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1982-04-23 第96回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十三日(金曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 羽田野忠文君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 高鳥  修君 理事 中川 秀直君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君       上村千一郎君    大西 正男君       木村武千代君    高村 正彦君       白川 勝彦君    森   清君       土井たか子君    鍛冶  清君       部谷 孝之君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         法務政務次官  竹内  潔君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 千種 秀夫君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省矯正局長 鈴木 義男君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         衆議院法制局第         二部長     松下 正美君         警察庁警備局外         事課長     吉野  準君         法務大臣官房審         議官      當別當季正君         法務省入国管理         局登録課長   亀井 靖嘉君         大蔵省証券局企         業財務課長   土居 信良君         大蔵省国際金融         局外資課長   吉田 道弘君         自治省行政局振         興課長     浜田 一成君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   下平 正一君     土井たか子君   塚本 三郎君     部谷 孝之君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     下平 正一君   部谷 孝之君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出第六八号)      ————◇—————
  2. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 外人登録法は、申すまでもなく国内における外国人登録に関する法律でありますが、この機会に、国内におります外国人権利と義務について、いろいろな方面から政府その他の考えをただしたいと思います。  まず第一に、国会の問題でありますが、国会国民国会法憲法に基づいて請願をする権利がございます。外国人国会への請願権保障されておるかどうか、法制局意見を聞きたいと思います。
  4. 松下正美

    松下法制局参事 お答え申し上げます。  外国人請願権があるかどうかというお尋ねでございますが、憲法第十六条は何人に対しても請願権保障する旨を定めていることから申しまして、日本に在住している外国人請願権を有することは明らかでございまして、この点は異論がないところであろうというふうに考えております。  問題は、外国人に対する請願権保障が、日本在住外国人のみに認められているのか、あるいは日本に在住しない外国人、つまり在外外国人をも含めまして外国人請願権が認められているかどうかということでありますが、在外外国人にも請願権があるかどうかにつきましては、日本領域外にいる外国人には憲法効力が及ばないという属地主義原則から申しまして、消極に解さざるを得ないというふうに考えているわけでございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 私の承知するところでは、米国における請願のありようは、米国に在住していなくても請願権利があると言われておるのでありますが、それは日本憲法と違った点があるからなんですか。
  6. 松下正美

    松下法制局参事 お答え申し上げます。  米国憲法がどういう姿になっているかということは、実はつまびらかにいたしておりませんが、御指摘のように、米国在外外国人にも請願権を認めるという旨の判例があることを論拠といたしまして、相互主義の見地から在外米国人に対して請願権保障を及ぼすべきではないかという議論もあるわけでございますが、米国にそのような判決がありましても、実は日本にはそのような判決は見当たらないわけでございますし、また、相互主義ということなんでございますけれども日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約には日米国民請願権につきましては何らの定めも設けられておりませんので、米国のそのような判例の存在、それから相互主義の理念をもってしましても、憲法属地主義原則の例外を認めることはできないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 直接外国人関係があるわけではありませんが、また、法制局判断が適当かどうかはわかりませんけれども請願をされた場合に、衆議院の各委員会における請願受理、不受理の習慣とでも申しますか、いままでの現状は、請願というものは法律的拘束力がありませんね。政府を拘束する力はありません。国民請願政府伝達をするという趣旨なのでありますが、結局請願受理するか否かについては採決採決ということは与党反対したらだめということに現状はなっておるわけであります。これは憲法における請願というものが、外国人を含む国民の中からこういうことをしてくれ、またそういうことをしてくれるなという請願、いずれも国民意見であるならば、政府を拘束する力はないのであるから、憲法上における請願立場から、両方ともこれを受理しても差し支えないのではないか、そう考えられるのでありますが、どうお考えでありますか。
  8. 松下正美

    松下法制局参事 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御指摘は、請願権というのは単に希望の表明であるにすぎない、したがって国家機関を拘束するものではないというところから、日本に在住していると在住していないとを問わず、請願権を認めるべきではないかという御趣旨であろうかと思うのでございますが……
  9. 横山利秋

    横山委員 ちょっと違う。私の第二の質問は、外国人であると日本人であるとを問わず、請願権というものは、請願一般論は、いままで採決で大体やっておったが、それはこうしてはならぬ、こうしてくれと相反する請願が出る場合に、結局は採決だから与党意思でどちらかをとる、そういうことになっているけれども、しかし、請願というものは政府を拘束する力がないんだから、国民意思政府伝達するという意味において両方とも採択してもいいんではないか、あるいはまた、政府の政策に反対する意見であっても採択をすべきではないか、こういう意味であります。憲法上の請願権というのは、そういうことではないのかという意味で聞いておるのです。
  10. 松下正美

    松下法制局参事 お答え申し上げます。  請願内容が相反するものでありましても、請願受理すべきではないかという御趣旨であろうかと思います。(横山委員両方とも」と呼ぶ)請願受理そのものは、互いに相反する内容請願というものは当然受理されているものと考えておるわけなのでございます。ただ、それを採択するということにつきましては、採択採決で行われておりましても、受理そのものはすべて行われている、このように考えておるわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 私の聞いているのは、採択の問題です。
  12. 松下正美

    松下法制局参事 その点につきましては、採択国会意思表明であります以上、多数決によるということは当然の事実と申しますか、やむを得ないのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 受理はするけれども採択与党意思で決定されるという御返事のようでありますが、受理をするということはどういう意味なのか。受理は審議の対象にするということにしかすぎないのであって、決して国民意思が、請願意思国会を通じて政府伝達されるということではないのでありますから、私は、受理法律的効果というものは余り過大に評価してはならぬ。問題は、採択するかどうかということなんです。国民にこういう意思があるということを政府伝達をする。たとえば安保条約反対だという請願は、受理されても採択されないんですね。あるいはいま外人登録法について反対だという請願がある、受理はするけれども採択はされない、そういうことに矛盾を感ずるのです。国民の中にも賛成、反対両方意思がありますよということを政府伝達をする、それがどうして与党の意向に反するものは受理されないのか。憲法上の請願権というものはそういうものではないのではないか。賛否いずれも政府に対する意思伝達国民請願権というのは保障されているんではないか、こういう意味なんですよ。
  14. 松下正美

    松下法制局参事 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の点については、いろいろ問題もあろうかと思いますので、少し検討させていただきたいというように思います。
  15. 横山利秋

    横山委員 わかりました。それでは法制局で一回御検討を願います。  大蔵省はお急ぎですか。大蔵省につきましては、株式保有、持ち分の取得等について伺います。  外資に関する法律で、原則として主務大臣認可外国人株式取得するには大臣認可。現在、日本外資が導入されるということについては、数年来期待をするという雰囲気の方が多いのでありますが、一体いま外資に関する法律によって外国人株式取得する制限というのはどういうことになっていますか。
  16. 吉田道弘

    吉田説明員 お答え申し上げます。  いま先生から御質問がございました外資に関する法律は、五十五年十二月で廃止になりまして、いまの外為法に統合されました。それで、当時外国人に対してありました制限が、外国人という国籍基準ではございませんで、現在は居住者、非居住者という形に変えられました。  したがいまして、たとえ外国籍の者でありましても、いわゆる居住者に該当する者については、日本国籍の者と全く同様でございます。また、非居住者につきましても、現在のところ、たとえば上場株式で申し上げますと、対内直接投資というものに当たります一〇%以上の取得、その会社発行株式総数の一〇%以上の取得に当たらないような場合については、単純な届け出で結構でございますし、普通、指定証券会社という制度を通れば、全く届け出等は必要ございません。
  17. 横山利秋

    横山委員 一〇%以上なら届け出が要る、こういう意味ですか。それは、一〇%というのはいかなる会社にも適用されることですか。
  18. 吉田道弘

    吉田説明員 お答え申し上げます。  一〇%、上場会社につきましては、すべての会社について適用されております。(横山委員「どういうところの会社」と呼ぶ)上場会社でございます。(横山委員上場会社全部一〇%以上は届け出」と呼ぶ)はい。
  19. 横山利秋

    横山委員 一〇%以上の取得実績届け出というのは、現在あるのかないのかということ、それが一つ。  それから、あわせてこの機会に伺いたいのですが、居住者外国人株式保有に関する株主権行使については、何ら商法上の制限はありませんか。
  20. 吉田道弘

    吉田説明員 お答え申し上げます。  一〇%以上のいわゆる対内直接投資届け出につきましては実績がございまして、一番最新の例で申し上げますと、いま発表されております最新が五十七年二月中でございますが、これによりますと、二月中にございました届け出件数は七十三件、金額にして九十一億円でございました。  それから、商法上の関係につきましては、私ども大蔵省としては担当しておりませんので、失礼させていただきます。
  21. 横山利秋

    横山委員 じゃ、民事局
  22. 中島一郎

    中島政府委員 外国人でありましても、株式保有を許されておる者につきましては、商法上その行使についての制限はございません。
  23. 横山利秋

    横山委員 先般、商法改正のときに議論になりまして、私も題材にしたわけでありますが、たしか香港におります日本における繊維上場会社株主である外国人株主権行使をしようとして、それに対して異議を呈して裁判になっておる。どなたか御記憶ありませんか。ありますか。その実情を説明してください。
  24. 吉田道弘

    吉田説明員 いま御質問のございました点につきまして、先ほど対内直接投資についてだけ御説明申し上げましたが、一つ補足させていただきますと、今度の外為法で新しく指定会社制度というのができておりまして、これにつきましては、特別に指定された会社につきましてはそれぞれ二五%以上で指定された非居住者持ち株比率というのがございますが、その非居住者持ち株比率を超えるときにつきましては届け出の必要がございます。これは先ほど申しました対内直接投資、いわゆる一〇%以上の制度のほかにあるわけでございます。いま御質問のございました点は、この指定会社制度でございます片倉工業の件かと存じます。
  25. 横山利秋

    横山委員 その実情
  26. 吉田道弘

    吉田説明員 この点につきましては、現在訴訟中でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 それはわかっておるのです。何を争っているのか。
  28. 吉田道弘

    吉田説明員 片倉工業につきましては、この会社指定する場合におきまして、いわゆる事業所管大臣としまして直接の所管官庁でございます農水大臣のほかに通産大臣厚生大臣等指定告示の中に入っておりましたが、そういうものは直接関係ない、したがってこの告示は無効であるという点につきまして、無効の確認の訴訟になっております。それに対しまして、私どもについてはそういうことはない、適法であるということについて争いになっております。
  29. 横山利秋

    横山委員 一定パーセント以上は届け出をせよということなんですが、届け出について、単に自動的に届け出ればしまいということなのか。届け出について、何かこれはまかりならぬとか条件が付されて、届け出しても認可しないということがあり得るのですか。何のために届け出をさせ、それについてどういうチェックをしようとするのですか。
  30. 吉田道弘

    吉田説明員 いま先生のおっしゃいました片倉工業の場合、いわゆる指定会社制度の場合と対内直接投資の場合と、届け出それぞれございますが、若干要件が違いますが、指定会社制度の方のお答えでよろしゅうございますでしょうか。  指定会社制度につきましては、その届け出たものが直ちに効力を持つわけでございませんで、いわゆる審査にかかるわけでございます。審査基準としましては、この法律外為法上の附則第二条の第一項にございますように、二つ基準がございます。  一つは、「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになること。」二としまして、「我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになること。」こういう基準に従いまして、こういう基準に合った場合につきましてはそれぞれ所要の措置、変更なり中止ということができるようになっております。
  31. 横山利秋

    横山委員 該当実例はありますか。
  32. 吉田道弘

    吉田説明員 ございません。
  33. 横山利秋

    横山委員 それでは大蔵省法制局も結構です。  次は、国家賠償法について伺います。  国家賠償法は、私の調査したところによりますと、相互主義で、外国等もそうやっておるという場合にのみ外国人適用される、そういうふうに理解しておりますが、そのとおりでありますか。
  34. 中島一郎

    中島政府委員 そのとおりでございまして、国家賠償法の第六条、相互保証主義という規定がございます。条文を読んでみますと、「この法律は、外国人被害者である場合には、相互保証があるときに限り、これを適用する。」こうなっております。
  35. 横山利秋

    横山委員 たとえばこの委員会議論になりました飛騨川バス転落事故国家賠償責任を負ったわけですが、あの中に外国人がおったとしますね。その外国人がおったけれども、そういう場合に、おまえのところの国の国家賠償法日本人適用されているかいないかによって、同じ乗客であっても賠償適用される、適用されない、そういうことになるわけですね。
  36. 中島一郎

    中島政府委員 そのとおりでありまして、その外国人の本国に日本国家賠償制度と類似の制度があり、その国家賠償制度日本人にその外国において適用されておるという場合に限るというのが、この規定解釈でございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 国家賠償法について相互主義適用されている国はどこですか。
  38. 中島一郎

    中島政府委員 詳細については調査をいたしておりませんけれども、いわゆる先進諸国と呼ばれておる国におきましても、相互主義をとられておるところもあり、そうでないところもあるという実情でございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 あなたにお答えを願うのは困難かもしれぬけれども、民間で飛行機がおっこった、その中に外国人が乗っておる、そういう場合に、おまえのところは相互主義があるかという理屈が通っているのですか、通っていないと思いますか。
  40. 中島一郎

    中島政府委員 これは条約締結加盟国になっておるかどうかということにもよることであろうかと思っております。
  41. 横山利秋

    横山委員 大臣、お聞きになっておられるでしょうか。私の投げかけている問題は、国家賠償法ということは、とにかく国がえらい悪いことをした、故意、過失で国内に在住しておる外国人に対して大変申しわけないことをやった、けれども日本人がおまえのところの国でそういうことは賠償をされないというならやってやらないよということですね、いまの議論は。国が自分責任があると認めておきながら、日本人もそうしなければやってやらないぞということが現実に起こった場合に、飛騨川転落事故が起こった、そのインド人相互主義になっておらない、だからやってやらないということが国民的世論納得を得る理屈になると思いますか。大臣、どうですか。
  42. 中島一郎

    中島政府委員 まず、私からお答えさせていただきますが、相互保証の有無にかかわらず外国人に対して国家賠償法適用を認めるということは、一面大変好ましいことであるというふうに考えておりますので、国家賠償法改正が将来検討されるというような場合には、ただいま御指摘の点も十分に検討しなければならないというふうに考えております。しかし、実際にはこの国家賠償法六条の規定のために国家賠償法に基づく賠償が行われなかったという事例は承知しておらないわけでありまして……(横山委員相互主義がなくても」と呼ぶ)はい、相互主義のために救済を拒否したという事例は現在のところないというふうに聞いておるわけでありまして、今後生ずるとしてもきわめて例外的な場合ではなかろうかというふうに考えております。
  43. 横山利秋

    横山委員 そういう該当事案がなかったということは、国家賠償法で本来やるべきではあるけれども相互主義になっておるところであるから関係がなかったというのか、相互主義になっていない国の外国人でも国家賠償で支払ったというのか、どちらですか。
  44. 中島一郎

    中島政府委員 相互主義適用がありまして救済を与えたというケースが大部分であろうかと思いますが、仮に相互主義立場上からは救済しなくてもいいという場合でありましても、国がその具体的な事案に応じて国家賠償をするということは可能なわけでございますから、そういった事例もあるというふうに承知いたしております。
  45. 横山利秋

    横山委員 可能なというのは、何の根拠で可能というのですか。相互主義でなくても可能だというのですか。
  46. 中島一郎

    中島政府委員 これは国が当事者の一方になるわけでありますから、国家賠償法の六条を援用して救済をしないことができるという権利を与えておるのが六条の規定であろうかと思います。ですから、その援用をしない、これは自分の方で救済をします、損害賠償を払いますと言えば、事案解決になるわけでございます。
  47. 横山利秋

    横山委員 六条は、「この法律は、外国人被害者である場合には、相互保証があるときに限り、これを適用する。」とある。だから、いまの局長の話とちょっと違いやせぬかね。相互保証がないときには補償をしないことができるというような感じではないのですね。そういう意味で書いてあるのではない、「相互保証があるときに限り、これを適用する。」でありますから。あなたは保証がなくてもやることができると解釈をしているようですね。そうじゃないのですか。
  48. 中島一郎

    中島政府委員 これは結局、国とその外国人との間の法律関係ということになるわけでありますから、国がこういう規定を援用しないでみずから救済をするということは可能であります。
  49. 横山利秋

    横山委員 そうかね。それはあなたの勝手な解釈ではないかな。大臣参議院から出てこいというお話だそうでありますから、ひとつこの問題のけりをつけたいと思うのです。  民事局長は、六条があるけれども相互保証がなくてもできるのだという解釈をおとりになっておるようでありますが、私は、法文上そんな解釈はできないと思っているのですよ。だから、あなたにお答えを願いたいのは、二つありますが、一つは、民事局長答弁はおかしい、あなたはどう思いますか。それから二つ目は、飛騨川転落事故あるいはクロロキンの国家賠償責任というような問題で、おまえは外国人だ、おまえの国とは相互保証がない、だから賠償してやらぬということが現実に起こった場合に、そんなことでは国民納得しませんよ。民事局長解釈ができるものなら、国家賠償法法律改正が必要だと私は思う。どう思いますか。
  50. 坂田道太

    坂田国務大臣 法律の問題は私はよくわからないわけですけれども、ただいま民事局長答弁をいたしましたことから考えますならば、先生のおっしゃるような事態に対しては、外国人といえども相互主義を離れまして、日本国民の要望にこたえて救済できるということになろうかと思うのでございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、大臣を初めあなた方と私の点ではコンセンサスはあるのですね。相互保証がなくてもやれますよということなのですが、私はこの六条ではそういう解釈はできない、何の根拠をもってそうおっしゃるのかと言いたいのです。その点の意見が違うこと、それから本当にそうだとしたならば、相互保証がなくても政府判断でこれはできるという項目がここになければおかしいということなんです。  大臣、どうぞ参議院へ行ってください。  それで民事局長、念のためにもう一遍だけ、その点であなたの見解を伺います。
  52. 中島一郎

    中島政府委員 これは被害者と国との間の折衝がまず始まるわけでありますから、国がこの点を不問にして補償するということが可能であろうかと思います。問題は、国との間の争い裁判の問題になった場合でありますが、国が、この相手方の被害者外国人である、その外国人については相互保証がないじゃないかということを言えば、裁判所はこの法律適用できないということになりましょうが、国がそういう主張をしなければ相互保証の問題は起こらない、こういうことで申し上げておるわけでございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 それはちょっとおかしな議論じゃないかね。国家賠償法というのは国家の銭を出すわけです。あなた方は役人だ。その役人が、この法律に厳として「相互保証があるときに限り、これを適用する。」と書いてあるけれども、いいですよ、払ってあげますよ、裁判国家賠償法の六条を主張しませんよ、そんなことを法律を守らずに勝手にやっていいものでしょうかね。法律によらざる国家支出じゃないですか。それを勝手にやってもこの六条を主張しなければそれまでの話だ、お役人国家の税金をそんな勝手に支出してもらっては困る、こういう論理にはどうします。
  54. 中島一郎

    中島政府委員 法律上のたてまえはそういうことでありますが、具体的な事案において国民納得が得られないケースがあるじゃないか、こういう御質問でありますから、そういう場合については、国が政治的な判断によって具体的妥当な解決を得る方法もあるのではなかろうかということを申し上げておるわけでございます。
  55. 横山利秋

    横山委員 おかしいなあ。まあ、これは押し問答をしてもしようがないのですがね。委員長も聞いていらっしゃるが、国民が新聞で騒ぐ、テレビで騒いだから、法律にはこう書いてあるけれども出しますよということで、法律でいかぬと書いてあることを勝手にやり得るのだという判断は、この場合にはコンセンサスがあるからいいですよ、私は出すべきだという立場だからいいけれども、そのほかの場合に、勝手に国民の世論だというて、法律に明示してあるにかかわらず、そんなもの適当にやれるのだという解釈は、これは私は納得できませんよ。これは納得できない。法制局は帰ってしまったけれども、一遍内閣の法制局衆議院法制局に確かめて、改めて問題にします。  次は、刑事訴訟法の問題であります。  外国人は刑法は全面的に適用されるわけでありますが、外国人が法廷で裁判をされる場合、きょうは最高裁は来てなかったか。最判所の用語は日本語となっておるわけでありますが、この通訳はどこの負担になりますか。
  56. 當別當季正

    ○當別當説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問は、刑事訴訟法百七十五条の規定によりまして、「国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。」この規定に基づく通訳者の費用の支出の問題だろうと思いますが、これは最高裁判所に証人、鑑定人、通訳人などに対します費用の支出の予算が計上されておりまして、そこから支出されることになるというふうに承知しておるわけでございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 裁判所が外国人のいろいろな裁判上の通訳費用を持つ、そういうわけですね。  監獄、刑務所ではどうでありましょうか。刑務所で外国人に面会に来るということについて、それは看守が立ち会うことになるわけでありますが、そういう場合には通訳はどういうシステムになっていますか。
  58. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 外国人の被収容者について外国語で接見をするということは、刑務所、拘置所の所長の許可がある場合でなければできないことになっております。  実際の運用といたしましては、通訳が必要な場合は、できる限り施設の方であっせんをいたしまして、通訳をつけるということにいたしております。
  59. 横山利秋

    横山委員 あっせんをするということは、たとえば朝鮮人の人が収容されておる、朝鮮語しかできないという場合には、刑務所があっせんするのですか。その費用は刑務所が持つのですか。
  60. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 外国人の収容者が外国語で面会をする場合に、所長の権限としては二つございまして、大丈夫であるというふうに考えれば、その場合には外国語で接見するのを認めまして、特に通訳等の措置はとらない、これが一つでございます。  もう一つは、どうしてもこの場合には接見の際の話の内容を知らなければいけないというときには通訳をつけることになるわけでございますが、この場合の費用につきましては、現在の扱いとしては、その施設の側で容易に提供することができる場合は提供いたしますが、そうでない場合は本人の負担でということもございます。それから、本人の国の領事等に依頼して通訳をつけてもらうということもいたしております。
  61. 横山利秋

    横山委員 それに関連して、外国から来た文書、日本語でない文書、信書ですね。その信書についてはどういう扱いをしておるのですか。信書は、恐らく日本語で書いてある手紙につきましても開封して検査をしておるのではないかと思うのでありますが、その翻訳費用はどうしているのですか。
  62. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 外国語による信書の中で、刑務所当局で理解できるものにつきましては刑務所当局でそのまま検閲いたしておりますので、特段翻訳等の問題は起こらないわけでございますが、非常に特殊なといいますか、職員等ではとうてい理解できないような外国語の場合には、被収容者が費用を負担してこれを翻訳させることができるということになっておりまして、非常に簡単な方法で、施設の方で知っている人に依頼して翻訳してもらえるというような場合は別として、費用がかかるというときは本人に負担させるということになるわけでございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 関連して、聾唖者の手話通訳についてはどういう扱いをしていますか。
  64. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 聾唖者の方につきましては、特段の法的規制がございません。したがいまして、意思を疎通させるという場合には、一つは筆記、書いて行うということがございます。それから、手話の点につきましては、これを施設の方で提供するというだけのあれが整っておりませんで、実際にはボランティアの方の助けをかりて、どうしても必要な場合はやっているというのが実情でございます。
  65. 横山利秋

    横山委員 総じて私の承知する限り、外国人の収容者に対するこの種の問題がきわめて厳格過ぎるという批判を受けておるわけで、いまの聾唖者の手話通訳にしましても、面会者が連れていくと、おまえのところの手話通訳はいかぬ、刑務所の指定した市町村の関係者、手話通訳者、それでなければいかぬとか、そういうことを言う場合が多いのであります。この種の外国人だとかあるいは聾唖者の面会、それから通訳、手話等について、もう少し簡便な、温情ある態度をとったらどうだという意見が強いのでありますが、どうですか。
  66. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 外国人の場合あるいは聾唖者の場合についての通訳あるいは翻訳等の問題でございますが、これは一方では、施設の側としてそういうものを理想的な形でつけるということは非常にむずかしい状況がございます。他方、こういう人たちは大変コミュニケーションが困難な状況にございますので、通常のルールで事を処理しようといたしますと大変気の毒と申しますか、あるいは権利救済に不十分という場合も出得るわけでございますので、そういう点につきましては、両方の要請を考慮しながら、できる限り通信あるいは面会ということの保障と申しますか、それが十分にできるような方向で取り扱っていきたいと考えております。
  67. 横山利秋

    横山委員 善処を望みたいところであります。  次は、外国人土地法であります。  これも古い、大正十四年の法律でありますが、これも外国人が土地を所有するについては、相互主義ということで制限ないし禁止があるわけですね。
  68. 中島一郎

    中島政府委員 相互主義の要件のもとに政令で制限、禁止をすることができることになっておりますが、現在は、この外国人土地法に基づく政令は制定されておりませんので、結局、禁止あるいは制限はないという実情でございます。
  69. 横山利秋

    横山委員 法律はあっても政令がないから、法律は事実上の効果を持っておらない、こういうことですね。  そうしますと、第四条の規定に、「国防上必要ナル地区ニ於テハ勅令ヲ以テ」云々とありますが、この勅令もないわけですね。そうしますと、外国人がいま自由に日本の土地を所有できるということだそうですが、現実問題として、外国人日本土地所有の状況について把握をしていますか。
  70. 中島一郎

    中島政府委員 私どもでは把握しておりません。
  71. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、これはどういうことになるのですかね。私は、外国人日本国内において土地を所有することが現状においては全く自由であるという点について、一抹の疑念をなしとはしないのであります。私の承知する限り、そんな実例というものは、余り私の周辺には問題があったということは聞いてはいないのですけれども、この外国人土地法の現状というものが、いまおっしゃるようなことであり、大正十四年から勅令がないということについて、一条から九条に至りますまでのこの法律を動かす必要性というのはいま全くない、こうやっておいても大丈夫だというふうな御理解でございましょうか。いままで問題がなかったからほうりっ放しになっておったということのようでありますが、今後予想すべき問題も全くない、こうお考えでしょうか。
  72. 中島一郎

    中島政府委員 先ほど御指摘ありました外国人土地法の四条、国防地区等における取得を禁止し、あるいは条件または制限を付することができる、これも勅令によってできるわけでありますが、これについては、戦争中勅令があったといういきさつがございますが、戦後廃止されておるわけでございます。  それで、私の方は、直接の実態を把握するという方の主管の省でございませんので、実態わかりませんのですが、外国人の財産取得に関する政令による制限というものがございますが、これの実際の運用がどういうふうになっておりますか、私どもの方ではわかりかねるわけでございます。
  73. 横山利秋

    横山委員 どこが担当するのですか、担当するところがないんじゃないですか。
  74. 中島一郎

    中島政府委員 これは政令でございますから、担当の省があるはずでございます。後ほど調べてみます。私の方ではございませんので。
  75. 横山利秋

    横山委員 要するに、法律はあっても実効を及ぼしていない、そして実情の把握もできていない、担当のセクションもはっきりしないということで御答弁があったわけでありますが、この点も、私は実情納得できません。もし外国人土地法が必要でないというならば、今回、法改正法律の改廃もずいぶん思い切って行われておるわけでありますのに、法務省は——外国人土地法の所管はあなたの方ですか。違うのですか。
  76. 中島一郎

    中島政府委員 外国人土地法は私の方の所管であると承知しております。
  77. 横山利秋

    横山委員 それなら、そんなもの要らぬから今度の法律廃止の中に入れてくれと、何であなたは言わぬのですか。本件についても納得ができない状況でございます。  要するに、私が納得できない理由は、法律はあっても勅令、政令は何ら出ていない、実効を及ぼしていない、そのことは外国人土地法が必要でないからだということに尽きるわけですね。必要でないならば、行政改革のこの機会に廃止したらどうだ、こういう点についてはお答えがあるのですか、ないのですか。
  78. 中島一郎

    中島政府委員 時代時代によりまして、その必要が起こる場合もあり、消滅する場合もあるということであろうかと思いますので、その時代時代に即応して、政令によって簡易迅速にその手当てができるようにということで、法律は残っておるものであるというふうに理解しております。
  79. 横山利秋

    横山委員 そんな勝手な理屈は通りませんよ。成立してから六十年たっているのですよ。その間に戦争があった。戦争では、勅令はあったかもしれぬ。それは廃止された。自来、三十六、七年たっているんですよ。それは理屈が通りませんね。これも問題を提起しておきます。  次は、公証人、水先人が外国人であってはいけない理由は何ですか。——ちょっとお調べ願っているようですから、後で御回答いただくことにいたします。  最近、新聞にも出ておりましたけれども、弁護士会から法務大臣に対して、日本外国人弁護士がやることについては慎重であってもらいたいという要望があり、たしか、大臣趣旨はわかったと言ったそうでありますが、外国人弁護士が日本で開業する、公認会計士も同じ問題ですね、そういうことについての法律制限はどうなっていますか。
  80. 千種秀夫

    ○千種政府委員 現在の弁護士法におきまして、特に外国人日本で開業するという規定はございません。かつて占領中に、日本で弁護士をする外国人についての規定がございましたけれども、それが削除されておりまして、現在はございません。(横山委員「だれがいつやってもいいの、外国人が」と呼ぶ)したがって、外国人日本で弁護士を開業しようということになりますと、現在の弁護士法の規定がそのままかぶってまいりまして、弁護士たる者はまず日弁連に登録をして、しかる上弁護士活動ができるということになっておるわけでございますが、それには日本の弁護士の資格が必要でございまして、司法試験を受けるとか大学教授をやるとか、その資格に該当しませんと登録が受け付けられませんので、実際はできない、こういうことになります。
  81. 横山利秋

    横山委員 こういうことはどうなっているのですか。日本の弁護士資格を持っている者はアメリカでもできる、アメリカの弁護士資格を持っている者は日本でできる、公認会計士を含めて、そういうあれはないんですか。
  82. 千種秀夫

    ○千種政府委員 アメリカの弁護士が日本の弁護士資格を取る道がないかということになりますと、これはないとは言えないんで、あるのでございますし、日本の弁護士がアメリカへ行ってアメリカの弁護士資格を取ることもできるわけでございまして、それぞれの国の弁護士資格を持っておれば、それはもちろん問題はないわけでございます。ない者が、お互いに他の国へ行って弁護士活動ができるかということは、これから問題になる問題でございまして、現在それがアメリカの方の要請で、何とかできるようにしろということが言われているわけでございます。それについてのルールというものは、いまございません。  したがって、これを実際にやろうといたしますと、まず実際にその関係のある弁護士会の方がアメリカの法曹協会のその部門と話し合いをし、交渉をしまして、一定の限度、たとえば外国のことでございますから、アメリカの弁護士が日本へ来て日本の弁護士と同じように日本法律についてやろうとしても、なかなか無理でございます。しかし、アメリカ法についてはアメリカの弁護士の方がよく知っているはずでございます。逆のこともまた言えるわけで、日本の弁護士がアメリカへ行って、日本法の必要について日本国民あるいは企業に対して法律のサービスをするということも考えられるわけでございますから、そういう一定の限度で、どのような制約のもとにどのようなことができるかということを話し合いをして、その基準を立てました上でその制度をつくっていくということは、これからの課題でございます。
  83. 横山利秋

    横山委員 記憶に定かではありませんけれども、講和条約が発効した後、日米通商航海条約でございましたが、何かこの問題に該当する項目があったわけではないんですか。
  84. 千種秀夫

    ○千種政府委員 日米通商条約の八条というのがございます。この八条というのは、その第一項で、お互いに日本人ならアメリカへ行った場合、アメリカ国民でございますと日本へ来た場合に、その国の資格のある弁護士なり会計士なり、そういう技術者を雇って仕事ができるということを保障している規定でございます。その一項の後段に、その国の資格がない者でも、自分の企業の中のたとえば検査をさせるとかいう場合には、その国の資格がなくてもできるというような規定がございます。その後段の中には弁護士というのは入っておりませんが、しかし、自分の企業に雇って社員として弁護士を使う場合には、これは弁護士が一般の不特定の人に対する営業をするわけじゃございませんので、そういう場合はできるということになっておりますが、アメリカの弁護士が日本へ来て弁護士業を開業しようということになりますと、これは日本の弁護士法の問題になってくるわけでございます。
  85. 横山利秋

    横山委員 私は、何も外国の弁護士なり公認会計士を自由に日本でさせていいではないかということを必ずしもいま言う立場で伺っておるわけではないのです。しかし、いま、在日外国人権利と義務というものがどうあればよろしいのか、現状はどうなっておるのかという点で伺っておるわけです。  公認会計士についても、弁護士と同様の条件下にあるわけですか。
  86. 千種秀夫

    ○千種政府委員 サービス業の一部ということでございますと、弁護士も公認会計士も似たような問題かと思いますが、公認会計士につきましては監督官庁は大蔵省でございまして、私の方から申し上げる立場にございません。ただ、いまおられないようでございますから、承知している限りのことを申し上げますと、監督官庁の大蔵省の方で認可をした者が一定の範囲で仕事ができるように聞いております。
  87. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんし、ちょっと各省の手配がおくれたようでありますが、考えてみますと、そのほか税理士、船舶職員法、航空従事者、航空法、医師法、歯科医師法、衛生士、薬剤師、それから保健、助産婦、獣医師、建築士等外国人日本において職業につきたいという点についてのありようについては、必ずしも各法が統一されているわけではないように私は思うのであります。  弁護士や公認会計士にいたしましても、実は日本外国の商社が本店を持ち、支店を持ってかなりの活動をしておるし、日本人もまた外国で、日本会社外国で支店を持ち、本店を持ち、かなりの活動をしている、国際化しているという状況のもとで、日本人の海外商社活動、外国人日本における企業活動あるいはまた職業活動というものが、かなり昔と違ってきわめて広範に入り乱れてそれぞれの職業活動の自由を可及的に広げ、その自由を保障するというときになっているのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、この種の問題を、外国人国内における権利と義務の統一の問題について、一体どこが、どの省が統一的にお考えになるのか。個々ばらばらにそれぞれの法律に基づいて各省が適当に考えるのかという点について私は疑問を持っておるわけですが、どなたかお答えできますか。
  88. 中島一郎

    中島政府委員 現在の制度といたしましては、それぞれその外国人が活動をする分野を所管しておる役所ごとにその問題を所管しておるということでございます。  先ほど御質問ありましたうち、公証人の関係は私の方でございますので、お答えをさせていただきますが、公証事務というものは国の事務である前提でございます。たとえば公証人のおりません地方におきましては、法務大臣指定した法務事務官が公証人の仕事を行っておるということが端的にそれを物語っておるかと思うわけでありまして、したがいまして、公証人については、公証人法の十二条という規定がございまして、「日本国民ニシテ成年者タルコト」ということがその要件として定められておるわけでございます。
  89. 横山利秋

    横山委員 ちょっと問題を変えますが、数年前、ワーキングホリデーについて、特別に入管の別枠として行われました。そのワーキングホリデーは一回で終わりなんですか。その後どうなったんですか。ワーキングホリデーの法律的な解釈はどうお考えになっているんですか。
  90. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ワーキングホリデー制度は、五十五年の一月に故大平総理大臣が豪州を公式訪問された際、フレーザー首相との間で意見の一致を見て、日豪両国の相互理解の促進の一環として設けられたものでございます。  この目的は、両国政府が、相手国の青年男女に対し、長期にわたり休暇を過ごすために入国することを認め、また旅行資金を補うため、休暇の付随的側面として仕事に従事することを認めるものでございます。このワーキングホリデー制度は、現在わが国は豪州としかやっておりません。現在、ほかの国に及ぼすことは考えておりません。
  91. 横山利秋

    横山委員 大平さんが特別な意味でやったことだというのですけれども、そのワーキングホリデーというものが、各国の青少年交歓という意味において非常にユニークな取り扱いだと私は思うのであります。そういうことは豪州のみならずほかの国でも可能性のあることではないか、推奨すべきことではないかと思うのです。いまあなたの話を聞くと、まあ、あれは大平さんが勝手にやったことだから、法律的見解は特例として認めたんだけれども、ほかはやる気持ちはないというのですけれども、そういう話がまたほかの国にあれば、あなたの方としてはそれに応ずる用意はありますか。
  92. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 そういうお話が起きた場合には、関係省庁とも協議してその問題を考えたいと思います。
  93. 横山利秋

    横山委員 電算機の問題でちょっとお伺いします。  私も、法務省が電算化することについて勉強をしていらっしゃるということは承知しておるのですけれども、いまは余りにも時間がかかって思うに任せぬ。この間私が伺いました外国人登録法の事務手続につきましても、べらぼうなたくさんの登録申請に関するものが手作業で行われておる、あるいはまた空港における入国の管理というものが、成田はある程度のことができておりますけれども、ほかの地域ではそれが全く手作業的なやり方で行われておると伺っておるわけであります。この種の入国管理に関するあるいは国内外国人管理に関する電算化の作業はいつごろ完成し、いつごろ実現をするわけですか。
  94. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま横山委員が御指摘になりましたように、入国管理局所管業務が最近非常に増大してきております。そこで、これを効率的に運営を図るため、事務の電算処理化につきましては従来から積極的に対処してきているところでございます。現在実施中のものとして挙げますと、本省におきます日本人及び外国人の出入国記録の電算処理、それから東京入国管理局成田支局における入国審査、これは要注意外国人の検索システム電算でございます。それから、外国人登録記録の処理につき、現在本省において移行作業を行っているところでございます。  この三つの分野における電算の導入状況について申し上げますと、まず第一に、日本人及び外国人の出入国記録処理電算につきましては、昭和四十五年に移行作業に入りまして、昭和四十六年から本番稼働に入っております。それから、成田支局の入国審査電算でございますが、要注意外国人の検索システム、これにつきましては昭和五十三年に開発研究に着手いたしまして、昭和五十四年に移行作業に入りました。そして五十七年、ことしから本番稼働に入っております。三番目に、外国人登録記録の処理電算でございますけれども、五十年に開発研究に着手いたしまして、五十七年、現在移行作業に入っております。五十九年に本番稼働に入る予定でございます。五十九年に登録電算が本番稼働に入りますとともに、入管関係の電算計画は一段落、そういう状況でございます。
  95. 横山利秋

    横山委員 外人登録の電算化はどうですか。
  96. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 いま三番目に申し上げましたのが外国人登録記録の処理電算でございまして、昭和五十年に開発研究に着手いたしましたけれども、ことし移行作業に入っております。いろいろなデータのインプット、入力その他の作業をしております。そして五十九年に本番稼働に入る、こういう予定でございます。
  97. 横山利秋

    横山委員 きょうはのっぴきならぬ用事がございまして、残念ながらずいぶん問題が残っておるわけでありますが、すでに同僚委員の諸君から、本外人登録法に関しまして全国の担当者会議の諸要望事項、特にその中における指紋の押捺制度等々たくさんの問題提起をされておるわけであります。私どもとしては、この過料の二十万円の問題を含めて政府側に、また与党側に幾つかの修正を要望いたしておるところであります。この修正要望につきまして、本日の理事会におきましてもいろいろ意見交換をしたわけでございます。総体的に見て外人登録法が一歩前進を見るにやぶさかではございませんけれども、少なくとも二十万円の過料はぎらぎらし過ぎるとか、あるいは指紋押捺制度をやめろとか、あるいは外人登録の年齢制限の問題だとか、そういう数々の問題については、これほどの改正をする機会にいま一歩是正すべきではないか、そういうことについて同僚議員からもたくさんの機会、人、みんな一致して野党側としては政府与党に要望をしておるところであります。  大臣はお見えになりませんが、政務次官、その状況は御存じでございましょうか。御存じであるとすればどういうふうに対処をお考えになっていられるか、伺いたいと思います。
  98. 竹内潔

    ○竹内政府委員 大体のことは承知しておりますけれども、いま外国人登録法は、他の一般行政法規と同様、時代の変遷に応じ、時代の要請に的確に対応し得るよう常に見直さるべきであることは当然であります。今後ともわが国の内外の政治、社会、経済、文化等の諸情勢の変遷に迅速に的確に対応すべきである。今後、今次改正法案の審議を通じまして御指摘のあった諸点を含め、引き続き検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  99. 横山利秋

    横山委員 終わります。
  100. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  101. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 先年、国際人権規約に日本は加盟したわけでございます。国連に対して日本として人権問題をどのように討議機関の場所で報告し、いろいろな質疑の場所での日本側の発言があるかということから、まず私はお尋ねを進めたいと思うのです。  それに先立ちまして、国連のファン・ボーベン人権部長が、これは事実上の解任であると私は言わなければならないと思うのですが、おやめになったという事実があるようでありますが、このいきさつについてお尋ねをしたいのです。何か御承知おきになっていらっしゃることがございますか。
  103. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの点につきましては、承知いたしておりません。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 外務省の方で、これに対しては掌握なさっていらっしゃいませんか。国連に出向なさっている職員の方々からの御報告はございませんか。私は国連に出向なさっている職員の方々から聞きましたよ。
  105. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 その点につきましては、まだ伺っておりません。至急調査いたしたいと存じます。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 このことに対しての事情というのはもうずいぶん進んでいるようなかっこうになっているのに、把握なさるのが遅いのですね。  この今度解任された部長の御発言の中に、ごあいさつの中身としてこういうのがあるわけです。「締約国の報告書の作成過程で、一般の人々、あるいは、社会のグループの代表の参加を得るための措置はどの程度までとられているであろうか。」こういう疑問形で問題を投げかけて、一般の人々、社会のグループの代表の参加というものをでき得る限り求めていくというのが至極当然であるというふうな御発言があるわけなんですが、この人権部長の御意見からしますと、どうも日本政府の資料のつくり方を私も限られた範囲でいろいろと見聞をいたしまして、開きがあるように思うわけであります。  昨年の十月にボンで第十二会期人権専門委員会が開催されているわけですが、日本側の報告というものはどういうふうになされたかというのを、総括的にまずお答えください。
  107. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 わが国は、昭和五十五年に人権規約、B規約の第四十条に基づく報告を作成いたしまして、国連当局に提出いたしました。翌五十六年、つまり昨年の秋、ただいま委員から御指摘のございました人権委員会におきまして、わが国が先年に提出しておりますところの報告、これを中心にいたしまして質問を受け、これに対して回答を行ったという経緯がございます。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 いま総括的にと申し上げましたから、御答弁もその趣旨に沿ってお聞かせいただいたわけですが、どうもこの委員会での日本側の報告が、人権規約にうたわれているすべての権利日本では憲法などで保障されている、実行状況を見ても日本は人権が最もよく守られている国の一つというふうに自画自賛が過ぎておりまして、これに対してのかなりの批判があったということを聞かされておりますが、その辺は率直にお述べいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  109. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま土井委員から御指摘がございましたように、わが国が提出いたしました報告の内容は、率直に申し上げまして、簡潔に、しかしながら要を得た報告だった、かように存じます。また、同じく御指摘がございましたように、質問側の委員からは、日本の報告は簡潔に過ぎたのではないか、これはノルウェーから出ておられる委員でございましたが、そういう御発言もございました。ただ、日本といたしましては、今回のいわば審査、これが最初の試みでもございましたし、やはり簡にして要を得たものをもって当たるべきである、こういう考えで臨んだわけでございまして、今後は前回の経験を踏まえて十分内容のあるものにするように心がけたい、努力をいたしたい、かように考えております。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 ノルウェーの方の発言された方は、よほど紳士であったと私は思います。紳士でございますから、簡潔であるということの表現で簡潔に過ぎるという発言をされているに違いないと思うのですが、要は、もっと具体的に、率直に、正直に事実に即応して言えば、規約の諸権利日本法律に食い違いはないと思うけれども、規約と相入れない歴史的、社会的、文化的な伝統に基づく束縛がある中で、規約をどういうふうに実行していくかということが実は問題なんだ。ところが、そこのところは日本のレポートというのは法律面にまことに偏っている、官僚的な報告であるという強い批判があったということを私自身聞かされております。また、法律面に偏ったと申しましても、その法律自身に対してもいろいろな問題点がまだまだあるのじゃないか。人権規約を誠実に履行するという点から考えて、まだ日本が留保いたしまして未批准の分についてまでも考えを及ぼしてまいりますと、これは日本としてはまだ法律面についても問題点が多々あるということを指摘せざるを得ないのですが、これはそういうふうに私自身思っておりますけれども、いかがですか。
  111. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 A規約に関連いたしまして、わが国は加入に際して留保を行っているところは、ただいま御指摘になられたとおりでございます。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 その中のある一つの問題なんですが、まだまだこれから申し上げますけれども、まず、日本にマイノリティーズ、少数者、少数民族が存在しないというふうに日本は報告の中で言っているけれども、実は朝鮮人、中国人、それからさらにはアイヌ人等々のグループがあるではないかという指摘があったはずでありますけれども、それは事実だと思いますが、いかがですか。
  113. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのございましたうち、まず朝鮮人、中国人に関しましては、これらの方々はいずれも外国人でございますので、B規約第二十七条に申しておりますところの少数民族の概念からは外されるものかと存じます。  次に、通称アイヌと申される方々の点でございますが、この点に関しまして、お話のございましたように、わが方はそういう少数民族は存在しないという答えをいたしております。  その理由は、第二十七条で申しております少数民族は、解しますところでは、種族あるいはまた宗教、文化といった面で少数の集団であって、歴史的、社会的あるいは文化的に見て他の集団と明確な区別がある、こういう少数民族に対してかくあるべしという規定であるというふうに解するのでございますが、このような観点からいたします少数民族としてアイヌをとらえる場合、私どもの見解では、単に歴史的、社会的あるいは文化的という事柄のみならず、加えて政治的、社会的な要件、制度がどうなっているかということもあわせ考えるべきであるということでございまして、そういう観点からいたしますと、御承知いただいておりますように、アイヌの方々に対しましてもひとしく同じ政治社会体制が適用されておるということでございますので、そういうことから少数民族は存しない、かように説明をいたしたのでございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、その委員会におきましては、在日朝鮮人、在日中国人の地位に関するいろいろな情報がすでに用意されておりまして、日本政府からさらに詳しい説明を受けたいというふうな要求があったやに私は聞いておりますが、そういうことに対してお答えになりますか、お答えになりませんか。どのようなお心づもりでいらっしゃいますか。
  115. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま御指摘になられましたように、委員側の方からそういう情報についてより詳しい説明が欲しいという御要望がございました。これにこたえまして、この委員会に出席いたしましたわが方代表よりは、在日の朝鮮人の方々に対する状況、これについて報告をいたしております。その報告は、昨年の二月にわが国が国連の人権委員会におきまして非公式の場で提出いたしまして説明をいたしました資料、これに基づいて報告をいたしたのでございます。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 さらにこのことに対して詳しい報告をという要求があったようであります。そのことに対して、これは次回にか、次回までにかいずれかはわかりませんが、御用意がおありになるのでしょうか。
  117. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 より詳しい報告ができるように努力いたしたいと存じております。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それは努力をなすって報告をされるということなのだというふうに理解してよろしいですね。それは次回ですか。
  119. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 次回の同じ期、委員会には提出いたしたい、かように考えております。
  120. 土井たか子

    ○土井委員 同じくその委員会で、これは例を挙げればほかにもいろいろあるのですよ。順を追って申し上げますが、国籍法の関係で、これは法律自身の問題ですね、国際結婚で生まれた子供の日本国籍取得に関しまして母親を差別しているという指摘があったはずでありますが、このことに対してはどういうふうにお答えになりましたか。
  121. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 いま御指摘のございました国籍法に関連する問題、これも委員側の方から説明がございまして、これにつきましては、御承知いただいておりますように、婦人の差別撤廃に関する条約の批准の問題がわが国にとって重要な課題になっております。その際に検討すべき重要な事項の一つとして、まさにこの国籍法の問題がございます。ただいま関係の省を中心としたしまして、この婦人差別撤廃条約を批准する上において必要な国内措置をどういうふうにとるべきか、どういうふうに対応すべきかということを鋭意検討いたしているところでございまして、この条約批准との関連でこの国籍法の問題は十分取り組んでいかねばならないと考えております。
  122. 土井たか子

    ○土井委員 そのような心づもりというのは、もういままでに耳にたこができるほどお聞かせいただいております。具体的に法務省の方は作業をお急ぎになっているという事実が現実の問題としてあるわけです。その関係現実の取り扱いの問題との関係で、後で少しお聞かせいただかなきゃならない質問を私は用意しております。  しかし、この女性の地位に関する問題というのは単に女性だけの問題でございませんで、人権という点から考えていくと、これは男性もともに考えなければならない問題点でございます。こういうことからすると、どうも日本という国は人権規約に反する多くの人権侵害が存在しているのに、正確にそのことを国連に正しく政府は報告をしていないという向きがちらちら出るのです。  人権擁護委員外国人というのはなれるのですか、いかがですか。
  123. 中島一郎

    中島政府委員 担当の人権擁護局長が参っておりませんので、私から便宜お答えをさしていただきます。  現在、人権擁護委員は全国で一万何千人かいらっしゃると思いますけれども外国人の人権擁護委員はおられないと承知いたしております。恐らく法制上そういうことになっておったのではないかと思いますけれども、確定的なことは申し上げる用意がございません。
  124. 土井たか子

    ○土井委員 この国連の委員会で、日本は、人権擁護局や人権擁護委員があるから、人権に対してこれを擁護するという側面では問題がないという報告をなすったのじゃないですか。非常にこのことに対して主張に力を入れて擁護委員の問題を披瀝されたために、じゃ、擁護委員というのはどういうものかという関心を非常に持たれまして、いろいろ人権擁護委員会についての構成のあり方、機能の問題に対しての質問が続々と出てきたという話を私は聞いております。ところが、この人権擁護委員が実は無給であるというふうなことも聞かされ、外国人はなれないということも聞かされ、何とまた草の根の問題だと期待が非常に持たれたのが、実は期待過剰であったというふうな意味で不信の念すら委員会では持たれたといういきさつもあるようでありますが、これはいかがですか。
  125. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 不信の念を持たれたというふうには了解いたしておりません。
  126. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、そのことに対していろいろな質問が集中して、そして日本の報告をされた方は立ち往生されるようなかっこうにもなられたと私は仄聞しておりますよ。いかがですか。
  127. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 この委員会の審議の経過を簡単に御報告させていただきますと、委員側からの質問は、わが方の代表が答弁を行いました前日に一括していろいろな質問点を出され、それを承りまして回答を準備して、翌日お答えしたという経過でございます。したがいまして、ただいま御指摘のございました特定の事実について委員側の方からいろいろとやかく批判めいた御意見はなかった、かように了解いたしております。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 まあそれは、いろいろ事情に対してその場所にいない者にとりましては、政府からのかっこうのいい答弁を聞いて、さようでございますかと認識する機会にしか恵まれないのですが、これ自身は大分事実と反していた場合には、われわれこそ大変な割り切れない立場に立たされるというかっこうになるわけでありまして、事人権の問題ですから、私は深刻だと思うのです。  PRの大切さがこの委員会でしきりに問題になりました。それは当然のことだと思うのです。つまり、国際人権規約の中身を批准をして履行することのためには、まず政府は、条約加盟の意義というものを国民に周知徹底させるということは、どうしても至上命題にその場合なってまいります。知らないと、何がどうなるのかわからないわけですからね。だから、そういうことからいたしますと、これは現在、やはり人権問題について特に密接な直接な関係がある部署であるたとえば警察とか監獄関係者とか、公務員等々の研修で人権規約についての教育が具体的になされていますか、どうですか。
  129. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま土井議員が仰せられましたように、国連の人権規約にわが国が加入した目的は、この規約に盛られる人権の保障権利の確保を一層さらに充実させていく、こういうことを心がけるべきであるということにあること、そのとおりでございます。また、同じく御指摘がございましたように、このような規約が何を定め、何を確保しているのであるかということを十分国内の各層、国民の皆様方に御承知いただくように努力すること、これまた仰せのとおり重要なことであると思います。  このような観点から、外務省といたしましても、情文局から人権規約についての解説を試みたパンフレット、小冊子を作成いたしまして国内に配布するという、いわゆるPRに心がけております。また、省内におきましても、機会があるごとに、場合によりましては研修所などの場を利用いたしまして、省員にもこの人権規約についての知識を十分ならしめるように努力はいたしております。あるいはしかしながら、ただいままで行っております努力が果たして十全であるかどうか、この点御疑念がおありかもしれませんですが、こういった点をも踏まえまして、一層今後努力してまいりたいと思っております。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 ときに警察、監獄関係者、公務員の研修にこの人権規約というものが入っているという御発言でもございましたから、研修目録なりプログラムについてひとつ御提示を願います。どういうふうに人権規約についての研修がなされているかというのは、ぜひとも知りたいと思います。人権規約を日本が批准したのはたしか一九七九年九月、さらに難民条約の発効は一九八二年、ことし一月、この難民条約についても同様に研修対象になっておりましょうね。いかがですか。
  131. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 先ほどの私よりの答弁の際に、外務省省員に本件人権規約の何たるかを十分周知せしめるための努力の一環として、研修所などにおいてもしかるべき機会をとらえて説明をするということを申し上げたのでございますが、この人権規約そのものだけについての研修プログラムというものは特に設けるということではございませんで、最近における国際情勢の動き、なかんずく国連の関係においてどのような進展があったかということの関連でこの人権規約の問題というものの説明を行うということでございますので、そのように御承知賜りたいと存じます。  なお、難民条約につきましても、特にただいまのところでは、この問題だけを取り上げてのプログラムというものは準備いたしておりませんので、そのように御了解賜りたいと思います。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 端的に言うと、やっていらっしゃらないということだろうと私は思うのですね。国際情勢の説明なんて、そんなものは、それすなわち人権規約について研修をしているということにはならないと思いますよ。条約に加盟してから後、国内的にどういう措置をどのように講じられたか、そして人権に対して国内的措置としてどれがどれだけ変わったかということが実は問題なんであって、それは日本人であれ外国人であれ、日本国内的措置が実は問われている問題なんです。国際情勢についての説明をやっているからその研修になっているというのはまことに場違いもはなはだしい問題でありまして、どうもおやりになっていらっしゃらないという実感が私はいましております。これはおやりにならないと、お話にならないと私は思うのですね。  では、私は一市民の立場でさらにお伺いしますが、人権週間というのが日本でありますね。人権週間。人権規約に加盟したことは、恐らくこの人権週間については最もPRをするという時期であろうと私は思うのです。私はお祭り事じゃないと常日ごろ思いますので、何々の日とか何々週間と言われるのは、その週間とかその日だけに限って、あとは知らぬ顔の半兵衛で何がどうなっていようと関係がないということであってはならないと思っていますから、そういうふうにこの人権週間というものをその週間だけとは理解いたしておりませんが、しかし、やはりPRをする一つの絶好の場所ではないかとも思うわけです。人権規約についてPRをされておりますか。ことしは何をしようとなさるのですか。その辺、いかがですか。
  133. 中島一郎

    中島政府委員 これも、法務省といたしましては人権擁護局の所管かと思うわけでありまして、私から便宜お答えを申し上げるわけでありますが、十二月十日が人権デーということになっております。これは世界人権宣言が採択された日を記念して設けられた記念日であるかというふうに思うわけでありまして、その前一週間、でありますから十二月四日から十二月十日までの一週間、これを人権週間ということで、国内的には法務局の人権擁護部あるいは地方法務局の人権擁護課等におきまして、先ほどお話の出ました人権擁護委員の御協力を得まして種々の行事を行っております。啓発活動ということでいろいろな行事を行っておるわけでありまして、その中にあるいは世界人権宣言でありますとか国際人権規約でありますとかいうようなもののPRというようなものも含んでやっておるわけでございます。
  134. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま民事局長からお答えしたわけでございますが、人権擁護局長が参っておりませんので、詳しいことはいずれ局長から報告させますが、実はその人権週間の大会に私、出席をいたしました。昨年のテーマはたしか、中学生に対しまして人権について考えるといいますか、そのような作文を書かせまして、それに総理大臣賞、法務大臣賞、それからまた人権擁護の方の会長さんからそれぞれ賞を差し上げた。私もかわいい中学生と、後で法務省に来ていただきまして、賞を授けると同時に、いろいろ話をしたことでございます。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 それは大臣御自身の御経験からの御発言でございましょうが、先ほどは、人権週間の中では人権擁護委員などの協力も得てという御発言もございました。実は先ほども私、それに少し触れたとおりで、擁護委員さん自身は無給なのであります。したがいまして、そういう活動からいたしますと、いわばボランティア活動になるのですね。ボランティア活動に依存をしてそのPRについておやりになるというふうなかっこうになっている面を、私たちは黙視することはできないのです。  というのは、それにひっかかってくる問題が実はこの委員会でもあったのです。こういうPRをするのには予算が必要である、その予算を用意するのには、日本の場合は非常に厳しい、財政再建の折からいよいよ厳しいということも考えられているのでしょう。そこで、人権規約の中でPRのために充てられる一定の額をGNPの何%と規定をするというふうなことになってくれば、それ自身が義務化されるわけであって、理屈の上から考えるとそういうPRのやり方も考えられると思うのだけれども、しかし、そういう法文化されるということになった節は、日本としては恐らく加盟できなかっただろうという発言を平然となすっていらっしゃる日本からの代表者があるのですよ。これはまことにいかがわしい発言だと私は思うのです。こういう発言をなすったのでしょうね。どうですか。
  136. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 いたしております。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 法務大臣、これはちょっと問題があるとお思いになりませんか。PRというものはそれぞれの国々のGNP比何%と人権規約で定めていれば別だ、それがないことについてどうこうしろと強要されても、それはそれぞれの事情があるからむずかしい、しかし、日本としては、規約にそういう条文があったときにはこの人権規約に加盟できなかっただろうというようなことを発言されているのですね。これは法務大臣の御感想を承ります。
  138. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 わが代表がその場で申し上げましたことは、確かに予算確保という観点からは、たとえばGNPの一定割合を義務的な形でそれに充てるということがいいのかもしれない、しかし、そのような義務的な規定を設けるということになりますと、せっかくの人権規約というものの成立が手間取るといいますか、非常にむずかしくなるのではないかというようなことを申したというふうに聞いております。この点につきましては、ただいま委員がおっしゃられましたように、いささかそういう場での発言としては問題があったのではないかと私どもも反省いたしておりますが、他意なくそういうことを申したということで、御了承を賜りたいと存じます。
  139. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま外務省から一応の御答弁がございました。したがいまして、その事実内容を私、余りよく承知しておりませんので、ここでいろいろと批評は申し上げませんけれども、しかし、日本の国として人権問題に対して真剣に取り組んでおるということは、私ははっきり言えるのであって、それがお金でどう表示されるかというものは、やはりまた別の問題だと私は思うわけでございます。そしてまた、現在の予算の中で十分だというふうには私は考えておりません。われわれは一層努力をする必要があるというふうには思います。  ただ、これは私の受け取り方が間違っておるかもしれませんけれども、先ほど土井先生はボランティアだからいけないんだという……(土井委員「それはそうじゃない」と呼ぶ)私は、こういう問題はむしろボランティア活動こそ、それに対してこちらが奨励するというか、あるいは足りない部面をこうしていくということは、これは民主社会、自由な社会を発展させていく。何でもかんでも国がやる、そういうようなことはよくない。むしろ成熟した民主社会においてはボランティア活動こそ本当のものだというふうに思うのです。だから、そこは私の受け取り方があるいは違ったとは思いますが、私自身はそう思うのです。しかし、いま政府で予算化しておりますものが十分であるとは決して思っておりません。しかし、それなりの努力をしているということはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 私は、ボランティア活動がいけないと言っているわけじゃないのです。ボランティア活動に依拠してばかりいるということはけしからぬと言っているのじゃないのですよ。そこのところはひとつ誤解のないようにお願いしたいのですが、ただしかし、ボランティア、ボランティアと言いましても、人権尊重されているという実感があって、初めてその問題に対しては自主的にそういう活動というものが喚起されるわけでございますから、そこのところはそうでないのにやることを要求するというのは、私は間違っているだろうと思います。だから、その辺は非常にいわく微妙な問題でありますから、いま大臣お答えになったことも私は理解できないじゃありません。  しかし、そうなればなるほど、さて次の問題にひっかかるのです。これはこの委員会の場所で、人権規約にうたわれている権利というものが日本では保障されている旨の発言が非常に強くなされたという経過がございまして、また、そのことに対して日本としては非常に強く取り組んでいるというような趣旨も発言されたわけでございますから、そこで出てきた問題は、人権規約の選択議定書に対して日本が批准してないわけですね。これは、私も外務委員会に所属いたしておりまして、A規約、B規約の審議にかなりの時間をかけて審議をしたという経験をいまだに覚えているわけでございますが、この留保条項等々の問題をめぐって、かなりこれに対しての質問が各党から集中してあったという事実を私もいまだ忘れていないわけです。  そういうことからいたしますと、個人のアピール権というものをいろいろ認めたものを、どういうわけでこの選択議定書に対して日本は批准しなかったのかという質問が、案の定出てきたのです。そうしたら、その席で日本側から出られている方は、これはまあ主権の問題だからといって振り切られたといういきさつがあるようであります。どうもこれでは困る話じゃないか。主権の問題だからといって振り切ってしまっておられるのは、穏当とは言えないのですね。適当とは言えないですよ。ちょっとこれは私はまた見過ごすわけにはいかないなと思いながらこの資料に当たったのですが、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  141. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 わが方から出席いたしました者から聞きましたところによりますと、この選択議定書の問題が果たしてこの人権委員会の取り上げるべき問題であるかどうか、その点に疑義がございましたので、ただいまおっしゃられましたような答えをした由でございますが、委員がおっしゃられました御趣旨は、私どもといたしましても十分理解し得るところでございまして、単に形式的な形で返事をすべき筋合いのものでは必ずしもない、そのあたりは十分肝に銘じて検討考慮すべきことではないか、かように感じております。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 もういまは、その場面についてのいろいろな自省も含めて御発言になっておられますから、それは十分その点も御認識だろうと思いますが、実は人権規約を国会として承認するに当たりまして、衆議院の外務委員会の場所では決議をしたわけであります。その決議の中に、未批准の部分、つまり留保部分については早期に留保を外すという方向で努力することというのがちゃんとあるんですよ。したがいまして、国際的なこういう場所に出て、国連のこういう委員会に出ていろいろ発言をなさる場合に、日本の主権の問題だとおっしゃる、その主権の中に国会における決議というものが認識されてないということが非常に明確に浮き彫りにされるわけでありまして、こんなことに対して私は黙っているわけにはいかないのです。よろしゅうございますか。これは認識として間違っていますよ、主権の問題だとして振り切ればそれでいいというのは。国会答弁で、時間さえ来ればいいから、いろいろと肩透かしの答弁をやってみたり、ごまかし答弁をやればそれでいいという姿勢が、外国に行ってまでも出ているのです。ひどい話だと私は思いますよ。このことは、自省を含めて検討されますね、必ず次回には。委員会に持って出る場合。
  143. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま仰せになられました諸点は十分心にとどめまして、次回の委員会に際し準備を行う上で考慮いたしたい、かように存じております。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 さっきからいろいろ考慮の点が出てきたのですが、そこでちょっと、さらにそれならばというのでお尋ねを進めますが、外務省は国連のこういう委員会に報告書を作成なさる、そういう作成をなさる段階で国内のいろいろな法制度に対して調査をなさる、そして調査結果をおまとめになる、こういう一つの作業の手がかりがあると思うのですが、この一つの作業について具体的にまとめられたものを資料としていままでお出しになってきた過去の経緯があるのです。  私もここにその一部を持ってまいりましたが、「日本における一般外国人国内法上の地位」という報告でございます。外務省の条約局第四課というのが昭和三十年三月お出しになっていらっしゃる。これは追録第二号という形で出ているわけでありますが、これも順を追って言わなければなりません。追録第一号というのは、その前年の昭和二十九年三月に、同じく外務省の条約局第四課から出ております。そうして第三号は、三十年の明くる年、昭和三十一年の三月、条約局の第四課から出ているのですが、その後、三十二年に至りまして、三十二年の三月に、今度は出された課が変わりまして、第三課になっているのですね。三十二年と三十三年と、私はこれを調べてきたのですが、第三課になっています。ところが、三十四年に至りまして、条約局の法規課から同じようにこういうものが出まして、そして三十四年以後これはぶつんとちょん切れてしまっているのです。どこをどう探してもないわけです。昔はこういうことをしてお出しになっていたのだけれども、いまは作業がぶっ切れてしまって、お出しになっていらっしゃらないということなんですか、どうなんですか。
  145. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お尋ねの点につきましてはつまびらかにいたしておりませんので、至急取り調べたいと存じます。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 これはどうも、ないようですよ。以前なさっていた作業がいまはないというのは、不必要だという認識がおありになったのかもしれません。それならば、なぜ不必要かという根拠を聞きたいと思います。これは非常に大事な資料なんです。見ていって、これが非常に大事だということがいよいよわかるわけですね。ですから、これが後ぶつ切れているかどうかを調査をしてください。恐らくないと思いますよ。なぜないかという理由もその節は聞かせてください。
  147. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 仰せのとおり至急措置いたしたいと存じます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、国連の人権専門委員会に対して日本の報告は、いまお尋ねした限りにおいても、まだこれは氷山の一角ですが、未完成だということを言わざるを得ないですね。さらに追加をするということも必要でしょうし、質問を受けたことに対して中身に答えるということもやはり必要でございましょう。そういうことに対しての書面を出すということが必要視されてくると思うのですが、その取り扱いはどういうことになりますか。この会期がどうなっているのか、私はインターバルのシステムがつまびらかにわかっておりませんので、その点の御説明も含めて、ここでしておいていただきたいと思うのです。
  149. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 次回の委員会会期、その場で日本がいろいろ質問を受けるという意味の会期でございますが、これは委員の側から通報があるということでございまして、具体的にいつ昨年秋と同様の委員会会期が開かれるかは、ただいまのところ定かではございません。まだ決まっておりません。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 その会期に当たりまして、日本としてはやはりいま申し上げたような積み残し、あるいは答えるべきものに答えていないという問題点、またはまだ個々の点は十分ではないという反省も含めての報告書を作成をしてお出しになるということは、当然のことでありますね。そうでしょう。
  151. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お示しになられましたラインに沿って努力いたしたいと存じております。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 それで、そういう節に、いまここで審議をされております外国人登録法関係の問題が触れてくる部面があるように私は思われてならぬのです。もう当法務委員会では質疑の時間が重ねられてきておりますから、この問題についてもお触れになった場面がおありになるであろうと思いますが、もう十分にお触れになったかもしれません。指紋についての問題であります。これは外国人だけにある義務なんですね。日本人に対してはこういう取り扱いをしないですね。国際人権規約のB規約の七条を見ますと、何人もその品位を傷つけられるような取り扱いを受けないということに相なっておりますが、本来、指紋を取るということは、被疑者としての取り扱いがなされているというふうに潜在的に受けとめる人たちが、日本国内に多うございますよ。そういう関連からいたしますと、この人権規約の関連性でどのように認識したらよろしゅうございますか。
  153. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 指紋の押捺は、外国人登録証明書の偽造や変造、不正使用、そういうものを防ぐために必要な制度でございます。こういうふうに外国人の在留管理に資するために外国人登録法が存在するわけでございまして、いま申し上げましたような合理的な必要から行っている措置であるので、人権規約には違反しないと解釈しております。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 合理的であればすべて人権規約には違反しないのですか。しかし、その合理的と言われている内容が、各国から見て納得ができるようなものでないと、説得性ある合理性ということにはならないと思いますね。それは大丈夫だと確信をお持ちになりますか。
  155. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人登録法は、御承知のように、外国人の身分関係、居住関係を明らかにして外国人の公正な在留管理に資するということでございますが、この具体的な側面といたしまして非常に重要な面は、不法入国者の防止という面がございます。わが国の場合には、戦後、やや数は減ってきている徴候は見られますけれども、近隣諸国からの不法入国者が入ってくることはずっと後を絶っておりません。そこで、私どもといたしましては、外国人登録法で指紋押捺、外国人登録証明書の常時携帯義務、こういうものを課しているわけでございます。これは外国人の公正な管理に資するという目的を達成するための合理的な理由に基づく国の措置でございますので、海外の人たちには十分理解してもらえるものと確信しております。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 それは大変問題が多いのですね。これは後で言いましょう。  ただ、不法入国者を取り締まることのためにすべての外国人に指紋を押させることが義務化されているというのは、どうもおかしな話なんですね。不法入国者に対しての取り扱いというのは、別途の取り扱いでできるはずでありますよ。こういう取り扱いで、それに対しての不法入国者をいろいろ取り締まっていくということは、それこそ合理的でないなと思いながら、私はいま聞いているのです。  昨日、この法務委員会では参考人をお呼びになって事情聴取なすった中で、大阪の生野区の区長さんがお見えになったはずです。大阪の生野区というと、外国人居住者の方々の数が非常に多いところ、外国人居住率の高いところというふうなことを一応考えなければならないですね。この区役所の窓口で指紋を取るという作業に関して、窓口でその作業に当たっている区の職員の方々が鑑定できないわけです。鑑定は無理なんですね。素人ですから、指紋の鑑定というのはできるはずがない。鑑定士に見てもらわなければならないという作業があるわけですね。しかし、それでもいろいろと作業をするのについては、その業務に携わっていらっしゃる職員の方々について問題もあるようであります。法律にあるから仕方がないということでやっていらっしゃるようでありますが、同一人であるということの確証は、事実上その指紋によってできるのかどうかということになると、いまのような取り扱いからすればなかなかこれは繁雑ですよ。むずかしいということがまず言えると思うのですが、法務省の方としては、この指紋を通じていままで自治体に対して照会されたという例がありますか。
  157. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 指紋そのものの照会は、年間二十件前後ということを申し上げたこともございます。ただし、私の方では、登録事項の照会と申しますのは、Aという人が間違いなくAであるか、あるいはAという人がBという居住地に住んでいることは間違いありませんかという、身分関係事項の照会というのはございます。これが年間四万件でございます。そうしますと、その人たちが間違いなくそこに住んでいるというのは、これは数十年さかのぼるわけでございますが、そういうさかのぼって同一性を確認するという場合には、その写真は幼少というか年若いときから年配になっておるわけで、この確認というのは非常にむずかしい。結局、最後のところは指紋で確認するという作業に到達していくだろう。  それから、私どもの方でもう一つの事務は、在日の外国人の方で名前を変えるとか生年月日を変える、変えると申しますのは訂正の申し立てでございます。実は私は二十年前からずっとAという名前でおりましたけれども、本当はBという名前です、この申し立てが、それらを含めまして年間二万五千件もあるわけです。これは全部氏名とは申しません。氏名は、抽出して調べたところ一割をちょっと超えるかなというくらいの数でございますが、それでも一割の人たちが名前を変えてくれ。それもその人たちが二十年前から使っておった名前と現在申し立てるその名前の人とが同一であるかということを確認をする。これは登録記録がずっと連続してございますから、その氏名とか居住地とか、そういう登録事項を順に追っていきましてそれは確認いたします。それから、先ほども申しましたように写真がございます。しかし、写真というのは、私どもの実務の経験では同一性を的確に判断するということは非常にむずかしい。結局、最後のよりどころとしては指紋しかないということでございます。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、それにしても、この作業に関していろいろと人権をもう少し尊重するという姿勢で臨まなければならないという部面があるということは、御賢察おきいただいているはずだと私は思うのです。  その一つに、普通のカウンターでその作業をやることのために、他の市民の方々も来られる、町民の方々も来られる、そうすると、その目の前で指紋取りをやるわけですね。みんな奇異な目でそれをごらんにならない方がむしろ不思議なんです。指紋を取られる立場からしますと、何かそれは大変肩身の狭い思いをされるとか、要らないいろいろな思いをお持ちになるということもあったりしますから、この辺の配慮というものはどういうふうになされているかということを考えれば考えるほど、どうも取り扱いは余りずさんじゃないかということは一つ言える問題だと思います。  外国人の方々がたくさんおられるたとえばその生野区のような場合は、特別のコーナーを設けてそこで特別にそれを人目に立たないように扱うというふうな配慮もなされているようでありますけれども、これはちょっと取り扱いの上でもいろいろ問題がありますよ。いかがですか。
  159. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 市町村で指紋押捺するときに、外国人が人目に立つのを非常に嫌がるという面があることは承知しております。そこで、私どもは市町村の方に、なるべく遮蔽をするような措置とか、そういうきめ細かい方法でやることを御指導申し上げております。生野区を含めて多くの市町村ではこれが実現しております。  もう一つ、指紋押捺を非常に嫌われる理由の一つとして、手が汚れてしまうとか、そういうこともあるようでございます。そういうことにつきましても、指をきれいにするものを備えたり、十分そういうきめ細かい措置を市町村の方では現に相当やっていらっしゃると承知しております。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 そうでもないようですね、これは。承知しておりますとおっしゃるんだけれども、それは報告を聞いてそのように承知なさるだけの話でしょう。現場に行ってお確めになったことはございますか。それはそうじゃないだろうと思うのです。それからすると、種々今回のこの法改正について御検討になる場合、それからやはりどういうふうにこの問題を取り扱っていくかということを決定なさる場合に、これは検討課題としていままであったに違いないと思うのです。だけれどもまあうまくやっているらしいで、余りこのことに対しての配慮がなされていないというのも一つは問題があると思いますが、そもそもこの指紋取りということ自身がおかしいという立場で私は質問をさしていただきます。  いま指紋を取ることを拒否しているという例があるはずでありますが、そういう拒否した事例の取り扱いはどのようになっておりますか。
  161. 當別當季正

    ○當別當説明員 御承知のとおり、わが国に入国して長期にわが国に滞在する外国人は、入国してから九十日を経過する時点で新規の登録を必要とするわけでございます。また、現行法では三年に一回いま御審議いただいております改正法案によりますと五年に一回の確認申請をしていただくことになっておるわけでございますが、そういう機会に指紋の押捺をしていただいておるわけでございます。  私ども調査いたしました結果では、いま申し上げましたような機会に指紋の押捺を拒否といいますか、していただけなかった申請者の方々、これは現在までの間九件、十二名おられるということでございます。九件、十二名といいますのは、一件は御家族四名ということでございますので、九件、十二名というふうに申し上げておるわけでございます。  なお、その措置はどうなっておるかという御質問でございますが、所轄の市区町村から住居地所轄の警察署長に対しまして告発がなされておる件数が合計七件、未告発が五件ということでございまして、告発がなされました七件の処理の内訳は、検察庁に行って起訴された事件が一件、それから出国済み、これはソ連人でございますが、出国済みというのが一件、あと検察庁並びに告発を受けた警察署で捜査中が五件、こういうふうに承知しておるわけでございます。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 このいろいろな取り扱いの事例を当たってまいりますと、それはいま御返答になったようなことであるでありましょうが、告発を留保されている自治体があるわけですね。これは実はなぜ留保されているかというと、説得中であるということで留保されているんですが、その間、したがって指紋なくても十分にこなせるということでもあるわけであります。また、起訴をされて、そしてその結果簡裁で略式命令を受けて一万円の罰金を裁定されているという例もあるようであります。いまは逆に御本人の方から正式裁判を提訴されているようでありますけれども、しかし、そうなってくると、一万円の罰金を支払いさえすれば、また継続して指紋を押さなくともよいという理屈もかなうわけでありまして、その間指紋がなくともこれもまたこなせるという例になっていくわけであります。  したがいまして、いろいろいまの事例の中でも、指紋を取らずしていろいろな事務、業務というものが行われているという関係から考えてまいりますと、これはやはりそもそもいろんな人権関係からしても問題がある、取り扱いの上からしても疑義を呼ぶ部面があるような指紋に対して、これを押すことを義務づけるということはいかがかと思うのですね。  いわゆる先進国では、アメリカ以外は指紋を取る国はないようです。みんなそれを義務化しておりません。認めておりません、指紋を取ることを。ところが、アメリカについて言っても、これはもう御案内のとおり、アメリカというのは出生地主義ですから、一代限りで、しかも一回限りなんです。一回指紋を取ったらパーマネントなんですね。一代限りですよ。子供の代にはもう問題にならない。それは取らなくてもいいんです。また現に取っておりません。だから、次代の人はこれは対象にならない。一代限りであり、しかもそれは一回限りだということを念頭に置いておいて、このアメリカという国の取り扱いも考えてみていただきたいんです。先進国ではこれは義務化しておりませんよ。そうすると、国際的に見ればこれは人権軽視の取り扱いになっているというふうに見られなくはない。どういうふうにお感じになっていらっしゃいますか。
  163. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 指紋押捺制度というのは、国際的に外国人登録制度が非常にまちまちでございますので、したがって、その中に占める位置もそれぞれ非常に違うわけでございます。したがいまして、諸外国における制度の比較というのも非常に困難でございます。  指紋押捺制度を採用している国、採用していない国は、一応昨年の暮れに外務省を通じまして調査をいたしました結果がございます。それによりますと、先進国で指紋押捺制度を採用している国はアメリカでございますが、そのほかにインドネシア、韓国、メキシコ、中南米諸国、こういうところは非常に多くそういうものを採用している国があるようでございます。  それから、指紋押捺制度をそういうものとして採用してはいないけれども、それに近い制度を持っている先進国が幾つかございます。たとえばオランダの場合には、身元確認のため必要と認められる場合には指紋押捺を要求することができるという制度がございますし、スウェーデンの場合でも、外国人法違反の罪を犯した者及び有効な旅券等を所持しない者で政治亡命者、難民等を主張する外国人、こういう者に対してはそういうものを要求できることになっているようでございます。西ドイツにつきましても、指紋押捺制度自身はございませんけれども、身分または国籍に関して疑いがある場合には強制的鑑識調査を実施できるため、その際に指紋押捺を強制できる可能性があるとされているわけでございます。こういうふうにいろいろと制度はまちまちでございますけれども、何らかのかっこうで指紋押捺制度というものを持っておる先進国はあるわけでございます。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 先進国というのはどういう国々と考えておられるのか、大分大鷹さんと私の認識に差があるみたいに思いますけれども、先進国の中ではアメリカだけだという記載があるのです。アメリカだけだというところでアメリカを見てみると、先ほど私が申し上げたような事情ですから、いまの御答弁はまことに言いわけがましい御答弁でありますけれども、この事実を曲げて、また変えていろいろと見るわけにはいかないのです。だから、そういうことからすれば、国際的に見て日本という国は外国人に対して人権軽視の感があるというふうに思われても不思議はないなと私は思いながら、この指紋の問題なんかも考えるわけです。  しかし、それと同時に、関係するいろいろな法制上の取り扱い自身が、その指紋の問題とも関連してきますから、きょうは自治省にも御出席いただいておりますので、お尋ねしたい問題があるのです。  住民基本台帳法の問題です。この目的に「住民の居住関係の公証」ということがございますが、ここに言う「住民」に外国人は含まれておりますか、どうですか。
  165. 浜田一成

    ○浜田説明員 お答えいたします。  住民基本台帳法上は、「日本国籍を有しない者その他政令で定める者」については適用がないことになっております。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 外国人は含まれないという法的な根拠というのは、きちんとあるのですか。そのことをこの住民基本台帳法の中でちゃんと定めていますか。その条項を示してください。
  167. 浜田一成

    ○浜田説明員 住民基本台帳法の三十九条でそのような規定がなされているわけでございます。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、住民基本台帳法の第一条の中身として「住民に関する記録を正確かつ統一的に行なう住民基本台帳の制度を定め、もって住民の利便を増進し、あわせて国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。」と書いてあるのですが、この本来の趣旨からして、外国人を除くということはどういうふうにお考えになりますか。
  169. 浜田一成

    ○浜田説明員 日本国民と外国人との間には、選挙権その他の権利なり義務なりあるいは資格等の関係で法令上さまざまに異なる取り扱いがなされているわけでございます。したがいまして、住民基本台帳法では日本国民の居住関係について基本的に取り扱っているわけでございまして、外国人関係につきましては外国人登録法等によって処理されているものと理解しておるわけでございます。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃった資格とか条件とかについて全く差があるからということでありますけれども、住民票で処理する事務の中に国保、国民年金、児童手当があるのですね。いまは外国人にもこれらは適用になっているのですよ。  それならばお尋ねしますが、その具体的な実務についてはどのように指導されているのですか。
  171. 浜田一成

    ○浜田説明員 たとえば国民健康保険法の取り扱い上、外国人が受給資格を得るというようなことがあることは承知いたしておりますが、この点につきましては外国人を全部一律に扱うという取り扱いではないわけでございまして、厚生省の方でそういったことについて具体的に取り扱いをされているわけでございます。  住民基本台帳法と国民健康保険法なりあるいは国民年金法とのつながりは、基本的な部分で住民であるということと具体的な事務処理とのつながりをつけるために資格の有無等をただ住民基本台帳に記載するわけでございまして、現実国民健康保険なりあるいは国民年金の給付につきましては、それぞれ所管のところで取り扱いをいたしているわけでございます。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 資格の有無を住民基本台帳で問題にするといまおっしゃいましたね。それからすると、国際結婚をしている場合、ここに私は住民基本台帳法に基づく住民票の用紙を持ってまいりましたが、日本人の場合はこの住民票に記載をするというかっこうになります。外国人は、ここにあるような外国人登録原簿に記載をするというかっこうなんですが、それぞれの自治体がこれの取り扱いを統一いたしておりませんから、持ってまいりましたのはある自治体で使っている世帯名簿という、これは記載する用紙なんでありますが、これは全然別の取り扱いをしなければならないのですね。そうすると、資格の有無についても統一した世帯として住民掌握ができないと思うのですが、どうですか。同じ家族であって違うのですよ、これは。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  173. 浜田一成

    ○浜田説明員 国民健康保険等の資格の有無自体は別のところで定まるわけでございまして、ただ、その資格のある者について住民基本台帳に記載をするということであるわけでございます。したがいまして、外国人につきましては、基本的な部分というのはむしろ外国人登録法によってそれが明らかにされているわけでございます。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、現実においては統一した世帯として住民掌握ができないということなんですね。できてないのですね。また、できないのですね。どうですか。
  175. 浜田一成

    ○浜田説明員 住民基本台帳法上の取り扱いとしては、そういうことになります。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、統一した世帯として住民掌握ができないわけですから、児童手当をどう考えるか、資格があるかないか、それから年金が一体どういうことになっているか、資格があるかないか、これは実に繁雑な調べをしなければならない。そうして、実にむずかしい調べをすることのためにそごがないとは言えないですよ。どうして統一した世帯として住民掌握ができるようになっていないのですか。やろうとしたらできるのでしょう。やろうとしたらできることをやっていないのですよ。そういうことじゃありませんか。いかがです。
  177. 浜田一成

    ○浜田説明員 最初に申しましたように、日本国民たる者について基本台帳を整備するというのが基本でございますので、そういったことで例外的なものが出てくるのはやむを得ないと思っております。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 お役人というのは、現行法に対しての解釈とその適用についての御説明をここですれば、それで任務は十分だとあるいはお思いになっていらっしゃるのかもしれません。しかし、この住民基本台帳そのものが外国人を除いて住民というものを概念していること自身がおかしいじゃないかという点に思いをいたしてもらいたいと言っているのです。よろしいか。そうなってくると、それを阻害している法律の条文があるならば、改正考えてしかるべきなんです。どのように改正をしていくかという努力をしてしかるべきなんですよ。その点、何もなくて、それは法律自身が外国人を省いていますからそんなことはらち外の話でございますとか、関係のない話でございます、取り扱いできませんとぶった切ってしまってよろしいかという問題になってくるのです。  外国人登録原票で個人単位のカードで取り扱うということを先ほど来おっしゃっているのですが、そういうことをなさるために具体的に実務を行うことがどんなかっこうで進んでいるかというのは、各自治体で大変な苦労が出てくるのですね。いまここに持ってきたのは、先ほど申し上げたとおり、世帯名簿と書いてあるある自治体の自主製作によるところの用紙なんですが、こういう取り扱いをなすっていらっしゃるということを自治省は知っていらっしゃいますか。
  179. 浜田一成

    ○浜田説明員 承知いたしておりません。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 自治体ではこういう苦労をしないと一括して世帯の実態がつかめない、だからこういう苦労をせざるを得ないということで、大変無理を重ねてこういう措置を講じられるというかっこうになるのです。なぜかといったら、法令上に根拠があるわけじゃありませんから、費用についても自治体の一方的な負担によって賄われるというかっこうになるわけなんです。だから自治体では、外国人が多ければ多いだけ、この取り扱いについての出費はかさむのです。自治体では法令上の根拠もない、財源もない、しかし取り扱いの上ではそういう取り扱いをしなければ、家族構成に対して一括して住民ということで掌握し切れないという点があるものだから、無理に無理を重ねておやりになるというかっこうになってくるのです。よろしゅうございますか。  それで、この住民基本台帳法の十二条によりまして住民票が交付されるわけですが、外国人については住民票の交付というのはどうしていらっしゃるわけですか。法務省でも自治省でも、どちらでもいいですよ。
  181. 當別當季正

    ○當別當説明員 日本人の住民票に相当する外国人制度としては、市区町村長の発行する登録済み証明書でございます。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 その自治体の発行する登録済み証明書については、法務省か自治省か、十分にそのことに対して掌握をし、関与をされていますか、どうですか。
  183. 當別當季正

    ○當別當説明員 外国人登録法上、外国人登録事務は、御案内のとおり機関委任事務でございまして、法務大臣、都道府県の指導監督のもとに市区町村がとり行っておるわけでございますが、ただいまお答え申し上げました登録済み証明書、これは多様な目的のために発行されるわけでございます。先生指摘の年金の請求に必要だとか児童手当あるいは児童扶養手当の申請のために必要だとか、いろいろな申請の理由があるわけでございますが、この登録済み証明書の発行自体は、市区町村固有の事務だというふうに考えておるわけでございます。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 固有の事務であるために、機関委任事務ではありませんから、経費もこれまた自治体の財源で賄われる。したがって、超過負担になるというかっこうになるわけです。しかも外国人登録済み証明書というのは、手書きのために作業量が大変なんですね。昨日参考人として御出席になりました大阪生野区の区長さんのいらっしゃる生野区の例だと、五十六年度では三万八千六百九十二人の外国人登録数に対して三万九千二百七十七通を発行しておられるというかっこうなんです。これは大変な事務ですよ。  こういう関係のことを、今回の改正案について自治省や法務省はどういうふうな協議の俎上にのっけられましたか。こういうことに対しては全く顧みずに、指紋についても義務化しよう、そして外人登録証の常時携帯義務についても罰金の額を何とかにしようというふうな討議だけをなすったのですか。私がきょうここで指摘したような問題に対しては協議をなさらなかったのですか。いかがですか。
  185. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人登録制度と住民登録制度とは、基本的に目的を異にしております。そこで私どもは、いま土井委員がおっしゃいましたような意味での協議を自治省とはしておりません。
  186. 土井たか子

    ○土井委員 趣を異にするといって振り切って、そしてこれに対しての改革なり、何とか改善策をという思いがない限りは、外国人は法上、住民基本台帳法に言う住民に永久になり得ない。そこに住んでいる限りは住民なんですよ。国際結婚している場合は、家族構成の中で住民になる人と住民にならない人とあるわけです。これは一日も早く是正するということが考えられてしかるべきだと私は思いますが、どうお考えになりますか。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 住民基本台帳法に言います住民には、先ほど自治省からのお答えにもありましたように、外国人の方は入らないわけでございます。しかしながら、私どもが承知している限りでは、地方自治法によりまして、外国人も住所を持っている限り都道府県、市町村の住民と認められまして、そういう市町村団体あるいは都道府県団体からの役務の交付を受けることができる、また、その見返りとして、そういう方々は同時に納税等の義務も生ずるわけでございます。  そういうことでございまして、先ほどの点に戻りますけれども外国人の住民問題というのはまた別の問題である、私ども外国人登録制度を運用しております者の立場からいいますと別の問題である、目的も違うし、したがってその中身も違うということでございまして、いま土井先生がおっしゃられましたような意味のそういう協議はやっていないわけでございます。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 どうも、承れば承るほど役務、義務に対しては強調なさるのです。わけても納税の義務に対しては強調なさるのです。ところが、いま私が問題にしているのは、当然考えられてしかるべき権利上の問題ですよ。年金の問題しかりですよ。児童手当の問題しかりです。保険の問題しかりですよ。人間として生きていく上で社会的に保障されているそれぞれの保障制度に関して、いま取り扱いが住民としてなされていないというかっこうになっているのです、端的に言うならば。  権利の上でも住民として取り扱って、初めて人権に対して考えているというかっこうになるんじゃないですか。義務や役務の問題は地方自治法で言うから、それはそこで取り扱っているので住民たり得ています。しかし、権利の方ではそうなっておりません。それで果たして国連の委員会に出かけていって、日本としては外国人の人権に対しても十分に配慮をして、人権尊重でやっておりますと言い切れますか。こんなおかしな話はないと思うのです、大鷹さん。全く別個の問題だと割り切れないと私は思っています。取り扱いが全く別だからですね。今回のこの私が指摘した問題については、考える余地なしと言われるようなことでは断じてないと思っている。どうですか。
  189. 當別當季正

    ○當別當説明員 土井委員の疑問とされる点について御説明申し上げたいと思います。  先ほど来、自治省あるいは法務省の方からお答え申し上げておりますことは、住民基本台帳法の上では、先ほど御指摘規定によりまして、外国人は住民とみなされないということを申し上げておるわけでございまして、もともとは地方自治法の第十条に、市区町村の区域内に住所を有する者はその市区町村の住民とするという規定があるわけでございますが、この規定の上では、われわれは住民であるというふうに考えておるわけでございます。  問題は、なぜそういう住民基本台帳の上で、日本人の住民基本台帳、外国人外国人登録というふうな区別のある取り扱いをしておるかという理由でございますが、私の理解しておるところでは、日本人であれ外国人であれ、まずこの種の身分を特定するためには、国籍、氏名、生年月日という身分事項特定のための基本的な事項ということが確定されなければならないわけでございます。日本人については、戸籍制度によってこの身分の特定に必要な事項が担保されておるわけでございます。しかし、外国人につきましては、国籍も氏名も生年月日もわが国で認定し得る事項ではございません。そういうことで、基本的に外国人については住民基本台帳法の適用にはなじまないという関係から、外国人登録法に特別の定めを設けておるというふうに理解しておるわけでございます。さて、先生の御指摘の点でございますが、御案内のとおり、外国人登録法第四条には登録事項というのがあるわけでございまして、この登録事項の中に「世帯主の氏名」「世帯主との続柄」というのがございます。こういう点から、先生先ほど御指摘のとおり、外国人登録原票というのは個人別になっておるわけでございますが、世帯単位にこれをまとめて保管するということも、いま言った登録事項との関係から可能になるわけでございます。近時、外国人登録制度というものが、先ほど御指摘のような各種の給付行政の上で非常に重要な役割りを営むに至っておりますので、私どもといたしましては、できるだけ外国人登録原票を世帯単位にまとめて整理保管するということによって、市区町村の給付行政の事務が円滑に行われるようにと指導しておるところでございます。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 円滑に行われるように指導ばかりはなさるけれども、先ほどから、だから言わぬこっちゃないのですよ。自治体の方は機関委任事務じゃないのです。独自の事務でおやりになっている。また、法令上の根拠がないのです。ある意味では勝手にやっているかっこうですよ。だから、持ち出し分がふえて、それだけ超過負担というかっこうでおやりになるということ、それをそのままにしておいて指導しておるなんて、厚かましいことを言っていただくわけにはいかないだろうと私は思うのですね。おかしなことをおっしゃるよ。常にそんな指導なんですか、国の行政指導というのは。そんな勝手なことがあっていいかと私は思いますよ。何でもかんでもつらい部面は相手方に押しつけて、持ち出しまでさせて、そしてこちらは、それに対して改革をすべきことに手を染めないでおいて、現在のありさまについてもっとやれもっとやれという指導をやっていらっしゃるさまだと私は言わざるを得ない。  これは繰り返しになりますけれども、住民基本台帳法の第一条では、「住民に関する記録を正確かつ統一的に行なう住民基本台帳の制度を定め、」と、ちゃんとなっているのですよ。だから、こういうことからすれば、それはいまも答弁の中で御指摘になりましたが、第七条の十の国民健康保険の被保険者としてのいろいろな取り扱い、十一の国民年金の被保険者としての取り扱い、十一の二の児童手当の支給を受けるためのいろいろな取り扱いということに対しては、これはやはり家族構成が統一的に取り扱われているという中で、作業に対しても合理化がそれこそ図れる問題であります。  大鷹さんも合理化とか合理的というのはお好きだから、そういうことからすれば、その大鷹さんがこういう問題に対して手をお染めにならないというのは、私はむしろ不思議だと思う。今後この問題に対して検討していただけますか、いかがですか。検討なさってあたりまえだと私は思いますけれども、いかがですか。つまり、住民基本台帳法の中に言うところの住民に外国人も含めるという取り扱いを検討していくということであって当然であると思われますが、いかがですか。
  191. 浜田一成

    ○浜田説明員 まず、国民健康保険なり国民年金の事務の実際の取り扱いをやりますのは厚生省でございまして、厚生省においてそういう世帯把握の統一性が必要であるということであれば、そういうやり方をされる問題だろうと思うわけでございます。住民基本台帳の中に日本国民でない者について取り入れるということになりますと、現実にいま統一的に行われているものに非常に問題も起こってくるだろうと思うわけでございます。そういった観点からいたしますと、住民基本台帳法上直ちにそういったことを取り入れていくというのは、かなり問題があるのではないかという理解をいたしておるわけでございます。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 これは関連法の内容調査をし、検討を進めて、やはりこれだけの問題を解決すればそれで事足れりとは私も思っておりませんから、先ほどはしなくも言われた戸籍法との関係もあるでしょう。戸籍法というものに対して旧態依然たるあり方というものをこの日本において認めていいかどうかの問題も、恐らく国籍改正機会に大変燃えてくるだろうと私、思っているのです。だから、そういうことも含めて御検討になるということは、早かれ遅かれどうしても必要になってくると私は思いますよ。いかがですか。
  193. 中島一郎

    中島政府委員 戸籍法の点に触れられましたので、私から申し上げますが、戸籍法についての私どもの基本的な考え方というものは、ただいま御指摘になりましたように日本国民を対象とするということでございますが、新しい時代をも迎えておることでございますので、ただいまの御指摘もあり、検討することにやぶさかではございませんが、問題の本質は、私どもの従来の考え方というものを変えることは、非常にむずかしい問題があろうかというふうに考えております。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 大体、法律というのは不安定なものであっちゃ困りますから、一たん制定された法律に対しては、誠実に遵守するという役割りと、適正にこれを解釈適用するという役割りがそれぞれのお役人のお立場としてはあるわけでありまして、それなりに本当に石頭なんですね。現状に即応してどうこうしようということに対して、差し迫っているにもかかわらず、それに対してなかなか目を見開いて見ようともなさらない。そういうことであって人権擁護を十分にやっているなんて、口幅ったい限りだと私は言いたいのです、本当に。その戸籍法の問題については、検討をやぶさかではないというところまでやっときょうは言われましたから、そのことも含めてこの住民基本台帳法についての検討も、あわせてこれは早晩改正に向けて考えなければならないときがやってきますよ。それをいつまでも別問題だ別問題だと振り切るわけにはいかないだろうと私は思っています。  さて最後に、取り扱いの上でこんなおかしなことを黙認しておいていいかという意味も含めて、少し取り扱いをしたい課題があるんですよ。国籍法の改正というのは、いま法制審議会にかかっていますが、答申はいつ得られそうでございますか。
  195. 中島一郎

    中島政府委員 法制審議会に対しましては、私どもとしては、明年の春に法案を提出することを目標にして手続を進めたいということを申し上げまして、早期に答申をいただくようにお願いをしておるところではございますけれども、審議会の審議が今後どのような進み方をするかということについては、現在のところ全く見通しが立っておらないというような状態でございますので、いつ答申がいただけるかということについては、確定的なことは申し上げられないような段階でございます。
  196. 土井たか子

    ○土井委員 法務大臣は、今国会の予算の分科会の席で私がお尋ねをいたしましたら、来国会の提出ということをその至上命題にして努力をしているところである、提出できると思うという意味も含めて御答弁を私はいただいたわけであります。そうすると、来国会の提出、つまり来年の春には必ず提出するということから逆算をして、いま何だかあいまいな御返答でしたけれども、作業は進んでいるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  197. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま民事局長からお答え申し上げましたとおりに、昨年十二月に諮問をしたばかりでございます。諮問をしました以上は、一応審議会の方々のある程度の自主性に任せるべきだというふうに思うわけです。ただし、われわれといたしましては、できるだけ早い機会に、じゃ一体いつごろだということで、五十八年度をめどにということを考えておるわけでございまして、五十八年度はもう何が何でもかける、国会に御審議を煩わすというふうには考えておらないわけでございます。一応のめどは五十八年度ということでございます。そういうことで審議会にお願いしていますけれども、果たしてどういうふうな御答申になるのか、その辺はある程度審議会のメンバーの方々の自主性にもお任せしなくてはいけないんじゃないかというふうに考えております。
  198. 土井たか子

    ○土井委員 そこが大臣、むずかしいところなんですね。審議会の自主性も尊重されることは大事でしょう。でも、法務省また法務大臣御自身が、是が非でもそれは八三年には提出したいのだというふうなことで、大変な心意気でこの問題に対して取り組んでいらっしゃるかどうかということが、ひいては審議会の作業の進捗状況にも影響を与えていると私は思うのですね。だからそこのところは、どうもいまのでは先日の御返答からすると後退したような向きもございますよ。必ず提出しなければならないということでもございませんのでというのはきょう初めて聞いたわけでして、あきれているわけでありますが、熱意を持って、おっしゃった以上は前言翻すようなことをなさらないで取り組んでいただかなければならぬと思うのです。よろしゅうございますか。
  199. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどちょっと間違えましたけれども、諮問は五十六年の十月三十日、そして第一回の部会というのが十二月の二十五日ということでございます。それは訂正させていただきたいというふうに思います。  いまの御提言の問題は、これは私は決しておくらすつもりは毛頭ないわけです。でき得べくんば五十八年度ということでございまして、それでもって直ちに熱意がないとお決めになるのはいかがかというふうに思うのでございまして、一生懸命やっているつもりなんです。そういうことでございます。
  200. 土井たか子

    ○土井委員 その作業の段階で、審議会の答申が出るまでに公聴会というのを考えてみてはどうかという意見があるのですね。すでに法務省の担当の方にも、そのことを私ども意見を具申しまして、ぜひ関係者の方々の意見を聞いていただきたい。国際結婚をして、外国人と結婚して子供の母親となっている日本の女性の生の声というのは、やはり法案審議にとってはかけがえのない大切な声だと私は思いますから、そういう関係者の方々について、どういう関係者の方々になるかという問題もあろうかと思いますが、公聴会方式にするとか、あるいは公聴会方式でなくてもそういう機会を別途持つとかいうふうなことについて考えてみようとも非公式におっしゃったのですが、これはまたお約束いただけますね。
  201. 坂田道太

    坂田国務大臣 それはどの段階でやるのかは、なかなかむずかしいのじゃないかと思うのです。と申しますのは、いませっかく審議会にお願いしているところで、片方、私の方でこうやるということがいいのか悪いのかという問題があるわけです。  実は、これは「時の動き」の五十七年四月十五日ですが、ここの一番最初のところに「男女平等の原則に基づき国籍改正を審議中」と書いておりまして、たとえば「一昨年、婦人差別撤廃条約に署名したわけですが、これを批准するには、それにふさわしい国内法」が必要だ、「この際、父系主義を見直したらどうだろうか」、これは恐らく土井委員あたりのことを十分考えてのことなんでございます。「例えば、お父さんが日本人でお母さんが外国人の場合、その子供は日本国籍となるのに、お父さんが外国人でお母さんが日本人の場合、その子供は日本国籍取得できない、それはおかしいじゃないかということで、女性の方々からずいぶん批判を受けておりますので、父の国籍と同等に母の国籍を承継できる父母両系主義に改めるべきではないかということです。これはいろいろ議論のあるところだと思うんです。しかし審議会のメンバーは、その方面のベテランの方ばかり集まっていらっしゃいますから、できれば五十八年度ぐらいまでに、何とか前向きな答申が出ることを期待しているわけです。」こう書いておりますが、それが私のいまの気持ちなんでございまして、いま御指摘になりました公聴会方式でいろんな方の意見を聞くということ、私は大賛成なんです。ですから、それをどの段階で聞くか、これはもう少し考えさせていただきたいというふうに思います。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 ことしの一月一日から、日本人の母親と外国人の父親との間に生まれた子供についての永住申請の手続が緩和されたと私どもは認識をいたしておりますが、案件はふえておりますか、どうですか。何件ぐらいが許可と不許可、また留保になっておりますか。
  203. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 例の入管法第四条第一項十五号の一という新しい資格ができまして、これは日本人の配偶者と子でございますけれども、この資格で今日まで入国した人は何人ぐらいいるかという点でございますけれども、数百名の規模ではないかと考えております。正確な統計数字はここに持ってきておりません。  それから、同じく入管法の二十二条の第二項によりまして、ことしの一月一日から永住要件が緩和されました。これは、日本人とか永住権を持った人の配偶者または子につきましては、例の独立生計維持能力、それから素行善良という二つの要件が撤廃されたわけでございます。その手続によってどのくらいの数の人が永住権を取ったのか等につきましては、ここに数字を持ってきておりませんので、お答えできません。
  204. 土井たか子

    ○土井委員 またそれは別途資料なり何なりでお聞かせいただきたいと私は思いますが、日本人の母親と外国人の父親との間に出生した子供の問題について、子供だけの永住申請というものができるのですか、どうなんですか。
  205. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 それはできます。現にそういう方々のお子様の永住申請が、最も今度の新しい法改正によって簡単になる、そういう方々でございます。と申しますのは、従来は永住申請者の独立生計維持能力とか、そういうことが要求されていたのでございますけれども、今度はそれが要求されなくなったということで、いまおっしゃいました日本人の母親と外国人の父親との間に生まれたお子様、こういう方々が法改正によって最も利益を受ける方々であると考えております。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 しかし現実は、入管の窓口に参りましていろいろ手続をとる節、子供だけの永住申請については認められないのですよ。配偶者と同時に子供の永住申請について認めていきましょうという取り扱いをされておりますよ。だから、局長のいま言われることはちょっと現実に合わないのでございますが……。
  207. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 従来から、親子一緒に永住申請というものは出るべきものだ、そういう観念があったことは確かでございます。場合によっては末端の方でそういう考え方でお答えした人もいるかもしれません。しかし私どもは、現在取り扱いといたしましては、そういう外国人の方と結婚された方のお子様につきましては単独で永住申請ができる、そういうふうにしておるわけでございます。
  208. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、そのことが現実どれほど本省の方で認識をされておりまして、そういう取り扱いをしておると断言なさいましても、問題はやはりそれを取り扱う現場なんですよ。現場の方ではいまおっしゃったようになっていないのです。なぜだとお思いですか。
  209. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほども申し上げましたとおり、永住申請につきましては家族単位でという、そういう物の考え方の人も確かにいるのだろうと思います。したがいまして、あるいはそういう指導を現場の方ではしたかもしれません。しかし私どもは、現在、いま土井委員が御指摘になりましたようなケースにつきましては単独で永住申請ができるというふうに取り扱いをはっきりさせております。したがいまして、この趣旨を徹底させまして、そういう誤解は今後は起きないようにしたいと考えております。
  210. 土井たか子

    ○土井委員 それと、手続の上でもう一つ問題が、ひっかかることがあるのです。  在日韓国人の方々に対して、特に協定永住、一二六の場合は取り扱いが父母両系主義の取り扱いにすでになっていると考えてよかろうと私は思うのです。つまり、在日韓国人の方々に対しての特例永住は自動的許可ということになっていて、しかも在日韓国人の方が父親であっても母親であってもよいという取り扱いをされております。その場合の手続としては、登録証と申請書でよいというかっこうになっているのですね。つまり、永住をするという意思表示と資格を証明するという手続さえとれば、それでよいというかっこうになっているわけなのですね。  ところが、日本人の母親の子供の場合、父親が外国人であることのためにとらなければならない手続が非常に繁雑ですよ。手続の上でも簡素なものにすると言われながら、現場に行ってみると、相変わらず何項目にもわたる項目について書かなければいけません。疾病とか財産とか、そういう問題についてまでも書くことを要求されるのですが、行政改革というのは、このあたりから改革してもらわぬと困ると思うのです。よろしゅうございますか。外国人についてそういう取り扱いをやっていて、日本人の母の子供に対して相変わらず繁雑な取り扱いを認めていくというのは、私はまさに合理的ではないと思うのですよ。しかも、いま国籍法の一部改正案についての作業が進んでいるところでございますから、国籍法の改正に手間取っている間に、次善の策として子供に対しての永住権申請はまず簡素にする、そして子供に対する永住権は自動的許可となるということをやはり明確にしておいていただかないといけないと思いますが、この点、いかがですか。
  211. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほど土井委員がお挙げになりました日韓地位協定に基づく永住申請、それから法一二六−二−六該当者の特例永住、こういうものはすべて申請があれば無条件に認める、そういう制度でございます。したがいまして、提出する資料も非常に少ないということは事実であろうかと思います。  ところが、一般永住の場合には提出を要求される書類も非常に多いじゃないか、これを何とか簡素化してもらえないかという御意見がいま土井委員の方から出ました。この点は、私どももできるだけ事務の簡素化を図りたいと考えておりまして、現在、鋭意検討中でございます。配偶者の場合の提出書類はやや簡素化できる程度かもしれませんけれども、永住者の子の場合には、多分必要書類は大幅に減らすことができるのではないかと考えております。現在、この点は詰めておる最中でございます。
  212. 土井たか子

    ○土井委員 いつごろまでに詰まりそうでございますか。
  213. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 もう間もなく、一カ月以内には必ず実現すると思います。
  214. 土井たか子

    ○土井委員 予定されております時間がそろそろ参りましたから、これで本日の質問を私は終えたいと思いますが、事今回審議されておりますこの法案に関しましても、それからさらに、最初にこの問題も含めて問題になります国連の人権委員会での日本の諸問題に対処する姿勢にいたしましても、具体的な事例を通じてよほどこのことに対してねばり強く言わないと、なかなかお役所仕事というのは動かないのですね。ましてや、法令の改正ということになりますと、なかなかこれに対してはエネルギーと時間がかかるということを覚悟しなければならない。それでもって、国連では日本としては十分に人権を尊重している国であるということが自画自賛の形で出されるというのであってみれば、これはどこの国のことであろうと、もう一度目をこすって国連の報告書を見なければならないようなかっこうなんです。そんなうそをついてもらっちゃ困るのです。  実は、外面だけよくすれば済むというような問題じゃない。外面だけよくしようとすればするほど、この人権問題は軽視の方向に参ります。それ自身が人権軽視だと言わざるを得ないというふうにも私は考えるわけですけれども、今回のこの法改正に当たりましても、指紋の問題やさらに外国人登録証の常時携帯義務の問題等々、これについて人権尊重という点から、何とかこういう条項を削除するという努力がなされなかったのはどういうことなんだろうかという思いを強くしている私は一人なんです。相変わらずこういうものを温存しつつ、先ほど申し上げました現行法制度に対しても、外国人外国人だ、日本人日本人だから別法体系でこれに対して臨むというふうな基本姿勢がみじんでもある限りは、やはり日本に在住している外国人に対しての人権を十分に日本として受け答えをして考えているというわけにはならないだろうと私は思います。  そういう意味も含めて、法務大臣、最後に包括的なことになりますけれども、御見解、御所信を承って、私は終わりにいたします。
  215. 坂田道太

    坂田国務大臣 最近、日本が経済的にもかなり充実をしてきた、あるいはまた犯罪件数も諸外国に比べて低い、あるいは治安もよろしい、また日本は非常に四季の変化に富む美しい国である、また歴史的伝統、文化を持った国である、あるいは平和な国であるということで、終戦直後の状況あるいはその後の十年、それから最近では非常に変わってきておる。したがいまして、日本に来たい、観光はもちろんですけれども、勉強したいあるいはまた永住したいという人も大分出てきておるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、どうやってそういう住みよい日本あるいは平和な日本というものを維持し、そしてまた、そこではそういう成熟した自由社会において人権が本当に守られておるという国をつくるかということについて真剣に努力をしてきておるわけでございます。  二面において、この法案それ自身が不法入国者等の不法な人を摘発するといいますか、そういう手段に考えられることはもちろんです。もちろんですけれども、しかし、その意味するところは何かというならば、大部分の外国人日本で本当に平和に、そして基本的人権が守られる、そういうような国に住みたいということを起こさせる、そういう環境をつくっていくためには不法な者に対してはきちんとした取り締まり等もある。これは単に日本だけじゃないので、諸外国におきましても何らかの形でそういうことはしておると私は思うわけでございます。そういうことをしておるがゆえに、逆に言うならば大部分の健全な人たちが日本に訪れる、ミッテランさんもやってくるというようなことに実はなったわけなんです。本当なんです。私はそう思うのです。  でございますから、確かに土井委員のおっしゃるのはもうそのとおり、きょういろいろと勉強させていただきました。まだ不十分な点があろうかと思います。そのことにつきましては、日に新たに日に新たにという努力をわれわれは重ねていかなければなりませんし、法制的には一応これこれだけれども、実際の運用についてもう少し工夫があってしかるべきではないだろうか、あるいは法務省と自治省と、あるいは現場ともう少し考えたらどうだ、こういう提案をしたらどうなんだという御指摘に対しましては、私は十分拝聴いたしました。私の在任中にできるだけの努力をいたすということをお約束いたしたいというふうに思います。
  216. 土井たか子

    ○土井委員 ありがとうございました。終わります。
  217. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 安藤巖君。
  218. 安藤巖

    ○安藤委員 最初に、大臣にお尋ねをしたいのですが、先ほど土井委員に対しましては、最後にいろいろ含みのある答弁をなさったのですが、これまで外登法の改正案に対する審議の中で、私どもの林委員を初めほかの党の同僚委員の方から指紋の押捺の問題とかあるいは不携帯問題、提示義務の問題、それから職業、勤務先の変更登録の問題ですね。それから罰則については、懲役、禁錮あるいは罰金ということではなくて過料にしたらどうかとか、いろいろ意見が出たのですが、どうもいろいろ事実を示して質問をいたしましても、一口に言うと、ああ言うとこう言うみたいで壁がなかなか厚くて、もうこれでいいんだというみたいな、これ以上変えませんよというみたいな感じがしておったのですね。  いま私が言いましたのは全部じゃありませんが、いま言いましたような幾つかの問題について、絶対いまの状態、それから今回の改正で十分だ、これ以上のものはないということではなくて、やはり質疑の中で出てきた意見、これを今後参考にしていろいろ検討をしてよりよいものをつくっていこうというような姿勢はおありになるのかどうか、まず最初にお尋ねしたいと思います。
  219. 坂田道太

    坂田国務大臣 今回の外国人登録法というのは、われわれといたしましては、現段階においてはベストだということで実は御提案申し上げておるわけでございます。しかし、その間といえども、いろいろの御発言に対しまして私は耳を傾けるということは必要なことであるというふうに思っておるわけでございます。
  220. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうようなことでないと、言うても聞く耳を持たぬみたいなことで、壁にぶつかって声がはね返ってくるだけで終わりということでは非常につまらぬ話だと思いますが、いま大臣が御答弁なさったようなことでございますので、いろいろお尋ねをしていきたいと思っております。  まず最初に、警察庁の方、見えておりますので、警察庁にお尋ねをしたいと思うのです。  これはこれまでも二回ほど出てきた件なんですが、東村山市の件です。ことしの三月二十一日正午、久米川駅前の派出所で、これは朝鮮籍だと思うのですが、少年が職務質問を受けて云々という件があるのですが、もう一度詳細にそのときの経過を説明していただきたいと思います。
  221. 吉野準

    ○吉野説明員 お答えいたします。  三月二十一日午後零時三十分ごろでございますが、東村山署の恩多派出所というのがございますが、そこの派出所員が派出所前で警戒中、自転車に乗った少年が通りかかったわけでございます。管内は非常に自転車の盗難が多いところでございまして、自転車盗の発見に重点を置いて警戒しておりましたので、まず注意をして自転車を見たところ、かぎは壊れたかぎがついておったということに目がいきましたので、とっさに停止させて顔を見たところが、実はその前に、三月六日になりますが、そのときに取り扱った少年であったということでございます。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  それで、三月六日の事案をちょっと申し上げないと後の話がおわかりにならないと思いますので、ちょっと簡単に申し上げたいと思います。  六日の日は、午後八時ちょうどごろでございますが、東村山市の栄町三の三十二先路上において、いま申し上げたこの同じ勤務員でございますが、警ら中、無灯火の自転車で二人乗りで通行中の少年を発見して、停止を求めて職務質問をしたということでございます。  運転しておった少年は、ライトは壊れておる、氏名は何々と、これは日本名を言ったそうでございます。それから、自転車は家のものだと答えたのでありますけれども、態度に非常に落ちつきがなく、それから自転車には防犯登録もないというのでさらにいろいろ聞いたところが、朝鮮学校の生徒であるということで、別の外国名を名のったということであります。ということで、外国人登録証を持っているかと聞いたところが、持っていないと言っただけで、あとは答えなかったということでございます。  警察官は、夜でもあるし、また少年でもあるので、家族に聞くのが一番いいだろうと思いまして、自宅へ電話しなさいと言ったところが、すぐ近くの公衆電話から電話をして、しばらくたってお母さんが現場に来たので警察官が尋ねたところ、自転車は家のものだ、こういうことを述べた。それから外国人登録証はない、こう答えた。申請もしていないと答えて学生証のようなものを提示したということでございます。この際、少年がそばから口を添えて、学校から登録証は持たなくてもよいと言われている、同級生はだれも持っていない、こういうふうに言ったということでございます。  そこで、当該警察官は母親に対して、登録してなければすぐやった方がよろしいと言ったところ、母親はすぐ申請しますと答えて、午後八時三十五分ごろ現場から帰っていただいた、こういうことでございます。  それで、先ほどの話に戻るわけでございますが、そのときの少年であります。まず、自転車が先ほど申し上げたようにかぎが壊れておるということであるし、それから、見るとこの前の自転車と違う自転車であったわけです。大変不審を抱きまして、この自転車はだれのものかと聞いたところが、家のものだと答えただけで、あとは何を聞いても黙して答えずという状況であったようであります。それで当該警察官は、六日の日に母親が登録申請をしていない、こう言ったのを思い出して、登録証明書の所持の有無について聞いたところが、これに対しても黙して答えずということであったようであります。  そこで当該警察官は、本署に行って職務質問を続行した方がいいだろうというふうに考えまして、本人に本署で話を聞こうかと言ったところが、無言でうなずいたということでありますので、定時事務連絡のため派出所に立ち寄ったパトカーの後部座席に乗車してもらって本署に任意同行した。  本署で、約零時四十五分ごろから一時十分まででありますから、二十五分間くらいでありますけれども会議室で改めていろいろ聞いたところが、自転車は家のものだ、間違いない、それから外登証は母親が保管していると答えて、そこで氏名、生年月日、住所、それから電話番号を述べたということであります。  そこで家族に電話をして、すぐ署へ来てください、こう言ったところが、お母さんが見えなかったようでありまして、お姉さんが見えたということであります。それでいろいろ聞いたところが、自転車は家のものに間違いない、それから外登証については、いま申請中で書類は母親が持っているということだったので、それではお帰りくださいということで引き取っていただいた。これが事案の全容でございます。
  222. 安藤巖

    ○安藤委員 その恩多派出所の巡査は、その少年が十四歳以上だというような認識は持っておったのですか。
  223. 吉野準

    ○吉野説明員 先ほど申し上げましたとおり、最初のときは何にも聞いておりませんというか、答えておりませんのでわかりませんが、体の大きさから見て、十四歳以上であるという認識は持っておったようでございます。
  224. 安藤巖

    ○安藤委員 それはその巡査にあなたの方でお確かめになったのかどうか。私が聞いておるところによると、その少年は髪の毛を伸ばさないでいわゆる丸坊主で、一見したところ小学校五、六年生に見えるような子供だというようなことなんですが、そういうことからすると、どうして十四歳以上というふうにわかったのか、不思議でしょうがないのです。だから、持っているかと聞く以上は、十四歳以上だという認識がなかったらおかしいと思うのですが、それはしっかりとお調べになったのでしょうか。
  225. 吉野準

    ○吉野説明員 中学二年生だということを言っておりましたので、十四歳以上だという認識を持ったと当該巡査は申しております。
  226. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、本人に聞いたらそうだということですね。それでわかったと。そうしますと、順番からして自転車のことから話がいったようですが、その自転車のことをあれこれ言うている過程で中学校はどのくらいだというようなことでわかった、こういうことなんですか。最初から、自転車の話をしている途中から登録証を持っているか、そういうようなことになったんじゃないのでしょうか。
  227. 吉野準

    ○吉野説明員 先ほどお答えしましたとおり、自転車のことで発端が始まりまして、それから外登証に及んだということでございます。
  228. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもいまの説明ではよくわかりませんが、私どもの方でいろいろ聞いた、あるいは調べたところによりますと、自転車のことでいろいろ話をしておって、登録証を持っているかというふうに聞いたということなんですが、そうすると、十四歳以上だという認識がなかったら、そういうことを聞くのはおかしいわけですね。だから、ちょっとその辺はいまの話でもつまびらかになっていないようですが、パトカーを呼んで本署へ連れていったわけですが、パトカーを呼んで本署へ連れていこうということをその巡査が考えたときに、両親に連絡をとるというようなことは、その段階では考えなかったのでしょうか。
  229. 吉野準

    ○吉野説明員 先ほどお答えしましたように、何を聞いても黙して答えずということでございます。それで連絡のとりようもなかった、こういうことでございます。署へ参って初めて自宅の電話番号、住所、氏名を言ったということでございます。
  230. 安藤巖

    ○安藤委員 いまのお話で、三月六日の件があったということですが、この少年の家はその派出所から約百メートルしか離れてないところにあるということですが、そのことはその担当の巡査は知らなかったのでしょうか。百メートルぐらいだったらすぐ連絡はつくと思うのですが、どうでしょう。
  231. 吉野準

    ○吉野説明員 これはその後調べてみたことではございますけれども、三百四十三メーターでございます。ただし、そのときは百メートルも三百メートルも全くわからなかったわけでございます。結果的にこれがわかったということでございます。
  232. 安藤巖

    ○安藤委員 三百四十何メートルと百メートルで、それは三倍ぐらいになるかもわからぬけれども、まあ五十歩百歩の中に入るのじゃないかと思うのです。それで、六日のときにいまおっしゃったようなことがあるとすると、うちがどの辺かはもうわかっておったのではないか。わかっておらなかったらおかしいと思うのです。母親が来たわけでしょう。だから、その二十一日には当然わかっておったと思うので、母親あるいは父親、親族に連絡をとるということだってできたと思うのですが、その辺のところは、あなたの方でその巡査に、なぜそうしなかったのか特に聞いてみなかったのですか。
  233. 吉野準

    ○吉野説明員 再三お答えしていますように、現場の派出所でいろいろ聞いたようでございますけれども、黙して答えずということでございまして、連絡のとりようがなかったということでございます。
  234. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、連絡のとりようがなかったのではなくて、六日の件があれば、すぐ近くにうちがあるということはわかっておったはずじゃないかと思うのですが、それもわかっておらなかったということなのでしょうか。
  235. 吉野準

    ○吉野説明員 先ほどもお答えしましたが、一回目のときは本人に公衆電話をかけさせて、当該警察官はその近くにおりましたけれども内容は実は聞いていないわけでございます。さらに、住所、氏名ともそのとき確認しておりませんので、どこにうちがあるかは聞いておらないわけでございます。
  236. 安藤巖

    ○安藤委員 とにかくパトカーを呼んで本署へ連れていこう、そのときに本人がうんとうなずいたということですが、この少年の本署へ行くことについての承諾ですね。母親なり父親なりの承諾もなしに、本人がうなずいたからいいということで連れていったというのは、僕は問題じゃないかと思うのですね。その辺のところは私、どうしても問題にしたいと思うのです。果たしてそういうような状況であったかどうか。とにかく本署へ行こうじゃないか、パトカーを呼んだ、乗れというようなことで連れていったのではないかというような疑いが持たれるわけなのですが、その辺のところをしっかりお確かめになったのですか。本人がどういうような意思表示をしたというのですか。
  237. 吉野準

    ○吉野説明員 確かめてみましたが、本署へ行こうかと言ったところが、本人が黙ってうなずいたということで、これは承諾があったということで、後部の座席のドアをあけて入ってもらったということでございます。先ほども申し上げておりますようにいろいろな疑念があるわけでございますし、この疑念を晴らすのは警察官の職務として当然のことでございますので、この程度のことは許されることだというふうに私ども考えております。
  238. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、本署へ行くかどうかという点について、未成年の少年がうんとうなずいたということでもって合意をしたというふうに判断をして連れていくのはあたりまえだ、そのことについて両親あるいは親権者の人たちの承諾を得られなくても構わぬのだ、こういうような扱いですか。これは一般の日本人の場合だって該当するのですよ。たとえば街頭でちょっと職務質問なら職務質問をして、そして派出所へ行って、それからパトカーで本署へ連れていく、どうだ行くかというときに、親権者の意向も確かめないで本人がうなずいたからそれでもういい、こういうような扱いをしてもいいということになるわけですか。
  239. 吉野準

    ○吉野説明員 本人がその場でいろいろ質問に答えてもらえば、そして特にその家の電話とか住所がわかれば、また別の方法もあったと思うのでございますが、先ほどから再三申し上げているように、反抗的で一切黙秘ということでございますし、さらに、これまた繰り返しになりますが、自転車のかぎが壊れておって異常である、また前のときの自転車と違うということでもって疑念を持った、それから前のときに母親が登録はしていないと言ったということを思い出しましたので、親権者がおればそれに聞くのが一番早いのでございますけれども、連絡のしようがないわけなんで、派出所におっては本人のためにも不利になる。人通りの多いところでございますし、道案内等で来る人も多いわけでございますので、そういう意味も含めまして本署へ行った方がよろしい。もちろん同意がなければ連れていけないわけでございますけれども、一応聞いたところが、うんというので、それじゃ行こうか、こういうことを言ったということでございます。
  240. 安藤巖

    ○安藤委員 その同意の問題が非常に大きなウエートを占めると思うのですよ。うなずいたから、よし、それじゃ行こうということで、両親の意向も聞かないで連れていった。日本人の場合でも外国人の場合でも、親権者、法定代理人はちゃんとおるわけですから、本人にかわってその親権者の意向を聞いて初めていろいろ措置するわけでしょう。ところが、本人がうんとうなずいたということだけ、あるいは派出所ではかえって迷惑だ、これは警察の方の一方的な判断じゃないかと思うのです。  それでは、そのときに大ぜいの人が派出所の前を取り巻いて見守っているという状況が果たしてあったのかどうか、あるいはいまおっしゃったように道を尋ねてくるような人たちが何人かあったのかどうか、本当にその少年が派出所で警官にいろいろ尋ねられているというようなところを大ぜいの人が取り巻いて見ておるような状況であったのかどうか。そういう状態ではなかったのでしょう。その辺のことをはっきり確かめておられますか。
  241. 吉野準

    ○吉野説明員 大ぜいの人が取り巻いて見ておったという状況はございませんが、長いことそこでいろいろやっていますと、その間にいろいろ人も来るし、目につくだろうという配慮でございます。
  242. 安藤巖

    ○安藤委員 パトカーを呼んで本署へ連れていった問題について私がこだわるのは、この問題で母親がその当日警察署へ抗議に行きましたところ、その東村山署の警備課長さんが、パトカーに乗れて喜ぶ子供もいるのだというようなことまで言うたというのですよ。あなたのところの子供だってパトカーに乗れて喜んだかもしれぬじゃないか、何も無理やり連れていったわけじゃないのだ、こういうような言い方をしたというのですが、その辺は何か聞いておられませんか。
  243. 吉野準

    ○吉野説明員 その点については、承知いたしておりません。
  244. 安藤巖

    ○安藤委員 私がいまここに持っているのは、日本社会党東村山総支部、日本共産党東村山市議団、東村山無所属革新市民連合、東村山地区労働組合協議会、自治労東村山市職員組合名義のビラです。だから、でたらめが書いてあるということはないと思います。しかも、これは大ぜいの人にまかれましたから、そんなものはうそだということなら、警察の方からも苦情が出るのではないかと思うのです。それにちゃんとそういうふうに書いてある。これは母親が抗議に行ったところそういうことを言われたので、余りのことを言われたというので、これらの人たちに話をしてこのビラができ上がっておるわけです。あなたはこういうようなビラがまかれているということを聞いてはおられませんか。
  245. 吉野準

    ○吉野説明員 そのビラについては、承知いたしておりません。
  246. 安藤巖

    ○安藤委員 何か都合の悪いようなことは承知いたしておりませんと言うみたいなのですが、先ほど言いました団体の人たちが、この問題について東村山署へ、子供を強引にパトカーに乗せて本署へ連れていったのはけしからぬ、どうなっておるのだということで抗議に行ったのですね。そうしましたら、これはそのときの写真なのですが、警官の数がたくさんあります。これもそう、これもそうですが、こういうふうにたくさんの警官が、このビラには数十名とあるのですが、この写真で見ると約二十名の警官がその東村山署の玄関の前に並んで、抗議に行った人たちに対して中へ入れまいとするというようなことまでやっておるのですが、これはそういうような抗議を申し込まれると都合が悪い、そういう人たちに警察署の中へ入ってこられたのではかなわぬというような何か特別な事情でもあって、こういう異常な警備態勢をとったのですか。
  247. 吉野準

    ○吉野説明員 三月二十三日に約二十名の朝鮮総連の関係の方が署へ来られたのでありますが、何分大ぜいで来られてわいわい騒がれるものでありますから話し合いにならないということで、代表をしぼっていただきたいと言ったところが、二名しぼってもらいましたので、それと警備課長が応接いたしております。そういうことでございます。
  248. 安藤巖

    ○安藤委員 いまの答弁では、抗議、そしてどういうようなことでこうなったのかという説明を求めに来たのに対して、なぜこれだけ大ぜいの警官が出てこういう警備態勢をとらなければならなかったのかと私がお尋ねしたことに対する答弁にはなっておりませんよ。
  249. 吉野準

    ○吉野説明員 大ぜいで玄関前に押しかけて、受付前に入り込み、受付係に対していろいろと申し出をしておるということでございますので、これは当然執務の妨害になりますので出ていただいた、こういうことでございます。
  250. 安藤巖

    ○安藤委員 いまあなたが、執務の妨害になるから出てもらったというのですが、そうしますと、警察署の玄関から入って執務しているところへ入り込んできて、机などにたとえば腰かけるなどして執務の妨害になるようなことがあったとおっしゃるのですか。
  251. 吉野準

    ○吉野説明員 このまま放置しておきますと、これは当然執務の妨害になるわけでございます。これはいろいろ過去のこの種の例からいって明らかなので、それで警告をしておるわけでございます。警告をした後で出ていただいたということでございます。
  252. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうような警察の対応の仕方が、やはり基本的に問題じゃないかと思うのですよ。だから、これからもお尋ねするわけなんですが、その少年を母親の同意も得ないで勝手にパトカーを呼んで本署へ連れていったということに対して、なぜそういうことをしたのだという釈明を求め、そして抗議をしに来た。だから、それはそれなりにちゃんと聞いて、説明すべきことを説明するというようなことをおやりになればいいのですが、警官隊がずらっと二十名も警察の前に並んで、そしていかにも暴徒の集団が押しかけたかのごとき対応をとるというのは、やはりこれは異常な警備で、在日朝鮮人の人たち、あるいはその人たちの人権を守るためにいろいろ活動しておられる人たち、そしてまさにそのことのために来た人たちを、あたかも犯罪人の集団が押しかけたかのごとく扱う、こういうようなところが一番基本的な問題じゃないかと思うのですが、これはそういうことをしなくてもよかったのではないかというようなことは、毛頭考えなかったのでしょうか。
  253. 吉野準

    ○吉野説明員 過去この種の事案等にかんがみまして、大ぜいの方と会って話すということは不可能なわけでございます。やはりこちらからも説明したいことがある、向こうも言いたいこともあるでしょう。その場合は人数をしぼって穏やかに話し合うのが最善でございまして、この場合も、二十名ということではとてもその話し合いにならないということで、二名にしぼっていただいて警備課長が応対をしたということでございまして、私は適応妥当な措置であったというふうに考えております。
  254. 安藤巖

    ○安藤委員 あなたは、いま二十三日のことを言ってみえているわけですか。  それから四月五日にも、いま私が言いました人たちが釈明を求め、そしてそのとった措置に対する抗議も兼ねて行かれたのですが、そのときも同じように警官隊が出てきて応対をした。私が先ほど示した写真は四月五日のときの写真なんです。このときは共産党、社会党、それから革新無所属の市会議員、それから先ほど言いましたような市民団体の人たちの代表が行っているわけなんです。そういうときにも、いま言いましたように二十名前後の警官隊が警察署の玄関前に、先ほど写真で示したようにずらりと並んで入ってくるのを阻止した、こういうことが行われているのですよ。この点はどうなんですか。
  255. 吉野準

    ○吉野説明員 四月五日は十二名の方が来られたので、やはり十二名では多い、先ほども申し上げた趣旨等にかんがみまして人数をしぼっていただきたいということで、三名の方にしぼっていただいて、警備課長から御説明申し上げております。
  256. 安藤巖

    ○安藤委員 ですから、結局は代表をしぼって市会議員三名が中に入って説明を受けた、こういう経過になっていることは私も承知しておるのですが、こういう市民団体の人たちあるいは市会議員の人たちが行ったときにも、そういうふうに警官が二十名前後出て警備をする、こういう姿勢がやはり問題だと私は思うのです。  そこで、この問題だけあれこれやっておるわけにはまいりませんが、これもこの前のいろいろな質疑の中で出てまいったことなんですけれども、たとえば小平警察による朝鮮大学生に対する、これはおととしの四月十八日の一斉の職務質問及び外国人登録証の提示を求めたという件、これは何か特別ほかの事件で警官が捜査をする、あるいはしておるというようなことでもあったのでしょうか。
  257. 吉野準

    ○吉野説明員 昭和五十五年四月十八日の夜のことでございますが、この小平管内は非常に犯罪の多いところでございまして、恐縮ですが、ちょっと数字を引かせていただきますと、五十五年、その同じ年でございますが、一月から五月まで、たとえば粗暴犯、暴行、傷害、恐喝等でございますが、これが三十七件でございます。侵入窃盗、これが百二件、それから非侵入窃盗、自転車盗とかひったくり等でございますが、これは実に五百八十件、それからわいせつその他が九十八件ということで、全部で八百十九件起こっているわけでございますので、防犯に大変力を入れておりまして、この日の夜も防犯活動のために各種犯罪の予防、検挙、それから交通事故の防止も兼ねまして検問を実施したということでございます。
  258. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、いまのような趣旨で警官がその当時その付近に出動しておって、いま言ったような趣旨で職務質問をした、こういうふうに思われるわけですが、そうしますと、この朝鮮大学生の人たちがそういうような犯罪に関係ありというような判断があったのか、あるいはそういうことも含めて職務質問をするようにという指示が現場に出動した警官に対してなされておったのかという点はどうですか。
  259. 吉野準

    ○吉野説明員 当然のことながら、朝鮮大学校の人をねらってやったというわけではございませんで、一般の犯罪予防という見地から検問を実施したということでございます。
  260. 安藤巖

    ○安藤委員 この件はこれまでもしばしば話に出ておったのですが、朝鮮大学の校門から数百メートル、といっても大きい方の数百メートルでなくて三、四百メートルのところで、集会から帰ってくる朝鮮大学生に対して行われたということなんですが、朝鮮大学生のみを対象にして職務質問、外登証の提示を求めたというようなことではなかったのですか。
  261. 吉野準

    ○吉野説明員 そのような事実はございません。一般人に対しても職務質問をやっております。
  262. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、いま答弁をなさったような犯罪にその朝鮮大学生が関係があるのではないかというような疑いを持って職務質問をした、こういうことになりますか。
  263. 吉野準

    ○吉野説明員 その朝鮮大学校の生徒さんも、来る人来る人片っ端からやったというわけでは決してございませんで、警察官が見ておって職務質問を要すると判断した者、例を挙げた方がよろしいと思いますけれども、たとえば酒に酔って道路中央を歩いていた人とか、職務執行中の警察官に酔って絡んできた人とか、無灯火の自転車に乗っていた人とか、そういうような人たちに対して職務質問を行ったということでございます。
  264. 安藤巖

    ○安藤委員 いまあなたがおっしゃった職務質問の対象になった人たちに対しても、この朝鮮大学の学生の人たちが職務質問を受けた朝鮮大学の正門から数百メートルというようなところで職務質問をなさったのですか。
  265. 吉野準

    ○吉野説明員 現場は通称たかの街道と言っているところでございまして、地理的に見ますと、朝鮮大学校の正門から近いところでございます。
  266. 安藤巖

    ○安藤委員 近いところだといっても、私がいまお尋ねしているのは、朝鮮大学校から百五十メートルとか二百五十メートルあるいは四百メートルというようなところで、朝鮮大学の学生の人たちが職務質問を受けておるのですよ。だから、その範囲内で、いまおっしゃったように、酔っぱらって道をふらふら歩いておるとか、警官に絡んできたとかいうような人たちに対して職質をやったのかどうかということを聞いているのです。
  267. 吉野準

    ○吉野説明員 そのとおりでございます。
  268. 安藤巖

    ○安藤委員 その辺のところは、こっちがわからぬと思って適当におっしゃっておられるのではないかという気もするのです。  私が問題にしたいのは、現行法の第十三条の携帯義務、提示義務、これが簡単に、先ほどの久米川駅前の派出所の件でもそうですが、朝鮮人だなあるいは在日韓国人だなというふうに見たら、たちどころに職務質問をやって、登録証の提示を求めて云々というようなことにすぐ使われる。そして、少年を本署へパトカーで連れていったり、あるいは何ら犯罪の嫌疑がなく、大学の門が近くてそこへ帰ろうとしていることがわかっておるにもかかわらず登録証の提示を求めるというようなことで、すぐ犯罪容疑者というふうに見て取り締まりの対象にされる、そのことを私は問題にしておるのですね。だから、その辺のところは慎重にやっていただかなければならぬと思うのです。  いまの小平警察署の件のほかにも、大臣、よく聞いておってくださいよ、こういう実態なんですね。  これはこの前も話がありましたけれども、女の先生が教室で授業をやっておる真っ最中に入っていって、すぐ連れていく。それは普通の民家のところだったから、学校かどうかよくわからなかったというのですが、子供たちを前にしていろいろ教えているのですから、教室だということは一見して明らかだと思うのですね。それがすぐ警察へ連れていく、こういうようなことが行なわれるわけです。  それから、これは「法律時報」の昭和五十年六月号ですからちょっと古いのですけれども、こういう事例もあるのですね。  五十年の四月十七日の件ですが、東京に住んでいる人が山陰線の鎌手駅の方へ旅行に行った。そこで、駅を出たところで突然四人の私服警官に取り囲まれて、派出所に同行を求められた。余り突然なことなのでびっくりして、どうしてなのかと理由を尋ねたら、一人の警官が、窃盗の嫌疑があったんだというふうに答えた。この人は全く身に覚えがなかったので、派出所に同行を求められたときに、任意のものか強制によるものかというふうに尋ねたところ、警官は任意だと。それならここで話をしようと言ったその途端に、二人の警官がこの人の両腕を強く握って、一人が背中から押して無理やり派出所に強制連行をした。  この人はその途中も強く抗議をしたのですが、派出所の中に連れ込むや、いきなり身体検査を始めた。そして、外国人登録証を見せろと言った。この人は持っておったので、見せるから身体検査をやめろと言いながらズボンのポケットから登録証を取り出そうとしたところ、警官らは、もう見せなくてもよい、登録証不提示罪で逮捕すると、逮捕して手錠をかけてしまったのです。こういうふうに使われているのです。  しかも、この島根県警は数名の警官を東京に派遣をして、警視庁とともに四月二十二日に、何ら正当な理由がないにもかかわらず、この人の家人の留守中家宅捜索を行うということまでやっておるのですよ。これは窃盗とか何かということではなくて、この十三条の不提示罪ということで家宅捜索まで行われている。こういうとんでもないことが現実に行われているわけですね。  これは切りがありませんから、そんなにたくさん挙げるつもりはありませんけれども、もう一つは、去年の夏、八月八日に富山県の富山市内で起こった件ですが、午後十一時ごろ、十五歳の三人の在日朝鮮人の少年、この人たちが夕涼みを兼ねて自動販売機へジュースを買いに行く途中に、富山北警察署の警官二人に職務質問をされた、そして登録証の提示を求められた。自動販売機へジュースを買いに行っただけですから、うちがすぐ近くであることはわかっておりますが、自宅が近いので連絡すればすぐ身元が確認できるはずだ、いまは持っておらぬけれどもというようなことを訴えたけれども、警官は耳をかそうともせずに、三人を外国人登録証の常時携帯義務違反を口実に、またこれも本署まですぐ連れていって、そしていろいろ取り調べをした。  こういうふうに、何やかんやとこの十三条を盾にとって被疑者扱いをするというようなことがずっと行われているのですね。だから、これはきのう尾崎参考人が、この外国人登録法というのは治安立法的性格を持っているんだということを言いましたけれども、やはりそういうふうに使われている、これが実態だというふうに思わざるを得ないのです。  いま私がここに挙げただけでも、すぐ簡単に逮捕する、家宅捜索までする、そして、うちがすぐ近くだからと言っても言うことを聞かないで本署へ連行していくとか、こういうようなことがしょっちゅう行われるのですが、この不携帯の問題については、法務省の方としては、こういった調子にこの十三条を適用しろというふうに考えておられるのですか。
  269. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人登録証の常時携帯義務の問題につきましては、私どもは、常日ごろ運用に当たっております警察当局と意思の疎通を図るということが非常に大事であると考えております。いずれにいたしましても、いまいろいろお話を伺っていて、そういう意思疎通の機会というものはできるだけ多くやりたい、こう考えております。  なお、ただいまお挙げになりましたような具体的なケースについてどうかということについては、いろいろ事情もそういうときに詳しく聞きました上でないと、なかなかすぐには御返事しかねます。
  270. 安藤巖

    ○安藤委員 常に携帯していなければならぬ、そういう趣旨ですな。この常にというのが常住座臥、たとえばふろへ行くときでも、どんなときでも常に肌身離さず持っていなければならぬということではないのだというような説明をこれまでもなさっておられたようだし、過去にもそういうことを答弁をしておられるというふうにも認識しておるのですが、そういうことでいいのですか。とにかくいつでも持っていなければならぬのだ、ふろへ行くときにも持っていなければならぬ、極端なことを言えば、銭湯へ行くときも持っていなければならぬのだ、二、三軒先にたばこを買いに行くときにも持っていなければならぬのだというところまで常に携帯していなければならぬというふうにこれを適用していくのだということではないのでしょうか。そのとおりなのか、どちらですか。
  271. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 これまでの国会の質疑の記録などを拝見いたしますと、よくふろ屋の件なんかが出てきているようでございます。ふろ屋へ行って湯舟につかるときまで一緒に持って入らなければいけないのかとか、あるいはそもそも近いふろ屋に行くのに携帯しなければいけないのか、そういう話が出ているようでございます。これはどういう場合にはいいとか、どういう場合には必ずというような線はなかなか引きにくいのでございますけれども、いままで常に言われてきましたように、常識の範囲内ということで考えるほかはないのじゃないかというふうに思っております。
  272. 安藤巖

    ○安藤委員 入管局長、それから法務省の側では常識の範囲内ということで、そんなものを持っておらなくたってあたりまえじゃないかとだれでもが認めるような場合でも持っていなければならぬというつもりはないのだというふうに理解していいのじゃないかと思うのですがね。常識の範囲というのは、だれが考えてもそのときに持たせるのは無理だというような場合じゃないかと思うのですね。一々、ではここまでかという議論をいまからするつもりはないのですが、さっき私が言いましたように、すぐ近くの自動販売機へジュースを買いに行く、あるいはちょいとたばこを買いに行く、あるいは二、三百メートルか四、五百メートルか知りませんが、その辺の友達のところへちょっと行って用を足してすぐ帰ってくるというような場合も持っていなければならぬのかというようなことなんですね。やはりそのときに職務質問なさって、持っていなかったら不携帯罪ということですぐ連行されて逮捕される、手錠をかけられる、こういうことでなければならぬというふうに考えておられるのかどうか、この点はどうですか。
  273. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 どういう場合はたまたま携帯していなくてもそう厳しく問う必要はない、どういう場合にはぜひ持ってもらわなければならぬという基準は、これは安藤委員御自身が御指摘のとおり、線を引くのは非常にむずかしいと思います。原則は常時携帯してもらわなければいかぬ、しかし、たとえばすぐ隣のたばこ屋にたばこを買いに行くときに外国人登録証を携帯していなかったということが非常に厳しく問われなければいけないかというと、これはまた常識の問題として必ずしもそうじゃないのじゃないかということになろうと思います。  いずれにいたしましても、その辺の具体的な線引きというのは、いろいろなその場合の事情とか、そういう具体的な条件というものがありましょうから、一般論として申し上げるのはなかなかむずかしいのじゃないかという感じもいたしております。
  274. 安藤巖

    ○安藤委員 しかし、しゃくし定規でやるというようなことでなくて、いまおっしゃったように常識の範囲だということでやってもらいたいということなんですね、もちろんその常識の中身が問題は問題でしょうけれども。しかし、先ほど私が挙げたような事例だと、これは常識的に言って、自動販売機へ缶ジュースを買いに行くというような場合なんかは、持っていなくたってしょうがないのじゃないかというのが常識の範囲じゃないかと私は思うのですね。だから、そういう常識の範囲ということでは漠然としておりますから私もちょっと困るのですが、しかし、それ以上言いようがないとおっしゃるからあれですが、そういうようなことでこの第十三条を適用をして提示を求め、携帯を義務づけるということでいくのだというようなことでまず一応了承しておきますが、そういうような考え方が警察の方に徹底されているのかどうかという疑問を持たざるを得ないのです。  いまおっしゃったように常識の範囲だ、わりとかっこうがいいです。ところが、警察の方へいくと、先ほど実例を挙げましたように適用をされて、すぐ本署に連行されていくというふうにこれが扱われておるのです。だから、いまもおっしゃった常識の範囲というようなことをどのようにして現場の警官の方に徹底をさせておられるのか、あるいはこれからしていかれようとするのか、これをお尋ねしたいと思います。
  275. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほども申し上げましたとおり、私どもは警察の方々とできるだけ機会を設けて平生接触をして、そうして意思疎通を図るということが大事だと思っております。これまでもやってきましたし、これからもそういう機会をできるだけ持っていきたいと思います。そういう話し合いを通じまして、私どもの気持ちは警察の方におわかりいただいていると考えております。
  276. 安藤巖

    ○安藤委員 それで、警察庁の方はどうなんですか。いま大鷹入管局長はそういうふうにおっしゃったのですが、おわかりいただいていると思うということなんですが、おわかりいただいておるのでしょうか。
  277. 吉野準

    ○吉野説明員 ただいまの入管局長の御趣旨には全く賛成でございまして、そういう方針で指導いたしておりますし、一線でもやっておると承知いたしております。  冒頭に安藤委員が御指摘事例につきましても、私、再三御説明しましたように、自転車の問題から入っていったわけでございまして、登録証のことも聞きましたが、結局不問に付しておるわけでございまして、何ら措置はとっていないということでございます。  それと、先ほど来富山の缶ジュースという例をお挙げでございますが、これもちょっと誤解がおありになるのじゃないかと思いますけれども、深夜午後十一時三十五分ごろ、自動販売機からジュースを購入した少年三人を認めたので、これは少年補導の観点から、真夜中でございますので職務質問を行ったということでございまして、その結果三人とも外国人であり、身分を確認すると外登証を持っていないということであり、特に周囲の状況からしまして補導に値するのではないかということを考えましたので、身分関係とそれからいろいろ聞きたいということでもって本署へ同行していただいたということでございまして、これももちろん任意同行です。  それで、本署に着きましてから身分を確認いたしましたところ、二人は富山市内に居住しておってすぐ身分関係が確認できましたので、パトカーでそれぞれ自宅まで送り届けておりますが、もう一人の少年につきましては、これは石川から富山に遊びに来ておるという人だったようでございまして、外登証はどこにあるかわからないということで要領を得なかったので確認がおくれて、結局最終的には確認できたのでありますけれども、宿泊先の友人の父を呼んで引き渡したということでございます。ということで、いずれも外登法違反の件につきましては不問に付しております。
  278. 安藤巖

    ○安藤委員 話を蒸し返すつもりはないのですが、畠山の件は、一人はちょっと離れたところから来た人らしいのですが、残りの二人はうちがすぐ近くだから、いま持ってないけれどもすぐ持ってきますとか、すぐわかります、聞いてください、こういうふうに言うたにもかかわらず、それに耳をかさないで本署へ連れていったということなんですよ。だから、何も本署へ連れていく必要はないと思うのですね。どうして本署へ連れていったのか、さっきの東村山市じゃないけれども、やはり問題にしたいと思うのですよ。だから、そういうことについては、先ほど入管局長がおっしゃったような、常識という関係についてはよくわかっております、だからそういうことでやっておりますと言うけれども現実にはそういうことで、すぐ近くだからわかると言っているのにもかかわらず、本署へちゃんと連れていったというようなことは、やはりこの外登法をもとにして犯罪人扱いをしているのではないか。補導の必要性があるといったって、うちがすぐ近くだったら、どうして補導の必要性があるかと言うんだ。うちが近くならそこへ早く帰りなさいよ、あるいは近くなら一緒についていってやるわ、あるいは親を呼び出すなりということだってできると思うのですが、何でもかんでもすぐ本署へ連れていくということが問題だということを私は言うておるのですよ。だから、その辺のところを考えてもらいたいということです。  そこで、その関係でお尋ねしたいのですが、この十三条の二項に「その職務の執行に当たり」というのがありますね。この「職務の執行に当たり」というのは、幾つか警察官の職務というのがあるから、警察官ばかりじゃなくてほかにもたくさんの公安職員等々のあれも挙がっておりますから、相当範囲が広くなると思うのですが、これは特に外国人登録証の携帯、不携帯の問題を調査といいますか、その職務ということには限らなくて、先ほどからの話のように、近くで犯罪が行われておるとか、あるいは犯罪多発地帯であるとかいうようなことで職務を外登法関係以外でやる場合にも、この「職務の執行に当たり」というのは入るわけですか。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕
  279. 吉野準

    ○吉野説明員 およそ警察の任務は、公共の安全と秩序の維持という非常に幅広いものでございますので、その職務も多岐多様にわたっております。たとえば職務質問であるとか、その一歩進んだものとしての犯罪の捜査とか、あるいは交通の取り締まりその他いろいろございます。こういうものを全部指すのであるというふうに解しております。
  280. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、通りがかりの人を呼びとめて、外国人だということがわかった場合に、外国人登録証を持っていますかと言う、そういうのは、これも職務質問になるのだろうと思うのですが、どうですか。
  281. 吉野準

    ○吉野説明員 御質問趣旨が必ずしもよく理解できておりませんが、外国人であることを確認するための職務質問ということは、通常やっておりません。
  282. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしたら、通りかかった人に対して警官が呼びとめて、普通、これからどこへ行かれるのですかとか、どこへお勤めですかとか、名前はどうですかとか、そのときの事案によって違うと思うのですが、そういう質問をして、これは職務質問だろうと思うのですが、外国人だなということが言葉の使い方などでわかったというときに、外国人登録証を持っておりますかというふうに聞く、これも職務質問の中に入るわけですか。
  283. 吉野準

    ○吉野説明員 入る場合もあろうかと思います。
  284. 安藤巖

    ○安藤委員 入る場合もあろうかということだと、ようわからぬのですけれども、そういう場合は、外国人だということがわかった、そうすると、この人は外国人登録証を持っていないのじゃないのかという疑いを持って、そして確かめる、こういうようなことになっていくわけなんですか。
  285. 吉野準

    ○吉野説明員 そういう場合もございます。
  286. 安藤巖

    ○安藤委員 警察官職務執行法に、職務質問の項が第二条にありますね。これによると、いま外国人登録証の提示を求めるというのも職務質問に入る場合もあるということだからお尋ねするのですが、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」に対して、それを「停止させて質問することができる。」だから、結局これにのっとっていま私がお尋ねしたようなこともする、こういうことになりますか。
  287. 吉野準

    ○吉野説明員 先ほどお答えしましたが、その補足のような形になりますけれども、警察の職務は非常に幅広いものでございます。これを全部法律規定するというのは不可能なことでございまして、お尋ねの警察官職務執行法の第二条の職務質問の項もその一類型でございまして、これによらない質問というものも当然あるわけでございます。
  288. 安藤巖

    ○安藤委員 この警察官職務執行法の第二条によらない職務質問というのもあるということなんですか、いまおっしゃったのは。
  289. 吉野準

    ○吉野説明員 そのとおりでございます。
  290. 安藤巖

    ○安藤委員 そうですがね。それでいいのですかね。この警察官職務執行法に基づいて質問というのがあって、こういう場合にそういう認められる者を停止させて質問することができる、あるいは派出所または駐在所あるいは警察署に同行することを求めることができるというようなことになっているわけなんです。それ以外にも、こういうとき以外にも警官は勝手に人をつかまえて、あなたどこのだれだ、どこへ行くんだ、どういう商売だ。さらに外国人だとわかれば、すぐ登録証を持っているかと言うことができるのですか、この法以外に何か根拠があって。
  291. 吉野準

    ○吉野説明員 警察官職務執行法第二条によります場合は、やれる行為として、「停止させて質問することができる。」ということになっておりますが、「停止させて」というのは、判例の認めるところでは、やや圧力を加えて、たとえば逃げようとする者の肩、背中に手をかけて停止させるという程度のことは許されるというふうに解されておりますが、そういうことができるのはここにある要件の場合であるということでございまして、それ以外の質問というのはいっぱいあるわけでございまして、その場合はこれほどのことはできないということでございます。それで、外国人に対する職務質問の場合も両方あるということでございます。
  292. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、両方あるということですが、この警職法の第二条に基づいて職質をするというような場合は、やはり不携帯罪だという疑いを持って提示を求める、こういう疑いを持ってかかるということになるわけですな、職務質問の場合は。そういうふうに思っていいですか。
  293. 吉野準

    ○吉野説明員 具体的な例を申し上げた方がよろしいと思いますけれども、昨年、宮崎県で検挙した北朝鮮からのスパイでございますけれども、いわゆる黄成国事件と言っておりますが、これは北朝鮮から派遣されてきたスパイでございまして、宮崎県の日向海岸から入ったり出たりしておった男でございますが、これを宮崎県警が検挙しておりますけれども、これはまさに異常なかっこうをしているところを警官が発見いたしまして、これは密入国だろうと思いまして、外国人登録証の提示を直ちに求めたという事案でございまして、そういうことがあり得るということでございます。
  294. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう密入国の疑いを持ってやるという場合は、また別のケースだと思うのですよ。私が言うておるのは、たとえば先ほどの話のように、常識の範囲でその提示を求めるというようなことですね。だから、そういうような場合にも、どうも持ってない疑いがある、ひとつつかまえてやろうというような疑いの目でもってやる場合が、先ほど挙げたような事例の中にもあるわけですが、そういうふうにこれが使われるということを私どもは恐れるし、現実にそういうふうに行われているというふうに思うものですから、その提示を求める場合の警官の態度というのは相当慎重に構えてもらう必要があるのではないかということで、いまお尋ねしておるわけです。だから、密入国の摘発した事例をいきなり持ち出されても、そんなものは、私のいま質問している内容と全然食い違っておるのです。  普通に、そういう挙動不審で何か犯罪を犯してきたとか、密入国してきたのではないかとかいうような疑いを差し挟む余地のないほど、普通の状態で出かけていって、自動販売機で缶ジュースを買うとか、たばこ屋へ行ってたばこを買うとか、そういうような場合には、疑いを持ってかかるというのがもともとおかしいのじゃないかと思うのです。もともと疑いを持って、よし、ここでひとつつかまえてやろう、あれはどうせ持ってないに決まっている、ひょっとたばこを買いに来たんだから、これは絶好のチャンスだみたいなことで呼びとめて、そして持っておるかというふうに、この第十三条が乱用をされるおそれがあるのではないかということを私は心配してお尋ねしておるのですよ。だから、そういうような場合は、この警職法の二条に基づく職質というようなことにはならぬわけなんですかね。
  295. 吉野準

    ○吉野説明員 いまお挙げになった例で御説明すればよろしいと思いますけれども、たとえば顔見知りの人がたばこ屋へたばこを買いに行く、どうせ持っておらぬだろうから摘発せいということで職務質問をかけるというようなことは、絶対にやっておりません。また、そういう指導もいたしておりません。
  296. 當別當季正

    ○當別當説明員 外国人登録法を所管する入国管理局の立場といたしまして、先生の御質問お答えいたしたいと思います。  外国人登録法十三条第二項に提示要求、それから相手側から見た場合には提示の義務が規定されておるわけでございますが、先生指摘のとおり、法律規定された職員が「職務の執行に当たり」ということでございますので、当該職員が法令によって定められた職務権限の行使に当たって必要な場合というふうな考え方をとっておるわけでございます。  なお、先生の御疑問の点ではないかと思いますので、ちょっと付加させていただきますと、警察官は、警察官職務執行法第二条で職務質問の権限があるじゃないか、それでは外国人登録法の十三条第二項というのはどういう場合に発動されるのだろうかという御疑問だろうと思うのでございますが、これは比喩的な言い方をさせていただきますれば、当該外国人の身分関係を特定するために必要がある場合、これが提示要求を警察官が最も必要と考える場合であろうというふうに考えるわけでございます。  職務質問は、これは警察の所管の法律でございますが、私の理解しているところによりますと、職務質問に伴って所持品検査ができるかどうかというのは非常にむずかしい法理論がございます。アメリカではストップ・アンド・フリスクという理論があるわけでございますが、現在の最高裁も同じようなアメリカの法理論を取り入れまして、事案の重大性、悪質性との相関関係でこれは考えなければいけないわけでございますが、一般的に職務質問に伴って所持品検査できるということにはなりません。したがって、やはりこの十三条二項の規定に基づきまして、身分関係を特定する必要がある場合には、警察官が相手方に対して提示を求め、相手方が提示に応ずる義務があるというこの規定を設けておるというふうに理解しておるわけでございます。
  297. 安藤巖

    ○安藤委員 ですから、いまの説明は、かえって本人にとって有利なことになるんだみたいな、いろいろ前からもそういう答弁があったのですが、それはそれとしておいて、私がいままでずっと問題にしてきたのは、この十三条の二項というのは、警職法の二条にもよらない、警職法を基本法とすれば何か特別法みたいな扱いでこれが振り回されているんじゃないかという気がするから、だからそういう懸念もあるからいろいろお尋ねしておるのです。先ほど二、三挙げた例もそうです。  それから、いま警察庁の吉野さん、ようわかっておる人にそんなことやるわけないんだということをおっしゃるのですが、それがまたあるんですよ。ようわかっておりながら、いまちょうど持ってないからということで、前から目をつけておった何か在日朝鮮人の活動家とかというのをねらってやるという場合だってあるんですよ。  たとえばこれも一つ事例ですが、一九七四年十月、朝鮮総連の東京の大田支部の社会経済部長が金大中事件のビラ張りの許可申請を池上警察署に提出して、あわせて自分の名刺も出した。この人は地元に居住する活動家で、百も承知の上なんです、その人は常にこういうような届け出に来ているわけですから。にもかかわらず、名刺もちゃんと出しているにもかかわらず、あなた、登録証を持っているかと提示を求めたというのです。だから、ようわかっている人にはそんなことやりませんよとあなたはおっしゃるけれども、現場は実際にそのような扱い方をしていない。そのことを頭に入れておいていただきたいのです。いいですか。そのことを特に強調しておきたいのです。  時間もだんだん迫ってきましたから、きのう参考人の方にいろいろ話をしていただいて、大分ありがたい意見をお聞きしたのですが、市町村にある指紋の原票ですね。これは私の方からも生野区長さんにお尋ねをしたのですが、この原票の指紋の照会、よそから、その指紋が本人のものかどうかということを確かめてくれというような照会は全くない。それから、原票にある指紋の鑑定をすることができるというような人は特にいないというようなことになってくると、これはやはり原票の指紋というのは切りかえ申請のときあるいは再交付申請のときにまた押してもらう、そのときに前に押してあったのと一緒かどうかということを確認するためだということは私も聞いておるのですが、そのときに本当にそうかどうかということを、これは一見して明らかな場合もあるかもしらぬですが、私ももちろん素人だからようわかりませんが、ちょっとややこしいのになってきますと、流紋状とか、何とかかんとかありますね。専門家もいないということになると、同一の指紋かどうかということはなかなかわかりっこないと思うのです。では、何のために押してあるのかというような気がせぬでもないです。  だから、指紋の問題については、何人かの人が重ねて、口が酸っぱくなるほど、とにかくやめたらどうだということをあれこれの理由を挙げて言っておられるのですが、いまも私が言いました市町村の指紋の原票というのは何の役にも立たぬじゃないかと思うので、廃止したらどうかと思うのですが、どうですか。
  298. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま安藤委員がおっしゃいましたとおり、指紋をなぜ原票に押すかと申しますと、まず登録証明書、これは現在三年ごとに切りかえられておりますけれども、今後五年ごとということになります。この証明書に指紋を押してもらう必要があります。これは毎回切りかえのたびごとに押してもらう必要があるわけであります。そのときに原票にも同時に押してもらいます。もちろん、このときにこの二つの指紋を照合いたします。すべての場合に、いま安藤委員指摘のとおり、正確にこれが照合できるわけでもありません。できない場合もありましょう。しかし、できる場合もかなりあると思います。たまたまきのうは生野区長さんが、自分のところではそういう照合などというものは余りやっていないというようなことをたしかおっしゃっていらっしゃいましたけれども、東京都下の区役所等ではこれを現にやっております。それで、この原票にその都度切りかえのたびごとに押してもらった指紋があることによって、この登録証明書を携帯している人が原票に登録されている人物と同一人物であるということが最終的に確認できるわけであります。したがって、そういう必要に備えて、やはり原票への指紋の押捺というのは欠かせないということになるわけでございます。
  299. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうような話もこれまで何度かこの委員会でお聞きしておるのですが、その議論はまた同じような御答弁が来るのではないかと思うからやめておきますが、やはり検討もしていただきたいと思うのです。  登録証にも指紋が押してありますね。登録証の不携帯、提示の問題を先ほどいろいろお尋ねしたのですが、持っているか、見せる、そのときに、この登録証の人物と持っている人物、提示した人物が同一かどうかということですね、これは写真で判定するよりしようがないでしょう。警官が見せてもらったときに、一々、あなた指紋を押してくれ、そして登録証に押してある指紋と比べて、よし間違いない、こういうわけじゃないでしょう。ですから、少なくとも登録証の指紋というのは全く用のないものじゃないかというふうに思うのですよ。登録証の提示義務、不携帯はだめだ。だから、この登録証の指紋というのを押すのを一つ減らすということは考えられないのでしょうか。
  300. 當別當季正

    ○當別當説明員 ただいま御質問の点につきましては、新規にあるいはその後切りかえ申請とか再交付申請に基づきまして新たに登録証明書を発行する都度当該登録証明書に指紋を押捺していただくということは、私ども立場からはぜひとも必要だというふうに考えておるわけでございます。どうしてかと申しますと、この当該外国人の方々にとりましては、それぞれの所持しておられる登録証明書に指紋が押捺されておることによって、自分の持っておる登録証明書が自分に対して交付された登録証明書に間違いないんだということを的確に当該外国人の方々にも証明していただけるということで、当該外国人の方々にもお役に立つ制度ではないかというふうに考えておるわけでございます。  一つ例を挙げて御説明申し上げますと、私ども執務上しばしば、他人の登録証明書を譲り受けましてその登録証明書に張ってあります写真を自分の写真に張りかえて、当該他人に成り済ましてわが国に居住しておるというような遺憾な例を発見するわけでございます。これは刑法上からいいますと外国人登録証明書の偽造、写真の張りかえによる偽造ということになるわけでございますが、そういう場合は、やはり指紋という制度がありませんと、写真だけでは所持人と当該外国人登録証明書との同一性ということを確定するわけにはまいりません。この指紋制度があるからこそ、そういう事実関係は確実に担保されるというふうに、一つの典型的な例を挙げて御説明申し上げたわけでございますが、そういうふうに私ども考えておるわけでございます。  なお、先生の先ほどの御疑問は、たとえば警察官が提示要求した場合を例にとりますと、現場の警察官は一々当該外国人に新たに指紋を押させて指紋の照合をするわけではあるまいという御疑問を言われたわけでございますが、これは事案内容によりけりだ、通常本人の申し述べる身分事項、それから写真と本人との照合、そういうことで疑問がなければ、通常はそういうことはしないであろうと考えるわけでございます。先ほど申し上げましたような他人の外国人登録証明書を譲り受けて写真を張りかえて、それを所持しておるというような事例について申しますと、警察官がそこまでの疑問を持つということになれば、任意に派出所において指紋を押してもらって、それを照合することによって、果たして当該外国人登録証明書が所持人との間に同一性があるかどうかということの疑問を解明する手段を尽くすであろうというふうに考えておるわけでございます。
  301. 安藤巖

    ○安藤委員 だから、写真を張りかえて見せる場合は、張りかえた当人が写っておる写真ですから、ああこれだとわかると思う。しかし、そのときに問題は、どうもこれは怪しいなというふうに思うのかどうかということですよ。だから、そのときに派出所に来て指紋を押してもらって、では、その警官が指紋の専門家で簡単にわかる場合はともかく、そうでない場合だってあるわけですから、どうしてわかるかというのです。だから私は、もともと指紋というのは全廃さるべきであるというふうにもちろん思っておりますし、そういう修正案も提案しようと思っておるのですけれども、少なくとも、まず外国人登録証の指紋だけでも、どう考えてもこれは無用のものだとしか思えない。  いまおっしゃったように、原票に押した、それと同じものを押した外国人登録証をもらった、だからこれはおれのものだと思ってもらえるのだ、こういう言い方ですが、これは仮に百歩譲っての話だけれども、原票に押した、そしてそれに基づいてもらったのですからやっぱりこれはおれのものだと、それで思ったっていいじゃないですか。そしてまた十分それで思えると思うのですよ。何もその原票に押したのをそのまま押した外国人登録証でなくたって、それから先ほど言いましたように、警官に見せたって警官が照合するわけじゃありません。派出所に行って押してもらったって、判定ができるものでもありません。全く無用の長物じゃありませんか。少しでも少ない方がいいというのが登録事務協議会の方からの意向でもあるのですからね。  だから、そう我を張らないで、もう絶対にこれで大丈夫だ、これ以上のいいものはないなんてことを言わないで、だから最初に私が言うたのです。これが一番いいのだ、もうこれ以上変える必要はありません、もう指紋の問題にしろ不携帯の問題にしろ、あれこれ皆さんがお尋ねになっても、ああだこうだ言って頑として譲らぬ。だから、この姿勢がまたおかしいのではないかと思うのですが、いまの登録証の指紋、これは全く無用だと思うのです。  それから、時間がありませんから、もう一つお尋ねしますが、動静記入というのがありますね。これは市町村の場合で言うと動静記入、法務省で言うと動静通知というのですか、これもきのうの生野区長さんによると、動静記入をするけれども、これも全く照合もないし、全く役に立っていないというお話です。そして事務がそれだけふえているわけです。これもひとつやめたらどうかと思うのですが、どうですか。
  302. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 先ほどの指紋の件でございますけれども、指紋制度は三十年に導入されましてから、登録証明書の偽造、変造、不正使用、そういうものが激減しております。現に私どもが摘発しました不法入国者を当たりまして、偽造、変造の外国人登録証明書を持っているかということを調べました。その結果、その中で何人かそういうものを持っている人が出てきたのですけれども、それがすべて指紋制度が導入される前のものでございまして、つまり指紋制度が入りましてからはそういう偽造、変造、非常にむずかしくなっている、そういう事情がございます。逆に言えば、もし指紋制度を廃止すれば、必ずそういうものが激増するであろうと私ども考えておるわけです。そういう意味におきまして、指紋制度というのは不法入国に対する抑止力として働いている。この面も見逃せないのじゃないかと思うのでございます。  次に、動静通報でございますけれども、これはすでに安藤委員が御承知のとおり、市町村長が受ける動静通報でございますが、入国者収容所または地方入国管理局等の収容施設、収容場と言っておりますが、その長が通知する被退去強制者動静通報及び矯正施設の長が通知する在監者の動静通報の二種類がございます。いずれも各種申請等の取り次ぎを依頼するため、公権力により身柄を拘束されている既登録外国人の居所を明らかにし、それを把握する必要があるからでございます。  この動静通報を原票に記入する法的根拠はございませんけれども、原票の様式に備考欄を設けることにより、実務運用上、右この二つの動静を当該備考欄に記載させることによって外国人の居所を明らかにすることにしている、そういうことでございますので、私どもはこの制度を廃止することは考えておりません。
  303. 安藤巖

    ○安藤委員 本当に廃止してもいいようなものまで頑として譲られないので、はなはだ心外でございますが、最後に、先ほどもちょっと言いましたが、私どもの党の方からこういう修正案を考えておりますということと、近いうちに正式に修正案として出したい、その要旨だけ申し上げて、大臣にも御検討をお願いするということで申し上げて、終わりにしたいと思います。  まず一は、本人出頭、新規登録等に際しての写真提出義務年齢、これを今度十六歳というのですが、これはやはり成年ということで二十歳に引き上げる。それから、常時携帯義務を廃止。それから、五年ごとに確認して切りかえ交付を受けることになっておりますけれども、これはもうきのうも田中先生が参考人としておっしゃったのですが、永住と非永住とこういうふうに分けて、永住を認めた以上は住民登録というような方向に行くべきだということもおっしゃったのですが、そういう意味も含めてこの確認申請の切りかえ交付、こういう制度を廃止する。それから、各種申請の際、登録原票、登録証明書、指紋原紙に義務づけている指紋押捺廃止。それから、登録事項の変更の場合に登録する義務がいろいろありますが、そのうち職業及び勤務場所または事務所の名称及び所在地については削除すべきだ。それから、罰則の軽減については、申請の不履行及び虚偽申請については五万円以下の過料にすべきだ、こういう修正案を用意しておりまして、ごく近日中に提出をする予定でおりますので、大臣にも御検討をお願いするということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  304. 中川秀直

    ○中川(秀)委員長代理 次回は、来る二十七日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十四分散会