○塚本三郎君 私は、民社党・
国民連合を代表して、当面する
内外の重要課題に対して、四点にしぼって
質問をいたします。
その第一は、
行政改革と歳入欠陥についてであります。
本年二月、本院予算委員会において、
総理は、
行政改革について第二臨調の答申が出されたら、それを法制化し、実行に移すと言明され、さらに、それが
実現のために
政治生命をかけると私に答えられましたが、いまもその約束に変わりはありませんか。
第二臨調は、国鉄、電電公社、専売公社の三公社等に対して、いまや大胆な基本答申が出されるものと予想されます。このとき、
政府・自民党及び一部野党からは、実行不可能として、妨害とも受け取られるがごときさまざまな動きがあります。
総理は、いまこそ
政治生命をかけても、官僚及び与党内の答申妨害の動きを封ずべきであると思いますが、いかがでありましょう。(
拍手)
また、増税なき財政再建を明言され、さらに五十九年度末には赤字国債をゼロにするとの御答弁も、いまなお変更なきものと受け取ってよろしいか。
以上三点を実行することは、きわめて困難を伴い、失敗すれば明らかに
総理の
政治責任も問わねばなりません。
そこで、お聞きしなければならぬことは、すでに五十六年度の歳入欠陥が三兆円を超えるのみならず、五十七年度に至っては、さらに大きな歳入の欠陥が予想される
事態であります。伝え聞くところによれば、最終的には赤字国債をもって穴埋めする以外に他に方法がないと
考えられているようであります。補正予算後になおこれほどの欠陥を招き、借金で穴埋めすることは完全に粉飾決算であり、
政府の重大な
責任と言わなければなりません。(
拍手)
これに対して、
渡辺大蔵大臣は、物価が落ちつき過ぎたから税収が少なかった、物価が高くなれば税金ももっとたくさん入って、こんなことにはならずに済んだ、予測は当たるにこしたことはないが、物価が落ちついたから歳入欠陥も仕方がないではないかと他人事のごとく、しかも各方面で語っておられるのであります。
総理が
政治生命をかけておられる
行政改革の真の
目的は、この借金財政を改めるところに主眼が置かれたはずであります。税収三十兆余に対し、借金八十二兆はいかにも多過ぎるのであります。そして、やがて返済の時期が迫っております。だからこそ、赤字国債をまず減らすことに最大の
関心を払い、ゼロシーリングを強行して約二兆円の赤字国債を減らす予算を組まれたのではありませんか。その二兆円の減額すら、補正予算では守り切れませんでした。その上、三兆円を超す大失態の赤字を生みながら、物価が落ちつき過ぎたという大蔵大臣の表現は、
経済の何たるかを知っての
発言とはどうしても思えないのであります。
私ども民社党は、しばしば、赤字国債を急速に減らせば景気の停滞を招き、結果として税収不足を来し、財政再建はむしろ遠のくと
政府に忠告してまいりました。その場当たりの耳ざわりのよい空約束だけで時を過ごした鈴木内閣の二年間の
経済政策の失敗が、
鈴木総理、いま重苦しくあなたの頭上にのしかかってきておることであります。
物価の安定こそ
経済の
拡大と消費の増大を招き、ひいては豊かな
国民生活と安定した財政運営ができると叫び続けてこられたのは、歴代自民党内閣の悲願と自負であったと私は思っております。
渡辺大蔵大臣のこのマンガチックな一片の言いわけで帳消しにしてよいものでありましょうか。
総理は、これは明らかに
経済政策の大失敗だとお認めになるべきであります。
今日の日本
経済は、中小企業の破産、倒産が相次ぎ、構造的
不況産業は、その数を増すばかりであります。その結果、補正予算を組んでもなおかつ三兆円を超える歳入の欠陥を招いたではありませんか。
政府は、この際、景気
対策と財政
対策のために秋には臨時
国会を開かねば切り抜けられないとの声がありますが、どうなされるおつもりでありましょうか。
さりとて、これ以上公共投資に成長の道を求めることは財政上困難と見られております。要は、民間の持てる資金と
活力を注入せしめる以外に道はないのではありませんか。とりわけ、
国民生活の中で、住宅だけはいまだ文明
各国の水準に比べておくれをとり過ぎております。住宅建設は総合産業であり、あらゆる
分野に刺激を与えずにはおかないはずであります。
それがためには、土地問題にかかわる市、県、国の縦割り行政から来る許可、認可の複雑な官僚行政を徹底的に改め、土地購入から四年も五年も待たなければ
開発許可が出なかったり、持てる土地の五〇%以上を市に供給しなければ許可をしないという驚くべき行政の実態を、いま直ちに洗い直すことを提言いたします。
質問の第二は、
先進国首脳
会議についてであります。
世界経済が停滞を続ける中で、
不況の長期化、失業者の記録的な増大、高まる保護
貿易主義、アメリカの高金利、
各国の
経済政策の相違など、その
対策について
西側の足並みは決して整ったものにはならなかったと思います。しかし、厳しい
世界経済の中にあって、わが日本が
世界経済再
活性化の牽引車となるべく、自他ともに
期待されての会談でもありました。それは当然のごとく内需の
拡大、すなわち五・二%の
経済成長の
達成が柱となるべきでありましょう。だが、残念ながら、今日の日本
経済は五・二%どころか三%台にも届かないと見るのが常識となっております。私が
さきに
経済政策の失敗を指摘するのもこの点にあります。
日本が置かれた
立場からは、成長率の
達成は、ひとり日本
国民に対する約束のみならず、
国際社会に対する配慮をも含んでいると見るべきでありましょう。この際、
政府は、万難を排して
経済成長の
目標達成に取り組むべきだと思います。
一方、アメリカの高金利の是正を求めねばなりません。
サミット出席の
各国がレーガン
大統領に対して高金利の是正を求めたと伝えられるが、それに対していかなる回答が得られたのか、明らかにしていただきたい。
アメリカ
政府の財政逼迫から、高金利によって
世界から金を集めざるを得ないという手法は、ひとりドル高を招くのみならず、アメリカ
政府そのものがサラ金財政と化し、その結果、
世界通貨は大混乱を来しております。
サミットの直後に、前川日銀総裁さえも、なぜドルが高く円がかくも安いのか理由がわからぬと述べておられます。かくして、
サミット出席の
各国首脳が口をそろえて、アメリカの金利是正の要求をいたしましたのに対し、それをあざ笑うがごとく、逆に円は二百五十円を突き抜け、二百六十円に近づきつつあります。
鈴木総理、一体今回の
サミットは
成功であったのか失敗であったのか、どちらと判断されるのでありましょうか。そしてまた、一体
サミットとは何であったのか、その
意義と
使命はどうなってしまったのか、改めて問われるときが来たと思うのであります。
質問の第三は、核兵器の廃絶と軍備縮小の問題であります。
私ども中道四党は、同盟を加えた五団体として、ニューヨークにおける
国連の
軍縮特別総会に向けて、署名約千六百万余を携えて、日本
国民の平和への強い意思を伝えてまいりました。しかるに、本日の新聞によれば、ソ連が空前の規模の総合核兵器実験を行ったと、アメリカ国務長官が異例の暴露声明を発表いたしました。第二回
国連軍縮特別総会で、
核軍縮と核の先制不使用を強調したソ連ブレジネフ共産党書記長のメッセージを読み上げた直後にこれが行われたことをアメリカは指摘し、
世界への約束を行為で裏切っていると言行不
一致を強く非難しておるのであります。このソ連の行為を
政府はどう受けとめておられるのか、
所信のほどを伺いたいのであります。(
拍手)
また、欧州に向けて配備されたソ連のSS20なるものは、その攻撃範囲が約五千キロにして、誤差はわずか二百メートルと聞いております。これが核弾頭をつけて飛べば、全欧州はその傘のもとにすっぽりとおさめられてしまいます。アメリカがこれに対抗するためのパーシングIIの配備をめぐって、核に対する恐怖が全ヨーロッパに広がって反
核軍縮の大きなうねりとなったことは、
政府も御承知のとおりであります。
そこで触れねばならぬ第一は、欧州に向けられたSS20が、米ソ
交渉によって彼らからはるか遠いわれら東の方に移動させられたとすれば、欧州の安全はすなわちアジアの恐怖を増大せしめることに連動するという点であります。
さらに今日、沿海州を
中心に、すでにSS20が日本に照準を向けて二十ないし三十は配備されているという事実であります。日本は非核を宣言している
平和国家であります。
総理は、過日
国連に行かれたとき、ソ連代表にSS20の撤去についてどんな要求をされたのか、お伺いしたいのであります。
また、
総理は、
国連において、非核地帯の
設置を適正な条件のあるところから目指すべきではないかと注目すべき
発言をなされましたが、一体それは何が適切で、どういう条件で、どの程度の
地域と範囲を想定しておられるのか、その描かれている予想図を示していただきたい。
また、
国連の
平和維持機能の
強化を主張しておられます。フォークランド紛争、中東戦争、アフガン問題等々、戦争に対して
国連の
機能がきわめて悲観的に見られる折から、
国連の
機能の
強化は、
世界すべての国の
期待するところでもありましょう。しかし、果たして日本は、これに対して何ができると
考えられるのでありましょうか。平和維持のために、具体的にたとえば自衛隊の派遣とか、医療班の派遣とか、
科学技術の供与とか、そんなことでも想定しておられての
発言でありましょうか。はたまた
経済協力のみにとどめるのか、その真意のほどを伺っておくべきだと信じます。
最後に、私は、
政治倫理の
確立について論及いたします。
鈴木総理は、
昭和五十五年七月、就任後の初の記者会見で、政界浄化、
政治道義
確立に関する特別委員会の
国会設置を提唱し、
政治倫理に取り組む意欲を
国民に印象づけられました。しかし、今日までこれが
実現のための指導力を発揮された形跡はみじんも見られません。(
拍手)大変失礼な表現でありますが、口で唱えて実行はあなた任せの自然体の二年間でありました。
かくて、今回のロッキード事件における六月八日の判決は、ひとり佐藤孝行議員に対する判決と申すよりも、自民党の金権
政治そのものに下された判決と私どもは失礼ですけれども受けとめております。(
拍手)
もしそれ、与党自民党が、佐藤議員及び判決文の中に名前を出された議員とは無縁の事件であると
総理御自身が言い切れるだけの倫理観をお持ちならば、この際、厳然として政権党としての権威あるけじめをおつけになるべきだと思うが、いかがでありましょうか(
拍手)
思えば昨年十一月、
鈴木総理は、灰色高官二名を党の中枢に据え、また、党の外にあるとはいえ、裁判中の元
総理をして、直接、党及び内閣に影響力を行使でき得る人事配置をなさったのであります。そこへ、八日の判決が、佐藤、橋本両氏が有罪となったのみならず、灰色高官名さえ判決文に登場して、
事態の深刻さを浮き彫りにいたしました。
総理にとっては、
政治倫理を立てれば
政局運営に支障を来し、政局を無事に運営しようとすれば
政治倫理をないがしろにせざるを得ない
立場に、みずからを置かれたと言うべきでありましょう。一体、
総理はどちらを選択されるのか、明確にお答えを願いたいのであります。
また、佐藤議員の判決は、第一審とはいえ、有罪と断定された以上、みずから
政治的道義的
責任をおとりになるべきで、議会の数によってやめさせられたり守られたりすべき筋合いのものではないと思います。
民社党は、判決以来、議員みずからが処すべきこととして、辞任勧告を差し控えてまいりました。しかるに、去る十五日、本人がみずから
責任をとらぬと開き直られた以上、やむなく中道三派とともに辞職勧告の
決議を上程することに決しました。
また、灰色高官に対する金銭授受の事実が判決文から読み取れます。とりわけ、二階堂幹事長が去る五十六年六月本院に提出されました上申書と、今回の判決文との間には、内容が明らかに相違いたしております。さすれば、議院証言法に基づいて御本人の
所信を改めて本院で語っていただくことは、ひとり野党のみならず、与党のためにも必要であると信じます。(
拍手)幸い、ほかに名指しされた加藤六月議員のごとく、みずから証言を名のり出ておられる節もありとせば、速やかに疑惑を解明すべきことは、国
会議員全体の名誉のためにも必要ではありませんか。
もし、今
国会において証人喚問と
事態の解明が
実現せざれば、
国会全体が灰色に包まれ、
政治不信は極度に
拡大されるでありましょう。
鈴木総理は、先ほど申されたごとく、
事態解明は議会に任された、
議長のもとで処理するであろうと、
解決を気楽に避けられて、与党議員をして証言法の改正に新たな難問を持ち込んだり、内容を骨抜きになさることがあれば、それは議会運営のかぎを握っておられる鈴木内閣の汚名を末代まで残すことになるでありましょう。
鈴木総理は、
政治倫理の
確立を約束されて二年、いまこそその約束を果たされるときが参ったと信じております。これはひとりわれわれ野党議員のみならず、本議場におられる心ある与党議員の良心でもあると私は信じて疑いません。(
拍手)大義親を滅すという
総理のお好きな言葉がいまや生かされるときが来たことを付言して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕