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1982-02-09 第96回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月九日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    岸田 文武君       後藤田正晴君    近藤 元次君       塩川正十郎君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    畑 英次郎君       原田  憲君    藤尾 正行君       藤田 義光君    船田  元君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       渡辺 栄一君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    大出  俊君       大原  亨君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       石田幸四郎君    沖本 泰幸君       草川 昭三君    神田  厚君       木下敬之助君    竹本 孫一君       安藤  巖君    瀬崎 博義君       東中 光雄君    藤田 スミ君       依田  実君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 坂田 道太君         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣  田澤 吉郎君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         郵 政 大 臣 箕輪  登君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     松野 幸泰君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府人事局長 山地  進君         総理府統計局長 永山 貞則君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         北方対案本部審         議官      橋本  豊君         警察庁交通局長 久本 禮一君         行政管理庁行政         監理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         北海道開発庁計         画監理官    富士野昭典君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁次長 多田 欣二君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         国土庁長官官房         会計課長    中村 博英君         国土庁土地局長 小笠原正男君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省理財局長 吉本  宏君         大蔵省証券局長 禿河 徹映君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         大蔵省国際金融         局次      大場 智満君         厚生省公衆衛生         局長      三蒲 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省保険局長 大和田 潔君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸治君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松井 和治君         運輸省航空局次         長       山本  長君         労働大臣官房審         議官      小粥 義郎君         労働省労働基準         局長      石井 里二君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省住宅局長 豊蔵  一君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (住宅都市整         備公団総裁)  志村 清一君         参  考  人         (住宅都市整         備公団理事)  武田 晋治君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     畑 英次郎君   金子 一平君     岸田 文武君   藤本 孝雄君     近藤 元次君   渡辺 栄一君     船田  元君   正木 良明君     沖本 泰幸君   矢野 絢也君     石田幸四郎君   竹本 孫一君     神田  厚君   金子 満広君     東中 光雄君   村上  弘君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   岸田 文武君     金子 一平君   近藤 元次君     藤本 孝雄君   畑 英次郎君     大村 襄治君   船田  元君     渡辺 栄一君   石田幸四郎君     矢野 絢也君   沖本 泰幸君     正木 良明君   神田  厚君     竹本 孫一君   安藤  巖君     藤田 スミ君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十六年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計補正予算(第1号)昭和五十六年度特別会計補正予算(特第1号)昭和五十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 つい先ほどのニュースで、八時四十分ごろ、福岡発の羽田行きの日航DC8が、百六十人乗りでありますけれども着陸に失敗して海に突っ込んで死者も出た模様であるということを、実はテレビで聞いたわけであります。現時点で、この状況についておわかりであれば、運輸大臣の方から御説明願いたいと思います。
  4. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 本日の午前八時四十五分ごろでございますが、福岡発日航DC8、三五〇便、定時到着八時五十五分の予定の飛行機でありますが、八時四十五分ごろ東京国際空港着陸のために進入中、滑走路の手前百五十メーターないし二百メーター海上に着水をいたしたわけであります。  現在、原因をというよりも、乗客その他の救助全力を挙げておりまして、海上保安庁といたしましては、直ちにヘリコプター六機、巡視船、巡視艇含めて四十六隻、この救助に向かっておるところでございますが、なお現在の乗客、乗員の被害状況につきましては、なかなか確認ができておりません。大変これは申しわけないことであります。未確認情報としまして、死者は二名ぐらいは出ておるのではないか、さらに四十数名の方々が負傷していらっしゃるのではないかということを、未確認でございますが、現在われわれはそのように承知をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、現在まだ、非常に浅瀬でございますので、満潮にならなければ水没することはまずなかろうということでございまして、全力を挙げて現在乗客の救援に当たっておるところでございます。なお、消防庁並びに水上警察、あるいは海上自衛隊等にも本件の救助に対しては全力を挙げて御協力をいただいているところでございます。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 つい先ほどの事故でありますから、まだ状況確認できないと思います。もし運輸大臣希望であれば、きょうこの委員会から退席されて、その対策に当たられても結構だと私は思います。同時に、午後冒頭稲葉質問予定されておりますので、そのときに、その時点でおわかりの点を報告されれば結構である、こう思いますので、御希望であれば御退席になって結構です。  今度の予算委員会において、いろいろ総理答弁が行われておるわけですが、私はその答弁を聞きながら、特に総理の発言の中で、武藤質問に対する核に対する認識は、核は絶対悪であるという総理認識が表明されたこと、また五六中業のいわゆる昭和六十二年までは防衛費はGNP一%を守っていくという点、さらにまた第三点は、財政再建については特例公債の依存から昭和五十九年度必ず脱却をする、さらにこの間大型間接税の導入は行わない、いわば大増税は行わないということ、そしてこの財政再建には、きのうも、行革を含めて総理政治生命をかける、きわめてきりっとした答弁だと私は受けとめておるわけです。  また、引き続いて、昨年以来、非核三原則は守る、武器輸出の三原則についても鈴木内閣としては守っていくという態度も本委員会において表明されているわけです。  私は、まず質問冒頭に当たって、これらの総理答弁はきわめて国民としても期待をしておるところでありますので、率直に確認をさしていただきたいと思いますが、総理はいかがでしょうか。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この国会が開催をされましてから、本会議並びに当予算委員会を通じまして、いま岡田さん御指摘の重要な問題につきまして、私の所信、政府の方針を申し述べたところでございます。  なお、それらの問題につきまして重ねて御質問なり御所見があればお答えをしたい、こう思っています。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 大蔵大臣もまた、五十六年度までは大型増税はしないと明確に答弁されているわけです。これまた確認さしていただいてよろしゅうございますか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 政府歳出というのは、歳入があって初めて歳出があるわけですから、問題は、行政改革というものをやろうというやさきにおいて歳入を安易に与えることは、歳出カットができないということになりかねない。そういうような意味で、問題は国民がどれを選ぶか、最終的にはそういうことになると思います。しかし、現段階において、行革をまず中心にやろうという段階において、大型増税というものは念頭にないということであります。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和五十六年度という年は、一般の年と違うのですね。財政再建元年の年なわけであります。大蔵大臣もいろいろ過去の例を引用して述べられておりますけれども、そういう比較にはならぬと思うのです、五十六年度財政再建元年でありますから。しかも、五十六年度当初予算は、自然増収で当初対当初で見れば、四兆四千九百億、所得税では二兆八百億、そして増税は一兆四千三百五十億円が盛られ、公共料金は五千百六十六億円増になっているわけです。また、電電とか競馬からのいわば納付金、これらの三千二百三十八億を含めて五十六年度予算ができているわけです。そういう意味で、五十六年度予算案は非常に他の年度性格が違うことは、大臣も私は御承知かと思うわけであります。  そういう観点からまいりますと、私は、先般大臣が言われている過去の例ときわめていとも簡単に比較することは間違いである、実はこういう見解を持っておるのであります。そういう意味で、今次補正予算が組まれて、しかも当初の公約違反である三千七百五十億の特例公債が盛り込まれた、こういう点で私どもは、五十六年度性格からいって非常に大きな問題であると指摘をいたしておるわけであります。そういう意味で、この五十六年度税収欠陥見込みについていろいろいままで議論されてまいりましたけれども、そういう立場からこの見込みという問題についても従来の年とは違う、こういう点で私はきちんと受けとめてほしいと思うのであります。  そこで、私は率直に聞きますけれども、では十二月の対前年同月比一四・二%増がすでにきのう発表になったわけでありますから、そうしますと、歳入欠陥を、税収欠陥を起こさないために一—五、この間一体対前年度比平均幾ら税収伸びがあれば歳入欠陥が起きないのか、率直にひとつ答弁をしてほしいと思うのです。
  10. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  二九・一でございます。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 約三〇%、二九・一%と言われたのであります。そうしますと、これがもし対前年同月比で見まして二〇%の場合、一五%にとどまった場合には一体どの程度税収欠陥が出ると試算されておりますか。
  12. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  いままでの税収の低さというのは再三御説明したような要因があったわけでございますので、そのままそこを置いて今後を機械的に結ぶということは問題があろうかと思います。したがって、一五とか二〇ということで置くこと自体には問題があろうかと思いますが、仮の計算ということでよろしければ、これはわれわれの見解ではございません、仮の計算で一月以降五月までということになりますと、二〇%ですと約一兆程度という計算になります。一五ですと一兆六千。これは計算上の問題でございまして、税目ごとに振れがございまして、特に法人税、これは大口ですから、これは三月のが五月にぽんと入ります。それから三月十五日が申告所得税で、これはいままで低過ぎるというようなことでございます。いまのようなのは、われわれとしては計算上の問題だけにしておりまして、念頭にはございません。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 前年度の五十五年度、五十四年度、五十四年度後半の税収伸びは高いわけですね。したがって、五十四年度、五十五年度の一月から五月までの税収伸び平均何%になっていますか。
  14. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  前年との比較と申しましても、景気が落ち込んだところからの回復でございますし、昨年はまた停滞し始めたときですから、それは比較が困難でございますが、数字で申しますと、一般会計の一月以降の伸びは、五十五年一二・六、五十四年一八・八であります。しかし、その前も一八・八でございますが、四十七、四十八では三〇、四〇というときがございます。そのときの経済情勢とか税の入り方、前の年の比較ではいろいろ問題があります。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 質問に答えてください、私克明に質問は通告してあるわけですから。五十四年度、五十五年度の一−五の税収伸びは前年度同月対比で平均五カ月間で何%になっているのですかと聞いたわけです。きのうちゃんと通告してあるでしょう。
  16. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  いまお答えしましたように、去年の一−五では一二・六、五十四年度では一八・八でございます。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 特に五十四年度税収伸びは一−五は非常に高いわけであります。ですからこの委員会でもいろいろ質問されておりますように、いま私が質問した客観的なそういう数字から推計して、私も本会議指摘をしましたように、まあまあ大体一−五は二〇%をコンスタントで平均税収伸びるということは、これまたきついことではないか、こう思われるのは当然ではないかと実は思うのです。そうしますと一兆円以上のまた歳入欠陥が生まれるということになるわけです。  私は、そういう状況がある程度客観的にまた推計として認識できるとするならば、潔く第二次の補正を出すことが財政運用としてきわめて常道であるという判断を持っておるわけであります。といいますのは、この処理の問題も、いずれもし歳入欠陥が出ればどう処理をするかという問題が出るでしょう。処理の仕方ではさらに財政再建に足かせをはめるという結果になる危険性を私は感ずるわけです。しかし潔く二次補正をすれば、たとえば特例公債に依存してもそれは十年間で払うわけでありますから、それはそれなりで、それを前提にして財政再建計画を組めると思うわけです。だから男らしくこの際二次補正に踏み切ったらどうか。われわれは素直に二次補正審議に応じたいと思うわけです。  そういう私ども見解指摘に対して、余り強を張る必要はないのじゃないでしょうか、大臣。いかがでしょうか。
  18. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 税収のいままで回復のよくないところを選びまして、回復し切れないと見られるものについて四千億の補正をやったということでございます。今後はどうなるか、いまの御質問にございますが、今後のところを機械的に伸ばすというところには、技術上の税目ごとの振れがございます。特に申告所得税がいままで低く前年の予定納税ベースで進んでいますので、差額として三月の税収がどうなるか、これは不確定要因でございます。それから法人税の方が、五十三年度取り込みをやりましたので、三月の税収が全部これは響いてきます。これは非常に技術上むずかしい見通しになっていまして、まだ四割しか入っておりません。したがって、税収の三分の一を占めます、一般会計の一割を占めます税収をどう見込むか、これは五十三年の年度所得の区分のところで非常にむずかしい前提を置かれています。それから、いままでのところでは特定業種が非常に悪い振れでおりますけれども、これがどうなるか。  そういうことで、また延納の問題もございましたが、いろいろ技術的に見ましても今後の見方にはいろいろ見方がございますので、直ちにどうということよりも、また増税の影響もございます、いろいろございまして、補正で四千億立てたというところまでははっきりしておりますが、今後は不確定要因でわれわれとしては技術的、専門的に補正後の数字が見込める、こう考えております。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 自縄自縛という言葉がありますけれども、こういう税収見通しを困難にさしておるのは、四月を前倒しにした、五月も一応前倒しにしたわけですね。そして四、五、ここの税収が今年度税収に入るわけでありますから、そういう面から考えると、大蔵省前倒しをしたということが税収見込みをこれまた非常に困難にしているということが言えるのじゃないかと思うのです。年度がわりでありますし、経済指標も今度は変わってまいるわけでありますから。私はそう思うのですけれども大臣はいかがですか。
  20. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  制度上の問題でございますが、先生の御指摘、ごもっともと思います。四十九年に納期ベース成立ベースにしましたので、ここに二月決算法人が入りました。それから、五十三年度受け入れ期限を五月末に延長しまして三月決算が五月末、  こうなったわけでございます。したがいまして、予算を編成します十一月下旬から十二月上旬のわれわれの立場といたしますと、十月末税収で見ていきます。そうしますと、五十二年、取り込み前のときには全体が半分わかって、法人税も半分わかった状況だったのです。ところが取り込み後の状況で見ますと、全体の三五%ぐらいのところで、しかも法人税は二割を切るところで税収を見込むという非常に困難な状況です。しかも、一年決算法人がふえていまして九月決算のウエートが落ちておる、そういうことでございまして、五十三年の改正で二兆円取り込んだという問題もあったわけですが、いずれにしましても、この赤字という問題はわれわれも見込みが非常に困難でありますけれども、やはり自然体でわれわれ考えておりまして、赤字だからといって徴税強化とかいうのは租税法律主義に反します。しかし、はっきりしているものは出すというのが財政民主主義であると思います。また、余りに赤字を恐れますと、当初から低い見積もりをするということになります。昨年のいまごろはむしろ見積もりが低いんじゃないか、剰余が出るんじゃないかということで剰余金のお話が相当あったわけでありまして、いまの段階は非常に読みにくいわけでございまして、われわれとしては最善を尽くしているということで御理解願えたらありがたいと思います。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣も同じような見解である、こう言うのでしょうけれども、しかし、私はやはり補正というものは、第一次補正以外にも補正を出すことが政府として何かマイマスであるとかあるいはまた過ちであるというような考え方は毛頭持ってなかろうと思うわけですね。ここまで客観的に指摘をされて、税収見込みというものがほぼ客観的に固められてきた場合には、素直に二次補正する方が財政再建元年にふさわしい財政運用であり予算編成ではないか、予算調整ではないか、こう私は思うのですが、いかがですか。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは物の考え方だと私は思います。  いま主税局長からるる申し上げましたように、法人の決算も前には年二回決算ということが普通だったわけですが、最近年一回決算ということが多くなりまして、その分だけ法人税見通しがしづらくなった、これも事実でございます。したがって、来年の五月の申告を見ないとよくわからないというのも、これも事実。ただ、物品税、印紙税それから源泉所得税等にはっきりした徴候が出ておるので、そのはっきりしたものについては補正をするということにしたわけであります。  しょせん、歳入は見積もりでございますから、その見積もりについては、前から言ったように、いろいろみんな勉強してやるのですが、なかなか近似値が出てこないというのが過去の実情でございます。したがって、今回ももう一兆円も足りなくなるんだということが断定的にはっきりしているとおっしゃいましても、それはやはり推測にしかすぎないわけでございます。先ほど言ったように、年二回決算法人で九月で半分ぐらいのものは出てこなかった、あとの方も出てこないだろうということがはっきりすれば別なんだが、大手企業等の場合では、証券を初めむしろいい結果が出ておる、数は少ないけれども。そういうところにいままでと違った非常に流動的なものがある、年一回に今度なってしまったわけですから。たまたま九月に出たものは大手なんかのものは比較的いい。決算出さなかったものは三月にまとまって出てくるわけですから、だから過去の状況とはかなり違った問題点がある。裏から言えば、年二回に分けられないから見通しがしにくいということも言えますが、期待ができるということも言えるわけでございます。  万々一の話はここでする必要はないのかもしれませんが、もしそういうふうなことがあるという前提だけに立って、では十年先に延ばしたがいいじゃないか。それは気楽ですね。気楽ですが、それでは五十八年度予算編成というものを控えてうんと楽になってしまうという話で、行政改革の精神に果たして合うかどうか。ここで抜本的な見直しをやるというのであれば、出口をふさいでうんときつい、もう歳入見通しが非常に少ないというような点で行革に取り組んだ方が、姿勢として決意のほどがはっきり出てきていいのじゃないかという見方もないわけではございません。しかし、そういうことを考えて補正をしないと言っているわけじゃなくて、先ほどるる言ったように、いままでの見積もりでいけるという計算上そういう見通しに立っておるから、ただその足りないという部分だけを補正したということでございます。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 もし一−五対前年同月比二〇%で推移をした場合には、この補正予算に出されている特例公債を含めて、たとえば二千五百億円の決算調整資金を取り崩しても、結局赤字国債に依存するものは一兆二千億程度になるわけですね。したがって、二兆円の減額をしたけれども、もしいま私の言った前提であるならば一兆二千億は減額をしなければならない。その場合には実質八千億の特例公債の減額にとどまる、これが財政元年の総決算に実はなるわけであります。非常に重大だと思うわけであります。そういう意味で、私どもは今年度歳入欠陥について重大な関心を持つということはきわめて当然なわけです。これは財政当局でもそうだと思うのですね。そういう立場で私ども質問しておることを特に強く認識をしてほしいということを、まず申し上げておきたいと思います。  同時に、財政再建というものがともすれば何か、五十九年度特例公債依存から脱却すれば財政再建がほぼ目鼻がついたとか終わったというような印象がどうも議論の中に出てきておるような感じがしてならないのであります。しかし私に言わせれば、財政再建というのは、少なくとも八〇年代はわが国の財政再建の年代である、こう言っていいのではないかと思うわけです。六十五年には償還のピーク時になりますし、十七兆七千億程度が見込まれるわけです。そして、すべて国債を償還しても六十八年度でなければ終わらないわけでありますから、そういう面から見ると、財政再建というのは、昭和六十五年をどう迎えるか、こういう意味でこの約十年間、まさしく八〇年代はわが国の財政再建の年代である、こう位置づけられていいのではないかと思うのですが、これは総理、どうでしょうか。
  24. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 財政再建に対する岡田さんの認識、非常に厳しいわが国の財政事情を踏まえての御所見でございますが、私も全く同感でございます。ただ、そういうような公債に大きく依存をしておる、そのために財政が硬直をしておる、これを何とか是正をしなければならない。そういう中におきまして、まず少なくとも最小限度、私は五十九年までに特例公債依存の体質から脱却をしたい、六十年から特例公債の今度は償還に入るのでございますから、まずその最低限度の措置としてそれだけはひとつやりたい、こういう考えでございまして、それで万事財政は再建されたということにはならないという認識につきましては、岡田さんと全く同意見でございます。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、私は外交関係の問題について御質問いたしたいと思います。  去る八日に発表された米政府の八三年一般教書、特にこの中で特徴的なのは、防衛費がいわば突出をしておる。GNPの六・四%、前年度名目で一七・九%。そしてまた、赤字財政についてはレーガノミックスがいわば大幅に修正されてしまって、八四年でも八百二十九億ドルの赤字になる、こういう内容を含めた一般教書が発表されたわけであります。  アメリカの経済の運営あるいはまた財政のあり方というものはわが国の経済にもいろいろ影響がありますし、また、その財政の性格によっては今後わが国にもいろいろな面の影響というものが当然予想されると私は判断するのであります。したがって、この米政府の八三年度一般教書に対する政府の評価をこの機会に承りたいと思います。
  26. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今般、レーガン大統領から八三年の予算教書の発表がなされたわけでございます。これは、レーガン氏が大統領選挙戦を通じましてアメリカ国民に公約をした、それらの諸政策が今度の八三年予算教書に色濃く盛られておる、このように見ておるわけでございます。一つは、ソ連との間に近年大きな格差を生じてきておる軍事力の格差を是正するために防衛予算をふやした、これが一つの特色でございます。  それからもう一つは、アメリカの財政の再建という観点から相当思い切った緊縮予算を編成した。それからアメリカ経済の再生のためにいろいろの施策をこの中に織り込んだ。特に、民間経済の活性化に期待するという政策を織り込んだ。こういうようなことがレーガン氏の大統領選挙を通じての公約であり、それが八三年度予算に盛られておる、このように私は見ておるわけでございます。  特に、アメリカ経済の再活性化、景気の回復、それに伴ってアメリカの金利の低下、こういうようなことは世界経済に大きな影響を及ぼすことでございますから、この八三年度アメリカの予算の執行によって、実現によって、経済政策が成功、成果をおさめるようになることを私は期待をいたしておるところでございます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 アメリカの予算はアメリカの議会でもこれから議論をされるでしょうし、相当な意見もすでに伝えられておるわけであります。そこで、ただこれに関連して七日に米国議会に提出されたワインバーガー国防長官の国防報告、この内容についても私がもう説明するまでもないと思います。しかし、従来のアメリカの国防報告の内容とは違って、特にアジア、日本の位置づけ、この点についてはきわめて明確に国防報告書の中に示されていることに私どもは注目をいたしておるわけであります。そういう意味で、わが国はこのアジア地域におけるコーナーストーンとして、礎石というのでしょうか、かなめ石というのでしょうか、そういう明確な位置づけがなされておるわけであります。同時にまた、防衛努力あるいはまたシーレーンの防衛、そして朝鮮半島における脅威に対応するという意味で防衛力や経済援助、こういうものが明確にうたわれておるわけであります。この点についてどのように受けとめられておるのか、政府見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  28. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の防衛、安全保障の問題につきましては、国会におきましてしばしば申し上げておりますように、わが国の憲法並びに基本的防衛政策に基づきまして必要最小限度の自衛のための防衛力を整備をする、また米国との間に日米安全保障条約を締結する、この安保体制によりまして日本の安全と防衛を確保していく、これが基本的な方針であることはしばしば申し上げておるところでございます。  したがいまして、米側が日本の防衛努力につきまして常に関心を寄せておるということは自然のことであろう、こう思います。特に今回の、アメリカが相当大きな内政その他の犠牲を払って防衛力の増強に努力をしておるというようなことから、NATOその他の同盟国に対して相応の防衛努力を期待をする、要請をするということは自然のことだと思います。  しかし、前段で申し上げましたように、わが国の防衛につきましては憲法がございます。また防衛政策というものは、私どもはこれをあくまで堅持しておるわけでございます。そういうような観点から、自主的にこの「防衛計画の大綱」を着実に整備をしていくという方針に沿って努力をしていくという方針には変わりはございません。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 この中で、従来になかった内容が報告されておるわけです。すなわち東西貿易の問題ですね。これは安全保障戦略上、東西貿易について再検討する、いわば国防と貿易の連関性、リンケージさせるという方針が今回初めて盛られたわけですね。この点もまたきわめて注目しなければならぬと思うわけです、特にわが国はソ連との隣国の関係にもございますから。したがって、この国防報告書に示しているアメリカの考え方、こういうことについてはどういう見解をお持ちでしょうか。
  30. 深田宏

    ○深田政府委員 お答え申し上げます。  米国の場合は、昨年来、オタワのサミット等の機会にも東西通商関係を非常に重視いたしておりまして、わが国を初めといたします西側諸国との間で対ソ貿易等について、たとえば高度技術の移転の問題等につきまして協議を進めたいという考え方を示しております。そのような観点から、通商関係というものを広い意味の安全保障の文脈の上でとらえるという傾向は出てまいっております。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 何かあなたに解説を伺っているような気持ちですね。私はやはり、明確に貿易と防衛というものを連関性を持たしていこう、こう国防報告書の中で報告をされている。わが国は対ソ制裁の問題についても非常に慎重な扱いをしているわけですね。そうしますと、東西関係、いわばソ連を中心とする貿易政策については、きわめて恒常的に一つのさらに強い枠がはまるということになるわけですね。これはしかし、アメリカの国防省の報告なんですよ。その内容に触れられておるわけですよ。だから、わが国としてはこの点についてどういう見解を持つかという主体的な判断をお聞きいたしておるわけです。
  32. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 わが国は、ソ連に対しましては西側が結束して当たっていくことが一番必要である、そういう見地に立っておりまして、そこで、ただいま局長の方から申し上げたようなことも踏まえまして、ソ連に対していろいろな形で力をつけるような結果になってはいけない、そういうことを配慮しながら貿易をしなければならない、こういう見解に立っておるわけでございます。  具体的にはパイプラインの問題であるとか、あるいは技術の提供などによりましてソ連に力を付与するような、そういうようなものの提供というものは差し控えたい、これは西側の共同的な見解でございまして、わが国もまたそのような方針をとっていくべきである、このように見ておる次第でございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 また今度の報告の中には、同時多発戦争が発生する危険性がきわめて特徴的に強調されておるわけであります。私は、これは防衛関係の問題に関連しますから、わが党のこの関係の質問者が次々とおりますので、深くこの点については触れないで、一応いまの答弁を聞いておくという程度にとどめておきたいと考えます。  そこで、総理並びに外務大臣の外交に関する演説がすでに本会議で行われておるわけでありますけれども、八二年度のわが国の外交の重要課題というものをきわめて国民にわかりやすく、八二年度のわが国の重要外交課題についてはかくかく、かくかくであるという点を、総理から明確にひとつ説明していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  34. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 まず第一は、激動する国際情勢の中におきまして世界の平和と安全を確保する、そういう国際的な平和と安全の中に日本の平和が初めて確保されるわけでございますから、そういう立場で国際政局に対処したい、そのためには自由主義、民主主義、自由経済の共通の価値観の上に立つ西側の諸国と緊密に連携をし、連帯、協調を強めていく外交を展開をしたい、基本的にはそのように考えております。  それから第二の問題は、世界の経済が非常にいま停滞をし深刻な状況にございます。そういうような背景がございまして、貿易摩擦が強まってきておる。わが国は貿易立国で国の繁栄を求めておる国柄からいたしまして、やはり自由貿易体制を維持強化をする、保護貿易主義というものの台頭を抑制をして、そしてあくまで自由貿易体制を維持拡大をするということが必要であります。そういう観点に立ちましての国際経済政策、対外経済政策、これが私はことしの大きな外交課題の一つである、このように考えておるわけでございます。  もう一つの点は、ことしは御承知のように国連で軍縮特別総会が開催をされることに相なっております。軍縮、特に核軍縮、そしてそれを通じての世界の平和の確立、これが今年の外交の非常に大きな課題であり、国民的な関心事である、政府はこれに向かって全力を挙げる、このように考えておるところでございます。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 鈴木内閣の外交の基本的方針も、福田内閣で示された日米を基軸とする全方位外交、この基本的な方針については変わりはないのでしょう。
  36. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 わが国がアメリカとの間にいわゆる安保体制を保持しておることは御承知のとおりでありまして、わが国の外交の中でそういう関係からいたしまして対米外交というものが基軸になるということは言うまでもございません。この対米関係をもとにいたしまして、そして自由主義陣営との間の協調のたてまえで、ただいま総理が言われましたとおりに、世界の平和と安定のために積極的に貢献をしていく、そのことがまた、ひいては日本の平和と安全を確保するゆえんである、こういうことで、対米関係を重視した外交をとっておるわけであります。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 という外務大臣のいまの御説明は、日米を基軸とする全方位外交だということになりますか。
  38. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日米を基軸といたしまして、そして基本的な方針としては、世界の平和と安定に積極的に貢献をする、そういうたてまえのもとに各国との外交を包括的に進めていく、こういうことであります。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 ですから、日米を基軸とするということは、欧米との、ヨーロッパの自由主義諸国との協力も含まれておると思うのですね。そう解すのがいいでしょう。したがって、日米を基軸とする全方位外交という従来の方針と変わりないんでしょうと聞いておるわけです。端的に聞いているわけですが、いかがですか。
  40. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 鈴木内閣の外交方針、それを私も堅持しておるのでございまして、従来のというのがどの程度の期間をとるか、私は鈴木内閣の閣僚でございますから、その閣僚として、従来とられた方針を堅持しておるということは言うまでもありません。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 福田内閣は明確に日米を基軸とする全方位外交と言われて、私はその方針が変わっていると思っていないわけですよ。そういう意味で、福田さんがかつて言われた日米を基軸とする全方位外交、きわめて端的に言うとそうでしょうと申し上げているのですが、いかがですか。
  42. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 福田さんがおっしゃった、アメリカを基軸とする全方位外交、これと変わっておるということは本質的にございません。ただ、御承知のようにアフガン問題が起こったり、最近はポーランドの情勢もあのような非常に流動的な情勢になっております。東西関係が厳しい局面に相なっておりますことは、これは現実としてわれわれは認めざるを得ない。  そこで、全方位外交という精神には変わりはないにしても、こういう事態に、国際情勢に対応してまいりますためには、アメリカや西欧諸国との連帯と協調を特に強めていく必要がある、そして、ソ連その他のあのような行き方を是正をしてもらわなければいけない、このように考えます。したがって、無原則な、八方美人的な平和外交、そういうものでなしに、その点をきちっと現実の厳しい国際情勢を踏まえた真の平和を実現するための外交を展開していこう、こういうことであることを御理解を願いたい。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういう総理認識からいきますと、先ほど国防報告の内容でも聞いたわけでありますけれども、米ソの関係はそうしますと冷戦構造の段階に入りつつある、こういう認識でしょうか。
  44. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 米ソの関係は、いま申し上げたように、なかなか厳しいものがございますが、しかし、一方におきまして、米ソ両国の間には対話の窓口は常に開いていこう、こういう非常に冷静な判断もあるわけでございます。  御承知のように、グロムイコソ連外相、ヘイグ米国務長官との外相会談というものも開かれております。また、戦域核等の制限、縮減等の問題につきましても話し合いもされておるというようなことで、とにかく、その考え方なり世界戦略なりというものには相違がありましても、常に対話をし、相互の理解を進めて、そして国際情勢が平和の方向に向かって建設的に進むようにという努力が一方においてなされておる。私どもはそれを評価をしておりますし、また、そういう面について日本は日本なりに努力をいたしておるわけでございます。  昨年、ニューヨークで国連総会が開かれました際に、当時の園田外務大臣がヘイグ米長官並びにグロムイコ・ソ連外相に対して、両国の話し合い、対話ということをぜひひとつやるべきである、こういうことを強く要請もいたしました。また、先般、柳谷外務審議官がモスクワで日ソの事務レベル会談をやりました際にも、米ソの話し合い、対話というものを世界平和のためにぜひやってほしいということを強く要請をしております。そういう努力を今後とも進めてまいりたい、こう思っております。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただいまの総理の御答弁を聞いておりますと、私は、米ソの緊張は高まりつつあるけれども、しかし、戦域核制限交渉も継続されておるという面から見れば、冷戦構造に入っていくというものではない、こう思うのですが、そういう認識でよろしいですか。
  46. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、緊張緩和という努力が行われておるというぐあいに見ておるわけであります。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、先ほど総理からも答弁がありましたけれども、今年のわが国の外交の重要課題というのは、貿易摩擦等も含め対米関係を重視する、これにはもちろん西側との関係も含まれた意味であります。  第二には、日本と韓国の間には、この二年間、いろいろ関係の改善という問題が進まない状況で推移したわけですから、日韓の新しい時代をつくり上げていく、同時にまたグローバルな緊張緩和、そういう面で隣国である日ソの対話を前進をさせていきたい。そして軍縮については、唯一の被爆国であるわが国は、核軍縮を中心にして、ひとつ軍縮国連総会を契機にして国際世論に訴えていきたい、いま総理が言われたのはこういう点ではないのか、こう私は思うわけであります。  そこで、こういう一つの方針に従って総理自身も、外交的な外遊日程というものが明確でないにしろ、今年一年間の見通しを持たれておると思うわけです。今年の総理の外交的な外遊日程はどのようになるでしょうか。
  48. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 三月にはイタリアの大統領が訪日されることに相なっております。それから四月にはミッテラン・フランス大統領も訪日をされることになっておりますし、六月の初めには趙紫陽中国首相が訪日をされることに相なっております。そして六月のこれも上旬でございますが、フランスのベルサイユにおいて先進国首脳会議が開催をされます。なお、六月の上中旬、七月にかけまして、ニューヨークにおきまして国連の軍縮特別総会が開催をされる。私は、趙紫陽中国首相の来訪の答礼も含めまして中国を訪問いたしたい、このように考えておるわけでございます。  外交日程でいま大体決まっております日程は、以上のとおりでございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 日韓の協力問題で事態が進展すれば、総理は訪韓されて首脳会談をする、こういう御意思ですか。
  50. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 その前に日韓の外相間の会談が持たれて、日韓両国の関心の諸懸案がある程度話し合いのめどがついた上で日韓首脳会談を考えたい。大体、日韓の両国政府の間で双方の都合のいい時期に首脳会談をやろうということでは意見の一致を見ておるわけでありますが、その時期、場所等につきましては、まだ決まっておりません。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理は今年初頭、中東訪問の外遊日程を組まれたのでありますけれども、サダト・エジプト大統領の事件等もあって中止をされた、こう発表されておるわけであります。今年の外交日程の中に中止された中東訪問ということは全然考えられませんか。
  52. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いろいろの事情が発生をいたしまして、いまのところ中東訪問の日程は決めておりません。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 アメリカとのいろいろな関係の調整あるいは意見の交換ということには、総理は非常に積極的な姿勢を示されておるわけです。六月七日でしょうか、国連で総理が演説をされるのは。このときに日米首脳会談を行うというお気持ちですか。
  54. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 多分その前にフランスで、先進国首脳会議でレーガン大統領にも、また各国の首脳にもお目にかかるわけでございますが、その際に個別になおレーガン大統領を初め各国の首脳ともそれぞれ御都合がつけばお会いをしたい、私はこう思っておりますので、もしフランス滞在中にそれが実現いたしますれば、もうそういう時間的なあれも余りございませんから、ニューヨークではお目にかかる必要がなくなるのではないか、こう考えております。
  55. 岡田利春

    岡田(利)委員 対米関係の問題で、一つは防衛的協力という問題、二つ目には貿易摩擦の解消と  いう問題があるわけですが、特に防衛協力については、アメリカの強い防衛の協力要請ということがなされたことは事実であります。また、技術開発の協力、このことについても、レーガンからすでにわが国に求められておることも事実でしょう。そして日米の共同訓練、あるいはまた極東、日本といいましょうか、有事研究というものを双方で合意して進めていく。この防衛関係の四つのアメリカからの要請、これを称して四本柱、こう言うのでありますけれども、これは、アメリカの希望としては個別のものでしょうか。この四本柱を一体のものとして日本に要請をしておる、こう受けとめられるべきものなのか。見解はいかがでしょうか。
  56. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 マンスフィールド大使の所見からいたしますと、ただいまお触れになりましたようなことを、順次米側の意向として指摘をされております。これは日米安全協議委員会の席上のことでございますから、アメリカの代表としてそういうふうに述べられた、そういうことからいたしますと、これは一つ一つが個別でなく、防衛協力とかあるいは在日米軍の経費の問題とか、技術協力の問題とか、そういうものを一括して意向を表明したものと踏まえております。
  57. 岡田利春

    岡田(利)委員 貿易摩擦に関しては、アメリカ側の日本に対する要望は、関税の見直し、非関税障壁の改善ですね。これはすでに閣議でわが国は決定をして対応しておるわけです。さらに二十七品目の残存輸入制限品目の解除、どの程度まで解除できるかという問題を含めて、解除、さらに金融サービスの自由化、そして突出輸出品の自主規制、向こう側自体も規制をする面もありますけれども、いろんな自主規制ということがやはりあるのではないかと思うのです。それでもなおかつ輸入の拡大の実効が上がるかどうかという面は、また別途にあるのではないかと思うのであります。私は、そういうのがアメリカの貿易摩擦に関するアメリカ側のわが国に対する要望の内容ではないかと思うのですが、この私の認め方は間違いでしょうか。
  58. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 岡田委員のおっしゃった範囲が大体米側の意向と踏まえていいと思うのであります。日米間で往復六百億ドル以上の貿易の関係にあるわけでございまして、これが世界の経済の上に非常に関係をしていく。こういうことからいたしますと、アメリカのいろいろな市場開放についての意見は意見といたしましても、基本として、日米間、あるいはもう一つ広く西側と申し上げていいかと思いますが、何としても自由開放の貿易体制をとっていこうということが、大きく基本のこととしてあるということを認識しておかなければならないかと思うのでありますが、幾つかの御指摘の点はアメリカとしては意向として表明しております。
  59. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近の米政府のわが国に対する要請、もちろん国内政治の一つの反映でもあるわけであります。しかし、アメリカ議会の議論を見ましても、企業の利益あるいは地域のローカルインタレストを守る、こういう非常に強い動き、漁業関係なんかにもその点が非常に端的にあらわれておると私は思うのです。これはやはりアメリカの国内政治の動きというものがアメリカ議会の中の議論を通じて変わりつつある、こう見なければならないのではないかと思うのであります。したがって、そういうものをストレートに米政府が日本に伝えたとしても、それがアメリカ政府全体の要請である、こう受けとめることはちょっと早とちりになるおそれも非常に大きいと言わざるを得ないと思うのです。もちろん、わが国の議会だって、ローカルインタレストの問題やあるいは産業あるいはまた企業に関連してもいろいろな意見が出されることは当然であります。私は、そういう意味で日米の関係において、特に従来のパターンの日米外交ではなくして、もちろん議員外交の問題もあるでしょうが、議員外交だけではなくして、各界各層の重層的な広範な民間外交といいますか、そういう関係を大きく前進させなければならない段階に来たのではないか、こう思うのでありますけれども見解はいかがでしょうか。
  60. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 全く同感でございます。日米関係は、政府間はもとより、各界各層の接触、交流、対話の積み重ねによりまして、いま非常に良好な関係にあるわけでございます。  貿易摩擦の問題が大きくクローズアップされておりますけれども、いま外務大臣から申し上げたように、年間六百億ドルにも及ぶ、世界のGNPの二割国家であるアメリカ、一割国家である日本、こういう世界経済の中で大きな力を持っておる、シェアを持っておる両国の経済関係、貿易関係でございますから、ある程度の摩擦、小競り合いというものは、これは起こるのが当然のことであって、ただ、その問題を経済問題は経済問題として処理して、政治問題に発展をさせないようにするということが非常に大事な点であろうか、私はこう思っております。私どもは、そういう考え方で日米関係の円満な友好協力関係の発展ということに努力をいたしておるところでございます。  しかし、議会方面になりますと、ことしは中間選挙があるということもございまして、アメリカの議員諸君もやはり選挙区の動向には大きな関心を持たざるを得ない。そこで、各州等の関心品目である一部農産物等についての自由化を求めたり、いろんな動きがあるわけでございますけれども、これがアメリカ全体の空気であるというぐあいには私は受けとめておりません。そういう問題につきましても、十分日本の立場、事情を説明をし、理解を求めながら、米議会との間にも友好関係を発展させるように、議員外交等につきましても、皆さんにも御協力をいただいてこれを進めてまいりたい、こう思っております。
  61. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういうさなかに、アメリカでは日本製小型トラックの関税が四%から一挙に二五%にはね上がった。これはガットの違反である、こういうことで提訴をするという動きもあるように聞いておるわけであります。あるいはまた集積回路についても、アメリカ通商法の安全保障の関係の条項にひっかけてこの規制をする、これもいま非常に端的にあらわれてきておるわけであります。そういう面から考えますと、アメリカ自体もこういう規制というものを最近非常に厳しく、積極的にやるという態度がうかがわれるわけであります。わが国も、これらに対しては当然わが国の立場から、ガットに提訴をするなり、また、集積回路等の問題についても話し合いをするなり、積極的な姿勢が必要だと思うのですが、この二点について。これは通産大臣でしょうか。
  62. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本に対する批判として、日本がいろいろと非関税障壁を設けておるということがあるわけでありますが、同様にアメリカにおきましても、いまおっしゃるような小型のトラックの車体に関する税であるとか、あるいはまたバイアメリカン政策であるとか、あるいは各州ごとには、たとえばカリフォルニアのユニタリータックスだとか、われわれが見ましても明らかに非関税障壁という面があるわけでありますので、こういう点についてはわが国としても撤廃、撤回を強く求めておるわけです。特に議会におきましては、いまお話しのような通商法の改正であるとか、あるいはまた自動車に対する制限立法等が続々と提案をされておる。これはいわゆるアメリカの相互主義というふうな立場から出されておるようでございますが、こうした法案が通らないようにわれわれとしても積極的に働きかけていきまして、ともに自由貿易を守っていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 たとえば、せっかく東京ラウンドの中で、中川・シュトラウス会談で農産物については五十八年度まで合意したわけですね。その合意事項に反して、たとえば牛肉、オレンジの制限の撤廃、これでは秩序も何もないわけですね。中川さん、ちゃんと話したのですか。こういう問題が起きるように話したのですか、話が詰まってなかったのでしょうか、いかがでしょうか。
  64. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昭和五十三年でございましたか、私が農林大臣になりました。五十二年の暮れになったのですが、五十三年の一月早々から今日と同じような経済摩擦がありまして、東京ラウンドに関連してぜひ話し合いをしたいということになり、翌年度の五十三年度分の一年分と、それから五十八年に向けての五年間の二つの話し合いがありました。五十三年の分はもちろん若干の調整で終わったわけですが、牛肉、柑橘類、オレンジあるいはオレンジジュース、グレープフルーツジュースそれぞれについて数量できちっと五十八年度までの話がついております。五十八年度ですから、五十九年の三月までの約束がきちっとできておりまして、その間向こうから言われるような仕組みにはなっておりません。  ただ、最近言われておるのは、これは向こうも守っておるようでして、次の五十九年度以降について少し前倒しで、前倒しというか、時期を少し早めて、その当時の約束はたしか牛肉については五十七年度末、ですから来年の三月前後に話し合う、それからオレンジ、柑橘類については五十七年度下期前後について話し合う、こういうことになっておりますので、いずれにしても来年三月までの間に話し合う。三月前後に話し合おうというのを、最近来ておるのは今年の秋以降、十月ころから話し合おうじゃないかということで、話し合う時期について早めようということは言っておりますけれども、私が話してきた基本的な事項を覆そう、こういう意向はないように承っております。
  65. 岡田利春

    岡田(利)委員 田澤農林大臣も、しばしば国会でこの問題に対して見解を述べられておるわけです。きわめてきちっとした姿勢をもって答弁されておることに意を強くいたしておるわけです。ずっとこう見ますと、総理大蔵大臣、河本さんを除いてずらっと四人、それから中川さんと隣の六人は農林水産大臣の経験者ですから、農林水産の歴史的な流れについては一番知っている内閣ではないかなと私は思うのであります。そういう意味で、この問題はわが国の農政の長期的な問題に関連するわけでありますから、特に対米関係についても言うべきところはやはりきちっと言う。ただ言うだけではなくして、わが国の実態というものをきちっと理解をできるように説明をする、こういう真摯な努力を心から期待を申し上げておきたい、かように思います。  そこで私は、最近の円レートの動向を非常に心配をいたしておるわけであります。アメリカ側の高金利によってわが国の円が安いということが言われるわけであります。しかし、最近の円のフロート状況を見ますと、それだけではなくして、たとえば貿易収支の赤字とかアメリカの高金利、金利格差というだけではなくして、他の要因も含まれておるではないかと判断せざるを得ないのであります。特に今回のレーガン政権誕生以来、やはり緊張の度合いというものは非常に微妙な影響を国際的に与えるわけであります。そういう中におけるドルに対する信頼感というものは、そういう状況の中では高まる、こういう要因もあるのではないのか。また、同時にアメリカに対する投資も非常に積極的に行われつつあるわけです。合弁会社等も年々ふえておるわけであります。そういう意味で、アメリカに対する資本の投下という問題も出ておるわけであります。また、いわば金融の自由化という問題もアメリカから要請をされておる、こういう要因もあるわけですね。ですから、そういう従来にないファクターというものが作用しておると見るべきではないか。  そうなってまいりますと、民間機関は、円のフロートは大体二百円から百九十円くらいの予測が多いわけでありますけれども、今年度円高が期待できるかということになりますと、そういうファクターを考えると、円高の期待は余りできないのではないかなとも思うわけであります。そういう点について、政府は、最近の円のフロートの状況から判断して、その要因について私は私なりに幾つか申し上げたのでありますけれども、どういう見解でしょうか。
  66. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 円レートの問題については、いろいろな要素が絡み合っておるわけであって、大体いま岡田議員が指摘したような問題だと私は思っております。もちろんアメリカの高金利というものが、資本の流出というような点と絡んで作用はいたしておりますが、アメリカの当局者にも、金利を下げたからといってドルはそんなに下がりませんよ、なぜですか、それは何か変動とか事変が起きればドルが強くなるということは、やはり国力の総合的な評価なんだということを言っている人があります。私は、なるほど一理ある話だと思って聞きましたが、いろいろな要素があるわけでございますから、一概に断定的なことを申し上げることはできません。
  67. 岡田利春

    岡田(利)委員 経済の運営を担当する河本さんは、どういうような御認識でしょうか。
  68. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これまでの為替相場は、主として二国間の経済の基礎的な条件によって動いておったのでありますが、最近は、いま御指摘がございましたように、国際情勢の変化、それからアメリカの高金利、これが非常に大きく影響しておると思いますが、特に最近円安の傾向が強くなっておりますのは、今回の予算教書など見ますと、アメリカの短期金利一〇・五%、こういう見通しを出しておりますが、それに対する一つの失望感でなかろうか、こう私は思っております。つい先ごろまでは、アメリカ政府は金利はもっと下がる、こう言っておったのが、予想外に高い水準である、そういうことが背景にあるのではなかろうか、こう思っております。そのために本日も相当な円安になっております。幾つかの複雑な要素がございますが、現在の時点においてはアメリカの高金利、このように判断をしております。
  69. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど東西関係、特に米ソ関係についても触れられた答弁総理から私はいただいたわけであります。しかし、米ソ関係は一九五四年、アイゼンハワー・フルシチョフ会談が持たれて、これまで七回程度の米ソ会談が持たれているわけであります。もちろん首脳が会談する場合には決裂の例はなくして、何らかの合意に達しているわけですね。しかもその内容については発表されてない面も多々あるということは、過去の歴史が証明いたしておるわけです。いわば米ソ関係というのは対立・合意、対立・合意の歴史的な連続で推移をしてきた、こう申し上げても私はいいのではないかと思うのです。したがって、今回もある程度緊張は高まる気配を見せていても、いわば冷戦構造には突入しない、こういうような状況認識がなされるわけですが、その基調には、これはアメリカ国内でもヤルタ体制からの脱却というようなことが公然として言われておるのでありますけれども、しかし三十七年前のヤルタ体制というものはやはり依然として続いておる、これがやはり基調になっておると見るべきではないか、こう思うのであります。そういう見方に立つと、米ソ関係、東西関係の見方はまた一つの方向性を見定めることができるのであります。そういう点について、わが国はヤルタ体制についてどう外交的な認識をしておるのか、伺っておきたいと思います。
  70. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ヤルタ協定は、その当時の当事国の首脳が共通の政治目標を陳述した文書にすぎない、こういうふうに現在では言われておるわけでございます。また、当事国の中でも中心的なアメリカは、いま申し上げたとおりの見解をとっておる、こういうことでありますから、特に日本としては、その中に領土問題などが含まれておりますが、法律的な効果などはない、こういう見解に立っております。
  71. 岡田利春

    岡田(利)委員 いや、協定が法律的にどうかという問題を私は伺っているのではなくして、やはりヤルタ体制というものが第二次世界大戦の東西の国境も決めましたし、そこで話し合われた事項というものをある程度受け継ぎながら、対立・合意、対立・合意の歴史であるのではないか、こう私は申し上げておるわけです。別にそういう覚書が有効であるとか無効であるという話を聞いているわけではないのです。実際に生きた外交をする場合に、そういう問題についてどういう認識をするか。そういう話し合いをされた三十七年前のヤルタ合意といいますか、ヤルタの体制というものが、やはり依然として基調として残っておる。これはシュミットの発言でもそうではないでしょうか。そういうヤルタ体制があるから東西関係はまだ安定をしているという意見もあるし、あるいはミッテラン大統領のように、ヤルタ体制から脱却しなければならぬ、しかし願望と現実とは違う、こういう発言もあることは、ヨーロッパの首脳というものはそういう認識に立っていると言わざるを得ないわけです。そういう意味で私はお伺いしているんですが、いかがでしょう。
  72. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまも申し上げましたように、現在アメリカは、当時の共通の政治目標を陳述した文書にすぎない、こういう考えを明らかにしておるわけでございますから、岡田委員のおっしゃるようなそういう見解には私どもは立っておらない、こういうことでございます。
  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務大臣がそう言っても、西ヨーロッパの首脳はそういうことを公然と言っておるわけですよ。だから、そういう体制というものはやはり残っておるということは認めざるを得ないのではないかということを申し上げているのですが、これは総理、いかがですか。
  74. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ヤルタ協定は、一九四五年、当時のソ連、アメリカ、イギリスの首脳の間で取り交わされた合意でございまして、ヨーロッパの戦後処理から国連における投票権の問題まで、非常に幅広くいろいろな合意が含まれております。その中にユーゴの問題とかポーランドの問題が含まれておりまして、それが巷間、俗説でございますけれども、いかにもソ連の東欧における影響権を認めたというふうに解釈されております。しかしこれはあくまでも俗説でございまして、それについて、その三当事国からこれを廃止しろとかやめろとかという発言は出ていないと承知しております。  フランスのミッテランは、今年の冒頭におきましてヤルタ体制からの脱却、ただしこれは現実をよく踏まえて考えなければいけないということを申しておりますが、そのフランスでさえもこのヤルタ協定の直接の当事国ではございません。したがいまして、日本、このヤルタ協定の当事国でない国といたしまして、この問題についてとやかく言う立場にはないと考えております。
  75. 岡田利春

    岡田(利)委員 ですから、国際的に米ソ首脳会談が行われるということになりますと、そのときの国際情勢の中で何が一体話し合いされるのか、非常にこのことに心配もあるし期待もあるわけですね。しかもその内容というものは、秘密合意の事項は発表されないわけですよ。これは日本でもそういうことをその都度聞いたことがありますか。そういう内容について、ずいぶん時間がたってからそのときの話し合いの内容がわかるのでありますけれども、ではそういうことが同盟国である日本の側に説明されたことがありますか。
  76. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ヤルタ協定は一九四五年の二月に合意されたものでございますが、これが発表されたのは翌一九四六年の二月でございます。その当時においては、日本はもとよりこの協定の存在は承知しておりません。
  77. 岡田利春

    岡田(利)委員 首脳会談だ。違うんだよ、質問と。首脳会談で話されたことが日本側に説明されたことがあるかと言うんだ。後からわかるんでしょう。質問と違うじゃないですか。あるかないかと聞いているんですよ。あるかないかでいいんです。後からいろいろなことがわかってくるんでしょう。
  78. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 どうも質問を取り違えまして失礼いたしました。  私の承知している限り、首脳会談でそういう問題が取り上げられたことは恐らくないのではないかと思います。ただ、細かく歴史を全部調べたわけではございませんので、後ほどよく検討した上で御返事さしていただきたいと思います。
  79. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの答弁も私の質問とちょっと違う。ずっと僕は質問をよく親切に教えているものだから、そういう混同して答弁しているんですね。  この点は外務大臣、どうなんですか。大体七回程度の首脳会談が開かれている。しかも後から秘密合意事項というものが伝わってくるわけですね。少なくともやはり国際的な情勢を大きく左右する米ソ首脳会談の中で、肝心な点については、これはその内容が未発表で常に推移してきたというのが歴史だと思うのですね。しかし、そういう内容について具体的に詳しくわが国は説明を受け得る立場にあるのですか。
  80. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、このヤルタ協定のそもそもの性格が、これが、当時の首脳が共通の政治目標を陳述した文書にすぎない。したがって、そういう価値しかわれわれは認識をしておらないのでありますから、その後、このヤルタ協定当時の首脳の間ではこういう話があったとかどうとかありましても、それはいわば茶飲み話のようなものだと私は思うのですね。そして特にこのヤルタ協定の基本的な性格は、これはソビエトの参戦をその三大首脳の中で話されたことでありまして、しかも私が申し上げておるのは、その後においても、アメリカにおいてもその扱いは私の言っておるような扱いをしておる、こう申し上げておるわけでございますから、先ほど局長が言われたように、何かこの問題についていろいろ話はあったとかなかったとか、仮にあったといたしましてもそれは別段特に価値のあるものではない、こういうことです。
  81. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務大臣人柄がいいからあれですが、私の質問と全部違うわけですよ、答弁していることが。ヤルタ体制については前に質問して、いまは、米ソ首脳会談がアイゼンハワー・フルシチョフ会談以来七回も行われている、その合意事項というのは秘密事項で発表されないわけですよ。後から、時間がたてばその当時の会談の内容というものがわかってくる、こういうのが普通一般だと思うのですね。しかし、わが国は同盟国的立場にあるのですけれども、そういう点について説明をきちっと受け得る立場にあるのですかと聞いているのですよ。この点どうですか。
  82. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は、そういう立場にないと思うのですね。これはそういう価値を認めておらないのですから、こっちの方から進んでいろいろ聞く必要はないことだと思うのですよ。(岡田(利)委員「米ソ首脳会談の話です」と呼ぶ)米ソ首脳会談の中で、このヤルタ協定関係のあるいはヤルタ体制とおっしゃるのですか、いろいろ言ってもそういうことについては、われわれの方としてはそういうものをもう認めておらないのですから。それからまた、当事者のアメリカもこれはそう価値のあるものでないということを言っておる、こういうことなのです。
  83. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはだめですね。質問に答えてくれないのですから、時間のむだだ。  総理、いかがですか。私の質問、御理解できるでしょう。
  84. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の正しく理解するところによれば、委員の御質問は、ヤルタ会談そのものを離れて米ソ関係においていろいろな話し合いが行われるだろう、その際にその内容について日本側に通報があるか、こういうのが御質問だと思います。  それで、私の了解では、米ソ間において話し合いが行われ、それが日本に関係ある部分については日本側に通報があるというふうに理解しております。ただ、これが過去の米ソの会談全部に適用があったかどうか、私もそこまで調べておりませんのでわかりません。
  85. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういう意味で、米ソ首脳会談で一体どういう話がなされるか非常に関心のあるところであります。当時の客観的な状況の中で、こういう点について話し合いがなされただろう、その後の行動を見て、したがってこういう行動にお互い出てきたのだろう、こういう分析を一般的にせざるを得ないわけですね。しかし、それは国際的な情勢を大きく動かす一つの源泉になっていくわけでありますから、きわめて重要だということを強調するためにも、この日米関係の立場から、日本はどういう説明を受ける位置にあるのかということを私は聞いておるわけであります。まあいいでしょう。  そこで、外務大臣、次の質問なのですよ。  北方領土のルーツは、ソ連側に言わせればヤルタ協定にある、こういう立場なのですね。ソ連側ですよ。日本は認めていないのですけれども、そういう立場なのですよ。そこのところを混同されていろいろといままで答弁があったと思うのですが、ソ連側はそういう立場に立って領土は解決済みだ、こう述べておるということについて——向こうの主張ですよ、日本は認めていないのだけれども、向こうの主張はそこに根拠があるということについてはわかりますか。向こうの言い分について理解すると言ったら言葉があれですから、そういう主張だ、向こうの主張についてはそういうヤルタ協定にルーツを求めている立場がああいう主張だというぐあいに聞こえるのじゃないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
  86. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日ソ共同宣言の折とそれから一九七三年の田中・ブレジネフ会談の折と、この二つを考えていきますと、未解決の問題として今後話し合っていこう、そういう姿勢をソ連がとったわけであります。しかし、最近においては解決済みということを言われる。その解決済みの前提を、それはヤルタ協定だと、仮にそう言っておるとするならば、それはそれなりにソ連の主張でございますから主張の根拠は了解する以外にはないのですけれども、しかし共同宣言や田中・ブレジネフ会談のことからいうと、必ずしも当初そういう見地に立っておったのではないというふうに私は思うのです。
  87. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国の領土問題はわが国と相手国との間の話し合いで解決するというのが基本でしょう。しかし、日米関係から言えば、このヤルタ協定の問題もあるわけでありますから、そういう点で、米ソの話し合いの中でわが国の北方領土の問題についてもアメリカの立場を明確にソ連側に伝えてもらう、こういうような意思はありますか。
  88. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 岡田委員のおっしゃることを、ヤルタ協定からソ連が主張しておるということを前提にしましても、アメリカはその後、このヤルタ協定による千島列島の解釈につきましては日本と同様の見解を持っておる、こう思います。
  89. 岡田利春

    岡田(利)委員 まあいいでしょう。  いずれにしても、日ソ共同宣言、田中・ブレジネフ共同声明もございますけれども、ソ連のせんじ詰めていく立場というものはそこにあると、私自身はそういう受けとめ方をしておるものですから、非常に厳しいなという感じを非常に強くしておるわけです。したがって、そういう立場からちょっとお聞きいたしたわけです。  そこで、先般日ソ事務レベルの協議が行われて、二年八カ月ぶりで話し合いが開始されたわけであります。もちろん領土問題についても触れられておりますが、漁業協定の長期化や墓参の問題や漁船拿捕の問題等についても触れたということが報道されておるのですけれども、その内容の説明がないのであります。したがって、その内容についてきょうお聞きしたいということと、同時に次回の事務レベル及び外相会談の開催の見通しについて承っておきたいと思います。
  90. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまお尋ねの内容の点につきましては、後刻局長の方から答弁をさせますが、外相会議の問題につきましては、これはすでに新聞紙上でもはっきりいたしておりますように、日本側からグロムイコ外相の来日を求め外相会議をやりたい、こういうことを申しておるわけであります。これは御承知のように、今度外相会議を催すとすればグロムイコ外相が訪日をする順番である、こういうことから、そのような所見を事務レベルの会議で申しておるわけでありますが、その結果は、グロムイコ外相の問題はよく相談をする、指導部と相談をする、こういうことになっておりますので、その返事を期待をしておるわけであります。
  91. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 まず、次回の事務レベルの協議は、双方の都合のいい時期に東京で行うという合意がございます。  もう一つ先生の御質問だったと了解いたしますが、領土問題のほかにどういう問題が話し合われたかという点につきましては、先ほど御指摘のありました漁業協定の長期化の問題、北方墓参の問題、いまだ帰還していない邦人の帰還問題、北方領土水域における漁船拿捕の問題等が議論されました。(岡田(利)委員「内容は」と呼ぶ)  内容は、当方から先方に種々の要望を出したということでございます。  北方墓参問題につきましては御案内のとおり、従来どおり北方領土の墓参を認めろ、身分証明書だけで認めろということ。それから漁業協定の長期化につきましては、双方の漁業の安定化のために、現在一年ごとに更新している協定を長期、数年間の協定にしろということ。それから未帰還の邦人問題については、一刻も早く邦人を帰してくれということ。それから北方領土水域における漁船拿捕についても、恣意的な拿捕、罰金等は差し控えてくれ。こういう当方の要望を向こうに伝えたわけでございます。
  92. 岡田利春

    岡田(利)委員 対ソ経済制裁の問題でありますけれども政府は、イスラエルがゴラン高原地方を併合したことについて、これは十二月十五日外相の非難談話が発表されていますね。そして、五日の日の国連の緊急総会における非同盟中立国の提案のイスラエル制裁案に対してはわが国は反対をした。そして賛成八十六、反対二十一、棄権三十四カ国である。圧倒的に賛成者が多かったわけであります。イスラエルの行為には明確に反対をして、今度は制裁措置についての投票には反対をする。そういう立場の日本が、ポーランド問題が起きた、もちろんアフガンの問題は前にありますけれども、ポーランド問題が起きた、それはソ連と関連がある、こういう意味でソ連に対して経済制裁をとる、何かつじつまが合わない気が私はするのであります。  そこで、対ソ経済制裁についての見解を承っておきたいと思うのでありますが、安倍通産大臣は訪米したときに一応のわが国の考え方を向こうの方にも話をしたという報道がなされましたし、一体この対ソ制裁は、総理答弁では、EC等の動き等も十分勘案して慎重にこれに対処するという答弁が、その後国会でもなされておるわけであります。しかし、EC関係の話し合いも詰まっているようでありますけれども、わが国が対ソ制裁措置をとるのかとらないのか、とるとすればどういう措置をするのか、すでに検討が相当煮詰まって結論に近づいているとも聞いておるのでありますけれども、この点はいかがでしょうか。
  93. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ポーランド問題につきまして西側諸国の共通の認識は、ソ連の圧力のもとにこういう事態を惹起しておる、そういう見解に立っておるわけで、日本としてもソ連に対し、鈴木総理あるいは私から在日の大使を通じてその自制を求めた、こういうことでございます。そういう立場から、ソ連に対する制裁措置についてはこれは西側諸国と見解を同一にしよう、こういうことで、現在西側諸国との間で連絡をとって詰めておるわけでございますが、ただいま岡田委員のおっしゃるように、制裁をするという方向はすでに出しておるわけでありまして、その具体的なやり方につきましては緊密な連絡をとって近く結論を出したい、こう思っておるところでございます。
  94. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の名前が出ましたから御答弁しておきますが、いま外務大臣が言いましたような政府の対ソ制裁措置についての基本方針をアメリカ側に伝えた、こういうことでございます。
  95. 岡田利春

    岡田(利)委員 すでに日本としても対ソ制裁措置をとるということは、総理からも国会で答弁をされておるわけであります。しかし、二年半ぶりで日ソ間の話し合いの糸口も開かれた、こういうことも現実であります。そしてまた、この話し合いの前進というものは、わが国の安全保障にとっても不可欠な要件であるということも、これは外交青書で明確に述べられておるわけであります。そういたしますと、わが国はわが国の立場でこの問題についてはきわめて慎重であらねばならない、こう思うのであります。そういう意味で、総理見解をこの機会に承っておきたいと思います。
  96. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ポーランド問題に対しましては、先ほど来、日本政府認識見解につきましては外務大臣から御答弁を申し上げたとおりでございます。  基本的には、ポーランドの問題はポーランド人の自主的な行動によって決めらるべきものであって、外部からこれに干渉したり介入したりすべきものではないというのが基本でございます。したがって、ポーランド政府なりポーランドの事態に対して、もしソ連がこれ以上介入をするというような事態になりますれば、ポーランドのためにも世界の平和のためにもこれは容認できないという立場でございまして、そのような事態にならないように、私どもはソ連に対しても自制と慎重な対応を求めておるところでございます。  そのために、もし行き過ぎがあった場合には、西側の諸国が連帯協調して、そのような行動に出ないようにこれを抑止するというようなことから経済の制裁問題等も検討がされておる、こういうことでございまして、日本としては最終的には日本の自主的な判断で決めることでございます。
  97. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、日ソ関係の安定化はいずれにしてもわが国の安全保障にとっては不可欠的な条件でありますから、特に慎重な態度をこの機会に要望いたしておきたいと思います。  そこで、きのう野坂委員がちょっと質問しました日韓経済協力の問題について触れておきたいと思うのですが、すでに高級実務者協議を通じて、韓国側も借款に必要とする十一項目の内容を予算額、資料を添えて日本に渡した、こう言われているわけです。また、金額についても、具体的な規模がそのときに出されたとわれわれは承知をいたしているわけであります。その具体的な内容とそして向こう側が示した金額的な要望の内容をこの機会にお示し願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 金額の問題は、これはいま両国の間の折衝の過程にあるわけであります。外交上の相互の話し合いの中にあるわけでございますから、それについてはこの段階では差し控えさしていただきたい。  現在まで公表されておりますのは、韓国の第五次五カ年計画の概要と、それから先方が日本に対して要請されたプロジェクト、これは岡田委員がおっしゃったように十一のプロジェクトが示されておる、こういうことでございまして、実務者レベルの会議も、先方からのそういう提示、説明を受けたものを日本側は持ち帰りまして、今度は日本国内で関係各省庁の間で、どういう応答をするか、こういうことを検討してまいっておるわけであります。そこで、われわれとしては二回目の会合を持ちたい、こういうことを要望しておる段階でございますので、その間の数字につきましては、この段階ではお許しをいただきたいと思います。
  99. 岡田利春

    岡田(利)委員 ある筋の情報では、韓国側は、金額については輸銀二十八億ドル、民間十二億ドル、海外協力基金二十億ドルの計六十億ドルとなっている。そして、別途商品供与が二十億ドル、こういう情報もあるわけですが、これは当たらずとも遠からずでしょう。
  100. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いままで新聞などで出た今回の六十億ドルの数字では、別に私も詳しいことを聞いたわけではありませんが、商品援助は二十五億ドル、政府援助等を三十五億ドル、こういうことが伝えられておるということは、現に新聞等で私も承知しておるところでございます。
  101. 岡田利春

    岡田(利)委員 韓国の第五次五カ年計画の達成のために必要とするバンクローンを含んだ借款、これは三百三十三億ドルとも伝えられておるわけですが、この点はどうか。  同時に、今日韓国が抱えている対外債務の残高は百四十億ドルとも推計されるわけですけれども、その点については大体その数字でよろしいですか。
  102. 木内昭胤

    ○木内政府委員 お答え申し上げます。  八〇年末の時点での韓国の対外債務は二百七十四億ドル、八一年末の段階では三百億ドル前後に相なっているのじゃないかと思います。
  103. 岡田利春

    岡田(利)委員 このうち、わが国からの債務残高はどの程度ですか。
  104. 木内昭胤

    ○木内政府委員 政府関係で申し上げますと、政府貸し付けの残高は、八〇年末で九億五千万ドル足らずと承知いたしております。それから輸出入銀行の投融資残高は十二億五千万ドル見当と承知いたしております。このほかに、米、古米を供与いたしておりまして、これが累積で二千三十七億円、およそ七億ドル見当ということかと承知しております。
  105. 岡田利春

    岡田(利)委員 経済協力の問題も質問したいと思ったのですが、時間もないようでありますが、私は、対外経済協力の関係で、いわば中進国とも言われている韓国に対するきわめて偏重した供与というものは問題があるのではなかろうか、こう思うわけであります。したがって、プロジェクトごとに一つ一つ積み重ねて、最終的に話し合いで供与を決めるという姿勢のようでありますけれども、それも全体的なバランスを失することがあってはならないと思うのです。今回の韓国の要望に対して基本的な視点というものは、その点をぴしっと踏まえて対処をする、こういうお考えですか。
  106. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 基本的には岡田委員のおっしゃるような姿勢で臨みたい、こういうふうに思っております。  しかし、韓国の日本との歴史的な経緯であるとか、あるいは昨年あたり大変経済成長率が落ち込んでいろいろ困難に直面しておるというようなことから、必ずしも中進国であるから援助はしない、こういうたてまえでまいっておるわけではないわけでございまして、しかし経済協力の基本的な方針、たとえば五年で倍増をしようというようなことを申しておるわけでございますが、あるいはいま御指摘のような積み上げ方式でいこうというような、そういうようなことは当然考えながら、しかし韓国の直面する社会経済上のいろいろ困難な面についてできるだけの協力をしたい、こういうことでございます。
  107. 岡田利春

    岡田(利)委員 朝鮮半島の緊張の緩和ということもわが国の安全保障にとっては不可欠でありますが、外交演説では、朝鮮民主主義人民共和国との間に貿易、経済、文化、こういう点の交流を引き続き図っていくと、非常に簡単に述べられておるわけであります。従来の方針であります。私は、一歩を進めてある程度のレベルの人事の交流あるいはまた朝鮮との対話の道を開くという努力が必要ではないか、こう思うのであります。しかもソウルにおけるオリンピックもすでに国際的に決まった、こういう状況もあるわけでありますから、私はもう一歩進めた姿勢が非常に望まれると思うわけでありますけれども、今回の外交演説では去年と同じ内容ですね。半歩でも一歩でも進めるという気持ちはないですか。六月には御存じのように民間の漁業協定もあるわけであります。情勢も変わってきておるのであります。そういう点についてはいかがでしょうか。
  108. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 朝鮮半島の緊張緩和あるいは進んで統一平和、こういうことを求めることにつきましては、われわれも同じ考えに立っておるわけであります。また、韓国の全斗煥大統領もその統一に対しての具体的な方法についての提唱をされておるということも最近報道されておるわけでございまして、第一次的には三十八度線で対峙しておる両国の間で平和、統一の空気が醸成されていく、緊張を少しでも少なくするということが必要ではないかと思うのであります。  わが国としては、現在、北側とは国交を持っておりません。したがって従来、貿易とかあるいは文化とかスポーツとか、いろいろな面でできるだけの交流をしていきたい、こういうことを申しておるわけでございまして、現在の朝鮮半島の実情からいたしますと、三十八度線で両国で百万からの軍隊が対峙しておるというような状況で、緊張緩和、統一平和というようなことを期待してもなかなかそういう線に行っておらないという実情にあるということはきわめて遺憾なことでございますが、日本としては北側に対しては、まずいろいろな交流を繰り返していく、そういう立場をとっておるわけであります。
  109. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間もなくなってまいりましたけれども、私はその他の外交問題もたくさんあるのですが、最後に、深海海底資源開発について、米、英、仏、独の四カ国の協定がすでに締結された。これはわが国にとっても重要な問題であります。白嶺号などというりっぱな深海船が国民の税金によってすでに建造されておる。一体、この四カ国協定にわが国は参加をするのかしないのか、わが国は独自でいくのか、いずれにしてもこれは決めなければならない問題である、私は、外交上の責任もある、こう見ておるわけであります。この点についての見解をひとつ承っておきたいと思います。  それともう一つは、対外援助、経済援助について質問ができなかったわけでありますが、一点だけ総理見解を承っておきたいと思うのであります。  それは、わが国の対外援助、予算は一二・何ぼ、非常に伸び総理の国際公約を実現するという方向で進んでおりますけれども、積み残しが多くなってきておるわけですね。特に円借款については実行は四一%でしょう。先般渡辺大蔵大臣はエジプトに行って、四百五十ですか、しかし三年間何も実行されていないわけです。もう一千数百億になるわけですね。そういう状況にまた今年も五十六年度分として円借款をやる。こんなことをやっておっても真の対外経済協力にならないわけであります。もう四一%でしょう、円借款は。これどうするのでしょうか。そして、予算はどんどんふえていくわけですね。ことしだけでも一兆円を超えるわけです、そして倍になるわけですから、予算だけでも二兆円になっているわけですね。いまの外務省の経済協力だけではできないのでしょうね。やはり農林省とか通産省。建設省もあるでしょう、また対外的にはジェトロなんかの任務も変わってこなければならないと思うのですね。そういう意味で対外経済協力の総括をもう一遍して、見直しを基本的にしなければいかぬのではないか。その上で、これに対応する体制についても、いろいろな関係機関があるわけでありますから、本当に総理が言うように対外経済協力というものがわが国の国際的な安全保障の重要な柱であるとするならば、その体制がとられて、それが実効が上がるものでなければならないと思うのです。重大なる問題であると思うわけです。この点の総理見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  110. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 深海底資源開発につきましては、日本では国内法を持っておりません。国内法を持っておる米、英、西独、それに仏が参加する、しないということが取りざたされておりまして、相互国制度の創設をしようという動きがございますが、わが国といたしましては包括的な海洋法条約のもとで行われるべきであるという立場をとっております。  なお、総理の御答弁の前に、経済協力の関係で、岡田委員のおっしゃっておることと実際が若干食い違っておるのではないか。技術協力については執行率はおおむね九割、経済開発等の援助費、これはいわゆる無償援助でありますが、これは一〇〇%執行しております。円借款につきましては、これは円借款の性格上、支出の完了まで四、五年かかります。そういうことが通常でありますので、ある段階を見るとおっしゃるようなことがあろうかと思いますが、昨年末現在での円借款の約束額のうち約三分の二がすでに支出済みでございます。  以上でございます。
  111. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 経済協力、特に開発途上国、第三世界に対する経済協力は、日本として国力にふさわしい国際的な貢献ができるということで、私は非常に重視しております。これを推進しておるところでございますが、いま外務大臣から申し上げたように、必ずしも私は執行状態は悪くはないと思っておりますが、しかし、岡田さんがおっしゃるように、今日の世界的な景気の停滞、不況、特に非産油第三世界の経済困難というのはきわめて深刻でございます。五千億ドルに及ぶ累積借金、負債を抱えておるというような状況でございます。したがって、手元資金が足らない、自己資金がどうしても足らないという面がございます。そういう点は私どももよく承知をしておりまして、世銀でありますとか、今度はいろいろな国際金融機関等の強化も必要であろうかと思います。  また、執行に当たりましての技術その他の援助もあわせて行うことによって実効も上がってくるのではないかと思います。総合的な努力を今後進めてまいりたい、こう考えております。
  112. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  113. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  114. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、小坂運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小坂運輸大臣
  115. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほど羽田空港の現地まで参りました。委員各位の大変な御配慮、ありがたくお礼を申し上げます。  本日の八時四十五分ごろ、日本航空三五〇便、福岡七時二十五分発、羽田八時五十五分着予定が、東京国際空港に着陸のためC滑走路に進入中、空港敷地手前百二十メートルの海上に墜落、着水をいたしました。乗客百六十六名、乗員は機長を含め八名であります。  救助活動は、現在、海上保安庁船艇二十三隻、同ヘリコプター二機、さらに消防庁、水上警察、自衛隊等が強力に救助活動を続行をいたしております。  乗客、乗員の被害状況でございますが、一部まだ未確定でございますが、残念ながら、死者は二十名を現在数えております。重傷者が七十七名、軽傷者七十名、なお救助中七名ということになっておりますが、この亡くなられました二十名の方方に心から哀悼の意を表したいと思うのでございます。  救助されました乗客、乗員は、付近の二十八の病院に収容いたしまして手当て中でございます。  運輸省といたしましては、事故発生直後、本省に対策本部、本部長事務次官を設置するとともに、羽田空港と第三海上保安本部に現地対策本部を設置いたしました。また、航空局技術部長を現地に派遣をいたしておるのでございます。航空事故調査委員会は、事故調査官六名を現地に派遣をいたしております。なお、私もただいま先ほど現地に参りました。  当時の気象状況は、気温が二度、北の風十五ノット、視界二十五キロメートル、雲高五千フィートでありまして、気象条件には別に異状はなかったというのがいまわれわれが出しておる結論でございます。  なお、機体が爆発する危険性があるという警告が出ましたが、現在、機体から油の抜き取り作業を準備しておるところでございます。  なお、この事故の実態についての調査でございますが、まだ機首が水面にもぐり込んでおりまして、現在そこをいろいろと作業いたしておりますが、まだボイスレコーダーあるいはフライトレコーダーが手に入っておりませんので、事故の実態についての調査が具体的には開始されておらないというのが現状でございます。  いずれにいたしましても、航空機の事故は非常に多くの犠牲を出すものでございまして、私も、運輸行政の一番基本は安全である、乗客の安全を守るということに重点を志向することで努力をいたしたのでありますが、今回の事故は大変遺憾なことでございまして、謹んで御報告を終わります。      ————◇—————
  116. 栗原祐幸

    栗原委員長 質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  117. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま運輸大臣から報告がありました日本航空の事故につきましては、亡くなられた方方に対して深い哀悼の意を表し、同時に、けがをされた方の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。同時に、こうした事故が再び起きませんように、その原因を究明して万全の策を講じていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  きょうは五十六年度補正予算を中心とする質問でございますので、私もできるだけわかりやすく質問をさせていただきたいというように思いますし、お答えの方も、国民の皆さんが聞きたいと思っていることを質問する考えでおりますので、そういう点を配慮しながらぜひお答えを願いたいというふうに最初に申し上げておきます。  今度の補正予算で六千三百億ですね、建設国債といいますか、それが二千五百五十億、特例が三千七百五十億ですか。  そこで、最初にお聞きをいたしたいのは、いま国債の利子が一日どういう状況になっておるか。その点、私がこの前聞いたときには、一日百五十億で一時間に六億ぐらいだということをお聞きをしておったのですが、きのう聞きましたらこれが百七十億ぐらいですか、一日に利子だけね。時間に直すと一時間に七億五千万ぐらいの国債の利子だ、こういうふうに聞いておるのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  118. 松下康雄

    ○松下政府委員 五十六年度予算におきまして国債利払い費、一日当たりにいたしますと概算百七十億となっております。
  119. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、結局、ことしの、そして来年の国債の額は出ているわけですね。そうすると、五十六年、五十七年、五十八年、五十九年というか、わかっている範囲でずっといきますと、結局、国債が百兆円になるというのは、一体いつごろ、どういう数字でなってくるわけですか。
  120. 松下康雄

    ○松下政府委員 五十八年度末の国債残高、現在の試算でございますが、百兆円ということになっております。
  121. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、利子ももちろんそれに従って非常に大きくふえてくる。こういうふうになってまいりますと、これは結局、国債を持つ力のない人、ない人であるけれども税金を払う人が大ぜいいる。それらの人が、国債を持っている人の、これは銀行であるとか証券会社その他いろいろ個人もありますけれども、そういう人の利子を税金でもって支払うという形になってこざるを得ない、非常に短絡的な考え方ですけれどもね。そういうふうなことが常識的に言えるのではないですか。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは物の考え方でございまして、国債の金は、一般の銀行預金、郵便局の貯金、そういうようなものが主たるものでございます。ですから、銀行に預金をしている人は間接的に国債を買っている、郵便局に貯金をした人も間接的に買っているということは言えるかもしれません。
  123. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、赤字国債を五十七、五十八、五十九で新規発行をなくす、こういうわけですね。これはわかったのですが、そうすると、財政再建というのは、それが財政再建であるという意味なんですか、それとも、公債の依存率を一けたにするということが一つの財政再建だということなんでしょうか。どれを財政再建というふうなことで呼ぶのでしょうか。
  124. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これもとり方はいろいろあるわけでございますが、要は、国の歳出、その財源というのは、本来から言えば租税収入等をもって充てるというのが原則である、私はそう思うわけであります。しかるに、歳出が多くて歳入が少ない、租税が少ないというような状態のときに国債を発行した。しかしながら、その国債の依存率が一時は三九%、収入の中で三割も占める、こんなことはもう異常なことでございまして、これを二七にするとか、三三、二七、それから二一とさらにそれを下げていく。仮に国債が発行されても、全体の経済規模の中でそれは小さなものであるならば、必ずしも国債があったから財政不健全ということではないのでありますが、異常に大きいというところに問題があるわけでございます。  いずれにいたしましても、自分の自然の収入といいますか、本来の収入で歳出が賄われるように持っていくことが財政再建の根本である、そう思っております。
  125. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、それは一体いつごろ、どのような方法で、ただ歳出のカットの方法もあるし、歳入を別な形でふやすという方法もあると思うのですが、いつごろ、どのような形で、その財政再建というか、それは具体的にでき上がるという見通しなんですか。
  126. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 すでにもう九十兆円から国債残高があるわけでございますから、これも六十年にはその一部が償還に回ってくる、支払いをしていかなければならない。したがって、本来から言えば、もう国債を発行しなくても済めるような状態にまでしなければならないと思うわけでございますけれども、現実の問題としてそういうような状態には当面とてもならない。したがって、私どもといたしましては、まず、国債の中でも消費的経費に使われるもの——いわゆる建設国債は投資的な経費であって、その方は経済との関係もございますから、一挙にこれを切るというわけにはまいりません。経済の維持、持続と発展というものもあわせて考えていかなければ、これも収入に大きく響いてくるわけですから、それとの兼ね合いでどいうふうにするかということは、そのときどきの経済事情、財政事情等を勘案して決めていくよりほかにない。とりあえず、われわれといたしましては、五十九年度までに、いわゆる赤字国債と称せられる資本的支出でないもののために支出される国債、これは発行しないようにしていこうということを考えておるわけです。
  127. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、五十九年度までにいわゆる赤字国債というものの新規発行をやめたいということの結局わかるのは、いまは五十七年ですね、五十八年の暮れごろにはっきりとしためどがついてくる、こういうふうに承ってよろしいですか。
  128. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十九年度までに脱却ということになると、五十九年度予算編成というようなことが当然考えられます。
  129. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、この前、総理大蔵大臣も言われた、五十九年度に新規の赤字国債の発行をしないことについて政治生命をかけるという意味、これは結局、五十八年の暮れの予算編成期にならないと結論は出てこない、こういうことですか。どういう意味なんですか、その政治責任をかけるという意味と時期的な絡みとは。
  130. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まあ、経済は変動いたしますから、五十九年に入ってから何らかのことで急上昇するというようなこともございましょう。したがって、五十八年の年度末というふうに断定的に申し上げることはできません。いずれにしても、五十九年度中いっぱいに赤字国債を脱却したい、そう考えているわけです。
  131. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、その目安は大体五十八年の暮れにはつくということですね。これは常識的に考えてそのとおりですね。  そこで、今度の補正予算のことで、これはたとえば租税収入の場合あるいは印紙税の収入の場合、これが減ったということが一つの大きな原因になっておるわけでしょう。そうすると、租税収入が減ったのは物価が安定したからだというわけですね。そうすると、その物価が安定したということは、大蔵省なり、企画庁もそうかな、どういうふうに上がればいいというふうに考えておって、それがどういうふうに安定をしたということですか。これが第一点ですね。  それから、印紙税収入が減ったというのは、これはあなた、いわゆるキャッシュレスが非常にふえてきて、そしてキャッシュレスですから領収証を発行しないわけだね。だから、印紙は張らないということから、そこで収入が減ってきた、こういうことでしょう。だから、印紙税収入の場合などは、当然前もってこっちが考えれば、払う方はもう一枚上手なんですから、その上のことを考えてキャッシュレスを活用するということは当然わかっていたのではないでしょうか。以上二点。
  132. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ともかく税収の減った原因は何かと申しますと、それは景気の立ち直り方が思ったよりも緩やかである、そういうことも一つあるでしょう。しかしながら、それは中身はどうなんだということになりますと、思ったより石油等を初め消費節約が進んだということも言えると私は思います。その結果として物価が急速に鎮静化した、これも事実。年度間の見通しとして、特に税収に関係のある卸売物価等につきましては、年度平均して五十六年度は四・一ぐらいになるのじゃないかと思っておったものが、去年の秋には一・八に見通しを直すというようなことになりました。現実の問題としては最近は一・六ぐらいに非常に鎮静化してきている。消費者物価においても同様でございまして、五・五ぐらいに見たものが四・五ぐらいに、それ以内ぐらいにおさまるかもしらぬというようなことであって、こういうようなことが、七・七とかいう春闘相場が出たわけでございますけれども、その後で今度は賃金交渉するというような場合の方が一層物価が鎮静化してくるというようなことが、後から賃金改定等には低目の影響を与えてきている、こういうことも言えるだろうと思います。  それから、物価が思ったより低くなったことによって、当然、従価税的なもの、これは物品税等に多くありますし、お酒などでも従価税的なものももちろんあります。そういうものは上がれば自動的に上がるわけですから、それが上がらなければ税収は上がらないという問題もございます。印紙なども全く物価に関係ないというわけにはいかないのであって、やはり金額の大きいものは大きな印紙を張るということになりますから、これはそのままストレートというわけにはいきませんが、やはり物価に多少の関係はもちろんある。  それから、いま言ったように銀行振り込みとかキャッシュレスとか、そういうものがうんとふえた、予想外にふえたということもあるだろうと私は思います。  そういうようなもの等ではっきりと、このような状態では、このまま進めば、いままでの減りぐあい等から見て約四千億円ぐらいの見積もりを直す必要があるということになったわけです。
  133. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、その中で、たとえば去年物品税を上げましたね、VTRとかライトバンとかね。それを十月一日から上げて、そして、それが入ってくるのは大体一月以降にふえるわけでしょう。そういうふうなものを見るとか、三月は個人所得税、それから大体五月に法人税ですね。大体五月いっぱいぐらいで目鼻がつく、こういうことですね。そうすると、五十六年度税収がはっきりわかってくるのは大体七月になりますね。七月の初めごろには大体税収がわかってくる、こういうことですね。それがまず第一点ですね。  そうなってきたときに、今度の補正予算を組んだけれどもその税収がこの補正予算どおりいかないということになってきたときには、一体どういうふうなことになるのですか。あなたは責任をとるとかなんとか言っていたけれども、それは具体的にどういうふうなことになってくるのですか。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これもかねてからいろいろ議論のあるところでございますが、なかなか歳入見積もりというのは、事務当局でもいろいろな材料を集めて予測を立てるわけでございますが、経済見通しと同じようなものでございまして、例年どうしたって数%の食い違いというのは実際問題として出てきちゃっておるわけです。われわれとしては、一応補正減をいたしましたから、きのうもお話をいたしましたが、特に十二月の税収というものは非常に上向きになってきた、この状態でずっといけば、私は一応現在の補正で何とかなるんじゃないか、そう思っておりますので、そこから先の問題については具体的にまだ考えていないということであります。
  135. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、私が言ったように、本当の数字が出てくるのは大体六月の末から七月の初めだと、こういうことは間違いないですね。これはどうですか。
  136. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  五月に入りましたのが、六月の中旬以降に集計しますので、発表は七月の初めということになろうと思います。
  137. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの話は前からいろいろ質問があったところですから、同じことを質問してもあれですから……。  いま春闘相場の話がちょっと出ましたね。そこで、企画庁長官にお尋ねをするんですが、あなたのところの、名前は言わぬけれども、ある審議官が書いた非常におもしろい本があるわけです。「“非”常識の日本経済論」という非常におもしろい本だ。これは専門家の常識を破るような形で、多少シニカルな書き方をしている本だけれども、これはとてもおもしろい。この本の中に出てくるのは、こういうことが出てくるわけだ。「クイズ=高率春闘の最大の受益者は誰か。答=大蔵省。理由=賃上げ率が一%高まれば、所得税は二・五%も増えるから。すなわち、家計調査結果によれば、五十五年の勤労者世帯の勤め先収入(税引前収入)は、前年比七・七%の伸びであったが、勤労所得税は一九・一%も増加している(弾性値二・五)。〔注1〕 一般に公刊されている「家計調査報告書」(年報)中には、世帯主職業別統計は年次データしか収録されていないが、総理府統計局へ行けば月次データまで利用可能である。本図は、この月次データを加工したものである。」こういうようなことを言っておるのです。  総理府の統計で、この十月のやつが一番新しいわけですね。「一世帯当たり一か月間の収入と支出——全国(全世帯・勤労者世帯)」、これは十月のですね。これを見ますと、たとえば「勤労者世帯」の中の「勤め先収入」というところを見ると、四%の数字で出てくる。そうすると、今度はそれがここへ来るわけですね。「勤労者世帯」のところの「非消費支出」の「勤労所得税」というところに来る。そうすると、九・七ですね。こういう数字になってきているわけですね。企画庁で、これは僕は企画庁の人に、よく調べといてくれ、これは本当かうそか、どういうふうな反駁があるなら反駁があるのか、そういうようなことをよく調べてくれというふうに前もって話してありますから、あなたの方でお調べになっておられると思うのですが、この点について企画庁長官はどういうふうにお考えなのか、ひとつお聞かせください。
  138. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの所得税は累進課税になっておりますから、傾向としてはそういう数字になっていくのではなかろうか、こう思いますが、詳細につきましては政府委員から答弁させます。
  139. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 ただいま先生から御指摘のございました家計調査によります勤め先収入と勤労所得税の関係でございますが、一般に勤め先収入が上がりますと勤労所得税が上がるという関係がございます。五十五暦年の数字を見ますと、勤め先収入の増加と税収の増加の関係の弾性値は二・五でございます。それから、五十六年の一−十一月まで数字がございますが、それをとりますと二・七でございます。したがいまして、一般的に勤め先収入が上がりますと税収が上がるという関係はございますが、そのときの経済情勢その他で弾性値は若干動いていくという状況にございます。
  140. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはそのとおりで、五十五年度は七・七について一九・一%ですね。だから二・五、こういうふうな数字が出ておる。それで、いまあなたの言われた一から十一月までだと二・七%という数字が出ている。だから、所得税が累進であるために、非常に短絡的な考え方だと思いますが、結局一%の収入が上がると二・五ないし二・七%の税収がふえてくるという計算になるわけですね、企画庁の計算は。河本さん、あなたもおおむね相違ないと言ったし、いまもそう言っているんだから。そうでしょう。  そうすると、いろいろな問題がそこに出てくるわけですが、この点については、いま企画庁ではおおむね認めましたけれども大蔵省ではその考え方を認めるのですか認めないのですか、どっちなんですか、これは。
  141. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  いまの数字は家計調査の数字でございます。われわれ税の方で言いますと、まあ大体似た二・三ぐらいで推移しています。五十五年実績は二・二五でございます。いまのは家計調査と税の方の税収の弾性値、給与、賃金の伸びに対する弾性値、弾性値というのは給与が伸びるとそれだけ伸びるということでございます。  いまの赤羽さんの話がいいかどうかいろいろ……(稲葉委員「赤羽さんなんて言わないよ」と呼ぶ)失礼、ここに本が出ておるものですから。所得再配分のための累進構造であるというのが一つでございますので、これは大蔵省が喜ぶというよりも、累進構造であるというのは所得再配分であるということからきますので、これは当然税はふえる、弾性値が高いというのは言えると思います。これがいいか悪いかは、累進構造というものが社会的な再配分ということを目指しておるということからくると思います。  それと、ちょっと時間を食いますけれども、たとえばいまの話を焼き直しまして、所得が一〇%ふえる、三百万が一割ふえる、給与収入です、そのときは三万くらい所得税がふえるわけですね、二・八万円。したがって、残りの二十七万円、約三十万円という手取りはふえるわけでございますね。そういう意味で、やはり賃上げでメリットは労働者であるということは言えると思います。ただ、税金がその分累進でふえておる。それで、手取りはふえるわけでございまして、ただ累進でございますので、上の方が税金が多くふえるということですから、むしろ上の方の負担が重くなっていくという問題があります。  それと、物価の問題があると思うのです。物価の分を差し引きますと、むしろ一千万を超えればマイナスになります。これは五十二から五十七です。三百万と五百万では実質のところではプラスになってきます。  あとはインフレの問題だと思うのですが、しかし、インフレによって国の財政がよくなるのはよくないと思います。したがって、賃上げであっても、インフレによって国が赤字を消すとかメリットがあるということは喜ぶべきことではない、こう思います。
  142. 稲葉誠一

    稲葉委員 何もインフレによって賃上げしろなんて、そんなこと言っていませんよ。私が言っているのは、いま言った企画庁の専門家の書いた数字というのはなかなかおもしろいですよ。おもしろいし、この総理府の統計をとってみるとそういう数字、二・五とか二・七になってくるんですよ。ただ、もちろんそれを一〇%上げたらそのままいくとかなんとか、そんなことは数字の上では出てきませんよ。そんなめちゃくちゃなことを私は言っているのではありません。しかし、所得によっては、一千万円の人とそれから低い人とによって違うのですからいろいろあるけれども、いま言ったように、大筋としてはとにかく一%の賃上げがあれば二・五ないし二・七ぐらい、まあ二・五でもいいですよ、そのぐらいの税収がふえるということを企画庁の専門家がちゃんと書いているんですよ。それでいま河本さんもそれをおおむね認められて、局長、何局長か知らぬけれども認められたわけですからね。これは後の非常に大きな問題として、私もこの程度にしておきますよ。これは宿題というか、非常に興味の深い問題なんだ。だから、いま大蔵省としてはそのままストレートにイエスと言えないからああだこうだ言っているけれども、これは非常におもしろい統計ですね。実に官庁エコノミストとしては愉快な人だよ、この人は。本当だよ。僕は名前を言わないですよ。名前をあなたの方は言ったけれども、僕は名前なんか言わないよ。そんなことを言っちゃかわいそうだもの、その人が。それはそれとして、いまの問題、後に残しておきます。  そこで、もう一つ問題は、所得税法人税の納税者の数、所得税の実人員がどんどんふえてきていますね。どんどんと言っていいと私は思うのですが、それはどういうふうに所得税の納税者がふえてきているか、それをちょっと説明してくれませんか。
  143. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  所得税、源泉と申告合わせまして、五十三が三千五百三十六万人、それが五十七年は、予算見込みでございますが四千百九十、五十五が実績では三千八百八十九。いまのが個人。あとは法人でございましょうか。(稲葉委員所得税だけでいい」と呼ぶ)所得税はそういうことでございます。
  144. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたは全部言いませんでしたけれども、重複しているのもありますからそれを引かなきゃいけませんね。そうすると、五十三年の所得税実人員が三千三百三十一万人、これは納めている人がね。五十四年が三千四百八十万人、五十五年が三千六百五十三万人、五十六年の見込みは四千五十八万人、五十七年度予算では四千百九十万人ということで見ておるのではないですか。いま私が言いました数字、間違いないですか。ずいぶんふえていますよ。
  145. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  いまのは、実績が五十五は三千六百五十三というのが所得税の実人員、重複を引いたものです。あとは、予算見込みとして、五十六が四千五十八、五十七が四千百、さっき申し上げた数字です。
  146. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、五十五と五十六を比べると、約五百万人ふえているわけでしょう。そういうふうな形に、どんどん所得税を払う人がふえてきておる、こういうことは数字の上から言えるということになるわけですが、この所得税を払う人の中の分析は、これはまた別の問題ですから別の機会にさせていただきたいというふうに思います。  そこで、これは河本さんに先にお聞きをしておきたい、こう思うのですが、さっき岡田さんもちょっと触れられたことなんですが、アメリカの高金利、これは原因がどういう理由によって生じているのかということですね。たとえば、予算が非常に大きくなってくる、赤字が出てくる、その赤字を埋めるためには結局あれしなければならない、金利が高くなってくるという、このアメリカの高金利の現状が臨時的なものなのか恒常的なものなのかということですね。恒常的としても、ある段階までいく、どの程度段階まで恒常的なのかということ、これはもちろん見通しですから、そうやかましいことを言って、統計なんかでわかるべき問題でもありませんけれども、その一つの問題がありますね。  それから、それが日本の経済に与える影響の問題ですね。そうでしょう。ドルが高くなってくる、円が安くなる。ドルが高いというのは何も金利だけの問題ではもちろんありませんね。アメリカの実際の経済力というものは日本よりも強いわけですからね。だから、それはありますけれども、そこへポーランドの問題や何か起きてきて、いろいろの問題がありますけれども、そうすると、いま言ったような、一時的なものか、ある程度恒常的なものかというのが第一の質問ですね。  第二の質問は、結局、円安ということにならざるを得ないだろう、そうなってくると再び輸出がどんどんふえてくるようになって来ざるを得ない。そうなってくると、今度の予算なり何なりで組んでおる内需中心の予算ということについては、アメリカの高金利というものが逆に、逆にというか、円安を誘って、また輸出ラッシュということにならざるを得ないのではないだろうか、こういうふうなことですね。もちろん輸入価格は、原材料の輸入なんかでこれは上がりますから、それはありますけれども、そういう点についてまずお答えをお願いをいたしたい、こういうふうに思います。
  147. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 アメリカの金融政策は、御承知のように、五十四年の秋から変わりましたので、政府がなかなか低金利政策をやろうと思っても思うように展開できない、こういう背景もあろうかと思います。  そこで、アメリカの高金利が日本経済にどういう影響を与えておるかということでありますが、やはり最近の円安の一番大きな原因はここにあろうかと思います。日本経済とアメリカ経済を比較いたしますと、日本経済の実力からいいまして、円はもう少し高く評価されていいのではないか、こう思っております。  円安になりますとどうしても輸出依存型になりがちでございますし、それからまた、アメリカの高金利がいまのような水準でございますと、日本の金融政策は思うように展開できない。すでにもう昨年の三月と十二月の二回にわたる公定歩合の引き下げなども余り効果が発揮できなかったというのも、やはりアメリカの高金利の影響だと思っております。したがって、内需拡大の政策も思うようにこれができない。いま私は、内需拡大政策に一番足を引っ張っておるのはアメリカの高金利ではなかろうか、このように判断をしております。
  148. 稲葉誠一

    稲葉委員 なかなか思い切ったというか、まああたりまえのことを言われているのだと私は思うのですけれども、とにかくまあ思い切った発言ですね。  そこで、それでは日本としては円高政策をとるということになってきたときに、具体的にどういう政策をとるのですか。今度の予算の中にそれはどういうふうにあらわれておるのですか。それが一つですね。  それから、アメリカの高金利の関係で、今度日本としては景気を刺激するためにまた公定歩合を引き下げようとしたって、結局それはできなくなってきたのじゃないですか。それはそうですね。そこら辺のところはどういうふうに説明をされたらよろしいのでしょうか。
  149. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、景気刺激のために低金利政策を展開するという目的で公定歩合を二回引き下げましたけれども、実効が上がらない、こういう状態ですから、いまとても公定歩合をまた引き下げられるような状態ではありませんし、引き下げても意味がない、むしろマイナスの効果さえ出てくるのではなかろうか、こういう感じがいたします。  それじゃ、いろいろな対応をして円高にしようといいましても、やはり日本の資金力の十倍以上の投機資金が待ち構えておりますから、意図的にやろうとすれば当然そういう投機資金が出てまいりまして、なかなか思うように展開できないということでありますから、やはり私どもといたしましては、アメリカが幸いに消費者物価は下がる方向に相当進んでおるということでございますから、もう少し低金利政策を強力にとってもらえないだろうか、こういうことをひたすら念願をしておるのが現状でございます。
  150. 稲葉誠一

    稲葉委員 ひたすら念願するのは、これは自由だと言えば自由かもわからぬけれども、しかし、アメリカはああいう政策をとってヨーロッパや日本に対してどういう影響を与えるかということは、これはアメリカとしてはわかっているはずでしょう。それは前もって、前もってと言えばおかしいかもわからぬが、日本に対しては何らかの話し合いとかサゼスチョンとかいろいろなことは何にもないのですか。なしにいきなりばんとやるのですか、どうなんです、それは。
  151. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはいろいろ国際会議なんかでも問題になりまして、日本ばかりでなくてドイツもフランスも、何とかならぬか、もう少し金利を下げてくれという話は再々したわけです。あちらさんの言い分は、高金利政策をやっているのじゃなくて、私のところではそれは一〇%からのインフレと失業に悩んでいる、インフレ退治だ、そのためには要するにマネーサプライを締めなければならぬ、その結果として結局資金需要が多いから金利が上がるので、金利を上げる政策をとっているのじゃないのだ。何といってもアメリカではインフレを静めることが最大の政治課題であるということの繰り返しになるわけです。最近はみんなややあきらめ顔でして、早くアメリカの経済がよくなってもらわぬと困る、世界的に規模が大きいだけにどこの国でも影響がありますから、したがって、早くアメリカも歳出カットその他をやってインフレを鎮静化する、御成功を祈るというようなことで終わりになってしまうことであって、それ以上強制的にどうこうということは、国内の政策の話ですから、希望は強く申し上げますが、それ以上どうこうというまではいかないというのが実情でございます。
  152. 稲葉誠一

    稲葉委員 強制するわけにはいかないですね。それはあたりまえの話で、それはその国の自主性がある。日米の貿易摩擦の問題でもそうなんですね。時間があればきょうやりますけれども、たとえばアラスカ石油の問題だとかあるいは杉丸太の問題にしても、これは外務大臣も二階堂さんから、アラスカ石油の問題についてはアメリカに行って十分に主張してくれと言われているはずですよね。二階堂さんがそう言っているのですから。ところが、アメリカではいろいろな問題があります。国内の問題、たとえばアラスカ石油を西海岸にやるとか——いま答えはいいです。聞くだけ聞いておってください。そして、あとは半分ぐらいはパナマ運河を通って東へ回るのでしょう。パナマ運河というものは狭いから、あれは小型タンカーでなければだめでしょう。そうすると、小型タンカーだと日本へアラスカ石油を輸入することができなくなるから大きな問題になるからというようなことで、それに選挙区のことが加わって、アラスカ石油の問題についてもアメリカは日本に輸出したい、自由貿易だ自由貿易だと言っていながら、ちっとも自由貿易でも何でもないのですよ。自分の都合のいいときは自由貿易、都合の悪いときは自由貿易でない、保護貿易なんですね。その辺はまた別の機会にお聞きしますが、いろいろなそういうような点があるのです。  そこで、ことしの予算の編成のときに一番問題になりましたことの一つに、引当金の問題があるわけですね。これは率直に言うと、とにかく退職給与引当金の問題でしょう。退職給与引当金の残高が、いま一番新しい資料で言いますと、資本金をたとえば五十億以上と百億以上に分けて説明をしてくれませんか、幾らありますか。
  153. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  五十五年度の退職給与引当金利用状況ということで見ますと、百億円以上のところで四二%を占めております。金額は二兆九千九百億、合計は七兆一千三百五十二億であります。
  154. 稲葉誠一

    稲葉委員 退職給与引当金がこんなに七兆幾らあるのですね。いまここに出した資料というのは五十五年度の資料ですから、これは後で皆さん方にお配りをしていただきたいというように私は希望するのですが、実際はこれより高くなっているのですね。去年二月にこの予算委員会へ出したものと、それからことし私のところへ出したものを比べますと、去年のは五十四年度分でしょう、ことしは五十五年分ですね。それを比べますと、五十億以上の資本金のところで百六十億ふえているわけです。百億以上のところで千五百三十億、合計二千九百二十億円退職給与引当金がふえているわけですね。この数字は資料に出ているのですから間違いないわけですが、そこで、退職給与引当金というものについて、今度繰入率の問題をめぐりましていろいろ問題が出てきたように私は聞いているわけです。  そこで、お聞きをいたしますのは、まず、この退職給与引当金というものが認められると、いかにも名前から言うと、従業員が退職するときには、ちゃんと引当金が積んであって、それが保証されておる、こういうふうに響きは聞こえるわけですね、だれが見ても。そうでしょう。ところが、そういう保証は一体あるのですかないのですか。どういうふうになっていますか。最初に百分の二十五を特別積み立てしていましたね。それをいまでは、昭和四十年だか削ってしまいましたね。だから、いまはそういう従業員の退職のときの保証だということの性質はなくなっているのじゃないですか。
  155. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 特定預金の制度は最初ございまして、御指摘のとおり四分の一だったのが四十年に廃止になって、現在は特定預金という制度では担保されておりません。
  156. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、担保をされていないということは、この金を自由に使ってもいいということですよ。これはあたりまえの話で、担保されていないのだから。いまの企業の実態から言えば自由に使ってもいい。そうすると、これが最初のときには繰入率が五〇%でしたね。それが四〇%になりましたね。一〇%繰入率がふえたといいますか、そういうふうになって下がったというのかふえたというのか、考え方によりますが、変わってきましたね。そのことによって税収は一体幾らふえたのですか。
  157. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  最初は、期末要支給額の一〇〇%でございました。それを三十一年に五〇に落としまして、いまの御質問は五十五年に四〇にしたその差額であろうと思うのですが、約三千億であったと記憶しております。三千億若干出ておったと思います。
  158. 稲葉誠一

    稲葉委員 約三千億ですね。そうすると、これを三〇%にしたらどうなんです。三〇%にすると、前からの経過措置か何かがあって、最初のころはふえないですね、税収は。ふえないけれども、これが五十八、五十九、六十とだんだんこう後になるに従ってうんとふえてくるのじゃないですか。その間の経過をちょっと説明してください。
  159. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  五十五年に四〇に落としまして、それは積み増し停止にいたしていますので、仮にそれを三〇なら三〇に落としましても、それによってすぐには数字が出ません。将来というか、積み増しでない形で四〇を三〇にするという計算はいま持っておりませんが、先ほどの数値からは御推察ができる金額であろう、根っこはふえておりますけれども。積み増し停止ですからいま落としても数字は出ません。しかし、将来とか、積み増し停止をやめてしまうとなると、その差額が出てくるということは申し上げられます。
  160. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたの方は三〇なら三〇にしたときのことを言いたがらないのです。言いたがらない理由はもちろんあります。いいですか。これを三〇にやろうとしたかどうかは別として、大蔵省は退職給与引当金について手をつけようとしたわけです。七兆幾ら、金はこれだけあるわけですよ。いま実際はもっとあります。これは五十五年度の資料ですから、いまはもっとあると思うのです。大体七兆五千億ぐらいあるかな。そのことに手をつけて、結局大企業が税金をよけい取られるのですよ。あたりまえでしょう。この前、五〇から四〇になったときだって三千億ふえているのですから。これはふえるのです。だから、土光さんたちが猛烈に反対をして、結局大蔵省はこれを引っ込めてしまった、こういうことになるんじゃないですか。引っ込めたかどうかは知らぬけれども。  そこで、お聞きをいたしたいのは、この問題についてまず疑問になりますのは、最初のときの計算は、余命退職年数というのがありますね、これを九年に見ておったわけでしょう。そして、利子を八%として計算してくるわけですね。八%の利子がいいか悪いか、これも議論があるのですが、それはいいです、おきましょう。そうすると、四〇%に落としたときには余命退職年数を十二年に見ているわけです。これは間違いないですね。今度定年制がしかれてくるとその年数がふえるわけです。ふえると、大体十五年になるのですよ、平均して。これはあたりまえの話です、実態調査すればそうなるんだから。そうなってぐると、繰入率というものは、いまの制度を一応いいという前提にして、いいというか何というか、そのままという形にしても、繰入率を下げるというのが、余命退職年数が九年から十二年、十二年から十五年になったのですから、十二年で計算しているものが十五年になれば、この繰入率はうんと低くならなければ、三〇%とかなんとかに下がってこなければならない。これはあたりまえのことではないでしょうか、理論的に言って。
  161. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 いま御質問になっているのは、要支給額の四〇の算定根拠の問題、それは利率と年数で現価換算するという趣旨で、それの変動要因があるかということでございましょう。それで、五十五年のときに、その前が九年だったのを十二年に見直しております。五十五年からいまの段階ですから、そこのところは十二年がそれほど変わる数字ではないわけでございます。十五年という数字ではない。年数の方ではそう変わらない。定年制が延長になりましても年齢別がどうなっているかという問題が響きますので、直ちにそこで延びるということではございません。したがって、年数の方では、この問題は四〇を下げるという要因としては働かないと思います。
  162. 稲葉誠一

    稲葉委員 しかし、それは大蔵省から僕が聞いた説明とは違うな。これは主税局長がそういうふうに言うのだから。ただ、十二年が十五年になったということは間違いないですね。なりつつあるということは間違いないですから、いますぐどうこうという意味ではなくて、この繰入率が変わってこなければならない、こういうことは当然考えられてくるのではないですか。これが第一点ですね。  それから、もう一つの点は、これはいますぐここで回答ということではなくて、労働省にも関係することなんですよ。労働大臣いるんですか。よく聞いておいてくださいよ。これは質問通告していませんから、いまここで答えを求めるわけではありませんが、研究しておいてもらいたいことなんです。  賃金は確保されているわけですね。ただ退職金の問題については確保されていないということです。これは間違いないというか、その点が非常に緩やかというか、十分なものでない。こうなってまいりますと、いま言ったような形で出てくるのは、本来、従業員全員が任意に全部退職したという場合に積み立てる金としてこの退職給与引当金という制度が生まれてきているわけですね。ところが、従業員については何ら保証がない、担保になってないということですから、それについては今後退職金の確保の問題として十分考えていただきたいと思うのです。これは率直に言うと、労働組合の中でもいろいろな考え方があるのですよ。意見の相違もあるらしいので、いまここで結論を求めるわけではありません。いずれにしてもそういうような形になってくるということが一点。  それから、いま言ったような形で、とにかくこの金が七兆幾らあるのですよ。この金を企業は自由に何に使ってもいいのです。ことに百億以上の企業が、あなた、約三兆円持っているのですよ。だから、これに手をつけられるのを財界が嫌がるのはわかるけれども、しかし、そのことと、こういうように担保も何もない、しかも引当金という形で、実際は課税しなければならぬものを自由に使っておるという形については是正しなければいけない。これはあたりまえのことだというふうに私は思うのです。これについては大蔵大臣はどういうふうにお考えでしょうか。あなたはもういい。細かい点はいいよ。
  163. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  支払い担保の問題は、御指摘の点は確かに労働省側というか、労働法規的にはあろうかと思いますが、税の関係で申し上げますと、引当金の性格が何かということから来る面があります。これは負債性というか、条件つき債務の負債性引当金ということでありますと、その勤務年数に応じて退職に対する支払いの債務が発生しておるわけです。それを四〇ということで換算しておるわけでありますから、この期間計算と申しますか、費用収益の対応からいきますと、債務性の引当金は制度としては正しいわけで、債務性の引当金という点については会計上も異論がないところでありますので、それを支払い担保するという問題はまた別の観点と思いますけれども、会計上では、それは負債性としては制度としては正しい。ただ、それがどういうところの限度が正しいかという問題は、御指摘の年数とかそういう面で見直す必要がある。そのときに年金制度にどうなっていくかという問題、さらには社外に拠出するという形をどう考えるか。これは中小企業の退職金あたりでは社外拠出しております。そういうときは損金になります。そういう社外拠出というような問題、またはそれに絡む年金、それから計算根拠はどうかということを踏まえながら、しかし、債務性の期間計算としては正しい制度であるという前提のもとに検討を今後も続けるということであろうと思います。
  164. 稲葉誠一

    稲葉委員 負債性引当金というのは、企業会計原則の注の十四かな、ありますね。それ以外のものが負債性引当金以外の引当金となっているんだけれども、そういう細かい議論をここでやりますとあれですから、私はこれ以上はしません。しかし、これについては非常に大きないろいろな問題があるということについては、大蔵大臣も専門家だからよくわかっていると思われるので、大蔵大臣から、どこに問題点があって、これに対してどう対処しておられるかということについて一言お話を聞かしていただきたいと思います。
  165. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政不如意の折でございますから、私も決して無関心でおったわけではないわけでございます。一時はあなたと同じようなことを省内においても議論をしてまいりました。しかし、ただいま主税局長が言ったように、いろいろ学問上の論争が実際はまだ詰まってない。しかし、そうはいっても、現実の問題として四〇%繰り入れられないという実情もあるわけだから、そこらのところは何とかもっと詰まらぬかという議論も当然出てくるわけでございます。余り極端なことをしますと、今度は、いまもお話があったように、社内に持っていれば損金にならないが、それじゃ部外に出しちゃう、生命保険会社とかそのほかの年金、掛金で出してしまうということになれば、それは当然経費になってしまうわけです。ですから、そういうような問題との詰めの問題、それから、労働組合などでもこれを切り下げることには必ずしも全員が賛成しているわけではありません。そういうことを切り詰めていけば、退職金そのものが先細りになってしまうのじゃないかという心配を持つ人もございます。  そういう点等もありまして、今回は詰めまでに至らなかったということは事実であります。しかしながら、これは非常に財政事情厳しい、財源の欲しい状況の中でありますから、引き続きこれは手離すわけにはいかない。重大な関心で、もっと理屈もちゃんと詰めていく必要がある。私はあきらめていないわけであります。
  166. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、問題はまだあるのですよ。たとえば貸し倒れ引当金の問題でも、実際の貸し倒れと貸し倒れ引当金との割合を見ると、大体三分の一なのだな、実績は。これなんかも考える必要が私はあるというふうに思います。  それから、負債性引当金以外のもので利益留保性の引当金問題についても十分一つ一つ洗って、いまここで大蔵省に利益留保性の引当金とは一体何なのだ、何と何と何を利益留保性の引当金というのかということについて、私は細かい点は聞きませんけれども、だから、貸し倒れ引当金の実績が三分の一以下だ。利益留保性の引当金というのはいろいろなものがある。法律でもいろいろ単行法で決まっているのがある。それらについては十分な分析をする必要がある、こういうのが私の意見なわけです。何が利益留保性の引当金かというと、これがまたわからない。会計学者にも議論があってわからぬけれども、問題の点は問題として十分考えていただきたい、こういうふうに思う次第ですね。  そこで、問題を少し変えまして、従来から問題となっておりまする武器技術の問題や何かに関連してお聞きをしたい、こういうふうに思います。  この出発点が、昭和五十六年九月八日の参議院の外務委員会で田中寿美子さんですか、質問をいたしておるときに、外務省の松田というこれは審議官ですか、参事官ですか、何か松田という説明員ですが、この人が十二条との問題でこういう答弁をしているわけですね。「安保条約に基づきまして地位協定が結ばれ、その十二条においては在日米軍は特別の調達、すなわち日本にとっての輸出というものが存在してございます。」こういうふうに答弁しているわけですね。これは外務省ね、これはよくわかりませんが、在日米軍が日本において日本から調達をしたのは輸出だ、こういう考え方なのです。ここから議論がごちゃごちゃしてきちゃったのではなかろうかというふうに私は思うのです。  そこで、この部分について、一体これはこのままでいいのか、あるいは訂正する必要があるのかどうか、この真意は一体どういうところにあるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  167. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の説明員の答弁は、いわゆる日米間の武器輸出の問題との関連で、日米間には若干条約等の面で特殊な側面があるということで、安保条約、相互防衛援助協定あるいは地位協定というようなことで例示的に御説明申し上げたということでございまして、地位協定の条文上は、そこで御答弁申し上げておりますように、地位協定のたてまえとしては米軍が保有する武器を含みます物資というものは国外に自由に持ち出すことが認められておる。そういうものも広い意味で言えば輸出というものに当たるであろう、そういうことで例示的に御説明申し上げたということでございまして、先般来御議論いただいておりますアメリカから要請がございましたいわゆる防衛技術の交流問題とこの地位協定の十二条というものとが何か非常に関連があるというふうなことでございますれば、これは私どもそういうふうには考えておりませんし、また松田審議官の御説明もそういう趣旨で申し上げたものではないというふうに理解しております。
  168. 稲葉誠一

    稲葉委員 何もいま問題となっておる武器技術の輸出が、この十二条によるものだということは私は言ってないですよ。これは全然別のものなんですよ。それがこの「輸出」という言葉がここに入ってきちゃったものだからよくわからなくなってごちゃごちゃになっちゃったんじゃないかというふうに私は思っておる、こういうことを言っているわけです。  これはいま問題となっている武器輸出とは別のものだ、そういうことでしょう。これは俗に言うところの、和田装備局長の言葉をかりて言うといわゆる裏口入学だ、こういうことなんでしょう。だから、これはどういう意味で十二条の適用というものが裏口入学ということになるのですか。条約局長じゃないんだよ。装備局長に聞いているんだよ。装備局長しゃべっているから聞いているんだ。条約局長ならわかってんだ。あなたの答弁はもうわかったよ、いまと同じなんだから。それはわかっているんですよ。あなたの話はそれでいいのよ。十二条というものがいま問題となっているところのものとは違うんだということでしょう。そんなことはわかっている。いまあなたがしゃべっているし、そんなことはわかっているからいいんだよ。何回も同じことを聞いたってしょうがないんだから。  装備局長は、この雑誌のインタビューの中で裏口入学だと言っているんですよ。だから、裏口入学とはどういう意味なのかと装備局長に聞いているわけだ。
  169. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 先生、多分「正論」でございますか、そのインタビューのことを引き合いに出されたのかと思いますが、まずお断りしなければいけないことは、これはインタビューでございまして編集権というものが雑誌にございまして、向こうの方が一言一句につきましては、多少長くしゃべったものをつづめるということで、それなりにニュアンスの差がどうしても出てまいります。私どもはこれについて、全体としては大体こういうテーマを話された、それから話の方向はこうであったということを否定するつもりはございませんけれども、個々の点につきましては多少私の真意が伝わってない点もあるということをまず御理解いただきたいと思います。  ということを申し上げた上でのことでございますが、私が裏口入学と言った趣旨は、この十二条の解釈については、かねてから申し上げておりますとおり、外務省の解釈と私は全く同じでございます。裏口入学というのはそもそもすべきでないものだという意味で、私は武器技術との関係で申し上げたというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
  170. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、いま問題となっておるものの発生ですね、どこから出てきたかというと、これはあの亘理さんがアメリカへ行って会って話をして、その後二回の装備の会議が開かれて、そこでだんだん決まってきて、去年十二月の十四日、十五日に会議が防衛庁であって、そこから話が具体化してきておる、こういうふうな経過である、こう私は思いますね。これは時間的にはそういう経過になってきていることはあたりまえですね。  どこを向いて質問をしたらいいのかわからない。向こうを向いて質問をするのもおかしい話ですね。こっちを向いて質問するのもおかしいし、テレビの方を向いてやるのもおかしいし、委員長の顔を見てやるのが本当かな。  そこで、問題となってきておりますのは、これは一体どこがどういうふうに問題があるかということを整理しないといかぬですね。だから、いまアメリカから言われてきているのは、鈴木・レーガン会談があって、それで共同声明があって、その次に六月に二つの会議があった。一つは、大村とワインバーガーの会談があった。そこで一般的な日本の軍事技術というものをアメリカに入れてくれという表明があった、こういうわけでしょう。それで、七月の閣議にかかった、こういうことでしょう。ここまでの事実関係は防衛庁、間違いないでしょう、どうですか。
  171. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 稲葉委員指摘のとおりでございます。
  172. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、七月からかかって、いままであれしているわけですが、それはこの松田という審議官が、日にちは違いますが、十二月十八日に答弁していますね。これはだから十二月十四日、十五日の会議を受けて答弁しているわけですね。参議院の決算委員会答弁ですが、その中で、いつごろ完了するのかということを説明員の和田君が、「防衛庁長官が七月十日の閣議でお願いしたことでもございますので、そう遠い将来になるのもいかがかなという気もあるというような状況でございます。」こういうふうに装備局長答弁していますね。  それを受けてまた質問があって、今度は松田審議官がこういう答弁をしているのですね。「ただ、現在もうすでに十二月十八日でございまして、ことしあと十日ばかり、かつ予算編成という時期もございますし、年末年始も控えておりまして、どの程度早くなるかは、先ほど装備局長の言われたとおり、そう遠くないと申し上げることしかございませんが、一つ申し上げておくべきだと考えます点は、明年一月八日に第十八回安全保障協議委員会を東京において開催する段取りとなっております。私どもとしましては、外務大臣防衛庁長官も出席され、米側も駐日大使、太平洋軍司令官も出席するその会合で、この問題が討議され得るであろうということを前提に、鋭意検討を進めている次第でございます。」こういう答弁を松田審議官がしておる。このことも間違いのない事実ですね。  この答弁は一体どういう意味なんですか。大体もう一月八日ごろをめどに解決する、あるいは遅くともこの問題については一月いっぱいには解決するんだ、そういうようなことを意味して、考えておって、現実にそれが進行しておったということからそういう答えが出てきたんじゃないんですか、これは。
  173. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 決算委員会のやりとりについては稲葉委員がいま御指摘のとおりでございます。そこで述べていますように、何月何日までに責任を持って結論を出すということを申し上げる状況ではない。ただ、ここで言っているのは、一月八日に行われる予定となっていた、実際行われましたけれども、十八回の安保協議委員会を検討の作業の一つの節目として、作業としてやっているんだ、そういう趣旨でございます。
  174. 稲葉誠一

    稲葉委員 現在はこれはどういうふうになっているんです。外務省と防衛庁と、これは同じようなグループ、グループと言っては悪いけれども、クラスですね。それに対して通産省が別の立場をとっておるというふうに一般に伝えられているわけですね。そうしたら、通産省の立場というのはこれに対して一体どういうふうな立場をとっておられるわけですか。
  175. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 武器輸出並びに武器技術の提供については、御承知のように三原則がありますし、政府の基本方針があるわけでございますが、これまでしばしば論議されましたように、安保条約との絡みも出てきたわけでございまして、それをどういうふうに位置づけていくかということについて、目下あらゆる角度から検討しておるということであって、結論はまだ出てないというのが今日の状況であります。
  176. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの武器技術の輸出問題と日米会談、これは外務省に聞くのかな。防衛庁でもいいな。防衛庁がいいかな。あなたの方がいいな、あなたの方が人柄がいいから、あなたの方に聞く。みんな人柄がいいですよ。  そこで、これは日米会談と一体どういう関係があるのです。もちろん始まったのは前ですよ。話が始まったのは前だけれども、アメリカ側が、武器の技術について日本の持っている技術をアメリカ側によこしてくれ、こういうようなことを言い出してきたということと日米会談とはどういう関係があるのでしょうか、防衛庁長官
  177. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 稲葉委員の頭の中にある日米会談というのがどれを指しておられるのか、私はっきりいたしません。(稲葉委員鈴木・レーガン会談のことだよ」と呼ぶ)鈴木・レーガン会談と本件とは直接関係ないわけでございます。唯一日米会談として関係あると言うことができるとすれば、それは一月の八日に開かれた安全保障協議委員会においてマンスフィールド大使から、午前の委員会大臣答弁いたしましたように、安全保障の面で日米間には在日米軍の経費負担とか共同訓練とか有事研究とか六条研究とか、あるいは本件の武器技術の問題があるということを言われ、それに対して防衛庁長官から、武器技術の交流については慎重に検討中である、こういうことでございます。
  178. 稲葉誠一

    稲葉委員 一月八日の話を僕は聞いてるのじゃないですよ。私の聞いているのは、鈴木・レーガン会談とそれに基づく共同声明というかな、それと直接——あなたは直接と言うから、直接間接どういうふうなかかわり合いがあるのですかと、始まったのはそれより前ですよ。そんなことはわかっているんだよ。第一回、第二回はそれより前なんだから、そんなことはわかっていますよ。第三回は去年の十二月にやって、それより後ですから、そんなことはわかっているんだけれども、それと直接間接どういうふうなかかわり合いがあるのですか、こういうふうに聞いているわけですよ。だから、防衛庁長官、お答えください。わからないかな。わからなければしょうがない、わからないでいいのだけれども
  179. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 鈴木・レーガン会談におきまして日米間で防衛の問題について話し合いがされたわけでございますが、その際に、この問題についてはさらに下の方におろしてひとつ対話をさせていくという話し合いがあったというふうに記憶しておりまして、その一環として大村・ワインバーガー会談、大村・デラワー会談、こういったものが行われたというふうに承知しております。
  180. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、私はそれをいま聞いてるわけですよ。外務省はどうしてそのことを答えないの。そんなことは和田君が委員会で答えてるのですよ。僕はこれを持っていて知ってるから、わざと隠したわけじゃないけれども言わなかったのだけれども昭和五十六年十二月十八日の参議院の決算委員会で和田君はこう言ってるのだよ。いろいろありますが、最後のところでこう言ってるのだ。「特に、本年五月の鈴木・レーガン会談及びそれに基づきます共同声明、そういったものの精神を踏まえ、かつ日米間の非常にユニークな防衛の関係ということを頭に置いた場合には、日本がアメリカに対しまして装備技術の面でももっと積極的な態度をとることは当然ではないかというお話があったわけであります。」あなたはこう言ってるのだな。装備局長、言っているでしょう。言っていることは間違いないんだから。その意味をいまあなたはちょっと言われたけれども、もう少し詳しく説明してください。防衛庁長官は引き継ぎを受けてこういうことを知っているわけだがな。どうなの。ここのところをもっと詳しく説明してください、ここが一番大事なところなんだから。
  181. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 この日米間の装備技術交流そのものが話題になりましたのは首脳会談ではございませんで、大村・デラワー会談ということでございます。しかし、それは先生のおっしゃった趣旨と別に相反することにはならないかと存じますけれども、それは確かめさせていただきます。  アメリカ側が言いましたのは、いろんなところでいろんなことを言っておりますが、それをちょっと場所を特定しないで全体をつづめて申し上げますれば、これまでアメリカは日本に対しまして防衛技術というのを非常に寛大にといいますか、気前よく出してきた。ところが、日本をつらつら眺めますと、エレクトロニクス、それから光ファイバーその他におきまして大変高い技術を持っている。これからは日本とアメリカの間におきましても装備技術の双方交流といいますか、ツーウエー・ストリートというような言い方をしておりますが、そういったのは双方交流になるべきなんだ、いまのような一方的な片道通行というのはきわめて不公平である、こういう言い方を向こうはしております。それに対しまして当方は、先生御存じのとおり、毎回機会をとらえまして、日本には武器輸出原則、統一見解というものがございます、こういったものがいま言ったようなお話にどうもかかわりがあると思うので、この点は御指摘せざるを得ないという点をるる申し上げておる、こんなような状況でございます。
  182. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の言っているのは、あなたが国会で答弁しているのです。雑誌のことはいいですよ、雑誌は編集権があるからあなたの言ったことをそのまま書くかどうかわからぬから。そうではなくて、あなたが国会で答弁しているのは、「特に、」ということで、「鈴木・レーガン会談及びそれに基づきます共同声明、そういったものの精神を踏まえ、」てというようにあなたはここで答えているでしょうが。ちょっと待って、待ってよ、待ちなさいよ。余りあわてんなよね。ゆっくりよく全部聞いてから言いなさいよ。だから、なぜ「鈴木・レーガン会談及びそれに基づきます共同声明、そういったものの精神を踏まえ、」てということをここに引き出したんですかと、こう聞いているわけですよ。これは答えは簡単でしょう。これが一つの、あの中に出てくる同盟というものの一つの具体的なあらわれなんじゃないですか。もう常識から考えてみたってそうでしょう。同盟というのはこっちも向こうをあれし、向こうもこっちをするということが同盟なんだから、それを引き継いで、この武器技術の問題についてもさらに一段と、前から話が出ていたけれども、これによってはずみがついてきたんだ、こういうことはあたりまえじゃないですか。防衛庁長官、どうなのよ。あなたの部下が答えているんじゃないのよ、あなたが責任者なんだから。何だかさっぱり、わかっているのかいな、本当に。
  183. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 いま言われましたのは私の意見として申し上げたのではございませんで、第三回の装備技術定期協議が十二月の十八日でございましたか十五日でございましたか、それがあったときに、先方の技術担当の次官補のロレンゾという方がそういうことを強調したということを御紹介させていただいた、そういうものでございます。
  184. 稲葉誠一

    稲葉委員 そのとおりですね。最後のところに「当然ではないかというお話があったわけであります。」と、ちょっとぼくも最後のところははしょっちゃったからね。これはちょっとぼくも深く……(「うかつだね」と呼ぶ者あり)いやいや、ちょっと聞き方が悪かったんだね。それはそのとおりよ。そこまで読まなかったのはこっちもちょっとずるいけどね。  そこで、いや、そのとおりなんだな。「当然ではないかというお話があったわけ」なんだと。だから、問題はもう少し先に行くわけだ、今度は。じゃ、日米会談なりその共同声明というものを受けてなぜ向こうがそういう話を、ロレンゾが日本にしてきたのかということですよ。それは共同声明の中に同盟ということがあるからということが大きな原因になってきているのじゃないですか、言葉は同盟であっても。そういうことじゃないですか。私はそのように考えるから、それはだから同盟ということが具体化をしてきた一つの大きなあらわれがこの問題だ。だから、私は前から話があったことは知っていますよ。だから、これによってはずみがついてきたんだ、そういうことを言っているんです。あたりまえでしょう、それは。どこが違うんですか、それは。私の言うこととどこか違いますか。どうですか、それ。外務大臣でも防衛庁長官でもどっちでもいいや。どうなんです。
  185. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ちょっと整理させていただきます。  日米会談がありまして、共同声明が出て、その八項で日米の防衛についての話が出ているわけです。そこで言っているのは、日本の自衛力の増強と在日米軍の経費の負担、これを憲法の範囲内及び基本的防衛政策の中でやる、それが一点。  第二点は、今後行われるハワイの実務会談及びワシントンにおける大村・ワインバーガー会談に期待する、これが時間的には流れでございまして、その流れを踏まえて大村・ワインバーガー会談が開かれて、その際に大村・デラワー会談というものがあったわけでございます。  先生が言われるように、共同声明で同盟という言葉を使ったからこの問題についてはずみがついたのではないか、こういうことではないかと思いますけれども、この点については、日米間がほかの国と比べて安保体制というものがあるというものは、共同声明があろうとなかろうと、それは何ら前と後と変わってないということでございます。
  186. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、同盟という言葉が使われたから、それによってこれが行われたということを私が言っているわけではない。だから、はずみがついたんだということを私は断っているわけですね。いいですか。  そこで問題は、結局あれでしょう、同盟というのは双務性の問題ですわね。だから、ここで日本の技術を向こうへ輸出をしてくれ、向こうは受けたいということは一つの双務性のあらわれである、こういうふうに理解をするのが普通の理解の仕方じゃないですか。いい悪いの議論は別ですよ。これは新聞社によっても全く違うんだからね。たとえば朝日の社説と読売の社説と比べてごらんなさい、全く意見が違うんだからね。それはそうだけれども、だけれども、それは意見は別として、事実としてはそれは双務性のあらわれだ、こういうふうに、向こうから見れば双務性の要求だ、こう見るのがきわめて当然過ぎるくらいあたりまえのことではないでしょうか、こういうことですよ。どうですか。
  187. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 慎重に答えないと非常にむずかしい問題でございますが、双務性というものをどういうふうに先生がとらえられているかということでございますが、一般的にアメリカから技術の流れが一方的にあった、それを両面交通にしたいということであれば、まさに双務性ということを申し上げていいと思います。
  188. 稲葉誠一

    稲葉委員 同盟ということの一番重要な要素というと、裏返しにすれば、それは双務性ということが同盟という言葉の裏返しの意味であるということ、これもあたりまえのことじゃないですか。だれが考えたってそうじゃないですか。
  189. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 同盟の意味については前国会あるいは行革その他でいろいろ説明しているので、私、ここであえて繰り返しません。しかし、あえて申し上げれば、そこで言う同盟というのは集団的自衛権というのは前提にしていない。しかし、日本とアメリカとの間では、相互の間でいろいろな流れを双務的にしようということが含まれているというふうには考えられると思います。
  190. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、集団的自衛権の問題をここで問題にしているんじゃないのですよ。これはまた問題があるんですよ。あるけれどもそれは別として、だからアメリカで安保改定の論議が議会でいろいろ起きているでしょう。それと集団的自衛権とどういう関係があるのか、これは問題があるわけでしょう、日本の憲法で集団的自衛権行使できないんだから。できないのをアメリカで、安保改定の論議と集団的自衛権の行使ということとすべてイコールかどうかということの議論がこれはまずあるわけだ。もし仮にイコールだとすれば、日本の憲法ではできないことをアメリカの方で、議会で言っているということなんだけれども、これはここで論議することは別として、これは後の問題にまたなると思うのです。  そこで、ちょっと話を変えますと、このいまの財政中期展望その他を見ましても、歳出をうんと削れ、今後いろいろ出てきますね。  そこで、防衛費予算について、いいですか、後年度負担ですね、五十七年度と五十八年度を比べたときに、五十八年度はっきりふえるのは、八千六百億の後年度負担からいままでのあれを落とす、七千億を落としますね、千六百億がふえるでしょう、これは間違いない。これは何%ぐらいですか。そのほかにいまから当然ふえると考えられているものが入ってきているわけですね。これがふえると全体どのくらいになるのです。五十七と五十八を比べると、予算伸びは二けたになるんじゃないですか、これは。いいか悪いかじゃないですよ。事実として言っているんですよ。
  191. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  五十八年度におきます歳出化の予定額は、いま御指摘のように約八千六百億ということに推定をいたしておりますが、これは五十七年度歳出化分というのが約七千億でございますから、その増分を見ますと約千六百億円ということになりまして、その分だけをとらえて申し上げますと、五十七年度予算額二兆五千八百億に対して約六%程度に当たるということが言えると思います。  ただ、それでは全体として一体どういうふうなことになるのかというお尋ねかと思いますが、五十八年度予算と申しますと、ただいま申し上げました歳出化分だけではございませんで、人件糧食費、それから、その他のいろいろな新規装備等を含めた新規施策のための経費というものを見積もる必要があるわけでございます。五十八年度の防衛関係費を、では全体としてどういうふうに見積もるかというのは、これはまさに今後の問題でございまして、当然のことでございますけれども、そのときの経済財政事情等を勘案し、それからまた国の諸施策との調和を図りながら慎重に決定をしていかなければいけないという性格のものでございますから、ただいまの時点でそれがどの程度になるかということを具体的に申し上げることは困難かと存ずる次第でございます。
  192. 稲葉誠一

    稲葉委員 それではお聞きをいたしますが、いま言ったのは六%ふえるという、それはわかった。これは後年度負担だからふえますね。そうすると、P3Cが七機でしょう。それで今度は十機にしたいということですね。ことしは一・一%の予算が、頭金が出ていますね。それから、F15は二十三機のうちで来年は二十機になるかな、これは一・五%の予算を組んであるでしょう。これはもう、大蔵省が了解しているかどうかは別として、そういう予定でいることは間違いないわけだ。これは交換公文の中にもあるわけですから。  そうなってくると、このP3Cの場合の十機の一・一%、F15二十機の一・五%かな、これはことしの予算の頭と同じように組んだ場合にそれが加わってくるということがまず第一に考えられますね。いいですか。そうすると、防衛庁長官、来年はあれですか、P3CもF15も要らないのですか。新しいの要らないの。要らないんなら答え簡単なんだよ、これは。要るってことになればそれが頭出すんでしょう。ことしと同じように片方は一・一%、片方は一・五%頭を出すでしょう。あたりまえじゃないですか。要らないというなら要らないとはっきり答えてくださいよ。そうしたら削っちゃうから、ここで。そうでしょう。どうなっているんです。
  193. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 防衛庁としてはぜひお認めいただきたいとはお願いしておるのでございますけれども、お認めいただくのは財政との絡み合いでございますので、いまこの時点で申し上げることはできません。
  194. 稲葉誠一

    稲葉委員 それから、バッジシステムの問題がありますね。バッジシステムは、これはあれも言っているように、すでにもう三社かな、これは四十二年にできたものでしょう。それで、防衛白書にも、非常に古くなって変えなければいかぬということが書いてあるわね。そうして、それに対して、日電グループと日立、富士通の三社に、新しいバッジについてはこういうものが必要だという要求性能を出して、細かい仕様をつけてお願いしてある。各社とも相当な金をかけてソフトとハードについていろいろ提案書をつくっている段階だ。それが一月の終わりまでに出てくる。今回は提案資格者を国産メーカーにしぼった、こういうふうに言っていますね。この三社からこれについての提案書が出ているんでしょう。
  195. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 三社と申しますか、三グループから一月三十日に提案書が提出されております。
  196. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはすでに全体として調査費がついていますね。約四億五千万かな、調査費がついて、そうしてやっているのであるから、いまのそういうようなものが、幾らの金額が出ているということ、それは僕は聞きませんよ、それは商社の秘密もあるし、いろんなことがあるからそんなことは聞きませんけれども、これがあなた加わってくるんじゃないですか。大臣どうなの。すでに調査費がついてやっておるいまのバッジシステムの改善ですね、改編というのか、これは概算要求の中に、五十七年の、ことしの七月か八月にやるのかな、そうですね、来年度予算。これはもうやらないと断言できるんですか。断言してごらんなさい。男子の本懐だもん、ひとつあなたやってごらんなさいよ。
  197. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 ぜひお願いをしたいとは思っておりますが、先ほどP3C、F15でも申し上げましたとおり、財政との絡みの問題でございますので、防衛庁としてはお願いしたいということだけでお許しを賜りたいと思います。
  198. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたがそういうふうに言われるのについて、しつこく聞くのは私も嫌ですから聞きませんからね。もう私はあっさりしているんですよ。いや本当だよ。僕は江戸っ子だから、もうあっさりしているんだよ、本当に。それで、やはりあなた人柄がいいでしょう。本当に人柄がいいんだ。人柄がいいから何となく質問しにくいんだよな。本当に人柄がいい。本当だ。  それはそれとして、そこで総理にお尋ねをしたいのは、いままでの問答をお聞きしておったと思われますが、五十七年度の防衛予算と五十八年度を比べますと、これは伸びは二けた以上にはなるんです、計算からいっても。そういうようなことはあなたしない、まず第一に、それは約束できますか、どうです。
  199. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 まだ防衛庁の方から五十八年度についての具体的な要求、これは出ておりません。稲葉さんから、従来の経緯からいってこうなるんじゃないかとか、いろいろお話がございましたけれども、実際に来年、五十八年度の財政事情も非常に厳しい、こういう状況下にございますから、現実に防衛庁当局から要求が出た時点で、財政当局その他、他の諸政策との整合性等も考えながら判断をしなければいかぬ、こう思っております。
  200. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、防衛予算というものは聖域視しないと、こういうようにお聞きしてよろしいですか。
  201. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、防衛庁に対しても大蔵当局に対しましても、さらにまた五六中業の作業過程においても、ある年度予算要求が特に重くのしかからぬように、できるだけ平準化するようにという強い希望を示しまして、そのように作業を進めてもらう、こういうことにいたしておるわけでございます。
  202. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、もう一つ前に戻っちゃってあれなんですが、こういう問題があるわけですね、一般消費税。五十九年までに赤字国債を発行しない、しないようにする、これはそのとおりですね。そのときに大型間接税もやらないという話が、これは大蔵大臣からも出ておったわけですね。いいですか。そうすると、そこでひとっこれは詰めなければならないと私は思うのですよ。  どういう点を詰めなければならないかというと、まず国会の決議で一般消費税、「いわゆる一般消費税(仮称)」とありますね。あるでしょう。その一般消費税(仮称)というものは、これはやらない、これは間違いないですね。これは間違いない、あたりまえだ、国会決議なんだから。それは一体具体的には何を意味して、どういうものを意味しているのか、これを大臣、説明してください。
  203. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政は、先ほどから言っているように、歳出を確保するためには財源が必要でございます。したがって、それらの兼ね合いをどういうふうにするかというのは、そのときどきの経済事情、社会事情、財政事情、政治事情、そういうようなものを勘案をして決めていかなければならない、そういうことであります。
  204. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が言っているのは、一般消費税の導入は国会決議でしないことになっているのでしょう。それを尊重するのかしないのかということですよ。お聞きしましょうか。
  205. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 決議が直されるまでは尊重するのは当然であります。
  206. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、国会決議の一般消費税というものはできないということでしょう。尊重するんだからできないと言うならば、その国会決議で言うところの一般消費税というのは何か。この前の国会討論会で宮澤さんと田村さんとやっていたなあ、あれだよ。どうなの、それは。国会決議では「いわゆる」がくっついているんだよ。括弧がくっついているんだ。わかりますね。だから、そこで逃げようと思えば幾らでも逃げられるのだ。そのとき問題となった一般消費税はやらないということなんだ。そのとき問題となった一般消費税というのは一体どういうものなのか、はっきりさせておかないといかぬのだ。
  207. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えいたします。  税調が当時答申した内容にございますとおり、仕入れ控除方式というものでございまして、売り上げ金額に税率を掛けまして、それから仕入れ金額に税率を掛けたものを控除する。それは勘定によってやるわけですが、アカウントによるやり方で、インボイスによらない、売り上げから仕入れを引く、おのおのに税率を掛けていくという意味の仕入れ控除方式でございまして、さらに免税点というところもわりに高く設けられておったわけで、仕入れ控除方式というのがいわゆる一般消費税という政府税調答申にあるそのものの仕組みでございます。
  208. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはわかりましたね。そうすると、それはまず抜けるわけだ、インボイス方式でやったものは。だから、ECの付加価値税とはちょっと違うんだけれども、それは別として、いま主税局長答弁したようなものは抜けてできないことになるわけだ。そうすると、今度は大型間接税というのはできないということに第二段階になってきているわけでしょう。それじゃ、大型間接税というところの大型というのは一体何かということになってくる。何を言っているのです、これは。
  209. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大型というのは何かと言われましても、大型というのは税目別に大型なのか全体として大型なのか、それはなかなか一概には言えないわけですね。たとえば印紙税を倍近く上げた。したがって、これは大型増税だ、だれも大型増税と言う人はない。一兆四千億円というような増税をやったけれども、一兆四千億円は予算規模から言うと三%ぐらいですか、そうですね。これも大型とは言わない。余り世間で言っていませんね。したがって、どれだけが大型かということも、そのときの予算規模、それから経済事情、財政事情、そういうような中でおのずから出てくるものであって、いまの段階で何が幾らだったら大型で、幾らだったら小型かというようなことを定義づけることはむずかしいと思います。これは常識論の話でございますから、そのときどきの常識で大型かどうかということが決まるんじゃないか。人によっても多少個人差はあろうかと思います。
  210. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、河本さんに聞いた方がいいかな、これは。あなたと大蔵大臣と大分意見が、同じようなところもあるし、どうか知らないけれども大型間接税をやらないと言うのでしょう、五十九年度までは。赤字国債の発行がなくなるまではやらないと言うんだから、それじゃ、あなたの考えている大型というのは一体何を言っているのです。企画庁長官としてはどういう考えを持っているの。いや私の方の管轄じゃないと言うならそれはしようがないけれども、どうなんです、それは。
  211. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は大型という言葉は使ったことはありませんが、大型ということになりますと、常識上、いま大蔵大臣の御答弁のとおりだと思います。
  212. 稲葉誠一

    稲葉委員 それならばあらゆるものがみんな常識なんですよ。あらゆるものを常識で判断するのならば、何もここで議論することはないのです。だから、ぴしっとしていかないと、これは必ず出てくる問題なんですよ。来年から再来年になってくるとこの問題は出てきますよ。もうはっきりしておるのです。そのときに、大型間接税やらないと言ったけれども、一体大型とは何かということをぴしっと決めていかないと問題になってくる。財政規模から言うと、世間の常識と言うけれども、いまの大蔵大臣の常識というのはどうなんですか。あなたの常識というのはどうなんですか。一兆四千億円は大型じゃないということですね。わかりましたね。いいですか。そうすると、一般消費税のときは五%で三兆円をやるという話でしたね、あのときの大体の大筋は。これはどうなんですか、大型ですか、大型でないのですか。そのときから見れば大型だったと言うの。それはどうなんですか。
  213. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ですから、それはそのときの財政規模等によっても違うわけですよ。ですから、そこらのところ何%に線を引くかとおっしゃいましても、幾ら幾らという厳格な定義というのはなかなかつけにくい。しかし、だれが考えてもこれは大型だなとか、これは小型だなとかいう、おのずからそこには形は出てくるものであって、予算規模が決まらなければ大型とか小型とか言えないわけです。かつて一兆円予算で一千億円大減税というのをやったことがあります。これは予算規模の一割減税ですから、大減税、大大型と言われたわけですが、現在一千億円とか二千億円とか言っても大型減税なんと言う人はだれもいないということと同じで、その当時どれぐらいのもので言うか。また、負担の問題もあるでしょう。いろいろなニュアンスがいっぱいあると思うのです。したがって、いまの段階で幾らならば大型かと言われましても、そういう税金をいま考えておりませんから、幾ら幾らということを定義づけることまでまだ考えておりません。
  214. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは近い将来問題になってくるのですよ。あたりまえの話でしょう。問題となってくることは事実でしょう。それはどうです。
  215. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これも、問題にならなければ一番いいのですよ。景気がうんとよくなって、世界じゅうことしの後半からよくなるというのだから、その波に乗って日本も自然増収大型に入るというようなことにでもなれば一切解決で、そういう心配は要らぬということでございます。もう一つは、ともかく行革については情熱を持って皆でやろうという発想の転換をして、ここで本当に大型歳出カットができるということになれば、これもまたそういう必要もない。  問題は、歳出を認めておるのか認めないのか。認めるとすれば財源をどうするのかという問題の議論の中で出てくることでございます。ですから、やはりそのときにならないとはっきりしたことを申し上げるわけにはいかない、そういうわけです。
  216. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはもちろんそうですね。はっきりしたことを言ったら自分で自分を縛るようになってしまうから、それは言えないわけでしょう。うんと言っておるからそうだよ。それはこっちもわかっておるけれども、ちゃんとそういう歯どめをかけていかないとあれだから。いまあなたは一割の場合には大型と言う場合もあるようなないようなニュアンスに聞こえたのですけれども、いまこれ以上ここでやってもあなたの方ではそれは言いっこない。後で自分の首を絞めるようになるから言いっこないよ。それはまあ別のことにしましょう。しょうがない。また別の人に別の角度から聞いてもらうようにしたい。  そこで、この前私の質問した中で、これは外務省関係ですが、MDAの関係の一条1の細目取り決めというのがあって、これはナンバー一からナンバー二十八まで出てきたわけですね。これは全部で三十二あるわけでしょう。あと四つは、あのときの答えによると、いかにもアメリカが交渉を渋っておるような形に聞こえたわけです。そんなことはないでしょう、交換公文だから。これはすぐ出てくるんじゃないですか。どうなっています。
  217. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  決して渋っているわけでなくて、残る四件についてアメリカ側の取り扱いがどういうふうになっているかわからないということで、その結果がわかり次第御提出するということでございますが、本日までまだ、アメリカ側と接触しておりますが、先方の回答が参っておりません。回答が来次第、出せるものは御提出するということにしたいと思います。
  218. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、この前私は、ナンバー二十七がF15航空機の取得及び生産に関する交換公文、それから二十八がP3C航空機の取得及び生産に関する交換公文、五十三年六月二十日、両方とも同じ日ですね、これについて質問をいたしました。交換公文そのものは別にどうということはないので、いまの、たとえばF15ならば百機を限度とするというようなことが書いてあって、P3Cなら四十五機ですか、限度とするということが書いてあるだけの話ですね。  そこで、この前、北米局長はこれの子供の話をしましたね。子供だから名前があるでしょう、名前のない子供なんていないんだから。その子供は何という名前なのかね。フルネームで言ってください。
  219. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 たしか私が申し上げたかと思いますが、フルネームで申し上げさせていただきます。  まず、P3Cでございますが、P3C航空機システムの取得及び日本国における生産に関する日本国防衛庁とアメリカ合衆国国防省との間の了解覚書というものでございます。同様にいたしまして、F15でございますが、F15も同じスタイルでございまして、P3Cの部分をF15と読みかえていただければいい、こういうふうになっております。
  220. 稲葉誠一

    稲葉委員 順番はどっちでもいいですが、番号はF15の方が先なんですよ。P3Cの方が後なんですよ。どうでもいいですが。  その覚書というのは一体何が書いてあるのですか。それが出てこないと、このF15なりP3Cの価格の内訳というものはわからないのですよ。だから、一体何が書いてあるのですか。それで私は、軍のいろいろな情報の交換的なものがこの中に書いてあると思うのです。あるらしいんだ。私はそれを聞こうとは思いません。そんなことはあれだから聞こうとは思いませんけれども、このF15なりP3Cの価格に関する関係ですね、いろいろなものが出てくるんじゃないかと思いますので、内容について説明を願いたい、こういうふうに思います。
  221. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まず第一点でございます。中身は何が書いてあるかということでございますが、第一が、計画の概要ということでございまして、防衛庁がこの覚書の定めるところに従いまして、F15につきましては、百機のF15J及びF15DJ、複座機でございますが、DJ航空機並びに関連装備、資材を購入し、または生産する意図を有し、米国防省はこれを販売し、または生産を承認するということでございます。まるごとで売ることもあるし、日本でライセンス生産をさせることもある、こういう趣旨でございます。  それから、このシステムは基本的には日本国及び合衆国の企業を通じて取得するということになってございます。やはりコマーシャルベースが中心だということでございますが、しかし、補助的に、必要に応じまして米国防総省の方はFMSの直接販売を行うというようなことでございます。  それからあと技術上の知識、実施試験につきまして、米国防省は防衛庁に対しまして、システムの生産、維持に必要な合衆国政府の発明技術資料を提供する、こういうことでございます。この点につきましてはまた後で立ち返ります。  それから、研究開発費の回収でございますが、合衆国国防省がF15のシステム研究開発試験及び評価、いわゆるRアンドDでございますが、これに投資した額を考慮し、日本側はこれに対する公正な比例配分による分担金を支払うということになっております。  それから、財産権の保護につきましては、きのうも当委員会で問題になりましたところの特許権等の知識の交流を容易にするための協定の規定に従うということでございます。あと技術資料、秘密保持、支援役務、標準化といったようなことについて規定しているということでございます。  それで、第二点でございますが、価格の関係いかんということでございますが、価格に関しましては、ここの覚書では直接何も触れておりません。ただ一点、いま申し上げました中で、研究開発費の回収という点がございますが、その開発費の割り掛け分につきましてこの覚書等の中で定めておるという点だけが、価格に直接関係する部分でございます。あとの部分は、インフレその他の要素もございますので、その都度決められることになるということでございます。
  222. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの価格のことは書いてない。いまあなたのおっしゃるようなことなら別に問題はないわけだ。それでは、その覚書と称するものを、あれですから、ここへ出してくださいよ。出せますか。出してください。
  223. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 この覚書につきましては、前からるる申し上げましたように、細部に至りましては秘密ということになっておりまして、私どもはなるべく公表しようということで、アメリカと話し合って決めた内容がいま申し上げたような点でございます。いま申し上げた点を書き物にしたものがございますので、概要につきましては提出することができるというふうに考えております。
  224. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、価格はその都度決まるというわけですね。これは予算書の中で本体と所属品とが分けてありますね、聞いたら。それでは、その中で、いま言った研究開発費の回収というのは入っているわけでしょう、覚書の中へ。そうしたら、研究開発費が全体として幾らなのかということが出てきて、そして機数ごとに割り振ったものが出てきているはずですよ。それは一体どこにあるんですか。それを出してくださいよ。それでないと、予算審議というのはできないじゃないですか。私はそう思いますがね。わからないでしょう、値段が。
  225. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 研究開発費、いわゆるRアンドDの内容につきましては、当委員会でもるる申し上げておりますが、アメリカとの間で秘密になっております。  ただ、たびたびの御質問でありますので、私ども調査した古い資料等がございまして、一般的にRアンドDについての計算方法、そういったものの資料の数字について触れることは、多分許されるだろうというふうに考えております。  一般的なRアンドDの計算方法につきましては、前から御説明いたしましたように、米国政府がこのシステムの研究開発に投じましたところの費用、これを全体の生産見込み機数で割る、上に、分子にRアンドDの総額が乗りまして、下に全体の生産機数がかかる、こういうものでございます。  それでは、まず分子の方の研究開発の総額が幾らかということでございますが、これは古い時代にはそういった数字を国防総省が出していたこともございます。たまたまF15についてはその数字を見たことがございます。その数字を、米国防総省の別に注釈なしに見たという事実だけで申し上げますと、約二十億ドルを超えていたと思います。その後どうなったかについては、古い数字でございますので、確かめるすべがございません。最近は一切そういうものを出しておりません。それから、分母の方でございますが、分母につきましては、この間も申し上げましたとおり、現在の生産機数はたしか七百四十機程度というふうに考えております。  それ以上私が申し上げるのは、ひとつ差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
  226. 稲葉誠一

    稲葉委員 それでは、いまあなたのおっしゃったことの中で、出せる資料は出していただいて、出すと言ったのを出してください。いいですね。そして、いまあなたの言われたことは議事録をよく調べます。調べて、資料と突き合わせて、また質問を別の機会にさせていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、時間も来たわけで、ちょっと最後にお聞きをいたしたいのは、このF15にしろP3Cにしろ、日本に入ってきているものについては、MDAに関連をする秘密保護法の適用があるわけですね。自衛隊法だと秘密を漏らした場合には懲役一年以下でしょう。だから、これは十年以下の懲役ということになっていますね。これは間違いないわけですが、そうすると、日本からアメリカに行った武器なり技術というものについても、同じように向こうは秘密保護法というものをもって律するということになっているのですか、どうですか。また、なるのですか。
  227. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 相互防衛援助協定そのものに関する御質問でありますと外務省になるわけでございますが、その点については、いま先生から、第三国に対しての譲渡は供与国の事前の同意が要る、こういうことのようでございまして、それについてはコメントを避けさせていただきますけれども、私の方で扱っておるものとしましては、日本から積極的に相手に供与するといいますか、普通の細目取り決めの逆みたいなかっこうでございますが、そういったものは一般的にはちょっと思い当たりません。ただ、資料交換取り決めでございますね、いわゆるデータ・エクスチェンジ・アグリーメント、DEAと呼んでおりますが、これについてだけは一応交換ベースになっておりまして、それにつきましては、ここでも前に申し上げましたように、相互防衛援助協定の第一条にありますところの第三国譲渡の場合の事前承認というのがかかっている、こういうことを申し上げているわけでございます。
  228. 稲葉誠一

    稲葉委員 もう時間ですから最後の一問だけにいたしますが、そこで、極東有事というふうなことが言われて、そのときに日本から極東有事のある特定国へ武器なり技術の輸出は、これはできない、これはもうあたりまえの話です。そうすると、米軍が十二条で調達したものについて、米軍がそれをある極東有事の紛争当事者国に出すということについては、日本としては全くタッチができないというふうに、これは事柄から見て承ってよろしいのでしょうか。この点についてのお答えをお聞かせ願いたい。
  229. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問は地位協定の十二条との関連の御質問かと思いますが、十二条は、別に、米軍が他の第三国のために、あるいは第三国の軍隊のために物資を日本で調達して、それをその当該第三国へ渡す、そういう調達活動を認めるためにできている規定ではございません。これはあくまでも、米軍が必要とする物資を調達するための規定でございます。
  230. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、第三国のために調達するということではなしに、米軍のために調達したものを向こうへやるのは自由かと聞いているのだよ。タッチできないのかと聞いているのだよ。できないでしょう。
  231. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そのような調達活動は地位協定で認めておるわけではございませんので、これは全く別個の問題でございます。
  232. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に、石田幸四郎君。
  233. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 五十六年度補正予算に関連しての質問に入る前に、先ほど御報告がございました日航の着陸事故の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  昨日のホテル・ニュージャパンの火災死亡事故に引き続いて大変な事故が起こったわけでございますが、先ほど御報告がございましたけれども、その後やはり被害の状況が拡大をされているのではないかと思いますので、現時点でわかります状況についての御報告をちょうだいしたいと思います。
  234. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 二時四十分現在、残念なことに死者の方が二十四名、重傷の方七十七名。なお、一応死亡を伝えられておりました機長がこの七十七名の中に入っておるそうであります。軽傷が七十名。これには副機長が含まれております。なお、生死不明三名でありまして、現在機内にはすでに残存者はないという報告であります。したがいまして、いま、特に今回の事故の決め手になるであろうと思われるフライトレコーダー、またボイスレコーダーを回収するために作業員が現場に到着をいたしておりますが、これを回収することによってさらに原因の究明が前進をするのではないかというふうに思っております。
  235. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 お亡くなりになった方々には心からの御冥福をお祈りをいたすわけでございますが、いま御報告がありましたように機長の生存が確認をされたということで、今後の事故究明にもかなりの状況がわかってくるというふうに思うわけでございます。  羽田飛行場への着陸進入につきましては計器飛行で行っておるわけでございますが、先ほど運輸省に確認をしたところでは、計器については何ら故障はなかった、正常に作動しておったというふうに伺いました。そうしますと、航空機以外の問題であろう、あるいはまた急速なエンジントラブルかというふうに考えられるわけでございますけれども、そこら辺の想定について何かおわかりの点がございましたら、御報告をちょうだいをいたしたいと存じます。  それから、まとめてお伺いをするわけでございますが、DC8の事故につきましては、四十三年の十一月にサンフランシスコでございました。しかし、このときには、全員無事である、きわめて奇跡的な事故であったというふうに言われておるわけでございますが、四十一年三月にも羽田で同機種の事故が起こっておるわけでございまして、直接的な事故の原因については今後の究明だと思うのでございますけれども、いわゆる機種問題についての究明までされるおつもりなのか、この点についてもお伺いをいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  236. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 航空事故調査委員会から、現在調査官六名を現地に派遣しております。まだ、これらの方からの問題の指摘等については入手をいたしておりません。  また、航空法に基づきまして運輸省といたしましては、日本航空に対して立入検査を直ちに実施をいたしまして、運航面並びに整備面についての調査も進めるつもりでおります。  なお、私が羽田に参りましたときの空港長その他の話を総合いたしましても、ただいま議員のおっしゃったように、計器その他においては何の異常もなかったというようなことを証言しておりますので、なお、これらの事態の解明につきましては、専門官の調査にまつという以外にはないのではないかと思っております。
  237. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最後に、被害者の方々に対して、本当にお気の毒なことになったわけでございますが、亡くなった方々への補償あるいは負傷された方々への治療については、万全を期さなければならないと思うわけでございます。また、昨日のホテルの事故といい、本日の日航の着陸事故といいましても、単なる不幸な出来事が重なったというだけでは問題は済まないわけでございまして、人命尊重という立場から安全性について万全を期していかなければならないわけでございますが、この二つの問題について大臣の御決意をお伺いをいたしまして、この問題については終わりたいと思います。
  238. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 午前中お許しをいただいて、羽田の現場まで参りました。その際に、日本航空の社長並びに副社長に会いましたときに、まだそのときは死亡者の方はわずか数名であったのでありますけれども、負傷者の救出された現場を見ますると、やはり大変な状態でございました。そうした事態を見ましたので、日本航空に対しまして、この事故の対策については全力を挙げて万全を尽くしてやってほしい、特に亡くなられた方に対しての弔慰その他については、特に十分なことを配慮するように私は口頭で申しつけたわけでございます。  なお、こうした高速大量輸送機関の発達した現代におきまして、一たび事故が起こりますと、その波及効果が大変なものでございますので、前々から私、運輸大臣就任以来、特に安全運航ということについては特段の注意を各方面に発しておるのでございまして、今後も一層こうした面について注意を促し、航空、交通、すべての安全の確保に努力をしてまいりたい、これが私の決意でございます。
  239. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、国連軍縮総会の問題について、それに関連して幾つかお伺いをいたしたいと存じます。  まず、総理にお伺いをしたいわけでございますが、昨年の十月、臨時国会の代表質問で、わが党の浅井副委員長が国連軍縮総会、いわゆる第二回総会の出席を御提案を申し上げたわけですが、総理はこの席上、総理として初めて軍縮総会で意見を開陳される旨、お答えがあったわけでございます。そのことについて私も大変高く評価をするわけでございますが、やはり問題は、どういう演説をされるかが問題でございまして、具体的にどんな御提案をなさるおつもりなのか、具体的に言えないとすれば、基本的な方針だけでもまずお伺いをいたしておきたいと思います。
  240. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 六月の上旬からニューヨークで開催されます国連軍縮特別総会、この総会は軍縮、特に核軍縮につきまして、世界全体にこの問題に対する認識を深める、また人類全体として軍縮に対する決意、そういう方向づけをする上からいたしまして非常に重要な意義を持つ総会である、私はこのように考えております。  わが国は、世界におけるただ一つの原爆被爆の惨禍に遭った国でございますので、ぜひこの総会を通じまして核軍縮、ひいては核の廃絶、そういうことを訴えたい、そして世界の平和と安全のためにわが国の国民的願望を強く訴えたい、このように考えておるわけでございます。  そこで、具体的にどういうことを提案するかという点につきましては、ただいまあらゆる角度から慎重に検討を進めておりますが、私は、国民各界各層、学界あるいは労働界、その他各界の御意見というものを十分お聞きをいたしまして、国民立場に立って、この総会で私の主張、演説をいたしたい、このように考えておるところでございます。
  241. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いま総理から核廃絶、核軍縮への御決意を表明されたわけでございますが、総理もいまおっしゃっておりましたように、いま各政党間におきまして、この国連軍縮第二回総会に対する国民世論の盛り上がりと申しますか、そういうものを背景にして、いろいろな議論が交わされておるわけでございます。あるいは労働四団体の中でも、この軍縮総会へ向けての意思表示をしたいというので、中央三団体の方は三千万署名というようなことも考えておられるようでございます。あるいはまた各文化人の間にも、これへの意思表明のためのシンポジウムとかいろいろなことが計画をされておる。さらにはまた、団体に所属をしない一般の方々の中にも何らかの意思表示をしたい、こういうような運動が徐々に盛り上がっておるわけでございまして、これらが一本化できれば一番いいわけでございますけれども、それらはこれからの問題であろうと思うわけでございまして、いま総理がおっしゃったように、各界各層の意見を十分聴取したいというようなお話、まことに結構かと思うのでございますが、そうしますと、具体的には国連軍縮総会に向けて、少なくとも全野党との党首会談あるいは何らかの形で意見表明を聞く機会をつくる、こういうことでございましょうか。
  242. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 できるだけそういう機会も持って御意見を拝聴したい、こう思っております。
  243. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それから、過日の衆議院の本会議あるいはまた当委員会におきましても提起をされた問題でございますけれども、核兵器に関する国連の決議の問題です。これに対して日本政府の態度というのはきわめて不可解じゃないか、反対する場合もあるし、あるいは保留している場合もあるという問題が取り上げられたわけでございます。  この核兵器の廃絶の問題は、これは人類全体の願望であることは言うまでもないわけで、特に被爆国としての日本の国民は、きわめて強い廃絶への信念を持っているというふうに考えます。そういうわけで、核兵器の不使用あるいは不配備の問題あるいは中性子爆弾の禁止といったような決議については、大多数の国々も賛成をしていらっしゃるわけであります。  そういうような状況から見ましても、私は、現実的ないろいろないわゆる防衛に対する配慮というものはあるにいたしましても、しかし人類の願望であるこの核兵器廃絶という問題については、やはり思想的な根底の問題でございますから、そういうものについては、反対や棄権というような態度はとるべきではないというふうに思っておるわけでございます。無条件で核兵器の廃絶に賛成してもいいんじゃないか、こう思いますけれども、こういったことをわが国の方針とすることについては何か不都合なことがあるのかどうか、そこら辺が明確になりませんと、国民の皆さんも納得できないんじゃないかと思うのですが、この問題についてはいかがお考えでございましょうか。
  244. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 核軍縮、核の廃絶に向かって実効のある努力を積み重ねていくということが大事なわけでありますが、そういう意味合いからいたしまして、わが国はつとに核実験の全面禁止ということを強く提唱をしておるわけでございます。ジュネーブにおける軍縮委員会等におきましては、常に日本が先頭に立ちまして、核実験の全面的禁止ということを努力を続けておるところでございます。  そこで、いま石田さんから、国連において日本はこの核の問題について、あるときは賛成をし、あるときは棄権をし、あるときは反対をする、どうもその態度が一貫していないのではないか、もう無条件で常に核軍縮、核の廃絶等に対しては、そういう決議については賛成をすべきだ、そういう御意見があったわけでございますが、私は、人道的な見地からいたしまして、核兵器が使用されました際に、これが人類の生存に重大な脅威を与える、その核の惨禍というものを考えました場合には、絶対にその決議に対してはいつの場合でも賛成すべきだという御主張、これは理解ができるわけでございます。  しかし、一方におきまして、今日、世界の平和と安定、この平和を維持するための国際環境というものは、御承知のように、東西の力の均衡の上にこれが辛うじて維持されておる。そしてその背後には、核の抑止力というのが大きな戦争抑止の力になっておるということも、これも現実の問題であるわけでございます。  そういう中におきまして、国連というああいう国際政治の場において、いろいろの意味合いを持つ、政治的な背景と意図を持つところの決議案というものが提案をされるわけでございます。これは御承知のところと思います。たとえば核の不配置、核兵器の不配置という問題が提案をされる。これを一つ見た場合におきまして、ソ連はすでにヨーロッパにおきましてSS20というような中距離ミサイルを配備済みである。極東においても配備されておる。一方、アメリカ等は、その点においては配備がなされていない。こういう際に、核兵器の中距離ミサイル、戦域核の不配備の提案というようなことをいたしましても、それが果たして国際の平和と安定のための抑止の均衡になるのかどうかという問題にもなるわけでございます。  したがいまして、日本といたしましては、国連総会にいろんな形で決議案が出るわけでありますが、その背景なりその及ぼす影響なり、そういうものを総合的に勘案をして、そしてこれに賛否の態度を決めておるというのが政府の方針でございます。  いずれにいたしましても、私どもは検証を含んだところの実効のある核軍縮というものを着実に進めてまいりまして、核兵器の数にしてもその戦力にしても、これを低位に均衡させる、そして最後には核兵器の廃絶、軍縮、そういうことを実効を上げながら実現をしたい、こういうのが政府の考えでございます。
  245. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は、若干考えを異にするわけでございますけれども、いずれにしても、そういうような核の均衡という中で平和が保たれている現実を無視するわけにはいきません。しかし、それだけに、むしろ核兵器を中心とした軍拡競争に対して、平和日本としての意思を強く表明するための手だてというものを考えなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。  これ以上申し上げても議論のすれ違いかと思いますので、これはこの点にとどめておきますが、今回のアメリカの予算の発表を見ましても、レーガン大統領の軍備均衡論における軍事の拡大というものが、きわめて突出した形で目につくわけでございます。  さらにまた、最近非常に問題になっておりますのがいわゆる戦域核の問題でございますけれども、極東あるいはその周辺において、この戦域核としては、恐らく地上配備ではなくて、戦闘機や潜水艦等の艦船に積載されるのではないか、こういうようなことが言われておるわけで、こういうことが日本への核兵器の持ち込みにつながらないか、きわめて危惧するところでございます。  何度も確認をされている問題ではありますけれども、核兵器の積載艦船につきまして、日本への一時寄港や通過も事前協議の対象となるということについて、再度確認をしておきたいと思いますが、いかがお答えでしょうか。
  246. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 米ソの間におきまして、戦域核中距離ミサイルの削減交渉が行われておるわけでございますが、その際において、米側はゼロオプションということを提案をいたしております。わが国政府といたしましては、この米国政府のゼロオプションという主張を支持いたしておるところでございます。そういう中で、ソ連が極東地域に対しまして、御承知のように、SS20等の配備をやっておるというようなことは、私は非常に遺憾な事態である、このように考えておるわけでございます。  アメリカからは、日本政府に対して正式に、日本にあるいは極東に、中距離ミサイルを対抗上配備するというような提案なり通知なり情報というものはございませんが、仮にありましても、わが国は非核三原則を堅持しております。いかなる形の核兵器といえども、日本に持ち込むという場合におきましては、これは安保条約上の取り決めによりまして事前協議の対象になるわけでございまして、そういうような際におきましては、わが国としてはそれをお断りをするということは、一貫した不動の方針であるということを申し上げておきます。
  247. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それから、この問題におきます最後の問題としまして、生物兵器禁止条約あるいは特定通常兵器の使用禁止条約、これらの問題についてでございますが、通常兵器におきますところの軍縮を推進することも、第二次世界大戦の惨禍に学んでも当然なわけで、この通常兵器におきます軍縮もぜひ世界的にも推進をしていかなければなりません。そこで、いま私が申し上げましたこの条約問題については、日本も署名をしておられるわけですね。  それから、環境破壊兵器禁止条約の問題、これらの問題につきましても、新聞報道によりますれば、政府は今国会に提出をして批准をすべきだ、こういうようなことが報道されておりますが、まだ政府の正式見解として国会に提出するというお話は承っていないので、この際、その問題についてお伺いをいたしたいと存じます。
  248. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 まず、特定通常兵器の制限・禁止条約についてでございますが、この国会でその締結について承認を求める方向で、現在検討中でございます。  それから、細菌学的兵器及び毒素兵器禁止条約については、今国会でその締結について承認を求めるべく、そういう考えで現在各省庁との間で協議、検討を鋭意行っておるところでございますが、この方は検査、検証等の点について非常にむずかしい点があるように聞いております。  それから、環境破壊禁止条約につきましては、わが国としては、軍事的、敵対的使用に供する本件技術の開発を行う考えもないし、現に行ってもおりません。各国の対応ぶりを見きわめる必要もあったので、現在署名をまだいたしておらない、こういう状況にございます。
  249. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 現在、政府としてはこれらの承認を求めるように努力をするということ、また、環境破壊兵器条約の問題については、未署名の問題でございますから、承認を求めるような提出はできないかと存じますが、ぜひこれについても真剣な取り組みをお願いをいたしておきたいと思います。  時間もありませんので、財政問題について簡単にお伺いをいたしたいと存じます。  政府は、五十六年度当初予算におきまして、赤字国債二兆円減額を表明をされました。また総理は、昨年の三月ですか、行政改革政治生命をかけるというふうに決意を表明して、そうして、この問題との取り組みが始まったわけでございます。  昨年度は、この二兆円の減額と裏表で、一兆四千億という実質大増税があったわけでございますが、四年間の所得減税見送りという問題、あるいはそれに伴って景気にかげりが見えてきたというようなことから、昨年は各野党がそろって減税を要求したわけでございます。しかし、政府財政再建のために財源がないからというようなお話で、結果はミニ減税に終わってしまったわけでございます。そのときの主たる答弁としては、消費者物価がきわめて安定しているから、そう心配はないというようなことであったのでございます。しかし、先回のこの予算委員会等でも指摘をされましたように、残念ながら景気は上向きにならなかった。そういうような状況の中で、いわゆる五十六年度税収不足の中から追加国債発行というようなことになったわけでございます。  問題は、各一般紙で盛んにいま指摘をされておりますように、一体これから五十六年度税収見込みはどうなるんだというようなことですね。先ほどもこういう御議論があるわけでございまして、確かに六月ぐらいですかまでの状況を把握しなければ、この問題を的確につかむことはなかなかむずかしいというお話でございます。しかし、本日の新聞を見ましても、まあ瞬間風速のことを考えれば二兆二千億ぐらい税収が落ち込むんじゃないかというようなことが盛んに書き立てられておりますから、国民の皆さんは心配をしておるわけですね。  そういうふうに考えますと、ただ、いまわからない、わからないだけでは、国民の不安を除去することはできないわけで、何とかそこら辺の見通しについて、政府の方では見通しを発表することができないのか。あるいは、できるとすれば、きわめて近い将来、いつごろの時点ならば大体の税収見込みについて発表ができる、こういうふうに考えていただきたいと思うのでございますけれども、ここら辺の問題についていかがでしょうか。
  250. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 六月の末になれば発表できると思います。
  251. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 六月の末の話は先ほど来承っておるわけでございまして、それではやはり国民の不安を除去することはできない。それだけに財政がむずかしいということでもあろうかと存じますけれども、四千五百三十億の減額修正をされて、今後も大幅な税収減が予測をされております。その中で、いろいろな新聞記事を見ますと、大蔵省筋では、大幅な円高やあるいは急速な景気回復がなければ、そういうものを条件としていかなければ、三月決算法人税の奇跡的な伸びは期待できない、さらに税収は落ち込むかもしれない、そういうようなことも発表されておるわけでございます。  この、言った、言わないの議論は、余り的を射た話ではありません。しかしながら、各新聞社がいろいろ取材をされている、その大幅税収減ということは、だれしもが予測をするところであります。しかし政府は、昨今の予算委員会の議論を承っておりますと、そうは心配ないじゃないかというような議論を盛んにしていらっしゃるわけです。ですから、このうらはらの問題で、もし政府が、税収不足というものをそんなに心配する必要はないとおっしゃるならば、どんな条件が満たされたときに税収不足は来さないのか、そこら辺のお考えについてはいかがでございますか。
  252. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  個々の税目について、いままでの実績及び今後の見通しということで積み上げておりますので、経済環境というのが経済見通しのように運営されることはもちろん必要なバックではございますが、税収自体としては、個々の税目の内容に応じた見通しでございますので、一律にその条件ということは申し上げにくいと思います。
  253. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それならば、さらにお伺いをいたしますが、この税収不足については、各新聞社あるいは野党がかなり心配しているような傾向というものは避けられない、こういうふうに私は思うわけでございますけれども、これがまた五十七年度予算との関連において非常に問題が出てくるわけでございます。  この間の予算審議の中で、政府は、財政再建のためには大型新税は導入しない、所得減税は五十八年度以降を検討しておるということで、国民の皆さんは、大体この二つの方針を大筋において示されたわけでございます。大型新税を導入しないという問題については、きわめて合意が得られやすいわけでございますけれども、所得減税という問題を考えてみたときに、どうしてもいま現在の実質的な収入の目減りというものがあるわけで、何とかこれを回復してもらいたいというのが、いま、たとえば労働四団体あたりを中心にして盛んに要求が出てきておるわけでございます。  そういうような状況の中で五十八年度予算編成というものを考えてみた場合に、財界からは早くも、ゼロシーリングどころかマイナスシーリングというような、そういうようなことも議論が出始めておるわけでございます。そういう二つの方針を同時に実現をするということはきわめて困難だ。そういうところから、大蔵省筋の中には、五十八年度以降においては地方交付税率の大幅引き下げというような議論も出てくるわけです。これらの問題について、これを両立する手だてというものについて、どうもいままで納得した議論が交わされていないように思うのでございますけれども、決意だけではどうしようもないわけでありまして、この大型新税は導入をしない、五十八年度以降は所得減税をやるという、この二つの離れわざをどういうふうに整合性を持たしていくのか、そこら辺のお考えについて少し承りたいと思います。
  254. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十八年度以降所得税の減税をやるということをお約束はしておりません。要するに、長い間税率構造が変わらなかったり、課税最低限がくぎづけになっていることは決して好ましいとは思っておりませんということを申し上げておるわけでございます。何とかできる方法がないかといって、模索をしておることも事実でございます。  問題は、いまおっしゃったように、歳出というのは極力われわれは抑えるように努力をしてまいりましたけれども、必ずふえるのがございます。何がふえるか。いま地方交付税のお話がございましたが、法人税所得税、酒税がふえれば、その三分の一近いものはいやおうなしに、自動的に地方交付税へ回っていきますから、この歳出も比例してふえていく。それから国債費が、九十三兆というようなすでに残高に達するということになれば、十兆円分だけふえるわけでございますから、その分の利息は当然にふえるということになってまいります。社会保障制度を現状のとおりで維持するとすれば、これはもう老齢化社会に向かって年金はふえるし、病気がふえれば医療費がふえる。物価が上がれば物価スライドというようなことで、また年金がふえたり人件費がふえるという、ふえるものがあるわけですから、そのふえるものをふやさなくするというのは、いま言ったものなどは非常にむずかしいものの一つ。しかも、これはかなり大きな金額です、生活保護なども一兆円以上あるわけですから。したがって、それは自然増収だけで一つは対応する。そのほかに一兆九千億円からの今度は赤字国債を減らすということですから、ふえた財源はその方に充当していく、優先的に取られるということになってまいります。そうなりますと、所得減税をやる財源というものはなかなかむずかしいのじゃないか、こういうことを申しておるわけでございます。  何とかそこらのところを発想の転換が将来できるかどうかは、今後の課題として検討しなければなりませんが、われわれは、当面五十八年度に向かいましては、やはり行政改革という点から考えても、歳入の増大に頼るという安易な形でなく、徹底的に歳出の見直し、合理化、節減、これをまず最優先で取っ組もうという基本的な考え方でございます。  具体的にどうするんだと言われましても、具体的な問題というのは、そういう思想のもとでどれを幾ら切るかということは、予算編成の過程を通じて例年詰めていくことでございますから、あらかじめ何を幾ら切るということをここで具体的に申し上げることは非常に困難でございます。
  255. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題はいままでも何回も伺っておるわけでございますから、この程度にいたしたいと存じます。いずれにしても、しかし、労働四団体を中心にしまして大型減税本年度実施への希望が強い。何とか景気を回復させなければならぬという願望もその中に含まれている。いわゆる減税問題が即景気回復につながるかどうかの議論はなお分かれるところでございますけれども、しかし、そういったものを国民大衆の願望を十分酌んで、そして今後の財政運営に努力をしていただきたいことを要望しておく次第であります。  それから、この予算に関連をしまして、国家公務員の人勧とこの予算問題についてちょっとお伺いをいたしておきたいと思うわけでございます。  ことしは、当初予算におきまして人件費が六兆七千八十億が組まれて、その中で給与改善費が一%組まれておったわけでございます。その後、人事院勧告が出て、五・二%ですか、いろいろな曲折がありましたけれども、これが年末近くになってやっと実施が決まったというような状況補正予算の都合上もあるわけでございますけれども、どうも一般の労働者が春闘等において本年度の給料のアップというものが示されている。ところが、公務員の人は、もう年末近くならなければその辺がはっきりしない。しかも、そういうものがいろいろな他の政治課題との政治的な取引の道具にされておるというようなことについて大変不満を持っておられるわけでございますが、五十七年度に向かって政府は、この人勧の問題、どう対処されていこうとするのか、基本的な問題として伺っておきたいと思います。
  256. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  五十七年度におきましては、人事院の勧告が行われましたら、その時点で諸般の情勢を勘案いたしまして、その取り扱いを検討をいたしまして、私といたしましては、人事院勧告を尊重するという基本的なたてまえに立って、誠意をもって対応する考えであります。
  257. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 行管庁長官にお伺いをいたしたいわけでございますが、現在、第二臨調におきまして、この公務員の問題、総数の問題あるいは給与の問題、いろいろ検討されているようでございますが、この問題の答申はいつごろになるのか。  それから、この人事院勧告の問題について、私は国家公務員の給与のその適、不適の問題についは大いに議論を進むべきだと思いますけれども、人勧制度そのものはそう簡単にいじるべきでない、こういうふうに思うわけでございます。ここら辺の議論は今後どうなるというふうに予測していらっしゃるのか、あるいは行管長官御自身でも結構でございますけれども、この国家公務員の給与の改定問題について、改正は人事院勧告まで及ぶべきだというふうにお考えなのか、ここら辺についてお伺いをいたしたいと思います。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 公務員制度の問題も聖域ではございませんので、臨調の討議の範囲に入っております。現に第二部会におきまして、公務員関係のそういう小委員会を設けまして検討を開始しております。  いつ答申になるかはわかりません。大体七月答申以降でありまして、両論ありまして、七月答申の中に入れたらどうかという議論と、来年、五十八年の三月答申にしたらどうかという議論もございます。これらはいずれも臨調で最終的に決める問題でございます。  それから、人事院勧告の扱いにつきましても検討を加えようとしております。いまのような勧告のやり方がいいのか悪いのか、あるいは人事院勧告制度自体あるいは給与のあり方等々につきましても、委員の中にはいろいろの御意見があるようでございまして、ようやくそういう議論を始めようという段階にいま至っておりまして、どういう結論になるかは、われわれが注目しておるところでございます。
  259. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 第二臨調の答申があるいは三月以降になるかもしれないというようなお話もございましたのですが、いずれにしても、この人勧問題まで触れるというようなことでございますれば、かなりの時間がかかるというふうに思います。  そういうような時間的な流れの中で、一つは、昨年の九月ですか、官房長官が人勧の取り扱いに関連しまして、四十八年の全農林事件の最高裁判決の問題と関連しておっしゃっているわけですね。政府が誠実に努力して勧告どおりに実施できない場合についての最高裁の判断は明確ではないけれども、違憲であるというふうに断じているとは思えないというふうにおっしゃって、これが五十六年度の人事院勧告にも大きく影響をしてきているわけでございます。  ただ、私が大変わからないのは、この誠実な努力というものは一体どういうものなのか。大変抽象的におっしゃっているわけですね。五十七年度の給与改善の問題についても恐らくこの問題が再び出てくると思いますので、官房長官はいまも御意見が全く変わっていないのか、また、その誠実の内容という問題についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お伺いをいたしたいところでございます。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和四十八年の最高裁大法廷の判決は、基本において、公務員の労働基本権の代償としてこういう制度が設けられたのであるから、基本的にはこれを、いわば勧告を誠意をもって政府が実施をしなければならない、それが考え方の基本であるということはこの判決に述べられておりまして、それがもとになりまして、さて、しかし判決は、最後の方で、裁判官数人の方の補足意見として「当局側が誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、要求されたところのものをそのままうけ容れなかったとしても、この制度が本来の機能をはたしていないと速断すべきでない」、こう述べておられますので、その点を私なりに解釈して申し上げたことでございます。もっと正確にはその後法制局長官が委員会で述べておられますが、大筋で私の申し上げていることは、その限りでは誤りではないとただいまも考えております。
  261. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 しかしながら、実際にことしの人勧の予算一般会計に占める額、そういうものを検討してみると、人事院勧告の額は三千四百二十億でございます。それで、期末手当等の凍結が行われたわけでございますから、これが八百八十億カットされておるわけですね。そうしますと、全体のアップ率の中での四分の一が削られておるわけです。財政事情は依然として厳しいわけでございまして、五十七年度も五十八年度も五十九年度も大変に厳しいと思わなければならない。そうしますと、継続的にそういったアップ率のカットというものが行われていくわけでございます。しかも、先ほど来お話が出ております公務員制度全体についての臨調の答申、それから答申後のいわゆる法改正となるとかなり時間がかかるわけで、五十七年、五十八年の予算に関連して考えてみますと、そういうようなことが継続的にカットされるということになりますと、いわゆる人勧制度そのものの機能の喪失という問題につながってくるわけでございます。ですから、いわゆるこの誠実な努力というものの中身が詰められてこなければならぬはずなのですね。そういう意味で私はお伺いをいたしておるわけですが、いま一度見解を承りたい。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 臨調が、先ほど行管庁長官が言われましたような意味で公務員制度全体について検討されるのであろうと伺っておりますが、その際、この人事院制度についてさらに何かを答申されるのであるかどうかについては、私どもつまびらかにいたしておりません。仮に臨調が答申をせられましたときには、それをどうするかということは政府として決断をしなければならない問題でございますけれども、いずれにしても、それはいま仮定の問題でございますから、それ以上申し上げることはただいまの段階では大して意味がないかもしれません。  したがいまして、人事院制度がそのまま仮に継続をするとして、そうして今年も再び人事院の勧告がなされましたときに、昨年は臨調において、ちょっと言葉が正確でございませんが、たしか、しかるべき抑制措置を考えるべきであるという趣旨の中間答申があったのでございますし、それについても政府は深い考慮を払ったわけでございますが、今年人事院制度がそのまま存続をして、しかも勧告について臨調がさらにどういうことを言われるのか言われないのか、また、そのときの財政事情がどのようなものであるかというようなこと、これらが政府の態度を最終的に決定する大きな要素になろうと存じますが、その際、仮に政府が最善を尽くして与えられた環境の中で一つの決定に至りますならば、それは昭和四十八年の最高裁の判決に言うところのいわば法律上、事実上善意を尽くしたということにやはり該当するのではないかというふうに考えております。
  263. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、総務長官にお伺いをするわけでございますけれども、先ほど申し上げました公務員の給与の適、不適の問題について議論することについては問題はないと思いますけれども、その問題と人勧制度という問題とは基本的に私は分けて考えなければならない問題だと思っているわけです。と申しますのは、政府が仮に誠実な努力を継続的に行ったといたしましても、なおかっこの機能の喪失というものは考えられる。そこからまた、いわゆる争議行為だって発生するおそれがあるわけでございます。そういうようなことを十分踏まえて考えたときに、先ほど来問題にしております給与の適、不適の問題と人勧制度というのは基本的に分けて考えなければならぬというふうに私は思うのですけれども見解を承りたいと思います。
  264. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  人事院勧告につきましては、私ども、そのときの財政事情、また臨調のこの逼迫した事情に対応する問題に対して、その基本的なたてまえとして人勧を尊重することは当然でございます。ただ、私どもは、政府がこの財政事情の中で、人勧の答申どおりにこれをやることは、たてまえとして当然でありますけれども、国の財政事情が非常に逼迫いたしておるときには、やはり国の財政事情に応じて対応することはやむを得ない措置である、こう考えております。
  265. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一度お伺いいたしますけれども、先ほど来申し上げておりますように、財政事情、いろいろ厳しい状況の中でございますから、政府が誠実な努力を重ねていくのは当然だと思いますが、そうしてもなおかつ人勧制度のいわゆる機能の喪失という問題が起こり得る、こういう議論が一方においてあるわけですよね。この問題についてはどういうふうにお考えになりますか。
  266. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 御指摘のように、片方においては人勧の尊重ということを、もちろん私どもは基本的に尊重をするというたてまえで臨んでいかなければなりません。しかしながら、片方において国の財政、大変に不如意また逼迫いたしておる際におきましては、それにでき得るだけの配慮をすることは当然でございますが、人勧の意思を尊重をする最大限度の配慮はいたすべきものである、かように考えております。  ただ、人勧どおりにその実行ができない、こういう事情につきましては、すでに今年もそういう事態でありました。来る五十七年におきましても、これにどう対応するかということについては私ども最善の努力を払ってまいりたい、こう考えております。
  267. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 余りお答えにならぬと思うのでございますけれども、これが五十八年度までこういう形でいくと三年継続でやるわけですよね。そうしますと、一方においていわゆる公務員にも争議行為というものについての議論が出てくると思うのですけれども、まあいいでしょう、これ以上議論してみても答えが出てくるとは思いませんので。しかし、そのおそれは十分にあるということを御警告を申し上げておきたいと思うわけでございます。  次に、国鉄問題について若干お伺いをいたします。  財政赤字が問題になっておりまして、特に三K赤字がまた委員会等でも取り上げられておるわけでございます。その三K赤字の代表選手とも言える国鉄の問題について若干お伺いをいたしておくわけですが、まず臨調との関係についてお伺いをいたしたいと存じますが、これは七月答申の中に制度改革の問題が出てくるようだということが一般的に報道されておるわけで、このめどはどういうふうになっていくか。仮にこの七月答申の中に出てきた場合、これは第一次、第二次、第三次というようないろいろな改革案に恐らくならざるを得ないだろうと私は思っておりますけれども、仮に七月に出るにいたしまして、もうすでに概算要求の時期にも来るわけでございますから、そうしますと、五十八年度予算には恐らく制度改革案というのは間に合わない、こういうふうなおそれも出てくるわけですね。あるいは議論がふくそうしてくれば五十九年度にも間に合わないかもしれないというような問題が出てくるわけですね。しかし、国鉄問題をいま討議する場合に、そういうような見通しをつけずにいまいろいろな問題を取り上げても余り意味がなくなっちゃうわけですね。ですから、答申が延びた場合には現状の形態の中での論議をしておかなければならぬ、こういう意味です。  そういうことで、一体行管庁長官あるいは運輸大臣は、いわゆる改正案が本格的に国会の議論になるというのはどこら辺になるかというふうに見通しをつけていらっしゃるのか、議論の初めでございますから承りたいと思うのです。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 臨調におきましては、いま三公社五現業等も相手にいたしましていろいろ検討を加えております。経営者の当局あるいは労働組合代表あるいは学識経験者等を呼びましていろいろ意見も聞き、また、みずからいろいろ論議をいたしまして、方法を模索しておるという段階であります。いつどういう答案が出てくるか、いまのところまだ予定はついておりません。
  269. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま行管長官からお答えしたような見通しではないかと思いますが、私らといたしましては、ただ、そうした事態を放置するのには余りにも重大な国鉄の問題でありますので、昨年五月に決定を見た経営改善計画、これをともかく前向きに進めていく、可能ならば、時期が延びれば延びるほどこれを強化し、深度を深めていくというような方向で国鉄問題に対処してまいりたいというふうに思っております。
  270. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いずれにしても、現段階においては臨調のいろいろな議論を踏まえながら現状の形態の中での議論を進めていかなければならぬということだというふうに理解をいたしたいと思うわけでございます。  そこで、赤字債務の棚上げ問題について若干伺っておきたいわけでございますが、なぜこの問題を取り上げるかといえば、現在臨調で検討されているといわれる民営論、あるいはその他の分割案という問題、これを基調として考えるにいたしましても、あるいはこれからの現状の形態の中でのいわゆる国鉄問題を考えるにいたしましても、いずれにしても赤字債務の問題を解決をしないで次へのステップはできない、これはだれしも認めるところではないかと思うわけでございます。  そこで、国鉄総裁にお伺いをするわけでございますが、五十六年度の赤字額がどのくらいに達するかというふうに見ておられるのか、それから六十年までの累積赤字は現時点でどのくらいと予測されるか、同時にまた、この棚上げ問題につきまして、国鉄総裁は、いままでも、昭和六十年までに赤字債務の棚上げをしていただかなければならぬというふうに希望を表明しておられるようでございます。そういった意味で、その問題の確認をしておきたいし、もし再棚上げが行われないとすればどんな事態になるのか、そこら辺についてもお答えをいただいておきたいと思います。
  271. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもの累積赤字のうちで、現在未処理になっておりますものの五十六年度末の見込み額は二兆三千三百億でございます。これはただいま御審議いただいております補正予算が成立した後の見込みでございます。それから、六十年度見込みは八兆二千億でございます。  これの処理でございますが、石田委員よく御承知のとおり、何回か閣議了解がつくられておるわけでございまして、閣議了解では、いずれの日にか何らかの処理をするということを含みとしながら今後の問題であるということになっておるわけでございますが、その後、国鉄問題についての御批判が非常に厳しくなってきておりますので、これが従来の考え方で進み得るかどうかということについては、私どももそう楽観はいたしていないわけでございますが、しかし、今後あらゆる努力はいたしますけれども、どうしても累積赤字額がふえてまいりますので、これにつきましては従来の閣議了解ベースでお願いをいたしたいというふうに考えているわけでございます。これの処理が全くつかないということになりますと、累積赤字額は、赤字額そのものはよろしいのでございますが、赤字額を見合いの借り入れがございますので、その借入金利分だけ年々の経営がまた悪化をしていくということでございまして、六十年度試算の八兆二千億といいますと、仮に七分の金利としましても大変大きな金額になってくるということでございまして、やはりある段階で何らかの処理をお願いしなければならぬと考えております。
  272. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、いま国鉄総裁が述べられたとおりでございまして、大筋としては棚上げの処置を了解をしておられるようでございますけれども、これは年々利息は七%ずつついていくわけですから大変な額になってくるわけで、先へ延びれば延びるほどやっていけなくなるというようなことになりまして、いずれかの時点といいましても、十年も二十年も先というわけにはもちろんいかないわけでございましょう。いずれにしても、近い将来においてこれをやらなければならぬ時期が来ていると私は思うのですけれども、どんなふうにお考えでございますか。
  273. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国鉄再建の当面の考え方は、五十五年度に二度目の過去債務棚上げというものを行ってまいりました。それを前提として、先般策定された経営改善計画をまずやってもらわなければならない。問題は、臨調でも問題になるでしょうけれども、それではまだ足らない。もっと人員の削減をしてもらわなければ困る。労働条件等いろいろな問題があろうかもしれませんけれども、現実の問題としては、一万二千人削減して五千人採用するというようなことをやっておったのでは、これはとても、これは皆税金で穴埋めをするわけですから、なかなか国民が承服してくれないんじゃないか。したがって、私としては、臨調の答申等を見た上でなければ具体的なことは申せませんが、人員の削減と合理化を徹底してもらいたい。それが決まらなければ、安易にまた棚上げで、穴埋めを国民の税金でしますということはとても言い得る状態ではないと思っております。
  274. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 第二臨調との兼ね合いもありますし、あるいは企業努力との兼ね合いもあるわけでございます。しかし、いま申し上げたように、第二臨調から実際の改革案ということになってくると、私は最低二年は要るだろうと思うのですね。そうしますと、どうですか、近い将来、五十七年度、五十八年度あるいは五十九年度ぐらいではとてもそのめどはつきそうにないというふうに思いますので、そこら辺までは棚上げはできぬということになりますが、大蔵大臣いかがですか。あなたのいまの御趣旨でございますと、そこら辺はむずかしいというようなことになりますな。
  275. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この問題でまだ詰めておりませんが、そう早い時期に棚上げというようなことはできないだろう。何としても、国の方で二兆円赤字国債を減らすのに四苦八苦しておるわけですが、国鉄の方は黙っていても赤字が二兆円ふえてしまうということでは、一体何で財政再建をやっているのかというような話になりますから、これは徹底的なことをやってもらわぬと、国としては、国有鉄道ということでございますから、知らないと言うわけには結果的にいかない。したがって、これは国鉄自身ももう一遍ひとつ再反省をして、徹底した合理化案をつくってもらいたいと私は希望しています。
  276. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それで建値上げ問題に関連してお伺いをいたすわけでございますけれども、五十五年度ですか、当初計画よりも大幅な減収があった。いわゆる増収見込みに対して、それが十分に達成できなかった。恐らく五十六年度も当初予算に比べると約千六百億ぐらい増収が期待できない、いわゆる見込み額に対して減収であった、そういうふうになると思うのですよ。  そうしますと、いま大臣がいろいろ言われているけれども、どうも予算の査定のときに対して——私の言わんとするところは、要するに、いまの国鉄の増収見込みというものが余りにも大幅に過ぎているのじゃないか、実際はそれだけ入ってこないわけですからね。そういうような大幅な収入をただ期待するだけで簡単に認めているというのはおかしいのじゃないですか。そういう議論になりませんか。いかがですか。
  277. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま数字をお示しいただきましたように、五十六年度の収入の状況は決してよくないわけでございまして、予算に対比いたしまして約千六百億ほど不足しそうだという事態になっております。そのうち半分、約八百億につきましては、九月までの実績からそういうことになっておりますので、今回御審議いただいております補正予算におきましても、その分は減額修正をしていただいているわけでございます。  そこで、何でそんなに収入が減るかということでございますけれども、千六百億の約半分、八百億は貨物収入の減少でございまして、これは従来も全体として数量は減りつつあったわけでございますが、それにしても収入そのものが前年より減るというような事態はなかったわけですけれども、五十五年、五十六年の二年にわたりまして収入としても減ってきております。  あとの八百億は、五十六年度予算見込みますときの、つまり一昨年の十月、十一月の時点の収入見込が、その後ずっと見込みどおりいかなかったわけでございまして、細かい数字は申し上げませんが、私どもはここ数年、毎年改定をさしていただいておりますけれども、改定による増収分に関する限りはほぼ目算どおりの収入を上げさしていただいていると考えておりますので、決して運賃改定の結果ますます赤字を増幅するという結果にはならないと思っておるわけでございます。
  278. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 では、運輸大臣にお伺いしますけれども、ことしも六二%の値上げですか、運輸省の方に申請をされておるわけですね。私は、上げ幅が少し大き過ぎるのじゃないかと思うのですよ。結局、それだけ上げてみても実収は伴わないわけですから、そこら辺はもっとシビアに見る必要があるのじゃないかと思うのですね。それについてのお答えをいただきたいということと、それから値上げの問題についてでございますが、五十二年末に法定制の緩和がなされたわけでございます。私たちはこれについて反対であったわけですけれども、その後の運賃値上げ方式というのは、私はきわめて問題じゃないかと思うのです。というのは、予算の編成段階におきまして大枠は国鉄と大蔵省の間に、予算を編成する都合上、増収見込みというのを出さなければならぬ、そういうことで、大体そこで話がついてしまうわけですね。それから、いまごろになって運輸省に値上げが申請されて、運輸省はこれから運審にこの値上げをかけるわけですね。それでお答えが出てくるのは四月十日ごろということになると、運審の機能というのは運賃値上げに関してはもう喪失してしまっているのじゃないだろうか。少なくとも、予算審議されている段階において、運審が何らかの意見を議論をするということでなければおかしい。三月末に予算は確定するわけですから、それが四月の十日になって、運賃値上げ結構でございますとか、上げ幅はこうしましょうと言ってみたところでどうしようもない、こういうふうに思いますけれども、この二点についてお答えください。
  279. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 石田委員と私もその感を同じくするものでございますが、いずれにいたしましても予算編成の前に国鉄と大蔵省の間で予算編成の収入見込みを立てなくてはならない。その場合に、やはり膨大な赤字の補償と申しますか、そうしたことで巨額の国費が使われる。そうしたことのバランスの中から、収入見積もりの中で来年度予算については千五百億の増収を図れというようなことが具体的に示されるわけのようであります。したがいまして、それに対応した値上げが計画されるわけでありまして、国鉄当局は千五百億を達成するべく、いろいろと運賃の値上げについての等級その他の幅、種類別、そうしたものを決めて、運輸省に申請をしてくるわけでござ・います。しかし、このようないろいろな作業の中間におきましても、運輸省の鉄監局は、運輸審議会の委員の方々にはその情報と申しますかを常時御連絡申し上げて、御理解をいただいておるという努力をしているわけなのでございます。そのような形の中で、一応御理解をいただいた中での御審議をお願いをするというふうになっておるのでございます。  いまの国鉄の現状というものは、先ほども国鉄総裁から話がありましたが、私の見るところはもっとはなはだしい、ひどい状態ではないかと考えます。特に、累積した債務が、私の概算でも十八兆に及んでいるのでありますから、この金利だけを考えましても、それをいかに棚上げをいたしましても膨大もない負債、負担になっているわけでございます。  いずれにいたしましても、私といたしましてはこうした値上げは予算編成上の問題としてやむなく出てくるのであって、国民各位から非常に今度の値上げについてはけしからぬという声を伺っております。また紙面においても、何の値上げだというふうに非常な強い御批判をいただいていることはよく承知しておりますが、しかし、一方におきましての予算編成上の措置としての値上げであるということで、われわれといたしましてはやむを得ないことだというふうに考えておりまして、運審においてもできるだけ合理的な、また利用者にとって受け入れられる方向でのお知恵をひとつ出してほしいということを運審の委員の方々に私の方からお申し入れをして、御努力をいただきたいということをお願いしているのが現状でございます。
  280. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 大変苦しい状況であるということについては、それ自体私もよくわかります。しかし、運審の機能というのは、個々の委員に御理解を求めるということではなくて、審議会としての議論が大切なわけでございますから、今後の予算編成の中にもそこら辺がきちんと反映されるよう、今後の改正なりあるいは取り組みの時期を前へずらすとかいうような御努力をすべきだということを申し上げておきたいと思います。  それから、だんだん時間がなくなってきましたけれども、次に安全性の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  本日は日航の墜落事故という問題があり、きのうはホテル・ニュージャパンの問題があったわけでございますが、国鉄改革という問題、これがいかなる方法で模索されるにいたしましても、安全性を無視して再建策なりあるいは改革案というものが考えられないわけですね。  そこで、総理にお伺いするわけでございますが、今後の議論の発展との関連もありますので、この交通サービスにおける安全性について、これは非常に大事な問題じゃないかと思いますので、基本的な見解を明らかにしていただきたいと存じます。
  281. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 交通サービスの観点からいたしまして、安全性の確保、人命尊重ということが一番重要な問題であることは御指摘のとおりでございます。国鉄の財政があのような危機的状態にあるということで、いろいろな施設が老朽化しておるというようなことも看過できないところでございます。したがいまして、政府としては、厳しい状況の中ではございますけれども、この経営改善計画の中におきまして、施設の改善等につきましては配慮もいたしておるということでございます。
  282. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、具体的な数字を挙げて申し上げてみたいと思います。  これは五十四年度の資料でございますけれども、いわゆる旅客車については、耐用年数を経過しているのは六三%というふうになっております。それから約二年経過しておるわけでございますから、大体六五、六%が耐用年数を過ぎているであろうというふうに推測をされるわけであります。あるいはまた橋げたの問題をとらえてみますと、五十四年度で五一%でございますから、これも五五、六%は耐用年数をはるかに過ぎておるというふうに思わざるを得ないわけでございます。トンネルについてもほぼ同様の数字が出ておるわけでございますが、これは私はいままでも何回も問題にしてきたのです。それから、運転の保安上の問題で、重点的な警備個所というのは全国で六千カ所ある、それから、運転保安上徐行が必要な個所は全国で二百五十カ所だというふうに、そういう数字が国鉄の資料からも出ておるわけでございまして、これは国鉄総裁と議論をしてみましたら、いわゆる安全性をより高めていくためには、年間大体五千億規模の投資が必要だというのですね。五千億、えらいことです。ところが実際は、新幹線の建設等にいろいろ設備投資が食われておるので、ここのところずっと年間約三千億程度のことしかできておらないとおっしゃる。それで、いま総理はいろいろおっしゃいましたけれども、まず五十年代を展望してみますと、一年間に二千億の投資不足が出ているわけでございますから、これだけで十年間の展望ということになりますと二兆円からの安全性への投資が欠落している、こういうことになるわけですね。この財政事情の厳しいときに、いま総理が決意を表明されましたけれども、耐用年数がどんどん過ぎていく。耐用年数が過ぎたから即危険だということにはならぬにいたしましても、これは物理的な考え方をもってすれば、いつかは設備そのものを取りかえなければならぬ、そういうものもきわめて数多くあるというふうに見込んでいかなければならぬ。そうすると、二兆円からの投資不足というものは、必ずその安全性を損なう事態が来るし、また、そこまで来ているというふうに考えなければならぬ。いま国鉄、きょう、あすの間に大事故が起きるというわけじゃありませんけれども、しかし、事故というものはいつ起こるかわからないわけでございまして、あのホテル二一ユージャパンの問題だって、恐らくたばこの不始末からであろうというふうに言われているわけです。これは人間の注意、不注意の問題もありますけれども、しかし、交通機関として考えたときには、いわゆる財政論理あるいは経営論理の問題以外に、何としても安全性というものが確保された上での経営論であり、財政論でなければならないわけですね。一体、この二兆円の投資不足という問題について、政府はどういうようなお考えを持っていらっしゃるのか、あるいはこれから五、六年もまだ財政状況が厳しいだろうから、とてもできないというふうにおっしゃるのか。それで一体、国民の前で済むだろうかというふうに思いますので、どうしてもこの問題についてはお答えをちょうだいいたしたいと存じます。
  283. 高木文雄

    ○高木説明員 私が出る幕ではないかもしれないのでございますけれども、余り施設が老朽しているということでも国民の皆様は御心配になろうかと思いますので、ちょっと注釈をさせていただきますが、私どもも前にも作業をいたしましたが、お示しのように、でき得れば年間五千億円ぐらいの取りかえ経費があればいいがなと思うわけでございます。それに対して、実行上三千億円ぐらいしかできていない、それは事実でございます。  それを現実にどういうふうに処理をしているかというと、車両の場合には、お客様に対するサービスが悪いままで古い車両に乗っていただいているというかっこうになっております。したがって、車両の古い中の安全にかかわる部分は、これは定期の検査をきちっといたしておりますから、取りかえがおくれるために安全を損なうというようなこと、すぐに事故につながるというようなことはまずない、また、あってはならぬということでいたしております。  それから、足回りといいますか、線路そのものの方につきましては、御指摘のように、橋梁がくたびれてまいりましたり、トンネルにいろいろ欠落が出まして水がしみ出るというような事態はかなりの程度起こっておりますが、これもお金がありませんので、やむを得ず、とりあえずの応急処置でつないでおるわけでございまして、確かに私どもとしては、欲を言えばもう少しそちらに回さしていただいて、安心して毎日を過ごさしていただければありがたいわけでございますが、いまこういう事態でございますので、いわば応急処置、応急処置をつないでやっているということでございます。事故は絶対に起こさないというつもりでやっておりますので、その点は御安心いただきたいと存じます。
  284. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 国鉄総裁の御努力については大変多とするわけでございますが、さりとて私はこの問題で引っ込んでいるわけにいきません。もう投資額は絶対的に不足しているわけですから、これはもう現在の国鉄の経営状態の中から考えてみて、国鉄が処理できるような状況にはないわけですよ。これはどうしても政府に何らかの対策を立ててもらわぬことには、この問題の解決の方向は出てこない。少なくとも、それに対する方向はこうするということだけでも決めなければ、国鉄だって予算の編成上、そっちへ振りかえることだってできないはずですよね。現状で精いっぱいやっておるわけです。この辺はいかがお考えでございますか。
  285. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま国鉄総裁から御説明ございましたが、しかし私、就任以来国鉄の問題を見ているときに、最高に欠落していることは、要するに償却は全く字面だけであって、実際の償却をやっていないのであります。これは企業経営と申しますか、国鉄も経営でありますから、当然その償却は、五千億あるのでありますが、それを現実に償却をしていく、当然それが補修費になって設備の更新に回っていくわけでありますが、それがずっとなされてなかったと思うのであります。  私は、経営姿勢の問題も、この安全問題については非常に重要であるというふうにいま考えております。しかし、もうすでに過ぎ去った過去の未償却分の累積が、おっしゃるように年々五千億でありますが、ただこれは帳面づらだけ、字が書いてあるだけでありますから、こんな中で補修費が出るはずがない。また、一般の工事費として、国から予算としていただいている一兆円の金があるわけでありますが、こうしたものもそれぞれに割り当ててあるのでございましょう。しかし、いずれにいたしましても償却をする、その上に立って給与を決め、あるいはまた経営を考えていくということが欠落している。ここに問題の中心があるように思うのでございまして、いま御指摘の安全性の確保のために、そうした過去の経営の不振というものは一応仕方がないとしても、これからは運輸省といたしましても国鉄当局と十分相談して、国民の御期待に沿う努力をいたしたいというふうに考えます。
  286. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題については、努力をするということにつきましては私も理解をするわけでございますが、大蔵大臣、いまいろいろ申し上げましたように、しかし現実は金なんですね。それはもういまの国鉄の企業努力の中ではどうしてもできない。しかも、これが第二次臨調の答申が出てきて、どういう形で変革するにしましても、この安全性の問題をないがしろにして新しい再建論というものは考えてはならないはずなんです。そのためには、どうしても安全性確保のための投資をしなければならない。いま、大蔵省と御相談の上さらに検討してみたいとおっしゃいますけれども、やはり大蔵大臣の御決意もまた承っておきたいと思うのであります。いかがですか。
  287. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国鉄は、全体的にまず考え直してもらわなければ困ります。しかしながら、われわれは、安全確保という点は非常に重要なポイントでございますから、この点は御指摘のように年々見ておるわけです。いまもお話があったように、今回も三千七百億円ぐらいは出しているわけです。投資額の保安と取りかえ、公害関係の分で三千七百五十億円の予算はつけておるのです。したがって、いろいろと知恵もしぼりまして、それで安全対策には一層万全を期すようにやっていただきたいと思っております。
  288. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 一朝一夕に解決すべき問題ではないと思いますが、ひとつ早い機会にこの総合的な検討を御要望申し上げておきたいと存じます。  それから、もう時間もなくなってきましたので、余りお伺いをすることができないのでございますが、現在国鉄が非常に企業努力をしておられる、さらに現在保有している財産についてもどんどん処分するというようなことでございますが、どうもその見通しが余り明るくない。財産処分の問題についても、目標値に達することはできないのではないかというふうに私は大変危惧いたしておるわけでございまして、そういう角度からお伺いをするわけでございますが、現在の国鉄の公舎、木造公舎等もいろいろあるわけでございまして、そういうものの空中権なんかも積極的に活用する方向に行くべきではないかというふうに思っております。これは意見として申し上げておくだけにとどめておきたいと存じます。  さらに、運輸大臣に一つ御要望を申し上げておきます。  これも再建論議とはまた違った基本的な問題にかかわるのですけれども、高速道との関係ですね。わが国の高速道は、ことしの三月末において約三千キロ時代を迎えてくるわけでございまして、青森から鹿児島まで縦貫道というようなことになります。この整備が終わると、今度は横の部分、横断道に入っていくわけでございますけれども、これがまた、恐らく国鉄の経営赤字の大きな負担になるだろうというふうに私は考えます。  たとえば三十五年と五十五年の貨物の輸送というものを考えてみますと、国鉄の場合、三十五年は五百三十六億トンキロあったわけでございますが、五十五年には三一%それが減っているわけですね。それで、貨物は壊滅状態になっておるわけでございまして、それが横断道ができていくということになりますと、貨物の減少は言うに及ばず、人的輸送についても減っていくわけですね。  一つの事例を挙げますと、新幹線と北陸自動車道との関連をとらえてみますと、国鉄の場合、五十二年と五十五年を比較しますと、約一四%旅客が減っているわけです。それに比べて新潟−長岡間の高速道路の方は、人的輸送だけでもどんどんふえておりまして、一日平均五百八人からいま千八百七十人と三倍以上に達しておるわけですね。ですから、これから横断道をつくっちゃいけないと言うわけにはいかないわけですけれども、ここら辺の調整は十分にしていかないと、また第二の赤字ができるということでございますので、質問時間がありませんから、この点については十分な調整をしていただきたいことを要望として申し上げておく次第でございます。  それから、住宅問題をやりたかったのですけれども、余り時間がありませんので残す時間でお願いをしたいと思いまして、この交通問題に関連して、いわゆる植物人間と言われる大変気の毒な方方の問題について、その救済措置についてお伺いをいたしたいところでございます。  一つは、この植物人間、交通事故だけではないのでございますけれども、交通事故によってそういうような気の毒な状態になる状況もかなり多いわけでございます。そこで、最近の事故状況についてまずお伺いをいたしたいと思います。簡単に数字だけおっしゃってください。
  289. 久本禮一

    ○久本政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十六年中の交通事故の数字でございますが、四十八万五千三百六十六件、前年に比べまして一・八%の増ということでございます。死者数につきましては八千七百十九名でございまして、これは前年に比べて四十一人、〇・五%減っておりますが、負傷者数は六十万を超えまして前年比一・三%の増ということで、ここ一両年発生件数と負傷者数の増加傾向が続いておるということでございます。  また、昨年の死亡事故の特色をごく簡単に申し上げたいと思いますが、依然として都道府県の間にかなり著しい格差があるということでございまして、いろいろ施策のすき間と申しますか、そういった点でのばらつきが目立つわけでございます。また、形の上では自動車に乗っている最中に死んだ者、それから二輪車に乗っているうちに死んだ者が増加しているといったような傾向が、昨年の死亡事故事例から見ました特色であろうかというふうに考えております。
  290. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 自動車事故については鎮静化の方向に一時向かっておったのでございますが、やはり負傷者も最近はふえておるわけでございまして、この中でいわゆる植物人間と言われる方々、重度身障者になった人たちというのは一体何人ぐらいと運輸省の方では把握しておられますか。
  291. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 本年一月の介護料を渡しているのは四百五十三人でございます。
  292. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 交通事故におきます重度の身障者は四百五十三人というふうに承りました。厚生省全体ではどのくらいになりますか。
  293. 森下元晴

    ○森下国務大臣 厚生省で把握しておりますのは、推計でございますけれども、二千名から二千五百名と推計をさせていただいております。
  294. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それで、この身障者、重度の意識障害者の問題でございますけれども、自動車事故対策センターがこの重度意識障害者の実態調査を五十五年の十二月にしていらっしゃるわけですね。これを見ますと、総理にも聞いていただきたい、ぜひこれを読んでいただきたいと思うのですけれども、もう大変な苦労を看護の家族の方々はしていらっしゃるわけなんですね。たとえば、いわゆる床ずれを防ぐために、全然意識のないそういった人たちを一日七回から八回、体を動かして体位を変更してあげなければならぬ、あるいは全員の人が食事は鼻からカテーテルで流し込むかスプーンで流し込んでやらなければいけない、あるいはまた全員がおむつを使用しておるというような状況でございます。あるいは七五%の人が、一日に一回から二回、全身をふいてあげなければならぬというような状況になっておるわけでございまして、こういったいろいろな苦労、また経費の問題を含めても、これは大変なんですね。健康保険の問題を除いても、そのほかに、大体付添看護婦さんなんかを含めますと、月間で約四十万、年間ですと四百八十万、五百万前後の金がかかるわけです。これはとてもやっていけるものではございません。しかも、いま厚生省からお話がございましたけれども、二千人から三千人の推定というようなことで、これは十分把握されてないわけですね。そういうような状況でございますので、これは何とかしなければならない。  しかも、病院などに入っている例でも、そのほとんどが病院側の都合によって退院を勧められておる。もうとてもこれ以上治りそうもないから、退院をしてもらわなければならぬというふうに迫られておるわけですね。そういう人が結局転々として自分の家へ帰ってきて、家族がめんどうを見なければならぬ。経済的な問題だけではなくて、そのために家族の健康が損なわれる、あるいはそういう人がいるから結婚ができないというような問題まで引き起こしておるわけです。  しかし、この重度の身障者に対する救済措置というものが、いま適確なものがないのですね。身障者福祉法というものがあるけれども、この身障者福祉法の方は、いわゆる更生をする可能性のある人が対象になる。したがって、寝たきりの重度障害者に対しては救済措置はないわけですよ。この確認をひとつ厚生大臣に伺いたいのですが、いまこの対策はないのじゃないでしょうか。
  295. 森下元晴

    ○森下国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、福祉法では、あくまでも自立更生するであろうという可能性のある方に対する適用でございまして、いわゆる重度の、植物人間と言われている患者の方に対する適用は、残念ながらございません。それに対しましても、厚生省は五十四年に実は諮問をいたしまして、ただいま内容について検討しております。  以上でございます。
  296. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういうわけで、これは救済措置が全然ないわけですね。現在、身障審議会ですか、そういうところに諮問をしておられるようなんですが、この答申はいつごろ出るのですか。また出てから、一体この超重度の心身障害者に対して、厚生省は身障者福祉法の改定というところで対処しようとしていらっしゃるのか、あるいは独自の法案をつくって対処しようとしていらっしゃるのか、そこら辺もお伺いいたしたい。いずれにしても、早急な救済対策を立てて救済をすべきであるというふうに考えるわけでございますが、これについての厚生大臣見解を承りたいと存じます。
  297. 森下元晴

    ○森下国務大臣 御指摘のいわゆる植物状況にある患者の問題を含めまして、身体障害者福祉法による身体障害者対策の今後のあり方につきましては、現在身体障害者福祉審議会において御審議をいただいておりまして、本年三月末ごろには答申をいただく予定になっております。この答申を受けました後、厚生省内に基本問題検討会を設けまして、法改正の要否を含めて今後の対策を検討してまいる予定でございまして、五十七年度予算では四百万円の予算を計上さしてもらっております。
  298. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらに詰めてお伺いをいたしたいわけですが、この答申を受けてということでございますから、厚生省としても前向きでこの問題を取り上げていらっしゃると思うのですね。しかし、実際は予算との関連においては、今国会に間に合わないのじゃないかと思うのですが、果たして今国会に救済対策が出てくるのか、あるいは五十八年度の国会にこの救済法が出てくるのか、そこら辺の見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
  299. 森下元晴

    ○森下国務大臣 答申が出ましたら、前向きに検討をさしていただきます。
  300. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 確たる御返事ではございませんけれども、前向きの姿勢ということでございますから、できるだけ早い機会においてこの救済法をひとつ御提出いただきたいということを強く要望をいたしておく次第でございます。  最後に、総理にこの問題についてお伺いをするわけでございます。  大変厳しい財政状況にいまわれわれは追い込まれておるわけでございますが、政治は社会全般の問題について取り扱うわけでございまして、特定の人の利益になるような措置をすべきではないことは、これは言うまでもないことでございますが、しかしながら、このように一生懸命努力してもなおかつやっていけない、また、心身をむしばまれながら十分な治療ができないというような人については、これは政治として救済をしていかなければならぬというふうに思うわけでございまして、やはり政治の根底には慈悲がなければならないのは当然のことでございます。  大変財政状況は厳しいのでございますけれども、このいわゆる寝たきりの人たちないしは取り巻く家族の人たちのために、ぜひともこの救済法を、困難な財政状況ではございましょうけれどもやっていただきたい、こういうふうに御要望申し上げるわけですが、総理の御決意を承りたいと思います。
  301. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 石田さんから先ほど来、超重度心身障害者と申しますか、植物人間とも言われる方々の医療等の問題につきまして、切々たるお話がございました。先ほど来、厚生大臣からも御答弁申し上げておりますように、政府としてもこの問題につきましては前向きで検討を進めております。審議会の御答申を得れば、直ちに厚生省の中で検討委員会をつくって法案化に取り組んでまいる、このようにいたしております。  また、五十七年度予算におきましても、非常に厳しい予算ではございましたけれども、身障者の方々とかあるいは母子家庭でありますとか生活保護家庭でありますとか、そういう方々に対しましては特別な配慮をいたしておるわけでございます。今後におきましても、このような寝たきり老人あるいは超重度心身障害者等の対策につきましてはきめ細かな配慮をいたしてまいりたい、こう思っております。
  302. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、住宅問題を実は掘り下げていろいろとお伺いをしたかったのでございますが、時間がありませんからごく簡単にひとつ、問題だけお伺いをいたしておきたいと思います。  五十七年度予算におきます住宅都市整備公団の計画によりますと、建設戸数計画は改造を含めて三万五千戸うち賃貸は五千戸というふうになっているわけでございますが、五十五年度の会計検査院の検査報告によりますれば、空き家が余りにも目立ち過ぎるわけですね。新築空き家が六千八百一、保守管理住宅が一万八千四百四十四、長期空き家が九千三十四、合計で三万四千八百四十九戸ですから約三万五千戸これは本年度予算の一年分が全く空き家になっておるわけですね。これを見ますと、いままでいかに住宅公団がずさんな経営をしてきたかということがわかるわけでございまして、この会計検査院の指摘も大変厳しいものがあります。あるいはそのほかに土地の問題があるわけです。これはいままでも、公団あるいは建設省の中におきましても対策委員会ないし対策本部みたいのを設けてやってこられたと思うのでございますけれども政府としては毎年毎年膨大な予算を財投からつけているわけですよね。それで一年分も空き家ができてしまうというような状況については、監督官庁として建設省はもっと厳しく対処しなければならないのじゃないかと思うのですよ。  それについて御答弁をいただきたいことと、それから時間がありませんので、公団の方にこれへの反省、また今後どう対処していくか。特に私は、雇用促進事業団なんかの充足率というものは大変高いパーセントになっているのだけれども、どうも法律を超えてもなおかつ簡単に処理しているような気がするんです。それはそれで問題として、もっと市場性を導入してどんどん対策を立ててやっていく。  しかも、けしからぬのは、住宅公団の方で出されている事業等の促進対策委員会の報告によると、この空き家は減っているような数字になっているんです。ところが、会計検査院の方は年々ふえておる。恐らく、会計検査院の報告の方が私は正しいと思うのだけれども、そういうようなきわめて反省のないような数字を出していたんではだめだと思うのですよ。最後に、それだけ建設大臣とそれから公団の総裁にお伺いをいたして、終わりにしたいと思います。
  303. 始関伊平

    始関国務大臣 石田委員がただいま御指摘になりましたように、住宅都市整備公団、もとの日本住宅公団ですが、これが大変な空き家を抱えております。各方面から批判を浴びておるのでございますが、その数量は昭和五十五年度の会計検査院の検査報告で三万五千戸というふうに指摘をされております。  なぜこういうことになったかということと、それから、これをどうするのかということと、責任をどうするのかというようなことがただいまの問題だと思いますが、住宅公団は建設省関係の公団の中でも最も古い公団でございまして、戦後間もなく、いわゆる四十七、八年の高度経済成長が終わるまでの間が、たまたま日本で住宅の不足が激しくて住宅需要が最も旺盛な時代であったのでございますが、その間においてかなりな役割りを果たしてきたというふうに考えております。しかし、石油ショックを境にいたしまして、住宅需要に関する客観的な情勢がまるっきり変わってきた。その見通しを誤ったということが大きな意味での原因だと思うわけでございまして、先ほどお話がございましたように、建設省でも省内に委員会をつくる、また、それを受けて、今度は公団の方で個別の団地ごとに具体的な対案を進めましてやっているというのが現在でございます。  空き家ができた理由の中に、関連公共施設の整備が伴っていない、たとえば道路でございますが、それが三万五千のうちの半分以上、一万八千もあるのでございまして、その整備、それから家賃を情勢によりまして引き下げる、あるいは家賃のシステムを変える、それから二戸の住宅を合わせまして二月に改造して大型化を図る、それから募集販売体制の強化というようなことをいろいろいたしておるのでございまして、私の持っております資料でも、五十五年に比べて五十六年末は大体三万五千が三万二千に減っておるという計数が出ております。  この問題につきまして、私も就任間もないころに志村総裁に来てもらいまして、どうするつもりか、これはみんな先輩のやった失敗の跡でありまして、ある意味では気の毒だけれども、君の手で後始末を完全にやってもらいたい、それから世の中に3Kと言われるものがあるのだけれども、それに準ずるようなことになったのでは大変申しわけないがどうだ、経理上は全くそういう心配はない、非常な熱意と決断を持ってこの問題に取り組むという姿勢を示しておりますので、私もぜひ君の手で後始末を完了してもらいたいというふうに激励をいたしておりましたような次第でございます。  以上、私から御答弁を申し上げます。
  304. 志村清一

    ○志村参考人 ただいま先生から御指摘のありましたような相当戸数の空き家を生じておりますことはまことに遺憾でございまして、われわれ強く反省しているところでございます。これらの問題は当面私どもの経営上の最大課題でございますので、その解消のため全力を挙げて対策に努めてまいりたい、かように考えております。今後も真剣に公団役職員一同努めてまいりたい、かように覚悟をいたしております。  先ほど先生御指摘のように、市場性を導入して考えろという御指摘でございますが、私どもも先生の御指摘のような方向で考えたいと存じておりまして、家賃につきまして、立地条件とかあるいは規模等々で原価家賃では必ずしも適当でないというものもございますので、これらにつきましては、先生御承知のように、傾斜家賃をつくっておりますが、この傾斜家賃のアップをしばらく据え置くとか、あるいはさらに減額をして最長五年間ぐらいそのままでしばらく据え置くとかいうふうな家賃対策を講じまして、需要者に喜んでいただけるような取り扱いにいたしたいということを二月一日から始めております。  また、われわれの持っております住宅については、昔建ちましたものは、当時の需要がそういう状況であったために二DKがわりあい多いわけでございますが、いまの状況と合っておりません。さような意味におきまして、私どもとしては二戸を一戸にかえる、二戸一改造と称しておりまして、それによって規模を広げるとか、あるいは二戸をお貸しする、多家族の方、三世帯住宅のような方に対しましては、二DKでは狭過ぎるという問題がございますので、おじいちゃん、おばあちゃんはすぐそばに住んでいただくというふうな二戸貸しをする、そのかわり家賃は若干の減額を行うというようなことも、この二月一日から実施をいたしております。  また、そのほか私どもで、団地につきまして従来駐車場等の設備がわりあい少なかったのでございますが、できるだけ駐車場の増設をするというようなことで、入る方の御便宜を図ろうというように考えております。  しかし、これらにつきましても、案外に私どもの公団の住宅について国民の方々は御存じない向きもございますし、われわれの募集あるいは受け付けの体制もやや役所的な面もあったように思いますので、これらにつきまして心を改めまして、十分PRもし、受け入れやすいような方向で進みたい、かように努力をいたしている状況でございます。
  305. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  次に、神田厚君。
  306. 神田厚

    神田委員 まず質問の前に、本日の日本航空機の事故によりまして遭難をされました方たちの、死亡された方とおけがをされた方に対しまして、心から哀悼とお見舞いの言葉を申し上げたいと思っております。どうぞ政府におきましても、早急な原因の究明と速やかな補償についての指導をお願いをしたいと思います。  さて、まず最初に総理に御質問を申し上げます。これは本会議の代表質問におきましてわが党の佐々木委員長も特に強調をしたところでありますが、政治倫理の確立の問題についてであります。  御案内のように、ロッキード事件が起こりましてからかなりの時日がたっております。それによりまして、国民の政治に対する不信感というのはきわめて大きくなっております。いまこそ政治が国民の皆さんから信頼を回復をしなければならない、そういうときであるというふうに考えております。その信頼を回復するための手段として、総理はかつて、いろいろその政治倫理の確立につきまして御自分の御公約等もお述べになったことがございます。また、政権党であります自由民主党の中にも、政治腐敗防止法の立案あるいは議院証言法の改正、さらには議員の倫理規程の制定、こういうことが積極的に制定の検討がなされたわけでありますが、政権党であります自由民主党の総理・総裁であります鈴木総理の政治倫理に関する諸公約の実現につきまして、ひとつ明確なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  307. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘がございますように、政治倫理を確立をして政界の浄化を図り、政治に対する国民の信頼を回復をするということは、議会制民主主義を守ってまいります原点であるわけでございます。過去において国民の皆さんから御批判を受けるような事態が発生をいたしましたことは、まことに遺憾でございます。しかし、私どもはそういう点を反省の糧として、政治家各人が身を正し、政治姿勢を常に自粛自戒をして努力をしてまいるということが必要であると考えております。また、政治家の自粛自戒だけでなしに、制度的にも、政治倫理の確立という面からいたしましていろいろの工夫をこらし、また、その実現、実践に当たっていくということも大事であるわけでございます。私は、そういう意味で、国会におきまして倫理委員会というようなものをつくっていただいて、いま神田さんから御指摘があったような問題等をそこで十分御審議をいただく、これは国会の問題でございますから、各党各会派におきましてぜひそういうお話し合いを願いたいものだと期待をいたしておるわけでございます。  自由民主党におきましては、先般、結党二十周年に当たりまして倫理憲章を制定いたしました。また、その精神の上に立ちまして、倫理規定でありますとかいろいろの制度の改革等につきましても検討を進めておるところでございますが、今後、国会の場におきましてわが党からも御提案を申し上げることにいたしております。先般も、わが党の田村国対委員長に対しましてそのことを強く要請もいたしておりますし、党執行部においてもこの問題を取り上げておりますので、よろしくお願いをいたしたい、こう思います。
  308. 神田厚

    神田委員 大変、倫理委員会等の前向きなお答えをいただきまして、ありがとうございました。  ロッキード事件が発覚してから、すでに大変長い時日がたちました。そして、昨年の十一月五日には小佐野被告が実刑判決、それから一月の二十六日には全日空ルートの若狭被告を初めそれぞれが実刑判決、さらに今月末には、現議員を含むあるいは前議員等の判決が予想されております。  いま国民は挙げて行財政改革を推進する、そしてその痛みを分かち合いながらいわゆる日本国家の財政の再建に取り組もうというときに、残念ながら外国企業に関連する贈収賄の容疑によって政界の指導者が現在裁かれているという状況は、国民にとりまして大変残念なことであるわけであります。そして、世界のGNP第二位の経済大国だと言われて、世界から大変な役割りを担えと言われている国の元総理を初めとする政界の要人が、こういう形で何年にもわたりましてこのロッキード関連の裁判に関与をしておるわけでありますが、私は、こういうことが本当に国民の政治不信のもとになっている、こういうことを強く感じているわけであります。もしも、今月あるいはこれから先の判決によりまして、現職議員等に関しまして有罪の判決が出た場合には、総理はどういうふうな御指導をするような、あるいはそれについてどういうふうな処置をなさるお考えを持っておるのでありましょうか。
  309. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 お話の件は、現在司法の場におきまして厳正、慎重に審理が進んでおる問題でございまして、行政府の責任者である私が、いまの時点でそれを予断をして、その際にはこうする、ああするということを申し上げることは差し控えたい、こう思っておるわけでございます。
  310. 神田厚

    神田委員 いま若狭被告を実刑と申しましたが、有罪判決でございますので、これは訂正いたします。  いずれにしましても、私どもは、これは国民の政治信頼を回復するために政府みずからが、国会みずからがやはり襟を正さなければならない大変大事な問題だと思っておりますし、総理自身が自民党総裁として指導力を発揮すべき問題であるというふうにも考えておりますので、その点をひとつ伝えておきたいと思っております。  さて、ところで一部のマスコミによりますと、このロッキード判決を迎える前に衆議院を解散をする、そして政治的な動揺をそれによっておさめるというような報道がされておりますが、このロッキードの裁判に関して、総理自身は、早期解散という問題についてどういうふうにお考えでございますか。
  311. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、全く解散とか総選挙とかそういうことは夢にも考えたことがございません。この点ははっきり申し上げておきます。
  312. 神田厚

    神田委員 さらに、本日の新聞報道によりますと、政府首脳の一人が、五十八年度の経済運営をめぐりまして、与党と野党の話し合いがつかない場合には解散に打って出るということもあるというようなことを言っております。  私どもは、いま国を挙げて財政再建に取り組み、一刻の政治空白も許されないような状況の中で、安易に解散に頼るというような発言がされておりますことはまことに遺憾であるというふうに考えておりますが、その点、総理はどういうふうにお考えでありますか。
  313. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いまも明確に申し上げましたように、そういう物騒なことは全然考えておりません。
  314. 神田厚

    神田委員 次に、経済、財政問題について御質問を申し上げます。  鈴木総理は、三日、衆議院の予算委員会におきまして、五十九年度に赤字国債から脱却するという公約を実現できない場合は政治責任をとる、こういうふうにおっしゃいました。しかしながら、現在の財政再建の情勢というのは非常に厳しくなっております。御説明するまでもありませんけれども、五十八年、五十九年には国債減額を約二兆円しなければならない。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕 さらに、これはさまざま検討されている問題でありますが、五十八年度以降の減税も前向きに考える、それから歳入欠陥は当初の予想よりもかなり厳しい状況だ、五十九年度までに大型増税をしないという中で、どうやってこの総理の公約を実現をしていくのか、その手段、どういうふうなことでこれをやっていくかということをひとつ明確にここでプログラムをお示しをいただきたいと思います。
  315. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、昭和五十九年度までに特例公債依存の体質から脱却をしたい、それは六十年から特例公債の本格的な償還の年に入るわけでございますから、その償還のためにまた特例公債を発行するというようなことではこれは救いがたい財政危機に陥る、こういう判断からでございまして、私は、この特例公債依存の体質から脱却をするというだけで財政再建が終われりとは考えておりません。しかし、少なくとも必要最小限度五十九年までに特例公債発行ということは、これをやらないというようにいたしたいと考えておりまして、それができない際におきましては、私が政治的な責任をとるということを明確に申し上げておるわけでございます。  そこで、これからのプログラムでございますが、それは、財政再建あるいは行政改革、この問題は今日国民的な課題に相なっておりますから、私は、大型増税というようなことを念頭に置かずに、この行政の改革、また財政の思い切った削減、合理化、見直しというようなことによってこれを達成をいたしたいということをはっきりとここで申し上げておきたいと思います。
  316. 神田厚

    神田委員 どうも定義がひとつはっきりしませんのは、大型増税はしない、それでは大型とは一体どのくらいのことを言うのかという問題が一つあります。これは総理あるいは大蔵大臣、どちらでも結構でありますが、総理としては、大型増税というその大型というのはどのくらいのことをお考えでありますか。
  317. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 どうもきょうは大型か中型か小型かという議論が繰り返されておるのですが、私は、お互いに政治家であってそういうことを言っていらっしゃるのではないだろうか、こう思っております。国会の決議として、いわゆる一般消費税のような課税、増税はしない、これは国会の決議になっております。その趣旨を十分踏まえて政府は対処しようということでございますから、大型だとか中型だとか小型だとか、そういう細かなせんさくはしないで、私は国会の決議というものを十分尊重して対処してまいりますから、御信頼をいただきたい。
  318. 神田厚

    神田委員 大変決意を披瀝されましたが、大型というのは形のこと、税の形式のこと、それからあるいは税の量の大きいこと、これは両方あるわけであります。その辺で、総理はいまその税の形式、消費税のようなものはとらない。ただ私どもは、やはりそこで大体税収としてどのくらいのものを言うのかという量の問題もあるわけでありますが、その辺のところは、総理がそういうふうなことで国民の迷惑するような大衆増税はやらないというふうなことであろうと思って、御了解をしたいと思います。  それでは、あと二、三点問題がありますが、まず一つは、赤字国債償還問題でありますけれども、この赤字国債償還問題について、いろいろ六十年以降につきましても大体のあれが出ております。しかしながら、予算繰り入れができるような財政構造が一体できるのかどうか。現在の財政事情を見ましても非常に大変な状況であります。それを踏まえて考えた場合に、六十年度以降の償還計画にしましても、そういうふうな構造、体質が果たしてできるのかどうか、どういうふうにしてつくっていくのか、大蔵大臣、ちょっとお尋ねいたします。
  319. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 六十年以降実際の償還が始まるということになって、まず六十年から予算繰り入れをしなければならない、そのためには、どうしても経済運営を現在よりも発展をさせていくということが私は必要であろう、そう思っております。したがって、政府においても、日本は世界の先進国からすれば経済運営は非常によくできておるけれども、この状態を持続し、さらに発展させるように心がけていく必要があると思います。
  320. 神田厚

    神田委員 そういうことになりますと、新経済社会七カ年計画、これが現在政策の基礎になって、経済見通しの中心になっておりますけれども、こういうものの見直しというものも当然考えていくということでありますか。
  321. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の七年計画は、昭和五十四年の八月に正式に決定したものでございます。五十年度の新指標で計算をいたしますと、七年間平均五・一%の成長を持続する、こういうことを目標にしております。ただし、毎年経済の事情が違いますので、それ以上の成長の年を目標にするときもあれば、あるいはそれ以下のときもございます。年々によって目標は違うわけでございまして、毎年フォローアップをいたしております。  ただ、五十四年の八月といいますと、第二次石油危機が起こり始めましたころでございまして、その後、五十四年後半、五十五年と、非常に厳しい情勢にもなっております。そういうこともございますし、いま経済審議会で今後の二十年間の経済展望をいろいろ作業をしていただいておりますし、それから六月ごろには臨調の本格答申も出てまいりますので、そういう幾つかの新しい条件を総合勘案をいたしまして、現在の七カ年計画を一体どうするか、根本的にやりかえた方がいいのかどうか、そういう結論を出したいと思っております。
  322. 神田厚

    神田委員 それからもう一つは、実質経済成長率五・二%、これをどういうふうに実現するか。中身は四・一%を内需にして外需を一・一%に見込むということでありますが、五十六年度の経済の構造あるいはこれの問題を見ますと、五十七年に一遍にこういうふうに転換が果たしてできるのだろうかというのは多くの国民の疑問としているところであると思います。これについて、内需にこれだけ転換をして、それは輸出がなかなかできないからというふうなことではなくて、具体的に内需をこれだけにできるという具体的な政策をどういうふうにお持ちになっているのか、それをひとつお聞かせいただきます。
  323. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず最初に経済に対する認識でございますが、私どもは、いま世界経済並びに日本経済は激動期にある、このように理解をいたしております。非常に激しく動いておるというのが現状であろうと思います。  過去二カ年は、先ほどもちょっと触れましたが、第二次石油危機の厳しい影響が最も深刻に出てまいりまして、世界経済が非常に悪い状態になっております。しかし、最近は石油の需給関係も安定をしてまいりましたし、それから第二次危機が起こりましてから三年経過いたしますので、おおむねことしの後半から世界経済全体が回復の方向に向かうのではなかろうか、こういう判断をいたしております。アメリカの経済などもそういう想定のもとにことしの後半以降、二、三日前の予算教書などを見ますと、五・二%実質経済成長をする、こういうことを言っておりますが、それもやはり第二次石油危機の厳しい影響がだんだんと薄れてきたからだと私は判断をいたしております。  そういうことを背景にいたしまして、内需転換のまず第一番に考えておりますことは、物価の安定をさらに進めてまいりたい、こう思っております。物価の安定を進めることによりまして消費拡大の基礎をつくりたい、こう思っております。  それから、いま金融政策は残念ながらアメリカの高金利のために非常に制約を受けておりますけれども、条件の許す限り機動的に運営をいたしまして、民間の設備投資の拡大の基礎をつくっていきたい、このように考えております。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  御案内のように、住宅政策につきましては、今回の予算で非常に積極的な幾つかの対策を用意をいたしております。  また公共事業につきましては、その運営、執行方法等につきまして十分工夫を加えてまいりたい、このように考えておるところでございます。  そういうことを中心といたしまして、内需中心の経済運営に切りかえていきたい、このように考えておるところでございます。
  324. 神田厚

    神田委員 御説明を聞いていると、しかし、これだけ過年度と違って内需を見込んだわりには、説明に説得力がないというふうに考えております。  私も、これで一番のポイントとして考えなければならないのは、やはり減税問題だと思います。この減税問題で、五十八年度以降の減税についてかなり含みを持った発言がされておりますけれども、私は、やはり財源等の問題も含めて、減税はどうしてもやらなければならないという前提に立つことが一番だと思う。それは、内需四・一%を見込んだということにおいて、同時に大型減税を実施するという気持ちを政府が持たなければいけないということ、そしてその次には、減税の財源をどういうふうに探すかということについて、これは衆知をしぼってひとつ捻出をしていかなければならないわけであります。この点、大蔵大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  325. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 減税の問題をお答えする前に、物の考え方として、国の施策によって利益を受ける人も、その費用を負担する人も、これは同じ国民なんですね。したがって、これをどういうように組み合わせていくかということが問題なわけでございまして、いろいろな行政サービス、社会保障、文教を初め、そういうようなものはすべて財源が必要なわけですから、その財源を何によって求めるか。  一つは税。原則的には、税で賄うのが原則でございます。しかしながら、不況からの脱出というようなこともあって、公債発行というようなことをやって、それが非常に深みに入ってなかなか一挙に抜け切れないという現状にあることも事実。そのかわり、財政は極端に悪くなっておるが、国民生活や日本の経済運営全体としての諸条件は先進国よりもはるかにいい、これも事実でございます。したがって、その中で、仮に、もっと購買力をふやすために減税をやれという御議論については、それでは何を財源として減税をやるかという問題にしぼられてくるわけです。  したがって、それらの問題については、私どもも、数年にわたって課税最低限が据え置かれ、税率の構造が固定をしておることは好ましくはないと思っておりますから、今後、いろいろ議論を深める中において、将来何を財源として減税をするかというところにみんな議論が一致するという方向になれば、減税は不可能ではないだろうと私は思っております。
  326. 神田厚

    神田委員 減税問題について総理は、鈴木内閣として内需を拡大するという方針であるならば、いろいろむずかしい状況なのは十二分に承知だけれども、それはやはり減税に向かって、それをやるのだという一つの方針をお出しになっていただきたいと思うのでありますが、大蔵大臣からの御答弁もありましたが、総理としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  327. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 当委員会でもしばしばお話し申し上げておるわけでございますが、私は、基本的には、日本の所得税に対する課税の負担の割合は決して欧米先進国に比べて高いとは思っておりません。でありますけれども、五年間も課税最低限を据え置いておるし、税率構造も改めておりません。でありますから、国民の皆さんの中に重税感というものが確かに強く出てきております。私どもも、その点につきましては大きな関心を持ち、何とかしてこの問題に前向きで対処したいという考えを持っておりますが、いずれにいたしましても、財政再建下におきまして、ことしも、五十七年度予算を編成するに当たりまして思い切った歳入歳出の見直しをやりました。予算全体としても六・二%、また一般歳出におきましては一・八%という、昭和三十年以来の超緊縮予算をやったわけでございます。ゼロシーリングという新しい手法もとったわけでございます。しかし、私は、これは一歩前進でありましたけれども、必ずしも万全であったとは思っておりません。  したがって、五十八年度以降におきましては、さらに行政の各部門、また三公社その他の特殊法人等の見直し等も思い切ってやりまして、そしてこの行政改革によって財源等の捻出もやってみたい、そういういろいろな工夫をこらして、そして減税ができるような条件整備に努力をしたい、こう思っておりますが、どうかひとつ各党におかれましてもお知恵をお貸しいただきまして、力を合わせて国民の期待にこたえるようにいたしたいものだ、こう思っております。
  328. 神田厚

    神田委員 前向きに対処するというふうな御答弁でありますので、知恵も出せということでありますから、ちょっと減税財源で私どもの方で考えておりますのは、造幣特会というのがあります。この造幣特会の中に補助貨幣回収準備資金、これが大変なお金を準備をしている。つまり、硬貨を紙幣にかえるというふうなことで、これを全部編入しているわけでありますね。日本のコインの保有者が一斉にお札にかえるために準備をしているというものであります。これは金本位制時代の名残りでありまして、こんなもの、いま一遍に全部コインを紙幣にかえてくれというようなことはないわけで、世界でやっておりますのもベルギーだけだというようなことであります。こういうことを考えますと、このお金を、たとえば五十七年度にこれに納入する割合を二〇%減らせば、これが約二千六百億円減税財源に充てられる、これは一つの例であります。あとは、大体いろいろなことで皆さん方と一緒にやっている、検討している項目でありますが、たとえば、こういうふうな問題が具体的に検討されることがないだろうか。総理がおっしゃいました給与所得の関係でも、これら給与所得控除の頭打ちを復活させれば、それなりに、どの程度でどういうふうにこれをやるかというのは技術的な問題になりますけれども、六百億から一千億くらいのものはこれもできるというふうなことで、ひとつこういうものも検討に値すると思うのでありますが、大蔵大臣、いかがでありますか。
  329. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 造幣特会に補助貨幣回収準備資金というのがございます。ございますが、これはいまお話しのように、補助貨幣の引きかえとか回収に充てるために、補助貨幣発行高に見合った金額を準備資産として保有している、これは補助貨幣の信認の維持を図るという趣旨でできておるわけでございます。  ところが、ではその金は余ってどこかで遊んでいるか。それは遊んでおりません。全部使われておるわけでございます。これは運用部に運用されておるわけでありますから、その金が減れば運用部の金がその分だけ減るということになります。その両面からいたしましても、私どもとしては、これを五十七年の減税財源に充てるというようには考えておりません。
  330. 神田厚

    神田委員 私どもの調査では、確かに大蔵大臣がおっしゃったように運用部に預託されている。しかし、運用部に預託されているのは八五%から八六%、あとの残りの一四%から一五%は、約一千九百億円程度でありますが、当座預金に入っているわけです。だから、使い方は、運用部に全部入っているからだめだというんじゃなくて、検討の余地はあると思うんであります。その点はひとつ後ほど——事務当局の方が変なことを教えているんじゃないですか。やはり運用部だけじゃなくて、預託されていることも一緒に教えなければだめです。時間がありませんから、それは検討してください。そういうことで、この減税につきましては極力あれをしていただきたいと思っております。  ついでに、五十八年度予算編成で、ただいま総理は、なお厳しい歳出カットその他をやるんだということであります。どうもこの件につきましては、経済界でも、大型予算をつくれという考え方と、それからさらになお一層歳出カット等を厳しくしたゼロシーリングあるいはマイナスシーリングあるいはゼロベース、こういう予算の編成をしろということで、やはり意見が食い違っているようですね。この点で、五十八年度予算の作成についての考え方も一応これは聞いておかないといけないと思うのでありますが、大蔵大臣は、五十八年度予算のつくり方は大型予算にするのか、それともことしと同じようにゼロシーリングにするのか、あるいはマイナスシーリング、これは経団連等が言っておりますけれども、マイナスシーリングにするのか、その辺のところはどういうふうにお考えでありますか。
  331. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま世論として盛り上がっておるのは、政府に、行政改革を断行せよ、骨の髄まで削ってみろ、この会議の席でも数名の方から非常に強い御叱正を受けております。やはり長い間高度経済成長のもとでつくられた制度、施策、こういうようなものについて、安定経済成長時代になれば当然抜本的に考え直す必要があるというものもまた残っておる、私はそう思っておるわけでございます。したがいまして、みんな税の負担は少ない方がいいというのも国民世論でございますので、まず行革と一緒になりまして歳出の削減、抑制、合理化を第一義的に取り上げてまいりたい。ということになれば、五十八年度予算編成に当たりましても、当然臨調答申の精神を踏まえて緊縮型の徹底した予算にする必要があるんじゃないか。それをマイナスシーリングにするのかどうか、ゼロシーリングにするのか、そういう具体的なことはまだ決まっておりませんが、一定の条件のもとに最小限度ゼロシーリングにする必要があるだろう、そう思っております。
  332. 神田厚

    神田委員 大蔵大臣から答弁がありましたが、総理はどうですか、五十八年度予算大型税で積極財政をやれというふうな声もあるし、緊縮でいくんだというふうな方向もありますし、それらはどういうふうにお考えになりますか。
  333. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 こういう非常にむずかしい時期の対応をいかにするかという五十八年度予算ですから、いろいろな御意見があると私は思います。しかし、いま大蔵大臣からも申し上げましたように、私は、国民的に盛り上がっております行財政改革というこの機運、このような国民世論の盛り上がりという時期を逸しては、もう当分行財政改革というものはできないのではないか、こう思っておるわけでございます。そして私は、この行財政改革をすることによって、今後のわが国の財政体質なり行政のあり方なり、そういうものをこの際改革をしなければならない、こう思っております。  一時、経済が少し苦しいからこの際手綱を緩めた方がいいとかそういう声は、これは当然出てくる問題でございます。予想されることでございますが、欧米先進工業国等のそれに比べました場合に、まだ日本が音を上げるようなそういう段階ではない。われわれはお互いに歯を食いしばって、この際やるべきことはやらなければいけない、このように考えております。
  334. 神田厚

    神田委員 経済企画庁長官はどういう御意見でございますか。
  335. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 実は、まだ昭和五十六年度でございまして、そして五十七年度予算をいま審議しておるような段階で五十八年度はどうか、こういう突然のお尋ねでございますので、私もまだ確たる方針はございませんが、基本的な考え方といたしましては、私は、やはり徹底した行財政の改革による歳出の合理化、これが一番の基本でなかろうか、こう思います。ただ、将来日本がどうしても発展していかなければならぬ幾つかの分野がございますが、そういう分野につきましては、また別の角度から日本の国力を勘案しながら判断をしなければならぬ課題だ、こう思います。
  336. 神田厚

    神田委員 大蔵大臣がゼロシーリングが最低だということでありますから、場合によりましたら、これはマイナスシーリングもあるというふうに私も受けとめざるを得ないわけでありますが、それにしましても、やはり緊縮であるということは非常にむずかしいことであります。こういう緊縮財政のときには、いわゆる各省均等の予算の編成ではなくて、国家のいろいろな大事な政策に沿って優先政策をきちんと決めて、それに重点配分をしていくという考え方もあるいは検討をしていかなければならないような時代になってきているかと思っておりますが、その辺のところは発想の転換というようなことでひとつ参考にしていただければと思っております。  時間がなくなりましたので、外交、防衛問題につきまして二、三御質問を申し上げます。  米国大統領の予算教書と国防長官の国防報告が出されました。これにつきましては非常に特徴的なことが数々ありまして、日本に対しましても大きな影響を与える問題になっております。日本政府がこの予算教書及び国防報告に対しましてどういうふうに対応していくかというのは、きわめて重要なものであります。なぜきわめて重要かということは、申すまでもありませんけれども、前年度の教書の内容あるいは国防報告の内容から大変内容が変わってきているということであります。この変化に日本の政府としてどういうふうに対応していくかというのは非常に大事だというふうに考えておりますので、この点につきまして二、三お伺いをしたいと思っております。  まず、一番特徴的なのは、アメリカにおきまして国防費が相当増加をされまして、対ソ連との優位政策を明確にとり出したということであります。そして、同盟国に対しましてその支援を要請をしている、同盟国に対しましてそれぞれの役割りの分担を明確に要求をしてきている、こういうことであります。そして、日本に向けられておりますのは、すでに日本に対しましては、日本はアジア・太平洋地域におけるアメリカの前進防衛戦略のかなめ石だということでこれを規定をしまして、そういうふうないろいろな形での役割り分担の期待の姿勢をしておるわけであります。海空の防衛力の強化、経済協力の増加、千海里内海上交通、シーレーン防衛の履行、こういうことが出ておるわけでありますが、これらの問題につきまして、この予算教書と国防報告について、まず外務大臣はどういうふうにこれをお受けとめになりましてお考えでありますか。
  337. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 神田委員のお尋ねは、どちらかというとワインバーガーの国防報告の方に御関心があったと思います。外務省内で検討いたしましたが、今後なお分析もし、さらに検討を深めなければならない、こう思っておりますが、一貫して言えることは、レーガン政権発足以来、国防力を維持してこそ真の平和が保たれる、こういう見識のもとに強いアメリカを目指しておるということは、この報告の中にも認められると思うのであります。  自由と民主主義という価値観を擁護するグローバルパワーとしてのアメリカが、いま神田委員がちょっとお触れになりましたが、ソ連のここ十年来のアメリカを上回る軍事力強化の努力、これについては懸念を示しておると思います。また、国際情勢につきましては、北東アジア、インドシナ、中東、東欧等非常に緊張しておるという認識の上に立ちまして、軍事力の均衡ということを目指しておる。この均衡が欠ければ抑止力を失う、それが紛争の要因になる、そういう見解を持っておると思うのであります。特に八〇年代中葉に対する見通しとして、このままの状況であるならばソ連の軍事力は非常に上回るということを憂慮しておると思うのであります。  日本に対する期待について、いまおっしゃったような点が幾つかございます。これはわれわれとしては、そのまま国防報告の所見として受けとめて、日本は日本としての憲法の枠の中で防衛大綱のもとに自主的にいろいろ考えていくべきである、このように思うのであります。  一般教書の方におきまして、国防力を重点にしたことは言うまでもございませんが、しかし、明年の後半期以降を五・二%の成長でやっていこう、こういうことで、いまのアメリカの経済の状況を何とか打開していこうという意欲の見えておるところが、私としては特徴的に見ました。しかし、果たしてそのようにいくかいかないか、これも十分予算教書全般を検討しなければならない、このように一応の見解を持った次第でございます。
  338. 神田厚

    神田委員 それでは、防衛庁長官はどういうふうにお受け取りになりましたか。
  339. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 外務大臣からお話しになったとおりでございますけれども防衛庁長官といたしましては、安保条約の相手国である米国大統領並びにワインバーガー長官の今回の御提案なり予算は、同盟国であるわれわれとしても高く評価に値するものと考えております。
  340. 神田厚

    神田委員 ちょっと時間がありませんので突っ込んだ話ができませんが、総理は、この予算教書、国防報告、どういうふうにお受け取りになりましたか。
  341. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 予算教書並びに国防白書、この分析は、外務大臣が申し上げたように私も受けとめておるわけでありますが、一言で言えば、レーガンさんが大統領選挙で国民に公約をされたもの、それを八三年度予算においても実現をしようという意欲が非常に強くあらわれておる。これは、国防力の増強の面にいたしましても、経済の立て直しあるいは小さい政府への志向、そういう点は大統領選挙の公約に忠実に努力をされておる、こう思っております。  私は、防衛の問題につきましては、アメリカが日本に対して安保条約の締約国の日本に期待を寄せておる、関心を持っておるということは、これは当然のことだ、こう思っておりますが、わが国としては、わが国の憲法なり基本的防衛政策なり国民世論なり、そういうものがあります。他の政策との整合性、また厳しい財政再建下であるわけでありますから、そういう点を総合的に判断をして、自主的に進めてまいる考えでございます。  経済政策その他につきましては、ぜひレーガン教書の線で成功されることを期待をいたしております。
  342. 神田厚

    神田委員 いまの総理答弁でありますと、いわゆるアメリカの国防中心の予算、さらに同盟国に対するそういういろんな要請に対しまして、自主的に日本は、アメリカのそういうものに無原則に追随することなく対応していく、こういうふうなことでよろしゅうございますか、もう一度ひとつ。
  343. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。
  344. 神田厚

    神田委員 それでは、時間がなくなりましたので一つだけ、アジアの戦域核問題、いま欧州でゼロオプション、先ほど総理もこのアメリカのゼロオプションの提案に賛意を表するということでやられておりますが、問題は、欧州の戦域核削減交渉がアジアにどういうふうな影響を与えるかというような問題であります。欧州で成功してアジアの方の緊張が高まる、こういうことになっては大変問題でありますから、この辺のところをお聞きをしたいと思うのでありますが、まず端的に防衛庁にお伺いをしますが、防衛庁長官、ソ連の戦域核のアジアにおける配備状況をひとつ御説明いただきたいと思います。  長官、ちょっと時間がないから、簡単に要点だけ言ってくれますか。
  345. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答え申し上げます。  ソ連の戦域核については、SS20でございます。このSS20につきましては、シベリアの内陸部に配置されております。数でございますけれども、全体としてわれわれは、ソ連全域で二百五十、そのうち五十以上、三分の一ないし四分の一がアジア極東地域に配置されているというふうに考えております。そのほか、これは直接は戦域核とは定義されませんが、バックファイアがございます。バックファイアはソ連全土で百五十以上、そのうち同じく三分の一ないし四分の一、これがシベリア内陸部及び沿海地方に配備されております。  以上でございます。
  346. 神田厚

    神田委員 ソ連の戦域核がアジアに配備されている。それで続けて、日本に向けられているというふうに考えられているのはどのくらいありますか。
  347. 新井弘一

    ○新井政府委員 私がお答えできますことは、SS20の射程距離は五千キロである。日本が完全にその射程の中に入る。バックファイア、これについても四千五百キロの航続距離でございますから、日本がすっぽり入るということでございます。
  348. 神田厚

    神田委員 そうしますと、いま申されました五十以上の、三分の一以上あるいは三分の一か四分の一、それからバックファイアの対象がすべて日本に向けられているというわけになっておりますね。  防衛庁長官、それではこういう状況に対して、日本はどういうふうにこの核の脅威に対応しようとしているのでありますか。
  349. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 ソ連の極東における戦域核配備等につきましては、ただいま政府委員から御説明を申し上げましたが、防衛庁としても大変大きな関心を持ってこの事態を注視しているところでございます。しかし、わが国は言うまでもなく非核三原則を堅持しておりますし、核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存をすることとしております。このためにも、防衛庁としてはなお一層日米安全保障体制の信頼性の維持向上に努めてまいらなければならない、そのように考えております。
  350. 神田厚

    神田委員 前は、私ども質問に対しまして、ソ連の核の脅威に対しては、やはりこれをどういうふうに守るかはもちろん日米安保条約の問題だけれども、研究をしていかなければならない、検討していかなければならないというふうなことまで答弁したことがあるのですが、その辺はどうですか、長官
  351. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 そのことは、先輩の防衛庁長官から昭和五十五年二月二十一日の神田委員の御質問に対しての答弁があったというふうに承っておりますけれども、この答弁に関連いたしまして、三月六日の予算委員会で防衛庁から、ソ連の戦域核の極東配備については、ただいま私が申し上げますとおり、大きな関心を持ち、注視をしておりますけれども、米側と具体的にこれに対してどう応ずるかというようなことについて検討、研究することを考えているわけではないという趣旨の答弁をしたところでございまして、わが国としては、先ほど私が申し述べましたとおり、これらの核の脅威に対しましてはアメリカの核抑止力に依存をする、この方針で、そのためにも日米安保体制のなお一層の維持向上に努めたい、そのように考えておるわけでございます。
  352. 神田厚

    神田委員 これだけ明らかに日本に対しましてソ連の核の脅威があるという状況であります。  欧州におきましては戦域核の削減交渉が現実に進んでいる。そして総理は、ことしの軍縮会議等におきまして核軍縮について積極的に日本がその役割りをしようとしているわけでありますから、私はこの極東の戦域核の問題につきまして、日本といたしまして、ヨーロッパと同じようにアジアにおけるゼロオプションの提案等を考えていかなければならないのではないか、そうすることが政治の場においてこのソ連の核の脅威から国民を守っていく一つの方法になるのだ、こういうふうに考えておりますが、最後に、この核軍縮とアジアにおけるゼロオプションの提案等について総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  353. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、午前中にも御答弁申し上げたところでございますが、この戦域核の削減交渉の問題につきましてはアメリカのゼロオプションを支持し、これが実現をされるように、わが国としても国際的な場その他でそのアメリカの方針を支持していきたい、このように考えておるわけでございます。  さきにニューヨークで、園田元外務大臣が現職時代に、ヘイグ米国務長官並びにソ連のグロムイコ外務大臣に対して、この核軍縮について米ソ超大国は徹底的に話し合いをしてもらいたい、こういうことを強く訴えました。さらに、先般、柳谷審議官がモスクワにおきまして高級事務レベルの会談をやりました際にも、ソ側に対してこのことを強く訴えたところでございます。今後、国連の軍縮特別総会その他の場におきまして、私はわが国の国民世論を代表いたしまして、そういう点を強く訴えてまいる考えでございます。(神田委員「アジアのゼロオプションの提案」と呼ぶ)  欧州におけるゼロオプションと同じように、アジアにおきましてもソ連はSS20だとかそういうものを配備しているわけでありますけれども、それに米側が配置をして対抗するということでなしに、ゼロオプションとしてこれをやっていくべきだ、それを支持するということを含めて申し上げておったつもりでございます。
  354. 神田厚

    神田委員 終わります。
  355. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて神田君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  356. 木下敬之助

    ○木下委員 総理は、昨年十一月に第二次鈴木内閣を組閣されました直後の記者会見において、行政改革と貿易摩擦の解消を最大の政治課題として取り組む旨の発言をなされておりましたが、今日に至ってますます大きな問題となってきていますこの問題に対する現在の総理のお考えをお聞かせください。
  357. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 行政の改革、財政の再建は、鈴木内閣の一貫した最重要の政策課題として取り組んでまいります。今後におきましても、これに対する私の熱意は変わりありません。  さらに、対米関係あるいは対EC関係貿易摩擦の問題が非常に緊迫した状況にございます。私は、申し上げるまでもなしに、貿易で立っておる国であるという観点から、どうしても保護貿易主義の台頭というものを抑えて、そしてあくまで自由貿易体制を維持発展をさせる、世界経済の再活性化の中でこういう問題を解決しなければいかぬ、こう考えておりまして、そのためには、まずわが国としては進んで東京ラウンドの関税の二年分前倒しもやる。さらに、私は決して指摘されるようなぐあいに日本が閉鎖的とは考えておりませんけれども、いろいろアメリカ及びEC方面から日本の市場の開放ということが言われておりますから、われわれは謙虚にこれを受けとめて、いま輸入手続の簡素化であるとか非関税障壁の問題であるとか、そういう問題に真剣に取り組んでおるところでございます。
  358. 木下敬之助

    ○木下委員 ただいまお聞きいたしましたが、幾つかの点で前進してきているということは、米もEC等も認めて評価しているところですが、根本的な問題解決にはほど遠く、一日も早く日本としての基本姿勢を明確にして積極的に理解を求めていかなければならないときであると考えております。この現状の認識をはっきりさせるために、貿易収支の見通し数字によって確認したいと思います。  まず、五十六年度対米、対ECの貿易収支の見通しです。次に、昨年度当初の見通しはどうだったか。そして、五十七年度見込みはどのくらいの数字を見込んでおられるか、教えてください。
  359. 井川博

    ○井川政府委員 経済見通しにおきましては、対米、対ECといった国別の見通しは出しておりませんで、マクロ的に全般的に見通しを出しております。この場合に、五十六年度の経常収支は、当初マイナス六十億ドルでございましたけれども、その後見通しを改定いたしまして、実績見込みでは百億ドルのプラスということになっております。  それから、五十七年度の経常収支につきましては百二十億ドルのプラスということになっておりまして、これを貿易収支にいたしますと、今年度の実績見込みが二百六十億ドル、来年度が三百億ドルということにいたしてございます。
  360. 木下敬之助

    ○木下委員 そんな、全体の数字がわかるということは数字を積み上げているからだと思いますし、出せないはずないと思いますが、通産大臣ですか、どうかお答え願います。
  361. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 正確な数字はまだ承知しておりませんが、また統計のとり方等によっていろいろありますが、対米の貿易収支は百八十億ドル以上になるのじゃないか、対ECについては百億ドル以上になるのじゃないか、こういうふうに言われておるわけです。
  362. 木下敬之助

    ○木下委員 ありがとうございます。そういう大きな数字でございますね。そして、当初の見通しから大変に狂いが出てしまっている。この見通しとかけ離れた大きな黒字になったのは、何が要因でこのようなことが起こったと考えられますか。
  363. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いろいろな原因もあると思いますが、主たる原因は、円安による輸出の増加、輸入の減退ということで、これは突き詰めていけばアメリカの高金利政策というのが円安を誘導したということであろうと思います。円安がやはり貿易の黒字を拡大した大きな原因であろうと思います。
  364. 木下敬之助

    ○木下委員 内需が落ち込んだということが相当大きな原因であるとも考えておるのですが、特に一千四百億の増税をしたり、住宅計画ほど伸びなくて、中小企業の投資も落ち込んだ、こういったことの結果じゃないかとも思いますが、いま通産大臣言われたように、金利に責任があるとすれば、この大きな貿易摩擦問題はアメリカに責任があるというふうな御発言でございますか。
  365. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに、円安というのが外需を刺激して内需が落ち込む、そういう大きな要因になったと思うわけでありますが、その円安を誘導したことは、やはりアメリカの高金利政策というのが非常に大きな要因ではなかったか、こういうふうに思っております。
  366. 木下敬之助

    ○木下委員 それがこの貿易摩擦問題に対する日本の姿勢でございますか。そういった姿勢でいろんな折衝その他に当たっていこうと言われるわけですか。いままでの傾向を見ますと、米から言われた、その他から言われた非関税障壁等にも相当の譲歩といいますか、相当のことをしながら日本は努力していると思いますけれども、責任の最大が米の金利にあるというなら、いままでの政府の姿勢でもありますし、これからどういう政策で当たっていこうとされるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  367. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私申し上げたのは、八〇年には貿易の対米黒字が百億ドルちょっと超えただけですが、ことしになりまして急激に百八十億ドルというふうな状況になったのはやはり円安の効果が大きかったと思うわけですが、貿易摩擦については、これは御承知のように日本とアメリカあるいは日本とECとだけではなくて、またアメリカとECの間にも熾烈な摩擦があることも事実であります。  そういう状況の中で、日本の貿易の黒字の拡大、あるいはまた、先ほどから総理も申し上げましたような関税に対するあるいはまた非関税障壁等に対するアメリカの批判あるいはECの批判、いわゆる日本が市場閉鎖的である、こういうことがやはり日本に対する批判であることも、これまた事実であろうと思っております。経済摩擦というものをこのまま放置しておけば、世界的にやはり保護貿易の方向へ進んでしまって、せっかくの自由貿易体制というのが根底から覆っていくわけでありますから、この際やはりお互いに主張し、そして求めるところは求めなければなりませんが、同時に、市場の開放のためになさなければならない責任を果たしていかなければならない、こういうふうに考えております。  アメリカについても、たとえばいまアメリカの金利問題等については、これはわれわれは、アメリカが高金利政策をこれ以上続けていけば円安を誘導していく、それはアメリカに対する貿易の黒字が伸びていくということもやはり主張しなければならぬと思うわけでありますし、同時にまた、アメリカの対日輸出の努力ももう一歩やはりやってもらいたい。あるいはまた、アメリカの日本に対する非関税障壁等も先ほど述べましたけれども、バイアメリカン政策であるとかあるいは小型の自動車に対する特別な関税措置であるとか、そういうこともあるわけですから、そういうものに対しては主張しなければならぬと思うのですが、同時にまた、日本として自由貿易体制を守るために、市場開放のために努力すべきことは努力していかなければならぬ。そのためには関税の前倒しも行ったわけでありますし、あるいはまた非関税障壁の改善等についても思い切った努力もしたわけでございますが、これでもって終わりになったとは私は思っておりません。今後残された問題にも真剣に取り組んで、やはり市場開放政策を進めていかなければならぬ、自由貿易体制を守るためにこれはやらなければならない、こういうふうに考えております。
  368. 木下敬之助

    ○木下委員 話が戻りますが、見通しは大きく狂った、見通しが狂ったことにはそういういろいろな要因があった。見通しの狂ったことの責任を追及しても仕方がないのですけれども、こういう見通しが狂って大きな黒字が出てしまった。この出た黒字を貿易摩擦ととらえるなら、その責任が一体どこにあるのか、こういう論議が必要だろうと思っております。そういった中で、米の金利政策にも関係がある。しかし、米欧からの日本に対する批判というのは大変強いものがある。しかも、たとえて言いますと、ボルドリッジ商務長官等の発言は日本の社会、文化まで変えよ、こういう日本の社会、文化論にまで及んでいる。こういう批判が正当な批判だと考えられるかどうか、これをひとつ総理からお答えいただきたいと思います。
  369. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 文化ということまで変えるということになると、日本人お互いにかちんとくるわけでございます。これはどうも、後で調べてみますと、それは間違いだということがわかりました。でありますから、私は批判に対して批判を加えるようなことは避けます。
  370. 木下敬之助

    ○木下委員 基本的な姿勢をはっきり持って当たっていただきたいものだと思います。  通産大臣にお聞きいたします。  米誌のニューズウイークに掲載されたインタビュー記事の中で、輸入総代理店制度廃止を検討する必要があると述べておられるようですが、廃止するおつもりがあるのですか。
  371. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは大臣になる前に記者会見で述べたわけでありますが、総代理店というのは、御承知のようにいわば商習慣的なものになっておるわけでありますけれども、そして現在は並行輸入等も認めておるような状況でありますが、しかし、われわれ見ておりまして、この総代理店制ということによって輸出業者、輸入業者が不当に価格をつり上げるというふうな傾向もなきにしもあらず、そういう面では、やはり製品輸入等をわが国が促進する上において一つの問題点ではないだろうか、こういうふうな点から指摘をしたわけでありまして、やはり並行輸入というふうなものを進めて、自由貿易といいますか、自由な輸入体制というものをつくっていくことの方がこれからの貿易摩擦を解消する上においてもプラスになるのではないか、私はこういうふうな考えを持っておるわけです。
  372. 木下敬之助

    ○木下委員 具体的にやめることに取りかかろうとしているわけではないわけですか。やはりそういう考えがあって進められておるということでございますか。
  373. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは法律によって決めたとかなんとかいうことじゃなくて、いわば商習慣としてあるわけでございますので、この弊害が出れば、やはりそれに対応する並行輸入というようなことを推進をして独占的なあり方というものを改めていく、そういうことに対してはやはり行政当局としても今後積極的に取り組んでいきたい、こういうふうに思っておるわけです。
  374. 木下敬之助

    ○木下委員 この問題に対する私の考えを述べてみたいと思います。  商品を販売していくのには、何をさておいてそれを消費者に知っていただくことが必要であると考えます。そのための広告、宣伝は、自社が輸入総代理店でなければあえて先行投資を行うようなところはないだろうと思う。また、特に輸入機械類を日本国内で使用してもらおうと思ったときには、国内機械と同じように修理、調整に対する万全の体制を用意しなければならない。そのためには場所の確保、技術者を海外のメーカーへ派遣してトレーニングする、そんなことが必要であろうと思います。こういうことは輸入総代理店として認知されていなければとうていそのような投資は行うことはできないというふうに思います。  こういった例から、輸入総代理店制度を認めず、だれでも輸入することができるようになる、そうするとふえるのじゃないか、機会均等でふえるのじゃないかという考えは机上の空論であって、私は、実際問題としては輸入商社というものは大きな役割りを果たしていると思うのですが、この点いま一度お答え願えますか。
  375. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは確かに商習慣として、またそれが現実的に合っているあり方として進められてきていることであろうと思うわけですが、やはり弊害の面もなきにしもあらずじゃないかと私は一般論を言ったわけですが、そういう世間の声も聞いておるわけでございまして、そうした弊害等が目立たないように、やはり並行輸入というふうなこともあわせて行うということもまたこれは必要なことじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  376. 木下敬之助

    ○木下委員 十分慎重にやっていただきたいものだと思います。  それでは、先ほど確認しましたように、この貿易摩擦問題というのは、百、二百、三百といったこんな百億ドル単位の大きな問題であるのに対して、これまで非関税障壁とか関税の前倒しとかいろいろやってきたものの効果は、そんなに金額的には大きなものではないんじゃないかと考えるわけです。先月末に発表された非関税障壁の撤廃等による輸入増の金額というのはどの程度だと考えておられますか。オルマー米商務次官の発言によると、せいぜい二、三百万ドルだろうというふうに書いておるわけです。
  377. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 関税の前倒しの措置は、これは千六百五十三品目でございますからおよその見当はつくわけで、約二億ドルの日本の財政負担ということになってくるわけですが、非関税障壁の六十七項目の改善措置がどの程度輸入に寄与するかということは一概にはかり切れない問題じゃないかと思っております。これは、各国から指摘をされましたいわば象徴的な日本の非関税障壁だということでこれを改善したわけですから、これは漸次効果が出てくるのではないだろうか、私はこういうふうに思っておるわけで、二、三百万ドルとオルマー次官が言ったというようなことを聞いておりますが、そういうような数字でもってわが国の努力を推しはかるというのは間違いである、私はこういうふうに思っております。漸次これは効果が徐々に出てくる問題である、こういうふうに思っております。
  378. 木下敬之助

    ○木下委員 長期的な効果というのは私も否定はいたしませんけれども、現実の当面しておる大きな数字に対しては、その程度のことではとうていおさまりそうもないし、現に不満を表明する発言が相次いでいるようでございます。日本の正当な努力だけでは解消できそうもないのに、米欧では強硬な意見が沸騰してきているという現状にどう対応するかが課題であると私は考えます。日本の立場を理解してもらうための今後の積極的方法とスケジュールについてお伺いいたしたいと思います。  新聞等で見ますと、公聴会等が開かれるようで、これにどういった方を派遣されるのか、また江崎自民党国際経済対策特別調査会会長に総理が親書を託されるのではないかという報道もありますし、また外相がみずから行かれるという情報というか新聞記事も見ておるのですが、こういったスケジュールについて、そのほかにもございましたらお聞かせ願いたい。
  379. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 経済摩擦につきましては、ただ日本とヨーロッパあるいはまたアメリカとの関係だけではなくて、世界じゅうにこの摩擦があることは事実でありまして、アメリカとECとの経済摩擦も非常に厳しいものがありますし、あるいはまた、アメリカとカナダとの経済摩擦も厳しいものがあるわけで、全世界的なものだと私は思っております。ですから、特に日本だけが集中的に攻撃を受けている問題ではないというふうにも思うわけでありますが、もちろん日本の経済情勢がいいわけですから、いま批判も非常に受けていることは事実でありますが、われわれとしては、自由貿易を守っていくためには、これまでも第二次鈴木内閣ができまして、ああした東京ラウンド二年前倒し、これはいままでにない思い切った決断であったと私は思いますし、この非関税障壁の輸入手続の改善措置も、これまたこれまででき得なかったことをやったわけで、ずいぶん抵抗もあったのを、いわば決断をもってこれを処理したわけでございまして、私は、やはりこの日本の自由市場を開放するための努力というものは、世界で評価をしてもらわなければならない、こういうふうに思います。  したがって、やはり日本のその努力というものをアメリカあるいはECに対してまず知らしめるということが一番大事じゃないか。こういうことで、実は党の方でも江崎委員長がアメリカあるいはECに出かけるということになったわけでありまして、特に一つの大きな要因は、いまアメリカの議会でいわゆる相互主義というのが非常に台頭して、御案内のように多くの法律案が、相互主義の制限法律案が国会に出されておる、こういう現状なものですから、日本の今日まで努力している、また今後とも努力しようというその決意を知ってもらって、この相互主義でもう覆われる、こういうことがないように抑えていかなければならぬ、こういうことでございますが、今後も引き続いて残された問題もあります。  それから、アメリカあるいはECから日本に対する要求リスト、いわゆる自由化を求める要求リストというものも出ておるわけですから、こういうものを各省で検討をしながら、国内産業との調整も図りながら、やはりわれわれとしては、市場の自由化のための努力を怠ってはならない。これからもひとつできるだけのことをやっていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  380. 木下敬之助

    ○木下委員 具体的な外交スケジュールといいますか、そういったスケジュールについて何かはっきりしているものがあったらお聞かせ願います。
  381. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御質問の中に私のことにも触れられておりましたが、本年の下期にはいろいろ外交スケジュールがございます。一番大きいのはパリにおけるサミットでございます。またASEANにおける拡大外相会議もございます。あるいはイギリス、フランス、西独、豪州等との外相レベルの定期会談も持っておるわけでございまして、先ほどから通産大臣から貿易摩擦を中心としてのお話があり、また、日米間の今後の経済関係を打開する上に金利の問題などにも触れられたわけでございます。  当面の諸問題については通産大臣の御説明のとおりでありますが、しかし、これからの世界経済をどう持っていくか。これはよく世界経済の再活性化ということが言われております。これらの問題につきましては、関係諸国において腹蔵のない意見討議をすべきではないか。オタワ・サミットなどでも同趣旨のことが取り上げられておりますが、昨年のサミット当時よりもさらに深刻な諸要素を持っておるのが現在の世界経済の実情ではないかと思うのであります。  すでに鈴木総理もこの点に着目されて、現在どういうふうに世界経済の再活性化をやっていくか、そのような点で作業をいたしておるわけでございますが、いずれにしても、これから開かれるサミットを初めとする各種の国際会議は非常に重要である。  また、私については、機会を得てアメリカへ参り、これらの重要会議の前に首脳と腹蔵のない意見を交わしてみたい、こうは思っておりますが、現在国会のさなかでありますので、日程はまだ決めておりません。
  382. 木下敬之助

    ○木下委員 通産大臣からも外務大臣からもお話がありましたが、私は、この貿易赤字問題を最初に確認いたしましたように百億、二百億、三百億という大きな数字でとらえたときに、いろいろな問題が小さ過ぎるのではないか、もっと大きな視点からの解決を堂々と図っていかなければならないのではないかというふうに考えております。そういった意味でちょっとお尋ねしたい問題が二、三点ございます。  その一つは、先ほど通産大臣のお話にも出てまいりました相互主義という考え方が、各国でいろいろな角度から発言されているようですが、政府はどう定義して、どういうふうにとらえて、またそれはわが国の世界経済に対する考え方、ガットの精神等に反すると考えるのか、どう考えるのか、総理からお答えいただきたいと思います。
  383. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 最近相互主義という言葉が出てきておりますが、これは端的に申し上げますと、後ろ向きの相互主義のように私は受けとめておるわけでございます。それは縮小均衡への道であり、保護貿易主義の道である、そういう方向では世界経済の発展、再活性化はできない、また貿易摩擦の解決にもつながらない、このように私は考えております。そういう観点から、国際間の貿易のルールのようなものは、ガットの閣僚会議が今年中に開かれることに相なっておりますから、ガットの場等においてこれは縦横に論議をされて、そして国際的に一つの共通の認識、目標を設定すべきだ、このように考えておるものでございます。  それからもう一つは、貿易摩擦の問題は各国の経済が苦しいから起こってきておる問題でございまして、どうしても世界経済そのものを上向きにする、よくするという努力、これが必要ではないだろうか。そのためには、わが国等もできるだけ相互の投資あるいは技術の共同研究開発あるいは合弁企業でありますとか、そういう産業協力を積極的にひとつやるべきではないだろうか、私はこのようにも考えております。  さらに、これは先進国、工業国だけでは十分目的を達せられるかどうか疑問だと実は考えております。一方において発展途上国、第三世界、これは五千億ドルに上るような大変な累積債務をしょっておる。もう金利さえも払えないような状態、そういうことでございますから、失業とインフレ、そして国民経済の大変な困窮が存在するわけであります。そういう方面に、やはりわが国などは特にそうでありますけれども、国際的な責任を果たす意味合いで経済協力技術協力等を積極的にやる。世界全体がそういう方向に行かなければ、私は、今日の究極の経済摩擦は解消できないのではないか、このように考えております。
  384. 木下敬之助

    ○木下委員 私も総理の考えに賛成でございますが、具体的に挙げられたようなもの等について、早速具体的に行動を起こしていただきたいと思います。  この相互主義の問題でひとつ明らかにしておきたいことは、いろいろな考え方が相互主義という言葉にはあるわけですけれども、対米もしくは対EC、一つの相手国との貿易収支をお互いにゼロにする、こういう相互主義というのは日本にとっては全く不可能なことで、大変こっけいな考えだと考えております。特に日本は、中東二百四十億ドル、インドネシア九十億ドル等のエネルギーその他の問題があり、一方資源がなくて必ず赤字になる国があるわけですから、そういったことは絶対に不可能だと思いますが、この点について政府の考えを確認いたしたい。
  385. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの議会等で言われておる相互主義、英語でレシプロシティーとか言っておりますが、これを突き詰めて言えば、いまおっしゃるように貿易をお互いに均衡にしろ、こういうことにもなりかねないわけでありますし、私たちは相互主義といいましても前向きの、たとえば半導体の関税をお互いに四%なら四%下げよう、こういうふうな相互主義ならいいわけですけれども、自由化を進めていくという意味の相互主義は評価できる点もあると思いますが、いま総理の言いましたような後ろ向きの、相手がこれだけの壁をつくっているからこれだけの壁をつくるのだ、アンパイアなしにそういうことを一方的にやるということになればこれは保護主義につながるわけですし、報復主義につながっていくわけですから、ガットの自由貿易体制というものを根底から覆す非常に危険な思想である、私はそういうふうに考えております。
  386. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、日本にとって対米貿易インバランスを根本的に解決するためには、資源輸入国としての日本は米国から資源を輸入する必要があると考えております。通産大臣は、アラスカ石油問題は外交の重要な課題であると述べられましたが、アラスカ石油及び石炭の輸入の可能性をどのように考えているか、今後のこの問題についての政府の対米交渉の姿勢を承りたいと思います。
  387. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 基本的に日本は貿易国家でございますし、石油はほとんど外国に依存しているわけですから、対米貿易の場合もインバランスを一挙に解決するということは、これは不可能であろうと思うわけです。ただ、インバランスが貿易摩擦の一つの問題としてアメリカから提起をされておるわけですから、それならやはり日本の欲しがっているものがアメリカから輸入できれば、それはそれだけインバランスの改善に大きく貢献するのじゃないか。それにはやはり日本の欲しいものは石油であり石炭である。  幸いにしてアメリカは、アラスカで百五十万バレルという石油の生産をしておるわけですし、その一部を日本に輸出してもらいたい。あるいはまた石炭は、膨大な資源を持っておるから、これについてもいろいろと問題はあるわけでありますけれども、これは長期的な立場で、日本の輸入商品としては非常に大きな目玉商品ではないか。これに対して、アメリカもインバランスを解決しようということなら、積極的にひとつ対応してほしいということを要請をしたわけでございます。  アラスカ石油につきましては、御案内のようにアメリカの法律がありまして禁止をされておる。同時に、安全保障の立場とかあるいは海運関係で、なかなかむずかしいという意見もあるわけです。反面またアメリカの中でも、アラスカ石油を輸出したらいいのじゃないかという声もあることも事実であるわけでありますから、これは結論が出ておりませんし、まだイエスともノーとも言っておらない。むしろむずかしいというふうな感じでございますが、私たちは、インバランスを改善する一つの方向としては、これはこれからひとつしんぼう強く取り組んでいって、アメリカに求めるべきことではないか。  同時にまた、石炭についても、長期的には、アメリカは奥地ですから、いわゆる輸送手段とか港湾とかいうインフラの問題等もありますし、価格の問題、品質の問題等もあるわけですが、こういう問題等は今後腰を据えて話し合えばその道が開かれてくるのじゃないか、これはぜひともひとつ、今後時間がかかっても実現をしていくべき問題じゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  388. 木下敬之助

    ○木下委員 今後の強い交渉を期待いたしております。  次に、米の高金利に対してでございますが、これにどう要求していくのか。ECは下げるように要求をしているようでございますが、日本も米に政府介入を促すつもりがあるのか。また、日欧共同で申し入れる考えはないのか。サミットではこの問題にどういう姿勢で臨むのか。この点をお聞かせ願いたい。
  389. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどもお話がございましたように、アメリカの高金利政策については、日本ばかりでなくて、ドイツやフランス、イギリスなども含めまして、考え方を変えてくれという要請があったことは事実でございます。しかし、アメリカとしては、もうインフレを収束させることが最大の政治課題である、そのためには、要するにマネーサプライをある程度締めなければならぬ、その結果として高金利が出てきておるので、高金利政策をとっておるわけではないということで一貫をしておるわけでございます。  そうなりますと、他国の基本的な政策の問題でございますから、われわれとしてはまあ下げることを強く期待するというようなことぐらいにだんだん変わってきてしまうというのが実態でございます。その政策が成功するかどうか、いろいろわれわれも疑問を持っておるわけだけれども、そういうような批評をする段階でもございませんし、ただ何とかひとつ、インフレも収束するならば、もっと下げてもらいたいということを続けて言っておるだけでございます。
  390. 木下敬之助

    ○木下委員 ブロック米通商代表が、米国の金利を引き下げることはしないと欧州諸国や日本の利下げ要求をきっぱり否定した、こういう報道もなされております。それはいろいろとむずかしい問題もございますでしょうけれども、やはりここに問題があることは確かですから、サミットでは、大分先になりますけれども、いま言ったような問題はどういうふうに取り組むお考えでございますか。
  391. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 高金利問題が為替レートに重大な影響を及ぼしている、ついてはという話をいたしましても、為替レートは金利だけで決まっているのじゃない。それは確かに金利だけじゃないでしょう、いろいろな経済的諸条件がみんな絡まっておるはずですから。しかし、その中でも金利が最大の原因だと言うと、向こうは、それならば動乱ぎみになって何でドルが強くなるんだ、これは国力の反映なんだというようなことを言っておりまして、なかなか金利を下げるということは言わない。しかしながら、アメリカの物価の状況が鎮静化してくれば、われわれとしては、またそういう日本の主張はしていきたいと思っています。
  392. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、そのブロック代表はその後続けて、改めて日本が資本市場を海外の借り手に開放するよう要請し、そうすれば円相場は上進しようと語っております。こういうふうに、開放する考えがおありなんですか。また、開放すればそういった効果が見込めるわけですか。
  393. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本でもかなり市場は開放してあるはずです。私の関係ですと、いろいろなサービス部門とかいろいろな資本の問題とか言われておりますが、資本の問題についても、これは一昨年の十一月に外為法の改正をしまして、開放、原則流出入自由ということにいたしました。その結果、昨年一年間における日本からの長期資本の流出は二百二十八億ドル、外国から入ったものは百六十三億ドルというようなことで、これは、資本の面については、日本では六十五億ドルもむしろ赤字というぐらいでございますから、それらの点については余り批判を受けるところはないのじゃないかと思っております。
  394. 木下敬之助

    ○木下委員 もう時間がありませんので、次の問題に進みます。  米からの強い要求があり、国民特に農家にとって最も注目されております残存輸入制限品目のこれからの扱いについてお伺いいたしたいと思います。  まず、田中元総理が、一月十八日都内のホテルでの講演の中で、わが国の対米貿易黒字が二百億ドルを超えた場合、日米間で第二次産品は全部無関税になり、農産品の自由化も避けられないだろうと見通しを明らかにされておりますが、総理はこういった元総理の発言も踏まえてどのようにお考えになられますか。
  395. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま残存輸入品目は二十七品目ございますが、そのうち、革を中心に工業製品が五品目、二十二品目が農産物ということになっております。米側では日本に、農産物、特に柑橘類であるとかあるいは肉類であるとか、そういうものを大幅にクォータをふやせとかあるいは自由化せよとかいうようなことを言っておるのですが、いまアメリカから日本は食料品、農産物を中心としまして七十億ドルのインバランスです。そして、数量的に言いますと、二千万トン以上の農産物、穀類をアメリカから買っておる。大豆四百万トン、それから小麦四百万トン、その他飼料穀物を八百万トン以上、一千万トン買っておる。恐らくアメリカにとっては、日本が世界最大の農産物の輸入国じゃないでしょうか。  そういうようなことでございますから、私どもは日本の農業の事情、こういうものも十分説明をし、今日までの輸入努力というものもよく説明をして、理解を求めながらこれに対応していかなければならない、こう考えています。
  396. 木下敬之助

    ○木下委員 この問題に当たって、一つ大事な点で、わかり切ったことですけれども確認しておきたい点があるのです。  残存品目、特に牛肉とかオレンジ等は、これまで農林省が力を入れて奨励してきた品目であり、今日まで農家は将来に夢を託して努力してきたわけです。いまこの問題は、ガット違反であるとして米が提訴する可能性を示していると聞きますが、農水省としては、当然のことながら、牛肉、オレンジ等の制限はガット違反にならずに続けていけるという見解のもとにこれまで指導してきたと考えておりますが、どういう見解のもとに指導してきたのか、お聞かせください。
  397. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 ただいま御指摘の牛肉、オレンジの問題でございますが、この点については木下さん御承知のように、東京ラウンドで合意した事項がございまして、それをただいま私たちは忠実に実施をいたしているという状況でございます。  この会議は、一九八四年以後の問題をこれから話し合いをしていかなければならないのでございますが、アメリカからは今年の十月ごろどうか話し合いをしていただけないだろうか、こういう申し入れがあるのでございまして、私たちとしては、できるだけ東京ラウンドでの合意を尊重してまいりたい、かように考えておるのでございます。  そこで、この話し合いを否定いたしますというと、いま先生御指摘のように、ガットの精神に反するのじゃないだろうかと私は思います。ガットの原則の一つに話し合いの精神というのがございますから、その線に沿ってこの問題は私たちはやはり進めてまいらなければいけない、こう思っておりますので、そういう点はガットの精神を十分尊重しながら話し合いを進めてまいりたい、かように考えております。
  398. 木下敬之助

    ○木下委員 これまでずっと続けて奨励してきたことですから、その線に沿って今後ともやっていただきたいと思っております。  今後の交渉の予定で、いま出ましたように牛肉、オレンジジュースの自由化を前提とした日米交渉の時期を、米国側はことしの十月に繰り上げる要求をしてきているようですが、政府はどう対処するおつもりですか。(「ダブっている」と呼ぶ者あり)繰り上げてやるかということですよ。
  399. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この点についてはいま話し合いを進めておる段階でございますので、私たちとしては東京ラウンドの合意を尊重していただきたい、こういうことをいま主張いたしている段階でございます。
  400. 木下敬之助

    ○木下委員 私の最初の質問が、ガット違反にならずに続けていけるのかというその見解を聞いたら、東京ラウンドの線に沿ってと言われるから私は大きな意味でとったが、このことを先ほど答えたわけですか。——そうですが、わかりました。  それでは、日米貿易小委員会はいつやられるような予定でございますか。
  401. 深田宏

    ○深田政府委員 先生御存じのように、前回の小委員会は昨年の十二月の九日と十日に開催いたしまして、その際、できればことしの二月の末にでも次回の会合を開きたいということをアメリカ側の代表は申しておりました。現在アメリカ側からは、その時点で現実には二月の二十五、六日ごろにぜひということを申してきておりますけれども、国会の関係その他いろいろございまして、次回はワシントンでということでございますから、いまアメリカ側と日程を打ち合わせているところでございます。
  402. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、いろいろな話し合いの中でやられると思いますけれども、この農産物の自由化というのをもしすべてやったとしたときに、どれだけ黒字減らしに寄与すると政府はお見込みでしょうか。
  403. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 まあいろいろの計算の仕方があるのですが、五億ドルと言われ七億ドルと言われる。全体から見たら、それは大した額ではないということです。
  404. 木下敬之助

    ○木下委員 私もそのとおりに思います。しかし、この自由化によって国内生産農家への影響は大きいのじゃないかと思いますが、どの程度見込まれておりますか。
  405. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 金額的に計算することは非常にむずかしいと思いますけれども、いま私たちは農林水産業の近代化のために非常な努力をしておりまして、農家あるいは団体の方々に一つの新しい農業への道をお願いしておるのでございまして、その新しい道を進むためには、何としても対外経済摩擦だとかその他のこういう不安というものを解消して差し上げることが一番だと思います。  また、これからの新しい農業を私たちが本当に進めていくためには、そういう点に配慮をしてまいらなければならないと思いますので、そういう点のマイナスは非常に大きいのじゃないだろうか、かように考えますので、農林水産省としては、この点については先ほど先生の御指摘のように十分慎重に扱ってまいりたい、かように考えております。
  406. 木下敬之助

    ○木下委員 仮定の話で申しわけありませんけれども、もし仮に自由化した場合、財政負担は甚大であったとしても、農家への所得補てんを行うということが考えられるのじゃないかと思いますが、この点大蔵大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  407. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま農林大臣のお話のとおりでございますから、そういうことは予定いたしておりません。
  408. 栗原祐幸

    栗原委員長 木下君、時間ですよ。
  409. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、最後に一言だけ。  以上、貿易摩擦問題に関して諸問題を論じてまいりましたけれども、非常時であるという認識のもとに決断されたもの、もしくはこれから決断される諸政策の中に、長期的に見た場合は行き過ぎであり、将来に大きな禍根を残すような問題が含まれているのじゃないかと考えられますので、どうか大きな視野でもって一つ一つのものに当たっていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  410. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて木下君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十七分散会