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薮仲分科員 それでは、私は、本日は大臣に篤と歯科診療の実態を御理解いただきたい、そういうことで、いま問題となっていることを何点か具体的にお話をさせていただきたいと思いますので、どうか正確な御理解をいただいて、これからの診療報酬の改正等で御尽力をいただきたい。
最初にお断りいたしておきますけれども、私は、歯科医師でも、またそういう専門でもございません。私の地元の静岡県の医師会長さんや保険部長、あるいはこの問題に熱心に取り組んでいらっしゃる
方々から静岡県の歯科診療報酬の実態等を伺って今日があるわけでございますけれども、その地元の問題は、
厚生省を初め
関係の先生方の御
努力でその後
改善の
方向に進んでいることを私は評価をし、敬意を表する次第でございます。
さて、お手元に
資料をお渡しさせていただきましたけれども、大臣のには特に赤書きをしておわかりをいただくようにさせていただきました。
昨年の歯科診療報酬の改定で、
厚生省はそれなりに、いま問題になっております欠損補綴やあるいは幼児の加算等々改正をなさったようでございますけれども、私は、その前段としてまず大臣に御承知おきいただきたいのは、
資料の一番上に出ていると思いますけれども、診療行為について、医科と歯科がどういうような診療
内容になっておるかということです。
これを見ますと、表の一番上にございますように、医科の診療
内容、点数と百分率が出ておりますが、医科の診療
内容で一番パーセントの多いのは投薬でございます。三〇・一。二番目が診察、一四・七、三番目が注射、一三・〇、等々でございます。ということは、いま言われていること、薬漬け云々ということを、いいとか悪いではなくして、実態として見たときに、やはり投薬というものは診療
内容で大きな部分を占めている。これは出ておるわけです。
逆に、歯科の実態は下に出ておりますから、ごらんいただきたいのですが、診療行為の中で百分率が一番多いのは、歯冠修復及び欠損補綴、いわゆる総義歯であるとか鋳造冠とか、つまり入れ歯をしたり補綴をするというのが四五・一%、一番百分率が多い。その次に処置及び手術、三二・四。逆に、医科の場合で一番高かった薬は三・二で、非常に低い。
ということはどういうことかといいますと、歯科診療に当たってはことごとく手で作業をして、実際の行為を行わなければ評価されない。いわゆる医科と歯科とを比べて何が大事かといいますと、やはり歯科の場合は技術料というもの、手を下さなければ歯の治療はできない。薬を上げて治す行為というものはほとんどない。その点が医科と歯科の診療
内容で非常に大きく違う。私は、この点をまず大臣に御認識いただいて、
資料の二番目をごらんいただきたいと思うのです。
これは、私が全国の歯科の先生、
九州から東京、大阪、名古屋、地元の先生等からいろいろな話を聞きました。これは
一つの流れですが、総義歯、入れ歯ですね、この総義歯の実態でございますけれども、細かいことは抜きにして、受付、それから歯科助手の方、歯科医の先生がどういうことをやるか。カルテの診査から、もう細かい手や指を洗うこと、問診をして口腔内診査をしてというような、一連の一日の作業
内容をここに出しました。こういう作業
内容の中で、一体どのような点がいまの診療報酬の中で適正に評価され、何が適正に評価されないか。
ということは、ここで私が申し上げたいのは、歯科の先生の一番重要な部分は、先ほど大臣に御理解いただきましたように、歯冠修復及び欠損補綴、そして処置及び手術ということでございますから、これをもとにして、この総義歯と、きょう私が問題にしたいのは鋳造冠、この二つを
資料として、そこの三枚目、大臣、もう一枚開いてください、そこから御
説明をさせていただきたいのです。
これは、総義歯の場合、何日間かかって、どれだけの材料を使って、いわゆる人件費で出すとどうなるかということを、昨年、私はこれをいわゆる技工士の技工料等々で出しまして、やはり総義歯というものは非常に不採算、赤字になっておるという実態を出しました。今回は、さらに具体的に人件費で、材料費で割り出していますので、ごらんいただきたい。大臣のは特によけいな数字が入っておりますので恐縮でございますが、まず、総入れ歯の場合に、一日目、二日目、三日目、四日目、五日目、六日目と、六日間の治療
内容が出ております。そして、一日目には時間がどのぐらいかかるかということを書いて、合計で技工作業と同時に六百分という数字が出ております。六百分かかります。
もう
一つ問題点は、歯科医師の給料をどの程度で見るか。
ここに出ております分当たり百二十四円というのは何かといいますと、大臣にちょっと御
説明をさせていただきたいのは、これはお手元に
資料がいってなくて恐縮なんでございますけれども、
一つは日歯で出した
資料と、これがあるんですが、中医協でつくりました
昭和五十一年度の
調査によります「医療経済実態
調査結果表」というのがございます。これは大臣も御承知だと思いますけれども、これによりまして歯科並びに医科の先生方の給料が一体どうなっておるのかということが出ております。これの四十四ページに、歯科の場合は月収が二百十万五千五百二十五円、
経費を引いて手元に八十万六百一円という
金額がこの歯科の場合は出ておりまして、医科の場合は今度は違うわけでございます。医科の場合は、
参考に申し上げますと、ベッドのない、無床の場合がここに出ておりますけれども、手元に残る
金額だけで申し上げます。歯科は八十万でございましたけれども、医科の場合は百五十三万四千二百四十二円。これはおよそ六年前の統計
資料、中医協がおやりになったことで、ざっと言って歯科の先生は八十万、医科の先生は百五十万の月収というようなことが言えるのでございますが、私は、ここで高いとか安いということを問題にする
考えは毛頭ございません。
一つの実態として、歯科診療報酬というのは、ある
意味では非常に低いといいますか、困難といいますか、制限されている部分があるのかなという感がありますが、それはきょうは論じません。しかし、そういうことを通じまして、歯科の先生が一分当たり百二十四円というのは、希望する値段として出しますと月収百三十万ぐらい。これは医科よりも低いわけですが、一分間百二十四円で計算したのが大臣の
資料三のP一と書いてあるもの。
二枚目をちょっと開いてください。これは同じ
内容ですけれども、今度、歯科の先生の値段について
日本歯科医師会の
調査室でつくりました「経営分析法による歯科診療費用の算定」という正確な
資料がございます。その中で処置別診療費用というのがありますが、その
資料は大臣にいっていませんが、大和田
局長や管理官はよく御存じだと思いますが、この中で院長の年収、分当たりのあれが出ているわけでありますが、これでいきますと、分当たり百二円というのが出ているわけです。それを、いま大臣のお手元の、同じところでございますが、歯科医師のところを分当たり百二円で置きかえました。これが総義歯の
資料二で、お医者さんの給料が百三十万の場合、日歯の言う一分間当たり百二円の場合、これで計算しても総義歯が黒字になるか赤字になるかを出したのがこの表でございます。
大臣、恐縮でございますが、また一番表に返っていただけますか。総義歯の一です。
総義歯の一でいきますと、いわゆる歯科の先生がかかった時間に分当たりの百二十四円を掛ける。助手と技工士というのはどこから出したかといいますと、助手というのは、歯科助手がございませんので、これは人事院の「民間給与の実態」の中の准看護婦を例にして、これは給料を分当たり十六円七銭で出しています。技工士は、臨床検査技師の方から代表しまして十七円三十銭で出しております。この
金額に分を掛けますと、以下、この表のとおりの
金額が出てまいります。材料費は六千四百三円、歯科の先生は三万四千百円、助手の方は四千四百十九円、技工士の方は五千六百二十二円、光熱水道費も出ていますが、三千七百二十円、合計五万四千二百六十四円のお金がかかります。一番右端は、総義歯にかかる保険点数が何点かというのが出ておりまして、細かい点は
局長、管理官よくおわかりですので省きますけれども、一番安い部分で三千三百四十五点でございます。これに基準材料の点数を加えて、点当たり十円ですから、これに十円を掛けますと三万四千八百七十円。これはAマイナスBは幾らになるかというと、一番右の欄にマイナスで出ています。総義歯一個つくると、この表でいくと一万九千三百九十四円赤字になります。一番安いのでいっても一万八千八百十四円赤字になります。一個総義歯をつくるとこうなってしまいます。これは月収百三十万でやりました。
日歯の
資料でやったのが、大臣、二枚目です。二枚目の表を見ていただいて、下に出ていますAマイナスBが一万三千三百四十四円、一番安いのでいっても一万二千七百六十四円。このように総義歯をつくると赤字になるということを、日歯の先生がずっと叫び続けました。
この表の客観性を具体的に指摘するために、この時間についていろいろな
意見があります。たとえば、技工士について三百二十五分は多い、技工士の方は百九十分でできるという
意見を言っています。ところで、大臣、
考えていただきたいのは外注技工。院内で、先生と院内にいる技工士がやる技工料というのは、外注技工に入ってないので、す。
日歯の先生が出された表で時間をどの程度見ているか、日歯の先生のあれを
参考に申し上げますと、これは
九州大学歯学部、
九州歯科大学、福岡歯科大学の
方々が出された表でございますけれども、たとえば総義歯の場合、ここに出ているのは六百分以上です。歯科医師の所要時間はちょっと少ないのですが、二百五十五分、技工士は逆に三百五十八分で出ているのです。合計六百十三分というのが日歯の
資料にある時間なんです。ですから、私が知った約五十名近い先生方が個々に御自分の詳細な報告書からつくってくださった六百分というのは、私は客観性があると思うのです。これで計算しても総義歯が赤字になる。同じように、大臣の表のP三あたりからは、もっと細かい材料、その診療
内容まで全部何分かかってどうなのかを出してあります。
同じく鋳造冠。大臣、
資料四を見てください。この鋳造冠も一番問題なんです。これも、
内容は、給料の中身は総入れ歯と同じでございますが、これで結論だけ申し上げます。
資料四の一番下にAマイナスB、保険から実際かかったお金を引くと、この鋳造冠一個で二万一千八百三十八円の赤字になります。これは、月収百三十万で計算しました。
もう一枚目、
資料四ダッシュを見てください。これは、いま言った日歯にあります一分当たり百二円で計算しても一万八千三百六十二円、鋳造冠、大臣がたとえば虫歯になって冠をかぶせると一個につきこれだけの赤字になりますというのが歯科診療の実態で、いわゆる鋳造冠あるいは総義歯については、今後も医療改正の中で十分検討していただけないかというのがまじめな歯科の先生方からの御
意見でございますが、この点、
厚生省の見解を伺いたいのであります。