○
飛鳥田一雄君 私は、
日本社会党を代表して、
鈴木総理の
施政方針に関し、国民の切実な関心が集中している若干の問題点について御質問をいたしたいと存じます。(拍手)
まず、その第一は、今日の世界を覆う
核戦争の危機に対処してわれわれは何をなすべきか、際限なき
軍拡競争の流れを
核軍縮、
核廃絶の方向に切りかえるための日本の
役割りは何かという問題であります。
昨年以来、
レーガン米大統領を初め、
米政府、米軍の権威筋が、いわゆる
限定核戦争の可能性を強調し、
通常兵器による攻撃に対してすら
核兵器で対抗する用意がありと再三言明したことが
ヨーロッパの諸国民に重大なる衝撃を与えました。すなわち、
米ソ両国の本土には全く傷をつけず、
核兵器を使いやすくして
ヨーロッパ域内だけの
限定核戦争を考えるという核超大国の身勝手な
戦略プランを知ったとき、西欧のすべての
主要都市で二十万、三十万あるいは五十万という空前の規模の
反核闘争が展開せられたのであります。その情勢に押されて
米ソ両国が
核兵器削減交渉のテーブルに着かざるを得なくなった事情も、総理は十分に御承知のことと存じます。
しかし、これは単に遠い
ヨーロッパだけの問題ではありません。すでに
米政府の高官は、将来、
戦域核兵器を日本、中国を含む
アジア地域に配備すると言明しておりますし、明年十月以降、
巡航ミサイル搭載の戦艦が極東に配備される予定となっております。総理は、こうした発言や報道をどのように受けとめておられるのでありましょうか。あなたは、どんなことがあっても日本と
東アジアを
ヨーロッパのような
戦域核の舞台にはしないとの断固たる決意をお持ちであるかどうか、まずこのことを伺っておかなければならないところであります。(拍手)
ロンドンの
国際戦略研究所が言うように、そもそも
核戦争とは、何人にもコントロール不可能な戦争であり、それを地域的に限定できるなどと考えること自体が幻想にすぎません。限定から
全面核戦争へのエスカレーションに歯どめはきかないのであります。
昨年以来
ヨーロッパに生じた事態の意義は、これまでのいわゆる
核抑止論を破綻させ、核の傘のもとにあることが決して安全なのではなく、逆に核の傘のもとにこそ最も危険なものがあるという事実に、幾百万、幾千万の民衆が気づいて立ち上がったというところに特徴があります。(拍手)政府は、この
ヨーロッパ民衆の自覚をどのようにお考えですか。依然として核の傘は必要だ、
核兵器がなければ安全は保たれないとの
時代錯誤的見解をとっておられるのでありますか。これも伺っておきたいと考えます。
総理は、
施政方針演説の中で、
核軍縮を中心とした軍縮の促進を訴えるため、みずから本年六月の
国連軍縮総会に出席する意思を表明されましたが、私は、その趣旨に賛同をいたします前に、幾つかの点をお尋ねしておかなければなりません。
日本の政府は、御承知のように、
核軍縮の方向に沿っていままで
国連総会が行った数多くの決議に対して、最近はほとんどの場合棄権または反対の態度をとっております。一例を申しますと、
核兵器の不使用及び
核戦争防止の決議に対しては、一九六一年には賛成しておきながら、その後は棄権に回り、そしてついに最近の二回は反対の態度をとっているのであります。昨年十二月の総会でも、百二十一カ国が賛成したのに反し、
わが国政府は
アメリカに追従して、たった十九カ国の
反対両雄に加わったのであります。あまつさえ、同時に採択された
中性子爆弾禁止の決議に反対票を投じておられます。一体これはどういう意味でしょうか。(拍手)国民は、このままではだれ一人として総理の
核軍縮の促進などという言葉を信ずることはできません。明確な
お答えをいただきたいと思います。(拍手)
私は、
わが国が非核三原則を堅持しつつ、さらにこれを発展させるため、日本を含む
東アジア、さらには
アジア・
太平洋地域における
非核武装地帯の創設に努力することがきわめて緊急かつ重要な課題であると考えています。前国会においてもこれを主張いたしましたが、総理は、現実的な条件がまだ整っていないとして消極的な態度を示されたのでありました。だが総理、これはのんびりと条件が整うのを待てばいいという問題ではありません。
わが国民と
アジア諸国民の死活にかかわる火急の課題であります。条件が未成熟ならば、それを熟させるためにいまこそあらゆる努力を注ぐべきではありませんか。
私はまた、この際、
非核武装地帯設置の課題にあわせて、核を保有しない国に対しては、核による威嚇及び攻撃をしないという
国際的保障を取りつけるために、総理がこの総会で全力を傾注して活動されることを提案いたします。(拍手)同時に、
わが国の非核三
原則堅持を前提として、ワシントンともモスクワとも直ちにそのための交渉を開始すべきであります。そのことは現実的に可能なはずであります。
わが党もまた、この二つの緊急の課題の達成のために諸国民との
民際外交、
国民運動を通じて、
最大限度の努力を惜しまず、断固として闘う決意でありますが、総理の御見解はいかがでありましようか。(拍手)
すなわち、八〇年代の世界は、
核兵器の途方もない発達のあげく、
核保有国が勝利はおろか生き残る見込みもない袋小路に入り込み、
自分自身ではそこから抜け出せなくなっているところにこの上もない危険な特徴があります。いまや
核戦争の危機を救うには、核を持たない国の
役割りが決定的に重要であります。
わが国は、核超大国に依存し追従することをきっぱりとやめ、世界の非核の国々と団結して
核廃絶の立場に徹し、人類の危機を打開しなければなりません。このことこそ、非武装平和の憲法を持つ
わが国と国民の世界史的な使命だと考えるのでありますが、総理はいかがお考えになりますか。(拍手)広島の経験は、今後生かされなければなりません。
第二の問題は、総理は再三
軍事大国にはならないと説明しておられるのでありますが、現実には歯どめなき
軍拡路線を走り始めているのではないかという国民の不安の問題であります。
本国会に提出された
政府予算案は、
防衛費の伸びが
社会保障費の伸びの一挙に三倍以上、七・七五四%という異常な
突出ぶりを示したところに大きな特徴があります。ゼロシーリングと言われながら、こうして
防衛費の伸び率のみがエスカレートした理由は、一体何を意味するのでありましょう。しかも、一兆七千五百億円という後
年度負担の膨張とあわせて、
鈴木内閣の
軍備増強に対する
並み外れの
執着ぶりは何のためだろうかと、国民は一様に疑惑と危惧の思いを寄せております。
総理、
わが国を取り巻く
国際環境の中にあえて軍備の急増を必要とする特段の事態が生じたのでありますか。それとも、何か特別の外圧が存在するのでありましょうか。
政府予算決定の直後、米国の国防総省が、日本の
防衛費突出について高く評価すると、異例の
特別声明を出し、
国務長官からも感謝の書簡が寄せられていますが、このあたりの事情を総理は国民に向かってどのように説明せられるのでありましょう。一体、自衛隊は
アメリカ軍の下請軍なのでしょうか。納得のいくように
お答えをいただきたいと思います。(拍手)
また、このまま
防衛費増額の傾向が続くならば、五年前の
閣議決定以降政府が守ってきた対
GNP比一%以内とする
防衛費の枠が破られるのは、もう時間の問題であります。
わが国は、かくて坂道を転げ落ちるように
軍国主義の大道に転ずるのではないか。総理は、一%の枠をすら外そうとするのか、
軍備増強の歯どめをどこに設けるのか、明確な
お答えをいただきたいと思います。(拍手)
さらに、私は、
わが国の
防衛関連の諸決定が、実質的にはまず
日米制服組の間で行われ、次いで政府がこれを追認し、最後に国会の場に持ち出されるという仕組みが、いつの間にかつくられているということに非常なる懸念を感ぜざるを得ません。現に一例を挙げれば、きのう、きょうの新聞に暴露されております昭和四十一年六月締結の
武器研究開発に関する覚書などは、まさに国民に何も知らせないまま、みごとに
武器輸出禁止原則を破っているではありませんか。(拍手)そうでなくても、
安保ただ乗り論とか安保税を取れといったひとりよがりの発言に対して、政府の態度は余りにも弱腰であります。
わが国平和憲法の規定は、そういう外圧の直射をかわすための
アメリカへの弁解の道具となってはならないのであります。
総理、どうぞ世界の
軍事大国の実情をごらんください。総額三百数十兆円にも上る
軍事費増強五カ年計画を決めた
アメリカは、その陰に戦後最大の一千万人近い
失業者とインフレ、
財政赤字に悩んでおるのであります。他方、軍事的にそれと拮抗しているソ連の側も、
経済成長の落ち込みの中で五カ年計画の
下方修正を余儀なくされ、三年続きの農業不振に苦悩しているのが実情ではありませんか。
こうしたときに、
平和憲法のもとで軍備を抑制し、それによって労働力、資金、技術、資源等を効率的に活用し、高度な
経済成長を遂げてきた戦後日本の
歴史的経験は、過大な
軍備負担にあえいでいる各国から見て、魅力に満ちた教訓を含んでいるはずであります。(拍手)すなわち、
平和憲法のもと、日本の経験は、いまこそ
軍備増強と安定した
社会経済開発は両立し得ないとか、軍縮は
経済成長の最大の要因だという
国連軍縮専門家会議の報告を具体的に裏づけているはずであります。
私は、
わが国こそこの点に自信を持ち、胸を張って
軍事大国の
軍拡政策をたしなめ、世界の軍縮の
先駆者たることを目指すべきだと考えるのでありますが、
鈴木総理の決意はいかがでありましょう。承りたいと存じます。(拍手)
ところが、いまの現実では、
ソ連脅威論や
極東有事への備えといった虚構を盾にずるずると
軍事大国の道に流され、戦後日本の
平和的発展の模範とされてきた
憲法体制すら突き崩されようとしているのであります。
私は、伝えられる
極東有事研究は、朝鮮半島を主な対象に、
わが国の港湾、空港その他の施設を米軍が使用し、
物資調達等を含むかつての
三矢作戦計画を公然化し、
憲法違反の
集団安保への道を開くものだと考えます。また他方では、現
在日米共同作戦体制が着々と進み、那覇市の
軍用地返還訴訟など、県民挙げての抗議にもかかわらず、沖縄を極東・
中東戦略の拠点とする目的で大規模な
日米合同演習さえ計画されている実情であります。
こうした方向では、結局のととろ日本が
アメリカの
極東戦略に巻き込まれ、
核戦争となるおそれを強め、総理の言ういわゆる
専守防衛論とか
日本列島ハリネズミ論などは、およそ無意味なものにならざるを得ないのではありませんか。御見解を伺っておきたいと存じます。と同時に、総理は、こうした
基地沖縄の現実と将来をどうお考えになるのか、これもあわせて伺いたいと存じます。
第三には、矛盾を深め、手詰まりに落ち込んでいる
わが国最近の経済、
財政状況の問題についてであります。
すなわち政府は、来年度
経済成長を名目八・四%、実質で五・二%と見通し、五・二%のうちの
国内需要を四・一%、輸出を一・一%に切りかえると言われておりますが、いかなる具体的な
政策手段で目標を達成されようとするのでしょうか。最近の統計では、内需は
マイナスであります。本当におやりになれる自信がおありなのか、改めて伺います。
御承知のように、今日の不況はすでに国民各階層の生活に大きな影響を及ぼしつつあります。昨年の
春闘賃上げ率は七・七%でありましたが、
零細企業に働く人々は五%、パートタイマーは四%のアップで、格差は広がっているのであります。しかも、
勤労者全体の税金と
社会保険料の負担は増加する一方であり、手取りの所得は低下の傾向を示しています。その上、
勤労者には五年間も
所得税の
物価調整が行われず、その結果、来年度予算では二兆円を超える
実質増税を強いられようとしておるのであります。このため、大衆の購買力は落ち込み、それにかかわる
中小零細企業の経営も苦しく、昨年の夏場からは
設備投資すら前年に比べて
マイナスとなっています。もちろん住宅の建設も進んでおりません。
住宅建設については、政府は今年度、百三十万戸の見通しを立てておられるのでありますが、地価の高騰を最大の
マイナス要因として、国民の
住宅取得能力は一昨年以来低下の傾向にあります。せっかくの政府の
土地税制緩和策も、大企業を喜ばせるだけで、結局は地価の抑制に逆行する効果しか生みませんでした。
民間設備投資についても、
中小企業の
投資意欲が問題となっております。
こうした
国内経済の低迷を打開し、
対外経済摩擦を緩和していくには、私は、まず大幅な
賃金アップと一兆円以上の減税によって個人の
消費能力を高め、その面から内需を喚起する以外にはないと考えますが、総理の御見解を伺いたいと思います。(拍手)もちろん、この際、直接税を
大衆的間接課税に切りかえるというような手品が許されるはずがないことも御承知のとおりであります。
次に、財政問題でありますが、総理は、
財政再建に
政治生命をかけるとしばしば主張してこられました。ところが、
赤字国債の削減についてすら、すでに今年度予算の補正で三千七百五十億円という
追加発行に追い込まれ、政府の
財政再建計画には大きな支障が生じてきたのであります。
しかもなお、最近の
税収動向を見ますと、今年度内には一兆円に及ぶ
歳入欠陥が生ずると言われ、さらに来年度もし五・二%の
実質成長が実現せられないようなことがあれば、
歳入欠陥は一層ふくれ上がることが予想されます。もし総理が国民に公約した
財政再建ということが実現できなかった場合、総理はいかなる責任をおとりになりますか。改めてお伺いをいたしておきたいと思います。(拍手)国民を苦しめるだけ苦しめておいて、後は知らぬ顔では通りません。当然、責任をおとりになるべきであります。
また、
臨時行政調査会の答申では、
不公平税制の是正、特に
租税特別措置の見直しが指摘されました。ところが、政府が来年度の
税制改革案で
整理合理化を図るものは、現在の
企業向け租税特別措置のわずか三分の一にしかすぎません。また政府は、日本の
所得税の累進率は国際的に高いと言い、
金持ち重点の減税を考えているようでありますが、年収一億の
高額所得者は、収入のほとんどが
資産所得であり、
分離課税や各種の
減免措置で負担を軽くされているのが実態であります。なぜ
勤労所得が主である中以下の
所得層を中心に減税をしようとはお考えにならないのですか。お伺いをいたします。
さらにまた、政府は、
補助金の一律カットを唱えながら、建設省の
公共事業関係は据え置きにして、
厚生省関係のものを
最大削減の対象といたしております。全国で千七百万人のお年寄りが首を長くして待っている年金の
物価スライドアップを政府は一カ月おくらせましたが、その額は百八十億円、わずかP3Cの一機半分にしかすぎません。
福祉切り捨てのあらわれでなくて何でありましょうか。(拍手)
渡辺蔵相は、親を
老人ホームに入れる
親不孝者が多いから
財政負担がふえていると語ったと言われております。
鈴木内閣が
福祉切り捨ての政治々やろうとしていることが、
大蔵大臣のこの正直な発言で一層はっきりいたしました。
総理、あなたは、いま全国で寝たきりの人が六十万人もおり、その介護に疲れ果てた家族が自殺するというような悲惨な事件がしばしば起きていることを御存じでしょうか。こういう庶民の苦しみを解決していくのが政治ではありませんか。(拍手)
財政赤字をふくらませた元凶が、大企業や
大金持ち優遇の
不公平税制の温存であり、保守党の
選挙基盤に注がれるむだな
補助金の
ばらまきであることは、いまや明らかであります。(拍手)その上、
軍事費を聖域として突き出したことがこれに拍車をかけました。
不公平税制、むだな
補助金ばらまきにメスを入れ、
軍事費を削減し、その上に立って、
福祉充実と一兆円
所得減税を当面最大の
政策課題とすべきであります。
この点、政府は、国民の切実な要望にこたえ、潔く予算の修正を行うべきではありませんか。(拍手)ここに
鈴木総理の姿勢をはっきりとお伺いしておきます。
第四に、政治の腐敗、社会の荒廃について、総理の姿勢を問いたいと存じます。
一昨日、総理は、政権を担当して以来、
行政改革と
財政再建を内閣の最
重点課題にしてきたと言われました。しかし、
鈴木内閣発足後間もない一昨年十月三日、政府が緊急に取り組むべき課題として掲げられたのは、第一が
政治倫理の確立、第二が
財政再建、第三が
行政改革という三原則であったはずであります。この第一の
政治倫理の確立が、最
重点課題からいつの間にか消えてなくなってしまったのは、なぜでありますか。しかし、これはきわめて重大なことであります。
今年は、
ロッキード事件の判決が行われる年であり、現に、きのうも
小佐野判決に続き、
若狭有罪判決が言い渡されました。国民は、これら事件を機に、政治が
金権腐敗、
汚職体質と訣別し、
政治倫理を確立し得るかいなかについて大きな関心を持っております。
かつて、三木元総理は、
真相究明だけでは事件の教訓は生かされない、
自民党の体質を思い切って改革するとおっしゃり、続いて、福田元総理も、
解党的出発を説き、事件の再発を防ぐ有効な歯どめを考える
再発防止法を検討するとさえおっしゃっておったのであります。ところが、現に、一昨年の
自民党の
運動方針には、厳しい
政治倫理の確立と、その
徹底的実践という言葉が、たとえ言葉だけでもありました。だが、今度の
自民党の
運動方針には一切その言葉はなく、
鈴木内閣も最
重点課題からそれをすっぽり欠落させてしまっておられるのであります。
いま国民は、
ロッキード事件の
刑事被告人に率いられた勢力が
自民党内で力を伸ばしていることを苦々しく思っております。(拍手)
鈴木総理が、その勢いに屈して、
政治道義に背を向けた
党内人事を行ったのではないかとの不信を国民は強めております。総理は、
政権維持にきゅうきゅうとする余り、国民の政治に対する
信頼回復の重大性を忘れていらっしゃるのではないか。なぜ総理は、
政治倫理の確立を最重点の
政治課題とせられないのか。そして、そのためにいかなる具体的な手段をおとりになるのか。これは国民に対して総理がじかに
お答えをいただきたいのであります。(拍手)
政治道義の退廃は、社会の荒廃につながります。最近の
建設業界の談合問題、
大学入試をめぐる不正、数々の汚職など、
金権腐敗の横行はまさに目に余るものがあります。この腐敗の根が
政官財の癒着の
政治構造にあることはもはや明らかであり、
汚職隠しを許さない、国民に開かれた政治の確立なしに
金権政治の一掃はできないのであります。
政官財の汚職、腐敗を見逃したまま、
青少年非行の増加や教育の荒廃を解決することも困難であります。
ところが、
鈴木内閣は、逆に愛国心や
国防教育を叫んだり、教科書に対する検定や
官僚統制を強めたり、自由と
民主主義に逆行する反動的、
国家主義的施策を強めております。選挙の洗礼も国民の審査も受けない文部省の検定官がきわめて政治的に教科書の
検閲行為を行うことは、教育の
民主化と研究の自由に対する侵害ではありませんか。
総理、
金権腐敗を一掃し、
民主政治の回復のために、
政官財癒着の
構造汚職の根を絶つ勇気がいまこそ日本国の
総理大臣たるあなたに求められているのであります。一体あなたはその資格ありと自称せられますか。日本の
民主政治を守るためには、自己の
政権維持よりも国民の政治への
信頼回復を最優先に考える姿勢を貫かれるお考えですか。ここに日本の将来を憂える国民の声を代表して、
鈴木総理の誠意ある措置と信念をお聞きしたいのであります。(拍手)
また、公正にして明るい政治を確立するためには、さまざまな差別と格差の解消にも意を尽くさなければなりません。
さきに批准をいたしました
国際人権規約に照らしても、差別の問題を放置することは断じて許されないのであります。そのためにも、
部落差別、
障害者差別、
在日外国人差別、
女性差別等を解消するための施策を確立する必要があります。特に、続発する悪質な
差別事件にかんがみても、期限切れの迫る
同和対策事業特別措置法強化改正並びに
部落解放基本法を制定すべきだと私は考えます。
以上、種々伺ってまいりましたが、最後に私は、八〇年代における
わが国政治の基調をどこに置くべきかということについて触れたいと思います。
最近の
内外情勢に生じているさまざまな衝撃的な出来事、すなわち、
戦域核の登場に伴う
核戦争の脅威、ポーランドの事態、欧米の
大量失業を含むスタグフレーションの深まり、
経済摩擦、南北問題、資源エネルギー問題の深刻化、さらには産業界におけるエレクトロニクス、
ロボット革命の進展など、それらはいずれも
世界人類が史上一度も経験したことのない重大な歴史の曲がり角にあることを示唆するものであります。このときこそ、私たちはそれだけに何よりも平和の大切さ、自由と人権、
民主主義のとうとさ、人間一人一人の自立と、そして連帯の意味を改めてかみしめなければならないのでありましょう。(拍手)このことを忘れてはならないのであります。すなわち、
平和憲法のそれは理念であります。
総理、あなたが日本の進路を誤るとき、
わが国民にどんなに大きな災厄をもたらすかを為政者として真剣に考えるべきときであります。(拍手)
かつて日本の軍部は、満州は日本の生命線と称して
軍国主義化への道を暴走し、国民を敗戦の惨禍に導き入れました。いま韓国は日本の防波堤という同じ思想が台頭し、
極東有事即応体制が進められようとしています。これらを前提とした
経済協力は、
安保絡みと言わざるを得ません。そこでは韓国の
民主化、朝鮮の
自主的平和統一の大義すら踏まえない
国家支配者の
エゴイズムが露骨にあらわれているのであります。平和の道筋、
平和創出の
憲法原理が見失われているのであります。この
国家エゴイズムの姿勢そのままでは、南の国々との真の協調も、
先進諸国との
摩擦解消はもちろんのこと、八〇年代を軍拡から軍縮の道へと転ずる水路を開くことも不可能であります。
また、国内においても、政治が温かくきめ細かな気配りを欠くところでは、自由と人権、
人間尊重の
民主主義は窒息させられるしかありません。
政府の経済、
財政運営の失敗から、いま不況が深まり、
失業者がふえ、
ロボットで無人化された工場の傍らに、生きがいもなく、疎外感に打ちひしがれている青年や
中高年齢労働者の不安な
生活実態が広がっております。
総理は、一方で減反を強いられ、
他方農業では食えないために家族と離れ離れの
出稼ぎ生活を送っている農民の嘆きをどうお考えですか。農業を
貿易摩擦の犠牲にし、農民の
生産意欲を失わせては、
食糧自給率の向上は望めません。
こうした状況のことごとくは、
わが国の
保守政治が、政治の原点である
日本国憲法の理念に背き、国民と時代の要請から遊離してきたことの帰結と言わなければなりません。ところが、総理が総裁を兼ねる
自民党は、
自主憲法制定を
運動方針に掲げ、
平和憲法の改定を企図しているのでありますが、総理は、一体、この
時代錯誤もはなはだしいたくらみをきっぱりと拒絶する決意をお持ちでしょうか。(拍手)
わが党は、もちろん
改憲阻止、護憲の課題に向かって党の総力を挙げて断固として闘い抜くことを国民の
皆さん方に、ここにお誓いをいたすものであります。(拍手)
総理、いかがでしょうか。
わが国の政治をその原点である平和、人権、民主という憲法の基本に立ち戻らせる決意を固めていただけないでしょうか。その御決意のほどをお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔内閣
総理大臣鈴木善幸君登壇〕