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瀬崎委員 私は、日本共産党を代表して、政府提案の五十七年度
一般会計予算、
特別会計予算、
政府関係機関予算三案に反対し、日本共産党提案の予算組み替え動議に賛成の討論を行います。
いま国民が求めている来年度予算は、生活防衛のための予算であり、平和と軍縮のための予算であり、そして民主的な財政再建を目指す予算なのであります。ところが、政府が提出した五十七年度予算案は、これらの要求に全く逆行する大軍拡、大企業奉仕、国民生活破壊のきわめて反国民的な予算案であり、断じて認めることはできません。
以下、政府提出予算三案に反対する主な理由を述べます。
本予算案に反対する第一の理由は、一般会計の実質的な伸びが一・八%にすぎないのに対し、軍事費を七・七五四%増の二兆六千億円と異常突出させていることであります。
しかも、F15やP3Cなどの正面装備を充実させるために後年度負担方式がフルに利用され、五十七年度軍事費の後年度負担は一兆七千五百億円、五十六年度の一兆三千五百億円の実に二九・八%増になっているのであります。
アメリカのレーガン大統領は、昨年、二回にわたって限定核戦争があり得るということを表明しました。そして、
鈴木内閣が五十七年度予算案を決定すると直ちに、アメリカ国務省、国防省は異例の歓迎声明を発表し、さらに、ロング太平洋軍司令官は総理及び
防衛庁長官を訪問して、社会保障費を削って軍事費を伸ばされた御努力に敬意を表すると述べたのであります。アメリカの核の傘のもとでの軍備増強が、アメリカの恐るべき核戦略の一環、一翼に置かれていることはきわめて明白であります。
当
委員会においても、わが党の不破書記
局長は、本予算案で大量導入しようとしているP3Cが、極東有事に際して
米軍に情報提供することで、国会も国民も知らない間に日本が
米軍の引き起こす限定核戦争に巻き込まれていく危険を明確に指摘しました。この、憲法はもちろん日米安保条約をも乗り越える戦争加担行為の重大な問題を追及したわが党の不破議員の質問に対して、軍事機密を口実に答弁を拒否し続けた
鈴木首相の態度は、不当きわまるものと断ぜざるを得ません。
F4ファントムの爆撃装置復活問題でも、従来の政府の国会答弁、統一見解を根底から覆し、総理にも真実を知らせないままに防衛庁が改修予算を組んでいた事実は、シビリアンコントロールが空洞化されつつあることを浮き彫りにしたのであります。
鈴木内閣の進む方向は、日本民族の破滅的不幸を自分の手で進めるものであり、私は再びあの忌まわしい侵略戦争を繰り返さない決意を込めて、本予算案に反対するものであります。
反対理由の第二は、本予算案が、国民には犠牲を押しつけながら、大企業への補助金や優遇税制には手をつけず、軍事費とともに聖域扱いをしていることであります。
戦後最高の失業の発生、史上第三位の中小企業倒産に示される国民の生活苦をよそに、大企業は巨額のもうけをため込んでいます。わが党の調査によれば、大企業五十社の内部留保は、昨年九月期で、前年同期比一兆七千五百億円増の十五兆六千億円にも達しているのであります。ところが、政府はこの大企業に至れり尽くせりの優遇策をとっているではありませんか。たとえば、わが党の
渡辺議員が明らかにしたように、三菱重工、石川島播磨重工、川崎重工、東芝、日立のわずか五つの大企業に対する通産省の補助金だけでも五十六年度二百九億円、五十七年度二百二十六億円に上り、また、政府が、利益が出れば返還させることになっていると説明しているコンピューター業界への開発費補助金は、
昭和四十七年度からの五カ年間に計六百八十六億円が支出され、国庫に戻ったのはわずか二億円、〇・三%にすぎないのであります。
公共事業においても、全体の伸び率がゼロに抑えられている中で、財政投融資を使った高速道路建設費は八・八%増、本四架橋は四六%増と、大企業奉仕の大型プロジェクトは依然として大きく伸ばされています。
税制の面でも、政府が当初予定した企業税制のわずかばかりの手直しさえ、財界の反対でたちまち骨抜きにされるなど、大企業奉仕が貫かれているのであります。
反対理由の第三は、本予算案が、軍事費と大企業奉仕という二つの聖域によって福祉、教育、国民生活が踏みつぶされる最悪の生活破壊予算となっていることであります。
全く許せないのは、政府の五年連続減税拒否によって、五十二年から五カ年間に、給料は一・五倍にしかふえていないのに、国民の所得税負担は実に二・三倍、納税者一人当たり二十万円もの実質大増税が強行されていることであります。
このほど発表された
総理府の家計調査は、国民の実質消費支出とサラリーマン世帯の可処分所得が、
昭和五十五年、五十六年と二年連続マイナスとなったことを明らかにしているではありませんか。これは
総理府の家計調査統計が整備されて以来、史上初めてという記録であります。首相は、政府の発表したこの調査結果に痛みを感じないのですか。
そのほか、来年度予算では、年金、恩給物価スライドの一カ月延期、老人医療の有料化、児童手当の削減、四十人学級計画の凍結、公立学校施設整備費の削減など、福祉、教育の全分野に大なたをふるおうとしており、この面からも本予算案を通すわけにはいかないのであります。
第四の反対理由は、本予算案が、歳入欠陥確実の粉飾予算になっていることであります。
自民党と
鈴木内閣の国民生活犠牲の政治によって深刻な消費不況を引き起こし、それがいま空前の歳入欠陥として財政にはね返り、五十六年度一兆円をはるかに超える税収不足が不可避になるとともに、また五十七年度にもそれが引き継がれることが動かしがたい事態となってきています。
ところが、この事実を指摘し、対策を要求したわが党の質問に対し、
鈴木首相、
渡辺蔵相は、六月になってみなければわからないなどと無責任な答弁を繰り返し、ついには、一々責任をとっていたのでは首が幾つあっても足りないと開き直ったのであります。もはや、
鈴木内閣には、財政を正常に運営し、責任を持って国政を担う意思も能力もないと断ぜざるを得ません。
第五の反対理由は、本予算案が、政官財癒着の腐敗構造と、それに起因する行政の大きなむだを温存した予算案となっていることであります。
当
委員会におけるわが党の
村上副
委員長の追及で、
鈴木首相以下四十七人もの国
会議員が国の公共事業を受注している企業から違法な選挙資金を受けていた事実や、私が示した資料によって、
田中角榮元首相以下八人の政治家が公共工事の入札に際し、受注工作に関与していた疑いが明らかになりました。同時に、公共工事をめぐっての持参金つき天下りや、発注官庁による入札以前の発注先決定、裏ジョイント指示などの生々しい事実も明らかになりました。公共工事がこのような政官財癒着によって私物化されている事態をなくすためには、受注企業の政治献金の禁止、民間企業への天下り規制強化、入札制度の民主的改善などの抜本的防止策を講ずることが緊急に必要であり、これこそ国民が求める腐敗と浪費をなくし、一兆円減税と財政再建にも役立つ行政改革として真っ先に着手すべき課題であります。
鈴木内閣がこれらの具体的な提案をすべて拒否し、臨調では検討課題にすら挙げていないという事実は、
鈴木首相が政治生命をかけるという臨調行革が、国民の願いといかにかけ離れているかを改めて示したものにほかなりません。
私は、ここで特に議会制民主主義の根本にかかわる重大な問題を指摘しておきたいのであります。
去る二月二十五日夜の当
委員会の
理事会では、第一に、日本共産党から、一兆円減税を含む予算組み替え要求が、日本社会党、公明党・国民
会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合の四会派から、一兆円減税共同要求が出され、自民党は、党に持ち帰り、検討の上回答する、第二に、自民党の回答を受けて、減税問題及びそれと関連する集中審議のテーマ、日数を
理事会において協議する、第三に、
分科会の日程に入ることが全会一致で決められたのであります。
ところが、その直後から、国会の機関、会派とは全く別に、一部野党の政党間協議並びに自民党との折衝が始まり、予算
委員会の運営が不正常な状態に置かれることとなったのであります。この一部野党と自民党の政党間協議は、わが党のたび重なる申し入れにもかかわらず、党首会談までが、国会を構成する公党として議会運営に責任を持つわが党を排除して、しかも、終始国民に隠された密室で行われたのであります。
こうした事態の異常さについては、
栗原予算
委員長も
理事会において、いままでの慣例を破った会合が開かれ、それがすべて不調に終わっており、きわめて異例であり、遺憾であるとか、
理事会で決めたことが他の要因で動かされたことは遺憾だったと言明せざるを得なかったのであります。
国権の最高機関である国会の運営を、正規の国会の機関を離れて、党略に従属させた自民党と一部野党の責任は、断じて許されることではありません。
さらに、自民党と四会派が密室の協議でつくり出した合意なるものに対して、宮澤官房
長官は、国会というのは大変なところだ、このように明確にして不明瞭なみごとな文章をつくると指摘したと伝えられており、そうした合意がつくられたということは、議会制民主主義を真っ向からじゅうりんするものと言わなければなりません。内容においても、軍拡、大企業奉仕、国民生活破壊の五十七年度予算を、事実上無傷で成立させることを前提として、減税については最大限の努力をうたうだけで、すべてを大蔵
委員会小
委員会にゆだねるものであり、一兆円減税、軍事費の削減を初めとする国民の切実な要求にこたえるものでないことを率直に指摘するものであります。
いま、われわれは、アメリカの核戦争政策に追随して軍事費を限りなく増大させ、国民犠牲の道を進むか、それとも国民の暮らしを守り、平和で民主的な日本につくりかえる道を進むのかという、わが国の進路をめぐる二つの道の選択を問われているのであります。
わが党が示した歳入、歳出の両面にわたる全面的な組み替え提案こそが、日本を核戦場とさせないための軍縮への第一歩であり、一兆円減税を初め、福祉、教育など国民生活を守ることによって消費拡大、不況打開の道を開き、さらに不公平税制の是正で当面の税収欠陥にも対処し、真の財政再建への出発点となるものであります。
以上、わが党提案の組み替え動議に賛成、政府提出予算三案には強く反対して、討論を終わります。(拍手)