○安藤委員 これが本当に問題になっておりまして、私は具体的にいまそのチケットを五枚持っておるのですが、これはあるジムにいる選手が試合のチケットを渡された、なかなか売れなくて困ってしまって、結局そのジムのトレーナーが気の毒がって一万円渡した、そうしたらこれをくれた、二万七千円分です。それがたまたま私の手に入っておるのですが、事ほどさように選手は非常に
苦労するわけですね。だから、収入は本当に微々たるものになってしまうわけです、それが売れなかったら現金収入はないわけですから。こういうひどい状態になっているわけです。
このことはボクシング業界だけだと思うのです。お相撲さんの場合、お相撲さんが入場券を売って歩くかといえば、そんなことはありませんから。だから、これもやはり健全化対策特別委員会の方でも御
検討いただかなければならぬ問題じゃないかと思うのです。やはりそれを売るについては、売りさばきは親戚とか友人とか
限度がありますから、どうしてももっと売ろうと思うと、いわゆる組
関係とか暴力団
関係とか、そういうところへ行って頼むとか、よし、おれが一手に引き受けてやるというようなことでその方面との縁が切れないばかりか、だんだん深まっていく、こういうような事態になっているのではないかと思うのですね。だから、この辺のところも改善しなければならぬところじゃないかなと思っております。
ある選手の奥さんが、その選手が家にほとんど金を入れてくれない、あれだけ何遍も試合をやっている、大ぜいお客さんも入っている、一体どうなっているのだというのでコミッショナーに直訴をしたこともあるそうですね。ところが、その問題についてはうやむやになってしまったというようなことがありまして、その選手は、試合前に売ってこいと言われたチケットをロッカーの上に置いて、試合が終わったらそのまま姿を隠してしまった、そういう悲惨な例だってあるわけなんですね。
たとえば、これは
昭和二十六、七年から三十年ごろですか、たしか世界フライ級チャンピオン白井義男という人が見えたですね。この人が、有名な話があるのですが、聞いておられるかと思うのですけれ
ども、日本ではそういう状態なわけなんですが、ハワイで試合があって行った、そうしたらプロモーターから、マネジャーのカーン博士という人の分と
自分の分と小切手をちゃんと渡された、それで本当に非常に感激したという
言葉を言っているのですね。日本はそういうところから見るとまだまだおくれているなとつくづく思ったということを言っております。
この
関係もありまして、
先ほどもちょっと話が出ましたが、ファイトマネーというのは、選手に対して口頭で、おまえ今度の試合は幾らだと言うだけ、それでチケットを渡されるだけ、これでは選手の方は、そんなチケットでもらったファイトマネーじゃファイトが出てこぬと思うのですね。だから、これはきちっと書面で
契約するというようなことをやはり
考えなければいかぬのじゃないかと思うのですね。書面で
契約をしろということは、いまのところルールにはないようです。だから、これもきちっとやる必要があると思うのですね。外国じゃ、特に欧米じゃそんなことはきちっと書面で
契約をして、全部ガラス張りにして、あなたの取り分はこうだよということで、現金で手渡されるというようなことですね。これは、この場をおかりいたしまして、その辺の問題点の
指摘をするにとどめておきます。
そこでもう
一つ、選手の人権問題について、これは
人権擁護局の
局長さん来ていただいておりますので、これは関心を持っていただきたいという趣旨で申し上げるわけですが、ほかのところはあるのかどうかよくわかりませんが、プロボクシングの場合、選手の人権、特に移籍のときの人権問題です。これが相当ひどい状態になっているということを聞いているのです。
たとえば、これは昨年の十月九日の報知新聞、これは亀田という選手が、中央
大学卒業でアマで相当鳴らして、有名な選手だったのですね。「亀田引退のピンチ」という題ですが、亀田昭雄選手が「世界挑戦を前にして“引退”の危機に追い込まれている。これまで所属していたミカド・ジムがこの一日に閉鎖され、系列の協栄ジム」、これは金平さんのところですが、「に吸収合併されることになったが、これに伴う移籍に不満を持っている亀田は「場合によっては、ボクシングをやめる」というもの。」という記事があるのです。
このときにミカド・ジムには亀田選手のほかにまだ七人の
人たちが選手としておって、いろいろ練習に励んでおった。
先ほど読み上げました記事のように、ミカドというのは何か大きなキャバレーですか、キャバレー・ミカドの
経営者と一緒らしいです。そちらの方の経営が悪くなってしまったものだからジムを閉鎖する、こういうことになって、金平さんの協栄ジムに移籍させよう、こういうことになったわけですね。移籍というと非常に調子はいいのですが、全くこれは身売り、売り飛ばしですね。そういうようなことで、結局亀田選手には一言の相談も何にもないわけです。いきなり協栄ジムと話をしてしまって、そしてこれを引き受けてくれ、こういう調子ですね。
そこで
先ほどのような、読み上げました記事のような問題があるのですが、そのときに亀田選手は、ミカドが閉鎖された、だからもう
自分はフリーになったのだ、だから、これからどこのジムへ所属するかは、今度は
自分の自由に決められるのだ、こういうようなことを言っておられたのですが、とにかくどこかのジムに所属していないと選手として試合ができない、こういう仕組みになっておるので、金平氏の方でも、どこかのジムに所属しなければだめだ、試合には出られないぞ、やはりおれのところにいなければだめだ。
コミッショナーの方にいろいろ話をしたのですが、コミッション側もこれに対してあいまいな態度をとって、とにかくこの新聞の談話によりましても、こういうことを言っておるわけです。これは小島茂日本ボクシングコミッション事務局次長、これは移籍するときには、ルールとしては、選手個人とそれから移籍する相手のジムのマネジャーとの間に
契約書が必要だ。ところが、そういう
契約書が来たということは、「コミッションには、そうした報告はまだ届いていない。選手がジムを変わる時は、前マネジャーの承認が必要となっており、亀田君らの協栄以外のジムへという希望を実現するのは難しい」ということで、ルールでは、
先ほど言いましたように選手とマネジャーとの間の
契約が必要だ、こうなっているわけですが、それがないままに勝手に移籍されてしまったわけです。だからこういうような問題が出てくるわけです。
こうなりますと、選手の意向とか人権というのは全く無視されて売り飛ばされる、こういうのが現実として行われているようなんです。だから、私はいま、
人権擁護局に対してすぐどうこうせいというようなことを言うわけじゃないのですが、こういうようなことがプロボクシング界で行われているという問題について相当大きな関心を持っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。