○堀昌雄君 このたび、長崎県を
中心に集中豪雨が参りまして、多数の皆さんが犠牲になられました。命をなくされた方々に心から御冥福を祈りますとともに、被災者の皆さんにお見舞いを申し上げておきたいと思います。
政府は、ひとつこの際、
国会とも十分連携をとりながら、適切な対策を講じられることを要望して、本題の
質問に入らせていただきます。(
拍手)
私は、ただいま議題となりました
公職選挙法の一部を
改正する
法律案について、
提案者並びに鈴木
内閣総理大臣に日本社会党を代表して
質問をいたします。
最初に、この法案の基本的な
考え方について私の
意見を申し述べ、その後でこの法案の内容についてお尋ねをいたしたい、こう
考えているわけでございます。
そこで、この法案の
参議院における
公職選挙特別
委員会の採決のあり方は、きわめて遺憾なことでありました。それだけに、本院においては、すべての
国民に納得のいただけるよう十分に慎重な
審議を行い、第一院としての
良識を広く
国民に理解されるよう真剣な
努力をしなければならないと
考えているのでございます。(
拍手)
そこで、この
選挙の基本的な
考え方は、御承知のように、過去における
個人本位の
選挙から、
政党本位の
選挙、政策本位の
選挙への移行を実は土台としているのでありますが、少し私は、日本の
国政選挙における過去の状態を振り返ってみて、なぜ
個人本位の
選挙というものが長く今日まで日本にあるのか、同時に、欧米諸国においては、つとに
政党本位、政策本位の
選挙制度に変わってきているのか、この問題について基本的な
考え方を少し申し上げておきたいと思うのであります。
わが国の
選挙法は、明治二十二年、一八八九年、
法律第三号によって初めて
国民に
選挙権が与えられることになりました。当時は
選挙権は二十五歳、
被選挙権は三十歳、十五円以上の直接国税を一年以上支払って、同一府県に一年以上在住した者が
選挙権が持てるのでありました。当時の人口は約四千万人、この制限された
条件のために、
有権者は約四十五万人でありました。そうして
議員定数は三百名で、この
有権者は人口のわずか一・一%にしかすぎない状態でありました。四十五万人の
有権者が三百人の代議士を選ぶということは、千五百人が一人の代議士を選んでいるわけでありますから、まさにここでは、
個人が千五百人の代表として選ばれたというのが歴史的な経過であったと思うのであります。
その後だんだんと日本においても民主主義が発展をしてまいりまして、幾多の
改正がその間ありましたけれ
ども、一九二五年、大正十四年、ついにこの納税その他の
条件が撤廃をされて、普通
選挙が行われることになったのであります。当時は人口が約六千万、
有権者は、この
条件の撤廃によって千二百四十万人にふえました。人口の二二%となったのであります。定数が四百六十六人でありましたから、一人当たり二万六千六百人が
有権者として出てまいったのであります。
その後、
昭和二十年、
法律第四十二号、一九四五年に、敗戦の後で
選挙法が
改正をされまして、新たに女子の
選挙権が認められることになり、
選挙権の年齢が二十五歳から二十歳に、
被選挙権が三十歳から二十五歳に引き下げられることになりました。当時、人口は七千三百万人、それに対して
有権者は三千六百八十万人でありますから、言うならば五〇%が実は
有権者になったのであります。
今日の状態はどうかといいますと、五十五年六月の
選挙で
有権者は八千九十二万人、人口が一億一千七百万人でありまして、人口の六九%が実は
有権者となり、そうして一人当たりの
議員に対して十五万八千三百人が
有権者となってきたのであります。
このことはどういうことかといいますと、要するに
個人の
政治家を選ぶということから、民主主義の発展に伴って、そこで必然的に
政党が生まれてきたわけであります。その
政党が生まれてきた過程を通じて、世界の各国において
政党本位の
選挙にと移行が行われてきたわけであります。
少なくとも、西欧の例を申し上げますと……(発言する者あり)黙って聞け。比例代表は、一八五五年にデンマーク、一八九九年にベルギー、一九〇六年にフィンランド、一九〇七年スウェーデン、一九一八年スイス、その後、西独、イタリーと、欧州の諸国においては、御承知のように比例代表を
中心とした
政党本位の
選挙になってきたのであります。
そこで、現在のこの
選挙法の問題というのは、本来、
選挙制度審議会では、
衆議院で
個人から
政党本位の
選挙へという
審議が行われてきていたわけでありますけれ
ども、
衆議院の問題は今日までそのままになって、
参議院の
全国区にこれを導入することになったというのが今回の
経緯であります。
そこで、われわれ
衆議院の段階で
考えてみますと、いま金帰火来と称してわれわれは
選挙区へしょっちゅう帰っておる。それはなぜか。要するに
有権者と人間的な義理人情、あるいは後援会による結びつき、
個人的な結びつきをつくらなければ現在の
選挙は非常に困難である。特に自民党の場合には全
選挙区複数でありますから、われわれとの争いよりも、自民党内部の争いになる。そのために起こるものは何か。必要な資金をたくさんに集めなければならないというのが結果的に起こってくる。これが皆さん、今日のロッキード問題を
中心とする、今回の
国会における証言法
改正やその他の問題に連なっているのであります。(
拍手)
ですから、問題は、やはり西欧先進諸国がすでに行っておるように、
衆議院を含めて
政党本位の
選挙、政策本位の
選挙を争うことでなければ、私は、日本の将来というものは非常に大きな問題があると
考えているのであります。
なぜかと言えば、これまで日本は前にモデルがありました。これに追いついてきて、いまやわれわれが一番前に立っておる。われわれの前にはモデルはないのでありますから、われわれがモデルをつくらなければなりません。それには
政治家が最も
責任を持たなければならないのでありますが、金帰火来で勉強しないために、官僚のお世話にならなければ
国政が
運営できていないというのが現状ではないでしょうか。やはり私は、
政党が指導性を持って、官僚を指導しながら
政治をわれわれの手で
運営できるようにしなければなりませんが、そのためには、
政党本位の
選挙はどうしても欠くことができない
選挙制度であると
考えているのであります。
そういう
意味で、私たちは基本的に——共産党の方はがたがた言っていますけれ
ども、比例代表、賛成だと言っているんじゃないですか。比例代表、賛成。問題はどこにあるかと言えば、今回の法案の中にあるのは、無
所属……(発言する者あり)静かに聞け。無
所属、少数会派の皆さんをどのように処理するかということが、実は今回のこの法案における最も重要な
問題点なのであります。
そこで私は、以後、
質問に入るのでありますけれ
ども、まず
提案者に対してお伺いをいたします。
参議院における
審議の過程で、無
所属、小会派を締め出すということが強く
意見が出されておるのであります。これらの問題は、私がいま申し上げました、わが党は基本的な
立場を踏まえ、さらに無
所属、小会派の
立場を尊重した
社会党案の
提案を
参議院でいたしていたのでありますけれ
ども、残念ながらこの法案は否決されたのであります。そこで、
提案者は一体この問題について、特に社会党
提案についてどのように評価をし、どのように
考えておるかということを、まず
提案者からお答えをいただきたいと思うのであります。(
拍手)
二番目は、先ほ
ども申したように、
選挙制度審議会は
政党本位の
選挙をまず
衆議院に導入しよう、こう
考えて
審議が行われ、第七次
審議会で初めて
政党本位の具体的な対応を問うという諮問が出されましたが、これはちょうど最終の時期に
衆議院が解散をされて、答申を見るに至らず今日に至っているのであります。
そこで、この
参議院の比例代表の問題は今回の課題になっておるのでありますけれ
ども、
政党本位の
選挙制度を
衆議院に導入するという問題については、私は比例代表が基本でなければ金権の問題は遮断ができない、こう
考えているのでありまして、
政党本位の
選挙とは、私が言っておるのは比例代表であることによって初めて金権の関係が遮断をされる、少なくともこれを実行することを通じて私は日本の
政治が健全な
政治になると
考えておりますが、
提案者はどう
考えておられるかをお尋ねをいたすのであります。
その次に、今回の
改正案では、
参議院の
定数是正については何ら触れられていないのであります。
参議院における
公職選挙法の取り扱いについては、これまで
定数是正を行うことが主要な課題でありまして、そうしてこの
全国区の問題は二の次に置かれていたのであります。にもかかわらず、今回は
参議院における
定数是正の問題が何ら議題となっていないのであります。この点について、
提案者は一体どのように
考えてこの
全国区比例代表だけを
提案をされたのかをお尋ねをいたしたいと思うのであります。
次に、
総理大臣にお伺いをいたします。
衆議院は、過去において二回
定数是正を
政府の
提案によって行ってまいりました。しかし、いま
総理がお答えになっておりますけれ
ども、こちらの方が重要であったから実はこちらを先にしたというお答えでありましたけれ
ども、私は、
国民が
考えておりますものは、確かにこの法案も大事でありますが、
参議院における
定数是正もきわめて重要な課題である、こう
考えているのでありまして、
政府提案としてこの
参議院の
定数是正にどのように対応されるのかをお伺いをいたしたいのであります。
さらに五十五年十一月十日の
衆議院の
公職選挙特別
委員会で、私がこの
政党本位の
選挙制度を
衆議院にも導入する問題について
提案したのに対してあなたはこのように答えられているのであります。「堀さん御指摘のように、
選挙制度並びに
選挙運動等のあり方、これは
わが国の
議会制民主主義が健全に発展できるかどうかという基本の問題でございます。私も真剣に取り組んでまいります。」こう公式に答弁をしておられるのであります。
総理大臣は、一体この答弁と今日の状態をどう
考えておられるのか。
あなたは少なくとも、私がいま
提案をしたように、いまの日本の
国政の中で
衆議院の
選挙法を
政党本位にするか否かは、いまの金権問題を遮断するかどうか、これはもちろん
個人の問題も含んでおりますけれ
ども、私はやはり
制度の問題を改めることによって、そのような可能性を遮断することがきわめて重要であり、
議員がしっかり勉強して
政治をわれわれの手に取り戻すためにもこのことが重要であるということを申し上げたのでありまして、そういう点を含めてひとつ
総理大臣の御答弁をお願いをして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
参議院議員金丸三郎君
登壇〕