運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-08-06 第96回国会 衆議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月六日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 羽田野忠文君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 高鳥  修君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君    理事 岡田 正勝君       上村千一郎君    大西 正男君       高村 正彦君    森   清君       下平 正一君    塚本 三郎君       林  百郎君    箕輪 幸代君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君  委員外出席者         警察庁刑事局暴         力団対策官   関口 祐弘君         最高裁判所事務         総長      矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局総務局長  梅田 晴亮君         最高裁判所事務         総局民事局長  川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員の異動 八月四日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     坂本三十次君 同日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     亀井 静香君 同月五日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     木部 佳昭君   上村千一郎君     松永  光君 同日  辞任         補欠選任   木部 佳昭君     今枝 敬雄君   松永  光君     上村千一郎君 同月六日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     箕輪 幸代君     ————————————— 本日の会議に付した案件  民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法  律案内閣提出第七六号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所嵜民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 羽田野忠文

    羽田野委員長 内閣提出参議院送付民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。熊川次男君。
  5. 熊川次男

    熊川委員 ただいま審議対象になっておりますところの民事訴訟法及び民事調停法の一部を改正する法律案のうちで、その一つの柱とも言うべき調書のいわば簡略化とも目せられる法案がございますが、この法案の一番の主眼点、こういうものをまず簡潔にお伺いできたらと思います。
  6. 中島一郎

    中島政府委員 ただいまの御質問は、民訴の百四十四条を改正しようという点についてでございます。     〔委員長退席太田委員長代理着席〕  現在の百四十四条によりますと、証人の陳述あるいは検証の結果というものは、調書記載をして明確にするということが必要になっておるわけでありますけれども、訴訟裁判によらないで完結をいたしました場合、すなわち訴訟上の和解が成立いたしました場合でありますとか、あるいは訴えの取り下げがありましたというような場合には、その訴訟に関する限りは証人調書等は不必要ということになるわけでありますので、裁判長許可当事者からの調書作成申し出がないことを条件として、証人調書等作成省略することができることとしようとするものであります。  これによりまして裁判所書記官省力化を図りまして、その余力をもってより必要な方面にこれを振り向けようというのが、改正主眼でございます。
  7. 熊川次男

    熊川委員 書記官省力化のねらいが一点、もう一点は、その発生するであろう書記官余力を他の方に向けるという点と理解させられますが、書記官はいままで調書をつくることが十分できなかったわけでしょうか。それとも、できるけれども、その余の書記官の活用がより緊急かつ重要ということで、本案の提出になったのでしょうか。
  8. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 調書作成の現状について申し上げます。  御承知のように、民事訴訟における口頭弁論期日は、弁論だけの場合は大体一カ月程度、証拠調べが入りますと二カ月ないし三カ月というサイクルで順次回っております。これが実務の大体の平均的な状況だろうと思いますが、そのような状況前提といたしまして、書記官調書作成状況を申し上げますと、弁論調書は大体終わればすぐ、一週間以内にできるのが普通であります。証人調べ調書等につきましては、これは次回期日、二カ月で回りますと二カ月以内に作成し、次回期日に間に合わせる、こういうような実情でありまして、大体このとおり実務は動いておるわけでありまして、その限りにおきまして不都合はないと申し上げてよかろうかと思います。  でありますので、今回お願いをしております法改正の眼目が、書記官事務がいま大変だからこのような省力化を図っていただきたいという裁判所側の要望からではございませんで、先ほど法務省からも御説明がありましたとおり、当該事件に関する限りもはや不要になった、それまでつくることはないではないか、このあたりが理由であります。省力化によって出てまいりました余力はほかの事件のいろいろな書記官事務に振り向ける、あるいは簡裁でありますれば調停事務に振り向ける、このようなことを考えたいと思っております。
  9. 熊川次男

    熊川委員 わかりました。結局、証人調書というようなものの作成が不要だということが明確になった段階で初めて、それ以後に生ずるであろう調書などについての、いわば事件解決のための裁判所書記官手続を軽減させよう、こういうふうに理解できるとすると、判決あるいは裁判以外によって事件解決するまでの一回とか十数回とかいろいろの裁判期日における調書作成というのは、原則的に行っていただくというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  10. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 この法律案にも書いてありますとおり、裁判によらずして事件完結した場合ということでございますので、それ以外の場合には従前どおり調書作成していくということでございます。御質問のとおりでございます。
  11. 熊川次男

    熊川委員 質問の点が、ちょっと私の方が舌足らずであったかと思いますので、確認させていただきます。  先ほどのお答えで、裁判によらずして事件解決することが明白となった場合においては、裁判前提とする、すなわち一般的には判決前提とするような調書作成を省くのが主眼だ。現在書記官がつくっていないということではなく、全部事務を完遂しているからというお答えがございましたので、それでは判決以外で確定することが明白になるまでの調書作成関係は、従前の例に従うというのが原則的方向姿勢、場合によれば、形式的には今度の法案が通っても、指導の面においてはそのような方向でいくということでないとちょっとお答えがかみ合わない、一貫性を欠くかなと思うので、お尋ねいたします。
  12. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問のとおり、ということは、書記官調書作成事務はいままでどおり行う。ただ、たとえば第五回期日におきまして和解ができた、たまたまその日には証人尋問も行われた、その調書は、その日でありますから当然まだできておらない、けれどもそれは省略をする、こういうことでありまして、和解ができるかどうか見込みが立たないのに、早々と作成しないでほっておくというようなことは、決してしないということでございます。
  13. 熊川次男

    熊川委員 わかりました。そうしてみると、和解あるいはそのほかのいろいろ調停切りかえもあるでしょうが、そういう形で五回目に話がついたというけれども、その五回目にたまたま鑑定なり検証なり証人調べが行われた場合は、その日の証拠調べ状況はいまお話のあったとおりで、第一回から四回に至る各口頭弁論期日における証拠調べ経過並びにその結果の記載従前どおり完全に行うのだ、こう聞いていいのですね。
  14. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 通常の場合は、先ほども申し上げましたとおり、たとえば第五回弁論期日証拠調べを行い、その後和解に入って和解ができたという場合に、その証人調書省略するということに相なろうかと思います。  ただ、集中審理等を行って、月に二回の割合で証拠調べを入れている、これが四回目、五回目やった、六回目になって和解ができた、期日を詰めてやっておりますために、調書作成がまだ四回目、五回目は間に合っていなかったという場合もなくはないと思われます。そういう場合には、まだできておらない調書省略、四回期日、五回期日証拠調べ調書省略できるということになろうと思います。  ただ、それはきわめてまれなケースでありまして、通常は、先ほど申し上げましたような三カ月サイクル期日指定でありますと、もうすでに前回期日調書はできておるのがたてまえでありますし、実情もそうでありますから、省略する調書当該期日調書ということになろうと思っております。     〔太田委員長代理退席高鳥委員長代理     着席
  15. 熊川次男

    熊川委員 そうしてみると、きわめてまれな場合、いまお言葉に出ました集中審理、月に二回以上ということでしょうか、そういうような場合以外は従前のとおり調書作成は行う。すなわち、いま二カ月サイクルと言いましたね、二カ月サイクルぐらいで口頭弁論期日が入っている場合は、当該その日に訴訟手続完結するような、裁判以外で完結するような方法があった場合は、当該その日の証拠調べ簡略化するけれども、それ以外は簡略化しないのだ、こういうふうでよろしいでしょうか。
  16. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 原則としてそういう運用、ありようになろうかと思っております。
  17. 熊川次男

    熊川委員 それでは例外があるのでしょうか。あるとすれば、そのティピカルな場合を一、二挙げていただきたいと思います。
  18. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 代表的なケースといたしましては、先ほど申し上げました集中審理で短期間に証拠調べを詰めて行うという場合に、前回調書がまだ今回期日に間に合っていないというような場合でございます。  そのほかにはちょっと実例としては考えられないのでありますが、たまたま当該書記官病気等調書作成が間に合わなかった、前回期日調書作成が間に合わなかったところ、今回期日において和解が成立したというような場合、これはまた法律要件に該当すると思われますので、省略していいということになろうかと思います。これも例外的な場合でございます。
  19. 熊川次男

    熊川委員 そうすると、今度の審議対象になっております民事訴訟法百四十四条、この「ただし書を加える。」という欄がございますね。この欄に、「但シ訴訟裁判因ラズシテ完結シタル場合ニ於テハ当事者訴訟完結シタルコトヲ知りタル日ヨリ一週間ヲ経過スルニ其記載ヲ為スベキ旨ノ申出ヲ為シタル場合ヲ除クノ外云々、こうありますが、そうすると、この「一週間ヲ経過スルニ其記載ヲ為スベキ旨ノ申出」云々というのは、一週間を経過するまでに、最後の、裁判以外によって事件解決することになったその日の証人調べ証拠調べの内容について、一週間以内につくってくださいと言わない限りは、原則は書くんだ、条文にはないけれどもそう理解していい、こういうことになりますね。
  20. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 この新しい条文によりまして省略対象となる調書につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  ここに書いてある要件は、たとえば和解で終わったといたしますと、その終わった日から一週間を経過するまでに調書作成してくれという申し出があれば、まだつくってない調書、いわば省略対象となる調書作成しなければならない。だからその場合、原則としては当該期日調書ということになると思いますけれども、先ほど例外があると申しましたが、例外の場合は、申し出があればその前回期日調書もつくらなければならないということでございます。     〔高鳥委員長代理退席太田委員長代理     着席
  21. 熊川次男

    熊川委員 大体原則はわかりました。例外もきわめて集中審理などによってあって、五回と四回が、言うならば最後口頭弁論期日と直前の期日がきわめて接着していたような場合は二回ぐらいつくらないこともあるかもしれないが、それ以外は原則としてつくらせます、こういうことでございますね。——はい、ありがとうございました。  それから、観点を変えますと、本来ならば書紀官が余り期日経過を経ないで調書作成しております、こういうことだったのですが、だとすれば、特段の事情が何かあるときに、これは見方の相違になるかもしれませんが、書記官ないしは裁判所の方で、当事者または当事者代理人に、調書作成しなくてもよろしいかというような聞き方もあろうかと思うのです。当事者の方から一週間以内に出さない限りは原則つくりませんみたいな原則といいますか、ともかく本人または代理人かち調書記載してほしいと言ったときにのみつくるみたいな形にも読めるのですね。これはそうではなしに、逆に、原則はつくります、ただし裁判所の方が当事者または当事者代理人から不作成了諾を得たときにはつくらなくてもいいのだというような記載はちょっとあれでしょうか、まずかったのでしょうか、この辺のいきさつ、ちょっとお話しいただけますか。
  22. 中島一郎

    中島政府委員 通常の事態を考えてみますと、たとえば和解成立でありますが、そこに当事者はそろっておるわけであります。したがいまして、裁判所の方から、この事件については和解が成立したので調書省略をしてよろしいかということを確かめまして、そこで決着がつくんだろうというふうに思うわけであります。しかし、その場合には代理人だけが出ておりまして、調書の点については本人に確かめてみないと確定的なことは言えないので、ちょっと待ってもらいたいというようなケースもあろうかと思うわけであります。その場合には一週間以内に申し出をしていただくということで、この条文を考えたわけでございます。
  23. 熊川次男

    熊川委員 それはわかるのですけれども、この根本にひそむものが、いわゆる俗に言うところの職権主義的な発想であっては因るなということでございますので、原則はつくらないんだというふうにも読めますから、一週間以内につくってくれと幾ら裁判以外の方法によって完結したときでも当事者が言ってこない限りつくらないんだというような、いわば本来つくるべきものであるから、また現につくっていたんだから、裁判所の方から、これはつくらなくてもいいでしょうかというような姿勢があってもよかったか。裏を返して端的に言えば、若干職権主義的な萌芽がもし芽を出しているとすれば、この辺は運用に当たってもきわめて留意をしていただきたいというのが主眼でございますから、この点をお含みいただきたいと思います。     〔太田委員長代理退席委員長着席〕  それから、時間がございませんので、原則として裁判以外によって事案解決ができたその日の口頭弁論なり証拠調べのをつくらないんだという原則はわかりましたが、その日のことであっても、ときに裁判官更迭があったり、あるいは極端な場合、証人偽証のおそれがあるとか、いずれにしても、かけがえのない調書になるような場合があり得るかと思うのですが、それも一週間を経過した後に発生するおそれもないとは言えないと思うのです、きわめてまれな例かもしれませんけれども。そのような場合は裁判長許可にかからしめているんだという御配慮になろうかと思いますが、そういう事案予防策などについてはどんなふうに考えておられるか、簡潔にお願いできますか。
  24. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま裁判官更迭の場合ということをおっしゃったように思いましたが、当該期日事件和解あるいは取り下げ完結するわけでありますから、完結して事件は終局するわけでありますので、更迭の問題は生じないかと思います。  あと、偽証等の場合に調書省略してしまうと、ある意味で証拠が残らないではないかという点は確かに御指摘のとおりでございます。ただ、私ども経験的に申しますと、偽証が問題になるというような場合は、当事者双方訴訟活動から、訴訟指揮をしている裁判官はわかりますので、当事者に、省略していいかどうか念を押すことになろうかと思います。そういうことによって、御心配のようなことは防止できるのではないかと思っております。
  25. 熊川次男

    熊川委員 ありがとうございます。  それから、ちょっと飛び飛びになって恐縮ですが、今回は送達に関してもかなり訴訟促進的な御配慮をいただいておるので、御苦労のほどを感謝するわけです。ただ、その過程において送達効率化あるいは便宜化というような一方の利益の面に、被送達着送達をされるべき筋合いの人が被害を受けないように御配慮をしていただかなければならないと思うのです。  そこで、一、二疑問になるのは、提案理由とかいろいろ御説明を拝聴して、読ませていただいて、いろいろすばらしい利点があることはわかりましたが、本人就業場所への送達などに関して、その受領者をかなり広めておりますが、その受領者の中には、余り従前法律用語ではなじみの薄い、事務員とか、あるいは雇い人でしょうか、さらには弁識能力のある者云々という形で、抽象的な言葉が出てきておるわけですが、こういったことによって送達手続の錯綜といいましょうか、送達手続そのものに関して、手続面においてよけい紛争が起きるようなことがないようにしていただきたいと思うのですが、この辺のお考えをお聞かせいただけたらと思います。  あわせて、そういった能力の存否、あるいは事務員であるかどうか、雇い人であるかどうかというのは、いつ、だれが、どういう時点で、どんな資料をもとにして判断するものかも教えていただけたらと思います。
  26. 中島一郎

    中島政府委員 主として前半の部分について、私の方からお答えをいたしたいと思います。  現在の法律ですと百七十一条というのがございまして、住所、居所、事務所、営業所における送達において補充送達をすることができる、その補充送達は、受送達者本人の「事務員雇人ハ同居者ニシテ事理弁識スルニ足ルベキ知能具フル者ニ書類交付スル」という規定になっておるわけでございます。  今回は、就業場所における送達というものを新設したいということでございますので、その場合における補充送達は、本人事務員雇い人または同居者ということにはならないわけでありまして、本人雇い主等事務員、雇い意人ということになるわけであります。そこで、その範囲を住居所等における補充送達よりも制限をいたしまして、同居者というのを除いております。したがいまして、雇い主等あるいは「其ノ法定代理人事務員ハ雇人ニシテ事理弁識スルニ足ルベキ知能具フル者」ということになったわけであります。したがいまして、従来からこの点についての判断は、送達機関であります執行官あるいは郵便事務を取り扱う者が判断をいたしておりますので、今回新しい判断事項を加えるということではないという次第でございます。
  27. 熊川次男

    熊川委員 この事務員というのは、細かい点でありますけれども、たとえば事務員というカテゴリーの中には、夏休みの学生のアルバイトなんかも入るのかどうか。さらには、ときどき留守を頼まれて、留守がてら事務もとっているかもしれませんが、そういう人とか、微妙なケース送達能率化を願えば願うほど出てくると思うのですが、この辺の限界は、一、二例を挙げてお話しいただけるでしょうか。
  28. 中島一郎

    中島政府委員 事務員もしくは雇い人ということでありますが、アルバイト事務員というふうに見ていいのか、あるいは雇い人と見ていいのかわかりませんけれども、抽象的にはこれに含まれるというふうに考えられるわけでありまして、具体的なケースケースにおきましては、若干判断に微妙な差の出てくるようなものもないわけではないというふうに考えておりますが、それを余りに法律によって限定をするということは、かえって送達における判断が困難になるというようなこともあるわけであります。その判断は、個々具体的なケースケースによって送達をすべき吏員が判断をするということになるわけでありますが、もし、その送達の効力が争われるということになりますれば、最終的には裁判所によって決着がつけられなければならないというふうに思うわけであります。
  29. 熊川次男

    熊川委員 本来最も手続確実性を尊重すべき訴訟手続送達訴訟係属がするかしないか、あるいは最終判断判決が到達するかしないかというようなきわめて重大なときもあるわけですから、それがケースケースによってというような形ですと、本来の法的安定性といいましょうか、そういう面にちょっと背くような気もするので、慎重に、確実なケースを積み重ねるように御配慮いただけたらと思います。  最後に、そのような紛争があった場合においてはその手続において解決するというニュアンスにお聞きしたのですが、雇い人事務員裁判所からの書類を預かったけれども、失念して本人に渡さなかった、あるいは期日を徒過してしまった、のみならず、アルバイトの人が棚の上に上げておいて、もうアルバイトをやめて来なかったというような形で、いずれにしても本来送達を受くべき人の故意または過失、落ち度によらずして手に渡らなかった場合において、あるいは判決などによって不変期間が徒過したというような場合の不利益はだれが負担し、かつどのような救済方法があるのでしょうか。簡潔にお願いできたらと思います。
  30. 中島一郎

    中島政府委員 就業場所等において補充送達が行われた場合には、百七十一条の四項という条文を準備しておるわけでありまして、そのときには「裁判所書記官其ノ旨ヲ送達受ケタル者ニ通知スルコトヲ要ス」ということになっております。別途普通郵便等によりまして、受送達者の主として住居所あて通知をいたしますから、それによって受送達者としては職場の同僚に自分に対する書類が渡されたということを知るわけであります。それで確かめることができるわけでありますから、仮に書類を受け取った本人が失念をしておりましても、そのまま書類受送達者の手に渡らないということはほとんど考えられないわけであります。  しかし、非常にまれな場合といたしまして、何らかの理由によって受送達者本人書類が届かないという場合も理論的には皆無ではないわけでありまして、その場合には、ただいまおっしゃいましたように、本人の責めに帰すべからざる理由によって不変期間を遵守することができなかったということになるわけでございます。その場合には、民訴法の百五十九条でありますかの訴訟行為の追完が許されるということになろうかというふうに考えております。
  31. 熊川次男

    熊川委員 ありがとうございました。時間でございますので、これをもって終わりにさせていただきます。
  32. 羽田野忠文

  33. 稲葉誠一

    稲葉委員 最初に大臣にお尋ねをいたしたいわけですが、この法案については大臣が提案説明されたわけでしょう。どうして大臣が提案説明されたのでしょうか。
  34. 坂田道太

    坂田国務大臣 法務省所管だと聞いておるわけでございまして、そういう形で御説明申し上げたわけであります。
  35. 稲葉誠一

    稲葉委員 この法案の中のどこが法務省関係していますか。
  36. 中島一郎

    中島政府委員 法律ごと所管の省庁というのが決まっておりまして、民事訴訟法法務省所管法律ということになっておるように承知いたしております。
  37. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が聞いているのはそんなことではなくて、この中身のどこが法務省関係が出てくるのですか。この法案中身、どこが法務省関係していますか。それを聞いているわけです。
  38. 中島一郎

    中島政府委員 中身の点は別といたしまして、形式的に民事訴訟法という……(稲葉委員「いや、別とするんじゃないよ。中身を聞いているのだ。だめだよ」と呼ぶ)そういう理解でございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。この法案中身法務省とどこが関係しているのですかと聞いているのだ。民難局とどこが関係しているの。説明してくださいよ。どうもよくわからぬ。私は二日ぐらい考えたのだけれども、よくわからないから聞いているわけだから。
  40. 中島一郎

    中島政府委員 法務省所管法律の中には、法務省に直接の関係のない法律というものも数多くあるわけであります。したがいまして、中身というよりも法律そのものについて所管が決まっておるというふうに理解をしておるわけでありますが、それを離れて、個々の条文法務省の仕事に関係のある条文があるかということをおっしゃいますと、いますぐちょっと思い浮かびますのは、たとえば供託というようなことになりますと、私の方で供託をやっておるとか、そういった個々の関係になるわけでありまして、民事訴訟法でありますから、主として関係するのは裁判所手続ということになろうかと思います。
  41. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、供託についてはこの法案改正があったのですか、なかったのですか。これは日弁連の中にも入っていたのを省いたのですか。その点についてはどういう関係になっていますか。
  42. 中島一郎

    中島政府委員 ただいま申し上げましたのは、民訴の中の条文に何か関係があるかというお尋ねでありましたから、たとえば供託というようなことになりますと、法務省法務局の所管の仕事に関係をしてまいりますということを申し上げたわけでありまして、民事訴訟法が供託という言葉を使って規定しております場合、それは主として訴訟手続に反映をする、訴訟手続の必要上供託をするとかしないとかということが中心に規定されておるわけでありまして、その供託の具体的な方法等につきましては、民訴にも若干規定はございますけれども、主としては供託法その他に規定があるという関係でございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、この法案改正案を出しているわけでしょう。改正案の中で供託のことは書いてあるのですか、ないのですか。
  44. 中島一郎

    中島政府委員 五百十三条の改正というものが問題になっておりますが、そこに若干供託の関係が出てまいります。
  45. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、ちょっとその点を説明していただけませんか。
  46. 中島一郎

    中島政府委員 五百十三条の規定によりまして保証を立てるということになるわけでありますが、その保証を立てる場合において、「供託ヲ為スニハ其裁判ヲ為シタル裁判所又ハ執行裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ管轄区域内ノ供託所二之ヲ為スコトヲ要ス」という規定になっておりまして、従前の二項を削り、三項を、若干文字の修正はいたしておりますけれども、二項に繰り上げたわけであります。  これは、以前に民事執行法の改正が行われました際に、その関係で執行法の十五条という規定が設けられました。従来の供託の取り扱いといたしましては、供託を積むのはどの供託所でもよい、理論的にはそういうことであったわけであります。その供託をいたしまして供託所から供託書正本というのをもらいまして、その供託書正本を裁判所に持っていく。その裁判所に届ける先は制限があった。こういうことになりまして、その供託書正本を裁判所に届けて初めて供託をした効果が発生するという考え方であったわけであります。  それを先ほど申しました民事執行法の十五条、それからそのとき同時に行いました整理法によりまして民訴の百十二条というものを改正をいたしました。それによって、供託すべき供託所はその発令裁判所を管轄する地方裁判所の管内の供託所に限るということになりますとともに、以前行われておりました供託書正本を裁判所に届けるという手続を待つまでもなく、供託をすることによって供託をした効果が発生するということになったわけであります。  そのときに、五百十三条を同時に同じような形で改正をすべきであったわけでありますけれども、それが若干技術的な問題から改正漏れになっておりましたので、今回その点を手当てをしたというのが、五百十三条の改正でございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは実は私も悪かったのですが、民事執行法のそのときの十五条の問題は、この前のときに深く研究しなかったわけですね。本来こういう条文は全部逐条審議すべきだと思うのですが、そういう形にしてないものですからね。  たとえば控訴を提起した場合に、控訴提起に伴う執行停止の申請をしますね。その場合の供託は、たとえば新潟なら新潟の事件であって東京高裁に控訴をしたときに、今度は供託は東京の法務局へ供託をしなければいかぬわけです。そうでしょう。今度は新潟で供託したのじゃいけないわけでしょう。そういうふうになったわけでしょう。これは非常に不便なんですね。それは効力の発生は供託だけで効力を発生するかもわからぬけれども、東京高裁へやってきて、そこで執行停止をもらっても、また新潟なら新潟へ帰って、宇都宮なら宇都宮でもいいです、帰って供託して、また今度こっちへ持ってくるんですよ。非常に不便なんですね。  私はどうもその点が、この前の審議のときにそこまで審議しなかったんですから、こっちが悪いんですけれども、どうもかえって問題が一般国民には不便になっているんじゃないかと思うわけです。しかし、これはもう通ってしまった法律ですから、そのことをかれこれ言ってもしようがありませんけれども、そういうふうに感じておるわけです。  それは、ただ供託することによって効力が発生したという形になれば、そういうふうなところで利便があるのかもわからないですね。いままでは、停止決定のような場合でも、幾ら幾らを供託することで停止決定という形を出していたわけですね。そうすると、それだけをもらうと、供託したのかしないのかわからぬわけです。供託すれば停止をするという決定だったわけですが、今度は停止決定が、供託してからでないと停止決定を出さないという形にいつから変わったんですか。執行法に伴って変わったんですか。これはどういうふうになったんですか。
  48. 中島一郎

    中島政府委員 従来から町方のやり方があるようでありまして、まず保証決定をして、そして保証を積んできた場合に保証を積ませた上でかくかくの決定をするという方法と、それから幾ら幾らの担保を供することを条件として停止するという場合とあるようでありまして、保全処分の場合には主として前者の方法をとり、執行停止の場合には主として後者の方法をとっておったと考えておるわけでありますが、例外的にそうでない取り扱いもやっておったと承知しておるわけでありまして、必ずしもそれは民事執行法の改正等とは直接の関係はないということでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉委員 これはこの法案の問題ではないわけですからね。ただ、控訴提起に伴う執行停止のときは、民事執行法との関係でそういうふうに変わったんじゃないか、こういうふうに私も思うのです。  それから、各高等裁判所によってみんなやり方が違うんですかね。ここが私もよくわからないんですが、いずれにしてもこれは統一した方がいいんじゃないかとも思うし、あるいはそれは各裁判官の考え方なりその裁判所の慣行がありますから、ここでわれわれがかれこれ言うべき筋合いではないと思うのですが、いまは、その話が法務省に関連していると言っていますから、関連しているのがどこだろうと思って私も考えてみたら、どうも五百十三条だけの話のように思うから、そういう話がだんだんそこへ行ってしまったわけですけれどもね。これは直接この法案関係することじゃありませんから、ここら辺にしておきます。  そこで、これはどなたにお聞きしたらいいのですか。やはり大臣なのかな。だって提案者が大臣だから、大臣に聞かないと筋が通らないのだと思うのだけれども。提案理由説明に、民事訴訟手続等の適正を図った、こう書いてありますね。いままで適正でなかったようにとれるのですね。適正の度合いが足りなかったように思えるね、この書き方は。そう思いませんか。適正を図るのだから、いままで適正でなかったようにとれるのだけれども、この法案のどこにこの部分が具体的にあらわれているのですか。
  50. 中島一郎

    中島政府委員 従来適正でなかったという意味ではございませんけれども、世の中の状態が変わるに従って、従来の条文で通用しておったのでは不十分な点も出てまいります。したがいまして、より適正に運用するために必要な条文改正をお願いしたいという趣旨であるわけでございます。適正、円滑というふうに両方一括してのことになるわけでありますけれども、たとえば送達方法について就業場所における送達を新設して、従来の手続では送達できなかったものについての手当てをする、あるいは調書省略判決書の記載の簡素化等によりまして、省力化によって生じた余力をより必要な部分に振り向けるということによって、手続のより適正、円滑な運用を図る必要があるというわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、円滑はわかるのです。適正というのがわからないのです。いままで適正が足りなかったという意味にとれるでしょう。そのことを、いまあなたのおっしゃったようなことによって適正化が図られたのか。適正というのは、不適正ということに関連して適正という言葉がある。言うならば質的に変化していくということになるわけですからね。どうも適正と円滑というのをただ普通に並べるから、修飾語で並べただけというなら、それはそれで話はわかるのです。適正と言うから、何かおかしくなってくるのです。
  52. 中島一郎

    中島政府委員 たとえば、今回証人等が不出頭の場合の過料、罰金の額も引き・上げたわけでございますが、従来の額によりましては証人等の出頭を確保するのに十分でないということでありますので、今回の過料、罰金の額等の引き上げも、理論的に見れば証人の出頭確保につながる、より適正な裁判が期待できる、こういうことになるわけであります。
  53. 稲葉誠一

    稲葉委員 証人が出てこないで、過料だと思いますが、罰金もありましたっけ、忘れましたが。一体そんなことありますか。
  54. 中島一郎

    中島政府委員 私の裁判所時代の経験では、民事でございますけれども、一件だけ証人不出頭の場合に過料にした。当時は五千円の過料の時代でございますけれども、勾引というような意見もあったわけでありますけれども、まず過料をしてみようということで、その事情を聞くために呼び出しましたところ、当時二十五、六年でありましたか、まだ物の不自由な時代でありまして、着ていく着物がなかったということでありましたが、洋服は何でもいいのだということで来てもらいまして、過料もしたと思いますけれども、その経験が一件あるわけでありまして、ほかに統計的なものについては最高裁判所の方から答えていただきたいと思っております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉委員 別にそれほど重要なことでもありませんから、別に重要でもないことを質問するのはおかしいと一言えばおかしいのだけれども、あれですから、今度は重要なことを質問します。  これの中で私、わからないのは、たとえば送達が大きな問題になっているわけですね。それはこれからお聞きするわけですが、法制審議会の存在といいますか、ことしになって法制審議会に一体何と何がかかったのですか。この法案も法制審議会にかかったわけですね。たしか三月二十四日だったと思いますが、かかったわけですね。いろいろ説明を聞きましたけれども、かかったのですね。民訴法の部会だと思いますが、三ケ月さんが部会長ですか、そこで一体何回ぐらい、どういうふうな議論がこれに関連してあったのですか。そこら辺はどういうふうになっておるわけですか。  また、法制審議会にかけるべき基準というふうなものはどこにあるのですか6何かあなたの方の係ではないらしいですね。司法法制調査部というのが法制審議会の管轄でもあるように聞いているのですが、いまの点はどういうふうになっているのですか。
  56. 中島一郎

    中島政府委員 法制審議会の所管は、ただいまおっしゃいましたように司法法制調査部でございます。中身のいかんによりまして、刑事局、民事同等が非常に深くかかわり合いを持っておりますので、私の方から便宜お答えをいたしますけれども、法制審議会にかける基準ははっきりしたものがあるかと言われますと、これは一般的に重要法案の、しかも重要な事項について審議をお願いするということであろうかと思います。  民事局関係で申しますと民法部会、民事訴訟法部会、民事執行の部会がございます。その他にも国籍法部会、商法部会、国際私法部会、いろいろの部会があるわけでありまして、本年になって改めて法制審議会に審議をお願いした法律なり改正なりはございません。以前からそれらの法律についての改正問題についての審議をお願いしておるわけでありまして、民事訴訟法改正について申しますならば、昭和二十六、七年ごろに非常に基本的、包括的な諮問が出されておると記憶いたしております。それに基づいて、法制審議会ではそのときどきに必要な部門についての審議を行われまして、結論を得たその都度答申をしていただくということになっておるわけであります。  今回のこの改正でありますが、そもそも始まりましたのは、昨年の九月ごろからであったと記憶いたしております。法制審議会の民事訴訟法部会で審議が始まったわけでありまして、その間、民事訴訟法部会も二度、三度開かれております。そのほかに小委員会というのが数回開かれておりまして、その事前には準備会というのが小委員会一回について一ないし二回開かれておるわけでありまして、そこでまず今回審議すべき項目を決め、それについてのかなり詳細な審議をしていただきまして、最後は三月九日の民事訴訟法部会で答申の要綱案を決めていただきまして、それを三月二十四日の法制審議会の総会にかけまして、そして答申要綱をお決めいただいたというような経過でございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉委員 私がお聞きしたいのは、民事訴訟法全体の改正の中で考えられているかどうかということと、考えられているとするならば、その中でこの法案はどういう位置にあるのか、こういうことをお聞きしたいわけなんですね。いや、民事訴訟法全体の改正は考えていない、これはこれだけなんだということならば、これはそうかもしれませんけれども、このほかにも民事訴訟法として改正すべき点があるというふうに、全体として法務省としてはお考えになっているかどうか、こういうことですね。
  58. 中島一郎

    中島政府委員 法制審議会の民事訴訟法部会において、次に何を取り上げるかということが昨年の部会においても審議されたわけでありますが、その際に、私の方からは、この裁判所関係の緊急に必要な送達その他の規定についての御審議をお願いしたわけでありますが、部会としては、そのほかにたとえば仲裁手続でありますとか、あるいは証拠法の関係を見直したらどうかというような、いろいろな御意見があったわけであります。私どもとしては、まず当面この問題をやっていただきたいということで、今回半年ばかりかけてこの問題が終わりましたので、この次はそのときに問題が出ておりました他の事項に移って審議が行われるであろう。したがいまして、民訴の今回問題になりましたような事項類似の項目が引き続き取り上げられることはないというような状態でございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま仲裁の話も出ましたけれども、仲裁というのは、いわゆるアービトレーションですか、日本じゃこれはほとんどないのじゃないですか。ないと言ってはあれかもわからぬが、ほとんど事実上ないですね。そのために和解手続なんかがあるわけですから。  それはそれとして、証拠法の問題ですか、ちょっとよくわからなかったけれども、いずれにしても、これは全体の中の一こまとして、緊急を要するからということであなたの方としてお出しになったというふうに考えておるわけなんです。     〔委員長退席太田委員長代理着席〕  率直に言って、私どもも送達ができなくて困っていることは事実なんですね、これは。本当に皆困っています。困っているから、それじゃ一体どういう案が一番いいかということになってくると、これはまたなかなかむずかしいことになってきて、そこでこの法案についても慎重に審議しなければいけないんだ、私はこういうふうに理解をしておるわけなんです。  そこで、さっき最高裁の民事局長が熊川さんの御質問の中でお答えになった訴訟の迅速化の問題についての関連だと思いますが、公判期日調書の問題ですか、和解調書の問題かな、証人調べがあったときの後で和解ができてしまえば、普通、証人調書は同意を得て省略してしまいますね。いまもやっているわけですが、そういうようなことで証人の呼び出しの関係期日について、普通の口頭弁論のときには月に一回ぐらいずつだ。これはそのとおりだと思うのですが、何か証人調べのときは二カ月か三カ月ぐらいで証人調べ期日が指定されるような話がいまありましたね。そんなことはないんじゃないですか。それはきわめて異例であって、証人調べは長ければ大体半年、どんなに短くても大体四カ月は——簡単なものは別ですよ、きわめて簡単な証人調べは別だけれども、なっておるのです。  これは最高裁、私はこういう法案について最高裁を呼ぶことは反対なのです。最高裁というのは司法権のあれですから、立法府へ最高裁が出てくるということは反対なので、私は最高裁の人はお呼びしない主義なんですが、進んで出てこられたものをお断りするわけにはいかぬからあれですが、それは別ですが。  そこで、私はこういうことを調べていただきたいと思うのですよ。  第一、まず民事の開廷が、たとえば本庁でも支部でもいいのですが、民事で一人の裁判官が三開廷やっているところが、一体どの程度ありますかということですね。まずこれはないでしょう。一人の裁判官が三開廷ですよ。東京はやっているかもわからぬ。しかし、東京の場合は、またこれは隔日勤務だし、いろいろですかもわからぬが、とにかく三開廷やっているところがどのくらいあるのかということと、二開廷やっているところがどのくらいあるか。それから、一開廷半というのが多いのじゃないかと思うのです。そういうのがどの程度あるかということを、これはせっかく最高裁においで願っておるのに何も御注文しないのも悪いですから、それをよく調べておいていただきたいと思うし、わかっていればわかっているでいいのです。  そのときにまた困るのは、係の書記官がいるわけですね。裁判官のその日のその事件はこの書記官だということになっているわけですけれども、そうすると、ある期日が決まっても、その書記官裁判官とでペアを組んでいるわけですから、それに合わないと期日が決まらないわけです。だから、証人調べもそういう関係で、日が決まっても、その書記官の日がその日に当たるからだめだということになる。そういうような関係で非常に延びてきているのが多いのだ、こういうように私は理解しているわけですね。  だから、いま言ったように三開廷やっているところと二開廷やっているところと一開廷半あるいは一開廷、あるいは書記官との関係がどういうふうになっているのか。そのことをいまあなたのお話、熊川さんの質問では、何か二、三カ月で証人調べが行われるようなお話をしておられたからどうも、そういう事実はないことはないけれども、それはきわめて少ない。普通の場合は長ければ六カ月。六カ月というのも、これも少ないかもわからぬけれども、たとえば一時間半とか二時間というときには、六カ月ぐらいになってしまいますね。普通は短くても四カ月ぐらいはかかっているのじゃないですか。夏休みが入った場合は別ですよ。そういうようなことがあるから、その間の事実関係というものをひとつお調べを願いたいというふうに思うわけですね。
  60. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の中にありました週三開廷開くか二開廷か一開廷半か、こういうことでございましたが、民事事件を専門に担当している限り、左陪席裁判官——未特例の左陪席裁判官は別でありますが、特例以上の判事補、判事は原則として単独二開廷、合議一開廷ということで、三開廷入っているのでありまして、これは全国的にいってどこでも同じだろうと思います。  ただ、中小の裁判所になりますと、民事事件だけを担当しないで、家庭裁判所事務を兼務したりしておりますし、場合によっては支部を填補するということもございますので、おっしゃるように二開廷あるいは一・五開廷しかその本庁なら本庁の事務を担当していないということもあろうかと思います。そういう実情でございますので、各裁判所事務分配規程というのを毎年、司法年度当初に決めておりますけれども、これをずっと克明に調べればわからなくはないと思うのですが、かなりむずかしい調査になろうかというふうに思うのであります。  いま一つお尋ねがありました、A裁判官に甲乙の書記官がつく。確かにそういう配置になっているところが多うございます。東京の例で申しますと、まさしくそういう形になっております。記官に配填された事件はできるだけずっと終局までA書記官が担当した方が効率的であるというような配慮、係制と言っておりますけれども、そういう方が効率的である、また当事者との関係でもむしろ親切になるということで、そういう執務体制がとられておるのでありますが、確かに期日指定の面で若干支障が出てくることもありますけれども、そのデメリットといま申しましたメリットとを勘案して、そういう体制を東京地裁ではとっておるものというふうに承知しております。そういうふうな実情でございます。  それから、証拠調べの次回期日の点でありますけれども、東京地裁での私の最近までの経験でいきますと、大体三カ月では入っておりまして、四カ月を超えれば、これは長いというのが私の経験的な感じでございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまのお話でまず問題になるのは、裁判官が単独でやっていて、合議に入っている場合を加えて三回というふうに計算しているわけですが、これは例外といいますか、普通はないわけですね。ないとは言わぬけれども、単独の場合の主として民事裁判のことについて私は聞いておるわけですから、合議の場合は除外をして、単独の裁判官がするのが週に大体二回が本庁では普通だ。ところが、事件はもう書記官の係が決まっておるわけですよ。この事件はこの書記官と決まっておるわけですから、そうすると、この書記官は  一週間のうち一回しか立ち合いしない、立会しない、こういうことになってくるのが多いのじゃないかというふうに思うわけです。  それから、東京の例を挙げましたけれども、東京の場合弁護士がいっぱいいますから、だから期日がわりあい入りいいわけですけれども、地方の場合は弁護士の数も少ないし、事件は前に受けておりますから、どうしても入るのが遅くなって事件が来る、こういうふうなことになってくる。ことに支部の場合は、民事の場合は民事の裁判官が二開廷やっているところは、甲号支部ではあるかな、乙号ではほとんどないんじゃないですか。大体一回半じゃないですか。そういうような形になってくると、ことに乙号支部の事件がおくれる、証人調べが非常におくれる、こういうふうな形になってくると思うのです。  これはここで論議すべき問題ではないかもわかりませんけれども、そういうようなことも考えられてくるのと、民事裁判がここで迅速化というようなことも、もちろん円滑進行ということも言われておりますけれども、民事裁判がおくれるということで、それが裁判官の責任だということは私は言わないわけです。そういう場合もありますけれども、そういう場合があるのは、それは結審してしまって判決期日を追って指定しているわけですよ。そして、それは早くて大体三、四カ月、半年。極端な人になると一年過ぎる。一年半。昔の例だと外遊して帰ってきてから判決したという人も、これは有名な話。これはいろいろあるわけですけれども、だから、結審してしまってから判決を書くまでの間が一年も一年半もかかっておるというのは裁判官の責任であるけれども、裁判がおくれるということは、弁護士の責任が非常に大きいと私は思うのですね。  弁護士が当事者との十分な連絡をとっていない場合もあるし、それからもう一つは、たとえば訴状を出す前に、交通事故の損害賠償の場合だったならば、同時に前もって弁護士によって記録のあれを求めておいて、そして刑事記録の贈与をしておいて、それを同時に訴状と一緒に証拠に出せば、どんどん早く進むわけです。それがいまの段階ではやらないわけで、第一回が済んで、そこで申請する。第二回に記録が来る。そして、記録が来てそこで今度はリコピーするというわけで、第二回目もほとんど有名無実に終わってしまう。第三回目あたりに記録が出てくる。今度は、出てくるとこれはよく内容を吟味しなければならないからということで、また延びてしまう。こういう関係で延びてくるんです。これは弁護士の責任というか、私はそれが大きいと思うので、だから訴訟がおくれるということを全部裁判官の責任だとか裁判所の責任だなんということは私は言わないのです。これは弁護士が悪いのは、悪いというか、怠惰と言うと語弊がありますが、忙しいからかもわかりませんが、そういうところもありますから、全部を裁判所の責任だということは私は言わないということは、前々からも言っておるとおりなんです。  それはそれとして、今度の法案で私が問題にするのは送達の問題ですね。さっきもお話ししたように、送達には確かに困っておる。困っておるのだけれども、それじゃこの法案が最良かとなると、これはまたなかなかむずかしいのです。  そこで一つお聞きをいたしておきたいのは、これは一体どういうふうになっておるのかということは、民事訴訟法の百七十二条関係です。「郵便に付する送達」、これはありますね。まずわからないのは、これはこの要綱試案には含まれていなかったわけですね。これを廃止するとか存続するとか、どう改正するとかということは含まれてないわけでしょう。おわかりでしょう。百七十二条、百七十三条、その効力が出ていますね。まず、私はいままで疑問に思いましたのは、これは一種の意思表示ですね。裁判所の意思表示と言うと語弊があるけれども、意思表示と見ていいでしょう。日本の場合はすべてが到達主義ですね。なぜここだけ到達主義でなくて発信主義をとっているのか。その点はどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。
  62. 中島一郎

    中島政府委員 百七十三条につきましては現行法どおりでございまして、条文が若干変わっておりますのは、これは全くの整理でございます。  この百七十二条の沿革というほどでもないですけれども、これは最後の切り札的な送達方法であるということになるわけでありますが、古く旧民訴の時代を見てみますと、この場合でもやはり住居所等における送達が不在のために送達できないというようなことがあったわけでありまして、そういう場合には補充送達をもっと拡張いたしまして、文書を裁判所郵便局等に預っておく、その告知をする、それをあるいは受送達者の住居の扉のところに張っておくというような方法も認められておったわけでありますけれども、そういうものはどうも不適当であるということで、この郵便に付する送達に吸収をされたというふうになったわけでありまして、確かにほかの送達についてはいずれも到達主義をとっておる、しかも特別送達ということで配達証明つきの書留ということでありますから、何月何日の何時にだれに渡した、本人に渡したかあるいはその他の雇い人等の同居者に渡したかということ、それからその書類を受け取った者の署名または捺印ということで送達報告書がつくられるということになっておるわけでありますが、その方法がとれないということでありますから、やむを得ずこの書留郵便に付する送達をとった、こういうことであります。  書留郵便でありますから、やはり本人不在であれば到達しないわけでありますけれども、従来の方法でありますと、何度も書留郵便を配達をして本人に到達をするというのが前提でありますが、ただ、いつ到達したかということの立証は、先ほど申しましたように配達証明つきでございませんのでとれないわけでありまして、それだけの不利益を受送達者に付してもやむを得ないということから設けられた規定であろうというふうに考えております。
  63. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、私が聞いているのは、いまの立法の趣旨はわかりましたよ。これは民法の到達主義から見るときわめて例外ですね。そんなことはあたりまえの話です。一体どうしてこれは廃止をしないのですか、こう聞いているわけですね、次の問題として。当然こんなのは廃止していいんじゃないですか。これは非常に弊害のある規定です。実際にはこれはほとんど使われていないですね。使われてないと言っていいくらいです。例外的には使われる場合なきにしもあらずですけれども、ほとんど使われていないわけでしょう。だから、これは当然百七十二条、百七十三条ですか、百七十三条は効力だけれども、その前の百七十条の二項も入るのですか、いずれにしてもこれは非常に弊害がある規定ですから、削除をするのが筋じゃなかったか、こういうふうにお聞きしたいわけです。
  64. 中島一郎

    中島政府委員 送達でありますから、確実にその書類が届いて、しかもその書類が届いたということを公証するということ、これがもう大原則であります。     〔太田委員長代理退席熊川委員長代理着席〕 ただ、手を尽くしてもその方法によっては送達できない場合が考えられるわけでありまして、その場合における手当てもしなければならない。一番極端な場合が公示送達という場合でありますし、そこまでいかないにいたしましても、住居所はあるけれども、そこでは送達ができないというような場合には、その中間的な送達方法として書留郵便に付する送達が認められておる。現在でもなおその制度を存置する必要があると考えるわけでありますが、ただ、ただいまおっしゃいましたように、この方法によりますと弊害もあり得るわけでありまして、現在の実務においてはほとんど行われていない、非常にまれな場合にしか行われていないということも、一面においてこの制度の限界を物語っているかというふうに思うわけでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、ほとんどこれは行われていないし、実際にはおかしな規定なんですよ。ですから、当然民訴部会の審議の中に、これを削除するとかしないとか、検討するとかということが入っていなければならぬわけだ。ところが、あなた方の参事官室でつくった要綱の中には、この百七十二条関係、「郵便に付する送達」については入っていないでしょう。これはどういうふうになっていますか。
  66. 中島一郎

    中島政府委員 入っておりませんし、法制審議会でもそういう御意見は出なかったと記憶いたしております。
  67. 稲葉誠一

    稲葉委員 失礼な話だけれども、法制審議会の人たちは学者の人たちが主だと思いますが、弁護士も入っておるかもわからぬけれども、率直な話、送達のことは知らないですよ、一番よく知っているのは書記官ですから。  いま特別送達の話が出ました。特別送達は幾らです。その内訳はどういうふうになっていますか。
  68. 中島一郎

    中島政府委員 八百六十円であったというふうに記憶いたしております。六十円が普通郵便の料金であります。それから、三百五十円が書留料金でありまして、あとの二百五十円が特別送達のための費用でありまして、なお、還付されたときにはそれにプラス三百五十円取られたというふうに記憶いたしております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉委員 そのとおりですね。そのとおりなんですが、そうすると、還付したときの還付料三百五十円、これは実際にだれが払っているのですか。
  70. 中島一郎

    中島政府委員 やはり終局的には送達する側。裁判所は立てかえますけれども、結局負担は、原告なら原告の負担になるということになろうと思います。
  71. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が聞いているのは、裁判所が立てかえて払うのでしょう。裁判所が立てかえて払うという意味は、どういう意味だと聞いているのですよ。それはこういうことです。裁判所の方は金がないので、係の書記官や受付の事務官が自分の金を一応立てかえて払っている、こういう例が非常に多いのじゃないですか。そこまで御存じですか。
  72. 中島一郎

    中島政府委員 予納金の中から払っておるのだろうと思いますが、あるいはまれな場合として、書記官が立てかえておるというようなこともあろうかと思います。
  73. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、私はいまの点で非常にこの条文はおかしいというふうに考えておるのです。  そこで、これは私もよくわからないのですが、現実に特別送達をしますね。昼間ですね。普通の場合の送達は時間が大体決まっていますね。そうすると、それが届かない場合には、いま実際はどうしているのですか。この法案は別ですよ。この法案は別として、いまはどういうふうにやっているかということです。
  74. 中島一郎

    中島政府委員 この法律案関係資料の中に、裁判所の方でつくられました実情調査表というのがございますが、それによりますと、受取人不在を理由として還付されてきた郵便物というのが二千八百五十三ありますうちで、その後どうしたかということがE欄に書いてございます。それで住所、居所、事務所等を送達場所として特別送達郵便でもう一度送達したというのが一千一件ございます。それと同時に、受け取りを勧告をする、これは普通郵便あるいは電話などでやるのかと思いますけれども、勧告したものが八十一件ございます。それから、速達の取り扱いによって再度送達をしたというのが九百七十三件ございまして、さらに、執行官による送達をしたものが四百八十二件あるようであります。それから、住居所等においては送達不能であるということで勤務先にあてて送達をしたもの、それから、書留郵便に付する送達をしたもの等があるようであります。
  75. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、いろいろな経過はたどったにしても、こういう方法によって送達ができているのじゃないですか。
  76. 中島一郎

    中島政府委員 この結果がどうなったかということは、この表からはわからないわけでありますが、必ずしも送達ができたという意味ではございませんで、こういう方法でもう一度試みたという結果になっております。
  77. 稲葉誠一

    稲葉委員 いやいや、もう一度試みたじゃなくて、試みて一体どうなったのですか。どういうふうになったから、だからこそ今度のような法案が必要だというところに結びつかなければ、この資料は意味がないわけですからね。そこはどういうふうになっておるのですか。実際はどうしているのですか。公示送達は別ですよ。公示送達はそう簡単にいかないわけですね。裁判所が出して、裁判所の方から警察の方に照会してそして調べて、大体どのくらいかかりますか、長いときには半年ぐらいかかりますかな、公示送達までね。短いのはもっと短いのがありますけれども、そして調べるわけですね。  だから、私が聞いているのは、「受取人不在の場合の送達実情調査表」というのでこういうふうになってくれば、結局これで何とかやっていっておるならば、別にこの送達の部分に関する法案は必要ではないではないかということになるわけですね。質問の意味はわかるでしょう。だからお聞きしているわけです。
  78. 中島一郎

    中島政府委員 詳細は数字的に出ておりませんけれども、うまくいって送達ができた場合もありますけれども、多くの場合は功を奏さない、だから当事者裁判所も非常に困っておるというのが実情でございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは最高裁に聞いた方がいいのかもわかりませんけれども、うまくいかなくて裁判所が非常に困っているというのは、この資料、この表の中のどこに出てくるのですか。
  80. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 私どもの方で調査した結果をまとめた表でございますので御説明をいたしたいと思いますが、ただいまの御質問に対しましては、確かにこの表からは何も結果は出てまいりません。要するに、一回正式の送達をやったけれどもこれだけのものが返ってきた、それについてE欄に番いてあるような手だてを第二回目以降とらざるを得ない。たとえばE欄におきますイの方法、こういうような方法書記官がいろいろ工夫して、いま出せば土曜日の午後着くだろうとか日曜日に着くだろうということ夢計算して、それだけの手数をかけてやっておるということでありますし、ウの方法になりますと、それだけ費用がよけいかかるということになるわけであります。執行官による送達になりますと、これはまた費用は郵便の場合よりもかなり多くかかる、こういう方法をとらざるを得ない実情であるということがこの表からおわかりいただけると思うのであります。したがいまして、このイ、ウ、エのような方法をとったもののうち、かなりの部分は功を奏したものがあると思われます。けれども、それは調査の対象外にしておりましたために、数字が出ておりません。  問題は、アの通常方法によるもの千一件、これで効果を奏したものがあるかということだろうと思われます。これで効果を奏すれば、二回あるいは三回と同じような正式送達をやればいいじゃないかということになろうかと思いますが、このアの方法で二回目をやったといたしましても、これは経験的に申し上げるほかはないのでありますが、効果を奏するのはまずまれであると言わざるを得ない、こういう状況にあろうというふうに考えるわけであります。したがいまして、このような就業場所への送達という方法をお考えいただいたということになろうかと思うわけであります。
  81. 稲葉誠一

    稲葉委員 この表では、まず受取人不在という場合に、そこにいても夫婦共稼ぎや何かでそのときにいなかったから受け取れなかったというふうなものもあるだろうし、どこかへ行ってしまって全然わけがわからないのもあるし、いろいろなものが入っているのじゃないかと思うのですね。それがよくわからないのと、それからAを見ると、五十六年十月と十一月だけのもののようなのですね。それがそうかということです。まあ、これが一〇〇%で基準になっているから、そういう意味なのでしょうね。それと、この特別送達というのは、何か訴状だけのことについて調査したようにもなっていますね。そうすると、実際には特別送達というのは訴状以外にもあるわけだと思いますが、そこはどういうふうになっておるのですか。
  82. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 まず第一点についてでございますが、とにかく還付されてきたのがこのB欄でございます。その中で受取人不在を理由とするものがC欄でございまして、BからCを引いた残りの数は、おっしゃるように転居先不明とかそういうことになろうかと思います。でありますので、いることはいるのだけれども不在だ、こういうものがC欄でございます。  それで、この調査でございますけれども、現地の裁判所に非常に負担をかけますために、大体の様子をみんな経験的にはわかっておるのですけれども、数字がつかめないのでは困るということで、地方裁判所の訴状についてと、十二の簡易裁判所における支払い命令という代表的な文書の送達について調査を行ったということでございます。  裁判所送達は、大体の見当でありますけれども、民刑合わせまして五、六百万通に上るはずであります。そういうような実情でありますので、調査も勢い限られたものにならざるを得ないわけでありまして、訴状と支払い命令だけ調査した、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  83. 稲葉誠一

    稲葉委員 後段のものが支払い命令のようですね。支払い命令の場合は、これはもう不在というよりも、行方不明になっていなくなってしまったのが相当あるのじゃないかと思いますが、この前のあれでもあったように、これは恐らく立てかえ金が一番多いわけですね、そういうふうなことだと思うのです。そうすると、曲りなりにもこれで行われておるのじゃないかというふうに思うのです。  そこで、私の質問の第一は、この表に「勤務先にあてたもの」というふうにありますね。これはどうして「勤務先にあてた」というふうに書いてあるのですか。どうして「就業場所」と書かなかったのですか。この法案では「就業場所」になっていますね。勤務先と就業場所とは違うのですか。これはどうなっているのですか。
  84. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 これは法案ができる前の調査でございまして、いわば俗称勤務先送達ということで調査をしたものですから、そういう表現をとっているだけでございます。別に違うわけではございません。
  85. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、違うわけじゃないと私も思うのですが、就業場所という概念の方が勤務先よりも何か広いような印象も私は受けるのです。勤務先という言葉法律用語じゃないかもわからぬですね。業についているけれども勤務してないということもあるかもしれないから、就業場所の方がより広くてより正確だという考え方かもわかりませんが、就業場所という言葉を特に選んだ理由はどこかにあるのですか。
  86. 中島一郎

    中島政府委員 就業場所の代表的なものとして、勤務先という言葉従前俗称的に使っておったと思いますけれども、それを法案作成の段階でいろいろ検討いたしましたところ、就業場所という表現が適切であろうということで、就業場所ということでまとまってきておるというふうに申し上げていいかと思います。
  87. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから私が聞いているのは、就業場所というのとここにある勤務先というのは違うのか違わないのか、就業場所というのが概念が広いという意味なのか、これが第一です。  特に就業場所という言葉を選んだのは、これは法律用語として選んでいるわけでしょう。法律用語として選んだのは意味があるわけですから、いろいろな議論があったと思いますけれども、どういうわけで就業場所という言葉が適切であるというところに結論がいったのか、こういうことを第二点としてお聞きしているわけです。
  88. 中島一郎

    中島政府委員 範囲といたしましてはやはり就業場所の方が広い、勤務先というのはそのうちの一部であろうかというふうに思います。  それで、就業場所という言葉を選びましたのは、ほかの法律の表現なども考え、あるいは今回の法律の実体を最もよくあらわす表現として適切なものということで選んだわけでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉委員 ほかの法律というと、どの法律就業場所という言葉が書いてあるわけですか。
  90. 中島一郎

    中島政府委員 労働基準法その他労働法規等でございます。
  91. 稲葉誠一

    稲葉委員 恐らく労働基準法、常働法規だと思います。しかし、労働法規の場合は、いろいろな統計をとる場合とか労働行政上の意味として就業場所という言葉をとっているのだと私は思うのです。  いずれにしても、それはどうということないことですから言葉はそれでいいのですが、そうすると、いまの場合に「勤務先にあてたもの」としてここに書いてあるわけですが、これはどういう経過から勤務先にあてたようになっておるのですか。恐らく訴状の場合は、訴状が送達されないで返ってきた。それでいま上申書を出していますね、原告の方の代理人が上申書を出して、ここへ送達をしてくれ、こういうふうなことでいまやっているんじゃないですか。それと、今度の法案ができたときにそれはやり方が変わってくるのですか、どういうふうになるのですか。
  92. 中島一郎

    中島政府委員 私の方でお答えしていいのかどうかわかりませんけれども、現行法の百六十九条の二項でございます、今度改正後の新しい法律では百六十九条の三項ということになるわけでありますが、こういう条文がございまして、「送達ヲ受クベキ者が日本ニ住所、居所、営業所又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラザルトキハ送達ハ其ノ者ニ出会ヒタル場所ニ於テ之ヲ為スコトヲ得」ということになっておるわけであります。そこで、出会い送達というものを期待いたしまして、当事者から上申書が出まして就業場所等において送達ができたという場合、できたかどうかはわかりませんが、勤務先にあてて送達したというのが、この表のオ、カの欄の数字であろうかというふうに思うわけでございます。  今度改正をいたしまして、就業場所における送達ということになりますと、従来の出会い送達というのは、これは受送達者本人に交付するという方法しかないわけでありますが、この就業場所における送達でありますと、一定の要件のもとに補充送達も認められるということになるわけであります。上申書を出させて送達するというような手続については特に変わりはないというふうに思います。
  93. 稲葉誠一

    稲葉委員 出会い送達という意味が私、よくわからないのですが、出会い送達というのは、これは百六十九条の第二項で言うのは、「出会ヒタル場所ニ於テ之ヲ為スコトヲ得」というのであって、勤務先へ送ったのでは出会い送達ではないのではないですか。出会いというのは、相手方と会ってそこで口頭なり何なりで伝えたり何かするのが出会い送達ではないのですか。これはちょっと私はここのところがよくわからないのです。だから、たまたまその人が裁判所へ来たときに、そこで期日はこういう期日ですよということを通知するというのが普通の出会い送達ではないのですか。いまあなたがおっしゃったように勤務先へ書類を送るのが出会い送達なんですか。私、ちょっとよくわからないのです。
  94. 中島一郎

    中島政府委員 結局、百六十九条の解釈としては先ほど申し上げたとおりでありまして、そのほかに、事件について裁判所に出頭した者に対して口頭で書記官が告知するという、書記官による送達というような制度もございます。この表の中身でありますので、詳細は私から申し上げていいのかどうかわかりませんが、私としてはこの表を見てそういうふうに理解をするというわけであります。
  95. 稲葉誠一

    稲葉委員 書記官送達というのは、確かに裁判所に来たときに書記官送達する場合、これはいまでもありますね。この出会い送達というのは、私はよくわからないのですよ、率直に言うと。いまのあなたのような説明だとしますと、本人のところに届かなかったときに、「出会ヒタル場所」というのが勤務先まで入っているというふうに聞こえたのですが、私の聞き方が悪かったのかもしれないが、ちょっと意味がわからないのですが、それならば、この条文があれば今度の法律改正は要らないということになるのじゃないですか、そうじゃないのですか、違うのですか。
  96. 中島一郎

    中島政府委員 この「出会ヒタル場所」というのは、これは勤務先に限りませんけれども、勤務先も含まれるという理解でございます。
  97. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、「出会ヒタル場所」というのは、郵便を送って特別送達をするにしろ何にしろ、郵便を送って相手が受け取れば、それが「出会ヒタル場所」になるのですか。人間と人間とが会ったときが出会いじゃないのですか。普通世間の常識では、出会いというのは人間と人間とが会ったときが出会いじゃないの。数寄屋橋で会うのかどうか知らぬけれども、いまは数寄屋橋で余り会わぬけれども。どうなんです、この意味はよくわからないのですよ。百六十九条の第二項というのは意味がよくわからない。
  98. 中島一郎

    中島政府委員 送達実施機関である執行官あるいは郵便集配人が本人に出会った場合には、その出会った場所のいかんにかかわらず、この出会い送達ができるというふうに理解しております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉委員 それならば今度の法案は要らないのじゃないですかということになるのかならないのか、そこが私はよくわからぬから聞いておるわけですね。いまあなたのおっしゃるように、出会い送達というのはそうなんだ、執行官が行くあるいは郵便配達が行く、そういうことで出会うと言うが、人間的に会わなければ出会いにならないのですよ。最初の説明を聞くと、何か郵便を送れば出会いみたいに聞こえたから。まあ書留ならば人と人と会わなければいかぬわけですからね。  これがあれば、今度の法案は、少なくとも送達に関する面については要らないのじゃないかという気もするのです。特にこの条文がありながら、同時に書留に付する百七十二条の規定がありながら、まあ百七十三条の場合はめったに利用していないということですから、これは発信主義ですから例外中の例外だから別として、いまおっしゃったようなこれがあるならば、今度の法案は必要ないのじゃないか。特に必要であるということなら、その違いというものが明らかにならなければいけないわけですね。その点を私はお聞きしているわけなんですよ。
  100. 中島一郎

    中島政府委員 この出会い送達本人に出会う可能性の最も大きいものを典型的に、住居所以外には就業場所であるというふうにとらえまして、これを特別な送達方法として創設をするというのが今回の改正であります。  従来の百六十九条二項の出会い送達でありますと、これは住所、居所、営業所事務所を有する者にありましては「送達ヲ受クルコトヲ拒マザルトキ」に限ってすることができるわけであります。したがいまして、本人が拒否した場合にはこれは送達はできないということになるわけであります。今回の就業場所における送達にありましては、本人はこれの受領を拒否することはできないわけであります。  それから、本人送達交付をすることができない場合には、出会い送達の場合には補充送達ということは考えられないわけであります。今回の就業場所における送達におきましては、一定の要件のもとに補充送達を認めるということでありますので、今回改正の必要があるわけであります。
  101. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま民事局長のおっしゃったようなことは、提案理由説明の中にはないのじゃないですか。どこにそういう説明が書いてありますか。
  102. 中島一郎

    中島政府委員 提案理由はごく骨子を抜き出して説明をしてあると思いますので、ただいま申し上げましたようなことについては書いてございません。
  103. 稲葉誠一

    稲葉委員 確かに出会いという言葉はありますね。就業場所において送達を受けるべき者に出会わないときはこういうふうにするのだ、こう書いてありますね。そうすると、出会ったときは当然本人が受け取らなければならない、受け取りを拒否できないということになるわけですかな。ちょっと私もそこら辺のところはよくわかりませんね。そこまで法律でやることが一体いいのか悪いのか、相当無理があるような気も私にはするのですが、私も送達のことは実際のことはよくわかりませんから、またこれは少し研究させていただいて、別の日に質問をさせていただきたいというふうに思います。  そしてこの表を見ると、最初に言った執行官送達の問題もあるのですが、お話では、いろいろな工夫をしながらやっているという話がありました。恐らく私は、日曜に特別送達が着くように書類を出しておるということを言われておるのではないか、こう思うのですね。ただそれは、速達の場合は全部日曜配達しているわけでしょう。だからそれに合わせるような形でやっておるというように私は聞いたわけなんですが、実際は、いつごろ、どこへ郵便が着くかといったって、日にちはおおよその見当はつきますからできますけれども、そういう意味で解決をしているのはどの程度あるわけですか。
  104. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 速達便を使いますと日曜配達ができるわけなものですから、上の表のE欄のウですね、九百七十三件がこの方法をとっているということでありまして、書記官室ではかなりこの方法の有効性を認めているようであります。ただ、これが何割成功しているかというところまではちょっと調査し切れないものですから、申し上げるわけにはまいりませんけれども、それにいたしましても、多くの送達書類送達事務で一々その日取りの計算をしてやらなければならないというのも、書記官にとっては大変なことでありますし、費用もかかりますので、できるだけ一回目の正式送達後は、昼間の不在者についてはそういう方法ではなくて、もっと一般的に就業場所というようなことでやった方が効果が上がるだろうし、費用も安かろうということだと思うわけであります。
  105. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは費用も安いといったって、それは原告の方で負担するので、速達はいま二百円ですか、私もよく知りませんが、よけいに払えばいいことであって。  それで、いま書記官がその点について非常に配慮していると言うけれども、実際は書記官配慮しているわけでも何でもないんじゃないですか。期日書記官が決めるかもわからぬけれども、その送達の方は、実際はどこでも事務官が全部やっているのじゃないですか。実際の事務事務官の女の方がみんなやっているのがあれですね。期日を決めるのは弁護人と相談してやって、いつ発送するかということは、書記官がやっているのではなくて、女の事務官の人がほとんどやっているのじゃないですか、どこでも。どういうふうに実際はなっているのですか。
  106. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 送達事務の多くを事務官が補助していることは御指摘のとおりでありますが、速達便を用いるかどうか、どの事件について用いるかということは、やはり書記官判断をしてやっておるところでありまして、補助の事務官限りで勝手にといいますか、自由に決めるということはないのではないかというふうに推測しております。
  107. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから結局、このウのところで速達の取り扱いによるものが九百七十三件あるわけですから、通常方法によるものというもので、これである程度賄えた。速達の取り扱いによるというのは、日曜日か土曜日か知りませんが、恐らくそこの送達ということを考えてやっているわけなんだ、こういうふうに思うわけです。そして、いまの出会い送達というのが私、よくわかりませんけれども、この条文があるとして、受け取りを、これは「拒マザルトキ亦同ジ」ですね。拒まないときに限ってやれるのだ。受け取りを拒んだ場合に、初めて今度は就業場所にやれるというような理解の仕方のようですね。そうすると、拒むと今度は罰則があるわけですか。郵便法で罰則になるのですか。これは法律はどういうふうになっていますか。
  108. 中島一郎

    中島政府委員 郵便法のことで、十分調査いたしておりませんけれども、罰則はないと思います。したがって、送達ができないということになろうかと思います。
  109. 稲葉誠一

    稲葉委員 もう一つ問題になってくるのは、たとえば特別送達が来ますね。来たときに、ただ判こをくれというので、判こをもらうだけですよ。判こをくれというので判こをもらって、認めでも何でもいいのですから、実印を押す必要はないかもわからぬけれども、認めで、くれといって押すだけの話ですからね、いまの段階では。署名または捺印でしょう。署名は郵便局の人が、いまは正式には郵便事務官というのかな、その人が名前を書くんですからね。だから後になって争いが起きるのですよ。後になって、そういう書類は受け取りませんと出てくるわけです。わからないわけです。  そうすると、特別送達ですから受け取ったようになっているけれども、判こを押してあるけれども、だれが打ったか、さあわからぬ。「同居者」という欄もあるでしょう。「雇人」という欄もありますね。それで丸をつける。それで、判こをくれというので判こを押しただけだということになって、だれが受け取ったのかわからぬから、これはやはり後の争いを避けるためにも、判こよりもむしろ署名、だれが署名したか、署名人というものをはっきりさせないと、これは送達の争いができてくるのじゃないかと思うのです。それはあなたの方には関係ない、これは郵便法の問題ということになるのですか。これはどういうふうになっているのですか。
  110. 中島一郎

    中島政府委員 実際の取り扱いといたしましては「郵便送達報告書」というものになっておりまして、それに「受領者の署名又は押印」という欄がございます。それから「送達方法」といたしまして、「受送達者本人に渡した。」のか、あるいは「受送達者は不在であったので、事理を弁識すると認められる次の者に渡した。」ということで、事務員雇い人同居者に渡したのか、あるいは「次の者が正当の事由なく受取りを拒んだので、その場に差し置いた。」ということで、受送達者が拒んだのか、事務員が拒んだのか、雇い人が拒んだのかという欄もございます。そして「送達年月日時」と「送達の場所」「上記のとおり送達いたしました。」ということで、配達担当者の記名、印欄もございますので、これはこのとおり適正に行われれば、私どもとしては送達の事実関係ははっきりするというふうに考えております。
  111. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間ですからきょうはこれでやめますけれども、私の言っているのは、そこで「署名又は押印」でしょう。だから、押印だけでは、ただくれというので判こをもらって、認めをもらって押しているのが現状なんですよ。だから、だれかそこにいる人が判こを持っていって、そして押しているのがあれですから、名前を書きませんから、だれが受け取ったのか本当はよくわからぬ場合が相当出てくるわけです。だから、それはいま言った「署名又は押印」というふうなことでやっているのは、それは郵便法なり郵便法の規則だか何だか知りませんけれども、それはどういうところに根拠があるのですかということを私は聞いておる、こういうことなんです。
  112. 中島一郎

    中島政府委員 民事訴訟法の百七十七条という規定がございまして、送達証書に関する規定でございます。「送達ヲ為シタル吏員ハ書面ヲ作り送達ニ関スル事項ヲ記載シ之ヲ裁判所提出スルコトヲ要ス」ということになっておるわけでありまして、これが根拠で送達報告書というのがつくられておるようであります。
  113. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはだから、基本的なことはそうだけれども、それに対して、いまのような細かいことについてはどこで規定されているか。民訴の規則か何かで規定されているんじゃないですかと聞いているわけですよ。これはそのとおりでしょう。そうでなければおかしいもの、それは。そこまでの細かい点は規則で決まっていなければおかしいんじゃないですか。となれば、その規則は直す必要があるのではないでしょうかということを私はお聞きしているわけです。
  114. 中島一郎

    中島政府委員 郵便規則に規定があるようであります。
  115. 稲葉誠一

    稲葉委員 きょうはこれで終わります。きょうはこれで終わって、次回、いまの郵便関係とか郵便規則とか、まだほかにいっぱい問題があるのですよ。だから十日にゆっくり聞きます。そういうことです。
  116. 熊川次男

    熊川委員長代理 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  117. 羽田野忠文

    羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所矢口事務総長、梅田総務局長及び小野刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  119. 羽田野忠文

    羽田野委員長 質疑を続行いたします。横山利秋君。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 まず最初に、同僚諸君の質問もございましたが、法案の内容について逐一ただしますから、簡潔にお答えください。  民事訴訟法百四十四条第一項、「一週間ヲ経過スルニ其記載ヲ為スベキ旨ノ申出ヲ為シタル場合ヲ除クノ外」「結果ノ記載省略スルコトヲ得」とありますが、一週間と限定した理由は何でしょうか。
  121. 中島一郎

    中島政府委員 訴訟完結までにというようなことも考えておったわけでありますけれども、それでは余りにあわただしい、若干の熟慮期間と申しましょうか、考慮期間を置く必要があるんじゃないかということでございました。さりとて、それが余り長くなりましては、調書をつくるべきか、つくらなくてもいいのかということが決着をいたしませんので困りますということでありまして、まあ一週間くらいあればその点について熟慮して、当事者申し出をするかしないかの決定もできよう、裁判所の方の事務の処理という点からいっても、まあそれくらいは妥当ではないかということで、一週間ということになったわけでございます。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと短くありませんかね。「当事者訴訟完結シタルコトヲ知りタル日ヨリ一週間」。記載省略について、後々のことを考えますと一週間ではちょっと短い感じがいたしますが、御検討はしませんでしたか。
  123. 中島一郎

    中島政府委員 通常の場合でありますと、和解が成立いたしますと、その場に当事者もいるわけでありますが、調書作成する必要があるかどうかということについては、それほど事実を調査しなければならないというようなこともございませんし、それほど複雑な思案をめぐらさなければならないということでもございませんので、まあ一週間もあれば十分であろうというような御議論であったわけでございます。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと意見が違いますけれども、前へ進みます。  百五十四条の第二項、「前項ノ呼出ハ最初ノ期日ノ呼出ヲ除クノ外同項ニ定ムル方法以外ノ相当ト認ムル方法」ということは、「相当」というのは全くの自由裁量にゆだねられておるわけですか、何が「相当」ですか。
  125. 中島一郎

    中島政府委員 全くの自由裁量という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、その事態に最もふさわしい方法ということになるだろうと思います。実際問題といたしましては普通郵便が多く用いられるかと思うわけでありますが、それ以外に、たとえば弁護士である訴訟代理人に対しましては電話で連絡をするというようなことも、実際に簡易裁判所においてはすでに行われていることでありまして、これと同じような扱いをすることになろうかと思っております。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 「相当ト認ムル」という言葉が特に入っている理由がわからないのであります。不相当と認める場合は、どういう場合ですか。
  127. 中島一郎

    中島政府委員 適当な方法というような意味と同じことで相当と認める方法ということを使っているわけでありまして、要するに、呼び出し手続の厳格性ということを非常に強調いたしましたならば、この一項のように呼び出し状を送達するという方法になるわけでありますが、これでは非常に費用もかかります。場合によりますと、書留郵便でありますから受送達者が不在の場合には送達ができないというような弊害もございます。したがいまして、それを緩和しまして別の方法、呼び出し状を送達するという方法以外の方法をとることができるわけでありますが、その中にはいろいろな方法があるわけでありまして、先ほど申しましたように、普通郵便による方法もあれば、電話による方法もある。あるいはまれな場合かと思いますけれども、だれかに言づてを頼むというような方法もあろうかと思います。それをその場合場合にふさわしい方法を選ぶということであろう、こう思います。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 ここに言う「相当ト認ムル方法」というのは、この法律によって改正された諸方式による方法以外に、方法が認められているわけですか。
  129. 中島一郎

    中島政府委員 この改正法によって認められた方法ということになりますと、就業場所における送達ということが中心になろうかと思いますが、それ以外の方法ということになります。ただ、その相当と認める方法によって呼び出すという百五十四条の二項の規定も今回の新設によって認められた新しい方法ということに、法律的には新しい方法ということになるわけであります。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 どうもはっきりしないのですが、あえてもう一週間きますと、不相当と認むる方法がいまあなたの頭の中にあるのですか。
  131. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 実はこの簡易の呼び出しの方法は、現在簡易裁判所の特別として条文化されておりまして、この条文、三百五十六条ノ二でございますけれども、この条文に、相当と認める方法によって呼び出しができるというふうになっております。この規定によりまして、簡易裁判所におきましては、相当と認める方法、先ほど法務省から御説明がありましたように、電話、普通郵便等を用いまして呼び出しをやっておるわけであります。  この方法がかなり費用も安く済みますし、効果も上がりますものですから、地方裁判所におきましても事実上この簡易の呼び出しを行っているのが現状であります。その事実上行っておりますために、その費用が正式に法律訴訟費用化されないということがあります。(横山委員「私の質問に答えてください。不相当と認める方法は何かという質問です」と呼ぶ)はい。でありますから、現在の簡易裁判所において制度化されております簡易の呼び出しにおける相当と認める方法が今度新法の百五十四条に持ってこられておるわけでありますから、相当と認めるのは、はがき、電話、普通の六十円の封書等々が考えられるということでございます。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 答えにならぬわね。不相当と認める方法は何かと聞いているのです。これは後でお答えをお願いいたします。考えておいてください。  同項の一番最後、「此ノ場合ニ於テハ期日ニ出頭セザル当事者云々が出なかったからといって、「法律上ノ制裁其ノ他期日ノ懈怠ニ因ル不利益ヲ帰スルコトヲ得ズ」、これはどういうことですか。常識的に見て、出なかったからといって一切の制裁、不利益はない。一切のという意味ですか。
  133. 中島一郎

    中島政府委員 理論としてはそういうことになるであろうと思います。被告が正当な事由なく出頭しなかった場合には、明らかに争わないものとみなされて欠席判決をされるという不利益があります。また、証人等が出頭しなかった場合には、過料の制裁あるいは罰金の処罰を受けるというような不利益を受けることがあります。そういったものを一切ひっくるめて不利益を受けない、こういう趣旨でございます。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 百六十二条、現行法の「郵便集配人」を「郵便ノ業務ニ従事スル者」にかえた理由は何ですか。
  135. 中島一郎

    中島政府委員 今回、私どもこの改正法案を準備いたします段階で、郵政当局といろいろと接触をしたわけでありますが、郵政当局でおっしゃいますのは、現在の「郵便集配人」という表現は、現在郵便業務に従事する者が行っている仕事の内容を十分にあらわしていない。しかも非常に単純な仕事のようであって、暗いイメージもある。これを「郵便ノ業務二従事スル者」という表現にして、実態をよくあらわすとともに、郵便業務に従事する者のイメージアップを図りたいのだというお言葉でありました。私ども、必ずしもこれがイメージダウンにつながっているというふうに思わなかったわけでありますけれども、郵政当局の強いお気持ちでありましたので、これを受け入れることにしたわけでございます。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 集配人以外に郵便局におる人間をも含めるという解釈があり得るのですか。
  137. 中島一郎

    中島政府委員 今回のものでもそうでありますけれども、窓口で郵便を渡すというようなことが予定されておりますが、そういう者は集配人と言えば集配人というふうに言えるかもわかりませんが、集配人ではない業務に従事する者と言えば言えるかと思います。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 第百六十九条の第二項、「前項ニ定ムル場所ガ知レザルトキ」。「知レザルトキ」というのは日本語にあるのでしょうかね。その次に、「送達ヲ為スニ付支障アルトキハ」。「支障アルトキ」という判断は、全くの裁量がその裁判所の担当者にゆだねられるのか。それから、「送達ヲ受クベキ者ガ雇用、委任其ノ他ノ法律上ノ行為ニ基キ」という、ここに言う「雇用」は、自分が雇用主である雇用なのか、被用されておる被用者であるのか、どうですか。
  139. 中島一郎

    中島政府委員 「知レザルトキ」あるいは「支障アルトキ」というのは、送達についての原則的な方法であります住所、居所等における送達をしないで、それにかえて就業場所等における送達をするという場合の一つの要件でありますから、厳格に解釈しなければならないものであって、裁判所あるいは裁判所書記官の裁量に任されておるものではないというふうに考えております。  それから、この場合の「雇用」でありますが、「雇用」というのは、被用者として雇われて、自分の住居所あるいは自分の事務所、営業所以外において就業しておる場合に言うことでございます。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 それならば、ここは受くべき者が被用ではないのですか。これを見ますと、後の方にどこか出てくるような気がするんだが、被用の場合、いわゆる雇用されておる被用の場合が出てくると思うのですが、ここは自分が雇用しておる、この「雇用」というのは雇っておるという意味でしょう。「受クベキ者が雇用、委任其ノ他ノ法律上ノ行為ニ基キ就業スル他人ノ住所」、ここは実際は被用の意味ですか。被用されておる者の意味なんですか。
  141. 中島一郎

    中島政府委員 そのとおりでございます。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 「法律上ノ行為二基キ就業スル他人ノ住所」という、「法律上ノ行為二基キ」というのが特に入っている意味は何ですか。
  143. 中島一郎

    中島政府委員 代表的なものは、そこの前に書いてございます雇用あるいは委任契約でございます。しかし、雇用あるいは委任以外の法律上の行為に基づいて就業しておる者もあるわけでございます。たとえば出向というようなことでありますと、その就業場所の人間とは雇用関係もなければ委任関係もないわけであります。たとえばそのほかにも公務員というようなことでありますと、これは雇用でもない委任でもない、任命行為に基づいて就業しておるということが言えようかと思います。そういう法律上の行為に基づいて就業しておる場合ということでありまして、事実上の行為に基づいて就業——就業と言っていいかどうかわかりませんけれども、事実上の行為によってそこで仕事をしておるという者を省く、それを除く趣旨でございます。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 三項に「其ノ者ニ出会ヒタル場所ニ於テ之ヲ為スコトヲ得」という、けさほども質問がありましたが、「出会ヒタル場所」というのは偶然にという意味でありますか、それともあそこにおるらしいといってこちらが訪ねていって、おると思わしき場所におったという意味でありますか。
  145. 中島一郎

    中島政府委員 この三項の解釈といたしましては、その両方を含む趣旨であるというふうに理解しております。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 百七十一条の「事理ヲ弁識スルニ足ルベキ知能具フル者」、これは本当によくわからないことでありますが、要するにどういうことなんですか。常識を持っている者というふうに理解すべきことですか。
  147. 中島一郎

    中島政府委員 そういうことになろうかと思いますが、補充送達を受けて、それがいかなるものであるか、自分が何のためにこれの交付を受けたのかということが理解できる能力がなければならないと思うわけでありまして、それを受送達者本人に渡すことが十分に期待できるような、そういう能力ということになろうかと思います。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 だれがそれを判断するのですか。
  149. 中島一郎

    中島政府委員 第一次的には送達の業務に従事する者、執行官あるいは郵便の業務に従事する春ということになるわけであります。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 第二項の「同項ノ他人又ハ其ノ法定代理人事務員ハ雇人ニシテ事理弁識スルニ足ルベキ知能」と言っておりますが、ここに言う「他人」とはだれですか。
  151. 中島一郎

    中島政府委員 百六十九条の二項によりまして、「雇用、委任其ノ他ノ法律上ノ行為ニ基キ就業スル他人ノ住所、」のその「他人」でございます。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 第三項の「書類ノ交付ヲ受クベキ者が正当ノ事由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒ミタルトキ」とありますが、ここに言う「正当ノ事由」というのは、どういう意味でありますか。
  153. 中島一郎

    中島政府委員 名あて人が間違っておるというようなことが教科書などには書いてございます。それから、条文としては後の方に出てまいるかと思いますけれども、刑務所に入所中の者に対する送達は、その監獄の長に対してすることになっておりますが、それを誤って住所、居所等に送達をした、家族がおりまして補充送達を受領するように求められたというような場合その他が考えられるかと思います。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 だれがそれを判断するのですか。
  155. 中島一郎

    中島政府委員 やはり第一次的には送達の業務を行う吏員ということになります。
  156. 横山利秋

    ○横山委員 正当の理由なくしてこれを拒みたるときはそこに書類を差し置くことが得とありますのは、そこへほうっておけということですか。
  157. 中島一郎

    中島政府委員 放置すると言うと、ちょっと言葉が適当でございませんが、文字どおり差し置くということでございます。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 おれはもらわぬと言うのに、置いていくと言ってけんかをして、そこへほうっておくということじゃないですか。ほうっておくことに対して第三項は、ほうっておきましたよということで、ほうっておいたということによって一体法律上どういうことになるのですか。ほうっておいても効果がある、この法律はそこで送達が終わったという判断をするわけですか。
  159. 中島一郎

    中島政府委員 差し置いたことによって送達の効果は発生したということでございます。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 送達を受けて拒んだ人間は、ほうっておきやがった、そんなものはおれの知らぬことだ、おれは受けぬ正当の理由があるといって争うわけですが、争っても何にもならぬぞという意味ですか。
  161. 中島一郎

    中島政府委員 差し置き送達が有効にされるためには、あくまでも「正当ノ事由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒ミタルトキ」という要件が必要になるわけであります。この要件がないにもかかわらず差し置いた場合には、差し置き送達は有効ではないということになります。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 本人は正当の事由があると言う、送達した人間は正当の事由がないと言う。そういう争いの中にそこにほうっておいた。これは法的な効果がある、いや、そんなことはないという争いがあったときにはどうなるのですか。
  163. 中島一郎

    中島政府委員 裁判所がその送達が有効にされたかどうかということを判断いたしまして、有効にされたという判断に立てば事後の手続を進めるでありましょうし、送達の効力に疑義があるということであれば、改めて有効な送達をするということになると思います。
  164. 横山利秋

    ○横山委員 第四項で、常識を持っておる者、「事理ヲ弁識スルニ足ルベキ知能具フル者」に書類を置いてきたということは、本人書記官は通達しなきゃあかんよとなっておりますが、第三項はほうりっ放しで、後の始末はないのですか。
  165. 中島一郎

    中島政府委員 第三項の場合には、本人が、あるいは本人にかわって送達を受くべき義務ある者が、書類が届いておるということを知っておる場合であります。第四項で問題にしております第二項の場合には、これは本人は知らない場合でありまして、事務員雇い人等が本人にかわって書類を受け取った場合であります。でありますから、まだ本人の支配下に書類が届いたというふうには見ることはできませんので、そういう点に若干問題がありますので、第四項によって、普通郵便等その他の方法によって本人あてに通知をするわけであります。
  166. 横山利秋

    ○横山委員 百七十二条、前条によって送達ができなかった場合には書留郵便で出せ、こういうのですが、書留郵便が届いたかどうかについての確認は、実際上書留郵便を出してもおらぬ、受け付けぬ、拒否するという場合における百七十二条のフォローはどうなるのですか。
  167. 中島一郎

    中島政府委員 百七十二条の場合には、書留郵便に付したときに送達の効力が生ずるということでありますので、理論的にはその書留郵便本人に届いたかどうかということの判断は必要でないわけであります。
  168. 横山利秋

    ○横山委員 執行官に以前からいろいろ聞いておる分では、夜間送達、休日送達を一生懸命にやっておりますという話を聞きました。今回のこの法案によって、夜間送達並びに休日送達をできる限り少なくしたいという心理があるようでありますか、どうですか。
  169. 中島一郎

    中島政府委員 必ずしもそういうことではありませんが、夜間送達あるいは休日送達ということになりますと、これは執行官の配置があるかどうかというような問題にも関係をいたしてまいります。配置がありましても、執行官の手持ちの仕事の関係がどうなっておるか、執行官は御承知のように執行という重要な職務がございますので、送達の方にどの程度時間をとることができるかというような具体的な事情もあるわけでありますので、そういうものをも含めて考えまして、執行官による送達、すなわち夜間もしくは休日送達というものに支障がある場合には、この就業場所における送達という方法をとることができるようにしたいというのが、今回の改正法案でございます。
  170. 横山利秋

    ○横山委員 執行官の状況を聞きましたところ、現在三百七十名ですか、法改正以降いろいろな改正がありまして、ずいぶん努力をしておられるようであります。  一つは、先般執行官法をつくりましたとき、執行官の報酬について根本的な整理をする、根本的な給与制度にするという趣旨の附帯決議がありましたが、その後どうなっていますか。
  171. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 執行官の俸給制への移行、これは完全俸給制か手数料との併用俸給制かは別といたしまして、それは進むべき方向であるというふうに考え、立法当局とも御相談をしておるわけでありますけれども、格づけの問題とか昇進をどうするかとか、あるいは併用の場合、俸給類と手数料額をどういうふうに決めるかとか、いろいろむずかしい問題がありますことと、執行官の中に必ずしも俸給制への移行を望まないという声もありまして、いろいろな要素がまざり合わさりまして、まだ実現の方向には向かってないというのが現状でございます。
  172. 横山利秋

    ○横山委員 当時もう一つは、執行官の下で働いておる事務局の諸君、古い人については登用をしてやるべきだろうという趣旨、あるいはまた研修制度を十分にやれという趣旨が強く指摘をされたところでありますが、その従事員からの登用は現状どういう状況になっておるか。研修状況はだれがどういうふうな方法をやっておるか、伺いましょう。
  173. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 まず第一点の執行官への登用の点でございますが、これは恐らく、当時執行吏代理と言っておりました者の中からの登用という御趣旨であろうと思います。これは法の改正の際に執行吏代理の制度は廃止されましたけれども、身分保証という関係から、執行官臨時職務代行者という姿になったわけであります。それで、この人たちが法改正当時約二百四十人おりましたけれども、現在は二十六人に減少しております。その中で執行官に登用された人が五十二名でございます。このように執行官臨時職務代行者を含め、法改正後四百数十名の新しい執行官が採用されておりますけれども、そのほとんどは裁判所書記官事務官であります。  この人たちの研修につきましては、まず初任執行官研修というものを、書記官研修所において全国統一的に行っております。その後は各地方裁判所におきまして執行官研修を行いますし、私どもが各高裁単位で執行官の会同、協議会等を催し、その資質の向上を図っているという状況でございます。
  174. 横山利秋

    ○横山委員 先般来、執行官の競売について競りがなく入札制度になりまして、書面による入札の応募が可能になりました。その実施状況はどうでありましよう。
  175. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の期間入札の制度は、東京、大阪等でまずスタートいたしまして、その後本庁で十数カ庁、支部で数カ庁この制度を取り入れております。各方面から暴力団の介入が報ぜられておりますために、私どもといたしましては、この期間入札の制度が暴力団の介入防止に非常に役に立つというふうに考えておりますので、これを全国の裁判所に押し及ぼしていくよう施策をとっているところでありまして、今年度末には、恐らく本庁で四十ぐらいはこの制度を取り入れることになると思っております。
  176. 横山利秋

    ○横山委員 執行官業務につきましては、かねがね私もいろいろな角度で業務の改善を指摘しておるところでありますけれども、本法の改正によって執行官が本来の現況調査に十分に努力されるように、夜間、休日送達がこれで少なくなることが、国民の皆さんにとって一体どうなのかという感じが多少いたしますけれども、執行官業務の改善がこの改正によってさらに推進されるように希望をいたしたいところであります。  先般、いまの報酬の問題もございましたが、執行官はいま一体どのぐらいの、最低、最高、平均の報酬をもらっていますか。
  177. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 五十六年度で申し上げますと、これは粗収入で申し上げますが、全国平均が千三百五十二万九千円でございまして、最高は横浜地裁小田原支部の三千六十四万二千円ということになっております。
  178. 横山利秋

    ○横山委員 先ほどへ戻りまして、百四十四条に入るわけですが、調べていきまして、和解解決と訴えの取り下げ解決が非常に多いということに、私も一驚を喫しました。この場合に、先ほども午前中質問が出ておったわけでありますが、証人調書和解無効、重大な事実誤認、代理人資格の争い等で後で問題が起こるというときに、その調書ができていなかった、どうやらなっちゃっておったということが実際問題として起こるのではあるまいかということが感じられます。問題としては、和解の効力を争った件数等問題になりそうな件数は一体どのくらい現在までにあるのであろうかどうかということと、和解になりそうだということは大体事前にわかるわけでありますから、書記官の諸君が、和解になるのなら何も忙しいときに調書をつくっておかぬでもいいだろうという可能性があるのではないかということが心配されるのですが、どうですか。
  179. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 和解の効力を争う訴訟等がどの程度あるかを正式な司法統計としてとっておりませんために、わからないわけでありますけれども、東京、大阪、名古屋、この三大地裁本庁の五十六年一月から十二月までの一年間の実情を調査した結果がございますので、それを申し上げたいと思います。  この三つの裁判所で、まず五十五年度に和解によって既済になった件数が一万一千九十七件でございます。そして五十六年度に和解の効力を争う事件が二十五件起きております。前年度の和解で済んだ事件が一万一千件、そして翌年その一万一千件の中から出たというわけではありませんが、五十六年度じゅうに和解の効力を争う事件が二十五件出たというわけであります。これはパーセンテージで申し上げますと〇・二二五%ということになっております。非常に少ないケースであると思われます。  なお、ついでに申し上げますが、この二十五件が一体どうなったのか。和解無効が認められたのかどうか、この点までは調査ができておりませんけれども、われわれの経験的なところから申し上げますと、この二十五件のうちで和解無効が認められるケースというのはきわめて少なかろうというふうに思っております。  なお、和解の見通しが出てきた、和解期日を重ねている、その場合に、和解に入る前に取り調べた証人調書等をつくらないでほっておくのではないかという御指摘でございます。確かに人間やすきにつきやすいものでありますから、心がけ次第ではそういうおそれが全くないということは断言できないのでありますけれども、和解ができるかどうかの見通しも立たず、ただ和解手続に入ったというだけで調書作成をおろそかにする、あるいはできるであろうという見込みで調書作成しないというようなことは、これは許されないことだと考えております。調書省略の制度がない現在におきましても同様の危惧はあるわけでありますけれども、そういうことは絶対にやらないという指導は行き渡っているものと理解しております。
  180. 横山利秋

    ○横山委員 私の勘違いかもしらぬけれども、そういうような和解解決と訴えの取り下げ解決が多くて、それに対して和解無効や重大な事実誤認、代理人資格の争い等が件数は少ないけれどもあるというときに、一週間を経過するまでに言わなければいかぬよという百四十四条が少し不自然ではないか、こういう意味です。
  181. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 確かにごく少数とはいいながら、効力が争われ、あるいはその和解の効力が結果において否定されるといたしますと、その従前訴訟がまた生き返りまして審理が続けられるということになるのが通常でありますけれども、そうなった場合を仮定いたしますと、前に調べた証人調書省略はしておかなかった方がよかったということになるのは当然であります。そういう場合には、省略をしておかなかった方がいいということになるわけでありますけれども、これがきわめて少ないケースであるということ、それから一方において、ほとんどのケースにおきましてはもはや用がない調書である、それを全部つくらなければならないそのエネルギー、そういうバランスの問題であろうかと思うわけであります。今度の新しい制度が、私どもとしてはそれなりのバランスを保った合理性のあるものであるというふうに考えておるわけでございます。
  182. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと説得力がありませんね。訴訟完結したことを知りたる日より一週間を経過するまでに申し出なければいかぬよ、その一週間裁判所が——二週間だって何もしなければいいのですからね。一週間というきわめて短い期限を限らなければならないことは、選択の問題じゃないと思うのです。二週間だって一月だって、別に差し支えはないのじゃありませんか。そういうことが私は不自然だと思うのです。一週間ということは、実際問題としては完結したらもう省略だという論理と同じことだと私は思うのですよ。だから、二週間だって一月だっていいんじゃないか。一週間という、事実上完結したらおしまいだという論理というのはおかしいじゃないか、こういうふうに聞いているのです。
  183. 中島一郎

    中島政府委員 一週間なり二週間なりという期間は熟慮期間でありまして、その間に調書作成申し出ればいいことになるわけであります。もっと考えれば調書作成省略してもらっていいのかもわからないけれども、一週間では短過ぎるということであれば、その短い期間の間にお考えになった結論に基づいて調書作成申し出ておいていただければいいということになろうかと思います。
  184. 横山利秋

    ○横山委員 おっしゃるけれども、訴訟完結した、よく読んでみたらこれはおかしいと思いついた、人から和解なんてそれはおかしいですよと言われた、和解無効、事実誤認、代理人もそんなのはおれの代理人じゃないというごたごたが、一週間の間に判断ができて、省略してもらっては困るというように、そう簡単なものじゃないと私は思いますよ。だから、一週間ということは、事実上完結したらさようならだということに等しいわけだ。それを二週間ならなぜいかぬのか、一月ならなぜいかぬのか。一週間たったらもう全部処置しなければならない積極的な事務上の必要性は何もないではないかということなんです。どうもこれは納得できませんね。これは一週間と書いてあるのだけれども、一週間で通ってしまうと、何とも弾力性のない話ですね。
  185. 中島一郎

    中島政府委員 法制審議会の民事訴訟法部会におきましてもそういう点が問題になったわけでありまして、期間の点より、まずこの当事者申し出によって調書をつくるという制度を設けるかどうかというようなことから議論になったわけでありまして、私どもはその際における結論をそのままとって法案にしたという結果でございます。
  186. 横山利秋

    ○横山委員 あなた方の問題を人の責任にしてはいかぬですよ。これは私としては大変おかしい。  それから、判決書の証拠事項の調書引用の問題ですが、参議院でも議論になって、多少は何かおっしゃっていらっしゃるようだけれども、判決書は永久だ、証拠書類は十年だ、それじゃ判決書の中へ省略して書いてしまう、証拠を調べようと思っても、十年たったら証拠書類はありはしない、そういうことについて、結局はその論理はどうなさるおつもりですか。
  187. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問の趣旨は、記録は十年で廃棄され、判決は現在のところ永久保存ということになっておりますが、この引用した証拠関係書類が記録とともに廃棄されてしまって、何にもわからなくなってしまうのではないかという御指摘だったと思いますが、その点につきましては、すでに御承知と思いますけれども、現在、判決書の事実欄の最後記載しておりますその証拠関係記載というものは、原告は甲一号証から十号証まで出した、証人甲の尋問を求めた、被告は乙一号証から五号証までを提出した、それで本人尋問を求めた、それだけしか書いてないわけでありまして、その部分が記録の中に証人等目録あるいは書証目録として一覧できる表になっておりますので、それをわざわざ書くのは機械的、形式的ではないかということで、このような改正法案ができたものと理解しておるわけであります。  したがいまして、その形式的な記載の部分でございますので、それがなくなったとしても、これは判決の内容がわからなくなるということにはならない、判決というのはだれとだれとの間にどういうことについて裁判がなされたかということが重要でありまして、証拠に関する引用部分がないとしても、その判決の効力、人的、物的既判力の及ぶ範囲の確定ということは十分できるのだろうというふうに考えておるわけでございます。
  188. 横山利秋

    ○横山委員 そう言ってしまえばおしまいですけれども、判決書を見れば、判決の効力は、証拠事項の調書がなくてもそれは判決の効力に変わりがないことはあたりまえですが、いろいろと他の関連の裁判あるいはそれによるいろいろな学問的な研究、そういうものに必要で、判決書を見れば済むというものではない。その詳細な証拠書類について、判決は永久だけれども証拠書類は十年でおしまいだ、だからそこのところは、判決書に引用されておる証拠書類については一緒にとじ込んでおくなり何なりしておいた方がいいではないかという意見に対して、にべもない話ですか。
  189. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 現在の訴訟記録の編成の中身をちょっと申し上げますが、訴訟記録には当事者が出した訴状とか答弁書をつづる部分がありまして、その後、証拠書類等、証人尋問調書等をつづる部分があります。こういうのが十年の保存期間がたちますと全部廃棄されて、証拠、その記録にあります証人調書あるいは書証の写し等は全部廃棄されてしまうわけであります。  いま問題になっておりますのは、どういう証拠を出したかという記載はいままでは判決書に書いておったわけでありますが、記録の中に原告側、被告側、どういう証拠を出したかという一覧表がございます、これを引用することによってかえようというだけのことでありますので、記録が廃棄されて証拠が、証人調書やあるいは書証の写しがなくなってしまうという点につきましては、この改正には何ら関係がないということでございます。そういうことで御了承をいただきたい。
  190. 横山利秋

    ○横山委員 御了承できませんが、時間がありませんから、この際、裁判の遅延問題について事務総長に伺いたいと思うのです。  とかく私ども、裁判裁判所のあり方について議論をいたしますときに、法曹界の各方面の専用家の御意見を伺うわけですけれども、しかし、一般国民が裁判のことはわからないから、法曹界の皆さんに信頼し、依頼をするということであって、国民的な裁判制度に対する意見その他については、わりあいに集まってこないと私は思うのであります。  訴訟というものについて慎重と公正を求めることは、もうあたりまえのことでありますが、しかし、もう一つの迅速と裁判を安くやってもらうということが、とかくなおざりになっておるような気がして私はならないわけです。早くやってもらいたい、安くやってもらいたい。裁判って時間がかかるぜ、裁判って金かかるぜというのが、国民一般の共通の心理なんであります。したがって私どもも、私は法曹界出身でもないただの労働者出身なんでありますが、国民全般の声にこたえる裁判制度の改善というものがわりあいにない、われわれは心しなければならぬことだと思っておるわけです。  調べてみますと、日本では全訴訟事件と同数に近い調停事件がある。これが世界の中で日本の特色の一つだそうであります。それからもう一つの特色は仮処分がほとんど本案訴訟の果たすべき役割りを肩がわりしているというのも、世界で類例のない日本の特色だそうであります。なるほど、そう言われてみれば私もそうだと思う。こういうような現象というものは、裁判をやればおくれるで、勝つと思うけれどもそんなもの最高裁までやられちゃかなわぬから、金がかかるから、まあ調停にしておこうかというような傾向が多いのであって、これでは本当に裁判が国民の期待を負っておるとは思えない、こういうふうに感じます。  それで、安中訴訟を例にとってみますと、これが十年かかりましたか、裁判長が五人かわって、当事者が二十二人死にました。昭和十二年ごろから安中公害の問題は議論になったわけでありますが、ことしの三月に判決が出るまで、訴訟としても約十年かかっておるわけであります。  いろいろな論文を読んでみましたところ、この比較が、アメリカもそうでありますが、西ドイツの比較を見ますと、まことに対照的に、裁判所裁判官の数も比較にならぬほど多いのですね。最高裁の統計ちょっと古いのですけれども、四十年の統計ですか、十年以上の裁判にかかっているものが百九件の既済、未済が百七十件。最高裁の裁判官は、十年も前のものを一生懸命に書類をひっくり返して調べておる。最高裁というのは、国民にとっては雲の上でありますから、高裁から離れて最高裁へ行ったのはどうなっているやら全然わからぬ。そういう雲の上で十年も前のものを百件も二百件も抱えてやっておるということについて、どうも私は現実的な感覚がなかなかしないわけであります。  一体、国民的な要望であります、裁判に時間がかかる、もう少し安くやってもらえぬだろうかという点について、裁判所としては基本的にどんな心構えでいらっしゃるんでしょうか。
  191. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員から裁判のあり方というものにつきましてのきわめて鋭い御指摘があったわけでございます。  私ども、争いというものは、いろいろの人間が社会で生活しております以上は、なくすることはできないというふうに考えております。社会が複雑になればなるほど、また価値観の多様化ということが叫ばれておりますが、そういうことがあればあるほど、どうしてもどこかで解決をしていかなければいけないそういう争いというものは、これは絶無にしてしまうということはできないわけでございます。といたしますと、そういった争いをだれが解決するかということになれば、やはり司法制度というものの健全な運営によって解決する以外に、現在の文化の英知というものはそれ以外にないということで、司法制度が作用しておるというふうに理解をいたしております。  といたしますと、司法の最終の目的というものは、やはりいろいろある争いというものをできるだけ時宜を得て解決するということにあるわけでございまして、それをさらに細かに見てまいりますと、まず迅速な解決というものが要請される、これはもう当然のことでございます。ときには、おくれた解決というものは解決のないに等しいわけでございますので、御指摘のように、迅速な解決ということが真っ先に出てくる問題であろうかと思います。  ただ、そうは申しましても、話し合いで事が終わるということであるならば、どんなに早く話がつきましても、それで結構、めでたしめでたしということになるわけでございますが、どうしても考え方の対立がある、事実の認識についての争いがあるという両当事者紛争というものを前提にいたします限りは、そこに有権的に解決しなければいけない。有権的な解決というのは、考えてみればどちらかに不利であり、どちらかに有利であるという解決になるわけでございます。といたしますと、その解決というものは、個々の争いの両当事者から見て、あるいはある点で不満である、ある点では非常に満足であるということであるにしても、両者が満足を得るということはできないわけでございますので、どうしても客観的第三者が見てそれは適正な解決であるというふうに思われるようなものでなければいけないということが出てまいります。これが的確性、正確性の要求であろうかと思います。  そのように見てまいりますと、迅速の要求というものと正確性の要求というものは、車の両輪ではございますけれども、実は相反する命題を突きつけられているということになるわけでございます。私どもが一番悩みますのは、やはり迅速性もまことに必要である、しかし、より的確な答え、迅速性にも増して正確な答えでなければいけないんだ、仮にどちらかの不利益をこうむった当事者が、おれは満足できないと言っても、客観的にいろいろの人がごらんになって、それでいいんだと思えるような結論でなければいけない。これが非常にむずかしいところでございまして、個々の事案によって、ときに的確性というものに重きを置き、ときに迅速性というものに重きを置くという結果になって出てくるというのが現在の訴訟のあり方ではなかろうかと思います。  御指摘の西独における裁判でございますが、私どもも、上西独には相当多数の裁判官がおられ、また日本の十倍以上の事件が起こっており、そして、それが現実に、私どももかつてヨーロッパで西独の裁判所を傍聴させていただいたことがございますが、裁判官がてきぱきと訴訟指揮をして、あっという間に事件解決しておられるというところを見まして、その面においてわれわれとして十分学ぶべきものがあるというふうに感じたわけでございますけれども、そういうふうに解決をしておられる、それで裁判官の出した結論には従っていくというようなところが見受けられまして、二面学ぶべきものが非常に多いというふうに感じたことがございました。  私どもの日本でのあり方ということでそれをこちらに持ってまいりました場合には、では、日本は常に西独的なやり方をしていないのかというふうに考えてまいりますと、私は必ずしもそうでないような感じがいたします。御指摘の調停における簡易な解決方法、そういったものも、西独における裁判官の面前における、職権で訴訟を進行し、あっという間に判決の言い渡しがなされるというやり方と基本構造においては相通ずるものがある。国民性の相違もございますので、どちらかというとドイツでは理屈で解決をし、それで満足をする。日本では話し合いで解決をし、それで両当事者が満足をする。同じところを目指しておるのではなかろうかというふうに感じておるわけでございます。  ただ、例としてお挙げになりましたけれども、公害事件等の大きい事件になりますと、確かに時間がかかっております。それは刑事事件でも同様でございまして、十年、あるいはひどいのになりますと十数年かかっておるような事件もございます。これは決して私どもそれがいいと思っておるわけではございませんで、最善の努力をして、やはり少しでも短くしていくように努力していかなければいけないと思いますけれども、あえて言わしていただければ、新しい型の新しい権利に関する多数当事者紛争といったようなことになりますと、どうしても迅速性の前に慎重であらねばならない、的確性が前面に出てこなければいけないといったような配慮が働きましておくれておるわけでございまして、そういった点ははなはだ残念に思っておるところでございますが、現状としてはそういった非常におくれておる事件も皆無ではないということについては、以上申し上げたようなところからお許しをいただきたいというふうに思っております。  ただ、私といたしましては、司法というものが国民の信頼を得ていくためには、やはり時宜に適した、時機を得た解決というものに持っていかなければいけないということについては最大命題であるというふうに考えておりますので、事案によりまして、より迅速に解決するという事案と、時間をかけてもじっくり審理して、みんなの納得のいくような結論に努力しなければいけないという事案、そういった二つの型の事案をえり分けることによって、国民のなお一層の信頼を得られるようになればというふうに念願をいたしておるわけでございます。
  192. 横山利秋

    ○横山委員 裁判所としてはそうであろうし、裁判官としては、迅速よりもやはり公正、判決に間違いのないということをお考えになるのが私は普通じゃないかと思うのです。  詳細は知りませんけれども、実はいま訴追委員会にある裁判官の訴追請求が出ています。それはサラ金業者の起こしたものですね。その概要を私がちょっと聞いたわけですが、サラ金業者から簡裁に申請が出て、判事が被害者を呼んで、それじゃおれがやってやるからこれだけ金を持ってこいと言って、金を持ってきたら、今度はサラ金業者を呼んで、最高裁の判決があるから、おまえのところは裁判になったらこうだぞ、それが嫌だったら和解に応じろというので一生懸命にやって、そして当事者がもうそれで了承したら調停取り下げろというやり方で、実に縦横無尽の活動をしておる。サラ金業者が、あんなやり方めちゃくちゃだといって怒って、どうも訴追請求をしたようでございます。  私は、それは両面があると見ておるわけでありまして、いま国会で問題になっておりますサラ金業者の法案の数字よりもちょっと高目に和解しておるような気がするわけです。その判事さんは、最高裁の判決判決和解和解というふうにやっておる。取り下げですから、当事者間の示談ですから、別に違法でも何でもないと思いますよ。そういう一生懸命に迅速にやる余りちょっと問題を残しておるなという気持ちが法務委員としてはせぬでもない、そういう裁判官もある。  また、ここに一つ新聞の論説というか、ニューヨーク支局の細野という特派員が出したものですが、「年間米国では数百万件の訴訟が起こされているのに、日本では民事訴訟が十六万件(七九年)に過ぎないとの数字を挙げ、日本で訴訟が少ないのは、争いを好まず「和」を尊ぶ日本人の国民性が原因、との見方を紹介している。」これはアメリカ人の言い分です。「確かに訴訟をめぐる日米両国民の態度は国民性の違いをきわだたせている。」「まず個人の権利に対する認識が違う。米国人は、権利は「自分で勝ちとり、自ら守るもの」と考え、日本人は「与えられるものでありだれかが守ってくれる」との意識から抜け切れない。自力救済と他力本願。「チャレンジの精神」を尊ぶ米国人は「泣き寝入り」や「ヤセがまん」をせず、自らの権利を主張するにあたっては、「ダメでもともと。やるだけやってみよう」というしたたかさを持つ。」こういうことがIBMの問題の対応でも、日本側としても裁判で迫られておると思うのです。  また、エール大学のウィリアム・ケリー助教授は投書で、「日本で訴訟が少ないのは、むしろ弁護士資格を取るための司法試験が極めて難しいうえ、裁判が長くかかるためだ」というふうに言っております。確かに西独と比べて裁判官は八分の一、弁護士は五分の一ですね。アメリカでは法曹有資格者の数が逝去二十年間に倍増し、日本の五十倍の六十万に近い弁護士有資格者があるそうですね。  こういう状況から考えますと、裁判遅延についてのいろんな問題が私はあると思うのであります。第一は、何といっても裁判官の増員であり、第二番目には書記官、調査官の増員であり、あわせて裁判所の、裁判官判断、極端な言い方をしている人がありますが、前近代的な寺小屋的な裁判官の仕事。それから三番目に、訴訟活動を怠る者について少し不利益な措置をしたらどうだという意見。一体訴訟がおくれることによってだれがその裁判の費用を持っているかと言えば、国民の税金で負担しているんだから、訴訟を怠っておる者についてそれだけ損するというような感覚を少しは持ったらどうだ。最高裁が規則制定権を持っているんだけれども、いろんな事情があって、そうどんどん規則をやると権力的になるからといって遠慮しているけれども、遠慮の問題と違う点があるのじゃないか。それから第五番目に、弁護士制度の問題がある。先ほど言ったように、弁護士にかかると高いという批評は、国民の中に蔓延しておるわけですね。もう少し弁護士さんも軽い事件やいろんな事件——私、初めて見たのですが、六法全書の一番最後に弁護士費用が書いてありますね。そんなことで本当にやっておるのだろうかという感じがするわけですけれども、実際はそうはやっておらぬという話なんですが、それならそれで空文じゃないかという気持ちもするわけであります。  そういう点で、総合的な裁判の迅速、低廉について、角度をもう一遍−世論を巻き起こして国民的な期待にこたえる、決して慎重、公正を阻害しろとは言わぬけれども、そのバランスの中でもう少し迅速、低廉な裁判というものが国民の中に、まあ国民の権利を守り、処分すべきものは処分するというやり方が、いまのありようでは、がはっていくように着実に目標には進んでいるかもしれないけれども、なかなかうまく国民的要求にこたえられていないんではないかということが思われてならないわけであります。  法務大臣、この種の問題についてどうお考えになりますか。
  193. 坂田道太

    坂田国務大臣 裁判というものが本当に国民のものにならなきゃならない、そのためには、これが公正にしかも迅速に行われるということは言うまでもないことだと思うわけでございます。日本と諸外国の例を見ますと、おのおの特徴はあると思いますけれども、日本は日本なりに調停の制度、和解の制度があるというようなことは、やはり日本の日本らしいといいますか、そういう日本民族としましてこういうような制度が根づいたんだなという考えを持つわけでございます。  西ドイツ等におきましては、かなり裁判所も多いし、しかもまた裁判の件数も多いようでございますが、同時にまた、それがなかなか解決をしないということで、この間シュムーデという法務大臣も参りましたけれども、むしろ日本のやり方も学ぶべき点があるのではないだろうかというようなことを言われて、そして日本を視察していかれたわけでございます。  アメリカ等につきまして、私、つまびらかではございませんけれども、しかしながら、やはり弁護士さんは非常に多いのだけれども、日本のように弁護士さんが裁判に面接関与するというのは非常に少ないというような話も聞くわけでございまして、しかもその弁護士さんの資格ということを考えれば、むしろ日本の方が法律的な知識等においては高い。しかも裁判官になる人も、それからまた検事になる人も、そして弁護士になる人も同じ勉強をし、資格を取って、そしてやるという、こういうようなやり方というのはなかなかユニークな制度ではないだろうかというふうに思います。  しかし、いまるる先生御指摘になりましたようないろいろの不十分な点、これから改善しなくちゃならない点もございます。何と申しましても、やはりいま御指摘ありましたように、裁判官の数をふやしていくということは一つの大事なことではないだろうかというふうにも思っておるわけでございます。今日非常に予算といたしましては窮屈なときではございますけれども、その中におきましても最大限の努力を払っていかなければならないのではないかというふうに、責任を痛感いたしておるところでございます。
  194. 横山利秋

    ○横山委員 日本の裁判制度が慎重であり、公正である、まあときにはいろいろ問題もありますけれども、慎重であり、公正であるという点については、そうだれも疑わぬ。けれども、遅くて高いということは、これは天の声、地の声、国民の声なんですよ。だから、そこにもうすこし焦点をきちんと当ててもらいたいということを私はお願いしておるわけでありまして、先ほど五つ六つのことを言いましたけれども、事務総長、何か御意見がありましたら具体的に聞かしてもらいたいと思います。
  195. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 先ほど五つの点でございましたか、御指摘がございましたが、いずれもごもっともな御意見だと思います。裁判官の充実にいたしましても、これは基本の問題でございますし、さらに、国民の間に多数存在する事件というものを現実に取り上げて、それを法廷で解決していくという使命を持っておられる弁護士さんの役割りというものは、また司法の円滑な運営のためにはぜひとも必要なことでございますし、そのために弁護士の数が少ないんじゃないかという御指摘も、きわめてごもっともな点であろうかと思います。また訴訟指揮等についてもっと果断でなければいけないという御指摘、まことにごもっともでございます。  いずれも、十分司法というものの果たすべき役割りというものを御認識いただいた上で、御激励をいただいておるというふうに受けとめておるわけでございますが、現実の問題といたしましては、やはりいろいろな隘路がございまして、お叱りを受けるかもしれませんけれども、司法というものはスロー・アンド・ステディということで、そうならざるを得ない。そうなりたいと思っておるわけではございませんけれども、結果的にそうならざるを得ない宿命を持っておるような感じもいたします。  何はともあれ、以上御指摘になりました諸点につきましては、私どもも十分にその問題点を考えておるつもりでございますので、今後とも全般の点について御期待に沿い得るよう努力をいたしたい、このように考えております。
  196. 横山利秋

    ○横山委員 最高裁、お帰りになって結構です。  この機会にちょっと時間をいただきまして、商法の改正に伴う諸問題について伺いたいと思います。  ここに時間の節約上新聞の解説を引用いたしますが、「改正商法の施行を十月に控え、官民挙げた総会屋摘発と締め出しが、今、急ピッチで進みつつある。」という記事があり、「五月二十七日開かれたデパートのしにせ、三越の定例株主総会。若手総会屋グループ「論談同友会」(四十四人)の“宣戦布告”で関心を集め、会場は超満員、異様な熱気に包まれた。」等々で、警視庁によると、この種の総会出動二百七十三会場、出動警官数は延べ二千七百人に上っておるそうであります。「五月末、警視庁は改正商法の施行に備えて捜査四課に特殊暴力対策本部を設置、総会屋の摘発に全力を挙げるとともに、経営者の意識革命に乗り出した。摘発件数は七月末現在五十件、七十九人にのぼっている。一方、企業側も総会屋との絶縁を相次ぎ宣言、賛助金の打ち切りを通告し始めている。警察庁の調べによると、上場企業を中心に結成した各地の特殊暴力防止対策協議会のうち、十都府県(約千八百社)がすでに絶縁宣言を出した。こうした総会屋一掃作戦は九月末までさらにピッチを上げ、十月一日の改正商法施行とともに、総会屋は姿を消す運命にある。」  あとは省略いたしますが、警察庁として改正商法に基づく総会屋の摘発は、いま引用いたしましたとおりでございますか。そのほか状況を聞かしていただきたいと思います。
  197. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  御案内のように商法が改正になりまして、いわゆる総会屋排除の各種の規定が整備されたということで、現在私ども警察といたしましても、総会屋対策を強力に進めているところでございます。  ただいま先生御指摘のようなものを含めて各種の対策を講じているところでございますが、大ざっぱに申し上げまして、一つには、企業に対しまして、総会屋の排除あるいは賛助金の打ち切りということを改正商法の趣旨にのっとって進められたいという強い呼びかけをしているところでございますし、また一方では、企業がそうした総会屋と絶縁をすることによりまして、総会屋が企業に対しまして報復的な行為あるいは犯罪をすることにつきましての企業に対する被害防止措置というものの徹底を図っているところでございます。  さらにまた、総会屋関係者の事件の検挙ということで、現在、恐喝なり威力業務妨害等の各種の法令を活用いたしまして総会屋の検挙活動というものを積極的に行っている、かような次第でございます。
  198. 横山利秋

    ○横山委員 これは民事局長に確認をいたしますが、改正商法で改正されました総会屋に関する改正点を、簡潔にもう一度言ってください。
  199. 中島一郎

    中島政府委員 改正商法の関係で申しますと、まず商法の二百九十四条ノ二という規定がございまして、この条文によりますと、「会社ハ何人ニ対シテモ株主ノ権利ノ行使ニ関シ財産上ノ利益ヲ供与スルコトヲ得ズ」ということになっておりまして、もしこの利益供与がなされました場合には取り戻しを請求することができる、あるいは会社が取り戻しを請求しません場合には株主がその取り戻しを請求するというような制度を設けておるわけであります。  それと同時に、商法の四百九十七条におきまして、それに違反して会社の金品を供与した取締役等を処罰するという規定を置いているわけでありまして、両々相まって会社の金が株主権の行使に関して供与されるということを防止しているわけでございます。
  200. 横山利秋

    ○横山委員 これは私ども審議をし、その趣旨には賛成をして、それが適切な効果を上げることを心から期待をしておる中であります。  ただ、先般来、私のところへも陳情がございました。それは中小マスコミ業界、業界雑誌とか、業界新聞とか、そういう業界及びその関連の印刷業界、その従業員がこの改正商法の結果大変な被害を受けておる、こういう言い分なんであります。私は、それは株主の権利行使に関する利益供与の禁止であるから、その業界誌なり何なりが株主であるかどうか、そして株主であって株主権の行使について利益の供与を受けているのかどうかという問題であって、そうでなければこの商法の改正と全然別次元の問題であろう、また警察がそういうことを、二百九十四条ノ二と四百九十七条を援用して業界雑誌なり中小その他のマスコミ業界の排斥を言うはずはないでしょう、こう言っておいたのですが、この点について警察はどういう指導をしていらっしゃるのですか。
  201. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、現在私ども警察といたしまして、総会屋対策の一環といたしまして、企業防衛組織あるいは各種の経済団体を通じまして、各企業に対して総会屋排除、賛助金の打ち切りということを呼びかけているところでございます。この場面で私どもとして強く申し上げておりますことは、このたび新設されました商法四百九十七条の株主の権利の行使に関する利益供与の罪という問題でございまして、こうした違反行為が発生することのないよう、注意を喚起しているわけでございます。  もとより四百九十七条の規定は、ただいま先生から御指摘ありましたように、株主の権利の行使に関しまして会社の計算において利益を供与した場合に犯罪が成立するものでございます。したがって、警察といたしましては、その株主権の行使に何ら関係のない業界誌等の出版物の営業について、商法を盾に取り締まりを行うというふうなことは、いささかも考えていないわけでございます。  ただ、脱法的に出版物の購読料なりあるいは広告料を装いながら、実は株主権の行使に関しまして会社に利益供与をさせるというものもあると思われますので、この点につきましては十分警戒を要すると考えております。
  202. 横山利秋

    ○横山委員 それは本当にごもっともなのでありまして、一体総会屋がどういうふうに転廃業をしているのだろうか。確かに株主である総会屋が総会屋をやめて業界誌を発行した、そして業界誌を援用してこの二百九十四条による株主権で事実上利益供与の仕事をしたということになりますと、おっしゃるようなことだと思うのですが、一体総会屋はこの十月を前にしてどういうふうに転身をしておると思われますか。  それから第二番目に、もしそういう総会屋が業界誌に転身をしたことによって業界誌全般に対してあなた方が目を光らせて、そういう傾向があるから業界誌も目つぼにとらなければいかぬぞということになりましたら——業界誌でもいろいろありますよ。それは知っています。いろいろありますけれども、健全な企業、産業の発展のために効果を上げておる業界誌なり業界新聞もあるわけですから、その辺の区別は十分にしてもらわなければいかぬと思うのです。その点についてはどうですか。
  203. 関口祐弘

    ○関口説明員 まず、最初の御質問の総会屋の動きでございますけれども、私どもとしても非常に関心を持ちまして、その状況把握に努めているわけでございますが、多くの総会屋はいわば廃業と申しますか、その道を歩まざるを得ないというふうに動いているやにも見受けられますけれども、ただ一面におきましては、脱法的に動こうという傾向も見られる。その一つといたしまして、出版業に転向する、あるいは政治団体を標榜する、仮装するというふうな形も見受けられるのではないかと見ております。  それから、第二の御質問でございますけれども、私ども警察といたしまして、法を執行するに当たりましては、常に国民の人権というものを最大限配慮をいたしまして捜査、取り締まりに当たっているということでございまして、先生御指摘のような業界誌云々ということ、そうしたものの営業そのものについて私どもがとやかく申し上げるという立場でもございませんし、そこに犯罪行為、違法行為というものを見出せば、それに対しまして厳正に対処してまいる、かように考えております。
  204. 横山利秋

    ○横山委員 よくわかりました。これは企業側の立場を推測いたしますと、中には業界誌も、問 のものも恐らくなかろうではないと思いますので、この機会に企業側が商法の改正に便乗して、業界誌の広告なり購読料を、警察が言っているからといって籍口してやろうとしている嫌いもないわけではないわけなんであります。いまあなたの御答弁によりまして、警察がそんな解釈はしておらぬ、それは企業側の問題というふうに理解をい  たします。  商法の改正による効果が適正に上げられるように期待をいたしまして、私の質問を終わります。
  205. 羽田野忠文

    羽田野委員長 沖本泰幸君。
  206. 沖本泰幸

    ○沖本委員 御質問いたします。  昼間の不在者に対しまして送達手続を新しく設けるということに当たって、就業場所送達をするときにどういう方法をお考えになったか、こういう点について御説明をいただきたいと思います。
  207. 中島一郎

    中島政府委員 住居所はわかっておりまして、そこに居住しているにもかかわらず、昼間不在のために書留郵便が届かない、これを何とかする方法はないかということでありますから、まず最初に考えましたのは、普通郵便による方法はどうかということを考えたわけであります。     〔委員長退席太田委員長代理着席〕  普通郵便でありますれば、昼間不在でありましても、その郵便受けにその郵便を入れてくるということになりますれば、帰宅をいたしました受送達者がこれを見るということができるわけでありますので、確かにその点は実質的であるわけでありますので、まずその点を考えた。  それから、現在の郵便法規等によりますと、書留郵便を配達いたしまして、全戸不在等のために送達ができないという場合には、それを持ち帰って郵便局にとめ置く。そして不在配達通知書というものを置いてきまして、それによって受送達者から都合のいい日時を通知してもらってもう一度送達をする、あるいは郵便局の窓口に取りに来てもらうということになっておるわけでありますが、それにもかかわらず、郵便局に取りに行かない、あるいは都合のいい日時を通知しない受送達者が多いわけでありますので、むしろ郵便局の方で何度でも郵便物を持っていってもらうという方法はとれないかというようなことも考えました。  さらには、サラリーマンでありますと、日曜日とかあるいは休日、あるいは夜間というような場合には在宅をしておることが多いのでありますから、そういう配達日時を指定して配達してもらうという制度はとれないか。そればかりでなしに、諸外国の制度、その他いろんなことを検討したわけでございます。
  208. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その手だてについていろいろと御検討があったわけですけれども、具体的に問題点になるというのはどういうふうなことが多く問題になったかということを……。
  209. 中島一郎

    中島政府委員 最初に申し上げました普通郵便による方法でありますけれども、これは確かに現実の問題として届いておる、受送達者に届くということは、かなりのパーセント期待できるわけでありますけれども、やはり送達という以上は、法定の手続によって書類を届けるというだけではなしに、そのことを公証するということが必要ではないか。でありますからこそ、現在は特別送達による書留郵便という方法をとって、そして送達報告書というものを裁判所提出するということになって、だれにいっその書類を交付したかということがはっきりと証明できるような方法をとっておりますので、普通郵便による場合にはその方法に欠けるわけでありますから、必ずしも適切でないということになったわけであります。  さらに、郵便法規を改正するという方法につきましては、郵政当局の事情にもよるわけでありまして、やはり人員、体制の問題その他、郵政当局としては現状ではその方法は無理である、困難であるということで、話が進まなかったわけであります。
  210. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この問題で、最近はIBMの問題、刑事事件ですけれども、そういうのがありまして、とみに外国の問題、違いとかあるいはその問題点がいろいろ指摘されたりすることがあるわけですけれども、諸外国のこういう制度についての対応というのはどういうのがあるか。ヨーロッパないしアメリカの問題について、御研究になった点、御検討した点があれば教えていただきたいと思います。
  211. 中島一郎

    中島政府委員 主要な立法例につきまして、私の方で承知しておる点を若干申し上げてみますと、まずドイツの制度でありますけれども、受送達者が不在の場合には、当該建物に居住しておる家主、貸し主筆に補充送達をすることができるということで、まず補充送達できる者の範囲を日本の場合よりも広げております。それから、その場合には、そういった者に文書を交付したということの告知書を普通郵便で送るというような扱いになっておるようでございます。それから、そういう方法により得ない場合には、近隣者に文書の写し等を交付しまして、そしてその受送達者の住居の扉に、近隣の何某に文書の写しを交付してあるということを張りつけまして、それによって送達の効力が生ずるというような方法も認められているようでございます。  それから、フランスの場合でありますけれども、フランスの場合にありましても、送達は近隣者に写しを交付することによって効力を生ずる。そして、送達に来ましたが不在であったので、近隣者の何某に写しを交付してありますという来訪告知書をその者の住所に残しておくというような方法がとられておるようでございます。  それから、アメリカでございますが、アメリカは各州でさまざまな制度がとられておるようでございまして、すべてについて十分承知しておるわけではございませんけれども、その中の一例といたしましてミシガンの制度というのがございますが、執行官が何回か住居所等に赴いて送達を試みるわけであります。あるいは最初のときに十時に行けば、その次は十一時に行ったり、少し時間をずらして行くということで何回もやりまして、相当回数真摯な努力をしたにもかかわらず受送達者が不在等で送達ができなかったという場合には、裁判所に対して相当な努力をしたにもかかわらず送達ができなかったという旨の宣誓供述書を差し出すわけであります。裁判所はこの宣誓供述書を徴した上で送達書面を戸口に張りつけるという送達方法許可する、それによって送達が行われておるというような制度がとられておるようでございます。
  212. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまの民事局長のお答えの中にも、省力化あるいは経費を節減するためというような  お答えがいろいろあったわけですけれども、現在の執行官の送達について、アメリカの場合は何度一もしたということになりますけれども、執行官の送達の活用ができなくなったあるいはできない、こういう問題についてお答えをいただきたいと思います。  また、執行官による送達を、いま以上に経費を節減するという意味でなしに、充実させていく、そういうことをする、ついてはどんな障害があるのかという点を御説明いただきたいと思うのです。
  213. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 執行官による送達は、実は昭和四十一年十二月の執行官法制定を契機にいたしまして、できる限り郵便による送達へ切りかえていくという方向に取り扱いが進んできたわけでございます。  そのような方向に進んだ理由を簡単に申し上げますと、執行官法によって執行官の国家公務員性が強化されました。執行官の任用資格も行政職e表四等級以上と定められたわけであります。このような関係もありまして、執行官の事務送達も含めていろいろございますけれども、何と申しましても、事務の中核は差し押さえ、不動産の売却等の執行事務でございます。このように執行官法−を整備する以上は、執行官の職務内容につきましてはその本来の職務に専念する方向がよろしかろう、職務の純化と言っておりますけれども、その純化を進めるべきだということから、送達事務はできる限り郵便による方向に流れてまいったわけであります。その結果、民事送達も、当時と比べまして、現在五分の一くらいに減ってまいっております。  それにいたしましても、現在民事送達だけで十万件近くまだ行っております。そのうち、裁判所の命令によりまして夜間送達を行っておるのが二万五千件強まだございます。これは裁判所から命ぜられますと、執行官としてはそのとおり送達を行うほかないわけでありますが、そういうような実情にございます。でありますから、現在昼間不在者に対する送達につきましては、執行官による夜間、休日の送達が効果があることは十分わかりますけれども、これを原則化いたしますと、先ほど来申し上げております執行官の事務の純化という意味からは逆行するわけでありまして、私どもはその方向は望ましくないと考えておるような次第でございます。
  214. 沖本泰幸

    ○沖本委員 日弁連の意見書を参考に読ませていただいたわけですけれども、その中にも、書記官裁判官の充実あるいは執行官の充実ということが原則である、そういうことをなおざりにしてというようなことが書いてあったように思うわけですけれども、そういう点から考えますと、俗に言いますと、けさほどもお話がありましたが、請負金額が非常に安い、そのために嫌うというような点とかいろいろあって、そういう点を考えますと、結論的には、これも執行官の職務ということになりますから、安過ぎるということで嫌がるというのであれば、手数料をもっと上げたらどうかということも考えられるわけですし、そういう点を十分手掛てした後に、あるいは検討した上でこういう方法をとるべきではないかということになりますけれども、適正額を上げて従来の仕事を十分にさせるという点はどうか。  あるいは、最近執行官がしばしば事件を起こして問題になるという点もあります。そういうものと比べていくと、何かこのことだけ忌み嫌って、そういうことの方に力を入れていくという点、あるいは執行官の仕事を手伝う人夫の人たちがいろいろ代行して間違いを起こすこともよくあるわけですけれども、そういう人たちがなかなかこういうことに使えないという点もあることから、夜間送達なりを執行官自体が忌み嫌っていくという方向に流れていくという点があるのじゃないかという点も考えられるわけですけれども、そういう点についてはどうなのでしょうか。
  215. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 先ほどちょっと申し落としましたが、執行官法の改正前には執行官の仕事を代理する執行吏代理という制度がございまして、これは二百数十人おりました。この執行吏代理というのが大体送達事務を担当していたわけでございます。この送達代理の職種は改正のときに廃止されまして、直ちに解雇するわけにまいりませんので、執行官臨時職務代行者という形で残したわけでございますけれども、これは暫定的な経過措置でございますために、だんだん減る、最終的にはゼロになるという運命にあるものでありますために、現在これが二百四十名が二十六人に減ってきておる。ということは、送達担当の主力であった送達代理がそれだけ減ってしまったということでございます。そのような背景もあるということを御了承いただきたいのであります。  なお、その手数料との見合いの問題でございますが、確かに執行官に聞いてみますと、夜間送達などを実施した場合、それは初めての場所でありますと、夜一度行って一遍に目的の家にたどり着くことはまず至難のわざだ。昼間一遍見ておいて、確かめて夜行くというふうにしないとたどり着けないんだ、こう言っております。そのような手数がかかる事務であることを前提にいたしますと、現在の手数料の定めは非常に安いというふうに言わざるを得ないわけであります。  いま、夜間に、たとえば五キロくらいの場所への文書の送達をいたしたといたしますと、大体二千三資円ぐらいの手数料、旅費がもらえるということになっております。これで見合わないということで、これを二倍にし、あるいは三倍にすればどうかということになるわけでありますけれども、これはどうしても特別送達による料金八百六十円との見合いの問題がありまして、これとは無関係に執行官送達の手数料を上げるわけにもまいらない。いろいろそういうような実情にありますということを申し上げて、御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  216. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまの執行官送達という面と、これに載っております就業場所への送達ということの関係性は、どういうふうになっておりますか。
  217. 中島一郎

    中島政府委員 送達の基本は、住居所における送達が第一義であります。住居所における送達のうちでも昼間の送達がまず基本であります。それで、昼間不在等のために昼間の送達ができないということになりますと、その次に考えるべきことは、夜間あるいは休日の住居所等における送達ということになりますので、執行官による送達が支障があるかどうかということが、その次に考えなければならない問題であります。住居所等において執行官による送達が支障なく行えるという事情にありますならば、それを行う。それに支障があるということでありますれば、就業場所における送達を考える、こういう順序になろうかと思います。
  218. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この昼間不在あるいは夜間の住居地という問題に絡んで、不在であるということの理由でこの送達方法を変えるわけですけれども、余り確かめもせずに、結局はいないということで方法をとっていくということが考えられるのじゃありませんか。そういう点については、確実にしていくという方法をおとりになったわけですか。
  219. 中島一郎

    中島政府委員 通常の場合でありますと、原則であります住居所等に対する送達を行うわけでありますので、その住居所等における送達が不在のために不能であるということで送達できなかった、しかもその場合に不在配達通知書というものを置いてくるわけでありますから、もし受送達者がその書面を手に入れようとすれば、都合のいい配達日時を指定して再配達をしてもらうなり、あるいは郵便局へ取りに行ってもらえばいいわけであります。そういう機会を与えたにもかかわらず裁判所書類が返ってきたという場合に、初めて次の段階に移ることになるわけでありまして、手続としては非常に慎重に行われておるというふうに考えるわけでございます。
  220. 沖本泰幸

    ○沖本委員 就業場所送達を実施するには、いまおっしゃったように、事前に送達書類の受け取り方を勧告して、受け取らない場合には就業場所において送達を行うということを普通郵便通知する、これは先ほどもあったのですが、もう一つのみ込みにくいのですが、この点について。
  221. 中島一郎

    中島政府委員 ただいま申しましたように、不在であります場合には不在配達通知書というものを置いてくるわけでありまして、それにもかかわらず当事者から何の連絡もないために郵便局では裁判所書類を返してくる、還付してくるということになります。そういたしますと、その次に、休日なり夜間送達の可能かどうかという問題がありますけれども、就業場所に対する送達という段階に移るわけでありますが、その前にもう一度、普通郵便等受送達者に対して、住居所に対する送達をしたけれども不在のために不能だった、今度はいよいよ就業場所に対する送達をすることになりますよということをさらに通知してはどうかという御提案かと思うわけであります。このことも、理論的には確かにそういう方法も考えられるわけでありますけれども、私どもの感じといたしましては、そこまでする必要があるのだろうかということであります。  何度も繰り返して申し上げるようでありますけれども、不在でありました場合には、不在配達通知書というものを置いてくるわけであります。それは自分の郵便受けの中にはうり込まれてあるわけでありますから、帰宅した受送達者はそれを見ることができるわけであります。でありますから、それに対して郵便局に何らかの連絡をとるということができるはずであります。それをしないでおいて裁判所へ戻ったということになるわけでありますから、あるいは十日が短いということであれば、その間長期出張中であったということであれば、裁判所に連絡をして、自分のところには裁判所から書類が来ておるらしいけれども、郵便局のとめ置き期間の間には自分は出張中で留守にしておったから書類を受け取ることができなかった、どうしたらいいんだということで連絡をしてもらえばいいわけでありますから、それもしないでいる受送達者に対して、今度はいよいよ就業場所に対して送達をいたしますよということを通知してやるということは、これは受送達者の利益を余りにも考え過ぎているということにならないだろうか、制度としてのバランスとしてどうだろうかというのが私どもの感じでございます。
  222. 沖本泰幸

    ○沖本委員 就業場所送達が実施された結果、送達を受ける人がいろんな問題なりいろんな時点で不利益を受けた、こういうことが出てきた場合に、たとえて言うなら名誉棄損を負ったとか、そういうことになるわけですが、そういう場合には国家賠償責任を追及することができるのかどうかですね。そういう点はどうなんですか。
  223. 中島一郎

    中島政府委員 就業場所における送達という制度を今回新設いたしました場合に、従来と変わりますのは、場合によっては就業場所において、受送達者に対して裁判所から書類が届いたということが雇い主あるいは同僚に知れるということであります。裁判所から書類が届いたということを就業場所における雇い主あるいは同僚等に知られたことによって何らかの不利益を受ける、名誉棄損とかそういう事態が起こるということは、ちょっと考えにくいのでありますけれども、抽象的に仮にそういう不利益が起こったという場合を考えてみましても、就業場所における送達というものが民事訴訟法上許された制度であるということになりますと、その要件を満たした送達が行われた以上は、これは適法な行為ということになりますので、それによって国家賠償の責任が生ずるということは、ちょっと考えにくいというふうに思います。
  224. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは考えにくいけれども、起きないとは限らないわけですね。ですから、そういう場合に、その問題の受け皿的なそういう方法を考えることは必要ないのか、もうそういうことは論外であるというふうにお考えなのか、どちらなんでしょう。
  225. 中島一郎

    中島政府委員 現在あらゆる場合を想定するということができませんので、あるいはそういう場合が起こるのかというふうにも思いますけれども、いま通常の事態をいろいろ思いめぐらしてみましても、適法な行為でありますから、それによって国の不法行為が成立するという場合はないというふうに考えます。
  226. 沖本泰幸

    ○沖本委員 就業場所といっても、ほんまいろいろありますね。個人経営的な就業場所もあれば、小人数の企業の就業場所もありますし、あるいは大きなビルの中の就業場所もありますし、そういたしますと、大企業のようなところでいわゆるそういうことを、文書の送達なり何なりというようなことを社員にあてて一括してやっておるようなところでの送達、非常に本人に行き届く期間が、郵便物なんかですと早く行くことはあるでしょうけれども、人の手を経ていく、いろいろな目を通していくというようなことも考えられますし、この新しい制度ができて動き出すと、やはり企業の方もそういうことを承知してもらうということの必要もあるということになりますが、そういう種々の段階に従っていろいろな場合を想定した検討はなさったわけなんですか、どうでしょうか。
  227. 中島一郎

    中島政府委員 事前に想定できる限りにおいて、いろいろの場合を想定して検討をしたわけでありますけれども、具体的に制度が動いてみますと、また思いもかけなかった事態というものもあるいは出てくるかもしれないというふうに考えておるわけでありまして、その場合には、改めてその事態において、郵政当局と裁判所とか関係者が協議して適切な措置をとっていただきたいというふうに思うわけでありますが、これがもし立法によらなければ解決できないということになりますれば、私どもの方でその点を検討しなければならないというふうに思います。
  228. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは国民が周知しなければならない問題でもあるわけですけれども、さりとて、国民が周知するほどいっぱいあるわけでもありませんし、民事事件でその衝に当たったときにこういう場面に遭遇するということになりますし、またそれに遭遇する人もこういう場合にはまた限られてくるということにもなるわけですけれども、そういう点の改正について、それぞれのところで変わっていくということを徹底するということなのか。法律改正されて、そのままでいって、もう問題が起こったときだけにこういう法律の適用を受けて行われていく、在来から行われておった、それが本人が不在というような問題からいろいろと問題が展開していって、現状のものがこういうふうに変えられていくという形にあるのか、その点はどうなんでしょうか。
  229. 中島一郎

    中島政府委員 国民の皆さんにかなり関係のある事柄であるというふうに思うわけでありまして、そういうことからだと思いますけれども、この試案を公表いたしました際に、各新聞がこの記事を取り上げて解説をし、批評をしたというようなこともあったわけであります。今回この法律が成立をいたしましたならば、また各紙いろいろと取り上げて解説をしてくれると思いますけれども、私どもも積極的に、その制度の趣旨なり運用の実際なりというものを国民の皆さんに知っていただくために努力をいたしたいと思っております。
  230. 沖本泰幸

    ○沖本委員 就業場所における送達運用について、たとえば参議院の御質問の中に、官庁の書類の中でホチキスでとめているのがある、そのホチキスを外して中身を見て、またホチキスでとめておけばわからないという面もありますね、そういうことがあるじゃないか、これは参議院の寺田さんの質問の中にあったと思うのですが、それはやはり考えられることだから十分指導しなければいけないというようなお答えがあったと思うのですけれども、そういうことで通達をお出しになるのか。その通達を出す場合に、ポイントはどういう点にポイントを置いておやりになっているのか、それをお伺いしたいと思います。
  231. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいまの送達実務の中で、ホチキスによる封というものが一部で行われていることは事実でございます。ただ、今回の法律が制定されますと、就業場所への送達というものが行われる。いわば送達受取人からすれば、自分の支配圏外で送達が行われる。ということは、自分の支配圏内の人ではない、外の人に知られるおそれがあるということでありますので、その就業先への送達の場合にはホチキスではなく、のりづけで厳封するように指導をしていきたい、そのつもりで送達事務の実施要領というようなものを作成している現状でございます。
  232. 沖本泰幸

    ○沖本委員 調書作成省略及びこの判決書の記載を簡素化していくという問題で、西ドイツにおいても調書記載省略判決書の記載の簡素化が進められているというふうに聞いているわけでございますが、どういうふうな概要なんでしょうか。
  233. 中島一郎

    中島政府委員 一九七六年のいわゆる簡素化法のことをおっしゃっておるのであろうと思いますけれども、その簡素化法によりますと、ドイツの民事訴訟におきましても、調書省略あるいは判決記載簡略化ということが認められているようであります。  調書記載省略につきましては、証人調書あるいは検証調書等につきまして、今回のこの改正法案よりももっと緩やかな要件省略が許されるというような規定になっておるようであります。  それから、判決書の記載簡略化についてでありますけれども、これについても、重要でないものについては引用が許されるということでありますので、現在改正法で問題になっておりますような証拠の標目と申しましょうか、証拠記載、摘示等については引用が許されるというようなことになっております。
  234. 沖本泰幸

    ○沖本委員 改正前の取り扱いを、控訴の提起に伴う執行停止の保証等の例でわかりやすい例があれば、教えていただきたいと思うのです。
  235. 中島一郎

    中島政府委員 ちょっと、もう一度御質問を伺わしていただきたいと思います。
  236. 沖本泰幸

    ○沖本委員 民訴法の五百十三条の改正関係と、それから改正前の取り扱いを、控訴の提起に伴う執行停止の保証をわかりやすく御説明願いたい。
  237. 中島一郎

    中島政府委員 民訴の五百十三条という規定でございますが、これはいまおっしゃいましたように、執行停止等の場合に保証を立てる必要がある場合の規定でございます。従来の扱いといたしましては、その保証は供託所に積むわけであります。そしてその供託所から供託書の正本というものをもらいまして、これが供託をしたということの証明になるわけでありますが、それを裁判所に届けるということになるわけでありまして、それによって供託の効果が発生するということになるわけであります。  前回の民事執行法の改正及びそれと同時に行われました整理法におきまして、民事執行法の十五条というものが制定され、民事訴訟法の百十二条というものが改正されたわけであります。その改正の内容は、ごく大ざっぱに申しますと、従来は担保を供する供託所は理論的にはどこでもよろしいということになっておりましたのを、「担保ヲ供スベキコトヲ命ジタル裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ管轄区域内ノ供託所」というふうに制限をしたわけであります。しかし一方、従来はその供託所から供託書の正本をもらって、それを裁判所提出しなければ担保を積んだ効果が生じなかったものを、供託所に供託さえすればそれで供託の効果は生ずるということにしたわけであります。  民事訴訟法の五百十三条というのはそれと同じような規定でありますので、その際に民事訴訟法の五百十三条も同じように改正をしなければならなかったわけであります。しかし、これは全く技術的な問題から、そのときには五百十三条の改正ができなかったわけであります。ところが、五百十三条の三項というのはただいま申しました民事訴訟法の百十二条というのを準用いたしておりますので、五百十三条も実質的には百十二条の改正とともにただいま申しましたような内容に変わってしまったわけであります。ところが、形式的に五百十三条の一項と二項というものが残っておった。そこで今回、この点を形式的な面も改正してすっきりした形にさせた、するということでございます。  具体的な形で申しますと、けさほど稲葉委員から挙げられました例で御説明をいたしますと、新潟の地方裁判所で一審の判決があった、仮執行宣言がついておる、この仮執行を停止したいということで、東京の高等裁判所に控訴の申し立てをいたします。そこで執行停止決定をもらうわけであります。従来でありますと、その執行停止決定をもらいますと、その中に書いてありますその執行停止決定というのは、金幾らの担保を供することを条件として執行を停止する、こういう決定でありますから、金幾らを供託しなければならないわけでありますが、その供託は日本全国どこの供託所で供託してもよろしいということになるわけであります。それを供託所から供託書の正本をもらって、そして裁判所に届けなきゃなりませんが、その裁判所はあるいは新潟の、執行裁判所が主でありましょうから、新潟の地方裁判所に届けるということになるわけであります。  ところが、今回の改正によりまして、新潟の判決に対して東京高裁に控訴して、東京高裁で執行停止決定をとりますと、その執行停止決定の効力を発生させるための供託は、東京高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所でありますから、東京地方裁判所の管内の供託所でないと供託することができない、こういうことになるわけであります。しかし一方、その供託することによって執行停止決定は効力を生ずる、こういうことに民事執行法の改正によって変わっておったわけでございますが、今回の五百十三条の改正によりまして、それに執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所というものをつけ加えたわけであります。でありますから、執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所においても供託することができるということになりまして、民事執行法施行後現在までに比べれば、この部分が供託所がふえたということになるわけであります。
  238. 沖本泰幸

    ○沖本委員 用意したことはほとんど伺ったわけであります。あとはまた他の質問者のお話を聞きながら勉強したいと思います。  終わります。
  239. 太田誠一

    太田委員長代理 次回は、来る十日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十八分散会