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1982-02-25 第96回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十五日(木曜日)委員長の指  名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費国会、裁判所、会計検査  院、内閣総理府経済企画庁国土庁を除  く)及び法務省所管並びに他の分科会所管以  外の事項)    主 査 小渕 恵三君       大村 襄治君    栗原 祐幸君       近藤 元次君    藤尾 正行君       三原 朝雄君    稲葉 誠一君       大出  俊君    横路 孝弘君       大内 啓伍君  第二分科会外務省大蔵省及び文部省所管)    主 査 砂田 重民君       奥野 誠亮君    金子 一平君       堀内 光雄君    宮下 創平君       阿部 助哉君    木島喜兵衞君       鈴切 康雄君    依田  実君  第三分科会厚生省労働省及び自治省所管)    主 査 海部 俊樹君       上村千一郎君    亀井 善之君      小宮山重四郎君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    大原  亨君       野坂 浩賢君    草川 昭三君       木下敬之助君    瀬崎 博義君  第四分科会総理府経済企画庁)、農林水産  省及び通商産業省所管)    主 査 武藤 嘉文君       宇野 宗佑君    植竹 繁雄君       越智 通雄君    正示啓次郎君       岡田 利春君    藤田 高敏君       岡本 富夫君    米沢  隆君       東中 光雄君  第五分科会総理府国土庁)、運輸省、郵政  省及び建設省所管)    主 査 後藤田正晴君       江藤 隆美君    鴨田利太郎君       塩川正十郎君    澁谷 直藏君       渡辺 栄一君    武藤 山治君       山田 耻目君    草野  威君       金子 満広君 ————————————————————— 昭和五十七年二月二十五日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 鈴切 康雄君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       浦野 烋興君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       亀井 善之君    熊川 次男君       後藤田正晴君    近藤 元次君       塩川正十郎君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       渡辺 栄一君    稲葉 誠一君       小川 国彦君    大出  俊君       大原  亨君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    沢田  広君       田中 恒利君    野坂 浩賢君       武藤 山治君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       春田 重昭君    木下敬之助君       浦井  洋君    瀬崎 博義君       三浦  久君    渡辺  貢君       依田  実君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣  田澤 吉郎君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 相場 照美君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         警察庁刑事局長 中平 和水君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         北海道開発庁総         務監理官    楢崎 泰昌君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         国土庁土地局長 小笠原正男君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省情報文化         局長      橋本  恕君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省体育局長 高石 邦男君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省援護局長 北村 和男君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業大臣官         房会計課長   浜岡 平一君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         通商産業省機械         情報産業局次長 石井 賢吾君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         中小企業庁長官 勝谷  保君         運輸大臣官房長 角田 達郎君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第五局長  丹下  巧君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     熊川 次男君   砂田 重民君     亀井 善之君   瀬戸山三男君     宮下 創平君   根本龍太郎君     近藤 元次君   藤田 義光君     鴨田利太郎君   村山 達雄君     浦野 烋興君   武藤 山治君     沢田  広君   横路 孝弘君     小川 国彦君   正木 良明君     草野  威君   矢野 絢也君     春田 重昭君   竹本 孫一君     米沢  隆君   浦井  洋君     渡辺  貢君   金子 満広君     三浦  久君   依田  実君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     植竹 繁雄君   熊川 次男君     宇野 宗佑君   原田  憲君     砂田 重民君   小川 国彦君     横路 孝弘君   沢田  広君     田中 恒利君   春田 重昭君     岡本 富夫君   三浦  久君     金子 満広君   渡辺  貢君     東中 光雄君   山口 敏夫君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   田中 恒利君     武藤 山治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  3. 沢田広

    沢田委員 各大臣、御苦労さまであります。大臣の都合がありまして順が不同になりますが、その点、御了承いただきたいと思います。  最初に、厚生大臣障害者年というようなことですが、現在障害者対策については十分とは言いがたい状況でありまして、非常に手おくれしている現況にあります。しかし、これは世界的な要請でもありますから、わが国もそれに対応していかなければならない、そういう一つの要件を担っていると思います。  まず、その辺の認識について、障害者年だけやればいいということではない、これからが本番である、これからやはりやっていかなければならないのだという認識はお持ちになっておられるかどうか。なお加えて、平等と参加という趣旨は今後も生き続けるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  4. 森下元晴

    森下国務大臣 御指摘のとおりに、昨年国際障害者年でございまして、世界的にも大きな花火を打ち上げたわけでございます。ただ、一時花火にしてはいけないということで、総理大臣本部長総理府総務長官また厚生大臣が副本部長ということで十年間の行動計画をつくりまして、障害者方々福祉のために具体的にその活動をやっていこうということで、着々と進めております。したがって、障害者対策に関する長期計画の策定につきましては、大体この三月中に政府といたしましては障害者対策に関する長期計画を策定する予定でございまして、万遺憾なきを期したいと思っております。
  5. 沢田広

    沢田委員 非常に前向きな御答弁はいただいたのでありますが、ただ、これが空文句になったのじゃ何にもならない。結果的には、たとえば駅に入る場合にしても、あるいは銀行を使う場合にしても、公園を使う場合にしても、あるいは教育分野についても、これは挙げたら切りがないのでありますが、厚生省だけで処理するわけにはとてもいかない問題である。全部の各省に通ずる問題である。  ですから、私はここであえて特別措置法という法律を、これは名称は仮称でありますが、やはり総合的な各省にまたがるものを一定の計画のもとに実現していく、そういう体制をとらないと実りがないということになる可能性もある。しかも、地方団体の協力も相当仰がなければいけない。あるいは、その順位というものの選択も迫られてくるだろうと思うのです。  そういうようなことで、計画だけじゃなくて、それに伴う財政の裏づけとともに特別措置法という法律をつくって、そして各省がそれに対応しながら予算を組み、総括するものは総括していく、こういう体制が必要だ。  それからもう一つは、障害者種類別内容が伴う。あるいは肢体不自由者の問題、あるいは盲人の問題であるとか、それぞれ障害の中身によってもまたこれが対応が異なってくる。  そういうことで、まず総合的な法律をつくることを前提としてこの十カ年計画なら十カ年計画が実現できるように対応すべきだと私は思うのでありますが、いかがでありましょう。
  6. 森下元晴

    森下国務大臣 いまおっしゃいましたように、障害者対策雇用の問題、それから教育生活環境、もう総合的に非常に広い分野を含んでおります。したがって、この心身障害者特別措置法のようなものをつくって総合的にやるべきである、お説ごもっともでございます。  ちょうど昭和四十五年に心身障害者対策基本法というものがつくられておりまして、この内容の中に「総合的推進を図る」、ただし、四十五年でございますから大分日がたっておりまして、その運用面において、いま御指摘されました点につきまして十分配慮していきたい。また同時に、障害者にもいろいろな方々がおいでになるし、その障害者種類と申しますか、様態によってきめ細かな福祉政策をやれ、これもごもっともでございます。全力を挙げてやることをお誓い申し上げまして、御答弁といたしたいと思います。
  7. 沢田広

    沢田委員 非常にやろうという気魄——気魄までは感じませんが、やろうという気持ちをあらわしたことだけは間違いないようでありますから、その実現を特に要望して、次の問題に入りたいと思います。  労働省関係で、中高年老齢者のいわゆる生きがい、安らぎあるいは雇用確保が問題になって、労働省もそれぞれ通達などを出しているわけでありますが、問題は、各市町村段階でできている中高年齢者雇用関係です。シルバー人材センターですか、そういうような措置でやっておりますが、一方、市町村では中高年雇用事業団というような名称を使ってやっておる。  これの問題は、職業安定法の職のあっせん、四十四条との関係がいろいろと問題になってくる。脱法的ではないでしょうけれども、いわゆる個人請負、言うならばシルバー銀行が請け負って、個人仕事をさせる、こういうへんちょこな形でやっておる。もっと認知をして、いわゆる正規の職業安定法の中に含まれる仕組みというものが必要なんではないか。時間が忙しいということで、私、回答も含めながら言っちゃっているのでありますが、労働大臣としては、今後、そういうすき間風みたいなやり方ではなくて、もっときちんとした中高年者雇用確保、こういう体制をつくるべきじゃないか、いかがでしょうか。
  8. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 最初に、中高年齢者雇用の場をどうするかというようなことから御答弁をしたいと思います。  高年齢者雇用対策は、労働行政の最重点政策一つとして従来私どもは考えておるわけであります。したがって、今後とも精力的に取り組んでまいる考え方でございます。  そこで、六十歳定年の一般化をできるだけ早く実現したい。それからさらに、今後高齢化の波に移る六十歳代の前半層、要するに六十歳を超える雇用延長制度化を促進していきたい。それから、シルバー人材センターの育成とか援助など、多様な就業希望にこたえた対策をやらなければいけない。さらに、離職した高年齢者の再就職の促進などを積極的に推進してきたところでありますが、今後ともこれらの施策を総合的かつ強力に推進して、高年齢者にふさわしい雇用就業機会確保に努めるという考え方でございます。  なお、市町村等高齢者事業についていろいろと疑わしい、違反らしいようなものがあると聞くが、その実態はどうかということでありますが、現在、全国の各地でいわゆる高齢者事業団と言われるものがつくられまして、活動をしておるわけでありますが、これらの事業団については、企業組合形式のものがある、あるいは任意団体的なものもある。したがって、そういう組織形態もいろいろあるわけなんです。事業団会員との関係についても、雇用関係を有しているものやそうでないものなど、実態はさまざまであるように聞き及んでおります。したがって、これら高齢者事業団活動は、一応事業団仕事を受けまして、これを会員である高齢者に行わせる形態が一般的であると聞いております。その詳細については、必ずしも十分把握しておるとは言えないと私は思います。  そこで、こうした事業団活動職業安定法違反に該当するかどうかは、具体的な事例について個々に判断していかなければならないのではないか。お尋ねの問題については、具体的な御指摘をいただきますと、私どもの方で実態調査をして、職業安定法違反事実があればこれを是正して適切な指導をするという気持ちでございます。  なお、労働省といたしましては、今後の高齢化社会に適切に対応していくためには、できる限り高齢者就業機会確保、増大していく必要があるという観点に立って、昭和五十五年から社団法人という形で高齢者会員として事業を行うシルバー人材センターを育成することにいたし、そのために助成制度を発足させているところであります。このシルバー人材センターについては、職業安定法の既存の法律に反することにならないように、事業に即して適切な指導を今後とも行っていく考え方でございます。
  9. 沢田広

    沢田委員 厚生大臣の方が忙しいそうでありますから……。  もう一つは、行革の臨調の答申にもあります三Kの一つであります十三兆円にも及ぶ医療費の問題の解決ということは、これまた当面の財政再建のためにも急務と言われております。これについて、いままでの予算委員会その他の御討議も幾らか私も聞き及んでおりますが、要すれば、十三兆円というものの薬漬け医療、乱診乱療、この実態にメスを入れないではこれはどうともならない。何かしかし、タブーのような、聖域のような、おっかなびっくりでこれに対応している。これではどうにもならない。ひとつ厚生大臣決意をもって、これにどう対応して、これからいわゆる水ぶくれにふくらんでいく医療費、あるいは医療組織、体質、そういうものを改革する意思はあるのかないのか。そして、これは大臣の任期中にひとつ解決してほしい、こういうふうに思うのでありますが、いかがでありましょう。
  10. 森下元晴

    森下国務大臣 医療費の問題は、これは保険財政のみならず国の財政まで大きな影響を及ぼす問題でございまして、乱診乱療薬漬けという問題につきましても、否定はいたしておりません、全国いろいろ事件がございまして、大変御心配、御迷惑をおかけしておるわけでございますから。しかし、粗診粗療になるとまた健康上困りますし、そこらの兼ね合いが非常にむずかしゅうございます。  昨年の六月に御承知のように薬価基準を大幅に、これは一八・六%下げまして、医療費適正化のためにやらさせていただいたわけでございますけれども、今後ともに指導監督の強化、それからレセプト審査の充実、改善、そういう問題につきまして医療費適正化を強力に図ってまいりたい。非常にこの辺むずかしい問題でございまして、私も厚生大臣になりまして厚生行政の中でこの医療費の問題をいかにするかと心配もしておりますし、かなり強い決意をもって取り組んでまいりたいと思っております。  社労委員会がございますので、いろいろ時間の御配慮をいただきましてありがとうございます。
  11. 沢田広

    沢田委員 歴史に名前が残るように、ひとつ厚生大臣思い切って、あの人はようやった、日本の健康を守るためにりっぱなものだったと銅像が立つぐらいな気持ちでどうぞがんばっていただきたい。いまの調子じゃちょっとなかなか心細い感じがするのでありますが、要請をいたしまして、労働大臣厚生大臣の方は解放いたします。どうぞ行ってください。  続いて防衛庁関係防衛庁は三十分おくれだと言っていましたから、こっちはダイヤを組むのに大変なんでありますが、続いて自治省の方ですが、先般、議員定数違憲判決が、もう三回か四回も出てきているわけであります。これは行政府拘束されるわけでありますし、立法府拘束されるわけだと思うのであります。でありますから、当然行政府においてはかくあるべきであるというものを、国会なりあるいは行政府責任において、議員がどうこう言おうと言うまいと、そのこととは関係なしに、行政府責任において、この議員定数の不均衡、アンバランスを是正をする、かくあるべきである、それすらできないようじゃ行政府の存在がないのでありますから、行政府としては当然その判決に基づく是正というものの責務を負っておる。その責務を果たす立場においてどう対処しようとなさっておられるのか、一応お答えをいただきたいと思います。
  12. 大林勝臣

    大林政府委員 先般、大阪高裁からも御指摘のような違憲判決が出ておるわけでありまして、一昨年は東京高裁からも出ておりますことも御承知のとおりであります。そこで、私どもも、この宋数問題というのは国政上大変重要な問題というふうに認識をして、研究はしております。  ただ、事柄の内容が、定数是正の問題を扱います場合に、第一番目の問題としては、総定数をどうするかということを当然の前提として考えざるを得ません。第二番目の問題といたしましては、総定数基本が決まりました場合に、各選挙区別区割りをどうするかという問題に逢着するわけであります。したがいまして、総定数の問題をどうするかという問題自体が、これは国会つまり立法府構成自体の問題と認識しておりますし、さらには、それに基づいて区割りをどう考えるかという問題、これはやはり各党にとりましてこれまた大変重要な問題と認識しております。  そういうことで、総定数の問題なりあるいは区割りの問題、いずれも立法府構成自体に直接関係する問題でありますので、政府が先立ってこれについて考えるというよりも、まず立法府の方においていろいろ御議論をいただきまして、そういう御議論に基づいて勉強してまいるという方針をとる方が適当であろうと考えております。
  13. 沢田広

    沢田委員 そういうことではないのであります。行政府行政府として独自な拘束を受けている、立法府立法府として独自の拘束を受けている、これが三権分立のたてまえでしょう。だから、選挙区の定数なんというのは五百十一でいいんですよ。何もあなたが、ふやそうと減らそうと、そんなこと考える必要ない。現在の体制の中での不均衡をどう直すかという案をつくればいいのであって、それが行政府を縛りつけている判決の意味でしょう。いまの答弁、何ですか。普通のときには行政府が先行して何でもかんでもやっておいて、こんなときだけは何か逃げちゃって、議会の方が先にやってもらわなければ困ります、そんなことが行政府としての権威じゃないじゃないですか。  行政府としては、五百十一名です、こういうふうな現在の段階においてはこういう案になります、そういうものをやっぱり国民に対して回答しなけりゃならぬ義務を負っているんじゃないですか。いまの答弁答弁になってないですよ。行政府責任においてやるべきだ。定数をふやすとか減らすとかなんということは行政府で考えることじゃない。五百十一名が現在の定数なんだから、その定数の中において、三対一になるのか二対一にするのか、その判決に基づいて配分すればこうなる、こういうもので行政府として回答してもらうのが筋じゃないか。それが何か逃げて隠れて、立法府の方が先だ、立法府の方が先だ、そんなことで行政府の存在がありますか。自治省なんて要らないよ、それじゃ。(「沢田さんやるか」と呼ぶ者あり)私だったらちゃんとやってあげますよ。そんな、議員の顔ぶれを見ながらつくっているようじゃしようがない。ちょっと答えてください。
  14. 大林勝臣

    大林政府委員 もちろん、総定数をどうするか、あるいは各選挙区別定数がどうなるか、計算上はいろいろの想定をつくればいろいろ出てまいります。ただ問題は、御指摘のように、たとえば総定数を五百十一名で固定する場合に、それぞれの選挙区別定数がどうなるかという問題であります。つまり、現在は、御案内のように三人から五人というふうな定数配分で長年の間各選挙区の定数が決められておるわけでありまして、もしも三人ないし五人という定数配分というものを固持して考えるといたしますれば、必ず境界変更とかいろいろな問題が出てまいるわけでありまして、まずどういう方針をとるかということにつきまして行政府の方でイニシアチブをとるということは、事柄の本質上適当ではなかろうとお答えしているわけであります。
  15. 沢田広

    沢田委員 だから、事柄の性質上、議員は利害関係が多いから、やはりかくあるべきだというものを行政府が一応つくるのが私は行政府の義務だと言っているのだ。  もうあなたに言ったってしようがないから、やはり大臣じゃなければ話にならぬのかもしれぬから、これはまた別の機会にやるとして、行政府、そんなことでおっかなびっくりして出さないでいたのじゃ、国民に対する責任は果たしていることにならないでしょう。一応あなたの方では、行政府行政府として、これが理想的です、こういうようなもので、五名が最高なら五名で、あと選挙区をつくっていく以外にないのですよ。だから、そういうようなことで、あなただけ責めてもしようがないのかもしれぬし、それだけおっかないのだろうと思うから、これ以上詰めませんけれども……(「総理大臣候補」と呼ぶ者あり)それはまたそれで、これはほかの大臣に聞いても所管外だと答えられちゃえばそれっきりですから、それはやめておきますが、そういう形で、いまの質問は残念ながら後に譲って、次の問題に入っていくことにいたします。しかし、いまのは回答になっていないですよ。よくそれは覚えておいてください。  それでは、大蔵大臣経済企画庁長官、来ておられます。  いままでのような質問とはちょっとまた違うのでありますが、非常に景気が低迷をしている。それから貿易摩擦も厳しい。しかも、財政再建もやらなくちゃならぬ。特にまた増税なき財政再建である。こういう幾つかの制約条件の中で、当面の財政運営といいますか、経済の運営というものを考えていかなくちゃならぬ。一つは、マクロとミクロと言われておりますが、短期的な一つの展望、今年度どうするかということ。それからもう一つは、これからの将来に対する展望。これは、短い時間でこのことを言い尽くすことはきわめて困難であると思うのであります。しかし、いま私たちが報道関係等を通じて知り得る情報としては、大蔵省経済企画庁との間では、個人的にはどうあるかは別として、相当格差がある、相当流れが違う、こういうふうに国民の一人として感じとめるわけであります。  大蔵省の方としては、やはり財政再建が主である、これは至上命令である、そのためには、国民経済が若干停滞しようと、ある程度弱くなっても、それはがまんしていかなければならぬという発想のようであります。経済企画庁の方は、財政再建が一年や二年おくれても、何とかこの景気を回復していくということが必要である、こういうような視点に立っておられるように感じとめられます。  大蔵大臣経済企画庁長官が、いま言った制約条件の中で、いわゆる当面の対応としてはどうこれからなさろうとしておられるのか。具体的に言いますと、建設国債をここで出さなくちゃいけない、公共事業を前倒ししなけりゃならない。これもちょっと問題があるのは、この前の行革国会のときには、小さな政府にして、いわゆる国の投資経費というものはある程度減らして民間の活力によってやっていくのだ、政府のいわゆる公共事業その他によるてこ入れというものを経済の発展の基盤にするのではなくて、いわゆる民間の活力が主体になっていく日本の経済、そういうものを志向していくのだとこの前は述べられたと思うのであります。だとすれば、二百七十兆、二百四十兆、いろいろ言われておりますが、それの主要な中身というものは民間の設備投資であり、民間住宅であり、あるいは民間のいわゆる生産の上昇である。政府がここでごちょごちょやってみたところで、全体的な国民総生産が伸びていく要因にはほど遠い。そういうのがいわゆる政府の方向づけた行革だったと思うのであります。それがどうもいまは変わってきまして、何か公共事業を前倒ししなければいかぬとか、あるいはその他の要件がある。その辺は変わったのか変わらないのかということを含めて、当面する制約条件の中においてどのように対応してこの景気の後退というものを防ごうとなさっておられるのか、これはやむを得ないと見て運営をしていくのか、その辺を含めて、両大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 経済七カ年計画と中期展望との関係でございますが、これは、かねて私が申し上げておるとおり、経済七カ年計画は七カ年計画、中期展望は中期展望、それは全く無関係かと言えば、もちろん全く無関係ではございません。お互いにとっておる資料を利用しておるわけです。たとえば歳入の伸びというようなものは、七カ年計画どおりにもし経済が発展すればこの程度の歳入があるだろうという見積もりはそれからとっておりますから、そういう点では利用をしておるわけでございます。また、歳出の方は、これも現在の制度、施策のままでそれが移行すると仮に仮定すれば、行革も行わない、そういうふうな改革をやらない、いままでのとおりに、惰性で五十七年度ペースでずっと進むのだという場合の後年度負担の経費の推計はどうなるかというようなことで、これは一つの今後の中期財政見通しを立て、予算編成の検討の手がかりにするというためにつくっておるわけでございますから、似たようなところもございますが、必ずしも同じものではないということでございます。
  17. 沢田広

    沢田委員 いや、大臣、ちょっと居眠りしていたとは言わぬけれども、全然話を聞いていないわけです。だから記者団の人が笑っているのです。疲れておるのでしょう、連日ですからね。お疲れは同情に値するのでありますが、全然質問に合っていない。せっかくいろいろなことを私が述べたのを、もう一回言うと大分時間が減ってしまうのですよ。後ろからか何か聞いてください。では、経済企画庁長官がお答えいただいたことを踏まえて、今度は大蔵大臣、答えていただきたい。
  18. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は、財政と経済は表裏一体の関係にあると思います。いま政府の目標は、五十九年度に赤字国債をなくする、つまり財政再建をする、こういう目標を最高の政策として掲げておりますが、これを完全に実行するためには、やはり景気がよくならなければならぬと私は考えております。経済が活力を回復しませんと税収も減りますし、それから失業者もふえる、経済摩擦も拡大する、こういうことで財政再建そのものがやりにくくなってくる。こういうことでございますから、財政再建を成功させるためには、やはり経済がある程度の活力を維持しなければならぬ。そういうことを考えますと、財政と経済というものは表裏一体の関係にございまして、決して別のものではない。常に政策は整合性を持って進められなければならぬ、このように判断をしております。
  19. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、全然的外れの答弁をしたつもりではないのですが、要するに、中期展望というのは財政の中期展望でございますし、片方は経済の七カ年計画、そういうようなものを説明をしたわけでございます。  これは要するに、財政だけがよくなって、経済に関係ないとは言えないし、しかし経済の問題は財政には関係ありますが、そのままそっくり財政になるものではないという意味で申し上げたわけでございまして、いま河本長官がおっしゃったように、これは財政だけで、経済と無関係ということはあり得ないわけですから、やはり経済とは密接な関係がございます。しかし経済と全く同じに財政が動くということも、必ずしもそうではない場合もありますということを申し上げたかったわけであります。
  20. 沢田広

    沢田委員 では、若干細かく出題します。  経済企画庁長官、現在の景気の動向は低迷とか底冷えとかいろいろ言われております。何とか手を打たなければならない状態とお考えですか、いかがですか。
  21. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年の中ごろから景気は、緩慢でありますけれども回復の方向に進んでおったと思います。ただ、秋ごろから貿易が急速に落ち込みました関係で、内需はまだ十分回復してない、こういうこと等もございまして、経済は全体として見れば停滞ぎみである、こういう状態であろうと思います。やはり現在の経済の足を引っ張っております一番大きな原因は、世界全体が非常に不況である、第二次石油危機の影響が深刻にいま全世界を覆っておる、こういうところにあろうかと思います。  そういうことを考えながら、やはり現在のような状態が続きますと困りますので、何とかしなければならぬ、このように考えておりますが、さしあたりやれることは公共事業の前倒しをやるということぐらいでなかろうかと思うのです。いま関係各省と調整中でございます。金融政策もやりたいのですけれども、アメリカがああいう状態ですからこれはやれない。こういうことで、いま公共事業の取り扱いにつきましては関係各省で相談をしておる最中でございます。
  22. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣はこの見解についてどうお考えですか。
  23. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 景気の問題は非常に私も重要に考えております。おりますが、日本の経済も世界の経済と連動いたしておるわけでありまして、日本だけ全然独自なことをずっといつまでも続かせるということは実は非常に至難なわざでございます。だからといって、日本だけがいま失業の問題でもインフレ率の問題でも一番いい状態にあるわけですから、この状態を何とかして持続をさせていかなければならぬという点では全く一致をいたしておるわけでございます。  しかしながら、この段階においてたとえば大幅な景気刺激策をやるということは、金融的にも財政的にもできないし、また日本だけがそれを仮にやったとして、財政をさらに悪化させあるいはせっかく安定した物価が高騰の方に向かうということでもこれは非常に困る。日本は不景気でもありますが、幸いに物価が安定をしておるので、国民生活が諸外国よりも急激なインフレと失業には見舞われないで済んでいるということでございますから、そこらのところとの兼ね合いが実は非常にむずかしいわけでございまして、この程度であるならばそう急激に悪いということでもないから、住宅政策それからいま言った公共事業の前倒し等をやってみて、ともかく世界の景気が秋口からは快方に向かうだろうというのが大体一致したみんなの、これも見通しでございますがね、世界じゅうそういう見通しを立てておりますから、そこにつないでいきたい。もし、さらに世界の景気が立ちおくれるというようなことで日本の景気がさらに深刻化するというような見通しが出てくれば、そのときにはまたそのときに考えていかなければならぬ、ここ半年ぐらいこれでがんばってみれば大体所期の目的どおりでいけるのじゃないかなと私は思っておりますが、経済は生き物でございますから、それはその生きた経済に対応させて財政運営をやっていきたいと思っております。
  24. 沢田広

    沢田委員 いまの見解に企画庁長官はどうお考えですか。
  25. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在としてはいま大蔵大臣がお述べになったことしかやれないのではないか、とにかくやれるだけのことはやってみる、そして後半、世界経済がよくなる、それにつないでいく、民間経済の力が回復するのにつないでいく、こういうことでなかろうかと思います。
  26. 沢田広

    沢田委員 無理にすり合わしても、割れた茶わんはやっぱりはげるのでありますから、いまの見解の認識のずれといいますか、処方のずれというようなものはいずれ顕在化されるだろうと思いますが、一応いまやっとすり合わしているような気がいたします。  もう一つ、貿易摩擦の影響なんでありますが、貿易摩擦の影響、アメリカもきわめて強い調子ですし、ECもきわめて強い調子であります。これ以上、日本がいわゆる集中豪雨的とか言われております貿易条件をつくり出すわけにはいかぬ。去年の百七億から百九十四億ドルぐらいに今年度はまたなりそうだ、こういうようなことも言われている状況でありますが、企画庁長官としてはこれに対してどういうふうに今後考えておられるわけでありますか。
  27. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 貿易摩擦も非常に頭の痛い問題でございますが、やはり私はこの背景は、世界じゅうの経済が非常に悪くなっておる、世界全体の購買力が非常に激減をしておる、ここに最大の原因があろうかと思います。アメリカの自動車などでも一時期千二、三百万台の需要がございましたが、いま七百五十万台、こういう状態になっておる。これは一例でございますが、とにかく世界全体の経済が再活性化をする、力を回復する、これがもう前提条件になっておる、こう思うのです。これが実現をしませんと、何をやってもまたトラブルが再現をしてくるであろう、このように考えております。  いま江崎ミッションがアメリカに行っておられまして、アメリカ側といろいろ話し合いをしておられますので、その結果を見まして、政府として次に打つべき手は何かということについて、お帰りになってからよく相談をしたい、こう思っております。
  28. 沢田広

    沢田委員 いまの条件に大蔵大臣は、貿易摩擦の財政に与える影響についての見解はどうですか。
  29. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 企画庁長官と同じ意見であります。
  30. 沢田広

    沢田委員 次に、さっき私は質問しなかったのですが、経済企画庁長官、中期展望というのは大蔵大臣の見解では目安であって——前の行革のときには、中期展望というのは七カ年計画に連動する短期の一つ計画である、それから七カ年の方はいわゆるビジョンである、こういう認識も当時はありました。ところが、このごろだんだんこの中期展望が崩れましたものですから、余りはっきりしたことを言うと後で責められるというような考えもあるのでしょうが、中期展望は目安であってそれほどのものではないというようなことを言われているのであります。そこで経済企画庁としては、七カ年計画と中期展望との位置づけというものについてはどういうふうにお考えになっておられるのか。これは一緒になるのか一緒にならないのか、それぞれひとつお答え——さっきそれを大蔵大臣が、私は質問しなかったのですがお答えいただいたわけで、経済企画庁長官、お答えいただきたい。
  31. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 七カ年計画というのは、昭和六十年度の望ましい経済の姿を設定いたしまして、それを実現するための政策手法はどうすればよいか、こういうことを中心にいろいろ作業をしたのが七カ年計画でございます。財政の中期展望というのは、もちろんそれも参考にされるでしょうけれども、先ほど大蔵大臣が言われましたように、また別の角度からいろいろな前提を置いて作業をしておられた、こういうことでございまして、立場が違うものである、このように思います。
  32. 沢田広

    沢田委員 では、異質のものである、そういうふうに考えていいですか。
  33. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 もちろん、財政中期展望をおつくりになるときには参考にされたと思います。しかしながらそれだけではございませんで、現存しておるいろいろな制度等から財政試算をはじかれて出されたものであろう、このように思います。
  34. 沢田広

    沢田委員 そこで、では中期展望は目安と言われましたけれども、五十七年、五十八年、五十九年、六十年、目安になる材料は、増税なき財政再建、要すれば赤字国債をなくすための中期展望というふうに解釈してよろしいですか、それともそれ以外に何か中期展望の持つ意味はありますか。
  35. 松下康雄

    ○松下政府委員 中期展望自体のつくり方の考えは、大蔵大臣からも申し上げましたように、五十七年度の歳入歳出に係る制度をそのままと仮定をいたしまして、その後の物価とか年金受給者の数とか小学生の数とかそういう指標に基づいて、これを将来に引き伸ばしてその姿を見ているわけでございます。したがいまして、歳出は歳出でそのように計算をいたし、また歳入は現在の税制をそのままと考えまして、これも将来に引き伸ばしてこれを見積もっておりますので、その間に不一致が生じております。もう一つ、公債につきましては、いまも御指摘ございましたように、五十九年度に特例公債をゼロにするということで、これは漸減の数字を挙げてございます。  一方でそういうふうに歳入と歳出の間の不一致がございまして、これを毎年度の予算編成では何らかの方法で解消して、歳出歳入を突き合わせねばならないわけでございますけれども、その場合の手法がどうなるかは、その年度の経済情勢なり、財政事情なり、いろいろの現実の情勢を踏まえまして、予算編成の過程で結論を出していくということでございますので、具体的にこういう手法で不一致を解消するのだというところまで申し述べておらないのが中期展望でございます。
  36. 沢田広

    沢田委員 私は、中期展望の持つ意味は、赤字国債をなくすだけがとりあえず中期展望の目標、それ以外に何の目標があるのか、何を意図しているのか、それをお答えいただきたい。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 そこで、要調整額が出てくる。要調整額をどうこうしろと私はいま言っていない。中期展望を出した意味は、何と何を目的として出したのか、簡潔にひとつお答えいただきたい。
  37. 松下康雄

    ○松下政府委員 これは五十九年度に特例公債から脱却をするという方針で今後財政運営を進めますときに、歳入歳出の状態は現状をもととすればこのような情勢になることが推定をされます、したがいまして、特例債脱却のための政策方針を立てていくその前提となるべき将来の情勢をお示しをした、そういう趣旨のものでございます。
  38. 沢田広

    沢田委員 いまとさっきの言葉の中に、五十七年度の制度を継続していくとすればというふうに言われましたね。そのとおり解釈してよろしいですか。
  39. 松下康雄

    ○松下政府委員 これは、将来、制度の改正、合理化というようなことは当然やるべきことでございますけれども、現在の時点ではまだ決定しておらないことについてはこれを取り込んでございません。ただ、細かくなりますが、この歳出の見積もりの中に予備枠というものを置いてございます。この予備枠というものは、五十七年度の制度そのままということで将来進む、それだけで歳出としては十分であるかどうか、何らか新しい施策も必要になることも想像される、そういったものに対してある程度の財源の引き当てをとるとすればどうなるかという意味でお示しをしてございますから、その中に将来のいわば追加の政策の可能性の分のゆとりが若干見てある、歳出についてはそういうことでございます。
  40. 沢田広

    沢田委員 五十七年度の制度というものが継承されるとすれば、五十七年度予算の中にも持つ問題が若干あるわけですが、去年も大蔵大臣、人件費を一%しか組まなくて、それで九月の国会でも大変いろいろ苦労したという経緯があります。今日、政府は経済の見通しで消費者物価を四一七%で見ている。卸売物価も三%と、一応政府の言うとおりになったとして、見ている。最終消費も住宅は一〇・四なんという数字を見ておりますが、これもいろいろ各委員からも指摘をされているところでありますから多くを申し上げません。  とすれば、一%の予算を組んでいるというのは、五十七年度全体経済計画というものを見ての数字ではない。言うなら当て馬である。去年と同じような、一応予算上の形として当て馬として組んだのである、こういうふうに理解してよろしいですか。そうすると、五十七年度予算は当然その分この経済の見通しだけある程度ふくらむ。経団連が言っているように春闘で七%というような賃上げが行われると仮定すれば、当然一%では間に合わなくなるということは今日時点において明確でありますね。七%が六%になろうと八%になろうと、一%でないことだけは間違いない。ということになれば、五十七年度そのもののその制度の一つの中身として、一%として組んだこと自身に無理があるのじゃないのか。あるいはそういう上昇というものに対してわざと抑えていこうという意向も含まれているのかどうか。あわせてお答えをいただきたいと思います。
  41. 松下康雄

    ○松下政府委員 中期財政展望におきましては、人件費の計算はただいま御指摘がございましたように五十七年度予算に給与改善費を一%計上してある、それをそのまま使ってございますので、各経費の中に入っております給与改善率は毎年一%でございます。ただ、それでは結果的にもっとベースアップが予想されるところであるので、中期財政展望自体の歳出は不十分なところがあるのではないかという点につきましては、実は先ほどちょっと申し上げました予備枠を組みましたのは、そういうふうに最初の計算で織り込むことができないいろいろな事情にも対応できるようにという点でつくったわけでございます。私ども、今後を見通してベースアップが一%を現実に超えることはもちろん十分あり得ると考えるわけでございますけれども、しからば今後のベースアップの率がどれだけになるかということ、これはやはり労使の交渉から決まってまいります民間の給与がもとになって、さらに公務員の給与が決まってくるということでございますから、私どもとして、賃上げ率は何%ということをこの計画の中にどうも組むわけにまいらないということから、こういう処理になっているわけでございます。
  42. 沢田広

    沢田委員 そうすると、当て馬という言葉を使いましたが、前年度一%であってことし一%ということは、将来も上がることが予知されるけれども、その上がる分が明確でないから、そういうことの考えは持っているけれども当面前年度と同じに一%で組んだんだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  43. 松下康雄

    ○松下政府委員 歳出需要の見通しとしましては、そういう考えで組んでございます。
  44. 沢田広

    沢田委員 財政法上は若干問題があると思うのでありますが、そういう予定で組んだとすれば、たとえば九月ごろ人勧やあるいは裁定やその他が出てきたときに、予算が一%なんだから実現できないということにはならない。当然その予想値は、若干最終の数字が不確定だから当面一%で組んだのであって、そのことは当然上がるべきものは上がったようにするということで、これは大蔵大臣でありますが、政府としては、そういう前提で組んだと仮定をすれば、八月なり九月なりになって、民間賃金が決まり、人勧が出、あるいは仲裁が出てきた場合には、前回のように国会の議決というようなことでなしに、政府自身の手で処理していくものだと解釈してよろしゅうございますか。
  45. 松下康雄

    ○松下政府委員 私、先ほどからお答え申し上げておりましたのは、財政の中期展望で、各年どういう考え方でどういう数字でこれが組まれているかということを申し上げていたわけでございます。五十七年度の予算につきましては、給与改善費としましては五十六年度に引き続いて一%分を計上いたしてございますけれども、現実にこの給与改善がどうなるかということは、実際に人事院勧告が行われました時点で、その後の財源事情、経済情勢その他を総合的に勘案をいたしまして、政府として全体的な討議の上でこれは決まってまいるものでございます。
  46. 沢田広

    沢田委員 さっき制度の継続という言葉を言われました。制度の継続ということになれば、それが上がれば当然年金の方も、軍人恩給を含めまして、年金それから公務員給与、さらに加えて厚生年金、消費者物価も上がるわけですから、当然それにスライドをしていくという原則が継続されます。そうすると、五十八年度三兆三千七百億という要調整額に、加えれば当然一兆円程度ふくらんでくる。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 あるいは五十九年度にも同じように、それを歳出カットでやったと仮定をいたしましても、さらにそれは翌年度もいまの七カ年計画の成長率で見ていけばそうなってくるということが制度の継続であります。ですから、そうすると五十八年度、五十九年度に対する展望というものは、少なくともその分だけは修正されていかなければならぬ。それ以外にもありますよ。それ以外にもありますけれども、そういうことは当然起こり得る、可能性を持っているというふうに理解してよろしいですね。
  47. 松下康雄

    ○松下政府委員 この財政の中期展望の性格それ自体は、最初から申し上げましたような一定の前提を置いて将来の財政の姿を投影して眺めてみるという見通しでございますので、これが各年度につきまして、財政運営はその年はこうやっていくんだという方針を決めたものでないことは、最初にお断りしたところでございます。そういったものとしまして、各年の実際の財政の決まっていきぐあいというものとは別の考え方の部分がございますけれども、ただ、ただいま御指摘のありました給与なり年金なりについてはどうかという点を御説明申し上げますと、給与につきましては一%の改善費でございますけれども、同時に予備枠があるということを申し上げました。年金につきましては、現在の制度が、たとえば厚生年金は物価スライドというような制度でございますので、七カ年計画で想定する消費者物価の率によって、年金そのものはあらかじめ伸ばしてこれは計上してございます。そういうことでございますので、ただいまの給与あるいは年金等の増加によって出てくるものというのは、物の考え方としましては、この計算の中には予備枠を込めたところでは一応取り込んで計算をしてあるということになってございます。
  48. 沢田広

    沢田委員 時間と大臣の都合の関係で、どうもちょっと詰めが足らないのでありますが、農林大臣がせっかくおいでになっていただいておりますので、さっきの経済摩擦に対応する経済企画庁長官の答弁では、江崎さんが行っているから帰ってきてからだなんて言っているわけですが、すべてそういうふうに解釈してよろしゅうございますか。農林大臣の方の影響も含めあるいは関税を含めて、これからの貿易摩擦の解消問題は、江崎何ですか、代表というのですか、視察団というのですか使節団というのですか、わかりませんが、それが帰ってきてからそれから対応するんだ、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  49. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 いま経済企画庁長官の御説明にもありましたとおり、貿易のインバランスを解消するためにはやはり何としても世界経済の再活性化が一番重要だと思うのでございます。しかも、それとあわせてもう一つは、わが国としてはやはり内需を拡大して、貿易の輸出ドライブのかからぬ経済運営をしていくということも重要な要素だと私は考えております。  そこで、対外経済摩擦解消のために、昨年の暮れ御承知のように対外経済閣僚会議を開きまして、五項目にわたる対外経済対策を決定して、その対策をいま協議を進めているわけでございます。沢田委員承知のように、関税率の前倒しをすでに決定してあります。さらにまた、輸入手続の緩和等も進めているわけでございまして、私たちはやはりこういうような状況を、政府の機関を通じてもアメリカに貿易の拡大に対する努力を理解していただく、もう一つは、私の立場としては、日本農林水産業の実態というものを極力アメリカに理解していただくという努力をしてまいらなければならないと思うのでございます。  でございますから、もちろん江崎使節団がお帰りになってからいろいろな問題は出てまいろうと思いますが、私としては、いま対外経済摩擦に対しては農家あるいはまた農業団体が非常に関心と不安を抱いておるのでございますので、できるだけ残存輸入制限品目を含めて余りこれには手を染めていただきたくないというのが私の心境でございまして、でございますから、貿易全体の中で対外経済摩擦を解消していただきたい、これが私の考え方でございます。
  50. 沢田広

    沢田委員 やはりこの対外経済摩擦の解消のためには農産物が一番影響力が大きいという常識で、農林大臣においでをいただいたわけです。これは農産物はそのまま置いておいてそれ以外で解消してほしいということなんでありますが、なかなかアメリカの都合はそうはいかないのじゃないかと思うのですね。だから結果的には、その辺をどういうふうに調整をされるかわかりませんけれども、十アール当たりの農地価格にすると、わが国のに対して三%ぐらいの値段ですね。あるいは二戸当たりにしても百四十三倍という条件、国民一人当たりにしても四十倍、あるいは農用地にしても七十六倍。これは西ドイツ、小さな国、イタリアなんかに比べても物すごく非生産的な条件になっていますね。だから、日本の農業の生産性というものを高めなければ、まあ3Kの一つですから国鉄も同じでありますが、高めなければ、結果的には、だめだだめだと言ってみても太刀打ちできなくなってしまうのじゃないかという心配があるわけですね。その点についてはどのように対応なさろうとしているのか。一方では、そのままの状態でいたんではどうにも太刀打ちできない。といって、だめだだめだと言っていけば、今度は輸出に影響が出てくる。ほかのものを今度はボイコットされるという対日批判に変わる。それをどういうふうに調整なさろうとしておるわけですか。
  51. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 いま農林水産省としては、八〇年代の日本農業の方向その他の長期的な目標を掲げて農業の生産性の向上を図る。ことに国内で生産できるものはできるだけ国内で賄うという基本、そうして国民の需要の動向に応じて農業生産の再編成を図る。そのためには、何としても技術革新、開発普及というものが一番必要でございます。新しい農作物をつくり上げること、それは同時に農業の新しい道を開くことに相なりますものですから、そういう点を積極的にいま進めている。  もう一つは、この前の国会で農地三法が成立いたしましたので、特に農用地利用増進法というのを基本にして経営規模を拡大していくというようなことを進めて、いま価格の面でも確かにアメリカとはなかなか対抗できないと思いますけれども、少なくともEC並みの価格を維持するように私たちは努力をしていかなければいけない。また、質の面でも高い農産物をつくるようにしてまいらなければいけない。  そのためには、もう一つ非常に大きい問題は米の過剰なんですね。この問題については、三Kの大きい問題の一つでございますが、私たちは十カ年計画でいま二期対策を進めておるわけでございます。これまでは、どうもこの対策については緊急避難的な考え方を農家、団体の方が示してきたのでございますが、最近に至って、この問題は新しい農政をつくるための一つの方向なんだ、これを土台に新しい日本農政というものをつくらなければならないという意欲が非常に強くなってまいりましたので、そういう点を含めて、これからいま御指摘のこの日本の現状を体質を変えていくということに積極的に進めているということでございますので、対外経済摩擦という問題は、そういう非常に積極的な農政を進めているだけに、私たちとしては非常に注意して進めていかなければならない問題だ、こう考えておるのでございます。
  52. 沢田広

    沢田委員 時間の関係が若干ありますから、農林大臣の方にはその対応に遺憾なきを期すことを心から期待をいたします。  さっき御三方の答弁では、いずれも内需の拡大ということが異口同音に出ました。これは、貿易の方を減らす方法も一つありましょう。それから、現在のような内需の拡大に公共事業の前倒しをするという方法もあるでしょう。しかしこれも、前期八割なんて出っこないですね。地方団体だって原資がないし、政府だって原資、現ナマがなかなかないのです。ですから結果的には、四月、五月に出ようなんということは、これは言うべくして——設計だってできっこない。夏になれば雨になるし、これはそうは言うべくしてなかなかむずかしい。そうすると、この傾向は続いていかなくちゃならない。まだ地方団体は、これから予算編成をして組んでやるわけですから、三月末のいわゆる会計閉鎖期まで仕事が終わるか終わらないかで、いっぱい詰められている状況にある。それを新年度の前倒しなんていま言ったからといったって、これは十月ごろでなければ発注していくわけにはいかない、道路の掃除とかなんとかいうのは別ですが。そういうような状況だと思うのです。  そこで、じゃ貿易の摩擦を解消して一%貿易が減った影響がどのぐらい出てくるか、あるいは個人の減税が一兆円行われたらどういうふうに内需の拡大に影響してくるか、そういう検討は、この公共事業の前倒しだけでなくて政府としては検討されておるのですか、されたことはないですか、もう耳もかしませんか。これは大蔵大臣ですか、総理がいないのですから大蔵大臣がお答えいただくのと、経済企画庁長官がお答えいただく。  たとえば、貿易摩擦によって貿易が一%少なくなってきた影響、それから個人減税を一兆円やった影響、あるいはその他のそれぞれの条件がある。公共事業の前倒しによる影響、それを、それぞれの国民の総支出あるいは失業率あるいは在庫、卸売物価、そういうものに基づいてある程度調査されたかどうか、御検討なさったかどうか、されたならば、その結果についてお答えいただきたい。
  53. 井川博

    ○井川政府委員 公共事業の前倒しにつきましては、現在関係各省で検討中でございまして、どの程度前倒しになるか最終結論を得ておりません。したがいまして、その経済効果ということを試算したことはございません。  それから減税でございますけれども、われわれといたしましては減税なしという前提でございまして、その効果を試算というところまではいたしてございません。  対外問題でございますけれども、それだけ外需が減るということは、他面、内需をどう見るかというふうな問題がございまして、大変むずかしい問題がございます。しかしながら、一方において外需、すなわち輸出がそれだけ減るということが内需の拡大によって出るということであれば、むしろ経済成長としては減らないというふうなかっこうになるわけでございまして、そのときそのときの情勢によって違うのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  54. 沢田広

    沢田委員 いま、この景気を何とかしなければならぬという状況で、それぞれが——それは幾ら政府が考えてなくとも、やはり政策目的として景気の低迷から脱しなければならぬということで、あらゆる方法を考えるのが当然政府責任じゃないですか。それは全然政策意図がないから考えないのだといって、そのままほうっておける条件にないのでしょう、いまの経済が。だとするならば、一兆円減税なら一兆円減税によってどういう内需の拡大につながるのか。野党が言っているから耳をかさないというのではなくて、それにはこういうマイナスがあり、こういうプラスがあるということをやはり国民に示す義務があるのじゃないでしょうか。全然考えてないというのは、いままで不勉強だったのじゃないですか。もう一回お答えください。
  55. 井川博

    ○井川政府委員 影響について試算はいたしていないわけでございます。しかしながら、減税をやった場合というふうな問題でございますけれども、それは従来からいろいろ御議論が出ておりますように、それだけ公的負担が少なくなるという意味において、一方において消費を拡大するという効果があることは事実でございます。  他面、同じ金を今度は政府の支出、公共事業として出した場合、これはいろいろモデル等々によって違いますけれども、同じ金を今度は公共事業で出した場合は、それはそれなりに従来のモデルから言えば減税以上の効果がある。と申しますのは、減税ということになりますと、それがまるまる一〇〇%消費には回らないというふうなこともございまして、そういういろいろな筋道の考え方はございますけれども、これを試算までいたしたことはございません。
  56. 沢田広

    沢田委員 これはいろいろなところで試算もされているわけですね。たとえば、私の方も一兆円減税だけを言うのでは悪いと思うから両方言っておきますが、一兆円減税でマイナスになってくるところは、デメリットとしては公的バランスが減るということ、それから経常収支の面に影響が出ること、輸出がマイナスになること、あるいは在庫がやはりマイナスになること。プラスの面で考えれば、住宅がふえる、あるいはそれ以外には、一番大きいところではやはり消費が拡大するということ、あるいは工業生産が伸びる、こういうふうなところではメリットとして評価される。  じゃ貿易を一%縮小したらどうなるのかというと、総体的に変わらないのは失業率。あとは大体皆マイナスになって、一番大きいのが経常収支にやはり大きく影響することと公的バランスが減ることである。  だから、貿易摩擦に対応して一%コントロールする、縮小するプラス・マイナスと、一兆円の減税のプラス・マイナスを比較すれば、やはり一兆円の減税のプラス・マイナスの方がより効果的である。これは数字が示しているわけです。これは四半期ごとの数字になりますが、それ以外の評価もある。これはわれわれ個人が集めている資料の限界なんであります。  政府は、給料をもらってそれぞれやっているのですから、もう少しちゃんとしたそれぞれの評価というものの結果が出てきて、そして国民の前に示して、だからできないんだとか、だからこれがいいんだとかという国民の認識としての選択を認めていけるような、それは耳をかさない、資料を出さないというような形じゃなくて、こういうメリットもあればデメリットもあります、だからこうですという一つの説得性といいますか、そういうものを政府は行う義務があると私は思っていました。そういうことが全然行われていないということはきわめて遺憾であります。野党が一兆円減税ということをもしこれから言って、遅まきながらこれからやる意思がありますか。こういうプラスがあり、こういうデメリットがある。まあ財源がどうなるかという問題ももちろんあります。ありますけれども、いまの景気の低迷を脱却するために必要な要件として、こういうものが考えられる要素にならなければならぬだろう、そういう必要性についてはいかがお考えになっておりますか、お答えください。これは大臣でもあるいは担当者でも結構です。
  57. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 お答えいたします。  一般的なことになりますけれども、減税の効果、これは金額は別としまして、減税いたしました金というのは、個人に入ります際に貯蓄という段階を経て消費に行くわけであります。貯蓄の率が高いことは御承知のとおりでございまして、日本の場合二〇%に近い一九・五ということで、米国の五とか、英国が一〇とか、西独十三・八、フランスがやはり……(沢田委員「それはもういいです」と呼ぶ)そこはずっと違いますから、貯蓄の方に行って、消費に行くところが影響がそこで少ないということは言えるわけです。いまのは結局、消費の方に響いて経済の伸びの方に影響が小さいということを、貯蓄の段階を経ておるから私は申し上げておるのです。  それからもう一つは、税収へのはね返りでございますけれども、はね返りとして税収の方に、再建の方にプラスになるじゃないかという御意見がありますけれども、これはいろいろ計算というか、われわれ勉強いたしておりますけれども、一千億減税いたしましても、せいぜい大きく見ても百億ぐらいしか税収にはね返らない。これは租税負担率が低いからであります。そういうことがわれわれ検討している過程では出ます。  さらに減税の財源……(沢田委員「もういいです」と呼ぶ)いや、ちょっと御説明をしておるところでございますが、歳出の方を切れば、歳出の方は乗数効果が大きいわけでありますから、特に投資の方との比較で考えるべきである。  それからもう一つは、増税で埋める、こうなりますと、企業増税という形では経済にマイナスになるという問題が同時にございます。それでは公債、こうなりますと赤字分が大きくなる。先ほどのように、はね返り税収があってもギャップが大きくなるという問題があることは、検討いたしておるわけであります。
  58. 沢田広

    沢田委員 私は、計算しているかどうかということを言ったので、計算していないんで思いつきで答えられても困るから、それはそれでいいです。  次に、国鉄が一番この予算委員会、行革国会を通じていろいろと言われてきましたし、何か行革委員会でも、三Kのうち、健保ももう手がつかない、米の方も手がつかない、まあ国鉄だけは目のかたきというわけじゃないでしょうけれども、まないたの上に載せてたくさん料理しようという意気込みでいるように仄聞をいたしております。国鉄を何とか片づければ行革はほぼ終わったんだなんという暴言も聞かなくはありません。  まずそこで、きわめて短い時間でありますが、幾つかの問題についてお伺いをしながら、いわゆる国鉄というものを国民的に見てこれからどう考えていかなければならぬか、これもまた当面の問題、長期の問題と両方に分かれるのでありますが、当面どういう対応が必要なのか、このことがやはり、ただ赤字だからけしからぬと言っているだけでは済まされないと思うのであります。そういうようなことで若干お伺いをしていきたいと思います。  ただ、前提として、国鉄が公共企業体になって——私はいま総裁がおられるからといって高木総裁だけを指摘しているのじゃなくて、歴代の総裁を含め、歴代の役員を含めて経営者能力といいますか、企業者の責任というようなことについてきわめて甘い発想に基づいて今日まで運営してきた、その責任はきわめて大きい。もっと言うならば、早くから、こういうことが世に指摘される以前にみずからを正し、みずからをやはり是正をしていくという努力、そういうものが前提としてなかったことはきわめて遺憾だと思います。それは前提としてつけ加えながらお伺いをいたしてまいりたいと思います。  まず、長期の負担である十六兆四千二百七十四億、そう長い時間聞く必要はないのでありますから、簡単に言っていただきたいのですが、この十六兆四千二百七十四億という長期の借り入れをしなければならなかった原因はどこにあったのか、お答えをいただきたいと思います。
  59. 高木文雄

    ○高木説明員 借り入れの主たる必要性は、一つは建設関係でございまして、利子補給はいただいておりますけれども、道路その他と違って、ほとんど全部が借入金でやっておる。その中で、たとえば車両の取りかえのようなものは、これは本来借り入れでいいのかもしれませんけれども、路盤費といったようなものについては全部借り入れというのは本来は相当無理があるということが一つと、それから近年は赤字が単年度に発生しておりますので、そのつなぎを借り入れによっておるということでございまして、大別して建設と収支補てんといいますか、補てんではありませんが、つなぎといいますか、そういうものが累積していったということであろうかと思います。なお、最近では、借り入れが金利を生みますから、金利負担にまたつながっていくという問題ももちろんあるわけでございます。
  60. 沢田広

    沢田委員 それから、われわれはよく構造欠損という言葉を使っております。いわゆる公共企業体でありますから、企業性と公共性というものが併存しているわけであります。極端に言えば、企業性を発揮するところはどこなのか、それから公共性を生かさなければならないところはどこなのか、その線引きが非常に不明確である、そのことによっていろいろ見方が変わり、対応が変わってくるというふうに思います。  そこで、構造的な欠損と言われているものはどういうふうに国鉄としては——この分はどうにもならない、国鉄で対応できないものだ、これは政府に考えてもらう以外にないんだ。だから、たとえば上越新幹線あるいは東北新幹線が通ると約四千億以上の赤字が出る、これは何も、そんな赤字をしょって国鉄が運転することはないじゃないですか。言うなら、政府に返上しちゃったらどうですか。こんな四千億の、これ以上赤字をしょって上越・東北新幹線を動かすわけにいきませんというふうにお断りしたらいかがでしょうか。そのことを含めて、ひとつ構造的な欠損についての見解をお伺いいたします。
  61. 高木文雄

    ○高木説明員 東北・上越の新幹線につきましては、開業当初、いまお示しのように資本関係費の負担が約四千億というオーダーになります。これはいかなる場合にも、鉄道の場合には初期投資額が非常に大きくなりますので、開業後数カ年は赤字にならざるを得ないわけでございます。これは国鉄に限らず、公営の地下鉄それから私鉄の場合も同様でございます。これが恒久的に赤字であるというのであれば、いまお示しのように私どもとしてはお断りをせざるを得ないことになりますけれども、東北・上越については、十年以上かかるとは思いますけれども、いずれ収支が償うだろうという見通しを持っておりますので、これが構造的な赤字要素だとは考えていないわけでございます。  構造的な赤字として、いまわれわれの手ではどうもならぬ状態になっておりますのは、私ども特殊な言葉遣いをしておりますが、特定人件費と呼んでおるものが主体でございます。  そのほかに、地方交通線につきましては、もともとお客さんの少ない地域ではそろばんがとれないわけでございますので、しかしこれはなかなかやめるわけにもいかないということからいたしまして、現在でも補助金をいただいておりますけれども、地方交通線が特定人件費に次ぐ大きな構造的な問題というふうに考えております。
  62. 沢田広

    沢田委員 行管庁長官、お忙しい中をおいでいただいております。順不同になりましたが、ちょっとお伺いをしてまいりたいと思います。  行管庁から呈すると——聞いていなければいいです。次に行きます。  構造欠損の中身は、一万人の退職者を上回る分を大体考えまして一千七百八十億、あるいは共済年金の普通の条件よりは上回る分として千四百八十億、地方交通線関係で三千四百億あるのでありますが、その八割が一応そう見て二千三百七十億、地方バス百二十億、通学定期、通勤定期、そういうもので六百四十億等々と言われているわけです。一番大きいのは総額十六兆、長期十一兆と言われている過去の借金の利息だけで七千七百億、減価償却四千億ちょっと、三兆円の営業収入で、普通の会社でこれを払っていくということは、普通条件としては考えられない。七%として七千七百億の利息を払っていくわけですから、これは考えられない。だからこの点は国の財政で賄うか、自己の財源を捻出するか、国鉄としてはその二者選択に迫られてきている、あるいは両方ということになるかもわかりません。ですから、そのためには、運輸大臣、国の財政が厳しいんだから国の出し前は少なくしたい、そのことはわれわれも理解します。とするならば、やはり自主的に金を生み出していく力、権限を大幅に国鉄に与えて、そして企業性を発揮させるところはどんどん伸ばす。そして公共性の穴も埋めさせながら、同時に利益を生んでいけるような組織というものをつくらせてやらなければだめだと思うんですね。その点、運輸大臣の御見解をひとつ承りたいと思うのであります。
  63. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 先ほどの、最初の国鉄に対する考え方で、ちょうどあなたがおっしゃいましたように、公共性と企業性と申しますか、その二つの論点が過去十年間続いてきて、やはり公共性にウエートが置かれた対策がずっととられてきたわけでありますが、いま財政再建という問題のみならず、日本の全体の問題から見ての企業性というものをもう少し色濃く出そうという観点からの国鉄再建問題が非常に議論されていることと私は認識しております。  しかし、この公共性と私企業的な企業性というもののどこに線を引くかということが、やはり先ほど申し上げましたように、過去何年にもわたって公共性主体の施策が打たれてきたわけでありまして、そこにいろいろな問題がある。たとえば、いま御指摘の年金の問題、あるいは退職金の問題、あるいは地方交通線の問題等々、国鉄総裁が御答弁を申し上げたような形になっておることも事実でございまして、いま私はこうした問題を、委員の御指摘のように、どこまでを国鉄自体が負担し、どこまでを国が負担し得るのかというような問題について、いろいろと検討しているところでありますが、さしあたり、年金問題につきましては、大蔵省基本問題研究会という年金に対しての研究会が組織されておりまして、今日まで二十回以上の会合を重ねてきておるわけでございまして、私といたしましては、一応この年金問題につきましては、こうした政府内部にある組織を通じての解決策をまず第一義的に求めたい。  しかし、それがどうしてもできない場合には、さらに国鉄の経営体自体の中から、これをどのようにしてカバーできるのかというような問題も考えざるを得ないかとも思いますが、一義的には基本問題研究会においての処理ということに重点を置いて、現在その成り行きに対して関心を払っているところであります。
  64. 沢田広

    沢田委員 時間がきわめて短くなりました。総裁なり運輸大臣の方で結構でありますが、いまもしこの長期の債務、それから構造欠損というものがなかりせば、国鉄の経営はどうなっているのか、なったのか。向こう二年なり三年の経過でいいです。長期債務というようなもの、それから構造欠損というものがもしなくて、国鉄経営は去年とことし、おととしと比較してどういうふうな、ますます奈落の底へ落ち込んでいるのか、あるいは幾らか横ばいになっているのか、あるいは幾らか努力をしているのか、その結果の資料を出していただきたいと思いますが、総裁、いかがですか。
  65. 高木文雄

    ○高木説明員 もう少し細目を伺った上で資料を調製いたします。
  66. 沢田広

    沢田委員 先般、この委員会あるいは行革委員会でも、国鉄の管理者の自殺率が非常に高い、こういう御指摘がありました。四人ということです。それは何か労使の紛争が原因で、その演説の中身としてのつながりとしてはそういうようなかっこうになっていたと思うのです。総裁もそういうふうに受けとめていたと思うのですが、あと四分間ですから、簡単にお答えいただきたい。そう受けとめていたか、それとは別と考えていましたか、どっちですか。
  67. 高木文雄

    ○高木説明員 必ずしも労使間の問題だけではないと思います。いままでほかの職にあった者が助役というようなことになりましたことによるストレスというようなものもございましょうし、それから、実は故人のことでございますから余り立ち入ったことは申し上げにくいのでございますけれども、やはりいろいろな家庭問題といったような問題もいろいろと絡んでおるようでございます。しかし、いずれにしましても、そういうところについては、紛争が多い職場に対してもう少し局等からのバックアップが必要であったなという反省を持っております。
  68. 沢田広

    沢田委員 私は一応調べてみました。これも故人の名前が出ることはどうかと思いますから、事実なのかどうかということで確認してみた。それで、職員はやはりこの年度四十何名か自殺されているんですよね。だから、全国の自殺者の比率の割合からいけば、四十万の中の四十何人ですから、その比率は別として、管理者は四人で職員は四十何名か死んでいるんですよね。この四人が全部、この前の演説の中のような労使の紛争のものかというと、そうじゃないんですね。総裁の説明の仕方というものは、何かこれが労使に巻き込まれて、悩みに悩んで管理者がお亡くなりになったというふうに皆さん受け取ったと思うのです、私もそう受け取った一人ですから。ところが、実際に調べてみるとそうじゃない。だからこの辺の説明はやはりきちんとしていかなくちゃいけない。  ただ、故人のプライバシーの中に立ち入って、目玉に指を突っ込むような話はここでもしたくありませんから言いませんけれども、少なくともそれが主要な原因であったとは思われない。一つの例ぐらいはいいのじゃないかという気もするからちょっと言いますと、奥さんが亡くなられた後で奥さんをもらった。その奥さんがほかに男性をつくった、あるいはサラ金みたいなところから借金をしてどうにもならなくなった。そういうような例が主要な原因になっているのです。あるいはもう一つの例は、六日に転勤してきて八日なんだ。二日間だ。しかも、五十六年のときなんかはマル生とかなんとか起きている時代じゃない。六日に転勤してきて八日に亡くなっている。その間に、労使の紛争なんか起きっこない、二日しかたっていないんですから。そういうことが、いかにもそれに連動しているがごとく喧伝されることは、これはきわめて遺憾だと思うのでございます。  これはつけ加えて、後でまた内容を、個人のプライバシーを侵害しない程度において、ひとつ明らかにしていただきたい。  いよいよもう時間になりましたので終わりますけれども、運輸大臣、この間経営改善計画をつくりました。政府としては、朝令暮改じゃないけれども、これから臨調が出ようが、これでとにかく国鉄を再建してみろということで国会でも決めた、臨調がどう出てくるかわかりませんけれども、われわれの国会としては朝令暮改ということは許されるべきではないと思うのですね、だからこれでとにかくやらせる。さっき言った企業性を生かすところは生かす、公共性を生かすところは生かす、もちろん努力することは前提として、そういう方向でやっていただけるのかどうか、最後にお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。総裁の方もお答えがあれば、一分ぐらいですから、簡単にお答えいただきたい。
  69. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 経営改善計画はぜひとも実施をしていきたいというつもりでおります。
  70. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもは、構造的問題についてはなかなかわれわれの手ではできないと言っておりますけれども、反面幹線等につきましてもまだ赤字があるわけでございますので、これを何としても、重要部分というか、お客さんのかなり多い部分については、収支償うように取り組んでまいります。
  71. 沢田広

    沢田委員 時間だから終わります。
  72. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて沢田君の質疑は終了いた  しました。  次に、渡辺貢君。
  73. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 先日来、本委員会におきましても、公共事業の発注をめぐっての談合の問題あるいは不正入札、高級官僚の天下りによる持参金つきという実態、さらにはそういうものを背景にしながら政界工作が行われている、その帰結として、選挙等における選挙資金が寄附という形で国会議員等に寄附をされているという事態が明らかになってまいりました。本来清潔であるべきこうした政治の中に大変大きな腐敗が起きているという事実は、国民からもきわめて厳しい指弾があるわけであります。わが党の村上委員瀬崎委員のそうした追及に対して、各紙も一面トップなどで報道し、取り上げております。現在国民の中では、臨調に基づく答申が現実には大軍拡という形であるいは大企業聖域という形で温存されながら、一方では教育福祉が削減される。消費不況という中で国民の皆さん大変苦しんでいらっしゃるわけであります。こういう点で、私たちはこの政官財の腐敗の根源を厳しく指弾をして正していくというのは民主主義的な政治の原点である、こういうふうに考えるわけであります。そういう立場に立って質問を進めてまいります。  初めに行管庁長官にお伺いいたしたいと思いますが、臨調の実体が実は軍拡であった。「臨調見たり軍拡化」というふうな話もされているわけでありますが、同時に一方でこういう腐敗の実態であります。改めて行革の基本的な理念について長官の御見解を承りたいと思います。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 臨調の目的は、簡素にして効率的な政府をつくり、来るべき新しい時代の要請にこたえる行政の体質改善を行うというのが目的でございまして、軍拡ではございません。
  75. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 簡素で効率的な行政を、あるいは来るべき時代という理念は、ある意味では是認できると思うのですが、軍拡でないということは、本年のこの予算案が国民に示されている過程で、まず削減すべきは軍事費の増大であるということは国民の皆さんの大きな世論でありまして、認識の違いではないかと考えます。  そこで、ここに公表された群馬県の県報、そして昭和五十五年の総選挙に際して報告されております、当時中曽根衆議院議員の収支報告がございます。この報告によりますと、企業からの献金七十七口を初めとして全体で百十三口、金額は六千百五万円。私もこの報告を見て、大変な金額だ、六千百五万円でございます、驚いているところでございますが、この点について二点お伺いをいたしたいと思います。  出されている報告書でありますから当然御存じだと思います。それが第一点。二点目は、六千百五万円という大変な金額がどんなふうにして収受されたのか。つまり相手の企業が持ってきたのか、あるいは要請して取りにいったのか、出してもらいたいという要請があったのか、そういう収受に当たっての問題でございますが、まずこの二点についてお答えいただきたいと思います。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま突然そういうお話を承りましたので、どういう中身の御質問か、いままだよく理解できない点がございますが、いわゆる政治資金の問題で、これは会費として集めたのもございましょうし、あるいは寄附金として来たのもあると思います。それはみんなケース・バイ・ケースで異なっているものの集大計ではないかと思います。
  77. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま突然だというお話でございましたけれども選挙昭和五十五年でありまして、ちゃんと中曽根康弘の名前で提出をされておりますし、会費ということではなくて、選挙運動費用収支報告書ということで、選挙の費用として寄附がされている。内容はきわめて明確であります。  この問題についてはさらに後ほど進めてまいりたいと思いますが、次に伊藤防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。  新聞で報道されているところによりますと、一月十一日に日本兵器工業会の新年会があったということで、ここには長官が御出席をされているやに聞いておりますが、この新年のパーティーで長官がどんなようなごあいさつをされたのか。これは就任直後でございます。  また、二番目には、日本兵器工業会の会長さんとも談笑されたというような新聞記事もございますが、日本兵器工業会の会長さんはどなたでございましょうか。この二点について。
  78. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 御指摘の本年一月十一日に開催されました日本兵器工業会の昭和五十七年新年賀会には、従来からの恒例でもございまして、新年のあいさつを申し上げました。  なお、会長さんのお名前はちょっといま記憶にございません。
  79. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 あいさつをしたということでございますが、あいさつの中身というのを聞いているわけであります。ここに報道されている各紙がございますが、長官は「二十六年ぶりに防衛予算の伸びが一般予算を上まわった」と胸を張って、その具体的な中身も説明をし、「大変ご同慶の至り。これも陰に陽にの兵器工業会のみなさんのご協力によるもの」というふうに言って盛んな拍手を浴びている。こういうふうな報道もございます。  日本兵器工業会の会長について御存じないということでありますけれども防衛庁の発注請負契約は日本兵器工業会に加入をしている九十九社であります。その兵器工業会の会長さんを知らないというのはいささか噴飯物だと思うわけでありますが、時間がありませんので私の方から申し上げたいと思います。日本兵器工業会の会長は舘野万吉氏、日本製鋼所の社長でありまして、防衛庁、通産省、国会議員の皆さんのお力によってこういう成果が得られた、こういうふうなあいさつをされているわけであります。  そこで、自治省に次にお聞きをいたしたいと思いますけれども、すでに当委員会の論議の中でも明らかになっておりますが、公選法百九十九条一項に規定されております国、公団、公社からの請負契約の発注の問題、つまり、国や公団、公社から請負契約をした企業が、当該契約期間に選挙にかかわる寄附行為をなしてはならないという規定でありますけれども、この請負契約の中には、当然建設省などの公共事業、同時に国鉄や電電公社、防衛庁などの請負契約も入るというふうに解釈がされていると思うのですが、御答弁いただきたいと思います。
  80. 大林勝臣

    大林政府委員 公職選挙法の百九十九条で「請負その他特別の利益を伴う契約」という言葉がございますが、従来、この「請負」という言葉につきましては、土木事業に関する請負というものが代表的なものとして掲げられておりますが、土木事業に限らず、請負的と申しますか、非常に継続的でありますとか定期的でありますとか、そういった取引、物品の納入契約等をもこの中に含むものと解釈はされております。
  81. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、いまの解釈で、防衛庁等からの請負契約もその法の範疇に明らかに入るということでございます。  そこで、防衛庁にお聞きをいたしたいと思います。  第一に、株式会社富士通、これは日本最大のコンピューターメーカーでございますけれども、株式会社富士通並びに株式会社日本製鋼所の一九七九年と一九八〇年の防衛庁の請負調達についてお伺いをいたしたいと思います。それぞれどれだけの請負金額になっているか、その金額ですね。
  82. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まず富士通でございますが、五十四年度、金額で七十七億円でございます。それから五十五年度は金額で約五十五億円でございます。  それから株式会社日本製鋼所でございますが、五十四年度が約八十一億円、それから五十五年度が約百二十三億円、こういう状況でございます。
  83. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま御説明がありましたのは五十四年、五十五年のそれぞれの総額でございますけれども、ちょっと中身に立ち入って質問を続けたいと思うのですが、これは防衛庁からいただいた資料に基づいて申し上げたいと思います。  株式会社富士通の場合に、昭和五十五年の三月二十九日に、防衛庁との間で航空戦術支援システム、TSCと言いますけれども、これはP3C用の支援器材であります。このP3C用の支援器材を昭和五十五年三月二十九日に契約をして、納入期目は昭和五十七年三月の末であります。つまり、昭和五十五年六月の総選挙の期間に相当する。請負契約の総額は十九億円であります。このほかに、レーザーレーダー試作、これも五十五年三月十一日契約、五十五年十二月納期、契約額は一億二千万円。日本製鋼所の場合には、同じく五十五年三月三十一日の契約、五十七年三月二十五日の納期ということで六十二ミリ口径七十六ミリ速射砲、こういう契約の中身でありますが、五億六千七百五十万円、こういうふうになっております。  そしてこの富士通と日本製鋼が、先ほど触れました中曽根当時議員に対して寄附を行った日でございますが、この収支報告書によりますと、富士通からの受領日は昭和五十五年五月三十日、金額は百万円であります。日本製鋼からは昭和五十五年六月六日、金額は九万円になっております。このほかに、すでに明らかにされた以外に私の調べただけでも、三井建設、昭和五十五年六月六日の選挙の寄附の受けつけ、こういうふうになっておりまして、三井建設の場合には国鉄新幹線の工事、昭和五十五年三月の契約、五十五年十一月の納期ということで総額三十九億五千五百七十六万円、大変な額になっているわけであります。  そこで、第一に防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思うわけでありますけれども、先ほども自治省答弁の中にありましたように、公選法百九十九条一項の規定に基づく請負契約というのは防衛庁の調達契約も入るということであります。このように具体的にその契約期間内に行われている当該選挙に寄附がされているというのは、すでに自治省あるいは法務省によって本委員会で明らかになっておりますように法違反であります。公選法違反であります。あなたは、二月八日のわが党の村上委員の質問の中でも触れたように、飛島建設からやはり法違反のお金を受け取っているわけでありますけれども、法違反を犯している防衛庁長官が、法に違反して選挙の寄附行為を行っている防衛庁調達の富士通や日本製鋼について云々するというのはいささかおかしいと思いますけれども、しかし防衛庁の所管でありますから、こういう問題について防衛庁長官としてどのように考えていらっしゃるか、はっきりとした答弁を求めたいと思います。
  84. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 御指摘の件につきましては、防衛庁長官としてコメントすべき立場にはございませんので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  85. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それはおかしいと思うのですね。防衛庁日本製鋼所や富士通に発注しているわけでしょう、所管官庁なんですよ。具体的な事実であり、しかもあなたの方から出してきた資料なんです。それに対して答弁ができない、差し控えたい、何かやましいことがあるのか。もう一度はっきりした答弁を求めたいと思います。
  86. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 調達については厳正に、適正にやっておりますし、先ほど申し上げましたとおり、この件につきましては私から防衛庁長官としてコメントすべき立場ではございませんので、改めて答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  87. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 またまた答弁の拒否でありますけれども、いずれにしても防衛庁の所管であります。法違反を犯しているのは明らかな事実なんですから、調査をして明確にされたい、そのことを強く要望して、時間がありませんので次に進みたいと思います。  そこで、中曽根長官に引き続いてお尋ねをいたしたいと思いますが、いま申し上げましたように、総選挙に際してこうした法違反の寄附が長官に出されている。当然、贈った方も贈られた中曽根さんの方も法違反でありますけれども、この点について長官、どのようにみずからの政治責任についてお考えか、はっきり答弁をいただきたいと思います。
  88. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この前そういう問題が起こりましたときに、われわれの方で調べてみました。その中にいま御指摘の富士通さんと日本製鋼さんの方もあるようでございます。  いままで調べた範囲内では、富士通さんの方は公示前に政治資金としていただいたのをそちらの方へ記載してしまった、そういう間違いのように報告を受けております。これは直します。  それから、日本製鋼さんの方は、九万円という額から想像すると、この社長さんの舘野さんというのは旧制静高の私の同窓でありまして、恐らく社長のポケットマネーを政治資金として、私の後援会を旧制静高で同窓がつくってくれておりまして、それがそっちへ紛れ込んだのではないか、そう想像しております。  いずれにせよ、そういう選挙の報告について間違った報告をしていることは大変申しわけない次第で、訂正させていただきたいと思います。
  89. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま訂正すればいいんではないかというふうなお話でありましたけれども、実は二月八日にわが党の村上委員指摘をしたわけでありますが、そのときに佐田建設百万円、東急建設五十万円という具体的な事例を申し上げました。その後二月二十三日に中曽根さんの出納責任者より不手際による誤記であるということで、群馬県庁の選管に訂正の届けが出されております。つまり、指摘をされたからこれは誤記であったという届けであり、いま私の質問に対しても選挙前であった、政治献金であったというふうに言われておりますが、選挙にかかわる寄附は公選法百九十九条、二百条の違反であり、同時に政治資金規正法第二十二条の質的項にも違反するのですよ。請負契約等を行っていた場合に当該選挙にかかわる寄附を行えば、それが政治資金であってもそれは当然法に触れる、これは政治資金規正法二十二条に明確に規定をされております。誤記だということで訂正すれば何でも済んでしまうということであれば、法律は要らなくなってしまう。交通違反を犯せば、ちょっと間違えたということで済んでしまうわけなんです。国会議員として、国の政治に携わる者として、そういう姿勢では絶対に許すことはできないと思います。しかもあなたは行管庁長官でしょう。先ほど国民の皆さんの期待にこたえるような効率的な行政を進めていくと言っていらっしゃる。こういうことで本当に国民の皆さんの期待にこたえられるような行政を進めていくことができるのか。私はとても考えられないと思いますので、厳正にその点についての御見解をもう一度いただきたいと思います。
  90. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 事情は先ほど申し上げたとおりでございまして、はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。
  91. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 遺憾だと言えば済むと思っていらっしゃるのかもわかりませんけれども、この問題は、引き続きさらに明確にみずからの政治責任を確立されるように強く要望いたしたいと思います。  この中曽根さんの収支報告の中では、選挙にかかわる寄附の問題とあわせて、現在臨調の役員に就任されている企業からの寄附も含まれております。先ほど指摘いたしました富士通の副社長、あるいは三菱鉱業セメントの会長さん、三菱コンツェルンの総帥と言われている大槻文平氏が顧問、またアラビア石油からも参与という形で参加をされているわけであります。こういうふうに見ると、やはり政治家がみずからの責任を明確にしていく、国政を担当する者が、行政の衝に当たる者がその点をきちっとしていかなければならないと思うのですね。そういう意味で強く反省を求めておきたいと思います。  そこで、私は自治大臣、国家公安委員長ということで世耕大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  すでに今日までの本委員会における論議を通じまして、鈴木総理、また櫻内外務大臣、今日の中曽根長官、そうして数名の閣僚、四十名余りの国会議員が法違反の寄附を受け取っているという事実も明らかになったわけであります。私はそこで思うのですけれども、誤記だということで訂正するならば法を免れることができるということになると、まさに公選法や政治資金規正法の中身はざる法になってしまうではないか、形骸化されてしまうわけであります。法が形骸化されてどうして社会の秩序を維持することができるのか、国民の皆さんの期待にこたえることができるのかと私は思うのですね。  そこで、公選法に基づいて自治大臣として的確な措置をとることが第一点。第二点は、国家公安委員長としてこの法違反について捜査を指揮するなり厳正な措置をとるように、この二点について強く求めたいと思いますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  92. 世耕政隆

    世耕国務大臣 私、実は一人で二役でございまして、ちょっとニュアンスが変わってくるのですが、第一問の自治大臣としてどういう処置をとるかということでございますが、今回御指摘になった件につきまして、私は見解は申し上げることはできますが、その後の処置を私がやるということは権限の外になります。そこで、自治大臣としての範囲内における私どもの見解を申し上げます。  今回の問題で公選法百九十九条、二百条の問題に触れているという御指摘でございますが、今後われわれのやることは、選挙の候補者も選挙運動員も、それだけではなく、選挙人側においても法の内容を十分承知していただくことが必要であると思います。この法律に関しては皆、余り知らない人が多い。そこで、今後ともその周知徹底を図っていくこと、それをまた遵守していただく、この方向にわれわれは努力を傾けていく所存であります。  もう一つの、国家公安委員長としてこの問題にどういうふうに対処していくか、取り組むか、こういうお話でございますが、政治家が企業などから寄附を受ける場合には、公職選挙法、政治資金規正法等関係法令に従って適正に行うべきが至当であると存じております。仮に法に触れる事実がある場合には、警察は事柄の内容に即して適正に処置するものと考えております。  以上のことを申し上げます。
  93. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 法の遵守をということでございますけれども国会議員さんあるいは秘書の方、十分にこういう法律があるということは知っている。にもかかわらず、違反が続出をしているわけであります。ですから、国家公安委員長としても、当然捜査当局が行うであろうというふうにいま御見解を述べられていらっしゃいますが、厳正にそういう点については、人数も大変多いわけでありますから、措置をとられるように強く要望を申し上げたいと思います。  この議論を締めくくる最後に当たりまして、官房長官に御質問をいたしたいと思いますが、予算委員会における質疑等を通じて鈴木総理もこうした法違反の事実を認められました。しかし同時に、政治倫理の確立をやはり公約をされているわけであります。そこで私は、法があってなきに等しい状況では真の意味の政治倫理の確立はできない、国会議員自身が、あるいは政府の要職にある方々がみずから正していかなければならないし、それは個人責任であると同時に、議会制民主主義のもとにおいては国会の重要な責任であるというふうに考えるわけであります。そういう点で、政治倫理を確立していく第一歩としても、まさにその試金石としても、この問題に対して内閣として厳しく対処する、そして国民の皆さんの期待にこたえる、最後にそういう立場からの宮澤長官の御見解を承りたいと思います。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 内閣といたしまして、ただいま御指摘になりましたような態度で臨むべきものと存じます。  なお、先ほど世耕大臣が自治大臣並びに国家公安委員長として言われましたこと、これも内閣としてそのように考えております。
  95. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 前段の質問は以上で終わりまして、いまの立場をさらに厳しく堅持されることを要望しておきたいと思います。  次に、通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  ことし一月一日の新聞各紙の報道を見ますと、特徴が二つございます。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕 一つは、軍拡に対する警鐘ですね。そして核兵器の廃絶、平和、軍縮の実現というのが各新聞の社説であり、大きな扱いになっているというのが特徴です。軍拡に対する、戦争の危機に対する国民の不安が如実に反映をされている。もう一つは、「ロボット時代」「科学技術新時代を告げる」こういうふうなカラー入りの特集がされております。  そこで、通産大臣、国の技術開発、産業政策は、やはりあくまでもこうした国民の平和を願うその願いを前提として、労働者や国民の幸福、進歩のために追求されるべきであるというように私は考えておりますし、戦争のためにはもちろん、あるいは特定の大企業の利益追求に科学技術が利用されることがあってはならないというふうに考えるわけでありますが、通産大臣の御見解をまず承りたいと思います。
  96. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今後わが国が技術立国として、産業構造の創造的な知識集約化を図りながら活力のある経済社会を確立していく上では、頭脳資源を最大限に活用した創造的な自主技術開発がきわめて重要であると考えております。また、技術革新が世界的に待望されている今日、技術革新をリードし、世界経済の発展に積極的に貢献していくことがわが国の国際的な責任である、こういうふうにも存じております。  こうした観点から、わが国の技術開発において重要な役割りを果たしておるところの民間部門の活力を最大限に発揮せしめるよう助成を行うなど、技術開発の環境整備に努めること、さらにまた、国民経済上重要性、緊急性が高い技術開発分野であってリスクが大きい、リードタイムが長い等から、民間にゆだねるのみでは円滑な開発が困難に考えられるものについては政府みずから研究開発を行うこと、これらを基本として今後とも所要の施策の拡充強化に努めていかなければならない、こういうふうに存じておるわけでございます。
  97. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま答弁がございましたけれども、立ち入った問題については後ほどの質問の中で触れていきたいと思いますが、一月四日の毎日新聞を見ますと、ロボットの問題で「賛否真っ二つ」というふうな報道があるわけなんですね。「導入進めば失業増」というそういう不安を表明される方が六七%、あるいはコンピューター社会で人間性が喪失をされてしまうというふうに懸念をされる方々も非常に多いわけであります。  そういう点で、私は改めてこの技術開発の基本を踏まえていく必要があるというふうに思うのですが、ノーベル化学賞を受賞された福井教授は、授賞式のあいさつでこう述べているわけなんです。科学技術の基礎的な研究を重視しなければならないし、同時に、その科学技術の成果は平和のために貢献できるように使っていかなければならない、また人類の幸せのために科学技術が貢献をしなければならない、こういうふうに述べられているわけであります。そういうことを押さえて質問を進めていきたいと思うのです。  通産省にお聞きをしますけれども、第四世代電子計算機基本技術開発促進費補助金、これは二つのテーマがあり、そのうちの基本ソフトウエア技術開発は、電子計算機基本技術研究組合を通じて東芝、日立、日本電気等の六社に出されているわけなんです。また、民間航空機用ジェットエンジン開発、いわゆるXJB開発補助金は、財団法人日本航空機エンジン協会に参加をしている三菱重工、石川島播磨、川崎重工の三社に、そして原子力発電支援システム開発補助金は、三菱重工、日立、東芝等六社に直接交付されております。  つまり、通産省の補助金の流れを見ますと、一つは、研究組合などの受け皿をつくって第三者法人として、そういう組合に出されている。実態は三菱や東芝あるいは日立などの大企業で組合をつくっているわけでありますが、もう一つは、直接企業に出される。こういう二つの流れがあると思うのですけれども、具体的にこの二つの流れがあるかどうか、ひとつ簡潔にお示しをいただきたいと思います。
  98. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、ジェットエンジンにつきましては、日本航空機エンジン協会という財団法人でございます、あるいは第四世代のコンピューターについては研究組合ということで、みんなで集まったところへ出しておるというのが一つでございます。  それからもう一つは、原子力発電の支援システムの問題でございますが、これは各企業に出しておるということでございます。
  99. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ただいまそういう流れが明らかにされたわけでありますが、そうしますと、もう少し突っ込んだ御質問に入りたいと思います。  お手元に資料I、資料IIというのを配付をいたしておりますけれども、この資料Iの1についての試算でございますが、これは通産省からいただいた資料や大蔵省の補助金便覧から関係する補助金を洗い出して、項目ごとに補助金額を対象企業数、つまり、先ほど御説明がございましたように開発協会であればそこに参加をしている企業、百億円であれば、五社参加すれば五分の一でありますから一社二十億円、こういうふうな計算によりまして平均値を出して、各企業ごとに集計したものであります。  これによりますと、三菱重工業の場合には、これはたくさんの補助金が直接間接にございますけれども、民間輸送機YX、YXXの開発費等九件、四十九億九千九百万円、これは補助金という形であります。委託費は、海底石油生産システム開発等の八件で十四億六百万円、合計して、ここに書かれておりますように昭和五十六年度は六十四億五百万円に上るわけであります。同じような推計で今年度提出をされております政府予算案で算出をいたしますと、七十六億三千四百万円、実に二〇%をほぼ超えるに近いような伸びを示しております。これは同様に、日立が今年度四十四億八千万円、来年度四十七億七千八百万円、東芝が今年度二十九億四千七百万円、来年度が三十六億八千二百万円、このように計算をして、三菱、日立、東芝、石川島播磨、川崎重工を加えた五社の合計では、今年度が二百八億九千七百万円で、来年度は二百二十五億九千百万円に達するわけであります。つまり、表を冒頭の一九七八年と比較しますと、来年度の額は二・四倍の伸びであり、この五年間の合計額は九百億円に達するわけなんですね。そして、今年度と来年度のこの五社の伸び率を見ますと、プラス八・一%、大変大きな大企業に対する補助金の伸びになっているということは、この資料で明らかであります。  そこで、中小企業庁からいただいた資料等を検討したわけでございますけれども、中小企業向けの技術指導及び技術開発の補助金については、この五年間どういうふうな推移になっているか、来年度は総額で幾ら組まれているか、御説明をいただきたいと思います。
  100. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 お答えをいたします。  五十七年度の予算案では、小規模の、一番狭義の予算としては四十三億でございます。これ以外に関連の使途その他がございますが、予算としては四十三億ということになっております。
  101. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま長官は、五十七年度、来年度予算についての内容だけ触れられたわけでありますが、四十三億。そうしますと、三菱重工が来年度一年間で七十六億三千四百万円でありますから、三菱重工の六割ぐらいになりますか、半分よりちょっと多いということなんですね。先ほど安倍通産大臣も、科学技術の開発が必要であり、そして先端技術については政府が相当力を入れていかなければいけないということで予算も組んでいるというふうな趣旨のお話でございました。私たちも先端技術の開発、そういうものについて否定するものではございません。しかし、バランスのとれた技術の開発が、底の広い開発が必要でありますが、いま中小企業庁からの説明によると、わずか四十三億円。  日本の産業構造を見た場合に、製造業では事業所数の九九・五%、そこで働く労働者の七四%が中小企業なんです。出荷高も五三%。現在、消費不況と言われて、中小企業の倒産は毎月千件以上、もう五年間、六十カ月を超えているわけなんです。そういう中小企業の現状を見ると、新聞でも報道されておりますように、ますます大企業との鋏状格差が広くなっていく。やはりそういう実態を見た場合に、中小企業等に対する支援や援助を積極的に進めていかなければならないというふうに思います。  そこで、大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですが、今国会の冒頭、わが党の金子議員の代表質問に対して、鈴木総理大臣は、大企業に対する補助金については「厳しく見直しを行っており、大企業優遇といった性格のものではありません。」という答弁をしているわけなんですが、しかし、現実にはこういう現状であります。大企業が聖域に置かれ、軍事費が突出をしている、そして国民生活が苦しい。しかも、大蔵大臣は、財政再建に政治生命をかける、歳入欠陥が起きたら政治生命をかけるというふうな趣旨のお話をしているわけでありますけれども、このような現実に対して、総理の答弁もございましたけれども、大蔵大臣としてどのように財政の運営でお考えなのか、御見解を承りたいと思うのです。
  102. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私どもは、大企業の補助金等については特に目を光らしてやってきております。しかしながら、大きな企業またはその団体の受ける補助金は一切だめだと言っているわけではありません。御承知のとおり、いま話題になっておるのは、電子計算機開発促進費補助金とか民間輸送機開発費補助金とかあるいは外航船舶建造融資利子補給金とか、大体こんなことを言っているのではないか、想像するところ、そう思っております。  しかし、この電算機の開発については、世代の新しい計算機を開発するということで、これは日本のような国はこれから頭脳集団、情報産業、そういうものを伸ばしていかなければ国民生活の向上安定に役立たない、したがって、ほかの国に負けないように国際競争力をつけるためにやらなければならぬということになりますと、これは中小企業にやってくれと言ったって、だれもこんな電算機の開発なんかやる人はないわけですよ。大企業であっても、果たして成功するかしないかわからない、しり込みする。しかし、まあやってみろ、そのかわり補助金もつけるということで、いままでは五〇%の補助金だったのですが、こういうような御時世でございますから補助率は四五%に下げさせてもらいますというようなことで、必要最小限度のもの等を通産省の要求によってつけた。事実でございます。  それから、民間航空の輸送機の問題も、YXXの開発調査費でございますが、これも同じで、日本のような何でもできる国が飛行機もろくにできないようでは少し恥ずかしいのじゃないか、民間は昔はすばらしい飛行機をつくったこともあるのだから、頭脳集団としての飛行機の開発、民間輸送機の開発については通産省はひとつぜひ進めたい、私も賛成なんです。これも中小企業に頼むわけにはいきませんで、そういう点で、しかしながらこういう財政事情でございますから補助率は下げさしていただきますということで、下げさしてもらいました。  また、外航船舶の問題は、新規のものは勘弁してくれ、確かに油だとかいろいろなものはあるようだけれども、それは勘弁してもらいたい。しかしながら、いままで契約したものについては、これは契約違反で裁判したら負けちゃうから、それで契約してやらしたものを途中でやめたと言うわけにはいかない。しかし、そうは言っても、これは本来補給すべき額の三分の一相当を船主負担にして後に繰り延べるというようなことで、補助金の縮減というものを図ってきておるわけです。  ですから、一概に大企業だから全部だめなんだと言っても、なかなかそうはいかないのです。大企業というのは、やはり大従業員を抱えた企業も大企業と言うのですから、御了解を願います。
  103. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま大蔵大臣答弁を聞いていますと、三菱重工の社長か日立製作所の社長が国会に来て答弁しているような感じを受けるわけなんですね。そうじゃなくて、日本の産業構造全体を見た場合にどういうふうに重点的な配分をしなければならないか。すそ野の広い中小企業や国民生活を十分に考えて財政の運営を図るというのが大蔵省の立場でしょう。それを三菱重工の社長が言っていると同じような立場で国会答弁をされてしまったのでは困ると思うのです。  私は、いま額の大きさについて言いました。しかし、もう一歩進めていきたいと思うのですけれども、額も大きい、さらに中身の問題として収益納付という問題がありますが、ひとつ大蔵大臣、これからの論議もよく聞いておいていただきたいと思うのです。  そこで、厚生大臣おいでだと思いますが、厚生省では薬業合理化補助金という制度をつくられて、そして過去十年間いろいろ仕事をされてこられたと思うのですが、この十年間の合理化補助金に基づく実績、そして収益納付の実態あるいは交付先等を御説明いただきたいと思います。
  104. 森下元晴

    森下国務大臣 お説のとおり、昭和二十八年度から五十三年度まで六十三件、交付金額一億一千百十五万円、一件当たり二百万円以下でございます。  これは、企業合理化促進法に基づきまして新しい薬の開発、向上を促進する観点から、新医薬品の工業化に必要であると認められる試験研究のための機械購入費を対象にした補助制度でございます。  この補助金は、所期の成果を上げることができた試験研究について償還させる、いわば成功払いであります。こういう仕組みになっておりまして、その償還の対象は六十二件、金額にして一億三百九十六万円でございまして、償還済みのものが五十八件で、金額にして九千六百四十二万円、残り四件につきましては昭和五十九年末までに償還される予定になっております。内容的には、私は非常にいい結果が出ておると思っております。
  105. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま厚生大臣から御答弁がございましたけれども、技術開発というのは、こういうきめの細かいものを中小企業であっても国民生活と非常に結びついている部門、そういうところに非常に効果的に活用することができる。六十三件についてもほぼ成功し、しかも中小企業の皆さんが、これは交付先はほとんど中小企業でございますけれども、大変な努力をして製品化をしていく。しかも製品化をされて、今日まで九千六百四十二万円納付をされているわけです。成功償還といいますけれども昭和三十年以降は補助金等適正化法に基づいて収益納付ということで措置をされていらっしゃると思うのですが、一方ではこういう中小企業の皆さんの努力、また技術開発もこういうふうに腰をおろして、しっかりやれば可能だということが明らかにされているわけであります。  そこで、通産省の方にお聞きをいたしたいと思うのですが、同じ収益納付が規定をされております電子計算機等開発促進費補助金、一九七二年から七六年にかけて総額六百八十六億円、これは三つの技術開発組合にそれぞれ参加をする富士通、日立、日電、東芝、三菱電機、沖、この六社に出ているわけでありますけれども一つはこの収益納付の期限、二つ目には今日までの納付実績とその見通しについて、お答えをいただきたいと思います。
  106. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたのは、自由化対策ということで出しました新機種の計算機の開発でございましたら、これは六百八十六億でございますが、これにはいろいろコンピューターそのもの以外の周辺機器も入っておりまして、六社というのは本体でございまして、そのほか企業を合わせますと、周辺だと五十何社とか、もう少し多いかと思います。  なお、収益納付の期間は、五十一年に研究開発が終わりましたので、五十二年から六年まで五年間でございまして、五十五年度までに約二億円の収益納付が行われております。
  107. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いまの答弁ではっきりするわけでありますけれども、総額六百八十六億円でしょう、しかも大企業、それで収益納付の期間は五年間でありますから、昭和五十六年度、ことしの三月三十一日で終わるわけでありますけれども、現在までに納付されているのは約二億円ということなんですね。中小企業の場合にはほとんど納付をされている。しかし大企業の場合にはなかなかそれが進まない。先ほど大蔵大臣は、大企業の場合には新しい技術を開発をしていくのだからいろいろお金もかかるということを言っておられました。  私は先日、日立製作所の本社を訪れまして、コンピューター部門の部長さんなどともお話をしたわけでありますけれども、それによりますと、いま問題になっております補助金で開発された、たとえば日立でありますが、HITACというMシリーズが日立で開発をされております。各社ともいろいろ、富士通の場合にはFACOM−Mシリーズというのがございますが、最新の日立M二四〇H、HITAC−Mシリーズ、さらに二六〇Hというのが開発をされた。また二八〇Hというのも開発をされておりますけれども、こういう新機種は昨年にも発表されて、いよいよ昨年末、今年初めからこういう新機種が売り出されていくということなんですね。つまり補助金をいただいて開発に成功をし、いよいよ商品化されて売り出されていくのは、先ほどちょっと通産大臣も触れましたけれども、長いリードタイムが必要だ。ところが売り出されるときには、もう収益納付の期限は五十七年三月三十一日で切れてしまうわけなんです。こういうふうに大企業の場合の収益納付のやり方には大変大きな矛盾がある。現実に合ってないわけなんですよ。利益を生み出していくときには切れてしまうわけです。しかも大企業は、私の資料を先ほど示しましたけれども、この資料Iの3にありますように、「三菱重工等五社の売上げ、経常利益の推移」、大変莫大な利益を上げているわけなんです。  そこで、もう一度大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどは私の意見に対して大変全面的な反論らしきものを展開されたわけでありますけれども、こういう制度、しかもこれは補助金等の適正化に関する法律ということで、財政法の一環なんですよ。大蔵省の所管の法律なんです、適正化法は。そしてこの適正化法の中では、補助金というのは国民の税金なんだから、その税金が有効に誠実に使われなければならない、こういうふうになっているのですが、そうなると先ほどの大蔵大臣答弁とは大変大きな違いがある。という点で、この適正化法に基づいて納付の制度あるいは納付のシステム、期限、こういうものについて全面的に見直し、検討をされるべきである、これが第一点であります。  第二点は、私たちは大規模産業に対する補助や新しい技術の開発そのものを否定するものではありません。しかし、財政再建だと言い、五年間一円も減税がされていない、消費不況だと言っている、こういうときに国民の皆さんの財源をどうやって正しく使っていくか。これは大蔵省として、大臣として、ミッチーと愛称されているわけでありますから、そういう立場で取り組んでいかなければならない。そうなると、こういう不合理なものに対してメスを入れていく、削減をしていく。わが党は提案をいたしております。大企業補助金あるいは海外経済協力など大企業の海外進出を助けるようなそういうもの、そして莫大なこういう利益を上げているそういうものに対してはメスを入れて、組み替え予算の中では総額約三千億円、全部と言っているのではないですよ、というふうに具体的に提案をしているわけなんです。  そういう意味で、一つは、収益納付について適正化法に基づいて検討をし、合理的に是正をしていく、第二番目には、国民の立場に立ってこういうものを思い切って見直していく、そういう姿勢が大事だと思うのですけれども、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  108. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま先生、大企業で非常にもうかっているところに補助金はどうかというお話でございますが、御承知のように、コンピューターにつきましては世界の中で八割がアメリカ企業、しかも六割をIBMが押さえているということでございまして、ヨーロッパ諸国も日本以上にコンピューターの育成につきましては力を入れておる、それにもかかわらずほとんどIBMに対抗できないというのが実態でございまして、すでにフランスそれからドイツでは二割以下のシェアしか、しかもある程度外資と組んで、それからイギリスでもこれは三割ぐらいということで、何とかIBMに対して対抗していたところもいまや成り立たない、日本にも技術協力してくれ、こういう段階になっておるわけです。  したがいまして、翻って日本のことについて見ましても、コンピューターメーカーというのはそれぞれいろいろな部門もやっておりまして、全体としては利益を上げておるわけですけれども、いま申されました中型、大型コンピューターにつきましては利益を上げてないということでございまして、したがって収益納付に関しましても、一応関係方面とも御相談いたしましてやっておるわけでございますが、その限りで上げてないから納付が少ないということでございまして、非常に上げているにもかかわらず収益納付が少ない、こういう実態ではないということをまず御説明させていただきたいと思います。
  109. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま通産省の機械局長の方からお話がありましたからおわかりだと思いますが、実はコンピューター等に対しましても世界各国、重立った国では助成策を講じてやっているわけです。アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ。それから航空機等に対しても同じように各国ともそれぞれやっておる。そして国の産業を保って競争力をつけさせよう。それによって雇用確保され、外貨が獲得され、あるいはいろいろな面でよくなるわけですから、補助そのものはそういう点で有効に使えるならばひいては国民全体のためになることだから物によってはいいんじゃないか、私はそう思っておるわけです。  それから、あなたの言うように、五年たったならば返さなくたっていいというのはおかしいじゃないか、そこらの点はどうなのか。民法との関係なのか、法律的な問題でございますが、いまのところ、説明したのは、要するに大型、中型部門ではまだ採算がとれない、だから納付が少ないんだというお話がいまありました。実態をよく調査をいたしますが、この辺で切るのは切ってしまうのがいいのか、あるいはもうけが出るようになったらもう少し延ばして返してもらうようなことがいいのか、これらは今後ともあわせて検討させていただきます。
  110. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 実は通産大臣にもお聞きをしたいと思っておったのですけれども、機情局長が出てきて言いわけの答弁をされてしまったわけですが、東芝、日立、私もそういう担当の部課長さんともお話をしたときに、開発をしてそして利益を上げていくのはこれからだ。しかも超LSI、半導体ですね、わが国ではもう六十四Kビットのものが開発されて実用化されていく。さらに百二十八、二百五十八と。よくIBMの問題が比較に出されるわけでありますけれども、私も決して日本の産業がIBMの後塵を拝していいというふうには単純には思っておりませんが、この補助金をいただきながら開発されたものも、たとえば超LSIなどではかなり比肩するものが、あるいはリードするものがつくられてきている。そして企業化し、商品化して利益を上げていくのはこれからだというふうに言っているわけです。これもこれから発売ですからね。そういう点を見た場合に不合理ではないかという指摘で、大臣もいろいろ検討しなければならないという趣旨でございました。ぜひそういった点を踏まえて努力をしていただきたいというふうに考えるわけであります。  大分時間がなくなりましたが、この補助金の問題でもう一つだけ簡潔に触れておきたいと思うのですが、先ほども、補助金の流れ、システムについては二つある。つまり一つは各大企業が参加して受け皿をつくっていくもの、もう一つは直接出されるもの、そういう中に原子力発電支援システム開発補助金がございます。これは昭和五十五年度に要綱ができているわけでありますけれども昭和五十五年度は八億五千百万円、五十六年は十一億四百万円、五十七年度、来年度の予算では十六億円というふうに、それぞれ個別の三菱や日立、東芝等に出されるわけなんですが、自治省にお尋ねをしたいと思います。  こういうふうに直接国から補助金を受け取っている企業、これは政治資金規正法の二十二条、質的制限という禁止条項がございますけれども、この禁止条項に照らして、国から補助金を受け取っている企業が政党、政治団体あるいは政治家に寄附をしてはならない、つまり国と企業との癒着を生み、政治腐敗を生み出す、こういう法の趣旨のもとにこの規定があると思うのですが、自治省の御見解はいかがでありましょうか。
  111. 大林勝臣

    大林政府委員 政治資金規正法の二十二条の三で、国から補助金を受けている団体は政治活動の寄附を制限されておりますが、その趣旨は、ややもいたしますと、そういう補助金にまつわる寄附というような疑惑を生じやすいというところから制限がされておるわけであります。ただ、補助金の中でもいろんな種類の補助金があるわけでありまして、現行法におきましては、補助金でも試験研究でございますとかあるいは災害復旧であるとか調査であるとか、そういう性質上利益を伴わないというふうに考えられる補助金については除外をされておることも御承知のとおりであります。
  112. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま選挙部長は、法の趣旨、そのとおりでありますけれども、その補助金の性質によっては云々と言われましたが、試験研究、調査あるいは災害復旧は除く、こういうふうになっているのですが、同時に、性質上利益を伴わないものは除くという規定があるんですね。つまり利益を伴わないものは除くという規定でありますから、利益を伴うものは当然規制の対象になる、こういうことだと思うのです。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、この通産省が出しております要綱を見ますと、この要綱の中では、はっきりと要綱の第十九条、企業化等という中に、「この補助金を受け取った企業は企業化に努めなければならない。」こういう規定がある。さらにその期間内においてもどんどん事業化していかなければならないという規定がありますし、先ほども収益納付の問題で触れました。この二十条には収益納付の規定があるのです。つまり、収益を生む、だからそれを想定して収益納付という規定がございます。そうなると、前提としては当然収益を生むもの、つまり政治資金規正法二十二条に該当する補助金である、こういう見解にならざるを得ないわけであります。  これがこうした大企業に莫大に出されておりまして、その大企業からは、この表の5にありますように、各年度にわたって具体的な数字が記載をされております。たとえば昨年度昭和五十五年のダブル選挙の場合には三菱重工の八千二百二十二万円、これを先頭に五社だけで三億六千九百三万円、一九七六年から八〇年までの五年間の合計は、三菱重工一社で四億円に上るんですよ。国の補助金をもらっているわけです。法違反になる。しかも五社で合計では十六億円なんです。つまりこれが今日の補助金のある意味では一つの具体的な性質をあらわしているのではないか、こういうように思います。  こういう点から見ると、本日の論議の前段で触れましたように、公職選挙法に基づく寄附違反大臣総理大臣を初め関係していらっしゃる。しかし、何となくしり抜けのような答弁がされている。これを厳しく、きちっと押さえていかなければならないし、同時にこういうふうに日本のトップビジネス、大企業が補助金を受けて、そして法違反の性格のある寄附金を莫大にされている。つまり企業からの献金はやめなければいけないというのは、談合でも何でもそうであります、ここに問題があると思うのです。そういう姿勢を正してこそ真に国民の皆さんの期待にこたえる政治を進めていくことができる、民主主義の根底ではないかというふうに思います。  そういう点で、最後に宮澤官房長官の御見解を承って、この問題についての質問を終わりたいと思うのです。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政治資金に関します倫理の問題につきましては、先ほど世耕国務大臣が御答弁になられたとおりであると存じます。そういうことがきちんと守られます限り、企業の献金であるからといってそれが悪であると直ちには私は断定できないと考えております。
  114. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 官房長官、そういう姿勢では本当に政治倫理の確立をすることはできませんよ。三菱重工だけでたくさんの補助金をもらって、来年度、五十七年度七十数億でしょう。そして一年間に三億も四億も献金をしていく、こういう状況では本当に清潔な政治を実現することはできない。そのことを強く指摘をしておきたいと思います。  時間も迫ってまいりましたので、次に日韓経済協力の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  櫻内外務大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、二月の十六日の外務大臣の発言以降、この日韓間における経済協力の問題はいよいよ五月の外務大臣の訪韓によって決着がつくんじゃないかというような報道がされているわけでありますけれども、昨年九月の日韓定期閣僚会議でもいろいろな問題がペンディングになっていた。安保絡みの問題やあるいは韓国の主張するような六十億ドルという金額の問題あるいは個別の、日本側の主張するようなプロジェクト積み上げ式でいくのかあるいは総枠でいくのかというふうな問題がペンディングになっていたわけでありますけれども、外務大臣が、ほぼ総枠のような形で政治決着をつけるんだというふうな趣旨の御発言をしていらっしゃいますが、そうしますと、今日までの日韓間にあったそういうペンディングの問題はほぼ解決をした、だから政治決着ができるんだ、こういう御見解なのか、その点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 五月ごろ外相会議が持たれるのではないか、そういう推測が行われておる。これは、私の国会との関係あるいはそのほかの外交日程からしますと、ゴールデンウイークにそういう会議が持たれるのではないかという推定だと思います。  それから、いままで一次、二次と実務者レベルの会議をしてまいったわけでございまして、その間に韓国側の要請する十一のプロジェクトあるいは商品借款についての韓国側の考え方日本側としていろいろな角度から聞いております。しかし、それで実務者レベルの会議が終わったのか、こう言うと、双方で完全な合意、少なくとも提示されたものについての説明が了承されるというような段階にはまだ至っておりません。そこで、この後外交ルートを通じて残された問題については詰めよう、いまこういう段階でございまして、今後その詰めに従って、さあどうするか。ただ、いつも申し上げておりますように、実務者会議で最後が決着するというのでなくて、これはやはり外相会議でこの経済協力問題をどうするか、こういうことになることはそのとおりだと思います。
  116. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、まだ詰めはできてないということでございますが、いま外務大臣答弁の中で商品借款の問題がございました。これは昨年九月の定期閣僚会議の中にも商品借款という問題はなかったというふうに私も記憶しておりますし、昨年十月十六日の衆議院の決算委員会における当時の園田外務大臣の発言の中でもなかったわけであります。商品借款というのは中進国の場合にはとらないというのが日本政府のいままでの見解だったと思うのですけれども、この点についてはそういう見解が変えられたのか、また現実に商品借款をわが国が行っている国はどこにあるのか、この二点についてお答えいただきたいと思います。
  117. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  商品借款は、従来から開発途上国の中でも特に国際収支上の困難に逢着している国に対して、その輸入の促進、インフレ収束等を目的といたしまして供与してきているものでございます。したがいまして、所得水準の低い国という例が多うございます。現実に供与いたしている国といたしましては、一番最近ではパキスタン、それから昨年では中国、エジプト、タンザニア、スリランカ、ジャマイカ、バングラデシュ、それからトルコ等に供与しております。トルコ、ジャマイカ等につきましては、一人当たり国民所得は相当程度高い国であることは御承知のとおりでございます。
  118. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いまも御答弁ございましたけれども、ほとんど開発途上国なんですね。トルコの場合には国民所得が若干高いということでありますけれども、カントリーリスクの問題も起こしておりますように、国自体としても財政的に破綻をしているという国であります。そういう点から見ると、韓国の場合には、一九七八年の第十回日韓定期閣僚会議においても中進工業国ということで両国間の合意ができている。そして政府借款ではなくて民間ベースに移すというような合意もございます。そういう点から見ると、今日突如として商品借款の問題が入ったというのは大変理解に苦しむ。いわゆる総枠の中に、商品借款であるならば、これはアンタイドかタイドかわかりませんけれども、結局韓国が自由に使える、こういう金になるわけですね。制約がなくなってしまうということで大変大きな問題であるというふうに思います。  そこで、時間がございませんので、先ほど外務大臣が触れられたようにまだ十分に煮詰まってないというお話でありますが、この問題は大蔵あるいは通産などそれぞれ関係がございます。外務の十五億ドルというベースに対して大蔵は八億ドルであるとか、中をとって通産は十億ドルであるとか、こういうようなお話が出ているわけでありますけれども政府としての明確な統一見解が必要である。前提になるのは、当然安保絡み、軍事協力ではないということを前提にしなければならないと思うのです。今日韓国の軍事予算は、アメリカのミリタリー・バランスを見ましても三分の一は軍事費である。しかも武器輸出国であります。そういうことでありますから、軍事協力はしないということを前提にはっきり政府統一見解で出すことが必要だ。  さらに、具体的には次の三点。一つは、経済協力の基本でありますプロジェクト主義を貫いていくということ。二番目は、単年度主義、いわゆる積み上げ方式で総枠ではないということであります。これは当然財政法の立場からもわが国の場合には単年度主義をとっている制約があると思うのですが、第二点はこの問題。第三点は、いま触れた商品借款、まさにつかみ金的なものでありますから、この三つの問題について、前提を押さえて政府としての統一見解が必要であるというふうに私は考えております。この点についての外務大臣の見解を承りたいと思います。
  119. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 今度の日韓の経済協力につきましては、本委員会でもお答え申し上げておりますが、プロジェクトごとの詳細を検討いたしまして、その積み上げによる。また、日本政府の経済協力の基本方針がございますから、その基本方針の中で考えていく。それから、商品借款についてはただいま御所見がございましたが、これについては慎重に検討していきたい、これが政府としては今回の日韓経済協力の交渉の中で一貫してとられてきておる方針でございます。
  120. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 時間がないので最後に一言だけこの問題で申し上げておきたいと思うのですけれども、この日韓経済協力の背景には、言うまでもなく日米あるいは米韓関係があるというのは周知の事実でありまして、昨年、日米首脳会議の際における当時の淺尾北米局長のブリーフィングの中でも、そういう趣旨のものがアメリカから述べられているというお話もございました。昨年の十月にはホールドリッジ国務次官補も、対韓問題について日本政府が韓国の防衛努力をきちっと押さえて協力をしなければいけない、こういう見解を述べておりますし、ことし一月の日米安保協においても、アメリカ側からそのことが強く出されているわけであります。  そういう点で、日韓経済協力、純然たるベースではなくて、つまり経済協力の原点である人道的な立場に立つものではなく、そういう危険な背景があるということをひとつ指摘をしておきたいと思いますし、また、経済協力の基本は、国連や世銀の調査や見解でも明らかなように、開発途上国に対する援助が基本であると思うのです。ブラント報告などでは、五億人、六億人などのアジア、アフリカの方々が飢えに苦しんでいる、こういうことも報道されております。そういう点で、経済協力のあり方を、改めてこうした立場に立って確立をされるように強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  122. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  123. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、当面緊急の課題になっておりますアメリカとの日米貿易摩擦の問題を中心にいたしまして、特に食糧、農産物の自由化に焦点を置きながら、若干の御質問を申し上げたいと思います。  まず、外務大臣にお尋ねをいたしますが、自民党の江崎調査会がいま訪米中でございますが、伝えられる報道によると、レーガン大統領、副大統領、関係アメリカ各閣僚、関係機関、いずれも日米の貿易摩擦については大変風当たりが強い、こういう報道が伝えられておるわけでありますが、わが国に対するアメリカ側の大変強い対日批判は一体どこに原因があって、アメリカは一体何を日本に求めておるのか、このことをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  124. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 田中委員の御質問で触れられたとおりに、江崎ミッションは、米国内のむずかしい諸情勢の反映を受けてでございましょう、米側のレーガン大統領を初めとする要人との会見におきましては、非常に厳しい要望を受けておるように見受けます。これは、端的に申し上げますならば、やはり日米間の貿易が非常に大きなインバランスにあるということではないかと思うのであります。したがって、先般来、鈴木改造内閣におきましては、市場開放対策をいろいろととってきておる次第でございますが、まだそれらの日本側の誠意が十分アメリカ側に浸透しておらないうらみがあることを、大変遺憾に思っておる次第でございます。
  125. 田中恒利

    田中(恒)委員 外務省は駐米日本大使館、大河原大使などを中心にして、いま大々的にアメリカの政府並びに特に議会筋に対して、わが国の主張を理解をさせる諸対策を講じておられるようでありますが、その日本側の主張点というのは一体どういうものになっておるのか、この点を外務大臣からお聞かせをいただきたいと思うのです。
  126. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 米側の各機関に対して大河原大使あるいは日本から特に橋本情文局長を派遣をいたしましたが、大使館のそれぞれの立場の方々を動員いたしまして、そして議会を初め有識者の方に広報活動をいたしておるわけでございますが、これは要するに、日本側がこの開放体制をとるためにいろいろ努力をしておることが十分理解されておらないということであってはいけない、あるいは日本に対しての批判が大変誤解の面があったりしてはおらないかというようなことで、いろいろな角度から説明をいたし、米側の理解を得るべく全力を注いでおるような次第でございます。
  127. 田中恒利

    田中(恒)委員 すでに鈴木内閣は、関税の二年前倒し、さらに輸入手続の簡素化などにつきまして決定をいたし、その上に貿易の苦情処理の機関を設置をせられる、この程度のことでアメリカとの話がつくだろう、こういうことで現段階では取り組まれておるように私どもは伺うわけでありますが、しかし、そのことではこれはなかなか済まない。外務大臣は三月には訪米をされるようでありますが、この段階に至るまで一体日本側として——アメリカとのこの摩擦の問題で特に外務大臣が訪米をされるに当たって、どういう対策というか考え方で三月に訪米されるのか、この辺も含ませてお知らせをいただきたいと思うわけです。
  128. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 三月の訪米についてはまだ決定はいたしておりませんが、そのころの時期に先方の日程が許せば、行くのにちょうどいいんではないか、こう思っておるわけでございます。  私が先方に参ります以上は、これはもう日本側としての率直な意見を申し上げるつもりでございます。改造内閣としてまだ三カ月足らずのところでございますが、いち早く総理御自身の発想で、関税の前倒し、非関税障壁の改廃あるいはオンブズマン制度などをやる、こういうことで着々といまの貿易摩擦に対応しておるわけであります。  また、今回の江崎ミッションあるいは外交ルートを通じまして、農産物等の自由化の要望などがございます。あるいはサービス部門の自由化などもございますが、これはこれでまたそれぞれ適切にこたえていく必要があるかと思うのでありますが、しかし、先方の次々と要望されるものの中には、余り日本の実情を十分理解してない面があるのじゃないかというような点もございますので、そういう点は、今回の江崎ミッションにおきましても相当率直に意見を申しておるようでございますが、なお理解を得ないということであれば、私もさらにそういう点を強調してまいりたいと思っておる次第でございます。
  129. 田中恒利

    田中(恒)委員 私ども眺めておりますと、向こうからボールが投げられましてそれを打ち返すのに一生懸命、こういう感じであります。日本とアメリカとの関係は、ことしの予算の編成をめぐってアメリカ側から大変強い防衛費の増額についての風が当たってまいりました。これを一応かわしたかと思うと、今度は経済摩擦の問題で、これまた、いま一荒れしようとしているわけですね。  こういうアメリカ側から一方的に投げかけられてくるものに対して、わが国政府がやはり日本としての主張をきちんと持って、単に誤解があるから、あるいはあちらさんの方の納得不十分であるからそれを理解をしていただく、こういう程度のことでは、私は自主的な日本の外交の姿としては納得できないわけであります。この点についてもう少し踏み込んで、わが国として持つべき主張、特に今回の経済摩擦の問題をめぐってきわめて不合理と思われるような諸点について、鈴木内閣なり外務大臣が先頭を切って大胆にアメリカに物申す、こういう姿勢をお持ちであるかどうか、この機会にあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  130. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 田中委員のおっしゃることは、大変私ども元気づけられるところでございます。本来でありますと、本年は平和条約が発効いたしまして三十年でございますから、ひとつ日米友好親善を大いにうたい上げてお祭りでもするのがいいかと思うのでありますが、どうもそういうような状況にないことを大変に残念に思うのでございます。  大体が、アメリカ経済が失業、インフレに悩まされておる。これはまた国際経済も同様の傾向を持っておることは御承知のとおりでございます。この一環の中での、アメリカとしての現に直面しておる困難について、友好国である日本に何分かの応援を求めよう、あるいは日本の市場閉鎖性などについてこの際ひとつ大いに文句を言っておこうというようなことであろうと思うのです。しかし、ここでこうやってしゃべっておる以上に、今度の江崎ミッションを通じて見ますと、どうも非常に米国内の空気が悪い、厳しい状況にある。したがいまして、いまアメリカの大使館を通じまして手当てをして、先ほど申し上げたような広報活動を大いにやっております。  そういうことをやっておりますと、州によっては、日本に対して大変理解を持っておる州もある、また厳しい州もある、いろいろございますので、せっかく江崎ミッションが参ったのでありますから、帰りました後に、せっかく行かれた印象などを十分聞きまして、また広報活動の結果を踏まえまして、仮に私が行くときには、また新しい視野、角度から大いにアメリカに対して物を申したい、このように思います。
  131. 田中恒利

    田中(恒)委員 外務大臣、御用があるようですから、通産大臣にお尋ねをいたしますが、いまアメリカの議会に提案されております相互主義法案、大変たくさんの種類が出ておるようでありますが、これの見通し、これに対する通産大臣の御所見をひとつ賜りたい。
  132. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの議会にはずいぶんいろいろの種類の相互主義法案が出ておりますが、今回はこの相互主義法案に賛同する議員が相当ふえてきている、特に有力な議員が参加をしておる、こういう状況でございますし、全般的に相互主義という空気がアメリカ議会全体を覆っておるということでございますから、この法案の中には通るものもあるのじゃないか、私はこういうような心配をいたしております。そして、これに対してアメリカ政府がどういう対応をするかということも重大な関心でございます。
  133. 田中恒利

    田中(恒)委員 通る法案もあるかもしれないということでありますが、今度の経済摩擦の原因というのは、一つは、アメリカの中間選挙を前にして大変政治的要因が動いて、議会筋が非常に活発な動きを示しておるというのが特徴でありますが、やはり基本的には、どなたも言われるように、アメリカの国際競争力が非常に低下をしてきた。加えて、アメリカの予算財政の中に防衛費が非常に突出して、わが国もそうでありますが、この影響が国内経済に響く、高金利政策をとらざるを得ない、こんなことなどが日本の商品の輸出に対してはね返ってきておる、こんなふうに言われておるし、われわれもそう思うわけです。  しかし、わが国の国内の経済の構造の中で、集中的な輸出、特に大企業を中心とした、自動車などを中心とする集中豪雨的とさえ言われるような対米輸出の経済構造、これをどうしていくのかという問題が、この問題を契機にしてお互いにやはり考えていかなければいけない問題のように思うわけであります。通産大臣は、これらの日本の経済の体質を一体どういうふうに変えていかれるのか。当面の貿易摩擦の処理に当たって、特に日本の輸出産業部面に対する鈴木内閣としての取り組み方につきまして、この機会にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  134. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 わが国は貿易立国でございますから、やはり国際的な競争力のある商品は外国へ輸出をして、そして日本の経済の安定を図っていかなければならぬことは当然でありますが、しかし、いまお話しのように、集中豪雨的な輸出ということについては、この数年来、わが国としても自制をいたしております。たとえば自動車についても、アメリカだけではなくて、ECに対しても自粛措置をとってきておりますし、自動車のみならず、鉄鋼も同様でございます。その他、工作機械であるとかIC製品であるとか、日本としては集中豪雨を避けた形で自主的に自制措置をとってきておることは、アメリカもEC諸国もよく理解をしておるところであります。
  135. 田中恒利

    田中(恒)委員 通産大臣は、先般三極通商会議を経てこちらにお帰りになりまして、日本の残存輸入制限品目二十七品目ありますが、これを見直さなければいけない、こういう御発言があり、また当委員会で、農産物の残存輸入制限二十二品目について、通産大臣から、やはり前向きにこれを検討していく意味の御答弁があったようであります。農林大臣は手を染めたくない、こういう御見解のようでありまして、政府内部でまだ少し意見の一本化がなされていないようであります。  私は、農村関係を地盤として出ておる者でありますが、いま日本の農村を回りますと、零細なわが国の農民が、一体何で、国際競争力がこれほど高まって、これほど大きな国になったという日本の巨大工業製品の犠牲にならなければいけないのかという意見が、実は満ち満ちておるわけであります。このことに対して、鈴木内閣がやはり回答を与えなければいけない。通産大臣も農林大臣をやられた方でありまして、今日の農政、特にわが国の食糧輸入の現状は嫌と言うほど御承知でありますから、私は細かくは申し上げませんが、一体こういう残存輸入制限二十二品目を検討しなければいけないのか。私どもは、実は昨日と一昨日二日間、農林水産委員会で、もうほとんどこの議論に集中したわけであります。これは自民党を含めて各党とも、やっちゃいかぬとみんなおっしゃるわけでありますし、農林大臣も手を染めたくない、やりたくない、やらせないために全力をふるってがんばる、こういう御発言があったわけでありますが、通産大臣どうお考えですか。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この残存輸入制限品目につきましては、十二月十六日の経済対策閣僚会議、これには総理も出席をいたしております。関係閣僚も出席をいたしておりますが、その経済対策閣僚会議におきまして対外経済政策を決定するに当たりまして、残存制限品目の問題については諸外国の関心品目に留意しつつ、適宜にレビューを行う、こういうことを決定いたしておるわけであります。したがって、私はそうした政府の決定に従って、ここで発言をいたしておるわけでございます。
  137. 田中恒利

    田中(恒)委員 政府の決定に従って御意見あったわけですが、通産大臣としてはどういうふうにお考えですか。
  138. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん私もその閣僚会議の一員でございます。その決定のもとにこれからの問題に対して対処していかなければならない、こういうふうに考えます。
  139. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣、お尋ねしますが、この十二月の十六日の経済対策閣僚会議の、適宜レビューいわゆる見直しを行うという、この見直しを行う政府の主体は農林省ですか。
  140. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 対外経済閣僚会議で決めました五つの対外経済対策については、これは対外経済閣僚会議で決定したのでございますが、そのレビューの問題については、やはりこれは対外経済閣僚会議で最終的に決められるものと私は考えます。
  141. 田中恒利

    田中(恒)委員 最終的には閣僚会議で決めるわけですけれども、閣僚会議に持っていくためにレビュー、見直しを行う担当の役所というのは、これは農林省でしょう。その最終的な判断者は農林大臣でしょう。これは間違いないでしょう。
  142. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 それは当然農林省が参加しなければならないと考えています。
  143. 田中恒利

    田中(恒)委員 すると、農林大臣は、この二十二残存品目についてどういうお考えですか。
  144. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 この委員会で何回もお答えしておりますけれども、いまの農林水産行政の置かれている現状、それから残存輸入制限品目に対する農家あるいは団体の考え方は非常に厳しい、そういう背景を受けまして、私としては残存二十二品目についてはできるだけ手を染めたくない、現状を守りたい、こういう考えております。
  145. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣はやりたくないということでありますが、通産大臣、これは通産大臣だけじゃだめですね、経済閣僚会議は大蔵、外務、経済企画庁いろいろありますけれども、しかし一番のお役所は、私は通産省と農林省だと思うのですよ、農産物輸入制限に関しては。この農林大臣の意見というものは、レビューを行う最終的な決定機関である経済閣僚会議の中で通産大臣としても十分にわきまえて、しかも、あなたは農林大臣をせられてきたわけであります。農林大臣在職中もこれほどの規模ではなかったけれども自由化問題はあったわけでありますが、私はやはり通産大臣が協力して農林大臣の大体いまのような趣旨に沿うように努めるべきだと思いますが、いかがですか。
  146. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私もいまの農政の直面している困難な実態というのはよく承知をいたしております。経済対策閣僚会議におきまして今後新たな方針を決定するに当たりましては、農林大臣の御意見も十分お聞きして決定をされなければならない、こういうふうに考えております。
  147. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林大臣にお尋ねしますが、アメリカの経済摩擦のいま焦点になっておるのは、ともかくアメリカの食糧を日本に買え、日本の市場は農産物について大変閉鎖的である、これが大体一番表へ出ておることなのですね。農林大臣は、日本の食糧市場というのは外国に対してきわめて閉鎖的であるとお考えですか。
  148. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 アメリカとの食糧全体から言いますと、むしろ日本がお客さんでございまして、農林水産関係でも百二億ドルのアメリカから輸入をしている、こういう状況でございますし、穀物全体でも約二千三百万トンほど輸入しているという状況でございますので、決して農林水産産品については閉鎖的でない、こう考えるのでございます。どこの国でも農林水産物についてはそれぞれ保護政策をとっておりますので、私は、二十二品目は日本の農政を支えるための最小限度のものだ、こう考えますので、これだけはぜひ守りたいものだ、こう考えておるのでございます。
  149. 田中恒利

    田中(恒)委員 私も農林大臣のいまの御答弁とは同じ理解をいたしております。単に数字でたとえば世界の農産物の輸入状況を見てみると、世界全体は五年間に六二・七%上がっておりますが、日本は六九・七%ということでありますし、ヨーロッパなどに比べても相当たくさん食糧を買っておるわけですね。いま日本に食糧を買う余地はない。いま日本の国民の一人当たりの食糧の需要というのは停滞をし始めて、いわゆる食糧の支出は減ってき始めております。食べる量も減ってきております。これ以上こういう状況の中でたくさん入れるということは、これは外国の食糧が入るわけですから、国内の食糧生産に打撃を受けるということになるわけであります。こういうことになりますと、一昨年ですか、国会は食糧の自給力確保に関する院の決議をいたしておりますが、こういう決議の方向と全く逆なことになるわけですね。  残存輸入制限自体がいまたしか十億ドルぐらいだと思うのですね、二十二品目。これを完全に撤廃しても二十億ドル。アメリカといま百三十四億ドルの貿易収支のいわゆる黒字だと言われている。一体、十億なり二十億ドルぐらいでこの経済摩擦の関係が解消されるとはとうてい思えないわけですね。そういう意味では、これは理論以前の問題だと思うのです。ただ何となくアメリカが牛肉なりあるいはオレンジなりジュースなり残存輸入制限の品目をやかましく言ってきておるから、何とかここで少し考えなければいけないのじゃないか、こういう姿勢で取り組まれますと、私は、日本の農業なりあるいは食糧問題というのは大変な状態になっていくと思うのですね。  私がここでとやかく申し上げるまでもありませんが、ともかく世界は食糧をめぐって大変な危機的な状態になるのじゃないか、こういう人間の不安が満ちておる今日であります。そういうときだけに、食糧の自給確保の政策と今回の貿易摩擦、特にアメリカの食糧輸入についての要請については、ぴしっとはね返していただきますように重ねて農林大臣に要求をいたしまして、大臣の御答弁をもう一度承りたいと思います。
  150. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 ただいま田中さんの御指摘のように、私たちは、わが国の食糧の自給力を確保するために最大の努力をいたしているわけでございますが、そのためには、わが国で自給できるものと海外からどうしても依存しなければならぬ品目とあるわけでございますが、しかし、できるだけ私たちの国で生産できるものは私たちの国で賄うという考え方でこれを進めてまいらなければこれらの問題は処理できない、食糧の安全保障というものを確保できない、かように考えますので、今後私たちは、できるだけ国内で生産できるものは国内で賄うという基本に立ってこれからも政策を進めてまいらなければならない、かように考えております。
  151. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、先ほど外務大臣に、日本として自主的に、主体的に主張すべきものを主張してほしいと申し上げましたが、私は食糧、農政上の日米関係を見ましても、そのことを非常に強く感じるわけです。今日、わが国とアメリカとの関係が、経済的にも政治的にも軍事的にも大変密着をしておる。そういうことは十分承知をいたしておりますけれども、しかし、たとえば、私は愛媛県ですからミカンの地帯でありますが、私のところは温州ミカンをたくさんつくっておる。この温州ミカンをアメリカに輸出しております。わずかでありますが、輸出しております。このミカンができるまでの間に、アメリカの植物防疫官が四回、五回、六回ほど参ります。そして、いろいろな検疫上の検査や指導をいたします。大変やかましい。その上に、輸出用ミカンの周辺半径五百メートルというのは、温州ミカン以外は植えてはいけないということになっている。いま温州ミカンは、御承知のように、転換を政府も奨励しておる。約二割、いわゆる米で言えば減反であります。そこで、中晩柑という少し内容の違った果樹にみんな切りかえておる。この温州ミカン周辺五百メートル半径は切りかえができない、これは作付制限をされておるわけですから。こういう厳しい状況があります。  特に、この輸出先はアメリカ四十八州中六州に限られておる。あとは輸出させてくれない。いまアメリカからオレンジなり牛肉なりを相当買っております。しかも、東京ラウンドですでに相談ができて、できたとおり日本は買っておる。アメリカはその上にさらに大きくかぶせてこようとしておりますが、わが国の温州ミカンについてはわずか六州しか買ってくれない。こういう不合理な状態がある。  特に、私はいまからチチュウカイミバエの問題について御質問いたしますが、チチュウカイミバエというのは世界の害虫の中のこれは先祖みたいなものでありまして、一番こわい虫であります。この虫が日本に入ったら、日本の蔬菜と果樹は全滅をする、北海道を除く全土に蔓延をする、こういう内容の虫でありますが、このチチュウカイミバエの問題をめぐっても、私は、日米両国間に対等な状態にない話し合いがせられておるような気がしてならないわけです。  通産大臣にお尋ねをいたしますが、大臣は三極通商会議においでになったときにレーガン大統領とお会いになった。私は、相当高度な政治論議がされると期待をしておりましたら、新聞を見ると、チチュウカイミバエのことについて安倍通産大臣にレーガン大統領からお話があった、こういう報道が一番大きく出たのですね。私は一体どういうことなのかと思いましたが、このことについてレーガン大統領からどういうお話があったのか、お聞かせを願える範囲でお知らせをいただきたいと思うのです。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 高度な話し合いもしたわけでありますが、チチュウカイミバエの問題につきましては、ちょうど日米交渉が行われている最中でありまして、レーガン大統領が円満な解決を望む、こういうことでございます。これに対して私から、これはもう純技術的な問題であるので、日米間において純技術的に解決されるべきことである、こういうふうにお答えをいたしておるわけでございます。ですから、この解決は純技術的に解決されたものである、こういうふうに私は考えております。
  153. 田中恒利

    田中(恒)委員 それは害虫ですから、こわいやこわいですけれども、世界の指導者であるレーガンが虫のことについて一国の通産代表と話をいたしたということですね。そのことだけでも、当時、後でいろいろ御質問いたしますが、日米専門家会議が行われる寸前でありますが、やはり国民に対しては割り切れぬものを与えたということは事実であります。私も、いま安倍大臣が言われたようなことだと思いますよ。思いますが、いわゆる関係者を初め日本国民に対しては、これは何かアメリカから強い力が加わった、こういう感じをせざるを得ない、そういう状況を一段とつくったと思います。  昨年の八月二十六日にこのチチュウカイミバエの検疫の取り扱いについて専門家会議が持たれました。そして、一定の合意が成立をいたしました。それから五カ月たちましたことしの一月二十日に、これを変えられました。大幅に緩和せられました。わずか五カ月であります。一体この五カ月の間に緩和をしなければいけない条件があったのかどうか、これは農林大臣からお聞かせをいただきたい。一体どういう理由でこれは変えられたのかですね。
  154. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 チチュウカイミバエにつきましては、たまたま日米専門家会議を開いたときと安倍通産大臣が外遊したこととやや時期が一致したものですから、そういうような誤解を招いていますけれども、実際問題は、やはり専門家会議で専門的な立場から議論しての決定でございまして、したがいまして、撲滅宣言を前提として暫定措置を行ったということが現状でございまして、あくまでも専門的な立場で問題が処理されたということでございます。したがいまして、この内容についてでございますが、去年の十一月に入りまして、問題の二郡について成虫もあるいは幼虫もゼロなんです。それから、十二月もゼロですし、一月に入ってもゼロだ、こういうようなことで、一九八〇年から八一年までの間は、十一月には成虫が九頭、幼虫が四十七カ所、一月に入って五頭と二カ所、二月で成虫がゼロで幼虫が一、それから三月で成虫が一で幼虫がゼロというような経過で、それで一九八一年から八二年になって先ほど申し上げましたように十一月にゼロ、十二月にゼロ、一月にゼロというデータが出ているわけでございますが、詳細については、専門家会議の経過でございますので局長から説明をさせます。
  155. 田中恒利

    田中(恒)委員 政治的なものはなかったということでありますが、私は、いまの貿易の自由化、経済摩擦と、スケールは小さいわけですけれども、同じような状況で進んでおるような気がしてならない。当時カリフォルニアの関係者の間から日本商品のボイコットというのが起きまして、この一月十一日にカリフォルニア州知事が日本の総領事に対してチチュウカイミバエの検疫を緩和してくれ、こう要請をしておりますね。さらに、十四日にはハヤカワという向こうの議員が、これをやらないと日本商品のボイコットをやる、こういうことを言っておる。それに符牒を合わせたようにカリフォルニア州農民のボイコットの宣言がなされる。このころにたまたま安倍通産大臣がお行きになったということでありますが、こういう一連の動きを見てみますと、何か外から力を加えて、そして専門家会議、純然たる技術的、専門家的な内容のものに対して上から何か力を加えていく、こういう形が進められてきたと思うのです。そういうところにわれわれはちょっと納得しがたい面があるわけです。  しかも、この内容でありますが、このチチュウカイミバエというのは大体いまは余り表へ出ないので、これは昨年も一昨年も二年間連続、表に出てくるのは六月なんであります。五月の末から六月なんですね。ですから、いまの時期は出ないのですから、これは静まった、こういう認識をするのはあたりまえのことなんです。その時期になぜ改定をしなければいけないのかという問題があります。あるいは、いまアメリカのカリフォルニアでは七つの郡に特別検疫地域、ここでできた一切の果実は全部焼却する、こういうことになっておりますね。一切これを搬出してはいけない、こういうことになっております。七つの郡にしておるのに、二郡だけ撲滅宣言ができれば昨年の八月十八日以前の状態に戻す、あとの五つの郡に生息をしておってもそれは見逃しておく、こういうやり方は一体どういうことなんだ。あるいはレモンでありますが、レモンにチチュウカイミバエは付着しないということは技術的にも断定できていない。レモンにも付着をする。ただ、レモンとオレンジを比べればオレンジに付着しやすい、こういうことになっておるわけですね。ところが、このレモンをいわゆる検疫なしに入れる、こういう申し合わせもしていらっしゃる。これはカリフォルニアの日本に対する出荷が最盛期になってきたものだから、その力だと思うのです。私はどう考えても純然たる技術的、専門家的立場で検討せられたものとは思えない。  特に、これは局長じゃないといけないと思いますが、検疫証明書というものは国を出るときに出す証明書でしょう。日本でもアメリカでも輸出品について検疫証明書は国外に出るときにやるものでしょう。今度なぜ低温に切りかえて船中で薫蒸をする。日本の港、横浜なり神戸の港に着いたときにアメリカの検疫証明書を発行される、日本の領海の中でアメリカの検疫官が検査をして証明書を発行する、こういう処置がこれまでありましたか、日本の植物防疫のやり方の中に。外国の港に着いてアメリカが証明する、こういうことが認められるというところに私はどうも納得がいかないわけですが、これらの点について、これは事務当局で結構ですが、ひとつはっきりとした御回答をいただきたいと思うのです。
  156. 小島和義

    ○小島政府委員 お答え申し上げます。  今回のアメリカと日本との間におきます専門家同士の会議の結論になりました事項は三つございまして、一つは、アメリカからの輸入果物につきましての規制の緩和の時期をいつにするかという問題、第二には、レモンについての暫定的な扱いの問題、第三には、船上での低温処理という問題でございます。先ほど大臣からお答え申し上げましたように、これらの問題はいずれも専門的、技術的見地から議論されました上で決定いたしましたものでございまして、いかなる政治的な配慮もいたしておらないわけでございます。  お尋ねありました件について順次申し上げますが、まず第一に、相当アメリカに対して緩和したのではないかというお話でございますが、アメリカ側としては、最近の発生状況が非常に少ないという事態を踏まえまして、昨年八月以前の状態に戻してもらいたい、つまり規制地域外は無消毒でよろしいという状態に戻してくれというのが向こうの主張でございますが、私どもとしては、ただいまそういう最終判断をすべき時期ではない、時期尚早であるということをもちまして、スタニスラウス郡、ロサンゼルス郡両郡の撲滅宣言が出された段階でそのようなことにいたしたいということにいたしたわけでございます。なぜ全体で七郡ありますうちの二郡でそういう扱いにしてよろしいと判断をしたかと申しますと、昨年の八月に飛び火をいたしましたのがいま申し上げました両郡でございまして、そのほかにもう二郡ほどございますが、これは既存の発生郡といわば隣接をしておる、その二郡もいずれも最近の状態は非常によくなっておりますが、これらを切り離して撲滅宣言を出すかどうかというのはかなり技術的に困難な問題もあるようでございますので、その二つの郡、スタニスラウス郡とロサンゼルス郡の撲滅宣言を待って八月以前の状態に戻すということでありますから、これは当方の主張をそのまま押し切ったものというふうに御理解をいただきたいわけであります。  第二の、レモンについて特別な扱いを決めたではないかというお話でありますが、レモンについては、昨年八月以降アメリカ側とこの果物が寄主植物であるかどうかにつきまして大変な議論がございまして、アメリカ側は寄主植物ではないと主張し、私どもは寄主植物であるということで主張し、現在寄主植物として扱っておるわけでありますが、アメリカにおけるさまざまな実験例から見ましても非常につきにくい果物であるということは日本側としても認めておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、さらにはレモン生産郡の周辺地域におきましては過去三カ月にわたりまして一匹の発見もない、こういうふうに事態が非常に改善されているということを踏まえまして、出荷の時期をこの四月の十日までと限定をし、かつ規制地域を含んでいる郡の生産ではないという場所の限定をし、さらに万が一規制地域外に虫が出てくるという事態があったらこれらの措置はいつ何どきたりとも撤回をするという条件を付しましてこういう暫定措置を決めたわけでございます。その後の取り扱いは四月の上旬にさらに相談をするということにいたしておるわけであります。  それから、最後の船上での低温処理の問題でございますけれども、これはお話のように、チチュウカイミバエその他の禁止害虫の発生地域からの解禁に当たりましては、輸出国を船積みされるときにおいて検疫証明書が発給されるということが大前提でございます。今回のアメリカにつきましてこの措置を認めましたのは、アメリカのただいま消毒を義務づけておりますものはいずれもその害虫の発生してない地域からのものでございます。したがって、禁止地域を解禁する場合と虫の入ってくることを予防するための消毒とはおのずから扱いが違うということをもちましてこの措置を認めた、こういうことでございます。
  157. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろ釈明をせられましたけれども、私はちょっとこれは納得いかない。この植物防疫法という法律は、人間で言えばコレラ、チフスのようなものなんですよ、このチチュウカイミバエなんというのは。それが来るときには、これは植物防疫法の法の基本から言えば入れないというのが基本なんですよ。オーストラリアだってヨーロッパだって、いまこのチチュウカイミバエがあるということで、国全体が輸入禁止の省令に基づいて処理されておるわけですよ。何でアメリカだけカリフォルニアで起きたのを——本来であればアメリカ全体にこれは関係するんですよ、この植防法のたてまえから言えば。植防法というのは、このチチュウカイミバエについては、もし発生したらそこからそれが完全になくなるまでストップするというのが本旨なんです。それをきわめてあいまいな取り扱いをせられて処理をせられておる。私はアメリカでなかったらやらないと思うのですよ。このことが影響してオーストラリアがオレンジの自由化を迫ってきたでしょう。私、いろいろ申し上げたいけれども、EDBでやれるならうちもやっておるからやれ。今度やるでしょう、オーストラリア・オレンジ、解禁せにゃいけないでしょう。この取り扱いに一つの大きな理由があると私は見ておるわけですよ。  私は正直に申し上げまして、このミバエ問題を通してわが国のいわゆるアメリカに対する姿勢がやはり農業の内部でも出てきております。今回の貿易の自由化の問題の中でも、そのことが出る不安を強く持ちます。それだけに政府が明確に、特にこの農産物、食糧問題については強い決意で取り組んでいただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。
  158. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、小川君より関連質疑の申し出があります。田中君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川国彦君。
  159. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、昨年度から引き続いて国政上の重要課題になっております行政改革の問題について、鈴木内閣の閣僚にその政治姿勢をただしてまいりたいと思います。  まず、行政改革はやはり国民的なあるいは国政の課題としても当然やらなければならない、しかし弱者いじめの行革ではなくて、中央省庁の統合整理あるいは出先機関の整理統合あるいはまた特殊法人、外郭団体を含めた機構の合理化、予算の節約、こういうことを図って国民の税負担を軽減していく、こういうことをしていかなければならないと思うわけであります。  こうした方向の中で、さきの行革特別委員会におきまして、私は、大蔵大臣あるいは行政管理庁長官に対しまして、中央競馬会、日本船舶振興会、日本自転車振興会、こうした特殊ギャンブル団体の財政を洗い直して、予算や補助金の乱用をやめさせ、むだ遣いしている金は国庫に納付させるべきだ、こういう提案をいたしましたが、その後、昭和五十七年度予算編成を通じての鈴木内閣の政治姿勢を見ておりますと、どうも真剣に行革に取り組んでいるという姿が見えないわけであります。  まず、大蔵大臣と行管長官に伺いたいのですが、私がさきの国会で、中央競馬会の三千億という剰余金の中から直ちに千五百億円というものの国庫納付が可能である、こういう提案をいたしました。私は、私の友人の公認会計士あるいは税理士、そうしたグループとつぶさに中央競馬会の決算書全体を検討する中でそういう提案をしたわけでありますが、どうもそうした私の提案が鈴木内閣の中では真剣に取り上げられていないような感じがするのであります。この点について大蔵大臣、行管長官、それぞれこうした問題についてどういう取り組みをなすったか、まず御答弁をいただきたいと思います。
  160. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 せっかくの御提案ですから、耳寄りな話でもございますし、私としては鋭意実態を調べるように言っておいたわけでございます。ところが、御承知のとおり、中央競馬会の特別積立金等の中身を調べてみますと、二千八百億ばかりあるのはありますが、そのうちの二千億円くらいのものが、スタンドとか土地とか厩舎とか競馬場の施設という固定資産なんですね。七百七十億ぐらいのものが流動資産であるのですが、これはいろいろなことで、この程度の運転資金がないとやっていけないというようなお話もあります。もう少し何かできないかと言ったところ、去年あれだけ五百億からのものを出さしたということで、ともかくことしは間に合わない。  それじゃ、何かギャンブル税でもできないかということで検討もしてみたのです。ところが、ギャンブル税といったって、売り上げにかけるといっても、いま二五%も取っている。したがって、それ以上高くテラ銭はねているところは世界じゅうない。ほかは一五とか二〇くらいだ。お客離れしちゃう。それじゃ、勝った人にだけかける方法はないか。馬券を買ったらその馬券で大当たり、何万とか何百万とか入ったら、その半分だけは直ちに所得税の対象、一時所得としたらどうだ。ところが、一時所得にすることはできる。しかし、一時所得というのは必要経費を認める。そうすると、負けた連中が馬券をいっぱい散らしてあるから、そいつを拾っていって、これだけ使ってこれだけ勝ったんだということになると利益がなくなってしまうし、おまえのものじゃないじゃないかという証拠がないということで、実際そういうことで、そうかということで時間切れということでございます。  いずれにしても、どんどんこれからも競馬、競輪というのは伸びていく、特に競馬は伸びていくということで、馬主賞金とかよけいなむだ遣いとかいうようなものをどんどん出させることはいかぬ、したがって、こういう点は少し締め上げまして、第二の剰余金がいっぱい出るようにしてもらえば自動的に入るわけですから、そういうことをお願いしておるわけでございます。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御趣旨は私ども同感でございまして、臨調の昨年の七月十日の答申の中でもそういう努力をする方向が示されております。  そこで、われわれといたしましても、いま臨調におきまして具体的にどういうふうにやるか、特殊法人の縮減問題とも絡めて検討しておりますので、国家財政窮乏の折から、最大限御協力を願う方法はないものかと思って、探索しておる次第であります。
  162. 小川国彦

    小川(国)委員 両大臣とも努力中、探索中、こういう答えなんですが、実は私、昨年末中央競馬会の幹部に、その後皆さん方、私が提示した国庫納付金ができるであろう、こういう提言に対して政府の方から何らかの働きかけがあったか、こういうことを話しましたところが、実は、いろいろ国会で問題になったので五百億程度の国庫納付を求めてくるか、こういうことで待っておったところが、政府から何のあいさつもない、名前は申し上げませんけれども、そういうお話を承っているわけです。この国家財政厳しい状況の中で、ことしは文教も福祉もあるいは農業もいろいろな面で予算の制約を受けておりますし、福祉や文教は何十億あるいは何百億という予算が削られて、福祉施設や学校が建てられない、つくられない、そういう状況があるのに、五百億という国庫納付のある程度のめどを競馬会自身が持っておるときに政府から声がかからないというのは、やはり真剣にやっていないのじゃないか。私はこの二年間、徹底的に中央競馬会問題を追及してきただけに、そういう政府の政治姿勢を大変残念に思うのです。行政管理庁なり大蔵省なりが、そういう働きかけなり検討を具体的に持たれたのかどうかですね。
  163. 松下康雄

    ○松下政府委員 中央競馬会の納付金につきましては、私ども直接に中央競馬会とお話をするということの前に、主管の省庁であります農林省と、先ほど大臣が申されましたようないろいろの議論を重ねまして、その結果、五十七年度につきましては、大臣の申されましたような、こういう予算を計上するということにいたした次第でございます。
  164. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっといま主計局長答弁、明快に聞こえないのですが、五十七年度予算では計上しないということですか、するということですか。
  165. 松下康雄

    ○松下政府委員 五十七年度の歳入予算におきまして、中央競馬会の納付金としましては千八百三十八億九千百万円を計上いたしております。そのうち、第一国庫納付金の分千五百三十八億九千百万円、第二納付金の分三百億円でございます。
  166. 小川国彦

    小川(国)委員 それはもう定例のもので、第一次国庫納付金というものは一〇%と決まっているものですし、第二次は、中央競馬会は毎年大体七百億円ぐらいの第二次剰余金を出していますから、その半分三百億ぐらいは既定のコースです。毎年のお決まりなんですね。そのほかに五百億ぐらい、政府が困っているならこの補正予算を組む際にでも特に政府はまた五十六年度予算でも赤字国債を発行しなければならない事態があって、なぜそうした私どもの提案に基づいて、私は千五百億と言っているのですよ。受ける方は五百億というふうに考えているのですからね。  そういうところを大蔵省は農林大臣との協議と言いましても、大臣もかわったばかりで、大臣、これについて御協議受けましたか。——いつもあなたは出てくるんだよね。私は農林大臣に質問しているのだ。閣僚は引き継ぎをやったばかりだから、新大臣がそういう話を、さっき大蔵大臣は農林大臣の方と相談をした、こう言っている。あなたは農林大臣じゃないのだからちょっと下がってもらって、農林大臣が受けたかどうか。この前も大臣に聞いて、しかも大臣答弁できる範囲のことを聞いているのに出てくるんだ。国会の審議にそういうことは許されないのですよ。下がってください。
  167. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 前の大臣の事実関係でございますので、はなはだ失礼でございますが、畜産局長から答弁させますから、御了承いただきます。
  168. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘の国庫納付金の問題でございますが、前の行革国会でもいろいろ御指摘ございました。私ども、まずことしの予算を組む前から、実は先生御指摘のいろんな経費の問題等も洗いまして、御承知のように、競馬会予算は十二月認可でございますので、その際にも関係経費等について十分目を通してやったわけでございます。その際におきましても、競馬会といたしましては、御承知のように、売り上げがなかなか伸びなくなってきた。昨年末の有馬記念では、初めて対前年比一〇%以上の収入減等がございまして、競馬会としては長期に安定的に納付金を納めていく必要がある、したがいまして、いままでのように売り上げがどんどん伸びているという事態じゃございませんので、先ほども大蔵大臣から御説明がありましたような原資の中で極力長期に安定的な国庫納付を続けるような体制にしたいというのが、競馬会の私たちに対する話でございました。したがいまして、通常の第一納付金のほかに第二納付金も含めて千八百数十億の納付をする、しかも極力経費を節減して、今後ともこの納付が、単に単年度の問題ではなくて、かなり長い間安定的に納付ができるようにということを競馬会ともよく話し合いまして、大蔵省と協議して決定した次第でございます。  大臣につきましては、事務引き継ぎの際に、競馬会の問題でいろいろこういう問題があったということでお話をいたした次第でございます。
  169. 小川国彦

    小川(国)委員 いまの答弁もっともらしく聞こえるのですが、確かにおっしゃるように、五十六年度はいろいろ競輪、オートレース、中央競馬、地方競馬、競艇、売り上げ減、不況を反映してそういう状況はあります。しかし、中央競馬における限りは、競輪もオートも減、それから地方競馬も競艇も減になっているのですが、五十五年一兆三千六百十四億の売り上げに対し、五十六年も一兆四千四十六億と売り上げも伸びている。しかも、私が指摘しているのは、五十六年度の補正でも五十七年度の予算を組むのでも、本当に財源を見出すことに大蔵大臣も、政府全体が血眼になって財源を探している。減税の財源も探さなければならぬ、それから赤字国債の発行もやめなければならぬ。そういうことになったら真剣になって政府機関あるいは特殊法人、そういうところの財政を見直すべきなんです。  中央競馬会は金がないないと言うけれども、さっき大蔵大臣言ったように、三千億の剰余金のうち二千億は確かに固定資産になっています。ですから、一千億は現金、預金で持っているんです。一千億の現金、預金をいま持っているという企業、日本全国のトヨタとかソニーとか優良な企業でも、皆数百億あるいは何十億という借金を持っている。中央競馬会だけは借金ゼロです。毎年一千億の現金を持ち越しているのですよ。私は、政府にとったらこれはよだれが出るような財源じゃないかと思うのです。それで、その一千億を仮に国庫納付をさせても、翌年の運営に全く支障がない。これは私、かなり大ぜいの財政の専門家に相談をしたのですが、そういうようにできている。  頭脳明晰な大蔵省なり政府がその辺のところに財源を求められないはずはないわけであって、私は、この問題に関する限りは政府財政再建の真剣味はなしというふうに思う。これからでも結構ですから、ぜひひとつ大蔵省なり行管ももう少し真剣に取り組んでもらいたいと思いますが、まずこの点いかがでございましょう。
  170. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、これは大蔵省がじかに取り上げるわけにはいかないわけです。法律が当然必要なわけです。これは農林省でするか、本来なら農林省でしょうけれども法律で納めさせなければ、ただよこしなさいと言ったって、よこすわけがないわけです。ですから、われわれとしては、今後も苦しくなればなるほど、さらに内容実態をよく調査をして、そして納付してもらうことができるかどうか、極力してもらうような方法を何か考えていきたいと思っています。
  171. 小川国彦

    小川(国)委員 きょうは総理大臣がいないので、大蔵大臣に総理になったような気持ちで言ってもらいたいと思っているのですが、多少遠慮されているので、ぜひ私は、鈴木内閣の閣僚もきょうは大ぜいおいでになっていただいておりますので、財源探しの中ではこういう特殊法人の洗い直しの中に財源を求めていく、そういう真剣な御検討を閣議の中でも願いたいと思うわけです。  それから、次に私は、こうした中央競馬会の問題を契機として、中央競馬会、日本船舶振興会、日本自転車振興会、日本小型自動車振興会、こうした大きなギャンブルをやっております四法人の実態をいろいろ検討してみたわけであります。そういたしますと、四法人で配分しております補助金というものが年々大きくなってまいりまして、いまこの四法人が五十六年に配分しました補助金は、船舶振興会が七百六十億、自転車振興会が四百七十六億、小型自動車振興会が八十四億、中央競馬会が八十一億、この四団体でざっと千四百二億円という補助金を配分しておるわけです。その中には、運輸省所管の日本船舶振興会が造船関連企業への補助金で出しているものもありますし、通産省所管で自転車振興会が機械工業の振興、あるいは小型自動車振興会も機械工業の振興、中央競馬会は周辺自治体への交付金、こういうので約八百九十六億出しておりますし、それから福祉医療、文教、体育団体への補助金というものを見ますと、この四団体でやはり五百六億という補助金を出しておるわけです。  これをひとつ見てまいりますと、ことし厚生省福祉予算が削られた、文教の教育予算が削られた、あるいはまた医療費が削られた、そういう中でいろいろな補助金も削られておるわけでありますが、五百六億という補助金、全体でいきますと千五百億という補助金がこうしたいろんな団体から恣意的に出されているわけなんです。  私、いろいろな老人ホームとか保育園とか身障者の施設とか、そういう社会福祉施設に出しているギャンブル四団体の補助金というものを調べてみましたところが、厚生省の補助金では五十六年度六百件、二百八十一億円の補助金を社会福祉施設に出しているのですが、ギャンブル四団体で出しておりますのは九百二十八件、二百五十五億ということで、厚生省の取り扱っている補助金よりもギャンブル四団体の補助金の方が件数は多い、額もほとんど同額に近い補助金を配っているわけです。  しかも、その補助金を配っている配り方を見ますと、これが大変でたらめな補助金の配分でございまして、厚生省に対してたとえば社会福祉施設をつくりたいということで申請をする場合には、都道府県庁を経由して、それぞれの衛生部とか社会部、そういうところから厚生省に書類を出すわけです。厚生省の方では、これに対してはヒヤリングをやったり書類審査をしたり、かなり厳しくやる。ところが、船舶振興会の方は直接船舶振興会の本部に申し込めということになっている。日本自転車振興会のは共同募金会に申し込めということになっている。小型自動車振興会のはやはり共同募金会に申し込めということになっている。中央競馬福祉財団のは馬主会に申し込めということになっている。この馬主会などは、五十五年、五十六年を見ますと、五十五年は三百二十七件、五十六年は四百十一件で、約八〇%というものが馬主会を窓口にこういう福祉施設をつくる補助金の申請を出しておるわけなんです。  こういうふうに窓口がばらばら、それから審査も、厚生省の方は都道府県が国に協議書を出して担当官にヒヤリングをしてやるのですが、競馬福祉財団の方は馬主会が中心に審査する。船舶振興会は専門委員会というのをつくって、振興会の中の、財団の中でやっている。それから、自転車振興会、小型自動車振興会も同様なんです。とういうふうにして見ますと、そういった老人の福祉施設一つつくるのにも窓口がばらばらであって、しかも民間の方のギャンブル四団体の出しているのは、補助基準もばらばらなんです。  実は、このことで各都道府県の福祉担当者にいろいろ問い合わせをしたところが、厚生省に申請する補助金はきちんと適切な窓口でいっている、しかし、ギャンブル四団体のものは、これは政治家の政治力次第で配分が決まっちゃうので、額よりよけい来るのもあれば少ないのも来る、交付額もばらばらだ、こう言うのですね。だから、厚生省福祉予算の同額近いものがこのギャンブル四団体で出されて、窓口もばらばら、審査もばらばら、それから交付基準もばらばらなんです。  ことしの国の福祉予算が行き詰まって削減されているという状況の中ですから、こういう四団体の補助金はもう一本化して、福祉福祉厚生省が一元化してやる。これはひとり厚生省だけの問題ではないのです。文教関係の補助金、体育協会関係の補助金、体育団体の補助金もたくさん出ていまして、これもやはり同じように窓口も審査方法もばらばらです。ですから、行政改革の中でこうした団体の補助金というものをきちっと整理統合していく方向を考えるべきではないでしょうか。  私がいま申し上げたそのばらばらな福祉行政は、広い枠で言えば、これは第一義的には厚生大臣が考えなければならないし、第二義的にはこの行政改革の中で行管長官がどう考えるかという問題になりますが、その両大臣に、この福祉の施設の問題についてどう考えるか、まず伺いたいと思います。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  172. 森下元晴

    森下国務大臣 公営ギャンブルから福祉関係事業等についての補助金はいただいております。それで、いま言われましたように一元化して、ちゃんと審査基準も決めていただくということはそのとおりだと思いますが、とにかく私の方はいただく方でございまして、過去のいろいろな沿革また歴史等がございまして、昨年も村山大臣に質問されたのを私、後で承っております。いろいろと御不審の点も多いようでございますし、特に中央競馬福祉財団の問題につきましては、これは地方の方から上がってまいりまして、そして農林省と共管で御通知を受けるというような形態を一応とっているということでございまして、私としても、いまお話のございましたような一本化ができるものであればできるだけその方向に持っていきたいという希望はございますけれども、繰り返しますが、いただく方の立場として強い立場にはないということを申し上げたいと思います。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 小川委員がいつも公営ギャンブル、特殊法人の剰余金等の問題で御質問しているのを拝聴して、私は非常に胸を打たれる思いがいたします。ともかくむだを排除して一銭一厘でも国の財政に役立たせようという考えは行管庁と同じでありまして、われわれもそういう気持ちでこれに対処してまいりたいと思っております。  ただ、特殊法人は皆おのおの性格を異にしておりまして、いま列挙されました地方競馬とかモーターボートとか競輪とかオートレースとか、そういうようなものは大体地方公共団体が施行者で、振興会がそれらからお金をいただいて、それを補助金のような形で回しているという形になっておるわけでございます。したがって、振興会という名前が掲げられておるわけでございます。そういういきさつ等もやはり一応は考えなければなりません。しかし、国家財政窮乏の折から、ウの目タカの目で冗費があれば、また出せる金があれば出していただくということはわれわれ真剣に考えなければなりませんので、引き続いて検討してまいりたいと思っております。
  174. 小川国彦

    小川(国)委員 この問題に対する政府の取り組みというのは、いま厚生大臣も何か奥歯に物が挟まったような言い方で、もらう方だからというので遠慮しているような答弁ですが、そういうことではあれなので、全国でこういう福祉施設にまだ入れない寝たきり老人もある、あるいはまた特殊な老人ホームの必要性もある、あるいは重度身障者の施設も必要である。それを厚生省は、ことしはその予算を全部切っているわけですよね、いろいろな申し入れに対して。ところが、一方では、たとえば中央競馬会の出している福祉財団の補助金などというのは、競馬会の馬主がむやみやたらと紹介してきたもの、あるいは国会議員でも馬を持っている馬主の議員がおりまして、これがまた非常に影響力を持っていて、私、具体的には申し上げませんが、その馬主の人で競馬会の役員をしている人の選挙区にはその福祉の補助金が普通の県の十倍ぐらいいっていたりするのです。そういうように国会議員が競馬会へ頼みに行ったり、船舶振興会へ頼みに行ったりということをみんなやっているから、こういうようにばらばらになっているたとえば福祉の補助金も、政府の機関にきちっとまとめることができないのですよ。  国会議員が国政を審議する上では、やはりきちっと厚生省予算にしてやるべきなんで、競馬会へ頭を下げに行ったり、船舶振興会や自転車振興会へ頭を下げに行って予算をもらうというのはおかしいのです。全国の都道府県を回ってみると、地方自治体のこういう福祉の担当者は、口をそろえて、一方はわれわれ厚生省にちゃんと書類を出せますが、もう一方は先生方のやることですと言うんです。だけれども、これは順位がおかしいじゃないか、これは適正にすべきだということは私ども厚生省には言いますが、そういうところへ直接行って言ってもしょうがない。これはやはり国の行政の中で正さなければならない。そういう意味で、ギャンブル四団体がやっている福祉の補助金、それから文教関係の補助金、医療関係の補助金は全部本省が吸い上げて、本省の予算全国的な視野に立って公正、適正な運営をしていかなければならないと私は思うのですね。  そういう改革について、これはだれに御答弁をいただけましょうか。残念ながら総理がいませんので、それでは行管長官にひとつ御答弁をお願いいたします。
  175. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 前にも小川さんから、厚生省が吸い上げて一元的にやったらどうかという御質問をいただいたことがございますが、私は、その点はちょっとどうかという気がしておるのであります。と申しますのは、各団体競って収益を上げるように、そして、いい実績を残すように競争をさせるのがいいのではないか。厚生省が一括召し上げてやるというと、厚生省を前にしてちょっと悪いですが、どうも官僚主義で、それでまた書類の審査だとかあるいは現地調査だとか、非常にややっこしいものが出てくるのが通例なんですね。そういう点はまた直さなければなりません。そういう功罪をよく考えてみると、やはりいまのようにかなり自由を持ちながら、しかも有効なところにわりあいに機動的にそういう施策の手が伸びていくという面もなきにしもあらずであります。そういう利害をよく検討してみたいと思っております。
  176. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは、私はもう少し具体的な問題を出して質疑をしたいと思うのです。  中曽根長官、厚生省が情けないというのは、現に閣僚のお一人ですから、それが政府不信の中に意見を吐かれては、国民はだれを信用していいかわからなくなるわけでありますから、そういう点ではあれなんですが、特に最近目立つのは、中央競馬会に次いで船舶振興会のむだ遣いが非常に目につくのです。  この中で、まず造船関係企業への貸付金というのを、船舶振興会が一千億円の基金をもっていま貸付残高九百七十六億円を貸しているのですね。それで、造船関係の企業ということなんですが、造船関係の方へネジ一つでも納めれば造船関係企業ということになって、この幅はものすごく広がっているようでございますが、いま九百七十六億、船舶振興会が貸し出しているのです。これは銀行に二%の低利でお金を貸し付けまして、それを受けた金融機関が関連企業へ四・五%から四・七五%で融資しているのです。  これで見ますと、貸付先は審査は全部終わっているのですから、銀行はトンネルでお金を通すだけなんです。それで、何もしないで座ったまま二・五%の金利を金融機関が皆稼いでいるのです。この銀行は、政府銀行で四行、都市銀行で十三、地方銀行で五十二、相互銀行で四十五、信用金庫で百十四、これも政治的に決められたのではないかと思うのですが、この二百二十八の金融機関が九百七十六億の金の貸し出しをやっているのですが、これは全部座ったままで、二%で借りて、企業に四・五−四・七五で貸しているのです。ざっとこれも計算いたしますと、この金利差利益で年間二十五億から三十億金融機関にもうけさせているわけです。  こういう機械工業の振興とかそういう資金は、恐らく通産省なり、通産大臣がおいでになりますが、そういうところがやっているはずなんです。そういうところは、政府機関でも商工中金とか中小企業金融公庫とかきちっとした審査をする機関があって、そういうところに回せば、こんな銀行に二十五億も三十億も、何にも仕事をしない、書類をパスさせるだけのところに手数料は払わなくて済む。これはやはり船舶振興会が銀行を全部指定しているからなんです。そういう指定の権限の上にあぐらをかいている船舶振興会、それをまた許容しているために、こんなところでも国の資金ともいうべき金が銀行の不当な利益というふうになっている。これは国の制度金融になっていないのですよ。こういう点の改革はどうされるのか。  それから、船舶振興会の中には、特別協賛金というので最近何か、ブルーシー・アンド・グリーンランド財団、略してBG財団といって笹川良一氏が会長になっている団体に、五十五年度は船舶振興会から四十億七千五百九十九万、それから開催者の方からは五十六億七千五百万、ざっと百億のモーターボートレースの金が行っているのです。  ここがいま全国の地方自治体に対して、プールをつくりたい、体育館をつくりたい、そういう場合にはどうぞひとつこのBG財団に申し込みをなさいというので、全国の三千三百の自治体のうち現在百十五が体育館やプールをつくってもらって、さらに四十五が計画中である。そうして、この三月で切れる特別レースというのをまた延長すれば、年々百億のモーターボートレースの金がこのBG財団に流れ込んで、そしてまた、自治体の首長がいま小学校や中学校にプールをつくりたい、体育館をつくりたい、とても文教予算ではできないというので、BG財団に頭を下げて予算をもらいに行くということになるわけなんです。  こういうふうな特殊法人とも言えない財団法人に、国の税金にも匹敵するこうした公的な資金を取り扱わせて、国の枠外にこういう予算をふやさせていくというのは一体どうなのか。幾ら行政改革、行政改革といっても、こういった特殊法人と同等と政府は言っている財団法人、これをやはり法改正でもして、中央競馬会が少なくもやっている一〇%、あるいは第二次剰余金の中の五〇%、それと同様な国庫納付金をきちっと取る。こういう乱脈な補助金交付というものをやめさせませんと、これは国政が乱れていくもとだというふうに私は思うのです。そういう点を正していくという姿勢が鈴木内閣の閣僚にあるかどうか、この点をひとつ行管長官にお伺いをしたいのです。
  177. 江藤隆美

    江藤委員長代理 どなたがいいですか。——指されたわけですから、一応中曽根行政管理庁長官。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 詳細は運輸大臣あるいは自治大臣に御答弁願いますが、私は、先ほど申し上げましたように、どうも政府機構とか官僚システムというものは硬直しておって、いろいろな手続を要求して、そして機動性に欠けている、そういう欠陥を直すのは行政改革であり、できるだけ仕事は民に移そう、そういうふうな方向で一生懸命やっておる最中でもあるわけです。  いまやっている仕事が法に違反するとか、あるいは非常に妥当を欠くような政策が行われているならば、監督官庁が厳重に取り締まってそれは直さなければならぬと思いますが、しかし、いままであった官庁のしきたり、書類とか手続とかあるいは実地の検査とか、そういういろいろな面の煩項さを考えますと、わりあいに機動的にうまくいっているんじゃないか。文部省予算が少なくて、プールがなくてみんな困っているというときに、そういうものが一面において機動的に出動してやっているというのは必ずしも否定すべきものではない。しかし、そのプールをつくる場所の選定が、不正が行われるとかあるいは妥当性を欠くということは、これは監督官庁が厳重に取り締まったらいいのではないか、私は、実はそういうふうに感じておるところです。
  179. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸大臣にもひとつ所管大臣として……。
  180. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの御指摘の諸点でありますが、私も、就任してまだ日が浅いのでありますけれども、多少関心を持って事務当局にいろいろと質問をし、また、その経緯、いきさつその他も聞かせてもらったわけでありますが、この配分につきましては、一応学識経験者、しかも、それを運輸省が承認をした人々の委員会で、きわめて厳正にやっているというような実態であると聞いております。  また、各官庁、たとえば文部省とかあるいはまた自治省であるとか、さらにまた厚生省であるとか、こうした交付金を受けたいと言われる各省の事務当局、さらにまた各地方自治団体の方々、こうした方々との間で十分打ち合わせをし、その利害得失なども十分論じて、そして、それを一応の原案をつくって、さらにそれを先ほど申し上げました学識経験者の審査委員会にかけてこれを配分しているというふうに報告を受けているわけでございます。  したがいまして、ただいまも行管長官からお話がございましたが、ある場合にはこうしたことが行政の円滑化に役立っておるのではないか、また役立っているのが当然であろうというような感覚を持って現在——しかし、こうした問題についての委員の御指摘についてはわれわれも十分よく踏まえて、そうしたことの中から種々の問題が起こった場合には、適正に、厳重に対処してまいろうというふうに考えております。
  181. 小川国彦

    小川(国)委員 どうも中曽根長官もあるいは小坂運輸大臣も、非常にこの現状認識については甘い。私は、まだこれらのところに不正とか——最近その外郭団体に若干汚職事件が起こりましたけれども、しかし、こういうものを放置しておいたらいろいろな問題が起こってくるのは必然だというふうに私は見ているのです。特に、中央競馬会から船舶振興会を見てきて特にその感を深くしているのですが、きょう会計検査院はおいでになっておりますか。  会計検査院にお伺いしたいのですが、こうしたギャンブル団体について、会計検査が及んでいるところ、及んでいないところ、その点はどうなっておりますか。
  182. 丹下巧

    ○丹下会計検査院説明員 先生御指摘の四団体でございますけれども日本中央競馬会は国の全額出資団体でございますので、私どもの方で検査の対象になっておりますけれども、あとの三団体につきましては、私どもは検査権限を持っておりませんので、検査はいたしておりません。
  183. 小川国彦

    小川(国)委員 いま会計検査院から御答弁がありましたように、これは中曽根長官や小坂大臣が民の機動的なものを発動させるといっても、予算の執行一つ見ても、私がいろいろ見てまいりますと、こうしたBG財団がいままでつくった百十五、それからいまやっている四十五、百六十の全国のプールや体育館を、では一体だれが監督指導をしていくのか。それから、いま申し上げたギャンブル四団体が使っている補助金、さっき申し上げたように、金額では千五百億に達するわけです。この大変な補助金のうちに、監査、いわゆる会計検査院の検査が及んでいるのは中央競馬会関係のみでありまして、それ以外のものは全部会計検査が及んでいない。  したがって、私は、いま運輸大臣は適正にやっていると言っていましたが、では運輸省の人が、いまやっているその百六十の施設を監査、監督をしたことがあるかというと、残念ながら現場へは、そういった意味では一度も行っていないようです、これは一例ですけれども。これは、ですから四団体が出してきている千五百億の補助金というものの、使った、適正か、効率か、不正はないか、そういったものは残念ながら国政の枠外に置かれている。NHK法のように、NHKは放送法の中で、きちっと会計検査院の検査を受けるということになっている。したがって、適正な運営が行われていると思うのですが、KDDのように、ああした会社もやはり会計検査を受けなかったがゆえに、ああした事件を引き起こしているわけです。私は、これらの中央競馬会を除く団体が、会計検査の枠外にあって、こうした千五百億に達する補助金を使っているということは、必ずこうした問題を引き起こすだろうというふうに思う。国の予算的なもので補助金が配分されて、配分してつくられた施設の監督、指導、監査を行う機関が何もないのですから、それぞれの財団なりあるいは振興財団が行うということで、内規で済ましているわけですから、ここに私は大きな不正の落とし穴が控えている、こういうふうに見ているわけで、中曽根長官が言われるように、民間に任せておいたら非常にいいことをやるのではないかというのは、これは私はこのいまの法的な背景を見ると、その辺に非常に大きな問題点を感じるわけなんです。  その点では、もう一度中曽根長官と運輸大臣に、こうした問題に対してどう対処をしていくのか、その点をひとつ伺いたい。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまの会計検査の点は、われわれも考えなければならぬ点であると思います。これらは検討課題として、われわれは勉強させていただきます。
  185. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸大臣とそれから通産大臣にもひとつ……。
  186. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 行管長官の御答弁と同じような心境であります。
  187. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 通産省では、御承知のように、競輪それからオートレースを所管しておるわけでございますが、これは地方公営競技でありまして、いわゆる地方の財源の確保のために行われておるわけでありますが、その一部が、御承知のように、振興会を通じて補助金として機械関係あるいは公益関係に流されておる。この補助金の助成の方針を決定するに当たりましては、いま通産省は各所管の官庁と十分連絡をとり、関係所管の意見も十分尊重して行っておる、こういうふうに聞いておるわけであります。
  188. 小川国彦

    小川(国)委員 いま関係諸官庁と連携をとっているということは伺ったわけでありますけれども会計検査の対象になっていないという状況、こういう問題について今後どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  189. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 車両競技法等を通じまして、厳重に監督をしている、こういうことでございます。
  190. 小川国彦

    小川(国)委員 それは、モーターボートの方もモーターボートの競走法でやっていますし、おたくの方もそういう法律で現状やっていることは知っている。しかし、通産省の補助金についても、内部でその団体の監査を行うだけで、そして、その補助金が適正に行われているかどうかの、その後の監査、検査というものは行われていないのですよ。そういったものは、政府機関の検査対象にしていくべきではないか。先ほど中曽根長官も小坂大臣もそういった方向でという答弁をされているのですが、通産大臣、そこのところはどうかということなんです。
  191. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 失礼いたしました。  中曽根長官の御答弁のように、十分勉強させていただきます。
  192. 小川国彦

    小川(国)委員 そういった中で、私はぜひ最後に、船舶振興会の理事長なども委員会の中で触れませんでしたが、外郭団体の中では、財団法人でありながら千八百万円という大変な年所得で、特殊法人を抜きん出てこうした給与を受けているという実態もやはり今後検討してもらいたいと思います。  最後に大蔵大臣、以上申し上げてきた中で、この四団体のいろいろな問題点はおわかりいただいたと思うので、そうしたものの財政を、もう一遍国の財政再建の中で洗い直して、ひとつこうしたところから、国の枯渇している財源を捻出していく、そういう方向について大蔵省においても取り組むお考えがあるかどうか、それを伺いたいと思います。
  193. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどから大変微に入り細にわたって熱心な御建言をいただきまして、それを十分もう一回私どもの方で読ましていただいて、できるだけそういうふうにあらゆる財源探しというものをやっていかなければ、五十八年度予算はもう本当に組めないというような状態でございますから、大変参考になりました。お礼を申し上げます。
  194. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  195. 江藤隆美

    江藤委員長代理 これにて田中君、小川君の質疑は終了いたしました。  次に、春田重昭君。
  196. 春田重昭

    春田委員 質問の前に各大臣にお願いするわけでございますけれども、質問事項が多岐にわたっておりますので、御答弁はひとつ簡潔に、明瞭にお願いしたい、こう思っております。  最初に、石油の問題について御質問申し上げますが、最近の円相場の乱高下といいますか、揺れは非常に大きいわけでございます。二百四十円台の円安傾向が続いていたかと思えば、二百二十七円台の円高といったぐあいに、不安定な現象が続いております。こうした中で、石油製品の値上げ、電力料金の値上げの問題が巷間うわさされているわけでございますけれども、通産大臣としてのこの件についての御見解をまずお伺いしたいと思います。
  197. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに、最近の急激な円相場の変動に加えまして、石油製品の市況が弱含みであるということを反映し、石油産業の経営環境が悪化をいたしておるわけでございまして、そういう状況のもとで、一部石油元売り会社の中には、三月から値上げを行う動きがあることは承知をいたしております。  この値上げは、製品コストの価格への転嫁が実現できていない分についての値上げ、こういうふうに承知をいたしておりまして、通産省としては問題はないのではないかと考えております。
  198. 春田重昭

    春田委員 現在、通産省としては各会社ごとにシーリングの枠を定めておるわけでありますけれども、石油のだぶつきといいますか、また、お互いの乱売という形でシーリング枠いっぱいいっていないので、それまで上げたいという意向があるみたいでございますけれども、こうしたいわゆる円安傾向が長く続けば、当然この上方修正ということもあり得るんじゃないかという見方もあるわけでございます。この点、大臣どうですか。
  199. 小松国男

    ○小松政府委員 先生お話しのございましたシーリングプライスとの関係で、現在のような円安が長く続いたらシーリングプライス自身の値上げがあるのではないかという御質問だと思いますけれども、私どもとしては、できるだけ価格形成というのは業界の自主的な努力によってされるということが大事だと思っております。  ただ、シーリングプライス制度というのが、過去の緊急事態に応じまして、不当な値上げを防止するために設けられている制度でございますので、この制度との関係で、その値上げが不当であれば当然チェックせざるを得ませんけれども、その範囲内にとどまる限りは、業界の自主的な努力によって、現在非常に需給がだぶついている中で価格形成を図っていくのは、市場メカニズムからいって当然のことではないか、かように考えております。
  200. 春田重昭

    春田委員 したがって、私が聞いているのは、いわゆる円安傾向が続いたならばどうなるか、こういうことなんです。
  201. 小松国男

    ○小松政府委員 シーリングプライス制度に乗って、具体的にコストアップ要因その他との関係で必要があるということであれば検討いたしますが、現在の段階は、シーリングプライスよりもはるかに下回った段階で価格形成が行われている各社がその値上げを考えているという段階でございますので、特にシーリングプライスについてその改定その他を考える段階にまだ来ていない、かように認識しております。
  202. 春田重昭

    春田委員 ということは、供給面でもかなりだぶついている、また、原油価格も昨年、一年前に比べましたら大体一バレル二ドルないし二・五ドル下がっている、こういう現状でございますから上がる状況ではない、したがって、当面心配ない、こういうことですね。もう一回確認しておきます。
  203. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 現在の段階において一部の値上げの動きが見られるわけでございますけれども、これは、要するにコストの問題で、ある程度の値上げということはやむを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  204. 春田重昭

    春田委員 シーリングの枠内ではある程度やむを得ない、こういうことですね。  いずれにいたしましても、石油製品の値上げというものは物価に与える影響が非常に大きいわけでございますので、先ほど来言っておるように、石油が非常にだぶついている、原油が下がってきている段階でございますから、私は、極力通産省としては上方修正しないように要望しておきます。  さらに、さきの予算委員会で通産大臣は、九電力の統廃合の見直し、検討といいますか、こうしたものの必要性をお述べになったと聞いているわけでございますけれども最初この点を確認したいと思います。
  205. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この前の答弁で多少舌足らずな点があったと思いますが、私は、九電力については、これまでの分割以来の電力の安定供給を確保したその実績というものは評価しなければならぬと思っておる。同時にまた、今日この体制を依然として守っていくということについては問題はないんじゃないかということでございます。  しかし、私が申し上げたのは、一般的にこのエネルギー問題が八〇年代の大きな課題として浮上してきておるわけでありますし、これまた大変な変動も今後予想されるわけでございますので、そういう中でエネルギー政策全般についてはいろいろな角度から見直していかなければならないのじゃないか、こういうことを申し上げたわけであります。
  206. 春田重昭

    春田委員 石油というものは円相場の動向に大きく左右されるわけでございまして、一年で、年間五百数十億円が高くなったり安くなったり、これは輸入代金でございますけれども、そうなると言われているわけでございます。しかし、石油業界は、円高差益のときは国民への還元を拒否し、いわゆる円安差損のときは値上げでカバーしようというもくろみがあるわけでございまして、国民としては納得ができないわけでございます。  そこで、こうしたいわゆる円相場の乱高下のときにはちょうどチャンスだと思うのです。そういう点で、従来から論議されております為替リスク対策、これをいまこそ真剣に考えるべきである、私はこのように思うわけでございますけれども大臣の御見解をいただきたいと思います。
  207. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そういうふうな御意見が各方面からあります。私も聞いておるわけでありますが、為替リスクということになりますと、石油業界一つをとってみましても、五千億というふうな単位で変動があるということでございますから、この対策のために特別な積立金とかそういうものを用意するということはなかなか私は困難ではないか。一つの理想としては、こういうふうに変動が激しいわけですから、わかるのですけれども、現実問題としてはなかなか困難な問題が含まれておる、こういうふうに思っております。
  208. 春田重昭

    春田委員 準備金制度以外にも円建ての予約とか、いろいろな方法があるわけでございますから、そういった意味でも考えていただきたい、こう思っております。  なお、石油業界での再編合理化の問題がございますけれども、これは石審の答申では、いわゆる元売りが非常に多い、そういった意味ではグループ化すべきだという意見も出ているわけでございますけれども、再編の問題、大臣どういう御見解ですか。
  209. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 元売りの企業を軸にして形成されておるところのわが国の石油産業にありましては、石油供給システムの全体の合理化、効率化を図るとともに、過当競争体質を改善し、自律的な産業秩序を確立するためには、やはりいまお話のありましたように、元売り段階の集約化を図るということが効果的ではないかと私は考えております。昨年の十二月の石油審議会石油部会の小委員会報告でも、過剰設備の処理と並んで、元売り段階における集約化、リーディングカンパニーの形成を通ずる秩序のある石油産業体制の確立が必要である、こういうふうに提言をされておるわけでございますので、このような元売りの集約化、企業が自主的に対応すべきものではありますけれども、当省としてこれを促すための政策的な支援を行っていきたいと考えております。
  210. 春田重昭

    春田委員 政策的な支援ということで、新年度におきましては、かつて行ったような低利な融資が、こういう合理化されたところには、また再編されたところには融資がされるみたいでございますけれども、いずれにいたしましても、私は、そうしたいわゆる再編といいますか、そういう時期にちょうどかかっているのではないか、こういうことで非常にいまがチャンスだと思うのです。そういう点でもとのもくあみにならないように通産省としても積極的に推し進めていただきたい、こう思っております。  しかし、それが国民の負担にならないようないわゆる再編合理化にお願いしたい、こう要望しておきます。  時間の関係で石油問題はこれで終わります。  続きまして、景気の問題につきましてお尋ねしていきます。  昨日の新聞を読みますと、来月ぐらい総合景気対策を打ち出す、こういう形で報道されているわけでございますけれども、この時期と、どういう内容なのか、まず河本長官にお伺いしたいと思います。
  211. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 総合景気対策ということは考えておりません。ただ、いま景気の落ち込みが相当ひどうございますので、それで五十七年度の公共事業を上半期にできるだけ繰り上げて執行したい、こういうことで、いま関係各省の間で相談をしておるところでございます。
  212. 春田重昭

    春田委員 公共事業の前倒しですけれども、これは予算的にも公共事業は三年間横ばいになっておるわけでございます。したがって、前半に七〇%ないし八〇%前倒した場合、下半期には相当不足になってくるわけでございます。そこで、景気刺激策としていわゆる後半も必要であるとなれば、いわゆる公共事業の追加ということで建設国債の発行もあり得るのかどうか。これは大蔵大臣の方にお伺いしたいと思います。
  213. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私どもとしては、いま予算を出しておるわけですから、まずこの予算を通していただいて、この予算の中でその執行の仕方等に十分配意して、景気にいい影響を与えるようにしていきたい。その後の問題については、経済は生き物でございますから、様子を見て、どうするかはいま申し上げられる段階ではありません。
  214. 春田重昭

    春田委員 政府は五十七年度の実質経済成長を五・二%と目標を定めているわけでございますけれども、民間の各機関はほとんど三%台を大体予測しているわけです。そういう点で、五・二%達成が本当に可能かどうか、この点を長官に確認したい。  それとともに、五・二%のうち、内需で四・一%押し上げようとしているわけでございますけれども、昨年の実績見通しからいけば大体一・五%ぐらいだ。それを四・一%に伸ばすことは相当大変な難事業だと思うのですけれども、内需で四・一%押し上げる、これが本当に可能かどうか、あわせて御答弁いただきたいと思うのです。
  215. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 民間の五十七年度経済見通しと、それから政府の見通しが若干違っております。民間の見通しは大体三・八%から三・九%ぐらいだと思いますが、政府の方は一%強高くなっております。一番大きな違いは、民間の見通しが出ましたのは十一月から十二月の前半にかけてであったと思うのですが、政府予算が決まりましたのは十二月の末でありますし、同時に、政府の経済運営の基本方針が決まったのも十二月の末である。そういうことから、たとえば住宅政策などは相当思い切った内容になっておりますけれども、これなどは一応考慮されていない。それからまた、公共事業ども景気の状態を考えまして、できるだけ民間資金を導入して仕事の量が減らないように配慮を加えております。そういう点も考慮されていないのではないか、こう思います。  そういう違いもあろうかと思いますが、ただ何分経済の激動期でございますから、経済がどのように動いていくか、内外の情勢をよく見守りまして、経済の動きに即応いたしまして適切な経済運営をしていかなければならぬ、このように考えております。
  216. 春田重昭

    春田委員 内需四・一%の寄与度の内訳を見ますと、個人消費が二・一、住宅が〇・六、企業設備が一・三、それから在庫が〇・一、合計で四・一になるわけでございます。  個人消費につきまして若干お伺いしますけれども個人消費は昨年の試算では五十六年で一・八%の伸び、五十七年度では三・九%の伸びを見ておられます。倍以上です。この三・九%伸ばすには、従来からも論議されておりますように、可処分所得をプラスにしなければならない。可処分所得をプラスにするには、物価の安定とともに雇用者所得の伸び、そして大幅減税、こうなるわけです。  そこで、長官にお伺いしますけれども、この雇用者所得の指標となる春闘のベースアップでございますが、これは当然労使間の交渉でございます。労使間の交渉でございますけれども日本経済のかじ取りを行う長官としては何%以上に期待をしているのか。いままでの動きから言えば、高目のベースアップを期待しているという答弁があるようでございますけれども、具体的に何%ぐらいを期待されているのか。また、減税の必要性についてどうお考えになっているのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  217. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府見通しと民間の経済見通しの間で、先ほど数字の違いがあるということを申し上げましたが、比較的共通しておりますのは個人消費だと思います。政府の見通しは三・九と想定をしておりますが、大体民間の調査を見ましても、三%台の調査が多くなっております。五十六年度は経済の状態が非常に悪くて、雇用者所得なども当初政府が想定しておりましたよりも相当落ち込んでおります。しかし、五十七年度につきましては、後半景気が回復すると見ておりますので、所定外の給与も相当ふえる、このように考えておりますし、それから物価は一応四・七と想定をしておりますけれども、これは一応の想定でございまして、あらゆる努力を集中いたしましてできるだけ低い水準に安定をさせたい、こう思っております。現在はおおむね三%台で推移をしておりますので、できるだけ低い水準に持っていきたい、このように考えておるところでございます。  そこで、ベースアップはどうかというお話でございますが、政府は経済見通しをつくります際に、一人一人の雇用者所得の伸びが幾らぐらいになるであろうかとか、あるいはまた国全体としての雇用者所得の伸びがどうなるか、こういうことは経済見通しの作業上作成をいたしますけれども、これはベースアップとは違うわけでございます。ベースアップにつきましては、これは労使双方でお決めになることでございますから、政府の方としては一切言及をしない、意見は言わない、こういうことになっております。  ただ、産業政策としましては、生産性の向上が進むような産業政策であるとか、あるいはまた構造的に不況業種があったのではなかなか大変だろうと思いますし、中小企業の現状等もなかなか大変だと思うのです。そこで、そういう個別対策はしっかりやっていかなければならぬと考えておりますけれども、ベースアップそのものにつきましては一切論評しない、こういう考え方でございます。(春田委員「減税は」と呼ぶ)  可処分所得を伸ばすためには、公的負担が少ないということが望ましいわけでございます。政府の統一見解といたしましては、過去数年間所得税減税をしておりませんから相当負担が重くなっております。しかし、五十七年度の財政事情から見ますと、とても減税などはできるものではございません。大変むずかしい状態でございます。  ただ、五十八年度以降——五十八年度ではございませんで、五十八年度以降の課題として、できるだけ早く減税ができるような条件を整備をしたい。条件とは何ぞやといいますと、それは財政再建のめどがつくということ。それから同時に、財源ができなければ減税はできませんので、財源をつくって、同時に財政再建の見通しを立てるということ、そういう条件を整備をして、整備ができ次第できるだけ早く減税の条件を整えたいというのが基本的な考え方でございます。
  218. 春田重昭

    春田委員 ベースアップにつきましては論評しないということでございますが、経企庁が出しています「昭和五十七年度の経済見通し」がございます。これは雇用者所得が五十六年度では七・八%の伸び、五十七年度で八・六%の伸びとなっております。〇・八伸びているわけです。そこで、八・六伸ばすためには、所定内の賃金、所定外の賃金として経企庁としては試算された数字が、これは当然大手のベースアップ闘争をやる組合とともに、日雇いやそうした方も一切含めて大体六・九くらい伸びるんじゃないか。そこで、就業者人口が一・一ですか伸びるから、合わして八・六という計算になっていると思うのですね。  五十六年度では所定内賃金、所定外賃金が大体六・二と伸びを見ておられるわけですね。したがって、この六・二と六・九の比較からして、昨年のベースアップが七・七%でありますから、当然これは七・七以上の高目のベースアップを期待している、政府はこう見ている、こう言ってもいいんじゃないかと私は思うのですけれども、その点どうですか。
  219. 井川博

    ○井川政府委員 経済全体の雇用者所得と一人当たり雇用者所得については、ただいま先生おっしゃったとおりでございまして、五十六年度の実績見込み、雇用者所得七・八でございます。しかし、雇用者の伸びが一・五ございますので、五十六年度実績見込み一人当たり雇用者所得は六・二、それから五十七年度につきましては雇用者所得全体としては八・六でございますが、雇用者の伸び一・六ございますので、一人当たり六・九ということになります。  今年度六・二に対して六・九ということになっておりますが、これはあくまで春闘とは別でございまして、春闘の対象にしておりますのは所定内ということでございますが、雇用者所得全体としては所定内が大体半分でございまして、残り半分所定外その他というのが入っているのは御承知のとおりでございます。したがいまして、われわれとしては、春闘を特に頭に置いているわけではございません。  先生は先ほど、昨年の春闘が七・七であったのに、一人当たり雇用者所得が六・二になっちゃったと、そうだとすると、来年度一人当たり雇用者所得六・九のためには云々というふうなお話があったわけでございますが、従来から一人当たり雇用者所得と春闘賃上げの関係を見てみますと、経済が上がりカーブのときと下がりカーブのときでは俄然違っておりまして、経済が下がりカーブのときには、春闘の賃上げ率がある程度高くても一人当たり雇用者所得が低くなる。五十六年がまさにそういうところでございました。この点われわれは、来年度経済は上がりカーブと見ておりますので、先生がおっしゃったように、昨年との対比で七・七に上乗せというふうな感覚にはならないんではないか。ただし、これは経済の実勢でございますので、われわれが六・九と言います場合は、特に春闘幾ら幾らということで計算をしたわけではございません。
  220. 春田重昭

    春田委員 次に、可処分所得のプラスの要因として減税があるわけでございますけれども、先ほども大臣答弁ありましたように、五十八年以降条件整備をする、こういう話でございますけれども、いわゆる条件整備ができたら減税をする、こういうことですね。これは大蔵大臣、河本長官の御意見と全く同じですか。
  221. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 同じでございます。
  222. 春田重昭

    春田委員 大蔵大臣にお伺いしますけれども、今日までの大臣国会答弁は、減税は不可能説が非常に強いわけでございます。非常に強いというか、そのとおりですね。今日の景気回復は財政面からのいわゆるてこ入れ以外にもうない、このような声が圧倒的でございます。そうした面で、私たちが主張していますように、不公平税制の是正、補助金の見直し、行政経費の節減、税外収入の伸び、それから税の自然増収、こういう点で財源捻出に努力すれば一兆円減税はできる、私はこう思うのです。そういう面で、大臣はいままではほとんど拒否されておりますけれども、再度、こうした減税の声は、ただ単なる労働団体だけの声じゃない、いまや国民全体の声となってきておるわけです。財界の中からも減税必要論が非常に出てきておるわけでございますから、そうした面からも私は本当に発想を転換して減税をやるべきである、こう主張しますけれども大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  223. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ともかく政府の行政経費というのは、だれかが出してくれなければ維持できないわけです。行政経費を切れと言われても、どこを切るか、国鉄の七千億を切っちまえとか、私もずいぶん言ってみたんですが、これはすでに借りちゃった借金の利息であって、それも国が運用部で貸しているお金だから、これを切ったんでは同じ話になってしまう。いろいろそれはやってみたんです。しかしながら、発想の転換をもっと考えれば、社会保障費や文教費等で切るところがあるかもしらぬ。あるかもしらぬが、現実の問題としてなかなかここで急に切れと言っても切れないから、法律その他を整備をして、発想の転換を図って、五十八年度に向けては一層に切り込んでいくということをしなければならぬと思っております。  しかし、当面する五十七年度予算でそれだけの財源をこしらえろと言われましても、なかなかできない。そして、日本の税金は、つい最近OECDの諸国の平均労働者の所得税、社会保険料の負担率というのがOECDから発表になったのがありますが、それで日本は標準的サラリーマン、大体三百八十四万円ぐらいと言われている。そこで所得税は十四万七千円ですか、これを住民税と両方合わして二十三万となりますが、どこの国と比べましても、イギリスの六十二万、ドイツの四十一万、アメリカの四十二万、こういうもの等と比べましても、アメリカは日本なんかよりもむしろ標準的サラリーマンの方がやや月収が少ない。西ドイツはやや日本よりも多い。だけれども、そういうような点は差っ引きしますと大差ない。日本の方がむしろいいぐらいのところがいっぱいございます。  したがって、どこの国でも非常に減税もしたいんでしょうが、現実にはなかなかむずかしい。日本ではもう大多数は、下の方は年間三百万円ですから、月給二十万で、ボーナスもらって三百万、それぐらいの人は、月に千五百二十円しか引かれてないんですね、減税減税と言うけれども。そのかわり、医療社会保険料とか労働組合費とか何千円と引かれていますね。したがって、これは私としては、だれかがこの費用を持たなければならぬということになると、現段階において本当に困っているのは、やはり一千万円以上なんですよ。八百万とか一千万以上の人は確かに困っている。日本の累進税率は急カーブですから、したがって、一千万を超えて一割、百万ふえたら四十四万だけ税金を取られるわけです。だから、一千万以上になると、かなり音を上げてきていることも事実です、急カーブのために。  しかし、じゃ、それ以上税金の高い国はないかというと、それはまだいっぱいあるんです。いっぱいあるんですが、日本としては、ほかと比べると非常に急カーブになっているから、この税率構造をそのままに置くということは、まして五十九年度からグリーンカードで合算課税というのですから、これは私は持論でありまして、これはこのままでというわけにもいかぬじゃないか、グリーンカード実施するのだから。やはり少なくともそのときには、同時に税率構造から全部変えたものを一遍やらなければ、とてもじゃないが困るじゃないか。何でも所得税中心で、所得税にだけおんぶされていくというようなことで、社会保障費のように好不況に関係なくどんどんふえるという片方に経費があるわけですから、それを景気、不景気に左右される所得税や法人税にだけ依存するというのが果たしていいのかどうなのか、こういうような問題もあわせて、私は、本当に真剣にみんなの問題として検討していく必要があると思っております。  したがって、ことしのこの国会で減税案を出せと言われても、とてもできない。やるとすれば、かなり抜本的な、大がかりな、発想の転換を図ったものを提案すべきではないか、私はそう思っております。それには時間がかかるということであります。
  224. 春田重昭

    春田委員 昨年のベースアップが七・七%でございますけれども、ある機関の統計では、そのうちの六二%が税金と社会保険料に消えている、こういうことです。したがって、残りの三八%があるわけでございますけれども、これも公共料金や物価値上げでマイナス、それが今年度の可処分所得のマイナスがずっと六月から十月まで続いた現象となっているわけですよ。そういう点で私は、国民の苦しみといいますか現実は、政府としてもくみ取っていただいて、この一兆円減税に向けて努力していただきたい、こう要求しておきます。  時間がございませんので、次に進みたいと思います。  そこで、やっと十一月に可処分所得がプラスになったわけでございますけれども、長官、これ、十二月以降の基調といいますか傾向というのは、どういうふうに見込まれていますか。
  225. 井川博

    ○井川政府委員 お話のように数カ月ぶりに十一月、可処分所得がプラスになったという状況でございます。ただ、この状況がこのまま定着するかどうかというのは、もう少し模様を見ないとわからないと思います。現に、消費その他の資料あるいはまた実収入の資料等々見ましても、一本やりでそういくかどうかという問題がございます。  しかしながら、御承知のように、在庫が昨年の夏ごろ大体調整を終わって、その後鉱工業生産もじりじりと上がりカーブである。対前期で申しますと、四−六月がマイナス〇・三、非常に厳しい状況でございましたが、七−九月が前期比一・六、十−十二月が二・七になっております。それから、前年同期比でございますと、四−六月が〇・八、それに対して七−九月が四・五、十−十二月が五・七。とれに応じて所定外の所得もふえつつある、こういう状況がございます。そういたしますと、やはり実収入もふえる、他面物価が大変安定しているということになりますと、傾向としては可処分所得がマイナスからゼロそしてプラスになる、こういう傾向でいくであろうということが考えられますが、十二月あるいは現段階一、二月で直ちにそういう方向にいくかどうか、やはり多少上がり下がりをしていくんではないか、こういう感じがいたしております。
  226. 春田重昭

    春田委員 ところで、十一月に可処分所得がプラスになったわけでございますけれども、これは〇・三%でございます。この原因を調べてみますと、妻の収入が対前年度同月比で一〇・九%ふえているわけですね。つまり、パートの主婦がふえている、そのことを示しているわけでございます。ところが、このパート主婦に対する諸施策が非常に手薄い状態でございます。たとえば税金にいたしましても、現在の非課税限度額は七十九万円なんです。月平均七万円弱でございまして、これが実態的に即してないわけです。そういう面でも、今回の大幅減税で給与所得控除、基礎控除を引き上げて、この七十九万の非課税限度額を九十万程度に上げるべきであると私たちは主張しているわけでございますけれども大臣の御見解。
  227. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 お答えいたします。  パートによる収入の問題ですが、配偶者であるというところで非常にむずかしい問題があるわけです。パートによる給与収入から給与所得控除の最低限、最低金額五十万でございますね、それを差し引いた残額が基礎控除の二十九万未満という場合に配偶者控除が認められる、こうなっておるわけです。ですから問題は、配偶者控除を受けながら納税者にならない形でいくというときには、いまの五十万プラス基礎控除の二十九万ということで七十九万、こうなっているわけです。これは五十六年改正でそこをはっきりさせたわけでございますので、やはり税の仕組みからいきますと、配偶者が家庭にいる場合、またいまは働きに出ておられても、納税者にならないで配偶者控除を受けるという立場でございますと、二十九万プラス勤労控除の五十万というのが、どうしてもそこが限度になってしまうということを御理解願いたい、こう思います。
  228. 春田重昭

    春田委員 私たち中道間では、今回の一兆円減税につきまして、この給与所得控除を五万円積み上げ、基礎控除を三万円積み上げて、現行七十九万を当面八十七万にしていくという案を出しているわけでございますので、政府としてもこれを鋭意検討していただきたい、こう思います。  次に、先ほど内需の問題でいろいろ質問したわけでございますけれども、外需は来年度は一・一%の寄与度を見ているわけでございます。この一・一%の寄与度でございますけれども、内需見通しが暗い今日、経済成長五・二%を達成するためには、現実的には外需によらざるを得ないんじゃないかという意見もあるわけでございますけれども、長官、どういうお考えですか。
  229. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 来年は経常収支の黒字を百二十億ドルと想定をいたしまして、外需一・一%をいま考えておるわけでありますが、世界経済がいまのような状態ですとこれが精いっぱいではないか、こう思います。ただしかし、いま世界の経済の状態は非常に悪うございまして、昨年の後半からことしの上半期が一番悪い状態ではなかろうか、こう言われております。一説には世界恐慌以来の最悪の水準だ、こういう説もございます。世界全体の購買力も非常に落ち込んでおりますし、ちょっと日本の商品が出ていきますとすぐトラブルになる。しかし、世界経済が回復いたしますと、どんどん日本の品物が出ましてもそんなに文句は言われなくても済むと思いますし、あるいはもっと日本の商品を出してくれ、こういう希望も出てくるのではないか、こう思うのです。  要は、世界経済がどのように回復するか、この一点にかかっておると思います。世界経済さえ回復すれば、外需が少々伸びましてもそれはそう大きなトラブルにはならない、こう思っております。
  230. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、内需四・一、外需一・一ということは、内需には力を入れるけれども外需には余り力を入れないでいいような感じを受ける向きがあるわけですね。そういう点では、内需を拡大するとともに、外需だって当然、一・一どころか、さらに広げていかなくてはいけないという意見もあるわけでございますから、当然貿易摩擦が別の問題として出てきますので、輸入の拡大等を図っていくべきであると私は思うわけでございます。来年度貿易収支が三百億ドル、それから経常収支が百二十億ドル、こういう形で黒字を見込んでおるわけでございます。六月になりますと、パリのサミットがあるわけでございますけれども、ずっとこうした外圧、外圧で、貿易摩擦ということで欧米から相当な批判が出ているわけでございます。こうした批判をこの数字でもって乗り切っていけるかどうかというのが心配なんでございますけれども、長官、この点どうですか。
  231. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの貿易摩擦は主として米国が中心でございまして、いま江崎ミッションが向こうへ行っておられまして近々帰ってこられますので、来週早々には経済対策閣僚会議を開きまして、そこで模様をよく聞きまして、それで日本としての対応を早急に決めたい、こう思っております。  それはそれといたしまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、世界経済を回復させるということがやはり日本の外需を拡大する最大の背景だと思います。そこで、五月から六月へかけまして幾つかの重要な国際会議が開かれますし、その準備会議もこの月末から開かれますので、日本といたしましては、世界経済をどう再活性化させるか、こういうことを最大の課題として予備会談でもいろいろ議論していただこう、こう思っておりますし、また、そういう国際会議では、ぜひこの問題について、世界の主要な国々が協力して世界経済全体の再活性化を図っていく、こういう方向に前向きの協力をひとつやっていただくということが大事だ、こう思っております。この問題を解決しませんと、なかなか日本がさらに外需を伸ばすというところまで議論が発展しない、こう思います。
  232. 春田重昭

    春田委員 貿易収支のバランスのためには、輸入の自由化が必要になってくるわけでございます。現在、江崎さんが行かれているわけでございますけれども、その席上でも、米国から強い要求が出ております牛肉、オレンジの輸入枠の拡大の問題が出ているわけでございます。この輸入拡大、自由化の問題につきまして農林水産大臣はどういう御見解なのか、お伺いしたいと思います。
  233. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 政府は、すでに対外経済摩擦解消のために、東京ラウンドで合意されました関税率の引き下げを今年を含めて三カ年前倒しをしたわけでございまして、このことは、簡単に言いますけれども非常に大胆な貿易拡大のための一つ対策だと思うのですよ。  それからもう一つは、検査手続の緩和のために六十七品目をいま決定したわけでございますが、これも、六十七品目を緩和するとしたら本来ならかなりの年数、一年や二年ではなかなかこの問題はできることじゃないのですけれども、この際輸入手続の緩和をいたしたわけでございますし、こういう一つの輸入拡大のわが国の態度というものをやはりアメリカによく認識していただくというために、江崎ミッションが今回アメリカへ出向いているわけでございますので、先ほど河本長官からもお話がありましたように、江崎ミッションがお帰りになってから、一体アメリカの要求が何なのかということを踏まえながら今後対策を進めてまいらなければいけませんけれども、とにかくアメリカの要求というのはかなり厳しいようでございます。  したがいまして、東京ラウンドで合意されました残存輸入品目につきましては、私としましては、いま日本の国内農業は非常に厳しい転換期を迎えておりますので、対外的に強い農政をつくるためにはいま一番重要な時期なんでございますので、そういう時期を迎えておるときに、これらの問題で農家あるいは団体の方々に不安を与えるということは日本の農政にとって非常にマイナスだと考えますから、私としては、いろいろな面を配慮した、いわゆる貿易全体の面で貿易の摩擦を解消して、できるだけ農産物に影響を与えぬような形をとりたいと考えているわけでございますが、先ほど申し上げましたアメリカの要求というのはかなり厳しいようでございますので、政府としてもこれは私の考えに協力していただいて、ひとつ積極的な対策をしていただくことを、私は常に政府全体でそういう態度をつくるようにお願い申し上げているというのが実態でございます。
  234. 春田重昭

    春田委員 そうした背景を踏まえながら、江崎さんがアメリカへ行っていま交渉されていると思いますけれども、しかし、それを知りながらあえてこうした牛肉やオレンジの自由化、二十二品目の自由化、こういうことが出てきていると思うのですね。そういう点で、従来から農水省は絶対のめないという形できておったわけでございますけれども、その点もう一回、絶対のめないのか。それと、交渉の時期を、暮れに行う予定なのを十月からやれということでアメリカからきているそうでございますが、この辺の交渉の時期の早めにつきましてはどういうようにお考えになっているのか、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  235. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 この委員会で私、何回か申し上げておるのでございますが、農産物の品目については、私としては、農林水産大臣としてはこれは手を染めたくない。しかも、牛肉あるいはオレンジの東京ラウンドの合意でございますが、一九八三年まで決定しておるわけでございまして、一九八四年以後の問題については、ことしの暮れに話し合いましょう、いい機会に話し合いましょう、こういうことでございますので、まだその日程については決まっておりません。
  236. 春田重昭

    春田委員 通産大臣は退席されておりますけれども政府委員がお見えになっていると思いますからお聞きしますが、通産省としては農産物を含めた全品目の輸入の拡大を図っていく立場にあるわけでございますけれども、もし仮に農産物の輸入自由化拡大ができないとなった場合、いま米国で問題になっております相互主義貿易法案というものがあるわけでございますけれども、これがひょっとしたら議会を通過するのじゃないかという心配があると思うのですね。この点どうですか。
  237. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  安倍大臣、三極の会合に参りまして、アメリカの政府当局あるいはECの当局との話し合いを通じて、アメリカの政府としては、少なくとも議会のそのような保護主義的な方向にはくみしないという話し合いをして帰ってきたわけでございますけれども、その後の動きを見ますと、二月に入りましてから、先生御指摘のように、相互主義的な法案がまたさらに出ておりまして、しかも有力な議員がいろいろその提案に参加しておるということで、通産省といたしましては、その傾向につきまして非常に懸念をしておるという状況でございます。  輸入制限あるいはIQ全般につきましては、昨年の十二月十六日の閣僚協で、これを政府全体としてレビューしていくということが決まっておりますので、通産省といたしましても、そのような方向で適宜輸入枠の拡大あるいは自由化につきましてもレビューをしていくという方向にあるわけでございますけれども、先ほど農林大臣から御説明ありましたように、昨年来関税問題あるいは輸入検査の問題で、日本政府としては非常に輸入につきましての努力をしておりますので、それを極力アメリカ政府に、あるいは議会筋に説明することによりましてアメリカの理解を求め、そのような輸入制限法案が成立しないような方向で説得してまいりたい、かように考えております。
  238. 春田重昭

    春田委員 もし農産物の輸入自由化拡大ができなかった場合、説得できる自信がございますか。
  239. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 アメリカの議会筋に対する説得は、今回の江崎調査団が現在総力を挙げてやっていただいておりますので、その成果に期待しておりますし、また政府間の交渉につきましても、今後累次の政府間の交渉で逐次日本の輸入努力に対する姿勢が理解を得ていくというふうに考えております。もちろん、アメリカの議会の問題でございますので、私どもがそのような法案の成立について、それはあり得ないということを現在申し上げる立場にないわけでございますけれども、通産省といたしましても政府の一員といたしまして、アメリカの政府あるいは議会がそのような法案の成立に走らないように、極力努力をしていくということで御理解いただきたいと思います。
  240. 春田重昭

    春田委員 時間がございませんから、次に進みたいと思います。  物価の問題でございますけれども、五十六年の実績見込みは四・五%となっております。五十七年度は四・七%の見通しをお立てになっておりますけれども、長官は物価は非常に落ちついているという御主張でございますが、この五十六年度、五十七年度の見通しにつきまして簡単にお答えいただきたいと思います。
  241. 廣江運弘

    廣江政府委員 五十六年度の消費者物価でございますが、十二月まで全国の確報が発表されておりまして、一月は東京都区部の速報が出ております。それによりますと、昨年の四月から十二月までの平均で見まして四・四%でございます。そして、東京都区部の一月は三・四%、これは速報でございますが、そういうことになっております。  政府は経済見通しを作成いたしますときに、五十六年度の実績見通しといたしまして四・五%程度と、こう見ておりますが、十二月までの数字、それから一月の東京都区部の速報から推定をいたしました全国の一月の数字がどうなるかということはございますが、いろいろ勘案いたしますと、四・五%程度は十分にいける、それも下の方でいけるのではないかというのが見通し得ると思います。  その基調の上に立ちまして五十七年度はどうかという御質問でございますが、同じく見通しを立てますとき、四・七%程度と、こう見ております。これは、基調といたしますと、いまの落ちついた基調がそのまま持続してくるという考え方の上に立ちまして、基本的には同じであると考えておりますが、ただ、いま非常に緩んでおります需給の状況も少し締まってくるであろうというふうに全体の経済見通しで考えておるわけでございまして、そういう経済見通し全体の一環として物価はあるわけでございますから、そういう意味で多少上目の数字を見ておりますが、これは現在までの物価の推移、それから来年の原油の価格の状況であるとかいろいろ考えましても、コスト的にそれほど押し上げる要因はございませんので、多少需給の要因は先ほど申し上げましたけれども、十分に達成できる数字である、かように考えております。
  242. 春田重昭

    春田委員 一昨年の七・八%の物価上昇と比べれば、格段の急降下をしているわけでございます。ところが、先日のある民間の新聞社のアンケートによりますと、非常に生活が苦しくなってきた、その原因の中に、四人のうち三人が、非常に物価が高くなってきたというデータが出ているのです。また、総理府が行っております統計でも、政府に一番望む政策は何かと言えば、物価対策がトップなんですね。あとは税金の問題とか所得が伸びないという苦情等がありますけれども、国民の感じとしては、非常に物価は高いというのがこのデータ等でも出ているわけです。ところが、長官は、物価は落ちついている、安定している、むしろ四・五%に下がる見込みであるという御見解をお示しになっておりますけれども、国民感情としては非常に物価は高いという見方、この国民と政府の乖離、どう見られますか。
  243. 廣江運弘

    廣江政府委員 政府が発表いたしております消費者物価指数は、これは国際機関においても考えておりますといいますか、推奨されております方式でありますし、世界的に見ましても非常にりっぱなものだと思っております。ただ、先生いま御指摘になりましたように、感覚的にはもう少し高いのじゃないか、こういうお考えの向きが、いろいろの調査とかあるいは考え方の中に示されるときがございます。これはひとつ考えますと、政府の消費者物価指数といいますのは一つの平均値でございます。ところが、いろいろ高いと言われますのは、個人の家計から見てこう言われるわけでございます。  これをいろいろ分析してみますと、大体個人で言われますときには、多少心理的要因もございますけれども、最近買った中で非常に値上がりの目ぼしいものであるとか高いものというのが印象に強く残るわけでございまして、横ばいのものであるとか下がったものというのは多少考慮の外にあるときもございます。それから、質の向上をしているものあるいは量をふやしたといったようなものも少し一緒に物価と混同されて申される向きもあります。そういうところなどが感覚の上にあらわれていることの大きな理由かと思います。  ただ、私どもといたしますと、そういう高いじゃないかという感覚はいろいろ心にとめまして、十分に物価対策をやっていかなければいけないと思っておりますし、片方、政府の示しております消費者物価指数というのは、平均値でこういうふうにして非常に厳正にやっておるのだということにつきましても、大いに知っていただくようなPRもしなければいけないと思っております。
  244. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、物価政策は政府の経済政策の中でも最優先して考えております。そこで、一応四・七という目標は想定をしておりますけれども、できるだけこれを下げていきたい、こういう考え方で、物価の安定のために引き続いて全力を傾けていきたい、こう思っております。
  245. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、ベースアップは経営者のかたいガード、減税は大蔵大臣を中心とした政府のかたいガードがございます。せめてこの物価だけは目標以下に抑えていただきたいと要望しておきます。  さて、内需の大きな支えといいますか柱は、住宅問題でございます。政府は、五十七年度百三十万戸の住宅を建設する、このように豪語なさっておりますけれども、今年度の見通しは大体百十五万前後ということで、非常に落ち込んでいるわけでございます。来年、そう環境が変わるとは私は思わないのです。むしろ環境は悪化していくと私は思っておるわけでございます。そうした中で、百三十万戸建設、断じてできる御自信があるのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  246. 始関伊平

    始関国務大臣 百三十万戸の住宅建設の達成が可能かというお話でございますが、これはもう申し上げるまでもございませんが、経済回復を内需を中心にしてやっていこうということで、本年度の政策として一番重視されているものでございます。したがいまして、本年の予算編成、財政投融資計画の決定、さらに税制改正、この三つの点におきましてかなり思い切った、私どもの予想から言えば、当初考えておりましたよりもっと力を入れた対策がまとまったわけでございます。  いまお話しのように、非常に困難な点もございますけれども、政策的には公的金融、税制、財政投融資の活用、さらに、そのほかに財形住宅融資とか厚生年金還元融資、あらゆる手段を講じまして、全力を尽くしてこれをやってまいるつもりでございます。  本年の一月末になりまして、新しい政策のうちに貸付限度額の引き上げというようなものを加味いたしまして住宅金融公庫の貸し出しをいたしましたが、その応募の状況なんかも、大体三月初めの締め切りまでには十万戸くらいいくだろうということで、要するに政府が直接政策手段をもってやるところについてはまあまあ相当にいけるであろうという自信を持っております。  ただ、それ以外に、民間の資金による本当の意味の民間住宅というのもございますが、これは大蔵大臣にお願いしまして、銀行ローンを引き下げるとか財投資金を確保してもらうとか、その他、先ほど来お話しの物価を維持しながら、経済運営全般の力によって、その方面にもひとついい効果を上げていきたい。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕 河本長官しょっちゅう言っておりますように、これは世界経済の状況も影響するでございましょうし、非常に見通しのむずかしい点もございますが、われわれとしては全力を挙げて百三十万戸建設を達成したい、かように存じておる次第でございます。
  247. 春田重昭

    春田委員 鈴木総理は行革に政治生命をかけるとおっしゃっている。大臣は百三十万戸建設に政治生命をかけるくらいの決意が必要だと私は思うのです。大臣は非常に甘いといいますか、楽観されたような御答弁だと私は伺うわけでございますが、かなり厳しいと私は思うのです。  第四期の住宅建設計画がございます。政府は、五十六年度から六十年度までに七百七十万戸建設するとおっしゃっております。ところが、初年度の五十六年度で大体百十五万戸、五十七年度仮に百三十万戸できたとしても、残る三年間でその七百七十万戸ができるかといったら、これはもう天文学的な数字になるわけですね。私は、いわゆる第四期住宅建設の計画というのは、やはりもう一度一から見直していかなかったら完全に破綻していくんじゃないか、こう思いますけれども、どうですか。
  248. 始関伊平

    始関国務大臣 最近の住宅建設の実績から申しまして、五年間七百七十万戸というのは多過ぎるじゃないか、こういうお話でございますが、いま申し上げましたように、一切の政策手段を挙げてこれを努力目標としてがんばってまいるつもりでございまして、にわかに七百七十万戸を見直すという考えは、いまのところございません。
  249. 春田重昭

    春田委員 しかし大臣、正直言ってこの五十六年度百十五万戸、五十七年度百三十五尺残りで五百万戸が必要なんですよ。できないじゃないですか、実際考えてみても。通産省だって、この石油の需給見通しは訂正したんです。見直した。大蔵省だって、経済見通しは見直そうというときなんですから、不可能じゃないですか、実際。大臣、正直言って、本当に七百七十万できるという自信ございますか。いや、局長はいいですよ、時間がないから大臣言ってください。
  250. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 失礼でございますが、私からちょっと事務的にお答えさせていただきたいと思います。  政府が昨年の三月の末に決定いたしました第四期の住宅建設五カ年計画におきまして、全体の総戸数を七百七十万戸と見込んでおりますが、また一面におきまして、公的資金によります住宅建設の目標三百五十万戸というのは、これは決定しておるわけでございます。そういう意味におきまして、七百七十万戸は一つの見込み、努力目標というふうに御理解いただきたい点がありますことと、もう一点、住宅につきましては新設着工統計が基本的なデータになっておりますが、これにつきましては数%の漏れがございまして、住宅建設五カ年計画におきましては常時この漏れを補正しつつ達成状況を見ているところでございます。したがいまして、必ずしも新設着工統計と一致しないという点もございます。また一面、それを達成するためのいろいろの政策手段を駆使することにしておりまして、そういう意味におきますところの政策目標等につきましては現在変える必要はない、なお一層これを推進していく必要があるというふうに考えております。
  251. 春田重昭

    春田委員 大きいことがいいことだというあれがありますけれども、しかし大臣、いま建設業界というのは物すごい倒産件数になっているのです。全倒産件数の中で約三三%倒産しているのです。だから、建設業界の方たちは政府の政策に非常に関心があるわけですよ。それが現実離れしたそういう政策でできるわけないじゃないですか。この問題は時間がございませんから先へ送りますけれども、いずれにいたしましても、今年度につきましては、住宅金融公庫では戸数を五十一万戸から五十四万戸にふやしたり金利を若干下げたりいろいろおやりになっております。また、厚生省の方の年金融資等もございます。金利も下がりました。また、労働省の財形の方も金利が下がります。いろんなことをされておりますけれども、私から言わせれば小出しなのですね。根本的な土地問題の解決なくして住宅問題は解決しないのですよ。また、住宅金融公庫の政策でも一応そういう形で戸数や金利は下がっておりますけれども、そういうあめは与えてありますけれども、また、むちも導入されているのです。大臣、御存じのとおりいま五・五%の金利になっておりますけれども、十一年目からはいわゆる財投金利七・三%の重い金利になるわけです。これは昨年も八百万以上の収入の方たちにはそういう形でやって、いわゆる第二弾ですね、パートツーの重い制度なのですよ。また従来は、一戸建ての建設用地の場合は百平米以下でも公庫の融資はついておったわけですよ。ところが、一月一日から百平米以上でないと住宅公庫の融資がつかない、こういう制度も導入されている。大阪では三三%あるのです、昨年の実績からいったならば。全国的にも八%あるのです。これだけで大体三万戸くらい一戸建てが減りますよ。こういう点からいって、いや政府は住宅建設につきましては十分配慮しておりますと言いながら、大蔵大臣のこれは財政的な面もあるから、そちらの方もにらみながらそういう重い制度を導入されているのです。それで百三十万戸と言ってもできるはずがないですよ。金利の問題と、百平米以上でないと融資をしないというこの問題につきまして、簡単に御答弁いただきたいと思うのです。
  252. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答えいたします。  いま先生から御指摘がありました住宅金融公庫の個人住宅の融資につきまして、十一年目以降におきましては十年間と異なった金利体系にするということについての御質問かと思いますが、公庫の補給金というものも従来の高金利時代等を経ました結果相当にふえてきておるという実情が一方にあることと、また一面、国民の方々が本当に必要とする時期に的確な助成をして差し上げる、そういうことを考えますと、十年程度たちますと所得も相当に伸びて負担も楽になってくる、そういう前提を踏まえまして、適切な時期に適切な助成を行うということで今回このような措置を導入いたしたいということで、住宅金融公庫法の改正をお願いしているところでございます。そういう中でもまた一面、所得が低額で居住の安定を図るため必要があるという方につきましては従来と同様の金利でやっていくというふうにもいたしておりますので、こういったようなことを踏まえながら五十七年度、相当大幅な公庫の条件の改善を行い、また今後とも必要に応じて的確な改善が図られるものと思っております。  それからまた、住宅の融資をいたします場合の土地の規模の件でございますが、実は建て売り住宅等につきましては、昭和五十三年度から良好な環境の住宅建設を促進し、よい住宅取得を確保するという意味から、百平方メートル未満のものにつきましては融資をしないということにいたしておりましたが、この一月から、個人の住宅を新しく建てられる場合におきましても、新しく土地を分割または造成いたしました場合には百平方メートル以上のものについてお願いしたいということを考えております。これはやはり今後の住宅状況というものは質の改善とともに住環境の改善を図っていくということが必要でございまして、そのためからもある程度の誘導効果というものを期待しつつお願いをしているところでございます。
  253. 春田重昭

    春田委員 時間がございませんから細かい論議はできませんけれども、いずれにしましても、金利の問題は非常に借りやすいけれども返しにくい制度になるわけです。労働省所管の財形にしても、二%下げるといっても一、二年目まででしょう。三年目からは一%下げるといっているけれども、六年目以降になったらもとの財投金利になるわけですよ。だから、借りやすいようにしながら返しにくい、そういう制度になっているわけです。そういう点で私は、この七・三%の財投の金利はもとの五・五%に戻すべきである、こう主張しておきます。  なお、百平米の問題につきましては、これはきょうは時間がございませんので、また後日の委員会で質問していきたいと思っております。  いずれにいたしましても、私は、住宅建設促進といいながら、そうしたいわゆる手かせ足かせの後退の制度がかなり入ってきているという点で百三十万戸は非常に無理である、こう思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、内需の振興のためには住宅建設以外ないわけでございますから力を入れていただきたい、こう思っております。  最後に、先ほど言ったように、住宅の問題はやはり土地が最大の決め手になるわけです。そういう点で、住宅が欲しいという者の収入と住宅価格の間に非常に大きな乖離がある、この点に問題があるわけでございまして、いわゆる土地を凍結するには国土利用計画法というのがあるわけでございますが、いまだかつて一回も運用されてはおりません。そこで、規制区域の指定でございますが、条件的には非常に厳しい条件があるわけです。たとえば、集中的な投機的取引、地価の高騰、この二条件を満たさなかったならば指定区域の対象にならないという法になっているわけでございますので、私はどちらか一方になればいわゆる規制区域に指定していく、こう法改正すべきであると主張しますけれども、これは国土庁、簡単に御答弁いただきます。
  254. 小笠原正男

    ○小笠原政府委員 お答え申し上げます。  国土利用計画法第十二条の規制区域制度でありますが、もともと土地投機の集中による地価の異常な騰貴という緊急事態に対処いたしますために、地域と期間を限定をいたしまして土地取引を原則的に禁止をする、最小限度やむを得ない取引しか認めない、こういう厳しい規制を行う制度でございます。  私どもは、こういう制度でございますから、万一の場合にはいつでも機動的に発動できるように全国の要注意地域を常時チェックをしているわけであります。その結果からして、いままでのところ、そのような制度を発動するような事態がまだ発生していないということでございます。といいますのは、現在投機的取引が影をひそめておりまして、最近地価も鎮静をしておりますが、昭和五十四年、五十五年の地価上昇というのは、住宅地の需給不均衡が一番大きな原因であったと思います。したがって、住宅地の供給を増大するということがやはり当面最大の急務である、取引を規制するよりは宅地供給をふやすということが急務であると考えております。したがいまして、土地税制の改正等が大いにその面では効果を発揮するものというふうに考えておる次第でございます。
  255. 春田重昭

    春田委員 次に進みます。建設大臣、結構です。  次に、中国残留孤児の問題について若干厚生大臣にお伺いしたいと思います。  現在、厚生省で把握しています調査中の中国残留孤児は、九百十二名と聞いております。そのうちの遼寧省と黒竜江省のメンバー六十名が、昨年に続いて、今回第二回の来日をしたわけでございます。現在肉親を求めて鋭意努力されているわけでございますが、現時点で肉親と判明された方は何名なのか、お答えいただきたい。
  256. 森下元晴

    森下国務大臣 数字的な問題は、援護局長から答弁させます。  私、実は三日前の二十二日、第二陣三十名が青少年総合センターにおいでになったのを御慰労に参ったわけでございます。孤児の問題につきましては、大陸へ進出いたしました日本が、敗戦によってまいた悲劇でございまして、これは深刻な戦後処理の問題として厚生省としては受けとめております。私もたまたま大陸におりまして、それに近い現状を見聞しておりまして、ひとしお感無量の思いでそういう方々にお会いしたわけでございます。  数字的な問題は、援護局長よりお答えいたさせます。
  257. 北村和男

    ○北村政府委員 お尋ねの身寄りが判明した者につきましては、第一班の遼寧省三十人のうち九名、それから本日から始まりました第二班の黒竜江省関係につきましては、三十人中きょう午後までに四人判明いたしております。
  258. 春田重昭

    春田委員 昨年の三月、第一回目の来日があるわけでございますけれども、そのときは何名来日されまして、身寄りがわかったのは何名ですか。
  259. 北村和男

    ○北村政府委員 四十七名参りまして、二十五名判明いたしております。
  260. 春田重昭

    春田委員 今回六十名のメンバーが来日しておるわけでございますけれども、九百十二名の中で六十名が選定されたその根拠というのはどこにあるのですか。
  261. 北村和男

    ○北村政府委員 九百何人と申しますのは、本人から、自分は孤児ではないかという、申し出た人数でございます。それらの資料に基づきまして、私どもの方で持っております関係資料その他で確率の高いと思われる者を、ことしの予算は六十人でございますので、歩どまりを見まして百六人まず名簿を選びまして、これを中国政府に連絡をいたしたわけでございます。中国政府の方でいろいろ孤児の身元確認やらあるいは本人の健康状態その他を勘案いたしまして、今回お招きした六十人を選ばれたという経過でございます。
  262. 春田重昭

    春田委員 いずれにいたしましても、非常に確率が悪いわけですね。昨年が四十七名中二十五名でございますから五〇%、今回が三十名中の九名、これは遼寧省、黒竜江省は現在三十名中四名と聞くわけでございます。非常に期待して来日されたと思うし、厚生省としてもあらゆる資料をもとに今回の残留孤児の対面があったと思うわけでございますけれども、いずれにしましても結果的には非常に確率が悪いわけです。  聞きますところによりますと、手紙等でこういう人が、日本に私の肉親がおるみたいであるということで、そういう残留孤児から厚生省の援護局の方にいろいろな便りがある。これをほとんど中心として今日までの第一回、第二回の、今回の面会があったわけでございまして、こうしたいわゆる手紙だけの便りを中心とした面会、面接というのは非常に確率が悪いところがあると思うのです。そういう面では、やはりせっかく高い費用で、また期待してわが国に来るわけでございますから、もっと万全な態勢をとるべきじゃないか。日中政府間がもっと緊密な連携をとりながら、当然事前に写真等も、また、いろいろな経歴等も、いろいろな角度からもうこれ以上ないという資料をそろえて、そして来日、こうすべきだと私は思うわけでございまして、今回、第一回、第二回で大体いろいろな教訓とするところ、反省するところができてきたと思うわけでございますけれども、次回からのそうしたいわゆる面会につきましては、もっと万全な対策を考えるべきであると私は思うわけでございますけれども、この点、大臣どうですか。
  263. 森下元晴

    森下国務大臣 非常に確率が悪いわけでございまして、うまくお会いできた方はいいわけでございますが、不幸にして会えずにお帰りになった方、まあ日本に残ることもできますけれども、非常に落胆をせられておるわけでございまして、少なくとも一〇〇%に近い数字が出るように事前に中国側とも打ち会わせましてやるべきである。かなり慎重にやったはずでございますけれども、現実となりますと非常に悪い数字の率でございまして、私どもも大いに反省しながら、そういう不幸の上に不幸が重ならないように努力をいたしたいと思っております。
  264. 春田重昭

    春田委員 かなりの方がまだ残っておるわけでございますけれども、第三回以降の肉親捜しは大体いつごろ行われるのですか、お答えいただきたいと思います。
  265. 北村和男

    ○北村政府委員 ただいま招いております分が、昭和五十六年度予算として執行しているわけでございます。来年度のは、いま予算委員会で御審議いただいております援護局関係予算の中に原案を盛り込んでいるわけでございますが、簡単に申し上げますと、ことしの六十人を倍の百二十人にし、そのほかに、日本政府から調査団を中国に派遣をいたしまして、現地で直接孤児と思われる人たちに面接調査をして、特にいま先生からお話がありました前二回の経験によりますと、新聞、テレビ等で大きく報道されたことが非常に効果がございます、中でもテレビで実際にその本人が歩いたり手を振ったりしているところに、親御さんの方からあるいは自分の子供じゃないかなというきっかけが出てくる点もございますので、今回政府調査団では現地で孤児のビデオを撮ってまいりたい、そのようなことを考えております。  なお、実施時期等につきましては、予算成立後の話でございますが、中国政府との話し合いも残されておりますので、まだ何月ということは確定いたしておりません。
  266. 春田重昭

    春田委員 第一回が四十七名、そして五十六年度が六十名、五十七年度で百二十名と年々ふえているわけでございますけれども、しかし、こういうベースでいくとあと六、七年かかるのですね。そういう点からいったならば、やはり中には中国残留孤児の肉親と会うことが戦争が終わったことになるという方もあるわけでございますから、早急に解決するためにも予算措置として十分な配慮をすべきじゃないか、こう思うわけです。大臣も直接激励に行かれたわけでございますから、その辺のところは肌で感じられると思いますけれども、今後とも十分な予算措置を配慮すべきである、このように私は主張しておきます。  次に、実は薬価の問題で質問する予定だったわけでございますけれども、時間がございませんのでこれは分科会にゆだねたいと思いますが、私の言いたいのは、大臣、こうなんです。  五十六年度の国民医療費が大体十二兆九千億、その中で薬剤費の占める割合が大体三六%とすれば、約四兆七千億ぐらい薬剤費に占められます。そこで、薬剤費が非常に高いということで、昨年一八・六%の薬価基準の値下げが行われたわけでございまして、大体政府財政効果、七千億ぐらい下がるのじゃないかという見方だったわけでございますけれども、これは現在調査中でございます。ところが、中には投薬量をふやしたり投薬回数をふやして、余り薬、減っていないのじゃないかという意見もある。こういう点で、せんだっても、五十五年度の政管健保の薬剤費の比率が対前年度に比べて二・何%ふえて三八%になっている、こういう現況からして、いまや諸外国に比べて薬剤費が非常に高いわけでございますから、引き下げるべきときに来ているわけですね。  そうしたときに、公立病院、いわゆる国立病院ですね、それから国立大病院につきましては、せんだってもわが党の草川議員が談合等の問題を指摘したわけでございますけれども、また別の次元として、薬には薬価基準の高い先発品、これは大手メーカーが多いわけです。それから、薬価基準の安い中小メーカー等に多い後発品がございます。たとえば抗生物質でセファレキシンという薬がございますけれども、一番高い薬価で百四十七円、真ん中で八十円、一番安い後発のものは三十五円となっております。このように三段階になっておりますけれども、この国立病院や国立大病院につきましてはほとんど高い先発品の薬しか入っていない、こういう問題があるわけでございます。そうした国立病院には、親方日の丸的な、予算があるから高いものを買ってもいいというような感じがある。一方、開業医等におきましては、後発品の非常に安いものを使っているわけです。  この薬というのは、先発品、後発品と分かれておりますけれども、先発品はかなり研究開発等で高いお金を投資しておりますから、ある程度薬価が高いのはわかります。しかし、特許権で十五年、先発権で三年が六年に延ばされて、先発権はかなり保障されておるわけです。したがって、この期間で十分財政投資したものは回収できる。ところが、現在も高い薬価のままになっていっている。後発品におきましては、同種同効という原則がございまして、同じ原材料だったら同じ効果があるという原則があるわけです。そういう同じ薬事審で通過された先発品と後発品が、国立大の病院には高い薬しか入っていない。ある医療センターに品目がかなりありますけれども、その中で抽出した結果、いわゆる後発品、一番安い薬が六%しか使われていない、九四%は高い薬が使われている、そういうデータが出ているわけです。そういう点で、国は薬剤費は下げると言いながら、そういった面で甘い措置をとっておる。  こういうことでございますから、国立病院、国立大病院については後発品もどんどん入れて、経済性をも加味した中の薬の購入、そして入札制にしなければならない、私はこう主張するわけでございますけれども大臣、どうですか。
  267. 森下元晴

    森下国務大臣 春田議員の言われることはよくわかります。昨年実は薬価基準を改定して、一八・六%下げました。それで先ほどおっしゃったように、七千六百七十億くらいの効果がある、こう見込んでおりますけれども、これは統計情報部でやっておりまして、まだ全貌を把握するに至っておらないということが前段の御質問でございます。  それと、先発メーカーと後発の問題でございまして、この前の草川委員からも、詳しいデータで入札の問題等も御指摘が実はございました。そういう疑いがないようにやるのが厚生省指導監査でございまして、従来の経緯からすると、これは春田議員がおっしゃるような懸念があるような疑いがあったかもわかりません。過去のことでございます。そういうことが薬価行政において、とにかく二千社以上のメーカーがございますから、その中には大手があり、中手があり、小手もございまして、各企業がともに栄えていくように、大手だけが優先するようなことがないように十分配慮してやっていきたい。  十分意に沿う御答弁にならないかもわかりませんけれども、以上申し上げて、御答弁といたします。
  268. 春田重昭

    春田委員 これは、予算を配分する大蔵大臣としてはどう思いますか。
  269. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは御指摘のように、実勢価格と実際の薬価基準との差というものは極力詰めなければならないわけでございます。したがって、厚生省が毎年薬価調査をやってその差をなくしていくというやり方、これは大変結構なことだと思っています。
  270. 春田重昭

    春田委員 大臣、違うのですよ。薬価基準はそれは実勢から見直さなければいけないけれども、私が言っているのは、国立病院、国立大病院には先発品がほとんど入って、後発品が入っていない。これは国費の節減に大きく影響しているんじゃないか。後発品だって薬効性は一緒なんですから、経済性も加味して後発品も先発品の中に入れて購入すべきである、こういう主張なんです。どうですか。
  271. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 抗生物質は全部国家検定品でございますから、成分と性能が同じならば本当は安い薬の方がいいわけですね。しかしながら、なかなか国立病院のお医者さんはお役人的でございますから、やはり名の通ったものを買いたがるという傾向があるそうでございます。そこまで私がどうこうと申し上げることはできません。これはその仕入れ者の意思によって、自分はどの薬を使えば一番患者のためになるんだということでやっているんでしょうから、それは仕方のないことだと思っています。
  272. 春田重昭

    春田委員 時間が参りましたけれども、最後に官房長官、会計検査院法の改正が五十四年に出されて三年になっているわけです。現在まだ国会に上程されておりません。これは当事者間の話し合いという形になっているわけでございますけれども、衆参の本会議で六回、決算委員会で六回決議されているのです。しかし、いまだかつてこの国会に上程されていないという現況ですね。私はもうこの辺である程度腹を決めるべきじゃないかと思うのです。断念するのか、または本当に院法改正をやるのか、時間がございませんからこの点だけ答えていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題には長い経緯が御承知のようにございますが、ごく最近だけを申しましても、大平総理大臣昭和五十五年の二月に、何とか会計検査院の考え方各省庁の考え方を調整をしてみたいと言われまして、私の前任者も私もそれに非常な努力をいたしました。しかし、おのおの言い分はあるわけでございますが、ただいまお時間もお急ぎでございましょうから詳しくは申しません。が、結局調整ができずに現在に及んでおりまして、昨年の七月に私どもの方の官房副長官から各省庁にあてまして、法改正は検査院原案のままでは内閣として提示することは困難なので検査院と関係各省庁で引き続き検討を願いたい、ただし、会計検査院の検査機能の強化ということは国会の御決議でもあり、これは非常に大事なことと思うので、別紙により会計検査院の検査等への協力について各省庁実行してほしいということを通知をいたしました。そういう経緯でございます。
  274. 春田重昭

    春田委員 きょうは公正取引委員会のメンバーの方、会計検査院のメンバーの方がお見えになっておりますけれども、時間がございませんので後日また質問さしていただきたいと思いますので、どうか御理解いただきたいと思います。  終わります。
  275. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて春田君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、一般質疑は終了いたしました。     —————————————
  276. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、御報告いたします。  昨二十四日、分科会設置の際、分科員の配置及び主査の選任につきましては委員長に御一任願っておりましたが、分科員の配置につきましては公報をもって御通知いたします。  次に、分科会の主査は次のとおり指名いたします。         第一分科会主査 小渕 恵三君         第二分科会主査 砂田 重民君         第三分科会主査 海部 俊樹君         第四分科会主査 武藤 嘉文君         第五分科会主査 後藤田正晴君以上であります。  明二十六日からは分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会