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中野(寛)
分科員 大臣のお答えになられた基本的な姿勢については、私も全く同感であります。それだけに私は、たとえば保育
行政、そしてまたベビーホテルのような民間の施設を活用する場合にも、そこには、言うならば
子供を預かり育てるというだけではなくて、そこに預けに来るお母さんなりお父さんに対して、育児のあり方について親を指導することもできる、そのような人をやはりその施設には置くということさえもやらなければいけないということも私は考えるわけであります。そのことは昨年も指摘したとおりでございます。ただ、残念ながらこういう需要がある。しかもそれはやむにやまれぬ事情のもとでの需要も決して少なくない、ということになりますと、やはり保育
行政の充実はなお一層図っていかなければなりません。しかし現実には公立の保育施設だけでは、これは不十分であります。
ちなみに、昨年の法一部改正後、また私
どもが指摘をいたしました後、どのようなことがなされたか。ここに四つの通達文書があります。これは児童家庭
局長さんのお名前でお出しになっておられます。
順を追っていきますと、いわゆる児発第三百三十号、これは「ベビーホテル問題に対応するための乳児院の活用等について」ということであります。これがいけないというのではないのです。このことは大変結構な
措置だと私は思うのですが、ただ、どれだけ効果を上げているかということになると、大変問題があると思っているわけであります。たとえばこの「乳児院の活用等について」その後、この通達に基づいてどういう効果が上がったか。私の
調査では、この通達等を活用しながら実施されたいわゆる昨年の実態
調査に基づいて、ベビーホテル長期入所児を乳児院に引き取られたという
ケースはただ一件だけでございます。しかもそれは、お母さんがいわゆるトルコぶろ回りをし、行方不明になっておる。お父さんが重度の結核患者で、麻薬患者でもある。ゆえに、ベビーホテル側が警察と児童
相談所に三カ月間にわたって交渉してやっと
措置された
ケースでございます。このようなことで、たとえばこの通達が果たす役割りというもの、それはどれだけの効果が果たして上がっているか。実態として大変残念な状態がなお継続をされているということであります。乳児院に
子供を預けることを忌避する国民の気持ち、それを甘えの構造と言って、そのまま見過ごしていいのかどうか、この問題も私は残されていると思うのであります。
それから五百六十六号、七月二日に出されております「無認可保育施設に対する指導監督の実施について」そして、その通達には「無認可保育施設に対する当面の指導基準」というのが添付されております。そして、この文章を見ますと、たとえば「保育に従事する者の数は、おおむね児童福祉施設最低基準第五十三条第二項に定める数以上であること。」二番目には「保育に従事する者のおおむね三分の一以上は、」そして大きな項目二番の中の二番「保育室の面積は、おおむね乳幼児一人当たり一・六五平方メートル以上であること。」
数字が書いてあるところにはすべて「おおむね」とつくわけであります。それはそれなりの意味を持たせて、弾力的に経過
措置として判断するためにつけられた言葉でありましょうが、しかし、おおむねという言葉は、たとえばおおむね十人と書かれておったときに、それが二十人であったという場合に、それではこれに違反していると明確に答えることができない実態が残されているわけであります。たとえばこのような基準についても、私はもっと明確にしていいんじゃないかと思います。このような実態ですから、結局それは結果的に守られないという状態になっている。このこともやはり指摘しなければならないと思います。ゆえに、先ほど御指摘申し上げました神戸の市営住宅で保育ママ形式で預かっていた、そこで
子供を死亡させた事件というものもやはり起こってくるわけであります。
次に、六百三十五号「夜間保育の実施について」という通達が出されております。しかし、これも婦人の就労時間が二十四時間、いつの時間帯でも社会要求されている。労働基準法に違反しているという問題もあるかもしれません。しかしその労働基準法の枠内で婦人の労働時間帯をはかったとしても、やはり現在
措置された内容では十分対応ができません。いわゆる地域点在性ということの配慮がなされませんし、まして一カ所に二十人、三十人の
子供たちが夜間保育を望む数になるなんということは、大体考えられない。やはり夜間保育を望まれる
子供なんというのは、きわめて少数であることは事実です。それを地域で割っていけば二人とか三人とか、せいぜい五人とかいう
数字、それを一カ所に二十人、三十人集めて
措置しようといったって、それはその数に達するはずがありません。ゆえに、先般、
東京都
中野区では、国や都の夜間保育事業を補完するという形で
予算案が出されて、そして五人とか六人とか民間に委託をして、そしてそこで家庭的な雰囲気の中で預かってもらおうという
措置が講じられましたが、むしろその方が実態に合っている、こう申し上げることができると思います。
次に、七百十七号通達「延長保育特別対策の実施について」いわゆる保育は一日八時間が適当であり、通勤時間を補う意味で朝七時から夕方七時までとしているが、婦人の仕事内容ではその時間に限らず、他方面の職種が婦人にも要求をされ、そしてそれに対応してやっていこうと思えば、この時間帯では実際これはおざなりとしか言いようがありません。たとえば夜間学校の先生は夕方四時から夜九時までの保育要求であり、看護婦さんは三日に一日は夜勤があります。女医さんは、患者の容体によっては一日じゅうの保育をお願いしなければならぬという実態が出てまいります。また
子供が二歳、三歳になるころ、婦人の職場の地位も高くなり、独身時代からの職場での仕事内容も充実をし、出産を機に仕事が中断をされると再度の職場復帰はむずかしい。パートとしてしか認められない状態では、やはり御婦人方は当然不満を持たれることになるわけであります。これからの婦人の進出、そしてプロフェッショナルとしての仕事をやっていこうという意欲を持っている
方々にとっては、これらの実施要綱では余りにも物足りないということになってしまいます。夜間保育等々についても、何も夜働いておられるホステスさん
たちだけではないということ、そういうことをやはり十分考えながら対応していく必要がある。
以上、大変ぶしつけな御指摘を申し上げましたけれ
ども、これらのことについては恐らく経過
措置としておやりになったことだろうと思いますが、今後、抜本的にはどういう対策を講じていかれようとしておられるのか、そのことについてお伺いしたいと思います。