもとでありますから、日本が順調に経済が伸びておる状況下におきましては、アメリカの国会を中心として国民の期待は、もう一つ日本は努力ができるのではないか、そういう見地に一般的に立っておるのではないか。しかし残念なことに昨年十月以降の日本の経済は非常な下降状況にあるわけであります。そういう状況下に日本としては市場開放対策をとり、経済摩擦を解決しようとする努力に努めてまいったわけでありますが、なかなか日本の財政の非常に厳しいということについては、アメリカ政府、国民の十分な認識は得ておらないと思います。しかし私は閣僚の一人として、昨年の十月ごろまでとその後については非常な大きい変化があって、このことは十分アメリカ政府の理解を求めなければならない、あるいはアメリカ国民に知ってもらわなければならないということを痛感するものでございます。  幸いにいたしまして、最近におきましては経済界の交流あるいは政府レベルさらには青少年交流、そういうような面でいろいろ交流が非常に盛んになっております。また国会の皆様方におかれましても非常な御努力をちょうだいしておる、こういうことで次第に日本の実情を把握してもらえておるのではないか。ただ現在この秋の選挙を目前にいたしまして、それからの影響もこれは無視することができない状況で、非常にむずかしい条件下にはございますが、何といっても日本外交の基軸は日米関係であり、また経済面を見ましてもすでに六百億ドルを超えるそういう貿易関係にございますから、今後とも日米関係をもっと良好なものにするためのあらゆる努力を必要とすることは言うまでもないと思う次第でございます。
  25. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 考え方の相違という点で二、三御質問したいのです。  一つは、アメリカで安保改定論を日本に要求しろというような議論が一部にあり、また一部には米軍の段階的撤退論を日本に突きつけるべきだという議論があった。これは二つとも大分アメリカ側の対日認識がおかしいのじゃないかと思うのですが、こういう議論は最近アメリカの国会では抑えられてきておるということですが、しかし実はこの五月の末に私もアメリカに参りましてアメリカの民間の方といろいろ話ししましたら、安保改定論的な発想の議論がありました。そういう点をどう考えられるか。  それからもう一つは、ソ連がグローバルパワーになってきた、したがってソ連のグローバルパワーに対しては全面的に柔軟に対応する戦略が必要だ、したがって日本がその一翼を担うような形の役割り分担が要る、こういうことを最近レーガン政権は言っておるようでございますけれども、一方ではソ連は穀物が常時足りなくて非常に農業が弱点の国であるとか、あるいはソ連の衛星諸国に対して経済的に十分これを把握する手段に最近欠けてきて、いささか弱っておるというような情報も入っておりますけれども、一体、これはレーガン政権の批判になってはまずいかもしれませんけれども、グローバルパワーとしてのソ連という言い方はいかにも大時代的で、精密な外交関係を樹立していかなければならない日本の立場としては必ずしも同調できないような感じもするのですが、その点はいかがでしょうか。
  26. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私から、まずアメリカの安保改定論についてどういうふうに考えるかということでございますけれども、これはもう先ほど御説明いたしましたように、確かに一部の議員あるいは一部の市民の中に安保改定論というものがあって、いまもあるというのは事実でございます。しかし大勢は先ほど御説明したように現在の安保条約というものが十分機能しておるので改定する必要がないということでございまして、ヘルムズの安保改定論も取り下げられたということでございますが、ただやはりその背景及び全体の流れを見るときに、アメリカが非常に現在経済的に苦しい立場にある、しかし同時にアメリカとしては国防に力を注いでいるときに、やはり日本あるいはNATOに対して防衛あるいは国防に対してもう少し力を注いでいってもらいたいという気持ちあるいは焦燥感というものがあるのは事実でございます。  もちろんわれわれとしてはそういうアメリカ側の世論、それがまた貿易あるいは経済摩擦と結びつかないようにしていくというのがわれわれの責任であろうかと思って、それは先ほど大臣が御答弁したように、いわゆる官対官ということでなくて、やはり民間幅広いところでお互いの意見というものを交換していく必要があるというふうに私としては感じておるわけでございます。  次に、レーガンがグローバルパワーとしての立場からソ連を見ているということでございますが、やはりアメリカとしては軍事的な力というものは衰えたとはいえそのグローバルパワーとしての責任があるわけでございまして、その責任において果たしていく役割りというものは依然として残っているわけで、この点については同盟国としてはそれを認識していく必要があると思います。あるいは方法論において意見の違いがあるにしてもアメリカ側の持っている宿命というもの、これはやはり一日にして変えられないというふうに考えております。
  27. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) ただいま大坪委員からソ連が内部的に脆弱性を秘めている、これをもってグローバルパワーと称するのはいかがなものかという趣旨の御発言がございました。これにつきまして私どもの考えを申し上げます。  確かに一九八〇年代に入りましてソ連の抱えている問題というのはいろいろな面で顕在化した、こういう意味であたかも一九七〇年代、これは私の見解ではブレジネフ政権にとっては最も政権発足以来安定したいわば黄金の十年であったと思いますけれども、そのつきが落ちつつあるというような印象を受けます。にもかかわらず私は二点指摘したいと思います。  その第一点は、ソ連経済が非常に農業を含めて悪いのではないかという観測が一般でございますけれども、実はソ連の経済は効率は悪いけれどもすぐれて強力な経済であるということは指摘できるかと思います。なぜかといいますと、要するに国の資源、資力、資金をすぐれて軍事力に投入できるそういう体制を持っている国であるということでございます。ブレジネフ政権は確かに大砲もバターもと言っておりますが、問題は大砲の後にバターが来るということでございます。  それから第二点、これにつきましてはさらに分けますと二つあると思います。一つは、ソ連が過去四半世紀の間GNPにして一二%−一四%、これだけの財力を軍事力に投入してきた。そこから生ずる蓄積効果、これが顕在化するのは恐らく一九八〇年代、今後であろうという状況がある。第二点、このような質量ともに強力な軍事力背景にして、オペレーションの面では、一つにはソ連として多正面に出る多正面作戦が可能なような状況が出てきた。もう一つは遠隔地に兵力を投入できる、またしつつある、こういう状況が出てきた。これをアメリカあるいは西側からとりますと、まさにグローバルな進出でありグローバルな脅威であると見ざるを得ないというふうに考えております。
  28. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 この間、八月五日ごろでございましたか、日本記者クラブでマンスフィールド・アメリカ大使が、五六中業が非常に日本の努力ででき上がって大変喜ばしいけれども、もう少し加速してもらいたいというようなことを述べられたと思います。それから、わが方の独自の問題で考えた場合に、日本有事だけではなくて極東有事あるいは中東有事というようないろいろな事態に対応して、現行の日米安保条約の上でも日米間で事前に十分協議し詰めておかなければならない問題が幾つかあるような気がいたします。  もちろん当局としてはそういう点について努力をされておるでしょうけれども、こういった問題を具体的に取り上げて一つ一つ国民の前にはつきりさせていただくことが日米間のコンセプションギャップを克服する最も具体的な手段じゃないかと思うのですが、その辺は大臣はどのようにお考えですか。
  29. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 大坪委員の御指摘のとおり国民に対して十分この諸状況というものを徹底し理解をせしめる、こういうことは言うまでもないことだと思うのであります。  ただ、たとえばマンスフィールド大使のお話が出ましたが、五六中業に対しての一つ見解をお述べになっておる、それはそれとして、やはり日本政府は一体それをどういうふうに見るか、政府としてそしゃくをしたそのことを国民によく徹底をしておく必要があるのではないか。先ほども申し上げましたように、五六中業に基づいて日本が自主的な防衛力の強化に努めていく、非常に財政厳しい中でも概算要求は特別枠でやっていくという、そういう特段の配慮をしておるわけでありますが、しかし現実にはそれを遂行するにしても非常に財政状況が一層困難になっておるというようなこともございますから、したがってマンスフィールド大使がこう言っておる日米関係を配慮するならそういう方向に持っていくべきかと直ちに言えない。やはり十分政府としてはそしゃくをしながら国民によく理解を求めていく、こういうことがいいのではないかと思う次第でございます。
  30. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 最後でございますけれども日本の戦略と申しますか、自衛力の根拠はあくまで侵略を抑止する力としての自衛力でございます。  で、この前も防衛庁長官にお尋ねしたのですが、やっぱり物を守るというのには盾と矛が要るわけでございまして、現在の日本は憲法及びこれに関連するいろいろなたてまえ、そういう立場をしっかり立てまして、盾でもってしっかり守りますという自衛力を明らかにしておるわけでございます。しかし、それだけでは現在の国際情勢の中で防衛を全うすることはできないことはもう明らかなことなんで、したがって、いざという場合には矛を持っておる米国にも手を握ってもらって、そして通常兵器による攻撃力に対しても、またそれを超えるような攻撃力に対しても抑止力日本にあるという形をとらざるを得ない。そういう防衛政策的な日本の立場と、それから近隣諸国、特に超大国でありますソ連や中国との間に平和共存を維持していくという外交政策、この二つの間の調整というのは日本の国是として大変むずかしい問題であろうかと思うのでございます。  特に最近アメリカはアフガニスタン侵入に対する対ソ制裁措置として各国にいろいろ要求をいたしておりますが、米国自身が、これは先ほどもちょっと同僚委員から質問がありましたように、ごく最近大量の穀物の長期輸出契約をソ連と結んでおります。日本アメリカに農業問題で大分いじめられておりますから、農業には恨みがございます。これはまあ冗談ですけれども、そういうことから考えても、このアメリカの措置は非常にエゴイスティックに映る。あるいは戦略的にソ連の弱点を裏で補完しながら口でけんかをしているのかもしれませんけれども、やっぱり西欧諸国わが国を十分納得させる対ソ制裁措置の根拠にはならないような気がする。ヨーロッパ諸国は非常に最近厳しい対米対策で、ソ連に対してはパイプラインに関連してこれをあくまで約束どおり実行するということにしておるようでございます。これは非常にアメリカと仲のいいはずのイギリスまでそういうことをしておる。わが国はアフガニスタン侵入以来非常にアメリカの立場を考えて対ソ制裁協力をしてきておるはずですけれども、そのわが国に対してもアメリカヨーロッパとの関係もこれありということで言っておるようですけれども、サハリン開発の対ソ禁輸措置ということを日本に言ってきておる。こういうのはどうもちょっと私どもは納得できないのでございます。  日本安全保障の観点から言えば、先ほど申しましたようにハードの面の自衛力の対峙だけではなくてソフトの面の外交ということが非常に重要だとなれば、特にソ連に対応するわが国の外交政策の中で、こういう問題について政府はもう少し積極的な、まじめな、まあまじめと言うと語弊があるけれども、真剣な取り組みをしていただきたいという感じがいたしますが、いかがなものでしょう。
  31. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) アメリカの穀物再輸出につきましては七月三十日に単年度延長するという決定が行われ、近くソ連と具体的な交渉に入るというふうに聞いております。  アメリカ穀物輸出に再度踏み切った理由につきましては、先ほど外務大臣から御説明がありましたとおり、もしアメリカがとめてもほかの国が輸出するという状況ではしり抜けになってしまうじゃないかという理由、そのほかにアメリカ穀物輸出ソ連からの外貨を吸収するものである、ソ連に外貨を与えるものではない、三番目には、こういうことをしても西側ソ連に対する依存度が高まらない、かような理由を掲げているわけでございます。いずれにいたしましてもアメリカは単年度の延長はいたしましたけれども、長期穀物協定の再交渉には入らないという立場を守っているわけでございます。  対ソ制裁という言葉が正しいかどうかわかりませんが、こういう西側ソ連に対するいろいろな措置はやはりソ連に経済的文化的な圧力を加えることによってソ連の態度に自省を促す、その行動を牽制するという目的があるわけでございますが、これを実効あらしめるためにはやはりあくまでも西側が結束して当たるという必要があろうかと思います。やはりしり抜けというような行為があってはならない、かように考えているわけでございます。  現在米欧間あるいは日米間にいろいろ経済問題に関連いたしまして意見の相違があることは事実でございます。しかし基本的な認識としてやはり東西関係については、特に東西の経済関係につきましては安全保障の考慮を含めてやらなければいけない、慎重に進めなければいけないという点については西側のコンセンサスがあるように考えております。  西ヨーロッパ日本との協力という点についてただいまお触れになりましたけれども、もちろん西ヨーロッパとは意見交換、情報の交換はいままでもやってまいりましたし、今後も引き続きやっていくつもりでございます。しかし日本の抱えている案件、具体的にはサハリンの石油でございますが、それと西ヨーロッパの抱えている案件、いわゆるヤンブルグの天然ガスの問題でございますが、この両者はその性格も経緯も非常に異にするものでございます。したがいまして西ヨーロッパとは今後とも意見交換等は進めていくけれども、やはり西ヨーロッパと一緒になってアメリカに当たるという段階ではないように思います。やはり日本といたしましては今後とも日本独自の立場に立ってアメリカに対しいろいろ申し入れを行い、その再考を求めていくべきではないか、かように考えている次第でございます。
  32. 勝又武一

    ○勝又武一君 二月二十六日の当委員会で、大臣は安保問題に関する所信の表明をされました。その中で「わが国安全保障を確保するために、近隣諸国との間に円滑かつ安定した関係を構築していくことがきわめて重要」だということを強調されました。私も全く同感ですが、現在のアジア情勢は一体どうなのか。「円滑かつ安定した関係」と言えるのかどうなのか。  中国、韓国、東南アジア諸国から、日本の教科書の改ざん、歴史的な事実を歪曲しているという国を挙げての非難や追及や抗議が続出しておるわけでありまして、一体わが国がよくてそれらの国の文句を言っている方が悪いのかどっちなのか、はっきりお答えをいただきたい。これらの国の抗議を受けたいまの問題は、私は単なる教科書問題ではなくて重要な安保外交問題だというように考えますけれども大臣の所信はいかがでございますか。
  33. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私が所信表明の中で申し上げたことは現在においても私はそのとおりであり、またそのように取り進めてまいりたい、このように思っておる次第でございますが、最近における教科書問題を発端としてのわが国に対する中国、韓国を中心とするそれら諸国の国民世論の動向というものは、これは御指摘のように外交の重要な問題として慎重に見守っていかなければならないことではないかと思います。  教科書問題は問題として一つございますが、しかしそれを離れて、一体日本の現在の姿というものが中国、韓国から見て、あの敗戦当時の反省というものがあるのかないのか、あるいは日中共同声明に基づくところの中国に大きな損害を与え迷惑をかけた、そのことを反省し責任を感じて今後に対応するというようなそういう姿かどうか、あるいは韓国におきましても国交回復当時の椎名外務大臣の言われたようなことになっておるのかどうかというようなところまで批判の目が向けられてきておるわけでありますが、このような日本姿勢についてはわれわれはやはり反省をし、そして責任を感じての努力をしなければならない、このように思っておる次第でございます。  そのことをおいて考えてみますならば、先ほども申し上げましたように、日韓間あるいは日本中国間における経済関係あるいはASEAN諸国との貿易関係経済関係を見て、それほどまずくぎくしゃくしたような状況であるかということはそれは私は考えないところでございますが、不幸にして現在厳しい批判の声が上がっておるときでありますから、これらの問題については日本として冷静にまた謙虚にこの批判に対しどのようにこたえていくかというその姿勢が重要ではないかと思う次第でございます。
  34. 勝又武一

    ○勝又武一君 大臣にお願いしたいのですけれども、きょうは時間がきわめて限定されておりますので、一つずつお聞きしようと思ったこと大体みんな先に答えられちゃっているわけですけれども、ぜひ御協力を賜りたい。  そこで、いま大臣も幾つか挙げられましたけれども、そういう日中共同声明なり日韓共同コミュニケなりそのこともお聞きしようと思っていました。大臣も全くそのとおりだということですからそれは省きます。  そこで、大臣がいまおっしゃっていらっしゃるように、私は外務省の主任務というのは国際間の協力、協調、そして世界の中の日本だという考えが大切だと思うのです。安保とか外交というものは本来国際間の摩擦をなくすべきものだ、こういうふうに考えますけれども、この点の見解はいかがですか。
  35. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま勝又委員のおっしゃられましたことは私も全く同感でございまして、国際間の協力また世界の中の日本としての責任を果たしていきたい、こう思います。
  36. 勝又武一

    ○勝又武一君 そこで一つだけ、日本がアジアの近隣諸国を侵略し迷惑をかけてきた、こういう気持ちで先ほどのような問題が幾つか出てきている。  そうしますと、たとえば中国孤児の問題というのが一つあると思うのです。孤児を養ってきた養父母の問題をどうするのか、長い間育ててくださったそういう養父母の皆さんに対する養育費について、中国には賠償を払わなかったけれども、せめても日本の政府が責任を持ってお礼をする、お支払いをする、こういう気持ちが当然あるということが必要だと思いますけれども外務大臣としてどうお考えになりますか。
  37. 長谷川和年

    説明員長谷川和年君) お答えいたします。  委員ただいま御指摘の問題に関しまして、外務省としましては従来から中国政府の理解と協力を求めることが重要と考えまして、中国側と十分協議して対策を進めてきた次第でございます。今後とも孤児の養父母の問題につきましては、そういった養父母の扶養などの問題も含めまして中国側の理解を得ながら親族探しのための訪日あるいは身元調査、こういった問題の促進等積極的に取り進んでまいりたいと思っております。  また、ただいま委員御指摘の必要資金の貸し付けなども現在厚生省が御検討中でございまして、公益法人が孤児等にかわって送金する制度なども検討されております。
  38. 勝又武一

    ○勝又武一君 中国の都市を私が訪問したときに、これは上海でも長沙でも北京でもそうでした。今度二十三日から私はまた主として中国の東北地方に出かけますけれども、団体として行動しているときと個人で北京や長沙の町を歩くときに中国の皆さんが私に向ける目のどぎつさ、そのことを痛感するわけです。それはまだまだ親兄弟、子供、肉親、そういうものを虐殺された人たちがいま生きているわけです。  私はやはり日中国交回復のときに本当に反省をしたことを謙虚に反省する気持ちが率直に言うと文部省なり自民党の一部文教族と言われるような人たちには足りないのじゃないか。この気持ちがあれば今度のような私は教科書問題というのはむしろ起きていないのじゃないか。そういう意味で特に国交回復後わずか十年たっただけ、それまでの二十数年というのは中国敵視政策をとり続けてきた。わが国はいま経済大国だと豪語しアジア諸国をべっ視をしているという気持ちですね。私はそういう片りんがやっぱりあるのじゃないか。そういうことをやはり政府として特に外務省としてはこのことを真剣に考えて対処する必要がある、こう考えますけれども大臣はいかがでございますか。
  39. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 勝又委員のおっしゃられるとおり私は感じます。日中国交回復十年という節目の年を迎えておるわけでありますが、国交回復前の日本の中国に対する行為については、日中共同声明の前文を引例するまでもなく、われわれとして深い反省と責任を感じなければならないことであって、この十年の間にそういう面がすっかり払拭されておるのか、こう言うならばそれはそういうことではない。日本としては長い間の経緯から迷惑をかけたいろいろな面があるのでありますから、それらの点を十分念頭に置いて対応していかなければならない。  今回の問題につきましても外務省として中国また韓国の国民世論動向を見ますときにそのようなことを本当に切実に感ずる次第でございまして、そういうことを日本の各方面に外務省の責任としてよく認識をしてもらう努力をしておる状況でございます。
  40. 勝又武一

    ○勝又武一君 新聞論調を見ておりますと、そのわりには文部省は正直言って外務省を少し腹の中では、まあどう言ったらいいのでしょうか、ばかにしているのじゃないか、率直に言って教育のことはわからないくせにうるさいやつらだ、こういう気持ちをむしろ持っているのじゃないかということさえ私は思います。外交よりも検定制度の方が大切だ、こういうように思い込んでいるところがあるのじゃないか。  本来憲法なり教育基本法に基づいた教育というものを真剣に考え、未来の国民像はどうなくちゃいけないかということを本当に考えていれば、当然先ほどから外務大臣がおっしゃっているように、国際的視野に立ち国際人としての行動能力を持つ国民の育成、国際性のある教育を目指すのが当然だというように私は考えるわけです。憲法なり教育基本法の精神そのものです。外務大臣の御見解を承りたいわけです。
  41. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま御指摘の中に、文部省が文部省としての立場で検定制度をどういうふうに取り運んでいくか、これはこれで文部省としてのお考え、責任があると思うのであります。  私としては外務省が関係国の国民世論動向を見て、そのことが正しく日本の国内に反映することが必要である、日本の国民が知ってもらう必要がある。そのことをさらに突き進んで申し上げますならば、ただいまお話がありましたように、この国際関係の非常に密接になっておる日本現状からいたしますならば、そういう国際的な認識を十分持ったまた国際人としての活動のできるようなそういう人間形成を志向する必要がある、これは外務省の立場からは当然考えなければならないことだと思います。
  42. 勝又武一

    ○勝又武一君 これは四月十二日にNHK特集というのがございまして、教科書の検定について大々的に報道をされました。いままで密室の検定と言われていたのが全部録音テープで全国放送されている。大変これは視聴率が高くて反響を呼んだわけですよ。私は文教委員会や予算委員会で再三教科書問題をいままで取り上げてまいりましたけれども、特にこの反響は大きかった。つまり文部省の密室の検定というものはNHKの報道を通して明らかにされた。さらにこれは再放送をされましたよね。それが一つ。  そこへもってきて、きょうの朝日新聞の一面トップ記事ですが、「文部省教科書修正要求に見解」というので、この二面には「教科書検定文部省の見解要旨」という、これは文章で事細かく出ているわけですね。そしてこの文部省見解というのをよく読んでみますと、きわめて歴史的な事実に対する文部省の認識には疑問が多い、これでは中国や韓国に対する説得力は全くない、もうこういうように明らかにしているわけですね。しかもいわゆるお役所、まあお役所というか文部省という官僚の皆さんの「常とう手段である「行政指導」という責任逃れ」、これは侵略をされていた中国や長い植民地弾圧を受けていた韓国の大衆や国家に、国民に適用する考え、そうとは決して思われないわけです。しかもこの朝日の記事によりますと、教科書を執筆した大学教授の皆さんは「「文部省の説明には奇弁が目立ち、事実と異なる部分もある。執筆者・編集者への責任転嫁も散見される」と反論している。」と、こういうように書いているわけです。  私は、文部省がこの程度の説明資料で中国や韓国を説得しようとしても全く不可能だ、これはまさにもう外務大臣がおっしゃっているような方向でなければ善隣の友好関係は保てない、まさに安保と外交問題の本質から外れている、こういうように考えますけれども大臣はいかがお考えになりますか。
  43. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いま文部省の考え方、これは朝日新聞の記事に基づいて御批判が出たわけでございますが、私は国務大臣として現在外務省の責任の衝にあるわけでございまして、ただいまの文部省のお考え、それについてどういう考えを持っておるのかということにつきましては、大変恐縮でございますが、ちょっとお答えをいたしかねる、こういうことでございます。
  44. 勝又武一

    ○勝又武一君 各東南アジアを含めた近隣諸国の皆さん、これは一つずつ私が挙げるまでもなく、いま中国や朝鮮民主主義人民共和国、韓国、シンガポール、フィリピン、タイ、香港、マレーシア、もうこれらのところがそういう批判をしているということは各紙が報道しているとおりですよね。そして特にこの教科書検定に厳しい海外の目とか、加害者意識を忘れた日本だとか、そういう連日報道する中で、特に日本防衛予算の別枠突出問題、この間も議論がありました五六中業の十六兆から十七兆というような軍備拡大、これらは日本の軍国主義復活と結びつくのだという意味での各国の指摘があるわけですよね。  私が外務大臣にお聞きしたいのは、そういう点について片方では歴史的な事実を歪曲し、改ざんし、戦争を美化しよう、アジアの近隣諸国の対日観に重大な悪影響を及ぼそうと、こういうことに対する文部省のこの程度の方針では、そういうものは日本の外交政策としてはきわめて不適切じゃないか、こういう意味でお伺いをしているわけです。ですからそういう意味で私は率直に言うと、これはまさにもう閣内不統一じゃないか、外務省と文部省の考えというのは大きく食い違っているのじゃないか、そういうふうにさえ思いますけれども大臣、いかがでしょうか。
  45. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 近隣諸国ただいま国名をずっと挙げられたわけでございますが、それらの諸国における政府の考えあるいは国民世論の動向、これを注意深くよく把握するということは外務省の必要なことであり責任だと思います。  ただいま全般的にそれらの諸国が日本の軍国主義復活を懸念しておるのじゃないか、そういう国民世論が起きておるのではないか、こう言って御指摘でございました。私はそういう問題につきまして日本は平和憲法を持って二度と再び第二次大戦当時のようなそういう惨禍を繰り返さない、こういうことは日本の基本姿勢でございます。そのための憲法も持っておるわけでございます。日本のいまの防衛というものは、日本の専守防衛を念頭に置いた全くの日本防衛のためにどのようなことをすべきかということに基づいてのいろいろな施策が展開しておるわけでありますから、それらの点についても十分各国の理解を求める必要があると思います。ただ現在日本に対して厳しい目が向けられる、批判がある、こういうことについてはそれらを謙虚に受けとめまして、かりそめにもそのようなことがあってはならない、このように思う次第でございます。
  46. 勝又武一

    ○勝又武一君 私は外務省の任務というのは、当然いまおっしゃっていらっしゃるようにこれらのアジア諸国との間に信頼の回復を図ることにあると思います。そういうまた信頼回復のための外交を展開する必要があると思うわけです。そういう意味で腰を据えたアジア外交をこそ行うべき重要ないま時期ではないか、そういうふうにさえ思うわけです。  そういう点で再三外務大臣の御見解を承っておりますと、全く文部省の方針というのはこれに逆行している、そうとしか考えられません。私は本日は宮澤官房長官の御出席を要請いたしまして、政府としての統一見解をお聞きしたいと思っておりましたが、衆議院の時間の関係で宮澤官房長官は午後においでになるようでございますので、午後の時間をいただいて、これらの問題についてももう少し官房長官にもお聞きをしたいと思いますが、当然内閣官房と外務と文部とが三者一体になってやらないといけないのじゃないか、そういう意味で先ほどから閣内不統一ではないのか、こう言っているわけです。  そういう意味で、まさに文部省の方針と外務省の方針というのは大きく食い違っているというように私は考えますので、大臣として御努力をいただきたいと同時に、この点についての御見解を再度お伺いをするわけです。
  47. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 何か閣内不統一ではないかという御懸念を持たれておるわけでございますが、これはなかなかむずかしい問題だと思うのですね。検定制度、教科書の問題について責任を持っておる文部省がその立場でいろいろお考えになり処理をされておる、しかし残念ながら日本の戦後の姿勢がこの問題を発端として批判を受けておる、そういう現実に直面したわけでございまして、外務省はそういう各国の世論動向をこれを正しく伝え、そしてそれが反映されることを努力するということでございまして、現在その努力が続けられておる段階でございまして、直ちに外務省と文部省が意見が違うというようなことではない、私はこの文部省の考えについて外務省としての立場からはいろいろな情勢、動向をお伝えしておるということで、現実に問題になっておることについて私がいろいろ意見を言うということにつきましては、それはやはり多少自制をしながら、文部省の行き方についてよく見守っていく必要があるのではないかと思うのであります。  それをもって不統一と言われては私は非常に残念なのでございまして、そうでない、外務省は外務省としての立場に忠実で、努力をして、そして御懸念のないような成果の上がるように努めたい、こう思うのであります。
  48. 勝又武一

    ○勝又武一君 他国からの信頼を回復するただ一つの道は、問題になっておりますいわゆる歴史的な事実というものを認めるという、こういうことをまず出発点にするしかないのじゃないか、そういうふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  49. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいまの御指摘の点がいま政府としては鋭意努力をしておるところでございまして、そのために各国状況を正確に外務省は把握をしたい、また関係者がその衝に当たっておる出先の大使館によく問題の把握をしてもらおうということで説明に行く、必要があれば相手国に対してもよく理解を求めよう、そういう努力がいま続けられておるところでございまして、私はそういう努力は必ず関係国の理解が得られ、そして将来に向かって相互信頼の素地が得られるものと、このように思う次第でございます。
  50. 勝又武一

    ○勝又武一君 私は歴史的な事実というのはこれはもう動かすことはできないものだというふうに考えます。そしてまた中国でも韓国でも朝鮮民主主義人民共和国でも、その他の東南アジアの諸国でも、私が先ほど指摘をいたしましたように実際犠牲を受けた人たちが現実まだ生きていらっしゃるわけです。過去の話じゃないわけです。ですからそういう意味での歴史的な事実というものは動かしようがない、悪かったことは悪かったと率直に認める、こういうことが当然基本にあるから例の日中共同声明なり日韓共同コミュニケも出たわけであります。  そういう意味で、再度私はこの点を申し上げますけれども、この点が非常にやはり文部省の考えと私は外務省の考えが大きく食い違っている。ですから恐らくきょう中国で外務、文部の両局長さんが努力されていらっしゃるでしょうけれども、私はこの成果はきわめて疑問だというふうに思っております。この程度で解決できる問題じゃない。  だから、先ほどもこれも挙げましたけれども、文部省の検定の録音テープがもうすでに国民には明らかになっている、そういう中で世界の人たちもその事実を知っているわけです。記述の表現をやわらげようとしたという事実を率直にまず認めるというところが出発にならなければこれはもう解決にならない。歴史的な事実を認めるということになればそういう再改訂の方向を、どういうような判断に基づいて具体的にやるかは別にしてそこを出発点にするしかない、そういうふうに思いますけれども、重ねて外務大臣の御見解を聞きたいわけです。
  51. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 外務省が現在非常に責任を持っておることは、今回の中国あるいは韓国の国民世論あるいは政府申し入れ、そういうものからいたしまして、日本が果たして日中共同声明に指摘をしたように、あるいは日韓共同コミュニケの中で言われておること、そういうことが本当に関係国から見て守られ行われておるか、多大な損害、迷惑をかけた、そういう反省の実が上がっておるのか、責任を感じておるのかということがこれが一番の問題点だと思うのでありまして、そういうことが日本の国内におきましてはだれもがそのことについて常に念頭に置いて関係国に対する反省、責任というものを感じておらなければならないと思うのであります。それが私は基本である。  そして、それがどのように表現されていくか、そういうことにつきましては当然そのことを十分踏まえますならば結論ははっきりしておるものと私は思うのでありますが、現在この問題について真剣に取り組み、またそれぞれの立場で理解を求めようとすることについては理解を得たいと、こういう努力をしておることでございますので、この辺を御了承おきいただきたいと思います。
  52. 勝又武一

    ○勝又武一君 全く全然御了承できないわけですよ、そういうお話では。  だから、私は大臣が苦悩されていることもよくわかるのです。しかし私は大臣お話で私も一致していると思いますのは、この問題は単なる教科書問題とか文部省ペースの問題ではない、日本安全保障なり外交の問題だという点で私は認識は一致したと思うのです。そうすれば中国なり韓国は再改訂をするしかもう方法はないのだということを明らかにしているわけですから、そしてまた大臣もいまそういう歴史的な事実をお認めになっていらっしゃるわけですから、これはもう教科書の再改訂をするしか方法はないのじゃないか、そう思いますけれども、いかがでございますか。
  53. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私が先ほどから繰り返し申し上げておることで外務大臣としての誠意をお認めいただきたいと思うのであります。  非常に今回の問題のむずかしいことは、戦後ずっと積み上げられてまいりました教科書検定制度というものがあって、それがいろいろ批判を受けずにりっぱにその権能を発揮できるかどうか、こういうことについてはおのずからその責任に当たる方々によって十分配慮されるべき問題で、そういう問題が一方にございますから、これを外交面からいろいろ言うということについては私はこの際は差し控えるのが妥当でないか、こう思っておるわけであります。
  54. 勝又武一

    ○勝又武一君 九月二十九日がいわゆる日中国交回復十周年記念日、それから九月下旬に鈴木総理の訪中という日程が新聞報道をされているわけです。  そして、重ねて申しますが、私は先ほどのような単なる検定制度を守るために小手先のごまかし的な技術的な方法、そういうようないまの文部省の展開ではなくて、この問題は国際的な視野に立つ、国際感覚の上に立ったきわめて高度な政治的判断で早急に政治決着を図らなくてはいけない、これはもう当然国民のだれもがそう考えている、私はそれがもうまさに国民の世論だ、そしてまたそれは外務大臣なり官房長官なり総理なりの最終的な政治決断の問題だというように考えますけれども、最後にこのことをお伺いをして、同時にまた官房長官にかかわる質疑については午後に保留することを申し上げまして質問を終わりたいと思います。
  55. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま御指摘のとおりに、この問題は関係国から見まして本当に日本が虚心坦懐にみんなが心を合わせていい結論に至った、こういうことでなくてはいけないと思うのですね。そこに非常に苦慮する面があるので、ただ単にびほう的なそういうことであったらば、これはもう禍根を残すばかりでありますから、いまいろいろ議論のさなかでございますが、私は誠意をもって関係国がなるほどと御納得いけるような結論にいくよう外務省の立場で努力をしたいと思います。
  56. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 午前の質疑はこの程度にいたしまして休憩をいたし、零時五十分に再開いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後零時五十九分開会
  57. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから安全保障特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお題いいたします。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 大臣にお伺いいたしたいと思いますが、これはまあ防衛庁の仕事ではありますけれども日本海で日米海軍の合同演習があるということを聞いております。場所が場所でありますので外交上注目を浴びる可能性があるのじゃないかという気がいたしますが、まず防衛庁の方からその規模内容等について御報告をいただきたいと思います。
  59. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海上自衛隊は明八月十一日から十五日までの五日間、さらに八月下旬におおむね五日間程度米海軍と共同で対潜戦を中心といたします訓練を行うことにいたしております。  訓練海域は、いま御質問にもありましたように能登半島北方の公海上の海面でございます。岸からの距離は、一番近い佐渡島から近いところで約六十キロ、遠いところで三百六十キロぐらいの海域になります。  なお、訓練内容といたしましては、主として対潜捜索攻撃訓練、水上打撃戦訓練及び防空戦訓練などを予定いたしております。  参加いたします艦艇でございますが、わが方の部隊が、これは前半の五日間のものでございますけれども、護衛艦が七隻、補給艦が一隻、潜水艦が一隻、そのほかに航空機、P2Jでございますが若干参加をいたす予定であります。なお米海軍の方は空母が一隻、巡洋艦が一隻、駆逐艦が一隻、フリゲート艦が三隻、それに補給艦一隻、潜水艦一隻、航空機は艦載機及びP3C等が若干参加をするという予定にいたしております。  なお、八月下旬に予定をしております演習につきましてはまだ細部は決まっておりませんけれども海上自衛隊としては護衛艦が七隻、潜水艦が一隻、補給艦一隻、航空機が若干、米海軍の方は艦艇が八隻、航空機が若干機ということであります。  なお、前期と後期に参加いたします艦艇、部隊等はいずれも日米双方とも別の部隊でございます。
  60. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 どういう状態を想定した訓練、演習なのか、その点も御説明願いたいと思います。
  61. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申しましたように、今回の訓練は基本的と申しますか汎用的な対潜捜索訓練あるいは水上打撃戦訓練ということで、特定の事態要素といったものを想定した演習ではございません。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 特定の事態を想定した訓練ではないと言うけれども、特定の事態を想定しない訓練なんというのはあるのかどうか、ちょっとその点がわかりにくいのですが、アメリカの航空母艦が参加をしておるということになると、常識的に考えられるのはアメリカの航空母艦に対する護衛といったような任務ということが出てくるのではないかというふうにも考えられる。そのアメリカの航空母艦あるいは巡洋艦等と日本海上自衛隊等の役割りはどういう分担になってどういう訓練をするのか、その点もお伺いいたしたいと思います。
  63. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 過去にたびたび御答弁申し上げていると思いますけれども、日米の共同作戦と申しますのはそれぞれの指揮系統に従って、相互に密接な連絡はとりますけれどもそれぞれの立場で作戦を行うということでございますので、今回の訓練も日本側が米側を護衛するとか、そういったような考え方でございませんで、先ほど申したような対潜作戦あるいは対水上艦作戦、そういったものでございますから特に米側と日本側一つの部隊をつくるといったようなことではございません。  なお、念のために申し上げますけれども、先生御案内のように、たとえば対潜水艦作戦と申しますのは、海水の温度でございますとかあるいは海底の状況、そういったそれぞれの海域特性といいますか、そういったものに応じた最適の戦法というものがとられて初めて効果を発揮いたすものであります。したがいまして、日ごろからわれわれといたしましてはいろいろな海域で訓練をいたしまして、それによって戦術技量を向上していくということが非常に大事だというように考えているわけでございます。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いま防衛庁から報告のあったとおり、佐渡島を中心とした日本海でもって日本アメリカの艦隊が合同で演習をやるということであります。特定の場合を想定しているのではないというふうなお話がありましたけれども、軍隊の演習というのは、特定の場合を必ず想定をした上でないと演習というものは成り立たないという気がいたします。  したがって、表面上の弁解はともかくとして、そうすると仮想敵国というものは、ソビエト極東海軍を仮想敵国とみなして日本海で演習をするのだというふうに常識的に見られてもこれは仕方がない。そういう外交上の配慮というものは当然これは払わなければならぬと思うのでありますが、この種の海上自衛隊と米海軍との共同演習などというものは外交ルートを通じてあらかじめ話があるものなのかどうか、それに対して外務大臣として了承を与えて始められたことなのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  65. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日米共同訓練が行われる場合に際しましては外務省は防衛庁から連絡を受けておるというのが従来の例でございます。
  66. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 防衛庁から連絡を受けておると言うけれども、結局防衛庁からこういう演習をやるという連絡を受けるだけであって、外務省としてあらかじめそういう演習の内容についての報告等を聞いて、それに対するいいとか悪いとか、望ましいとか望ましくないとかいったような意思表示というものはやらないことになっているのか、その必要がないことになっておるのか、その点はどうなっているのですか。
  67. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま大臣が御答弁されましたように、本件について防衛庁から連絡を受けました。その内容についても先ほど防衛庁の方から答弁されたようなこと、すなわち実施期間であるとかあるいは参加の船、航空機等の内容についても同様の通告を受けております。  その場合、私たちが第一に考えたのはやはり日本の漁民に対する安全ということでございまして、この点については昨年の経験もございますし、今回防衛庁の方で水産庁とともに十分協議されてその安全の確保に努められているということでございますし、われわれとしてもアメリカ側に対してこの種の訓練を行う場合には十分安全を確保してほしいということは日ごろから申しているわけでございます。  それから、この種の訓練の是非について、これはやはりアメリカ側抑止力というものを高める上からいってわれわれとしては必要であるというふうに認定しております。
  68. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日本海で日米海軍の演習ということになれば、当然これはだれが考えてみてもソ連の極東海軍を意識した訓練というふうに考えるのが常識だと思うのでありますが、もしもこれが場所を変えてパールハーバーの沖であるとかアメリカ本土の近辺にソビエトの海軍がたとえば日本海上自衛隊と一緒に訓練などということがあったとすれば、ハチの巣をつついたような騒ぎになるのじゃないかという気がいたします。そういうことはまあ現在の状況ではあり得ないことなんでありますけれども、裏返して言うと日本海で日本アメリカ共同で訓練をする、しかも航空母艦まで参加をするということは大変なことだという気がいたします。外交上の問題として黙っていていいものかどうか、当然のことだというふうに片づけてしまっていいのかどうか、私はちょっと疑問に思うのです。その点外務大臣としては別にそんなに気に病むことはないのだというふうに考えておられるのかどうか、その点もお伺いしたいと思うのであります。
  69. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日本アメリカとの間で安保条約を持っており、また先ほど局長の方から申し上げましたように日本の安全については総合的な抑止力必要性も認めておるわけでございまして、今回の共同訓練をやる、こういう場合にその抑止力のために必要な訓練ではないか、こういう認識を持っておりますから、この訓練について外務省が何か批判的なことを言うとか、あるいは防衛庁と米軍との間の取り決めについてそれに対していろいろ文句をつける、こういうふうなことは考えておりません。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 参加するアメリカの航空母艦というのは何という船なんですか。
  71. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ミッドウェーと申します。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ミッドウェーとなると、これは排水量何トンでしたか。
  73. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 五万一千トンございます。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ソビエトの極東海軍に入ってきたヘリコプター搭載の巡洋艦などとは比較にならない本格的な攻撃型航空母艦であるということをわれわれも聞いておるのでありますけれども、こういう大型の恐らく世界でも最もすぐれた装備を持った航空母艦が日本海に出かけていって日本海上自衛隊共同訓練をするといったようなことは、どこの国を仮想敵国としているのかということは結論としておのずから出てくるという気がいたします。日本はそういったような仮想敵国ということを想定しないでおるという話を前に聞いたことがあるのでありますけれども、仮想敵国を想定しないで演習などをやるということはいまでも行っていることなのか。そういういささか弁明じみた話というものが社会的に通用するのかどうか私は疑問に思うのでありますが、その点外務大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  75. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日本が特定の国を仮想敵国視するというようなことは従来からそのようなことはしないということを明白にしておるわけでございまして、ただいまも申し上げましたように、要するに安保体制の中で日本防衛抑止力の一環として共同訓練をする、こういう一般的な考えに基づいておると思います。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、よく伝えられる話でありますけれども抑止力の一環として三海峡の封鎖といったようなことも防衛庁一つの戦略としてはいろいろとわれわれ聞くのでありますが、そういったこともやはり抑止力の一環として当然のことであるというふうにお考えになっておるのかどうか、その点はどうですか。
  77. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいまの御質問は非常に広い意味の御質問だと思いますけれども、いろいろ国会で議論されている三海峡の封鎖、これを日本自衛隊が行う場合というものは明らかに日本が攻撃された場合というふうに限定されているわけでございます。ただ考え方としてそういう三海峡の封鎖という考えがあるわけでございますが、それを抑止力として説明するのかどうかということは、やはりそのときどきの国際情勢ということによって具体的な答えをお答えした方がいいのではないかという気がいたします。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この抑止力のいまの説明、大変歯切れが悪いのだけれども日本海でもって具体的に言うと、日米海軍が、まあ日米海軍と言うと日本も海軍ということになってしまうのだけれども、一々こっちが海上自衛隊で向こうが海軍だと言っていたのじゃ一言で言えないから仕方がないから日米海軍とこう言うのですけれども、この日米海軍の協力体制といったようなことは、これは明らかにソビエトを意識したものというふうに見られても仕方がないという気がいたしますし、きょうのある新聞によれば、「五六中業を達成すれば対ソ交戦、一カ月可能」である、これが防衛庁の試算による一つの結論であるということも報道されているわけなんです。こうなると、ますますもって穏やかでないことになってくるわけであります。  こういうふうに、外務省がどういうふうに考えていようと、防衛庁ではアメリカ側協力をして着々と一つの実績をつくっておるということが現実の問題としてあらわれておるのでありますが、これが果たして外交上黙っていていいものかどうか。その点防衛庁と外務省との間の連絡といったようなものがもっと緊密に行われてしかるべきではないかという気がいたしますが、その点はどうなんですか。
  79. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほども答弁いたしましたように、本件の合同演習をとりましても、あるいはその他の場合をとりましても、外務省と防衛庁とはいろいろな場を通じまして緊密な協議をしている、それは事実でございます。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外務大臣にお伺いいたしますけれども、教科書問題でも日本では一応釈明をすれば向こうが納得をするというふうに思っているのかもしれませんけれども、侵略という事実というものをわれわれ自身が認めるということになりますと、教科書の記載もやはり侵略というふうに明確にしておかなければ筋が通らないような気がするわけであります。  昨日、外務大臣の衆議院における答弁では含みを持たせた御答弁があったというふうに聞いておりますけれども、これらの問題に対して一体外務大臣としてはどのように対処されるおつもりなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  81. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 第一には、日中共同声明で日本が中国及び国民に対し大きな損害を与え迷惑をかけた、そのことを反省して責任を感ずる、こういうことを申し上げております。また日韓共同コミュニケの中におきましても同様に、過去の関係は遺憾であって深く反省しておるという文言で日本としての反省、責任というものを明白にしておるわけでございまして、このことを日本としてはどういう分野におきましても常に念頭に置いて行動をする必要がある、特に外務省は中国あるいは韓国等の世論動向を見まして、これらの世論動向、国民感情が果たして日本にそういう共同声明の前文あるいは共同コミュニケのその考えにのっとっておるのかどうかという厳しい批判もあるときでありますから、この際は日本として一層反省をし責任を感じそれにのっとる行動をとるべきだ、こう思っておるところでございます。
  82. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そういういまの外務大臣が言われたような考え方に基づくならば、それはやはり単なる釈明、弁明でもって事がおさまるとは思われない。  いま外務省から派遣をされた局長は何を釈明し、どういうふうに相手を納得をさせるつもりで出かけているのか、その点もお伺いしたいと思うのですが、いかがですか。
  83. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 外務省及び文部省から局長レベルの使者が出ておるわけでございますが、現在は中国に行っておるわけで、在北京における日本大使館が今回のこの重要な問題に対応しておるわけでありますから、その対応ぶりに万が一にも遺憾なことがあってはいけない、こういうことで本国政府の意図あるいは問題になっておることについての詳細な説明また理解を要する、こういうことでそういうことが第一の目的になっておるわけであります。  しかしながら、担当の衝にある責任ある高級官僚を派遣しておることでございまして、相手国から説明を求められるならば喜んで御説明を申し上げたい、また日本の真意のお尋ねがあればそれももちろん応じたい、そういう気持ちは持って伺っておるわけでございます。
  84. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 幾ら真意はこうだということを言ってみたところで問題は具体的な問題であります。横文字の国と違って漢字の本家でありますから、侵略を進出というふうに書いたということを言いわけでもって納得をさせるということはきわめてむずかしいことじゃないか、こういうふうに考えるのです。  外務省としては文部省の検定といったようなことが既定方針を変えないという事実を踏まえて、なおかつ中国をあるいは韓国を納得させるという自信がおありになるのかどうか、その点もお伺いしたいと思うのでありますが、いかがですか。
  85. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 現在両局長が訪中いたしておりますのは、ただいま大臣が申されましたとおり十分先方の意向も伺ってくるということでございまして、検定制度、教科書の具体的な問題にまで立ち入るということは考えておらないわけでございます。いろいろ複雑な問題でございますので段階を経て対応してまいるその第一着手というふうに御理解いただければと考えております。
  86. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 段階を経ていろいろと着手をするということは具体的にはどういうことなんですか。
  87. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) これまでも東京におきまして在京中国大使館あるいは在京韓国大使館の幹部と文部省の局長が対応しておりましたような事柄、それから外交当局が北京あるいはソウルにおきまして意見交換しております事柄等を包含する事柄でございます。
  88. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 具体的にはわからないな、これはどういうことだか。事柄でございますと言ったって、どういう事柄なんだかさっぱりわからない。内容をもっと具体的に説明していただけませんか。
  89. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) もっとはっきり申し上げるならば、現在中国あるいは韓国もこの教科書の記述の改訂を求めておることは御承知のとおりでございます。しかし今回のミッションはその改訂の問題につきましてのやりとりということを行うことは考えておりませんで、その背景日本にありますいろいろな考え方等につきまして先方に説明するとともに先方の考えを率直に承ってくるということが内容でございます。
  90. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、わかりやすく言うと文部省で教科書の改訂でいろいろ問題になった、字句上明らかにこれはごまかしであるというふうに指摘をされたということが問題になっておるけれども、その改訂をもう一度考え直そうというのじゃなくて、実はわれわれの真意はこうなんです、決して過去における侵略行為をごまかそうとしているのじゃありませんという言いわけであるというふうに聞き取れるわけです、あなたの御答弁をそのまま解釈をすると。そうじゃないのですか。
  91. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 表現が適切かどうかは別にいたしまして、言いわけめいたこともやりとりの中に含まれることは否定し得ないと思います。
  92. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 要するにこれは俗な言葉で言えば言いわけだと思うのです、一言で言ってしまえば。だから問題はそういう言いわけをして相手が承知をするかどうか、承知しなかったらどうするか、こういう問題が出てくるわけですね。その点今度は大臣の方でどういうふうに処理をされるおつもりなのか。  いろいろと局長クラスが行っておる、実はこういうわけだと一生懸命に言いわけをしておる、だけれどもそういう言いわけが効かない、特に漢字の問題なんですからごまかしようがないということで相手が納得をしないという場合には総理大臣の訪中だってどうなるかわかりませんね、これは。そういうことも考えられるのだけれども、そうなれば外務大臣とすれば大変な大きな問題になりますよ。一体どのように処理をされるのですか。
  93. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) まさに御指摘のとおり今回の出張で先方に伝えます事柄によって先方が納得するかどうか、情勢は非常に厳しいものがあることはすでに予想されるわけでございます。したがいまして、そのやりとりの結果、帰国の上いろいろ私どもとしまして深刻に検討しなければならないというふうに考えております。
  94. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私はずばり言いましたけれども、中国側がたとえば納得をしないという場合には総理の訪中にまで問題が及ぶじゃないかというふうに考えられるわけです。  だから、そういった事態を考えたならば、やはり思い切った改訂なら改訂ということ、再改訂をするといったような文部省としての面目がまるつぶれになることを覚悟して、そのぐらいのことをやらないことには事はおさまらないのじゃないかという気がいたしますが、外務大臣としてはどのようにお考えでしょうか。
  95. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほど申し上げましたように、日本の基本姿勢として共同声明で申し上げておるように中国国民あるいは中国国家に大変な損害、御迷惑をかけておる、それについての責任、反省ということがこれが絶対的に必要なことであるわけであります。  この中国の世論動向を見ておりますと、そういう日本は本当に責任を感じておるのか、反省をしておるのかということに今回の教科書問題を発端として疑問を持っておられるようにわれわれは受けとめられるわけでありまして、私どもはそのようなことは絶対ない、これが日本のあくまでも基本の姿勢であって、そしてこの姿勢に伴った措置がとられていく必要がある、このように外務省の立場から中国や韓国の申し入れ、世論動向からいたしますとそれをはっきり認識しておるわけで、そういう日本政府の基本的立場はやはりこれは機会があれば先方にも申し上げ、理解を得る必要があるのではないか。  一方におきまして今度の発端になった教科書問題がございますが、そういうことを踏まえてどう今後の検定制度を考えていくかということには、これはまず文部省として諸般のいろいろな状況から判断をしていくことであると思うのであります。私はあくまでもあの戦争当時の迷惑をかけたような事態ということは再び繰り返してはならない、そして日本が戦後平和憲法を持って行動をしておる、そういうことについてやはりこの機会に理解を得ておく必要があるのではないか、こう思うのでありまして、こういう外務省のとる姿勢と具体的な処理との間にどのように結んで持っていくかというところに非常に苦慮しておるというのが実情でございます。
  96. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私がなぜ日本海における日米海軍の演習を取り上げたかというと、私はかつて戦争中に日本海で上陸訓練というのをやらされたことがあるのだけれども、そのときの仮想敵国は、上陸目的地はソビエトであるというふうに教育をされた記憶がまだあるわけです。したがって、こういったような問題は外交問題になってから外務大臣があわてるようなことがあってはいかぬのではないかという気がしたので、あえてこの問題も取り上げたわけであります。  教科書問題にしても日教組の委員長と文部大臣会見をした際に指摘をされた場合には何事もないようにこれをいなしておいて、そして中国、韓国から火の手が上がるとあわてふためくといったようなことはまことに醜態だと思うのです。外国から言われる前にみずから正すべきものは正す、こういう姿勢が必要ではないかという気がいたしますし、その場合に必要になってくる処置というものは言葉の上の弁明ではなくて、特に教科書問題なんかははっきりしているのでありますから事実をもってさっぱりさせる、誤解を解くという手だてを講ずるのが正しいと私は思うのでありますが、この点外務大臣の御意見を再度確認しておきたいというふうに思います。
  97. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 瀬谷委員は十分御承知のことでございますが、私どもは内閣でそれぞれの責任を分担しておるわけでございまして、私としては中国、韓国等の世論動向、また厳しい申し入れ、そういうものを踏まえまして、そのことが正しく国内の各方面に理解されるよう努めておるわけでございます。  そして、そのことによって物事が判断され善処をされる必要がある、こう思うのでございまして、ただいま私に文部省の検定制度に絡む問題についてお答えを求められておるとするならば、まことに恐縮でございますが、いま申し上げたような私ども責任は正しい判断をしてもらおう、そういうことで中国、韓国等の動向をお伝え申し上げ、また外務大臣としての必要な発言をしておる、こういうことでございますので御了承をいただきたいと思います。
  98. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 教科書問題が出たところで関連しながら一、二申し上げてみたいと思います。  もうすでに同僚委員からさまざまな観点に立っての質問もありましたので、重複は避けたいと思いますが、国内問題で処理できるであろうという一般的な判断がみごとに覆りまして、これがまことにうっとうしい国際問題、外交問題にまで発展したということは日本の外交史上恐らくまれなことではないであろうか、きわめて遺憾なことであるわけであります。考えてみれば内政干渉ではないかという、そういう判断も成り立つかもしれません。しかしいまやそういったことで日本主張というものをどこまでも貫くという段階はもうすでに過ぎ去っているであろう。  私も学徒動員で軍隊の経験を持っている一人といたしまして、あの当時の模様、大変厳しい拘束された状況の中で、まともな情報というものは私どもの耳に入ることはございませんでしたけれども、それでもあの前後においては、特に南京においてはというような忌まわしい問題が今日まだ私どもの記憶の中に焼きついているわけであります。あの当時、日本の中国に対するあるいは進出というまことに当たりさわりのない、しかし中国人民にとってみれば、あるいは韓国民にとってみれば大変憤りを感ずるような、そういうことがありましても日本の軍事政策というものはそういう方向で貫かれていたと思うのであります。したがって、そういうような過去の既成事実に対して、だれが冷静に判断いたしましても侵略であるかあるいは進出であるかということの帰着すべきところは明確ではないだろうか、いたずらに言葉の使い方によってねじ曲げようとすること、これ自体が何らの反省もないということになるのではなかろうかということを非常に心配するわけであります。  特に韓国の場合はいま国民世論が非常に強い、むしろ政府レベルよりも国民の世論が、日本政府と言った方がいいのか日本に対して相当強烈な修正を求めるという動きのようであります。多くを申し上げる必要は毛頭ないと思うのであります。確かに私どもは過去の反省に立てということを大前提とするならば、これはもう明確にする以外にはないであろう。  しかし、きょう行われた参議院の文教委員会では、小川文部大臣はきっぱりと改める、修正をする考えは毛頭ない、こういう答弁がなされたことが報道されました。こうなりますと恐らく中国側の言い分、韓国側の言い分というものは平行線をたどるであろう、これが今後の日中あるいは日韓関係においてまことに思わしくないそういう亀裂が生じてしまうのではないかということを非常に心配するわけであります。  いま日中で事務レベルの折衝が開始された段階であります。これがどういう方向へ行くか予測もできないでありましょう。韓国もまた同然であろうというふうに思うわけでありまして、今後末永く日中あるいは日韓関係の親善友好というものを持続するとするならば、果たしてどういう手段をとることが一番現段階において望ましいのか。私はいま教科書の改訂や検定についてどうこうという、これは委員会が違いますのでそういうことまで触れようとは思いません。しかし事外交問題にかかわってきた以上、あるいは安全保障というそういう立場に立って考えてみた場合に、摩擦をここに生じさせるという方向が望ましいとは決して恐らく政府当局としてもお思いになっていらっしゃらないと思うわけであります。  来月には先ほどもお話が出たように総理の訪中が予定されているわけであります。その期間は刻々と迫っているわけであります。果たしてその短い期間の中でどういう対応と決断がそこになされるのか。果たして中国側があるいは韓国側がそういった日本の明確な、今後どういう形で打ち出されるかわかりませんけれども、しかし少なくともいままでの考え方では恐らく納得はしないであろう、そういう今日までの経過と、それからいま韓国側あるいは中国側の感触を得た上での判断というものは当然なされてしかるべきだというふうに思いますし、先ほど来の答弁を伺っておりましても、明確に大臣がおっしゃった中には反省の上に立たなければならない、したがってその反省の上に立つということは具体的には何だということになるでありましょう。  恐らくお気持ちの中には言いたいことといま言いにくいこと両方おありになるのではないだろうか。まことにうっとうしい話でありますけれども、しかしこの辺を明確にしませんと、くどいようでありますが、いま申し上げたような大変予測しない危険な状態がお互いの国の間に生まれるのではないか。その点について私自身も櫻内さんの所信を伺っておきたいと思います。
  99. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま一方において具体的な問題で厳しい批判があり論議が行われておるわけでございますが、中国、韓国等の国民感情、世論動向、政府の対策、そして厳しい申し入れ等を考えていきますときに、日本としてあのような惨禍を再び繰り返さない、日本の行為に対して厳しい国際的な批判を受けて、そしてその厳しい批判、それを十分認識して日本は戦後行動していこう、こういうことで来ておるわけであります。  また、一方において平和憲法のもと戦争を放棄する、こういう大きな日本としての道筋を歩んでおるわけでございまして、このことはどういうことがあっても日本国民が一丸となって守っていくことであって、これが守られていく限りにおいては、いま問題になっておることもそれが守られておるならば解決ができるのではないか、あるいは御理解をしていただけるものではないか、そういう一つの大きな基本的なものがあると思うのであります。  また他面、そうでなく、いまアジア全般的に日本に軍国主義が復活して再び脅威になるのではないかというそういう懸念、あるいは中国、韓国等の皆さんの国民感情、こういうことがございます。だから、それにはそれに対していまの基本の日本の考え方というものがいかなる場合いかなる面においてもこれが守られていくということがもし御理解がいただけるとするならば、いま当面の問題もあるいは打開ができるのではないか、こういう見解も持っておるわけでございまして、外務省の私の立場からいたしますればこのほうはいとして起きておる厳しい批判なりその国民世論というものを国内に十分説明をし、過ちのなきを期したいと思っておるわけであります。
  100. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それ以上考え方についてさらにということは恐らく不可能なことではないかというふうに思うのです。  ただ、日本のとっている態度というものは、たとえばこの問題が表面化した段階におきまして西ドイツあたりの教科書と比較をされてみたり、いろいろ言われているわけです。私は別に西ドイツの教科書見たわけではありませんから、ただ報道によってしか知り得ることができませんけれども、ドイツの場合には明確に侵略という表現を用いておる。ですから私はもうあいまいなそういうわかりにくい日本側の回答というもので満足し得るだろうかということが一つ。  それから、中国や韓国側の要請どおり明確にこの機会に改訂前、まあ検定前と申しますか、あるいは再改訂と申しますか、戻すというふうにするか、恐らく二者択一ということでどちらかを選ぶ以外には道はないのではないだろうか。そのことによって恐らく中国側も韓国側も了解する。  そうでありませんと、午前中にもこうした問題が触れられましたけれども、ASEAN地域におきましてもこの種の日本に対する批判というものが飛び火するかのように起こっているというようなことも伝えられております。こうなりますと、問題は中国あるいは韓国だけにとどまらずASEAN全体を、余り生々しい表現で言うのはいかがかと思いますけれども、あたかも敵に回すみたいなそういうことは決して望ましくない。  私がいま申し上げたようにもう二つのうち一つを選ぶ以外にはないのではないかというふうに思いますけれども外務大臣としての感触はいかがでございましょうか。
  101. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは私なりに検定のあり方についていろいろ新聞あるいは書面などで見ておるわけでございますが、この検定のあり方についての判断ということについては、おのずからそれを所管しておる文部省において適切な判断が行われるべきである、こう思うのであります。    〔委員長退席、理事堀江正夫君着席〕 したがいまして私としては中国、韓国のことはもとよりでございますが、お話のASEAN諸国の動向あるいはその他の国の批判など、これらは忠実にその重要性にかんがみてお伝えをして、判断の材料にしてもらいたい、こう思っておるところでございます。  ただ、先ほど申し上げたように、日本政府としては日中の国交回復による共同声明あるいは韓国との間の日韓のコミュニケ、こういうようなものに明白にその姿勢を打ち出しておる、これをどうこうということはこれはもう絶対にできないことであり、これが忠実に守られ、そのことによって両国の信頼を得なければならない、こういう大原則があるのとともに、日本は戦後日本としての独自の立場と行き方を続けておって、それが忠実に行われておる限り日本に対する信頼にもとることは私はない、こう思うのでありまして、両国の世論動向、これを正確にお伝えするとともに、そういう日本の基本的姿勢をあくまでも遵守しておるということをはっきりしておく必要がある、こういうことによりましておのずから検定問題についての判断が正しく行われることを期待しておるわけであります。
  102. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、この問題を通じて日中あるいは日韓関係というものの一つの大きな阻害要素になるようなことは断じてないような方向へ外務大臣としても十分その辺をわきまえながら取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思うわけであります。  次に、先週の安保特でも私申し上げたわけでありますが、今月末に予定されております日米安保事務レベル協議、やはりあれから五日経過しているのでございますけれども、相当アメリカ側日本に対する防衛力強化という点からいろいろな問題を強く要請してくるのではないかというふうに思えてならないわけであります。  きょう、どの新聞でございましたか出ておりました中で、ひそかに防衛庁はいわゆる防衛能力の評価ということについて検討した、その結果、どういう戦争の性格を想定した上でやったかその内容は明らかでございませんけれども、大体一カ月の戦いには対応できるだろう、しかしその反面に、米側から要請されてきたいままでの経過を振り返ってみると、少なくとも緒戦かあるいは継戦の途中かわかりませんけれども三カ月は持ちこたえてもらいたいという考え方が依然として定着をしている、そうすると日本防衛庁アメリカ側の考え方に大きな開きがある、こういったことも今度のハワイ会談で具体的な中身を持って日本側に要請されるのではないだろうか。  そのほかに軍事技術の協力問題も出されるでありましょう。あるいは武器輸出の問題も話題になるかもしれない等々いままで当委員会においてさまざま議論されてきたような問題が集約的に今回のハワイ協議において持ち出されることは必至であろう。また同時に、先般も私触れましたように、米側はそのために要するであろう日本の財政負担と申しましょうか、そういったことも恐らく数字に示しながら要求をしてくるに違いない。  ともかく、いままでのただ単なる意見交換という枠からはみ出して強力な対応を迫られる、そういう話し合いというものに性格がだんだん変わってくるというような、やはり私も前回申し上げたとおりそういう状況の中で今回の協議が進められるのではないだろうか、そういう心配は全くないとした方がいいのか、そういうような話も当然出るとするのか、出た場合に防衛庁としてはどういう対応というものがいま考えられているのか、やはりここで念を押しておきたいというふうに思います。
  103. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 今月の末から予定されておりますところの日米安全保障事務レベル会議におきましての話題といいますかテーマにつきましては、今日ただいまの時点でまだ固まったものがあるわけではございません。したがって、アメリカ側から日本防衛努力に関してどういった要請なり話なりが出るかということについていま申し上げるようなまだ材料の持ち合わせございませんけれども、一般的に申し上げれば、いま先生御指摘のあったような、わが国に対する防衛努力の期待といったものがどういう形であるかは別といたしまして議題になることは大いにあり得るというふうに思われます。  しかし一方、私どもとしましては現在防衛計画の大綱の水準を達成するということをめどにしましたところの五六中業を作成したばかりでございます。ただいまこの五六中業を遺憾なく達成するということが目下の急務であり先決要件であるというふうに考えておりますし、そういった姿勢で臨むべきであろうというふうに思っております。
  104. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 しかし、昨年六月の第十三回、今回は第十四回になるわけでありますが、日米協議の際に、たとえば防衛大綱の水準を達成した段階においてはミサイル護衛艦というのは七十隻、潜水艦二十五隻ということが方針として明らかにされているわけであります。しかしそれでは足りぬという、つまりもうしょっちゅうこれも問題になっておりますように、防衛大綱の見直しをすべきではないか、あるいはその五六中業の繰り上げ達成というものをやるべきではないか、これはもうしきりにそういったことがいままで伝えられもし、そしてまたそういうような話がとだえたかなと思うとまた米側から打ち上げられるということで、絶えずこの問題がつきまといながら日本の対応というものが迫まられている。  これは恐らく避けて通れない。避けて通れないけれども、じゃ米側の要求をそのままうのみにした場合に一体どうなるのだ、恐らく日本ももう逐次軍拡への道をなし崩し的にやってその道を開いていくような方向をたどるのではないかという危険を非常に強く感ずるわけであります。かといってまた米側のその要求というものを、ただそれはできませんと。みんな向こうは向こうで日本のその事情はもうよく知っているわけです。もう何回もここで話題になっておりますように、憲法がどうしたとか非核三原則がどうであるとか専守防衛がどうであるとかそんなのは百も承知。その上に立ってなおかつそういう要求がなされてくる。あるいは議会筋もそういう強力な要望というものを提案してくる。果たして避けられるか。もちろんそういった場合に、かねがね鈴木総理自身も表明しておりますように、できることとできないことは明確にしていく、これが果たしてそのガードが崩れないでそのおっしゃるような方向が貫けるのか。貫けないとするならば一体どういう対応の仕方というものがあるのか。  もう日にちも迫っていることでありますから、いま具体的な議題が出ないとは言いながらも過去においてすでに十三回もやっているわけです。いろいろな意見交換がなされているはずであります。当然最近のワインバーガーあたりの言動を聞くに及んでも相当いままでにない強烈なものが要請としてあらわれてくるのではないだろうか。それをただできませんということで断わり切れるのか。できるとするならばどの範囲でもってできるというような話し合いというものが進められるのか。恐らくそういうせっぱ詰まった段階に今回の第十四回会談は持たれるのではないか。そういうおそれは全然ないというふうに判断してよろしいのか。
  105. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) アメリカ側からいま御指摘のような話が絶対ないかということにつきましては、私は大いにあり得るのではないかというふうにすら思うわけでございますけれども、私ども日本側といたしましては五六中業を説明し、これを精いっぱい一日も早く十分に達成するということについて御理解を願うよりほかに方法はないのではないか。それ以上のことをいま考えているわけではございませんが、そういったアメリカ側の要請がもしあるとすれば、立場のつらさというものはこらえながら、そういった日本の立場というものを説明する以外にないというふうに考えております。
  106. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 夏目さん、それはもう何回も繰り返しこの委員会でおっしゃっていることなんですよ。絶対その立場が貫けるのかということなんですよ。  にもかかわらず、さっきも午前中だったと思いますが、大坪さんかだれかの御質問の中にあったマンスフィールドあたりが記者クラブで五六中業の繰り上げ達成いかがなものであろうかと。これは決してあの方個人的な発想からそういうことを言うている問題ではないと私は思うのです。当然米国政府の意向を受けてそういう発言をしていることはこれはもう明確な事実であります。そういったような大変厳しい、あるいはもう日本にとっては教科書と同列視することはいかがなものかと思いますけれども、これまたやっかいな問題であろうというふうに思えてならないわけであります。  さてそこで、米国がそれだけの強硬な対日要請をする。確かにいろいろなことを国防総省あたりでも分析したようです。同盟十五カ国のいわゆる共同防衛についての寄与の程度は一体いかなるものであるかということも分析されたそうでありまして、その中でわが国は対GNP費を見ましても最低である、そういうようなところから恐らく日本としてはもっとやるべきだというようなそういう意見として出るのだろうというふうに思うのでありますけれども、しかし日本日本として独立国家でありますから日本の立場というものがありますし、財政状態もこれはもう何回も繰り返し言われているとおりであります。にもかかわらず何回もそういう日本側の考え方というものを相手に伝えてあるし十分理解もされ納得もしていただいているのではないかと思いつつもなおかつ繰り返しそういうものが出る。それは言わずもがなソ連に対する防衛力増強強化ということが背景にあることだけは十分にうかがい知ることができるわけです。  先般も新井参事官の答弁を聞きましても、もうここ数年来ソビエト軍の配備状況というものはバックファイアあるいはSS20を含めて倍以上増強されている、あるいは艦艇についても同じことが言えると思うのですね。そういった危機感から米国だけの防衛能力には限界がある、まあ限界があるという判断が成り立つかどうか僕はわかりませんけれども、そういった観点からせめて対潜能力であるとかあるいは洋上防空というものも枠を広げましてやってもらいたい、これは必ず出ると思うのです。できないということだけでやれるか、じゃせめてやり得る範囲というものは一体どこまで、まあ譲歩ということもありますから一歩譲ったとしても、譲ってアメリカ側の要請を受け入れるとすればどうこうことが考えられるのか。  恐らく防衛庁としてはそれはもういままでわれわれが素人的な発想をする以前からそういったことの分析は十二分になされているはずである。しかし国民としてそれを受け取る場合、日本の将来の防衛というものはどういうふうにいくのだろうか、果たして専守防衛という線をあくまでも一つの歯どめとしてそれ以上は強化しないのだ、拡大しないのだという方向でいくのか、あるいはもうなし崩し的にアメリカ側の要請にどうしても応じてそれをまた拡大していくような方向にいってしまうのか、その辺がやはり知りたいところであるしまた不安な要素でもある。これをまとめてひとつ防衛庁として実際具体的ないま問題も少し触れたわけでありますから述べていただきたい。  外務省としても柳谷審議官が参画をするわけでありますので、その際今後の外交上のいろいろな取り組みという判断の上に立って、日本防衛のあり方というものは決してばらばらになっているわけではなく表裏一体になって日本政府を代表してその意見交換というものは行われるはずでありますので、外務省と防衛庁の両方の見解を伺いたい。
  107. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) 答弁を繰り返すようになりますが、まず今日の時点におきまして日米安保事務レベル協議におきますところの議題といいますか、どういう話し合いが出るかということについての具体的な材料がまだあるわけではございません。したがいまして、米側からどのような日本側防衛努力に対する期待なり要請というものがあるかについても何とも申し上げかねるというのが現在の状況でございます。  しかし、一般論として申し上げるならば、いま先生の御指摘になったような日本防衛努力に対する期待、とりわけ海上交通保護に対する期待といったものも当然話題になることは予想するにかたくないところでございます。  そこで、それに対して日本側はどういった立場でアメリカの要請を拒否できるのか否かというふうな御質問でございますが、これにつきましては仮定の話でございますけれどもアメリカ側からそういったわが方の大綱もしくは五六中業で現在考えておりますところの防衛力整備を上回る要求があったにいたしましても、私どもとしては大綱の枠内で五六中業をできるだけ速やかに達成するということ以外に対処する立場というものはないわけでございます。この辺についてはわが国の国内条件も含めて十分説明をして理解を求めるという以外に道はないのではないかというふうに思っております。
  108. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 渋谷委員よく御承知のとおりこの安保事務レベル協議というのは交渉の場ではございません。しかし先ほど来質疑応答の中に出ておりますように、アメリカ側としてはこの安保事務レベル協議において相当いろいろな要請というものを出してくるというふうに私も受けとめております。受けとめておりますが、やはり日本としてできることとできないこと、これはそこではっきりと申し述べる必要がありまして、仮にもその場でアメリカ側に対して誤解を与えるということは避ける、これは非常に重要ではないかと思います。  それでは、じゃ日本は何ができるかということでございますが、防衛費その他についてはいま防衛局長から答弁されたとおりでございます。ただアメリカ側が求めている日米安全保障関係というものは自衛隊の強化ということでなくてやはり日米間の防衛協力の問題、具体的に申し上げれば五条ないし六条の協議の問題あるいは在日米軍の経費の負担等の問題がございます。それから先ほど来御質問のございました共同訓練の問題もございます。この中で日本としてはやはりできることは積極的にとらえていくその姿勢ということを示していくことがやはり重要であろうかと思います。  これはこの安保事務レベル協議ということを踏まえて、今後の日米関係の中で防衛問題について考えていく際にアメリカ側の考え方を日本側としても率直に聞くと同時に、やはり日本側としてできる範囲のことあるいはできる範囲内でやっていく方向づけということを明らかにしていく必要は今後ますます必要になってくるというふうに考えます。
  109. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 むしろ淺尾さんの方が明確なやはり将来展望を踏まえた上でおっしゃっておられると思うのです。決して夏目さんの答弁がいいかげんであるということを申し上げているわけじゃございませんよ。  ただ、私くどいようですけれども、もう十三回も繰り返しやっている。もう確かに交渉の場でない、ただ意見交換の場であるとは言いつつも、その性格はだんだんエスカレートして変わってきているということについての日本の対応というものが相当厳しく迫られるであろうという、そういう心配からいま再度確認の上でこのことを実は申し上げているわけです。恐らく手を変え品を変えあるいは議会筋を通して波状攻撃的な日本に対する要請というものが当然予測されることであろうというふうに思うわけです。それほどにやはり国際情勢というものはあるいは緊迫しているということもとらまえる必要もあるかもしれないのです。あるいはアメリカ側のその政策自身にもわれわれとしてはいかがなものであろうかという側面ももちろんあることは言うまでもありません。  そういった状況の中で行われるこの協議というものについては、いま御答弁がありましたように、確かに予測されない、予測されるかもしれないけれども具体的に詰まっていない、これは僕は答弁にならぬと思うのです、はっきり申し上げて。当然そのことを想定しながらというのが対応の姿勢ではなかろうかというふうに思うのが常識でございましょう。ないからやらないのだ、これはここの委員会だけでそれでおしまいになるかもしれない、けれどもそれは防衛庁としてはそんなことは絶対やっているはずはない。こうもある、こういった場合にどうするのか、こういった場合に一体どうするのかということは、ここで私があえて強調せずとも十分やはり検討されているはずであるというように思えてならないわけです。しかしこれ以上言っても水かけ論になりそうでありますから申し上げるのをとどめたいと思います。  ただ、日本にこういう一つのおどかしともつかないようなことがアメリカ筋あたりで、これは非常に限られた人間が言っているのだろうと思います。アメリカ全体を代表する世論の盛り上がりの中でそういう方向性を打ち出したというのじゃなくて、やはり同盟国として日本が余りにも非協力的であるならばこれは考え直す必要があるじゃないか、そういうような考え方も米国内にはあるらしい。しかし私どもとしてはやはり日米の正しい意味においての友好親善というのはこれからも持続しなければならない。これども事この防衛に関する問題になりますと、やはりできることとできないことだけはこれは明確にしてもらわなければ困るというのが当然であろう。  こういった問題にまた関連しまして、これもしばしば問題になってきた軍事技術協力問題です。これはなし得るのかなし得ないのか。実際問題として政府側としては外務、防衛、通産がそれぞれまだ意見がまとまっていないということで、恐らく今度の事務レベル協議の話題の中に出るであろうと想定されながらも、恐らくその点についての日本の明確な考え方というものを開陳するまでに至らないだろうというふうに伝えられているわけでありますが、この点については、しかしもう現実的にはやっているわけなんですがね。ともあれやっておるやってないの前にいま政府側としてはどういうふうにこの問題について今後取り組まれようとしているのか。この問題についても当然要請が出てくるであろうというふうに思います。
  110. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 軍事技術の協力につきましては、すでに昨年六月大村防衛庁長官アメリカを訪問し、その際にワインバーガー国防長官と会った際に、現在日本に対してアメリカ側が多くの武器あるいは技術というものを提供している、しかしそれは一方的であって日本側から武器技術の提供を受けていない、そういう片面交通を両面交通に直してくれという要請がございました。その後関係省庁の間で現在さらに検討を続けております。  御承知のとおり片方において武器禁輸三原則あるいは政府統一見解というものがある、これは基本的にはアメリカに対しても適用になる、しかしアメリカとの関係では安保条約あるいは日米相互防衛援助協定というものがございます。その中でいかなる調和が保たれるかということについて三省庁の間で心血を注いできているわけでございます。  このハワイ協議の際に結論が出るかどうか、あるいはアメリカがそういう点について質問してくるかどうかということでございますが、すでにマンスフィールド大使が先般の日本記者クラブの演説において幾つかの日本に対する防衛問題について言及した際に、この軍事技術の供与についても両面交通にしてほしいということを述べております。したがってハワイの協議において協議自体の場でなくてもその間においてアメリカ側が言及してくることは十分に考えられるわけでございます。その際にもしそれは結論が出ていればわが方としてはその結論に従って回答するということでございますが、結論がついていなければ、まだ残念ながら結論が出ていないのでそう回答せざるを得ない、こういうことになると思います。
  111. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょうは通産の方も来ておられると思いますが、通産省の方としてはむしろこの問題についてはきわめて消極的である、むしろ外務省と防衛庁の方はきわめて積極的である。  米国下院の外交委員会ザブロツキは、すでにミッドウェーの例を取り上げて現実的には日本側からいわゆる技術提供を受けているというようなことを明らかにしているというような経緯もあるようでございます。それらを含めていま外務、防衛、通産とまだ意見調整の段階である、要するに慎重であるその理由は一体いかなるものであるか。それはもちろん武器輸出三原則というものがあります。しかし時と場合によってはだんだんそれが空洞化するような方向にいかないとも限らないというようなことも実は心配されないではない。  米国といえども例外ではないとしつつも米国自身が紛争当事国になって日本がその安全を脅かされるという場合にはその協力は可能である、しかし起こるその地域が日本の安全に全く関係ないという場合においてはそういう協力はできないというようなことがもうすでに政府筋にその原則だけはすでに決まった。恐らくいま淺尾さんが答弁されたこともそれに関連した意味を含んで答えられたのではないかというふうに思うのです。その辺を通産あたりの慎重な考え方の背景には一体どういうことがあるか、それを答弁してください。
  112. 広海正光

    説明員(広海正光君) 先ほど外務省の担当局長から答弁されましたように、本件につきましては一方におきまして武器輸出三原則あるいは政府の統一方針というものがございます。また他方におきまして日米安保条約に基づくあるいはその他の条約に基づく日米安保関係というものがございまして、この問題を検討する際にはこの両方の要素を十分に検討をし尽くすということが必要でございますので、引き続き関係省庁におきましてあらゆる角度から検討をしているという状況でございます。  検討の中身につきましてはいま目下鋭意検討中であるということでございますので詳細は申し上げられる状況にございませんけれども現状は以上申したとおりでございます。
  113. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 しかしもう検討の段階を僕は恐らくはるかに過ぎていると思うのですね。この問題はいま突如として当委員会において議題になったわけではございません。しかし武器輸出三原則等の大前提を踏まえるならば、これはやはりわれわれとしてはどこまでも米国といえども例外ではない、あるいは軍事技術の協力の問題にいたしましても例外ではない。  軍事技術協力の問題についてはもう時間がありませんので立ち入った質問ができないことは非常に残念でありますけれども、しかしこれも恐らくハワイ協議において議題になることは必至でございましょう。その紛争についても実はもう少し突っ込んでお話を伺いたかったわけです。これは日本安全保障についても非常に密接な関係を持つ問題でありますだけに一体許容範囲というものはどうなのか、確かに武器輸出三原則というものがあることは十分承知をしておりますけれども、    〔理事堀江正夫君退席、委員長着席〕 事態のいろいろな変化に伴って一体最小限の日本として協力ができるとすればどういう場合なのか、できないとすればどういう場合なのか、これはもう明確に今後も一つの政府の方針として貫いていくのかどうなのかということからまたさらに話題を展開してまいりたいというふうに思っていたのですけれども、ただし一般論として、もう一遍いま申し上げたことを、結論的に今後政府の方針としてはあくまでもいま申し上げたような方向でいかなる場合があっても貫くのかどうなのか、あるいはいま通産の方がおっしゃったように、いま検討の段階である、その検討を待った上でできることとできないことを明確にして米側とさらに協議の対象にするのだ、こういうふうに理解をしていいのか、その辺の答弁を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  114. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まだ結論が出ていないというのは事実でございます。結論が出ているにもかかわらず発表しないということではございません。  そこで、できることとできないことということが決定すればアメリカには通報いたします。しかしこれは日本政府が独自に決定すべき問題でございまして、その決定の直前にアメリカに知らせるという行為はとるということは申し上げることはできません。
  115. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、教科書検定問題に関連して端的に外務大臣にお伺いしますが、一九三一年から四五年までの十五年間に一千万人以上の被害を出した中国に対する戦争を侵略戦争とお考えになっているのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  116. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 戦前における日本軍の行為につきましては国際的には侵略であるという厳しい批判を受けておる事実があることを認めなければなりません。そしてこの事実は政府としても十分認識する必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  117. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 櫻内さんはきのうの衆議院の外務委員会でも幾ら聞かれてもいまのお言葉を繰り返すだけだったということなんですね。なぜ侵略戦争だとはっきり言わないのか。国際的に侵略戦争だと言われていることをよく認識しなければならない、言われていることを認識した上で、さあどうするのかということについては言っていないわけです。  八月六日の衆議院の文教委員会で、小川文部大臣は日中戦争について、その性格は侵略であったと答えました。この文部大臣認識は外務省としてはそれでいいのですか。
  118. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私はこの日本のとった行為、これについて繰り返し申し上げておるように、大変な迷惑をかけ損害を与え、そしてそれに対する反省と責任を持つということが第一でございますし、またそういう行為が国際的に侵略であるという厳しい批判を受ける、そしてそれを認識するということの方が私は非常に重要である、こういうことを強調しておるわけでございます。
  119. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 国際的に認識されていること、国際的に言われていることを認識して反省するということと、みずからそれを認識するのかどうかということとは違うわけですね。いままさに教科書問題を通じて問題になっているのは、一体日本があの戦争を侵略戦争としてみずから認識しているのかどうかという基本姿勢が問われている。侵略戦争とは言わない、国際的に批判されていることは認識するということなんですか。あくまで侵略戦争とは言わないというのが外務省の公式見解なんですか。
  120. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そういうふうに国際的に厳しい批判を受けるということの方が、私は現在日本政府としてそのことを踏まえることが非常に重要であるという認識でございます。また言うまでもないことでございますが、このようなことを日本は再び繰り返さない、そして戦争を放棄しておる、こういう立場でございますから、おのずから私が申し上げておることで十分国際的には理解され得るものと信じております。
  121. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 戦争を放棄している憲法第九条に違反して物すごい軍事力強化をしていることは後段の日米共同演習質問でもやりますけれども、そう言われていること自体がもう虚偽なんですね。  それで、そういう外務大臣の言われる国際的な侵略戦争という批判をよく認識する、その方が重要だというのは鈴木内閣としての統一見解なんですか、公式の見解なんですか。
  122. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 鈴木内閣ではございません。日本政府が一貫してそういうことを申し上げ、そして日本は世界に対してそういう反省の上に立って行動しておることを明白にしておるわけでございます。
  123. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも外務大臣鈴木内閣も事態の本質と重要性というのをよく認識しておられないと思う。私は今度の教科書検定問題というのは実は氷山の一角であって、日本政府自体があの戦争についてどういう認識をしているかということが基本にあって、それが文部省を通じてあのような検定の修正意見、改善意見ということになっているわけですね。  で、私だけでなく各野党が政府としては侵略戦争として認めるかどうかというのを重視して追及しているのは、まさに問題がたとえば教科書の表現でも進出なのか侵略なのかという言葉の問題、認識の問題として重大な外交問題にまでなっているからですね。だから外務大臣のいまの見解外務大臣個人の見解ではなく、また鈴木内閣だけの見解ではなく、歴代の日本政府の一貫した見解なんだといま言われましたが、まさにそこに問題があるので、これは教科書問題以上の重大問題だと思うのですね。で、中国あるいは朝鮮、今度はベトナムも批判しておりますけれども、教科書で侵略と書いてあったのを進出と直さしたというところが問題になっているのだから、じゃ日本政府が幾らわれわれが追及しても侵略と言わない、あくまで言わぬわけですね。これはもう一層私は大きな問題になると思うのです。  たとえば、この九月に日中国交回復十年になるのですが、日中国交回復をやった当事者であった田中角榮元首相、彼が首相当時、日中国交回復の翌年の国会答弁でこう言っているのです。わが党の不破委員の衆議院予算委員会での質問に対して、これ侵略戦争と考えるのかどうかということを聞いたのに対してこう言った。「端的に侵略戦争であったかどうかということを求められても、私がなかなかこれを言えるものじゃありません。これはやはり将来の歴史が評価をするものでございまして、」と、自分は言えない、歴史が評価すると。それで不破委員が、ポツダム宣言にははっきりそう指摘しているじゃないか、「田中内閣総理大臣 ポツダム宣言を受諾しなければならないような国情だったのです。」、「ポツダム宣言を修正するような力はなかったのです。」と、こういうことを予算委員会で答えているわけだ。できればポツダム宣言直したかったのだけれども、もう負けているところで力はないので、やむを得ずああいうポツダム宣言を受諾したのだ、あれが侵略戦争であったかなかったかは歴史の判定だと。今度教科書の検定でまさに歴史の判定、彼らの言う歴史の判定で、侵略じゃなくて進出だ、これも十数年来確かに内閣の方針だと言われているわけです。  これは田中角榮氏だけではありません。三木武夫氏、七六年一月三十日、三木首相です、「再びあのようなことは繰り返してはいけないと考えます。」、それから福田首相、七八年十月十八日、参議院外務委員会で上田議員——私が同じ質問したらこう言った。「侵略戦争というと、あなたがおっしゃると何か特殊な意味があるんじゃないかというような感じがしますものですから、」——変な感じをするわけですな。「侵略戦争であるかどうかというと、私はそのとおりとは申し上げませんけれども、非常に私は」「迷惑をかけた」「遺憾なことをした」と、そういう理解。大平正芳首相、宮本顕治議員の質問に対して、七九年一月三十一日、第二次大戦のように国民のエネルギーを誤った方向にしむけた不幸な時期もあったが長期的には西洋の知識技術を吸収し近代化を進めてきた成果は見るべきものがある、こういう答弁ですよ。もう歴代の首相がこの侵略戦争というのをあくまで国会の場で言わないということを通してきた。偶然じゃないのですね、その方針が教科書にあらわれているわけだから。  それで、外務大臣どうなんですか。あなたは決して侵略戦争と言わないで、この教科書を侵略というふうに将来直せ、あるいはいま直せということを指導できるわけはないですね。そうすると、いまの教科書のあの表現あれで正しいのだ、侵略ではない、侵略とは言わない、国際的な侵略戦争という批判はよく認識して反省するということでいいのだとすれば教科書のあの表現問題にならないということになりませんか。
  124. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は上田委員と所見を異にいたします。  日本が過去のああいう行為を再び繰り返さない、また非常な御迷惑をかけたことについてその責任を感じ反省をしておるという立場を持っており、また日本が国際的に厳しい批判を受け、侵略ということを指摘されておるということ、そのことは政府としても十分認識しなければならない、本来その方が私はより正直でより正しいと信じておるわけでございまして、そしてこの日本の基本の姿勢があらゆる面において反映されていくべきであると思いますし、また日本は戦後世界にない平和憲法を持って戦争を放棄しておるというこの事実も明白であるわけでありますから、この基本的な姿勢については私は十分各国の理解を得ておるものと思います。  また、このことを言うことによりまして何か日本の過去の責任を回避するというようなことは毛頭考えておりません。厳しい国際的批判は十分日本政府として認識するという厳然たる立場をとっておるのであります。
  125. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、その反省の不十分さが侵略戦争と認めない、あくまで言わないというところに生まれており、教科書の記述まで直して、子供たちに侵略戦争ではなかったということを教え込もうとしている姿勢そのものが問題なんです。だから反省が口だけではないかということにあれだけの被害を受けたアジアの諸国民の厳しい批判が起きているわけなんですね。それは南京虐殺問題、あるいは朝鮮に対する三十数年間の植民地支配の問題についての反省でも同じことです。  反省の足りない面としてもう一つ別のことをお聞きしますが、今度自民党の国際経済対策特別調査会会長の江崎さんを団長とする代表団が台湾を訪問しました。この台湾訪問について、中国側はこういうことを問題にしている。  北京の八月五日発の新華社電「江崎真澄氏を団長とする自民党代表団が台湾で台湾当局と会見した際「両国」という言葉を使ったことに対し、「中日国交回復の基本原則を公然と破壊する、こうした行為を中国人民は絶対に容認することはできない」」と、そう述べたというのですが、外務省はこの自民党の正式の代表団のこの行動、また会見で両国という言葉を使ったのかどうか。これら全体についてどういう見解ですか。
  126. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 江崎議員を団長とする自民党のミッションが台湾を訪問したことにつきまして、中国当局が関心を持っておったことは十分承知いたしております。  それから、ただいまの新華社の報道につきましては団長の記者会見での言葉が足りなかった、すなわち日本と台湾地域と言われるべきところを両国と言われたということは事実と思います。このことに中国が懸念を表明いたしましたことは新華社の報道のとおりでございます。しかしながら江崎団長は出発されるに先立ちまして、中国側とも非公式に、この問題は台湾と日本にあります相当巨額な貿易のインバランスを是正するためのものである、すなわちこのことによって台湾の人々がいろいろ苦労をしておる、こういった不健全な貿易インバランスではいろいろ問題になりかねない、これを是正するということが主たる目的でありまして、何ら政治的なかかわり合いというものでないことを十分御説明になられて御出発になっておるというふうに伺っております。
  127. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 十分説明したけれども、実際に行ってみるとやっぱり考えていることが口に出てしまう、両国という問題が出て、新華社が公式に抗議するという事態になっているわけですね。  教科書問題にせよこの日台関係にせよ、私は鈴木内閣の基本姿勢が問われている、同時にこれはこの委員会関係しておる平和の問題、安全の問題、そういう問題の基本方向にも関連しているということを指摘して、次の問題に移りたいと思います。  先ほど同僚委員質問いたしましたあしたから始まる日本海での日米共同訓練の問題について、三つの問題を質問したいと思います。  一つは漁民に対する被害の問題、イカ漁がいま非常に盛んな時期なんですね。発表されました海域を見ますと、イカの漁場にやっぱりかかっております。富山県の漁業協同組合は早くも演習中止してほしいというので防衛庁に抗議電報を打っているということ、それから八日の記者会見で田澤農水大臣は漁民に被害があれば直ちに演習を中止させるということを言っておりますが、昨年もはえ縄切断事件で途中で中止したことは明らかです。わが党の立木委員もかつてこの問題国会で問題にしたとき、外務省は今後そういう漁民に被害が起こらないようなそういう時期を選ぶように防衛庁にもよく言うということを言ったはずですが、外務省としてどうなんですか。今度のこの時期に何らの被害が起きないという判断をしたのですか。防衛庁にも何も言わなかったのですか。外務大臣、御見解をお伺いします。
  128. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 午前中にも御答弁申し上げましたように、今回の共同訓練についてアメリカ側から防衛庁に話はございました。その際に私たちも相談を受けたわけでございます。その際にわれわれとしてはやはり昨年の経験がございますので漁民に対する安全保障というものを十分に考慮に入れてほしいということでございまして、私たちの理解では防衛庁が十分水産庁とその点について協議されて今回の訓練ということになったかと思います。
  129. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 昨年は秋田沖で演習をやるという発表だったのですが、その後判明したところによるとアメリカの軍艦は宗谷海峡から入ってきているのですね。そして北海道の沖でも被害が起きた。はっきりルートがわからなければ漁民もみずからを守る措置さえとれない。今度米海軍の進入ルートですな、これはどのルートから入ってくるのですか。
  130. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 米側艦艇の演習海上の前後におきます行動につきましては、外国の海軍の行動でございますので私どもの方では十分承知しておりません。
  131. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まことに無責任きわまる話ですね、どこから入ってくるか十分承知していないと。知らぬわけはないでしょう。知っているけれども言わないということなんですか。本当に知らないで済むと思っているのですか。もし宗谷海峡から入ってきてまた北海道沖その他その他で被害が起きても知りませんでしたで済ますわけですか。被害が起きたら直ちに中止する程度で、また中止しないでほっておくつもりですか。
  132. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま申し上げたとおり、米側の行動につきましては何分にも米国海軍独自の行動にかかるものでありますから、米側の発表以外に私の方からは申し上げる立場にないわけであります。  なお、漁業に被害を与えないということについては私ども万全の対策を講じておるつもりでございますが、いま申し上げたように、仮に万々一でも何か起きたという場合には当然のことながら十分の補償をするということになろうかと存じます。
  133. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まことに無責任な態度ですね。  二番目の問題、ミッドウェーの参加ということです。ミッドウェーは、核積載可能機と言っておきましょうか、何機積んでいますか。
  134. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ミッドウェーは排水量五万一千トンでございまして、兵装といたしましては航空機七十五機を積んでおるのが常態でございます。
  135. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それが核積載可能機であることはもう言うまでもありません。この核積載のミッドウェーが日本海に入って演習するのは今度が初めてじゃないですか。
  136. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 核積載をしておるかどうかということは私ども知悉しているところではございませんけれども、航空母艦が日本海に入って演習をする、訓練をするという事態は従来たしか八回ほどあろうかと存じております。
  137. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 単なる航空母艦じゃなくて核空母ミッドウェーが日本海に入って演習する、特に自衛隊共同演習するというのは今回が初めてだと思いますが。
  138. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来米空母とわが自衛隊共同訓練をしたという回数は過去八回ございます。もちろんその中でミッドウェーが参加したというのは初めてでございますが、別の空母が参加をしておるということでございます。
  139. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、じゃ核空母ミッドウェーと海上自衛隊との共同訓練、これが初めてですね。しかも日本海でというのは当然初めてということになるわけですな。  核空母ミッドウェーが単独であろうが共同であろうが日本海で演習をしたことはありますか。
  140. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申し上げますが、私どもはミッドウェーというものが核空母というように必ずしも限定しておりませんけれども、ミッドウェーが海上自衛隊共同訓練をするというのは今回が初めてでございます。
  141. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも調べてないのですね。後でもっときちんと出してください。核空母とあなた思わないかもしれぬけれども日本海でミッドウェーが演習するのは初めてではないかということ、はっきり答えてください、わからないの。
  142. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申し上げますが、ミッドウェーと海上自衛隊が……
  143. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それはわかっている。ミッドウェーが日本海で演習するのは初めてかと聞いているのです。
  144. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ですから、米海軍の軍艦が公海上でどこで訓練をしておるかということについては私どもの知る限りではないということを申し上げておるわけであります。
  145. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今度海上自衛隊と一緒にやるミッドウェーが核兵器を積載していないと断言できますか。
  146. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもはミッドウェーが核装備をしておるかどうかということは知悉しておりませんけれども、少なくともミッドウェーは横須賀の母港から出港しておりますので核装備はしていないものというように理解をいたしております。
  147. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全くもう人をばかにした答弁をしますね。横須賀から出港したら核兵器を積んでいないと思う、そんな核空母なんというのはありませんよ。大体横須賀に行くときから持っているのはあたりまえなんだから。  私は八月四日、先週のこの安保特でB52が空中発射の巡航ミサイルを積む、そのB52に対して首都圏の横田、大和田、所沢基地から最終のゴー指令発射の基地建設が行われつつあるという問題を追及しましたが、今度は日本海で核空母ミッドウェーと日本海上自衛隊とが共同演習する。非常に重大な事態になっているのですね。きょうの新聞見ますと、こういう大規模日本海での演習をこれから毎年やる、そう書かれていますが、毎年やる計画ですか。
  148. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今回の演習及び八月下旬に行う予定でございます演習、これはミッドウェーは参加いたしませんと思いますが、以外に現在のところ決まった計画はございません。
  149. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 新聞報道どおりだとすると、毎年日本海でこういう核戦略演習が行われる。もう八四年六月から第七艦隊に海洋発射の巡航ミサイル、トマホークが実戦配備されるということが発表されているのですね。毎年やるとなると、たとえば再来年八四年に行われることになれば海洋発射の巡航ミサイル、限定核戦争のためのミサイルですよ、それを積んだ第七艦隊と日本海上自衛隊とが演習するということになるので、これはやっぱり日本自衛隊アメリカの核戦略部隊、核戦力の文字どおり一翼だと、これをもう争う余地なく示す非常に重大な事態で、先週も私指摘しましたように日本アメリカの限定核戦争にますます組み込まれつつあるということにほかならないと私は思います。  時間がもう参りますので、最後に第三の問題駆け足でやりたいのですが、今度の問題とも関連するのですが、今度はP2Jだと。恐らく来年以降は日本のP3Cも参加すると思うのですが、P3Cは、私が四月十六日にここで質問したリンク11ですね、これは積んでいるのでしょう。
  150. 木下博生

    政府委員(木下博生君) P3Cにはリンク11を積んでおります。
  151. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 リンク11については四月十六日に質問した際なかなかはっきりお答えにならなかった。しかしあのとき装備局長は迅速なデータ交換がこれできるのだということを言いましたね。そうしますと、P3Cが恐らく仮想敵のソ連の潜水艦を追ったときの生データ、これをリンク11を使って米軍との間で情報交換するということになるわけですね。
  152. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 今回の訓練にはP3Cは参加しないことになっております。
  153. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それはわかっているけれども、もし今後P3Cが参加するということになれば、たとえば来年再来年、そのときは潜水艦を捜索して、その生データですな、P3Cがつかむそのデータは迅速な情報交換をリンク11を通じて共同演習するアメリカに対して、恐らくコンピューターのセンター持っているのでしょうね、そこに行くわけでしょう、情報は。
  154. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 先ほども西廣参事官から申し上げましたように、今後の米軍との訓練予定についてはまだ何にも決まっておらないわけでございますので、将来のことについては何にも申し上げられません。
  155. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私この問題非常に重視するのは、二月二日の衆議院予算委員会でわが党の不破委員質問に対して塩田防衛局長は、対潜哨戒行動中のソ連原潜の情報について平時にどういう情報を交換するかについては控えさしていただきたいと答えなかったのですね。これ当時重大問題になったのです。なぜ重大問題になったかというと、昭和五十年十二月十六日に衆議院内閣委員会で丸山防衛局長が、対潜哨戒機が飛んで情報を米軍と交換するのは安保第五条の状態のときだけだ、つまり有事のときだけだと言ったのに、今度は平時について情報交換をしているのかどうかこれは答弁を控えさしていただきたいということになったわけですな。  それで、私このリンク11の問題を通じて意味がわかりましたよ。情報交換といったって何か電話で告げたり、それから紙持っていくのじゃないんだな。P3Cが飛んで、そこで得た生データ、座標に関する生データが全部自動的に米軍に行くのですよ、リンク11を通じてすべてコンピュータで。そういう可能性があるということはお認めになりますか。
  156. 夏目晴雄

    政府委員夏目晴雄君) まず一般論から申し上げますが、日米安保体制下におきましては日米間において平素から情報交換をすることは当然であるし、またしなければならないものというふうに考えております。ただいかなる情報をどういう場合にどういう方法で交換するかというようなことについては、事柄の性質上、答弁を差し控えさせていただきます。
  157. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 非常に重大な答弁です。もう時間が過ぎましたので今後追及してまいりたいと思います。
  158. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 きょうはせっかく外務大臣に御出席をいただいたのですから、日本安全保障という立場から日本の外交の姿勢について幾つかの点をお聞きをしてまいりたいと思うのです。  大臣、第一にお聞きをしたいことは、世界平和のためにも大変大きな影響を持っているというのは中国とソ連関係だと思うのです。日本に対する影響も非常に大きいと思うのです。わが国の政府はこの中ソ関係というものをどういうふうに分析し判断をしているのかということが一つ。同時にわが国の政府として対中国、対ソ連関係をどういうふうに外交上扱っていこうとしているのか。この二点をまずお聞きをしたいと思うのです。
  159. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 最近の中ソ関係の動向につきましては、スポーツ面あるいは文化的な面での人的交流がとだえていたのが交流が見られるということと、それから三月二十四日にブレジネフ第一書記がタシケントにおきまして中国に呼びかけるかのごとき演説をされたことから、国際的に中ソの雪解けということではなくても、何らかの歩み寄りが見られるのではないかという観測が流れましたことは御承知のとおりでございます。  しかしながら、私ども中国当局者とのいろいろな場でのやりとりを通じて看取されますことは、やはりベトナムにおきましてはソ連がベトナムの後押しをしておる、このベトナムと中国とは全く相入れない関係に至っておること。それからアフガニスタンではソ連が介入いたしまして、介入の最も被害を受けておりますパキスタンと中国とはきわめて密接な関係がある。このような地政学的な状況から、若干の交流はさておき中ソ対立というものが雪解けに向かうという状況はとうていないというふうに判断いたしておるわけでございます。  先ほど御指摘のとおり、この中国とソ連の動向と、その関係がどういうふうに進展するかということはわが国にとっても大変かかわり合いのある問題だと心得ております。
  160. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) わが国が近接国であるソ連との間で友好的な関係を維持したいということは一つの念願でございます。しかしながらソ連との間で御承知のような北方領土問題というものがございまして、これが解決なくしてはわれわれとしてはどうしても釈然といたしません。したがいまして、平和条約を締結して領土問題を解決し、真の相互理解に基づく対ソ関係を持ちたいということが、これがいまの日本政府の対ソ方針でございます。
  161. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、私がお聞きをしているのは、私は対中国、対ソ連関係というものは大変重要なんだから中ソ等距離外交を堅持すべきではないですかということをかつて質問したことがあるわけなんです。そのときの時の外務大臣は、そういうものはございません、わが国は全方位外交ですと言って、大変いい言葉があるものだなと思ったのです。私は外交に全方位外交なんてないと思うのです。ですからその辺対中国、対ソ連に向かって日本の外交というものはどういう姿勢をとっているのかというきわめて大事な点なんですから、その辺のところを大臣からお答をいただきたいと思うのです。
  162. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) まずソ連との間には領土問題のように非常にむずかしい問題を抱えており、わが国挙げての悲願である、これを解決して何とか相互理解の上に立っていきたい、こういうことでございますが、しかし近接したソ連との間でありますから経済問題などについて政経不可分の立場である程度の交流をしておるということも事実でございます。  また、中国につきましては国交回復すでに十年、こういうことで、今回の残念な問題を別といたしまして円滑にここずっと両国の間はきておると思うのであります。その間に御質問のあったような中ソの関係がどうなるかということはわが国としても関心を持たなければならないところでございますが、タシケント演説に対する中国は留意をしながらも、しかしソ連行動をこれを見守りたいという、そういう姿勢をとっておるわけでございます。したがって、日本としてはアジアにおける両大国との関係でございまして、これらの関係が少しでも打開されていくことは好ましいことでございます。一方におきまして東西関係というものがございますが、しかし隣接国としてはまたただいままでに申し上げましたような配慮をしながら外交を進めていくべきであると思います。
  163. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 中ソの等距離外交でいくのですが、それともどちらか偏った、どちらかに重点を置いた外交でいくのですか、そこのどちらだということをはっきり言ってくれませんか。
  164. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そういうふうに割り切った表現はなかなかむずかしいのではないかと思います。日本と中国、日本ソ連それぞれ趣が違っておるのでございまして、いろいろな問題が、特に領土問題を抱えておるソ連との間と日中とではおのずから違う面がございますが、それぞれの国との外交をそれぞれ重視していくということであり、等距離とか、三分の一と三分の二とか、そういう表現には当たらないかと思います。
  165. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それ以上申し上げませんから。  ただ外務大臣、日中国交回復をなさるときに、私は何でそんなにお急ぎになるのですか、それじゃ日本は中ソ等距離外交を崩すのですかと言ったら、中ソ等距離外交なんかございません、わが国は全方位外交ですというのが当時の外務大臣答弁なんです。そしてあの日中国交回復をなさったらソ連日本に向けてどういうことをしたかは私が申し上げなくてもこれは外務省の皆さん方よくおわかりのとおり、どういう仕打ちをしてきたかというのは。  それで、アジア局長にも申し上げておきたいのだけれども、先ほどのような御答弁しかできないならば、何にも日本の外務省にアジア局なんか必要ないと思うのです。私は中国とソ連関係と言ったのいまだないです。ずっと前からだけれども国際情勢を一変するほどの大きな変化を与えるくらいの力があの両国の関係がどうなるかで起きると思うのですよ。いまこの短い時間の中でそのことを私これ以上とやかくお聞きをしようと思わないのだけれども、もう少しその辺はきわめて、私なんかでもこの中国とソ連の国がどういうことになるかということ、いま以上に険悪な状態になって、決して私は日本にとってはこれはプラスになりゃせぬと思うのです。ですからその辺でもって十分な分析をしていただきたいし、それなりに御答弁もできるようにしていただきたいと思うのです。  いまもベトナムの問題が出たのだから私はベトナムの問題でお聞きをするのだけれども、あのベトナム、ラオス、カンボジアという三カ国に対して日本の外交というものはどういう姿勢をおとりになっているのですかということ。カンボジアにポル・ポト政権ができたときは、あれは承認しました。そしてあのポル・ポト政権が何百万という人たちを虐殺したことがわかっておっても、その承認というものは取り消しをしないでそのままずっと来たわけなんです。それにそれなりの理由があったのかどうか。  それで今回、シアヌークとソン・サンとポル・ポトと三派の連合政権をつくったわけだけれども、それについても明確な態度を私は外務省がお出しになるかと思ったらいまだにお出しにならないわけなんです。あのラオス、カンボジア、ベトナムの三国に対してわが国の外交姿勢はどういうものなのか。日本としてのリーダーシップを発揮して、あそこのところに平和を保つといいますか平和をつくるようなことのために私たちがこういう役割りを果たしているのですという、そういうものはお持ちなのかどうか、その辺のところをお聞きをしたいのです。
  166. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ベトナムにつきましては、一番重要な事柄はベトナムのカンボジアに対する軍事介入の結果非常に関係がやりにくくなったという事態でございます。私どもとしましては、ベトナムのカンボジアからの撤兵ということを何とか実現していただきまして、そうして現在言うなれば凍結に近い状態にあるベトナムとの関係を円滑なものにしてまいりたいというのが基本的な考え方でございます。  すなわちベトナムに対しまして円借款あるいは無償協力で百四十億円の援助を供与することをしたいということで臨んでおりましたところ、カンボジアヘの介入ということになりましてこれも中断状態にあるわけでございまして、このように日越関係が消極的に推移しておるというのははなはだ遺憾であるというふうに考えておるわけでございます。  それから、カンボジアにつきましては従来からポル・ポト政権を承認し続けてきておりますので、これポル・ポト自身のいろいろな国内での業績と芳しからざる評判があることは私どもも十分承知いたしておるわけでございますが、そのことをもってベトナムの武力介入の結果出現しておりますヘン・サムリン政権の承認ということには遺憾ながらつながらないというふうに判断しておるわけでございます。  したがいまして、ポル・ポトを主体といたします民主カンボジア政権を引き続き承認いたしておるわけでございますが、先ほど御指摘のとおり三派連合政府ができ上がったわけでございます。この三派連合政府は民主カンボジア政府の枠組みとの関連ででき上がっておるわけでございまして、したがいまして日本政府はこの三派連合政府との関係を維持しておる、そういう意味ではこれを支持する立場にあるわけでございます。ことしの秋の国連総会におきましても、この三派連合政府の代表権の問題が論議される場合にはこれを支持するつもりでございますし、また物質的にも、人道的な面に限られるわけでございますが、この三派連合政府に対してどのような人道的な支援ができるかということを目下検討中でございます。  それから、ラオスにつきましては、これもソ連寄りの姿勢をとっておるという意味合いにおきましては現在のベトナム、それからベトナムの後押しででき上がっておりますヘン・サムリン政権と同じ立場に立つわけでございますけれども、ラオスはカンボジアに別に武力介入しておるわけではございませんで、関係をできるだけ積極的なものにしておきたいということで、数年前にはかつて日本側で手がけましたナム・グム・ダムの補強工事に協力いたしておりますし、昨年はビエンチャンの給水塔の整備といったような社会インフラ部門の経済協力を行っておるわけでございます。  もっと大きな視点でこのインドシナ問題が解決するように日本側の積極的な外交努力が望まれるという御指摘はそのとおりでございます。ASEAN諸国あるいはベトナムともこの問題については話し合っておるわけでございます。中国ともこの問題については率直な意見交換いたしておりますが、遺憾ながら彼我の立場にきわめて大きな懸隔がございまして、率直のところこれまで十分成果が上がっていないことは遺憾と存じますけれども、国連総会にこの秋大臣が臨まれて、ベトナムのグエン・コ・タク外相も昨年は出席されませんでしたけれどもことしは出席されるというような話もございますし、あらゆる機会をとらえまして先生御指摘のような外交努力はいたさなければならない、かように考えております。
  167. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 アジア局長、よくわかりました。それで、同じアジアの中ですからね。そういう点では努力をしていただきたいと思うのです。  それから、先ほどの御答弁の中で若干私が知り得ている情報からいくならば違っている点は、あのポル・ポト政府軍が虐殺をしたのはヘン・サムリンが入ってきてからではないのですから、ポル・ポトが政権を取ってすぐあのプノンペンの二百万をほうり出してかなりの連中を殺したわけなんで、その当時と日本政府はそのポル・ポト政権を承認をしたままでおったわけでしょう。もちろんヘン・サムリンはそれはベトナムからの言うならば軍事侵略をしたのだから、そのポル・ポトが悪いといっても、それはヘン・サムリン政権承認ということになるならばそれはおかしなことだということもわかりますけれども、その辺の点が若干直しておいていただかなければいかぬことです。  それから、ラオスの関係も表面的には軍事介入ではないかもわかりませんが、実質的には軍事介入とは変わりがないことが行われているはずです。現実にもうしばらくしたらラオス人の方が少数民族になるであろうとまで言われている。どういう実態になっているか、これはぜひお調べをいただきたいと思います。余り新聞なんかにも出ませんからなにですけれども、容易ならない事態にいま来つつあるわけですから、その辺のこともぜひ特に大臣の方にお願いしておきますけれども、アジアの平和という観点に立って、非常にこのベトナムの三国の問題はむずかしいですけれども、お取り組みをいただきたいということをお願いをしておきます。  次に、時間もないですから朝鮮半島の動向をどう見ておりますか、あの三十八度線の緊迫状態というのは高まっているのか、それともおさまっているのか、どういう判断を日本政府はしておって、これについてどういうふうな対処の仕方をしようとしているのかをお聞きをしておきたいのですが。
  168. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 朝鮮半島には軍事境界線を隔てまして彼我百万人に及ぶ正規軍が対峙しておるわけでございまして、遺憾ながら緊張状態というものが引き続き存在しておるというのが状況でございます。ことしに入りましてからも数件に及ぶ銃撃戦が繰り返されておりまして、軍事境界線の状況はきわめて厳しいという評価をせざるを得ないと思います。  他方、何とか南北の話し合いができるような状態というものを私どもも希望いたすわけでございまして、現に全斗煥大統領もことしの一月二十二日には南北の基本関係を律する条約のごときものを作成するとか、あるいは統一韓国を志向した憲法を南北双方で起草し合うというような、いろいろな南北の緊張状態を減らしていくための提案をされておることも事実でございます。しかしながら北朝鮮側は全斗煥政権を相手にせずということで、昨今は何らの南北の話し合いが行われていない状態は非常に残念であるというふうに見ております。
  169. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そういう状態の中で日本政府としてはどういう対策を講じておるのか。あわせて韓国からの対韓援助の問題、経済援助の問題が持ち出されてきて、いまだに解決をしないままで来ているのだけれども、これらについての現状がどうなっておって解決の見通しはあるのかどうなのか。その辺の御判断はどうしているのですか。
  170. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 朝鮮半島におきます南北の問題につきましては遺憾ながらわが国の対応の仕方というものは非常に限界がございます。北朝鮮とは外交関係がないということで、もっぱら私的な関係で往来されておる方々を通じていろいろな御判断を伺っておるわけでございます。ソ連との間でこの問題について触れ合うことはございますが、これも限られておるわけでございまして、主として中国と、すなわち中国は北朝鮮との関係がきわめて密接であられるわけでして、中国の要人の方々と何とか南北の問題がいい方向へ展開するようにということでお話し合いをしておる。したがいまして全体的に見ますと遺憾ながらはなはだ奥行きが少ないということは認めざるを得ないと思っております。  それから、第二番目の対韓経済協力の問題でございますが、これは四月の末に柳谷外務審議官が訪韓し、それから七月の初めに李範錫外務部長官が訪日をし、その後七月の下旬に外務省の事務当局の者が韓国に参りまして、技術的な側面でのやりとりをしておるというのが現状でございます。依然として彼我の考え方の差が大きいということはその後も情勢が変わっておりません。  そこへ加えまして教科書の問題が起こったわけでございます。本来的には経済協力の問題と教科書の問題とは別個の問題であるわけでございますけれども、実態としましてはやはりこれを截然と区別して論議し合える雰囲気に残念ながらないというのが今日の状況でございまして、そういう意味では私どもせっかく誠意を持ってこの経済協力問題の話し合い解決に引き続き努力していく姿勢は持っておりますけれども、現実はそのように展開していないという状況かと思います。
  171. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間がなくなってしまったのでもう少し突っ込みたくてもこの辺でやめておきたいと思うのですが、ただアジア局長、いま北朝鮮と中国が密接だという御答弁があったのだけれども、それはかなりもう二年くらい前のことじゃないですか。いまは北朝鮮はソ連との方が密接な関係にあるはずで、むしろ中国離れをしているというのが最近の情勢だと思うのですけれども、その辺もお調べいただきたいと思うのです。  最後に外務大臣にお答えをいただきたいのですが、わが国の外交の基本姿勢は何かということなんですね。一言でお答えいただきたいと思うのです。  最近は教科書の問題が出ている、あるいは貿易摩擦の問題で一ころ騒がれた、あるいは軍備防衛問題もそうなんですけれども、外国がおとなしいとわりあいにわが国は高飛車に出ておって、それで外国からぎゃーぎゃー言われて圧力をかけられるとどんどん後退をしてもう譲歩をしてしまう。外国の諸君が日本に対してはおどしをかけなければあの国は言うことを聞かないのだということが公然と言われるようないま状態になってきてしまっているので、そういう点に立ったときに非常に私はむずかしい面があると思うのだけれども日本の外交の基本姿勢はこういうものなんですということを一言で結構ですから大臣からお聞かせをいただきたいと思うのです。
  172. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) わが国外交の最も基軸になるのはやはり日米外交であると思います。  特に日本アメリカとで世界のGNPの三五%近いものを占めておる、また日米間の貿易も六百二十億か三十億ドルぐらいになっておる状況でございまして、日米間がどのように提携して進んでいくかということは世界に対する大きな影響があると思います。現在世界経済が沈滞しておるというときにもつと日米外交を推進いたしまして、その辺がもとで、そして世界経済が回復するようにしなければならない。そういう意味におきましては日米間におけるもっと腹蔵のない意見交換をし密接な関係を保ちたいと思います。  それから、何といっても日本はアジアにおきまして一応先進国の立場をとっておるのでありますから、近隣諸国また太平洋地域の諸国との関係をよくする、特に日本は原料の供給を太平洋地域の諸国に仰いでおるのでありますから、そういう点を重視していかなければならない、このように考える次第でございます。
  173. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、私できょうは終わりですから、もうすぐです。  朝から教科書問題やっておりますけれども、私はあえて球筋を変えてみたいと思います。外務大臣、あなたの歴史観にかかわりますけれども、柳条溝以来の十五年戦争についてはわが国の方がむしろ被害者であったというふうなことはよもやお考えではないでしょうね。
  174. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはいわゆる満州事変の発端でございまして、柳条溝における爆破を契機として満州事変が発生した、この満州事変につきましては当時国際連盟……
  175. 秦豊

    ○秦豊君 なるべく間を省いていただいて、大臣結論を伺いたいのです。
  176. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 満州事変について厳しい批判を受けたのでありますから、現在におきましてもその批判を踏まえてまいりたいと思います。
  177. 秦豊

    ○秦豊君 政府は、特にあなたは間接叙法と言うのですね、これを。直接認めることによる責任の波及を恐れていらっしゃるとは思わないけれども、私は端的に伺っているのです。  国際常識、理念の、通念の常識として、私の申し上げた十五年戦争で日本がよもや被害者とはお考えでないでしょうと言っているのですから、一秒か二秒で答弁は終わるはずです。重ねて。
  178. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そのとおりでございます。
  179. 秦豊

    ○秦豊君 非常に明確になりました。  日本語の概念の場合には被害者でなければ加害者という立場に立つ。カテゴリーは二つしかない。ならば、しかもその加害者が他国の領土にゆえなくして侵入をし行った軍事的行為の総体をこれを軍事侵略、略して侵略と言うのです。これも、したがって論理的な整合性を重視される大臣としては当然お認めになりますね。
  180. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は日本がやった行為を日本自身がどうこうと言うよりも、本日この委員会当初来、また連日申し上げておるのでありますが、日本に対してそういう行為に対する厳しい批判がある、それを日本が受けとめて行動することがよろしい、だからそれは反省とか責任とかいうことが伴ってくるわけであります。
  181. 秦豊

    ○秦豊君 またすぐ間接叙法に逃避される。お悪い癖ですよ、あなたの。それがあなたの公的な立場の限界に対しても、それは大変私は情けないと思います。  ならば、ちょっとまた変えますが、あなたはこの問題について冷静に謙虚にということを再三当委員会で繰り返された。当然です。当然の大前提だと私も共感をする。問題はその具体性ですね。だからその侵略に対する反省とか、加害者であった十数年の民族的な行為に対する、国家的な行為に対する反省が当該問題、この問題の原点であることはもう私と認識を分かち合いますね。
  182. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 認識を分かち合うと言われて、ちょっと私この御質問趣旨がわからないのでありますが……
  183. 秦豊

    ○秦豊君 同じ認識にお立ちですねと申し上げております。
  184. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) それは先ほどから秦さんからは間接表現だと言われますが、日本が厳しい批判を受けておることを、それを認めて認識しておるのでありますから、そのとおりでございます。
  185. 秦豊

    ○秦豊君 これ以上はこの問題については言いますまい。この問題というのはこの項については。  それで大臣、総理訪中は当初予定であれば九月二十六日は北京であられたはずです。したがって日航特別機は九月二十五日かどうかまだわからないが、この総理訪中というのは外務大臣としては第一義として当面日中復交十年、大きなイベントだから何としても達成したい、貫きたいというお考えをいまもなお牢固としてお持ちなのか、あるいはこの教科書問題の推移いかんによっては延びること、あるいは場合によって中止に追い込まれてもそれはいたし方がないという御見解でしょうか。
  186. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 実現に努力をする誠意を披瀝したいと思っております。
  187. 秦豊

    ○秦豊君 ならば、橋本さんが帰られてから省内でじっくりと北京側の感触を検討される、それがまず土台ですね。それで、いろいろな事務レベルを重ねて、また新たに橋本さんじゃなくして木内さんがいらっしゃるかもしれない、あるいは審議官がいらっしゃるかもしれない、あるいは在中大使というレベルで向こうの外相レベルとの会談が設定されるかもしれない。さまざまな段階と、あなたの言う謙虚な誠意を尽くした果てに、やはり当該この問題については外務大臣、よくお聞きいただきたいのですけれども、どうも外交が消極的過ぎる。  私は文部省を三流官庁だなんて思ったことはついぞ一度もないけれども、外務省が一流官庁であるとも思ってはいませんけれどもね。しかし相対比較のこれは問題で、最後には外交、外交的決着以外にない。政治決着と言うけれども、それは大きな範囲です。その前に首相訪中をいま言われたように何としても実現したいということが外務大臣の第一義であるならば、最後は、総理訪中の前のある段階の最後、これは日中両国外相会談によって決着をするということが一つの筋道じゃございませんか。どうお考えでしょう。
  188. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 問題解決の上に最も大事なこと、また相手国が日本に対しての信頼度をどこに持つか、この辺が非常に大事なところでありまして、日本の世論というもの、日本政府の考え方がどこから見ても完全に一致しておる、そのことが必要であると思います。
  189. 秦豊

    ○秦豊君 ですから、私がお尋ねをしている真意をもう少し砕きますと、外務大臣、必要なことはあらゆる手を尽くしましょう、これが恐らく鈴木政権の重要なポストである外務大臣としての、首相の右腕的存在たる櫻内外相の当面の急務だと私は思うのです。  で、こういう場合の解決として政府特使とかいろいろあります。事務レベルではもはやもう橋本さんが限界かもしれない。ならば、やはり両国外相会談というのは考え得るよりベターな解決へのプロセスだと私は思いますが、必要な段階にはそういうことを検討もされ決断もされるお考えはいかがでしょう。
  190. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 秦委員に言うまでもないことでございますが、外相会議の実現のためには相手側の了承がなければならない、やはり両者合意の上でなければならない、そこへ持っていくためのやはりいろいろな問題があるということは御理解いただけると思うのです。
  191. 秦豊

    ○秦豊君 ですから、それはもうさまざまなチャネルを通じて煮詰める、積み上げる、これは外交常識です。それを果たした上に、ここで外務大臣が訪中をされることがわが国政府の誠意と謙虚さを披瀝する最大の場である、方法であるという場面が必ず私は到来すると思うのです、八月の下旬ころには恐らく。そうなれば訪中をおいといになりませんね。
  192. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いまこういう責任の衝に立っておるのでありますから、だれが見ても必要であると、私自身がまた判断をするときにはそういう事態も考えられると思います。
  193. 秦豊

    ○秦豊君 大変結構なお取り組み、基本姿勢であると思います。私はやはり総理訪中の非常に大事な段階としてそういう場面が必ず到来するであろうし、そのことによって、たとえば外相会談による共同コミュニケによって改めて両国間の外交を貫く、今後の日中関係を貫く両国間の誠意を改めてコンファームする、あるいは宣明するという場にぜひともしていただきたいと思います。  それでは、この問題をちょっと外しまして、ハワイの問題を伺っておきたいと思いますが、淺尾さん、何かさっきから伺っていると、まだいまのところでは議題というのはないのだそうですね。日米間の重要ランクの協議がそういうふうにラフに行われるとは私実は知らなかったものだから、相当事前に精密な打ち合わせがあるかと実は錯覚をしておったのですけれども、議題が決まっていないのならば、いままでの答弁では含まれる範囲はわかりました。対米技術協力、シーレーン、五六中業の達成の見通し、あるいは加速の可能性不可能性、その他対ソ軍事戦略情報、いろいろあると思うのだけれども、どういうふうに進行されるのですか、ハワイ会談で。
  194. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) この協議は率直な意見交換ということで議題を決めないのが原則でございますし、従来からもそういうことでやっております。  ただ、秦委員の御指摘のように、会議の進行を図る必要上第一日目には何をやる、二日目には何をやる、三日目には何をやるという大まかな打ち合わせということは行われるのが通常でございます。従来の例によれば、まず国際情勢、特にアジアをめぐる軍事情勢について双方が意見交換し合う、その次が日本アメリカとの防衛協力の問題というのが第二点でございまして、第三点としてその他の問題というのが討議されるというのが従来の慣行でございます。
  195. 秦豊

    ○秦豊君 さっき同僚議員が質問されましてその答弁にちょっと納得がいかないので、重複をあえて避けません。読売の八月九日二面のトップだと思いますけれども「軍事技術供与認める」、「米が紛争時でも 政府方針「三原則」事実上空洞化」というかなり大きな記事がありました。御披見かもしれません。  それによりますと「政府は八日までに、懸案の日米軍事技術協力問題で、アメリカが紛争当事国になっても、紛争が「わが国の安全に影響を及ぼす場合」など、一定の条件下では、技術の提供、輸出を認める方針を決めた。」とあるのですね。これは事実ですか、決定ということは事実ですか。
  196. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 決定でございません。決まっていればこの場で答弁させていただくわけです。
  197. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、どの辺まで煮詰まっているのですか。この報道を全面否定するような方向にしかなっていないのですか。
  198. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 新聞の報道について一々コメントするのは差し控えさしていただきたいと思いますが、また答弁の繰り返しで時間のむだだというふうに怒られるかもしれませんけれども、いわゆる安保条約と他方における禁輸三原則あるいは基本方針、これとの整合性ということでいろいろ政府部内で打ち合わせているということを申し上げることによって答弁にかえさせていただきたいと思います。
  199. 秦豊

    ○秦豊君 それは納得できない。私はマスコミ報道の読売二面トップに対するあなたの印象を、あなた評論家じゃないのだから、そんなものを求めたわけではさらさらない。ただこういう報道を筆が走り過ぎているとか、事実をゆがめたとか、誤っているとかいうのは価値の判断の問題。行政府がいまなそうとしていることに対する一つの取材だから、これは取材は無限に自由ですよ。  当委員会における答弁としては、じゃ全く外務省の方針というのは模索もしていないとは言えないでしょう、一年間やってきたのだから。じゃどこまでまとまっているのですかということを聞いているし、その一つの基準としてこういう報道を全面否定しているような方向なのか。つまりこれは全くミスリードに値すると言われるような報道でしかないのか、あるいは当たらずといえども遠からずというふうなかなり精緻な取材なのか、つまり外務省の態度はどこまで煮詰まっているのかをあえて聞いているのですよ。だから重ねて答弁求めます。
  200. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、私たちは一貫した立場をとっておりまして、総理大臣が衆議院の予算委員会答弁されているように、日本アメリカとの間には日米安保体制があってアメリカから武器技術の供与をしてほしいという要請があってこれにこたえなければならない、しかし他方国内において武器禁輸三原則、政府統一見解というものがあるということでございまして、その二つをどういうふうにして整合させるかということに目下苦慮しているわけでございまして、いまある新聞の報道が正しいか間違っているかということを評論ないしそれに対して評価を加えるということは今後出てくるであろう結論についてそれをプリジャッジするということであるので差し控えたいと思います。
  201. 秦豊

    ○秦豊君 もちろんホノルルであなたまたはどなたかが対米軍事技術協力についての結論をアメリカ側にもたらす義務はない。これはすぐれて日本政府のマターですよ。だけれども相関関係があることは否定できない。  ならば、ちょっと聞き方を変えますが、ホノルルには日本政府として通産その他防衛サイドとも調整をした、調整を終えたいわゆる結論めいたものは持参するのですか。それはどうなんですか。
  202. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 結論めいたものを持参できるかどうかというのはまさにいまの三省庁等の協議の進展状況によるものでございます。
  203. 秦豊

    ○秦豊君 まあのれんに腕押しは時間の浪費と思うからちょっとやめましょう。  マンスフィールド大使が述べた、先ほども同僚委員が引用されましたが、つまり互恵的両面交通的、これしかし考えてみますと日本防衛庁の技研で開発している項目あるいは部門を見ましても、民間の汎用技術ならばかなり魅力のあるものがあるのだけれども日本防衛庁サイドに限局しますと、互恵両面交通ははなはだ現実性が希薄になると私は思っているのですよ。  ならば、淺尾さんに伺いますが、アメリカ側はそこまで駐日大使が言うぐらいであればどんな部門、どんな分野、どんな技術関係を要請しているのでしょう。外務省が得ている感触としてはどうなんですか。
  204. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私たちの得ている感触はまさに日本姿勢を問われているものでございまして、個々のものどういうものをアメリカ側期待しているかということではございません。  なお、汎用技術については従来の国会答弁でもございますように、これはいま問題になっている武器技術とは全く別の次元でございまして、いま問われている今日的な武器技術というのは武器技術そのものでございます。
  205. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣ね、これは八月四日の当委員会で宮澤官房長官の私に対する答弁ですが、いわゆる防衛計画の大綱水準の装備、つまり五六中業の到達点、これはわが国が装備すべき自衛力の限界、上限と考える、非常にむずかしいことだけれども上限と考えるという答弁をされていますが、外務大臣はどういうお考えでしょう。
  206. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 別に打ち合わせたわけではございますが、私も上限と考えております。
  207. 秦豊

    ○秦豊君 打ち合わせたわけではないというのが正しい用語だと思いますけれども、まあそれはいいでしょう。  そうしますと、そういう認識が前提ですと、マンスフィールド大使が努力は多とする、評価するが速度が問題である、つまりいわゆる日本語で言うと、平たく言えば繰り上げ達成、前倒しというふうになるのですが、こういう発言に対する外務省の受けとめ方はいかがですか。
  208. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは外務省というよりも現実には財政上の問題が一番ウエートが高いのではないか、そして私の承知しておる最近の財政状況からいたしますと、マンスフィールド大使の期待する加速を加えるということについてはなかなかむずかしい状況ではないかと判断しております。
  209. 秦豊

    ○秦豊君 ベトナムの問題につきましてちょっと二、三伺っておきたいのですけれども、在来の日本政府の方針、つまり外務省の方針というのはカンボジアからのベトナム軍の完全撤退、これがあくまで前提であり、それがなければ百四十億円の凍結は解除されない、これは過般伝えられた一部撤退、一説では五万人規模にすぎないそうだが、こういう程度ではとても凍結解除の前提にはなり得ない、今後ともそうである、完全撤退という基本線は絶対に譲らないということは確認さしてもらってよろしいですな。
  210. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 必ずしも完全撤退にこだわる必要はないのじゃないかというふうに考えております。すなわち完全撤退へ向けての方向が明白になれば、その時点で積極的に対応する道もあるかと思います。  ただ、先般インドシナ外相会議が行われまして、部分的な撤兵ということがうたわれたわけで、それ自体は歓迎いたすべきことでございますけれども、その実態を遺憾ながらいまだ掌握いたしてないわけでございます。二年前にアフガンからソ連軍の部分的撤退ということが言われまして、欧米各国がベニスのサミットを前にしてその評価に迷ったわけでございますが、その後私ども承知いたしましたところでは、どうやら兵員の交代にとどまった。もし今回の部分撤退がそのようなことであれば事態は現在と変わらないということじゃないかと思います。
  211. 秦豊

    ○秦豊君 いまの木内さんの答弁は在来の外交方針の変更というふうに私はイメージしますが、そう受けとめてよろしいですな。
  212. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 在来の方針の変更ということではございません。私どもとしましてはこのベトナムの問題につきましてはASEAN諸国とも相談をしていく間柄になっておりまして、そういったプロセスを経ることも必要でございます。その限りにおきましては在来の方針の変更ではございませんで、ただあくまでも一兵も残さずに撤退する事態が前提条件になるかどうかということになりますと、そこまでこだわる必要はないのじゃないかというふうに申し上げたつもりでございます。
  213. 秦豊

    ○秦豊君 その部分はかなり含みを残した微妙なものを感じざるを得ませんね。  残り時間がわずかですから、少し先を急ぎたいと思いますが、これは新井さんの御担当ですか、アメリカ上院外交委員会六月十日議事録の一部ですが、国務省のステッセル副長官の証言の一部、ソ連はベトナムの海空軍施設へのアクセスを強化し維持しその施設を使用するという項目があって、やや具体的な展開があります。いま防衛庁ないし外務省の把握している限りでダナンとかカムラン等の軍事施設は現実にどうなっているのか。それからソ連側の使用は随時使用か常時使用か。今後の予測はどうか。つまりベトナムあるいはモスクワ、ハノイの微妙なかげりも観測されていますから、それのはね返りを含めて、そういう問題まとめてちょっとお答えしておいていただきたい。
  214. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) お答えいたします。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 簡潔にお願いしたい。
  216. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) はい。  御承知のとおりソ連の航空機艦隊がベトナムの基地の利用を開始したというのは中越紛争を契機としてからでございます。そこで、その七九年の末ごろから、ダナン、カムラン湾、二つ基地がございますが、カムラン湾の軍事施設の建設が進んでおりまして、最近ではダナンよりむしろカムラン湾の利用の割合が高まっているというふうにとらえております。それで事実ツポレフTU95、いわゆるベアといいますが、その他水上艦艇あるいは潜水艦等もそのカムラン湾を利用しております。このうちTU95につきましては主として洋上哨戒の任務についております。それからさらに水上艦艇、潜水艦等は東シナ海とか太平洋、あの近辺の展開の寄港時に利用している。これを一言で言いますと常時利用の状況がさらに強まっているということだろうと、そういうふうにとらえております。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 きのうドネリー在日米軍司令官が、バックファイアーは太平洋に進出をしていると。これは恐らく僕は訓練飛行を意味していると思うのですが、防衛庁が把握している限りで空中給油機を伴ったバックファイアーの訓練飛行のうちベトナム基地を利用している形跡はありますか。
  218. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) バックファイアーについては全く承知しておりません。そういう事実はないと思います。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 それでは最後になると思いますが、外務大臣、秋にまた国連総会が開かれます。そうすると絶えず問題になっておりますのは、わが政府が核不使用決議案に今度こそはどうするか、つまり第二回軍縮総会鈴木スピーチとの関連において改めて問われます。その結論の前に外務大臣の基本認識は核は絶対悪とするお立場なのか、それともきわめて常識的な米ソ核軍事戦力のバランス論というお立場にウエートがあるのか。それから総理からは具体的にごく最近に核不使用決議案についてそろそろ外務大臣として意向を取りまとめよというふうな指示があったのかどうか。秋の国連総会はやがて到来するわけですから、そのときには外務省としてどういう手順でどういう結論に収斂していこうとされるのか。  はなはだ質問をまとめて恐縮だけれども、時間の制約上お許しをいただきたいが、その点をお答えいただきたい。
  220. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 軍事力のバランスにつきましては通常兵力、核兵力ともに考えてのことを念頭に持っております。  また、核不使用の決議につきまして、いま総理から特段の指示は得ておりません。現在外務省の考えておりますのは、従来と同じようにその決議が出された時点の提出国の考え方また決議内容等を検討して、その折に態度を明白にしたい、こういう考え方に立っております。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 まだ一分少々時間があるようですから活用します。  木内アジア局長、先ほどのあなたの答弁に触発されたのだけれども、今回の教科書問題で対韓経済協力問題についてやや遷延することもやむを得ない、全斗煥大統領の外遊日程もうすでにセッティングされていますからね。  そうすると、あなたの御判断では秋をまたがり最悪の場合は十一月の時点にまでかなり詰めがおくれるということですね。なってもいたし方がない、来年度にならなければそれでよいというふうな把握でしょうか。その点だけ伺っておいて終わりましょう。
  222. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 私どもとしましてはできるだけ早く経済協力の問題を決着させたいという態度に終始現在もそういうことでございます。  ただ、現実の問題としまして、昨今のソウルにおける、あるいは韓国におきます教科書問題をめぐる情勢はかなり騒然といたしておりまして、このような状況下、韓国の当局側が私どもと経済協力問題についてじっくり相談をされるような状況にあるかどうかと申しますとなかなか厳しいものがあるのじゃないか、したがいまして結果的には私どもの願望と異なりまして少しずつ先に延びてしまうのも残念ながらいたし方ないのかなというふうに見ておるわけでございます。
  223. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十八分散会