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1982-02-02 第96回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮仙重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    鴨田利太郎君       北川 石松君    工藤  巖君       後藤田正晴君    塩川正十郎君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤尾 正行君       藤田 義光君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    渡辺 栄一君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       沢田  広君    野坂 浩賢君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    矢野 絢也君       木下敬之助君    竹本 孫一君       塚本 三郎君    金子 満広君       瀬崎 博義君    野間 友一君       不破 哲三君    山原健二郎君       依田  実君  出席国務大臣         内閣総理大臣 鈴木 善幸君         法 務 大 臣 坂田 道太君         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣 田澤 吉郎君         通商産業大臣 安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         郵 政 大 臣 箕輪  登君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     松野 幸泰君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         国土庁長官官房         長       福島 量一君         国土庁長官官房         審議官     川俣 芳郎君         国土庁土地局長 小笠原正男君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         国税庁直税部長 吉田 哲朗君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房審         議官      宮野 禮一君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生大臣官房会         計課長     坂本 龍彦君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省医務局次         長       山本 純男君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         中小企業庁長官 勝谷  保君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省河川局長 川本 正知君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治大臣官房審         議官      小林 悦夫君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         消防庁長官   石見 隆三君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二日  辞任         補欠選任   藤本 孝雄君     北川 石松君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   山田 耻目君     沢田  広君   木下敬之助君     塚本 三郎君   山原健二郎君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   北川 石松君     工藤  巖君   沢田  広君     山田 耻目君   塚本 三郎君     木下敬之助君   野間 友一君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   工藤  巖君     藤本 孝雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野絢也君
  3. 矢野絢也

    矢野委員 私は、公明党国民会議を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に御質問いたします。  総理、いまわが国は国際的にも国内的にも非常に厳しい状況に置かれておるわけであります。国際的には、アフガン、ポーランド、それに対するアメリカ・レーガン政権の力には力という姿勢、対日防衛増強要求も強まっておる。また、貿易摩擦が激しくなって、日本は非常に憎まれっ子になってきておる。国内的にも、経済が非常に不景気が長引いておるし、それから福祉文教予算の切り捨てなど老後の不安だとか国民生活の不安、さらにまた、総理も頭が痛いのでしょうけれども財政の大赤字、財政再建、非常に大変な問題が山積しておるわけでございます。  私ども公明党は、この状況を打開するために、大まかに言いますと五つの御提案をしておるわけでございます。  一つは、何といっても貿易摩擦の解決、経済の立て直し、また税収の確保のため内需中心経済成長、これが何よりも大切である。外国に依存しないで、国内経済というものを内需中心でしっかり立て直す。  また二番目には、そのためにも国民生活を守る、特に勤労者の暮らしを守るために大型所得税減税あるいは福祉文教住宅などを中心に重点的な政策を行う、公共事業の効果的な運用、こういったことが大事だとわれわれは思います。特に所得税減税。  三番目には、そのためにも骨まで削る行政改革ということが必要だと思うのです。総理は、お金がない、財源がないとおっしゃいますけれども財源がないのじゃないのですよ。本当に真剣な行政改革財源をおつくりにならなかったと言われても仕方がない。  四番目には、軍事力のみに頼る安全保障政策、これはちょっとぐあいが悪い。もっと総合的な平和戦略、特に対外的には反核、軍縮の運動を日本政府は先頭に立って推進すべきだと思うのです。  五番目には、もう一番大きな声で申し上げなければいかぬけれども憲法に違反をし、民主主義を破壊する党利党略選挙制度改悪、参議院の全国区制度改悪、これは公明党は断固反対であるということを申し上げておきます。  そういう五項目にわたって私は御質問をしたいわけでございますが、質問の順序がありますので、いわゆる談合問題から最初に御質問したいと思うのです。  総理、いま中小の住宅産業建設産業は大変な売れ行き不振で、建設業界は非常に苦しい経営になっているわけです。小さな業者は、大型や中型の公共事業には指名にも入れてもらえない。この公共事業というのは国の予算で賄われておるわけですから、国民税金公共事業というのは行われておるわけです。いま談合問題が国民の疑惑を呼んでおる。公正な競争というものが阻害されて、業者話し合いによって、国民税金で成り立っておる公共事業の、何というのでしょうか、いわばたかりみたいな状況がいま見られるわけですよ。これは予算委員長にも申し上げたいのでありますけれども公共事業の公正な発注ということは、予算の厳正な執行という立場からも本予算委員会にとっては見逃すことのできない大事な問題であります。  そこで、この公共事業、いろいろありますけれども土木工事が非常に多いわけですが、ごく一握りの人物、長老と呼ばれる実力者たちによって、ダムとか高速道路鉄道、下水道、埋め立て工事など一件当たり百億とか二百億というような大型公共事業のほとんどが談合によって決められておる。  そこで、いま総理のお手元に行っていると思いますけれども資料があるわけです。この二枚つづり資料がありますけれども、これは一体何だということになるわけですが、この資料の性格を申し上げますと、これは昭和四十七年ごろに土工協裏組織である当時の合理化委員会リーダー実力者たちによって作成された談合資料なんです。土工協裏組織と言われておる当時の合理化委員会、これはいまは経営委員会名前が変わっておる。しかも、これは四十七年ごろから向こう十年間、つまり今日に至るまでのダム工事について談合し、業者割り振り決定をしておる資料なんです。  この資料を見てください。この資料では、三百億とか二百億とか何十億というような巨大なダムが、建設省関係ダムで三十九件、水資源開発公団の関係で九件、合計四十八件ですか、十年前、四十七年ですよ、向こう十年間の四十八件のダム名前がまず載っておる。府県名河川名前、そしてそのダム堰堤体積、驚いたことにこれから十年後に出るような工事の総事業費までちゃんと載っておる。ちゃんと十年前に業者、これは営業努力と申しましょうか何と申しましょうか、えらいものです。ちゃんと金額が入っておる。そして、そこからずっと右へ見ていただくと、どのダムがどの業者発注されるか、この四十八のダムすべてにわたって、このダム本命はこの業者だ、業者業者といいましても、これは大手の一握りの業者です。本命と言われる業者に丸がついておる。くどいようですけれども、これはいまつくった資料と違う。四十七年ごろ、それから十年間に発注が予定されるダム工事のすべてについて的確な情報をキャッチして、談合裏組織と言われる当時の合理化委員会、いまは経営委員会名前が変わっておるけれども、そのリーダーたち実力者たちによって業者割り振り決定されておる談合資料なんです。この資料は私、責任を持って申し上げておきますが、にせものと違います。本物です。  そして、それがどうなったか。結論から先に申し上げますと、ここにちょっと枚数の多い資料がありますけれども、これは建設省資料を要求して御回答願った分です。米印で括弧して書いてある大きな字の方は、談合本命とされて十年前に決められておる業者名前をここに参考のため私が転記してある。小さい字の方は、建設省の御回答による、この工事はどの業者が何ぼで落札しましたという結果がここに載っておるわけです。結論から申しますと、現在までこの四十八のダム、まだ全部が発注されておるわけじゃない、十九が発注されておる。そのうち十八がこの十年前に決まった談合資料のとおりに業者が決まっておるのです。  もっと正確に申し上げますと、この発注された十九のダム工事のうち、完全に談合申し合わせと一致しておるのは、この資料にAと書いてありますけれども、この建設省資料のA、これは十三、完全に一致しておる。ほとんど一致しておるというのが五つ、これはBと私の方で記号をつけてございます。そして、十九のうち、この談合申し合わせと結果において違ったのはたったの一件だけです。一つだけです。すべて大手業者が、しかも、ごく一握りの大手業者が偏った形で受注しておるわけです。  建設省に伺いたいのですけれども、なぜ向こう十年間にわたってダム工事計画、型式、堰堤体積、総事業費事前業者に漏れておるのでしょうか。また、この資料、私が示したこの二枚つづり談合の表、これは一体どういう資料ですか。建設省、知らぬとは言わせませんぞ、これは。まずお答え願いたい。
  4. 始関伊平

    始関国務大臣 お答えを申し上げます。  ここに資料を提示されまして、この談合の疑いのあるような資料をお持ちになりまして、実際入札の結果はここにあるとおり決まっておるということでございますが、具体的な問題でございますのでその点のお答えは差し控えさせていただきまして、この点が公共事業執行に関連いたしましてただいま非常に世間の注目を引いておる重要な問題になっておるということは、私どもも十分承知いたしまして憂慮いたしておるところでございます。  ただ、ただいまの御質問は、いわゆる予定価格というようなものはなぜ漏れておるかということであったと思いますが、予定価格の扱いにつきましては建設省でも非常に注意をいたしまして、これが事前に漏れるというようなことは絶対にない、責任局長が自分で書きまして、それを金庫の中に入れておるということでございまして、漏れるはずはない、かように申しております。ただ、一定の方式によりまして計算をいたしますので、多少経験のある者から申しますならば、それにほぼ近い数字が出るのが実情である、このように申しておるのでございまして、いろいろな問題点があると思いますが、とりあえず御指摘になりました問題につきましてお答え申し上げます。
  5. 矢野絢也

    矢野委員 何だかお答えになっておらないのですけれども、この資料、確実な資料であるということは、私、先ほど申し上げましたけれども、しかも、この建設省から出されておる資料を見てくださいよ。十年前の話と違うのです。この四十七年ごろ決められた談合申し合わせ、五十五年度にも五十六年度にも、去年もおととしもこの談合表のとおりに発注されておるのですよ。十年前の話だなんて気楽な調子で受け取ってもらっては困る。この談合表はいまもまだ生きているのです。十年前に申し合わせしておいて、そのときにもう建設省データが漏れておって、業界の偉い人が話し合いをして、そこにはどうやら天の声とかなんとかいろいろ複雑なことがあるみたいなんだけれども、それはまた後ほど申し上げることにして、それがいまだ今日においても生きておる。しかも、この談合申し合わせの大部分の工事はこれからなんです。全部済んだわけじゃない。去年もおととしもこの談合申し合わせのとおり出ておるし、まだ半分以上工事が残っておるのですよ。いいかげんな答弁じゃ困る。建設大臣、余り御経験がないようで、どういうことになっておるか、もうちょっと私から説明しましょう。  業界各社希望するダム、おれはこの工事が欲しいんだ、希望工事お願い書というものを役所に出すのと違うのです。業界実力者と呼ばれておる人のところへ、それぞれの会社社長印を押したお願い書を、民間会社社長でもないお方のところへお願いしますと言って持っていくのです。その実力者と呼ばれる人々は各社のそういう希望を集約いたしまして、そして天の声とか地の声とかいろいろあるらしいのですけれども、その間、もちろん業者の必死の営業活動もあるのでしょう、また業者施工能力という問題もあります、あるいは実績という問題もあります、バランスということもあるのでしょう。そういったことをその実力者と呼ばれる人たち調整をして、そして、この工事はおまえのところだ、この工事はおまえのところだというふうに割り振りを向こう十年間にわたってなさっておる。しかも、それは途中でまた天の声とやらが出てきて変わることもある。  私は、談合というのは、国民税金を使って、公共事業ですから重大な問題だ、けしからぬことだと思いますが、何も一概にすべて悪いと思いません。たとえば業界過当競争を防止して共倒れを防ぐとか、能力がない業者が落札して結局国民税金である公共事業がむちゃくちゃな工事になってしまうとか、そういったことを防ぐという一種の必要悪的なものもそれはあるのかもわかりません。しかし、余りにもこれはひど過ぎます。何百億という工事が、四十八件の大きな工事があらかじめ決められておる。総理行政改革だと言ってがんばっていらっしゃる。行政改革というのはこんなところからやってもらわなければいけないのです。公正な競争によって施工能力のある業者がきちっとした価格で、だれしもが納得できる価格で、しかもオープンな形で公正な価格で入札する、それこそ本当の行政改革ですよ。十年前から、これはおまえにやる、これはおまえだ。競争なんかないじゃありませんか。それこそ業者思いどおりの値段がつく、それは言い過ぎかもわかりませんが。そういう状況が起こりかねないじゃありませんか。先ほどの十九のうち十八の工事申し合わせに一致しておる、一つだけ違っておる、五つは主力になる業者談合申し合わせのとおりでございまして、あとはジョイントになる、失礼な言い方だけれども、小さな業者名前がかわっているにすぎない。十九のうち十八が事実上談合申し合わせのとおりになっておる。しかも、その談合申し合わせば、あたかも業界における憲法のように、この十年間、去年発注された工事も一昨年発注された工事もそのとおりに行われておる。それを、建設大臣、何だか予定価格事前に漏れるはずがないとか言っておられますけれども……。  もう一遍伺います。こういういわば天の声、政界、さらに行政業者政官財の癒着によって税金がむだ遣いされておる。いいかげんな答弁では済まぬ。なぜ事前データが漏れたのか、なぜこういう談合を放置しておいたのか、この資料はどういう資料なのか、もう一遍この三点について答えてもらいたい。
  6. 川本正知

    川本政府委員 具体的な事実関係のお尋ねでございますので、私からお答えをいたします。  先生からいまお示しいただきました資料を拝見いたしましたが、その内容につきましては、私、全く承知しておりません。この根拠等についても全く不明でございます。  以上だけ申し上げておきます。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 何だかそれを言うために大臣を押しのけてあなたは出てきたんですか。大臣、もう一遍答えてください。何だか知りませんということをわざわざ言うために出てきて、一体あれは何だ。
  8. 始関伊平

    始関国務大臣 お答えをいたしますが、ただいま御指摘のございました土工協、それから、その裏組織であると言われております建設同友会、これが長い間談合組織としての役割りを務めてきたのではないかという少なくとも疑惑がございまして、それによりまして、この談合組織であると言われました建設同友会というものは昨年中解散いたしましたし、また前田君という会長も責任をとって辞職いたしました。それは事実でございます。事実関係の究明はなかなかむずかしいのでございますが、そういう疑惑を長い間生んでおったということについては私どもも大変遺憾に思いますし、また責任を感じております。  それからもう一点、一握りの者が長い間回り持ちで請負をしておるのではないかというお話でございまして、この点はかなり根本的な点でございますから申し上げておきますが、御承知のとおり、工事の中には、工事の規模が非常に大きい、それから技術的にも非常にむずかしいものもある。そうしますと、特にダムなんかについてそういうことが言えるんだろうと思いますが、極端な場合にはもう一社か三社しか有効に遂行のできる業者がいないというふうな場合が、まあこれはダムの場合ではございませんが、あるようでございまして、そこで、その業者が持っております信用、技術力、そういったようなものを審査いたしまして、この程度の工事にはこの程度の業者が必要なんだということをいたしておりまして、その中から指名競争入札をいたしておりますので、御指摘のような結果に相なっておる点もあろうかと思います。これは工事の性質上やむを得ない点もございますが、しかもその場合に、大体いままでは十社を指名しておったのでございますけれども、十社ではちょっと少な過ぎるのではないか、談合を防止するという点から見ても、その防止に多少役立つだろうということからいたしまして、先般、つい一週間前でございますが、建設の事務次官から通達を出しまして、これは大体二十社までふやすということにいたしたい。いろいろございますが、こういうことが、ただいま御指摘になりました問題に対するわれわれの対応策の一つであるということをちょっと申し上げておきます。
  9. 矢野絢也

    矢野委員 なぜ事前予算が漏れたのか、なぜこういう談合を放置しておいたのか。私が示しましたこの二枚つづりの、四十七年、この資料の性格まで私はちゃんと申し上げているのですよ。この三つの質問に答えていません。こんなことじゃ質問できませんね、これ以上。
  10. 川本正知

    川本政府委員 この資料を拝見いたしますと、ここにダムの高さ、型式、堤体積、総事業費というふうなことが数字としては載ってございますけれども、これは工事発注する予算とは全然異なっておるようでございまして、総体の事業費、概算事業費が書いてあるようでございまして、実際問題、ここに契約しております額を私の方から提出いたしました資料に列挙してございますけれども、もちろんそれとも違っておりますし、予定価格とかそういったものというものではないと思います。あくまでも概算の事業費ではないかと思います。(矢野委員「なぜそれが漏れたんだ」と呼ぶ)  先ほど申し上げましたように、この資料の根拠については全く不明でございますので、何とも申し上げられません。(矢野委員「なぜ一致しているんだ」と呼ぶ)業者でございますか。——ダム工事の一般的な発注につきましては、通常のやり方といたしまして、ジョイントベンチャー、いわゆる共同企業体を公募をいたしまして、そして、その申請を受け付けまして指名競争入札に付するというのが一般的なやり方でございます。でございますので、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、ダムの実績といいますか、実力のある業者がそれに応募してまいります。そういったことでそのジョイントベンチャーを公募、二社または三社ということでやるのが普通でございますが、そういったことで公募を受け付けまして、そして、指名審査して発注した結果がこれでございます。
  11. 矢野絢也

    矢野委員 それじゃこの問題、どうやら建設省はとぼけておられるようだから、聞くところに聞けばちゃんとわかります。私はまた一時から質問ができるわけですから、いまから二時間半ぐらいあるんだから、大臣、だれにどういうように聞けばいいかというのはあの方が一番よく御存じですから、その間お調べいただいて、この私が示した資料についての事情を一時の時点で御報告願いたいと思います。委員長、よろしくお願いいたします。いいですね、大臣。もうまた長話されると困るから、イエスかノーかだけ言ってもらいたい。
  12. 始関伊平

    始関国務大臣 ただいまの資料につきましては調査をいたさせますが、古い関係もございまして、なかなかわかりにくいだろうと申しておりますので、一応お答えいたします。
  13. 矢野絢也

    矢野委員 冗談じゃありませんよ。こっちはもうきちっと確認がとれているのですよ。  それじゃ、一点だけにしぼって伺いましょう。私が示したこの資料、四十七年ごろつくられたものであり、本物なのかにせものなのか、その御確認だけ願いたい。
  14. 始関伊平

    始関国務大臣 ただいまちょうだいいたしました資料は、ダム関係の主管局長でございます河川局長がただいま初めて拝見した、私はもちろんでございますが……。でございますので、にせものか本物かという点につきましては断定いたしかねるというのが……。
  15. 矢野絢也

    矢野委員 だから、一時までに調べてきなさい。私は余り個人の名前を出してどうのこうのということは言いたくないから。そんなにとぼけるなら、何から何まで言いますよ。だから、一時までに調べてきなさい。
  16. 川本正知

    川本政府委員 先ほどお話がございましたように、この資料の根拠、出たところをお示しいただきましたので、調べてまいります。
  17. 矢野絢也

    矢野委員 では、そういうことで、次にいきます。  総理財政再建にはずいぶん頭を痛めていらっしゃると思います。しかし、中小企業や国民にとりましては、総理財政再建で頭を痛めていらっしゃるかしらぬけれども、企業の再建、家計の再建、こっちの方が頭が痛いわけです。住宅だって、遠いし、高いし、狭いし、大変なローンで国民は苦しんでいるのです。勤労者は一生懸命働いているけれども暮らしはよくならないというわけで、財政再建財源があるとかないとか連日のように総理答弁しておられますけれども国民総理答弁を見て、そんなのはわしらの知ったことじゃないよ、それこそ政府や政党、これは私どもにも責任があると思います、与野党ともに。要するに財政を政治がいいかげんなことをしておいて、そして所得減税をやれと言えばやれない、金がない、そんなものはそっちの都合じゃないか、こんな感じであなたの答弁国民は見ておられますよ。  いま国民が苦しんでおる問題に対して政治がどう答えてくれるかということの方が、いまテレビを見ておる国民のあなたの御答弁に対する期待だと私は思うのです。財源が足りません、財政が赤字です、こんなことよりも、国民の苦しみに対してどうこたえるか、そういう意味から、私はまず経済問題の方から先にお尋ねをしたいと思います。  五十六年度経済、ことしの三月末で終わる、簡単に言えば去年の経済ですが、最初総理は、実質成長率五・三%の伸びを図りたい、こういうことだった。しかし、それはちょっと無理でということになったのですが、その五・三%を伸ばすその中身は、内需で四%、外需、貿易ですね、一・三%、つまり、五・三の成長率のうち七割は内需で五・三を達成するんだというふうに去年の最初に政府は考え、総理はそう答弁しておられる。たしかそうだった。内需中心でいきたいと考えておられたと思うのです。そうですね、総理
  18. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 経済成長の目標を設定をし、それを達成するに当たりまして、内需中心でそれを実現することによって雇用を拡大をし、また貿易摩擦等に大きな悪影響をもたらさないように、いろいろ政府としても努力をいたしたところでございます。  成長は、世界の先進工業国の中でも最も高い成長率を確保し、また雇用問題も、御承知のように、二%台という比較的いい状態が生まれたわけでございます。また、消費者物価等におきましても、逐次安定の基調にある。こういうように、国際比較においては比較的順調にこの第二次の石油危機を乗り越えてまいっておるわけでありますが、矢野さんから、その成長は内需によるところが少なくて、外需に大きく依存しておるのではないか、こういう御指摘がございました。そのとおりでございます。私どもは、その点につきましては、今後できるだけ国民消費を伸ばし、また住宅建設等の波及効果の大きい投資を促進する、比較的大企業の方の投資は堅調を続けておりますが、中小企業は必ずしもよくない、こういう点等を十分再吟味いたし、政策を検討いたしまして、五十七年度経済の運営につきましては最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  19. 矢野絢也

    矢野委員 五十六年度経済内需中心でいきたかったんだがそうならなかったという意味のことを、自己批判を含めてお話があったわけです。  経済企画庁長官、昨年たしか国会で、景気底入れ宣言というのを河本さんがなさった。私、それを聞いてうれしく思いましたね、不景気がこれで底入れで、これから景気がよくなる。あなた、あれは間違いでしたか。
  20. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気の動向について若干申し上げますと、日本経済は一昨年の夏ごろから第二次石油危機の厳しい影響を受けまして、どんどんと落ち込んでまいりました。そこで、政府では、一昨年の九月と昨年の三月、二回にわたりまして、若干の景気対策を進めたのであります。その結果、昨年の五、六月ごろに大体日本経済は大底に達したのではないかと思っております。自乗、回復の方向に向かっておりますけれども、その回復の力が非常に緩慢である、弱い。そこでいろいろなひずみが生じておりますが、在庫調整等もほぼ終わりましたし、これからはもう少しスピードが加わってくるのではないか、回復の力が増してくるのではなかろうか、こう思っております。大体昨年の五、六月ごろが一番底であった、このように考えております。
  21. 矢野絢也

    矢野委員 底入れ宣言だなんておっしゃるから、これからよくなるのかなというふうにみんな希望を持ったのですが、これはえらい長い底ですな。何か底が抜けそうな感じの、フライパンみたいな、底の広い……。  通産大臣に伺いますけれども、一月二十八日、昨年十二月の鉱工業生産動向の速報を発表されました。生産、出荷とも、十一月に引き続いて二カ月連続マイナスである、生産活動に迫力なし、こういう意味の発表をされましたが、通産大臣として、最近の生産活動の流れ、動向をどう見ておられますか。
  22. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 鉱工業生産につきましては、確かに年末までは非常に悪かったわけですが、多少、出荷動向で回復基調が指標の上では出ておるわけでございますが、しかし、まだ御案内のように力強さには欠けておるわけでございます。特に、いま経済の実態としては、産業間の格差といいますか、非常な不況産業と好況産業との間の格差がずいぶん出ておりますし、それから規模別に中小企業、大企業、特に中小企業の設備投資が落ち込んでおる。地域別にも東北、北海道等、大変公共事業等の不振等もありまして落ち込んでおる。そういうばらつきが大変目立っておるようなのが今日の経済の特徴ではないかと思っておるわけですが、こうしたものを踏まえまして、五十七年度五・二%という実質成長を目指しまして、いろいろ政策的な面からも、あるいはまた民間活力も活用して、何とかその実質成長を確保するために努力していかなければならないと考えております。
  23. 矢野絢也

    矢野委員 昨年の国会、この席で私は総理に、何といったって経済を支えるのは消費の動向が問題だ、消費が果たして伸びるかどうか。当時、個人消費について実質四・九%伸びるという見通しを持っておられた。本当にそんなに伸びるのかしらということで、伸ばすためには所得減税が必要だということを昨年要求したわけですけれども総理はこの席で、いや、物価が安定しておるから、これからも安定する傾向だから、物価が安定すれば消費は伸びるのだ、消費の伸びる根拠として、河本さんもそうですが、物価が安定するから消費が伸びるのだと総理も河本さんも力説しておられた。確かに物価は安定しました。政府の予定よりももっと低い水準で物価は安定した。去年の国会の論理からいけば、物価が安定すれば消費が伸びる。ただそれだけを柱にしておっしゃっておった。予想以上に物価が安定したのですから、予想以上に消費がふえなくてはならぬはずなのに、なぜ消費が去年は不振だったのですか。去年ここで言っておられた、物価が安定すれば消費が伸びるのだという論理は間違いでしたか、河本さん。
  24. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十六年の経済は、消費は政府の見通しよりも伸びが相当低いと思います。その理由は、いま御指摘になりましたが、物価は予想外に安定をいたしましたけれども、雇用者所得の伸びが予想よりも相当低い水準になった、こういうことでございます。それは、実は雇用者所得につきましては一人当たり七・五%増、それから雇用者の数が一・六%見当ふえますので、国民経済上見た全体としての雇用者所得の伸びが九・二、こう想定をしておったのでございますが、景気の回復の力が弱いということのために所定外給与が伸びない。それからまた、中小企業の状態が非常に悪い。そういうことで、特に中小企業の所得が伸びない、こういうこと等もございまして、全体としての伸びが相当低い水準になった。この点で、残念ながら若干見通しが違うておったということでございます。そういうこともございまして、消費の伸びは、政府の当初の想定よりも相当低い水準であったという状態でございます。
  25. 矢野絢也

    矢野委員 若干の消費の伸びの食い違いだとおっしゃいますけれども、そうじゃないですな。個人消費が、昨年政府の当初見通しは百五十七兆、ところが、やってみた結果の実績見込み百四十七兆、十兆円も落ち込んでいるのですね。これは、当初見通しは名目で九・九伸びると見ておられたのが、名目で結果的に七・〇の伸びにとどまっておる。実質で申し上げますと、当初見通しでは消費が四・九%伸びると見ておられたのが、実績見込みではたったの一・八の伸びにとどまっておるのです。これじゃ売れ行きが悪くなるのはあたりまえです。商店や小売店が非常に売れ行き不振で困っておられる。不景気なのもあたりまえです。十兆円も落ち込んでおる。四・九が一・八に伸び率が落ちておる。これは、若干の伸びの読み違いというようなものじゃないと思いますよ。  つまり、内需でいこうとしたのが、去年の経済は軒並み内需がだめで、輸出だけががんばった。そして貿易摩擦が、いま通産大臣、大分責められておられるようだけれども、内需が弱いから貿易摩擦が起こるのです。大蔵大臣、内需が弱いから税収だってしんどくなるのですよ。国内でいろいろと経済の動きが活発になった方が税金はふえますわな。なぜ十兆も消費が落ち込んだのですかね。  もう一つ、あわせて河本さん、民間住宅で申し上げますと、政府の当初見通しは金額で十六兆四千億、実績の見込みでは十五兆五千億に落ち込んでおる。約一兆円、民間住宅は落ち込みました。名目で八・五の見通しが、実績では六・五。実質では四・三民間住宅を伸ばすと思っておられたのが、実績見込みではたったの〇・九です。先ほど談合問題で大手業者ダムのことを言いましたけれども、いま町の中小の建設業者は本当に青息吐息です。なぜ住宅がこんなに、十六兆四千億が十五兆五千億と一兆円も落ち込んだのか。四・三の伸びが〇・九になったのか。  ついでに、民間の設備投資も伺っておきたいのです。政府の当初見通しは、民間の設備投資四十一兆八千億、実績の見込みは残念ながら三十九兆四千億、二兆四千億円落ち込みました。ここで二兆四千億なんて簡単に言いますけれども、これは莫大な落ち込みなんですよね。実質では七・三伸ばすというのが、実績では二・四の伸びにとどまっておる。  この消費と民間住宅、設備投資、私は具体的に当初見通しと実績見込みを数字を挙げて申し上げたわけですが、経企庁長官、これは何でこんなことになったのですかね。総理、後でもう一遍まとめてお答えいただかなければならない。というのは、五十七年度は内需中心でいきますよと総理が張り切っていらっしゃるのはいいけれども、この反省がなければ、同じ失敗をまたことしやるということを申し上げたいから、私は詳しいことを申し上げておるのです。河本さん、お答えいただきたい。
  26. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま、消費、住宅、投資、この三つの分野で数字を挙げて御説明がございました。  消費が相当落ち込んでおるということは、先ほど来私が答弁をしたとおりでございますが、住宅の落ち込みも、政府の当初見込みよりも、ほぼいま御指摘の数字見当落ち込んでおると思います。この理由は、主として所得が伸びないが価格が上がった、一言で言えばこういう背景だと思います。それから投資につきましては、全体として約三兆ほど落ち込んでおるではないか、こういう御指摘がございましたが、これを分析いたしますと、大企業はほとんど計画どおり進んでおると思います。落ち込んだ三兆近いこの投資は、ほとんど全部中小企業関係である。結局、消費が落ち込む、それから住宅が落ち込むということになりますと、この二つの分野はいずれも中小企業と表裏一体の関係にある分野でございますので、中小企業の活力が非常にそがれる、したがって投資が伸びない、こういう状態でございます。
  27. 矢野絢也

    矢野委員 総理、いまの経企庁長官の御答弁は大事なことをおっしゃっているのですよ。消費が伸びなかったのは雇用者所得の伸び悩みにある、こうおっしゃったのです。去年はここでは、物価が安定すれば消費が伸びるのです、こう総理は言っておられた。結果は、雇用者所得が伸びなかったから消費が伸びなかったのだといまお答えになった。これは私、率直な御反省だと思う。住宅だって、所得が伸びないのに住宅価格が上がる、だから住宅がふえなかったという意味の御答弁があった。設備投資も、大企業は大体計画どおりいっておるけれども、中小企業がうまくいってない。中小企業というのは、消費と一番つながりが深いのですよ。これは後ほどまた詳しく申し上げます。去年のこの見通しと実績の食い違い、この反省というのは非常に大事だと私は思うのですよ、総理。  そこで、伺いたいのです。今度は総理に伺いたいのですけれども、五十六年度で消費は十兆円減ってしまった。名目では二・九%落ち込んでしまった。実質では三二%落ち込んでしまったのです。それをことし、五十七年度は、去年の実績によれば百四十七兆円であったのを百六十兆円に伸ばそうと、こうあなたはおっしゃっているのでしょう〇十三兆伸ばすのですよ、去年十兆減ったのを。名目で去年は二・九%落ち込んだのが、今度は八・六%伸ばそうとおっしゃっているのです。実質で去年は三・一%落ち込んだのが、三・九%ほど伸ばすとおっしゃっている。私も消費は伸びてほしいのです。でなければえらいことになる。しかし、去年のこの惨たんたるありさまから、ことしこんな、百四十七兆を百六十兆の消費にするのだ、実質で三・九%伸ばしてみせるのだ、これは一体どういう根拠があるのでしょうか、総理。これは願望ですか、希望的観測ですか、何の根拠もないお話ですか。根拠と確信をひとつ総理総理にもたまにはしゃべらしてあげてくださいよ。
  28. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先にちょっと私が最近の数字の動きを申し上げたいと思いますが、五十六年度の雇用者所得が予定よりも非常に落ち込んだということは、これは一言で申しますと、景気の回復がおくれた、こういうことだと思います。五十七年度につきましては、後半、日本経済は相当回復の方向に行くであろう、こういう想定をいたしております。そして、この雇用者所得全体の伸びは、五十六年度当初計画ほどは伸びませんが、五十六年度の実績よりは相当上回るであろう、こういう数字を根拠にいたしております。必要とあらば、いま政府委員もおりますから、その計算の根拠をお示ししたいと思います。
  29. 矢野絢也

    矢野委員 少なくとも五十六年度実績よりも雇用者所得は伸びる、これは本当にありがたいことで、相当大幅な春闘のベースアップでも考えておられるのですか。何かそれとも、いやだいやだとおっしゃっているけれども、所得減税をばんとやるのか。どのようにしてこれは雇用者所得が伸びるのでしょうか、政府委員からお答えいただきましよう。
  30. 井川博

    ○井川政府委員 雇用者所得全体といたしましては、五十六年度が対前年比七・八%アップ、五十七年度は八・六%アップと見ておるわけでございます。しかし、それには雇用者の増というのがございます。雇用者の増が五十六年度は一・五%、五十七年度が一・六%でございますので、一人当たり雇用者所得ということになりますと、五十六年度が六・二%、五十七年度が六・九%ということになるわけでございます。ただし、これは一人当たり雇用者所得、いわば所得全体の問題でございます。いま先生お話しになりました春闘云々というのは、それらの中で所定内給与を対象にしたものでございますが、これが全体の半分でございます。そのほかに、時間外手当、ボーナス等々というのがございまして全体の所得ということになっておるわけでございまして、六・二から六・九、必ずしも春闘の数字ではございません。所得全体として、景気が上向くのに応じて伸びていく、こういう想定をいたしておるわけでございます。
  31. 矢野絢也

    矢野委員 一人当たり六・二が六・九に伸びるであろうという観測を示されただけであって、根拠は一つも示していらっしゃらない。これは後ほどまた詳しく聞きます。  今度はひとつ総理に答えてもらいましょう。  民間住宅が約一兆円去年は落ち込んでしまった。名目で二・一%落ち込んだ。実質で三・四%落ち込んだ。これは当初見通しと実績見込みのギャップです。それを五十七年度は、去年の十五兆五千億から十七兆七千億に二兆二千億も民間住宅をふやすのだ、ふえるのだ、名目で一四・三%ふえて、実質で一〇・四%ふえるのだ、これはどう考えても私は納得できませんね。毎年百五十万戸水準でずっと住宅がきたわけですけれども、一昨年、五十五年度に一挙に百二十万戸台に落ち込んだのです。百五十万戸が百二十万戸台に落ち込んで、五十六年度、去年は百十万戸台への落ち込みが大体間違いない、確実だ。  総理、一戸建て住宅とマンションを合わせた分譲住宅の売れ残り、在庫が、いま全国で十万戸あるのです。つくってしまって、売れない。売れ残りが十万戸あるのですよ。一戸当たり二千万円と、単純な計算でいきましょう。十万戸の売れ残り、ストックというのは約二兆円です。民間の建設業者、マンション業者がせっせせっせとつくって、十万戸売れ残っている。二千万円平均で計算すると、約二兆円ストックがあるのですよ。つまり、それだけ建設業者は在庫を抱えている。最近の新聞を見てください。物すごいですな、分譲住宅の広告。あれは、売れ残っておるから一生懸命売ろうと思って広告しておられるのですよね。二兆円の資金がいま寝てしまっているのですよ、民間住宅は。売れない。  そういう在庫を一方に持ちながら、十五兆五千億の去年の実績見込みを、五十七年度は十七兆七千億、二兆二千億もふやすのだ、これは手品でも使うのですかな、総理。どういう根拠でそんなに住宅建設がことし、五十七年度ふえるとおっしゃるのですか、総理。  なぜこれを言うかといいますと、消費と住宅と設備投資は、五十七年度経済の成長を支える大事な柱でしょう、内需中心でいくとおっしゃっているのだから。内需中心が失敗したら、また貿易に力が入ってしまって外国から憎まれる。何としてでも内需中心でことしの経済はやっていかなければいかぬ。消費は、いま何だかんだおっしゃっているけれども、どう考えてもふえるという見通しはつかぬ。せめて民間住宅はどうかといえば、いまのような調子です。内需中心経済成長にならなかったら、これまた不景気が長引きまして、また税収が減りまして、大蔵大臣、えらいことになりますね。五十六年度経済、五十七年度経済というものをもっとまじめに考える必要があるという意味で、細かい数字を挙げて申し上げている。  去年に比べて、五十七年度、住宅は二兆二千億円ふやすのだ、名目で一四・三%、実質一〇・四%ふやすのだ、ふえるのだ。片一方で二兆円の在庫があるのだ。どういうわけでふえるのですか、総理。今度は総理、ひとつたまには答えてくださいよ。
  32. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来私に対しても御質問がございましたが、物価が予想以上に安定的に推移したのに消費が伸びない、これは特に雇用者所得が伸びないからだという御指摘がございました。  確かにそのとおりでございまして、その原因は、景気の回復が期待に反して非常に緩慢であった、停滞をした、特に中小企業が非常に不振であった、また、冷夏の影響等で北海道その他の地域におきまして深刻な打撃をこうむった、それが消費の減退にもつながった。いろいろな悪条件がございました。  しかし、今年度は、OECD等の報告を見ておりましても、年度の後半には、先進工業国を初めとして世界の景気も徐々に回復をするだろう、明るい展望もある。また、一番日本経済に影響を持っておりますアメリカの景気の回復も後半には期待ができる。こういうような対外的な要因もございますし、政府も、昨年の反省に立ちまして、何とか景気の回復をもう少し促進をしたい、内需に特に力を入れたい、そういうような観点から努力をしておるわけでありますが、物価が非常に安定的に推移いたしております関係から、きわめて、この一、二カ月の動向を見ておりますと、徐々ではありますけれども、消費も上昇傾向にございます。私は、これを確かなものに今後していく必要がある、こう考えております。  なお、内需振興のために、矢野さんは住宅の問題にもっともっと力を入れるべきだ、こういう御指摘、そのとおりでございます。  五十七年度予算におきましても、政府においてもその点に特に配慮をして、現在のような状況下においてできるだけのことをしたいということでやっております。たとえば、住宅関係の税制の面におきましても工夫をこらしております。買いかえの住宅等につきましても、税制上特別な特例を開いたりしておるわけでございます。また、住宅金融公庫の融資につきましても、その金利の引き下げをやるとか、いろいろ努力をしておるわけでございますが、矢野さんが御指摘になっておりますことは、その根本の、住宅を取得する所得の伸び、能力がなければ、幾ら住宅対策を講じてもいかぬじゃないか、こういうことをおっしゃっておるのではないだろうか、こう思いますが、そういう点につきましても政府としても最善の努力を払ってまいりたい、こう思っております。
  33. 矢野絢也

    矢野委員 国民の所得を伸ばさなければ消費もふえないし住宅も伸びない、それを次に言おうと思ったら、いま先に総理お答えになったわけなんだけれども国民の所得をふやす、そのためにはどうしたらいいかということをもうちょっと考えなければいかぬと思うのですよ。  総理は、五十七年度経済は少しはよくなっていくから、だから消費も伸びるだろうし住宅もふえるだろう、これは論理の逆立ちになっておるわけで、五十七年度経済がよくなるかどうかを判断するために、私は、消費はどうなるのか、あるいは住宅はどうなるんだということを聞いているわけです。それを逆に、ことしは少しはよくなるから消費もふえるだろう、住宅もふえるだろうじゃ、これは理屈にならぬ。まあぼちぼち詰めましょう。  経企庁長官に先ほど住宅の問題を伺いましたね。もう一つあわせて、住宅の問題と民間設備投資、大企業は大体計画どおりだけれども、中小企業は落ち込んでおる、うまくいってない。確かにそのとおりで、ことしは何とか三十九兆四千億、これを、五十六年度の実績見込み三十九兆四千億を五十七年度は四十三兆五千億、約四兆円設備投資をふやす、名目で一〇・五%、実質で七・七%設備投資を伸ばす、こう経済見通し、計画を立てておられる。  先ほど住宅のことで、片っ方で二兆円も在庫を抱えながら、売れ残りを持ちながら、二兆二千億も住宅をふやして、一〇・四%も実質でふやすなんて、そんな手品みたいなことができますかと私は伺いました。設備投資も同様のことですね。住宅と設備投資、専門的立場からひとつ、なぜ去年が落ち込んでことしはふえるんだ、どういう条件がどう変わったのだということをもう少しお答えください、住宅と設備投資について。
  34. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 住宅政策につきましては建設大臣お答えになるのがよろしかろうかと思いますが、経済全体の立場から総括的な点を若干申し上げてみたいと思います。  今回の予算で、政府は相当思い切った住宅政策を決めております。たとえば住宅金融政策ども、現時点で考えられる措置は全部採用した、このように私どもも判断をしておりますし、それから住宅の半分は建てかえでございますので、中古住宅政策につきましても、これまた相当前進するような配慮が加えられております。また、土地政策につきましても、あらゆる角度から検討が加えられておりまして、そういう観点から私は住宅は相当伸びると期待をしておるのですが、民間と政府との住宅建設の見込みの違いは、民間の平均は大体百十五万戸見当でございます。政府は百三十万戸でありますが、民間の見通しが出ましたのはいずれも十一月から十二月の前半でございまして、政府の住宅政策が決まる前に出ておりまして、そういう点に若干の見通しの違いがあるのではないか、このように考えております。  それから、設備投資の面でございますが、これは先ほど、中小企業の設備投資が伸びない、その背景は消費とそれから住宅の不振にあるということも申し上げましたが、もう一つつけ加えて申し上げますと、やはりアメリカの現在の高金利、とれが日本の金融政策を非常にやりにくくしております。公定歩合を何回か下げましたけれども、しかし思うように長期金利が下げられない。ほかにも理由はございますが、やはりその最大の背景はアメリカの高金利にある。したがいまして、私どもも、雇用者所得がある程度伸びるということを期待いたしますと同時に、アメリカの金利政策が、世界全体の経済を考えてもう少し弾力的に進めてもらいたい、こういうことを強く期待をしておるところでございます。
  35. 矢野絢也

    矢野委員 雇用者所得が伸び悩んでおった、ことしは何とか少しはよくなるのじゃないかという希望を込めておっしゃっておるようでありますけれども勤労者の所得が伸び悩んでおる、特に中小企業の勤労者の所得が伸び悩んでおる、これは統計上明らかです。中小企業の勤労者の所得と申しましょうか、可処分所得と申しましょうか、実収入と申しましょうか、落ち込んでおる。この議論は、もう政府の方で雇用者所得の伸び悩みという形で認めていらっしゃるわけですから、細かい数字を挙げて言いません。  大蔵大臣、所得が伸び悩んでいるところへ持ってきて、税金だけふえておるわけなんです。雇用者所得も伸び悩む、税金だけふえる。私は先ほど消費は大丈夫かしらということをくどく伺っておるわけでありますけれども、消費が伸び悩んだのは雇用者所得の伸び悩みであるとお認めになっておる。その雇用者所得、国民の所得、そこへさらに大蔵省がふところに手を突っ込んで、えげつない、税金まで巻き上げよう、所得税の増税をしておるわけではありませんと大蔵大臣はおっしゃるかしらぬけれども、ここで私が理屈を並べなくても、五年間も所得税減税を見送れば事実上の増税になっておるということは、もう議論しなくったって、大蔵大臣はおわかりになっていると思うのです。  せんだって、大蔵省の歳入明細の発表がありましたけれども、去年の税制改革の増税分は別にしまして、自然増収の四兆一千二百二十億ですか、そのうち所得税の自然増収が一兆八千九百八十億、法人税は一兆二千五百三十億、これに相続税の増加分を加えますと、直接税の自然増収は約三兆三千三百億、こんなことになっておるわけです。自然増収全体の八二・六%が直接税の自然増収、特に所得税の自然増収は全体の四九・一%、所得税の自然増収は全体の自然増収の半分ということですな。  そこで、所得税の自然増収の中でサラリーマンの給与所得、源泉所得税の自然増収は五十六年当初に比べますと一三・一%伸びておる。サラリーマンに対して減税を見送ったためにどれだけしわ寄せがいっておるかということは、この数字からも明らかだと思う。そしてまた、経済見通しで予定しておられる一人当たりの雇用者所得の伸びは六・九だと先ほどもお答えがありましたね。源泉所得税の方は一三・一%もふえる、所得の方は六・九しかふえないのに。これだって危ないものですよ。後でまた申し上げますけれども、六・九伸びるか伸びぬかわかりゃせぬ。そこへ持ってきて、所得税の方は一三・一%もまたふんだくろうという。  所得税の自然増収に占める源泉所得税の自然増収の割合というのは六七・六%、これはサラリーマンへの実質増税になっておるということを大蔵大臣、まずお認めになりますか。
  36. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実質増税というのはどういうふうにとらえるか、要するに税額全体として源泉所得税の比重がふえておるという点から考えれば、そういう見方もあろうかと思います。しかし問題は、所得の伸びた比率よりも税金の比率の方が高くなるというのは、これは超過累進税をとっている国においてはどこでもそうでございます。  たとえば、三百万円の給与所得者を標準家庭にして、仮に一〇%月給が伸びた、三十万円ふえたといたしますと、月給は一〇%で三十万しかふえないが、税金は四万七千円ふえますから十数%ふえたことになる。しかし、そうすれば実際は手取りが少なくなったかというとそうじゃなくして、月給は三十万円ふえるわけですから、税金は約四万七千円、まあ五万円ぐらいふえるとしても、二十五万円ぐらいは余分に残るわけですから、率だけでふえたからと言われましても、そうはなかなかいかない。  ただ問題は、これは一千万円ぐらいの階層になりますと、仮に一割ふえて百万円ふえたと思ったら、税額だけで四十四万円取られちゃいますから、物価の値上がり等から見るとかなりの重税感が出るということは言えるだろう。これは日本の税率構造が非常に急進的な超過累進税型であるというところから、月給が一割ふえても十数%、二割ふえたら三〇%も税額がふえる、階層によって違いますが、そういう傾向に出ていることは事実でございますが、中身は必ずしもその比率だけ痛めつけられているわけではない。高額所得者の方はきついですよ。しかし、一千万円以下の場合は必ずしもそうではない。  むしろ問題は、物価の問題なんです。せめて物価だけが、幸いにことしは安定していることがわれわれ本当にありがたいと思っておるのです。去年のいまごろは、春闘でともかくいっぱい取らなければならぬ、政府は六%台の物価ということを言っておきながら七・八にもなりそうじゃないか、けしからぬ、実質賃金が目減りしたと言って、去年はさんざん国会でずいぶん私も攻撃を受けました。ことしは幸いに、去年の春闘で七・六ですか七・七ですか取ったら、物価は三・九ぐらいまで下がっちゃって、ことしはけしからぬ、けしからぬという声がないのはせめてもの幸いだ、そう思っているわけでございます。
  37. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵大臣、余りしゃべらぬ方がいいと思うのですよ。本当に何だか問題発言ばかりありますよ、あなたの発言は。私もひとつ冷静に、あなたの発言は非常に問題だということで二、三点指摘したいと思いますけれどもね。  要するにあなたの言いたいことは、月給のふえた実額以上に税金を取ろうと言っているわけじゃない、何ぼか残るわけだから文句言うな、簡単に言えばそういうことだ。いや、そう聞こえますよ。月給のふえた分全部税金で持っていくわけじゃないんだ、税金は累進課税で少しふえた、いま三十万円ふえた人でも五万何ぼとおっしゃったですかね。それで残るんだから、不公平、不公平と言うなと言わんばかりのせりふですけれども、それは詭弁というものですよ。やはりそれは、一様にどの職業の方も、物価が上がる、その物価の値上がりに対応して所得がふえているのですよ。その所得のふえ方に対して、どういう割合で税金を取られているかということが問題なんですよ。そうでしょう。  たとえば、一人当たり平均の税金の推移ということで、五十二年度と五十五年度とで比べてみましょうか。  給与所得者は五十二年は税金が十一万七千円、五十五年は十七万四千円、五万七千円税金がふえた。伸び率は四八・七%。営業の所得者の五十二年の税金十二万五千円、五十五年は十五万四千円で増額は二万九千円。給与所得者は五万七千円税金がふえた。営業所得者は二万九千円しかふえていない。農業経営者は五十二年は五万六千円、五十五年は八万円、増額が二万四千円。この取られている税金の増額分、ふえた分からいっても、給与所得者は五十二年より五万七千円、これは実額の面でも一番大きいのです。ふえたパーセンテージでいっても給与所得者は四八・七%、営業所得者は二三・二%というふうに違う。  ですから、給料がふえた、それを全部税金に持っていくわけじゃないのだから文句言うなというような論理は余り通用しない、本当のことを言いまして。給料がふえたといったって、年々物価も上がっておる、実質所得というのはふえていない。いま私が申し上げたのは、給与所得者はほかの所得者に比べて不公平な扱いになっておる。所得減税を見送られた結果、累進課税制度というものが高い税率が適用されるから、いままで以上に高いパーセンテージで税金を取られるという仕組みになっておる。それはしかし、あなたはその中から多少残るからいいじゃないかとおっしゃるかしらぬけれども、ほかの所得者に比べてまず不公平と違いますかということ、これが第一点。  それから、何か実質収入の問題で、去年はえらい攻められたけれども少しは楽になりましたみたいな気楽なことをおっしゃる。ちょうどこれから、そのことであなたにさんざん文句つけようと思っておったのですよ。  先ほどの第一点はいいですな。勤労、営業、農業、こういう所得者に対しての実額面とパーセンテージの面での不公平はどうしてくれるんだということ、これはあなたちゃんと答えてください。  もう一つは、世帯というのは、分類しますと、勤労者世帯、それから一般世帯とこう二つある。勤労者世帯は全世帯の六六%、個人企業が大半を占める一般世帯、これは三四%、こうなっているわけですけれども勤労者世帯の実収入は昨年の十月まで春闘の賃上げを下回っていますよ。実質で見ると、パーセントではマイナスとかあるいはちょっと伸びたぐらいの感じ、横ばい、マイナス、微増です。実質の可処分所得で申し上げると、四月、五月ぐらいはプラスだったけれども、後ずっと今日に至るまで勤労者世帯はマイナスですわ。個人企業が大半を占める一般世帯の消費支出、これは五十五年、一昨年の十一月以降五十六年の十月まで、つまり今日まで連続大幅のマイナスです。去年は攻撃されましたけれども、大分うまくなりましたからやれやれですなんていう気楽なせりふは、これは問題発言です。そんな認識じゃ困る。勤労者世帯は、実質可処分所得は、四月、五月は例外として、依然としてずっとマイナスが続いているのです。一般世帯も、消費支出は一昨年の十一月から連続の大幅マイナスなんです。どう思いますか。先ほどのと、私、二点申し上げておる。
  38. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 前の方の給与所得者と他所得者との不公平の問題、これは恐らく、国税庁の民間給与の実態及び源泉所得税の課税の実績で推計したあの表でおっしゃっているのかと思いますが、私もそれによって御説明を申し上げます。  確かに、昭和五十二年対五十五年の場合を見ますと、給与所得にかかわる所得税額というものの伸び率は、給与所得者が一七三、申告している人が一五七、そしてこの内訳は、農業所得が八七とか営業所得が一四五、その他の人が一八〇、こうなっております。  それで、これが五十二年対五十七年で見ますと大体とんとん。給与所得者が二三七・四、申告所得税の方も二三六・四ということですから大体同じぐらい。ただ内訳になるとむらがある。内訳で、農業所得者の場合が一四〇、営業所得が二三〇、その他の所得の方はぐんとふえて二八一とこうなっていますが、これは先ほどもお話があったと思いますけれども、要するに事業所得者というのは、仮にかなりもうかってきますとみんな法人成りになってしまうわけですよ。営業所得者というのは、その辺の八百屋でも呉服屋でも小間物屋でもみんな給与所得者なんだ、事業所得者じゃない。もうからないうちはいいのですよ。もうかってくると給与所得者になってしまう。最近は、仮に医師所得といって医者の所得が非常に高いということで、五千万円以上は特別に五二%以上経費を見ないというように法律が変わったものですから、したがって、一億、二億、三億とかいう売り上げの方は、ほとんど医療法人になるかあるいは何かリース会社でもこしらえて、青色申告等であるいは奥さんその他全部給与所得者にしてしまうかというようなことで、そういう面で所得の率の高い人、もう一千万円を超えますとどんどん給与所得者に転向していくという傾向があることも事実でございます。これは節税ということなんでしょう。そういうような観点からだけ見て、事業所得者の方が伸び方が低いじゃないかと言われましても、そこらはそういうところに問題があります。  それから、農業所得の場合は、これは米の値段が三年据え置きとか、特に去年は二年間の冷害というようなことで減収というようなものがありますから、全体として農業所得はふえているはずがない。これは全体としては減っておるわけでございます。したがって、これも毎月の失業者の移動というようなものを見れば、農業所得から何十万人他のサービス業に移ったとか、製造業に移ったとかと、毎月月報に出ています。こういうものはみんな給与所得者に転向しているというような点もございます。したがって、農家所得が伸びないからといって——中には落ちこぼし等がないとは申しません。ないとは申しませんが、全体的に見れば、別にそこで不正なものが行われているというふうには私は考えていない。(矢野委員「不正ということを言っているわけじゃないよ」と呼ぶ)そうそう、何か妥当性のないことがいっぱい行われているものではないというふうに思っております。  営業所得者の場合は、いま私が言ったようなことでして、個人営業というものは、これは国税庁で調べてくればわかりますが、いわゆる一人法人みたいなものが先ほど言ったようにどんどんふえているというのも実態でございますので……。
  39. 矢野絢也

    矢野委員 実質可処分所得の方はどうですか。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実質可処分所得、いま申しますが、いずれにしても、私が先ほど申しましたのは、要するに累進課税構造という構造を持っておりますと、所得がふえても一律三割しか税金を取らないのだということになれば、それは所得が五百万ふえようが一千万ふえようが、一律三割ですから、アップ率以上に税率はふえません。しかし、日本はある段階から、一割から始まって一割五分、二割、二割五分、主割、三割五分、七割五分までいってしまうわけですから、したがって、七割五分ぐらいの人は月給が百万円上がれば七十五万円取られてしまうということになるので、これはもう何とも、日本のように超累進構造がいいかどうか。これは私は、長い間課税最低限の据え置きの問題がありますが、その問題と含めまして、この累進構造の中身というものについては、いずれ所得税全体の見直しをするときには一遍見直さなければならぬのじゃないかという気持ちは持っております。  それから、私が言ったのは、要するに実質賃金目減りという問題が、少なくとも税金については、いま例示的に申し上げましたように、そう起こっていない。  それから、支出が減ったという問題ですね。これはいろいろあると私は思うのです。いろいろあると思いますが、普通ならば物価が安定したのだから、物価が安定すれば支出が伸びたっていいじゃないか、われわれもそれを期待しておったわけです。ところが、そのわりに支出が伸びないというのも事実なんです。これは一つは、雇用者所得が春闘と同じように全部右へならえにならなかったということも一つあるでしょう。あるでしょうが、消費節約ムードといいますか、ともかくこれは一年間ぐらいのうちに石油が約一割近いものが節約された。これはまた恐るべき、恐るべきというか大変な出来事でありまして、それによって日本はこの苦境から脱出できているわけですから、アメリカやイギリスなどと違って、非常にみんなインフレと大失業に悩んでいる中で何とかやっていられるというのは、石油の節約を一割やった、それが貿易黒字になったという副作用もございます。ございますが、石油だけならいいんだけれども、やはりテレビもあれば、洋服もあれば、何もあれば、みんないろいろ持っておる。やはりもったいないという気持ちがかなり近ごろしみ通ってまいりまして、資源のない日本としては、まだ着れるんじゃないかというようなことが家庭の中まで——会社だけ節約して、家庭へ行けば月給が上がったのだからということで普通の消費が行われるということじゃなくて、そういう節約ムードが家庭までつながったということも、全体から見れば、数字的にはどれぐらいのことになるのか、私よくわかりませんが、かなりの影響を消費支出については持っているんじゃないかというように思います。  これから先は企画庁の分野でございますから、その程度にさせてもらいます。
  41. 矢野絢也

    矢野委員 非常に饒舌をふるわれたという感じでございますが、私の質問には少しも答えていただいてない。私は、税の自然増収の中で源泉所得税の割合が非常に大きいですな、雇用者所得の一人当たりの伸び六・九%を大幅に上回る源泉所得税の自然増、一三・一%増、財政再建のための重要な財源である税収、その大部分をサラリーマンの税金が支えておるな、しかも、そのサラリーマンの税金は、所得の伸びよりももっと大きなパーセンテージで取られておりますなと。それに対してああだ、こうだとおっしゃったから、そういうことをおっしゃるならということで、今度はいろいろな所得の方々の間の不公平ということを指摘したのですよ。そしてまた、実質可処分所得とか消費支出、勤労世帯、一般世帯と比べてふえてませんな、減ってますなと、僕はそれだけのてとを伺っただけなんです。  それに対して関係のない、八百屋さんがどうだ、お医者さんがどうだと。私は何も農業所得者が不正を働いているなんて一つも言ってない。要するに勤労者、サラリーマンの所得税は五年間も減税見送りで、一方では物価が上がっておる。実質収入はふえない。その中で名目収入だけふえるわけだから、税金分はいままで以上に大きな負担を強いられておるということをさっきから私は言っておるのですよ。この事実、一言でいいですわ、ほかの話をされてはかなわぬ。この事実を認めますか、認めませんか。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは給与所得者ばかりではございません。所得税におきましては最高税率が七五%ですから、住民税と両方で最高は九三%。したがって、八千万円からの人は百万円上がれば九十三万円が税金になる。一〇%しか月給が上がらなくても、仮に八千万の人が八百万上がったとすれば、一〇%しか所得がふえなくても税額は九三%にふえるということになりますから、それは超過累進税の中ではそういうことが言えます。そしてまた、給与所得というのは大きなシェアを持っていますから、その中で大きな支えになっておるということも事実でございます。
  43. 矢野絢也

    矢野委員 サラリーマンに対する所得税減税で御迷惑をかけておるという認識があるのかないのか、それをもう一遍言ってください。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは御迷惑……(矢野委員「しようがないとでもおっしゃるのですか」と呼ぶ)御迷惑という言葉が適当かどうかわかりませんが、私としては、やはりそういう税率構造がそうなっている以上、税率構造を直さなければ仕方のないことでございまして、全部、所得が幾ら上がっても二〇%とか三〇%しか所得税は取らないということになれば、所得が上がっても税額も同じ比率でしか上がらない。超過累進税が非常に急カーブであるということは事実ですから、この状態がずっと昔、昔といっても数年前に決めたことであって、これだけ所得水準が上がってきたんだから、課税最低限と、要するに税率の区分、この区分を据え置いているということは、私は、いつまでも据え置くことはできないだろうということを言っておるわけです。  そこで問題は、結局サラリーマンに御迷惑をかけています、御迷惑という——サラリーマンといいましても、全部の人がこれはお金を出し合って、ある一つのルールのもとで国家財政を維持しておるわけですから、それが給与所得の方にその重みが強いということであれば、将来の問題としてこれは私は検討の余地はないとは言っておらないわけです。
  45. 矢野絢也

    矢野委員 要するに、長々とお話しになって、率直にお認めなさったようななさらないような、最後のせりふは大体お認めになったわけだけれども。  総理、こういうわけですね。お聞きのような消費とかあるいは住宅とか設備投資とか、それを支える個人の所得、雇用者所得あるいはそれにかかわってくる税金の問題、これ以外に社会保険の負担等もあるわけですよね。これは二けたのアップになっているのですよね。これで本当に五十七年度は内需中心、その柱である消費が伸びるとあなたはまだ確信しておられますか。実質可処分所得は、税金だとか二けたを超える社会保険費の負担だとか、つまり非消費支出の増大によって、つまり物を買うために使えるお金が押しつぶされそうに減ってきておる。いまわれわれ、あなた方に大型所得税減税をやれ、こう要求しておるのです。できません、財源がないと毎日お答えになっておる。減税に踏み切ろうとされない。とにかくせっかくつくった予算だから、じっとここはこういうふうにしてほおかぶりでがまんして、こう思っていらっしゃるように思いますね。  しかし総理、大事なことは、経済の見通しは、幾らあなたがそこで説明しておられても、悪いのです。予想されるように消費も民間住宅も設備投資も伸びそうもないのです。ましてや財政が景気を持ち上げるというような力も、これは残念ながらないのですよね。昔はそういう力もあった。消費も住宅も設備投資も財政も力がない、経済の見通しが暗い、この予算をじっと変えないでいくんだ、こう言っておられても、その予算を支えている税収が、こんなに経済の見通しが悪いということでは税収が減ってくるんです。私たちが所得税減税をやれ、福祉文教をふやせと言っているのも、ええかっこうして言っているのではないんです。そのようにして内需を拡大しなければ税収も確保できませんよ、あなたがしがみついてこれが正しいと思っておるこの予算も破綻してしまいますよということを私たちは申し上げておるんです。この場で何とか言い抜けたって、それはだめなんです。  大蔵大臣がいつも言っておられる、経済は生き物だ、生き物という言葉を逃げ口上に使っておられるけれども、私は逆に使いましょう。生き物なら生き物らしく、これが元気が出るような手だてを講じなければ、本当に経済というのはよくならない。だから所得減税もやろう、住宅に対するもっと強力な手だても講じましょう、福祉文教もふやしましょうということを申し上げておる。これは何もええかっこうだけで言っているのではないのですよ。あなた方がおつくりになる、政治に責任を持っておられるこの予算が歳入欠陥にならないようにするために、そして一方では、不公正が是正され、中小企業も国民もゆとりができるような対策をやろうじゃありませんかということを先ほどから申し上げておるんですよ。何も私たちはメンツで減税をやれとか、そういうことを言っているのではないです。その方が経済がよくなる。どうでしょうか、総理
  46. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 矢野さんがおっしゃっておるお気持ち、これは私も痛いほどよく感じ取っております。ただ、経済の見通し、経済運営についての考え方、これは先ほど来、私並びに経済企画庁長官と矢野さんとの御意見の間には、残念ながら見通しが違う面がございます。私どもは、この五十七年度予算は、現在与えられた条件の中であらゆる工夫をこらし、また自由民主党とも十分調整もし、これが最善最良の予算である、こういうことで御提案を申し上げております。また、これをやることによって、経済成長も雇用も物価も、そして税収も何とか目標どおり進められる、こういうことでいっておるわけであります。しかし、それに対して矢野さんが、そうでない角度からいろいろ御心配いただいておるということは私も非常にありがたいことであり、よく承っておくわけでございます。今後、御提案申し上げておる予算執行の面におきまして最善を尽くしてまいりたい、そして国民の皆さんに責任を果たしていきたい、こう思っています。
  47. 矢野絢也

    矢野委員 総理が私と河本さんのやりとりを聞いておられて、見通しに食い違いがある、しかし、政府の見通しどおりに何とかこれは実現するんだ、こうおっしゃっておるわけですが、本当にそうあってほしいと思います。ここで私、あなたをやっつけたからといって少しもうれしいわけじゃないのであって、本当に経済がよくなり、その結果税収もふえ、大蔵大臣ももう少し筋の通ったことが言えるような財政状況になった方がいいのです。さっきから聞いておると、詭弁の連続だ、失礼だけれども。  なぜ河本さんと私の五十七年度の見通しが違ってくるか。それは私、五十六年度の見通しと実績見込みを対比しながら、これだけ落ち込んだんですなと数字で申し上げましたね。これだけ去年落ち込んだものがことしはこうふえる、食い違いを私は強調しているんじゃないですよ。この食い違いは、どのようにしてどういう根拠で埋まるんですかということを私はさっきから聞いているんです。食い違いがあるといって私、何もここで力んでいるわけじゃないんです。この食い違いはどうしたら埋まるんですか、何か埋まる根拠がことしあるんですか、去年あれだけ落ち込んでおって。それに対しては、雇用者所得が少しはふえるとか残業手当もふえるとか、少しは経済もよくなるだろうとかいう御答弁だったんだけれども、それは単なる見通しの違いというよりも、その背景についての、経済状況についての認識の違いだと私は思うのですよ。  大蔵大臣、大蔵省がおつくりになった予算ですから、総理としてはこれが一番正しいのだと、恐らく渡辺さん、総理を大分説得されてそう思い込ましておられるに違いないと思うのだけれども、それは総理としてそう思い込むのも無理はない、自分の内閣でつくった予算だから。大事なことは、経済全般の動きに目をつぶってしまってはだめだ、予算だけがすべてじゃない。経済に目をつぶってしまうと、税収減という形でとんでもないしっぺ返しを食らうということは去年でよくわかっているじゃありませんか。  どうでしょう。私たちは、大型の所得減税、不公平税制の是正の徹底、福祉文教関係予算の確保、住宅建設の促進など景気対策の充実、それらの財源を生み出すための骨まで削る徹底した行政改革、協力しますよ、総理。防衛予算についても、異常突出しておりますからこれはちょっと削ろう、こういう考えを申し上げておるわけであります。特にこの中で、所得税減税に踏み切る決意はありませんか。大蔵大臣、ああだ、こうだと言っておられるけれども、やはりサラリーマンに対するいまの課税方式は適当でない、将来是正の必要があるという認識を回りくどい言い方で述べておられた。そこで回りくどく言わなくたって、聞いているサラリーマンの方が実感で一番よくわかっているんですよ。月給袋を見たら一番わかるのです。大型の所得減税をひとつやりませんか、総理。  それで、何とかひとつ経済内需中心で、そして仁徳天皇じゃないけれども、古い言葉だが、民のかまどに煙が立って初めてお上も潤う、それまでは税金を取らない。取らないとは、そんなことはあなたに言いませんよ。いま税金は必要でしょう。仁徳天皇のまねを全部せいとは言わぬけれども財政栄えて国民が泣くというような発想でなく、まず国民を豊かにする、暮らしをもう少しめんどうを見る、そういった中から税の自然増収という形で内需拡大、経済の活発という形で法人税や所得税がふえていく、こういう方法を何とかひとっことし、去年も失敗したんだからやれませんか、大型の所得減税総理のお考えを聞きたいと思います。
  48. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 矢野さんが端的におっしゃいましたが、財政が立て直しができても、そのために国民経済が沈没して国民生活がこれ以上苦しくなってはいけない、こういうことで、政府は財政再建に固執しておるのではないか、こだわっておるのではないか、こういう意味合いのことをおっしゃった。先ほど来お話がありますように、給与所得に対する課税の水準が、課税最低限の五年間の据え置きや税率構造等もそのままになっておりますから、確かに結果的に増税というような感じに相なっておりますことは私も承知をいたしております。それをいつまでも固定をしておるということは、したがって適当ではない、こう考えますが、御承知のように、このままに財政の現状を放置いたしますと、これはわれわれの時代はいいとしても、次の世代に対して大変な重荷をしょわせることになる。したがいまして、私は、財政再建はこの際目標どおり国民の皆さんの御理解を得、国会の御協力をいただいて五十九年までに特例公債からの脱出をしたい、そして、そういう条件の中でどうやっていまの所得税減税等をやるか、これが一千億や二千億ということではおっしゃるとおり効果がないと思います。一兆円ということになると、それは相当大きな財源というものが必要でございます。  私どもは、将来は別といたしまして、五十七年度予算の編成に当たりましては、あらゆる工夫をいたしたわけでございます。歳出歳入についても思い切った見直しをいたしました。この実質的な歳出の一般会計における伸び率も一・八と、これは昭和三十年以来の超緊縮予算、また公債に対する依存率も二六から二一%というぐあいに着実にやってまいりました。しかし、そういう中で一兆円に及ぶような大型所得税減税というようなことは、これはなかなかできない、このように私は率直に申し上げまして、将来の問題として、そういう減税ができるような状況を何とか早くつくりたいという努力を政府としてもやってまいるわけでございますから、こういう点を国民の皆さんにも御理解をいただき、御協力をお願いをしたいというのが私の率直な考えでございます。
  49. 矢野絢也

    矢野委員 私の質問財政再建はどうでもいいからとにかく景気対策をやれ、二者択一的な形で問題提起をしているわけじゃないのですよ。財政再建をするためにも税収を確保しなくちゃならぬ。そのためには去年のような、後で赤字国債を追加発行するというようなことにならないように、つまり税収が予定よりも減っちゃってというようなことにならないようにするためにも内需拡大ということが大事だ。その大きな一つの柱として所得税減税ということを申し上げておる。しかもそれは、財源がないないとおっしゃいますけれども、こうやって膨大な予算書つくってしまって、つくってしまってから財源ないというのはあたりまえですわ、それは歳入と歳出とちゃんとつじつまを合わせてあるのだから。  むしろ言いたいのは、予算をつくる前に、本当に所得税減税のための財源を生み出す御努力が、失礼でございますけれども第二臨調任せという感じがしますよ。たとえば中央官庁の統廃合の問題だとか国鉄の赤字の問題、薬漬けの医療行政の問題、お医者さんの不公平税制の問題、何も第二臨調がつくってこなくたって、そんなもの初めから総理わかっているじゃありませんか、大きなところは。確かにゼロシーリングで伸び率は抑えた、歳出規模は抑えた、そういう意味では御努力されたと思いますよ。しかし、その抑え方が、一番国民が疑問に思っておるいわゆる三Kの赤字とかというところにメスを加えないで、第二臨調の第一次答申のいわばつまみ食いだけをして、弱い者いじめのつまり福祉文教の切り捨てという形で第二臨調の答申を活用なさったにすぎないじゃありませんか。本格答申を待ってからやるんだとおっしゃるかしらぬけれども、くどいようだけれども、そんな本格答申なんか待たなくったって、何にどう手をつければ財源が出てくる、むだはどこにあるかはみんな知っていることではありませんか。だから、財源がないんじゃない、そういう形で骨まで削る、むだの節約をして財源をつくらなかったから所得減税ができない、こういうことだと思うのですよ。  しかも、所得減税ができない、内需拡大の適切な手が打てない、その結果、またあなたがしがみついておるこの財政再建もおかしくなるんじゃありませんか。財政再建やるためにも、骨まで削る行政改革をやって、福祉文教、景気対策には重点的に予算の配分をするというような発想がなぜこの五十七年度予算編成の前にとれなかったか。ゼロシーリングできましたなんて、これは、こんなもの本当の意味の財源づくり、まじめなやり方とは言えません。歳出規模を縮めたという意味においては評価するけれども、やり方については、これはおざなりだと言わざるを得ませんよ。御苦労なさったことは私は認めます。もっとメスを加えるところがたくさんあった。総理、御存じだったのになぜやらなかったのですか。財源はないのではない、つくらなかった。この五十七年度予算だってずいぶんむだがたくさんある。それを削ることによって所得減税ができる、内需拡大ができる、御心配なさっておる歳入欠陥も何とか防ぐことができる、こういうことを申し上げているのです。もう一遍御所感を伺いたいと思います。
  50. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 矢野さんがおっしゃっておりますことは、私よく理解できます。できますが、しかし、いまの行財政改革にいたしましても、一挙にすべて大問題が解決をするものではない。大きな問題であればあるほど、長年にわたってそういうことになっておりますから、それを一つ一つ私は解決をしていかなければならない、こう考えております。したがって、三Kの問題等につきましても、矢野さんの御指摘のとおり私どももこれはぜひやらなければいけない、こう考えております。  したがいまして、先ほども申し上げましたように、所得税大型減税という問題は、私は、これは将来のぜひやらにゃいかぬことであろう、こう思いますので、それに対する条件整備に全力を尽くして当たっていきたい。その中で特にいまの行政改革、それによって基本的に財源を生み出す、そういうことで三Kの問題をひとつ重点的に取り上げろという御主張には私は全く同感でございまして、そういう方向で努力をいたします。
  51. 矢野絢也

    矢野委員 五十六年度予算、これは補正予算で三千七百五十億の赤字国債追加発行というようなえらいことになっておるわけだけれども、まだこれ以上赤字が出るんじゃないか、赤字というか税収減があるんではないか。一説には六千億歳入欠陥があるとか、どうとかこうとか心配されていますけれども、大蔵大臣、どうでしょうか。五十六年度税収の見通しの問題、まだこれ以上出るんじゃないでしょうか。
  52. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十六年度の問題につきましては、物品税、印紙税等の落ち込み等を見まして適正な補正を行ったわけでございます。われわれといたしましては、まあこれで大体いいと思っておりますが、委細の問題については、非常に専門的な問題でございますから、私はこれでいけると思っておりますが、主税局長から説明させます。
  53. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 お答えいたします。  いままでは低調な傾向を続けておりますが、十一月末までのところでまだ四六%でございます。昨年に比べますと四ポイント以上開いております。ただ、いままでのところ、業種のいろいろなばらつき、回復のおくれも一緒になっておりますが、やはり物価の予想外の低さになったということも反映した分が相当あると思います。それから法人税では、延納が昨年に入っちゃってことしに入らなかったとかいろいろあります。それから所得税では、昨年の申告が悪かったものですから、それによる予定納税が低い、その種のものがずっとございます。  今後どうなるかは、経済の回復にかかわりますけれども、増税の効果はまたあらわれる面があります。それからあと、法人税が三月決算が大口でございまして、これが法人税の三割を占めています。したがって、この三割を占める法人税がどうなるか、これは五月にならぬとわからぬわけです。これはいろいろなデータをとりながらずっと計算をやっておるのですが、非常に不確定要因が大きいことは事実です。しかし、われわれとしては最大の努力をして見積もっておるということでございます。取り込みをやったという五十三年度の改正のために、非常に少ない税収の段階で大きな部分を見積もらなければいかぬ。それから申告所得税が、三月の申告、これが大きなウエートを占めますので、この辺がどうなるかというのがポイントでございます。  しかし、われわれとしては、できるだけの資料で最大限の努力をやっておりますが、そういう意味で、これは歳出のように確定的な予算を決めるという法的性格でなくて見積もりでございますけれども、それでいいかげんとは思いません。最大の努力をやって、私は、補正後で、それが見積もられたとおりに入ることを期待しておる……(矢野委員「期待ですか」と呼ぶ)それが入ると私は思っておりますが、これはやはり経済に対して、税法というのは法律主義でございますから、租税法律主義でそれを執行するわすですから、課税の強化をして目的達成するというものではございません。しかし、われわれとしては最大の努力で見積もったものであるということを申し上げます。
  54. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  55. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢野絢也君
  56. 矢野絢也

    矢野委員 答弁が先だ。
  57. 栗原祐幸

  58. 始関伊平

    始関国務大臣 先ほど矢野委員お示しの資料は、調査いたしましたところ、約十年前に合理化委員会で作成したものであることがわかりました。これは、業者希望を取りまとめたものであるとのことでありますが、このような資料が作成されましたことはまことに遺憾に存じます。  業界に厳重に注意いたしますとともに、現在入札制度の合理化対策について中央建設業審議会で審議していただいておりますので、その結果を待って速やかに対策を確立いたしたいと存じております。
  59. 矢野絢也

    矢野委員 私がお示しした資料については、十年前に合理化委員会で作成したということをお認めになりました。ただ、これは業者希望を取りまとめたものだとおっしゃいましたけれども建設省業者希望どおりのことを発注するのですか。冗談じゃないですよ。談合資料だと私は言っているのです。
  60. 川本正知

    川本政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおりでございまして、私どもが調べました点におきましては、ダム工事といいますのは大変大規模な工事になりますので、業者希望というのが殺到します。そういったことで、当時の合理化委員会というところで各業者から希望を聴取いたしましてそれを一覧表にした、そういうかっこうと聞いております。
  61. 矢野絢也

    矢野委員 談合の事実を認めますか、どうですか。
  62. 川本正知

    川本政府委員 談合したという事実は認めておりません、私どもとして。
  63. 矢野絢也

    矢野委員 なぜですか。委員長、これはだめですよ、こんなの。
  64. 始関伊平

    始関国務大臣 ダム工事につきましては、非常に規模が大きい、一社だけではやりかねる場合が多いようでございまして、これこれの工事についてジョイントを組んでひとつ申し出てもらいたいというようなこともいたしておるようでございますから、そこで希望を取りまとめる云々のことが起こってきたと思います。  なお、先ほどの矢野委員の御提供になりました資料と、その後の建設省が現在工事をやらせておるものがその中に二十社近くあるわけでございますが、それとを比べてみますと、完全に希望どおりと合致しておるのがございますむそれから一部変わっておるのがある、全然違っておるのがございますので、いまお話しのように、これが直ちに談合の証拠であるということを了承するわけにもまいらぬかと思っております。
  65. 矢野絢也

    矢野委員 発注された工事のうち、いまお認めになった十年前に作成された資料のとおりに、十九件のうち十八件が一致しているのですよ。先ほども申し上げたとおり、公共事業というのは国の予算です、国民税金です。この予算委員会において予算を審議するに当たって、これはきわめて重大な問題なんです。  委員長、これ以上私は質問を続けられませんな。
  66. 始関伊平

    始関国務大臣 先ほどからの件でございますが、談合の疑いを持たれるような資料が作成されたことについてまことに遺憾である、申しわけない、こう申したのでございますが、これはとりあえずの調査の結果でございますので、なお建設省といたしましても引き続いて調査を続行いたしまして、しかるべき機会に御報告申し上げたい、かように存じておりますので、御了承をいただきたいと思います。
  67. 矢野絢也

    矢野委員 さらに今後調査を続行するというお話でございます。また、談合の疑いがあるということもお認めになった上で遺憾の意を表されたということのようでございますから、これは委員長、先ほど言いましたとおりきわめて重大な問題で、予算執行上の問題でもありますから、この問題は保留させていただくということで、本委員会においても、建設省に対してあるいは関係各省に対して厳正な調査を御指示いただきたい。それを踏まえて、政府の統一見解等も委員会として御要求をいただきたい。また、今後の調査の成り行きによりましては、私、先ほどからあえて個人名は避けてまいっておりますけれども、詳しい事情をお伺いしなくてはならないことが今後生ずると思います。そういったことも踏まえて、委員長において善処を願いたい。委員長の御見解を承りたいと思います。
  68. 栗原祐幸

    栗原委員長 この問題、きわめて重大な御指摘でございますので、理事会で検討いたしまして、適切な処置を講じたい、こう考えております。
  69. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、次の質問に移ります。  先ほど歳入欠陥の問題でお尋ねをして、まあ何とかなるのじゃないかみたいなお話があったわけですけれども、これは非常に重大な問題だと思うのですね。  総理は二兆円の赤字国債の減額ということを公約として昨年は掲げられた。もう三千七百五十億赤字国債追加発行で公約は破れた。しかも、これは大変恐縮だけれども、通産大臣、安倍さん、あなたは、何かマスコミによると税収が一兆円程度不足するおそれありとおっしゃったそうですな。どうでしょう、あなた何かえらいそんな発言しているのだけれども、大蔵省は大丈夫だと言っているけれども、ついでだ、前、政調会長だったのだから、知らぬとは言わせないよ。
  70. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 どこのマスコミでそういうことを言ったか知りませんが、とにかくいまの経済情勢が非常に厳しいということでありますし、これからの経済運営しっかりやらないと、さらに税収欠陥が出てくる可能性は客観的にあるわけですから、これからやはり経済運営に努力をして、内需の振興を図って、税収が落ち込まないようにやらなければならぬ、こういうふうに思っております。
  71. 矢野絢也

    矢野委員 福田元総理も、もし今年度税収が不足すれば政治責任の問題であるなんて、ずいぶん物騒なことをおっしゃっているわけだけれども総理、これ、どうでしょう。五十六年度の税収についてこれ以上税収が落ち込むということになれば、重大な政治問題だと私も思うのですけれども、そういうことないでしょうか。もし起こったら政治責任どうなりますか、総理。いや総理だ、これは。総理のあれを聞いている。
  72. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十六年度は、二兆円の国債の減額を目標としてがんばってきたのは事実でございます。しかしながら、御承知のとおり景気の立ちおくれ、物価の異常な安定、鎮静化、そういうような点から考えまして、物品税、印紙税等の収入が落ち込んだことも事実でございます。一方、史上最大と言われる災害が発生をいたしまして、約一兆円程度の被害というような思いがけない問題が起きました。五十六年度予算は、もともと増税と歳出カットというようなことでかなり切り詰めた予算でございますから、その中でさらに不用額を大幅に出して吸収するだけの余力がないという現実に照らしまして、われわれといたしましてはやはりその経済の実態に合わせて無理のないように補正を組んだ方がいいという結論に達しまして、国債三千七百五十億円の追加発行と、それから災害復旧のための建設国債の追加発行、合計六千三百億円を発行することにしたわけでございます。
  73. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 五十六年度補正予算を組むに当たりまして、ただいま大蔵大臣から申し上げましたように、せっかく特例公債発行の減額二兆円をやったわけでございますけれども、それを三千七百五十億円、税収の思わざる減収のために追加発行せざるを得なかった、これはまことに残念なことでございます。しかし、私は、これによって五十九年特例公債依存の体質を脱却するという方針には変わりがございません。それを貫くために、全努力を傾けてまいる所存でございます。
  74. 矢野絢也

    矢野委員 五十六年度税収が落ち込みますと、また五十七年度の税収にも重大な影響が出てくるという意味でお尋ねしたわけですが、ともあれ行政改革も骨まで削るような行政改革をひとつやっていただきまして、五十九年度赤字国債発行ゼロ、これはやっていただきたいと思いますね。  あわせて、午前中お願いいたしましたように、一兆円減税というものは、国民生活を守る、社会的な不公正を是正する、サラリーマンばかりいじめるというようなこんな悪いやり方はひとつ改めてという意味もあります。とともに、内需を拡大して景気をよくするということで、一兆円減税、引き続きわが党同僚議員がこの問題について要求をし、質問をするつもりでございますので、この問題はこれで終わります。  福祉の問題、これは中期展望では八・八%伸ばすという御予定だったのですね、大蔵大臣。ことしは八・八%伸ばす、そう書いてあります。ところが、実際は二・八%しか伸びてない。これは戦後最低の福祉の伸びですね。文教も中期展望では五・五%伸ばす、こういう予定であったのが二・六%。中期展望よりも大幅に落ち込んでおりますね。ところが、防衛費に限って言いますと、中期展望では六・二%伸ばすんだというお考えだったのが、何と七・八%伸びておる。防衛は中期展望よりも大幅に伸びておる。福祉とか文教は中期展望で予定した金額よりもがくんと減っておる。総理、失礼ですけれども予算はその内閣の顔であると言われますが、五十七年度予算は、福祉文教を大幅に削り込んでそして防衛を伸ばした、こういうことになると思うのです。  そこで、福祉文教は突っ込んだ御質問をしたいと思っておりましたが、先ほどいろいろなことで手間取りました。福祉文教問題については、寝たきりのおじいさんの問題、体の不自由な方々の問題、母と子供の御家庭の問題等々、大変な問題があるのです。これは同僚議員の質問に譲りたいと思います。  そこで、いま申し上げた防衛費が異常に突出しておる、これはわが党委員長もその削減を本会議において要求したわけでございますが、特に、この防衛費の伸びを削るという問題も大事ですけれども、中身がもっと重大だと私は思うのですね。その中身の問題で議論したいと思います。  一つは、後年度負担の問題がある。五十八年度以降に回される後年度負担は、防衛費に限って言えば一兆七千五百億、対前年比二九・七%もふえておる。この後年度負担は、簡単に言えばツケで買った分ですね。ことしの予算では金は出さないが注文だけしておく、払いはツケだ、来年だ、再来年だというやり方、これを後年度負担と言います。それが防衛費に関して申し上げますと、五十八年度には歳出予算になっていくものが八千六百億円もある。これだけで五十八年度予算の防衛費を対前年比六・一八%押し上げることになるのですね。  これはどうでしょう。現在のところはGNP一%を守る方針ですとおっしゃっていますが、五十八年度はこれは守れますか、GNP一%以内に防衛費を抑え込むということですね。現在のところと、前提つきで総理はおっしゃっていましたけれども、後年度負担、五十八年度は八千六百億円ツケが回ってきます。これだけで六・一八%ふえる。どうでしょう、これは。
  75. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十八年度は、守れます。
  76. 矢野絢也

    矢野委員 まさかそのとき大蔵大臣をやってないからだなんて気楽なつもりでおっしゃっているんじゃないでしょうな。どう考えたってこれは守れそうもない。残念ながら名目成長率が落ち込んでいますから、GNPは少なくなっていくというか伸び率が減っていくと、よけいにこれは一%を突破する危険性がある。  なかんずく、この内訳を見ますと、後年度負担、簡単に言えば、P3C対潜哨戒機、F15戦闘機、これがまた物すごい。それから戦車。戦車で申し上げるとこれは何ぼでしょう。二百四十六億ですね。これは七十二両。防衛庁長官、ことしの予算要求はゼロ。予算はことしはゼロで、それで二百四十六億円後年度負担に回しておられる。言っちゃ申しわけないけれども、こんないいかげんなやり方を大蔵省は認めた。これは本当にむちゃくちゃだ。それから、対潜哨戒機P3Cは何ぼだ。七台買う、ことしの予算で。八百五億。八百五億の買い物をするのに、ことしの予算に入れているのは、たったの九億一千六百万しか入れていない。それから、F15戦闘機を二十三台買う、ことしの予算で。これは二千四百七十七億かかる。これは一台大体百億ですね。これだけの買い物をするのに、ことしの予算では三十七億しか予算に出していない、あとは全部後のツケになっている。  私は、あえて突出部分の削減を求めるとともに、この戦車と対潜哨戒機、F15戦闘機、これはこんなに数が要らないのと違いますか。こんなべらぼうなやり方をすれば、ますます防衛費の後年度負担がふえる、ますます財政硬直化が起こる、こう思うのですけれども防衛庁長官、いかがですか。どうしてもこれは買わなくてはならないのですか。
  77. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 言うまでもなく、国の防衛は国家存立の基本ともいうべき重要な問題でございまして、今回の防衛予算は、わが国防衛のために必要最小限度のものであると考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。  なお、数字の問題につきましては、経理局長から補足説明をさせていただきます。
  78. 矢野絢也

    矢野委員 それはいいです。  総理に伺いますけれども、何か、周囲を海に囲まれた日本として、海洋国家にふさわしいハリネズミのような防衛計画のあり方に着手してほしい、こういうふうに九項目にわたって総理は指示された。  わが党も、憲法は守る、軍事大国化には反対、そして非核三原則は堅持する、こういう大前提を置いた上で、領土、領空、領海、この領域を保全するための一定の能力というものは憲法の範囲内である、こういう立場をとっているわけです。そして、こういう周囲を海に囲まれた日本ですから、本土に上陸を許してから本土決戦なんという発想はだめだ、四面を海に囲まれた日本は、水際で上陸や着陸を阻止する、領域内での撃退、こういう構想をわが党は新政策としてせんだって決定いたしました。これはあくまでも、平和日本が将来ともに平和であらねばならぬという立場から立案をしたものでございます。  総理もいま言うたようなことを指示なさっているわけで、一見何となく似ている感じもするんだけれども、よく調べてみたら、予算を見るとどうも似ていない感じもする。  さらに、この陸海空のバランスのあり方などは、日本独自の方針について研究してもらいたいとも指示されましたね。それから、防衛費は聖域ではなく、最も効率的な予算に努めてほしい、こんな御発言もなさったようなんですけれども、いずれにしても、海洋国家にふさわしい防衛のあり方というのは、どういう意味で総理はおっしゃったのですか、ひとつ御真意を聞かせてください。
  79. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま矢野さんからお話がございましたように、わが国は、四面海で囲まれております海洋国家でございます。そして、憲法並びに基本的な防衛政策によりまして、専守防衛に徹するというわが国の防衛政策がございます。したがいまして、私は、この専守防衛に徹するということ、そして海洋国家であるということ、こういう要素を踏まえて、それにふさわしい防衛体制を構築をするということを、防衛庁長官に対して専門的にひとつ掘り下げた検討を進めてほしい、その成果は、「防衛計画の大綱」の達成の過程でこれをその中に反映させてほしい、こういうことを指示いたしたわけでございます。  私は、そのことがわが国の地勢的な、また基本的防衛政策に合致した防衛体制であり、それによってわが国の抑止力を強めることができる、このように考えております。そういう点から、公明党さんの領土保全の防衛政策ということとは、いまお話もございましたが、相共通する考え方の上に立っておるものと思います。  それから、しからば五十七年度の予算を見ると、実態はどうも公明党、自分たちが考えているものとは違うようだ、こういうこともおっしゃっておりますが、御承知のように、政府は昭和五十一年に閣議決定をいたしましたところの「防衛計画の大綱」、これに沿いまして、現在着実に防衛計画を進めておるところでございます。これは、もう申し上げるまでもなく、わが国にとりまして必要最小限度の防衛力を整備しようとするものでございます。しかも、その根底には専守防衛に徹しようというものでございます。  したがいまして、私は、五三中業、五六中業等によりまして逐次着実にこれを達成をしていこうということで、その一環として、P3CであるとかF15であるとか、やはりそういうような正面装備、質の高い近代的な防衛体制というものをしませんと、古い兵器等を幾ら数多く積み上げても、これは防衛計画の志向いたしておりますところの抑止力の強化にはならない、このように考えておるからでございます。
  80. 矢野絢也

    矢野委員 わが党の領域保全の考え方といまの自衛隊の実態とは、かなり隔たりがあるのです。  総理が、海空重視という立場で指示されたという真意、これは実はまだはっきりわからないのですけれども、守るという立場から申し上げると、大きく分けて三つあるわけですね。遠いところで、遠方で防御する。それから領域内で防御する。つまり、領海、領空あるいはそれに近接する海域、水域で防御する。その最も典型的な例は、水際で防御する。これが二番目です。三番目は本土決戦。遠方で防御するというやり方、領域内で、特に水際で着上陸を阻止するというやり方、上陸を許してから本土決戦をするというこの三つがある、簡単に言えば。私どもは、この二番目の、領域内でこれを阻止することが大事だという立場をとっているわけですけれども、ところが総理、いまの自衛隊はそうなっていないのです。  たとえば、どうでしょう。海上自衛隊で申し上げましょうか。いろいろな船あるいは飛行機をお持ちでございますが、これはほとんど潜水艦向きの装備です、海上自衛隊は。着上陸阻止のために潜水艦をたたくということも一つの要素であるかと思いますけれども、本当は着上陸を阻止、総理の言う専守防衛が領域保全である、領域内撃退であると考えれば、潜水艦をやっつけるやつよりも、たとえば高速ミサイル艦とかというようなものの方がもっと有効なんですよ、海上自衛隊で言えば。  あるいは、陸上で言えば戦車。戦車をたくさん今度またお買いになるわけだけれども、戦車が有効に働くということは、簡単に言えば相手方が上陸をしてきたときに、それを迎え撃つというときに働くのでしょうけれども、この狭い日本で戦車が大活躍されるような状況があったのでは困る。本当は国民が迷惑だ。上陸をさせないということが一番大事なことです。そのためには、たとえば陸上自衛隊は戦車よりも対戦車ミサイル、この方がいいのです。それから、地対艦ミサイルをお持ちになった方がいい。何もそんなに距離の長いものでなくてもいい、距離の短いミサイルをお持ちになった方がいい。  航空自衛隊もいろいろな装備をなさっているようでありますけれども、F15、これは一番最新式のいい飛行機だとおっしゃっているようですけれども、本当に領域保全という立場から防空ということを考えるのであれば、これは防空ミサイルの方がもっと有効なんです。ベトナム戦争では、北ベトナムの地対空ミサイル、これは、アメリカ空軍が撃墜されたその全体の九二%に当たる九百九十機を北ベトナムの地対空ミサイルが撃墜しているのです。そして北ベトナムのミグ戦闘機は、米軍をたったの八十機しか撃墜していない。たったの八%、迎撃戦闘機は八%しか相手方をやっつけない。防空ミサイルは九二%の飛行機を撃墜しているのです。  第四次中東戦争でもそうです。アラブ側の防空システムが、ミサイルですね、七九%の八十一機を撃墜した、要撃戦闘機はたったの四機しか撃墜していないのです。  つまり、防空という立場から考えれば、F15というような、そんな御大層なものを持たなくても、防空ミサイルの方がまず安上がりです。それから、防空ミサイルは飛行場をつくらなくてもいいのです。それから、F15なんて、一遍故障したら修繕するのが大変だ。防空ミサイルは、それこそ生産も組み立ても、簡単とは言いませんけれども、F15に比べればはるかに簡単です。しかも、最近の防空ミサイル、地対空ミサイルあるいは地対艦ミサイルも含めて、全部移動式です。トレーラーの上に乗っかっている。したがって、相手方の第一次奇襲に対する抵抗力、抗堪性、これは抜群にあるわけですよ。F15なんて飛行場の上に乗っけてあって、奇襲でやられたら全部やられてしまって、あと防空能力ゼロというようなことになりかねない。  ですから、本当に四面海に囲まれたわが国の領域内での防御ということを考えるならば、海上自衛隊は、私はそんな潜水艦専門の装備をつくるよりも、相手方の輸送船団や護衛艦に対して脅威を与えるような、上陸を阻止できるような高速ミサイル艦、護衛艦は五千トンですけれども、高速ミサイル艦なんて百トンくらいのものでいいのです。ずっと安上がりで済みますよ。  陸上自衛隊も、言っちゃいかぬけれども、こけおどしと言うと怒られるかもわからぬけれども、そんな戦車をたくさんつくるよりも、対戦車ミサイル、あるいは相手方の上陸を阻止するための地対艦ミサイル、陸から船をねらえる、山陰からねらえる移動式の地対艦ミサイル。  あるいは航空自衛隊も、私は、F15を全部やめろとは言いません。それは、迎撃戦闘機も多少必要でしょう。しかし、こんなにたくさん、予算を硬直化させ、福祉文教を削るようなことまでしてふやす必要はない。防空ミサイル。しかも、総理の言うようにハリネズミみたいにしなくてもいいのです、防空ミサイルは。哨戒能力事前キャッチ能力というものがあれば、これは集中的にそれを配備すればいいわけですから、何も固定式の基地をつくる必要はないのです。  こういう方向に自衛隊を変えられるのが総理の言う専守防衛の趣旨にかなうのではないかと私は思いますが、いかがでございましょうか。
  81. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 専守防衛に徹するわが国として、しかも地勢的にも海洋国家である、それにふさわしい防衛体制を、こう考えました場合に、矢野さんのただいまお述べになりましたことは、大変示唆に富む御意見であると私は評価をいたしております。  それが全部そのとおりでいいかどうかはわかりませんが、これは専門的に掘り下げた検討をぜひやってほしい、こういうことで私は防衛庁長官に指示をいたしたところでございます。ただいまの御意見は、私、大変参考になったところでございます。  なお、防衛庁が実際にやっておりますことはこういうことであるということは、防衛庁長官から説明をいたさせます。
  82. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま総理からもお話がございましたように、総理の御指示を受けまして、防衛庁は早速鋭意研究を進めております。これからの作業の過程でまた御報告を申し上げますけれども、ただいま防衛庁がとりつつあることにつきまして、防衛庁の考え方を申し述べて御答弁にかえたいと思います。  公明党の御指摘をいただいております領域保全ということが、わが国に侵略が発生するような場合に、戦火が国土に及ばないよう、できるだけ洋上あるいは水際において阻止、排除すべきであるとの考え方であるといたしますならば、全く同意見でございます。  ただ、このためには、単一の、一つの装備システムに頼ることなく、それぞれの段階で対処するための縦深性のある防衛力が必要であると考えております。また、領域保全を全うするためにも、着上陸した侵略を早期に排除する防衛力が欠かせないところであり、これは抑止力の観点からも重要であると考えております。また、資源の多くを海外に依存しておりますわが国としては、わが国周辺海域における海上交通の安全確保を図ることはきわめて重要であると考えております。  したがいまして、防衛庁としては、このような基本的な考え方に基づきまして、P3C、戦車、F15のほか、御指摘の地対艦ミサイル、対戦車ミサイル、ミサイル艇、地対空ミサイル等ももとより重要であると認識をしておりまして、現在、これらの装備の整備を進め、あるいは研究開発等に着手することとしておるところでございます。
  83. 矢野絢也

    矢野委員 防衛に当たって三つの段階がある。遠方で防御する。領域で着上陸を阻止する、水際で撃退する。本土に上陸したものをやっつける。この三つのうち、私が申し上げたいことは、いまの自衛隊は二番目の領域内での着上陸阻止とか水際撃退の装備が全然貧弱で、そして遠方防御、遠いところで防御できるような能力を持つF15とか、遠いところの洋上で潜水艦を探してやっつけるという対潜哨戒機P3Cとか、そういうものばかりに力を入れておられるのは、これはおかしいじゃないですか、あるいはまた、この領域保全に力を入れないで、水際撃退に力を入れないで、戦車ばかりふやすというのもおかしいじゃありませんかということを言っているのであって、そちらを削って、水際撃退の方の、たとえば高速ミサイル艦とかあるいは地対空、地対艦の短距離のミサイルの開発であるとか、そういうものを買う予算に回しなさいということを申し上げているのであって、私が領域保全が大事だと言ったからといって、それはこれからまた買います、そんなことをしたらなおさらまた予算がふえてしようがないい。そんなことを言っているのじゃない。  私は、特に総理が、今後そういう望ましいあり方を考えなさい、こう御指示をなさった。であるならば、少なくとも後年度負担に莫大な借金を残すP3CとF15と戦車の契約はことしはひとつやめてもらって、そして領域保全、水際撃退に重点を置いた計画ができてから発注なさったらどうですか。計画もできないのにただどんどん既成事実をつくっていく、これは総理のお気持ちに反するやり方なんですよ。  それは、縦深性がなくちゃならない。立体的で、なくちゃならない。私が言っているのは、何もそのことすべてを否定しようと思いません。ただ、水際撃退、領域保全に重点を置いた装備を手厚くし、遠方防御とか本土決戦の装備は、もっと効果的な、たとえば防空ミサイルはF15よりももっと有効です、防空という立場から見れば。戦車をやっつけるなら対戦車ミサイルの方が有効だ。その方が安いのです。  どうでしょう。後年度負担の戦車とP3CとF15、これは発注取りやめを、総理、指示してください。あなたの意図に反していますよ、これは。いかがですか、総理計画をやめましょう、その計画を。
  84. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今年度の防衛予算は、今時点におきまして防衛大綱の水準にできるだけ早く到達をするための必要最小限度の予算として認められたものでございまして……(「だれが認めた」と呼ぶ者あり)総理の御判断によりまして認められたものでございますので、このままの姿で、できるだけ早く、一日も早く防衛の大綱の水準に到達するということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  85. 矢野絢也

    矢野委員 基本的に陸海空三軍を、攻撃的でない、相手に脅威を与えない、憲法に違反しない、そういう前提での装備の再編成をなさるべきである。総理がおっしゃる専守防衛というのは、いま申し上げた前提において国民の理解が得られるものであると思うのですよ。こんなF15とかP3Cとか、それはそれ自体あった方がよりベターだという理屈が防衛庁にあるかもわかりませんけれども、費用と効率の問題というのは防衛に当たってはやはり考えなくちゃならぬという意味で、私はそういう要求を申し上げたわけです。  時間もございませんから次に進みますけれども、この問題は、追ってさらに具体的に御質問を同僚議員がすると思います。  いわゆるシーレーンの問題です。総理、海上自衛隊は、かつては沿岸防御に力を入れます、こういう方針をとっておられた。いつの間にかシーレーンも守らなければいかぬなんということに海上自衛隊の任務自体が変わってきておる。資源がない国だからシーレーンも守らなくちゃいかぬという理屈があるのでしょうけれども、このシーレーンというのは、船団を防衛しながら、つまり駆逐艦その他いろんな船が周りを取り臨みながら、輸送船団を守りながら、船団護衛の形でいくのか。あるいは航路帯というもの全体を優勢を保つというやり方でいくのか。これは、船団護衛は無理だから航路帯、一千海里とおっしゃっているようだけれども、そこでの優勢を図る、こういうことのようですね。優勢を図るとは具体的にどういう意味ですか、防衛庁長官。航路帯におけるわが方の優勢を保つとは、一体どういうことを意味するのですか。
  86. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 大変具体的な問題でございますので、防衛局長から答弁させます。
  87. 塩田章

    ○塩田政府委員 ある海域におきまして優勢を図るという意味は、その海域、たとえばいまの御指摘問題点で言いますと、わが方の船舶が航行しておる、それを海上自衛隊が護衛しようとするその海域でございますが、その海域におきまして、ある時期、つまり船舶が航行しておる時期、安全に航行ができるようにその海域の優勢を図る。つまり、逆に言いますと、従前言われておりますような制海権の確保ということで、その辺の海全体を制圧するというような制海権の確保ということは、現在の、これは世界各国共通でございますが、各国の海軍力では考えられない。わが国の場合も、必要な時期に必要な海域を利用できるように優勢を確保しよう、そういう意味でございます。
  88. 矢野絢也

    矢野委員 必要な時期、必要な海域で優勢を保つということは、これは相手があっての話でありまして、相手がどういう能力のときにこちらがどれだけ持っていけばどういう優勢が保てるかというような議論に本来なるわけです。そういう具体的な想定も余りお詰めになっていらっしゃらない。  これは、もう時間がありませんから結論を急ぎますけれども、簡単に言えば、アメリカの極東における戦略というものを日本も何らかの形でお手伝いをしなくちゃならぬ。私も昨年アメリカへ行きましたときに、アメリカの国務省やペンタゴンは、私どもに、日本日本の手で守ってもらいたい、これが一つ。アメリカもいま手がいっぱいで、ヨーロッパ正面、中近東、大変なんだ、太平洋は、これはちょっとがらあきなんだ、その分日本にちょっと応援してもらいたい、協力してもらいたいなんて私どもにアメリカの人が言っていました。  私どもは、第一のお話の日本自身のことは、領域保全という任務に限定して、憲法の範囲内でこの任務を全うするための一定の能力というものは認めるという立場を公明党はとっているわけですけれども、いま政府がやろうとしているのは、そういう領域保全の方の、本当の水際撃退という能力については全然いいかげんで、弾薬の備蓄もないし、飛行場の抗堪性もないし、レーダーサイトもまるでまる裸の状態である。本当の日本の領域を守るという意味での装備は全くお粗末な状態にほうっておいて、そして航続距離の長い、潜水艦を探してやっつけるP3C対潜哨戒機、これはまさにアメリカの極東における肩がわりを自衛隊はやろうとしておるのであって、航路帯の優勢だとかシーレーンの防衛だというのは、これは単なる口実であると私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  89. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来申し上げております日本の海上護衛、航路帯の護衛等がアメリカの一環ではないかというような御趣旨のお尋ねのようでございますが、かねてから申し上げておりますように、昭和五十一年の「防衛計画の大綱」以来、日本といたしましては一貫してそういうことを申し上げておりまして、日本としてこれは必要最小限度の一つの防衛力整備の目標として一千海里程度の航路帯を守れるようにしたいということを申し上げております。それをまた受けまして、ガイドラインにおきましても、そういう計画のもとにいま共同の作戦計画を練っておるわけでございますが、決してアメリカ側がどこかへスイングするからその穴埋めといったようなことではなくて、これは日本本来のわれわれの防衛力整備目標として申し上げておることでございます。
  90. 矢野絢也

    矢野委員 日本本来の防衛力整備ということなら、そんなに百機もF15を買ったり百機以上もP3Cを買ったりすることをおやめになって、私が先ほど具体的に御提案を申し上げたような装備に改めるべきだと思うのです。大体、シーレーンを守ると言ったって、そんなことはできっこないですよ、大変申しわけない言い方だけれども。一定の時期に一定の海域において優勢を保つなんて、そんな抽象的なことで一機百億以上もするようなP3Cを百機も買われたんじゃたまったものじゃない。  第一、シーレーンを守る必要がないと言うと誤解があるかもわかりませんけれども日本にいろいろな物資を運んでくる船は、全部日本国籍の船とは限らないのです。外国の国籍の船も日本への貨物を積んでくるのです。まさか無差別にそんなものを撃沈するはずがない。あるいは、日本のタンカーであるといっても日本の荷物を積んでいるとは限らない。外国の荷物を積んでいる場合もある。あるいはまた、当然そういう船とか荷物には保険が掛かっておる。全部日本の保険会社だけに限っているとは限らない。つまり、海賊的にある日突然日本のシーレーンが、日本の船だけがねらわれるというようなことは、常識的に考えてそんなことはあり得ない。そうでしょう、総理。全部が全部日本の船で運んでいるわけじゃない。外国の船を、どこかの国がいきなりこれは日本向けだといって攻撃しますか。たとえ日本の船であっても、その荷物は日本とは限らない。というわけで、ある日突然海賊的なことが起こるとは限らないのです。もっと極端なことを言えば、たとえば石油で言えば、ペルシャ湾で何らかの事故があったときには、もうシーレーンもへったくれもないわけです。  ですから、本気にシーレーンの防衛だという議論は私は成り立たないし、本気で防衛庁が考えているとは思わない。本気で考えているなら、それにふさわしい具体的なシーレーン防衛の想定された状況に対する想定した能力というものを示していただきたい。そうじゃないのです。たとえば、極東で有事がもし万が一発生した。卑近な例で申し上げると、インド洋に第七艦隊が移動しておった。あわてて第七艦隊、たとえばミッドウェーが朝鮮半島の方へ戻らなくちゃならぬ。そのときに、いま一定の時期、一定の海域で優勢を保つと言っておられましたが、日本の対潜哨戒機がその海域を、ちゃんと潜水艦を探す、潜水艦をやっつける。いわば日本の航空自衛隊や日本の海上自衛隊は、結果として第七艦隊の露払いをやったり、あるいはまた護衛をやるという結果になりかねない。また、そういう効果を期待しているから、アメリカはP3CだとかあるいはF15をたくさん持てと要求しているのです。これはどうでしょう。そういうような有事のときに、たとえばの話です、第七艦隊が移動するときに、日本のP3CやF15がその一定の時期、一定の海域を優勢を保つための行動をとったことは、これは集団自衛権の発動になりませんか。
  91. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、第七艦隊が動いたから、あるいは動くから、そのために一定の海域を優勢を保つということ、また、そのために自衛隊を動かすということではございませんで、P3Cをお願いしておりますのも、先ほど来申し上げておりますように、日本の本来われわれが目指しております一千海里程度の航路帯の防衛ができるようにしたいというその目標に向かっての整備でございまして、それによりまして、おっしゃいますような第七艦隊のためのどうということを考えているわけではございません。
  92. 矢野絢也

    矢野委員 いわゆる極東有事の研究がいま進められようとしておるわけです。いま私が申し上げたような航続距離の長い、しかも対潜水艦用の装備あるいは迎撃戦闘機というよりも、むしろ艦隊、船団を直接支援する能力を持ったF15、こういうものは、幾らあなたがおうしゃっても、結果として集団自衛権の行使、憲法違反につながる危険性を持った装備であると私は言わざるを得ない。それはまたアメリカ側も強く御希望されておる。これは無理もないですよ。そういうものを日本がたくさん持ってくれたほどアメリカは楽になる。個別的自衛権だという名のもとで、日本の自主的判断だという名のもとで、結果的には共同作戦になり、集団自衛権の発動になり、憲法違反になる。  くどいようですけれども、本当に専守防衛という立場からは領域保全に任務を限定し、また、そのために効果のある、効き目のある、しかも抗堪性、つまり移動性がある、破壊されないという、安上がりであるという、そういった面での装備に再編成を、総理まじめに御検討をお願いしたいと思うのですが、もう一度総理の、この極東有事におけるわが国自衛隊のこういう装備を持った航空機の行動あるいは今後の装備についてのわが党の提案についての御見解を承ることにして、これを最後の御質問にしたいと思います。
  93. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、現在の「防衛計画の大綱」というのは憲法やわが国の防衛政策の基本に沿ったものでございまして、最小限度のものをやろう、しかもこれは、他の政策との整合性を見ながら、財政事情等も勘案しながらこれを着実にやろうということでございます。私は、防衛という問題は、これは他から押しつけられてやるべきものではなしに、国民的な合意、国民的な理解と支援の上に初めて国の防衛というものはできるという基本的な認識を持っておるものでございます。  そういう観点から、矢野さんがおっしゃった領域保全の考え方、また、私が申し上げる海洋国家、専守防衛というその基礎の上に立つわが国にふさわしい防衛力の整備、こういうものを専門的に掘り下げた検討を願って、これを防衛計画の今後の達成の中で反映さしていくという方針で取り組んでまいる考えであります。
  94. 矢野絢也

    矢野委員 私は、この安全保障問題、自衛隊の論争というものは、一定の能力を認めるという立場で、共通の土俵に立って、そして何が一番日本の安全にとって、日本の平和にとっていいものであるかというコンセンサスを得たい、こういう意味であえてこの問題を提起したわけでございます。さらに大事なことは、日本の安全のあり方ということについてもっと議論をしなくちゃなりません。それ以上に大事なことは、世界に対して核兵器の廃絶、軍縮を強く要望される。わが国政府が、六月に予定される国連軍縮総会に対して、本当に国民が納得するような平和戦略に基づいた行動をとられることを心より御要望申し上げまして、私の質問を終わります。  委員長、どうもありがとうございまし。
  95. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  96. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する内外の問題につきまして質問をいたしたいと思います。  まず、行政改革につきまして御質問をいたします。  今日の政治情勢の中で最も大切な一つ行政機構の改革であろうと存じます。そこで最初に総理にお尋ねをいたします。鈴木総理は、行政改革に政治生命をかけると約束されましたが、いまもそのお約束は変わりありませんか。
  97. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 行政改革財政の再建はわが国にとりまして、これは避けて通れない民族的な、国民的な課題である、私はこのように考えておりまして、これが達成のため私としては、不敏でありますけれども、全力を尽くして取り組んでまいりたい、こう考えております。
  98. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、増税なき財政再建でもあると私どもは受けとめております。一方から増税しながら借金を減らしたのでは、これは責任を転嫁するだけで、使う方の政府みずからが節約をしなさい、こういう命題であろうと存じます。したがって、増税なき財政再建でもあると私どもは受けとめておりますが、総理もそのようにお認めになられましょうか。
  99. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この行政改革、そして財政再建を達成するに当たりまして、納税者である国民の立場に立って考えていかなければならない、これを基本として踏まえております。納税者である国民の皆さんは、負担はこれ以上避けてもらいたい、そして納めたところの税金あるいは料金等はむだのないように効率的に使ってほしい、そして、いままでの国の借金はそういう努力の中でこれをなくするように努力してほしい、これが納税者である国民の皆さんの願いであろう、お気持ちであろう、こう思っております。それを踏まえまして私は今後におきましても行財政改革に努力をしてまいる、こういう決意でございます。
  100. 塚本三郎

    塚本委員 ですから、増税はせずに改革をするとお約束になりますかと重ねてお尋ねいたします。
  101. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま申し上げたように、納税者の心を心として、大型の、いわゆる一般消費税のような大型の増税、そういうようなことは毛頭念頭に置かずにやってまいる考えでございます。
  102. 塚本三郎

    塚本委員 まだしりが抜けておりますよ。増税はなくして、五十九年度までに赤字国債をなくする、こういうふうにお約束をいただきたいと思いますが、それはできませんか。
  103. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この増税なきという言葉ですね、どうも私は、国会におきましては昨年来、租税特別措置等は徹底的な見直しをすべきである、あるいは交際費課税等ももっと厳しくすべきである、こういう御意見がございました。ところが、たまたまそういう面に手をつける場合に、それも増税じゃないか、こういう御批判が一方において出てくるわけでございます。そういう点は国民の納得するような形で処理してまいらなければならない、私はこう思っております。
  104. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、新たなる税法に基づく増税はしない、しかし、枠の中における不公平等に手をつけることはいたし方がないというふうに受けとめてようございますか。
  105. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、現在の日本経済情勢が他国に比べていいという原因の一つには、当然、税で賄われるべきものを、不況からの脱出のために大量の国債を発行して公共投資をやったとかいろいろな原因があるわけです。したがって、現在の国債の発行された中には、当然、税をもって賄われるべきものを国債で肩がわりしたという現実もございます。したがって、将来の返還というような問題につきましては、一番いいのは、歳出カットが徹底して、その中から余剰財源を生み出すことができるとすれば、それが一番いいことです。  もう一つは、何といいましても自然増収の問題がございます。自然増収が非常に入って、そのためにその中から緩やかに返済ができるという問題がありましょう。これらの問題は二つとも重要な問題でございます。  しかしながら、今後の経済状況その他いろいろなことを考えてまいりますと、一切増税なしで完全な財政再建ができるかどうかという問題は、今後これらのどの道を選択するかというような問題との絡みでございますから、いまここで将来にわたって増税なしで、財政再建というのはどこまでを言うかの問題もございますけれども、中長期的に見れば、増税は一切なくして完全に財政再建ができるということをお約束するという状態では現在ない、私はそう思っております。
  106. 塚本三郎

    塚本委員 総理にお尋ねいたしますけれども、どこまでもというのではなくして、五十九年度で赤字国債をゼロにする。実は私ども民社党だけは他の党と違いまして、すでにそのことは、政府の力量からして無理であろう、したがって、六十年ないし六十年代初頭まで延ばさないと逆に不景気になって後のしりがくくれませんよと再三御注意申し上げたことを大臣は御承知のはずです。にもかかわらず、五十九年度でゼロにいたしますというふうにして突っ走っておいでになったから、ならば私たちも結構でございます。そして、臨時行政調査会も増税なき財政再建ならば全力を挙げて協力をいたしましょう。それがいま大臣がべらべらとおっしゃったようなことを並べたら、彼らはだまし討ちと受け取りますよ。君はそう言っておっても、受け取る方は違うのだ。  総理、法律の中におけるやりくりや、いままでもおやりになったことに対して、むしろ野党の私たちもまたこれを削りなさいと指摘しておいたものもあります。したがって、そのことを私は、いまの総理の明確な御回答でわかりました。しかしながら、新たなる法律をこしらえて、一般消費税のごときものでなくしてほかの問題でも、現行税制の中での増税はいたし方ありませんが、少なくとも五十九年までには増税なき財政再建に政治生命をかけますということを、総理、もう一度お約束していただけませんか、どうぞ。
  107. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど、一般消費税のような大衆増税、これは私は絶対に避けたいということを申し上げました。やはり第一は、行政の思い切った改革、それから財政の面における歳出の見直し、そういうようなことを最大限にやりまして、それによって財源を造成をして、それで特例公債の発行の減額をやっていく、これが基本でございます。それをいま私は、そういう方針で私は最善を尽くすということを申し上げておるわけでありまして、その点で御理解がいただけるのではないか、こう思います。
  108. 塚本三郎

    塚本委員 最善を尽くすというお約束をいただきました。  昨年の夏、第一回目の臨調の答申が出ました。これは彼らに言わせますと、行革の切り口をつくっただけだ、これからうみを出そうではないか。過日の放送討論会におきましても自民党の幹部の方から、いわばこれは前菜だけでございます、昨年の秋の臨調国会にお出しになったのは。私もそう思います。これから本格答申をなさろうといたしております。そのとき臨調から出されました、とりわけ三公社に対する答申等にいま全力を集中しておいでになります。六月ないし七月に出された答申に対しましては、責任を持って総理及び中曽根行管庁長官は法文化し、行政として実行いたしますとお約束できましょうか。
  109. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、昨年の施政方針演説で、この行財政改革を内閣の最重要政治課題と位置づけまして、そして、その際に民業と官業のあり方、民業でやれるものはできるだけこれを民業に移す、官業でなければできないものを除いてできるだけこれを民業に移して、民間の創意と工夫、努力によってやることが効率的であろう、親方日の丸という体質を抜けなければいけない、そういうようなことも申し上げました。また、中央と地方の行政の機能分担についても触れました。こういうことを受けて、臨調におきましても同様の方針を立てられていま努力をしていただいておる。私は、政府と臨調の間には基本的に方針なり考え方の差異というものはない、こう心得ております。  したがいまして、そういう三公社五現業等、いま申し上げたようなことを踏まえて、臨調から御答申をいただきました際には、これを私どもは十分尊重して実際の法案その他に立案、調整をいたしまして、そして、その御趣旨が生きるように国会にお諮りをしたい、こう思っております。
  110. 塚本三郎

    塚本委員 しかとお聞きしておきました。  御承知のとおり、いま日本経済は世界で最もすぐれた経済だと言われております。自動車にしろ鉄板にしろ、あるいはテレビにしろ、とうとうとして世界の企業に太刀打ちをして、すべてこれ勝者という立場に立つことができました。にもかかわらず、一体政府の事業と行政だけがどうしてこんな惨たんたる赤字財政になってしまったのでございましょうか。大蔵大臣に示したら、恐らく三十分ぐらい言いわけの御説明があろうと存じております。しかし、私は聞かなくても、そのこともそうだと一理あることは認めます。しかし、何といたしましても、すでに本年度末におきまして借金は八十二兆、一年間でいただきます政府の税収は、その半分以下であります。どこの企業に、どこの家庭に、二年から二年半以上の借金を食いつぶした家庭、企業があるでございましょうか。かくして、この利息は、すでに何度も大臣が叫んでおいでになりまするように、一日に百五十億円ずつ、毎日、三百六十五日支払われております。この惨たんたる政府の財政は、世界一すぐれた日本経済と世界一惨たんたる日本の政府財政とは、同じ日本人が運営しておる姿でしょうかと皮肉の一つも言いたいのであります。もうこれ以上税負担は耐えかねるというところから、土光さんも老骨にむちうってとみずから叫んで御努力いただいておるのです。そのときに増税というしりだけを抜けておいて、そうしてこれを改革するでは、やる気をなくしてしまわれると私は心配をいたしております。幸い、いま総理はしかとそのことをお約束をいただきましたので、私はもう一つだけ御決意を伺いたい。  いまのことは何とでもやりくりがつきます。問題は、五十九年度から六十年代の前半にかけてのいわゆる十年先、これが日本経済にとって決定的な命運を決めるときになろうと存じます。政府の計画どおりに達成されたとしても、借金の総計は百十兆と私は試算いたしております。利払いだけで七兆七千億、償還を入れたならば十五兆という、それこそ気の遠くなるような支出が計画どおりにいっても出てくるわけです。先ほどから矢野委員もあるいはまた多くの委員も、ここで防衛費の問題を取り上げました。二兆五千億であります。そのとき十五兆を超えるような借金の返済と利息に追われて、日本政府はやっていかれるでございましょうか。もちろん、そのときまで総理も大蔵大臣もその任においでにならないことは承知いたしております。しかしながら、一国の総理として、その目標に対してどう取り組むかの基本的、中期的戦略がなければならないと存じております。だからこそ、しり抜けばよくないと私は申し上げておるのです。基本的にその御信念のほどをもう一度伺いたい。
  111. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 全くおっしゃるとおり、私も同感でございます。それゆえにこそ、私はいまのうちに財政再建ということを行政改革を通じて達成をしなければならない。六十年から御承知のように特例公債の返済が始まるわけでございます。そういうようなことを考えて、いまそういうことをやると苦しいからといってこれを引き延ばした場合にはえらいことになるという認識、これは全くあなたと同じような考え方で、これに取り組んでおるのはそのゆえんでございます。
  112. 塚本三郎

    塚本委員 行政改革の問題はいわゆる小手先の問題ではなくして、特に政府がお金を使うときの、たとえば企業体なり公社なりのその体質の問題を論じなければなりません。その構造の問題を論じなければなりません。さらに、その制度の問題にメスを入れなかったら身動きができない状態であります。企業経営者に人事権がない、管理権がない、こんなことで企業運営をせよという方が、これはもともと無理ではないでしょうか。その基本的認識の上に立って臨調は、いま総理がいみじくも御指摘なさいましたように、第一には官と民との見直し。もはや、民業が競争して、自由に、そうしてりっぱに成長しておるとき、手足縛られた官業が民間の仕事と競争して勝てるわけがない。この点を三公社五現業にはっきりと認識と断を下すときがやってきたと私は思っております。小手先の問題じゃない。  もう一度申し上げまするけれども、体質の問題であり、構造の問題であり、制度の問題に切り込まなかったら、官と民との問題の解決ができない。このことが行政改革の根本であろうと思いますが、総理、いかがでしょう。
  113. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 各担当大臣から……。
  114. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、中曽根先生。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 塚本さんの考えに同感でありまして、きのうも江藤議員の御質問に対して、なぜ行財政調査会、行財政改革から財を抜いたかという御質問がございまして、そのときも、それは行政体質の改革が主であるからである、財政再建は、これは行政改革によって結果として生まれるものである、また行政改革を促す一つの機縁として存在するものである、本質はいわゆる統治機能の中の立法及び司法を除いたそれ全部が行政ですから、外交も福祉も教育も財政も含まれたその行政の体質の改革ということが主眼でありますと申し上げたので、あなたと同じ考えに立脚しています。  また、三公社五現業、特殊法人の改革についてはやはり自主自立、自己責任、これを重んじた方向に行かなければ簡素効率化はできないと考えております。
  116. 塚本三郎

    塚本委員 第二は、中央と地方との役割りの分担の明確化であります。  昭和十二年と記憶いたしておりますが、日支事変の最中に国の出先機関としてつくられたいわゆるブロック別の各局、まあ私は名古屋に所属いたしておりますけれども、昨年も取り上げてみました。  農林省がありながらどうして中部全体に農政局という、管轄するブロックの局が必要でしょうか。もちろん営林局のように実動現場部隊の作業は私は必要だと思います。しかし、農政という政を、各県には農地部長がおるじゃありませんか、農政部長がいるじゃありませんか。しかも、愛知県のごときは、仲谷知事の任命というよりも、農林大臣が農林省の役人を県に押しつけてきておるような出先の姿までとっておるじゃありませんか。  どうして名古屋に通産局という局が必要でしょうか。各県には商工部長がいるじゃありませんか。どうして東海医務局といういわゆるブロックが必要でしょうか。各県には衛生部長がいるじゃありませんか。もっと言いましょうか。切りがありません。  こんな状態ですから、国税や営林のように現場実動部隊に対してはあるいはもっとふやすことが必要であるかもしれません。しかし、政を行う中央官庁の出先機関がブロック別にその中二階をつくっておるということは、もはや、電話は即時通話であります。新幹線、飛行機を使えば日本じゅうどこへでも行き帰りができます。電話は半日待たなければ通じなかった昭和十二年、夜行で行かなければ名古屋、大阪まで届かなかった時代と違っておるのにかかわらず、どうしてその出先機関を置いておくことが必要でしょうか。やがて臨調におきましてはこの答申が出るでしょうけれども、この問題は臨調よりも政府御自身がみずからそのことを痛感しておいでにならなければおかしいと思うのです。  自分の手を切ることにちゅうちょされることは人情として認めます。しかし、このことはもはや余分の財政を食うだけではなく、知事さんはよう言いませんけれども、市長さんは黙っておりますけれども、本当は中二階は御免でございます、そのまま大臣のところへ行きたいんです、大臣のところなら議員先生方がすぐ御案内くださる、中二階がみんな遮蔽しているじゃありませんか。金を余分に食うだけではなく、むしろ業務をこれによって阻害しておると断定いたします。行管庁長官いかがでしょう。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は原則的に賛成でございます。  恐らくああいう中間的なブロック機関ができましたのは、昔は官選知事でありましたから、中央の威令が直ちに知事にも敏感に響いて行われた。しかし、新しい憲法になりまして地方自治の本旨というようなことで地方自治体の権限が膨張いたしまして、そういう結果、中央官庁は地方に対して不信感を持つとかあるいはある意味においては不安心感を持ちまして、それで自分の出先をタコの足のように全国に張りめぐらした結果が、そういうことになった一因でもあると思っています。  そこで、いま臨調におきまして、中央と地方との権限をいかに分けるかということを真剣に検討しております。しかし、地方の時代といって地方にいろいろなものが与えられても、まず地方がもっとしっかりして、責任を持って、そして住民に迷惑をかけないし、また自主自立で、簡素にして効率的な政府をつくっていただかなければだめであります。しかし、地方によっては、給与水準が中央よりはるかに高いというところもありますし、場所によっては忌まわしい事件が起きている例もございます。知事さんにおいても、そういう例がございました。そういうことを考えてみると、地方においてもここで考えてもらわなければならぬことがあるのでありまして、そういう改革が行われるときには、中央地方相ともに応じて新しいシステムに完全に責任を持つということが必要であると思っております。  しかし、いずれ臨調の答申が出てまいりますから、それを誠実に執行したいと思いますが、いまは塚本議員のお話を承りまして、そういう方向に出た場合に、民社党は賛成していただいて、いざ財務局がなくなるとか海運局がなくなるというときに、反対運動が出ないというふうに御協力いただくことは大変ありがたいことであると思っております。
  118. 塚本三郎

    塚本委員 長官、昨年も同じことを言われたんです。何回これを繰り返すんでしょうか。もう三年目ですよ、私はこれを取り上げているのは。私は八回ここでやっているのですから。その三回目にこんな同じことをおっしゃってみえる。少なくとも官民の問題は、民のことは御存じない政府の皆様方では無理だから臨調の答申を待とう、これはわかります。だけれども、官の問題そのものについては、外のいわゆる臨調の人たちよりも、政府皆様方の方が玄人だと思うのです。それを答申を待つとおっしゃっても、第二臨調、それは一番後回しなんです。あなた方がやってくださると期待しているんですよ。だから、来年また私はこの席に出るかどうかわかりませんけれども、同じことを言わないように、ひとつ十分に実行に着手するように強く希望を申し上げておきます。  行政改革につきましては、私はある責任者に聞きました。勢いが大切だと言うのです。時間を置いたならもうできなくなるよ。ここなんです、問題は。総理が政治生命をかけるとおっしゃったから、私も総理のところへ、自民党さん以上に協力しましょう。佐々木委員長も、土光さんのところまで飛んで行きました。命運をかけてやりましょうと約束しました。そしていま畳みかけるように、第二臨調は六月の答申を目指してその勢いを——マスコミも協力しておってくださる。国民もひいひい言っております、財政難で。この勢いに乗じてすべての問題を解決しなかったならば、一年、間を置いたら一〇〇%不可能になると彼らも見ておるでしょう。そのとき、政府の問題だけは、自分でやらなければならぬ問題だけは、第二臨調なんというようなことで三年目同じことをおっしゃったならば、がっかりしますよ。どうぞひとつ、私は優秀な行管庁長官の手腕をぜひこの一年のうちに生かしていただくことを強く希望いたしておきます。  三公社についてお尋ねいたします。  電電公社につきまして、いまは相当の利益を上げておられます。波風は立っておりません。年間千二百億ずつを国庫に納めるという体制ができたことは、おみごとであります。これは最も合理化が進み、労働組合もよく協力をしておるようであります。なればこそ利益を国に還元できたと、当局も労組も、その努力に対して私たちは認めております。もちろん、世界的にこの種の企業は、科学技術の進歩とともに合理化に乗りやすい宿命を持ち合わせていたことも、政府は当然だとお認めになっておられるでしょう。  そうかといって、電電公社でさえ数年先には行き詰まると専門家は見ております。先ほど申し上げましたように、構造及び制度がいまのうちに再検討されなければなりません。すなわち、独占企業であること、公社という半官業でありながら、利益を政府から要求されております。せっかく利益を出したら国に吸い上げられてしまうぞということになってしまったならば、そして給与の面におきましては、一生懸命成績を上げたところも、国の枠の中で身動きができないような状態に立っております。また、利益を吸い上げる初年度でありますからいいんですが、これはだんだんと利益を、努力するとまたよけいよこせ、こうなってくるのです。私も、実は減税財源にもう少し取ってやろうと計算してみたんです。恐らく大蔵大臣だって虎視たんたんとしておいでになるでしょう。利益を上げれば取られてしまうならば、もうこれは信賞必罰ないじゃないかということになりかねません。  したがって、この際は、これを一挙にどう解決するのか。民業にでも任して、株を渡して、そしてその金を政府にどっと吸い上げてみて減税財源に回すということも一つの方向ではないでしょうか。電電公社をどのようにこれから持っていこうとしておられるのか。これも臨調待ちでしょうか。行管庁長官、どうでしょう。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三公社五現業につきましては、いまのお話のように、臨調でいま最大の努力をしてその案をつくっておる最中でございますから、私がとやかく申し上げるのは差し控えたいと思いますが、先ほども指摘のように自己責任の原理、大体いままでは公共性と能率性との調和を目指してああいうものがつくられたわけでありますが、できた結果を見ると、その民の悪いところと官の悪いところと両方が出てきているという指摘が鋭く行われているわけです。  ですから、現状はどうしてもこれは改革しなければならぬところまで来ておりまして、電電につきましては、真藤総裁みずから内部を点検されて改革案を策定しているやに承っております。また、組合員の中におかれましても、自分でみずから改革案を御検討中であると聞いております。これらは非常にうれしい、ありがたい動きでございますが、せっかく臨調がいまやっている最中でございますから、それを見守りまして、答申をいただきました上は、よく検討して、そうして最大限に尊重して実行したいと思っております。
  120. 塚本三郎

    塚本委員 電話交換手の、聞くところによりますと五万人からの女子職員、どうしたんでしょうか。あるいはまた、国鉄と同じように、距離料金をやっていますね。東京は三分間十円、名古屋は三分間三百円、大阪は四百円、こういう計算の仕方というのは、国鉄ちょっとかわいそうだと思う、こういう点では。一本のケーブルが走れば、電波何千通と走ります。東京が一通話三分間十円ならば、名古屋ならば施設費だけだから十五円、大阪二十円、いかがでしょうか。二十倍の料金になっていますね。こういうような料金計算というものによって辛うじて電電公社は救われておるという見方は、ひがみでしょうか。  私は、電電公社のそういう問題についても、いまは利益を上げて国に貢献をし、労使が合理化に努力しておいでいただく最中でございますので、水を差すことは避けますけれども、この姿からして数年先には第二の国鉄になりますよという声を、私たちは襟を正して聞いていかなければいけない、こう提言いたしておきます。  次は専売公社でありますが、どうでしょうか。膨大な資産を抱えております。製品はもうこれ以上売れませんから、一定限度でもってもう余分につくる必要はない。無理に宣伝して、のめのめと言うわけにいかないのですね。よけいのんだならば害になりますなんて書いているのですから。後ろに下がることもできなければ、前に進むこともできない。これから専売公社はどうするのでしょうか。  アメリカを初め世界の企業は、ほとんどこれ、御承知のとおり民業でございますね。私たちは、酒、たばこと、こう言うのですよ、嗜好品として。お酒だけは、酒造で、民間でやっておいでになるのに、たばこだけはどうして国が経営しなければいけないのでしょうか。もちろんその点は、たばこ耕作者に対する葉たばこの問題もあります。別途考慮なさればいいじゃありませんか。これらも民業に払い下げられたら、何兆円でしょうか、これは莫大な金がいわゆる株となって戻ってくるのじゃないでしょうか。一兆円の減税どころか、何十兆という金になるという声さえも聞こえてまいります。しかも、ずいぶんの金を持っておいでになる。これは後で財源のところで提示してみようと思っております。  どうでしょう、この際は地域に分割するか、あるいは銘柄によって、私、たばこを吸いませんから駅のポスターでしか知りませんけれども、マイルドセブンとかセブンスターだとかピースだとか、光はいまなくなったか、銘柄別に会社を分けてみて競争原理を導入することをお考えになりませんか。長官、どうでしょう。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三公社五現業につきましてはおのおの性格の違うところもあり、また伝統も違うところもありますから一律には扱えませんが、いま私が申し上げましたように、公共性とそれから能率性、そういう面から見まして非常に深い検討が加えられております。しかし、大体同じような原則でこれに対する案はできてくるだろうと思います。  たばこの場合は、やはりいま御指摘のたばこ耕作組合の皆さんの問題と外国たばことの問題が一つございます。こういう点もよく考慮しなければならぬと思っていますが、塚本議員の御意見は傾聴に値すると思って考えております。
  122. 塚本三郎

    塚本委員 国鉄は、いま総裁おいでになりますが、もう少しお待ちいただきたいと思います。  その前に、特殊法人の焼け太りと言われております。整理して一緒になったならば、二つが一緒になった以前よりもよけいな金を政府が与えておる。これじゃ役員の数は減うたけれども、焼け太りと民間人は言っておるのです。こんなことは何度も何度も指摘されたことでございますから、これも徹底的に切っていただかなければなりませんか、私は時間の都合で、この際役員の給与の問題だけ、余りにも国民が怒っており、腹が立っておりますから、この怒りの声をぶつけて、襟を正して料理していただきたい。  もちろん、高級役人の皆様方とて定年退職後におけるところのいわゆる勤務の問題は十分考慮してあげなければなりません。しかし、考えていただかなければなりませんことは、たとえば日本の有名なトップ企業であっても、定年になりましたら、いわゆる下請だとか子会社、系列会社に必ず押しつけてよこすのです。しかし、親会社だけはみごとにきちっと利益を占めておるのです。そうして彼らに対しては、生かさず殺さずという言葉で表現するのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、たとえば定年のときに百万円の方ならば、六十万円か七十万円に下げておいて、足りないだけは年金かあるいはまた共済金か、こういうもので、ちょうどそのときには高校、大学生を抱えた家庭的に大変な年齢でありますから、旧より下げないということを条件にして、親会社の給料だけ下げて、そして共済なりあるいは年金の金と継ぎ足してとんとん、ボーナスの少なくなることはがまんしてくださいよ、こういう態度なんです。それでもわが親会社はめんどう見のいい会社だと言って、すべてそれのできる会社から配属された諸君は喜んでいるのです。中小企業には全然そんなことがないことは御承知のとおりです。  どうして政府の特殊法人についてだけ、百万円の方がまた三割くらいよけい、七十万円の方も同じ、どうして余分に取るのでしょうか。さらにその上に共済の金が来る、こうなんでしょう。どうしてこんなことになったんでしょう。まして渡りというのは、そこで退職金をいただいてまた、またと、多いのは五回も退職金という例があったようですね。最低三回と言われておりますね。もうこの退職金は一回こっきりにする。そうして、特殊法人に出るときには、必ず前の給与よりは落とせとは言いませんけれども、次になったときには、赤字の企業に対しては政府がめんどうを見てくれるというようなぶら下がり方式はやめて、せめて日本のトップ企業並みにお扱いになることが、赤字国家日本政府の当然の国民に対する義務だと主張いたしますが、この点は総理からお答え  いただきたい。
  123. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 塚本さん御指摘のような特殊法人の役員、しかも、それが高級官僚の天下りというような形で行われておりますこと、これは国民が耐えられない気持ちで見ておることは事実でございます。今回の改革の中で、これは一つの大きな問題点として政府としても対処してまいりたい、こう考えております。
  124. 塚本三郎

    塚本委員 総理、御無礼だから確認はいたしませんけれども、いまの主張どおりやっていただき得るものと御信頼申し上げておりますから、その点よろしくお願いいたします。  次は、天下り候補。御存じでしょうか。各省における中堅幹部が次の衆議院選挙の立候補を目指して、各地で国費で選挙運動をしているのですよ。これは皆様方も被害者なんです。どうでしょうか、名前を挙げてみましようか。とにかくひど過ぎるのですよ。建設省のお役人は、公園つくってやろうというようなものでしょう。厚生省のお役人は、会館つくってやろう。だれの金なんですか、これは。こんなことで勢力がふえた、ふえたと言っておりますけれども、ひがみで野党が言うわけじゃございませんけれども、足りない国費でもって選挙運動をやらかしておる。勤務評定してみたらどういうことになるでしょうか。後から高木さんに申し上げるいわゆるやみ給与以上のことを、政府みずからが率先垂範しておいでになるのですよ、これは。  「地元に土産? 国営公園 総選挙出馬含みの建設省課長」なんて出ていますね。始関さん、いいですか。「後援会づくりに選挙区回り 地元潜行 年内解散に動く官僚候補 大蔵省の候補を交え三つどもえ」なんていうのが書いてあるのですよ。ずいぶん、週刊誌なんかずらりと八、九人書いています。(「大臣の中にも経験者がいる」と呼ぶ者あり)大臣の中にも経験者がおいでになるという話ですけれども、どうでしょう、これは。  高級官僚がその系統の企業におりるときには、公務員法によりまして一定の限度はその企業につくことができないという仕組みになっておることは御承知のとおりです。現職のままでその地方における通産局や財務局やあるいは農政局にわざわざ転勤させておいて、選挙区にわざわざ局長が転勤ですよ。こんなばかなことをやられても、局長さんのために何ができた、下水ができた、道路ができた、何やら会館ができた、こんなことをわれわれ労働者の金を使ってみたり国民の金を使ってみて、各省がみんなそんなことをやっているじゃありませんか。この際厳に、いま運動しておいでになるところの方を、まじめに本省に勤務するなり、まじめに地方局の局長らしくそこに座っておりなさい、そう言って、むだに選挙運動のために金をお使いになった方は、まあ首にせよとは言いませんが、立候補だけは、そう受け取られた以上は、良心的に一回見送って、そうして(発言する者あり)安いですか。企業天下りが二年ないし三年で出ていますから、一回見送れば大体そんな形になると思いますが、これはだれにお答えしていただきましょうか。(「総理総理」と呼ぶ者あり)
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 公務員の倫理を向上させて官紀を振粛するということは、閣議で何回も決定をしておりまして、昨年の十二月の閣議でも決定いたしました。もし、それに逸脱するような公務員があれば、その関係大臣を通じてびしびし取り締まらせる予定でありますから、どうぞ言ってきていただけばやりたいと思います。
  126. 塚本三郎

    塚本委員 この際、せっかくです、総理に対する呼び声が高いようですから、総理からもお答えいただきましょう。
  127. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは綱紀粛正にもつながる問題でございます。私は、選挙に出るなとは言いませんが、その場合にはもう役所をやめて堂々とフェアにやったらいい、こう思っております。そういうような行為がございますれば厳重に注意をいたしますし、そのように進めるつもりでございます。
  128. 塚本三郎

    塚本委員 立候補の権利はありますから、しかし、そのように進めるということは、少なくとも総裁として公認だけはしないというふうに受けとめさせていただきましょう、異論があるようでございますけれども。  さて、行政改革の中で国鉄問題は最も重要な問題かと存じます。政府が鳴り物入りで取り組んでいる財政再建は、今年度の赤字国債一兆八千億円を減らすためにゼロシーリングという新語まで普及させ、おまけに不景気まで招いてつくり上げた予算が昨年度の予算であり、また今年度の予算でもあるようであります。ところが、国鉄一社で約八千億の補助金を与えてなお足りなくて、おまけに一兆二千億円余の赤字を積み立てる見通しであります。すなわち、全政府の努力で削り取った一兆八千億を上回る借金を国鉄一社で一年間に使い果たして、なお足りないという計算であります。一体これ、総理と総裁は何とお受けとめになるでしょうか。総理、どうぞ。
  129. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 三公社の中で国鉄の立て直し、再建ということが一番むずかしい。しかし、国民の側から見ますと、これだけはぜひやってほしいという課題であると私も認識をいたしておるわけでございます。いま、国鉄といたしましても、また政府といたしましても、さきに成立をいたしました国鉄経営再建促進法、これに基づくところの経営再建整備の計画に基づきまして、三十五万人体制を初め、また経営の合理化等につきまして努力をいたしておるところでございますが、なかなかその成果が顕著に出ておらないことは、私どもも大変遺憾に思っておるところでございます。しかし、この問題につきましては、私は、果たしてこの再建計画だけで国鉄再建の実が達成できるかどうかということにつきまして、国民各層からいろいろの御批判があることも承知をいたしておりますし、臨調においては、ただいまこの問題一つだけでもひとつ解決をしたいということで、あらゆる角度から御検討を願っております。また、運輸大臣も、この問題につきましては真剣にいまその改革について構想を練っておる段階でございます。国民的なこの課題に対して、政府としても最善を尽くす考えでございます。
  130. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま御指摘のように、毎年二兆近い赤字が出ておるという非常にぐあいが悪い状態になっておるわけでございまして、大変多くの利用者の方々に運賃の問題で、また納税者の方々には補助金なり将来の赤字問題ということで御迷惑をかけておるということについて、私自身、日々大変苦悩いたしております。  ただ、御理解いただきたいと思いますのは、毎年毎年の経費と収入との関係でそういう赤字が出ておるわけではないわけでございまして、赤字の半分以上は、過去の借入金に対する利子の支払いと年金、退職金等の問題から出ておることは御承知のとおりでございます。その処理につきましてはいずれまたお願いをしなくてはなりませんが、とにかく、私どもとしては毎年毎年の収支赤を小さくするという努力を積み重ねていく以外にはないのではないかということで取り組んでおりますが、何分大きな世帯でもございますし、いろいろなお耳ざわり、お目ざわりなトラブルも起こっておるわけでございまして、これを一つ一つつぶしていくことが私の仕事かといま考えております。
  131. 塚本三郎

    塚本委員 まあ、高木さんはなりたくてなったのでなく、みんな断られたから仕方なしになった総裁だからお気の毒だという前後の事情も、私は承知しないわけではありません。しかし、高木さんが総裁になってから雪だるま式に悪くなってきたことも事実です。根はもちろん前々総裁が植えてきた問題であることも、私は承知いたしております。しかし、やはり国鉄と悪い因縁のなかった高木さんならば、片一方において大蔵省から金もつぎ込む、しかし片一方において悪い芽は摘み捨てる、こう政府も期待をなさったであろうというふうに思います。にもかかわらず、金だけは便利につぎ込む太い管ができたけれども、悪い芽だけはそれの肥やしになってしまった、これが今日の国鉄のなれの果てと私たちは見ておるわけでございます。  国鉄は、公益性を持つとともに企業であることを忘れてはなりません。もちろん、民鉄もそういう点では企業でありますけれども、運賃を安くしてお客さんをみずから開発をして集めて採算に合わせておるとき、運賃を高くし、そうして政府の補助金ででぶでぶに太らせるかっこうで、サービスを悪くしてお客さんを私鉄の方に追いやってしまって抜き差しならないところにきてしまったというのが今日の実情であると私は見ております。  そこで、総裁、国鉄が今日のごとく破滅的赤字体質となったのは、先ほど三公社はいわゆる体質の問題だ、構造の問題だということを指摘いたしましたが、いわゆるかのマル生運動反対、すなわち合理化反対闘争を主張する無責任な国労、動労の恫喝に国鉄当局が屈したことに始まると思います。この点は、数字を見ればわかるところです。もちろん、不当労働行為は禁じなければならぬことは当然であります。しかし、不当労働行為というかけ声によって何もかにもマル生反対の流れをつくってしまった。合理化と言うと不当労働行為と、こういうふうにマル生反対の流れをつくってしまった。労働大臣経験のある文相もうなずいておいでになります。この非能率的な、いわば人民管理的運営にしたのが根本原因だと思いますが、総裁、どうでしょうか。
  132. 高木文雄

    ○高木説明員 よく御存じのとおり、過去においてそういう問題がありました。それからの立ち直りに大変時間がかかったということは事実でございます。しかし、現状におきましては、現場現場でまだまだいろいろ問題はございますけれども、大勢としては大分体質が変わってきたと思っております。私どももそのことを強く期待し、今後いま御指摘のような体質から現実的に抜け切れるものというふうに考えておるわけでございまして、その切りかえがおくれておることは私自身歯がゆく思っておるわけでございますが、今回の経営改善計画によりましてこれに取り組むことは、そういうモラールの問題も含めておるわけでございますので、暫時時間をかしていただきたいと思っております。
  133. 塚本三郎

    塚本委員 皆さん、よく大臣さんたちお聞きいただきたいと思います。改善されたという認識なんですよ。だんだん悪くなっていっているんですよ。私は新聞でずっと集めているのですが、国鉄だけで非難ごうごうの記事がこんなにあるのです。サンケイ、読売、朝日、毎日、東京。全部これを一々総裁にお聞きしておったら、これだけでもう私の時間なくなりますからやめますけれども、「国鉄でごまかし処分」だとか「浮上する国鉄地域分割論」から始まりまして、「むだ遣いここにも」ということから、半数はごまかしの何やらだとか、「職場規律の乱れ」だとか、ここ二カ月の新聞とっただけでもこんなに国鉄さんだけであるんですよ、問題の姿が。よくなった、よくなったと言って、よくなったということは悪いところを総裁御存じにならないということだと思うのです。ますます人民管理になっているんですよ、これおわかりでしょうか。魚は頭から腐るという言葉があるのです。頭から腐るのです。悪くなっておることに気がつかないから、よくなった、よくなったと、こういうふうな表現をしてみえるのです。  私に言わせたならば、本当は国鉄職員の中だってみんな悪いわけじゃない。一人一人は親切な職員さんがいっぱいおいでになる。そういうまじめな人たちでも、いわゆる最高幹部の皆様方がこの人民管理的体質を改めなかったならば、これはどうにもならないのですよ。生産性向上運動間違いだというふうにやってしまった前々総裁にその根があることは私は指摘をいたしておりますが、そのときにいわゆるつくったところの、まあ国労にあるいは動労に騒がれて、当時一部の新聞までそのことを扇動いたしたと私は見ておりますが、その波に押されてしまって紛争対策委員会の覚書というのが四十六年に結ばれております。生産性に協力した者は組合に人事の相談をするというのですよ。だれとだれを左遷したらよろしゅうございますか、駅長さんや区長さんを。だから、あいつとあいつとあいつとということで合理化に協力した人、みんな左遷させたんですよ。いまでもそれが生きておるんでしょう。あのときは前々総裁だから、あなたに言うんじゃないのですけれども、おっしゃるようにすれば国労も動労もまじめにやりますということだから、鉄労を犠牲にして今日やってきたんでしょう。それ、よくなるならばみんなが褒めてあげようじゃありませんか。見るも無残な破滅寸前の姿にした国鉄。これ、今日ここで直ちに破棄するという——この協定生きておるんですよ。私が人民管理と表現したのはこのことなんですよ。総裁、破棄するとここで約束してくださいよ。
  134. 高木文雄

    ○高木説明員 協定上は生きております。しかし、これは非常に問題があるわけでございますので、現実問題として、そういうことが各現場現場で行われている実態ではないと考えております。これを、いまやいわゆる三十五万人ということでモラール是正というときに、そうした問題を一つ一つ直していかなければいけないということでいま積み上げているところでございます。
  135. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、問題はそこなんですよ。こういうことをしておいて現場協定を結ばせるからなんでしょう。諸悪の根源は現場協定なんですよ。私がいみじくも人民管理と言ったでしょう。事故になったって、災害になったって、時間外の出動のときにはまた駅長さんが一々交渉をしなければならぬのですよ。全部そういうことが現場協定にゆだねられているからでしょう。だから、鉄労のまじめなところだけはすっすっと行くんですよ。だから、現場協定を破棄することが大切ですが、その前にこの覚書を破棄することを約束しなさい。それをしなければ次は動きませんよ。どうですか。
  136. 高木文雄

    ○高木説明員 すべての協定につきましては、やはり協定をもって直していくということではないかと思います。労使関係においていい協定もあれば悪い協定もあるわけでございまして、いろいろな場合に一方的破棄ということは、これは労使ルールからいっていかがかと思います。ただ、いま御指摘の点は非常にまずい点がいろいろあるわけでございますので、それとの取り組みにおきまして直していかなければならぬということは、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  137. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、これは協定全部を破棄しようというんじゃなく、この覚書を、あなたの前々任者が出した覚書を破棄してください。ほかの協定を言っているわけじゃないんですよ。四十六年の覚書を破棄してくださいというんですよ。何もそんなことを、あなたがノーと言って命令を下せばいいじゃありませんか。総裁、よく相談しておいてください。運輸大臣、どうですか。
  138. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 塚本委員のただいまのいろいろな御指摘は、私も十二月初めから運輸大臣になって国鉄問題をいろいろ検討しておりますが、最もそれは重大なことだと考えます。また、一般の労働組合運動の中で、今日の国鉄ほどこうした形で事が運ばれているところはいまだかつて私は見ないのでございまして、当然これはいまおっしゃったような方向で改善をするなり、あるいはまた労使交渉をさらに練り直すなり、私は、やはり国鉄当局のこれからの努力を強く要請したい。したがって、先般も、国鉄問題はまず最初に労使問題であるということから、国鉄本社を訪問いたしまして、幹部の諸君に会って、ひとつ元気を出してこの難局を乗り切ってくれということを申しに行ったようなわけでございますが、これから国鉄総裁以下おのおのの力を出して、ただいま御指摘のような方向で事態の解決を図っていくものと私は期待をいたしております。
  139. 塚本三郎

    塚本委員 だれもかれも国鉄のは労使問題だとおっしゃるけれども、当局の姿勢の問題ですよ。労働組合じゃない、職員でしょう。待遇改善についてはやったらよろしい。ぴしっとした幾つかの協定があるでしょう。だけれども、四十六年の生産性向上に一生懸命努力した人をいわゆる労働法違反だとか不当労働行為という名前で一部のマスコミと一緒になって当局が責められて、それに実は新しい流れをつくって生産性向上反対、合理化反対という中で、悪うございましたといって結んだのがこの覚書でしょう。だから、それを一生懸命にしたところの現場長さんを左遷してみたり、これから昇給昇格をするときには組合の承諾が必要でございますというように人事権を放棄さしておいて、やれるはずがないじゃありませんか。そんなの再建なんかできるはずがないじゃありませんか。  これは労使問題じゃないんですよ。命令権というものを放棄しているところにあるんです。私は、後から校内暴力も言いますけれども、すべていわゆる頭が腐っていけばみんな腐っていくんですよ。きちっとした厳然たる命令を出せば、国労だって動労だって大部分の人たちはまじめな人なんですよ。一生懸命やろうとしてみたって、一部の者の方に味方をするような風潮があるということが問題だということだから、それを直せと私は言っているんですが、どうですか、総理。これは重大な問題だから総理からこの点を、運輸大臣、あなたじゃなくて総理に。
  140. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの問題につきまして、われわれとしましては各地の管理局長が第一線に立って、そして第一線の職場の方々に直接会うということをまず第一にやることがすべての根本であるということで、昨今、各管理局長が現場に出向いて、そして駅長さんや助役さんの話も聞き、また組合とも接触して努力をしようということをいま始めたところでございます。一応御報告しておきます。
  141. 塚本三郎

    塚本委員 総理、さっきの覚書について御見解をいただきたい。
  142. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま国鉄の直接の監督の責任者である運輸大臣から当局としての考え方を申し述べたところでありますが、私は小坂運輸大臣に御就任を願う際に、この国鉄再建問題、これをぜひひとつお願いをしたい、いろいろむずかしい問題がたくさんあると思うけれども、ひとつ体を張ってでもこの問題に取り組んでもらいたいということを御要請を申し上げて就任願ったわけでございますから、私は運輸大臣に期待をいたしておるわけでございます。私も絶えず御相談に乗りながら、いま塚本さんから御指摘になりましたいろいろの問題、国鉄再建のためにとるべき策につきまして、今後において努力してまいります。
  143. 塚本三郎

    塚本委員 高木総裁、いまの問題は御相談いただいて、それじゃ現場協定はもう一切破棄していただいて、駅長は職員に対する命令権、区長は職員に対する命令権を、人事権を取り戻すという前提で、現場協定は全部破棄して、改めてゼロから始めて、いままでのいい慣行だけを中央の組合と労使が結び直して、それまで一切破棄する、現場協定を破棄するという約束だけ、先にしていただけませんか。
  144. 高木文雄

    ○高木説明員 御趣旨のように、非常に過去の積み上げからいって不適当なものがないとは言えないわけでございまして、これを是正するということは、ここではっきりお約束させていただきたいと思います。  ただ、協定、協約というものの性格から言って、一方的に破棄するとかなんとかということは穏当でない場合がございますので、ぜひ御趣旨のように直していくということはお約束いたしますが、一方的にここで破棄せいと、約束せいと言われましても、それは労使関係関係で、労使協定というものの性格上いささか問題がありますので、その点だけはお許しいただきたいと思います。
  145. 塚本三郎

    塚本委員 そういう御意見でしたら、もうこれは手がつけられませんから、臨調の六月ないし七月の答申を待って民営移管してみて、みずから借金していただくより生き残る道はありませんぞ、総理。私は素人として言っているのじゃないのですから。現場協定がどういう状態になっているのか、命令権がないところに問題があるのでしょう。四十三年から始めた現場協定というのは現場協議であったけれども、いまや現場長つるし上げの舞台になっているのですよ。そうすると、そのときにおける協定や協議をしなければなりません。そうすると、おれは嫌だというから、協議をする相手に駅で判こだけ押しておいて、一カ月のうち毎日組合事務所に専従させておいて、給料をおれたちが払っておるんだから協定、協議の場に出てこいという形になっているのですよ。これがやみ専従というのです、わかりますか。協定を実行するために相談しなければなりませんと言うのです。駅長さん、区長さんに人事権がないからこういうことになるのでしょう。だから、組合に対する、いわゆる相談するために、あらかじめこちらで払っている人を組合に常駐させておいて、一週間か一カ月の間に一回か何回か知りませんけれども、そのために給与をこちらが払っているのですよ。これをやみ専従というのですよ。これはここに全部書いてありますよ。それだけだって、恐るべし千人を超えておりますよ。私は一つ一つ聞いている時間はもったいないけれども、こういう問題は、諸悪の根源はここにあるのですから、相談するなんというようなことを言っておって、七月になったら、臨調でザ・エンドですよ、これは。こういう状態に立ち至っているのです。  当局がその実態を知らずに、いいものもあるなんということを言って、いいものはこれからすくい上げてくればいいじゃありませんか。大体、中央におけるところのきちっとした交渉が徹底して、そして遵守させればいいはずなんでしょう。そのガンになっているのが覚書だから、それは外しなさいと言うのですけれども、それがわからないというのだったら、現場協定を一つ一つ全部破棄して——駅長が命令できないような職場、区長が命令できないような職場というのは、企業ですか。総裁、どうですか。
  146. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま御指摘のいわゆるやみ専従が千人あるとおっしゃいましたが、その問題は先ほど来おっしゃっている問題とはちょっとまた別の問題でございます。  それで、いまの専従の問題というのは、これまた長い歴史があって、大変ややこしい話でございますけれども、専従の運用について問題があるということは事実でございまして、現在専従のあり方ということ、それから、たとえば毎日勤務している者が日によっては交渉に出てこなければならぬということになった場合に、勤務割りを非常につくりにくいからということもありまして、その諸君に対して勤務が軽くなっているというような問題もございます。しかし本来、専従というのはルールに従って専従職員を置くべきでありまして、その専従職員の置き方が明快になっていないというところに問題があるわけでございます。いま御指摘のように、本来専従であるべきものが専従という扱いになっていなくて、いわゆるやみ専従のような形になっていることは直さなければいけない、直ちに直さなければならぬと考えております。
  147. 塚本三郎

    塚本委員 まあ、これ一つ一つやってみると、驚くべき事態が毎日毎日各地に、こういうふうに二カ月の間にこれだけのものが、いわゆるやみ給与から、やみ専従から、やみ協定から、やみだけで、まともな協定なんというのを入れてみたら、本当にまさにこれは人民管理の状態になってきている。こういう状態だから、これを破棄すると約束ができなければ、もはや国鉄はいまの状態に任せるわけにはいかない。ということは、全部生産性向上反対、合理化反対の同意の上でなされているということが基本なんですから、これはどうしようもないのですよ。もう臨調の先生に聞いてみても、まあ国鉄はどうしようもありませんなと。いや、それじゃ僕はきょうは総裁に言うから、ここでいままでのことは、政治生命、いや総裁生命をかけてそういう覚書を破棄し、生産性を向上し、一般の企業と同じように合理化をいたしますと宣言させたならば、生き残る可能性はあるんじゃないでしょうか、こういうことなんですよ。そういう事態が、私は国鉄を救う唯一の道だと。  それでなければ、現場長はかわいそうなんですよ。つるし上げの舞台になって、昨年だけだって助役さんや駅長さんで自殺をした人が何人おるか、総裁、知ってみえますか。遺書の中には「生産性向上万歳」と書いて死んでいますよ。総裁、何人自殺したか、一遍答えてください。
  148. 高木文雄

    ○高木説明員 この一年間で管理職で自殺した人の数というのは、四名でございます。
  149. 塚本三郎

    塚本委員 総理、こういう状態なんですよ。人民管理でつるし上げて、こういう状態になってきているのです。四十六年のあの協定がいかに間違っているか、覚書がいかに間違っておったか。そして、国鉄を愛する諸君は全部左遷されて、二階に上げられてはしごを取られたんですよ。管理職が一年間で四人自殺しているんですよ。本局、何をしているんですか。  いま運輸大臣は、いまからようやく対話に入ったとおっしゃるが、できやせぬのですよ。なぜできないか。学士採用なんだからですよ。東京で採用されて、天下りで来て、六年から七年でもう局の課長なんですよ。四十年勤めて、あと二年かそこらのときにやっと恵まれた人だけが課長になる席を、二十代後半から三十代の三十一、二でもって課長さんでしょう。彼らは国労、動労に騒がれないことだけを考えて、自殺寸前になっておっても、見て見ないふりをしておるじゃありませんか。全部目は東京を向いておるからですよ。栄転だけを考えているじゃありませんか。せめて支局で雇って、生涯支局長になるまでがんばるという採用の仕方がなぜできないのでしょうか。  魚は頭から腐る。見殺しに君たちはしているんだよ。こんな状態で徐々になんて、百年河清を待つような状態じゃありませんか。  こういう問題につきましては、私は毎年列挙してみました。昨年は民鉄との問題を列挙してみました。今年は、たとえば東京駅におけるところの弘済会に一体どれだけの歩金を取っておるのか。まるっきり先輩の諸君が国鉄をダニのごとくに食いつぶしておる。品物を売ってみたって、一%か二%しか国鉄は取ってないじゃないか。私は東京駅の大丸へ品物をおさめておりましたが、三〇%取られておりますぞ。国鉄だけが一%や二%で、これは三年か四年に一回ずつ全部入札でもってやらせてみたら、一坪だって何百万円とする利権のところがいっぱい東京駅だってあるじゃありませんか。私鉄と比較するだけだって、監査委員会も報告しておりますけれども、四分の一じゃありませんか。みんなが寄ってたかって幹部の諸君が国鉄にぶら下がっておる、食いつぶしておるという状態なんですよ。これからやると言ってみたって間に合わない。こういう状態になっているのですね。  まあ、この点を総裁も人事御一新なさって、そうして全く新しい体制で、本当に生産性向上、合理化を高らかに宣言して、そうして二十万人ぐらいでやっていくという体制、それをつくらなかったら、生き返る道は断じてありません。  私は、臨調の部会長にいろいろと相談してみました。もう塚本さん、改善策を提言するなと言うのですよ。何やったって、また時間を引き延ばされるだけだから、それよりも七月を待って、いわゆる第三セクターにし、そして七つか八つに分割して民営に移管する以外にないぞと、こう腹を決めているのですよ。私はそれが本心だと思う。新聞にみんな出ております。  高木さん、本当にもう国鉄の百年の歴史を生かすか殺すか、あなたの決断一つだと思う。いままでの覚書を破棄して、現場協定を破棄して新しく出直すと、決意をここでおっしゃったらどうでしょう。。
  150. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまのお尋ねの中で一つ、東京駅の問題が出ましたが、これは私どもは弘済会に場所を貸しておりますし、大丸の場合は設備その他を、あるいは運営費等をどっちが持つかということで契約方式が違っておりますので、その点だけは御理解を願いたいと思います。  それから職員の配置、いわゆる学士さんの扱いの問題でございますが、この問題は私もかねがね問題意識を持っておるわけでございまして、いまの組織論と別の問題として人事運用論に相当問題があるという認識を持ち、多少とも直す努力はいたしておりますが、それはおまえのやり方がなまぬるいということであろうかと存じます。  それから、何しろまず協定を破棄しなさいということでございますが、これはやはり破棄ということに私どもは非常にひっかかるわけでございまして、いずれの場合でも協定の一方的破棄というのには相当問題があるわけでございますので、それを正していくということについては御趣旨に沿ってやらなければとてもいかぬということは考えておりますが、破棄ということだけはよろしくないというふうに考えております。
  151. 塚本三郎

    塚本委員 国鉄の問題は終わりますが、総理、相手方がうんと言って、そうでございますかと言ってくれれば、それは本当に正すということで結構だと思うのです。ところが、べたべた、べたべたと生産性向上反対、合理化反対、三十五万人体制反対と駅舎までべたべた張っておっても、その違反のポスターさえもまともに取ることができず、きょうでも行ってごらんなさい、駅員だってワッペンをここに張ってある。これは違反なんですよ。ところが、現場協定でもって全部駅長は黙認させられておるのですよ。こんなものやるだけだって一年や二年かかるのですよ。もう間に合いませんぞと私は言っているのですよ。それはもう一週間か一カ月の間で全部正常にしてくだされば結構ですよ。やるはずないからこそ、破棄せよ、人事権というものを奪い返しなさいということを私は言っているのですよ。やる意思がないのだったら、もうこのまま泥沼に突っ込んでいってしまって、臨調がおっしゃるような形になりますよ。国鉄百年の歴史をつぶすのはあなたなんだ。違法のストライキで処分された連中までまた採用しておるじゃありませんか。あなたがやったのでしょう。首切った諸君をなぜ採用するのですか。それじゃ首切った管理者たちがおれるはずないじゃないですか。法に違反したからこそ処分したのでしょう。そういう人たちが戻ってきて一生懸命合理化をやってくださったらともかく、それが全部現場長のまじめな人をねらい撃ちで引きずりおろしてしまっておる。だから、私は人民管理と言っているのですよ。そんなこと一つも気がつかれずに、こんな状態でいつまでも時間を費やすのはもったいないと思いますけれども総理、最後にお聞きしたいのです。この状態は、いかにも公益的な体制ではあるけれども、企業として成り立ち得ないというふうにお考えになりませんか。
  152. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国鉄につきましては、いま臨調で真剣に討議しておりますが、委員のお考えを仄聞しますと、中には、あなたがおっしゃるように、国鉄はもう破産寸前に来ておる、普通の民間の会社だったら更生会社になるような状態だろうと言っておりました。恐らくいま一番大事なことは、労使が本当にその危機に目覚めて、そうして、いままで言われているような国にたかったり、あるいは国民の財産におんぶするという風潮を改めて、自主自力で立ち上がる、そういう労使の精神的改革が必要ではないかというのがいま臨調の皆さんのお考えにあるところです。私らもそういう動向を見ておりまして、国鉄がどういうような改革が行われるのか、また臨調がいかなる答申を出してくるか、重大な関心を持っていま見守っておるところであります。
  153. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来、塚本さん本当に真摯な立場で国鉄の問題を取り上げていただきました。事態はまさにおっしゃるとおり遷延を許さないところに来ていると私も認識いたしております。臨調の答申を待って英断を持ってこれに対処したい、こう思っております。
  154. 塚本三郎

    塚本委員 私が総理に先ほどから、答申を必ず法制化し、いわゆる行政として実現すると約束を求めたのは、このことを実は先にお認めをいただいておいたということは、国鉄の問題をまず解決さしていきたい、こういう真意であったからでございます。  さて、問題は次に移ります。  減税の問題はもう各委員が主張いたしております。問題は財源ということにしぼられてきておると、大体共通の認識であります。しかし、大蔵大臣、われわれ野党の立場から、五十兆という予算の中で百分の一であります五千億、本年度は、民社党は来年もう一回と考えておりますが、国税五千億、地方税三千億、合計八千億を最低限としていわゆる減税を実現しなさい。その論点はいずれの委員もおっしゃったことと全く同じような観点に立っております。五十兆に対する五千億ということは百分の一です。大蔵大臣、われわれ野党の代表からこの金を持ってこいというふうに言われなければ出されないのでしょうか。やはり行政行政としての権威があり、プライドがあると思いますので、どこの金を持ってこいと言いたいのですけれども、それを言うことは与野党の立場から御無礼だと私たちは思っております。  当然あなたたちがみずから、行政改革をいたします、不公平税制を改めますというふうにお約束をいたしておりますので、特定の銘柄を指定することは選択の幅を狭めると私たちは勘案して言わないだけのことでありますので、あなたの方で、もはやここまで来たならば、特に自民党としての党の本旨を損なわなければと、こういうようなことを国対委員長も御発言いただいております。もっともだと思います。そういう意味で、この際、これがあるじゃないか、これがあるじゃないかと指摘をされる前に、何とか苦労してでもそこまで、各党が足並みをそろえておっしゃるならば、いやもう節減のときだからやるべきでないと思いますけれども、しかしながら、景気回復と自然増収を図るためにこれが大きなかなめだ、この金によって、自分の手持ちも入れて景気回復にドライブをかけたいというその声も一理はあるとお認めになるならば、この際は大蔵大臣の立場で何とか苦労いたしましょうという御返答をいただくべきだと思いますが、いかがでしょう。
  155. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 かねて総理大臣からも私からもお答えをいたしておりますように、数年間にわたって課税最低限と税率控除を固定しておくということは、決して好ましいとは思っておりません。しかしながら、現実の問題として、御承知のとおり、先ほどからお話があるように、国の財政事情が非常に厳しい。一方、どうしてもふえる費用があるわけですよ。抑えようとしても抑え切れない。  先ほどもお話がありましたが、たとえば、ことしでも国債費は一兆一千七百五十七億円着実にふえるわけですから。減らす方法がない、これは。もう一つは、たとえば地方交付税交付金のように、これも一兆一千四百七十四億円、自動的にふえてしまう。抑えようがない。もう両方で二兆三千億円からの金がふえてしまう。したがって、自然増収で仮に三兆円ぐらいの金が出てきたとしても、そういうようにどうしても抑えられないものがある。したがって、あとは五千七百億円程度の金しか残らない。一般歳出の伸び分はですよ。そうすると、人件費は四千億円からこれまた別にふえるということになりますと、歳出をもっと大幅にカットできればそれはいいんでございましょうが、現実の問題としては、各論になるとなかなかそう簡単にはいかない。そこで、われわれといたしましては、何とか国債の増発だけでもふさいでいかなければ、先ほど塚本委員がおっしゃったとおり、これは十何兆も支払う時期が来るわけですから。  したがって、そういうような段階の中で、さらにここで減税財源をひねり出すということは、非常に実はむずかしいということを申し上げているのです。ことに、財源の見通しがツキ、五十九年からの赤字国債脱却のめどもつくというような条件がそろえば、われわれはやらないということを言っているわけじゃないのです。
  156. 塚本三郎

    塚本委員 もう無理だということのために余り時間をかけられると、次のお聞きしたいことができなくなるから、大臣、恐縮だけれども……。  日銀総裁がおいでになっておられますのでお聞きしますが、五十七年度におけるところの剰余金見込みというのがありますけれども、これは幾らぐらいになっておりましょうか。
  157. 前川春雄

    ○前川参考人 五十七年度の見込み額は一兆四十三億五千七百万でございます。
  158. 塚本三郎

    塚本委員 ちょっとついでに、それはどういう性格の金ですか。
  159. 前川春雄

    ○前川参考人 日本銀行の収益から経費を引きまして、その中から引当金を引いた分でございます。
  160. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、この中から政府に対する納付金というのは、これは本当は利益金と思ったのだけれども、剰余金という中から政府へ、この金から納めるんだという話を聞きましたが、そうなんですか。
  161. 前川春雄

    ○前川参考人 剰余金の中から積立金を引きまして、残りました分を納付するわけでございます。
  162. 塚本三郎

    塚本委員 積み立てた残りを政府に納めるという話になりましたが、さて、その積立金でございますけれども、法定積立金というのは幾らになっておりましょうか、いま現在積み立てておりますのは。
  163. 前川春雄

    ○前川参考人 現在の法定積立金は三千百九十三億五千二百万でございます。
  164. 塚本三郎

    塚本委員 それではもう一つお聞きいたしますが、別途積立金というのは幾らになっておりますか。
  165. 前川春雄

    ○前川参考人 四千九百八十億一千六百万円でございます。
  166. 塚本三郎

    塚本委員 総裁、それは五十六年度であって、五十七年度にはさらに五百億と一千億プラスされるという計算の報告を受けておりますが、これは間違いありませんか。
  167. 前川春雄

    ○前川参考人 五十七年度につきまして、収益がどの程度上がりまするか、これは金融情勢等によって変わるものでございまするから的確には申し上げられませんけれども、ある程度の収益が上がりまするので、その中から納付金をするわけでございまするから、その前に積立金、法定積立金並びに別途積立金はある程度積み上がるということを期待しております。
  168. 塚本三郎

    塚本委員 さて大蔵大臣、この法定積立金というのと別途積立金というのと、これは性格がどういうふうに変わっているのか、ちょっと説明していただけませんか。
  169. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 法律上の問題ですから、主計局長をして答弁させます。
  170. 松下康雄

    ○松下政府委員 積立金の算出のやり方といたしまして、法定積立金は剰余金の二十分の一を充てるということになってございますが、その他に、剰余金の出ぐあいに応じまして、年々のいわば収益状況に応じまして別途積立金を積んでまいります。ただ、両者合わせまして積立金となっているわけでございますので、性格的な違いはないと存じます。
  171. 塚本三郎

    塚本委員 日銀総裁、結構ですから。お忙しいようですから結構です。  私、わざわざ確認をいたしましたのは、大蔵大臣、いまあらゆるところ、政府の中から手をつけて金を探すことができないとするならば、法定積立金を崩せとは私は申し上げませんけれども、別途積み立てることができるとなっておるその積立金、いま日銀総裁は四千九百億とおっしゃったが、今年度末ではさらに見込みとして一千億をこれに上積みをされる。ちなみに、前年度は三千八百億であったのが、今年度が四千九百億というふうに、年々一千億ずつは余分に積み立てておいでになる。法定の方も、五百億ずつ余分に積み立てておいでになる。法定のものを、あらゆる変動に処すために、これを手をつけろとは言わないけれども、別途積立金の五千九百億というのはまさに垂涎の的だと思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  172. 松下康雄

    ○松下政府委員 日本銀行の積立金は、先ほどお答え申し上げましたように、入れる計算は二つでございますが、やはり積み立てられたものは全体といたしまして独立の中央銀行でございます日本銀行に、将来たとえば不測の損失を生じましたような場合の引き当てとして積まれているものでございます。  全体といたしまして、どのような考え方によって積み立てを行っているかということでございますけれども、おおむねの目標といたしまして、中央銀行におきましては、自己資本比率を一〇%程度保有をするということで銀行自体の信用度を達成いたしたいという目標でございますが、現在までのところ、自己資本比率は九・七%程度という見込みでございます。  こういう点から申しまして、銀行の信用維持という観点から、この積立金の取り崩しということには問題があるのではないかと考えております。
  173. 塚本三郎

    塚本委員 九・七%で、現在ならば一〇%ならばということなら、ここに法定五百億と別途一千億、一千五百億円だけは可能だというふうに私どもは解釈をいたします。理屈をつけて出さずにおこうと思えば、多いのは多いにこしたことはないですよ。毎年一千億ずつ別途はふえてきているのですから、法定は五百億ずつ毎年ふえてきているのだから、多いにこしたことはないですよ。十倍あったってだれも文句を言いませんよ。だけれども、これだけ財源がないと言うならば、この際私どもは、減税の材料の中で、五千九百億というのを別途に持っているのですから、法定の中におけるところの金を崩せとまでは言いませんけれども、この三千六百億の法定はそのままにしておいて、別途も同じ性格であるとするならば、約六千億の中から二千億ぐらいこの際出してみたって罰は当たらないのじゃないでしょうか、どうでしょうか。  さらにまた、専売公社の益金の問題もどうでしょうか。政府の中では嫌がるから外から取ってこいと、こう言うのですよ。納付金として七千六百十八億。ところが、別に利益の積立金というのが九千億ありますね。しかも、葉たばこは二年分となっておるのが、農家のために三年分となって余分に二千四百億円買い入れておるから、葉たばこだけで九千四百二十九億円というものを別途持っておいでになるのですね。だからこれもせめて、一年余分に農家のために買ったら、今度は勤労者のための減税財源として九千億の中から二千億か二千五百億、資産化されておりますのも現金のものもあるでしょう、あるいはどういう資産になさっておるのか、とにかく流動できる資産として持っておいでになるはずだと思いますので、両方から二千億か二千五百億ずつ、さらに政府の中で全然ないと大蔵大臣おっしゃったならば、官房調整費の中でも三千億ほどあるはずでございますから、各省の中から少なくとも百億ずつお出しになって二千億をつかみ出していただく。  政府みずからおやりにならないとするならば、財源は、私の方は苦労して一緒に協力をしてあげましょう。いまここで私どもはそれをせよと言うのではなく、そういうふうにして出せば、少なくとも法律と現在の常識の中で許される範囲の中において、河本大臣御苦労の景気回復の一助にさしていただき、野党はこぞって、いわゆる減税財源として努力をしておるところの問題の解決に当たりたいと思います。大蔵大臣、いかがでしょう。
  174. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財源の問題について、専売公社は確かに一兆円近い積立金がございます。現実にはこれは葉たばこで寝ている。不用財産で売り払うといっても、実際は葉たばこは買い手がないし、売り払いのしようがないという問題がございます。  それから日銀の方は、いま局長が言ったように、自己資本比率を大体一〇%ということを目標にして、昭和四十六年までは日銀券の信認という観点からこれはそれぞれあったのです。ところが、ニクソンショックのときに円の切り上げによって膨大な為替差損を生じた。それでがばっと低くなりまして、それ以来そのような異常事態に備えるために、昭和四十六年程度まで、どんな問題が起こるかわからぬというようなことで、日銀券の信頼維持という観点から積み上げているものでございますから、これを強制的に吐き出させるということはわれわれとしては非常にむずかしい。それで、法定積立金と別途積立金は、先ほどお話があったように、性格的にはそういうような信認維持のための裏づけとしては同じでございます。
  175. 塚本三郎

    塚本委員 それはわかっておるのですよ。おるけれども、今年ふえる分だけで千五百億あるじゃございませんか。三年前なら半分しかなかったのですよ。だから、多ければ多いにこしたことはないけれども、こういうときだ、お出しになったらということです。  葉たばこは別の勘定なんですよ。大蔵大臣は一緒にごっちゃにしてみえるけれども、別途の積立金として出ているのですよ。葉たばこの資産は別だというのです。これは別途積立金なんですよ。材料費を別途積立金に計上する、そんな会計がありますか。よく調べてください。私はきちっと調べてみてそういうことを申し上げておるのですから。  一々そういうことで断ろうとすればいろいろな理屈をつけるでしょうけれども、私どもは政府を握っておりませんから、ああだこうだと逃げられますが、もう少しまともになって真剣なそういう取り組みをしてくださって、そうして、おれたちも本当はこの際は必要なんだ、増税をせずにおれたちが持っている中でしぼるようにして出して行政改革に資する。そしてまた、景気回復と不公平な税制を改めるために一石三鳥の努力に協力してやろうじゃないか、そう思ってやっているとき、これはできません、これはできません、そんなことを言っておったら何もできないということになりますよ。あなた神様じゃないんだから、私たちが苦労して調べてきたことをもう少し、そういうこともあるかもしれないから、塚本さんの言うことも一度調べてそのようにやってみよう、そういう態度でないといけませんぞ。  わざわざ総裁にも来ていただいたのは、そんなのありませんと言われるといけないと思って、どうせ言うだろうと思って、私はお忙しいところをわざわざおいでいただいたから、証言だけしていただいてお帰りいただいたんですけれども、そういう逃げの態度では物事の前進は図れないというふうに、私は強く御注意申し上げておきます。  次は、住宅問題に移ります。  住宅問題というのは、百三十万戸というふうに政府も計画をして、景気回復の決め手ということを訴えておいでになります。それには問題は、土地問題を解決しなければならないことは当然であります。報道によりますと、新都市計画法に基づく線引きとかあるいは譲渡に対する所得税の改革が進められておると伺いますが、どんな状態になっていましょうか。
  176. 始関伊平

    始関国務大臣 住宅建設の前提条件として、宅地を供給するための施策を講ずることが大変大事である、これは御指摘のとおりだと思います。  そこで、税制の面でございますが、御承知のように、かつて過剰流動性、それから列島改造ブームというような時代に大変な土地の買い占めが行われました。四十四年の一月以降に取得いたしました土地につきましては、いわゆる重課税というものを課しておったのでございますが、今日までもう十三、四年たっております。それがいろいろと続いておりますので、これが土地の流通を妨げる非常に大きな要素になっております。これはただいま国会で御審議をいただいておるわけでございますが、土地税制の一つの重要な柱といたしまして、これからは四千万円を超えましても二分の一総合課税ということでまいる。  もう一つは、線引きの問題をおっしゃいました。宅地の供給を円滑にいたしますためには、いわゆる都市計画区域とそれから調整区域と両方の線引き、これは都市計画法をつくりましてから五年に一遍ずつ見直すことになっているのでございますが、第二回目の見直しの時期になっておりますので、これはいろいろの条件を見まして、県知事が主体になってやるわけですが、市町村特に市とよく相談いたしまして、適当な土地、たとえば土地区画整理の見込みがあるといったようなところはどんどん市街化区域に入れる。逆に、余り農業をやるという方が多くて市街化の見込みのないところは線引きをするということで、これから鋭意その方向で進めてもらうことに地方と相談をいたしております。
  177. 塚本三郎

    塚本委員 建設大臣、地方では土地暴騰に手をかすという非難を恐れて、なかなか線引きに手をつけない知事さんや市長さんが多いのです。そうすると、許されたところにだけ集中をいたしますから、一部のものが暴騰をするという形になっていく。そして、一方におきましては、坪二十万円も三十万円もするような土地において、坪千円あるいは百円の土地でできるようなたんぼを持っておる。そうして坪百円から千円のところでできたお米も坪二十万円のところでできたお米も同じ値段で扱っておるというところに、日本の農業問題の最大の問題があると思います。いま、私どもはこのことを論ずる時間がありませんが、ともあれ二十万円の価値のあるところでは二十万円の価値のあるような使い方をしなければ、住宅問題や工場等の建設は進まないということではなかろうかと思います。  私は、農業問題は別途農政問題として農民の生きる道を開いていただかなければならぬと申し上げておきますが、ともかく景気回復の決め手は住宅であり、住宅の決め手は土地であり、その土地の問題は線引きの問題であり税制の問題だと思いますので、いま始関建設大臣からお答えになりましたその方向をあいまいにすることなく、しかと指示をしていただきまして、需要に応ずるような道を開いていただきたい。いかがでしょう。
  178. 始関伊平

    始関国務大臣 ただいまの住宅建設促進の意味合いからの御提言、御意見には全く同感でございます。どうも地方では、いろいろな関係でこれ以上人口をふやしたくないとかなんとかいうような空気のところもかなりあるようでございます。これは目下の住宅建設の重要性もよく理解していただきまして、今後地方との連絡を密にいたしまして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。  それから、農地の宅地並み課税その他農地の宅地化促進の問題につきましてもいろいろむずかしい点がございますが、今度はC農地につきましても宅地並み課税を一応実施するということにいたしましたし、したがって、その地域内で土地区画整理事業というようなものも進められるようになりました。御趣旨に沿うように万全の努力をいたしてまいります。
  179. 塚本三郎

    塚本委員 総理、ちょっと聞いていただきたいと思いますが、あなたがおいでになったサミット、先進国首脳会議で集まられたその国の首都を比較いたしてみますと、東京という町は、その首都の中で一番人口密度が低い町であるということを総理、御存じでしょうか。
  180. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 確かに御指摘のように、山手線の中の地域がドーナツ型に人口が減少しているということは私も承知しておりますが、サミット開催都市の中で順位がずっと低いというようなことはいまお話を伺ったわけでありますが、しかし、これはほかの調査によるとそうでもない、人口密度が上から二番目くらいだ、そういう報告もございます。いずれにしても、確かに山手線の中の地域における人口密度は年々減っているということは事実でございます。
  181. 塚本三郎

    塚本委員 総理、そういう意味で私申し上げたのじゃないのです。東京が土地問題だといって人口がふえないならば、世界じゅうどこも住むところはありませんぞ、こういうことなんです。東京は一番土地がゆったりしたところですよということです。だから、住宅問題は土地問題であることを否定いたしませんが、それ以上に行政の問題だということを知ってほしいということなんです。  大体、世界じゅうの首都において、平均二階というこんな町ないですよ。平均二階なんですから。ローマへ行きましたら、一歩外へ出たらずっと牧場が続いておるわけです。土地が余ったなんて言うけれども日本より小さいんですよ。ローマはどうしたんだと言うけれども、四階以下は建設が禁止されておるんですよ。お金持ちが広い土地を占めてしまって、一階か二階でしょう。平均二階から二・三くらいに最近なったんでしょうか。これじゃ、世界じゅうで東京が一番土地が潤沢なところだから、建設業者に言わせると、東京における住宅問題は土地問題じゃないというんですよ。政治家がその行政のあり方を知らないところに一番問題があるから、住宅問題は行政の問題だというお話を、恥ずかしいけれども、私もついこの間調査の結果知らしていただいたのです。お互いにそれ反省してみようじゃありませんか。  若い彼らは、この東京を何とかしよう、もちろん、富士山ろくへでも都を引っ越せば別です。しかし、このままでこれをよくしようとするならば、すばらしい御提案ですからいま行えと言っても無理でしょうが、たとえば山手線の中における中央区を中心にする八つの区の中において、現在のように宮城を初め、新宿御苑もそうですが、日本の伝統的な施設はそのままにしておいて、建蔽率三〇%で十一階平均に住宅をつくり、さすれば理想的な学校もつくり、一戸当たり二十五坪から三十五坪と欧米並みの四LDKから六LDKをこしらえて——二十三区じゃないですよ、山手線の中とそのかかっておる八つの区において、全部現在の施設は認めた上で、建蔽率三〇%で十一階建て平均にして欧米並みの四から六LDKにして、人口が一千万人住むことができるという計算を出しております。なおかつ八つの区の中において、十八ホール一つずつ、八つのゴルフ場をつくることができると提言しておるが、総理どうでしょうか。わかりますか。住宅問題は土地問題にあらずして行政の問題だと提言をされておること、総理、もう一遍お答えいただけませんか。
  182. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 すばらしい御提案だと思います。表敬します。問題は、都政を含めて大きな行政、政治力によりまして、思い切った都市改造をするということであるわけでありますが、私どもも真剣にひとつ研究さしていただきます。
  183. 塚本三郎

    塚本委員 いまこれを取っ払ったりすると言っても、これは憲法から人権の問題からなかなかできると思いませんが、せめて江東区であるとか、山手線から一歩外へ出てみると、少なくとも膨大なそういうところだけはきちっとゾーニングしてやってくださるならば、そういうことを許可してくださるならば、地下鉄まで業者が引いてあげます、こう言うのです。いまあるところをどうこうするのじゃなくて、江戸川区や江東区やああいうところだけでも一定の区域を指定して、十階建て、十五階建てを許可してくださって、そして、われわれに任してくださるならば、五千億くらいの地下鉄はわれわれの費用で引いてあげます、こう言うのですよ。いかに行政というものがいわゆる場当たりだけの後追いの行政であるかということを私は恥じ入りました。  さらに外に出てこれから住宅開発をしようとするときの行政の姿、御存じでしょうか。彼らは言うのです。土地を買って住宅建設をしようとするとき、せめて欧米並みに三〇%の公園、道路敷地、公共敷地等を提供して終わりにしていただけませんか、こう言うのです。いまは五〇%取り上げてますよ。これはどなたの主管ですか、建設大臣でしょうか。
  184. 始関伊平

    始関国務大臣 最初の問題は、東京都内の土地の平均家並みが低いということに着眼されて、職住近接というようなことですね。それから、市街地再開発というような意味を含めて、ここに大きな住宅開発ができるじゃないかという御提唱でございました。大変卓抜な、いいアイデアだと思いますが、すぐに実現というわけにはまいりませんけれども、そういう方向に着眼いたしまして、われわれの方も今後検討を進めてまいりたいと思います。  後の方の問題は、開発行為の場合の供出すべき面積その他についてのお話と思いますが、ある一定の宅地などを開発いたしました場合に、それに伴う道路、下水道あるいは場合によりましたら学校の用地というようなものを開発業者に提供させる、この問題と思いますが、こういうものは本来公共工事でございますから国の方の補助あるいは国の方の経費でつくるのが当然ですが、時と場合によりましてお話のようなことが行われております。これが余り行き過ぎますと開発された土地の単価も高くなりますしいろいろ弊害もございますので、私どもといたしましては自治省と相談いたしまして、ただいまこの程度までとおっしゃいましたが、余り無理のないようなことでこの開発行為を円滑に進めていきたいという方向で努力しておりますが、今後一層注意してやってまいりたい、かように存じております。
  185. 世耕政隆

    世耕国務大臣 自治省の側から申し上げます。  ただいま建設大臣が言われたのは宅地開発指導要綱に関することだと思いますが、これは各自治体が宅地開発に伴う生活環境の整備その他でお金が要るので、その自己負担をできるだけ軽くするためにつくられているもので、各地方団体で自主的にやっておるものでございます。  これは、行き過ぎがないように各地方自治団体を通じて指導をしているわけでございますが、余りいろいろな意見とか苦情が出てまいりますので、ただいま建設省と共同で調査中でございます。その上でいろいろ今後善処してまいりたいと思っております。
  186. 塚本三郎

    塚本委員 苦情だけは自治大臣御承知のようでございます。これもまた、実は土地問題ではなくして行政問題だと言われている。先ほど申し上げましたように、買い入れた土地に対してまず半分は、ひどいところ、千葉県のごときは頭から五四%出せですよ。五四%出せですから、土地は倍以上になるのですよ。そこへもってきて、許可認可にいたしますと、図表がありますけれども、驚くべき、いわゆる自治体の市町村だけで最低二十の課を回って判こをとらなければなりません。県庁へ行って三十の課の判こをとらなければなりません。課長さんが欠席をいたしておりますると一週間から一カ月、未決の箱の中に入れたままなんです。かくして、土地を買い入れてから許可が出て作業をするまでに平均して五年間、長いところは七年かかっておりますから、すでに金利だけで倍になるから、半分で倍になってさらに倍だから、工事着工のときに土地価格は四倍になっておる。自治大臣、こういう計算御存じでしょうか。
  187. 世耕政隆

    世耕国務大臣 細目になりますので、政府委員の方から御報告申し上げます。
  188. 小林悦夫

    ○小林(悦)政府委員 お答えいたします。  それほど極端な例はない、二、三年はかかるものはあるかと存じます。
  189. 塚本三郎

    塚本委員 不勉強だよ、君は。平均五年間だよ。もう一遍調べ直しなさい。ばかなことを言いなさんな。ふざけているぞ。七年のものもありますよ、私はきのう聞いてきたばかりなんだから。大臣、あんな役人さんどうするのですか。こんなところで半分のことを言っているのですよ。答えなさい。
  190. 世耕政隆

    世耕国務大臣 早急に検討いたしまして、善処させていただきたいと思います。
  191. 塚本三郎

    塚本委員 だからこそ、住宅問題は土地問題でなくして行政だというのです。こういう人の行政問題だということを考えていただかなければなりませんね。  事前伺いから事前許可、本申請と、三段階なんですよ。一つの団地をつくろうとすると、これに要する書類だけでどれだけあると思いますか。二トントラックにいっぱいかかるのですよ。この事務経費だけだって気が遠くなるのです。初め作業をして工事にかかるときからすでに四倍になっているのですよ。四倍にしているのは行政なんじゃありませんか。せめて一年間か二年間でこれができたならば三〇%は安くなると言明しておるのですよ。わかりますか。だから、住宅問題は土地問題だと言って地主に責任をおっかぶせておるけれども行政問題そのものだということを、総理以下御認識をいただかなければ問題の解決になりませんよ。  その上、どうでしょうか。土地を出したらそれで手をつけてくださればいいのですが、学校をつくれとまだくるのですよ。道路をつくれとくるのでしょう、下水をつくれとくるのでしょう、消防をつくれとぐるでしょう、消防車まで買えとおっしゃるよ、街路樹まで植えよとおっしゃるよ。五年先には伸びてきて間引きしなければならぬから距離を置くと、それではだめだ、真ん中へ植えろといって植えさせられておるのですよ。これが実態なんですよ。  悪代官という言葉がありますけれども、私は聞いておって、悪代官じゃなくて白昼強盗じゃないか。四倍の土地から工作されて、消防車まで買わされて、さらにひどいところになると、できて五年間、道路の管理もそのままで、受け取らないのですよ。それで、そのうちに舗装が割れると、修理をさせてくださいという伺いを出すんだそうですよ。固定資産税は自分で出しているのですよ。まさに白昼強盗だと思いませんか。私は聞いておって、野党ではありますけれども、恥ずかしくなりました。  総理、もう一度申し上げますけれども、土地問題以上に行政問題だということを御認識いただきたいと思います。一言お答えいただきたい。
  192. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御意見拝聴いたしました。政府各関係部局を督励いたしまして、今後努力してまいりたいと思います。
  193. 塚本三郎

    塚本委員 この問題は地方の問題ですけれども、これはいま真剣に政府も取り上げておいでになる第二臨調の中における四つの項目の一つ、許認可行政を徹底的に早めるということが最も大切な典型的な例で、行政がこういう形で平均五年間もかかって、それから住宅建設などしておったのではたまったものじゃないということの典型的な例です。  なぜ私がこういうことを言うかといいますと、これがきちっと一年ないし二年でいわゆる開発ができますれば、少なくとも三〇%から三三%は売るところの住宅に対して安く売ることができるということです。このことは、年間所得に対して個人の住宅ならば五年分、借家ならば、あるいはアパートで、いわゆるビルならば四年分、この限界ならば現在の購買力でも百五十万戸は必ず売れると彼らは言明しているのです。それが個人住宅は七倍を超え、そしてまたアパートでさえも六倍になっておるという状態じゃ売れるはずないじゃありませんか。許認可事項さえ簡素化してくださるならば、百五十万戸はつくり、売ってみせますと業者は言っておるのですよ。このままいけば最低百万を切るかもしれない。どうにかうまくいっても百八万戸しか売れないと言っております。まさに住宅建設は、土地問題にあらずして行政簡素化の問題だと思っております。行管庁長官長官おいでにならぬですか。総理、この点お答えいただけませんか。
  194. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 行政事務の簡素合理化につきましては、いま御指摘をいただきましたものを初めといたしまして、中間答申をいただくことに相なっております。この四月には私どもそれを取りまとめまして、この各分野にわたるところの行政事務の思い切った簡素合理化を国会にお諮りをして、御決定をいただきたい、こう思っております。  ただいまの土地に関するあるいは住宅に関するところの許認可事務、これを簡素合理化することが住宅問題解決の大きな決め手になっておる、かぎであるという御指摘は、十分拝聴いたしました。
  195. 塚本三郎

    塚本委員 しかとひとつ進めていただいて、目標の百三十万戸建設に、後からしまったということのないように、この行政さえ進めていただければいわゆる百五十万戸までは可能ですと、彼らみずからがそう言っておるのですから、こんないい話はないじゃございませんか。ぜひひとつ精力的に進めていただきたいと思います。  次は、中小企業の相続税制について御質問いたします。  中小企業の事業主ないし経営者が老齢化し、ここにその世代交代期を迎えているが、現行の相続税制度のもとにおいては、事業主ないし経営者の死亡により中小企業は膨大な相続税を負担することになり、その負担にたえることができず、かくて事業の継続が困難に陥るというケースが続出しております。  中小企業は、現在、事業所数において九九・四%のシェアを占め、雇用従業員数八一・一%、製造業出荷額は五二・七%に達しております。日本経済は中小企業によって支えられているのであり、その中小企業が相続税の負担の重圧によってその存続が危機にさらされていることは、日本経済にとってゆゆしき大問題であります。  右の事情から、個人企業の事業用資産及び法人企業の取引相場のない株式に対する相続税の過重な負担が是正されるべきであることは言うまでもありません。これは主な中小企業団体の共通した要望課題となり、国会審議においてもこの問題はしばしば取り上げられてまいったところであります。  現行相続税は、自然人の生存中に形成された私的財産に対して、死亡時に清算し、社会に還元するとの課税理念から成り立っているものでありますが、自然人と違って、継続企業として永続性を持った活力ある事業経営を行わなければならぬ企業の事業用財産に対する課税としては、これは問題が多いことはすでに大臣も御承知のとおりであろうと思います。個人企業の事業用資産に対する相続税の負担が事業の継続を阻害するほど膨大なものとなるのは、事業用資産を構成する土地の異常な高騰によるものであることは明らかであります。  そこで、問題です。ここです。個人企業の事業用資産及び全部または一部について取引相場のない株式については、その評価方式を純資産価額方式に統合することとした上、個人企業の事業用の土地及び法人企業の取引相場のない株式について、現行の農地等に対する相続税の納税猶予制度、これは租税特別措置法の七十条の六を考え方のベースとして所要の調整を加えた制度を設けることを提言いたします。  すなわち、現行の農地等に対する納税猶予制度というのは、相続人が農地等を相続して被相続人の農業経営を継ぐ場合には、その農地等の相続税については納税の猶予が受けられるというものであります。具体的に言えば、農地等を相続した人が農業を継続する限り、農地等の時価のうちで、農業投資価格を超える部分に対応する相続税については、すなわち土地価格だけはということですが、その納税を猶予し、次の相続まで、または申告期限後二十年間農業を継続した場合はその納税猶予額を免除されるというものであります。もちろん、それが途中において売ったり農業をやめてしまったときは、改めて当時の利子を入れて納税しなければならぬことは当然であります。  したがって、ここに創設を提言する制度の内容は、基本的には右の現行の農地等に対する相続税猶予制度の内容を踏襲しつつ、右の農業投資価格を、個人企業の事業用土地の相続の場合にあっては当該土地の取得価額に、買ったときの価額だけにするとか、あるいは法人企業の取引相場のない株式の相続の場合にあってはそのいわゆる株式の発行会社の土地の帳簿価額を限度として置きかえてみたらどうでしょうか。  すなわち、個人企業の事業用の土地及び法人企業の取引相場のない株式に対し、その事業用の土地またはその取引相場のない株式の発行会社の土地の時価のうちで、当該土地の取得価額または帳簿価額を超える部分に対応する相続税についてその納税を猶予して、先ほどのように二十年後まで続けたならばそれは免除するという、農家と同じように、その中小企業の会社の土地についてはいわゆる買ったときの値段かあるいは帳簿価額だけにして、あとは猶予をするという方策をとるべきだ、こういうことを提唱するのです。ぜひ、中小企業の諸君の立場にかんがみ、事業継続のために取り上げてほしいというふうに提言いたします。どうでしょう、大蔵大臣
  196. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、たとえば都会等で工場等を持っておる人、あるいは医業で言うと精神病院のように広い土地を持たないと商売にならないというような方に、大変強い御要望でございます。しかし問題は、農地の場合は、要するに現在の民法上均分相続という制度がございます。しかし、日本の農業はこれ以上零細化されても困るし、農地法という法律上不在地主は原則的に耕作は認められない、所有は認められない、これは原則的な考え方でございます。したがって、農地は自分のものであっても自分のものでないような状態でもございますから、特別な扱いをしていることはただいま御説明のとおりでございます。したがって、中小企業の場合はそれとは必ずしも同じではないのであって、そこらのところで農地と全く同じにするということは非常にむずかしいと私は思います。  問題は、大抵、法人になっておる場合が大きなものは多いでしょう。したがって、問題は上場株式との均衡問題、権衡問題というのがあります。上場株式というのは必ずしも含み資産が正当に株価に評価されるとは限りません、かなり人気の問題もございますから。したがって、含み資産で時価に評価すればもっと高くなる株価も、安い評価の場合がございます。ところが、中小企業の場合、いま言ったように取引のなにがございませんから、結局はその財産を時価に評価して、持ち株で割り算して株価を出すということのために、非常に一株当たりが高くなるという傾向がございます。これも事実です。問題はその均衡をどうするかという問題でございますので、これらの点につきましては、相続税というものは富の再分配機能というような観点もあるし、技術的にいろいろな問題点がございますが、一つの株式の評価についての提言であることは間違いないんです。したがって、これらについては今後専門家の意見も広く徴して検討していきたい、そう思っています。
  197. 塚本三郎

    塚本委員 農業においては、膨大な土地を持っておる、それを相続税によって分けてしまっては農業は成り立たないという、いまの、零細化することを防ぎたいということです。しかし、その評価は、いわゆる売れば高くなるということの評価でいくと問題があるからそういうふうにしようということですが、同じようなことは工場の場合もっと問題なんです。農業ならまだ、売って、細分化でもみんな生き残ることは農業として生き残る、独立はできないとしても。しかし、中小企業の場合は、切ってしまったら工場そのものが成り立たないんですから、だから、これを処分をして相続税に充てるということにおいて不可能であるという点においては、これは双方負っておるところの重みからいったら違いはないというふうに見るべきではないでしょうか。  しかし、あなたがいま言っておるように、まあ例外として精神病院のような多くの問題について、これはまた病院は病院で、別個医療法人の相続で私がここでも提案しておりますように別の問題を提言しておけばいいことであって、この際は、少なくともいわゆる戦後三十から四十代の人がもう三十五、六年たって七十代の峠を越えようとしております。そのときに、事業継続を可能ならしめる個人の財産を社会に還元するという相続税が、事業継続という社会的な使命を持ったものと相反するような使命になっておるから、ここに一番問題は、その土地自身の価格が売れば高くなるであろうという期待可能ないわゆる益というものを税として取るのだったら、免除するのではなくして、それを処分するまで実は猶予したらどうだ、こういう提言ですから、これはやはり社会的な要請にこたえるものとして手をつけていただくことが大切ではないかというふうに思います。  いろいろと法制局とも相談してみましたが、これはもっともな提言なんだから、農家にこれを当てはめることによって、もちろん所有と経営との不可分というものもあります、しかしながらさればといって、中小企業においては、いわゆる土地は分割することは物理的には可能ですけれども、中小企業の土地は敷地そのものだから分割さえも成り立たないという、法律的には農家の方に利のあるような法制がありますけれども、現実的には農家以上に中小企業は分割をしたら経営そのものがだめになってしまうといういわゆる不可欠の地位にも立たされておるという意味からいっても、この際、猶予を許されないいまの相続の問題ということを考えて、真剣にひとつ具体化の方向で取り組んでいただきたいというふうに提言します。もう一遍お答えいただけませんか。
  198. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農業の土地は、耕作権の問題と所有権の問題と一緒なんです。工場のような場合は、経営会社でやっても株の分割は自由にできるわけです。したがって、そこが農業と非常に違うところでございますから全く同じにはできませんが、上場株式との均衡上の問題として、御趣旨に沿ってどういうことができるか、一層検討を深めていきたい、そう申し上げます。
  199. 塚本三郎

    塚本委員 それは株で分けると言ってみても、中小企業なんというのは御承知のとおり、大臣わかっておって、あなたも税理士やってみえたんだからおわかりのとおり、そんなもの三つにも四つにも分けたら経営なんか成り立つものじゃありません。中小企業はいわゆるワンマン経営でやっていくところにまた中小企業の強さというものがあることは、改めて申し上げるまでもないんです。だから、そんな株主にごちゃごちゃ言われるような経営形態になったらその企業は衰退してしまうんです。わかっておって大臣お答えになっておるからこれ以上申し上げませんけれども……(「わかっておらぬ」と呼ぶ者あり)わかっておらぬという意見がありましたけれども、とにかくそれは本当に深刻な問題になってきている。おれたち死ぬとき子供に対してどうしたらいいんだということで、もう頻々としてそういう相談がありますから、これはぜひひとつ考えてやっていただきたい。  それとともに、もう一つ経営者自身の信用が問題なんですよ。死んだときにはその経営のノーハウというものが全くだめになってしまうんです。だから、二代目は育たないというのはそのことなんです。そういう意味で、生前贈与ということを考えておいて・おやじが元気なときには、おやじが後ろに下がって息子を監督しておいて、そうして息子を社長にしておいて、贈与は、おやじが死ぬときまで贈与税をそのままにしておいて、そうして亡くなったときに相続税に切りかえるという形を民社党は提言しておきますが、どうでしょうか。  そうするならば、若者がおれの会社なんだと言って、三十代の若き諸君が先頭に立ってがんばってくださる。そのとき贈与税でがっぽり取られてしまったら何にもなりません。だから、中小企業としてのその最も大切な生きる道を備えておいて、先ほど申し上げたように、中小企業のわが国に果たさなければならぬ役割りは御承知のとおりでございますから、ぜひぜひ生前贈与ということを認めて、その贈与税をおやじが亡くなるまで猶予していただいて、亡くなったときにこのような、提言申し上げたような相続税法の適用をするということによって、いまやる気のなくなった二代目というものを第一線に押し出してきて、中小企業に活力を与えるということの提言を申し上げますので、この点をもう一度大臣からお答えをいただきたい。
  200. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほど申し上げたように、農業の場合は食糧の生産という、食糧の確保という国民的な課題、大問題があるわけです。そこで、農地の分散をさせないために特異な扱いとして一括贈与制度というものをつくっておって、それで均分相続という問題についても、耕作権というものをばらさないようなために政策的にやったわけです。そこらとの関係がありますから、中小企業の場合必ずそれと同じことは非常にむずかしいんじゃないか。  問題は、税の問題は公平の問題がございますから、中小企業以外の方でも、自由業の場合でも、学者でも財産を持っている場合がございますし、いろいろそういうところとの公平の問題という問題も考えなければなりません。ただ私としては、先ほど言ったように、株の評価等についてはこれらの権衡問題は十分に検討していきたいということを申し上げているわけでございます。
  201. 塚本三郎

    塚本委員 農業のことを盛んにおっしゃるが、農業を私は軽視するつもりはありませんけれども、中小企業は農業以上に企業を分離することが不可能だということは、大臣御承知でしょう。だから、そんなことをおっしゃらずに、他の問題との税の公平ということについては配慮しなければならぬと思います。しかし、農業との関係は、私は、どちらに軽重があるかということはこれはもはやこれ以上論ずる必要はないと思いますから、生前贈与と相続税と二つについて御提言を申し上げておきます。  それから、次はグリーンカード。  明年一月から交付開始、五十九年一月から実施される。実施の切迫に伴い、制定当初には全く意識されなかった幾多の疑義が各界に大きな不安感を噴出させております。  この制度は、税負担の公平論を金科玉条にして、憲法が保障する国民のプライバシーの権利を無視していることが最も心配されます。  その二は、この制度で預貯金が公的に露見するのを避けるため、それらの預貯金がこの制度の対象外に分散されれば、この制度で期待した総合課税による増収額は確保できなくなってしまうことを心配いたしております。  この制度から逃避する資金を目指して、金融、証券、保険の業者競争が激化して、国民経済の各分野に不測の事態を惹起するおそれがあるということであります。  この制度は、一般国民や金融諸機関に大きな責務を強制するもので、その物的消費や労務の総量は莫大なものになろうということであります。  顧みて過ちあらばこれを改むるにはばかるなかれと言われておるように、私たちは、実際あのときに賛成したのです。しかし、理があるから賛成したのですけれども、実際には一利あって多くの害があることがその後わかってまいりました。五十五年の国会で制定された当時、国会はロッキード疑獄の衝撃で、ほとんどその功罪を論ずる暇がなくして私たちまで賛成をしてしまったのであります。しかし、この過ちが、多くこれから問題になってくることを私たちは心配いたしております。  かつて国会におきましては、二十三年にGHQの指示で取引高税法を議決したが、これは国情に沿わないと反省して、翌二十四年には早速これを廃止したという経過もあります。角を矯めて牛を殺すという言葉がありますように、国を憂えて、このグリーンカードというものは、私たちが考えて、不公平を改めるということは事実です。しかし、二百億もかかる。五百何十人も、行政改革のときにまた大蔵省の役人をふやさなければならぬ。国税は八百億、地方税は千億から千二百億で、二千億取れると計算するけれども、このまますぱっといけばそうなるでしょうけれども、もうどんどんと逃げつつあるという状態。まして換物思想から、毎日金が一トンずつ売れていくという新聞の報道等は御存じのとおりでしょう。だから、公平は結構ですけれども、一々それに要する紙を持ってきていただいて、そのカードの番号によってやるという、かつての納税者背番号というものと違わない形になってくるのです、実際においては。  ですから、これはしかし問題が多いなというふうなこと。いま大変な、二億口とも三億口とも言われております。聞いてみると、十枚ぐらいとにかく紙をやりとりしてやらなければできないとするなら、紙の金だけだって何億か要るということになるのです。ですから、これは問題があるぞというふうな多くのちまたの声に対して、私どもは賛成したからここで言うのは恥ずかしいという気持ちがありますけれども、しかし、やっぱり間違いがあったということで、もう少し再検討しなさいと提言することが、これからの必要なことではないかというふうに思います。どうぞこの点、大蔵大臣総理大臣からこの問題についてお答えいただきたいと思います。
  202. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、大多数の政党から、ぜひとも税の公平確保のために、分離課税はいけない、総合課税にしろということで、それでも逃げ道がいっぱいあっては困るという点から、一方においては非課税貯金というのが三百万円という枠があるが、これは制限なく現実には積まれているのではないか、脱税している、それをなくせという、公平という見地から生まれた制度なんです。まだ実行してない。五十九年から実行する。しかし、それにはかなり誤解があって、全部貯金がわかってしまうのではないかとか、いろいろ誤解があるというのも事実なんです。ですから、実行までには、誤解のないように全部の人にもっとPRをする必要がある。政府としては、これをいまやめてしまうという考えは、つくったばかりでございますから、着々準備をしておって、これは自民党だけで強行採決でつくったわけではございませんで、そういうこともあり、これはそういうふうな心配のないように善処してまいりたいと思っております。
  203. 塚本三郎

    塚本委員 これは通産大臣にひとつ答えていただきましょうか。といいますのは、大蔵大臣、もちろん私ども勉強しておるのですよ。タンス預金は認められておりますし、あるいは通知預金や普通預金のように利息が本当にわずかなものは認められておるのです。そうすると、この金利わずかで済む金をねらって金融機関が大混乱になって、争奪戦が始まってくるのですよ。おわかりでしょうか。ここへ証券会社がわっと来ますよ。保険会社がまた参入してまいりますよ。基盤の大変動になりますし、中小企業の当てにするところの庶民預金の財源がなくなってしまいますよ。これは重大な問題だと思います。通産大臣、いかがでしょう。
  204. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 実は、私も党にありますとき政調会長をいたしておりまして、このグリーンカード制につきましては実行についてはいろいろと問題がある、こういうことでいろいろの角度から再検討をいたしたわけでございまして、そして相当程度の是正措置はとって、一応五十九年度から実施という形で進んでおるわけでございますが、まだ実施までには時間もあるわけでございます。いまのような御意見等も踏まえまして混乱の事態がないように対処していかなければならぬと思うわけであります。
  205. 塚本三郎

    塚本委員 郵便貯金を扱っておる郵政大臣、グリーンカードをどういうふうに扱われるかということを聞きたいと思うのです。
  206. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 郵便貯金の問題がございますが、一般の金融機関と同じように取り扱っていくと聞いております。
  207. 塚本三郎

    塚本委員 ピントが外れておりますけれども、まだ聞いておいでにならないからもうこれくらいで……。  総理大臣、これ相当問題が多いのです。私たちも賛成したことをはっきりと国民の前で認めておるのです。そして、不公平税制は改めなければならぬというその一点で進めてきたことに間違いありません。各党ほとんど御賛成なんです。しかし、いま各党、こちらの自民党の先生方でも、ずいぶんそういう問題点指摘されて、改めて静かに勉強なさってみるとき、それ自身は何も問題はないけれども、付随して起こってまいりますところの多くの害というものに気づいてきて、そして問題が余りにも多過ぎるということを素直に認めて、これは実施前に、実施しようとして具体的に着手したとき問題点が多かったからこれを廃案にするということぐらいは、過去の例もなくはないのですから、国家のために、わずかに一千億かそこらの金のためにこんなに大混乱を起こし、そして金融界における地殻大変動を起こすというふうに提言しておきます。これは恐らく、運輸大臣あたり、経済人だからよく御存じいただけると思うのです。これは問題が多い法律だと思いますので、総理、よく静かに、法律をつくった私たちも含めて反省、改めていくようにさらに提言を申し上げます。  私、本当は防衛問題をただしたかったのですけれども、あと三十分足らずしかなくなりましたので、第二陣の方に安全保障の問題を移しまして、教育の問題を最後に取り上げてみたいと思います。  過日、私どもは教育憲章を制定することを提唱いたしました。国民の多様な価値観を認め、自己の信念に基づき勇気を持って行動する人間を養成すること、民主主義の担い手としての自覚と責任を持った人間の養成、国際平和の基礎としての連帯感の養成など目指すところであります。これは家庭や学校、社会における青少年教育のよりどころとなり、今後の各種の青少年施策の基本となるものであります。国民の合意によってこういうものを制定すべきではないかというふうに考えますので、文部大臣、いかがでしょうか。
  208. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  教育の基本理念につきましては憲法、教育基本法に明らかにされておりますし、これを具体化いたしまするために学校教育法がある。さらにまた、教育課程の基準となります学習指導要領、これらで教育の基本理念についてはもとより、いかにしてこれを具現するかということについても国民の前に明らかにされておると考えております。これに加えてさらに教育憲章を制定すべしという御提言でございます。  申すまでもなく、今日の教育をよりよくしようというお気持ちに発する御提言として、敬意を表する次第でありますが、これを制定いたします際にどのような形式によるか、あるいは内容にどういうことを盛り込むか、相当広範な国民的な合意を必要とする問題でもあると考えます。慎重に検討すべき問題だと考えております。
  209. 塚本三郎

    塚本委員 これは合意がなければなりませんので、提唱しておきますから、十分に時間をかけて御検討いただきたいと思います。  教育制度を取り上げる前に、私、昨年の予算分科会において一、二提言したことがありますので——厚生大臣おいでになりますか。  実は医療費の問題が高騰しておるその裏には、戦後、健康保険によって、どんどんとお医者さんあるいは歯医者さん、こういうものの学校が増設をされました。いまやその医者の数がどんどんとふえてしまって、そうして都会においてはもう開業する場所がないような状態になってきております。私立の学校もたくさん許認可がふえてまいりました。もうこのあたりで国公立の定数ぐらいはしぼっていくべきだということを提案して、園田厚生大臣もそのようにいたしますとおっしゃったけれども、依然として国公立の医師に対する問題は、一人大変な金がかかっておるということを聞いております。  したがって、これは行政改革の立場からも、最近は私立の方に重点がいっておるんだから、国公立の方は、いわゆる臨床関係で大体六十人から八十人という枠で持っておったのを一挙に百人にしてしまったから、もう一度六十人から八十人に減らしていかないと、それはもうお医者さんが多くて、医療は完全にすればいいに決まっておりますが、しょせんそのことは医療費の膨大にもつながるということで、定数をしぼるという約束をされましたが、いまその作業はどうなっていますか。厚生大臣からお答えいただきたい。
  210. 森下元晴

    ○森下国務大臣 この問題につきましては、園田厚生大臣の発言、いまおっしゃったとおりでございます。  そこで、今後の医師及び歯科医師の養成を将来の医療需要に応じた適正数とするためには、今後の医療の動向、社会情勢の変化等を総合的に勘案する必要がございます。このために現在、関係がございますから文部省との間に検討会を設けるとともに、適正な医師数の算定をどのような方法によって行ったらよいかについて検討しているところであります。  それから、医学部の定員の縮小については、これらの検討結果を踏まえまして、これも文部省と協議してまいりたいと考えております。
  211. 塚本三郎

    塚本委員 ぜひ早く実施に移していただく必要があると思いますので、御要望申し上げておきます。  さて、文部大臣、教育制度の見直しに対して、戦後いわゆる六・三・三・四という制度ができました。しかし、御承知のとおり、この制度が特に中学三年、高校三年、大学四年という、ちょうど生徒が肉体的、精神的に成長期に入った、中学に入ったら高校受験、高校に入ったら大学受験にと忙殺されてしまい、学校の名誉のためにも先生方はその入学に中心を置かざるを得ないという形になってしまっております。したがって、校長先生などの世論をとってみますると、現在の六・三・三・四というのはいいという人が一割そこそこなんです。もう見直すべきだという制度の提言をしてほしい、こういう声が圧倒的、九割の声になっておるということを大臣はどうお考えでしょうか。
  212. 小川平二

    ○小川国務大臣 学制の根本的な改革という問題、申すまでもなく国家の将来に非常に大きな影響を及ぼす問題でございますから、慎重に対処してまいりたいと思っております。  いまお言葉にございました中学校と高校の境を取り払うといいますか一本にするという問題、高等学校へ入学するというころになりますると、生徒の能力、適性ということもほぼ明らかになってまいりまするし、それに応じて将来の進路を選択するということになるでございましょう。非常に多様な選択が出てくるに違いない、教育内容もこれに対応したものでなければならないということになると存じます。高等学校と中学をつないでしまった場合に、果たしてこういう状況に適切に対応できるだろうかということ、これは一つ問題点ではなかろうかと思いますので、よほど慎重に検討しなければならない問題かと考えております。
  213. 塚本三郎

    塚本委員 ここに、東京新聞の記事の中に、六・三・三制支持一割以下、こうなっているんです。校長先生や教頭先生に世論をとってみると、この制度このままでよろしいという人は百人の中で十人いませんぞということなんです。中学と高校を、三・三を六にして一つにせよということは、義務であるのと義務でないのとの問題があります。だからいまどうせよと、こうしなさいという提言をする勇気はございませんが、しかし、現在の制度がよろしくありませんぞということ、これは決定的になっておるということを考えますと、もうかわいい子供たち、国家有為の人材を育成するために、いわゆる制度そのものを改定することについて、具体的に検討を開始することが必要だと思うのです。どうせよということまでまだわれわれ案を持っていない。現場の先生方の意見を十分に聞いて、あるいはお母さん方やおやじさんたちの意見を聞いて——もうそんなことになると、試験勉強中心の人はまだいいかもしれないけれども、そうでない人たちは学校に行きたくないという風習までできてしまっておるのです。ですから、この制度そのものを検討することを提言いたしますので、大臣も早急に、どうしたちいいかということを、現場の声ぐらい聞くところに手をつけてほしいと思います。いかがでしょう。
  214. 小川平二

    ○小川国務大臣 時代の変化に即応いたしまして、現行の教育の制度あるいは内容、絶えず見直しを図っていく必要があると存じます。  今日の学制を根本的に改革すべく検討を開始すべしというきわめて重大な御提言をただいまいただきました。しかと承って研究をするつもりでございます。
  215. 塚本三郎

    塚本委員 しかと承ったということは、どうせよというのではないのですけれども、具体的に改正のための調査ぐらいには乗り出すというふうに受けとめてようございますか。
  216. 小川平二

    ○小川国務大臣 仰せの点は絶えず研究をいたしております。
  217. 塚本三郎

    塚本委員 そんなばかな御発言ありますか、絶えずなんというようなことをですね。それではいままでどうして一割しか支持できなかったものをやっているんですか。あなた、文部大臣になったばかりだからといって、そんないいかげんな答弁ありませんよ。絶えずやってみえたならば、十人に一人もないというデータが出ているのか。絶えずやっておりますというのは、どういうデータでありますか。いままでのデータ、ちょっと報告してください。
  218. 小川平二

    ○小川国務大臣 現行の制度に対していろいろな批判が出ておることは承知いたしております。それらの批判には十分耳を傾けて研究をいたしておる、さようなことをただいま申し上げたわけです。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  219. 塚本三郎

    塚本委員 一般論としてやっておりまして、四分六ぐらいならそれはどうかなということでいいんです。百人のうち十人いないという状態ですよ、現場の担当者が。絶えずやっておったけれども、そこまでとは知らなかった、だからどうしようかということについて具体的に乗り出してまいりましょう、ここまでおっしゃるのが親切な御答弁じゃないでしょうか。もう一度答えてください。
  220. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいまたとえば何らかの機関を設ける等のことをして、組織的にこの問題を研究しようということまでは考えておりません。しかし、きわめて重大な御提言を承りましたので、念頭に置いて善処いたしたいと思います。
  221. 塚本三郎

    塚本委員 私、ここで提言しておいて、聞きっ放しになって、大臣がかわってしまって、何度も同じことをしなければならぬことを残念に思いますから、今度の小川大臣はもう少しその点、いわゆる組織的なことまでもときによっては踏み込むけれども、いまここで約束するわけにいかないということですから、とにかく校長先生たちの世論は百人の中で十人いないのですよ、これは恐らく同じように父兄も受けとめておるというふうに踏んまえていただきたいと思います。  次に、私は教育費の問題につきまして提言をいたします。  いま、いわゆる勤労者の、いや勤労者だけじゃない、サラリーマン全体の世論を見てみると、一番の可処分所得に対して大きな負担は何だといえば、必ず教育費という答えが返ってまいります。二五%から、いわゆる塾などに通っておる子供を持つ人たちにとっては四〇%にまで達しておるという状態になっております。減税の問題につきましては、長々と各委員がおやりになったことです。しかし、少なくとも国家有為な人材を育成するためにせめて教育費を、自分のかわいい子供だから、金はあるいは食事を減らしてでも出してやろうという気構えを持っておりますけれども、しかし、それは国家のためでもあるのだから、少なくとも、まあどうでしょう、全部というわけにまいりません。西ドイツにおいては下宿代まで全部経費として損金算入であります。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕 カナダにおきましては二十五ドル以上は全部経費として損金として認めて税の対象から外すということになっておることは、大臣あるいは御承知でしょうか。  私は、五年ほど前ここの舞台から、文部省の諸君もその気になって資料をつくって提言いたしました。せめてどうでしょうか、高校と専門学校、大学の入学金と授業料だけは、どうせ少ないときには私学助成したり国庫から出しているのだから、父兄が分担してくださるところのその絶対必要な金額だけ——私が試算しますると一兆二、三千億です。税額でこれを損金として認めるとすると一千億ないし一千五百億の間だと思いますが、ことしやれというのは無理だと思いますけれども、もうぼつぼつ、教育費の中で——もう一度申し上げます。高校、専門学校、大学の入学金と授業料だけは経費として所得税の対象から外すというふうなことを具体的に文部省から作業に移るわけにまいりませんか。かつては作業を進めたことがあるのですよ。大臣、いかがでしょう。
  222. 小川平二

    ○小川国務大臣 教育費の負担を軽減するということは教育行政の上のきわめて重要な課題だと心得ておりますが、御提案の問題は、きわめて率直に申しまして、今日直ちに実現するということはきわめてむずかしい問題だと心得ております。お言葉にありますように、かつて相当長期間にわたって繰り返し繰り返し文部省が問題を提起して、大蔵省と折衝をしたというような経緯もあったわけでございますが、御期待の方向で解決をできずに今日に至っておるわけでございます。  この問題を検討いたします際に、たとえば所得を異にするのに従って負担が違ってくるということは不公平ではないか、あるいは若年の勤労者との間に均衡を失するのではないかというような問題に突き当たるわけでございます。あるいはまた、これは大蔵省の言い分でございますが、所得税について個別の事情をしんしゃくするにしてもこれには限度があってしかるべきだ、何から何まで取り上げるわけにはいかないという、これは大蔵省の主張でございます。  御提案の趣旨は十分理解をいたしておりますけれども、なかなかこれは今日直ちに実現できる問題ではない、当面、私学に対する助成あるいは私学振興財団の融資等々の歳出面の対策で負担軽減に努めていきたい、こう考えております。
  223. 塚本三郎

    塚本委員 かつて文部省が熱意を持っておったので、大蔵省が何と言おうとも文部省だけはこうしてやるんだ、野党も一緒になって協力せいというぐらいの若い文部大臣が就任してほしいと、いま愚痴をこぼすのですね。まあ森下厚生大臣と小川文部大臣とこれは交代していただいたら、両方、老人医療法を抱えた厚生省と若者の代表森下大臣と、これは総理大臣、任命を間違えたんじゃないかな。ちょっとそういう気がいたしますね、本当に。この点はもう少し本当に熱意を持って当たってほしいという気がいたしますね。そういう考え方で私たちは子供のために舞台に立って大蔵省に向かって体当たりでぶつかっていくというような大臣であってほしいということを、強く要請いたしておきます。  校内暴力について。  中学生の学校の中における暴力は大変な事態になっております。刑法犯に占めるところの中学、高校生の場合三二%、とりわけ中学生が最も多いというような状態になっております。学校の中における暴力件数は、昨年千七百二十八件というふうに、四二%もふえておるのですよ。特に生徒が先生に対して暴力をふるったというような事件が九五%もふえて、先生が生徒にやられるのですよ。これは高校にはほとんどないのですね。もう高校になるとないのです。中学が恐るべし六百四十九件昨年あるのです。高校はわずか三十一件なんです。東京都内においてはことしに入ってから毎日一件ずつ発生しているのです。どこかの学校で先生が生徒に暴力をふるわれておるという状態になっておる。原因は、家庭にもあり、学校にもあり、地域社会にもあるでしょう。しかし、最も大事なことは、先ほども私は国鉄の中で管理者の問題を提起いたしましたが、学校の中においても、先生というよりも校長先生、教頭先生が管理者としてきちっと中を押さえておるかどうか、このことが決め手だということを現場の先生方は言っております。大臣は、どうですか、就任なさってから一度でもそういう暴力事件のあった学校等を直接お調べになったことがおありでしょうか。
  224. 小川平二

    ○小川国務大臣 校内暴力の問題につきましては、塚本先生同様、私もまことに心を痛めている。遺憾ながら、今日まで特定の学校について調査をするという機会を持ち得ずに来ております。
  225. 塚本三郎

    塚本委員 お忙しい方だから、私は無理もないと思いますが、私、ここで昨年校内暴力の問題も取り上げました。家庭の問題があります。日教組の問題があります。教科書の問題があります。そういう形から学校の管理制度の問題がある。特に、東京都教育委員会が日教組と結んでおる協定の中において、本人の希望と承諾がなければ転勤をさせることができないという人事権の問題が一番の問題だと指摘をしました。幸い、鈴木知事は、本年四月一日からは破棄するという報告を私のところへしてくれました。この鈴木知事の英断によって、もう東京都内におけるところの空気は変わってきているのですよ。全国にも私はこういう体制で——問題は、組合が悪いと言うけれども、管理者の姿勢なんです。魚は頭から腐ると私は三時間前にも言いましたけれども、ここなんです。  私は、本委員会において、一年前、校長先生はなぜ殴られないかという話をしました。校長先生はなぜ殴られないのだ。ほかの先生は生徒にどつかれても、校長先生はほとんど殴られない。見て見ないふりをするからだ。問題があったときには担任の先生に任せて自分は逃げるからだ。最後に、厳然として管理責任を負った先生は注意をして徹底的にそれを教育をいたします。その三つのうちの一つなんです。だから、校長先生は殴られないのだという話を一年前にここで提言をいたしました。  私は、東京都の中で、大臣、ぜひお願いいたします、見に行ってやってほしい。最もよくなかった環境の中学が最もりっぱになって、校内暴力が絶滅をされた事案を一つここで紹介をさせていただきたいと思います。  校長先生が毅然として行ったときにはこれが改まる。この学校は、いわゆる東京におきましてあの山谷という、まあドヤ街というふうに言われておりますが、そういう中において、もう大変にひどい状態の学校です。蓬莱中学校というんだそうです。もうあの山谷ドヤ街の中で、朝学校へ行くと、まずいわゆるうんちが残っておる。あの労務者たちの立ち小便で悪臭ふんぷんなんです。へどがいっぱいあります。そういう学校の中ですけれども、数年前に先生方がよそから転勤してきて、どうしてこんなひどいんだということで、話し合って、おれたちからひとつ直していこうじゃないかということで、先生方が、私も日教組の一員でございます、しかし組合には何とも言わせません、こう言って自主的に私たちは取り組んでまいりましたと言うんです。そうしてまず一番初め、来た生徒から先生と一緒になって、そのふん便の掃除から始めるんだそうです。毎朝だそうですよ。山谷ドヤ街の労務者たちの立ち小便から、そういうものを全部掃除することから始めるんだというのです。それから便所の掃除からすべてのことについて、もういまは学校はピッカピカだそうですよ。自分でそういうことを体験してきた、非行多発の一番悪いところで。もう四時になると危いからといって帰れ、先生方も余分なことをするよりもと言って、四時になるとみんな帰りなさいと校内放送するんだそうです。そうすると、ああいうところですから、みんな中学生、浅草へふらふら出てくると、ストリップの看板やエログロの看板ばかり。こんなところへふらふら行っていい子が育つはずないじゃありませんか。そのときに先生方が、最後まで残ろう、そうして話し相手になってやろうと言うんです。そうしても残業手当は全然出さない。ぐずぐず言ったときに——それは日教組の諸君がぐずぐず言ったそうです。ところが、管理者がやる気のある方に味方をしてくれたと言うんです。ここが大臣、大事なところです。そういうものと摩擦があるときに、必ず管理者がまじめにやる者の味方をしたら、今日の国鉄だってあんな姿にはならなかったと私は思っておるのであります。ここはそういうふうで、日本で一番悪いとは申し上げませんけれども、いわゆる大阪における釜ケ崎と東京の山谷と言えばおわかりいただけると思います。そういう中においてピッカピカの学校ができ上がった。  私は、過日その学校の中の風景を、よそから余り参観が多くなった、どうしてこんなにりっぱになったんだということから、その姿を私はフィルムで見せていただきました。  彼らは、ただ単に頭じゃないと言うのです。実際に自分で行動させればよく覚えると言うんです。奉仕活動を自分でさせるようにいたしました。そうなると、残っておっても学校の中が楽しくなるのです。先生方はいわゆる残業手当をよこせなんて言わないと言うんですよ。子供のためにいつまでも残ってやろうじゃないかという形に変わってくると、今度は先生どっか日曜に遊びに行こう、こういうことになったから、行く場所がないから千葉県の農家を借りて、休耕田を借りて、そうして田植えまでやってみたと言うんです。こんなに彼らが生き返った姿を見たことがないと言っておりますね。ついにはボランティア活動までやって、障害年だからといって、昨年は身障者に対するいわゆる奉仕活動をやってきましたと言うのです。そうすると彼らは、いままでわがまま言っておったことが済まなかった、身障者の諸君と一緒に生活するときに満足なものがどんなにありがたいか覚えたと言うんですよ。それを全部作文に書かせるから、みんな作文がうまくなったと言うんです。頭じゃないんですから、やったことを書けばいいんですから。もうそうなると夏休みまでみんなが一緒に出かけるようになる。こういうような体験を通じて、いわゆる暴力の一番典型的であったと言われておりますその学校が全然暴力がなくなって、父兄も理解をしてやっていく。それでおって進学率は決して落ちておりません、むしろ向上してきたのだと、その先生方は目を輝かして私どもに言っております。  文部省におきましても、県に一つずつ勤労学習何やらという体験校をつくろうというようなことをおっしゃってみえるけれども、これは県に一つではなくして、やはり田植えというようなもの、芋掘りというようなもの、老人クラブに慰問に行って一緒に遊んであげて、身障者と別れるときには向こうは涙を流して別れを惜しむ、そういう体験を通じて彼らは暴力をなくしたと言うんです。  どうぞ大臣、もう近々のうちに、時間を見て、朝から半日ぐらいで結構ですから、見に行ってやってほしい。そうして、本当に具体的に体験を通じて若者たちが直っていく姿、そのとき最も大切なことは、管理者が毅然として、やる気を持っておる先生の側につくんだということが私は印象的でございます。  この点に対する感想と決意のほどを文部大臣総理大臣に伺って、時間が参りましたから終わりたいと思います。
  226. 小川平二

    ○小川国務大臣 校内暴力の問題は、一言にして申しますれば、学校、家庭、社会それぞれのあり方、それと生徒児童自身の性格、素質というようなものが絡んで出てくる問題と心得ておりますが、御指摘がございましたように、学校におきまして、校長を中心として一体となってこれに取り組んでいくという姿勢において欠けた学校があるということにも一半の責任があると理解をいたしております。  校内暴力を絶滅いたしますために、文部省として数々の施策を実行して今日に至っておりますが、お言葉にございました勤労生産学習、植物の栽培等を中心にして正しい勤労観を培う。これについて実践的な研究をいたしますための学校を指定するというようなことも今年度から実行に移す予定になっております。  非常に貴重な御注意、御教導をいただいたと考えておりますので、今後もこの問題につきましては、文部省一丸となって対処いたしていくつもりでございます。  将来、必ず時間を捻出いたしまして、学校の視察も実行する所存でございます。
  227. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいまは塚本さんから、校内暴力の追放、さらに非常に乱れた校風を刷新をした、こういうような具体的な事例につきまして、その上に立つ責任者、指導者が体を張って真剣に立ち上がったことがそういう成果をおさめたというお話を伺いまして、大変感銘をいたしたわけでございます。  私どもも、いまの学校暴力、家庭暴力、子弟の教育ということに大変心を痛めておりますが、今後とも関係当局を督励いたしまして、努力してまいりたい、こう思っております。
  228. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  229. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  230. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党を代表して、内外政策の幾つかの問題について、鈴木総理並びに関係閣僚に質問をしたいと思います。  まず最初に、政治倫理の問題ですが、この一年の間に政治倫理の上で、あるいは教科書の問題であるとか大学関係の問題であるとか、さまざまな問題が起きました。しかし私は、やはり何といっても一番大きな問題は、国会と政府が一貫して取り上げて問題にしてきたロッキード事件の判決が相次いで下っていること、そこから政府及び国会が過去にやった公約に基づいて何を引き出すかということが最大の問題の一つであろうと思います。  本会議でわが党の金子議員がこの問題について質問したときに、鈴木総理は、過去の経過についてちょっと誤解があったのではないかと思うのですけれども、ロッキード問題に関連して指摘された疑惑はすでに司法当局において解明が終わり、委員会の任務といいますか国会の仕事は済んでいるはずだというふうに答えられました。  しかし、七六年、いまから六年前になりますが、自民党を含めて野党各党の党首、五常の党首が衆参両院議長と一緒に会談をしまして、いわば国政の舞台で責任ある答えを議長裁定として出したことがあります。それは国会の任務が、ロッキード問題に関し、本件にかかわる政治的道義的責任の有無について調査をする、これが国会の任務であって、司法当局の任務とは違うのだということをそのときに明瞭に確認したはずであります。  それからまた、この政治的道義的責任というのは何かということについて、当時各党かちいろいろな結論が出されましたが、その同じ年の九月に自由民主党が公表した、いわゆる灰色高官についての定義があります。これをちょっと、過去のことですから思い出していただくために紹介をしますと、政治的道義的責任を追及しなければいけない灰色高官として三つのケースを挙げて、ロッキード事件で、金品の授受によって収賄罪その他の犯罪の成立が認められるが、公訴時効の完成によって不起訴となるもの、これは時効不起訴ですね、第一のカテゴリー。第二のカテゴリーは、そういう犯罪の成立が認められるが、軽微または情状により不起訴となるもの、微罪不起訴、これが第二のカテゴリー。第三のカテゴリーが、やはり売り込みに関し依頼を受けて金品の授受があったのだが、そのことに職務権限がないため罪とならないもの、罪不成立。要するに、時効不起訴、微罪不起訴、罪の不成立、この三つが、刑事上罪にはならないが国会として追及すべき道義的責任の所在だ、自民党もこういうことを提起したわけであります。この点に関しては、当時大方国会全体で異論のない分類だったと思うのです。  それでなお、それに続いてその年の十一月に、当時の政府の方からこういうカテゴリーに基づいて国会で追及すべき道義的責任、政治的責任、こういうことのある人物は何かということに関して、当時の政府から国会に報告がありました。もう余り詳しいことは申しませんが、いわゆる時効不起訴ですね、金品の授受はあったが、時効になっているので刑事の罪にならないということで名前が挙げられたのが、佐々木秀世議員と加藤六月議員でした。それから、金品の授受はあったが、職務の権限がかかわりなかったというので政府から報告があったのが、二階堂進議員と福永一臣議員でした。  それで、こういう報告が政府からロッキード委員会にあった翌々日、十一月四日にそれぞれの議員から釈明がありました。福永議員が、金品は受け取ったが、これは一般的な政治献金だったということを認めた以外は、当時政府から名指しをされた三人の議員は全部、事実そのものを否定されました。これがいまから六年前、七六年に起こった経過であり、今回のかかわりだったわけですね。ですから問題の所在は明確であって、国会が追及すべきあるいは取り上げて国民の前に黒白を明らかにすべき問題は、司法当局のいわゆる捜査や司法当局の訴追の範囲内には入らないが、先ほど挙げた時効不起訴、微罪不起訴あるいは罪の不成立、こういうカテゴリーにある人物がどうであるか。このことに関しては、その当時政府の見解と名指しをされた議員たちの見解が分かれたままになって、いまだに国会はその結論を出していないわけです。そのことは五党合意に基づく議長裁定によっても、これに関して結論を出す責任が国会にあること、またそれを指摘した政府の側にもあることは明瞭であります。  それで、そういう見地から伺いたいのですけれども、一月二十六日に全日空ルートの判決がありました。法務大臣に伺いますが、この全日空ルートの裁判の際にいわゆる若狭調書、検事調書が証拠として採用されていると思いますが、いま挙げられた四人の高官に対する金品の授受について、全日空ルートの法廷で証拠として採用されたこの若狭調書の中に明記されているかどうか、そのことを伺いたいと思います。
  231. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 いわゆる若狭調書と言われましたけれども、何通もあるわけでございまして、過日判決がありました事件についての証拠として採用されました調書の中には、御指摘の点は含まれていないと思います。
  232. 不破哲三

    不破委員 それはとんでもない話でありまして、この若狭調書が証拠として採用された公判、これは八〇年の十一月十四日の百六十一回公判です。それで、それまでに何回か若狭調書自体についてこの全日空ルートの法廷で検事が読み上げて問題にしたことがあります。その中に明確に例の三十ユニットですね、先ほど国会で四人の灰色高官として問題になったと言いましたが、四人の灰色高官に対する金品の授受の状況ですね、これが明確に含まれているし、そのことが七八年十一月二十七日の七十六回公判で読み上げられてもいる一はずであります。いかがでしょうか。
  233. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいまの若狭調書の内容でございますけれども、一部の調書に一部の政治家の方に金を配付すると申しますか、そういう関係話し合いをしたという段階の部分があったように思います。
  234. 不破哲三

    不破委員 そのいわゆる渡す話し合いをしたという部分を私は問題にしているのではないのです。具体的に名前を挙げてだれが渡すかということを、これは直接全日空ルートの被告ではありませんが、ほかの被告ですが、大久保被告とか名前を挙げて、その被告から渡したという報告があった。その状況まで含めた検事調書をこの裁判所に提出をされて法廷で読み上げられて、しかも証拠として採用されている。そのことを刑事局長は、政治にかかわる問題としては重大な問題であるのに御存じないのですか。もう一度聞きます。
  235. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 委員も御案内と思いますけれども、いわゆる全日空ルートの事件は初め一本で審理が行われていたわけでございますけれども、途中で分離をされまして、現に過日判決がありましたのはその一部の被告について判決があったわけでございまして、残りの二人の被告につきましてはまだ判決がないという状況でございます。したがいまして、私が申しましたのは、今回判決があった部分に関してはその部分が判決等でも摘示されていない、こういう趣旨で申したわけでございます。
  236. 不破哲三

    不破委員 私が言いましたのは、一昨年の十一月十四日ですよ。第百六十一回公判で、この全日空ルートの法廷で証拠として採用された若狭調書ですね。その中にいま挙げた二階堂進議員以下四人の灰色高官に対する金品の授受ですね、謀議じゃないですよ。授受についての言明があるのかどうかと聞いているのです。
  237. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御趣旨をあるいは取り違えているかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、この事件の審理は最初一本で行われていたわけでございますけれども、その過程でいまおっしゃったようなことはあるかもしれませんけれども、私が申しましたのは、今度の判決ということでございましたから、今度の判決には関係がないということで申したわけでございます。
  238. 不破哲三

    不破委員 今度の判決には、私はまだ要旨しか手に入れておりませんけれども、裁判所に提出をされた若狭調書について、「被告人らの検察官調書の信用性等について」という項目をわざわざ設けてこれが争点とされたわけですから、その中で結論として、全体として信用性は十分認め得るものだという結論を出しているわけですね。  それから判決自体の本文においても、被告人らの検察官に対する各供述調書には、いずれも任意性、信用性を認めることができると結論をここで出しているわけですね。これが検事調書に関して結論を出しているということは、この法廷に出された若狭調書が法廷に出されている限り全体として裁判所が認定したということになるわけですね。この調書が採用されたときの各新聞には、たとえば二階堂進議員に対して大久保経由で五百万円届けておくように頼んだ、そうしたら、済んでから大久保からすべてきちんとやっておきました、渡しましたと連絡があったということまでこれに含まれていたんだということが当時の新聞記事にさえわざわざ明記されているわけですね。  ですから、私は政府に、わからないというのですからまず求めたいのですが、今度の判決で全体として信憑性がある、任意性もあれば真実性もあると認定された若狭調書の中に、いま挙げた四人の灰色高官に対する金品の授与、これに対する記述があれば、六年前の自民党党首を含めての五党合意とそれに基づく議長裁定の趣旨からいって、国会はそれから結論を引き出す義務がある。これは当然だと思うのですね。司法がやったからだめだ、もう済んだのではないのです。司法はそれ以上のことは刑事上の罪にならないからできないのです。司法が罪にできないところを、国会としては政治上道義上明らかにする。ところが、六年前の段階では、政府側はこの点で灰色だと言ったが、名指しをされた人たちはみんな否定をした、そこで国会の検討が終わっているわけですよ。だから、まだ六年前の五党首合意に基づく議長裁定は実行されていない。当然、今度の判決から自民党党首である鈴木善幸氏も、それから国会全体も、政府全体も、六年前の国民に対する公約をほごにするのでなければ、そういう点で明確な結論を引き出すべきだと私は考えます。  まず第一に要望したいのは、その裁判所に出されて、そういうことがすでに報道をされている検事調書に、いま言った、問題になっていた金品の授受についての記述があるかどうか、これを私は至急調べてこの予算委員会に報告をしてもらいたい、その上でそこから、そこに明確に記述があればしかるべく結論を出すのは当然だ、この点を要望したいと思いますが、いかがですか。
  239. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどと同じことになるかもしれませんけれども、確かに過日の判決でいわゆる若狭調書についての信用性があるということが言われておりますけれども、それはこの前判決がありました事実に関して言っているわけでございまして、なお残っている部分がございまして、その部分についてまで触れて、全般について信用性があるということは言っていないわけでございます。と申しますのは、当然のことながら、残された、まだ判決のない事実につきましては、その事実についての判決の中でその点について判断をする、こういうことになるわけでございまして、そういう趣旨から先ほどのようなことを申したわけでございます。
  240. 不破哲三

    不破委員 そうすると、証拠として採用した文書について、ここからこれはこちらの証拠、これからこれはこちらの証拠と、ページごとに区分してあるのですか。それからまた、裁判官が全体として任意性がある、全体として真実性があると——あなたは裁判官にかわって答えられましたが、それはその一定部分だけだということはあなたの勝手な解釈じゃありませんか。わざわざ全体として真実性があるということを明言しているわけです。だから、私が要望しているのは、あなたがないと言うなら、あるかどうかを確かめて報告をしてくれということを言っているわけで、それがなぜできないのですか。
  241. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 同じことの繰り返しのようになって恐縮でございますけれども、やはり事件は一応別になっているわけでございまして、今度の判決におきまして、今度の判決で認定した事実、それを認定する証拠としての関係で若狭調書はいわば全面的に信用性がある、こういうことでございまして、残された事実についてまでどういう判断をするかというのは、その次の判決でまた判断が示されるということで、内容自体が二つに分かれているとかそういうことではございませんで、要するに証拠の評価というのは認定する事実との関係で言うべきことである、こういう趣旨でございます。
  242. 不破哲三

    不破委員 じゃ、総理に聞きましょう。法廷でそういうことに関する事実が確定したら、当然それに対する政治的道義的責任の究明を図るのが政府及び自民党党首及び国会の義務だと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  243. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先般下されました若狭裁判の判決につきまして、行政府の責任者であります私が裁判についていろいろコメントをするという立場にはございません。これは申し上げるわけにはいかない。さらに、この事件が発生をいたしましてから、政治倫理のあり方につきまして国民世論が大変高まりました。この世論の前に、政界に地位を持っておる者は、私を含めて、この厳しい世論に対して謙虚に耳を傾け、反省をし、その身を正して、今後政界の浄化刷新に当たらなければいけない、私は全部の政治家がそのように世論の前に謙虚な立場で反省をするということが、これが政治倫理確立の原点であり、民主政治を守る出発点である、このように考えております。したがって、あの事件というものは、政治家たる者が政治倫理の確立に対して本当に真剣に真摯にお互いに反省し、このようなことが将来起こらないように、みんなで自粛自戒していこうではないかという誓いをしたということに大きな意味がある、このように考えております。  なお、この問題につきまして、国会でなお審議の必要があるのではないか、政治的道義的な責任の問題について国会の場で論議する必要があるのではないか、それが残されておるのではないか、こういう不破さんの御指摘でございますが、これはあの当時相当航特委が回を重ねて開かれまして、そしてその結果、国会の多数によって航特委は廃止をする、もうこの事件は裁判所、司法の場において判断をさるべき問題である、こういうことで国会としては航特委というものを廃止することになった、こういうことであるわけでございまして、いまそれを再度航特委を設置してその問題をやるかどうかということは、これは各党各会派の話し合いによって決められるべきことである、このように私は承知いたしております。
  244. 不破哲三

    不破委員 私は、まだ航特委の設置と言ってないのですよ。何か予定された答弁がそうだったのかもしれませんが、方法論じゃなしに、こういう問題を追及し明確にする義務が国会にあるということについての見解を伺っているのです。  それで、鈴木総理は、裁判が進んでいくのだから事は片づくと言いましたけれども、実際には裁判で確定をするのは、いわゆる判決として確定するのは、先ほど何遍も言っていますように、現在の日本の法律で法律上罪になることの結論だけです。しかし、それが進むにつれて、金品の授受があったかどうかという事実は確定をしていきます。これは裁判に移ったのだからもうほおかむり、大丈夫だというわけにいかないのですね。私がいま全日空ルートで、今度の判決で若狭調書によってどれだけの事実が確定したかということを申し上げたのは、まだこれから先に来る判決を含めての最初の一端であります。その裁判が進行すればするほど、ほおかむりすることが許されない事実が次々に明らかになっていくだろう。私どもはそのことを含めて今後徹底的に追及することをここで申し上げて、私は次の問題に移りたいと思います。  次に、このロッキードの関係にかかわるわけですが、ロッキード会社日本に売り込もうとした飛行機の、民間が一つはトライスターで、自衛隊用がP3Cでしたね。あのときに、今度の軍備拡大の中でもP3Cの大量導入というのが大変問題になっておりますが、このP3Cを導入するときに、防衛庁当局としては、内外可能な対潜哨戒機についてかなり吟味をして、これが一番だというように結論を出したのだと聞いたことがありますが、実際にP3Cに匹敵するような対潜哨戒機は、現在比べ得るものは世界にほかにないのですか。防衛庁長官に伺いたいと思います。
  245. 塩田章

    ○塩田政府委員 当時検討いたしたのは事実でございますが、現在P3Cに匹敵し、あるいはそれ以上の飛行機と言えばE3Aというのがあるわけでございます。これは米軍が現在持っている飛行機でございますが、それは当時私どもとしましては、われわれが要求する性能以上の性能でもあるし、金額等の点からいってもそこまで必要ないということで、私たちが海上自衛隊に必要な対潜哨戒機としてはP3Cが最善であろうというふうに判断をしたわけであります。
  246. 不破哲三

    不破委員 いまの防衛庁の計画では、P3Cを大体何機まで導入する計画ですか。
  247. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在、国防会議でお認めいただいておりますのは四十五機でございます。
  248. 不破哲三

    不破委員 報道されているのは五六中業がよく問題になりますけれども、五六中業では大体どれぐらいのことを考えておりますか。
  249. 塩田章

    ○塩田政府委員 五六中業での作業はまだ途中でございまして、まだどういうことになるか申し上げられるような段階にございません。
  250. 不破哲三

    不破委員 なかなか口がかたいようですが、しかし防衛白書には、日本の必要からいって何機必要かということは書いてあるわけでしょう、防衛庁の計画が。その目標を示してほしいと思います。
  251. 塩田章

    ○塩田政府委員 「防衛計画の大綱」におきまして、海上自衛隊の対潜機部隊、作戦用航空機約二百二十機というふうに書いてございますが、このうち約百二十機はいわゆる回転翼、ヘリコプターでございますから、残り、これはいずれにしましてもめどでございますけれども、百機前後が固定翼になる。その固定翼のうちP3Cを何機持つかということでございまして、大まかな数字で言いますと、現在私たちが整備しております目標は、固定翼、P3Cというだけじゃございませんが、固定翼対潜機、大型対潜機約八十機は整備したいということで、現在の時点では整備しておるところでございます。
  252. 不破哲三

    不破委員 国会になるとずいぶん控え目になるのですが、五十三年の防衛白書ですね、「将来、最終的に現有陸上固定翼対潜機をP−3C級に置き換えたとした場合、九十機程度の規模が必要である」、はっきり九十機と書いているじゃないですか。時間の節約で、はっきり早く認めてくれたら先へ進めるのですが。
  253. 塩田章

    ○塩田政府委員 九十機ということは確かに言っておったわけでございますが、先ほど申し上げました四十五機のP3Cの購入計画を決めました段階で、当面八十機体制を維持するという目標でいこうというふうに決めたわけでございます。
  254. 不破哲三

    不破委員 当面というのはいつまでですか。
  255. 塩田章

    ○塩田政府委員 四十五機ということをお認めいただいておりますので、四十五機ができるまでは、いずれにしましても全体で約八十機というのをめどに整備しておりまして、いつまでというふうに決めておるわけではございません。
  256. 不破哲三

    不破委員 そうすると、八十機にしましょうか、この八十機の対潜哨戒機の部隊は、お買いになるからにはちゃんと用途が明確になっているのだと思うのですけれども、どういう海域をどういう範囲で対潜任務につくのですか。
  257. 塩田章

    ○塩田政府委員 海上自衛隊の任務といたしまして、わが国周辺海域及び航路帯を設ける場合にあってはおおむね一千海里程度というのが目標でございますが、それを海上護衛ができるようなめどを持ちましていまのような整備を図っているわけでございますが、いま御指摘の点が現在哨戒飛行をやっているのかという意味でございますれば、そういう海域をやっているわけではございません。(不破委員「これからですよ、買うのですから」と呼ぶ)これから買いましても、八十機の体制が仮にできたとしまして、平素の警戒はいま申し上げておる全部の海域をやるわけではございませんが、有事の場合の作戦の目標としましては、いま申し上げましたような海域を目標にしておる、こういうことでございます。
  258. 不破哲三

    不破委員 たしか在日米軍も嘉手納と三沢にP3Cの基地を持っていると思いますが、在日米軍のP3Cとそれから日本の対潜哨戒機の間には海域の分担のようなものがあるのですか。
  259. 塩田章

    ○塩田政府委員 海域の分担をしているわけではございません。
  260. 不破哲三

    不破委員 そうすると、同じ海域を、ふだんの場合にはアメリカの対潜哨戒部隊とそれから海上自衛隊の対潜哨戒部隊が、いわば二重にカバーすることになるわけですか。
  261. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねが平時の点でございますれば、そういうことはあり得ると思います。有事の場合にはどうかということでございますれば、これは共同作戦計画に従って行動するということになろうかと思います。
  262. 不破哲三

    不破委員 しかし、有時の場合に共同作戦計画で行動するというときには、あくまで安保第五条の発動が条件でしょう。いわゆる極東有事のときじゃないはずですね。
  263. 塩田章

    ○塩田政府委員 日米が共同対処をする場合は、安保五条の場合に限ります。
  264. 不破哲三

    不破委員 そうすると、極東有事のときには、アメリカの部隊だけで日本海域を含めた対潜哨戒をすると考えていいのですね。
  265. 塩田章

    ○塩田政府委員 アメリカがどこの範囲までどういうふうにやるかはわかりませんけれども、少なくとも日本にとってはまだ有事ではございませんから、日本は平素の哨戒行動をするだけでございます。
  266. 不破哲三

    不破委員 そうすると、アメリカは西太平洋にどれくらい対潜哨戒部隊を持っていますか。
  267. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま数字を調べております。
  268. 不破哲三

    不破委員 では、数字が来る前にちょっと伺いますが、P3Cの特徴というのは、いままでのP2Jに比べれば非常に性能が高いと言われているのですが、相手になる潜水艦を音紋によって識別するというところに特徴があるわけですね。それについては日本はかなり蓄積を持っていますか。
  269. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本はまだP3C、ついせんだって二機入ったばかりでございまして、蓄積があるかということでございますが、まだそういう段階ではございません。
  270. 不破哲三

    不破委員 これは大変むずかしい技術だそうですが、防衛庁長官あるいは防衛局長の見通しでは、どれくらいでそういう蓄積ができる見込みですか。
  271. 塩田章

    ○塩田政府委員 これは、米軍はもうずいぶん長い期間やっておることでありまして、いまやっと二機入った自衛隊がいまからどの期間でどの程度までいくかということは、ちょっと私もわかりかねます。
  272. 不破哲三

    不破委員 そういうことに関しては、日米間で情報の交換はあるわけですか。あるいは、日本が自力で蓄積しなければいかぬものですか。
  273. 塩田章

    ○塩田政府委員 情報の処理のことは、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  274. 不破哲三

    不破委員 そうすると、たとえば日本側が対潜哨戒機で、これからP3Cが入りますね、いろいろ情報が入る。これは米側に提供するのですか、しないのですか。
  275. 塩田章

    ○塩田政府委員 情報処理の問題でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。
  276. 不破哲三

    不破委員 私は、それは非常におかしいと思うのですよ。大体いまから六年前、同じ国会で、これは内閣委員会ですが、ここで対潜哨戒機で得た情報を米側に提供するかどうかという質問に対して、あなた方は明確に答えているのですよ。六年後に何で答えられなくなったのですか。情報処理の考え方が違ってきたのですか。
  277. 塩田章

    ○塩田政府委員 そのときにどういうふうに答えたか、私承知しておりませんが、現在、私といたしましては、先ほど申し上げましたようなことで差し控えさせていただきたいと思います。
  278. 不破哲三

    不破委員 これは非常に重大なんですよ。というのは、六年前の内閣委員会では、日本にP3Cが入っても、たとえば相手国の——相手国であるかわかりませんが、相手国の原子力潜水艦がここにいるとかいないとか、そういう個別の情報をアメリカに提供することは、安保第五条の事態にならなければできないということをあなた方は明確に答弁したのですよ。それで、それがいまもう情報処理だから答えられないということになると、考え方を変えて、そういう情報提供をふだんからやろう、有事であろうが有事であるまいがやろうということに変わったとしか思えないのですが、この前の答弁から変更になったのですか。
  279. 塩田章

    ○塩田政府委員 そういった情報の処理は、平時でありましても有事でありましても問わず、これは一般に公表すべきものではございませんので、そのこと自体、われわれの考え方を変えたつもりではございません。
  280. 不破哲三

    不破委員 別に、この国会でP3Cが手に入れた情報を公開しろと言っているのじゃないのですよ。P3Cが手に入れた情報をアメリカ側に知らせるのか知らせないのか、これを言っているのです。  このときのあなた方の答弁を言いますと、一般的な天候とかそういう情報は構わないと思うが、タクティカルな情報、どの潜水艦がどこにどう動いておるかという戦術情報は、これはアメリカに提供できるのは安保第五条のような事態になったときだ。これが昭和五十年十二月十六日の内閣委員会の答弁ですよ。これを変えたのか変えないのか、はっきりしてほしいのです。
  281. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどのお答えのとおりでございます。
  282. 不破哲三

    不破委員 これはおかしいと思うのですよ。同じ衆議院で六年前にはちゃんと答弁したのですよ。何で言えないのですか。ガイドラインが引かれたら、日米間のそういうことまで国会に報告できなくなるのですか。それなら防衛庁長官、明確に答えてください、防衛局長が答える権限がないんなら。
  283. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの六年前の答弁といいますのは、たとえばいま御指摘の例で言いますと潜水艦でございますが、個々の潜水艦がどこにいるというようないわゆる動態情報といいますか、そういうようなものは作戦上の必要でございますから、有事の場合には、そういう共同対処ということになりますと相互に情報を交換するということがあるということをお答えしたんだろうと思うのですが、しからば平時の場合にどういうふうな情報交換をしておるかということについて、いま戦時の場合にそういうことがあるだろうということは言いましたけれども、平時の場合にどういう情報交換をしているかということにつきましては、公表することを差し控えさしていただきたいということを先ほどから申し上げているわけです。
  284. 不破哲三

    不破委員 そのときしかできないという答弁をしているのですよ。本来これはタクティカルなものだから、第五条の発動の条件でしかできないという答弁をしているのですよ。それを変えるのかと言っているのですよ。明確にしてください、大事な点ですから。
  285. 塩田章

    ○塩田政府委員 平時は、いまのような潜水艦がどこにおるという個々の動態情報というのは、言うなれば必要がないわけです、平時の場合は作戦上のことがありませんから。したがって、その必要性というのは有事の場合であろうということで、有事の場合にはそういう交換はあるだろうということを申し上げたわけです。
  286. 不破哲三

    不破委員 問題は、有事といったって二種類あるのですよ。日本有事の際には、第五条が発動になる。極東有事の際には、アメリカ側が必要とするかもしれないが、日本は有事じゃないわけですね。有事有事と簡単に言わないで、安保協議会でも二種類分けてやっているのですから、いわゆる極東有事の際にあなた方はどう対処をするのか、それを聞きたいのです。
  287. 塩田章

    ○塩田政府委員 私が先ほどから申し上げました有事というのは、日本が攻撃をされた場合ということです。  それから、先ほどの数字でございますが、西太平洋地区に米軍のP3Cがどれだけあるかということでございますが、三沢に九機、嘉手納に九機、フィリピンに九機、計二十七機でございます。
  288. 不破哲三

    不破委員 そうすると、アメリカにタクティカルな情報を提供できるのは第五条の発動、いわゆる日本有事のときだと確認していいですね。長官、いいですね。
  289. 塩田章

    ○塩田政府委員 正確に申し上げますと、そういったタクティカルな情報、動態情報を必要とするのは有事の場合であろう。したがって、そういう場合にはそういう交換は考えられますということを申し上げただけでございます。
  290. 不破哲三

    不破委員 そうすると、極東有事の際にもやることはあり得るというのですね。それをはっきりさせてください。
  291. 塩田章

    ○塩田政府委員 はっきりお答えいたしますが、先生のおっしゃる極東有事というのは、日本で言えばまだ平時でございますから、そういった平時に、先生のおっしゃる極東有事を含めた平時にどういう情報を交換するのかということについては、先ほどからお答えを差し控えさせていただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  292. 不破哲三

    不破委員 これは非常に大事なことですから、要するに極東有事のときにはタクティカルな情報交換をしないとは言えないというのですね、ここで。つまり、差し控えるわけですから。そのことを確認しておきます。  それから、質問を進めますが、アメリカが西太平洋海域、日本の周辺よりもかなり広い地域ですね、その対潜哨戒をやるのに二十七機で済んでいるのに、何で日本が八十機要るのですか。
  293. 塩田章

    ○塩田政府委員 アメリカは、アメリカが考えておる戦略構想によって必要な数を置いているのだろうと思います。われわれは、われわれが考えております海上自衛隊の任務から考えまして、先ほど申し上げました九十機体制なり八十機体制なりが欲しいということを申し上げておるわけであります。
  294. 不破哲三

    不破委員 しかし、不思議だと思いますね。アメリカは長い年月の蓄積があって、対潜哨戒の訓練もあれば知識も知っているとさっきあなたが言ったばかりですよ。わが方は、まだ音紋の蓄積もない。だから、P3Cを使ってどれだけのことができるかということは、アメリカの方が日本のあなた方よりも詳しいはずですね。そのアメリカが、西太平洋というアラスカから東南アジアまで入る海域を二十七機、三飛行隊でやれると言っているのに——私が調べましたら、これは相当長期間にわたってふやす計画はないですね。まだ経験がほとんどない海上自衛隊が、何で日本周辺海域をやるのにアメリカの二十七機の三倍近い飛行機を必要とするという結論を出したのですか。
  295. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、日本は、先ほど申し上げましたが、日本の周辺海域数百海里、航路帯を設けた場合には約一千海里、そういうものを海上護衛を行うという場合にどれだけ必要かということを考えまして、先ほど来の数字を申し上げておるわけでございます。アメリカは、日本が考えておりますような日本の周辺海域の海上護衛でありますとか、あるいは日本で言うところの航路帯の護衛でありますとか、そういうようなことを、アメリカの場合は日本に対する支援はしてくれても第一義的な任務ではございませんし、アメリカがどういう戦略構想を持って二十七機をもっていま配置しておるか、あるいはこれをさらに今後ふやすつもりがあるのかどうか、そういったことにつきましては、私は承知いたしておりません。
  296. 不破哲三

    不破委員 そのアメリカがやる相手も、日本が守ろうという相手も、これは潜水艦が相手だったら同じなんですよ。同じ海域で同じ潜水艦部隊を——それは状況は違いますよ。日本日本有事のときやるとあなたは言われる。アメリカはアメリカ有事ですね、極東有事のときにやる。しかし、同じ海域で同じ相手を攻撃したりする対潜作戦を展開するのに、ずっと狭い海域を考えている日本の方が八十機から九十機必要で、アメリカは長い経験を持って嘉手納と三沢とフィリピンのキューピーポイントですか、この三カ所に三飛行隊二十七機で済んでいる。どう考えたっておかしいじゃありませんか。  太平洋にほかに持っているのは、オーストラリアが十機持っているだけでしょう。西太平洋に関する限り、日本が八十機備えれば、日本がP3Cを八十機、アメリカが二十七機、オーストラリアが十機、日本はまさに対潜作戦の主力部隊になるのですよ。あなた方は経験がないと言いながら、そういう勘定をすることだけは早い結論が出るのですね、実際に使ってもいないのにアメリカ以上に必要だと。私は、ここにいまの対潜哨戒に突出して金をつぎ込んでいる本当の理由、日本の周辺海域を防衛する意味だったら必要がないものを、アメリカの肩がわりとして買い込まされているという実態があるように思うのですが、やはりそうなったら、実際の配備上、西太平洋の一番強力な対潜哨戒部隊になるでしょう。明確じゃありませんか、それは。
  297. 塩田章

    ○塩田政府委員 仮に、逆に今度は、日本がいま自分で守ろうとしておる周辺海域あるいは航路帯、こういったものをアメリカが守るとした場合に何機で済むのかということになると、これはわからない話であります。アメリカは、要するに自分の機動艦隊なり、あるいはその他自分の守りたいものを守るべくしていまの配置をしていると思います。ですから、守ろうとする構想が違いますから、数だけで比較するというのはおかしいのではないかと思います。
  298. 不破哲三

    不破委員 あなた方は、このP3Cを当面四十五機、将来は八十機買いたいと言って、今度の国会にその最初の予算案を出しているわけですね。だから、アメリカはこの程度で済んでいるが日本は特別に必要だと言うのなら、どういう構想で必要なのかということを説明する義務があると思うのですよ、予算委員会ですから。何で八十機必要なのかということを説明してくれないと、これはわからぬじゃないですか。アメリカはそういう構想で軽く済んでいるのでしょう。できるだけ安い政府、安い政府と言っているときに、経験のあるアメリカがこれだけで済んでいるのに、日本の方がこれだけ必要だ。なぜ必要だかということを説明する義務がありますが、報告してください。
  299. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず最初にお断り申し上げておきますが、私はP3Cを八十機と言った覚えはございません。「防衛計画の大綱」で約二百二十機と言っているうちの大型対潜機、固定翼機は約百機だろう、そのうちのP3CあるいはP2J、そういったいわゆる大型対潜機を少なくとも九十機ぐらい欲しいということでありましたが、当面の整備目標として八十機だということでいまやっておるということを申し上げました。したがいまして、P3Cを八十機整備してほしいということをいま申したつもりはございません。  それから、どういう任務でどういう構想かということでございますが、しばしば申し上げておりますように、日本の周辺海域数百海里、航路帯を設けた場合に約一千海里、航路帯といいましても、普通に言われておりますように二本ばかり考えられるわけですが、そういうものを考えた場合に、いまのような数字の大型固定翼対潜機が要るということでございます。
  300. 不破哲三

    不破委員 航路帯防衛と盛んに言いますけれども、七九年の十一月まで統合幕僚会議の事務局長だった左近允さんが「海上防衛論」という本を書いているので読んでみましたが、その対潜哨戒機が相手にするのは当然ソ連の潜水艦だというごとになっていますが、そのソ連の潜水艦が一体戦時になったとき何を目標とするだろうかということを彼はこの本の中に書いていますよ。  第一に、ソ連弾道ミサイル潜水艦の防衛、要するに核部隊の防衛ですね。第二に、米弾道ミサイル潜水艦の攻撃。だから、アメリカの核ミサイルを持ったポラリスとかトライデントの攻撃ですね。皆、核戦争ですよ。第三が米艦隊の攻撃。第四がソ連シーレーンの防衛。第五が沿岸の防衛。恐らくは優先度もこの順序である。つまり、シーレーン攻撃の優先度は低いことになるが、これはソ連海軍の文献を分析した結果であるとともに、米海軍力のソ連に対する脅威の変化に対応したソ連潜水艦の兵力整備の推移からも導き出される。  左近允さんは、七九年の十一月ですから約二年前まで統合幕僚会議の事務局長をやった人ですね。その前には第四護衛隊の群司令で、対潜作戦に従事していた人でしょう。この人が、潜水艦のことを問題にしたら、極東でソ連の潜水艦がやる作戦任務は、上から五つ挙げると、戦略ミサイル潜水艦の攻撃と防衛、それからアメリカの艦隊の攻撃、ソ連のシーレーンと沿岸の防衛、その次に、恐らく六番目くらいに各航路問題が出てくるわけです。いわゆるシーレーン防衛ですね。ということを書いているわけです。  私は、実際に現場に当たって対潜作戦をやっていた人が、やめたから書けるのでしょうが、こういうことを書いているということはかなり真相をうがっていると思うのですね。いまの潜水艦戦と言えばやはり何といっても核ミサイルをお互いに積んでいるわけですから、核ミサイルを積んだ潜水艦の攻防戦ですよ。その攻防戦があるから対潜哨戒機部隊というものが必要になる。この左近允さんが書いているとおり、西太平洋がその攻防戦の第一線になる。その西太平洋で、日本が八十機の対潜哨戒機P3Cを持つ。あなたはP3Cと言わなかったと言ったけれども、P2Jなら日本はもう八十機持っているはずですよ。防衛白書では、P3Cにかえるときにこれを九十機にかえたいと書いてあるので、ごまかしてもだめなんですね。P3Cが、日本が八十機から九十機、アメリカが二十七機、オーストラリアが十機。これに匹敵するものはアメリカのP3A以外にないというのですから、まさに、いわゆるミサイル潜水艦がお互いに攻防戦をやり合うその西太平洋で日本が第一線部隊、主力部隊になる、こういう役割りだから私たちは重視しているわけです。  しかも、あなたが差し控えたところが問題なんですよ。アメリカは極東有事になる。日本は平時です。そのときに、日本のP3Cの部隊がソ連の原子力潜水艦や攻撃型潜水艦の所在についての情報をキャッチしてアメリカに通報をして、それでアメリカが武力行使をやるということになれば、平時なら単なる情報交換で済むかもしれないけれども、これは日本の完全な戦争行為ですよ。あなた方は、六年前には第五条の発動、日本有事のときにしかやらぬと言いながら、きょうは極東有事のときにはアメリカに情報を提供するのかしないのか差し控えさせてもらうと言いました。大体、あるかないかわからぬというときはあるということなんですよ、アメリカの核と同じで。極東有事のときに、日本がまだ平時で、安保条約も発動されていない、自衛隊の出動条項も発動されていない、そのときにアメリカが第三国と交戦状態になる。そのときに、そういう戦術情報を提供するかどうかということをあなたは国会に言えないのですか。言えないとしたらこれは大問題ですよ。いよいよになってもそれを黙っているというなら、国会が知らないうちに日本は戦争に巻き込まれて、自衛隊が勝手に戦争行動をやることになるじゃありませんか。自衛隊の出動条項も、それから安保の第五条も発動されないときに、アメリカに対して戦術情報を提供するのかどうか、これは明確にしてもらいたいと思いますね。
  301. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま先生は潜水艦の情報についてお尋ねなわけですが、私が申し上げているのは、潜水艦に限らず、およそこういった軍事情報というものは、世界各国お互いに探り合ったり、情報をとり合ったりしておるわけですけれども、その扱い方は、一番機密度の高い扱い方をしておるというのが実態だろうと思います、もちろん物にもよりますけれども。それで、日米間におきましても、平時からどういう情報の交換をしておるかというようなことを公表することは差し控えさせていただきたいということを先ほど来申し上げておるわけです。
  302. 不破哲三

    不破委員 ですから、日本が有事でないとアメリカにそういう情報は渡さぬと前は言っていたけれども、いまは言えないんですね、極東有事のときに。  総理長官、どうですか。これは明確な戦争行動になるわけですよ。アメリカが第三国と戦争をやっているときに、日本がその第三国に対する軍事情報を、しかも対潜哨戒機の相手は相手の潜水艦と明確になっている。この位置が明確になれば攻撃をするわけですね、アメリカの側は。そのときに対潜哨戒機が、P3Cが情報を提供するかどうか。アメリカがカバーしているのなら、これは提供しないで済むんですよ。アメリカがカバーしないで日本がこの部分を受け持たされていると思うなら、提供しないといけなくなるわけですね。そこのところ、この問題は重大な政治問題ですから、そろそろ防衛庁長官が物を言ってもいいんじゃないでしょうか。
  303. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどの五十一年の答弁に関連して申し上げましたが、有事になったら戦術情報を提供することはあるだろう……(不破委員「第五条ですよ」と呼ぶ)第五条ですね。第五条の有事の場合は、戦術情報を提供することはあるだろうということはあるいはそのとき答えているのかもしれませんが、そのことは、平時には出すとか出さないとかということを言っているのではないと私は思うわけです。
  304. 不破哲三

    不破委員 これは重大な政治問題ですからね。日本が有事でないときにそういう明確なタクティカルな情報を提供するのかどうか、政府の見解を示してくださいよ。示さないとこれは進めませんよ。委員長、頼みますよ、これ。
  305. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛局長が再三答弁したとおりでございますけれども情報を提供するかしないか、そういうことについては一切申し上げないということになっております。
  306. 不破哲三

    不破委員 そういうことは国会に一切言えないというのですか、総理。これはいまやっている軍事動向についての情報じゃないのですよ。そういうときに、軍事、たとえば極東有事の支援活動が問題になる、そのときにどの範囲のものまで日本がやるのかということをいま議論しているところでしょう。そういうのは全部議論しても隠すんですか、私たちに、国会に。
  307. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 言うべきことではないということでございます。
  308. 不破哲三

    不破委員 総理、これは重大な問題ですからね。そういうことは国会に言えないということが内閣の見解だと言っていいですね。——総理総理に聞いているんですよ。
  309. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほどからお答えいたしておりますように、情報の交換につきましては、どこの国もお互いにこういう情報をここと交換しておるというようなことは公表しないというのが一般でございまして、われわれもそのように考えておるわけであります。
  310. 不破哲三

    不破委員 私は、ここに情報を言えというんじゃないのですよ。そういう際に日本がどういう行動をとるかということを国会に示せと言っているのですから。  いま防衛庁長官は、国会に示せぬと言いました。総理、一体それでいいかどうか。総理の答えを聞くまでは前に進めませんよ。(発言する者あり)
  311. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 言うべき、申し上げられないことでございますということを改めて申し上げます。
  312. 不破哲三

    不破委員 総理がそれでいいのかどうかを聞いているのですよ。(「総理に答えさせろ」と呼び、その他発言する者あり)
  313. 栗原祐幸

    栗原委員長 不破君、質問を続行してください。
  314. 不破哲三

    不破委員 私は総理質問する権利があるのですよ。防衛庁長官の見解が内閣の見解と考えていいかどうかということを総理に聞いているのですから、総理以外答えられないわけですよ。何で立たないのですか。
  315. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お答えいたします。防衛庁長官の見解は内閣の見解でございます。
  316. 不破哲三

    不破委員 いまの官房長官答弁総理の見解を代表していると見ていいですね、内閣だから。
  317. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 防衛庁長官の見解は内閣の見解でございます。
  318. 不破哲三

    不破委員 私は、自民党は幹事長代理を決めているのは知っているのですけれども総理代理を決めているというのは初めて聞きましたが、先に進みましょう。  それで、いまのやりとりからも明らかなように、アメリカが本当にアメリカの対潜哨戒機だけで有事のときの対潜体制をカバーしているなら、いまみたいに防衛庁長官や防衛局長が、極東有事のときに情報提供するかしないか、こだわらないで済むはずなんです。ところが実際には、いざ極東有事が起こると、アメリカが西太平洋全体で戦争行動をやらなければいけなくなる。二十七機しかいない。これ以上ふやすのはアメリカの財政が困る。だから去年の、去年とは言わない、ずいぶん前から日本に対潜哨戒機を買ってくれ、買ってくれということを言ってきたわけですよ。現に、アメリカのスターツという会計検査院院長は、日本の会計検査院も同じでしょうが、日本がP3Cを取得することは、米国の過大な対潜哨戒負担を軽減できる。会計検査院が、アメリカの予算節約上、日本に買わせろと、七七年ですからいまから五年前に言っているわけですね。それからまた、七九年のアメリカの軍事態勢報告によると、最近日本がF15とP3Cをかなり大量に買うことを評価して、これは西太平洋におけるアメリカの軍事態勢を補完するものであると評価しているわけです。  問題は、あなた方が言われるように、第五条、つまり日本の防衛が問題になるような日本有事のときだけを想定しているのなら理屈が立つでしょう。そうじゃなくて、日本の安全は脅威をされていない、日本は武力攻撃を受けていない、自衛隊法も発動されていない、安保第五条も発動されていない。そのときに日本が、アメリカの注文のままに、左近允さんが言っているように、核戦争の海における最前線の問題である核ミサイル潜水艦の攻防戦の第一線に立って、西太平洋の対潜哨戒の主力部隊になる。そのときには情報を提供します。情報を提供して、その情報の結果、日本のP3Cが攻撃しなくても、その情報に基づいてアメリカが攻撃行動をとれば、情報を提供したことは、平時と違ってこれは単なる情報交換で済まなくなるのですね。完全な戦争行動でしょう。(「仮定の話だよ、そんなもの」と呼ぶ者あり)仮定じゃないから、なかなか言えないわけだよ。仮定なら幾らでも答弁するでしょう。(「ソ連の軍事力の問題をここでやってもね。」「ソ連の問題をやれよ」と呼ぶ者あり)ここはソ連の議会じゃないですからね。  ですから、そういう危険なことを、いまP3Cを大量に買うことによってあなた方は進めようとしている。日本の安全と言うけれども、左近允さんが言うように、対潜作戦というのは、初めから五番目まではシーレーンの防衛なんか問題にならぬのですよ。そのことを明確にして次に進みたいと思います。  いま言ったように、潜水艦戦と言えばこれは核戦争の問題でありますが、次に戦域核戦争の問題について聞きたいと思います。  総理は、本会議での答弁の中で、いわゆる限定核戦争、核の限定使用についていろいろ答弁をして、米国本土は避けるが、ほかの地域は核戦争の舞台になる、そういうような無責任なことはないはずだということを参議院の答弁で述べましたが、アメリカは戦域核戦争という戦略方針をかなり前から採用していますね。限定核戦争と言うと一般になりますが、戦域核戦争というのがアメリカの軍事方針では明確に確立をして、いわゆるアメリカとソ連が戦略核を撃ち合う、核ミサイルを撃ち合う戦略核戦争と区別して、戦域核戦争ということを言っている。これは、ことしの国防報告なんかも、戦域核戦争という概念を使ってアメリカの戦略をずっと説明しています。  このアメリカの戦域核戦争という定義がどんなものであるか、総理あるいは防衛庁長官、御存じですか。
  319. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 お答えをいたします。  御質問のアメリカの限定核戦争のシナリオというのは、いまお話のあったことが正確にどういうことを意味しておるか明らかではございませんけれども、レーガン大統領等のいわゆる核兵器の限定的使用等に言及したと言われている発言については、基本的には、米国としていかなる攻撃に対してもこれに対応し得る有効な態勢をとることをその抑止力の基本としているという趣旨を述べたものと認識しております。  しかし、同時に米国としては、核兵器の使用がもたらす結果の深刻さを強調し、また軍備の削減を可能な限り追求して、平和確保に最善を尽くさなくてはならないとも述べており、核戦争及びそれに至るような軍事衝突は避けなければならないという基本的立場を有しているものと考えております。  いずれにいたしましても、わが国は非核三原則を堅持し、わが国への核の持ち込みは認めないこととしているとともに、核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存することとしております。
  320. 不破哲三

    不破委員 私はまだ核戦争のシナリオの話をしていないのですよ。けれども、あなたの方で書いている答弁のシナリオだけが先に進んでいるのです。  私が非常に深刻だと思うのは、あなた方はアメリカは同盟国だ、同盟国だと言う。日米共同作戦を一生懸命研究している。その同盟国で共同作戦を一緒にやる相手が、どういう戦略を公に発表してやっているかさっぱり知らないで、それだけやっている。  アメリカの戦域核戦争というのは、一番最初に出てきたのはレアード時代の国防報告でしょう。七三年度ですが、そこに、「戦域核戦争とは、米国軍またはわが同盟諸国によって、あるいはこれらに対して戦域核兵器が使われるが、」つまりアメリカや同盟国軍が使うか、アメリカの同盟国軍に使われる、お互いに使われるが、「米国に対すす核攻撃を含まない戦争である」と、はっきり定義をしてあるのですよ。アメリカ本国だけは核攻撃を受けないが、戦場では、アメリカとその同盟国軍が相手の軍隊と核の撃ち合いをやる。これが、レアード時代といいますか、ニクソン時代に確立した戦域核戦争の概念なんですね。これは、その次の代の国防報告でも明確に述べられています。  だから、鈴木さんは、そんな無責任なことを言うはずがないと言うけれども、戦域核戦争という独特な言葉が、戦域というのは変な言葉ですが、生まれたのは、アメリカ本国は攻撃をされないが、よその戦場でやるということをわざわざ定義して、それの作戦にするためにつくった言葉なんですね。その戦域核戦争の定義がいまの国防報告につながっているということは、防衛庁長官、はっきり胸におさめて同盟国づき合いをやってくださいよ。  それからもう一つ伺います。その戦域核戦争の核の使い方ですが、このときに相手が核を使わないでもアメリカの方から核を使うということをアメリカは基本方針にしていることを御存じですか。総理または防衛庁長官に、別のシナリオじゃない正確な答弁をお願いします。
  321. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御質問の限定核戦争のことにつきましてはいま申し上げましたけれども、いずれにしても、一度核兵器が使用されれば人類の滅亡につながるおそれがきわめて強いわけでございまして、私としては、核兵器が使用される事態は断じてあってはならないものと考えております。
  322. 不破哲三

    不破委員 これも余り御存じがないようですから。  これは七八年度の国防報告ですよ。四年前ですね。七八年の国防報告に、極東における戦域核戦争の開始のことが書かれています。  極東では朝鮮で戦争が勃発したときが一番ありそうだ。そのときに、戦域核戦力を使用する米国の決定は、つまり戦域核を使うアメリカの決定ですね。どういう場合にやるかということが明確に書かれている。  一つは、圧倒的な敵の通常兵力の突破によること。相手は核を使わないが、相手が通常で攻めてきたときに負けそうだったら使うということが一つ。もう一つが、敵が核兵器を最初に使用した場合。明確に二つの方針を書いているのですよ。朝鮮戦争に関連してですよ。つまり、相手が核を使わないでも通常兵力で負けそうになったら核を使う、これがアメリカが戦域核戦力を使用する決定の条件だ。これは七八年度の国防報告ですよ。  それから三番目に、その同じ報告には何て書いてあるかというと、通常兵力でやられるときに、来攻する敵軍を、それが一大突破を達成する前に壊滅させるためにやる。つまり、相手に通常兵力で突破されたからやるんではなしに、されそうになったら先手を打って核で攻撃する。来攻する敵軍をそれが一大突破を達成する前に壊滅させることを意図した地域的核攻撃だ。  防衛庁長官が言ったシナリオというのはこれなんですよ。つまり極東の戦域核戦争というのは、かなり明確にアメリカは国防報告というような天下に公表する文書の中に、朝鮮半島を想定して、何年も前から書いている。核を使うのは相手にやられてからじゃない。相手の通常兵力に負けそうになったら負ける前にやる、これがアメリカの戦域核戦争シナリオだということを防衛庁は研究していると思うのですが、どうでしょうか。
  323. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答えいたします。  これは話せば長くなりますけれども、アメリカ及びNATOの核戦略の基本は、バランスと抑止にあります。これは一九五一年のリスボンにおけるNATO会議以来の一貫した方針でございます。したがいまして、前提はあくまでも抑止にあるわけです。  そこで、実は戦後の一九五〇年代以降の東西の戦力状況を見ますと、圧倒的に強い……(不破委員関係ない」と呼ぶ)いや、そうじゃないのです。圧倒的に強いソ連の通常兵力に対して、向こうが戦端を開いた暁にはこちらは核で反撃することもあり得るという、そういうポジションを示すことによって、そして核の抑止を図ってきた、それが現在まで続いているということでございます。あくまでも核の抑止にあるということでございます。そして同時に、したがいまして第一撃は絶対に使わない、これが基本でございます。
  324. 不破哲三

    不破委員 先に使うと書いてあるのですよ。あなたはまあいいです。  総理に伺いますが、いま私が読み上げたのは別につくり上げた文書じゃなしに、アメリカの国防報告なんですよ。つまり戦域核戦争というのは、いま政府委員が言ったように、相手が通常兵器の場合にも、ぐあいが悪くなったら核を使うんだというのが戦域核戦争なんですね。総理は国会の本会議答弁で、核の使用は絶対に困るんだということを言いましたが、核を最初に使用するということをアメリカが宣言した。通常兵力のバランスでぐあいが悪くなったら核戦争に最初に火をつけることがあるんだ、これが戦域核戦争だということを宣言している。このことについてどうお考えですか。
  325. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 一たび核を使うということになりますれば、これは人類の破滅につながるような惨禍をもたらすわけでございまして、私は絶対に核兵器を使用するというようなことがあってはならない、こう思います。  不破さんは、先ほど来、アメリカの国防白書にこういうことが書いてあるとか、るるお話しになりましたが、そういう表へ出すようなことを、実際の戦争、戦略に秘密なことを言うものではない。それは賢明なあなたが一番よく御承知のはずでございます。これはやはり、いま防衛庁の係官が言いましたように、核の抑止力、これは断固としてそういう侵略に対しては対抗する用意があるんだということを言っているだけであって、私は、直ちにそれをもってアメリカが先に核を使うとかそういう即断は軽率である、こう思っております。
  326. 不破哲三

    不破委員 やる気なんだが表に言うときは隠せというのならわかるけれども、やる気がないのを表の文書だけにやるやると書くというのはないのですよ。つまり、それぐらい核を最初に使うというのはアメリカにとってあたりまえの方針になっているのですね。だからアメリカは、核兵器の使用禁止条約が出ると困るのです。  総理は、核兵器の使用は絶対に困るんだと言われるのだが、それならなぜ国連で核兵器の使用禁止決議、これは東も西も全部禁止するわけですね、なぜそれに反対するのですか。その理由をちょっと伺いたいのです。
  327. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 核の使用を禁じようという決議は、十回出ておると思うのです。これは六一年から始まっておりますが、日本は当初、最初の分ですね、その趣旨に賛成をしております。ところが、その後ずっと七回ほどは棄権をしておりまして、一昨年と昨年の決議に際しては反対をいたしました。  これは本委員会でもしばしば論議されておりますこの軍事力の均衡ということ、それから一昨年来の国際情勢、ソ連のアフガニスタンやポーランドに対する行動等から見まして、あるいはこの軍事力の均衡というものを考える場合に、ここで核の抑止力というものを考えておく必要がある。こういうことで、その情勢が反映しての反対ということになったわけで、これでおわかりのように、十回それぞれそのときの国際情勢を反映しての判断、こういうことで御承知をいただきたいと思います。
  328. 不破哲三

    不破委員 しかし、核の使用は絶対にあっては困るんだ、一遍使ったら人類が破滅するというのが総理答弁でしたね。今度出された決議は、核兵器の使用は国連憲章の侵犯であり、人類に対する犯罪であるということと、それゆえ核兵器の使用あるいは使用の威嚇は核軍縮がなされるまで禁止さるべきである。二項目ですよ。このどこがぐあいが悪いのですか。総理は、使用してはいけないといまも言ったばかりです。そのいまも言ったばかりの総理が代表している日本の政府が、国連の場へ出ると、使用することを禁止するとはけしからぬ、反対だと言うのはどういうことになるのですか。総理総理に見解を伺いたいのです。
  329. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま御説明したことで不破委員が、どうでしょうか、おわかりにならなかったのでしょうかね。軍事力の均衡ということが平和維持に必要である、これは御了解いただけると思うのですね。ところが、ソ連のアフガニスタンやポーランドに対する行動からすると、ソ連の意図しておるところはこの均衡についてどうもわれわれとして不安がある、そういう情勢を踏まえてのときの使用をすまいという決議でありますから、そこで、核の抑止力というものが働いていることが平和を維持する上に必要だ、こういう立場をとっておりますから、そのときの反対をした国をごらんいただくとよくわかると思うのですね。これはもうすでにお調べになっていると思いますが、西欧先進諸国、アメリカとかカナダとかフランスとか西ドイツとか日本とか豪州とかが反対をしたのでありますから、その点で十分おわかりだと思います。
  330. 不破哲三

    不破委員 国連に入っている国の数と、そのときの賛否の数を教えてください。
  331. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答えいたします。  一九八〇年の秋の国連総会で御指摘のございました決議案が提出され、表決に付されたのでございます。結果は、賛成百十二、反対十九、棄権十四でございます。(不破委員「それは去年ですか」と呼ぶ)去年、八一年は、賛成百二十一、反対十九、棄権六でございます。
  332. 不破哲三

    不破委員 このように、国連に百五十七カ国入っているうちで、核の使用を禁止する決議に対して賛成した国が百二十一ですよ。反対した国が十九です。(「大きさが違う」と呼ぶ者あり)大きさが違うというやじがありましたが、世界の人口四十三億を超えている中で、反対をしている国は、人口を合わせれば全部で七億ないのですよ。だから、三十数億の核兵器使用禁止を求めている国に対抗して、さっき櫻内さんが挙げたいわばNATOと安保とANZUSに入っているアメリカの同盟国だけが人口七億を代表して抵抗している。これが国連の表決ですよ。その七分の一を日本が人口の上で引き受けているということになるわけですからこれは重大なのですが、総理は平和国家、平和国家と言うけれども、世界唯一の被爆国でありながら、核兵器の使用だけはとめようじゃないかというのに対して、日本がアメリカと一緒になって反対している。  総理はさっき、使用は絶対にあってはならないのだと言ったでしょう。あってはならないのだというあなたの願望が、国際的な決議になって核兵器を持っている国を抑えればこんないいことはないはずなのに、何で、国際舞台でそういうことが議論になると、百二十一カ国に対抗してわずか十九の軍事同盟諸国がアメリカと一体になって反対するのですか。今度の国連総会でも反対するつもりですか。
  333. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 今度出たならばどうか、出るか出ないかもわからないことでございますが、出たときは、そのときの提案者の意図あるいは国際諸情勢、そういうものを勘案して判断をするというのが常識だと思います。
  334. 不破哲三

    不破委員 それで、さっきアメリカが朝鮮で先制的な核兵器の使用を考えているということを私が言いました。それについてだれも否定しませんでした。外務大臣は、そういうことは抑止力なのだからあるのだ。総理も、そこからすぐ、言われていることだけで本当にあるかどうか言ってもわからぬということを言いました。しかし、あなた方はそのアメリカと極東有事のときにどういうことをやるかという相談をやっているわけですね。それで、戦争のときにやることは、公に言われていることよりもよけいなことをやるものなのですよ。公に言っていることは必ずやると考えて間違いない。ですから、このことを、そういう相手とあなた方が極東有事の研究をやり、共同作戦の態勢をとり、進もうとしているのだということを私ははっきりここで述べておきたいと思うのです。  先へ進みますが、そのときに朝鮮で核戦争が始まったら、一体どういう部隊が動員されるだろうか。極東にいろいろなアメリカの部隊が置かれていますが、核兵器をもって攻撃する能力を持った飛行機が、朝鮮の周辺といいますか、極東にどこにどう配置されているか御存じですか。
  335. 塩田章

    ○塩田政府委員 アメリカの核部隊の運用構想等につきましては、私ども承知しておりません。
  336. 不破哲三

    不破委員 私は運用構想を聞いているのじゃない。正確に聞いてくださいよ。核攻撃能力を持った攻撃機部隊がどこに配置されているかということ、これは防衛庁知らないわけはないでしょう。
  337. 塩田章

    ○塩田政府委員 私ども承知しておりません。
  338. 不破哲三

    不破委員 しかし、アメリカの飛行機の型の中でどれが核装備可能かということは明確にされているわけですから、それを防衛の当局者が承知しないで一体何で共同作戦の相談ができるのか知りませんが、それなら聞きましょう。  日本の国内にそういう核攻撃能力を持った、能力ですよ、核装備可能な攻撃機はどこに配置されていますか。
  339. 塩田章

    ○塩田政府委員 米軍の部隊の配置のことでございますから、まして核の部隊の配置等につきましては、私どもは承知しておりません。
  340. 不破哲三

    不破委員 これは余りにも国会をばかにした話ですよ。しかし、どの飛行機が核装備可能かということは、秘密でも何でもなくて公表されていることですよ。いま持っているか持っていないかじゃなしに、核装備可能なタイプの飛行機がどこに配置されているか、それも言えないのですか。調べているところなら調べているところだと言ってください。
  341. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本に配置されておりますアメリカの飛行機、どこにどういう飛行機があるかはわかりますけれども……(不破委員「型はわかるでしょう」と呼ぶ)型もわかりますけれども、いま覚えておりませんので急に申し上げられませんので、そのうちのどの飛行機が搭載可能かと言われても、いまちょっとお答えいたしかねます。
  342. 不破哲三

    不破委員 たとえば岩国にある海兵航空部隊のA4スカイホークとA6イントルーダー、これは核装備可能でしょう。
  343. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘の飛行機は、装備によって核を搭載することは可能であろうというふうに思います。
  344. 不破哲三

    不破委員 これはたしか、いま両方合わせると二十八機岩国に配置されていますが、いま毎年チームスピリットといって朝鮮での演習をやっていますね。この岩国の海兵航空部隊はチームスピリットに参加していますか。
  345. 塩田章

    ○塩田政府委員 突然のお尋ねでございまして、ちょっとわかりません。
  346. 不破哲三

    不破委員 しかし、こういうことは、たとえば朝鮮でのチームスピリットの演習というのは、朝鮮で戦争が起こったときにどの部隊がどう行動するかの演習を毎年やっているわけですね。これは日本の軍事面に大変大きな影響を持つことですよ。それを防衛という名のついた軍事の衝に当たる人たちが、そういう一番大事なことを、しかも目の前でもう二月、三月にはやられようとしているというものについて知らないというのは非常に、装備が足りないんじゃなくて大分知識が足りないんじゃないかと私は思うのですけれども、これは七八年以来例年参加しているわけですね、岩国の海兵航空部隊が。核装備可能な海兵航空部隊が朝鮮での……(「知っていることを聞くな」と呼ぶ者あり)質問ですからね、これは。朝鮮での演習に七八年以来毎年参加しておる。(「知らぬことを聞くのが質問だよ」と呼ぶ者あり)このことを知っているかどうか聞いているんです。どうですか、それは確認できますか。
  347. 塩田章

    ○塩田政府委員 私ども事前に御通告いただければ、調べればすぐわかることでございますが、突然お尋ねになりましても正確にお答えができない、こういうことでございます。
  348. 不破哲三

    不破委員 先ほど防衛庁長官は、戦域核戦争のシナリオについて云々と言われましたけれども、大体何を聞くかということはおおよそ知っていたはずでああいう答えをされたのでしょう。それなら、アメリカが極東で核戦争をやるときにどういう対応をしようとしているのか、十分調査して臨むのがあたりまえじゃないですか。  それで、七八年以来この核攻撃能力を持った海兵航空部隊が朝鮮の演習に参加しているということは、アメリカのシナリオが発動されたらまずこの部隊が参加することは間違いないということですよ。  その次に伺いますが、これは昨年来国会で私ども問題にしておりますが、この岩国に核兵器の組み立て、整備を任務にするMWWUが置かれているということは、あなた方も確認しましたね。これと同じ任務を持った部隊が極東の周辺にありますか。
  349. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちの承知している海兵に関しては、いま御引用になりましたいわゆる海兵航空第一武器隊、MWWU1でございます。
  350. 不破哲三

    不破委員 ですから、朝鮮で戦域核戦争が始まる、それに日本の海兵航空部隊が参加する用意をし、訓練をしている。この部隊に対して核兵器を提供できる部隊というのは、岩国にあるMWWUだけなんです、いま確認されたように。世界に三つしかないのですから。二つまでアメリカ本国にあって、一つは岩国にあるわけですね。これは海兵航空部隊だけの例ですが、朝鮮でアメリカが公表しているようにいざというときに核戦争を発動したら、これは私どもが言っている基地の問題だけでも日本が核戦争の足場になる。この部隊はここにしかないのですから。朝鮮に展開するアメリカの海兵航空部隊の核戦争用の兵たん機能を持っているのは、ここしかないわけですから。  私どもは、そういう意味からも、一方ではいま始まっている軍拡、これが核戦争のいわば応援計画だということ、それから、わが党がいままで一貫して追及している岩国とか嘉手納の核基地が、限定核戦争、戦域核戦争ということをレーガンがあれだけ明確に言い出した状況の中ではなおのことですけれども日本を核戦争に巻き込むんだということを言ってきているわけですが、そういう状況の中でも、日本にこのような性質の核部隊が置かれていることについて、政府は再吟味する考えはありませんか。朝鮮で核戦争が行われるシナリオが書かれている、それに核を提供する唯一の兵たん部隊が岩国に置かれている、そういう状況でも、この核部隊の撤去について政府は考え直すつもりはありませんか。総理に見解を伺いたいと思います。
  351. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 不破委員よく御承知のとおり、海兵航空団というものは三つございまして、その三つの一つずつにいまのような武器隊がございます。しかし、これは再三国会で答弁しているように、核を持っているわけでございませんで、委員も言われましたように、核を整備する能力を持っているということでございます。  ただ、こういう部隊がいるからすぐ朝鮮で核戦争が起きて日本が巻き込まれる、したがって撤去せよということでございますが、岩国にいるこの航空武器隊それ自身が、安保条約それ自体の日本の安全と極東の安全と平和に役立っているということをわれわれは認識しておりますので、撤去するということをここで申し上げるわけにはまいりません。
  352. 不破哲三

    不破委員 総理は核は困ると何遍も言いましたけれども、しかし、国連で核兵器の使用禁止が問題になれば、使用賛成の方に手を挙げる。それから、アメリカが朝鮮で核戦争をやる、こちらから使うこともあるんだといまから公言している、それに参加する部隊が日本にいて、参加したときにも核兵器を組み立てて提供するアジアで唯一の核専門部隊、これが岩国にあることについても黙っていて、これを撤去させようとしない。総理が核の使用は絶対御免だとか、日本は平和国家なんだから核兵器についてだけは明確な態度をとるんだとか言っている一般的な言葉と、国連や日本の基地の問題でやろうとしていることや、やってきていること、全く違うじゃないですか。  それからまた、総理は海と空重点だと言ったけれども、その海と空の重点の一番重点に置いている対潜哨戒機というのは、本当に日本の海域の一般の安全のためだったら、アメリカが西太平洋全部持っている中で二十七機しか持っていないのだから必要ない。それをどんどんやろうとしているのは、これまた原潜同士の核戦略の一環を担うものだ。私は、まさにいま政府がやろうとしている突出軍拡、これは、世界唯一の被爆国である日本でありながら、その日本鈴木内閣のもとで核戦争の応援団、核戦争のいわば執行者の方向にどんどんどんどん入り込んでいく、ここにアメリカとの軍事ブロックで縛られた自民党の政治のいやおうなしに抜け出すことのできない方向があると思うのですが、この問題の最後に、こういうことについての総理の所見を伺いたいと思います。
  353. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来不破さんの御所見を伺っておりましたが、核戦争は絶対に起こしてはならない、起こってはならない。核の廃絶、さらに核軍縮に向かって私どもは努力をしておるところでございます。  先ほど来、国連で日本が核使用の問題で賛成に回ったではないかと。不破さん、国連という場は、これは国際政治の場でございます。そこで、ここにおいて行われる決議というのは、学術的な文書ではない。政治的な意図を持った文書でございます。でありますから、その国連の決議として提案される場合に、その提案国並びにその背景がどういう意図を背景として持っておるかどうか、そういう政治的判断をしながら賛否を決めるものであって、ただ学術文書のようなぐあいに、これは核というものが決議の中にあるから賛成をしなければならない、そういうものではない。あくまで核の均衡の上に現実の国際平和というのが保持されておるという厳しい状況を私ども頭に置きまして、どうやったらこのバランスが保持され、核の抑止力によって核戦争が阻止できるか、そういう総合的な立場から判断をする必要があるということでございます。  それから、嘉手納基地等に核を操作する部隊が存在するとかいうようなことを盛んに言っておりますが、私どもはそういうことは承知いたしておりません。わが国は非核三原則を堅持しておりまして、ここに核の持ち込みというようなことは絶対にわれわれは容認しない。これは事前協議の対象になっているものでございますから、必ずその際には事前協議がなされる。事前協議があった場合には、われわれはこれを拒否するということは国民に対して明確にお約束を申し上げておるところでございます。
  354. 不破哲三

    不破委員 いまの辺、重大な発言ですね。提案者が悪い、提案者の意図を考えて反対しているのだと。非同盟諸国ですよ。日本が非常に関係を持っている非同盟諸国の多くが提案をして、それに対して提案者の意図が悪いから、考えて賛成しなかったのだ、反対したのだ。私は、それは日本総理大臣の大事な発言としてちゃんと胸にとめて次に進みたいと思います。(「モスクワに行って言えるか」と呼ぶ者あり)モスクワと言うけれども、ソ連は一昨年は賛成しなかったのですよ。私どもはそのことをうんと批判しました。抗議もしました。それでようやく態度が改まったということを述べておきましょう。  次の問題に進みますが、このようなむだなアメリカの核戦略の一翼を担うようなことに大量の資金を費やしていることと同時に、私がもう一つ問題にしたいのは、財政危機だと言いながら、たとえばエネルギー開発とか技術開発とか政府が優先順位をつけた分野には大変むだな、いわば浪費型の行財政が行われておるという問題について取り上げたいと思います。  一つは、原子力開発をめぐる問題です。  まず最初に伺いますが、あの例の原子力船「むつ」ですね。これは科学技術庁長官の領分になろうと思いますが、いままでにどれぐらいの金を使いましたか。
  355. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 原子力船「むつ」の開発のために使用されました経費といたしましては、現在まで、昭和三十八年度に原船事業団が設立されまして昭和五十五年度までの決算、十八年間の決算ベースで三百三十九億円でございます。さらに、これに今年度の予算約六十九億円を加えますと、約四百億円となるわけでございます。
  356. 不破哲三

    不破委員 いま新しい港の建設なども問題になっておりますが、それを含めてこれからどれぐらい使うつもりですか。
  357. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 今後の原子力船開発の基地といたしまして新定係港の建設を予定しておりますが、これにつきましては、現在候補地につきましてその自然条件あるいは環境等調査中でございまして、この結果を待たないと正確な数字が出てこないという状況にございます。  なお、それとあわせて陸上附帯施設が必要になるかと考えております。
  358. 不破哲三

    不破委員 しかし、過去の国会で、いままで、新定係港の建設費は不確定だが、三百二十億から三百三十億ぐらいの間になるということを答弁したことがありますが、これは二年前だと思いますけれども、いまでもそれぐらいの費用ですか。
  359. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 まだ候補地がはっきりしていない時点で申し上げた数字かと存じますが、現在では少し事情も変わっております。したがいまして、その程度あるいはもう少しという感じではおりますが、まだ明確な姿が見えてきていないというのが状況でございます。
  360. 不破哲三

    不破委員 三百二、三十億からもう少しだ。報道によれば五、六百億という声もありますね。要するに、これは八百億から千億近い金が必要になるだろうし、これから投資する分だけ考えても数百億に上るということは、いまの答弁から明確だと思うのですね。  それなら、この原子力船「むつ」を最初に国の政治に上せてつくろうということにしたときに、予算は港の建設費を含めて一体どれぐらい考えていましたか。
  361. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 当時「むつ」の建造費といたしまして、最初の船価の予定は五十六億円でございました。現実には七十三億円かかったわけでございます。また、現定係港でございます大湊港の建設には二十六億円を予定し、そのとおり実施されたわけでございます。
  362. 不破哲三

    不破委員 そうすると、大体両方合わせますと百億円内外の予算ということで始めたわけですね。それが現在までに四倍の費用がかかって、それでしかも、これからのことを考えると、恐らく十倍ぐらいはかかるだろうというふうになっている。  これが現在の経緯なんですが、私が聞いたところによりますと、一番最初計画がされたときには、港の建設を含めて六十億円という計画であった。ところが、それは実験が終わったら海上観測をやる観測船の計画であって、途中から大蔵省が、せっかく金をかけてつくるのに海上観測だけではもったいない、特殊貨物船にしろということになって、それで実験が終わったら特殊貨物船にするということに計画変更をして、百億円の予算に決まったんだということを聞いていますが、それで間違いないですか。
  363. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 当時、三十六億円の建造費で発注をしたわけでございますが、応札がなかったというような事情がございまして、その後船価を上げて再び入札を求めたという事情がございます。そういう経過はございました。
  364. 不破哲三

    不破委員 それで、この計画を始めたとき、実験が終わったら特殊貨物船として使うんだということになっていましたね。それは間違いないですね。
  365. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 この船の目的につきましては、当初は船種が海洋観測船ということでスタートいたしましたが、昭和四十二年にこれを特殊貨物船ということで、目的を変えたわけでございます。  なお、現状を申し上げますと、先般の国会で御審議をいただきまして五十五年十一月二十九日成立の日本原子力船研究開発事業団法によりまして、この船の目的は実験船に限るということにいたしているわけでございます。
  366. 不破哲三

    不破委員 いまから前にこれを百億円かけてつくろうというときに、最初は実験船だったのだが、それでは国費のむだ遣いになるということで、完成して実験が二年終わったら一二年間の実験航海が終わったら実用に付するのだ、しかも、その実用はかなり高価なものを運ぶ特殊貨物船だ、はっきり言えば核燃料ですかね、核燃料や使用済みの核燃料を運ぶ特殊貨物船として使うんだということになっていたことは間違いないですね。
  367. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 物を運ぶことも考えての実験船という位置づけであったかと理解しております。
  368. 不破哲三

    不破委員 ちょっとそこのところをごまかしては困りますよ。たとえば昭和四十一年の原子力委員会の年報ですね、はっきり書いてあるのですよ。船種については、実験航海終了後は核燃料、使用済み燃料等特殊貨物の輸送船とする。それから目的についても、二年間の実験航海が終わったら特殊貨物の輸送船として使う。つまり、そういう船として設計して、そういう船として建設に当たってきたということはちゃんと記録に残っていることですね。間違いないですか。
  369. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 昭和四十一年当時、そういう考え方をしていたことは事実でございます。
  370. 不破哲三

    不破委員 六十億円の予算を百億円に変えるときに、それはただの実験船ではむだだから、そういう貨物船として使おうじゃないかということで国会に報告があって承認されたことですね。それが実際には、これから完成して実験航海が終わるまでには、恐らく一千億を超える金がかかるでしょう。その計画したよりも十倍の金がかかるようになった。しかも、そうやって特殊貨物船として使うはずだったものを、去年計画をいきなり変えて、いまでは実験だけにしよう、実用的な用途はないものにしようということに変えてしまった。それから三番目には、この船は最初の設計は単なる実験じゃなしに、使用済み核燃料を運ぶというのは高度な実用ですよ。一番危ない輸送ですよ。だからこれは実用船としてつくったことは間違いないのですね。このことは間違いないでしょう。
  371. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 特殊貨物として当時核燃料物質が考えられていたということは事実でございます。当時の事業団年報に六弗化ウランの輸送ということが記述されております。また昭和四十三年当時、できるだけ核燃料だけじゃなくいろいろなものも積んで、ある程度収入を上げたいという希望があるということも御説明申し上げている経過はございます。
  372. 不破哲三

    不破委員 ある程度どころか、当時の政府側の話だと年間一億五千万から二億円は稼ぐのだというようなことまで言っていたわけですね。それで百億円の予算が大体認められた。ところが、一千億円もの金をつぎ込みながら、その所期の目的も達成できない。実用船としてつくったはずのものが去年いきなり変わって、また実験船に逆戻り、これは一体何ですか。  それでもう一つ伺いたいんだが、その実験船のためにわざわざ港を一つつくるというのです。これは全く実験のだめに五百億、六百億とも言われているお金をつぎ込んで、「むつ」だけが入る港をつくるのですか。
  373. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 最終的に実験船にしようという決断は、むしろ昭和五十一年三月三十一日に原子力船開発事業団法が切れるに際しまして、その延長につきましての国会での御討議の結果、実験船に限ろうということに変わったわけでございます。  もう一点、港の件でございますが、将来的には公共的な港湾として考えたい、このように考えております。
  374. 不破哲三

    不破委員 そうすると、原子力船以外も入る港ですか。
  375. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 地域の発展を考えた公共的な港湾ということを考えたいと思っております。
  376. 不破哲三

    不破委員 いま青森県の関根浜を計画しているようですが、あの「むつ」の事故が起こったときに大湊でない新しい港を全国で探しましたね。六十カ所探したはずですが、そのときに関根浜を調査してどうだったですか。
  377. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 その当時の経過にかんがみまして、青森県下は調査の対象にしなかったと聞いております。
  378. 不破哲三

    不破委員 つまり、あのときに港として白羽の矢を立てた六十の中に入らなかった港なんですね。だれが考えても条件が悪いところ。それで、青森湾があるわけですから、あそこのところにわざわざ港を新たに必要とする事情は何にもない。そこに五百億とか六百億とか、ともかく三百二、三十億よりはよけいなお金をつぎ込もうというのですから、よけいなお金をつぎ込んで港を一つつくろうということをあなた方は計画しているわけですね。それで、現地で聞きますと、第二原子力船もやがて来るんだからむだじゃないんだという話をされているそうですが、これは原子力船の専用港なんですか、それとも一般の商業港なんですか。
  379. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、将来的には一般の船、どういう船がどういう形で使われるか、これから地元といろいろ御相談したいと思っておりますが、公共性を持った港にしたい、このように考えております。
  380. 不破哲三

    不破委員 だけれども、港、商業港というのは何にもないところにいきなり、工業もなければ需要もないところに——笑っていられる閣僚もいますけれども、港を一つ掘ったから栄えるわけじゃないのです。そういう見通しのないところに何で五百億、六百億のお金をかけて港をつくるのですか。ただでさえ財政が足りないと言って政府が青息吐息のときに、何でそういう方針をやるのか、これは明確にしてもらわないと、どういう展望を持っているのですか。
  381. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 私ども日本にとって原子力船の開発、原子力商船の開発というのはやっておくべきだという基本的な判断に立っております。その開発の基地として一つ港を持ちたい、こういうことをお願いしているわけでございます。
  382. 不破哲三

    不破委員 そうすると、結局は話が違って、原子力船のために必要な港ではありませんか。  では、「むつ」の次の第二原子力船というのはいつごろできる見通しなんですか。
  383. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 長期的な話になりますので、現実的に第二船がいつという計画は持っておりません。しかし、「むつ」に次ぐ経済性を追求するための舶用原子炉の研究は、今日すでにスタートしておりまして、これがどのように発展していくかという状況になるわけでございます。  それから港につきましては、原子力船と、またほかの船との共用ということは十分可能ではないか、このように考えているわけでございます。
  384. 不破哲三

    不破委員 しかし、あなた方が関根浜に白羽の矢を立てるまでは、青森県の経済や東北の経済から言って、あそこの太平洋岸に新しい港が必要だという話は何もなかったのです。だから、要するに原子力船「むつ」の処理をするために、大湊を断られたから新しい港をつくる、それだけのことでしょう。それで、いままでの政府の方針によると、第二原子力船は民間によると書いてあるけれども、実際に第二原子力船を計画している海運業界がありますか。
  385. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 現在のところ具体的な計画は聞いておりません。しかし、いろいろ研究計画につきましては、業界日本原産会議中心に研究をいたしておりまして、原船事業団と密接な関係をいま保ってお互いに勉強し合っているという状況でございます。
  386. 不破哲三

    不破委員 その事業団の人がいろいろ勉強し合っているだけで、第二船の計画は具体的には何もない。この事業団の理事長が、「エネルギーレビュー」という雑誌に「原子力船時代は来るか」ということを書いて、そういう質問に対して「いつかは来ます、二十一世紀には。いまは油もずいぶんたくさんあって、原子力船は要りませんけれども、」これは一番熱心な原子力船研究開発事業団の理事長の言明ですよ。具体的にはどこにもないわけですね。それで、第二船の計画はどこにもない、そのために新しい港をこの時期に五百億、六百億でつくって「むつ」だけの港にする。その「むつ」が一体どういう値打ちがあるかということがいま問題なんですよ。  一番最初に「むつ」をつくったときには、これはもう実用は十分可能だ。実験だけじゃないんですよ。実験船というのは、完成して二年間の実験航海までで、三年目からは、使用済み核燃料という一番危ない、高度な輸送力を持つ必要がある、そういうものを運ぶ実用船として設計した。ところが、去年、変えてしまった原子力船開発の新しい計画によると、「むつ」をつくってから、今度はそれをもとにして新しい炉の研究をやりたいというんですね。それから、その炉の研究をやって、今度は実用船に取りかかる、実用船だというので、ようやく百億の予算がついた。ところが、合わせれば一千億近い金をこれから投じるのだが、これは所期の目的は全然達成できないで、炉の開発の予備材料にしかすぎない。それはそうでしょう。「むつ」に積んだ炉をつくったころは、いま日本で動いておる原発の一番古いのがつくられたころですよね。だからもう新しい船舶用炉の開発の、実験の値打ちもない。だから、新しい船舶用炉の開発はこれからやるんだと言い出した。船として実験すると言うが、その船をつくる計画はまだどこも立てていない。一番熱心な事業団の理事長でも、二十一世紀になったらどこかやるんじゃないか。ある人に言わせると、石油がいまの二倍か三倍に上がってくれたら原子力船の値打ちが出てくるんだがと言っている人もある。これは海運業界関係者ですよ。つまり、「むつ」の次には何も来る必要がない港に、いまのこの情勢のもとで、政府がいままでやったこのまずい結果の後始末のために、これから五百億というお金を投じてやろうというんですか。どういう見通しでこれをやろうとしているのですか。科学技術庁長官、そろそろ出てきたらいいでしょう。
  387. 中川一郎

    ○中川国務大臣 不破委員からいろいろ御指摘がありました。一時期はやめたらどうかという意見もあったわけです。これは原子力に反対する人が、何でもやめろという中での反対でして、原子力を否定する人の意見でございます。  われわれはエネルギー問題を考えるときに、原子力発電も必要であれば、原子力炉の舶用炉の開発も絶対必要である。二十一世紀と言いますけれども、そう遠い年代ではないんです。そうなったときに、科学技術立国を目指し、しかも船舶国家であり、海運国家である日本が舶用炉について技術を持っていないということは、国民に対しても申しわけないし、それから技術立国としての日本としても情けないことである。若干の金がかかったことは、放射線漏れのことがあり、いろいろ反対もありましたから、出直しの気持ちで、百億程度でできたでありましょうけれども、研究開発には慎重を期さなければならぬというところから、いろいろ曲折を経て佐世保で修理をお願いした。そのときも、佐世保からは出ていく、三年たったら出る、そういう約束のときに私が大臣に就任したんです。ところが行き先はない、三年たったら出なければならない、期限は来る、しかも工事は終わっておらないというせっぱ詰まったときに、六十カ所探してみてもなかなかない。さてそれでは廃船にするかということになると、そうはいかない。そこで、青森県に行って、漁民の皆さんの気持ちはわかるけれども、舶用炉はぜひ必要であるから、お願いできないことだけれどももう一回寄せていただけないか、せっかく施設もあることだから、こうお願いしたわけです。漁民の皆さんは非常に理解をしてくれて、漁業を守っていくことが中心であって、舶用炉に反対をするものではない。そこで関根浜なら結構です。しかし、関根浜ができるまではあそこの大湊に置いてやろう、こういういきさつを経て、当初なかったものを、私は二重にも三重にも誠意をもってお願いした結果、初めてクローズアップされた港なんです。若干の金はかかり、またその間、放射線漏れ等のいきさつもありまして御迷惑をかけたことは残念であり、遺憾だとは思っておりますけれども、将来のエネルギー、二十一世紀になるか、それ以前になるか、それ以後になるかは別として、長い目で日本の将来を考えたら、やはりこういった方向で国民の協力を得ることが国民のためになる、こういう信念を持ってやっておるところでございまして、共産党の皆さんもどうか何でも反対、反対と言わずに、先々のことも考えて御理解、御協力をいただくように、国民にかわってお願い申し上げておきます。
  388. 不破哲三

    不破委員 若干のお金と言いますが、さっき三百二、三十億以上だと言ったけれども、大体関根浜に港をつくるとしたら五、六百億かかると言われているのですよ。それが若干だというのが、行政改革に命をかけると言った、政治生命をかけると言った鈴木内閣の閣僚の言葉というのは、私は驚きだと思うのです。それだけの、五、六百億ものお金を一体ほかに使ったらどれだけのことができるのか、そういうことを考えないで、ただ「むつ」だけの後始末のために使おう。しかも、舶用炉の開発のためだと言うけれども、大体あれはすでに開発されて実用になるというつもりで始めたわけです。ところが、去年の計画をごらんなさい。まだ舶用炉は開発されていないんだ、これから舶用炉の開発の研究をするんだ。そういうことから原子力船第一船開発計画を変更して——こんなことはいままでなかった。なかったものを、舶用炉の開発の材料をこれから探します。まだ実用になっておりませんということを、もう十何年もたってから急に衣がえをして、衣がえしたということは、いま「むつ」を完成させても、これがもう実用船とは言えない。初めに計画したような実験の値打ちもないということを政府自身が認めたことなんですよ。そういうことに、いままで乗りかかった船だから——乗りかかった船だからということでむだ遣いをしないということが、鈴木さんが盛んに言う行革だったはずでしょう。そこを洗ってこそ、本当にむだ金じゃなしに、日本の将来に向かって役に立つ科学投資になる。もうがむしゃらに、何流か知らないけれども、一遍乗り出した船なんだから、幾ら金がかかっても、その結果がむだになってもやるんだ。この「むつ」を完成させても実用船までにはまだ距離があるということを認めざるを得なくなったこと自体、いまの政府の失敗の告白なんですよ。そういうやり方を変えろということを私は言っているのですよ。  同じようなことが、あの原発に関係した再処理問題にも起きておるわけですね。いま東海村にこの原子力発電所から出る使用済み核燃料、「むつ」が運ぶはずだった核燃料を再処理して始末をする再処理工場が動いておりますね。  通産大臣に聞きたいのですが、去年の十二月に電気事業審議会で、この再処理と電力コストの問題に関して従来の考え方をひっくり返した新しい報告が出たということを聞いておりますが、事実ですか。
  389. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  昨年の電気事業審議会の料金部会で、核燃料の再処理コストを電力料金の体系でどう扱うかという議論がされまして、結論としては、諸外国その他を調査した結果、さらに核燃料の再処理についても技術が確立され、それについての原価計算その他も可能になってまいりましたので、これは核燃料を実際に燃やして発電をした段階でコストとして計上するのが適当ではないかということで、その方向で政府としても検討するようにという結論が出されております。  私どもといたしましては、この答申を尊重いたしまして、今後こういう問題を電力料金の計算の根拠として考えていくための引当金ないしは準備金制度の検討を現在行っておる段階でございます。
  390. 不破哲三

    不破委員 ちょっと待ってください。再処理をコストとして考えるというのは新しい方針じゃないですか。それまでも再処理はコストに計上するという考え方だったのですか、あなた。
  391. 小松国男

    ○小松政府委員 再処理コスト自身が技術開発の段階で十分見きわめをつけられるまでは、実際に幾ら計上していいかということがなかなかわからなかったわけでございます。ただ、考え方といたしましては、当然、燃やした使用済み燃料につきましては、再処理を行うことが将来の利用の問題、またそれを廃棄物として十分管理保管する場合にも必要でございますので、コストとして計上すべきだという考え方はもともとございましたけれども、具体的技術的にどう計上していくかという問題については結論が得られていなかった、それについて今回方向を出したということでございます。
  392. 不破哲三

    不破委員 ちょっと、肝心なことを隠しちゃいかぬですよ。ここに私は公益事業部のそのときの会議についての報告を持っていますが、原子力バックエンド費用のうち、使用済み核燃料の再処理費用についてはこれまでは資産勘定にしていた。つまり再処理のコストはかかるけれども、再処理によって生まれるプルトニウムやウランの方が高い。だから、これはコストじゃなしに資産勘定だというように扱っていた。核燃料を資産として計上し、費用扱いはしていない。ところが、その勘定が狂って、再処理の費用がはるかに高くなって、プルトニウムやでき上がるウランの値段をはるかに上回ったのでコストとして計上せざるを得なくなった。大転換でしょう。それを確認したのが去年の部会じゃないですか。
  393. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、最初核燃料、使用済み燃料の処理コストというものが明確でございませんで、その段階では、確かに再処理をした段階で出てまいりますウラン並びにプルトニウムの利用価値との関係で、その辺のコスト関係というのを十分見きわめがつかなかったわけでございます。ですから、その段階では、場合によってはコストとして計上できるかどうかという点についても確かに不明な段階があったと思います。その後再処理の技術が確立され、コストについての見きわめがついた。現段階で考えますと、再利用されるプルトニウムないしはウランの評価に対しまして、最終費用がはるかにこれを上回りますので、これをコストとして計上するという考え方でございます。
  394. 不破哲三

    不破委員 だから、わからなかったからじゃなしに、あの再処理工場を実験プラントじゃなしに商業用でちゃんと経済性に合う工場につくるということを政府は決めたわけですね。そのときには、経済性はちゃんと成り立つということを明確にしてやったはずなんですよ。そのときにはちゃんと試算もしているのですね。再処理のコストはこれぐらい、それから、でき上がるプルトニウムやウランの買い上げ価格はこれぐらい、これはちゃんと利益になるということを試算してやっているわけですよ。ところが、その計画が全然狂ってきた。私ども試算してもそうなんですけれども、この間新聞に出たところによりますと、電力会社が企業によっては、予定していた経常利益の半分が吹っ飛んでしまう、年間に吐き出す使用済み核燃料の再処理費用を計上すると吹っ飛んでしまうということになって大騒ぎになっているといいますが、いま一体使用済み核燃料は東海工場でトン幾らで処理しているのですか、再処理料は。
  395. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 現在トン当たり一億三千五百万円で再処理をいたしております。
  396. 不破哲三

    不破委員 トン当たり一億三千五百万円。百万キロワットの原子力発電所が動きますと年間三十トンの使用済み核燃料が出ますから、それだけで約四十億円コストがかかるわけですね。それをいままでは四十億円かかると思わないで、これは資産だ、計算したらプラスになってもうけになるんだと勘定してやっていた、去年の十二月までやっていた。いままで膨大な量がたまっておりますが、それはだから全部いままで勘定しないできたわけですね。これだけでも大失態だと思うのですね。  しかし、なぜこんなことになったのか。東海村で商業用の再処理工場をつくるときに、なぜそういう誤算をしたのか。これはまた科学技術庁になるんですが、あの工場を建てるときに、再処理費用というのは大体どれぐらいでできると見込んでいたものですか。
  397. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 当初の、一番最初契約いたしましたときは、たしかトン当たり二千万円という契約でございました。これはまだ初期の段階……(不破委員「建設段階、建設段階。建設に踏み切るときにどれぐらいのもくろみでやったかということです」と呼ぶ)  建設につきましては、操業に当たります部分は借入金でやっているわけでございます。したがいまして、操業そのものは借金でやって、その元金を返しまた利息も払える、そういうことを前提に、十五年間の操業を前提に計画をしたわけでございます。
  398. 不破哲三

    不破委員 だから、操業のときに、つまりいまは計算が狂ってきて、もうけだと思ったのが大変な費用がかかることがわかった。操業のときにどういう計算でもうけだと考えたのか。——操業でなしに建設に踏み切るときにですね。そのときに試算をやっているでしょう、科技庁で。どれぐらいの再処理費用と考えていましたか。
  399. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 当時トン当たり千五百万円程度でそろばんに乗るであろうという試算をしたそうでございます。しかしながら、その後国際的にも——当時その千五百万円というのは国際相場でもあったわけでございますが、国際相場も現在上がっておりまして、約一億二千万から一億六千万の幅で現在国際的な再処理費用ということになっております。動燃につきましても、操業がうまくいけば一億三千五百万円で採算に乗るという見込みを持っているわけでございます。
  400. 不破哲三

    不破委員 私はここに昭和三十九年五月二十七日の原子力局で計算したコスト計算の表を持っていますが、これによりますと、トン当たりの再処理費用は八百九十五万円でできる。それでウランとプルトニウムが約四千万円で売れる。トン当たり八百九十五万円の費用でできて、輸送費を二百万円勘定しても、トン当たり二千九百三十五万円もうかる、こういう計算を科学技術庁がやっているんですよ。それに基づいてやっているわけですよ。トン当たり八百九十五万円でできるはずのものが、いま一億三千五百万円。物価は三倍ちょっとでしょう、その間に。ですから、その間に予想が狂って、十何倍の費用がかかるようになった。これが現実ですね。どうでしょう。
  401. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 昭和三十年代にいろいろ再処理につきまして研究、勉強しておりまして、その時点での試算は先生御指摘のとおりであったかと存じますが、私ちょっとその点ただいま確認できません。で、昭和四十五年には千四百八十万円ということで、こういう数字をもとにこの動燃の計画に移った、このように御理解賜りたいと存じます。
  402. 不破哲三

    不破委員 つまり、勉強中にいろいろな実験の設備をつくらないで、電力業界が必要だからというので、まだ勉強中なのに本格工場をつくっちゃった。ですから、最初の計画と十五倍も狂うようなめちゃくちゃなことが生まれるのですね。たとえば、一番最初に建設するときに、予算はたしか二百二十八億円の建設予算で試運転まで間に合うという計算をしたはずですが、実際には東海の再処理工場に、去年の本格操業に入る前にどれぐらいかかりましたか。
  403. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 再処理工場の建設、操業に要しました費用は四十二年の動燃設立以来五十六年度までで千七十四億円でございます。しかし、このうち大半は借入金でございまして、政府出資分は二百八十七億円でございます。ただし、同じ期間に再処理の技術開発、安全性あるいは環境への適応といったような基礎的な研究開発に四百三十二億円を支出しております。
  404. 不破哲三

    不破委員 借入金といっても最後は返さなければいかぬわけですね。つまり、ここでも二百二十八億円の予算で始めたものが、実際にでき上がるまでに一千億円を超えるお金がかかっている。しかもその結果は、最初に考えた予算よりも物すごく高いもの、電力会社のコストに響くようなものになっている。しかも一億三千五百万円でやって、いま採算とれていますか。
  405. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 予定したトン数がまだ処理できておりません。したがいまして、現在のところまだ赤字ということでございます。
  406. 不破哲三

    不破委員 たとえば、去年でも、これは事前に伺ったことなんであれですが、建設費が百二十億円、それから操業費が七十億円、約百九十億円つぎ込んでいるのですね、去年一年間でも。もう試運転段階は終わって、それで四十トンしか再処理できなかったわけですから、一億三千五百万円かけてみてわかるように、これは実際に去年一年間かかったコスト、それまでに投資した分は抜きにしても、去年一年間かかったコストの半分ぐらいしか上がっていないわけですよ。  それで私が伺いたいのは、やはりここにも電力業界の注文に応じて、まだでき上がっていない技術を簡単に国の投資で商業化して、それでにっちもさっちもいかなくなる。「むつ」と同じことがあらわれているわけですよ。  たとえば、この工場は前から、政府もそれから事業団の関係者も原価回収主義でいきたいということを言っているわけですが、一体何トンぐらい処理できるようになったら原価は回収できるようになるのですか。
  407. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 年間百三十トンで大体減価償却できる、こういうふうに計画をしているわけでございます。
  408. 不破哲三

    不破委員 何年ぐらいたったらそこまでいける見通しですか。
  409. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 先生御指摘のように、なかなかむずかしい技術でございまして、その操業度がなかなか上がらないという実態で苦労しているわけでございますが、本年度は八十トン、来年百トンというふうに上げていきまして、なるべく早く安定的に百三十トン以上、できれば百四十トンベースに持っていきたい、このように計画しているわけでございます。
  410. 不破哲三

    不破委員 余り時間もありませんので細かく全部は言いませんけれども、私はここには大事な問題が含まれていると思うのです。  たとえば再処理事業というのは、これは原発以上に技術が未完成なんですね。それで、原子力発電所だったら放射能は炉の中に閉じ込められている。再処理工場というのは最初から放射能のかたまりを工程の初めに入れて、出てくるのがまた放射能のかたまりですから、全工程が放射能に浸されているわけですね。  たとえば東海村でいいますと、ステンレスのパイプが百二十キロメートル通っているそうですが、この全部に放射能の液が通過しているわけですよ。ですから、原子炉以上に、至るところに事故の発生の危険がある。たとえば、今度でも二十八日に再処理工場が動き始めましたが、私が聞いたところによると、きのうまた事故が起きている。去年起きた事故と同じ性質の事故。一番最初のところで核燃料を勇断してそれを溶解槽に入れて、それを吸い上げるポンプがありますけれども、去年も運転を始めたらその吸い上げポンプの中が詰まって動かなくなったわけですね。ところが同じ故障が、直っているはずなんだが、ことしも起きている。つまり、政府が九百万円ぐらいでできると考えたときには、これはもう完成した技術で、ただ後は商業化すればいいということで入れたんだと思うんだけれども、実際にはそういう危険なことを扱っているわけですから、まだまだ世界じゅうどこでも成功していないものをやったわけだから、これは事故が起きるのはあたりまえなんですね。百三十トンやったら原価回収できると言うけれども、日産〇・七トンですから、年間約二百日は動かないとこれは政府が計画したとおりにならぬわけでしょう。去年はそれがせいぜい四十トンですから、六十日足らず分しか動いてないわけですね。ですから私は、ここにもやはり政府が大変無計画なために——これは「むつ」よりももっと大きな費用を投じているわけですよ。政府が無計画なために、せっかく国の金を投資しながら実際には技術の進歩に役立たぬという例があらわれていると思うのです。  それからもう一つ言いますと、今度はこの再処理で出た放射性廃液ですね、これはどう処理していますか。
  411. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 それぞれ酸化プルトニウムあるいは放射性廃液という形で容器に保存しております。一部プルトニウムにつきましては、金属に還元をいたしまして「ふげん」の燃料に使っているということでございます。それから放射性廃液につきましては、ガラス固化の技術開発を進めておりまして、六十二年度からガラス固化に移りたい、このように考えて計画的に研究開発を進めているという状況でございます。
  412. 不破哲三

    不破委員 放射性廃液の処理も、その処理のコストというのはいまだに計算をしていないでしょう。それで、放射性廃液というのは高レベルの放射能があるわけですから、ほとんど半永久的に保存するか処理しないとこれはいかぬわけですね。だから実際に原子力発電のコストにどれぐらい響くかということは、まだ本当に推測でしかない。しかもその分はどんどん原発が動きながら相変わらず、さっきと同じようにやがてまた将来になったら、これは安くできると思ったが、高い費用がかかったということで、電力料金に加算されるということになるのでしょう。そういう点ではまだ全く未開発の技術、未完成な技術を、それを完成したと思い込んで国の莫大な投資をつぎ込んで、その後始末を結局は電力料金とか政府の予算とかいう形で国民がしょわなきゃいけなくなる。私は、こういう浪費型も、ここにこそ本当に行革をやる気なら思い切って洗わなきゃいけない、金額の単位がでかいわけですから、問題があるということを指摘したいと思うのです。  それからまた、もう一つ言いたいことは、きょうは時間がありませんから同僚議員がやることになると思いますが、同じような浪費が研究開発という名前で大企業に投じられているものにもある。政府が軍事、それから聖域とされている大企業関係のエネルギーや研究開発の問題、こういうことを行革を本当にやるというなら本当に洗うつもりがあるかどうか、そのことを総理に伺いたいと思うのです。
  413. 中川一郎

    ○中川国務大臣 再処理についてもいろいろ御意見がありました。御承知のように原子力発電をやるのには核燃料サイクルと言って、再処理あるいは廃棄物の処理、処分までやらなければ一貫した開発とは言えないわけです。  そこで、再処理は、いまイギリスやフランスにお願いしているという情けない事態でございますので、実験に取りかかって成功しているわけです。これまた当初よりは、もう二十年前の話ですから、値段も変わってまいりますし、その上に安全性ということについて十分の改善に改善を加えなければならないということでやってきて、国際価格にもそう劣らないところまで成功したのです。しかし実験段階ですから、まだ安全に安全を加えて、まあ無理すれば八十日、百日操業できるところを四十日ぐらいでやりながら、まだ採算は合わないけれども、これが八十日になり百日になっていって成功すれば、仮にこれがコストで一円としても、それでも十円のものが十一円になるのであって、まだ火力発電から見れば半分に近い程度で国民に電気が供給できるいいものなんですから、少々——先ほど少々と言いましたのは、国民に安い電気なり、あるいは将来舶用炉をつくるということからいくならば、投資としてはがまんできるものではないか、こういうことでやっておりますし、それからハイレベルの廃棄物につきましても、これは幸いにして量がほんの少しのものなんです。ですから、ガラス固化等をやって、地下埋設等の方法もありますから、どうかそんなに悪いところばかり見ないで、われわれは悪いところがあるからこれからよくしようと思って努力していることも評価していただいて、エネルギー対策についても長期的視野に立って御協力をいただきたい。国民の大方の皆さんは、御理解をいただいているものと思うのです。  ただ、安全性については何よりも優先していかなければならぬということでやつでおりますから、どうぞひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。
  414. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま科学技術庁長官かち申し上げたとおりでございます。
  415. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十二分散会