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1982-03-08 第96回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月八日(月曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 小渕 恵三君       大村 襄治君    栗原 祐幸君       近藤 元次君    藤尾 正行君       三原 朝雄君    五十嵐広三君       稲葉 誠一君    川本 敏美君       沢田  広君    竹内  猛君       安井 吉典君    横路 孝弘君       大内 啓伍君    兼務 井上  泉君 兼務 土井たか子君    兼務 野坂 浩賢君 兼務 渡部 行雄君    兼務 沖本 泰幸君 兼務 草川 昭三君    兼務 斎藤  実君 兼務 鳥居 一雄君    兼務 藤田 スミ君 兼務 正森 成二君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (北海道開発庁 松野 幸泰君         長官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君  出席政府委員         行政管理庁長官         官房会計課長  品川 卯一君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         北海道開発庁総         務管理官    楢崎 泰昌君         北海道開発庁計         画管理官    富士野昭典君         北海道開発庁予         算課長     服藤  収君         科学技術庁長官         官房会計課長  三井 嗣郎君         科学技術庁計画         局長      下邨 昭三君         科学技術庁研究         調整局長    加藤 泰丸君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房会         計課長     河上 和雄君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省保護局長 谷川  輝君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君  分科員外出席者         内閣官房内閣参         事官      中村  徹君         行政管理庁行政         管理局管理官  伊藤 卓雄君         経済企画庁調査         局内国調査第二         課長      遠山 仁人君         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全課防災環境         対策室長    笹谷  勇君         国土庁大都市圏         整備局筑波研究         学園都市建設推         進室長     久保 敏行君         法務省人権擁護         局総務課長   寺西 輝泰君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         大蔵省主計局給         与課長     水谷 文彦君         大蔵省主計局主         計官      藤原 和人君         大蔵省主計局主         計官      浜本 英輔君         大蔵省主計局主         計官      公文  宏君         厚生省援護局庶         務課長     岸本 正裕君         農林水産大臣官         房秘書課長   甕   滋君         資源エネルギー         庁長官官房原子         力産業課長   田辺 俊彦君         運輸省自動車局         業務部貨物課長 浅見 喜紀君         労働省労政局労         働法規課長   齋藤 邦彦君         建設大臣官房人         事課長     高橋  進君         自治省財政局地         方債課長    森  繁一君         北海道東北開発         公庫総裁    新保 實生君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 分科員異動 三月八日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     五十嵐広三君   大出  俊君     竹内  猛君 同日  辞任         補欠選任   五十嵐広三君     安井 吉典君   竹内  猛君     沢田  広君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     大出  俊君   安井 吉典君     佐藤  誼君 同日  辞任         補欠選任   佐藤  誼君     川本 敏美君 同日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     稲葉 誠一君 同日  第二分科員沖本泰幸君、第三分科員土井たか子  君、野坂浩賢君、草川昭三君、鳥居一雄君、第  四分科員井上泉君、斎藤実君、藤田スミ君、第  五分科員渡部行雄君及び正森成二君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算  〔総理府行政管理庁北海道開発庁科学技  術庁)及び法務省所管〕      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算及び昭和五十七年度政府関係機関予算総理府所管について審査を進めます。  行政管理庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。野坂浩賢君。
  3. 野坂浩賢

    野坂分科員 行政管理庁長官にまずお尋ねをいたしますが、第二次の臨時行政調査会特殊法人整理統合についても議論されておるというふうに聞き及んでおるのでありますが、現在の状況を御説明いただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特殊法人につきまして、関係者の御出頭をお願いしてヒヤリングをいままでずっとやってまいりました。特殊法人といいましても非常に数が多うございまして、幾つかのジャンルに分かれるわけでございますが、それらの代表的なものにつきましてもいろいろ深く勉強を重ねております。しかし、まだ結論を得るには至っていない状態でございます。
  5. 野坂浩賢

    野坂分科員 私は特殊法人の数は百八つあるというふうに聞いておりますけれども、それをどの程度まで統廃合するということは現在議論のさなかであって、その着陸地点はわかっていない、こういうふうに解してよろしゅうございましょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりでございます。
  7. 野坂浩賢

    野坂分科員 特殊法人役員の選考については、昭和五十二年十二月二十三日の閣議決定では「次の事項に留意するものとする。」と書いてございます。その内容は、「特殊法人業務内容を勘案し、民間からの登用を積極的に推進すること。」また「特殊法人相互間のたらい回し的異動は、原則として行わない」と決められております。  五十四年十二月十八日の閣議了解も、再確認するというような意味で、運用方針を定めて、これらの就任者についてはこういうことが書いてありますね。「国家公務員からの直接の就任者及びこれに準ずる者をその半数以内にとどめることを目標とする。」以上の点は十分に留意をするということが述べられておりますが、そのとおり現在実施をされておるでありましょうか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特殊法人公務員出身者役職者を半分以下に減らそうという目的で努力をしてまいりましたが、五十五年一月一日の調査では国家公務員出身者が四百六十七人、五九・三%でございました。五十六年の一月一日には四百四十二人、五七・五%になり、五十七年一月一日におきましては四百二十人、五五・七%にまでなりました。もう一息というところで、引き続き努力してまいるつもりであります。
  9. 野坂浩賢

    野坂分科員 半数以内に完全に抑えるというのは、目標としてはいつごろを考えておられますか。
  10. 中村徹

    中村説明員 時期がいつということは申し上げられないわけでございますが、できるだけ速やかに半数以内にとどめるように努力を積み重ねていきたいと考えております。
  11. 野坂浩賢

    野坂分科員 これは昭和四十年以降からの課題でありまして、ほとんど毎年のように閣議決定をされております。長官お話しになりましたのは全体で五五・七%であるということでありますが、現状、たとえば建設省おいででございますね。あなたのところは、私は一九八〇年十月三十一日の資料しか持ち合わせておりませんが、日本住宅公団役員数が十五名のうち天下りは十三名、首都高速道路公団は九名のうち八名、日本道路公団は十四名中八名、水資源開発公団は十二名中十一名、阪神高速道路公団は八名中八名、こういうふうに理解をしております。これでは、全体のバランスが五五・七となったと言うにしても、建設省天下りは圧倒的に多いじゃないか、こういうふうに思いますね。  農林省おいでですね。農林省おりますか。——あなたのところも、農用地開発公団森林開発公団農業機械化研究所は一〇〇%天下り、こういうふうに承知をしておるわけですが、このとおりであるか、どういうふうにされておるのか。中曽根長官お話しになったように、五〇%以内というのはいつごろ実施をするのか。
  12. 高橋進

    高橋説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生お話にございました数字につきましては、ちょうどその時点での数字を持ち合わせておりませんので正確かどうか確認できませんが、いま私の手元にございます五十七年一月一日現在におきましては、建設省所管におきます特殊法人全体の役員六十八人中、国家公務員からの直接の就任者及びこれに準ずる者が五十名ということで、七三・五%という率でございます。先ほどの政府全体の数字よりも大分高うございますが、基本的な考え方、これは政府閣議決定に基づきまして行っておるわけでございまして、今後できるだけ早く適材適所の任用を図りながら部内登用の者を高めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  13. 甕滋

    甕説明員 農林水産省におきましても閣議了解の趣旨に沿いまして従来努力をしてまいっておりますが、国家公務員出身者が占める割合につきましては現在のところ全体で六〇%となっております。閣議了解の五〇%に近づけますように今後とも努力をしてまいりたいと思います。  なお、御指摘国家公務員出身者一〇〇%の法人でございますが、例に挙げられましたような法人についてそういう実態になっております。民間から登用できる人材をさらに求めまして、内部登用も含めまして今後とも努力するつもりでおります。
  14. 野坂浩賢

    野坂分科員 長官、いまお話をお聞きのとおりでありまして、七三・五%、六〇%。民間にはそういうふうに人材がないというお考えでしょうか、これがまず一点。  それから、適材適所主義ということを盛んに言われますけれども、適材は民間にも多数おるだろう、こういうふうに考えておるわけです。しかも、四十年に決められてから十七年、再度確認をされてからも五年たっておるわけであります。これがなかなか整理ができないというのは何が理由だというふうにお考えでしょうか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特殊法人性格によりましていろいろケースが違うと思いますが、やはり遅々として進まないという状況ははなはだ遺憾でございます。恐らく縄張り意識というものが多少残っているんではないかと思います。
  16. 野坂浩賢

    野坂分科員 縄張り意識を一掃されるように期待をするわけであります。  それから、たらい回しは一回限りだということでありますが、これはそうむずかしいことではないと思うのです。実例としては一回以上の方がたくさんあるように承知をしておりますが、建設省農林省から、両方から聞きましょう。両方から、一回限りということは厳守をされておりますか、されておりませんか、それだけ……。
  17. 高橋進

    高橋説明員 お答えいたします。  過去におきましては、いわゆるたらい回しということがあったかと思いますが、現在のところいわゆるたらい回しということをしないという方針でやっております。
  18. 甕滋

    甕説明員 御指摘たらい回し的人事についてでございますが、過去においては幾つケースがございます。現状におきましては、閣議決定の線に沿いまして厳正に運用しております。
  19. 野坂浩賢

    野坂分科員 私、十分調査をしておりませんので、ここではっきりしたことは申し上げることはできませんが、たとえば農業者年金基金協会に、農林漁業金融公庫に、日本中央競馬会に、こういうケースがたくさんありますね。一遍調べて資料として提出をしていただきたい、こう思います。いいですね。
  20. 小渕恵三

    小渕主査 よろしいですか。
  21. 甕滋

    甕説明員 調製いたしましてお届けしたいと思います。
  22. 野坂浩賢

    野坂分科員 特殊法人にはいろいろあるわけでありますが、大蔵省及び主務官庁特殊法人指導監督をする立場にある、こういうふうに考えておるわけであります。特に、協議法人等はその主務官庁大蔵省が指導し監督を厳重にやっておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  23. 水谷文彦

    水谷説明員 お答えをいたします。  特殊法人は現在百八ございましょうか、そのうちいろんな面で主務大臣承認をする、あるいはその承認に際しまして大蔵大臣協議に応ずるという法人が現在五十五ございます。ただ、その五十五と申し上げますのは、ただいま御議論いただいております職員給与あるいは退職金とか、そういった面につきましての協議でございます。それが五十五法人ございます。
  24. 野坂浩賢

    野坂分科員 それではお尋ねをしますが、大蔵省所管をしておる法人五十六ですか、それについて指導監督をされるわけですけれども、そうすると、役員が十五人も二十人も要らなくて、まあ係長程度の者が一人おればあとは何でもかんでも大蔵省がやっていくということになるんじゃないかとも思うのです。  まあその質疑は別にして、この労働者諸君たちが、特殊法人統廃合によりまして、それがなくなる場合がありますね。その場合、そこに勤務しておる従業員の皆さんは、他の特殊法人に救う。それは切ってしまわないで、その人たちは他の特殊法人の方に転勤をさせる、拾っていくということになるわけですか、長官どうでしょう。——どなたでも結構ですが。
  25. 佐倉尚

    佐倉政府委員 特殊法人、いま先生の御指摘のような統廃合による職員の処遇につきまして、各法人理事者あるいはその主務官庁においてできる限りの措置がとられるべきものだというふうに考えております。  それで、過去の統廃合におきまして、各法人理事者あるいはそれぞれの主務官庁におきまして、本人希望ももちろん聞きながら就職あっせん等の所要の措置がとられてまいったわけでございます。  それで、いま申し上げましたように、基本的にはそういうふうに本人希望あるいは理事者側主務官庁というところで就職あっせん等措置をとっているということで推移してきているわけでございます。
  26. 野坂浩賢

    野坂分科員 そこが問題なんですね。たとえば文部省のオリンピックの関係は国立の方にとっていくということは、主務官庁の中ではできますが、いま中曽根長官お話しになりましたようになかなかでき得ない。なかなか整理ができないというのは縄張り根性があるんだ。その縄張りを取って、従業員は他の横断的な体制をとっていかなければ、この主務官庁だけに任せるというところになると非常に問題が起きるだろうと思うのです。なかなかとれないという場合がある。その点については縄張りを取って横断的な職員対策というものを確立すべきだ、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についてはどうですか。
  27. 佐倉尚

    佐倉政府委員 先生ただいま御指摘のような点につきましては、臨時行政調査会等において御審議いただけるものと考えております。  従来、先ほど私が申し上げましたようなことでやっておりますけれども、いま先生の御指摘のような点につきましては、今後ともその辺で結論が出れば、その線に沿って努力してまいりたいというふうに考えております。
  28. 野坂浩賢

    野坂分科員 臨時行政調査会に任せるんじゃなしに、統廃合があれば、その余剰人員というものはどこかで受けていかなければならぬでしょう。切っていくということを考えていないでしょう。だから、それについては、他の不足をしておるような場合にはそちらの方に縄張りを越えてやはりやっていかなければ、安定をした職場ということにならぬ、安心をして生活をするということができない、こういうことになるわけですから、その点は臨時行政調査会で検討するであろうというような人任せじゃなしに、行政管理庁がそういう点については主務官庁に指示し、当該官庁に指示して、それらについては安心をして生活ができる体制を整えるということがあなた方の任務でもあるじゃないですか。どうですか、調査会に任せるというようなことじゃなくて……。
  29. 佐倉尚

    佐倉政府委員 日本航空機製造株式会社とか、それから日本硫安の問題とか、そういうものにつきましては各主務官庁及び理事者側で先ほど申し上げましたような措置努力してとっているわけでございまして、そのように措置いたすことでございますけれども、私が申し上げました先ほどの臨調の問題は、今後長期的に先生指摘のようなものをどういうふうに組織的にやっていくかという点につきましては、臨調等で何らかの御指摘があるのではないかというふうに考えておりますので、そういう御意見等を踏まえつつ十分考えて検討して……(野坂分科員基本ですよ」と呼ぶ)基本的な点につきまして十分考えていきたいと考えているわけであります。(野坂分科員「善処するということですか」と呼ぶ)当然努力し、検討してまいるというふうに考えております。
  30. 野坂浩賢

    野坂分科員 努力し、検討する、首切りではなしに。私が言っておるのは、ここで余れば不足したところに縄張りを越えていけ。言うなれば横断的な人員配置をすべきではないのか。他の新しい人を採用する前に、その余剰人員不足人員のところに縄張りを越えていけ。そうしなければならぬのではないですか、それが基本ではないのですか、こういうことを聞いております。それの答弁をもう一遍お願いします。長官の方がいいですね、これは。
  31. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 野坂さんのお話はごもっともなことでございまして、一つの官庁だけで手に負えないような場合には当然われわれも手助けをし、また内閣としても手助けをして、合理的に調整するようにすべきであると思います。
  32. 野坂浩賢

    野坂分科員 特殊法人というのはそれぞれ労働組合法なり基準法なりあるいは労働法なり、労働三法に準拠して賃金その他は決められる、こういうように私ども理解しておりますが、そのとおりですね。どなたでも結構です。労働省でいいです。
  33. 齋藤邦彦

    齋藤説明員 ただいま先生指摘のように、政府関係特殊法人職員につきましては、いわゆる労働三権というのは完全に保障されているということになっております。
  34. 野坂浩賢

    野坂分科員 そういうことでありますが、大蔵省協議対象になっている特殊法人労働組合がありますね。いま八二年の春闘が始まっておるわけですが、八一年の賃金は決まったところは幾つありますか、あなたのところで。
  35. 水谷文彦

    水谷説明員 お答えいたします。  ただいまの労働省からのお答えの補足でございますけれども特殊法人職員につきましては労働三権が保障されているわけでございます。しかしながら、特殊法人性格というものが公共性が強い、あるいは公益性が強い、しかもその給与等の財源につきましては国からの補助金あるいは交付金財投資金出資金といったいろいろな形で国民の負担に依存しているわけでございます。そういった見地から、特殊法人職員給与規程等につきましては、御案内のように主務大臣承認をする、あるいはその際に大蔵大臣協議に応ずる、こういう仕組みになっているわけでございます。そういった特殊法人が先ほど申し上げました全体で百八ございましょうか、そのうちの五十五特殊法人が、そういった形で大蔵大臣あるいは主務大臣給与決定についてかかわりを持たせていただいている。なお、細かくなりますけれども、いわゆる公庫等政府関係機関につきましては、予算統制を通じましてやはり政府がかかわり合いを持たせていただいておる。それが十二法人ございましょうか、現在そういった形になっております。  それで、そういった主務大臣承認をし、あるいは協議に応ずる場合に、それはある程度基準がなければいけないでしょうということで、私どもは、各法人給与規程について承認ないし協議に応じます場合の基準は、やはり国民理解を得られるようなできるだけ客観的、妥当な基準でなければいけないだろうということで、給与につきましては、国会の御承認を受けました国家公務員給与に準拠することが適当であろうという考えでやってきております。国家公務員給与に準拠するということがとりもなおさず国会の御承認を受けたものに準拠することであり、かつ、それが国民理解を得られるゆえんであろうということで、基本的には国家公務員給与準拠ということで協議にあずからしておっていただくわけでございます。  しかるときに、ただいま御質問ございました、特殊法人の中でことしの賃金決定がどの程度進んでおるかということでございますけれども、先ほど御説明いたしました五十五法人の中で、先週前の段階で、特殊法人ないしその主務大臣の方から大蔵大臣の方に協議が来ておりますのが約二十ございます。
  36. 野坂浩賢

    野坂分科員 協議が来ておるだけであって、解決をしておるところは幾つですか。簡単に答えてください、五つとか六つとか。
  37. 水谷文彦

    水谷説明員 私どもの方は、主務大臣の方から協議を受けるということは主務大臣がこれでやろうということでございますので、その内訳はよくわかりませんけれども、二十については給与が支払われているであろうと考えております。
  38. 野坂浩賢

    野坂分科員 五十五と十二で六十七ですね。そのうち二十、私が聞いておるところでは六つというふうにけさ聞いてきたのですけれども、あなたの方の御答弁は二十法人ということでございますが、それならそれなりで結構でありますが、八二年になるのに八一年の賃金も決まらない、給与も決まらないというのは一体どこに問題があるかというと、先ほど議論しましたように十五人なり二十人、しかも適材適所主義天下りをされて十分当事者能力もあるだろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、ほとんど決まらない、一年経過してもまだ決まらないというようなことでは、そこに勤務する職員については非常に安定をしない、こういうふうに思うわけですね。それだけの力がない当事者なら、先ほど言いましたように三人なり五人なりに縛ってしまって、あと大蔵省なり主務官庁が前に出てやればいい、こういうかっこうになってくるわけでありますから、余りにも当事者能力がない、それは政府が介入し過ぎるという結果ではないかと思いますが、労働三権も持っておるわけですから、しかも優秀な天下りが行っておるわけですから、当事者能力解決をつける、こういう権限を持たせてやった方がいいではないかというふうに思うわけでありますが、長官、どのようにお考えでしょうか。
  39. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点はまさに臨時行政調査会で検討しておるところでありまして、政府行政の領域の範囲をどの程度までするか、民間の力をどの程度まで伸ばさせるか、その間にある特殊法人というものについてどの程度政府は規制すべきであるか、こういう問題についていま検討して、方向としては政府は余り干渉し過ぎるではないかという意見が有力でございます。
  40. 野坂浩賢

    野坂分科員 そこで、この給与の方法について長官お尋ねをしたいのですが、たとえば私鉄が各個別にやらないで経営者団体と統合してやっておりますですね。それと同様に、同じような性格を持つ特殊法人が何階層かに分けてでもまとまって、たとえば政法連といいますか、特殊法人の経営者の皆さん方と特殊法人の組合の皆さん方とが統一的に交渉して結論を出す、その方が、大蔵省にしても主務官庁にしてもあるいは行政管理庁にしても、いまの省力化といいますか合理化といいますか、そういう意味で、当事者の皆さん方を信頼して、当面大枠そういうかっこうを打ち出す、こういうかっこうの方がむしろいいではないか。たとえば初任給はいま政法連と組合側とが協議して決めておるわけですから、そういう方法をとった方がこれからもスムーズにいくし、生産性の向上もあり得るというふうに考えておりますが、長官はどういうふうにお考えでありましょうか。
  41. 水谷文彦

    水谷説明員 お答えをいたします。  それは特殊法人のあり方の基本にかかわる問題でもあろうかと思いますけれども、私どもの現在のたてまえは、先ほど申し述べました特殊法人公共性なりあるいは国家財政との関連からいたしますと、やはり国がその基本的なところにつきましては関与をさしていただいて、そういった中で当事者の話し合いに任せていただきたいという考えでございまして、ただいまのお話にございましたような初任給につきまして、全体の原資配分の中で初任給にどの程度の配分をするかという配分問題につきましては、お話しの政労協の方で検討し、あるいは交渉されているようでございます。
  42. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間が過ぎましたのでこれで終わらなければなりませんが、いま大蔵省答弁は、給与にかかわる問題については、主務官庁なり大蔵省が締め上げる、こういうことを言っておりますけれども、これだから当事者能力が全く出てこない、決定ができない。それなれば、経営者なり天下りの皆さん方は無能であるということになるわけです。行政管理庁なり第二臨調で十分検討していただきたいと思います。  現在、きょうの午後一時、農用地開発公団とか住宅金融公庫の組合とか全国診療報酬支払基金労組とか、二十三ないし二十六の協議対象法人はもはや、八一年の賃金が決まらぬ、昭和五十六年の賃金が決まらぬ、こういうことでは日本の経済にも暮らしにも大きな影響があるということで、中央労働委員会に提訴をしなければならぬ、こういう事態にまで迫られておるわけであります。これについては、当局側といいますか特殊法人理事者側が中央労働委員会のあっせんに応ずるように、政府としては働きかけて早く解決をしていただきたい、こういうふうに思っております。そのようにしていただきたい、こういうことを申し上げておきますが、どうお考えでしょう。
  43. 齋藤邦彦

    齋藤説明員 先生指摘いただきましたように、中央労働委員会に特殊法人関係の組合があっせんを申請するという話を情報として聞いておるわけでございますけれども、あっせんに応ずるかどうかということはすべて理事者側がお考えになることだろうと思いますので、そういう意味で、あっせんに応ずるなとか、あるいはこういう場合にはあっせんに応じろとかいうことを政府として統一的に指導するというのはいかがかというふうに考えておる次第でございます。
  44. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がありませんからこれで終わりますが、八一年の賃金が八二年になっても決まらない、しかも当事者能力政府側がむしろ抑えておる、こういう現状であります。したがって、労働三権を持つ労働者が法的な機関であります中央労働委員会に提訴するのは当然であります。一般の民間であるならば素直にそのテーブルに着くというのが姿でありますが、これについて労働省側としては、どう対応するかその推移を見守るというようなことでは、問題解決にならぬわけでありますから、早急に解決ができるようにテーブルに着いて、そのあっせん等についての協議を十分にするという姿をとってほしいというふうに考えるわけであります。最後に、行政管理庁長官中曽根長官にそういう努力をしていただきたいという希望を述べるわけですが、それに対しての考え方を述べていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 関係者の御要望を体しての野坂委員の御発言と思いますが、御意見として傾聴いたしたいと思います。
  46. 小渕恵三

    小渕主査 これにて野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして行政管理庁についての質疑は終了いたしました。
  47. 小渕恵三

    小渕主査 次に、科学技術庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  48. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 私は、茨城県の筑波研究学園の延長線の上に六十年に開かれる科学技術博覧会、そのことについて関係者に質問したいと思います。  まず最初に、多くの要望があったにもかかわらず、茨城県の筑波研究学園に、谷田部町にこの科学博覧会の場所が設定されたということについて、御努力をいただいたことに対しては地元選出として感謝をしたいと思います。  そこで、これからが問題なんですね。私は、昨年の二月二十六日に、科学技術博覧会の促進法の審議の際にいろいろな質疑を行いましたが、幾つかの問題について明らかになっていない点がありますから、この点について一つずつ質問していきます。  この土地は、すでに博覧会が行われた大阪や沖縄と違って、非常に僻地であります。したがって、この科学博覧会の実施ということと地元の関係というものは非常に大事でありまして、これは国土庁にも関係をしますが、当初、茨城県の筑波研究学園をつくるときに、東京あるいはその周辺の過密の解消、過密過疎の一掃ということと、集中した研究ということがねらいであったと思いますが、実際のところ、五十四年に概成をしてみると、いまだに人口の移転がおくれている。これはまた別な委員会で問題にしますが、たとえば公務員の住宅も一万戸予定をしているものが七千台でとまる。さらに、建てた中に空き家がずいぶんあるというような状態を考えてみると、これからこの科学技術博覧会がそういう欠陥を補って、なお目的を達し得るかどうかという点が実は問題であるわけであります。  法案の審議の際に幾項かの附帯決議をしたわけですけれども、その附帯決議等は、今日の段階でどの程度満たされているのかという点について、まず関係者お尋ねをしたいと思います。
  49. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 博覧会につきましては、現在準備中でございまして、六十年の三月から六カ月間筑波研究学園都市で開催するということになっております。開催に必要な手続につきましてはすでに完了しておりまして、あと会場の計画それから政府の出展の計画、輸送対策等々につきまして準備を進めていかなければならないわけでございます。  まず、会場の建設につきまして、五十七年度の予算に盛られましたのは、敷地造成についての経費と、あと道路とか電力、ガス等の基礎施設の整備について費用が盛られております。また、緑地とか公園及び歩行者の道路につきましても設計工事をすることになっております。また、外国展示館のうちの一部の展示館につきましての設計等に要する事業につきまして、補助金として合計三十億円が計上されておるところでございます。そのように準備が着々進んでおるということでございます。
  50. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 準備が進んでいるといっても、一番心配しているのは、輸送対策が一番問題だと思うのですね。六十年の三月十五日から九月の十五日ごろまでの間、六カ月間に約二千万とも言われる観客がそこに来られるということになると、その中で鉄道あるいはマイカー、バス等々が考えられるわけですが、現在の道路等では、いまの交通だけでもかなりいっぱいになっておるときに、さらに一日平均十万人という往来があるとすれば、これはあることが予定されていますが、その基礎になっている人数の計算は、何によってそういう二千万という数を出されたのか、そしてそれをどういう形で輸送をされようとしているのか、この輸送問題について、今日までの考えをお聞きしたい。
  51. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 博覧会の入場者の数につきましては、会場計画とか輸送計画、資金計画等を検討するための基礎的な数値となるものでございますので、できるだけ正確な予測をすることが重要でございます。しかしながら、こういう予測というのは非常にむずかしい問題でございまして、過去において開催されました万博、大阪の万博でございますが、それから沖縄で開かれました海洋博におきましても、それぞれ繰り返して検討が行われております。それらを見ますと、開催の近くなるほど知名度が高くなるというようなこともございまして、入場者の予測精度は向上しておりますけれども、それでも、開催直前の最終予測値におきましても実績とは相当のずれがございます。  しかしながら、できるだけ予測を的確にするというようなことで、当庁におきましても、また博覧会協会の前身でございます博覧会推進協議会におきましても、いろんな手法をもちまして調査をしたところでございますが、その調査結果を踏まえまして入場者数を約二千万人と想定したところでございます。  その輸送につきましては、その二千万人のうちで約半分の一千万人は自動車の利用客というようなことを考えておりまして、残りの一千万人は鉄道利用客ということと予想しております。その観客の輸送対策につきましては、昨年の十一月の六日に開催されました第一回の国際科学技術博覧会関係閣僚会議におきまして、緊急を要する関連事業計画が定められました。  道路につきましては、既設の道路を十分に活用するということを考えておりますが、遠距離からの自動車の利用客の便に供するために、常磐自動車道等の高速道路その他一般道路を整備するとともに、会場周辺の道路を重点的に整備をすることといたしております。  次に、鉄道利用客の大半が利用いたします国鉄常磐線でございますけれども現状では取手から水戸の方面に向かっては輸送力が非常に小さいということもございまして、中距離電車の輸送力増強を図りたいということを考えております。これは東京への通勤客の輸送対策としても考えられるものでございまして、それを逆に水戸の方面へ向かって輸送するということで、両方兼ね合いまして中距離電車の輸送力の増強を図るということを考えております。  また、博覧会の会場に向かいます観客の利便に供するために、常磐線の牛久駅と荒川沖駅の間に臨時駅を設置することに決定されました。  次に、臨時駅から会場への輸送の問題でございますが、会期中にその臨時駅からは約八百三十万人の観客を会場まで輸送する必要があるわけでございます。その輸送につきましては、バス輸送を前提として考えておりまして、現在博覧会協会等におきまして検討が進められておるというところでございます。
  52. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この輸送について三点質問します。  取手から水戸に関して常磐線の輸送力が鈍るという点の中に、柿岡に気象庁の地磁気観測所、これがある。あれば侵されざるものであるという形で前々から、常磐線が複々線にしようとすれば、輸送力を強化しようとすれば、地磁気観測所というものが、どうもそういうことは困る、つまり直流は困るというわけですね。そういうことで退けてきている。いままでそうなんです。一体地磁気観測所というものはそれほど日本の科学にとって大事かどうかということについては、これは別な機会に問題にしなければならない。これは科学技術庁長官ともこれから話をしなければならない問題ですが、地震研究所というものがたくさんあるし、筑波の研究学園の中にも公害研究所がある。あるいは地質調査所がある。国土地理院がある。同じような研究をしているものがたくさんある中で、地磁気観測所はそれほど、あらゆるものをはねのけてそこになければならないのかということになると、これは問題だと思うのですね。これが第一の問題。  それから第二の問題は、いま茨城県では県議会が開かれている。県議会の中で牛久−荒川沖間の駅の問題についてのいろいろのやりとりがある。あの中で、本当に八百何十万という人間が輸送できるような状態になるのかということについていまやりとりをしていることの中で、知事の答弁はかなり批判的な答弁で、したがって、新交通システムというものを新たに考えなければだめではないか、こういうことを言っているわけなんです。そこで、土浦の市長もそれからあの周辺の町村長も、なお別なルートを考えなければこれは十分じゃないじゃないかと言っているのです。これについてもう一度関係者からお答えをいただきたい。
  53. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 地磁気の観測につきましては、地球の科学を研究する上で非常に重要な研究でございまして、しかも連続性が必要だというようなことで、現在柿岡で研究されているわけでございまして、そこにそういう施設があるということで直流はぐあいが悪いということがあって、交流電化ということで電化されておるというような状況でございます。  それから、県議会の話が出ましたが、臨時駅から会場までの輸送というのは非常にむずかしい問題がございます。確かにそのとおりでございまして、先ほど御答弁申し上げましたとおり、現在バス輸送を前提として考えておりますが、しかし、それにかわる新しい新交通システムというようなものが実現可能かどうか、資金面から見ても工期的に見ても可能かどうかというようなことも検討しなければなりません。よりよい方法が見つかればそういう方法をとることも可能かと思いますが、現在、その辺につきまして関係者の間で検討を重ねておるというところでございます。基本といたしましては、現在バスを考えておりますが、やはりバスにおきましても、町の中を通常走っておりますバスとは違うような、大量輸送ができるようなバスというようなものも検討の対象として考えておるところでございます。
  54. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 中川長官にお願いしたいのですが、この地磁気観測所は、確かに日本では明治の初めに東京に研究所ができて、それから大正の初めに柿岡に移っていった。いまちょうど百年目を迎えて、移ってから七十年目である。それからもう一つは、旧樺太、いまのサハリンの豊原から北海道の女満別に移っている。それから鹿屋にもある。三つ日本にはあるのですけれども、これは連続性と言うけれども、戦争の段階ではいろいろの点で中断をしている。これは科学技術庁所管ではなくて運輸省の所管であります。科学技術庁としても、いろいろな地震に関する研究があると思うのですけれども、これはいつの日にか別なところでいろいろ話をしたいと思うのですが、この地磁気観測所が果たしている歴史的な社会的な役割りということについて、ぜひこれは整理をしてもらいたいと思うのです。他の同じ研究所との関係整理をしてもらいたい、これが第一です。  第二は、新交通システムの問題です。間際になってからもう輸送がどうにもならないということでは遅い。だから、できるなら早く新交通システムについて決断をしていただかないと非常にまずくなる。この二点について長官からひとつ伺いたい。
  55. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 地磁気観測につきましては運輸省の所管でいまやっておりますので、運輸省の方に先生の御意見を十分お伝え申し上げたいと思います。  それから、新交通システムの問題でございますが、この点につきましては先ほど御答弁申し上げましたとおり、どういうふうに輸送するのが一番いいかということについて、現在関係者の間で検討を進めておるところでございますので、できるだけ早く結論を出して、どういう形の輸送にすべきかということを決めたいと思っております。
  56. 中川一郎

    ○中川国務大臣 第一番目の地磁気観測所につきましては、これは運輸省の所管でございまして、御指摘の点もございますので、運輸省ともよく相談をしたいと思います。  それから新輸送体系、私どもは非常に頭を痛めておるところでございます。そこで、協会の方でもどう対応するか、いろいろ知恵をしぼっておりますので、支障のないように万全を期すよう、最善の努力をいたしたいと思います。
  57. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この地磁気観測所については、私は非常に疑問を持っておる者の一人なんです。同じような地震の研究をするものがあちこちに出てきている。もっと精密なところだってある。資料が断続しているわけですね。戦争中の資料というのはほとんど使い物になっていない。そういうことから考えてみると、あそこになくちゃならないという理由はどうも乏しい。だとするならば、これは筑波大学の学者、教授陣も、いわんや県でも、県西の開発、輸送のために大変これは、まあ邪魔になるとは言わないけれども、どこかへ移ってもらった方がよろしい、こういう意見なんだから、これから少し県民運動などを起こして騒がしくしなければいけないとも思っているわけです。県民運動、まあそれはがまんしてもらうよりしようがないですね。そういうふうにしなければ世の中は動かないですから。まずそういうことで、これは大いに研究をしていただきたいと思うのです。  次いで、宿泊の問題です。一日に十万と言われる人々が出入りをする場合に、これは外国人も見えますが、この宿泊の設備というのはほとんどないですね。またそのために、半年間の人を入れるためにホテルや宿泊所を準備するほどの金持ちもいない。そこで、一体どういうふうにこの宿泊を考えられているのか。
  58. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 博覧会協会が行いました調査によりますと、博覧会の入場者のうちで四割程度が宿泊を希望しておるというようなことでございまして、さらにこのうちで六割程度が現地の宿泊を希望しているというようなことでございます。このため、博覧会のピーク日に平均二十万人来るというようなことを想定しておりますが、先ほどの数字を入れますと約四万八千人が現地におきます宿泊を希望しているものと想定されております。これに対しまして宿泊収容能力と申しますか、日本観光旅館連盟加盟の旅館等を考えますと、会場を中心にいたします三十キロ圏内におきましては、一日当たり二千人程度の能力があるというにすぎません。水戸、大洗等の茨城県内の主要都市の宿泊能力も限られておりますので、宿泊施設につきましては、基本的には東京を中心とせざるを得ないということを考えております。  観客の利便、交通対策等を考えますと、会場地の周辺におきます宿泊者の収容能力を向上することが重要でございますが、その対策につきまして、博覧会協会とか県当局におかれましてもいろいろと検討をされております。しかし、博覧会が終わりました後の利用状況考えますと、恒久的な宿泊施設を数多くつくるというのはいろいろと問題が生ずるおそれがございます。そういうこともございまして、たとえば民宿とかあるいは民泊とかキャンプ場、オートキャンプ場、そういうようなものを整備するというのが一番現実的な案ではないかというようなことで、現在対応策を検討しておるところでございます。
  59. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 これについて民宿、民泊というものはぜひやってもらいたいと思う。何のために地元の人たちが関心を持っているかというと、科学博覧会が六カ月あるからといって毎日そこへ見に行っているわけじゃない。やはり自分たちの住宅なり何なりが活用される、周辺が少しは変わるということについて関心も高めているわけですから、これは観光協会なり商工会なりそういうもの、あるいは農協、市町村はもちろんですが、ぜひ連絡をして、いまからその準備に取りかかってもらわないと遅いというような感じもしますから、これは地元が歓迎をしているのですから、ぜひ活用してほしい。これは要望します。  次いで問題は、外国人も来るから通訳が必要です。それから暴力装置もなかなかあるからその警備、それから消防、医療、こういった環境の問題についてどのように考えられているか。
  60. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 いろいろな御指摘がございましたけれども、まず医療対策につきましては、会期中の観客の医療の問題、それから従業員の問題、それから開催準備期間中の作業員に対しましても万全の措置を講じなければならないということでございます。そのために、博覧会協会を中心といたしまして、大阪の万博、沖縄の海洋博の場合を参考にしながら医療体制につきまして検討を進めておるところでございますが、医療要員の確保等につきましては、関係各機関の協力を得ることが不可欠でございまして、当庁といたしましては、関係方面の幅広い協力を得まして、万遺漏なきよう対処してまいる所存でございます。  あと通訳問題その他御指摘がございましたけれども、それぞれ重要な問題でございますので、関係機関とよく打ち合わせをいたしまして、準備の万全を期したいと思います。
  61. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この医療問題については、午後から厚生大臣に特に要請をしなければいけないと思う。いまの答弁では、ちょっとこれは物足りないですね。さっぱり何が何だかわけがわからない。  それから、通訳の問題等についても、あそこには筑波大学の教授及び学生、大学院生もいるわけだから、こういう者を活用するなら活用するんだという方向でいまから準備してつくらなければ、急にそこへ集めることもできないでしょう。そういうような少し具体的に物を考える前向きなことができないものなのかどうなのか、もう少しはっきり言ったらどうなんだ。
  62. 下邨昭三

    ○下邨政府委員 通訳の問題につきましては、大阪の万博の場合にもそういうことが得られたと聞いておりますけれども、たとえば地元のボランティア活動というようなことも考えておりまして、あと警備とか消防の問題につきましては、県当局と具体的な詰めをやっていきたいと考えております。
  63. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 中央で物を計画して、何でも中央から人間を連れてくるということじゃなくて、地元にあるエネルギー、できる者を使うという考え方がどうしても足りない。地元からは土地を安く買いさえすればそれでいいんだ。建設は鹿島建設や間組や、ああいう大企業ばかり連れてきて、そしてそれは手抜きをしている。談合をする。これは悪いことばかりしているじゃないか。そういうようなことをやらせて、そして今度は、地元にそういう大学があってりっぱな通訳もいるし、使える者がいる。あるいは農家も、かつては養蚕をやった農家だ。こういう農家というのは、かなりりっぱな部屋をたくさん持っている。これも活用してもらいたいんです、実際は。こういうように地元を活用していくということで関心を高めて、そしてそれに対して協力をしていくという姿勢が足りない。これは別に筑波だけじゃないですよ。それは各地においてもそういうことは言えるわけだから、ぜひそういうふうに考え方を変えてもらわなければ、土地さえ安く買えばあとは何をしてもいいんだというその考え方はよくないんだ。そういう考え方はやめてもらわなければ困る。そしてできるだけ地元のエネルギーを活用する、こういう姿勢になってもらいたいと思うがどうだね。これは大臣だ。
  64. 中川一郎

    ○中川国務大臣 竹内委員も御存じのように、この科学博は、何も科学博だけというだけじゃなくて、せっかくつくった筑波学園都市というものの機能を高めていこう、こういう問題もあるのであって、中央がよければ地元はどうでもいいなんというけちなことでやっておらないことはひとつぜひ理解していただきたい根本の問題です。  そういう意味で、国と地元が協力をして科学博も成功させるし、地元もよくなるようにということでやっておりますので、中央だけよければいいというようなことではやっておらないことをぜひ御理解をいただき、通訳の問題あるいは業者の問題等も、地域の皆さんの納得のいくようにできるだけ協力してまいりますので、いままで御協力いただきましたと同様に御理解と御協力をいただきます。
  65. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 もう時間がなくなったわけですが、最初に申し上げたように、筑波にその位置を決めていただいたことは結構ですが、それの活用の仕方、やり方、それによっては幾つかの問題が出ようと思うし、今日までの進んでいる過程においてはそれほどの大きな誤りはないと思うけれども、どうも役所の答弁がいいかげんで抽象的でわかりにくいのです。  これから一つだけ問題にするのは、跡地利用というところまで考えてもらいたいのです。つまり、これは半年で終わるのです。終わった後の利用をどうするかという問題については、私は再三ここで主張している。それは筑波研究学園の人口が二十万にならない。二十万分の小学校や水やいろいろなものをつくっておきながら十四万何がしでとまってしまった。こういう状態というのは政策上の失敗なんだ。そういう失敗を黙っているわけにはいかない、理想と現実が違っているのですから。そういう点からいってみると、これをどうして二十万の最初に出発したような都市にするのかということについては、もっともっと工夫をしてもらわなければ困る。これは国土庁ですね。国土庁から最後に、そして大臣からそれについて補足をして、私は終わります。
  66. 久保敏行

    ○久保説明員 お答え申し上げます。  筑波研究学園都市は、先生御案内のように研究教育機関等の施設等が概成いたしましたし、基幹的な都市施設もかなりでき上がっておるわけでございますが、しかしながら都市の建設という観点から見ますとまだその途上にございまして、先生指摘のように人口の定着が十分でないというようなこと、それから生活環境の面から見ましても必ずしも十分でないというようないろいろな問題があるわけでございます。国際科学技術博覧会がこの都市で開かれるということは、筑波研究学園都市の発展にとって非常にプラスになると私ども考えておるわけでございますが、御指摘のように博覧会後の跡地利用と申しますか、工業団地の造成とかいろいろな施策が考えられると思いますが、こういったものを積極的に推進いたしまして当初の都市建設の目的が達せられるように国土庁としても努めてまいりたい、このように考えております。
  67. 中川一郎

    ○中川国務大臣 筑波学園都市についての主管庁は国土庁でございまして、いま国土庁から御答弁のあったとおりでございますが、われわれもそういった点に非常に深い関心を持ち、今回の会場決定にもそういった配慮から決定を見た次第でございますし、跡地利用についても工業団地ということを中心に考え、県あるいは産業界の御理解もいただいて、あの地帯の繁栄に長い意味で協力できるよう努力していきたい、こう思っております。
  68. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 終わります。
  69. 小渕恵三

    小渕主査 これにて竹内猛君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  70. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 私は、この際、低レベルの放射性廃棄物の陸地貯蔵施設並びに処分等についてお聞きしたいというふうに思うのですが、その前に、高レベルのいわゆる下川の調査問題で、去年の二月いろいろ御質問申し上げた経過があるのでありますが、あれは五十七年度で調査を終了する、かつ終了次第あの実験施設等については撤去する、こういう長官のお約束をいただいておったのでありますが、それに間違いありませんね。
  71. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答え申し上げます。  下川鉱山におきまして高レベル廃棄物の評価、どういう地層に将来処分をすべきであるかということにつきましての評価の手法の研究をやっているわけでございますが、昨年御答弁申し上げたとおり、五十七年度すなわち来年度で試験を終了し、また試験の終了し次第、その持ち込みました施設、試験設備につきましては撤去するという方針には変わりはございません。
  72. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 この間来新聞紙上等をにぎわしているのでありますが、低レベル放射性廃棄物の陸地貯蔵施設について、その大体の計画概要、つまり規模はこんな程度で、かつその事業主体はどんなことを考えているというようなことのあらましを御説明いただきたいと思います。
  73. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 施設貯蔵につきましては、昭和五十一年の原子力委員会の決定、また昨年六月の総合エネルギー調査会原子力部会の報告を踏まえまして、現在昭和六十年代のできるだけ早い時期に貯蔵が開始できるようにということで、いま実施体制、さらに立地の初期的な調査等々具体的な準備を行いつつあるところでございます。今後関係業界、それから何よりも地元との合意形成を十分に図りながら慎重にその計画を検討してまいりたいと思っております。まだ初期的な検討段階でございますので、具体的な姿をここで提示することはできる段階にございませんけれども、低レベル廃棄物、現在二百リッターのドラム缶でサイト内に厳重に安全に保管されております。  この予測をいたしますと、幾つかの予測がございますが、二百万本あるいは三百万本なり、これは減容効果によって違いますが、二〇〇〇年ぐらいにそのような量になるかと推計されております。これを海と陸にあわせ行うということで、その一部を陸地処分ということで原発のサイトの外の施設貯蔵を集中的につくるという計画を持っております。最終的にどういう、何万本のドラム缶を貯蔵するかによって敷地面積その他変わってまいりますけれども、私どもといたしましては、仮に百二十万本ぐらいのドラム缶を貯蔵するといたしますと、施設面積では二十万平米ぐらい、さらに全体の処分場の面積はさらにその数倍になるかと考えております。
  74. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 去年の十一月五日ですかの科学技術委員会で、これについての概要の説明を草川委員に対してしているわけですね。これをちょっと読んでみますと、「大体千六百億円ぐらいと予測しております。そして、その中で貯蔵できるドラムかんの数は約百二十万本、これは私どもの予測で二〇〇〇年ごろ、昭和七十年に約三百万本ということでございますが、その中の四割は陸に、そして六割は海に処分するという方向で考えますと、そういう数字でございます。」こういう御説明があるわけですね。大体最近の新聞紙上等における内容を見てみると、面積は六百六十万平米とか言っていましたね。その辺のところを少し詳しく言ってください。
  75. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 私どもといたしまして、一応百二十万本を二〇〇〇年に貯蔵すると仮定をいたしましてモデル的に施設の絵を描いてみました結果でございますが、それによりますと、処分場の面積は全体で六百六十万平米、敷地面積は十六万平米ということで、総投資額は、今後のいろいろな変動条件によりますが、現在価額で千六百億円程度を一応想定しております。
  76. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 事業主体は。
  77. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 事業主体につきましては、現在財団法人の原子力環境整備センターが初期的な調査に携わっております。私どもといたしましては、その立地技術面での調査のプロセスで事業主体につきまして関係省庁と御相談しつつ確定をしてまいるということでございます。
  78. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 どうなんですか。これはいろいろおたくの方で出している資料を見ましても、表現が微妙なものですから念を押すんですが、貯蔵そのものが処分、こういうことを考えているんですか。あるいは貯蔵というのは一時的で、貯蔵を終えてから地中処分なり浅層処分なりをしようとするのか、あるいはまた海洋投棄でもしようとするのか。あるいはその両方考えているのか、その辺をちょっと知らせてください。
  79. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 お答えいたします。  昭和五十一年の原子力委員会の決定に、陸地処分の方法として、地中の処分それから施設貯蔵がございますということが明記されております。これが陸上での処分と考えております。それから現在試験投棄等で鋭意努力がされつつあります海洋処分ということがまた一つの形かと思います。  私どもといたしましては、施設貯蔵でございますから当然建物の耐久期間というものがあるわけでございますけれども、これをつないでいけば処分として考えられ得るということで現在検討をしております。
  80. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そうですね。つまり建物に貯蔵すること自身が処分だということでいま計画を進めているということなわけですね。しかし同時に、敷地の状況によっては、そういう貯蔵処分もさることながら、便利のいいのは、差しさわりがなければそこで地中処分だとか、あるいは浅層処分なんということも一緒にできれば一番いいなというようなことも考えているのかどうか、ちょっとお知らせください。
  81. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 通産省といたしましては、現在施設貯蔵、これはすでに原発のサイトの中で安全性等につきまして明確に実証されつつありますということで、商業化が現実的に、すぐの問題としてできるものとして考えております。地中処分につきましては、現在科学技術庁等を中心にさまざまな実証試験が行われつつありますが、将来施設貯蔵が、地中処分が安全性等の実証が終わりました段階で、私どもとして商業化があり得るということでございましたら、施設貯蔵そして地中処分というのを並行して商業的な規模で行い得るということもあり得るかと思います。ただし、現在は実証試験を継続中でございまして、通産省といたしましては明確にその点をお答えすることができません。
  82. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 つまり、いまの同一敷地内で貯蔵もそれから処分もできるというようなことも考えておるかということなんで、後でちょっと補足してください。  それから、この計画は初めて発電所の敷地外で廃棄物を貯蔵したり処分をしたりしようということなわけでありますから、それだけに大変に私は重大なことだと思うのです。そこで、現在の原子炉等規制法では敷地外施設についてはどうするかということがはっきりしてないのじゃないかと思うのですが、これはどう考えていますか。
  83. 赤羽信久

    ○赤羽政府委員 具体的に施設外にどう処分するかということにつきましては、現在原子力委員会の専門部会で施設貯蔵のことも含めまして具体的な進め方を検討しておるところでございます。したがいまして、この結果を待ちまして最終的な法令の整備ということも考えていくべきかと思っております。
  84. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 つまり、法令の整備がなければできぬということですね。
  85. 赤羽信久

    ○赤羽政府委員 現在の規制法におきましては、具体的な施設貯蔵のあり方ということが必ずしも明記されておりません。特に廃棄だけを専門とする事業者という指定がございません。ただし、施設外に貯蔵する場合には、関係政令、府令の定める基準に従って行えという規定だけがあるわけでございます。したがいまして、これを実際の運用の形とあわせて具体的にどういう規定を必要とするか、それも専門部会の検討を待った上で進めてまいりたいということでございます。
  86. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 つまり、変えなければいかぬということですね。
  87. 赤羽信久

    ○赤羽政府委員 現在の法体系のもとでも、部分的な政令、府令の規定だけの改正でいけるか、法律改正を必要とするか、これは具体的な形を見ないとまだ判断できないという状況にあると思われます。
  88. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 いままでのはサイト内で増設したり直したりするものについてでしょう。だから、いまのように発電所の敷地内じゃなくて、日本じゅうの発電所で発生するものをどこかに集めて巨大な集中貯蔵施設をやるというのに、法令の整備なしにそんなことができるわけがないじゃないですか。
  89. 赤羽信久

    ○赤羽政府委員 現在の規制法におきましても、事業所外の廃棄について基準を守らなければいけないという基本的な規定はございます。ですから、施設外の廃棄を一切否定しているわけではございませんが、具体的な形によりましてその規制を万全にするための整備が必要かどうか、その検討をいたすという意味でございます。
  90. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 決まり切っていることをそういつまでも言われても困ると思うのですね。とにかく世界でも例のない大規模なものをいまやろう、こう言っているわけですね。そうすると、当然施設内でちょっと直したり何なりするのとは違うわけですから、現在の法体系でできるわけはないわけでありますが、同時に、地域住民にとってはこれは大変な問題だ。そこで、たとえば知事の意見だとか、あるいは当該の自治体もそうだが、周辺の自治体のそれぞれの意向であるとか、あるいは地域住民の意思であるとか、関係団体の意思であるとか、こういうものをどう徴しようとするのか、それは法律的にどう考えているのか、この辺のところをひとつ知らせてほしいと思う。
  91. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 廃棄物の処分施設を発電所以外でやるということを仮に考えた場合に、地域の方方の御意向、お気持ちというものは当然重要と申しますか、決定的な要因であると考えております。したがいまして、その手続につきまして、いまのところ発電所建設の段階におきます公聴会あるいは公開ヒヤリングといった制度もございますが、そういう手続に準じた形での地域住民の方々の御意向を確かめるという手続は当然必要であろうというふうに考えております。
  92. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 わかりました。ぜひそのようにしてください。少なくとも現在の原発を建設する場合と同様なさまざまな手順というものは当然踏まなければいかぬということだと思います。  先々週、原子力環境整備センターの石原理事がマスコミの皆さんを集めて原子力講座、レクチュアをしたようです。そのことは非常にいいことだと思うのです。それは悪いというのじゃない。非常に結構なことだと思うのですよ。それこそ公開の原則で、してもらうということは大事なことだから、大いにいいことだと思う。その中で、お聞きしますとこういうことを言っているのです。五百カ所くらいの図上調査のうちから三十カ所くらいにしぼった、そのうち数カ所について地方自治体のトップと話し合っている、しかし統一地方選があるから、それが終わってからでなければなかなかはっきりできぬだろうと、ざっくばらんに話しているのです。そのことは、僕がいま言うように悪いことでない。そんなようなことは本当にざっくばらんに国民に話してほしいわけですから、そのことは結構だと思うのです。しかし、要するにその話のように相当なところまで詰まっているようだ。あるいは広瀬理事は、これは某新聞の記事になって出ているわけでありますが、記者に対して、有力候補として十カ所ほどにしぼった中に幌延が入っていると、具体的にこういうことも言っているようですね。こうやってざっくばらんにお話をいただいているのですから、まさか国会でざっくばらんにお話をしないということにはならぬと思いますが、大体その候補地の選考はどの程度までしぼられていますか。
  93. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 御指摘のように、原子力環境整備センターが全国的にいろいろ調査を進めているということは事実でございます。それで、新聞の方々との懇談と申しますかセミナーと申しますか、その席上で、一理事が個人的な見解として申し上げたということも事実のようでございます。一方、われわれが受けております報告では、まだどの地点に、数地点にしぼったという段階に至っていないという正式な報告を受けておりまして、御指摘お話もあったものでございますから、本人も呼びまして確かめたわけでございますが、あくまで一理事としての私見として率直に申し上げたということであるようでございまして、まだどの地点がどうこうということではないというのが、この国会の場におきまして申し上げられる段階でございます。  なお、御指摘の幌延町についてでございますが、何か原子力関係の施設が考えられないかということでいろいろお話があるということは事実でございます。
  94. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 しかし、この前、今度の予算委員会との関連もあって、科学技術庁の皆さん、それから資源エネルギー庁の皆さんにおいでいただいて、社会党の科学技術部会でレクチュアを受けたのです。しかし、そのときにちゃんと僕はお話を聞いていますよ。具体的な地名じゃないですよ。地名じゃないが、五十七年度中に立地のめどをつけて、五十八年度には用地買収というようなことにしていきたい。私メモにちゃんと書いてあるのです、そのときの説明が。だから、余りあれしないで、やはり率直に状況を言ってくださいよ。どのくらいのところまで来ているのですか。
  95. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 先ほど申し上げましたように、立地に関します複数地点に関する調査をいま環境整備センターが行っているというのが現状でございます。
  96. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 複数というのはどのくらいですか。
  97. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 私ども正確にまだ承っておりませんけれども、十数カ所と承っておりますが、その中からいましぼり込んでいるという段階でございます。地元の状況、合意形成のあり方等十分に踏まえて、これからしぼっていくという状況でございます。
  98. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 北海道の幌延がこれは最有力というぐあいに新聞紙上では伝えられているわけであります。去年の六月に、幌延町が陳情に科学技術庁等に出かけていった。かねがね原発等施設について誘致の運動をしていたわけでありますが、この折に、原発は地盤が悪くてだめだ、だから、まあストックサイロとかいう言葉を使ったとか聞くのですが、そういうようなものではどうかという示唆が科学技術庁幹部からあったような話を聞くが、そんな事実はありますか。
  99. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 原子力関係の施設を何か考えてもらえないだろうかというお話が再々ございました。しかし、ストック云々というような示唆をわれわれがしたことは絶対にございません。
  100. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 町は、去年の九月に補正予算を組みまして、十月、十一月に十カ所にボーリングをしているようです。地質調査の結果が十二月に出ておりましたが、当然それはごらんになっていると思いますが、あるいはまた、すでにこのセンターの方ではいろいろな角度での地質調査等やっているというふうに思いますが、そういう点から見て、幌延における立地調査について、立地の可能性といいますか、そういうことをどんなふうに、現在の段階で結構ですが、お感じになっていますか。
  101. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 あの辺の地層が余り強くないという情報は、北海道電力等々を通じましてわれわれ承知しているわけでございますが、まだ具体的にボーリングをやったとかいうような事実につきましては、私ども承知をいたしておりません。
  102. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そうすると、一応北電なんかとは話はしているわけですね。この間ちょっと新聞なんかを見ますと、どうも北電も、これは何か寝耳に水だというような話はしているのですが、いまのお話を聞くとそうでもなさそうであります。  そこで、いまちょっと出ましたように非常に劣悪な地盤条件になっている。あそこはサロベツ原野に続いたところで大変な湿原であります。泥炭等それから砂地のところで、これは相当深いところまできわめて弱いというようなことは、この間、町自身の地質調査なんかでも明らかになっているわけです。しかも、あそこは御承知のように国立公園にまさに交わっているところであって、これは町の陳情書なんかにも書かれているのですが、こういうことが書いてあるんですよ。「幌延町は、日本最後の国立公園と言われる利尻・礼文・サロベツ国立公園の一角を占めています。名山利尻富士、礼文の植物とならんでサロベツ原野二万三千ヘクタールの展望は、まさに日本の冠たる眺望といえましょう。海跡湖の名残りパンケ・ペンケの両沼、湿原をいろどる原生花園、学術的に注目されるコモチカナヘビ、数多くの野鳥など一原逍遥しましたら興味のわくところです。」こういうPRが書かれているのでありますが、そういうところです。国立公園の自然環境に対する影響もきわめて大きいと言わなければいけないと思いますね。こういうさまざまな問題が実はあそこにはあるということはすでに御存じだと思いますが、十分にひとつこういう点を御検討をいただかなくてはいかぬのでないかというふうに思います。  どうも時間がないものですから、科学技術委員会が十一日にありますから、その折に詳しくまたいろいろ聞きたいと思いますが、いまの地盤だとかあるいは国立公園等の関係について、どういうぐあいにお考えになっているかをちょっと後でお答えください。  同時に、大臣にひとつお聞きしたいというふうに思うのです。  私は、この問題というのは、お聞きして、北海道の過疎の悲しみというか苦しみというか、そういうものの悲痛な一つの叫びのような感じがやはりしますですね。だれもそんなものを欲しいとは思わぬのでしょうが、そう言わざるを得ぬという過疎の現実というものがそこにあるのかなという気持ちもしないわけではありません。しかし、どうもそういう過疎の悲しみや貧しさや、そんなものにつけ込むようなことでこういうことを考えられちゃいかぬと僕は思うのですね。いわば北海道開発の基本にかかわる問題でないかというようにも、われわれ北海道に住んでいる者は思うし、これは大臣なんかも北海道出身なんだから、当然そういうことをお感じになっているに違いないというふうに思うのですよ。  それで、いまあっちこっちに発電所がある。北海道には御承知のように発電所はないわけですね。それで、あっちこっちにある発電所の廃棄物をみんな集めて、今度は北海道に持ってきて処分せいということもどうかと思う。それはその発電所の存在の可否についてはいろいろ論議のあるところだ、これはおくとしても、それなら発電所のあるところでそれぞれひとつ処分してほしい。よくトイレなきマンションなんということを言われるわけだけれども、そのトイレの部分だけを北海道に持ってくるというようなやり方は、われわれ納得いかないですよ。この間の下川の問題がある。これはさっき答弁を聞きましたけれどもね。今度はまた幌延だ。(「二区ばかりだ」と呼ぶ者あり)まあ、そういう説もあるのですよ。五区に持っていったらどうだという説もないわけではないのですよ。まあ、二区も五区もそうだけれども、北海道として、大臣、こういうことではうまくないですよ。ぜひひとつ慎重に対処してほしい。そして、いま減容の技術開発をどんどんしているわけでしょう。それはいま二百万本とか三百万本だとか、さっき話があったけれども、しかし、たとえば焼却減容して、灰にしてそれを固化すれば四十分の一になるというのでしょう。いまある七万何千本のやつが二千本で済むと、あなた方の資料でそう書いてあるのですよ。あるいはセメント固化ではなくてアスファルト固化するということなら、五分の一で済むわけでしょう。いま、技術開発をして、そういう施設を片っ端から建てているわけだ。そうしたら、これはおたくの方の資料でいくと、三百万本で、陸がそのうちの四割で海が六割、こう言っている。三百万本になんか全然なるわけないじゃないですか。けた違いじゃないですか。こんないいかげんな資料を出してもらっちゃ困るんですよ。しかも、陸が四割で海が六割と言ったって、いまのような減容をしていったらば、海になんか投げられるわけはないじゃないですか。陸で処分するよりしようがないじゃないですか。それは、海で六割、陸で四割どころか、海はゼロで陸が十割になるということを考えてやっているのじゃないですか。それならそういうぐあいに言ってくださいよ。だめですよ。だから、いま陸地貯蔵施設というものを急いでやらなければいかぬということになっているんでしょう。こういうことなんかもやはり率直に話してもらわなければ、われわれ国会で十分な審議ができませんから、お願い申し上げたいと思いますよ。それぞれお答えいただきたいと思います。
  103. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 低レベルの廃棄物につきまして、できるだけ減容をしよう、量を少なくしようというための技術開発は極力進めているところでございます。したがいまして、試算にございます三百万本という御指摘がございましたが、これはできるだけ減らすという方向で努力をいたしております。今後とも最善の努力を尽くすべきだと考えております。  なお、やはり原子力委員会の考え方といたしましては、陸と海と半分ずつぐらいで最終的な処分をいたしたいという考え方は変わっておりません。全量陸でということは考えていないわけでございます。ただ、海洋処分につきましてはいろいろ御意見がございまして、現在御納得をいただくべく努力中ということでございます。  それから、自然公園あるいは景観等の御意見がございましたが、そういうことについては十分配慮すべきであるというのはこれは当然のことでございまして、自然景観を壊す、あるいは特殊な生物等々についての配慮ということは当然十二分な配慮を払うべきでございまして、そういうものに影響が出ないような対策は、もしそういう事態になりましたならば当然十二分の配慮をすべきであるという御意見につきましては、全く同感でございます。
  104. 中川一郎

    ○中川国務大臣 五十嵐委員から、北海道へ持ってくるのは酷ではないか、過疎につけ込んだやり方だ、こういう率直な御意見もございました。一見そう見えるところもありますが、私が申し上げたいのは、世に言われておるほど危険なものではない、これだけはぜひ認識していただきたい。私も、倉庫に保管してあります発電所等で現物を見てまいりましたし、正直言って抱きついてもみたし、いろいろとやってみて、十分安全性についてはしっかりできている、こういう自信がございます。そこで、現地の人もそういったことを見た結果、これは安全なものだ、世の中で言われておるような危険なものではない、こういう認識から、そういった施設を持ってきてほしい、こういうことになったのだと思います。  しかしながらこの問題は、やはり本人である地元の方々、また関係する北海道の皆さんが認識していただいて、人様はいろいろ言うようだが、北海道の利益になり、また地域振興になる、こういう認識があればできることであって、北海道や地元の方々が、怪しいものであり、北海道へ押しつけるというような気持ちでできるものではありません。ただ、北海道は一つもないではないかということでございますが、なかったことがむしろ北海道開発にとってまずかったと私は思っております。電気料金が安いということが産業誘致に非常に影響いたしますから、やはり安い電気である原子力をやっておった方がよかったのではないかと思います。  まあいずれにしても、どこへ持っていくにしてもいろいろ議論のあるところでございまして、ただ北海道は土地の利、土地が広い、過疎ということも一方ありますが、土地の広さの利益があるという点も配慮をすべきではないかと思いますが、いずれにしても地元の完全な納得の上に成り立つものであって、地元の反対を押し切って、国益だけを考えてやるような気持ちはもちろんありませんし、御指摘の北海道がごみ捨てになる、こういうような批判がないように、私も同じく北海道出身でございますから、その点は慎重にやるように、重々事務当局にも申し上げているところでございます。
  105. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 先ほど申し忘れましたので補足させていただきますが、幌延町のお話がございましたときに、仮に低レベルの廃棄物の貯蔵ということも考えていいという率直な地元の御意見がございました。その報告を申し上げましたときに、私どもが大臣からきつく御下命をいただいたのは、まず国策に沿うものでなければならない、二番目に、北海道地域としての納得が得られるものでなければならない、三番目に、地域の振興に結びつくものでなければならないという三つの御下命をいただきまして、そういう観点で本問題を考えるようにという御下命をいただいておりまして、そういうスクリーンと申しますか、考えをもとにその幌延町のお話を伺い、また考えているというのが現状であるということを申し添えさせていただきます。
  106. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 さっき海と陸の話が出ましたが、おたくの方の資料によっても、あれは何年かな、二、三年前ですか、つまり当時約二十万本ぐらいの発電所のドラム岳の在庫状況の中で、実際に海洋に投棄可能なものは二三%になっているでしょう。そうでしょう。二三%ですよ。しかも六、四というのは逆しまですからね。海の方が六なんですから、わからないんですよ。しかも、これからどんどん減容していくわけだ。減容したものは海になんか投げられる状況のものでないんですからね。大臣、抱きついたと言うけれども、それはセメント固化したもののうんとレベルの低いものじゃないですか。大臣が抱きつくというんですから、なるべく抱きついても大丈夫なものをちゃんと用意したのじゃないでしょうかね。しかし、これからはそうでなくて、たとえばアスファルト固化するということになると、それは五分の一に小さくなるということは、放射能レベルで五倍になるということですよ。焼却して灰にしてそれを固化するということによって四十分の一に圧縮できるということは、それはつまり放射能レベルで言えば四十倍になるということでしょう。そうでしょう。それだけ濃度が高くなるわけでしょう。だから、これから減容を一生懸命やっていくということは、ドラム缶一本当たりの放射能のレベルというものがいままでよりもうんと高くなるということなわけだから、今度は高くなったものに一遍抱きついてごらんなさいよ。  それから、これは御存じだと思うが、一つお知らせしておきますが、去年の六月八日に地区労で、北電であるとか関係のところに、おたくの方まで来ていないかもしれませんが、地元の方で、一応原子力発電所並びに関連施設の誘致あるいは調査について反対であるという申し入れが出ているようですね。それから、今度の問題が出てから、反対の町民会議ができたというようなことで電報なんか来ていました。あるいは新聞紙上にもそれが出ておりましたが、そういう住民の運動も一つあるようですから、大臣が言うように、あくまでも慎重に慎重に、遠い五十年後、百年後、もっと将来の子供たちのことも考えなければ、いま金をもらえるから、五カ年間何億かずつもらっていまの住民が幸せだから、しかし放射性廃棄物は五十年も百年も、われわれの子供や孫のときにあるんだという状況では、これはやはりいいことではないわけです。だから、どうぞそういう面で、あくまでもひとつ慎重に御配慮いただくように要望したいと思います。お答えがあるようですね。
  107. 中川一郎

    ○中川国務大臣 どうも五十嵐委員のお話を聞いていると、いまは安全だけれども将来安全でないものを押しつけるのじゃないか、これはちょっと訂正させていただきまして、仮に減容しても放射線の影響はないということを前提にしてやるのであって、これは技術的にも恐らくまた説明に参りますが、お願いする場合は、抱きついても大丈夫という、本当に石のかたまりという程度のものをお願いするのであって、いまはそうだけれども将来はなんという、ましてや私が見に行ったところは何か用意しておいて、大丈夫なところへ抱きついたのだろうなんというのは誤解に基づくもはなはだしいことでございまして、私は任意に見せていただきたいと、たくさんあるところをあちらこちら抱きついて歩いたので、一本に抱きついて満足しているわけではありませんし、また地元の方方も非常に熱心に、私たち以上に調査をしてそういう気持ちを持っているということでございますので、どうか誤解に基づいて地域の人や第三者の人が不安を抱くようにならないように、この点もひとつ御協力を願いたいと存じます。
  108. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 先生承知のように、放射性廃棄物でございますけれども、年とともに放射能というものは減衰していくものでございますので、何年もたてば普通のコンクリートと同じになってしまうものであるということもぜひ御認識いただきたいと存じます。
  109. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 どうも、もうやめようと思ったけれども、念入りの御説明でありますから……。  しかし、当面減容することによって、従前あったものが一いままで敷地内に積んでいたドラム缶が約二十万本ある。まあ、ドラム缶に入れてないのもあるけれども、入れたと計算すれば現在なら三十万本ぐらいになるのですか。しかし、この放射能のレベルよりも、減容したら減容した分だけ放射能のレベルが高くなることは間違いないでしょう。そうでしょう。そうでないのですか。それが一つですね。  それから、それは長いこと置けば減衰するのはあたりまえの話。それはそういうことですよ。しかし、それは簡単なものではないですね。それが一年や二年で、はい大丈夫というようなことになるものであれば何も心配ない、敷地内に置いておいて後は一般廃棄物と一緒に処理すればいいのだから。そうでないから問題なわけです。だから、それを御理解してくださいと言ったって、そんなものわからないで言っているわけじゃないが、それはなかなか大変なことだと僕は思いますよ。お答えありますか。
  110. 赤羽信久

    ○赤羽政府委員 現在ありますもので減容できるものとできないもの、減容しにくいものとございます。それで、減容すると言っておりますのは手袋とか紙とかいうものでございまして、これですと御指摘のように数十分の一になる場合もございます。ただし、そのものがほとんど汚染がないようなものでございますので、仮に数十倍にふえたといたしましても、やはりそのドラム缶についてのレベルは非常に低いということでございます。  それから減衰のことでございますが、これはいろいろな核種が入っておりますので一概には言えませんが、減衰の速いものと遅いもの平均しまして、一番主であるコバルト60に着目いたしますと、計算上は五十年たてば千分の一のレベルになる、いわゆるただの石になってしまうという計算もできるわけでございます。
  111. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 残念でありますが、あとはこの次の機会にいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  112. 小渕恵三

    小渕主査 これにて五十嵐広三君の質疑は終了いたしました。  次に、沖本泰幸君。     〔主査退席、近藤(元)主査代理着席〕
  113. 沖本泰幸

    沖本分科員 いま原子力の廃棄物の御質問でしたが、私は宇宙の廃棄物について——廃棄物のようなことになるわけですが、御質問したいと思います。  五十三年二月二十八日に衆議院の本会議で原子力衛星規制に関する決議が議決され、さらに参議院でも議決されているわけですが、その中身につきましてもう一度おさらいをしてみたいと思います。   去る一月二十四日、カナダ北部にソ連の原子力衛星が落下した事件は、我が国に強い衝撃を与えた。   原子力衛星が今回のように落下し、その結果、人類が放射能汚染の被害を受けることは、あらゆる手段により防止されなければならない。   よって、政府は速やかに関係諸国と協議し、次の措置を講ずべきである。  一 原子力衛星に関しては、安全確保に万全を期するため、新たな打上げ禁止の検討を含め、厳しい規制措置が国際的に講ぜられるようはかる。  二 周回中の原子力衛星に関する資料の公表を国際的に働きかける。  三 周回中の原子力衛星に関して、監視及び安全確保を目的とする国際協力体制を強化する。なお、政府は右のほか、宇宙関係三条約批准  の準備を促進すべきである。   右決議する。 こういうふうになっておるわけです。  宇宙条約の基本になる月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約は昭和四十二年に発効したわけで、これだけを日本は批准したわけです。そして、その他の宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定、これが救助返還協定、その次が宇宙物体より引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約、これは損害賠償条約、次に、宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約、こういう二条約それから一つの協定はいまだに批准されていない。それに対する国内法の整備もできていないわけですが、これはどういうことになっているわけですか。
  114. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 沖本先生指摘の二条約一協定、残念ながらまだ批准手続がとられておらない状況でございます。この理由は、まず救助返還協定につきましては、宇宙から落ちてきました宇宙物体をどうやって返還するか、あるいは宇宙飛行士をどうやって救助し、どうやってもとの国に返すか、それから登録条約につきましては、どうやって打ち上げた宇宙物体を登録するか、そして何よりも損害賠償条約につきまして、もし日本が加害国になりましたときの財源の手当てあるいは被害国になりましたときの損害賠償金の配分の方法等のいわゆる国内措置がこの二条約一協定を円滑に運営してまいりますためには必要でございまして、この国内措置につきましてまだ国内関係省庁の間での調整がついておらない状況でございます。したがいまして、残念ながらまだ批准の状況に至っていないわけでございます。
  115. 沖本泰幸

    沖本分科員 これのまとめ役は科学技術庁のように聞いておりますけれども、ようおまとめにならないのですか、まとめようとなさらないのですか。どういうことなんですか。
  116. 中川一郎

    ○中川国務大臣 条約批准でございますから外務省が中心になってまとめる、こういうことになっておりますが、科学技術庁が深い関係を持っていることは事実でございまして、国会の決議もございますので、また御指摘もございましたので、できるだけ早く取りまとめるように外務省とも十分相談いたしたいと存じます。
  117. 沖本泰幸

    沖本分科員 結局、通産省は未来産業の関係がある、それから郵政省は通信衛生はうちの方の関係だ、それから気象庁は気象衛星に関する問題は私の方である、運輸省はスペースシャトルの問題が今後もあるので、それから文部省は東大宇宙研の衛星はどうするのだというように、それぞれの言い分が突っ張り合っていて一向に進まないと聞いているのですけれども、宇宙衛星なりあるいは偵察衛星等の衛星を宇宙に打ち上げている国は、ソ連とアメリカと、日本が三番目にあるわけで、日本はすでに二十一個打ち上げておる。ソ連が千五百個、アメリカが九百個、その次に日本で二十一個、こういうことになりますが、この宇宙条約の批准は、米ソを含めてほとんどの国が条約を批准しておるということなんです。それで、いわゆるロケットの破片を入れると、この宇宙に一万個の物体があるわけです。大半のものは大気圏に突入するときに燃え尽きるということなんですけれども、一番問題は、やはりカナダに落ちたように、よその原子力推進で動いている衛星等が放射能をまき散らして大変なことになるということで、衆議院も参議院も一斉にこの決議をしたわけですから、その辺に問題があるわけです。  いろいろ聞いてみますと、科学技術庁の方も原案的なものはおつくりになったわけなんでしょう。各省に案内をして、まとめようとしておる。ところが、その辺が全然行き違ってしまっておって、まとまってこない。結局、いまだに国内法を整備する内容のものまででき上がっていない、こういうことになってきておるから、国際的に大変な不信を買っておるし、批判をされてきておるということになります。貿易の摩擦等もいろいろあるわけですけれども、そういうものに加えて、やはりこういう問題が国際間の問題にもなってくるし、おまけに一番の問題は、宇宙損害の賠償等に関する法案、これは科学技術庁がつくったわけですけれども、日本の国民はこういう問題で被害を受けてももう外国に民事訴訟しかできない、こういうことになるわけで、いつ落ちるかわからないというものが多分に含まれておるということになるわけです。この間はオーストラリアの方へ落ちたけれども、人のいないところへ落っこちたということと、放射能が余りなかったということで終わっているわけです。こういう事態で、日本が三番目の国でありながら全然この問題を放置しておる、国内法の整備もできていないということになると、これは問題だと思うのです。  すでにアメリカからは、スペースシャトルに関していろいろなことで日本の国との間にも案内があり、それに対して一緒に協力していかなければならないような問題もでき上がってくるし、未来に向かってどんどんこういう問題が発展していっておるわけですけれども、いまだに一向に条約の批准ができてないということは、全く何と言われてもしようがないところにあるのじゃないですか。こういう点について、外務省はこれをどうしようとしているのですか、いつまとめるつもりなんですか。
  118. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 沖本委員御指摘のように、いわゆる宇宙先進国、アメリカ、ソ連、イギリス、ドイツ、フランス等々、すべてこの条約を批准し、加入しているわけでございまして、したがいまして、先生指摘の宇宙先進国の三番目の日本としましても、一刻も早くこの条約を批准し、この締約国になりたいという強い希望を持っておるわけでございます。しかしながら、他方、御指摘のように国内措置がとられませんと、ことに損害賠償条約につきましては、その条約に規定されております権利及び義務関係を円滑に履行することはできませんので、国内法の整備につきまして今後とも関係省庁と鋭意調整の上、国内体制をなるべく早くつくりたい、こういうふうに希望しておるわけでございます。
  119. 沖本泰幸

    沖本分科員 関係省庁とはかってというのは、いまから始まる場合にこれからはかっていくことになるのですけれども、最初の骨子になる条約だけは早々と批准してあるわけでしょう。その他、いま言いました二条約と一つの協定そのものが全然進まない。各省庁間の折衝を重ねて、いわゆる協力し合って協定してということなんですけれども、できない理由はどこにあるのですか、どこが反対しているのですか、どういうことがまとまらないのですか。
  120. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 ことに損害賠償条約の中には、もし打ち上げた宇宙物体が落ちた場合に、打ち上げ国が無条件にその損害賠償に応ずるという、いままでの国際法の概念には入ってない新しい概念が規定されておりまして、それを担保しますためには、たとえば両方の、つまり日本が加害国になった場合と日本が被害国になった場合と二つのケース考えられるかと思いますが、日本が加害国になった場合に、ではその財源の手当てをどうするのだという問題、それから、日本が被害国になりました場合は、国がその打ち上げ国から金を取ってきて、それをどうやって被害者に分配するかという問題、こういうふうな国内体制がいまのところまだできてないわけでございます。したがいまして、それが条約に参加する非常に大きな障害になっているわけでございます。
  121. 沖本泰幸

    沖本分科員 あなたはおっしゃらないけれども、結局は、いま言ったように、通産省、郵政省あるいは気象庁の問題、文部省の問題、運輸省の問題、それぞれが自分のところの勝手な言い分をいろいろ言うから、まとまらない。まとめるためには協力し合っていかなければならない。一番の問題は、日本が加害国になったときどうやって賠償するか、そういう中身じゃないですか。そういうことになったときにどこが責任をとるのですか。
  122. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答えします。  ただいま先生指摘のように、この条約の批准に関する準備がおくれている場合でございますけれども、それは必ずしも各省庁間のいろいろな問題があるからということではございませんで、先ほど外務省の方からも説明がございましたように、この条約そのものが国家の無過失責任というものを課しておるという、条約の上でも非常に特殊な条約でございます。そしてまた、そのような条約を批准する以上、各種のそれを担保するような国内の措置を準備しなければならないということでございまして、加害者になった場合、被害者になった場合、それぞれの国内措置についての検討が非常に綿密に行われなければならないということでございます。あるいはまた、見方を変えますと、この条約を批准している国は数多くございますが、どの国を見ましても、この条約のために国内法を準備しているというような例も見当たらないということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、今後国内法を整備する必要があるかどうか、あるいは一般的な国内措置でもって対応できるかどうか、そういう取り扱いについて関係省庁との間で話し合いを繰り返してきているというのがいまの実情でございます。
  123. 沖本泰幸

    沖本分科員 国内法をまとめると言ったって、四十二年に批准してからもう十年以上たっているのですね。条約の最初のができてから十年以上たっておる。それから、衆議院、参議院の決議は五十三年ですからね。速やかに批准するように準備しなさい、早くやりなさいということで、国会政府に対して迫っているのでしょう。それがいまだにまとまらないのだ、あるいはこういうところが問題でまとまらないということがわかっていて、これはなかなかまとまりそうにもないということなら話はわかりますけれども、その辺一切おっしゃらずに、各省間の調整をいまとっております、それで国内法の整備もまだなかなか、こういうことでは、いつの日になったら批准ができるのですか。おまけにスペースシャトルにまで日本の国は踏み込んでいって、おつき合いしましょう、宇宙開発について一緒になってやっていきましょうというところまでどんどんいっているわけでしょう。  それで、先ほどもお話ししたように、米ソに次いで日本が三番目なんです。一番の問題は、その他の国は打ち上げていないから、損害を賠償してもらう方の国だから、どんどん皆批准しているという向きもあるわけですけれどもね。それでは、米ソが批准したのは、どういう内容の批准をしておるわけなんですか。
  124. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 宇宙三条約と国内法の関係につきまして、よその国の例を調べたわけでございます。アメリカ、イギリス、カナダ、西ドイツ、オーストラリアの五カ国を調べたわけでございますけれども、先ほど科学技術庁の方からも答弁申し上げましたように、いずれの国も国内法は新しい立法措置はとってないわけでございます。各国とも、もしそういったような事態が来た場合には臨機応変に対処できる、こういうようなことでこの三条約に加入したわけでございますが、ただ、アメリカはその後、損害賠償条約につきましては、無過失責任の原則に従って賠償を行うための法律をつくっております。それからまた、西ドイツ、オーストラリア、イギリスは、宇宙活動を行うのは国内の政府団体だけだ、したがいまして、政府につきましては政府が責任を持つから、新しい立法措置は要らない、こういう理由でもって、以上調べました国につきましては、立法措置は特にとってないようでございます。
  125. 沖本泰幸

    沖本分科員 そうすると、いわゆる国内法を整備しなくてもやっているというわけですから、日本も同じようにならって、国内法の整備をせずそのまま批准していくことにはならないのですか。ただ、問題は、打ち上げ者に賠償責任があるということになるわけでしょう、賠償する場合の責任は。その他のことは日本の国が責任を持つ、政府が責任を持つ、その辺の関係はどうなるのですか。
  126. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 責任は国家にございます。だれが打ち上げたかに関係なしに、もし日本の人工衛星等々が相手の国に損害を与えました場合には日本国が責任を持つ、こういうことになっております。
  127. 沖本泰幸

    沖本分科員 その責任は日本国が持つけれども、では、その責任を持つところの担当の省庁はどこになるわけですか。
  128. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 ただいま外務省からも答弁いたしましたように、損害が起きた場合におきましては、この条約では一義的には打ち上げを行った国が賠償をするということでございます。その場合に、国は打ち上げた者に対して後から求償をするという手続があるわけでございます。打ち上げ者に対して求償をするということでございます。
  129. 沖本泰幸

    沖本分科員 ただ、責任を政府が持つだけで、さっき私が言ったように、結局は打ち上げた者に賠償の責任を政府が求めるわけでしょう。その辺のことは、打ち上げ者というのはどういうところが打ち上げ者になるわけですか。いま気象衛星、通信衛星が打ち上げられています、そういうところなんですけれども、そのほかのところはどういうことになるわけですか。
  130. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 ただいまも申し上げましたように、この条約上では国が一義的に責任を持つ、それから後で国が打ち上げた者に対して求償をする、条約の上では求償の方法については何ら規定はございません。したがいまして、国内でどのように打ち上げ者に対しまして求償するかというような国内措置は、条約とは別途に検討する必要があるということでございます。
  131. 沖本泰幸

    沖本分科員 その求償、いわゆる請求していって賠償するにしても、賠償するところはやはり政府機関なんでしょう、いまのところは。民間が賠償しなければならないというようなことは、これから将来起きるわけですか。そういうものがネックになっているのですか。政府のどこかの省庁が賠償の責任を持って実際に賠償するということになれば、それは政府の中でまとめられることじゃないのですか。
  132. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 現在わが国におきまして打ち上げを行っておりますのは、実用衛星につきましては宇宙開発事業団、科学衛星につきましては文部省の宇宙科学研究所がそれぞれ打ち上げを行っているわけでございます。現段階におきまして、その他の者が打ち上げをするというような計画は、いまのところまだございません。
  133. 沖本泰幸

    沖本分科員 だから、素人考えお話を聞いていても、それだけ簡単なことがなぜまとまらないのか。何かがあったとき、全部責任を追及されるということになるのじゃありませんか。そういうことをおもんぱかって、衆参で、国会で決議したということになるのじゃないですか。そうすると、決議そのものをほごにしているということにもなりますし、いつそれをまとめますとかなんとかというめどがまだついていない。あるいは省庁間の連絡はどういうふうにとって、どの辺でまとめられるというものでなければ、外務省の方は全体がまとまるのをじっと待っているということになるし、科学技術庁の方は一生懸命心配して見守っている、これじゃいつまでたってもまとまらないじゃありませんか。その辺がどうしてもあいまいもこで、おっしゃること自体が言い逃れ、言いわけに過ぎている。一つもいつまでにまとめようとか、これはぜひとも早急にまとめなければならないとか一ただ科学技術ばかりがどんどん進んでいって、こういう肝心なものがなおざりにされているということ自体がおかしいのじゃありませんか。その辺を諸外国が見たら、日本は何をやっているのだろうというそしりを受けることになるじゃありませんか。  そういうことになりますから、時間ももうぼちぼち来ることになるわけですけれども、大臣は閣議にしょっちゅうお出になっているわけですし、大臣は相当突っ込んだことをおっしゃる大臣でもありますし、自分のところの御担当でもあるわけですから、この辺を閣議でまとめて進めていただく、そして、いまここに至ればこの国会にはなかなか間に合いそうもないと思いますけれども、せめて次の国会には完全にまとめて、国会にもこたえるということは、国民にちゃんとこたえることになる。国際間でもいやな思いをしたり肩身の狭い思いをしなくていいように広げてもらわないと困るわけです。その点、大臣、そういうふうにお計らいしてもらいたいと思いますが……。
  134. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 大臣からも当初答弁がございましたように、確かにいま先生指摘のように、この三条約についての早期批准ということはわが国にとりましても非常に重要なことであると存じますし、また、かつての両院の御決議の御趣旨も、われわれは十分に重く受けとめてやっておるわけでございます。ただ、先ほどからもるる答弁いたしましたように、条約のむずかしさ、そしてまた国内措置の問題というところで、われわれここに批准する以上は、十分に検討を積んだ上でやりたいというような気持ちを持っているわけでございます。ただ、先生いまもお話しのように早期にということでございますので、私ども関係省庁、特に科学技術庁、外務省等を中心に、この問題については今後前向きにこの批准に取り組めるように、その内容等について十分な検討を進めてまいりたい、かように存じます。
  135. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いま担当局長から答弁したように、世界じゅうがもう批准しておりますし、中国、インド等まだやってない国も幾つかありますが、主要国はやっておるようですし、それから国会決議もありますし、また沖本委員からも御指摘がございましたので、早急にできるように最善を尽くしたいと存じます。
  136. 沖本泰幸

    沖本分科員 さっきは委員長は、原子力の廃棄物に対して抱きついても大丈夫というお話をしていらっしゃいましたけれども国民が抱きついても大丈夫な条約を早く批准していただきませんと、何か損害を受けたときに国民自体がどこに持っていっていいかわからないわけです。いわゆる縄張り争いだということは新聞紙上にも大分出ております。だから、各省庁全部ここへ来てもらって、一々言い分を言ってもらいたかったのですが、時間がありませんので外務省だけにとどめたわけですから、その辺の意もくんでいただいて、新聞を読みますと今国会は無理だろうということを書いていますから、せめて次の国会には明らかにしていただきたい、こういうことを要望いたしまして、質問を終わります。
  137. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 これにて沖本泰幸君の質疑は終了いたしました。  次に、鳥居一雄君。
  138. 鳥居一雄

    鳥居分科員 科学技術振興ということで、いまビッグプロジェクトが三つございますね。海洋開発、原子力、それから宇宙開発。私は、宇宙開発、特にロケット開発につきまして何点か伺ってまいりたいと思うのです。  振り返ってみますと、月に第一歩をしるしたその当時は、万年筆型のロケットが打ち上がっていた。こういう時代から、いまNII型ロケットの開発を終え、いよいよCSを今年度の予算の中で来年二月には打ち上げをやろう、一定の技術開発、その評価は惜しむものではありません。昨年はアメリカにおきましてシャトルが実験に成功いたしまして、いよいよこの実用化の段階を迎えた。シャトルにつきまして、宇宙開発委員会あるいは科学技術庁はどういう受けとめ方をしているのだろうか、こう思うのです。  つまり、シャトルの成功前というのは、国策という名のもとにNシリーズあるいはHシリーズのロケット開発が国益につながる大事な問題であった。これを利用するユーザーとしては、CS、通信衛星あるいはBS、放送衛星、気象衛星あるいは科学技術の実験用、こういうユーザーがおりました。それで、八〇年代を展望しますと、NIIの能力として三百五十キロという重量の打ち上げ、八〇年代はともかく一トン、二トンという重量、能力が要請される時代になっているわけです。そこで、国策との接点、これは非常にむずかしい問題だろうと思うのですが、まず、シャトルの成功をどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、ここから伺ってまいりたいと思います。
  139. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  宇宙開発の推進をする母体に宇宙開発委員会がございますが、宇宙開発委員会におきましては昭和五十三年に宇宙政策大綱というのを決めまして、向こう十五カ年間にどのような考え方で日本の宇宙開発を進めたらよろしいかというような大筋を一つ示したものがございます。  当時、すでにスペースシャトルはその計画が着着と進んでおりまして、数年後にはスペースシャトルも打ち上がるであろうというような状況下にあったわけでございます。現に昨年スペースシャトルは成功をしたわけでございまして、当時、宇宙開発委員会が政策大綱の中におきましても、スペースシャトルの問題につきましては、その当時はまだ実際に試験飛行も終わっていない段階ではございますが、わが国のいわば人工衛星あるいはロケットの開発という自主的な路線というものは将来とも守っていくべきであろう、ただし、宇宙空間における有人飛行であるとか、あるいは緩い速度をもって大気圏に再突入して回収するような技術、これは向こう十五年間等を見通した場合においてもなかなか日本の技術では満足にはできないだろう、そういったような場面を想定しまして、そういったようなものにつきましては、当面はわれわれは、たとえば文部省がいまスペースシャトルを使いましてアメリカとの共同でSEPACというような宇宙科学実験、これは粒子線加速器をシャトルに積みまして人工オーロラをつくる実験でございますが、そういったものについての計画をいま着々と進めておりますし、また、私どもはスペースシャトルの無重力空間というものを利用いたしまして、それを使った材料実験をしよう、そういったようなものについてはスペースシャトルを当面大いに利用することは有効ではないかというような考え方を持っているわけでございます。  それ以外の一般的な人工衛星の開発あるいはロケットの開発というものは、われわれはともかく日本の自主技術路線というものを中心に開発をしていくという考え方はいまのところ変えてございませんし、また、スペースシャトルそのものもまだ実験段階でございまして、いまのところまだ二回の飛行が終わったばかりでございますので、今後まだ数回の実験飛行等を終えた上で、実際にどのように実用化の方に進めていくかというような検討がなされることかと存じますので、いまのところはそういったものを見詰めているところでございます。
  140. 鳥居一雄

    鳥居分科員 問題は、実験用に打ち上げるべき軽量級のものの打ち上げ委託、これをシャトルに頼るのだ、そういう道は現に開かれているのだという御説明だと思うのですね。ところが、NIIを使って来年二月に打ち上げしようとしているCS2、CS2a、五十九年二月のCS2b、六十年以降におきましてはCS3を、公社としては大容量通信回線を確保したい、こういうことで計画しています。その間に、八波の波を持つ、一応割り当てを受けましたから、BSを打ち上げなければならないと思うのですね。この打ち上げ経費その他を考えてみますと、たとえばCS2を通信コストで考えてみますと、スペースシャトルを使った打ち上げ経費を計算した場合、それからNIIによる場合とを単純に計算しまして六分の一、こういう計算の数値が出てきております。私たち、通信・放送衛星機構法案を審議いたしましたときに三分の一と指摘いたしましたけれども、今日では、打ち上げ経費の上で六分の一という差が出てきている。この本体の重量級の打ち上げ、これについては十五年を展望して五十三年に確定をしたとおっしゃっています宇宙開発政策大綱、この見直しを含めてその対応が十分なされていいのではないか、こう実際に思うのです。この点についてはいかがでしょう。
  141. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先生指摘のように、重量の大きな人工衛星を、スペースシャトル等にも配慮をしながらどう考えていくのかといったような御趣旨の御質問かと存ずるわけでございます。  私ども、電電公社の人工衛星、大型衛星の打ち上げ等についてのお話等もあるやに聞いておりますけれども、それについては詳しく公式には聞いておりません。  御高承のようにアメリカとソ連、あるいは欧州宇宙機関、これはESAと申しますが、そういった宇宙の先進国と言われている国では、皆みずから打ち上げする手段を持っておりまして、それぞれ自国の衛星需要にこたえて宇宙開発を行っているということからもわかりますように、何と申しましても、先端技術であるところのロケット技術を今後ともわが国に保持することは、宇宙活動におけるわが国の自主性を確保する、そしてまた、わが国全体の技術セキュリティーを確保するという点からも、きわめて意義が深いものではないかと思っているわけでございます。したがいまして、わが国におきましても、みずからの衛星をみずから打ち上げるロケット技術を保持し、そしてまた、必要とする時期にいつでも打ち上げられるような能力を持っているということをしなければ、宇宙開発における自主性が失われてしまう。そしてまた、宇宙開発に関する限り、わが国は後進性からなかなか脱却ができないということになろうかと思うわけでございます。したがいまして、わが国のロケット及び人工衛星についての自主開発の確立について、われわれは目下全力を挙げているところであるわけでございます。  先ほど政策大綱の話を引用いたしまして、五十三年から十五年間を見通したということでございますけれども、今日あることは当時から十分想定していたわけでございます。したがって、いま直ちにこの宇宙政策大綱等をどうこうしようというふうについては、もう少しまだ様子を見る必要があろうかと思います。  ただ、いま先生指摘のように、科学技術の進歩あるいは宇宙利用の状況というものは刻々と変化してまいることもわれわれ十分に存じているわけでございます。したがいまして、将来の方向といたしましては、そういった基本路線の見直しということもあるいはあろうかと思いますけれども、スペースシャトルに関する限り、今後の実験あるいは実用化への状況等を十分に見守りながらその必要性等について検討をしてまいりたい、かように存じます。
  142. 鳥居一雄

    鳥居分科員 宇宙開発政策大綱で今後予定している目下お持ちの計画、これは、私ども、HシリーズのHIまでというふうに記憶し心得ておりますが、どこら辺をめどに考えていらっしゃるのでしょうか。つまり次の段階、昭和六十二年、CS3の打ち上げにHIを使って、重量として五百五十キログラムを目途にしている。ところが需要は一トンから二トン、これを打ち上げてほしいという要求がもうすでにあるわけです。そうなってまいりますと、能力の上から言って、Hシリーズの開発というのがこれに追いつけるのか。先ほど申されました欧州共同開発機構、ESAのアリアンロケットを使う、あるいはシャトルを使う、こういう道しかないのじゃないか。打ち上げ経費の上から言っても非常に安上がりである。そうすると、衛星本体の開発としては国産の技術開発をどんどん進めていくが、ロケット開発についてはある一定のめどを持って、HIIまでの開発にとどめるとか、あるいは目下のところ確定しているHIまででいくのだとか、この辺の見通しについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  143. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  HIのシリーズにつきましては、先ほど申し上げました大綱におきましては、五百ないし八百キログラム程度の静止衛星の打ち上げ能力を持つロケットとして開発をするということでございまして、先ほどから先生指摘の五百五十キログラムと申しますのは、HIを仮に二つのステップに分けるならば、HIのAのステップであるというぐあいに理解をしてよろしいかと私どもは思いますけれども、その後、同じくHIのシリーズにおきましても、できればさらに力の大きいロケット、言ってみれば、大綱では八百キログラムと言っておりますけれども、その八百キログラムが仮に技術的に可能であるならば、千キロすなわち一トン前後まであるいは可能かと存じますが、そういった新しい型のロケットをさらに引き続き検討をするというふうに、大綱でもその道筋が示されておりますし、われわれとしましてもその実現方に努力をしてまいりたいと思うわけでございます。
  144. 鳥居一雄

    鳥居分科員 四年後にはインテルサットで二・二トンの打ち上げをやるというのです。この計画を考えてみますと、HIシリーズ、仮にHIで八百キロ、これを乗せることができたと仮定しまして、昭和六十二年にCS3を打ち上げようという電電公社の要求は一トンクラス、これを乗せざるを得ない、私の調査ではこういうふうに言っております。それでインテルサットが上げようという二・二トン級、これはアリアンロケットあるいはシャトル、どっちかの選択でいくんだ、そうするととてもとても太刀打ちができないわけです。つまり地上回線等地上のマイクロウエーブあるいは同軸ケーブルを使った通信と、それから衛星通信との間のコスト、これを考えてみますと、大体六千キロから一万キロメートルを超えるものについては、現在のNIIロケットを使った場合にとんとんだ。つまり一万キロメートルを上回るという通信の場合には、便宜上計算したものですが、コストが合う。ところが、ともかくCS2の段階で六千キロから一万キロメートルという通信コストを考えてみますと、CS3の場合、もし一トンクラスの大容量通信衛星を打ち上げることが仮にできた場合にはどういうことになるかといいますと、地上回線と比較して、大体千キロメートルを超える程度のものであれば地上回線との間のコストがとんとん。CS3、これをもし重量四トンの衛星を打ち上げることができた場合にはこれがさらに縮まって三百キロメートルになる。これを欧州各国の通信需要の上から言ってコストの比較をしてみますと、公社が二・二トン級の通信衛星の打ち上げを計画し、現在NII型ロケットに頼って打ち上げをしていく、その打ち上げコストとの比較でいきますととても太刀打ちできない、こういう具体的な数字が出ているわけですね。インテルサットでは四年後に二・二トンを上げるという時代に、いま国内の国益だから、国策だからということで、Nシリーズに縛られ、あるいはHIがこれから開発されるであろう、それをCS3で使わなければならない、こういう縛りは実にナンセンスと言わざるを得ないと思うのです。十五年を展望して政策大綱を決めたのだ、これはどういう条件があれば見直しをやるのでしょうか、これを明らかにしていただきたい。
  145. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 政策大綱の見直しについて、どういう条件があるかということを確実に明記したものではございませんけれども、人工衛星等の技術開発の進歩あるいは周辺のもろもろの社会情勢、そういったものを総合的に勘案して、必要があらばという意味で、その時期が来ればあるいは見直しをするということも考えるべきである、そういった意向かと存じます。
  146. 鳥居一雄

    鳥居分科員 そうしますと、ユーザーの方の意向、たとえばNHKがBSを打ち上げる、NHKは受信料収入で支えられている、そういう法人です。度数料で支えられているのがNTTです。NTTの意向あるいはNHKの意向、これはいまの機構の中でこの政策大綱の中に組み入れられますか。
  147. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 現在の段階でもって、政策大綱を直す必要があるかどうかということそのものをまだ検討している段階でございます。  ただいま先生指摘ございますように、大容量化していく方向にある各国の人工衛星開発利用の状況というものを踏まえて、特にコストの面等を考えて、日本としてももう一遍よく考えるべきじゃないかといった御趣旨の御質問かとも存じますが、現段階において、確かにスペースシャトルは、まだ実験段階にあるとはいいながらも、将来ほかの国の人工衛星を打ち上げるということがあるいはあるかもしれません。それをまた前提にして、何回かコストの試算等もかつて出たこともあるようにも私たちも存じ上げておりますし、アリアンヌの場合につきましても、ほかの国の事例等もあるわけでございます。しかしながら、もしわが国が、本当にこれからの大容量衛星の打ち上げというものをほかの国の打ち上げ手段に全部頼るということで推移したとした場合において、今後、十年後、二十年後を見通した場合において、本当にいまからわれわれが技術開発を推し進め、そしてまた、将来われわれが必要とする星を打ち上げるような打ち上げ手段を確保してある場合と、全くそれがなくてすべて人に頼ってしまうといったような場合で、本当に、いま先生もおっしゃいましたように、現段階である種の数字を比較をすれば、外国に打ち上げてもらった方が安いというデータも当然あるわけでございますが、それが遠い将来にわたって、日本の宇宙開発あるいは通信政策というものを考えた場合において、将来とも本当に安いコストで保証されるかというと、その保証はないというのが現状ではないかと思うわけでございます。  したがいまして、われわれは、先ほども申し上げましたように、当面はNIIでございますが、早くHI、そしてまたHIの大型、いわゆるIIの方までなるべく早くその開発を終了しまして、ユーザーさんの方の御需要にもたえ得るように全力をふるってまいりたい。そういった意味におきまして、ユーザーと開発側が長い目で見た日本の宇宙開発利用、そして通信政策といった面で、お互いに協力、協調し合いながら宇宙開発に取り組んでいくというようなことで、われわれとしましては十分に今後とも話し合いを進めてまいりたい、かように存ずるわけでございます。
  148. 鳥居一雄

    鳥居分科員 その論理はよくわかるのですよ。わかるだけに、大変なお荷物になっているわけですよ。だから、たとえば打ち上げ経費を四分六で、ユーザー側が六割、国の予算として四割見るんだ、あるいは打ち上げ後の管理をしていく機構についてはユーザー側がフィフティー・フィフティーで持っていくんだ、これは打ち上げが成功すればいいですよ。「あやめ」の失敗ということもありまして、オール・オア・ナッシングで二百五十億からのものが飛んでしまった。打ち上げ経費まで含めますと、これは大変な費用に実際なっているのだろうと思うのです。  それで、国策としては確かに、よその国のものを頼りにしないでどこまでもという、これはわかるのです。しかし、一定の限度あるいはここまでというもの、コストパフォーマンスですよ。ユーザーとしてはここまではおつき合いできるけれども、この先はとてもとても、こういうものがあるはずです。ですから、利用者側の意向というのが宇宙開発委員会に直接届いていくような機構、これがなければならない。真ん中に郵政省が入って直接の話は聞こえてないはずなんです。  二月二十三日付の新聞報道によりますと、実際に電電公社は、国産ロケットではコストが高い、アメリカのシャトルを利用する方針に決めたという報道がなされました。これはまさしくそのあらわれだろうと思うのです。その翌々年に打ち上げを予定しているNHK、これも同じだと思うのです。これは落っこってしまったという形になった場合にはどうしようもない。すべて受信料収入です。視聴者としては宇宙開発のために国策の一翼を担っているんだ、こういう合意はないんですよ。ですから、六割負担というものの不合理性、こういうものを私は痛切に感じる。  ところで、来年二月打ち上げのCS2、これは衛星部分が幾ら、打ち上げ費用幾ら、それから宇宙保険はどの部分にどういうふうにかかるのか、本年度の予算の中で保険料は幾ら予算化されたのか、ひとつ端的にお答えいただきたい。
  149. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 五十七年度冬季に打ち上げを予定しておりますいま御指摘のCS2でございますが、全体で打ち上げる経費は二百四十億程度かと存じます。そのうち、人工衛星に関係する部分が約九十三億、ロケット部分に相当する経費が百十億程度、そのほかに打ち上げ追跡関係の費用が四十億程度の三つだと存じます。(鳥居分科員「保険は……。」と呼ぶ)保険の関係でございますが、いま保険料として計上しております金額は二十億二千万円でございます。
  150. 鳥居一雄

    鳥居分科員 これは「あやめ」で失敗し「あやめ」二号で失敗し、常識からいきますと、今度のNIIロケットには保険会社としてはお手上げだというのが普通だろうと思うのですね。保険が本当にかかるのですか。どの部分にどういうふうにかかるのですか。
  151. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 再打ち上げに必要な経費は全体で約二百四十億円程度と申し上げたわけでございますが、現在の保険の国際市場の状況から見まして、二百四十億円全部を付保することはなかなかむずかしいということが一点ございます。そのほかに、このCS2につきましてはロケットの予備機を準備してございますので、そのロケットの本体に相当する金額は約百億弱、九十七億円程度でございますが、それを除外しますと、保険金額としましては百四十数億円となります。その百四十数億円に対する保険料が二十億円ということでございます。
  152. 鳥居一雄

    鳥居分科員 最後に、それじゃ大臣に伺いたいと思うのですが、一方におきましては国策という大義がございますね。最近、新聞等でも御承知のとおり貿易摩擦です。私は、国の政策として、開発すべき一定の水準は守らなければならないと思うのです。しかし、コストを全く無視してどこまでもどこまでもおつき合い願っていくという、これはちょっと無理があるのじゃないかと思うのです。そこで一定の限度を決めるべきじゃないか、これが私の意見なのです。  それで、一定の限度と同時に、シャトルの実験前は、シャトルの実験も済んでいませんからシャトルの道はまだまだ、こういうのが当時の議論です。一回飛びました。これは大変有望な、先行き明るいものがある、ユーザーはみんなそう思ったのです。二度成功しました。いよいよ実用化の段階が目の前です。これは実験室を上に打ち上げるというそんな規模の小さいものじゃなくて、大いに私は乗るべきじゃないかと思うのですが、その点中川長官の御意見を伺って、終わりたいと思います。
  153. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 ただいま先生指摘のように、何か一定の限度を設けてはどうかといった御趣旨もあったわけでございますが、先ほどからるる御説明しておりますように、シャトルは二回の実験に成功したとはいうものの、本格的にどのような運用がされるかということはいまのところまだわかっておりませんし、一方、ほかの国に頼むことに比べれば現段階では開発の経費がわが国は高いといったことも十分承知しているわけでございますが、いまの段階において何か限度を設けてというところまで話を詰めることはなかなかむずかしいと存じます。  ただ、先ほどからも申し上げておりますように、われわれとしましてはなるべく早くユーザーの御希望にも沿うことができますように、わが国の宇宙開発の能力を一日も早く高める努力を今後とも積極的にやってまいりたい、かように思うわけでございます。
  154. 中川一郎

    ○中川国務大臣 宇宙利用、宇宙開発についての現実的な提案がございまして、私どもも非常に参考になります。特にスペースシャトルが打ち上がってからユーザーの方々等にいろいろな意見もあるようでございますが、科学技術庁としてはやはり自主技術を持つということが長期的に見て、短期的にはまたいろいろ議論もございましょうが、これだけ進歩したわが国が基本的なものを持たないということは残念なことであり、長期的にしっかりしたものを開発していきたい、こういう路線は踏み外してはならない、こういう基本態度で進みたいと思いますが、現実問題としてまたいろいろありますので、その辺は今後いろいろと相談をしながら、両面成り立つような工夫もしながらやっていきたいと思います。
  155. 鳥居一雄

    鳥居分科員 終わります。
  156. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 これにて鳥居一雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、科学技術庁についての質疑は終了いたしました。
  157. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 次に、北海道開発庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  158. 安井吉典

    安井分科員 先ほどこの分科会で五十嵐委員から、科学技術庁のこまで、低レベル放射性廃棄物陸地処理処分の問題について質問がありました。     〔近藤(元)主査代理退席、横路主査代理着席〕 これはいま北海道で大変重大な問題になっているわけで、私は、北海道開発庁のこの三十分のこまで、北海道開発との関連性だとか、その他基本的な問題について若干のお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  先ほどは、陸地処理処分については六十年代のできるだけ早い機会にやりたいというような政府側の御答弁であります。それまでに必要ないろいろな準備を整えたいというわけでありますが、この際私も重ねて伺いたいのは、まず第一には、どのような段階を踏んで陸地における処理や処分の方法に到達しようとされているのかというその手順、五十七年度の予算の中にもすでに試験研究の費用も計上されているわけでありますが、それらも含めて、どういうような手順でおやりになろうとしているのか。  それから二番目には、専門部会の検討にまつとは言いながら、これはもう全く初めてのことでありますだけに、法令の新しい制定だとか改正が必要ではないかと思います。先ほども法令という言葉をお使いになっているわけであります。またその中に、原発の場合には公開ヒヤリングもやっているのでこういうのも必要だと思いますというようなお話がありましたが、その手順というか法令のありようの中に、原発の場合と全く同じような仕組みを構想されているのか。そして、法律の改正はやはり私は必要だと思いますけれども、それはどうなのか。  つまり、初めは技術的な手段の問題、それから二番目は法令の問題です。お答えいただきたいと思います。
  159. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 お答えいたします。  まず低レベル廃棄物の処分につきましては、先生承知のように海洋処分と陸上処分ということで、自来、原子力委員会の決定に沿いまして準備を進めているところでございます。  陸上処分については、施設貯蔵、施設によって低レベル廃棄物を貯蔵するという考え方、これは原子力委員会あるいは通産省のエネルギー調査会の報告に出ておりまして、その方向で現在検討を開始しているということであります。最も現実的な方策の一つとして検討を行っているところでございます。  第一に、技術面でございますが、原子力発電所のサイトの中に、現在二百リッターのドラム缶で安全かつ厳重に保管されております。これは将来ふえていくわけでございますが、それに関しまして、すでに実証されているということではございますけれども、地域の方々の御理解国民の方々の御理解を得るために安全性の実証試験を行うべく、来年度から五カ年間で主要な施設のあり方について、具体的にモデルをつくりまして実証していきたいと思っております。  一方、立地手続あるいは法令等についてでございますが、別途科学技術庁の方からもお答えがあるかと思いますが、私どもといたしましては、地元の地域社会の方々の合意形成ということを重要なポイント、必須の条件と考えておりまして、そういう合意を得るためのメカニズムを、原子力発電所あるいはその他の核燃料サイクルの施設の立地のあり方と絡めまして、今後検討をしていきたいと思っております。  第三に、具体的な立地地点の調査でございますが、これは現在のところ、財団法人の原子力環境整備センターがかなりの複数地点について初期的調査を行っているという段階でございまして、私どもは、詳細にまだその調査状況については承ってない状況にあります。しかし、できるだけ国民の皆さん、地域社会の理解を得つつ進めるということを前提に、調査につきましても、できるだけ速やかに具体的に結果が出ますことを期待しております。  それから、法令に関しましては、私ども理解といたしましては、施設貯蔵あるいは陸地のサイト外処分、原発のサイト外処分の安全基準につきましては、すでに原子炉等規制法の三十五条で「保安のために必要な措置を講じなければならない。」とされておりまして、これに基づきまして所要の規制、安全性の担保のための措置がとられると考えております。
  160. 安井吉典

    安井分科員 そうすると、法令の問題についてはいまの規制でいいようにいまの御答弁から聞こえるわけですが、そうではなしに、これは全く新しいことでしょう。新しいことには新しい規制法がやはり私は必要だと思う。どうですか。
  161. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 現在、核燃料サイクル施設を中心とします規制に関しましては、炉規制法に基づきまして安全性の審査ということを厳密に行うということで法ができ上がっていると理解しております。  陸上処分の際の安全の基準、これは現行の法体系のもとで保安のために必要な措置を講ずる。この基準のつくり方はまた別途詳細な当局の基準ができ上がるかと思いますが、現行法で安全に関してはいいかと思っております。  それで、あとは廃棄の事業をいかにするかということに関係いたしまして、その貯蔵のためにどうするかということは、実施主体をどうするかということとの関連で法令上の問題が、現行法でできる、あるいは新たな措置が必要であるという感じになるという状況になると思っております。現時点では、私どもといたしましては、その点の廃棄事業をどうするかにつきましては、先ほど科学技術庁から御答弁いただきましたように、専門部会で検討中で、その結果を見て早急に体制を整えていくということになろうかと思っております。
  162. 安井吉典

    安井分科員 先ほどはコマーシャルベースでやる道も考えているというふうな御答弁であったわけでありますが、そうなれば、もういよいよ規制というものを明確にしない限り、これは軽々と進めないと思います。やはり法律がどんなことがあっても必要なんじゃないですかね。国会のきちっとした合意というものがない限り、軽々しく進めるべきような問題ではないと思いますが、どうですか。
  163. 笹谷勇

    ○笹谷説明員 先ほど安全局長からも御説明したかと思いますが、現在、原子力委員会の方で施設貯蔵を含めましてその具体的な進め方について検討が進められております。それ以降、事業主体を含めてさらに具体化が進められていくと思いますので、その辺が明確にならなければ——先ほど通産省からお答えしたような形で、施設貯蔵についての安全面は現在の法令で規制ができるわけですが、その民営化とかその辺になりますと、具体的になった段階で検討していかなければならないのじゃないか、こう思っております。
  164. 安井吉典

    安井分科員 では、この問題については今度科学技術委員会がありますので、その際にさらに詰めたいと思います。  いずれにしても、これは世界じゅうで無類の嫌われ者なんですね、このことだけは明らかであります。現在、西太平洋への海洋投棄計画が、太平洋諸島の住民の反対で全く立ち往生しているということも紛れもない事実です。これはいつ解決できるのです。解決のしようがないでしょう。それができないままにいま陸地処分を出してきているだけに、ああこれはもう河岸をかえて、海がだめなら陸へ、そういうことじゃないかとだれでも思わざるを得ないわけであります。そこへ幌延町長からの陳情があって渡りに船というのは、私は、どうも安易ないまの政府の取り組みではなかろうかと思います。  外国に再処理を委託しても、やはり廃棄物はまた戻ってくるわけですよ。外国だって技術もないし明確なあれもないし、そんな邪魔者は要らないものですからみんな戻ってくる。何もかも、海上もだめ、外国からも戻されてくる。しかも原発のサイト内に置いてあるわけでありますけれども、できるのならずっとそこに置けばいいじゃないですか。しかし、それは地元に反対を受けているわけでしょう。地元の人には、これは一時保管であって、永久保管は別のところに持っていきます、だから許してくださいというふうなことで、地元の人はようやくいま納得しているんでしょう。だからゆるしてくださいとゆうふうなことで、地元の人はようやくいま納得しているんでしょう。だから、原発の立地点などというのは、原発はいずれは廃墟になるわけで、この処理もまだ決まってないけれども、そういう重大な問題もあるわけですからね。そこで納得すればそこに置いておいていいはずですよ。そこでもいかぬと言うわけですからね。  そういうような中で、技術も完全に開発されたというわけでもないし、法令もまだまだ検討が必要なところがたくさんあるというその無類の嫌われ者をいまどうするか。そういう中で北海道が浮かび、幌延が出てきている、こういうような状況であろうと思います。幌延がなぜ浮かんだかということについては、午前中もいろいろお話がありましたから重ねて伺うことはいたしませんけれども、たくさんの地点の中から数地点を圧縮して、その中に幌延が入っている、そういうような言い方をなさったと私は思いますけれども、その圧縮された中に幌延以外に北海道の地点がありますか。それを伺います。あるかないか、それだけ伺いたい。
  165. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 環境整備センターが現在自主的に調査を進めておりますが、具体的に個別名詞としてそれ以外には私どもとしては承っておりません。
  166. 安井吉典

    安井分科員 じゃ、いままで詰められた地点の中で北海道で出ているのは幌延だけだと、そう理解していいわけですね。
  167. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 幌延地域を含めまして、もう少し広い範囲にわたって、非常にラフな調査で机上調査、地質調査等を行っておると聞いております。
  168. 安井吉典

    安井分科員 北海道以外に有力な地点はないのですか。数地点ということですからまだほかにあるはずですね。どこですか。
  169. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 先ほども答弁さしていただきましたが、現段階では、机上調査、それにわずかな踏査調査を含みまして概括的な基礎調査を行っているという段階でございまして、有力地点というようなものは浮かび上がってきておりません。私どもは、幌延町につきましては、地元がそういう意向を持っておられるということを承っているということでございます。
  170. 安井吉典

    安井分科員 そうしますと、いまの御答弁からすれば、全国で何地区というけれども、しかし、いまのところはもう幌延に集中して、センターの方もエネルギー庁の方も考えているんだというふうなことにどうもとらざるを得ないわけですがね、そういう理解でいいんですか。
  171. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 地元の御意向という意味では、私ども承っておりますのは幌延町ということでございます。ただ、原子力環境整備センターのサイドに立って行っております調査につきましては、かなりの複数個所、全く同じような考え方で行っていると聞いております。
  172. 安井吉典

    安井分科員 その個所は、いまここではおっしゃっていただけませんか。
  173. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 現在のところ非常に初期的な調査でございまして、具体的な地点としてまだ申し上げにくい状況にあるかと聞いております。
  174. 安井吉典

    安井分科員 北海道開発という視点から、私はこの問題をもう少し見てみる必要があると思うわけであります。  北海道開発法によって北海道の開発が国家事業として進められているわけですが、そういう際に、幌延町なら幌延町に核のごみ処分が行われるということは、これは幌延町だけの問題じゃなしに、わが愛する美しい郷土北海道にそういう処分地点が置かれる、こういうことであります。単に幌延町の町長さんが言われたからということじゃなしに、北海道という全体の中で問題をやはり理解していく必要があると思うわけであります。だから、道民感情として日本じゅうの廃棄物のごみ全員集合、そういうことでどこでも嫌われている、世界じゅうに嫌われているものを、美しい郷土北海道にそんなもの持ってきていいのかどうかという、そういう道民感情の方が私はどうも先のような気がするわけであります。ですから、北海道開発計画とは一体何なのか、もっとその原点に立った検討が私は必要ではないかと思うわけです。いままで私どもは、北海道は食糧基地だとか、道民生活の向上が必要だとか、そういうようないろいろな決まり文句を聞いてきたわけでありますけれども、しかし、核のごみ捨て場まで北海道にどうしてももらわなければいけないというそういう筋ではないような気がするわけであります。それがどうも宝物だというその物の考え方自体がおかしいと思うわけであります。  もっとも、この幌延町が置かれている現実も、これも非常に厳しいものがあると思います。しかし、これは幌延町だけじゃなしに、北海道全体の問題でもあるわけですね。今日までかなりの財政投資あるいは融資が農村に対してもなされてきたことは間違いありません。しかし、それによって酪農地帯は家畜の数はふえるし、施設も著しく向上をいたしました。しかしその反面、農村の人口がどんどん減っていく。乳価は生産費を償うものにはならず、そして借金は膨大にふくれ上がってきている、これが酪農地帯を含んだ農村の現状だと思います。ですから幌延町は、牛の数はなるほど九千頭までふえたけれども昭和三十九年の七千四百九十九人の人口が五十七年の一月末には四千十人に減った。ところが、これは単に幌延町だけの問題ではないわけですね。大体において農業基本法ができて去年で二十年になるわけですが、その間に日本の農業人口は半分になりました。農業基本法は一体何だったかという問い直しが行われているわけであります。  しかし、北海道の農村の場合は特にそういうことが言えるわけで、酪農地帯は幌延町と同じような状況がもう至るところにあらわれているわけであります。まだ幌延町には雪印の工場がありますからね。これは道北全体の乳をあそこに集めて、ずいぶんあっちこっちの工場をつぶしましたけれども、あそこだけが生きているわけです。それだけでもまだ救いだということにむしろなるぐらいだと思います。  ですから、そういうふうな中においてこの問題が出てきたというのは、過疎から脱却するのにはもうこれよりないと町長さん思い込んでいる、そういうふうな状況。もう恥も外聞もなく、世界じゅうの嫌われ者だろうと何でもいいから、これによって交付金か何かをがっぽりもらうんだ、こういうふうな言い方をされているようであります。  私は、こうなると北海道の開発計画は何なのかということをもう一度問い直していく必要があると思います。酪農村を、これまでのどうしようもないような、もうこれでおしまいだというような絶望的な気持ちにまで陥れた責任を、開発計画とその推進者は反省しなければならぬと思いますね。その点どうですか、大臣。
  175. 富士野昭典

    ○富士野政府委員 北海道開発計画あるいは北海道開発というものがいかにあるべきか、あるいはどんな目的であるかというようなことを中心にしてお尋ねいただいているかと思いますが、北海道開発では、まず、北海道は日本の食糧基地であるということを一つ言っております。もう一つは、やはり北海道並びに日本の産業構造というものをもう少し高度化していくために残された有力な地点であろうというようなことがあるかと思いますが、そういう趣旨に基づいて現在、昭和五十三年から六十二年までの新北海道総合開発計画という十カ年計画を進めているというのが現状でございます。(安井分科員「核のごみ捨て場が開発なのかということを聞いているわけです」と呼ぶ)  その件について申し上げますと、御存じのように、現在の北海道開発計画というのは昭和五十三年の二月に閣議決定がされてございまして、その開発計画と申しますのは、北海道開発の進むべき方向肴あるとかあるいは施策の基本方針であるとかを取り決めておりまして、どちらかといいますと個々の具体的な事業の詳細については余り記述してないというのが、御存じのように開発計画の内容でございます。その中で原子力に関係いたしましたこととしては、「原子力を含む電源開発を積極的に促進」してまいりたいということを基本方針のところに触れてございます。そういう点から言いまして、現在、先生からお話がありました低レベルの放射性廃棄物の取り扱いをどうするかということが問題になるかと思いますが、その辺の関連から私ども考えていかなければならない、こう思っております。  しかし、いずれにいたしましても、現在この問題についての具体的な内容を私どもまだ承知しておりません。これからだんだんとあるいは具体化されて、その時点で北海道というのがあるいは問題になるのではないかというふうには考えておりますが、その具体化につれて、北海道も含めまして、地元の意向であるとか関係省庁の意見であるとかを参考にしながら、先生のおっしゃっております北海道開発というものにこういう施設がいかに貢献していくかということを検討しながら、具体的な問題について検討してまいりたい、現在はそういうふうに考えております。
  176. 安井吉典

    安井分科員 大臣、これはやはりあなたから明確に答えていただかなければいけませんのは、さっき私が言っているように、これは世界じゅうのどこからも嫌われ者ですよ。それを北海道が開発のために必要だというような形で受けとめる、そういうことが考えられるわけがないじゃないですか。北海道開発とは道民の生活の向上だとか食糧基地をつくるとか、そういうきちっとした方向づけがあるのじゃないですか。そういうものとこのごみの処理場と一体何のかかわりがあるのですか、そのことを明確にお答えください。
  177. 松野幸泰

    ○松野国務大臣 お答えいたします。  新聞に報道された低レベル放射性廃棄物の陸上処分関連施設の立地については、現在具体的な立地点は一切決まってないと聞いているので、幌延町の立地の問題について現在当庁から具体的な答弁を申し上げる状況ではありません。しかしながら、今後地元から立地の円滑な推進方について具体的な要請があった場合には、この問題に対する道の考え方を十分聞いた上で、科学技術庁など関係省庁とも十分連携をとり、北海道総合開発との関連にも配慮しつつ、慎重に検討してまいります。
  178. 安井吉典

    安井分科員 幌延ということで決まったわけでもないし、まだきちっとしぼられたわけでもないというさっきのお話なんですね。だから私は、北海道開発計画と幌延ということじゃなしに、いまの核廃棄物の処分というどこでも嫌がるものが道民の福祉につながるとだれも考えられないわけですよ。そういうものを開発計画の一端のものだとして受け入れるか受け入れないか。もう幌延と言いません。北海道に対して核の廃棄物などというものは受け入れるべきではないのではないか。あなたは岐阜県知事であられたから、岐阜県は困りますと言うが、北海道はいいなんということじゃ答弁になりません。北海道をいい北海道にすることが開発庁の長官のお仕事じゃないですか。そういうお立場から、いい北海道にするためにはこんなものは困りますと明確に一言言っていただきたいわけです。
  179. 松野幸泰

    ○松野国務大臣 お説よく拝聴いたしましたが、北海道庁とも、いま御答弁申し上げましたようによく相談をいたしまして、開発と表裏一体という考えはいかがなものか、さようなことには賛成はそう簡単に私はできない、こういう考えでおりますので、よろしくお願いいたします。
  180. 安井吉典

    安井分科員 大体大臣の言外に含めた意味はわかるような気がします。しかし、もっとこれから進んだ段階で、明確にいまのお気持ちを持っていただきたいわけであります。  最後に一つ、北海道開発庁の廃止の問題が臨調で出てくる可能性もあるわけです。公共事業とかそういったようなものが、二次産業のおくれている北海道には、北海道経済の補いになっているわけです。ここで北海道開発庁がなくなってしまって、北海道開発に対するいろいろな仕事がぐっと後退するようなことになれば、一つの役所の問題じゃなしに、北海道の経済や道民の生活全体につながる問題だと思います。大臣としてその問題に対する御決意を伺いたいと思います。
  181. 松野幸泰

    ○松野国務大臣 臨時行政調査会では、行政改革の課題について種々調査、審議されていると承知しており、このことについていまここで申し上げるのは差し控えたいと思います。  私が所管している北海道開発行政について申し上げると、北海道は国土面積の御承知のように五分の一を占め、豊富な水資源に恵まれ、工業開発の適地や広大な農業開発適地を持つなど、大きな開発可能性を有しており、今後のわが国の増大する人口と産業の望ましい地域配置を実現し、国土の均衡ある発展を図るために大きく寄与し得るところであるので、このような北海道の開発は、わが国経済社会が長期的、安定的な発展を期するためきわめて重要な行政課題であると考えております。  また、御指摘のとおり、北海道経済は公共事業に大きく依存するなど、いまだ産業構造の脆弱性や昨年の未曽有の災害に見られる国土整備水準の不十分が認められるところであり、今後北海道の開発をさらに積極的に進める必要があると考える。北海道開発庁を中心とする北海道開発体制は、北海道の開発をきわめて効果的かつ効率的に推進しており、今後とも必要不可欠と考えております。
  182. 安井吉典

    安井分科員 いまの大臣の御決意を伺っておって私たちも同感する点が多いし、北海道の開発法というものが本当に生きるような、そういう仕組みを実質的につくっていくということですね。形の上でもそうだし実質的にもつくっていくということ。そのことへの期待を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  183. 横路孝弘

    ○横路主査代理 これにて安井吉典君の質疑は終了いたしました。  次に、斎藤実君。
  184. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、北海道開発に関連をいたしまして、北海道の不況対策について伺いたいと思うのですが、経済企画庁が出しました二月四日の地域経済動向、これを見ましても、北海道の経済がきわめて憂慮すべき状態にあるわけでございます。五十七年の一月、電力の需要は、九電力の中でも北海道がきわめて落ち込んでおるわけですね。御承知のように北海道の経済はここ数年来きわめて厳しい状況にあるわけでございまして、鉄鋼ですとかあるいは造船、紙パルプ、セメント、数少ない北海道の基幹的な工業が軒並みに不況でございます。さらにまた、冷害や大水害に見舞われまして、きわめて憂慮すべき事態になっておるわけでございます。公共事業の実質的なマイナスも加えまして、北海道経済の景気回復はその手がかりもつかめない状態だというふうに私は思うわけでございます。  そこで、これらの北海道の景気回復を一体どうするのか、この低迷をしております状態について、どういう状態になっておるのか、具体的にひとつ状況を伺いたいと思います。
  185. 遠山仁人

    ○遠山説明員 わが国の景気は、回復テンポが非常に緩やかでございますけれども、回復基調を維持していると考えております。しかしながら、地域間で景気に破行性が生じていることも事実でございまして、関東とか近畿では、景気は、緩やかでございますが改善の方向にございますけれども、北海道そのほか、東北とか四国、九州なんかでは改善の動きが弱くなっております。  お話しの北海道の地域につきましては、鉱工業の生産、出荷の回復の動きが非常に弱く、それから乗用車の販売台数も落ち込んでいる。それから企業倒産でございますが、一月が再び前年同月の水準をちょっと上回ったということもございます。しかしながら、公共事業の請負金額が、災害復旧工事等の本格化がございまして、前年に比べまして大幅な増加が最近見られます。また、百貨店の販売額が一とろに比べますとやや高い伸びとなっているということで、一部指標には明るさも見られるのではないか、こんな状況ではないかと思われます。
  186. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 昨年十二月の鉱工業生産指数でございますが、前年同月を比べてみますと、北海道はマイナス〇・六、全国ではプラス四・三。非常に格差があるわけですね。雇用の面で見ますと、有効求人倍率では、五十六年十二月で北海道は〇・四二、全国で〇・六九と、これもきわめて低いわけですね。全国では五十二年、五十三年の〇・五六という停滞期間から回復をしていると思うのですね。北海道は五十二年の不況期間から一貫して回復をしていない。また企業倒産も、五十六年十二月一カ月の件数では、北海道で百十六件、全国で千四百七十件、全国から見ると八%の比率を占めておるわけでございます。年間全体で見ればまだこの比率が高くなるだろうと私は思うのですね。  そこでまず、北海道における不況の長期化の原因についてどういうふうに考えているのか、経企庁と開発庁に具体的に伺いたいと思います。
  187. 遠山仁人

    ○遠山説明員 北海道地域の景気が他の地域に比べまして停滞ぎみに推移してまいりました背景には幾つかの点があると思います。  まず、製造業の業種構成を見てみますと、いわゆる素材型業種あるいは食料品製造業、そういった割合がほかの地域に比べまして高いわけでございますが、そういった業種の生産活動が機械工業なんかに比べまして非常に不振である、こういう状況が一つございます。そのほか公共事業への依存度が他の地域に比べまして高いために、その伸び率が鈍化いたしますと、その影響を非常に受けやすい。それからもう一つ、二年続きの冷害あるいは豪雨等によります農作物への被害、こういったものも北海道地域の経済に影響しているのではないか、こんなふうに見ております。
  188. 楢崎泰昌

    ○楢崎政府委員 私どももいま経済企画庁が御答弁なされたのと同じように考えておりますが、特に短期的には昨年の冷害による農産物の減少、そしてまた、財政を中心とする公共事業、それが横ばいに走っているということも一因か、また、先ほど申されましたように、長期的には産業構造の問題がある、そのように認識をいたしております。
  189. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 構造的な原因についてはまた後ほど触れますが、短期的な原因については、いま御答弁があったとおりだと私も認識をしておるわけでございますが、ただ、この開発庁の予算を見てみますと、昭和五十四年、五十五年、五十六年、約七千億、それからずっと横ばいになっているわけですね。五十七年度予算もやはり七千百億ですか、これもまた横ばい。四年間名目で約七千億台ということで、物価上昇を考えた場合に、質的にはこの四年間にわたって毎年数%ずつ減っているわけです。先ほども触れましたように、災害という不幸な事態のために、災害復旧で公共事業は確かに伸びました。しかし、五十七年度のこの横ばいの予算で果たして北海道の経済が上向くかどうかということはきわめて疑問だと私は思うのですが、この五十七年度の予算執行に対して、どういうふうに景気対策として取り組むか、具体的に御答弁いただきたいと思います。
  190. 楢崎泰昌

    ○楢崎政府委員 先生承知のように、五十七年度の予算は、前年度に引き続きまして財政再建という課題をしょって御審議願っておるわけでございます。六月に概算要求、ゼロシーリングということで出発いたしまして、ただいま御審議をいただいております北海道開発予算は総枠七千百十四億余りでございまして、前年度を若干下回っているという状況でございます。仰せのとおり、そういう意味で、北海道は公共事業に対する依存度が非常に高い経済でございます。したがいまして、公共事業そのものが前年度とほぼ横ばいという点からは、北海道経済に対して、前年に対してさらによい影響というわけにはなかなかまいらないように思います。  御審議いただいております五十七年度の予算そのものをごらんいただきますと、内容的には沙流川の総合開発の建設であるとか、地方港湾の白老港の新規着工であるとか、帯広空港の大型ジェット化の着手であるとか、主要な新規事項のほとんどが認められておりまして、将来についての展望を示しているように私ども考えております。いずれにいたしましても、御審議いただいております予算案が成立をいたしましたら、それに沿いまして努力を傾けていきたい、かように考えているところでございます。
  191. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 確かに財政再建とかゼロシーリングということをいま言われましたけれども、私はそれは大事だと思う。しかし、財政再建といっても、むだなものを切り捨てていく、私はこれが財政再建だろうと思うのですが、必要欠くべからざるものについては、これはゼロシーリングとかなんとかといっても、全国画一では私はおかしいと思うのです。北海道というのは歴史が浅い、まだまだ公共投資を必要とする地域でありますから、公共事業の全国のパーセンテージを北海道に当てはめるということは、私はおかしいと思うのですね。したがって、予算の審議中でございますが、明年度はやはり北海道の開発なり公共事業というものについて、不況対策の一環として本州と別なんだという配慮があってしかるべきではないか。先ほども数字を挙げて企画庁から説明がありましたように、もっと北海道の公共事業については重点的に配分すべきではないか。全国一律というのはおかしいし、こういう構造的な北海道の経済の不況を脱却するためには北海道開発庁がひとつがんばってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  192. 楢崎泰昌

    ○楢崎政府委員 お答え申し上げますが、政府全体として公共事業をどうするかという問題が一つあろうかと思います。また、その中で、いま御指摘のように北海道関係の公共事業をどうするかという御指摘だと思います。私どもは、北海道の土地というものが二十一世紀に向けての産業と人口の適正配置に充てるべき土地であるという理念のもとに、北海道につきまして大きな公共事業を継続させていただいているわけでございますが、先生指摘がございました点も踏まえて十分今後とも努力をしていきたい、かように考えております。
  193. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 国の公共事業の伸びが期待できない状態の中で、地方公共団体の事業の伸びを大きくする方策はあるのかないのか、五十七年度の地方財政対策の目玉の一つとして地方自治体の単独事業が大きな柱となると私は思うのですが、北海道の場合は単独事業の伸びはどのように開発庁では考えているのか、伺いたいと思うのです。
  194. 楢崎泰昌

    ○楢崎政府委員 地方公共団体がどのような予算を編成をしているかということは、いまの段階で私どもまだ的確につかんでおりませんが、新聞その他で拝見するところでは、道を初め市町村、各自治体におきまして単独事業を相当数計上し、そして開発の路線に乗っていきたいということを御検討なすっているやに伺っております。
  195. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 自治省にお伺いしますが、地方自治体の単独事業を考えた場合に当然地方債が問題になるわけでございますが、北海道における地方債の実情は、全国平均に比べてどういう状況になっているのか。地方債の起債枠について北海道の景気の状況を考慮して増額することが私は望ましいと思うのですが、いかがですか。
  196. 森繁一

    ○森説明員 お答え申し上げます。  先ほど先生の御指摘になりました昨年の十月の経済対策閣僚会議の結果を踏まえまして、私どもの方から、地方の単独事業につきましては引き続き機動的、積極的にその充実を図られたい、こういう通知をいたしたわけでございます。あわせまして所要の財源につきましては地方債によりまして適切な措置を講ずる、こういう通知をいたしまして、全国の各地方団体に地方単独事業を機動的、積極的に行うように、こういう呼びかけをいたしたわけでございます。  それで、北海道について申し上げますと、それに基づきまして、道分で約三十億、市町村分で約十二億の地方債の追加の要望がございました。これにつきましては、その要望どおりこの一月二十九日にすでに起債を配分してございます。  五十七年度でございますが、これは今後の問題になろうかと思いますが、私ども地方財政計画というのを毎年立てておりまして、この中で、社会資本の整備を計画的に推進いたしますとともに、先ほど来御指摘のありました地域経済の安定的な発展を図らねばいかぬ、こういうことから地方の単独事業につきましては八・五%という伸び率の地方財政計画を編成してございます。その地方財政計画に基づきまして必要な財源はそれぞれ交付税等で図られるわけでありますが、地方債について申し上げますと、地方団体が一番事業のやりやすい一般単独事業について申し上げますと、八%の伸び率ということにいたしておりまして、今後北海道につきましても、道及び関係の市町村の要望を踏まえながら適切に対処をしてまいる所存でございます。
  197. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ぜひひとつ地方自治体の起債の枠の拡大については積極的な御努力をお願いしたい。  次に、北東公庫にお尋ねをいたしたいと思うのですが、御承知のように、北東公庫の地域開発に対応する金融機関としての役割りはきわめて大きいわけでございます。総裁にお伺いいたしますが、北東公庫の金利がきわめて高い。これはもう北海道開発審議会でもたびたび議論になるわけですが、もう少し北東公庫の金利が安くならないのかどうか、まず最初に総裁からひとつお答えいただきたい。
  198. 新保實生

    ○新保説明員 開発公庫の金利体系は基準金利と特別金利という二本立てになっておるわけでございますが、私どもとしましては、北東地域における自然、経済的条件のハンディキャップその他を考えますときには、できるだけこれを低いものにしたいという希望は持っておるわけでございます。しかし、国の政府機関全体の金利体系というものがございまして、その基準金利をプライムレートより下げるということは、一度は予算要求の形で出したこともあるわけでございますけれども、なかなか問題が多うございまして急速な実現はむずかしいような情勢でございます。  そこで、われわれとしましては、一方の特別金利という体系がございますので、そちらで拾い上げられるものはできるだけ拾い上げていくということで、特利の充実拡充ということにこの数年心がけてまいりたわけでございます。五十七年度の予算においても若干それが実現を見ておるわけでございますが、今後もその点について努力をしてまいりたい。  それから、基準金利の面、特別金利の面、両方を通じて中小企業の金利体系というのがまた別建てになっておりまして、これは北海道東北にのみ認められた制度でございまして、たとえば現在で申しますと、一般の基準金利は八・六%でございますけれども、中小企業に関しましてはそれから〇・三%低い金利が適用されております。特別金利につきましても、物によっては中小企業の金利が低いというのがございます。私どもの融資対象の約半分は中小企業でございまして、その恩典を受け得る企業もかなりあるのではないだろうか。しかし、なお今後とも努力してまいりたいと考えております。
  199. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 北東公庫の五十七年度の予算を見ますと、貸出枠が一千六百億でございますね。昨年も一千六百億。その中で特別枠が昨年四百八十億。ことしも一緒なんですが、もう少し特別枠を拡大できないものかというふうに私は思うのです。実は北海道開発の重点ということは工業部門の充実にあるということは、もう私がいまさら申し上げるまでもないことでございますが、この工業部門の発展の中核としての苫東開発は、御承知のように企業立地が非常におくれておるわけでございます。それで、あの広大な土地で売れているのは恐らく二〇%になっていないと私は思うのです。ただ、この苫東の開発事業というものは、現在の経済状況から見て相当長期化するだろうというふうに私は思うわけでございます。したがって、苫東開発は北東公庫から四百億近い融資を受けておるわけでございます。金利が七・九七%、全体で八百億という膨大な借金があるわけでございますが、保有地在庫に見合う借入金の金利負担がきわめて大きいわけです。  そこで、苫東開発は北東公庫から運転資金として五〇%限度内で融資を受けているわけでございますが、この種の長期の事業で、売った土地は分譲後は企業の設備の一環となるわけでございますので、この融資は設備資金並みの七〇%程度の融資をすべきではないかというふうに考えるわけですが、総裁いかがですか。
  200. 新保實生

    ○新保説明員 お尋ねの苫小牧東部開発株式会社に対しましては、公庫も出資をさしていただいておりますし、融資の金額も相当の額に上っておりますので、私どももあの事業がうまく進むようにこいねがっておるものでございますが、約十年たちまして金利負担も相当大きなものになりつつあるということは十分承知しております。  そこで、その金利負担を軽減する方法を講じなければならぬということは私どもも真剣に考えておるわけでございますが、その一つとしまして、先ほど申し上げました特別金利がございますが、その中でも一番低い金利を適用するように努力してまいったつもりでございます。  それから、融資比率の点でございますけれども、これは現在の私どもの公庫業務方法書によりますと、長期の運転資金と設備資金というふうに二つに分類されておりまして、設備資金の方は七〇%以内、運転資金の方は五〇%以内ということで決まっておりまして、この土地造成事業というのは、造成した後、他へ販売するという性格がございますので、運転資金という範疇に所属させて扱われておるわけでございます。しかし、経済的に考えますと、非常に長期間固定する資金でございますので、短期間に回転する運転資金とは違う面があることもまた事実だと思いますが、その点は何か考慮しなければならないのじゃないかと私ども考えておるわけでございます。  しかし、一方において、これは資本金の構成が官民の比率五〇対五〇というふうにあらわれておりますように、融資の金額でも五〇対五〇がいいところではないかというような見方をする向きもございまして、あの会社の全プロジェクトに対して五〇の融資を適用しておるわけでございます。ほかの出資をしていない会社に対しましては七〇という設備資金の融資限度を適用する場合もありますけれども、それはその会社にとりまして幾つかのプロジェクトをたくさんお持ちの中で、そのうちの特別な融資対象になったプロジェクトについて七〇ということで、したがって、その会社が現在借り入れておるすべての設備資金の残高に対しては公庫の融資比率は非常に低いものになってしまうわけでございます。  そういうものとのバランスとか、それから何よりも運転資金である。開発公庫法の法律の改正がございましたときにも、土地造成資金ということは特別に一条を起こしまして改正されておるわけでございますが、そのときに運転資金というふうなことも明確に位置づけられております。しかし、先生が御指摘のようなところもございます。いろいろ困難な問題はございますけれども検討さしていただきたい、こういうふうに考えております。
  201. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 総裁、かつて昭和三十九年十一月に苫小牧港株式会社に対して特例措置として五〇%の枠を外して七〇%程度の融資をしたという例があるわけでございますので、この種の一つの事業の性格から、総裁から検討さしていただきたいという答弁がございましたが、ぜひひとつ前向きな御検討をお願いする次第でございます。  それから、行革と関連をいたしまして、所得格差が解消されたから開発庁や北東公庫は不要だという論議をよく聞くわけでございます。しかし、だんだん私が申し上げましたように、北海道経済というのは体質的にはきわめて弱いし、本州でかぜを引けば北海道が肺炎になってしまうというような体力的な格差は相当あるわけでございます。そこで、この面でも開発庁の果たす役割りというのはきわめて大きいと思うのですが、この行革に対する取り組みも含めて、大臣からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  202. 松野幸泰

    ○松野国務大臣 臨時行政調査会では、行政改革の課題について種々調査審議されていると承知しており、このことについていま申し上げるのは差し控えたい。  私が所管している北海道開発行政について申し上げると、北海道は国土面積の五分の一を占め、豊富な水資源を有し、工業開発の適地や広い農業開発適地を持つなど大きな開発可能性を有しており、今後のわが国の増大する人口と産業の望ましい地域配置を実現し、国土の均衡ある発展を図るために大きく寄与し得るところであるので、このような北海道開発はわが国経済社会が長期的、安定的な発展を期するためにきわめて重要な行政課題であると考える。  また、御指摘のとおり、北海道の経済基盤の脆弱性や昨年の未曽有の災害に見られる国土整備水準の不十分さが認められるところであり、今後北海道の開発をさらに積極的に進める必要があると考える。北海道開発庁を中心とする北海道開発体制は、北海道の開発をきわめて効果的かつ効率的に推進しており、今後とも必要不可欠と考えております。  御承知のように、三十年の歴史を振り返ってみまして、北海道開発庁そしていま御質問のありました北東公庫の果たしてきた使命というものがいかに大きく貢献しておるかということを踏まえながら、行政改革についても十分検討をしていただきたいと考えております。
  203. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣から非常に積極的な所信のお答えがあったわけでございますが、明年度の北海道開発について、予算やあるいは政策的なものも含めて積極的な取り組みをぜひひとつ長官にお願いをして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  204. 横路孝弘

    ○横路主査代理 これにて斎藤実君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして北海道開発庁についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  205. 横路孝弘

    ○横路主査代理 次に、法務省所管について、去る一日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  206. 土井たか子

    ○土井分科員 法務大臣、御承知のとおりにただいま国籍法の一部改正に向けての作業がなされているわけでございますが、法制審議会の作業が所期の予定どおりに進行しているというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。
  207. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨年諮問いたしまして、着々と進んでいると承っておりますけれども政府委員から答弁いたさせます。
  208. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答え申し上げます。  国籍法部会の関係でございますが、たしか本日部会が開かれていると思います。したがいまして、御指摘のとおり順調に進行しているというふうに考えております。
  209. 土井たか子

    ○土井分科員 前法務大臣には、八三年にはこの一部改正案を具体化して国会に提案したいというお約束をいただいているわけでございますが、もちろん坂田法務大臣におかれましても、その点はそのままそれを受け継いでおやりになると私たちは理解をいたしております。そのように考えておいてよろしゅうございますね。
  210. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 前大臣も非常に積極的な気持ちで考えておられたと思いますけれども、私も同様に考えております。
  211. 土井たか子

    ○土井分科員 そういたしますと、八三年にはということでございますから、少なくとも次の通常国会の間には提案されるということを予期しておいてよかろうと思いますが、そのように考えましてよろしゅうございますか。
  212. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点につきましては、法制審議会に諮問をいたしたばかりでございますので、できるだけ法制審議会の意見を尊重いたしまして私どもといたしましては取りかからなければならない。一応諮問をいたしておりますので、どのようなことに相なるかわかりませんけれども、しかし、そのようなことも踏まえて諮問委員会としてはこの問題と取り組んでおられるというふうに私は承知をいたしておるわけでございます。
  213. 土井たか子

    ○土井分科員 さて、いまからお尋ねをいたします中身は一部国籍法にも関連をする部分が少し出てこようかと思いますから、そういう意味も含めてひとつお聞きをいただければ大変結構だと思います。  出入国管理令が改正をされまして、出入国管理及び難民認定法がただいまもう施行されておりますが、この施行につきまして、種々私ども考えておりました点と実際面でちょっとずれがある部分が出てまいっております。その一つをきょうは取り上げてみたいと思いますが、それに先立ちまして、少し御見解を確かめた上でその本題に入りますために、まずお尋ねしたい点は、日本人の配偶者または日本人の子供に対しまして永住許可の内容考える場合に、生計要件であるとか素行要件というものを省略するということに相なっていると思いますが、この点はいかがでございますか。
  214. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そのとおりでございます。
  215. 土井たか子

    ○土井分科員 今度は日本人の配偶者とその子の在留資格について、法四条一項の一六−一を適用するということになると思うのですが、この期間はどのように考えられているわけでありますか。在留期間ですね。
  216. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 期間につきましては三通り考えております。百八十日、一年または三年、そのいずれかを適用することになっております。
  217. 土井たか子

    ○土井分科員 しかし、どうも実際問題については、この一六−一というものがどのように運用されているかというのは、実際面に当たってまいりますと、法務省の自由裁量で決められるという面が非常にあります。一定の観察期間の中に置いといて、そして子供に対して在留資格というものを問題にしていく。その在留資格を問題にした上で、永住についての意思ありやなしやということが問題にされていくわけでありますが、在留期間について、永住申請をする場合に何年在留するということを法務省としてはお考えになっていらっしゃいますか。
  218. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 観察期間というお話が出ましたけれども、先ほど三通りの期間があると御説明したことに関連いたしますけれども、たとえば百八十日というような期間を与えますのは、この人はかなり観察を要する場合でございます。たとえば日本人の配偶者といっても擬装結婚のようなケースもあるわけでございまして、果たしてそうでないかどうかを確かめるために、いきなり一年とか三年を与えないで百八十日の期間でその在留許可を与えるというケースもあるわけでございます。  なお、それでは在留期間でございますけれども、在留期間につきましては、永住の場合、現在運用では原則として五年間の在日歴がなければいけない。具体的に申しますならば、一年以上の在留資格を持って五回——一年の場合には五回でございますけれども、一年以上の在留資格を持った人が五年間いるということが原則でございますけれども、日本人の配偶者、子供の場合には、それよりはもっと短いものに考えておるわけでございます。
  219. 土井たか子

    ○土井分科員 日本人と結婚をしている外国人については五年よりももっと短いものとおっしゃっていますが、そうすると大体どれくらいになっていますか。
  220. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 一般的に申しますならば大体三年くらいのことを考えております。しかしこれは、たとえば在外で長く結婚歴があって日本に来られたという場合にはさらにもっと短いものを考えておりまして、たとえば一年ということになります。したがって一年ないし三年というふうに、ケース・バイ・ケースケースによってその程度のことをお考えくださって結構でございます。
  221. 土井たか子

    ○土井分科員 さて、法第四条の一項一六−一に書いてあるところを見ますと、日本人の配偶者または子と非常にはっきりと端的に書いてございまして、それ以外の表現は何もないわけでありますけれども、入管事務所に参りますと、この点に対しての解釈と申しますか、理解と申しますか、これが一定ではないようであります。中には被扶養者に与えられる在留資格ということを考えられている向きがございまして、配偶者であっても扶養者でなければならない、子供であっても被扶養者の子供でなければならない、こういうことが言われるわけでありますけれども、そういう内規と申しますか内部通達と申しますか、そういうものを法務省としてはお出しになっていらっしゃるのですか、いかがでございますか。
  222. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そういう通達と申しますか指示と申しますか、そういうものは昨年出しました。ただし、その後いろいろ検討中でございまして、さらにもっと詳しいものを出すように現在準備しております。
  223. 土井たか子

    ○土井分科員 もっと詳しいものとおっしゃるのは、中身を考え直してお出しになるという意味で詳しいものとおっしゃっているのか、こういう被扶養者でなければならないという、扶養者と被扶養者という関係においてここに言うところのこの一六−一の配偶者または子というのを考える面をきめ細かにもっと考えていくという方向でおっしゃっているのか。これは考え方によってはまるで百八十度違いますから、その点をもうちょっとここで御説明賜りませんか、いかがでございます。
  224. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 当初私どもが、日本人に扶養されている配偶者及び子供には、先生先ほどから御指摘の一六−一という資格に変更してもいいという通達を出しましたのはなぜかと申しますと、たとえば扶養されているのではなくて扶養している側の配偶者の場合、その人は現在一六−三という資格で入っているわけでございます。この一六−三をそのまま在留資格として持たせる方がいいのか、あるいは十六−一に変えた方がいいのか、本人にとってもどっちがいいのかというようなことをよくよく検討する必要があったわけでございます。そこで、このたび私どもいろいろ検討した結果、そういう人々についても十六−一への変更を認めるという方針を決めました。したがいまして、詳しくと申しましたけれども、そういう方向で検討を続けてまいって、またそういう結論に内部的にもうすでに達しているわけでございます。
  225. 土井たか子

    ○土井分科員 これ、実際問題調べてまいりますと、男性が扶養するのはあたりまえである、女性は扶養されるのがあたりまえである、こういう認識がどうもおありになるようでありまして、日本人の夫と外国人の妻との間で、この外国人の妻に対しての在留資格というものを求めようとしますと、簡単にこれは取れるわけであります。ところが、逆に日本人の女性が妻であって外国人の男性が夫である場合は、女性が扶養するという場合、そして夫が被扶養者であるという場合でなければ問題にならないということがまず一つと、そういう場合でありましても、勤務先の証明などが必要であるとか、あるいは女性の実家の収入であるとか財産の証明が必要であるとかなかなかやかましいことを言われるわけであります。正面切って一法務省とされては、男性であるか女性であるかという点を基準に置いてこの日本人の配偶者という配偶者内容を問題にするとそれが大変問題になるわけでありますから、したがいまして、実際の扶養能力ということを問題にしてこれを取り扱いを進められたに違いないと思うわけでありますが、しかし結果的に見ますと男女差別がここで歴然と出てくるのです。いかがでございますか、これはやはりこういうあり方があってはならないと思いますよ。
  226. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 入管法の運用に当たりましては、私どもは男女差別ということは一切考えておりません。扶養される、扶養の有無ということを一応めどにいたしましたけれども、それもまた男女差別につながるものとは考えてないわけでございます。ただいま土井委員が御指摘になりましたように、たまたま日本人妻、外国人が夫である場合、日本人妻に相当な資産があるとかあるいは相当な収入があるという場合には、当然その夫である外国人男性は配偶者として入国できるわけでございます。そういうことで、もともと男女差別とかそういうものは一切私ども運用で考えていないわけでございますけれども、たまたまそういうふうに見える場合もあるかもしれません。しかし、それも実は私どもは、一六−一という資格と一六−三という資格が競合する関係がございましたので、どっちを適用した方がいいかという観点から考えていたわけでございまして、今度それを一六−一でもいいということにいたしましたので、ますますこういう御心配、上辺でそう見える御心配はなくなるはずでございます。
  227. 土井たか子

    ○土井分科員 おかしいことをおっしゃいますね。上辺の問題じゃないのですよ。実際問題からしてそういう取り扱いになるという実例があっちこっちにあるのです。そうして、しかも入管の窓口においてそれの取り扱いが違ってきているのですね。扶養者ということを要件として考えなければならないということをきっぱり言われる窓口もあれば、そうではなくてこの法文ではそういうことは書いていない、だから一切そういうことは考えないで取り扱いましょうと言われる窓口もあるのです。取り扱いの上でばらつきがありますよ。  そして、申し上げますけれども、先ほど永住許可について生計要件というものが今回は外されたということについて初めにわざわざ確認をさせていただきました。永住権を取得することに対して生計要件というものが外されたということの意味を考えてまいりますと、ただいま問題にしております一六−一については被扶養者のみを対象にするというのはどうもおかしいんじゃありませんか。扶養者という認識はやめていただかなければならぬと思います、被扶養者ということも。この節この十六−一を考える場合に、その要件にはそんなことはどこにも書いてないわけですから、法文上は。したがって、解釈の上では法文上のこの記載どおりに日本人の配偶者または子ときっぱり考えていただいていいんじゃありませんか、どうですか。
  228. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほどから問題になっております扶養者という言葉でございますけれども、これは男性であっても女性であっても構わない。つまりその場合、男性が外国人であってもあるいは男性が日本人であっても同じであるということでございます。したがって、その意味におきまして男女の差別はないわけでございます。  それから、その次に、土井委員がおっしゃいましたのは、出先によってはばらつきがあるという点でございました。当初の私どもの各地方入管に対する指示では、一応日本人に扶養されている配偶者または子をとりあえず一六−一への変更を認めるという方針で統一していたわけでございます。しかし、その後先ほどからも申し上げておりますように、いろいろ検討しました結果、今度すでに日本に入ってきている外国人の夫の場合にも一六−一への変更を認めるという方針決定いたしました。そういう指示をただいましているところでございます。したがって、そういう意味でいままでもばらつきがあったとは承知しておりませんし、これからもその心配はないと考えているわけでございます。
  229. 土井たか子

    ○土井分科員 それは御承知になっていらっしゃる範囲内においてばらつきはないというふうにお考えになっていらっしゃるんだろうと思いますが、私どもは、入管の窓口でどういう取り扱いを受けておられるかという実態をずっと調べていくと、かなりばらつきが実際実務の上であるんですよ。したがいまして、幾らここでお役所仕事でばらつきがないというふうに考えているとおっしゃっても、現実その窓口に行かれる方々の受けとめ方からすると大変ばらつきがあるというのが実際でございますから、したがいまして、これは大変意味として大きいと思います。入管局それからさらには在外公館がどういうふうに考えられているかという問題もございますからね。これは国内だけの措置ではございませんで、在外公館がそれぞれかの地において取り扱うという、事務の内容にもわたりますから、そういう点からすると、私は、もっと在外公館について調べていったらばらつきは拡大するだろうと思いますよ。日本の国内においてもかなり取り扱いが違うのです。  さて、一六−一についてさらに聞きますけれども、そうすると、いまおっしゃったような意味だとすると、女性も男性も働いている場合はどうなるんですか。逆に一時的に両者ともに収入がないという場合にはどうなるんですか。どういう取り扱いになるんです。
  230. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいまの御質問の趣旨、必ずしもはっきりいたしませんけれども、新しく入国する場合であるといたしましたらば、いずれにいたしましても、国際結婚の場合、夫が日本人であろうとあるいは外国人であろうと、その世帯としての生計能力があるということが必要でございます。
  231. 土井たか子

    ○土井分科員 大分それは御答弁の御趣旨が変わってきていますね。さっき永住許可については生計要件というのは対象外にするということになっておりますね。つまり、それまでに在留資格の点で問題があるかもしれませんが、しかし永住許可についてはもう生計要件というのは外すということになっているわけですから、そういうことからすると、女性の場合も男性の場合もともに共働きであるという場合もある、逆に両者ともに働いていないという場合もあると思うのです。そういう場合には、この十六−一の解釈適用というのはどういうかっこうになるのですか。これは現実の問題として起こってきますよ。
  232. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 十六−一の適用につきましては、先ほどお答えしたところの繰り返しになりますけれども、その世帯としての生計能力を私どもは問題にいたします。したがいまして、夫婦共稼ぎであるという場合には、その結果その世帯の生計が十分に維持されるということであれば問題はございません。他方におきまして、夫婦ともたまたま働いてないということであっても、どちらかが非常な資産があるとか、そういうことで生計に心配がないということであれば、これも問題はないわけでございます。
  233. 土井たか子

    ○土井分科員 資産のない場合はいかが相なりますか。
  234. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 収入も資産もない、したがって生計を立てる道がないという人々については、入国を認めることはできないわけでございます。
  235. 土井たか子

    ○土井分科員 入国が認められて以後こういう条件になる場合もないとは言えないですよ。当初は仕事があった、働いていた、しかしその後そうではなくなったという場合もないとは言えないですよ。いかが相なりますか。
  236. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そういう方々の永住につきましても、やはり原則として私どもはその世帯の生計能力ということを問題にいたします。もちろん日本人の配偶者あるいはその子自身につきましては生計能力がなくてもいいわけでございますけれども、その方々の世帯としての生計能力ということはやはりなければならないと考えております。
  237. 土井たか子

    ○土井分科員 その家族とか世帯という物の言い方というのは非常に漠然としているのですが、この場合、いまお答えになったその世帯としてとおっしゃるのは、どういうことを指しておっしゃっているのですか。
  238. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 たとえば夫婦のことでございますけれども、日本人の配偶者である夫婦のいずれか、その人については生計維持能力というものは問いません。たとえば日本人の配偶者である外国人の妻、この人につきましては永住要件を緩和されているわけでございます。しかし、その人の全体としての世帯の生計能力、これは結局その人の夫が支えているわけでございますけれども、そういう人の生計維持能力というものは私どもは十分に吟味いたします。
  239. 土井たか子

    ○土井分科員 どうも先ほど来御答弁を聞いておりますと、せっかく国籍法の一部改正を進めている趣旨からしてもおかしい御答弁が続くのですよ。男性側が生計能力があるのはあたりまえであって、生計能力がない男性というのは男性に値しない、そういう発想なり認識がおありになりはしませんか。それで、この扶養者というのを、また被扶養者というのをこういう一六−一に当てはめてお考えになるからおかしくなるのですよ。すんなりとこの条文どおりにどうして素直にお考えにならないのですか。条文に書いてあるのは、端的に日本人の配偶者または子とあるだけなんですよ。どこをどうして配偶者に被扶養者たる配偶者、被扶養者たる子供という認識が出てくるのですか。どこにもないじゃないですか、そういう裏づけというのは。どうしてもおかしいと言わざるを得ない。これはお役所仕事じゃないのです。大臣、こういうことをお聞きになっていてどういうふうに思われますか。大臣からお答えをいただきます。
  240. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は法律のことが余りわかりませんので何とも申し上げられないわけでございますけれども、やはり国籍法の改正ということをやらなければならなかった、そういうこともあるというような気がいたします。ですから、この問題につきまして、将来はいま先生が疑問に思っておられるようなことが国籍法との関係において十分理解のいくような形になるのじゃないかというふうには思います。でございますけれども、どうも法律のこと余りわかりませんので、これ以上私は何とも申し上げません。
  241. 土井たか子

    ○土井分科員 これは法律上の技術論じゃなかろうと思うのです。私は、やはりこういう問題に対する常識の問題であり、認識の問題だと思うのです。常識、認識の問題からすると、世界の趨勢に逆行するような物の考え方をいまだにこういう取り扱いの上で置いているということは、外国から来る人たち、外国から日本に居住したいという人たち、さらに永住を希望する人たちに対する取り扱いはこういうかっこうで出るわけでありますから、そういうことを通じて日本という国の認識が問われる問題にもなってくると私は思うのですよ。したがいまして、法技術からするとどうのこうのという三百代言ごかしの答弁でごまかせばそれで済むとお思いになるかもしれないが、そんな技術論の問題ではなかろうと思います。いま大臣がおっしゃったとおりで、国籍法の改正に向けてやらなければならなかったという理由もその辺にあるだろうとおっしゃるその理由がまさにここにもあるわけですね。だから、早い日にこれは変えていただかなければならないと思いますよ、本当に。法を変える以前に認識を変えていただきたいというのが正確かもしれない。先ほどのような御答弁を承っていると、認識を変えていただかないと法は変わらないかもしれませんよ。  そこで、大臣の御認識はそのようで、早く変えなければならないというお気持ちもお持ちになっていらっしゃるであろうと私は思って、さらに二点ばかりこのことについてお尋ねをして、時間ですから終わりたいと思います。  日本人家族ですね——さっきおっしゃった世帯というのはいまだによくわからない。あの答弁ではあいまいもことしていて何が何だかわかりませんよ。     〔横路主査代理退席、主査着席〕 これは法律についての技術論をさっきからしきりに展開されるのだから、何法のどこに世帯というのが書いてあるか私は聞きたいような気持ちでありますが、しかし私はそういうことはあえていじめないでおきましょう。ただ、日本人家族について永住申請をする場合には、すでに朝鮮半島や台湾出身者と同じように、特例永住として提出書類を簡素化するということをお考えになってはいかがかと思うことが一つであります。これは時間の都合から詳しく申し上げませんが、窓口へ行くと従来と同じ手続を要求される。これは少なくとも本年の一月一日を期して施行される新法によって、いろいろな手続も簡素化されるということに非常に期待をかけられた向きがあっちこっちであるのですけれども、相変わらず実際の申請に当たっての提出書類は従来どおりであります。数は十一にもわたる内容が強要される。その中身を見ますと、健康診断書を提出する意味というのは、そういう疾患、疾病に問題があって、日本人の配偶者または子供であってもこのことにひっかかればもうだめだと言われるかどうか。それから生計能力というのは除外すると言われていたにもかかわらず、この内容からすると相変わらず生計能力がどれだけあるかということを問題にしている部署がございます。こういうことを考えていくと、提出書類の簡素化それから即決、そういうことが考慮されてしかるべきだと思いますが、この手続の上でのお取り扱い方についてどうでございますか。是正できるでしょう。
  242. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 この永住申請の手続につきましては、できるだけ法改正とともに簡素化されるべきものと考えております。現在の段階では、まだそこまで私どもの方の準備ができてなかったので実現しておりませんけれども、目下鋭意その具体的な中身を検討中でございます。近いうちにかなりの簡素化が実現できるものと考えております。
  243. 土井たか子

    ○土井分科員 現在、最初にお尋ねをいたしましたが、法務大臣からできる限り早期に、しかもそれは八三年を目途に改正についてのいろいろな段取りがいま鋭意努力されている段階でございますから、このことについても、これはきょうお尋ねをいたしました在留の問題、永住の問題にかけてお尋ねをしたいのですが、現在の国籍法によりまして、日本人の母の子供であるにもかかわらず日本国籍が取得できていない子供がございます。こういう日本人の母親の子供については、無条件に永住権というものが与えられるということになるのが当然だろうと私は思いますけれども、これについてはいかが相なりますか。
  244. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そういう方の永住権につきましては、できるだけ前向きに取り組んでいきたいと考えております。
  245. 土井たか子

    ○土井分科員 できる限り前向きにとおっしゃいますけれども、これはやはり具体的にはっきりさせていただかないと困る問題であります。子供に対しては当初から、母親が日本人である限りは日本国籍があって当然という考え方があって、現在国籍法の改正に向けての作業が進められているわけでありますから、日本人の母親に対して、その子供に対しては永住権を認めていく、これはもう当然のことだと思われるのですが、法務大臣、最後にそのことを一言お伺いをして、私は時間ですから質問を終えたいと思います。
  246. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いま政府委員から答弁いたしましたとおりに考えております。
  247. 土井たか子

    ○土井分科員 まあ、とおりにとおっしゃいますから、それは前向きでということだろうと思いますが、特別の事情もなしに、わが国に永住をしたいという家族に対して許可がされないというのはそもそも不都合であると同時に、永住を許可されている外国人の配偶者や子供についても、やはり家族単位で考えるということから先ほど来の御答弁があったという意味があるわけでありまして、それから考えましても、家族が同居して生活を維持するという点から考えで、母親が日本人であって外国人の男性と結婚して、その間にできている子供に日本国籍がない、そのために、家族としての単位を考えてまいりますと、やはり国籍法が変わらないとどうにもならないという部面もございますけれども、国籍法が変わるまでの間に、今回は在留資格であるとか永住資格に対しての抜本改正があったわけでありますから、こういうことを機に、やはりその子供に対しての永住資格を認めていくという方向での検討がもうすでにあってあたりまえなんです。しかも、それが一月一日を期して実施されてあたりまえなんです。現にそのことが実施されておりません。まだそのことは認識の上でも不十分と私は言わざるを得ない。したがいまして、再度、大臣からの御答弁をいただいて、私は終わりにいたします。いかがでございましょう。
  248. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先生のおっしゃるような方向で考えてまいりたいと思っております。
  249. 土井たか子

    ○土井分科員 終わります。
  250. 小渕恵三

    小渕主査 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  251. 正森成二

    ○正森分科員 私は、昭和四十五年の六月ごろに行われました、わが党の宮本顕治委員長宅に盗聴が行われる、家のすぐ前の電信機に盗聴器が仕掛けられたわけでありますが、この事件は明白な時効であるかどうかは別として、刑事事件犯罪を構成すると思いますが、一体どういう法律に触れるのか、また捜査はどうなっておったのか、御報告を願いたいと思います。
  252. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のいわゆる盗聴事件につきましては、ただいま正森委員からもお話がございましたように、刑事処分といたしましては時効完成ということで不起訴処分になっているわけでございます。  一応考えられる罪名としては、たとえば有線電気通信法違反であるとか、あるいは業務妨害であるとか、そのような罪名が考えられるわけでございます。
  253. 正森成二

    ○正森分科員 この事件は、正確に申しますと、有線電気通信法の二十一条、これは五年以下の懲役あるいは五十万円以下の罰金でありますが、有線を損壊するというような犯罪になる可能性がありますし、また、公衆電気通信法第百十二条第一項では、通信の秘密を侵すということで、一年以下の懲役もしくは五万円以下の罰金、さらに、電話盗聴によりまして日本共産党ないし宮本委員長の業務を妨害するということで、刑法二百三十三条違反にも該当するおそれがある、こういう犯罪であります。  その後明らかになってまいりましたところでは、これらの犯罪は、当時創価学会の学生部の幹部でありました北林芳典、竹岡誠治あるいは広野輝夫というような何名かのグループによって敢行されたものでありまして、そのうちの何人かは、民事事件の法廷でみずから犯罪に関与したことを認めているわけであります。  私どもは、こういう公党の委員長宅に盗聴器を仕掛けるというようなことは、ウォーターゲート事件をまつまでもなく、きわめて卑劣な行為であり、宗教の関係でもあるいは政治的な関係でも断じて許されてはならないことであると思いますが、法務大臣はいかがお考えですか。
  254. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いかなる人も法の前には平等でございますから、罪が証拠に基づいて追及されることは当然だというふうに思います。
  255. 正森成二

    ○正森分科員 ところが、その後、一年余り前からいろいろな週刊誌、雑誌等で明らかにされておりましたが、最近は、二月に行われました宮本委員長宅盗聴事件の損害賠償等を求める民事事件の法廷において、創価学会の顧問でもありました山崎弁護士が証言している中で、この盗聴事件が世間で問題になってきた場合に、後始末、つまり犯罪として暴露されないようにという後始末に、現職の検察官が関与していたということが非常にはっきりしているわけであります。  二月十七日に行われました民事事件の法廷で、山崎氏はこう言っているわけですね。「一九七〇年の七月末、日蓮正宗の総本山の大石寺で、創価学会学生部の夏季講習会が開かれ、私もこれに参加したところ、」——私というのは、山崎氏であります。「池田大作会長から、君はこんなところにいる立場ではない。すぐ帰って後始末をちゃんとやりなさい」——盗聴発覚の後始末ですね。「と、しかられた。この講習会に参加していた学会員の神崎武法検事、福島啓充検事ともう一人の検事と相談したところ、福島検事は、知らんぷりしていれば大丈夫だと言い、ほかの二人の検事も同調した。」こういうように言われているわけであります。  これは実にけしからぬことであると言わなければなりません。刑訴の二百三十九条の二項でも「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪歩あると思料するときは、告発をしなければならない。」と定められております。これは検察官でなしに、通産の官僚であれ大蔵の官僚であれ、およそ公務員である者は、「犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」こうなっているのですが、まして検察官というのは、公訴は検察官がこれを行う、検察官はいかなる犯罪についても捜査をすることができると検察庁法その他に定められておる、まさに犯罪を許さないで公的秩序を維持する職務にある人々なんですね。それが重大な犯罪を打ち明けられて、知らんぷりしておれば大丈夫だと言って証拠隠滅に加担するとは、一体何事かというように思うわけですが、法務大臣、どう思われますか。
  256. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 正森委員のお尋ねは、民事事件の公判期日に山崎という人がいま御指摘のような供述をしたということで、そのことからその事実がはっきりしているということを前提にされておるわけでございます。ですから、一般論といたしまして、御指摘のような犯罪事実が仮にある場合に、それをほうっておいてはいけないということは当然でございますが、その前提となるようにそういう犯罪事実があったのかどうかということが、御指摘のようにはっきりしているかどうかというところが問題であろうと思うわけでございます。
  257. 正森成二

    ○正森分科員 いまの刑事局長答弁は、御指摘のような犯罪事実があったかなかったかが問題であるということは、宮本盗聴事件があったかなかったかが大いに疑問である、こういうことですが。とんでもないことを言うなあ。
  258. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 あるいは言葉が足りなかったかもしれませんけれども、私が申したかったのは、山崎氏の言うような、しりぬぐいといいますか、後始末といいますかへそういうことについて検事と相談をした、そのときに御指摘のような問答というか、やりとりがあったということの事実自体があったかどうか、こういう趣意を申し上げたかったわけでございます。
  259. 正森成二

    ○正森分科員 それならまだ話がわかるけれども、宮本委員長宅盗聴事件があったかなかったかわからぬというような答弁をしているのなら、言語道断だと言わなければなりません。  ところが、こういう相談をしたということは、民事法廷における宣誓証言で非常にはっきりしているだけでなく、その民事の法廷でいろいろの人が認めているのですが、同じ表現の中で、こういう事件のもみ消しについて相談をして、知らんぷりしておれ、動かないのが一番いいと言っただけでなしに、この神崎検事、福島検事らは口々に「ボスも大変だなあ。おれたちは検事をのんびりやっていて、ボスに申しわけないなあ。」こう言っているんですね。一体何事ですか。検事をのんびりやっていて申しわけないなあ、ボスというのはもちろん池田大作会長であります。公党の委員長の自宅を盗聴するという犯罪行為をやっている人物に対して、ボスは大変だなあ、それに比べておれたちはのんびりして申しわけないなあ、こんなことは検察官たる者が言うべきことですか。これは全体の奉仕者でなければならぬというのは、憲法第十五条の定めるところですね。坂田法務大臣よく御存じでしょう。「すべて公務員は、全體の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」こう決められておるけれども、この神崎だとか福島という検事は、全体の奉仕者どころか、創価学会と池田大作氏の奉仕者であるということを非常にはっきり示しているじゃないですか。  前田局長に聞きますが、あるいは筧官房長でもよろしいが、こういう証拠隠滅的な行為があったかなかったかが問題だと言っておりますが、そのことについて、福島検事はもう現職をやめておるようですが、神崎検事というのは、いいですか、法務大臣、法務省の中枢におって、刑事局の局付検事の筆頭なんですよ。法務省の中枢におるのです。この検事に対して、その事実の有無についてお調べになりましたか。
  260. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答え申し上げます。  この件につきましては、委員御承知のとおり、昨年の十月か十一月でございますか、一部の週刊誌等に同様類似のことが報道されまして、その時点で、神崎検事を初めとして名前を挙げられた人たちが、それぞれの上司に申告をいたしております。その内容を上司も詳しく聞いたわけでございますが、内容を検討いたしまして、本人たちは強く否定いたしております。そこでそういう事実はないものというふうに私ども考えたわけでございます。また最近、御指摘の赤旗の紙上で私、拝見したわけでございますが、同様の記事が載りまして、改めてまた神崎検事が直属上司の方へ上申をいたしまして、そういう事実はないということを強く含定しておるわけでございます。
  261. 正森成二

    ○正森分科員 実にいいかげんな答弁だと思うのですが、こういうことが報道されたのは赤旗だけではありませんよ。週刊ポスト、週刊文春、月刊宝石等々に繰り返し繰り返し報道されているわけであります。  これは、法務大臣、検察官としてまさに致命的な行為ですね、もしあったとすれば。ところが、それに対して、私が調べたところでは、赤旗にはもちろん、こういう雑誌等にただの一遍も、それは事実無根であるとか、おれの名誉を著しく棄損されたとか、検察官全体に対して名誉が棄損されたとか、そういう抗議をしたこともなれけば、内容証明を送ったこともないわけであります。体、日本の検察官というのは、それほど名誉心あるいは職務に対する公正さを傷つけられたことに対する怒りがないわけですか。あたりまえなら、もし何もなければ、何ということを書くかと言って怒ってあたりまえでしょう。それを全然やっていないのはどういうわけですか。そんな公務員、まして検察官がありますか。それをやって、反対に名誉棄損だとか謹告だとか言って身の潔白を明かすのがあたりまえじゃないですか。それをやらないで、おれは関係がないとか、中には、創価学会員であること自体を否定している者もおるじゃないですか。  われわれは、信教の自由を否定しようとは思わぬ。また、政党支持の自由を否定しようとは思いません。検察官でも自民党に投票する人もある。公明党に投票する人もあるでしょう。中には共産党の正森成二に入れる者があるかもしらぬ。それは構わない。投票の自由です。けれども、一定の政治的な意図で、いろいろなことに公正さを疑われるような状況で加担するというようなことは、絶対にやってはならぬことじゃないですか。どうです、そういう点について告訴だとか、告発だとか、民事裁判に訴えるとか、内容証明を送るとか、そういうアクションを起こしたかどうか。起こさないとすれば、これほど重大な問題についてなぜそんなに平気な顔をしているのか、お聞きになりましたか。
  262. 筧榮一

    ○筧政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年秋、御指摘の週刊ポストとかあるいは月刊宝石でございますかに記事が出ましたときに、名前の出ました検事一同からその上司に申告がなされ、その事実を聴取したわけでございます。その結果、そういう事実はないという判断に達し、そういう事実がないということが明白であるならば、これ以上特段の手続をとる必要はないというふうに考えておったわけでございます。今回、また証言という新たな事態が出たわけでございますので、改めてもう一回事情を聞きましたけれども本人の述べるところは、強くこれを否定いたしておりまして、私どもとしても、その証言を信用するという結論に達しておるわけでございます。
  263. 正森成二

    ○正森分科員 今度出ているのは宣誓した上の証言で、もし事実に反すれば偽証罪ということもあり得るような、そういう証言なんですね。それに対して、否定するだけで、公的人物として身の潔白を明かすための種々の手段をとっていないということは、非常に問題じゃないですか。  しかも、この神崎検事というのはそれだけじゃないのです。二月十七日の証言では、妙信講との教義論争というのがありました。これは昭和四十七年の九月に連続して七回にわたって創価学会側と妙信講側との教義論争が行われた。これは国立戒壇論を妙信講側がとり、創価学会側は憲法問題からこれに反論をしたという事件であります。これについては、双方の側が、録音テープはお互いにとらないということを約束していたにもかかわらず、出席者が発信機をつけて論戦の現場へ行って、向島の常泉寺で論戦が行われたわけですが、道一つ隔てた盗聴の場所で、聞こえてくる声を盗聴して、そして次々に、どう論戦したらいいかという指示を与え、あるいは指示を与える参考にしておる。その受信録音の現場にこの神崎武法という検事がいて、息をこらして聞いておった。とんでもない話じゃないですか。これは電話線に何か仕掛けたというようなものではありませんから、それとは異なるケースでありますけれども、明らかに一方の側に加担して、信義に反するようなやり方でこういう非行をやっておるということは疑いのない事実であります。これは現場に加担しているのですね。だから、少なくともこういうことをやるのは、妙信講は国民ではないという構成をとらない限り、全体の奉仕者としての検察官にあるまじき行為であると言わなければなりません。こういう点についてはいかがですか。
  264. 筧榮一

    ○筧政府委員 ひとつ御了解いただきたいと思いますが、先ほど先生のおっしゃいました、証人尋問で宣誓の上証言したとお話しでございますが、たしかあれは民事訴訟における本人尋問であったように承知いたしております。  それから、ただいまの妙信講の件でございますが、この点も昨年秋の一連の週刊誌あるいは月刊誌等の記事の中に載っておりました。それにつきましては、それに関与したとされておる検事から事情を上申といいますか、申告させました結果、そのような事実はないという本人たちの申し出が相当であるといいますか、これを信用できるという結論に達しておるわけでございます。
  265. 正森成二

    ○正森分科員 いずれも一方の人間から事情を聞いて、そして済ましているのですね。山崎氏というのは、あなた方は恐喝で起訴しているのでしょうが。その本人に検事調書で詳細に聞いているはずでしょう。本件の場合には、加害者側が神崎という検事ですよ。どうして加害者側だけを聞いて、より公正な立場に立つ者の意見を聞かないのですか。そして、本人だけの言い分を聞いて、そういうことがないということで済ますのですか。  さらに私は申したいと思いますが、私は信教の自由にはどうこう言おうとは思っておりません。しかし、本人は少なくとも創価学会員であり、司法関係の人を指導する法学委員会のメンバーであるということは認めたのでしょうか。創価学会の法学委員会の会報のグレートイーグルというのがあります。ここで創価学会学生部結成十周年記念文集というのがございます。その中で、神崎武法氏は当時学生部副部長で、この文章から見ますと恐らく司法修習生であったと思われますが、こう言っているのですね。  「“いざ鎌倉”の精神で」というわけで、   私も、大学を卒業し、研修所で毎日記録を渡され、判決文、訴状、準備書面等で起案、講評というスケジュールを送っていると、はたして、自分の現在の勉強が……という疑いを生じたこともあった。   同時に、本部職員として、先生のもと、先輩の厳しい指導を受けている友人が羨しくなることもある。 先生というのは池田大作氏です。   そういうときには、「本部から派遣になっている気持ちで戦ってきなさい。刀折れ、矢つきたら、いつでも私の所へきなさい」との池田先生の激励を思いうかべて戦うのである。      (中略)   池田先生は「どの世界でも同じだが、とくに仏法の世界においては“いざ鎌倉”というときに、はせ参じられる人が、真の人材であり、信者のなかの大信者なのである……“いざ鎌倉”というときには、自分が率先して学会を守り、学会を推進していくのだという幹部にならなければいけない。この心構えさえあれば、ふだんの行動に、自然とにじみ出てくるものである」と指導されている。   われわれは“いざ鎌倉”の精神で戦うことを決意しようではないか。 こう言っている。だから、この神崎という検事は、宮本盗聴事件や妙信講事件のときに、まさにいまこそいざ鎌倉だ、創価学会のために、池田大作会長のために戦わなければならぬ、こう思って、検察官という公的身分があるにもかかわらず盗聴のもみ消しに参加し、みずから盗聴の現場にも参加する、こういうことをやっているのですよ。それに対して、どうだと言うて、本人がいや違いますと言うたら、それをそのまま信用する、そんなことでいいのですか。そんなことで済ますつもりなんですか。  法務省の刑事局の局付検事の筆頭だということになれば、われわれ国会議員のところへも何遍も来るのですよ。こんな男が発信機を仕掛けておって、道を隔てたところの創価学会がわれわれの質問内容まで全部盗聴する、そういうことだってあり得るじゃないですか。はっきりけじめをつけるのが当然じゃないですか。  仮に立場をかえて、日本共産党が竹入委員長の自宅を盗聴し、鈴木総裁の自宅を盗聴した、そういうことが暴露されて、おるかおらないかわからないが日本共産党の検察官がその証拠隠滅に参加した、こういうことが法廷証言で明らかになって、あなた方はその人物でも法務省の役人として使うのですか。それでも自民党やその他は黙っているでしょうか。黙ってないでしょう。相手が共産党だから、やったのが創価学会だからといって手かげんするなんということは、絶対に許されぬ。本人に対して速やかにしかるべき措置をするか、自発的に本人に態度をとらせるのがあたりまえじゃないですか。  たとえ刑事事件が時効になっても、国家公務員法の八十二条では、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行がある場合というのは懲戒免の対象じゃないですか。今後とも何らの措置をとらないのですか。法務大臣、そんなことでは国民全体に対する示しがつきませんよ。普通の官庁じゃないですよ。法秩序を維持する法務省の検察官がこんなことをやっている。答弁を求めます。
  266. 筧榮一

    ○筧政府委員 先ほど申し上げましたとおりでございまして、私どもといたしましては、神崎検事初め名を挙げられた数名の検事の詳細な申告と申しますか、弁明を検討いたしまして、片や山崎弁護士等の本人尋問の供述もあるわけでございますが、これを比べました場合に、私どもとしては神崎検事の上申といいますか、これが信用するに足るという判断でございまして、現段階で……(「いざ鎌倉というのはどうだ」と呼ぶ者あり)修習生時代にそういう宗教に関する論文を発表したということは聞いております。しかし、そのこととその後の行動とは特段の関係はないというふうに理解いたしております。
  267. 正森成二

    ○正森分科員 そういうことを言うなら、私も少し言いましょうか。二月二十六日付で神崎検事が、御迷惑をかけて申しわけがないということで辞職を申し出たといううわさがありますが、本当ですか。今後とも本人が辞職を申し出ようとも、あなた方は法務省のエリート官僚として使い続けるつもりですか。
  268. 筧榮一

    ○筧政府委員 一般論として申し上げまして、個個の人間の人事異動に関する事柄につきましては、お答えを省略させていただきたいと思います。
  269. 正森成二

    ○正森分科員 一般論の個々のケースというようなケースじゃないのですよ。また、私どもの耳に入っているところでは、本人は、いろいろ法務省や検察全体に御迷惑をかけて申しわけがない、進退は自分で考えるというように友人に言っておるようですが、その場合でもあなた方は留保して、本人を法務省のエリート役人として使い続けるつもりですか。けじめをとりなさい、けじめを。
  270. 筧榮一

    ○筧政府委員 繰り返すようでございますが、個個の人間の人事異動に関する点については、お答えを差し控えさせていただきます。
  271. 正森成二

    ○正森分科員 そういう誠意のない答弁をするなら、われわれは今後ともこの検事や、そのほか名前の挙がっている検事が二、三おりますが、そういう問題について引き続き質問を続けて、綱紀を正すより仕方がありません。法務大臣はどう思われますか。
  272. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま官房長からお答えをいたしましたことを、私は信頼をいたしております。ただし、法務省といたしましては、法の番人、法秩序の維持ということがきわめて大事であります。したがいまして、不偏不党、厳正公正な処置をいたさなければならないというふうに考えております。対処をいたしたいと思っております。
  273. 正森成二

    ○正森分科員 あと数分になりましたが、大阪で葦原運輸という運送会社があります。ここでは八名の労働者が首を切られて、現在も闘っておりますが、この経営者というのは物すごく暴力をふるって、労働者をぶん殴ったということで、ここに判決を持ってきておりますが、民事裁判の中で、十七回もそういう暴行をやったということが明らかになっているのです。そのうちの一回などは、課長クラスが労働者の指に食らいついてつめをかみちぎったといって、ゴリラみたいなそういう経営者ですね、それで、労働委員会で首切りが無効だということになって、もとへ返せと言って、それが行政裁判になって、最高裁で決まるということになっても従わないのです。私は言語道断だと思いますが、そういう場合には労働組合法の二十八条で、これは犯罪行為であるということで検察官が起訴できることになっているのです。こういうけしからぬ使用者に対しては、私は、法務省としては厳正に措置してほしいと思いますが、いかがですか。
  274. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 本件につきましては、労働委員会からの通知に基づきまして、目下検察当局におきまして捜査中でございます。やがて適正な処理が行われるものと思っております。
  275. 正森成二

    ○正森分科員 大臣、このケースは二、三年前にも一度地労委から、最高裁の命令を守らないといって通知があった。そのときは不起訴になった。今度、また守らないということで通知になっているのですから、そういうときには厳正に措置してもらいませんと、労働者は、結局法務省というところはおれたちを守ってくれないということになってしまうと思うのです。  そこで、労働省に来てもらっていますけれども、もう時間がありませんから省略しますが、運輸省に聞きます。  道路運送法等で取り締まりがあると思うのですけれども、こういう業者に対しては、あなた方も法の許す範囲内において、業務の改善命令とか、あるいは場合によったら、一定の禁錮以上の刑に処せられた場合には免許の取り消し等についても考慮できるというようになっていますが、労働省と相談をしてやはり行政指導をやってもらわなければいかぬと思うのですね。それについて、もう時間がありませんので、一言でいいから答弁してください。
  276. 浅見喜紀

    ○浅見説明員 お答えいたします。  労使間の問題につきましては、基本的には労働関係御当局の問題かと存じますが、過労運転あるいは過積載の防止といったような輸送の安全を確保するとか、そういったことは自動車運送事業者の責務でもございますので、自動車運送事業の適正な運営の確保という道路運送法上の観点から、運輸省といたしましても、必要に応じて関心を持って対処してまいりたいと考えております。
  277. 正森成二

    ○正森分科員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、こういうケースについては、法務省もあるいは労働省も運輸省も厳正な措置をとっていただきたいというように思います。  終わります。
  278. 小渕恵三

    小渕主査 これにて正森成二君の質疑は終了いたしました。  次に、川本敏美君。
  279. 川本敏美

    川本分科員 私は、まず厚生省に、中国残留日本人孤児の問題について若干お聞きしたいと思うのです。  きょう朝九時過ぎの飛行機で、肉親捜しに日本へやってきておった黒竜江組の三十人が日本を離れました。この間から、厚生省の肝いりで六十人の中国残留孤児を日本へ連れてこられて肉親捜しをやった、大変御苦労であったと思うわけですが、現在中国に残留する日本人孤児と言われるのはどのくらいおるわけですか。
  280. 岸本正裕

    ○岸本説明員 中国残留孤児と申しますのは、さきの大戦の終戦直前くらいから戦後の混乱期にかけまして、肉親と、中国の東北地区、旧満州地区で離れ離れになった方々を総称しているわけでございまして、この正確な数字というものはなかなか把握が困難でございます。  しかし、現在までに中国残留孤児から直接または間接を通じまして私の方に肉親調査をしてほしいという依頼があった数は、これは本年の二月一日現在でございますが、千四百五名でございまして、そのうち、今回の訪日孤児で判明いたしました四十二名を除いた数字で申し上げますと、四百九十三名の身元が判明いたしております。したがいまして、現在当局で調査中の者は九百十二名ということになるわけでございます。     〔主査退席、近藤(元)主査代理着席〕
  281. 川本敏美

    川本分科員 昨年の三月にも中国残留孤児を日本に招待して肉親捜しをやったわけですが、ちょうどいまから一年前であれば、中国残留孤児で調査依頼のあった者は千百八十五人だと言われておった。それが現在千四百五人ということで、一年の間に二百人ばかりふえておるわけです。  いろいろ言われますけれども、大体中国残留孤児というのは、あの終戦当時の混乱した旧満州で、主として満蒙開拓青少年義勇軍とか開拓団等で国策によって中国へ送られた人々の小さな赤ちゃんを、そういう戦線をさまよう中で、混乱の中で、とてもこのままじゃ生きて連れて帰れない、何とかして殺さずに済ませたいという親の願いで、中国の養父母にもらってもらったり預けたりという形で、今日までその養父母の手厚い養育のもとで育ってきたのだと私は思うわけです。私も、戦争が終わった当時は、いわゆる蒙疆自治政府といいますか昔の蒙古におりまして、約四カ月間、大体三千キロぐらいを歩いて北京に帰ってきましたが、その途中で同僚の小さな赤ちゃんが毎日のように死んでいくわけです。それを朝から荼毘に付して骨にして、そして出発をして、夜寝たらまた朝死んでおる。そういう野宿生活を続けて私も引き揚げてきた一人でありますけれども、よくわかるわけです。  そういう中から考えますと、今日、これはやはり戦後処理の問題だ、特にこの孤児たちは戦災者ではないか、こういうふうに私は考えるわけですけれども、現在厚生省が取り扱っているこの中国残留孤児の扱いについては、引揚者援護法ですか未帰還者留守家族等援護法ですか、そういうような形の取り扱いをしておる、いわゆる戦争被害者という取り扱いではないのじゃないかと思うのですが、その点、厚生省どうですか。
  282. 岸本正裕

    ○岸本説明員 引き揚げ者として私ども考えておりまして、引き揚げ者援護の一環として孤児が日本に帰ってこられる場合の援護をしているわけでございますけれども、こういう孤児が発生した経緯を考えますと、当然戦争によってもたらされた犠牲者であるということは言えるかと思います。
  283. 川本敏美

    川本分科員 そこで、この間もこの分科会で質問があったようですが、法務省にお聞きしたいのですが、まず残留孤児の戸籍の復活の問題です。この間から帰ってこられた方の中にも、肉親が見つかった方も見つからない方もおる。見つかった方は戸籍を復活するのはさほど困難ではないと思う。しかし、日本人であるということがはっきりしておって肉親がわからない、こういう人たちについてはやはり国籍を復活させなければならぬと思うのですが、その点簡単に復活できるのかどうかということが一つ。  もう一つは、お父さんが日本人で孤児であれば、子供さんはおのずから全部日本国籍ですね。しかし、お母さんが孤児であって御主人が中国人の場合の赤ちゃんは、本来国籍は中国籍になるわけです。ところが、仮にこっちで肉親がわかった、わからずにかかわらず日本へ帰ってきたい、こういうことで配偶者を連れあるいは子供を連れて帰ってくる場合、日本国籍の人はすぐできるけれども、中国籍の御主人とかお婿さんとかあるいは子供の戸籍はどうなるのか。この問題についてやはりひとつこの辺で明確にしなければいけないと思うわけですが、その点についてはどのようになるのか、その人たちが日本人として帰化するのは大して手間がかからず簡単にできるのかどうか、ひとつその点をまずお聞きいたしたいと思います。
  284. 中島一郎

    ○中島政府委員 ただいま御質問にもきざいましたように、いわゆる中国残留孤児と呼ばれる人々の中には、日本人の父あるいは母がはっきりしておるというケースもかなりあるわけでありまして、こういった孤児については、自分の本籍がすでに日本の戸籍にあるという例もございましょうし、あるいはかつて本籍があった、戸籍に記載されておったけれども、その後、死亡あるいは認定死亡あるいは失踪宣告というようなことで、戸籍が消されてしまっておるというようなケースもあろうかと思いますけれども、かつて戸籍があったというわけでありますから、それを復活をするということはさして困難な問題ではない、ただいま御質問にもあったとおりでございます。  問題は、日本人であるらしいけれども父親なり母親なりがはっきりしないというケースであります。そういう人につきましては、本来は日本人でありながら戸籍がないわけでありますから、就籍という手続になります。就籍をいたしますためには家庭裁判所に就籍の許可の申請をいたしまして、就籍の許可の審判を経まして戸籍をつくってもらう、こういうことになるわけであります。本人は日本人だと思っておる、ところが、やはり裁判でありますから、立証の問題がありまして、日本国籍を有しておるということの立証が必ずしも十分でないというために、就籍の許可の裁判が得られないというケースがあるわけであります。そうなりますと、日本国籍を取得するあるいは日本国籍を認めてもらうという手段といたしましては、帰化という手続が残されておるということになるわけでありまして、私どもは、法務局、地方法務局を通じましてその帰化の事件を扱っておる、こういうことになるわけであります。  その帰化の場合でありますが、一般の外国人ということになりますと、引き続き日本に五年以上在住しなければならないというような居住要件の制限もございます。そのほかに独立の生計を営む能力があることというような要件もありまして、そういった要件を満たさなければ帰化の許可が与えられないということになるわけでありますが、ただいま御質問にもございましたようないわゆる中国残留孤児につきましては、日本国籍を有するということは立証できなくても日本人の子である、日本人の父また母の子であるということだけは明らかなケースが多いのじゃなかろうか、そういったものにつきましては国籍法の六条の二号という規定がございますが、それには日本人の子であって現に日本国に居住する者につきましては居住要件は必要ありません、独立生計を営む能力という要件も必要ありませんということで、いわゆる簡易帰化というものが認められておるわけでありますので、その規定を活用することによって中国残留孤児の帰化を容易ならしめるということが一つ考えられるわけでありまして、私どもは今後そういった方向に向けて事件を処理するように検討してまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、もう一つお尋ねのございました一定の身分関係のある者の国籍の取得でございますけれども、そういったものにつきましては個別的に帰化の許否を決定する、申請によって帰化の手続をとってもらう、こういうことになろうかと思います。
  285. 川本敏美

    川本分科員 いま後段でおっしゃられた、日本人の両親の子であるということははっきりしておる、しかし肉親が見つからない、そういう方には国籍法の六条二号を適用して簡易な形で帰化を認めたい、こういうことですが、それはあくまでも帰化ということになりますよね。もともと日本人なんですから、日本人が日本に帰化するなんということはおかしいのじゃないかと私は思うわけです。これはやはり戦争被害者であるという立場に立って認識をしたならば、そのようなことは言えないのじゃないか。戦争被害者にさらに帰化しなければ日本人と認めないということでは、これは踏んだりけったりしているのと同じことですよ。しかしその孤児たちには何の罪もないわけです。戦争を起こした、そしてその戦争は終わったけれども、三十七年たった今日なおその戦争の被害を受けておる人たちが生きておるのだ、それが日本人なんだ、こういう発想に立ったら、国籍法六条二号というのじゃなしに、やはり両親が日本人であったということが明確にできた孤児については、仮に日本の肉親が見つからなくとも、戸籍が見つからなくとも、日本の国籍を与えて、日本に帰りたい人は連れて帰る、少なくともそういう責任が政府にあるのじゃないかと私は思うわけですが、その点、法務大臣どうですか。
  286. 中島一郎

    ○中島政府委員 現在の国籍法によりますと、「日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。」こういう大原則があるわけでありまして、日本国民であるかどうかということは国籍法によって決まっておるわけであります。国籍法によりますと、「子は、左の場合には、日本国民とする。」こうありまして、「出生の時に父が日本国民であるとき。」あるいは「父が知れない場合又は国籍を有しない場合において、母が日本国民であるとき。」というような幾つかの場合が掲げられておるわけでありますので、この要件に当たれば日本国民であるということになるわけであります。父親が何県何町の何某であり母親がどういう人であったということが明らかになりますれば、父親が日本人であるからその子供は日本人である、あるいは父親が知れなくて母親が何某であるということがわかれば、母親が日本人であるから子供は日本人である、こういう認定が可能でありますが、その具体的な父親なり母親なりが何びとであるかということを明らかにしないでおいて抽象的に日本国籍を持っておるかどうかということの認定は、これはかなり高度な判断に属するわけでありまして、このことは裁判所で決めるというのが大原則であります。でありますから、その点は裁判所で決めていただきたいわけでありますが、実際は日本国籍であるのかもわかりません、しかし裁判の手続において、日本国籍である、日本国民であるということが認められない場合も全くないわけではないというふうに考えられるわけでありまして、そういった人の救済として、私どもができるだけ前向きに考えて帰化で処理をするということになれば、六条の二号というものが考えられるのではなかろうかということで、われわれとしてはこれが精いっぱいの処理ということになろうかと思います。
  287. 川本敏美

    川本分科員 きょうは厚生大臣がここにお見えになりませんからなにですけれども、いまのお答えでは、それはわかり切った話です。この間から日本人のいわゆる残留孤児だと思って連れて帰った人の中でも、肉親が見つからない、そんな人はたくさん、何千人という中には、いま五千人もおると言われておるのですから、その中にはたくさんおると思う。日本人の子供には違いない、それは、私がその当時中国でそういう現況を見てきておるのですから、たくさんそういうのはあると思うわけです。連れて歩いて殺してしまうよりは生き長らえさせたい、そういう親の気持ちが、中国人に預けたりもらってもらったりしたのだと思うのです。だから、その子たちがいま日本人であるということはわかっても、両親もわからないし、もとの戸籍もわからない、そういう人たちは、はっきり日本人の子であるということがわかれば、厚生大臣なら厚生大臣が確認をして、その厚生大臣が確認をした者についてはもっと簡単な形で国籍が取得できるような、復活できるような形を考えてもらわなければ、戦争被害者であるという意識に立っているとは言えないのじゃないかと私は言うわけです。その点について法務大臣、御意見を聞きたいと思います。
  288. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いま政府委員からお答えをいたしましたとおりに、一つにおきましては、日本人の親が見つからなければ家庭裁判所による就籍の審判によって戸籍をつくるということ、どうしても親が見つからない、しかも立証が十分ではないために就籍が認められなかった場合であっても、孤児証明が一方においてあり、かつ、養親等の供述により少なくとも片親が日本人であるというふうに推認されるという孤児については、日本人の子に準じて帰化で処理をするということをただいまここで考えております。  しかし、何分にもそういうことでは、確かに日本人の子であるということを考えて日本に帰ってきたいというわけでございますので、これをひとつ何とか、政府といたしましても、各省庁、特に厚生省と御相談申し上げまして、何か前向きにできる措置が、いま政府委員から御答弁申し上げました以上のことを考えられないものかということを検討させていただきたいというふうに思っております。
  289. 川本敏美

    川本分科員 そこで、厚生省にもう少しお聞きしておきたいのです。  現在わかっておるだけでも調査依頼が九百人を超える人が残っておる。ところが、この間帰った方の中でも、その当時仮にこちらの両親が四十五歳だったとすれば、現在もう九十歳近い年になるわけです。中国の養父母も四十歳の人でもそういう年になる。そういうことになると、一年一年、おくれればおくれるほど肉親捜しが大変むずかしくなってくることがどなたにでもおわかりだと思うのです。ところが、千人の人を毎年六十人ずつ連れて帰っておったんじゃ十年たっても六百人ですよ。発想の転換を必要とするのじゃないかと私は思うわけです。  そこで、いろいろ言われておりますけれども、たとえて言えば、大連の港に青年の船みたいな船を一隻着けて、その一隻に五百人なり六百人なりの人を乗せて、日本に着くまでの間厚生省の方が船の中で聞き取り調査をいろいろやって、それを電報で送りいろいろ国内で手配をしておいて、全国日本列島、九州は九州、四国は四国、中国は中国、近畿は近畿、東京は東京、関東は関東というように港々に船を着けて、そこでその地域の人たちといろいろ出会わしたりいろいろな形で肉親捜しをやっていく。そういうことをすれば、仮に千人おっても五百人やれば二年で何とかできるわけですよね。そういうような形の抜本的な親捜し、肉親捜しの方法についても、これは一日もゆるがせにできない、人道にも反すると私は思うのです、だから、短期間で終了さすためにはそういうような一つの抜本的な発想の転換を必要とする時期に来ておるのではないか、このように思うわけですが、厚生省、その点はどう考えていますか。
  290. 岸本正裕

    ○岸本説明員 昨年から六十人ずつということで訪日調査をいたしまして、いま国会で御審議いただいております予算で、来年度百二十名ということに倍増させることを考えておりまして、そのほかに、厚生省の職員が中国に赴きまして直接孤児からいろいろな事情聴取をし、またいろいろな、たとえばビデオテープなどに映像をとりまして、これを日本に持ち帰りまして全国にお配りをして、いろいろと肉親からの孤児捜しの資料の充実に努めたい、こういうふうに考えております。そういたしますと、現在の六十名からはかなり前進した調査ができるのではないかと考えておりまして、そのほかにも、できるだけ短期間、早期にこの肉親捜しが進捗するように私どもも知恵をしぼってみたい、こう考えておる次第でございます。  いま先生から、たとえば青年の船方式のようなことで、五百名ないし六百名を一度に船で訪日させまして調査をしたら、一気に解消するのではないかという御指摘をいただいたわけでございますけれども、これもそういう意味で、早急に解決するという面からは一つのアイデアかと思うわけでございますけれども、現在の孤児調査というのは御承知のように非常に乏しい資料をもとにして行っておりますので、一度にたくさんの方々がお見えになりましても調査の効果というものはいかがか、こういうふうに思うわけでございます。それで、そういう面では大変むずかしいのではないかという気がいたします。  前二回の孤児調査によりましても、孤児たちはこのような方法で一日も早く調査を進めてほしいという非常に強い希望がございました。船方式によりますと、発想を変えまして、たとえば孤児のわからなかったものに対する、いろいろな祖国を見せるというような要素が出てくるのではないか。そういうものよりは、いまの孤児たちの切なる願いは、この孤児調査を一刻も早く進めてほしいということでございますので、私どもも知恵をしぼって早期解決のための案を考えてみたい、こう考えておる次第でございます。
  291. 川本敏美

    川本分科員 それから、これは法務大臣にお聞きするのが妥当かどうかわかりませんが、やはり三十数年子供を育てていただいた養父母、この養父母に対して日本政府としてもほうっておけないと私は思うわけです。だから、法務大臣は国務大臣ですから、閣議にも出られるのですから、ひとつ法務大臣の個人的な見解でもお聞きしたいと思うのですが、その養父母に対する日本政府としての感謝をあらわすということを何らかの形で考えるべき時期に来ておるのじゃないか、その点法務大臣、どう思われますか。
  292. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私、この中国残留孤児の問題については深刻に考えておる一人でございます。したがいまして、国務大臣といたしましても、できるだけこれが促進され、そして日本に帰れる人は帰れるということにならなければならないし、また、長い間中国におきましてそのめんどうを見られた方に対しまして、日本国民としてあるいは政府として何らかの感謝の気持ちを申し上げるということは当然なことじゃないだろうかというふうに思っておるわけでございます。機会がございましたならばそういうような気持ちも申し上げてみたいと思っております。  それからまた、同時に、国会におきましてもひとつそのようなこともお考えをいただきたいと思うわけです。先生指摘のとおりに、向こうの育てられた方々も年齢がだんだん年をとっていかれるわけで、記憶がそれだけ薄くなっていく、こちらの方もそうだ、そしてまた、孤児たちもそうだということでございますから、これは非常にむずかしい問題ではあるけれども、しかし、この問題については超党派的に考えられる問題ではないだろうかと思いますし、単に事務的にだけで運んでもむずかしい問題だというふうに思います。こういうことにつきましてひとつ国会でもお考えをいただきたい、われわれもその任務、任務に従いましてお手伝いを申し上げる、そうして、本当に日本人であるこの子供さん方が日本に定着をする。お帰りになって、そうやってたくさんおいでになりましても、まず言葉の問題、日本語の教育の問題、そしてまた就職の問題、いろいろございます。  これは全く私見でございますけれども、一ところに、一年なら一年あるいは半年なら半年施設を提供いたしまして国の力で教育をしてあげる、そうしてそれぞれの地域に帰っていただくというようなことがなされなければならないのではないだろうかというふうな気持ちで実はいっぱいでございます。
  293. 川本敏美

    川本分科員 時間がありませんので、私も申し上げたいことがあるのですが、残留孤児の問題はそれぐらいにしておきたいと思うのです。  そこで最後に、これは法務局の問題ですが、昨年末の十二月の二十日前後に私は奈良の法務局にお邪魔したわけです。ところが、奈良の法務局へ私がお邪魔してびっくりしたことは、駅の改札口以上に混雑しておるわけです。来ておるお客さんが座る場所もない。みんな立って待っておるわけです。なぜこうなのかということを聞きますと、私も認識を新たにしたわけですが、年末とか月末とかを控えますと、銀行から金を借りようとしたり、一軒の家を買ったりすればローンの設定とかで謄本をとったり、いろんなことで登記事務が五つも六つも重なってくるわけですね。そうしなければ金も借りられないという状態になってきておる。そういう状態ですから、年末を控えて金を借りるために抵当権の設定とか抄本の請求とか、いろんなことで人が並んでおるわけです。  ところが、法務局の職員の数は限定されてますからいたし方がない。ところが、こっちの金を借りたい方は、命の次に大事な金ですから、金がなかったら年が越せないのですから必死で皆並んでおるわけです。あれじゃ奈良の法務局はとてもじゃないが仕事のできる状態ではない。少なくともあの法務局は増築をしなければ、国民の要求にこたえられない状態になっておるのじゃないかと私は思ったわけです。  そこへもってきて職員の数ですよ。いろいろお聞きいたしますと、アルバイトを入れようにも、特殊な仕事ですから、だれかれなしにパートやアルバイトを入れてしてもらうわけにはいかない。そういうことになると正規の職員をふやす以外にないわけです。パートやアルバイトを入れて、もし登記の原簿やいろんなところにちょっと手でも加えられたら、これはまた大変なことになるわけですから正規職員でなければいけない、あるいは法務局を退職したOBか何かでなければいけない。そういうような形になってきますと、奈良も人口急増都市ですけれども、全国の都市化しておるところにおいても同じような現象が見られるのではないかと私は思うわけです。しかし、よその状況はわかりませんから、まず、私が目で見てまいりました奈良の法務局のあの庁舎をもっと広げるということが一つ。  もう一つは、職員をふやさなければ県民の期待にこたえられない。もしそれで期日に金が借りられなくて、家を抵当でとられたというようなことになったら法務局の責任ですよ、法務大臣の責任ですよ。その辺について法務省はどのように考えておるのか、どのように対処しておるのか。時間がありませんから簡単にお答えをいただきたいと思う。
  294. 中島一郎

    ○中島政府委員 まず、庁舎の問題でございますけれども、奈良地方法務局本局が入居しております庁舎は昭和五十二年に建築をされました行政合同庁舎、正式の名称は奈良地方第二行政合同庁舎でございますが、ただいま御質問にもございましたように、法務局の入居部分は、登記事務を初めとする事務量の急増によりまして非常に狭隘になりまして、事務の能率化を阻害しておりますばかりでなくて、登記手続に来られる国民の方々に非常な御迷惑をおかけしておるということは十分承知しておる次第でございます。そこで、狭隘解消のための増築を早期に実現できるように努力をしておるわけでありますが、増築実現までの暫定措置として、少しでも狭隘緩和を図るために、廊下の一部を待合室に取り込むというような模様がえ工事も考えておるというような次第でございます。  それから、職員関係でございますけれども、登記の事務量に比べまして従事職員の数が、これは奈良の法務局だけの問題ではなくて、各法務局の現場において非常に不足をいたしております。それで、私どもは法務局の増員の要求ということを最重点事項の一つとして努力をしておるわけでありまして、現在御審議中の昭和五十七年度歳出予算案におきましては百六十七名の増員が認められることになっておりますが、一方、定員削減措置によりまして百三十三名が減員になりますので、差し引きまして法務局関係の純増は三十四名ということになるわけであります。  そこで、この三十四名を全国の五十局の法務局、地方法務局に配分をするわけでありまして、その配分につきましては法務局、地方法務局の登記事件等の動向、定員配置の現状などを考慮して配分をするということにいたしておりますが、ただいま申しましたように増員数に限りがあることから、奈良地方法務局には増員ができるかできないかわからないというような実情でございます。
  295. 川本敏美

    川本分科員 時間がないので、終わります。
  296. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 これにて川本敏美君の質疑は終了いたしました。  次に、井上泉君。
  297. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、前田刑事局長、鈴木矯正局長に、これは担当かどうかわかりませんけれども、以下質問する問題の内容についての知識を得たいと思うので、まず御質問申し上げるわけです。  法務大臣と刑事局の仕事との関係で、法務大臣の権限というのはどういう面が特徴的にあるのですか。
  298. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの趣旨を十分理解していないかもしれませんけれども、刑事局は平たく申せば出先に検察庁を抱えておるわけでございまして、検察庁と法務大臣との関係はまた特殊な関係にございまして、検察庁法で決められているとおりでございます。でございますけれども、一般的な指揮監督権があるわけでございますから、その大臣の一般的な指揮監督権の補佐をしているというのが刑事局の立場でございます。
  299. 井上泉

    井上(泉)分科員 一般的な指揮監督をなされるところの権限がありということでありましたならば、たとえば検察庁にこの証拠を採用してくれと言っても検察庁はなかなか証拠に採用しないという場合に、法務大臣がそれはやはり人権に関することだから、おまえ、その証拠は採用すべきじゃないか、こういうことを言った場合にはどうします。
  300. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの証拠を採用する、しないというのはどなたが言われるのかということでございますけれども、それは裁判の当事者からのことでございましょうか。
  301. 井上泉

    井上(泉)分科員 それはそうです。
  302. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そうしますと、これは具体的な事件のことでございますから、先ほど申しました法務大臣と検察庁との関係は検察庁法に書いてございまして、具体的な事件の捜査とか処理とか公判維持に関しましては、大臣は検事総長だけを指揮できるということになっておるわけでございます。したがいまして、個々の具体的な事件につきまして、担当の検察官に対して直接指示なり命令なりはできないわけでございます。
  303. 井上泉

    井上(泉)分科員 具体的な事例として、狭山の石川君の事件でありますが、石川君は現在千葉刑務所に無期懲役を受けて服役中でありますけれども、再三、再審を要求して、そうして再審を要求するに当たっては、いろいろな証拠物件というものを提示してあって、その証拠物件を開示をしてくれ、せよ、こう言って迫ってもなかなか開示をしない。そこで再審が却下された。そこでまた新たな証拠が出てきたということによって、それを取り上げて再審の門を開け、こういう要請をしておる中に、小名木という人の証言が新しく出されてきておるわけですが、これは刑事局長御存じですか。
  304. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 余り具体的な詳細までは存じておりませんけれども、その事件につきましていろいろな主張がなされていることは承知しております。
  305. 井上泉

    井上(泉)分科員 この小名木さんという、その事件があったと言われるところのすぐ隣で農作業をしておった人が、その時刻に農作業をしておったけれども、そういう悲鳴も聞かないし、あるいは逃走しておる人がやってきた、そういうふうなことも見ることはできなかった、その時間帯、その場所には全然そういう者はいなかった、ましてや強姦殺人をするような行為があったということは全然感じ取る状態ではなかった、こう言って、その場所に居合わせた小名木という近所の百姓のおじさんが証言をしておると、これは新聞にも大きく報道されたわけでありますから、これは御承知でしょうか。
  306. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そういうお話があったことは承知しております。
  307. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは証拠として採用されるでしょうか。
  308. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 証拠として採用するかどうかということは、要するに裁判所の御判断のことでございまして、裁判所がどのような判断をされるかという問題であろうと思います。
  309. 井上泉

    井上(泉)分科員 その裁判所の問題だが、証拠を採用するかしないかは裁判所の判断というわけですけれども、やはりこれは刑事局、検察庁の方としても、私は、こういう被告にとっては、石川君にとっては、いわゆるもう本当にかけがえのない大切な、大事な証言でありますが、こういうものが新たに提起をされたということについては、むしろ積極的に刑事局長としてはこれをその証拠として採用するように働きかけてやるべきではないか、こういうふうに思うわけです。その辺の職務権限はどうか、私は法律家じゃありませんのでわかりませんが……。  そこで、大臣どうですか、こういうふうに、この非常に重要な証言が出てきており、これをその証拠として採用してもらいたいということを要求をしておるけれども、とんとらちが明かぬ。こういうふうなことは、これは裁判の問題だから関知せぬというのか、あるいはこれに対して、刑事局の方が消極的であるからこれは裁判所の方が採用していないじゃないか、そういうふうな御詮議をなさってみるというお気持ちはありませんか。
  310. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 個々の事件、特に裁判所に移っておる公判中の問題につきまして、法務大臣といたしましてかれこれ申すことは差し控えたいというふうに考えております。これは一貫した法務省の考え方でございます。
  311. 井上泉

    井上(泉)分科員 個々の事件といいましても、個々の事件が集まって全体ということに構成されているわけですから、そういう個々の事件の中にそういう問題点があれば、それを指摘するということもやはり私は一いわゆる刑事局の仕事というものは、国民の人権を無視するようなそういう誤った、どういいますか、行政というか刑事司法のあり方というものは是正をさしていくべきだと思うわけです。そこで、それはそういうことで一貫して大臣言われるのでありますから、このことについてはそれ以上大臣には質問をいたしません。  ここで、石川君はいま未決じゃなしに無期懲役で拘留されておる、服役中ということになっておるわけですが、これは無期懲役の事犯を起こした者でもやはり仮出獄の恩典というものは開かれておるということを私は承知をするわけですが、二、三例を挙げて、無期懲役の者が何年で仮出獄をしておるのか、御説明いただきたいと思います。
  312. 谷川輝

    ○谷川政府委員 委員の御質問にお答えいたします。  無期懲役刑を受けまして現在受刑しておる者につきましても、改俊の情が顕著である、刑務所において施設内で処遇をするよりも、もう社会内に出して様子を見てやろうということが適切だと思われる場合には、刑の執行を十年以上経過しました後、各地にございます地方更生保護委員会の協議といいますか、慎重な審議を経まして、その決定をもって仮出獄を許すことができることとなっております。これは刑法にその規定がございます。  現実に一例を御説明申し上げますと、昭和五十五年中に無期刑受刑者の中で仮出獄を許された者は合計五十七名ございます。ところで、昭和五十四年末現在の無期刑受刑者の数は約八百名でございますので、その七・一%が仮出獄を許されたというような現状にあるわけでございます。
  313. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで十年経過、石川君の場合には拘束されてから約二十年経過をするわけですが、懲役刑の最高は二十年とかいうことを聞いてもおるわけですけれども、これはもう二十年というものは刑務所の中で拘束をされておる。そうして再審を要求しておるといっても、現在、一方においてはこういうふうに受刑者としての日々を暮らしておる。その年数を考えると、もう十年以上は経過して、つまり規定の上から言えば仮出獄をしてもよいいわば刑期を積んできておる、こういうふうに思うわけですが、こういう場合にはどうやったら仮出獄をさしてもらうことができるのでしょう。
  314. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答え申し上げます。  まず、先ほどの答弁に一言つけ加えさしていただきますと、犯行時少年であったような場合の無期懲役の場合は、少年法の五十八条というのがございまして、これは七年以上刑を勤めた後にいわゆる仮釈放の対象となる、成人の場合は十年以上ということになっております。  ところで、この十年というのは、矯正の方が現に執行しておる方でございますし、その仮釈放を決定をする方が私ども保護の担当でございますけれども、刑の執行が開始されて実際の列の執行が十年、あるいは先ほどの少年の場合は七年の執行を終えた後ということになるわけでございます。そもそもこの刑法の解釈という点につきましては、いま先生お尋ねの中で、恐らくは未決時代の日数はどう計算するのであろうかということだろうと思いますので、その点の所管は刑事局長の方でございますので、刑事局長答弁を譲りたいと思います。
  315. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは刑事局長
  316. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま保護局長から申し上げたことと同じようなことになりますが、たとえば一般成人の場合には、刑法で「有期刑ニ付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ経過シタル後」ということで、刑期ということになるわけでございまして、そのことから申しましても、刑の執行が始まってから十年ということにならざるを得ないといいますか、なるわけでございますので、いわゆる未決中の期間をこれに通算するといいますか、算入するわけにはまいらないわけでございます。
  317. 井上泉

    井上(泉)分科員 よく判決には未決通算何日というようなことになっておるわけですが、石川君の場合には未決通算何年ということはないわけですか、そうすると。
  318. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、四十九年の十月に東京高裁で無期懲役の判決があったわけでございますけれども、その主文では、いわゆる未決算入ということにはなっていないようでございます。
  319. 井上泉

    井上(泉)分科員 そうすると、無期懲役を受けた方には、たとえ手前に何年おっても、刑期がないから未決通算というものはない、こういうことですか。
  320. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 個々の裁判におきまして、裁判所の判断でいわゆる未決算入という言い渡しがなされる場合もあるわけでございます。これは無期刑でございますけれども、場合によって有期に減刑されるということもあるわけで、そういう場合もございますから全く無意味ではないわけでございまして、それはケース・バイ・ケースと言えばそういうことになっておるわけでございます。ただ、いま御指摘の事件につきましては、裁判所の判断でそういう言い渡しがつけ加えられておらない、こういうことでございます。
  321. 井上泉

    井上(泉)分科員 こういう問題を、専門でもないからもちろんわからぬですからお尋ねするわけですが、常識的に考えて、何年も、十五年も十六年も未決におって、拘禁されておって、今度刑の判決があったときに、この判決から刑期が始まるというようなことは非常に不合理で、それは裁判所がそういう決定を下したから、刑事局の方としては関知するところではない、こういうふうに言われると取りすがるところもない、こういうことになる。そういう場合には、無期懲役に対して仮出獄の条件を与える場合には、未決通算というものは裁判所の裁判長の判断で、それを入れるも入れぬも裁判長の絶対的な権利として行うことができるという、これは法律になっておるのでしょうか。
  322. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 現在の制度といたしましては、いまのようなことになっているわけでございます。
  323. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう制度は、今日の人権尊重の時代にふさわしくない制度じゃないかと思うのですが、これを改正するという場合にはどこが法案を出す役所になりますか。
  324. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この問題につきましては、御指摘のような考え方も一面あり得るわけでございまして、そういう考え方による改正ということも十分考えられるわけでございます。現在、私どもで刑法の全面改正ということを考え、鋭意作業を進めておるわけでございますが、その中でそういう考え方を取り入れるということは可能なわけでございます。
  325. 井上泉

    井上(泉)分科員 石川君の問題についてはまた次の機会に一なお、これは新しい、しかも決定的な証拠である小名木さんの証言というもの、これを法の番人という最高裁が採用せぬということはもってのほかですから、これを検察庁の方が最高裁に採否を決めてもらいたいということで証拠物件として出してあるということは、先ほどの答弁で間違いない、こういうふうに認識をしておっていいですか。
  326. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 これもちょっとお尋ねの趣旨に合うかどうかと思いますけれども、現在、この事件につきましては最高裁に特別抗告の申し立てがなされて、係属中であるわけでございまして、その段階で、本人側のいわば訴訟活動の一つとしてそういうことが行われているわけでございまして、先ほど来申しておりますように、検察側で裁判所に対してこうしろ、ああしろということは言えない立場にございまして、裁判所の御判断にまつというほかないわけでございます。
  327. 井上泉

    井上(泉)分科員 言えないが、こういう証拠物件が出されてきておるということについて、これは刑事局の方も承知をしておる。この問題については、私も法律の専門家の弁護士の先生方に相談をして、一日も早く石川君の無実が立証されて釈放されるように、そしてまた、これは百歩譲って、こういうことで拘束をされてきておるといっても、もう二十年も経過したから早く釈放するようにというような、やはり運動というものを強めていかなければならぬ、こういうふうに思うわけです。  そこで、もう一つ、いわゆる帝銀事件の平沢さんがことしの二月十八日で満九十歳になっている。私も毎年この誕生日の前後には刑務所へ行くわけですが、ことしも二月十七日に行って会ってきたわけです。会ってきたわけですけれども、比較的元気に、そしてまだ自分の冤罪というものを主張し、自分を拘束した高木検事が人間として死ぬることを希望する、こういうふうな話までしておったわけです。この平沢さんはもう真犯人であるか否かということを抜きにして、もう九十歳でありまするから、これは日本の昔からの制度、つまり律令制度の時分でも、日本では九十歳以上の者と七歳以下の者に対しては、たとえ死刑に当たる罪を犯したとしてもこれを罰しないことになってきておる、こういうことを文献で承知をしておるわけですが、平沢さんはもう九十歳になっておるのですから、ここらあたりで何とか恩赦の道を与える方途がないのか、お手上げかどうか、担当の局長から、平沢さんを出すという場合にはどういう手だてがなされたら釈放ができるか、その点ひとつ御返事願いたいと思います。
  328. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答え申し上げます。  井上委員十分御承知のとおりでございまして、現在のわが国の刑事法制度の上から申しますと、いまおっしゃっておられます平沢の場合には、恩赦ということでやるか、あるいはもう一歩刑事手続の中でございます再審という手続の中でけりがつくかという二つの道しかないようでございます。恩赦について申し上げますと、これまた御承知のとおりで、一昨年の十二月十六日に、法務省にございます中央更生保護審査会一恩赦の点について議決いたします機関におきまして、恩赦不相当という議決がなされました。直ちに一昨年十二月二十二日、代理人の弁護士の方から新たな第四回目の恩赦の申請が出ておりまして、現在、中央更正保護審査会におきまして、慎重にいま一度審議をしておるという最中でございます。現在の中央更生保護審査会の委員方は、いずれも知識、経験ともに豊かな方ばかりでございまして、必ずや慎重審議の結果、適切な御判断をいただけるものというふうに私どもは期待しておる次第でございます。
  329. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは期間で言うと、大体どのくらいかかるものですか。これは慎重審議いうて十年かかったら百になりますよ。一体、常識的に言うてどうなんですか。
  330. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答えいたします。  これは平均どのくらいであろうかというようなお答えが全くできない事柄でございまして、だれが見てもはっきりした簡単な——簡単と言うと語弊がありますけれども、たとえば交通事故あたりの事件でどうのこうのと申します場合は早期に結論が出ると思いますけれども、本件の平沢の帝銀事件のような場合は、記録だけでも膨大な数に及びまして、しかも現在恩赦の申請もなされておりますと同時に、十何回目でございますか、再審の申請もなされておりまして、記録が再審を担当しておられます裁判所に行ったり、あるいは私どもと申しますか、中央更生保護審査会の方に戻ってきたりということでございまして、従前どおりの結論を出すならば実は簡単でございますが、昨年中に二人中央更生保護審査会の委員がおかわりになりましたので、新しくおかわりになった委員はより慎重に検討したいということで御審理になっておりますので、そう簡単には結論が出ないのではないか、このように考えております。
  331. 井上泉

    井上(泉)分科員 それ以上のことは——この場合にあれですか、大臣は何にもこれに対する権限というものはないのですか。
  332. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答え申し上げます。  権限がないということはないのでございまして、中央更生保護審査会というところの委員方が御検討になりまして、恩赦相当ということになりますと、大臣あてにその旨の御報告をなさる。そうすると大臣の方から、これも相当であるとお思いになれば、内閣に対しまして恩赦にすべきが妥当であるというふうな申し出がなされまして、閣議で恩赦ということが決定され、そして法務大臣名義でいろいろな種類の恩赦状というのが出されるという仕組みになっておるわけでございます。
  333. 井上泉

    井上(泉)分科員 こういう問題については俗に言われる法務大臣の指揮権というものは通用しないということですか。
  334. 谷川輝

    ○谷川政府委員 検察庁法のいわゆる指揮権というものは全く関係がございません。あとは大臣の御判断と申しますか、それにかかっておるわけでございます。
  335. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、私は時間がありませんから要請するわけですけれども、これはできないですか。平沢さんが養子縁組みをしておる。つまり平沢さんにも子供ができた。それで、病気でもした場合には、平沢さんの面会は断られるわけですが、そういう場合に、やはり病気で寝ておれば、親族のある限りにおいてはそのところへ行って面会をさすとかいうように居間で面会さすというようなことはできないでしょうか。そういう便利は図ってもらえないでしょうか。
  336. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 刑務所内での面会の問題でございますと実は矯正局の所管でございまして、矯正局長がちょっと参っておりませんので的確なお答えができないわけでございますが、面会の場合に刑務所内の管理等に支障がない限度でいろいろな便宜は計らい得るのではないかというふうに思います。
  337. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、この平沢さんの釈放については別に大臣が指揮権を発動してできるとかいうような性格のものでもないということでありますし、その点については了承するわけですけれども、もう九十ですから、この世の中へ出しても別に実害を生ずるというようなことはないと思うし、そういう線で中央更生保護審査会の審査を早く急がせて適当な結論を出せよ、こういうくらいの働きかけは大臣としてできないものかどうか、大臣の見解を承りたい。
  338. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほど政府委員から御答弁申し上げましたとおりに、中央更生保護審査会のメンバーというのは非常に識見豊かな方々ばかりでございます。したがいまして、平沢の年齢等も考慮の上、慎重に十分検討をされるものだと私は考えて、これを見守りたいと思います。
  339. 井上泉

    井上(泉)分科員 終わります。
  340. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 これにて井上泉君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  341. 草川昭三

    草川分科員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  まず最初に、赤ちゃんの国際的な養子縁組みの問題についてお伺いをしたいと思います。  実は法律の専門のジュリストというのがございますが、この七百三十号の中にも「国際養子縁組の一断面」という形で問題提起がなされておりますし、それから一つの解決方法といたしまして、実は私どもの地元でございます愛知県の産婦人科の会の方が赤ちゃんの縁組みについての無料相談というのをやっておりまして、これは法務省の民事局長の方からも御推薦を願っておるわけでありますし、厚生省の児童家庭局長の方からの推薦も出ておる一つの問題提起があるわけでございます。  しかし、いま具体的な事例としてジュリストの中にも提起をされておる問題は、日本人の実父母があるわけでありますけれども、これは昭和五十四年十一月に出生をした婚外子、当時は父親が認知していないわけでございますけれども、例の有名な菊田医師のところで赤ん坊を生み、そして菊田医師の地元の公証人役場で母親が親権放棄をするわけでございますけれども、たまたまその親権放棄の客観的な条件としてはかなり強い要求というのですか、本人は強迫だと言っておるわけですけれども、そういう形で養子縁組みをしたわけですけれども、これのいわゆる認証された書類というものが中心になりまして、しかも広島のベビー救済協会という定かではない協会の手によってハワイで養子縁組みがされる、こういう事件でございまして、後ほどこの実親、特に父親がそのお母さんと結婚するということになってその子供を取り戻したいというので、国際裁判になっておるわけでございます。その国際裁判がついせんだって結局棄却というのですか、敗訴するわけでございまして、非常に問題が多いわけでございますが、この事実について法務省は承知をなすっておみえになるか、まずお伺いをします。
  342. 中島一郎

    ○中島政府委員 この件につきましては、ただいま御指摘がございましたように、国内の裁判所でも取り上げられましたし、外国の裁判所の事件にもなっております。また二、三の法律雑誌もこの関連記事を掲載したというようなことでございますので、そういうものを通じて、また先ほども指摘がございましたように、公証人が若干関係をしておるというようなこともありまして、その公証人から地元の法務局を通じて事情を聞いた、そういった方法によりまして、その程度のことは承知をいたしております。
  343. 草川昭三

    草川分科員 そこで、日本で生まれた日本国籍を有する子供、とりわけ乳幼児、赤ちゃんでございますが、この乳幼児をアメリカ在住のアメリカ人の養子とするというケースに限定をしたいと思いますが、一つの方法は、先ほど申し上げましたように、日本の家庭裁判所に養子縁組みの申し立てをするということが一つあると思いますし、これは具体的な例もあるわけであります。もう一つの実務上の問題ですけれども、第二の方法は、養子となる子供をアメリカに連れていき、アメリカの州法上の養子縁組みの手続を行わしめるわけでございますけれども、これにはアメリカというのは各州がございまして州法によって違いますけれども、各州とも非常に厳格な手続が要求をされまして、たとえばそのハワイの場合だと州の児童家庭局というのが、認定をする団体がございまして、その団体がいわゆる養父というものの家庭の条件あるいは養父のいろいろなバウンダリーコンディションというのですか、周辺の状況というのを子供の福祉という立場から綿密な調査を行いまして、これならばいいだろうというので養子縁組みを認めるということになっておるそうでございます。それはそれでいいのですけれども、たまたまこの日本の場合は父親のない子供というものが生まれる。そこで公証人の手元で母親が親権放棄をする、それがアメリカならアメリカへ行く、その場合にあっせん業務を行う人がいるわけでございますけれども、たまたま本件の場合は、広島県佐伯郡大野というところにベビー救済協会というのがあるわけです。ここの景山という方があっせんをなされるわけでございますけれども、これは私ども調査によりますとベビー救済協会というのは県のあらゆる、いわゆる広島県の行政とは何らのかかわりがない、登録もされていない、役場の方もそういう団体があるということも承知をしていない、その方がいるということは知っているようだけれども、ということなんでございますが、この方がハワイの方と話し合いをいたしまして、ハワイの新聞に赤ちゃんあっせん広告を出しておるわけであります。日本の子供をあっせんするという形でハワイ在住の方に希望をとりまして養子縁組みをしておるわけでございますが、私はこれは人権上から考えてもいかがなものかという感じがするわけでございます。人権上こういう子供のあっせんということがお金が前提にやられているとするならば私は人身売買だと思いますけれども、非常にむずかしいすれすれのところでこのようなことが行われておることについてどのようにお考えになられるでしょうか。
  344. 寺西輝泰

    ○寺西説明員 お答えいたします。  先生ももう御承知のとおり、養子縁組みにつきましては、未成年者の場合、その子供の人権を確保するという趣旨から、日本では家庭裁判所の許可を必要とするということにして、その審査を経ているわけでございます。先生が御指摘の事例の場合も、これはハワイの方の裁判所のチェックを経ているものでございまして、そういう裁判所という厳正な立場から特にその未成年者である子供の立場に立ってチェックをするということが行われておりますので、そのような場合に、間にたとえば業者が介在しようと裁判所のチェックを得るということで子供の人権が守られておる、そのように理解しております。
  345. 草川昭三

    草川分科員 ということになりますと、一番最初に子供の人権がいま守られておるとおっしゃっておられますけれども、たまたまその一番最初の具体的な事実というのは、日本の公証人の面前で実はその母親が親権放棄をしたという唯一の書類が基礎になるからこそアメリカ、たとえばこの場合はハワイでございますけれども、ハワイの裁判所が認定をする、こういうことになるわけです。ところが、その日本の公証人というのはどういうことをしたかというと、形式的な審査ではないだろうか。日本の公証人はどういうやり方をしたかといいますと、いわゆる認証という手続をしたにすぎないわけです。公証人の目の前で書類を書いたということだけを公証人は認証したわけでありまして、書類の内容についてまで公証人が責任を持って認証をしていないところに私は問題があると思うのですけれども、その点いわゆる公証人というのは国際的な管轄があるかないか、あったとしても、どの程度内容について、こういう内容なのでいいですか、悪いですかということを言ってしたかどうか、ここが非常に問題になってくるわけですが、認証という手続はどのようなものか、お伺いしたいと思います。
  346. 中島一郎

    ○中島政府委員 公証人の仕事の内容は各種あるわけでありますが、そのうちの一つには、公証人がみずから公正証書をつくるという仕事がございます。これは申すまでもなく公証人がその証書の全般をみずからつくって、公証人の責任において書面をつくる、そして関係者がそれに署名をする、こういう形になろうかと思います。  もう一つ、署名の認証という仕事がございます。これは署名そのものは関係者がつくるわけであります。その末尾であろうかと思いますけれども、そこにその書面に利害関係を有する者が署名をいたします。その署名が何人によってなされたかということを公証人が認証する、こういう性格のものであるというふうに理解いたしております。
  347. 草川昭三

    草川分科員 そこで、私どもはそのとおりだと思いますけれども、私は実態上の問題を提起するわけですけれども、その母親がそこで放棄をする、その放棄について本人が撤回をしたい、非常に迷うわけですね、母親ですから。迷うんだけれども、たまたまそのあっせん人というのが来て、もうこの赤ん坊はハワイへ渡すということが決まっておるのだ、あなたがいまここで親権放棄に反対をするならば、ハワイから養父が来ておるんだ、あるいはあっせんをする人が来ておるのだ、その費用もあなたは損害賠償として払いなさいなんということを言うものですから、やむを得ず本人は公証人の目の前で署名をした。公証人はたまたまこれは日曜日でございましてサービスをしたということになると思うのですけれども、公証人の自宅で認証をされたという、その書類が基本になりましてアメリカでは敗訴になってしまった、こういう事例を訴えておるわけでございます。  その本人の住所も、本人は別の住所でございましたけれども、親権放棄をした住所は、たまたまこの菊田医師の宮城県石巻市の住所になっているというわけでございまして、私は、これは調べていきますと非常に重要な問題があると思うのです。公証人の方は、本人の免許証の提示を求めて本人であるということは間違いがない、しかし、免許証ですから住所の移動があるというので認められたようでございますけれども、私はこういうものを見てまいりますと、人権上非常に重要な問題になるのではないだろうか、こう思うわけであります。ですからこれは一つの事例で、もう敗訴になっておりますけれども、親としては非常に耐えられぬ問題でもございますし、法律的に言うならば、そんなに耐えられなければそのときになぜ拒否をしなかったのか、本人が悪いじゃないかということで一言で片づけられてしまうかもわかりませんけれども、意味するものは、私は非常に重要な問題があると思って提起をしておるわけであります。  そこで、その養子縁組みについては、具体的には愛知県の産婦人科医がやっておりますような赤ちゃんの無料相談ということを真剣に取り上げながら、そして家庭裁判所においてそれを認めていくというようなやり方が私は一番いいと思うのでございますし、かなりの実績があると思うのですが、法務省として、この愛知県産婦人科医が問題提起をいたしております赤ちゃん縁組みの無料相談について、どのような見解を持っておみえになるか、お伺いをしたいと思います。
  348. 中島一郎

    ○中島政府委員 愛知県医師会の行っておられますあっせん、その具体的な内容については私存じませんけれども、先ほどおっしゃいました愛知県医師会の発行しておられます業務内容についての小冊子がございまして、それを拝見したことがございますが、その内容によりますれば、養子縁組みのあっせんといたしましては法律的にも問題がなく、大変結構なことであるというふうに考えております。
  349. 草川昭三

    草川分科員 この問題については一回大臣からも御意見を聞きたいと思うのですが、私はたまたまここに「かわいい天使がやってくる」というので小冊子を持っておりますが、法務省の方の民事局長の推薦、これは五十三年の十月一日の法の日を記念してやられておることであります。それから厚生省の児童家庭局長の方も、これでいくことが日本の将来のためにも非常にいいことではないだろうか、こう言っておるわけでございますので、ぜひこの運動を進めていただきたい、こう思うので、大臣にこの件についての御意見を賜りたいと思います。
  350. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま民事局長が御答弁申し上げましたとおりに私も考えておりますので……。
  351. 草川昭三

    草川分科員 では次に、樺太、いまのサハリンでありますけれども、日本がいわゆる朝鮮というものを植民地として支配をしていた当時、これは現在の北朝鮮、韓国を問わない、当時朝鮮人として彼らを日本国籍にしたわけでございますけれども、樺太に強制連行をいたしまして、炭鉱等で強制労働に従事をしたわけであります。これが敗戦時には約四万三千人残っておみえになったわけでございますけれども、彼らの出身というのは圧倒的に現在の韓国が多いわけでございます。当然のことながら故郷への帰還を希望しておみえになるわけでございますけれども、いまなお残念ながら複雑な要因等がございまして、そのまま現地に抑留というのですか、残っているわけでございます。この件について、まず、これは外務省になりますか、どの程度フォローというのですか、つかんでおみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  352. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  政府は、かねてからソ連政府に対しまして帰還希望者の実情調査を依頼する等働きかけてまいりました。残念ながらソ連政府からは、本件は日本とソ連の間の問題ではないということで回答を得ておりません。帰還促進の団体の調査によりますと、約四万人の方が在樺太朝鮮人として抑留されたわけでございますけれども、韓国政府からの提出のリストによりますと約七千名、そのうちの千五百名が日本への引き揚げを希望しているということでございます。さらに、入国許可の申請を行いました方々は、全部で百三十七世帯、四百三十八名、現在までに入国許可を付与された者は百二十四世帯の四百十一名、実際に入国いたしました、帰国いたしました方が三名ということで入国許可を得ておりますけれども、未帰還の者が四百八名という状況でございます。
  353. 草川昭三

    草川分科員 いま在樺太朝鮮人の方々は約四万人ということでございますが、これも正確に実は日本政府として把握をしていないわけです。これも帰還促進団体の数字による、こういうことになっておりますけれども、実際上戦前日本が日本人として強制連行をした数というのは一体どこが把握をしておるのか、そして本当に日本政府の責任のもとにどのような調査が行われているのか、これがいまもって定かではないわけであります。  これはもうきょうは時間がございませんので、できたら、あすも私は締めくくり総括でこれはぜひ関係の方々に意見を求めるつもりでございますけれども、安否調査というものを外務省はやったかどうかということをまずお伺いします。
  354. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 外務省といたしましては、ソ連政府に対しまして、先ほど申し述べましたように累次実情の調査を依頼いたしました。その安否等含めまして実情の調査を依頼したわけでございますけれども、残念ながらソ連政府は、これに対して日本とソ連の間の問題ではないという立場をとり続け、回答しておりません。
  355. 草川昭三

    草川分科員 そこで、法務省にお伺いをいたしますけれども、法務省が入国許可申請を行った者について四百十一名の許可証を出したと言っておるわけですけれども、これはどのような手続で入国審査を行われたのか、お伺いします。
  356. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 サハリンにおります韓国人のうち、韓国に帰りたいということでわが国を通過したいという、そういう申請を出した人、それからかつて日本に住んでいたためにもう一度日本へ戻って定住したいという、そういう申請をした人と両方ございます。大部分は前者でございます。このうち、今日まで韓国に戻るために日本に入りたいという申請に対して許可を与えました者が三百七十六名おります。それから日本に定住したいということで許可を申請しました三十五名に対して許可を出しております。合わせて四百十一名でございます。  そこで、前者の韓国に帰りたいという人については問題ないのでございますけれども、わが国に定住したいというケースにつきましては、私どもとしては、まず、かつて在住した経歴が本当にあるかどうか、それから身元保証人の有無、こういうことに着目して審査をしたわけでございます。  なお、この四百十一名の許可を得た者のうち、実際に入国した者は、韓国向けの二名と、わが国に定住した一名、合わせて三名でございます。
  357. 草川昭三

    草川分科員 とにかく四万人お見えになるわけですよ。四万人お見えになる中でわずか三名だけというのは、これは日本の責任としても大変なものがあると私は思うのです。私も、ちょうどいま裁判をやっておりますけれども、樺太裁判というのがやられておることは法務省も御存じのとおりでございますけれども、その裁判の証人になるために韓国からお見えになった方ともお会いをいたしましたけれども、戦前に、ある日突然日本の兵隊が来、日本の行政官が来て、私のお父さんを樺太に連行した、日本人として連れていった。だったら、日本人として韓国へ帰してもらいたい。いま局長は、韓国に帰りたいという人は問題ないとおっしゃっておられますが、問題がまさしくあるわけですよ。問題があるからこそ、戦後は終わっていないと彼らは言うわけです。私もお会いをいたしましたけれども、自分の流した涙が川になるぐらいなんだ、できたら私は、一カ月でも二カ月でも半年でも、お父さんに会えるならここにおる、こう言っておみえになりましたけれども、これはいまちょうど中国から孤児の招待の問題について日本の国内が大変な関心を呼んでおりますけれども、それと同様、それ以上に私は、いまなおこの四万人の日本の責任というものが果たされていないということに非常に強い不満を持つわけです。ソ連政府が言うことを聞かなければ日赤を使うという手もあるわけでありますが、ひとつこれは厚生省の方から、どのようにお考えになっておられるのかお伺いしたいと思います。——厚生省ちょっと来てないそうですから、では、ひとつこれは法務省の方としても人権上の問題があるわけでありますし、いま入国審査を進めたとおっしゃっておられますけれども、私はこの四百十一名だけではないと思うのです。とにかく四万人という方が日本の手によって連れていかれたわけですから、徹底的に調査をし、いま少しソ連政府に対するアクションなりあるいは行動も必要だと思うのですが、まずこの人権上の配慮をどのように考えられるか、法務省にお伺いします。
  358. 寺西輝泰

    ○寺西説明員 人権上の問題ということでございますけれども、確かに道義的な問題その他いろいろあると思います。しかしながら、これは外交の問題が絡んでおりまして、われわれ人権擁護機関としましてはもう手も足も出ないというところでございます。政府の各機関が一生懸命その点も御配慮になって努力をされておられるところでございまして、私どもとしましては、一日も早くこの問題が解決することを期待しておるというところでございます。
  359. 草川昭三

    草川分科員 きょうは分科会の席上でございますからいま課長がおっしゃいましたようなことの答弁よりこの場では出ないかもわかりませんけれども、これはぜひ法務大臣にお願いしますが、閣議の席上でもぜひこれは取り上げていただきたいことでございますし、これは裁判で結論が出る問題ではございません。いまお話がありましたように、国と国との関係であり、そしてまた、国と国とがどうしても解決をできない場合には人道上の問題として赤十字のルートで話し合いをするとかということを真剣にこれは考えなければいけないことだと思いますので、ひとつ大臣から最後に見解を賜って、時間が来たようでございますから終わりたい、こう思います。
  360. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 サハリン在留の朝鮮半島出身者の帰還問題につきましては、これらの人たちが樺太に渡りました歴史的な経緯等を考慮いたしまして、できるだけの人道的配慮を尽くしたいというふうに考えております。これらの人たちからわが国を経由して韓国に帰還したいとしてわが国に入国申請がなされました場合には、すべてこれを認める方針でございます。また、これらの人たちがかつてのわが国における居住歴等を理由として再びわが国での居住を希望する場合には、できるだけ入国を認めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  361. 草川昭三

    草川分科員 以上で終わります。
  362. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  363. 沢田広

    沢田分科員 法務大臣にまず最初に、いまも爼上に上っておりましたが、言うならば大東亜戦争のつめ跡というようなものが顕在化されつつあります。先般台湾の方々の判決においても認められなかったという経緯もあります。これは朝鮮の人人も同じでしょうし、いまの名称で言えば韓国であり朝鮮民主主義人民共和国である。もちろん樺太の問題もその一部でありますが、日本人であったときの既得権、これが判例では今日むずかしい、こういうことになっておりますが、その点の見解、これは言うならば日本人としての義務を履行しようとして生じた犠牲、この考えは間違いないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。——それじゃ後で……。答えてくれますか。これは大臣の素朴な感情を聞きたかったのです、事務官の答弁じゃなくて。その当時日本人であったことによっていろいろと犠牲を受けた、その犠牲については日本人としての補償というものが伴うのが至当なのではないのか、こういう人情論といいますか純粋な議論として、大臣に素朴に、これは法律上の問題を聞いているのではありません、ひとつ大臣、その点は素朴な見解をお聞かせいただきたい。
  364. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 かつて日本人であったたとえば台湾の方々が一緒に戦争に行かれて、日本ではそれなりの処遇が行われておるのに、現在は台湾人であるがゆえになかなか日本人の出征者と同様の取り扱いを行えないというような点があることも私は承知をいたしておるわけでございます。こういうような問題をどうやって合理的にあるいは法律的に処理するか、日本が今日国際的な地位を得ました国としておりますときに、やはりそれなりの責任を果たさなければならない。ただし、その責任や義務はどういうふうに考えたらいいかということに心を痛めておるというのが私の気持ちでございます。
  365. 沢田広

    沢田分科員 理解のある御答弁だと思うのです。言うならば一つの土俵ができたというふうな感じが私はします。判決その他の問題は司法関係の権限でありますが、立法府としてはそれに対応する法律をつくれば救済の道は講ぜられる、その法律がどういうふうになるかは別問題としまして。これは細かい問題はたくさんあるだろうと思うのです。どの程度までどういうものをということで議論の余地はあると思いますが、立法化すれば一応救済する意向はある、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  366. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 政府として当然考えなければならない問題もあろうかと思いますが、同時にまた、国会自身としてお考えいただく問題もあるのではないだろうか、むしろその方があるいはその人たちの処遇を正当になし得るという場合もあろうかと実は思うわけなのであります。私も三十六年国会議員をやっておりますけれども、議員立法で、なかなか政府立法でできないもの——政府としては何かやりたいのだけれども、各省庁との話し合い等も十分にない、そのうちに時間がだんだんたっていくというようなこともございまして、その際はむしろ各党お寄りいただいて国会としてのコンセンサスが得られる、その場合は各省庁がまたそれなりに対応いたしまして議員立法として通過した例も今日ございますので、そういうようなことを先生がお考えになっておるとするならば私も同様に考えておるわけでございます。
  367. 沢田広

    沢田分科員 非常に結構な答弁です。では、資料その他の提出等はそれぞれ外務省あるいは総理府、法務省含めまして協力することはやぶさかではない、こういうふうに考えてよろしいですか。
  368. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 法務省といたしましては、できる限り資料も提出させていただきたいというふうに思っております。
  369. 沢田広

    沢田分科員 では、それでその問題は終わります。  次に、いまいろいろの原因はあるだろうと思うのですが、子供たちの生育程度が、体はとにかく大きくなった、能力においてどうこうということはいろいろ議論があると思うのですが、十八歳の成人説というものがいまいろいろ議論されつつあります。十八歳で成人に認めていく、選挙権ももちろんある、そのかわりまた義務も伴う。いまの二十歳の成人を十八歳ということにしてはおうかという意見を聞きます。この点はどうですか。法務大臣としてどのようにお考えになっておるか。政府の統一見解までには至っていないと思いますけれども、今日いろいろ問題が多いときでありますから、成長率あるいは知能あるいは社会常識、いろいろな分野を考えて、十八歳から成人として扱うという条件に近づきつつあると私は感じているわけでありますが、いかがお考えになっておるでしょうか。
  370. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この点は、先生も御指摘のとおりに非常に問題があるだけに、法務大臣としてそれに対する意見を申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  371. 沢田広

    沢田分科員 私は法務委員会にいたことがありませんから、法務大臣が何かそういうことを言うといろいろ影響が出てくるということになるのかならないのかちょっと私もはかり知れないものがあるのですが、先生も大変長い議員歴であり、日本の将来を考えてかくあるべきだというものをやはりお持ちになっておられるのだと思うのですね。また、そういうことを主張したからこそ三十有余年の議員生活がやはり国民の支持を得られたんだと思うのです。ですから、今日この老齢化社会を迎えていく、老人人口はふえる、就業人口は減る、いろいろな角度の物の見方を考えまして、あと二十年後あたりが一番最高のピークですね。そういう展望を持って考えたときに、確かに十八歳では生まれる子供の知能指数が低くなるとか低くならないとか、そういう問題ももちろんあると思います。人口政策もあるだろうと思います。あるいは老人対策もあるだろうし非行少年の問題もある。しかし、担当する法務大臣として一応全般的なそういう情勢の判断をして、成人を十八にするか十九にするか、これは議論の余地があると思いますよ、必ずしも十八が絶対的だとは私は思っておりません。しかし、そういう一つの方向へ決断をしなければならない時期に来ているのではないかというふうに私は感じるわけなんですが、その点大臣、どういう理由で支障があるのか。私が素人のせいかもわかりませんけれども、大臣の見解を述べると何か特別政変でも起きるのでありましょうか。ちょっと御見解を承りたいと思うのです。
  372. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 なかなかいい質問をなさいますので実はお答えに窮しているということなんでございます。かつて封建時代におきましては十五歳をもって成人とするというようなこともあったわけです。しかし、また一面においては十八歳で体は非常に成人に達している、ところがまた一方の批判あるいは非行青少年その他の行動から考えると実は非常に幼稚なんだ。われわれのころは大学入試のときに親がついていくなんということはなかったわけですが、このごろでは大学の入試に親がついていくとか、あるいはまた就職試験にやはり親がついていくとかいうようなことで、その点は非常におくれているんじゃないだろうかという気もいたすのです、自立精神ということから考えると。でございますから、これはいろいろの面を総合して考えないと何とも言いようがない。いわんや法務大臣が、二十歳を十八歳にした方がよろしいなどと言うことはやはり問題だと私は思っております。この点は総合的に考えなければ問題であると思っておるわけでございます。ひとつ先生の御意見は御意見として伺っておきたいと思います。
  373. 沢田広

    沢田分科員 大臣、ばかに消極的なんでありますが、その点はひとつ何らかの機会にそういう知識人やあるいは有識人といいますか、あるいは国民各界各層の意見を集めていく機会をなるべく早くつくっていただきながら、二十年、三十年先の日本の人口構成等を考慮しつつ、あるいは労働者人口等も考慮しつつ、大所高所に立って判断をするという機会を早目につくっていただくよう要請をして、次にいきたいと思います。  次に、登記関係でお伺いをいたしますが、不動産の登記というのは、要すれば第三者に対抗する条件を具備する、こういうふうに一般的に、自分の所有物件であるということを第三者に対抗するための必要要件として登記というものが現在の法律上規定されておる、大ざっぱに言ってこういうふうに理解してよろしいですか。
  374. 中島一郎

    ○中島政府委員 権利に関する登記に関して申し上げましたならば、ただいまおっしゃいましたとおりでございます。
  375. 沢田広

    沢田分科員 登記について、特に不動産を申し上げるのでありますが「不動産ノ表示ニ関スル登記ハ登記官職権ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得」という条項がございますね。これはどういう意味と解してよろしいですか。
  376. 中島一郎

    ○中島政府委員 権利の登記の前提といたしまして、すべての不動産について、その形状あるいは大きさというようなものを表示いたしまして明らかにするという目的のもとに、すべての不動産、土地、建物につきまして、その明細を職権によっても登記することができるという形で設けられたのが表示の登記でございます。
  377. 沢田広

    沢田分科員 この職権で登記ができるということで従来いろいろの問題が起きた例もありますが、いずれにしても悪いことだけではない。いわゆる登記官が、それが雑種地であれば雑種地であり、宅地であれば宅地であると確認をすれば宅地として登記もできる。あるいは民法上二十年、まあ十年でいいんですが、十年何ら督促を受けずに占有していれば、これまた民法上その人の所有物件になる、これも当然決まっている。これも登記官が確認できれば当然その人に職権登記は可能である。あらゆる場合を考えてみて登記官の権限というものは非常に強い。私もそう思うのでありますが、そういうことなどを含めて、登記官の認定によってそういうことは、いわゆる職権で登記することは可能であるとあらゆる法律に一あらゆる法律にと言うと言葉がいけないのですが、農地法あるいは都市計画法、そういうものの法律について別枠にわたって登記は可能である、こういうふうに考えられるのでありますが、その辺はいかがですか。
  378. 中島一郎

    ○中島政府委員 表示登記ということになるわけでありますと、それは現在において新しく表示登記をするという場合は新しく不動産が生じたという場合が中心になろうかと思います。でありますから、新しく建物が建築をされた場合、あるいは土地が何らかの形で新しく生じた場合、あるいはその土地の形状が変わった場合、建物の形状が変わった場合、こういう物理的な変更が起こった場合が表示登記の問題であります。  ただいま御質問の中にちょっと出てまいりました取得事項によって権利が移った、これは権利の登記でありますから、ただいま申し上げております表示の登記ではなくて、権利の登記として処理されるべきものであります。
  379. 沢田広

    沢田分科員 そこで、官公署の権利に関する嘱託登記という条項がありますが、二つばかりこれについてお伺いします。  官公署と現在呼称されているものの中身、これはここで挙げ切れないのじゃないかという気がするのでありますが、挙げ切れないのだったらば後で書類でお示しをいただきたいのですが、挙げられれば挙げていただきたい。
  380. 中島一郎

    ○中島政府委員 いわゆる俗に官公署と呼んでおりますが、それは国、地方公共団体あるいは省庁というようなものを中心といたしまして、その他に特別法によりまして、特殊法人等が登記の面におきましては官公署としての取り扱いを受けておるものがかなりございますので、これは後ほど詳細を御報告したいと思います。  それで、官公署というのは登記法上どういう特別な扱いを受けておるかというふうに申しますと、その権利の登記におきまして、私人でありますれば申請によって登記が行われる、こういうことになります。申請のためには登記法上は本人が出頭しなければならない、こういうことになっておるわけであります。ところが、官公署につきましては申請にかえて嘱託という手続をとることができるわけでありまして、この嘱託につきましては本人が出頭しなくてもよろしい。ここが登記法上官公署が特別な扱いを受けておる点でございます。
  381. 沢田広

    沢田分科員 若干オーソドックスな話になりますが、道路の買収それから河川の買収、その他、今日戦後だけ数えてもたくさんあるわけですが、抵当権が入っているあるいは相続人が十七人も十八人もいるというようなことによって、公の団体が買収した土地ですら登記ができないでいるというものもたくさんあるわけですね。河川台帳なんか戦後三十何年たったってできない。道路台帳が、できるというのがほぼ七割くらいでしょうか。そのぐらい国有財産といいますかそれぞれの行政財産の把握力というものはきわめて程度が低いのですね。こういう実態についてはお聞き及びになったことがありますか。
  382. 中島一郎

    ○中島政府委員 河川台帳あるいは登記台帳ということになりますと、そういった行政財産を各省がどの程度把握しておられるかということにつきましては、私、直接の所管でございませんので十分承知いたしておりません。
  383. 沢田広

    沢田分科員 これは、昔われわれが県会の時分に、河川台帳を出せと言っても出せない、道路台帳を出せと言ってみてもなかなか出せない。では警察の財産を全部出せと言ってみてもこれも出せない。駐在所が皆どこのものであるかもわからなくなってしまうというぐらいに、きわめて官公庁の財産管理というものは不明確である。土地改良区の関係の方も同じなんです。これも、用地買収はしたけれども第三国人が持っているとなると、売買されてしまいますと分筆もできなければ登記もできない。同時にまた、抵当に入っていればこれも分筆ができない。こういうことで、水路を含めて河川、道路の登記についてきわめて悩んでいる。こういう実態は御承知にはなっておりませんか。
  384. 中島一郎

    ○中島政府委員 官公署が国有財産をどの程度把握しているかということの実態全般についてのお尋ねであるかと思いましたので、私、その点は十分承知いたしておりませんと申し上げましたが、官公署が私人から不動産を買収をいたしまして、その買収のための登記ができておるものもありできておらないものもある、そのできておらないものがかなりあるんじゃないか、その実態はどうかということでありますれば、私、直接の所管でございませんから十分は承知しておりませんけれども、間々そういうケースについての話を聞きますので、そういう傾向がかなり強いということは承知いたしております。
  385. 沢田広

    沢田分科員 そこで、これは公共の福祉に反せざる限り個人の所有権は保護されなければならぬことは当然なんでありますが、戦後も相当たちました。二十年なり十年という年月がたってきている財産も相当ある。当時買収した財産をまた買収しなければならないという事例も多くあるわけです。しかしこのことは、われわれ長くこうやっている者から見るときわめて不合理に聞こえるのですね。一たん買収したもの、国有財産になっておるものが無断で占有されたままでずっと置かれて、また立ち退きに膨大な経費をそのときの時価で投ずる。まあ法務大臣も長くやっておられるから、こういう例もたくさんごらんになっただろうと思うのですね。ですから、そういうことを起こさないで済む方法はないか。その当時の昭和二十五、六年の金額で言えば千円とか五百円とかいう坪単価ですね、そういうところで一たん買収が完了してしまっている。ところがそのまま放置されて登記ができないでいる。そうすると、そのうちにおじいさんは死に、今度次の代になったら十何人も相続人がいる。ただじゃ売れない、それは当然差額をよこせ、現在六十万もするのだ、こういう論が起きるということは常識的に解釈して御理解いただけるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  386. 中島一郎

    ○中島政府委員 買収その他によりまして所有権を取得いたしましたときには、直ちに移転登記をしていただくというのが登記権利者のためであります。でありますから、最初におっしゃいましたように登記は対抗要件であるということになっておるわけであります。そういうことになっておるにもかかわらず、登記を怠っておる間にいろいろと事情が変更した、相続が起こったというような場合に、相続人が直ちに登記に応じないで、いわゆる判こ料というようなものを要求するというような実態は承知いたしております。
  387. 沢田広

    沢田分科員 そこで、今度は提言なのでありますが、官公署の権利に関する嘱託登記という場合は、何も知事が行かなくてもいいですよ、市長が来なくてもいいですよ、その職員をもって代行できますよというのがいま言われた内容でありますし、また実際にはそのとおりになっておるわけでありますが、問題は、これは仮称でありますが、仮々登記、いわゆる証明書登記、たとえば、これは何年何月に河川改修のために買収してあります、あるいは土地改良区が買収しました、あるいは住宅公団が買収しました、建設公団が買収しました、そういう事実登記だけを掲載することができないかどうかという提言なのです。これはいわゆる所有権の登記にまでは至らない。しかし、相続があったり銀行の抵当権に入っていると、全部借金を返すまではどうにもならないですね。登記は実際できない。その分だけ外してくれと言ったって、全額返さなければ銀行は抵当権を外さないですね。一部分じゃ現実に外さないです。ですから、どの法律でこれを処理していくかということになれば、やはり登記の中の一部分としていわゆる売買証明書登記というようなものをする以外にない。これはまたあらゆる人にできたら問題を起こすでしょうから、少なくとも公の団体、官公庁に準ずるものを含めて、この団体だけにはその証明書を添付することが可能である、こういうことによって時効の問題で二重買いを防ぐ、差額の追給を防ぐ、あるいは第三者への移転を防ぐ。その程度表示をしてあれば、これは住宅公団の土地に何平米売買されているのだなという事実を証明することだけぐらいは可能ではないか。業務量がふえるかどうかという問題はまた別問題ですが、その程度は公共の福祉という前提に立って、二度払いを防いだりあるいは二重の売買を防止したりするための必要な最小限度の要件じゃなかろうか、こういうふうに思うのです。紛争解決のためにもその程度は考慮していくべき必要性があるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  388. 中島一郎

    ○中島政府委員 まず、ただいま抵当権つきの物件のことをおっしゃったのですが、買収しました当時すでに抵当権がついておりましたならば、買収者はそれを承知の上で買い受けたということでありますから、抵当権の処理は登記権利者がしなければならないということになります。買収をしたときには抵当権がついていなかった、その後買収の登記をすることを怠っておる間に抵当権が設定された、そして抵当権の登記がついたという場合には、これは登記を怠っておりました登記権利者が自分の責任においてこれまた処理していただかなければならない問題であろう、こういうふうに思うわけであります。事実上そういう場合に登記が非常に困難になるということは、私も承知いたしております。また、相続が起こりまして相続人が数名あるいは十数名になりますと、その相続人全員から改めて登記申請の委任状をもらわなければならぬ、もしくれない場合には、全員を相手にして訴訟を起こして勝訴の判決をとらなければならないということで、非常にこれまた手数がかかるということも理解できるわけであります。  そこで、いまいろいろ簡便な方法、仮々登記というふうにも、あるいは事実の証明というようなこともおっしゃいましたけれども、そういうものの効力としてどういうものを考えるのかというようなむずかしい問題があるわけでありますが、根本的には、この場合の官公署というのは決して一般私人よりも強力な、あるいは特別の立場にある存在ではなくて、登記権利者として一般私人と全く同じ立場にあるということが大前提になるだろうというふうに思うわけでありまして、そうなりますと、官公署が登記権利者である場合についてだけただいま申し上げましたような便法をつくるということは、これはただいまの登記のたてまえから申しまして困難ではないかというふうに考えております。
  389. 沢田広

    沢田分科員 結局これは整合性という問題に帰着するわけですが、私人の売買の証明と言えば完全にそうなる。  いま抵当権の話がありましたが、公共事業をやっていって抵当権があるから買収しないで済むかというと、それは抵当権を取り外す義務は、売り主に、契約の中には抵当権を外して売りなさいよと書いてありますよ、しかし、そんなことをやっていたら公共事業はできないでしょう。一々借金を払うまで買いませんなんて言っていたら、それこそ現実問題として進まないでしょう。結果的には外すことを条件に売買するわけですね。ただ、現実は条件が履行されないということになるだけの話。現実はそういう形になってしまうし、あるいは売買の交渉をしている最中に抵当権に入る場合も起こり得る。  ですから、官公署というのは、憲法上公共の福祉に反せざる限り個人の財産が保護されるという項目があるわけですから、すべてにその条件を適用するとは私も考えないで、公共事業についてだけ一応仮々といいますか、あるいは事実証明を登記上表示することができる、そうすると、その次に買った人はそういう事実があるんだなということを承知の上で買う、あるいは不当な損害を受けない、あるいは実際には売られてしまっている本のを売りつけられる場合も起こり得るが、そういうことが起こらない、そういうことで、公の仕事についてだけは一応事実証明というものを可能な範囲で、ひとつどこから始めるか、国の事業から始められても結構ですが、とにかくそういう事事証明だけしておいて、その事実のあること、いわゆる対抗要件ということは、その事実を知りながら買ったということをここでは確認するだけなんですよ。これは裁判所に行きました場合に大きな影響力を持ってくる。その事実を承知した上で買ったものと、知らなくて買ったのではえらい違いがある。いわゆる公費の節約という面からいっても当然必要な要件じゃないのかというふうに思うわけでありまして、この点はひとつぜひ御検討をいただけるかどうか、あなたと法務大臣にちょっと一言ずつおっしゃっていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  390. 中島一郎

    ○中島政府委員 御承知のように、現在の登記法のたてまえは双方申請ということになっておりまして、登記権利者と登記義務者の双方から申請をしてもらえばその登記は受け付ける、こういうことになるわけであります。登記義務者が承諾をいたしません場合にはそれにかわる判決をもらう、こういうことになるわけでありまして、そのいとまがないときには仮登記あるいは仮登記仮処分というような簡便な方法も認められておるわけであります。裁判所に無効原因を理由として訴訟を起こした場合には、予告登記というようなことで一般世間に警告を発するというような登記もございます。  ただいま御質問になりましたような場合もそういう既存の制度に乗せて処理をしていただきたいというふうに思うわけでありまして、その範囲をさらに広げて、官公署にだけ特別の立場を認め、特別の制度を認めるということは、繰り返しになりますけれども、困難であろうかと思います。ただ、登記制度を常に現在のままでいいということで安閑としておるわけではございませんので、そういう点も含めまして検討をするということは当然でございます。
  391. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま政府委員から答弁いたしましたとおりでございますので、検討させていただきます。
  392. 沢田広

    沢田分科員 終わります。
  393. 近藤元次

    ○近藤(元)主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田スミ君。
  394. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 きょうは行政管理局にも来ていただいていると思いますが、お答えいただくのは後の方になりますが、関連がございますので、よろしくお願いいたします。  第九十四国会で、法務局、更生保護官署及び入国管理官署職員の増員に関する請願が採択されております。要するに、これらの部門の大幅増員の要求、それが請願の内容でございますが、この請願の趣旨や採択をした国会の意思は、一体どういうふうに生かされたのか。  そこで、五十七年度の予算案を見ますと、法務省は概算要求で二百二十八人、それが政府案になりますと百六十七人、そして、そこから第六次削減計画による五十七年度の削減数百三十三人が差し引かれまして、結局実質増三十四人というふうに聞いておりますけれども、この点、間違いございませんか。  あわせて、登記部門の事件数、甲号事件、つまり所有権の移転だとか抵当権の設定、表示などの甲号事件、そして乙号事件、謄抄本、証明、閲覧などの部門の乙号事件、それぞれ五十年度に対して五十五年度には何%事件がふえ、そしてこれに対して登記従事職員は何%ふやされてきたのか、お答えを願いたいと思います。
  395. 中島一郎

    ○中島政府委員 まず最初の五十七年度予算案についてのお尋ねは、法務局に関する限りはおっしゃるとおりでございます。  それからその次に、事件数でございますが、五十年度と五十五年度の比較という御質問でございましたけれども、五十年度と五十五年度をそのまま比較したという数字はちょっと手元にございませんので、三十二年度を一〇〇といたしました数字にかえさせていただきますが、登記甲号事件につきましては、三十二年度を一〇〇にいたしますと、五十年度が二四六、それに対しまして五十五年度が二七三、こういうことになります。  乙号事件につきましては、三十二年度を一〇〇といたしまして、五十年度が九八六、それに対しまして五十五年度が一四七二、こういう数字になります。  それから、登記事務従事職員数でございますが、全国の数字といたしまして、これも三十二年を一〇〇といたしますと、五十年が一三一、五十五年が一三七、こういう数字になっております。
  396. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 事件数が非常にふえてきているのにかかわらず、職員の数はさっぱりふえていないというのは、大臣もいまの数字を聞いていただいておわかりいただいたかと思います。  私は、先日、大阪法務局と、それから大阪法務局管内の地元の堺支局、岸和田支局を訪ねて現場を見てまいりました。後で詳しくその様子に触れていきたいと思いますが、一言で言いましたら、登記の現場というのは息つく暇もない、だれかが戦争みたいなところですわと言われましたけれども、本当に息つく暇もないわけです。したがって、苦肉の策として民事法務協会から職員を派遣してもらっているわけですが、こういう人たちも実際もう休みなしに働いていらっしゃる。司法書士さんとか、あるいは土地家屋調査士さんの方々にも、無償の応援をさまざまな形で受けている。にもかかわらず、どうしようもない忙しさの中なんですね。こういうふうな忙しさの中では当然業務のミスというのはつきものだろうかと私は思うわけですが、もう一度お尋ねいたします。  五十五年度の職権更正許可事件数と、その中で改ざん事件と呼ばれるものが何件あったかということをお答えいただきたいと思います。
  397. 中島一郎

    ○中島政府委員 まず、職権更正許可の事件数でございますが、五十五年度におきまして一万九千二百三十五件ということになっております。これは、登記官の登記に錯誤または遺漏があった、それが登記官の過誤による場合に職権で更正をするという事件数でございます。  それから、もう一つお尋ねございました改ざん事件と申しますのは、これは必ずしも職権更正許可事件数の中に含まれるというものではございませんで、本来これは全く別個のものであります。部外者等によりまして不正に登記簿が改ざんをされた、こういう事件でございますが、五十五年度におきましては十件ということになっております。
  398. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 一万九千二百三十五件のこの職権更正許可事件数、これは氷山の一角だというふうに聞いておりますが、私、その中でと申しましたが、改ざん事件は別だそうですが、いずれにしても国民の所有権を主張できる唯一の国家保障、それがこれで果たして守られるのかというふうに考えるわけです。  この登記簿の抜き取り改ざん事件なんですが、五十五年に大阪の法務局中野出張所で登記簿原本不実記載事件と呼ばれるものが起こっております。御存じでしょうね。
  399. 中島一郎

    ○中島政府委員 中野の事件も報告に接しております。
  400. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 この場合、所有者が全く知らない間に別の人間によって土地が売りに出されていた。その所有者は売りに出されているということを知って幸いにも実害はなかったわけなんですけれども、手口は、閲覧に来て、そうしてその中から抜き取って、不法に記入をして、今度また閲覧に来てそれを差し込んだというふうに推測されているわけです。もしこれが他人の手に売却されてしまっていたとしたら、とてもじゃないけれども大変なことになったと思うのですね。もちろん土地は所有者に戻るだろうと思いますし、そういうことを知らないで買った人は国の方から損害の補償というのは当然だろうと思いますが、それでも満額返るというわけにはいかない場合もあるでしょう。いわんや、もとの所有者が抹消登記が済むまでは、銀行から融資を受けるというような場合でも非常に困難が出てくるというような問題が起こってくると思うのです。  不動産登記法施行細則の三十七条には「閲覧ハ登記官ノ面前ニ於テ之ヲ為サシムヘシ」こういうふうになっておりますけれども現状はそういうふうにやられているとお考えでしょうか。
  401. 中島一郎

    ○中島政府委員 細則の三十七条には、確かにただいまおっしゃいましたような規定があるわけでありまして、閲覧は登記官の面前でということを励行するように、その監視体制を十分にするようにということで努力をいたしておりますが、実情は必ずしも満足すべきものでないというようなこともあろうかと思っております。
  402. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 現状のこの人員ではとうてい不可能な状態だというふうに言えると思いますが、どうなんでしょう。
  403. 中島一郎

    ○中島政府委員 職員数の絶対数が不足いたしておりますので、閲覧の方に人を割くというようなことも困難な状態でございます。そこで、閲覧監視要員というようなことで手当てをいたしましたり、あるいはレイアウトを考えて少人数で監視が行き届くようにするとか、あるいは監視ミラーというものを新たに設置いたしまして監視に努めるというような工夫もいたしておるわけでございます。
  404. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 私が見てきた堺支局も、それから岸和田支局も、閲覧室にはミラーが置かれていました。これは中野出張所のこの事件が起こった後、そういうものが置かれるようになったということなんですが、職員がそのミラーを見てそういう事件が起こらないように防止をしていくというような現状ではとてもありません。  この中野出張所の場合も、五十五年度一件当たりの乙号事件の扱い者に対して職員が配置されている数をずっと一日で割り算していったら、中野出張所なんかは乙号事件一件を扱うのについて三十秒ですよ。たったの三十秒です。大阪府下で一番多い、一分をオーバーしているところというのはたった一カ所なんです。ひどいところは十八秒、こんなところもございます。ずいぶん仕事が多いのに対して人手が非常に不足しているということは、もうはっきりしていると思うのです。一体これで国民の大事な所有権が守られるのか。  そこで、大臣にお伺いをしたいわけですが、大臣は、一月二十日の参議院の決算委員会で、わが党の安武議員の質問に答えて、増員に対しては一段の努力、一層の努力というふうに約束をされました。現行のこの業務を登記官の面前でとまではいかないまでも、せめて一回り所内を見渡して、適正な業務を行うとすれば一体ここでは何人不足だというふうに考えておられるか、率直にお答えをいただきたいと思います。
  405. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 実は私も板橋の法務局を見ました。それから熊本の、地元でございますけれども、どこも非常に大変な状況で、いま先生の御指摘のとおりだと思うのです。しかも、乙号に関しましては、この十年間で約二・二七倍というふうに件数がふえておる。にもかかわらず、この従事職員というのはわずかに一・一五と、これで果たしてやれるだろうかということで、相当労働過重が職員の方々に加わっている。したがいまして、公に認められました休日すらもなかなかとれないというような状況。     〔近藤(元)主査代理退席、主査着席〕  法務省の仕事というのは、一面において法秩序の維持でございます。が同時に、国民の権利を保全するという重大な役割りがあるわけです。しかも、登記がうまくいくかいかないかによって国民一人一人の権利が失われたり、あるいは損害をこうむったりするわけでございまして、全従業員といたしましては、与えられた環境のもとに最大の努力をしておる。本当にかわいそうなような気がいたしております。でございますから、一方におきまして行政の簡素化あるいは削減等も、それは政治の至上課題ではあるといたしましても、このように事業がふえ、そしてそれに対しておりまする従業員が余りにも少ないということについては、行管庁の方でもひとつお認めをいただきたいし、また、大蔵当局の財政的な面についても考えてもらいたいというふうに私は考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、所管の責任を全うする上から申しましても、また従業員が本当にりっぱに仕事をやってのけるということから考えましても、来年度の予算に向かっては一層の努力をいたさなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  406. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 大変御理解のある御答弁をいただいたのですが、いま法務省として何人欲しいというふうに計算をしていらっしゃるのか、その数を教えていただきたいわけです。
  407. 中島一郎

    ○中島政府委員 現状のままの仕事の仕方というものを前提にいたしまして不足人員を試算いたしておりますが、三千六百四十八名であったかというふうに記憶いたしております。
  408. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 大臣もおっしゃいましたけれども、本当にそのとおりなんです。実際、マンションなんかの場合は、司法書士の方に登記記載事務の協力を得てつくって、登記官は最後の校合印だけ押すというような状態のところも出ております。それで、協力をしてもらっている司法書士や調査士さんにお会いしましたら、どういうふうにおっしゃるかというと、どこもかしこもめちゃくちゃにここは働いているということをまず言われるわけです。事務内容はだんだん複雑になっていますし、量はふえるし、おまけに使っている地図なんか古くなって、それをつくりかえたり、そういうことに非常に時間がかかっていく。そこへサラ金業者だとかそういう出入りがふえて、大きな声を張り上げる人もいる。おまけに市民の方の出入りも非常にふえてきまして、全く司法書士さんなんかが職員の方にうっかり声をかける暇もないぐらいだというふうに言われております。  私も法務局へ参りましたら、ちょうどお年寄りの方が謄本をもらいに来たというわけなんですが、地番がわからない。そこで、担当の方が忙しい中で探しはするのですけれども、わからない。おばあさんにその地番と住居表示と住所との違いを説明をするのですが、そこがまたさっぱりわかってくれない様子で、横からは順番を待っているのにと言ってしかられるし、それから堺支局なんかは電話の交換手がいないのです。あそこは三十数名職員がいるのですが、電話の交換手がいないわけですから、こもごもに電話がかかってきて、繁雑な中に繁雑を重ねている、これでは本当にどうしようもないと思うのです。  そこで、きょうは行政管理局にお出ましをいただいたのですが、こういうふうな実態を認識していらっしゃるか。先ほど大臣は、もっと人をふやさなければいけないというふうにお答えになりましたけれども行政管理局としてはどういうふうに考えていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。
  409. 伊藤卓雄

    ○伊藤説明員 ただいまお尋ねの法務局の登記職員の問題に関してでございますけれども、私ども国家公務員の全体の定員管理をやっておる立場からまず基本的な考え方を申し上げまして、続きまして、法務局の実態について触れさせていただきたいと思います。  これは申すまでもないことかと思いますけれども国家公務員の数はできるだけ最小限度にとどめたいというのが私ども基本的な考え方でありまして、また、最近の情勢からもそういうことは御理解いただいていると思いますけれども、そういった中でいろいろな仕事をやっていくというためには、どうしても行政の効率化あるいは定員配置の合理化を一方でお進めいただかなければならないわけでございます。特に、今日のように厳しい定員事情のもとにおきましては、新しい行政需要にもなかなか十分には対応できないというところでございますので、私どもの立場といたしましては、真にやむを得ないというものから優先順位をつけまして認めていくというような基本的な態度に立っておるわけでございます。ここ数年、特に昨年以来は厳しい情勢、特に財政事情あるいは臨調の答申といったようなことも踏まえまして、引き続き定員の増加を抑制する、そして、実際には少数精鋭主義によりまして厳正な定員管理をやっていくべきであるということが前提としての基本的な考え方であるわけでございます。  こういった考え方はつとに法務当局の方でも御理解いただいておりまして、これを踏まえて対応していただいておると思いますけれども、登記事務に関しましては、事件数の増加に対応いたしまして、その事務を適正に処理していきたいということで、われわれの方に増員措置の御要求もいただいておりますし、あわせて事務の合理化あるいは能率機器の導入といった面で最大限の努力をしていただいておるということを聞いておるわけでございます。
  410. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 臨調と言われましたけれども、現場は少数精鋭主義、全くそんなものが通用するような状態じゃないのです。法務省の方は、いま人員不足三千六百四十八人だというふうに数字を示されましたけれども、これは登記事件の数だけではじき出した数字でございまして、労働組合などの試算では、登記事件数だけではなしに一登記簿の維持管理とか、そういう統計上に全くあらわれてこない繁雑な仕事を加えて考えていきますと、一万人以上は必要なんだ、そうでないと、本当に国民の財産も権利も守れない状態にいまあるのだということを訴えているわけです。身近にいらっしゃる司法書士さんだとか土地家屋調査士さんだとかも、人員増の要求を出していらっしゃいますし、大阪府の市長会、大阪府の町村長会もこの五十五年の十二月に人員増の要望書を提出していらっしゃいます。国会に対しては、もうこれは利用する国民の方が、実に八万七千九百十八人の方がこの署名に協力をして、人員増が第一だということを訴えているわけです。  したがって、今後は、この業務状態などに支障を来すことのないように増員に対して十分御努力をいただけるか、この点、行管にもう一度お伺いをします。
  411. 伊藤卓雄

    ○伊藤説明員 先ほど定員事情の非常に厳しいことについてはちょっと触れさしていただきましたけれども、私どもといたしましては、そういった厳しい状況の中でも、真にやむを得ないものについては最小限認めていくという基本的な考え方で対処してきておるところでございまして、登記事務に関して申し上げますと、登記事件数の増加ということに対応いたしまして、事務を適正に処理していただきたいという観点から、従来から事務の合理化、機械化が進んでおることは当然存じておりますけれども、厳しい定員事情のもとにありましても、増員には特に配慮をしてきておるところでございます。  ちなみに五十七年度について申し上げますと、先ほどから申し上げておりますような新規増員については厳に抑制するという政府方針のもとではございますけれども、かつ、そういう厳しい方針のもとで公務員全体では純減を千四百三十四名も出す。各省が軒並み純減で非常に苦しいやりくりをしていくといったような中で、登記関係の増員については格別の配慮をしたというところでございます。
  412. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 格別な配慮が十分でないということがあるからお尋ねをしているわけですので、今後の御努力を重ねてお願いをしておきたいと思います。  そこで大臣にお伺いをいたしますが、第六次定員削減計画なんですが、法務省全体で見ましたら四・四四%と、なるほど臨調の示した五%の数字よりは低くなっております。しかしこの中で法務局を見ましたら五・五四%、保護観察局が七・九五%、地方入国管理局が五・二〇%と、いずれも臨調の言う五%よりも高いというわけですね。したがって、私は先ほどの御答弁から見ましても全く理解に苦しむわけです。安藤議員にも以前同じように満額確保の決意ということで非常にいい御答弁をいただいたわけですけれども、結果は、ふやされながら片一方の削減計画で減らされる。しかも、その減らし方が法務局なんかの場合は臨調の数よりも多くなってしまっている。私は、この数字は非常に大きな矛盾をはらんでいると言わざるを得ないと考えますが、矛盾を感じていらっしゃるでしょうか。ちょっと次がありますので簡単にお願いいたします。
  413. 筧榮一

    ○筧政府委員 削減率の内部的な数字につきましては、いま先生のおっしゃったとおりでございます。  その理由についてでございますが、削減は今回で第六次でございますけれども、その削減を各組織でどう負担するかということになりますと、これはその業務の内容ということが非常に大きな要素になってまいります。たとえて申しますならば、私どもで預かっております刑務所等の固定配置その他でどうしても機械的にも削減のできないというところ、いわば公安職の部門が相当数ございます。したがいまして矯正関係等の削減率は三・四九という数字になっております。それで、いわゆる行政事務部門の多い法務局あるいは保護の方の削減率が高くなっておるというのが実情でございます。  それを矛盾とおっしゃれば矛盾かもしれませんが、業務量の増減に伴う増員措置につきましては、増員措置の方でこれを手当てをする。削減の方は、やはり従来の経過からその業務の内容ということで、おのずから削減率が定まってきておるというのが実情でございます。
  414. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 結局、増員にいまとにかく力を尽くしていただくことだというふうに思います。この点は最後にもう一度大臣の御決意のほどをお聞かせいただきたいと思いますが、時間がございませんので、二点だけ追加してお尋ねをして、終わりたいと思うのです。  一つは、この大阪法務局管内の中野出張所、問題の起こったところですが、これは本当に老朽化していて、たとえばトイレなんかも事務所のずっと奥の方で、利用する方も職員も一緒のトイレになっているというような、手狭というのか汚いというのか、ああいうのは早く改善しなければいけない。これについてどう考えていらっしゃるか。これが一点です。  もう一つは、岸和田支局、堺支局に参りますと、法務局というのは人権擁護のお仕事もされていらっしゃるところなのに、この建物はそこにどういう配慮があるのだろうか。国際障害者年で障害者の方も当然そういう場所にもっと自由に出入りをしてもらうような環境をつくっていく、いわばそういうお仕事の先頭に立っていらっしゃるところが、堺の方は人権の仕事をするところが二階、岸和田支局の方は全体が二階なんです。そして、もう何の施しもなされていないという点で私は非常に残念に思いました。特に岸和田市というのは障害者の住みよい町づくりということで、駅舎から役所からいろいろな施設から市民が総ぐるみで力を入れているところで、まるでぎらりと目をむいたような状態になっております。  増員に対する御努力、中野出張所の改善、それから障害者に対するもう少し配慮のある施設の整備、この三点について最後にお伺いをして、私の質問を終わります。
  415. 中島一郎

    ○中島政府委員 増員の点につきましては、先ほど大臣も申し上げたとおりでありまして、私どももなお一層力を尽くして増員要求に当たりたいと考えております。  それから、中野出張所でございますが、これは三十四年に建築された庁舎でありまして、私も見ましたけれども、非常に老朽、狭隘、何とかしなければいけないという整備に迫られておった庁舎でございます。ただ、現在の敷地は御承知のように七百平方メートルしかないということで、現在地で改築をすることは困難である。そこで敷地の確保に努力をしてきたわけでありますが、なかなか適地がなくて予算要求に至らなかったというのが実情でございます。ようやく敷地の確保ができましたので、早期に新営工事に着工できますように最大限の努力をしたいというふうに考えております。  それから、岸和田の身体障害者対策でございますが、登記所における身体障害者対策につきましては、昭和五十一年度以降に新営をした庁舎については玄関、便所等に所要の措置を講じております。また、それ以前に新営をされた既存の庁舎については、建設省官庁施設特別整備計画によって逐次必要な整備を進めているわけでございます。  大阪法務局岸和田支局につきましては、この庁舎が昭和四十九年度に建築されたものでありますために、現在のところ身体障害者対策の措置が講じられていない庁舎ということになっておるわけでありますが、早期に所要の措置が実現できるように努力してまいりたいと考えております。
  416. 藤田スミ

    藤田(ス)分科員 どうもありがとうございました。
  417. 小渕恵三

    小渕主査 これにて藤田スミ君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  418. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 まず最初に、すでに時効になっておることが明瞭な抵当権を抹消する問題についてでありますが、いま登記事務をやっておると一番困るのが、この何十年も前の明治時代の抵当権が抹消できないでおる、これを抹消しようとするには相手と共同の申請によらなければならない。しかしもうすでにその人は他界しておってどうにもならない。そこで相続の手続をしなければならなくなるわけですが、ところがその相続の手続をやろうとすれば、もうばらばらになっておって相続の手続なんかとてもじゃないが不可能になっておる。そういうものがたくさんあるわけです。しかし考えてみると、この抵当権設定というのは初めから弁済期が記入されておりますから、時効はだれが見てもわかるわけです、消滅時効にかかっているかいないかという問題は。しかしそれが手続上双方の申請がなければどうにもならないわけですから、これを改正しなければならない。そうしていかないと、私はこれから登記事務というものは物すごく繁雑になるばかりだと思うわけでございますが、これに対してひとつ対策をお伺いしたいと思います。
  419. 中島一郎

    ○中島政府委員 時効が完成しておることがだれの目にも明らかであるというふうにおっしゃったわけでありますけれども、恐らくそれは、二十年の期間を経過したということが登記簿上明らかであるという意味であろうかと思いますが、時効制度につきましては、御承知のように時効の中断というような制度もございますので、権利者が所要の中断手続をとりましたときには、二十年経過しても時効は完成しないというようなこともあるわけであります。でありますから、そういった事実関係を明らかにするために、登記義務者が承諾をいたしません場合には、訴訟で解決をしてもらうというのが本来でございます。  ただ、ただいま御質問のようないわゆる休眠抵当権とでもいうようなものにつきましては、何らかの特別な立法措置が必要ではないかということで、私どもも検討はいたしておるというのが実情でございます。
  420. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時効については中断の手続があるから、それがある場合は時効が成立しないのはあたりまえの話で、私の言っているのは、時効がすでにだれの目にも明らかに成立しておる、しかも時効中断というのは民法第百四十七条できちっと意義づけられているわけですから、この手続によらないものは中断と見られないわけでしょう。そうしたら、この手続がとられているかいないかというのは登記上どういうふうに表現されるわけですか。
  421. 中島一郎

    ○中島政府委員 登記官はいわゆる形式審査、書面審査でございますから、ほかに中断手続がとられておるかどうかということが明らかでない場合があるわけであります。それを調査するということは、現在のところ登記官の職務範囲ではないということになるわけでありますので、そういう問題は双方申請でやっていただきたい。もし双方申請ができない場合には、裁判所の判決を持ってきていただきたいというのが現在のたてまえでございます。  ただ、それにかわる何らかの簡便な方法というものをごく限られた範囲について検討する必要があるのではないかということが、先ほど申し上げたところでございます。
  422. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この時効の中断ということで仮に裁判上争われていたとすれば、それは請求権の中断であって登記の中断にはならないと思うのですよ。登記は、明らかに新たな契約が更新されればそれに基づいて登記をしなければ抵当権の実行もできないでしょうし、そういう中断ということに余り私は重きを賢く必要がないのじゃないか。仮にそういう事態が出ればそのときに裁判すればいいのであって、その中断があるかないかわからぬからこれを放置しておくということになると、永久にこれは一抵当権はついて回ることになるんですよ。請求権の中断と登記そのものの無効というものを私は明確にすべきじゃないか。現実にこれが物すごい事務の煩瑣を来し、事実上不可能な状態になって、もうやむを得ないから抹消はあきらめよう、裁判しようとしても相手がいない、これでは裁判できませんよ。そういうときには架空の、いたことにして裁判でもやるしかないでしょう。仮にそのもとの抵当権の明治時代の住所で送達をして、そうしてそこにおる人に受け取ってもらう、そのかわり裁判には欠席してくれ、そうして欠席裁判でこれを抹消の判決を得る。しかし仮にそういう込み入った手続をやっていたとしても、これは虚偽の裁判になってしまうのですよ。それならば、裁判する相手がいないときにどうしますか。
  423. 中島一郎

    ○中島政府委員 抵当権の登記を抹消するということは、抵当権者にとりましてはその権利を奪うということでありますから、その権利が本当に消滅しておるのかどうかということについては十分慎重な手続を経なければならないというのがたてまえでございます。  でありますから、相手が行方不明の場合には訴訟によって公示送達というようなことで、相手に訴訟の係属を知る機会を与えまして、そして相手の権利を守っておるというのが現在の制度でございます。いわゆる休眠抵当権の登記を抹消する方法といたしましては、ただいま申しました訴訟による場合が一つございます。  それからもう一つは、抵当権者が行方不明の場合には、不動産の所有権の登記名義人は、公示催告の申し立てをいたしまして、そして除権判決を得た上で、その除権判決の謄本を添付して単独で抵当権の登記の抹消を申請することができるという方法が一つございます。  それからもう一つは、抵当権者が行方不明の場合において、債権証書及び債権並びに最後の二年分の定期金の受け取り証書が存在するときは、不動産の所有権の登記名義人は、これらの書面を添付しで単独で抵当権の登記の抹消を申請することができる、こういう方法も認められておるわけでございます。  これが現行法の制度でございます。
  424. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 民法百六十七条に「債権・財産権の消滅時効」というのが書かれております。そのほか消滅時効の明らかなものがあるわけですが、弁済期が過ぎてから二十年以上経過した場合に、これは有効になる一つの手続というものはあるんでしょうか。登記が有効になる手続がほかにありますか。
  425. 中島一郎

    ○中島政府委員 考えられますことは、時効が完成しておるかあるいは時効の完成を妨げる何らかの事実があったかどうかということであります。時効の完成を妨げるような事実というものは、これは非常にまれな場合なんだから、二十年経過しておるという事実があればそれでまず登記を一たん消してしまって、そして、そういう特別な事情があったということを登記権利者が立証してきた場合に登記を復活したらいいじゃないかという考え方が一つあろうかと思います。それに対しまして、登記の抹消をするということはこれは権利を奪うことになるんで、時効が完成しておるというふうに一見見えるにいたしましても、それを、時効の完成を妨げるような事実はなかったんだということを登記権利者に認めさせる、あるいは裁判所で認めてきてもらってから登記を消すべきではないかという考え方がまだあるわけであります。  いずれがいいかということはいろいろ意見の分かれるところであろうかと思うわけでありまして、現在の制度はこうなっておる、ただ、それについては何らかの要件のもとに簡便にまず登記を消すという方法も考えられるのではないかということで検討しておるということを申し上げたわけでございます。
  426. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ぜひそういう方向で検討していただきたいと思います。これは抵当権だけに限ったものではありませんから、そういう消滅時効が明らかに証明できる、判断できる、こういうものについては、職権なりあるいは一方の申請でこれを抹消することができる、こういう手続をひとつ十分検討していただきたいと思います。  それでは次に、公共嘱託登記等司法書士業務についてお伺いいたしますが、いわゆる地方公共団体等では、仮に土地を取得した場合、これを公共嘱託登記で登記するわけですが、その際、正規の職員によってこの登記手続がなされるならばまだ話はわかりますが、それが全く身分をその地方公共団体に持たない一私人が嘱託員として嘱託されて、そうして一定の報酬をもらって登記手続をやっておる、これは司法書士法に違反しないのかどうか、この点、まずお答え願いたいと思います。
  427. 中島一郎

    ○中島政府委員 官公署が登記をいたします場合に、みずから登記をするということはその職員が登記をするということになるわけでありますが、それはもちろん許されることであります。その点につきまして、司法書士法の十九条によりますと、司法書士会に入会している司法書士でない者は、他人の代理をして登記業務を行ってはならない、こういうことになっておるわけでありますから、純然たる策三者が官公署の代理人として登記業務を行ったということになれば、それは司法書士法十九条の違反ということになるわけであります。
  428. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、私はまた若干違った解釈をしておるのです。というのは、正規の職員であればいい、これはつまり本人申請だからいいということだろうと思います。しかし、それじゃなぜ登記事務を司法書士という一定の国家試験を終えた専門家に扱わせるかということですね。それはやはり、登記事務のいわゆる法律判断あるいはその複雑性、そういうものを整理して円滑に登記事務が進むようにということで、この専門家に登記を委任するという制度ができたと思うのですよ。だとすれば、これは知事自身が手続をやるわけじゃない、あるいは市長自身がやるわけじゃない、一般の職員にやらせる。その際に、そこに本当にやらせるなら、専門家を自分の職員にして、身分も市や県の身分にして、そうして専門家にこの手続をやらせるべきではないだろうか。そうでないと、専門家と素人とを分けたその思想が生きてこないと思うのですよ。その辺はどうでしょうか。
  429. 中島一郎

    ○中島政府委員 現在の登記申請につきましては、本人申請ということも許されております。したがいまして、本人がみずから申請をするということは可能なわけであります。  官公署の場合には、その長の手足となって職員が登記事務を行う、これはまあ法人についても同様であろうかと思うわけでありますが、ただ、第三者に依頼をする場合には、司法書士会に加入しておる司法書士でなければならないというのが現在の司法書士法のたてまえであります。そこで、司法書士の資格のある人を官公署の職員にしてその者に申請行為をさせるということは、これは望ましいことでありますし、現にそういう取り扱いをしておられる市町村等もあるように聞いておりますが、必ずしもそうでなければならないということにはならないことでございます。
  430. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで私は、登記事務が非常に停滞して、そして特に公共嘱託登記関係は遅滞しておるのが目に余るほどよく発見するわけですが、これをもっとスムーズに進めていくためには、やはり地方公共団体なりが司法書士の集団なりあるいは土地家屋調査士の集団なりに嘱託していく、それが会ではまずいというなら、何か法人格をとらせてそういう契約関係を確立するということは、今後の登記事務の促進のためにも非常に重要なことではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  431. 中島一郎

    ○中島政府委員 司法書士なり土地家屋調査士なりはその面の専門家でありますから、これらの人が依頼を受けて登記事務を代行するというととは、登記の適正、迅速な処理のためにも好ましい形であるというふうに私ども考えております。公共団体等が司法書士に事件の依頼をしやすいように、また、司法書士なり土地家屋調査士が官公署等から事件の依頼を受けやすいようにということで、数年前から公共嘱託登記委員会というものが各府県単位につくられておりまして、その連合委員会というものが中央にできております。そこが官公署等と折衝をいたしまして、依頼についてのいろいろ具体的な、手数料はどうするとか報酬はどうするとかいうような取り決めもいたしておるわけでありまして、そういう委員会をますます充実をするということは私どもも望むところでありまして、委員会等から御依頼があればできるだけの御協力はしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  432. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ただいまの問題は、やはり専門家にその登記手続をさせることが最もよいわけですから、そういう方向でひとつ、最もいい関係を確立するように特に要望しておきたいと思います。  次には、農用地利用増進法ができまして、これまた権利の設定や所有権の移転など登記事務がなされるわけですが、これについては非常に問題があるわけで、特に、市町村が余り登記関係をわからない職員に事務をとらせたり、先ほど言ったような特定の第三者に、委嘱したり、これは第三者委嘱でなくて農協ですか、そういう関係で、登記事務の適格性が失われつつあるということがいま問題になっているようですが、この適格性を保持するためにはどういう対策を整えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  433. 中島一郎

    ○中島政府委員 農用地利用増進法につきましては昭和五十五年の九月一日から施行になっておるわけでありまして、施行後まだ日も浅いために、これに基づく登記申請というものはあっても非常に数が少ないわけでありまして、その実態は私ども十分承知をいたしておりませんので、適格性を欠いておるかどうかというような点については十分承知いたしておりません。むしろ、公共団体の嘱託でございますから、適格な嘱託が行われているのであろうというふうに考えておるわけでありますが、こういった嘱託につきましても、やはり専門家である司法書士なり土地家屋調査士なりが依頼を受けて申請行為を代行するということが望ましいことは先ほどから申し上げておるとおりでありまして、公共嘱託登記委員会がさらにその機能を発揮して、司法書士がこういった事件の依頼を受けることができるように私どもも期待しておる次第でございます。
  434. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これは、管轄は手続までは農林水産省になると思いますが、手続後の登記事務の処理の分野からは法務省になるわけですから、ひとつ法務局関係者はその指導を適切にお願いしたいと思います。  そこで次には、登記事務のコンピューターシステム化というのがいま研究されておるようでございます。これはいま司法書士間にもあるいは職員間にも非常に不安の種になっておるわけですので、この辺でひとつその研究の成果を中間発表していただいて、現実にいま司法書士業務あるいは登記事務がどういうふうになっているかということを考えていただきたいと思うのですが、コンピューター化のいままで研究された中身、それから今後の展望についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  435. 中島一郎

    ○中島政府委員 登記事件の現状にかんがみまして、将来の問題として登記業務にコンピューターを導入することができないかどうかということにつきましては、昭和四十七年ごろから研究を始めたわけでございます。それで、まず机上の研究ということを行いまして、次いで室内実験を行ったわけでございます。室内実験を終わりました段階で、われわれパイロットシステムというふうに呼んでおりますけれども、登記の現場でコンピューター処理を現在の登記事務の処理と並行的に行ってみて、コンピューターで登記事務を処理した場合のいろいろな問題点を探ってみる、どういう問題が起こってくるかということを実験してみるということを考えておるわけでありまして、現在御審議中の五十七年度予算案におきましては、そのパイロットシステムの第一年度分の予算というものが認められておるわけでございます。  で、私どもは、このパイロットシステムをある特定の登記所において現在の現実の登記事務の処理と並行的に進めてみまして、その結果によりましていろいろな問題点を探って、その解決方法を検討して、そしてその結果によって導入の可否を判断したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  436. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 その導入の可否がわかるのは相当先の話だと思いますが、いかがなものでしょうか。
  437. 中島一郎

    ○中島政府委員 現在考えております予定では、順調に参りまして約三年余りはかかるのではなかろうかということでございます。
  438. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、先ほどの質問者からもお話があったようですが、いまの登記事務は大変な量に上っておるわけです。ところが、これに対して政府のやったのはわずかにプラスマイナス三十四名の増なんですね。見たところは定員増百六十七名になっておりますが、いわゆる第六次の定員削減計画の中で百三十三名割り当てられておりますから、差し引きわずかに三十四名ということなんです。これではお話にならないのですよ。先ほどのお話では三千四百数十名の人員を要求しておると言いながらわずか三十四名です。これで国民の権利が守れますか。これはよほど真剣に考えないと、ただ行政改革だなんという太鼓ばかり鳴らしたって、国民が本当に自分の財産や諸権利を守れなかったらこれは国の責任が問われますよ。これについてはひとつ大臣から確たる御返答をお願いしたいと思います。
  439. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほどからお答えを申し上げましたとおりでございまして、私も現場を見まして、いかに事件数が多くなってきているか、そしてそれに対応して人員が十分でないかということを痛感いたしておるわけでございます。相当思い切ったやり方をやらないと、国民の権利保全が保てないというふうに私は考えております。来年度の予算等におきまして、この点を十分財政当局並びに行管等にも働きかけまして、任務が全うできるようにいたさなければならない、こう考えておる次第でございます。
  440. 中島一郎

    ○中島政府委員 先ほど私の答弁がはっきりしなかったかもわかりませんけれども、三千六百四十八名というのは、現在の仕事を十分にやるための不足人員の試算でございまして、要求数は昨年の要求数の二分の一とかあるいはゼロシーリングとかいろいろ制約がございますので、そんなに多い数字は要求できませんで、もっとずっと少ない数字でございます。
  441. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 いまのはつまり要求も試算も同じですよ。ただ要求は差し控えたというだけの話で、必要量には変わりはない。  そこで、時間も参りましたので、最後にお伺いしますが、いま大臣の御答弁がありましたけれども、これは一方にコンピューター化を研究しておるので、このコンピューター化によって人員整理がされるだろうという期待感が多分に作用しているのではないかと私は思うのですよ。ところが、これはとんでもないので、実用化するまでには大変な年月が必要だと私は思うのです。しかもこの実用化だって、果たしていいのか悪いのかというのはいまとても判断できないのではなかろうか。というのは、コンピューターの予算が莫大になる、そうしてコンピューターによってはじき出される人員と、そろばんで計算すれば一体どっちが得なのかというこの問題だってあるわけですし、それから現実に職員が働いてこそ、国民は働く場所があってこそ生活ができるのですから、そういう意味では政府というのは責任があるわけですし、その辺をやはり十分考慮していただきたい。  それから、最後の人権擁護委員会活動の問題に入りますが、政府はどのくらいの予算で人権擁護活動をやっているのか。私の聞いたところでは、とにかく一日行って日当が五百円、そして五百円も、五百円札をもらうならいいんだけれども、実際に見ないで、これは昼食代にしますよと言って、その五百円は全然顔を見ないで弁当だけを食べてくる。これではとても人権擁護はやっていかれませんというのが現場の本当の声です。そして一年にどのくらいもらうんだと言ったら、法務省からもらうのは多分年俸にして八百円じゃなかろうかという話なんです。これはどうなっているのか。しかもその人権擁護委員というのは、法務大臣の名前で辞令が出て嘱託されておるわけですから、これはやはり大臣に大きな責任があると思いますが、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  442. 寺西輝泰

    ○寺西説明員 お答えいたします。  先生も御承知だと思いますが、人権擁護委員というのは、人権擁護委員法という法律で全くのボランティア活動をやっていただく、そしてその活動をしていただいたことに要した実費を弁償させていただく、こういうシステムになっております。現在、昭和五十六年度の予算では、人権擁護委員一人当たり年間一万五千円の実費弁償を計上してございます。  そこで、先生が先ほど御質問なさいましたように、その実費弁償のお支払いの方法は、実際に活動していただきました費用を会計担当者から人権擁護委員の預金口座等に直接送金させていただいておりますので、お渡ししてすぐにそこで差し引いてというようなことはまずないと思います。また、年間八百円しかお渡ししないということもまずないんじゃないか。実際に御活動いただきますと、ごくわずかではありますけれども、年間一万五千円を計上してございますので、何とかがまんしていただける範囲お渡しできているんじゃないか。これは決して満足いく金額じゃございませんので、年々充実していくように努力しておりますけれども、そういう実情でございますので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。
  443. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 最後に大臣ひとつ。
  444. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま政府委員からお答えをいたしましたとおりでございますけれども、やはり人権擁護ということは非常に大切なことでございます。そういう意味から申しまして、この方々が、実際ボランティア活動であるにいたしましても十分に御活動いただきまして、そして人権が擁護されるということにならなければいけないと思っております。私といたしましても、一層の努力をいたしたいと考えております。
  445. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間が参りましたからこれでやめますが、ただ一言。  私が何かうそを言ったような返答でしたが、これは人権擁護委員の本人から聞いた話をしたまでです。この真偽のほどはまた後で調べたいと思います。  それからもう一つですが、このボランティア活動ということは、私はその辺の清掃活動などとは違うと思うのですよ。これは憲法体制の一翼をなすものですから、この人権擁護委員の活動というのは。だから、その辺の考え方、思想というものをもう少しはっきりさせていただきたいと思います。  以上で終わります。
  446. 小渕恵三

    小渕主査 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の熱心な御審議と格別の御協力によりまして、本日ここに本分科会の議事がすべて終了することになりましたことを深く感謝申し上げます。  これにて散会いたします。     午後六時十五分散会