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1982-09-14 第96回国会 参議院 安全保障特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年九月十四日(火曜日)    午前十一時一分開会     —————————————    委員異動  八月三十日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     高杉 廸忠君  九月十三日     辞任         補欠選任      小野  明君     矢田部 理君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤 武徳君     理 事                 堀江 正夫君                 大木 正吾君                 上田耕一郎君                 柳澤 錬造君     委 員                 板垣  正君                 岩本 政光君                 衛藤征士郎君                 大坪健一郎君                 源田  実君                 夏目 忠雄君                 勝又 武一君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 桑名 義治君    国務大臣        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        外務省アジア局        外務参事官    長谷川和年君        外務省北米局安        全保障課長    加藤 良三君        大蔵省主計局主        計官       小川  是君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の安全保障に関する調査  (日米安保事務レベル協議に関する件)  (シーレーン防衛問題に関する件)  (防衛予算に関する件)  (防衛白書に関する件)  (防衛計画の大綱に関する件)  (我が国の防衛体制に関する件)     —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  昨十三日、小野明君が委員辞任され、その補欠として矢田部理君が選任されました。     —————————————
  3. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  4. 堀江正夫

    堀江正夫君 本日はハワイ協議にしぼりまして質問をいたしますが、まず最初に、先般のハワイ協議出席の皆さんの御苦労を多といたします。  今回の協議では毎日マスコミに対するレクチュアが行われたと聞いております。したがって、ことしの協議内容についての報道は比較的正確に行われたのじゃないかと思っております。そこで、私の質問はこの報道をもとにして行いますので、もし間違っている点がありましたならば御指摘をしていただきますが、同時に協議内容は大体承知した上での質問でありますから、一つ一つ質問に端的にお答えを願いたい。あらかじめその点をお願いをして質問に入らしていただきます。  まず、今回の協議総合評価でありますが、マスコミによりまして、危険な色増す日米防衛協力であるとか、自衛隊の傭兵化であるとか、安易かつ危険な決定であるとか、シーレーン防衛は妄想であるとか、いろいろと言われておるわけであります。しかし、私は昨日からこの協議が従来のいわば責任のないフリーディスカッションの場から具体的に防衛政策を論ずる重要なものに性格が変わったのじゃないかと考えております。そして今回の協議はそれなりに実りのあるものであったと思っておりますが、防衛庁外務省はこれをどのように総合的に評価をしておられるのか、その結論だけをまず承っておきたいと思います。
  5. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) お尋ね、協議内容については御承知の上ということでございますので、端的に結論から申し上げさしていただきますが、今回の日米安保事務レベル協議におきましては全体を通じてきわめて友好的な雰囲気の中で行われたということ、そして双方出席者がそれぞれの問題について自由かつ率直に意見交換をし相互の立場理解する上にきわめて有効であったということが言えようかと思います。  しかし、私どもの方から今回の五六中業あるいは五十八年度の概算要求等について、その内容あるいはその決定までの経緯背景等について説明をしたわけでございますけれどもアメリカはそれを一応の評価をしながらも今回の国際情勢というものを見た場合にまだ不十分であるということ、そうしてアメリカもこの軍事的な国際環境の厳しさというものをわきまえて相応の努力をしている、日本も西側の一員としてより一層の努力をしてほしいということでありまして、具体的な数字を挙げての防衛力増強についての要請こそなかったものの、わが国防衛力増強に対する期待というものはきわめて強かったということが今回の会議を総括した印象であろうというふうに思います。
  6. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 外務省といたしましても大体同じ認識を有しております。今回の事務レベル協議におきましては本当意味での対話というものがあったということは米側評価していた次第でございます。
  7. 堀江正夫

    堀江正夫君 具体的な協議に入る前にマンスフィールド大使があいさつをされたようでありますす。この中で五六中業早期達成期待の表明をされた。このことは今回新たに国家安全保障会議シグールアジア局長が出席された、こういった点から考えましても米政府の一致した正式の見解だと見るべきだと思いますが、いかがでありますか。
  8. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) マンスフィールド大使から会議の冒頭に当たりまして今回の五六中業に当たって防衛庁が行った努力というものは評価をする、歓迎はする、しかしなお一層の防衛努力を要請したいという趣旨発言がございました。そうして今回のわが方の防衛力整備についての増強のみならず、国際情勢一般についての認識アメリカ側の内部として国防省、国務省あるいはホワイトハウス、国家安全保障会議等を通じて一致した意見であるという印象を持ったことは事実でございます。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 次は国際軍事情勢について承ります。  まず、この中で米側が一番力点を置いて強調した点を御説明願います。
  10. 新井弘一

    説明員新井弘一君) お答えいたします。  すでに報道でも明らかなように、今回の国際情勢に関する討議につきましては世界情勢全般及びアジアを中心とする地域情勢をめぐりまして双方との間に意見交換がございました。その中で何といいましてもアメリカ側が重要視しているのは、最近先般来のソ連の質量とも両面にわたる軍事力増強動きでございました。
  11. 堀江正夫

    堀江正夫君 次に日本側説明をされたわけです。その説明の中でアジア情勢に触れられております。そして今後もアジア情勢の好転に対して日本が最大限の努力をする、そのように言われたと伝えられておりますが、その点はもうまさにそのとおりだと思いますが、説明をされたアジア情勢についての見方はどうも私には少し甘いのじゃないかと思われてなりません。  たとえば中国対外政策は穏健だと、こう言われております。しかし中越戦争、カンボジアにおけるポル・ポト支援、さらに全く突発的に教科書問題が大きな声を上げた、これらを見ますと決して穏健とは言えないのじゃないか、こうも思うわけであります。  たとえばASEAN結束と活力を評価しておられます。しかしその結束は域内の軍事紛争ソ連中国両国軍事プレゼンスの反映ではないか。言うまでもなく各国はそれぞれ問題点を包蔵しております。国家間の対立もあります。確かに結束を強化しておりますけれど、その結束も軍事的な本当結束までには至っておらない、こういったASEANの状況をどう見たらいいのか。  さらに太平洋地域近代化アジア安定要因、このように言われております。確かにそういう面があると思います。しかし第二次大戦以後の軍事紛争を見てみますと、第一番が貧困地域、次が中所得地域、そして第三番目が極貧地域で多発をしておる、これが現実であります。  こういった点から見ても、どうもいかがかと思われてならないわけですが、外務省がこのアジア情勢について言われた趣旨を簡単に承っておきたいと思います。
  12. 加藤良三

    説明員加藤良三君) お答え申し上げます。  私どもの方からは日本安全保障政策というものを一般的に説明してまいります過程日米安保体制維持強化ということ、それからわが国自衛力整備ということに並んで外交面での努力ということもある、この三つのそれぞれの分野において努力を行う必要があるという話をした経緯がございます。  こういう一般的な討議過程で結局アジアの平和と安定に寄与するというものを考えます場合には、これらのものを総合的に勘案して評価さるべきであるという一般論を述べたということでございまして、この地域におきまする一般的な国際情勢というものが非常に厳しさを増しているというところに関する限り日米間に見解相違はございませんでした。
  13. 堀江正夫

    堀江正夫君 少なくも両国軍事情勢に対する説明を見る限りにおきましては、新聞等でも報道されておりましたが、依然として両国にはやはり認識に若干の差があるように思われてならないわけであります。しかしその後のディスカッション、これが行われて、その中では少なくもソ連軍事力増強、あるいはこれに伴う脅威の増大、こういった点については認識が一致したようにも思えるわけなんです。  その辺どうもはっきりしないのですが、この席で明確に御答弁願いたいと思います。
  14. 新井弘一

    説明員新井弘一君) 明確に端的にお答えいたしますと、繰り返しますけれどもソ連軍事力、特に近代化動き等々によりまして、現下の国際情勢が厳しさを増しているということについては双方の間に意見相違はなかったということをはっきり申し上げられると思います。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 軍事情勢につきましては一応このくらいにいたしておきまして、次に移ります。  五六中業と五十八年度の概算要求について日本側から細部の御説明を行われた、それに対して米側がどのように評価したか、先ほど一部防衛局長からもお話がありましたが、どのような点を具体的に問題点として指摘をしたのか、これらの点につきましても新聞等報道はされておりましたけれども、一応承っておきたいと思います。
  16. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) この五六中業あるいは五十八年度の概算要求につきましては日本側から説明をしたわけでございますが、その説明は、まずこの五六中業なり五十八年度の概算要求を決めたところの国内事情背景というものについて説明をし、そうした厳しい環境の中でわれわれとしては精いっぱいの努力をした結果のものであるということをるる説明をしたわけでございます。それに引き続きまして、五六中業内容性格策定方針整備内容等について具体的に御説明をし、さらに五十八年度の予算についてもこうした厳しいシーリングの中でこの五六中業というものを確実に達成する方向努力したという点をるる説明をしたわけであります。  これに対してアメリカ側は、この五六中業努力しているという点についての評価はする、それからなお具体的な内容については一層勉強してみるけれども、現在の国際情勢というものを見た場合に日本側が考えているこの五六中業ではまだ不十分ではないのか、なお一層加速した努力が必要であろうというふうな指摘があったわけでございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 次に、シーレーン防衛の問題につきましてお聞きをいたしますが、まず第一に、これにつきまして米側がどのような見解説明をしたのか、これをお聞きいたしたいと思います。
  18. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず、このシーレーン防衛につきましては、二日目にアメリカ統合参謀本部第五部長であるビグレーという海軍中将からのコメントがあったわけでございますが、その要点を申し上げますと、第一に、日本防衛に関し、現在日本が市場あるいは資源というものの多くを海外に依存しているという立場に立ってみると、シーレーン防衛海上交通安全確保というものは日本防衛安全保障にとってきわめて重要、バイタルな問題であるという指摘が第一点言えようかと思います。  そうして、日本防衛力整備の中でこのシーレーン防衛というものを高める必要があるだろうということ、しかし現在われわれが聞いたところによれば五十八年度の予算についても、あるいはまた現在の防衛力においても、それからさらには五六中業で達成されるであろう防衛力においても、このシーレーン防衛能力というのは十分とは思われないというのが第二点。  それから第三点として、アメリカ側日本立場に立って分析、研究をした結果によると、いま申したような日本防衛力海上交通の安全を確保するにとって十分でない、なお今後対潜能力、あるいは防空能力というものを強化することによって一層の能力の向上が期待できるのではないかというふうな話があったわけでございます。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 米側提案説明の中で一千海里シーレーンの以内、以遠分担、こういったような話はなかったのですか。
  20. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 失礼いたしました。  日本海上防衛シーレーン防衛について努力をする必要があるということの中で、日本は千マイル以内の防衛というものを主体的に行ってほしい、米軍はそれ以遠防衛力、それからこの千マイル以内、以遠を通して攻勢的な分野米側が担当して日本に協力するというふうな話はございました。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 そこで、シーレーン防護シーレーン防衛いろいろ言われておりますが、このシーレーンというのは従来から一定の帯だ、こう解釈しておる人もおります。あるいは、この帯は確かに帯だけれどもそのときどきによって変わる不定の帯だ、こうも言われております。さらに、いやこれば結局は面なんだ、こうもいろいろと言われておりますが、この点は本当にはどうなのか、またこの点は思想的に日米間では一致しておるのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  22. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) アメリカ側が今回のシーレーン防衛に関連して再三言っていたことは、まず一つは、この海上交通安全確保シーレーン防衛というのは、あくまでも日本個別的自衛権憲法の枠内で日本防衛のために日本国益のために行うべきことは当然であるというまず大前提を彼ら自身も認めております。  第二点は、われわれが従来この国会においても再三御説明しておりますように、わが国周辺数百マイルあるいは航路帯を設ける場合にあっては千マイルをわが方の防衛力整備めどとして現在防衛力整備を進めているということについての認識理解というものを十分持った上で、なおかつその重要性についての指摘があったということでございまして、このシーレーン防衛についての認識、特段今回の会談においてもそのシーレーンが帯であるとか線であるとかいうふうな議論はございませんけれども、そういったわが方の考え方について十分認識した上でその重要性指摘したというふうに理解しております。
  23. 堀江正夫

    堀江正夫君 どうも私聞き漏らしたかと思いますが、もう一度具体的にシーレーンというのは一定の帯なのか、不定の帯なのか、面なのか、その点をお聞きいたします。
  24. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) いろいろシーレーンというものについての考え方があろうかと思いますが、私どもはこのシーレーンというものは端的に言うならば海上交通の安全を確保することがシーレーン防衛であるというふうに理解しております。  そうして、このためにどういうことをやるかということを考えた場合に、まずわれわれとして能力的にできることは周辺数百マイルであろう、また航路帯を設定する場合には千マイル程度が一応のめどとして適当であろうというふうなことを考えているわけでございまして、このシーレーンというのが一種の帯というような形で具体的に地図の上に引かれたものであるというふうには理解してない、そのときそのときの態様によりまして、そういった航路帯といいますか、船を通す経路というものはある程度集約される、特に日本の場合にあらゆる世界の各方向から入ってくる航路というものは日本付近に来ると必然的に収束されてくるわけでございます。  そういったものの端的な一つの例として一種の航路帯というものを設定した場合に云々ということを申し上げているのであって、シーレーン防衛ということを一般的に申し上げるならば、海上交通の安全を確保する、船舶を保護するということ、船舶の安全を確保するということがこのシーレーン防衛の意義であろうというふうに理解しております。
  25. 堀江正夫

    堀江正夫君 もう一度お聞きします。結果的には、そうすると面になることもある、そういうことになりますね。
  26. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 面になるか線になるかということですが、そのシーレーンというものを線だというふうな理解はしておりませんので、ある種の航路帯を設定する場合には、まあ何といいますか、ある種の海域を区切った、まあ海域というか航路帯ということを考えざるを得ないようなこともあるかもしれませんが、一般シーレーンという言葉は何かといった場合には海上交通の安全を確保することだというふうに御理解いただきたい。それは線とか面とかということとはまた別の次元の話ではなかろうかというふうに思っております。
  27. 堀江正夫

    堀江正夫君 まあこれはこのくらいにしておきましょう。  そこで、昨年の春に総理がニューヨークでシーレーン防衛の問題につきまして演説をされました。これは私の解釈でありますが、総理は千海里内は日本の庭先だ、五条事態下でこの千海里の範囲内の日本向け船舶等に対する保護は日本みずからがやるのだ、こういう意味だと理解をしておるわけです。  それで、今回の千海里内日本分担という米側提案は、この総理の言われておる趣旨と同じ趣旨、同じ思想と考えるわけですが、いかがですか。
  28. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 総理大臣が昨年ワシントンのプレスクラブお話をした趣旨というのは、防衛庁が従来再三国会等において述べておりますように、わが国防衛力整備の目標として周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイルの防衛というものをめどとして防衛力整備を進めているということを再三申し上げているわけですが、そういった趣旨と同じことをそのプレスクラブでも申し上げたというふうに理解しております。
  29. 堀江正夫

    堀江正夫君 それはそれで一応御説明は終わりかと思いますが、もう一度聞きますが、私が言いました今度のアメリカ提案した趣旨と同じですかどうですか。
  30. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) これも再三繰り返しになりますが、アメリカはわが方の海上交通安全確保についての考え方、すなわち憲法の枠内、個別的自衛権の枠内であるという前提、それからいま申し上げたようなわが国周辺数百マイル、航路帯を設ける場合は千マイルをめどとして防衛力整備をするという前提認識し承知した上でのいろいろな指摘であったというふうに考えております。
  31. 堀江正夫

    堀江正夫君 よくわかりました。  そこで問題は、その千海里内の防衛のための所要量の問題になるのだろうと思います。私の理解では、元来こういう点において両国間で十分に話し合いがされておったとは理解をしておらないわけであります。したがってここにおいて両者の間に差がある、これは当然と言えば当然だと思っておりますが、千海里内の日本分担というのは、一般的に従来の米海軍力中東スイングによって薄くなった部分を補完する、こういう意味から、もちろん防勢面ですけれども日本が主役あるいは全面的な責任を負うというふうに変わってきているのじゃないか、こう思うわけですが、いかがですか。
  32. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 最近の国際情勢の厳しさというものを背景にして、アメリカ軍事力というのが世界相当広範囲に広がっているということの結果、一般的にある地域についての米軍プレゼンスというものが薄くなっているということは言えようかと思います。またそのためにこそアメリカはそれぞれの友邦諸国に対しての防衛力増強期待しているということもまたこれ理解できるところでありますが、われわれが考えているシーレーン防衛なりというものは、あくまでも日本防衛のために、日本国益のために自衛権範囲内で必要なことをやろうということでございます。  ただ、その結果アメリカに相応の寄与の結果になるということは、これはあり得るかもしれません。しかしこれはアメリカ軍事戦略というものの補完、肩がわりということを目的としたものではなくて、あくまでも日本防衛のために自衛範囲でやるということが大前提であることは当然のことだというふうに思っております。
  33. 堀江正夫

    堀江正夫君 もちろん私もそう思うわけですが、そこで、千海里内の米国の攻勢作戦分担、こういうことを言ったと言われておりますが、具体的にこの攻勢作戦とはどのような作戦が考えられるのか、それをお聞きしておきます。
  34. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) このアメリカ攻勢作戦というのを具体的にどうかということは一概になかなか言えないと思いますが、機動打撃力を持った第七艦隊というのがすでに北西太平洋におるわけでございます。そういった機動打撃力を使ったもろもろの行使というものが当然攻勢的な分野にも及ぶことがあろうかと思います。  それは積極的に敵の対象国潜水艦なり艦艇、航空機の攻撃をすることもあるでしょうし、いろいろな分野があろうと思いますが、いずれにせよ、わが方の海上防衛力でもって足らざる部分についての攻勢的な分野というものは一般的にアメリカが行うであろうということでございます。
  35. 堀江正夫

    堀江正夫君 もちろんシーレーン防衛を達成しようということになりますと、柔軟な戦略が必要だと思います。その中には攻勢的な作戦もやらなければいけない、防勢的な作戦もやらなければいけない。防勢的な作戦の中にもいろいろとある。その攻勢的な作戦をやる、まあこれ以上は私具体的には聞きませんけれども。  次は合意を見たシーレーン共同研究について承っておきたいと思いますが、これは報道されておるように、ガイドラインに基づく五条事態研究である、そうですか。
  36. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 御指摘のとおりでございます。
  37. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうだとしますと、率直に言いまして今回改めて提案をしたということが私にはなかなか理解できないわけであります。  といいますのは、ガイドラインに基づくところの研究は言うまでもなく現能力によっていま事が起きた場合に応ずる共同作戦計画をつくるための研究であります。で、これはすでに一つのシナリオについては概成したというふうに防衛庁国会等でも報告をしておられます。シーレーン共同作戦計画、これはもちろんこの一環として具体的にやらなければならない既定の決定の枠内のものじゃないか、それをどうしてこの機会にわかり切ったことを提案されたのかなと、こういう疑問でございます。  で、協議をされた経緯からずっと眺めてみますと、まさか問題の先送りとは考えたくはありません。常識的にはやはり将来の兵力水準に焦点を当てるべき研究じゃないかなと、こう思うわけであります。で、特にあの時期日本側から提案をされた趣旨というものを簡単に承っておきたいと思います。
  38. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) この研究はただいま御指摘のとおりガイドラインに基づくものでございまして、これは日本に対する武力攻撃が行われた場合、すなわち安保条約第五条の事態における日米共同作戦計画一環として行うということでございます。  この研究はすでに数年来重ねられておる研究一環でございますが、昨年ある一つの設想に基づく作戦計画の研究というものが一応概成したということは国会で答弁も申し上げたことはまたそのとおりでございます。しかしこのシーレーン防衛海上交通安全確保を主要テーマとした研究というものは必ずしも十分でないというふうな反省がわれわれにあるわけであります。  しかも、今回のハワイ協議におきまして、アメリカ側から、アメリカ側が分析をした結果によると現在の防衛力をもってしても、さらにはまた五六中業による防衛力をもってしてもこの海上交通安全確保というための能力として不十分であるということについての説明があったわけでございます。われわれ海上交通安全確保についても、日米共同対処というものを前提とする以上、その基本的な事項について日米間に認識を一致さしておくことが必要であるというふうに考えたのが第一点。  第二点は、アメリカ側が今回この日本防衛力についての不十分さというものを指摘したわけでございますが、その前提となる脅威の内容、あるいはその脅威がどういう形で侵攻してくるかというそのシナリオの設定、たとえば空からの脅威というものはどれほど見込まなければならないのか、そうしてその脅威はどういう形で日本に侵攻してくるのかということを具体的に詰めないと、なかなか私どもとしてもアメリカの言い分というものについての理解なり認識というものはいかないわけでございます。そういう意味合いから、今回せっかくの御指摘もあったことでございますので、ともかくそういう前提条件からまず勉強をしてみようということを提案し、アメリカ側もこれを了としまして必要な協力をしようということになったわけでございます。  決してこれを将来の防衛力整備一つのきっかけにしようというものではございません。あくまでも現有レベルにおけるオペレーションプランという立場研究をしたいというのが私どもの考えでございます。
  39. 堀江正夫

    堀江正夫君 政府の立場としては現在それ以上は言えないのでしょう。しかし問題の所在が必ずしもそこにはないということは明瞭だと私は思っております。少なくも今度のこの合意された研究に基づいてやはりその点が浮き彫りされるような研究ということを恐らく多くの国民は期待しておるだろうと思います。  その点を申し述べるわけでありますが、これは日本側からの提案であります。そうなりますと、実施要領等につきましては当然日本側から提案をしていかなければならぬ性格のものじゃないかと思います。会議後すでに二週間たちました。長官の訪米も間近いわけであります。いつごろ実施要領等について御提案をされるおつもりですか。また段取りはどうなっていますか。
  40. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まさに御指摘のとおり今回の共同研究提案はわが方から提案したわけでございますので、わが方から何らかのアクションをとることが常識的かという判断はございます。  現在その開始の時期、あるいはどういう形でするかということについてまず防衛庁部内における研究をしている、その結果アメリカ側にそういったわが方の案というものをぶつけて調整をするということになろうかと思いますが、その時期あるいはタイムスケジュール等について現在確たる具体的な案を持っているわけではございません。今後できるだけ早期にやりたいというのがいま言えるぎりぎりであろうというふうに思っております。
  41. 堀江正夫

    堀江正夫君 今度の協議の中では、たとえばことしの一月に合意をした六条事態研究、これの促進についての期待も表明されたというふうに聞いております。また去年大村防衛庁長官訪米時、向こう側から提案がありました武器技術供与の問題、これについての促進方の期待の表明もあったというふうに聞いております。私はこの問題も、やはりのんべんだらりしておられるわけじゃないけれども余り時間をかすといったようなことでは日米間の信頼関係の基本を損なうことにもなりかねない。ぜひとも積極的にこの問題は取り組んでいただきたいということを御要望申し上げておきます。  そこで、長官がこの月末には訪米されますが、ハワイで合意された共同研究、これはさらに政治的にワシントンにおいて確認されるべきものかなと、こう思うわけでありますが、いかがでございますか。
  42. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 今月末に大体予定をしております私の訪米、まだ正確に日にち等決まったわけではございませんけれども、大体月末に出ていかなければならないような状態でございますけれども防衛についての日米首脳会談は、先生御承知のとおり安保条約を結んでおります両国防衛関係の首脳がお互いの防衛問題につきまして間断のない、また腹蔵のない意見を交換する、対話をするというのがもともとの趣旨でございますので、そのための会談でございますけれども、したがって特定の懸案等についてぎりぎり詰める、特定の懸案の解決ということが目的ではございませんので、そういうことも考えながら腹蔵のない意見の交換をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございまして、もちろん話し合いの中には出るかもしれませんけれども、いまこれこれで解決を図ろうというような姿勢で私は臨んでいるわけではございません。
  43. 堀江正夫

    堀江正夫君 どうも私耳が遠いものですから聞き漏らしたかと思いますが、この共同研究、当然話し合いの中に出てくると思うのです。そこで確認をされますかされませんか、この実施について。
  44. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) もちろんハワイ事務レベル協議でこちらから提案をして向こうからの賛意を得たことでございますから、その方針をさらに確認をし合うということは当然あろうと思います。
  45. 堀江正夫

    堀江正夫君 時間もそろそろ迫ってまいりましたので、最後に、私はマスコミはどのように評価しようとも今回の協議というのはそれなりに両国にとって大変実りのある会議だったと評価をしております。  ただ、今回の協議を通じまして強く感じますことは、一つはいまやいよいよ従来どおりの国内的な制約、理由だけでは世界にも全く通用しないし理解もされない、対応もできない、このようになってきた。たとえば自衛権の問題一つ考えてみましても、事シーレーン防衛に関する限りはもっと幅広い解釈運用が必要なのじゃないか、それは日本自体のために、このように思われてなりません。  さらに基本的に申し上げますと、従来の防衛政策の法律解釈、この中に軍事的な合理性というようなものが全く考慮されてない、一顧もされてない、検討の対象になっていない、そういったところに日本の基本的な問題があるのじゃないかなということをしみじみ感ずるわけであります。  二つ目は、言うまでもございませんが、米国は日本の生存にとって絶対手放すことのできない唯一の同盟国である、本当に力を分け合わなければならない存在なんだ、それをやらなければ日米安保体制というものが形骸化してしまう可能性さえないとは言えないのだ、そういったことを政治も国民ももっと正しく理解をしていただくように、もっと関係者みんなが努力をしなければいけないという、こういったことを強く感じたわけであります。  最後に、防衛庁長官の御所見を承って私の質問を終わらせていただきます。
  46. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) わが国は言うまでもなく世界の中でも一番すばらしいと言われております平和憲法を持っております。その中から専守防衛、非核三原則、また武器輸出禁止三原則等いろいろな日本防衛には今後とも守っていかなければならない基本的な確たる原則がございます。これを今後ともしっかり守ってまいるわけでございますけれども、その中でいま先生御指摘のようなわが国の文脈だけで通用し世界的には通用しないいろいろな問題点があることも私も承知をしております。  しかし、冒頭に申し上げましたとおり、私どもには守らねばならない防衛の基本原則があるわけでございまして、この原則を守りながらもまた世界でも理解できるようなそういう防衛というものを考え、防衛に対する考え方を整合性を保ちながら、これから新しいよりよき防衛の姿をわれわれは追い求めていかなければならないというふうに考えております。  そしてまた、その中の基本が日米安保条約でございますから、これがいまもお話しのとおり形骸化しないように、本当日米安保条約というものが日本防衛のために真に役立つ、効果的な力が発揮できるような日米間の信頼性の維持というものは、これまたわが国防衛にとっては欠くことのできない基本的な問題だろうと思います。  そのことについての認識も私は先生と全く同じでございまして、そのための一助ともいうことで今回の日米首脳会談もあるわけでございますから、先生の御指摘、御意見、私もそういう御意見を貴重な御意見として参考にさしていただきながら、これからの防衛問題、当面の日米首脳会談に臨みたいというふうに考えております。
  47. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 時間をいただきまして若干の質問をさしていただきますが、いま堀江先生がわが党を代表されまして主要な問題点について御質問になりましたので、多少重複するかもしれませんが、少し詰めてお伺いしてみたいと思います。  まず、今回の日米事務レベルの協議につきましてでございますけれども日米事務レベル協議両国の事務レベルでの話でございますから、もちろん政治的な話というよりは事務的な詰めが中心だろうと思います。  一番主要なテーマになりました千海里のシーレーン防衛につきましても、これは鈴木総理が言われたからアメリカが問題提起をしたのであって、いわば政治的に決定しない事項をこの日米事務レベル協議で持ち出したのではないと私は理解しておりますけれども、まずそこのところちょっとはっきりお伺いしておきたいと思います。
  48. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回の事務レベル協議におきまして、アメリカ側がこの点に関しても言ってきたことは、一つは昨年五月のワシントンにおけるプレスクラブでの鈴木総理発言というものを評価するという前提であったわけですが、その話の一環として日本日本防衛にとって、市場、資源を海外に依存する日本にとっての    〔委員長退席、理事堀江正夫君着席〕 海上交通安全確保というのはきわめてバイタルな重要なテーマである、そして日本はその航路帯を設ける場合には千海里、周辺数百マイルの中にあって主体的に防衛努力を行うということも認め、そうして日本がこのために五六中業においても相応の努力をしているということを評価しているということがあるわけでございますが、そういった意味合いにおいて、われわれが現在とっている防衛政策防衛力整備考え方というものを彼らが十分認識し、かつそれを評価するということがその背景にあったというふうに思うわけでございます。  したがいまして、今回アメリカ側から指摘されたシーレーン防衛につきましても、そういった前提の中で、しかも日本が現在とっている憲法範囲内あるいは個別的自衛権の枠の中での防衛努力という限定を置きながら、なお一層の努力期待するということを述べたわけで、特段新しいことを言ってきたということではないというふうに私ども理解しております。
  49. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 そこで、中身を新聞報道その他で伺っておりますと、ソ連の動向すなわちソ連戦略姿勢は、アメリカは一貫して何と申しますか抑止戦略に立っておるけれどもソ連は一貫して軍拡の傾向がある、あるいはソ連の極東における兵力は確実に増強しておる、非常に慎重な国ではあるけれども極東における兵力は確実に増強しておる、こう言っておりますけれども、具体的に従来われわれが知っております数字と違って、どういうふうに増強されたという説明がありましたか。
  50. 新井弘一

    説明員新井弘一君) ただいま先生御発言のとおり、アメリカ側からソ連の極東等における軍事力の動向について具体的な説明があったことはそのとおりでございます。ただ、その中身はどうであったかというと、これを逐一つまびらかにするということは事柄の性質上差し控えざるを得ないという点ば御理解いただきたいと思います。  ただし、概括的に申し上げれば、ソ連が極東に配備している陸海空及び核戦力、これにつきましてはソ連全土で持っているトータルの数の約三分の一あるいは四分の一程度であるということでございまして、こういったアメリカ認識はすでにわが方が防衛白書等で明らかにしております認識と基本的に差異がなかった、したがいまして私どもの率直な印象としては格段目新しいということはなかったということでございます。
  51. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 われわれが知り得ております数字では、たとえば潜水艦がウラジオストックに百二十八隻、艦艇がその他の分含めて七百二十隻以上、全部で百五十八万トンぐらいおるということですが、大体そんなところですか。
  52. 新井弘一

    説明員新井弘一君) 大体そういうふうに理解していただいて結構だと思います。
  53. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 ところが、アメリカ側はそうは言いながら八〇年代の脅威を考えると日本のいまなさっておられる努力、達成される兵力水準では不十分じゃないかと思うのだがどうだろうかと、こういうようなことを言っておるようです。  一体八〇年代の脅威というのは具体的にどういうことを言っておるのでしょうか。
  54. 新井弘一

    説明員新井弘一君) この点については必ずしも詳細明らかではございませんが、私どもアメリカ側と常日ごろ、さらにはハワイ会談を通じて理解しているところを述べますと、御承知のとおりソ連が過去四半世紀にわたりGNPにして一二ないし一四%というベースで軍備増強を進めてきた、その蓄積効果というのがより顕在化するのは八〇年代であろう、そういうことからその種の認識が出てきておる、そういうふうに理解しております。
  55. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 いろいろな軍事専門家と言われる方々の議論なんかによりますと、ソ連軍事力の上昇ラインとアメリカ軍事力の停滞ラインがぶつかるところが八五年ごろじゃなかろうか、したがって八四年から五年にかけては世界政治に非常に軍事的な危機が来るのじゃないかということを言う人もおりますけれども、そういう認識あるのですか。
  56. 新井弘一

    説明員新井弘一君) 今回のハワイ協議におきましてはその種の具体的な意見の開陳はございませんでした。  ただ、一般論といたしましては、御承知のとおり一九七〇年代のデタント期を通じまして米国及び西側諸国等においては国防予算の増額というものをむしろ差し控えてきた。御承知のとおりアメリカにつきましては特にアフガニスタンに対するソ連の武力介入を契機に、これはカーター時代の末期でございますけれども、国防力の増強、国防費の増額に踏み切った。ただし実際にリードタイムというものがあるので、やはり七〇年代の終わりに始めたとしても実際に西側あるいは具体的には米国の軍事力が顕在化するということについては数年かかる。そういうことから、他方における先ほど御説明しましたようにソ連の間断なき軍事力増強ということから、いわばギャップが拡大する可能性があるという、そういう説が実際に存在していることは事実であろうかと思います。
  57. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 そこで、そういう脅威があるから、アメリカの気持ちとしては、もう少しあなたのお国は防衛力を強化されないと本当のところは大変おくれてしまうのではないだろうかという危惧をあらわしたのではないかという気がいたしております。アメリカの議会の議論は、まあ選挙の前ですから多少アメリカの経済危機をそういう議論に肩がわりするという点もありますけれども、しかし一貫して日本防衛努力をもう少し積極化してもらいたいという願望に満ちておるようでございます。  これは人の国の話ですけれどもわが国自体としていま防衛力増強努力をしておる五六中業についてもアメリカがいろいろ評価をしておるようですが、この事務レベルのいわゆる防衛関係専門家の方々の評価として五六中業評価はどうあるのか。  それからまた、少し五六中業を前倒しに早目にやってくれないかというような議論があるようでありますし、また米国は核の傘を含めて同盟国に対するコミットメントは絶体に守るけれどもそれは同盟国の協力が必要だということを言っておりますけれども、それは同盟国の協力が不十分な場合にはどうこうするというようなニュアンスがあるのかどうか。  それからまた、これを背景にして日本の場合は五六中業についてこの実行計画を予算に組むことになっておりますけれども、昨日の国防会議ではこれに対して大蔵大臣から多少の制約的な発言があったようですけれども、その辺のことをアメリカの要望も含めてちょっと説明していただきたいと思います。
  58. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) ただいまの日本防衛力整備、すなわち五六中業なり五十八年度の概算要求について、それぞれの内容についてはもちろんでございますが、その策定にかかわる経緯背景等についてもるる説明をしたわけでございます。  アメリカ側からのこのわが方の防衛力整備についての意見というものを要旨簡単に申し上げますと、まず一つは、ただいま説明のあった五六中業については引き続き勉強をしてみたいということが第一点でございました。  それから第二点は、防衛庁が五六中業で大綱達成のために努力をしているということは評価するというのが第二点でありました。  第三点は、しかしさりながら率直に言うならば、この五六中業防衛力をもってしても一九八〇年代、ただいま御指摘のあったような脅威というものを考えた場合に、米国はそれによって達成される防衛力水準では十分とは思われないというふうなこと、そうしてその後アメリカ側においても同盟諸国に対する防衛力増強する期待というか声というのが相当高まっているというふうなことについても十分認識をしてもらいたいというふうな意見がございました。
  59. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 それで、議論の中心が海上防衛、特にシーレーン防衛の問題にあったように思いますけれどもシーレーン防衛については後でまた別に詳しく御質問したいと思いますが、要するにシーレーン海上防衛日米間の事務的な研究を続けなければいかぬだろうというような話が出ておるようで、さっきの御説明によると、現有兵力のオペレーションプランだというようなことでございます。この日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインのもとでの日本有事の場合の専門家の検討というものの性格をちょっと御説明いただきたいと思うのです。  これは両方の持ち寄ったいろいろな事実、情報の調整や検討を基礎にした研究であろうかと思いますが、このガイドラインを決められましたのはたしか昭和五十三年ごろだと思いますけれども、昭和五十一年ですか、この取り決めに当たっては、ガイドラインは「日米安保条約及びその関連取極に基づいて日米両国間が有している権利及び義務に何ら影響を与えるものと解されてはならない。」というような留保条件がついているようですから、われわれは安心して率直な腹を割った話し合いと理解していいのでしょうね。さっきの防衛庁長官アメリカにおいでになって、アメリカの高官と話されるときの政治的談議のテーマには私はどうもならないような気がするのですけれども、どうですか。
  60. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず、ガイドラインに基づく共同作戦計画研究というものはどういう性格かということでございますが、これは昭和五十三年十一月に決められたものでございまして、このガイドラインに基づくところの研究をする、シーレーン防衛研究共同研究をこの場でするということを申し上げたわけですが、まずこのガイドライン研究大前提として日米防衛協力のための小委員会の報告というのがございます。  この報告によりますと、まず前提条件としまして「事前協議に関する諸問題、日本憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は研究協議の対象としない。」ということが第一点でございます。  それから第二点は、この「研究協議結論は、日米安全保障協議委員会に報告し、その取扱いは、日米両国政府のそれぞれの判断に委ねられるものとする。この結論は、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」、そうしていま御指摘のありましたようなこの指針というのは「日米安保条約及びその関連取極に基づいて日米両国間が有している権利及び義務に何ら影響を与えるものと解されてはならない。」ということが決められているわけでございます。  今回の共同研究というものも、当然のことながらこの枠内において日米が共同して対処する場合にいかに整合のとれた統一的な作戦が可能であるかということの研究を行うものでございまして、御指摘のとおり、この枠からはみ出るということは一切考えておりません。
  61. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 防衛庁長官は今度訪米されますけれどもアメリカがいろいろ注文をつけるかもしれませんけれども日本の独自の立場をしっかりお話しをいただきたいと思うのですけれども、こういう問題について、これは事務的に詰めるべき問題であって政治的な性格の問題じゃないということはいまのお話で明らかでありますけれども、どうお考えになっておりますか。
  62. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 先ほど来堀江先生の御質問にもお答えを申し上げましたけれども、今回の日米防衛関係での首脳会談はお互いの防衛の問題についての間断のない対話、腹蔵のない対話をするのがもともとの趣旨でございますので、総括的にいろいろな話をしてまいりますけれども、大坪先生御指摘のとおりアメリカ側のいろいろの期待表明もあろうかと思いますけれども、また現に過去にもあったわけでございますけれども、それらを念頭には置きながらも、わが国わが国の自主的な判断でわが国防衛をやってまいるという基本的な立場、姿勢で会談にも臨みたいと思いますし、また今後の防衛の姿をそういう形でつくり上げていきたいと思っております。
  63. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 そこで、シーレーン防衛政策について少し質問をしぼってみたいと思います。  まず初めに、鈴木総理大臣がおっしゃった非常に素人わかりのするハリネズミ防衛論というのがございます。それからその次にこのシーレーン防衛論というのが出てきたわけでございますけれども、これはわが国憲法九条、それから専守防衛との関連でこれらの防衛論の考え方をどういうふうに理解したらいいのか、そこのところをまずちょっと詰めてみたいと思います。
  64. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず、シーレーン防衛につきましてでございますが、わが国は御承知のように海で囲まれている国でございます。そういった立場にある以上、貿易なり資源、エネルギー等の大半は海外に依存しているということから見て、わが国が生存をしていくためにも繁栄をしていくためにも海上交通安全確保というものはきわめて重要であるということは論を待たないかと思います。  われわれとしてはそういった重要性認識の上に立って海上防衛力整備をしているわけでございまして、その整備は、これも再三御説明申し上げているとおり周辺数百マイル、航路帯を設置する場合には千マイル程度をひとつのめどとして防衛力整備していく、これはあくまでもわが国防衛のために、わが国国益のために必要であるという判断に基づいて行うものでございます。  一方、ハリネズミの理論でございますけれども、当然のことながらわが国に対する武力攻撃があるとすれば海空を通じて行われるのが常識であろうというふうに考えるわけでございます。  そういった侵攻の態様というのは一概にこれこれというふうに断定するわけにはいきませんけれども、いずれにせよ、いかなる侵攻があるにせよ、侵攻する者にとってわが国に対して手を加えた場合に手ひどい手痛い打撃を受けるというハリネズミ的な発想が必要であり、そういった防衛力を持つことがまた日本に対する侵攻、侵略を抑止する上でも役に立つのではないかということを考えるわけであります。  そして、そのためには防空能力、それから着上陸阻止能力あるいは水際での撃破能力、いろいろ複合された機能というものを有効に組み合わせて縦深性のある効果的な防衛力を保持することが侵略を抑止するゆえんであるということを考えまして、シーレーン防衛につきましても、あるいはハリネズミ的な物の考え方わが国に対する武力侵攻を抑止するという立場に立った考え方は、いずれもわが国の置かれた立場あるいは専守防衛というものを考え国柄というものを考えた場合に相矛盾することなく両存できる考え方であろうというふうに理解しております。
  65. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 結局戦争はないにこしたことはないわけでありますし、攻撃はないにこしたことがないわけでありますし、そのために抑止論という議論があるのだろうと思います。  そこで、抑止的な立場で考えた場合にシーレーンというものの持つ意味というのは非常に日本では大きいと思います。先ほど堀江先生から御質問ありましたけれども、いずれにしても海の上を船が通ってくるわけですから、これを守らなければいけないということは重要なんですけれども、いろいろなシーレーンが考えられる。台湾海峡を通り抜けて沖繩の横を通ってくる船の流れとか、あるいはグアムを通ってくる船の流れとか、あるいはハワイを通ってくる船の流れとか、あるいは北の方を回ってくる船の流れとかいうのがあると思いますけれども、そういった幾つかの主要なシーレーンの中で最も防衛が困難なシーレーンというのはどこだと考えられるのか。  それから、時間がなくなりましたからついでに御質問しておきますけれども、守るのに非常にむずかしいシーレーン、そういったシーレーンに対して実際的な脅威、具体的な妨害は何によって行われ、どんなふうな形であらわれてくると予想されるのか、これをまずちょっとお伺いしたいと思います。
  66. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 非常にむずかしい質問でございますが、まずシーレーンのどのシーレーンが困難かというような御質問でございますけれども、これも先般お答えしましたとおり、私どもシーレーン防衛というものを一般的に考える場合は海上交通安全確保ということでございまして、どの航路帯がそのシーレーンであるのかということとは直接関係がないと思います。  しかし、さりとて一般海上交通の安全を確保する場合に、世界の各方面から物資がわが方に向かってくるということになるわけですが、それは非常に広範囲なものにわたると思います。しかし実際に有事の際にわが方にそういった航路が向けられるとすれば、それは当然日本の国に近くなるほどそのあらゆる航路というものは収束されてある狭い範囲におさまってくるということでございまして、そういうことを考えた場合に南西航路なり南東航路というのは最も常識的にとり得る航路であろうということ、またこれ当然のことだろうと思います。  そのうちどれがむずかしいかということでございますが、一般的に海上交通に対する脅威というものはどういう形で行われるかということはきわめて複雑でございまして、一概にどの航路がむずかしいか容易であるかということを申し上げるのはなかなか困難かと思います。  それから第二点の御質問でございますが、そうしたシーレーンに対する脅威が何かということでございますけれども、これは端的に申し上げれば対象になるものは一つ潜水艦であり、一つは水上艦艇であり、あるいは航空機というものが海上交通に対する脅威の主なものであるというふうに申し上げられようかと思います。
  67. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 話が抽象的なんでちょっと困るのですが、時間がないから先へ行きます。  そうすると、要するに潜水艦とか航空機と言っても、あの海の上まで出てくる航空機ですから相当高度な航空法を持ったバックファイアかなんかが出てこなければならないのだと思います。それから海上艦艇、これはある意味で一番やりやすいけれどもアメリカ日本を助けてくれるとすればこういうものは防ぎ得る可能性が強い。やっぱり潜水艦と、バックファイアのような機動性のある爆撃機が邪魔をした場合に一番困ると思う。  そしてまた、シーレーンでもアメリカ側のいろいろな話なんかを読んだり聞いたりしておりますと、ハワイを通ってくるラインとかグアムを通ってくるラインというのはアメリカの基地もあることだし邪魔しにくい、一番邪魔しやすいのは北をずっと回って大圏航路で来る一番近い道が危ないのじゃないか、一番妨害しやすいのじゃないか、こういう話もあります。そういったときにその妨害に対する防御の方法は一体どう考えておるのか。  たとえばフォークランドでこの間アルゼンチンとイギリスが戦争をいたしましたけれども、イギリスからフォークランド島までの六千海里という大変長い距離のシーレーン防衛というのが大きな問題になったようでございます。いろいろ人様の国の戦争を参考にするのは大変不謹慎な話ですけれども、そこで幾つかの防御の具体例が出たはずでありますし、最近発達した兵器に対応するいろいろな防衛のあり方が議論されたわけでありますけれども、そういうものが防衛庁ではおわかりになっておられますでしょうか。もしおわかりになっておれば若干教えていただきたいと思います。
  68. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず、海上交通の安全を確保するためにどういった防御の手段があるかということでございますが、これはいろいろな防衛力の運用というか作戦というものが考えられると思います。  一つには、一番端的な例から申し上げますと、海上交通の安全を確保するために最も必要なことというのは脅威をなくすることが一番肝要であろうというふうに思うわけです。したがって洋上における広域哨戒をする、その中で対潜掃討なり対潜制圧というものをやってなるべく相手国の潜水艦なりというものの活動を抑止する、そうしてなおかつ必要であれば比較的安全な航路帯というものを設定してそこを通す、そこを集中的にあるいは重点的に防衛をするというふうなことも一つの方法かと思います。  あるいはもっと極端な言い方をして、船団を直接防護するというふうなことを考えられようかと思います。さらには海峡の防備の問題、あるいは重要港湾を防備する問題、こういったあらゆる海上作戦というものが総合されていわゆる海上交通安全確保に寄与し得る、累積効果によって海上交通の安全が確保できるというふうに私ども理解しておりまして、これは一にかかってそのときの脅威の態様、戦闘の推移というものを見ながら臨機に必要な措置をとっていくことに相なろうかというふうに思っております。  それから、質問の第二点のフォークランド紛争についての教訓ということでございますが、今日時点まだ詳細な報告というものは必ずしもあるわけでございませんけれども、航空機搭載ミサイルの有効性、あるいは護衛艦に積むところの対空ミサイルの必要性等につきましての有効性というものは十分理解できるところでございますし、私どもとしてもそういった立場から護衛艦への対空ミサイルの装備を含めまして近代化を進めているというふうなこともその一環として申し上げられようかと思います。
  69. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 この間イギリス上院の防衛関係の議員さんが見えられまして、率直にお尋ねしてみた、フォークランドでどうでしたかと。  そうしたら、私どもはむしろエグゾセのようなミサイルがあるから巨艦主義じゃもうむずかしいのじゃなかろうかという感じで申し上げたのですが、最も有効な広域船団護衛ということになれば、やっぱり大型の船、特に巨大な空母と護衛艦隊がなければならない、その巨大な空母と護衛艦隊を組み合わせて初めて制空権が掌握できて、その制空権の確保のもとに船団護衛が可能になるので、それをやらないで小さな船一隻二隻ひっつけておいたらエグゾセミサイル一発ですぐ沈んでしまう。あれよりももっと性能のいいミサイルを日本なんかも持っているはずですから、そういうことになれば小さな船を幾つ持って対空兵器を幾ら整備したって、もう第二次世界大戦の例に見られたあのプロペラ飛行機でさえ防ぎ切れなかったのですから、防衛の目的にならないじゃないか。そうすると広域船団護衛ということを考えるだけでも海上自衛隊にプラス航空隊が別に要るのじゃないか。それからそういう航空隊に対して空中補給部隊も要るのじゃないか。そういったものがまるっきり具体的に国民に説明されてなくて、シーレーン防衛シーレーン防衛と言ってあの広い海で簡単に防衛ができるように言っておりますけれども、それは無理なのじゃないか。  私はシーレーン防衛というのは本当日本のためにどうしても必要なんだけれども、むしろ実際いまのままではできません、五六中業ではできませんと言い切るのが防衛庁の任務じゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  70. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) このシーレーン防衛というものがきわめて困難な問題であって、これについてはしょせん防衛力を多少伸ばしたところで不可能ではないか、したがってむだなことではないかというような御批判があることも重々承知しております。  しかし、われわれとしてもこのシーレーン防衛というものは一〇〇%できるとは思っておりませんが、現在持っている防衛力でも何がしかの効果といいますかというものは期待できるのではなかろうか。しかも、さらにわれわれとしてもシーレーン防衛重要性というものを認識して、今後五六中業においても相当この海上防衛力の充実近代化というものに重点を置いて努力しているわけでございます。そういったことを考えますと、この能力も相当向上するであろうということは言えようかと思います。  ただしかし、それで果たして十分でありパーフェクトであるかということになると、これはまた別問題でございますが、しょせん、いずれにせよわれわれが必要なことはこういった防衛力整備して、どういう機能であれ周辺海域における防衛能力を高めることがある意味での抑止につながる。もちろんわれわれ日本自衛隊だけでできるというふうな認識は持っておりまん。アメリカとの共同作戦というものを当然前提にしているわけでございまして、そういった中において抑止効果というものは期待できるのではないかというふうに思っておるわけであります。
  71. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 時間がなくなりましたから少しはしょりますけれども、今度の事務レベル協議でも千海里内は日本がやってくれないか、アメリカはその外と攻撃的な領域を分担するというような話があったように新聞に書いてあります。  そこで、いま申しましたようにシーレーン防衛というのは大変むずかしい金のかかる問題であります。ところがその有効なシーレーンの抑止効果、海上封鎖に対する抑止効果を有効に持つためのシーレーン防衛政策をやろうとすれば当然非常に防衛力の充実が新しい観点で必要です。しかしながら、そこにもってきてすぐ出てくる問題は、わが国の専守防衛との関連で一体シーレーン防衛というのはどこまでが可能なのかということになる。専守防衛で持ち得る海空の能力というものは限度がある。それとそのシーレーン防衛とはどういう関係になるのか。  それから、自衛隊を海外に派遣しないという参議院の決議がございます。しかしシーレーンのことで考えてみたら非常に遠くまで行くじゃないかという議論もある。これもしかしもう少し考えてみれば南鳥島にしても沖ノ鳥島にしても、与論島にしても、日本本土から見れば大体千海里ぐらいの遠さのところにあるれっきとした日本の国土でございます。したがってシーレーン防衛という考え方は専守防衛立場から見て法律的にも事実的にも絶対に必要なんでありますということを防衛庁は国民に向かってはっきり言ってもらわないと、野党の先生方がここにおられて後から質問が出るかもしれない。専守防衛立場からおかしいのじゃないかとかなんか言ってまた足を引っ張られるかもしれない。  そういうことになると、これはいま言いましたように抑止効果を持つどころではなくて、出ていったらすぐ沈められてしまう程度のシーレーン防衛力した持てないことになるのじゃないかということを実は心配しておるのですが、そこを一体どういうふうに御説明になりますか。
  72. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 海上交通安全確保が大事であるということは御認識いただいているとは思いますが、この海上交通の安全を確保する上で憲法自衛権を行使し得る範囲というのはどこまでかということでございますが、われわれとしては当然のことながらこれは領土、領海、領空に限られることなくわが国防衛に必要な限度において公海、公空に及び得ること、またこれ当然であろうかと思います。そういった前提の中でわれわれは周辺数百マイル、航路帯を設定する場合には千マイルの海上交通の安全を確保するということを目標に防衛力整備しているわけでございまして、これが専守防衛の枠なり域を逸脱するものであるということは全く考えておりません。  今後ともそういった枠内において海上防衛力近代化、充実というものに努力したいというふうに考えているわけであります。
  73. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 時間がなくなりましたから、最後にお願いを申し上げたいと思うのです。  私は、やっぱり防衛政策というのは国民世論の御承認がなくちゃいかぬ、国民の皆さんが自分の国を守るという問題について本当に気持ちがあって御理解がなくちゃいかぬと思うのです。そういう面については国会の議論というものが新聞に出ますけれども、非常に国民の皆様は注目してこれを見ておられる。ネガティブの議論ばかりが出ておりますけれども、しかし国会の中では真剣に日本防衛問題が議論されておる。そして専守防衛という大原則、これはもう世界に類例を見ないほど厳しい防衛力の自己規制でございますけれども、この憲法九条と専守防衛の議論を踏まえてもなお日本防衛のためにどうしても必要な、日本海上防衛のためにどうしても必要なシーレーン防衛という問題についてはもう少し声を大にして防衛庁でもお話しをいただく必要があるのじゃないか。  この間イギリス下院の国防委員会の訪日団のブルース・ジョージという方がこういうことを言っておられました。イギリスでは以前は社会福祉にもっと経費を割けと盛んに人々は叫んでいた、その人々がこの二、三週間、つまりフォークランドの戦いが起こったら、いままでは社会福祉にもっと金を割け割けと叫んでおったその国民が、その人々が、この二、三週間には、なぜもっとミサイル等の兵器に経費を回して準備していなかったのかといって政府を責め叫んだ、緊急事態になるというと国民は十分しかもかつ緊急な防衛を要求するものです。したがって、そういうことについて防衛庁はあらかじめ国民の皆さんに十分な何と申しますか情報伝達と十分なやっぱり考え方の統一点を示していただかなくてはならないのじゃないか。  そういう話をされたブルース・ジョージという方は労働党の方でございますが、事が起こってから後で国民の厳しい非難を受けて、そしてそれは話が違うじゃないかというわけには防衛庁としてはいかないと思うのです。防衛庁長官の御感想を聞かしていただきたい。
  74. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 御指摘のように、防衛というのは国家にとって欠くことのできない基本的な果たすべき機能だと思います。そしてまた国家というのは国民を除外してはないわけでございまして、先生御指摘のとおり国民の皆様方に防衛の必要性、重要性、またすぐには間に合わないのだ、やっぱり不断の積み上げ蓄積された努力によって日本防衛が全うされるというようなことにつきましては全く御指摘のとおりでございまして、そういう考え方のもとにわれわれもいままでやってきたつもりでございますけれども、御指摘がございましたようにまだまだ足りない面も多々あります。御所見を十分踏まえながらさらにわれわれもわれわれ自身の努力を積み重ねますとともに、国民の皆様方にも防衛というものは国にとって欠かすことのできない基本的な機能なんだ、それをまた国民の皆様方もそれぞれのお立場で担っていただきたい、また御理解をしていただきたいというようなことを今後とも誠意をもってお訴えを申し上げてまいりたいと思っております。    〔理事堀江正夫君退席、委員長着席〕
  75. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 午前の質疑はこの程度として、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  76. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから安全保障特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国の安全保障に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  77. 大木正吾

    ○大木正吾君 午前中の御質問を伺っていまして、ハワイ会談は大分和気あいあいといいましょうか、お互いに腹蔵ない話をされた、こういうふうに承ったわけでございます。  そこで、一般の新聞報道等を拝見いたしますと、何かアメリカのぺースに押しまくられた、こういうような書き方もございますし、そういう点等についてですが、主たる論点といいましょうか、両者が話し合った問題点についてまず大まかに防衛局長あたりから聞かしていただけませんか。
  78. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回のハワイ協議は、言うまでもなく日米防衛担当の事務レベルの者が集まりまして、お互いに関心のある安全保障防衛問題についての自由率直な意見交換というのがねらいでございました。そういった意味合いにおきまして、今回の会談はお互いが自由に率直に発言をし合ったということから、お互いの立場というものを理解する上でもきわめて有効であったということが言えようかと思います。  しかし一方、わが国防衛力整備、すなわち五六中業あるいは五十八年度の概算要求についての説明をるるしたわけでございますけれども、これに対してアメリカ側は、一応大綱達成のために日本政府が努力していることは評価するけれどもその内容というのは必ずしも十分なものではないというふうな意見表明がありまして、具体的な数字を挙げての日本防衛力に対する期待、要請というものは特段ございませんでしたけれども、言葉の端々から国防総省当局あるいは国務省を含めましてアメリカ政府全体がアメリカの友好国である日本防衛力整備についての要請がきわめて厳しいということ、その背景には厳しい国際情勢背景としながらアメリカ自身がいろいろな犠牲の上に立って国防努力をしておる、そういう中にあって日本側としてもなお一層の努力期待するというふうな意味では相当強い期待表明があったということでございます。  国際情勢についてもそれぞれの立場から発言があったわけでございますけれどもソ連軍事力増強をめぐる国際情勢が一段と厳しさを加えているということについての基本的な認識が一致したということ、これも先ほど御説明をしたとおりでございます。  その他、三日目に至りましてドネリー在日米軍司令官から在日米軍の駐留経費の負担あるいは六条事態研究等についての発言があり、これのそれぞれについて日本側からもそれぞれに応じた見解を表明したわけでございまして、総括して申し上げることは、雰囲気としてはきわめて友好ではあったけれどもアメリカの並み並みならぬ日本に対する防衛努力期待があったということが今回の会議の特色でなかったかというふうに思っております。
  79. 大木正吾

    ○大木正吾君 といたしますと、大まかに整理しますと、まず国際情勢認識、これについては大まかには一致したというお話があり、五六中業の問題については、いえば日本側努力は認めるけれども不満、繰り上げ等の話があり、同時にシーレーン問題等についても去年のハワイ会談でも要求は出ていた中で、ことしの場合に持っていったものがやはり少しくアメリカ期待からは少ないと言いましょうか弱い、こういう感じのものがあった。さらに地位協定等に関しましての費用の分担要求ですが、いまお話を伺いますと相当アメリカ側としては準備が、ペンタゴンなり国務省を中心にしまして相当各省庁の、いえば相談がしっかり行き届いて、事務レベルの協議と言いながらも相当まとまった対応をしてこられた。日本側の方は、いえば外務省、同時に防衛庁等が中心で行かれたわけですが、防衛庁長官は行かれる前に五六中業等に関して国防会議の御承認をいただいていた。  どうですか。そういった関係のことをあわせまして考えたときに双方の準備なりあるいは政府、ガバメントの中における準備の違和感といいましょうか、そういったものは日本側の方が少しく、いえばおくれているといいましょうか、準備が不十分だ、こういうような感じはなかったでしょうか。
  80. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私ども立場で申し上げれば、決してアメリカ側が正当な準備をして会議に臨み、日本側がそれに対する対応が不十分のまま会議に臨んだというふうな印象を持っていることはありません。  ただ、アメリカ側日本側に対しての期待する防衛力増強期待というものに対して、わが方は現在大綱の枠内で五六中業を精いっぱいやることがいまわれわれに課せられた任務である、精いっぱいのことであるということをるる申し上げたわけですが、日本側の事情というものはわかるけれどもアメリカ日本以上に日本と同じようないろいろ苦しい立場努力しているということ、そういった意味での意見というのがあって、その辺の防衛力増強についての意見が必ずしもかみ合っていたかどうかということになりますと、われわれがいま考えている防衛力以上のものをアメリカ期待していたというふうなことはあろうかと思います。  そういう意味で完全な一致と言えるかどうかという点についてのいろいろ御議論があろうかと思いますが、準備がどうかということについて特段われわれの方にひけ目があったというふうには考えておりません。
  81. 大木正吾

    ○大木正吾君 じゃ、別の角度から伺いますが、これは当然記録等を残されていると思うのでございますけれども、そういったものの要約などは、きょうじゃなくてもいいのですが、整理して拝見する機会が得られましょうか、どうでしょうか。公表はされてないようですけれども
  82. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) この種の会議というのがあくまでも事務レベルにおける自由率直なフリートーキングという形で行われました関係上、この個々の会合の内容について逐一御披露することはアメリカ側との話し合いもこれあり、御説明することにはなかなか相ならぬというふうに思っております。しかし概略の内容についてであれば、この答弁を通しても御説明をいたしますし、資料としてということであれば、また後検討さしていただきたいというふうに思っております。
  83. 大木正吾

    ○大木正吾君 ただ散見いたしますと、会議が終わりましてから当然これはスポークスマンの方々が報道陣に対して発表されるわけですけれども、そのときにやっぱりアメリカの発表と日本側の発表が食い違う、今回も結局食い違っているわけですね。  ですから、そういったことを避けるためにも、防衛局長言うことはわからぬことはありませんが、やっぱりディスカッションして整理できた面と意見の違う面、そういったところはお互いにそれはもう堂々発表していいわけですから、そういったことがわかるように、何か同じことを理解するのに双方が違ったのじゃこれはまずいわけで、後でもって問題残しますから、そういったことで私は伺っているわけでございまして、そういった問題点については会議後に日本の新聞の報道等をごらんになられて、防衛局長、大臣等はこの会談の結果について双方認識の違いですね、そういったものがあったことについてはお認めになりますか。
  84. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回のハワイ協議につきましては、御承知のように報道関係者も多数同行しているということもありまして、私どもとしてはできる範囲においてこれを公表するという考え方のもとに、毎日のセッション、第一日目は国際情勢、第二日目は防衛力整備をめぐる問題、三日目も日米防衛協力あるいは駐留軍支援等の問題をめぐって記者に対するブリーフィングというものを行って、私どもとしてはできるだけこの問題点を公表するという精神でやってきております。  この会議の中身につきましては、アメリカ側とわれわれと基本的に何か見解相違があったかということでありますれば、私どもとしてはそういった点は特になかったのではないかというふうに思っております。アメリカ側もこの点については特に日本側と基本的に対立し、また会合そのもがが何か一つのものを決めたり交渉するという場ではございませんで、あくまでも自由に討議をする、自由に発言するということでございますから、いろいろな意見の開陳というものはありましたけれども、その中で基本的に対立したままどうのこうのというふうなところは特になかったというふうに認識しております。
  85. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは基本的な認識の違い云々のこともございますが、ただ日本側としますれば憲法あるいは非核三原則、専守防衛問題あるいは集団防衛に違反しない問題、そういったことについては配慮していったことは間違いありませんね。アメリカの方では、むしろシーレーン問題等を考えますと、いえば日本に対するというか、日本における海上輸送路の問題だけじゃなくて、世界戦略一環としてやっぱり考えて戦力を強化していく、こういう気持ちがあったことは間違いないと思いますね。そのことをお互いに理解し合う、理解し合った上ですから、いえば完全にその部分について国際情勢の見方なりあるいは戦略、戦術の問題について一致したわけじゃないわけでしょう。  ですから、そこのところはお互いに理解し合ったということはわかりますけれども、一致したという認識に私どもとしても立ち得ませんので、まあ立ったら大変だと思いますから、それをちょっと申し上げておきたいのですが。  そこで具体的に入らしていただきますけれども一つは対ソ認識の問題なんですね。ソビエトの脅威論の問題なんですが、これは入り口が非常に大事な問題だと私自身判断しているわけですが、先ほども大坪委員から話がありまして、一九八四、五年ごろがという話もございました。そこでこの問題の中身にちょっと入って伺いますが、ソ連が極東における軍事力増強してきている、ここまではいいと思いますが、しからば一体日本に対しての侵略行為、そういったことがあるというようなお考えが共通認識されたかどうか、そこのところをひとつどういうぐあいだったか教えていただけませんか。
  86. 新井弘一

    説明員新井弘一君) お答えいたします。  けさの答弁でも私から御説明したとおり、極東におけるソ連軍事力の質的量的増強は目覚ましいものがある、これは極東に限らず世界的な、たとえばヨーロッパ方面でも同じようなことが言えるわけでございますが、ただし現在西側自身の防衛力整備あるいは国防努力等ございまして、近い将来、これまでもそうでしたけれども、大規模な衝突が生ずるというような状況はいま直ちには見通し得ない、要するに抑止力がいまの時点では働いている、そういう基本的な認識でございます。
  87. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは非常にむずかしいデリケートな解釈が出てくるわけですけれども、たとえば本年一月に鈴木総理が、これは恐らく衆議院の本会議での答弁じゃなかったかと思いますが、記録はっきりここに持っておりませんが、こういうふうに答えておるのですね。差し迫った脅威があるとは思わない、しかし侵略を企てる意図が変化をする、こういう趣旨のことを言っているわけですが、これは要するに、いえば一九八四年、五年に侵略を企てる意図に変わっていくというような読み方は行き過ぎなのかどうなのか。その辺は非常にデリケートな問題ですから、もし話題になりましたら聞かしてくれませんか。
  88. 新井弘一

    説明員新井弘一君) その一九八四、五年の時点が危ない、そういう認識で鈴木総理がおっしゃったというふうには私ども理解しておりません。  ただし、これは軍事関係では常識でございますけれども、問題は特定の国が具体的にどういう軍事力というものを現実に持っているかという、そういった面はわれわれが常に注目しなければならない点でございまして、それに加えて意図がどうするかということについてはこれは実際問題として非常にわからない。ただ言えることは意図は変化し得る、より具体的に言えば、たとえば東西のバランスが大いに崩れるというような事態が生ずれば、あるいは意図は変化するかもしれない、そういった点についてはわれわれは十分注意しなければならない、そういう趣旨であろうというふうに私理解しております。
  89. 大木正吾

    ○大木正吾君 ちょっとしつこいようですが、もう一遍伺います。  これは大事な問題点なんですが、たとえばハワイ会議の結果は共同研究問題があと出てまいりますね。その他いろいろなことが出てくるわけですが、このソ連脅威論の関係で仮に一九八〇年代に侵略があるという、そういうように想定するか、あくまでも抑止力あるいは大きな均衡の崩れはないという判断に立つかどうかですね。この辺がアメリカのぺースに、あなた方御苦労なさったけれども、とにかくやっぱり引き込まれざるを得なかった基盤があった、こう考えざるを得ないわけですね。  ですから、その辺の問題についてこれを完全に認識が一致したというふうに言われますと、私どもでは、それじゃ一体いまの五六中業繰り上げ、防衛力大綱の見直し、そういった問題ずっとだんだん引っ張り込まれてしまって、こういうことはどうしても、いえば頭からぬぐい得ない問題として残るわけですよ。ですから、先ほど夏目さんもおっしゃったのですが、その部分について認識が一致したというところを少しきめ細かくといいますか、ややこしく質問いたしましたけれども、もう一遍参事官、話ありましたら聞かしてくれませんか。
  90. 新井弘一

    説明員新井弘一君) 補足説明をいたします。  ハワイ協議におきまして、第一日目の国際情勢に関する意見交換の際にアメリカ側からアメリカの国防政策の基本について説明がございました。  そのポイントを申し上げますと、まず第一点が、先ほどのを繰り返しますけれどもソ連の量的質的な増強というものが進んでいる、これに対してアメリカは対応を余儀なくされている、具体的には通常戦力及び核戦力の分野ソ連近代化に対応する応分の措置をアメリカとしてもとらざるを得ない、しかしながらアメリカの核戦略の基本、これは核戦略のみに限定するわけではございませんけれども、これはあくまでも抑止にある、決して対ソ優位を求めるものではなくて均衡である、そしてさらにその均衡をより低いレベルに落とすということがアメリカのグランドデザインである、そういう趣旨説明が明確にございました。
  91. 大木正吾

    ○大木正吾君 どうもそういうようなお話など正確に新聞等に発表されてくだされば、また認識が少し違うのですが、新聞等報道ですとむしろそういうことではなしに、アメリカの方でグローバルな世界戦略の中における日本の位置づけ、こういう形の報道ばかり毎日散見しておったものですから、だから私の方ではどうしてもその方がやっぱり方向としては正しかろうと。  これは抑止力ですから、直ちにどっちが戦闘行為開始するかということはもちろんわかるわけじゃありませんが、たとえば、これずらっと見ていきますと最近の状況でアメリカ側から言ってきている問題たくさんありますよね。たとえば共同演習、リムパックの問題から始まって同時に最近では陸上自衛隊との合同演習とか、そういったあらゆる演習が出てきまして、最近B52とF4の電子連絡の問題とか、たくさん共同訓練から始まってきて、その次に今度最近目立ちますのは、沖繩が大変な基地でありましたけれども日本の本土の中に、いえば日米両方の、何というのですか、いわゆる共同同盟基地とでもいいますか、そういったものが新田原とか硫黄島とかたくさんできてきているわけでしょう。  そういう点をにらんでいくと、やっぱりいま参事官がおっしゃった形には、私どものこれは認識の弱さかもしれませんが、とるわけにいかないと見ているわけですけれども、いまのアメリカお話もう一遍聞かしてくださいませんか。いまのメモがあればメモを先行きいただきたいのですが、口頭で結構ですから。
  92. 新井弘一

    説明員新井弘一君) 同じことを繰り返すことになりますけれども、私の頭の中のメモによってもう一度述べますと、要するにソ連軍事力の増大に対してアメリカは対応を余儀なくされている、それが第一点。第二は具体的には通常兵力と核戦力の分野である、第三点、ただしアメリカの国防政策の基本はあくまでも抑止にある、次のポイントは、その核について申しても対ソ優位を求めるのではなくて均衡である、最後に、その均衡もできるだけその抑止の効果を通じて均衡を具体的には軍縮交渉を通じて低いレベルに均衡を落とすということ、これがアメリカの基本政策である、そういうことでございます。
  93. 大木正吾

    ○大木正吾君 そこはいいでしょう。  長くやっていてもしょうがありませんから伺いますが、それではそういった理解に立ったと仮定いたしまして、日本の役割りというものは、今度の、いえば事務レベルとは言いながらも立場アメリカ側はどういう立場を求めてきたのですか。
  94. 新井弘一

    説明員新井弘一君) ただいま述べたようなアメリカの基本方針に基づきましてアメリカは対応しているけれども、ただしアメリカの兵力自体が限られている、そういうことで非常に薄く広くその兵力が分散さぜるを得ない、そこで同盟国がそれぞれの防衛分野でしかるべき努力をしてほしい、それとの関係で日本については日本防衛のために日本でできることをやっていただきたい、そういう趣旨でございます。
  95. 大木正吾

    ○大木正吾君 先ほども質問ありましたシーレーンの件にちょっとしぼって伺ってみますが、これは私は日本には、シーレーンですから中近東から来る石油とか、あるいはアフリカその他から来るいろいろな原材料の問題とか輸出関係などの輸送関係、日本の国民の生活のために輸送路の防衛、こういうふうに一般的には理解して、国民の方もそう理解していると思いますが、アメリカの求めているこのシーレーンの問題には、それもあるかもしれませんが、もっと強い要求があるのじゃないのですか。  たとえば中近東なりに非常事態といいましょうか、もし米ソ関係における問題が小国との関係においても生じた場合には第七艦隊をインド洋の方に持っていかなければいけない、その穴埋めの防衛地域としてシーレーンということをアメリカは考える、こういう考え方アメリカには厳然としてあるわけでしょう。これは間違いですか。
  96. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 先ほど新井参事官の方から答弁がありましたように、厳しい国際情勢の中にあってアメリカはグローバルに兵力を展開している、その結果広く薄くなっているという意味合いから、それぞれの地域においてそれぞれの国の防衛のためにそれぞれの同盟国が努力してほしいというふうな表明があったことはいま御答弁申し上げたとおりでございます。  シーレーン防衛につきましてもアメリカ側が今回の協議で言っていることは、シーレーン防衛というものは日本の安全、日本の生存、発展にとってきわめてバイタルなものである、重要である、そうして日本日米共同してシーレーン防衛に当たるのだけれども、その千マイル以内を日本が主体的にやってほしい、アメリカはそれ以遠の分と、それから攻勢的の分野日本側に協力する、支援するであろうということ、さらにつけ加えますならばアメリカ日本シーレーン防衛について、これはシーレーン防衛に限りませんけれども日本憲法の枠内において個別的自衛権範囲内でそういった努力をしてほしいということを言っているわけでございまして、決してそれ以上のものを求めているわけではない、日本日本防衛のため国益のために必要な範囲努力してほしいということを言っているわけでございます。
  97. 大木正吾

    ○大木正吾君 いま言った一般的な議論はそれはわかりますけれども、とにかくグローバルな戦略の中における日本自衛隊の新しい、いえば戦略的な持ち分といいますか、そういったものを要求していることには間違いがないわけですね。  そうしますと、これほかにもハワイ会談で聞きたいことがございますが、いま防衛局長おっしゃったけれどもアメリカ憲法とかあるいは非核三原則とか専守防衛、そういったことを理解した上に立ってとおっしゃいますけれども、その枠の中でこれできますか。  五六中業の繰り上げ問題は、結果的には恐らくまたこれ六十年ぐらいになったら今度は五九中業になるかどうかわかりませんけれども、そういった中で結果的には防衛計画大綱を見直すような事態に入ってくる、こういうふうに私たちは受けとめざるを得ないわけですわね。ですから、そういうこととの関係で憲法なり専守防衛その他の日本の現在の防衛に対する国民のコンセンサス、こういったものを越えないでできるかどうかという問題が問題だと思いますね。そこのところについてどうですか。
  98. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず一つ、私どもはこのシーレーン防衛に例をとって申し上げれば、わが国の置かれた環境というものを考えた場合に海上交通の安全を確保するということは日本にとってきわめて重要であるということは御理解いただけると思います。  そういった中にあって、私どもとしては周辺数百マイル、航路帯を設定する場合には千マイル程度のものを防衛力整備めどとして努力をしていくということを申し上げているわけでございます。これは当然のことながらわが憲法の枠内、自衛権範囲内、専守防衛の枠内でやれること、必要なことだというふうに認識しております。  ただし、その結果、いま先生のお言葉の中にできるかというふうな話がございましたが、それで一〇〇%パーフェクトなものができるかというお尋ねであれば、なかなかこの五六中業をもってしても必ずしもそれは十分なものとは思いませんし、完全なものとは思っておりません。  ただ、そういった今後の努力を形成することによりまして、わが方の海上交通の安全を確保する能力が高まることによって相手の侵攻に対する一つの抑止としての効果というものは期待し得るのではないかというふうに考えておりますし、また有事の際にそれなりの効果、行動というものも可能である、そういう姿勢を示すことがまた一方大事な問題ではなかろうかというふうに考えておる次第であります。
  99. 大木正吾

    ○大木正吾君 さっき伺った中でもう一つあるのですが、アメリカは結局第七艦隊が移動した場合の後の、いえば東南アジア防衛ですね。こういった問題について話題はハワイ会談ではそういったことは強く出なかったのですか。
  100. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) この種の問題については一切出ませんで、日本日本の国是たる憲法、専守防衛、そうしたもろもろの制約の中で努力をしてほしいという以上のことは一切話としては出ませんでした。
  101. 大木正吾

    ○大木正吾君 これ新聞がここに幾つか切り抜きがある。読み上げてもいいのですが、幾つかの関係者の方々の意見を総合してという形でもってホノルルについていった記者の方が、朝日あるいは毎日新聞、みんな送ってきているのですが、その中に、アメリカ自身が有事の際に三海峡封鎖の問題でありますとか、あるいはソ連の太平洋艦隊の基地のあるウラジオ等をたたくとか、要するにソ連に対する問題は、アジアの問題日本が受け持ってくれということをはっきり向こうは言ったと、こう書いてあるのですよ。  これを夏目さんはそういうことは全くなかった、こうおっしゃるものですから、私たちは一体どっちを信用していいかわからなくなってしまうので、私はこういうことを言わないはずないと思って見ている、いままでのずっと常識からいたしましても。きょう配られた新しい防衛白書なんかでも恐らくそういったニュアンスとして読み取られる部分が、まだ読んでおりませんが、出るかもしれませんね。  だから、共同研究していく過程でもってこういったことが、夏目さん、今度あなたがもっと出世しちゃうと困っちゃうのですが、これ記録に残っているわけですから、そのときに制服組じゃありませんけれども、竹田君じゃないけれども何か言いっ放しにして逃げてしまうと、これでは困るのでして、だから一切なかったという言い切りは本当にできますかどうですか。そこをもう一遍お尋ねしたいのですが。
  102. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そういった枠内を超えて日本に対する防衛力期待といった提案なり要請というのは一切ございませんでした。
  103. 大木正吾

    ○大木正吾君 本人が一切なかったと言うのですから、これ後ほどいずれ共同研究の中でだんだん正体をあらわしてくるかもしれませんから、その際の議論に譲ってみたいと思うのです。  もう一つ、ちょっとこれ余りおもしろくない話でございますけれども伺ってみたいのですが、対米技術協力問題なんです。これは最近電子戦争などが相当にやっぱり進んできておりまして、アメリカは相当対米技術協力問題について日本と話をうんとしたい、あるいは日本の協力を得たい、こういうお話が出たというふうに感ずるのですが、その辺はどうですか。
  104. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回の事務レベル協議におきましても、第三日目の九月一日の日にアメリカ側からこの日米技術協力の問題についての話が出ました。  話の趣旨を簡単に申し上げますと、本件については昨年大村長官が訪米した際話が出ておるけれども、その後一年以上たっておる、その回答をできるだけ早くしてほしいというふうな要請がございました。これに対してわが方から、わが方には武器輸出三原則あるいは政府方針というものがこれあり、一方アメリカとの関係においては日米安保条約、安保体制というものがある、その辺の関係をどういうふうに理論づけるかということについて政府部内で鋭意検討中であるけれども、今日ただいまの時点で右か左かというふうなことをお答えする段階にないということを御理解いただきたいという旨を答弁して終わっております。本件についてのアメリカの要請が相当強かったというふうなことは言えようかと思います。
  105. 大木正吾

    ○大木正吾君 これハワイ会談の始まる前の新聞記事でございますけれども、多分これ官房長官の側の記者会見じゃないかと思うのですが、おおむねいま防衛局長おっしゃった趣旨のことがありますが、この中にこういうことが出てくるのです。たとえばアメリカが紛争当事国になった場合でもその紛争がわが国の安全を脅かすような事態であれば軍事協力は可能、こう出ていますね。  これを解釈していきますと、要するに脅かすような事態という問題なりあるいはこの地域がどういう関連を持つかということで考えていきますと、たとえば韓国ですね。朝鮮半島。インドシナはいまベトナムですからこれはソ連側に立っていますが、そういったこととの関連等とを見ていきますと、この一項についてもこれは非常に、いえばしり抜け的な要素を持っているし、まあこれはなかなか抑制はできませんが、第二点としますれば、結局アメリカから第三国への輸出ですね。たとえば光ファイバーとか、いろいろな最近見えない飛行機とか、塗料の問題とかたくさん出ていますが、堀田ハガネ事件は古いですけれども、とにかくそういった汎用品などもそうでしょうし、同時にそれに関連しましてある程度相互研究なりをしていけばそういった日本の諸製品が絡んでいくことはこれは間違いないわけでございますから、その辺の問題についてアメリカ側が要求し、この政府の三原則に対する軍事技術供与問題については日本の態度というものは申し上げなかったですか、向こうに対しては言わなかったですか、これは。
  106. 木下博生

    説明員(木下博生君) ハワイ会談での本件についての話の模様についてはただいま防衛局長の方から御説明申し上げたとおりでございますけれども、いま御指摘になりました新聞記事に関連いたしますが、いま防衛局長からお答え申し上げましたように、現在本件につきましては鋭意関係省庁の間で検討を続けておる段階でございまして、したがいましてアメリカが紛争当事国になった場合とか第三国への輸出問題とか、そういうような問題についてまだ検討中でございますので、現在見解を申し述べ得る段階ではございませんので、中身については差し控えさせていただきたいと思います。
  107. 大木正吾

    ○大木正吾君 だんだん鈴木善幸さんと似てきましたね、先延ばししていけばいいということで。  アメリカ日本に要求している大きな問題というのは防衛予算の、いえば五六中業の繰り上げなりあるいは拡大問題が第一でしょう。第二にはやっぱり有事研究問題、これは相当日本有事は進んでいるようですが、極東有事問題に入った研究をさらにまたやろうとしているわけでしょう。第三点は、やっぱりさっき申し上げましたけれども共同訓練の問題、陸海空三軍にリムパックを中心としたもの。そして技術協力問題ということは実は武器禁輸問題と絡みまして、昭和三十年代の自衛隊のときにはこれはアメリカの兵器をどんどん使っておったから別に問題なかったけれども、最近はエレクトロニクスを中心としまして日本の技術はぐっと強くなっておるのですよ。その関係が全部この新しい近代戦争に生きてくる。だからこのことを言っている。大体四点ぐらいが大きな意味で分けますとアメリカ日本に対する要求だろうと思いますね。  そうしますと、私たちはこの技術協力問題については、武器禁輸三原則のときには衆議院で与党と野党が大げんかをしました。しかしこの問題について、ただただ鈴木内閣流に延ばしましょうだけではちょっと困りますので、特に共同研究、そういったもの始まるわけですから、そういった話題の中に当然これ入ってこざるを得ない問題だ、こう考えるので、防衛庁長官どうでしょう、この問題については共同研究が具体的に始まる前には日本政府の見解はまとめてこの委員会で発表してもらいたい、こう考えているのですが、いかがでしょうか。
  108. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) いま装備局長あるいは防衛局長からお話を申し上げましたとおり、この問題は改めて申し上げますと日米安保条約等の関連、またわが国が持っております武器輸出三原則との問題、この整合性を求めながらいま関係三省庁間で本当に鋭意毎日のように検討し勉強をしておりますけれども、装備局長お答えを申し上げたとおり現時点ではまだまとまっておりませんで、内容等についてお答えができないのはまことに残念でありますが、御指摘のように、これは大変すぐれて政治的に重大な問題でございますので、三省庁間の検討を注意深く見守りながら、いまその推移を見守っておるという段階でございます。
  109. 大木正吾

    ○大木正吾君 具体的にちょっと補足してもらいたいのですが、要するにハワイ会談でもって、いずれも基礎的な状況が若干違うわけですからそれに対する問題を全部共同研究の中に持ち込んで流し込んだわけですから、その前にはアメリカが要求しているこの四つの大きな問題の中の技術協力問題、当然話題になることは間違いないわけなんですよ。  だから私が申し上げているのは、そのことが始まる前に、共同研究が始まる前には、この問題についてもっとはっきりした日本政府の共同した、話し合ったまとめた統一見解出してもらいたい、こう申し上げているわけでして、そのことについてお約束願えますか。
  110. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) ちょっと私意味をあるいは取り違えておるかもしれませんが、今回の武器技術協力の問題につきましては、先ほどハワイにおきましてアメリカ側から日本側の回答が欲しいという一般的な表明がありまして、それに対してわが方はいま検討中で今日時点でお答えする段階でないということをお答えしたことが今回のハワイ協議における本件に関するすべてでございまして、それ以上具体的な話というのは特段なかったわけでございます。  それからもう一つ、いま技術協力の問題について何か共同研究をやるかのごとき御発言がございましたけれども、今回のハワイ協議における共同研究ということは、御案内のとおりあくまでもシーレーン防衛に関連してアメリカ側からいろいろな話がありましたので、そういったことについては今後いろいろ共同で勉強してみましょうということを申し上げたことでございまして、これはあくまでもシーレーン防衛に関連する研究ということでございまして、技術協力に関しての共同研究でないということでございまして、この点念のため申し添えさしていただきます。
  111. 大木正吾

    ○大木正吾君 あなたそうおっしゃるけれどもアメリカが一番要求したのは、さっきも並べましたけれども、やっぱり自衛隊の増強問題が第一の問題ですよ。第二はやっぱり共同訓練ですよ。まあどっちを優先するか別にして有事訓練が三つ目、最後に残った問題が日本の最近のエレクトロニクス関係の技術の、いえば上昇といいましょうか向上に伴いまして、B52とF4が連絡し合って演習した記事が新聞に出ておったが、あれはうそですか。ああいう問題がやっぱり当然シーレーン防衛に関係するのじゃないの。  けさの新聞かきのうの夕刊に一部出ておりましたが、やっぱりアメリカシーレーン問題に関連して防空関係あるいは航空機関係の空軍力の強化を期待しておる、こういう記事がだれかアメリカの偉い方の話の中に、一部の新聞にありましたが、そうした場合にシーレーン研究の中にはなぜ戦力なり武器の向上問題が議論に入らないということが保証できますか。私は非常にその点は防衛局長少しお考え方が浅いのじゃないか、こういう感じがするのですが、どうでしょうか。
  112. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回のシーレーン防衛に関する共同研究というのは、日米防衛協力のための指針、すなわちガイドラインに基づく共同作戦計画研究の場で取り上げよう、わが国に対する武力攻撃があった場合に日米共同で対処する、そのために整合のとれた効率的な作戦をしなければならないというふうな意味合いから、日米間において共通の認識を持つためにいろいろ研究をする必要があろうかと、そういった研究一環として、いわば現有防衛力前提として武力攻撃があった場合にどういう対処をすべきかということについて研究するのが本件の研究でございまして、その中にいま先生の御指摘のあったようなわが国が持つ一般的な技術の問題についてどうこうということについては、私いま頭の中にそういったものを含めて研究するということについて全く考えていなかったものでございますから、ちょっとまだ先生の御指摘の点が御理解がいかない点があろうかと思いますけれども、今回の研究はそういうものであるということを御了解いただきたいと思います。
  113. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは時間もありませんから余りこれ以上追及いたしませんけれども、B52がF4と連絡をし合っているという記事はあなた新聞で見たでしょうね。あれは何でやっているのですか、連絡は。エレクトロニクスでしょう、元祖は。  ですから、やっぱり見えない飛行機とか、そういった、いえば日進月歩の軍事技術の中ではシーレーン防衛問題についても三年後にまた変わっていくのです。どんどん変わっていくのですよね。空中から海中にもぐって潜水艦を捕捉するわけですからね。ミサイルと電子戦争、そういった関係になってくるのだから、当然この問題、あなた、それは共同研究の中でやらなければ、まさかあなた一九八五年ごろに十年前の兵器を使って話してもしようがないわけでしょう、結局は。  そういったことを含めて私たちは当然この中にはそういった問題も関連してくる、こう見ておるわけでございまして、ぜひそういったことは御認識といいましょうか、私の考え方を押しつける気持ちはありませんよ。あなたやらぬと言うのでやらぬでも結構ですが、私はそういう心配しているということだけは申し上げておきたいわけです。  そこで、次の問題に入らしていただきますけれども、時間がありませんので、五六中業の繰り上げ問題に絡みまして日本の財政非常にピンチな状態にいまあるわけですが、大蔵省の方だれか来ていらっしゃると思いますけれども、最終的には去年と同様の、いえば渡辺さんががっくりというか、あるいは一晩で変質するというか、そういった状態にいってしまうのかもしれませんけれども、五六中業繰り上げ要求が厳しいという中でいきますと財政非常事態宣言という考え方も政府の一部にはあるわけですね。そうすると、繰り上げ要求については絶対にことしの場合には認められないし、同時に防衛予算は相当に、いえば大蔵省のぺースでもって抑えていかざるを得ないと思うのですが、その辺の現状における感覚はどうですか、感触はどうですか。
  114. 小川是

    説明員(小川是君) 五六中業につきましては、五六中業ができますときの性格論からいたしまして防衛庁部内における今後の防衛力整備の進め方に関する大筋を示すものとして、防衛庁の資料として了解されたものと私ども理解しております。  五十八年度の予算につきましては、実は昨日の国防会議において防衛庁予算概算要求の主要項目について説明がございましたときに、大蔵大臣から申し上げましたとおりマイナスシーリングという非常に厳しい要求枠を設定して各省要求をいただきましたが、その後の財政事情は一層厳しくなっておりますので、いかなる経費についても聖域化、聖域視することなく、さらに歳出削減に努力するように、このように私ども大臣に言われ、現在ヒアリングも行っているところでございます。
  115. 大木正吾

    ○大木正吾君 国民の大半は、この前も申し上げたのですけれども、いま自衛隊現状ぐらいでいいということが大体アンケート等に出てくる数字ですから、私はあくまでもハワイ会談でがんばったとおっしゃるならば、これはぜひ、いま大蔵の話があったのですが、アメリカさんがどんなことを言ってこようとも、とにかく予算のこういった厳しい環境のときには一定の方針を決めたその枠内でもってぜひしぼってもらいたい、このことを申し上げておきたいわけで、今回のこの駐留経費の負担問題については先ほど午前中話がありましたので聞きませんが、防衛局長、やっぱりぴしっと断ってアメリカから再要求が出てくる心配はないわけですか。
  116. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 在日駐留軍の経費負担の問題につきましては日本側が従来とってきた措置について大いに感謝するということを述べた後、アメリカ軍としても今後相当大幅な需要というものを控えているので、なお一層の努力期待するということが第一点。第二点としては、駐留軍労務費についての負担ということを重ねて意見表明があったわけであります。  これらに対してわが方から、五十八年度概算要求についても厳しい財政の枠内ではあるけれども、昨年に比べてかくかくしかじかというふうな数学、いわゆる増加幅というものを示して努力している、しかも施設庁全体の予算の伸びの小ささに比べても相当な努力をしているということを説明するとともに、労務費については現行の地位協定の解釈上から新たな項目の負担というものはできかねるということをはっきりお断りしたというのが経緯でございます。
  117. 大木正吾

    ○大木正吾君 最後ですけれども、これは外務省に伺いますが、教科書問題はこれは別にいたしまして、最近日本防衛力増強問題に対するアジア諸国の反応ですね。これについて最近の新聞で、まあフィリピンのマルコスさんが言っていることもありますが、それ以外の国々も相当潜在的には警戒している向きがあるようにいろいろな報道なりでアジア関係の問題が出てくるわけですが、それに対する防衛庁の配慮、同時に外務省の見方、特に外務省の見方を先に伺って、防衛庁の方からその次に補足して答えてくれませんか。
  118. 長谷川和年

    説明員長谷川和年君) お答えいたします。  わが国は平和憲法のもと専守防衛に徹しまして軍事大国にならないということを決定しておりまして、このような立場は従来から東南アジアあるいは世界の各国にも説明しているところでございまして、特にアジア諸国に対しましては、この旨適宜、最近では昨年一月鈴木総理ASEAN諸国を訪問した際でございますが説明してきております。この点につきましてはアジア諸国も理解していると私たちは了解しております。しかし今後ともこのような努力を継続しましてアジア諸国の理解を求めるように努めてまいりたいと思っております。
  119. 大木正吾

    ○大木正吾君 防衛庁はどうですか。
  120. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) ただいまの答弁と同じでございますが、私どももとより専守防衛憲法の枠内に徹して防衛力整備を必要最小限度において行うということでございまして、そういった懸念のないよう、軍事大国というふうなことにならないように十分留意して防衛力整備に努めておるということでございます。今後ともそういった方向努力すべきであろうというふうに考えております。
  121. 大木正吾

    ○大木正吾君 最後ですけれども、私たち心配しておりますことは、今度のハワイ会談、大分防衛局長等もしっかりした答弁でうまくこれかわされましたけれども、いずれにしましても見ている事態というものは、共同研究の中に入りますとやっぱりアメリカのグローバルな戦略の中にシーレーン問題等が組み込まれていくことは、方向としては大体そういうふうに行くのかなという危惧を持っていることが第一の問題ですね。  同時に、日本国内における関連なりあるいはアジア地域、太平洋関係で申し上げますと、リムパックを中心とした共同演習がきわめて活発に陸海空ともどもに行われております。同時に日米共同の防衛基地というものがどんどん日本で沖繩以外にも広がっておりますね。こういった問題を考えますと、どうもやっぱり日本防衛方向というものは、皆さんがおっしゃるように、いえば憲法なり専守防衛あるいは防衛計画大綱、こういった線からいずれは逸脱をする、こういうふうにやっぱり心配しているわけでありまして、国民の多くはいまの財政状態の中であくまでも防衛費の問題等含めて現状維持ぐらいが圧倒的多数な数字を示しているし、アジア諸国も、いえば日本防衛力増強に対し心配している状況でございますから、むしろ軍事が、軍備が、あるいは戦力が平和を守るだけじゃないわけで、外交問題、日本の国民の愛国心、そういったものこそがむしろ防衛問題の中心ですから、そういう点を中心としながらぜひ長官の今後の努力を最後にお願いいたしまして終わります。
  122. 矢田部理

    矢田部理君 シーレーン問題を中心に伺いたいと思いますが、その前提といいますか、二、三の問題を最初にお聞きしたいと思っております。  先ほど防衛白書をいただきました。これは全般的にまだ検討しているいとまはありませんけれども、気がついた点を一、二点お聞きしておきたいと思うのです。  六十五ページでありますが、「憲法自衛権」という節の中に自衛権の行使できる地理的範囲ということに関する記載がございます。これは「必ずしもわが国の領土、領海、領空に限られる訳ではないが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので一概にはいえない。」、こういう記述になっていますね。ということになりますと無限に拡大する可能性をも含むわけでありまして、こういう記述で、いうならば自衛権の行使の範囲を拡大する意図を出してきたのではないかというふうに感じられるのですが、この点はどうお考えでしょうか。
  123. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) わが国防衛憲法の枠内、自衛権の及ぶ範囲内に限られることは論を待たないわけですが、この自衛権の及ぶ範囲というのがわが国の領土、領海、領空に限られるかというと必ずしもそうではなくて、必要に応じ、わが国防衛のために必要であれば公海、公空に及ぶこともあり得べしというのは今回の防衛白書が初めてではなく、従来累次にわたって国会においても答弁をしてきたことでございます。  なお、それではその範囲はどこまでかというお話については、これは一にそのときの侵攻の脅威の対象の態様、そういったものでもって判断されるべきものであって、これを一概にあらかじめどこまでというふうなことをきちっと決めるようなことはなかなかできないということも、これまた従来再三にわたって御答弁申し上げたその線を踏襲しているものであって、今回特にそういうものを逸脱して記述したというものではないというふうに理解しております。
  124. 矢田部理

    矢田部理君 その後の記述でありますが、他国の領土等に派遣するいわゆる海外派兵はいけない、ここまあ一つの抑えになっております。しかしその海外派兵に至らなければいかなる範囲でも必要あらば出かけていけるというふうにも読める記述になっているわけなんでありまして、これは従来の専守防衛という考え方からは逸脱している、むしろ無限拡大の可能性を持っているというふうに指摘せざるを得ないわけでありますが、特にいつからこんな考え方になったのか、どこで変わったのかということをちょっと歴史的に詰めてみたいというふうに考えています。  第一回の防衛白書がたしか七〇年だと思いますが、このときの白書では専守防衛について「憲法を守り、国土防衛に徹するという考え方」、国土防衛ということを基本に打ち出している。それ以上のことを言っておらないわけですね。これは七〇年の白書以前あるいは以後もそうなんでありますが、たとえば六〇年安保の際の安保特別国会では、日本自衛のため必要な線を領土以外に拡大をしてそこが武力攻撃を受けた場合自衛権が発動するという性質のものではない、これは岸元総理の答弁でありますが、かなり厳格な抑えをしておったわけです。  で、七五年のたとえば丸山防衛局長、これは幾らか含みを出しているわけでありますが、本来領海、領空で守るのがたてまえである、原則だ、しかし相手の武力攻撃の態様に応じてはやむなく公海、公空に及ぶことがあるとかなり抑えた控え目な言い方をしているのでありますが、どうも最近の周辺数百海里の防衛であるとかシーレーン防衛だということになると、この原則なり基本を非常に突出させてそこに市民権を得よう、こういう考え方が明確になってきている。それをこの自衛権の行使の範囲ということで防衛白書でも裏打ちしようという意図がありありと出ているのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。
  125. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私ども決してそういうことを考えているわけではございませんで、この自衛権の及ぶ範囲につきましては、たとえばここに昭和四十四年の参議院春日正一議事質問主意書に対する政府の答弁書があります。  これを簡単に御紹介しますと、質問主意書の中では「いつたい自衛隊が公海、公空まで出動できるとする根拠は何か。また、その際の公海、公空の範囲はどこに限度があるのか。」という質問主意書でございまして、これに対する政府の答弁書としましては、   自衛隊法上、自衛隊は、侵略に対して、わが国防衛することを任務としており、わが国に対し外部からの武力攻撃がある場合には、わが国防衛に必要な限度において、わが国の領土・領海・領空においてばかりでなく、周辺の公海・公空においてこれに対処することがあつても、このことは、自衛権の限度をこえるものではなく、憲法の禁止するところとは考えられない。   自衛隊が外部からの武力攻撃に対処するため行動することができる公海・公空の範囲は、外部からの武力攻撃の態様に応ずるものであり、一概にはいえないが、自衛権の行使に必要な限度内での公海・公空に及ぶことができるものと解している。  ということがございまして、この考えは首尾一貫政府としてとっていることでございまして、それ以上のものでも以下のものでもないというのが現在の立場でございます。
  126. 矢田部理

    矢田部理君 従来は国土防衛を基本にして、国土という中には領海、領空も入ることは当然だといたしましても、少しは先に出ていかなければいかぬという議論が中心だったのですが、むしろ今度は先に出ていく方に焦点を置いているということで、私はいまの説明にもかかわらずこれは納得できない。むしろこの拡大をねらっているというふうに思っているのが一点であります。  もう一点、中業との関係で質問をしておきたいと思いますが、五六中業評価については大綱の水準を達成することを目標としているということが基本の説明になるわけでありますが、どうも大綱を超えているのではないか、大綱の事実上の修正が行われているのではないかという印象を強くいたしております。  と申しますのは、なるほど防衛計画の大綱の中でも周辺海域防衛といいますか、あるいは海上護衛等の任務というようなことが記述としてはあるわけでありますが、少なくとも大綱策定当時は千海里のシーレーン防衛なんということは考えの中になかったのではないかというふうに受けとめられるわけでありますが、今度の中業を見ますと、まあ中業だけではありませんが、世を挙げて千海里航路帯防衛論みたいなものがいま軍拡の中心的な中身になっている。それに見合った形でいわば五六中業も策定をされる。これはやっぱり逸脱だと思うのですが、いかがでしょうか。
  127. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) わが国周辺海域防衛と並びまして、海上交通安全確保ということは海上自衛隊が発足以来一つの柱といいますか目標として考えておった事柄でございます。  そして、その周辺数百マイルあるいは千マイルという数字につきましては、確かに大綱にはそういった数字を示しての規定というものはございませんけれども、私どもとしては三次防あるいは四次防というものを検討し設定するに当たっても、そういった周辺数百マイル、あるいは航路帯を設ける場合には千マイルというものをめど防衛力を進めるということが念頭にありまして、そういうことを頭に入れながら防衛力整備をしてきた、大綱もそういったことを念頭に置きながら作成されているということでございまして、大綱によってシーレーン防衛範囲なり枠というものを広げるということになったというふうな認識は持っておりません。
  128. 矢田部理

    矢田部理君 これは私一人だけの認識ではなくて、先ほどから話題になっております在日米軍のドネリー司令官が八月九日の日に記者会見をしまして、一千海里シーレーン防衛などの面で防衛計画の大綱は五六中業である程度修正が行われた、こういうふうに受けとめ評価をしているという認識を示しているわけであります。また鈴木総理の例のナショナルプレスクラブでの演説に関連して、一千海里シーレーン防衛を表明したが大綱作成当時にはそのことは予想されていなかったということで、言うならば五六中業あるいは鈴木総理アメリカにおける演説でむしろ大綱を質的に修正した、量的な問題を中心に大綱は扱っているわけでありますけれども、事実上修正したと言われても仕方がないような内容、トーンになっているのではないかという疑問を依然として持たざるを得ないものですが、もう一度だけ答弁を求めます。
  129. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) ドネリー在日米軍司令官が八月の上旬に記者会見におきましてその種の発言をしたということは私も承知しております。しておりますが、いかなる根拠に基づいてそういった発言になったかということについて私つまびらかにしておりません。  われわれの考え方としては、先ほど来申し上げたように海上交通のの安全確保シーレーン防衛重要性については相当前からの課題でございましたし、今回特にこの大綱によって新しく出てきた問題ではなく、まして五六中業によってこの大綱の枠を超えて防衛力整備をしようという考えは毛頭ないわけでございまして、あくまでも五六中業は大綱の水準を達成することを基本として作成しているというものでございますことを申し添えていただきます。
  130. 矢田部理

    矢田部理君 シーレーンの問題に入りますが、前々から言われてきていることでもあり、また先ほど防衛局長もそう述べられているわけでありますが、周辺海域数百海里の防衛、それから航路帯を設けるときは千海里程度というふうな表現になっているわけですね。  この表現を言葉どおり受けとめますと、まだ航路帯を設けて防衛するということは固まっていないのでしょうか。設ける場合は云々という表現がしばしば繰り返し使われるわけですが、その点いかがですか。
  131. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) シーレーン防衛海上交通安全確保をするために考えなければならないことというのはいろいろなことがあろうかと思います。  作戦的に由し上げれば、いわゆる対潜哨戒機等による広域の哨戒をして、潜水艦が水面に顔を出すことについての抑止というか抑制するというふうなことによる潜水艦の行動を阻害するというのが一つの要素であろうかと思っております。それからまた、さらには海峡における防備あるいは重要港湾における防備というものを十分いたしまして、それに対する潜水艦からの攻撃というものを排除するような機能も必要かと思います。さらにはこの周辺における潜水艦掃討といいますか、制圧といいますか、その種の行動を通すことによって相手の潜水艦を排除しあるいは行動を阻害するというふうな行動も必要かと思います。  それから、必要があれば航路帯という比較的安全な地帯というか地域を設定しまして、その線を船団を通すというようなことも必要になるかもしれません。またもっと極端なことを言えば直接船団を護衛して安全を図るというふうなことも必要になるかもしれない。  一にかかってそういったことのどういう点を重視し、どういうことを重視してやるかということについては、そのときの脅威の態様なりわが方の対応の仕方いろいろ千差万別であろうと思います。  そういった意味合いにおきまして、いつでも必ず航路帯を設定するというものではなくて、必要に応じて航路帯を設定するということは大いにあり得ると思いますが、きちんとどこの線が航路帯であるということはあらかじめ決めておくようなものではないだろうというふうに考えておるわけでございます。
  132. 矢田部理

    矢田部理君 あなたの説明は、従来そのわきにおられる塩田防衛局長時代の説明と大分ニュアンスを異にするのですよ。  従来は航路帯というのは必ずしも線ではない、面でもなけれども、いわは帯、ある種の幅を持ってと、こういうことで、千海里防衛論の中身として考えられてき、あるいは議論をされてきたのは南西、南東の日本航路帯を中心に守る、守り方等についてもいろいろ議論があったわけですが、あなたのやつはどうも航路帯論が場合によっては設けることもあるし設けないこともある、千差万別だということで、従来の点や線の防衛から面の防衛に広げるような布石を答弁の中でしているのではないか、こういう危険、疑いを感じてならないのですが、この点いかがですか。
  133. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 決して塩田防衛局長の答弁と食い違っているということもありませんし、それをことさらに拡大しようという意図があるわけではございませんで、周辺数百マイルの防衛をする、あるいは航路帯を設ける場合は千マイル程度のものをめどとして防衛力整備を進めるということにおいて全く変わりはないわけでございます。  ただ、海上交通安全確保というのは常に航路帯を決められたところに設定をしてやるものであるというふうに限定したものではないということを念のため申し上げているわけで、海上交通安全確保というのは各種の作戦が総合的に行われ、有機的に行われ、そういったものの累積効果によって効果が発するのだということを御理解いただきたい、そういうために申し上げているわけでございます。
  134. 矢田部理

    矢田部理君 それじゃ、念のために一応伺っておきますが、周辺海域の場合には数百海里という限定は設けているわけですか。それから航路帯についてはさらに突出して千海里論というふうにいままで仕分けされてきたわけですね。だから周辺海域について言えば、どちらかというといままでも面防衛であったのですよ。  それはあなたの先ほどの議論と符節が合うような気がするのですが、数百海里を突出して航路帯的なものを守るということになった場合は、面ではなくて線防衛といいますか、そういうニュアンスでいままで説明してきたと思うのですが、そういう数百海里以上の部分についても面防衛的な考え方に立つのでしょうか。
  135. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 現在防衛力整備前提といいますか、一つの目標として考えられるものは周辺数百マイル、航路帯を設けた場合には千マイル程度のものが何とかできるようなものを持ちたいということでございまして、この点については全く変わりございません。
  136. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、数百海里までは面防衛だ、航路帯を設けた場合はその部分に限って防衛するのだ、突出部分には。いわば線防衛的な考え方というふうに受けとめてよろしいですか。
  137. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) どうも私言葉にこだわるようでございますが、線というと何か幅が全くないみたいであれなんですが、ある種の先生おっしゃっている意味が私と同じであるとすれば同感でございます。違いがないと思います。
  138. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、シーレーン防衛に関する日米共同研究について宮澤官房長官が九月三日の日に記者会見をして幾つか重要な点の指摘をしているわけでありますが、いまだこのシーレーンということについて日本には定義がないというのが一点。しかもこのシーレーン防衛についての防衛のプログラムもないのだ、さらには三点目として、個別的自衛権範囲がどこまでかということもまだ定かでないというような非常に重要な指摘をしているわけでありますが、防衛庁認識もこの長官の認識と同じだというふうに受けとめてよろしいでしょうか。
  139. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) シーレーンというものの定義のとらえ方いかんにもよろうかと思いますが、私どもとしてはシーレーンというものは海上交通の安全を確保することだというふうにまず理解をしております。そしてそのためにどういうことが必要であり重要であるかということについては相当いろいろな御議論があろうかと思いますし、いろいろ見解というものがあってもこれは不思議ではない。ただ、そういったものの重要性についての認識についてはそう差異があるとは思っておりません。  それからもう一つシーレーン防衛についての何と申しましょうかプログラムということですが、私どもとしては現在の五六中業におきましても海上交通安全確保ということはきわめて重要な柱として努力一つの重点として考えており、そのために海上防衛力の充実、近代化ということも相当重視して行っているわけでございまして、そういう意味合いにおきましても全くプログラムがないというふうには私ども考えておりません。ただ、どこまで持っていったら十分かというふうなことについての御議論またこれいろいろとあろうと思いますし、現に今回のハワイ協議におきましても、アメリカ側から現在の防衛力においてもそれからさらには五六中業においてもなおかつ不十分であろうというふうな指摘があったわけでございます。  そういった指摘があったものですから、私どもとしてはいろいろ前提になる条件について勉強してみようということを提案しているわけでございまして、いろいろな意見があることはわかりますが、概念そのものについての見解が根本的に違っているというふうなことはないのではないかというふうに理解しております。
  140. 矢田部理

    矢田部理君 この点はもちろん結論的な内容は違うのでありますが、たとえば海幕長をやられた大賀さんが言っているわけですね。どうも日本防衛論議というのは国をどう守るかという戦略構想が十分にないまま、言うならば装備だけが先行している、シーレーン防衛についても、この宮澤さんの言をかりるならばまだその構想が固まっていない。  いろいろなことが想定されると防衛局長も言うわけでありますが、にもかかわらず抽象的に海上交通の保護とか安全のためにと称してやたらにいろいろな軍艦をつくったり飛行機を買い込んだりする。問題が逆になってはしないのかということが一つ指摘できると思うのでありますが、その点どう考えるかということが一点。  もう一点、宮澤官房長官が記者会見で言っているのは、共同研究というけれども研究と実行は別なんだということを盛んに強調しているのですね。しかもその前段には個別的自衛権範囲がどこまでかということもまだ実ははっきりしていないのだ、議論の対象なんだというふうにも言っていることとあわせ考えてみますと、どうもこの共同研究というやつは個別的自衛権範囲内か否かにこだわらないで研究を進めるということになりはしないのかというこれまた疑念を持つわけでありますが、その点いかがでしょうか。研究だからということで、集団自衛権にわたるようなことも研究の対象にするのではないかという問題指摘でもあるわけでありますが、この二点について伺っておきたいと思います。
  141. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回のシーレーン防衛に関する共同研究というのは日米防衛協力のための指針、すなわちガイドラインに基づく研究わが国に対して武力攻撃があった場合に現在の防衛力をもっていかに有効に対処するかといういわばオペレーションプランについての研究でございます。  こういった研究をするわけでございますが、この研究はあくまでもいま申し上げたとおりガイドラインの枠内でやる。そのガイドラインというのは現在日本が置かれている憲法範囲内、事前協議というものは対象にしない、専守防衛、非核三原則の範囲内で行う、しかもその相互の国はその研究の成果によって拘束されるものではないということもはっきりいたしておるわけでございまして、そういう意味合いから私どもとしてはこの研究についても十分な枠というかフレームワークというのが設定されている、そういった中でやるものであるということでございまして、研究と実行とは別で、研究は野方図にやるというふうな考えを現在とっているわけではございません。  それから、シーレーン防衛構想についてはっきりしてないというふうな官房長官のお話があった由でございますが、私どもとしてはこのシーレーン防衛重要性については論をまたないところでございますが、このためにどの程度の防衛力、どういったものが最も有効であるかということについてせっかくアメリカ側からの指摘もあったわけでございますから、そういった面についての研究、脅威の分析あるいはシナリオの設定等についてアメリカがどういうことを考えているかということを聞くのもわれわれの勉強の一助になるという意味合いから共同研究をしたわけでございまして、この構想、海上交通防衛についての重要性認識なり考え方が全くないままやっている、装備だけが先行するということじゃなくて、そういうことの前提として現在の防衛力が果たして有効であるかどうかということを研究をするわけでございまして、いま言った防衛構想が全くないままにこの研究に入るというものでは必ずしもないのじゃないかというふうに考えております。
  142. 矢田部理

    矢田部理君 繰り返しに多少なりますが、宮澤さんは個別的自衛権範囲がどこまでかということはまだ議論の対象であって決まってないのだ、しかも今度の研究ガイドライン憲法の枠内でやるのだと。その枠内でやると言ったからといって、個別的自衛権範囲がまだ定まっていないということになれば、当然集団的自衛権とのかかわりにおけるグレーゾーンみたいなものが想定をされるわけですね。ここら辺は研究の対象にすることになるのではないですか。
  143. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私いま憲法の枠内と申し上げたのは、当然のことながら集団的自衛権に踏み込んだものでなくて個別的自衛権範囲内であるという大前提のもとに申し上げたわけでございまして、個別的自衛権憲法とは別に理解して、その分についてはグレーゾーンとして取り扱うことあり得べしということは全く考えておりません。
  144. 矢田部理

    矢田部理君 どうも話が行ったり来たりするのですが、個別的自衛権と集団的自衛権がある、概念上、定義上はこれは区別ができますが、具体的なケースを想定してどちらに入るのかということになるとなかなかこれは区別ができない、できにくい状況、または防衛庁長官のNHK発言、いろいろまたただしますけれども、宮澤さん自身が定まってないのだ、まだ議論の対象なんだと、こう言っているわけですから、ここら辺は当然議論をすることになるのじゃありませんか、グレーゾーンと言っていいと思いますけれども
  145. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私はいま憲法の枠内、個別的自衛権範囲内でということを申し上げましたが、それでは個々の場合に非常に具体的な個々のケースをとらえて、この場合どうかこの場合どうかというふうなことを議論を進めていけば、そういった議論があるいは出てくるかもしれません。私まだそこの具体的なことについて詰めているわけではございませんけれども一般的にそういうことはあり得るかもしれない。しかしそれは大前提として、まずわが方は憲法の枠内である、個別的自衛権範囲であるということは別としまして、もしそういうふうなことが出てくればそれはそのときに考えて、これが個別的自衛権に抵触するのだ、範囲を逸脱するのだということになれば、それはこの研究からは除外されるだろうと思います。  そういうことが議論の過程として共同研究の場で全く出てこないかと言われればそういうことがあるいはあるかもしれません。ただ、これは一般論としてアメリカ側もわが方の置かれた立場個別的自衛権に限るということを十分承知しての共同研究でございますから、無造作にそういうものが出てくるとは思いませんけれども、もし仮にそういうものが出てくればその場でもってアメリカ側と話し合ってそういうものは除外するということに相なろうというふうに思っております。
  146. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと角度を変えて伺いたいと思うのですが、どうもシーレーン防衛というのは軍事的にも、それから財政的にはもちろんでありますが、これはナンセンスだ、いまの戦争とか各国の軍備の状況から言えば時代錯誤だという議論があるわけだし、私もそう思っている一人なんでありますが、ここにたとえば日本郵船の三原専務の話が紹介をされているわけですね。「現代は攻撃兵器も格段に進歩し、ミサイル搭載潜水艦攻撃されれば、いくら護衛されても商船はひとたまりもない」、「船員だけ危険な海に出て働けといっても、船員は動くわけにはいかぬ。シーレーンという考え方そのものがナンセンス」なんだと、こう言っているわけですよ。何かあなた方が大変にぎにぎしく騒いでいるわりにはきわめて冷静に当事者は受けとめている。  これは企業側だけでなくて、たとえば海員組合の土井組合長が次のような投書をしているわけでありますが、「かつて帝国海軍でさえ不可能であったことを企図するなど、海の実情を無視した時代錯誤であり、その真意を疑わざるを得ない。」とまで言い切っているわけですよ。これは労使双方がそう言っているわけであります。  その点で、たとえば大変海上輸送路の安全とか保護とかということを言っておられるけれども、こういう直接の関係者にあなた方は話を聞かれたり意見を聞かれたことはあるのでしょうか。
  147. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私残念ながらまだそういう方々の意見を直接聞く機会がございませんが、そういう記事が載っていることを拝見して承知はしております。  ただ、私どもこの海上交通安全確保というものは何も全面的に一〇〇%することが可能であるということを考えておるわけではございませんで、そういった機能なり能力というものを持つことが、これはもう防衛力全般について言えることでございますけれども、相手のフリーハンドを排除するという意味で抑止的な意味合いから必要であるというふうに考えて、一方またこういった能力を持つことの姿勢を示すことがわが国防衛安全保障を確保する上で必要なことであろうというふうにも考えておるわけでございます。  もちろんこういった努力の積み重ねによって相当の能力は持つわけで、そういった能力を持つことが抑止効果にもつながる、一〇〇%でなくてもそういうたとえば対潜哨戒機によって日本周辺を哨戒することによって相手の潜水艦というのは相当行動が制約されるわけです。そういったことが広い意味シーレーン防衛海上交通安全確保に全く無益なものというふうには考えておりませんで、その点御理解いただきたいと思っております。
  148. 矢田部理

    矢田部理君 きわめて説得力のない、しょぼしょぼした説明だというふうに私は聞くわけでありますが、どうもかつて北海道侵攻論とか北の脅威ということを盛んに振りまいて陸上自衛隊の大軍拡計画を推進した、それがかなり説得力がない時代に入ったわけですね。いま余り言う人はいないわけです。そして今度はシーレーン防衛だ、海上交通路の保護だというようなことにアクセントをつけて盛んに振りまくのは、あなた方のやっぱり軍拡計画の口実づくり、これを目玉にして一大軍拡をやろう、こういう意図が率直にあらわれているのではないかというふうにすら実は考えられる。  また、国際的に見ればやっぱりアメリカの再三にわたる圧力があるわけでありますが、第七艦隊がインド洋からペルシャ湾にスイングする、穴ができる、そこを日本で埋めてくれと言ったって、第七艦隊というのはもともとやっぱり戦略艦隊ですよ。これの穴埋めを日本がやろうというふうなことになったら実は大変なことになるのでありまして、米軍ですらあきらめているシーレーン防衛などということを日本がこれからやるというのはいかにもやっぱり時代錯誤であるし実態に合わないというふうなことを特に指摘をしておきたいというふうに考えるわけです。  そこで、防衛庁長官に伺いますが、NHKの座談会に出られたときに個別的自衛権と集団自衛権問題に関連して長官が発言をされた。そのことが問題になっているわけであり、かつ後で釈明をされたような経過もあるようでありますが、どんな経過でどんな発言をし、どんなことになったのかということをまず御説明いただきたいと思います。
  149. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 二週間前のNHKのテレビ討論会に出まして、「シーレーン防衛日本の選択」というような表題でございましたが、司会者から集団的自衛権の問題についての質問がございまして、そのときに私は、日本攻撃をされ侵略をされておるときにもちろん防衛出動がなされ、また日米安保条約の五条も発動しておる段階において日本周辺において当然日米で共同対処をする事態が起こります、そのときに、日米共同で対処をしているときに当然攻撃があるわけでございますから、それに日本攻撃に応じて反撃に出ていくということは集団的自衛権の行使にはならない、もちろん憲法にも抵触はしないということを私は申し上げました。  その前の段階で丸山さんが若干の相当長い時間にわたっていろいろな発言をしておりましたけれども、私はそのことで、最後の方で丸山さんが集団的自衛権の行使には当たらないということをお話しになったものですから、いま丸山さんおっしゃったとおり有事の事態の場合においては日米共同で対処をし共通の攻撃に対して反撃に出るということは集団的自衛権の行使には当たらない、それはいま丸山さんおっしゃったとおりですというようなことを申し上げたのでございます。
  150. 矢田部理

    矢田部理君 これは時間がないからかいつまんでやりたいのですが、従来政府は、自衛隊は個別的自衛権範囲内でわが国の安全を守る行動をとり、その結果として米艦を守ることはあり得るという、問題の丸山さんが局長時代の答弁があるわけですが、その答弁はいまも変わりがない、その基本だということはそう受けとめてよろしいでしょうか。
  151. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) そのとおりでございます。
  152. 矢田部理

    矢田部理君 ところが、この丸山さんはNHKでは一私人としてという前書きつきではありますが、千海里内での米艦隊への攻撃日本に向けてなされる攻撃の一部とみなすのが当然で、この米艦の防衛は集団自衛権の行使ではない、こういう趣旨発言をしたように思われ、かつそれに防衛庁長官が賛同したように受けとめられているわけでありますが、その見解には立たない、それに賛同したわけではないという点をもう一点押さえておきたいのですが、そのとおりでよろしいでしょうか。
  153. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 先ほども申し上げましたとおり丸山さんがいろいろたくさん述べておりまして、それを一つ一つチェックしないで、最終的に丸山さんが、公海上においても自衛隊が米艦隊と共同対処をしておって、そういうことも予想されるので、そういう場合においては日本がもちろん攻撃をされ侵略をされておって日米安保条約の五条が発動されておる場合においては集団自衛権の行使ということにはならないということを最後の方におっしゃったものですから、そのことをとらまえて私もそう思いますということを申し上げたわけでございまして、丸山さんの発言全体を私が肯定したということではございません。
  154. 矢田部理

    矢田部理君 その最後のところが大事なんですが、いままでは米艦の護衛は結果としてあり得ると。しかもそれは幾つかの前提が置かれていたわけですね。その前提をかなり外すようなかっこうで、千海里内で米艦が攻撃されればこれは日本に対する侵略とみなして護衛できるのだ、米艦の護衛をやるのだ、これも集団的自衛権ではないのだ、個別的自衛権範囲内だというふうな趣旨発言はあなたはとらない、そういう立場には立たないということは確認できますか。
  155. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) もっぱら米艦隊を防衛するというようなことでなしに、結果として米艦隊が護衛される、防衛されるというようなことで私は集団的自衛権の行使には当たらないということで肯定をしたわけでございます。
  156. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、私が述べたような趣旨の丸山発言には賛成できないという立場ですかと、こう聞いている。イエスかノーかだけ、あなたの考えを言ってくださいよ。
  157. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) そのとおりでございます。
  158. 矢田部理

    矢田部理君 ところで、これは前田幕僚長の記者会見の発言なんでありますが、今後米空母が搭載しているE2Cから目標や情報の提供を受けるための共同訓練をやっていきたい、共同訓練の時期は護衛艦にリンク11、リンク11がそろってからやりたいというふうに言われているわけでありますが、こういう計画があるのでしょうか。リンタ14が装備される時期、予定はどうなっているのでしょうか。
  159. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) いま担当の者がおりませんので便宜私からお答えしますが、海上自衛隊がE2Cと共同の訓練を行う具体的な計画について存じ上げておりませんけれども、現在の海上自衛隊の護衛艦のうちリンク11というようなものを装備しておる船というのは微々たるものでございまして、もしそういうことをやるにしましても限られた船しかできないというふうなことであろうというふうに理解しております。  詳細、E2Cとの共同といいますか訓練の具体的なスケジュール、計画については、申しわけありませんがいま私存じておりませんので、別途調べて御返事申し上げます。
  160. 矢田部理

    矢田部理君 本人が知らないということですから、私も深く突っ込むことはやめますけれども、リンク11というのは御承知のように米軍と瞬時に多量の情報交換ができるデータ通信機というふうに聞いておるわけだし、それから14というのは同様のもので受信専門のもの、これを連動させて訓練をやるということになりますと、敵機やミサイルの来襲をアメリカのE2Cがキャッチする、これを瞬時に自衛隊の護衛艦に知らせる、護衛艦がこれを受けてそれを撃ち落とすという訓練をやるというのは、もう個別的自衛権範囲を越えて、やっぱり集団的自衛権の問題にのめり込む危険性を多分に持っている訓練なので、こういうものはやっぱりやるべきでないというふうに考えるわけですが、その点いかがですか。
  161. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) いま具体的なE2Cと護衛艦隊との共同訓練のスケジュールは承知しておりませんというふうに申し上げましたが、海上自衛隊の船がいわゆる対空、防空作戦ということも考えなければならぬというふうに認識する以上、E2Cからの情報をもらってそれに即応して対空防御の運用を考えるということはわが国の護衛艦を防衛するためにも必要なことであって、決してそのことをもって直ちに集団的自衛権の行使にわたるというふうなことになるとは考えておりません。
  162. 矢田部理

    矢田部理君 あなた事実あるいは機器の性能、役割り等をまだ十分知っておられない答弁だと思いますが、余り知らないようですから次の問題に入ります。  日米共同訓練の問題点を幾つか出してきているわけでありますが、これは最後にまとめて伺うことにいたしまして、今度のハワイ会談でもう一つ問題になりましたのがミッドウェーが横須賀に入港する、その入港の本来の目的は休養と補給だ、こういうふうに言われてきたわけでありますが、そこに搭載されている艦載機が従前厚木、三沢、岩国などで実は訓練をやっているわけですね。その訓練の場所をほかに移すべし、関東及び関東近県に移してほしいということがハワイ会談でも実は問題にされておる。防衛庁防衛施設庁等はそれを受ける形で来年度には調査費を要求するという運びになっているようでありますが、この米軍の訓練の特徴、頻度、どんなことをやっているのか、問題点等をまず説明していただきたいと思います。
  163. 塩田章

    説明員(塩田章君) ハワイ会談で御指摘のような話題が出たことは承知いたしております。  現在、厚木で問題になっておりますミッドウェー艦載機の訓練でございますが、訓練の規模とか内容とか、そういったことについて若干申し上げますと、ことしの二月からごく最近まで四回ございまして、各回の期間を申し上げますと大体十日から二十二日の間、毎回の日数は異なっておりますけれども大体十日から二十二日間ぐらいの間で行われております。一日平均機数は少ない場合が六機、多い場合が十機ということで、これに参加いたしております機種はF4戦闘機、それからA6、A7という攻撃機、それからE2、こういったものが参加いたしております機種でございます。  それから、訓練は陸上の基地を使います着艦訓練でございまして、その着陸の回数はいま申し上げました期間におきまして一日平均しまして三十回から五十五回というふうな回数の間に分布いたしております。  それから、これが特異性とおっしゃいましたけれども、着艦訓練でございます関係上低く飛びます。しかもそれを繰り返し飛びます。そういうことがございまして非常に騒音が高いわけでございますが、一回九十ホン以上の騒音を示したのが、これも二月の第一回から最近の第四回までそれぞれで多少ずつ違いますけれども、一日に一番多い場合で百八十八回、少ない場合で十回ぐらい、一回に九十ホン以上を記録したのがそんなような記録がございます。  以上のような訓練を実施いたしておりますのが実情でございますが、これはいまも御指摘ございましたように、ミッドウェーが横須賀に入港いたしております期間、これもまた期間が短い期間長い期間いろいろございますけれども、その期間約半数の飛行機が厚木に駐機しまして残りの半数は艦内におる、その厚木に駐機しました半数につきましていま御指摘のように三沢でありますとか厚木でありますとか岩国でありますとか、そういったところでいま申し上げましたような着艦訓練をしておる、こういうことでございます。
  164. 矢田部理

    矢田部理君 この訓練の特徴は一部出ましたが、一つは夜間やるということなんですね。しかも着艦訓練でありますから非常に低空でしょっちゅう飛び回る、騒音がものすごい、低空でやるから危険度も高いということで、これは大変厚木などでも問題になっているわけなんです。したがって当然のことでありますが、ほかの地域で受け入れるべしというふうなことで場所を選定されるのは困る。私の地域にも百里があるわけでありますが、関東周辺ということになりますと、百里、木更津、横田などが問題にされるわけでありますが、これはやっぱりやめてほしいと思うのです。  もともとこのミッドウェーの寄港そのものが問題であるところへ、しかもミッドウェーの寄港は補給と休養のために来ているのだということ、ところが実態は裏方で相当の訓練をやっている。これまたやっぱりとんでもない話なのでありまして、やめるように私はまず第一に要求をしたい。同時に訓練の実態や問題点を全面的にやっぱり国民の前に明らかにすべしというふうに考えています。ここに運輸省にも来ていただいておりますが、フライトプランが必ず出ます。その全体を明らかにしてほしい。これは時間がありませんから答弁は要りませんが、要求だけしておきます。  といって、私が要求をしたらそれは外務省に聞かなければだめだ、外務省筋を当たってみると、在日米軍の問題だから何とか秘密みたいのことで知らせられない、いま関東周辺にどこか持っていこうとする艦載機の訓練場、その実態や頻度や内容を知らせないで強引に持っていく、調査費まで要求するなんというのはとんでもない話なんでありまして、時間がありませんから、運輸省と外務省が寄り寄り相談をして、フライトプランその他を含めて全貌を明らかにしていただきたいというのが二番目の要求であります。  それからあと、これはこの間日本海でやった海上自衛隊の日米共同訓練、ここでも実弾射撃の問題点等が幾つか発表をめぐったりして問題になっている、あるいはペリリューの参加と行動が問題になっているというようなことがあるわけでありますが、これは別の機会に譲ることといたしまして、もう一点だけ伺っておきたいのはB52との共同訓練でありますのが、八月三十一日に五島列島上空でB52とF4が電子戦の訓練をやりました。そのときには日本でも公表をされたのでありますが、九月十一日の記者会見では来週中に二回目のものをやる、ところが米軍からクレームがついて、今後こういうものは隠密裏にやりたい、公表しないでほしい、こういう話になってきているようであります。なぜ公表してはならぬのか。  従来核の存在というのは秘密だということで明らかにしてこなかった。今度はこの運搬手段までをも秘密のべールの中にやっぱり包み込もうとする、そういう意図が出てきているわけでありますが、特にいまの世の中は人工衛星、偵察衛星が非常に発達しておりまして、あれだけ巨大なものが動くということになれば、しかるべき国は当然この程度のものはキャッチできるのに、なぜ国民の前に明らかにしないのか。その点だけをお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  165. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) B52との訓練でございますが、先生いま共同訓練とおっしゃいましたけれども、このB52との訓練は私どもとしては共同訓練ということではなくて、B52の本来の行動の途中にそれをターゲットとして利用さしてもらうということで、日米の共同訓練というふうには理解をいたしておりません。したがいまして米側の行動というのは基本的には米側独自のB52の行動をとっておりまして、その中途においてわが方がターゲットとしてそれを利用さしてもらうということでございまして、従来から艦艇、航空機に限らず米側独自の行動につきましては公表をしておらないということでございます。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 ハワイ会談につきまして質問をいたしたいと思います。  シーレーン共同研究、これは報道によりますと日本側から提案した、こうなっておりますが、そのとおりでしょうか。
  167. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そのとおりでございます。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 第一、第二、第三、新聞にしさいに報道をされました。逐次私もマスコミを通じて会談の成り行きを注目していたわけであります。  この日本側からシーレーン共同研究という提案をしたのはやっぱり会談の成り行きで、そのときの次官以下局長が当然いらっしゃる、提案した方がいい、こういう判断で提案された、こういう理解でよろしゅうございますか。
  169. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回のハワイ協議に臨むに当たって私どもは私どもなりにアメリカの出方というものをいろいろ実は模索をしていたわけでございます。しかしながら現実にシーレーン防衛についてアメリカ側から何らかのコメントがあるだろうということはわかっておりましたが、具体的にどういうふうな話し合いが出るかということまでは実はわからなかったというふうな経緯がございます。  そこで、この会談の二日目にアメリカ側からわが方のシーレーン防衛について、これは非常に日本防衛にとって重要なバイタルな事柄であるけれどもアメリカ側の勉強によれば能力的にきわめて不足であるというようなことの説明がるるあったわけでございます。そういうことを踏まえまして、私どもとしてはアメリカ側の言っていることの前提条件あるいは脅威の内容、あるいは侵攻の対応、シナリオの設定等についていろいろだだすべき点があるのではないかということを考えまして、一方またこのシーレーン防衛についても日米共同作戦をするというふうなたてまえから言って、基本的な認識についてはできるだけ日米間にそごのないように一致したことが望ましいということを総合的に考えて、そういうものをひとつガイドラインの場でもって研究しようじゃないかということを提案したというのが実情でございます。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、日米政府間の会談ですから、当然向こうの話の内容が何たるかわかって臨んだわけじゃない。事前にこういう提案をしよう、こういうことで臨んだわけでもない。  そうすると、いままでの日米のこの関係から見ますと、これ従来ともに対潜能力を増加しろ、あるいは防空能力について増加しろ、あるいは昨年は具体的に五六中業をはかるかに超え防衛大綱をはるかに超える数までアメリカ側は示してきた、あるいは今回のハワイ会談におきましても五六中業の早期達成ないしは防衛増強さらにやれ、具体的な数字は出さないにせよ非常にいわゆる圧力がかかってきた、アメリカからいろいろな要望が出てきた、そういうことを踏まえて、それじゃひとつそういう共同研究でもやらざるを得ない、こういう立場に追いやられたのじゃなかろうか。私たちはマスコミ報道の中ではそういうふうに察したのですが、その点いかがでございましょうか。
  171. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 非常にデリケートな事柄でございますけれどもアメリカ側一般的にわが方の防衛力増強を要請したということは、そういった期待があったことも事実でございます。しかしそれを具体的に、いま先生から御指摘があったようにどの程度の防衛力を持たなければならないといったような具体的な要請なり提案というものがあったわけではございませんが、そういう一般的な要請の中で海上交通安全確保シーレーン防衛についてのいろいろな話し合いがあった。  私どもとしては先ほど申し上げた理由から言ったわけですが、私ども一つの心配は、防衛力整備のようなものが一種の圧力、プレッシャーとして責任を持たせられるようなことになっても、わが方は現在大綱の水準を達成することでもって精いっぱいでございますので、そういう点もあわせ考えましてこういつた提案をする、すなわちいわゆる現有防衛力の中におけるオペレーションプランの場で検討するということを提案した、そのいろいろな会議の雰囲気というものを総合的に判断してやったというのが実情でございます。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、まだ質問当初なんで、こんなことは質問にならないかと思いますが、善意に解釈すると、いわゆる従来ともアメリカのいろいろな要求に対してこちらははねつけてきた、憲法の枠の範囲あるいは防衛費のいろいろな政策上の制限等。ところが、またまた同じようなものを持ってきた、当然そういうことがあるだろうと事前にそんなことは予想されますね。それに対してアメリカの圧力と申しますか、強い増強に対する要請と申しますか、あるいは早期に五六中業を達成しろという期待感というものについて、アメリカに対してそれはできないのだぞと口で言うよりも、もっと具体的にアメリカの事務当局に知ってもらうためには、ひとつ共同研究をやれば向こうの理解も深まるだろうということもその共同研究の中の一つ日本側の考えの中にもあったのかと、そういうことで解釈できますか。
  173. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私どもが今回共同研究提案したという一つ背景は、アメリカ側がそういう日本防衛力で不十分であるということを言った、それに対してわが方としてはもちろんわれわれの持っている防衛力を一〇〇%十分なものとは思っておりませんけれども、実際に共同作戦をするに当たってもアメリカがどういうことを考えてわが方のシーレーン防衛というものを考えたのか、せっかく日本立場に立って研究したということであれば、その前提をいろいろ聞いてみることが今後の日米間の意識のギャップを埋める上にも意味があるだろうということで申し上げたのが第一点でございます。  第二点は、非常に私ども気になりましたのは、こういった共同研究をすることによって将来の防衛力整備一つのきっかけといいますか、口実にすることは避けなければならないという意味合いから、ガイドラインに基づく安保条約第五条発動のときの日本に侵攻があった場合の共同作戦計画一環としてやるのだということをきちんと明確にした上でその日米間の意思の統一を図ろう、調整をしようという意味合いから共同提案をお願いしたということでございます。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっとずれますけれども、いまのに関連しますので。  先ほど一千マイル以内、それから以遠日本は以内を守る、アメリカ以遠を守る、これは従来とも日米両政府間で約束できていたことですか、あるいは今回のハワイ会談で新しく約束をした、こういうことでしょうか。
  175. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) わが方が従来から周辺数百マイルにおいて、航路帯を設定する場合は一千マイルをめどとして防衛力整備をするということはアメリカは当然承知しておりましたし、昨年の五月、鈴木総理がワシントンのプレスクラブで講演した際の質問に応じて答弁されたのも同趣旨であり、アメリカも今回のハワイ協議を通じまして日本側のそういった立場というものを十分認識した上での話でございます。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 昨年の鈴木総理以遠に対しては触れておりませんね。
  177. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 一般的にわが方のそうした考え方についてはアメリカ側は承知した上でのことでございます。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 ということは、鈴木総理発言も今回のハワイ会談の発言もイコールであって、総理のときには以遠には触れてないけれども従来の政府の政策である数百海里、一千海里云々、この政策は鈴木総理そして今回のハワイ会談変わりない、こういうことでありますが、鈴木総理の場合には以内についてのことは公約、まあ公約じゃない、いろいろの論議がありますが、そこはまあいろいろでしょう、約束しております。あるいは政策として努力目標を打ち出しております。ところが以遠について触れてませんね。  今回の場合にははっきり以遠については向こうが守る、こういうふうに言ったということですね。これにつきましては当然日本側の政策の範囲ではないわけですね。日本側の政府のいままでの政策の範囲は鈴木総理発言、いままでの国会答弁、いまも何回も繰り返して言われました。それに尽きるわけであります。  そうすると、それに対して日本側以遠アメリカが守ってくれるということをオーソライズした、向こうもそれをオーソライズしたということは、当然日本政府の公約、まあ公約といいますか、政府の施策の中にそれが組み込まれた、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。いままでのニュアンスじゃなくて今回のハワイ会談を踏まえてのこととしてお聞きしたいのですが。
  179. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) このハワイ協議というのは日米の事務レベル同士の一つのフリートーキングの場でございますから、このことをもってして両国間の公約というか、約束というふうにとるかどうかというのはいろいろ御意見もあろうかと思いますが、少なくもアメリカ防衛当局者が千マイル以遠アメリカがやるということを言っておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして私どもとしては従来私どもが再三国会で答弁していることの一つの裏づけにはなっているというふうに理解しております。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官、事務レベルだから必ずしも政府間の約束であるかどうか疑問だと言って、次官が出てそうそうたる人が出てきたのですから、これはもう政府間の約束であると私は認識しますが、やっぱり事務レベルであることは変わりないでしょう。  長官は月末、日にちは未定だけれども行かれる。当然ワインバーガー長官と会われる。当然日本から提案したこの共同研究というものを、まあ長官から出すのか向こうから出るのか、一つの話題になることはこれはもう避けられない、これはそういうふうに私認識する。長官もその認識は間違いないと思いますね。何らかの話題になる、これはもう間違いない、こう思うのです。  そうすると、いま繰り返しますように、以内の問題につきましては、それは公約であるかどうかは別にしても、私は、総理プレスクラブで言ったことはやっぱり日本発言ですけれども、公的な場でアメリカで言ったことですから、あれはやっぱり日本の公約だと、こういう認識は曲げることはできないとは思うのですが、以遠につきまして日米事務レベル、トップレベルで以遠アメリカが守りますと、こういう発言をしたということは、日本もそれを、まあ頼むと言ったか了解したと言ったか、それについて合意したわけですから、当然日本の施策の中に、従来の施策の中にいまの日本周辺数百海里、航路帯もし設置するとするならば南西南東一千海里、これは日本シーレーン防衛として守る、そしてその以遠アメリカに守ってもらうとはっきり政策として明示しなければならない、当然そうすべきだと私は思うのですが、事務レベルだから政府間の約束じゃない、こう言うならば、ひとつ長官いらっしゃったときにそこはやっぱりきちっと正式な政府間の取り決めとして話し合ってくる必要があるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  181. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) ハワイ協議での発言はやっぱりそれだけの重みがあるわけでございますから、われわれもこれは大いに多としたいと思います。  また、何といっても日本防衛は自分がやるということとともに、日米安保条約というものの基軸、これはとても信頼性を増すことに努力しなければならないわけでございまして、そのための会談でもございますから、その中の一環としていま先生御指摘のようなお話を、いまこれこれやるということでございませんから、総括的な間断のない対話を続けるということが今回のみならず日米会談の本来の趣旨でございますから、そのことだけ詰めるということでもございませんけれども、当然そういうようなことで日本防衛がより全きになるようなことであるならば、そしてまたそのことによって国民に日本防衛に対して御信頼がいただけるような方向であるならば、そういうことにつきましてもお話し合いをしなければならないというふうに考えております。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 総括的な云々じゃなくて、これは重要な問題、この問題が従来ともにここにいろいろな歴史の各防衛局長、長官の答弁、シーレーンについていろいろあるので、これをこれからまだ時間の範囲内でやらなければならないのですけれども、先ほど社会党の先生おっしゃったように、ちょっとやっぱり違うのです、夏目局長の発言。  ですから、それについてまたやりますけれども、もう一回確認しますよ。総理発言、これはもう総理アメリカプレスクラブでの発言ですから、この国会においててにおははいろいろ変わっていますからね。ですけれども基本的にはこれ変わりません。われわれは日本周辺海域の数百海里の範囲内、そして海上輸送路の約一千海里を憲法の条項に照らしわが国自衛範囲内として守っていくとの施策を今後も続けていく考えである、こういうふうに述べているのですね。これは若干違いますけれども国会における答弁もこのとおりですね。それにさらに続けて、その一千海里以遠についてはアメリカ防衛の、そこのところニュアンスは別ですけれどもアメリカに守ってもらう、これが今度のハワイ会談で続ける日本一つの政策、施策となるのですねと、こう確認しているのですが、長官それでよろしゅうございますね。
  183. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 従来から一千海里以内はできるだけわが国の力で守るということを目標に防衛力整備を進めてきたわけでありまして、それ以遠のことについてはアメリカの力に期待するということがもともとわれわれの防衛力整備の目標でございました。そういうやさきに今回のハワイ協議でアメリからそういう発言があったわけでございますから、これを大いに多としながらそれなりの話をしてまいりたいと思っております。
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで、また前の共同研究に戻りますけれども、そうすると共同研究、さっきの局長の話二項目ありましたですね。アメリカ側にやっぱり説得力あるような日本立場説明しなければならない、それはもう当然そうだと思います。いろいろな事務レベルの打ち合わせがあるのですから、そこで説得すればいままでもできたし今後もできるとは思うのですけれども、これは政府事務当局の考えですから、これは私たち云々するところじゃありません。  そうすると、具体的にこの共同研究では何をやるのかということなんです、何をやるのか。専守防衛のたてまえを貫く、憲法範囲内で当然できることしかやらない、当然のことながら個別自衛。集団防衛なんかやるつもりない、こういうことでしょう。そうするとその一千海里の中、その中でアメリカとまあタイアップですか、もう言うまでもなく安保五条においては日本の領域を攻撃されたときにアメリカがこれに対して日本を守る、だから従来の国会答弁、ちょっとさっき局長の答弁おかしいのですけれども、公海における日本の艦船の攻撃は必ずしも直接の日本攻撃じゃないと隣の塩田局長はっきりおっしゃっているのですよ。さっき局長はちょっとそれはもう当然専守防衛でそのとおりやれるのですなんというような発言しましたが。  そういうものを排除しますと、アメリカ共同研究をした場合にどういう共同研究のテーマがあるのかということ。ないのじゃないでしょうか、共同研究。むしろ共同研究というよりも、その中において日本アメリカとタイアップしては何にもできないのですよ、みんな集団自衛権の発動になっちゃいますからできないのですよ、日本はこれもするのです、あれもするのです、これは憲法枠、個別自衛権の中、こういうものですよといって、むしろ研究というよりもアメリカを説得する、あるいはそれについてのアメリカのサゼスチョンを聞く、こういうことの方がより正確じゃなかろうか、研究ということになるから。  しかも、この研究というのは実行に移すようなものじゃないのだ、それはすぐ何かやるなんということじゃ全然ありません——何にもやらない研究だったらやる必要ないじゃないですか。研究と言うからには国費を使って何か仕事をやるからにはむだ使いはならないですよ。それについて、いやこれ実行するべきものじゃない、研究するからには何か排除する、これは先ほどおっしゃった、そういうものはグレーは排除するなど。それで残ったものについて何か実行するためのものが研究じゃないですか。いままでの研究だって極東有事の研究だ、いろいろな研究やってきたのですからね。  まあこの問題ちょっと後にあれしますけれども、これは今度は研究と言う、しかもそれは実行に移さないのだ、こうもおっしゃっている。そうなると何の研究のテーマがあるのか、こういうふうにも私たち疑問に思うのです。だからもう一回要点で質問いたします。  この共同研究という文字どおり日本語の研究をやるのですか。それとも、いままで日本的に言うとアメリカ理解が薄い、どうも理解してもらえない面がある、それについてさらに理解を深めるためにタイアップしていろいろな面でより深くやらざるを得ない、そういうものが主体なんですか。そこら辺もう一回、先ほどの質問と若干ニュアンス同じようですけれども、そうじゃないと、どうもその研究、それを研究して何にもしないのですという研究ではむだになるのじゃないか、何にもしない研究ならやらない方がいいのじゃないか。それじゃ、そのアメリカ理解をふやす、ほか幾らも事務レベルの、制服レベルの会議あるじゃないですか、チャンネルが。そこでやれる。特別にシーレーン共同研究なんという仰々しいものやるから何か誤解を生むのじゃないか、私はこういう見解を持つのですが、ひとつ誤りを訂正してください。あるいはその答弁お願いします。
  185. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まずシーレーン防衛につきまして千マイル以内は日本がやってほしいということですが、これは何もかも日本がひとりで独力ですべてをやれということではございませんで、あくまでも大前提としてアメリカが必要な支援は行うということが網にかぶっているわけでございます。  そういった中でございまして、日本に侵略があった場合、武力侵攻があった場合、すなわち日米安保条約第五条の発動があって、アメリカとわが方が共同作戦をしている、その共同作戦というのはいろいろな場面において行われることが考えられると思います。それはわが国の領海内あるいは領土の中での共同作戦もあるでしょうし、また公海上においての共同作戦ということも大いに考えられるところだろうというふうに思っております。そういった共同作戦前提として考える以上、その共同作戦を整合のある形で効果的に行うためには基本的な認識を一致さしておく必要がある。  そこで、いまシーレーン防衛についてアメリカ側からいろいろな指摘というか批判があったわけでございますから、そういった批判の前提指摘前提になっているアメリカ考え方のもとになっている脅威の分析なりシナリオの設定というものがどういうものかというものをつぶさに研究することは、われわれとしても将来のシーレーン防衛に関する共同作戦というものを考えた場合に必要なことではないかということで共同研究をしているわけでございます。  それから第二点の、共同研究が何の役にも立たない、使わないものであったらやる必要がないではないかということでございますが、この点についてはまず第一は、この共同研究をしたからといって直ちにそれが新しい防衛力整備につながるものではない、それは別の次元の話であるという意味で直接関係ないということを申し上げたわけで、この研究自体が無意味なものである、無価値なものであるというふうには思っておりませんので、私ども、共同作戦をする場合のオペレーションプランの策定の上でこういった研究というのはいろいろな形で将来役に立つものであるという認識は持っております。
  186. 黒柳明

    ○黒柳明君 公海上における日本艦艇、艦船、商船に対する攻撃、これについてはどういうふうに対処するのですか、公海上。
  187. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず、問題を整理する必要があると思いますが、もうすでに日本に対する侵攻、武力攻撃が加えられておって、そうしてその中でわが国防衛力行使というか防衛出動をしている、自衛権の行使をしている、その段階においてアメリカ側と共同作戦をすることというのは大いにあり得るだろうと思います。  そうして、公海において日本の艦船に対するある国の攻撃、まあある国というか相手方から攻撃を受けた場合に、これはわが方の自衛権の行使として行動することは当然可能なことだろうというふうに思っております。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまの紛争という前提を取った場合、紛争中という前提を取った場合。
  189. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 紛争という前提を取ったというのは、まだ日本としては有事になっていない、いわば具体的に申し上げれば、いわゆる六条事態と申しますか、アメリカが何かいろいろなことをやる、そういう段階においてわが国に対する武力攻撃というものが公海上においてあるとは私は思いませんし、そういうものが継続的、計画的、組織的に行われれば、その時点から自衛権の発動の要件にも該当するということになり得るのだろうというふうに思っております。
  190. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、公海上で、たとえばいまでも、いまの時点でもいいですよ。シーレーンを守るというのは航海の安全を守るわけですから、それを守るというのはいつか攻めてくる可能性、これがあるからだ、攻められる可能性があるからです。これは紛争が起こって攻められるという可能性もあるし、ふだん平和時に思えたっていつも紛争の火種はあるわけですから、そんなこと私が言うまでもないが、そういう時点において公海上において日本の商船、艦艇が攻撃された場合にはこれは当然自衛権の発動になるのですか、直ちに。
  191. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) これはそのときの状況に応じて千差万別でございまして、一概に自衛権発動の要件に該当するかどうかというのは申し上げられないと思いますが、その攻撃わが国に対する組織的、計画的な武力攻撃と判断し得るようなことであればそういうふうな自衛権の発動ということにもなり得るだろうというふうに思いますが、たまたま一隻の船、二隻の船が沈められたということによって直ちに自衛権が発動になるとは考えられないということだろうと思います。  ただ、自衛隊の法律におきましては、そういう事態において防衛出動とは別個にいわゆる海上における警備行動という規定がございまして、こうした規定の活用ということも場合によっては考えられるのではないかというふうに考えております。
  192. 黒柳明

    ○黒柳明君 アミテージ次官補代理が、これ新聞発表になりましたが、五六中業の同時期のソ連の兵力レベルを推定対比させてシーレーン防衛に何が必要かも研究してみたい、これは記者会見におけるアメリカ側あるいはアミテージさんの個人的願望かもわかりませんが、当然ここからいつの時期か研究がスタートし、いつの時期かやっぱり何か結果が出てくる、こういうことは必然でありますが、こんなこともやっぱり一つのテーマとして考えてはみたい、こう思っていますか。
  193. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 実はアミテージ国防次官補代理の記者会見におきまして、この研究の成果によって日本防衛力が足りないということが判明した場合にはこういった防衛力増強をすることも期待したいというかのような発言があったということは聞いております。  一部そういった報道がなされたことにかんがみまして、私どもとしては、あくまでも今回の研究ガイドラインに基づく五条事態わが国に対する武力侵攻があった場合に現有の防衛力をもってどういうふうに対処するかということの研究が主題である、将来の防衛力整備に直接つながる問題ではないということを念のためアミテージにも確認し彼の了解もとって、日米間にその点の考え方のそごというものはないということを確認しているわけでございます。
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官、また訪米時期の話でございますけれども、どうなんでしょうか。いまの共同研究、こちら側から提案した、こういう問題だからこそやっぱりこちら側が向こうのアメリカよりより積極的でなければならない、これは当然だと思いますね。ですから提案して月末になりますともう一カ月になるわけですから、まして事務レベル、事務方じゃ謙遜を含めてまあまあ両国間のというわけにいかないのかいくのか。長官は、いや事務レベルといったってこれは権威があるのだからと。  そうなると、やっぱり長官いらっしゃったときを限度にして、やっぱりこれが日本側から出していた問題でもありますし、ある話し合いを詰めていく。要するにいつの時期か、どういう構成かあるいはテーマか、そんなこともこれは長官が行ったときに全部詰めて全部結論出すなんというわけじゃなくして、そんなものも長官訪米のときにはやってこようという長官個人としてはやっぱり腹づもりはあるのでしょうか。
  195. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 日にちは迫っておりますけれども、まだ十日ぐらいあるものですからまだ完全に私の心構えといいますかその準備は最終的には決まっておりませんので、いまこの段階でこういうことをしよう、こういうことを言おうということを決めておりません。  また先ほど来防衛局長からお話し申し上げておりますように、この日米共同研究もなるべく早くやりたいという基本方針のもとではございますけれども、またいついつから始めるということでもございませんし、またメンバー等のことにつきましてもまだ決まっておりませんので、いま黒柳先生おっしゃるような方向で私の訪米時にそういう話がどれくらいのシェアで出るかということについては正確に申し上げられませんけれども、一カ月前にハワイの日米事務レベル協議で出た話でございますから当然話にはなるだろうというような気持ちでおります。
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛局長、やっぱり時期は決まってないので、まだ決めてないから決まってないのです。ですから再三言うように日本方からの提定ですから、やっぱりどうなんでしょうか。早いにこしたことはないという感じは持っているのでしょうか。まあいつでもいいのだというようなことじゃ無責任だと思うのですけれども、その点いかがですか。
  197. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 言うまでもなくこの件につきましてはわが方から提案したことでございまして、いつ始めてもいい、いつでもいいというふうなものとは役人の考えることとして考えているわけじゃございませんで、できる限り早くしたいという考え方は持っておりますが、今日時点でいつからどういうスケジュールでいつまでにというふうな具体的なものを持っているというまだ段階ではないことを御理解いただきたいと思います。
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 それでは、シーレーンの方にちょっと質問入りますけれどもシーレーンというもう言葉の解釈云々の時代じゃありません。この軍事用語というのは、やっぱり最近の軍事用語、これは防衛用語ですね、要するに英英辞典でも何を見ましてもシーレーンというのは出てきません。  これは私専門家を前にして別にこんなことを言う必要はないと思いますが、いわゆる海上航路帯等というものについてはシー・レーンズ・オブ・コミュニケーション、これが従来から今日までのいわゆる世界的な防衛用語、軍事用語で海上航路帯、補給帯、いまいろいろな意味に使われている。ところがシーレーンというのは、国会発言なんか見ましても前からシーレーンなんというのはこれは使っていたわけじゃありませんね。これは現代的に使われた用語だと私は思うのですが、いまこのシーレーンの用語の内容とか解釈とかそんなことを論議するのじゃないです。シーレーンというものについて問題点を論議したいのですが、まずこの私の認識というのは誤りありますか。
  199. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) シーレーンという言葉が、正直言いまして私もその専門家ではございませんが、使われ始めたのはここ数年間のことだろうと思っております。それまではシーレーンあるいはSLOCという言葉は余り使われなかった。少なくも国会で始めてシーレーンという言葉が出てきたのは私の記憶によれば昭和五十年ごろだったのだろうというふうに思っております。  ただ、その使われ方についていろいろな意味で使われたということはあろうかと思いますが、私はシーレーンというのは一般的に海上交通の安全を確保することがシーレーン防衛というふうに理解しております。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 全くそのとおりでありまして、世界的にシーレーンというような言葉はなくて、SLOC、シー・レーンズ・オブ・コミュニケーション、これが通常的ないわゆるウェブスターや何かのイングリッシュ・アンド・イングリッシュ・ディクショナリーに出ている軍事用語ですね、世界的な専門用語。だからこのシーレーンというのは私はやっぱり日米間の、いま何回も言われるのでもう省略しますが、周辺、千海里、これに伴って生まれた一つの軍事用語、あるいは国会での。  それで、こういうことですよ。ちょっと局長と意見が違うという断定的なものじゃありませんけれども、要するに午前中に、線なのか、これが変わることがあるのか、面なのか、この理論に私行き着くわけですけれども、五十年にこれ出てきたときにはわが国の海上自衛隊の守備範囲については大体数百マイルに及ぶ周辺海域、それから航路帯を設置する場合には大体一千海里の範囲内ということで、いまのところ南南東と南南西の二本の航路帯を考えていますと、これ丸山局長ですね。その次もやっぱり二本。二本という言葉が使われているのです、この代は二本、二本。  そうすると、これは二本というのはラインという意味じゃなくしてもやっぱり帯、私たちの考え、あるいは局長の考えはそうじゃなかったのかわかりませんよ。何か船が通る幅を持った帯、こういうふうな概念で政府の答弁は盛んに使われていたのです。  ところが、この時点においてもアメリカの使われ方というのは違ったのですね。あのかつての、これ資料があるのですけれども時間がありませんので、ライシャワー発言から出てきたあのイントロダクション、寄港、あれと同じように、アメリカの場合には帯とかラインとかこういうものじゃなくて、いわゆる日本で言うとシーレーン、レーンだから細道、こういうような考え、帯だから何か幅はあるけれども長いもの、そうじゃなくてアメリカの場合にはシーレーンという新しい用語は海域としていたわけですね、海域。それが端的に出たのが昨年のあの下院における公聴会、下院における日本に対する要望、フィリピン以北グアム以西、この海域日本防衛義務があるという決議を下院で出していますね。これが一番端的にあらわれている。  ここらあたり、それは私たち素人の認識が誤っていたのかわかりません。今回のハワイ会談におきましてもマスコミの皆さん方シーレーンというのは何かわからないじゃないか、日米間で相違があるのじゃないか、こんな書かれ方が一番先頭に来ていました。それがわからないのだからシーレーン防衛すると言ったってだめじゃないか、そうするとますますアメリカの圧力に屈して増強の一途をたどる可能性が出てくるだろう、危険だなと、こんな書き方があったわけでありまして、私なんかもやっぱり素人ですからそういうような認識をもろに受けてしまうわけであります。  ところが、基本的にシーレーンという現代防衛用語、軍事用語、これをアメリカで使う場合と、そのシーレーン、それが航路帯と使った場合に、全然向こうは海域意味し、こちらはあるときにはラインになりあるときには若干の道みたいなもの、二本、こういう食い違いがあったのじゃないかなという私の認識は誤りでしょうか。
  201. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) アメリカ側と私どもの間に考え方相違があったとは思っておりませんが、とかく海上交通安全確保、すなわちシーレーン防衛ということを言いますけれどもシーレーンという言葉のイメージがあたかも一本の細道であるかのような印象を持ったことは、いろいろな方がそういうふうに感じていること多いかと思います。しかし一般的にやはりシーレーンというときには海上交通安全確保ということで、特定の航路帯というものを指すものではないというふうに理解しております。  ただし、わが国海上交通の安全を確保することを考えた場合に、当然のことながら世界各方面からわが国に向けられる航路というものは集約的に日本周辺に来てある一定の幅の中におさまってくる。そうしてその最も合理的で、かつ海上交通の安全を確保することを考えた上でも南東航路であり南西航路というのが実際のオペレーションというものを考えた場合に最もあり得る形として、ティピカルな形としてあるのじゃないかということだろうと思います。そういったことがいわゆるシーレーンの定義というものとごっちゃになっているのではないかというふうに私自身は思っております。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、防衛局長さんからもう二段階も三段階も卒業されて塩田施設庁長官、防衛局長だってさんざんこういう発言をしているのですけれども、当然守備範囲が違いますので、かといって防衛施設庁の長官ですから、もうシーレーンおれは知らなくていいのだ、発言しなくていいのだなんという人ではないと思うので、どうですか、シーレーンというのは。  それじゃ、長官ですから、こちらからあれしますが、昨年六月、航路帯というものについて国際的には面的な要素というものに海上防衛のあり方が移りつつあると言える、こう発言されているのです。これはいま考え変わりましたでしょうか。
  203. 塩田章

    説明員(塩田章君) 去年の私の答弁に関するお尋ねでございますからお答えいたしますが、そのときの質問がいわゆる航路帯と言われる場合の幅についての議論でございまして、幅は一体どのぐらいかと。  かつて国会でも百マイルだとかなんとかというような議論が出たこともございまして、一体幅はどうだというような議論がございましたので、私がそのときお答えいたしましたのは、一定の幅を持って固定的に考えて、われわれが考えている航路帯というのはこれだけの幅があるのだというふうにとるとそれは実態と大変違ったことになりますよということをお答えしたのが趣旨でございます。そういう意味で、陸上におけるハイウエーのような意味での航路帯あるいはシーレーンというものがあるわけではなくて、もっと幅広く考える必要があるという意味では面的要素を加えつつあるというお答えをしたことがございます。  そのことはいまでも私は変わらないというふうに考えております。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあもう防衛局長ではありませんから、どうですか夏目局長、確かに線でも帯でもないと思うのです。かといいまして、もうここからここまで全部なんということもないとは思うのですよ。  ですけれども、まあこれ時間がありますれば向こうの議事録等一々やればいいのですけれども、当然そんな持ち時間なんかありませんものですから、要するに私にアメリカの考えと日本の考えと基本的に食い違いがあったとしてもアメリカアメリカですから、日本日本ですから、いざとなったときアメリカがもろ手挙げて日本を守るという約束だってあるかどうかわかりゃしません。核の傘だって非常に従来から疑問視されております。ますます疑問視されるのですから、食い違いがあったって別に構わないと思いますよ。  構わないと思いますが、ただしいま日米間の安保条約、そして日米間の接点、非常に強い。しかも共同研究日米間ですからね。それの認識というもの、それをまず皆さん方が、私なんか当事者じゃありませんからいいですが、それはっきりしておきませんと食い違いからスタートした、そんなばかなこと専門家ですからないと思いますが、あるいは私たちがそういう認識で何か議論しているとなると幾らたっても防衛はかみ合いませんね。かみ合いません。  しかし、私もまた繰り返すようで恐縮でありますけれども、昨年の一連の公聴会、そして下院がそのときの勢いに乗ったとも言えるかわかりませんけれども日本はグアムからフィリピンまでの海域を守れ、こう決議案を出しました。これはやっぱりひとつの厳しいものじゃないですか。日本もある意味ではこれを率直に、やるやらないなんということじゃなくして、そういうものが出たという認識は当然していると思いますね。  ところが、こちらの認識というものは、マスコミの皆さん方がお書きになるようにシーレーンと言ったって何を言うのか、さらに言うと何から何を守るのかという従来の防衛的な初歩の要素、それもわからないで論議なんかという書かれ方を盛んにされていた。私は非常にそれに同調する、同感するのです。  その場合に、シーレーンというものが、アメリカの従来の考え方というのはシー・レーンズ・オブ・コミュニケーションじゃない、シーレーンというのは海域だという考え方前提にやっていた。だから昨年はこちらの五六中業、あんなに一生懸命やったのですよ、野党の反発を受けながらね。後で来年あたり一%GNPを超えるだろう。ところがアメリカは昨年さらにそれを上回って量的な要求を出してきたわけでしょう。なぜそれじゃアメリカは出してきたのか。  私もその間二回ばかり向こうに行きましてアミテージさんに何回も会っていますし、いろいろな話を聞いてきました。皆さん方の百分の一ぐらいでしょうが、その彼らの認識というのは、いわゆるラインであるのか帯であるのかわからないけれども相当広範囲なところを守るためには単純計算したって日本の五六中業じゃ、P3CあるいはF15のそれだけじゃとても守れません、潜水艦もう一艦隊つくらなければだめ、護衛艦ももっとつくらなければだめだということに基づいて、彼らなりに昨年のあの数字を出した。  これはもうあたりまえだと思いますね。やぶから棒に五六中業に上乗せして潜水艦は十三だから十六にしよう、こんなことじゃないわけですよ。彼らなりに、どこからどう守るのか、どの範囲を守るのか、こういうことを前提にやらなければそんな天下のアメリカが、世界戦略を立てているアメリカが、いやシーレーンは際限がないのだ、だれが攻めてくるかわからないから何もできないのだ、どういう形態で来るかわからないからまあやっておけばいいのだと、そんな作戦を立てている国じゃありませんよ。当然こちらより制約も緩慢でありますし、いろいろな面において自由がありますから、それについて日本に無理押しにこれをやらせようという意図がなくても、彼らが出した数字については当然彼らなりの根拠がある。  その根拠というのは、何をどの範囲でどこから守るという根拠が彼らなりにしっかりしているわけです。日本はまだそれがはっきりしていません。多々ますます弁ず方式ですな。  それで、彼らの基本認識、守るべき範囲というのはその海域である、日本が言っているシーレーン、それを海域なんだと、こうとっている。だから私は基本的にずれがあったって構わない。別にずれがあったって構わないのですけれども、そこらあたりを何もずれがあると認めてはうまくない、相違があると認めてはうまくない、こういうふうなお考えがあるいはあるかと思いますね、この席で。  ですけれども、私はそのアメリカのそういう認識について防衛庁の専門家の皆さん方が、いや、そんなことは違う、われわれと同じだ、アメリカの考えは日本の考えと同じだとすると、これは物すごくおかしいことになるのじゃないか。共同研究だけじゃありませんよ。こういうふうに感ずるのですけれども、どうでしょう。
  205. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) アメリカわが国海上交通能力防衛能力シーレーン防衛能力に関して当然のことながら、再三繰り返しになりますけれども日本憲法の枠内で個別的自衛権範囲内でやるということが第一の前提として認めた上でのことである、それから第二点は、わが国が、従来しばしば申し上げているように周辺数百海里、航路帯を設ける場合は千海里程度のものを防衛力整備めどとしてやっているということを承知した上での議論でございまして、その点に関してわが方とアメリカの間にこのシーレーン防衛に関しての何といいますか、概念の差というものがあるとは私ども今回の会議を通じても感ずるところはなかったわけです。  ただ、そのために必要な防衛力の多寡といいますか、どれだけの防衛力が必要かということについては開きがあったのだろう、そのために彼らが不足だと言った、しかし実際に彼らがどういうことを考えたかということでございますが、いま先生の御指摘のように、グアム以西フィリピン以北の三角海域を全部日本防衛責任だということで言っているということは、先ほど申し上げたとおりわが方の言い分というものを十分承知した上で言っているということ、あるいは集団的自衛権というものを、すなわち海域分担というものを前提としたものでないことを承知した上での意見開陳でございますので、そういった開きというものはないと思いますけれども、そういうものにつきましても今後の共同研究の場でもってアメリカ考え方が具体的に聞けるものというふうに思っております。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ私の質問とちょっと答えはずれていますが、それじゃ、ここの先ほどのこの航路帯について、面的な要素というものに海上防衛のあり方が移りつつあると言える、これについては賛同いたしますか。
  207. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 従来航路帯というものが線であるとかあるいは一種の道路、あるいは線路のようなものとしてあるのだという意味から、当然のことながら海上交通の安全、船舶の安全を確保するという意味合いから相当な広がりを持ったものである、しかしそれがそれでは千海里のコンパスをもって日本周辺に円を書いて、それが全部航路帯だということを申し上げるつもりがないので、そういったものを合理的に考えた場合にはやはり東南の航路あるいは南西の航路というのが最も合理的な航路として考えられるであろう、そういう意味合いで従来そういうものを例示として説明したのだというふうに思っております。
  208. 黒柳明

    ○黒柳明君 念を押します。今後ともこれがまたいろいろな当然現職局長の発言ですから。  そうすると、これ五十六年四月七日ですが、塩田前防衛局長がお答えになった最後のくだりなんですが、面的な要素というものに海上防衛のあり方が国際的には移りつつある、こういうことなんですが、これはもう面的というわけですから、面的といったって、これも面だし、これも面だし、いろいろな面がありますね。ですけれども、ここでのニュアンスあるいはお考えは、幅とか線とかそういうものじゃないですよ、相当広いものですよと、こうなりつつあるというニュアンスでおっしゃったことは、これは私はもう間違いないと思うのですね。  それがさつき局長がおっしゃったようにグアムからフィリピンまで全部なんて、そんなことに私は決して思いませんよ。またアメリカがそう思っていて日本がそう思わないからおかしいとも思っていませんよ。そんなことは思っていません。  航路帯というのは相当やっぱり広範囲なものを考えざるを得ない。こういうことで、私は今後の南東とか南西を設定するならばということを議論しないと、もう初めから議論がかみ合わない、こう思うのですが、もう一回今後のこともありますので確認しますが、そういう考えでいいですか。
  209. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 将来設定されることがあり得べき航路帯について具体的な数字をもって幅を示すというような意味では無意味だという意味から、面的な要素が広がりつつあるというふうに前局長が答弁されたものというふうに理解しております。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、私のそういう考えでいいですね。
  211. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そういうことでございます。
  212. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みませんね、ややこしくて。  それで、その前提になることなんで、ちょっともう時間がないので逆になったかもわかりませんが、これから共同研究やるのですから何も前提が一致しなければできないということはないと思うのですが、いわゆる対ソ脅威、アメリカは完全に世界戦略の中でいわゆるソ連に対するバランスを何とか確保しよう、こういうことで世界戦略を立てるのは言うまでもありません。  それで、先ほどもらった白書、もうちょっと早くきのうくれたらいいのですけれども、これは防衛庁作戦で間際にくれたもので読む暇もないが、矢田部先生はよく読まれてあそこまでやったと思います。私みたいな読むのが下手なのはだめなんですけれども、うまい作戦だと思いますが、要約の方ですね。長いのは読めませんが、従来ともに「わが国安全保障にとって」ソ連の「潜在的脅威の増大であるとみられる」、こういうことで昨年からソ連が潜在的脅威である、ことしはその潜在的脅威が増大している、こういう書かれ方、これは増大してないと言う方が果たして間違っているか、増大していると言う方が間違っているか、これはもう全く個々の意見があります。日本の国内におきましてはいろいろな意見がある。  これはそのとおりでありますけれどもアメリカはあくまでももう顕在的に核でもあるいは通常兵力と組んでも、もしかするとソ連に追い抜かれちゃう。それに対しての世界戦略ですから。日本はまだ増大したと言っても潜在的脅威と思っているソ連ですからね。  そうすると、これからの共同研究についてはこの点はどうなんですか。これは全く潜在的脅威とソ連を昨年はっきり断定して、しかもことしは増大している、こういうふうに言った、これがやっぱり共同研究をやる日米間の日本側の基本姿勢になることは間違いありませんな。ソ連の潜在的脅威の増大、それを基本にして共同研究を進めていく。
  213. 新井弘一

    説明員新井弘一君) お答えいたします。  ソ連の北方領土に対する兵力の再配備をソ連の極東における全般的な軍事力強化という観点でにらみ、総合的に判断するとこれらがわが国安全保障にとって潜在的脅威になるという認識、なおかつ特に最近二、三年のソ連のミンスクの回航でありますとか諸種の動きを全体としてとらえますと、むしろ単に潜在的脅威のみならず、その増大しつつあるというのは昨年においても同様の認識でございます。  他方、共同研究について御議論ございましたけれども、もちろんわれわれはソ連を仮装敵とするわけじゃございませんけれども、しかしながらこういったソ連の軍備力の増強ということは当然のことながら念頭には置かざるを得ない、そういうふうに考えております。
  214. 黒柳明

    ○黒柳明君 しかもここでは特に「極東方面において質量両面にわたる一貫した軍事力増強」、こういうことで、当然日本の置かれている位置がアジアの極東であるわけですから、こういう指摘ですけれども、この極東における質量ともにわたる「一貫した軍事力増強」、これが当然中心にならなければ、基本的理念にならないとあの一千海里の航路帯における共同研究なんというのは無意味なわけです。  当然ソ連を仮装敵国にしないと、いま言った御答弁、まあするのだなんというわけにいかないです。しないという前提は従来と変わりない。これはもう当然ですけれども、この潜在的脅威の増大、しかも極東方面における質量ともにわたる増大、これが当然理念の中心になる共同研究、これはもう防衛庁としては避けられない、こういう私の認識は間違っていない、こう思います。その御答弁なわけです。  となりますと、いまのところは一千海里、そうすると、ここでも後の方で指摘されております。陸海空と分かれていますけれども、エネルギーだけじゃありません。食糧、資源等の輸入国であるから海上確保は必要だと当然のことながら書いてある。いまは南西、南東ですね。それに対して確かにミンスクあるいはこれからバックファイア、極東に配備されましたね。SS20。ところがベトナムのダナンだってカムラン湾だってソ連は補給基地や何かに相当使うようになりましたですな。アメリカの第七艦隊はアフガンの問題、イランの問題があったからインド洋に展開しましたね。  そうすると、今度ソ連の潜在的脅威は増大した、さらに増大してきて、あのベトナムからソ連がさらにインド洋あたり、いまも若干行っていますが、ミンスクあるいはバックファイアが来るようになるとどうなんですか。いままではマラッカ海峡なんか、とてもじゃないが、あんなところは手が及ばないと言いつつフィリピンからマラッカ海峡といったら手を伸ばせる範囲ですからね、一千海里からマラッカまで。マラッカ海峡なんかとても日本防衛範囲じゃありませんよと言ってきた。最近はマラッカ海峡論というのは余り論議されませんね。  ですけれども、マラッカを回ってベトナムにもうソ連の拠点が厳としてある。これが補給を中心にして使われつつある。そうするとアメリカ世界戦略の中で、この次はベトナムの基地を中心にしてソ連の示威行為が激しくなると、いま言った守備範囲というものは今度は日本の場合にはそちらの方まで頼むという可能性も出てくるのじゃないでしょうか。  あるいは航路帯にしても、南東、南西、グアムのこれは豪州航路、あるいはこちらの中近東につながる航路、さらにはアメリカの西岸は食糧それからパナマ運河についても当然重要な航路帯、これはいまはソ連の示威行為がないから、あるいはアメリカがしっかりしているから、だけれども、ここにももしソ連の何らかの示威行為というものがあった場合、日本として食糧の確保が最大の重要な事実ですから、そうするとそこまで、当面は南東、南西ですけれども、将来的にはソ連動きに伴って、こちらのアメリカ西岸航路とか、こういうものについても日本のいわゆるシーレーン防衛というものは手を伸ばさなければならないときが来るのか、ソ連の行動に伴って、アメリカの判断に伴って。どうですか、それは。
  215. 新井弘一

    説明員新井弘一君) お答えいたします。  物事は悪い方悪い方に考えますと幾らでも想像力は飛躍するわけでございますけれども、先ほど防衛局長から再三再四説明いたしましたように、アメリカの基本的な立場は今回のハワイにおいても千マイル以内は第一義的に日本防衛努力をしてほしい、他方千マイル以遠アメリカの方で責任を持つということでございますので、私はアメリカ発言を信じております。
  216. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、それは私も信ずる。私もアメリカ好きですから信ずるのです。  ただ、いまの日本戦略というのは日本中心じゃない。当然ですね。アメリカ安保条約でタイアップ、一千海里なるシーレーン日米共同研究するのですから、そういうわけでしょう。これはもう事実ですから、アメリカ戦略というのは世界戦略ですから、対ソ、力のバランスの関係ですから。  そのアメリカの対ソ意識が変わる、あるいはソ連の行動というものが変わってくる、あるいはソ連世界制覇なんていうことを考えているかもわかりませんよ。現にベトナムにはもう厳とした基地がある。インド洋にはもう出ているのですから、そのソ連の行動に伴って、あるいはそれに伴ってアメリカ考え方が変わってくると、わが国もそれとともにシーレーン防衛なんかが変わってこざるを得ないようないまの現状じゃないでしょうかと、こういうことなんです。悪い方悪い方にばかりじゃない。そうじゃなくて基本的な考えを私は言っているのです。基本的な考えで、日本が主体的でやっているわけじゃないでしょう。日本はこの中でやるのですから、しかもアメリカの助けというものは安保条約で必要なわけですから、アメリカ世界戦略の中で日本は動かざるを得ないような条件になるのじゃないでしょうか。違いますか。  いや、そんなこと関係ない、ソ連動きアメリカの考えも関係ない、日本だけでできるということでしょうか。
  217. 新井弘一

    説明員新井弘一君) もとよりわが国アメリカとの間に安全保障条約を結んでおります。それに同盟国でございます。したがいましてアメリカ考え方戦略戦術、これは当然私ども理解しなければならない、そういう面はあることは事実でございます。  しかしながら、日本自体の防衛につきましては先生御自身その主体性ということを何回か御研究され、御発言なさいましたけれども、私どももまさに主体性を持って、同時に自信を持ってみずからの律し方をまず第一に考える、その上での日米安保条約であろうと、そういうふうに考えております。
  218. 黒柳明

    ○黒柳明君 かつてガイドラインの中で極東有事やなんかの研究したわけですけれども、今回の有事というのはやっぱりどうなんですか。一千海里以内を日本、それ以遠アメリカ、そうすると当然この接点が必要になるわけですね。  一千海里以内といったって以内だけ守っているわけいきませんからね、アメリカが向こうを守るわけですから。それで中東からのタンカーについてわが四億トンぐらい、一万隻ぐらいの輸入の船があちこちから来るわけですから。なかんずく石油のルートが来るわけですな。そうすると、この接点当然起こってくるわけですね、以遠以内といったって日本が守るアメリカが守るというこの接点が当然起きてくるわけですね。そういうことですな。  そうすると、この接点についてはこれから共同研究の中で勉強もしていこう、こういうことなんでしょうけれども、これについてはどういうことが考えられるのですか。いわゆるただ単にその通信でのコミュニケーション、こういうものでこれで済むのか、あるいは一千海里といったってここからここ、はい白組赤組なんていうことじゃないと思いますよ。当然交錯する範囲というのはあると思いますよ。一千海里ぴったりなんていうわけじゃないと思いますからね。  だけれども、これ重なる部分が当然出てきますな、重なる部分。それから重なる部分から除いてここは日本、ここはアメリカ、こういう部分も当然出てくるわけですね。こういう部分も当然これからの共同研究の中で考えていかなければならないのでしょうね。どうですか。
  219. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) もう先生十分御承知の上で御質問であると思いますので、何ともお答えのしようがないわけでございますけれども周辺数百マイルにいたしましても千マイルにいたしましても、ある線を切って、そこから一歩たりとも出ることはまかりならぬ、一歩たりともアメリカは中のことはやらないということではございませんので、臨機応変にそのときの状況に応じて若干のでこぼこということは当然これはあり得ることだと思います。  具体的に申し上げれば、船団護衛というようなことを考えた場合にも、千マイルのところでこれをリレー的にタッチして相手方に渡すとかいうふうなことがその千マイルの真ん中でもってやるということが果たして現実的かどうか、この点については今後の問題だろう、いずれにしましても千海里よりも少なくてはいけない、ちょっとでも出たらいけないというものではない、一つめどということで千海里ということを申し上げているということを御理解いただきたいと思います。
  220. 黒柳明

    ○黒柳明君 また機会がありますけれども、最後に一つだけ。  こういう事態になりますと、やっぱり硫黄島の存在というのは、ちょっと一部新聞に書かれていましたけれども戦略的に非常に重要な場所になるのではなかろうか。かつて沖繩が日本本土の最前基地であり、あるいはアメリカがキーストーンだといまでも言っている。極東に対してのやっぱり一番の出先ですしね。  そうすると、どうなんですか。その硫黄島、ここはもう沖繩とは面積的にも違いますけれども、立地条件もいい。あるいは使うにつけてもいい立地条件ですな。住民もいない。文句言う人もいませんし、だれもいません。ウサギぐらいのものですからウサギはそんなに文句言わないですよ。  そうすると、いまは訓練の基地ですから、そこらあたりも千海里のいま航路帯シーレーンの中において相当日本側として、あるいは当然アメリカ側としても重要な認識を従来以上にしてくる場所じゃないかと思うのですが、防衛庁の考え、あるいはまだまだそこまでいってないと思うのですが、硫黄島についてのどういうふうにするのかというような構想、そんなことはあるのですか。
  221. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 現在硫黄島におきましては海上自衛隊の基地隊というものが存在しておりまして、あそこにたまさか飛来する航空機の支援というものを主任務にしておるわけでございます。  私どもとしては国内における航空機の訓練環境というものは必ずしも十分でないということもございまして、要撃訓練あるいは夜間戦闘機訓練といったものを硫黄島周辺で行えることになれば内地における航空基地周辺の騒音の救済にも相当役立つし、訓練効率も上がるのではないかということで、ここ数年来硫黄島に各種の補給支援施設というものを建設いたしまして、五十九年度ごろにはそこで訓練を開始したい、航空自衛隊あるいは海上自衛隊の航空機の訓練基地として使用したいということで現在整備を進めているというのか現状でございまして、現在のところそれ以上の計画の持ち合わせはございません。
  222. 黒柳明

    ○黒柳明君 計画はないとしましても、要するに予算もいろいろありますしね。ですけれども、その千海里航路帯防衛についての重要拠点である、こういう認識を持って今後何らかの構想をという考えはないですか。
  223. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 現在のところ訓練基地として十分な施設整備を行いたいということでございます。
  224. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 午前中からの審議でハワイ事務レベル協議内容がかなり防衛庁側から明らかにされたのですけれども、私幾つか残された問題を質問したいと思いますが、午前中以上に国民の知る権利にこたえて実態をお答えいただきたいと思います。  日程を拝見すると、第一日はマンスフィールド米大使の五六中業の早期達成をというあいさつから始まったという報道ですが、第二日が非常に重要だったように思います。夏目防衛局長が五六中業概算要求について説明をされておりますが、新聞報道によりますと、たとえば読売の八月十日、防衛庁は五六中業達成時、限定小規模侵攻に約一カ月間抗戦可能という能力評価を極秘裏に作成したという報道があり、日経の八月三十日夕刊には、この継戦能力見積もりを米側に提示する方針を固めたとあり、それから協議が終わった後の日経九月四日号には、かなり詳しく継戦能力、対潜、防空能力等々米側分野別に詳しく説明したという報道がありますけれども国会にも説明をしていないこういう極秘裏の詳しい能力の見積もりを米側にあなたは説明したのですか。
  225. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回の五六中業の策定に当たって、御承知のとおり、この中期業務見積もりの中には能力見積もりというものと事業見積もりというものの二種類があるということは先刻御承知のとおりだと思います。私どもとしては部内の作業としてこの中期業務見積もりの事業見積もりの算定に当たりまして能力見積もりというものも行っていることは事実でございます。  これどういうものかと申しますと、いわゆる対象期間の前における防衛力、それからこの五六中業が達成された暁における防衛能力とを比較してどのように各種の防衛能力というものが向上するかということを検証しているものでございまして、この内容についてはわが方の手の内を明かすような事柄にもなりますので公開をはばかるものでございます。  そこで、ハワイ協議においてこの件についての説明なり開陳というものがあったかということでございますが、こういった中身についての説明というものは一切してございません。
  226. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 していないということですね。お聞きしておきます。  二日目に、ビグレー統参本部第五部長、この方がシーレーン防衛についてのアメリカ側の構想をかなり詳しく述べたということで先ほどから中身の話がありました。これがいま非常に大問題になっているわけですけれども夏目さんの堀江委員に対する説明を聞きますと、面だとか線だとかいう次元とは別だ、海上交通の安全を確保することだ、そのために何をやるかということだという御説明で、そうすると、ある航路帯を設定した場合にその安全を確保するために何をやるか、これは大変広がってくるわけですね。当然面の問題になります。  それから、きょうの夕刊を拝見しますと、夏目さんは参議院の決算委員会で、日本は物資の大半を海外に依存しており海上交通安全確保が必要だ、さらに有事の際継戦能力を保持するためにも必要だという答弁をなさったという報道があります。有事のときに継戦能力を保持するためにシーレーン防衛が必要だというと、当然アメリカからの来援あるいは物資輸送、これの確保ということにもなるという新聞報道がありますが、この継戦能力の問題について真意をもう少し説明してほしい。
  227. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 四面海をもって囲まれたわが国、すなわち資源エネルギー等大半を海外に依存しているというわが国立場から見て海上交通安全確保が重要な問題であるということは御理解いただけると思いますが、もう一つ先ほど決算委員会で申し上げたのは、日本が有事になって戦闘をする場合に、いろいろないわゆる戦闘物資といいますか、弾薬その他の補給というものが必要なことというのは大いにあり得るだろう、そういったものの輸送のためにもこのシーレーン防衛というものは重要であるというふうに一般的に申し上げたわけでございまして、ことさら私がこのことを新しく申し上げたわけでございませんので、従来とも防衛庁としてはそういう考え方のもとに海上交通安全確保重要性を訴えているということでございます。
  228. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 とにかく線とは別の次元で海上交通の安全のためにあらゆることをやらなければならぬというのがシーレーン防衛ということに再定義されたわけで、そうなると、かなりアメリカの考えているシーレーンに近づいてきたと思うのですね。  それで、きょう渡されたこの新しい防衛白書の七十九ページを見ますと、海上交通の妨害に対する対処について約一ページにわたって非常に詳しく書かれております。これはこれまでの防衛白書にはなかったものです。ここで対潜哨戒問題ですね。「固定翼対潜機による周辺海域の広域哨戒」という言葉が書かれておる。広域の哨戒をやるわけですな。  そうすると、P3Cの広域哨戒というのは、この中には特に潜水艦の問題が非常に重要だということも、前の防衛白書にも書かれてありますが、これは周辺海域数百海里並びに新しい定義によるシーレーン千海里に対する広域の哨戒をP3Cなどによってやる、それを目標にするという意味ですか。
  229. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 陸上対潜哨戒機による機能というのは、このP3Cに限らずP2Jの時代から広域哨戒というのがその機能から見た大きな任務の一つでございまして、今回もそういった広域哨戒の必要性についていささかも変更したところはないわけでございます。今回の白書についてそういうことを書いてございますのも従来の考え方をそのまま踏襲しているということでございます。
  230. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 従来の考え方としても整備目標として数百海里、一千海里を考えているわけだから、それに対して固定翼対潜哨戒機で哨戒することを目標にしているわけですね、広域の中身は。
  231. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 従来から広域哨戒が陸上対潜機部隊の任務の一つでございます。
  232. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、従来からじゃなくて、何回も数百海里、一千海里ということを言われているわけだから、周辺海域数百海里、シーレーン一千海里については対潜哨戒を実施することを目標とするということですね。
  233. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そのとおりでございます。
  234. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうなりますと、防衛計画大綱当時から明らかに大きなエスカレーションが生まれたことは明白だと思うのです。  それで、私は五十二年の防衛白書持っておりますが、この五十二年の防衛白書防衛計画大綱、基盤的防衛力構想について最も詳しい解説を行ったもので、この七十ページには「第12図 海上防衛」というのでちゃんと図まで出ております。ここで七十一ページに「固定翼対潜機の部隊は、必要とする場合に、太平洋側は約三百海里、日本海側は約百−二百海里のわが国周辺海域について、一日一回」哨戒を実施する、船舶護衛については「各一個隊を」充てるということが書いてあるのですね。  そうすると、太平洋側三百海里というのが防衛計画大綱のときの目標だったわけで、それを数百海里、一千海里をすべて哨戒するということになりますと、明らかに大きなエスカレーションが生まれたと思いますけれども、いかがですか。
  235. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私の承知しております範囲では、その大綱を決めたときからの周辺数百海里、航路帯を設ける場合は千海里というものについての変わりはないわけでございまして、それをさらに敷衍して防衛力整備の対潜機部隊の整備目標の一つの算定の考え方としていま先生が御指摘のあったようなことを考えたということでございまして、そのときの考え方と現在と変わったところはないのじゃないかというふうに思っております。
  236. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは強弁であって、防衛計画大綱のときにはこれが大体上限なんだということだったのですね。それがいつの間にかこういうエスカレーションをして数字もついに一千海里に及んだということを私は確認しておきたい。  それだけではない。きょうの新しい防衛白書には続いてこう書いてある。固定翼対潜機による広域哨戒、それから艦艇による哨戒により「外洋に展開してわが船船を攻撃しようとする敵艦艇を制圧するとともに、」と、こう書いてあるのですね。外洋に展開して攻撃しようとする敵艦艇を制圧するというと、この周辺海域数百海里、シーレーン一千海里に及ぶ海域の制海権をやっぱり得るということを目標にしているということだと思うのですね。その点いかがですか。
  237. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まず第一に、いま最近の世界の海軍において制海権というふうな言葉を使うというのは余り聞いておりません。最近はその制海権にかわる言葉としましていわばシーコントロールという言葉に変わりつつありまして、これは制海権との違いを大ざっぱに申し上げますと、必要な時期に必要な海域におけるわが方の海域の自由な使用を妨げられないようにするという程度のことでございまして、全般的な無制限な制海権というふうなものを期待するようないまや軍事情勢でないということが一つでございます。  そこで、われわれのこの防衛自書に書いてございますのも、実際に海上交通の安全を確保するに当たってこれもさっきから再三申し上げておりますが、海峡、港湾の防備あるいは対潜作戦を行うことによって、対潜掃討といいますか制圧といいますか、そういったものの脅威をできるだけ退ける、排除するというふうなこと、あるいは航路帯防衛、さらには船団護衛というふうないろいろな作戦というものをそのときの必要に応じて複合的に組み合わせて、そういう累積効果によって海上交通の安全を確保するということでございまして、その一つのやり方がここに書いてあるものだというふうに理解しております。
  238. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 じゃ、制海権ではなく新しい概念のシーコントロール、これは目指しているわけですな。
  239. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 周辺数百マイル程度においてはその必要なときに敵潜水艦によるわが方の船舶に対する妨害というものがないようにするという意味では、そういう意味でシーコントロールを目指したいということだろうと思います。
  240. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これ非常に重要な答弁だと思うのですね。ビグレー統参本部第五部長はシーレーン防衛のためにまず第一にいまの一千海里防衛問題を出したわけですね。  その次に、たとえば朝日の九月二日の報道によりますと「三海峡封鎖によって西側シーレーンを脅かすソ連攻撃潜水艦が沿海州の基地から太平洋に出るのを阻止する」ということが重要だという発言があったとありますが、これ関係者の話によって確認されたとありますが、事実ですか。
  241. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 特段三海峡の封鎖についての言及があったわけではございませんので、海上交通安全確保すなわちシーレーン防衛について港湾、海峡の防備の重要性、その他洋上哨戒の必要性、そういったもろもろの作戦のワン・オブ・ゼムとして海峡防備の必要性ということは言われたというだけでございます。
  242. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 長かったか短かったかは別にして海峡防備の必要性が出たと。  先ほどの新しい防衛白書には三海峡封鎖の問題が出ております。「主要な海峡を通過しようとする敵潜水艦及び水上艦艇に対しては、海上自衛隊は、対潜戦、水上打撃戦等を実施することによって、その通峡阻止に努める。」と、これは全く新しい表現ですね。
  243. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私ども日本に対する武力攻撃があった場合に三海峡の防衛ということでいろいろなことを艦艇あるいは潜水艦その他もろもろの水上固定機というものを利用して防衛を考えることが必要だと思います。その際、日本に対する敵対国の潜水艦なりそういったものの通過を阻止するために、必要な場合には機雷を敷設するというようなこともあるいはあるかもしれません。そういうことをもって通峡阻止ということで言えば、通峡阻止ということは何も今回改めて出るようなことではなく、従来とも言われていた言葉であろうと思っております。
  244. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛白書に載ったのはことしが初めてだと、そう思います。  つまりシーレーンの対潜哨戒その他の対潜作戦が第一、二番目が三海峡封鎖、それから同じ新聞記事によりますと三番目にビグレー氏は「F15迎撃戦闘機の大量配備によって、日本列島上空に強力な防空網を張りめぐらし、バックファイアー爆撃機が太平洋上に出るのを阻む」と、特にそして洋上防空、これも要望したという報道がありますが、これは事実ですか。
  245. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私の聞いている範囲でそういうような話というのは一切出ませんでした。
  246. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、あなたはずっと出席されていたのだから、会議の場所ではなくても、あるいはどこかで出たことがあるのですか。朝日の記事は「当地の日本側関係筋が明らかにしたもの」と、どの筋だかわかりませんけれども会議の場所以外でも全く出なかったと断言できますか。
  247. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 会議の場所以外で、ある特定の人が一杯飯みながら話したということがあれば、それは私存じておりませんが、少なくも公式、まあ公式というか正式の会議の場では一切出ませんでした。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 非公式で、酒の席かどうかは別として出た可能性があるということですね。  会議の席上、このバックファイア問題は出ませんか。
  249. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) いま私がちょっと不謹慎な用語を使いましたが、酒の席で出たかもしれませんと言ったのは、出た可能性があるということじゃなくて、私の知らないことでございますことを念のためつけ加えさしていただきます。  バックファイアについても、そのビグレーの話の中でそういう具体的な話は出ませんで、一般的に彼らが分析したところによると、日本の現在の防衛力、すなわち五六中業防衛力をもってしても海上防衛のための能力が不足しているという指摘があっただけでございます。
  250. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 すると、防空問題、この要望はあったわけですな、防空問題。  それからついでに、黒柳委員が先ほど述べましたが、硫黄島問題はこの会議では出ませんでしたか。硫黄島にF15の基地をつくるという必要については。
  251. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 日本シーレーン防衛能力を高めるために、防空能力、対潜能力を向上することによって一層高まるであろうということはありました。硫黄島については話はありません。
  252. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さらに、朝日の記事によると、先ほどあなたも言われた攻勢的作戦、この具体例としては「第七艦隊の空母艦載機がウラジオストクなどにある極東ソ連軍の出撃基地をたたくことを指摘した模様だ。」とありますが、そういう模様はありましたか。
  253. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私の乏しい英語の能力からいって、そういう話は出なかったと思います。
  254. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さらに、今度は読売九月三日付ですけれども協議出席者のメモ複数、これは複数ですからかなり確度は高いと私は思うのですけれども、そこで確認ざれたところによると、一千海里シーレーン防衛は「1米軍の、中東など全世界的な対ソ連守備範囲の一部である」、それから韓国海軍の戦力は北朝鮮だけで、「日本の持つシーレーン防衛能力は自由陣営全体に重要だ」ということを述べたといわれる。そうすると、この日本に要望されているシーレーン防衛が韓国、中東など、やっぱりアメリカ世界戦略全体にかかわる重要な一環だという認識アメリカが持っているということになりますが、こういう話あるいはこれに関連したような話は出ましたか。
  255. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そういう話は出なかったと記憶しております。
  256. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だんだん声が小さくなるのだけれども、出なかったと思いますと言うのじゃなくて、出なかったと断言できますか。
  257. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私の記憶にある限りそういう話は出ませんでした。
  258. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも小佐野さんに少し似てきて、記憶にある限りと言うのですけれども、そういう条件がつくのはきわめて危ないですね。あなたはなるべく国会で話そうという態度をおとりになっているけれども、いま初めてですよ、記憶にある限りというのは。やっぱり人間忘れることもあるので、しかし後で記録を調べてみたら出ていると。私はいま記憶にある限りということをあなたがおつけになったことは、こういう中東、韓国、そういう問題がやはり出たのだというように受け取らざるを得ない。  さらに、これは赤旗、まあ赤旗もときどき出さぬといかぬので、九月三日付に時事の報道がある。この時事の報道はきわめて重要です。「一千海里のシーレーン防衛日本自身の防衛のためだけでなく、中東、韓国」——やっぱり出てくる、中東、韓国。「など西側にとってきわめて重要な戦略地域に紛争が発生した際に、米本土からの大規模な軍事力投入とその長い補給路確保のために不可欠の要素だ」と、そういうアメリカの根拠、日本にこういうシーレーン防衛を要求する根拠、これが初めて日本側に示されたという時事の報道があります。これも関係者筋から明らかにされた、これも「複数の日本側関係者が同日明らかにした」と、あなたが入っているかどうかわかりませんが、記憶ありますか。
  259. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 全くありません。
  260. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、日本の新聞記者がやっぱり日本の重大問題だとして取材されて、公式にこうやって報道された問題が私は根も葉もないうそだとは全く思えません。  こういうことになりますと、あなた方が言われている日本防衛のためのシーレーン日米共同研究なるものがどういうものになっていくかという危険が私は非常にあると思うのですが、合意されたたとえば日米共同研究ガイドラインに基づくと言うのですけれども日本攻撃された場合だけでなく、あの中には「おそれのある場合」ということもあるわけです。そうすると、日本有事だけでなく、中東あるいは極東有事で、日本自身はまだ攻撃されてないけれども日本攻撃されるおそれがあるというので、やっぱり中東とか極東有事等々の問題について研究する可能性もガイドラインにはちゃんとあるわけですよ。  今度のシーレーン防衛共同研究に対しては、ガイドラインの中の「おそれのある場合」、これについても研究するわけですか。
  261. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回の共同研究というのは日本に対する武力攻撃がなされた場合の研究ということで、これは日米防衛協力のための指針、ガイドラインにもはっきり分けて書いてございますが、この日本に対する武力攻撃がなされた場合のいろいろなことを研究するというのが今回の作戦計画の目的でございます。
  262. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 おそれのある場合は除外されますね。
  263. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) ですから、今回の作戦計画というのは日本に対して武力攻撃があった場合日米で共同で対処するということでございますから、そのための作戦計画の研究ということでございます。もともとこの作戦計画の研究というのは攻撃があった場合のことを想定してつくられるものというその研究でございますから、当然のことながらおそれのある場合を前提にして研究をするものではないということでございます。
  264. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 おそれがある場合はやらないというように確認しておきたいと思います。  以上の私の質問、それから午前中からの審議の中でも今度のハワイの事務レベル協議がやっぱり日本の政府が進めてきたいわゆる防衛政策の根幹に触れる重大な転換、危険なエスカレーション、そういう要素を含んでいることはこれは明らかだと思うのですね。やっぱり新聞でも米軍の傭兵になるという問題あるいは集団自衛権に踏み込む、専守防衛の枠を大幅に踏み越えるという危険が指摘されておりますが、私もそう思います。  さて、夏目さんは、アメリカ側が一千海里以遠について、一千海里以内はあなたは主体的にと言われたけれども、新聞報道ではプライマリリー、つまり第一義的ですね、そういう言葉が使われているけれども日本が守る、アメリカは攻勢的作戦一千海里以遠防衛をやるということですね。これは海域分担ということではないかと思いますが、解釈はどうですか。
  265. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) これも再三お答え申し上げておるところでございますが、アメリカ側日本に対するシーレーン防衛能力増強に対する期待というのは、あくまでもわが国憲法、専守防衛の原則あるいは個別的自衛権範囲に限るということを、条件を承知した上でのことでございます。そういう意味合いからして、当然わが国が集団的自衛権に踏み込むような海域分担を要求するものでないということは明らかであろうというふうに思っております。
  266. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日本から言って一千海里以内と以遠と分けてそれぞれ分担をやろう、しかも以内は日本がプライマリリー、第一義的にやるのだ、攻勢的作戦についてはアメリカが持つというわけだから、防衛作戦については日本が持つわけですよ。これは海域大体一千海里で分けたことじゃないですか。  しかも、私が重視するのは昭和五十年六月三日、衆議院の内閣委員会で当時の丸山防衛局長がこう述べておられる。「日米である区割りを設けて、わが方の専管水域あるいはアメリカの専管水域というような形での分け方、分担の仕方というものは、憲法上の制約その他から考えてできないのではなかろうか。できないのではなかろうかではなくて、できないというふうに考えておるわけでございます。」、専管水域という言葉はありませんけれども、プライマリリーに日本が一千海里以内は防衛については受け持つ、以遠についてはアメリカがやる、明らかに区割りを設けて日米分担した、憲法違反ではなかろうかではなくてこれは憲法違反でできないのだ、そう丸山防衛局長が答えている問題なんです。あなたは憲法違反の問題について踏み込んでいる、そう思います。どうですか。
  267. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そもそも千海里は別としまして、海域を分けましてここからこっちは日本側責任としてあらゆる事態に対して日本側責任をもって対処する、日本防衛の必要の範囲を超えて第三国の船舶なり艦船を防衛するために行動することも責任になるということであれば、これは集団的自衛権の行使になると思います。海域分担してというのはそういった意味合いを含めて申しているのだろうと思いまして、今回アメリカ側からわが方に言ってきているというのは、日本日本防衛のために自衛権範囲日本国益のために必要だという限度でその千海里以内をやってほしいということを言っているわけで、決してはっきり海域分担分けてもう全般的に日本責任であるということではないわけでございます。その点はっきり海域分担と今回の千海里以内の防衛というものとは意味合いが違うだろうというふうに思っております。
  268. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは言葉による解釈だけであって、それは日米間で条約を結んで、一千海里からこの扇形のところは、フィリピン以北グアム以西は日本側が守る、そこから外はアメリカだというような条約は結んでないかもしれない。しかし日本側のあなた方責任者とアメリカ側責任者が集まってアメリカ側がそういう説明をして、あなた方はそれをのんできて、防衛庁長官は先ほどこれを非常に高く評価する、多とするということを言ったわけでしょう。国会報告しているのです。これは事実上の海域分担に踏み込んでおると思う。  しかも、一千海里以内については攻勢作戦アメリカが持つ、で、アメリカの艦艇を結果として守ることもあるというのでしょう。結果として守ることもあると。意図に反して思わず守りたくないのに守っちゃったというのじゃなくて、結果として守ることを予想してやっているわけですよ。ただ憲法論議を避けるために初めから守るつもりでやっているのではない、結果として守ってしまいましたというようなことで憲法論議を避けるつもりかもしれぬけれども、この結果として守るという答弁がずっと国会でまかり通っているわけでしょう。結果として守るために日米共同で一千海里以内は日本が守る、守ったことが結果としてアメリカを守る。  夏目さんは午前中の答弁で結果としてアメリカ世界戦略と言われたか寄与することもある、結果として結果としてという言葉を差し挾むことによって実際上集団自衛権に事実上踏み込んでいる。憲法範囲内、個別的自衛権範囲範囲内と言いながら言葉のまやかしで憲法違反の集団自衛権に踏み込んでおるものだ、そう思います。  これは答弁を求めてもまた逃げるでしょうから、私どもはそう考えざるを得ない、事実がそれを明らかにしているということを指摘しておきたいと思います。  こういうことになるのは、私はもう時間も余りありませんが、やっぱり昨年の鈴木首相の一千海里防衛のあの言葉ですね。あれは御本人が無知のために言ったかもしれない、あるいはリップサービスだったかもしれないけれども、対米公約として彼らはしっかりとつかまえて、それを論拠にして園田外務大臣が平屋建てに十階建ての家を建てろと言ったようなものだというような、あの膨大な数字が昨年のハワイ事務レベル協議で出たわけですね。大変な事態に私は踏み込んでいると思う。この中から昭和五十一年の基盤的防衛力構想、防衛計画大綱、これの見直しの問題が私は浮かび上がっていると思うのです。  共同研究を決めた後、記者会見でアミテージ国防次官補代理はこの共同研究についてこう言っている。日本に対する脅威のシナリオを設定して、このシナリオは夏目さんも先ほど述べられましたが、五六中業で到達する日本兵力水準ソ連兵力水準を対比させ、シーレーン防衛に何が必要かを決定したと。これは大変なシナリオなんですね。ソ連の兵力がどうなっているか、つまりソ連の脅威です。それに対して五六中業達成時日本の水準はどうなるか、これを比べて、これじゃ足りないじゃないかと、そのシナリオに基づいて決定していくというわけです。  ところが、五十二年の防衛白書に詳しく出ておりますが、防衛計画大綱の考え方というのは五十二年の五十四ページに出ている。「基盤的防衛力構想」というものは「脅威の量だけを考えて防衛力の量を算定するのではなく、」「平時において十分な警戒態勢をとりうるものという観点から防衛力の量を追求」するのだ、日本を囲む外国の脅威の量がどのぐらいになるからこっちもやらなければならぬというのでは、これはどんどん際限のない防衛力増強にいくので、そうではない、「脅威の量だけを考えて防衛力の量を算定する」のじゃないということを明白に防衛計画大綱では基本的考えとして述べていたわけです。  それが今度はアミテージ国防次官補代理が、まさに脅威の量に応じて日本で何が足りないか、そのシナリオを共同研究やろうというのでしょう。防衛計画大綱の考え方と全く違う、これを御破算にする考え方アメリカに引きずられて防衛庁当局は踏み込んでいる、そう断定せざるを得ませんが、何かお答えできますか。
  269. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回の共同研究は、あくまでも先ほどから申し上げておりますように日米防衛協力のための指針、ガイドラインに基づく研究でございまして、わが国武力攻撃が行われた場合の、すなわち安保条約第五条が発動された場合の共同対処計画についての研究、すなわち現在の防衛力レベルにおいてどういうふうな対処ができるかといういわゆるオペレーションプランについての研究が主題でございます。  いま御指摘の、アミテージ国防次官補代理が現地の記者会見でいろいろなことを言ったというような報道もなされておりますけれども、この点についてはわが方の考え方を再度念のため確認して、アメリカ側日本側認識と全く変わりはないということの確認をとっておりますので、大綱を踏み外すとかあるいは五六中業云々というようなことではないということをはっきりと申し上げさしていただきたいというふうに思います。
  270. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間が参りましたので、最後に防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  夏目さんはアミテージの記者会見での言明を違うとはっきり申し上げておくと言われましたが、吉野次官そのものがその日の同じ記者会見で新聞記者の方々から防衛計画大綱の枠を超える結論が出るのではないかという問いに対して、どんな結論が出るかやってみないとわからない、そう述べているのですよ。アメリカ側じゃないのだ。日本防衛庁の次官がどんな結論が出るか防衛大綱の枠を超えるか超えないかはやってみないとわからぬということを述べているのですから、大変な問題だと思うのですね。  私冒頭に指摘したように、第一日のあいさつでマンスフィールド大使は五六中業の繰り上げ、これを要望しました。ことしの四月から六月の上院の対日関係の公聴会でもイクレ国防次官は五六中業の早期達成を公然と要望しております。それで五六中業の繰り上げがあるだけでなく、大綱の見直しそのものがやっぱりこの共同研究一千海里シーレーン防衛で浮かび上がりつつあると思うのです。矢田部委員も先ほど指摘したドネリー在日米軍司令官は八月九日記者会見で、第一、ソ連の脅威、二、日米の役割りの明確化、三、兵器の近代化、四、千海里防衛の鈴木首相の公約、これを挙げて、これらのことは五十一年当時予想されなかったことと強調し、大綱は情勢の変化に応じて手直しをしなければならない、こう述べている。  私は長官にお伺いします。少なくとも昭和六十二年度まで大綱見直しはしない、見直しをしないだけでなく大綱見直しについての検討も研究も一切しないと防衛庁長官責任を持って断言できるのかどうか、この点をお伺いして質問を終わります。
  271. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 私どもはただいま防衛計画の大綱をできるだけ早く達成をしたい、その目標は昭和六十二年度というふうになっておりますけれども、それはもう達成というよりも概成ということでわれわれは考えておりますけれども、それに専念をしておりまして、防衛計画の大綱の見直し、またその検討についてはいまのところ一切考えておりません。
  272. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 最後に一問。  必ずいまのところと言われる。これはくるくる変わられるのですよ。だから私は少なくとも昭和六十二年度まで自民党政権としては、またいま防衛庁長官をしているあなたはやらない、研究もしないと断言できるのかと聞いているわけです。
  273. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 同じことを申し上げますけれども、私のいまの立場で申し上げられることは、いまのところ防衛計画の大綱の見直し、また検討は一切考えておりません。
  274. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  275. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 最初にお聞きをしてまいりますことは、昭和二十年八月に第二次世界大戦が終わりました。あれから今日まで世界で戦争が何回ぐらい起きているのか、どれだけの国がそれに関係したのかということをまずお聞きをいたします。
  276. 新井弘一

    説明員新井弘一君) お答えいたします。  武力紛争の実態についてはなかなかどれを取り上げるかどれを捨てるかということで必ずしも厳密に把握することは困難でございますけれども、一応約七十の紛争が起きているというふうに把握をしております。
  277. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 国の数。
  278. 新井弘一

    説明員新井弘一君) 国の数についても実ははっきり申しかねます。
  279. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 どれを取り上げるか、確かにそういう点が私はあると思うのですが、七十の紛争があったというその数が取り上げられたならば、その七十の紛争というものに参加をした国はわかっているわけですから、当然何カ国が関係をしたのだという答えが出てこなければおかしなことなんで、それがわからぬというそんな失礼な答弁はないと思うのですよ。明確に答弁しなさい。
  280. 新井弘一

    説明員新井弘一君) もちろん紛争は一カ国でやるわけでございませんから、簡単に言えば掛ける二で百四十ということになりますが、その他いろいろな紛争の中には反徒団体とかいろいろなものが入りまじっておりますので、そういう意味で必ずしも明確にお答えできないということでございます。
  281. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 防衛庁長官、聞いてください。いま長官にこの件について私は答弁をお聞きしようとは思っているのじゃないのです。防衛庁における言うならば質的なレベルがどのくらいにあるかということを私は判断するためにこの質問しているのですよ。そんなことは何も聞かなくたってわかることなんです。しかしいまのような答弁の仕方でもって、それは私は防衛庁長官の指揮下にあるそれぞれの地位の人がそういう答弁を国会でしていていいのかどうか。紛争を起こしたのは七十ですと言って国家の数は言わぬ。言わぬから言えば掛ける二でもって百四十、そんなばかな答弁ありますかと言うのです。それで、これ長官、後でもって、そのことはよろしいから。  で、きょう私は一番本題として聞きたいのは、鈴木総理が昨年五月に日米首脳会談でアメリカへ行きました。あのときにアメリカで外交委員会のメンバーと話をしておる中で、いわゆる日本はほえるライオンにはならない、ハリネズミになりますということを述べて、いわゆるハリネズミ防衛論というものがそこから出てきたわけだけれども、この鈴木総理のハリネズミ防衛論を防衛庁として支持をしているのですかどうですか。
  282. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今年の一月、鈴木総理から予算決定した後、たしか一月の上旬だと思いますが、幾つかの項目について御指示がございまして、その中に一つのハリネズミといいますか海洋国家防衛論というような話があったわけでございます。このときの話として、わが国は四面海をもって囲まれた海洋国家である、そういったわが国の特性にふさわしい防衛体制というものを研究してほしいというふうな御要請なり御指示というものがあったということを聞いております。  私どもとしては、この問題というのは確かにわが国が置かれた条件というものを考えた場合に非常にむずかしい問題であり、今後エンドレスに研究を続けるべき問題であると思っておりますが、今回の五六中業に当たってもこういった総理の御指示というものを踏まえまして、ハリネズミの考え方、すなわちわが国に対して侵略をしようとすればそれは手痛い目に遭うというふうな抑止効果のあるもの、そうして実際にやってきたときには相当な有効な対処ができる防衛力を持つべきである、これはスウェーデンのいわゆるハリネズミ防衛理論と同じことだろうというふうに考えましていろいろ施策を五六中業の中にも盛り込んでいるわけです。  一つには、敵の侵略企図というものをできるだけ早い時期に察知することが必要であろう、それから有事になった場合に即応してその侵攻に対処し得る能力、それから実際に上がってくるときには防空能力を含めてできるだけ洋上、水際においてこれを撃退し得るような能力ということだろうと思いまして、そういう意味合いにおいての防衛力整備というものを今回の五六中業の中でも十分重要視して計画をつくったということでございます。
  283. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 局長のいまの御答弁を聞いておりましても、私は防衛庁のハリネズミ防衛論は総理のハリネズミ防衛論を支持していると思いますので、そうなると、その戦略、戦術というものはどういうことを考えているか聞かなければいけなくなるのですが、いま局長はことしの一月と言われましたが、私が聞いているのは、日本の政府の中で皆さん方に総理がああこう言ったのならば私はそれほど問題にしないのです。  少なくともアメリカに行って、アメリカの外交委員会のメンバーとの話の中でそういうことを発言したわけでしょう。私の記憶では、あのときは日本の新聞がそれを訳すのについて何ですか利口なハツカネズミとかという訳しをして、向こうの相手側としては何を言っているのだかわけわからぬという、そういうこともあったわけだけれどもアメリカのようなところに出ていって話をするときに、少なくとも日本の一国の内閣総理大臣がハリネズミというようなものを持ち出して防衛問題を議論をするというその認識の浅さというか甘さというか、欠陥と言いたいのですけれども、その辺のところを皆さん方はどう考えているのかというのですよ。  で、昔の三八歩兵銃が兵器の主役のときは私はそういうハリネズミ防衛論が成り立つと思うのですよ。今日のこのミサイル時代にそんなハリネズミ防衛論がどうして成り立つのですか。その辺の点を防衛庁のお考えを明確にして、そしてもしも総理はそう言われたけれども私たちはそういうものは支持はできません、それは困るのですと言うならばまたそれは話は別ですけれども、もうちょっと明確に答えてくれませんか。
  284. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) この総理のハリネズミ論というのは具体的にどういうものを指すのかというふうな特段の御指示というものは必ずしもはっきりしてなかったわけでございます。  で、私どもは私どもなりに防衛庁としていろいろ研究をしまして、先ほどもちょっと申し上げたようにスウェーデンのハリネズミ理論、すなわちみずからは手は出さないけれども侵攻してくるものには手ひどい打撃を与えるという、いわば憲法の制約を持った専守防衛わが国にとっての一つ防衛のあり方というものを示唆されたものというふうに理解しまして、先ほど申し上げたようなウサギの耳を長くすることによって敵の侵略企図をできるだけ早く察知するということ、そうして侵攻の際は即応して対処し得るもの、実際にやってきたときには防空、洋上、水際、そういった各種の作戦を有機的につなぎ合わせて縦深性のある防衛力の組み合わせによってこれに対処することがわが国にとってのいわばハリネズミ理論の一つの具現になるのではないかということで、たしかこの五月ごろでございますか、前局長が総理にも御説明をしたということでございます。
  285. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いまの局長の答弁に関係して、そうすると私は二つお聞きをしたいのですが、スウエーデンの事例を持ち出すのだけれども、スウェーデンの事例を持ち出すのならば、あのソ連潜水艦がスウェーデンの領海を侵犯したときにスウェーデンの国はどういうことをしたかということ、おわかりのとおりだと思う。日本の場合には沖繩のところでもってやはり同じくソ連の原子力潜水艦日本の領海を侵犯したときにどういうことをしたかということもおわかりのとおり。全く違っているわけでしょう。  じゃ、スウェーデンのようなということを取り上げて私たちは判断をしますと言うならば、あの沖繩においてのソ連の原子力潜水艦に領海を侵犯されたときの日本政府のとった処置、防衛庁がとった処置は間違っていますということをおっしゃられるのかどうなのか。それを言っていただかないとスウェーデンを持ち出すことは無理なことなんです。その辺のところをまずひとつどういうことになるのですか。
  286. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私この話と直接のつながりはございませんが、先般のソ連潜水艦による一種の領海侵犯といいますか、そういったことにつきましては当然のことながら現在の自衛隊法によるわが自衛隊の任務としてそういう規定がないものでございますから、それは第一義的には海上保安庁の任務として、海上保安庁において外務省と連絡をとりながら適切な措置をとったということを聞いておりまして、防衛庁として特段のことをしたわけではございません。  まあスウェーデンと比べてどうかというふうな御批判があろうかと思いますが、それはいま私ども立場としてこれ以上のことを申し上げる実情にないということ、また御理解いただきたいと思っております。
  287. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや局長、いわゆるハリネズミ防衛論ということについてスウェーデンのようなというふうに局長がその事例を引かれるから、その資格があるのですか、あるならばあの日本の沖繩でもって領海侵犯されたときの日本の政府のとった処置は、少なくとも官房長官が領海侵犯と受けとめますといって文句を言いながら何ら何もしなくて通したわけでしょう。だからスウェーデンの事例を持ってくることが無理じゃないのですかということを私は言っている。  それからもう一つは、二つ目にいまの答弁の関係で聞きたいのですけれども、先ほどからも防衛白書が出ているのだけれども、この防衛白書の中では直接侵略、間接侵略、さらには軍事力を持っての不法行為に対して云々ということを言っているわけですね、わが日本防衛庁は。そうしてくると、そういう防衛庁防衛論というものといまのハリネズミ防衛論とは私は結びつかないと思うのですが、その辺はいかがなんですか。
  288. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私先ほど申し上げた趣旨は、今後の防衛力整備のあり方について一つの何というか考え方としてスウェーデンのことを持ち出したわけでございますが、いま先生の御指摘の点は防衛力整備以前の日本防衛体制というか、いわゆる防衛出動が下令される以前におけるもろもろの平時からの自衛隊の任務のあり方についての御示唆のある御意見だろうと思います。  この点については防衛力整備とは直接関係のない話でございますが、私どもとしても貴重な御意見でございます。しかしながら、いま防衛庁立場でこれ以上のことを申し上げる状況にないということ、また御理解をいただけると思います。
  289. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 よくわからない。  それで、これはもう長官にお答えをいただきます。本来ならこれは総理に聞かなければいかぬことなんで、総理発言を国務大臣の方でとやかく言うことも私は無理だと思うのだけれども、少なくとも日本の内閣総理大臣日本はほえるライオンではなくてハリネズミでやりますということを言ったということは、現段階においてもハリネズミ防衛論で日本防衛は成り立つという判断をしたからだと思うのですよ。防衛庁長官もそういうふうにお考えなのかどうなのかということが知りたいです。そしてもしハリネズミ防衛論が成り立つのだということになるならば、先ほどからいろいろ意見が出ております五六中業なんていうものは必要がないことになるわけなんです。むしろ私は、さっきもちょっと触れましたけれども日本の内閣総理大臣としてアメリカまで行ってそんなハリネズミ防衛論を振りまくようなことが恥ずかしかったという判断をするのだけれども、長官、その辺はどういうふうにお考えになるかお聞かせいただきたい。
  290. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 総理大臣アメリカで言ったことの内容について、私どももちろんその場にもいないわけですから正確にはわかりませんけれども、鈴木総理が私にハリネズミという言葉で指示をしたときには、ハリネズミ防衛論という、こういうものをまとめてお話しいただいたわけでございませんで、もちろん全体の時間も短かったし、その中の一部分でハリネズミのようなということを形容詞として使っておったということ、そしてまたそれと直接関係するかどうかわかりませんけれども総理の指示の中には、日本世界でもすぐれた先端技術を持っておるので、そういう先端技術を日本防衛の中に取り入れられる、そういう工夫をすべきじゃないかというようなこと、それから、その中の一端として今回予算が認められればぜひ試験的にやってみたいということでいま概算要求を申し上げておりますけれども、余り大きい船でなくて小型の高速艇で、それにミサイルを積んで配置したらどうだろうというような、そういうような具体的な指示もあったわけでございまして、ハリネズミ防衛論というような、そういうまとまった形でお話があったわけではございませんで、その中の形容詞として使われたハリネズミというのがいかにもまとまった防衛論のようにとられておりますけれども、そういうことではございませんで、もちろん総理の言う考え方もわれわれはこれからの日本防衛、四面海に囲まれた日本の地形的地勢的な立場からも取り入れていかなければならない一つ防衛考え方だというふうに思っておりますし、いま申し上げましたとおりその一つとしてミサイル高速艇なども来年度の予算で、一隻でございますけれども試験的にやってみようということでやっておるわけでございます。
  291. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ハリネズミといったらどういうことですか。辞書をお引きいただきたいと思うのだけれども、敵に遭ったら体を丸めて自分の身を守るという、そういうことが辞書に書いてあるわけなんです。  防衛力の問題から言ったならば、それはミサイルだとか何だとか、そんなことは出てこない。言うならば敵に遭ったら自分は体を丸めて小さくなってじっと静かにして、そして自分の身を守っていようというのがハリネズミの性格だということになっているのだから、だからさっきも言うとおり、そういうふうなことを一国の総理が言うようならば、何もここでもって国会で議論をして五六中業もこれからやる必要ないことなんです。少なくとも現状においてそういうハリネズミ防衛論が成り立つような防衛力を持っているという判断がなかったら一国の内閣総理大臣としてそんな言葉を吐く資格はないわけなんです。だから日本の内閣総理大臣として余りにも軍事的な知識というものに欠けているのじゃないか。  そこのところは長官はそういうお考えになりませんか。もっともあったってそう言えないだろうけれども、そこはどうですか。
  292. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) ハリネズミというのは、もちろん本当の正確な解釈で言うならば柳澤先生がおっしゃるようなことだと思うのですけれども総理の私どもに言ったときの時点での私どもが受けました感触といいますか感覚では、やっぱり針を相当伸ばしておいて、さわったら痛い目に遭わせるというような意味の、縮まるという意味でなしに、むしろ針を出しておいて、いま防衛局長も答弁を申し上げましたとおりいろいろアンテナをあらゆる面に張っておいて、そして警戒態勢を厳重にして、もしそれでも来たならばそういう針にさわって痛い目に遭わせる、そういうような意味でむしろ積極的な防衛構想の面もあったわけでございまして、ハリネズミという言葉を正確に分析されるとそういうことだと思いますけれども、私ども総理から受けた印象はそういうふうにはとられませんでしたので、軍事的な知識を持たれたりっぱな一つの構想だろうと思います。
  293. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 まあそれはそれ以上総理のことを長官として悪く言うわけにいかぬから。  ただ、本当にお願いいたしますので、国内においていろいろ私たちが議論している分はどうこうがあったっていいし構いませんけれども、やっぱり国際舞台へ出ていったら笑われないようなことだけはきちんと言っていただいて、そして昨年のときだって、あれすぐもう新聞に出て、利口なハツカネズミとそれを訳したと言って、あわてて恐らく向こうの日本大使館の人たちが訂正をしてやっているくらいなんで、それは本当言ってアメリカの国会議員にばかにされたと思うのですよ。防衛問題の論議するのにそんな言い方をしているようで。  それで、私としてお願いしたいのですけれども、もう少し総理にもいろいろそういう問題についての御進言をしていただいて、正確にというか、やっぱり外国から笑われないような防衛問題の発言をしていただきたいと思うのです。  それから、長官がいま言われましたので、この五六中業これからやろうというのでしょう。五六中業ができ上がったらいま言われたハリネズミ防衛論は成り立つのですか。それとも私がさっき言ったように、この時点で、昨年総理が言っているのですが、そういう点から立つならば五六中業なんか必要がなくなっちゃうのですけれども、ミサイルも要らないことになるのです。その辺についての防衛庁としての理解はどういうふうになっているのですか。
  294. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) まずこのハリネズミ論の定義についていろいろな御意見があったわけですが、私どもとしましては先ほど来再三申し上げておりますように、まず警戒監視能力を高めることが大事であろうということで、そういった面の重視を五六中業の中でもいたしております。  それから第二は、防空能力あるいは洋上阻止能力として先ほど大臣からも話がありましたようなミサイル艇の装備もそうでございますし、いわゆる地対艦誘導ミサイルの研究開発といったものもそういった範疇に入るだろうと思います。それから洋上着上陸阻止のための水際防御能力としていわゆる浅海面における浅海用機雷とか、あるいは現在使っておりますところの対舟艇ミサイルの配備というようなことを総合的に考えまして、そういったいろいろな段階における防衛力を複合して有機的につなぎ合わして、それぞれのレベルにおいて縦深性のある防衛力をつくることが一種のハリネズミ論ではなかろうかという認識のもとに、五六中業でもそういった面を重視してつくっておるということが現状でございます。  いま先生の言われるようなハリネズミというものとはあるいはニュアンスが違うかもしれませんが、私どもとしてはそういった意味防衛力整備しようと思っておりますということを総理にも御報告をし、おおよその御了解を得て五六中業というものはできたというふうに判断しております。
  295. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 夏目さんはいま自分で答弁していてそれに納得して答弁されているの。  さっきから言っているように、ハリネズミということになったらミサイルも持たないでいいの。それから先ほどきょう朝から議論されておるシーレーンの千海里なんということもなくなっちゃうの。日米共同演習なんということもこれは必要がないの。だからほかの外務省かどこかの人たちが言うなら話は別だけれども、せめて防衛のそれを主管として扱っている防衛庁の幹部の皆さん方ぐらいはその辺のところをきちんとしていただいて、そして総理のそういう発言のあったときには、さっきから言うように、総理それは誤解を招きますからそういう言い方はやめてくださいと言ってやるようじゃなかったら、どうしてそれ五六中業でなんてつながるの、そんな。  さっきから言うとおり、三八式歩兵銃が兵器の主役の時代ならばそれはハリネズミ防衛論は成り立つのですよ。今日のこれだけの近代兵器の持っている時代にそんなことを言っていてもらっては困るのです。で、それがいいのだといって言い通すならば日米共同演習もやめるべきだし、ミサイルもやめるべきだし、もう五六中業なんか要らないですよ。現在の兵器だけでもって十分にハリネズミの役割り果たせますと言って、全部それならこれからの五六中業もうやめますということを言わなくちゃいけないことであって、もうちょっときちんとその辺を答えてくれませんか。
  296. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 私最初にお断りしたのはそういう趣旨でございまして、私どもとしてはそのハリネズミ論ということのよしあしは別としまして、私どもはこういう意味に解して防衛力整備を考えましたということを申し上げたわけでございまして、ハリネズミという言葉の持つ意味、そういう言葉の妥当性ということについて捨象したという前提お話を申し上げたということを御理解賜りたいと思います。
  297. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そういう無理につじつま合わすみたいなことを言わないで、率直に私は防衛庁立場から言うならば総理が言われるようなハリネズミ防衛論というようなものでは困るのです、機会を見てそういうことについてはやはり発言を訂正してもらいます、今後そういうことは二度と言ってもらわないようにいたしますという、明確にそういう答弁してください。そうでなければ理解できないですよ、そんな言い方しておったら。
  298. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) そのことにつきまして先ほど防衛局長からも答弁いたしましたように私に対してそういう指示がありまして、私がそれを防衛庁内に持ち帰りまして総理の御真意等もそれなりに分析をいたしまして、それに対応する形で当時の防衛局長と当時の事務次官が総理の方に出向きまして総理の真意をさらに確かめ、われわれの考え方総理考え方が、言葉はちょっとハリネズミということで別でございますけれども総理の考えておられますいわゆるハリネズミ防衛論とわれわれが五六中業で党で目指す防衛考え方が一致をしたわけでございまして、その考え方に基づきまして五六中業も策定をし、その初年度としての五八予算概算要求もやっておるところでございまして、現時点におきましては私ども総理防衛に対する考え方はいささかも食い違っておりませんので、いまこの時点で総理にそういうことは間違いですよというようなことを申し上げる必要はないというふうに確信をしております。
  299. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官、いまことしの一月に総理に言われましたときの云々というのがスタートになっている。私が問題にしているのは、昨年の五月にアメリカの議会で、議会というか国会議員相手の話の中で言ったことを問題にしているの。  国内で皆さん方の話だったら、そんなことをたとえのものに取り上げてこう言ったああ言ったでそれは済んじゃうことなんです。アメリカの国会議員諸君との話の中でそんなことを日本の内閣総理大臣が言うから私は恥ずかしいと思うし、情けないと思うし、いかに日本の内閣総理大臣の軍事知識のレベルが低いかということを証明しておるようなものなんだから、そのときに皆さん方は総理のところにすぐ飛んでいって、総理そんなことを言ったら誤解を受けます、困りますよ、もうちょっとそういう誤解を受けないような発言をしてもらわなければ困りますと言ってもらわないと、それだから日本でサミットやったときも、そんなことじゃいかぬけれども、西ドイツのシュミット総理がいよいよソ連アジアの方にSS20を配備をしましたよと言ったら、日本総理大臣はSS20とは何だかわからなかったということがあったでしょう、そんなことが。  だから、その辺を過去のことをとやかく言うつもりはないのだけれども、もう少し皆さん方がその辺をきちんとしていただいて、そして何だかんだと言っても国の防衛というのは大事な問題なんですから、何でもかんでもすべてしゃべりはせぬと思うけれども、しゃべれることはきちんと私たちの前にもしゃべっていただく、そして大臣であろうが総理であろが、間違った発言をしたら、そういうことについてはきちんとやはり皆さん方が言って訂正をしてもらうようなことをせぬことには世界から笑われ者になるのですよという、その辺を申し上げたいのです。  そういう点を十分要望してもう私終わりますから。
  300. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) ただいまの御高見を踏まえながら、十分われわれ果たしていっておりませんでした総理に対する防衛問題に関する補佐の役目をしっかり果たしてまいりたいと思います。
  301. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三十六分散会