○山原
分科員 建設省、後で……。
大臣、ちょっとお聞きいただきたいのですが、私のいろいろ集めた資料ですが、京都の宮津市の場合には、昨年の十月六日に
政府に対して意見書が出ております。これは建設労働者の三省協定による賃金の支払いと建設業退職金共済制度の完全実施に関する意見書というのでございまして、この中身を読みますと、「公共事業に就労する建設労働者にとって、実際に支払われている賃金は工事に積算されている三省協定額よりも少なく、また加入が義務づけられている建設業退職金共済制度も労働者にはほとんど実施されていないのが現状であります。よって、
政府におかれては、建設労働者に三省協定並みの賃金支払いと、建設業退職金共済制度の完全実施の実現に
努力されるよう強く要望する。」という、これは宮津市議会の満場一致の
決定です。
それから、これは私の県ですが、一例だけ申し上げますと、高知県の幡多郡三原村の場合です。これは昨年の十二月十六日でございまして、ここでは三原村村議会の産業建設常任委員会が調査結果を発表しております。これは、「執行部、委員の実態調査の結果、設計単価と実際労働者に支払われている賃金実態は格差のあること等を確認し、同日審議採択した。少数意見なし。留保なし。」
意見としましては、実態調査の結果は、普通作業員で五千円ないし五千五百円であり、平均五千二百五十円となっている。女子の場合は三千五百円から四千円で、平均三千七百五十円である。男女平均は四千五百円となり、設計単価に示す普通作業員七千五百円に対し六〇%
程度であり、「執行部はこれらの実態を十分了知の上、設計単価に最も近い金額が建設労働者に支払いされるよう業者へ速やかに
行政指導されるよう強く要望するものである。また、建設業退職金共済制度も完全に
適用され、手帳が全員に手渡されるよう
指導すべきである。」という決議をいたしております。
こういう決議が、現在請願採択あるいは意見書という形で一県七十二市町村から出ております。一県というのは福島県でございます。県議会で議決をされております。それから、高知県十三市町村、岩手十四、新潟三、秋田九、三重五、長野二、宮城一、福島七、京都八、北海道二、兵庫二、愛媛四、こういう数字が出ておりまして、かなり多くの、しかも全国に散らばった形でこういう決議が出ています。
それで、
大臣の御出身の青森の場合ですが、どういうふうになっているかということでちょっと見てみますと、日本農業新聞の五十五年十一月五日の新聞を見ますと、「これでよいのか救農土木」という表現でサブタイトルがつきまして、四十六歳の普通作業員が全国平均七千八百三十九円であるにかかわらず、青森の場合は七千二百二円となっておりますが、実態は五十歳の男の人で六千円、女の人で四千円、これを平均しますと五千五百円、こういう差が出ているわけですね。これはなぜかという問題はもう時間がありませんから申し上げませんけれ
ども、実際に自治体において調べますとこういう差がある。これは何とかしなければ過疎の問題、出稼ぎに出なければならない問題も絡んでまいりますし、また
地方自治体におきまして、この賃金が少しでも三省協定のようになっていけば、その自治体にとりましては大変ないわゆる内需、自治体の消費力が増していくわけでございますから、そういう意味でこれは非常に重大な問題だと思っているのです。
福島の場合は、県議会におきまして松井土木部長が、八〇年度の救農土木事業での労務者の平均賃金は五千百二円であり、設計労務費とは相当の差があったということをはっきり認めております。
〔
岡田(利)主査代理退席、植竹主査代理着席〕
そして、福島県下の下郷町の場合には、男五千二百五十円、女三千九百円、平均四千五百七十五円ということで、設計労務単価を見ますと特殊作業が一万一千円、そして普通作業が七千四百円で、平均しまして九千七百五十円でなければならないのが四千五百七十五円ということになりますと、何と五千百七十五円の差が出てくる、こういう実態になってまいります。
それで、これは単純計算はせられませんけれ
ども、三省協定の労務設計単価より約三〇%くらい低いとしますと、
昭和五十五年度の国、公団、公社の公共事業が六兆六千六百四十四億円、
地方自治体の公共事業が十三兆五千三百十三億円ですから、合計二十兆円ですね。二十兆円のうち三二%労務費があるということになりますと、実に六兆四千六百四十億、そのいわゆる過大積算が二兆円にも達するということでございまして、これはちょっとほうっておけない問題だと思っています。仮に二百日一つの町村で働く土建の従業員が五百人おるとしますと、この差を三千五百円としましても、一年間に、計算しますと三億五千万円ということになるわけですから、これがどこかへ消えているということになるわけです。たとえば私の県には大体五万人土建労働者がおります。これを計算しますと、高知県で実に四百億と言うとオーバーになりますから、二百億から三百億という金額が浮くという計算が出てくるわけです。それは単純計算はせられぬと思いますけれ
ども、それにしましても、大の男が一カ月働いて十二万円から十三万円。女の人ですと、家事労働をほとんどほうったような形で労働に従事しながら六万円から七万円という、生活保護以下あるいはすれすれという実態があるわけでございます。これはどうしても改善しなければならぬ。なぜこんなふうになってきたのか。これは建設省も十分おわかりのように、十年前はそうじゃなかったのです。むしろ実勢賃金の方が積算労務単価より上だった場合があるわけですね。
先ほど委員長にお許しをいただきましたので、資料を配っていただきたいと思います。
大臣、ちょっとごらんになっていただきたいと思うのですが、これは私の方で調べました三枚目の紙を見ていただいたらわかりますけれ
ども、グラフが出ておりますが、三省協定が結ばれました
昭和四十六年から、設計単価に組まれた労務賃金というのはずっと上昇しています。ところが、実際に労働者に支払われている賃金はこの下の黒い線でございまして、この差が最初はなかったのが、だんだんだんだん広がっていっているというわけです。もちろん中小土建業者は大変苦しい状態にありますから、これは一挙に解決せよとは言いませんけれ
ども、この差は縮めていくということが、これは町村にとりましても、また働く労働者にとりましても、それから消費不況をなくする意味におきましても、非常に効果のある問題だと私は思っております。
そこで、こういう原因は、一つは、先ほど言われましたにせ台帳の問題といいますか、二重台帳をつくっておる。それは二枚目の紙に出ておりますが、たとえば、こういうのはなかなか手に入らないわけでございますけれ
ども、これは新潟県、岩手県、福島県、長野県、三重県、高知県などでこういう二重帳簿が発見されたわけですね。たとえばこの六番目の〇〇勲と書かれた方を見てみますと、九千六百円の単価で十九日働いていることになって、その賃金は十八万二千四百円となっていますが、実際の実台帳は、6のところを見ますと、この勲さんという人は、日当は、単価が五千五百円、十四日働いて七万七千円という二つの台帳があるものですから、このつくられた台帳が、これが設計単価になるわけですね。だから、こういう差が出てくるんです。
そういったことを考えてみますと、これはどうしても改善をしていくということ、それも非常に大事な問題でありますので、もっと言いたいこともありますけれ
ども、田澤
大臣ももちろん農山漁村県を主体にして出られておりますので、これはほうっておけない問題だと私は思っているのです。
大臣、今日、一遍に何千円の差のあるものを埋めてしまうということになりますと、これは業者も大変でしょうから、しかし、こういう差が広がっていくのをそのままほうってはおけないという意味で、建設省としても当然適正な価格ということで
指導されておるわけですが、農林省としましても、日本の農業
発展のためにも一定の
指導方針を持っていただきたいと私は思いますが、この点について
大臣の御見解を最初に伺っておきたいと思います。