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1982-03-31 第96回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月三十一日(水曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 羽田野忠文君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君    理事 岡田 正勝君       井出一太郎君    上村千一郎君       大西 正男君    木村武千代君       高村 正彦君    佐野 嘉吉君       下平 正一君    鍛冶  清君       安藤  巖君    林  百郎君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 鈴木 義男君         法務省訟務局長 柳川 俊一君  委員外出席者         警察庁長官官房         留置管理官   望月 秀一君         警察庁警務局給         与厚生課長   福永 英男君         警察庁刑事局捜         査第一課長   仁平 圀雄君         警察庁刑事局捜         査第二課長   森広 英一君         警察庁刑事局暴         力団対策官   関口 祐弘君         大蔵省証券局企         業財務課長   土居 信良君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 三月二十九日  法務局、更正保護官署及び入国管理官署職員の  増員に関する請願安藤巖紹介)(第一六二  五号)  同(林百郎君紹介)(第一六二六号)  同(正森成二君紹介)(第一六二七号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一六五一号)  国籍法の一部改正に関する請願土井たか子君  紹介)(第一七〇三号)  同(田中恒利紹介)(第一七〇四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  証人等の被害についての給付に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第六七号)  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉委員 大臣お尋ねをするわけですが、憲法二十条と政教分離関係ですね、宗教活動の禁止の問題といいますか、そうした問題の中で、昭和五十五年の十一月五日に法務委員会で、私が奥野さんにお聞きをいたしておるわけですが、それに対して奥野さんはこういうふうに答えておるわけです。「私はそれよりも、憲法二十条で宗教的活動をしてはならないと書いてあるわけでございまして、その宗教的活動をしてはならないという言葉靖国神社に参拝することを禁止しているとはどうしても私には受け取れない、」こういうふうに奥野さんは言っておられるわけですね。議事録の十一ページの一番下の段です。奥野国務大臣答えがありますね、おわかりですか。  こういうふうに奥野さんは言っておられるのですけれども、坂田法務大臣としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  4. 坂田道太

    坂田国務大臣 靖国神社に閣僚として参拝をすることにつきまして、いろいろ御議論があるということは承知しておるわけでございますが、靖国神社は国家のために犠牲になられた方々の霊を慰めるためのもので、一般宗教とは異なった性格があるとも思われますので、私といたしましては、国のために犠牲になられた方々を思うという気持ちも国民の自然な気持ちではなかろうかというふうに思いまして、そういうふうに考えますが、なお憲法上のいろいろな問題につきましては十分私も慎重に考えてまいりたいというふうに思っております。
  5. 稲葉誠一

    稲葉委員 お話をお聞きしておりまして、「宗教的活動をしてはならないという言葉靖国神社に参拝することを禁止しているとはどうしても私には受け取れない、」こう奥野さんは言っておられるわけですが、坂田さんもこれと全く同じですか。
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 大体そういうような気持ちでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉委員 ちょっとはっきりしませんけれども、大体というのはどうなんですか。全く同じかというふうに聞いているのですが、大体ということになると、どこがこの考え方と違うわけでしょうか。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは憲法二十条で宗教的活動をしてはならないということでございますけれども、その宗教的活動をしてはならないという言葉は、靖国神社に参拝することまでも禁止しているというふうにはどうしても私にも受け取れない、この点は同じでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、大阪の箕面の忠魂碑の公費移転問題で大阪地裁裁判があったわけですね。これについてどうなんでしょうか。裁判が確定していないのですが、一つ政党が、しかも野党と違って政権政党がこれに反対をするという決議までしている。決議が第一段階ですね。これが司法権独立と一体どういう関係があるか。いいですか、総務会決議したというのですけれども、それがこの司法権独立とどういう関係があるかというのが第一の問題ですね。第二は、閣議でこれに反対だという決議をしたときには、一体司法権独立とどう関連をするかということですね。第三点は、この裁判反対だという具体的な運動を自由民主党が起こすということになったときに、それはこの司法権独立に一体どういう影響を与えるか、関連でどういうようになるか。この三点について、大臣としてお答えを願いたい、こう思います。
  10. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは、大阪地裁民事二部におきまして三月二十四日に判決があったわけでございまして、法務省といたしましてはこういう訴訟につきましては関与しておりませんので、この判決内容十分承知をしておりません。しかも、こういうような問題につきまして、いま直ちに私がいろいろ申し上げるということはいかがかと考えますので、批評を差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  11. 稲葉誠一

    稲葉委員 ざっくばらんに言うと、いま私は三つのことを聞いたわけですから、ここのところでそれに関連してもっとしつこく食い下がるのが本当なんですが、大臣とは初めてですからこの程度にしておきますが、私は三つのことを聞いたわけですね。だから、自民党の総務会でこれに対して反対意見を述べる、決議するということと司法権独立と一体どういう関係があるかということですね。これはどうなんでしょうか。政権与党の場合、総務会というのは最高議決機関ですか、そこでこういう判決反対だという意見を述べることは、司法権独立、そして裁判影響を与えるということになるのじゃないでしょうかね。そこはどういうふうにお考えでしょうか。
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございまして、ただ、一般にはやはり言論の自由というものはあるわけなんで、各政党といえども、たとえばいろいろ判決がございましてもそれなりにやっておられるというのも、私は記憶があるわけでございます。しかし、政権与党という場合にどうなのかという問題はあるいは残るかと思いますけれども、それでもやはり一般言論ということは許されておるのじゃないかというふうに思います。
  13. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから私は、話を三つに分けているわけですね。  そこで意見を述べるということについては、これは言論の自由で、一つ判決に対して私どもも意見を述べることはありますから、これは一つ言論の自由に入るというふうに私も理解するわけです。ただ、政権与党の場合と野党の場合とは違うのだという理解の仕方はありますけれども、そこら辺はちょっと議論のあるところかもわかりませんね。  第二段階としては、閣議で仮にこういう判決反対だというふうに決めるということになると、これはどうなんですか。閣議でそんなことを決めるわけはないという答えなら、そういう答えでいいわけですよ。恐らくそういう答えになると思うのですが、そこはどうでしょうか。
  14. 坂田道太

    坂田国務大臣 いま閣議でそういう議論もございませんので、何ともお答えのしようがございません。
  15. 稲葉誠一

    稲葉委員 閣議でそんなことは議論するわけがないですね。そんなことをしたら大変な問題になりますね。それはそうなんです。  第三番目の問題は、それを具体的に、こういう判決があるから、この判決反対だという運動違憲判決関連して政権与党が起こすということはどうなんですか。言論の自由はいいですよ、言論の自由は私もそのとおりだと思いますが、それを違憲判決反対だということを運動として起こすことは、三権分立の精神からしていかがか、おのずから限度があるのではないか、私はこう思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  16. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは一般論としての言論の自由以外に、お答えのしようがないと思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま最初大臣が、奥野さんの言われたことを受けて私が確かめたところ、それとほとんど同じですが、何か議事録読み方を多少変えましたね。靖国神社に参拝することを禁止しているとはどうしても考えられないというふうにこの議事録にあるので、私がそういう質問をしたら、靖国神社に参拝することをもと、「も」をつけたような答弁だったように、どこかちょっと私の読んだのと違うような読み方をされて答えたように私は思ったのですが、これはどうなんでしょうか。
  18. 坂田道太

    坂田国務大臣 私としましては意識的にそんなことを考えたわけではなくて、同じ速記録を読んだわけでございますが、もしそう聞こえたとすればそれは間違い、あるいは私の言い違いで、「靖国神社に参拝することを禁止しているとはどうしても私には受け取れない、」と。
  19. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまのお答えは、近い将来非常にいろいろ問題になってくるところだというふうに私は思っておりますから、きょうのところはそのままにお聞きをいたしておきます。  そこで、ロッキード事件関連をする政治倫理の問題なんですが、きのう、六月八日に橋本、佐藤両氏判決言い渡しがあるということが決まりましたね。これは私は、別に他意があってこういうふうな判決の日にちを決めたものだというふうには理解をいたしません。裁判長が前に亡くなられて、その後を受けられたわけですから、国会の会期中とかなんとかそんなことは全く考慮の外に置いて、きわめて技術的にその判決言い渡しの期日を告知した、こういうふうに私は理解をいたしております。  ただ、問題としては、きのう判決告知をして六月八日というのは、ちょっと間があき過ぎるのです。普通ならば、告知をすればもう大体一カ月以内に判決言い渡しができるはずだ、こう思うのですが、それをいまここで論議しても司法権の問題ですから始まりませんから、論議をいたしません。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕  そこで、実は中央公論の四月号に「ロッキード裁判に思う」という古井喜實さんの論文というか、それが載っておるわけですが、私も読みました。読んでみて、内閣総理大臣職務権限というふうなことについていろいろ説明をするなり、古井さんの意見を述べておられるわけです。これはもちろん言論の自由ですし、それから内閣総理大臣職務権限というのがいまこの裁判の中で、きょう証人を呼ばれていますか、だれか証人に出てこの問題について論議が行われるということですから、ここでこのことについて私が質問するのもこれまた当を得ない、本当は質問したいところですけれども、当を得ないというふうに私は考えますから、この点はやめます。質問しません。  ただ、この中で出てくるものの中に、事実としてこういうことがあったかなかったかということだけ一つお聞きをいたしておきたいのですが、それは最初のところに「検察側は、公訴提起後二年も経過してから、冒頭陳述の重要な補充訂正を行なっているが、これは、あらかじめ法律論議を詰めないで、まず事件に手をつけたと疑われる余地がありはしないか。」こういうふうなことがここに出ているわけですね。  そこでお聞きをいたしたいのは、一つは、「公訴提起後二年も経過してから、冒頭陳述の重要な補充訂正」を行ったことがあるのかないのか。あるとすれば、それは事実に関するものなのか、法律論に関するものなのか、それからどういう点を補充訂正を行ったのか、こういうことをお聞きしたいと思うのです。私も実は、公訴提起後二年経過してから、冒陳の重要な、まあ重要なというのは意見が分かれるところですからわかりませんが、補充訂正を行ったということはちょっと気がつかなかったものですから、その点についてお聞きをするわけなんです。
  20. 前田宏

    前田(宏)政府委員 事実についてのお尋ねでございますが、まず、いま御指摘のいわゆる冒頭陳述補充訂正が行われたかどうかということの事実関係を申しますと、五十四年の二月二十八日の第六十五回公判になるわけでございますけれども、そこで補充訂正が行われておるわけでございます。起訴後ということになりますと、ちょっと起算日の計算がおかしいようでございますが、約二年たっているということは、むしろ第一回の公判が五十二年の一月二十七日にございまして冒頭陳述が行われているということからいたしますと、約二年というのはそういう意味ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  その内容でございますが、細かく申し上げると相当長くなるわけでございますので、かいつまんで申し上げるわけでございますけれども、先ほどお尋ねのように事実問題か法律問題かということになりますと、まあ両方あると言えばあるわけでございますが、要するに、この事件におきます職務権限との関係で、たとえば冒頭陳述の第三のところで「わが国政府国内幹線航空路への大型ジェット旅客機の導入に関する方針並びにロッキード社及び丸紅の全日空に対するL1011型航空機売り込み活動の概要など」という項目がございますけれども、その第三の項目の六の部分で「政府日米貿易均衡是正策としての大型ジェット機緊急輸入方針」というのがありまして、それが何項目かに分かれて書かれておるわけでございますが、その一部について若干の補正をしているということ、これはいわば政府方針が決まる経過のところの事実問題と言えば事実問題であろうかと思います。  それから第四の項目で「被告人桧山、同大久保、同伊藤の同田中に対する贈賄と同田中受託収賄」という表題がございます。そこの一に「本件における内閣総理大臣職務権限」というふうに題しまして、それ以下いろいろと述べておるわけでございますが、その2のところで「内閣総理大臣定期航空運送事業者の新機種選定に関する職務権限」という部分がございます。これは当初の冒頭陳述では比較的短かったわけでございますけれども、それに若干の補充をしております。趣旨においてそう変わっているわけではございませんが、要するに、内閣総理大臣職務権限として、内閣総理大臣が各国務大臣を指揮監督できるばかりでなく、みずからも権限を行使できるというような趣旨でございまして、それが後々にも関連してくるわけでございます。  あとは若干細かくなりますけれども、たとえばその続きの方で何カ所か関係者の供述をもとにしました贈収賄関係の事実関係の摘示があるわけでございますが、その部分につきまして、たとえば桧山等田中被告人に対して「総理大臣権限に基づいて運輸大臣をして全日空に対し」1011型航空機を選定するよう行政指導させるよう働きかけてもらう」という後に「あるいは総理大臣みずから全日空に対し右の行政指導をしてもらうのが最善の方法であり、」というふうに若干の加筆をしているところがあるわけでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉委員 古井さんがどういう御趣旨でこの論文を書かれたのか、ちょっと私どもよくわかりませんが、読んでみますと、率直に言うと興味が深いというか何というか、あれなんですが、そうすると、いま言われたところがなぜ二年もたってそういう冒陳補充が行われたかということですね。普通はそういうことはありませんね。ということは、考え方によると、まずこれが「重要な」となっていますが、重要なと言えるかどうかということですね。まず第一点、そこら辺から、これはどういう答えになるのかな。これは考え方の違いですという答えになるのかな。余り答えを教えてしまうとまずいな。これはどういうふうになるのですか。これは重要なというふうになりますね。ということは、いま言ったように、内閣総理大臣が、所管大臣を通じてだけではなくて、みずからも権限を行使し得るということの冒頭陳述が行われているところから見ると、これは重要なというふうに見てよろしいのじゃないでしょうか。
  22. 前田宏

    前田(宏)政府委員 稲葉委員が先にお答えを言っていただいたので、私から申し上げることはないわけでございますが、まあ重要なと言えば重要でございましょうし、その程度はそれぞれの見方によって違うだろうと思います。
  23. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、いま私が問題にしているのは、これはこういう理解の仕方もあると思うのですね。最初のときに、片方が職務権限のことについては争っていない、まあ争ってはいるのだろうけれども積極的な争いをしていないし、アリバイの問題を中心にいったから、その職務権限の問題については余り出てこなかったので、そのためにこの冒頭陳述補充というものが、みずからも権限を行使し得るというようなところが二年後になって出てきたのだ、それは訴訟全体の流れからいってそういうふうな経過になったのだというふうな理解の仕方ですか。どういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。     〔中川(秀)委員長代理退席委員長着席
  24. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のように、冒頭陳述補充訂正をしたこと自体一つ問題点になっているようでございますので、余り詳しいことをお答えするわけにもまいらないかと思うのでございますけれども、一般的に申しまして、冒頭陳述は当初の検察官としての立証方針に基づいて書かれるわけでございますけれども、その後順次公判が進行してまいりまして弁護人側からもいろいろな主張が出るということ、また、両者からの立証活動が行われて、当初の考えておりました立証計画と若干変わってくるということも当然あるわけでございまして、それに応じて公判推移、また相手方の主張等をにらみながら、場合によっては補充訂正をするということもあり得るわけであろうと思います。  確かに稲葉委員仰せのように、事実関係争いといいますか、アリバイ論争等を含めて激しく行われたわけでございますけれども、職務権限につきましても全然触れられていなかったわけではなくて、当初から釈明等もあったわけでございます。そういうこともにらみながら検察官側といたしましては公判を進めてまいっておりまして、その推移に応じて、また弁護人側のいろいろな主張等に応じて、この時点でより一層検事側主張を明らかにしておくことが適当であろうという判断になりまして、こういう措置がとられたものと理解しております。
  25. 稲葉誠一

    稲葉委員 この論文を読みますと、いかにも法律的な論議というものを十分にしないで、そしてまず、感情的とは言っていませんけれども、感情的正義論というかそういうようなことで出発をしたというふうに理解できるようにとれるのです。この論文を問題にすること自身がおかしいと言えばおかしいのですけれども、「これは、あらかじめ法律論議を詰めないで、まず事件に手をつけたと疑われる余地がありはしないか。」こう言っているのですが、これについてはあなたの方ではどういうふうに考えておられるわけですか。いま言ったように、総理大臣がみずから職務権限を行使できるというところが最初のころに出てこないで、途中から出てきたというところに何か疑問を持たれたのではないでしょうか。一般の人もそういうふうに持つのじゃないでしょうか。そこはどうですか。
  26. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来お断りいたしておりますように、そのこと自体かいま問題になっており、これからの公判一つの大きな争点でございますので、この段階で申し上げるのはいかがかと思うわけでございますが、一般的に申しまして、あれだけの事件を処理するわけでございますから、当然のことながら、その段階に応じて十分な検討もいたしましてそれなりの措置をしたものというふうに理解をしております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまあなたが言われているように、これはいま問題となっているところで、今後も問題となっていく。どの程度問題になってくるかは別として、そういうことですから実は私も取り上げることについてちゅうちょするというか、一〇〇%取り上げるということはしないわけなのです。だけれども、私が疑問に思うのは、この事件アメリカから出発したわけでしょう、だからここまで行ったので、これが日本国内で起きたとするならば、恐らくここまで来ないで終わったのではなかろうかというような疑問を私は持つのです。それをいまあなた方の方に聞いたところで、どういうふうに答えていいか、それはなかなか答えられないということになるでしょう。  そこで、一般的にロッキード事件関連をしたり何かして私が非常に疑問に思いますのは、日本の場合、なるほど法律的には私もそう思うのです、大臣。五億もらってとか幾らもらったということで起訴されておっても、二百万にしろあるいは五百万もらったということで不起訴になったとしても、それは法律的には別として、政治的な責任としては当然そこで責任を負わなければならない、法律的な責任政治的責任というものは分けて考えなければいけないのではないかというふうに私は考えておるわけです。  そこでお尋ねいたしたいのは、アメリカにおきまして七八年に政府倫理法というのができましたね。この政府倫理法というものができた経緯、これはウォーターゲート事件であれでしょうが、それとその内容についての概略の御説明を願いたいと思うのです。これは一番詳しいのは国会図書館から出ているのが一番詳しいのですが、それは余り詳し過ぎますから概略で結構なんですが、御説明を願って、大臣にお聞きしたいのは、一体アメリカでこの政府倫理法ができておりながら、日本においてはなぜそういうふうなものができないのかということですね。これは第二に大臣お尋ねしたいと思います。
  28. 前田宏

    前田(宏)政府委員 お尋ねアメリカ政府倫理法内容でございますが、いまお持ちのレファレンスに訳が出ておりますが、後半部分がないようで、どうもよくわからない点もあるわけでございます。  ただ、私ども理解しておりますところでは、大きく分けまして四つの事項になるかと思いますが、第一は、いわゆる資産報告の問題であろうと思います。正副大統領、上下両院議員最高裁判事以下の連邦判事、さらに一定のランク以上の公務員、こういう人たちにつきまして、資産報告書を作成して、これをそれぞれのしかるべきところに提出する義務を課しているというのが第一の項目であろうと思います。  第二は、ちょっとよくわからない点もございますが、人事管理庁という機関があるようでございまして、そこに倫理局というものを置くということになっているようでございます。この倫理局権限は、このいま申しました倫理法の執行に関して規則を制定するとか、あるいは必要な調査をするとか勧告をするとか、そういうようなことができる機関のようでございますが、ややわかりにくい点もあるわけでございます。  第三点は、退職公務員のいわゆる天下りの規制と申しますか、そういう事項でございまして、いわば三段階に分けまして、行政府の各機関退職者は、在職中個人的にかつ実質的に従事した手続等に関し、前官庁に対して私企業等を代表することを禁止するというようなことから始まりまして、いろいろな形の規制が決められているようでございます。  それから第四は、特別検察官の任命という問題でございまして、これはいわゆる政府高官と申しますか、そういう者たちの犯罪の捜査、訴追をするために特別検察官というものを設けていこうということで、その任命手続あるいは権限等が決められているということでございます。  最後に、これも中身がよくわかりませんけれども、上院に法律顧問局というものを設けるということになっている。  これが大体、いわゆる政府倫理法内容であろうと思います。
  29. 稲葉誠一

    稲葉委員 大臣にお聞きする前に、ちょっといまの点で、中身はよくわからない、わからないという答えが出てくるのですが、これは法務省の刑事局なり法務省の管轄かどうか、ちょっとこれはわからぬから、あなたの方でも中身はわからないという答えをするのだろうと思うのですが、一体こういう問題についてはどこが管轄するの。中身がわからないはずはないでしょう。政府倫理法というのが上下でできて、この「外国の立法」という国会図書館の本もちょっとわかりにくい翻訳であることは間違いないけれども、わからなければよく確かめたらいいわけなんで、そこら辺のところはどこが主宰なのか、ちょっとわからない。これは予算委員会で聞くのが本当だったかもわかりませんが。私も聞くつもりだったのですが、聞けなくなってしまったのです。  いまあなたが言われた中で、資産の公開、届け出がありますね。収入や資産だけでなくて、一件百ドルを超えた収入や贈り物はすべて列挙して、千ドル以上の投資もすべて報告しなければならないというのが、何か抜けていますね。これは意識的に抜かしたのかな、どうでしょう。
  30. 前田宏

    前田(宏)政府委員 別にそういう意味で申したわけではございません。ただ、先ほどわからないと言ったのは、条文は一応読んでみておるわけでございますけれども、たとえば強制措置をとるという言葉があるわけでございますね。そういうものの具体的なことがよくわかりにくい。倫理局で強制措置をとるということなどが書いてあるものですから、果たしてその具体的内容はどういうことかなという意味において理解しにくい点があると申したわけで、法律の規定というか内容自体不確かだという意味ではなくて、実質的によくわからない点があるという意味で申したわけでございます。  それから、資産報告書のことにつきましては、別にいま意識的に落としたわけではございませんで、資産報告書の記載事項というのがたくさんあるわけでございます。その中に、いま仰せになりましたようにいろいろなことが書いてありまして、それを順次申しますと、合衆国以外から支給される給与及び百ドル以上の謝礼等の勤労所得、それから百ドル以上の利子、配当、賃貸料等の不労所得、親族以外から受けた旅費、宿泊料その他のもてなしで二百五十ドル以上に相当するもの、親族以外から受領した百ドル以上に相当する贈り物、二百五十ドル以上の弁償金、賠償金等の受領、事業、投資その他のために保有する千ドル以上に相当する資産、一万ドルを超える負債というようなことがずっと並べてあるわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま私が言って局長が答えた一件百ドルを超える収入とか贈り物は、報告しなければならぬというのでしょう。ここだけではないかもわからないけれども、アレンが失脚したのはこれが主たる原因であったということも考えられるわけですね。  そこで、大臣お尋ねをいたしたいのは、こういうようなことでロッキード事件の再発防止策を決めて、直ちに実施するものとしていろいろありましたね。この中で法務省関連するものなどももちろんあるわけですし、刑法の贈収賄罪の規定整備、これはもう一部行われたのでしょうけれども、その他のものがいろいろあるのです。いま言ったように、アメリカ政府倫理法というものは非常に厳しいですね。私どもから見ても厳し過ぎるくらい厳しい。しかも、これは市民運動団体が中心になって運動を起こしてこれができ上がった、こういうふうに理解をいたしておるのです。  これから見て私は、前に申し上げたように、何億円なりあるいは幾らというふうなことでもらったと考えられる場合には、アメリカ政府倫理法の精神からいっても、日本でもこれに準ずるものが当然できていいし、またそれに応じたものが行動として起きなければいけないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうして日本の場合にはアメリカのような政府倫理法というものができないのか。政治倫理というものがきわめてルーズに行われているのではないか、ではどうしたらいいのか、こういうようなことについて大臣からお答え願いたい、こう思うのです。
  32. 坂田道太

    坂田国務大臣 アメリカにおきましては、ただいま先生からも、また政府委員からも答弁いたしましたとおり、七八年にできました政府倫理法というのはかなり厳しいように承知をするわけでございます。わが国におきまして、事情は異なるとは申しながら、ロッキード問題、それからダグラス、グラマンの航空機購入にまつわる疑惑、こういう問題が発生しましたために、いろいろの防止策を検討して、政治の倫理の確立を図ることが重要であるというようなことにかんがみまして、たとえば、昭和五十四年の九月に航空機疑惑等防止対策に関する協議会の提言を受けていろいろの対策を講じてきたわけであります。  いまお話がございましたように、法務省におきましては、企業倫理の確立、企業の自主的監視機能の充実を図るために、先般会社法の改正を行い、株主総会、取締役等による会社の経営に関するコントロールのあり方等の改善、監査制度の充実、企業内容の開示の強化等によりまして、企業による不正事件の再発の防止を図ることといたした次第であります。また、収賄罪の刑を加重する刑法の一部改正や国際的捜査、司法共助の拡大を図る国際捜査共助法の制定を行いましたほか、政治浄化のための公職選挙法の改正や政治資金規正法の改正、脱税犯の刑を加重する税法の改正について所管省に協力するなど、ただいま申し上げました協議会で提言されました事項の法制化に努力をしたところでございます。  ただ、いま御指摘のございます政治倫理に関する問題については、実は国会にゆだねて検討を行われてきておるということでございまして、まだそれが実現に至ってないという実情であろうか。先生御承知のとおりにあると思います。
  33. 稲葉誠一

    稲葉委員 国会で政治倫理委員会というか、そういうようなものをちゃんとして、具体的な行動を起こさなければならない、これはもうそのとおりなんですが、なかなか現実の問題として起こしにくい状況にある。その原因がどこにあるか、こういうことについてはもう大臣もよく御存じだろう、こういうふうに思います。  で、このロッキード裁判の中で一つの問題は、たとえば児玉判決の問題をめぐってみても、さっぱり判決がないわけですね。それで、新しい刑訴ができるときに、言い渡しの期日の場合には、前は被告人が出頭しなくてもできたわけでしょう、それを出頭しなければできないというふうに直したその理由というか、その経過はどういうことなんでしょうか。
  34. 前田宏

    前田(宏)政府委員 改正当時のことで詳細を存じておりませんけれども、やはり判決言い渡しというものはそれなりの重要なことだということで、本人の出頭が必要だという考え方が強く当時考えられたものと思います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはあなた形式的な——じゃあ、旧刑訴のときにどうして本人が出てこなくてもできたの。そんな答弁はだめよ。どうしてできたの、旧刑訴のときは。本人が出頭しなくてもできたんでしょう。本人が出頭しなければ今度できなくなったんでしょう、新刑訴のときに。このときに日本側は抵抗したんでしょう。日本は無理だ、日本の場合には判決言い渡しに出てこない人が相当いるからだめだということで抵抗したんだけれども、アメリカは、そんなことないからというので、そこで判決宣告期日も出頭しなければできないというふうになったんじゃないですか。これは直接の話じゃありませんけれども。  そこで、たとえば児玉判決についても、これは法務省に聞くのは筋が違うかもわからぬけれども、本人が出頭できないんなら特別法廷を開くという手もあるし、それから本人が意識がないというならば、公判手続を停止するとかというのが筋ではないですか。ただこのままいくというだけでは、国民の方としても何だかわけがわからないということになるんじゃないでしょうか。そこは法務省としてはどういうふうに考えているんです。
  36. 前田宏

    前田(宏)政府委員 確かに、いわゆる特別法廷と申しますか、そういう制度もあるわけでございますが、本件の場合には、被告人自身の病状が相当重くて、仮に特別法廷的な形で病室等で宣告をするということを考えましても、その本人にその宣告の趣旨が到達しないといいますか理解されないというようなことで、その特別法廷というやり方も見合わされているというふうに承知しているわけでございます。  なお、公判手続の停止ということももちろん考えられるわけでございますが、なおその病状の変化といいますか、状況を見ているというのが現状であろうと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの刑訴の改正のところ、公判期日に本人が出頭しなければならないという規定が入った経過、その点、資料に基づいてよく研究しておいてください、いまここであれしてもなにですから。これはGHQの指示ですね。そのとき、日本としては無理な規定だということを大分言ったようですね。  そこで、いろいろ問題は出てくるのですが、たとえば六月八日に判決があるというときに——六月八日ということを抜きにして一般論として言いますと、東京地裁の場合、東京地裁で保釈中の者が判決言い渡しを受けて実刑になりますね。保釈の効力を失うわけですね。そうすると、具体的には一体どういうふうにいまやっているわけですか。まず、保釈の効力を失うからというので、その日のうちには収監しないのが慣習みたいに一応なっていますね。普通のところでは、地検へ連れていきますと、どこかの部屋に待たしておくというのが普通だと思うのですが、東京の場合はどういうふうにやっているのですか。下の仮監へ連れていくのですか。
  38. 前田宏

    前田(宏)政府委員 非常に具体的なことでございまして、私自身もそれほど詳しく承知しておりませんけれども、やはり被告人によりけりと言うのも変でございましょうが、それなりの応対の仕方もあるのじゃないかと思います。別に差別をするという意味じゃなくて、逃げそうな者は逃げそうな者で厳重に監視するとかということにおいて違いがあるという意味で申しておるわけでございますが、そういうことで、収監のための準備手続といいますか準備段階をしているうちにまた再保釈になるというのが多い、ならなければまたそのまま収監をするということであろうと思います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が聞いているのは、その人によりけりという言葉があなたから出てきたから、いま一番国民が関心を持っておるのは、これは変な話だけれども、名前は言わぬけれども、たとえばロッキード事件関連するある人と言っておきましょう。ある人が一審で有罪の判決を受けた、そうすると保釈の効力を失う、これはわかっていますね。そうすると、具体的にどうするのですか。東京地検へ一たん連れていくのでしょう。連れていって、どこかで待っててもらうのでしょう。地検の中のどこへ待たしておくのかな。東京地裁の一番下にある仮監に入れておくのかな。どういうふうにやっておるのです。  あなたがその人によりけりという言葉を言うから、おかしくなるのですよ。こっちが何を質問するかということをあなたがわかってきたから、その人によりけりという言葉が恐らく出てきたのだと思うのです。だれを想定してこっちが質問しているか、だれを想定してあなたの方が答えているか、大体わかるから名前を挙げないけれども、そういうふうになっていくんだよね。よりけりというのはおかしいよ。その人の身分によって違ったり何かしているわけじゃない。だから、東京地検に連れていくんでしょう。これはまず間違いない。いまはどこへ置いておくのですか。
  40. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほどの御答弁の中でもすぐに補充いたしましたように、よりけりというのは、人によって差別待遇するという意味じゃなくて、すぐにでも逃走しそうな者であればそれなりの厳重な措置をとらなければならないでしょうし、それほど逃走のおそれがないということであれば、それなりの対応があるだろうという意味で申したわけでありまして、被告人の身分とか地位とかによって差をつけるという意味で申したことでないことは、その間でお断りしたところでございます。  ただ、どの部屋に連れていくかというような具体的なことになりますと、それはそのときの状況いかんにもよるのじゃないかと思いますけれども、やはり執行関係の担当事務をするところがございますから、恐らくその担当の者が所属する事務課等に連れていって収監のための手続をとるというのが普通の場合だろうと思います。
  41. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから私が聞いているのは、東京地裁で実刑判決を受ける、保釈の効力を失う、わかった、収監しなければならない、しかし、収監はその日のうちは一日待つ、夕方まで待ちますね。これはあたりまえの話というか、一つの慣例になっているから、だれでもみんな同じ扱いをしていますね。普通の地検ではどうしているのです。普通、執行はどこでやるのか。ちょっとはっきりしない。検務一課でやるのか検務二課でやるのか、これは別として、そこら辺のところへ連れていって、事務官や何かみんないっぱいいるところのそばに置いておくのでしょう。置いておくと言うと語弊があるけれども、そこに座らしておいて、待っていろといって待たしておるのが普通じゃないですか。だから、東京地裁の場合は、東京地裁のどこを通って一体どういうふうに地検へ行くのか。  これはすぐ問題になるのですよ。問題になって、これは恐らく世間は、特別扱いをしたといって大きな問題になる可能性があるから、私は聞くわけです。まさかそれは、検事正室へ行って、はいここでお待ちくださいというのじゃないでしょう。そんな扱いをしたらえらい騒ぎになりますよ。だから、逃げる逃げないということで判断するならば、みんな同じ扱いをしなければいかぬわけだから、地検の検務一課——いま東京地検には検務一課というのがあるのかどうかわからぬけれども、そこでそばに座らしておくのですか。いすに腰かけさしておくのですか。そうでなくちゃおかしいぞ。特別な地位のあった人だからといって、何とかだとかいって特別扱いをするというわけにいきませんよ。だから、地位によっては特別扱いしないということをひとつはっきり答えてください。それから、どこへどうやっておくのか。
  42. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来お断りしておりますように、執行事務の具体的な、たとえばどこの廊下を通ってどこの部屋に連れていくかということまでは、私、承知してないものでございますから、なお後で確かめておきたいと思いますけれども、先ほど申しましたように、別に地位によって差をつけるということはないわけでございます。ただ、身柄の逮捕なり勾留なり押送の場合に、非常に新聞等、新聞等といいますか、マスコミ等の関心を集める場合には、カメラマンが集中するとかそういうこともあるわけでございまして、そういう場合にはそれなりの配慮をすることもあるだろうというふうに思います。
  43. 稲葉誠一

    稲葉委員 まあ生臭い話ですから、これ以上余り聞きませんけれども、特別扱いをしないでくださいね。いいですか。現在でも東京地裁は特別扱いをしているらしいな。きょうは地裁は呼んでないけれども、裁判のときも、特別な部屋で待たせたり何かしているのじゃないですか。それはどうも警備の関係だということらしいけれども、それはきょう裁判所を呼んでいませんからあれですが。  そこで、大臣お尋ねをいたしたいのですが、一部に伝えられておりますところでは、保安処分に関連をして、四月じゅうに法務大臣の私的な諮問機関として保安処分を討議する懇談会を設けたい、これが第一。そして、何か実態をつかむために、夏、いろいろな施設などを、ヨーロッパその他アメリカも含めて訪問したいというか研究したいというか、そういうような意向を持っておられるとかなんとかということが伝えられておりますね。この点についてはいかがなんでしょうか、お答えを願いたいと思います。
  44. 坂田道太

    坂田国務大臣 刑法改正の一番重要な問題の一つでございます保安処分、治療処分とも言っておるわけでございますけれども、この問題につきまして日弁連との間の交渉を続けておりますけれども、まだ意見の一致を見ないという状況にある。したがいまして、もう少し話し合いを進めてまいりたいということと、それから、非常にこの問題が専門的な分野にわたるところもございますし、一般の国民に十分周知されておるというふうにも思われない。もう少し議論を国民の課題として取り上げてもらいたいということをかねがね実は私は考えております。でございますから、本委員会等におきましてもできるだけこの問題で、意見の違いはあったにしましても、議論を尽くしたいというふうにかねがね私は思っておるわけなんです。  新聞の論説あたりを読みましても、全く法務省と日弁連と意見の対立がはっきりしているじゃないかとか、あるいは厚生省の方はもう拒否しているんじゃないかというようなお話もございます。やはりこういうことではいけないので、何かそこに両方歩み寄り、両方基本的には考え方をそう変えないで両立する道というものはないものだろうかというようなことも一つ考えられるように私は思うわけなんです。  そういう意味から、比較的良識のある方々に、日弁連さんはこういう主張をされております、われわれ法務省ではこういう主張をしております、日弁連さんでは、むしろ精神医療を主体なんだから、結局厚生省の現在の国立病院で対処すればそれでやっていけるじゃないか、こういう御主張だ、ところが、そういう精神障害性の犯罪者でかなり凶悪な人が含まれておる場合は、ちょっと国立病院で受け取るというのは、当然やらなければならないことかもしれないけれども、ちょっとわれわれの方では困難だ、むしろよく伺ってみれば、何かひとつそれは法務省の刑事政策上の保安処分という形あるいは治療処分という形でやってもらえないか、まだはっきり厚生省の方ではおっしゃっておりませんけれども、そういうようにうかがわれる節もあります。  そういうふうなところを考えましたときに、施設は厚生省でやるにしろ、あるいはこちらでやるにいたしましても、そういうところをはっきりわれわれの方でやります、あなた方の方はあなた方の方で治療、保護それから社会復帰、開放性の治療、こういうことで、法務省法務省として、厚生省は厚生省として、両方立つ道は政府全体として立たないものだろうかというような道も、あるいは話し合いの結果として生まれるような気もしてならないわけで、あらゆることを尽くして話し合いを続けたいというのが私の気持ちです。  この四月十六日にもう一回実は日弁連さんとお話し合いをいたします。しかし、ここで尽くされなかった場合に、それでは直ちにもう日弁連さんを相手にしないということで進むかどうかということを考えましたときに、せっかく日弁連さんの方にも少しは歩み寄りの気配が私としては考えられるわけでございまして、もう少し話し合いを続けたい。続けたいためにはひとつそういうような懇談会等も私的なものを設けて、しかもうちとしては法制審議会という審議会がございますから、これに抵触するようなことがあってはいけないので、やはり保安処分、治療処分というものに限定して、しかも一応その路線に沿った上でいかがでしょうかということを聞いてみるという私的なものをつくってみてはどうかな、いままだ考えているわけでございまして、まだこれを絶対にやらなければならないとも考えておりませんが、でき得べくんばやりたいと考えております。  外遊の問題は、そういうことは漏らしたことはあるのです。それは漏らしたことはありますけれども、これは全く私個人の考えでございまして、まだうちの法務省人たちとも了解を得ている問題ではございませんので、これはもう少し慎重に、これからの問題として、いまはまだそれは考えていない、ただし、懇談会の問題はいま真剣に実は考えて、相談もしておると御理解をいただきたいと思います。
  45. 稲葉誠一

    稲葉委員 話はわかりました。実はこの保安処分の問題については、保安処分が万能だという考え方を一方とっているわけですね。一方というのはどこかは別ですよ。そういう理解の仕方もあるだろうし、保安処分があれば通り魔殺人なんかみんななくなってしまうように考えている人もいるかもわからぬし、あるいはこれがあればそこら辺歩いている人がみんな引っ張られてしまうように考えている人もいるかもわからぬということで、私自身もいろいろ考えてはおります。  そこで、いまおっしゃった大臣の外遊の問題についてお聞きをする前に、あなたはいまちょっと外遊の問題を漏らしたということを言われましたな。それに対して事務当局から猛烈な反発を食ったんじゃないですか。そんなことは非常に困るというので反発を食ったんじゃないでしょうか。どうですか、それは。
  46. 坂田道太

    坂田国務大臣 いや、この点を事務当局にはまだ話もしておりませんし、また反発のあれも何も聞いておりません。ただ、新聞にはそういうことに書いてあります。
  47. 稲葉誠一

    稲葉委員 ほとんどの新聞は書かないですよ。本当に少数の新聞が一部ちょっと伝えただけでしょう。外遊の問題は外遊の問題として、それはいまあなたとしては外遊の問題は言えない立場にありますよ。それはこっちもわかりますよ。  そこで、お聞きしたいのは、変な意味と言うと語弊があるかな。ちょっと変な質問になるんですが、あなたが法務大臣になられて法務省に行かれて、この役所はどうも少しほかの役所と違うなというふうなことを何かお感じになったところがあるやに漏れ聞いているわけですけれども、その点はどうなんでしょうか。いままでおもしろおかしくというか、出ていますね。たとえば、大臣室で弁当を食うのも全部自分の金を出すんだとか、あるいは大臣室の生け花も全部大臣の方で出すんだとか、あなたはまだいろいろなことを言われて、なかなかやかましい役所だというふうなことで、ほかの役所と違うなと感じられたということも興味本位に伝えられておりますので、その点についてのお尋ねをしたいと思います。
  48. 坂田道太

    坂田国務大臣 法務省は法の番人でございますから、法秩序、そしてまた国民の権利保全ということですから、非常に窮屈なかた苦しいところということは、実はかねがね先入観を持ってまいりました。行った当初は、やはりそうだなと思っておりました。大臣室も広々としておりますし、天井は高いし、寒々としてと、そう感じたのですが、やはり二カ月、三カ月、四カ月たちますと、いや、これはなかなか法務省の建物も古くていい、よその省よりも、何といいますか、落ちついて、厳粛でいいなという感じでございます。それからまた、職員の方々も、初めは非常に取っつきにくかったのは事実でございます、ことに検事さんが非常に多いわけでございまして。そういうことがございましたが、一緒に仕事をやっておりますと、だんだんそうじゃなくて、非常にいまは気持ちよく伸び伸びと仕事をさせてもらっておるというのが、実は率直な私の気持ちでございます。  それからまた、いろいろの問題について窮屈じゃないかということでございますが、よその省はそれなりに対応しておると思います、違いもあるとは思いますけれども、各省の中で法務省くらい、それくらい厳しくやっておる省が一つくらいあったっていいんじゃないかと私はいま考えておるわけでございます。何ら違和感を持っておりません。非常にいまは、何といいますか、楽しくと言ったら少し言い過ぎでございますけれども、ちっとも違和感を感ぜずに、伸び伸びと実は仕事をさせていただいております。
  49. 稲葉誠一

    稲葉委員 違和感を持ってないということを言われること自身が、違和感を持っているということの裏返しじゃないでしょうかね、いまはないと言うんだけれども。こっちがそういうことを聞いたからお答えになったので、こんなことを聞くのもおかしいんですがね。  ただ、大臣が保安処分のことに関連をして欧米諸国なとを——アメリカへはあなたの方の参事官が行っているわけですよ。宇津呂参事官が行っているんだけれども、その報告が出てこないわけだ。雑誌に書いてないわけだ。ほかのヨーロッパへ行ったのは、古田君たちみんな書いていますけれども、アメリカへ行ったのはどこかで書いていますか。僕が見ないのかな。じゃ、間違いかな。いずれにしても、弁護士会では第二弁護士会が中心になって、第二弁護士会ばかりじゃありませんけれども、非常に熱心にやっておられるというわけです。おのおの都合のいい見方ばかりしているわけです、率直に言って。  僕は、ヨーロッパでも——アメリカはちょっと知りませんが、ヨーロッパを見てきても非常に都合のいい見方ばかりしているわけです。たとえば、どこかのロンドンの郊外にある病院へ行ってきても、塀が非常に低かったとか、非常に明るい感じだったという見方をしてくる人もいるし、いろいろあるわけなんです。だから、あなたが外国に行かれるということならば、クールな目でよく見てほしいと思うのですね。偏った見方をしてはいけません。両方の報告書みたいのがありますから見比べていただいて、ことにアメリカなりヨーロッパの施設というものについてはクールな目で見ていただきたい、こう思うのですが、どうでしょうか。
  50. 坂田道太

    坂田国務大臣 そういう機会がございましたら行って、この目で確かめてきたい、その際はクールな目で客観的に見てまいりたいと考えております。
  51. 稲葉誠一

    稲葉委員 そのほかいろいろな問題についてお聞きをいたしたいのですが、私が一つ聞きたいことは、刑事補償法の改正案がもう出て、きのうかな、参議院で審議しているのですか、その問題の中で詳しいことをお聞きをいたしたいと思うのです。これは刑事局長に聞いた方がいいかな。  たとえば近田事件というのがあって、俗に言う勧銀大森支店強殺事件、これは一審が無期懲役ですね。二審が無罪ですね。これは高裁の十一刑事部ですね。無罪、それで検事上告して、これは棄却決定ですね。弁論を開かないで決定なんですが、この事件だとか、それから福岡高裁差し戻しになった事件だとかその他いろいろあるわけです。詳しいことは刑事補償法の審議の中で個別的に詳しく聞きますが、こういう事件、たとえば勧銀の大森事件の結論から見て、聞いて、刑事局長としては捜査に関連をして一体どういうふうなことを感じというか、考えられたわけでしょうか。
  52. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いろいろなことを思うわけでございますが、刑事事件というものは捜査の段階から大事であるし、また公判段階も大事であるし、いろいろな捜査そのものにつきまして十分慎重にやっていかなければならぬものだなということを改めて感ずるわけでございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、慎重でなければならないと言うのだけれども、一人の人の人権を傷つけたということについては何か全然言葉がないですね。これはどういうわけなんだろうかな。これはいまあなたの方としては、最高裁の判例の中にもいろいろなことが出ていますから、恐らくそれを受けて、人権を傷つけたというふうな考え方が答弁として十分出てこないのかもわかりませんね、と思うのですが、まず、その点についてはどういう配慮をしているかということが一つ。  それから、これは私が思いますのに、検事上告という制度があって、これは検事上告をしていますね。ところが、これは絶対的な上告の理由ではなくて、恐らくこれは破棄しないというと著しく正義に反するとかなんとかいうあの理由の事実誤認でしょう。ところが、最高裁の決定を見ると二、三行でしょう。二、三行で簡単に片づけられちゃって、これは法律上の理由に当たらないというので却下されちゃっているわけでしょう。そしてあと職権でずっと最高裁で決定しているわけでしょう、伊藤正己さんが裁判長のところで。これは検事上告という制度が、それほどまでの必要があるのかどうかということですね。だから、絶対的上告理由なら別だけれども、そうでない理由の場合には検事上告という制度を置く必要がないのじゃないかと思うのですね。これが第一点ですね。  それから第二点は、最高裁の決定の中で簡単にけっ飛ばされているのでしょう。けっ飛ばされている理由は三行か四行じゃないですか。法律上のあれには当たらないというのでけっ飛ばされているのじゃないですか。これは少しみっともないじゃないですか。こういうことについてどういうふうになるかということですね。  それからもう一つは、そもそも検事控訴なり検事上告という制度が根本的に必要かどうかということですね。これは検事控訴を認めていないところがありましたね。これはイギリスかな。ちょっと忘れましたが、どこかの法制ではありますね。ただ、それは当事者主義をとれば検事もあれなんだから、認めるのも筋かと思いますが、いま言った本件の場合の検事上告というもの、これを一体なぜしなければいけなかったのかということが一つと、それから、検事上告という制度そのものが一体必要なのかどうかという点ですね。絶対的上告理由なら別だけれども、そうでない理由までやる必要があるのかどうかですね。  それから第三に、いま言ったように三行か四行で片づけられて、法律上のあれに当たらないなんてやられて、みっともないじゃないですか。そういうふうに思われないですか、どうでしょうか。
  54. 前田宏

    前田(宏)政府委員 最初に、いわゆる人権問題について何も言わなかったという御指摘を受けたわけでございますが、慎重にやるべきだということの中にはそういう意味も含めたつもりでございまして、捜査、公判を通じて、一方においては真実の発見ということが大事でございますが、それとともに人権の保障ということも大事でございまして、両面につきましてなお一層配慮しなければならないというふうに思っているわけでございます。  それから、本件のような事例についての上告の問題でございますが、すべての事件についてああいう形での上告がなされているわけでないことは、稲葉委員も御案内のとおりだろうと思います。ただ、本件だけの問題ではございませんけれども、たとえば重大な事件につきまして一審と二審との判断が全然正反対であるというような場合に、特に二審の判断について承服しがたい点があるという場合には、やはり最高裁の判断を仰ぐということも必要な場合も物によっては十分あり得るんじゃないかというふうに思うわけでございまして、なるべくそういうことは控え目にした方がいいと思いますけれども、すべてしてはならないというふうには思わないわけでございます。  現に、今度の最高裁の決定でも、確かに御指摘のような形になっておりますけれども、事実問題については詳細な判示がなされておるわけでございます。それだけにいろいろと内容的にもむずかしい問題があったということが、それ自体からも一般の方にもおわかりいただけることじゃないかというふうに思うわけでございまして、そういうことを考えますと、いわば原則的に言えば、事実問題は控訴審段階まででなるべく決着をつけるべきものだと思いますけれども、重大な事犯または内容的にいろいろ問題がある事犯につきましては、場合によってはそういう措置もやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞いた第三点についてはお答えがないけれども、これはみっともなくありませんか、最高裁の決定を見て。法律上の理由にならないと書いてあるでしょう、最高裁の決定で。二行か三行じゃないですか。最初のところでけっ飛ばされて、あと職権であれしているのじゃないですか。私はだから、最高裁の決定が検察官の上告を棄却しているのですから、結論としては同じなんですから、職権でそこまでやる必要があるかどうかというのは疑問に思うのです。私個人の考え方ですから、判決の批判になりますからそれはしませんが、ちょっと疑問に思います。  もう一つ感ずるのは、東京高裁の十一刑事部の判決を全部とりました。私、読んでみた。非常に詳細に、実に良心的にやられておりますね。これはいずれまた細かい点については、たとえばこの中にある手紙の点ですね。手紙の点で氏名、押印しているところがあるし、押印のない手紙もあるとか、それから後から出した手紙もありますね。四月一日付に出した手紙もあるとか、それから代用監獄の問題で、どこでどういう自白が行われてきたのかとかいろいろな点で問題があって、刑事補償法にも関係するし、監獄法にも関連する問題ですから、細かい点についてはそちらの方でお聞きをしたいと思いますが、この高裁の第十一刑事部に行ったからあれはこうであって、ほかの部へ行ったらそこまでいかなかったのじゃないかというふうな、高裁には地獄部、極楽部というのがあるわけですから、だからそういう点は、その人のあれにもよるかとも思うのですが、刑事補償法の中でこの事件の詳細についてはお聞きをしたいと考えます。  これは恐らく刑事補償法の問題が起きてきますからね。鑑定の問題でも出てくるでしょう。鑑定の場合、同一だという鑑定はしていないわけですね。類似だという鑑定をしておるだけだ。いろいろな問題が出てきますから、そこら辺のところは改めてお聞きをしたいと思っています。これは刑事局長の方と矯正局長の方で、よく最高裁の決定なども読んで、一審の判決も読んで、いろいろ事実関係をひとつ研究しておいていただきたいというふうに思います。  それから、検事控訴を認めていない法令が、たしかイギリスだと思うのですが、私の記憶違いかもわかりませんが、どこかあったと思いますが、なぜそういうふうになっているのか、その由来などについても十分研究しておいていただきたいというふうに思います。  そこで、選挙違反の問題について二つばかりお尋ねをいたしたいのですが、大臣日本の選挙違反というのは皆様方——皆様方と言うと語弊かありますが、これは確かになかなか問題があるのですよ。たとえば選挙の場合に事務所がありますね。事務所から各地区の選対へある程度金を渡す場合がありますね。そうすると、日本の選挙法は前渡しというのを認めないわけですよ。労務費というのは、現実に使った者から請求があって初めて渡すという形になっておりますね。だから、金を渡すというと、全部と言っていいぐらい、これは事実認定の問題でしょうけれども、金が行けばそれがすべて投票取りまとめの報酬として渡されたという形になってくる可能性が、選挙違反というのは非常に強いのです。  というのはなぜかといいますと、御案内かどうかは別として、投票が終われば事務所の書類なんか全部片づけてしまいますわね。あなたはうんうんと言って、よく承知しておられる。それを疎開と称しているわけでしょう。疎開と称して、あなた、事務所のを全部片づけて、ほかへ持っていってしまう。だから、選挙違反には大体物証はないわけです。だから、つかまってきて、そこで具体的な調べをするというと、自白以外にない。  そうすると今度は、俗に言う技術というか腕というか、できるかできないかということを検事が試されるのは、選挙違反と涜職と会社犯罪ですが、会社犯罪の場合は、帳簿や何かありますから、ある程度証拠がある場合がありますね。それから、涜職の場合もある程度ある。選挙違反の場合は、全くと言っていいくらいないわけです。だから、どうしても自白強要というか、自白に頼るという形になってこざるを得ない。自白をさせて、その事件が上の方へ伸びていけば——足は別ですよ、足というのは、俗に一番下っ端の連中を足と言っているのですが。上の方へだんだん伸びていくと、この検事は腕がある、できるということになって、評価が上になってくる。現実にはこういうふうになってきている。刑事局長、これは違うなら違うと言ってください。実際そうなんで、あなた、検事の腕がいいか悪いかわかるのは、選挙違反と涜職と会社犯罪の三つなんだから。それで、選挙違反は検事としてどうしても無理がある。どうしても上へ伸ばしたいということになるのですよ。上へ伸ばせば、その検事はできるということになって評価されるのですよ。それで大体回って、東京地検へ入ってくるという形になるわけですね。そういうルートになるのです。  そこで、問題になってくるのは、選挙違反における自白の強要ですね。これは検察は全部そうなんです。だから、ロッキード事件で被告人たちが検事の作文だと言うことについて、私はある程度同情というか、理解を示すのです。実際は、これは検事の作文なんです。とり方によるが、検察の作文なんですよ。ということは、本人がしゃべったことをそのまま書くのじゃないのですから。質問は出ていないのですよ。答えだけが全部出ているのです。午前中ずっと聞いたものを午後になって検事の頭でまとめて、口でしゃべったものを事務官が書いているわけです。そこで被告人なり何なりにこのとおり相違ないかと言えば、結局相違ないということになってしまう可能性が日本では多いわけですからね。  そういう意味において、これは作文といえば作文なんです、問いがないのですから。問いと答えがあって初めて出てくるのです。あるいは速記がとられているとか、ソノシートとかなんとかがあるというならわかるけれども、そうじゃないんで、そのためにはもちろん任意性の問題とかいろいろな保障があるということを言われるに違いない。三百二十一条でいろいろあるんだと言われるでしょうけれども、それはそれとして、選挙違反については、そういう意味でどうしても無理が伴うということですね。これは理解を願っておきたい、こう思うのです。  そこで千葉県。千葉県というのはよくこういうのがいろいろあるのですが、最初にお聞きをしておきたいのは、まず泰道代議士の選挙違反。検察審査会から回ってきましたね。それはその後どういうふうになっておりますか、それを最初に聞きましょう。
  56. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いわゆる泰道派の違反につきましては、御指摘のように千葉の検察審査会におきまして、検察官の不起訴処分が不当であるという議決が一月の二十九日になされておるわけでございます。この議決がもちろん地検の方に回ってきておるわけでございますので、千葉地検におきましては直ちに事件を再起するという手続をとりまして、広い意味での再検討、再捜査を行っている状態でございますが、まだ結論を出すに至っておりません。
  57. 稲葉誠一

    稲葉委員 結論はすぐ出るというわけじゃないと思うのです。いま国会開会中ですし、なかなか無理かと思うのですが、実際には捜査に着手しているのですか。どうもそこら辺のところがはっきりしないので、差し支えない範囲でお答え願いたいと思うのです。
  58. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ですから、先ほどもやや抽象的に申し上げたわけでございまして、それ以上に、だれをどういうふうに調べるとかいう具体的なことは、事柄の性質上差し控えさせていただきたいわけでございますが、必要なことは順次やっていくというふうに御理解いただきたいわけでございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは逆な意味と言うとおかしいんですが、検察の威信が問われている。威信という言葉が当たるか当らないかは別として、それが問われている事件ですから、しっかりやっていただきたいと思う。恐らく、いま国会開会中ですから、余り進まないのかもわかりませんが、いずれにしても正すべきものは正していただきたいというふうに思うのです。  そこで、同じ千葉の松戸支部で、これまた選挙違反ですね。これは不動産業の方がつかまって、検事を特別公務員暴行陵虐罪で千葉地検松戸支部に告訴しておる、こういうのが言われておりますね。まず、こういう告訴があったかどうかということ。三人からだったか、それから日弁連の人権擁護委員会にもあったらしいんですが、これが告訴をしているということは事実かどうかということが一つ。事実とすれば、その内容はどうかということが一つ。  それから、これはサンデー毎日ですけれども、三月二十八日号に一問一答がいろいろ出ているのです。これは公判記録によってらしいのですが、公判調書——この検事が証人で調べられていますが、ここに書いてあることは公判調書とは違いますか違いませんか、どうなんですか。
  60. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、告訴がなされているかどうかという問題でございますが、その点は確かに告訴が出ておりまして、昭和五十六年の一月二十七日に、千葉地検の松戸支部に対しまして、鈴木利という方外二名から、特別公務員暴行陵虐罪ということで告訴がなされております。その事件は、間もなく千葉地検の本庁に移送されておりまして、千葉地検の本庁で現在捜査中でございます。  それから、サンデー毎日に記載された事実についてでございますけれども、公判調書自体、まだこれは事件が確定していないわけでございますので、それがストレートに外へ出るということ自体、ちょっと問題もないわけではございませんけれども、そういう意味で、公判調書の内容そのものを申し上げるのもいかがかと思いますけれども、このサンデー毎日の記事との関連で申しますと、もちろん公判調書の中の高原証人の証言の全部が引用されているわけではございませんので、そういう意味では、やはり全体を見ていただかないと判断が正鵠を欠くという問題もあるかと思いますが、その調書の中でサンデー毎日に引用されているようなやりとりがあったということは、おおむね事実でございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは票を取りまとめて五百万円受け取ったというのでしょう。五百万円については立件できないということで釈放したのですか。警察の任意取り調べを受けて、それから警察の方は強制捜査に及ばずとして捜査を断念をしたということですか。断念と言うかは別として、やらなかった。それがその後において検事の方で逮捕した、こういうふうな経過ですか。まずその点、五百万円に関連して、五百万円ばかりとは言わぬけれども、三十万円でもいいですが。
  62. 前田宏

    前田(宏)政府委員 お尋ねに即して申しますと、いわゆる五百万円の受供与ということで鈴木利という人を逮捕して勾留しておったわけでございますが、その勾留事実では当時起訴いたしませんで、いわば別の事実である三十万円の事実で求令状起訴ということをして、五百万円の当初の事実については釈放という手続がとられているわけでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞き方が悪い。もう一つ前の段階、検事のところで逮捕したのかどうかということです。警察では任意捜査でやっていって、それが断念かどうかは別として逮捕しなくて、検事のところへ来たときに五百万円のことで逮捕したのかどうか、こういう点ですね。
  64. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、五百万円の受供与の事実で逮捕したのは、検察官でございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉委員 確かに選挙違反の場合は、警察と検事との間で意見が分かれることは相当あるのです。これはどっちにどうひいきするという意味ではありませんけれども、警察の場合には、選挙違反でいろいろな人からの話なんかがあって、ある程度妥協することがあります。だから、そこで事件にならなかったものが、検事のところへ来て五百万円の授受ということで逮捕されることは、一般論として選挙違反の場合はよくあることです。そうして、五百万円では起訴されないで、求令状起訴で三十万円でしょう。  その中でいろいろなことが出てきますが、たとえば「四十分以上も立たせ、その後ろに折りたたみ式の椅子を持ってきて、そこに座っていたのはどういうわけか。」ということに対して、「そういうことは一、二回ありましたが、別に意味はありません。」こう言っています。ですから、警察が事件にしなかった、検事としては非常におかしいということから逮捕して事件にしようとして、なかなか五百万円の関係では自白が得られない。金の授受は認めたのでしょう。授受は認めたけれども、趣旨が違うということじゃないかと思いますが、その辺は時間の関係もありますからあれですが、恐らくそうだと思うのです。そこで、検事の方は非常に焦ったのじゃないですか。焦って、何とかしてこれを物にしようというふうなことがあって、相当な無理がこの捜査の中で行われてきたのではないか、こういうふうに考えられるのですが、いま私が読んだようなこと、四十分以上も立たせたということが仮にあったとすれば、それは一、二回あったということを認めていますね。別に他意はないと言うのだが、それはちょっと通らないな。  その授受を否認したのか趣旨を否認したのか、どうなのですか。恐らく趣旨を否認したのだろうと思うのですが、そこでそこへ立っていろと言って立たせたとするならば、これは行き方としてはよくないですよ。とにかく自白を得ようとして非常に焦ったということがそこに出てくるのじゃないですか。どうなのですか、そういう事実はあったのですか。
  66. 前田宏

    前田(宏)政府委員 捜査の経過でどういうことがあったかということになりますと、本件の選挙違反の事件自体がまだ控訴審にかかっておるわけでございますので、そういうことの関係もございますから、どういうような捜査の進行状況であったかということについて申し上げるのは適当でないと思うわけでございます。  三十分程度立たせたということの事実については……(稲葉委員「四十分」と呼ぶ)三十分ないし四十分だと思いますが、本人も一応述べているわけでございますので、その事実自体は否定できないことだと思います。ただ、先ほど申しましたように、そういうような取り調べに至った背景、いきさつ、そういうこともあり得るわけでございますし、また、この事件自体が先ほども御説明いたしましたように告訴を受けてまだ捜査中でございますので、その事実があったかどうか、またなぜそういうことになったのかということにつきましては、いまその捜査の対象でございますので、現段階では御答弁は差し控えさせていただきたいわけでございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間が来ましたので、この程度にしておきます。大臣、今後いろいろな面で質問をさせていただきたいと思います。  私、この事件でいま非常に疑問に思いますのは、これは局付の若い人たちに研究しておいてもらいたいのですが、黙秘権があると言っているでしょう。黙秘権という制度がある以上、房の中にいて、おれは黙秘権を行使するのだからと言ってそこへ行かない、取り調べ室へも行くのは嫌だと言ったときに一体法律的にどういうふうになるのですか。これがまず一つです。  それから、検事が調べたときにでも、自分は黙秘権を行使しますと言ったときに、検事なり警察官としては一体どういう態度をとれるのですか。いろいろなことを聞いてきますね。黙秘権を行使するというのに、いろいろなことを聞くことができるのですか。黙秘権を行使するのはけしからぬといって何らかの態度がとれるのかどうかということ。黙秘権を行使したということが、これは裁判の問題になるかもわからぬけれども、求刑の問題とすれば、これは反省の情がない、改悛の情がないといって量刑の中の一つの要素になるのかならないのか、これは一体どういうことなのでしょうか。きょうは時間が来ましたからいまでなくていいですよ。よく研究しておいてもらいたい。  日本人はきわめて例外の人しか黙秘権を行使しません。検事のところでもそうだし、また法廷で黙秘権を徹底的に行使されて、それで警察官が出す証拠を不同意にされたら、これは一体どういう結果になるのだろうか。これはいいですよ。答える筋合いのものじゃないけれども、そこら辺のことがあるので、本人が黙秘権を行使するとがんばったときに一体どういう態度が法的に許されるのかということ、これはゆっくり研究しておいてもらいたいと思います。  時間が来ましたので、終わります。
  68. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 林百郎君。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 最初に、警察庁にお聞きしたいのですが、ホテル・ニュージャパンの問題です。  日本人遺族会の人たちは今月末までに回答を求める、それによって四月上旬に態度を決定するということになっておりまして、ちょうどきょうになるわけなのですが、それと報道の伝えるところによると、十九日に検察、警察の合同会議が開かれているというわけなのですが、言うまでもなく消防法違反で二十数項目、スプリンクラーの問題だとか非常ベルのオフの問題だとか、こういうような問題があって、もはや横井社長の刑事責任は客観的には逃れ得ないように思われるのですが、この点について警察庁の方はどういうようにお考えになっているわけですか。
  70. 仁平圀雄

    ○仁平説明員 社長を含めまして管理者の刑事責任が問題になりますのは、ただいま先生も御指摘になりましたが、防火・消火設備の設置及び維持管理の状況、消防計画に基づく消火及び避難誘導の訓練状況、それから消防庁の行政指導に対する対応の仕方等ということになると思うわけでございますが、これらの点につきましては、火災事件発生後現在まで引き続き検証、関係者からの事情聴取等を行います一方、自動火災報知機及び放送設備の作動状況とか炎及び煙の速度とその経路並びにその煙の毒性とか、さらにはスプリンクラー、防火扉等防火・消火設備の状況とその効果等につきまして東京理科大学及び警視庁の科学捜査研究所に鑑定を依頼しておるところでございまして、これらの捜査結果を総合的に検討いたしまして刑事責任の有無を明らかにしたいということで、現在捜査しておるところでございます。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 前田刑事局長さん、幡野政男という総務部長、これは防火責任者だったらしいですが、この証言によりますと、横井社長はこういう消防庁の注意や何かは全部知っていたのだけれどもやらなかったのだということを、取り調べに際して述べておるというわけなのです。そうなりますと、いま警察庁の言ったガスの毒性とかいろいろなことがあるにしても、あれだけの被害を発生したことについての横井社長の刑事責任は免れないと思うのですが、刑事局としてはどういう姿勢でこれに臨むのですか。当然これは刑事責任が追及されてしかるべきだと思うのですが、どうでしょう。
  72. 前田宏

    前田(宏)政府委員 御指摘のニュージャパンの火災事故につきましては、先ほど警察庁の方からお答えがございましたように、当面警察の方でいろいろな角度から火災原因、あるいはあれだけの被害になった原因と申しますか、そういうようなことにつきまして鋭意捜査しておられるところでございます。その過程におきまして、だれが責任を負うべきであるかということも当然明らかになってくるわけでございまして、いろいろなことが報道等にもされますけれども、まだその捜査が十分尽くされていないといいますか、まだ結論を出すようなところまでいっていないというふうに承知しているわけでございまして、刑事責任の有無ということになりますと、やはり証拠の積み重ねということによって初めて明らかになることでございまして、いまの段階でだれにどういう責任があるということを申し上げるのは、ややまだ早いのではないかというふうに思っております。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣、これは非常に大きな社会的な問題になっていて、横井社長の責任も追及されているときに、まだ全般的な総合的な材料が整わなければ刑事責任を追及することができないというようなことで、一体国民は納得するのでしょうかね。だから、刑事責任についても事態によっては追及するという方針で鋭意、警察と刑事局とが捜査をしているということならわかりますが、いまの前田さんの答弁ではまるで雲をつかむみたいなことで、いまごろになってまだそんなことを言っていたらとても国民は納得しませんし、ましてや遺族の人たちの慰謝の方法、損害の賠償あるいはテナントを持っている人たちの損害の賠償もまだ行われていないわけですから、大体の大きな方向としてはどういう方向でいま鋭意捜査を進めているかということを、大臣、検察の最高責任者として、どういうようにお考えになっているのですか。
  74. 前田宏

    前田(宏)政府委員 私も決して消極的な意味で申したつもりはございませんわけですが、ただ、林委員が横井社長の責任は免れないのではないかという断定的なお問いをされましたので、そういうことに対して、そうですというふうに直ちにはいかないということを申したかったわけでございます。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 断定的にはいかないけれども、横井社長の刑事責任をも含めて捜査は多面的に総合的に行っている、ここであなたに結論を言えとは私も言いませんけれども、それはそう聞いておいていいんですか。
  76. 前田宏

    前田(宏)政府委員 あの事件に限らず、どの事件でもそうでございますが、特にあれだけの被害を起こした事件でございますので、その責任がどこにあるかということはあくまで究明されなければならない問題だ、かように考えておりますので、責任のある者につきましてその責任の有無、程度等を明らかにするのは当然捜査当局の義務である、かように考えております。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 それはここで確定的に責任のあることを明言されることは私は求めませんが、その責任のある者の中には当然横井社長も含めて、責任ある者の一人として捜査は進められているわけですか。いや、それは多面的に捜査することはわかりますが、横井社長の刑事責任をも含めてそれぞれ責任ある者についての責任の追及については手抜かりのないようにしておる、そう聞いておいていいんですか。そうでなければ、国民はこれは納得しません。きょう最終的な回答を聞くというときに、まだ責任の方はどうなるかわからないなんという答弁を国会でしていたら、それは国民は承知しませんよ。どうなんですか。  大臣、どうですか。局長だけではどうもなまぬるくていかぬけれども、あなた、大臣としてこれをどう思いますか。     〔委員長退席、太田委員長代理着席
  78. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま刑事局長から御答弁申し上げましたとおりでございまして、法務省といたしましては、厳正公正に対処いたしたいと考えております。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 公正はいいんですが、その公正の中には当然横井社長の責任をも含めて、ここで、あると言えとは私、言いませんけれども、含めてあらゆる点に手抜かりのないような捜査をしている、こう聞いておいていいんですか。これは局長、答えてください。これは常識的な質問ですよ。
  80. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来繰り返して申し上げておりますように、あれだけの事件につきましてだれに責任があるかということにつきまして当然その究明をするのはたてまえでございますので、その関係者の中にそういう方も当然含まれてくるだろうというふうには思っております。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう方というのはどういう方ですか。何でそんなに名前を恐れているの。
  82. 前田宏

    前田(宏)政府委員 別に名前を恐れているわけではございませんが、要するに、担当者もありましょうし、その上司もありましょうし、さらにさかのぼって社長の責任ということも問題としては当然考えられるということでございまして、特に特定の人を名指して捜査するということは、また逆に適当でないわけでございまして、やはり証拠の積み重ねによって担当者の責任も究明され、さらにその上司といいますか、上部の責任者の責任も究明されるというのは当然のことでございます。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 何だか歯切れの悪い答弁ですが、そういう方とかなんとかいうことで、そういう方の中には当然私の言った人の名前も入っている、そう解釈して次の質問に移りたいと思います。  実は大臣、刑務所に関する法律の改正を意図しているようですね。その要綱だけ私たちの手に入ったのですが、その項目の中に代用監獄の数は漸次減らしていく、こういう考えだということが入っているわけなんですが、法務省考えとしてはそういう考えなんでしょうか。
  84. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 お答えいたします。  監獄法の改正につきましては、昭和五十一年から法制審議会で審議が行われてまいりまして、昭和五十五年の十一月に法制審議会の答申があったわけでございます。現在、法務省におきましては、この答申の趣旨に基づいてこの法案を今国会に提出すべく作業中でございます。  この法制審議会の答申の中には、いわゆる代用監獄につきまして数項目事項が含まれております。その趣旨は、代用監獄は現在とほぼ同様に、監獄——今度の新しい私ともの法案では刑事施設と呼んでおりますが、この刑事施設にかえて、勾留される者等を警察の留置場、代用監獄でございますが、ここに収容するという制度は残しておくというのが第一点でございます。それから、この代用監獄につきましては刑事施設に関する法律を原則として適用していくというのが第二点でございます。  法制審議会の答申の主たる趣旨は以上のとおりでございますが、これの附帯要望事項と申しますかあるいは実施上の心構えと申しますかが、二点加えられております。  その第一点は、関係当局、主として法務当局でございますが、法務当局としては拘置所あるいは拘置支所等を将来拡充していって、代用監獄へ行かなければならない場合が少なくできるように努力しろ、こういう一種の努力についての要望がございます。  それから、もう一点は警察当局に対する要望でございますが、これは代用監獄について施設の構造あるいはその運営について改善を図るとともに、この代用監獄の業務に従事する警察官について教養訓練を十分行うようにということが言われております。  結局、この二つは実施上の要望事項というものとして出されておるわけでございまして、法制審議会の答申そのものとしては、先ほど申しましたように、代用監獄を存置する、その代用監獄には原則として刑事施設法、監獄法にかわるものでございますが、その規定を適用していく、こういうことでございます。現在、私どもは、その法制審議会の答申の趣旨に沿って法案の作成を急いでおる段階でございます。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど同僚議員も質問されたんですが、近田被告の無罪確定で、判決にこういうようにあるんですね。いろいろの疑問点がある、「このような疑問がある以上、自白の信用性を全面的には肯定できず、自白の内容が途中で変わり、動揺しているのは、被告が長時間取り調べに対しその場その場で想像を交え、捜査官の想定した状況に沿う供述をしていたためと考えられる。」これは最高裁の判決の中の理由の一部ですけれども、これについて検察当局は、どうしてこれは公訴が維持できなくて、一審が無期懲役だったのが二審で無罪、上告で無罪になった、これについてはどういう反省をされておるわけですか。
  86. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、自白の信憑性ということにつきまして、最高裁の決定の中でもいろいろと指摘をされているわけでございます。この事件に限らず、被疑者、被告人が捜査段階で自供し、また途中でそれを翻すというようなことがしばしばあるわけでございまして、その場合にそれがいかなる理由によるものであるか、またそれが何らかの理由によって曲げられているようなことがあるかどうかということは、それぞれその段階でしさいに吟味をして、真実に反しないような捜査をしなければならないわけでございます。そういう意味で、今回の事件一つの大きな教訓として今後の捜査の適正処理に当たりたい、かように考えております。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 局長は、局長ですから、実際に代用監獄というんですか、この中で被疑者並びに被告人がどういう扱いを受けておるかということは余り御存じないかと思うのですけれども、原則として捜査に当たっている者がその捜査されている者の身柄の管理までも握っているということは、それは外国の発達した国々の諸例を見ても余り見当たらないわけですね。ということは、自分が取り調べられている事件について自分の身柄をその取り調べる人が管理しているということになれば、どうしてもその人の強制に乗ぜられるか、あるいはその人にこびるか、あるいはその人の言うことを聞いた方が目の前の自分の取り扱いの利益にはなるのではないかというようなことになるので、これはやはり取り調べをする者とそして取り調べをされている者の身柄の管理をする者とは別な人がやるし、また場所も、さっき答弁がありましたけれども、審議会の方では漸次代用監獄を減らしていくと言いましたけれども、そういう根本的な考え方法務省では持っておられるのですか、どうでしょうかね。
  88. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 代用監獄の問題につきまして、先ほど申しましたように、法制審議会では、現在のままではございませんが、制度上、運用上の改善を加えて代用監獄を存置していくという方針が出ておるわけでございます。  基本的な問題になりますといろいろ御議論があったわけで、そういう点は法制審議会でも十分議論がなされたわけでございますが、現在の捜査あるいは起訴前の身柄の拘束の問題ということを考えますと、第一には、監獄、すなわち拘置所あるいは拘置支所というところに勾留された者を収容していては、十分に捜査ができないという面が一つあるわけでございます。そういう場合に、捜査の必要から拘置所あるいは拘置支所ではなくて代用監獄の方へ収容する必要のある場合がある、これは捜査上の必要ということでございます。  それからもう一つは、拘置所あるいは拘置支所というものの所在地が非常に限られておりまして、その収容能力にも現在のところかなりの限界がございますので、入り切れないという点から、あるいは無理に入れても実際に捜査を担当する警察あるいは検察庁と大変遠いということで、捜査が十分できないという面もございます。  こういう意味で、一つは捜査の必要性、もう一つは拘置所の所在地等が限られておる、この二つの面から代用監獄に収容するという場合も現在のところでは必要であるというように考えております。  外国の例がどうなっておるのかという点につきましては、いろいろ資料等も出ておりますが、それぞれの国の捜査のやり方等が違っておりますので、一概に、この国でこうしておるからまた別の国でもこうしなければいかぬということにはならないと思いますが、一般論として、捜査する者とそれから留置、身柄を管理する者とを分けた方がいいかどうかという問題はいろいろあると思いますが、現在でも、日本でもそうですし、外国でもそうですが、逮捕された者については、捜査する者と留置する、身柄を管理する者とが一緒になっている例が大部分でございます。  そういうことで、一般論と申しますかあるいは原則論としてそういうことが言えるのかどうか、若干疑問に思っておりますが、ただ、実務の運用上そういう点に配慮しなければいかぬということはあり得るだろうと思いますが、警察庁では、たしか昭和五十四年以来だったと思いますが、警察の内部で、捜査を担当する者と警察の留置場に収容された者の扱いをする者、すなわち警察官についてなるべく両者を区別していこうという方向もとられておるわけでございます。  それから、先ほど申しましたように、法制審議会の答申に付せられました要望事項の中でも、代用監獄における処遇について十分な配慮をするようにということが言われておるわけでございます。  なお、警察での実際の扱いについては、恐らく警察の係官の方から御説明があろうと思います。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 いまのは鈴木矯正局長ですね。  それじゃ、実情を申しますが、昨年の七月二十二日に公職選挙法の違反の疑いで、これはもう全く形式犯で、文書を配ったのが違反だとかというようなことで逮捕された木下和男という練馬の個人タクシーの運転手さんなんですが、これが警察でどういう取り調べを受けているかということの実情を、本人から私、昨日も来てもらって聞きました。いまの鈴木矯正局長の言うように、何か取り調べの便利があるから、だからそこに置いておくなんて、取り調べの便利のために基本的人権がどんなに侵されているかという、この重要性ですね。憲法で保障されている黙秘権、あるいは刑事訴訟法で保障されている黙秘権、これなんかを行使したらどんな目に遭うかということを、これは私、実情を聞きましたから一言あなたに言っておきますし、また、警察も来ていると思いますから申します。  この木下君に対して、警視庁から石神井署へ派遣されました大番、田尻、野口といういずれも警部または警部補ですけれども、こう言っているのですね。  大番警察官は取り調べに、おまえのやったことは大したことではないんだ、民商や共産党の活動をやっていることが問題なんだと、選挙違反なんかはそっちに置いてあるのですよ。おまえが共産党員だ、民商だ。民商というのは御承知ですか。民主商工会で、いろいろ民主的に税金の相談を受ける。そういう政治的な方が重要なんだ、選挙違反はそっちじゃないんだ、それが問題なんだ、いい年をして民商や共産党をやめろ、ここで区切りをつけて、代々木につばを吐いて霞が関に敬礼をしろ。霞が関というのは多分警視庁のことでしょうね。そんな民商や共産党がこわいのか、後のことは警視庁四万三千人が守ってやるからしゃべってしまえと、被告人の思想転向をやっているのですよ。  これで二十日間、徹底的に午前九時から夜の九時まで調べているのですよ。これは昔の治安維持法と同じですよ。これは思想信条の自由に対して迫害を加えているわけなんですから、刑事事件の取り調べじゃないのですよ。  大番警察官は、おまえはずっと黙秘で来たから反省の色がない、だから裁判官の心証が悪いから幾ら保釈金を積んでも出られない、こういうことも言っている。  また、田尻警察官は、おまえのやったことは大したことではないんだ、しかし国政にかかわることなんだ、民商や共産党の活動をやっていることが問題なんだと、大番警察官と同様に、そういうところへ攻撃を加えてきているわけですね。いつまでしゃべらないんだ、子供が三人あるものですから、三人の父親として父親失格だと自白を強要しながら、何回となく被告の耳元で、大声でばかやろう、このやろうとどなりつけたというのですね。  また、高橋警察官は、これは石神井警察署の警部補ですが、早くしゃべらないと車もさびついて使えなくなるぞ、女房もさびついて使えなくなるぞ、それとももう浮気でもしているか、おまえが考えているほど甘くないぞ、早くしゃべってしまえ、日本は社会主義になどならないぞ、こういう取り調べをしているのですよ。  これは思想の取り調べでしょう。昔の治安維持法の取り調べと変わりないじゃないですか。取り調べに便利だからそばの警察の留置場へ置くんだ。黙秘権を行使すればこういう責められ方をしている。これでいいんですか。これは鈴木矯正局長と警察庁のだれか答弁してください。  要するに、黙秘権を行使すれば徹底的に責める。その責め方も、もしそれが共産党員であったり民商の会員であったら、問題は刑事事件の取り調べじゃないんだ、おまえの思想転向が大事なんだ、そうでなければおまえのタクシーもさびついてしまう、女房もさびついてしまう、それでもいいか、それともおまえ、浮気でもしているのか、こういう失礼な、ばかやろう、やろう呼ばわりですよ。こういうことがやられているということを鈴木さん知っていますか、あるいは警察じゃ知っているのですかね。答弁してください。
  90. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 ただいま御指摘のありました事件については、矯正局長として私は何も存じません。先ほど私が申し上げましたのは、一般論を申し上げたわけでございまして、捜査の必要から代用監獄に収容する必要のある場合もあり得るということを申し上げたわけでございます。もちろん、この捜査につきましては、これはまた矯正局長として申し上げることではないわけでございますが、刑事訴訟法その他によりまして被疑者あるいは被告人の権利を守る趣旨の規定がいろいろございまして、そういうものの適切な運用によりまして被告人、被疑者の人権を守る必要があることは当然でございます。  繰り返しますけれども、御指摘事件につきましてはちょっと私からお答えいたすことができないものでございますので、御理解願いたいと思います。
  91. 森広英一

    森広説明員 いまお尋ね事件は、昨年の七月五日に行われました東京都議会議員選挙に際しまして警視庁が検挙いたしました事件でございまして、七月二十二日に公職選挙法違反の事件といたしまして容疑者を逮捕いたしまして、その後取り調べを行いまして検察庁に送致をいたしまして、八月一日付で起訴をされて、現在公判中の事件のことであろうというふうに存じます。  御質問がございますので、警視庁に報告を求めて調査をいたしましたけれども、ただいま御指摘のような、いわゆる犯罪の捜査に関係のないような取り調べをしたとか、いろいろ任意性を害するような取り調べをしたような事実はないという報告を受けております。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 それはそうだよ。ここでそんなことをやりましたなんて言いっこないよ。こっちだってそのつもりで言っていますが。  それじゃ、この人に弟が二人いるんですよ。弟二人のところに捜査に行っていますか、警察。そういうことを知っていますか。兄貴が早く物を言うようにしろ、考えを直すようにしろと。そういったことを知っていますか。
  93. 森広英一

    森広説明員 お答えいたします。  それほどまだ時間的余裕があるわけでございませんので、いま御指摘のような詳細な、被告人の弟さんの方へ捜査員が行ったかどうかというような事実についてまでは、現時点で私は承知しておりません。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、本人は留置されていますが、留守宅へ行って奥さんに、検事に会って調書に捺印するようにしてくれ、検事さんにもそう頼んでくれ、そう奥さんに言ったばかりか、奥さんの下着類をたんすから出して一枚一枚調べていった。とにかく配った文書はもうはっきりしている。それが公職選挙法で違反になるかならないか、また刑事事件になるかならないか、これはおのずから見解が違います。われわれは、それは民主主義のもとにおける選挙の当然の権利だと思っておりますが、とにかく奥さんのところへ行って、奥さんの下着まで一枚一枚調べている。そして、検事さんのところへ早く行けと言っている。捜査権をそういうところまで拡大して捜査した、こういうことは聞いていますか、あるいは知っていますか。
  95. 森広英一

    森広説明員 そのような捜査をしたという事実は承知しておりません。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 承知していないということは、知らないということなのかね。それを聞いてみたら、そういうことはしていませんというのかね。どっちだ。まだそこまでは聞いておりません、きょう林議員から初めて聞いたから、私の方ではそのことについてはまだ認識を持っておりません、そういう意味ですか。
  97. 森広英一

    森広説明員 いまのような具体的な事項につきましては、私はいま御質問を聞いて初めて伺った事項でございますので、警視庁の方にそのようなことがあったかどうかというようなことを調査はしておりません。したがって、承知しておりません。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 お父さんが佐渡にいるのですよね。佐渡の両津市の警察の刑事をお父さんのところへやって、おまえの息子さんは黙秘権を行使しているから、お父さんから黙秘権を解くように、警察の取り調べに応じてしゃべるようにしてくれ、そういうことを佐渡のお父さんにまでやっている、そういうことをあなたは聞いていますか。聞いていないならいないで、そう言ってください。
  99. 森広英一

    森広説明員 それもいま初めて伺いましたので、聞いておりません。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、あなたの知らないようなことが行われているわけですよ。子供さんが学校へ行っているのですけれども、学校へ行く途中で子供さんをとらまえて、子供さんに、おまえのお父さんはこういうことをやっているのだから、お父さんに黙秘権などは使わないようにするようにお母さんを通じて頼んだり、そうしなさいということをやっているということは聞いていますか。
  101. 森広英一

    森広説明員 いま初めて伺いました。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣、実はこういうことが新しい憲法もとで、しかも、不利なことを供述しなくてもよろしいという憲法の規定、刑事訴訟法で規定されていることが、全く警察の中では痛めつけられているわけですよ。私も治安維持法で一年ほど行っていましたから、よく知っています。これは全く戦前の治安維持法の取り調べと変わりないですよ。警察の思想の中には昔の治安維持法の考え方、黙秘権なんか行使するのはとんでもない話だ、共産党、何事だ、民商、何事だ、そんなものは早く出て、もしこわかったら四万幾らの警察がいるのだから安心しろ、こういう形で責めて、しかも夜の十時まで二十日間責め通したというのですよ。そうなれば、人の肉体的な抵抗力だって逸してしまうのですよ。そういうことが行われている。  検事も二度ほど、桜井検事というのがここへ顔を出していて、こう言っているのですよ。桜井検事は午後になると毎日取り調べに来て、私のまないたに乗れ、私を信じてしゃべれ。全く黙秘権などのことは念頭にないのですね。こういうことがいま警察で行われている。これが、警察行政だけではなくて、検事もこの上にあぐらをかいて、そして公訴を提起している。そのことが今度のたび重なる最高裁へ行っての無罪判決や差し戻し判決、全部が自白ですよ、警察へ留置しているうちの自白に基づいて起訴したことがこういう結果になっているのですよ。  こういうことについて、検察庁としては、最近の最高裁の判断も含めて反省をされるかどうか、ここで答弁してもらいたいと思うのです。
  103. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほどもお答えをしたところでございますが、捜査に当たりましては、一面、真実の発見、真相の発見ということも大事でございますが、関係者の人権ということも当然大事なことでございまして、そのいずれについても欠けることのないように十分配意しなければならない、かように考えておるところでございます。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 外国では、私もいろいろの文書を全部読んだわけじゃないですが、とにかく被疑者でいる間あるいは有罪の判決をするまでは無罪と推定するということになっているわけですね。それから呼び方についても、基本的な人権を傷つけるような呼び方をしてはならない、そういうことが世界人権宣言にもちゃんと書いてあります。それをいま警察では、おまえ、こら、これが普通ですよ。あるいは番号何番とかね。英語で言えばあなたとか、ドイツ語で言えばあなたとか、そんな呼び方なんかは警察じゃ全然通用してないですよ。だから、そういう基本的な人権が全く無視されている警察、しかも治安維持法と変わりないそういう思想と施設が依然として警察の留置場の中に底深く流れているということは、十分考えなければならないと思うのです。  そこで、代用監獄制について、いま法務省の方では弁護士会と保安処分の問題とともに話し合いをしているというのですが、話し合いの項目の中に、この代用監獄制について項目になっておりますか。
  105. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 現在、法務省と弁護士会との間での保安処分に関する話し合いの問題の中では、代用監獄の問題は取り上げられておりません。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 おらないと言うのですか。弁護士会の方からそういう話は出ておらないですか。代用監獄制についてはこれを改善すべきだとか、あるいはあなたが先ほど答弁されたように、急に施設を全部刑務施設にしろとかいうことは予算の関係いろいろありますけれども、こういうものは漸次なくすべきである。要するに、留置場を刑務所がわりに、刑務所というか刑務施設ですね、これに代用することは漸次変えていくべきであるという意見は出ていませんか。出ているはずですよ。
  107. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 私どもが理解しております限りにおきまして、弁護士会、これは日本弁護士連合会もそれからかなりの数の単位弁護士会もそうでございますけれども、基本的には代用監獄は廃止すべきであるという意見でございますし、それから当面の対策としては、代用監獄を順次廃止していくべきであるという考えをお持ちであることは、私ども十分承知しております。  それで、先ほど法制審議会のことを申し上げましたけれども、法制審議会におきましても、弁護士会、これは必ずしも弁護士の委員だけではありませんが、弁護士会から推薦されました委員の中には、ただいま申しましたような基本的な考え方で御意見を申された方もいられたわけでございます。ただ、法制審議会の最終段階におきましては、弁護士会から出ておられました委員の方も、先ほど法制審議会の答申として申し上げましたところ、すなわち、代用監獄は存置する、それから代用監獄には監獄法関係法律を原則として適用するという基本と、それから先ほど申しました二点の附帯要望事項と申しますか、実施上の考慮事項等あわせてこういう方法でいくことにすべきであるということについて、弁護士会の方面の御理解をも得られたわけでございまして、現在法制審議会で出ました答申の線に基づいて法案の作成を急いでおるところでございます。もちろん、その後におきましても弁護士会から——その後といいますのは法制審議会の答申がありましてからも、弁護士会からやはり代用監獄は廃止すべきである等の御意見は何回も出ておりまして、私どもも逐一それは聞いておるところでございます。
  108. 望月秀一

    ○望月説明員 警察の方の改善の状況等をちょっと御説明をさせていただきたいと思います。  ただいま法務省の矯正局長から御説明を申し上げましたとおり、法制審議会からの監獄法改正の骨子となる要綱というのがございまして、これの第三番目に、「関係当局は、刑事留置場の構造、設備及び管理機構の改善並びに収容処遇に当たる警察官の教養訓練の充実に努めること」という警察向けの義務づけが課されております。  これが改正法の実施に当たる配慮事項ということでございましたが、警察庁といたしましては、五十五年の四月にまず管理機構の改善、これを実施いたしまして、私も現在は長官官房総務課に属しておりますが、従来担当をしておりました刑事部門から管理部門にこの業務がすべて移っております。したがいまして、警察本部におきましてはこの業務は警務部あるいは総務部で行っておりますし、警察署におきましては刑事課から警務課あるいは総務課に移管をされまして、現在捜査を担当していない部門で留置場の看守でありますとかあるいは面会、差し入れの事務等につきましては所掌をしておるところでございます。  それから、留置場内の構造、設備の改善につきましても、特に法務省顧問の小野清一郎先生を初めいろいろと御指導をいただきまして、これは五十四年の十一月に留置場の設計基準を改正いたしまして、留置人のプライバシー保護という見地から留置室の前面の下半分を遮蔽する、あるいは一人当たりの居住有効面積といいますか、そういう面積の拡張を図るといったような改善をいたしております。  なお、収容処遇に当たります警察官の教養訓練につきまして、従前は三日程度の講習を行いまして看守勤務員に配置をしておったという実態でございましたけれども、これは昨年度から予算化されまして、各都道府県の警察学校で二週間の専科教養を実施した上で配置をするという方向にございますし、幹部につきましては、毎年一回中野の警察大学校で専科教養を実施しておるところでございます。いずれも……(林(百)委員「簡潔にしてください。幾らあなたがうまいことを言ったって、実際はそういっていないのだから」と呼ぶ)  御趣旨はよく承りましたけれども、私ども、裁判官の判断によります勾留状の発付ということで代用監獄の業務を行うことになりますので、いつそういう裁判官の命令が発せられましても、人権保障に欠けるところのない制度としてこれを受けなければいけないという責務を感じておりますので、その面で努力を続けていくことをお誓いいたします。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 では、もう一つ。  法務大臣、いま警察ではりっぱなことを言っておりますが、いま警察で考えている代用監獄の内容については、われわれも薄々考えていることを聞いているのですが、これは前から刑務施設の中にもあるのですが、懲罰というようなことで声を出せないような猿ぐつわをはめるとか、あるいは言うことを聞かなければ、要するに留置場の秩序を維持しないような者は体を締めるような着物を着せるとか、あるいは身動きのできないようなベッドに三日も四日も寝かせている。排便のことやいろいろ、一々こっちの言うことを聞き切れないという場合にはたれ流しになるとか、懲罰としてはそんなことも内容に含んでいる。それから、本人から出す手紙についても、一々内容を検査する。弁護人から来る書簡についても、本当に弁護人から来たものかどうか内容を調べるというようなことで何か考えているようなんですが、私は、この身柄の拘置については、やはり法務省が一貫してやるべきだと思うのですよ。  捜査に直接当たっている警察官が身柄まで管理するということは、それはどうしても不合理ですよ、どんなことでもできるわけですから。やはり法務省の刑務所といいますか刑務施設、それとは比べものにならないわけですよ。それを一貫してやはり法務省が掌握すべきだと思うのですよ。弁護士等の間でもそういうような話し合いもなされているという話も聞きましたけれども、将来、警察の方から、いまの留置場というか警察の拘禁施設を恒久化し、立法化し、その範囲では法務省の矯正行政から外すようなことを何か考えているというようなことを聞いておりますか。それともそんなような話を耳にしていますか。それに対しては法務大臣はどういうお考えですか。
  110. 坂田道太

    坂田国務大臣 法制審議会の答申に基づきまして、刑事施設法を成案を得て国会に提出したいと考えておるわけでございまして、その内容につきましてはただいま矯正局長が申し上げましたとおりでございます。ただ、いやしくも被疑者等につきましては、あくまでも真実を究明するということが大切でございますけれども、またそれに全力を尽くさなければならないとは思いますけれども、同時に、この近代的な社会におきまして、基本的人権を守るということは当然なことではなかろうか、両々相まって初めて法務行政というものが国民から信頼されるというふうに私は考えるわけでございます。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一問で終わります。  いま矯正局長さん立ちかけてやめられたのですが、結局、真実発見をにしきの御旗にして、だから警察の留置場を取り調べの便宜上置いてもいいんだと言いますが、真実の発見というのは何も自白じゃないと思うのですよ。やはり新しい刑事訴訟法の精神は客観的な物的証拠で争う、それで法廷で当事者主義を貫く、これが真実発見の道だと思うのですよ。真実を発見するためにはどんな乱暴をしても、被疑者や被告人の人権をどんなにじゅうりんしてもいいというようなことは許されないと思うのですよ。だから、真実発見というような、聞いた言葉ではいいようなことで、そしていま留置場に留置されている被疑者がこんなひどい人権のじゅうりんを受けているということをよく考えていただきたいと思うのです。  そういう意味で、矯正というか、被疑者や被告人も含めてその管理はやはり法務省が一貫して掌握するように、これはすぐにはいかないかもしれません、しかし漸次そういう方向へ努力すべきだ。また、外国でもそういう例が多いのですね。取り調べ官がその取り調べておる被疑者や被告人を自分で身柄を管理する。それは人が違ったにしても、同じ警察ですからそれはどうにもできますし、それから被疑者の身になれば、何かおもねるか、あるいは点数を稼いで早く出してもらえるかという気持ちが人間として動くのは当然だと思うのですよ。それはやはり分離しておかなければいかぬと思うのですよ、真実を発見するためにも。  そういう意味で、矯正局長立ちかけたのですが、どういうお考えか、最後に法務大臣からもう一度それをお聞きして——要するに真実発見、結構ですよ。われわれもその点では法務委員としてやりますけれども、しかし、それは何も憲法や刑事訴訟法で保障されている黙秘権をつぶさなければ真実が発見できないということはないんで、黙秘権が行使された場合には客観的な物証を努力して集めて、それで公判を維持する、そこで当事者主義で争っていくというのが新しい刑事訴訟法のたてまえだと思うのです。だから、それに徹してもらいたいというように思います。
  112. 鈴木義男

    ○鈴木(義)政府委員 私、先ほど立ちかけましたのは、林委員の御質問の中に、警察ではこの代用監獄を何かずっとひどいものにしていくということで法案を考えているんじゃないかというようなお話がちょっとございましたので、その点はそうではないということを申し上げたいと思います。  まだ案がまとまっておりませんので、その内容等はまた時期が来て申し上げたいと思いますが、現在私どもが理解しておりますのは、警察の留置場に収容された者、すなわち代用監獄に収容された者を含めまして留置場に入った者について、その権利義務の限界をはっきりさせることによって一層人権保障という面をも充実させていこう、こういう御趣旨で立案がなされているように理解しておりますので、その点を申し上げたかったわけであります。
  113. 坂田道太

    坂田国務大臣 林委員が言われましたとおりでございまして、今日の世の中におきましては、やはり証拠に基づいて真実を明らかにするということが一番大切だというふうに考えております。  それから、先ほど私が答弁いたしました際に、法制審議会の趣旨を踏まえて今度の刑事施設法の成案を得ておると申しましたのは、その法制審議会の要請におきましても拘置所をだんだん拡充していくという方向が一つ示されておるということは、林議員の御主張と一致する方向ではないだろうかというふうに考えております。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 終わります。
  115. 太田誠一

    ○太田委員長代理 午後一時十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後一時十分開議
  116. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安藤巖君。
  117. 安藤巖

    安藤委員 最初に、先回商法第五十八条の関係でいろいろお尋ねをいたしましたが、その関係でもう少しお尋ねをしたいと思います。  この五十八条の一項の前文に、条件があるわけですけれども、法務大臣または株主、債権者、利害関係人が、存立そのものを認めない不正行為をする会社に対する解散命令を裁判所に請求することができるということになっておるのですが、この前、民事局長は、そう法務大臣法務大臣と言わなくても、株主、債権者、利害関係人等々も申し立てることができるから、そちらの方の申し立てというのもあってしかるべきではないかというような答弁をされたのです。新潟交通など、あるいは新潟遊園と役員がほとんど同じだということも指摘したいのですが、時間の関係がありますから一つだけ申し上げておきます。  この前お話ししましたように、東京ニューハウス株式会社が現在新潟遊園というふうになっているのですが、登記簿謄本によりますと、この代表取締役に遠藤昭司という人がおるのですが、この人は、いわゆる田中金脈をいろいろつかさどっておる、ナンバーツーと言われておるほどの、田中角榮の秘書をやっている人なんです。もう一人の代表取締役の桜井信一という人は、新潟交通の企画課長、それで、この前もちょっと指摘をいたしましたけれども、全くロボットのような存在になっているわけなんです。そして新飯田美津男という人が取締役なんですが、この人は、田中角榮の刎頚の友と言われております小佐野賢治がやっておりました日本電建の取締役をやっておる人なんですね。それから、田中利男という人が監査役でおるのですが、この人は田中角榮のいとこ。もう一人、取締役の田中一郎という人がいるのですが、これは田中角榮のいとこの田中秀雄という人の子。まさに自分の腹心、ロボットあるいは親族で占めているのですよ。そして、株もほとんど全部この人たちが占めているのです。  こうなると、五十八条の「法務大臣又ハ」以下の人たちがこの条文に基づいて解散命令を裁判所に請求するということはちょっと考えられないと思うのですが、その点はどう思われますか。
  118. 中島一郎

    ○中島政府委員 解散命令の問題でございますけれども、前回御指摘になりました会社につきまして御指摘のような事実が認められるといたしましても、それが商法五十八条の各号の要件に当たるかどうかということについてはなお検討の必要があるというふうに考えておりますけれども、仮にこれに該当するといたしましても、この解散命令の制度は、会社制度が乱用されまして、会社の存在ないし行動が公益を害するということのために、その存在自体を許すことができないというふうに認められる場合にその法人格を奪ってしまう、そういうものであります。したがって、法務大臣がその請求をするかどうかを考えます場合には、きわめて慎重に判断しなければならないものであるというふうに考えております。  そういうことでありますから、会社の株主なりあるいは債権者その他の利害関係人がどういう人たちであるか、あるいはそういった人が会社の存立あるいは解散命令というようなことにつきましてどういう考え方と申しますか立場をとっているかというようなことも、法務大臣としては考慮しなければならない一つの要素ではあろうか、その点は御指摘のとおりであろうかと思うわけでありますけれども、実はそれよりも先に、解散命令以外に公益を維持する方法というのはないのかということを問題にする必要があるのではないかというふうに申し上げたわけでございます。  一般論としてでありますけれども、前回ちょっとおっしゃいましたように、たとえば税金の関係であるということであれば、その是正を求めるというようなこともありましょうし、あるいは違法な方法で免許の取得をしたということでありますならば、その停止なり取り消しをするというように、違法行為なり不当行為の個々の事由につきまして他の行政上の措置をとって公益の維持を図る、それで、そういった手段を尽くしましてもなおその会社が違法行為なり不法行為なりというものを継続して、そのために公益を維持することが全く期待できない、そういった非常に例外的な場合に限定して法務大臣としての解散命令の請求の権限を発動すべきではないかということを申し上げておるわけでございます。
  119. 安藤巖

    安藤委員 おっしゃるように、まさに会社の死命を制するようなことですから、慎重に構えていただくのは当然だと思うのですが、先回も指摘いたしましたように、脱税を含めていろいろな、私に言わせれば悪事を重ねておる、不正行為をやっておるわけですから、先ほど言いましたような株主その他の利害関係人の方からの請求ということは全く考えられないような役員構成になっているということも勘案をしていただきたいということを申し上げておきます。  そして先回、いろいろ制約はあるけれどもとにかく調査をしますというふうにおっしゃったのですが、その後調査はしておられますか。しておられるとすれば、どういうようなことをやっておられますか。
  120. 中島一郎

    ○中島政府委員 この五十八条の法務大臣の解散命令の請求に関しましては、対象会社に対して各号に掲げる事由があるかどうかの調査をする、そのための特別の調査権限というものが明確に規定されておらないようでございます。したがって、私どもといたしましては、一番入手しやすい情報ということになりますと会社の登記簿謄本ということでございますので、とりあえず御指摘のありました会社等につきまして登記簿謄本というものを取り寄せて、会社の概略を承知したというような段階でございますが、将来どういうふうな調査方法があるかというようなことも考えておりますけれども、やはり公表されておる情報というようなものが一つございましょうし、それから、前回これも御指摘になったようでありますけれども、非訟事件手続法の百三十四条ノ四に規定されております裁判所その他の官庁等からの通知というようなものもございましょう。あるいは関係者からの情報証拠、そういうものを総合的に調査検討してみたい、こういうふうに考えております。
  121. 安藤巖

    安藤委員 その結果と、おとりになるであろう措置に対して大きな期待を抱いておりますので、そのことだけ申し上げておきます。  それから次に、これはまた違った話なんですが、会計帳簿と貸借対照表の関係、商法三十三条の関係お尋ねしたいと思うのですが、この二項によりますと、「貸借対照表ハ開業ノ時及毎年一回一定ノ時期、会社ニ在リテハ成立ノ時及毎決算期ニ於テ会計帳簿ニ基キ之ヲ作ルコトヲ要ス」というふうにありますね。現在、この貸借対照表がこの法文どおりに会計帳簿に基づいて作成をされているというふうに認識をしておられるかどうか、まずお尋ねします。
  122. 中島一郎

    ○中島政府委員 そのように理解といいましょうか、認識いたしております。
  123. 安藤巖

    安藤委員 いろいろ私の方で調べたり事情を聞いたりしたところでは、決算期に商品の関係で言いますと棚卸しというのをやるわけですね。実地棚卸しというのをやって、会計帳簿から離れて棚卸しをした結果確認をした商品の在庫、これを貸借対照表の資産の方に計上する、こういうようなことが行われておって、この条文どおりに会計帳簿に基づいた貸借対照表というのがつくられておらないという批判の声を聞いておるのですが、そういうようなことは考えてみたことはありませんか。
  124. 中島一郎

    ○中島政府委員 実地棚卸しということが実際に行われておるということは承知いたしております。これは帳簿に記載されておりましても、実際にはすでになくなっておる、あるいはなくなっておりませんでも財産上の価値がもうなくなっておる、あるいは著しく評価が下がっておるというような商品その他もあるわけでありますから、実地棚卸しをすることによりまして会計帳簿の数値を修正をする、そしてその修正された数値に基づいて貸借対照表を作成するという扱いのようでありますから、商法三十三条二項の要求しておるところに合致しておるというふうに理解しております。
  125. 安藤巖

    安藤委員 その議論をあれこれやっておる時間的な余裕がありませんから、結論を急いで申しわけないのですけれども、私が知っている山下通雄という人ですが、これは会計関係の学者なんです。この人は、やはりいまの商法三十三条の二項の法文どおりに貸借対照表がつくられていないという意見を持っておられる代表格の人なんですが、その人が、この法文どおりに貸借対照表をつくるために、会計帳簿の記帳の仕方あるいはつくり方といいましょうか、それをいろいろ考えておられるのです。  問屋の場合一つ言いますと、売上帳というのがまずありますね。それから商品の仕入れ帳、そしてこの人に言わせると商品あり高帳というのがあるのですが、これは全く有名無実だ。それで、在庫を調べるときに、売上帳と仕入れ帳を突き合わせていろいろやらなければいかぬ、それから監査役などがその会社の経理をちゃんと見るという場合にも、いろいろそういう帳簿をあれこれ見なければならぬというようなこともあって、なかなか明快に現在の会社の資産あるいは経営状態というのをはっきりと一目瞭然に見分けることができない。だから、この三つの帳簿を一つにまとめたような帳簿をつくったらどうかという提言をしておられるのです。  そういうことになりますと、たとえばこれはことしの二月二十五日に、あの有名な例の粉飾決算をやった不二サッシの事件で有罪の判決が出ておるわけです。この不二サッシの場合は、在庫商品のないものをあるかのごとく計上するなり、あるいは評価を過大に評価して財産があるかのごとく装って、そして違法配当をやったというようなのが中身なんですが、こういうような実地棚卸しを中心にした貸借対照表の記載というようなことでもって粉飾をするというようなことも、先ほど言いましたような商品の仕入れから売り上げからあり高から、これはもちろん、単価から売上金額から利益から滅損した場合のそれも全部一目瞭然に記帳される帳簿なんです。そういうような帳簿で記載するというような提言があるのです。  こういうようなものは、いまおっしゃったことからすると商法三十三条の二項に合致したあれがやられておるというふうにおっしゃるのですが、いま私が紹介しましたような帳簿のつけ方からすれば、これは一目瞭然となってそういう粉飾決算なども防ぐことができるし、それから会社の経営者も、自分の会社がどういうような経営状態にあるのかというようなことも一目瞭然によくわかるしというような点から見て、なかなかいい提案じゃないかなと思うのです。  いま私がお話ししただけですから、すぐおわかりにならないかとも思いますけれども、こういうような提案がなされて、特に私は、この前商法改正が実現しました監査特例法の監査対象になるような大会社のことを申し上げておるのですが、そういうような方法で記帳された方がいいのではないかなといま思っているのですが、いま私が説明をした範囲で感想を求めるというのはむずかしいかもしれませんが、どういうふうに考えておられますか。そんなものは全く不必要だ、そんなふうにする必要はないのだというようなことなのか、そういうようなことでも一目瞭然とわかるようなものができたらいいという積極的な受けとめ方をされるのかどうか、そのどちらかということをお答えいただきたいと思うのです。
  126. 中島一郎

    ○中島政府委員 会計の専門家でございませんし、その御提案自体今回初めて承知いたしましたので、正確な評価、正当な評価をするということはできないわけでありますが、私の方でも今後検討してみたいと思いますし、この著者の方も、今後専門家の検討にまちたい、こういうふうにおっしゃっていますので、そういう専門家の検討の結果をも私ども勉強してみたい、こう思っております。
  127. 安藤巖

    安藤委員 大蔵省の方からも来ていただいておりますので、いま聞いておられたとおりでございますが、どういうふうに考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  128. 土居信良

    ○土居説明員 お答えいたします。  ただいまの山下先生の御提案でございますけれども、私ども、御提案の趣旨につきましては、会計帳簿を作成する実務上の一つ考え方であろうというふうに承っておきたいと思っております。  なお、もう一言だけ申し上げますと、ただ、先生のおっしゃる御趣旨が、期末の棚卸し資産の残高を操作することによって容易に粉飾決算が行われるのではないかというような問題意識が仮にあるといたしますと、私ども所管しております証取法の適用会社はおおむね上場企業でございます。意図的に粉飾決算をいたすところはもちろんございますけれども、不二サッシの例なんかはそれだと思っておりますが、一般的に申し上げますと、経理処理に当たりましては、たとえば電算機なんかも積極的に導入するなどいたしまして製商品の受け払い簿などを作成いたしておりますし、また、作成された財務諸表というのは、第三者でございます公認会計士がしっかりと監査いたしております。その正確性が担保される仕組みになっております。商品の棚卸しに関しましては、実地棚卸しの立ち会いも行いますし、また、残高の確認、帳簿との照合も行っております。意図的なものは、いずれにしても起こる可能性があるわけでございますが、帳簿組織が不備であるからということで粉飾決算が容易に行われるというようなことはないと思っております。
  129. 安藤巖

    安藤委員 これはまた別の機会に譲るといたしまして、土居さん、もうお帰りになっていただいて結構でございます。  次に、公職選挙法百九十九条、それから二百条の関係のいわゆる選挙資金の問題についてお尋ねをしたいと思います。警察庁も来ていただいておりますね。  鈴木総理に関する選挙資金の関係で、これは三月の十八日にわが党の三谷議員が地方行政委員会でこの問題を取り上げてお尋ねをいたしましたところ、警察庁の中平刑事局長の答弁では、事実関係調査しているというお話がございますが、その後どういうふうに事実関係調査して、現在どこまで到達しているか、お答えいただきたいと思います。
  130. 森広英一

    森広説明員 中平刑事局長が答弁をいたしました後、関係の都道府県警察に指示をいたしまして、関係者、当事者等の事情聴取を含めまして各種の調査を開始いたしました。現在もまだその調査を続行しておる段階でございます。
  131. 安藤巖

    安藤委員 自治省にお尋ねをしたいと思いますが、二月の十八日の予算委員会でわが党の東中議員が質問をいたしました。これは鈴木総理に対する質問で、鈴木総理は、趣旨は、いろいろお調べや御指導をいただいている段階だというふうに言っておられるのですが、これは間違って届け出をしたんじゃないか云々という話もあって、届け出を出し直すとか出し直さないとかいうような話まで出ていっておるようですが、これは自治省の方で、いろいろそのようなことも含めてこれは御指導もいただいておる段階というふうに言っておられるのですが、何か調べたりあるいは指導なんかもしておられるんじゃないかなと思うのですが、しておるとすればどういうことなのか、お尋ねいたします。
  132. 岩田脩

    ○岩田説明員 私どもの方では、このことについてどうこうしろというような、その指導をする立場にはおりません。  このことについては、同じようなお話がございましたので、地元の選挙管理委員会に聞いてみましたけれども、総理の関係の団体の方から、こういう事実と間違った記載があるので、それの訂正をしたいという話でおいでになって、どういう書式のもので訂正願を出せばいいのかとかそういう形で話し合ったことが、そのように指導とかというように伝えられたものだと思っております。  なお、その御指摘の団体からは、訂正願がすでに提出されております。
  133. 安藤巖

    安藤委員 訂正願というのが出されておるということですが、そうしますと、訂正というのは、選挙活動費用収支報告書というのではなくて、政治資金規正法に基づく届け出というふうに訂正の申し出をした、そしてそれを受け付けた、こういうことになるわけですか。
  134. 岩田脩

    ○岩田説明員 お答えします。  この当該団体からは、これは政治団体に対する寄附であって政治団体の収入として受け入れるべきものを、誤って選挙運動費用の収支報告書の中に含んだのだという理由でそれの訂正の願い出がありまして、これを受理し、すでにその旨を告示いたしました。
  135. 安藤巖

    安藤委員 では、そういう訂正の申し出はもっとも至極なことだというふうにお考えになって、先ほどおっしゃったような手続を踏まれたということになりますか。
  136. 岩田脩

    ○岩田説明員 県の選挙管理委員会の所管することではございますけれども、御承知のとおり、選挙に関する収支報告書は、その事実に即した記載がなされて出てまいります。それを公表するという形で選挙人の皆さん方にも見ていただくという形が制度の基本でございますので、そういった願いが出てくれば、形式的な間違いなんかのチェックはするにいたしましても、受理をしてこれを公表する手続になろうかと思っております。
  137. 安藤巖

    安藤委員 そこで、警察庁にお尋ねをしたいのですが、この東北ブルドーザーから五十万円受け取った日は、私どもの調査では九月二十四日になっておるわけですが、このときの選挙は九月十七日告示、十月七日投票日、まさに選挙期間中なんですね。で、この選挙期間中に受け取ったお金、しかもこれは選挙運動費用収支報告書として選管に届け出がなされているわけなんですね。だから、これは明らかに百九十九条、それから二百条にぴたりと当てはまると思うのですが、警察庁はそれに対してどういうふうに考えておりますか。
  138. 森広英一

    森広説明員 具体的な事案を前提に置いてのその中身の詳細な議論というのは避けたいと思いますけれども、やや一般論化して申し上げますと、そういう時期に寄附を受け入れて、受け入れましたという事実を収支報告書の中に記載をしたということから、一応選挙に関する寄附がなされたのではないかという推定が働くということはそのとおりだと思いますけれども、しかしながら、公職選挙法の違反と申しますのは、収支報告書に記載されたからといって直ちにこれが成立するというものではございませんで、むしろ、届け出面よりも寄附そのものの実態の姿、こういうものを明らかにして判断をすべき事柄であるというふうに考えております。
  139. 安藤巖

    安藤委員 まさに寄附そのものの実態で、犯罪の成立は受け取ったときになるということは言うまでもないと思うのですが、そうしますと、先ほど訂正の申し立てがあったということで、それを受理をして公告もしたというお話があったのですが、そういうこととはかかわりなく、受理したときのその金銭の性格を問題にするのだというふうにお伺いしていいわけですね。
  140. 森広英一

    森広説明員 届け出面だけで判断するわけにはいかないというふうに申し上げましたが、かかわりなくと申しますか、もちろん参考にはなりますけれども、それのみではなくていろいろな諸状況を全部総合して判断しなければならない、かように思っております。
  141. 安藤巖

    安藤委員 それから、いま個々の具体的な問題についてあれこれ申し上げるわけにいかぬというふうにおっしゃったのですが、もう具体的に九月二十四日というまさに選挙期間中にこれは受け取っているということになると、「逐条解説公職選挙法」という、これは自治省の人も恐らくこの編集には関与しておられる大きな本があるのです。皆さん御承知だと思うのですが、それにも「いかなる名目であろうと、選挙期間中当該選挙における公職の候補者に対して寄附がなされるときは、客観的に明らかに選挙に関するものでないことが認められない限り、本条違反として処罰されるものと考えられる。」もうはっきり書いてあるのです。だから、これからすると、まさに私がいま問題にしている鈴木善幸その当時候補者の選挙団体に対して選挙資金として東北ブルドーザーから五十万円の寄附がなされたとしか思えないじゃないかと思うのですが、どうお考えですか。
  142. 森広英一

    森広説明員 何遍も申し上げてくどいようでございますが、具体的な事案というものを踏まえての議論は御勘弁をいただきたいと思います。一般論化して申し上げますと、そういう推定が一部働くだろうということは事実と思いますけれども、いまお読みになりました本にもあるようでございますが、やはりあくまでも、何かいろいろな事情がありはしないかということも含めて、あらゆることをよく調べて結論を出すべきことである、かように思っております。
  143. 安藤巖

    安藤委員 法務省の刑事局としては、いま私が警察庁あるいは自治省に対していろいろお尋ねしておったのですが、いま私が申し上げましたようなまさに選挙の期間中にこの寄附がなされている、そして先ほど来申し上げているように選挙運動費用として収支報告書が出されているということになると、まさに百九十九条、二百条に該当することになるのではないかと思うのです。法務省は、これも二月十八日の東中議員に対する御答弁ですが、警察の方の調べを待って対処したいというふうに前田さん答弁しておられるのですが、まだずうっと待っておられるおつもりなのか。検察庁としてもやはり何らかの態度を示さなければならぬ段階だと思うのです。この問題を私どもが最初に取り上げたのは、予算委員会の総括で二月の八日なんです。だから、それからもう相当な日がたっております。警察庁任せというようなことではとてもじゃないが——何も警察庁の方をあれこれ言うわけではありませんが、法務省としても、検察庁としても大いに関心を持って対処すべきだと思うのですが、どうでしょう。
  144. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、犯罪の成否のことにつきましては、先ほど警察庁の方からもお答えがございましたし、私も前に予算委員会あるいは当委員会でもお尋ねを受けたことがあるかと思いますが、まさしくその事実関係そのものが問題なのであって、それが犯罪になるものであれば当然なるし、ならなければならない、こういう当然のようなことでございますけれども、そういう言い方でお答えしたわけでございます。  それから、これに対する対応の仕方でございますが、これも先ほど来警察の方からお答えがございましたように、関係都道府県警察において事情の聴取等を含めた実態の把握といいますか、事実関係の把握に努めておられるということでございますので、私どもも、これだけいろいろ国会でも御議論のある問題でございますから、それなりの関心を十分持っております。一応警察の方でそういう運びにしておられるということでございますので、それとまた別途の方法で私どもが何か乗り出すというのもいかがかと思いますし、また現段階ではそれだけの必要もないのじゃないかというふうにいまは考えております。
  145. 安藤巖

    安藤委員 犯罪を構成する事実があれば犯罪になるし、そうでなければそうでないのはあたりまえの話で、私はそんな話を聞こうとは思ってないのです。  まさに受け取った日にちは選挙期間中であるということですね。それから「逐条解説」、これは相当権威のあるものだと思うのですが、それの解説からすると、これはもう事実関係としては実にはっきりしてきているのじゃないかと思うのですが、その辺はどう考えておられるのですか。
  146. 前田宏

    前田(宏)政府委員 その点もさっき申し上げたように、警察庁の方からお答えがありましたように、その寄附のあった時期、また一応届け出がなされていること、それ自体一つの有力な資料といいますか、になるだろうと思いますけれども、それだけで直ちに断定できないというふうになることにつきましては、先ほどの警察庁の御答弁と同様に考えているわけでございます。
  147. 安藤巖

    安藤委員 先ほど、訂正の申し立てがあったということなんですが、これは鈴木総理の関係で言いますと、選挙運動費用の関係につきましては、これは出納責任者というのですね、金丸五郎という人で、そして政治資金規正法の関係の方は会計責任者、これは肩書きも違うのです。人ももちろん田上仁兵衛、こういう人になっているのです。だから、それぞれの責任者も違っているのです。だから、届け出ということも一つの参考というようなこともおっしゃったのですが、これはやはり全然別の組織で責任者も違っているのです。それを金丸五郎という人が、やはりこれは選挙に関する寄附をもらったのだということで、ちゃんと帳簿を出して届け出る。そして今度は訂正というのですが、どういうふうにしてその二つの組織で、会計責任者が違うのにどういうやりくりをしたのか、私はもう不思議でしようがないのです。この辺は自治省は何もチェックなさらなかったのですか。
  148. 岩田脩

    ○岩田説明員 選挙に関する収支報告書でございますから、当該出納責任者の方から訂正の申し出があったと聞いております。
  149. 安藤巖

    安藤委員 そうなるとよけい奇々怪々で、受け取った人が選挙資金として受け取った、そして届け出をした人が、実はこれは選挙資金ではありません、これは政治資金の方です、会計責任者はほかの人なんですから、その人が本来受け取ったお金なんです。これは受け取ってしまったのですから、返したとかどうこうというのと違うのですから、全くこれは不可思議きわまる話なんです。だから、その会計責任者の田上という人が現実には受け取っていないのを、その人が受け取ったごとく今度は訂正をするということはとんでもない話だと思うのですが、そう思いませんか。だから、その辺について県の選管の方にもきちっと言って、もう一遍調べ直せということを言っていただく必要があるのじゃないかと思うのですが、どうです。
  150. 岩田脩

    ○岩田説明員 選挙に関する収支を扱っております出納責任者の経理と、それから政治団体の経理を扱っております会計責任者でございますか、その二つの機構があって、その間で混乱が起こって間違いがあったという報告でございますので、私どもとしてはそのような理由による訂正を受け付ける。その内容についてまで、実際にいつどうやって間違えたというような調査を私どもの方で事情を聞くというようなことはしない立場に立っておるわけでございます。
  151. 安藤巖

    安藤委員 その辺のところ、何もチェックしないのですか。それはちょっとおかしいですよ。こんなものは受け付けられませんよということぐらい言えないのですか。  警察庁の方、どうです、いまのような実態なんです、訂正の申し立てと。きわめて奇々怪々な話ですよ、これは。受け取る人が違っておった、違う人が受け取ってあった、そして使ってしまった、それで実はこれは違っておりました、そんなことは通るのですかね。これは実に人をばかにした話をいましておられるのですよ。警察庁はどう思います。
  152. 森広英一

    森広説明員 お話が大変具体的な事案の具体的なお話になってまいっておりますので、そういうことについてまだ十分実態の掌握もしていない、もちろん結論も出していない段階で、いろいろと細部にわたってどうこうということは言えませんけれども、私どもの仕事の性格上、あらゆることをどんな要素もすべて漏らさずによく実態を掌握して、そして結論を出すようにいたしたいと思います。
  153. 安藤巖

    安藤委員 まだ実態を調査しております、しておりますというようなことを、これは永久に繰り返されるおつもりじゃないかなという危惧の念をいま抱かざるを得ぬような事態なんですね。先ほど言いましたように、これは二月八日にもう指摘をして、そして鈴木総理も、受け取ったことは受け取ったんだ、それであれこれ理屈をつけておられますけれども、先ほどからの話を聞きますと、全く矛盾したわけのわからぬことをやって、訂正の申し立てをしてごまかそうとしている。これはかちっと決めていただく必要があると思うのです。いろいろ調べておられると思うのですが、いつまでも調べておる、調べておると言いますと、私どもの方もこれは具体的に言わざるを得ぬのです。  鈴木総理の関係では、これは岩手読売の二月十二日の記事ですが、川口栄という方がおられまして昭栄建設株式会社の現会長、この昭栄建設株式会社というのが東北ブルドーザーで、商号変更したわけです。いまの九月二十四日というのは、この人が東北ブルドーザーの社長をしていた当時の話です。この人はこう言っているのです。「ウチは全社的に善幸さんを支持しており、多少余裕が出てきたので、いくらかでも助けになろうかと考えた」、それでお金を持っていったのだ。「そして、「(選挙資金としての献金を禁じた)公選法一九九条を知らなかったもんだから……。でも、向こう(鈴木善幸事務所)も商売人なんだから」、商売人だからというのは、この関係の専門家だからという趣旨だと思うのですが、「商売人なんだから、『こういうことは、まずいんだよ』と言ってくれたらよいのに……」と不満とも取れる発言をし、「運が悪かったんだな」と繰り返した。」こういう記事があるのです。  となると、これはやはり五十万円を持っていった川口さん、この東北ブルドーザーの方としては、あくまでもこれは選挙活動資金としてお金を持っていったのだ、悪いなら悪いと教えてくれればよかったのに、こう言っているのですよ。だから、持っていった方も、明らかに選挙資金として持っていったということを認めているわけですよ。だから、これは隠れもない事実だと思います。具体的な問題についてはあれこれあれこれといまおっしゃるのですが、私は、もうこういうように具体的な事実を指摘して、まさにこれこそ違反じゃないのかと言っておるのです。これは具体的な問題については答弁を差し控えるとかなんとか言いますが、こういうような事実を私いま挙げているのですが、こういうことで、いまの問題といままで述べたことを全部含めて、これでまだ結論を出せないのかということを私、言いたいのですが、どうですか。
  154. 森広英一

    森広説明員 いまお示しのようないろいろな公刊資料等で御発言をされている御発言の趣旨はよくわかるのでございますけれども、警察といたしましては、やはりそういったものも参考にいたしますけれども、やはり自分自身がいろいろの調査をしまして、納得のいく資料をもって、そして結論を出すべき立場にございますので、いまのような、資料をお示しのせっかくの御質問でございますが、それだけでこの場で結論を申し上げるというわけにはいかないということは御理解を賜りたいと思います。
  155. 安藤巖

    安藤委員 当然入手はしておられると思うのですけれども、第一、川口栄という人から事情をお聞きになったことがあるのですか。
  156. 森広英一

    森広説明員 現段階で具体的などういう方から事情を聞いているということについて確認をする等のことは、差し控えさせていただきたいと思います。
  157. 安藤巖

    安藤委員 それでは何にも答弁しないと同じみたいな話です。  こういう寄附をした方も受け取った方も、これは両方罰せられるわけですが、そうしますと、寄附をした方からも、それから受けた方からも、両方から事情を聞くなどを含めて調査をしている、こういうふうに伺ってよろしいわけですか。
  158. 森広英一

    森広説明員 そのような当事者的立場にある方はもちろん、もっと広く、いろいろな可能なことを全部含めましていろいろ調査をしております。
  159. 安藤巖

    安藤委員 まだこの問題はこれからもいろいろ機会を見つけてお尋ねをしなければならぬと思うのですが、ほかの関係で、ほかの関係といいますのは、この百九十九条、二百条の関係ですが、現職の閣僚八名を含めて四十七名、自民党の議員がほとんどですが、違反行為を犯しておるということを私どもは幾つかの機会で指摘しておるのです。  たとえば櫻内外務大臣は、二月十八日の予算委員会でわが党の東中議員の質問に対して、千歳電気工業からの寄附の問題で、これは個人的にもらった、云々というようなことをいろいろ言っておられるようですが、先ほど私が言いましたように、いかなる名目であろうと選挙期間中受け取ったらこれは該当するんだという考え方、これは定説だと思うのです。これからすると、幾ら個人だろうが何だろうが、とにかく選挙期間中に受け取ったということなら該当するんだと思うのです。特にこの櫻内さんの場合は、一昨年のダブル選挙、これは六月二日告示、六月二十二日投票日であったことは公知の事実ですが、この告示の日の六月二日に二十万円を受け取っているんですね。そして櫻内さんは、沢田という人を個人的に知っているからその関係で持ってきたのだというような弁解をしておられるようですが、先ほど私が言いました「逐条解説」の考え方、それからまさに告示の日に受け取ったということになったら、これは明らかに二百条に該当するのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  160. 森広英一

    森広説明員 個別のものについてお答えをすることはむずかしいわけでございますが、一般論として申し上げますと、公職選挙法の百九十九条の一項におきましては、請負その他国と特別の利益を伴う契約をしておる当事者は寄附をしてならない、こういう規定でございまして、たとえば一つの会社が国と契約関係にあるという場合においては、その会社が寄附をすることを禁止されておるわけでございまして、個人という立場になりますと、果たしてその個人自身が国と契約関係にあるかないかということによって判断が分かれてまいろう、かように思います。
  161. 安藤巖

    安藤委員 ですから、その辺のところもきちっとお調べいただくべきだと思うのです。いまあなたのおっしゃるところを聞いていると、何か櫻内さんの代理人がしゃべっているみたいな印象を受けるんですね。  それから、時間がありませんからちょっとまとめて言いますが、田澤農林水産大臣の場合は間組から二十万円ですが、これは昭和五十四年の十月二日に受け取っているのです。これは九月十七日告示、十月七日投票日ですから、まさに選挙期間中ですね。それから始関建設大臣、この人は六月九日、一昨年のダブル選挙の、これも選挙期間の真っ最中。それから、ほかにもたくさんあるのですが、中曽根さんの関係も幾つかあるのですが、時間の関係でこれは後日に譲ります。佐田建設というところから百万円受け取っているのですが、これも選挙の告示の日、六月の二日に受け取っている。そしてそのほか東急、富士通関係、これもまさに選挙期間中。それから三井建設、日本製鋼所関係も、いずれも六月の六日でまさに選挙期間中に受け取っているのです。こうなりますと、もうはっきり選挙資金として寄附を受けたものであるということが言えるというふうに思うのです。  それからあえてもう一つ、これも知っておられると思うのですが、陣中見舞いの関係については、これは自治省選挙部編集による「選挙慣例実例判例集」、一問一答ですが、「陣中見舞は、寄附として会計帳簿に記載の要があるか。」という問いに対して、「答 寄附として会計帳簿に記載しなければならない。」こうなっておるわけです。ですから、告示の当日に持ってくるというのは明らかに陣中見舞いだと思うのです。  そういうことから考えると、いま私が申し上げたほかにも事例がありますが、時間がないから省略しますけれども、もうほかに客観的な証拠が必要でないほど明確に百九十九条、二百条にぴしゃりと該当するというふうに思います。ですから、その辺について警察庁もしっかりと捜査して、とにかく現職の閣僚だから遠慮するなどということではなくて、先ほどの弁護人みたいな発言をし、考え方をするのではなくて、厳正公正にやっていただきたいということを希望いたします。  それに対して答弁願いたいということと、それから刑事局長、どうですか、いま聞いておられたでしょう。警察庁が、警察庁というよりも警察の方がやられるのを待っておる、関心を持っておるということではなくて、やはり具体的に何らかの調査に入るとかというようなことも考えていただかなくちゃならぬのだというふうに思いますが、どうか。  それから大臣に、全部並べて申しわけないのですけれども、法務省としても、法務大臣としてこういう不正、腐敗をそのまま見逃しておってはいけない。現職の閣僚がやっておるからこそ、よけい現職の閣僚である法務大臣としては姿勢を正すという態度を厳しく打ち出される必要があるのではないかと思いますので、その辺のところのお考えをお示しいただきたい。  以上、三人の方に質問をいたしまして、御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  162. 森広英一

    森広説明員 公選法の判断についていろいろ御質問がございましたのでお答えいたしたわけでございまして、いわゆる弁護人云々というお言葉がありましたけれども、それは大変な誤解であることをお断りしておきます。  次に、この関係の事案について調べるかというお尋ねでございますけれども、もちろん国会で問題になりましたあのケース全部につきまして、それなりの調査をいたしまして責任のある結論を出したい、かように思っております。
  163. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほどもお答えしたところでございますが、警察当局が先ほど来お答えのように鋭意実態の把握に努めておられるところでございますので、それと同じことをまた別途検察当局がやるというのもいかがかと思うわけでございます。そういうことで、現段階におきましては、警察の方の実情把握ということにまっている方が適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  164. 坂田道太

    坂田国務大臣 法務大臣といたしましては、当然なことながら、厳正公正に対処いたしたいと考えております。
  165. 安藤巖

    安藤委員 終わります。      ————◇—————
  166. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 内閣提出証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  167. 横山利秋

    ○横山委員 証人等の被害についての給付に関する法律について、若干の質問をいたしたいと思います。  第二条の「共同被告人の一人が供述する場合において、その供述が他の共同被告人に関する事項を含むものであるときは、その共同被告人は、同法の規定による証人とみなす。」という場合ですが、これは私どもがアメリカへ証言法を勉強に行きました際に、いわゆる免責条項についてずいぶんアメリカでは普通のことになっておったわけであります。日本でこの種の問題についていろいろ議論をいたしましたが、なかなかなじまないだろうということが議論になりました。この共同被告人が他の共同被告人に関して証言をするというときに、しかし実際問題として、警察で、おまえ、あいつのことについて証言をしろ、本当のことを言ったらおまえもなるべく寛大な措置をしてやるからというようなことが言われ、それを期待して共同被告人の一人が供述しているようなことが実際問題としてあるのではなかろうかと思いますが、どうですか。
  168. 前田宏

    前田(宏)政府委員 被疑者の取り調べに当たりまして、いわゆる利害誘導と申しますか、そういうことをしてはならないことはむしろ当然でございますし、そういうことによって得られた証拠ということになりますと、証拠能力の点でも問題があるわけでございますから、やはり取り調べに当たりましては、供述を得る以上は真実を述べてもらうという態度で臨むべきもの、かように考えているわけでございます。
  169. 横山利秋

    ○横山委員 そうおっしゃいますけれども、ロッキード事件アメリカ人に対して証言をもらった、それに対して最高裁は事実上の免責条項を発動したというふうに理解しているのですが、違いますか。
  170. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ロッキード事件におきますアメリカでのいわゆる嘱託尋問につきましての経過は、詳しく申し上げるまでもないと思いますけれども、証人が自発的には証言をしないということでなかなか証言が得られないということから、当時の東京地検の検事正におきまして、いわゆる起訴便宜主義の発動ということで宣明と称するものを出しまして、またそれを裏づけるような形で最高裁の宣明がなされた、こういうことでございます。それがいわゆる免責に当たるかどうかということになるわけでございますけれども、実質的にはそういう理解も可能であろうと思います。
  171. 横山利秋

    ○横山委員 免責条項か起訴便宜主義か、それは理屈を言えば違う、しかし、それが共通する部面があるということだと思うのでありますが、最高検や最高裁判所のやることはいい、現場のお巡りさんが適当にやることはいい、まん中はいかぬ、こういうことですか。
  172. 前田宏

    前田(宏)政府委員 どういうふうにお答えしたらいいかと思いますけれども、要するに抽象的に言えば、きちっと手続にのっとったことであれば、手続に従った措置と言うことができると思うわけでございまして、そういう決められた手続を離れて脱法的なことといいますか、実際の運用として先ほど申しましたように利害誘導的なことになることは適当でなかろう、こういうふうに申したわけでございます。
  173. 横山利秋

    ○横山委員 第二条の二で「この法律で「参考人」とは、他人の刑事事件について検察官、検察事務官又は司法警察職員に対し」とありますが、ここで言う「参考人」というのは起訴後、起訴前両方言っておると思われるのでありますが、参考人として告知をいつも警察はしているのでしょうか。
  174. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  私、警察庁の暴力団対策官でございますが、お礼参り等につきましては、暴力団が加害者になるということが多うございますので、私、この席へ立たしていただいているわけでございますが、ただいまお尋ねの点でございますが、私どもといたしましては、被疑者と参考人というものにつきましては区別をいたしまして、参考人という形ではっきりと捜査をさせていただくということで、ときには参考人としての段階から、だんだんいろんな周辺の捜査によりまして被疑者になるという人物もないわけではないと思いますけれども、原則的にはそういう形をとらしていただいております。
  175. 横山利秋

    ○横山委員 被疑者として警察が引っ張った場合には、黙秘権がありますよという告知をするのでしょうね。それを告知せぬ人はみんな参考人として呼んだということでしょうか。  それから、新聞でときどき見る重要参考人というのは、規定上、法律上、一体存在があるのかないのか。また、重要参考人という言い方を警察が新聞記者やいろんな人にするのかせぬのか、あるいは勝手にマスコミが重要参考人としてやっておるのか、その辺はどうなんですか。
  176. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  被疑者につきましては、先生御指摘のとおり、黙秘権の告知ということを当然法律に定められたところによりましてやっております。  参考人の問題でございますが、重要参考人云々という言葉でよくマスコミ的に使われているわけでございまして、別に法律上の言葉としてあるわけではないと思います。マスコミ的によく言われているのでは、参考人でも被疑者に近いような観念と申しますか、そういうふうなことで使われているのではないかというふうな感じがいたします。
  177. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの方が、重要参考人だと放送するのじゃないですか。
  178. 関口祐弘

    ○関口説明員 私どもから積極的にそういう形でやるということは、まずないと思います。
  179. 横山利秋

    ○横山委員 この二条二項の中に、そういう「司法警察職員に対し自己の実験した事実を供述する者」とありますが、「実験」ということが二回出てきますが、「実験」とはどういうことですか。
  180. 前田宏

    前田(宏)政府委員 みずから把握した事実と申しますか、要するに、身をもって知った事実というふうになるだろうと思います。
  181. 横山利秋

    ○横山委員 私は、何でこれは実験だと思って、つくづくいろいろ考えて一晩眠れなかった。法務大臣、どう思いますか。「自己の実験した事実を供述する者」、司法警察官に対して自分が試しにやってみた、試験をしてみたことを供述する者というのはおかしいじゃないですか、あなた、日本語で。
  182. 前田宏

    前田(宏)政府委員 学校などで実験という場合には、横山委員のおっしゃるように試してみるというようなことがあろうかと思いますが、若干私ども特異な言葉の用例を使っているという意味で、一般の方にあるいは奇異に感ぜられるかもしれませんけれども、私どもはわりに、証人とか参考人というものは実験した事実を述べるものだというふうに言って、そう抵抗感がないわけでございます。
  183. 横山利秋

    ○横山委員 抵抗感あるね。これは常識豊かな文部大臣を呼ばねばならぬけれども、法務大臣としての常識豊かな御感想をいただきたい。体験と称するのだ、それは。
  184. 坂田道太

    坂田国務大臣 率直に申し上げまして、私はちょっとわからぬわけでもないけれども、言葉としては体験でいいんじゃないかなとは思うのですけれども、ただ、こちらではそういうことが実験だとして常用されておるように思います。
  185. 横山利秋

    ○横山委員 きょうは法律の審議をしているのですからね。そんな、昔がこうだから、わしのところは勝手に使っているんだから許してもらいたいといったって、国民の代表として、「実験した事実を供述する者」というのは、自分が試しにやってみた、試験してみた事実を供述するというのは、これは自分が「体験した事実を供述する者」に直しなさいよ。そうこだわらぬでもいいじゃないか。
  186. 前田宏

    前田(宏)政府委員 こだわるわけではございませんが、体験というお言葉に即して言いますと、この「実」というのは、現実に体験したということを詰めて言えば実験という言葉になるというような意味ではなかろうかというふうに説明させたいわけでございます。
  187. 横山利秋

    ○横山委員 そんな勝手な話があるかね。「自己の実験」というのは、実は実際に体験したということなんだ。そんなことはあなたが勝手に牽強付会に解釈するもので、いわゆる「実験」という辞典とこかで取り寄せて——委員部、辞典とこかにないか。「実験」という言葉は、日本語ではどういうことなのか、一遍至急調べてくれよ。これはおかしいと思いますよ。  それから、三条で「裁判所、裁判官又は捜査機関に対し供述をし、」というこの「供述」は、捜査機関に対するものは供述で、そして裁判所では証言ではないのですかね、これは。
  188. 前田宏

    前田(宏)政府委員 証人と参考人とを分けて言いますと、そういう言い方もあろうかと思いますけれども、証人と参考人をまとめて言います場合に、その包括的な概念といいますか、包括的な言いあらわし方としては、広い意味では供述ということが使えるというふうに理解しております。
  189. 横山利秋

    ○横山委員 「捜査機関に対し証言又は供述をし」と、こういうふうにするのが正当ではないのですか。
  190. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ほかのところでもやはり供述という言葉を使っておりまして、たとえばいま御指摘の二条でも「共同被告人の一人が供述する場合」というふうに使っておるわけでございまして、広い意味で供述という言葉を十分使い得るものというふうに考えております。
  191. 横山利秋

    ○横山委員 それは親切でないですよ、この条文は。三条の終わりの方に「他人からその身体又は生命に害を加えられたときは、」ということになっておるのですが、身体または生命に害を加えられたのではないけれども、精神的に非常に打撃を受けた、病気になった、外へ出られなくなって商売もできぬ、こういうときにはどうなんですか。
  192. 前田宏

    前田(宏)政府委員 そういう場合も対象に含めるべきではないかという御議論は十分あり得ると思いますけれども、現行法の解釈という意味でございますならば、それは含まれないということでございます。
  193. 横山利秋

    ○横山委員 それならば、五条の一に「被害者が負傷し又は疾病にかかった」とありますね。五条の二にも「被害者が負傷し又は疾病」、三号も「被害者が負傷し又は疾病」。疾病というものは身体または生命に害を加えられたことに入るのですか。
  194. 前田宏

    前田(宏)政府委員 あるいは質問の趣旨を取り違えているかもしれませんけれども、生命、身体に害を加えられて、その結果、障害の一種といたしまして病気になるということも十分考えられることではないかと思います。(横山委員「いまこれを見ておったので、もう一遍言ってちょうだい」と呼ぶ)要するに、傷害罪の場合をお考えいただければわかると思いますけれども、結局けがをして……(横山委員「けがはしなかったんだ。身体または生命に害を加えられない、私の言っているのは」と呼ぶ)でございますから、生命、身体に害を加えられた場合に限って三条で給付を行うということにしておりますから、害を加えられない場合には、まず三条の基本で給付が行われないということでございます。したがいまして、害を加えられた場合にその範囲内でいろいろな給付が行なわれることになるわけでございまして、3条を離れて五条の給付があるというわけではないわけでございます。
  195. 横山利秋

    ○横山委員 じゃ、五条の疾病は何ですか。
  196. 前田宏

    前田(宏)政府委員 五条の疾病は、害を加えられた結果として障害という形もございましょうし、病気という形も起こるでありましょうということでございます。
  197. 横山利秋

    ○横山委員 そうじゃないですよ。五条の一は、被害者が負傷し、またはそれによって疾病にかかったというならわかるけれども、「被害者が負傷し又は疾病にかかった」のだから、負傷でなくて疾病にかかったときも適用することになっているのですよ。
  198. 前田宏

    前田(宏)政府委員 それでございますから、害を加えられた場合のいわば態様といいますか、それに何種類かあるわけでございまして、わかりやすく言えば、負傷の場合は外科的なことでございましょうし、疾病と言えば内科的なことであろうということで、その被害によって、その態様によっていろいろあるだろうということになろうと思います。
  199. 横山利秋

    ○横山委員 あなた、自分で言っておって私の質問にまともに答えてないじゃないですか。三条は厳密解釈で、身体または生命に害を加えられたときでなくては給付はしないと言っているんですね。五条の解釈は、被害者が負傷し、または病気になった、ですよ。病気になったということは、身体または生命に害を加えられたことではないのですね。あなたはそれでもいいの。おかしいじゃないの、その解釈。自分でもおかしいと思っているでしょう。
  200. 前田宏

    前田(宏)政府委員 そうおかしいと思っているわけではございませんで、先ほども外科的、内科的ということを申し上げましたけれども、一つの例で申しますと、害を加えられた、たとえば胸を殴打された。これは身体に害を加えられたわけでございますが、それで外部的なけがをすれば負傷でございましょうし、たとえば肋膜炎というような疾病を生ずる場合もあるという、外科的、内科的というのはそういう意味でございますから、害を加えられた結果によっていわば二種類の結果が生ずるということはあり得るであろう、そういう説明を申したつもりでございます。
  201. 横山利秋

    ○横山委員 私が言っておるもう一つの問題である脅迫をされたためにノイローゼになった、あるいは日ごと夜ごと嫌がらせをやられておるから営業ができない、あるいは外へ出ることもできない、害は加えられていない、こういうときには何にも恩典はないんですか。
  202. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほども申しましたように、そういう場合も含めて何らかの国からの給付が行われるべきではないかという御議論は十分あり得るかと思いますけれども、現行法の解釈としては、先ほど申しましたように、生命または身体に害を加えられたときということになっているわけでございます。(横山委員「解釈聞いているんじゃないです。改善しないかと聞いている」と呼ぶ)  これは立法政策としてはいろいろな考え方があると思いますけれども、この法律がつくられました経緯までさかのぼるわけでございますが、当時、先ほども話がございましたように、暴力団対策ということで刑法の一部改正、また刑事訴訟法の一部改正、そしてこの法律の立案と、こういういわば三本立ての立法措置昭和三十三年にとられたわけでございます。その際に、従来にないいわば特異な法律としてこういう本法のような法律をつくったわけでございまして、それはやはり証人等が安んじて供述、出頭してもらうということを目的といたしまして、いままで余り考えられていなかったような法律がつくられた経過があるわけでございます。  その場合にもどこまで範囲を広げるかということは当然議論されたようでございますが、その当時の実情といたしまして、やはり生命、身体に対する害というものが実際上多いし、またそれが一番問題である、そういうことでこの程度の範囲内での給付をするのが一応相当であろうという考え方で立案をされ、国会の御審議も経て制定された、こういうことでございまして、こういう国の給付制度というものをどこまで範囲を広げるべきかということになりますと、限度がないようなことにもなりかねないわけでございます。これは刑事補償法の問題についても似たような問題があるわけでございますが、やはり広い意味での補償と申しますか、国の責任がない場合で、しかも何らかの目的を持って国が給付をするという場合、それは当然また国民の負担においてなされるわけでございますから、いろいろなそういう類似の制度とのバランスの問題、あるいは国としてどこまでそういうことをすべきかという基本的な物の考え方、いろいろあるわけでございまして、この場合にはこの程度措置をとるのが当面の措置として適当であろうというふうに考えられ、現在までそういう形で来ておるわけでございまして、御意見のようなことが決して悪いとは申しませんけれども、この場合の措置としてはこの程度で足りるのではないかというのが一応の考え方でございます。
  203. 横山利秋

    ○横山委員 長々とおっしゃいましたが、この法律ができても実際に適用された例は余りないようですね。暴力団もまたお礼参りをする人間も頭がよくなって、身体に傷害を加えれば罪になる、そしてまたそれは補償されるから、証人もむしろ身体に傷害を加えられた方がいいとは言わぬけれども、やるならやってみろということになる。実際問題として暴力団が嫌がらせをする、おどしをかける、脅迫をするというやり方は、法の一歩手前で精神的に影響を与えるということが通常ではないですか。  どうですか、関口暴力団対策官は、私のいまの意見を聞いて、私の言っておることのような事例の方が実際は多いんじゃないですか。身体や生命に危害を加える一歩手前の嫌がらせの方が圧倒的に多いんじゃないですか。
  204. 関口祐弘

    ○関口説明員 いわゆる暴力団のお礼参り等の問題かと思いますけれども、かつて三十年代の前半あたりに、いわゆる証人威迫罪でございましょうか、そうしたものが新設される前後と申しますか、そうした時期にはかなりいろいろな事態が生じたようでございますが、最近では比較的その数も少なくなってきております。ただ、先生がおっしゃられるように、非常にある意味では巧妙にと申しますか、いろいろな動きをしているというふうな感じがいたすところでございます。
  205. 横山利秋

    ○横山委員 だから私は、刑事局長の言うように、それをやったら切りがないとおっしゃるけれども、ちゃんと一時金見舞い制度でもあってもいいだろうし、限界を示してもいいじゃないか。少なくともノイローゼになっちゃったりあるいはまた営業ができなくなったり、あるいはまた危険を感じて外へ出れないというような場合は、一時金制度があってもいいんじゃないですか。そう思いますが、どうですか。法務大臣、どう思いますか。あの人はかたい人で、言ったことは、決まっていることは一つも弾力性がない。  さっきの「実験」、どうですか。これ、広辞苑ですよ。権威ある日本の広辞苑ですよ。「実験」とは何と書いてあるか。「実際に試みること。実地の試験。人為的に一定の条件を設定して、自然現象を起させてみること。」と書いてある。刑事局長の言うように、実際の体験とは書いてないんですよ。これは広辞苑ですよ。大臣、いかがですか。考慮の余地ないですか。
  206. 坂田道太

    坂田国務大臣 法務省におきまして使っております用語と、それから一般社会で使っている用語とどちらがいいかというようなことは、なかなかこれは言い得ないわけなんで、ただし、非常に古い時代にできた法律を、やはり現代の社会の人たちにもわかりやすい用語にしなければならぬという試みは、やはり法務省といえども考えてきておるわけで、恐らくこれからの刑事施設法でも、それからまた刑法改正でも、その点には十分留意してやっておるところだと思います。この問題につきましては、ただいままで刑事局長が答弁いたしましたとおり、法務省においてはそういうふうにやってきたということを率直にありのままに申し上げたのだろうと思いまして、いろんな御議論をしていただくことがやはり法務委員会として大切なんで、ただいまの段階では、局長の申し上げましたことについて私も異論がございません。
  207. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つ、ノイローゼの問題、営業妨害の問題。
  208. 坂田道太

    坂田国務大臣 ノイローゼの問題等につきましても、こういうふうな法案として御提出申し上げておるわけでございますから、当然私も一緒に考えたことになるわけでございまして、ひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  209. 横山利秋

    ○横山委員 御理解賜らぬよ。  委員長、どうですか。わかっとるでしょう。「実験」の用語の問題といい、第三条の「身体又は生命に害を加えられたときは、」という問題といい、委員長はどうお考えですかね。委員長の御判断をいただきたい。  そんなもの、実際に一遍出したら、わかっとっても、広辞苑を持ってきても、法務省の用語だ、おまえさん方の関知したことではないという顔をしとる。国民が読む法律じゃないの。国民は知らぬでも法務省がわかっとりゃいいなんて、そんなばかなことはないですよ。
  210. 坂田道太

    坂田国務大臣 まず、この証人等が被害に遭いました場合に、いやしくも本法が周知されていないことによって給付が受けられないというようなことのないように、本法の周知、運用には最善を尽くしてまいりたい、かように考えますし、また、御指摘いただきましたそのような点につきましても、いずれもむずかしい問題を含んでいるように思われますので、今後ともできる限りの検討をしてまいりたいと考えております。そして御趣旨に沿いたいと思います。
  211. 横山利秋

    ○横山委員 検討をするといったって、いま法律を審議しておるのですよね。審議しておるときに、重大なことでも、政府の大方針だとか何かならともかく、関口暴力団対策官はあなた方に気がねして一番最後にちょっぴり言っただけだけれども、実際はその方が多い。横山委員のおっしゃることの方が多いと言っているんですよ。  第四条の第一「証人若しくは参考人又は被害者と加害者との間に親族関係があるとき。」夫が傷害事件を起こした。奥さんなりおじさんが法廷で証言した。あれは暴れん坊でどうしようもない人間ですと言うた。それで夫が怒って妻やおじさんをぶん殴った、傷害を与えた。そういうときにはだめなんですか。これは「全部又は一部をしないことができる。」とあるけれども、そういうときにはどういう判断をするんですか。
  212. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほどのことでまたお答えしておしかりを受けるかもしれませんけれども、この法律自体で使っているわけではないということをひとつ例として申し上げさせていただきたいわけでございますが、刑事訴訟法で証人の規定がございまして、たとえば百五十六条では「証人には、その実験した事実により推測した事項を供述させることができる。」というふうになっておりまして、このことからわかりますように、推測事項ということは一種の、直接はいわゆる実験していないわけでございますから、本来供述するのには適当でないという面もあるわけでございますが、ただ、それがみずからここにいう実験した事実に基づくものであれば、推測した事実でも供述させることができる、こういうふうに事項を区別する意味で使い分けている、そういう用例として使っているということをひとつ御参考に申し上げさせていただくわけでございます。  それから、四条の先ほど御引用のような例でございますが、まさしく条文にございますように「全部又は一部をしないことができる。」ということで、この給付を決定する者の裁量に任せられているわけでございます。したがいまして、この「証人若しくは参考人又は被害者と加害者との間に親族関係がある」場合も、いろいろ千差万別であろうと思うわけでありまして、その実態に応じて給付することが社会通念から見て適当であるかどうかという健全な常識に基づきまして、非常識な場合には「全部又は一部をしない」という決定をするということでございます。
  213. 横山利秋

    ○横山委員 もう少し具体的に、全部現場の裁量に任せてあるのですか。
  214. 前田宏

    前田(宏)政府委員 結局、先ほど申しましたように、いわばケース・バイ・ケースでございまして、その間柄も濃い場合もありましょうし、薄い場合もありましょうし、いろいろとあるわけでございますから、それを一つの基準みたいなものをつくるわけにもいかないような実態のものだろうと思うわけでございます。要するに、こういうことを一つの事由として掲げておりますことは、帰するところ、そういう場合に国が給付をすることが一般の国民の健全な常識から見て適当であるかどうかという問題があるのでこういう規定が設けられているわけでございますので、そういう基本的な物の考え方に立って、それぞれの事案に応じてより分けていくほかないというふうに思うわけでございます。
  215. 横山利秋

    ○横山委員 余り本法の適用例がないものですから具体的に議論ができないのですけれども、四条は一、二、三号とも現場の裁量権に任せておいたならば、なかなか全部しないということになりやすいような気がするわけであります。二の「証人等にも、その責に帰すべき行為があったとき。」とは一体どういうことなのだろうか。「証人等が加害行為を誘発した」、たとえば、そんなものけしからぬよ、おまえが大体悪いからそうなったんだ、小さいときからおまえは横着者だ、おまえはどうせ地獄に行くのだ、そういうことを言ったことになるのだろうか。ただ、証人等が加害行為を誘発するというのは、少なくともこれは法廷外における問題でなくて、証言に関連する場合であろうと思うのですが、三には「加害行為の原因となった供述において」と書いてあるにかかわらず、二には供述において加害行為を誘発した責めに帰すべき行為と書いてないのはどういうわけですか。
  216. 前田宏

    前田(宏)政府委員 逆の方からの御説明になろうかと思いますけれども、三号の方は、当然虚偽の陳述ということでございますから、「加害行為の原因となった供述において」ということがなければ特定しないというか、はっきりしないわけでございます。逆に二号の方は、別に供述において誘発するというふうに狭くする必要はないので、要するに証人等が被害を受けた、逆に言えば、その被害を受けた加害行為についてその被害者に当たる証人等がその加害行為をいわゆる誘発するようなことをしたということ、つまり被害者側にも手落ちがあるといいますか、そういう場合のことを想定しているわけでございます。たとえて言えば、民事の損害賠償におきますいわゆる過失相殺とでもいいますか、そういう被害者側に過失というか、手落ちがあるというか、そういう場合のことを想定して、そういう場合にすべて給付したんではやはり行き過ぎではなかろうかということで、その事態に応じて「給付の全部又は一部をしない」というふうに規定しているわけでございます。  ただ、横山委員の御理解が、何かこの一号、二号、三号を通じて大変給付をするのを制約しているというか、狭くしているのじゃないかという御印象のように受け取られるわけでございますけれども、そういうことではないわけでございます。先ほど来申しておりますように、ここに挙がっているような場合に全部そのまま無条件に給付をしたのでは、かえって一般の国民の方々が、何だ、ああいう場合にも全部金が払われるのかというむしろ疑義を持たれるということも当然あり得るわけでございますので、そういうむしろ限られたいかにも給付するのがおかしい場合には制限ができるという余地を残しておかなければならないのじゃないかという趣旨の規定であるというふうに御理解を賜りたいわけでございます。また、昭和五十二年に前回改正がありました際にも、当委員会等でいまのような御意見もあったわけでございます。そこで、当時の刑事局長から通達を改めて出しまして、いまのような場合につきましても十分適正な運用をするようにという趣旨のことを全国の検察庁に通達しているところでございます。
  217. 横山利秋

    ○横山委員 そのあなたの説明はその限りでわかったのですが、一号は親族関係という客観的事実というものが明白です。三は虚偽の陳述だということが事実関係として明白です。二の方は、証言ないしは供述との関連がどこにあるかということについて明白ではないわけですね。そこで私が聞いておるのですよ。証人等が証言ないしは供述に関連して加害行為を誘発したときとあるならまだ話がわかるけれども、なぜ一体証言ないしは供述にという文字がここにあらわれてないのか。全然証言、供述に無関係に加害行為を誘発したというなら普通の犯罪ではないか。何もここへ書く必要はないじゃないか。これを欠いて、あなたの言うように給付をしてやる趣旨だよという意味は、証言ないしは供述とどういう関係を持って二号はあるのですか。
  218. 前田宏

    前田(宏)政府委員 もともと四条は、給付を一応する場合にこういう要件に当たれば全部または一部をしないということでございまして、もとは三条に戻るわけでございます。したがいまして、三条では、先ほども仰せになりましたように、証人または参考人が刑事事件に関して裁判所等で供述する、あるいは供述の目的で出頭する、あるいは出頭しようとしたことによりという条件がそこに入っているわけでございます。そういう条件を満たしておって、一応三条によれば給付を行うことになる場合、その中で一部例外的に給付をしない場合というのを四条で決めておるわけでございますから、四条で改めてそういう供述または出頭に関しということを言う必要がないというのがまず大前提であるわけでございます。  なお、加害行為の誘発というので、悪口を言ったということを一つの例として挙げられましたが、それは何も裁判所あるいは捜査機関に対する供述の中で言う必要はないわけでございまして、たまたまこの害を加えたこと自体はそういう供述または出頭に関係していなければならないこと、それは三条の要件から当然でございますけれども、たとえば、証言等がありまして、それでそのことについて証人等を訪ねていった者が何かの話のやりとりの結果、むしろ被害者に当たる方が誘発的なことを言ったために身体、生命に害を加えるに至ったというようなことも当然考えられるわけでございまして、そういう加害行為、逆に言えば被害を生じたことについて、その事柄自体について誘発的な行為があったという場合には、やはり被害者に若干手落ちがあるということで給付の一部を場合によってはしない方がいい場合もあるのではないか、こういうことになるわけでございます。
  219. 横山利秋

    ○横山委員 そんなに長い説明をしてもらわなければわからないようなことではいかぬですな。  それからもう一点、五条で言いますが、「被害者が負傷し又は疾病にかかった場合」というこの「又は疾病にかかった場合」ということは、他人から身体または生命に害を現実に加えられた疾病でなければいかぬとあなたは先ほどおっしゃったのですが、しかし、まあそこのところは、身体または生命に害を加えられたわけではないけれども疾病にかかった、ノイローゼにかかったということは、これは絶対いかぬのですね。あなたの言うところによると、この解釈はいかぬ。「又は疾病」の「又は」は独立していない、こういうわけですか。負傷によって、暴力によって疾病にかかった、こういうわけですか。
  220. 前田宏

    前田(宏)政府委員 細かい議論のようで恐縮でございますけれども、五条の柱に「三条の規定による給付の種類」というふうに言っておるわけでございまして、ですから、五条の一項の一から五号までいろいろな給付の種類が挙がっておりますけれども、その給付というのは、三条で生命または身体に害を加えられたときに国が行う給付というふうに書いてあるわけでございまして、それを受けた「給付の種類」で、いわば内訳を書いてあるわけでございます。
  221. 横山利秋

    ○横山委員 五条の四と五ですが、遺族給付と葬祭給付の括弧書き。遺族給付は「(被害者が死亡した場合において、その遺族であって、証人等の範囲に属し、かつ、加害者との間に親族関係がないものに対して行う給付)」。葬祭も同じような問題ですね。療養給付、傷病給付、障害給付についてはそういう項目がないのですが、遺族給付、葬祭給付についてはなぜ家族関係を厳密にしなければならないのでしょうか。
  222. 前田宏

    前田(宏)政府委員 一号から三号までの給付は、つまり被害者本人に対するものでございますから、そういう問題は起こらないというのがまず前提でございます。それから、四号と五号は共通したような問題でございますが、確かに御指摘のようにいろいろな面から要件をしぼっているような感があろうかと思いますけれども、これも趣旨的には、先ほど来御議論といいますかお尋ねのありました第四条の給付制限と基本的には共通するような考え方に基づくものであるわけでございまして、やはり被害者が亡くなった場合に、遺族給付あるいは葬祭給付というものは遺族なりあるいは実際に葬祭を行う者に給付されるわけでございますが、それが全く証人等の範囲外の人である場合には、まずこの法律趣旨からして適当でないだろうということが一点。加害者とその給付の対象になる人との間に親族関係がある、そういう場合にまで国が給付をするのは、ややというか、行き過ぎではないか、そういう考え方に基づいて両面からのしぼりといいますか、条件を決めたものである、かように理解しております。
  223. 横山利秋

    ○横山委員 とにかく、証言をしてお礼参りのために殺されちゃったという場合、傷は治してやる、障害になったら給付してやる、病気になったら何とかしてやる、けれども、親族関係がある場合には殺されたら何にもしてやらぬということは、何か不自然に私は思いますがね。具体的にはどういうことになるのでしょうか。たとえば被害者が夫である、遺族は妻である、加害者がおじさんである、そういう場合のことになるのでしょうか。被害者であるお父さんが加害者おじさんによって殺されちゃった、その遺族が奥さんである。「証人等の範囲に属し、」というのはどういう意味かよくわからない。「証人等の範囲」というのがよくわからないのです。夫が死亡し、妻が遺族で、加害者がおじさんという場合には妻は遺族給付がもらえぬ、こういうことですか。
  224. 前田宏

    前田(宏)政府委員 「証人等の範囲」といいますのは、先ほど来御議論のございます三条に書いてあるわけでございまして、いまの場合、ちょっと正確に理解したかどうかと思いますけれども、おじさんが加害者で夫が被害者である場合に、奥さんである妻にどうなるか、こういうことでございますと、おじさんと妻との関係がいま問題になるわけでございますね。遺族と加害者ということでございますから、この場合には三条で「直系血族若しくは同居の親族」ということになっておるわけでございますから、おじさんが同居しておれば一応範囲内に入りますし、同居してなければ範囲外ということで給付の対象になる、こういうことでございます。
  225. 横山利秋

    ○横山委員 確かにお説のとおりだと思うけれども、解釈はそうだと思うけれども、しかし、被害者が負傷をした、病気にかかったときには療養給付、傷病給付、障害給付はあるけれども、死んだ場合には遺族給付、葬祭給付はむずかしくなりますよ、こういうことになるのですか。それなら療養給付、傷病給付、障害給付だって同じ条件であってもいいのじゃないですか。
  226. 前田宏

    前田(宏)政府委員 十分な御説明ができるかどうかと思いますけれども、たとえばいま問題になっております遺族給付で申しますと、加害者と遺族ということは、つまり加害者と給付を受ける者という関係になるわけでございます。そうしますと、要するに親族関係の者が害を加えたことによって、つまり犯罪行為にわたるような不正な行為をやったことによって、その遺族に対して国から給付が出るということは果たしてどういうものであろうか。特に最初に申されました例で言いますと、夫が加害者で妻が被害者である場合もあるわけでございまして、そういう場合に、夫が妻の証言に関してけしからぬということで妻を殺したという場合に、自分が遺族給付をもらうというようなことにもなるわけでございます。そういうやはり三条で限られておりますような配偶者あるいは直系血族、同居の親族という者は、考え方につきましてはいろいろあると思いますけれども、いわば非常に近い身内の間柄にあるわけでございまして、そういう近い身内の間柄にある者が加害者であり、しかもその加害行為によって給付を受けるということは、むしろ一般常識から見て果たしていかがかという方が強いのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  227. 横山利秋

    ○横山委員 第四条の一で、「親族関係があるとき。」には「全部又は一部をしないことができる。」となっておるのでしょう。それにまた追い打ちをかけて、遺族給付と葬祭給付は全部やらぬということなんでしょう。そうでしょう。あなたの言うようなことなら、四条の一で話は済んでおるはずだ。それを追い打ちをかけて、遺族給付と葬祭給付は一切やらぬぞというところまで言う必要があるのかという意味です。病気と違って、負傷と違って、死んでしまったのだから。死んだときには一番厳しいとはどういうことですか。
  228. 前田宏

    前田(宏)政府委員 一番厳しいという感じを確かに与えるかもしれませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、遺族というのは、その被害者が死亡したことに伴って初めて生じてくる関係にある人でございます。それで、先ほど申しましたように、この法律関係におきましては証人等に対して加害行為があるということを防止するためのものでございまして、そういう基本的な法律関係からいたしますと、加害者、つまりお言葉によれば殺した殺人犯人、それとそのことによって国から給付を受ける者が親族関係にあるということで、いわば親族が殺したことによってその遺族が国から給付を受けるということは、逆に言えば何といっても行き過ぎじゃないかというのがむしろ国民感情ではないかということで、このような規定になっておるわけだというふうに理解をしているわけでございます。
  229. 横山利秋

    ○横山委員 親族間で殺したということをあなたは題材にしておるけれども、問題は、証言をしたことによって起こる問題ですよ。親族間といえども、いかぬことはいかぬというて真実を述べる。それに対して、お礼参りで殺したということなんですよ。問題を履き違えてはいかぬですよ。親族間で殺し合いをやった者を国が何でめんどうを見なければならぬのかではない。国に協力して真実を述べ、証言をした。親子、親族の愛情はあるけれども、いかぬことはいかぬというて証言をしたことによって殺されたわけですよ。そういう大前提を抜きにして、親族間に国が銭をやるのはおかしいという発言はおかしいじゃないですか。  私は、これが全部に適用されるならいい。けれども、四条で大前提として「全部又は一部をしないことができる。」となっているではないか。それから、五条の一、二、三はそういう制限がないではないか。何で殺されたときばかり、やらぬ、全然やらぬ、一文もやらぬ、そういばる必要がどこにあるかということですよ。
  230. 前田宏

    前田(宏)政府委員 別にいばっているつもりもないわけでございますけれども、四条では、ここにありますように「証人若しくは参考人又は被害者と加害者」ということでございますので、これでは遺族ということはここには出てこないわけでございます。したがって、遺族云々につきましては別に規定が必要だということを第一に申したわけでございます。  それから、遺族給付の場合も、証人に出た方あるいは証人の家族の方が被害を受けたという場合に、その遺族に対して遺族給付をするというのはまずたてまえとして当然でございまして、それでありますからこそ遺族給付、また葬祭料を払うという意味での葬祭給付も設けておるわけでございます。ですから、よほど妙な間柄でない限りは一般的には遺族給付なり葬祭給付は行われるのが当然でございまして、たまたまその加害者と遺族とが親族関係にあるという非常に希有な例があると思いますが、そういう場合には例外的にやらない方がむしろ国民感情に合うのではないかということで、原則ですべてこういうものはしないということでないことは十分御理解いただいているかと思いますけれども、重ねて申し上げたいところでございます。
  231. 横山利秋

    ○横山委員 余り素直に言ってくれぬものだから時間がたってしまったのだけれども、五条の2、「他に収入のみちがない等」とありますが、「収入」とは、また広辞苑を引っ張り出さなければならぬけれども、いわゆる月々ないしは年によそから入ってくる収入のことですか。
  232. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ちょっとどういう御趣旨お尋ねかと思いますが……(横山委員「伏線があるんだ」と呼ぶ)そういう意味で何かよくわからないような気がするわけでございますので、何とお答えしていいかと思うわけでございますが、収入という言葉自体は別に、先ほどの言葉とも違いまして、むしろ通俗的に使う言葉であろうと思いますので、特段の意味はないと思います。
  233. 横山利秋

    ○横山委員 収入って、月ないしは年によそから入ってくる金だという意味ですね。自分のところにたんす預金を百万、二百万、三百万持っている場合には、それは収入ではないですね。所得、資産ですね。その点はどうなんですか。
  234. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ここで言っておりますことは、「被害者が負傷し又は疾病にかかり、そのため従前得ていた業務上の収入を得ることができない場合」というのが大前提でございまして、これは余り誤解のないことであろうと思うわけでございます。(横山委員「資産を持っておってもいいのか」と呼ぶ)そこでその場合において、「他に収入のみちがない等特に必要があるときは」ということでございますから、このいまの場合がそれに当たるかどうかということはケース・バイ・ケースだと思いますけれども、この「他に収入のみちがない等特に必要があるときは」ということに当たるかどうかという問題で解決されることであると思うわけでございます。
  235. 横山利秋

    ○横山委員 資産を持っておっても休業給付を出すということですか。
  236. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ですから、それはこの休業給付を特に行う必要があるときはということでございまして、大変資産を持っておられて銀行の利子もあるというような場合にまで休業給付をやる必要があるのかどうかということは、やはり問題になろうかと思います。
  237. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんが、これは同僚委員も言ったと思うのですけれども、担保に供するのに国民金融公庫だけに限定をする、沖縄もそうだそうでありますけれども、何で一体国民金融公庫だけに限定したのですか。
  238. 前田宏

    前田(宏)政府委員 私どもの法律案でございますから、私どもが決めたと言えば決めたことになるわけでございますけれども、こういう恩給その他のいわゆる国からの給付金はもろもろのものがあるわけでございますが、それを担保にして貸し付けを受けるという場合の貸付先、担保に入れる先といたしましては、そういうすべての給付金等につきまして一本化しているというのが現在の制度であるわけでございまして、そういう制度にいわば乗っかるという形でこの法律の改正をお願いしているわけでございます。他の金融機関にも応用してはいかぬという意味ではございませんが、その場合には恩給等も含めたあらゆる給付金について同様な扱いにしなければならないだろうと思います。
  239. 横山利秋

    ○横山委員 以上、条文的にやったのですが、この法律ができましたときには、いわゆるお礼参りに対する国の善意といいますか、証言を公正に真実を述べてもらいたい、そのための担保としてできた善意にあることは、私も認めるにやぶさかではありません。しかしながら、どうもお手盛りのような点がありまして、法律の擁護、それからこれが制定されるならば当然のことのように、たとえば「身体又は生命に害を加えられたときは、」という限定、そのほか、これはいま指摘いたしましたような数々の欠陥がございます、時間がないからもう申しませんけれども。警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律に横並びと言われるけれども、その中で、いま指摘したような点は向こうにはあるけれどもこっちにはないというような数々の問題がございます。こういう点について、えらい強弁をされて、いや、これでいいんだ、これでいいんだとおっしゃるけれども、どうせ法律をつくるときには法務省内部において、今度警察官の職務と横並びでいいんだから、さあさあやるまいか、やるまいかというてやったんではないか。いささか慎重を欠く法律案の立案過程ではなかろうかという疑念を私は抱かざるを得ないのであります。  この次にこれを改善されるときには、ぜひいま指摘をしましたような点の改善を求めたいと思いますが、大臣はいかがでございますか。
  240. 坂田道太

    坂田国務大臣 この法案につきましては、十分この法案の趣旨を周知徹底させるということが大事だと思います。また、きょう横山委員から御指摘になりました点につきましては、十分私どものところにおきまして検討をいたし、かつ、今後新たに法案をつくります際には、十分その趣旨を盛り込みたいと考えておる次第でございます。
  241. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  242. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 沖本泰幸君。
  243. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私も、ただいまの質問に引き続いて、内容についていろいろお伺いいたしますが、いま御発言があったとおり、これは警察官の方の法律の一部の改正、その内容に従ってこちらも右へならえで、部分的に、国民金融公庫または沖縄振興開発金融公庫からの小口の貸し付けが受けられるようにするものであるというふうなことだけでございますから、主としてこの法案のできたときにさかのぼりまして、きわめて素朴ではございますが、御質問したいと思います。  いろいろと前後するかわかりませんが、まず新聞の記事の中に、最高検の次長検事の伊藤榮樹さんの記事がありますが、最初から読みますと、  私が東京地検次席検事当時、信号無視の自動車運転で通行中の高校生をひいて死亡させ、公判中の青年が、被害者の父親に刺し殺されるという事件が発生した。   “父親”は、一人息子が殺された事件公判を傍聴したが、被告人である青年は、被害者こそ信号無視だと言いはり、被告人側証人は、弁護人とグルになって、青年の人柄の良さ、洋々たる将来性を述べたてる。そればかりか、被害者の遺族が相場はずれの高額な賠償を吹っかけて、誠意ある示談交渉にも応じようとしないなどと証言する。とんでもない。息子の位牌に線香一本上げにこないで、弁護士を使いによこして、金だけで片付けようとする。そんな示談に応じられるものか。ついこの間まであった息子のバラ色の前途をどうしてくれる。裁判官も検事も、弁護人たちの勝手な言い分をだまって聞いている。もう裁判所にまかせておくわけにはいかない。これが父親の犯行の動機である。   東京地検公判部の検事諸君にきいてみた。なんとか第二の事件を防ぐ方法はなかったろうかと。大量に起きる交通事故、その処理に機械的に対応するという悪い癖が、検事にもついてしまっていたのではないか。父親に証人に立ってもらって、無念のほどをぶちまけてもらえばよかった。弁護人側証人反対尋問して、殺されたのがもしもあなたの一人息子だったら、どんな気持ちだろうと尋ねてみるべきだった。証言に続いて、すぐに検事が論告を行い、遺族の被害感情を十分代弁してあげればよかった、などの答えが返ってきた。   公判では、加害者は、弁護人の助けを得て、有利な主張や情状をいくらでも述べることができる。しかし、被害者やその遺族は、検事から証人に立ててもらう以外には、思いのたけを述べる機会は全くない、被害者の心情を酌み、これを法廷に反映させることができるのは、検事だけである。日々定型的に多発する事件だからといって、検事がこのことを忘れるとき、思わぬ不幸な出来事が起きる。   刑事法学者の多くは、学生に、被疑者・被告人の人権を守ることのみを説く。とかく被害者は忘れられる。しかし、被害者側によるあだ討ちを禁じ、これに代わって国だけが犯人をこらしめることにした、それが刑事訴訟の本質である。被害者を忘れては、刑事訴訟はあり得ない。“被害者とともに泣く”、これこそ検事の原点である。 こういう記事があるわけでございますが、この点について、刑事局長はどういうふうにお考えでございますか。
  244. 前田宏

    前田(宏)政府委員 伊藤次長検事がただいま御引用の新聞記事にありますようなことを書いていることは承知しておりますし、その話は、前々から部内でもよく話題になっているところでございます。  こういう事件に限らず、検察官といたしましては、被害者の代弁者でなければならないということを先輩からもよく言われているところでございまして、確かに、ここにもありますように、勝手なことを言う被告人がいる、それについて被害者自身あるいは被害者が亡くなった場合にはその家族の方が大変残念な気持ちを持たれるということが間々あるわけでございますので、そういう点が十分公判にも反映され、そして適正な裁判がなされ、そのことによって被害者あるいはその家族、またさらに一般国民の方が納得していただけるような裁判がなされるというために、十分努力すべきものというふうに心得ているわけでございます。
  245. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これと全く同じ内容が、犯罪被害者補償に関する被害者の会の市瀬朝一さんの立場だったわけですね。ただ単に、通りがかりの者を一番最初に刺したら自分が仲間の中で目立つ、そういう単純な考えで市瀬さんの息子さんを刺して殺したわけです。それで法廷へ出ていくけれども一向に——これと同じような内容の事柄が起きて、市瀬朝一さんは出刃包丁を持って、殺してやろうと法廷へ何度も出ていった。それをはたの者がいろいろなだめて、とめた。それからずっと起こってくるわけですね。これは単に市瀬さんだけの話ではないと思うのですね。同じような思いをしてきた人が数多くあると思うわけです。そういう点にかかってくるわけで、先ほどは暴力団の問題に話が移ったわけですけれども、こういう場合に、逆に加害者の側に立つような人もあるし、立てないでがまんして泣き寝入りするという場合もあるわけですし、結局、判決そのものが被害者の方の気に入らないような形になってしまって、心の中では殺してやりたいという気持ちのままで終わってしまうようなことがあるわけです。  こういうものをはらみながら、現在のこの法律ができ上がるときに、刑事補償としていろいろ検討が加えられておったといういきさつがあるわけでございまして、そのときに当時の伊藤刑事局長は、犯罪被害者に対する当時の考え方で、刑事補償法ができたらそれがメーンになって、現在のこの法律は特別法みたいな扱いになるということをおっしゃっているわけです。ところがその後、いろいろ経過をたどりながら、法務省の方でこの法律ができないまま警察庁へ移って、そっちの方で犯罪被害者等給付金支給法という法律になって出てきたということになるわけです。そういうふうになって別々みたいになっておりますけれども、当時のこういう考え方と、現在の時点でどういうふうに受けとめていったらいいんでしょうか、どういうふうなお考えでいらっしゃるのでしょうか、どんな関連をお考えなのか。
  246. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほどのようなお話を背景といたしまして、犯罪被害者等給付金支給法というものができたわけでございます。この点につきましては、国会におきまして早く制定しろというような御意見も、それがバックになっていたというふうに理解しておるわけでございます。  その経緯におきまして、そういう犯罪による被害者に対して国が何らかの給付金を支給するという法律、これをどこの省庁で所管するかという問題があって、当初は法務省で立案に当たろうかということも考えておったわけでございますが、やはり技術的な面あるいは予算的な面、いろいろな問題がございまして、むしろ警察庁の方の所管でやった方が実現が早いということで、結局、いまのような犯罪被害者等給付金支給法というものが制定されることになったわけでございまして、その点につきましては改めて申し上げるまでもないと思います。  ただ、その当時から、その犯罪被害者等給付金支給法と、いま御審議をいただいておりますこの法律との関係ということは、いま仰せになりましたように、特別法、一般法とでもいいますか、そういう関係になるわけでございまして、それが法務省の所管でできました場合と警察庁の所管でできました場合とで、異なる点はないわけだと思います。まあ犯罪被害者等給付金支給法の方は、非常に広く犯罪による被害者に対する給付ということでございまして、こちらは、証人の供述または出頭を確保するという観点からのものでございますから、目的は若干違いますけれども、要するに、被害があった場合に何らかの給付を国が行うということにおいては似た点があるわけでございます。ですから、犯罪被害者等給付金制度がもっと拡大をいたします場合には、あるいはこの法律もその中に吸収されていくというような関係になろうかと思いますけれども、犯罪被害者等給付金支給法自体、その対象も一応限定もされているわけでございますし、要件あるいは目的等も違うわけでございますから、現段階におきましては両方の法律が併存していくという形になるわけだと思います。
  247. 沖本泰幸

    ○沖本委員 当時を振り返りますと、事志に反して何か違ったような形で結末がついたみたいな感じがするのですね。相当壮大な構想でこの法律が各党の議員の中でもいろいろ検討が加えられたし、あるいは法務省の方としてもいろいろな検討を加えられて、相当な形でまとまっておったという経緯があるわけですけれども、そのところでいくと、相当広い範囲の内容で厚みの深いものであったのですけれども、それがだんだん形が変わった。たとえて言うなら、各地検の存在するところにそれぞれの審査機関を置いて、そこでもっと広い意味での内容を含めたものの検討が加えられるというふうな形で何か新しい機構が法務省の中に誕生していくような、そういう構想であったように考えるわけなんです。ただ、これが警察庁の方でまとめられて法律化されたわけですけれども、それは現在ある警察機構をそのまま生かして使うという利便がそこにあったわけですし、内容的に事件に一番近いところの人が検討を加える、そういう内容も含まれておったということなんです。  この間東京都の方で、犯罪被害者の遺児について東京都独自が育英的な内容のお金を出す、それの考え方の基本というのは、交通事故による遺児の扱い方、考え方と、犯罪被害による遺児の考え方というのは同じ中で考えるべき内容のものであるということでいくというふうな形のものが新聞に出ておりましたけれども、結局は、一家の柱になって中心になるべき人が交通事故で死ぬ、あるいは殺される、そこで家族は途端に路頭に迷ってしまうというところの最終的な結果的な内容というものは同じことなんですね。ところが、片一方の交通の遺族、遺児に対しては強制賠償なり何なりでの補償がその都度加えられていって、あるいは任意保険からも得られるということですから、現在でいくと五千万、六千万の遺族補償が場合によっては行われるということになるのですけれども、犯罪の遺族に関しては最高額が九百万円なり八百万円という形で、最高額を受けた人を聞いた例もないということになると、その辺のお金で判断ということはいけませんけれども、実際の内容に非常な隔たりというものを感じるわけです。たとえて言うなら、刑務所へ行くと、刑務所の中で受刑者に対して、その人たちの人権を守るために一食当たりのカロリー数が計算されて出ていますけれども、遺族の方は生活保護を受けているというふうな現実的なものを見ていくと、全くこれは逆みたいな感じを受けることになるわけです。  そういうことで、最近は覚せい剤なりいろいろなことによる犯罪数も激増しておって、法務省の方としては、結局保安処分なり何なりの検討がどんどん加えられてきている。これは現在の社会環境がいろいろな形で変わってきて、社会環境と同時に犯罪の形がいろいろ変わってきているということになるわけですから、その中で起きてくるいろいろな内容についてもっと広い範囲の内容で物を考えなければならない、こいういう事態ではないかと思うわけです。そういう観点から見ていくと、いま申し上げたような一連のものの中でただ法律だけが鎮座ましましておって、余り救済する例も少ないというふうな感じを素朴に受けるのですが、その点について刑事局長はどういうふうにお考えですか。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席
  248. 前田宏

    前田(宏)政府委員 基本的には沖本委員のお考えに近いような考えを持っておるわけでございますが、自動車の事故の場合には保険制度というものがあるものですから、そういうことでカバーできる面が大きいと思います。ところが、一般の犯罪ということになりますと、それを保険制度に乗せるというわけにもいかないということになるわけでございまして、技術的といいますか、なかなかむずかしい問題があろうかと思います。  先ほども申しましたように、また沖本委員も仰せになりましたように、この犯罪被害者に対する給付制度というものは、いろいろ考えれば幅も広く、また内容も濃くということが理想的であろうと思いますけれども、そういうことではかえって実現がおくれるというようなこと、また、新しい機構を設けるということの方が形も整っていいという利点もあると思いますけれども、これもやはり現在のといいますか、最近の行財政事情というようなこともあるわけでありまして、新しい機構を設けるということも適当でない、なかなか困難であるというようなこともありまして、結局、なるべく早く実現したいということで、そのためには若干始まりは範囲が狭く、あるいは内容的に必ずしも十分でないということがあっても、余り理想をやっていたのではいつまでもできないというようなことで現在の法律ができたというふうに理解しておるわけでございまして、いま現在は警察庁の法律になっておりますけれども、私どもといたしましても十分関心を持っているところでございます。  この給付金支給法による給付の実態につきまして、いま具体的な資料を持っておりませんけれども、相当程度の給付金の支給がなされておるように承知しておるわけでございますし、さらにその対象の拡大なりあるいは金額の増加なりということにつきましては、警察庁におかれましても十分考えておられるところであろうというふうに思っておるわけでございます。
  249. 沖本泰幸

    ○沖本委員 何か機構が変わったとか移ってしまって、いままで法務省の中で温めてきたものがよそへ出てしまって関係がなくなったので、それで終わりみたいな感じで、いろいろな中で検討していただいて現在の法律が誕生した経緯はわかるわけです。それで最大限のことをやってみようと試みていることもわかります。しかしながら、それだけでは内容が現状にそぐわないのです。だから結局は、法律はできたけれども法律による救済というものが十分目的を果たさないというようなことになるわけでして、これではいまの社会機構に合わないのじゃないか、こういうふうに考えるわけですけれども、今後こういうものに対しては、もう法律ができ上がったのでこれでおしまいということになるわけでしょうか、どうでしょうか。
  250. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいまも申し上げましたように、いろいろな経過もあり、とりあえずこの範囲から始めようということでできた法律であるというふうに理解しておるわけでございまして、順次その対象の拡大なり給付の内容の充実なりというものは当然図られていくべきもの、かように考えております。
  251. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それから、前に赤軍派の成田の管制塔襲撃事件があったりして一連の裁判が続いておった中で、いわゆる裁判を無理やり引っ張ってみたり、あるいは弁護人の指定についていろいろ問題が出てきたりして、そういうふうな事柄も関係するわけですけれども、弁護士法というものが起こってきて、相当日弁連と法務省との間で議論があった上で法律は成立したわけです。そういうところから日弁連と法務省との話し合いがだんだんスムーズになってき出したという経緯がありますけれども、当時、国選弁護人のなり手がないというような具体的な事態があったわけですね。  今度の法律の中にも、国選弁護人の補償について最初の案の中にはのっておったけれども、大蔵省との話し合い等々によって、これは今度はのせないということなんですが、聞くところによると、弁護士会の方のいろんな条件等が十分なじまなかったということを聞くわけですけれども、いきさつはどういうことなのでしょうか。
  252. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま沖本委員も仰せになりましたように、いわゆる過激派によって刑事事件裁判が引き延ばしに遭っている。それも、被告人のみならず弁護人の引き延ばし戦術というようなこともありましてなかなか裁判が進まないというようなことから、非常に例外的な場合に弁護人が法廷に出なくても裁判が進められるようにしてはどうかという法案を提案したことがあったわけでございます。  それにつきましてはいろいろと御批判もあったわけでございますが、そういうこともありまして、いわゆる法曹三者の協議会におきまして、そういう事態を、むしろ法曹三者の協力といいますか、合意によって解決していく方法はないかということから、法曹三者の協議というものが何回か繰り返されまして、そこで、弁護士会はそういう特殊な事件について国選弁護人を必ず出すように努力をするということ、また、不当な訴訟活動をした弁護人については懲戒処分を十分にやるように努めるというようなことが協議事項になったわけでございます。その一環として、国選弁護人が被告人あるいはその同調者から危害を加えられた場合に何らかの補償的なものが考えられないかということが議題になりまして、その点についてはそういう制度の実現について十分検討しようということが、その協議結果の一項目になっていたわけでございます。  私どもといたしましては、どういう方法で国選弁護人の被害に対する補償的なものを立法化していくかということをいろいろと検討したわけでございますが、考えられますことは、国家公務員災害補償法的な形に取り込むということも一つの方法であるわけでございますが、これにつきましては、むしろ弁護士会側の方で、公務員並みに扱われるということは、逆に弁護人としての自主性というか独立性というか、そういうものがあって適当でないというような御意見もございました。  そういうことから、第二の方法として、この証人等の被害についての給付に関する法律の一部改正ということで、この中に盛り込めないかという検討もなされたわけでございます。と申しますのは、この法律が刑事事件の審理について民間の人の協力を求めるという精神でございますので、要するに、刑事事件の審理に協力した者という意味においては国選弁護人の方も共通性があるわけでございますから、そういう意味で、この法律にそういう場合を盛り込むことも不可能ではないだろうというふうに考えたわけでございます。  ただ、そういう場合に、その内容、つまり給付の内容が問題になるわけでございますが、この法律に入れます場合には、やはり証人、参考人等が刑事事件の進行に協力するという面でとらえておるわけでございますから、それと著しく扱いを異にするわけにはまいらないんじゃないかというふうになるわけでございます。そうしますと、日本弁護士連合会等の御意見といたしましては、それでは給付の内容が低過ぎるので、もう少し別な観点で何とか考えられないかというような御議論が出てきておったわけでございます。  しかし、そうしますと、また話がもとに戻りまして、この法律にはのらないということになるんじゃないか、そうすると、別な法律で、単独の補償法的なものあるいは先ほど申しました国家公務員災害補償法のような考え方になってくるということになると、それもまた必ずしも賛成でない、こういうような、ぐるぐる回るような議論が繰り返されていたわけでございます。  結論的には、むしろこの証人等の被害についての給付に関する法律の中で、できるだけ給付の内容を別建てにする方法で考えられないかということが繰り返して協議されておったわけでございますが、いま申しましたようなことで、著しい特別扱いということもできないということで、なかなか難問に突き当たっていたわけでございます。  たまたま、今回の改正という機会がございましたので、もしこの改正の中に入れるということで弁護士会の方で同意をするならばちょうどいい機会ではないかということで、最終的に日弁連の意向も確かめたわけでございますが、どうも御意見が日弁連内部でも十分まとまらなかったようでございまして、給付の内容余り十分なものじゃない場合にはむしろやめてもらった方がいい、まあそこまではおっしゃらなかったかもしれませんけれども、問題があるということで、むしろ検討を続ける、いわば継続的に協議した方がよろしいという御意向があったわけでございますので、せっかくの機会であったわけでございますけれども、今回は見送らしていただいた、こういうことになっておるわけでございます。
  253. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、この問題はこれでさたやみになるわけですか。継続的にとおっしゃっておりますが、いまのお話は、ちょうど幸いにこの法律の改正があったから話し合いにのせたんだ、ところが、法律はこれで成立したということになると、端緒がなくなってくるということになると、また当分の間はそのことに関しては議論をしないし、考えも当分向こうへお預けになるということと解釈していいんでしょうか。
  254. 前田宏

    前田(宏)政府委員 率直に申しまして、今回こういう改正の機会がありましたので、先ほどの犯罪被害者給付法ではございませんけれども、出だしは小さくても、この法律の改正の中でやっていったらどうかなというふうに私どもとしては内々思っていたわけでございますが、日弁連側の御同意が得られなかったということもありまして、今回は見送りということになったわけでございます。     〔熊川委員長代理退席委員長着席〕  それでこのことはおしまいということではございませんで、先ほども若干申しました当時の法曹三者の協議という中で、依然として残った問題ということになっているわけでございますから、今後どういうふうにそれを実現していくかということにつきまして、日弁連とも十分協議を重ねていきたいというふうに考えているわけでございます。
  255. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それで、あとはこの五十二年三月のときの国会の審議の中身に振り戻ってみるわけですけれども、この中で当時の刑事局長が、ずいぶん、検討する検討する、こういうふうにお答えになっているところがあるんですね。   国家公務員災害補償法の場合には至れり尽くせりになっているのを御存じですか。二十八条を見ますと、こう書いてあるのです。「補償を受ける権利は、二年間(傷病補償年金、障害補償及び遺族補償については、五年間)行わないときは、時効によって消滅する。ただし、補償を受けるべき者が、この期間経過後その補償を請求した場合において、実施機関が第八条の規定により、補償を受けるべき者に通知をしたこと又は自己の責めに帰すべき事由以外の事由によって通知をすることができなかったことを立証できない場合には、この限りでない。」つまり、二年問の時効で、ある場合には五年間であるというようにしておいて、その上に、国の実施機関の方がちゃんとあなたはこの給付を受ける権利があるんですよということを通知したんだということが立証できなければ、こんな期間に関係ない、あるいは通知できなかったのが自分の責任でない事由によって通知できなかったんだということを証明できない限りは時効は関係ないんだ、こういうぐあいに二重三重に保護されているのですね、公務員は。しかも、公務員は公務上の災害だけではないんですよ。通勤の途上で自動車事故にぽんと遭ったとか、そういうものについてもこういうように至れり尽くせりの保護がある。ところが一方どうですか。証人として出頭しなければ不出頭罪とかなんとかでやられるという場合に、殺された、傷害を受けたという場合について、二年間の除斥期間であって通知の義務もないというのは、これは余りにも法律的にはこの証人に関する災害の補償について軽視している。 こういう点。  それから、   一年間に百件も二百件も千件もあるなんというようなことは異常な社会です。少なければ少ないほどいいのです。しかし、仮にもあったとすれば、そういう人が一人も漏れなく受けられるようにするということ、これが国の責任じゃないですか。そういうことをするためには国が通知義務を負う、あるいは国がその通知義務を忘れておったようなときには、二年間であってもこれは二年間が延長できる、あるいはひょいと請求するのを忘れておった場合に時効中断の手段も与えるということがあっても当然じゃないですか。 こういう点について、「御指摘の点は、今後検討させていただきます。」こういうように刑事局長、答えていらっしゃるわけですけれども、この点の検討については、どういう御検討があったのか、どういう結論を得られたのか、その辺を。
  256. 前田宏

    前田(宏)政府委員 その問題は、先ほど大臣からもお答えになりましたこの法律の周知徹底という問題に帰するような問題でもあるわけでございます。確かに国家公務員災害補償法では、そういう通知制度みたいなものが設けられているわけでございまして、当時の当委員会での御審議の際にも当時の局長から申しておりますが、この法律は、いわば証人あるいはその身内の人に対する加害行為はすべて刑事事件になるものでございますので、そういう意味で、漏れなく検察庁のところで把握されることでございます。したがいまして、特に通知というような制度を設けませんでも、その被害者に検察庁に来ていただくという機会が当然あるわけでございますから、その際に申し上げることができるわけで、それによって、この法律による給付が漏れるということは当然防げる実態であるということが言えるだろうと思います。  ただ、そういう御議論もございましたし、件数が少ないのはどういうわけだというような御議論もまた別途あったわけでございます。ただいま沖本委員も仰せになりましたように、こういう事例が起こること自体好ましいことではないので、少ないことはむしろ結構と言えば結構なことでございますが、少ないなりに、その中で漏れてはいけないということは当然でございますので、そういう基本的なことから、前回の改正が行われました直後に刑事局長通達が出ておりまして、「ふだんより本法の周知徹底を図るのはもとより、本法による給付の対象となるべき事件が発生した場合においては、当該被害者等に対し、本法に定める請求手続を告知することはもとより、必要に応じ請求の意思を確認するなど、刑事司法に協力したことに関して被害を受けた被害者等が、いやしくも本法の不知のために、給付を受ける機会を失うことのないよう十分配慮されたい」ということを盛り込みました通達を出しておるわけでございます。
  257. 沖本泰幸

    ○沖本委員 当時の議論の中に、通達も出した、そういう運用的なことの内容で補うということでなしに、国が責任を持ってやるということで、当然法律の目の中に織り込むべきではないかという議論があるのですが、その辺に対する御意見はいかがですか。
  258. 前田宏

    前田(宏)政府委員 それは丁重にして過ぎることはないと言えばないかもしれませんけれども、やはり法律に規定を設ける場合には、それなりの必要性がある場合ということになろうと思います。国家公務員の災害補償の場合には、本法の場合と違いまして、件数も多いし、また、官側にすべて把握されていないという事態もあり得るわけでございますが、先ほど来繰り返して申しておりますように、本法の対象となるべき事態というものはすべて検察庁で把握できるということでございますから、検察官がその点について十分配意をしていれば、そういう給付漏れというような事態は起こり得ないわけでございますので、仮にその通知義務のようなものを規定いたしましても、その通知義務をまた忘れてしまえばしようがないと言えばしようがない面もあるわけでございまして、むしろそういう心構えの方が運用上大事であるというふうにも思うわけでございますので、なお重ねて今後もこの点についての周知徹底を図りたい、かように考えております。
  259. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いわゆる事件にして検察庁の方に送ってきた段階から検察庁の方で把握できるということなんですけれども、その以前の段階ですね。  これは警察庁の方にお伺いするわけですけれども、たとえば無罪になった場合とかあるいは不起訴になった場合、それはその後のことになってくるわけですけれども、そういう内容であるとか、あるいは警察の捜査の段階で、この前の五十二年のときの議論の中にもありますけれども、途中で待ち伏せをされておったり、嫌がらせがあったり、蛇を投げ込まれたり、あるいは爆弾みたいなものを送ってこられたり、いろいろなことがあって、そういうことで危険を感じるので、検察庁の方で把握する前の警察の段階証人自体が出渋ってしまう、そのことが大きな影響をするのであって、検察庁の方でいままで事件になったのは四件だということなんですけれども、その四件の下のすそ野の方がずいぶん広いのであって、その辺が大変なんだ、その辺から十分の手当てをしておかなければこの趣旨というものは生かされないんじゃないかという議論があるのですけれども、それについて警察庁の方で具体的にどういうことがいろいろあったか。先ほど暴力団担当の関口さんですか、そういうように思うと、何かお話があったわけですけれども、具体的に例としてどういうことがあったのか、また、どういうことがよく行われるのか、その辺をお聞かせ願えませんか。
  260. 関口祐弘

    ○関口説明員 私ども警察といたしましても、公判廷等の証人として必要な方が出られるということにつきましては、関係の検察庁等とも十分連絡しながら、その確保と申しますか、それに最大限の努力をしているところでございますが、ただいま先生おっしゃられるような証人に対するいろいろな嫌がらせというもの、言葉によるものが多いかと存じますけれども、各種の脅迫めいた言辞なり言動なりというふうなことで行われている向きも、第一線の方からは聞くところでございます。そしてまた実際に、たとえば被害届を出すあるいは目撃者というふうな人に、証人に出るな云々というふうな事態が発生しているということも、ごく最近私ども耳にしているわけでございまして、そうした事態に対しましては、現行法をフルに活用いたしまして検挙活動等を進めてまいりたい、かように考えます。
  261. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは実際に私がじかに聞いた話でもあるのです。これは証人という関係ではなく、暴力団の事件であるわけですけれども、たとえば車が並んでゆるゆる走っていて、それでいきなり前でとめられて、あわててブレーキを踏んだけれどもこつんと当たった、あるいは信号で出ていくようなかっこうしてとめられて当たった。向こうから当てたことになるんですけれども、それを逆に当てたということでおどかされて、それで結局は見舞い金を取られてということがその暴力団の資金源になっている。これは弁護士さんも同じようなことをおっしゃっていましたし、法律に詳しい方が介在しているときにはなかなかならないのですけれども、それで警察に言いに行っても、具体的な内容にならなかったら、言った言わぬようなことの間ではどうにもならぬということで全然取り上げてもらえないので、しまいにだんだん、いない間に子供がおどかされたり女房がおどかされたり、そういうことで夜も寝られないようなことになって、結局は金を出してしまう。  やはりこれは類似していることになるんじゃないかと思うのですけれども、それはいまおっしゃったとおり、あらゆるあるところの法律を全部駆使してやっているということなんですが、一番最初に申し上げたとおりに、事にならなかったら相手にしてくれぬという警察の窓口もあるわけなんですね。その辺に、もう被害者が迷ってうろうろするということの方が多いんですね。それで、そんなことして神経が細るんなら、対抗して闘うよりも、仕方がない、涙をのんで払え、問題なくなるということの方が多いというような事例を考えますと、すそ野の方の出来事の方がずいぶんあるということになるわけです。  ただ、私、こういうことだけ申し上げているということではないのですけれども、そういうことでその辺に対して法律を駆使してやるということに尽きるんじゃないかと思うのですが、窓口としてどういうふうな対応策があるんでしょうか。また、一般の国民にそういう質問を受けたときにはどう答えてあげたらいいか。勇気をふるって窓口に行きなさい、行ってもなかなか受け付けてくれぬというわけですね。そういう内容についてどういうふうにお考えですか。
  262. 関口祐弘

    ○関口説明員 お尋ねの件でございますけれども、そうした事態の発生を防止するというのが一番いい姿かと思いますが、仮に起きた場合に、私どもとして一番そのポイントとなりますのは、一刻も早く被害者の方が私どもに御相談していただくということで、私どもの立場で申し上げれば、そうした端緒を早目につかむということを大きなポイントとしているわけでございます。  ただいま先生御指摘のように、そうした御相談をしていただいても警察がなかなか取り合ってくれないじゃないかということでございますけれども、先生御指摘いただいた面も含めまして、最近暴力団等がいわゆる民事介入と申しますか、そうした形でいろいろな暴力ざたを起こすというふうな事態もあるわけでございます。そうした点に私どもとして十分留意をいたしまして、警察庁あるいは関係警察本部の暴力団の担当課にそうした窓口も設置いたしまして、積極的にそうした訴え出を受ける、そして適切な措置を講じてまいるということでやっているところでございます。
  263. 沖本泰幸

    ○沖本委員 最後になりますけれども、五十二年のときの議論の中でも、脅迫、軟禁、こういうことで、警察段階で脅迫されたとか軟禁されたとかあるいは傷つけられた、結局こういうふうな内容ですね、あるいは電話でおどかされたとか、そういう事件が年間に、たとえば捜査の段階で参考人に呼んで調べている間にどれぐらいあるんでしょうか。細かいととはいいですけれども、大ざっぱに言って。
  264. 関口祐弘

    ○関口説明員 ただいま先生お尋ねの捜査の段階でということでございますけれども、そうしたものは私ども必ずしもよく把握していないのでございますが、昨年の数字で、いわゆる証人威迫罪という刑法の百五条ノ二でございましょうか、これを適用いたしまして暴力団を検挙した数というのは、三十六名に上っております。
  265. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それで、同じような法律法務省の側と警察庁の側と二つあるということなんですが、警察の方で補償したそういう件数はどれくらいあるんでしょうか。傷つけられたり、実際に事件が起こって、そういうことによって補償した件数ですね。
  266. 福永英男

    ○福永説明員 私の担当しておりますのは、例の犯罪被害者等給付金の関係になりますので、ちょっと先生の質問の御趣旨とずれるかもしれませんけれども、申請が現在までで百二十件ぐらい、そのうち裁定いたしましたのが九十件ぐらいと承知しております。
  267. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いや、ここの五十二年の議論の中で、同じような法律が二つあるんだ。法務省側の法律と警察庁側の法律と二つあるんだ。同じような扱いをしているけれども、片方の方は請求しなくてもどんどんやってあげている、法務省の方の側は申告しないとだめだという法律になっている。だから警察庁の側で、参考人なり証人の形で調べている間に被害を加えられたり、警察の段階ですね、その段階ですから結局はそれがいわゆる起訴段階に至らなかった、だから検察庁の方にいっていないということがあるんだと思うのですけれども、そういうふうなのがあったのかなかったのか、あったとしたらどれくらいあるのか、どういう補償をしていらっしゃるか、その辺を教えていただきたいんですがね。犯罪被害者の方ではないですよ。
  268. 福永英男

    ○福永説明員 それでは、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律の方でございましょうか。(沖本委員「そう、そう」と呼ぶ)これにつきましては、五十六年を例にとってみますと、死亡で十七件、傷病で二十三件という数字が出ております。
  269. 沖本泰幸

    ○沖本委員 じゃ、終わります。ありがとうございました。
  270. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長 次回は、明後四月二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時散会