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1982-02-12 第96回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月十二日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君   理事 越智 通雄君 理事 小宮山重四郎君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 阿部 助哉君 理事 藤田 高敏君    理事 鈴切 康雄君 理事 大内 啓伍君       上村千一郎君    江藤 隆美君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       亀井 善之君    後藤田正晴君       塩川正十郎君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    原田  憲君       藤尾 正行君    藤田 義光君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       木下敬之助君    竹本 孫一君       金子 満広君    瀬崎 博義君       山原健二郎君    依田  実君  出席公述人         財団法人平和・         安全保障研究所         理事長     猪木 正道君         日本労働組合総         評議会事務局長 富塚 三夫君         名古屋市立大学         経済学部教授  牛嶋  正君         大阪大学名誉教         授       木下 和夫君         東京大学経済学         部教授     林  健久君         日本経済調査協         議会専務理事  宮脇 長定君  出席政府委員         内閣官房副長官 池田 行彦君         総理府総務副長         官       福島 譲二君         防衛政務次官  堀之内久男君         経済企画政務次         官       湯川  宏君         環境政務次官  石川 要三君         国土政務次官  菊池福治郎君         法務政務次官  竹内  潔君         外務政務次官  辻  英雄君         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         文部政務次官  玉生 孝久君         厚生政務次官  津島 雄二君         農林水産政務次         官       玉沢徳一郎君         運輸政務次官  鹿野 道彦君         郵政政務次官  水平 豊彦君         労働政務次官  逢沢 英雄君         自治政務次官  谷  洋一君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十二日  辞任         補欠選任   藤尾 正行君     亀井 善之君   正木 良明君     鍛冶  清君   矢野 絢也君     武田 一夫君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     藤尾 正行君   鍛冶  清君     正木 良明君   武田 一夫君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十七年度予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず猪木公述人、次に富塚公述人、続いて牛嶋公述人順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず猪木公述人お願いをいたします。
  3. 猪木正道

    猪木公述人 時間も限られておりますので、主として安全保障関係予算について私の意見を申し述べます。  御承知のとおり、安全保障は主として外務省防衛庁、ほかの省庁関係いたしますけれども、主として外交防衛ということになりますので、まず最初に外交予算についてちょっと申し上げます。  本年度外務省予算外交予算は約三千三百億円でございまして、予算総額に対する割合は大変少ないのであります。去年に比べますとそれでも一〇%以上の増加になっておりまして、好ましいことだと思いますが、それによって外務省の定員も七十数名ふえることになっております。  外務省はつとに五千人体制ということを言っておられまして、諸外国外交予算と比べますと、これからちょっと申し上げますように、日本外交予算は極端に少のうございますので、情報収集、分析、評価、そういう点にもいろいろ支障を来すと思いますので、安全保障の観点から見ましてもぜひとも外交予算はふやすべきである。幸い東京工業大学の永井陽之助教授が、昨年の諸外国予算日本予算とを比較した研究がありますので、御存じかと思いますけれども、念のためにちょっと要点だけを申し上げておきますと、外交予算総額米国日本の五倍であります。まあこれは、米国は何しろああいうふうに地球的な規模でいろいろ活動しておりますので、この五倍はそう不思議じゃないのですけれども、ドイツ連邦共和国、すなわち西ドイツが、人口から見ましてもGNPから見ましても日本よりもずっと少ないのですけれども、それが日本の二倍半でございます。どうもこれは日本のはなはだ異常な少なさを示しておるものじゃないかと思います。英国があのような困難な状況のもとで外交予算日本の二・二倍。フランスが一、七倍でございまして、こういう数字はほかにもいろいろございますけれども、もう一つだけ念のために申し上げておきますと、人口一人当たりの外交予算比較してみました場合に、西ドイツが、つまりドイツ連邦共和国が一万二千七百十円、英国が一万二千二百四十円、カナダが一万二十三円、フランスが九千六百十八円となっておりまして、日本の二千六百七十九円は極端に少ないということになるかと思います。  その意味で、本年度予算に関しましては増加兆しが見えておるという点で評価できますけれども、しかし、はなはだしく外交予算は不十分であると言わざるを得ないのでございます。  次に、外務省予算にも含まれており、他の省庁予算にも含まれておりますところの経済協力費について見てみますと、ことしの経済協力費が四千七百十億円でございまして、一〇・八%の増加になっております。これは大変好ましいことでございますが、しかし、先進工業民主主義諸国経済協力費比較いたしますとまだまだ遜色がございまして、この点もさらに今後大幅に増加する必要があるのではないか、このように考えております。  そこで、次に防衛費でございますが、二兆五千八百六十一億円となっておりまして、一般会計歳出の中における割合は五・二%ということでございます。私は、防衛問題をパーセンテージだけであるいは金額だけで考えることに対しては必ずしも賛成できないのでございまして、安全保障防衛にはそういう金銭であらわし得ないいろいろな要素がありますし、同じ防衛費でもその使い方によってはむだになるということもあり得ます。また、非常に効率が高いということもあり得るわけでありまして、余りにもパーセンテージにとらわれることはよくないと思うのですけれども、ただ、これが政府防衛に対するあるいは安全保障一般に対する姿勢数字であらわすという意味においては、これは大変重要な意味を持っておりまして、そういう意味で、ちょっと本年度のこの二兆五千八百六十一億円という予算の持っておる意味を考えてみたいと思うのでございます。  一般会計歳出全体の中で五・二%なんですけれども、これを昨年の状況比較してみますと七・八%しかふえておりませんから、基本的には昨年の状況と変わってないと思うのですけれども、アメリカ合衆国一般会計歳出の二三・七%を防衛費に使っておりまして、ドイツ連邦共和国が二二・六%、フランスが二〇・五%、英国が一二・三%ということでありまして、いずれも一〇%以上支出しているわけです。日本昭和三十五年度予算、つまり岸内閣最後に編成した予算までは一〇%以上支出しておったのでありますが、その最後予算で、つまり一九六〇年度昭和三十五年度予算から九・九%ということで、一〇%台を割りまして、それから一貫して下がって、ついに昨年は五・一%まで下がった。ことしは五・二%まで、わずか〇・一%ですけれども回復したということでございます。諸外国と比べまして、やはりここにわが国政府の、特に私はあえて申し上げたいのは、政府首脳と申し上げたいのですね。これは防衛庁の責仕とは必ずしも言えないので、歴代の政府首脳の、広くは安全保障問題、狭くは防衛問題に関する関心の低さといいますか、それが非常にはっきりあらわれておるというふうに考えます。  なお、これに関しましてマスメディアその他で、防衛費突出である。七・八%ふえたのは、他の省庁予算がそれほどふえていない、エネルギー対策費とかあるいは経済協力費とかを除きますとそうふえていないということから見まして、突出という表現が使われておりますけれども、これは非常に間違った印象を与えるのでございまして、昭和で申しますと三十五年度から二十一年間ですか、二十一年間怠慢を続けてきたのでありますから、そこでそれを多少修正するというのがなぜ突出か。これは皆さん方もお持ちの資料と思いますけれども、社会保障関係費比較しました場合、なるほどことしだけを見ますと防衛費の方が伸び率が高いように見えますけれども、何しろ社会保障関係予算は九兆円でございまして、防衛関係予算はわずか二兆五千億台でございますから、突出というのははなはだ妙な表現である。昭和三十年から昭和五十七年までの二十七年間に社会保障関係費は八十七倍になっておりまして、それに対して防衛費は十九倍ということでございますから、長期的に見た場合にいかに防衛費が虐待されておったかということがわかるわけであります。伸び率を見てみましても、最近十年間の伸び率比較しますと、社会保障関係費伸び率一九・二%に対して防衛費伸び率一二・五%で、決して突出とは言えないのでございます。  それどころか、以上のように怠慢という言葉は、これは多少の非難意味を含むような気がいたしますけれども、私は率直に言ってそういうつもりで申し上げておるのですけれども、過去二十一年間怠慢を続けてきた結果、大変な欠陥わが国防衛力に生じております。このことは私が申し上げますまでもなく、一昨年八月、つまり昭和五十五年の八月に出ました「日本防衛」という防衛白書、これは閣議で承認されておりますから日本政府の公式の文書と言っていいと思うのでありますが、その中で、わが国防衛力陸海空ともにいかに大きな欠陥があるかということが非常に率直に述べられております。  三つだけ例を挙げていきますと、陸上自衛隊で申せば大砲火砲、これは陸上自衛隊の中心でございますが、それの大半が第二次大戦型であるということが書いてありまして、そこに載っております図表を見ますと、同じ二百三ミリ砲を比較しました場合に、日本のものとソ連のものと比較しますと、射程が日本のものは、半分とは申しませんが、六割ぐらいである。ということはどういうことかと申しますと、双方でもし撃ち合うといったような不幸な事態が生じた場合、相手の弾は十分届くけれどもこちらは届かぬという場合が考え得るわけでありまして、これは、第二次大戦末期に旧帝国陸軍が随所においてそういう目に遭っておりまして、同じような状況が今日もある。それは、世間ではいまの自衛隊は非常に装備がりっぱで、旧陸軍に比べると一個師団火力が七倍とか八倍とか言っておりますけれども、そもそも旧陸軍火力は、当時の第一流の陸軍国比較しますと問題にならぬほど少なかったのでありまして、そういうものと比べて七倍あっても八倍あっても、それはほとんど意味をなさない比較であると思います。やはり今日の諸外国火砲比較をして、あるいは師団装備比較をして、そうして火力をどちらがどうであるということを言わなきゃならぬと思うのです。そういう点から申しますと、陸上自衛隊状況というのは寒心にたえないものがあると思います。そういう悪条件のもとで制服の人たちがよくがんばっておるということを私はいつも感心しておるのでございます。  海上自衛隊につきましても似たことがございまして、護衛艦が数十隻ございますけれども、その中で対空ミサイル防空ミサイル装備したものが、一昨年の八月の防衛白書によりますとわずか三隻でございまして、その後ちょっとふえておりますけれども、しかし大勢には影響はないと思います。つまり、護衛艦が五十隻以上もおるけれども、その中で防空ミサイル防空力を持ったものは非常に少ないということでございます。対艦ミサイルに至ってはもっとひどいのでございまして、その防衛白書によりますと、本年度末に一隻就役すると書いてあるのです。ということは、ほかのは皆対艦ミサイルがないということです。これは、アメリカの第七艦隊ソ連極東艦隊も、巡洋艦、駆逐艦を通じて対艦ミサイル装備するというのが普通になっておりますから、そういう点から申しますと、わが海上自衛隊には重大な欠陥があるということになると思います。昨年、私大湊へ参りまして、確かに一隻「いしかり」というのが就役しておることを確認してまいりました。たった一隻であります。  航空自衛隊の場合、F15のような優秀な戦闘機を入れておるのでございますけれども、しかしその掩体がないとか、絶無ではないにしてもほとんどないとか、あるいは滑走路に関するいろいろな対策が欠けておるとか、レーダーサイトが非常に脆弱で、それがノックアウトされた場合にそれに対するスペアがないとかといったような、数々の欠陥がそこに指摘されております。  そこで、そのような状況を念頭に入れまして、故大平前総理から安全保障問題に関する報告書を出すように求められましたときに、私どもは、防衛費は年率二〇%の割合でふやさないと防衛力としての意味をなさなくなるという答申といいますか、報告を提出しました。そのときには大平総理はもう亡くなっておりましたので、伊東内閣総理大臣臨時代理に提出したのでございます。その二〇%という数字は、私どもかなり検討いたしました結果得た数字でございます。装備費とかあるいは弾薬費とかあるいは施設整備費とかという点をかなり検討いたしまして、その結果、最低限年二〇%の増率が必要である。こういうことになりますともちろん突出という非難が起こると思いますけれども、しかし、何しろ二十年間ないし二十一年間怠慢に怠慢を重ねておるのでございますから、そういう点から申しますと、それほどのことをしないととてもいかぬのじゃないか。最近発表されましたアメリカ合衆国防衛予算が一七・九%増ということでございますが、大体その程度ふやさないと、アメリカの場合に果たしてその増加が妥当かどうかという点に関しては別な意見を私は持っておりますけれども、しかし、少なくとも日本においてはそれほどの増強をしないと整備にならないというふうに考えるのでございます。  そこで、時間も経過いたしましたので、結論を申し上げまして私のあれを終わらせていただきたいと思います。  まず第一点は、外交経済協力防衛全般を通じて、安全保障に対するわが国政府、特に政府首脳の認識が不十分であるという印象を受けます。しかし、これはただいまの内閣の場合だけではなくて、繰り返して申しましたように岸内閣末期以来のずっと一貫した傾向でございますから、特定のどなたがどうということは言えないと思います。その政府首脳姿勢、これがこのような今日の防衛力欠陥をもたらしておる。その点から見ますと、本年度予算はそれを是正しようとする兆しとまでは言えぬにしても、兆し兆しのようなものが見受けられる、そのように私は評価するのでございます。  第二番目に、外交に関しましてはいろいろな面で、わが国外交情報収集評価その他で不十分な面があったことは皆さん御存じのとおりでございますが、これはやはり外交予算が諸外国に比べて段違いに少ないということと無関係ではないわけでございまして、この点について、ことしは他の省庁予算がふえない中で、多少上向きの傾向を示しておりますけれども、まだまだ不十分であるということを申し上げたい。  防衛力に関しましても、先ほど来申し上げましたような欠陥があって、特に装備費が非常に不足しておる。このパーセンテージが二〇%を超えておりますが、一時は一九%とか一八%になったことがあるのですけれども、やはりこれは三〇%くらいまで持っていかないと一国の防衛力としてははなはだ不十分だということになりましょう。それから弾薬費弾薬費がことしの予算では三八・九%ふえておりますけれども、継戦能力を持つということが必要でございまして、そういう点から申しますと、二、三カ月の継戦能力を持とうと思えば、弾薬費なんかは倍増倍増倍増を重ねていってもなお足らぬというような状況でございまして、この辺に対する配慮が必要であろうと思います。それから、施設整備費も非常に不足しておる。そのために、たとえば飛行機の掩体がないということになる。それから、研究開発費が多少上向いておりますけれども、防衛予算の一%台でございまして、これはぜひとも思い切ってふやす必要がある、このように思うのでございます。  そこで結論といたしまして、特に防衛費に関しましては、「防衛計画大綱」に示されておりますところのいわゆる基盤的防衛力を達成しようと思えば、それの見直しが必要だという意見も起こっておりますけれども、それはそれとして、私もその見直しはもちろん必要だと思います。絶えずそういうものは見直していかなければならぬものだと思いますけれども、昭和五十一年に決められました「防衛計画大綱」の防衛力整備しようと思えば、最小限一〇%以上、二〇%近くの防衛予算増加をしなければ永久に達成できないのじゃないか。永久という言葉が少しきつ過ぎるならば、半永久的と申しましょう。半永久的に達成できない。「防衛計画大綱」を見直すという論議をする前に、とにかく「防衛計画大綱」に決められた防衛力を、ロジスティックサポート、後方支援も含めまして、完全に整備するということが一番大事でございますけれども、その点に関して、本年度の七・八%の伸びでは、これは一つ兆し兆しとは言えますけれども、しかし、この調子では半永久的に達成できないというような感じがいたします。  以上で終わらせていただきます。(拍手)
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 ありがとうございました。  次に、富塚公述人お願いをいたします。
  5. 富塚三夫

    富塚公述人 御紹介いただきました富塚であります。  私は、まず第一に国民労働者側から見ましたところの新年度予算案の性格について申し述べてみたいと存じます。  第一は、軍備優先福祉切り捨ての反国民的予算ではないかと思います。そして戦後史最悪と言うべき、バターを切り捨て大砲を、の公然たる路線の選択ではないか。鈴木内閣軍縮に理解を示すかのごときハト派のようなポーズをとってきておったのが、全くの偽りであり、国民に対してタカ派である内実を明らかにしたように見られてなりません。  防衛費の歯どめなき拡大弱者切り捨ての意図が明確になっているような予算案のように思われてなりません。  ゼロシーリング予算の中で防衛費のみ七・七五%アップ突出型予算になっていることは事実であります。この七・七五%のアップは、大蔵原案の六・五%や昨年の伸び率の七・六%をも上回ってかさ上げされた伸び率であるように思われます。  防衛費突出に対して社会保障費はわずか二・八%とコントラストをなしており、これまで防衛費拡大のチェックポイントとして事実上行ってきた社会保障費伸び率との関係が、今回は無視されたように思われます。  さらに、防衛費拡大のいま一つの歯どめとされてきたGNPの一%という点も、五十七年度が仮に〇・九三%でも、後年度負担をも大幅にふやしている実情から見ますと、防衛費予算突出していることは事実であり、このことに注目しなければならないと考えております。また、一方では、防衛費は経済的に浪費であるという意見も出されていることなどから考えてみると、この歯どめなき拡大について大いに懸念するところであります。  米国レーガン政権軍拡路線あるいは新冷戦激化路線に対して、鈴木政権日本国憲法平和国家の理念に立って、緊張緩和軍縮基本とする自立する平和戦略に立たなければ、とめどもなくレーガン政権軍拡強要に引きずり込まれるのではないかと心配をします。  また、各種年金物価スライドが一カ月おくれたことは、制度としての年金実質価値維持基本を壊すことにもつながり、重大な制度後退への道を開く危険性があるように思います。同じく老人医療への一部自己負担導入高額医療自己負担限度額引き上げが、われわれの要求している医療供給体制の改革がなされないままに進められようとしているが、明らかに福祉後退意味しているように思われます。  鈴木政権下での国民生活水準低下社会的格差の増大、深刻に受けとめなければなりません。  第二次石油危機を経過して、日本経済の良好なパフォーマンスが政府によって自画自賛されているように見られますが、勤労者家計は戦後初めてといってよいほど生活水準の絶対的な低下が起きています。このことを認識した政府予算編成となっていないように思われます。  勤労者家計の可処分所得は、昭和五十五年マイナス一・四%、五十六年に入ってもマイナスを記録し、二カ年連続の実質生活水準低下という状態に陥っています。これは第一次石油危機のときにもなかったことだと思います。雑貨支出はおろか、食費、衣服費を含む生活基礎品目でも絶対水準が下がり続けています。五カ年間据え置き課税最低限が大きく影響していると思います。  勤労者世帯家計悪化に加えまして、自営業あるいは農家などの一般世帯家計は、各日でも前年水準を下回っています。勤務先企業規模別に見た家計状況はかつてなく大きな格差が生じています。また、零細企業自営業家族従業者雇用就業が不安となってきていることも事実であります。パート賃金家内工賃の買いたたき傾向が目立ってきています。  こうした事実を見るときに、紛れもなく、第二次石油危機のツケが最終的に労働者国民雇用生活悪化に転嫁されてきた結果であり、これが消費不況の持続、経済回復が停滞している真の原因となっていると思います。  マネーサプライ・コントロールを通ずる物価鎮静策は、大企業分野の堅調さに対して、中小零細企業自営業企業分野及び勤労国民生活悪化に結びついているように思われます。  国民生活水準低下、一方では格差拡大の中で、予算編成に当たってここ二年間要請されてきましたのは、公正な福祉社会づくりを目指す所得再配分政策の強化であったと思います。福祉優先の予算編成へと転換しなければ、さらに国民生活悪化をして、国民にとって最悪の事態となり、政府として批判されるのは当然だと思います。行政改革は国民生活向上、福祉引き上げのため役立たなければならないというふうに考えています。  そこで、内需主導型の経済回復及び国民生活回復のかぎをなすのは減税であり、大幅な賃上げが必要であると私たちは考えています。政府予算案は内需主導型経済回復にふさわしい予算案になっていないし、本当に内需主導型の経済政策をやる気があるのかどうかについて疑問を持ちます。政府は五十七年度経済見通しで見込んでいる失業水準をいかにして実現するつもりなのか。これまでのように外需依存、輸出依存の経済回復が望み得なくなり、また、経企庁の最近の調査にあるように、民間設備投資もふるわないということになりますと、住宅、消費を軸とするコースしかあり得ないと思います。そのために、住宅政策の充実と所得税の中低所得者中心の大幅減税が消費主導型回復の政策ということになると思います。私は、過去二年間続いてきた三%台の成長が、さらに一年これから先続くことになれば、経済企画庁推計によるように三十万ないし四十万人の失業者が上乗せされ、税収減による財政再建の一層のおくれが危惧されるのではないかと見ます。  また、中期的に見て、ここ二年ないし三年の政府予算の促進による日本経済発展のパターンがこのまま続くならば、一九九〇年へ向けての日本の将来展望が心配されます。それは五%程度の中成長が無理ということになりますと、すなわち、ここ二、三年のように消費抑制と輸出拡大、輸出型産業の設備投資が集中化して、企業や地域間のばらつき、雇用創出効果の不均衝が生まれ、日本経済の悪循環は一層拍車をかけられていくことになるものと見ます。  私たち労働四団体は、一兆円減税を政府に要求して、この国会で予算修正をしてもらうことを決めました。  われわれは、五年間据え置かれています課税最低限、勤労者、サラリーマンへの重税、不公平税制に強い不満を持っています。トーゴーサンピン、クロヨンなどはその称号であります。国民春闘共闘会議で昨年十月行いました首都圏の三百五十世帯についての家計調査によりますと、近く発表する予定ですが、生計費の指数は対前年同月比六・四%の上昇となっていることが明らかになりました。ところが、総理府統計局の東京都区部の消費者物価指数は同月対前年比三・九%の上昇となっており、二・五ポイントの開きがあります。お金にして六千九百七円のマイナスとなっています。われわれは、実支出における消費支出及び非消費支出の構成比の推移について一九七四年ごろは一〇%、すなわち一割ぐらいであったものが、一九八一年には一五・三%とふえました。つまり、増税、社会保険料の負担増などにより非消費支出が多くなっている事実を見逃すわけにはいかないのでありまして、政府統計の物価指数は増税とか負担増が含まれていないというところに問題があります。われわれは一兆円減税こそ重大な課題であるというふうに思います。  過日発表になりました政府の今年度雇用所得見込みも六・九%増となっていますが、サラリーマン増税は一一・三%、つまり年間一人当たり二十三万六千円も増税をされるという結果が出ているわけであります。  私たちは、軍事費の突出あるいは不公平税制の是正、新年度の税制改正案を見ましても、大企業向けの特別措置の整理は、件数にして二十四件で全体の三分の一にとどまっている程度であります。こういう中で財源を積極的に生み出す努力をしていただきたいというふうに思います。  日本経済は国際的に見て、ECやあるいはOECDの他の諸国から貿易摩擦の解消あるいは発展途上国援助が強く求められている現状にあります。私たち労働四団体は、労働時間の短縮、すなわち貿易摩擦を解消するためには、労働時間の短縮が緊急の課題であり、あるいはウサギ小屋に住んでいると批判されているものを解消するためにも、住宅土地政策を充実させていかなければならないということで、労働時間短縮は、一九八五年までに年間総労働時間を二千時間以内、八七年までに千九百時間以内にしてもらうことの要求を決めました。また、週休二日制の実施も要求をしています。ILO条約四十七号批准も要求をしています。週四十時間労働、週休二日制を実施されますと、約七百万人の雇用創出ができる試算になります。さらに住宅土地政策、今日の国民のニーズに沿って、積極的に公共住宅を中心に解決をしていただきたいというふうに思います。  八〇年代は福祉型社会づくりが課題であります。高齢化社会の到来、進展が予想される土地問題、国際経済の秩序ある発展、こういうものが日本福祉型社会づくりの課題でありますが、いま短期的には、内需停滞という悪循環をいかに克服するかという局面が大事であり、私たちは内需停滞を克服するためにも減税そして賃上げ、ぜひこの春闘でも実現したいと考えていますし、そういった観点に立って、それにふさわしい予算づくりを希望いたすものであります。  以上で私の陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  6. 栗原祐幸

    栗原委員長 ありがとうございました。次に、牛嶋公述人お願いをいたします。
  7. 牛嶋正

    牛嶋公述人 いま紹介にあずかりました牛嶋でございます。  初めに、こういう陳述の機会をいただきましたことを委員長にお礼申し上げます。  私は、五十七年度予算のうち、一般会計予算を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。  わが国経済を取り囲む内外の厳しい情勢を考えますときに、来年度予算の編成に当たっての課題は、財政再建が最重点であるといたしましても、それだけではないと考えられます。  たとえば、一つには安全保障のための分担増の要求と、貿易摩擦の高まりによる外圧に対してどのように対処するか。あるいは第二点には、内需、とりわけ個人消費の不振を挽回して景気の回復をいかに図るか。また三つ目には、安定成長のための前提となる長期的なエネルギー対策の推進の問題が考えられます。また、構造不況産業の再生を含めて、産業構造の再編成と先端技術産業への移行も問題であります。また、社会の高齢化に対処できる財政構造の確立も急務の問題であるというふうに考えられるわけであります。  このうち、後の三つの課題は長期的問題でありまして、もちろん五十七年度予算におきましても十分に配慮すべきではありますが、緊急性から申しますと、初めに挙げました財政再建、外圧の排除、内需の喚起の三つの問題こそ、五十七年度予算の重点課題と考えられます。  しかし、この三つの課題は、これまで当委員会でもしばしば指摘されてまいりましたように、同時に来年度予算の中で受けとめることには無理があると考えられます。これに対しまして、五十七年度政府予算案は、来年度の経済見通しにも見られますように、内需主導による景気回復を前提といたしまして、財政再建を最重点とする超緊縮型予算によってこのトリレンマに取り組んでいるわけでありますが、もし緊縮型予算の中にこの前提を崩すような要素が含まれているといたしますと、初めから政府予算案は課題の選択に当たって大きな矛盾を含むものと言わざるを得ません。  中期財政展望では、財政再建の目標年次を五十九年度に置き、それまでに特例公債の発行をゼロとする財政再建計画が明示されているわけでありますが、このような財政再建計画を進めることの意義について、必ずしも国民に十分な説明がなされているとは言いがたい面がございます。  大蔵大臣は、一月二十五日の財政演説の中で、その理由といたしまして、一つには公債発行残高の累増が金利水準の引き下げの阻害要因となり、金融政策の円滑な運営を妨げるという点を挙げておられます。また第二点では、大量の公債発行が経済にインフレ要因をもたらす、こういった理由を挙げておられますが、そのほかにも、公債費の増高による財政運営の硬直化を一層強めていくという問題がありますし、また、大量の公債発行による世代間の負担の分担問題も考慮していかなければなりません。  このように眺めてくると、財政再建の意義は財政の弾力的運営のための環境を準備し、もって、財政金融政策が円滑に展開されるための状況をつくることにあると言えるわけであります。言いかえれば、財政再建は財政運営の本来の目的ではなくて、弾力的な財政運営のための条件づくりであるというふうに考えられます。  このことから申しますと、財政再建を目指して編成される来年度予算は、単純に、歳出を抑えて、歳入と歳出のギャップを財政再建計画に基づいて少しでも埋めていくというだけではなくて、私は、次の二つの条件を満たすものでなければならないというふうに考えております。  その第一の条件は、財政再建の過程で、全体として行政サービス水準低下を来すことがないように努めるということであります。さらに、積極的に行政サービス水準の引き上げを目指していく、これをいま行政サービス水準確保の条件とでも言っておきたいと思います。  第二の条件は、歳出の削減によって生ずる犠牲、及び減税が行われないことによる実質的な税負担増を、できるだけ公平にすべての国民に分配することであります。これを公平の条件と呼んでおきたいと思います。  もしこの二つの条件が十分に満たされないままに財政再建最重点の予算編成が行われるとするならば、それは単に数字合わせにすぎないというふうに言えるのではないかと思います。     〔委員長退席、越智(通)委員長代理着席〕  まず第一の、行政サービス水準確保の条件を満たすに当たりましては、予算編成のプロセスの中で中心となりますのは、大蔵省が各省庁からの概算要求に基づいて大蔵原案を作成する過程での査定であります。査定は、概算要求に盛り込まれた個々の事務事業に慎重な検討を加えて、与えられた財源枠まで予算を圧縮していく作業でありますが、もし、個々の事務事業の内容あるいは行政サービス水準への寄与率につきまして、科学的に分析を行い、五十七年度予算に要請されている課題に照らして、これらの事務事業に優先順位をつける形で査定が進められるならば、第一の条件をある程度満たして行政サービス水準低下を回避することができるものと考えられます。  問題は、五十七年度予算編成に当たって導入されたゼロシーリング方式が、果たして行政サービス水準確保の条件を満たし得るかという点であります。大蔵省がゼロシーリング方式を設定し、各省庁に対して概算要求の枠を前年度予算に対して伸び率ゼロという形で提示いたしましたが、そのときすでに大蔵省が原案作成に当たって行うべき査定の一部が原案作成前に実施されたことを意味し、予算編成の主役が大蔵省から各省庁へ移ったともみなされます。すなわち、各省庁が大蔵省から提示された伸び率ゼロという枠組みで概算要求を算定し、提出することによって、大蔵省に残された査定の余地は非常に狭められたということになるわけであります。  このように、今回採用されたゼロシーリング方式を見るとき、もし各省庁が、概算要求を作成する過程で個々の事務事業にそれほど厳密な検討を加えることなく、前年度予算に基づいて概算要求の作成を行い、第二臨調の一次答申に沿っての事務事業の見直しで浮かされた財源を新規事業に振り向けるという程度のものであるといたしますと、数字の上ではあらわれてまいりませんけれども、行政サービス水準低下は避けられないのではないかというふうに考えられます。  五十七年度予算の重点課題である財政再建の推進に当たってのもう一つの条件は、財政再建を進める上で当然生ずる負担を、できるだけすべての国民が公平に分担するという公平の条件であります。考えようによっては、この条件は、行政サービス水準低下をできるだけ回避するという第一の条件より、五十七年度予算の中で満たしていくことは困難を伴うものであります。とりわけ負担の公平な分配問題は、第二臨調の一次答申と深いかかわり合いを持つと言えます。  行政改革の推進は、いわば従来の諸制度のもとで徐々に形成されてきた秩序に大きな変更を加え、新しい秩序をつくり上げていくことでありますから、その過程で構造の変化に伴う摩擦を生ずることはやむを得ないことであります。そしてこの摩擦こそ、国民にとって一種の犠牲であり、負担であると言えます。  したがって、行政改革を通じて新しく確立される秩序が、旧秩序に対していかにすぐれたものでありましても、移行に伴う摩擦という犠牲、負担がすべての国民に公平に分配されなければならないことは言うまでもありません。行政改革や財政再建に対して、総論賛成、各論反対が示されるのは、多くの場合、この犠牲の公平な分配という要件が満たされないことに基づくものであります。第二臨調がその基本理念の中で公平を強く打ち出しているのはこのためであります。  しかし、来年度予算編成に向けて行われた一次答申は、緊急に取り組むべき改革方策の中に種々の項目を盛り込んではおりますが、その項目のいずれもが、財政再建に伴う負担をすべての国民に平等に分担していくというよりも、求めやすいところからまず分担してもらうという項目が多いように思われ、その端的なあらわれといたしましては、五十七年度予算の中で、社会保障や文教、科学振興、地方財政などの伸び率マイナスという形であらわれておるわけでありまして、生活関連予算の圧縮に見られるわけでございます。  このことは、税負担の面でもはっきりと見られるわけでありまして、すべての国民に対して公平な負担を求めつつ財政再建を進めるためには、何よりもまず現行の不公平税制を是正することであると考えられます。とりわけ、所得税制におけるクロヨンと呼ばれているような不公平要因をそのままにして、増税なき財政再建はあり得ないと考えられます。  政府の側には、新税創設や税率の引き上げをやらないのであるから増税ではないという見解がありますが、個々の納税者の立場からいたしますと、現行税制の不公平要因がそのままの形で、名目所得の上昇に伴う税負担の実質増大がさらに不公平を拡大するような形で納税者にかかってくることには、非常に大きな問題があります。  ここでも、源泉徴収される給与所得者の税負担が相対的に重いわけでありますが、これは結局、犠牲の求めやすいところに、言いかえれば各論反対の声がそれほど大きくないところに犠牲を押しつけたものであるというふうに考えられます。  このような形で財政再建を進めるとすれば、増税なき財政再建に対しても強い抵抗が納税者から起こることが予想され、第二臨調の今後の長期的な行政改革の推進にもきわめて大きな影響をもたらすものと言えます。そして、不公平税制の是正を見送った五十七年度予算には、多分にその危険性が含まれているとも考えられるわけでございます。  五十七年度予算のもう一つの特徴は、各省庁がゼロシーリング方式を遵守する余り、国庫負担を地方自治体や財政投融資、さらには後年度負担へとツケ回しする措置がとられてきた点であります。このうち、後年度負担へのツケ回しが国債減額に対してどのような意味を持つのか、十分に検討すべき問題であるというふうに思いますが、最後に、地方自治体へのツケ回しについて若干意見を述べさしていただきたいと思います。  地方自治体は、地方財政の危機と呼ばれました五十年度以降の財政逼迫に対処するため、地方自治体がこれまで払ってまいりました内部努力は、私は相当なものがあったというふうに考えております。なお給与体系の面で若干の問題を残しながらも、行政機構の簡素合理化、事務事業の見直し、定員管理の適正化と、あらゆる分野にわたって内部努力が進められてきております。これはまさに地方自治体がみずから行ってきた行政改革であるというふうにみなしてもいいのではないかと思います。このため地方自治体は、都道府県、市町村とも、その財政構造は、幾つかの指標で見る限り、国よりも一歩も二歩も財政の健全化が進んでいるというふうに私は判断しております。  それだけに国庫負担の地方自治体へのツケ回し婆予算編成に対する国の安易な姿勢と言わざるを得ないのではないかと思います。なぜなら、地方自治体の現在見られる財政構造におけるゆとりは、いわば地方自治体の先ほど申しました内部努力によるものであるからであります。さらに地方自治体は、社会の高齢化、人口の定着化、住民の価値観の多様化といった社会構造の変化の中で、新しい行財政の運営方向が求められているからであります。そして、この新しい行財政運営の前提条件といたしまして、現在以上の自主財源の確立が必要とみなされます。このように考えるときに、地方財政計画の前年度伸び率五・六%という形での地方自治体へのツケ回しによって、地方自治体に要請されているいま申し上げました新しい行財政運営の展開が果たして可能であるかどうかという問題がここに出てくるわけでございます。  むしろいまこそ、第二臨調の行政改革を機にいたしまして、国と地方の財政関係を、その機能分担、国と地方の間の税源配分及び国と地方の間の財政調整の各側面にわたって、地域における社会的、経済的構造の変化を十分に見きわめつつ、今度は国が積極的に見直していくべきときではないか、こういうふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  8. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  9. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀井善之君。
  10. 亀井善之

    亀井(善)委員 三人の公述人の皆さん、大変お忙しいところを御出席いただき、なお、ただいまは貴重な御意見をいろいろ賜りましたことを厚くお礼申し上げる次第でございます。  最初に、猪木先生にお尋ねを申し上げる次第でございますが、先ほども、防衛費突出予算であるのではなかろうかという批判がある、こういうようなお話もあったわけでございますが、私も野党や一部のマスコミから、福祉切り捨て防衛費突出、こういう批判があることも承知をしております。しかし、私はこの問題については、どうもいただけない問題ではなかろうかと思います。  先ほど猪木公述人からもお話がありましたとおり、やはり防衛というものは国の大きな基本の問題でもありますし、さらに、それを予算伸び率でいろいろ議論をすることにつきましては問題があるのではなかろうか、これは先ほどのお話のとおりでございます。私は、やはり率というよりも額の問題を考えていかなければならないのではなかろうか。福祉費、社会保障費につきましては九兆円、あるいは防衛費につきましては二兆五千億円、これを国民一人当たりに考えますと、総予算が本年度、五十七年度予算につきましては一人当たり四十二万円、大体このくらいの数字になるわけでございますが、その中で福祉費には七万七千円、あるいは防衛費は二万二千円、このような数字であるわけでございます。また、伸び率でいろいろ議論をされておるわけでございますが、伸びの額では、福祉につきましては二千四百億円、あるいは防衛費につきましては一千八百億円、こういうようなことが数字であらわれるわけでございます。  そういう中で、やはり福祉の問題につきましては、児童手当であるとかあるいは老人医療の無料制度であるとか、これらは高度成長時代にのみ通用する、ある面ではばらまきの福祉の典型だ、このようにも言えるのではなかろうかと思います。いまこそ私は、本当に困っている方々、公的な保護を必要とされる方につきましては十分福祉をいたさなければならないわけでございますが、やはり若干その問題等につきましても見直しをすべき時期に来ておるのではなかろうか、こういうような気がしてならないわけでございます。  そこで、日本の国がこのような世界の有数の地位あるいはまた経済力を持つようになったわけでございます。そういう面から、現在、貿易摩擦の問題であるとか、経済摩擦の問題であるとか、アメリカやヨーロッパの国々からいろいろ批判も受けているわけでございます。そういう中で、一方では、ポーランドの情勢もいろいろ変化をいたしております。やはり西欧側の一員としての日本の位置づけというものもあるわけでございまして、このような防衛費の問題が、先ほどもいろいろ改善の兆し兆しが見えているというようなお話があったわけでございますが、対外国の見方と申しますか、世界の国々に対して、今回そういうような若干兆し兆しが見えたものであるというようなお話もあるわけでございますが、今日の日本の国情あるいは西側の一員というような立場で、貿易の問題、経済の問題、いろいろむずかしい問題がある中でどう評価をされているか。今度の予算がそれらのものに対する一つの寄与と申しますか、多少でもそういう国際関係に寄与できることであれば、私は、その額が、伸び率がいろいろ言われておりますが、一つの大きな安いものであるのではなかろうか、こんなような気もするわけでございますが、国際的な問題をも考慮されて、ひとつ防衛費予算につきまして御意見がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  11. 猪木正道

    猪木公述人 ただいま私に対する御質問がございまして、御質問の趣旨は大体私も同感の点が多いのでございますが、一番最後のところで、国際的にどういう評価を受けておるか、その点について私の意見を求められましたので、それに対してお答えしたいと思います。  御承知のとおり、昨年度予算は、西側の同盟諸国、特にアメリカ合衆国が、これは同盟国ですが、他の西側諸国は間接の同盟国と言っていいと思うのですが、大変評判が悪うございまして、私の主宰しております研究所にはほとんど毎日のように諸外国安全保障問題の専門家が訪ねてこられるのですけれども、中には、口をきわめて、日本防衛に対する不熱心さといいますか、怠慢といいますか、それを非難する人がおりまして、中には、ただ乗りというような、大分聞きなれましたけれども、しかし非常にいやな批判もございました。昨年の十二月の初めに東京で、国際戦略研究所と読売新聞社の共催のシンポジウムがございまして、人類の生き残りということを究極の目標にした平和問題に関するセミナーでございましたが、米、英、仏、独、ノルウェーあたりから来ておられる方が、ほとんど口をそろえて、日本は国内市場の拡大にもっと努力すべきである、防衛に関して国際的な責任を果たせということを言われまして、聞いておりますと、私はそういう意見に対して大体同感なものですから、大変どうもつらい思いをしたのでございます。  ことしの予算に関しましては、この予算がどういうことになるかというふうに関心を持つ外国人が多くて、予算の書類ができたら、簡単なものでもいいからひとつ見せてくれぬか、写しをくれぬかということを言ってまいりまして、差し上げた方もあります。  そういう人々の意見を聞いてみますと、とにかく兆しというか、兆し兆しは認める、いままでずっとこう低下しておったのが、とにかく多少アップするという、それは認める、後年度負担その他を考えると、まあ大分日本もわかってきたんじゃないかというような気がする、しかしまだまだ不十分である。これは一つは、諸外国が、西側の諸国がすべて、日本を例外としまして大変困っておりまして、失業者が大変多い、インフレーションの率も、若干低下したような兆しがございますけれども、しかし大変高率である。その意味日本は、言うならば模範生のような地位におりますので、その模範生が防衛に関しては非常に不熱心だということで、今度の予算を見た人の中にも、多少の改善の跡は認めるけれども、まだ不十分であるという声が強いように思われます。  なお、これは皆さん方よく御存じ数字と思いますけれども、国民一人当たりの防衛費を国際戦略研究所が昨年比較しました数字がございますので、ちょっと申し上げてみますと、アメリカ合衆国が一人当たり七百五十九ドル、英国が五百十二ドル、フランスが四百八十三ドル、ドイツ連邦共和国西ドイツが四百五ドルというのに比べまして、日本はがたんと落ちて九十ハドルというのですから、これではどうもただ乗りと言われても仕方がないのですが、私は、そういう人に対しては、いや、ただ乗りじゃない、払っておるんだから、払っておるのをただ乗りとは何事だというふうに反撃をするのですけれども、いや、それはしかしひどい割引きじゃないか、小児割引きだって半額払わなければいかぬ、日本は半額も払っていないと言いますから、まあそうだ、まず乳幼児割引きぐらいのところだろうということを私は言って、相手もそんなところだろうということで意見が一致する場合が多いのでございますが、そういう点で、私は、先ほど申し述べることを忘れたのですけれども、今年度予算に見えたこの兆しを、さらに来年度予算にはうんとひとつ力を入れていくということにしなければ、外交に関しても同じでございますけれども、外務省の定員をふやすとか、経済協力費をふやすとか、それも同じでございますけれども、特にこの防衛費に関してかなり思い切った増額、しかも増額するからには、これは合理的に効果的にやらなければいけないので、そういう点に関しましては、防衛基本構想に関して十分に検討して、いやしくも国民の税金をむだ遣いしないように、また、防衛庁予算の中にも、決してそれがすべて効率的に使われているとは言えない面があると私は思いますから、そういう点も十分に検討していただいて、その上で思い切って増額をしないと、日本は国際社会の一員として、特に経済状況が相対的にうまくいっておりますので、恨みつらみ、そねみねたみの対象になっておりますから、そういう点からいって、防衛外交にもっと努力をしないと、国際社会の尊敬された一員にはなり得ないのではないか、そのように思います。
  12. 亀井善之

    亀井(善)委員 先ほど猪木先生、年率二〇%くらいの増率防衛力整備の問題にとって必要である、こういう御意見も承ったわけでございます。二十年間の怠慢のツケがあるということ、私もよくわかるわけでございます。いろいろ調べてみますと、一九六〇年ごろ、一般歳出の一〇%を割ってきておるようなわけでもございます。  そこで、やはり国家の安全保障、よく先生もおっしゃっておるわけですけれども、三本柱は、内政の安定、外交の成功、そしてさらには防衛力整備である、このようにおっしゃっているわけでございますが、防衛大綱見直しが必要である、このように先ほどおっしゃっていた中で、GNPの一%の問題、現在そのような一つの枠というものがあるわけでございますが、対抑止力というようなものをつくっていく、そういうような中でも、あるいは防衛力整備の問題でも、もう一%の問題というのは見直しをしなければならないのではなかろうか、このように私は考えるわけでございます。猪木先生、その一%の問題につきまして、私はさらに増加をすべきであるという考えを持つわけでございますが、その点につきまして、お考えがありましたら一言伺わせていただきたいと思うのです。
  13. 猪木正道

    猪木公述人 ただいまの点は、一%というのは、ちょうど昭和五十一年の国際緊張の緩和と申しますか、デタントのそれこそ最中に決められた一応のめどでございまして、閣議決定、国防会議決定となっておりますけれども、これは理論的には全く根拠がないものでございまして、軍国主義日本の苦い経験がございますので、だれしも防衛費の増強には歯どめが必要だということは考えておりますから、それの一応の目安として、諸外国と比べて幾分控え目にするというような、そういう配慮は必要だと私は思いますけれども、一%というのには理論的根拠は全くございません。  日本はよく、吉田さんの時代に、防衛アメリカに任せて、そして商人国家、通商国家としてやっていくという経済優先主義をとったんだということを言われるのですけれども、これは私は、吉田さんの伝記を書いた人間として、吉田さんのために誤解を解いておく必要があると思いますのでちょっと申し上げておきますと、吉田さんの時代の防衛予算はかなりのものでございまして、昭和二十六年、これは吉田さんがサンフランシスコ講和条約に調印した年ですけれども、その年の防衛予算一般会計歳出の一八・二三%と、まあ世界の列強並みでございました。それから、GNPに対するパーセンテージも二・一九%ですから、西ドイツフランス英国に比べると少ないですけれども、イタリアよりは多いといったような状況でございました。その翌年、一九五二年、昭和二十七年、これは独立をした年ですが、その年の防衛予算一般会計歳出の二〇・七六%でございまして、GNPに対するパーセンテージは二・七八%となっておりますので、決して吉田さんは防衛をなおざりにしたのではないので、吉田さんの後の方がなおざりにされたというのが正しい、私はこのように思うわけでございます。  そこで、これからのことでございますけれども、私は、一%の枠を超えるか超えないかということで国会等でいろいろ議論があることは新聞その他で承知しておりますけれども、それにはこだわるべきではないという意見を持っております。もちろん、国民の支持がなければ防衛力というのは役に立ちませんから、そういう意味から申しますと、国民に対してなぜ一%を突破しなければいけないかということを十分説得する必要があるので、それを国民によくわかってもらって、たとえばF15を何機入れるということも大事ですけれども、しかしそれに対する掩体がなかったり、あるいは乗員の訓練が十分にできない——いまは御承知のとおり、訓練空域が不足しておって、大変航空自衛隊は困っておるようです。そういう点で、たとえばアメリカ合衆国とかオーストラリアとかあるいはカナダとかを借りて大いに訓練をする、これは金がかかりますから、そういう点で、金を訓練に有効に使う。施設整備費の点を私は先ほど申し上げましたし、研究開発費も申し上げましたが、研究開発費が、諸外国が大体防衛予算の一割以上は使っておるのに日本だけが一%台であるというのは、はなはだ怠慢で不まじめな証拠だと私は思うのですね。  これは私、防衛大学校におりましたときに、ノーベル賞の江崎博士が帰ってこられたので、防衛大学校の学生に講演をお願いしましたら、開口一番、日本自衛隊の実力はどんなものかを調べるために、自分の独特の方法で日本自衛隊というものの力を測定してみた、それは、いかなる企業といえども、いま世界の第一級の製品を生産して業界第一位というようなところでも、研究開発を怠っておると五年後にはもうだめになる、そこで、日本防衛庁がその予算において研究開発費をどれくらい使っておるか、防衛予算研究開発費パーセンテージはどれぐらいかというのを調べてみたところが、それが一%前後であってアメリカ合衆国はもとより西ヨーロッパの諸国に比べても一けた少ないということがわかって、そこで、日本自衛隊は落第であるという結論に達しましたということを言われまして、それで防衛大学校の二千人の学生はしゅんとしまして、非常なショックを受けておったのを私はよく記憶しておるのですけれども、そういう点に力を入れて防衛予算を今後ふやしていただく。「防衛計画大綱」をまじめにできるだけ早く達成しようとすれば、必ず私は、来年とは申しませんけれども、再来年あたりには一%を超えると思います。これは超えてもいいのであって、それは超えてもいいんだということを国会を通じてよく国民に説得していただいて、ただし、はなはだしくこれをふやして、たとえば西ドイツフランス並みに三%にするというようなことは今日の問題としては現実的ではない、やはりまず一・五%ぐらいをめどにしていく、そうしてさらに、それまで来れば、そのときの国際情勢その他を見て、二%ぐらいあるいは一・八%ぐらいにまで持っていくということが望ましいのではなかろうか、その辺の自制をすることが、第二次大戦において大きな役割りを果たした日本としてはかえって安全保障上プラスするのではなかろうか、このように私は考えております。
  14. 亀井善之

    亀井(善)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
  15. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 次に、横路孝弘君。
  16. 横路孝弘

    ○横路委員 三人の公述人の皆さんには、貴重な意見をどうもありがとうございました。  時間もございませんので早速お尋ねをしたいと思いますが、初めに富塚公述人にお尋ねをしたいと思います。  いま、国民生活水準が絶対的に低下をしてきた、勤労者家計の可処分所得マイナスを続けている、したがって減税が必要であるということをお話しいただいたわけでございます。  この予算委員会の中でも、減税をめぐる議論は各党が熱心に行っておりますが、その際やはり問題になるのは、財源の問題が大きな問題になるわけでございます。私たち社会党も、幾つかの財源を示しながらこの議論を進めてきているわけでございますが、総評としてこの財源をどのように考えておられるのか、同時に、四団体として一兆円減税を要求しているわけですが、この四団体の中の調整というようなものはどのようにお考えになっているのか、まずそこのところからお聞かせいただきたいと思います。
  17. 富塚三夫

    富塚公述人 財源問題は、私たち総評としては、まず、防衛費突出部分は削減をしてもらって財源に充ててもらいたい、あるいは不公平税制の是正を実施することによって財源をつくっていただきたい、また、補助金のカットなどについても検討してもらいたい、政府の財政再建について十分検討してもらいたいという考え方を持っていますが、労働四団体といたしましては、不公平税制の是正を中心にいたしまして、すなわち、利子配当所得に対する優遇措置を廃止してもらいたい、あるいは社会保険診療報酬に対する特別措置も廃止してもらいたい、交際費課税を強化してもらいたい、貸し倒れ引当金など諸引当金を見直していただきたいと、統一的に労働四団体は見解を決めました。したがって、今回の一兆円減税について、各政党なり各団体それぞれの財源のつくり方について御意見のあることは十分承知をしていますので、十分に政党間で話し合ってもらうという点で、われわれは柔軟に財源をつくり出すことに対する態度については持っていることだけは明らかにしておきたいというふうに思います。
  18. 横路孝弘

    ○横路委員 財源については、そうすると柔軟に対応していくということだったと思いますが、いまの公述の中で行政改革についても触れられておられたわけですが、その行政改革ということになりますと、いつも問題になるのは三Kの問題であるわけであります。特に、この委員会の中でも国鉄の再建といわれる問題が幾つか議論をされているわけでございますが、今日の行財政改革の中で国鉄問題を富塚さんはどのようにお考えになっておられるか、基本的なお考えをお示しいただきたいと思います。
  19. 富塚三夫

    富塚公述人 私は、今日の国民のニーズに沿ったところの効率的、民主的な行革は実施すべきだという立場に立っています。  しかし、当面は三K問題が国の大きな課題ですから、とりわけ国鉄問題を真剣に考えていただきたいというふうに思っていますが、この秋ぐらいに臨時国会ぐらいを召集して、国鉄問題だけでも立法府が真剣に議論してもらえないかというふうに、私はそう考えて総評大会でも議論しました。  と申しますのは、いま私たちは国鉄問題について第二臨調の部会で議論されているように聞いていますが、分割するとか、民営化するとか、あるいは二十万体制にするとか、さまざまなペーパープランの中での議論が実はされていることに非常に不満を持っています。と申しますのは、すでに一昨年の国会で国鉄再建法が与野党で成立をして、そして最終的にいま三十五万人の要員あるいは七千キロローカル線廃止問題、われわれは反対ですが、しかし労使間が事前協議協定に基づいて交渉に入っている段階なんであります。その途中の段階でさらにもう一回見直すかのような幾つかの意見が出されることでは、一体労使はどのような努力をすればいいのか、きわめて不満であります。  そういう点で、本当に国鉄の再建問題を考えるということに相なりますならば、もっと立法府も行政府も、利用者なり国民なり、あるいは労働組合なり使用者なりの意見を十分聞いた上で対処すべきではないのかという考え方に立っています。このままですと、国鉄再建問題は、だれが責任を持ってだれがやろうとするのか全くわからない状況になっている。国家としての大きな問題であろうというふうに思っています。したがって、恐らく第二臨調の答申もされるでしょうが、私は、臨時国会ぐらいを立法府が開いて、その問題を裸になって議論をする、国民的な立場に立って議論をするというふうにしていただかないと、これは真の再建はできないのではないかというふうに思います。  国鉄は、もとより戦後の改革の諸問題や高成長を支えてきましたが、モータリゼーションの発達に伴って、あるいは低成長に転換する中でこのような事態を招いているわけですが、われわれ労働者に責任があるとは思っていません。問題は、政府が、あるいは国民全体が、どのようにこの問題について再建をしていくのかという観点に立たなければいけないのではないか、公共性と機能性をどう調和していくのかという観点に対する政策的な視点をもっと明確にしてもらいたい、私はこう思っています。
  20. 横路孝弘

    ○横路委員 確かに、国鉄の再建というのは、それは労使だけの問題ではないわけでありまして、私たちも徹底した議論が必要だと思いますが、しかし、意見の中には、国鉄の再建を妨げているのは今日の労使関係のあり方によるのだという意見もございまして、そういう議論もこの予算委員会の中でも行われているわけであります。そこら辺の指摘についてはどのようにお考えですか。
  21. 富塚三夫

    富塚公述人 労使関係に問題はありはしないかという、いろいろな点で問題提起がされていることは十分承知をしています。  そこで、国会内の議論でも大変誤解をされているやに私は思うのですが、一つは現場協議協定の問題があるわけです。これはかつての磯崎総裁がやりました生産性向上運動にかかわる中の関連は一切ありません。これは昭和四十年の十月に現場協議協定締結の問題を提起をいたしまして、公労委の仲裁裁定が出て、労使間でまとめ上げたものです。  この協定というのは、いわゆる不規則な勤務である、屋外労働である、あるいは汚染労働である、危険労働であるというふうな特殊な状態にあるものですから、現場の乗務員についてどの乗務をさせるか、どの乗務員をどの列車に乗務させるかなど、あるいは腹の痛みを起こしたときに休んだときにはどうするかなど、現場で協議をしなければいわゆる現場運用ができない、人事管理ができない、合理化の対応ができない、そういった問題があるものですからでき上がった協定であります。  しかし、今日の状況から見て、その協定がいまの時代に合わないというふうに考えられるならば、私ども労働組合も経営者側と話し合って改善をしていくべきだ、私はそういうふうに思っています。しかし、労使問題、合理化の努力が足りない、あるいは労使関係におけるさまざまな問題があるということだけ指摘されて再建問題が議論されることについては、私はいただくことができません。  労使がもちろん努力していくことも当然でありますが、もっと根本的に、国鉄問題というものがいまの国民のニーズに沿って、あるいは飛行機も満席でありますし、東名、名神高速道路もトラックでいっぱいでありますし、マイカーも非常に多くなっておりますし、総体的に陸海空の総合交通政策体系をどうつくっていくかという政治的な分野での対応が非常に重要なのではないかと考えていますので、私どもは国鉄再建について労働組合が積極的に努力することは当然だと思います。しかし、労使問題だけにすりかえられるような問題提起ではなくて、もっと国民の側に立って、利用者の側に立って、真剣にひとつ再建問題を御検討していただければありがたいというふうに考えています。
  22. 横路孝弘

    ○横路委員 総評の態度はそれでよくわかったわけですが、牛嶋先生、財政再建の中で国鉄問題を含めた三K問題、これについてはどのように先生のお立場でお考えですか。
  23. 牛嶋正

    牛嶋公述人 先ほど私、財政再建に当たりまして二つの条件を提示いたしました。先ほどは一般会計を中心にして議論したわけですけれども、この問題は政府関係機関及び特別会計についても当てはまる問題だというふうに思っております。  したがって、三K赤字の問題にいたしましても、まず第一条件であります行政サービスの水準低下というふうなものを来さないような条件、これを守る、これはいわば国民のニーズの側から立った三K赤字問題の解決の方向ではないかというふうに思います。  それからいま一つは、結局は三K赤字というのは負担をだれが負担するのかという問題でありまして、これにつきましても、十分に第二番目に挙げました公平の条件というものを満たすような形で進めるべきである。具体的にそれではどういうふうな進め方があるのかということにつきましては、私はきょうは一応一般会計を中心に論述させていただきましたので、次の機会にまたさせていただきたい、こういうふうに思います。
  24. 横路孝弘

    ○横路委員 もう一点、富塚公述人にお尋ねしたいと思うのですが、先ほど来お話ありましたように、来年度予算審議の中でも、内需主導型の経済回復政府の方もどこに期待をしているかというと、やはり住宅建設の伸びということと個人消費の拡大という点なわけですね。個人消費の拡大ということから見ますと、やはり今後の雇用者所得がどのように伸びていくかという点が非常に大事なポイントになりまして、政府の方は労使関係に不介入という基本的立場をとっているわけですが、減税とともに、この春闘をどのようにお考えになっているか、ひとつお考えをお述べいただきたいと思うのですが……。
  25. 富塚三夫

    富塚公述人 私たちは政府に減税を実現してもらいたいと同時に、労使関係では賃上げを、ことしの場合には九%から一一%のゾーンの要求になると思いますが、物価が五%あるいは負担増、増税が二・四%、マクロで経済成長が四%達成すると、それだけ労働者は還元してもらいたいという立場に立ちます。しかし、企業の支払い能力あるいは格差問題ということもありまして、さまざまなむずかしい問題のあることも承知していますが、労使関係では、われわれは決して過分な要求ではないと思いますので、要求額を満額われわれに回答してもらうように、ぜひ経営者側にも望みたいし、一定の賃上げがなされませんと、また減税がなされませんと、内需回復、克服をしていくような日本経済にはなっていかないであろうという点で、いろいろな角度から問題提起がありますが、物価問題あるいは負担増の問題、これは経営者は関係ない、国民皆負担問題だと提起されている分野もあるのですが、われわれは労働力を売って生活費を得るという点では、当然物価や負担増に見合うもの、そして収益を上げた、あるいは成長率に見合うものの還元は、ぜひこの際、経営者側にも考えていただきたいという立場でやっていますので、どうかひとつ先生方にも、この春闘では決して無理な要求額、過分な要求額を設定しているつもりではありませんので、経営者に賃上げを認めてもらうような環境づくりをしてもらいたい。同時に、中小企業対策にも努力をしていただきたいし、地域の地場産業の格差問題も真剣に考えていかなければならないだろうという点も思っておりますので、その点のひとつ御努力をお願いをいたしたいというふうに考えています。  以上です。
  26. 横路孝弘

    ○横路委員 猪木公述人にお尋ねしたいと思います。  防衛費をいろいろ数字を挙げられてお話しいただいたわけですが、それはそのとおりだと思います。ただ、日本の場合外国と違うのは、外国が持っていない平和憲法を持っているという点がやはり違うわけでございまして、ある意味で言うと当然だというように思います。  二、三お尋ねしたいと思いますが、防衛費をできれば年率で二〇%ぐらい伸ばしたらどうかという意見でございました。年率で二〇%といいますと、大体四年で倍になるということになろうかと思います。  一つは、国民の世論の動向なんですが、ことし一月の初めの調査によりますと、これは朝日新聞の調査でございますが、国の防衛予算をいまよりふやした方がいいと思いますかという質問に対して、そうは思わないという答えが六六%というように出ております。また、日本の安全を守るのに防衛力を高めるのがいいのか、それとも軍事力に頼らない外交に力を入れる方がよいと思いますかという質問に対して、外交に力を入れるという答えが六七%と出ています。こういう問題は、設問の仕方によって回答も違ってまいりますけれども、やはり大方の一定の世論を示しているのではないかというように思うのです。この世論の動向を先生はどのようにお考えになるかという点が第一点でございます。  それから、数字でどんどんふやしていくという場合に、やはり問題は数字だけじゃなくて、その前提となっている幾つかの問題があるだろうと思うのです。どうも日本の場合は、数字だけの議論が先行して、たとえば今日の状況をどう見るのか、特にいろんな紛争というのは世界に確かにあるわけでございますが、その紛争の原因というのは、何もソビエトだけが原因になっているわけじゃございませんで、そういう紛争を一体どうしたらなくしていくことができるのか、そのために日本は世界の中でどういう役割りを果たし得るのかという基本的な議論が一つ前提になければいけないのだろうと思いますが、その辺のところをどのようにお考えになっているのかという点が第二点です。  それから、一体猪木先生はどの程度の軍事力があれば御満足なのかということでございますが、私は、軍事力というのは際限がないわけで、これが専守防衛と言おうが拒否力と言おうが、どのような表現をしようが、周りの軍事能力との相関関係においてしかやはり考えられない。バランスをとるという考え方をとるにしても、ある意味で心理的な要素もございますから、安心感を持つということになりますと、どうしてもやはりある程度優位性を持たなければ、安心感を持たない、いわばバランスがとれたというようにみんなが認識されないのではないか。そうしますと、どの程度の軍事能力で、予算というのは、そのために一体どの程度必要なのかということになりますと、結局際限なく、いまの二〇%というのも、そのままこれが果てしなく続いていくということになりますと、西ドイツフランス並みにはあっという間になりまして、そうすると、米ソというものを目標にして軍事能力と軍事費がふえていくという過程に入っていくのではないだろうかという心配があるわけでございます。  時間が余り残りございませんが、その三点についてお考えを聞かせていただければと思います。
  27. 猪木正道

    猪木公述人 ただいまの御質問のうちの第一点、世論の点でございますが、これは私、新聞を注意して読んでいるつもりでございますけれども、たとえばアフガニスタン事件の起こった直後あたりには、同じ朝日新聞の世論調査で、防衛力をもっと強化しなければいかぬという意見がかなり大幅にふえたように記憶しております。現状でいいというのとそれを合わせますと、圧倒的な数で、防衛力を減らせとかあるいは廃止せよという意見はほとんどもう数うるに足らぬほど少なくなったように記憶しております。  私、ただいまの御指摘になりました数字は、国民が十分にわが国防衛力欠陥について知らされていないというところに大きな原因があるのではないか。もし国民が本当のことを知ったら非常に驚くのではないか。といいますのは、私、よく講演に出かけていくのですけれども、出ます質問が、装備は非常なものらしい、旧帝国陸海軍と比べても格段に、たとえば一個師団火力が七倍であるとか八倍であるとか、だけれども、士気とか規律とかという点で問題があるのじゃないか、サラリーマン化しているのじゃないかといった質問が多いのですね。これは全く世界の大勢とは遊離した意見だと思います。士気、規律その他に全く問題がないとは言いませんけれども、現代の、一九八二年の初頭における世界各国の軍隊とわが国自衛隊というものを比較してみますと、士気、規律その他精神的な面では大分上の方におると私は見ております。いわゆる西側諸国における軍隊にいろいろ問題が精神面であることは御存じのとおりでございまして、共産主義体制の国の場合においても、やはり似たような問題があることは、最近ときどき指摘されておりますけれども、とにかく第二次大戦中のあの一億神がかりのようになった時代の軍隊の状況といまの自衛隊状況とを比較して、たるんでいるというようなことを言うのは間違っていると思うのですけれども、装備の面で、日本大砲が諸外国大砲に比べて、射程が同じ種類のものの場合半分ぐらいであるということは、防衛白書でちゃんと政府は責任を持って公表しておられるのですけれども、これを読んでいる人というのは余りいない。講演の場合なんか、お読みになりましたかと聞きますと、ほとんど読んだという人はいないのですね。  そういうことからいまのような世論の状況が出ておるので、これはぜひ国会の場その他を通じて国民にもっと事実を知らせていただいて、そうして余り好ましくない言葉ですけれども、啓蒙するといいますか、事実を知らせていただくことによって世論は変わってくる。もっと国際社会に通用する世論になってくる。どうも日本の世論だけは少し、国際社会では通用しない、自己満足にふけっているようなところがございまして、平和憲法という御指摘がございましたけれども、私も平和憲法というものはりっぱなものだと思いますけれども、平和憲法さえ持っておれば大丈夫だといったようなことではないのでありまして、そういう点で国民に対するもっと事実を知らせての、啓蒙という言葉はいやな言葉ですけれども、啓蒙が必要だ、このように思います。  第二点は、紛争に対する基本的な姿勢でございますけれども、日本平和国家であるということは、何も憲法に規定されておるからではないので、日本の資源が非常に不足しておるという状況、インターデペンデンス、相互依存によって生きていくという状況、地球上どこで紛争が起こっても直ちに影響を受けるというこの脆弱性その他を考えますと、日本の存在自身が日本平和国家たらざるを得ない。だから、その意味から申しますと、鈴木総理は非常に軍縮に御熱心だと聞いていますけれども、具体的な軍縮に関する提案を持って会議に臨んでいただいて、そして平和国家としての実績を持っておりますから、大いにそれをやっていただきたい。私は軍備管理という問題に関しても非常に関心を持っておりまして、私の研究所でもそういう研究をしておるのでございますけれども、何しろ日本はユニラテラリーに、一方的に軍縮をし、そして一方的にアームズコントロールをやってしまっておるのですから、本当の意味のアームズコントロールをやろうと思いますと、たとえば東アジアにおいてやろうとしますと、日本は少しアップする、しかし周りの国はうんとダウンするというようなふうになるのは当然でございまして、その意味で紛争に関しては、防衛力整備の必要があり、かつそれを実行するということになりますと、たとえば二〇%ふやせば、御指摘のとおり四年ないし五年で倍になります。私は先ほど二%ないし一・八%が限度だろうということを申しましたけれども、そういう意味で私は永久に続けろということを言っているのではないのでございまして、いまの状況ではとにかくひどいから、護衛艦はすべて艦対艦ミサイル、艦対空ミサイル装備するように、大砲も少なくとも諸外国並みのものになるようにしなければいかぬ。そういうことをします場合には、なおさら声を大にして軍備管理、軍縮に関する主張を日本は大きく世界に対して主張すべきである、このように考えております。  この点で、先ほどちょっとレーガン政権のことが出ましたけれども、自分の国の軍備を増強することには大変熱心ですけれども、アームズコントロールや世界の軍縮というものに対する熱意の表明が少なくとも昨年の十一月十八日の演説まではほとんどなかったという点を、私は遺憾に思っておる次第です。  第三番目に、ではどの程度の防衛力があればあなたは満足するのかということをおっしゃいました。私は決して軍備拡充論者ではございませんで、日本が軍備を拡充したあげくの果て、世界じゅうを相手にしてああいう絶望的な戦争を戦ったということを身をもって体験しておるわけでございまして、これには限度があるということについては十分承知しておるつもりでございます。どの程度かといいますと、大体「防衛計画大綱」を絶えず再検討しながら、とりあえず予算面ではできれば両三年のうちに、まあこれがむずかしければ五六中業のうちに「防衛計画大綱」に示された防衛力は完全に整える。ややもしますと、F15とかE2CとかP3Cとかいう正面装備ばかりが問題になりますけれども、実際は一番おくれておるのが後方支援能力でございまして、その後方支援能力も入れますと、実はあの「防衛計画大綱」の防衛力というものは相当なものでございまして、これを整備いたしますと国民も安心できるし、そうしてまた世界も、日本が相当の努力をしておるということを評価して尊敬するようになる、このように考えております。
  28. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 次に、草川昭三君。
  29. 草川昭三

    ○草川委員 草川でございます。三人の公述人の皆様方から貴重な御意見を拝聴いたしまして、深くお礼を申し上げるわけでございます。  私は、主として牛嶋先生にお話をお伺いしたいと思うわけでございます。いま先生の方から、行政サービスの低下のないということ、そして負担の公平等が基本にならなければ財政再建というものはいかがなものかというようなお話をお伺いをしたわけでございますけれども、その中で地方自治体に対する負担というもの、あるいは本来国が持たなければいけない負担というものの肩がわりが非常に大きいというように私ども今度の予算からもうかがうわけでございますけれども、牛嶋先生は非常に地域の自治体に深く関与なすっておられまして、いろいろな研究も発表されておられるわけでございますので、その点からの御意見を聞きたいわけでございます。  一つは、地方交付税の減額が千百三十五億円に上っておるわけでございます。これが地方自治体に非常に大きなしわになると思うのですが、具体的に、強い自治体もあれば弱い財源の自治体もあるわけでございますから、どのような形で影響を及ぼすのでしょうか。こんなことをまず一番最初にお聞きしたいと思います。  それから、今度の予算の中で、私どもも議論を展開しておるわけでございますけれども、いわゆる国民健康保険の国庫負担分というものが、今度の予算ではいわゆる十二カ月分計上されておりません。十一カ月分の計上になっておりまして、一カ月分が約千八百四十九億円に上るわけでございます。これから高齢化社会を迎えるわけでございますし、国民健康保険のあり方というものが、従来の三Kというのはいわゆる政管健保であったわけでございますけれども、国民健康保険に変わってきておるわけでございまして、特に国庫負担率というのは約六三%にわたるわけでございますので、どのような形になっていくのか。行政サービスは地方の自治体の場合にも非常に重要な問題でございますが、先生の御意見を賜りたい、こう思うわけでございます。
  30. 牛嶋正

    牛嶋公述人 いま草川委員から二つの点について御質問がありました。  まず第一点、地方交付税に関しまして減額措置がとられたことに対する地方自治体への影響というふうなものについての御質問がございました。  先ほども申しましたように、後の国民健康保険も関連いたしますけれども、ことしは地方自治体に対しましてかなりツケが回っているわけでありますが、地方自治体から見ますと、必ずしもそれだけ肩がわりするだけの財源的な余裕があるわけではございませんで、先ほども申しましたように、五十年以降各自治体におきましても相当な思い切った行政改革を行ってきた結果でございます。  まだ給与面等につきましては相当な批判がありますけれども、かなりの努力を進めてきているわけであります。たとえば非常に私の身近な問題で恐縮ですけれども、私は名古屋市立大学でございますが、お隣の名古屋大学、これは国立でございますが、この経済学部を比較いたしますと、学生の定員はほぼ同じでありますけれども、その事務員の数を比較いたしますと、私のところは全員で六名で二百人定員の学生の事務を行っているわけですけれども、お隣の国立大学ではそれが三倍の十五名ぐらいの職員で行っておられるわけであります。こういうことで、たとえば来年度予算で、私のところも就職関係のいろいろな事務が増大してまいりましたので、事務員の増員を市にお願いしたわけですけれども、それが認められない。こういうふうな形で、やはり地方自治体に対しましてこういった形のツケ回しというものが、実際の現場のところでいろいろな形でしわ寄せが出てきている。具体的なお話ですけれども、こういうことで御理解願えるのではないかというふうに思います。  また、国民健康保険の問題でありますが、これは先ほど申しました高齢化の進展、それから人口の定着化とともに、この国民健康保険会計というのは、市町村にとりましてこれから非常に大きな重荷になってくるというふうに考えられるわけであります。特に国民健康保険の場合には、高齢者、退職された方がかなり国民健康保険に入っておられるわけでございますので、これまでの組合保険とのつながり等につきましても十分これから御検討をお願いしたいわけでございます。  こういうことで、やはり交付税では千三百五十億でございますか、それから国民健康保険で一カ月分千八百億というふうなことですけれども、かなりまだ財政力の乏しい地方自治体にとりましては、これは相当な負担であるというふうに申し上げることができるかと思います。
  31. 草川昭三

    ○草川委員 過日の全国の知事会の決議を見ておりましても、国民健康保険の特に事務費の一部負担を肩がわりするという、当初の概算要求でそのような態度が出たわけでございますが、知事会等でも大分強い反対がございまして、それは国の方も撤回をしたようでございますが、いまのままの方向になりますと、先生御指摘のような、本来国が持たなければいけない負担というものを、地方自治体ばかりではなくて、財投だとか一般の繰り延べということで来るわけでございますが、私は、交付税構想というものに対して、富裕県からまた貧しい県へという意味で逆交付税構想というものも一時出てきたようなこともあるわけでございますが、先生はこの逆交付税構想等についてはどのようにお考えになっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  32. 牛嶋正

    牛嶋公述人 先ほどの議論の中で私は、これからの地方自治体というのは、新しい行財政運営を要請されているというふうに申し上げたわけでありますが、これは、これまでの高度成長期における人口急増の時期におきましては、ともかくその人口を受け入れる市町村は、生活基盤と申します交都市基盤といいますか、そういった整備に追われていたわけでありますが、一応人口のそういった移動が定着化の方向に向かいまして、さらに住民の価値観の多様化というふうなことで、非常に住民のニーズ、市町村に対するニーズが多様化してきております。これを受けとめて、そういったニーズにこたえていくためには、相当市町村は、これまでの施設建設に重点を置いてきた行政から、いわば管理運営の行政というふうなものに重点を置いていかなければならないわけでありまして、そのためには、何よりも行政能力を高めるとともに、自主財源を確立していくというふうなことが必要前提条件になってまいります。そういう意味で私は、これから始まります国と地方の財政関係に対する行革におきまして、まず地方に対しまして、これまでの国と地方の税源配分をかなり手直しをしていただいて、地方自治体にもう少し税源を移譲するというふうな国税、地方税の見直しお願いしたいわけであります。  そこで、問題になってまいりますのは、富裕県とそうでない交付団体との間の財政力の格差が、こういう形で国から地方へ税源を移譲した場合にさらに拡大するのではないかというふうな懸念があるわけでありますが、私は、それにつきましては、税源を国から地方へ移譲する場合の税源の種類によっては地域間の格差をそれほど拡大させずに行い得るのではないかと思っておりますし、また、それでも地域間の財政力格差が出る場合につきましては、いま御指摘のように、富裕県から財政力の乏しい自治体へ逆交付税制度というふうなものも検討していくべきではないかというふうに思っております。その方式につきましては、いろいろ議論のあるところでありまして、今度は自治体間の問題になるわけでありますが、これは自治体間で十分な検討を加えていけば、そういった制度も可能であるというふうに思っております。
  33. 草川昭三

    ○草川委員 最後にちょっと富塚さんに、いまの地方自治体の関係でお伺いいたします。  総評の場合も、自治体関係の職員を大分抱えておみえになるわけでございますが、いまのままの形でいきますと、私は、地方自治体間の格差が増大し、非常に行政サービスも拡大をすると思うのですが、職員を抱えてみえる上部団体の立場から、地方行財政対策をどのようにお考えになっておられるのか、一言お伺いしたいと思います。
  34. 富塚三夫

    富塚公述人 御指摘がありましたように、地方自治体の格差問題についてどのように対応するかという問題、われわれも重大な問題として考えています。上部の方で、行財政改革、とりわけ行政改革の分野で公務員、地方公務員に照準が当てられている、あるいは特殊法人の統廃合問題などもあるということもありますし、財政問題で格差をなくしていくような手だてというものを十分に考えていかなければならないし、春闘を通じて地方自治体、地方議会についてわれわれは積極的に問題提起をしていくようにいたしたい。いま先生がおっしゃいましたような格差問題の解消に向けての対応というものに積極的に取り組んでいきたいというふうに思っています。
  35. 草川昭三

    ○草川委員 終わります。
  36. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 次に、大内啓伍君。
  37. 大内啓伍

    ○大内委員 きょうは三人の公述人の諸先生には大変ありがとうございました。民社党の大内啓伍でございます。  猪木公述人富塚公述人、お二人にお伺いいたします。まず先に猪木公述人の方にお伺いいたします。  すでに出ておりましたが、一つは、これからの防衛費のあり方、その額がどうあるべきかという問題もさることながら、防衛費を決定していく一つの物の考え方といいますか、基準といいますか、先ほど先生のお話、私も前に報告を拝見しておりますが、防衛費伸び率二〇%程度を確保することが必要であろうという御所見はわかるのでございますが、防衛費の決定というのはもちろん純粋な意味での安全保障政策や防衛政策の観点から決められなければなりません。しかし、同時にそれが国民の理解と同意を得るということも、民主主義政治の中では非常に重要な要件であることは論をまたないわけであります。  たとえば今回の七・七五四%にしましても、必ずしも国民というものはこれに対して理解を示すところまでいっていない。多くの国民がやはり突出という感じを、これはマスコミの影響も相当あったと思いますけれども、印象づけられていることは間違いないわけでございます。したがって、これからの防衛費についてのコンセンサスを得るという問題も防衛費問題の一つの重要なポイントである。これまでは、GNPの一%以内とかあるいは他の重要政策とのバランスというような問題が一つの基準らしいものとして議論されてきた。私は、一%論は本末転倒であるという議論を予算委員会等でも展開してきたわけで、それは決して、防衛費を急増せよとかそういう意味とは全く違う問題なのでございますが、つまり、物の考え方として間違っているということを申し上げてきたわけです、これは後で申し上げますが。そういう国民に理解を求めるような新しい基準というものをどういうふうに置くか、あるいは総理を初めとする政府の説明というのはどうあるべきか、こういう点について、先生にお考えがあればぜひ聞きたいということが第一でございます。  それから第二は、先ほど御指摘のように、できるだけ早く五六中業ないしは「防衛計画大綱」というものを実現するということが日本防衛力整備にとって重要であるというお話をいただきましたが、実はこの一月の六日に、防衛庁の内部におきまして関係参事官会議というものが行われ、その席上、陸海空各制服の方々が、五六中業を実行した場合どのくらいの予算が必要であるかという報告をなされておりました。そこで出された一つ結論は、大体正面装備だけで、五六中業を実現する、つまり「防衛計画大綱」をできるだけ忠実に実行しようとすると、約六兆円必要である。正面装備というのは、御存じのように防衛費全体の二五%程度でございますから、したがって、防衛総支出というのは大体二十兆円ぐらい。これはもちろんこれから内局で査定し、あるいは大蔵省で査定し、通常でございますとこれが減額措置になっていくわけでありますが、しかしそれにも限界がある。つまり、「防衛計画大綱」というものが一つの基準で、それを実行しようとすれば、その減額といってもそう極端にできるわけではない。とすると、これは当然、現在のGNP伸びがなだらかに下降傾向にございますので、というのは、過去三年間の名目成長率は大体七%台、五十七年度は八・四%と見積もっておりますが、果たしてその頭をもたげ得るかどうかについても疑問があるという状況の中では、防衛費GNPとの相対的な関係において、私の計算では五十九年度がすれすれ、六十年度は決定的に一%を割る。しかし、こういうことがもう見え見えの中で、この予算委員会等では、総理も大蔵大臣も一%以内という原則を守りたい。私はこういう物の言い方が混乱を引き起こしているなというふうには個人的に思っておりますが、その是非は別にいたしまして、そうした一%以内という限界を設けておくことが、「防衛計画大綱」の実践という別の目標を達成するために有効なものであろうかどうか。先生、先ほど理論的にも余り根拠がないというお話で、結論はすでに出ているようにも思いますが、その点についての先生の御所見を伺いたい。これが二つ。  それから三つ目は、日本防衛力整備については、国防会議等のシビコン、もちろんシビコンというのはたくさんございますが、シビリアンコントロールというものをできるだけ効果的なものにしていく。ところが私の知る限りでも、日本の国防会議というのは実質的に機能しているのかどうかということについて多くの疑問を持っているわけなんです。つまり防衛庁が出してくる資料、データ、それ以上のものを持っていないとシビコンというのはなかなか成り立たぬわけです。  たとえば一つの兵器あるいは一連の装備を整えるという場合に、それに予算をつけることが国家的、国民的な立場から必要であるかどうかというのは、相当の知識を持っていないとその是非を判断することができない。しかし私の知る限りでは、もちろん総理大臣を初めとする各閣僚の皆さんは御勉強されていると思いますが、少なくとも防衛庁の専門的な知識以上のものではない。国防会議の事務局長も防衛当局を経験した方々がなっておりますが、やはり最新の知識についてはむしろ防衛庁よりは劣るという現状の中で、シビコンというものが機能しているかのような錯覚を持ってこういう問題が決裁されていく。私はアメリカあたりの国家安全保障会議のスタッフ等と話してみますと、彼らは相当な専門家ですよ。国防省当局以上の専門的な知識と経験を持ちながら国防省から提出されてくる予算を吟味する、こういう状況がありますが、国防会議という問題の現状について、あるいは今後の改善について、お考えがあればお聞かせをいただきたい、これが三つ目であります。  四つ目は、今度の予算委員会でもいろいろ問題になりました対米軍事技術、情報供与並びに共同開発という問題であります。十年、十五年前の日米関係と今日の日米関係とでは、その分野において根本的な変化が起こっておる。そしてアメリカは、部分的に相当日本の技術、情報というものの提供を期待し、そのことを真正面から要求し始めてきている。日本は、言うまでもなく、これまでの防衛力整備及び今後の防衛力整備ということを考えても、アメリカから相当の軍事技術や情報というものをとらなければならぬ。でなければ、これからの「防衛計画大綱」そのものも実践できない、実行に移せない、こういう状況下にある中で、一般諸国と同様に武器輸出三原則の適用をアメリカに対して今後も続けていけるのだろうかという問題について、私どもはやはり検討を迫られてきていると思うのですが、その問題について先生はどういうお考えをお持ちか。  以上四点、それぞれ今度の防衛予算にかかわります重要な問題でございますので、御意見を聞かせていただきたい。  時間の関係で、大変恐縮ですが、続けて富塚先生の方にお伺いいたします。  これもすでに出ておったのでございますが、例の減税に絡みまして、五十二年度をもって課税最低限が据え置かれている。そしてそれから約五年たってきている。その間にもちろん物価の上昇もある。大蔵省はこの物価の上昇分から受けた勤労者の実害といいますか、これを一兆四千五百億ぐらいにはじいておるのです。私どもの計算では二兆円を超えるように思っておりますが、この課税最低限が据え置かれた結果、労働者、勤労者というのがどのぐらいの実害を受けているか、その点をどういうふうにお考えになっているかということが一つでございます。というのは、これは減税を主張する一つの重要な根拠になりますので。  それからもう一つは、これは横路委員からも御質問になっておりましたが、減税財源の問題なんですね。これは、行政費あるいは財政を何%節約すればこれだけの金が出るではないかという議論は、いまの段階では、つまり予算が編成されてしまった段階ではなかなか有効な議論にならない。そこで、不公平税制を初めとする財源というものをある程度具体的に提示しないと、なかなか総理も大蔵大臣もうんと言ってくれないという状況がありますので、これらについて何か具体的にお考えがあれば聞かしていただきたい。それから三つ目は、今度は五・二%の経済実質成長の中で四…一%の内需振興と政府は言っておりますのですが、これはどうもおぼつかないので、そのために、たとえば適正な賃上げとかあるいは減税という問題を消費支出の増大という意味から主張されておるわけですが、内需振興策というのは、それだけじゃなくて、もっと広範な政策が実は必要になってきております。その一つの柱が住宅政策になっております。もし内需振興でこういうことをもっと考えるべきであるという御提案があれば、ぜひ聞かしていただきたい、お教えいただきたい、これが三つ目でございます。  それから四つ目は、国鉄の再建の問題にかかわりまして、私どもいろいろな観点から論じさしていただいておりますのですが、先ほど富塚さんからおっしゃられましたように、それは根本的にはやはり総合的なあるいは立体的な交通政策といいますか、そういうものが確立するということが基本であり、そういうものについて十分な政策を準備していなかったということが、私は、政府の怠慢であるということは重々よく承知しております。  それにつけましても、やはり国鉄は国鉄自体としてのいろいろな問題がある。私はすべての存在の原点というのは協力にあるという一つの哲学は持っておりますが、やはり国鉄におかれましても、いろんなそういう政策上の問題が基本としてございますが、やはりこれから財政再建していこうとする中で、何といっても重要なのは、労使関係が信頼関係をもって再建に取り組む、共同作業の中に入るということが、私はフェアに見て必要だと思うのですよ。そういう点については、従来ともすれば欠ける面もあったし、あるときには生産性向上反対運動というようなことも相当大きく展開されたこともありました。しかし、私は過去についてどうのこうの言おうとすることではありません。これからのやはり財政再建に向けての、特に富塚さん、国鉄の労働組合の指導者であられますから、そういう点について労使の安定化といいますか、財政再建に向けての協力についてのひとつ決意、御方針というものをぜひ承りたい。  そういう過程の中で、いま国鉄の民営化というような問題が、あるいはこれは全体じゃなくても部分的な民営化、私は部分的に民営化した方がいいという部面がないことはないと思うのですよ。たとえば、印刷所等を国鉄が全部持っていたり、あるいは修理工場を全部持っていなければいかぬとか、そういう面については私は考えるべき問題も残っているように思うのですが、そういう問題についてお考えがあればお聞きしたい、お伺いしたい。  四点だけお教えをいただきたい。以上でございます。
  38. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 質問がたくさん出ておりますが、時間の都合上、公述人には失礼でございますが、要点を簡潔にお答えいただきたいと思います。最初に、猪木公述人
  39. 猪木正道

    猪木公述人 それでは、四点について、委員長の御指示どおり、努めて簡潔にお答えしたいと思います。  まず第一点でございますが、国民の納得をどうして得るかという問題、これは先ほどの横路議員の御質問にもちょっと関連すると思うのですけれども、これは予算委員会なんかの場を通じて、やっぱり特に政府国民を説得するという積極的な姿勢をとることが第一だと私は思います。特に国民の中には、残念ながら防衛外交とは何か代替性があるように思っている向きがあるんですね。外交を努力すれば、外交がうまくいけば、防衛はもうあんまり必要ないというような、そういう誤解がございますが、これは全く間違いでありまして、これは外務省の方が一番よく経験しておられると思いますし、かつて大平前総理が、外務大臣のときですから田中内閣のときだったと思いますけれども、外相としての御発言の中に、もっと防衛力を強化しないと外交をやりにくいというようなことをおっしゃっておったので私非常によく覚えておるのですけれども、外務大臣やあるいは総理大臣が外交上の問題で外国に対して約束をされたり発言をされたりした場合に、相当程度の防衛力がバックアップしていませんと信頼性がないんですね。相手は相手にしませんよ。だから、幾ら外交を巧妙にやろうと思っても、最小限度必要な防衛力を備えていないような国の総理や外相の発言というものは軽視されてしまう。第三国が邪魔をすればもうそれで腰を抜かしてしまうというようなことじゃ、幾ら外交交渉を真剣にやってもしようがない、こう思われる。その点で私は、国民にわかってもらうように、こういう予算委員会を通じて政府がもっと努力されることを期待したいと思います。  第二の、五六中業を通じて大綱を実現しようとする場合、正面装備だけで六兆円というお話がございましたが、確かにそのようになると思います。しかしまた一方で、これは行財政改革とも関係いたしますけれども、かなり、防衛庁の組織その他を見ておりますと、重複しておるものもあり、そこに節約の余地もあると思いますので、こういう点も十分に検討していただいてやれば、それほど大きな負担をかけなくても済むと思いますが、いずれにしましても、「防衛計画大綱」が五十一年に決定されて、ことし五十七年ですけれども、まだ実現されてないという、これはおかしな話なんです。大綱というのは、御承知のとおり、もう最小限度必要なユニットですから。それで情勢が変化した場合にはそれをもとにして伸ばすというのが大綱ですから。それが五十七年になってもまだやっていないというのはおかしいので、さらにこれ一%というようなことを言っていますと、これはもう絶対に、これはもう半永久的に達成できません。だから私は、先ほど来一%のシーリングは取っ払うべきだ、これはもう来年か再来年には、御指摘のとおり取っ払わなきゃならなくなると思います。それはいまから十分に国民にわかってもらうように説得される必要があると思います。  第三点、国防会議でございますけれども、これを国家安全保障会議に改編してはどうかといったような意見もいろいろございますが、私はもう全く同感でございまして、国防会議がいま十分に機能してないという点は、もう国防会議の方自身が一番よく知っていられる。国民もよく知っています。どうしたらいいかといいますと、これは私は、組織の面で法律を変えたりして国家安全保障会議にすることが必要かというと、それは望ましい状況がやがて来ましょう。だけども、それよりも、政府首脳、総理大臣が国防会議というものを重要視するということが一番ですな。総理大臣が国防会議を重要視して頻々に開く、重要な問題をここで審議する。たとえば、この間、海空を重視せよというようなことをちょっとおっしゃって、後でまた修正されたか何かされましたが、ああいう重要な問題はまさに国防会議に諮問して、ここで十分に審議されるべきであって、そうされると、国防会議に出向しておる各省庁の方々も、いまも決して優秀でないとは言いませんけれども、もっと優秀な人が来られるようになる。そうすると実力を持つようになる。いまおっしゃったアメリカの国家安全保障会議の人々に比べてもまさるとも劣らぬようになるだろう。いまのアメリカの国家安全保障会議のスタッフを見てみましても、この間やめましたアレンなんか見ましてもわかりますように、決して優秀な人ばかりじゃございません。決して私は日本人がアメリカ人に劣っていると思わないので、総理、政府首脳が国防会議を重要視さえすれば、制度を変えなくても十分に機能する。  また、それに関連してちょっと申し上げておきたいのは、外務大臣と防衛庁長官がそう頻々とかわるようじゃ、これはだめですま。外国も信用しませんし、ブラウン長官があきれたという話はお聞きと思いますけれども、私が防衛大学校にお世話になっておった八年間に、十人の長官が来たり去られましたけれども、私がやめましてから何人来たり去られたか、これはもう計算できないくらいでございます。それじゃ困るので、やはり防衛庁長官とか外務大臣とかという重要なポストは最小限四年間はやっていただく。そういうようなことも国防会議充実の上において非常に重要であろうか、このように思います。  最後に、対米軍事技術のトランスファー、移転の問題でございますけれども、これは私は常識から考えて、日米相互協力安全保障条約でございますから、人は日米安保ということばかり言いますけれども、実は相互協力の方がむしろ重要なので、その意味から申しますと、いわゆる武器輸出三原則の中でちゃんとして明文になっておりますところの、共産圏とかあるいは国連で議決した国とかあるいは紛争当事国とかに輸出しないというこの三原則、これは守らなければなりませんけれども、それに附帯するもろもろの、慎重にするとかなんとか言って結局何もかもできなくなってしまうという状況がおかしいので、これは明らかに日米相互協力安全保障条約を優先すべきである、このように思います。
  40. 富塚三夫

    富塚公述人 四つの御質問がありましたけれども、まず第一の減税規模でありますが、大内先生おっしゃっていますように成長率が上がっている中でわれわれの可処分所得が減っているという状態にいまあるわけですが、先生のおっしゃっているように、私どもは一兆円は非常に低目に実は今回労働四団体でまとめてありますので、本来なら二兆円あるいはそれ以上も減税をしてもらいたい、そして可処分所得をふやしていただきたいというふうに考えていますので、その点は先生の御指摘のとおりであります。  二番目に財源の問題なのですが、時間の関係で詳しく申し上げませんが、先ほど労働四団体で、財源をつくり出してもらいたい、不公平税制の是正による試算というものについてわれわれははじき出しておるのですが、国税で二兆二千億あるいは地方税で九千億というのが浮くのじゃないかということで、所得税関係、法人税関係など具体的な課題の検討は、われわれはわれわれでしている所存であります。どうかひとつ、国会内で各政党の政策を出していただいて、不公平税制の是正、改善によって生み出す努力をしていただきたいというふうに思います。  三番目に、内需の振興はやはり賃上げと住宅問題に力を入れるべきであろうというふうにわれわれは考えています。住宅問題について、四団体は住宅、土地問題を初めて今回取り上げたのですが、構造的政策というものをやはり中期的にどういうふうに見直していくのか、つくっていくのかということが必要であろうというふうに思いますし、格差拡大という問題も受けましてわれわれは賃上げ問題でも非常にむずかしい一面を持っておりますけれども、賃上げ問題とそれから住宅問題に力を入れて内需拡大、振興を図るようにしていった方がいいのじゃないかというふうに考えております。もちろん減税は先ほど申し上げた点の要求になっています。  最後に国鉄問題なんですが、運輸大臣をやられた田村元先生の私案とか森山元運輸大臣の考え方などは、現実的であり、十分検討するに値する。私は、本来自民党の先生の出されるのは余り賛成すると労働組合の側でもおしかりを受けるのですが、運輸大臣を経験されて非常に現実的に案を出されている、こう考えています。  問題は、民営化して電力方式のように九分割しても、だれが請け負って経営者になってくれるのか、経営してくれるのか。御案内のように、私鉄と違いまして国鉄はもうからない部分だけ担当させられておりまして、法律制限によって事業拡大もできない状況でして、名古屋に一つのホテルを国鉄がつくるだけでも、ホテル業者から総反撃を食って大変問題を起こしている状況なので、そういった事業の拡大の問題なども根本的に検討してもらいたい。  問題は、構造欠損と収支の損益問題をどう見ていくのか。幹線、非幹線の区分もいろいろ検討する問題があるだろうと思いますが、同時に、要員問題でも、第二次大戦後、一九四五年ですか、たくさんの兵隊さんに行かれた方が復員をしてきて、ちょうちん型要員構成から全部それがやめていくような、頭でっかちになって、退職金、年金が大変なんですね。ですから、私は決して賃金は高いと思っていませんし、年金、退職金問題もそういうところでふくらんでいるという、これは国家の一つの政策、施策であるべきだというふうに考えているわけです。  したがいまして、ぜひお願いいたしたいのは、どうも第二臨調の議論が間口が広まってしまって、どこに着陸するのか全然わからないし、一般的に分割論とか民営論とか、また二十万とか、ペーパープランでやっている状況で、実際に国鉄の輸送を預かっておる労働者からしますと、どうなっていくのかという不安が非常につきまとっているわけであります。したがって、国民諸階層の代表などによる根本的な検討をしてもらいたいことと、政党がやはり立法府で責任ある態度を打ち出していただきたい。近くそういうシンポジウムも各政党に要請をしてお願いをしようと思っていますが、政党はどのように責任を持って国鉄問題を改革されようとしているのかという点について、明確にひとつ打ち出していただきたい。  その点で、労使問題について先ほど申し上げましたように、いまの事態に沿って改善をすべき問題は、私は労使が話し合って改善をしていくべきだと思いますし、とかく労労問題になってきた経過があるわけですが、できるだけ各組合の話し合いもしまして、そして労働組合もこぞって再建のために、経営者の側もしっかりやってもらいたい。最近高木総裁も、いろいろな諸君も言っておられますが、一体どういうふうに国鉄経営者は、そして運輸省は、運輸大臣は考えておられるのか。問題の所在がちっともはっきりしないうちに、第二臨調のいろいろな審議、傾向だけが出るので、私どもも困惑していますので、どうかひとつ国鉄問題、私は国民の側から見てこれだけで臨時国会を召集していただいて議論するに値する、そして方向を打ち出すに値する時期であるし、そういう問題であるのじゃないかというふうに思っています。  その点で、労使問題の反省すべき点は素直に反省をするようにしたいというふうに思いますから、以上のことを申し上げておきたいと思います。
  41. 大内啓伍

    ○大内委員 大変ありがとうございました。
  42. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 次に、山原健二郎君。
  43. 山原健二郎

    ○山原委員 三人の公述人の皆さん、御苦労でございます。共産党の山原ですが、富塚牛嶋、そして猪木の御三方に、その順序でお伺いをいたしたいと思います。  一つ富塚事務局長に。  二月一日に私どもと総評との間に話し合いがなされておりまして、昭和五十七年度予算に対する要求項目の一定の合意に達しております。その中には、軍事費削減問題あるいは一兆円減税問題、それから国民の要求である老人医療の問題とか、四十人学級の問題とか、私学助成の問題、それから賃上げの問題あるいは生活関連の公共事業に対する投資の問題とかいうことが出ているわけでございますが、大体七項目の合意事項となっておりますけれども、これは現在の勤労国民の一致した願いであると私は思っているわけです。  そういう意味で、まずその中にある軍事費の削減問題ですね、先ほど御答弁の中で、今度の予算について軍事費突出弱者切り捨て予算であるということを明確に言われておりますので、その点は私どもも見解が当然一致するわけでございます。同時に、この軍事費の削減ということにつきましては、これはどの野党を見ましても、またどの労働団体を見ましても、軍事費を聖域にしないということでは一致しておりますし、また国民世論から見ましても、先ほど出ましたように、これ以上の軍事費の突出に対しては反対であるという空気は国民世論の過半数を占めておる、こういう状態ですから、この点でも国民的な一定の合意は得られておると思います。  その点について、軍事費の削減という問題が今国会における一つの大きな焦点となっております。これについて富塚公述人の御見解をお伺いしたいと思いますし、また、削減をするとするならばどの程度の削減が必要なのかということを、お考えになっておればお伺いをしておきたいと思います。
  44. 富塚三夫

    富塚公述人 いま御指摘ありましたように、私ども、共産党の側とも、七項目、話し合いで当面する予算要求について意見の合意を見たわけですが、総評としては、軍事費を削減してもらう、そういう立場に立って、とりわけ突出部分について削減をしてもらう方向で検討を求めたい、そう思っています。御案内のように軍縮の年と言われておりますし、世界では五千億から六千億ドルの軍事費が使われて、米ソが毎日一億ドルも使って核兵器の開発、備蓄をしている。大変危険な状態になっている。反核兵器、平和、軍縮の運動は積極的に進めていく所存でいます。  ただ問題は、減税を実現してもらうときに、各政党間の考え方、私も、いま申し上げましたように防衛費についての考え方もそのように持っているのですが、全体的にどのような合意を財源で見られるかという問題になると、それぞれの政党の考え方や政策だけが前面に出て一致できないのでは困る。多元的社会の中でも、いま多党化の現象の中でも、どうかひとつ野党各党はこぞって、一兆円減税の財源を生み出すために一致できることをまず考えていただきたい、私はそう思っています。そして、自民党の先生方も、大変減税に賛成をされる、景気浮揚策をとるべきだという見解を持っておられる先生方もたくさんおられるわけですから、この国会で合意を見て、一兆円減税をぜひ実現させていただきたい。その上に立って、軍事費の削減の問題等は福祉の問題に向けるとか、いわゆるトータルとして先ほどから申し上げていますような方向に向けて福祉予算への転換、修正というものをどのようにやっていただけるか、政党として御検討していただきたい。  なお、どの程度削減をすればいいかという問題は、私ども具体的に問題を提起していません。政党に予算審議にかかわる権限があるし、国会の権限でもありますから、われわれ自身が具体的にどの程度という問題は出していませんので、その点は御了承いただきたいというふうに思います。
  45. 山原健二郎

    ○山原委員 総評としての見解はわかりましたが、一兆円減税問題を含めまして、財源との関係もあり、私どもとしては軍事費の削減ということが最重要課題だと思っておりますので、その主張は申し上げておきます。  それからもう一つは、今日の日本の勤労者の生活実態から申しまして、先ほども御説明がありましたが、たとえば一兆円減税をやる、同時に日本の勤労者の生活防衛をするという場合に、どういった施策が必要であるかということを当然要求として持っておられると思いますが、簡単で結構ですから、先ほどのお話も出ておりますけれども、あえて一言お伺いをしたいのです。
  46. 富塚三夫

    富塚公述人 先ほど私が申し上げましたように、勤労者の可処分所得がこのところ非常に減っておる。去年の賃上げも、組織された労働者が八%、中小労働者五%、そしてパート労働者四%という労働省の調査になっているのですが、このところ格差の問題も非常に強く出てきている。したがって私は、この時期物価が比較的安定をしておることは非常に結構なことだと思うのですが、やはり実質賃金を確保して実質生活を守っていくという点で努力をしなければならないし、こういう時期こそ、消費停滞を克服するという日本経済の重要な命題があるわけですから、生活向上分にふさわしいような賃上げ、こういうものも行うべきだ。同時に、貿易摩擦問題などで諸外国から指摘されています労働時間問題あるいは住宅問題などにも取り組むべきだというふうに考えています。したがって、そういう方向について具体的に国会の中でもコンセンサスが得られるようにぜひ努力をしていただきたいし、とかく賃金を抑制さえすればいい、課税最低限を五年間も据え置いて、また実質増税になる、負担もふえていくということになりますと、消費停滞という悪循環が再び続いて、財政難、雇用悪化につながっていきますし、一方では輸出ドライブを生んで、貿易摩擦が激化して国際的にも孤立することは間違いないというふうに考えていますので、そういう観点に立って、国会の中で、春闘と日本経済あるいはこれからの日本経済の内需克服の課題について、もっと掘り下げて議論をしていただきたい。同時に、労使関係の問題についてもそういう観点で指導してもらうように働きかけていただきたいというふうに思っています。
  47. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと漠然とした質問をいたしましたのでお答えにくかったと思いますけれども、大体よくわかりました。  牛嶋先生、先ほど税の不公平の条件を解決をしていくというお話がございました。  先生の論文をちょっと読ましていただいたのですが、これはエコノミストの八〇年十二月九日号でございますが、租税特別措置についての見解が出されておりますね。その中に、租税特別措置が臨時的、短期的であるべきであるという御主張でありますが、しかし、現状はそれが非常に固定化しているという批判をされておるわけです。私どもも、この租税特別措置については、今日の不況あるいは経済危機というものの悪循環から考えまして、不公平税制の問題としても当然租税特別措置法についての見直しをすべきであるという見解を持っているわけでございますが、その点では先生のこの論文と私どもの見解とは一致しておるように思うのです。この点について御見解を伺っておきたいのであります。
  48. 牛嶋正

    牛嶋公述人 実は、税制を考える場合には、一つには課税の公平といいますか公正、これが第一に満たさなければならない基準だと私は思っておりますが、そのほかに、租税政策を通じていろいろな産業構造の誘導を図るとか、そういった租税政策を経済政策に使っていくというふうなことも考えなければならないわけです。その場合に、経済政策のための税制と、それから最初に申しました課税の公正とが必ずしも同じような税制にはならないわけで、そこにいろいろとトレードオフの関係が出てくるわけです。ですから、どうしても経済政策を展開する場合に租税政策を使わなければならないという場合には、その政策を遂行するだけに一つの措置を講ずる、私はこれが租税特別措置の役割りではないかというふうに思っているわけです。したがって、租税特別措置はあくまでも臨時的であって、その役割りが終わった段階で直ちに租税特別措置を解消していく。  ところが、それが非常に恒久的になっているところに問題があるわけでございまして、先ほど申しました所得税関係の不公平税制も、大きく分けますと、実務の面での改正と、それから租税特別措置を含みます税制の面での改正があると思います。所得税の不公平税制につきましては両面を進めなければなりませんけれども、租税特別措置につきましては、いま行われております利子配当の分離課税、そういったものを早急に見直すべきである、こういうふうに考えております。
  49. 山原健二郎

    ○山原委員 最後猪木先生にお伺いします。  先生が責任者をしておられる平和・安全保障研究所ですね、これは不勉強でちょっとよくわからないのですが、この研究所は、防衛庁との関係はどういうふうになっておるのかということをお伺いしたいのです。たとえば資金的にはどうなっているのかということ。もう一つは、防衛庁からの委託がどのような形で行われておるのか。あるいはテーマが防衛庁からこういう問題を研究してもらいたいというふうに来るのか、そういう関係も全くなしに、いわば第二者機関として平和と安全の問題について研究をされておるのか、それを最初に伺っておきたいと思います。
  50. 猪木正道

    猪木公述人 私どもの財団法人平和・安全保障研究所は、いまから三年と三カ月前になりますか、一九七八年十月の中ごろに創設されました。  これは、そういうものが必要であるということは前から考えておったのですけれども、政府から補助金等をいただいたりあるいは出資していただいたりして半官半民の研究所にいたしますと、自由な研究ができないし、また、自由な研究をやるとそれがまたいろいろ波紋を巻き起こして官庁筋に迷惑をかけることもあり得る。そこで、全く自由な、独立したものにしょう。これは英国の国際戦略研究所がそうなんでございまして、そこを模範にしようということで、そうなりますと大変財政的に苦しいのですけれども、経団連にお願いをいたしまして、財界から主としてお金を集めております。したがって、運営費に関しては、行政費といいますか運営費といいますか、つまりわずかな専従職員が、常任理事が私を含めまして二人、それから事務職員が二人、研究員が二人、その六人しかおりませんが、その俸給とか、それから六本木の事務所の家賃とかその他のいろいろな行政費に関しては、一切政府からお世話になっておりません。その点は、同じ財団法人でもいろいろ補助金をいただいているところもあるようですけれども、私のところはいただいておりません。したがって、全く自由に研究ができるわけでございます。  なお、研究の委託に関しましては、防衛庁との関係というのは、要するに監督官庁として防衛庁外務省があるということでございます。両方が監督官庁になっています。これは財団法人はすべて監督官庁があるわけですから、どこかの監督を受けなければいかぬ。それで防衛庁外務省、それから通産省、総理府その他のお役所から、あるいは他の団体と申しますか、そういうところから委託研究を受けておることは事実でございまして、防衛庁の場合、こちらでこういうことをやりたいということを申しまして、向こうもそれは大変自分たちにも参考になるからやってくれ、そういうことで年間六、七件あるかと思いますが、大体長期的なものでありまして、たとえば日米関係が八〇年代の後半にどうなるかとか、あるいは技術革新の結果、わが国防衛に関する状況が八〇年代の後半にはどうなるかとか、あるいは価値観の問題とか、あるいは平和主義ということが言われておるけれどもいろいろある、その平和主義について研究するといったような、そういうことをやっております。外務省からもアームズコントロール、軍備管理に関して委託研究を受けておりまして、ほかにも来年度からは、信頼醸成措置というのがございますね、コンフィデンス・ビルディング・メジャー、あれをひとつ研究してくれという、これはまだ内々の話ですけれども、インフォーマルな話がございます。それから経済安全保障関係で通産省から委託研究を受けてやりました。  それからなお、委託研究ではありませんが、運営上、私ども「アジアの安全保障」というのを英文で出しておりますので、それには外国人を呼ぶ必要がありますので、その呼ぶ費用に関してフォード財団から五年間の援助を受けておりまして、来年度まで援助が受けられるはずでございます。
  51. 山原健二郎

    ○山原委員 どうもありがとうございました。
  52. 越智通雄

    ○越智(通)委員長代理 次に、依田実君。
  53. 依田実

    ○依田委員 公述人の皆さん方には、大変長い間、また予定時間を大変オーバーしてお残りいただきまして、大変恐縮でございます。  私、新自由クラブの依田でございます。私の持ち時間が十分しかございませんものですから、残りのお二人には大変申しわけありませんけれども、猪木先生にしぼって、三点ばかりお尋ねをさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。     〔越智(通)委員長代理退席、委員長着席〕  まず第一は、もちろんソ連の軍事的脅威、それに対してわれわれが防衛力整備をしなければならぬということはよくわかるわけでございますけれども、ソ連の国内情勢、特に経済的事情というものを勘案して、なおかつソ連の軍事的脅威が極度に高まっているのかどうかという点についてちょっとお聞きをしたいのでございます。  もちろん、猪木先生もソ連経済については大変お詳しいので申し上げる必要もないのでありますけれども、最近の統計資科を見てみますと、ソ連経済は、成長率を見ましても、七一年から七五年の五・七%が七六年以降は三・七%程度に平均成長率が落ちておるわけであります。また、農業生産が大変不振でありまして、西側からの穀物輸入も八〇年から八一年約三千五百万トン、こういうふうに言われておるわけであります。石油の生産などもパーセンテージは低くなっておる。こういう中でソ連国民の生活というのは非常に苦しいわけでありまして、特に都市の生活水準というのは実質的には若干低下しているのではないかというくらい言われておるわけでありまして、食肉の消費量なども、七五年以来は他の東欧諸国に比べても消費が低くて、五十七キログラムの水準にとどまっているのではないか。かくかくしかじか、いろいろ経済的指標を見てみますと、ソ連の実力というものが果たして総体的にどういうふうになっておるのか、われわれとしても注目していかなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。  もちろん、最近のソ連の遠隔地介入能力というのは恐るべきものがあるわけでありますけれども、先生、こういうソ連の国内情勢、特に経済情勢というものを踏まえて、なおかつソ連の軍事的脅威というものが極度に高まっておるのかどうか、あるいはまたソ連がもし出るとすれば、その紛争地帯というのはどういうところに考えられるのか、この辺をひとつお話をいただきたいと思うわけであります。
  54. 猪木正道

    猪木公述人 これは大変むずかしい問題でございまして、世界じゅうの専門家がいろいろ議論をして、なかなか結論が得られない問題でございます。  軍事的脅威が存在することは、これはもうだれも疑わないのでございまして、それが最近とみに顕著に増大しておるかどうかという点に関して意見も分かれております。さらにいま御指摘のように、経済的な困難、これは大変なもので、ソ連自身の困難もさることながら、ソ連圏の衛星諸国における困難は、ポーランドの事態が明らかなように、またルーマニアの事態もそれに近いことになるのじゃないかと言われておりますけれども、非常に困っておる。  そこで二つの、結論と言うと大げさですけれども、二つの帰結がそこから出てくるわけなんですね、二種類の。  一種類は、そういうふうに経済的に困っておるから、だから、陸海空軍とそれから戦略兵器はなるほど大いに増強されておるけれども、そういう内部的な経済的な困難のために、ソ連の首脳部は慎重になって対外的軍事的冒険はもうしないだろう。特にアフガニスタンその他で大分こりておるからしないだろう。ポーランドが火がついておるのにそんな、東ドイツにおる十九個師団の最精鋭部隊との交通通信線も下手をすると危険に瀕するのに、やらぬだろうという、これが一つの考え方。  もう一つの考え方は、一九四一年、昭和十六年の大日本帝国を考えてみろ。経済的困難は大変なもので、いま石油の話がございましたが、油もそれこそ持たぬような状態だった。しかし、じり貧よりはどか貧の方がいいというような、ソ連の政治局員というのは皆なかなか百戦練磨の連中で、十五人もおって、一人死にましたから今度十四人になりましたか十三人になりましたか、それが慎重審議するんですから、まさかあの当時の軍国日本の指導者のような軽率な判断はしないと思いますけれども、冒険主義で打って出るかもしれぬというそういう見方をする人もおるわけなんです。その中で私はどちらをとるかと言いますと、前者の方をとっております。後者の方をとる人もおります。  ただなぞは、それほど経済的に困っておるのに、なおかつ着々として海軍力を中心に通常兵器で武装した、あるいは戦術核で武装した陸海空軍を増強し、かつ戦略兵器もどんどん増強する。これはなぜかというこのなぞは、私は機会あるごとに外国の専門家にもこれは聞いておるのですけれども、なかなか納得のある答えが得られませんですね。結局、一つのイナーシアがついてしまって、惰性がついてしまってなかなかとめられないのだ。ミリタリー・インダストリアル・コンプレックスというものが、アイゼンハワー大統領の言葉ですけれども、これがソ連で一番顕著でどうにもならないのだというのがどうも最も説得力のある答えのようでございまして、その辺だろうと私も考えておるのですけれども、お答えとしましては、一種類の意見がある。一つは、慎重にならざるを得ないだろうという意見。もう一つは、冒険的に打って出るだろうという意見。私はどちらかと言うと前者の意見をとる、こういうことでございます。
  55. 依田実

    ○依田委員 もちろん、ソ連という国は国内体制が専制体制になっておるわけであります。経済的にいろいろ困難な事情があっても、いざの場合はこれを政治体制で克服して外へ出てくる。この可能性はわれわれは大いに考えておかなきゃならぬということで、常に対ソ抑止力というものをわれわれが持っていなければならぬというふうに考えておるわけです。  しかし、ソ連というのは一方、過剰防衛意識、こういうものが伝統的に非常に強い。常に外から圧迫されているというような感じを持つ国民であります。そういう意味で、いたずらにアメリカ日本なりが軍拡、そういうものをやりますと、ソ連はそれに対してまた過剰反応を示す、こういうことで軍備拡張競争の悪循環というものがなかなか断ち切られない、こういうふうになるのじゃないかと思うわけであります。軍備増強の相互抑制、そういう方向へ世界を持っていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、それに対する先生のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  56. 猪木正道

    猪木公述人 ただいまの問題でございますが、アメリカに関しましては、アメリカソ連をアドバーサリーとしており、ソ連アメリカをアドバーサリーとしておりますから、アメリカがただ一方的に軍拡、軍拡ということをやっておったのでは、いま御指摘のような不安が出てくるわけです。ソ連という国は、戦争中は黒パンと塩しか配給しなかった国です。そういう国ですから、もうそうなれば、それこそ黒パンと塩だけでもがんばるというようなことで、軍拡競争が極端にエスカレートする心配もあるわけなんですね。  ところが幸いにしてレーガン大統領も、西ヨーロッパの説得が功を奏したのか、十一月十八日にゼロオプションということを言いましたね、中距離弾道ミサイルに関して。弾道に限りません、中距離ミサイルに関して。その結果、それが実はソ連に、真剣にアメリカと中距離ミサイルに関して交渉をするという決意をさせたのですね。ソ連という国は、あの国柄からして力を非常に信用する国でございますから、パーシングII型のような、モスクワ、レニングラードを五分間で第一撃できるといったような、そういうものを展開するぞと言って迫れば、ソ連の方では真剣にそれじゃ折衝しよう、ゼロオプションになるかどうか知らぬが、自分の方でも大幅に削減する用意があるということを言って、ジュネーブに来たわけです。  そういう例が示しておりますように、事アメリカに関しては相当の決意を持って軍拡をやっておるようですけれども、その軍拡の方向に関しては私も多少疑問を持っておる点があるのです。たとえばアイオワやニュージャージーを引っ張り出してきて装備を変えてみても、これが果たして西側の防衛力の増強になるのかどうか。逆にそれをエスコートするために駆逐艦やフリゲート艦が必要になって、アメリカの海軍力は総体として低下するのじゃないかという心配を私はしておるのですけれども、そんなことは別として、全体として、アメリカ防衛力の増強を一九六八年から約十年間怠ってきましたからその間にソ連がどんどん伸びたのですけれども、私はまだアメリカの方が優位にあると思います。決してアメリカが追い抜かれたわけじゃないと思いますけれども、このままでいくと大変だというので増強の決意を示したことは、ソ連を戦略兵器制限交渉や中距離ミサイル交渉に真剣に取り組ませる一つの大きなきっかけになっておる、その意味で私は評価しております。  日本防衛力に関しましては、これはもう、大綱に示された防衛力は何らソ連を刺激するようなものじゃございませんで、ソ連がサンフランシスコ講和条約のときに日本にこれだけ持たせたいと言った防衛力と比べてみても、時代の変化を別にしますと余り規模は違いませんので、したがって、日本大綱防衛力整備したからといって、ソ連との間に軍拡競争がエスカレートするといったようなおそれは皆無だというふうに思います。
  57. 依田実

    ○依田委員 本当ならもう一つ、この間国会で議論になりましたハリネズミ論についての先生のお考えを承りたかったのですが、持ち時間が終わりましたので、これで終わらしていただきます。大変長い間、皆さん方ありがとうございました。
  58. 栗原祐幸

    栗原委員長 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  この際、午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  59. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席の公述人に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十七年度予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず木下公述人、次に林公述人、続いて宮脇公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず木下公述人にお願いをいたします。
  60. 木下和夫

    木下公述人 木下でございます。  御下命によりまして、昭和五十七年度予算のうち、特に税制改正について公述人としての意見を申し述べます。  政府の税制調査会は、五十七年度税制改正に関する答申を去る十二月二十一日総理に提出をいたしましたが、この答申を検討するために政府税調内に設けられました臨時小委員会の長をたまたま命ぜられましたので、税調の審議の経緯にあわせて、私個人の見解を交えて申し上げたいと存じます。  まず、昭和五十七年度の税制改正の前提となる明年度予算編成の作業につきましては、昨年六月、概算要求に関するゼロシーリングの方針が了解された段階で、年金改定、ODA、エネルギー、防衛費等に関して約六千二百億円程度の例外事項が見込まれておりましたが、その後、八月以降、公務員給与改定、災害復旧事業その他の歳出需要が加わりまして、実質的には一兆六千億円程度の歳出増加の要因が生じました。しかし、これらの増加分も概算要求の一般歳出の規模三十二兆六千二百億円の中に抑え込むということが、予算当局の決意でございました。このような一般歳出のほかに、一般会計の歳出項目といたしましては国債費と地方交付税交付金とがございますが、この二つの項目を加えて、明年度の一般会計の歳出規模は四十九兆六千六百億ないし六千八百億円程度に抑制するのが限度であろうという感触を得たわけであります。  他方、歳入の側面におきましては、明年度にかけての経済の見通しは明らかではございませんが、少なくともいわゆる中期展望に想定いたしました三十六兆九千九百億円の租税収入を確保することはとうてい無理であって、恐らくこれよりも七千億円程度下回るであろうというのが主税当局の判断でございました。  そういたしますと、明年、昭和五十七年度の税収は三十六兆二千九百億円程度しか見込めないことになります。税外収入と公債金収入とを中期展望の線で確保し、それぞれ二兆三千三百億円及び十兆四千四百億円といたしまして、国債発行減額は一兆八千三百億円を堅持するとした場合、そこには六千二百億円ないし六千四百億円程度の歳入不足が生じるということでございました。  そこで、この不足分を税外収入の上積みと税収の増加とによって補わなければ予算編成に支障を来すということになりますので、まず、税外収入では外為特会の評価益等の取り崩しにより三千億円近い金額をさらに上積みするよう努力するとのことであり、租税収入におきましては、約三千五百億円程度の増収措置が必要となるとの判断に迫られたのでございます。     〔委員長退席、堀内委員長代理着席〕 しかし、税制調査会といたしましては、何よりもまず歳出規模の圧縮に全力を挙げ、不足分はできる限り税外収入の増加でカバーしていただきたい、それでもなおかつ歳入不足となる場合には、やむを得ず税収増加の方途を検討しようという態度をとったわけでございます。  したがいまして、税制改正審議の最初の段階から、特定の増収規模を前提としてそのための方途を検討するというのではなく、現時点において考えられる各項目の問題について一般的な検討を行って、税収増加の必要額が確定した段階で、このうちいかなる税目を選択して増収措置を講ずるかを考えることといたしまして、さまざまの項目につき総括的に審議をするということで進めてまいりました。  また、審議の過程におきまして、いわゆる増税なき財政再建という言葉の内容につきまして、かなり立ち入った論議がございました。すなわち、増収措置は一切とらないという意味であるという解釈から、新税を創設しないという意味であるという解釈に至るまで、さまざまの見解がございましたが、結局、終局的には、答申の中にありますように「新税の導入や税率の引上げを考慮の外に置く」という了解のもとに審議を進めたわけでございます。  また、第二次臨時行政調査会の行政改革に関する第一次答申の中に、税負担の公平確保のため制度面、執行面の改善に一層の努力を傾注するという要請及び租税特別措置のさらに厳しい見直しを行うことという二つの柱が「新規増税を行わず、特例公債の発行を減額する」という基本方針にあわせて出されている事情から、明年度の税制改正はこの二つの柱に沿って検討されねばならないという判断をとったわけでございます。  まず、第一の公平確保につきましては、もともと課税の公平という言葉に関する理解や解釈がまちまちであるという問題はございますが、公平確保のためには従来と同じように検討を続けるべきことは当然でございまして、明年度においても早急にできるものから手をつけることといたしました。  また、第二の租税特別措置の見直しも、従来、政府税調では年々引き続いて努力をしてきたところでございますが、明年度期限の切れるものに限定せずにその廃止及び縮減を検討いたしました。ただ、この場合の論議は、企業関係、すなわち法人税関係の租税特別措置に集約されておりまして、個人の所得税関係の租税特別措置については、その減収規模がきわめて大きいにもかかわらず、その見直しについては、社会保険診療報酬課税を除きまして世論はほとんど関心を示しておらず、また、政府税調の場でも論議されることがなかったということは、少なくとも私にとりましては奇異の感を抱かざるを得なかったと申せます。  以上のような経緯でまとめました明年度税制改正に関する政府税調の答申は、その基本線におきましては、昭和五十五年十一月に答申をいたしましたいわゆる中期答申の延長線上にあると申すことができます。事実、審議の過程におきましては、第二臨調や自民党税調がどのような案を提出されようとも、われわれは中期答申の線に沿って意見を出すべきだとする御主張も強かったわけでございます。  また、中期答申では「特定の政策目的に資するという租税政策上の配慮から設けられている特別措置、すなわち、政策税制は、」「税負担の公平その他の税制の基本原則からは認め難いものであり、常時、個々の政策目的と税制の基本原則との調和を図るという見地に立って吟味しなければならない性格のものである。特に、税負担の引上げを検討していかなければならないような状況の下においては、税負担の公平確保等をより重視する必要があり、その整理合理化を進めることが強く要請される。」と言っております。  そこで、われわれといたしましては、まず第一に、租税特別措置の新設、拡充は行わない。第二に、既存の租税特別措置につきましては、一、政策目的の薄れているもの、政策効果が乏しいと認められるもの等政策目的の意義や政策効果に比べて負担の公平の観点からの弊害が大きいと認められるものは廃止する。二、それ以外で適用期限の到来するものについては、その特別償却率等につき一律に大幅の削減を行う。なお、期限の定めのないものについてもこれに準じて取り扱う。三番目には、過去の整理合理化に際し長期にわたる経過措置が講じられている項目については、経過措置の廃止ないし期間の短縮を行うという原則に立って審議をいたしたわけでございます。  なお、明年度税制改正に関する答申の中で「政策税制以外についても、社会経済の実態に即して不断の見直しを行わない場合には、負担の不均衡を招くこととなる点に留意しなければならない。」と言っております。この点につき、たとえば引当金を取り上げますと、引当金制度はもともと法人税の課税所得を合理的に計算するために設けられたものでありまして、引当金制度そのものが企業優遇とか政策税制であるわけではないのであります。ただ、引当金の繰入率を法定する場合には、社会経済の状況の変化に応じて常に見直しをする必要があるという考え方に立って問題を取り上げたわけでございます。交際費課税の見直しについても、ほぼ同様でございます。  次に、所得税は、一般的に申しまして個人の稼得所得に対して直接に課税されますから、税負担感が最も厳しいと見られます。それだけに租税負担感が大きいということは、税収の使い道に対して国民が厳しい監視の目を注ぐという意味で、むしろ所得税依存度が高いことが望ましいという意見もございます。また、租税理論が伝統的に所得税を支持してまいりましたのは、個人の租税負担能力を最もよく反映するものはその所得にほかならない、かつ、課税に当たって諸控除を適用することにより納税者の家族状況等への配慮を行うことが可能となり、かつ、累進課税を適用することによって所得再分配により所得分配の是正に役立つとともに、いわゆる自動安全装置として自動的に景気変動を緩和する効果を持たせ得るというのがその主な理由でございます。  このように各種税目の中で最も好ましいはずの所得税が、しばしば租税負担不公平の元凶であるとされ、また、その大幅な減税を要求する、すなわち、言いかえれば税収における所得税の依存度を引き下げることを要求する声が大きくなっております。たとえば、昭和五十三年以来課税最低限が据え置かれたままであるから税負担が急増しており、物価調整減税を行うべきであるとか、給与所得控除ないし課税最低限拡大せよとか、あるいは個人消費を刺激するため大幅の所得減税を断行せよとか、さまざまな意見はすでに昨年十二月の段階でも政府税調の審議の中で提出されました。  明年度税制改正の答申では、これらのさまざまな意見を紹介いたしました上で「所得税の課税最低限は、」「既にかなりの水準に達しており、個人所得に対する所得税負担率は国際的にみて低い水準にあること、昭和五十二年と昭和五十六年とを比較すると一般的にいつて税引後所得の増加率は低位の所得階層ほど高く、かつ実質手取額は高所得階層では若干減少しているのに対し、中・低所得階層では増加しているとみられること、個人消費の積極的な拡大を期待できるような規模の所得税減税を行う余裕はないこと等に留意する必要があり、昭和五十七年度における極めて厳しい財政事情の下においては、この際これを見合わせるよりほかないと考える。」と述べております。しかし、そのすぐ後に「ただ、所得税の現行課税最低限と税率構造を長期にわたって固定することは適当でないので、歳出、歳入両面にわたり今まで以上に徹底した見直しを行い、課税最低限と税率構造の見直しが可能となるような財政状況をできる限り早く実現することが望ましいと考える。」と述べております。  このような考え方に対しましては、所得税減税が常に世論にアピールする好個のテーマであるだけに、多くの非難と批判が加えられるものと思われます。前に申し上げましたように、所得税の理論は、いかにこの税が数ある税目の中で相対的に最もすぐれた特性を持つかということを教えておりますけれども、もしこの税の大幅な減税を主張するのであれば、その論者は、所得税のこのような長所を否認しなければなりません。また、所得の増加率よりも税額の増加率が大きく、その負担に耐えがたいというならば、それはまさに所得税に特有の累進性を緩和せよという要求にほかならないのであります。このような主張は、保守的な財界人から主張されるならば理解し得ますけれども、そうでない場合は理解に苦しむところでございます。  さらに、所得税の理論と現実とのギャップをもたらしている主な原因の一つが、申告納税制度のもとにおける納税者側にもあることを認めねばならないと思います。私自身も、所得税の理論と現実とのギャップの解消がきわめて重大な政策課題と確信しておりますが、この問題の基本は、申告納税制度が正しく働く条件を整備することであり、その一部は、われわれの答申が触れておりますように、納税環境の整備によって期待されると言えましょう。しかし、もちろんそれだけで問題が片づくと言えないことは申すまでもありません。  さらに、土地税制に関する税制調査会の論議はきわめて活発で、興味ある議論の応酬がございました。答申では、土地政策における税制の役割りはあくまで補完的であることを述べた後、宅地供給の増加を図り住宅建設を促進する上で、宅地供給の阻害要因を除去するため税制面の配慮を支持する意見と、譲渡所得課税の緩和に反対する意見とが併記されました。そして、「土地税制が長期安定的な制度として確立されなければ、税制の緩和期待による土地の売り惜しみによつて土地の安定的供給を期待し得ないという判断においては共通していた。」とし、その場合には、特定市街化区域農地に係る固定資産税等について、営農を十年以上継続する意思のない者に対する課税の適正化が図られることを前提として、土地の譲渡所得課税に関する長期、短期の区分を十年とすることとし、長期譲渡所得の現行課税方式の改正及びいわゆる買いかえの特例の復活につきましては、賛否両論を併記することとなりました。  その他の税目につきまして、まず、相続税に関し中小企業の事業継承の観点からの見直しや、取引相場のない株式等の評価方法の改正問題、酒税制度基本見直し、印紙税、広告課税、ギャンブル課税等についての検討は、今後引き続き、あるいは改めて行うことといたしました。  終わりに、昭和五十七年度の税制改正の内容は、以上のような税制調査会答申に沿って構成され、三千八十億円の純増税措置となっておりますが、冒頭に申し上げましたような予算編成の背景から見まして、まことにやむを得ない増収措置を含むものとなったと申し上げざるを得ません。たとえば、法人税の延納割合の縮減を図ることとされましたが、とりあえず昭和五十七年度の税収確保に全力を挙げるという意味で、さまざまの工夫が加えられたことを物語っております。その意味では、言葉の最も正確な意味における増税なき財政再建に背くのではないかという御批判を受けるかもしれません。しかし、この御批判に対しましては、私はとうていお答えする能力は持ち合わせておりません。  以上でございます。(拍手)
  61. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、林公述人にお願いをいたします。
  62. 林健久

    ○林公述人 御紹介いただきました林でございます。初めに、このような発言の機会を与えてくださいましたことにつきまして、当委員会に対しまして、国民の一人、納税者の一人としてお礼を申し上げます。  五十七年度予算について意見を述べるようにというお話をいただいておりますが、予算そのものに立ち入って申し上げる前に、予算を考える前提といたしまして、二つほどお願いがありますので、その点をまず申し述べさせていただきます。  第一は、財政の民主主義といいますか、財政の民主的なコントロールについてであります。具体的には議員定数の是正についてであります。  御存じのとおり、同じ有権者でありながら、主として都会ないし都会周辺に住んでいるという理由から、そうでない地域に住んでいる人たちの三分の一とか五分の一とかしか一票の価値が評価されないという状況があります。これは、広く言えば日本の民主主義全体でありますが、とりあえずは予算あるいは財政に対する有権者の、有権者として当然期待される関心あるいは参加意識あるいは希望というようなものを薄めまして、逆に無関心とか無力感を引き起こしているというふうに想像されます。この点につきましては、すでに一応裁判所の判断がある程度出ているようでありますが、私としましては、司法府の意見はそれはそれとして、立法府自身におかれまして速やかにその是正に着手をしていただきたい。そして、国民が財政なり予算なりを自分のものあるいは自分の問題として考え、感じ、行動する条件をつくり出していただきたいと考えます。特に来るべき高齢化社会で不可避的に予想しなければならない負担の増加を考えますと、国民の自律的、自発的な財政への参加意識というものを高めておく必要があると痛感いたす次第であります。これが第一点であります。  第二は、経済政策としての予算政策にかかわる対外関係について、具体的にはアメリカの高金利政策についてであります。  アメリカとしてはインフレ抑制のために必要だということでこの政策がとられているわけでありましょうが、そのために日本や西欧の経済政策、とりわけ金利政策が非常にやりにくくなっておる。それが後に申しますように、五十七年度経済運営との関係で、五十七年度予算のあり方にも響いてまいっております。この高金利につきましては、過日、国際決済銀行の集まりで日本銀行初め各国の中央銀行でもアメリカに対していろいろな議論をしたようでありますが、政府レベルあるいは国会レベル、国会議員レベルでもこのような国際的な協調に抵触するような高金利政策の是正をぜひ強く主張していただきたいと思います。何といってもアメリカの世界経済に与える影響は大きくて、そこでの動きが日本予算政策、経済政策を動かしますので、アメリカに対する無用な内政干渉というようなことではありませんで、友好国同士のスムーズな経済政策の連携プレイという意味から、そのようにする必要があるのではないかというふうに考える次第であります。  次に、五十七年度予算の幾つかの点について意見を申し述べたいと存じます。  むずかしい条件の中で、大変苦労して編成されたことにつきましては、これは予算の各所にそれがあらわれておりまして、政府なり大蔵省なりの努力には敬意を表するものでありますが、多少私としては疑問もありますので、以下その点を取り上げて申し上げたいと思います。     〔堀内委員長代理退席、小宮山委員長代理着席〕  最大の問題は、五十七年度予算は何を第一の目標としてねらうべきか、あるいは政府案はねらっているか。それは当面の国民の利益に一番よくかなっているかどうかということであろうと思われます。無論、実際はこんな単純な形の問題ではないわけでありましょうが、ただ、この一番基本的な点で方向が違いますと個別的な問題の評価も違ってまいりますので、あえて単純な形で問題を出させていただきます。  さらに、これを極端な形で申しますと、景気刺激的な予算を組むか、それとも財政再建の非常に緊縮的な、あるいは超緊縮的な予算を組むかという大きな政策選択がその最大の問題だということであります。この基準で見ますと、政府予算は、五十九年度に赤字公債をゼロにするという戦略目標を立てて、それに整合的になるようにというので五十七年度予算が組み立てられている。したがって、いわば緊縮型予算に組み上げられているというふうに思われます。これに対しまして、私はもう少し景気刺激的な色を盛り込んだ方がよかったのではないかと考えておりますが、この点は後にもう一度戻って申し上げたいと思います。  第二の問題は、右の緊縮型の編成が政府自身が掲げております経済運営の方針と整合しているかどうかという点であります。政府は、政府以外のどの機関の見通しとも違いまして、かなり高い成長率を見込んでおりまして、それも大部分は内需によるという前提であるようであります。私自身は、実質五・二%という水準が実現できるとはちょっと予想できないのでありますが、しかしできることならば、たとえば四%台くらいの成長にはしてほしいというふうに希望をしておりますので、政府の高い見通し、あるいは希望的見通しでしょうか、これを掲げて、それに整合的な予算を組んで、経済の先行きについて人々に明るい希望を与えるというのであれば、私はこれを支持したいと思うのでありますが、実際には、目標は高いのでありますが、それに対して手段としての予算はうまく合っていないのじゃないかという疑問がありまして、その点をいまから問題にしたいというふうに思うわけであります。  来年度、世界経済はよほどうまくいって一%くらいの成長ではないかというふうに思われるわけでしょうが、その中にあって、日本としては貿易摩擦を避けながら五・二%の成長をしようということになりますと、よほど内需が強くならなければならないはずであります。特に五十五年度あるいは五十六年度の経済成長の主たる要因が内需ではなくて外需であったということから考えまして、これは相当大幅な経済の流れの変化を予想しなければならないと思います。特に、初めに申しましたように、アメリカの高金利のために、日本で金利を動かす、具体的には下げることによって景気を刺激するという手段をとりにくくなっておると思いますので、あえて金利を下げる方向で政策をやろうといたしますと、ますますもってアメリカへの資本輸出を促進させ、円安の傾向を強め、その結果ますます貿易摩擦を強くするという心配がありますので、どうもこの政策はとりにくい。一方、国内で経済が自律的に、政策の助けなしに五%以上の成長を達するほど急上昇するという要因はなかなか見出しにくいのではないかというふうに思います。したがいまして、余り金融政策をうまく使い得ない状況の中では、政府としては、この高い成長実現するためには、恐らくよほど財政の側から手だてを尽くさなければならないということになると思います。  しかし、この予算は最初に申しましたような緊縮型でありますから、そのために動く幅は非常に狭いということは当然のことであります。政府としては、恐らく成長の主軸に住宅建設というものを考えられて、そのために税制上の措置あるいは融資の措置を講じられておりますが、それらがある程度効果を持つことは私は疑いませんし、その期待もしておりますが、しかし一方で抜本的な土地対策、地価対策がなかなかとり得ないという状況では、住宅建設の伸び政府が期待しているような非常に高い値を期待するというのはやはり無理ではないかという感じを持ちます。  したがいまして、第三番目の問題としては、住宅が必ずしも十分に経済成長のリーディングなセクターとして当てにならないということになりますと、私は住宅以外の公共事業をある程度考えるとかあるいは減税による消費刺激を考えるとかということを考える必要が起こるというふうに思います。むしろ政府の五・二%という目的を達するためにそれが必要ではないかというふうに思います。この場合に、減税の対象としては、とりあえずは所得税が私は考えられると思います。これはよく言われているとおりで、特に給与所得税の課税最低限が五年間据え置かれたために大幅な実質的な増税になっているということがありまして、これを是正するということが要求されます。これは景気刺激のためというよりは、いわば予期せざる自動的な増税でありますので、当初予期されていたシステムに戻すために要求されるべき調整的な減税でありますが、それがもしうまく大規模に行われれば、同時に景気の刺激にも役立つという配置になろうかと思います。  さらに、景気刺激によってある程度の経済成長を達成しようというのは、政府自身の今度の予算の中からも予想しなければならない政策だというのは、たとえば今度の予算政府は、かなり多くの会計上の操作によって財政規模を圧縮するということを行っております。後年度負担に回すとか、あるいは他会計に負担を回すというやり方がそれであります。これは当面、非常に景気の状態が悪いので、これをしのいで後年度に景気回復を期待する、そこで得られた増収で返そうというわけでありますから、やはりもう少し積極的な経済政策を行おうというのは、政府自身の予算の組み方からも必然的に求められることになろうというふうに思います。  しかしながら、当然予想されますように、第四の問題ですが、減税の財源がないじゃないかという問題がもちろんあるわけであります。政府としても、先々財政再建が成って減税財源が考えられれば減税を考えるというふうに言っておられるとおりであります。減税財源につきましては、何か単一のうまい手が突然出てくるということは無論あり得ないわけであります。私自身は、至るところから少しずつ財源をかき集めて積み上げる、それ以外にはないというふうに考えます。無論支出面でも、可能ならば一層の削減をするということは当然考えられなければなりませんが、収入面では、一つは、いわゆるクロヨン是正のためにロクヨンあるいはトーゴーサンピンであればゴーサンと言われる領域に対しまして、たとえば記帳義務を導入するというようなことを行って、この財源難という悪い状況のもとでこそ長年言われ続けてきたクロヨンの是正、財源確保もねらいながら、同時に公平も回復するというので、従来以上にクロヨン是正のために力を注ぐことが必要ではないかというふうに考えます。  ついでにクロヨンについて申しますならば、単にこれは公平回復あるいは税源のみならず、今後拡大する社会保障制度の中で社会保障制度に当然、当然ではありませんが、しばしば伴うむだを排除しようとしますと、いろいろな点で所得制限を導入する必要が起こると思いますが、このときに国税のデータが必ず使われるだろうと思われます。そうしますと、もしクロヨンがそのままでありますと、そこに存在している不公平がまるまる社会保障給付の方にも入ってまいりますので、今後予想される社会福祉の合理的な充実という点から考えましても、どこかの時点で抜本的にクロヨンのようなことを是正しなければならないのではないかと考えますので、この財源不足のことし、来年というのは、その意味ではむしろ絶好のチャンスと表現すべき年かもしれません。特にこれは強くお願いをしたいと思います。  それからさらに、これまでいろいろな理由で課税の外にあった領域があると思います。いわば一種の税金にとっての聖域のようなところがあると思いますが、これはいろいろな事情があって、たとえば宗教なんかですと、宗教法人の事業については信教の自由に触れるとかいろいろな問題があって、聖域になっている領域が幾つかあると思います。こういう部分は、無論非常に重要な理由があってのことですから軽々に手をつけることは許されませんけれども、しかし、いまのような日本の財政の状況の中では、時としてはそういう領域の再検討、見直しを行うということが必要ではないかというふうに考えます。その結果、いままでどおりがよろしいということになれば、無論それでよろしいわけでありますが、現実態あるいは設立の事情等々を考えて、ある一定の期間ごとにそういう領域は再検討されてしかるべきではないかというふうに考えます。  そのほか、税金につきましては、先ほど木下先生が税制調査会においてなお今後検討すべき事項というふうにおっしゃった部分がありまして、これもぜひ検討を続けていただきたいというふうに考えます。  それから、間接税が高度成長の過程でかなり比率を下げておりまして、これは税調でも問題にされておるようでありますが、意図せざる間接税の低下というのは、ある部分については従量税を従価税にするとか、あるいは物品税の対象を絶えず見直すとかいうようなことで、実態を追っかけてある程度埋めていただいてもよろしいのではないかというふうに思っております。  それから、これは政府が時としてそういうふうに言われるわけでありますが、一般消費税あるいは大型消費税という間接税、そういうようなものをどう考えるかという問題が当然に残っておりますが、私自身は、後に触れます年金財政のこともございまして、いまも申し述べましたような数々の段取りを踏んだ上で、どうしても他に方法が残ってないということになりますならば、これは当然検討されてしかるべき重要なテーマだというふうに思います。特に、場合によっては、やり方によっては、いわゆるクロヨン是正ということとひっかけてあるいは有効にこれが使えることがあるかもしれません。いずれにしても検討はしなければならないというふうに考えます。  しかしながら、一方で減税するために他方で増税するというようなやり方は、当然のことながら、景気政策としては相殺要因が大きくてうまくない点が残っております。したがいまして、なおほかに目を向ける必要があると思います。私は、昨年も五十七年度政府としてもある程度手をつけておられるようですが、特別会計あるいは政府関係機関、その他の特殊法人というようなものの整理あるいは縮小ということによって、そこから何が出てくるかはよくわかりませんが、可能ならば一般会計の雑収入に繰り込み得るようなものを考えていただくということも、これは別に財源不足でなくても、いつも考えるべきことかもしれませんが、とりわけ考えていただいたらどうかというふうに思っております。それでもなおかつ、十分な景気刺激的な減税は考えられないというようなことになってまいりますと、私としては、赤字公債を五十九年度にゼロにするという方針自体、今年度予算の戦略目標がそれであると思いますが、その方針自身をある程度考え直すということも当然に起こってこざるを得ないというふうに思います。  私は、財政硬直化を防ぎ、借金で借金を返すというようなことにならないようにという目標で現在政府が追求しておられる方向というのは賛成でありますし、その努力については敬意を表しているわけでありますが、しかし、それは次に述べるような雇用の維持拡大と両立し得る限りにおいてでありまして、それとぶつかる場合には、政策の優先順位としては雇用の維持拡大が第一で、財政再建を第二にするのはやむを得ないというふうに思っております。  なぜそう考えるかということを、最後に第五番目の問題として申し上げておきたいと思います。  私は労働問題については素人なのでありますが、多分日本では労働人口増加率というのはこのところ大体年率〇・九%ぐらいですから、年々新規労働力として五十万人ほどに新しい職を与えなければならない。そのためには三%台の成長ではどうも十分ではなくて、少なくとも四%台には成長をのせておいてほしいということになると思います。無論外国の失業率に比べまして日本の失業率は際立って低い、それから物価の安定も際立っておるという点で、これは日本が誇っていいことだと思いますが、この状態を維持するだけでなくて、さらに先を見通しますと、余り無理をしない限りで成長率は高い方向で維持するという努力をすることが望ましいと思います。無論人為的な高度成長政策などは問題になりませんが、さりとて政策を誤って、人為的な低成長になることも避けるべきだというふうに考えるわけであります。  さらに、雇用につきましてはこういう問題があります。それは老齢者の雇用拡大問題であります。これは来るべき老齢化社会一般についてもちろん問題になりますが、とりわけ御存じのとおり、年金財政がここのところ国鉄を初めとして非常な危機に陥ろうとしております。これを放置し得ないということになりますと、一般会計からの国庫負担を新たにつけるとか、あるいは増すとか、あるいは給付水準を切り下げるとか、あるいは他の年金との統合を図るとかいう、どれ一つをとっても非常にむずかしい問題に取り組まなくちゃならなくなると思いますが、さらにそれに加えてもう一つ、定年の年齢を引き上げるということも恐らく先々考えなくちゃならなくなるだろうと思います。これは年金財政が破綻したところへいってから手を打つのでは遅いわけでありまして、なるべく早くから取り組まなくちゃならないというふうに思います。  そのためには、たとえば五十七年度予算でも、その長期を見通した雇用拡大路線、つまりは景気刺激的な路線というのをとって、民間も含めた老齢者雇用に積極的な取り組みという方向を見出しておく必要があろうというふうに考えます。その点で、やはり緊縮型と財政再建型の両立は大変むずかしいわけでありますけれども、もう少し景気刺激型に傾斜をつける必要があるのじゃないかと考えるゆえんであります。  最後に、当然予想されますただいまの私の主張に対する批評について触れておきたいと思います。  せっかく盛り上がってきた行政改革による財政再建の筋道が、こういうような主張を実行すれば底抜けになってしまうじゃないかという批評が当然考えられるわけであります。恐らく、実際問題としては私はかなりそういう傾向はあろうかと思います。しかし、多少空理空論を言わせていただきますと、まず第一に、財政状態のいかんを問わず、行政のむだを排除するというのは、国民から信託を受けた人々の当然の義務であって、財政難があってもなくてもその点に違いはないのじゃないかというふうに考えます。  それから第二には、財政が行わなければならないことというのは、行政改革の進展いかんにかかわらず領域が広くありまして、雇用の維持拡大のための政策というのはその中の最大のものではないかというふうに考えるわけであります。したがいまして、こういう前提あるいは考えのもとに私はただいま申し述べたような議論を展開したわけであります。  それに、実際問題として、政府の経済見通しあるいは税収見通しにつきましてもかなり達成がむずかしいのじゃないかと思われる面もありますし、五十六年度のように年度途中で補正をして、結局赤字公債をある程度出すというようなことは、五十七年度の場合にも避けがたいかもしれない。特に公務員給与のことだけ考えましても、当初に一%しか計上されてないということであれば、やはりそういうおそれはあるわけで、そこいら辺を余り無理な形で、どうしても五十九年に赤字公債ゼロでなければならぬという方からすべてを縛ってくるという点につきましては疑問があるというふうに考えておるわけであります。  以上、時間を超過して恐縮でありましたが、私の意見を申し述べました。(拍子)
  63. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、宮脇公述人にお願いをいたします。
  64. 宮脇長定

    ○宮脇公述人 宮脇でございます。  私は、行政改革と財政再建、それから景気政策、こういったものとの関連において意見を述べさせていただきたいと存じます。いま承っておりますと、林先生の御議論とほぼ重複するような個所が非常に多くて、大体同じような考え方に立脚しておるわけであります。  現在、政府は、行政改革と財政再建並びに景気政策という三つの課題に直面しておるわけでございます。そして、行政改革、財政再建と景気政策とは相互に相矛盾するような関係にあるために、まことに厄介でございます。  行政改革と財政再建はこれまで行財政改革と一括して呼称されまして、一体であるかのように扱われてまいりました。五十六年度予算のゼロシーリングとか補助金の一律一〇%カットというような手段を採用してまいりました。したがって、財政のつじつま合わせに行政改革が利用されたというふうな批判をする向きも少なくございません。しかし、これまで歴代内閣でこういった行政改革を重要政策の一つに掲げてまいりながら、抵抗が強くて容易に物にならなかった問題が行政改革でございますので、そのスタートに当たって、断固たる態度を示すという意味でこのような手段をとったことは妥当な方法であったと言えましょう。しかし、行政改革がいよいよ本番に入ろうとする今日、この二者を区別して考えないと混乱が起こりまして、双方とも目的を達成することができない、そして、あげくの果てに相互に責任のなすり合いをやるような結果にならないかということを恐れております。  財政再建は毎年単年度ごとに収支のバランスを積み上げて、そして財政赤字を減少するという手段が必然でありましょう。しかし、行政改革は単年度ごとの問題に余りこだわる必要はありません。問題によっては五年、十年と相当の期間をかけて計画的に実行していかなければならない性質のものであろうと思います。したがって、財政再建と終始ペースを合わせるわけにはまいりません。財政再建、行政改革、それぞれ独自の使命と論理があって、それを混同しないことがまずもって重要であろうと存じます。     〔小宮山委員長代理退席、堀内委員長代理着席〕  昨年、臨調の第一次答申があり、それに基づいて一括処理法案が可決され、それによって二千五百億円程度の財政が節約されることになりました。これに対して、たったこの程度のものかというふうな批判の声もありました。しかし、そのような性急な評価をすべきではなく、今後予定されている行政機構、公社公団、三Kといったふうなものの改革という本格的な答申に先立つ地ならしという意味評価すべき成果であろうと思われます。しかし、財政面での節約が余り即効性を期待し過ぎてはなりません。行政改革はいよいよこれからが本番であって、こうした重要課題の改革は一朝一夕には実行可能な問題ではなく、ある程度の期間をかけて、できるだけ混乱や摩擦を避けて根気よく実現を図るべきだと考えます。したがって、行政改革の答申は単に結論だけに終わることなく、改革の目的を達成するための手段、計画にまで立ち入って指示するよう期待いたしております。もし結論だけの答申に終わるならば、描いたモチに終わる危険が大きいと思われます。  このようにして、行政改革が成功すれば、結果として財政再建に貢献するところが大きいでありましょう。したがって、行政改革と財政再建の両者を混同してアブハチ取らずにならないように、特にこの際強調しておきたいと存じます。  次に、行政改革と財政再建の景気政策とのかかわりについて申し述べたいと存じます。  現在、対外的に貿易摩擦が大きな問題となっておりますことは御承知のとおりでございます。わが国は、関税引き下げやいわゆる非関税障壁の撤廃等、各種の輸入制限措置を撤廃して、国内市場を外国に対して開放する努力が必要なことは申すまでもありませんが、それに加えて、積極的に内需を拡大して輸出圧力を内側に向けるような政策を採用し、極端な輸出超過を減少するような努力が必要でございます。  最近日本の景気は停滞ぎみで、産業の業種や企業規模、地域別等によって景気の跛行現象が著しく、企業の倒産も累増してきています。内需拡大のためにはどうしても減税や財政支出によるてこ入れが必要でございます。  最近、現代総合研究集団と政策構想フォーラムという二つの思想的に立場を異にする学者の研究集団が相次いで研究を発表しております。両者が期せずして一致した政策提言をいたしております。その内容は、一兆円減税、公共投資の拡大、財政再建の時期の繰り延べ、税体系については直間比率の改善、不公平税制の是正等が挙げられています。  財政に余裕のあるときであれば、このくらいの思い切った景気浮揚政策を採用すべきでありましょう。しかし現在は、財政再建に向かってスタートしたばかりでありますので、限られた財政の範囲内で効果的な政策の選択が必要であります。確かに、このままで推移すれば内需の拡大は期待できず、円安によってますます輸出指向になり、貿易摩擦激化の果てに外国側による輸入制限措置の発動となってはね返り、わが国経済成長の担い手であった輸出までが八方ふさがりになるという危険性がございます。そうすれば、経済成長の鈍化、失業の増大、国際収支の悪化といった現象が相次いで発生し、日本経済は欧米型のスタグフレーション状態に陥る危険が大きいと思われます。そうなれば、財政再建はおぼつかなくなります。  昭和五十六年度の歳入欠陥がすでに一兆円を超すことが予想され、このままで推移すれば、五十七年度は二兆円ないし三兆円の歳入不足が生ずるというような予測も行われています。財政再建を強調する余り、角を矯めて牛を殺す結果になり、日本経済全体をおかしくしてしまうようなことにならないかというおそれがございます。したがって、ここで何らかの手を打って、沈滞している景気を刺激し、内需を拡大して民間企業の活力を取り戻し、企業収益を増大させることによって税収を大きくし、財政再建に寄与するという積極政策をとるべきであろうと考えます。  そして、内需拡大のための方策として、減税による可処分所得の増大という政策と公共投資の増大という二つの方法があります。  どちらを優先させるかという問題でございますが、減税について考察しますと、過去の五年間免税点の引き上げが行われなかったために、一般に税負担の重圧感が非常に強く、減税待望の声が大きいと言えましょう。しかしい総理府の調査で明らかなとおり、国民の九〇%前後が中産階級意識を持っておるという、世界でもまれな所得格差の少ない平準化した豊かな日本社会では、いまや自動車だとか家電音響機器等の耐久消費財は消費が一巡して、もはや買いかえ需要程度で、可処分所得の増大によって直ちにこのような耐久消費財への需要喚起にはつながらない。せいぜい海外旅行とかレジャー方面等、主として第三次部門に消費が向かうにすぎないと思われます。これでは波及効果が少なく、内需拡大に大きく寄与することは不可能でございます。豊かな社会では消費パターンが一変して、可処分所得の増大が直ちに消費を刺激し景気の浮揚に役立つというような、いわゆるケインズ理論が貫徹しないような状態になっております。大きな波及効果が期待できるものは、やはり住宅建設でありましょう。この方面への需要は強いと思われますが、何しろ土地が高くて、庶民には容易に手が届かない存在でございます。しかし、この際、住宅建設に需要が向くようあらゆる対策を講ずべきでありましょう。  以上のような観点からすれば、限られた財政の枠の中での選択では、減税よりもむしろ公共投資を優先させるべきだと考えます。住宅を初め研究開発投資、地域開発、都市再開発、巨大都市対策といったふうなインフラ部門の構造改善を通じて、国民が将来に向かって大きな希望と夢を描くことができるような対策と計画をこの際打ち出すべきだと考えます。八方ふさがりの重苦しい最近の風潮の中で、このように積極政策を打ち出し、国民の精神を鼓舞する必要がございます。しかし、だからといって、財政再建の基本路線を狂わすようなやり方であってはいけません。  私が申し上げたいのは、財政再建は縮小均衡でやるのはむずかしく、拡大均衡政策によって解決すべきだということでございます。そして行政改革は、単年度の財政政策に余り口出しすべきでなく、財政当局も、行政改革を盾に何が何でも財政支出を抑え込むという消極的なやり方では適当でなく、状況に応じて弾力的に財政再建の目的達成に努力すべきものと考えます。  減税については、行政改革との関連において、先ほど林先生も言われましたように、トーゴーサンとかクロヨンだとか言われているような不公平税制の是正、あるいは七〇%を超える直接税依存の税体系をせめて西欧並みに直接税、間接税おのおの五〇%程度にバランスをとるような税制の手直しをすることによって、減税財源を捻出した上で実施に踏み切るべきであろうと思います。そうすれば、減税のための新たな財源負担がなくて済むわけでございます。こうすれば、公共投資の拡大に合わせて、減税の実施により内需の拡大、景気浮揚が達成され、税収も増大して財政再建に大きく貢献することになりましょう。しかし、政策の選択を誤り、減税を優先して、その財源を財政支出に求めたり新たな企業課税に求めたりすれば、財政再建の障害になり、不況の中で企業の税負担が増大し、ますます不況を深刻化させ、日本経済を抜き差しならぬスタグフレーションのふちに追い込むことになると思われます。  よく行革デフレなどということが言われます。しかし、これは誤解もはなはだしいと思います。行政改革は行政の効率を高め、むだな支出を削り、必要部門に予算配分を多くするわけで、このことによってデフレが発生するはずがありません。デフレが発生するとすれば、経済財政政策の方に問題があると言うべきでございましょう。  五十七年度の経済成長政府見通しは五・二%となっており、これに対して民間研究機関の見通しでは四%未満というところが多いようでございます。恐らくこのままで推移しましたならば五・二%はおぼつかなく、それを前提としている予算は大きな破綻を来すでございましょう。そこで、政府の掲げた五・二%に近づくためには、何らかの別個の対策が必要になってくると思います。  次に、最近巷間でよく伝えられておる五十七年度予算について、福祉の切り捨て、防衛費突出ということがよく言われております。  確かに防衛費の対前年比伸び率は七・八%と高率なのに反して社会保障関係費が二・八%ということで、福祉切り捨て防衛突出という言葉がこういう根拠においてマスコミでしばしば使用されております。しかし、金額で見ると、社会保障関係費は九兆八百四十九億円であり、前年比二千四百八十億円の増加でございます。防衛費は二兆五千八百六十一億円であり、前年比千八百六十一億円の増加でございます。金額で見る限り、突出とか切り捨てとかいう表現は全く妥当を欠く言い方だと思われます。  福祉については、最近発表した私どもの研究「これからの福祉政策のあり方」でも強く指摘していますが、年金、医療は高齢化社会の進展に伴って大変な財政負担になります。いまの間に対策を講じておかなければ大変な禍根を残すことになります。したがって、福祉政策は、量の増大よりも質の改善、合理化が必要な局面になっています。これは福祉切り捨てではございません。私どもが作成したいわゆるアノミー指標というふうな観点から見ましても、欧米社会では、物質的に豊かになった社会で、福祉国家の模範と言われておるような北欧社会で、各種の社会的な矛盾が露出しております。犯罪だとか離婚だとかあるいは麻薬だとか、こういったふうなものの増加、青少年の犯罪の増加、それから勤労感を喪失して働く意欲をなくする、高福祉、高負担のために税金に取られてしまうので働く意欲を喪失する、そして資本が海外に逃避するというふうな現象が起こっておるわけでございます。  また、防衛費は、最近の貿易摩擦と絡めて対日攻撃の具となっている感がございます。日本防衛努力をしないで経済力の強化ばかりに力を注ぎ、強力な輸出競争力で他国を圧倒し、混乱に陥れているという非難の声が先進国、後進国を問わず起こっております。わが国平和国家でございますので、防衛力の増強はできることなら避けたいということでございますが、こういった国際情勢の中で、また米ソの軍事バランスの現状のような状態の中で、せいぜい一%前後の防衛力を持つということは決して防衛力突出とは言えないと思います。アメリカのレーガンが最近発表したような膨大な軍事予算を組むということならばそういう表現も適当でありましなうが、せいぜい日本のような状態でこういった表現をすることは、非常に一般国民をミスリードすることになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。  最後に、行政改革につきまして若干申し上げたいと存じます。  行政改革については専門でございませんので、細かなことは申し上げられませんが、いよいよ本番を迎えた行革について、常日ごろ考えている二、三のことを申し上げたいと存じます。  行政省庁の機構と出先機関の整理でございますが、現在、政府行政機構は二十省庁に分かれて、縦割り行政の弊と総合調整機能の弱体化がしばしば問題になっております。したがって、各省にまたがる案件が多く、ある場合には役所側が責任回避をし、別な場合にはわが省を無視するのはけしからぬというふうな態度に出て、行政能率を悪くしておる場合がしばしばございます。そのためにも行政機構の統一、簡素化を図ることが必要だと思います。そして、できるだけ行政窓口の一本化を図るべきでございましょう。  また、承るところによりますと、中央省庁の出先機関の占める公務員の数が全体の七〇%前後にも達するということでございます。この点については、早くから言われておることでございますが、思い切った合理化が必要でございましょう。  次に、補助金の整理でございますが、補助金については各省庁ごと原則として一〇%カットという方策をとり、三千百七億円の削減が行われたようでございますが、総額で十四兆七千六百五十八億円となり、対前年当初十四兆五千六十七億円に比べまして二千五百九十一億円、率にして一・八%の増加となっています。  補助金問題は、新たな行政需要に伴って支出をやむなくされる面が少なくないので、削減と増加のバランスで総額の減額はむずかしいと存じますが、効率の低いものや使命を終わったもの等については思い切った切り込みをやるべきでございましょう。その際、補助金の必要性についてその挙証責任を所管官庁に持たせて、納得できないものは断固として切るべきでございます。文部、厚生、農水省など四百ないし五百を上回る補助金を抱えている分野については、なお相当の合理化の余地があるものと思われます。  次に平衡交付金の問題でございますが、主税収入の一定率を地方自治体に交付する交付税交付金につきましても検討を加えるべきだと思います。中央に比べて地方自治体の財政には最近余裕が出てきていると思われます。地方公務員が国家公務員より給料が高かったり、中央省庁での国家公務員は過去十年来余りふえていないのに反して、地方公務員は八十万近くも増加しているということでございます。  そのほか三Kの問題などは申すまでもございません。  そして最後に、わが国は現在、経済成長、物価、雇用、国際収支、財政バランス等経済の基礎的な要素のうち、問題であるのは財政の面だけでございます。ところが欧米諸国はこのいずれもが悪く、容易にアリ地獄のような状態から抜け出せないで苦労しています。わが国とても、油断をすれば同様な轍を踏まないとも限りません。財政当局が心配され、苦労される実情はよく理解できます。  わが国経済は、六〇年代の高度成長時代のメカニズムやケインズ流の経済理論が通用しなくなっています。したがって、新たな時代に適応するような仕組みを工夫をすべきでございます。そのために行政改革が必要であります。どうかしっかりおやりいただくように期待しております。  これでもって、私の報告を終わります。(拍手)
  65. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 どうもありがとうございました。
  66. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 これより各公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田耻目君。
  67. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 公述人の御三方には大変御多忙のことと思いましたが、本日ありがとうございました。大変有益なお話を伺いまして、予算を審議する私たちにとってはありがたいことだと思っています。  ちょうどきょう四時ごろから本会議が開かれますので、予定された時間どおり行わねばなりませんので、御三方全部お伺いしたいのですが、林公述人のみにとどめて御意見を伺いたいと思います。  お話しございましたように、五十七年度の国家予算は大変緊縮予算でございます。その緊縮予算を策定をした政府は、その裏打ちとなる財政見通しでは実質経済成長五・二%を見込んでおります。林先生のお話の中にも、かなりこの実質成長を実現するのはやや難渋のようなお話でございましたが、私は政府の今回策定した実質五・二%の成長というのは、他の民間の調査機関の数字を集めてみましても、一番高いと思われる民間調査機関で四・五%の成長を出されておるのが三和と三井の調査機関でございます。一番低い調査機関は三菱総研でございますが、三%であります。こういう民間調査機関の見通しでございますが、政府が見通しを立てた五・二%、これが実行されませんと、ことしはまた途中で補正をしなければならないような歳入の欠陥を生ずることになります。そういたしますと、財政再建というのはまさしく絵にかいたもちになってしまいますので、非常に心配するわけでございますが、予算書全般に目を通して見ましても、いま非常に停滞しておる景気を刺激して経済政策に活性化を与えるというふうな見通しはなかなかございません。ただ、住宅建設についてアクセントをつけてはおりますけれども、そのほか見るべきものは何もないのです。ただ、財投で道路整備費二四・五%、国土保全費一二・一%、この程度の状態でございまして、とても景気を刺激する予算であるといって自信の述べられるものではないと思うのです。大蔵大臣の渡辺さんと経済企画庁長官の河本さんの間では若干の意見対立もございますが、それらは別といたしまして、林先生のこうした実質経済成長の五・二%の見通しについて、私は隔意のない御意見を伺いたいと思うのが第一点でございます。  第二点目は、特例公債の発行は五十九年でゼロにする、これは今年度の国債費の上昇を見ましても、私は当然そうだと思うのです。第二臨調は、それかといって増税はまかりならぬぞ、こういう意向も出ておるようでございまして、私はやはり日本の国家財政を考えてまいりますと、いずれにしても税の増収措置を講じなければならないという気がいたしておるのです。  ところが、きょうの午前中の富塚総評事務局長公述人のお話の中にも、ことしの五・二%の実質成長の根底には、いま非常に勤労者の関係は可処分所得が落ち込んでいる、この可処分所得を強めていかなければならないし、そのためには一兆円の減税をしてくれなくてはいけないということが切々と述べられていました。これは日本の労働四団体の統一的な要求であると述べられていました。そうした勤労者関係の可処分所得をふやすための努力を私たちはこれから鋭意していかねばなりませんが、自由民主党を初め各党の皆さんと相談をしてその施策を講じていかねばならないと思っていますが、やはり税の不公正を是正するという立場が先生の御意見にもございまして、私は全く同感でございます。  いま日本国民の納税者は、税に対する不信感を厳しく持っている人たちが六割、七割近くいらっしゃるのです。私はそういう意味から、税の不公正の是正を推し進めるお話もございましたが、クロヨンとかトーゴーサンをなくするために申告を厳格にしていくという立場も大蔵省は考えているようですが、やはり臨調の意見から、せっかく用意した大蔵省の考えがつぶされております。それは貸し倒れ引当金。そうした立場から考えますと、今日の租税特別措置法は、好況の時期に一つの手だてとして強化されてきました。この租税特別措置の中には、財投に絡んで多くの特例国債の経費が使われておるのです。言えば、先ほども御三方のお話の中に、いわゆる税の隠れ補助金と言えるかもしれませんが、この補助金制度を何とか手を入れねばとても歳入欠陥を補うことはできないという意見もございました。私はこれも同感ですが、その前に、長く国会で問題になっておる租税特別措置を全廃する。景気がいいときには、それはそれの役に立ったかもしれませんが、現在の段階では、非常に古いものが恒久化されております。その財政効果もわからないようになっているのです。私は幾たびか大蔵省に対して、この租税特別措置の財政効果を示しなさいと迫ったんでございますが、いまだに示したことはございません。そういう性格を持つ租税特別措置ですから、これを全廃して、改めて見直す、この立場を貫いていくことが税の不公正を是正する第一段としてきわめて大きな役割りを果たすものだというふうに思いますが、これらについてひとつ御見解をお示しいただきたいと思います。
  68. 林健久

    ○林公述人 簡単に申し上げます。  二つ御質問がございまして、一つは、政府が今回立てておる五・二%の見通しについてどう思うかという点で、第二番目は、租税特別措置の全廃という意見についてどう思うかという御質問だと思います。  前者について申しますと、私は五・二%はとうてい無理だろうというふうに考えます。私はなるべく高い線が望ましいというふうに考えておる一人でありまして、予算の中でよほど政府が減税及び公共投資をやって、五%に届くのはとても無理だろうと思いますが、四%に何とかいくんではないかというふうに思います。四%ぐらいには私としてはしてもらわないと、先ほど申しましたように若い労働力それから老齢者の雇用に響きますので、希望的には四%を超えてほしいと思っておりますが、実際問題として、仮に政策努力をやっていただいても五%に届くということは相当無理ではないか。もしあえてやろうとすれば、対外的な摩擦の方も強まりまして、そちらから思わざる摩擦ということも生じますので、どうも率直に言って四%をある程度超えるのが一番考え得る高い線ではないかというふうに予想をしております。しかし、あくまでも予想のことでありますから。  それから、第二番目の特別措置につきましては、これはここに木下先生もいらっしゃいますが、昭和四十年代から五十年代にかけてかなり精力的に整理が進んでおるというふうに私は思っておりますが、しかし、それにしても特別措置はまだ残っておりますし、それから個人の貯蓄というような形の特別措置といいますか、さまざまな措置も残っておりまして、それらが高度成長期やら低成長期やらを通じて同じ意味で重要かどうかということは明らかに問題でありまして、ただいま言われたとおり、すべての特別措置について全面的にゼロから見直すということに私は賛成であります。その結果、あるものは生き残り、あるものは廃され、場合によっては新規にもあるかもしれませんが、ただいまの山田議員のおっしゃったことに私は賛成であります。
  69. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 最後に、もう一点だけお伺いいたします。  先生は、年金関係についてお触れになりました。高齢化社会を迎える日本としては、今日の経済問題等を考えて、高齢化に到達する人は非常に不安にいま悩まされております。そういう意味で、長期計画をつくるために私たちも腐心をいたしておりますが、やはり長期財政をどう安定させることができるか、これについて実は腐心をしています。先生のこれに対する御考察がございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  70. 林健久

    ○林公述人 年金につきまして長期財政計画で何か考えがあったら述べろということであります。  率直に申しまして、これは私は結論を出せませんで現在おります。いまから先の日本の財政で何が一番深刻な問題かといいますと、私は、恐らく年金問題、あるいは率直に言えば年金の破産問題だろうというふうに予想をしております。     〔堀内委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、それが予想されるからどういう手が打てるかということになりますと、これはちょっととりあえずのところは動けない。特に御存じのとおり、国鉄はもう数年先にそういう事態が迫っておるわけですが、ほかの年金と統合することは、ほかの年金の方が簡単にはオーケーと言わないだろう。したがって、とりあえずのところ、そこに追い込まれたときにはやはり国庫から持ち出し、一般会計が負担するということに結局は追い込められるほかはなかろう。無論、定年を延長するとかほかの手だてをやっても、最終的にはそうなるほかないだろう。ところが、それを国鉄に認めますと、ほかのあらゆる年金が当然同じ要求を持っておりますし、また、現に厚生年金等々では、無論国庫負担部分があるわけですが、これをもっとふやせとかいろいろな要求が当然出てまいりますから、率直に言って、私は国庫負担にいくほかちょっと手だてはないと思っております。  しかし、それをやるためには相当大規模な増税が必要になりまして、あるいは保険料をよほど上げるか、どちらでもいいのですが、そうしますと、所得税にあるような非常に高い累進性を持った保険料というようなものを考えるか、あるいは一般消費税のように薄く広く広がるものである程度目的税的に年金税のようなものにするか、あるいはそれらを組み合わせるか、それ以外にちょっとしようがないんじゃないかと思います。  ただ、私が最初に申しました財政民主主義というのは、空理空論を申しましたのは、その含みがあるからでありまして、いまのような不公平な税をそのままにして、年金が必要だから所得税を増徴させろというようなことはとても納得できない。それから、いまのような不公平な選挙制度といいますか、一票、自分はどこどこの人の五分の一しか権利がないというような状態を放置しておいて財政負担だけは上げようというようなことに、有権者が合意するというのは非常にむずかしいことでありますので、迂遠な道でありますけれども、選挙制度を改正し、財政民主主義を生き返らせ、税制を公平にした上で、やはり増税をしてそれで年金を何とか賄ってもらう、骨だけ申せば、そういう以外に道はないのではないかと私はいまは考えております。
  71. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 終わります。
  72. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、草川昭三君。
  73. 草川昭三

    ○草川委員 草川でございます。  お三方の公述人の方々から貴重な御意見を拝聴いたしまして、心からお礼を申し上げる次第でございます。  まず最初に、木下先生にお伺いをしたいわけでございますけれども、実質成長率を政府の方は五・二%というものを前提に、自然増を約四兆円見込んでおるわけでございます。これはこの予算委員会におきましても非常に議論を呼んでおりまして、住宅促進対策を考慮に入れてもこれは不可能だろうと言っておるわけです。  そこで、一体税をどのようにするのかということで大変先生には御苦労を願っておるわけでございますが、政府は歳入と歳出のつじつま合わせのために高い成長率を設定したのではないかというのが私の意見なんですが、税負担のいろいろなことを検討なされる場合に、先生の方では成長率をどのように見られておみえになるのか、まずお伺いしたいと思います。
  74. 木下和夫

    木下公述人 昭和五十七年度の経済成長率につきましては、先般経済企画庁から発表になりました数字がございますが、これはたびたび諸先生御指摘のように、楽観し過ぎだというようなお話があるわけでございますけれども、現在のところは実質で国民総生産五・二という数字が出ております。私の直観と申しますか、景気予測屋ではございませんきわめて素人の直観では、とても五・二%の実質成長はおぼつかないだろうと思いますが、ただ、聞くところによりますと、企画庁の数字といいますのは努力目標だそうでございまして、一切の政策を動員してこのような高い成長率に持っていきたいという気持ちは、私としてもわからないわけではございません。わが国の経済が持っております実力と申しますのは、実質で五%の成長率を達成する能力は確かにあろうと思いますから、これに向かって全力を上げることではなかろうかと思います。  最近の状況はさまざまの悲観論が非常に強いわけでございますけれども、私自身はそれほど悲観するのが能ではあるまいという感じを持っております。特に注目をいたしますのは中小企業のこれからの動向についてでございますが、最近の状況が御承知のように一段と落ち込んでおるという悲観論というのが圧倒的に多くなっておりますけれども、現状では、少なくとも生産、売り上げは、在庫調整の終了を機会にして、昨年の秋以降上向きに転じておることは否定できません。それに伴いまして電力の消費量とか所定外労働時間は増加いたしまして、黒字の企業も次第にふえつつあるということも、これは否定できない事実でございます。したがいまして、製造業を中心に経済の状況は次第次第に回復しているとみなしても、現在のところは差し支えはないと思います。  それにもかかわらず悲観論が多いと申しますのは、やはり最近さまざまの企業に対するアンケート調査等々で収益、設備等の減少を予想しておる答えが多いからでございまして、これに対しましては、中小企業の今後の経営の動向というのは、いわば景気が落ち込みまして回復のプロセスにあることは事実であって、しかもその調整力は比較的根強いものがあり、今後の生産の回復は決して悲観だけで見るべきではなかろうと思います。もちろん、住宅とか公共投資関連の業種につきましては引き続いて厳しい状況にあるということは否定できませんけれども、しかし、今後は製造業から非製造業に向かって次第次第に回復の波が波及をしていきまして、むしろ現在一番心配すべきことは、悲観論が優越して、せっかく回復しかかっておる企業マインドを鎮静化させるということではないかと考えております。
  75. 草川昭三

    ○草川委員 もう一問またお願いしたいのでございます。  いわゆる歳出についての行革ということがいろいろと言われておるわけでございますけれども、税の収入の面でも、行革という言葉が適当かどうか知りませんけれども、いろいろと探し出してこなければいけないと思うわけであります。いわゆる税制を見直す時期だと思っておりますけれども、ひとつ企業増税ということの限界、先生のお考えでございますけれども、これ以上企業増税というものはできるのかどうか、余地があるのかないのか。それよりは、たとえば別な意味で、先ほども少し触れられておりますが、広告税だとかギャンブル税等の議論もあったやに聞いておるわけでございますが、そのような方にいくのか。一般消費税の問題は別といたしまして、少しその一般消費税をよそによけまして、その点についてお伺いをしたい、こう思います。
  76. 木下和夫

    木下公述人 お答えを申し上げます。  企業増税の余地があるかという御質問でございますが、現在のところ、実効税率の国際比較をいたしました場合に、わが国の標準的な企業の負担と申しますのは、国税の法人税、地方の住民税法人税割及び事業税を全部込めまして、およそ諸外国並みの水準に達しておると思います。もちろん、企業課税を国際間で比較をいたしますという作業はきわめて問題がむずかしいわけでございまして、いわゆる売り上げの中に何を入れるか、損金として、経費として認めるものの中に何を入れるかによって課税標準そのものに変化がございますので、税率だけで比較するということはなかなかむずかしいと思いますが、それでもなお、およそ先進諸国並みの水準に達しておると思います。したがって、だからそれから直ちに企業増税の余地なしという結論を出せるとは思いません。  もし企業からもっと税を徴収したいとおぼしめしならば、これはある程度追加の税率を構想することは不可能ではないと思いますけれども、今日の世界の経済というのは、国際間の流通が非常に激しくなっておりまして、外国の企業も日本で働き、また、日本の企業も外国で働いておるわけでございますから、わが国だけが諸外国より飛び抜けて税負担を高くするということは、いかがなものかという考え方を持っております。  そこで、それでは何かほかの税目は考えられないかという御質問でございますが、たまたま明年度の税制改正に関連をいたしまして、税制調査会で話題になった幾つかの税目がございます。しかし、この税目はどれを見ましても、それほどの税収を獲得するような税目ではございません。いわばかなり税収の規模も小さい税でございますが、現在のところ、明年度の税制改正に入れるのは不適当と判断をして、やめたわけでございます。  ただ、私の頭の中にありますのは、税調の審議を離れますが、目下百三十万以上の法人がございますが、その中で七十万ほどの法人はいわゆる赤字法人と申しますか、収益を計上していない法人でございますので、全く税を納税いたしておりません。しかしながら、その法人はゴーイングコンサーンとして継続して事業を営んでおりますし、そこで働いておる人たちの生活にも何の支障もなく続いておるわけでございますが、余りに長期にわたって赤字が続くというのはどうしても納得しがたい問題もございます。したがいまして、これに対する課税の方法ということを考える余地があろうかと思いますけれども、現行の法人税は、課税所得が黒字になりませんと課税されないたてまえでございますので、ここへ無理に外形課税のような考え方を持ち込むことは非常に無理でございます。したがいまして、企業活動に対する恩恵、さまざまの社会的な施設から受けておる恩恵に対して何らかの税負担をしていただくような方法はないものかということを頭の中で考えておるわけでございます。その他、先ほど御指摘の税の中では、印紙税については先般税率のアップをいたしたわけでございますが、必ずしも想定しておりました税収が入らない。いわば、かなりの節約ということが行われておるようでございます。それは、領収証にいたしましても発行しなければ課税を免れるわけでございますので、さまざまの方法を講じておられるのは当然のことでございますが、税の立案をいたしますときは、このようなことが起こるとは夢にも考えていなかったわけでございまして、やはり納税者としてはそういう工夫をなさると思いますが、何らかの方法で印紙税の課税を的確にするようなことは考えられないかということを念頭に置いております。  その他、広告税につきましては、広告の媒体に課税をするという案が前に提起されたことがございましたけれども、私どもが明年度の税制改正に関連して考えておりましたのは、支出広告費について、支出法人の経費に全額を損金で算入する方法をやめたらいかがか、一定の限度をつけるというやり方の間接的な方法で広告課税を行うことはどうだろうかと考えたわけでございますけれども、これはいち早く大変な反対が起こりまして、私どもも中止せざるを得なかったといういきさつがございます。  その他さまざまございますけれども、事ここに及んで急いで何かの税を考えろと言われましても、非常にむずかしい作業でございまして、今後ない知恵をしぼりますけれども、目下のところは、以上の点で御勘弁を願いたいと思います。
  77. 草川昭三

    ○草川委員 時間がございませんので、先生、もう一つだけお願いしたいのです。  先生もちょっと触れられたのですが、いわゆる理想的な申告納税制度というものは将来本当に完備できるかどうか、先生の簡潔な御意見を賜りたいと思います。
  78. 木下和夫

    木下公述人 これは申し上げることを非常にちゅうちょいたす問題でございますが、問題は、私ども自身の、わが国の納税者の問題に関係いたしますので、私を含めて非難をするという意味で申し上げますと、わが国の納税モラルというものが諸外国に比べてきわめてすぐれた高度のものであるとは言えないようでございます。そうしますと、いかに記帳水準を向上させ、いかにさまざまの措置を講じましても、これは大いに効果があると思いますけれども、ぎりぎりまで押し込んだ場合に、最後はやはり納税者個人個人の納税倫理の問題ではないかと思います。  これで勘弁させていただきます。
  79. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  80. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、木下敬之助君。
  81. 木下敬之助

    木下委員 三人の公述人の皆さんには本当に長時間ありがとうございます。先ほどから大変貴重な意見をありがとうございます。  木下先生にお尋ねいたしたいのですが、私たちは、いま最も重要な問題は減税であると考えて、どうすれば減税の実現ができるかということに日夜努力しておるわけでございます。     〔委員長退席、堀内委員長代理着席〕 先生には、条件をつくるのが望ましいといったような言葉も先ほど出てまいりましたけれども、どういった条件ができれば減税が可能とお考えでしょうか。
  82. 木下和夫

    木下公述人 所得税の減税につきましてはさまざまの要因がございますので、結論を申し上げますと、できれば所得税の減税は非常にいいことだと思います。これは人後に落ちず大きな声で私は申し上げたいと思います。しかし、その条件と申しますのは、歳入の面も歳出の面も双方にわたりまして、いままでやってこられた以上の徹底した見直しをひとつやっていただきたい。そうしますと、恐らく財政は身軽になると思います。その場合には相当規模の減税の余地が生じるというふうに解釈をしております。  ただ、御参考までに申し上げますが、私、最近入手をいたしましたOECDの調査でございますが、各国の平均的な生産労働者、これは製造業で働く男子労働者の年間賃金でございますが、それの平均を各国についてとりまして、その人たちが幾らの収入を得ておるか、それに対して所得税をどれだけ払っているかということを調査したものが発表されました。給与所得の夫婦子二人のケースでございますが、わが国の場合、一九八〇年につきまして、所得税の負担はその平均的な勤労者の所得について六・一%でございます。この数字はOECDの調査によります二十一カ国の所得税の負担の中で最も低いということだけを申し上げておきます。
  83. 木下敬之助

    木下委員 先ほどの話の中にも出てまいったと思いますけれども、課税最低限度額のことですね。これは欧米等に比べて日本の方が高い。だからいま言われたような、水準としては低いのではないかという事実があるように言われておりますけれども、私たち考えますのに、やはりヨーロッパというのは日本に比べて相当高齢化が進んでおるし、日本はこれから高齢化していくのだからその点は差があるのではないか、こういうふうに考えますが、その点もう一度お教え願えたらありがたいと思います。
  84. 木下和夫

    木下公述人 私からお尋ねをすることは禁じられておりますが、御質問の意味をもう一度重ねて……。
  85. 木下敬之助

    木下委員 課税最低限度額をいま引き上げてもらいたいということで、いろいろな減税要求をわれわれはやっているわけですけれども、その課税最低限度額が欧米等の水準に比べて高いのではないか。つまり、課税額といいますか、そういったパーセント等は水準として低いのではないかと言われているけれども、それは、そういったことが欧米に比べて日本に起こる原因は、欧米の方が高齢化が進んでいるからであって、日本はこれから高齢化社会に入っていくのだから、いまは日本が低くてもあたりまえ。つまり、日本は全体から見て、日本のそういったいろいろな条件を加味して考えると、課税最低限度額はもっと引き上げていかなければならないのではないか、こういうふうに私どもは思っているのですが、先生先ほど言われたような欧米との対比の中で、高齢化がどの程度進んでいるかということをお考えに入れた考え方というものに対して先生はどういうふうに思われるか、こういうふうにお聞きしているのです。
  86. 木下和夫

    木下公述人 これもお尋ねをするわけにいきませんが、高齢化が進んでおれば所得水準が低いという意味でおっしゃっておられるわけでございますか。
  87. 木下敬之助

    木下委員 お互いに質問の意味が両方わからなくなったのでは、これは話になりませんが……
  88. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 ちょっと、直接のお話し合いはお控え願いたいと思います。
  89. 木下和夫

    木下公述人 私は、国際比較をするときは、きわめて不正確だということを申し上げました。それは、その国の生活水準あるいは基礎的生活の、いわば食料品その他の価格というようなものをまず比較しなければならない、家賃も比較をしなければならない、あるいは為替相場というものは常に動きますが、これで直ちに調整をするということはなかなかむずかしい。そこで、先ほど申し上げましたように、平均的な勤労者の所得をとったわけでございます。ここには為替相場の比較は全然入り込みません。あるいは生活水準も入り込みません。その国の平均的な労働者が受け取る給与がどれだけかということを比較の基礎に置いて税を比較したわけでございますから、高齢化とか物価の動向とかあるいは扶養家族がどうであるとか、そういうことは一切捨象して比較ができる数字を申し上げたつもりでございます。
  90. 木下敬之助

    木下委員 私の方の質問としてはそうじゃなくて、そう考える人の考えに対して先生がどういうふうにお考えになるかをお聞きしたかったわけですけれども、その点すれ違いのままで、もう時間もございませんから、またいつかの機会に教えていただきたいと思います。  もう時間もありませんから、あと一つだけ。  日本の累進率、これについても幾らか見直したらという声も、政府の方に御意見があるように考えておりますけれども、この点、先生の方はどういうふうにお考えになりますか。
  91. 木下和夫

    木下公述人 現在の所得税と地方の住民税とを総合いたしました累進率と申しますのは、わが国は先進諸国の中で最も急激だと言われております。しかし、もっと正確に申しますと、累進度と申しますのは各所得階層について議論をしなければ正確ではございませんので、全体としての累進度というような議論をするのは意味がございません。わが国の場合は累進度がきついのは、恐らく千万円前後のところから三千万円、四千万円のところが一番累進度がきついと思います。ただ、この累進度のきっさにつきましては、従来から、先ほども御報告申し上げましたように、所得税は本来累進性を持たすべきなんだ、それは社会の所得の再分配をやるため必要なんだという思想が長々と続いておりまして、わが国の所得税は、その点では世界に誇るような累進度の高さを一般的に持っておると言ってよろしいと思います。  ただ、それが所得がちょっぴり伸びたために税負担が急激に上がるという負担感の増加につながっておりますならば、その負担感の増加の一番多いところについて若干の累進性の緩和をすることも可能でございます。それが望ましいならば、それをやってもよろしいわけです。  しかし、所得税として累進度が強い方がいいという考え方を私は捨てません。緩和をするならば、たとえばイギリスとか西独のように、最初の課税所得に対する適用税率をあるところまでコンスタントにする、たとえばイギリスとか西独では三〇%ないし二二%で一定にして、たとえば三百万とか五百万までは税率を動かさない、比例税にする、それから上を累進課税にするという考え方もあろうかと思います。しかし、このことは税調で問題にしておるわけではございませんし、私の頭の中でそういう方法もあるかなということを考えておりますが、しかし、これは全体が累進課税であるべきだといういわば進歩的な考え方には逆行する考え方であるということを申し上げておきます。
  92. 木下敬之助

    木下委員 ありがとうございました。
  93. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 次に、山原健二郎君。
  94. 山原健二郎

    ○山原委員 どうも御苦労でございます。  最初に木下先生にお伺いしますが、先ほど悲観論ばかり唱えてもだめだというお話がございまして、それはもちろん当然のことと思いますが、重複しないために、先生が「税経通信」に書かれました本年の二月の論文がございます。「五十七年度予算編成をめぐって」という表題でございまして、歳入欠陥の見通しについて書かれておるわけでございます。  ちょっと読み上げてみますと、「税収の伸び率は五十六年度で約九・六%にとどまり、五十七年度にはさらにこれより落ち込むことが予想される。そこで仮りに五十七年度税収が三十六兆九千九百億円をかなり割り込むとすれば」「あきらかに歳入不足が生じることとなる。」と書かれております。さらに、その前に「すでに昭和五十五年度補正後の税収は予算を約二千八百億円下回わっている。この低下した基礎の上に予想される五十六年度税収が、当初予算の三十二兆二千八百四十億円を達成する可能性は」「決して楽観できないのである。昭和五十六年度税収が確保されず、ふたたびその土台が下へさがると」、五十七年度の三十六兆九千九百億の「税収確保はさらに困難となる。」と述べておられます。最近の税収は、この委員会でも論議されておりますように、十二月が十一月の九・四%に比べまして一四・二%に好転をしておるという問題がありますが、一四・二%が今後続いたとしましても、五十六年度は一兆七千億円の不足となります。さらに、六月から十二月の税収は前年比一〇・三%増でございますが、この水準で移行するとなりますと、補正後の予算に比べても二兆二千億円の不足となります。仮に、補正後の予算を確保するためには、一月から五月までの税収増が前年に比べまして二九・一%の増とならなければなりません。これは、私はまさに不可能な問題だと思いますが、この点から見ますと、先生の書かれた論文の歳入欠陥見通しというものがかなり大幅な歳入不足を予想されておりますが、その指摘は正しい指摘ではないかと思うのです。したがって、五十七年度予算は最初から崩壊した形になっているのではないかという心配をいたしておるわけでございますが、この点について御意見をお伺いいたしたいと思います。——ちょっとお待ちください。時間がもうございませんから、私が最後ですので、後でお願いします。  林先生には先ほどお話をお伺いしましたが、たとえば、減税の財源を見るためにもあらゆるところから少しずつ削っていくというお話がございました。いろいろお三人のお話を聞きましても、大変一面では悩みも持っておられるわけでございますが、私はやはり軍事費の削減ということに対してメスを加えなければならぬのではないかと思っております。したがって、私の党としては軍事費一兆円削減ということを言っておるわけでございますが、その数字はともかくといたしましても、軍事費を聖域にしないでこれに対して見直しをする、あるいは削減をするということが必要ではないかと思うのですが、この点、簡明にお答えいただきたいと思います。  さらに、宮脇先生につきましてお伺いをするわけですが、宮脇先生のお話を伺っておりまして、かなり私どもと准行財政改革に伴う見解が違うことはよくわかりました。  しかし、実はここへ持ってきておりますが、先生が日本経済調査協議会の専務理事をされておりまして、その協議会から「これからの税制と租税負担のあり方」というのが出ております。  その中に、企業税制の問題に対してかなり鋭い指摘をされておることにつきましては、敬意を表明したいと思います。もちろん宮脇先生自身の個人論文ではありません、協議会が出されておるものでございますから、先生の個人の見解とどういうふうになるか、ちょっとわかりませんが、その中に租税特別措置について書かれておりまして、「高度成長の過程において租税特別措置は、特定の政策目標の遂行に使用されてきた。内部留保の充実、企業体質の強化、技術の振興、設備の近代化、資源開発の促進などが、その代表的な例である。」「これらは明らかに、企業を税制上それだけ優遇する結果となっている。」とこの中に述べております。  私どもの調査によりますと、昨年の九月決算におきまして、たとえば鉄鋼十社の内部留保が一昨年の九月決算に比べまして一〇・五%の伸び、二百億円の伸びとなっておりまして、内部留保が何と鉄鋼十社だけで一兆八千三百億円に達する、こういう事態が出ておりますから、当然この協議会の指摘は正しいのではないかと思います。  さらに、「資本蓄積、内部留保の充実といったこれまで重視された政策目標のために、税制を活用するのは明らかに時代おくれである。したがってこの目標に関連する各種の準備金や特別償却制度を廃止もしくは縮小すべきである。」と述べられております。さらに、この「適用される対象かつ期限は極力限られるべきであり、このような視点から現在の制度をもう一度全面的に見直し、課税の公平の要請に答えるべきである。」と書かれております。  そして二十二ページに、有価証券の問題につきましても、「有価証券譲渡所得に対する課税」の項で、「年間何千万株も売買しても五十回の取引回数をわれば、課税の対象にされず、課税の公平上問題がある。」ということが出ておるわけでございまして、これは私どもも今日まで指摘しておるところであります。その点では、先生の専務理事をされておるこの協議会の見解と同じ見解に立っておると思いますが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  95. 木下和夫

    木下公述人 御質問は、昭和五十七年度の歳入、とりわけて税収の見通しについてでございますが、お目にとまりました雑誌の私の主張と申しますのは、五十七年度に中期展望では三十六兆九千九百億と想定をしておった税収は、名目成長率一一・七%を前提として租税弾性値を一・二としてはじいたものを基礎にした計算である。ところが、名目成長率一一・七%というのはとうてい期待しがたい。で、経済成長率の見通しの改定も行われまして八%台になったわけでございますが、八%台になったといたしますと、それに一・二を掛けましても、税収の伸び率は一〇%そこそこということになろうかと思います。したがって、明年度の税制改正の審議の際、三十六兆九千九百億の税収はかたいかということを当局に伺いましたところ、とてもこれはだめだろう、少なくとも七千億程度は減少することを一応想定をしておかなければならないという話でございましたので、先ほどから申し上げておるような税外収入の確保と税収増措置を考えたわけでございます。  そこで、五十七年度の末になりまして、一体これだけの想定した三十六兆六千二百四十億という税収が、とらぬタヌキの皮算用であって、これが確保できるかできないかという御質問であろうかと思いますが、これは本年の経済動向次第でございまして、全くいまのところ想定はできません。  と申しますのは、税収の見積もりと申しますのは、各企業からさまざまの業界を通じての企業収益の動向を聞く、また物品税その他につきましては、商品の売れ行きの動向を絶えず把握していくということの積み上げ計算でございまして、各税目についてある種の租税関数を想定して数量的に計算するのと、実態的に資料を取り寄せて検討する方法とを突き合わせていきながら、総額としては名目国民総生産の伸び率というものを基礎にして評価をいたしますので、現在の時点で、これが実現できるかできないかということに答える能力を持っておる人は私はないと思います。残念ながら、私もここでお答えをすることはできません。願わくは、経済の回復が順調で、この税収が確保されることを念じておるということだけ申し上げます。
  96. 林健久

    ○林公述人 軍事費の見直しないし削減についておまえはどう思うかという御質問であったと思います。  私は、軍事費も含めましてあらゆる費目は例外なくすべて見直すべきだというふうに考えます。ただし、とりわけ軍事費だけを削減しろともし主張しようといたしますと、日本を支えておる軍事力についてどういう判断を持つか、ひいては社会主義と資本主義の対立についてどういう軍事的な判断をするかというような、私の力に余るような大問題を背後にきちんと持ちませんと、軍事費はかくかくの水準であるべきだ、あるいはかくかくの水準であるべきでないというふうに積極的に発言をする能力を私は持っておりませんので、まことに恐縮でありますが、きわめて一般的に申して、ある時期に、たとえば五十七年度に寄与率はそれほどではないと思いますが、ごらんのとおり、の突出したパーセンテージでもし軍事費が伸びるというのであれば、それがよほど合理的なあるいは国民の共感を得られるようなものでない限り、ほかの費目にも増して十分に検討をしていただきたいというふうに考えております。
  97. 宮脇長定

    ○宮脇公述人 私のところで出しました報告書の内容につきまして御質問があったわけでございますが、私どもの組織は一応財界の調査機関ということを言われておりますが、産・学・官というふうな構成でございまして、財界の利益擁護機関というふうな形の性格のものではございません。したがって、そこで書かれたものは学者も参加していただくし、それからいろいろなエコノミストにも協力してもらうというふうな形で執筆されております。  したがって、そこで御指摘の点につきましては、一応私どもの方の総合委員会というところで機関決定いたしたものでございますので、それはおっしゃられるとおりで否定するつもりはございませんが、しかしながら、この問題につきましては、基本的にそういう主張をしたわけでございまして、それをいかに実行するかという時期につきましては、現在のような状況の場合に、そういうことを強行して果たして弊害がなく行われるかどうかという点につきましては多々疑問がございます。したがって、基本線としては否定いたしませんが、それを現時点において強行しろということにつきましては、私はちょっとお答えする能力がございませんので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  98. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、有価証券の問題、それから会社の持ち株の操作によって膨大な利潤を上げておる、それに対しては全く課税がないというようなこと、これはもうずいぶん問題になっておるところでございまして、確かにそれはいま断行するとかなんとかということは、研究機関として、それができるものではないと思いますけれども、しかし、ここで指摘されておる、私の読み上げたことは少なくともかなり国民の合意を得られるものだと私は思っておりますから、その点で御質問申し上げたわけで、その点の分析、解明については敬意を表しますということを申し上げたわけです。その点で今後ともがんばっていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  99. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会