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前田(宏)
政府委員 ただいま沖本委員も仰せになりましたように、いわゆる過激派によって刑事
事件の
裁判が引き延ばしに遭っている。それも、被告人のみならず弁護人の引き延ばし戦術というようなこともありましてなかなか
裁判が進まないというようなことから、非常に例外的な場合に弁護人が法廷に出なくても
裁判が進められるようにしてはどうかという法案を提案したことがあったわけでございます。
それにつきましてはいろいろと御批判もあったわけでございますが、そういうこともありまして、いわゆる法曹三者の協議会におきまして、そういう事態を、むしろ法曹三者の協力といいますか、合意によって解決していく方法はないかということから、法曹三者の協議というものが何回か繰り返されまして、そこで、弁護士会はそういう特殊な
事件について国選弁護人を必ず出すように努力をするということ、また、不当な
訴訟活動をした弁護人については懲戒処分を十分にやるように努めるというようなことが協議
事項になったわけでございます。その一環として、国選弁護人が被告人あるいはその同調者から危害を加えられた場合に何らかの補償的なものが
考えられないかということが議題になりまして、その点についてはそういう制度の実現について十分検討しようということが、その協議結果の一
項目になっていたわけでございます。
私ど
もといたしましては、どういう方法で国選弁護人の被害に対する補償的なものを立法化していくかということをいろいろと検討したわけでございますが、
考えられますことは、国家
公務員災害補償法的な形に取り込むということも
一つの方法であるわけでございますが、これにつきましては、むしろ弁護士会側の方で、
公務員並みに扱われるということは、逆に弁護人としての自主性というか
独立性というか、そういうものがあって適当でないというような御
意見もございました。
そういうことから、第二の方法として、この
証人等の被害についての給付に関する
法律の一部改正ということで、この中に盛り込めないかという検討もなされたわけでございます。と申しますのは、この
法律が刑事
事件の審理について民間の人の協力を求めるという精神でございますので、要するに、刑事
事件の審理に協力した者という意味においては国選弁護人の方も共通性があるわけでございますから、そういう意味で、この
法律にそういう場合を盛り込むことも不可能ではないだろうというふうに
考えたわけでございます。
ただ、そういう場合に、その
内容、つまり給付の
内容が問題になるわけでございますが、この
法律に入れます場合には、やはり
証人、参考人等が刑事
事件の進行に協力するという面でとらえておるわけでございますから、それと著しく扱いを異にするわけにはまいらないんじゃないかというふうになるわけでございます。そうしますと、
日本弁護士連合会等の御
意見といたしましては、それでは給付の
内容が低過ぎるので、もう少し別な観点で何とか
考えられないかというような御
議論が出てきておったわけでございます。
しかし、そうしますと、また話が
もとに戻りまして、この
法律にはのらないということになるんじゃないか、そうすると、別な
法律で、単独の補償法的なものあるいは先ほど申しました国家
公務員災害補償法のような
考え方になってくるということになると、それもまた必ずしも賛成でない、こういうような、ぐるぐる回るような
議論が繰り返されていたわけでございます。
結論的には、むしろこの
証人等の被害についての給付に関する
法律の中で、できるだけ給付の
内容を別建てにする方法で
考えられないかということが繰り返して協議されておったわけでございますが、いま申しましたようなことで、著しい特別扱いということもできないということで、なかなか難問に突き当たっていたわけでございます。
たまたま、今回の改正という機会がございましたので、もしこの改正の中に入れるということで弁護士会の方で同意をするならばちょうどいい機会ではないかということで、最終的に日弁連の意向も確かめたわけでございますが、どうも御
意見が日弁連内部でも十分まとまらなかったようでございまして、給付の
内容が
余り十分なものじゃない場合にはむしろやめてもらった方がいい、まあそこまではおっしゃらなかったかもしれませんけれども、問題があるということで、むしろ検討を続ける、いわば継続的に協議した方がよろしいという御意向があったわけでございますので、せっかくの機会であったわけでございますけれども、今回は見送らしていただいた、こういうことになっておるわけでございます。