○鍛冶清君 私は、公明党・国民
会議を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
豪雨災害に関し、
総理並びに
関係各大臣に若干の質問を申し上げますので、誠意ある御答弁をお願いをいたします。
去る七月二十三日の夕刻から、
長崎地方を
中心に、熊本、大分地域を襲いました
集中豪雨は、
昭和三十四年に発生いたしました伊勢湾台風以来の大きな
被害をもたらしました。
一週間たちました今日ただいまでも、
被災地の皆さん方は懸命の
努力をなさっておられますが、いまだに遅々として
復旧が進んでおりません。
がけ崩れ、鉄砲水、家屋の倒壊や浸水、
河川の決壊、道路や橋の損壊、電気、ガス、水道施設の損壊等々、想像を絶する
被害が広がっています。
さらに胸が痛みますのは、この
災害で亡くなられた
方々、
行方不明の
方々が合わせて三百名を超すという大惨事になっていることでございます。家族の
方々や
被災地の皆さんのお心はいかばかりでございましょうか。この席をおかりいたしまして、お亡くなりになられました
方々の御
冥福と、一日も早く
被災地の皆さんが力を合わせて
復旧が終わり、力強い再出発をなさいますことを心よりお祈りをいたすものでございます。(
拍手)
わが党も、少しでも早く
被災された皆さんのお手伝いをしなければと、
災害発生直後、直ちに党本部に九州地方
集中豪雨対策本部を
設置し、
活動を開始いたしました。
また、この
災害に対しまして、
全国各地から続々と真心のこもった救援の手が差し伸べられてはいますものの、
現地の
状況は非常に厳しく、
復旧作業も困難をきわめており、本格的な台風シーズンを控えまして、さらに強力なそして早急な国の救援が待ち望まれています。
このたびの大
災害は、
集中豪雨がもたらした雨量は百五十三ミリという記録的なものとなり、これに満潮時が重なるといった悪
条件が引き起こしたものではありましょうが、さらには、無秩序とも思われる
都市化の進展が
被害を加速したことも否めない事実でありましょう。
御
承知のとおり、
長崎市は平地がきわめて少ない坂の多い港町で、終戦当時は十四万人であった人口が、今日では四十五万人と急速にふくれ上がってきております。そのため、いろいろな対応がおくれ、無秩序な宅地造成が行われてきた事実は否めないと思います。その結果、必然的に出水による
がけ崩れ、鉄砲水などを誘発しやすい
条件がつくられていたと言えましょう。これらの現状を踏まえながら、以下、数点にわたって質問をいたします。
まず、質問の第一点は、
激甚災害特別
措置法に基づく
激甚災害の
指定についてであります。
大
規模な
被災状況から見ましても、
激甚災害に
指定されることは当然のこととは思いますが、
現地の皆さんにとって最もいま必要なことは、これが速やかに適用され、
実施されることであります。この点について、どのように対処しておられるのか、また、いつごろ
指定でき得るのか、
総理の決意のほどをお伺いをいたします。
第二点は、
被災者に対する住宅、金融、税金の問題等、
生活再建対策についてであります。
被災家屋の建て直し、修改築に対する住宅金融公庫の
特別融資の早期
実施を初め、
被災した中小企業者の
生活再建と経営の安定を図るための商工中金、中小企業金融公庫、国民金融公庫等の
特別融資や既往の借入金に対する償還期限の
延長、税金の減免
措置、
被災農業者への
救済措置など、
被災者に対して総合的な
生活再建対策を速やかに講ずる必要があると思いますが、
総理のお
考えを伺いたいと思います。
質問の第三点は、
都市河川の
整備についてであります。
今回の水害では、
長崎の市街地も、中島川、浦上川のはんらんで濁流にのまれてしまいましたが、この実情の上から、
都市河川整備のあり方について多くの問題点が指摘されております。
建設省におきましては、
昭和四十七年から、
都市河川について、一時間の雨量五十ミリ程度に耐えることを基準に
河川の
整備を進めているようであります。ところが、
全国の市街地を流れる
都市河川の総
延長は約一万一千キロメートルに及んでおりますが、そのうち、この五十ミリの雨量に対してすら、これに耐えられるように
整備できておるのは、わずかその三八%にしかすぎません。
この実情から見ても、
防災の視点から、早急にこれら残り
河川六二%の
整備を進めなければならないことは申すまでもありませんが、さらにこの際、一時間雨量五十ミリ以上の雨が降り、しかも今回のような湿舌現象のもとで百ミリを超す
集中豪雨が
各地で見受けられる現状を踏まえましたときに、現在の
整備基準を根本的に見直すべきであると
考えますが、建設大臣の御
所見をお伺いいたしたいと思います。
質問の第四点は、宅地造成等のあり方についてであります。
現在、宅地造成や建築物の基準等については、
都市計画法、建築基準法、宅地造成等規制法などによってチェックされることになっています。これらの
関係法律が、
防災、安全
対策の面で相当の効果を発揮していることは十分
承知いたしております。しかし、これらの個々の
関係法律に沿って造成されました宅地や建築物も、当初は安全でありましたものが、年月がたつにつれて、周りの自然環境や物理的環境の変化によりまして、その安全性が損なわれてくるという現実がございます。
ことに人口急増の大
都市周辺地域では、後背地の山林の伐採や水田の埋め立てなどで森林の水源涵養機能が著しく低下をいたしたり、遊水地としての機能が喪失してくるなどの現象が
全国各地で目立ってきております。その結果、それらの地域は、
集中豪雨等に対して大変脆弱な構造になってしまっていると言っても過言ではございません。
そこで、建設大臣にお伺いいたしますが、
防災、安全
対策という視点から、今後の宅地造成の進め方について再
検討を行うべきときが来ている、こう思いますが、いかがでありましょうか。
質問の第五点は、
国土利用
計画や地域
計画と
河川計画の
関係についてであります。
治水事業を実効あるものとするためには、
河川の下流域の
整備とともに、上流域の砂防ダムや洪水調整ダムの
整備、森林資源の保護、無謀な宅地造成や乱
開発の規制等を含め、
防災の立場から
国土利用
計画や地域
計画と
河川計画を一体的に
推進する必要がありましょう。
本来、遊水地や
河川敷による洪水調整機能は、特に中流、下流域では多大な効果を発揮するものでありますが、現実には
都市化の進展の中で遊水地や
河川敷が縮小されてきている傾向にあり、その機能が失われてきているのです。これは全く重大なことであります。
そこで、地域
計画の一環といたしまして遊水地の
確保を強力に進めるとともに、必要に応じて
関係省庁間や省内の縦割り行政の壁を乗り越えて積極的な
土地利用規制を行うべきと思いますが、建設大臣並びに
国土庁長官のお
考えをお伺いいたしたいと思います。
また、
国土の六七%が山林であり、しかも国民の大半が住みやすい
河川流域を
中心に
生活を営んでいるため、実に
全国民の五二%、資産について言いますと六八%が潜在的に洪水の危険にさらされている実情でございます。このことを
考えますと、
わが国では、
国土保全という視点から実効ある
治水事業を進めるためには、今後
治山事業と不離一体的に
推進することが不可欠であると思いますが、この総合的な調整について
総理はどのように
考え、どのように進めていこうとされるのか、
所見をお伺いいたしたいと思います。
質問の第六点は、
災害復旧事業についてであります。
行政改革を
推進している今日、
財政事情も大変厳しいことは重々
承知してはいますが、
都市河川等の
災害復旧事業につきましては、将来再び同じような
災害を繰り返させないようにするためにも、
現地の実情に即応した改良
復旧事業を促進すべきだと
考えますが、建設大臣のお
考えをお伺いいたしたい。
また、
被害市町村に対しては、普通交付税の繰り上げ交付、特別交付税の増額など早急に財政援助
措置を講ずべきであると
考えますが、自治大臣に
お答えをいただきたいと思います。
質問の第七点は、危険区域内の住居移転についてであります。
ことし五月、
長崎県が策定いたしました水防
計画によりますと、県下の土石流発生危険
地区は四千四百三十八カ所にも及び、その対象家屋は十五万三千八百八十一戸にも上っているということであります。そのうち
長崎市内だけとってみましても、危険地域は五百六十七カ所に及び、対象戸数は一万三百四十戸にも及んでおります。
このような危険地域から移転する場合、現在、
防災のための集団移転促進
事業特別
措置法が適用され、助成が行われることになっていますが、適用要件が厳し過ぎるとの批判も出てきております。この中で、今回特に基準以下の少戸数の住宅の移転が数多く
考えられる中で、基準
緩和の要望が非常に強く出てきております。この実情から見まして、この際、少戸数であっても本法が適用されるような特例
措置を講ずることが必要であると思いますが、この点についての
お答えをいただきたいと思います。
質問の第八点は、
災害警報、避難体制と救援体制の
整備についてであります。
今回のように
梅雨期特有の局地的な
集中豪雨を的確に予測することは、現在の技術水準ではきわめてむずかしいとも言われておりますが、今後のことを
考えますと、
河川整備等、ハードの面のみではなく、ソフトの面も大切になってくると思います。この観点から、当面の対応策として、地域
住民に対する避難誘導や情報伝達システムを
開発し
整備を行っていくことは急務でありましょう。
また、
災害発生後の救援
活動をスムーズに行うためには的確な誘導や情報伝達が大切であることは言うまでもありませんが、今回の貴重な体験の上から、
交通規制についても
考える必要があると思います。
これらの問題について今後どのように対処していかれるのか、
お答えをいただきたいと思います。
以上、八項目にわたり質問を申し上げました。
総理並びに
関係各大臣の誠意ある御答弁をお願いいたします。
最後に、要望でございますが、
長崎、熊本、大分の
被災地の皆さんが立ち上がるためには、なお一層のきめ細かい身近な
対策が必要であります。これは地方自治体が行うことになると思いますが、飲料水や
都市ガスの問題、屎尿・ごみ処理の問題、防疫
対策等々、数多くの問題が山積いたしております。
これらの
対策を地方自治体がスムーズに行うことができるよう、国において、あらゆる面にわたって強力にバックアップしていただきたい、このことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕