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1982-02-20 第96回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 鈴切 康雄君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    植竹 繁雄君       大村 襄治君    金子 一平君       亀井 善之君    鴨田利太郎君       後藤田正晴君    塩川正十郎君       島村 宜伸君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    中村喜四郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤尾 正行君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       与謝野 馨君    渡辺 栄一君       稲葉 誠一君    大出  俊君       大原  亨君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    野坂 浩賢君       武藤 山治君    山田 耻目君       横路 孝弘君   平石磨作太郎君       木下敬之助君    竹本 孫一君       金子 満広君    瀬崎 博義君       渡辺  貢君    依田  実君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣  田澤 吉郎君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         内閣総理大臣官         房広報室長         兼内閣官房内閣         広報室長    小野佐千夫君         臨時行政調査会         事務局首席調査         員       山本 貞雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         科学技術庁長官         官房長     宮本 二郎君         科学技術庁長官         官房会計課長  三井 嗣郎君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         環境庁長官官房         長       山崎  圭君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         大蔵省理財局次         長       酒井 健三君         国税庁税部長 吉田 哲朗君         国税庁調査査察         部長      岸田 俊輔君         文部大臣官房審         議官      宮野 禮一君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省社会教育         局長      別府  哲君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山村 勝美君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         社会保険庁年金         保険部長    小林 功典君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         中小企業庁長官 勝谷  保君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松井 和治君         海上保安庁次長 勝目久二郎君         労働省労働基準         局長      石井 甲二君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         自治省行政局長 砂子田 隆君  委員外出席者         厚生省人口問題         研究所長    篠崎 信男君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事長)     瀬川 正男君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     中村喜四郎君   奥野 誠亮君     与謝野 馨君   海部 俊樹君     島村 宜伸君   澁谷 直藏君     狩野 明男君   武藤 嘉文君     亀井 善之君   村山 達雄君     植竹 繁雄君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   矢野 絢也君    平石磨作太郎君   藤原ひろ子君     渡辺  貢君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     村山 達雄君   狩野 明男君     澁谷 直藏君   亀井 善之君     武藤 嘉文君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   島村 宜伸君     海部 俊樹君   中村喜四郎君     小渕 恵三君   与謝野 馨君     奥野 誠亮君  平石磨作太郎君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤嘉文君。
  3. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 官房長官記者懇関係で早くお帰りにならなければなりませんので、最初に官房長官に一、二お話を承りたいと思います。  いろいろ国会予算委員会においても防衛問題が議論されておるわけでございますが、日本防衛費についても突出だとか突出でないとかございますけれどもアメリカ防衛費などは一七・九というような大変な突出ぶりでございまして、しかも、日本とは違って福祉を切り込んでまでやっておるような状況でございます。数年前と比較をすれば大変な変わりようなんでございますが、これは、必ずしもカーターさんからレーガンさんにかわったから大変こういう形になってきたというだけではなくて、カーターさんの時代でも、少なくともカーターさんが就任されたころとカーターさんがおやめになるころでは相当防衛政策というのは変わってきておったと私は承知をいたしております。  そういう点からいけば、治安であるとか防衛であるとか教育であるとかあるいは外交であるとか、こういうものはその国々においてなるべく一貫性を持っていくのが当然ではございますけれども防衛などについて、国際情勢変化なりあるいは軍事技術の進歩なり、こういうものを考えてまいりますと、やはり変更していかなければならないときは当然あると思うのでございます。そういう意味において、政府として防衛政策というものについてはそのときどきに応じて対応していかなければならないと考えれば、一貫性というものも大切ではありますけれども、一方において、やはり変化をしていかなければならないときにはこれに遅くならないように十分対応していかなければいけない、こう考えるのでございますが、その辺について、きょうは一般質問でございますので総理お答え願うわけにまいりませんので、官房長官からひとつお願いを申し上げたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最近になりまして米国が非常に防衛努力を急ぐようになりましたことの背景には、武藤委員がもうよく御承知のとおり、ベトナム戦争ウオーターゲート等々で米国にいろいろ迷いがございました間に米ソ間のバランスというものがかなり変化し始めている、こういう認識があることは仰せのとおりだと思います。そういう意味では、国際情勢技術変化等々に対応しなければならないという一般論は、私もそのとおりと存じます。  ただ、わが国の場合には、御承知のとおり、いまわれわれとして達成したいと考えておりますのは、基盤的な防衛力整備をしたい、「防衛計画大綱」を達成したいという考え方でございますので、まずこれを達成することが情勢変化のあるなしにかかわらず大切なことである、そういうふうに考えまして、その点に重点を置いておる。もとより国際情勢が変わった結果、その「防衛計画大綱」の達成をなるべく早くしたいというようなことは総理大臣も申し上げておることでございますけれども達成そのものは、情勢のいかんにかかわらずわが国としての基盤的なものを備えておきたい、こういう考え方であろうと存じます。     〔委員長退席江藤委員長代理着席
  5. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いまのに関連いたしまして、これは防衛庁長官からお答えを願うのがいいかと思いますけれども、いま御指摘のとおり、「防衛計画大綱」を何とか進めていこうということでやっておられることはそのとおりでございますが、私は、あの「防衛計画大綱」をお決めになりました昭和五十一年、日本防衛基盤整備を進めていこうというときと現在の時点における国際情勢というものは果たして同じであるかどうか。あのころはデタントの時代でございまして、ですから私は先ほども御指摘申し上げましたけれども、あの当時を振り返れば、アメリカにおいても防衛力はいまと比べれば整備は進んでいなかったわけでございます。確かにいま政府はその「防衛計画大綱達成さえこういう財政事情からいって大変であるということは私もよくわかりますので、なかなか大変かと思いますが、あれは均衡のある陸海空整備を進めていく、そして平時の、非常に平和時のものであるわけでございまして、アメリカなどのそういう防衛計画の変更を見てまいりますと、たとえば日本防衛についても、それはそれとして進めていかなければなりませんが、その中で当然アクセントをつけていくというのはしかるべきことではなかろうか。  ここでも野党の方からも御議論がありましたけれども、やはり海空関係を重視するとか、いろいろ議論が出ております。日本のいまの「防衛計画大綱」でさえ、一体それを達成するときにはどういう事態なのか、その前には一体それじゃ危険な状態はないのか。たとえばこの間のアメリカ国防白書を見ておりますと、この八〇年代の後半は大変な危険な不安定な状態になると書いてあるわけでございます。もちろんそういう状態にならないことを私どもは望んでおるわけでございますけれどもアメリカはそういう考え方に基づいて防衛力の拡充に相当力を入れておるという点から考えると、いま官房長官の御指摘にございましたけれども、「防衛計画大綱そのものを進めていく上において、たとえば来年、五十八年度からの中期業務見積もりのときには、その中でもアクセントをつけたところを、どこどこをひとつ思い切ってやっていこう、そしていざというときにはこういう形で日本は守るんだという具体的なことが、五十八年からの中期業務見積もりを立てるという点からいけばそろそろ私は出てきていいのじゃないかと思うのでございますが、その辺は防衛庁長官のお考え方はいかがであるかということと、もし防衛局長の方から何か具体的に中期業務見積もりの内容について御検討が始められているものがあれば、その辺お聞かせをいただきたいと思います。
  6. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま官房長官からお答えを申し上げましたとおり、できるだけ急いで基盤的な防衛力をつくり上げたい、そのための努力をいささかも怠ってはならないということは、仰せのとおりでございます。  また、いまお話しのとおり、これから調達をするものが二年、三年かかるということであるならば一九九〇年代にもなるものも出てまいりますので、そういうようなことを踏まえましてアクセントをつけながらやらなければならない面も出てまいるわけでございまして、武藤先生の御意見を十分参考にいたしましてこれからの作業に取り入れてまいりたいと思っておりますが、若干補足することがあるなら、防衛局長から補足さしていただきます。
  7. 塩田章

    塩田政府委員 五六中業作業を現在やっておりますが、その中で、いまの御指摘はポイントを決めて作業を研究したらどうか、たとえば海空などはどうかという趣旨のお尋ねであったかと思います。  この点につきましては、いま具体的な作業をやっている最中でございまして、どういう点でどういうことを考えているというようなことまでまだ申し上げる段階ではございませんが、先般も総理から海洋国家としてのあるべき姿というようなことを検討するように御指示をいただいております。そういったようなことも当然私どもは御指示趣旨を含めまして作業に当たっては検討いたしたいと思っておりますが、いまの時点で具体的にどういうことを考えておるということを申し上げられる段階ではございませんことを御了承いただきたいと思います。
  8. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それでは、アメリカ国防白書においては少なくともこの八〇年代後半は非常な危険な時期であり、不安定な時期であると書いてあるわけでございますが、その辺に対する認識は、防衛庁としては一体どうお考えなんでございましょうか。
  9. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 これも先ほど官房長官からお触れがございましたように、一九六〇年代からソ連が一貫をして軍事力増強に努め、従来は欧州方面にその力の拡張があったわけでございますけれども、ここ十年ばかりの間に極東方面にも大変な軍事力増強があり、また、その動きも大変活発でございまして、われわれとしても十分注意をしていかなければなりません。そのようなことから、われわれの周辺における脅威というものが高まってきておるという認識、またそういう国際情勢認識につきましては、われわれとアメリカ側との間にそれほどの差異はないものと考えております。
  10. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 そうしますと、この「防衛計画大綱」はたしか昭和六十二年完成ということでございますから、一九八七年で一応予算は全部つける、こういう形になっておるはずでございますけれども予算をつけても、それから実際動くようになるには、契約をし、それを日本が買って、そして訓練をやっていくと、大体五、六年かかるのが従来からの通例でございますが、そういたしますと、結局一九九〇年代になってしまう。私はその辺を先ほどから非常に、一体アメリカで言っているような認識に立っておるならば、相当中期業務見積もりにおいてはその辺アクセントをつけていかないといけないのじゃないか、こういう心配をして申し上げておるわけでございますが、その辺はそういう考え方で進めておられるのかどうか、もう一度確認をしていきたいと思います。
  11. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘のように、五六中業ができ上がりましたとしましても、六十二年に契約ベースででき上がるということになりまして、それから先実際にオン・ハンド・ベースは四年ないし五年かかります。さらにそれに所要の訓練を加えるというようなことになりますと、実際の戦力化ということは六年ないし七年かかるということが考えられるわけでございまして、一九九〇年代にかかっていくということが特に艦艇等につきましては考えられるわけでございます。  そういうこともございますけれども、私どもとしては、いまの作業としましては、ともかく「防衛計画大綱」の線に早く到達したいということで、それを基本的なめどとしまして現在五六中業作業を策定をいたしておりまして、一刻も早くその実現を期したいというのが現在のわれわれの考え方でございます。
  12. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いずれにいたしましても、この国会でもいろいろ問題になりましたが、私は防衛という問題については、もちろん野党先生方も非常に御熱心にいろいろと御発言をいただいておりますが、根底にはやはり考え方の違いがあるわけでございます。場合によれば、残念ながら平行線をたどらざるを得ない場合もあるわけだと思うのでございまして、一つ、そういう意味においては特にシビリアンコントロールが大切だということはまた言われておるわけでございますし、いま一つ、決してそうではないと私は思っておりますが、人によれば、どうも防衛庁秘密主義ではないか、こういうことを言われておるところも事実あるわけでございます。私はそうは思いませんが、そういう誤解を招かないためにも、こういう国会の場などにおいては、ひとつ防衛庁長官、ぜひ毅然たる態度で堂々と、防衛必要性、特にそういう国際情勢変化とか、なかなかこれは国民にはよくわかりませんし、それじゃマスコミで的確にそれが報道されておるかといえば、必ずしもそうではないと思いますので、やはりこういう場で堂々とそういう点は率直におっしゃっていただき、そして、それに対処していくには、中期業務見積もりなどで、「防衛計画大綱」はこうなっているけれども、これはやはりいまの事態に応じてはこうしなければいけないというような話は、ここで何かつかれてから発言されるというのじゃなくて、積極的に政府の、防衛庁の方からどんどんそういう機会をとらえて発言をしていくということが大切なんじゃなかろうか。  だから、なかなか予算委員会というのはむずかしいところでございますから、私は与党の立場ですから、余り突っ込んだ話をしていけない点は非常につらいのでございますが、いまの防衛局長などの御答弁も、もう少し率直に、やはりアメリカ体制がこういう体制で来ている、日米共同訓練どもおやりになるわけですから、そういう中、で、一体いまの「防衛計画大綱」そのままのいままでのペースでいいのかどうか、やはりそこに、日米共同訓練の中で日本の国を守るという点からいけばこういう点にアクセントをつけなければいけないというのは、私はあるのじゃないかなと思うのでございます。そういう点はぜひひとつ率直に御披瀝をいただく方が、国民もより国防衛という問題に対しての理解度を持つのではないかな、私はこう思うわけでございまして、その辺、ぜひひとつそういうお考え方に立って今後御努力をいただきたいことを要請をいたしますとともに、これは官房長官にもひとつお願いをいたしておきますが、何といったって日本国防最高責任者総理でございます。そういう意味において、従来がら総理が自衛隊のいわゆる制服組の幹部の皆様方余り交流がない。官邸へ行くのは何か特別、別のような考え方で行くのじゃなくて、どこの国だって、やっぱりアメリカならアメリカ国防省の連中だって、いわゆる武官が幾らでもホワイトハウスに行っているわけでございますから、そういう意味においては、もっともっとそういう点の交流がある方が、私はより国民がそういう国防というものに対する認識を持つと思いますし、また、総理御自身もより的確な判断をお持ち  いただけるのじゃないかと思うのでございますが、こういう点においては、よりそういう機会を深めていただく、そういう機会を多くしていただくということについて官房長官の御配慮はいただけるものなのかどうか、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 直接わが国の安全を守る人々と総理大臣とはできるだけ多くの機会によく気持ちを通わせ合って、お互いの考え方をわかり合っておくということは、大変大事なことだと思っております。及ばずながら私もそういう機会を多く設けるように努力をしてまいったつもりでございますけれども、今後ともそういう機会を多く設けまして、この人々が胸を張って自分たちの与えられた仕事を遂行してくれますように、総理大臣としても努めていただく所存でございます。
  14. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 防衛の問題に関して、F4の問題は、いろいろとこの委員会がストップしたこともありますので、私は、ただ事実関係だけ少し念を押しておきたいことが一つございます。  よく、新聞を見ておりましても、あるいはここでの議論も、何か爆撃装置をとにかく取りつけるということで、これは大変だ、大変だという議論がなされておるわけでございますけれども、私の聞いておるのでは、F4はすでに爆撃装置そのものは、いわゆる懸垂装置というのでございますか、固定したものはあって、F4の訓練ば爆撃の訓練ももうすでに従来からずっとやりてきておる、こういうふうに私は聞いておるのでございますが、その辺の事実関係をまず防衛庁の方からお聞きしたいと思います。
  15. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘のように、現在のF4ファントムは爆弾をつけて飛ぶことはもちろんできますし、その爆弾を投下することもできます。ただ、これがパイロットの目視による、いわば勘による投下だということでございます。したがいまして、その関係訓練も射爆撃場等を使いまして、これは訓練弾を使っておりますけれども訓練弾による投下訓練等は実施いたしております。
  16. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 おっしゃるとおりでございますね。  そこで、結局今度予算で問題になったのは、爆撃装置を取りつけるというよりは、コンピューターとかレーダーとか、たとえばコンピューターはF15に取りつけてあるのと同じものを取りつけるということのようでございますが、結局、そういうコンピューターなりレーダーを取りつけて、いまは目で、肉眼でやっておるものに対して、そのレーダーとコンピューターとずっと合わせてきて、そうして自動的に照準が決まったときにボタンを押して爆弾を投下する、こういう装置、いわゆる爆撃装置というよりは、爆撃の命中度を高めるためのいわゆる照準装置をつけるというのがいま問題になっている予算ではないかと私は思う。  この辺、何か私ども国民は、みんな爆撃装置、爆撃装置と書いてあるものですから、どうもそう思い込んでいる人が多いのではないか。この間テレビを見ていたら、竹村健一さんでも何かそんなようなことを言っておったので、ああいう人たちまでも間違って思い込んでいるというのは非常に問題じゃないかな、私はこう思いましたので、その辺、もう一度、いま申し上げたようなことで間違いないのかどうか、ひとつぜひはっきりお願い申し上げたいと思います。
  17. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 現在、F4EJは計算機によります照準の機能というものは持っておりません。したがいまして、パイロットが、操縦するとかあるいは照準いたします、あるいは爆撃のタイミングのとり方、そういったことに関しまして持っておりますところの技量に依存して爆弾を投下している、そういう実態でございます。  今回の試改修におきましては、F15と同じセントラルコンピューターを整備することになるということを一応考えておりますが、この活用によりまして、照準がより精密、正確なものとなるということを期待しているわけでございます。すなわち、レーダーが目標までの距離、方位等を精測した情報等に基づきましてセントラルコンピューターが弾道計算を行う、そういうことによりまして目標点に対します精確な爆弾の投下時期を算出することになるということでございます。したがって、現在はパイロットの技量に依存しております爆弾投下が、セントラルコンピューターを活用すること等によりまして精密、確実になるということが一応の試改修の目的でございます。
  18. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 もっと簡単で結構ですから、要はセントラルコンピューターを取りつけるという予算が今度の予算であるということだけ、そこだけはっきりしておいていただければと思います。
  19. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 セントラルコンピューターによりまして爆撃計算機能が付加される、そのとおりでございます。
  20. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 この問題は大変微妙な問題でございますから、私はこの程度でやめさせていただきます。  次に、武器輸出、武器技術交流の問題で少しお話を承りたいと思うのでございますが、昭和四十二年の佐藤総理の答弁以来武器輸出三原則ができ、そして三木内閣のときには統一見解ができ、それから昨年はまた国会でも武器輸出の問題については決議がなされておるということは、十分私どもは踏まえていかなきゃなりませんが、しかし、現実にいま日本へF15が入ってきております。そのF15については、たしか四五%がライセンス生産が認められておると聞いております。このように日本へF15の技術までも、それは確かにF15の一部は、五五は向こうから持ってくるわけですから、そういう面においては全部ではございませんけれども、相当部分の技術を日本に提供してくれてライセンス生産をやっていく、こういう姿勢というものは、私の承知しておるのではNATO以外には日本しかないのではないかな、こういうふうに聞いておるのでございますが、その辺は、そういう最も優遇された国にアメリカは考えておるのかどうか、まずそこからお聞きしたいと思います。
  21. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 私どもアメリカから聞いておるところでは、日本アメリカが武器技術を出す対象の国といたしましては、NATOと並んで最も優遇しておる国である、そういう説明を受けております。  なお、先生のお話にございました国産化率でございますが、一番最新のデータによりますと、国産化率がF15の場合約五一%という程度になっております。
  22. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 私の数字の四五が五一なら、もっとライセンス生産を認められておる、こういうことであります。  そのような形で非常にアメリカが信用しておるのが、昨年でございましたか、いままでライセンス生産をやってきた二百三ミリ自走りゅう弾砲のライセンスの問題については、その一部が、従来アメリカ側は協力をしておってくれたのがだめになった、こういうことを聞いておりますが、これも事実でございましょうか。
  23. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 二百三ミリのりゅう弾砲につきましては、五十六年度の予算で認められまして、五十七年度も引き続きお願いしておりますが、これにつきましてはライセンス生産をするという方向で話を進めておりまして、砲身のうちのいわばチューブといいますか、まさに筒の部分だけを除きまして全部ライセンス生産をさせる、そのためにアメリカから日本に技術を提供する、こういうお話が大体事務局の問でまとまりつつございましたけれども、それが昨年の十二月十五日になりまして、筒の一番前部にございます砲口制退器という部分と筒の一番後部を占めておりますところの砲尾環、その二つの部分につきましてアメリカの方で生産する、したがって日本に対しては技術供与をしない、そういう法律案が通って、それに大統領が署名されましてそのように決定された、そういう実態でございます。
  24. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 日本の航空機産業というものを将来伸ばしていかなきゃならないと私どもは思っておりますが、その航空機産業がいま依存しておるのは、やはり軍事の飛行機に約八割ぐらいば依存しておるわけであります。そういう航空機産業をより支えていくためにも、このライセンス生産というものは今後も維持していきたいと思っておるのでございますけれどもアメリカ側日本の武器の技術交流に対してノーと言っておることが、いまの二百三ミリのりゅう弾砲のライセンス生産を一応方針を変えてきたということに直接つながらなくて、もちろんこれはアメリカの経済が失業がふえ仕事がなくなっておるからということであろうと思いますが、しかし、将来ともそういうアメリカの経済の面からいっても、こういう点がほかのものにまで拡大をしていくということは私は考えられないことではない、そういう可能性もあるんじゃないか、こう思いますときに、近く政府で見解を出すという方向で進められておると承っておりますが、安保三条にもございますし、少なくともアメリカとの軍事技術交流についてはより積極的に進める、やはりアメリカの要請に応ずる形で進めていくというのが必要ではないか。日本アメリカとを比べれば、武器というものについてはまだまだ日本は低い水準でございますから、武器輸出をしてくれというようなことはアメリカは言わないとは思いますけれども、少なくとも現時点において、日本の民間技術の中でアメリカの軍事面に活用できるものがいろいろある、そういうものについては共同研究をやり、また、提供してもらいたいということについては積極的に日本は対応すべきだ、こう私は思うのでございます。その辺はまだ、官房長官、いまの現時点ではいいお答えがいただけるかどうかわかりませんが、いかがな方向で政府ではお考えでございましょうか、お答えを願いたいと思います。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、先般来通産大臣がお答えになりましたように、各省庁の間で意見の調整中でございますが、ただいま武藤委員の御指摘の問題は大切に考えるべき点ではないかと存じます。
  26. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 大切な考え方だとおっしゃっていただきましたので、ぜひそういう考え方が生かされるように、ひとつ政府間でしっかりしたお考え方のお取りまとめをなるべく早い機会にしていただけることを御要望申し上げておきます。  それから、もう一つだけ。  何か私よくわかりませんが、これは大出先生が御指摘いただいたのか、安田寛防衛大学校教授の、何かいろいろ問題をここで議論なされたことがありますけれども、ああいうような覚書が本当にあったのか、私は本当に正直疑問に思っておるのでございますが、その辺は実際どうなのか。この辺、もし何か防衛庁の方で実態を聞かしていただける点があればひとつ聞かしていただきたいと思います。
  27. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 安田教授がお書きになりました研究開発に関する論文でございますが、覚書は全体としては秘密ということになっておりますが、趣旨を申し上げますと、本覚書は、白米防衛当局間の資料交換を効率的に行う等、研究開発に関し担当者間の考え方を述べ合ったことの記録として取りまとめたいわば議事録的なものでございます。  内容につきましては、この前、大出先生からの御要求もございましたので、アメリカ側と、どの点まで公表できるか、鋭意いま最大限の努力をしておるところでございますけれども、基本的には、いま申し上げましたように、資料交換等を効率的に行う等、研究開発に関しまして担当者間の考え方を述べ合ったということでございまして、具体的に日米間で共同研究開発について義務づける、そういう性格のものでもございませんし、また、これに基づきまして共同研究開発を行ったという事例もございません。  なお、この安田先生の論文でいろいろ書いておられまして、この事実関係を一々述べることはちょっと差し控えたいと思いますけれども、前にもちょっと申し上げたことでございますが、この論文の中で、たとえばでございます、たとえば経費に関しましてちょっと言及されております。また、対象装備品は米三軍が必要とするものに限定するというようなことを書いてございますけれども、そういったことは本覚書の中には一切書いてございません。  総じて申し上げますと、この覚書の記述については、安田先生に私直接問い合わせましたところ、記憶に基づきまして十数年前のことを書いたということでございまして、どうも記憶違いの点もあるのではないかというふうに御本人も申し述べられておりましたけれども、率直に言いまして、これについて共同研究開発を実施した事例がないという記述の分以外につきましては正確でないということを申し上げるのが一番実態に即しているのではないかというふうに考えております。
  28. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 時間がございませんし、私は与党の立場ですから、余り突っ込んだ話はせず、この程度で終わらせていただきます。  防衛庁長官官房長官、結構でございます。  次に、それじゃ財政問題と経済見通しの問題について少し議論を進めてまいりたいと思うのでございます。  まず、経済見通しについては、ここでは皆さんからもういろいろ議論がなされておるわけでございまして、河本長官に承りたいのでございますが、民間の予測は、五・二%の実質成長率、八・四%の名目成長率、これは大変むずかしい、こういう判断でございます。たしか河本大臣からこの席で、それは住宅関係その他についてのいろいろの予算措置がなされる前にある程度見通しをつくられたからそういう点はあるのじゃないかというようなお話がちょっとあったように私記憶をいたしております。あの見通しを立てたそれぞれの銀行の調査部なりあるいは経済研究所なり、そういう人たちの話を聞いておりますと、いや、もちろんそういうものもある程度は考え方の中に入れてやっております、こういうことをおっしゃる方もあるわけでございまして、そういう点においてはこの見通しを実現することは非常に困難ではないかな、こういう判断を私もするわけでございますが、しかし、努力次第によってはこれは可能性がないわけではない。  そこで、たとえば、GNPの中では個人消費が一番比率が高いわけでございますから、個人消費が思い切って増大をする、あるいは住宅が一〇・四%でしたかのような増加をしていくというようなことが本当にできるならば、この経済見通しも結果的には実現を見る、こういうことにもなり、それは財政再建にも大変いい結果をもたらすわけでございますが、最近河本大臣はよく、収益の上がっている企業においてはなるべく高目のベースアップがこの春において設定されるのが望ましい、こういうような表現をなされておるわけでございます。その辺について、日経連は四・一%に抑える、こう言っておりますが、私は、こんな数字ではとても個人消費の拡大にはつながらない、こう思うわけでございまして、どの程度ならば物価にもそんなに影響なく、そして個人消費の拡大につながる、大体どの程度というめどを頭の中に描いてそういう御発言になっておるのか、その辺をまず承れれば大変ありがたいと思います。
  29. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府の出しております雇用者所得の伸びはベースアップと直接関係するものではございません。しかし、当然ベースアップというものはその中の一部に含まれるということでございますが、五十七年度は一人当たり六・九%、それから雇用者所得全体につきましては、雇用者の数も相当ふえますので、一・六%ぐらいふえると想定しておりますので、それを考慮に入れまして八一六%と想定をしております。一人当たりの雇用者の伸びにつきましては、五十六年度は実は御案内のように当初七・五%と想定をしたのでありますが、中小企業関係の回復が思わしくないということ等もございまして大体六・二%見当に落ちつきそうであります。したがいまして、五十七年度の見通しは五十六年度当初の見通しよりは低いのですが実績よりは若干高い、こうなっております。それは、後半わが国の経済もある程度景気が回復するであろう、そういう想定に立っておるからでございます。
  30. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 私の承りたいのは、確かに雇用者所得は雇用者の数とかいろいろ数字が合わさってできておることは承知をいたしておりますが、基礎になるのは給与所得というのがやはり大きなウエートを占めると思いますので、その給与所得がどの程度高まるのが望ましいとお考えになって高目のベースアップが望ましいとおっしゃっておられるのか、その辺のところをお聞きしたがったわけなんでございます。
  31. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 つまり、どの見当のベースアップが望ましいのか、こういう御質問でございますが、その点につきましては、ベースアップは労使の交渉で決まることでございますから、政府はそれに対して高い方がいいとか低い方がいいとかそういうことは一切発言をしないことにいたしております。労使交渉によって決めていただく、そういう考え方でございますが、ただこの労使交渉が円滑に進むような、そういう背景づくりは政府としては当然しなければならぬ責任があると考えております。  それじゃ労使交渉が順調に進む背景とは何ぞやといいますと、やはり景気の回復、そして生産性の向上、それから構造不況業種というようなものがございますと、やはりその分野のベースアップはなかなかやりにくいということ等もございますので、そういう業種に対しては個別対策が必要だ、こう思っております。五十六年度のように中小企業の状態が非常に悪いということになりますと、これもやりにくいということでございますから、当然中小企業対策も特別の配慮が必要であろう。そういう産業政策を進めながら労使交渉が円滑に進むような背景づくりをするというのが政府の責任である、こういう考え方でございます。
  32. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 なかなかこういう場で具体的には、お考え方があってもお答えにくいとは思いますが、私は、少なくとも日経連が言っているような四・一%以内に抑え込むということは、なかなか所得税減税もむずかしい今日において個人消費の伸びには非常にマイナスになるのじゃないかな、こう思うのでございますが、その程度の考え方に対してはイエスなのか、その辺はどうなんでございましょう。
  33. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日経連の言っております生産性の向上の範囲内の賃上げ云々という議論は、そういう考え方もあると思うのですが、しかし、その生産性向上という意味は、普通に言われておる生産性向上という意味とは若干違うと思うのです。つまり、実質経済成長が五・二%ということであって、就業者の数が一・一%ふえる、したがって、その就業者の数を差し引いたものが国全体としての生産性の向上だから四・一%以内が望ましいということでありますが、この四・一%というのは実質成長でありますから、その場合には物価の上昇というものは考慮されていないのではないか。  これはこの間も参議院の予算委員会で日銀総裁からも、物価問題は考慮の外にある、そういう趣旨のことを御説明がございましたが、しかし普通に言っております生産性の向上というのは、生産性本部あたりの言っております労働生産性のことでございまして、個々の産業においてどの程度労働生産性が進んだかということで、日経連の言っております国民経済的な概念における生産性向上という意味とは全然違っておると思うのです。個個の業種なり企業の賃上げというものは、国民経済がどうだとかそういう観点から賃上げを決めるのではなくして、それぞれの業種それぞれの企業における労働生産性の向上という観点から判断がされておるということでございまして、私は、生産性の向上ということで二つの意味がございますので、そこでいろいろなところで少し誤解を生じておるのではなかろうか、こう思っております。  そういう考え方もあろうと思うのです。日経連のような考え方もございまして、それは私はいいとか悪いとか言う立場にはございませんから、一切論評はいたしません。ただしかし、政府の雇用者所得の伸びという数字は先ほど申し上げましたが、これは日経連などとは全然別個の観点からの基礎に立った計算である、こういうことだけを申し上げておきたいと思います。
  34. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 経済見通しについて一つ一つ私入っていきたいのでございます。  住宅問題については正直、これもここで議論がございましたけれども、現在すでに建っておるものでも入居者がいないのが相当ある。一説によれば十万戸ぐらいあると言われておりますし、地方の田舎へ参りますれば、家というものについてはすでに相当余裕が出てきておる。要は、住宅を欲しいというのは、住宅需要があるというのは都会地だと思うのでございます。そういう都会地で住宅がなぜなかなか建てたくても建てられないかというと、住宅のコストも高くなってきておりますけれども、しかし住宅のコストが高くなったよりもやはり問題は地価の方が問題ではないかな、地価が高くなり過ぎたために住宅を建てようにも建てられなくなったのだということであります。  そこで、これは建設大臣にお聞きしたいのでございますが、最近都市計画中央審議会というのですか、いろいろと都市計画法に基づく市街化区域、市街化調整区域、この見直しについての検討がなされておるということでございますが、あの法律ができたのはいわゆるスプロール化を防ごうということでできたと私は承知をいたしておるわけでございますから、スプロール化を防ぐことは今後も大切だと思うのでございますけれども、しかし余りにも線引きがきちんきちんとなされ過ぎちゃって、そのためにわりあい窮屈になっておる。そしてそのために地価が結果的には——土地というものは量が少なければ値段が上がるのは当然な話でございまして、そういうことで地価が相当上がってきた点もあるのじゃないか。そうすると、逆にいま審議会で行われておる検討が市街化区域を思い切ってふやすような形での線引きの見直しがなされる方向に行くならば、私は相当土地というものが供給されることによって需給が緩み、その結果地価が抑制され、それが住宅の建設にプラスになっていく、こういう考え方を持っているのでございます。建設省としてはこの審議会の答申を待ってということではございましょうけれども、少なくとも市街化区域を思い切ってもっとふやしていこう、市街地における市街化区域はできるだけふやした方がいい、少なくともスプロール化を防ぐという前提に立って、ふやせるところはできるだけふやしたいという考え方に対しては御同意をいただけるものなのかどうか、建設大臣の御意見を承りたいと思います。
  35. 始関伊平

    始関国務大臣 内需拡大の大きな柱として住宅建設が取り上げられておるわけでございますが、そのためにはただいま御指摘のように、宅地供給の拡大と、それから宅地価格の安定ということが非常に大事である。そして、このたびいろいろ税制、金融面での施策を講じておりますが、それだけでは不十分であって、やはり都市計画の方面における施策がきわめて重要であるというただいま武藤委員の御指摘の点は私ども全く同様に考えております。  それで、このためには市街化区域内の土地の宅地化を促進する、これは土地区画整理その他いろんな手法がございます。こういうことが一方にございますけれども、いま御指摘のように調整区域の方でございますが、これはスプロール化を防ぐという意味ではかなりの効果があったと思いますけれども、その土地につきましても市街化区域への編入とか、場合によりましては開発許可等につきまして適切な措置を講ずることが大変必要だと存じております。  建設省としては、かねてから都道府県知事に対して市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画の見直し、いわゆる線引きの見直しでございますが、方針を通知いたしまして、適切な見直しを推進するよう指導をいたしております。場所によりましてはちょっと消極的な意向を持った知事さんなんか多いのでございますが、そういうことでは困りますので、そういう方向に指導をいたしております。  また、いまお話がございましたが、本年の一月に都市計画中央審議会に対しまして、良好な市街地の形成を図るための都市整備の具体的方策について諮問をいたしておるのでございますが、これもただいま武藤委員指摘のような方向に沿うものでございます。  以上、お答え申し上げます。
  36. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 私は、住宅事情は土地問題だ、こう判断いたしておるわけでございまして、そういう意味において、いま建設大臣から大変ありがたい御答弁をちょうだいいたしましたが、ぜひ前向きで、またなるべく早く実行に移していただくように各審議会を促進していただいて、そして、いま各地方にも通達を出していただいておりますが、本当にそれが生きてくるように、ぜひアフターケアの方もお願いをしたいと思います。  それから、最近、経済見通しに関連して、公共事業の前倒しということについては、河本大臣も大蔵大臣も同じような方向で非常に積極的に御発言をいただいておるわけでございますけれども、以前は大蔵省は、公共事業というのはGNPに占める割合は一〇%ばかりなんだから景気には大して影響はないよ、こういうようなことがよくあったのでございます。しかし地域によっては公共事業というものが相当寄与をしておるところも多いわけでございまして、これは企画庁の資料によりますれば、北海道は一六・六、東北は一五・〇、北陸は一二・二、四国は一三・六、沖縄は一九・九というような形で、地方によっては一〇%どころか、沖縄あたりは二割も寄与率があるということでございますが、私はひとつ公共事業全体を上期に八〇%以上ぐらいは前倒しをする、そういう考え方を早く固めていただきたいことと、あわせてでき得るならば、全体にただ八〇%どこの地方も同じようにということではなくて、その辺アクセントをつけて、いまのような寄与度の高い地域にはやはりそれよりも多くの前倒しをする、トータルとしては八〇かもしれないけれども、やはり寄与度の高いところへ重点的になるべく早く仕事をやらせるということの方が私は景気に対する影響はいいと思うのでございます。  この辺、公共事業の前倒しをいつかお決めになると思うのでございますが、そういう考え方に基づいてアクセントをつけウエートをつけて公共事業の前倒しをやり、そしてトータルが八〇ぐらいになる、こういうような考え方で進めるべきだと私は思うのでございますけれども、この辺についてのお考え方を、これは河本大臣、それから大蔵大臣からもひとつ承りたいと思います。
  37. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 公共事業、社会資本投資でありますが、これを五十七年度につきましては前倒し執行するということにつきましては、大蔵省あるいは党の政務調査会で予算編成の際に合意を得ておりますが、これをどの程度やるか、それからどういう方法でやるかということ等につきましては、これから関係各省で相談をすることになっておりますが、やはり現在の時点では景気回復にこれは非常に大きな役割りを果たすものである、こう思っております。  そこで、いまいろいろ御意見がございましたが、最も効果的な方法を関係各省の間でよく相談をしてもらって、適当な時期に決定をしたい、このように考えております。
  38. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 公共事業の執行についてはただいま企画庁長官から答弁したとおりでございまして、景気配慮というような点で前倒し執行等には十分協力していきたいと思っております。
  39. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 そこで、たとえば八割なら八割とか、どこになるか、まだそれはいま決まっておりませんが、私は八割ぐらいやらなければいかぬと思っておりますし、特に河本長官からも、これは景気にも非常にいい影響を与える、こういうお話もございました。そこで、下期のことまで心配をしておったのではとてもそういうことはできない相談でございまして、そうなってくると、これはどこかですでに御答弁があったやに聞いておりますが、景気というのは上期にそれだけやったら物すごくぼんぼん下期になったらよくなるというような問題でもないわけでございまして、そうなると、下期においては場合によってはやはり補正予算を組まざるを得ないのじゃないか、特に公共事業についての追加をせざるを得ないのじゃないかという事態が、これはいま五十七年度の予算の審議をやっておりますからやりますとは言えないと思いますが、万が一そういうような事態が発生したときには、大蔵省としても建設国債を発行してでもある程度やらざるを得ないというお考え方を持っていただけるかどうか、この辺を確認をしておきたいと思います。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いみじくも武藤議員が言ったように、現在の予算が成立するかどうか、いま瀬戸際で、その先の話までいま申し上げることはできません。
  41. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 私もそれはいまの段階ではむずかしいと思いますが、万が一の覚悟だけはひとつしておいていただきたいということを御要望申し上げておきます。  それからもう一つ、やはり経済見通しの中で設備投資についても五十六年度の経済見通しよりも相当高く見積もっておられるわけでございますけれども、現実には設備投資で悪いのは、私は大企業よりも中小企業の方が非常に悪いのじゃないかと思うのでございます。しかも中小企業の設備投資における寄与率が最近は非常に高くなってまいりまして、たしか半分近くは中小企業が寄与度を占めておるわけでありまして、そういう点からいけば中小企業の設備投資が何かもう少し高まってこなければならないのじゃなかろうか。  こういう点からいたしますと、いわゆる投資減税というのがあるわけでございますが、これは通産大臣と大蔵大臣に承りたいのでございますが、通産大臣のお立場からいけばあの投資減税はなるべく中小企業の設備投資は広く考えていただく、余り狭い解釈ではなくて広く考えてやった方が、いわゆる投資減税になればそれだけどんどん設備投資をやる気持ちが起きるわけでございますから、なるべく広く考えてやった方がいいとお考えかと思いますし、大蔵大臣の方は場合によれば、これはもうきちんと、あのときにいろいろ細かく両省間でこういうものとこういうものとなっているのだからそれ以外のものはだめだということかもしれませんが、その辺は両省間で話し合っていただいてでも少し拡大をして、中小企業の設備投資については極力投資減税の対象になるように持っていく方が、経済見通しの設備投資がプラスになり、それが結果的には税収の増加にもつながる、私はこう思うわけでございまして、そういう点について両大臣のお考え方を承りたいと思います。
  42. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるように中小企業のわが国経済における役割りというのは非常に大きいわけでございますが、その中小企業の設備投資がいま落ち込んでおる。これは昨年に比べても落ち込んでおるわけで、大企業と比べると私非常に心配をいたしておるわけでございます。したがって、この中小企業の対策をいかに推進していくかということが内需の拡大に直接結びついていくわけでございますから、その意味でも中小企業対策というのは非常に重要になってきておる、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。  中小企業につきましては、御承知のように、これまで機械類の特別償却等を初め、いろいろ特別措置は講じてきております。そして、いまお話のありましたような省エネルギーに対する特別促進税制というものを五十六年度から実行しておるわけでございまして、これらは大いに活用していかなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、今日の情勢の中で新しい投資減税制度というようなものをつくりていくということは、客観的に見てなかなか困難ではないだろうか。ですから、いままでの特別措置の税制を積極的に活用していく、こういうことに重点を置いてやっていきたいと思っております。
  43. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 大蔵大臣からお答えいただく前にもう少し。私の説明がちょっと不十分であったと思います。  要は、いまおっしゃるように、いまの投資減税は省エネの設備とかいろいろ決められてやっているわけですね。それをなるべく解釈を甘く考えてやった方がいいのではないか。中小企業の設備は非常にいろいろと細かく決められておる。あれをもう少し緩やかに解釈をしてやると、いわゆるきちんとした省エネになるかどうかその辺の解釈がむずかしいものでも、ある程度は省エネにつながる、こういう考え方に立って中小企業などのそういう設備投資に対する特別の減税は恩典を与えてやったらどうか、こういうふうに私は思うのでございますが、そういう点に対して通産大臣、もう一回ちょっと御意見を承りたいと思います。
  44. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 せっかくできました五十六年度から実行いたします省エネの税制でございますから、これは活用して、そして中小企業の設備投資が進むような方向で努力をしていきたい。この範囲等につきましては、いろいろと決められた問題、内容があるわけですが、しかしその運用の中ではいろいろと活用ができるのではないか。こういう点についてはまた各省庁とも相談をしていきたいと思っております。
  45. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 この税を決めるときには大蔵省の主税局にも、中小企業に対してはなるべく甘く見てやれよということを私は発言しておいたつもりですが、通産大臣もその辺非常に苦慮した御発言のようでございますので、これについては大蔵大臣の答弁は要りません。  次に、今度は経済見通しとは必ずしも一緒ではございませんが、財政の問題で少し議論してみたいと思うのでございます。  最近、五十六年度、五十七年度についての税収見積もりの問題について、この席でも何回となく議論がなされております。私は、まず一つ承っておきたいのは、五十六年度の補正後の税収の見通しを確保するためには一月から五月における税収が対前年同期比で二九・一%伸びなければいけない、そうしないと補正予算で見積もられた税収は確保できないという、この事実関係の数字だけ主税局長から承っておきたいと思います。
  46. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 お答えします。  いまおっしゃった数字のとおりでございます。
  47. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 そういたしますと、この間ここで福田局長から承っておりますと十二月から好転をしてきておるということでございますが、最近円安の傾向が強くなってまいりまして、この円安の傾向というものが輸出産業にはプラスになる点も確かにあろうと思いますけれども、一般的に言えば景気には決してプラスになっていないのではなかろうかな、こういう感じがするわけでございます。その点においてはこれは大変むずかしい数字かと思いますが、私はここでそれを議論するつもりはございません。  ただ、これが本当に歳入欠陥になってくると五十七年度の税収見積もりの基礎が狂ってくるわけでございまして、そうなると、野党の皆さんから御指摘をいただいているように、本当に五十六年の税収に欠陥が起きますとそれは五十七年度においても大きな影響を与えてくる、それこそ財政再建というものが果たしてできるのかどうかということまでこれは結びついていくわけでございまして、二九・一%というのは大変むずかしいけれども、ぜひそれが実現できるように私は望んでおきます。  この間大蔵省の発表になりました中期展望によりますと、五十八年度はいわゆる要調整額が三兆三千七百億、昨年の一月の中期展望で示されていた五十七年度の要調整額はたしか二兆七千七百億であったと思います。大変大きな数字でございまして、五十七年度の予算においても六月にゼロシーリングを決め、そして何とか予算をつくっていただいたわけで、われわれもお手伝いをしてつくったわけでございますが、その経緯を見ておりますと、これはなかなか大変なことだなと思うのでございます。  そこでこのスケジュールについて、これは大蔵大臣に承りたいのでございますが、たまたま五十七年度の予算は、大変だということでもう六月にゼロシーリングというものを設定いたしまして、それに基づいて、とにかく二月かかって八月末に概算要求を仕上げたわけでございます。それと、いま申し上げたように今度は要調整額がもっと多いわけでございますし、一方においては、五十七年度はともかく、五十八年度においては所得税は減税すべきでないかというような声まで出てきておりますし、大変な事態だと思うのでございます。そういう点からいけば、少なくとも昨年と同じようにもう六月ごろからある程度の方針を打ち出していかなければ予算編成は非常に大変だと思いますが、その辺についてのスケジュールに対する考え方、これを大蔵大臣から承りたいと思います。
  48. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まだスケジュールは決まっておりません。予算が成立をした後で去年の経過等も顧み、去年一遍やっているから今度はなれたという点もございますから、臨調答申の問題もあるし、そういうふうないろいろなことを踏まえて決めていきたい。しかし、いずれにせよ例年よりは早く要求額を示す必要があるだろう、そう思っております。
  49. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いまたまたま大蔵大臣から御発言がありました臨調の答申もあるということでございますが、そこで行管長官に承りたいのでございますけれども、四部会に分かれ、それをもとにまた特別委員会もつくって第二臨調では相当積極的に作業を進めていただいておると承っておりますが、いまのように、スケジュールはまだこれからでございますが、しかし私は、少なくとも昨年より遅い。ベースでやれるということではない、こう思うわけでございます。その辺、臨調の答申というものは、ある程度、五十八年度の予算編成、特に概算要求の前の事態において、概算要求をつくる上において十分生かされるような、ある程度歳出削減、ある程度といいますか、相当の歳出削減を期待できるような臨調の答申がなされるという期待で行管長官はおられますのかどうか、その辺を承らせていただきたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 増税なき財政再建というこの鉄則はあくまで貫かなければならぬと思っております。それから、この六、七月に出ます答申はいわゆる第三次答申と言っておりますが、基本事項にわたる問題が多いと思います。それが直接財政にどの程度関係してくるか、審議の最中でございますから、いまここで申し上げる段階にまだ至っておりません。  しかし、いずれにせよ諸般の情勢を考えてみますと、五十八年度予算編成をめぐる環境は、昨年よりもさらに一段と厳しくなりつつあるように思います。その中で増税なき財政再建を貫いていくと言う以上は、昨年以上の覚悟を持って勇断をふるったやり方でなければ健全な予算編成はできないのではないか。そういう情勢臨時行政調査会は恐らくひしひしと身に感じていると思います。  しかし、現実の予算編成問題に臨時行政調査会がどの程度関与すべきものであるかどうか、これはいろいろな情勢を見て慎重に考えなければならぬ問題で、予算編成権自体は政府にあり、かつそれを補佐してやるのは自由民主党でございますから、これはどちらかといえば行政事務の普通にやる仕事であって、どの内閣でもどの時代においてもやらなければならぬ仕事でありますが、臨時行政調査会でやる仕事は二年という時期を定められて、そして思い切った新しい行政制度をつくれという、また、より長期的な観点に立った使命が託されておるわけで、目前のカレントビジネスに当たるような仕事に臨時行政調査会がどの程度関与していいかどうか、これまた慎重に考えるべきところであると思っております。しかし、やはり財政再建ということも行政改革に関連してくることでありまして、恐らく行政改革を抜きにして財政再建はできない、そうとも考えられております。  ともかく申し上げられることは、内外の環境は昨年よりさらに厳しい窮迫した情勢になりつつあるのであって、その点についてはわれわれもまた国民の皆さんも一緒に事情をよく勉強し合い、相談し合って、そして思い切った措置を講じなければ乗り切れないだろう、そういうように考えております。
  51. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 確かに今度の場合には特に基本的な問題が中心で相当議論なされておりますので、なかなかむずかしいかと思いますが、しかし臨調の第一次答申は明らかに五十七年度の予算編成を配慮していただいて、補助金整理についての答申をいただいたわけでございまして、たとえばいま基本的な問題の中で行政機構の見直しであるとか行政制度のあり方の問題であるとかいろいろ議論がなされておるわけでございます。その中でやはり歳出削減につながるようなものは、あるならば、やはり第一次答申のときに御協力をいただいたように、今回基本的な答申であるけれども、なるべく早くそういうものがあるならばできるだけ出していただく方が、私ども政府・自民党が予算編成を進めていく上において、夏は概算要求でございますが、大変プラスではないかと私は思うのでございます。  そういう意味においてはどこまでそういう権限があるのかは私はよくわかりませんが、活用でき得るようなものがあるならばなるべく出していただくということはお願いをすべきだと思うのでございますけれども、その辺に対する行管長官のお考え方を承っておきたいと思います。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 武藤委員は現在の内外の行政、財政の状態をよく知悉されておられて、それで恐らく来年度の概算要求、予算編成というものが非常に重大な局面に遭遇するであろうということを予感されて申されておるんだろうと思います。  私も事態は非常に重要な情勢にある、そう見ておりまして、それを乗り切っていくについては国民の皆さんの完全な御理解を得て、また各野党の皆さんともよくお話し合いをして、そしてみんなで手をつないで乗り切っていく以外に乗り切れないような情勢ではなかろうかと思っております。  そういうこともよく考えまして、いま御発言趣旨をよく私たちも勉強をして、臨時行政調査会と現実の行政との吻合、整合性あるいは臨時行政調査会の果たす今日的役割りというものもよく考えまして、慎重に検討していきたいと思っております。
  53. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いま御指摘あったように、私も本当に五十七年度よりも五十八年度の予算をつくるのは大変だろうという判断のもとにお願いをしておるわけでございますので、できる限りひとつ臨調の方も御協力いただけるようにぜひお願い申し上げたいと思います。  そこで、いまも増税なき財政再建というお話がございましたが、一体増税なき財政再建、ことしもある程度は増税をやったわけでございますが、それはいまの税制の仕組みの範囲内でやったわけでございます。ことしやれなかったものに、たとえば退職給与引当金の繰り入れ率を引き下げるような問題はできなかったわけでございますが、あるいはその他いろいろとやろうと思ってもできなかったことは今度はございます。五十八年度においてはやはり同じような考え方でいけるのかどうか。少なくとも三千億くらいならいいんだという判断では私は非常にむずかしいんじゃなかろうか。それこそ、やっぱり去年やりましたような一兆円とかあるいはもっと多くの収入見積もりをどっかから持ってこないことには予算編成は実質的にはできないんじゃないかなと思うのでございます。  片っ方は、この間の総理府の世論調査の結果を見るというと、七十数%が重税感を持っておるという点からいけば、今後もっともっと所得税を減税しろというような声は大きくなってくると思います。しかし、現実には所得税の減税どころか、どこかから金を持ってこなければ予算も組めない、こういうような状態が私は出てくるのではなかろうかなという感じがするわけでございますが、一体この増税なき財政再建というものは、これはよく総理もおっしゃいます全く新しい、いわゆる一般消費税に匹敵するようなそういうものはしない、けれども、いまの税制の仕組みの中では、できるだけ知恵をしぼってより多くの税源を確保していくんだということでなければ、実際財政再建はできていかない、それこそ赤字国債を減らすわけにはいかないということになると私は思うので、その辺は増税なき財政再建というものは金額なのか、それとも金額はある程度大きくてもいまの税制の仕組みの中であれば相当税の増収を考えていいのか、いわゆるパーセンテージを変えるとかいうことでございますが、その辺は大蔵大臣はどうお考えになっておるのか、ちょっと承っておきたいと思います。
  54. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政再建というのは、終局的に言えばこれは財政を健全化するということです。そのためにまず第一に考えられることは、高度経済成長時代にできたいろいろな制度等の肥大化、あるいは現在の時代にはもうなくてもいいんじゃないかと思われるようなものなどについて、まず歳出面で徹底的な見直し、発想の転換をやって洗い直しをしていかなければならないということがまず大事です。そのために行革をやるわけですから。まずそれを成功させる。  その次は、やはり歳入の見直しということも当然に行われるべきであって、それは歳入のうち八割以上はどうしても租税に頼る、租税でやるというぐらいに最低しなければならないわけでございますから、歳入の見直しも行う。  要するに、歳入と歳出というものは裏表の関係にあって、どこに調和点を求めていくかというのはそのときどきの国民の選択にかかわる、こう思っておるわけであります。抽象的かもしれませんが、そういうことで御了解をいただきたいと存じます。
  55. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 文部大臣、結構でございます。済みません、時間がないので。  なかなかいまの時点でむずかしいかと思いますが、先ほど中曽根長官も御指摘がございましたけれども、五十八年度の予算編成は大変だと思うから、いまからやはりその辺のところは、それは余りそういうことを言うとまたいろいろとこれから物議を醸し出しますのであれでございますが、私は、増税なき財政再建ということは、やはりある程度現在の税制の仕組みの中で考えられるものはできるだけ考えて税収増を図らないとおぼつかない、不可能であるという判断に立っておりますので、その辺は大蔵大臣もわかっておると思いますけれども、十分やはり国会の場あたりでその辺は、逆に国民に対して大変だということをわかっていただくためには、こういうところでそういう議論が出た方がかえっていいんじゃなかろうか。何か増税なき財政再建というのは、税の増収というのはいわゆる全く自然増だけであって、仕組みの中でいろいろと税率その他を変えることまでしないというふうに判断をしていると、私は大変な間違いというか、国民が誤解をしてしまうおそれがあると思いますので、あえて申し上げたわけでございます。  時間もなくなりましたので、最後に、きょうアメリカへ江崎ミッションが出発をなされましたけれども、この対米経済摩擦と農業の問題について少し議論をしてみたいと思います。  河本長官、それから中曽根長官も結構でございます。
  56. 江藤隆美

    江藤委員長代理 河本長官と中曽根長官、結構でございます。
  57. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いま国際経済摩擦が起きておりますけれども、これは何も日本の産業が決して悪いわけではなくて、第二次オイルショック後の対応の仕方が日本はわりあいうまくいった。省エネその他の政策はうまくいった。もちろんいまのように国の財政は大変な赤字になりましたけれども、民間経済は非常にうまくいったわけでございまして、失業者も少なく、成長も順調、物価も安定、こういう状態に来ているわけでございますが、アメリカの場合はその対応が必ずしも的確でなかった。またアメリカ経済が、新しい商品とか技術の開発あるいは市場開拓とか生産性の向上とか、そういう面の努力がかつてのアメリカの非常に活気のあった時代と比べれば落ちてきた。こういうものが今日のこの経済摩擦につながっておると思うのでございまして、何も日本が決して悪いわけではないわけでございますが、しかし、現実に日米安保条約によって日本を守ってくれておるアメリカにおいて失業者が一千万人も突破しておるという状態を考えれば、できるだけ協力をしていかなければならないと思うのでございます。  そこで、最近も新聞を見ておりますと、アメリカとの間にいま問題になってきております半導体の輸出などについても、通産省はいち早く、できるだけ輸出についてはいわゆるオーダリーマーケティングと申しますか、うまくやってくれよと、こういう御指導をなさりておられると聞いておりますが、私は大変いいことだと思うのでございます。去年の自動車のような騒ぎになる前に日本の中でひとつ業界をうまく指導していただいて、余り向こうから集中的輸出だと言われるようなことのないようにしていく必要があることが一つです。  もう一つは、通産省でお願いをしたいのは、やはり失業者を少しでもなくすという点からいけば、日本の企業ができる限りアメリカへ工場を進出をさせるということが大変必要ではないかなと思っておりまして、その辺の御指導をひとつ積極的にやっていかないといけないのではないか、こう思うのでございますが、その点について通産大臣の御意見を承りたいと思います。
  58. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま日米間においては非常に経済摩擦が急を告げておりまして、アメリカにおきましても議会で次から次へと相互主義法案が提案をされておる、こういう状況でありますし、また、わが国に対して市場の開放を迫って強い要請が出されておるわけでございます。われわれはもちろんアメリカ自体の経済の再活性化を念願をいたしておるわけですが、同時にまた、日本自体としても市場の開放のためにはできるだけの努力をしなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。しかし、あくまでもその基本は自由貿易体制を維持していくということでなければならぬわけであります。  半導体につきましては、いろいろと新聞等でも報道をされておるわけでありますが、アメリカからわが国に対して自主規制を求める、こういうふうな要求はまだ出ていないわけでありまして、私たちは半導体についても昨年の九月にMTNの最後の交渉妥結でお互いに四・二%という関税の引き下げを履行するということに決着をいたしました。そういう前向きの市場開放を進めながら、先ほど申し上げましたようなやはり自由貿易という枠の中で今後とも貿易の均衡拡大を図っていかなければならない、こういうふうに思っておるわけです。
  59. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 時間がなくなりましたが、御答弁がなかった工場進出についても極力ひとつ御指導をいただきたいと思います。お願いしておきます。  それから、あと一分しかないので、農林水産大臣、大変恐縮でございました。農業というものは自然的ないろいろの制約の中で行われていくものでございますし、そういう点では普通の産業とは違うことも確かでございます。また食糧の確保あるいは社会の安定、こういう点からいっても農業というのは大変重要なものであります。  ところが、どうもいま農業に対して風当たりが強い。しかし、アメリカにおいては要は失業者が多くなったからこういう声が出ているのであって、農産物をたとえ自由化したって失業者が減るわけではないわけでありまして、結局農産物を自由化したって、アメリカがそれじゃそれによってもう何も言わないかといえば、私はそうじゃないと思います。そういう点では、先ほど通産大臣にお願いしたようなことの方が私は大切だと思うのです。特に残存輸入制限品目についてはいままでの歴史的経緯がずっとあるわけでありまして、これを簡単に自由化するというわけになかなかいかないということは当然だと私は思います。  そこでひとつ、農林水産大臣もがんばっておられますからぜひがんばっていただきたいのでございますが、ただ一言、しかしいつまでもそのまま、現時点のままでいいというものではない。やはり残存輸入制限品目についても枠をある程度拡大していくということは、当然これから考えていかなければならないてとであろう。そうすれば、それに対処してやはり日本の農業の体質改善もやっていかなければならないことであろうというふうに思うわけでございまして、思い切って日本の農業の体質政善をそういう方向に合うような形に持っていくという点についての決意だけをひとつ表明をいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 対外経済摩擦の解消は、わが国にとって非常に重要な案件でございまして、したがいまして、武藤委員承知のように、昨年の暮れに経済対策閣僚会議で五項目にわたる対外経済対策を決定して、それをいま実施いたしているわけでございます。  特に関税の引き下げの前倒しあるいは非関税障壁の緩和等を進めてまいっているわけでございまして、この条件をできるだけアメリカあるいはECの方々に認識をしていただく、あるいはまた日本の農林水産の現状というものをこれまたよく認識をしていただくということは、これからの農林水産行政、特に残存輸入制限品目の扱いの上で非常に重要だと思いますので、機会あるごとに私たちはそれを進めてまいりたい、かように考えております。特に議員外交がこういう面では非常に重要だと思いますので、そういう点では自民党としても今回江崎使節団を派遣したということは、それなりに大きな成果だと私は思います。  そこで、残存輸入制限品目でございますけれども、これは農林水産業を営む方にとっては大変な不安と大きな関心を持っておるものでございますので、私は率直に言ってこの問題には手を染めたくない、こう考えておるのでございます。しかも、私は単にこの現状を維持するというのではなくして、いま武藤委員から御指摘のありましたように、これからの新しい農業をつくるために、いま農林水産業に携わっている方々にあるいはまた団体の方々にいろいろ無理なお願いをしているのでございます。その新しい農業を確立するためにも、私たちはある程度環境を整備してやるということが必要だと思いますので、そういう点を配慮しながら、私はこの残存輸入制限品目について慎重に対処してまいりたいと考えております。
  61. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 終わります。
  62. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田高敏君。
  63. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この予算委員会が開かれまして、かれこれ二十日間を経過するわけですが、政府が方針として打ち出しておりますGNP実質五・二%の成長を目指して、その達成のためには内需主導型で経済運営をやっていこう、こういう方針が打ち出されて、それをめぐっていろいろな角度から論議が展開されてきておるわけであります。わずか一カ月足らずの期間の中でございますから、そのことだけでどうこう申し上げるつもりはございませんが、少なくとも今日の時点におきましても、内需主導型による景気浮揚の条件というものはきわめて薄いのではないか、こういう感じがするわけでございます。  それにつきましても、アメリカを中心とする対外的な貿易関係の実績についても、予算審議が始まりました時点ではまだ九月までの実績しか出てなかったと思いますが、かれこれ十月−十二月に向けての貿易輸出の実績も出てきたのではないか。このあたりの事情について、対前年度比を中心とする現状をまず御報告願いたいと思います。
  64. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 貿易につきましては、昨年の暮れから輸出が鈍化をしてまいっておるわけでありまして、この鈍化の情勢というものは依然として続いております。一月になりましてまた円安が加速をされたということで多少の持ち直しはあったようにも見受けられるわけですが、全体的には輸出入について鈍化の方向が続いておるということは、はっきり数字として出てきておるわけでございます。
  65. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 きわめて大綱的な報告があったわけでありますが、私どもの調査の範囲では、アメリカを除きます他の諸国との貿易実績においてはほとんどマイナスである。対アメリカとの関係においても少し漸減の傾向にあって、このままの状態でいけば、今日までいろいろ論議されてまいりましたような日米間の貿易摩擦等々の関係を含めて、対米貿易の傾向についても昨年と比較いたしますなれば減少の傾向に入っていくのじゃなかろうか、こういう見通しを含めて現状把握をしておるわけですが、その見方については変わりはございませんか。
  66. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま円安という状況にはありますけれども、やはり全体的に世界の経済が落ち込んでおる、こういうこともあるのじゃないかと思いますが、輸出の方も、いまお話しのように鈍化の情勢が続いておる。特に、いまお話しのように、アメリカと中近東だけは鈍化の中でも多少のまだ伸びがあるわけでありますけれども、その他の地域については軒並みに減少しているというのが実態で、輸出の形としては、対米摩擦という状況にいまありますが、そういう中では非常に悪い形になっておるのじゃないかというふうな判断をいたしております。
  67. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そういう現状であればあるだけに、これはなかなかむずかしいことですけれども、内需主導型の景気振興策を強めてまいらなければなるまい、経済企画庁長官初め通産大臣においても、その事実認識においては変わりがないのかどうか、この点を確認の意味においてただしておきたいと思います。
  68. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 お話しのように、やはりこれからの日本経済の運営で、内需振興ということを最重点にしてかかっていかなければならないと考えております。
  69. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私も同意見であります。
  70. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 先日の閣議が終わった後の記者会見におきまして、河本企画庁長官と通産大臣の現状認識については、若干のずれがあるようにも判断をするわけでありますが、このことは時間の関係もございますから、一応ネグることにいたします。正式な答弁としては、いまおっしゃったような認識においては大方一致をしておる、こういうことでございますから、その前提に立って質問を続けます。  それであればあるだけに、先ほど武藤委員の方から質問がありましたように、内需主導の景気振興策をとっていくということになれば、おのずから、そうではあるけれども、そのフリーハンドの枠というものが狭い。しかし、その有力な手段として公共事業の先食いといいますか前倒しですね、上半期に八割の前倒しをやる、こういうことが経企庁長官からも景気対策上絶対必要条件だということでございます。大蔵大臣もそのことについては、ただいま賛成だということでありますが、この前倒しによってそれでは大体GNPに対する影響度というものはどの程度出てくるというふうに見通しを立てられておるか、お尋ねをいたしたいと思うのです。
  71. 井川博

    ○井川政府委員 特にまだ上期の目標を幾らにするかという数値につきましては、現在政府部内で検討中でございまして、数値が決まっているわけでもございません。したがいまして、いま先生がおっしゃったように、そのことによって経済上どのくらいか、計数的には計算をいたしておりません。しかしながら、公共事業というのがこういうかっこうになりますと、限界的に非常に大きい意味を持ってまいるわけでございます。経済全体の回復基調が非常に鈍いときに公共事業が、特に地域的に景気が非常に低迷している地域で公共事業のウエートが多いわけでございますから、それが前倒しをすることによって非常に大きい効果があるであろうというふうなことを考えておるわけですが、計数的にはじいているわけではございません。
  72. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 どの程度の影響が出るかについてはいまの答弁のようでございますから、そのこと自身について議論を深めるつもりはございません。  ただ、問題は、八割まで前倒しをいたしますと、五十七年度の予算案の中に盛られておる公共事業の枠が、かれこれ六兆六千五百億程度と見ておりますが、そういたしますと、下期にはわずか一兆三千億程度しか残らない。これはきわめてアバウトな計算でありますが、その程度しか残らないということになりますと、やはり年度を通して考えます場合に、年度後半においては、これは何らかの形で公共事業の追加ということになりまして、いわば予算との関係で言えば補正予算を組まざるを得ない、こういうことにもなると思うわけでありますが、そういうことをも覚悟の上でこの八〇%の先食い、前倒しというものを考えているのかどうか、この点お尋ねをいたしたいと思います。
  73. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 前倒しをするということは決まっておりますが、これを幾ら前倒しをするか、そして同時に、その執行方法を具体的にどう進めるかということ等につきましては、目下関係省庁で調整中でございます。
  74. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 公式な答弁ではそういうことでありますが、報道機関の報ずるところによれば、大きな活字で「八割前倒し」、しかも、このことに対して財政当局である大蔵は、五十三年度程度の七〇%程度にしてもらわなければ、私がいま指摘をしておるようなことにもなるのではないかというようなことを報道いたしております。  私は、この報道は正しいと思うわけでありますが、やはり問題は、こういう方針を打ち出す以上、少なくとも、時期的な具体的な処方はありましょうけれども、七割にするのか八割にするのかという程度のことを考えないでこういうことを打ち出すことはないと思うわけですね。私は、このこと自身は全面的に悪いと言っているわけじゃないのですよ。やはり一つの有力な手段として公共事業の前倒しは必要だと私も思っておるのです。思っておりますが、いま言ったように、八割程度の目標だったら目標というものを設定しなければ、これは計画にならぬのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  75. 井川博

    ○井川政府委員 そこを現在まさに折衝中というところでございます。われわれの間でまだ数字が決まるというところまではいっておりません。ただ、今年度、先生御承知のように七〇・五という目標を立てましたけれども、今年度以上にしなければならない、しかも、景気の現状を考えれば相当、できる程度がんばっていこう、こういうつもりでは関係各省の間で意見が一致しておりますが、いろいろな計数がございますので、えい、やっという前に、具体的に個々に詰めていかなければならぬという問題もございます。そういう意味で、まさにその計数自体については作業中というところでございます。
  76. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 財政的な見地から言えば、政府がこの国会に提案いたしております新中期計画、新中期展望、これは六十年までの計画が出ておりますが、これによりますと、五十七年度を含めて建設公債というのは六兆五千二百億程度で、ずっと六十年までは横ばいだ。建設国債もふやさないのだ、そういうたてまえでこの計画が立てられておりますね。しかし、いまのような形で前倒しをやりますと、これは結果的には私は、六兆五千億程度の建設国債の発行高というものには手を加えざるを得なくなる、そういう手を加えてでもい今日の現状から言えば、内需主導型の景気振興策をとるためにはそういうこともやむを得ないのだ、こういうことに政策上の論理としてはなってくると思うのですが、その認識については変わりありませんか。
  77. 松下康雄

    ○松下政府委員 御指摘のございました財政の中期展望でございますが、これは将来にわたる財政上の政策方針というものを何らかあらかじめお示しをするという内容のものではございませんで、五十七年度の成立しました予算をもとにしまして、単純機械的に将来を見通せば財政需要はこのように一応想定されるというものでございますので、建設公債の発行額にいたしましても、本来はその年その年の経済事情あるいは起債の状況等、国債費の負担等総合勘案して一つ一つ決めてまいるべきものでございます。これで固定をしているという性格のものではございません。ただ、来年度につきましては、まだ来年度予算そのものをこうやって国会で御審議をいただいているところでございますから、この内容に影響を及ぼすような内容の検討はいたしておりません。
  78. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大蔵当局、財政当局から出された試算というものがあの程度のものである、私は、このこと自身についてきょうは議論する時間的余裕は持っておりません。問題は、そういう弾力的な運用をしなければ今日の現状というものを打開することができないという認識については、私は一致できると思うのです。その点では大蔵大臣どうでしょうか、私はそういうふうに思うのですが、そういう認識で間違いないでしょうか。
  79. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 経済は生き物、私がいつも言っているように生き物でございます。財政再建はしなければなりません。そのレールは敷かれています。しかし、上り坂も下り坂もあります。したがって、そういうものは世界の経済情勢、国内事情、いろいろなものに合わして、その時期時期において一番いい方法を選んでいくということが政治じゃないか、そう思っております。
  80. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 きわめて抽象的でありますけれども、いまの答弁のニュアンスからいけば、公共事業の前倒しについて財政当局も賛成だ、こういう立場をとる限りにおいては建設国債の増発というようなこともあり得るかもわからない。経済は生き物だ、そういうニュアンスの中には、私はそういう政治的な意味も含まれておると解釈をするわけであります。  そういう私の認識において大方間違いがなければ、これから先は御相談ですけれども、どうでしょうか、景気浮揚のために公共事業の前倒しをやる。その大幅な前倒しをやるということになれば、行き着くところは建設国債の増発ということにも事と次第では発展するかもわからない。しかし、そのことによって税収がふえるということになってくれば、これは財政再建にも寄与するわけですから、それは私は必ずしもまずいものではないだろう、こう考えるわけであります。  そこで、私の問いただしたいことは、そういう一応の財政計画があっても、景気浮揚のために建設国債の増発があるというのであれば、物の考え方として、今日国民から国政に向けて非常に大きい要求として高まっておりますのは、言うまでもなく所得税の減税の問題であります。私はそういう立場から、片やいま公共事業の前倒しによって起こり得る建設国債の増発ということがもし許されるというのであれば、減税についてもそういう弾力的な考え方を持つことができるのではないか、こう思うわけでありますが、どうでしょうか。
  81. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、いま建設国債を増発するというようなことを言っておりません。中長期的に見てそういうものは処置するべき問題だ、そういう意味で、あるときは国債を繰り上げ償還することもあるでしょうし、どうしてもそれ以外にないというときには、いつも固定的なことでないように、ふえることもあるいはあるかもしれない。しかし、当面は考えておりませんよ、当面は。中長期的に見て私はそういうことを言っているわけです。
  82. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 公債の繰り上げ償還なんというととは、昨日からも時折大臣が口にされておりますが、今日の財政事情の中では余りそのことは強調されぬ方がいいのではないでしょうか、そういう条件はないわけですからね。余りそういう一般論は言われない方が、財政通として一応評価されておる大蔵大臣のためにも、私はその方がいいと思いますね。私はそう思います。これは私の見解ですから。できるだけそういう意味では現実的な問題にしぼって、お互い政治家としての議論を発展させたいものだと思っております。  そこで、私が減税の問題に触れましたのは、七割、八割の公共事業の前倒しをやればそういうことになっていかざるを得ないだろう。これは時間的な経過も必要でございましょうが、私はそのように判断をするわけであります。したがって、そちらにそういう財源を使うのであれば、国民のこれだけ要求する減税に政府は耳を傾けないわけにはいかないのではないかということを強く要望しておきます。  そこで、ちょっと論点を変えたいと思うわけでありますが、この減税の問題につきましては各党ともいろいろな立場から議論が展開されましたが、なかんずく私ども社会党の武藤山治議員が代表質問の中で集約的に触れましたのは、鈴木総理に対して減税問題で、「この国会で与野党が一致すれば一兆円減税に踏み切っていいということもあり得るという意味なのか。その条件とは、与野党の一致ということを条件という意味で言っているのか、」こういう質問を去る二月一日、議事録で言いますと代表質問の十二ページにこういう質問をいたしております。これに対して総理は、「なお、その他私どもが納得できるような、自由民主党としてもなるほどこれなら財源として適当なものであるというようなものがあれば、これは私はいまの減税等について検討してよろしい、」こういう答弁をされておるわけであります。重ねて申し上げるまでもないと思いますが、いま私が議事録を読み上げましたように、与野党間で大方一致できるような身がわり財源、減税のための身がわり財源があれば総理としても減税することにやぶさかでない、こういう御答弁をなさっておるわけであります。  私は、ここで財政当局並びに官房長官にお尋ねをいたしたいわけでありますが、そういうことであれば、これは何らか与野党間で協議、話し合いをする場をつくらなければならぬ。そこで不公平税制の是正でいくのか、あるいはその内容はともかくとして、減税の身がわり財源にこういうものであればいけるんじゃなかろうかという相談のできる場を持つべきだと思うのですが、そのことについては大蔵当局なり財政当局なりあるいは官房長官としてはどのようにお考えになっておるでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御引用になりました速記録は私もここに持ってまいりましたが、総理大臣がこの委員会において何度かこの問題についてお答えを申し上げておりまして、表現はそのときどきで少しずつ違っておりますけれども、基本的な御答弁のラインは、第一に、五十七年度においてはこれは余裕がございませんのでお許しをいただきたいということ。第二に、ただ、所得税のいまの課税最低限あるいは税率構造、これを長いこと固定することは適当でないので、歳出歳入面で徹底的に見直しをする、それから五十九年度に特例公債脱却の明白なめどをつけたいということ、そして所得税減税の財源の手当てが可能となる条件を国民的合意のもとにできる限り早く整えたい、こういうこと、これが基本のラインでございます。  それで、ただいま御指摘武藤委員との質疑応答、確かに武藤委員がそういうお尋ねをなさいまして、総理大臣は、「五十七年度予算に関する限りは、」「先ほど大蔵大臣も申し上げたように、一兆円の減税をするような財源というものは、なかなかそれは困難である、このように私どもは考えております。」と申し上げた後、ただいまお話しのように、自由民主党としてもなるほどというような財源として適当なものがあれば、これは検討してよろしいと思いますが、なかなかこの点もむずかしい、それから五十九年のめど云々、こういうことでございまして、どうも先ほど申し上げました基本のラインについてお答えを申し上げているというふうに私には読めますけれども、いま藤田委員のお話は、しかし与野党でいろいろ相談をするということは、これは何も政府として反対することはないのだろう。それは国会でなさいますことでございますから、藤田委員の言われましたその点は国会のなさいますことでございますので、私どもはかれこれ申し上げることではございません。ただ、総理大臣のたびたび御答弁を申し上げました基本的な考え方は、先ほど申し上げましたとおりと存じます。
  84. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 なかなか政治的に読みづらいですね。よく言えば、含蓄のある知謀名将というのか、官房長官らしい御答弁でございまして、そうかといって、いままでの答弁に比べますと、率直に言って歯切れが悪い。歯切れが悪いところに一つ私がいま質問したことに対する悩みといいますか、そういうものがあると思う。私は、現実の問題としてなるほど財政再建という大きな課題を抱えておるわけですから、今日の財政の現状というものはあらゆる角度から指摘しておるような事情ですから、右から左に減税などということはできる条件でない、そういうむずかしい条件にあることをみんなが認識しながらも、さて国民の要求というものは非常に強い。これはいまだかってないような、所得減税に対する要求というものは強い。この要求は何らかの形で、できるものならばこなさなければならぬのじゃないかというのは政府の政治責任でもありますし、また、野党といえどもどもの政治の責任だと思うわけです。  そういう苦悩の中から出てまいりましたこの質問あるいは総理の答弁というものは、集約いたしますところ、私が先ほど読み上げましたように、与野党間で協議をして、そうして、この身がわり財源になるような共通の認識が得られるなれば、一兆円減税について検討してもよろしいという答弁を総理がなさっておるわけですよ。これは議事録の中にちゃんと出ておるわけですから、この答弁の事実だけは否定することはできない。  そういうことになりますと、いま官房長官が、そういうお話し合いをするのは、与野党間でやられるのは、国会でやるのは自由だ、こうおっしゃるわけですが、政府・自民党の総裁であり総理が、国会を通じてこういう答弁をなさっておる以上、単に政府の意思を離れて与野党間だけで話し合いをするという筋合いのものではなかろう。これはやはり政府もこの答弁については政治的な責任を持たなければならぬ。したがって、これは政府の意思を含めて与野党間でお話を願えるなれば政府としても考えましょう、こういうことでなければ、私は何のために議論をしたのかわからない、こう思うわけであります。そういう意味について、いま私が質問しておることについて、いま一度の答弁を煩わしたい。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣といたしましては、政府としての所信を先ほどのように何度か申し上げておるわけでございますが、その上で、さて国会のお立場で与野党でいろいろ相談をする、それでいい考えが出たときにどうか云々、こういうことでございますので、政府の所信は政府の所信でございますが、国会でそういうお考え云々というときに、これは行政府の長としては遠慮を申し上げながらお答えをしておるのだというふうに考えております。
  86. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 それでは、ひとつ論を進めますが、与野党間で話し合いの場をつくるということになれば、政府も積極的に、これは当然のことですが、協力しますか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 与野党間で合意があるということは国会の御意思ということになりますから、そうなりますれば、政府はもとよりそれを尊重いたします。
  88. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 まあ私の質問の趣旨に半ば沿ったような御答弁だったと思うのです。  いま一つ確認をしたいのですが、総理の答弁から出ておることですから、結果は、いろいろ相談をしてみたけれどもやはりうまい財源が見つからなかったという場合もあるわけですね。しかし、よく相談してみると、この限度内では一兆円減税はできるんじゃなかろうかという合意に達するかもわからないですね。問題は、いまそういう話し合いの場をどうしてつくるかということが、私は、総理答弁からきわめて大事な政治的な課題になっておると思う。ですから、総理が本当に責任をお持ちになるということであれば、むしろ政府の方から、これだけ国民の一兆円減税に対する要求も強いことだから、与野党の皆さんで御相談の場をつくられるべきではないでしょうかと、そういう提言をされることが事の順序じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこが総理がいろいろ御遠慮申し上げて御答弁を申し上げておるところだと思いますので、政府といたしましては五十七年度についてそういうことはできない、なかなか困難であると本来考えておる、これは何度も総理大臣が申し上げておるところでございます。
  90. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そうしますと、もう一度お尋ねをしますが、与野党間でこの総理答弁に関連をして話し合いの場をつくる、一兆円減税に向けての結論はどうなるかはともかくとして、そういう話し合いの場をつくるということになれば、こういう答弁をなさってきておる経緯から見ても、政府としても積極的にその相談には乗っかっていく、こういうお考えはありますか。これは当然なければならぬと思いますが、どうでしょうか。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私がお答え申し上げるのに少し分を越えておるかもしれないと思いますけれども国会の与野党においていろいろ御相談がある、その場合に政府として必要な資料あるいはいろいろ関連事項等々を提供せよ、あるいはそれにお答えせよということであれば、これは誠実にお答えをいたさなければならないと思います。
  92. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そういった資料の提供とかなんとかという次元の問題じゃないと思うのですよ。いま私が申し上げておるのは、ある意味ではきわめて高度な政治的な問題をどうこなすかという、そういう次元の相談を、あるいは質問をしておるわけですね。ですから、この議事録で言えば十二ページで答弁をされておるような趣旨に沿って、これは当然政府も一兆円減税の問題について相談の場をつくるべきじゃないか、与野党間でそういう協議の場が持てればむしろ政府も積極的に乗り出してきて、そして一兆円減税が可能であるかどうかについてその財源探しを含めて協議に加わる、こういう意味のことをお尋ねしておるわけですから、そういう決意があるかどうか、これをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。  もし官房長官、分に過ぎるということであれば、私は保留しまして、総理から直接御答弁を聞く機会を持ちたいと思いますが、どうでしょうか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私といたしましては、この委員会における御質疑お答えをするという形で政府考え方を申し上げてきたつもりでございますし、この問題についてのいわば与野党の御審議にそういう意味で参画をさせていただいておる、こう考えておるわけでございますが、なおまた、さらにその上で与野党でいろいろ御相談をなさるということでございますれば、必要な意見を申せ、あるいは必要な資料等々を提供せよ、これはもとより国会の御審議に対して最大限の御協力をいたすべきもの、こう考えております。
  94. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 資料のみならず、与野党間でそういう場をつくるということであれば、積極的に政府としてもその協議に参画をしたい、こういうことでございますので、その限りにおいて私は一応了とします。ただ、総理発言ですから、この問題については総理から改めて御答弁を求める機会だけは留保しておきたいと思います。  少しくこの問題で時間をとりましたが、二つ目の問題は財政再建にかかわる問題であります。  これは昨日阿部議員の方から、六十年以降の財政再建問題について、なかんずく赤字国債の現金償還問題を中心に質問をいたしましたが、私は、財政再建に関する限りは、前段後半というふうに分けますと、いわゆる昭和五十九年までの財政再建期間が一つ、六十年以降、いわゆる赤字国債の現金償還が始まる以降の財政再建問題、こういうふうに二つに分かれると思うのです。きょうは余り数字的な細かい議論はしょうと思いませんけれども、基本的な認識の問題としてはどうでしょうか。五十九年までの財政再建も非常にむずかしいけれども、六十年以降の財政再建の方がなおむずかしい、私はこういう認識でこの予算委員会でも財政問題にかかわってきたのですが、この認識についてはどのように考えられましょうか、大蔵大臣。
  95. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 六十年以降本格的な償還期に入るわけですから、そういう意味で、そのときの経済情勢がどうなっているか、これらの問題もやはり裏表の問題でございます。しかしながら、安定成長が続いていくという状況でございますと、いろいろむずかしい問題がたくさんあることは事実で、仰せのとおりであります。
  96. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 昨日も同僚の阿部議員から、熱烈たる財政再建に向けての私ども社会党の考え方を強調したわけでありますが、私は集約して申し上げると、六十年以降、政府国民に約束いたしておりますように、赤字公債の償還を現金でやるのだ、その時点が来て財源がないから赤字国債償還のためにまた赤字国債を発行するという赤字公債の借りかえはやらないのだ、これはもう何回も法律案で出してきておるわけですから、これはやらないのだ、この点は後で答えてもらいたいのですが、やらないのかどうか。そういうことでいきますと、財政法四条が求めておる現金償還を中心とする償還計画を出せ、出さなければならない、これは法律上の義務規定だ、出しましょう、こうなりますと、これは事実問題として六十年以降の予算が組めないということになるのじゃないか。六十年以降の予算を組むとすれば、いわゆる財政法が求めている厳格な意味における償還計画というものは立てません、出せません。ですから、右を立てれば左が立たず、左を立てれば右が立たず、こういう状態になってきておるので、そういう状態だから財政法が求める償還計画を出すわけにはいかないのです、このように私は認識せざるを得ないのですが、そういうことでよろしいでしょうか。私はそういう状態だと思うのですよ。どうですか。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まず第一は、経済見通しが立たない。六十年、六十一年、六十二年とかいうところですね。これは、一年の経済見通しさえもなかなか正確なものが見込めないというきわめて激動的な世界情勢。したがって、そういう状態の中で財政収入、収入についても、現在の税法どおりとしてもこれはGNPの伸び率その他はっきりしたものはわからぬわけですから、したがって、正確な計画というようなものは、そういう点からいってできませんということをまず申し上げているわけでございます。片っ方を立てれば片っ方が立たないというところまでまだいかない。見通しそのものが立たないということを率直に申し上げているわけでございます。
  98. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そういうことであれば、財政法四条が求めておる償還計画というものは、そういう意味においてはできない、こういうことですね。これは財政法違反と言われようと何と言われようとできません、そういうことだと思いますか、どうでしょうか。
  99. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これもかねて毎回議論のあるところでございますが、財政法に言うところの償還計画というものは、したがって、そういうものまで全部はっきりさせた上での計画というように読ませるという規定ではないんじゃないか、もっと現実的な実行可能の範囲の中における計画、したがって、いわゆる何年度になればどれくらいの償還するものが出てきます、それに対するいままでの運用利息等の財源もこういうものもありますとか、その程度のものというように従来解釈をされてきたわけでございます。その解釈が甘過ぎる、どうのこうのという議論は、それは最初からあったわけでございますから、その議論議論として、政府としては財政計画の中身というものはすでに国会に提出をさせていただいておる程度のもので足りるというように解釈をしておるわけでございます。
  100. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、その点では全くごまかしだと思いますね。財政法が戦後こういう厳格な、公債発行それ自体を禁止する、これはもう建設国債それ自体を禁止しておるのですよ。いわんや赤字国債の発行なんというのは。そのためにこそ、特例公債として特別な法律を出してやらなければいかぬという、そういう歴史的な法律上の経過があることを、いま大臣が面をかぶって答弁をされておるようなそんなものではないという、これだけは国会の意思としてきちっと厳格に確かめておかなければいかぬと思うのですよ。そんな便法主義で、その場逃れの解釈をするなんということは、これは大蔵大臣として、財政の責任者としては私は許されないと思います。  やはり財政法の求めるものは、憲法の第九条に匹敵するくらい、これは非常に厳格なものである、この認識だけはきちっと押さえて、いまのあなたの言葉からいけば、実行可能な範囲ということであれば、赤字国債を発行するときに実行可能な、返済計画の可能な範囲で発行しなければいかぬということになるのじゃないですか。そうでしょう。実行可能でない、償還計画も立て得ないような巨額な赤字国債を出したこと自体が財政法違反じゃないか、こういうことになるのですが、どうですか。
  101. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、法律論争はわかりませんが……(「逃げるな、逃げるな」と呼ぶ者あり)いえいえ、逃げるわけではない。わかりませんけれども、現実の問題として、数年先まで見越して財政の収入支出がはっきりわかって、そして、どういうような余剰が起きるかどうかというものまで、数字にあらわしたものを書けと言われても、責任を持ってきちっと間違わないものを書けるというようには思いませんということを申し上げている。そういう意味で、正確な償還計画というものは、それは理想ではあるが、現実の問題としてつくることはできないということを申し上げているのです。実務屋さんの方からもう少し詳しく説明させます。
  102. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 いや、いいです。この問題は、渡辺大蔵大臣あるいは鈴木総理自身を私どもは責めるつもりはないのですよ。これは四十年、福田さんのときですか、一番最初国債を発行しまして、こういう無責任な財政計画がずっときて、いま十何年間の累積の後始末をやるなにですから、その点では、ある意味で私は同情しておるのです。同情はしておるのだけれども、これはやはり歴代の自民党政権ですから、そういう意味では、今日の政権には自民党政府としての責仕がある。  ですから、もうこれ以上巻き返し繰り返し同じことを言っても始まりませんから、私もやめます。しかし、はっきりしておきたいことは、財政法が求めておる償還計画は出せない。余りにも巨額な国債発行をやったために、財政法が求めておる償還計画というものは現実の問題として出せません、このことだけははっきりしておきたいと思うのです。それはいいですね。
  103. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政法が求めている償還計画というものは出しております。だから、財政法が、そういう先々まで、実際に計画を立てられないところまでの計画を出せというようには解釈しておらないというのが従来の解釈の仕方であります。  ただ、問題は、藤田委員指摘をするように、国債が安易に発行されたじゃないか、それは本当に反省しなければいかぬ。どうしても、要求を抑えるよりも国債発行という手段の方がやりやすい。あるいは、どうしても、要求が多いならばそれに対して増税するのはあたりまえなわけですから、その増税はこれまた抵抗が強いということのために、国債発行を一遍やってみたら抵抗が少なかったので、ややもすれば安易に流れたきらいがないとは申し上げない、私はそう言っておるわけでございます。
  104. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この点については、時間の関係がありますから、私もこれでやめますが、私ども社会党としては、財政法違反の国債発行をやっておる、特に赤字公債の償還計画については全くごまかしであって、これまた財政法違反の、償還計画らしきものを出して——らしきものまでいかぬと思いますが、そういう見せかけの償還計画らしきものでごまかそうとしておる、このことだけは厳格に申し上げておきたいと思います。  本来なれば、こういう状態の中で、それでは真の財政再建というのは、五十九年までの問題ではなくて、赤字公債を償還してしまうまでの、わけても六十五年の赤字公債償還のピーク時までの財政再建の見通しを立てなければ、財政再建の見通しがついたということは言えないと私は思うわけですね。  これはなかなかきょうの答弁ではできないかとも思うのですが、少なくとも今後、増税によってやっていくのか、あるいはインフレ政策をとってやっていくのか、あるいはその前段として、行革による歳出削減なり不公平税制の是正というようなことは当然やらなければいけないわけですが、いずれにしても、政府は、この段階において、中期的な見通しに立った財政再建をやるためにはどういう組み合わせの財政上の政策をとらざるを得ないかということだけは、この国会で出すことができなければ、最も近い機会にそういうものを国民の前に明らかにすべきだと思うのですが、その点はどうでしょうか。私も二、三考え方を持っておりますが、きょうはもうこれ以上触れません。触れませんが、そういうものは少なくとも国民の前に提示をすべきじゃないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  105. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 数年先までも数字をもって示すことは、私はむずかしいと思います。いま言ったようにインフレ政策をとるのか、これは結果論からいうと、そういうことはできません。なぜならば、現在の年金でも人件費でも、インフレになればそれは自動的に上がる、ふえると思わなければならぬわけですから、そのときに、インフレになったから財政事情が必ずしもよくなるとは限りません。現在の借財については身軽になるかもしらぬけれども、そのとき財政事情が悪ければもっと大きな借財ができるということになるわけですから、インフレ政策は決して有利なものではない、きわめて不利なものであるというふうに私は思っております。  第二番目は、歳出の削減、これは行政改革等を通じて徹底的な削減対策をしていかなければならぬ、そう思います。  それからもう一つは、増税と言う前に、経済の維持発展という点から、民間経済に活力を与えつつ、まず自然増収の拡大を図るということも大切であります。しかし、その上においてもなおかつ歳入に不足が生ずるという場合には、何らかの国民負担というものは当然あると私は思っております。
  106. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 最後に答弁された何らかの形の国民負担というもの、これは増税コースだと思いますね。これは限定的にきょうはそこまで詰めようとは思いませんが、少なくとも、いま大蔵大臣の答弁にありましたような政府の方針というものを、きちっと数字でどんぴしゃり出すことはむずかしいと思うのですけれども国民の前に、中長期的な観点に立った財政再建の方策を示すことを強く要望しておきたいと思います。  時間の関係もございますので、所得税関係の問題で、社会党が昨年の暮れに、物価調整減税制度という法案の提出をいたしておりますが、これはもう簡単に申し上げるのですけれども、今日、一兆円減税の問題がこれだけやかましく言われてきておりますのも、年度年度の段階で、インフレ、物価上昇によって実質所得が目減りをするという事態が起これば、それはその年そのときによって調整をする、これは減税ではなくて、憲法八十四条の租税法定主義の精神からいってもそういう措置を講ずるべきであろうと私は思うわけであります。今日、世界の趨勢は、全部が全部とは言えないにしても、先進国あるいは開発途上国においてさえ、所得税の物価調整制度というものは世界の常識になりつつあります。いわんや、わが国の所得税制のように、収入が一%上がれば税率が二ないし二・五%上がるというような累進課税の体系をとっておるところでは、ことさらこの物価調整制度というものが必要ではないかと私は思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  107. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 お答えいたします。  技術的な面を中心に御説明したいと思いますが、諸外国でやっておりますのは、英国、フランス、カナダ等、われわれの計算では十六カ国ほどやっております。私もこのインデクセーション関係——このインデクセーションというのは、物価が上がったときにそれにスライドして所得税の諸控除、完璧に言えば税率まで後で直すということを意味するわけです。そのための法案を出すということが義務づけられる、これがインデクセーションでございますが、OECDの租税委員会での議論にも私参加したことがございます。諸外国やっておりますけれども、英国の場合、一九八一年度、赤字財政がひどくなりましたので、これをとめております。それから、フランスは、財政ギャップが大きくなりましたので、付加価値税等の増税措置でそこを埋めるということをやったりしております。インフレはイギリス、フランスともに進行を続けたわけです。カナダもこれは導入したんですが、インフレが激しくなり、公債がふえるという結果を招いています。導入時点におきましては財政状況は各国比較的よかったということがございます。それとインフレが高いという状況下で導入したわけです。しかし、諸外国では財政が、歳出に対して歳入が大体八割というぐらいの水準を保っていますので、日本の場合はそれの開きが大きいのが先ほどの御指摘の公債の問題です。  そういう意味で、日本の場合、財政状況が悪いということと、インフレは比較的諸外国に比べていいという状況下でこの問題をどう取り組むかということであります。英国がそういうふうに財政収支が悪くなっていまとめておりますし、アメリカもこれを導入しようといたしておりますけれども、一九八五年以降ということで、財政の改善を見通した上でという姿勢をとっておるわけです。減税政策をとっておりますけれども、このインデクセーションは慎重な態度をとっておるということも御承知のことと思います。また、オーストラリアは八二年度から廃止を決定いたしております。西ドイツは、私も会議で聞いておりまして、非常に強硬に考え方を批判しておったわけです。インフレに対してはインフレを抑えるのが財政の使命であるということを言って、これについて頑としてこの考え方に従わないという態度をとったわけで、ドイツはしたがってインフレに対しては非常にいい成果を上げておる。  日本も同様であります。日本の場合の評価は、過去の高度成長下において相当の減税をやってきた、物価の上昇以上に課税最低限等の引き上げをやったということを計数的に説明したわけですが、その辺が、現在はそういう状況にない。過去において相当の緩和をやったということで、四十年度ごろは日本が一番低いところから、五十万以下のところから、五十万の線で課税を始めておったわけです。フランスよりも一番低いところから。それがいま逆転していますので、そういう問題がございます。  やはり所得税制にはインフレを抑制する自動調整機能がございますので、それはやはりインフレに対しては有効な作用を持ちます。また、税制の問題で申しますと、減価償却あたりはインフレに対してどういう対応をすべきかという問題もあるわけです。また、歳出面におきましては、先ほど大臣も申しましたように、福祉関係は物価にスライドする面が多いわけです。一方、歳入の方にこういうスライドが入りますと、歳出、歳入のギャップが拡大するという問題が最大の問題でございます。財政構造に両方が硬直化してしまって、そのギャップが大きくなるのがインフレに対して悪い影響がさらに生ずる、それからインフレマインドが促進されるという意見もあるわけでございまして、やはりインフレを前提とした経済社会構造をもたらす。さらに財政がそれに輪をかけるということでございまして、インフレ自体を抑圧するということが社会的公正を確保するゆえんであるというのがオーソドックスな考え方でありまして、そういうことで、各国の経験は決してそれに対してそれが正しいという方向はたどってないということでございます。  われわれも従来から検討いたしておりますし、今後とも御提案については十分に検討いたしますが、そういう感じで受け取っております。
  108. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 世界でかれこれ十七、八カ国が、完全な自動調整措置をとっておるか、部分的な自動調整措置をとっておるか、あるいは準自動調整措置をとっておるか、若干の違いがあるにしても、この所得減税調整措置をとっておることだけは事実なんですね。  いま消極的な面を指摘しましたが、私は、インフレ抑制はインフレそれ自体を抑制するという政策をとることは、これはもう当然だと思う。しかし、インフレの強い弱いはありましても、今日依然として、わが国においても、諸外国に比べれば物価において最近は落ちついてはおりますけれども、しかし、ここ五年間課税最低限を据え置いてきた。そのことによって可処分所得が減って実質所得がマイナスになったことさえあるわけでしょう。マイナスになったことさえあるということは、この所得税制が今日のような状態にあることが主たる条件であるということについても、これはもう今日だれも否定する者がないと思うのですよ。  そういう立場からいきますと、やはり政府においてもこの所得税の物価調整制度については前向きに検討を進める必要があると思うのですが、その点は大臣どうでしょうか。
  109. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は自動的な調整減税というのは反対論者なんです、昔から。それはなぜかと言うと、いま福田主税局長が言ったように、インフレに対して安易な考え方がどうしても起きる。要するに、インフレを鎮圧する場合、いろいろな処方がありますが、一つはマネーサプライを抑えるとか、それから過剰流動性を抑えるためには、消費を抑え込む、金を吸い上げる、それによって消費節約を図らせる、そして物価の安定の方へ追い込んでいくというようないろいろな政策をやらなければならない。したがって、一時的に苦しい場合が半年、一年続いても、それが物価安定という形で出てくれば二、三年、四、五年の長い目で見れば、それは勤労者にとってもプラスになる。したがって、私は、狂乱物価のときに大減税をやったことがありますが、あれは果たして正しかったかどうか、私個人は余り評価しないのです。おもしろいことにはドイツと日本がとってない。とってない国がインフレ率が非常に低い。イギリスはやってみたけれどもギブアップ、それで今回は停止という試行錯誤の国もあるわけですから。アメリカはこれからやるというのですが、一九八五年かなんかになって果たしてできるのかどうか。やってみた結果がいいか悪いかこれもわからない。したがって、諸外国がやったからといって直ちにそれに盲目的に追従する必要はないのじゃないか、その国々の実態に即して、どちらが勤労者のためになるか、物価安定に役立つか、そういうものをやはり慎重に考えた上でやるべきだろう。私としては、したがって、これをやる方向で検討するということはいたす気持ちが実はございません。
  110. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 インフレ率の高い国はあたかも所得税の物価調整制度をつくっておるからインフレが高いのだと言わんばかりの大蔵大臣の答弁のようにも聞こえるわけでありますが、私も、前段申し上げておるように、インフレ抑制自体は本来のオーソドックスな政策でやるべきだ、しかし現実の問題としては、先進資本主義国と言われる国は大なり小なりインフレが続いておる。そのインフレによって所得が目減りする。ひどいときにはそのことが中心になって実質所得が下がるという場合には、やはり憲法八十四条の租税法定主義の立場に立っても何らかの調整措置が必要ではないか、こう思うわけであります。  その点で、大蔵大臣のいまのようなお考えであれば、これはきょう一時間やっても二時間やっても、基本的には反対のようでございますから、反対論者と賛成論者がここで議論をやってみても余り効果がないと思いますから、これは少なくともこの調整制度のメリット、やはり世界的に、あなたたちが特に何でもかんでもと言わぬが大方お手本にするアメリカにおいてさえやろうとしておるわけですから、そういう限りにおいては、ひとつこの物価調整制度のメリット面を中心に、前向きで検討をしてもらいたい。そういう要望については、これは無理でないと思うのですが、どうですか、そういう限りにおいては。
  111. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、減税そのものに反対しているわけじゃないんです。ただ、そういう制度を、自動的にインフレになったらば税金が下がるという制度を、自動的に、そういうものをつくる制度を賛成しないということを言っておるわけなんです。したがって、これに対するメリット、デメリットについては、諸外国の例もございますし、それはもちろん御提案でございますから、両方勉強は続けていきたいと思います。
  112. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 この問題はこの程度で終わらざるを得ないと思いますが、やはりこういう制度をつくることによって、インフレそれ自体を裏側から抑制する機能も持っておることだけは事実ですからね。そういう意味では、ぜひいま私が申し上げたメリットの面を十分評価する立場で検討をされることを強く求めておきたいと思います。  さて、いよいよ時間もなくて、あと残っておる四点ほど、どれを取り上げようかと思って実は迷っておるわけでありますが、やはり一番手近におります中川科学技術庁長官の顔を見ますと、どうもそのあたりにしぼらなきやならぬのじゃないかと思うわけであります。  長官には、この赤字財政下で、原子力研究所やあるいは動燃事業団や宇宙開発事業団が、毎年のように赤字欠損で繰り越してきておりますね。これは具体的な数字を言ったりしていたら時間がありませんから総括的に言いますと、ことしもかれこれ二千億の赤字繰り越しをやっておるわけです。私も少しく法律その他を読んでみますと、法律のたてまえは、一定の事業の収益ができたらその利益配分についてまでどうするかという、そういうたてまえの法律になっておる。ところが、結果は、利益を上げるどころか、どんどん毎年赤字繰り越しをやっておる。こういうことは法律の精神からいっても間違っておるんじゃないか。それは、この原子力研究なり動燃事業なりあるいは宇宙開発というものについて、研究をし、取り組むことそれ自体われわれは否定する何物もないと思います。しかし、そういうあり方は、やはり法律のたてまえからいっても、これは誤っているんじゃないかということが一つです。  時間の関係で一括して申し上げますが、これだけ財政再建問題がやかましくなっておるときに、この種の赤字繰り越しの財源が、建設国債を赤字欠損に充当するような、そういう財政上のやり方というものは果たして常識的なやり方であるかどうか、これは私はやはり筋論としてはおかしいのじゃないかということが二つ目。  三つ目の問題は、行管庁長官おられますけれども、こういうところへ少し行政管理庁としてはメスを入れられたことがあるのかどうか。もう国民に向かっては明けても暮れても歳出削減だ、福祉の切り捨てまでやるんだ。ところが、いま私が指摘しておるようなそういうものについては余りメスを入れられたような経過がないわけですよね。これは、ニューリーダーと言われるような中川長官、なかなか向こう意気が強いですから、そういうところへ余り行革のメスをお入れにならぬのじゃないかとさえ、私は少し皮肉かもわかりませんが、そんな感じがするわけですよ。そういう点について、もっと、防衛予算でも聖域でないと言う、いわんやこういう科学技術問題についても聖域があってはならぬわけですから、むだはむだとして指摘をしなければいかぬ。改革すべきものは改革しなければならぬ、こう思うわけであります。そういう点についての長官としての見解を聞かしてもらいたい。  また、会計検査院としても、そういう建設国債を充当して赤字欠損の穴埋めに使うようなことは、法律のたてまえからいって妥当なものかどうか、そういうものについて指摘をしたことがあるかどうか、この点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  113. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘の点は、半分当たっておるわけなんですが、原子力機関あるいは宇宙開発関係の機関の会計処理をどうするかという問題でございます。  一つは、国民的に役立つものであるから、補助金処理という方法も一つあるだろうと思うのです。しかし、いまは出資金という処理の仕方をやっておる。そこで出資金が取り崩されて欠損金になっていく。これは一般企業の会計体制をとっておるものですから、そういう形にならざるを得ない。一般企業会計をなぜとっておるかというと、やはり研究といえども成果が上がってくる、収益が上がってくると償うという前提になっておるわけでございます。それじゃ収益が上がっておるかというと、若干収入もありますが、その研究成果はすべて電気事業の方に利用されてしまっておる。それじゃこれはどういうわけかということになってくるんだが、そうなってくると、これはまた、電気料金が非常に安くなるということで国民に大きなメリットを与えるという意味では、国民経済的には役立っておる、こういうことも言えるのだろうと思うのです。  そこで、それじゃなぜ建設公債で扱うのかという第二番目の問題ですが、これはやはり道路が、国民に利益を与えるようなものは建設公債で発行されているのと同じように、研究成果はやはり国民に長期的に利益を与えるというところからやって決して無理がないのではないか、こういう判断も成り立つわけですが、御指摘の点からいって疑問のあることは事実でございますので、これは私も、ニューリーダーであるとかないとかじゃなくて、やはりもっとわかりやすくするような方法はないかということで、これは会計上の問題でございますので、昨年十二月から専門家の委員会をつくりまして、どうすることが国民に納得のいく方法であるか、ひとつきちっと、会計法上なり、いまの建設公債との関係なり、成果をどう見るなりといった点について、関連してどう扱うかということについていま研究をさしておりますので、もうちょっとひとつ時間をかしていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  114. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ニューリーダーであろうがオールドリーダーであろうが、手を入れるべきところには入れます。  いまの原子力研究所とかあるいは宇宙開発事業団の、一般に誤解を受けるような欠損金という表現で出すことがいいか悪いかということの問題なんです。あれは、直接営利事業をやっておる法人と違いまして、研究費を国の出資金という名前で出している。したがって、いろいろ「ひまわり」をつくる、あるいは原子炉をつくる、そういうお金が事実使われていってなくなっていく。それは欠損という形になりますけれども、そのこと自体が研究自体になっておるので、なくなるのがあたりまえで、使わなかったら何もしてないということになるわけです。したがって、普通の場合ならばダウンペイメントみたいにして出資金を出して、それに補助金という形でそれを使わせるというのが普通の場合なんですけれども、調べてみるというと、補助金という形にすると、非常に煩瑣な手続で一々大蔵省の許可や何かで研究になじまない、そういうわけで、出資金という形でやれば非常に機動的に研究ができるというので、出資金という名前にしているらしいのです。この辺の事情も科学技術の振興のためにやはり考えてやらなければならぬところで、一般の法人における赤字の欠損金とは性格が違う、研究で使った分を欠損という名前で出している。国の全体の大きな、国有財産と申しますか、ストックの中からはある意味においては消えつつある、そういう意味にすぎないと思うのです。  したがって、いまのようなやり方でやるのが、研究機関の場合に果たして妥当であるかどうか、これは確かに御指摘のように研究課題であります。ありますが、そのこと自体が間違っておることをやっているということに直結するものではない。補助金という形でやるのか、あるいは出資金という形でやるのか、あるいは別の形でやるのが正しいのか、これは研究物で、いま科学技術庁におきましてそういう専門家の研究会をつくってやっておるそうでありますから、その結果も一応見ていきたいと思っております。ただし、仮に出資金という名前で出した場合でもむだ遣いがあってはならない、むだ遣いやあるいは研究の間違い、とんでもない研究をしたとかそういうような場合には、これは当然責任を関わるべきであります。しかし、失敗したからといってこれはまた責任を関わるべきではないので、研究には失敗がとうといという面もあります。そういうような面から、ゆっくり余裕を見ながらも、しかも厳しく物を見詰めてこれを検討していきたい、こう考えております。
  115. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、基本的なことについて行管庁長官からいま教えてもらうほどこの問題については無理解じゃないのです、これは前段にも申し上げたように。しかし、法律のたてまえからいえば、利益を出すような法律の体系になっておるにもかかわらず、現実的には、一年や二年じゃないのですね、ここずっと何年来損金として上がってきて、その額はことしで言えば二千億ですよ。二千億なんという金は、これは一つの県の年間予算に匹敵する金ですからね。そういうものがどんと上へ打ち上げたりして消えてしまう。そのこと自身の研究開発は否定しないですよ。そういうものを国の補助金あるいは出資金でやっておることもわかりますよ。しかし、その利益の還元というものは、原子力のごときはほとんど民間に返っておるじゃないですか。電力会社が一兆円からの利益を上げるんだったら、民間からも少し出資させたらどうですか。法律のたてまえからいっても、大体二分の一程度は民間から出資さすということになっておるじゃないですか。そういうような法律に合わないことを今日の行政がやっておることを私は指摘しておるのですよ。  ですから、その点は問題の本質をきちっと押さえて、長官もおっしゃったように、少なくとも会計処理上の問題については確かに問題がある、これは改善をしなければならぬ、こういう率直な答弁でございますので、その点はぜひ——そのことについて実はもう少しいろいろな角度からなにしておるのですが、時間がありませんから、これは事と次第によれば予算の分科会あたりで内容的に必要であれば私はやります。しかし、いま私が指摘をしておる点については、これはやはり積極的に取り組まないと、それは年間二千億のような赤字を毎年のように繰り越していくようなことは、いまの行管庁長官の基本的な考え方を仮に了としても、認めることはできないと思う。この認識については科技庁長官も否定はなさらないでしょう。
  116. 中川一郎

    ○中川国務大臣 改善しなければならないと思っておりますので、いま専門的に研究調査をして結論を得たい、こう思っております。
  117. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 その点については、きわめて謙虚に科学技術庁長官らしい答弁がありましたので了といたしたいと思います。  いま一つ、これは科学技術庁長官にどうしてもお尋ねしておかなければならないことは、福井県の敦賀市に、今度動燃事業団が中心になりましてプルトニウムを中心とする高速増殖炉の原子力の発電所をつくる計画が進められております。この問題について、これまた時間があと七、八分しかないものですから詳しくやれないことが残念でありますが、予算措置としては、言うまでもなく五十六年度の百六十六億、五十七年度、いまのこの予算書にも百四十九億何千万、こういう形で計上されて、その中身を見ますと、土地造成費だとか進入道路の建設とか、あるいは本体建設工事費とかいう形で具体的に工事が進むようなところまで行っておるわけですね。ところが、どうですか、こういった、軽水炉の原子力発電所においてもこれは当然な措置でありますが、原子力発電所の立地手続というのは非常に厳格に決められておるのですが、私どもの聞き及んでおる範囲では、肝心な電源開発調整審議会の議も経てなければ電源開発基本計画の決定という手順を踏まないまま、まさにそういうものを飛び越えて安全審査を昨年の暮れにやっておる。その過程では、少し省略いたしましたが、事のよしあしを越えて、建設するということになれば、地元住民の意見を聞く、あるいは第一次の公開ヒヤリングをやるというようなことも、当然立地の手順として決められておるわけでありますが、そういうものも単なる説明でやって、そうして、いま私が前段指摘したような地元の合意も十分なされないまま、中川長官の性格らしく強引に引っ張って、手続を踏まなければいかぬところまで飛び越えてやっておる。こういう事実が発見されておるのですが、これはどういうことなんでしょうか。これは私は重大な法律違反だと思いますよ。地元の知事、市町村あるいは議会の同意を得るということは法律行為になっておりますし、電源開発調整審議会の議を経て物事を進めていくということも法律事項でしょう。こういうことをその手順を踏まずにやるということは、これはどういうことなんですか。
  118. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答え申し上げます。  まず、御指摘の高速増殖炉、「もんじゅ」と通称しておりますが、これは研究炉でございます。したがいまして、御指摘の電調審の審議の対象になっておりません。しかしながら、できるだけ普通の商業炉の手続と同じように進めていこうというふうに基本的に考えておりまして、昭和五十一年七月福井県知事さんから環境の事前調査の許可をいただく、さらには、新しい炉であるから商業炉との安全性の問題についてどうも理解がしがたいという御意見もございましたので、それでは行政庁審査で安全審査をやらしていただいて、その結果を御説明申し上げて、安全性に対する御理解もちょうだいしたいというようなお話し合いを地元と十分いたしまして進めているところでございます。  そういうことで、手続的につきましては、話が古うございますので、公開ヒヤリングの制度の確立いたしました五十四年一月以前から始まっている経過的な処置といたしまして、すでに事前に二回の事前の御説明も申し上げ、今回、行政庁審査の安全審査の結果も踏まえまして、安全性に対する御説明も来週させていただくという手順を進めている次第でございます。その上で県知事さんの同意をいただき、さらに二次審査に移っていくという手順を考えているわけでございまして、決して手順を省くとか飛び越えるとかいうことではございません。十分な地元の御理解、御協力を得て進めていくという方針で進めている次第でございます。
  119. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 全くこれは実態にそぐわない、これまた詭弁に近い答弁だと思いますよ。研究炉ということで形式上のことだけおっしゃっておるけれども、高速増殖炉というのは、安全性の問題については軽水炉の原子力発電所とは比較にならぬぐらい、プルトニウム239ですか、もしこの事故が起こったらどんな事態になるかということは、これはアメリカにおいても西ドイツにおいても、この間フランスでもバズーカ砲か何かで撃ち込んだという問題もありますが、外国においてもこの開発についてはいま非常に慎重にやりつつあるわけですけれども、いまの原子力局長の答弁によると、研究炉と言うけれども、これは三十万キロワットの施設でして、現在敦賀にあります事故を起こしました敦賀原発三十五万キロ、あるいは関電の美浜の一号炉の三十万キロワット、これと大体同規模なものですよ、これは同じ研究炉と言ったって。しかも、この「もんじゅ」の研究炉と称するものは、現実には商業化される実証炉としてやっておるわけでしょう。だから、これは単なる研究のためというようなものではなくて、五万や六万キロワットの東海村のようなああいう研究開発のものとは違うわけでしょう。これには発電機もついておるわけでしょうが。そういうものが単なる研究炉としての、いまあなたが答弁されたようなことで、重大な手続を、研究開発のためだから電調審のそういう手続も踏まなくてもいいんだというようなことは、事実問題としてできますか。これはできないですよ。そういう意味では、これは四次防の先取りじゃないけれども、こういう重大な法律上の手続を踏まないで予算を計上しておるのは、それこそこの間のF4ファントムじゃないけれども、これは一時執行停止ですよ。予算から削減してもらわなければ困りますね、この種のものは。どうですか。
  120. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 高速増殖炉は御指摘のように非常に新しい炉でございます。したがいまして、この前段階といたしまして、東海におきまして熱出力約十万の「常陽」という設備を用いまして、実験炉をつくりまして、これは発電は行っておりませんが、実験炉、原型炉、実証炉そして実用炉、こういうふうに進んでいくのがこの原子力開発の基本的なパターンでございます。私どもは原型炉まではあくまで完全な研究炉であるというふうに理解をしているわけでございます。  なお、御指摘のございましたフランスのスーパーフェニックスにつきましては、実証炉という段階で、われわれが考えております「もんじゅ」の次の段階の炉でございます。  また、電調審との関係でございますが、あくまで電気の需給を検討するという場でございますので、この「もんじゅ」につきましてはその検討の対象にないというふうに整理をしているわけでございます。
  121. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いま局長から御説明申し上げたとおりですが、ちょっと補足させていただくと、大事な原子力発電の核燃料サイクルにとってプルトニウム利用というのは欠かせない。これはもうフランスではすでに成功しているわけです。  そこで、研究ということであるから、科学技術庁に所管をしておる。目的は研究であって、ただし三十万キロワットの発電ができることは事実なんです。電調審というのは、いま言うように、電気の需給関係からどうであるかということを審査するためにあるものなんです。電気の需給関係からこれが生まれてきたものじゃなくて、研究をやるというところに主体があったために、研究炉であり、科学技術庁がやっておるということなんです。しかし、電調審にかわる各省庁との了解というようなものもとっていかなければいかぬことは事実です。  一番問題なのは、これは安全性ということなんですね。安全性についてしっかりしたことにしておかなければいけないというところから、建設同意を得て、もうすでに軽水炉のように、まあ大丈夫だわい、やってもいいわいというのにしては初めてのものですから、まず安全審査をして、安全でございますよということでなければ同意ができないという問題も現実あるわけなんです。やはり安全性を確保するという意味からいくならば、安全性について先にやっておくということの方が地元の納得を得るために必要なことでありまして、決して安全性を無視したからルールを変えたというのじゃなくて、安全性を守るという点から先にやったということであり、その上で御同意が得られるならば、さらに原子力安全委員会においてダブルチェックをして、さらに安全性を確保していくという仕組みでやっております。  それから、予算が先についておったじゃないかというのですが、実はこれは幸いにして地元は、結構です、関係する敦賀の市長さん等は、前向きでやってくれというような、県に建議資料が出るぐらい、決議案が出るぐらい前向きでございます。だが、知事さんはいろいろな事情があって時間がおくれておる、こういう関係がありまして、もうすでに昨年、一昨年あたりにできるのじゃないか、こういうものがおくれておったために、予算はついたけれども執行ができなかった、こういう経緯はありますけれども、いま言ったようなことで高速増殖炉開発上必要なことであり、安全性を大事にするというたてまえから、県の同意も十分得るように努力もしますし、安全性の了解を得るためにこういう手法を使っておるということでございまして、決して法律無視とか、あるいは県の知事の意思を無視してやっているのではなくて、県や皆さんとも相談の上やっておることでございますので、どうか御理解をいただきたいと存じます。
  122. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思いますが、地元との関係におきましては、ごく最近の地元新聞を見ますと、今月の二十二日に地元に行く、二十六日に県とも交渉するということでございまして、これは必ずしも地元の完全な了解を得ているなんということの私は理解には立っていないのですよ。ですから、そういう地元との手続関係においても、いまなおそういう努力をしなければならぬという状態にある。  そういうことを考えると、原子力発電所を設置する場合の、立地する場合の手続においては、安全性という立場からという御答弁がありましたけれども、私は、極端に言えば、目的が正しかったら途中の経過が少々逆立ちしておっても構わぬというような論理は成り立たない。行政というのは、やはり決められたとおり、物の手順というものを踏んでいかなきゃいかぬ。そういう点では、電調審の手続を省いたことは、これは軽水炉以上に安全性の問題については非常にやかましく問われなければならない原子力発電所ですからね。そういう点では、局長が言われるように、先ほども答弁がありましたが、やはり実質的には三十万キロワットの発電機をつける、そういう実証炉、商業炉としての研究開発だということになれば、従来の軽水炉でさえこれだけの手続を踏むのですから、プルトニウムを中心とする増殖炉の問題については、それ以上厳しい手順を踏むべきでないかという点については、これはやはり認めて、そういう手順を踏まなきゃいかぬのじゃないか。この点についてだけ、もう一度ひとつ確認をしておきたい。
  123. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 まず、電調審でございますが、これは電気事業法に定められております電気事業用の電気工作物を対象にしている、「もんじゅ」はそれから外れているわけでございます。したがいまして、電調審にはかからない。しかし、それに相当する、あるいはそれ以上の手続は十分踏ませていただきたい、このように考えているわけでございます。  来週の説明と申しますのは、この安全性を主体に地元に御説明するということでございまして、私どもといたしましては、その点地元の十分な御了解を得るべく努力をいたし、また、安全性を確保できるんだということを御理解いただくための努力を払っているということでございます。
  124. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 手続上の関係については納得いきませんが、時間が少し経過をしましたのでこれで終わりたいと思いますが、少し時間が超過したことについては、どうもありがとうございました。
  125. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  126. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  127. 野坂浩賢

    ○野坂委員 鈴木内閣は、特に総理は、総合安保論を強く主唱をしておられるわけでありますが、その中の一環であります食糧安全保障、こういう一つの柱がありますが、食糧安全保障というのは一体何でありますか、そして、何をやろうとするわけですか。
  128. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 私たちはいま長期の展望に立って、国内で生産できるものは極力国内で賄おうという基本に立って国民の需要の動向に応じて農業の再編成を図る、生産性の向上を図って、自給力の確保をしたい、こういうことなのでございます。したがいまして、日本で自給できるもの、完全に自給できるもの、あるいはまたやや自給できるもの、それから全く海外に依存しなければならないもの等があるわけです。いわゆるお米だとかあるいは果樹あるいは野菜、それから畜産物等はやや自給できるものでございますが、大豆あるいは小麦、飼料穀物等はどうしても海外に依存しなければならないという現況にございますので、私たちは、自給できるものと、それから海外から依存するものをできるだけ調整して、それで食糧の安全を確保したい、こういうことでございます。
  129. 野坂浩賢

    ○野坂委員 国内でできるものについてはできるだけ自給力を高める、そういう意味で、さきの国会で衆参両院ともに自給力向上の決議をした。しかし、将来の見通しとして農政審等がこれからの方向というものも打ち出しておるわけですが、五十五年度、穀物の自給率というのは何%になっておるわけですか。
  130. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 穀物の自給率は、たしか二九%だと心得ております。
  131. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十四年度は三三%、五十五年度になれば二九%、これは国会の自給力増強の決議なり、いまあなたがおっしゃったように、できるだけ自給率を高めるという方向と逆行しておるということが統計上には出ておるわけですね。  それで、この自給力の増強を図っていかなければならぬわけでありますが、わが国の外国からの輸入状況というのは一体どういうふうになっておりますか。
  132. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、小麦は大体五百五十万トンから五百六十万トン、それから大豆は三百万トンですね。それから、トウモロコシが千二百万トンぐらい、その他でございます。
  133. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大体合っておりますけれどもね。大体私どもが聞いておりますのは、小麦が五百九十二万トン、飼料穀物が千八百七十二万トン、大豆が四百十二万トン、合わせて大体二千八百万トンにも及んでおる、こういうのが現状なんですね。  これは、世界でこういう穀物を輸入しておるのは日本が世界第一位だと思っておりますが、どうでしょう。
  134. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 お話のとおり世界第一位だと思います。
  135. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。  二番目の西ドイツというのが百三十九億ドルで、日本が農畜産物では世界第一位だ。こういう状況の中で、ことしの内閣の方針は、貿易摩擦の解消、市場の開放ということが言われておるわけであります。  そこで、アメリカでは相互主義法案というものがつくられようとしておるわけですが、これは輸入市場を開放していない相手国に経済的な制裁を加える、こういうような意味を持つ法案で、むしろ将来問題が残る。端的に言えば後ろ向きじゃないのか、こういうふうに思うのですが、アメリカにたったこの間お行きになった通産大臣は、この相互主義法案についてどういう御感想をお持ちですか。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 相互主義につきましては、非常に前向きの相互主義、後ろ向きの相互主義というようなことがあろうと思います。前向きの相互主義といえば、お互いにとにかく市場を開放しようということで、たとえば半導体なんかにつきまして、アメリカ日本で同時に四・二%に関税の引き下げをする、こういうふうなことはいわば前向きの相互主義ということで、自由貿易体制を進めていく上からいけばむしろプラスになると思いますが、いまアメリカ議論されておる、特にアメリカの議会で提出いたしております法案のいわゆる相互主義というのはむしろ後ろ向きの相互主義であって、いわば日本にしてもその他の国にしてもアメリカに対して壁をつくっている、その壁に応じてアメリカも貿易の制限をする、こういうことでございまして、これは後ろ向き相互主義というよりは保護主義ということの方がいいのじゃないか。その保護主義がだんだんと進んでいけばこれは報復主義につながっていくわけで、自由貿易体制というものが根幹から崩れてくるおそれがある、こういうふうに私は心配をいたしています。
  137. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。  農林大臣、もう一つ聞いておきますけれども、こういうふうに輸入が非常にふえて農畜産物は世界第一位だ。いま全部輸入がとまった場合は、日本国民というのはどのくらいなカロリーで食するということになりますか。
  138. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 その前に、先ほど資料がございませんでどうも失礼いたしました。  アメリカからの穀物の主要輸入でございますけれども、小麦は三百三十五万トン、大麦は十三万トン、トウモロコシが千百六十七万トン、コウリャンが三百八十一万トン、大豆が四百二十三万トン、合計で二千三百十九万トン。世界全体からの輸入がカナダ、オーストラリア等を加えて二千八百万トンから二千九百万トンでございますから、そのうちの二千三百万トンをアメリカから輸入している、こういう状況にあるわけでございます。  そこで、カロリーとしては二千カロリーはどうしても確保しなければいけない、こう思います。
  139. 野坂浩賢

    ○野坂委員 輸入がゼロになったときにはどういうことになるのか、確保はそうですけれども
  140. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  輸入が一応とまったというように考えた場合、私どものあれでは供給カロリーで大体千五百カロリーぐらいというふうに考えております。
  141. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農林省ではそういうことを試算をしたといって発表されておるのですね。千五百カロリーだと言われたのですが、ここにはゼロの場合には千三百四十九、五割のときは千九百三十カロリー。千五百カロリーというのは、こんなに皆さんのように元気じゃなくて、床について寝ておる、八十の老人が食する、その程度のカロリーですね。
  142. 角道謙一

    角道政府委員 ただいま御指摘のとおり、大体基礎代謝量に若干プラスした程度のものだと考えております。
  143. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうですね。だから、自給力を高めていかなければ、ここ総括の質問ではずいぶんと防衛論争がありましたが、そういうときには、食糧安全保障はそういう意味で非常に重要ではないかと思うのです。  農林大臣は、この間の総括質問の中でこう言っておられますね。これからの新しい農業を私たちが本当に進めていかなければならぬ、こういうことを言っておられます。それは国内自給力の向上、食糧安全保障をやるために特に国内の農業というものに努力をする、こういう意味でございますね。
  144. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 先ほど先生から御指摘がありましたように、私たちは、国会の決議あるいは八〇年代の日本農業、農政の方向等を目標にしながら、農業生産の再編成あるいは生産性の向上を図ってただいま御指摘のように自給力を確保する。そのためには何としてもやはり技術の開発をまずしなければいかぬ、さらに経営規模の拡大等を進めながら新しい方向の農業というものをつくり上げなければならない、こういうことを申し上げたのでございます。
  145. 野坂浩賢

    ○野坂委員 経営規模の拡大、農地三法を改定してやられるということですけれども日本はいま一・一ヘクタールですね。アメリカは百五十七・六で百四十三倍なのです。西ドイツは十三・八で十三倍、フランスは二十四・五で二十二倍、これだけ面積が違うわけですね。値段の方は、日本の場合はたんぼが平均して十アール当たり九十一万四千円です。これは聞けばいいのですけれども、もう時間がありませんから。アメリカの場合は二万七千円、西ドイツの場合は二十三万一千円、こういうふうに非常にアメリカの土地と日本の土地の値段というのは、日本を一〇〇とすればアメリカはわずかに三%だ。だから、経営規模の拡大というのは、米を十俵とって十七万円、九十一万円の農地を買って十七万円の収入ではとても経営規模が拡大できない。だから、最近ずっと横ばいですね。これが農業の現状であります。それは御承知かと思うのです。  そこで、それほど厳しい日本の農業の中で、これから、残存輸入制限品目というのが二十七品目ありまして、こちらからもお話があったのですけれども、農畜産物の場合は二十二品目でございますね。この品目の輸入枠の拡大なり自由化ということが問題になってきた。この間安倍通産大臣はアメリカにお行きになっていろいろ御説明になったと思うのですが、大胆な方法を考えなければならぬじゃないかと言って、一月の二十三日ですか、新聞が報道しておるのです。農家の皆さんは非常に心配しておりますが、これは昭和五十四年、一九七九年ですか、あのときに東京ラウンドでこれからの制限品目、残存品目については大体一九八四年度からだ、こういうふうになっておると思いますが、そのとおりでしょうか。
  146. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 残存輸入制限品目じゃなくして、牛肉とオレンジについては東京ラウンドで一九八三年度までの合意ができておるわけでございまして、残存輸入品目全体は、これは東京ラウンドの合意事項とは別の問題でございます。
  147. 野坂浩賢

    ○野坂委員 アメリカでは市場開放を迫っておるということですが、担当の農林大臣としては何としてもこの二十二品目についてはいままでどおり確保するという考え方ですか。市場開放に応じない、いわゆる枠の拡大とか、日本農業を守るためにそういうことはアメリカの要求があっても譲ることはできぬ、こういうふうにお考えでしょうか。
  148. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 そのとおりでございます。
  149. 野坂浩賢

    ○野坂委員 通産大臣も四月ごろが山場で、内閣としては考えていかなければならぬということですが、お行きになった感触で、いま農林大臣がお答えになったとおり、通産大臣も農畜産物の制限品目二十二についてはアメリカの要望にこたえる考え方はない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  150. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカが非常に強い要望をしていることは事実でありますし、農産物については、アメリカの要求として交渉の期限を早めろ、こういう要求も出ていることも事実であります。政府としては、十二月に経済対策閣僚会議を開きまして、そして市場開放については積極的に努力をしなければならない、自由貿易を守るために努力をしなければならないということで対策を立てたわけでございますが、その中で残存制限品目等につきましてもレビューをしながら検討を進めていく、こういうことになっておるわけでございまして、非常にむずかしい問題でございますが、やはり今後政府としても国内産業の調整も図りながらこれに対しては取り組んでいかなければならない課題であろうと私は思っております。
  151. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ちょっと安倍さん、農林大臣ははっきり、農業を守っていくために、そういう制限品目については枠の拡大や市場開放する意思なし、非常に明確に言われましたね。通産大臣の場合はレビューして、いろいろ検討して慎重にやらなければならぬ、こういうことで、意識が違っておるわけですね。その辺について非常に心配しておるわけです。農林大臣も、この間の総括のときに、日本の農家の皆さんに不安を持たしちゃならぬ、だからこの辺はすっきりして、農業にいそしんでもらわなければ生産性等が上がってこない、こういう意味の御発言があったわけです。  安倍通産大臣も農林大臣だったのですからね。あなた、攻めの農政のことばかり当時はお話しになったですね。守る農政から攻める農政に転換する、これが安倍農政である、こういう演説を何回もなさったわけです。その攻めの農政というのは、そういう残存輸入制限品目を、そういうことについていま守っていかなければならない。アメリカの方から攻めてくるわけですから、それを守らなければならぬ。それについてはいろいろ御検討もあるでしょうけれども農林水産大臣の見解を支持してもらわなければ、日本農業はいままさに崩壊を始めようとしておるわけです。かつて農林大臣をやった通産大臣は、そういう点は田澤さんがおっしゃったとおりだ、そういう考え方で進む、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん守るものはきちっと守らなければならぬと思うわけでありますが、また同時に、農林大臣のお立場もよくわかるわけでございますけれども、私が申し上げましたのは、政府全体として十二月の十六日でしたか、経済対策閣僚会議を開いて、そこで合意に達した五項目の内容について申し上げたわけでございます。
  153. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたはどう考えていますか。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私はもちろんいまの政府全体の決めた方向で、これからいろいろとやはり日米間の摩擦も激しくなってくるでありましょうし、折衝も進むでありましょうが、そういう方向で努力をして、そして経済摩擦を解消するために対策を講じていかなければならない、こういうふうに考えております。
  155. 野坂浩賢

    ○野坂委員 俄然変わりましたな、通産大臣になったら。(「進歩した」と呼ぶ者あり)進歩はしてない、退歩している。経済摩擦を解消するためにいろいろ考えなければならないということは、枠の拡大なり自由化をするということが考えられるわけですか。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはいまの政府で全体で決めたわけですから、農林大臣も御出席になって経済対策閣僚会議で残存品目等につきましてもレビューをしながら検討を進めていくということで決まったわけでございまして、そういう政府の基本方針を踏まえながらこれから対処をしていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、しかし、農林物資につきましては農林大臣がこれを管掌しておられるわけでございますから、農林大臣のお立場は十分尊重していかなければならぬことはもちろん当然であろうと思います。
  157. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。農林大臣の言われるような方向で安倍通産大臣は協力をするということを確認しておきます。  それから、たばこが新聞に出ていますね。いま吸われようとしておりますそれは外国たばこを吸っておられますけれども、いま大体三千四十億本売れていますね。これでアメリカのたばこが大体四十億本、約一・四ですかな。一〇%にせいという話が出ておりますが、これは金額なんですか、本数で言っておるのか、その辺を第一点お聞かせ願いたい。  いまたばこの情勢というのは、ことし五万九千ヘクタールから約五万四千ヘクタールに減反されておりますね。米も六十七万七千ヘクタールぐらい減反された。たばこも五千ヘクタールぐらい減反された。また一〇%も受け入れるということになると、これまた大変なことになってくるのじゃないか。また、葉たばこ産業には大きな影響が出てくるということでありますが、専売公社の総裁においでいただいておりますので、そういう状況を踏まえて公社ではどのように対応をしようとしておるのか、お伺いをしたいと思います。
  158. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  去る十七日の毎日新聞に出た記事に関連しての御質問かと存じますが、まず最初に、一〇%ということにつきましては、私どもはもちろん、大蔵省も外務省もまだ聞いていない数字でございまして、新聞記者がどちらから入手されたものかわかりかねております。ただ、その記事にも前後矛盾がございまして、最初の方ではいまお話しのように、日本国内で売れておりまするたばこは、昭和五十六年度で見ますと、国内普通品が三千六十億本、輸入品が四十六億本、合わせまして三千百六億本のうち四十六億本でございますから、約一・四%はお話しのとおりなのでございますが、そこの記事にありますのは、その売れておる金額が約二兆五千億になりますので、一ドル二百四十円、その記事が出た当時の円相場でございますが、二百四十円として計算すると百億ドルだ。したがって、その一〇%の十億ドルを希望するというような記事になっておるわけでありますが、後で本数の方で一・五%を一〇%にするような記事になっております。いま申し上げましたように本数では一・四%ないし一・五%でありますが、金額では、輸入たばこは高いものでございますから二・五%ぐらいのシェアになっておるわけでございます。したがって、一〇%というのは金額なのか本数なのか。前の方では、百億ドルのうち十億ドルというのは金額でありますし、その辺が明確になっておりません。  いずれにいたしましても、私どもとしてはそういう数字はまだ承っておりませんが、一昨年の昭和五十五年十一月に日米たばこ協議を行いまして、輸入品の取り扱いにつきまして日米間、またEC諸国との間でも話し合いをつけて、小売店をふやすとか、あるいは広告宣伝を緩やかにするとかいうような、それからマージンを引き上げるというような措置をとったわけでございます。その後、しかし、アメリカの方ではもっとシェアをふやしてほしいということを言ってまいっております。ただ、私どもはこの数量を別段規制はいたしておりません。国内の市場で消費者がお吸いになると、その吸った高に応じまして、ボンド指定をいたしておりますので保税倉庫に入っておりまして、小売店で売れたらその数量を注文してすぐに輸入するという形になっておりまして、数量制限は格別いたしておりません。したがって、市場の競争でやっていくことになるわけでございます。  私どもとしましては、市場の競争に負けないように努力していかなければならないと考えておりまして、お話のように、外国の製造たばこの輸入量がふえますと、国内での売れ行き全体が余り伸びませんので、国産の葉たばこの売れ行きが落ちるということになりかねません。そうなりますと、たばこ耕作をしていらっしゃる方に大変御迷惑をおかけすることになりますので、できるだけそういうことにならないように、外国品と対抗できるような品質のたばこを製造していきたい。ただ、そのためには耕作者の方に、近年葉たばこの品質が低下してまいっておりますので、その品質をよくしていただくようにお願いしておる次第でございます。  なお、五十七年産の耕作面積を約五千ヘクタール近く減らすことにいたしましたのは、昭和五十年以降たばこの売れ行きが鈍化いたしまして、現在過剰在庫が一年分生じておりますので、その過剰在庫をこれ以上生じさせないためにやむを得ずとった措置でございます。その点を御理解いただきたいと存じます。
  159. 野坂浩賢

    ○野坂委員 きょうの新聞に「たばこの対日輸出促進もアメリカが強く求めているので、要望に応じる」というようなことが書いてあるので非常に心配しておるのですが、このたばこは制限品目じゃなくて自由化しておるわけですね。問題は、日本のたばこは大体皆さんが吸っておるようなのは百八十円ですし、アメリカのたばこは二百八十円で、百円の開きがありますね。たばこは、国の方に、大蔵の方に一兆四千億も納めておるわけですから、地方のたばこ消費税も含めればですね。そういう意味で何らこの要求に対して、いま聞けば保税倉庫から直接配っておるというようなかっこうですから、別段邪魔をしておるわけじゃない、あとは競争場裏に立つということでありますから、アメリカの要求に対してはこたえる、こたえないという問題ではない、こういうふうに考えてよろしいかということが一つ。  それから、臨調で行政改革——管理庁長官はもうちょっと遅くなってもよろしいと言ったものですからいませんけれども、総裁がおいでになっておりますのでついでですから、この行政改革について民営化論が三公社ではいろいろと言われておりますが、これに対してはどういうふうにお考えでしょうか、あわせてお伺いをして、これで終わりにしますから、いいぐあいに答えてください。
  160. 泉美之松

    ○泉説明員 まず第一に、お話のようにたばこはいわゆる制限品目ではございませんで、自由品目になっておりますから、国内の市場において内外製品が公正な競争を行っていくということがたてまえになっておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、私どもは、何とかして外国品に負けない品質のたばこをつくって消費者に提供していきたい、このように考えておるところでございます。  次に、臨調で検討されておる点につきましては、いろいろ新聞紙上では拝見するのでございますけれども、臨調の第四部会で検討されておるわけでございますけれども、第四部会から私どもに直接のお話はまだ何にもございません。ただ、新聞紙上で拝見いたしますと、国鉄、電電の民営化と並んで専売公社の民営化も検討しておられるように拝見するわけでございます。ただ、私どもといたしましては、基本的には現在の専売制度を維持し、公社制度を維持していくのがいいのではないか、民営化してどういうメリットがあるのだろうかという点を疑念に思っておるわけでございますが、仮に民営化するといたしましても、俗に言われているように、三つの会社に分割民営にするというがごときことは絶対にすべきことではないというふうに考えておるところでございます。
  161. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、林野の問題について伺います。  松枯れの現状と今後の対策でありますが、マツクイムシがずっと九州から始まって、いまや東北地方、田澤農林大臣の足元に来ておる、こういう現状ですね。五年間程度で空中散布で終わるんだ、こういうお話でありました。しかし、現況はだんだんふえて、いま二百万立方、その程度までマツクイムシで松枯れが起こっております。こういう状況であります。  したがって、いまの防除体制の問題ですけれども、空中散布だけではなしに地上散布、伐倒あるいは林種の転換、こういうことを含めた総合防除対策をやらなければこの根絶はできぬじゃないだろうか、こういうふうに思いますね。それがたとえばいい地点であっても、たとえばダムのところとか水資源とか、そういう点については市町村と十分協議をして、地元の意見を十分聞いて対応策を立てていかなければ、政府が考えておった効果が、まあ一定の程度上がったけれども、そう大きな効果は上がっていないということでありますから、そういう体制をつくってもらわなければならぬじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  162. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 マツクイムシの被害については、ただいま先生御指摘のように、日本列島、マツクイムシの被害で美しいこの日本の自然が本当に破壊されておるわけでございまして、過般も私、筑波学園都市へ参りまして、林業試験場でマツクイムシの状況をも調査してまいりました。筑波学園都市全体も大変な被害なんですね。  そこで、科学博をいまあそこで進めようとしていますが、あそこでもし松がなくなったら、あの全体の景色は一体どうなるだろうかと言って地元の人は大変心配しておりますので、そういう点から考えますと、抜本的な対策を考えなければならぬ、こう考えるのでございまして、ただいま先生御指摘のように、これまでは空中散布を進めてまいりましたけれども、これは被害木の伐倒、さらに破砕焼却、さらに市町村をも加えてその対策を進めるよう、新たに立法措置をいたしましてその対策に当たりたい、かように考えております。
  163. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの材の状況というのは、外材が七〇%で、民有林が二〇%、国有林が一〇%、大体こういう比率なんですね。きょうの読売新聞には、インドネシアが一九八六年からは丸太輸出を全面禁止する、こういうことを言っておりますね。それまでも向こうの木材加工業を振興させるために丸太輸出はやらぬということで、日本の木材加工業者は相次いで倒産をしておる、こういう状況ですね。しかも材価が低迷しておりますから、どうしても地元の山林地主は山を売らぬ。これは安定をしておらぬとなかなか思うように山というものの育成、材木というものの成長ということはでき得ない。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 したがって、いまは商社が無統制に入れておりますね。この点について、そういうところに政府が介入すべきでないという意見もありましょうが、全体的にこれからの世界の資源は、自動車のように一日に何台もできるわけじゃないですから、五十年もかからなければ本当の山はできない、材木はできっこないという関係がありますから、やはり審議会を設置されて需給調整をやっていかなければ、これからの国産材の発展というものはできぬのじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点はどうだろうかということが一点。  それから、これから山づくりをしていかなければならぬわけですけれども、大蔵大臣は昔農林大臣だったんですけれども、大蔵大臣になるとそういうわけにならぬわということをよく言いますけれども、独立採算を強要しておるために、間伐をして育成林といいますか、成林をされていかなければならぬのに、十分間伐ができていない。間伐をやらなければならない面積が大体四百六十万ヘクタールぐらいあるわけですね。それが一割もやられていない。こういう状況で、将来の森林政策、林業政策に重大な影響をもたらしておる、こういうふうに思うわけですが、この点はどうお考えだろうかということであります。  時間がありませんから、もう全部言ってしまいます。  さらに三点目は、労働力確保の問題ですね。この労働力の確保というものについては非常に問題だ。言うなれば、白ろう病対策の問題がありますね。あるいは雇用の安定の問題がありますね。社会保障の問題がありますね。こういうことが一つ一つ十分でないために、みんな年寄りになられて若年労働力というものが減っておる。林業に重大な影響をもたらしておる。こういう点については各省庁と協議されて十分対応してもらわなければ、林業政策に重大な問題が起こるではないかということですね。  四番目については、この三月一日でいよいよ営林署の統廃合が七つですか、この前の大臣のときにこれは一遍ストップしてしばらく考えようじゃないかというようなお話がありましたが、これらについても、全体の国有林、日本の林業、こういう面を考えられまして、何でもやるというようなことのないようにされた方がいいのじゃないか、こういうふうに思いますので、それらについて一括御答弁をいただきたい。
  164. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  まず第一点でございますが、現在わが国の森林の大半が育成過程にございまして、先生御指摘のとおり約六五%外材に依存せねばならぬということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり輸入国と十分連携をとりながら、情報を交換しながらやっていかなければならぬと思いますし、また、国内の需要供給のバランスをとった安定的な輸入ということをしていかなければならぬと思っております。したがいまして、そういう面から四半期ごとにこの需給調整の見通しを立てながら業界を指導し、これから適正に輸入してまいりたい、かように考えておるところでございます。  それから二点目の間伐でございますが、現在、民有林におきまして約百九十万ヘクタール緊急にやらなければならぬところがありますし、国有林も約十五万ヘクタール五年間やらなければならぬところがありますので、これにつきましては、ことし例の間伐促進総合対策事業というものを策定いたしましてようやく軌道に乗りつつございますので、さらに五十七年度には、需給、生産情報をうまくリンクさせながら流通改善をしてより一層促進をしてまいりたい、かように考えております。  それから次の雇用安定等の問題でございますが、これは林業経営では一番大事なものは雇用安定でございまして、この安定なくしてはやはり今後の日本の森林造成は十分でございませんので、私どもこれまでも、まずは雇用安定をするためには林業事業体の内容を強くしなければならぬということで林業振興施策をやってまいっておりますが、同時に雇用安定あるいは社会保険への加入をより一層促進するというふうな措置をとっておりますし、さらに本年からはこれに加えまして、グリーンマイスターと呼んでおりますが、これからの基幹的な従事者をより養成すべく努力しておるところであります。  それから最後の国有林関係の問題でございますが、五十三年以来経営改善を鋭意努力してやっていまして、それなりにこの成果が上がっておりますが、最近の木材関係業界の低迷等もございまして、経営内容は必ずしもよくありません。しかしながら、今後さらに一層経営改善に努力しながら進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。  以上でございます。
  165. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まだ若干意見はありますが、時間がありませんので、大体そういうことで進めてもらいたいと思います。  次に、砂糖問題でありますが、北海道のてん菜、沖縄のサトウキビ、鹿児島もそうでありますが、それから輸入糖を扱う精製糖業界、この方々が指定糖の売り戻しについての臨時特例法、いわゆる砂糖特例法ですね、これはロンドンの砂糖相場の大暴騰とか日豪砂糖協定の失敗、こういうことで弱肉強食ということで特例法ができたわけでありますが、これについては一定の成果をおさめた、こういうふうに政府は考えておりますか。
  166. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘の砂糖の事業団の売り戻しの特例に関する法律につきましては、五十二年の秋に、当時日豪で民間ベースで長期契約をしておりました割り高の豪州糖の引き取りを日本側の精製糖メーカーが拒否したことに端を発しまして、かなり新聞紙上をにぎわすような受け取り拒否というような問題が生じたわけでございます。そういった中で、割り高の豪州糖と一般的な輸入糖との両方をプールした形でのコスト価格の形成が当時の市価で賄い切れなかったということがございまして、その市価を実現する、できれば豪州糖の引き取りができ、二国間の大きな争いも未然に防げるということで、特例法を臨時のものとして行ったわけでございますが、現在、日豪砂糖協定は昨年の六月に切れておりますし、特例法の目的といたしましたその間の事情の解決には十分機能を果たしたというふうに思っております。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂委員 成果が上がったということですね。しかし、最近の国内の甘味資源、砂糖をめぐる情勢は、特例法のできた当時と同じような状況に追い込まれておる、こういうふうに思うのです。  ちょっと続けますが、その原因は甘味離れ、酒は飲むが甘い物はたくさん、こういう人が多いですね。そういう人、あるいは減反政策によるてん菜糖への転移、こういうことですね。また、そういうことから、このごろ液状の異性化糖というのがありますね。これは税金も余りかからないで安く入っておりますから、非常に業界が混乱をしておる、こういう状態でありますが、その状況についてどうお考えですか。
  168. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように、健康を志向します国民の食生活の中で、砂糖についてのといいますか、甘味離れというものは確かにあろうかと思います。一方、ただいま先生御指摘のように、ここ数年間稲転等もございまして、北海道のビート糖が増産するという傾向があることも事実でございます。また、五十二年ごろから異性化糖という、従来のブドウ糖のメーカーが、一つの技術革新でございますが、ブドウ糖にある酵素を加えることによりまして、その一部が果糖に変性して非常に甘味度を増すという技術が開発されまして、その生産がふえてまいってきております。そういったことによりまして、輸入糖が大変激減をここ一、二年しているという現実がございます。  現在のところ、これからの甘味離れがさらにどのくらい進むかとか、あるいは異性化糖の増産が今後どのくらいいくかということは、食生活の動向とも微妙に絡む問題でございますので、見通しをつけることはなかなかむずかしいとは思いますが、現在のところはそういった状況が続いております。
  169. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そのとおりだと思います。  そこで、糖価安定法というのがありますね。これによって価格調整をやる。そうですね。特例法によって数量調整をやるということになっておるわけでありますが、この糖価安定法の中で特例法の性格、数量調整もやれるというふうにしたらもっと効果があるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうかということと、安い砂糖と税金のついた輸入糖その他国内産糖、これとのけんかがあって、どれもよくなっていかなければならぬわけですね。言うなれば異性化糖だけを抑えるということになると菓子業界も問題がある、こういうことでありますから、総合的な甘味対策が必要だ、こういうふうに思うわけであります。  てん菜、サトウキビの皆さんが希望を持って生産をするということでなければ、先ほど議論がありましたように、たばこも切る、米も切る、また、てん菜もやったらまた切る、こういうことであったら日本の農業というのはいよいよ生き行くところがない、こういうことになりますから、それらの点について十分配意をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  170. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま先生御指摘のように、最近砂糖をめぐります情勢、大きく変わりつつあることは、私どもも十分しっかり受けとめておるつもりであります。したがいまして、現在各方面の意見も十分聞きながら、どういった方向でこの問題を解決するかということで鋭意検討中でございますが、ただいま先生も若干お触れになりましたように、事柄が大変微妙であり、かつ困難な問題でもございますので、時間はかかるかとは思いますが、現在鋭意検討中で、何らかいい結論を得たいということでさらに努力をいたしたいと思います。
  171. 野坂浩賢

    ○野坂委員 十分にこの対応をして、農家の皆さんに不安を抱かせないようにしていただきたいと思います。  大臣、結構です、もう三時ですから。  それでは、国鉄の問題について入らしていただきますが、ここ総括質問で国鉄のやみ手当とか労使の信頼関係の問題等けんけんがくがくありました。金額にしてわずかなことですが、現場の協定というのはそれぞれ労使が話し合ってやるということです。それについては、国鉄総裁、現場協定というのはやっていかなければ事業が進展をしないということですから、これについては当局の方からの提案がほとんどだというふうに聞いておるのですが、どうでしょう。
  172. 高木文雄

    ○高木説明員 現場協議のシステムが始まりましてから相当な時間がたっております。現場協議がどういうふうに進められているかということについては、しばしば御指摘を受けますように、運用上いろいろ問題があるわけでございますが、ごく最近の問題としては、御存じのようにかなり大規模ないわゆる合理化計画を進めておりますものですから、どうしても私どもといいますか、経営側からの提案で開かれることが多くなってはおりますけれども、しかし、必ずしも全般的にそうだとは言えないわけでございまして、いまもってなお現場協議について労使問題にかかわる提案もあるわけでございまして、一概には言えません。ただ、若干最近の傾向としては、おっしゃるように、私どもの方から提案してといいますか、協議を持ちかけているという事案がふえていることは事実でございます。
  173. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これらの問題に頭を突っ込んでおりますと時間が長くなりますから、国鉄再建の基本にかかわる問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  端的にお伺いしますが、国鉄の借入総額というのはどの程度ですか。それから累積赤字はどのくらいですか。
  174. 高木文雄

    ○高木説明員 長期負債残高は現在約十六兆円という非常に大きな金額になっております。繰越赤字の残高につきましては、例の棚上げをさしていただきましたものをどう見るかということでございますけれども、棚上げしたものが約五兆、それから棚上げ後発生しているものが約三兆ぐらいになっているかという感じでございます。
  175. 野坂浩賢

    ○野坂委員 借入残高十六兆円、棚上げ分を除いて三兆円の累積赤字、これをどうやって解消するのか。われわれも余り大きな金額であるためにどうしたらいいかと思っておるのですが、当局としてはこれをお返しになる方途——きょうも、財政法四条で赤字国債を出しておって勝手なことをしているのじゃないかとしかられて、将来のことはなかなかわからぬといって大蔵大臣答弁しておるのですけれども、同じようなことじゃないかなと思っておるのですが、これ、どういうふうにして解消しようというのですか。どうですか。
  176. 高木文雄

    ○高木説明員 この問題の処理につきましては、現在御承認いただいております経営改善計画を取りまとめます際にも、必ずしも明確にできなかったわけでございます。現在のお国の方の財政状態から見ますと、それはなかなかむずかしい問題があるということも、私ども承知をいたしておるわけでございます。率直に申し上げて、この処理方はまだ決まってないといいますか、なかなかいい案が決まってこないということでございますが、私どもとしましては、それよりも毎年発生しております赤字の発生をまず食いとめるということに全力を挙げなければいかぬということもありまして、いまお示しの長期の繰越赤字の処理については、まだ明確な御方針をお決めいただいていませんと申し上げる以外にないかと存じます。
  177. 野坂浩賢

    ○野坂委員 とりあえず赤字解消をしなければならぬので、負債十六兆円なり累積赤字三兆円については余裕ないというところですね。まあ、貸した者が悪いということかもしれませんね。  この長期負債の中で工事費にかかわるものはどの程度でしょうか。また、利子も含めて、その返済計画はどういうふうになっておりますか。
  178. 高木文雄

    ○高木説明員 道路とか港湾とが飛行場の場合と違いまして、私どもの場合は、新しい工事あるいは取りかえ工事も含めまして、いまのところはすべて原則的には借入金で賄うということになっておるわけでございます。そういう資産見合いの借入金は、ちょっといま正確に覚えておりませんが、十兆をちょっと超えるぐらいの額になっておるかと思います。  これの処理でございますけれども、これは本来ならば、二十年なり三十年の間に収益を生んでいくものでございますし、そしてまた、収入を見込みます場合の経費の原単位としてはそうしたものの償却なり借入金の利息というものは当然経費として考えるたてまえになっているわけでございますから、全体としての経営がもう少し立ち直っていけば、工事費の資金調達のための借り入れば返済ができなければならないわけでございます。ただ、若干当初の見込みと違って予期の収益を上げ得ない線区に投入したというものもございます。ですから、その辺をもう少し仕分けた上でなければいけませんけれども、基本原則はその後の営業によって回収し、それによってお返しをするということがたてまえになるべきものと考えております。
  179. 野坂浩賢

    ○野坂委員 貸借対照表や損益計算書でやればおっしゃるようになると思いますが、工事費が十兆円だ、たとえば青函トンネルがありますね。青函トンネルの借損料というのは七百億、上越新幹線は七百四十九億円ですね。これに青函トンネルを通るとすると一千億程度の工事費をあなたのところはまたぶち込まなければいかぬ、こういうことになりますね。北海道では四万三千人の皆さんがいらっしゃって、いまのところまあ赤字ですね、収入が青函トンネルを使って九百七十九億円です。これは聞けばいいですけれども、時間がありませんから。経費は三千百七十七億円ですね。そうなのですよ。これは違っておったら言ってください。人件費というのは、平均四百万円として一千七百億円ですね。全部首切っても——こちらの方は好きな方がいらしゃいますけれども、全部無人化しても千四百億というのは間違いなく赤字が出るということになっているわけですよ。(「いいものは残す」と呼ぶ者あり)いいのを残しても残さぬでも、全部やめても赤字が出るのです。青函トンネル七百億円使って整備費一千億円使って、毎年七百億払わなければいかぬですからね、もうけは九百七十九億円しかない。赤字が出るのは初めからわかっておる。こういう点については、国鉄は運輸省に何か言ったのですか。運輸大臣も総裁も、こういう具体的な例は一体どういうふうにお考えだったろうかということが一つ。  それから、五十七年度も工事費は一兆三百六十億円やるのですね。やるということになると、これはみんな借銭ですよ。自己財源全然ない。これは、こっちの方からやれやれというのだ。それをみんな甘んじて受けておる。あなたはいつも来てぼろかすに言われておるわけですね。その辺についてははっきり縦分けして、本当に国鉄だけは、これだけは国鉄の赤字です、このほかは知りませんというものがあれば勇気を持って言いなさい。
  180. 高木文雄

    ○高木説明員 まず青函トンネルでございますが、これは私どもの経営からいいますと、いまお示しのように、年に七、八百億円の償却費増を来すことになるわけでございます。この問題については、御存じのように私の方がいま建設を担当しておりませんで、鉄道建設公団が担当しておるわけでございますが、鉄道建設公団の資金のあり方というものについては、法令上も明確に決まっておらない、暫定的にはいま借り入れでやっているということでございまして、将来でき上がった後私どもに借料ということではね返ってくるということでございますので、それは大変困るということで、私どもとしてはこの青函トンネルの工事費の負担方についてなるべく早い時期にもう少し明確にしていただかないと大変困るということをいつも申し上げておるわけでございます。これは非常に大きな問題でございます。  それから今度は、全体の一兆三百億という数字をお示しになりましたが、これは鉄建公団と全く関係なく、私どもの方の鉄道の借入金でございますけれども、この鉄道の借入金は、一部はというか金額の非常に大きなものは東北新幹線の建設に使われておりますし、また一部は諸線の電化とかあるいは信号システムその他の改良とかに使われておるわけでございまして、全体としては、なお大部分のものは現在資産の取りかえに使われておるわけでございます。これらにつきましては、一つ一つのプロジェクトにつきましては将来的にそろばんの合うものについてやっておるわけでございますから、それはそれでよろしいわけでございますけれども、その前に全体としての経費が償ってないという問題があるわけで、たとえば現在赤字線区につきましても、やはりどうしても保安上の必要があれば橋梁のかけかえなりトンネルの改良なりをやらざるを得ないといった問題については非常に問題がございます。  したがいまして、一兆三百億円の工事費そのものの将来の経理をどうするんだというお尋ねでございますけれども、恐縮でございますが、その使われ方によって問題があるわけでございまして、少なくとももろもろの老朽資産の取りかえ等について採算の合わない線区の問題についてはちょっといまの方式では将来いろいろ問題を残すのではないかと考えますが、それならば断れとおっしゃいますけれども、断るというと今度は列車が本当に走らなくなりましたり、それから事故が起こるということがありまして、何としても私どもとしては事故は起こさないようにやらなければいけませんし、またいまのダイヤをそうどんどんとめてしまうわけにもまいりませんので、実はその辺は御指摘のように非常に問題があることを承知をしながら、まあ何といいますか、ほかに道なしということでいまそういう道をとっているわけでございますが、この点はわれわれも非常に心配をし、また何か対策を考えなければいかぬというふうに考えております。
  181. 野坂浩賢

    ○野坂委員 高木さん、あなたのお話を聞いておると、ことし何とかいけばいい、来年はまた来年だ、こういう考え方、大蔵大臣もそう言っていましたけれどもね。ことしの景気はどうなるかわからぬのでまあことしは、来年のことも予測がつかぬと言っておりますが、大体同じようなことですよね、赤字を持つと。  たとえば上越新幹線、たとえば青函トンネル、こういって政治家の皆さんがどんどんやる。それは国鉄は受けなければならぬ、こういう点も確かに問題があるだろうと思いますね。本当に国鉄が見た目で、これとこれとこれはとっても国鉄の負担ということにはなりません、これだけは国鉄は責任を持ちます、これだけは私たちの範疇ではありません、こういうことを考えると、ここでたとえば地方交通線の問題や構造的欠損部分なんかしょっちゅう言いますね、そういうものを踏まえると、たとえば来年度の赤字というのは、五十五年度は一兆八十四億円ですね、来年度は一兆三千億円、これで政府が補助金を七千三百億程度出しておりますから、それも含めれば大体二兆円の赤字ということになるわけですね、こういうかっこうでどんどん累積すればあなたのところは助からぬわけですから、この辺ではっきり国鉄はこれだけです、たとえば幹線だけです、こういうことになると、この金額は幾らになりますよというようなことをはっきりしてもらわなければ本当の意味の国鉄の再建はできぬじゃないか、こういうふうに思いますが、どの程度ですか、また考え方、対策。
  182. 高木文雄

    ○高木説明員 まさにそのとおりでございまして、そしてまた、そのことは昨年の五月にお認めいただきました経営改善計画の中に明確にお示しをさせていただいたつもりでおるわけでございます。しかし、その処理ということになりますと、現時点では行財政的な処理を私の方は一方的にお願いをしておる、政府の方ではそれはいま何とも答えようがないという現状でございまして、ちょうどいまこういう非常にむずかしい行財政改革の時期にぶつかっておりますので、私どもだけの問題を優先的にお決めいただくわけにもいかぬというのもごもっともでございますので、私どもは私どもとしてこうやっていただきたいというお願いはいたしておるつもりでございますが、なかなかそれが実現むずかしいことでありますので、私どもとしてはお願いをいたしたままで、あとはしかしそれだけではない、もっといろいろとわれわれが自分自身の手でやらなければならぬことがたくさんございますから、そっちの方で経営の健全化を図りまして、こうやればできますというあかしを立てることにいま最大の努力を集中しておるということでございます。
  183. 野坂浩賢

    ○野坂委員 弱い者はなかなか言えないでかぶるだけかぶっておりますけれども、いまの言外のお話は、たとえば地方交通線の問題なり、終戦当時六十一万人にふえた皆さんが、普通であれば一万二、三千人やめるのだけれども、いまは二万五千人ぐらいやめるというような異常部分、特定退職手当、特定年金、こういうことを言うと、全部引くと国鉄だけで大体四千億円程度になるんじゃないか。それについては、ボールを小坂さんの方に投げておる。小坂さんは財界出身でありますからこれを受けとめてどうやられるかわかりませんが、そういう点については一方的にお願いをしておる。まだうんとも言わぬ。ほかのことをやっておりますということで、全体のものにならぬのですね、本当の意味の国鉄再建。これについては運輸大臣としてはどういうふうにお考えになっておりますか。国鉄の現状、工事の状況、そしてすべて借入金で工事が賄われておる、こういう現況に立って運輸省としてはどう対応しようと考えるのか。
  184. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 いま国鉄総裁からお答え申し上げたのが実態であると思います。  ただ、われわれといたしましては、昭和六十年を一つのめどにしておりますけれども、現状のまま進みますとその時点での長期の債務残高は、来年度で十八兆円でありますが、二十四兆円ぐらいにふくれ上がるだろう、こういうことであります。これが先ほど来の御設問のように大体が赤字をかぶった長期債務でありまして、こうした事態を改善するということは容易なことではございません。同時にまた、現実の累積赤字も六十年には十三兆に達するであろうという予測も出ておるわけでございます。  しかし、こうした大きな問題をいますぐ解決するということも、今日まで長い惰性の中で来たことでありますから、短兵急にはいかないということはだれでもわかることでございます。しかし、その前にやはり国民的な合意と申しますか、あるいはまた国民が見ての国鉄というものに対する目が、こうした赤字を脱却するための努力をしておるんだということを、特にまた国会皆様方にそうしたことを意識していただくためには、とりあえず先般決定されました昨年五月の経営改善計画の中でも、特に幹線部分については収支とんとんにまで持っていくというその部分を最も強力に進めなくてはならぬだろう。また、その六十年度までに一つの解決策としての特定退職手当あるいは特定年金、特に年金の問題でありますが、これは一応御理解をいただいて、現在大蔵省を中心にしての基本問題研究会がございまして、そこでも検討してもらっておるというようなことで、少しずつ糸口ができていると思うのであります。  しかし、基本的に申し上げるならば、国鉄というものは年間三兆円の売り上げしかないところでありますが、四十二万人おるということでありまして、この問題が、別に私は人間が多いということを申し上げているのではない、またそれだけの理由があるのでありますが、もしも普通の経営形態に入って赤字体質から抜け出すためには、何と申しましても、三兆円程度の売り上げをしている企業を見れば、せめて四、五万人程度で済むわけでございます。そこに大きな問題があるのであって、そこをどうやって合理的に仕事を仕分けし、そしてまた同時にその改善に持っていくかということ、そしてまた、そういう意欲が起こるためにも、先ほど来申し上げております累積赤字とか長期債務残高をどうやって解消していくかという問題、多少私も考えておりますけれども、いまこの公的な場でそのことを申し上げることは、未熟な案でありますので申し上げかねておりますが、しかし私は、やはりそこに根本的なメスを当てながらも、問題は現状においての幹線の部分の収支改善、そしてまた、できれば特定年金と称するものの改善、この二つに重点を置いていったらいいのじゃないかと思っております。
  185. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大体わかりました。私が言うとおり、いま幹線の収支とんとん、いわゆる四千億円、これが国鉄の当面の任務、あとについては、それができてからのことだというのが運輸大臣の答弁でありますから、そういうかっこうで当面進むということになりますね。  そこで、三兆円の企業だというふうにお話しになったのですが、ことしも二兆八千八百七十七億円、これが予算です。ことしの三月まででは大体八百億円減収ですね。来年は三兆円で収支とんとん、こういうことですけれども、来年は千五百二十億運賃を上げて見ておりますが、私はそれはなかなかならぬのじゃないかと思うのです。  弾力条項ができてから、ばかの一つ覚えみたいに毎年毎年六%から七%とどんどん上げて、政府もそんなに上げたつて人が乗らぬじゃないかと言って下げたぐらいですね。ことしも六・一上げて千五百二十億の増収というのは、私は見通しとしては困難だし、国民のニーズに合うことにはならぬだろうと思うのです。もう一遍再検討する必要があろうと思うのですが、総裁と運輸大臣、運輸大臣から答えていただきますか、時間がありませんからそれで終わりますから。
  186. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 現在国鉄から申請を受けております運賃改定でございますが、先般の予算委員会においても申し上げましたが、今回の値上げによって約千五百億円の増収を図らなければその他のいわゆる財政支出に関連して縛りがかかっておるというのも実情でございます。  われわれとしましては、この値上げが国民にある程度受け入れられるような形を考えてもらったことは事実でございます。たとえば競争路線のあるところについては値上げを大幅に控えるとか、ある場合には現状より値下げをするというようなこともやっておるのでありますが、それだけではなかなか困難な面もあるように思います。私といたしましては、今回の値上げは残念なことでございますけれどもやむを得ないわけでございます。しかし、この千五百億円程度の増収を上げることによって、その間に、今年じゅうと申しますか五十七年度にかけて、先ほど来申し上げております幹線の赤字退治と収支とんとんをねらっていくというような諸施策が進められることを条件にしてひとつお認めをいただけないものかなというふうに考えているところでございます。
  187. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもも、どのようにしてこの経営を直していくかという場合に、非常に大きな問題はやはり収入をどのようにして上げるかということでございますので、いろいろ工夫をいたしておりますけれども、なかなか追いついていかないという現状でございます。今回も、昨年来絶えず何とか運賃改定なしでいけないかということを苦慮してきたのでございますけれども、一昨年来の景気の低迷ということもございまして、輸送量の落ちが、私どもだけじゃなくて、国内輸送量が全般的に停滞ぎみであることもありまして、なかなか伸びないどころか落ち込みが見られるという現状でございまして、残念ながらことしもどうしても改定なしではやれないということになりましたので、やむなく値上げをお願いしておるような次第でございます。  この問題は、いずれにしましても、国鉄が以前と違いまして全く競争産業になってまいったわけでございますから、その意味を十分かみしめながら、また本来国民のための国鉄であるということを頭に置きながら考えていかなきゃならぬわけでございますが、あれこれいろんな問題が重なってきてしまっております。先ほど来御指摘のように、借入金が非常に多い、利子の支払いが巨額であるといったようなこともなかなか解決できないまま推移しております。そうした現状から見て、いま値上げをしないで済ませるということは不可能に近いと考えまして改定をお願いするに至ったわけでございまして、御指摘のように、この問題を何とか打ち切る日が一日も早く——打ち切りというのはちょっと不正確でございますが、値上げをしないで済む日が一日も早く来るように、そのつもりでがんばっておりますけれども、なかなかうまくいかないということについても御理解を賜りたいと存じます。
  188. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運賃値上げ問題については、ことしの経験から見て、運賃を引き上げたほど効果は上がらないということだけは申し上げておきたいと思います。  議論はもっとしたいわけですけれども、私はあと十分もありませんので、次に入らせていただきます。  運輸大臣、現在、自動車というのは四千万台になってきたわけですね。日本の道路というのは、市町村道から、県道、国道から、全部で大体百十一万キロですね。四千万台全部道路の上にざあっと並べますと、いまは大体十三メーター間隔でいっぱいになりますね。アメリカは六千万台ですから、自動車工業会等の計算によるとこれから六千万台にしよう、こういうお話であります。しかし、六千万台になると、また道路公団その他で狭い日本に道路をつけなければならぬ。可住面積を考えますといまはアメリカの十倍ですね。世界最高ですね。ドイツの二倍、こういう状況になっておるのが車社会の現状だ。したがって、もうそろそろやはり交通総合体系というかそういうものを考えていかなければ限界に来る状況になるんじゃなかろうかな、こういうふうに思いますけれども、運輸大臣は担当責任者としてどうお考えでしょうか。
  189. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 おっしゃるとおり、現在の道の状態あるいはまた公害とか交通安全とか、そうした面も充実すればするほど、さらにまたその間において輸送部門においてのトラックと国鉄との輸送力のいろいろなアンバランス等々を考えてまいりますると、ここにやはり交通全体の体系のより合理的な調整ということを非常に喫緊な問題として配慮していかなければならぬというふうに考えておりますし、前任者もそうした問題についてずいぶん苦労をしたという申し継ぎを私にしてまいっております。
  190. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そろそろ限界が来ておるということでありますが、私は時間の関係で特に物価に影響のあります物流問題についてお尋ねをしたいと思うのです、物流の輸送問題、貨物輸送ですね。  いま区域の事業者、区域免許、これはいま三万四千二百七社あります。それから路線の会社が三百五十六で、ざっと三万五千社と考えていいですね。競争は激化の一途であります。この事業者のほかに、自家用のトラックというのが八百三十三万台あります。この八百三十三万台のうち普通車が百六万台。三万五千社のうち、行政管理庁その他で監査しますね、これについては大体一年間で二千三百社やっておりますね。これに違反がある。この違反のうち免許の取り消しというのは大体十社程度ですね。ほとんど監査もできない、こういう状況にあります。よく覚えておっていただきたいと思いますね。これだけ自動車がふくそういたしますと、とてもこの事業者の監査もできませんし、ある程度免許を規制するといいますか、輸送の激化ということがありますから、その辺についてはどういうふうにお考えでしょう。野放しでいく、こういうことですか、ある程度規制が必要であるということをお考えでしょうか。
  191. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま委員仰せられました数字はまさにそのとおりでございまして、しかもそれが非常な競争激化の状態であると思いますが、一方においてこうした事業の運営についての免許制度というものについて自由にしたらどうかという意見ももちろん多数出ておると思いますが、当面、私といたしましてはやはり免許制は今後も存続していきたい、それでなければなかなか秩序が保てないのではないかというふうにも思うわけでございます。
  192. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういう状況でありますから、最近は事故件数なんかも非常にひどいですね。特に自家用車が多いですね、自家用トラックといいますか。死亡事故なんかで自家用車は営業車と比べると七六・二%ですね。こういう状況でありますから何とかしなければならぬわけですが、監理官みたいなものが配置されておりますね、十七名ですか、あとは警察庁ですけれども、これではとても対応し切れないというようなのが現状であります。したがって、これらに対応して一定の、いまお話があったように、規制緩和の意見の方もありますが、いまの自動車の状況、物流の状況、輸送状況から見て、私も運輸大臣と一緒な考え方ですが、一定のそういう特別立法というものを検討していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  193. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 特に自家用トラックの届け出と申しますか免許と申しますか、そうしたものについては大体積載量五トン以上のものをまずやるというようなこともいま検討いたしておるところでございますが、法体系全般についての見直しその他も現実の事態にだんだん押されておるわけでございますので、今後検討してまいりたいというふうに思っております。
  194. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間が参りましたが、もう四分ありますから、外務大臣にせっかくおいでいただいておりますので、お願いをしたいと思うのです。  この間私が総括のときに質問しましたように日韓の経協問題、これにつきましてはきのうで打ち切って、後は五月の連休時に外務大臣の会議をやって決定をしたい、決着したいということですが、そのときの状況ですね、十一項目にわたるプロジェクトの問題、一項一項について積み上げ方式であるから説明があったと思いますが、向こうの言い分、このダムについては幾ら、この教育施設については幾ら、こういう話があったかなかったか、それについての資料を予算委員会の皆さんにもらいたい、こういうふうに思いますが、その点はまずどうかということが一点。  あなたは私との話で、総枠ではなしに積み上げだと言っておられましたが、これについては、この間の記者会見では、後で弁明しておられましたけれども、総枠だというようなお話があった。それで後は政治決着をするんだというようなこと。  三番目は、向こうの韓国側の六十億ドルに対して外務省は十五億ドル、こういうふうに言っておる。いまは、五十五年度は百九十億円ですね。東南アジア等の並みもありますからね。その辺もありますから、いまは一億ドルが向こうは十二億ドル、あなたのところは五年間で十五億ドル、五年であって三億ドル。大蔵省は八億ドルと言っておるというふうに書いてありますね。それについての見解を外務大臣と大蔵大臣から述べていただきたい。これが三番目。  それから、朝鮮の統一問題については、この間もちょっと議論がありましたが、何といいますか、環境づくりに力を入れるということになっておりますね。あなたは人事、経済、文化、スポーツ、こういうことをお話しになった。その交流を含めながらだんだん統一への条件づくりをしていくんだということであります。  たとえば、具体的に日中の航空路の短縮問題が出ておりますね。いまわれわれが中国に行く場合は、北京に四時間かかります。この間ICAOのコタイテ会長ですか、中国とも話し、朝鮮民主主義人民共和国とも話し、韓国とも話し、そして日本においでになった。これが短縮をされると、北回り、南回りをとって大体三時間で行ける。いまは朝鮮をよけて通っておるわけですから、それを通る。これについてはどうお考えであるか。これは運輸大臣からもお聞きをしたいと思いますね。  もう一つは、朝鮮民主主義人民共和国との間に漁業の暫定合意書というものがあります。暫定協定というものがあります。ことし六月三十日に切れるわけです。先ほど議論した後向きの相互主義とは違いますけれども、相互に、やはりお互いに尊重してやらなければならぬじゃないかという、そういう相互主義の意味でやっておるのですけれども日本は与えるものが何にもない、みんないただいておる。軍事警戒ラインの百五十海里のところまでやっておるわけですね。櫻内さんの島根県の浜田、うちの境港、こういうところの漁民というのは重大問題なんです、これが切れると。これについての環境づくりもしてもらわなければ、今度の暫定合意というのは非常に問題だというふうに心配しておるわけです。日朝議連なり日朝漁業協議会も非常に心配をしておるわけですが、それらについて十分の御協力なり御配意を賜らなければならぬと思うのですが、農林大臣は帰ってしまいましたから、農林省のだれかからお話を……(「元農林大臣がいる」と呼ぶ者あり)そういうことでありますから、地元のことも関係があるわけですから、水産庁長官もおりますから十分お答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。四人ですね。
  195. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日韓実務者レベルの協議は、御質問のようなふうに進展はしておらないのであります。今回は、日本側は、対日要請項目の具体的内容や年度別事業計画の有無などについて質問をしたわけでございます。第一回の要請リストについてのわが方の一応の考え方は説明してございます。韓国側よりは、韓国の現在直面する第二次石油危機以降の非常に困難な状況にある、そういう状況説明、あるいは対日要請項目についての経済性、五カ年計画との関係などを説明され、また年度別実施計画などについての補足説明があったわけでございますが、わが方が十分満足するような状況にはまだ到達しておりません。しかし、二回の実務者レベルの会議を通じまして、今後外交ルートでいろいろ確かめながら進めていける、そういうふうに思っておる次第でございます。  したがって、資料要求につきましては、野坂委員承知のように、外交交渉中の過程のものは、これは資料としてはお出しできないというのが一般的な従来申し上げておるところでございます。しかし、また必要があれば、交渉内容についての差し支えない範囲を御説明をするというようなことば機会を持って申し上げたいと思いますけれども、資料の提出はお許しをいただきたい。  それから、そういうわけでありますから、総枠がどうであるとか、あるいは十五億ドルがどうであるとか、そこまではまだいっておらないのであります。私が申し上げておるのは、実務者レベルで話をする、外交ルートで話をする、しかし、最終的には外相会議がまず話を決着する場ではないか、そう言うと、いや、そこで政治的決着とかいうような推定をされて、いろいろ記事が出て、私も困っておるような状況でございます。  それから南北の関係の問題につきましては、これは御承知のように一九七二年の七月に南北の統一問題についての共同声明があるわけで、私どもはそれがもとで進展をすることを期待しておるのでありますが、それは現在ではうまくいっておらない。しかし、一九八〇年の十月に北側の統一に対する構想、それから南側では昨年の一月、六月、また本年の一月、この構想を述べておるわけでありますが、私はこういう状況を見て、これはどうしても国連の事務総長のような方が間に入ってやらなければ、思い思いにこう言っておってもなかなか進展はしないんじゃないか、しかし、わが国としては、朝鮮半島の緊張緩和ができ、統一のできるということは好ましいことでございますから、そういう見地に立って側面的な協力をしてまいりたい、こう思います。  それからICAOの問題につきましては、これはそこで熱心に日中の航空ルートについてお話し合いを進めておるので、外務省としてはこれが結実をしてもらいたい、こう思っております。(野坂委員努力するわけですね」と呼ぶ)はい。  それから漁業の関係について、お話しのように六月三十日の期限が参るわけでございますが、この点については、御承知のような民間レベルにおける交渉が行われておるのでありまして、野坂委員と同じように、六月三十日になって切れては大変だ、何とか民間レベルの交渉が円滑にいってもらいたいということを期待をし、また何か協力のできることがあればと思っておりますが、しかしこれはあくまでも民間レベルのことでありますので、お答えはこの範囲にさせていただきたい。
  196. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 先ほどの航空路の問題でありますが、一月の十一日にコタイテ理事会議長が日本に参りましたときに会いまして、懇談をいたしましたが、ICAOの方としましても北鮮上空ルート並びに韓国上空ルートを開設することがあらゆる意味においてきわめて適当なことではないかという考えで、わが方と全く見解は一致いたしたわけであります。現在このコタイテ氏中心にいろいろと調整を図ってもらっておる現状であります。  なお、この際にもう一件は、韓国の管轄空域圏をいままでは避けて通っておりました上海−福江間でありますが、これも韓国の管轄空域を通過していく直通ルートを設定すれば、現状よりもさらに二十分ぐらい短縮できるというようなことがありまして、この点につきましても先方に依頼をしておるところであります。
  197. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えを申し上げます。  日朝漁業暫定合意につきましては、お話のように六月の三十日にこの合意が期限切れになるわけでございますが、関係漁船が二千隻、それに漁獲が最高で四万トンもございました、そういうような水域の漁業の合意が切れるということでございますので、先生御指摘のとおり、非常に漁民の方方も関心を持っておられるということでございます。ただいま外務大臣からも御答弁がございましたように、日朝間には国交がございませんので、政府として漁業交渉はできないわけでございますけれども、暫定合意の延長のために私ども十分関心を持っておりますが、とにかく民間レベルの交渉が円滑に進展しますように、それを期待いたしておるわけでございます。水産庁といたしましても、できる限り支援、協力をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、なかなか交渉がむずかしいということの一つの問題点といたしまして、特にわが方の漁船が合意内容の履行につきまして若干問題を起こしているということも伺っております。その意味で、わが方といたしましては関係業界に対しまして、特に侵犯等がないように十分に注意をいたしたところでございます。また、日朝の漁業協議会も構成員に対しまして、十分遵守方の徹底を行っているところでございます。
  198. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日韓援助について、大蔵省は数字を言ったことはございません。われわれが経済協力で言っておることは、過去五年間の実績の二倍に今後五年間でいたします。それはグローバルな話でございます。交渉は外務省がやっておるわけです。大蔵省は、財政当局として国民の財布を預かっておるわけですから、これについては経済協力も有効なものでなくてはならないし、他の国とのバランスもございましょうから、外務省から相談があったときに申し上げることにいたしたい、そう思っております。
  199. 野坂浩賢

    ○野坂委員 どうもありがとうございました。
  200. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  201. 大原亨

    ○大原(亨)委員 昨日に続きまして重要な問題につきまして順次質問いたしますが、大臣の連絡の都合上順序を変えまして、最初に、中曽根長官に地方事務官の問題、分権の問題、この問題につきまして質問をいたしたいと思います。  そこで、いま行財政改革に取り組んでおるわけでありますが、そのときに財政上のつじつまを合わせることよりも行政の内容を、高度成長が終わって低成長に入っておるわけですから、その情勢に対応いたしまして国民の立場からどのように改革するか、こういうことであると思います。  そのときの原則は、やはり中央集権から地方分権へと、こういうことが一つの方向であるというふうにわれわれは考えておるわけでありますし、地方分権を通じまして行政の総合化、インテグレーションと言いますが、総合化を行う。あるいは高度成長時代の縦割り行政、助長行政、こういうものを地方分権を通じまして総合化すると一緒に、ノーマライゼーションということを言いますが、そういういままで世界各国で行政の水準の問題として目標といたしましたことを、日本においても日本独自の情勢の中で実現をしていくことが大切であると思うわけであります。  その分権に対する管理庁の考え方、臨調の考え方、あるいはその中におきます地方事務官という制度は、これは知事が監督をしておる、そして身分や給与や共済年金等は国家公務員である、こういういびつな制度で当面の措置をとっておるわけであります。これは運輸省あるいは厚生省、労働省、順次質問をいたしますが、自治省はもちろん総括的に関係ありますが、地方事務官の問題につきまして、こういう問題については決着をつけて、そして中央がやる分野、中央が負担すべき分野、行政水準や全体の方針あるいは財政問題、そして地方に分権をいたしまして少々の問題はございましても総合的な行政をやる、こういう問題についてはっきりした方針が必要であるというふうに思うわけであります。  基本的な方針とそれから当面の地方事務官の措置に対して、去年以来、議事録を調べてみますと、あらゆるところで議論されておるようですが、今日の来年度予算の審議の段階において、この問題につきまして明確な方針を行政管理庁長官として述べていただきたいと思います。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 地方分権の問題は、現在臨調において中央と地方との仕事の分け合いという意味におきましていま検討されておりますが、私の私見によりますれば、大原さんがいまおっしゃったような方向に大筋において同感でございます。これは日本の現在の行政の体質等々も見まして、ある程度地方に移譲するなり整理するなり、あるいは地方における仕事を統合化する時代に入ってきているように私個人としては思っております。しかし、臨調におきましていませっかくその問題については審議中で、今回決着すべき最大問題の一つとして真剣に討議しておりますから、私がその以前にとやかく影響を及ぼすようなことは申し上げたくないと思いますが、大体臨調もそういう方向の考え方に立っているのではないかと思っています。  ただ、その前提として、地方の自治体がしっかりしてもらわなければ困る。責任を持って、そして効率的な行政を住民の期待にこたえてやっていただくということがやはり前提になるだろうと思っております。一部の地方自治体に見られるような、給与が中央に比べて非常に高過ぎるとかあるいは放漫財政をやっておるとか、そういうことが続くようではまたこれは住民の期待に反する、そう思っております。  それから、地方事務官の問題につきましては長い間の懸案で、大原先生の御主張はかねてからお聞きしておるところでございますが、今度の臨時行政調査会の答申を得ましてそれでひとつ決着させたい、そう考えております。
  203. 大原亨

    ○大原(亨)委員 ちょっと前の時間が食い込んでまいりましたので、長官の予定時間、連絡が私の方が悪かったので失礼しております。  私は、こういうことに関心を持っていま調べておりますが、なかなか十分な資料は集まりません。行政管理庁長官にぜひ調べてもらいたいと思う。つまり、市町村とか県、県はやむを得ないといたしましても、市町村が一年間に陳情政治のために使う旅費や予算、こういうものはどのくらいか、こういうことを十分調べていただいて、そして縦割り行政の弊害について明確にしながら地方分権で行政の総合化を図っていく、こういうことがぜひ必要である。そういうことをやることを通じまして、いま大蔵大臣おりませんが、財政の効率的な運用ということも考えていくべきである。こういう点では行政管理庁は十分努力をしてもらいたい、そして、第二臨調に、どういう答申を出すか知りませんが、反映できるようにしてもらいたい。そのことだけを御答弁いただきまして、御退席いただきたいと思います。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただいま臨調におきましては、先ほど大体大原先生と同じ方向であると考えると申し上げました中には、やはりいまの三割自治という考えがいいか悪いかという討議が行われておりまして、財源をある程度地方に分与して、そして地方の自主、自律性において仕事をやってもらうということが基本的ではないか、そういうような考え方もありまして議論されておりますので、申し上げる次第でございます。  それから、地方事務官の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございますが、大体今度は最終的に決着したい、そういう考えに立ってやりたいと思っています。
  205. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは、地方事務官の問題につきまして、自治省は、地方自治の実態からどういうふうな臨調に対する提言、問題提起をなされておるか、その点を簡潔にお答えいただきたいと思います。
  206. 世耕政隆

    世耕国務大臣 この問題、各関係省庁の間でいろいろ協議されてなかなか解決がついていないのは御存じのとおりだと思いますが、私どもの方は、従来から地方自治体は地方公務員化を希望しております。自治省はあくまで地方自治体の上に立って物を考えてまいりますので、今回行われている臨時行政調査会でその方向に沿って解決されることを望んでいるところでございます。
  207. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは、各関係大臣から、地方事務官という国家公務員でありますが、これらを管轄しておられて、知事部局のもとにおいて仕事をしておる、そういう問題で、必要なものは残していく、そうでないものは移譲していく、こういうけじめをちゃんとつける必要がある、そういうことは。必要なものはちゃんと国家公務員として管轄する、いまのような形はおかしいわけでありますから。ですから、これを厚生大臣、労働大臣、運輸大臣、各大臣の方から御所見を述べていただきたい。
  208. 森下元晴

    ○森下国務大臣 地方事務官問題は、社会保険制度の仕組みと運営の根幹にかかわる非常に重大な問題でございます。先ほど中曽根長官から、第二臨調でこの問題を検討されておるということでございますが、この社会保険制度の仕組みの問題から見まして、国の経営責任を全うできる方向ということを考えました場合には、厚生省といたしましては、地方事務官制度を残していただきたい。どうしても廃止の方向ということになりました場合には厚生事務官として、社会保険事業は国の直轄事業として処理できる体制を確立しなければ効率的な行政ができない、こういうことでございます。
  209. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いま問題になっております地方事務官制度のあり方については、いま中曽根長官が言われたとおり、重大な関心を持ってやっておるつもりでございます。  そこで、私どもといたしましては、現行の行政体制が職業安定行政として実態にかなった制度である、こういうふうに考えております。しかしながら、仮に臨時行政調査会の結論が地方事務官制度を廃止するという場合においては、職業安定行政に要請される広域性、統一性及び専門性を確保するため、地方事務官の身分を労働事務官に切りかえ、職業安定行政を国の直轄事務とせざるを得ない、こういうように考えております。
  210. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 運輸省関連の陸運関係の地方事務官制度でありますが、これは昭和五十二年十二月の閣議決定によって政府の方針が明らかになっておるわけでございます。もちろん、現在は臨調の審議が進んでおるととろでありますが、しかし、自動車の検査登録関係の事務に従事する地方事務官を運輸事務官とするということなどを内容とします道路運送車両法の一部を改正する法律案を国会に提出しておりまして、今国会においても継続して御審議をいただいていることになっております。なお、これによりまして、陸運関係の地方事務官約三千人のうち、九割が運輸事務官となりまして、陸運関係の地方事務官問題の大半が解決されることになります。  なお、他の輸送行政事務に関連しましての地方事務官のあり方について、現在いろいろと検討されているところでありますが、運輸省といたしましては、行政効率あるいは自動車の広域的活動への対応あるいは総合交通政策の観点から、他の交通機関との調整あるいはまた保安行政の一体性等等を考えまして、運輸事務官とすることが必要であるということを考えております。  なお、こうした考え方を調査会の方に十分反映させるように、現在、調査会の審議状況を注目いたしているところであります。
  211. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは、政府として現在、統一ある方針をとっているのかどうかという点については、いま見解を聞きましてもかなり分かれておるような気がいたしますが、しかし、いずれにいたしましても、中曽根長官がはっきり言明されましたように、この問題については近く決着がつく、こういうふうに思います。ただ、その考え方先ほど申し上げたのですが、縦割り行政を打破するためには、やはり中央の政府の機能はどうあるべきであるかという点をきちっと統一的に政府全体で把握する必要があると思うのです。そして、たとえば企画の面とかあるいは財政のバランスをとる基本的な面とか、そういう面においては国はきちっと保持いたしますが、しかし、他の実施の段階においては、自治体というのは生活行政、福祉行政、横の行政ですから、そこで統一的に処理をするという方針で思い切った措置をとらないと、同じ行政の面におきましても、それぞれの分野で委任すべき分野があるわけですから、そういう点については、全体といたしましては、統一ある方針を進めてもらいたいと思います。  第二臨調に自治省が出しました問題の提起については、私も検討いたしてみましたが、細かな点はお話しになりませんでしたが・これも改めて分科会等で議論をいたしたいと思うのです。そういう問題につきまして、行政の従来の、言うならば惰性を打ち切るようなそういう方針を各大臣とも持って、そして全体といたしましては、いわゆる年金にいたしましても、医療にいたしましても、社会福祉サービスにいたしましても、住宅にいたしましても、雇用にいたしましても、全部住民一人一人を中心に行われるのですから、そういう面においてはかなり行政の水準も成熟している、上がっておるというふうに考えますし、いつまでも中央だけがわかっておるような顔をしていたのじゃいかぬわけでありますから、この点については全体として十分留意をされたいと思うのです。中曽根長官がおられませんし、総理大臣官房長官もおられませんが、そのことを私は強く要望いたしておきまして、答弁をする人がいないのでありますが、全体的な答弁をするのは大蔵大臣やりますか。あなたやりますか。  つまり、大蔵大臣、予算を編成するものが、大蔵省が非常に権力を持っておる。きのうから言っておる。それが財政のつじつまを合わせただけじゃだめだ、こう私言っているのです。そのことをいままで言っておったわけです。しかし、あなたは聞いておらぬようだから、そこの結論だけを、つぼだけを言っておいて前へ進めますが、管理庁長官はこれは決着をつけるというふうにはっきり言っておられますから、この問題については十分討議をして、全体として行政をどうあるべきか、新しい八〇年代、二十一世紀にかけてどうあるべきかという点を考えていかなければ、財政のつじつま合わせだけでゼロシーリングを繰り返すと、そうすると政治の矛盾というものがだんだん拡大する、こういう点を十分留意をしてもらいたいと思います。賢明な大蔵大臣は十分理解をされておると思いますので、前に進んでまいりたいと思います。  項目にあるところで、ついでに寝たきり老人の問題を私はこれに関係して申し上げたいと思うのですが、寝たきり老人と医療法の問題であります。  つまり、行財政改革の中で、行政を総合的に進めていく、インテグレーションと言いましたが、そういうことは新しい理念や考え方の一つの基礎になっておるわけでありますが、そこで、高齢化社会の最大の政治課題は、これは寝たきり老人の問題なんです。というのは、政府あるいは自民党は、家族基盤をどういうふうに充実させるかということで、家族に高齢者やみんなと一緒に生活するような方針を出すのですが、しかし高度成長を通じまして民族移動が行われまして、核家族化が非常に進んでおるわけであります。一人暮らしの老人がどんどんふえておるわけであります。その中で、寝たきり老人がどんどんふえているということが、国民の感情から言いますと非常に大きな先行き不安の問題というか、課題であります。  寝たきり老人の問題等を一つとって考えてみましてもそうでありますが、特別養護老人ホーム、施設ケアを中心にやるのか。これは、一人について措置費が十七万円もかかるわけであります。大蔵大臣、あなた御承知のとおりだ。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 そして、老人医療の無料化と一緒に医療費が重なってくるわけであります。ある場合にはこれを逆に使いまして、たとえば、私が後で申し上げるのですが、去年も予算委員会でやりましたが、神戸の近藤病院などというのは、医者と特別養護老人ホームあるいは第二薬局とかトンネル会社をずっと総合的に経営いたしまして、近藤グループをつくって十五億円の脱税をやっている、こういう問題が大きな問題になりまして、ここではアフターケアについて御質問いたしますが、いずれにいたしましても、そういう施設については金がかかって、そして、この寝たきり老人の、実際のそれを背景とする家庭的な情勢や地域的な情勢に応ずることができないという情勢ですから、どうしても在宅ケアを考えていく。在宅ケアを考えていく際には、どういうふうにこの在宅ケアを充実させたらいいかという問題を考えないと、私は、医療の問題は解決できないと思うのです。  そこで、そういう問題は日本が非常におくれておるわけです。日本の政治というものは非常におくれておる。ばらばらであるわけであります。たとえば厚生省だけをとりましても、各局各課が分かれておる。こういうことで補助金がずっと末端に流れまして、総合的に使われていないわけであります。ですから、寝たきり老人の対策をどうするのかという問題について厚生省ははっきりした方針がなければいかぬ。これについてはどういうお考えであるか、お聞きをいたします。
  212. 森下元晴

    ○森下国務大臣 人間は集団的な動物と言われておりまして、孤独に耐えることが非常に苦痛であるというようなことを昔から言われておりますが、私は、病人とか特に御老人の方々のやはりこの孤独という問題について大変心配をしておりますし、特に寝たきり老人は病気である上にしかも孤独であると、非常に精神的な問題も含めまして考えておりますけれども、いま御指摘のように、どういう方法で寝たきり老人対策をやるか。私はやはり、自分の生まれて育った自分の家で老後を、しかも一人きりの孤独を少しでも安らかに生活していただく、また治療をしてもらう、これに重点を将来注ぐべきだと思います。先ほど特養のお話も出ましたけれども、やはりそういう新しい方向で寝たきり老人対策をやっていくべきである、このように実は考えております。  いまいろいろお尋ねになりましたが、数字的に申し上げますと、御承知のとおりだと思いますけれども、五十六年度厚生行政基礎調査によりますと、在宅で半年以上床につききりの寝たきり老人が、六十五歳以上で三十二万四千人と、六十五歳以上人口の二・九%となっておりますし、また六十五歳以上の一人暮らしの老人は九十八万四千人と、八・九%となっております。今後寝たきり老人や一人暮らしの老人の数がどのようになるかについては、今後の高齢者人口の増加に伴いまして、昭和六十年には六十五歳以上の寝たきり老人は三十五万四千人、一人暮らしの老人が百八万六千人、昭和七十年にはまだまだうんとふえていく、こういう増加傾向が示されております。  まさにおっしゃるように、寝たきり老人対策は福祉の中でも非常に重大な問題として対処していきたいと思っております。
  213. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは住宅政策とも関係深いのですが、家に一緒におりますと生活に非常に困るということで、病院に入れます。普通の病院へ入れます。あるいは特別養護老人ホームへ入れます。病院へ入れましても、特養へ入れましても、日本の制度は、リハビリテーション、機能回復訓練をほとんどやらないです。ほとんどやってない。だから、死ぬまでそこで過ごすということになります。これは人生の最後といたしましては最も悲しいことであります、そういうことは。ですから、高齢者の医療というのはやっぱりリハビリテーション、脳卒中で倒れてもすぐリハビリテーションをやる、そういうことで家庭復帰とか社会復帰をさせるような、そういう方向でないとこれはふえる一方であります。ですから、いまのそういう制度からいいますと非常に大きな欠陥でございまして、特別養護老人ホーム自体も改革しなければならぬ。閉鎖的にしてはならない。家庭との間で自由に往復できたりあるいはリハビリテーション等についても強化するような仕組みをとっていかないと、これは高齢者対策にならぬわけであります。  在宅ケアを中心として高齢者対策をやると言われたのでありますが、在宅ケアを中心としてやる高齢者対策、寝たきり老人対策は、どういう政策を方向としてお考えになっておるかということを、これは政府委員でもよろしいから、御答弁いただきたい。
  214. 金田一郎

    ○金田政府委員 ただいまお尋ねの在宅老人福祉対策でございますが、特に必要なことは、寝たきり老人等に対するホームヘルパーの派遣であろうかと思います。  従来は、御承知のとおり、低所得階層だけにホームヘルパーを派遣していたわけでございますが、五十七年度からは、当面約三万五千人のホームヘルパーを必要とするというように私ども試算いたしておりますが、上りあえず年次計画で増員を図る方針を立てまして、昭和五十七年度には、従来の約一万三千人に対しまして三千二百九十八人を増員いたしまして、一万六千六百十八人という計画を持っております。そういうことで、今回は、画期的に増員いたすことによりまして、所得税を課税されているような世帯につきましてもホームヘルパーを派遣するようにいたしたわけでございます。
  215. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは寝たきり老人とそれから重度障害者、あるいは高齢者で脳卒中等で倒れて寝たきり老人になる人もたくさんあるわけですから重なっておるわけでありますが、いまホームヘルパーの話がありましたが、そういうことに対応する保健婦の派遣とかホームヘルパーは、これは国際水準からいいましたら問題にならない。実情からいいましたら日本は問題にならないわけです。これは話にならぬ。ですから、これは大きな医療問題でありますが、その問題の中で、私はいままで議論いたしてまいりましたことについて厚生大臣に聞きたいのです。  老人保健法の問題で私も議論いたしましたが、これは非常に欠陥だらけであって、だんだんと議員修正を通じまして非常に悪くなったという話をいたしましたが、これは時間があればまた申し上げます。そこで、問題は、それらに並行して地域の医療計画をつくらなければいかぬ。その中心は医療法の提案、改正、医療法をどうするかという問題だ。従来からずっと議論が重なってまいりまして、昨年来の国会におきましても、政府はこの国会に医療法を出す、こういうふうに言っておるわけであります。たとえば高額医療機器の問題にいたしましても、一つの機械が一億円、二億円いたしますと、御承知のように個人の診療所あるいは基礎の弱い病院等がやりますと、これをペイするために物すごい医療の弊害が出てまいります。これは、もうけるために、言うならば検査漬けあるいはこれを乱用いたします。たとえば富士見病院のような例であります、齋藤さんがおられればよくわかるのでありますが。こういう問題に対しまして、非常に重要な問題ですが、いまだにはっきりいたしておりません。医療法を出すか出さぬか、議事録を私持っておりますが、お答えいただきたいと思います。
  216. 森下元晴

    ○森下国務大臣 前の国会でも質問された医療法の問題でございますが、これは地域医療計画の策定、それから医療法人の指導監督、規定の整備、こういうものを内容とする改正につきましては昨年来検討を進めておりますが、今後関係方面との調整を進めまして、国会提出に向けて努力をしてまいりたいと存じております。
  217. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いつごろ出されますか。
  218. 森下元晴

    ○森下国務大臣 いつまでというお約束はできませんが、最大の努力をいたします。
  219. 大原亨

    ○大原(亨)委員 この国会中に絶対出しますか。
  220. 森下元晴

    ○森下国務大臣 いろいろ関係方面との調整を進めておる関係で、まだそこまでお約束はできかねます。
  221. 大原亨

    ○大原(亨)委員 関係方面というのはどこですか。
  222. 森下元晴

    ○森下国務大臣 たとえば党の社会部会等いろいろございまして、そういう方面との調整であります。
  223. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは何回も厚生大臣は国会で答弁しているのですよ。それで、与野党一致でこのことは決議しておりますよ。それば与党も何もないでしょう。いかがですか、この国会に出しますか。そのくらいちゃんとやりなさいよ、厚生大臣。審議にならぬじゃないですか。  つまり、地域医療の計画を立てなかったならば、医療を中心とする福祉行政の総合化はできないのですよ。こういうことが、資源を効率的に活用して住民のニーズに応ずるのですよ。縦割り行政、企業助長行政中心から低成長時代の高齢化社会に対応する施策の中心の一つはここにある。雇用政策、住宅政策と一緒に地域医療政策をきちっとつくる、こういうことをやらなかったら、これは厚生大臣の存在理由はないと思いますが、いかがでしょう。はっきり出すと言ってください。
  224. 森下元晴

    ○森下国務大臣 言われることはよくわかるのですが、現段階においては、まだそこまで私から出すことの確約はいたしかねます。
  225. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いままで国会で出すと言ったのは、うそなんですか。
  226. 森下元晴

    ○森下国務大臣 うそではございません。
  227. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それなら出すのですか。
  228. 森下元晴

    ○森下国務大臣 これは検討中でございまして、必ずこの国会で出すということは、現段階では申し上げられないということでございますので、その点御了解を願います。
  229. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いままで医療法をこの国会に出すということは言っていないのですか。
  230. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 最善の努力をするという約束をいたされております。
  231. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それから、質問順序を変えまして、屎尿の海洋投棄に移ります。  これは厚生省と環境庁の関係だが、実は東京都で大きな問題になっておる問題です。私は広島県ですが、広島県でもいままで非常に大きな問題にいたしました。つまり、広島県とか瀬戸内海沿岸の市町村は、屎尿を処理する場合に、昔海洋投棄を瀬戸内海でしておったわけです。しかし、人口が都会に集中いたしましてから、これが非常に目立って弊害が出てまいりまして、あなたは徳島県だから御承知のとおり、赤潮問題、赤潮の一つの大きな原因、富栄養化の問題が出てまいりました。それで軌道を修正いたしまして、海洋投棄を当面の措置として続けておったわけですが、これは、たとえば高知県の沖へ、あるいは和歌山県の沖へですから、高知県や和歌山県の知事さんや住民は猛反対いたしました。徳島県は聞いておりませんが、猛反対いたしました。海流の関係があると思うのですが、黒潮の外の五十海里のところへ一定の地点まで持っていくわけでありますが、しかし途中で底を抜きましたり、ひっくり返して帰りましたり、こういうふうないろいろなことが発生をいたしまして、社会問題になりました。  そこで、陸上処理に全力を挙げておるわけでありまして、焼却場等につきましても設置をいたしておるわけであります。厚生省へ政府におきましても、この方針につきましては五カ年計画を整備法によりましてつくった、こういうふうに私も承知をいたしておりますし、二百三十一億円のそういう施設を整備する予算も計上いたしておる。そこへ降ってわいたように、東京都が黒潮の外、三宅島の近くの方ですが、そういうところへ持っていって海洋投棄をするということをやったわけであります。砂町の施設を廃止いたしまして、経費が少し節約になるというのでありますが、これも疑問でありますけれども、そういうことで行政改革の一環としまして廃止をいたしました。そういたしますと、結果といたしまして東京都の三百万人の人口の屎尿を投棄することになります。三百万人、莫大です。砂町の陸上の処理施設をやめましてそれをやるということになりますと、これは全国に波及するのじゃないかと私は思うのです。  この問題につきましては、政府としては、一つの行政の基準ですから、自治体に対する介入ではなしに、どういう方針をおとりになっておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  232. 森下元晴

    ○森下国務大臣 厚生省といたしましては、屎尿処理は、おっしゃるように、原則として陸上屎尿処理施設で処理することといたしております。海洋投入処分量を削減する方向で、屎尿処理施設等の整備の促進を図ってきたところでございますし、今後ともその方針に沿って努力をしてまいりたいと思っております。  ただ、今回東京都が計画しております海洋投棄については、陸上処理の方が好ましいとは考えておりますけれども、下水道の普及に伴う屎尿収集量の減少、それから屎尿浄化槽の老朽化、それから財政再建等の事情を総合的に判断して決定されたものと聞いております。また、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の規定に基づいて行われたものでありますので、やむを得ないと考えておる次第であります。
  233. 大原亨

    ○大原(亨)委員 非常に歯切れの悪い答弁ですね。全体としての方針はこうだ、ただし東京都の問題についてはやむを得ない、こういうことですね。  申し上げましたように、陸上の屎尿処理施設といたしましては、砂町は私の手元の資料ではずっと二十億円を超える三十億円近い連続投資をしておりまして、そして終末の、最後の処理をいたしまして柑橘その他の肥料にするまで、全国的にも非常に模範的な陸上処理の施設と言われているわけなんです。それをやめて、それは確かに金は少なくて済むでしょうが、海洋投棄を三百万人分持っていくというふうなことは、いわゆる首都における行政といたしましては、これはいかがなものであろうか。  東京都の下水道の整備は大体いつごろまでにできるのですか。
  234. 山村勝美

    ○山村政府委員 下水道の所管は建設省でございますが、聴取いたしましたところ、現在、五十五年度末で七四%に対しまして、残りの整備を完了するまでには六十年代後半にまでかかるというふうに承知いたしております。
  235. 大原亨

    ○大原(亨)委員 つまり、いまから大体昭和七十年までかからないと下水道は済まない、下水道はできない。これは世界にわかりますと非常に恥になる問題であります、首都が昭和七十年まで下水道が整備しないということは。  そういたしますと、昭和七十年までずっと海洋投棄を続けていくのですか。厚生大臣、他の地域におきましても、海洋投棄は法律上できないことはないわけだ。しかし、政策としましては五カ年計画をつくりまして政府はやっておるわけですから、一定の助成をしておるわけですから、そういたしますと、一定の行政の方向といたしましては陸上処理を奨励しておるわけですから、量的にも首都において三百万人分をずっと昭和七十年まで、だんだんと小さくはなるにいたしましても、大量な投棄を続けるのですか、そういう方針を認めているのですか、やむを得ないと思っているのですか。陸上施設を、いままでできたものをなぜやめるのですか。他の、たとえば広島県でも岡山県でもどこでもそうですよ、施設をつくるために住民との間においては物すごいトラブルを起こしている。そうして、政府の方針に従って、赤潮対策もあったけれども、海洋投棄を続けたいと思ってもそういうことで陸上処理施設をやっているのですよ。そういうところがひっくり返るのですよ。やっているところはまた別の考え方が出ますよ。そういうことについてはどういう大きな方針でやっているのですか。  行財政改革でやむを得ないというのでしょう。しかし、大臣言ったように、そんなに行財政改革でやむを得ないというのならば、どのくらい経費の節減になるのですか。  三百万人分をずっと投棄しますと、投棄をする場所等にはサバとかイワシとかがばあっと集まるそうだな。物すごく太り過ぎるそうだ、脂が。脂っこい魚が集まってくる、それは太り過ぎる、こういうことです。  途中で抜いて落としたりする、台風等では回って帰る、底を抜いて帰る。そういうこと等については、海上保安庁見えておりますが、海上保安庁等は、いま実情はどうなんですか。
  236. 勝目久二郎

    ○勝目政府委員 お答え申し上げます。  屎尿投棄船によります屎尿の違法排出の検挙の状況から申し上げたいと思います。  最近五年間について見ますと、七件を検挙いたしております。そのうち、指定海域外に排出をしたものが四件、決められた排出方法によらないで排出をしたものが三件ということに相なっております。
  237. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それはなかなか全部を取り締まっていないと思うのですが、厚生大臣、あなたの方の課長さんがこの間船に乗って行ったらしいよ。片道十時間かかるそうですね。行きと帰りで二十時間です。投棄する時間があるでしょうから。天候等の制約もあるわけですが、そういう前近代的な方法に東京都で返す。全国もそういう方針なんですか。もう陸上施設はこれからはつくらない、金がかかるからつくらぬ。そうすると、五カ年計画との関係はどうなるのですか。決めたばかりの整備五カ年計画はどうなるのですか。具体的な問題は東京都で一定の結論を出すでしょうが、厚生大臣としてはどういう考えを持っているのか。これは好ましいと思っているのですか。いかがですか。
  238. 森下元晴

    ○森下国務大臣 厚生省としては、原則的に陸上処理が好ましいと思っております。したがって、海洋投棄は好ましくないと思っておるわけでございます。  ただ、東京都の事情につきましては、関係部長よりもう少し詳しく答弁をさせます。
  239. 山村勝美

    ○山村政府委員 大臣が申し上げましたとおり、五カ年計画等におきます私どもの屎尿処理におきます基本的な考え方は、陸上処理施設の整備ということを基本にいたしまして、それが整備されるまでの間、海洋投棄に依存するということを原則といたしております。  今回の東京都の措置は、まことに残念ながらこれに逆行することに相なるわけでございまして、計画の目標達成には影響がないということは申し上げられないわけでございますが、本来五カ年計画等の実施に当たりましては、緊急措置法等でも明定してございますが、いろいろな施策との調整を図りながら、また経済、財政上の事情等を勘案しながら弾力的にやっていくということが明記してございまして、実施段階ではいろいろ変動があるということでございます。  私どもの屎尿処理施設整備の場合、一般的には国の財政事情が最も大きい影響かと思いますが、屎尿処理で将来海洋投棄がなくなるのかとかいう課題につきましては、一つには、下水道整備によります水洗化ということを一つ基本にいたしております。もう一つは、民間で整備されます屎尿浄化槽の整備という他力的な依存がございます。したがいまして、そういうものが想定どおりに進捗するかどうかということが、きわめて重要な要件になってまいります。  一方、五カ年計画は全国をマクロ的に想定いたし七おりまして、個別計画につきましては、地方自治体がそれぞれ地域の事情に応じて計画をつくるということになっておりますので、どうしても不確定要素が、他の五カ年計画等に比べましても非常に多いというしろものでございます。したがって、都の影響については、現在の段階で明確に申し上げられませんけれども、実態的と申しますか、印象的に申し上げますならば、確かに都のようなマイナスのものもある。反面、たとえば先生御案内の土佐沖とか和歌山沖等におきましては、海洋投棄に関しまして漁民との契約が非常に厳しい条件にございます。したがいまして、期限が切れることに伴いまして緊急に施設を整備していくというような動きがかなり活発でございます。したがいまして、プラス・マイナス等があるわけでございまして、計画の目標に影響するとかせぬとかいうことは現段階では申し上げかねる。しかし、厚生省といたしましては、つまり施設整備計画でございますし、その基本的な考え方に沿いまして予定された事業量を確実に実施していく、これに全力を挙げてまいりまして、目標が達成するよう努力してまいりたいと考えております。  また、海洋投棄の問題は全国に広がるのではないかという御心配でございますが、現在四百七十万キロリットルということでございまして、東京都がその二割を占めておるという実情にございますが、それを半分にしていこうという計画でございます。全国に広がるかどうかという心配は、確かに計画の目標達成に重要な影響がございます。が、一般に海洋投棄を開始するにはいろいろ条件整備が必要でございまして、現在の施設をつぶすとかつぶさぬとかという大変基本的な財産処分の問題がございますし、また、新たに船を、自記航行記録計等装備した外洋船を準備せなければいかぬとか、積み荷の場所をつくらなければいかぬとかというような設備投資もございますし、また、とりわけ漁民との調整の問題等の制約があるわけでございます。都の場合には、そういう意味では非常に条件がいいと申しますか、現在の輸送回数を、週二回を三回にすればほどんどいけるというような、そういう設備面では非常に有利な条件にある、かつ、黒潮が東の方へ流れておるということで、漁場への影響もまず生じないという有利な条件にあると考えられるわけでございます。しかし、全国的に見ますれば、たとえば紀州沖、土佐沖では順次海洋投棄停止の方向に向かっておりまして、すでに施設整備を完了した、あるいは着手した市町村がどんどんふえてきております。また、近く切りかえる市町村もあるわけでございまして、したがいまして、今回都がとった措置によって直ちに全国的な広がりになるということは考えられないのではなかろうかというふうに判断をいたしております。  いずれにしましても、施設整備について全力を尽くしたいというように考えております。
  240. 大原亨

    ○大原(亨)委員 最後には施設整備について全力を尽くしたいと言うのですが、つまり下水道の完備を第一にする、こういうことですね。それから、施設の整備をその次にしておいて、そして海洋投棄はやむを得ないものだけにしておく、こういう方針だったんだ、いままで。それを、三百万人分ですから、ごっそり変えるということになる、実際には。漁民やその他にないといいましても、通路もありますし、地理的な影響もありますし、これはアメリカの方に行くような話ですが、いまは潮が。そういう話だけれども、それはそういういままでの大きな方針を変えることにならないのかということについていもう一回方針を、厚生大臣、はっきりしてください。
  241. 森下元晴

    ○森下国務大臣 先ほども申し上げましたように、厚生省としては陸上で処理をするのが大原則でございます。海洋投棄は過渡的な措置でございます。特に東京都の場合は、るる申し上げましたような事情で下水道の完成を待ってということもございます。ただし、陸上の施設につきましても、いま部長が申し上げましたような方向で行くということであります。
  242. 大原亨

    ○大原(亨)委員 第一の質問に返りまして、医療資源の効率的な活用につきましては昨日来議論をいたしております。それで私は、厚生大臣、基本的には日本の医療の中で、きのう申し上げましたように、十三兆八千八百億円ほど五十七年度の国民の医療費は負担になる。これは税金であろうが保険料であろうがそういうことでありますから、その中でやはり医療の資源を効率的に活用しまして、そうして内容を充実させるという、そういう知恵を働かせないといけない、こういう主張をいたしたわけであります。  その議論の一つといたしまして薬価基準の問題があるわけであります。薬価基準については、これはもう渡辺大蔵大臣はやや専門家でありますが、実勢価格と薬価基準との間において非常な乖離がある。ですから、そのさやに寄ってたかってみんなが奪い合いをする。医療機関ではないメーカーもそれを考えておる。そして、日本の医薬品の生産は、必要量の二倍から三倍というふうに言われている。生産過剰であります。比較的に輸出が少ないのであります。これは薬価基準の制度が一つあるわけであります。ゾロゾロメーカーというのがあるわけです。自分では独自の医薬品の開発に余り金をかけないで、類似品をつくりまして薬価基準に登載しまして売り込むということであります。薬価基準、これは近藤病院のときもありましたが、薬価基準に登載をしてない別な医薬品を買い込みまして、そして、それを安く買いまして、十分の一、二十分の一で買いまして、それを薬価基準で請求するという手合いもあるわけであります。  ですから、薬価基準と実勢価格の乖離を縮めていきまして、そして薬でもうけるということがないようなそういう診療報酬の体系なりあるいは医薬品制度をつくっていかなければならないわけです。そうすれば、何千億円かの金は浮くわけであります。それが結果といたしましては何兆円になるわけであります。行財政改革というのは、たとえば談合問題と医療の問題をきちっとけじめをつけますと、財源は浮いてくるわけですよ。これをきちっとやるのが政治だと思うのですよ、低成長時代の。  そこで、バルクライン九〇というのはいかにもひどい。この決め方について、しばしば議論になるように、いろいろな幅があるけれども、加重平均の制度をつくって実勢価格との乖離を防ぐ、そしてこの加重平均を超える問題については一定の政策で示す、こういうことがあり得る。そういう薬価基準の決め方について、まず厚生省としては権威のある基準を決めなければいけない、中医協に任すということはいけない、こう思いますが、いかがですか。
  243. 森下元晴

    ○森下国務大臣 医療費の問題は国の財政の問題につながる大問題でございます。その中でこの薬価の問題、薬の問題も厚生行政の中の重要な問題でございまして、われわれも先生の御意見を十分傾聴しておるわけでございます。  そこで、詳細につきまして薬務局長の方より答弁をさせます。
  244. 大和田潔

    ○大和田政府委員 保険局長でございますが、この問題につきましては、先生御承知のように、大変いろいろ議論があるところでございまして、現在九〇バルクライン方式をとっておるわけでありますが、この九〇バルクライン方式につきましても、御承知のように、経時変動調査等、実態を把握いたします調査を前提にいたしまして昨年六月に薬価基準の改定を行いましたところ、一八・六%とかなり実勢を反映いたしました薬価基準の改定ができたわけでございます。しかしながら、今後、おっしゃいますように、実勢価格をよりよく反映する薬価基準方式というものを当然検討しなければいけないということで、中医協にいま御検討をお願いしているところでございます。  この問題につきましては、御承知のように、影響いたしますところが非常に大でございますので、中医協で十分御検討願いまして、その結果を待ちまして私どもといたしまして対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  245. 大原亨

    ○大原(亨)委員 そういう答弁を繰り返すからいかぬというのだよ。だめなんだ、そういう答弁を繰り返しては。つまり、中医協へ投げかけておくと、支払い側と診療側と公益委員、こういう三者構成ですよ、意見が一致するわけないんだ。つまり、薬価によってさや稼ぎをするという考え方をなくさなければ、医者が言っている技術を尊重するという原則は貫かれないのだ。技術を尊重しろ、薬のさやはおれの既得権だ、こういうことを許したのでは、じゃ、医薬分業はやらない、こういうことではむちゃくちゃになってしまうのですよ。つまり、悪貨が良貨を駆逐しているのは、一つはここにあるのだ。それで、製薬企業の本来の自由競争とか開発とかというバイタリティーがなくなっちゃう。模倣だけすることになる。そして、小さなメーカーが顔をきかしては薬価基準に入り込む、こういうことになる。ですから、ここはこういう方法でやるべきであるという点を示して、そして中央医療協議会に案を出すべきである。こういう案があります、こういう案があります、そういうことをきちっとやらなかったら、この医療問題は解決できませんよ。  こういうことを言いますと、私は選挙にとっては不利なんですよ。不利なんだけれども、こういうことをやらなかったら、日本の医療問題は解決できないのだ。(「社会党にもこういう人がいる」と呼ぶ者あり)それは自民党の中にも賛成者はいっぱいおるのだ。あなただって、最近ちょっとふらふらしておられるようだが、賛成しているのだ。大体あなたとは意見は合っている。これは他の党もみんなあるのですよ。しかし、これを遠慮して言わないと、これは本当の改革にならないですよ。良心的な医師はそれを望んでいるのですよ。薬でもうけるということはさもしいと思っているのだ。自分の技術を生かしたい。技術の評価をしてもらいたい。技術を評価しろという主張は、薬でぼろもうけをするという主張とは相反しますよ。ですから、製薬品業界においても医療界においても、言うなればグレシャムの法則が作用しまして悪貨が良貨を駆逐するのであります。それがいまの不正やその他の根源であります。武見さんは、三分の一ははしにも棒にもかからぬと言ったけれども、最後ですからなかなかいいことを言われます。たまに賛成することがあるわけでありますけれども、そういうことなんです。  ただ、それは薬価基準のバルクライン九〇について改革する、こういう方法があるじゃないか、加重平均の問題が議論になって、ほとんどもう各界においては一致しておりますよ。その方針なら方針を出して、これを段階的にどういうふうに実施するかということを考えればよろしいのです。もう一つは、年一回薬価基準の改定をするというふうに、政府の中においても大蔵省との関係においてもあるいは臨調等においても議論が出ております。この問題についてどういうふうにお考えか、二つの点をいま一度明快にお答えいただきたい。
  246. 大和田潔

    ○大和田政府委員 中医協におきまして非常に熱心に、いま審議を毎月一回、すでに数回以上やっております。したがいまして、中医協の御意見を私ども反映させていただきまして、私どもの案をまとめてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  247. 大原亨

    ○大原(亨)委員 そんなら厚生省必要ないと言っているじゃないか。君の考えはどうだ、厚生省の考えはどうだ、みんなの意見はどうなんだ、この意見をやってください、こういうふうにやるべきなんだ。大蔵大臣、いかがですか。あなたはもう卒業生だけれども、財政を預かっているのですから、これは重要な問題ですよ。いかがですか。(「やや知っている程度だから困る」と呼ぶ者あり)
  248. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私もやや知っている程度ですから、余り断定的なことは申し上げられませんが、薬価の問題は重要な問題です。そこで、私も厚生大臣をやったことがありまして、実は厚生大臣だけしかっても動かないのですね、問題は中医協にあるわけですから。中医協で三分の一が欠席したら、全部中医協は開かれない。開かれなければ何にも決まらない。じゃ、三分の二残っているのだからその人たちで決めたらいいじゃないかといっても、議事規則で三分の一欠席すれば流会。問題はそこにあるわけですから、そのためには議事規則を直させろ。ところが、中医協が直さない。したがって、何か中医協をつくっているもとの法律を直していかなければ、幾ら厚生大臣だけいじめられても、これはどうしようもない。したがって、そういうところは抜本的に行政改革と含めて正していかなければ動かないのじゃないかという気がいたします。
  249. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これはきのうの話に返りたくないですけれども、そういう中医協に、老人保健法案では、老人保健審議会の審議事項の政府の原案の中には、診療報酬支払い、点数出来高払いの支払いについて、これを老人保健審議会、四者構成——三者構成でなしに四者構成、実施の主体の市町村もおる、そういうところに付議すべきであるという原案を与党修正で変えて中医協へ持ち去った。中医協へ持っていったならば、いまのように、そういう問題、一番大切な問題、世界じゅうで一番苦労している問題、そういう問題についても解決のめどがないじゃないか、こういうことをきのう私は指摘をしたのだ。  とにかく、政府が方針を持つ、そして、これを中医協にいかがですかといって国民の前で明らかにしたらいいじゃないですか。いかがですか。
  250. 森下元晴

    ○森下国務大臣 一応、薬価の問題につきましては中医協の考え方にまつということを局長が申し上げました。渡辺大蔵大臣からも、元厚生大臣でございまして、一つの見識を持たれまして過去の中医協の姿を言ったと思います。私は、中医協を実は信頼せねばならない立場にございます。信頼をしておりますから、やはり中医協にこの問題につきましては十分審議していただきまして決めていこう……(大原(亨)委員「厚生省の意見は出すのか」と呼ぶ)もちろん、厚生省としてはそれだけの見識がございますから、それは、おっしゃいますように、厚生省内の主体性と、やはり薬事行政につきまして、また保険行政につきましての見識は出すのが当然でございます。
  251. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは加重平均方式でとって、それを基準にして薬価基準に登載する、できないことは政策で補う、こういうようにすべきだということは大多数の意見ですよ。そうしましたら、うんと違いますよ。  最近の薬剤の使用状況について御説明ください。
  252. 大和田潔

    ○大和田政府委員 先般発表されました社会医療調査におきます政管健保におきまするところの医療費に薬価がどれだけ占めているか、これは五十五年度分でございますけれども、三八%を占めておるという結果が出ております。その後、昨年におきまして薬価の改定をいたしまして、その後の結果はまだ出ておりませんが、恐らくこの数字はかなり下がっておるのではないかと思っておるわけでございます。なお、まだ結果としては出ておりませんので、はっきりしたことは申し上げられないわけであります。
  253. 大原亨

    ○大原(亨)委員 シビリアンコントロールではないけれども国会でこういう議論をするとやっぱりある程度ブレーキになっておるわけだ。だから、しなければいかぬわけだ。シビリアンコントロールと同じです。あなたらに任せていたらどういうことをするかわからないのだ。だめなんですよ。あなたは新しい厚生大臣だから気の毒ですけれども、責任があるのですよ。  医療費の中の三八%というのは、こんなものは世界じゅうに類例がないですよ。薬漬けですよ。つまり、いまの医療制度の十三兆八千八百億円と言ったが、重複診療、これは検査漬けだ。高額医療機器等を乱用する。悪徳医師もおるわけです、良心的な者もおるけれども。聴診器を持って一生懸命やっている人もおる。結局はマン・ツー・マンだから。薬剤の重複投与ですよ。薬漬けですよ。その結果として、ペイするために重複投資。病院、診療所の機能をどういうふうに分化するかということは、世界じゆうで非常に苦労している。国営制度でなくても、保険制度であっても非常に苦労しておるのですよ。それが日本は重複診療、重複投与、重複投資ですよ。膨大な医療費を国民が負担することになっていて、国庫負担もふえているのだ。国庫負担をちょろちょろ削っただけじゃだめなんです。厚生大臣がちゃんとしたのが、私が言うように長い間がんばってきちっと行政を把握しないと、役人というのは責任をとらないですよ。とれない仕組みだ。とれないのだ。  そこで、年一回どういう方式をとろうが薬価調査をする、薬価調査をして薬価基準の改定をする、そういうことについていままで何回も約束したし、あるいは臨調もそういう意見を出しておるが、この点は守りますか。
  254. 森下元晴

    ○森下国務大臣 後で薬務局長より答弁させますけれども、年に一回の薬価調査はやることに決まっております。改定につきましても、その方向でやることに決めております。
  255. 大原亨

    ○大原(亨)委員 調査をし、年一回の改定をやる、こういう方針であります。調査はいつ完了して、そうして、いつから薬価基準の改定をいたしますか。
  256. 持永和見

    ○持永政府委員 私の方から薬価調査について申し上げます。  薬価調査につきましては、先生御指摘のように年一回やるということで、昨年の十一月に事前の調査をやっております。本調査をことしの一月にやりまして、現在事後の特別調査をやっております。その後経時変動がございますので、そういったものを追跡調査するという予定になっております。そういった後で集計をいたすということになっております。
  257. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ただいま薬務局長が申しましたような薬価調査並びに一連の経時変動特別調査等が終わりましてから、私ども薬価基準の改定に着手したいと思いますが、いっと言われましても、実はいま申しましたような調査がいつ終わりますか、さらに、その必要に応じまして経時変動調査というようなものも必要でございますので、いまの段階でいつということは明確に申し上げられない段階でございますので、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  258. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは、年一回薬価の改定をやる、どういう方法であろうが、現行法であろうがどうであろうが、そういうことについては約束できますね。
  259. 大和田潔

    ○大和田政府委員 そのように努力をいたしたいと思います。
  260. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いま経時調査ということを言っているのですが、経時調査というのは、時間がたつと情勢が変わっているから、それを修正するんだという。去年の六月に薬価基準の改定をいたしましたが、三年目に一回やったんだ。やりますやりますと言っていて、時間がたつともとになる調査を修正しなければいかぬ。経時調査、経時調査ということで延ばした。だから、年一回はやる。年一回はやらないと、薬のさやを、半分とか十分の一くらいで買っているのがあるわけですから、それを当てにして経営するわけです。だから、ショックを起こすものだから、わっと反対運動が起きるわけだ。だから、実情に即して調査をして、その方式でやるということが大切なんです。たとえ現行のバルクライン九〇であっても、毎年やるということが大切なんだ。そうすれば、実勢価格と薬価基準とのギャップが時間的に少なくなる、そういうことです。  厚生大臣、おわかりでしょう。責任をもってやりますね。
  261. 森下元晴

    ○森下国務大臣 一連の調査を終えまして、年一回やるということを大方針にして努力をいたします。
  262. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これはまだ議論は尽きないのですが、前に進みます。  これもやはり私が去年の二月の予算委員会のときに取り上げました神戸の近藤病院、十五億円の大脱税事件。これは大蔵大臣も国税局も、ちゃんと犯罪にもわたるわけですから、全部連絡をとってやるという話ですが、そのときに問題にいたしました第二薬局の問題、本論に入る前に第二薬局の問題。  近藤病院は、自分の奥さんや自分の名前によりましてトンネル会社をつくりましたり第二薬局をつくりまして、そして言うなれば所得を分散いたすということと一緒に、実勢価格と薬価基準の差を同じ資本の経営者が取る、こういう方式、第二薬局。  第二薬局の最近の状況、だれが第二薬局は経営いたしておるのですか、その多い特徴的な問題について御報告をいただきたい。
  263. 持永和見

    ○持永政府委員 いわゆる第二薬局と申しますのは、私どもの方で調査対象としておりますのは、一つは、薬局の開設者が医療機関の関係者であるということでございます。それからもう一つは、医療機関の近くに近接した形でその薬局が開かれる。こういう形でいわゆる第二薬局というのを定義いたしておりまして、それを前提といたしまして調査をしておりますが、五十五年の十二月末現在で千七件程度ございます。五十六年の状況でございますが、五十六年は、第二薬局を許可いたしました件数が、従来に比べてかなり減っているという状況にございます。
  264. 大原亨

    ○大原(亨)委員 近藤病院のつくっておりました第二薬局はいまどうなっておるのですか。第二薬局という場合に、近親者と言いましたが、妻なんですか、本人なんですか。
  265. 持永和見

    ○持永政府委員 御指摘の近藤病院の第二薬局は、有限会社北神中央医療薬局という薬局だと思いますが、これは五十六年の三月三十一日に廃止をいたしております。
  266. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それで一番多いのは奥さんにやらしておるものです。本人がやっておるのもあるわけです。そういたしますと、御承知のように、院外処方といいまして診断をして処方せんを発行するのですが、院外処方の場合には一件について五百円ある。調剤の方も増しがあるわけですから。そういたしますと、一日百人ほど患者が参りますと、特別に一日十万円はぽんと入るわけです。それを保険財政に請求するのですね。ですから、医薬分業をインチキでしておりましても、そういう経費が入ってレセプトで請求するわけですね。  そこで、医薬分業というのは、世界じゅうそうなんですが、構造上、経済上、機能上、薬局は薬剤師が独立をしていないと医薬分業にはならぬわけですよ。医薬分業ではない。そのことをたてまえにいたしまして、院外に処方せんを出す場合に点数を五百円にしておるわけですね。五十点にしておるわけです、一点が十円ですから。であるのに、そうでもない、法の趣旨に反することでもぐっておいて、そして薬剤の差益や所得の分散や、あるいは税金を言うなれば隠す、こういうことは許せないことであります。そのことは参議院でも公明党からも議論がございまして、答弁といたしましてはそれに対しては、私のときもそうでありましたが、厳格な措置をとる、そういうことに相なっておるわけであります。そうすれば憲法上の問題は一つ出てまいりますが、しかし、それは医薬分業を決定いたしました精神がそうなんですから、その精神に従って行政指導することは当然なんです。ですから、そのことを、当然のことをきちっと守るべきであると思うが、いかがですか。  つまり、医薬分業というのは、医師が出しました処方せんを薬剤師が専門家として、重複していないか、いろいろな作用はないかとかいってチェックするわけです。チェックしなかったら、事故が起きたならばこっちも責任がある。診断も責任があるが、処方も責任があるということになる。そして、重複して薬剤を投与いたしまして過剰投与になるのを防ぐのです。こういう機能もあるわけです。そういう安全性の機能もあるし、それから独立性の機能がある。独立してチェックシステムをつくると、お医者さんは、薬を出した、注射を打つ、そのことだけでもうけられる、そのことをもうけの対象にしないで分かれるものですから、できるだけ事故がない、安全なように患者本位にやる。こういうことですから、第二薬局の問題を解決することは、薬価基準の問題と一緒に、近代的な医薬分業はチェックシステムを確立する上において不可欠の問題であります。この問題については明確な方針を出すべきであるが、いかがですか。
  267. 森下元晴

    ○森下国務大臣 第二薬局の問題、また薬の価格の問題につきましてはおっしゃるとおりでございまして、私も原則的には同感でございます。いろいろと第二薬局の問題で全国的に事件が出たことも事実でございますし、厚生省といたしましては、やはり医薬分業の制度の精神にのっとりまして強力に指導をしてまいりたいということを申し上げます。
  268. 大原亨

    ○大原(亨)委員 厳重に指導する方針としましていままで議論になったのは、厚生省のそれらの事態、たとえば薬害事件が多い、この間クロロキンの問題が出た、コラルジルとか睡眠薬とかキノホルムとかという。日本は世界一の薬害国だ、薬害列島日本だとみんな言っているんだ。その問題は薬の扱いにあるのです。これが医療保険財政にも影響しているわけですから、そのことは、近代的なそういうチェックシステムを法の精神に従ってきちっとすべきだ。例外措置だけを振り回してやるということはもうやめなさい。ですから、その原則にのっとってやるべきである、そういう筋の通った通達をきちっとして、全国の都道府県の担当者の会議も開いてこのことを徹底すべきであると思いますが、これはいかがでしょう。これは行財政改革の一番大切な点ですよ。
  269. 持永和見

    ○持永政府委員 先生おっしゃるとおり、医薬分業というのは医薬品の安全性の確保の上からも、またお医者さんと薬剤師さんがそれぞれの機能を十分発揮するという形で国民の医療の向上のためにも、これは当然必要なことでございます。そのためには、御指摘のように薬局と医療機関は別な機関でございますので、それぞれの独立性が図られなければならないということも、これまた当然のことでございます。したがいまして、そういう趣旨で、私どもといたしましては、先生も御指摘ありました構造的な問題あるいは機能上の問題それから経済的な問題、そういう問題について独立した形で薬局を開設しなさいということで都道府県にかねがね指導をいたしておりますし、また、いま御指摘のように、全国の課長会議その他の形においても、この問題については厳正に指導をするようなことで申し伝えてございます。その結果、先ほど申し上げましたように、五十六年におきましては第二薬局の許可数が前年に比べてかなり減っているというような実態がございまして、今後ともこれは先生おっしゃるとおり、そういう方針のもとに私どもとしては行政指導を徹底してまいりたいというふうに考えております。
  270. 大原亨

    ○大原(亨)委員 近藤病院は十五億円の脱税事件ですが、これは厚生省としてはどういう措置をとりましたか、国税庁としてはどういう措置をとりましたか、御報告をいただきたい。
  271. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 厚生省といたしましては、直ちに兵庫県と連絡をとりまして事情の調査を行いまして、医師数の不足等につきまして指導をいたしますとともに、当該病院への救急患者の搬送等を行わないように指示をいたしました。その後、同病院に対しましては十分な注意をもって監視を続けているところでございます。
  272. 大原亨

    ○大原(亨)委員 医道審議会の問題とか、医師の資格や保険医の問題はどうですか。保険医の取り消しなんかちゃんとしなさいよ。これは三年前に前科があるのですよ。
  273. 大和田潔

    ○大和田政府委員 保険医の関係でございます。  事件発生後の五十六年の九月十日、十一日の両日に兵庫県と共同いたしまして監査をいたしました。その結果、不当または不正の診療の請求が明らかになりましたので、九月二十九日付で保険医療機関の指定の取り消し及び近藤医師の保険医登録の取り消しを行ったところでございます。ただ、この取り消しに対しまして、五十六年十月十四日でございますが、神戸地裁から執行停止の決定がありましたので、兵庫県は直ちに即時抗告を行っておるところでございます。  以上が、保険関係の処分の実態でございます。
  274. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 医師法上の処分につきましては、近藤直が昨年三月及び八月にそれぞれ所得税法違反、詐欺罪で起訴されておりまして、現在神戸地裁で審理中でございますので、その結果を待ちまして厳正に対処いたしたいと考えております。
  275. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 国税庁といたしましては、近藤事件につきまして五十六年の三月に告発をいたしました。直ちに検事捜査に入りまして、同月起訴されております。  その所得税の脱漏額でございますが十五億七千二百万、税額にいたしまして十一億六千三百万でございます。  現在のところ、公判係属中でございますので、内容については御容赦いただきたいと思います。
  276. 大原亨

    ○大原(亨)委員 たとえば埼玉県の富士見病院の問題、これは齋藤さんも名前出しましたが、有名な話になりますが、その後の問題、それから京都の十全会病院の問題、それから大阪の代表的な問題は川合病院の問題、これは大蔵大臣は非常によく知っておられる。そういう問題等があるので、その事後の経過を聞きたいわけでありますが、これは改めて別の機会にいたします。  いずれにいたしましても、やはりこの医療の問題は非常に問題を抱えておって、せっかく財政を担当しておられる大蔵大臣はこの問題についてはかなり深いわけでありますから、十分閣内で意識統一をして、国税庁のこともあります、全体のこともあります。これは文書偽造であり詐欺、横領ですからね。四十円のコストの物を四百円で請求しましたり、五回注射を打ったのを十回注射を打ったように請求するんでしょう。こんなのは明らかに文書偽造、詐欺、横領ですから。たまたま間違ってやったというのじゃないのですから。これは一般的に全部やるのだということがいけないわけで、それでは悪い方からやっていく。まじめな三分の一の医師というものは、やはりみんなやってくれと言っている。私どもはたくさん知っている。あんなものをほうっておくからいけないのだと言っている。医師会が本当に学術団体であるならば、自律能力があるはずだ。自分のところで処理しなければならぬ。診療報酬だって平均的なもの以上に、たとえばかぜ引いたら鎮痛剤、解熱剤、それからそれを飲むと胃が悪くなるというので食事の前に飲めばいいと胃薬、それから肺炎になるかもしれぬというのでビタミン剤と抗生物質、いろんなものをごっそり出すでしょう。そういうことは、やはり必要な診療基準があるのですから、医師会等はぴちっと診療基準をつくって、それを守らぬのは自己規律するぐらいな気持ちじゃないと、私は保険制度は維持できないと思う。  保険料負担の限界の問題について私は議論したいと思うのですが、時間の関係がありますけれども、厚生年金や国民年金や共済年金の保険料負担と医療費の負担がこのままいくとどうなるか、国民所得がふえていくとどうなるか、所得税と住民税との関係はどうなるかということを考えないと、これは十年先には大問題を起こす。こういうことですから、私は老人医療の問題についても、最近の状況というものは非常に憂うべき問題であり、政府の統治能力について疑問を持つ、こういう点があるわけですが、きょうはこの話は終わりまして、前に進んでまいります。  人口問題研究所の所長が来ているのですが、出生率が昭和四十九年以来非常に低下した。これは厚生省が修正するのですが、人口問題研究所のめどを超えて低下したわけです。そして、これは昨年一部修正して出しましたが、これはいろいろな学者の意見もそうですが、私は、昭和六十年にいまの状況が最低になる、合計特殊出生率が二・一というように考えておったのが最低になる。出生率がだんだんと低下して、最低が一・六八人、二人と三人の子供を持った人が大多数であったのが、二人と一人になるという状況であります。そういうことが続きますと、これは教育にも影響あるし、労働にも影響あるし、産業にも影響あるし、経済計画にも影響があるわけでありますが、その基礎になる出生率の低下の原因と見通しについて、人口問題研究所がこの中心的な作業をいたしまして昨年出しました見通しは、いままでと同じようにこれは非常に安易なものであって、事態の深刻さを考えていないものではないか。調査の問題ですから、議論の根底にありますから、これについて簡単にお答えをいただきたい。これは長い時間、かかったら三十分ぐらいかかるんだから、簡単に答弁してください。
  277. 篠崎信男

    ○篠崎説明員 ただいまのお答えをいたします。  結局、この出生力が減少いたします原因の直接のものが三つございまして、一つは、新しく結婚適齢期に入るところの人口の年齢構造の問題、もう一つは、結婚年齢、それから婚姻率、この三つが直接の原因で出生力を決めることになっております。  たとえば、いままで下がりましたのは、昭和三十四年から五年間は、ちょうどその前のベビーブームがございまして一千三十九万生まれました、しかしながら、その後の出生率が落ちまして、その合計が大体八百二十四万、二百十五万の減退でございます。この減退の若者が結婚適齢期にちょうど昭和五十年から入ってまいりました。したがって、枝それ自身が少なくなってきている。もちろん葉っぱは一枚、二枚ふえますけれども、枝自身が少なくなってきているというところに一つの大きな原因があります。それから、昭和四十八、九年より婚姻年齢が上がってまいりました。いままでは女の方が大体二十四歳でございました。ところが、これが二十五歳に晩婚化の傾向、婚姻率も六・七に下がってまいりました。  この三つが大きな出生率の低下の原因でございまして、われわれはそれを踏まえて将来を見通しますと、昭和四十二年から四十六年まで、再びこのいわゆる結婚適齢期に達しますところの年齢構造が九百三十三万にふえます。つまり二百十五万減ったのが今度は百十万ふえる、そういう状況を踏まえまして将来の人口の推計の予測をいたしたわけでございますが、たとえば昭和六十年は、ただいま申し上げましたとおり非常に低い、合計特殊が一・六八人になります。しかしながら、いま言ったように毎年毎年結婚年齢に入ってきます人口がふえますので、昭和六十五年にはこれが一・七四。一・七四と申しますのは、昭和五十五年度の合計特殊出生率でございます。そこまでいく。その後逐次、昭和四十六年からは再び第二のベビーブームが始まりまして、約四年間に八百万が生まれております。そういう方々が逐次結婚適齢期に入ってまいります。そうしますると、底支えをいたしまして、そしてそれが昭和の七十五年には一・八五にだんだんと回復する。そういうものをずんずん計算いたしますと、昭和百年には再び二・〇人くらいの、いわゆる置換水準のレベルに達する。長いことでございますけれども、その底支えは昭和六十二年まで続くであろう、その後はじわじわと回復するのではなかろうかということを考えております。大変簡単ですが……。
  278. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは非常に関心のある問題ですが、余り議論していたら……。  しかし、出生率が低下したのは、そういう適齢期が下がったとかあるいは結婚の数が減ったとか離婚がふえたとかいう三つの理由じゃないんだ。そういうふうに考えているからいままで全部外してきたわけです。全部外れてきた。それは外国の例を見てみましてもそうはならない。そうして、実際上、高学歴化とかあるいは共稼ぎしなければ住宅ローンが払えない、教育ローンが払えない、住宅もない、こういうこと等が全部重なっているわけです。それで、先行き不安があるわけですから、石油危機以降の心理状況があるのです。心理状況がありましたら出生率は低下するんだから、そういう要素を全部集めてみて、これをどうするんだということを議論しないとこの問題は議論にならないのです。ヨーロッパ等では、ドイツ等では合計特殊出生率が一・四人台に下がっておる。しかし、外国から、アフリカその他から、完成された出稼ぎ労働者が二百万人来ておりますよ。ところが、日本はどうなるかという問題があるわけです。そうすると、雇用問題が非常に重要になってくるわけですが、一緒に働いておる母性の保障をどうするかという問題も出てくるわけです。児童福祉の問題も出てくるわけです。住宅問題が出てくる。こういう問題で、時間がありませんが、私は問題は、いまのような予測をするから全く予測外の事態が発生をいたしておるということであって、そういう問題については、事実に即して真剣に考える必要があるということであります。  時間もありませんが、最後に一問、済みません。  早稲田鉄灸専門学院、新宿にありますが、これの認可問題がいま審議会にかかる過程であります。鉄灸、マッサージ等の東洋医学の問題は、文部大臣きょう見えておりませんが、日本はやはり本格的に研究に入るべきであります。しかし、それと一緒に、たとえばもう一つの重要な点は、盲人の皆さん、視覚障害者の皆さん方の職域を拡大するような雇用政策、労働大臣見えておりますが、雇用政策を思い切ってとる必要があるわけであります。視覚障害者であってもできないものは何もないそうだから、そういう職業領域を拡大することが大切であります。それと一緒に、現在の視覚障害者の職域を保護することも大切であります。ですから、そのことに対処しまして、新宿でそういう専門学校ができることについて、これは晴眼者、健常者ばかりが対象でありますが、そういうことにつきましていろいろな角度からの関心が起きておるわけであります。事態を十分精査をされて、意見を聞かれて、この問題については慎重な指導をしてもらいたい、こういうことを要望をいたしておきます。これに対する御見解を承りまして、終わりたいと思います。
  279. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 この問題につきましてはあん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等中央審議会というのがございまして、ここに目の不自由な方の関係団体の代表の方も入っておられますが、この審議会におきまして十分御審議いただくことになっております。その審議の結果をちょうだいいたしまして、いたしたいと思います。
  280. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に、平石磨作太郎君。
  281. 平石磨作太郎

    ○平石委員 一番最後で、土曜日の午後になりましたが、しばらくのおつき合いをいただきたいと思います。  ところで、いま大原委員の方からもちょうど最後に出ておりましたが、私もこの問題についてちょっとお伺いをしてみたいと思うわけでございます。  完全参加と平等をテーマにして国際障害者年が昨年行われたわけです。     〔委員長退席、堀内委員長代理着席〕 そういう障害を持った方々は決して社会に甘えてはおりません。みずからの力と努力をもって生業に日夜努力をしておるわけであります。そういう障害者の方々の中で特に視力障害者、この視力障害者は、厚生省が四十五年に調査したときに二十五万、そして五十五年、十年たってまた調査をいたしたときに三十三万六千、その間に八万六千人ふえております。こういう方々が非常な努力をしてがんばっておられるわけですが、障害者年として特別に昨年運動が行われたことについては、やはり完全参加と平等ということについて一般社会の温かい理解と協力はもちろんのこと、行政を担当せられる政府においても、また政治に携わる方方も、こういったハンディを持った方々の社会に参加し得る条件、これを整えてやることが政治の、そして行政の目的なんだ。私は、そういう立場からこの障害者行政というものを考えたときに、ここに行政の基本があろうかと思うわけです。したがって、こういう立場に立って、私は、以下質問を申し上げてまいりたい。  いま申し上げましたようないわゆる条件づくりということについて、担当の厚生大臣はどのようにお考えか、お伺いをしてみたいと思います。
  282. 森下元晴

    ○森下国務大臣 完全参加と平等ということで昨年国際障害者年、華々しく花火は上げられたわけでございます。しかし、一時だけの障害者年ではなくして、十年間の行動計画を立てて、そして障害者の方々の福祉のためにやっていこう。総理が本部長、私どもは副本部長ということで全力を尽くしたいと思っておりますが、その中でいまおっしゃいましたあんま、マッサージの方々等の職場が非常に奪われておる、障害者年と反対する方向に行っておるじゃないかというような御趣旨でございます。それにつきましては後で関係者から詳しく説明させますけれども、やはり障害者年、またこの行動計画に沿いましてそういう方々が職場を奪われないように、福祉の精神に沿いましてそういう方々が恵まれるように全力を挙げたいということをお誓い申し上げます。
  283. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣から、やはり政治、行政はこういった方々の条件づくりに全力を挙げる、こういうお言葉をいただきました。  そこで、具体的にお話に入るわけですが、この方々は昔から、いわゆるあんま、はり、マッサージといったような仕事につきまして本当に生業として長いことこういった職域で働いてきたわけです。したがって、この方々の仕事といえば、いま非常に仕事は多様化されておりますけれども、視力障害を持つこういった方々はまさにこの職種が一つの聖域である、この聖域は私たち晴眼者にとりましても、また政治、行政を預かる方々も守ってやるというのが当然ではなかろうか、私はこういう感じがしておるわけです。  そういう意味から、今回、晴眼者でもってこういった技術習得のための学校の設置について認可の申請が出ておるわけですが、この認可の申請については、いま大原委員局長からお答えがございましたが、厚生省としての主体的な、いま私が申し上げたような立場に立ってのお答えとはどうも解しかねます。したがってもう一言、このことについては厚生省が主体的にどう考えておられるのか、お答えをいただきたい。
  284. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先生お話しのように、私どもも視覚障害者の方々のこういった職域につきましては十分了解しているところでございます。ただ、先生御指摘の学校につきましては、一応昨年の九月に審議会におきまして保留の決定をいたしたのでありますけれども、その後、東京都知事から関係団体に調整が図られたというふうなことが出てまいりたわけでございます。しかし、私どもとしてはそういった先生御指摘のような点も考慮いたしまして、今後、先ほども大原先生に申し上げましたように、中央審議会におきまして十分御審議をいただく、こういうふうにいたしておるわけでございまして、この点、御了解をいただきたいと思います。
  285. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、もうちょっと具体的にお聞きしたいのですが、いまこういう職種の中で晴眼者とそれから視力障害者との比率、これはどういうようになっておりますか、お伺いをしてみたいと思います。
  286. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 大都市におきましては晴眼者と視覚障害者の比率が七対三となっております。
  287. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま局長お答えのように、晴眼者といわゆる障害者との比率は十人のうちで七人が晴眼者、そして三人がいわゆる視力障害者、これはもちろん需要に当たってのお仕事がいろいろ多い関係もありましょうから、当然視力障害者だけでこれを消化するということは困難かとも思います。だが、そういう中で大体七割、三割というような状況が出ておるわけです。そして、そういう状況の中へこういう申請が出てきておる。そして、先ほどるる申し上げましたような立場から考え、しかもいまの答弁にありましたように、単なる行事としての障害者年ではなくて、長期の行動計画の中で障害者対策を強化していこう、こういうような時代になっておるわけでございますから、やはりこういった方々の職域は守ってやる、これが一つの基本ではないか。そしてこの障害者の、あんま、はり、きゅうの三師の法律の中の十九条には、まさにそのことが規定されておるわけです。晴眼者とそういう障害者との比率を考えて、そしてむやみに晴眼者がいわゆる障害者の職域を侵すことのないように法律で決められて、保護がなされておるわけですね。この規定から言ったときに、仮にこの審議会からオーケーという答申がなされた、あるいは報告がなされたといったようなときに、厚生省はやはりそれを尊重するのか、あるいはいま言うこの法律の運用の上においてどう判断されるのか、ここらあたりお答えをいただきたい。
  288. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 中央審議会におきましては、十三名の委員中視覚障害の方が五名お入りになっておるわけでございます。ただいま先生お話しのような御趣旨につきましては、中央審議会に十分その趣旨を私どもとしてもお伝え申し上げまして御審議をいただきまして、そういうふうな先生の御趣旨が反映できますように努力いたしたいと考えます。
  289. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこでもう一つお伺いをいたしてみたいと思うのですが、昨年の六月の一日医療費改定が行われました。この医療費改定によって、従来は診療報酬の中にいわゆるマッサージ料というのが入っておったわけですが、このマッサージ料がその診療報酬の中から削除されて、理学療法ということになりましたね。この削除されたというのは、厚生省にもそれなりの理由と説明はあるかもわかりません。あるかもわかりませんが、これもどうかなという気がする。  先ほどから申し上げておりますように、障害者年が去年から始まった。そして六月の一日に従来あったものが、したがって、こういった資格を持っておる方々が病院に勤務をされて、そしてリハビリ、いろいろな理学療法についての技能でもって患者さんに当たっておられる方がたくさんおるのです、それが解雇が始まったわけです。もう首切りだ、もうあなた方は診療報酬からなくなったんだから解雇いたしますというような形が各地に出ておりますが、厚生大臣、御存じでしょうか。
  290. 森下元晴

    ○森下国務大臣 承知しておりまして、私どもも団体から陳情を受けております。これはかなり誤解もございますし、また誤解を生むような内容も実はあるようでございまして、後で関係者から詳細説明させますけれども、結論は、視覚障害者の雇用の確保の問題はきわめて重要な問題でございますし、この点厚生省といたしましては十分改定の趣旨を徹底して、おっしゃいましたようにマッサージ料が除外されたり、またマッサージ師が解雇されたりというような誤解、不幸がないように啓蒙啓発運動をやっていきたいと思います。  あとを答弁させます。
  291. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答え申し上げます。  昨年六月の診療報酬改定でございますが、これは実は、従来たとえば温熱療法とかマッサージとか電気療法とかという個々の行為に加算するというような形のリハビリの点数であったわけであります。これは従来からいろいろ議論されておったところでありますけれども、この理学療法というのはむしろそういう個々の理学療法ではなくて、一つ総合的に包括的に組み合わせまして、そこで、たとえばこの患者にはマッサージをやり、温熱療法をやり、あるいは体操療法をやり、またマッサージをやる、そういったような療法を総合的に展開する方が、はるかにリハビリの効果を上げるといったような非常に積極的な意図から、丸め、総括的な点数にした。  その結果、医療機関につきましては健全経営の確保という観点から、たとえば認定施設のような場合には、従来百六十点、千六百円の点数であったものを三千点というような点数にする、あるいは簡単なものでも八十点、八百円という金額を百二十点、千二百円にするというふうに、かなりの引き上げを行ってまいりまして、そういったような面で医療機関の経営にも資するところがあるというふうに考えておるところでございます。  ただいま先生おっしゃいましたマッサージという名前が消えた、これは一つ誤解を受けている面も実はあるわけでございます。この運動療法に、つまり丸めまして、そこで包括的に実施をしてもらうという運動療法の中のかなり重要な部分に、マッサージという行為が含まれるわけでございます。それがどうも、マッサージという表現が点数から落ちたためにマッサージがなくなったというふうな理解、誤解があったというような感じもいたします。  そういったようなことにつきましては、誤解を解きますように全国の民生部長会議であるとか、あるいは全国の保険課長会議で私ども強く指導をいたしまして、趣旨の徹底が図られるように指導をしたところであるわけでございます。その点ただいま大臣が申しましたように、雇用がされなくなったというようなことにつきましては大変残念なことでございますので、できるだけこの趣旨を理解できますようなことで私どもも指導を強めていきたいと思っておるところでございます。
  292. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま御説明をいただいて、厚生省はそういう説明はできると思うと僕は言った。そういう説明は説明でも、奥さんを持ち、そして生業として病院勤務をして働いておられた方が現実に首切りになっておる。それは説明だけでは何にもならぬということですね。したがって私は、そういうことであるならば、点数も引き上げました、そして総合的に集めました、マッサージという名称がなくなった、だがマッサージの方々がそこで仕事ができて、マッサージの方が治療を行ったら診療報酬に入るのですか入らぬのですか。
  293. 大和田潔

    ○大和田政府委員 先ほど申し上げましたように、認定施設におきましてリハビリをやる、この複雑なものというのは一日十五人程度の患者を理学療法士が診る、あるいは簡単なものというのは四十五人程度診るといったようなことでございますけれども、その理学療法の中にマッサージが相当重要な部分を占める、こういうことでございますので、先ほど申しましたように、マッサージをやる、それから温熱療法をやる、それから水治療法をやる、それから機械療法をやり、またマッサージをやる、こういった組み合わせがあり得るわけであります。現にやっておる。その場合に、マッサージ師がそこに参加をしてやっておるわけでございますので、そこには十分マッサージ師の働く場があるわけでございます。  その場合には、先ほど申し上げましたように、現行千六百円の点数は三千円に引き上げておる。これは複雑な場合でございますけれども、そういったような引き上げをやっておるわけでございまして、さらに医療機関につきましても、経済的には健全な経営ができるような措置をとっておるわけでございます。したがって、マッサージ師の雇用問題というのは、どうもそれにもかかわらず起こっておるというのは、私どもといたしましてはまことに残念だという感じがしてならないわけでございます。
  294. 平石磨作太郎

    ○平石委員 解雇が始まったのは、これの改正が行われてから解雇が始まったわけです。そして、いまお話にありましたように総合化された。それは理学療法士いわゆるPT、こういった方々がやればいいわけでありますし、さらにこの方々は非常に技能者が少ないということです。それから養成も少ない。これはお聞きしたらいいのですけれども時間がありませんから申し上げますが、いわゆる理学療法士、PT、この方々は非常に少ないわけです。そしてマッサージの、昔から認可をもらって病院勤務をしておられる方々が、あなたがおっしゃるように大部分やらなければいかぬのです。そして温熱その他いろいろ、いままでは局所、腕をやった、足をやった、肩をやった、こういった形でそれぞれ併用がなされておりました。ところがいま併用がなされなくなって、一本になったわけですね。一本になって、もうマッサージのあなたは用済みです、こういう形になってしまっておるわけです。  だから私は、全国の所管部長会を開いて、そういった誤解あるいは取り扱いの間違い、解雇することが厚生省の真意ではないのだ、やはり引き続き病院内において使ってください、そして使った以上は診療報酬でも請求できるんですよ——マッサージ料がなくなったから病院のメリットにはならないという形でこれが解雇されておるのですから、そこのところをちゃんと病院まで真意を徹底していかないと、だんだんこれからもさらに解雇が続いていく、こういう気がしてなりません。ここにいろいろ事例についての新聞その他もございますけれども、これを一々紹介しておりますと時間がたちますから、そこの徹底ができるかどうか、これをひとつお答えをいただきたい。  もう一つ、これは労働大臣にお聞きをいたします。  障害者雇用促進法という法律がございます。これにはそれぞれ障害者についてのいわゆる雇用率が決められておるわけでございます。民間の産業その他においては一・五という雇用率が決められて、そして身体障害者の雇用の促進については特別法をもって努力をしておられるわけですが、医療機関におけるそういった解雇問題——私はちょっと統計を見てみますと、これについてはサービス業の中ではまだ五〇%ぐらい未達成の事業所があるわけです。そして、せっかくいままで雇っておられた病院から解雇を受けるということは、まさにこの雇用促進法の逆になっておるわけです。これは当然労働大臣としても関心を持たなければならないことだと思うのですが、ひとつこの点、厚生省と労働大臣にお答えをいただきたいと思います。
  295. 大和田潔

    ○大和田政府委員 前段の問題につきましてお答えいたします。  すでに先ほど申しましたように、全国民部長会議、それから保険課長会議に対しまして趣旨の徹底を図るよう指示をいたしたところでございますが、なお機会あるごとにそのような趣旨の徹底をしていきたい、かように思っております。
  296. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いまお話がありました視覚障害者については、その職域も限られております。したがって、あんま、はり、きゅう、いわゆる三療、に従事する方に多い現状にあったために、重度視覚障害者については普通の雇用率制度のほかに特別の雇用率制度を設け、原則として病院とかあるいは診療所等でのあんま、マッサージ、指圧従事者の七〇%以上が重度の視覚障害者となるように指導して、その雇用の促進に努めておるわけであります。  さらに労働省といたしましても、あんま、マッサージ、指圧師の職場を広げるために、企業に対しましてあんま、マッサージ、指圧師の雇用を働きかけてきたところであります。最近では金融機関あるいはデパート等で、従業員の健康管理のため産業マッサージあるいはヘルスキーパーなどとして、あんま、マッサージ師、指圧師を雇用するという事例も見られてきておるところであります。したがって、私どもといたしましても、今後とも以上のような指導を強力に進めることによって視覚障害者の雇用の促進に安定的に努めてまいりたい、こういう考え方でございます。
  297. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまお答えを賜りましたが、やはり勤務しておられるこういった方々は職域を奪われて解雇を受ける。それから技術を持ってみずから開業をしておられる方々は、晴眼者がそういう形で職域へ入ってくる。いわば両方からパンチを受けておるわけです。こういう状態をやはり厚生省も労働省も十分認識をしていただかなければならぬ。それで、所管課長会において、あるいは大臣からは指導をという御答弁を、いま両方からそれぞれ賜りましたが、もしまだまだ解雇が続くということになれば、これは行政としてもただの通達では話にならぬと思うのです。もっと積極的に強力な指導を、あるいは日本医師会に話を持ち込むとか、具体的な一つの手だてをしてあげないと、あれよあれよといううちに首切られてしまう、こういう心配がございます。この点について大臣、ひとつどうでしょうか。
  298. 森下元晴

    ○森下国務大臣 各部門、各機関を通じまして、いまおっしゃいましたように職域を追われた方々の御不幸をお救いするためにも全力を挙げて誤解を解くように、また、そういう方々の聖域が守れるように全力を挙げることによって、障害者年を意義あらしめるように努力をしたいと思います。
  299. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これでこの問題は終わらせていただきますが、こういった方々が不幸な目に遭わないような条件を次から次へ整えていかなければいかぬ状況であるにもかかわらず、その条件がとられてしまう、むしばまれてしまうというようなことは行わないように、どうかひとつ十分お願いをしたい。これでこの問題については終わらせてもらいます。  次に、昨年の予算委員会で私申し上げたことでございましたが、身体障害者福祉法の見直しでございます。  御案内のとおり、身体障害者はそれぞれの部位に欠陥がある。手がない、あるいは足をけがして切断した、こういったようなことになっておるわけですが、その後新しい情勢もございますから、新たに神経系統のものやらいろいろ加わってまいりました。内部疾患も加わってまいりました。だが、身体障害者福祉法というのは自立更生を旨とした法律です。そうなりますと、自立更生のできない植物人間、もう全身が機能麻痺になっておる、あるいは脳性麻痺、記憶喪失といったような形で、それぞれの部位、部位の問題でなしに全体が機能障害を起こして、まさに精神的なあるいは身体的な複合の重症、こういった者は障害者に入っていない。重くなればなるほど障害者手帳は渡してくれない。渡さないのです。それは法律上できないのです。  だからこれは、いま情勢が変わって、いろいろな職業病あるいはガス爆発等が起きた場合はもう全身障害になってまいります。記憶も喪失してしまいます。こういうような方々を障害者として法律の中で対象に入れていかなければならぬ。時代は変わったということを昨年申し上げたわけです。それで園田厚生大臣も、お説のとおりです、省内にそういった一つの協議会を持って、その答申を得て見直しを行います、こういう御答弁をいただいております。そして、それを今期国会に出したいというような意向がございました。どうなっておるのか、お答えをいただきたい。
  300. 森下元晴

    ○森下国務大臣 お説のとおり、いわゆる記憶喪失、植物状況になっておる方々をお救いする、これは身体障害者福祉法には対象になっておりません。そのとおりでございまして、前にも、早くこういう方々が福祉法の適用を受けるようにというような答弁もしたように聞いております。現在、身体障害者福祉審議会におきまして御審議をいただいておるわけでございますが、とにかくこの結論を早く出さないと、これはおっしゃるとおりでございますから、私も、全力を挙げて作業を早く進めていただくように、そして御発言の内容のように、そういう方々も福祉の恩恵を十分受けれるようにやっていきたいということを申し上げたいと思います。
  301. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時期等が示せれば示していただきたいと思うわけです。  また、時間がございませんからあわてて次へ入らせてもらいますが、現行母子保健法につきましても、時代が変わったということで欠陥、不備もいろいろ出てまいりました。したがって、これの見直し、改定についても検討段階に入っております。  私ども、当時橋本大臣に陳情申し上げた節もございました。五百万ぐらいの署名を持って母子保健法の改正のお願いをしたわけですが、その後この国会におきましても取り上げてまいりました。その都度、五十六年の夏ごろには一応答申も出ますので、秋ごろから改正をし、そしてできれば早期に見直し改正を行いたい、こういう御答弁も昨年の予算委員会でいただいておるわけですが、大体の時期、先ほどの身体障害者福祉法と母子保健法、これの改正案のスケジュール、提案の時期、これもあわせお答えいただければ大変ありがたいです。
  302. 金田一郎

    ○金田政府委員 ただいま大臣が申されました身体障害者福祉審議会の最終答申は、本年三月末ごろ提出される予定でございます。
  303. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 母子保健の問題につきましては、ただいま先生から御指摘のとおりの経過がございます。橋本厚生大臣時代にそのために家庭保健基本問題検討委員会を設置をいたしまして、御審議を煩わしてきたわけでございますけれども、昨年の十二月にこの検討委員会から、新しい家庭保健という考え方で母子保健を展開すべきである、こういう御提言をいただいております。ただ、その具体的な内容につきましてはなお別な機関で検討しろ、こういうような御提言でございましたので、私ども、厚生大臣の諮問機関でございます中央児童福祉審議会に、本年に入りましてから、この家庭保健の新しい考え方に基づく具体策について御検討を煩わしているところでございまして、この具体策につきましては五十七年度中にできるならば検討を終えたい、こういうことでございます。
  304. 平石磨作太郎

    ○平石委員 昨年から、あるいは橋本厚生大臣のときからのことですが、それだけ後へ後へと繰り越されておるわけです。したがって、私は、そういう時代が変わったということを御認識ですから、そうすればそれに合うような法律を早くつくるということが行政としても当然の責任ではないかと思うわけでありまして、これは早期にひとつ両法とも改正提案がなされるように強く要望して、この問題は終わらしてもらいます。  次に、保育の問題に入らしてもらいます。  時間が少ないから非常に急ぎ急ぎでございますけれども、この保育所の問題につきましては従来いろいろととかく問題がございました。そして、これも昭和二十二年か三年にできた法律でございますから、時代に合わない面も出ております。また、新しいことを取り入れて考えていかねばならぬといったような問題も生じておると思います。  そういう中で、行管長官の方で昭和五十年、この問題については勧告がございました。しかも、幼保一元化という問題、就学前児童についての文部省でやる幼稚園、そして厚生省が行う保育所、これはいろいろな問題があるからむしろ一元化すべきではないかといったような議論が大変当時起きたことでしたが、このことについても行管の方で勧告がなされ、以来、厚生、文部両者が協議会を持って今日まで来たわけです。これを得てこの問題については云々といったようなことで今日まで来ましたが、この行管の方のその後の協議の結果どういうように相なったのか、この点、お聞かせを賜りたいと思います。
  305. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 昭和五十年の行政管理庁の勧告に基づきまして、その後私どもと文部省と相談をいたしまして、幼稚園及び保育所に関する懇談会というものを設置をいたしまして御討議をいただいてきたのでございますけれども、昨年の六月にその懇談会から御報告がございまして、幼稚園と保育所は目的、機能を異にしておりますので、それぞれ必要な役割りを果たしていることから簡単に一元化できる状況にはない、こういう御報告をいただいておりますので、私どもといたしましては、幼保一元化問題についてはこの御報告によって一応のピリオドが打たれたもの、かように考えているわけでございます。
  306. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういたしますと、やはり保育は保育、幼稚は幼稚、こういうことでそれぞれ担当して児童の養護、教育に当たる、こういうことだと思います。  そこで、保育の問題について具体的にお伺いを申し上げたいと思うわけです。  いま申し上げましたように、時代は大きく変わってまいりました。そして、現在は非常に過疎過密の状態になっておるわけです。東京都を中心とする政令都市等あるいはその近郊は、非常な過密の状態であってまだまだ施設が足らないという状態、それから田舎の方は過疎ということが手伝ってだんだんと対象児が少なくなってきた、こういう状況が出てきているわけです。  そういう中で、三十年一日のごとく厚生省は、多少の運用上においての動きはありましたけれども、同じような考え方、同じような行政という形で進んでおるような気がしてなりません。そのために、あちこちに無認可保育所が出てくる、あるいはベビーホテルが出てくる、そして長時間保育に対する要望にも十分なこたえができないといった現象が生まれておるわけです。これは困るという形でこれを規制するような方法をとりましても、これは時代の要請でございますからそれだけの需要があるのでありますから、なかなか規制だけでは片がつかない。そうしますと、やはりこの法律にあるいは実情に沿わない面があるのではないかということを厚生大臣は判断せにゃいかぬ。  そのときに私申し上げたいことは、この児童福祉法の二十四条、これは市町村長が措置をいたしますと、こうなっておるわけです。これは保育に欠ける児童について、市町村長は保育所に入所させなければならないと、こうなっておるわけですね。御案内のとおりです。この状態をそのままいわゆる措置基準という形で、ずっと昔から同じようなことが行われておるわけです。これはいま申し上げたように、東京都あたりは非常にいいんです。ところが、田舎の方になりますと、もう子供が少なくなった関係上、そのままでいっておりますと保育所がつぶれてしまいます。  ここに行政管理庁の行政監察局から五十六年の九月に、保育所に関する調査結果報告書というものが出ております。これを見てまいりますと、まさにいまの保育についてのいろいろな矛盾点が克明に調査されて出ておるわけです。これはもうすでに当局御案内のことだと思うのです。  そういうことから見てまいりましても、やはりこの「保育に欠ける」という適用を緩和する必要がある刀その緩和することについては、一律に緩和といいましてもこれは困りますので、いま保育所の保育単価を決めるには甲、乙あるいは特別、こういった形で地域別に決めておりますが、地域によってはこれの適用を緩和していく。そうしないと、もともと子供が少なくなっておるところへこの縛りをきつくやりますと、もう保育所はこれでアウトです。だから、田舎の方の適用についてはそこをもっと緩やかにしたらどうか、都会の場合は現行どおりの方法をとっていく、こういうことが必要でないかと私は思うわけです。  それで、現在そういうことで保育に欠けるとはどういうことかということが通達の中に出ておりますが、その中の最後のところに都道府県知事に任すというところがございますが、その任すというのを、地域地域によってもう都道府県知事に任してしまう、こういう形にすれば、現行法そのものの運用においてそれが可能だと私は考えるがどうか、お答えをいただきたい。
  307. 森下元晴

    ○森下国務大臣 保育の問題は、将来の日本を背負う世代のために非常に重要な問題でございまして、昭和三十六年にこの保育所の入所基準が定められておりまして、約二十年間改正されていない、だから時代の要請にかなり合わなくなっておる、それから都市とまた田舎ではかなり内容的に違うではないか、だからやはり時代の要請に合うように弾力的にやるべきである、お説ごもっともでございますが、婦人の社会進出の状況等も二十年前と違った情勢下にございますけれども、当面は現在の基準の運用で一応やらしていただくということと、もう一つは、現在、中央児童福祉審議会で保育問題全般について御議論が行われております。お願いしてございまして、御提言の趣旨も、その場において十分いまおっしゃったような内容について討議がされておるということでございます。  いずれにいたしましても、時代も変わり、また地方と中央、いわゆる都市と地方との過疎過密の問題もございますし、私どもも十分御意見を尊重いたしまして対処していきたいということを申し上げておきます。
  308. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの大臣のお言葉は、十分対処してまいりたいというだけではどうもはっきりしません。だから、そういう時代が変わったということ、時代背景も変わったということは当局も御案内のところですから、そういう形にやはり対応していかないとまたいろいろな問題が出てくる。  現在、この結果を見てみますと、もう定員割れがきておるというものも出ております。そういうことを考えてみますと、おたくのこの措置基準を読んでおりましたら、こういうことが出ておりました。保育所の措置については厳重に徹底的にやってほしいという通達があります。その中で、「その他の地域においては、保育所の定員の範囲内において措置基準に該当しない児童を入所させてもさしつかえないが、その場合には、すべて私的契約児」としてください、こうなっておる。だから、厳しい措置基準ではあります。お母さんが働いておるとか、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんがいないとか、あるいは病気になった、災害を受けた、こういったことが五つ六つ出ておるわけですが、そういうことを厳格に適用してください。ただし、保育所の定員の範囲内において措置基準に該当しないような方がおっても入所させても差し支えない。これは定員に余裕があるときなんです。いま田舎の方は定員に余裕がたくさん出てき始めた。そうなると五十二年に局長通達でもって出しておりますこれから見ましても、私は、あの七項目目にある都道府県知事に頼んで委託をして、まあ適当にと言うたら語弊がありますが、緩和する緩やかな適用を行ってもいいのではないかという御提言を申し上げておるわけです。まあ、検討いたしましてということですが、ひとっここは篤とお考えをいただきたい、こう思うわけでございます。  それから、保育料が高い高いということをよく耳にいたします。これを見てみますと、なるほど高い。これは私もいろいろと資料をいただいて見たわけでございますが、この保育料がなぜ高いのだろうかということを考えてみました。  これは、保育ということになりますと家庭にかわることをするわけです、お母さんが働きに出ていますから。母親にかわったことをするのですから、小さなお子さんについては、いわば乳幼児等については費用もかかります。これは高いことはある程度仕方ありません。それはわかるのでございますが、この児童福祉法という法律を見てみますと、いま申し上げた二十四条で市町村長は措置しなければならない、こうなっている。そうなりますと、いわば行政処分でもって措置をして子供を保育所に入れます。ただし、費用は父兄、皆さんが一〇〇%見てくださいよ、これは五十六条に出ておるわけでございます。だから、お母さんのかわりをするのですからお金が要っても仕方がありませんし、またそれは当然です。ところで、その保育料を負担できない方は国と地方、いわゆる公共体で見ますよ、公費でもって見てあげましょう、こういう形になっておるわけです。  一方、幼稚園の方を見てまいりますと、これは学校教育法第五条によって設置者費用負担の主義、設置者主義なんです。だから、この幼児教育の場合の幼稚園はこれは義務ではありませんから、任意に、入れるか入れぬかは本人の勝手です。だが、預かった以上は、設置してある、いわゆる法人で設置してあれば法人、公立学校の場合は公立、いわゆる公費でもって設置者がその費用は負担いたします、こうなっておるわけです。それで保育の方も、御案内のとおりこれは任意ではありますけれども、市町村長の措置権によって措置されておる、いわば収容されておるわけです。だが費用は見ませんよ、こうなっております。ここに学校教育法とこの児童福祉法を対比したときに、何やらおかしな気がするわけであります。  そういうことで、この費用の徴収についてはやはりそういうたてりになっておるから、当然そこには違いが出てくるのだ。ただし、その場合に、保育単価といいまして、御案内のとおり全部その費用については、人件費から園の管理費から何までこれは入っておりますが、それを児童一人当たりに勘定して、いただくわけです。  私が言いたいのは、少なくとも公立の保育園とし施設としてやっておる以上は、父兄の負担は当然ではありますが、そこで働いておる保母さんとかいったようなものの人件費は設置者が見たらどうか。管理費も全部父兄任せにしてあるわけです。     〔堀内委員長代理退席、委員長着席〕 だから私は、少なくとも、子供の園における生活費とかこういったものについては父兄負担が当然のことだが、そこで働く人の人件費等についてはやはり設置者が見ていく、こういう形にすればこの保育料がそれほど高くはならない。  それで、大学、高校等の授業料と対比をしてみました。大体一万五千円から一万八千円。ところが保育所の場合は三歳児未満で五万円、四万九千五百円。毎月ですよ。こういう基準になっておるわけです。これらから考えたときに、やはりそこには人件費が含まれて、すべて含まれておるからそういう形になっておる。ここは一考すべきではないか、こういう感じを持つわけです。そして、その中でも特に、三歳児以下については費用もかかるから当然でしょうが、四歳、五歳児といういわゆる年長児になりますと、教育的要素が入ってきますので、ここの厚生省が出しておる「保育指針」を見ましても、「四歳、五歳については幼稚園の学校の教育要領による。」と、こうなっておるわけです。そうしますと、四歳、五歳児等については、私はやはりさっき申し上げた措置の緩やかな適用と、それから費用についても幼稚園とそう変わらない——幼稚園の場合は民間で大体一万五千円、公立幼稚園の場合三千円です。それが保育所では四万五千円、あるいは三歳児以上の場合は三万六千円かかります。こういうような状況の中ではやはり私は考えていく必要があると思うがどうかということをお聞かせいただきたい。
  309. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 保育所と幼稚園を比較しての御論議でございますが、保育所は、いま先生御指摘のとおり、私ども福祉の措置として行っているわけでございまして、原則として保護者が全額負担していただく。いわば家庭にかわりまして保育をいたしておりますから全額保護者負担でございまして、ただ、それが所得がないような家庭あるいはきわめて所得が低いような家庭については免除をする、それを国なり地方で肩がわりをする、こういう仕組みになっておるわけでございます。  幼稚園は教育の問題でございますから、全く画一的に行っているわけでございまして、確かに公立の幼稚園の場合には三千六百円程度の料金でございますが、私立、民間の幼稚園でございますと一万五千円の幼稚園料がかかっております。  私どもの保育所は公立であれ民間であれ、いずれも全く同じ取り扱いでございまして、先ほど申し上げましたような福祉の措置としてこれを実施しているわけでございますので、私どもとしてはそれなりに筋が通った問題である。しかも、行っております内容が、私どもは八時間の保育でございますけれども、幼稚園は原則として四時間、こういうことになっているわけでございまして、また、内容も私どもは保育をやっているわけでございますから、全く違う観点からお考えをいただく必要があるのではなかろうか、かように思うわけでございます。
  310. 平石磨作太郎

    ○平石委員 局長はえらい頭かたい。だから私が言うておる。  そこで、それはそういう考え方なら結構ですが、昭和三十五年八月に中央児童福祉審議会が答申を出しております。私調べてみましたら、これはちょうど私の言うとおりのことが書いてある。この答申の中にこういうことが書かれておるわけです。「施設職員及び児童の処遇改善及び前述の最低基準の改善によって措置費限度額は引上げられ、これに伴い児童本人又は保護者から原則として徴収する建前とされている徴収基準額は増大するのである」「現在徴収の対象とされている事務費については、これを公費負担とすることを検討すべきである。」こういうことが三十五年の八月に中央児童福祉審議会から厚生大臣あて答申がなされておるわけです。この答申と地財法等から判断したときに、時代はこのように三十五年当時とは大きく変わっておりますが、その要請がますます強くなっておる。三十五年当時ですらそういった児童審議会の答申がなされておるわけですが、これについて厚生省はどういうように考えてこられたのか、ひとつお聞かせいただきたい。
  311. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 昭和三十五年に中央児童福祉審議会からそのような御意見をいただいておるわけでございますが、当時は全般的に、国の財政事情等がございまして保育所における措置の内容に伴います保育内容が必ずしも十分でなかった。こういうような問題がございましたためにそういった御報告をいただいたわけでございますが、当時に比べますと、すでに二十数年経過をいたしておりまして、保育所の内容につきましては格段の充実を見ているもの、かように考えているわけでございまして、私ども、その御報告はすでに現在の時勢には適合しないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  312. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま局長さんから現在の時勢には適合しないのではないかというお話でしたが、現在の時代こそ私は適用されるのじゃないかというように思います。これは見解の相違ですから言い詰めばいたしませんけれども時代も変わってきたし、それから父兄の考え方も、教育的な要素が非常に強く要請されるというような現在の父兄の状況、意識といったようなもの等を考えたときに、厚生当局はもっと時代感覚に鋭敏に対応していくように私はやってほしい。そして、この長時間保育につきましても、まあだんだんと対応はしていただいておりますけれども、そういった時代を見ないと、先取りまでせよとは言いませんが、それに追いついていくくらいのことはしていかないと、ベビーホテルとかいったような悲惨な状態の施設が後から後からと雨後のタケノコのごとく出てくる。こういうことを考えて私は以上の提言を申し上げたわけです。したがって、まだまだ言いたいことがたくさんあるわけですけれども、これは常任委員会に譲りまして、一応保育の問題はこれで終わらせてもらいます。  次に年金の問題です。  年金も御案内のとおり非常に差し迫った問題となってきたわけです。差し迫った問題は先ほど社会党の大原委員お答えもありましたが、高齢化に急速に突入しておる、こういう状況。しかも今回の人口問題研究所の新しい推計によりますと、従来の五十一年推計から見たときに十年も早まつておる、こういうような報告がなされておるわけです。そしてこれがまだまだ加速されるというような情勢に入ってきた。そして、勤務しておられる方々も非常に命が延びた。これは大変結構なことですけれども、当然それは退職後におけるところの年金に非常な影響が出てくる。長い間の勤務年数、そしてそこには給与も上がってくる。こういったような問題が出てくるわけです。  そのことを考えたときに、もう年金問題は放置できない差し迫った問題として考えていかなければならぬ時代に入った。特に、まさにそのモデルと言うては語弊がございますけれども、さきの高齢化社会に見るようなのが国鉄の共済年金でございます。この国鉄の共済がこういった形に落ち込んだということについては、あの終戦直後、満州から引き揚げた満鉄の社員の方々やあるいは当時とにかく外地から引き揚げる方々を吸収しようというような形で吸収をした職員さんもたくさんおる、そこには、単なる企業ベース、企業として考えることも当然のことでありますけれども、いろいろ当時の政治的、社会的な要請によって国鉄がいまの職員を抱えたということがあったからです。そしてこの財政状況を見たときに、まことにもう破局的な状況に入っておると言わなければなりません。  きょうは国鉄総裁にもお見えいただいておりますが、この資料を見させてもらいますと、残っておる職員の保険料は千分の百七十七に引き上げる。そういうまことに保険料負担についてのもう筒いっぱいのところへ来ておる。それから成熟度を見ましても、七三・八といったような成熟度でございます。そして財政につきましては、まさに昭和六十年が参りますともうすっからかんになってしまう、こういうような状況です。これはやはり放置できない問題だと思うわけです。どのようにしてこれをやっていくのか。そして、いま進められております四十二万人体制から三十五万人体制へ入ってまいります。これは当然やらなければならぬことです。そうなりますと、さらに受給者の数がふえてくる。そして後へ残った職員は、新しい職員を抱え込むということはありません。私はその状態を見たときに、これはもう差し迫った問題だ。この状況についてどのようにしていきたいと考えておられるか、国鉄総裁の御答弁をいただきたい。
  313. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまお示しの私どもの年金の問題は、お示しのとおりきわめて深刻な状態といいますか、ほとんど成り立たない状態になってまいりました。そこで、三年ほど前から専門家の方方のお知恵を拝借して研究をしていただきました。結局、現段階では、私どもと給付あるいは掛金のシステム等で非常によく似ておるところの国家公務員あるいは他の公社等の、それぞれ現在独立しておる年金システムと統合を図る以外ないのではないかという経験者の御意見を賜っておりまして、それをベースにして、現在、年金問題の主務省であります大蔵省において御検討をいただいておるところであり、伺いますとかなり精力的な取り組みをしていただいておりまして、本年しかるべき時期にはそちらの方の御研究もまとまってくるというふうに承っております。私どもといたしましては、それらの作業が早く進みますことをひたすら願っておるというところでございます。
  314. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そのように大蔵を中心とするところの検討がなされておるといういまの御返事です。もちろん、企業内における努力というものについても、私はこの資料から見てみますと、まあまあ年金に関する限りにおいては負担その他を考えたときに限度まで来ておるのではなかろうか、こういう気がするわけです。  そこで、私が心配をすることは、この年金問題についてはいままでもいろいろと私ここでも論じたことがあるわけですが、どうも結局支給年齢の引き上げをやろうかとか、あるいはその給付費の単価を引き下げようとかいうようなことがすっと頭に浮かんでくるわけです。これをこの前のときに厚生省がやったわけですが、これはやはり、これだけ命が延びてまいりますと、当然そこには働いていただくということをやらないと、国家の上から考えて、労働経済からいっても私は努めて働いてもらう、そのことをまず考えなければならぬ。これは当然定年延長の問題です。そして、この定年延長については労働大臣の方で精力的に今日まで取り組んでまいりました。どのような状況になっておるのかをお聞きをしたいわけですが、少なくとも年金生活に入る、そしてそれまでは働けるというリンクにおいてこの高齢化社会を乗り切っていかなければならぬ。このことなしに前回厚生省はあの厚生年金を六十五歳に引き上げましょうとこうきたから、国会の反発を受けたわけです。だから、再びそういうことはないでしょうが、労働大臣、ひとつそこの定年延長の問題と、それから厚生大臣、そういうことがあるのかないのか、ここのところをお聞かせいただきたい。
  315. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いまお尋ねの件でございますが、大体、雇用政策と年金政策の関係については、基本的には将来高年齢者に生活の不安を招くことのないように両者の有機的連携を図ることが一番必要ではなかろうか、かように考えます。したがって、いまお話しのありました年金の支給開始年齢の引き上げについては、かかる観点から非常に重大な問題として検討する必要がある、こういうふうに考えます。  私ども労働省としては、今後の本格的な高齢化社会のもとにおいてわが国経済社会の活力を維持発展させていくためには、どうしても高年齢者にふさわしい雇用、それから就業機会を確保することが最も大事ではなかろうかと考えます。このことは、わが国の社会経済政策の最重点課題の一つとして考えておるわけでございます。したがって、この六十歳定年の一般化の早期実現については、後で局長から詳しく話をしますけれども、一般化の早期実現に向かって非常な努力をいまやっておるわけであります。したがって、昭和六十年以降高齢化の波が移ると見込まれる六十歳代前半層についても、定年延長を含めて六十五歳程度の年齢まで企業の雇用延長に努めますとともに、この層の多様な就業意識に応じた就業機会を確保するなど総合的な雇用対策を推し進めているところでございます。  先ほど申し上げました定年制の現状については、どういう姿になっておるかということは安定局長から答弁をさせます。
  316. 関英夫

    ○関(英)政府委員 簡単にお答えいたします。  五十六年一月一日現在の定年制の状況でございますが、五十五歳定年の企業数が三八%、六十歳以上が四二%というような比率になっております。これに、その一月一日時点ではまだ定年延長をいたしておりませんが、すでにその先において延長することを決定しているあるいはもう予定が決まっているというような企業数を加えますと、五十五歳定年は二八・四%に下がり、六十歳以上が五三・七%というふうになる見込みでございますが、なお五十五歳定年がこれだけございますので、来年度以降三ケ年計画で六十歳定年の一般化に向けて強力な指導をいたそうと考えておるところでございます。
  317. 森下元晴

    ○森下国務大臣 この年金の問題は、社会保障制度の中でも、全部大事でございますけれども、一番深刻なしかも一番大事な問題でございまして、今日的な掛金の問題、それと二十年後、四十年後のいわゆる給付の問題、そういう点で大変御心配をいただいておることは事実でございまして、そのためにいわゆる公的審議機関、また各政党の間でもいろいろ年金問題について懇談会とかまた審議会をおつくりになって真剣に検討をいただいておるわけでございまして、平石議員のお話のように、この点につきましては私ども全力を挙げて民生安定のためにもやらなくてはいけない。  ただ、おっしゃいました給付の支給年齢を上げよという問題につきましては、ただいま労働大臣が御説明いたしましたように、これは雇用の問題とかまた定年制の問題と絡んでまいりますし、結局高齢化社会に備えまして、安心して元気で長生きをしていただいて、いわゆる安らかに老後を送っていただく、これが私どもの大目的でございますから、御発言の意思に沿うように全力を挙げたいと思います。
  318. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私が厚生大臣に聞きたかったことは、リンクしてするかどうか、そこの一点だけでした。前のようなことをしてもらっては困るということです。このように非常に厚生省の担当も、担当しておられる面の厚生年金あるいは国民年金等でも大変な時代に入った。  ところで、国鉄の問題にまた返ってくるのですが、このような情勢になってきて非常に差し迫った状況ですが、運輸大臣、どのように指導し、どのように考えておられるか、運輸大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  319. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 現状では、国鉄の年金問題は、単独では成り立たないという差し迫った状況であると思います。特に、六十年を越しますと、危機的状態はもう御承知のとおりだと思います。それで、昨年来大蔵省で基本問題研究会を設置してもらっておりまして、その中にもまた国鉄関連の小グループをつくっていただいて、現在検討していただいているわけでございますが、われわれといたしましては、こうした国家公務員並びに三公社あたりが大体体質が似ておるのではないか、したがってこうしたグループの中での解決ということが考えられ、あるいは検討されるということを最も期待をいたしておるわけでございます。
  320. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま御答弁でお聞きしたのですが、他のいわゆる公共企業体といったものとひとつ一緒になってといったようなお話がありました。  さあそこで、そういうことが果たしてできるかどうかです。今日までそれぞれの組織において、それぞれの事業体において保険料を掛けて、将来に対する期待も持って、一つは財産もあるわけです。資産もある。国鉄のように破産状態になって、しかも本体も大変な事態になっておるという中で、この年金問題も国鉄再建に大きく作用しておる。この解決をつけないと、国鉄再建自体も私はむずかしいのじゃないかと思う。そして、それならば、他の公共企業体あるいは国家公務員、こういう共済組合の方がただオーケーと言うかどうかということ、ここが問題になってきます。  そこで、いままで八つに分かれた年金をそのまま統合するとかいうことは至難なわざですよ。したがってこれを、少なくとも公的年金というものであるならば、それにはそれぞれ国庫負担金が入っておる。国庫負担金がそれぞれ入っておるのであれば、いわゆる共通部分は少なくとも一緒にしてあげないと、それぞれ用意ドンで一緒になりましょうと言っても、これはできぬです。そうなると、やはり基礎になる共通部分は一つにして、その上にそれぞれ今日ある年金を上乗せをしていく、こうしないと、とてもじゃないができないのじゃないか。これは私ども昭和五十年から提案をいたしておるわけです。そして社会保障制度審議会が、こうやるべきだ、しかも六十五年をめどとして実施に移ってほしいという提言を内閣総理大臣あて、昭和五十二年に出されております。最高の権威のある社会保障制度審議会のそういう基本年金構想、その上へ従来のものを上乗せをしていく。  高齢化社会に入って、経済企画庁の国民選好度調査を見てみますと、この選好度調査で一番関心の高いのは老後の年金です。だから、老後の生活保障はこれはもう年金ですよ。そしたら、そのときの生活費がどのくらいかかるかということはわかりませんが、少なくとも所得保障なのか生活保障なのかという論はあるけれども、生活の大半は年金に頼らざるを得ない。そうしたときに、これをそのまま統合をして云々あるいは公的に全部を見ますと言っても、これは見切れません、国家財政は。少なくとも公的なものは最低のミニマムとして、最低保障はこれだけはいたしますよ、これだけは国が責任を持ちますよ、その上へ従来掛かっておる保険を上乗せをする、あるいは企業年金、個人年金にみずから入る。  みずから老後の生活設計をやる人たちは、いまからそのことを、どうしたらいいんだろうか、いま私はこれを掛けておりますが、私が年がいったときにこれがもらえるでしょうかと言って電話がかかってくるのです。非常な不安を持っておるのです、国民は。だから、もらえないものを掛ける必要はない、もうやめた、貯金をした方がいい、こういう意見も私はときどき聞きます。だから私は、その人たちに対して、それは掛けておきなさい、なぜならといったら物価スライドがある。十分ではなくても公的年金には物価スライドがありますよ、貯金をしたのではインフレに食われてしまいますよ、個人年金の場合も企業年金の場合もスライドはありませんよ、だから公的年金は掛けておかにゃいかぬ、こう言うて私は話してはおるのですが、将来、破綻になっては困ります。だから私は、こういった一つの基礎年金構想に具体的に早くいかにやならぬ、こう考えるわけです。  そこで、大蔵大臣にお伺いをしたいのですが、大蔵大臣はいわゆるそういったすべてのことにわたって国家財政のことの責任者です。そしてこの年金についても、当然厚生省あるいはその他の諸省庁からの相談があるはずです。だから、運輸大臣の方も国鉄総裁の方も当然のこととして相談があるはずですが、この大蔵省の中に共済年金制度基本問題研究会、これが昭和五十五年から発足をして研究がなされておる。この中で、いま運輸大臣がお答えになったようなことを答申をしておられるわけです。答申をしておられるが、先ほど私申し上げたように、そのままそっくり結婚しましょうと言っても、とてもこれは結婚はできません。結婚のできるような条件をつくってやらねばなりません。そこを大蔵大臣はいわゆる差し迫った問題として検討をせねばなりませんが、どのようにお考えか、お聞かせをいただきたい。
  321. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先生のおっしゃるのは、一つは国鉄問題の共済年金だろうと思います。これは成熟度が高いから、そして非常に赤字状態で、本当に結婚相手がいないというのも事実でございます。そういうような共済関係だけでも何とかならぬかというようなことで、五十五年に共済年金制度基本問題研究会というのを発足をさせまして、その中で職域年金制度と共済年金とのあり方でいかにあるべきか、それから他の公的年金との整合性及び調整の仕方をどうするか、それから国鉄共済の問題を含む財政問題をどうするかということで、去年の暮れまでに二十回やっております。そうして、この国鉄共済年金財政の危機的状況も考慮をいたしまして、いつまでものんべんだらりんともやっていられませんから、何とか早く、できることならばこの国会が終わったころまでに何とか結論を出してもらえぬかということでお願いをしております。そういうような結果が出てから、一緒になって取り組んでいきたいと思っております。
  322. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間がなくなって残念ですが、私の言いたいことは、まだ国民年金が残っておるのですよ。この国民年金も、厚生年金等と考えると全然けた違いの財政危機です。これはまた常任委員会でやらしていただきますが、この国民年金を見ましても、これは社会保障としてのいわゆる所得再配分機能が、これは同じ定額の保険料ですから定額でお返しします、こういう形のもので、しかも一方に無拠出の老齢福祉年金を抱えておるのです。そういったようにいろいろ問題点がありますが、ここらをやはり整理をして、いま大蔵大臣がおっしゃったように、早急にこの基本年金構想、いわゆる二階建て年金、そして民間活力を利用して企業年金、個人年金でみずから老後設計ができるように早く示してあげないと、国民の皆さんは、掛けていいのか掛けぬがいいのか。先でもらえるのか、不安を持っておるわけです。だから私は、少なくとも公で保障するものは最低保障としてこれだけは責任を持ちますというものをつくってあげて、本人の将来の老後設計が目星が立つようなことを早く示していく必要があると思う。そういう意味で、厚生大臣、ひとつこの取り組みについてのスケジュールをどのようにするか、はっきりお答えをいただきたい。
  323. 森下元晴

    ○森下国務大臣 活力ある福祉社会をつくろうということが臨調でも示されておりますし、私どももそういう目標を立てております。老後の幸せのために、安定のために、国民年金また厚生年金を通じましてまさに見直しの時期でもございますし、いろいろ各諮問機関、またいろいろ各党でやられております年金構想につきまして、貴重な意見を参考にいたしまして万遺憾なきを期したい、こういうことを申し上げまして、お答えといたします。
  324. 平石磨作太郎

    ○平石委員 厚生大臣、貴重な意見、貴重な意見と言うだけで一つも肝心のところを答えてくれませんね。もっと肝心のことを、どうかという問いに、いまはできぬというならできぬ、考え方は質問者の考え方に私は基本的には同調しますとか、ちょっとそこらあたりを言うてもらわぬと、全力を挙げてやる決意発表だけではこれは話にならないので、もう一回ひとつお願いします。
  325. 森下元晴

    ○森下国務大臣 平石議員の御意見には、まことに傾聴すべきものがございます。それを踏まえまして、厚生省といたしましても、そういう強い決意で今後厚生行政に生かしていきたいということをお約束いたします。
  326. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間が来ましたのでこれで終わらせていただきますが、大蔵大臣も、それから特に国鉄総裁、それから運輸大臣、大蔵となにをどんどんつっついていただいて、私たち国会もこれは協力すると思うのです。差し迫った問題ですから、ひとつ厚生大臣中心にがんばっていただきたいと思います。  これで終わらせてもらいます。
  327. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて平石君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十六分散会