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竹本分科員 私は、まず最初に、大蔵
大臣が現下最大の、また最も困難な課題、財政再建を一身に背負って毎日御健闘をいただいておる、大変な御苦労であろうと思いまして、心から敬意を表します。
きょうはちょっと向きを変えまして、
円高の問題を中心に申し上げてみたいと思うのですが、その前に江崎さんが
アメリカに行かれまして帰られるというので、ちょっと最近私が感じておることを申し上げたいと思います。と申しますのは、
予算委員会ではでに議論をするときには、話が大げさになりましてしんみり話ができないという面もありますので……。
私が最近感じておりますことの
一つは、
日本にはやはり国際感覚、外交感覚というものが足らないのではないかということであります。江崎さんが
アメリカに行かれる前に外人記者とお会いになった。そのときに、何かいい手はないのかということを質問されましたら、外人記者は、
アメリカに行かないのが一番いい手だと言ったという話を聞いておりますが、まことに至言である。いまごろ出ていく。一体何をするために行くのであろうか。行ってどれだけのことをまとめて帰る自信があるのであろうか。私は、江崎さんは大いに敬愛する先輩、友人でありますけれ
ども、その真意がよくわからなかった。
たまたまけさの
新聞をまた読んでみますと、
日本に帰って閣僚の皆さんとも相談をして、一体何ができるかを考えてみたいということを江崎さんが言っておられるようであります。そこで私は、なおさら外交感覚が足らないということの感を深くするわけですけれ
ども、一体
アメリカに何を言うつもりで行かれたのであろうか。また、
アメリカに行って、帰ってきてから何ができるかを考えてみようというのは、ちょっと順序が逆ではないか。何ができるかを考えて行くのでなければ話にならないというふうに私は思うのです。
そういう意味で、どうも
日本の政治、外交は、
政府・与党、いろいろわれわれも含めて、国際感覚に足らない点があり過ぎはしないか。大体
日本の政治、外交は腹芸中心であり、あるいは談合であるというようなことでして、近代的な合理主義というものが足らない。
私は、
日米太平洋戦争が起こるときに、その間の経過を若干知っておるわけでございますが、御
承知のように
日米開戦を避けるために野村大使、海軍大将が
アメリカに行かれた。そのときの
日米交渉の経過をいろいろ書いたものを見ましたけれ
ども、結局
向こうで言っているのは、
日本は何を言おうとしておるのかよくわからない、何となく話せばわかるぐらいの調子で来ているんだけれ
ども、さっぱり具体的なものがない。各論がない。腹芸ばかりだ。もう
一つはおじぎばかりする。実によくおじぎをするということが、何度もいろいろな本に書いてある。
おじぎばかりしたって話にならない。総論的なことを言ったって話にならない。やはり具体的にずばりと何ができるか、何ができないかということを、具体論をひっ提げていくのでなければ、あのときの話もだめであったが、今度の話もだめである。江崎さんが、行かない方がベターだと言われるような
環境の中で行かれて、帰ってきてから何ができるかを真剣に考えてみようというのも、あのときの
交渉の経過とよく似ている。
そういう意味で、これからいろいろ
日本も、国際社会における
日本でございますから、
交渉が多くなりますが、願わくは、そういうずれた国際感覚でなくて、常に積極的に具体的なものをひっ提げて議論をしてもらいたい、これは要望でございます。
大臣は、特に国際経済にも重大な
関係を持っておられるし、閣僚としても大きな希望を持たれておる
大臣でございますから、私から要望を申し上げておきたいと思うのです。
そこで、本論に入りますが、経済摩擦の問題につきましては
政府も非常に御努力をいただいておる、私
どももそう思います。しかしながら、そのまた
政府の努力につきましても感覚のずれというのがございまして、たとえば非
関税障壁の問題について、六十七品目ですかあるいは九十品目に達するような
事項についていろいろ
政府が努力をされた。その直後でございましたが、マンスフィールド大使が鈴木首相に会いまして、親書を持ってきた。その親書は、
日本の経済運営を根本から変えてもらいたい、それからまた、国際的な責任を大いに果たすようにしてもらいたい、こういうのでありまして、
新聞によれば、鈴木首相もずいぶん面食らわれたというようなことを拝見をいたしましたが、恐らくそうであろうと思います。
と申しますのは、非
関税障壁の問題また
関税の問題、大蔵省もあらゆる努力をされ
政府も努力をされておりますので、
日本として言えば、この間宮澤さんが言われたように、これだけやったのにまだ文句があるのかと言いたいぐらいであります。しかし
アメリカから見れば、何をやっているんだ、Rという字とLという字を置きかえるとかなんとかいった
程度のやり方では問題にならぬということで、改めて大きな
要求というか基本的な課題を突きつけてきた、こういうことであろうと思います。
それを踏まえまして、これから経済摩擦を解消するために何があるかという点でちょっと考えてみますと、たとえば輸出の抑制、自主規制と言ってみても、これもある意味で限界に来ておる。輸出の課徴金をかけるということも非常に問題がありまして、果たしてどれだけできるかということも非常に問題である。
輸入の方でも、緊急
輸入をやれ、備蓄をやれと申しましても、この上油を買うのか何を買うのか、また三十億ドル以上それが消化ができるのかどうかということを考えてみると、多くを期待することはできない。そういうふうにして、緊急
輸入や備蓄の問題もあるいは
関税、非
関税障壁の問題も、あらゆる項目を考えてみて、どうも私は決め手になる手は余りないように思いますが、
政府あるいは特に大蔵省として、経済摩擦を解決するためにこれはというような妙手あるいは手をお考えになっておるかどうか、伺いたい。
時間がないので一緒に申し上げますが、それに関連しまして、
円高を誘導していくということが、いろいろ考えられる政策の中で最も合理的なものではないかと私は思いますが、
大臣のお考えはどうであるか、この点もお伺いしたい。