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山田(耻)
委員 いま御三人から御説明がありましたが、多くの疑問が解決されたとは思いません。しかし、きょうは欲張りまして多くの問題に対して御
質疑を申したいと思いますので、次に進んでまいります。
国債の減額がゼロシーリングの枠よりかなり修正をされてきましたが、私が心配するのは、このまま推移すると、国債減額を修正して、そして挫折をしていくのじゃないか。五十九年度で特例国債をゼロにするという
政府の方針は決められておりますが、これが挫折をしていくのではないかということを非常に気にいたしておりますので、国債
関係について少し
大蔵大臣、
総理にお伺いしたいと思います。
五十六年度は特例国債を二兆円減額されまして、一応特例国債の減額というものは軌道に乗ったかに見えました。
昭和五十七年、本年度の
予算に当たりましても、ゼロシーリングの枠におきまして特例国債を一兆八千三百億、四条国債を前年度同額に据え置くとされていました。それがいろいろな事情で変わってまいりまして、特例国債の減額において一兆五千六百十億、四条国債は二千六百九十億円、合計一兆八千三百億円の国債減額となってまいりました。五十六年度の
予算におきましても、
税収の落ち込み約四千五百億円をカバーするために、三千七百五十億円の特例国債を追加し、災害復旧費の財源として四条国債を二千五百五十億円追加をいたしております。
税収不足は、
物価の予想以上の安定、
景気の年度半ばからの、
お話がありました素材
産業等の停滞によるものとされておりますが、
昭和五十六年度当初
予算、同補正
予算及び五十七年度の当初
予算における国債発行額は、整理すると次のようになります。
結局、
昭和五十六年度当初二兆円の特例公債減額は、一兆六千二百五十億円の減額と縮小されてまいりました。五十七年度当初
予算においても一兆八千三百億の予定が一兆五千六百十億円と減額をされ、縮小されてまいりました。当初の予定どおり五十九年度末までに特例国債発行をゼロにするには、五十八年、五十九年両年度でそれぞれ一兆九千六百二十億円の特例国債を減額しなければなりません。しかし、このような特例公債減額は、最近の
経済及び
財政の状況から見てきわめて困難な、あるいは本当に不可能となってしまっておるような気がいたしております。
昭和五十九年度末までに特例公債から脱却するという
計画は挫折してしまったのではないかと思います。脱却の時期を将来に一時延期するにせよ、国債減額
計画を再検討せざるを得ないところへ追い込まれている
現状ではないでしょうか。
なぜそのようになってきたのか。理由の第一は、最近における
税収の落ち込みが予想以上に大きく、
昭和五十六年度における補正
予算ではカバーし切れない
見通しとなってきたことであります。五十六年度の
税収不足は少なく見積もってみても一兆円を超え、多い場合には二兆円を超えるかもしれないという
見込みがなされております。
税収不足が一兆円の場合には、補正分を差し引いた残り約六千億については、
大蔵大臣の見解でもかつて述べられたことがございますが、決算
調整資金の取り崩し約二千五百億、国債整理基金からの借り入れ約三千五百億円が予定されておるようでございますが、一兆円を超えた場合にはさらに
歳入欠陥の補てん策が必要になってまいります。これは将来の国債減額の力を大きくそぐ原因となってくるのであります。
二つ目の理由は、
昭和五十六年度の
税収不足が大幅に生じますと、
昭和五十七年度の
税収が
予算で見込んだ額が達成されなくなりますために、五十七年度も大幅な
歳入欠陥が生じ、しかもことしの秋には特例国債の追加発行に追い込まれる
可能性が大きくなってきていると思います。
政府は五十七年度
税収を三十六兆六千二百四十億円と見込んでおられますが、増税分の三千四百八十億円を差し引いた三十六兆二千七百六十億円は、五十六年度
税収予算額の三十二兆二千八百四十億円に三兆九千九百二十億円の自然増収を見込んでいることになります。
税収増加率は増税込みだと
一三・四%、増税を除くと一二・三七%となります。GNPが
名目八・四%増となっているので、GNPに対する
税収弾性値は一・四七となります。この弾性値自体は最近十
年平均一・一
程度から見ますと、高過ぎます。
名目GNP
成長率が八%であった
昭和五十五年度には一・七でございました。五十六年度
税収が一兆円不足した場合、三十一兆二千八百四十億円では、仮に
政府の弾性値を想定しても五十七年度の
税収は一兆一千二百二十二億円不足をいたします。この場合には弾性値がもっと低くなるのが整合的でありますが、一・二を想定をしますと、一兆八千三百八十六億円の
税収不足となります。五十六年度の
税収不足が一兆五千億円の場合には、
政府の弾性値一・四七を想定しても、一兆六千八百四十億円の
税収不足が生じております。弾性値が一・二の場合には、二兆三千八百九十億円の
税収不足となります。
理由の
三つ目は、
成長率が
見通しどおりに達成されないことにございます。さきに述べた
税収の場合の数字でありますが、
成長率の達成がなかなか困難な
見込みなので、
名目成長率が下がればさらに
税収不足は大幅になってまいります。
成長率が一%低下して七・四%になった場合には、弾性値一・四七の場合でも四千七百九十五億円の不足が生じ、弾性値一・二の場合には一兆一千二百五十二億円の不足になります。五十七年度の
成長率が
見通しより低下いたしまして、五十六年度の
税収不足が生ずるという複合した場合が現実に実現される
可能性が最も大きいのです。この場合には二兆二千億ないし二兆五千億の
税収不足が五十七年度には生じます。特例国債減額どころではなく、特例国債の追加発行が必要になってくるのであります。
私は、このような
現状を踏まえてまいりまして、五十七年度の税制改正の課題は、前年度の大幅増税によって増税の限界にまで近づいてきた後だけに、次のような点を考慮すべきではないかと思います。
新規増税を行わずに歳出の削減、合理化、抑制を図ること。
二つ目には、税負担の公平確保については制度面、
執行面の改善に一層の努力を傾注すること。
三つ目には、租税特別措置についてはさらに厳しい
見直しを行うこと。
しかし、増税なき
財政再建と言われながら、課税最低限をそのままにして
所得税の減税を五年間しないことによって、実質増税を放置しております。不公平税制の是正については、医師優遇税制にはノータッチ、退職給与引当金の改正は引っ込めてしまった、交際費課税の強化も
中小企業の定額控除分はそのままにしておる。租税特別措置については、当初来年度に期限が来る二十六項目を
中心に一律三割を縮減するとされていましたが、この方針も大きく後退してまいりました。このほかに、次のような増税、価格変動準備金の一部積み立て廃止、これで六百三十億、交際費課税強化、定額部分を除いて全額課税四百六十億、貸し倒れ引当金、二年間で二〇%の縮減、これで九百五十億、
法人税の延納の圧縮、これで千四百四十億、合計三千四百八十億円がなされていますが、七千億円の自然増収
見通し減を補てんするために、
予算に今日盛り込まれております。
これからは課税最低限据え置きによります実質増税のゆがみをどうするかにかかってまいります。
所得税の負担のゆがみの実態は、たとえば
昭和五十二年度以降課税最低限が据え置きでありますために、この間の年収は四〇%
増加しておりますが、税負担は年収三百万円世帯で大体三倍になっております。四百万、五百万、六百万の世帯の税負担はほぼ二倍になっております。このような負担は、マクロ的に見ましても、
昭和五十八年度に国民所得の二六・五%の税負担になることを意味しておりまして、新
経済社会七カ年
計画で
昭和六十年度に到達すべき税負担率が二年早く実現されていることになります。このまま放置しておきますと、予定どおり七カ年
計画の終わる
昭和六十年度には、二六・五%ではございません、三〇%の負担率になってまいると予見されます。
このような
所得税だけの自然増税による負担増とゆがみは是正する必要があると思います。そのためには、
所得税減税はどうしても必要でございます。これは自然増税、
名目所得増による増税を
調整する意味での減税根拠の第一でございます。特に四年間で二三%の
物価上昇によって、六兆六千五百億円の
税収増をいたしておりますが、このうち一兆五千億円が
物価上昇によるものでございます。
物価調整的な減税は最低限必要でございます。
所得税減税の第二の根拠は、自然増税によって生じる他の申告
所得税、
法人税、間接税との間の不公平、クロヨンでございますね、これによる給与所得者、商工業者、農民等の間の税負担の不公平を是正する必要があるという点でございます。不公平是正のためには減税が必要でございます。
第三の減税の根拠は、減税によって
景気回復の効果を強めていくというものでございます。減税を一兆円する、公共投資を一兆円ふやす、
金利の引き下げによって、これをいたしましたら、五十七年度には九千億円の
財政赤字になりますが、
昭和五十八年度には、二兆八千億円の
財政赤字改善効果が出てくるという
予測も成り立っております。
しかし、
所得減税をする場合、かわりの財源をどこに求めるかという問題が残ります。
政府や一部財界人の言うような大型間接税を導入するということは、余りにも安易な、租税理論を配慮しない案でございまして、租税理論から言えば、直間比率論などには科学的根拠は存在しません。政治的に間接税が取りやすく、
税収が安定しているだけという目安でございます。不公平な税制を是正するのが第一先決の
条件です。きちんと不公平税制を是正した後で、今日の租税構造全体を洗い直す、そして新しい税体系を考えるべきではないか。歳出の徹底した洗い直しと同時に、税や歳入全体の徹底した洗い直しも必要でございます。
その場合、いろいろな案が出されてくると思いますが、すでに出されている提案の検討のほかに、
所得税と
法人税の統合問題、累進構造を持つ支出税、これは直税でございますが、などの長所や短所を十分に検討してみることも必要であろうかと思います。最先端の税制が現実の
予算編成や税制改正の場で検討されない点は、どうしても不満が残ります。国民のコンセンサスを得るために根本的な問題の解決を先へ先へと一年延ばしを考えずに、根本的な問題に抜本的に取り組んでいただかなければならないと思います。
減税につきましても、各野党から近く一斉に出そろってくると思いますが、申し上げたようないろいろな
税収見通しなり
財政現状を踏まえられて、
大蔵大臣にも
総理大臣にも、これからの
日本の将来の
財政収入を本当にお考えになりまして、
経済安定を図る立場から、私は率直大胆にいまの
税収見通し等について見解をお述べいただきたいと思います。