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1982-04-20 第96回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長代理理事 高鳥  修君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君    理事 岡田 正勝君       木村武千代君    高村 正彦君       佐野 嘉吉君    白川 勝彦君       森   清君    広瀬 秀吉君       鍛冶  清君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    白戸  厚君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     吉野  準君         法務大臣官房審         議官      當別當季正君         法務省入国管理         局登録課長   亀井 靖嘉君         外務大臣官房審         議官      小宅 庸夫君         外務大臣官房外         務参事官    長谷川和年君         文部省初等中等         教育局地方課長 横瀬 庄次君         文部省大学局高         等教育計画課長 十文字孝夫君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     木村  仁君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出第六八号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  内閣提出外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖本泰幸君。
  3. 沖本泰幸

    沖本委員 外国人登録法の一部を改正する法律案について御質問を申し上げます。  まず、この提案理由説明の中で、「外国人登録法は、昭和二十七年制定以来三十年を経過し、その間国際交流活発化に伴い、わが国入国・在留する外国人の数は著しく増加し、また、わが国国際的地位向上国際人権規約への加入等外国人登録行政を取り巻く諸情勢も著しく変化しており、このような状況に適切に対応するため、かねてより外国人登録制度見直しを行ってきたところであります。」というふうに述べられておりますが、この中で、「外国人登録行政を取り巻く諸情勢も著しく変化しており、」こう述べておられますけれども、どういうふうな形で著しく変化しておる、こうお考えなんでしょうか。
  4. 大鷹弘

    大鷹政府委員 「わが国国際的地位向上国際人権規約への加入等外国人登録行政を取り巻く諸情勢も著しく変化しており、」ということの具体的な意味でございますけれども昭和二十二年旧外国人登録令が制定された当時から昭和二十七年現行法が制定された時代までは戦後の混乱期にございまして、不法入国者以外に外国人入国もほとんどなく、外国人を登録する制度におきましても不正登録が行われる等制度基盤が十分確立したものではございませんでした。しかし、今日におきましては、年間百五十万人余の外国人が来日するなど、わが国国際化も進みまして、国際人権規約にも加入して、社会一般外国人処遇問題についての意識が高まったということでございます。
  5. 沖本泰幸

    沖本委員 処遇についての意識が高まってきたとおっしゃいますけれども、どういうような形で処遇に対する外国人意識が高まってきたかという点は、どういうふうにお考えなんですか。
  6. 大鷹弘

    大鷹政府委員 いま申し上げましたとおりに、こういう情勢変化に伴いまして、一般的に国民の間にそういう意識向上があったと私ども考えておるわけでございます。
  7. 沖本泰幸

    沖本委員 その意識向上、とりわけ在留外国人意識向上も含めておっしゃっていると思うのですが、在留外国人意識向上はどういうふうになってきているか、その辺は局長の方でどうお考えなんですか。
  8. 大鷹弘

    大鷹政府委員 わが国に来ます外国人は、現在、去年一年間で百五十万を超えておりますし、また、わが国長期在留する外国人も約八十万名おるわけでございます。こういう数字が非常にふえてきておりますけれども、戦後三十年たちまして、わが国においてこういう外国人に対する処遇をもっと考えていこうという機運が出てきたというふうに私どもはとっているわけでございます。
  9. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま局長から御答弁申し上げましたとおりなんでございますが、やはり日本の国がだんだん経済的に豊かになってきた、それから諸外国に比べますと治安が比較的に良好である、それから平和である、それから犯罪率もよその国に比べれば低い、そういうことから日本という国を見直すといいますか、単に経済的な国だけじゃなくて、日本は自然にも相当恵まれておる、あるいはまた文化もかなりの歴史を持って重みがあるということで、いい意味におきまして日本人に対する関心が非常に高まってきた、それで、ここへ少し長期滞在しようとか、あるいは観光だけじゃなくて、場合によっては定住しようとかいうような風潮が見られるということが、意識の高まりというふうに申し上げた内容だろうというふうに私は思うわけでございます。
  10. 沖本泰幸

    沖本委員 確かに大臣のおっしゃるように私も思いますが、そこで、提案理由説明の中で、「このような状況」、というのはいまおっしゃったような状況に「適切に対応するため、かねてより外国人登録制度見直しを行ってきたところであります。」こういうことなんですが、この適切に対応するために見直しを行ってきたという点は、後段に出てくる現在出ている法案の中身という点に見直しをしてきたということになるのでしょうか、あるいは前国会あるいはかねてからの登録法改正についていろいろ意見が述べられておる点、それに対して担当の政府の方、法務省の方で見解を述べられたりあるいはいろいろな点について改正意見をおっしゃっておられる、そういうような点を含めて後段に出てくる法律改正という形に見直したのか、法務省の方で適切に対応するために見直しというのはどういう見直しをやってこられたか、その中で結果的にこういうものになってきた、こういう広い意味での見直しを行ってきたけれども、集約していくと現在の段階はこういうことである、あるいはまたこれからまだまだ改良していかなければならない、しかし、いまの段階ではこの程度のものである、こういうふうな見直しなのか、これが最終的な一応の長期的な見直しの形で決まったのか、その辺はどういうことなんですか。
  11. 大鷹弘

    大鷹政府委員 ただいま申し上げましたように、大臣からもお話がありましたように、わが国社会も安定してきた、それから在留する外国人の数もふえてきたということが背景にございますが、他面におきまして、わが国に入ってくる不法入国者の数は必ずしも減少していない、後を絶っていない、そういう状況でございます。そういう点も総合的に考慮いたしまして、私ども外国人登録制度基本目的を達成し、外国人登録行政基盤を堅持しながら、外国人の負担の軽減、事務合理化考えたわけでございます。それが具体的には今度お諮りいたしております改正案の中に盛り込まれているというわけでございます。  この改正案を提出するに当たりましては、私どもは時間をかけてあらゆる角度から十分に検討をいたしたわけでございまして、現時点においては、私どもはこれが最善の案であると考えておるわけでございます。
  12. 沖本泰幸

    沖本委員 入管局長は、かねてから不法入国者が必ずしも少なくない、後を絶っていない、ますますふえているという点を力説されるわけですけれども、それに関してですけれども大臣は非常に日本状態治安もよくなり経済的にもまさっておるということで、日本の歴史等いろいろな点から、諸外国から日本へ来たがる人がふえてきている、あるいは日本に住みたい人がたくさんふえてきている、そういう向上していく日本状況、そういうことのために不法入国者も無理に日本へ来たいという形でふえてきている、こういうふうにとらえるべきなんでしょうか。どうも入管局長お話を聞いていると、不法入国者のためにこの外人登録法に力を入れているのだ、こういうふうな意味にとれるところがしばしばあるのですね。  そういたしますと、この中で出ている国際人権規約に加盟してという意味合いというものが、ただ形式的に加入したというふうに当たることになるのか、あるいはいまおっしゃったとおり日本立場というものが国際的にいろいろなってきた、そういうふうになってきた場合にいまの入管法の中に見合って考えてみると、国際人権規約に加盟するという意味合いというもの、それをどういう形でとらえて、それが法律の中に生きてくるのか、どういうふうな考えでこの裏側の中、あるいは法律の中の心の中に、あるいは入管当局考え方の中に、どういう形で国際人権規約に加盟してきたというふうな意味合いになるのか、それがやはり国民全体も知りたいところでもありますし、まして日本に短期、長期にわたり在留する外国人が一番知りたいという意味合いになるのではないかと思うのですが、その辺どうなんですか。
  13. 大鷹弘

    大鷹政府委員 わが国は、外国人労働者移入を認めないという基本的な政策長期間実施してきております。その観点から、不法入国に対しては厳しく対応するということで今日まできておるわけでございます。この不法入国者に対する対応が、人権規約加入とかそういうこととどういう関係に立つのだろうかという点が一つお尋ねでございましたけれども、私どもといたしましては、入国あるいは滞在の条件その他についての国内立法は、これは主権の範囲でございまして、これは各国裁量に任されている、したがって、国際人権規約にもとることは全くないと考えているわけでございます。  なお、密入国の実情でございますが、終戦直後の混乱期に比べますと、確かに摘発件数は減っております。しかしながら、最近数年の数字を申し上げますと、たとえば昭和五十年には摘発件数は千九十二件、五十一年には九百六十五件、五十二年には八百五十八件、五十三年には七百三件、五十四年には七百六件、五十五年には五百九十七件、こういう数字が統計上出てきているわけでございます。しかも、私ども昭和三十年から昭和四十八年にかけての資料に基づいて、と申しますのは摘発された不法入国者にただしたところ、その不法入国者不法入国した時期に一緒に入った人は大体そういう人たちの五倍いる。三百四十名について当たったところ、彼らと同時期に入国した人は千七百名だということでございます。したがいまして、水際とかそういうところで摘発できなくて、そのまま潜在している入国者も相当の数に上っているというふうに私ども考えております。  こういう人たちはいかなる動機日本に入ってきているのか。大部分経済的な動機だと思います。近隣諸国から入ってきている人たちが多いのでございますけれども、やはりわが国経済成長経済が発展して、そして日本に行って働いた方が所得その他の面で有利であるということから入ってきているわけでございますけれども、私どもといたしましては、不法入国者というものは、先ほど申し上げましたように、私どもが長い間とってきております外国人単純労働者移入は認めないという基本的な政策からいっても、やはり厳しく対応しなければならないものと考えているわけでございます。
  14. 沖本泰幸

    沖本委員 どうもその辺が私どもちょっと納得いかないのですね。というのは、不法入国者なり密入国者というものは徹底的に取り締まっていただかなければならないことは当然だと思います。しかし、いまこの法律が出てきて、この法律について議論しているところなんですけれども、先ほど私、申し上げたように、国際人権規約に加盟して、それにのっとって、ということはもううたわれているわけですからね。そうすると、この法律自体は、内外人の中でどういうふうに基本的な人権なりあるいは正当な人たちの問題が平等に扱われていって、そして日本の国の中におる外国人がその人権を尊重されていき、それに従って国際的な立場日本社会各国の中でどういうふうに位置づけられて、どういうおつき合いをしていくために日本はこういうふうな内容のものを整えております、こういうことで非常に文化も発達しております、それで情勢も安定しております、それに見合って人権というものも十分に考えながら、その中でこういう法律をつくりましたということになっていく、そこの議論が十分行われなければならないのですけれども、それはその議論の発展のおもむいていくところかもわかりませんが、入管局長はともすると、これはもう絶対に不法入国は許さぬための法律ですぞ、こういうふうに私たちには聞こえるわけなんです。  それは非常に苦労していらっしゃるところはよくわかりますし、当然十分に対応していかなければならないわけですけれども、そういうふうないわゆる政府の姿勢が国際的に難民受け入れ体制がまずいということで批判されたり非難されたり、そのあげくやっと難民受け入れ体制が少し整ってきたということにもなるわけですから、それよりもっと大きな意味でこの法律というものが、体裁を整えた形で日本の国の受け入れ法律の中にちゃんとなければならぬと考えるのです。
  15. 坂田道太

    坂田国務大臣 沖本さんのおっしゃる意味はよくわかるわけでございまして、あるいはこちらの説明不足の点があろうかと思うのですが、私自身は、先ほど申し上げましたように、そういう住みよいというか、あるいは長期に滞在したい、そういう人たちが非常に激増してきた、同時に、一面においてはやはり不法入国等もそれに付随してある、そういう大部分外国人が、本当に日本人権の点についてもきちんとしておる、そして平和なんだ、住みよいんだ、それから四季の変化もあって美しい国なんだ、こういうことで日本を見てくださる人たちが激増しておる、その人たちを永続的に、将来またどんどん外国人の方々も来ていただく、あるいは定住を希望される人がだんだん増加をするというためには、たとえばわれわれの方で日本に入ってこられるときの事務等もきちんとするところはきちんとするが、サービスにこれ努める、サンシャインのような設備あるいはサービスのやり方、これは非常に受け入れられておるわけです。しかし、従来はそうでもなかった、こういうことは合理化してよくなったと私は思うわけです。  でございますから、その大部分の健全な外国人に住みよい日本だということを本当に思っていただくために、不法にやってきた人たちに対してはそれなりにきちんとしないと、そういう大部分の人をだめにしてしまう、あるいは日本というのは嫌な国だというふうに変わってしまう、こういうわけでございまして、そのことにつきましては、単に日本だけでなくて諸外国におきましてもきちんとした法律があって、かえってそのことが安心してよその国で迎え入れられる、日本においてもそういうふうに迎え入れられるということなんで、局長が答弁いたしますことと私が答弁いたしますことと両方お聞きいただきますと、大体この法案意味がおわかりいただけるんじゃないだろうか。私は表面からお話を申し上げ、片方は裏側の話をいたした、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  16. 沖本泰幸

    沖本委員 先に申し上げた方がよかったかもわかりませんが、「入管行政国際人権規約」という点についての論文、第二東京弁護士会の秋山さんが述べていられる中でも、「人権国際的保障出入国の自由」という点についてですが、その中で、   世界人権宣言は、「人権と基本的自由の世界的な尊重及び遵守の促進」を国連加盟国が誓約し、人権普遍性を宣言したものであったが、人権規約は、締約国が他国の人権保障人権規約に定める手続を通じて監視することを認め、あるいは人権委員会に対する個人の申立を認める(但し、選択議定書締約国に限る。わが国は批准していない。)など、人権特定国家権力を超越して保障される仕組みを具体的に定めたものである。 こういうふうに、これは古いものですが、一九八〇年のもので述べて、またさらに、   他の基本的人権より以上に外国人権利出入国の自由に最も大きな影響を及ぼすものと考えられる。すなわち、人はどこの国にいようとも等しく基本的な自由と権利を享受することができ、特定国家権力恣意を超越して世界人民としての権利・自由を保障される、 こういうことなんですけれども、そこでこの中で述べていらっしゃるのは、昭和四十九年の時点では、在留外国人の  約八九・六%の六七万〇、九七四人は、昭和二七年以前から引続き在留している者又はその子等であり、このほとんどは朝鮮人韓国人中国人台湾人である。これらの人々の多くは、1昭和二六年法律一二六号の第二条第六項該当者平和条約発効により日本国籍を喪失することとなった朝鮮人台湾人昭和二〇年九月二日以前から引続き在留する者)及びその子孫、2日韓地位協定による協定永住許可を受けた者、3出入国管理令第四条第一項一四号の永住許可を受けた者、として在留している。また在日朝鮮人韓国人中国人台湾人のなかには、右の資格を受けられず、特別在留許可の更新を継続して不安定な状態長期間在留している人々もいる。これらの人々わが国定住しているといえるもので、生まれて以来わが国を離れたことのない人々も多数含まれている。   ところが、このような定住者が祖国との間を往来し、あるいは第三国に旅行する場合、定住国であるわが国に帰国する自由は十分には保障されていない。在日外国人国外に出国すると在留資格は消滅し、再び入国する場合には新たに入国許可を取得しなければならないが、許可を与えられる保障は何もない。入管令では、出国前にあらかじめ再入国許可を受けることができることになっているが(第二六条)、再入国許可を与えるか否かは法務大臣自由裁量によることとされているため、政府政策法務大臣恣意によって再入国許可が受けられないことがある。再入国許可が与えられたとしても、在留期間満了以前に再入国しないとき、あるいは再入国許可の日から一年以内に再入国しないときは再入国許可は失効することになっているので、短期間の旅行の場合以外に再入国許可制度は利用できず、在日朝鮮人台湾人等外国長期間留学したり、外国において経済的、社会的活動を行うことが困難となっている。   たとえば、山口県で生まれて以来わが国に在留し、明治大学を卒業した朝鮮籍崔正雄氏は、英国に留学しようとしたが再入国許可を受けられる見込みがたたないので、やむなく日本人の友人の戸籍謄本を借り、日本人として英国に留学したが、帰国後出入国管理令違反不法入国)で大村収容所に収容され、退去強制令書発付を受けて国外に退去させられている。入管令日本で生まれ育った定住外国人の留学の自由を制約し、定住権利をさえ奪い去ったのである。   在日韓国人作家鄭敬譲氏は特別在留許可により約九年間わが国で生活しているが、国連インドで開催する国際会議に出席するため再入国許可申請したところ、法務大臣は再入国許可を出そうとしない(昭和五四年一一月九日現在。)   再入国許可に関しては有名な「在日朝鮮人祝賀団入国許可事件」がある。朝鮮民主主義人民共和国創建二〇周年祝賀式典に出席するため再入国許可申請した在日朝鮮人に対し法務大臣はこれを不許可としたが、東京地方裁判所は「渡航の自由は、日本人のみならず日本国に在留するすべての外国人にとっても基本的な人権であるから、前条のとおり、日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれのある者でない限り、いずれの国向けの再入国であっても許可せらるるべきである」として不許可処分を取消し、東京高裁もこれを支持した。裁判所が法務大臣自由裁量に一定の制限を加えたものであるが、入管令が再入国許可について合理的かつ明確な基準を定めず許否を法務大臣裁量に委ねている以上、再入国の自由は保障されず、また、再入国の期限を許可から一年、と極めて短期間としている以上、定住外国人出入国の自由は実質的に保障されているとは言い難い。   人権規約発効により、出入国管理令第二六条は根本的に改正されなければならず、定住外国人の再入国許可行政は根本的に変更されなければならない。 こういうふうに述べているわけですが、この再入国許可を受けて出国する者は、登録証明書入管審査官に提出し、再入国した後に市町村長から返還を受ける、こういうことなんですが、これについて再入国許可は現在どれくらい受けているのか、あるいは申請はどれくらい出て、その中から許可がどの程度出されておるか。あるいはこの点について大臣のおっしゃったいわゆる自由な面、こういう面についていささか厳し過ぎるという嫌いもあるわけですが、いまの論文についてどういう御意見なのか、あるいは変化が起こってくるのか、この辺をひとつお答えいただきたいと思うのです。
  17. 大鷹弘

    大鷹政府委員 ただいま再入国許可等に関連する御質問がございました。そこで、主として在日朝鮮籍の者に対する再入国許可の問題についてお答えしたいと思うのであります。  在日朝鮮人北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国でございますけれども、そこに渡航して再び入国したいという意味の再入国許可につきましては、わが国北朝鮮との間に国交がないわけでございますから、親族訪問人道ケースのほか、学術、文化、スポーツまたは経済交流にかかわる案件に限り許可する方針をとっているわけでございます。しかし、もともと国交のない国同士の間では往来は非常に限られたものであるということは、アジアの近隣諸国のそういう関係にある国々の間のことをごらんになればすぐおわかりいただけると思うのでありますけれどもわが国北朝鮮との往来につきましては、いま申し上げましたように、わが国は徐々に渡航を認めてきておるわけでございます。この再入国許可につきましては一年間という期間がございますけれども北朝鮮に行く場合につきましては、もともと長期の用務で行かれる方は少ないわけでございますから、その許可期間も一律に三カ月にしておる、こういう事情はございます。いずれにいたしましても、徐々にこういう問題も改善してきておる、改まってきておるということでございます。
  18. 沖本泰幸

    沖本委員 改まってきているというお答えなんですが、いま局長は、朝鮮民主主義人民共和国の承認、お互いの国の国交が十分できていないという国の例についてお話しになったのですが、さっきの件は、協定永住権の中でおる人が外国の学校へ留学したいという申請をしたけれども許可されないので人の身分をかりて留学して、イギリスへ行って帰ってきたら不法入国だというので帰されてしまったという現実の例、あるいは作家の方が、学者がインド国連国際会議へ出たいけれども許可が出ないのでこれもだめになった、こういうことがあるのです。  そうすると、国際人権規約の中でいわゆる自由往来権が皆あるわけでしょう。内外人平等の原則とか居住、移転の自由というものが、ちゃんと人権規約B規約第十二条第一項にあるわけですから、そういう点から考えますと、だんだんと改められていっていると言うけれども、どういう形で改められていくのか、あるいはこういう点はむずかしいけれども、今後そういう点についてはもっと国際社会の中に入っていけるような形で、日本の国に長くおる、全然日本から出てない子弟がおるわけですから、日本語だけしかしゃべれない外国人がいっぱいおるわけですから、そういう人たち外国特定の学校で勉強したい、留学したいということも人権の中の一番大きな問題になるわけですから、そういうものの検討はどうされておるのかということです。ただ例が、北朝鮮だけはこうですよということでは説明にならないと思うのです。
  19. 大鷹弘

    大鷹政府委員 いま沖本委員がお挙げになりましたケースは、協定永住のケースとおっしゃいましたけれども、多分法一二六-二-六該当者のケースだろうと思います。具体的な案件については、私、いまここで詳しいことを承知しておりませんので申し上げられませんけれども、いまわが国といたしましては、こういう方々が海外へ渡航されるときには、国の利益を害するおそれがない限りこれを許す、こういうことになっておるわけでございます。  ところで、こういう方々が、たまたま単純な留学とか会合であるとかいうことであればいいのですけれども、実際は政治活動をするというような場合もあるわけでございます。そういう場合には、私どもといたしましてはやはり慎重に検討していかなければならない場合があるわけでございます。また、そういうことは人権規約の趣旨には全然もとることはないとも考えております。と申しますのは、一国が出入国、それから滞在の条件、こういうものをどういうふうに決めるかということは、国の主権の範囲にあるというふうに国際的に認められております。したがいまして、国が合理的な理由で実施しておりますそういう制限は、人権規約の条文にも精神にも抵触しないというふうに私どもは解釈しておるわけでございます。
  20. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは、先ほどだんだん改められていくとお述べになったのはどういう点が改められていくわけですか。入管局長、さっきお答えになりましたよ、だんだん改めていく、変わっていくと。では、いまどういう点を改めていこうと検討していらっしゃるのか、その辺はどうなんですか。いままでは問題点を極端にしぼっておったから、だからそのことだけクローズアップしているというふうにもとれるわけですけれども、その点いかがですか。
  21. 大鷹弘

    大鷹政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、政治的な色彩のない、そういう渡航でございます。たとえば親族訪問でございますとか、芸術、文化、スポーツあるいは経済交流、こういうケースにつきましてはできるだけ配慮していきたいということでございます。  先ほどはたまたま北朝鮮に対する渡航の件を引いて申し上げましたけれども、現在、親族訪問という人道ケースで再入国許可を得て出国しておられる朝鮮半島出身者の方の数は、年間四千名ぐらいになっておるわけでございます。そのほか第三国への渡航につきましても、私どもはいま申し上げましたようなことでできるだけ配慮していきたいと考えておるわけでございます。
  22. 沖本泰幸

    沖本委員 結局、再入国の条件として一年と短期間であるということをおっしゃっておられましたけれども、留学とかそういうことについて、それは申請許可条件以外の政治活動とか外れたことをやれば違反ですから認められないことになりもしますが、それは結果的な問題で言えるのじゃないですか。少なくとも日本の国を出ていってまた日本の国へ入ってきたいために、こういうことをやりたいので外へ出ていきますが再び日本に帰ってきます、生活の基本とか何もかも生きていく条件は全部日本の中にあるので、ちょっと外国に行って勉強して帰ってきます、こういう申請があった場合に、そういう点はどんどん許可をしていらっしゃるのか、あるいはそういうことはいまやっていないということなのか、それはこれから検討するということなのですか、どうなんですか。
  23. 當別當季正

    ○當別當説明員 お答え申し上げます。  先生の御質問の趣旨は、主として戦前から引き続きわが国に居住する朝鮮半島出身の方々、あるいは現在その二世の時代から三世の時代に移りつつあるわけでございますが、そういう方々に対します外国人登録法あるいは出入国管理法などでどういう改善措置をとられておるかという御質問だと承知しておるわけでございます。  例を挙げて御説明申し上げますと、御承知のとおり、昨年の通常国会において御審査をいただきまして、本年一月一日から出入国管理及び難民認定法が施行されておるわけでございます。この法律によりまして、戦前から引き続きわが国に居住する朝鮮半島出身者あるいはその直系卑属の方々、こういう人たちが、先ほど大鷹局長の答弁にありました昭和二十七年法律百二十六号二条六項の該当者につきましては、法的地位がいまだに確定される状態にはなかったわけでございます。     〔高鳥委員長代理退席、太田委員長代理着席〕 こういう人たちの法的地位の安定を図るために特例永住という制度を設けまして、ことしの一月一日から五年間、申請によって法務大臣は、裁量ではなくて覊束的に永住の在留資格を付与するという制度を新設したことは御承知のとおりでございます。  また、再入国許可の点につきましては、第二十六条を改正いたしまして、有効期間一年の再入国許可期間をさらに一年間延長するという制度を取り入れました。こういう制度がございませんと、再入国許可を得て留学中あるいは祖国を訪問中交通事故に遭ったとかあるいは病気になったとか、やむを得ない事情によって再入国許可期間内に再入国できなかったということになりますと、従来の在留基盤がすっかり崩れてしまうということになるわけでございます。こういう人たちの要望を取り入れまして、さらに一年間にわたって申請により再入国許可期間を延長することができるという制度を取り入れたわけでございます。  また、数次再入国という許可制度も取り入れました。従来は、再入国申請のある都度、単発の許可をしておったわけでございますが、商業活動に従事する人などを中心にいたしまして、何回にもわたって諸外国との間を往来する必要があるという強い要望がございましたので、数次再入国許可という制度を取り入れておるわけでございます。  また、御承知のとおり、一昨年の通常国会において御審議をいただきました外国人登録法の一部を改正する法律によりまして、再入国許可を受けて出国する外国人は、従来でございますと出入国港において入国審査官登録証明書を返納しなければならない、そして再入国後十四日以内に市区町村の窓口においてその登録証明書の返還を受けなければならないという制度があったわけでございますが、これが再入国許可を得て渡航する外国人の方々に非常に重い負担をかけるのだという改善の要望がございましたので、この制度を廃止いたしまして、再入国許可を得て渡航する外国人の方は、そのまま外国人登録証明書を持って渡航することができるというような改善措置を講じておるわけでございます。  以上、改善措置の一端を申し上げたわけでございますが、われわれといたしましては、内外の諸情勢に的確に対応できるように、絶えず法の全般にわたりまして制度見直しを行っておるわけでございまして、いま申し上げましたような改善措置がとられておるということを御紹介申し上げた次第でございます。
  24. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、意味合いは多少違うわけですけれども、これは三月の新聞に出ておったわけですが、「入管法の条文で”密告”奨励とは……」、こういうことで難民救援活動家らが物言いをつけている。   密告した密入国者が強制退去になれば、通報者には五万円以下の報償金が出るという条文が密入国者不法残留者を取り締まる出入国管理法にあり、これを知った難民救援活動家たちが「違反容疑者とはいえ、人を”売る”ことを奨励するような法律はおかしい」と、この条文の廃止を求める意見書を近く法務省に出すことになった。報償金の規定は極めてめずらしいケースだが、もっぱら外国人を対象とする法律だけに、日本人外国人差別意識の表れ、との指摘もある。法務省は「法律で定めようと部内的に出そうと捜査協力に金一封を出すことは普通にある」といっているが、 ということなんですけれども、ここの中で、「「インドシナ難民を救う法律家の会」代表の笹原桂輔弁護士は「このような条文があるとは知らなかった」」、私も同じなんですが、「と前置きして「刑法などのように主たる対象が内国人である法律には、このような報償金制度があるとは聞いたことがない。外国人対象の法律だからこそ取り上げられたのだろうから非常に差別的だ。外国人は、お情けで日本の土を踏ませてやっているのだという抜きがたい外国人不信が表れているように思える。日本内外人処遇平等の原則を掲げる国際人権規約を批准していることからも、この条文は廃止すべきだ」」、こういうふうに述べているわけです。  そこで、この新聞の中に載っていますのは、密入国で「五万円という金額は、当時は相当な価値があったため」で、「同一民族内で、気に染まない者を追放するためや小遣い銭稼ぎのために、残念ながら密告のし合いをするという歴史もあった」、これは居留民団の話であるわけですけれども、「日本政府の民族分断政策の一環として批判している。」  それから、この数についてですが、この「密入国不法残留者の大半を占めるとみられる在日韓国人朝鮮人退去強制令書発付件数は、昭和五十三年末までに三万六千件余にのぼっているが、そのうちどれだけが通報によるものかは不明。ここ三、四年間は報償金を出したケースはないと法務省ではいっているが、それは報償金の価値がインフレで下がったことと、入管側の情報網がかなり整備され、通報に頼る必要が少なくなったためだとする見方も。」できるということでしょうね。「法務省は「報償金制度を取り入れている非常にめずらしい法律だが(刑事事件の)捜査協力で金一封を出すことは、この経済社会で不思議でも何でもない。密入国不法残留という法律違反を内国人のために放っておいてよいはずがない。“法律の条文で定めていることがおかしい”という批判のようだが、(各省庁では)調査費や官房費の運用で情報提供に報いている。(実質上)同じことだ」といっている。」こういうふうに新聞は書いているのですが、このとおりと受け取っていいわけですか。
  25. 大鷹弘

    大鷹政府委員 ただいまの新聞記事が正確であるかどうかということについては、私、何とも申し上げられませんが、しかし、せっかくこの報償金の問題を先生がお尋ねでございましたので、なぜそういう制度を設けているかということについて御説明したいと思うのであります。  この入管法上の報償金制度の趣旨は、不法入国等の違反事件において一般の市民の協力を得る必要性がきわめて大きいので、その協力に対して若干の報償金を支払おうというものでございます。すなわち、法令違反などの場合、一般にはその違反行為により直接被害をこうむる者があるので、こういう被害者の親告等によって違反を摘発できるのでございますけれども不法入国等の場合には個別的直接の被害者というものがない、かつ、違反行為そのものが潜在的に行われるため、その端緒を把握することが容易でございません。そこで、民間からの協力を得なければ行政目的の実効を期しがたいという面があるわけでございます。  ところで、一般市民が通報等の協力をした場合には、その後関係機関からの事情聴取に応ずるため出頭する等犠牲を払わなければならない場合が多いので、その犠牲に報いるためにも、実費弁償の意味も含めて、入管法第六十六条において報償金の支払いを明示したわけでございます。そもそも違反者を放置していいというわけにはいきませず、摘発する必要がございますから、その摘発に協力した民間の人に対して、実費弁償の意味を含めた報償金を支給しているわけでございまして、摘発を受けた人をべっ視するということにはならないと思います。まして、外国人に対する差別であるということにも私どもはならないと考えております。
  26. 沖本泰幸

    沖本委員 それで、現在具体的に報償金を出しているのですか。出した例はあるのですか。また、そういう事案、密航がたくさんあるわけですか。
  27. 大鷹弘

    大鷹政府委員 その実例はございます。通報者の名前とかそういうものは明らかにできませんけれども、昨年度、五十六年度における支払い例を申し上げますと、大体次のとおりでございます。  一、タイ国人三名の不法残留及び不法上陸事件を発見し通報してきた日本人一名に対し、金一万円を交付いたしました。  二、韓国人二名の不法入国及び不法上陸事件を発見し通報してきた日本人一名に対し、金一万円を交付いたしました。  三、韓国人四名の不法入国及び不法上陸事件を発見し通報してきた韓国人一名に対し、金一万円を交付いたしました。  四、フィリピン人一名の不法残留事件を発見し通報してきた日本人一名に対し、金一万円を交付いたしました。  五、韓国人三名の不法入国事件を発見し通報してきた韓国人一名に、金一万円を交付いたしました。  これは現に昨年報償金が交付された例でございます。そのほかにも通報はございますけれども、大体匿名の場合が多いわけでございます。したがって、そういう人たちはもちろん報償金の交付の対象にはなりません。
  28. 沖本泰幸

    沖本委員 さっき入管局長は、密入国者不法入国者の数を大分お示しになったわけですけれども、私は実感として、実際の表に出ていない、いわゆるここで数を述べたのは摘発した人の数ですから、摘発されないで日本不法入国したり密入国した数はうんとあると思うのです。そういうことなんです。しばしばそういう人に会うわけですよ。  どういうことかというと、だんだん子供が育って生活も安定してきた。子供も育ってきた。子供が学校に行くようになった。ところが、学校に入学させるためには、親がいるわけですから、そのお父さん、お母さんの戸籍、籍という問題が起こってくるわけです。だが、どうしようもない。やむを得ず、今度は自分で自首して出ていく。そういうことのために自首してきたのですが、結果はどうなったかというと、お父さんは強制退去させられているわけです。それじゃ、言っていったところで子供の足しにも何にもならないわけです。むしろ子供の生活が破綻してしまう。そういう事柄が現実に起こっている。私は、実際に聞いていますし、見ています。だから、一つの面では、これとは逆のことで、自首して出た。自首して出ようと隠れて摘発されようと、結果的には同じ条件が起こってくるわけです。これでは自首して出る人も出てこないでしょう。ますますひそんでしまうことになるでしょう。  おまけに、しばしば行われていることは、いまおっしゃったように匿名でいろいろ言ってくるというのは、非常に悲惨な生活をしておる間はだれも何も言わないわけです。ただ、生活が安定してきて、日本人社会で認められて、そしてだんだん生活が安定し調子がよくなってくると、ぱっとやられるということの方が多いわけです。そういう例をいっぱい見るということは、私の大阪の周辺ではたくさんいらっしゃるということになるわけです。  具体的な中身のお話をしたわけですけれども、行き詰まってどうしようもなくなって表に出てきて、そして子供のためにということでそうなってきた、生活も安定しておりますというのと、密入国しておりながら覚せい剤を運搬しておるとかあるいは破廉恥な仕事をやっておるとか、いろいろなことで犯罪につながるような生活をしながら、密入国の結果がそうなっているというのとは違うはずなんです。実態そのものは、結局は日本におるいわゆる韓国人であるとか朝鮮人であるとか、こう言われる人たちは、ほとんど定住してしまっているわけでしょう。それで、入管局長もおっしゃったとおり、二世、三世であるという点もあるわけです。  具体的にはどういうことかというと、崔さんとか朴さんとか姜さんとかいう表札を皆めったに張っていないのです。皆、日本名なんです。手紙のやりとりも日本名なんです。銀行の口座も日本名なんです。生活の中身は全部日本人です。日本人社会の中で日本人として生活しているわけです。そういうふうに安定してきてしまって、日本人と何ら変わりのないところなんです。そういう環境の中で生きてきているから、密入国した人たちもそういう中に入っているわけです。奨励するわけでも何でもありませんよ。取り締まるものは取り締まってもらいたいのだけれども、結果的にはそんな事例がいっぱいあるわけです。だから、むしろ自首して出たり日本政府のお情けにすがろうとすることはしなくなってしまうという結果が起こるわけです。  僕の知っているだけで、子供だけ残して両親は強制退去みたいな状態になった人が現実におりますよ。だから、そこの中であることは、現実に血も涙もないようなことがあるわけです。だから、こういう法律であるということ自体が、むしろ全体の入管行政というものを暗いものにしてしまうと僕は思うのです。むしろ日本入管行政に協力した人は、別の意味で出してあげてもいいじゃありませんか。出されないことはないはずです。こういうふうな報償金制度で幾らでも密告できるのですというような形を法律の中に残すことは、国際人権規約に加盟しているという事柄とか日本社会立場がうんと上がってきたというものとは全然逆のものに受け取られます。そういうふうに私は考えますけれども、この点はどうなんですか。法律を改める考えはありませんか。
  29. 大鷹弘

    大鷹政府委員 私どもは、こういう法律を掲げていることは、むしろ事柄をはっきりさせて公明なやり方であると考えておるわけでございまして、これを改めることは全然いま考えておりません。
  30. 沖本泰幸

    沖本委員 全くそういう物の言い方が、おれのところは絶対なんだ、そういうふうに聞こえるのですね。やはりいろいろな条件もあるでしょう、いろいろな条件に対応したことをいろいろ考えていきましょうというふうには受け取れぬわけです。これはやはり本当にもっと具体的にいまの社会の条件に合うようなものに改めていただくべきだと思いますけれども大臣はどうお考えですか。
  31. 坂田道太

    坂田国務大臣 この制度は、昭和二十七年の最初からあった制度のように承知をしておるわけでございます。ただし、昭和二十七年の状況と先ほど来お話を申し上げておるような今日の状況とで、これが一体非常に有効なのかどうなのか。われわれといたしましては、これは有効だと考えておるわけでございますけれども、今後の問題としてこれは一遍検討してみるに値する課題ではないかと私は思います。しかしながら、今日までこの制度を維持してまいっておりますもので、もう少しこの点については私たちの手元で検討させていただきたい、今回の法案ではひとつ御了解を得たい、こういうふうに思います。
  32. 沖本泰幸

    沖本委員 ただ、法律の条文に報償金として通告してきた人に上げるというような中身があるということ自体、常識で考えてどうもなじまないですね。私はいいとは思いませんね。それはもうそういう方法しかないというのなら別ですけれども、もっと形を変えて、わかりやすい、ああそうかというふうに納得できるようにする。通告する人も堂々と言いに行けるようなことにはならぬかもわかりませんが、法律を読んでいて嫌な感じを受けるのと、そのまま受けられるのと大分違うと思うので、その辺はやはり考えていただきたいですね。入管局長、おれは改める気は絶対ないぞ、そうすると、聞く方だって何をということになりますからね。その辺、ひとつ考えてもらわなければならぬと思うのです。  そこで、いろいろ細かいところに触れていきたいと思います。  登録証の携帯の問題ですけれども、この登録証問題が一番大きな騒がしい問題なのですね。罰金と登録証の携帯問題と指紋とが一番山になっているわけです。それから、十六歳まで上げた、十四歳から十六歳にしたのだからいいだろうということと、手続を簡素化したのだからいいじゃないか、それから懲役刑を外したのだ、緩めたのだぞとか、何かその辺がどうもうまく感じられない。警察の尋問に遭って一番ひどいところを考えているわけです。  そこで、「登録証明書の提示」というのがあるのですが、   外国人は、入国審査官入国警備官、警察官、海上保安官、鉄道公安職員、外国人の登録若しくは主要食糧の配給に関する業務に従事する公務員、麻薬取締官、公安調査官又は公共職業安定所の職員が、その職務の執行にあたり、登録証明書の提示を求めた場合には、これを提示しなければならない(第十三条第二項、施行規則第十五条第一項)。   提示を要求することができるのは、前掲の国又は地方公共団体に限るが、提示要求の権限を有する官憲であっても、職務の執行と関係なく、又は職務以外の目的で提示を要求することは許されず、あえてこれをすれば職権濫用となる(刑法第百九十三条参照)。他方、職務行為の種類・内容については第十三条第二項は別段の限定をしないから、そこに規定されたものが行う職務行為には、いやしくも当該官憲の職務権限として法令上認められるすべてのものが含まれる。 これは、職権乱用ということはあるけれども、何をやってもいいのですよというふうに私には受け取れますけれどもね。  そこで、いろいろ事例がたくさん出てきているわけです。だから、国際人権規約を基本にして考えても、提示を求めることは人権侵害じゃないかと思いますが、この辺はどうなんですか。
  33. 大鷹弘

    大鷹政府委員 ただいま登録証明書の携帯義務違反を問うのは人権規約に違反するのじゃないかというお尋ねでございましたけれども外国人登録証明書の常時携帯義務につきましては、どんな外国人がどこで何をしているかを把握するのが外国人登録の直接の目的でございまして、このことは市町村の事務所に備える登録原票に登録しておけば一応目的は達せられますけれども外国人は本邦において社会生活を営んでおるわけでございまして、その生活の場で即時的に当該外国人の居住関係及び身分関係を把握することができる必要がある場合があるわけでございます。  そこで、事実、警察官が職務執行上、路上において身分を確認する場合、目の前にいる外国人についてその都度市町村の事務所に照会する手続をとっていたのでは間に合わない、したがって、外国人の公正な管理という目的を十分に達成できないという場合も少なくないので、その場で確認できるようにするため、登録証明書を交付し、所持、携帯させることにしているわけでございます。  このとおり、常時携帯の制度は、在留外国人の公正な管理に資するため、合理的な理由に基づく必要な措置を定めたものでございますので、国際人権規約には反しないというふうに解しているわけでございます。
  34. 沖本泰幸

    沖本委員 そこで、これは朝鮮総連からいただいた「外国人登録法の一部を改正する法律案に対する見解と要求事項」、この中に「一九四七年から八〇年までの三十三年間に四十九万五千二百二十四人が(登録法)違反で送検(しかも起訴率が高い。一九七八年の場合朝鮮人五四・六%。因みに二位は中国三二・六%、三位ドイツ二五・七%、四位ブラジル二三・一%)」、こう出ています。これは両方の面、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国という表現と韓国という表現の場合とがあるわけですが、人はこの中へいろいろまじっているわけです。  さらに、「登録法違反の五〇%以上が携帯義務違反、つまり不携帯罪 たとえば一九八〇年の場合全違反者(送致数)七千二百九十五人の内三千七百六十一人(五一・五%)が不携帯罪。その他新規登録不申請三百四十八人(四%)切替交付不申請二千百四人(二八%)居住地変更不申請二百七十二人(〇・三%)。」こう出ているわけです。しかもその違反のほとんどは過失犯である。そういうことについては前田刑事局長も、八〇年の五月十三日の参議院の法務委員会で、「過失による場合が多いと言えば多いだろうというふうに考えます。」こうお述べになっているわけです。それから、「恐らく多いのではないだろうかという気がいたします。」これは前任者の小杉入管局長がおっしゃっております。  ですから、そういうものに対しての罰則そのものが、罰規定が厳し過ぎるのではないか。今度の法律では懲役刑を外すということなんですけれども、それ以前の問題についても述べていると思うのです。そうすると、ほとんど過失犯、不携帯が大半過失ですから。ということになると、ほとんどちょいとということが多いことになるわけです。それで、いわゆる不携帯罪という罪になると、ちゃんとした刑法犯でしょう。そうなってくると、これは永久につくわけですね。そうすると、その人の生活のいろいろな条件の中でもいつもこれが後をついてくるのじゃありませんですか。この人が、生活上は社会的な地位も得てきたし、財産もできてきた、ほかのことでは何にもなかったけれども、ここで日本人としての資格を取りたいと言ってもこういうことが邪魔になってしまうということにもなるわけです。そういうことですから、その辺が一番ひどいと皆認識しているわけです。  それを、いや、おれのところではそうではないんだ、おれのところはこういうふうにしないと困るんだ、政府として管理する以上は。だけれども、それは管理する側のお考えであって、そこで一つ出てこないのは、管理される側の立場というものが何も考えられていないというふうに感じるわけです。ほとんどがいわゆる不携帯であった、過失であるということで、登録法違反の五〇%以上が携帯義務違反、不携帯罪ですね。そういうことになるわけですから、たとえば八〇年までの三十三年間に四十九万五千二百二十四人が登録法違反である、この中の五〇%以上が不携帯であったということは言えるわけですね。  そこで、この問題は、衆議院の社労でわが党の草川さんも、これは不携帯ではないわけです、居住地が変更になったことで登録変更申請を十四日以内にやるという点についてですけれども、たとえば飯場なんかで、出稼ぎで建設現場がしょっちゅう変わっていくという人が、一定の地域で長期に働くわけにはいかぬということになりますから、なかなかその申請の手続というのは大変なことになるわけです。そういうことですけれども、この違反については全部告発でしょう。その点は市町村の窓口の人が違反だといって告発するわけです。これは日にちが過ぎて大変なことになっていますということで告発するわけでしょう。あるいは携帯については、いわゆる職務尋問を警察官がほとんどおやりになるということになりますから、その場で持ってなかったということになると、それがそのまま今度は事件になって上がってくるわけです。そこで皆トラブルが起こっているわけです。  こういうやむにやまれないようないろいろな事情ですね、そういうもののしんしゃくなりあるいはいろいろな情状の中身について検討するところはないのですか。その辺どうなんですか。つまり、おれのところは法律をつくってこうこうこういうことなんですと言うのは、それは入管立場でしょう。だけれども入管はもう何も手をつけることはないのです。あと起こってくる事件の後の処理の問題だけですよ。何ぼ検挙されてどうなっている。結果だけ見るからこうじゃないかということが言えるのじゃないですか。結果の何か起こってくることの中身についていろいろ検討していることはないのですか。
  35. 當別當季正

    ○當別當説明員 外国人登録証明書の携帯義務違反の点について御質問をいただきましたので、お答え申し上げます。  先ほど来答弁申し上げておりますように、外国人に対して登録証明書の常時携帯義務を課しておるという理由は、在留管理の適正を期する上では、当該外国人の在留の適法性あるいは身分関係、居住関係といった事項につきまして、容易かつ迅速に把握し得る体制を整えておくことがどうしても必要だ、その目的を達成するために携帯義務の履行を確保すべく、一定の刑罰で適正な履行を担保しておるという関係にあることは御承知のとおりでございます。  ただいまの先生の御質問の趣旨は、外国人登録証明書の不携帯の事案について、一線の取り締まりというものが公平かつ適正に行われておるかどうか、それを入国管理当局としてどのように把握しておるかという点にあろうかと考えるわけでございますが、先生御承知のとおり、従来からも当委員会におきまして何回にもわたって、一線の取り締まりに当たっておる主として警察官の方々の外国人登録証明書の不携帯罪の検挙に当たってやや行き過ぎがあるとか、その運用が厳し過ぎるとかいう指摘が、具体例を挙げていろいろ御質問いただいておるわけでございます。  そういう関係から、外国人登録法を所管いたします入国管理当局といたしましては、法の運用が適正かつ公正に行われておるかどうか、あるいはその運用が御指摘をいただきますような厳し過ぎるとかあるいは行き過ぎがあるとかというようなことのないように、この点は、われわれは直接一線の取り締まりに当たっておられます警察の方々に対する指揮権とかあるいは指導権というものはございませんので、機会あるごとに警察庁の方々と協議いたしまして意思の疎通を図りまして、不携帯罪の取り締まりというものが公正かつ妥当な運用がなされるように配意しておるところでございます。
  36. 沖本泰幸

    沖本委員 これは以前の藤岡説明員の答弁を見ますと、   いわゆる居住地を変更したにもかかわらず、法定の十四日という期間内に変更の登録申請をしなかった、若干おくれたというような場合が問題にされているわけでございますが、この種のケースは、罰則適用を適用いたします場合には、実際問題といたしまして、変更登録申請の窓口になるところの市区町村役場がまず把握するわけでございます。(中略)。さような法違反の事実を把握、キャッチいたしました市区町村役場の吏員が、いわゆる捜査当局に、警察が普通でございますが、そういう法違反の事実があるという告発をする(中略)。刑事訴訟法にも一般的な告発義務が法律上定められております(中略)。それから外国人登録法の中にも、大体同じ趣旨の告発義務を定める条項がある(中略)。一方に法律上の告発義務があるわけでございますから、それを無視するような指導はできませんけれども、血の通った運用をするように日常指導をいたしておるわけでございます これがいまのお答えと同じような形になるわけですけれども、それじゃ、その血の通った指導をしておる、そこでやめなさいとか手を抜きなさいとかいうことは言えぬけれども、血の通ったことをやりなさいということは指導しておると、こうおっしゃっておるのです。  どういう形で指導しておるか。常時連絡をとっておるというお話ですけれども、それはどういう形で連絡がとられて、それが下の方にどういう徹底のされ方をしておるか、あるいは入管の方と警察庁の方との話し合い、警察庁長官あるいは警察庁の担当局長とのお話、そういうことで十分徹底はしておるということで、トップ会談だけで終わっているのですか。具体的にそれがどういう形で、厳しいことにならないような、具体的な内容に合って、人権を無視したりいろいろ盛んに問題を指摘されるようなところがないようにしておるのか。  この間の横山さんのお話ですと、名古屋の例を引いてお話しになっていたけれども、できるだけ窓口の人が、内容を見て手控えているということも横山さんおっしゃっておられたわけです。一々摘発していくと大変なことになってくるというようなことで、実際の市区町村の窓口の人が、内容を見て、それで見て見ぬふりをしているとか、目をふさいでいるとかということがあるんだということをおっしゃっている。ということになると、実際の運用について、これは現場でやる人は無理だと感じているわけですからね。そこで、そういう点についての話し合いあるいは具体的なことがどういう形で行われておるのか、それはどうなっているのか、その辺を御説明いただきたいのです。
  37. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 申請等につきまして法違反がございましたときの市町村窓口の取り扱いにつきましては、私どもの方で、市町村職員の必携という形で取扱要領というのを定めておりますが、その中で、基本的な点につきましては、市町村長は事案に応じて通知を保留して差し支えない、これは一応基本的にそういう通達を出しておりまして、市町村長、要するに窓口の判断でそういう告発をするかしないかという判断をしてもらって差し支えないんだという基本的な考え方を、その要領の中で定めておるわけでございます。  ただ、個々の事案につきましては、これは法務省の方で手とり足とり、これは保留しろ、これは告発しろというところまでは、全国の市町村にまいりませんので、その判断は市町村の担当あるいはその市町村の長に任されていることでございますけれども、私の方としましては、そういう基本的な考え方というものを取扱要領に定めまして、あと市町村の窓口の方々の適切な措置というものに期待している、こういう実情でございます。
  38. 沖本泰幸

    沖本委員 だから、ここで述べられておるのは、結局初め問題を提起したのは、一例として、出稼ぎのためにたびたび飯場や何かで変わっていく、それを一々登録してあるところの役場へ十四日以内に届けるというのは無理だ、そういう事例があるというわけですよ。皆生活が安定して、一つのところにかちっとおるということではないわけでしょう。そういうふうになってくると大変なのでと。ところが、この藤岡さんの説明だと、それは十四日以内という、これは法律で決められているから変えられません。しかし、血の通ったことをやっている、指導していると。それがいまおっしゃった通達という形なんですか。  しかし、お役人さんというのは、法律に忠実なのが最もいいお役人さんでしょう。曲げると、何かとして指弾され、自分の立場に傷がついていき、出世にも影響してくるということになるんじゃないですか。それは条件に応じてしんしゃくしていいよという、そういう形の通達といったら、どういうことになるのですか。それじゃ、窓口で起こっていることを具体的にお調べになって、それに準じたことをしていらっしゃるのか。あるいはこの法律が無理なのか。そうしたら、十四日以内でなしに、登録証書きかえのときに行ってくださいと言っていいんじゃないですか。そこまでやらなければならないということではないんじゃないだろうかということになるんじゃないですか。この辺はどうなんですか。
  39. 當別當季正

    ○當別當説明員 われわれは法の改正という形を通して御指摘の点にどういうふうに取り組んできたかという問題と、現実の市区町村の窓口を指導する上においてどういう立場をとっておるかという点を、分けて御説明申し上げたいと思います。  先ほど先生の御指摘の、藤岡説明員が説明された当時と比較いたしますと、一昨年の通常国会において成立させていただきました外国人登録法の一部を改正する法律によりまして、外国人登録法四条に定める登録事項のうち、国籍の属する国における住所または居所ほか四登録事項、合計五つの登録事項につきましては、変更のあった日から十四日以内に変更登録の申請をしなくてもいいと、この五つの登録事項については、その後再交付申請とかあるいは引きかえ交付申請とか確認申請とか、そういう形での申請がなされた際にあわせて変更登録の申請をしてもらえばそれで結構ですという形をとりまして、現行法は、登録事項のうちいま申し上げました五つの事項については、申請者側の利便も考慮いたしまして、その後の申請の機会にあわせて変更登録申請をしていただければいいような改善措置をとっておるわけでございます。  それから、運用面でございますが、先生御指摘の点につきましては、外国人登録法の違反事件につきましては、各種の不申請罪とか虚偽申請罪というように、機関委任事務として登録事務を行ってもらっております市区町村が違反事件を探知いたしまして、刑事訴訟法上の告発という形で捜査が開始される形の事件と、それから登録証明書の不携帯罪というような、主として一線の警察官の捜査活動によって違反事件が探知され、捜査が開始されるという事件と、二通りの性格のあることは御承知だろうと思うわけでございます。  先ほど登録課長の答弁申し上げました点は前者の違反形態でございますが、私どもといたしましては、刑事訴訟法上、職務の執行に当たって法の違反があるということを知った場合には告発しなければならないという訴訟法上の告発義務が規定されておりますので、事案によっては告発しなくてもよろしいというような形はなかなかとりにくいところでございますが、しかし、市区町村の窓口におきましては、一たん告発いたしまして、この告発した事件が検察庁で処理されますと、処分結果通知というものがまた告発した市区町村に検察庁から通知されるというシステムになっておるわけでございます。そういうシステムを通じまして、市区町村といたしましては告発事件がどういうふうな処分がなされたかということが理解できるような制度になっておるわけでございます。そういう点もございますし、また、各種の違反事件につきましては、ケース・バイ・ケース、いろいろなしんしゃくすべき事情もあるわけでございますから、そういう事案をよく勘案した上で、告発をとりあえず留保するという措置をとってもらって差し支えないというような指導をしております。  御承知のとおり機関委任事務でございますので、登録事務の運営につきましては法務大臣に監督権がございますので、いま申し上げましたような指導を、研修会とかあるいは協議会とかいうような機会を通じて行っておるという趣旨でございます。
  40. 沖本泰幸

    沖本委員 その研修会とか協議会とかというのは、全体に、窓口に向かって全部徹底ができる方法になっているのですか。また、そういうときには具体的な事例についてのレクチャーをやって十分対応できるような形になっておるのか、どうなんですか。
  41. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 登録事務に関します研修会というのはかなり活発に行われておりまして、各府県単位に登録協議会というふうなものもできておりまして、県主催で市町村の担当職員を集めまして研修を行います。そういう場合におきましては、登録課の職員をできるだけ派遣していま先生の言われました具体的な事例について討議をすることになっております。  それからまた、中央におきましては、全国から担当者あるいは担当課長を集めまして研修という形で実施しておりますが、この研修会も、通り一遍の研修と申しますよりも、各担当者から具体事例を持ち寄ってもらいまして、二十例、三十例というふうな事例に即しまして、登録課の職員等そういう担当者の間でその具体例について討議をする、こういう形になっておりまして、登録課の具体例についての考え方というのは全国の市町村に徹底できる一つの手段になっているかと思います。  ただし、全国に三千以上の市町村がございまして、各都道府県で職員を集めましても、予算上の問題もございまして、三千の市町村の全職員に徹底させるという点では若干問題がある。と申しますのは、市町村の職員も大体三年ぐらいで転勤してしまう。ということになりますと、その三年の間に全市町村の職員にそういう登録事務を徹底させるということはちょっとむずかしいところがあるという点はございますけれども、いま申し上げましたような事例に即した研修会と申しますのは活発に行われております。
  42. 沖本泰幸

    沖本委員 もっとも、その外人登録の担当者の窓口がきちっと決まっているところは特に多いところに限りますから、そのほかのところは戸籍とか住民票とかを扱うところが兼任でやっておるわけですから、その辺、徹底するのはむずかしいという点もあるかもわかりませんけれども、結局よって来るところは、人権侵害なのかあるいは不徹底のために事件、問題を起こしてくるかということになりますから、こういうことのために逆に管理を受けている人たち日本政府に対する不信なり、あるいは入管行政に対して反感を持ったり不信を持ったりということのないようにしてもらわなければならないわけです。  そういうことで、指紋の問題そのほかありますが、警察庁もお見えですから、まず先に実際の実例についてお伺いいたします。  これは五十六年ごろの問題なんですが、いますぐ掌握していらっしゃるとは思いませんけれども、被害を受けたという人の言い分なんです。「昭和五十六年の五月十四日頃だと思います。八王子の梅原さんの法事の帰り、勝沼インターの所で乗せてくれた運転手がスピード違反でつかまりました。乗っていた私達も(私・母)警察の中に呼ばれ、国籍を聞かれたので朝鮮と答えました。登録をとっているかときかれましたが、」登録証を持っているかどうかということでしょうね。「甲府を立つ時冷蔵庫の上に置いてきてしまいました。」と言うと、そういうことで家に電話をして確認したわけですね。  それで、「勝沼インターの警察では調書を取られました。そして私達は警察の方に深くわびました。取り調べが終ったあと警察の方に、「また呼び出しがあると思いますのでそのときはきて下さい」と言われました。私は清く正しく生きてきたつもりがこれでとうとう前科者になったかと思ったら急に悲しみがこみ上げてきました。  八月の末だったと思います。塩山署から呼び出し状と電話がきました。塩山署では三時間の調書を取られました。その内容は財産、家、貯金、結婚などいろいろと細く聞かれました。」それから、顔写真を撮られました。罪人扱いです。余りのことで涙がこぼれました。  それで、「私が警察の人に、「どうしてそんなことをするのですか」と抗議したら、警察の人は軽べつしたように私を見ながら「みんなこうしているんだ。仕方ないんだ」と冷たい口調で言いました」。それで、顔写真の後は足形を取り、両手全部の指紋を何回も取られ、身長まではかられた、こういうことをおっしゃっているわけなんです。  それから今度は、   逮捕されたのは、東京三多摩朝鮮第一初中級学校中学三年生の金日泰(十四歳)と李昌奇(同)の両君。「人権じゅうりん行為だ」と両親や同地区在住の朝鮮人たちは、東村山警察署へ激しく抗議した。   金日泰君が逮捕されたのは三月二十一日正午。金君が西武新宿線久米川駅前を自転車で通りかかったところ、駅前派出所勤務の警官がいきなり呼び止め「登録証を持っているか。みせろ」と呈示を求めた。   金君が携帯していないとわかるとその警官は、金君を派出所に連れ込み尋問したあと、パトカーを呼んで東村山警察署に連行した。金君は取り調べ室で家族や学校のことなど、およそ登録証不携帯問題と関係のないことについて尋問された。そして警官は仕末書を書くよう要求したが、金君がそれを書かずにいると、警官が“仕末書”をつくり、金君に署名するよう強要した。そして一時間半の取り調べのあと、金君はやっと帰宅を許された。   この事実を知った両親は「自分の子が罪人扱いされた」と憤がいし、同胞たちと連れだって久米川駅前派出所に抗議した。   同派出所では、東村山警察署の巡査部長が出てきて「その警官は交代で帰って、るすだ。明日の午後三時以降にでてくる」といったため、両親と同胞たちはその翌日の午後四時に再び出向いた。しかし同派出所では前日と同じ返答がかえってくるのみで誠意ある回答が、得られなかった。 こういうことで、怒って   金君の両親と同胞たちは、さらに二十三日、東村山警察署に直接出向き抗議した。ところが出てきた警備課長はのらりくらりの態度に終始したあげく、警官二十人を動員して抗議団を署外に強制退去させた。 こういうことです。  それから、これは年がわかりませんが、   四月二十六日午後二時ごろ、埼玉県熊谷警察署管内中央派出所の巡査部長八木沢ら警官二人が市内の鎌倉町付近で一時停止の標識にしたがいバイクを止めた陳美香さん(二八)を呼び止め、ヘルメット不着用を注意しながら運転免許証の呈示を求めた。陳さんが在日朝鮮人であることを知った八木沢は外国人登録証の呈示を強要した。陳さんが「母親にあずけている。行ってもらってくる」というと「いっしょに母親のところまでいこう。いやなら中央交番まで登録証をもってこい」と約束させた。   事情を知った母親は陳さんのかわりに登録証を持って交番にかけつけた。ところが八木沢らは母親に対し「十四歳以上であれば常時携帯するのが義務だ。母親が持っておろうが誰が持っておろうが違反だ」と強圧的な態度をとった。母親が「十六歳といっても事実上十四歳前の登録証だし、携帯義務についても配慮すべきではないか」と説明をし、本人の登録証を見せたにもかかわらず、八木沢らは受けあわず立件しようとした。   さらに八木沢は、急を知ってかけつけた陳さんの父親の登録証の国籍欄が「韓国」となっているのを見て「なんで韓国籍なのに朝鮮総聯を支持するのか」と警官としてあるまじき暴言をはいた。 だから、ここに事いてある記事の中には、   第一に、本来、外国人登録証の呈示はあくまでも犯罪捜査のような「職務の執行」に際してのみ許されているが、今回の事件は運転免許証の呈示ですむにもかかわらず、外国人登録証の呈示を求めるという職権乱用によってひきおこされた というふうに見ているわけです。  それから、これは八〇年一月二十四日の、「教員を逮捕、拘留」した。これは茨城朝鮮初中高級学校の教員の李孝一さん。   李さんは東京での所用を終え、十九日午前一時半頃学校に帰るため自動車で首都高速道路西神田口の信号をわたろうとしたところ、信号が変わったので一旦停止した。そこへ覆面パトカーが近づき、信号無視だといったので、李さんが信号が変わったので停止しているとのべた。ところが、警官は一方的に運転免許証の提示を求めた。   警官は李さんが在日朝鮮人であることを知るや、威丈高に外国人登録証明書の提示を強要した。李さんは服を着替える際に登録証を移し忘れて所持していなかった。   それを知った警官は李さんを麹町警察署に連行し、取調べを行なった。ところが、警官は“信号無視”や外国人登録証の不携帯とは何ら関係のない、学校内の状況や朝鮮総聯と学校の関係などについてあれこれと訊問した。   李さんが関係のないことには、答えられぬと拒否するや、警官は大声で「逮捕する」とおどしたすえ、逮捕、拘留した。 こういうことなんですね。  それから、これは八〇年三月二十日の「朝鮮時報」の記事ですが、   十三日午後六時ごろ、朝鮮大学校の学生A君が、自転車で同校から約三百メートル離れた電話ボックスに電話をかけに行く途中、パトカーの警察官に呼び止められた。   これは、A君が右側通行していたためだが、警察官はA君が朝大生であることを確認するや、語気を強めて「あれを見せてくれ」と外国人登録証の呈示を強要した。   たまたま、登録証を持っていなかったA君が警察官に尋問されていた同六時四十分ごろ、ちょうどそこを通りかかった朝大生B君が事情を知り、警察官にA君の登録証を持ってくるから待っていてくれ、といって同校に戻った。   しかし、B君が引き返す前に警察官は不当にもA君を小平署に連行してしまった。   A君の話によると、同七時頃、小平署に着き、取り調べ室のような所で尋問を受けたが、「外出時間は何時から何時までか」「寄宿舎には何人いるのか」「授業単位はどのように取るのか」など朝鮮大学校の内部に関わることまで根ほり葉ほり問い質された。 ということで、   とくに今回の事件は、日常生活の範囲内で引き起されたものであり、しかも登録証をすぐ確認できたにもかかわらず、学生を警察署にむりやり連行したもので朝鮮大学校の学生に対する意図的な抑圧行為であると断ぜざるをえない こういうふうに受け取っているわけですね。  いま申し上げたのは、一方的に向こう側が述べていることで、真相は私にはわからないわけですけれども、結局こういうふうに受け取られておるということになり、皆述べているところは大なり小なりこういうことで、しばしばおふろへ行くとき持っていなかったというのが質問の一番の大きな例にとられていますし、あるいはさっきも言ったように、免許証の提示のついでに国籍がわかると登録証を求められる、そこで皆トラブルを起こしているわけですね。  さっきも述べたとおり、大半が過失的な単なる不注意的な問題だということに当たるわけですね。しかし、それを持っていなかった場合には、いま言ったような形で立件されて、それで結局刑罰に問われていくという形をとっていく。その不携帯が全体の登録法違反の五〇%を超えているという言い方をしているということになると、やはりこれは考えざるを得ないということ。そういうことによって、特に反対側、調べられる方の側は、ここで非常な不信感を持っておるということにもなるし、それではその職務執行のために提示を求めている人たちが、そこでやはり差別していろんな形で言動があるんじゃないかというふうに考えるわけですけれど、警察庁の方はいまのことについてどういうふうにお考えになっており、そういう問題の取り扱いについでどういうふうな徹底の仕方をしておられるかということですね。人権を尊重して、普通の生活状態の人の人権を見るがごとく扱っておるのか、もうその時点から、いわゆる外国人は犯罪者であるというような形のことで取り調べを行っておるのか、その辺、いかがなんですか。
  43. 吉野準

    ○吉野説明員 いま、五つほど例をお挙げになったわけでございますが、私、実は全部は承知いたしておらないわけでございますが、承知しているものだけについて申し上げますと、大分食い違いがあるようでございまして、たとえば一番目の、塩山、山梨の例でございますが、スピード違反を取り締まった際に、外国人登録証を所持してなかったということで、後ほど打ち合わせをして、御都合のいい時間に署に来ていただいて調べをやって、それから指紋等を取りましたが、これは承諾をいただいて、任意で――身柄をとっておりませんので強制ではできませんので、任意で、承諾をいただいて取らしていただいたというのが真相でございます。  それから、東村山の事案でございますが、これは少年でございますが、十四歳でございますので携帯義務があるわけでございまして、たまたま派出所の警察官が、この管内は非常に自転車泥棒の多いところでございますので、そういう観点から警戒に当たっておりましたところ、自転車の施錠のない自転車に乗った少年を発見いたしまして、いろいろ聞いたのでございますが、要領を得ない、外国人であるというにもかかわらず持ってないということで、人がたかってきては本人の不利にもなるであろうという配慮から、これまた御本人の承諾をいただいて、近くの署へパトカーで任意で御回行いただいたということでございまして、この事案の場合は、比較的軽微なものでございますから、注意処分で終わっております。  あとの三件については実は承知いたしておらないわけでございますが、恐らくかなりの誤解があるのではないかというふうに考えます。  いずれにいたしましても、先ほどから御指摘のように、血の通った取り扱いはできぬのかという御趣旨のようでございますが、犯罪ありあるいは法違反ありと思量せば捜査をするというのは、これは警察の義務でございまして、現場の判断で恣意的に取り扱いを違えるということはできないことでございますけれども、私どもとしては、法の許す範囲内でできるだけ柔軟に取り扱うように指導いたしておりますし、現場でもそのようにやっておるというふうに承知いたしております。  御指摘の不携帯の事案につきましても、実は逮捕するようなものは非常に少ないわけでございまして、大半が任意捜査あるいは始末書、あるいは先ほど申し上げましたように注意処分というようなことで、事案の軽重に応じまして柔軟に取り扱っているところでございます。  また、外国人に対して差別をしておるのではないかというふうなお尋ねでございましたけれども、この点につきましても、かねがね、外国人は言うまでもなく言語、風俗、習慣等を異にいたしますので、日本人同士なら何でもないことが、つまらぬ誤解や無用の摩擦を招くことがしばしばございますので、そういうことのないように一線に対しては指導をいたしておるところでございます。
  44. 沖本泰幸

    沖本委員 さっきも述べましたように、日本名の表札がほとんどなんですね。手紙も日本名でやりとりしている。通称ですけれどもね。銀行の口座も日本名なんです。だから、生活の中身なんかも完全に日本人としての生活をやっているわけです。だけれども外国人として登録をして管理を受けているということになるわけですから、日本人のつもりが愕然とするようなことになると、結局はそこで反感を持ってくるということもあり得るわけです。  この前も述べたことがあるのですけれども、いわゆる万歳事件、日本が朝鮮半島を管理しておったときに起こった事件は、いまだに生き残りがいらっしゃるわけです。韓国側にもおるし朝鮮民主主義人民共和国側にも生き残っていらっしゃる方がおって、まだまだそのことをおっしゃっているわけです。だから、何かの不都合があるとそういうものが噴き出てくるわけです。われわれは頭からそういうものをなくしているわけです。もう戦争が終わったと同時に朝鮮半島は独立して、国は二つあるけれども、いま会談を設けて一つの国になろうとしている。われわれも一つの国になるためにお手伝いしなければならぬというような考え方でおるわけです。  日本にいらっしゃる方は、そういうふうな歴史的な経過をたどりながら、永住権を持ったり在留許可をもらって、いま言ったような生活にほとんどなっている。それから、言葉のなまりもいまほとんどないのですね。ほとんどなくなって、日本人としゃべっても変わらないわけです。若い人たちはもう恐らく日本の子弟と変わりませんでしょう。皆朝鮮語あるいは韓国語をしゃべらないのですから。だから、日本で生まれて日本で死んでいく人たちに変わりはないわけです。しかし、そこで嫌というほどおれは外国人だ、おまえさん方外国人だぞというものを認識させなければならないほどのものがあるのかということになっていくわけです。  結局は、警察庁の方にも申し上げたいのは、すべての警察官が提示を求める権限を持っているわけでしょう。制服の警官も私服の警官も、警察業務に携わる方、検察業務に携わる方は全部提示を求める権限があるわけですから、それは常時行われるわけですから、それがとりたてて片っ端から職務尋問するような形で提示を求めるとか、あるいは免許証を見たときにいきなりやるとか、あるいは常時顔を見られているけれども、いま持っていないなと思うときにばっと提示を求められるとか、そういうことが起こると逆のことになってくるということになるわけです。  そういうことですから、刑事局長にも長いこと待っていただいて申しわけないのですけれども、そういうものが結局は違反だとして事件が検察庁に上がってくるはずなんですけれども、中身を見たらこれは無理だなと思うものもあるでしょうし、いろいろなものがあると思うのです。ただ、それを警察から持って上がってきた内容そのままをうのみにして調書にして裁判所に出すのか、いろいろ検討して、これは問題外だとお決めになるのは検察庁の裁量によって起こってくることになるわけですから、その辺を警察庁も検察庁も十分注意して心がけてやっていただければ、日本人的な自覚を持って日本語をしゃべって日本人のような生活をしている人たち人権を傷つけたり、その人たちの感情を逆なでるようなことはないようになってくると思うのですね。そういう点を刑事局長、どういうふうにいままでとらえておられるか、これからどういうふうにおやりになるか、その辺をお聞かせいただきたいのです。
  45. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お答えの前提として、若干数字のことを申し上げますけれども、先ほど来、たとえば外国人登録法違反で半分以上が不携帯罪であるというようなお話もあったわけでございますが、入管局の方からお手元に出しております関係資料にも警察の統計があるように思いますけれども、それでも大体三割ぐらいというふうに思われるわけでございますが、私ども検察庁の方で従来から罪名別の統計をとっておりませんでしたので、今回この法律改正があるということもございましたので、五十六年一月から十月までの分ということで特別調査というような形でとった統計がございます。  それによりますと、検察庁の通常受理人員というものが全体で五千七百三十人でございまして、その中の千七十八人、約一九%と申しますか、その程度の者が不携帯であるということでございます。むしろ一番多いのは、登録証明書の切りかえ交付不申請、いわゆる確認の不申請というようなことになっております。  それから、処理状況でございますけれども、不携帯罪につきましては、起訴が千九百七十六、不起訴が五百九十三という数字になっております。もちろんこの起訴の中の大半、千九百四十五は略式命令による処理がなされておるわけでございます。  それから、先ほどお話がございましたことに関連して申しますと、たとえば居住地の変更登録申請、これは他の市町村へ居住地を変更したとかあるいは同一の市町村へ変更した場合とか、いろいろあるわけでございますが、これが例の告発に係る事件というふうに見ていいと思いますけれども、たとえば他の市町村への変更についての登録不申請というものでは、起訴が七十七件に対しまして逆に不起訴が百件ということでございますし、同一市町村内の変更につきましては、起訴が四十二件に対しまして不起訴が五十八件というふうに、起訴よりも不起訴の方が多いというような数字もそこで出ておるわけでございまして、たとえば当該市町村から告発がございましたものでも、その情状によりまして起訴しないで、不起訴処分にするという数も相当数あるわけでございます。  そういうふうな前提を若干申し上げた上のことでございますけれども登録証明書の不携帯罪の取り扱いにつきましては、いろいろと御議論もあるわけでございます。ただ、先ほど来入管当局からも御説明がございましたように、この登録証明書の携帯義務というものは、それだけ見ますと、一見軽微というような感もないわけではございませんけれども、それを放置いたしますと、証明書を持たなくても処罰されない、そうすると持たなくてもいい、さらには登録もしなくていいというような一つの悪循環の種にもなるようなことでございまして、そういう意味では必ずしも軽視できない面があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。  ただ、それぞれいろいろな事情があることは御指摘を受けるまでもないわけでございますし、たとえば他の違反につきましても先ほどのような形になっておるわけでございまして、検察当局といたしましては、それぞれの事案に応じてその情状をよく見きわめまして、起訴すべきものは起訴する、起訴しないで済ませるものは不起訴にするという態度でこの事件の処理に当たっているところでございまして、今後ともより一層そういうような配慮を加えて適正妥当な処理をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  46. 沖本泰幸

    沖本委員 もっと議論したいのですが、時間がなくなりましたので、お聞きしたい中身はなぜ十六歳になったかという点です。大方の意見は十八歳あるいは二十歳にしてほしいという意見があるわけですね。それはいまからやりとりすると時間がたちますからもう省略してしまいますけれども、その点は事務を扱っている方の側からも同じ意見が出ているわけです。  それから、指紋の問題です。指紋は、結局感情を逆なでするようなものだ、だから、その切りかえをしょっちゅうやらなければならないかどうかという意見も出ておりますし、そういうものを外してもらいたいという意見も出ているわけですから、これはまだ昼からの御質問でこういう問題がいろいろ出てくると思いますけれども、この間も横山さんが原票と写票との違いをお見せになって、大臣も百万通分調べるとおっしゃっておられましたけれども、窓口の方では全部手書きだと言うのですよ。手書きのためにとても大変だと言うのです。  そういうことで、あさって参考人で来ますけれども、たとえば大阪市の生野の区役所は、一番多いから十四人でやっているわけです。十七万人の人口の中で四万三千人が外国人なんです。そのために課長もおるし、係長もおるし、人が十四人もおる。そういうところの人が一番最初に言ったことは、手書きのために手間がかかり過ぎて困るということと、それから居留民団の要求で、指紋を取るときにはたから見えないように、選挙の投票所みたいな囲いの台を全区へつくって渡したということもあるわけですね。  その他の問題は、結局法務省から、国からもらうお金が少なくて持ち出しが大変だということもおっしゃっておりましたが、こういうものも議論しなければならぬと思います。  あと時間がありませんからこれでやめますけれども、ただ丁々発止の議論で申し上げたのではなしに、あなたの方は管理する側でおっしゃっているわけで、私たちが申し上げたのは管理される者の側の立場に立って申し上げている。公平な日本人としてこれはどうだろうかという考えで物を申し上げているわけですから、少しは、わかった、いまはどうしようもないけれどもこれからは十分検討しますとか、そういうものもある程度出てきていいのじゃないか。大臣だけがわかったような顔をなさるのですけれども、その他の方はわからぬぞといって、絶対おれのところの方がベターだというふうに聞こえがちなんですが、言葉のやりとりの上でそういうことではなしに、そういうものがやはり窓口に影響していくと思うのですがね。その辺を十分配慮してやっていただきたいと思います。  じゃ、これで質問を終わります。
  47. 太田誠一

    ○太田委員長代理 午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  48. 中川秀直

    ○中川(秀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田正勝君。
  49. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、最初にいまから私が申し上げますことをちょっと聞いておいていただきたいと思うのです。これは韓国の現役の国会議員の皆さんがつい最近私どもとともに話し合いをしましたときに、法務委員会で質問があるんならそのチャンスにこういうことをぜひ大臣にお伝え願いたいという御要望がありましたので、質問内容に大体ラップしておりますので申し上げておきたいと思うのであります。  これは外国人といわゆる住民という問題点についての語り合いでありますが、韓国の国会議員さんがおっしゃっていますから、そういう意味でお聞き取りください。  韓国籍でありましても、もちろんこれは外人ということでありますが、日本社会の一部を構成している住民であることには間違いありません。住民なればこそ納税の義務を負っているのでありまして、韓国の協定永住になりました人たちは単なる観光客ではないはずであります。それも特殊な過去の遺産といたしまして、数十年前から住民とならざるを得なかったという経緯があります。しかし、結局のところは住民として扱われてはいないというところに今日の問題の本質があるのではないでしょうか。住民というのはその社会で生きているということでありまして、その社会に貢献するということではないでしょうか。人間が生きていくためには、自由と平和と安全と、生活の基本的な要件が満たされておらなければなりません。しかしながら、永住外国人は、この場合協定永住の韓国人の方のことでありますが、それは別だ、その限りにあらずというのであっては、協定永住の在日韓国人は永遠のエトランゼでしかおられないということになるではありませんか。  問題はここにあると思います。在日韓国人は永遠に行政上の対象からはぐれて、ただ管理の対象以外の何物でもないということなのでありましょうか。住民としてなら住民登録だけでよいはずではないでしょうか。なぜ更新期三年が五年になるのでしょうか。なぜそのたびごとに指紋の押捺が必要なのでしょうか。どうしてこんな発想が生まれてくるのでしょうか。永住権を与えておりながら、強制退去というのは一体どういう発想なんでしょうか。住民としての貢献度は無視されて、繁栄と福祉は日本人だけが享受するということなのでしょうか。内外人平等の原則がうたわれ、世界人権規約を批准し、難民条約に加入した真の民主主義の真価にためにも、永住許可在日外国人に対して永遠の観光客扱いはやめていただきたいのであります。住民として扱っていただきたい。そうなれば金融、福祉、社会保障、教育、就職の差別も根本的に解決ができるだけではなくて、いま一歩歩を進めて、スウェーデンやスイスのように、三年以上住んでおる者であれば外国籍の者であっても地方自治体における選挙権、被選挙権の獲得も可能になるのではないでしょうか。  そこで、仮称外国人登録特別法を制定して、永住許可の出た在日韓国人を遇していただきたいが、いかがなものでありましょうか。たとえば、日韓地位協定に伴う出入国管理特別法が制定されたように、証明書の常時携帯、提示義務等はなくなって、住民登録でいくというような特別法をつくっていただきたいが、いかがなものでありましようか。  実に悲痛な叫びとでも言いたいような話の仕方でございました。こういうことがいまこの委員会でいろいろ論議をされておるわけでございますので、その点、大臣としても十分頭に置いておいていただきたいと思うのであります。  まず、質問の第一でありますが、警察庁の方にお尋ねをいたしますが、外国人登録証明書の常時携帯、提示義務についての問題であります。  日常、証明書携帯に関するトラブルが最も多い。これは先ほどの沖本議員からも御指摘のあった問題でありますが、ほとんど交通取り締まり警官の問題ですね。交通取り締まりの警官から運転免許証とあわせて証明書を提示せよと求められることが一番多いわけでありますが、この証明書を出すことについては、運転免許証そのものが登録証明書がなければ発行されませんね、つくられませんね。ということになれば、登録証明書がもととなって運転免許証が出ておるのでありますから、運転免許証を提示しなさいといって提示したら、それ以上の提示を求める必要はさらにないというふうに私どもは思うのでありますが、この点の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  50. 吉野準

    ○吉野説明員 お答えいたします。  交通取り締まり等で運転免許証の提示を求めることがございますが、その際に、外国人であれば必ず外国人登録証の提示を求めるということはないわけでございまして、やはりそこには合理的な理由なり必要性というものがありまして、それに基づいて提示を求めるわけでございます。  お尋ねの趣旨、外国人登録法に基づいて運転免許を出すというのは確かに仰せのとおりでございますけれども、御案内のとおり、運転免許証に記載している事項と外国人登録証に記載している事項は違うわけでございまして、たとえば在留資格とか在留期間とか、運転免許証にないものがございますので、状況に応じてはそういうものを確認する必要がありまして拝見させていただくことがあるわけでございます。そういう趣旨で、必要に応じて拝見させていただいているわけでございます。
  51. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 再度お尋ねをいたしますが、交通取り締まりの関係で免許証を提示せいということがよくありますね。スピード違反だ何だというようなことがありましたときに運転免許証を提示せよというのは、これは日本人であっても当然のことですから、ドライバーはその旨に従わなければなりません。だが、それを提示したときに、おや、これは字が三つだなというので、もうほとんど習慣的に、証明書を見せなさい、持っているか、こういうふうになってくるのが大体普通のようでございます。  それで、私が言うのは、そういうことはやめていただきたい。だから、交通に関する問題であるならば免許証で十分ではないか。それから、スピード違反その他でさらに深くせんさくをしなければならぬというような問題があるときには、その車に当然常置してあるべきはずの車検証を見れば十分ではないかというふうに思うので、交通取り締まりのときになぜ免許証以外にこの証明書を見せろという用事が出てくるのだろうかと、非常に不思議でたまらないのです。その点はいかがでございますか。
  52. 吉野準

    ○吉野説明員 交通取り締まりのときに、おっしやるところによりますと、自動的に外国人登録証の提示を求めているのではないかというお尋ねと思いますけれども、そういうふうな指導はいたしておりませんし、私ども承知している限り、現場でもそういうことはやっていないというふうに理解しております。その際に何らかの必要があって、提示を要求する必要がある場合に求めるというふうに承知いたしております。
  53. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そういたしますと、重ねてお尋ねをいたしますが、あなたは登録証明書を持っていますか、見せてくださいというような場合は、たとえばどういうときでしょうか。
  54. 吉野準

    ○吉野説明員 これはいろいろな場合があろうかと思いますが、たとえばどうも挙動が不審である。いわゆる職務質問一般に当てはまることでございますけれども、挙動不審であるとか、それからこれも実際にあった例でございますけれども、免許を持っていなくて、しかもスピード違反をしておったという事例を検挙いたしました際に、話をしておるうちに外国人であることがわかった。これは当然事柄の性格からいって提示を要求したというのがございます。
  55. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、再度確認しておきますが、警察庁といたしましては、交通取り締まりのときに免許証の提示を求めることは日本人と同様であるが、そのときにその都度証明書を見せうなどということは安易にやってはならないということで、そういうふうに指導をしておる、これは現場もそうやっておるはずだという御答弁であったと思いますが、間違いございませんか。
  56. 吉野準

    ○吉野説明員 交通の取り締まりの際に自動的にめったやたらに提示を求めるということでなくて、やはりそこにおのずから必要性がある場合があるわけでありますので、その必要性に基づいて提示を求めなさいということを指導いたしております。
  57. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 では警察庁、どうもありがとうございました。  それでは、それに関連をいたしまして法務省の方に質問をさせていただきます。  ただいま警察庁の方からお答えがありましたが、警察庁のお答えでは、自動的にその都度見せろというようなことなんかやっていないよ、そんなことは指導もしていないよ、現場もそんなことはやっていない、よほどのことか何かあればの話だというようなことでございます。ということになりますと、その他の場合にありましても、登録証明書の常時携帯あるいはそれを提示するというのは余り意味を持ってこないと思うのです。この点、常時携帯あるいは提示義務というのはやめたらどうかというふうに私は思うのでありますが、見解をお聞かせください。
  58. 大鷹弘

    大鷹政府委員 外国人登録証明書の常時携帯は、私ども入国管理、外国人の公正な在留管理をやっております者の立場からいいますと、どうしても必要でございます。なぜかと申しますと、それは第一に不法入国者を取り締まる必要があるということでございます。それからその次に、不法残留者という者がおるわけでございます。  それでは、不法入国者というのはどんなような状況かと申し上げますと、確かに戦後のあの混乱期に比べますと、不法入国者の数は減っておるかもしれません。摘発される者の数は、三十年前に比べますと大分減っております。しかしながら、現在でも毎年六百件近い、年によっては千件近い摘発件数があるわけでございます。その摘発されたケースについては、たとえば一人の不法入国者がつかまった場合には、実はつかまってない人がその数倍もいるんではないかというふうな調査もあるわけでございます。と申しますのは、三十年から四十八年にかけます三百四十名の不法入国者をチェックしましたところ、こちらの質問に答えてこの人たちは、自分たち不法入国したときには何人連れであったということを陳述しているわけでございます。そこからいいまして、つかまった人に対して少なくとも数倍の人が実は潜在不法入国者として日本に入っている、こういうふうに考えているわけでございます。  それから、不法残留者でございますけれども、これも実は年々非常にふえておるわけでございます。恐縮ですけれども、多少数字を引かしていただきますが、不法残留者の数は近年千人を突破しております。昭和五十二年には七百二十六名でございましたけれども、五十三年には千三名、五十四年には九百八十七名、五十五年には九百七十三名、五十六年には千百九十三名となっております。これはその大部分が在留期間を経過して残留するものでございまして、東南アジアの方から入ってきている女性の人たちがこの大部分に当たるわけでございます。そのほかに、在留資格取得許可を受けずに残留する者というのが毎年百名から二百名おりますけれども、これは不法入国者の子供で在留資格を受けることができなかった、そういう人たちでございます。  したがいまして、こういう不法入国者不法残留者というものを防止し、それから摘発するということのためには、どうしても外国人登録証明書を常時携帯してもらわなくちゃならないという事情がございます。外人の大部分の方はもちろん、ほとんどすべての方は何もそういう罪を犯しておられない方々でございます。しかしながら、私どもといたしましては、こういう現状にかんがみましてどうしてもこの制度は維持する必要があると考えております。  なお、そういう通常の外国人はその登録証明書をその場で提示することによって、自分たちは正規に在留する者であるということを即座に証明できるという面もあるわけでございます。
  59. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そういたしますと、局長の言われることもわかるのです。なるほどなあ、そういうことは困るだろうなあという、不法入国あるいは不法残留、もう大変困ったことですよ。よくわかるのでありますが、さて、それが実際に事件となってつかまえられるにいたしましても、言い方が悪いかわかりませんが、年間千件ぐらいなものでしょう。そうすると、実際にはこれをつかまえる手段としては証明書、いわゆるその他の何十万という正常な人たちが、そういう不法在留者あるいは潜在者、入国者不法者のためにいつも何となく虐げられたような、おまえたちは違うんだぞと言わんばかりの取り扱いをしょっちゅう受けなければいかぬのですね。これは局長さんあるいは大臣のように雲の上の人のようになってしまうと、まずそんなことは覚えがないでしょうけれども、これは嫌なものですよ。  だから、実際には、それをつかまえるというのは何かの動機があって、これはたとえばさっき警察庁でおっしゃっていましたように、挙動不審だなとかなんとかいって職質をかけた、そうしたところが、持っていなかった、あるいはその期間が過ぎておったというようなことがある。その場合に初めてつかまるわけでありまして、それ以外、のべつ幕なしに、道を行く人を見ておっては、話、言葉、アクセントに耳を傾け、あるいは面構えを見て一々呼んでは職質へかけるということはとてもできぬでしょう。何かのチャンスといいますか、何かの動機でつかまるのでありますから、そういうごく数少ないチャンスのために、摘発をするために、その証明書をみんなが持って歩かなければならぬというのは大変不便なことであり、住んでおって大変不自由ですね。自由でないですね。  特に、きょう私がずっとこれから貫いていこうと思うのは、協定永住者あるいは永住権者になった人、そういう人たちのことです。そういう人たちと思って聞いてくださいよ。一時在留でちょいと来ましたなんという分ではありません。そういう分ではないのです。だから、短期の滞在者ならパスポートとかあるいは特在の許可書とか、そういうものは当然持たなければいかぬでしょう。だけれども、協定永住あるいは永住権者になった者まで、何で持って歩かなければいかぬのか、これが不思議でいかぬのです。  それで、その何十万のうち何万分の一かに出てくる、あるいは何千分の一かで出てくるその摘発されたときに一人おったからということのために、何千人という人、何万人という人、何十万という人がしょっちゅう持って歩かなければいかぬ、それを持って歩かなければいかぬと規定するものだから、今度は持っておらぬと不携帯罪だ、こうなってくる。だから、こういう規則はわれわれ人間がつくるのですから、お互いが努力と工夫をすることによって不自由をなくしていくということは、やはり私は政治じゃないかと思うのですよ。  そういう点で、どうしても持っておらなければならぬという理由がどうも私はまだはっきりしないのです。ただいまの御説明では、わかるような気がするが、何十万人のうちの、いわゆるいまの一般の外国の旅行者なんかを入れますと百万を超えるのでしょう、その百万を超える人たちの中で、一年間に千人でございましょう。百万人のうちの千人ですよ。私は、普通の一般犯罪の犯罪発生率からいっても少ないのではないかと思いますよ。そういう者のために、まじめな、善良な人たちがいつもそうやってスタンプを押したようなものを持って歩かなければいかぬということは、これは悲しいことだと思いますね。
  60. 坂田道太

    坂田国務大臣 われわれ国会議員もバッジをつけていますね。私も三十何年やっておるわけです。やはりときどきこれを忘れることがあるのです。そうすると注意されるのです。確かにおっしゃるように、おれを知らぬかと言いたいような気持ちになるのですけれども、しかし、守衛さんはそれを任務としておられる、そしてこれを持たないと入れてはならない、こういうことですね。そこで秩序が保たれておる。これは一つの例。  それからもう一つは、運転免許ですね。これは日本全国とすると相当の数だと思うのですが、これは運転する限りは常時携帯していなければならないと思いますね。そして、それを停止なんかで、持っているか持っていないかとやられた場合、あれは何か罰金ですか、やられるということでございまして、しかし、ちゃんと持っておれば身の潔白が直ちに証明される。つまり、大部分の人はそれを持つことによって非常に安心感がある。それから、やましいことがあると非常に不安や何かあるのじゃないかと私は思うので、先ほど局長が答弁しましたように、犯罪の件数は非常にわずかだけれども、それはむしろ何十万という健全な外国の人あるいはまた永住されておる人たちを守るために、あるいはその自由を証明するために、それさえ持っておれば全く日本人と同じように活動ができるということになるわけなんで、むしろそれはいいことじゃないか。それだからこそ、単に日本だけじゃなくて、諸外国においてもそういうことはちゃんときちんとしている。国情によって多少違いはありましょう。  そういうわけで、基本的にはこの携帯義務というものは、少なくとも外国人である限りは、むしろその人の潔白を主張するために必要だというふうに私は思うわけです。ですから、各国によって事情は異なるけれども、そういうようなことがあるのじゃないかと私は思うのです。
  61. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣から積極的な御答弁をいただいて大変恐縮しておるのでありますが、一つの例とされまして、たとえばこの国会、私どもはバッジをはめております。それで、バッジをはめていなければ困りますと、たとえ大臣であっても衛視の人に文句を言われる。これはいわゆる国会の中の秩序を立てるために必要とされておるわけでありまして、その安全確保のためにやっておると思うのです。  ところが、実際にはどうかといいますと、私が言いたいのは、協定永住あるいは永住権を取った人、こういう人たちなんかは、あなたは永久に、どうぞ死ぬまで日本で生活をしてくださいよ、住んでくださいよという許可を受けた人が、たとえば国会へ、ここに参考人に入ってくるとか、あるいは何かの場合だったら、あなたはどういう方ですか、御身分はといって、その身分の関係を調べるために身分証明書を見せてくれということ、それはあり得るかもわかりません。だけれども、それは自分の都合でございますね。自分の都合でしよう。だから、たとえば厚生関係で児童福祉の関係の手続をしたいというようなときに、私はいわゆるこういう身分のものでございますということを役所で見せるようなときには、必要があれば、そのときは本人が不利益にならぬように、めんどうくさい手続を経ぬでもいいように証明書を持っていけば話は簡単ですよ。そういう物事、手続を簡単ならしめるために証明書を差し上げるのですというならわかるというのです。だけれども、道を歩くのでもふろへ行くのでも証明書を持っておらなければ、ばんと職質かけられて、それで証明書を持っておらぬといったら、ばちっと今度は罰金でしょう。  運転免許の分、あれは過料じゃないのですか。あれも罰金ですか。そうですか。――反則金だろう。違いますか。  だから、それと同じようなことを考えていらっしゃるから、車に乗る者でもみんな免許証を持っておるのだからということも一つ引用なさいましたけれども、それは車に乗るのには免許証がないと乗れぬから免許証を持って乗るのであって、車に乗れる者が外を歩くのに車の免許証は必要としないわけですね。だから、持たなくてもいいわけです。同じように、日本人であれば、外を歩くときに何も自分の身分証明書を持って歩く必要はないのですね。身分証明書を提示しなければならぬような場所へ出ていくときには、初めて持っていけばいいのであって、持っていかなければめんどうくさいから、時間がかかるから持っていけばいいのであって、それ以外のときには自分は何も持つ必要はないじゃないか、どこで要るのだろうか、何で要るのだろうかという気がするのですが、その点、よくわかるように言ってください。
  62. 坂田道太

    坂田国務大臣 今度の改正では、御承知のように、懲役がなくなって罰金だけにしたということで、その点を言うなら、先生方の御主張のように一歩進めたということでございますね。そのこと。  それからもう一つは、確かに永住許可を受けて日本人と同じように生活する、そしてできるだけ日本人と同じように自由に、しかも安全に、そしていろいろの便益を受けるというようにしてあげたい。しかし、国籍は、あくまでも日本国籍は持っていないわけですね。やはりここは明らかに違うわけなので、そこにはおのずと日本人と違うところはあったっていいのじゃないかということなのです。  確かに、先生のおっしゃるように、非常に不自由なことあるいはめんどうなことをできるだけ合理的に整理をして差し上げるということは必要だと僕は思うのですけれども、いま政府委員が答弁しておりますことは、やはり必要最少限度のことであって、それはむしろその人の潔白を証明する唯一のものだというふうに思うわけなので、本当にやましいことがなければ、持っておって、全く自由に行動ができるのじゃないだろうかと思うのでございます。
  63. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がなくなるものですから、どうも十分な突っ込みができないのですが、登録証明書を持たしていなかったらなぜ困るのか。いまの不法残留者あるいは不法潜入者を摘発するのにその身分証明書がないと困るという言い分は、一見わかるように見えて、大ぜいの人に不自由を強いているだけであって、実際には、上がっている効果というのはそんな大きなものじゃないと私は思っていますよ。  だから、協定永住あるいは永住権者になった者には、どうぞ死ぬまで、一生涯お住まいなさいということの許可をおろしたのでありますから、そういう人たちにまで証明書を出さなければならぬ、持って歩かなければならぬという――一時の短期滞在じゃないのですからね。そういうものを出す必要は全然ないじゃないか、持って歩かす必要はないじゃないか。持って歩かせいということになるから、持っておらぬと不携帯罪だ、こうなってくるのだ。罪をつくっていかなければならぬ。私は、非常に不自然な感じがするのですが、永住権者というのを当局はどう見ているのですか。ひとつ答えてもらいたいと思いますね。
  64. 大鷹弘

    大鷹政府委員 外国人の公正な管理というのは二つの側面がございます。一つは、言うなれば取り締まり面、規制面でございます。これが先ほどから私が申し上げております不法入国者不法残留者に関するわけでございます。もう一つの面は、サービス行政と申しますか、そういう面であろうかと思います。具体的には、入国管理法上でも、たとえば再入国許可であるとか在留期間の更新であるとか、そういう手続があるわけでございます。  この後者の方のいわゆるサービス行政面、そういう側面に関しましては、外国人登録証明書はもちろん常時携帯する必要はないと思います。必要なときにそれを提示すればいいわけでございます。しかしながら、規制面、取り締まり面、不法入国者不法残留者を取り締まる、この面に関します限りは常時携帯していただかなければなりません。と申しますのは、挙動不審ということがさっき出ておりましたけれども、そういう人が路上でたまたま警察官に職務質問をされるという場合、もし常時携帯の制度がなければ、そのたびごとに市町村であるとか、そういうところに一々問い合わせをしなくちゃいかぬということになるわけでございます。また、実際問題として、これはうまく機能しない場合があるのではないかと思います。したがいまして、この常時携帯というものは、取り締まりに際して、常に外国人が生活する場で即座にその身分関係、居住関係を把握できるような、そういう仕組みになっていなくちゃいかぬということからきているわけでございます。  それでは、わが国に長く在留しておられる韓国人の方々あるいは朝鮮半島出身者の方々、こういう方々は特別な取り扱いを受けてもいいじゃないかということをおっしゃっておるわけでございますけれども、こういう方々といえどもやはり外国人であることは間違いないわけでございます。その場合、外国人の中で在留に至った歴史に基づいて区別するということは、いわば一種の外国人の間で差別を設けるということになりますが、これは国際的に果たしていいことなのかどうか、そういう原則論の問題はおきましても、実際問題として、こういう方々をたとえばいまの登録証明書の携帯義務の適用から外すということになりますと、実際には、現在不法入国者とかそういう方々は近隣の国々から来ているわけで、在留外国人の方々となかなか区別がつきにくい、そういう人たちでございます。したがいまして、韓国人あるいは朝鮮半島の出身者、こういう方々を外しますと、実際上、私ども考えております不法入国者あるいは不法残留者を取り締まるための制度意味が没却されてしまう、目的を達することができなくなる、こういうふうに考えている次第でございます。
  65. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私、いまの問題についてはどうもまだ納得ができぬのであります。なぜならば、公正な管理を行う上から必要である。その公正な管理をするためには、取り締まり面あるいはサービス面という面から必要である。サービスの面においては常時携帯ということは必要ではないでしょうけれども、取り締まりという面から見たら、常時携帯をしておいてもらわぬと、規制の関係上大変困る。それで即時に本人の身分が明らかになる制度だから、むしろその方が本人にとっても身のためであるというようなお話でございますけれども、その取り締まりの面で、実際に証明書を見せなさい、こういうような事件が起きるというのはそうしょっちゅうあり得ることじゃないと私は思います。  それなら、日本人だったらどうするかということです、挙動不審だということで。たとえば、交通の関係をのけたら、もうほとんど挙動不審しかないでしょう。それは、泥棒に入ったり殺人をしたりしたら、日本人であっても何であっても、証明書を持っておろうが持っておるまいが、同じことですね。そうすると、ありそうなことというたら挙動不審くらいなものでしょう。挙動不審という点においては、外国人だけが挙動不審な動作をするわけじゃないのであって、日本人だって挙動不審な人もおりますわね。精神不安定な人もあるかもわからぬし、何か心配事があるかもわかりませんね。きょろきょろするかもわからぬ。そういうときに警察は、片っ端からそれを取っつかまえてはその質問をどんどんやるのですかね。そんなことないでしょう。そんなことはわれわれはあり得ぬと思っておるが、そんなに簡単に職質をかけているとは思いませんがね。ということになれば、そうそうこんな問題があるはずがない。  だから、本人の身のためだというのだったら、本人がその証明書を持っておるだけでいいじゃないか、家であろうと何であろうと。それを持ってなかったばかりに二十万なんというのはひどいじゃないですか。これは余りにもやり方がきつ過ぎると私は思いますよ。忘れたということでしょう。言うなれば、日本語で言うたらうっかりでしょう。あれっ、うっかりしました、こういうことじゃないですか、忘れたというのは。意識的に、ようし、きょうは警察官とけんかしてやろうというので、家へわざわざポケットから出して置いていくばかがおりますか。おらぬでしょう。持っておらなければいかぬ、持っておらなかったら不携帯罪になるぞということになっておるとすれば、それを意地になってでも家へ置いていく、そんなばかは世の中におらぬでしょう。ということは、悪いことだ、持ってなかったらやられるぞということがわかっておって持ってなかったということは、結局うっかりでしょう。持っておる人が持ってなかったという不携帯というのは、うっかりでしょう。日本語で言ううっかりに対して刑事罰を科して、二十万も罰金をふんだくるなんということは、これは正気のさたですか。余りにも取り締まりの方ばかりが先行してしまって、おまえたち日本へ住ませてやっておるんだ、だれのおかげだと思っているんだと言わんばかりの姿に見られやしませんか。私自身、この法案を見て非常に不愉快に思っておるところであります。  これはまた後に譲ることにいたしまして、次に参りますが、外務省お見えになっておりませんから、これも省きます。  次に、指紋押捺義務の問題でありますけれども、これは稲葉議員の方からもずいぶん詳しく質問がありましたが、一、二質問をしておきたいと思うのであります。  これで指紋の押捺というのが、新規登録のときにも要るしあるいは更新のときにも要るというようなこと、これは更新時期が三年から五年に延びたわけですから、その点は多少の評価は申し上げるといたしましても、この指紋押捺といういかにも人権を逆なでするような、いわゆる日本人の感情で言ったらまさに犯罪者扱いですよ。こんなことをやる必要はないじゃないか、これはやめたらどうだというふうに私は思っておるのでありますが、いかがでありますか。
  66. 大鷹弘

    大鷹政府委員 指紋制度というものは、申請人が同一人であるということを確認する上で唯一の絶対的な資料でございます。写真というものもございますけれども、写真の場合には年がたつと顔が変わることもありますし、写真そのものが傷んでくるという面もあるわけでございます。ところが、指紋に限りましては、生涯不変、万人不同という特色がございます。したがいまして、指紋制度を採用することによって、登録の正確性を維持し、登録証明書の不正発給や偽造、変造等を防止するということは、これはどうしても必要であると考えております。
  67. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま局長自身の口からも言われましたが、指紋というのは永久不動ですね。それでしかも万人不同ですね。ということになりましたら、これは一回やったらいいのに、何でそんな何回もするのですか。
  68. 大鷹弘

    大鷹政府委員 指紋押捺場所は、登録証明書と原票、それから指紋原紙と三つございます。登録証明書は、現行法では三年ごとに切りかえられておりますけれども、今後は五年ごとにということに変わります。その切りかえのたびごとにやはり指紋を押さなければならないことはおわかりいただけると思います。  ところで、この証明書に指紋を押すのは、一つには、所持人が登録証明書の名義人と一致しているということを確認するために必要でございます。それから同時に、登録証明書に指紋を押してある人は、原票に押してある人と同一人物であるということが確認されなければならないわけでございます。その場合に、登録証明書の切りかえのときに原票の指紋と当たればいいじゃないか、こういう議論もあり得ようかと思いますけれども、実際にはなかなか指紋の鑑識というのは専門家を要することでございまして、その場で正確に照合することができない場合もございます。したがいまして、登録証明書に指紋を押していただくときに、同時に原票にも押していただきます。この三年ごと、今後は五年ごとになりますけれども、そういう指紋がずっと押されていくわけでございます。  なぜそれが必要かと申しますと、人間がその間に入れかわってしまうということを防ぐためでございます。仮にそれでも入れかわりが起きたという場合には、どの時点でそれが起きたかということは、指紋の照合によってすぐに確認できるわけでございます。  それから、指紋原紙でございますけれども、これは法務省に保管して、全国からの照会とかそういうものに答えるために持って、集中的に管理しておるわけでございますけれども、こういうものにつきましても、いま申し上げましたように、その人間、外国人の入れかわりということがないように、その都度押していただく、つまり、確認申請のたびごとに切りかえが行われるわけでございますけれども、その切りかえに際しまして、市町村の職員の前で、登録証明書と原票と指紋原紙、三つに同時に押していただくということが必要なわけでございます。
  69. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ということになるとますますわからぬのですが、それじゃ、新規登録をされますときに、一年以上滞在の場合ですね、原紙にも押す、原票にも押す、証明書にも押す、三つ押しますね。それで、原紙は法務省にありますね。原票は市町村役場にありますね。証明書は本人が持っておりますね。それがたとえば五年なら五年の期間が来て更新してくださいと言ったときに、それを更新するのにその持っていった人が本人なのか本人でないのかというのは、どうやってそれじゃ証明するのですか。何のために指紋を押す。入れかわったってわからないじゃないの。
  70. 大鷹弘

    大鷹政府委員 ただいまの御質問の趣旨が必ずしもよく、私、わかっておりませんけれども、まあ登録証明書をその人が持参するわけでございます。そして、その人の身分事項、居住関係のことが全部そこへ出ておるわけでございますね。写真もついております。それから、それには指紋もついておるわけでございますけれども、その本人がおいでになったときに、その方が原票に登録されている人物と同じ人物であるということは、もしその指紋の照合がその場で直ちにできるものであれば、たとえばたまたま専門家がいたとかそういうことでできるならば別でございますけれども、普通はなかなかむずかしいわけです。したがって、そこで改めて証明書には指紋を押していただかなくてはいけませんし、また原票にも押していただく。それで、この登録切りかえにおいでになった方が原票に登録されている人物と同一人物であるということが、そういう形で担保されるという制度になっておるわけでございます。
  71. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 わかりますよ。あなたの言いたいことはわかるのです。新規登録のときにも、証明書にも押し、原票にも押し、原紙にも押す、そのワンタッチの動作はわかったけれども、その証明書を本人が常時携帯、持っておらなかったら二十万、こら、ちょいととやられる。それで五年たった、今度は更新に行った、その証明書を持っていきますね。証明書を持っていったら新しいのと切りかえる。その切りかえた証明書にまた指紋を押す、また原票にも指紋を押す、原紙にも指紋を押す。新規登録と全く同じ動作を繰り返すわけでしょう。  それは何で、もう永遠に不動なものであり、万人不同の指紋をそんな何回も何回も押さなければいかぬのだ、こう言って聞きますと、なかなか指紋の照合なんというのはもう鑑識でも専門的な知識の要るものでありまして、そう簡単には照合ができないのであります。したがいまして、原票にも原紙にも証明書にも、三つ全部本人の指紋を押しておきさえすれば人を間違うことがないと、こう言う。そこが私は非常に不思議なところだと思う。  そんな役に立たぬ指紋の原票や原紙なら、ない方がいいじゃないですか。何のために仕事をつくっておるのですか。なかなかもって専門的な知識がなければ鑑識もできぬというようなものを、何をしに法務省が持ち、市町村役場が何のために持っておるのですか。本人が更新の届け出に来たときに照合ができる、あるいは警察で、不審な者がおる、こういう証明書を持っておる、こういう指紋であるが、それは果たして原票にあるか、原紙にあるかという問い合わせをする。そのときにだあっと照合するためにあるんじゃないの。更新で五年に一回行っても照合できぬのですか。そんなに役に立たぬものなら、やめたらどうですか。
  72. 大鷹弘

    大鷹政府委員 もちろん、窓口で照合ができる場合もございます。しかし、常に照合ができるということではないということを申し上げたわけでございます。それじゃ、そういう制度が一体本当に必要なのかとおっしゃいますけれども、やはり先ほどから申し上げておりますとおりに、本人と、登録証明書の所持人と登録原票に登録されている人が同一人物だということを確認するためには、登録証明書が切りかえられるたびに、登録証明書はもちろんのこと、原票についてもやらなくちゃいかぬ、こういう制度になっているわけでございます。もちろん、私どもといたしましては、こういう基本的な指紋押捺の義務、あるいは先ほど来話題になっておりました登録証明書の常時携帯義務、こういうものは維持しなければならないと考えております。これは不法入国者不法残留者の取り締まりには非常に重要な役割りを担っております。  不法入国者不法残留者の摘発が、在留している外国人の数に比べて少ないというお話もございましたけれども、実は、実際に摘発される不法入国者不法残留者のほかにはるかに多くの抑止力を、こういう制度があるために抑止されている不法入国者もいるわけでございます。つまり、不法入国したいけれども日本に行くと非常に厳しい登録制度がある、指紋も押さなければならないし、それから常時携帯しなければならぬ、こういうことになりますと、密航を思いとどまる人もたくさんいるはずでございます。現に、私どもの経験によりますと、昭和三十年に指紋制度が導入されましてから、登録証明書の偽造、変造というものは激減しております。今日、私ども不法入国者を逮捕しまして、そして持っております偽造、変造の登録証明書を点検いたしましたところ、いずれも指紋押捺制度が導入される前の時代の、つまり指紋が押されてないものであったわけでございます。そういう事情もあるわけでございます。  そこで、基本的にこういう制度を維持することが大事なのでございますけれども、他方におきましては、私どもといたしましては、在留管理の目的が達成される限りは、外国人の方の負担、それから市町村の方々の負担もできるだけ軽減したい、こういうふうに考えまして、そして、今度の改正法案をお認めいただけますと、指紋の押捺回数、個数は非常に減るわけでございます。  御承知のとおり、今度の改正法案で、いわゆる本人出頭あるいは指紋押捺、それから登録証明書の常時携帯、こういうものの義務年齢を十六歳以上ということにいたしまして、従来十四歳だったものが十六歳になります。それから、確認申請期間も、従来三年であったものが五年になります。さらに、指紋原紙は現行法では二葉指紋を押さなければならないことになっておりますけれども、そのうちの一葉、都道府県の写票を昨年暮れの国会でお認めいただきました法改正によって廃止いたしましたので、その一葉も減ります。したがいまして、私どもの計算によりますと、現在現行法では十四歳から指紋押捺の義務があるわけでございますけれども、仮にこの人が七十歳まで生きるといたしますと、この人が現行法のもとで一生涯の間で押さなくちゃいけない個数というものは、七十六になります。他方、十六歳から押捺義務が生ずるとして、確認申請期間が五年に延び、しかも三葉であるということになりますと、この人が七十歳までに押さなくちゃいけない個数というものは、三十三でございます。八十歳までを計算いたしますと、現行法のもとでは九十二回押さなくちゃいけないことになりますけれども改正法案が通りますと、これが五十三個に減ります。これは約六〇%押捺回数が減るというわけでございまして、そういう意味で、私どもといたしましては、基本的な登録法の目的が達成される限りはできるだけ外国人の負担を減らしたいということで、そういう改正も盛り込んでございます。なお、常時携帯義務についても、いま申しましたとおり、義務年齢を十四歳から十六歳に引き上げております。
  73. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま、指紋を押させる効用といいますか、それから効果、そういうものがこういうものがあると、るる御説明がありましたが、私は、心理的に、日本に行ったら指紋を押した証明書を持って歩かなければいかぬということで、いわゆる不法入国者あるいは不法残留者というものが激減をするであろうということは、多分に推察できます。  多分に推察できますけれども、しかし、それじゃたとえば私がいまこういうことをやったら、局長さん、あなたはわかりますか。証明書の偽造ということもしばしばありましたということは、いままでの長い答弁の中で何回も言っていますね。たとえば写真も張りかえて、そして自分の偽造したやつで、更新の申請に参りましたと言うて、それで更新に行きますね。そうしたら、市町村役場では、その指紋の台帳の照合なんということは、いまの説明では、ほとんどやってないような感じですな。これが本人の指紋かどうかということは、全然合わせてない感じですね。だから、三年前の本人なのかどうかということは全然わからぬずくに、人間がからっとすり変わって行っても、写真さえ張りかえておけば、もう簡単に登録ができて、だから、更新登録じゃなくて新規登録をそのたびにやっているというようなことになりやしませんか。その点どうですか。
  74. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 いま、本人が偽造した証明書を持って市町村の窓口にあらわれたら、その偽造の証明書をいつの時点で入手したかということにも絡まりますが、元来、市町村に保管されております原票には、先ほど局長からも説明申し上げましたとおり、本人の指紋が少なくとも数個押してあるわけでございます。その隣に、偽造をしたというか、その保管している名儀人のような証明書を持ってくれば、そこで指紋が違うはずでございます。(岡田(正)委員「それは専門家でないとできぬと言ったじゃないですか」と呼ぶ)それは、先ほども局長が申し上げましたとおり、そういう専門家に頼らなければ発見できないものもございますけれども、市役所の窓口で実施せられている指紋の採取と申しますものは、左手人さし指を回転させて鮮明に取るわけでございます。そうするとわれわれ、渦巻きであるとか流れであるとかということで、その程度の同一性の確認というのは、専門家の鑑定を待たなくてもできるということで、局長が申し上げましたのは、非常に複雑で鑑定を要するようなものもあるけれども、そういう窓口でも発見し得るというものもあるということでございまして、私、申し上げましたそういう偽造の証明書が来れば、前の原票にある指紋との間で発見ができるということはございます。
  75. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 じゃ、時間がありませんので確認だけしておきますが、それでは、更新の申請に行きましたときに、市町村の役場では、これはあさってはっきりわかるでしょうが、窓口に行って更新さしてくださいと言った場合には、本人の指紋であるかどうか、確認する方法としたら、指紋しかないのでしょう。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  76. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 いま指紋の問題が出ておりまして、指紋によって同一性を確認するということに話をしぼっておりますけれども、市町村の窓口におきましては、もちろん登録事項で名前を書いていただきますし、それから写真を提出していただきますし、本人であるかどうか同一性の確認というのは指紋一つに頼っているわけではない、こういうことはございます。
  77. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それじゃ、もう一遍確認しておきますが、更新の手続に行きましたときには、あれは第四条でしたか、二十項目にわたるところの中が変わっていないかどうか、そういう点も一緒に登録をする、そして指紋を取る、それで写真をつげるのですか。そこらのところを明瞭に言ってくれませんか、更新のときに本人と間違いないかというための照らし合わせば、何と何をするのかということを。
  78. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 いま先生が二十項目と申されましたけれども、本人の氏名とか生年月日というのは、永住している人の場合は十一項ぐらいに減るわけでございます。そう減ることはございましても、そういう登録事項で本人の方から申し立てがございますから、もちろんそれによって同一性というのが一つございます。それから、先ほど私が申し上げました写真がございます。それから、そこで指紋が二つ並ぶわけでございますから、その問題がございます。同一性の確認というのは、ほぼその三つでなされているものと考えます。
  79. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、時間が非常に窮屈なんで次に移らせてもらいます。  大臣、この間、私は大変ショッキングな話を聞いたのです。これはもちろん外国の人ですけれども、いま日本の国会では外国人登録法の審議が行われておるそうですね。新聞で見られたのかもしれませんが、わりと知っているのですね。そうですよ、私は法務委員ですからその方の審査に携わっているのですと私が言いましたら、それならいいときにお会いした、ぜひひとつこれを大臣にお願いしてくれと言われたのです。  どういうことを言われたかというと、こういうことを言われました。永住権者といういわゆる永住の許可をもらった人は、指紋を押捺するというのは制度として認めてもいいのではないかと私は思う。いわゆる永住を許可するときに、その永住の許可の条件の一つの中に、条件というかそういうものの中の一つに指紋を取っておくということはいいことでしょう。それは別に抵抗感はない。  だけれども、それ以外の者、たとえば旅券でやる人なんかは別といたしまして、一年以上滞在という人については指紋の押捺をしていただきます、今度の法案ではこうなっています。その一年以上滞在なさる方という中に、実は外国人の中でも――私は決して人種差別とか職種の差別の意味で言っていませんから、大臣、誤解しないで聞いてください。外人の新聞記者あるいは外国人の大学教授、そういうような人たちは一年以下という人もたくさんおりますけれども、一年以上という人もずいぶんおるのです。そういう人たちもこれは例外なしに指紋押捺でございましょう。国際世論、大変悪いそうです。日本という国は一体何という国だ、われわれのような――その人の立場から言えばちょっといいつもりでしょうけれども、とにかくわれわれのような立場の者まで犯罪人扱いをして何だ、ひどいことをするじゃないかという気持ちが強いのです。  だから、サインでいいじゃないですか。サインにしたらどうですか。何万ドルというトラベラーズチェックだって、委員長御承知のように、サインだけで全部通るわけでしょう。それが何でサインでいけないのだろうか、どうして指紋を取らせるのだろうか、日本という国は野蛮な国だな、こういう言い方をしておられました。  この二つを特に大臣に伝えてほしいということを言われましたので、この際申し上げておきますが、大臣、どう思われますか。(「ドイツで指紋制度ありますか、大臣」と呼ぶ者あり)
  80. 坂田道太

    坂田国務大臣 詳しくは政府委員からお答えを申し上げたいと思うのですけれども、先般の稲葉委員の御質問でむしろ御指導いただいたわけですが、たとえばイギリスにおいては主体はサインだ、しかしながら押捺もやっておる、こういうことです。それから、アメリカの場合でも多くはやはり押捺をやっておるということなんで、必ずしも先進国に例がないわけではないということを私は聞きましたし、また、うちからも説明を聞いたわけなんで、やはりそれぞれの国の習慣があるわけですね。自分のところはサインで済ませている、ところが日本へ行ったら押捺をやらされた、これはけしからぬ。これは、たとえば私たち外国人として向こうへ行ったときに、自分たちの習慣に合わない、けしからぬ、こう思うのも常なんです。だから、日本が千年ばかり言うならば鎖国みたいな状況で、ほとんど国際的なことに関係――上の人たちがやったことはありますけれども国民同士がやったというのは最近のことだろうと思うのでございます。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕  そこで、やはりここはお互いの文明あるいは伝統、習慣、それをよく理解していかなければならないのであって、必ずしも押捺をやっておるからけしからぬと一概には言えないんじゃないだろうかというふうに思います。詳しいことはちょっと政府委員から。
  81. 大鷹弘

    大鷹政府委員 指紋押捺でなくて署名でいいんではないかという御意見でございますが、ただいま大臣からお答えになりましたことに特につけ加えることはないのでございます。  私どもも、申請人の同一人性を確認する方法として署名による方法というものは、日本のような国、それから日本における在留外国人の大半を占める韓国、朝鮮等含めましてアジア諸国においては、署名というものの習慣がございません。また、指紋ほどに絶対性を有するものでもないわけでございまして、私どもとしては、これはわが国には適さないものと考えております。  ただいま米国について大臣からお話がございましたけれども、世界諸国から移民を受け入れているアメリカも指紋制度を採用しておるわけでございます。今度ADIT制度という新しい登録証明書が開発されて、昨年から実施されております。いわゆる昔のグリーンカードをコンピューター化したわけでございますが、これも署名と指紋とが一緒に並んでおさめられることになっているわけでございます。  それでは、こういうアメリカのほかに指紋押捺制度というものはどうなんだろうか、各国制度でございますけれども、指紋押捺制度を採用している国というのはかなりございます。御参考までに申し上げますと、インドネシア、韓国、フィリピン、メキシコ、アメリカ、アルゼンチン、ブラジルでございます。それから、サインができない場合、署名ができない場合に指紋の押捺制度を採用している国というのは英国でございます。そのほかに、これ以外の制度で指紋押捺制度を持っている国といたしましては、たとえばヨーロッパのオランダがございます。これは身元確認のため必要と認められる場合に行っております。それから、スウェーデンでも一般外国人に対して押捺義務を課しておりませんけれども、有効なる旅券等を所持してない者、政治亡命者、難民、こういう者に対しては課しているようでございます。香港では指紋押捺制度は外人登録制度上はございませんけれども、いわゆる身分証明書を携行しなくちゃならない、その身分証明書には押さなくちゃならないことになっております。  それから、特に具体的に御指摘のあった西独でございますけれども、西独については指紋押捺制度はございませんが、しかし、身分または国籍に関して疑いのある場合には、強制的に鑑識調査を実施できるため、その際に指紋押捺を強制できる可能性があるというふうに言われております。  他方、指紋押捺制度を全然採用していない国は、国の名前を申し上げますと、中国、豪州、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、ルクセンブルク、ギリシャ、ノルウェー、スイスでございます。
  82. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 指紋押捺の件については、これは非常に重大な問題でありまして、もっと質問をしたいのでありますが、他の委員の方の中にもずいぶん専門的に御質問があるようでありますから、本件につきましてはこのぐらいにさしていただきます。  ただ、私どもとしても指紋押捺ということに対しては大変な抵抗感を持っておるのでありまして、韓国の国会議員団の方々の要望も非常に強いものがあります。それから、居留民の人たちの御意見を聞いても一番嫌なのが指紋押捺だ、それと常時携帯、それを忘れたら今度は二十万、これはひどいではないかという不満の声はごうごうたるものがありますね。  それから、これは稲葉委員の御質問の中にもありましたけれども、十四歳がなぜ十六歳なのか、どうもよくわからぬ。とにかく社会生活が営めるようになる年齢というならば、稲葉委員も言われましたように高等学校を卒業するというときがほとんどじゃないのか。いま日本状態を見ましても、大学への進学率は四三%ぐらいでありますけれども、高等学校への進学率というのはもう九四%程度にいっておるわけですからね。言うならばもう義務教育に近いような感じになっておるわけですから、ほとんどの者が高等学校を出てから社会に出るというのが普通ではないかというふうに考えますと、十六歳という年齢は非常に低過ぎるのではないかということを私ども考えております。  それから次に、登録事項の簡素化の問題でありますけれども、登録事項がめったやたらに多過ぎる、しかも手書きをしなきゃならぬということは、先ほども質問がございましたね。これの中で、具体的に申し上げますと、第四条の九号と十九号に「職業」それから「勤務所又は事務所の名称及び所在地」についての登録、これをするようにしていますね。このことにつきまして大変皆さんが困っているのですよ。このたびに届けに行かなきゃいけませんね。届けを忘れると今度はいわゆる不申請罪かな。とにかく何でもかんでも罪がつくわけだ。忘れたら罪、うっかりしたら罪、何でも罪なんだ。それでどんどん罰金持ってこいだから、とにかくこれはひどいですよ。  職業とかあるいは勤めておる事務所、あるいは事務所の名称や所在地、そういうものをやるということは、正直に言いまして、日本におられる韓国人なんかに言わせますと、まだ社会的な身分というものが実際には口ほどのことはありませんね、やはり差別を受けておるとしか言われない状況にありますよ、今日の状況も。そうすると、やはり職業をころころとかわることも非常に多いのですね。その職業がかわるたびに届けに行かなきゃいかぬわけでしょう。そうでしょう。職業がかわったりあるいは事務所がかわったりというようなことは届けぬでもいいんじゃないのでしょう。届けるんでしょう。届けんかったら罰金でしょう。それはいいんですか。罰金は要らぬのですか。いかがですか。
  83. 大鷹弘

    大鷹政府委員 職業、勤務先、これは外国人登録の二十の登録事項の非常に重要な身分関係に関する事項でございます。なぜこれが大事であるかと申しますと、これは結局、具体的に言えば、資格外活動の取り締まりのためにどうしても必要なわけでございます。  最近、この資格外活動の案件というのは急増しております。恐縮ですけれども数字を引用させていただきますと、五十四年には三百四十四件だったものが、五十五年には四百六十二件、五十六年には六百十五件、これだけの数が摘発されているわけでございます。そこで職業、それから勤務先につきましては、変更があった場合には十四日以内に届けをしてもらわなくてはならない、こういう規則になっているわけでございます。  なお、このほか、いわゆるわが国の労働行政のために、外国人の職業、勤務先等のデータは重要な役割りを演じていると承知しております。
  84. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この職業の関係あるいは事務所の関係等についてなぜ必要かといったら、資格外の取り締まりのために必要なんである、資格外と、こういうことでありますが、この資格外というのは、一体何のために必要なんですか。何の資格ですか、これは。スパイの資格ですか。
  85. 大鷹弘

    大鷹政府委員 資格外活動の一番典型的な例は、いわゆる観光査証、入管法の四-一-四と言っておりますが、四条一項四号、これの観光査証、短期滞在査証と名前が変わりましたけれども、これを容易に簡単に取得して入った外国人が、観光の目的を逸脱していろいろな仕事をする。その中には、例のパーとかキャバレーのホステスをやるとか、そういう人たちもいるわけでございます。そういう意味社会的な問題も引き起こしているわけでございますけれども、一番典型的な例はそういうものでございます。
  86. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 観光査証で入ってきて、それが有効なのは一体何日ですか。
  87. 大鷹弘

    大鷹政府委員 通常九十日でございます。もちろん更新できる場合もございます。
  88. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私が言いたいのは、永住権者の人であってもみんな同じ扱いでしょう。永住権者の場合は項目が十一に減っておると言っても、身分の関係で職業と事務所、この関係はやっぱり届けさせるのでしょう。もしそれが変わったら十四日以内には届け出をさせるのでしょう。届け出をせなかったら罰金でしょう。観光客と全く同じ扱いでしょう。私はこれを言うのですよ。何でそんな画一的なことをせねばいかぬのかと言うのです。観光の目的を持って入ってきた者が日本人の職業を奪い取るようなことがあっては労働行政上も大変問題がある、だからあなたの職業は、あなたの勤める事務所は、こうなるのだけれども、観光客で入ってきた者が、実際にはどこかの事務所へ勤めてサラリーをもらうんでしょうかね。何でこんなことを資格外取り締まりと言うのですか。私は全然これは感じが、何遍読んでも一つもぴったりこないのですよ。何で要るのかな。ちょっともう一遍教えてください。
  89. 當別當季正

    ○當別當説明員 日韓の法的地位及び待遇に関する協定に基づく協定居住者あるいは昭和二十七年法律百二十六号二条六項に基づいてわが国に居住している方々、それを中心に御質問だというふうに伺いましたので、その点にしぼってお答え申し上げます。  なおその前に、先ほど登録課長の方から、これらの人々については外国人登録法第四条に定める二十の登録事項は十一だというふうに申し上げましたが、別にこれは法律で十一にしぼっておるわけではございません。と申し上げますのは、二十の登録事項のうち、一の「登録番号」とか二の「登録の年月日」というのは、これは市町村の窓口で書くわけでございまして、申請者が記載するわけではございません。一番最後の二十の「市町村の長の職氏名」、これも同じことでございます。それ以外に、「国籍の属する国における住所又は居所」とか「上陸した出入国港」だとかあるいは「旅券番号」とか、こういう点につきましては、わが国で生まれ、またわが国で育ったというのがこういう人たちの二世、三世の人たちでございますから、現実に登録事項ではあっても、実務の運用の上は斜線を引いて登録証明書あるいは登録原票に記載しておらない、こういうことが申し上げた趣旨でございます。  御質問の本論に移らせていただきますと、まず大前提といたしまして、外国人登録制度というものの果たしておる役割りということを簡単に御説明させていただかなければなりません。  御承知のとおり、外国人登録制度が始まりました当初は、戦後の混乱期でございましたし、多数の二重登録あるいは虚無人登録、俗に幽霊登録と呼ばれておりますが、そういうことがございまして、非常に混乱を来した時期でございました。また、当時は主要食糧の配給ということに果たした外国人登録の役割りというものも無視できなかったわけでございます。  わが国も戦後長期間を経過いたしまして、国際的地位向上とかあるいは国際交流活発化というようなことに伴って、委員御承知のとおり、昨年の通常国会におきましては難民条約への加入に伴う関係法律の整備に関する法律によりまして、年金制度につきましては国籍要件を撤廃する、児童扶養手当とか特別児童扶養手当につきましても同様の制度がとられておることは御承知のとおりでございます。広く言いますと、社会保障あるいは社会福祉制度の上で外国人登録の果たしておる役割りというものが、近時非常に重要になってきたわけでございます。医療給付とかあるいは雇用保険法などに基づく給付なども同じでございます。  私が何を申し上げたいかと申しますと、登録事項のうちの職業とか勤務所の名称及び所在地というような点につきましては、いま申し上げましたような各般の社会保障措置、行政措置をとる上で、むしろ永住的な資格で在留していただいております外国人の方々の利便にも沿うところがある、そういう点が多いということを申し上げたいわけでございます。  窓口にこういう方々が申請に行かれますときに、登録証明書に記載してございませんと、市区町村の窓口に行って登録済証明書を取ってきてくれということを言わざるを得ません。そういう方々は、市区町村の窓口でいま言った必要な登録事項についての登録済証明書を取得して各種の給付行政の窓口に行かなければいかぬということになるわけでございます。そういたしますと、もちろん勤務時間外とかあるいは日曜祝日というようなことは、そういう要望には沿えませんし、先生御承知のとおり、現在機関委任事務として外国人登録事務を取り扱っていただいております市区町村の窓口は、いかにして業務を簡素化し、また合理化し、財政支出を軽減化するかというようなことで非常に苦労しておられるところでございます。そういうところにまた多数の登録済証明書の申請案件が殺到するというようなことになりましても、われわれの立場からいいますと、外国人登録事務の委託費の問題にも絡んでまいりますし、いろいろ市区町村に過大の負担をかけるということになります。これは外国人登録証明書あるいは登録原票にそれぞれの記載が登録事項としてあることによって、非常にスムーズにそういう方々の利便にも沿うゆえんであるというふうに考えておるわけでございます。
  90. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま審議官からも御答弁があったのでありますが、私は、証明書を持ってたとえば福祉関係申請に行くというようなときには、登録のいわゆる証明書、証紙といいますか、写しをもらってきなさいというようなめんどうなことをせずに、証明書を持っていけば非常に簡単にサービスがしてもらえる、だから持っておかなければいかぬのだという御意見、これは自分の必要があるから、証明書を持っていくのはわかると言うのです。それはいいと言うのです。自分が少しでもサービス向上してもらいたいと思って持っていかなければならぬところへ持っていくというのはいいと言うのです。だけれども、取り締まられるために証明書を持って歩かなければいかぬということはやめた方がいい。私はそういう意味のことを言っているのです。  それで、いま私がここで質問しているのは、職業と事務所です。この職業と事務所、いわゆる勤務先をかわった都度二週間以内に届け出をしなければいかぬということは、あの人たちは、大変失礼でございますけれども、われわれ日本人のものよりは一層職業が不安定でございますよ。いま皿洗いをやっているかと思えば、その次の月には今度はボイラーたきの助手に行ってみたりというようなことが多いのです。それを一々二週間以内で届け出しようったって大変ですよ。何のために職業や勤務先の届け出が要るかと言うのです。これは観光客なら話は別ですよ。別だけれども、もう協定永住権を持った人とかあるいはその子とか孫とかいうような人たちが、何でそんな職業や事務所なんかを一々二週間以内に届け出なければいかぬのか。日本人と同じように住民登録で十分じゃないかというふうに私は思うのであります。だが、時間がありませんので、これでここのところはやめさせていただきます。  そこで、せっかく人事院の方がお見えいただいておりますので、一つだけ質問をさせていただきます。  政府の方から出しておりますところの在日の韓国あるいは朝鮮人の問題のことでありますが、これは国家公務員あるいは地方公務員に採用してもらえるかどうかという問題について見解が出ておりますな。昭和五十四年四月、政府は一体どういう見解を出しておられるかということを、まず冒頭に教えてください。
  91. 白戸厚

    ○白戸政府委員 お答えいたします。  当然の法理といたしまして、公権力の行使あるいは国家意思の形成への参画に携わる公務員になるにつきましては日本国籍を必要とする、しかし、そうでない公務員についてはその必要はないという見解があるわけでございます。
  92. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いまおっしゃいましたとおり、公権力の行使あるいは公の意思を決定する機関というもの以外はどこへ採用してもそれは差し支えはない、いわゆる国籍の禁止ということはやっていないということでございます。  さて、そこでまず人事院の方にもう一つお尋ねしておきたいと思うのは、ちょっと具体的になりますけれども、国家公務員について具体的に、たとえばこの職種あるいはこの職階についてはよろしいよというようなことをお決めになっていますか。あるいはどこが決めるのですか。
  93. 白戸厚

    ○白戸政府委員 ただいまの国家公務員のうちの公権力の行使または国家意思の形成への参画に携わる者に該当するかどうかという点につきましては、やはり官職の職務内容を検討いたしまして個別具体的に判断する必要がある、こういうことで、一般的にその範囲を確定するということが困難でございますので、それはいたしておりません。
  94. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま、一般的にどの職種、どの職階ですよということは区別をしておりません、ただそういう問題が起きてくれば個々にそれを調べて判定をいたしますということでありますが、これは雇ってもよろしいということを決めるのは、最終的にはどこですか。
  95. 白戸厚

    ○白戸政府委員 ただいまの判断をいたしますのは、やはり第一次的にはその官職の職務内容をよく知悉しております任命権者ということになるわけでございますが、その任命権者において判断が困難であるという場合には、私ども人事院の方に尋ねてまいることもございまして、またさらに、その場合に私どもとしても判断に迷うというようなときには、法制局等とも意見交換をいたしながらその決定をいたしていく、こういうことでございます。
  96. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、もう一遍確認しておきたいと思いますが、国家公務員法並びに地方公務員法の上におきましては、国籍条件はないものと理解をしておりますが、そのとおりですか。
  97. 白戸厚

    ○白戸政府委員 国家公務員法あるいは地方公務員法の中に国籍をその条件とするというような規定は入っておりません。  なお、ただ実は外務公務員の関係につきましては、外務公務員法の第七条にその規定がございます。
  98. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、これは自治省の方にもなるかと思いますが、あるいは人事院と両方にかかわるかもわかりませんが、地方公務員についてでございますけれども、地方公務員法については、いま人事院の御回答がありましたように国籍条件はない、国家公務員にもない、あるのはいわゆる外務公務員に対してあります、こういうことでございました。  さてそこで、地方公務員においては国籍条件を明示してあるところがあるかどうか。これはたとえば私どもの漏れ承っておるところでは、これは先ほどの国の方にも関係がありますけれども、今回、国立大学の教授については今度新しく法律が出ておるようでありますから、これはもう触れないことにいたしたいと思いますが、地方におきますところの小中高、それから大学、こういう関係におきましてはまことに奇妙きてれつなことがありまして、どういう現象が起きておるかと思いますと、国籍条項を明記してある都道府県が三十と聞いております。それから国籍条件なんかはありませんということを明記しておるのが十七都道府県。この十七都道府県におきまして、すでに二十九人の先生方が教鞭をとって現地指導に当たっておるわけでありますが、不思議なことに三十の都道府県では国籍条項を明示してある、日本国籍を持たなければならない、こういうふうにしてあるから、試験に合格したって日本国籍を得なければ就職できませんよ、こうなりますから、もう頭から試験を受けさせぬ方が親切ではないかというので、試験を受けさせないようにしておる。  これは一体どうしてこうなったのかということをいろいろ調べてみますと、実は外国人を学校の現場で雇うということは、公務員の当然の法理である公権力の行使に抵触する部分があるという見解を文部省が出したと聞くのです。そのために全国で三十の都道府県がざあっと外国人締め出しの方法をとっているというふうに聞いておりますが、私の間違いでしょうか。それがもし間違いでないとするならば、いま人事院の言われたことと文部省の言われることとはその見解がまるっきり違うことになりますが、どういうことになりますか。
  99. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 お答えいたします。  公立の小中高等学校等の教諭の職務でございますが、これは児童生徒の教育をつかさどるということと同時に、学校の校務の運営に参画するという点がございまして、先ほどの公務員にとられております一般的な当然の法理として公権力の行使または公の意思形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とする、この法理の部分内容をその職務が持っているということでございまして、こういうことから正規の教諭としては外国人を任用することはできないものということは従来から解釈され、そのように運用されているところでございます。したがいまして、これに基づきまして文部省といたしましてもそういう指導を行っておりますし、先ほどお話にございましたように、全国都道府県のうち三十の都道府県におきましてはそのいわゆる国籍条項を明記しているわけでございます。そこで私どもとしては、公立の小中高等学校につきましては、教諭についてはただいまのような指導をしておりますので、各都道府県ともこれに適切に対応するように要請をしているところでございます。  それで、先ほどの人事院の方からのといいますか、御指摘のございました政府の答弁書との問題でございますけれども政府の答弁書におきましては、やはり一般論といたしまして、国あるいは地方公共団体の職員のそれぞれの職務内容は法令によって特に一律に明定されているわけでございませんので、一般的にはそれぞれが公権力の行使または公の意思形成への参画に携わる職員であるかどうかにつきましては、一般的にそれぞれの任命権者においてその任命に係る職の職務内容を検討して決めていく、そういう趣旨を述べたものだと考えておりまして、ただ公立の小中高等学校の教員につきましては、これは学校教育法におきましてその職と職務内容とが明確に定められていることから、これは各地方公共団体によってその教諭の職務内容が全く異なるというものでもございませんので、統一的に取り扱ってしかるべきだ、そういうふうに考えておるところでございます。
  100. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どういうふうに取り扱うのですか、入れてもいいというのですか。
  101. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 これは学校教育法という法令によって明確にされているわけでございますので、全国的に統一して取り扱っていいというふうに考えているところでございます。
  102. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私の質問が悪いのでしょうか。はっきり申し上げまして、公の権力を行使するあるいは公の意思を決定する、いわゆる形づくるというような立場日本人以外の者を採用してはいけませんよ、こういうふうにしてある、これが人事院の見解です。あなたは、それは一般的な見解で、一般論である、だから個々にわたったら個々で判断するんだ、こう言う。文部省としては、教育の現場に臨む先生というのは公の意思を形成する者として外国人であってはならないと要請をしておる。その要請に従って、三十の都道府県はいわゆる国籍条件をばちっと入れてしまった。そして国籍条件を入れていない、外国人でも入ろうと思えば入れるよという都道府県は十七の府県に及んでおる、こういうことでございましたね。  そこで、文部省がそういうふうな外国人を雇っちゃいけないよ、公の意思を形成する場所が学校の先生だよ、こう言うのだったら、その十七都道府県は文部省の指導に違反をしておるのですか、法律違反ですか、何違反ですか、何でもないんですか。三十の府県が、文部省の要請に従っておる方がばかなんですか。
  103. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 もう一度整理をして申し上げますと、まず公務員については、その公務員の当然の法理として公権力の行使または公の意思形成の参画に携わる公務員となるためには日本国籍が必要である、こういうことでございます。  そこで、公立の小中高等学校の教諭の職務を見ますと、これは特に学校の校務の運営に参画するということをその職務の内容にしておりますので、公の意思形成への参画と認められる事項をその内容にしているということでございまして、そのために従来から正規の教諭として外国人を任用することはできない、そういう解釈がとられ、運用されてきているところでございます。  それで、そういう指導に従いまして、御指摘の都道府県のうち三十の都道府県はそれを明記しているわけでございますが、残りの十七の都道府県は明記をしていないわけでございますけれども、ただ、明記をするかしないかということは、これは募集要項上の問題でございますので、明記をしていなくても外国人は採らないというところはかなりございます。  それで、その点については明記をした方が私どもとしては適当だと考えておりますが、明記をしないからといって、それが違法だとかなんとかということには直ちにはならないと思いますが、いずれにしても、法理で制約をされているわけでございますから、もしその外国人が正規の教諭に採用されるという状態ができれば、それはこの法理に反するという結果になっているというふうに私どもとしては考えております。
  104. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そういたしますと、はっきり申し上げまして、国籍条件を設けていないところの十七都道府県において二十九人の先生が教鞭をとっておりますが、この人らの取り扱いはどうなるのですか。
  105. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 これは十七都道府県の中で採用されておりますのは、その中の三県程度でございます。  その場合にどうなるかということでございますが、それは日本の国籍を有しない者が教諭として任用されている場合には、それは先ほど申しました法理に抵触するという状況にあるというふうに申し上げるわけでございます。
  106. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私の質問が悪いのですかな。私、日本語、悪いですか。  文部省は、公の意思を形成するのが小中高の学校の先生であるから、それは日本人でなければだめだよということを要請した。それをはっきりうたったのが三十の都道府県である。うたってないのが十七の府県である。いま現実に二十九人の教師がおる。それは首にするのですか、はね出すのですか、あるいはそこの教育長を、おまえ、違法行為をやっているといって更迭を知事に要請するのですか。どうなるのですか。
  107. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 そういう場合に、先ほどから申し上げておりますように法理に抵触している状況にあるわけでございます。ですけれども、現にその任用されております者につきましては、その身分を直ちに左右するということは、それは現実にその学校運営の問題とかあるいはその者の生活の営み等の問題、実際問題がございますので困難でありますが、こういう法理ということが公務員にとられている、そういう法的な取り扱いの趣旨を踏まえて各任命権者において円滑なその取り扱いを期待しているところでございます。
  108. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、もう一遍はっきり言いますが、いま文部省の意思に反して勤めておられる二十九人の教諭、これは将来国籍条件を排除するかどうかは将来の問題として、直ちにいまのところ、二十九人の先生方の身分については何ら変化はないということでよろしいのですな。
  109. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 ただいま申し上げましたように、それはやはり現実問題としての対応を各任命権者においてしなければならないことだというふうに考えております。
  110. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 自治省の方に続いてお尋ねをいたしますが、地方公務員についてやはり同じことをお尋ねするのでございます。  そこで、地方公務員の関係におきましては、これはいますいぶんあちらこちらに採用されておるところもあります。地方自治団体といったら九十ぐらいもありますよ。ですから、別にどうということはないのでありますが、いま文部省が、小中高の先生については日本人にあらざれば教員であらずということを、またえらいどぎつい通達を出しておりますので、これからずいぶん世論が沸き返ってくる問題だと思っておりますけれども、それに似通ったことが将来起きないためにもこの際お聞きしておきたいのですが、人事院の方で御回答のありました地方公務員について、これは国籍条件は採用についてはないというふうに考えておってよろしいかどうか。
  111. 木村仁

    木村説明員 昭和五十四年四月十三日付、在日韓国・朝鮮人の地方公務員任用に関する質問に関する答弁書、これは地方公務員についても同様のことが言われてあるわけでございまして、当然の法理によって公権力の行使または公の意思の形成に携わる地方公務員については外国人は採用できない、しかし、そのほかの公務員については採用することも可能である、こういうことでございまして、地方公共団体において実態の実情に即して公権力の行使または公の意思の形成に携わる公務員であるかどうかということを認定して採用しておる、こういうことでございます。
  112. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 もう一つお尋ねしておきますが、非常によくわかる説明であります。しからば、具体的にはどういう職種、どういう職階を言うのでありますか。あるいはそのことにつきまして、各地方団体にこういうものでございますというような何か基準でも示しておられますか。
  113. 木村仁

    木村説明員 先ほど人事院から御答弁がございましたように、具体の職種について画一的にこれは公の権力の行使あるいは公の意思の形成に携わる公務員であるということを認定することはきわめて困難でございます。まして、地方団体にはそれぞれ実情がございますので、各地方団体において具体の事案を検討して決定をする、こういうたてまえでございます。
  114. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後に、文部省の方おいでですか。いま出されております法律案で、長年言われてきました国立大学へのいわゆる大学教授の就職、この件につきまして今回法案をお出しになっておりますが、その法案の中で、私の勘違いかどうか知りませんが、教授会への出席はよろしい、教授にも採用するし出席もよろしい、そこで採決にも加われます。しかしながら、学長や副学長には就任することはできませんという文字が入っておるのですか、どうですか。
  115. 十文字孝夫

    ○十文字説明員 ただいま先生お話しのように、本年四月九日に、国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法案ということで、これは議員提案で衆議院文教委員会の方に付託されているわけでございます。  それで、この法案の中身につきましては私どもも拝見をいたしておりますが、この法案におきましては、ただいま先生がお話しになりましたように、国立または公立の大学におきまして外国人を教授等に任用することができる、そしてそういうふうにして任用された教授等は教授会の構成員となり、そして議決にも参画できる、そういうような内容になっておりますが、ただいまお尋ねの学長、副学長あるいは学部長といったものにつきましては、この法案では何ら規定をしてございません。規定をされていないということは、先ほど来いろいろ質疑応答がございましたように、従来から公務員一般につきまして、公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員に外国人を任用することはできないという法理がございますので、その法理にゆだねられているということであろうかと存じます。
  116. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後に、大臣の御意思を伺って質問をやめたいと思います。  非常に時間がないものですから、いまいろいろと飛び飛びの質問になりましておわかりにくいところもあったと思いますが、外国人登録法というのは非常にむずかしい、また運営においてもなかなか困難の伴う問題でありますだけに、慎重にその審議を尽くしていかなければならぬと思うのですが、一番肝心なことは、どんなに文字をかえてみたところで、問題は人間としての心ですよ。精神が、人道的な配慮といいますか、そういう方面へ十分に重心がかかっていないと、こういう法案というのはともすれば冷たく冷たく取り扱われがちになります。その点、運用の面におきまして大臣に特に要望申し上げたいと思います。この法の運用を人道的な立場に立って温かい気持ちで運用していただきますようにお願いをしておきたいと思うのでありますが、大臣、いかがでございますか。
  117. 坂田道太

    坂田国務大臣 御指摘のとおりに、この法案というのはなかなかむずかしい問題で、しかも終戦直後と今日とでは事情も非常に変化をしてきております。その中にありまして、日本国自身が、どちらかといいますと歴史的に言えば閉鎖的な社会を構成した、またそれなりにいいところもあった、あるいは平和を維持した点もあると思いますけれども、今日は交通機関等も非常に発達をいたしまして孤立して生きられない、そういうような社会に変貌してきております。また一面におきましては、日本がこの三十六年平和であり、かつ経済的にも発展をして、しかもなおかつ歴史と伝統を持ついろいろ魅力ある国になっておるということで、最近世界の人々日本を訪れる、あるいは日本から学びたい、たとえばミッテラン大統領もそのようなお気持ちで来られたというようなことでございます。この間参りました西ドイツのシュムーデ法務大臣にお会いしましたけれども、かつては日本はドイツからいろいろの制度を学んだかもしれないけれども、今日、われわれ西ドイツが日本に学ぶべきものがあるようだから実は視察に来たんだ、こういうことでございまして、いろいろ変化をしております。  それであるがゆえに、国際社会の一員として本当に経済だけじゃないんだ、人道的にも人権が擁護され、本当に自由な社会なんだ、こういうことを世界各国の人が認めるような、それの実質内容を備えたようなものにしていかなければならない。しかし、法案といたしましては、従来からのいきさつもございますし、一見非常に冷たいように見えるけれども、よく調べてみるとそうでもないという面もないわけではないということでございます。しかし、いま御指摘の点は私も重々お聞きをいたしておりまして、肝に銘じております。この運営につきましては人道的見地から十分配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  118. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。
  119. 中川秀直

    ○中川(秀)委員長代理 林百郎君。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣、それから入管局長にお聞き願いたいのですけれども外国人登録法または入国管理令の中で、近代的な日本として改善をしていかなければならない本質的な問題が含まれているんじゃないかということを、私、つくづく感ずるわけなんです。今度若干外国人登録に関しての拘束を緩めて外国人権利を広げる方向で進められたことについては、われわれ評価するにやぶさかではありません。しかし、いままで各同僚議員も質問をしておりましたように、登録証の不携帯の問題、それから指紋の押捺の問題等は実際どう行われているかということを、私、ちょっと入管局長にもまた法務大臣にも知っておいてもらいたいと思うんですが、皆さんがここでお答えになるようなきれいごとで済んでおらないということなんです。  一例として、私のところへ来ておる最近の朝鮮の人からの手紙を読んでみますと、こういうことがあるのですね。  昨年の五月十四日だったと思います。この人は、甲府に住んでいる方ですが、八王子の梅原さんという方と一緒に八王子の近くの知人の法事の帰りに自動車に乗って、一緒に行った梅原さんが運転をしてきた。ところが、スピード違反だということでとめられまして、運転しておった梅原さんはまず自動車の運転免許証を出せと言われたわけです。それだけで済まないで国籍を聞かれたので、朝鮮の人だというように答えたところが、後ろに乗っておった金さん親子に対しても、あなた方は一体どこの人だ、朝鮮の人だと言ったら、じゃ、登録証見せろ、こう言ったというのです。  金さん親子は、印鑑だとかお金だとか登録はいつもピンクのパックに入れてあるのだけれども、それを冷蔵庫の上に置いて法事に行ったということで、途中でそのことに気がつきまして、これはどんなことがあってもこのバックは持っておらなければならないということで、わざわざ途中で自分の家に電話をかけたところが、めいが出てきまして、それは確かに冷蔵庫の上にありますから心配のないようにと答えられたわけです。  ところが、勝沼の警察の分駐所では、金さん親子も、申しわけありませんでした、法事に行くところだったものですから、印鑑やお金や登録証を入れたのを冷蔵庫の上に置いてきまして、いま電話で確かめても確かにあると言っておりますと言ったところが、警察の方は、わびているにもかかわらず、一たん調書はとったらしいのですが、また呼び出しをするから来られたいと言うのです。ちゃんと登録証も家の冷蔵庫の上にあることもわかっているし、法事で来たものですから忘れていたので済みませんでしたと謝っているのに、出てこいということでまた呼び出された、こういう問題があったのです。  続いて七月二十日に、今度は塩山署から呼び出しがあって、守屋という警備主任が三時間余り調べた。その内容は、なぜ登録証を携帯していなかったかということではなくて、財産はどうだ、家はどういう構成だ、貯金はどのくらいあるんだ、結婚はどういうことになっているんだということを聞いて、その上、今度は鉄のいすの上に座らしていろいろな角度から写真を撮って、全く罪人扱いで本人は涙が出たというのです。私は警察の人に、どうしてこういうことをするのですかと言って抗議をしたというのです。朝鮮の人ですから言葉が不自由だったのですけれども、涙を出して抗議した。ところが、警察の方では軽べつした眼で自分を見ながら、これは規則だ規則だ、だれにもこうやっているのだということで、十本の指の指紋を何回も取ったというのです。それから足形を取り、手形も取り、身長、体重まではかったというのです。  すべて規則だ規則だということでやったというのですが、登録証を持っていなかったからといって、一度調書をとったのをまた出てきて、このときに警察の方は勝沼の分駐所で電話で甲府の市役所へ問い合わせをしたそうです。この金さん親子は外国人ですかということを問い合わせしたところが、甲府市の方では確かにそういう登録はしてありますから間違いありませんという確認をとっておるにもかかわらず、今度はまた改めて塩山署から呼び出しが来た。そして運転手のほかに後ろに乗っていた友人の金さん親子までが何十回となく十本の指の指紋を取られ、足形も取られ、手形も取られ、身長まではかられたと本人は言っているのですが、一体こういうことはできるのでしょうか。  本人が涙を出して、私をそういう重大犯罪人扱いにすることはやめてくれと言っているにもかかわらず、両手の指全部の指紋を取り、そして足形まで取り、そして三人とも写真を何十回となく撮っているというのですね。交通違反でなくて、後ろに同乗していた朝鮮の人の金さん親子のね。本人が涙を出して抗議しているのに、こういうことをやれるのですか。これは局長、どうですか。
  121. 吉野準

    ○吉野説明員 お答えします。  お尋ねの事案はこれであろうかと思いますけれども、昨年、山梨県の塩山警察署で取り扱った事案でございますが、五月十四日十四時四十分ごろでありますけれども、スピード違反の車を認めたわけでございまして、これが三十四キロオーバーのスピード違反でございましたので停止させて職務質問したところ、運転していた人が外国人だということがわかったわけでございますけれども、無免許であった。さらに質問を続行したところが、外国人登録証も不携帯である。さらに、ただいま御指摘のように後ろに二人の人が乗っておったのでありますが、この場合無免許でスピード違反で悪質なものでありますから、当然のこととして無免許の幇助ではないかという疑いがございましたので、いろいろ職務質問を行ったということでございます。その結果、同乗した二人も外国人で登録証不携帯ということが判明いたしました。  実は、その日調べたかったのでございますけれども、ただいまお話しのように、法事の帰りで大変時間的に急いでいるということでもありましたので、ごく簡単な取り調べで済ませまして、後日都合のいい日に出頭してもらうということを約束して帰っていただいたということでございます。そして打ち合わせの上、約二カ月後でありますが、七月二十日に、三名とも都合がよいということで塩山警察署に出頭を求めて、外国人登録証の不携帯の事実について取り調べを行ったということでございます。  取り調べの状況をいまいろいろお話ございましたけれども、通常のこの種事件の場合と全く同じでございまして、立件送致に必要な事項を聴取して供述調書に録取いたしております。なおその際、捜査上の必要から本人の御承諾を得まして指紋、写真、身長、足長等の捜査資料を作成いたしております。本人が泣いているのに何だというお話のようでございますけれども、これは犯罪ありと思量すれば警察はこれを捜査する義務がございますので、いろいろな情状等は別途酌量いたすとしましても、このような際はやはり捜査をする必要があると現場で判断をして、必要な捜査を行ったということでございます。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 あなた、自分でその場で捜査なさったのですか。ばかにリアルに話しているのですが、それはどこかから聞いた話じゃないですか。その後ろに乗っていた人がスピード違反の幇助をした疑いがあるということは、どういうことでそういう疑いがあるのですか。幇助とは何をやったというのですか。
  123. 吉野準

    ○吉野説明員 免許を持たない人のそばに座って、免許を持っている人がいわゆる練習をさせるという場合がよくございます。この場合もそういうことがあるのではないかというふうに疑問を感じた。結果的にはなかったのでございますけれども、そういうふうに思ったということでございます。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、警察官が職務を執行するに当たって、そういう実際幇助はしていなかった、ただ後ろに客として乗っていたその人に対して、登録証明書の提示をそういうように警察官の任意の考えだけで求めることができるわけなんですか。これは登録法の十三条に、警察官は職務の執行に当たって登録証明書の提示を求めるとあるし、それから、警察官の職務執行法によれば「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。」というのでしょう。どういう犯罪を犯し、もしくは犯そうとしたことを疑うに足る相当の理由があったのですか。
  125. 吉野準

    ○吉野説明員 ただいま御指摘の外国人登録法十三条に言いますところの職務上の必要ということにつきましては、これはいろいろ範囲が広いわけでございまして、警察官はおよそ公共の安全と秩序を維持する上で必要な職務を広く全般的に執行しているわけでございまして、これはただいま林委員御指摘の警職法の場合もございますし、犯罪の捜査そのものもございますし、あるいは交通の検問というものもございましょうし、あるいは泥酔している人を保護するという保護という任務もございますし、これは全般にわたっているわけであります。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 そんなことはいいですよ。だから局長外国人登録証の携帯については、本人の確認じゃないのですよ。警察は、犯罪人かどうかを認定するための手段としてこれを使っているのですよ。あなた方は、いかにも本人を認定するために指紋も要る、常時携帯も要るなどと言うが、実際はそうじゃないのですよ。  現にそのことについては、九十一国会でこういう答弁を法務委員会でしているわけなんです。「職務の執行に当たり」というその職務とは、犯罪捜査であるとか職務質問であるとかいうもので、職務の執行に当たり、「それに際してこの方が外国人である、その身分を確認するという必要性がある場合に呈示を求める、」「一般的にというか唐突にめったやたらに外登証の呈示を求めるということはできないわけであります」と。だから、この問題は運転手がスピード違反とそれから免許証を持っていたかどうかということで調べているわけでしょう。それと関係のない後ろに乗っている朝鮮の人に対して何で外国人登録証の提示を求めることができるのですか。国会の答弁ではそんなことを許されていませんよ、めったやたらに何でもできるなどということは。  局長、そういう意味で警察は、朝鮮の人さえ見れば、登録証はあるか。要するに、朝鮮の人たちを威圧し、そしてそれによって民族的な従属関係にする手段としてこれが使われているわけなんです。決してあなたの言うようなきれいごとで、外国人を確認するために必要ですとかなんとかなどということを警察は考えていないのですよ。だから、警備警察でやっているでしょう。第一、あなたその場にいたのですか。塩山の分駐所でちゃんと甲府の市役所へ問い合わせて、この人は外国人であることは間違いありませんという確認はもうしているのですよ。それにもかかわらず、またあなたは、本人が承諾しましたから任意に写真も数枚撮り、そして指も十本指紋を取り、手形も取り、足形まで取るなどということをあなた方はやるのですか。何でそんな必要があるのですか、外国人登録証の問題で。そんなものはあなた方、職権乱用ですよ。あなた方の方が告訴されてしかるべきですよ。  あなた、そこの当該の分駐所の警察官がやったということを知っていますか。本人が泣いてこんなことまでされるのですかと。それは朝鮮の人ですから、抗議といったって、日本人みたいに日本語を巧みに使って抗議はできないでしょう。しかし、涙を流してこんなことまでするのですかということは、嫌だということじゃないですか。あなたの言うように、進んで協力したからやりましたなんて、そんなことが言えますか。  まず、警察とそれから局長にお聞きしたいと思うのです。私は、そういう体質を持って外国人登録法を使用していたら、これはあなたの言うように実際外国人であるかどうか日本の国益のためにやるんだということは、筋が通らぬと思うのです。ことに朝鮮の人というのは、私がここで言うまでもなく、あなた、いつから入管行政に携わったか知りませんけれども、もともと独立した国だったのでしょう。それは日韓合併とかなんとかという名のもとで強制的に朝鮮の人たちの意思に反して合併されて、そして太平洋戦争前は数百人ぐらいしか日本にいなかった方が、戦争に協力するということで二百万人も連れてこられたのでしょう。そして戦争に協力させられ、非常に奴隷的な仕事に協力をさせられ、そしてその後はその人たち日本にいて、日本の生活にだんだん溶け込んで、いまや日本人たちとほとんど変わりない意識を持っているわけでしょう。税金も納めていますし、それから日本国民と同じような義務を果たしているわけでしょう。だんだん溶け込んできているわけですよ。もう二代にもなる人もおりますし、そういう人をいつまでも戦前の植民地であったような扱いをなさっているのでしょうか。  私は、日本外国人に関する入管行政の本質の中にそういうものがどうしてもあると思うのです。それはりっぱな外国人でもあるし、しかも外国人でありながら、日本とは特殊の関係がある外国人で、むしろわれわれは長い間苦労をかけた朝鮮の人たちに免罪を求めるような温かい処置をしてやらなければいけない立場にある外国人です。普通の外国人とは違うのですよ。それを警察官の言うように、まるでいつでも犯罪人扱いにして、朝鮮の人と見れば登録証を持っているか、登録証を持っているか、こういうことを言うということは許されるかどうかということです。  私はいま甲府の例を出したのですけれども、同じような例を申しますと、登録証明書を持っていることがただ外国人と認定するだけのものであるかどうかということは、これが全く否定されるような事案があるのです。たとえばちょっと古いのですが、一九六二年には茨城県の朝鮮中高級学校に武装警官が九十六名入り込んでいるのです。そして、登録証があるかどうかということを調べている、警察官がジープやトラックで分乗して。そんなことまでして登録証を調べなければいけないのですか。しかも、警察官の一部は女子寮へ土足のまま押し入って、手当たり次第捜査をしている。何も登録証と関係のない学生の家庭調査簿や出席簿や学級日誌、そういうものを押収していくわけです。これは局長、何とあなたがうまいことを言ったって、これは朝鮮の人たちを、朝鮮の人と見れば半ば犯罪人と思えというような扱いと変わりないじゃないですか。  それからまた違う例、たとえばこれも一九六三年ですが、竜ケ崎の朝鮮人の夜間学校ですが、女子の教員に対して、授業中に警察官が入っていって、授業をしている先生に対して、あなた、外国人登録証を持っていますか。いや、いま授業中だから、家にあることは間違いありませんから、あす必ず持ってきますからということをその女子の教員の人は言っているわけですね。ところが、いや、そんなことは承知できないと言って、授業中にもかかわらず、生徒の前でその先生、しかも婦人の先生を教室から引っ張り出している。  これは古い例ですが、最近こんなような例はたくさんありますけれども外国人登録証の常時携帯に絡んでこういうことが許されるのでしょうか。まず警察と、それから局長にお聞きしたいのです。
  127. 吉野準

    ○吉野説明員 ただいまのお話では、何か警察が外国人、なかんずく韓国人なり朝鮮半島出身者に対して片っ端から差別的にいろいろと職務質問しているのではないか、取り締まっているのではないかというお話でございましたけれども、私どもそういうような指導は全くやっておりませんし、第一線でもそのようなことはやっていないと承知いたしております。  先ほどから御指摘のこの事件の場合も、私が現場へ行ったのかというお話でございましたが、私はもちろん行ってないわけでございますけれども……(林(百)委員「報告を聞いているだけだね」と呼ぶ)そうでございます。抗議がございましたので、詳しく調べてみました。その結果、御指摘のように涙を流してというようなことは聞いておりません。逆に申し上げたいのは、子供さんを連れておったので子供をあやしたり、それから担当の取り調べ官が、お昼になりましたので、ポケットマネーで食事を出して食べていただいたというようなこともやっているわけでございまして、決して差別的に、非人道的に扱ったというようなことはございません。
  128. 大鷹弘

    大鷹政府委員 先ほども申し上げたのでございますけれども、現在、わが国に対する不法入国者入国、密航というものは、ケースは非常に多いわけでございます。摘発された件数だけで判断するわけにいかない、むしろそれよりもはるかに大きい数の不法入国者日本に入ってきている、それで摘発されていない、こういう状況ではないかと思うのでございます。  そこで、たまたま道路交通法違反の件でとめた外国人と認められた人、この人について、外国人登録証の携帯の有無を警察官がその場で問いただすのはきわめて当然のことだろうと思います。もしかしたらその人が不法入国者であるかもしれないわけでございます。同時に、警察官の方は、そういう外国人登録証の携帯義務の有無だけではなく、広く犯罪捜査に当たっておられますので、もしその疑いがあれば、当然その職務を行われるわけでございます。したがいまして、いまのお話を伺っていて、私どもで不都合を感ずる点はございません。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 何を言っているのかよくわからないのですが、それじゃ、九十何名もの警察官が大学へ行って、大学の生徒全体に登録証明書があるかどうか、携帯しているかどうかということを調べても、あなたは、決して違法ではないというのですか。それならそれでいいですよ。日本入管行政がそういう本質を持っているというなら、それでいいでしょう。  それから、警察の方に言いますが、あなた、そんなきれいごとを言っていますけれども、本人の私によこした手紙は、そんななまやさしいものじゃないですよ。だれが好んで、あっち向けこっち向けといって写真を数枚も撮られ、あるいは十本もの指の指紋を取られ、そして足形まで取られ、手形まで取られて、それがありがとうございますという気持ちでそんなことをさせる人はありますか、常識で。日本人だって、そんなことをやられれば嫌な思いをしますよ。指紋を取られるなんということは、それはあなたは取ってばかりいるから、取られたことがないから知らないかもしれませんが、取られる者の身になってみれば、指紋を取られるほど、そんなことほど不愉快な思いはないですよ。侮辱を受け、あるいは犯罪人として取り扱われるという不愉快さというものはないのです。それを十本の指の指紋を、しかも数回取っているのですよ。昼飯に何を出したか知りませんけれども、そんなことでその人の気持ちが慰められるということはあり得るはずないですよ。  それから局長も、そういうことをあなたがおっしゃっているなら、もうあなたの思想はわかりました。あなたは戦前から入管行政に携わっていましたか。ちょっと念のためにあなたの経歴をお聞かせ願いたいと思います。戦前だったら、朝鮮の人は植民地の人だったから、それはどういうことでもやれたかもしれません。しかし、戦後の新しい日本の国となって、いまや社会党や共産党の連立政権のフランスのミッテランまで来て、そしてソ連とも外交関係を結んでいるというときに、朝鮮の半分は社会主義国だからといって、あるいはそのほかの理由もあるかもしれませんが、いまもって敵視的な入管行政をなさっているということ、これは間違いですよ。あなたはその反省は全然ないですね、私はこの委員会に来て答弁を聞いていますけれども。そういう意味では、あなたは一体いつから入管行政に携わっているか、念のために、プライバシーで恐縮ですけれども、聞かしてください。
  130. 大鷹弘

    大鷹政府委員 私は、この一年三カ月、入管局長の地位におります。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 それまでは何をなさっていたのですか。プライバシーですから、答える必要がないというならいいですよ。私は警察と違って、無理にあなたに供述は求めませんから。
  132. 大鷹弘

    大鷹政府委員 事プライバシーにわたることで、意外の御質問と受けとめておりますけれども、私は、入管局長の職につくまではずっと外務省に奉職しておりまして、国内、東京在勤と外国の勤務と交互に繰り返してきました。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、ちょっと刑事局長をお呼びしているのですが、まだ来ないのですが、この不携帯罪に対して過失犯というのは認めるのですか、認めないのですか。
  134. 當別當季正

    ○當別當説明員 外国人登録証明書の不携帯罪について過失犯の成立は認めております。学説のみならず、最高裁判所の一貫した判例によりまして、不携帯罪については故意犯のみならず過失犯も成立するということになっておるわけでございます。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、刑法の総則には、過失犯を認める場合は特に法律でそういうことを規定しなければいけないとあるでしょう。これはそれがなくても不携帯罪には認めるのですか。それはどういう法律的な根拠ですか。
  136. 當別當季正

    ○當別當説明員 御質問のとおり、刑法総則には過失犯を処罰する場合には法律の明文の規定が必要だという規定がございます。この明文の規定というのは、学説の多くも認めておりますとおり、それから先ほど御紹介申し上げました判例なども認めておりますように、当該法規の全趣旨を勘案して、過失犯を処罰するということが法規の性格あるいは取り締まり目的、そういうすべての法規の立て方を勘案いたしまして、過失犯を処罰することが必要だという点をも含めまして、特に明文の過失犯を処罰するという規定がなくても、その趣旨が法規全体の立場から読み取れる場合には過失犯を処罰するのだという考え方でございます。これは、外国人登録法の不携帯罪についての判例だけではございません。古くは、有毒飲食物等取締令の過失犯を処罰する旨の最高裁判所の判例以来の考え方でございます。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、うちにあることがはっきりしているけれども、明日は持ってまいりますとか、きょうはふろに行く途中ですから、あるいは夏暑くて洋服を着がえてきましたから、あるいはきょうは海水浴に行くときですからとか、近くにジュースを買いに行くとか、いろいろな例がありますが、そういうような場合、一切過失を認めないというのはどういうわけなのですか。法の全体系からいって、そういうときは常識的に考えてもあたりまえだろう。あるいは朝鮮の人の独特な服がありますね、ポケットも何にもないような。何という服だか知りませんが、ああいうようなものを着ている、そういうような場合とか、本件の場合でもそうですが、うちにあるということは確認されているわけですね。ただ、法事だったから持っていかなかったということですね。そういう考慮というものは全然ないと言うのですか、あなたは。
  138. 當別當季正

    ○當別當説明員 外国人登録法十三条に規定してございます不携帯罪の構成要件の解釈として、過失犯を含むかどうかという問題と、当該個々のケースごとにこれを処罰するに値するかどうかという判断とは、別の問題であろうと考えておるわけでございます。  先ほども申し上げましたように、実態から見まして、登録証明書の不携帯は、その性質上過失に基づくものが多いということは事実であろうと考えられます。しかし、故意に基づくものであれ、過失によるものであれ、登録行政の目的達成を阻害するものであるという点では差異はないわけでございますし、登録法在留外国人に対して携帯義務を課し、その不携帯に対して罰則を科するという点については、過失によるものをも含むという趣旨は、一つ例を挙げますと、昭和二十八年三月五日の最高裁判所の決定においても明示されておるところでございます。  ただ、ただいまの林委員の御質問はこういう御質問ではなかろうかと思うわけでございます。なぜ外国人登録証明書の携帯が必要なのかという考え方、それから、携帯というのはどういう意味だろうか。これはまた最高裁判所が、法律に定められた提示要求権者から提示要求を受けた場合には、直ちにこれを提示し得るような状態で所持することが外国人登録法上の携帯義務の中身なのだということを言っておるわけでございます。したがいまして、個々の事案に応じまして、たとえば家の玄関で提示要求を受けた、しかし、すぐ家の中に入れば登録証明書が置いてあるというような事案、そういう個々具体的な事案に応じて、当該義務違反の態様についての罰則の適用、それから処罰の必要性というものが、それぞれの情状も勘案いたしまして、ケース・バイ・ケースで適正に検察庁の手において行われておるものであろうと考えておるわけでございます。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 それではお聞きしますが、憲法の三十八条には、日本国民は、不当に本人の意に反して自分の不利益なことを述べる必要はないとある。また、刑事訴訟法の三百十一条ですか、取り調べに当たって不利益な陳述をしなくてもよろしいという規定がありますね。この憲法三十八条、刑事訴訟法三百十一条は、外国人登録証の不携帯の罪については適用はないと言うのですか、あなたは。本人が見せようと見せまいと、自分の不利だと思うことは言わないで、改めて言うとか、そういうことはできるわけでしょう。これは適用はないと言うのですか。
  140. 當別當季正

    ○當別當説明員 外国人登録証明書を当該外国人が携帯しておるということは、いかにも行政取り締まり目的のためだけに法律がこういう義務を課しておるように思われがちでございますけれども、これは当該外国人が、自己の適法に在留しておるその地位、身分を即時に証明し得るということで、当該外国人にとっても利便になることであるという側面も大いに強調したいと思うわけでございます。  なお、ただいま委員御指摘の憲法の規定、刑事訴訟法の規定、外国人登録証明書の携帯あるいは提示というものが、直ちに自己の不利益な供述を強制されないという規定に抵触するとは考えておりません。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 あなた、何を言っているのですか。自分は、実はいまジュースか何かを自転車で買いに来ていますが、必ずうちにあります、その場合、おまえ、あれ持っているか――警察ではいまなれっこになって、あれ持っているかと言うのですね。あるいは高等学校の生徒に、調べると言って、一々、おまえはべっぴんだなあなんて、そんなつまらないことまで言ってなれ合っているのですよ。そういう状態のもとで、いまここにないが、うちに帰ればあるわけですから、いや、それはあなたにいまここで言う必要はありませんと言うことは、自分の利益になるじゃありませんか。そう言ってなぜ不携帯罪を負わなければいけないのですか。要するに、刑事訴訟法三百十一条と憲法の三十八条は適用されるかどうかということをそれでは一般的に聞きましょう、あなたに。具体的なことをいろいろ言っていくと、あなたもいろいろな事例を出してきて陳弁これ努めるから。
  142. 當別當季正

    ○當別當説明員 ただいまの憲法並びに刑事訴訟法との関係でございますが、最高裁判所の昭和五十六年十一月二十六日の判決はこのように言っておるわけでございます。「外国人の居住関係及び身分関係を明確にし、もって在留外国人の公正な管理に資することを目的とする手続であって、刑事責任の追及を目的とする手続でないことはもとより、そのための資料収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもない。」というようなことから、ただいま御指摘の憲法三十八条一項に言う「自己に不利盆な供述を強要」したことにならないことは、累次にわたる最高裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。これは直接には、密入国者が新規登録の申請を義務づけられておる、密入国した人が、密入国後九十日以内に住居地所轄の市区町村に出頭して登録申請をしろということを義務づけることは、まさに先生御指摘の憲法三十八条の規定に違反するのじゃないかという上告趣意に対する最高裁判所の判断でございますが、御指摘の不携帯罪につきましても同じ考え方でわれわれは考えておるわけでございます。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたがいま出した最高裁の判例というのは、不法入国者に対する入国許可証を持ってない場合のことでしょう。外国人登録証を持っているかいないかで追及されて、そしてそれに対して、私はいまあなたにそれを答える必要はありません、そういうことを言うことは許されるか許されないかという私の質問に対する真正面からの判決じゃないでしょう、それは。そうでしょう。不法入国者の場合でしょう。じゃ、刑事訴訟法三百十一条はどうですか。
  144. 當別當季正

    ○當別當説明員 具体的な法違反という形態で捜査手続に移行した後は、刑事訴訟法の規定で、「自己に不利盆な供述を強要されない。」というあの規定が適用されるわけでございますが、いま御指摘の点は、携帯義務あるいは提示要求に応じて提示するということでございまして、先ほどの最高裁判所の判例にございましたように、直接刑事責任の追及を目的とする手続じゃないということで、あの最高裁判所の判断を援用して御説明申し上げたわけでございます。
  145. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたの解釈からいうと、外国人登録証を持っているかいないかというようなことに対して、持っていないということを言っても、それが直ちに刑事責任を追及することとは結びつかないんだ、だから憲法三十八条の適用あるいは刑事訴訟法三百十一条の適用はそのときにはないんだ、こういうことですか。
  146. 當別當季正

    ○當別當説明員 先ほどもお答え申し上げましたが、この最高裁判所の判旨に従って申し上げますと、「刑事責任の追及を目的とする手続でないことはもとより、そのための資料収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもない。」こういう考え方でございます。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 警察にお尋ねしますが、あなたの方で写真を数枚撮ったり、十の指の指紋を取ったり、それから足形を取ったり、手形を取ったりしたのは、何もこれを直ちに刑事訴追するということのためにやったのじゃないのですか。それは何のためにそんなことをやるのですか。
  148. 吉野準

    ○吉野説明員 指紋、写真、その他の捜査資料でございますけれども、これは被疑者となった人から、捜査上必要がある場合に採集するわけでございまして、一般に強制捜査で逮捕した被疑者については、事案の性格からいって全部必要があるというふうに判断して全部取っているわけでございますし、任意捜査の場合は強制的に取るわけにいきませんので、被疑者本人の承諾を得て取っておるということでございまして、本件の場合も捜査上の必要ということに基づいて取ったということでございます。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたは、これを直ちに刑事事件として取り上げてあるいは送検をするとかなんとかということに基づいてやったのではない。いいですか。いまこちらの審議官の方は、不携帯というのは本人であるかどうかを確認する必要があるんだ、ことに不法入国者に対する手段としてこういう行政的な措置がとられているんだと言っているわけですよ。だから、それに対していろいろの尋問をするなりしても、それは直ちに刑事事件と結びつけるものではなくて、本人であることの確認を求める必要から、そういう行政的な必要からやっているんだと言っている。ところが、あなたの方は、不携帯だというと、直ちに今度は刑事被疑者としての――刑事被疑者だってこんなことしないでしょう。あなた任意にやったと言うけれども、それじゃ、本人はもう一度呼んで、あなたはあのとき進んでやったんですかどうですかと、国会で問題になりましたからと言って、直接今度は警察庁の本庁の方へ呼んで聞いてみてください。本人はそんなこと言っているはずないですよ、むしろ警察を告訴したいと言っているのですから。  食い違っているじゃないですか。要するに、行政的な目的だというのと、警察の方は直ちにこれを刑事被疑事件として取り扱うんだというのと、そこのところにこの取り扱いやあるいは本人に対する最終的な処置についても非常にニュアンスが違ってくると思うのですよ。警察の言うとおりになれば、みんな被疑者として、さらには送検して、できたら起訴してもらいたい。しかし、行政的な面から言えば本人の確認のためにこれはやるので、だから常に持っていてもらいたいし、いつでも持てるような状態にしておいてもらいたい、こう言っているのですよ。これは食い違っているじゃないですか。警察、どうですか。
  150. 吉野準

    ○吉野説明員 私が申し上げましたのは、この事件の場合で申し上げますと、明確な外国人登録法違反事件でありましたので、その被疑事件として立件することに決めまして、刑事手続として取り調べも行いまして、その際に先ほど御指摘の黙秘権の告知もやったわけでございまして、さらにその捜査活動の一環として、任意で承諾を得ておりますけれども、指紋、写真等をとらせていただいた、こういうことでございます。
  151. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ警察は、登録証明書の不携帯をしておれば、違反として常に立件を前提として取り調べをしていくということですか。本人であることがもういろいろの条件で確認される、あるいは一日待てば外国人登録証を持ってきてちゃんと見せることもできる、そういう条件があろうとなかろうと、とにかく警察が聞いたときに持っていなければ、もう立件だという立場で扱うというのですか。
  152. 吉野準

    ○吉野説明員 警察が取り扱っておりますいわゆる不携帯事案は多数ございますが、決してそのような画一的と申しますか、しゃくし定規な扱いをしておりませんので、注意処分、あるいはもうちょっと注意をする場合は始末書を書いていただくとかいうようなこともやっておりますし、強制捜査に移行するものはきわめて少のうございます。それはやはりその事案の内容内容に応じまして判断をしてやっているところでございます。
  153. 林百郎

    ○林(百)委員 それならあなたにお聞きしますが、一九六二年に茨城の水戸市で朝鮮中高級学校に武装警官を九十六名も派遣して、そこの生徒やいろいろ、全部の外国人登録証明書を持っていたかどうかということを調べたのは、一体どういうわけなんですか。しかも、女子の寮まで入っていって、そこにいる女子を、土足のままで入っていって手当たり次第捜査したというのは、何のためにこんなことをやるのですか。これは当委員会でもう入管の方も常に説明しているのですが、外国人であることを確認したいんだ、本人に間違いないかどうかということを確認したいんだ、そういう行政的な必要があるんだ、そういうことでこのことを言っているのですよ。     〔中川(秀)委員長代理退席、太田委員長代理着席〕 あなたの方は、もう何でも刑事事件だということから手当たり次第刑事扱いにしていく。そうでなければ、武装警官を九十六名も学校へ派遣して捜査するとか、あるいは授業中の先生を生徒の面前から引き出してくる。どうして授業が終わるまでしばらく余裕が置けないのですか。これに対して警察はどうお考えになるのですか。  それともう一つ、私の言ったこととあなたの言ったこととがどちらが真実か。朝鮮の人たち基本的人権を守るために、この私が挙げました、あなたも調べられた五十六年五月十四日の金美代子さんという人の親子、これはお母さんは七十幾歳にもなるのですよ。それがただ運転者がスピード違反だった、運転者が免許証を持っていなかったということだけれども、後ろへ乗っている親子まで調べて、しかも改めてまた塩山署の警備のところへ呼び出して、あなたの言うようなことをしている。これはあなた、本当にこれには快く協力してくれたのですか、どうしたんですかということを改めてあなたが確かめてみますか。これも今後、朝鮮の人たちに対する警察行政の上から、また、本来こういう外国人登録の証明書を携帯させる、そういう行政的な必要とあなたのいま言ったことと非常に食い違っていますから、そういう確認を念のためにされますか。同時に、私はぜひそれはしてもらいたいと思います。そうでなければ、あなた方の責任を追及しなければいけない問題が起きてきますからね。
  154. 吉野準

    ○吉野説明員 塩山の事件につきましては、先ほどもお答えいたしましたように十分調査をいたしておりますので、さらに調査の必要はないというふうに考えます。  それから、六二年の武装警官云々の事件につきましては、何分古いことでございまして、私、ちょっと承知いたしておりませんので、御答弁の限りでないと存じます。  それから、茨城の学校の先生の例はちょっと聞いておりますけれども、これは学校と申しましても、民家を借りた学級のようなものであったようでございますけれども、そこへ警察官が戸別訪問に参りましていろいろ聞いた際に、外国人であるということで登録証を持っておられるかどうか聞いたところが、持ってないということで立件したというふうに伺っております。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 もし、あなた方の塩山署における警察の取り扱いが職権の通常の行使を越えているということで、仮に告発があるとするならば、そのときには、警察の責任を明らかにするために、もう一度その告発に基づいて調査される意思はありますか、もしそういう事態が起きたとすれば。
  156. 吉野準

    ○吉野説明員 おっしゃるような事態になれば、これはどこへ告発が行くかにもよりますけれども、通常は警察に来ることはないのでございますけれども、警察に来るならば、それは当然そういう調べをやることになろうと思います。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 大鷹さんにお聞きしますが、これは一昨年の四月二十二日の法務委員会で、鳴海国博警察庁警備局外事課長がこういう答弁をしているのです。「一般的にというか唐突にめったやたらに外登証の呈示を求めるということはできないわけでありますし、また現にそういうこともいたしておらないわけでございます。「職務の執行に当り」という職務にはいろいろな場合があろうかと思いますが、たとえば犯罪捜査であるとかあるいは職務質問であるとかそういった際に、」「それに際してこの方が外国人である、その身分を確認するという必要性がある場合に呈示を求める、」だから「唐突にめったやたらに外登証の呈示を求めるということはできないわけであります」と、こう言っておるのです。  これは基本的にはこういう立場ですか。これは局長と警察にもお聞きします。これは当時の警察庁警備局の外事課長鳴海国博、あなたより少し物わかりがいい答弁ですね。こういう答弁をしておりますが、この方針は変わりませんか。
  158. 吉野準

    ○吉野説明員 私の前任の課長が申し上げたことでございますが、そのとおりでございます。私も同じ方針で臨んでおります。
  159. 大鷹弘

    大鷹政府委員 ただいま御引用になりました鳴海前外事課長の答弁の内容は私も承知しておりますが、警察もそういう方針で事案の処理に当たっていらっしゃると承知しております。私どももそれで結構だと思っております。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 不携帯について、懲役一年というのを今度は外しましたね。これは一歩前進だと思って、われわれは評価します。ただ、二十万円以下の罰金というと、これは刑事訴訟法の六十条からいいまして、やはり逮捕することができるという余地を残しておくためですか。まさかそのためとは言えないでしょうけれども、要するに、罰金は十万円以下だったら、これは六十条では逮捕ができないことになっていますが、それを超えると逮捕できるわけですが、二十万というのは何も偶然な数字じゃないと思うのです。これは何で二十万にされたんでしょうか。
  161. 當別當季正

    ○當別當説明員 お答えいたします。  現行の外国人登録法が制定されましてから三十年を過ぎておるわけでございますが、今回御審議をいただいております改正法案は、いろいろ罰則が画一的過ぎるというような御意見もございましたので、これを踏まえて、御承知のとおり懲役刑と罰金刑で対処する類型、それから罰金刑のみで対処する類型、それから二つの類型については罰則を廃止するという形でいま御提案申し上げておるわけでございます。  御質問は不携帯罪についての法定刑でございますが、御案内のとおり、現行法は一年以下の懲役または禁錮もしくは三万円以下の罰金ということになっておるわけでございますが、御審議いただいております改正法案によりまして、懲役刑並びに禁錮刑、これは廃止いたしまして二十万円以下の罰金という、罰金刑一本にしぼっておるわけでございます。  この一番大きな理由は、先ほど申し上げましたように、三十年余りたった改正でございますので、その間の賃金とか家計とか物価とかの上昇、そういうものも十分勘案いたしましたし、それから、委員御案内のとおり、わが国外国人行政の、いわば比喩的に申し上げますならば両輪として制定されます法律が、片や出入国管理法、片や外国人登録法でございます。この出入国管理法、正確には出入国管理及び難民認定法でございますが、この法律につきましては、昨年の通常国会におきまして御審議をいただきまして、本年の一月一日から施行されておるわけでございますが、この御審議の際に、出入国管理法の罰則につきましては、従来一万円であった罰金を十万円に、それから三万円であった罰金は二十万円に、十万円であった罰金は三十万円に、それぞれ引き上げる旨の改正をさしていただいておるわけでございます。いわばこの車の両輪の間柄にある法律でございますので、今回の外国人登録法改正につきましても三万円から二十万円というふうな案を出さしていただいたわけでございます。  ここで一言申し上げさせていただきたいと思いますのは、これはあくまでもいろいろな態様、いろいろな罪状を持つ不携帯罪についての法定刑の上限を定めたものでございますから、それぞれの事案に応じては、事案の実態あるいは情状に応じた処理がなされるであろうということが、当然のことながら考えられるわけでございます。  なお、私ども外国人登録証明書の不携帯だけの犯罪事実で過去に懲役刑の言い渡しが出された事案があるだろうかということを調査させていただきましたが、最近十年間に六件そういう事案があるわけでございます。いわば、今回の改正法案の提出は、従来であれば懲役刑で処断しなければならないような、数は少ないわけでございますが、そういう事案から申しますといわば悪質な事案も今後は罰金刑で対処していかなければいかぬということも考えまして、最高限度額として二十万円という罰金刑を考えさせていただいたわけでございます。  なお、御指摘の逮捕要件との関係でございますが、御案内のとおり刑事訴訟法は八千円以下の罰金、それから拘留、科料に当たる罪につきましては、現行犯逮捕の場合は、住居あるいは氏名が明らかでない場合とか、犯人が逃走するおそれがある場合というふうに要件を厳格に規定しておりまして、それ以外の場合には現行犯逮捕ができないことになっております。逮捕状による逮捕につきましても、八千円以下の罰金、拘留、科料に当たる罪につきましては、住居不定の場合あるいは任意出頭の求めに応じない場合というふうに要件がしぼられておるわけでございます。したがいまして、刑事訴訟法で定められております逮捕要件との関係につきましては、八千円以下ということでございますから、現行法も御提案申し上げております改正法案も変わりはございません。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 せっかくおいでになりました刑事局長に聞きますが、いまの八千円以下というのですが、罰金等の法律改正によりまして、逮捕のできる限度額が十万という限界まで上げてきている例がありますけれども、それはどういう罪についてですか。
  163. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、罰金等臨時措置法におきまして刑事訴訟法の何カ条かにつきましていわば読みかえと申しますか、規定を置いておるわけでございます。その罰金等臨時措置法の七条によりますと、刑事訴訟法の六十条三項、百九十九条一項、また二百十七条、ここに「五百円以下の罰金」ということになっておるわけでございますが、それにつきまして「十万円以下の罰金」と読みかえる場合と「八千円以下の罰金」と読みかえる場合と二つ定めておるわけでございまして、十万円以下の罰金になる場合はこの臨時措置法の三条の一項各号に掲げる法律の罪と明記されておるわけでございます。  それで、三条の一項の各号に明記する罪と申しますのは、刑法の罪または暴力行為等処罰に関する法律の罪、経済関係罰則の整備に関する法律の罪、この三つ――刑法につきましては一つ例外がございますが、要するにそういう刑法と暴力行為等処罰に関する法律経済関係罰則の整備に関する法律、この三つの法律に関しましては十万円以下というふうになるわけでございますけれども、その他の罪については、先ほど入管局担当の官房審議官がお答え申し上げましたように八千円以下の罰金、こういうことになっておるわけでございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、罰金に関する法令が変えられたけれども、この不携帯罪については何らそれに影響なく、八千円以下の罰金ということで逮捕ができるということで、すでに逮捕の要件はあるということですか。それでいいですね。
  165. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどのお答えから当然の結果ということになるわけでございますが、そのようになるわけでございます。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。  管理局長にお尋ねしますが、新聞紙上に上智大学学長のヨゼフ・ピタウという人の談話があるのです。これはイタリア人ですが、こう言っているのです。「外国人である私は外国人登録証明書を携帯していなければならない。だが在日二十五年、その間、北は北海道から南は九州まで、会議……などでよく旅行もするがこれまで一度も」いいですか、一度もですよ、「その提示を求められたことはない」と述べている。したがって、私は外国人登録証明書の常時携帯というような制度は廃すべきだ、こういうように言っているのですけれども、このイタリア人の談話と事朝鮮の人たちに対する扱い方との間に非常な大きな違いがありますが、これはどういうことですか。何かお考えになることありませんか。  私はこの中に、朝鮮の人たちに対する日本入管の姿勢が、依然として戦前の植民地的な差別観と、もう一つは、外国人登録の指紋の制度が入ったのは昭和二十七年で朝鮮戦争が起きたときですが、そのときの影響、それから北に社会主義国ができているということ、そういうことから政治的な一種の差別がどうしても朝鮮の人たちには加えられているのではないかということが、これは私の認識の中から払拭できないのですよ。この上智大学のヨゼフ・ピタウという人は、二十五年間一度もそんなことは言われたことはないと言っているのですよ、だからこんな制度は要らないのじゃないかと。これについてどういうふうにお考えになりますか。  要するに、朝鮮の人たちだって、いけなければ、市区町村へ問い合わせすれば、そこには外国人の登録票があるわけなんですから、それをもとにしてその当該朝鮮の人が実際本人であるかどうかを確かめる道もあると私は思うのです。何も常時こんなに朝鮮の人たちに精神的に威圧を加えるような制度を持たなくてもできると思うのですが、これはどうお考えになりますか。
  167. 大鷹弘

    大鷹政府委員 過去二十五年間一度も携帯の有無を聞かれたことがない、だから常時携帯義務は制度として必要ないんじゃないかというのは、私は飛躍があるように思います。イタリー人の場合には、いまちょっと統計を見ましたところ、長期在留している人は七百数十名のようでございます。他方におきまして、朝鮮半島出身者でずっと長く日本におられる方は六十何万名もおられるわけです。したがいまして、朝鮮半島出身者の方に携帯義務の有無をただされた人が数多くいることは疑えないだろうと思います。他方におきまして、いまイタリー人のケースが出ましたように、私の知っておりますアメリカ人に、たまたま私、聞いてみたわけでございます、どうだったかと。すると、やはり自分は二度ほど聞かれたことがあるということを言っております。また、朝鮮半島出身者の場合でも、全然聞かれていない人もいるのだろうと思うのです。したがいまして、いろいろケースがまちまちでございますので、それをもって常時携帯義務の必要性云々に結びつけて考えるのは無理ではないかと考えております。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 私、どうもわからないのですが、朝鮮の人というのは、そういうイタリアの人やアメリカの人よりもなお日本国民に溶け込んでいる人たちでしょう。もう六十万も日本にいるという。しかも、それは何も好んで来た人ばかりではなくて、日韓合併というような朝鮮の人たちにとっては非常に不幸なことがあって、そのために戦争の協力やいろいろの労働に携わるために日本へ来た人たちで、しかもいまやその人たちはもう子供たちまで日本に永住しているというようなことで、やはり特別な親近感を持たなければならない人たちでしょう。だから、その人たちに対して外国人――少なくともこのヨゼフ・ピタウという人は二十五年間一度も提示を求められたことはない。あなたの聞いたアメリカ人はどういう人か知りませんが、そういう配慮は入管行政としてはやるということを、やはり入管行政の姿勢として持っている必要があるんじゃないかというように思うのですけれども、その辺はどうでしょうかね。  それで、指紋の点についても、先ほども同僚議員が質問していましたが、実際に指紋を入管の方へ、この指紋がこの人の指紋ですかと指紋の問い合わせをし、照合までする事件というのは、一年に何件ぐらいあるのですか。
  169. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 近年その指紋だけの照会というのは少なくなりまして、それはここ数年は二十件くらい。十年前はもう七、八十ということでございましたけれども、最近は少なくなっております。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、二十件くらいのために指紋まで外国人登録証につけて持たしているということもおかしいんじゃないかと思うのです。入管の方へ一つ指紋が行きますね。あれ、入管では実際照合できるような、あれは科学的な施設やいろいろ要るのですけれども、そういうものはお持ちですか。警察じゃなきゃそういう指紋の同一性を認定する能力を持っていないんじゃないですか。
  171. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 厳密な意味の鑑識ということになりますと、現在の入国管理局にはそういう鑑識というのは持っておりません。  ただ、ちょっと付言いたしますけれども、この指紋制度が発足した当時におきまして二重登録、虚無人登録というのが多発しておりましたから、入国管理局の中にもそういう鑑識技術を持った職員が何十名かおりまして、二重登録の摘発ということをやったということは過去の例としてはございます。  先ほど私、指紋照会そのものは近年少なくなりまして二十くらいになっておると申し上げましたけれども、これは指紋だけの照会ということでございまして……(林(百)委員「指紋だけ、それを聞いているだけですから、あとのことはいいです」と呼ぶ)いや、それはどういうことかと申しますと、うちの方に照会件数は四万あるわけです。その人たちにつきまして、要するに同一性というものを確認していく作業が行われるわけで、その過程におきましては、登録課の中でその指紋に帰って同一性を確認するという例がございまして、私が申し上げました例は、指紋だけで、こういう人の指紋でこれは一致するものだろうかという照会が少ないということを申し上げたわけであります。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 指紋制度を置くのは同一性を正確に確認するためだという答弁は、ここでもう幾らでも行われているわけですよ。実際に入管に問い合わせがあなたの言うように四万もある、それはまあ認めましょう。そういう数字、どこでも出ています。それじゃ、実際指紋まで照合して同一性を認めてもらいたいと言ってくるのは何件あるかと言ったら、二十件でしょう。約二十件とあなた答弁したのを打ち消すのですか。
  173. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 これは私の方の業務を若干説明申し上げたいと思います。それは一つは、指紋を照合している係がございまして、そこに指紋というところから照会するのと、それから、本人の身分事項はこうだけれども、この人は同一性がありますかという照会と、それからもう一つは、こういう名前を……(林(百)委員「いいですよ、その中で……」と呼ぶ)最後の同一性を担保しているのが指紋だということになります。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 あなた、一たん言ったことを取り消すもんだから、また手数がかかってしようがないんだ。実際本人を確認するために指紋まで照合してもらいたい、そして照合を実際入管局でやるか警察でやるか知りませんが、そこまで入管に求めてくるのは何件あるかと言ったら、あなた、二十件くらいで最近少なくなっている。その数字は動かないんでしょう。動くんですか。あなた、一たん答弁したんだから、私はそのつもりで聞いているんだよ。
  175. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 その数字は、先生の御質問ですと、二十件ではないというふうに申し上げなきゃならないと思います。  二十件と申し上げましたのは、指紋ということについて、指紋だけを照会してきたというケースを私たまたま申し上げたわけでございまして、同一性碓認のために指紋にさかのぼる数字というのは、これは登録課の中でやっておりますから、一件一件勘定ができない状態になっているわけでございます。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 何かだんだんわからないような答弁になってきちゃって……。  それでは、指紋だけをひとつ確認して照合して問い合わしてくれという件数は何件ですか。
  177. 亀井靖嘉

    ○亀井説明員 それは先ほど申しましたように、二十件前後でございます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、これは局長ですか、だれに聞いたらいいのですか、不法入国してくるという人の数です。不法入国者を取り締まらなければいけない、取り締まらなければならない、これは大体どんな数字の推移ですか。あんまりさかのぼらなくても結構ですが、まあ五十年ごろから、どうなっていますか。
  179. 大鷹弘

    大鷹政府委員 不法入国者摘発された案件の数でございますけれども昭和五十年以降ということで数字を申し上げます。  五十年には千九十二、五十一年九百六十五、五十二年八百五十八、五十三年七百三、五十四年七百六、五十五年五百九十七件ございます。  これはあくまでも摘発された数でございまして、実際の不法入国者の数が各年にどのくらいあったということは、なかなか把握できません。しかし、昭和三十年から四十八年まで三百四十名の不法入国者に当たりましたところでは、大体その三百四十名について千七百名ぐらいの人が同時に不法入国いたしております。つかまっておりません。したがいまして、かなり摘発件数よりも多い数の不法入国者が、現在日本に潜在しているものと私ども考えております。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 潜在しているとかなんとかということを言い出せば――しかし、いずれにしても、千人前後の不法入国者、それを取り締まらなければいけないからといって、六十万の朝鮮の人たち在日朝鮮の人たちについては、いま言ったような非常な屈辱感もあるし、圧迫感もあるし、差別感もあるような、こういう登録証明書の常時携帯の義務だとか、それが刑事罰にまでなって、警察が思うままのことができるというような制度。それから指紋も、それは外国人たちにとってみれば、局長も指紋なんか取られたことないからお知りにならないかもしれませんが、警察で指紋を取られるほど嫌なことないですよ。まあ私も、言いたくないんですけれども治安維持法で指紋を取られましたがね。暗いような警察の部屋の中へ入れて、墨の中で、こう手を塗って、それで一枚一枚こう警察官がやるということ、それは人間にとっては最大の屈辱ですよ。そして精神的な打撃ですよ。そんなことを、六十万の朝鮮の人の中にあなたの言うまあ潜在者がいるかもしれないと言うけれども不法入国摘発されているのは千人前後でしょう、そういう人のためにこの制度をいつまでも残しておかなきゃいけないかどうかということは、やはり再考に値するのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  181. 大鷹弘

    大鷹政府委員 警察が取るような指紋ということをおっしゃいましたけれども外国人登録法上の指紋というのは……(林(百)委員「市区町村ですね」と呼ぶ)市区町村でやっておりますのは、左手の人さし指を一本だけやっておるわけでございます。その場合でも、市区町村によっては、できるだけ人の眼前でやらないように、いろいろと設備をしたりしているところもあるわけでございます。  六十六万の長期在留の朝鮮半島出身者に対してこういう不便をかけるのは、わずかな数の不法入国者の取り締まりのためには均衡を失するんじゃないかというような御意見でございましたけれども、しかし、わが国の場合には、国民の中に、国土は非常に狭い、しかも狭い国土の大部分は山地である、そこに人口が一億もいる、仕事もみんなが雇用されているわけではない、こういうことから、政府といたしましても、単純労働者移入しないという方針を堅持しているわけでございます。したがいまして、不法入国者というのは、やはりそういうことからも私どもとしては厳しく取り締まらなければならないと考えているわけでございます。七十九万の外国人登録をしていらっしゃる方には御不便があるかもしれませんけれども、しかし、私どもといたしましては、法律の目的を達成するためにはやむを得ないことと考えておるわけでございます。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたのその答弁は幾度か聞いているのですが、しかし、よく考えてみれば、千人かそこらの朝鮮の人たち不法入国者があるから日本労働者が非常に大きな打撃を受けるとか、あなた、常識的にそんなことが考えられますか。それはあなたの理屈じゃないですか。しかも朝鮮の人たち日本に来るとかなんとかということは、やはり日本とそういう特別な関係があったし、日本に親戚や父母やきょうだいがいるというような関係もあるし、何も好きこのんで不法入国までして日本の労働条件を攪乱しようなんと思って入ってくることはしないわけですね。これはやはり特殊な条件があるわけなんですよ。六十数万の朝鮮の人たちというけれども、何も好んで来たわけじゃないのですから、日本政策でいやおうなしに郷里をおいて連れてこられた人たちが圧倒的なんですから、その人たちと血のつながりのある人たち日本の国に入ってきたいという人もいると思いますから、私は密入国を奨励しているわけじゃありませんけれども、朝鮮の人たちにはそういう特殊な事情があるということを、日本入管行政としては考えていく必要があるのじゃないかというように思うわけなんですよ。  もう時間が参りますから、最後に、大臣、これは新聞でも取り上げていますが、入国管理法の六十六条、御承知でしょう。要するに、不法入国者ということを通報して、その通報に基づいて退去が命ぜられれば五万円以下の金額を報償金として出すというのが法律であるのですよ。これはやはり朝鮮の人たちを分断し、お互いにスパイし合うことを日本法律で奨励することになるのじゃないでしょうか。しかも、この新聞で報じているところによりますと、難民人たちややむなく残留している人たちの救援活動までして入管へ行くたびに、結構ですね、あなたまた五万円もらったんですかと言われるというのですよ。これでは難民人たちあるいはやむを得ず残留している人たちの救援活動もできない。「救援活動をしている木村さん夫婦」ということで新聞に出ておりますが、こういうこともできないというのですよ。     〔太田委員長代理退席、高鳥委員長代理着席〕 だから、各省庁で、ことに警察や何かではこういうことをやっているということを私も聞いておりますけれども、こういうことを法律で公然と書いておかなければいけないんですかね、大臣にお聞きしますが。  その資料として、それではこれが適用された事例は何件ありますか、それをひとつ具体的に、これは外務省から資料をもらっていますかな。
  183. 大鷹弘

    大鷹政府委員 報償金が交付されました例について申し上げます。  五十年度以降の数字を申し上げます。五十年度七件、五十一年度四件、五十二年度四件、五十三年度七件、五十四年度三件、五十五年度一件、五十六年度五件となっております。
  184. 林百郎

    ○林(百)委員 念のため、金額を言ってください。
  185. 大鷹弘

    大鷹政府委員 それぞれの金額でございますけれども、五十年度は四万五千円、五十一年度は三万八千円、五十二年度は四万八千円、五十三年度は七万二千円、五十四年度は三万五千円、五十五年度は一万円、五十六年度は五万円ということでございます。  この報償金は、南北の分断というようなことを先生おっしゃいましたけれども、これは必ずしも朝鮮半島出身者だけに関するものではございません。(林(百)委員「南北分断なんて私は言いませんよ。同じ民族の中で内部対立を激化させやしないかと言っている。南北なんて、あなた余分なことを言いますね。あなたの頭の中にそういうことがあるのでしょう」と呼ぶ)たしか先生そういうふうにおっしゃったと思うのですが、いずれにいたしましても、実際の交付の具体的なあれを見ますと、昨年のケースでございますけれども韓国人のケースも三件ございますけれども、タイ国人、それからフィリピン人、それぞれ不法残留のケースでございますけれども、こういうものについて交付されたというものがございます。
  186. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮の人たちにはこういうのがないのですか。  別に南北ということじゃありませんけれども外国人たちにとってみれば、スパイをして密入国したよと日本政府に通報すれば五万円以下の金が出るぞということになれば、それは中にはそういうものに乗ぜられる人も出てくるとなれば、お互いの同胞でありながら不信感を持ち合わなければならない、その民族にとっては非常に不幸な状態に置かれることになるんじゃないかと思うのですよ。それは知らないように出しているのなら、私は何もスパイに金を出すことに賛成しているわけじゃありませんけれども、知らないようにしているのと法律で公然とこんなことを掲げてくるということは、やはり日本入管行政として好ましくないのではないかと思うのですが、これ廃止なさる方向で検討されませんか。
  187. 大鷹弘

    大鷹政府委員 不法入国者につきましては、実際上直接これによって被害を受けるという人がいないので、結局民間の通報に頼ることにならざるを得ないわけでございます。そこでこういう制度を設けているのでございますけれども、私どもの手元にあります資料では、いわゆる通報の大部分は匿名でございます。したがいまして、こういう交付金の対象にはならないということでございます。したがいまして、この五万円の報償金目当てに通報してきている人というのは非常にわずかでございます。大部分は匿名である、したがってこれの対象にも考えられない、そういうことになっております。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣、そういう具体的に適用されているのは、これを見ますと年に四件、三件、一件というようなところがあるわけですね。それで、いま局長の答弁によりますと、ほとんど匿名でやる、有名無実の法律ですわね。これをここですぐ廃止しますとかなんとかということはあなたに求めるわけじゃありませんが、検討されませんか。もし密告して、それによって退去を命ぜられれば報償金を出すぞということを法律でわざわざ仰々しく書いておくことについては、検討される意思ございませんか。
  189. 坂田道太

    坂田国務大臣 昭和二十七年ごろこの法律ができて、この制度もできている、それにはやはりいま局長から答弁いたしましたような、それなりの理由はあるというふうに思うわけです。でございますから、いま直ちにこれをやめてしまうというつもりはございません。現在またこの法案を提出をして御協力と御理解を賜りたい、かように思っておるわけでございますけれども、こういうようなことについては非常に微妙な点もございます。したがいまして、私といたしましては検討させていただきたい。検討するというのは直ちにするということではないんで、諸外国にそのような例があるか、あるとするならばどういうことか、ないとするならばどういう理由か、そしてまた、昭和二十七年にわれわれがこれをつくったという意味合いはどうなんだというようなことを少し検討してみたい、かように考えております。
  190. 林百郎

    ○林(百)委員 私も、あなたにここですぐ答弁で廃止しろとまで求めるつもりはありませんけれども大臣ですから、いろいろ慎重に御検討なさるのは結構だと思います。  ただ、昭和二十七年というのは、私の記憶ですと朝鮮事変が起きた年なんで――そうじゃないですか。昭和二十七年というのは終わった年ですか。当時日本にいる朝鮮の人たちに対して、国際的にも治安関係いろいろで、朝鮮の人たち日本政府もまたアメリカ側も非常に神経をとがらした時代です。しかし、その時代は過ぎて、そしていま新しく難民の問題を局長言いましたけれども、事朝鮮の人たちに関しては日本社会に非常に融合してきていますし、また日本社会秩序を混乱させるような心配も全くなくなっている今日ですから、一番多い外国人と言えば何といっても朝鮮の人たちですから、大臣が慎重に御検討される、いますぐ廃止するという意味じゃないけれども、時代のそういう変遷もあるから検討されるということをぜひひとつ検討していただきたいと思います。  最後に、時間ですから結論をしたいのですが、朝鮮民主主義人民共和国日本との国交の問題について、これは法務大臣にこういう質問をするのもなんですけれども、閣僚ですから考えるべきときじゃないかというように思うわけですね。北の朝鮮に社会主義国があるからといって、社会主義国のどこの国とも国交を回復している日本が、いつまでたっても朝鮮民主主義人民共和国とだけは国交をしないというのはどういうわけなんでしょうか。私、不思議でたまらないのですよ。ミッテランさんが来れば、天皇まで出てああいう敬意を表しているわけでしょう。フランスという国は共産党まで閣僚に入っているわけですから、そういう時代が来ているのに、どうして朝鮮民主主義人民共和国と外交関係の端緒を求め、真剣にそれを開くようにしないのか。そうなれば、また朝鮮の人たちに対する入管行政もおのずから変わってくると思うのですが、そういうことについては、あなたも閣僚の一人ですから、ここで忌憚ないお考えを、政府の意向に反してまで、私、言えと言いませんけれども考えるべきじゃないかと思います。それはどう思いますか。
  191. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは日本の外交の問題でございまして、直接的には外務省の所管、外務大臣あるいは総理大臣ということでございます。特に私自身にはいろいろ考えはございますけれども、いまここでお話しすることはいかがかと思いますので、差し控えさしていただきます。
  192. 林百郎

    ○林(百)委員 外務省から来ていただいて、いままで非常にお待たせして何の質問もしなくて恐縮でございましたけれども、朝鮮の人たちに対して国際人権規約のBは適用になるわけでしょうね。これによれば、外国人たちに対して名誉を傷つけるようなことをしてはならない、こういうことがあります。この規約のBは適用になると思いますが、それは間違いないでしょうか。何人も非人道的もしくは品位を傷つける取り扱いを受けない、もちろん外国の人に対してもこれは当然適用になると思いますが、どうでしょうか。
  193. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  国際人権規約に言うすべての者と言います場合には、ただいま林委員御指摘ありましたとおり、在日朝鮮人を含みますすべての在日外国人が含まれております。したがって、国際人権規約にはA規約とB規約とありますが、ただいま御指摘の自由権に関するB規約は、朝鮮半島出身者を含めまして広くすべての外国人に適用されると考えております。
  194. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃもう一つ、法務大臣は外務省の所管だからちょっと答えにくいと言いましたが、これは高度な政治性を持つので答弁できなければできないでいいんですが、朝鮮民主主義人民共和国との国際条約の接触というか、そういうようなあれは外務省として何か展望とか意向とか、そういうものはいまお持ちになっているかどうかおわかりでしょうか。あるいはそういう方向を検討しているでも結構です。
  195. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えします。  政府としましては、朝鮮半島におきます南北間の関係のいろいろな推移、こういうものを十分注意しながら、今後とも経済文化面での交流、こういうものを維持していく考えでございます。
  196. 高鳥修

    高鳥委員長代理 次回は、明後二十二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会