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熊谷太三郎君 どうもいろいろお答えをいただきまして恐縮でございました。おっしゃること一々もうごもっともだと思いますが、ただ、最も大切なことを
一つだけということを申し上げるとしますと、私は
原子力発電所の立地を
推進するために最も大切なことは、
原子力発電の
安全性の確立が、非常に高い点から言いまして十分
原子力発電所というものが実用に供し得られる、すなわち
原子力発電は決して心配ないということを地元の人々にないし国民の方に
理解していただく、これが私はもう一番大切なことではないかと考えるのでございます。
もちろんいろいろな点もございます。言うまでもありませんが、この世の中で絶対安全というものは
一つもないわけであります。たとえば毎年の、直近の年でいいますと五十五年の
日本の事故の統計をちょっと調べてみましたが、大体交通事故、産業事故それからその他の事故の三つによります死亡は、自動車事故の一万一千七百五十三名をトップとしまして映画演劇業の一名に至りますまでを加えますと合計三万六百八十八名という方が
昭和五十五年度わが国において事故のために死亡されているわけであります。先ほどから取り上げられておりました
石炭におきましても、百万トンの
生産について大体一人の犠牲者が出るというのが定説になっておりますから、二千万トンとしまして年間二十人、これが昨年の
夕張炭鉱などの大事故による犠牲者を考えますととても二十人ではおさまらない。このようにすべてのいろいろな
生産やサービスには死亡、犠牲がつきものでありますが、
原発に関しましてはこの統計から考えまして年間はおろか実用に供されまして以来二十七年間に
日本だけではなしに世界じゅうで一人の死亡者も出していないわけであります。これは
一つには
原発管理の技術面並びに管理システムが大変すぐれているという結果とも言えますが、いろいろなことはさておきまして、この事実から考えまして
原発は十分実用に供し得る
安全性を備えているということがはっきり言えると思うわけであります。決して心配は要らないということであります。したがって、この事実を第一にPRしていただきますことが立地
推進の最大の要件であると私は考えてきておるわけであります。
ところがどうも、
政府はもとより
政府の指導管理のもとにあります宣伝機関や電力
会社や関係団体におきまして、この種のPR活動にほとんど見るべきものがないと言ってもいいのは全く残念と言うほかはありません。役所で、たとえばこれは
通産省で、これは科学技術庁で発行されておりますPR書でございまして、以前から見ますとこれは大変いまの安全問題などについての記述も御説明も変わってきている、進んできているということは十分認めますけれ
ども、しかしどうもこれだけで十分地元への説得力が得られるとはとうてい思えない。言うまでもありませんが、地元へ参りますと、
原発が来ればかたわの子供が生まれるというような説でもたやすく信用されるといったような状態でありますから、そういう素朴な
住民に対します心配がないという宣伝としてはこれではちょっと不十分、十分不十分であると考えるわけであります。
それから、ここにこれは「
原子力文化」というものがあります、ちょっと持ってきましたが、これは
原子力文化振興財団の機関誌でございます。これを開いてみましても、いろいろなことが書いてありますが、いま申し上げたような直截的に
原子力発電は決して安全上心配ないのだということは、毎月のこれを見たってとうていそういうものとは縁が遠い。せっかく多額の経費を投じての
原子力の平和利用を
推進するための機関誌でありながら、そういうものは不十分であると私は考えざるを得ない。電気事業連合会とかあるいは電力
会社な
ども相当にもう毎月毎月いろいろなPRを、特に印刷物なんかを出されましていろいろ
努力しておられるようでございますが、どうもその中身が次元が高いというか、あるいはほかのいろんな一般的な知識でありますとか、あるいははなはだしきに至ってはと言わざるを得ませんがその地方の名物とか名所とかあるいは趣味とかを載せる、あるいはまただれか人気女優
あたりをつかまえてきて対談をなさるとか、本当にどうしても
原発をこれは心配がないのだということを宣伝しなければだめだと思う
考え方から見ますと非常に離れているような感じがいたします。
これは二、三日前に出ました電事連の広告でございます。私は恐らくこれだけの広告には大変な金がかかっているのじゃないかと思う。しかもこれはサンケイですが恐らくほかの
新聞にも出ていたと思いますが、一体これを読んでどれだけ
原発の
推進に役立つと思われるでしょうか。私は非常に残念であります。「ママはオーストラリア生まれ、」とか「ボクは
日本生まれ。」とかいってこんなのをやって何かいろいろ技術が何したとかどうしたとか言われますが、そんなことを幾ら言われたって、地元の素朴な
原発立地を受け入れてもらわなければならぬ
住民を
原子力は心配ないのだというふうな
考え方に持っていくのには少しも役に立たぬと考えるわけであります。
いろいろ本当につまらぬことを申し上げましたが、こういう私の申し上げたことについて何か御感想がありましたら
通産省と科学技術庁の方で一言、私の申し上げるそんなことは間違いだと思われるのでしたら率直にひとつ御意見を言っていただきたい。もし私の申し上げることをそうだと思われるならばもう少し考えていただきたい、こう思うわけでございます。