○佐々木良作君 私は、民社党・
国民連合を代表いたしまして、
総理の
施政方針について若干の
質問を行います。
古来、
政治の要諦に「綸言汗のごとし」という言葉がございます。しかるに、
総理は最近、この言葉とは裏返しのような、きわめて不可解な言動を二つおとりになりました。
去る一月十二日、先ほ
どもお話が出ておりますように、
総理は、
防衛庁長官に対し、海洋国家にふさわしい、ハリネズミのような
防衛計画の策定などを
指示されながら、十八日には、みずから真意説明と称して、事実上これを打ち消す発言を行っておられます。朝令暮改というよりは、
国民にとりましては、何のことだかさっぱりわからないのであります。
またさらに、
財政再建の
基本方針について、
総理の
施政方針演説の起草をめぐって諸種の報道がなされておりますが、五十九年度に赤字国債をゼロにするという従来の
方針が、それはそのまま従来どおりなのか、単なる努力目標に変わったのか、
総理大臣と大蔵大臣の御発言を聞けば聞くほど、
国民は実際は一層わからなくなってしまっておるのであります。
この二つの事例に限らず、最近
総理の言動は、はなはだしく安定性を欠いております。防衛問題にしても、
行政改革にいたしましても、問題が重要な段階になればなるほど、
総理の
態度は右に左に揺れ動き、その真意がどこにあるのか、はなはだ理解に苦しむのであります。
総理御自身のお考えとは別に、声の大きい方、数の多い方に
鈴木内閣の
政治が流されていくように見受けられるのでありますが、一体、これが
総理の信条とされておる和の
政治というものなのでございましょうか。それでは、和の
政治というのは、融通無碍、無
責任政治の代名詞となってしまいます。(
拍手)
国民にとってこれほど頼りない
政治はございません。まことに失礼な申し方をいたして済みませんでした。しかし、私は、
質問の冒頭においてあえて
総理の
政治姿勢に不満の意を表し、強く反省を求めて、以下、当面する重要
課題について
質問をいたします。(
拍手)
本年は、
国連におきまして第二回
軍縮総会が開かれる年でもありますし、平和と安全保障の問題は、いまや内外の最大の
課題であります。
私は、まず、平和戦略の二つの
提案を行い、
総理の御見解を求めます。
第一は、米ソが首脳会談を開き、
軍縮の話し合いを行うよう、
わが国がイニシアチブをとって両超大国に働きかけることであります。
現在の国際情勢が、一九八二年を
軍縮元年にと、そういう意味の世論とは逆さまに、きわめて危険な緊張をはらんでおり、その根源が米ソ両国の
軍拡競争にあり、米ソの対話と両国の
軍縮のみが現在の緊張を
緩和し、平和への希望を取り戻すかぎでありますることは、衆目の一致しておるところであります。さらに、私は、現在の
わが国の
国際的地位からすれば、いまやこの点について積極的な
提案をすることが期待されておる状況にあると考えます。
総理の御見解を求めます。
第二の
提案は、
わが国がアジア・太平洋サミットの開催を呼びかけ、その総意に基づいて、米ソ並びに
国連軍縮総会に向けて、この地域における戦域核を中心とする
軍縮提案を行うことであります。
欧州での米ソ戦域核交渉とも関連しながら、いまや極東地域が、欧州に次いで、米ソ戦域核戦力の熱い対決の段階に達しようといたしております。このような状況にかんがみ、アジア・太平洋諸国の総意に基づいて、この際、改めてこの地域での
核軍縮が
提案されるべきだと考えます。(
拍手)
日本がそのためのイニシアチブをとることは、
わが国として、アジア諸
国民に対する責務でもありましょう。
総理の御
所見を伺います。(
拍手)
この
提案は、私が昨年四、五月東西欧州の六カ国とソ連を歴訪し、十月にはアメリカ、十二月には韓国をそれぞれ訪問いたしまして、野党外交の一端を担いながら、これら
各国での要人との会談等を通じて得た感触と論理に基づいたものでございます。
総理の御見解を承ります。
次に、対ソ
政策並びに朝鮮半島の平和確保についてお尋ねいたします。
日ソ関係を考えるとき、すでに解決した日中関係の経験を思い起こすことは決してむだではないと考えます。一九七二年の日中国交
回復までは、
核兵器を保有する中国は、
わが国にとって
一つの脅威と映っておりました。しかるに、その後の日中平和友好条約などにより、その脅威は
解消したばかりではなく、両国は友好と
繁栄のために互いに協力し合う関係にまでなりました。同様の成功をもたらすことが対ソ平和戦略の目標でなければなりません。日ソ友好のためには、ソ連がわが北方領土の返還に誠意ある対応を示すことが不可欠であります。さらに、文字どおりの平和共存を実行することが必要であり、その具体的
措置として、アフガニスタン等への不当な侵入やポーランドへの介入から手を引くことなどの面でソ連が建設的な
姿勢を示すことが必要であります。
わが国といたしましても、これらの点を強く
要求し続けていくべきことは当然であります。
しかしながら、だからといって、
わが国が、これらの問題に前進が見られない限りソ連とは一切話し合わないという
態度、いわゆる入り口論をとり続けますならば、日ソ関係の硬直を打ち破るきっかけはつかめますまい。これら諸懸案について、いつでもどこでも話し合おうではないかという
姿勢こそが日ソ関係を前進させ、平和への脅威を取り除く出発点になるのではないかと考えます。
私は、このような対話は、両国のハイレベルの
政治会談から始めることが適当であると思うのでありますが、先日の日ソ事務レベル協議は外相会談などに発展し得るものかどうか、その
展望を承りたいと思います。あわせまして、
政府は従来どおり入り口論に固執されるのか、新しい
立場で粘り強く前進を図る考えがあるのか、対ソ外交の
方針をこの際明らかにされたいと思います。
朝鮮半島の平和維持について、最近、全斗煥韓国大統領は新たな
提案をいたしました。との評価を含めまして、
政府は、今後どのような
措置が必要だとお考えになっておられるのか伺います。
また、韓国との関係が例の
経済協力問題をめぐりましてぎくしゃくしたものとなっている
状態をどう打開される
方針か。私は、この問題の解決は、官僚ベースの事務的話し合いだけではなく、これまた高いレベルの
政治会談がきわめて緊急の
課題であると痛感いたしておるのであります。
政府の対処
方針を伺います。
次に、防衛問題について具体的に
政府の
方針を伺います。
私は、適正な質と量を持った防衛力の整備は必要であると考えます。そして、その適正
規模は、国際情勢と
国民生活の両面から
国民の合意を得ながら決めていくべきもので、したがって、無限大に向かって大きければ大きいほどよいとか、ゼロに向かって小さければ小さいほどよいとかいうようなものではないと考えるものであります。(
拍手)わが民社党は、このような
立場から今後も
国会審議に参加いたしてまいります。
このような
立場から、これまで
わが国が軍事大国とならないためにみずからに厳しく課した諸
原則がありますが、それと
政府が行おうとする施策とに矛盾が起きるかもしれない疑念が生まれましたときは、
政府は、その事情を率直に
国民に説明し、一緒になって考え、
国民のコンセンサスを形づくっていく努力を惜しむべきでないことを強く私は
指摘するものであります。(
拍手)
この見地からあえて三つの疑点を提示いたしまして、
政府に現実に即した
答弁を求めるものであります。
その第一は、
防衛費の歯どめについてであります。
まず、今回の
防衛費の決定について、
国民の多くは、それが合理的な根拠で積算された必要最小限の額ではなく、より多く米国への配慮を優先させた
政治的なものではないかとの疑いを持っております。同時に、従来その歯どめとされていた
原則、すなわち、他の重要
政策とバランスをとるべきこと、
GNPの一%以内とすべきことという、この二つの点が破られつつあるのではないかとの疑いを
国民に抱かせたのであります。バランスについては、
伸び率で見る限り従来のバランスは破れておりますが、これに対して、もし絶対額など、他の基準でそれを求めようという
政府の
方針でありまするならば、
政府は、新たなバランス基準を示すべきであります。
念のためつけ加えまするならば、今回の
予算編成で示されました
政府の
方針が貫かれた場合には、五十八年度の
防衛予算の
伸び率は、間違いなく二けたになると予測する者さえあります。
また、
総理は、さきに関係当局に対して、
防衛計画大綱の着実な達成を
指示されましたが、
防衛庁の五六
中期業務見積もりによりますと、この大綱に定める防衛力の水準を達成しようとすれば、それだけで
防衛費の対
GNP比率は、
平均で一・二%、最終年次の六十二年度には一・五%前後になろうと予測しております。伊藤
防衛庁長官もすでに、
GNP一%以内と大綱達成という、この二つの
方針が両立がむずかしくなった場合には大綱達成を優先させたいという意味の発言を行っておられます。
このようにして、
GNP一%以内という歯どめ
方針も、現実には明らかに崩れつつあります。
国民は、いま防衛の必要性とともに、
防衛費が歯どめを失って無
原則に膨張するようになりはしないかと心配しているのであります。
総理は、きのうの
答弁におきまして、
GNP一%以内の
方針を守り抜くことを明らかにされましたが、そのことは、それによって大綱達成がおくれてもやむを得ないという
考え方を明らかにされたものと了承してよろしいか、重ねて
総理の明確な
答弁を求めます。(
拍手)
第二は、戦域
核兵器の極東配備問題と
非核三
原則のかかわり合いについてであります。
すでに、米国国防省は、極東にもSS20などのソ連戦域核が相当数配備されていることを明らかにいたしております。これに対抗して米海軍は、八四年に極東第七艦隊の艦船にトマホーク巡航ミサイルなどの戦域核を装備する計画をすでに決定しておると伝えられます。このような方向は、アジアにおける
核軍縮とは逆に、新たに戦域核の均衡をつくり上げようとするものであります。これは
わが国の港湾に出入りする米第七艦隊の核装備の問題でありまして、少なくとも、
わが国のこれまでとってきた
非核三
原則を中心とする平和戦略の方向とは逆行するものと考えざるを得ないのであります。
政府は、この問題に関するアメリカの
方針をどのように把握しておられるのでありましょうか、まず、その認識を明らかにしていただきたいと思います。
そしてその上で、ソ連が極東に戦域核を配備している状況に対して、
わが国はいかなる対処を図ろうとするのか、
防衛庁長官及び
総理から
鈴木内閣の
基本方針を明らかにされたいと思います。(
拍手)
総理は、昨日の
答弁で、一方で
非核三
原則を堅持すると述べられました。他方で、米国の核の抑止力に依存する
方針を変えないと述べられました。私がいま
質問いたしておりますのは、これを両立させることが困難な状況になってきており、
日本も西ドイツやフランスと同じように、ヨーロッパの西側諸国が経験しておりますのと同じ意味のその選択の岐路に立たされておりますが、この状況に対して
鈴木内閣としてはどうされる
方針かと承っておるのであります。私は、この実情を隠すことなく十分に説明して
国民と相談する
姿勢こそが一番いま大切ではないか、こう思うのであります。いかがでございましょうか。(
拍手)
総理、問題を逃げずに、率直に私は
お答えをいただきたいと思います。
第三は、米国に対する軍事
技術協力の問題についてでありますが、この問題に関して米国の
要求はきわめて明確であります。すなわち、第一に、軍事に転用され得る一般技術だけでなく純粋の軍事技術についても提供を求め、第二に、民間で開発された軍事技術も含めており、第三に、
わが国の武器
輸出三
原則に明らかに抵触することを承知の上で、あえてこれを求める
立場をとっていることであります。
これに対して
政府は、一月八日の日米安保協議におきましても、鋭意検討中として結論を避けたと伝えられておりますが、このようなあいまいな
態度による遷延策が今後も可能なのでありましょうか。
これに関連して、米国は、同盟国での兵器のライセンス生産を制限する
措置に出ようとしているとの報道もあります。一方では、F15など航空機、
各種ミサイルなどのライセンス生産によって高度の技術を入手しながら、他方では、技術供与を拒み続けることが本当にできるのでありましょうか。この問題もまた、
国民の目をごまかし、逃げてばかりおられない事態を迎えていると申すほかございません。
総理の
責任ある
答弁を求めます。(
拍手)
内政問題に移ります。
鈴木内閣は、内政の最重要
課題として、みずから
行財政改革を高く掲げられました。しかるに、先ほど来話がありますように、その鳴り物入りのかけ声と実際の
予算編成にあらわれた施策との間には余りにもはなはだしい隔たりがございます。
まず、そもそも
財政再建の初年度でありました五十六年度に
鈴木内閣が行われましたことは、二兆円の国債減額の見返りみたいに、一兆四千億に上る
史上最大の大
増税でありました。行革法によっていま力いっぱいしぼったと言われます。しかしながら、実質的な計算によりますと、わずかに五百八十億円
程度にすぎません。
そればかりではありません。先般、五十六年度の年度内歳入不足が明らかとなりますや、話が出ましたように、三千七百億円に上る赤字国債の増発を決定し、これと同じ安易な
態度が、今回の五十七年度
予算におきましても歳入不足七千億円を
増税と税外収入によって埋めるというやり方にあらわれております。そこには、歳入不足に対して何よりも先に支出の削減によってこれを補おうという
行財政改革断行の意欲が全く失われているのであります。(
拍手)
行財政改革の
基本方針は、行革の断行によって大幅に支出を削ることであり、
増税を行わずして赤字国債体質を
解消しようということではなかったのでしょうか。二回にわたる大
増税は、
増税なき
財政再建の
方針には反しないのでありましょうか。
総理の
責任ある
答弁を求めます。
総じて、
鈴木総理の
行財政改革の
姿勢は、その言葉とはうらはらに、事ごとに臨調任せの受け身の
姿勢に終始し、みずからが取り組もうとする
態度が見られないのは遺憾であります。
一例を三K赤字の雄である国鉄問題にとってみれば、
政府は、今回の
予算で国鉄に七千三百億円の助成を行われました。これは私が先ほど強く
批判いたしました
防衛予算の増加分、突出と言って騒がれておる
防衛予算の増加分の四倍もの額であります。しかもそれは五年連続の運賃値上げと、それでもなお一兆三千八百億円もの赤字決算が出ることを認めた上での
措置であります。累積赤字六兆五千億、長期債務残高十四兆四千億円に達し、すでに破産
状態にある国鉄の
現状に対し、いますぐでも
政府の
責任において手をつけられる改革への努力は露ほ
ども見せず、すべて臨調の答申を待って、それまではずるずると旧来の行き方を続けるというのでは、
総理の行革への熱意が疑われても仕方がないではありませんか。(
拍手)国鉄改革に対する
総理御自身の
方針はどんなものでございましょうか。
総理の御
所見を求めます。
なお、この際に、ちょっと触れますけれ
ども、後にも触れる
所得税減税につきまして、
財源のないことが
政府の
反対理由のようであり、先ほどの竹入さんへの
答弁にもるるそのことが述べられております。しかし、たとえばこの国鉄助成のような金を、どうしてもいま
国民の税金から支払わなければならないものなのでしょうか。このような支出を削って
減税するような発想に立つことこそが、
行財政改革の
基本理念ではありませんか。(
拍手)あわせて
総理の御見解を求めます。
中曽根行管庁長官に伺います。
昨年七月の臨調第一次答申は、緊急にとるべき改革方策として、歳出削減と
財政再建の
推進と題して具体的提言を行っております。これは明らかに五十七年度
予算編成に向けての提言でありますが、その提言は、さっきも申しましたごとく、決して十分には生かされておりません。だからこそ、伝えられるように、土光会長があの際に、
総理は行革の意味がわかっていない云々と激怒したのでありましょうが、長官御自身は、この臨調提言の趣旨が今度の
予算の中に十分に生かされているとお考えになっているのでございましょうか。御見解を承ります。
もし長官が、それは大蔵大臣の職務権限に属するものであるとか、
総理のリーダーシップにかかわるものだというような
考え方でありまするならば、それでは行革担当大臣としての
政治責任は果たせますまい。中曽根長官の
政治家としての
責任ある
答弁を求めます。(
拍手)
なお、この際、行革
課題の
一つであります補助金整理問題との関連で、わが党はすでに、いわゆる第二交付税の創設を
提案いたし、これは
行政の分権と合理化とを目的にした、地方の時代にふさわしい
提案であると自負しているのでありますが、
政府に検討を依頼いたしております。検討結果も含めて、
政府の
態度を明らかにされんことを望みます。
次に、
財政再建について伺います。
まず、
政府は、
財政再建のめどを本当にいつの時点に求めようとしているのか、きわめてあいまいであります。これを明確に、
国民にわかるようにお示しいただきたいのであります。
多方面から
指摘されておりますように、
政府の赤字国債減額の
基本方針はすでに大きく狂っております。予定どおり五十九年度にこれをゼロにするためには、五十八、九両年度にそれぞれ二兆円
程度の減額が必要となっております。さらに五十七年度
予算において、地方交付税交付金の減額分など後年度にツケを回す形の
措置をとったものが、
政府保証債の増加分も含めますと約一兆七千億円もあります。これは赤字国債と同様に、今後の
財政への重圧となってまいります。その上、現在の
景気動向では、五十六年度の税収見込みも、しばしば他からも
指摘されておりますように、さらに五、六千億の減収が予想されるようでありますし、そうすると、これをベースにする五十七年度の税収見込みも大幅に狂ってくることになりましょう。なおその上に、五十七年度自身の
経済成長そのものにも大いなる疑問もありまして、こういう状況では、五十九年度赤字国債ゼロ
方針は、このままではとうてい無理と言わざるを得ません。
したがって、
総理が、「
基本路線はいささかも変わるものではありません。」という
方針を堅持されようとするならばさらに
徹底した行革断行によって、思い切った
支出削減を行うことと、新たな
景気政策を採用することが不可欠となりますが、
総理は、これらの
措置を断固としてとることを前提にして、
基本路線は変わりありませんと言明されたのでありましょうか。
総理の
責任ある
答弁を求めます。これができないとすれば、新規
増税を行うか、
財政再建年次を繰り延べるかの既定
方針の大変更でありますが、
政府は、遠からずこの選択を迫られることになります。
失礼ですが、
総理、どうでしょうか。私は、どうやら
鈴木内閣は、
総理の言明にもかかわらず、すでに第一の既定
方針を貫くことをあきらめて、第二の
増税の道をちらつかせながら、第三の年次繰り延べの方向に逃げようとしていると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)もし、果たしてそうでありまするならば、これは明らかに
鈴木総理の
公約違反であり、その
政治責任はきわめて重大であります。
総理のはっきりとした誠意ある御
答弁をお願いいたします。(
拍手)
次に、
経済見通しに関連して、次の三点をお尋ねいたします。
その第一点は、
総理は、昨日の
答弁におきまして、来年度五・二%の
経済成長は可能だとの
所見を述べられましたが、それでありまするならば、当然に税の自然増収は本年度よりは相当
程度ふえなければなりません。にもかかわらず、
予算案ではそれをほぼ本年度並みにしか見込んでいないのは一体いかなる事情によるものでありましょうか。まず、明らかにしていただきたいと思います。もしそれが本年度の税収見込みがさらに低下するおそれに対する配慮でありまするならば、そのことを何ゆえに今回の
予算補正
措置の中で明らかにされないのか、この点も含めて御
答弁をいただきたいと思います。(
拍手)
第二点は、昨日の
答弁で、河本長官は同じように五・二%成長
見通しの根拠として海外
要因を中心に述べられましたが、海外
要因だけで果たしてどんなものでありましょうか。
失礼ながら、長官は、むしろ五・二%成長を達成することが現在の
日本経済にとっては一番大切だ、この観点に立って、そのためには新たな積極
政策をも採用すべきであり、きっと採用することになるだろうことを見越して五・二%を固執しておられるのではないかと私は推定するのでございますが、(
拍手)河本長官の真意を披瀝されんことを望みます。
さらに、その場合に河本長官が新たに採用すべきであろうと考えられておられる新
景気政策の大綱をここに明らかにされることを
要求いたします。(
拍手)
第三点は、
貿易摩擦問題との関連においてです。
総理は、昨日もそれから本日も、
わが国の
市場開放を一層進めることによってこの問題をかわす
方針を明らかにされました。それはそれで私は結構だと思います。しかし、現在の
各国の対日
要求の本音は、
貿易のアンバランス
是正そのものであります。しかも、
市場開放だけではアンバランス
是正がだんだん困難なことを承知して、それを見越して、いまや
わが国に対する新たな
要求が
わが国における
内需拡大に集中的に向けられつつあることを御承知だと思います。しかるに、現在、
鈴木内閣が
内需拡大に向けてとっておられる
対策の主軸は、本年度と同様に依然として
金融政策に限られており、あとは民間の活力に期待するのみというのであります。
総理は、日増しに高まる
対外経済摩擦が、このような
対策だけで、一段と
内需拡大に対する努力とその
政策を採用せずして
解消できるとお考えでありましょうか。あるいは今後、状況に応じては
財政面からする刺激
政策をも含めて新たな
対策を採用するかもしれない、採用しなければならないかもしれない、そういう用意をもお持ちになっておるのでございましょうか。御
答弁をお願いいたします。
河本長官からも、
見通しを含めて
お答えいただきたいと思います。
次に、
減税問題について伺います。
すでに、五十三年度以来五カ年間にわたって
所得税の物価
調整措置は見送られており、そのための
実質増税は二兆円を超えると言われております。
不公平税制是正の観点から、これは当然
国民に返されるべきものであります。
さらに、可処分
所得の低下が
個人消費を
低迷させ、同じ意味で
景気を
低迷させている大きな
原因になっている
現状からして、
所得税中心の
減税が
景気対策上も不可欠のものだという
考え方は、いまや衆目の一致しているところだと私は考えます。
総理は、昨日も本日も、
財政再建のめどがつけば
減税も考えるが、いまはその時期ではない旨の発言を繰り返しておられますが、私は、その
考え方はやはり逆さまでありまして、いまこそ
景気を刺激し、税の自然増収を図り、
財政再建の基礎固めを行うためにこそ
減税が必要であると考えるのであります。(
拍手)
問題の
財源措置につきましては、先ほど来竹入委員長からの御
指摘のような、その形の歳入
財源をふやすということと同時に、国鉄のところでも申し上げましたとおりに、
政府が本気になって行革の
決意さえ固めるなれば、
支出削減というその分からも十分に可能であると考えます。その気があるかないかだと思います。
総理及び河本長官の御
答弁を
要求いたします。(発言する者あり)
国鉄に限りませんよ、私の言っているのは。だから、皆さん心配しないでください。似たようなものがたくさんあるという例ですから。
以上のほか、内政に関しては伺いたい重要な
課題がたくさんございますけれ
ども、
住宅政策など竹入さんからも
指摘されたことと大体同じでありまするし、時間の関係上、残念ながら割愛いたします。
ただ、社会福祉、教育、農業及び
中小企業などの重要部門が、今回の
行財政改革の最大の犠牲部門としてのみ扱われようとしていることは遺憾であります。私は、これら部門に対する情性的補助
行政にメスを入れることに
反対しているのではありませんが、それはあくまでも新たなる建設へのスタートとして位置づけられるべきものでありまして、
政府は、行革
実施と並行して、それら部門の今後の改革目標を明確に打ち出すべきものと考えます。
総理の御
所見を承ります。
最後に、
総理の
政治姿勢に関連して、二つの問題について伺います。
第一は、皆さんがお触れになりました
政治倫理の
確立についてであります。
ロッキード事件によって
国民の
政治への信頼は大きく揺らぎました。それを取り戻すために、ここ数年実に多くのことが語られましたが、昨今は何を申しても陳腐なものとしか聞こえなくなっております。そして、その
政治の金権体質は、情実入学や談合問題に見られますように、わが
日本社会にじわじわと浸透してまいっております。まことに残念であります。
かつて、自民党におきましても、
政治腐敗防止法の立案や議院証言法の改正、議員の倫理規程の制定などを積極的に手がけることを言明されました。本日も
総理は、そのことを積極的に進めるように党に
指示しておるとおっしゃいました。あれから何年たちますか。なかなか進んでおらぬのではございませんか。そして、これらの公約はいつの間にかどこにいったのか、行方がわからなくなってしまっておるのが
現状であります。いまや、
政治倫理の行方は、ロッキード事件を裁く裁判所にゆだねられているのみと申して過言でありません。
私は、その
責任の一部が私
どもにもあることを否定はいたしません。その第一次的
責任は、しかしながら、第一党であり、政権党である自民党の
総理・総裁たるあなた御自身にあることをお忘れになってはなりません。(
拍手)
鈴木総理は、この際、
政治倫理の問題について毅然たる
姿勢を明らかにさるべきであります。今後この問題に
総理はどのように立ち向かわれますか、
政治倫理に関する諸公約がございますが、これをどのように処理される御
方針か、
総理の御
所見を承ります。
第二に、参議院の全国区選挙の改革問題についてであります。
私は、先ほどの竹入委員長と同じ
立場から、重ねて自民党の反省を求めるものであります。
私は、現行の全国区制について多くの不都合があるということも決して否定はいたしません、全面的には。しかし、その改革は、あくまでも二院制下にあって、いかにして参議院の機能を高めるかの
基本的
立場に立って進められなければならぬものであります。
現在、参議院の衆議院化、政党化が第二院としての権威と機能を低下させる一番大きな
原因として大きな
批判を呼んでおりまするときに、その政党化を
徹底的に進めようとする自民党改革案は、まさに世論に逆行するものであり、
憲法違反のそしりをさえ免れないものであります。そのような非民主的な改革案を、まさかとは思いますけれ
ども、党利党略の
立場から、多数を頼んで推し進めようとするがごときは、まさに言語道断であります。(
拍手)
鈴木総理に
自民党総裁としての御
所見を求めまして、失礼な言葉が多くて恐縮でしたけれ
ども、これで
質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鈴木善幸君
登壇〕