○大内
委員 私は、今度の衆参におけるこの問題についてのやりとりを聞いていました際に、
総理が一貫しておっしゃられておりましたのは、この原因というのは、
世界経済の停滞、円安あるいは物価の鎮静といった予想外の情勢のためだ。私は、それほど形式的なことではないと思うのですよ。それにも、もちろん大きな原因があったことは事実ですが、そういう
状況の中で動静が十分察知されながら機敏な対応を怠ったという、つまり経済運営のまずさというのが主体的にはあるのですよ。
それがたとえば国際経済であったり円安であったり物価であったら、責任はみんな相手にいってしまいますよ。それなら初めから、見通しなんというのは責任を負わないとおっしゃればいいんですよ。しかし、あの五十年の大きな経済、エネルギーの変動期とは全く違うのですよ。ある
意味での通常の状態で進んできたのです。不況なら不況、好況なら好況、その予測し得る範囲内の状態の中で
世界経済も進んでいったし、物価の動向もあったのですよ。ですから、そういう安直な分析で問題を過ごそうという形では、これからの財政再建はできないと私は思うから言うんですよ。
第一、では昨年の十月二日の経済対策閣僚
会議の決定を読んでみましょうか。十月と言えば、いいですか、十月から十二月期というのは、御存じのとおり成長がマイナスに入ったのです。年率で三・五%のマイナス成長になったのです。その直前に出された経済対策閣僚
会議のこの「経済見通し暫定試算」、見てごらんなさい、この甘さ。「現在、緩やかな回復過程にあり、その拡大テンポも概ね昭和五十六年度
政府経済見通しにおいて想定された線上にあるものと判断される。」そして、あえて言えば、物価の安定によりさらに個人消費支出の着実な伸びを期することが必要な程度であろう。何ですか、これは。
そして、その後に出された一月二十五日の閣議決定、これも何ですか。明らかに
日本の経済の成長率が急速な鈍化を歩み始め、七%の名目成長というのはなかなかむずかしい。したがって、四・一%の経済成長率もむずかしい。ここで相当の何らかの対策が必要である。補正も四千五百二十四億なんという、そんなちゃちな補正で収支とんとんにつけることはとうていできないというのが、もう
専門家の間では目に見えていたのですよ。そういう中でことしの一月二十五日の補正
予算を出した閣議決定では、七%の名目成長と実質の四・一%の経済成長、これは大丈夫だと言い切った。それは
予算が出ておりますから、それをもし修正すれば数字を全部入れかえなければならぬという配慮が恐らく優先したのでしょう。しかし、そのことは、そのことの余り
国民の皆さんに対してうそをついたことになる。中小企業に対してうそをついたことになる。
そういうような形で、一貫して
政府の五十六年度の姿勢というのは楽観主義に終始したのです。楽観論に終始したのです。その出発点が一月二十六日の
先ほど挙げた大蔵大臣の財政演説であり、五月六日の河本経企庁
長官の景気底離れ宣言であります。そして、十月二日の経済対策閣僚
会議のこの甘い分析であり、そして本年一月二十五日に当たっての閣議決定である。補正
予算の提出である。しかも、さっき私が申し上げたとおり、月例の経済の租税収入の動向というのは一貫して九%、一〇%という低迷の状態にある。そんなことがわからないはずはない。われわれ野党にでもわかることが大蔵省という大きな官僚機構を持った
政府にわからないはずはない。私はそういう
意味で、
政府のこの景気動向に対する見通しというのは、したがって税収見通しについての誤りというのは明白であった。
しかも、私は経済運営の失敗がなぜ起こったかというと、これはもちろんいろんな分析の仕方ありますよ。しかし、いま大蔵省や経済企画庁の物の
考え方は、家計赤字を解消するときの発想と一緒ですよ。家計で赤字が出ればまず切り詰めるでしょう。それから、増収を図るための何らかの措置をとるでしょう。その発想で財政の赤字を解消しようとしているのではないですか。だから、一般歳出についてはゼロシーリングで締め上げる、国債の減額も、できれば二兆円近いものもやって、この面でも締め上げる。そして、去年は一兆四千億の増税をやった。それも結局は、増収を図るというこの家計的な発想が逆に不況を深刻化し助長した。だから、税収減に結びついている。歳出を締め上げて税収減、増税で税収減。経済理論に反しますよ、これは。そういうことをやったから五三%が四・七%、四・一%、二・七%までどんどん下がっていった。そして、危ないというので、五十六年度はあの上半期に公共事業を、いまやっていると同じように、上半期に集中しようじゃないか、そして実績でも七〇%ちょっと超えています。そして、上半期に集中した。その結果、下半期に残ったのは三〇%弱、そして、その手当てを怠った。当然その公共事業という面でも手当てをしなければならぬ、そういうときに手当てをしなかった。それが、四・一%大丈夫です大丈夫ですと言いながら二・七%まで急速に下がった。それは海外要因もあった、輸出もあった、住宅のあの建設の問題もあった。これ、どう見たって経済運営の失敗じゃありませんか。
もし、財政理論でいくならば、
政府の中のむだ遣いというものを最大限に切って、財政節約をやってみる。つまり、
政府のむだ遣いによる赤字にはそれでいい。しかし、不況に対する税収不足に対しては、つまり赤字に対しては何らかの大幅の公共投資等をやらなければならぬという立場にあった。それが逆に増税で足を引っ張った。そして、その結果、いままさにびっくりするような、三兆円を超えるという五十六年度の歳入欠陥。しかも、それは五十七年度の財政そのものも揺るがしてしまう、五十八年度の
予算編成というものを重大なピンチに追い込む、こういう
事態をつくったのですよ。だから、私は財政再建の根幹を揺るがすものではないか、こう言っている。
大蔵大臣、この失敗を認めますか。部分的には失敗あったでしょう。私は、全部物価や国際経済や円安の責任にするのは余りにも政策責任者としてひきょうだと思う。これでは
国民は黙っておれない。中小企業の皆さん苦しんでおるのに黙っておれないですよ。これは、大蔵大臣においても
経済企画庁長官においても、その責任の痛感がなくしてどうしてこれからの野党の
協力を求めた経済運営ができますか、財政再建ができますか。いかがでしょう。そう無理じゃないと思うのです。