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1982-02-23 第96回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十三日(火曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 羽田野忠文君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 森   清君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       大西 正男君    亀井 静香君       木村武千代君    高村 正彦君       佐藤 文生君    佐野 嘉吉君       白川 勝彦君    枝村 要作君       北山 愛郎君    広瀬 秀吉君       鍛冶  清君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         法務政務次官  竹内  潔君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房会         計課長     河上 和雄君         法務大臣官房司         法法制調査部長 千種 秀夫君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 鈴木 義男君         法務省保護局長 谷川  輝君         法務省訟務局長 柳川 俊一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君  委員外出席者         警察庁警務局給         与厚生課長   福永 英男君         警察庁刑事局捜         査第一課長   仁平 圀雄君         警察庁刑事局暴         力団対策官   関口 祐弘君         警察庁刑事局保         安部防犯課長  佐野 国臣君         警察庁刑事局保         安部少年課長  石瀬  博君         警察庁交通局交         通指導課長   桑田 錬造君         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     福田 昭昌君         消防庁予防救急         課長      荻野 清士君         最高裁判所事務         総局家庭局長  栗原平八郎君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員異動 昭和五十六年十二月二十五日  辞任         補欠選任   小林  進君     枝村 要作君   前川  旦君     北山 愛郎君   武藤 山治君     広瀬 秀吉昭和五十七年一月二十九日  辞任         補欠選任   広瀬 秀吉君     山田 耻目君 同日  辞任         補欠選任   山田 耻目君     広瀬 秀吉君 二月二日  辞任         補欠選任   広瀬 秀吉君     山田 耻目君 同日  辞任         補欠選任   山田 耻目君     広瀬 秀吉君 同月三日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     藤本 孝雄君   上村千一郎君     宇野 宗佑君   広瀬 秀吉君     山田 耻目君 同日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     上村千一郎君   藤本 孝雄君     今枝 敬雄君   山田 耻目君     広瀬 秀吉君 同月十日  辞任         補欠選任   鍛冶  清君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     鍛冶  清君 同月十二日  辞任         補欠選任   鍛冶  清君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     鍛冶  清君 同月二十日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     小渕 恵三君   亀井 静香君     奧野 誠亮君   高村 正彦君     海部 俊樹君   佐藤 文生君     澁谷 直藏君   白川 勝彦君     武藤 嘉文君   中川 秀直君     村山 達雄君 同日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     今枝 敬雄君   奧野 誠亮君     亀井 静香君   海部 俊樹君     高村 正彦君   澁谷 直藏君     佐藤 文生君   武藤 嘉文君     白川 勝彦君   村山 達雄君     中川 秀直君 同月二十二日  辞任         補欠選任   広瀬 秀吉君     武藤 山治君 同日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     広瀬 秀吉君 同月二十三日  理事鍛冶清君同月十日委員辞任につき、その補  欠として沖本泰幸君が理事に当選した。 同日  理事森清君同日理事辞任につき、その補欠とし  て中川秀直君が理事に当選した。     ————————————— 一月二十九日  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一号) 同月二十六日  国籍法の一部改正に関する請願田中恒利君紹  介)(第一一号)  同(土井たか子紹介)(第一二号)  同(栗田翠紹介)(第一二九号) 二月四日  スパイ防止法制定促進に関する請願小沢一郎  君紹介)(第三四六号)  機密保護法制定促進に関する請願粟山明君紹  介)(第三四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一号)  裁判所司法行政法務行政検察行政国内  治安及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事森清君から、理事辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴う理事欠員一名並びにただいまお諮りいたしました理事辞任により、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は       中川 秀直君    沖本 泰幸君 を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 羽田野忠文

    羽田野委員長 法務行政検察行政国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、坂田法務大臣から説明を聴取いたします。坂田法務大臣
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼を申し上げます。  この機会に法務行政に関する所信一端を申し述べ、委員各位の深い御理解格別の御協力を賜りたいと存じます。  私は、昨年十一月法務大臣に就任いたしまして以来、所管行政の各般を見てまいりましたが、今日、内外の諸情勢がきわめて厳しいこの時期におきまして、わが国国民生活が比較的安定いたしております大きな原因一つは、その基盤とも言うべき法秩序が揺るぎなく維持され、国民権利がよく保全されていることにあると痛感いたしております。私は、この法秩序維持国民権利保全という法務行政使命の達成のために、今後とも全力を傾注し、国民の信頼と期待にこたえるよう、誠心誠意、その職責を尽くしてまいりたいと存じます。  以下、私が考えております当面の施策について要点を申し上げます。  まず、第一は、法秩序維持についてであります。  わが国における最近の犯罪情勢は、全般的には平穏に推移しつつあると認められますものの、犯罪発生件数がここ数年来漸増の傾向を示しているのみならず、内容的にも、各種犯罪の態様がますます悪質巧妙化し、保険金目当て殺人等凶悪重大事犯金融機関を対象とする強盗事犯、公務員による不正事犯が多発し、さらに暴力団を中心とする覚せい剤事犯がなお増加し続けている上、覚せい剤乱用者等による無差別殺傷事犯が続発して国民不安感を与えているほか、少年非行はその件数において戦後最高を示しており、また過激派集団による各種ゲリラ内ゲバ事犯も後を絶たず、今後の推移には厳に警戒を要するものがあると存じます。  私は、このような事態に対処するため、検察体制整備充実に十全の意を用いつつ、関係機関との緊密な連絡協調のもとに、厳正な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって、良好な治安の確保と法秩序維持に努めてまいる所存であります。  次に、刑法全面改正につきましては、かねてから政府案作成のための作業を進めているところでありますが、刑法が国の重要な基本法一つであることにかんがみ、国民各層の意見を十分考慮しつつ、真に現代社会要請にかなう新しい刑法典が実現するよう、改正法案を今国会に提出することを目途として引き続き努力いたしたいと考えております。  第二は、矯正及び更生保護行政充実についてであります。  犯罪者及び非行少年改善更生につきましては、刑務所、少年院等における施設内処遇と実社会における社会内処遇とを有機的に連携させることに努め、その効果を高めてまいる所存であります。  そのためには、まず施設内処遇の実情につき広く国民理解を得るとともに、良識ある世論を摂取し、時代の要請にこたえ得る有効適切な処遇の実現に努め、他方社会内処遇におきましては、保護観察官処遇活動を一層充実させるとともに、保護司等民間篤志家及び関係団体との協働態勢を強化し、犯罪者等社会復帰に当たり、その受け入れ態勢を十分整えるとともに、処遇方法を多様化して現下情勢に即した有効適切な更生保護活動を展開し、その改善更生の実を上げるよう努める所存であります。  なお、監獄法改正につきましては、昭和五十五年十一月に法制審議会から「監獄法改正の骨子となる要綱」の答申を得ましたので、今国会改正法律案を提出して審議をお願いすべく準備を進めているところであります。  第三は、民事行政事務等充実についてであります。  一般民事行政事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化傾向にあります。これに対処するため、かねてから種々の方策を講じてきたところでありますが、今後とも人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化事務処理能率化省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民権利保全行政サービス向上に努めてまいる所存であります。  なお、民事関係の立法につきましては、昼間不在者に対する送達の規定整備等民事第一審訴訟手続の簡素・合理化による訴訟促進のための諸方策につき、目下、法制審議会において検討中でありますが、その結論が得られ次第、速やかに準備を進め、今国会改正法律案を提出して審議をお願いしたいと考えております。  次に、人権擁護行政につきましては、国民の間に正しい人権思想をより効果的に普及徹底させるため、地域社会に密着した人権擁護委員制度の一層の充実を図るとともに、各種広報手段による啓発を行うほか、人権相談人権侵犯事件調査処理を通じて、正しい人権思想普及高揚に努めてまいる所存であり、いわゆる差別事象についても、関係省庁等と緊密な連絡をとりながら、積極的に啓発活動を続け、その根絶に寄与したいと考えております。  次に、訟務行政につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、近年における国民権利意識高揚現下社会情勢を反映して、社会的、法律的に新たな問題を含む重要かつ複雑な事件増加しており、その結果いかんが国政の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくないので、今後とも事務処理体制充実強化を図り、この種事件の適正円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。  第四は、出入国管理行政充実についてであります。  近年におけるわが国国際的地位向上国際交流の拡大に伴い、わが国出入国者数は逐年増大し、また、わが国に在留する外国人活動範囲が広がるとともに、その活動内容も複雑・多様化しており、加えて本年一月一日いわゆる難民条約への加入に伴う難民認定事務及び特例永住事務が開始され、出入国管理行政重要性はますます高まってきております。  このような情勢推移に的確に対処するため、現状に見合った出入国管理及び難民認定事務処理体制整備を図るとともに、難民に対する諸施策を推進するための措置の一環として、長崎県大村市にインドシナ難民を収容するための難民一時レセプションセンターを設置したところでありまして、同センターは去る二月一日からその運営を開始しております。  私は、これらの施策を通じ、国際協調の一層の促進を図りつつ、わが国出入国管理行政に課せられた使命の円滑・適正な運営に努め、その実を上げたい所存であります。  なお、外国人登録法改正につきましては、外国人登録制度基本的事項をも含む見直しを行っており、改正法律案をできる限り速やかに国会に提出すべく準備を進めているところであります。  最後に、法務省施設につきましては、昨年に引き続いて整備促進し、事務処理適正化職員執務環境改善を図りたいと考えております。  以上、法務行政の当面の施策について所信一端を申し述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたい所存でありますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)
  7. 羽田野忠文

    羽田野委員長 この際、委員長から申し上げますが、昭和五十七年度法務省関係予算及び昭和五十七年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付してあります関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。      ————◇—————
  8. 羽田野忠文

    羽田野委員長 内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。坂田法務大臣。     —————————————  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  9. 坂田道太

    坂田国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、高等裁判所における工業所有権関係行政事件並びに地方裁判所における特殊損害賠償事件及び覚せい剤取締法違反等刑事事件の適正迅速な処理を図るため、判事の員数を八人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、高等裁判所における工業所有権関係行政事件地方裁判所における特殊損害賠償事件民事執行法に基づく執行事件及び覚せい剤取締法違反等刑事事件家庭裁判所における家事調停事件並びに簡易裁判所における民事調停事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所職員員数を、司法行政事務簡素化能率化に伴う減員を差し引いた上、なお一人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  10. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  11. 羽田野忠文

    羽田野委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所栗原家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  13. 羽田野忠文

    羽田野委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。中川秀直君。
  14. 中川秀直

    中川(秀)委員 ただいまの大臣所信表明につきまして、数点御質問を申し上げたいと存じます。  所信表明の第一に、大臣法秩序維持ということを挙げておられるわけでありますが、そのことにつきまして、昨今起きた事件を含めて御見解を伺わせていただきたいと存じます。  まず、先般発生をしました日航機墜落事故についてお尋ねをさせていただきます。  死者二十四名、その他乗員、乗客百五十名が全員重軽傷を負うという惨事発生したわけであります。その後の報道によりますと、今回の事故機長による急降下やエンジンの逆噴射などによる疑いが大変強くなっておりまして、単なる操縦ミスというよりも、平素から異常な状態にあった機長による異常な操縦という、人為的なものだという見方が強まっておるわけでございまして、その点で大変世間に大きな衝撃を与えているわけであります。  まずお尋ねをさせていただきますが、今後捜査当局としては機長を身柄拘束なさるのか、あるいはまた鑑定のために留置をするのか、そういうような御検討もなさっておると思いますが、捜査現状方針について簡単にお答えを願いたいと思います。
  15. 仁平圀雄

    仁平説明員 警視庁におきましては、事故発生直後に刑事部長捜査本部長とする特別捜査本部を設置いたしまして、乗務員乗客航空業務関係者等からの事情聴取による事故原因究明、それから現場付近における目撃者からの事情聴取によります事故原因の解明、それから事故機検証による事故原因究明等を重点といたしまして、現在鋭意捜査中でございます。  これまでに機長に対しましては十数回にわたりまして、これは病院におきまして医師立ち会いでございますが、事情聴取を行っておりますほか、副機長につきましても十数回、航空機関士につきましては一回でございますが、それぞれ病院において医師立ち会いのもとに事情聴取を行っているところでございます。  今後の捜査の進め方でございますが、警察といたしましては、高速交通機関によるこのような多数の死傷者を伴う重大事故でございますので、できるだけ早く事故原因を解明いたしまして、関係者刑事責任有無を明らかにしたいと考えております。  なお、現在までの捜査の結果から、機長操縦ミスによる事故疑いが濃くなっておるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、機長等乗務員に対する事情聴取事故機検証、それから機長健康状態についての捜査等を今後とも厳正かつ積極的に推進してまいる所存でございますので、御了承いただきたいと思います。
  16. 中川秀直

    中川(秀)委員 私も飛行機の操縦なんかは全くのずぶの素人でありますが、その後の報道によりますと、どうやら単に操縦かんを倒したというだけではなくて、リバース、いわゆる逆噴射装置もほぼ同時に操作をしておる。逆噴射装置というのは、その装置をアイドルの状態、つまり一番エンジンの弱い状態にしてなおかつ二段階操作で逆噴射をするということのようでありますが、そうなると、単なる操縦ミスというよりも、あの段階で、つまりまだ滑走路の上空に差しかからない数秒前の段階でそういうことをするということは、恐らく正常な判断で言えば大変な惨事につながるということは当然考えられるわけであります。  そうなると、意識があったかないかはともかくとして、捜査の進展によっては、機長の行為に、いずれにしたって惨事につながることが想定される操作を複雑に行っておるわけでありますから、当然そういう大惨事に陥る、いわゆる未必の故意というものが当然成立してくるのではないかと思うわけであります。そうなると、単なる業務過失とかあるいはその他のことだけではなくて、いわゆる航空危険法殺人罪とかいろんな規定があるわけでありますが、そういう面からの捜査というか、そういう容疑をもっての捜査というものも当然なされていくべきではないかと思いますけれども、その点について。
  17. 仁平圀雄

    仁平説明員 現在は、先ほど申し上げましたような所要の捜査を推進しているところでございますが、航空事故調査委員会調査結果等も踏まえまして、故意によるものか過失によるものか認定してまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、現段階ではまだそういったところまできておらないということでございます。  それから、刑罰法令の適用につきましても、業務過失致死傷罪のほか、過失航空危険罪とか航空法違反につきまして当然明らかにすべく捜査を進めているところでございます。
  18. 中川秀直

    中川(秀)委員 いま一点お伺いしますが、機長健康状態のことについていま御答弁が若干あったような気がいたしますけれども、すでに御案内のとおり、かねてよりこの機長健康状態は悪い、事故直前にも恐怖心を感じて意識をなくして、幻聴があったなどという供述もあるようであります。また他方、五十五年十一月以降、健康診断記録というものにはいろいろな病歴が記載をされておって、心身症精神科医の要観察、抑うつ状態自律神経失調症などという記入があるわけでありまして、この期間中においても、六カ月ごとに行われる機長資格更新審査、これは公的なものですが、この際提出する身体検査証明書には、異常なしというような記載が前後三回も出ておる。この点については運輸省も調査に入っておるようでありますが、そういう虚偽の記載によって審査をパスしておるというような事実も明らかになっておるわけであります。また、その以前にこの機長さんは、幻覚か幻聴か知りませんけれども、自宅において盗聴器がつけられているというようなことで騒ぎも起こしておる。  こういうような状況を見ますと、管理者側日航、この会社が同機長健康状態について相当の認識を持っているということがはっきり言えると思うわけであります。そういうことでありながら、事故につながる危険性というものも当然考え得るべきであったにもかかわらず操縦をさせたというこの管理上の責任、これはかなり大きなものがあると思います。  新聞報道でありますけれども、遺族事態がだんだんわかるに従いまして、たとえばある遺族は、異常行動疑いがある人に機長職を任せるのは人の命を預かる会社のすることではない、殺されたも同然だ、本当にくやしい、こういうことを言っておるわけでありますが、これは当然だろうと思うわけであります。  こういうことについて、日航会社側管理責任刑事上の責任はどうなるのか、これについての捜査方針、これをひとつお伺いをしたいと思います。
  19. 仁平圀雄

    仁平説明員 現在、機長に対する取り調べを初めといたしまして、家族、医師日航関係者等から、機長健康状態あるいはこれまでの医療経過等につきまして幅広く捜査を行っている段階でございまして、日航側機長に対する健康管理状況並びに今回の事故に対する日航側管理者予見可能性等につきまして十分捜査を尽くしました上で、日航側刑事責任有無につきましても明らかにしてまいりたいと考えております。
  20. 中川秀直

    中川(秀)委員 冒頭お話をしましたように、世間に大変な衝撃を与えておる事件でありますので、何物にもとらわれることなく、公平かつ迅速、厳正に捜査をお進め願いたいと存じます。  あわせていま一点、ホテル・ニュージャパンの火災についてお尋ねをいたしますが、この点につきましては同僚議員から昨日の予算委員会お尋ねがあったようでありますので、簡単にお伺いをいたしますけれども、この事件も、言ってみれば人災といいますか、施設、設備の面で多くの法令違反を過去積み重ねてきて、たびたび勧告や行政命令を受けていながら改善をしなかった、こういう事件であります。しかも、同じようなケースが全国至るところにあるだろう。たとえば消防法一つとっても、改善勧告を受けながらまだ改善をしていないというような施設が都内だけでも三分の一はあるのではないか、こういうことも言われておるわけであります。  消防庁にちょっとお尋ねをいたしますが、今回の事故を教訓にして、今後、同種、同ケースの、つまり改善命令や勧告を出してなお改善ができていないというようなところにどのような方針で対処なさるのか。かかる悪質のケースには本当に厳正に営業停止命令まで出す、そのくらいの厳しい姿勢をやるのが最初から当然だった、いままでやらない方がよっぽどおかしい、怠慢を責められたっていまから取り返しもっかないことであります。これからどうなさるのか、ひとつその御方針だけお伺いをしたいと思います。
  21. 荻野清士

    ○荻野説明員 お答え申し上げます。  いま御指摘がございました件でございますが、消防法の第五条の発動もひっくるめまして、今後の対応いかんということでございますが、一昨年の川治プリンスホテルの火災の発生にかんがみまして、私ども消防機関は直ちに一斉点検を実施いたしまして、その結果に基づきまして不備事項の是正に努めてまいったわけでございます。さらに、昨年五月からは、これまた全国的に表示、公表制度というものを導入いたしまして、全国の旅館、ホテルにいわゆる「適」マークの実施ということを進めておったやさきでございまして、このような大惨事が生じましたことはまことに遺憾に存じておるところでございます。  したがいまして、今後におきましては、消防機関によります予防査察をさらに徹底いたしますとともに、悪質な違反対象物に対しましては、ちゅうちょなく消防法に基づきます措置命令を発する、しかも、それに従わない場合におきましては、消防法違反の公表制度というのをつくっておりますので、その公表制度を活用する、さらには告発等を行うというふうな断固たる措置を講ずることによりまして、二度とこういう惨事が起こらないように全力を挙げてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  そこで、五条でございますけれども、御案内のとおり、消防法五条の使用停止命令につきましては、現地の消防長、消防署長が、火災の予防上、さらには火災が発生したならば人命危険があるというふうに認めた場合に発動するものでございまして、今回の東京消防庁におきましては、スプリンクラーが未設置という事実に着目をいたしまして、まず行政手続として消防法十七条の四の措置命令によって是正を図ろうというふうにいたしたものと理解をいたしております。  なお、この法五条自体につきましては、抽象的な火災発生危険の存在のみでは足らなくて、いわゆる具体的な火災発生危険というものが存在する場合に発動し得るという解釈が行われておりますので、今後はその運用につきまして十分な検討を加え、適時適切な発動が行われますように、これまた指導徹底に努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  22. 中川秀直

    中川(秀)委員 御趣旨はよく理解をいたしましたが、これも新聞報道でありますけれども、亡くなられた方の遺族などからは、特に台湾関係の方もたくさんいらっしゃる、そういう遺族から、政府の登録した国際観光ホテルの看板を信じて宿泊をしたにもかかわらず、防災設備、防火設備、消火設備、避難誘導、危険の告知、すべての面で全くずさんであった、そのために大いなる犠牲が出た、国の責任も当然ある、司法的な責任追及も辞さないというような報道も出ておるわけでありまして、消防法五条による使用停止命令の解釈はよくわかりますけれども、運用面あるいはそれが不十分であるならば法令面も含めて、川治、ニュージャパンとこう続いてきたものが根絶できるような体制をいま一度ひとつぜひとも講じていただきたい、このように思うわけであります。  そこで大臣、今回のホテル・ニュージャパン事故にいたしましても、あるいは日航機事故にいたしましても、あるいは一昨年の川治のホテルの事故にいたしましても、多くの死者を出した原因には、法律や改善に関する勧告命令を無視して、経済性というか経済的利益を追求しようとする経営姿勢、こういうものがうかがえると思うのです。日航機事故について言えば、やはりこういう状態ならばある程度危険は察知できたはずだと私は思うのです。しかるに同機長をして操縦を行わせたところに、やはり利益本位の姿勢というものが追及をされても抗弁はできないと思うのです。事人命に関する問題でもございますし、この種の事件というものには厳しく対処をしていかなければいけないと思うわけでありますが、そうしたニュージャパンの火災及び日航機墜落事故についての捜査方針、厳しい姿勢というものについての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  23. 坂田道太

    坂田国務大臣 日航機墜落事故並びにホテル・ニュージャパン事故が相次いで起こったわけでございまして、このために亡くなられたお方に対して衷心より哀悼の意を表したいと思います。また、このために重傷を負われました方々に対しては、これまたお見舞いの微意を申し上げたいというふうに思います。  これらの事故に対しましては、いま懸命に原因の追及、解明が行われておるわけでございますが、いやしくもこのような事故が再び起こって、そして多数の人命が失われるということがあってはならないわけでございまして、これは単に法務大臣というか法務省の所管で、その法に照らしまして厳正に対処いたしますことはもとよりでございますけれども、政府全体といたしまして、このような事故が再び起こらないというように万般の解明をし、これに対する対策を考えていかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。やはり国民の一人一人の生命、財産を守るということ、安全を期すということは、政府全体に課された重大な責務ではなかろうかと思います。  この刑事責任等につきましては、まず第一次的には警察の捜査にまたなければなりませんし、また、法務の検察庁におきましても協議をいたしておると思います。もし送致されるというようなことがあれば、厳正にこれに対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  24. 中川秀直

    中川(秀)委員 両事故事件についてのお尋ねはその程度にいたしますが、時間がありませんので、次へ進ませていただきます。  大臣所信表明にもございますけれども、近年の少年非行というもの、これは大変なものがございます。昨年は、ついに戦後最高を記録いたしました。しかも、粗暴、兇悪事件が多発をしております。同時にまた、大変年齢も低くなってまいりまして、いまや高校生から中学生が主役というような低年化の傾向にあるわけであります。  昨年一年の検挙、補導された刑法少年十六万八千百人、前年同期に比して一二・四%増、全刑法犯の四四・一%がそうした刑法少年である、こういうことであります。非行少年の割合は、中学生が三七%、高校生が三五・八%と、昨年はついに中、高校生の順位が逆転をしたというような状況であるわけであります。  大臣も「今後の推移には厳に警戒を要する」、こういう御所信を述べておられるわけでありますが、大臣はかつて文部大臣もおやりになっておられるわけでありますけれども、総番とかヨウランとかという言葉を御存じですか。
  25. 坂田道太

    坂田国務大臣 残念ながら、承知いたしておりません。
  26. 中川秀直

    中川(秀)委員 新聞の見出しに「中学暴力、先生おろおろ」とか「暴力に学校ぶるぶる」、こんな見出しが躍っているのはごらんになったことがありますか。
  27. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点は承知いたしております。
  28. 中川秀直

    中川(秀)委員 ヨウランというのは、全国の公立中学校の約三分の一にわたって誕生しているという番長が着る特別の番長服であります。それから総番というのは、そういう各中学校の番長が地区ごとに一対一のけんかをやりまして、強い学校がその地区の総番長校になるという、その言葉の略であります。総番という言葉であります。一対一でけんかをすることをタイマンと言います。  大変耳なれないお尋ねをしてしまいましたが、いま中学校ではぶりっ子などという言葉がはやっておりますけれども、悪い子ぶるという言葉の方が、生徒たちの一般的な一つの身を守るための生き方のようであります。と申しますのは、荒れた教室で一人だけいい子ぶっていると徹底的に痛めつけられる。頭部に二カ月の陥没骨折をして、学校側は医師の通告で一週間後、十日後に知ったというようなケースもしょっちゅう起こっているわけであります。生徒たちは、自己防衛のために、同じように教室で先生の授業を無視し、騒ぎ、遊び、歌を歌う、こういうことをしていないと生命の危険に脅かされる。したがって、勉強は学校ではやらない、塾でやる、学校ではただ身を守るために静かにしている、これが実態のようでございます。大臣はそういう実態を御存じでございますか。
  29. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは新聞等におきましても、人づてにおきましても、いろいろ聞かされております。
  30. 中川秀直

    中川(秀)委員 公立中学校における校内暴力事件は、五十六年一月から十一月、去年一年弱で一万七千二百十八件。全国に何校中学校があるのですか、文部省。
  31. 福田昭昌

    ○福田説明員 いま手元に持っておりませんので正確ではございませんが、約一万校でございます。
  32. 中川秀直

    中川(秀)委員 たとえば検挙されたり捜査の手が入ったり、そういったいろいろ警察当局がつかんだだけで一万七千二百十八件、一校に二件ぐらい起こっているということでしょう。しかも、こんなものは氷山の一角です。ほとんど校内の問題として処理をされているのが実情です。いかにすごい数か御認識をいただきたい。前年同期比で四三%増、そのうち教師に対するものが三八%、前年に比して一一〇%、二二倍にふえている。一昨年は番長による教師への暴行事件がほとんどでしたが、昨年は一般生徒によるものも二割を占めて、普遍化の兆しにある。つまり、一緒になって殴らなければ自分が殴られてしまう、こういう状態に実はなっているのが実情なのであります。実は私事でありますけれども、私の子供もそれに巻き込まれて、医者へ一週間通いました。そんなことが中学時代にもう二回もあります。  このように、校内暴力は中学校が中心になって事件数は増加をしているのですけれども、相も変わらず、依然として学校内部の管理体制の問題とする考え方がある。また、学校の体面、信用等を重んじて内密に処理するというケースも多い。文部省は、これほどまでになった実態を、もう原因だとか何とかはいいから、どういう対策を立てているのか、どういう方針でやろうとしているのか。これは本当に私ぐらいの世代の中学生、小学生を持った親たちにとっては切実な問題です。これは文部当局と日教組の問題などという問題ではない。もっともっと深い根っこがあるはずだ。しかも、文部省がこんな事態をこのままにしておいて、文部省でございますなんて言っていられないほど、親ははっきり言って頼りないものに感じている。どういう対策を立てて、どういう方針でやっていこうとしているのか、時間がないからひとつ簡潔に言ってください。
  33. 福田昭昌

    ○福田説明員 校内暴力につきましては、学校、家庭、社会、それぞれいろいろなものが複雑に絡んでおろうかと思いますが、校内暴力自体は学校において発生をしておるということで、学校、社会、家庭、三者が一致協力してこれに取り組まなければいかぬというふうに考えておりますが、特に学校におきましては、全力を挙げてこの問題の解決に取り組まなければいけないというふうに思っております。  文部省としましては、学校におきます平素からの教育の充実ということがきわめて大切であるということで、第一点は、知育とともに徳育、体育といったようなものを重視をいたしまして、調和のとれた児童生徒の育成を目指すということで、現在実施に入りました新しい学習指導要領の趣旨を生かした学習指導の充実ということが、第一点として大切なことだと思っております。  第二点としましては、教師が児童生徒に対する理解を深め、学校におきます全教師が一体となって生徒指導に取り組むということ、そしてささいな暴力行為でありましても看過せず、毅然たる態度で生徒指導に当たるということ、これが第二点目でございます。  第三点目は、先ほど申し上げましたように、地域社会あるいは家庭と関係もございますので、学校は、家庭あるいはPTA、警察、児童相談所その他地域社会関係機関、団体とも連携を一層緊密にしていくということで、この三点を重点にして、あらゆる機会を通じて指導の徹底を図り、また、具体的な施策につきましてはさまざまな手だてをとりまして進めておるところでございます。
  34. 中川秀直

    中川(秀)委員 御答弁いただいたのは、中学校教育課長さんですな。ひとつ、いろいろな校内暴力、荒れる中学校、荒れる教室については、社会的な関心事で、本もたくさん出ていますよ。新聞記事も毎日のように書いておる。そうでしょう。大いに責任を感じて、徹底的なことをやってもらいたい。  これは、最近サンケイ新聞の社会部が出した「甦れ中学校」という本であります。新聞連載を本にまとめたものであります。これもひとつ、お読みになっておるかもしれないけれども、読んでいただきたい。一生懸命先生方が努力をして、これは山谷のドヤ街のど真ん中にある蓬莱中学校という学校、非行名門校から非行ゼロの模範校にしていった過程なんかもよく書いてあります。  たとえば、子供たちの触れ合いのために先生方がカンパをして、どこか千葉県の方に農家を借りて、農地を借りて親ぐるみで整備をして、毎週末と夏休みに第二の学校として、蓬莱自然の家というのですか、農作業を子供たちと一緒にやる。本当に何というのですか、勤労学習みたいないわゆる労作学習というのですか、そういう時間をとっている。夜は七時、八時ごろまで先生方がいつもかんかんがくがくの議論をして、職員室で待機をしておる。夏休みには学習教室、質問教室というので、しょっちゅう出てきておる。学校にはケツバットというのがあって、弱い者いじめをした子供にはばんばん殴る。体罰なんていうことはいけないなんて、そんなこと一つもこの学校では言っていない。要するに、学校は生徒にとって授業だけの場ではない。主体的な、生徒の自主的な企画を立てさせるために、遠足は生徒たちで企画をさせる。一週間ごとに担任を入れかえる。いわゆるすべての先生がすべての生徒に当たるという、一週間ごとに担任をかえる、そういうシステムも実験的にやっている。ボランティア活動なんかで、生徒が、中学生でありながら老人ホームや養護院へ行って何かを手伝うということまでやっている。そういったいろんなさまざまな試みをして初めて自分を生かせる学校だということがわかった。元番長がそう言っているとこの本には書いてあります。  いわゆる中学校の荒廃の原因には、落ちこぼれを量産する現行の教育体系の問題があると思う。しかし、それだけじゃない。教師の事なかれ主義というのがある。本気でやる先生をつくらないというところにも問題がある。また、家庭教育の崩壊の問題もある。さまざまな原因があるだろうけれども、要は、ゆとりある教育とかいろんなことをやっていても、先生にとってゆとりあるなんというふうに考えるところ、そんな部分もあるわけであって、本当の校内暴力あるいは非行少年に対する指導指針、方針、文部省きちんと出しなさいよ、すべてのケースを検討して。大変な事態ですよ、これは。ほっとく方がどうかしている。ほっているとは思わないけれども、そういう強力な指導要領も出さぬでこのままにしておくなんて、どうかしている。そんなことじゃ文部省なんて言えないよ。  時間がありませんから、もう簡潔に申し上げますけれども、警視庁の資料によると、最近の校内暴力、特に公立中学の三校に一校は番長がいると先ほど申し上げましたが、これは警視庁の資料だから間違いないと思いますけれども、その番長組織は、校外の暴走族あるいは暴力団とも結びついているということがある。警視庁がそう言っている。新聞報道や雑誌報道で行われている。また、何校かの番長が集まって地区の番長をつくる。先ほど申し上げた総番であります。こうした番長の交代期、一、二月、こういうときには、その番長の権威を争って、学校で荒れなければ、暴れなければよその学校からやられるというので、学校の損害額一校で五、六百万円になっているなんというようなことがざらだそうですね。  そういうようなことが指摘をされていますけれども、警察庁は、そういう校外の暴力団や暴走族と結びついているなんという実態をどのように把握しているのですか。逮捕したり何かしている件数も相当あると思うのですけれども、その件数を含めて、そういう実態はどういうふうになっているのか、最後になりますが、ひとつ教えてください。
  35. 石瀬博

    ○石瀬説明員 お答えいたします。  最近の校内暴力事件の特徴の一つは、反抗の手段方法が非常に凶悪になっているということと、いま一つは、御指摘がありましたように、校内の番長グループあるいは不良グループの背後に元番長である暴走族少年とか地域の不良グループがいる、あるいはまた暴力団も後ろから影響を与えているというようなことが一つございますし、それから、当該学校の番長だけが当該学校を支配下に置くということじゃなくして、御指摘のありましたように、広域にわたって総番長組織を持って、お互いに影響し合いながら校内暴力を凶悪化させている、こういうことでございます。まさに学校の手に余るような状態になっておりますので、警察としては、学校ともよく連携をとりながら、校内の番長グループ等と校外のそういった粗暴集団あるいは暴力団とのつながりを切断するための努力を続けておる、こういう状況でございます。今後ともそういう方向で、そういう集団の解体、補導、検挙、取り締まりをやっていきたいと考えております。
  36. 中川秀直

    中川(秀)委員 もうそういう学校の手にも余る事態だ。警察当局でもそう言っている。そうなると、もはや教育の枠内の問題じゃないですよ。また、先生の手に負える問題でもだんだんなくなってきている。そういうケースの場合でも、無責任に校内の問題として処理するケースが圧倒的多数だ。私の子供の場合もそうでしたよ、はっきり申し上げて。よそのクラスの子供だから、担任の私は知りませんなんて言っている。それが実態なんです。そんなことを放置をすれば、かえって少年非行の度を進める結果になる。早いうちにそういう芽は摘まなければいけない。学校は毅然として対処しなければいけませんよ。  先ほどの蓬莱中学校という、まさに非行ゼロ模範校になった。山谷のドヤ街の真ん中という常識からいったら非常に環境の悪いところであっても、そういう先生方の努力でやって、そういうゼロ校になった。その先生がこういうことを言っています。「警察と連携して解決するやり方」について、「教育の敗北という意見がある。なんで警察を敵対視するのか。」これは先生の意見ですよ。「とくに少年係のおまわりさんは教育的に見て処理をしてくれるし、学校に近い部分を持っている。教師より立派な人がいっぱいいますよ。地域や警察の力をかりねばならんときだってある。教師だけで解決できると、うぬぼれてはいけない。」「学校、父母、役所、警察などが協力して開かれた学校をつくるべきだ。」そういうようなことを、そういうゼロ校になるように努力をした、その中心になった先生でさえ言っているんです。  文部省、いま一回伺いますけれども、こういう実態を踏まえて、もっと毅然とした指導方針なり通達なり指導要領なり出しなさいよ、この問題で。はっきり約束してください。それでなければ質問が終わらない。
  37. 福田昭昌

    ○福田説明員 校内暴力の実態につきましては、私ども、全国の都道府県から顕著な事例を報告いただきまして、二百件以上に上る事例につきまして、顕著な事例につきまして個々に分析をいたしまして、そしてどういう実態にあるか、そしてどういう問題点があるかということをまとめまして、各都道府県へ配付をし、参考にさせていただいているところでございます。  ただいま先生からの御指摘のありました蓬莱中学校、これも一生懸命取り組んでやったわけでございますが、ちょうど五十年、五十一年、文部省の生徒指導推進校として取り組んだ、非常に成果を上げた学校でございまして、私どもは、全国的にも模範となるような取り組みをしたというふうに承知をいたしておるわけでございます。  校内暴力につきましては、ただいまお話がございましたように、従来、ともすれば学校が学校の中だけで処理をしようという姿勢があったことは否めない事実でございます。先般来、私どもその点につきまして通知を出しまして、関係機関との緊密な連携を平素からとっていくということを十分指導しておるところでございます。特に学校警察連絡協議会といったようなものにつきまして、ほとんど設置されておりますが、従来形骸化されておった面があるという指摘もありますので、こういうことにつきましても実効ある連絡会とするように指導を強力に進めておるところでございます。  また、校内暴力につきましては、さまざまでございますが、教育を預かる学校現場としては当然全力を尽くしてこれに当たるべきでございますが、事態が他の生徒あるいは先生方に危害が及ぶというような、学校教育の限界を超えるというような場合には、いたずらに学校だけで処理をするということでなくて、警察の協力を求め、大きな事故につながらないようにしていくということにつきましても、強力に指導をいたし、また必要な指導資料等も作成をして配付をする予定にいたしております。
  38. 中川秀直

    中川(秀)委員 もう時間がありませんからその程度にしますけれども、ともかく来年は数がちゃんと減るように具体的にやってください。こんな物すごい数が出ているのが、来年はこれだけ減りましたというぐらいまで目標を立ててきちんと、単に学校警察連絡協議会なんて形骸化しているからもう一回注意を喚起し指導したというだけでなく、御努力をなさっていることはよく理解しますけれども、もっと本気でやらなきゃだめだ、本当に。ひとつそれを強くお願いをしておきます。足らざるところがあったら、また何回でも指導の措置をとってください。ひとつお願いしますよ。  それから、その問題に絡んで、もう本当に時間が延びておって恐縮ですが、少年非行の問題は、大臣わが国だけの問題じゃありませんけれども、その対策として法制面でもひとつ考えなきゃいかぬのじゃないかと思うのですよ。  私ども、昨年九月に国会の法制制度調査団で北米、南米へ行かせていただきましたけれども、たとえばニューヨークなんかでは、十三歳、十五歳までの少年で、殺人、放火、強姦といったような悪質重大事犯の場合は、そういう犯罪を犯した少年の場合は、低年齢の者であっても刑事罰を科すことができる、そういう措置をとっていました。われわれが出した報告にもちゃんと出ています。  わが国の場合は、刑法で十四歳以上は一応刑事責任があるとされていますけれども、特別法たる少年法で、十六歳未満は全部家裁の審判だ、刑事罰は科せない、十六歳以上二十歳未満で家裁から検察庁へ逆送することができる、こういう規定になっておるわけですね。しかし、こう少年非行が低年齢化し、粗暴化し、先ほども話が出たように狂暴になって陰湿になってきますと、そういう法令面の問題でも、イギリス、米国、フランス、われわれが行ったアルゼンチンやブラジル、メキシコシティーもそうでしたが、ほとんどの国が少年というのは十八歳未満にしている。日本よりも二歳低い。並びに刑事責任についても、米国では悪質事犯の場合には十三歳、十五歳という少年でも刑事責任を問う。だから私は、家裁の審判から検察庁へ逆送する措置にしても、十六歳から十四歳ぐらいに引き下げたらいいと思う。少年の対象範囲も二十歳から十八歳に引き下げる。これは法制審議会で、かつて年長少年、年少少年と分けまして、年長十八歳以上、十九歳という少年にはこの審判手続から刑訴法の手続へも乗せることができるという小委員長見解も試案として出て、可決をされたところですが、これは昭和五十年ですね、そのままになっておるわけです。  こういういろんな事態を考えると、戦後最高少年非行なんというのが出てまいりますと——全刑法犯の四四%が少年刑法犯だ。法務省、いろいろな御意見はあるだろう。日弁連からもあるだろう。しかし、この取り組みを投げ捨ててはいけない。とことん努力をしなければいけない。これについての大臣の御見解をひとつ明解に御答弁いただきたい。それで私の質問は終わります。
  39. 坂田道太

    坂田国務大臣 最近の少年非行が御指摘のようにあるということはまことに遺憾なことでございまして、これは教育、社会福祉各般にわたる総合的な行政施策国民全体の幅広い努力が必要であることは申すまでもないことでございますけれども、法務省といたしましては、この少年非行防止対策の一環といたしまして、ただいま御指摘がございましたように、法制審議会の答申を得まして、少年法を初め少年院法等の関連法令の改正について作業中でございますけれども、この内容にはいろいろの問題はございます。ございますけれども、ただいまのような情勢ではほっておくわけにはいきません。速やかに検討をいたしました上、ひとつ法案にまとめて御審議を煩わしたい、かように考えておるわけでございます。  先ほどもお話がございましたように、私も十年前に大学紛争を経験いたしまして、静ひつに教育と研究が行われなければならない大学において、しかも教師と学生との間に何でこのような闘争が行われなければならないのか、あるいはまた学生同士がこうやって憎み合わなければならないのかということを痛感した一人でございます。そのときの大学の対応というものは、フンボルト大学のあの旧態依然たるいわば管理運営ということに障害があって、そうして学問の研究、自由という名のもとに、あるいは大学の自治の名のもとに、ああいうゆゆしい事態が起こっておったことに対しましても、大学当局みずからが警察官導入をもあえてしなかったというところに原因があった。しかしながら、やはり学問の自由、大学の自治というたてまえをとっておる大学といたしまして、大学長の要請を待って初めて警察導入をいたしました。それがあの昭和四十四年の一月二十日だったと記憶をいたしておりますが、その結果といたしまして、大学紛争は一応収拾がついたわけであります。  そういうことを考えました場合に、教育でやらなければならない部面、あるいは社会でやらなければならない部面、あるいは家庭でやらなければならない面もありますけれども、しかし、いやしくも重大犯罪等を犯すようなことになりましたならば、これに対して刑法の対処の仕方があるのじゃないだろうかというふうに私は考えておる次第でございまして、十分検討の上御審議を煩わしたい、かように考えております。
  40. 中川秀直

    中川(秀)委員 終ります。ありがとうございました。
  41. 羽田野忠文

    羽田野委員長 稲葉誠一君。
  42. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 法務大臣から所信の表明をいただいてきょう初めての質問でございますので、実は各局長全部集まっていただいたのです。所信表明は全部の局に触れていますから集まっていただいたので、所信表明のときは全部の局長が出るのが私は筋だと思いますね、予算委員会と同じような形ですけれども。  それはそれとして、これに関連をしていろいろお聞きをしてまいりたいのですけれども、その前に二、三のことを聞きたいと思うのですが、私は、実は予算委員会の総括質問のときに政治倫理とロッキード事件ということで通告をしておいたのですが、結局橋本、佐藤両氏の判決も近いということが常識的に大体想像できる。そうすると、それにいかにも国会が、影響を与えることはありませんけれども与えるかのごとき印象を与えてはまずいと思いましたので、その質問を私はやめたわけですね。ところが、ほかの方でばたばたといろいろなことをやられているわけですが、それはそれで結構です。  そこで、私はまずそのことにも関連をいたしましてお聞きをしたいこと、いろいろ疑問に思っておりますことの第一は、たとえばロッキード事件で田中元首相を逮捕するときに、法務省刑事局長が、法務大臣が新潟の方で釣りか何かしていたようですが、そこへ電話をして逮捕をしますという報告をしたのか、逮捕するということについての承認を求めたのか、一体それはどういうことなのかということが第一点ですね。その結果として、法務大臣は総理大臣に対してまた報告をしているのか、承認を求めているのか。あの当時の官邸のあれを見ますと、刑事局長法務大臣が二回くらい官邸へ行っていますな。それは一体どういうことなのかということですね。これは御案内と思いますが、例の請訓規程がありますね。請訓規程にも関連をしてまいりますので、そのことについての法律的な性格というか問題点といいますか、それをひとつお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  43. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 当時のことは直接関係しておりませんので正確でないかと思いますけれども、まず、いま最後におっしゃいました請訓規程というのが内部的にございますが、それは正式に事件処理する場合に大臣に対して請訓をするということでございまして、たとえば例に挙がりましたロッキード事件等はそういう請訓を受ける対象には入っていないわけでございます。  それでは、いまお尋ねのございましたように、事前に法務大臣の方に連絡というか報告というかがあったのはどういうことかということになりますが、それはいま申しましたようにそういう規程上のことではございませんで、事柄の内容と申しますか性質と申しますか、そういうことに応じて検察当局でやっておりますことにつきましては随時法務大臣に御連絡しあるいは御報告申し上げるということをしておるわけでございますので、その一つの例としてやったことと理解しております。
  44. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私の聞いているのは、承認を求めたのか単なる報告をしたのか、どちらですかということで、あなたのいまのお話では承認ではない、報告だというふうに承ってよろしいですか。  それじゃ、そのときだめだと言ったらどうするのですか。
  45. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 報告といいますか連絡といいますか、そう正確に分析してやっていることじゃないと思いますけれども、要するに、事前にその内容について申し上げたということでございまして、いまおっしゃったように大臣の方でどういうことをおっしゃるかということはそのときのことでございまして、そのときにならなければ何とも申しかねることでございます。
  46. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、それは請訓規程にはないことだから——逮捕したのは七月二十七日でしたね。その前に法務大臣刑事局長から電話で連絡をする必要はなかったのですか。なくてもよかったのですか。その点はどうなのですか。これはたしかあなたが官房長じゃなかったかな。——違う。その前かな、もう一つ前かな。じゃ、甲府の検事正をやっていたときか。それはどうですか。
  47. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 稲葉委員のおっしゃるようなことでございますので、先ほどもお断りいたしましたように正確なことを承知しているわけでございませんが、先ほど申し上げたようなことでございまして、随時その状況に応じて、また事柄の内容に応じて御連絡というか御報告を申し上げるということで、いわばその一つのあらわれとしてやったという以上に何もないと思います。
  48. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 じゃ、法務大臣なり刑事局長があのとき総理の官邸に二回行っていますね。安原さんだな。これはどういうことで行ったのですか。これは安原さんを呼んでこなければわからぬかもわからぬけれども。
  49. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 これも具体的にはよく承知しておりませんけれども、また、政府部内の一種の内部的なことでございますから、私が知っておりましても内容を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、いろいろとその事件につきましては御連絡申し上げることもあったのじゃないかということで、最初の御質問のことに関連して言えば、特に逮捕するかどうかということについての御連絡ということではなかったのじゃないかと思います。
  50. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いずれにしても、法務大臣と、安原さんが刑事局長のときに、あの前に二回行っていますよ。これは官邸日誌を見ればわかる、書いてあるのだから。二回行っていることは間違いないでしょう。回数は別として、行っていることは間違いないな。
  51. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 回数とか日時とか正確に存じておりませんけれども、恐らくそういうことがあったと思います。
  52. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたの答弁というのはちょっと歯切れが悪いな。  それはそれとして、そこでもう一つの問題は、私が非常に疑問に思っておりますことの一つに——じゃいまの事件を離れましょう。誤解されるといけませんから一般論として言いましょうね。  それは、一つは総理大臣の職務権限の問題と官房長官の職務権限の問題なのです。これが一つの問題点ですね。一般論ですよ。たとえば総理大臣の職務権限というのは、閣議にかけて了解をしというか報告をした上でないと、各省大臣に対する指揮権というかそういうふうなものは発生をしないのですか。それが第一点です。そこまできょう研究してないというのならいいですけれども、それは冒陳の中に出ていますから、あなたの方で研究していると思うのですが、それがまず第一点です。それはどうですか。
  53. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 抽象的な一般論ということになりますと、内閣法の解釈ということになりまして、私の所管ではないのではないかと思うわけでございますが、私なりに理解しているところを申しますと、閣議の方針に基づいてというたしか表現が内閣法でございましたか、あったように思うわけでございまして、それの解釈、運用の問題であろうと思いますが、その文言からいたしましても、必ずしも細かい点について一々閣議にかけたくても、基本的なことが閣議にかかっておれば、その内容に含まれるようなことは当然できるということではないかと思います。
  54. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、いまの問題は争いのあるところですね。古井さんが論文を中央公論に書くというのですが、どういう意図でどういう論文を書くのか、まだ出ていませんからわかりませんけれども、そこらのところは法律的に争いのあるところですが、そうすると、問題点は、閣議の方針とは関係ないことで金銭を授受するというと、総理大臣はちっとも犯罪にならないわけですか。贈収賄にならないということになりますか。これは閣議の方針とは関係なく金銭の授受を受けると贈収賄にならない、こういうことになるわけですか。
  55. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ですから、先ほども申し上げましたように、その文言の解釈の問題であろうと思いますので、それはやはり具体的な内容との関連において考えなければならないことだと思います。
  56. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いま一般論という話でしておりますけれども、それは余り触れるのもあれですからこの程度にしておきます、変な知恵を与えているように見られてもまずいですから。  そこで、今度は官房長官の職務権限の問題があるのですね。これがまた率直に言うとわからないのですね。官房長官の職務権限というのは、もちろん内閣法にあれば調整権限ですね。それはそうなんだけれども、参議院での質問の中で、真田法制局長官かな、これについて答えておりますね。これは率直に言えば、官房長官の職務権限というものを相当広く解釈しているということになると思うのですが、この理解の仕方で私が疑問に思いますのは、総理大臣の職務権限というものと官房長官の職務権限というものとは、それは質が違う、量が違う、そういうような面の違いはあるけれども、結局は、質では低い、量では少ないというか、そういうふうなものに考えられてきて同じことになってくるのではなかろうか、こういうふうに考えるのですが、真田さんの答弁も、補助的だとか補整的だとか、そういう意味にとれるのです。質問が途中で切れてしまっているしするから非常に不十分な質問であり、答弁は何かちょっとはっきりしないところがありますけれども、そこら辺のところはどうでしょうか。
  57. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 前の真田長官の御答弁も拝見したことがございますが、いま稲葉委員もおっしゃいましたように、必ずしも明快でない点があるように思うわけでございます。そして、一般的に官房長官の職務権限はどうかということになりますと、先ほど総理についてのお尋ねについても申し上げたと同様に、私本来の守備範囲の問題ではないんじゃないかというふうに思いますし、また、いまのお尋ねに即して申しますと、総理大臣の職務権限と官房長官の職務権限とを対比してその違いといいますか、そういうことになりますと、現に具体的に公判が進められております事件の内容にもかかわってくるようなことでございますので、そういう意味で、いまお尋ねに対しましてはこの段階ではお答えいたしかねるわけでございます。
  58. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 総理大臣の職務権限についてはいま公判にかかっていますから、私はこれ以上聞かない。これは私も節度を心得て、そのとおりしております。しかし、官房長官の職務権限は、あなた、何も裁判にかかっているとか何でもないわけですよ。  私が聞きたいのは、橋本登美三郎さんと佐藤孝行さんに対する受託収賄被告事件の論告がすでに行われている。これは九月、十月その他で行われている、判決は追ってしても。橋本さんや佐藤さんとは関係ないわけですけれども、たとえば二階堂さんが、すでに参議院であなたの方で発表してしまっているのですから、私はわざと聞かなかったのですけれども、発表されていることですから、これは論告にも出ていますけれども、五百万円を受け取っていたということは出ているわけです。だからそうなれば、結局五百万円を受け取ることに関連をして官房長官の職務権限ということが具体的に検討されたはずだ、こういうふうに私は思うのですね。検討した結果として、そしてそれが事件にならないとかなんとか、これは議論のあるところでしょうけれども、検討したのかどうか、検討したということは私がいま質問した範囲のものも含めて検討したのかどうか、そこのところをひとつ説明願いたいと思うのです。
  59. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねにもありますように、官房長官自体が起訴されているわけでないことはそのとおりでございますけれども、先ほどのように総理の職務権限と比較して質がどうであるとか量がどうであるとかということになりますと、総理の職務権限はこうである、それとの対比においてこうであるというような議論にどうしてもなりかねないので、そういう意味でかかわり合いがあるというふうに申し上げたつもりでございます。したがいまして、それだけを切り離して一般的に論ずることになりますと、それはむしろ私にお尋ねいただくのは無理なお尋ねじゃないかというふうに思いますし、具体的な方の職務権限については、その捜査の対象になるかどうかという観点から当時の当局におきまして検討したことは当然のことでございます。
  60. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、総理大臣の職務との質、量の関係において聞くのは別として、官房長官公邸において二階堂氏に対し現金五百万円入りの包みを手交したということは、だって、これは論告の中に入っている。このことは間違いないですね。これは論告だから公開の法廷で行われたし、あなたの方でも発表しているわけですから。  それで、それを見ると、よくわからないのは、第一の疑問は、いいですか、佐藤孝行、橋本登美三郎という人、これは被告ですからわかるけれども、事件関係ないというか、その他の人の名前まで出して論告をするというのはおかしいではないか、こういう疑問が素朴に起きるわけですね。たとえば二階堂さんの名前も出てくる、加藤六月氏の名前も出てくる、こういうことになるわけでしょう。こういうのを、一体なぜ起訴もされていない人の名前を出さなければならなかったのですか。
  61. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど参議院の予算委員会で発表したというお言葉がございましたけれども、発表というようなつもりではございませんで、論告にも出ておるし、その当時新聞にも内容が報道されているので、お尋ねに対して申し上げるということで申したことでございますので、その点をお断りいたしておきます。  いまのお尋ねについて言いますと、稲葉委員も御案内と思いますので、詳しく申し上げる必要もないんじゃないかと思うぐらいでございますが、現在起訴されてまだ判決になっていない二人の被告の方にそれぞれの金員が贈賄されたということで裁判になっているわけでございますが、その金というものはもとが一つでございまして、いわゆる三十ユニットと称せられるものでございますが、それがどういうふうにして調達されたか、またその配分がどのようにして考えられたか、そしてそれがどのように実行されたか、こういうことでありまして、その全体の流れの中で二人の方が出てくるわけでございます。したがいまして、その二人の分と残りの方とを分けて論ずることはできない。私もこの前、たしかいわば一体不可分の関係にあるというような表現を用いたと思いますけれども、そういう事実関係にあります関係で、論告におきましてもそのことの流れといいますか、それを説明するにつきましては、当然そういう経過を申し述べなければ事実関係がはっきりしないということであったわけでございます。
  62. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、あなたの方としては、この二人の人が片方が五百万円ですね、片方が二百万円ですか、もらったということについては、これはもう確信を持っておる、こういうふうに承ってよろしいですね。
  63. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 確信を持っているという言葉がどういうふうに理解されるかということであろうかと思いますが、検察官といたしまして起訴をいたしております以上……(稲葉委員「起訴じゃないですよ。あの二人ですよ」と呼ぶ)二人ですね。いま、二人おっしゃったわけでしょう。(稲葉委員「いや、二階堂さんと加藤さんは起訴してないですよ」と呼ぶ。)そういう意味でございましたら当然でございますが、起訴している方については当然有罪の考えを持って起訴しているわけでございます。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕  その他の方は、そういう事実であるからそういうふうに認められるということを論告で述べておるわけでございますから、その確信というのがどういう意味かということを先ほど来申し上げているわけでございますが、検察官としては、起訴している二人の方との関係においてそういう事実があったというふうに認めているということでございます。
  64. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 法務大臣、アメリカの政治倫理法というのがありますね。そのことを聞くわけじゃありませんよ。アレンの事件なんかありましたよね。それは、国会図書館から薄い本が出ているんですよ。「外国の立法」という中に出ていますから、それも入手してあれしています。  そこで、法務大臣にお聞きいたしたいのは、もらったということ、そのこともそうですけれども、それよりむしろ、それをもらっておりながら、伝えられるところによれば、国会のロッキード委員会で発表になりましたね。発表になったというか、発表させられたというのか、秘密会で発表したものを委員長が外部に漏らしたというのかよくわかりませんが、ともかくそのことに関連をして次の日に二階堂さんの事務所に集まった。福永さんは、自分はロッキードの金ということはわからないけれどももらったことは認めるということを言って、あとの人たちは、いや、それはもらわないことにしようという打ち合わせをしたとか、そういうようなことが伝えられているわけですが、それはそれとして、いま言ったようなことを聞いておると、もらったことは論告にもあるのですから事実、証人もありますからあれなんですが、それをもらわないと言ってがんばっている、そういうことが政治家の倫理として一体正しいのかどうかということですね。いいですか。  問題は二つありますね。まず、もらったということが非常にけしからぬということが一つ。アメリカのアレンの事件なんかと比較してもそれがけしからぬということが一つありますし、同時に、いま刑事局長の答弁を聞いてもおわかりのようですが、それをもらわないと言ってがんばっておる、そういう態度は政治家としては非常に理解できないというか、政治家の倫理に反するのではないかというのが私の質問です。それに対する法務大臣のお答えを願いたい、こう思うのです。これは法務大臣の初答弁ですからなかなかあれでしょうが、お答え願いたいと思います。
  65. 坂田道太

    坂田国務大臣 なかなかこれはむずかしい問題だと思うのですけれども、もらったかもらわないかという事実関係ですね。(稲葉委員「もらったと言っているんだよ」と呼ぶ)いやいや、一応検察はそういうふうに考えているわけでございます。ところが、本人にしてみれば、事実関係がどうなのかも前提としてまずあるのじゃないか、有無ですね、というふうに理解します。ですから、これはまたそういうこととは離れまして、たとえば事実関係としてもらっておるというのにもらわないということが何か証拠によって証明されれば、それは先生おっしゃるように、やはり倫理の問題があるのじゃないかというふうに思います。
  66. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは論告の中にはっきり出ているわけです。論告の中に出ておって、それでちゃんと証人調書まで、それから法廷での証人のあれまで援用してあるわけですから。ただ、余りここで言い過ぎますと、変な意味で影響を受けてくるということが考えられるのですね。裁判の内容にタッチすることが率直に言って出てきますよね。だから、私もちょっと迷っているものですから、私の歯切れもこれはよくないのです。あなたの歯切れもよくないわけなんだ。刑事局長の歯切れもよくないよ。そういうことがあるんです。だから、余り詳しくは意識的に聞かないようにいたします。  もう一つ別な疑問は、月四回の裁判というのを最初に弁護人側が受け入れたということが、私はどうしてもちょっと理解できないのですよ。そんなことでは弁護なんかできっこないのですから、月四回なんていうのは。だって、調書だってできないですからね。調書ができるのに、大体二週間かそれ以上かかるわけです。調書もできないのに月四回の裁判を受け入れたということは私には理解できないのですが、これはまあしかし、私がここで取り上ぐべき筋合いのものではありません。それを今度は月二回にしてくれと言ったとかなんとかいろいろありますけれども、それはここでは取り上ぐべきではありませんから、取り上げません。  もう一つ聞きたいのは、榎本敏男被告、これの病気の状態はどうなっていますか。いまの場合は分離してやっているわけですか。病気の状態はどういうふうに聞いておられるわけですか。
  67. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 病気のことでございますから個人的な問題といえば問題なので、果していかがかという気もいたしますが、裁判所に出ておる診断書があるわけでございますので、一応病名は脳出血ということになっておりまして、半身が麻痺しているというような症状が裁判所に出された診断書には書かれているようでございます。
  68. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、今後どの程度それが続くというふうに見られるわけですか。分離のままでしょう。そうすると、分離のままだと結局裁判もどこまで進むか、進むのに限度があるわけですからね。どの程度までの病状であっていつごろまであれだということを、裁判所に出す診断書だから、全部出ているわけでしょう。普通の診断書ならあれだけれども、裁判所に出す診断書は全部その点を細かく書かなければいけないのでしょう。高い診断書ですよ、あれは一通一万円取られるのだから。その診断書が出ているわけですから。
  69. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ことしの一月十一日付の診断書でございますが、それによりますと、裁判所に出頭できる見込みについて、向後三カ月は不可能と考えるという記載がございます。
  70. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 具体的な裁判になっていることですから、一般論として聞いたわけですけれども、そこにも限界がありますから、この程度にしておきます。  これは結審してからまだ半年になりませんけれども、常識的に見て、裁判長がかわったからあれかもわかりませんが、三月か四月には判決が一ある。そのときに、認定いかんによっては非常に大きな問題になるということですね。この二人の認定だけじゃないですよ。別の人も含めた認定によっては大きな問題になる、こういうことは理解をされているというふうに思いますね。私もそういうふうに理解をしますし、だれでもそういうふうに理解をしている、こういうふうに思うものですから、この程度にしておきます。  そこで、ちょっとまた話は別になりますが、少年事件でいま中川さんからいろいろ御意見があったわけですね。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、一つ事件としてこの前、少年で暴走族と称せられるのですか、そういうふうな形でできて、そして少年院送致になりまして、これは家裁の八王子支部で静岡の少年院へ送られたのですか、それが取り消しになったということですね。この事実関係をわかる範囲で説明を願いたいということが一つと、私、疑問に思いますのは、率直に言って私は、これは高裁に抗告をいたしまして、抗告が通って少年院送致が取り消しになったというふうに思っておったのですが、テレビを見たら、写真は東京家裁の八王子支部の写真が出ていますから、これは抗告ではない。抗告ではないとすると、一体どういう法律的な手続でこれをやったのだろうかというふうに私は疑問に思ったわけです。そういう点を含めてお話し願いたいと思います。
  71. 栗原平八郎

    ○栗原最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  委員御承知のとおり、少年審判は非公開ということが原則になっておりますので、具体的な審判の内容等について詳細に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、本件はもうすでに新聞等である程度詳しく報道された案件でもございますし、また、結果においては少年非行なしということで保護処分が取り消しになった事案でもございますので、ただいままでのところ私どもの方に報告されました資料等に基づいて、概略経緯を申し上げたいと思うわけでございます。  このケースは、昨年の七月の十二日ごろに、未明に二つの暴走族グループが相共謀いたしまして、十五台あるいは十九台の自動二輪車に乗りまして共同危険行為をやったということで、当該少年が八月の三十一日に逮捕され、その後二十日間ばかり勾留されて家庭裁判所に送られてきたわけでございます。  当初、家庭裁判所の本庁の方で受理したわけでございますが、本人が八王子管内に居住しておるということで、八王子支部の方に回付され、その間、調査等を経まして、十月の十四日に審判の結果、ただいま委員御指摘のとおり、中等少年院に送られて、十六日に静岡少年院に収容されたわけでございます。  ところが、本年の二月三日になりまして、付添人の方から保護処分の取り消しの請求がありまして、その申し立て書に基づきまして、家庭裁判所は直ちに審判の開始を決定をいたしました。その後、証人を合計五人取り調べをいたしました後、静岡少年院で本人の弁解等を確かめまして、二月二十日に保護処分の取り消しをしたわけでございます。  この根拠でございますが、少年法には刑事の再審に関する規定はないわけでございますけれども、少年法二十七条の二という規定がございます。これは、少年が保護処分継続中に審判権がなかったことを認め得る明らかな証拠が認められるような場合には、その保護処分を取り消すという規定になっておるわけでございまして、この審判権の解釈については若干説があるわけでございますが、現在の実務におきましては、単に形式的な審判条件、つまり年齢超過であることを見落として保護処分をしたという場合のみに限らず、審判事由のない場合、つまり具体的に申しますと、非行事実がないにもかかわらず非行事実を認めて保護処分をした場合もこれに含まれるという解釈をとりまして、従前、そのようなことはあってはならないわけでございますが、仮にそのようなケースがあります場合には、この二十七条の二に基づきまして、継続中の保護処分を取り消ししておるわけでございまして、本件もこの二十七条の二に基づきまして二月二十日に保護処分が取り消しをなされた、こういう経緯でございます。
  72. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 この事件についてはいろいろ考えさせられる点があるのですが、警察の捜査の点で、これはその後何かずいぶんアリバイが出てきたということが言われていますね。そして、取り消しになったり、検事のところで——検事のところで処分はできないわけですね、少年ですから。家裁で不処分になったのですか。不処分になって、新聞なんかを見ると(無罪)と書いてあるけれども、無罪というのともちょっと違うのですが、いずれにしても、警察の捜査に問題点があったというようなことも言われてくるのではないでしょうか。そこはどうですか。
  73. 桑田錬造

    ○桑田説明員 交通指導課長でございます。  警察の今回の捜査につきまして若干不徹底な面があったのではないかという御指摘でございますけれども、共同危険行為の禁止違反につきましては、きわめて危険性の高い反社会的な行為だということで、いろいろ取り締まりを望む声が強いわけでございますけれども、事案が大変多数の者によって行われるということで、きわめて捜査の困難な事案でございます。  本件につきまして、私どもとして捜査すべき点につきましては十分捜査を尽くしたつもりでございますけれども、結論的には、先ほどお話がございましたように、アリバイの存在が否定されましてあのようなことになったわけでございますけれども、アリバイの存否の中心になりましたアパートというものがございまして、この辺のアパートにつきましてもずいぶん裏づけもやったのでございますけれども、暴走族のたまり場というような場所でございまして、そこら辺の捜査について若干不徹底な面があったというふうに反省しているところでございます。
  74. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 その問題については、弁護士のところに取り調べのときのテープがあるようですね。そのテープの中でいろいろなことを言っていますね。これは新聞に出ていましたけれども、これはまた別の機会に問題になる、こういうふうに思うのですが、少年事件については、実際問題として警察は余り精密な捜査をしませんね。そういう点があるのです。  そこで、この少年法の問題に関連しては、いま、前に中川さんからもいろいろ質問があったわけですが、これは問題点は確かにいろいろあるのですよ。いろいろあることはあるのです。私は、この事件は、たまたまと言っては語弊がありますけれども、たまたま少年によく理解のある裁判官のところに後の事件——前の事件と同じ裁判官かな。ちょっとどうですか、それは。同じ裁判官ですか、どうですか。だとするならば、いずれにしても後の裁判官というか、その裁判官がよく理解のある裁判官であったというところが非常にこれは救われたことだった、こういうふうに思うのですね。  これは非常に個人差があるのですよ、家庭裁判所裁判官は。裁判官のあれをするわけじゃないが、三つに分けてみると、こういうことです。一つは、少年事件理解があって非常に熱心な裁判官、まずこれが一種類おりますね、一種類と言っては悪いけれども。もう一つは、いずれにしても地裁から家裁へ年限で回ってきますね、若い裁判官、判事補のときに。この裁判官があるでしょう。もう一つ、これは言葉は悪いんだけれども、地裁にいていわゆる退官になって、そして家裁へ回ってくる裁判官というふうに、大きく分けて三種類あるわけですね、この裁判官はどうかということは別として。その後の、第三の種類のいわゆる退官の家裁の裁判官、これにはみんな問題があって悩まされているところが非常にあるわけです。具体的なことはきょうはここで申し上げませんけれども、そういうようないろいろな点がありまして問題があるわけなんです。だから、家裁の裁判官というのは、非常に熱心な人とそうでない人と、個人差が非常に強いということが第一にありますね。  それから第二に問題は、これは法務省の方の問題でもあるし、少年法の問題でもあるのですが、審判があって、普通ならば控訴なりあれがあるわけです。その間は執行できないわけですね。ところが、この場合には執行してしまうわけでしょう。いま言ったとおり、少年院にその日のうちに送ってしまうのでしょう。大体その日か次の日ですが、送ってしまうわけですね。これはだから不服があって、この場合は初めは不服がなかったわけですが、抗告なら抗告をしていても、執行停止のあれがないから、普通の成人の事件と違って少年院に送ってしまうということでしょう。これは非常に問題だ、こういうふうに私は思うのですね。そのためにいろいろな問題がたくさんあるわけなんですが、ただ少年法を強化をすればいい、こういうふうなものではない。非常に問題があります。  だから、少年法の問題は要点が六項目にしぼられているわけですよ。それが各省間の非常にいろいろな折衝がありまするし、技術的な問題もある。基本的な態度の問題があって、これは非常にむずかしい問題ですね。だから、中川さんの言うように——中川さん、早くやれと言ったのかい。(中川(秀)委員「そう、そう」と呼ぶ)そういう意味、それは反対だ、おれは。それは反対で、そうじゃなくて、これは慎重に配慮をしてやらなければいけない、こういうふうなのが私の意見ですね。それについて最高裁なり法務省の方から——法務省はいいや、最高裁だけでいいです、法務省は後の方で聞きますから。
  75. 栗原平八郎

    ○栗原最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘でございますが、私ども、かねがねから家庭裁判所充実強化しなければならないということ、人の問題のみならず設備等の問題につきましても腐心いたしておるところでございます。裁判官等につきましても、地裁に劣らず家裁に有能な人材を配置するという方向で進んでおるわけでございまして、その点は御理解いただきたいと思うわけでございます。  少年法の改正の問題は、いろいろ問題点が含まれておるわけでございまして、ただいま委員の御指摘のとおり、お二人の委員のうちお一人は早く改正しろとおっしゃいますし、お一人はそうでないと言う。確かにそのように裁判所部内でも必ずしも意見が一致しているとは限らない。それだけ非常にむずかしい問題を抱えておるわけでございますが、私どもといたしましては、法務省当局の作業の進捗等を待って、真に当該少年の再非行防止につながるような法改正が行われるよう期待いたしたいとかねがね思っておる次第でございます。  以上でございます。
  76. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、この所信表明に従って若干質問をしていきたいと思っています。  まず第一にお聞きしたいのは、これは一体だれが書いたのです。これは坂田さんが書いたのじゃないでしょう。これは官房長が責任を持って書いたのかな、まとめたのでしょうけれども。  まず問題なのは、法務大臣、この並べ方が問題なのよ。ということは、一番最初に書いてあるのは法秩序維持ですよね。これが法務省の最大使命として書いてあるのです。これがもうすでに問題なところじゃないでしょうか。  それはヨーロッパでも何でもそうですけれども、たとえばマグナカルタでも何でもみんなそうでしょう。元来は封建領主の専制から個人の権利を守るために、人権を守るためにこの刑法というものができ、そしてそれら全体が法務省一つ使命になっておるはずなわけなんです。たとえば罪刑法定主義もそうでしょう、そういう形でできているわけですからね。ところが一現実にはそうではなくて、この所信表明でも一番最初に出てくるのは法秩序維持です。  刑事訴訟法の第一条を見ますと、公共の福祉と基本的人権との兼ね合いが書いてありますけれども、これは最初の草案は、基本的人権の方が上にあって、公共の福祉は下にあったのです。ところが、法案のときに、その出す前か何かに公共の福祉を上にして、そして基本的人権の尊重は下にした。こういうふうな経過なんです。  だから、法務省法秩序維持ということを、それは一つ使命であることは間違いありませんけれども、必ずトップに上げるというこの考え方が、私は問題点がここにあるというふうに思うのです。むしろ国民主権になった以上は、国民権利を守るというのが法務省のたてまえだというふうに脅えるのが筋ではないでしょうか。  では、法秩序というのは一体何か。法秩序を守ることによって国民権利を守るのだという理屈は、回り回ればそこへ来ますけれども、では、法秩序というのは一体何なのか、秩序というのは一体何なのか、こういうふうな問題が出てくるわけでしょう。そうなれば、これは各自の国家観の違いが出てきますから、ここで論議したところでこれは始まりません。秩序というものに対する考え方は国家観によってみんな違うわけだから。だけれども、こういう考え方は非常におかしいというふうに私は思うのです。  そこで、ちょっと話は飛ぶのですけれども、大臣にこういうことをお聞きしたい。非常にとっぴな質問で失礼ですけれども、法に対する理解の問題。  たとえばいま堺屋太一の「峠の群像」をやっているでしょう。あれは余りおもしろくないので私は見ません。あの後にやった「夢千代日記」の方がずっとよかった。五回全部見ましたが、あれは「続」でしょう。まだ夢千代は生きているからもう一回やるんだろうと思いますが、あれは実によかったですね。人生の哀歓がにじみ出た実にいいドラマだったと思うのですが、それはそれとして。  そこであなたにお伺いしたいのは、たとえば「峠の群像」は一つの忠臣蔵ですね。忠臣蔵というのは、浅野内匠頭が吉良上野介に殿中で刃傷をして、そして浅野内匠頭は切腹で、改易でしょう。そうして大石内蔵助以下四十七士が吉良上野介を討つ、こういうわけですね。十二月十四日です。日本では十二月は必ずあの芝居をやるわけです。それはそうなんですが、一体これに対して、忠臣蔵というのはりっぱな行為なのか。一体どういうふうにあなたは、なかなかむずかしいですよこれは。なかなかむずかしいけれども、これは非常に興味の深い問題ですからお聞きするわけですが、忠臣蔵に対してあなたは一体どういうふうにお考えなのか。坂田個人ではなくて、法務大臣としてのお考えですよ。これは後に絡んでくるのですけれども、それをお聞きしたい、こう思うのです。どうでしょうか。
  77. 坂田道太

    坂田国務大臣 個人的にはいろいろ申し上げたいと思いますけれども、やはりいまは法務大臣でございますので、私が申し上げることがいろいろに影響するというふうに思うので、私の考えは、その点に関しては差し控えさせていただきたいと思います。  ただしかし、日本の国民の間に忠臣蔵がああやって永続して、何といいますか、認められるといいますか、あるいはいま先生の御指摘のように、あれをやれば非常に大入り満員であるということも事実ですね。これはやはり日本民族の一つの歴史的な、あるいは日本の国民感情というものが那辺にあるかということをもうかがわせることではないだろうかというふうに思います。特に日本では判官びいきというか、そういう面もあるわけで、あるいは悲劇の人物に対して非常に同情するということもそうでございます。それがどういうことからそう来ておるのか、私個人はいろいろ考えておりますけれども、法務大臣でございますから、その点については御容赦を願いたいと思います。
  78. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私、なぜこういうことを質問するかといいますと、忠臣蔵に対する日本人の理解の仕方というのは、いま大臣がおっしゃったようなところが非常に多いですね。これは基本的に誤りだということを指摘している人がいるわけです。あれはこういうことでしょう。まず第一に集団殺人事件だ、そういうわけでしょう。四十七人が集まって、集団で殺人しているわけでしょう。集団殺人事件だ、法秩序の破壊だ、こういうわけでしょう。そうじゃありませんか。だから、あれがはやっている問は、日本の間では正しい法の理解というか、そういうふうなものはあり得ないんだ、こういうふうに言っている人がいますよ。これはだれだか御存じでしょう。——知らない。これは福沢諭吉じゃないですか。福沢諭吉か、内村鑑三か。たしか福沢諭吉だと私は思っている。  それはなぜかというと、福沢諭吉は、途中から変わってきてしまったんだけれども、だと思いますが、彼は、大石内蔵助以下の四十七士は集団殺人事件だ、法秩序を破ったんじゃないか、これを賛美しておる日本人の国民性はおかしいんじゃないか、これがある以上は日本は近代化しないということを言っています。だから彼は、大石内蔵助なんかは英雄ではないと言うんです。英雄というのはだれかといったら、それは人民のために奉仕して、そして自分が殺されたのが英雄だ、こう言っている。日本ではただ一人しかいない。だれだと思いますか。それは佐倉宗五郎だとこう言う。だけれども、佐倉宗五郎も、何かこのごろそれは違うという話もあるのだけれども、そういう話がこのごろ出ていますね。いろいろあるのですけれども、だから、四十七士は集団的殺人行為で、封建領主のためにその恩を返しただけではないか。御恩奉公ですね。これは川島武宜さんの「日本社会の家族的構成」の中に出てきますね。そういうことを言っていて、だから佐倉宗五郎というのは人民の英雄じゃないか、こう言っているのです。がからそこら辺のところは、日本人はどうも法に対する考え方が非常におかしいのですね。これは民主主義革命というものを経ていないところから発生してきているのだ、私はこういうふうに思うのです。  それからもう一つ、あなたはドイツ文学の専門でしょう。私も文学をやろうと思ったのですが、文学ではとても御飯が食べられないわけですよ。しようがない——しようがないと言ったらおかしいけれども、転向して、また転向しているわけですが、それは文学やりたいですよ、本当に。文学をやっていれば人生の純粋さに生きていられろし、政治の世界ではろくなことはないし、あれですけれども。  たとえばあの中でイェーリングの「権利のための闘争」というのがありますね。これは岩波文庫で日沖憲郎さんの訳ですね。これは私ども読んだものです。それから、たとえば小説の中ではクライストの「こわれ甕」、日本でもやりますね、喜劇で。あれは俳優座がこの前やったかな。河内桃子や大塚道子なんかがやったかな。永井智雄も出たのかな、ちょっと忘れましたが。クライストの「ミハエル・コールハースの運命」という本があるでしょう。岩波文庫の薄いやつ、一つの星。これなんかを見ると、権利のために闘うことは社会的義務であるというのがずっと流れている精神ですね。これはゲルマンだけでなくてヨーロッパ、アングロサクソンでもそうだと思うのです。  ところが、日本人の場合は、権利のために闘うというと、あれは変わり者だ、エゴイストだという形でやられているわけですね。だから裁判なしかでもすぐ和解へ持っていっちゃうわけです。これはまたあした裁判所定員法のところでやりますけれども、すぐ和解へ持っていっちゃう。調停だ、和解だということで、権利のために闘うということが社会的義務であるという考え方が非常に足りないですね。これが日本の民主主義革命というか、個の確立というものを妨げているわけですね。こんな話をしていると何委員会だかわからなくなっちゃうけれども、そういうようなことですね。  そこで、私はこの中でずっとお聞きをしていきたいのですが、まず刑事局長に、きょうの質問じゃありませんけれども、後で質問しますから研究していて答えてもらいたいのは、たとえば談合罪の問題がいま問題になっていますね。談合罪というもののできた経緯、まずこれ。これは非常な修正を経ていますよ。何回もごたごたしている、修正が。そこでいわゆる目的罪として二つの目的が入っていますね。これは不正の利益を得る目的だとか、それからもう一つ、公正なる価格を害する目的、この目的が入っていますね。なぜこの目的が入るようになったかというような理由。それから、独禁法との関係。独禁法には罰則がありますから、これとの関係の問題。それから問題となるのは、いわゆる談合行為というものが刑法上抽象的な危険犯か具体的危険犯かという問題がありますね。それから、これが一部適用されている。目的というのが入ったから適用されてきたわけでしょう。適用されないものも出てくる。そういう場合に、利益の均衡論であるとかあるいは相互救済論とかありますね。そういうふうな問題が談合の場合には談合罪には適用されないのですが、それとの関連で一体談合罪というものをどういうふうに実際理解したらいいか、こういうふうな問題が確かにありますね。きょうは通告していませんから、ここで聞きませんけれども。  これは、元検事で財政金融なんかに非常に詳しくて公取に行った高橋勝好さん、あの論文が非常にいい論文がありますから、読んでおいていただきたいと思うのです。これは問題は、談合罪の規定そのものに、衆議院の修正ですが、目的罪が入っちゃったために、これが非常におかしくなってしまった。こういうことを一つ申しておきまして、あとは別の機会に質問してまいります。  それから、よくわかりませんが、いま民事裁判でよくやられている疫学的証明というのがあるわけですね。刑事裁判の中で疫学的証明というのがどういうふうに問題となってくるか、こういうことについても研究しておいてください。だれか専門家いっぱいいるでしょう。研究しておいてもらいたいというふうに思います。  そこで、この所信表明に入りまして順次簡単にお聞きをしてまいりますが、この中でたとえば覚せい剤事犯の問題が第一に取り上げられておりますね。  私、この前、久里浜の少年院に行ったときに、隣に横須賀刑務所がありますが、あそこへ行っていろいろな内容を聞いたわけです。そうすると、あそこへ入っておるのはアメリカの軍人ですが、アメリカでは覚せい剤というのはないんです、麻薬取締法か大麻取締法。覚せい剤というのはない。日本だけの現象らしいんです。必ずしもいまそうでもないと思うのですが、この覚せい剤の取り締まりについて、事件がどういうふうに行われておって、これをどういうふうにして処置をしていくか、こういうことについて、ここに書いてあるのですから私はお聞きをしていきたいと思うのですが、それはどうでしょうか。
  79. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 取り締まりの実際のことにつきましては警察の方がより適切ではないかと思いますけれども、いま仰せになりましたように、最近覚せい剤事犯が大変ふえておるわけでございます。たとえば検察庁の受理人員で見ましても、昭和五十六年には三万四千人余りというようなことでございますし、起訴率も非常に高いというようなことでございます。そういうことで、覚せい剤の違反が数的にも多いのみならず、使用者層が一般に拡大しているというようなことが問題として指摘されているわけでございます。  さらに、これを絶滅といいますか、なくすためにはどうしたらいいかということがいろんな面から問題になっておるわけでございまして、何といいましても、いわゆる供給事犯を適切に捕らえてそれを厳罰に処するということが当面必要であろうというようなことが言われておるわけでございます。そういうようなことで、検察当局といたしましても、警察と十分協力をいたしまして、送致されます事件につきましては、一般よりもさらに厳正な態度で臨んでおるわけでございます。先ほども申し上げましたように、起訴率も順次上がっておるというような状況にございます。
  80. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これはむしろ警察の方が第一線の取り締まりですから。問題は韓国との関係になってくるわけですね。日本へ来る覚せい剤の七割近くが大体韓国からですね。日本から原料が行って向こうでつくっておったり、日本へ入ってくるのがこれですから、これをどうやってやっていくかということについては、法務省だけではなくて警察の方、警察は保安部かな、いずれにしてもよく連絡をとってこの徹底的な撲滅に当たってもらいたい、こういうふうに思うわけです。  それから第二の質問は、矯正関係の中でよくわからないのは監獄法ですね。名前は刑事施設法というのですか、出そうとした。そうしたら、警察の方で警察拘禁何とか法というのを出すとかなんとか言っていますね。これは片っ方の方じゃ、代用監獄というものを法制審の答申では暫定的なものとすると。これは監獄法の一条の三項ですか、やむを得ずしてこれを用いるというふうに基本的にはなっておるわけですね。  これは後でいずれにしてもゆっくりといいますか、中心にやらなければならない問題ですが、そこでなぜ、法務省刑事施設法、監獄法改正を出してきたら、警察の方でまたそれと同じような、立場は違うけれどもそういうようなものを急に出すようになってきたのですか。その経緯とこれに対してどういうふうに対処していくのかということ、考え方が違うんじゃないですか。そこら辺、どういうふうになっていますか。
  81. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 ただいまお尋ねのございました代用監獄の問題でございますが……(稲葉委員「代用監獄ばかりじゃなくて」と呼ぶ)はい。監獄法につきましては、一昨年十一月に法制審議会から監獄法改正の骨子となる要綱というものが法務大臣に提出されましたので、それを基礎にいたしまして、現在法務省事務当局において監獄法改正法案、すなわち刑事施設法案というものを国会に提出すべく、鋭意準備を進めているところでございます。  ただいま警察の方から警察拘禁施設法案というものが出されようとしているというお話でございますが、私どももそのように聞いております。当初、そういう案の内容について私どもがお聞きいたしましたところでは、警察の現在の留置場を警察拘禁施設というように呼ぶことにして、そこへ逮捕された者、それから勾留されて現在の代用監獄に収容された者について規定を設ける、こういうお話であったわけでございます。  ただ、現在私どもが立案の基礎としております法制審議会の答申におきましては、この代用監獄の問題について一定の方向が出ております。  結論的に申しますと、警察の留置場、これは刑事施設法案では現在のところ刑事留置場というふうに呼んでおりますが、刑事留置場は、刑事施設に入ってくるべき者を刑事留置場を刑事施設にかえて用いることができる。しかし、現行法と違います一番大きな点は、刑の執行を受ける者、すなわち懲役、禁錮、拘留等の刑の執行を受ける者は刑事留置場には収容することができないというように明らかにいたしましたのが第一点でございます。  それから第二点は、刑事留置場については監獄法、すなわち刑事施設法案の規定を適用するということでございます。  それから第三点は、この適用に当たって、たとえば刑事施設法案の中には、法務大臣とか法務省令という言葉が出てまいりますが、そういうものについての必要な読みかえ規定を置くということでございます。  それから第四点といたしましては、刑事留置場に関しまして、たとえば国家公安委員会が規則を制定するというときには法務大臣と協議をする。  それからさらに、法務大臣刑事留置場について必要な通報を警察の方に求める。それからさらに、その運営について法務大臣から意見を述べることができる。  それから最後に、これは現行法でも特別な法律がございますけれども、刑事留置場へ本来刑事施設へ入るべき者を収容した場合の費用を国から償還する。  こういうことが法制審議会の答申で決められたわけでございまして、これに基づいて現在立案作業を進めているところでございます。
  82. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私の聞いているのは、きょうは全部一応いるわけですから、簡単でいいのですが、結論はこういうことですよ。いわゆるあなたの方で考えている刑事施設法というのは、最後のところにもありますように、代用監獄というのは廃止する方向に向かうんだということが最後に書いてあるでしょう、そういう意味のことが草案の中では。ところが、警察の方の出してくるものを見ると、代用監獄というものを常置しよう、常置というか恒久化しようというように理解できるのではないか、そこら辺のところは基本的に違うのじゃないかということを聞いておるのです。
  83. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 お答えいたします。  法制審議会の答申におきましては、答申の内容そのものには特に代用監獄の利用を減らすということは入っておりませんけれども、最後に要望事項ということで、一つは、関係当局は刑事留置場に収容する場合を減らすように努力すること、それから、警察当局は刑事留置場の運営をしっかりするようにさらに努力すること、こういう二つの要望事項がつけ加えられておるわけでございまして、その趣旨に沿って立案を進めたいと思っております。(稲葉委員「だから、警察の方は考え方が違うんじゃないか」と呼ぶ)  当初、私どもが警察からお聞きしました素案の素案のまた素案という程度のものによりますと、多少法制審議会の答申の趣旨と反するところがあるようにお見受けしたわけでございますが、この法制審議会の答申をいただく段階においては、警察の関係官も参加して十分議論を尽くして結論が出ておりますので、私どもは、警察の現在考えていらっしゃるところが法制審議会の答申の趣旨に反するようなことにはならないものと考えておるわけでございます。
  84. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私の聞いておるのは、そういうことを聞いているのじゃないんです。法制審議会方針じゃなくて、その要望との関係で聞いておるわけですけれども、これはいいですわ、また別な機会にどうせゆっくり。まだ法案が出ませんからね。立場が違うんじゃないか、考え方が違うんじゃないかという印象を一般の人はみんな持っていますからね。だから、わざわざ何もそんな警察の拘禁法なんてものを出さなくていいんじゃないかということを考えているんですから、それで私は聞いているわけなんですが、いまここで聞いてもあれですから、それはまた別な機会に聞くようにしますね。まだ法案が出ないんですからね。法案が出たってそう簡単には通らない。それはいいや、それは別として。  そこで、保護局長に聞くわけですが、これは後で問題になってくるんですよ。恩赦の場合に法務大臣は一体どういうふうにかかわるんですか。大赦の場合、特赦の場合、いろいろな恩赦がありますけれども、それは法務大臣とどういうふうにかかわるのかということをお聞きしたいわけです。
  85. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答えいたします。  委員篤と御承知のとおり、法務省の中には中央更生保護審査会というものがございまして、委員長以下委員の方がおられまして、まず第一次的と申しますか、実質的にはその中央更生保護審査会で恩赦関係審議をいたされ、そこでこれは恩赦にすべきであるという結論が出ました場合、それを大臣に上申されるわけでございます。そして法務大臣は、法務大臣の名前でこれを閣議にかけられまして、閣議で御審議の結果恩赦にすべきであるという結論が出ますと、法務大臣の名前で恩赦状を出される、こういうかかわり合いでございます。(稲葉委員「大赦の場合は」と呼ぶ)  大赦の場合もやはり同じような状況になると思います。ただ、政令恩赦であるとか特別恩赦とかいろいろございますけれども、要するに、一括して政令恩赦というような場合は、内閣においてどの範囲でどうするかということをお決めになる、こういうふうに私どもは承知しております。
  86. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、これは法務大臣、一言お聞きしたいわけですが、いまのことを私は何で聞いたかといいますと、これはロッキード事件に関連しまして、恩赦の際に法務大臣がどうかかわるかということが今後問題になってくる可能性がある。そういったときに、大臣としては不公正な、同時にそれを疑われるような行動というのは絶対とられないということをひとつ約束していただけませんか。
  87. 坂田道太

    坂田国務大臣 私といたしましては、公正、厳正に対処いたしたいと考えております。
  88. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは後で、恐らくある段階で問題になってくると私は思うのですよ。だからいま聞くのです、これ以上言いませんけれども。  そこで、いろいろな問題があるわけですが、これは責任は官房長かな。たとえば法案の提出については、ここで聞いては悪いと思うのだけれども、裁判所定員法は別として、法務省としては非常におくれていますね。たとえば、刑事補償法というのは今度は金額を上げるだけでしょう。だから、何もおくれる理由はないと思うのですよ。これはどうしてそんなに刑事補償法のあれがおくれるのか。たとえば法制審議会にはかかるのかな。かかる必要はないと思うし、内閣の法制局だって、金額を直すだけなんでしょう、上げるだけでしょう、そんなものがおくれるわけないのじゃないですか。どういうわけでそういうふうにおくれているのですかね。これはちょっと官房のあれじゃないのかな。
  89. 筧榮一

    ○筧政府委員 お答えいたします。  特段おくらせているわけではございませんで、所要の手続に手間取っているわけでございますが、いま御指摘の刑事補償法につきましては、おそくも三月五日ごろに出すべく、いま準備をいたしております。  続けて申し上げますと、商業登記法と刑事補償法が三月上旬に提出予定いたしております。それから、あと船舶の所有者等の責任に関する法律、これは条約との関係でちょっとおくれております。それから、証人等の被害あるいは外国人登録法、そこらを三月中旬を目途にいま準備をいたしておるわけでございます。
  90. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いま商業登記法の話が出ましたね。これは民事局長ですね。いわゆる商号の仮登記や何かをやって、総会屋のあれを防ぐということでしょう。こんなことは当然この前の商法の改正のときに考えられていたのじゃないでしょうか、私どもはそこらまで気がつかなかったのですけれども。当然考えられておったのですから、あのときに一緒に出していいはずの法案ではなかったかと思うのですが、この商業登記に関連する法案ですね、これは総会屋封じでしょう。それは言葉の中には出ていませんけれども、実際は総会屋封じでしょう。どうして前に一緒に出なかったのですか。
  91. 中島一郎

    ○中島政府委員 商号の仮登記につきましては、商法には規定はございませんで、商業登記法にもっぱら規定があるわけでございます。前回は商法の改正ということが問題になりましたので、商法の改正そのものが非常にボリュームも大きいものでございましたので、それに限って御審議をいただいたというわけでございまして、その方が終わりましたので、今回商業登記法の改正をお願いしたい、こういうことでございます。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 まあ、総会屋対策であることは間違いないわけですけれども。  そこで、商法の改正が十月一日から施行になるわけでしょう。そうすると、それに伴いましていま省令の制定が非常に大きな問題になってきておるわけですが、これはきょうここでやるのは時間的にいってちょっと無理ですが、各方面の意見を求めているわけでしょう。これに対しては、例のディスクロージャーの問題で営業報告書の記載事項、これをめぐって経団連などが非常に反対をしていますね。どこを反対をしているかはおわかりだと思いますが、政治献金の問題ですね。政治献金や何かのことを記載することについて反対しているわけですね。だから、ここら辺のことについてはまた別の機会に質問をいたしますが、省令の制定についての各方面の意見聴取ですね、それに基づいていまどういうふうにしているかということについては、きょうは時間的に無理ですから、別の機会にゆっくりお聞かせを願いたいと思います。これは非常に大きな問題ですね、商法の改正以上に大きな問題。あれは附帯決議がありますからね、附帯決議と関連して省令をどういうふうに改正するかということが今後の大きな問題になってきておるということを質問したいと思います。  それから、時間の関係がありますので、この問題で、そのほかの事物管轄の問題や何かがあるようですが、これは飛ばしましょう。それから、人権擁護の問題についてもいろいろ問題がありますけれども、これは飛ばす。  訟務行政の問題で、これは柳川さんのところですか、国の利害に関係のある訴訟事件というのは非常にふえていますね。これは権利意識向上ということで非常にいいことだと思うのですが、ふえてはおるのですが、これに対してわが党の方から質問主意書で出ていますわね。これはどういう内容の質問主意書があって、これに対しては訟務当局としてはどういうふうに理解をされておられるわけですか。おわかりならばいまでもいいし、きょうということが無理ならば、そこまで私も通告していませんから別の機会でも結構ですし、どちらでも結構ですが、いま訟務行政の抱えている問題について、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  93. 柳川俊一

    ○柳川(俊)政府委員 御提示の質問書はいただいておりますが、まだ答弁内容を現在検討中でございまして、後刻御報告申し上げるということにいたします。
  94. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それから、訟務行政の問題で、国の代理になってくる人が、法務局というと七つありますか、法務局なり、事件によっては本省なりあるいは地方法務局のあれが代理人に指定されるわけですね。それが余りフェアじゃないというか、そういうような行き方があるというような批判があるわけですが、これは別な形で、具体的な事実について別な機会に質問したいと思います。  それから、入管の問題については、入管局長おいでですが、お聞きしますが、外国人登録法改正がここに出ていますね。これは例の罰則の問題その他を含めましてあれしているわけですが、警察の方では罰則を軽くすることについては——罰則は全部十把一からげになっていますからね。あれは急につくったからああいうふうになったと思うのですが、警察の方では、不携帯の場合かな、あれの刑を減らすということについては反対している。不携帯というか不所持というか、それについては反対しているということが一番大きな問題でしょう。いろいろありますけれども、警察の方との話し合いがどこがうまくまとまらないのか、あるいはその間話がついたのか、どういう点が問題点なのか、こういうことについて、ひとつお答え願いたいと思います。
  95. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人登録法の一部改正につきましては、先ほど官房長から総括的な今度の国会に提案する法案の説明の中で触れましたとおり、三月中旬にお諮りするということを目途に、現在鋭意準備を進めているわけでございます。その過程におきまして関係省庁とも十分な協議をしている、まさにその最中でございます。  関係省庁の中の一つとして警察庁があるわけでございますが、警察庁とは、今度の改正案全般につきまして非常に隔意のない意見の交換をいまやっているわけでございます。具体的にどういう点に問題があるかということについては、ちょっとこのお答えを差し控えさしていただきますけれども、いずれ近いうちに協議が調うものと考えております。
  96. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 一時から本会議ですね。そういう関係もありますから早く時間前にやめますが、いま入管局長がおっしゃったことで私は疑問に思いますのは、入管行政になぜ警察が関与するのか、どれだけそういうふうなウエートを持っているかということですね。このことについてはなぜ警察が関与するのですか。これは外国人を取り締まりの対象にしているからこそ、警察が関与するということになってくるのじゃないですか。この辺のところは、どうして警察が関与するのですか。
  97. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 外国人を取り締まるために警察が関与しているということはございません。外国人登録法の実施は、実施と申しますか、これは警察の方で当たっておるわけでございますので、その関係で当然警察にも協議しなければならない面があるわけでございます。
  98. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これで終わりますけれども、いまの答弁はちょっと納得できませんよ。罰則がいっぱいありますから、あの中で罰則を緩和することについて一番反対しているのは警察じゃないですか。なぜかと言えば、外国人登録証不所持の場合に逮捕したい、逮捕できるようにするのを残しておきたい、こういうことが警察の一番のねらいじゃないですか。これはあたりまえの話で、警察としてはそれはあたりまえかもわからぬけれども、それはそのとおりなんですよ。あれは、提示を求めて、持っていないということで現行犯逮捕ができるようにしようという規定を残しておきたい、罰則を残しておきたいというから警察の方で反対をし、その話し合いがまだうまくまとまっていない、したがって提出もおくれている。外務省なんかのあれもありますけれども、それが主な原因ではないか、こういうふうに私は私なりに理解するのですけれども、これはいずれ法案が出てきますから、そのときにまた質問なり何なりすることにして、本会議関係もありますから、時間よりちょっと早いかもわかりませんが、終わります。
  99. 羽田野忠文

    羽田野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後三時三十四分開議
  100. 羽田野忠文

    羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖本泰幸君。
  101. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣所信表明について御質問したいと思うのですが、その前に、警察庁の方もお見えいただいておりますので、けさほども触れられましたホテル・ニュージャパンのその後の問題についてお伺いしたいわけです。  新聞によりますと、十九日に東京地裁と警視庁とが合同捜査会議を開いて刑事責任の追及について打ち合わせをした、こういう記事を拝見したわけですけれども、この点について、新聞紙上によると二十数項目にわたって欠陥をつかんでおるということなのですが、つかんだその内容なりお打ち合わせになった内容を、一応お知らせいただきたいと思うのです。  けさほどもお話がありましたが、問題は、いわゆる政府登録した観光ホテルであるということを信用してここへ泊まった、そういう次第がずっと出てきておるわけですね。そして亡くなった方もそれぞれ外国にわたっているわけでございますから、今後の政府の責任というものも非常に重大なものになってくると思いますし、そういう点について責任の所在というものも、ぼちぼちゆっくりというわけにはいかないと思うのですね。ですから、できるだけ早く、どこに欠陥がありその責任はどこにあるのだ、だれがその責任をとらなければならないかというような点もわかりやすいようにわからせてもらうことがこの際重大ではないかと考えるわけでございますし、また、川治のホテルでは、ホテルの所有者が奥さんだったのに御主人も一緒に逮捕して調べるという事態と比べてみていきますと、ニュージャパンの方が重大性はもっと高い。人命の損失については向こうの方がもっと大きかったわけですけれども、社会を揺るがしているという点ではこれもまた大きな問題になるわけで、燃えた後まだそのまま散乱した状態国民の目の前にさらされているということになるわけですから、その辺をお考えになっていただいてお話しいただきたいと思うのです。
  102. 仁平圀雄

    仁平説明員 今回の火災事故につきましては、事案の重大性にかんがみまして、東京地検とは適宜連絡をとりながら、密接な連携のもとに捜査を進めている状況でございます。  また、今回の火災事件刑事責任といたしましては、出火行為者の刑事責任一つ考えられますし、火災発生時の措置に対する刑事責任、それから防火設備等の設置、管理に対する刑事責任、大別いたしますと三つほど考えられるわけでございます。したがいまして、行為者はもちろんのこと、ホテルの管理運営につきまして責任を有するすべての者について、管理運営上の不注意と本件事件との因果関係を明らかにいたしまして、厳正にかつできるだけ早く刑事責任有無究明してまいるということで捜査を進めているところでございます。
  103. 沖本泰幸

    沖本委員 これも新聞記事で見たわけですけれども、たとえて言うならば、暖房費を削減するために暖房用の空調機の外気を吸入する装置を遮断してしまって、それでホテル内の温度を高めていった、そのために必要な湿度がなくなって乾燥状態になって、それも火事を大きくする根本であったのではないか、あるいはたとえば防火壁なら防火壁もそのままであるとか、いろいろ考えられないようなことが起こってきておるわけですけれども、この異常乾燥状態に置かれるというのは、経営者自体が暖房費を節減ずるためにそういうことを要求してそうなっていったか、あるいは働いている人が経営者の意向を酌んでそういう常識では考えられないようなやり方をとってきたか、いろいろな面が考えられるわけですけれども、こういう点もその衝に当たった人の責任もあるだろうし、あるいはホテルの経営者の責任も存在するところであろう、こういうふうに思うわけですけれども、こういう点について所管のところではどういうふうなお考えを持っていらっしゃるのか、それもお聞かせいただきたいと思います。
  104. 仁平圀雄

    仁平説明員 現在、まだ暖房の関係につきましては警視庁の方から警察庁には報告が入っておりませんので、事実関係がどのようになっておるのかわからないわけでございますが、暖房の関係以外にも、いろいろ消防、防火あるいは避難等の設備等につきましては問題があるわけでございます。これらにつきましてはそういった設備の設置だけではなく、維持管理の問題等につきまして幅広く刑事責任有無を追及してまいりたいと考えておるわけでございまして、したがいまして、従業員はもとより、これら設備の設置あるいは維持管理等について責任を持っている者すべてを対象として捜査しなければならないというように考えておるわけであります。
  105. 沖本泰幸

    沖本委員 これは世界的に重大な関心を持たれる大きな事故であったという点では、近来まれなものでもあるわけですから、興味本位に知りたがるということではなしに、再びこういうことが起きないことのためには徹底究明していただいて、そして広く国民に周知してもらう、あるいは海外にもよく問題を解明したという点で知ってもらう、あるいは責任の所在をはっきりして賠償なり補償なりの根拠にもしてもらう、こういうふうな点を十分検討していただき、完全な捜査もしていただいて、その都度細かい内容についても、起訴するしないといういろいろな問題も絡むでしょうけれども、国民によく知らせてもらうことも大事じゃないかと思うのです。そういう点も十分お願いしたいのですが、当局としてはその辺どういうふうにお考えですか。
  106. 仁平圀雄

    仁平説明員 捜査機関といたしましては、先ほどから申し上げておりますいろいろな事項につきまして捜査を遂げまして、事案の真相を究明するといいますか、刑事責任有無を明らかにし、刑事事件としての適正な処理をいたすということでありますが、捜査の過程でいろいろな問題点等も判明してまいろうかと思いますので、そういった事項については、関係省庁との連携を密にいたしまして、今後の対策に資したいと考えております。
  107. 沖本泰幸

    沖本委員 それでは、大臣所信表明の内容についてお伺いしたいわけです。  稲葉先生の話にも出てきたわけでございますが、所信表明の最初に出てきたのは、結局、全般的にここ数年来犯罪発生が漸増の傾向を示しておる。「各種犯罪の態様がますます悪質巧妙化し、保険金目当て殺人等凶悪重大事犯金融機関を対象とする強盗事犯、公務員による不正事犯が多発し、さらに暴力団を中心とする覚せい剤事犯がなお増加し続けている上、覚せい剤乱用者等による無差別殺傷事犯が続発して国民不安感を与えているほか、少年非行はその件数において戦後最高を示しており、また過激派集団」云々、ずっとこうあるわけです。  少年犯罪なり校内暴力なりいろいろなものは午前中相当詳しく御質問もあり、今後この問題は続けていかなければならない問題ですが、まず最初に覚せい剤の乱用の問題をお取り上げになっているわけですけれども、このことが、奥野法務大臣から引き続いて法務大臣刑法全面改正にわたる御発言になっていった経緯があると思うわけでございます。  この刑法全面改正につきましてもこれからいろいろ議論を呼んでいくわけで、まずこの新聞に出ております「主要閣僚に聞く」というところでも、保安処分の大臣の話はこの中に出ておるわけですが、「保安処分を国立病院で引き受けるのは、ちょっと無理じゃないか、と思います。だが、法務省がやるとなれば、予算の問題もあります。どう実行しうるのか、十分に予想して立案する必要があります。」という話も出ておりますし、「少年犯罪の激増を前に、保護観察官の増員が、行革がらみで思うようにならない、といった悩みも、法務省にはあるのでは」ないかという質問に、大臣は「米国の一部などにみられる「カネがなければ、治安の悪化もやむを得ない」といった考えは、まずい。行革とはいえ、必要なものは、大蔵省とやり合ってもとるつもりです。」こういうお答えが勇ましく出ておるのです。  ところが、刑法全面改正につきましては、特に保安処分が問題だということで、日弁連の方では盛んに反対意見がずいぶん出ておるわけですし、私たちも全面改正反対の日弁連側からのいろいろな問題点の提起なり何なりを受けて、それで法務省との話し合いも横からじっと見ておる、成り行きを見守っておるというところにもなるわけですけれども、簡単に言えば、全面改正で保安処分を強化することよりも、むしろ先ほど言った覚せい剤なり何なりの犯罪を防止する方にかかった方が、こういう乱用者が最初の事件を起こすというのは防ぎ切れないから、そういう面からもこの取り締まりを強化した方がいいんじゃないかという意見が出ておるわけです。  それで、これも日弁連からのもので「改正刑法草案の問題点と総合的批判」という座談会の中にも出ておりますけれども、「薬物とりわけ覚せい剤と犯罪」という項目の中で、   覚せい剤等の薬物と凶悪犯との関係については、精神病者の問題よりも、はるかに直接的な関心が払われている。六月一九日毎日新聞夕刊は、ここ数年間の覚せい剤の薬理作用による主な殺人・殺人未遂事件の一覧表を掲げ、七月八日朝日新聞夕刊は、昨年の主な覚せい剤犯罪と、ここ十年間の覚せい剤取締法違反検挙人員の推移のグラフを掲げている。これらの資料はすべて、最近の覚せい剤事犯増加と、覚せい剤の影響下に行われた凶悪犯の増加を示している。薬物と犯罪との関係については、各新聞がコラム欄や社説でとりあげている。これらの中には、凶悪犯の直接の原因となった覚せい剤だけでなく、その背後にある「時代の閉塞感が生む理不尽な恨み」にも目を向けているものがある(六月二〇日朝日新聞天声人語)。   保安処分との関係では、精神病と犯罪との関係をとり扱うのとかなり論じ方が異なっている。覚せい剤については、それが精神にさまざまの病理現象をもたらす前に、覚せい剤そのものの流通を封じるという防止策があるからである。 一部飛びますが、   「通り魔事件をめぐる問題のありかは明確だろう。捜査当局を総動員した覚せい剤に対する全面的挑戦が最大の焦点となっているのである」。   同様の新聞論調は数多く見られる。七月二六日朝日新聞社説は、「保安処分より前にすべきこと」と題し、「覚せい剤対策とし七は根絶策が先行すべきことは論をまたない。覚せい剤の大半が韓国、台湾からの密輸入である以上、水ぎわ作戦などで国内への流入を防ぐこと、暴力団の資金源になっている販売ルートを断つこと、そして国民に対して危険性をPRすること、などがそれだ」と述べている。   六月二七日岩手日報社説も、「保安処分導入に慎重期せ」と題し、次のように述べている。 ということで、これの結びに、   保安処分は、犯罪防止手段としては、初「犯」を防止できないという本質的制約があるうえに、再「犯」の防止にもさほどの効果は期待できない。しかも保安処分導入に伴なう弊害は非常に多方面にわたって現われてくることが予想されるのである。新宿バス放火事件や江東通り魔殺人事件が保安処分制度炉あれば防止しえたかのような宣伝は、明白なデマゴギーであるとして、保安処分の予想される効果と弊害を冷静に評価するならば、否定的評価を下さざるをえないであろう。   不幸な事件の続発を断つには、覚せい剤等薬物に対しては、それ自体の制圧が要請され、また精神医療の充実が求められる。精神医療の充実は、「いささか生ぬるいと考えられるかもしれないが」という遠慮がちな表現(六月三〇日愛媛新聞社説)を伴わなければならないような性格のものではなく、 こういうふうな結び方をしておるわけです。  今度の所信表明の中で、覚せい剤の問題も含めて、大臣刑法全面改正についても意見を十分聞いて問題をやっていきたい、こうお答えになっておるわけですが、最近は覚せい剤の摘発した数量あるいは摘発した人員が相当ふえているわけですね。そのこと自体は、結局、ずいぶん取り締まっているから少なくなったのではなくて、需要がふえているからふえてきているというふうに受け取らなければならないと考えるのですけれども、まずそれに対する当局の取り締まり、これの防止の対策はどういうふうに講じておられるのか、今年度はどういう対策で臨まれるのか、また、これを根絶するためにはどういう問題をもって臨まなければならないか、こういう点についてお答えをいただきたいと思うのです。
  108. 佐野国臣

    佐野説明員 覚せい剤事犯の検挙状況を申し上げてみますと、ちょうど十年前の検挙の約十倍と申しますか、大ざっぱに言いまして、検挙人員については約十倍に至ろうといたしております。五十六年だけの数字で申し上げますと、検挙件数が三万六千三百九十七件、人員で二万二千二十四人を検挙いたしておるわけでございます。この間の増加傾向というものは非常に厳しいものがございまして、警察といたしましても、昭和五十五年それから五十六年の二カ年間では八百六十五人の警察官増員を行いまして、体制的にまずこの取り締まりに当たるということを行ってございます。  それから、捜査活動の面で申し上げますと、供給としましては海外からの密輸入がほとんどでございますので、密輸入事犯の水際での封圧ということ、あるいはこういったものの取り扱いは暴力団など密売組織が行ってございますので、こういった組織の壊滅、さらには末端乱用者の徹底的な検挙、こういった三つの柱で取り締まりに鋭意当たってまいっておる次第でございます。
  109. 沖本泰幸

    沖本委員 いままでの取り締まりの手段、そういう状況はわかったわけですけれども、たとえば最近は家庭の主婦なり少年にまで覚せい剤が広まっている。それだけ暴力団の動き方も販売のあり方も巧妙化してきているということになってきて、ますます増加している。需要がふえている。需要がふえるから供給する問題がだんだんふえてくるわけです。  覚せい剤ではありませんけれども、タイでは麻薬の問題でヨーロッパの若い人たちがずいぶんつかまった。自分が打つために行ったのが、今度はだんだん売る方の側に回ったとかいうテレビのスクープもありましたし、あるいはアメリカ大陸の中でも、メキシコでつくってアメリカが使っておるという面もいろいろあるわけですから、世界的な傾向でもあるわけでしょうけれども、われわれは、一番近いところでは韓国、台湾というのが一番問題視されてきておるし、この辺のルートが一番きついようにも見えるわけです。あるいはベトナムとかタイとかいろいろなところから入ってくる問題も考えられるわけでしょうけれども、そういう外国の中のあり方なり何なりはどういうふうに把握されながら、そういうところとどういうタイアップをして、より取り締まって、入ることを防ぐという点にどういう大きな重点を置かれておるか、その点をお聞かせいただきたい。
  110. 佐野国臣

    佐野説明員 お答え申し上げます。  ただいまの密輸入事犯の検挙活動、これは警察ないしは税関当局が国内で行うということでございまして、それ以外の供給先に対してどういう働きかけをされておるかということだと思いますので、その点について申し上げますと、私どもいま承知しております供給基地といたしましては、圧倒的に韓国からというのが多うございまして、年によって、それ以外では台湾あるいは香港というふうな場合もございますが、おおむね東南アジアから入ってくるというふうな状況でございますので、この点を踏まえて、これらの近隣諸国の捜査機関との協力がぜひとも不可欠であるという観点に立ちまして、いわゆる国際刑事警察機構というものがございます、これは国際的な捜査についての協力機関でございますが、これを通じまして捜査官を派遣したりあるいは相互の情報交換とかということもやってございます。  それから、御承知だと思いますが、国際協力事業団、これとの協力ということによりまして、毎年麻薬犯罪取り締まりセミナーを、関係諸国から捜査に携わる人たちに来ていただきまして、日本がいろいろな技術援助をする、あるいは情報交換を行うというふうな形での国際協力、そういった面にも十分配意しながら対策を進めつつあるという状況でございます。
  111. 沖本泰幸

    沖本委員 日本だけが需要地であって、供給する方の側の国、これは大っぴらでやっているわけではないはずですから、結局つくりやすい条件がどの辺にあるのか。台湾とか韓国とかその他の国では、供給する方の側だけであって、国内ではどういう反応を示しておるのか、どんな取り締まりをやっておるのか、そういう点はどういうふうに把握していらっしゃるのですか。
  112. 佐野国臣

    佐野説明員 私ども、先ほども申しました国際セミナーあたりで担当官ともいろいろ情報交換をいたしておるわけでございますが、そういった人たちとのやりとりから感じます点では、やはり外国におきましても麻薬や覚せい剤の取り締まりについての特別な罰則の強化をやっていただいているような国もございますし、それからわが方からの捜査依頼に対しましても、薬物乱用につきまして相当関心を持った対応をしていただいておるという状況を伺っております。したがいまして、平素捜査関係の緊密な連絡体制あるいは情報交換ということが、後どううまくやれるかということにかかっているのではないかというふうな感触を受けております。
  113. 沖本泰幸

    沖本委員 やはりこれは問題を大きくしていただいて、大っぴらに取り締まっていく気構えなり、お互いの国際間の協調なり協約なりあるいは防止体制なり検挙体制というものがわかるように、取り締まるときはわからないでしょうけれども、全体の国民がよくそういうことを知っておって協力して防いでいくというような大がかりな体制をとらないと、こそくなことでは防ぎ切れないと思うのです。そういう点をもっと強力化していただきたい、こういうふうにも思うわけですけれども、その点を十分体制を組んでいただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  これは刑法全面改正とつながってくる問題でもあるわけです。それで、日弁連なりそれなりに刑法全面改正に反対していらっしゃるところでは、その辺を十分やるべきであるという意見がいま申し上げたとおり出ているわけですからね。ただ議論に終わらないように、どっちにしたって凶悪な犯罪を防ぐためにいろいろ議論しているわけですから、その辺も、ただ取り締まり当局は警察庁の方であってということでなしに、政府自体が総力を挙げるという形で取り組んでいただかなければならないことだと思うわけです。  そういうことで、問題は、この全面改正につきましても、ただ法務省側と日弁連側とが交換会をやって何回か回を重ねた、意見が合わない。それで日弁連側の方ではもう反対、反対、反対と言う。日弁連の会長を先頭に怒っておるわけです。われわれはただ傍観しているわけにもいかないわけですけれども、結論は、意見が一致した刑法全面改正の方向で進めていただかなければならない。両方が意見が合うということが大事で、それまでは議論を十分重ねていただく。大臣もそういうような方向で物をおっしゃっていたように、読むところでは出てくるわけです。  ただ、この談話の中にも国立の病院を使うというのはちょっとというようなおっしゃり方もあるわけで、この談話の段階から見ると現在大分把握されたわけですから、そういう段階でこの全面改正、どういうふうなお考えで進めていこうとお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  114. 坂田道太

    坂田国務大臣 刑法全面改正につきましては、昭和四十九年五月に法制審議会から答申を受けまして以来、刑法国民の日常生活に密接なかかわりを持つ基本法一つであるということにかんがみまして、その改正に当たりましてはできるだけ広範囲の合意が得られることが望ましいという考えに立ちまして、ただいま御指摘のとおり、日本弁護士連合会その他からの御批判も含めまして各界各層の意見を聴取しながら、ただいま事務当局において検討を重ねております。関係省庁との意見調整を行いました上で今国会改正法案を提出することを目途にいたしまして、所要の作業を進めておるということでございます。  前提といたしましては、ただいままでの経緯から申しますと、国立大学病院を治療処分の施設にしようかということで進んでおるわけでございます。この点につきまして厚生省の御意見、御主張もありましょうし、厚生省としての医療目的、あるいはそれの治療ということもあろうかと思うのでございまして、まず第一にはやはり厚生省がどういう受け取り方をされるのか、そこを見きわめませんと、われわれの方でどうするかということがまだ言えない段階でございます。
  115. 沖本泰幸

    沖本委員 日弁連側の方の御意見をいろいろ見てみますと、具体的な内容をお示しのないままに刑法全面改正をやるぞやるぞ、こういうふうにおっしゃっている、簡単に言うとこういうような御意見みたいに見えます。それから、さっきも読んだわけですけれども、保安処分のあり方にしても、いままではただ単に精神異常者が再び事件を起こさないようにということが保安処分なり何なりの治療処分の発足だったけれども、それがひっくり返って薬物による精神異常者の方に問題をすりかえて、いわゆる新宿事件なり江東の通り魔事件なりというようなすごい事件が起こったので、その分に乗せておっしゃっておるので、すりかえられているというようなことも日弁連の方の回答の中にあるわけです。  それから、先ほど大臣がお触れになった、どういうところへ入れるか、治療するかという点と、それから根本的な意見は、保安処分でやることよりもむしろ医療的な面を重ねることの方が大事であって、裁判所が断定することよりもお医者さんに診てもらうことの方が、お医者さんに決めてもらうことの方がより重要なんだというような、そこでいわゆる人権侵害的な問題もある。この食い違いがいっぱいあるわけですね。だからその辺を、日弁連が言うとおり、具体的な中身を教えてもらえないで、ただ改正するということだけでは納得できないとかなんとかありますから、この辺では大分開きが大き過ぎるのですね。  ですから、もっと議論を重ねていただいて、そしてより法曹三者の協力が十分にできるような上で法律改正が行われることが国民の立場からは大事なわけですから、その意見を抑えてしまって法律だけがばっと出てくるということになると、国民の側からすれば非常に不安になるわけです。そうすると、弁護士会が言っている方を聞いてそれが本当なのかな、法務省がおっしゃっていることの方が本当なのかな、こういうふうになってきますから、その辺を十分お考えいただきたい〜思うのですが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  116. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどの答弁で国立大学病院と申しましたが、それは間違いで、国立病院に訂正させていただきたいというふうに思います。  確かに、覚せい剤等によって精神犯罪が行われるという外的要因、それから精神病そのものの心的要因、それからまた内因によるもの等々があるわけなんで、精神障害者といってもいろいろあるわけです。覚せい剤だけを考えておるというわけではございません。  それからまた、刑法との関係におきましては、これは先生もう御案内のとおりに明治四十年以来の大改正、しかもこれは、刑法基本法とも言うべきものでございますから、もちろん覚せい剤による傷害事件等は考えなければなりませんけれども、それはやはり一部の問題である。これにはこれに対する対処の仕方があろうかと思うわけです。  ただ、治療に重点を置くというのが日弁連側の御主張のようでございますけれども、その治療をそれじゃ徹底的にやることによってのみ一体解決できるだろうかということになりますと、なかなかそうではないんじゃないかというふうに思いますし、現に、覚せい剤による外部的要因による精神障害者において犯罪が行われ、殺人が行われておるということ、これを今度国民の側、市民の自由あるいは権利、基本的人権、生命ということから考えた場合には、日航の問題にいたしましても、また今度のホテル・ニュージャパンの問題にいたしましても、一方は飛行機事故であり、一方は火災による被害ではございますけれども、国民の、市民の恐怖感、不安感、あるいはその火災事故によって引き起こされた被害者の方々の立場に立った場合は、何ということをしでかしたんだということで、恐らく被害を受けられた人たちからいったら怒りもございましょうし、あるいはどうしてくれるんだということもございましょうし、不満もありましょうし、そしてまた責任の追及もあろうかとは思うわけです。  われわれ法務省といたしまして、治安責任法秩序維持を任務としておりまする省といたしまして、そういうことを放置していいかというと、あるいは厚生省の医療目的あるいは治療ということをやっていただくことはもちろんであるけれども、しかし、法秩序維持ということ、法秩序維持は裏返すならばむしろ基本的な人権や生命や財産を守るという、この一面がわれわれの職務としてあるわけなんで、それを守ることに対して何らかの措置が必要じゃないだろうかというふうには考えておるわけでございまして、その点につきまして日弁連側と実は意見が違っておるわけでございます。しかし、先生御指摘のとおりに、やはり日弁連側ともよくお話を申し上げ、そして国民の合意を取りつけながらこの刑法全面改正は進めていかなければならない。しかし、そういう問題はあるということはひとつ御理解をいただきたいというふうに思うのでございます。
  117. 沖本泰幸

    沖本委員 きょうはこの問題を深く議論するつもりはないので、大臣が法案をお出しになる前後に議論がいろいろ出てくると思いますから、できればそこへ問題点を移して、その辺で十分私たちも勉強して御質問もしたいと思っておるわけですけれども、いずれにしても、このまま平行線ばかりで最後は見切り発車みたいにならないように、その点を十分お考えいただいて諮っていただきたいと思います。  先へ進めさせていただきます。  その次は、矯正及び更正保護行政という点、それから監獄法はおくにしましても、民事行政事務登記事務、こういうふうにお話が進んでおるわけでございますが、私たちの方で、一括ということはありませんが、法務省関係にお勤めの労働者の方々から請願文をいただいておるわけです。  これによりますと、「更正保護業務については、犯罪の多様化、特に少年犯罪の深刻化によって保護観察官業務も複雑、高度化し、特に従来裁判所において取り扱われていた短期交通保護事件昭和五十二年四月より法務省に移されてからは業務の増大が著るしいものがあります。また、出入国管理業務も、国際交流の活発化、航空機、船舶の大型化によって出入国者が増大し、特に成田空港の開設にともなって、入管業務も著るしく繁忙を極めています。」ということで、法務省業務は、人的確保によること以外にはなく、定員職員に関して憲法十六条の趣旨に沿って、法務局、更正保護官署、入国管理官署の定員職員を大幅に増員してほしいということが来ておるわけでございます。  そこで、たとえて言うなら矯正の方ですけれども、この間、刑務所の方で退職した看守さんが十年たったときの死亡率が普通の死亡率の倍もあるということで、その原因は、非常に勤務が健康を害したり寿命を縮めるような内容のものがあるというようなことの発表があったわけです。そうなりますと、命にかかわる問題ですから、人をふやすあるいは勤務条件を変えてあげるということをお考えいただかなければならない、こういうことになります。  いまお話ししていることは、行政改革の面からいくと、改革ではないわけですね。結局、人員をふやしてくれ、予算をふやしてくれという形になるわけで、大蔵大臣の方は、総論賛成で各論反対をみんな言うじゃないかということをよくおっしゃっているわけですけれども、全く法務省に関しては行政改革と反対の方向ですべてを進めていかなければならぬような現状に立ち至っているわけですね。ということは、今度はひっくり返して言うと、いままで私たちしばしば触れましたけれども、予算要求の点については法務省が一番削られてしまって、大蔵省からいじめられている省庁である。裁判所を含めて他から収入を得る手段はなく、法務省裁判所は予算を使いっ放しのところであるというようなところからみんな削られてしまって、なかなかうまくいかないんだということが毎年のように予算国会の中で出てくるわけですね。  ところが、こういう事態になっているということは、やはりそういう積もり積もったもののしわ寄せがこういうところにみんな集まってきてしまったということも言えないことはないということになるわけです。たとえて言うなら、日航のパイロットの機長さんではありませんけれども、看守さんは、この間もちょっと話したのですが、私たちが動物の放し飼いを見に行くと、悠々としている猛獣を車の中から見ているわけですね。そうすると、看守さんだって人員を縛られて、ある程度しぼった人員で刑務所の中のあらゆる仕事をやらすと、入っている人は事件を起こして刑が決まって入ってきているわけですから、そういうところにおると、まるで車の中からサファリの猛獣を見ているようなことになるのではないだろうか。それから、住んでいる宿舎も、官舎自体が社会から隔絶されたみたいな状態のところにおって、生活していること自体がやはり公務に服しているみたいな条件の中に置かれているということになると、ストレスが全部たまってきて、ストレスのはけ口がなくなってくる。配置転換されてよそへ行っても、同じ条件のところで働くわけですから、そうなると組合もないし、不満のぶっつけようもないというようなものの積み重ねが寿命を短くしてしまって、早く死んでしまうような条件をつくり出しているのではないかという心配が出てくるわけですけれども、その辺はどういうふうにおとらえになっていらっしゃいますか。
  118. 坂田道太

    坂田国務大臣 実は私、就任いたしましてから二つの刑務所を見ております。一つは私の選挙区の熊本の刑務所と、それから東京の府中の刑務所でございます。これは参議院におきましても申したことでございますけれども、府中は累犯者を抱えておるわけです。約二千四百近い。その中で五〇%を超える者がいわば暴力組織の者でございます。しかも、作業をこれらの者はやっておるわけです。作業をやることが同時に更生につながるということで、作業をやっておるわけです。いろいろなものをつくったりいたしております。それを私ずっと見てまいりました。  そういたしますると、その一つの作業場、たとえば平均六十人ぐらい、これをたった一人の刑務官が監督、監視しておる。つまり、外からはシャットアウトしまして、ということでございます。これは大変なことだ。私、防衛庁長官をやりまして、ユニホームの自衛隊をあちこち視察をいたしました。スクランブル態勢にある二十四時間勤務のこの隊員たちの緊張ぶりは相当なものでございます。しかし、その他はそんなに感じませんでした。ところが、刑務所へ参りますると非常な緊張感、この緊張感なくしては、この六十名をコントロールできないという感じを持ったので、実は、よくやっているなという感じを持ちました。  後で所長から説明を聞いたわけでございますが、そして私はいろいろ質問いたしまして、一体この人たちの恩給受給の期間はどうなんだと聞いたわけです。それによりますと、恩給受給者期間が五年未満の者が副看守長以下約二七%、法務省一般の職員は二三%というようなデータも実は出ておるわけでございます。  私は、こういうようなことを考えましたときに、一面において行政改革、これはやらなければならないことだ、しかし、こういうようなところについてはやはり十分の人員と、それからいろいろの環境整備をやらなければ法秩序維持という基本的なものを確保できないんじゃないだろうかというような感じを持ったわけで、実は先生と同じような感じを持っておるわけでございます。それだけに、法務省の予算獲得にいたしましても、他省庁とひとつその点は十分考えた上でやってもらいたいというふうに思っております。ことしはがんばりましたけれども、あの程度のことでございまして、来年度はひとつ何とかしてがんばりたいと考えておるわけでございます。
  119. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣は新聞の中でも、必要なものは大蔵省とかけ合って、けんかしてでも取ってくる、こういうふうなことを、勇ましいことをおっしゃっているわけですから、いまのお話でそういう方向に問題がいくのじゃないかとも考えておりますけれども、これは矯正局、刑務所の中の問題で、私も前からここはよく行っているのですが、大阪の刑務所なら大阪の刑務所で、もう堺のど真ん中なんですね。町の本当に真ん中になってしまっている。そして、その中で周辺はもう近代的なマンションやアパートが全部建っている。ところが、一角だけが木造のくみ取り式の刑務官の宿舎になっているわけです。ですから、そこだけ異様な形で残っている。車はそこに入れないようになっているわけですね。そうすると、そこで働いている刑務官のお子さん方が社会的に非常に肩身が狭いと思います。そういうふうなものはこの条件外のことであるわけですね。ですから、そういう点も、見てきたとおっしゃるわけですから、時間をかけて十分見ていただいて、そういう面を変えていただかないと、これは命の問題ですから、お願いしたいと思います。  それから、さっきお伺いしたのですが、保護観察官の問題ですが、これもけさからの質問がありましたように、事件が猛烈にふえてきて、人員の増加が足りないということになって、どっちかというと、保護観察官以上に民間の保護司の方の力をかりる点が多いということにかかってくるわけですけれども、さりとて、その保護司さんがどういうふうな状態かというと、依然として古いお考えを持って、御年配の方が保護司でいらっしゃると、子供の事件なんかとは全然感覚が違ってきますでしょう。そうすると、違った目で違った判断を下したのではこれは何にもなっていかないというふうに考えますし、まして保護観察官自体も、やはり今様の多様化している子供の性格なり犯罪者の性格なり、社会生活に合ったような感覚を持たなければ、観察していき、指導していき、監督していく上からはいろいろな問題があると思うのですね。なおさら、極端に事件がふえて観察官が足りないということになるわけですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
  120. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答えいたします。  ただいま沖本委員十分御理解いただいておりますとおり、保護観察官の絶対数が足りないことはもう真実でございます。一人当たりの保護観察官の持っております平均の件数というのは、現実の保護観察事件と、それから少年院から出た人間で仮釈放、仮退院という形で社会内に復帰さすプロセスにおける環境を調整するという環境調整事件というのもございますが、それを合わせますと、大体一人、平均二百件以上の事件を持っておるという形になっております。これをカバーをするために、いわゆる協働態勢と私ども申しておりますけれども、全国に四万七千人の保護司の先生方がおってくださいまして、いわゆる民間篤志の精神、ボランティアの精神によりまして、保護観察官と一体になって仕事をしていただいておるという現状にあるわけです。  いま御指摘のとおり、保護観察官の数は少ない上に、保護司の先生方も高齢化しておることは間違いございません。徐々に私どもいろいろ指導いたしまして、現在のところ平均年齢は六十歳ちょっとということで抑えておりますけれども、一番高齢の方はやはり七十七、八というふうになっておりますし、しかも、若い保護司の方々というのがなかなかなり手がない。やはりこういう仕事は、自分のなりわいとかなんとかを抜きにいたしまして、お金や何かで仕事をするのではございませんで、世のため人のために非行少年や犯罪に陥った人間を立ち直らせてやろうというお気持ちのある方でなければ、こんな仕事はできないわけでございまして、いまの時代というのが必ずしもそういう時代ではないということで、一番私どもがなってほしい四十代、五十代というような方たちに適切な方が見つからない、努力はいたしておりますけれども、なかなか見つからない現状にあるわけです。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕  一方、これまた委員が御指摘のとおり、いまの少年非行の増大あるいは覚せい剤事犯、あるいは心身にある程度の障害のあるような犯罪者、そしてまた暴力団、暴力組織の人間というものが保護観察の対象にたくさんふえてきております。こういう多様化した犯罪類型の対象者に対応するには、やはり専門的な観察官が当たらない限りは、あるいは保護司さんの力をかりるとしても、その保護司さんにそういう研修を頻繁にやりまして、こういう非行少年にはこういう対応の仕方をしなければならない、暴力組織の人間にはこういう対応で保護観察をしなければならないという研修も頻繁にやらなければならないというのが間違いない事実でございまして、私ども、現在の財政状況のもとにおきまして、国家財政の許す限りの範囲内で一人でも多くの保護観察官をふやしたい、そしてまた保護司さんにも頻繁に研修を行いたい、無報酬に近い状況でございますけれども、やはり実際にかかりました費用とかなんとか、いわゆる実費弁償というものにつきましても、少しでも保護司の先生方に働いていただきやすいように国家財政の中からアップを毎年努力していきたい、こういうような状況で努力しておるのが現状でございます。
  121. 沖本泰幸

    沖本委員 この問題にしましても、いま一通り御説明いただいたわけですが、きょうはもう時間がありませんけれども、本当に一項目一項目をじっくり時間をかけて御議論したいわけです。  この辺からいきますと、大臣、いままでの法務行政の機構なり制度なりあり方というものをもう一度洗い直し考え直して、現代社会的な態様に組みかえていって、どうしたら効率の上がることができるか、もっと金をうんとかけてこの辺を変えないと対応できないのではないかという問題がいっぱいあるのではないかと思うのです。その辺をひとつ御検討いただきたいと思うのです。刑法全面改正も大事ですけれども、それ以上に力を入れていただくことじゃないかと私は考えておるわけです。  そこで、登録事務ももっと時間をかけてほかのときにお伺いしたいと思うのですが、時間もありませんので少し触れておきたいと思うのです。  入管業務の問題に関してですけれども、この間も韓国側から見た日本の過去にやったことということをテレビでやっていました。たとえば伊藤博文がハルビンの駅頭で凶弾に倒れた。撃った方は凶悪犯になっているのに、韓国では英雄になっているわけです。その辺が日本人の感覚ではそういうふうにしか、ちらっとしか聞いていないわけです。みんなそういうふうに思い込んでいるわけです。秀吉が朝鮮征伐をして失敗に終わったということになるわけです。韓国の后を惨殺したという問題とか、万歳事件では南北を問わずに朝鮮半島の朝鮮民族、韓民族すべてがまだまだ生き残っている人もいるし、恨みを持っている人もいるということになりますと、日本がやったことに対する反感を感情の中に持っているわけでしょう。そのまま持っているのに、いままでの、先ほど稲葉さんがお触れになりましたけれども、入管業務なりあるいは登録証を持っているか持っていないかという取り調べですね、そういう内容が、結局は上り反感を買っていくような内容のシステムになっているのではないかということが一番心配なわけです。これからのことでお伺いしたいわけですけれども、そういう点も含めて大臣に御感想をお聞きしたいと思います。  もう一つは、文部省の方が国公立の大学に外人の教授を入れるという点を検討している、あるいはそういうふうに決めたという内容のものを見たわけですけれども、文部大臣をおやりになった大臣は一番よくおわかりだろうと思うのですが、私の聞いた範囲内では、私立大学の方に入国ビザで入ってきている外人教授は、その他のところに行って講演なり講義なりしようとすると取り直ししなければならない。そういう点が、非常に有能な人に日本に来てもらっておりながら、十分に働いたり勉強させていただけない。こういう広く知識を求める場合でも、いまの入管のあり方自体が大きな障害になっているという点も聞いておるわけですけれども、こういう点について大臣はどういうふうにお考えなのか。
  122. 坂田道太

    坂田国務大臣 法務行政といたしましては、いまの入管業務、それからまた登記事務、これはむしろ国民に対するサービスの機関でもあるわけなんで、その意味において登記事務なんかは非常に激増いたしておるわけです。そのことをうまくさばくかあるいはそうでないかによって、国民権利が失われる場合だってなきにしもあらずということです。そういうことを考えますと、何とかひとつ、これをどういうふうにサービス行政をきちんとして国民に受け入れられやすいようにするかということ、あるいは入管業務にいたしましても、外人に本当に日本の国は親切な国だと言われるようにするということ、そういう目的を達成するために現在のようなやり方でいいかどうかということはやはり考えていかなければならない問題である。特に登記事務等におきましては、一面においては近代化、コンピューター化も図っていかなければならないというふうに思いますが、また戸籍等についていろいろ登記事務等について日本独特の文字その他もございまして、あるいはどうしても機械化できない点もあるかと思います。しかし、この点はやはり総合的にそういうような観点で国民の期待にこたえるような行政事務のあり方も考えていきたい、かように考えておる次第でございます。  外国人の大学の先生を国立大学に入れるかどうかの問題については、国会におきまして議員立法か何かでもやりたいということでございますから、私といたしましてはその方向に行けば幸いなことだというふうに思っております。
  123. 沖本泰幸

    沖本委員 終わります。
  124. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 岡田正勝君。
  125. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 まず、冒頭に大臣に質問いたしたいと思うのですが、午前中に説明がありました大臣所信表明というのはつくづくよくできているなと、実は感心しているのです。りっぱなものであります。  そこで、私のことにわたりますが、私は法律は全く素人でございますから、何を質問いたしましてもわなも仕掛けもございませんから、どうぞ安心してお答えをいただきたいと思います。ただ、国民が聞きたいと思っていることを聞くわけですから、はぐらかすというようなことだけは絶対にやらないように、これだけはお願いをしておきたいと思います。  さて、大臣に一番最初にお尋ねしたいのは、いま日本の国民には、法治国家というのは何かなという疑問が大分出てきておるのです。この際、法治国家という意味を御説明いただきたいと思います。
  126. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も実は法律にはうとい方でございます。的確なお答えができるかわからないのでございますけれども、やはり法律を基本にして政治を行う、あるいは社会の秩序を維持していくということではなかろうかというふうに思っております。
  127. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま一つお教えください。法律ということをいまおっしゃいましたが、その法律というのは、何のために、だれのためにつくるのでございましょうか。
  128. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは国民のために、国会の承認を得てつくられたものだというふうに思っております。
  129. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、この法律というものはおかしなものでありまして、つくられたら一人歩きをするとよく言われておりますですね。それと同じように、先般来、日本の景気の先行きを非常に心配した予算委員会が開かれておるわけでありますが、そういう中におきましても、たとえばそのつくられた法律のためにがんじがらめとなって、許認可事務が莫大かかっちゃって、たとえば景気を回復するための一つの手段とされております宅地の供給、住宅の供給というような問題にいたしましても、長期間にこの許認可の事務がかかっちゃいまして、大体平均して六年かかるというような状態でありますから、土地を買いまして許認可の手続を始める、おりてくるまでの間に物すごく金利がかかってくるというような状態になり、それから開発をするというようなことになりますから、しかも開発をしますと、その中におきまして、土地のうちの何十%は公の土地として差し出せというようなことなんかもあり、公がつくらなきやならぬような施設さえもデベロッパーがつくらにゃいかぬというようなことになりまして、実際にはデベロッパーが負担をしておる公共が負担すべきものと思われるものが六〇%に及ぶであろうと言われておるような逆現象が出ておるのです。それが全部宅地を買う人に皆覆いかぶさっていくわけでありますから、物すごい損害を受ける、負担に耐えられない、だから宅地が買えない、宅地が買えないから住宅が建たない、だから景気が回らないという。  たとえば自動車一台をつくりますには、五万点の部品が集まれば自動車が動くといいます。ところが、人間様が住まうのに不自由のない住宅をつくろうとしますと五十万点、十倍の部品が集まらないと人間様は住んでいけないということでございますから、その住宅産業というものがいかに景気に大きな刺激を与えるかということはおわかりいただけると思うのですが、そういう大事なものでありましても、そして人間が、とにかく自分で一国一城のあるじとして一軒の家ぐらいは持ちたいという希望をみんなが持っておるのに、それがかなえられないということは何が起因しておるかというと、やはりそこに一番問題は、法律があるんです。  というふうに、いろいろこの法律の問題で、ここにおっしゃっている法秩序維持というのは意味が違うと私は受け取っておりますけれども、全般的な法律という意味でいきますと、つくった法律は国民のためにつくられておるんだけれども、実際には国民が縛られてしまっておるというようなものもありますので、これからまた日にちもあることでありますので、いろいろな審議を通じまして具体的な問題をお尋ねをしていきたいと思います。  さて、本日は大臣所信表面に対する質問でありますから、次に進ましていただきますが、大臣はこの中でこういうことを言っておられますね。「法秩序が揺るぎなく維持され、国民権利がよく保全されていることにある」ということが書いてありますが、国民権利がよく保全されていると大臣はお認めになっておるわけですね。この国民権利とはどういうものですか。
  130. 坂田道太

    坂田国務大臣 これはいろいろ言えるかと思うのでございますが、法務省といたしましては、検察、矯正、更生保護等の治安維持を目的とする行政と並びまして、登記、供託あるいは戸籍、国籍、人権の擁護等国民生活や身分、財産の保全に関する行政に当たることなどを責務とする行政機関でございまして、これを一言で申し上げますと、法務省法秩序維持国民権利保全といった使命を有する行政機関と言うことができると考えます。  ところで、わが国現下情勢を見ますると、職員のたゆまぬ努力と国民の良識による法秩序維持国民権利保全がよく達成されておると私は感じておるのでございまして、そのことを一般的に申し上げたのでございます。特定の権利を指して申したわけではございません。
  131. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、ただいま人権ということも御発言がありました。それからまた、所信表明の中の第三の問題のところで、人権擁護行政というようなことなんかについても言及をしていらっしゃいます。  そこで、これに関連をいたしまして質問をするのでございますが、大臣はいま日本に、これはこう発言していいのかどうか、正確な言葉があれば教えていただきたいと思いますけれども、アイヌの人々ということを言っていいのでしょうか、どうでしょうかね。それからもう一つの呼び名としましては、ウタリというような言葉もあるそうであります。よくわかりません。私も自信がないのです。法律には素人でありますから全く自信がありませんが、アイヌの人々、日本人を和人という立場から呼べば、現在二万四千人ぐらいいらっしゃるであろうという、そういう人々は正式にはどう呼んだらいいのか、これをひとつまず教えていただきたいと思います。
  132. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  私も詳しいことは存じないわけでございますが、現在、北海道庁におきましては、ウタリ福祉対策というような事業を四十九年ごろから始めておるわけでございまして、ウタリ、仲間というような意味らしゅうございますが、そういう番葉を使っておるようでございます。アイヌという言葉は、私もどれだけ差別性があるのかどうか、よく存じません。アイヌ民族というようなときには使うわけでございますが、一般にアイヌと言うときには若干の差別性があるかなという感じ、よくわかりませんけれども、そういうことで若干の使い分けがあるかなとは思っております。これも一般化したアイヌというのが差別用語だとは、私はちよっと現在のところは思っておりません。  大体そういうところでございます。
  133. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで私は、わが日本に生をうけております限り、日本人であります限り、みんなは公平であり、平等な取り扱いを受けなければならぬと思います。その中の問題で、近年だれも知らない者がおらないのは、同和対策の問題であろうと思います。これが期限切れになろうというこの機会に、現在ではそれにかわりまして地域改善対策特別措置法という法律につくりかえて、名称を変えて、中身はほとんど一緒でありますけれども、五カ年間の延長をしようという動きがございます。  さてそこで、今度は同対という文字が抜けちゃいましたので、そうするとこれは全国民的な問題かなというふうに一般的にはとられると思います。ところが、総理府の方の御見解を伺ってみますと、アイヌの人々、いわゆるウタリの人々についてはこの中には包含しないのである。今度名称が変わりまして、同対法は名称が変わって地域改善対策特別措置法という法律が出ましても、その中には含めておりません、こういうお答えが返っておるのであります。  しからば、このウタリの人々は現在どういう法律で保護されておるのであろうかということを調べてみますと、もうずいぶん古い昔でありまして、明治三十二年三月二日に、当時どしどし本州から和人が北海道に入り込んでいきました。そのために土着のウタリの人々が駆逐をされるというような現象が起きてまいりましたので、治安対策の一つだろうと思いますけれども、それを防ぐために、混乱を防ぐために北海道旧土人保護法というのがあるのであります。現在でもこれは日本で生きているのです。商法の中でも番頭、でっちなんという言葉がまだ残っておるのですから不思議はないと思いますけれども、旧土人とはまたこれいかに。  片方では、同対事業の問題等にいたしましてもずいぶん目を開いた対策が行われておりまするけれども、人数が少ないからか、二万四千名に及ぶこのアイヌの人々に対しては、旧態依然とした明治三十二年の北海道旧土人保護法、これをもって対処しているというのはどうも私には解せぬのであります。一体これが法の保護のもとに平等に皆さん保護されているかどうか、大いに疑問とするところですね。  しかも、北海道旧土人保護法というのがあるだけでもいいじゃないかなんという乱暴なことを言う人がありますけれども、とんでもない話でありまして、この旧土人保護法の内容は何かといいますと、もう御承知のとおり、部落のことをコタンといいますが、あの人々は部落を中心に生活をしておったわけですね。ところが、日本人がどんどん押し込んでいくものでありますから、中にはコタンから逃げ出しちゃって、生活ができなくなっちゃって、ばらばらに飛び離れていく、そういうことを放置してはならぬではないかということで、コタン単位に保護してあげなければならぬだろうというので、土地の保有権を主体といたしまして保護するということが、大体この保護法のいわゆる趣旨でございますね。  ということになりますと、実際には人権の問題あるいは生活の問題、福祉の問題、そういうものに対していま一体どのくらいの手が差し伸べられておるんであろうかということを考えてみますと、これも昭和五十七年度の予算の中で、総理府の所管でありますけれども、国庫補助金といたしまして十二億一千百二十三万円しか上がってないのです。これがすべてであります。これは補助率が二分の一補助ということにしておりますから、したがって、あとの半分は北海道庁がこれと同額のものを持ちますから、言うならば二十四億二千万円程度の金で事業をするということになるわけであります。これ以外に、北海道庁は単年度予算として約六千三百万ぐらいの予算を計上いたしておりますので、ざっと言うなら大目に見積もって二十五億円、これがいわゆるウタリの人々に対する一年間の対策費でございます。余りにも画然とした差が開き過ぎている。  差別ということをいま日本では絶対に行ってはならない、考えてもいけないという思想がずいぶん徹底をしておるにかかわりませず、このウタリの人々に対する対策というのは最もなっていない。もう忘れ去られておるんではないかという感じすらするのでありますが、いま大臣は、法のもとにみんなは平等である、その精神をお述べになり、その熱烈たる大臣のお気持ちはよくわかるのでありますけれども、こういうようなことが放置をされておることにつきまして大臣はどうお考えになっていらっしゃるか、御所見を伺いたいと思います。
  134. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま先生のお話をお聞きいたしまして、その実情の一端を知ることができたわけでございます。この点につきましてどういうふうにやるべきか、これはひとつ考えさせていただきたいというふうに思います。しかしながら、やはり法のもとに平等でなければならないという考え方は、私の考え方も先生のお考えとも同じでございます。
  135. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは別の問題にいかさせていただきます。  先ほど沖本委員からも御質問のあったことでございますけれども、その中になかった問題で、暴力団のことについてまず冒頭からお尋ねをしてまいりたいと思います。  暴力というのは何でしょうか、その意味を教えてください。
  136. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  私どもも暴力団という概念で取り締まり上考えておりますが、それは、集団的または常習的に暴力的な行為を行うおそれのある組織ということで一応考えさせていただいております。
  137. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 わかりました。集団的に、常習的に組織されておるものを暴力団という、こういうことなんですが、それはわかりました。それはわかったんだが、そのもともとの暴力というのは何ですか。
  138. 関口祐弘

    ○関口説明員 暴力という意味でございますが、人の生命、身体等に対しまして傷害なり何なりという不法な力を加えるということかと思います。
  139. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではお尋ねをいたしますが、暴力団というのは合法団体でしょうか、非合法団体でしょうか。これは会社とかなんとかいろいろに看板を違えておりますから、なかなか答えのしにくいことであろうと思いますが、まさしく暴力団というものだけを対象にいたしますと、その暴力団というのは非合法団体なのか合法団体なのか、お答えください。
  140. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、暴力団は不法行為を行うおそれのある組織ということで考えておりまして、それ自身合法、非合法ということを言うのはきわめてむずかしいと思いますけれども、一般市民、国民の立場からいたしまして国民に大きな被害を及ぼすということで、私ども常時その警戒に当たっているわけでございます。
  141. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、現在の日本の中におきます暴力団の現状について、詳しくお答えをいただきたいと思います。
  142. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  昭和五十六年当初でございますけれども、全国の警察で把握している暴力団の数は、団体数にいたしまして二千四百八十七団体、構成員にいたしまして十万三千九百五十五人となっております。暴力団の勢力がピークでございました昭和三十八年当時の五千二百十六団体、十八万四千九十一人という数と比較いたしますと、団体数では半減、構成員数では四割減となっているわけでございます。しかしながら、山口組を初めといたしまする大規模広域暴力団というものが依然として根強い勢力を持っているという状況でございます。
  143. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは大変お答えがしにくいのではないかと思いますが、私も町において質問されて、まことに答弁するのにまいってしまう問題があるのですけれども、暴力団といういわゆる不法行為をやるおそれのある組織、そういう団体がいまお話しのように二千四百八十七団体、人数にして十万三千九百五十五人という膨大な数字に上っておるわけでありますが、まじめな町の諸君からいいますと、こういう人たちが新聞をよくにぎわしますね、その都度に私どもに言われることは、暴力団というのは悪いということはわかっておる、悪いとわかっておるのに何で解散させられぬのだろうか、どうして解散をさせることができぬのだろうか、日本は法治国家じゃないのですかいな、こういう質問を端的にぶつけてくるのですよ。私ら専門家ではありませんのでなかなか答弁がしにくいのでありますが、もしあなたが国民からそう質問をされたら、どう答えますか。
  144. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  暴力団はただいまおっしゃられたような数字でございますけれども、ある意味では社会に非常に根強く根づいていると申しますか、そうしたものがあろうかと思います。そうした意味で、私どもの努力にもかかわらず、依然として強い勢力を有しているという状況でございます。  私どもとしましては、この暴力団を壊滅するということで、警察力はもとよりでございますけれども、ただいま委員御指摘のとおりに、これを壊滅するためには警察ばかりでなくて、広く関係諸機関あるいはまた国民各層の皆さん方の御尽力をいただくということで進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  145. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは通告をしておりませんでしたので数字をお持ちでないかもわかりませんが、いまの御発表になりました暴力団の中で、幹部が何名ぐらい、それからその下の者が何名ぐらい逮捕されて現在収容されておるか。現在時点、二、三カ月前でも結構でありますが、およその数でもいいです。教えてください。
  146. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  若干古い数字で恐縮でございますけれども、五十六年の十月時点でございますが、首領と称しまして組の親分格でございますけれども、この検挙人員が二千四百六十一名という数字でございます。さらに、その下の幹部クラスというものになりますと、二万二千六百五十八名という数字が出ております。
  147. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さてそこで、沖本委員の中にも質問がございまして、それに大臣がお答えになりました。累犯者を収容しておる府中刑務所を私は見てきたよ、こういうことをおっしゃいました。そこにおられる方々の御苦労というのを物語っていらっしゃいましたが、私どもも先般、委員会として見に行かしていただきまして、つくづく痛感をしているところであります。  さてそこで、それほどの苦労を重ね、そしてその中で作業をさせることによって新しい社会に出ていく力を生みつけようと努力をしていらっしゃいますけれども、私の聞き及ぶところでは、暴力団の関係者で所から外へ出てりっぱな人として更生をしたという例はごくごく少数、それも一人か二人という人数ではないかと聞いておりますが、その点はいかがでございますか。
  148. 関口祐弘

    ○関口説明員 お答えいたします。  その前に、ただいまの幹部等の検挙の数でございますが、大変失礼いたしまして、首領クラスが九百五十六でございます。それから、幹部が八千三百八十というのが検挙の数字でございます。  ただいまの御趣旨、ちょっとわかりかねましたので恐縮なんでございますけれども、若干違うお答えになるのかと思いますが、暴力団で更生をしている者というのも、数は定かではございませんけれども、若干なりともおります。
  149. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは数字でありますから、ちょっともう一回お尋ねしておきますが、そうすると、収容された人間は首領クラスが二千四百六十一、それから幹部クラスが二万二千六百五十八というのは全くこれは取り消して、九百五十六と八千三百八十という意味ですね。
  150. 関口祐弘

    ○関口説明員 そのとおりでございます。
  151. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それじゃ、次の問題に入らしていただきます。  次に、いま大変問題になっております覚せい剤事犯でございますが、この覚せい剤の問題につきまして、一体どのくらい利用者がおるんだろうか。一説には六十万だ、五十万だ、いや百万だなんといういろいろな数字が出てくるのでありますが、これはなかなか推定がむずかしいと思いますけれども、利用者の数がわかればお知らせをいただきたい。その中で、どの程度までが中毒というのか知りませんが、とにかく中毒患者のようになって、入院をしておるというのが一体何名ぐらいおるものであろうか。それからその実情につきまして、できましたらばこの三年間ぐらいの実情をお知らせいただければありがたいと思います。  ついでに、全部関連しますから一緒に申し上げておきます。この覚せい剤の関係でいろいろと御苦労なさいまして逮捕されたり何かしておりますね。これがいわゆる売った人、それからそれを買うた人とに分かれるのじゃないかと思うのでありますが、そういう関係を、売った人と買った人とを別々に、どのくらいの人員を検挙しているのか、それに対してどういう対処をしておるのか。一説によりますと、大変軽い刑らしい、物すごく軽い刑で出てくるらしいということも聞いておりますが、その点はどうなのか。  それから、無差別の殺傷事件というのは、大体が覚せい剤によるものがほとんどのようでございます。新宿のバス焼き討ち事件、江東区のすし屋の職人の刺身包丁の事件、それから先般、大阪でしたかありましたアパートの中のその奥さんを初め隣近所の人を無差別に殺しているあるいは傷をつけているというような事件なんかがあるのでありますが、その無差別の殺傷事件の実情を、できればここ三年間ぐらいのものがありましたならば教えていただきたいと思います。  そして、その中におきまして被害者が出てくるわけでありますが、その被害者に対する救済措置、通称行きずり殺人の被害者救済措置と言っておりますけれども、この被害者の皆さんに対する救済の状況は、去年の一月一日からということになっており、また暫定的には一昨年の五月から、これは二百万と百万に分けてやっておるようでありますが、そのデータがありましたら教えていただきたい。  それから、遺児等がおりますね。子供さんが残っておるというのがありますが、これに対する対策はいまどういうふうになっておるのだろうかということを含めてお答えを下さい。
  152. 佐野国臣

    佐野説明員 覚せい剤の検挙人員の推移を申し上げてみますと、五十四年は一万八千二百九十七名——ちょっといま数字が図表でございますので、後ほど改めて申し上げますが、五十六年だけで申し上げますと三万六千三百九十七件、人員で二万二千二十四名でございます。昨年に比べますと、これは件数で三千四十三件増加、人員で二千百三人の増加でございます。  それから、事犯の内容別で申し上げますと、密輸入事犯が五十二人、それから譲り受け、譲り渡しの関係で申し上げますと、両方合わせまして六千六百八十六人、それから所持事犯、これの数は五千八百十七人、それから使用事犯九千四百五十人となっております。  それから、暴力団との関係で申し上げますと、全検挙者の中の四九・七%。それから御参考までに申し上げますと、暴力団犯罪全検挙者が五万二千六百七十人おりますが、これの二〇・六%に当たるかと思います。
  153. 仁平圀雄

    仁平説明員 無差別殺傷事件、すなわちいわゆる通り魔事件関係につきましてお答え申し上げます。  通り魔事件のうち殺人事件につきましては、昭和五十五年以降現在までに発生が十六件、検挙が十四件、十五人でございまして、被害者は五十四人、うち三十二名が死亡されております。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 また、通り魔事件のうち傷害、暴行、器物毀棄等の事件は、五十六年度分しか把握いたしておりませんが、五十六年中に発生が二百四十七件、検挙が百一件、七十二人でございまして、被害者は三百十四名に上っております。  また、先ほど申し上げました通り魔事件の殺人事件関係で検挙いたしました十五人につきまして、犯行の原因を大別してみますと、精神障害によるものが六名、覚せい剤、シンナー等乱用によるものが四名、それから何らかの社会的不満によるものが正名というような状況でございます。  また、この十五名の処分状況について見ますと、無期とか懲役等刑が確定した者が三名、起訴公判中の者が五名、精神病院に措置入院中の者が四名、鑑別所等に入所中の者が二名、それから被疑者死亡で不起訴の者が一名となっております。  それから、御指摘になられました三つの事件関係でございますが、昭和五十五年の新宿京王デパート前におけるバス放火殺人事件関係の犯人につきましては、現在起訴公判中であります。過去に精神病院に入院歴があるわけでございます。それから、昭和五十六年、去年の江東区における通り魔事件の犯人は、覚せい剤の使用者でございまして、現在起訴公判中であります。さらに、ことしの二月の西成区におきます殺傷事件、まあ通り魔類似事件として私ども把握しておるのですが、この事件の犯人も覚せい剤の常用者でございまして、この犯人につきましては、現在逮捕勾留中でございます。
  154. 佐野国臣

    佐野説明員 先ほど検挙者の関係で、過去三年という御指摘でございましたので、五十四年の数字も申し上げます。検挙者につきましては一万八千二百九十七名、それから五十五年が一万九千九百二十一名となっております。  それからもう一点、検挙者以外に、潜在的な使用者が相当おるんじゃないかということにつきましてのお答えでございますが、私ども、正確な数字は把握しておりません。ただ、取り調べの過程などで、ほかにも覚せい剤を使っている人を何人か知っていますかというふうな、友達の数であるとか、あるいは何回か再犯的に使用しておる、そういう状況を勘案いたしまして、ごく大胆な推測ではございますが、ごく大ざっぱに言いますと、検挙者の約十倍程度は潜在的な形でおるのではないかという試算を持っております。  以上でございます。
  155. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 答弁で漏れておりますのが、いま十倍という言葉で言われましたが、数字をもって言ってください。どのくらいの人が——よく一般的には、六十万だろう、いや九十万だ、いや五十万だと、いろいろなことを言う。どれが本当か、よくわかりません。当局も、どれが本当かと言われたら困るでしょう。けれども、まあ大体このくらいですという、その何十万人というような単位で数字を発表してもらいたい。  その中で入院しておる者が一体どのくらいか。私どもが了知しておるのでは、三百人くらいしか入院しておらぬのじゃないか、それ以外の者は全部野放し、町の中をうろうろ歩いておる状態であると聞いておりますが、その数字を教えていただきたい。  それから、通り魔犯罪の犠牲者になりましたそのいわゆる遺児の救済等について、どうなっておるかというお答えがありませんでした。  以上です。
  156. 佐野国臣

    佐野説明員 数字といたしましては、明確なものは出してございません。検挙者が現在二万人前後でございますので、それの十倍前後といいますと、一応数十万程度の見通しで私どもおります。  それからなお、御指摘の入院者の関係は、手元の資料がございましたら後ほどお答え申し上げます。
  157. 福永英男

    ○福永説明員 御質問の最後の二問について、私からお答え申し上げます。  まず第一点の通り魔事件などの被害者の救済状況でございますが、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により死亡した者の遺族や身体に重大な障害を負わされた被害者に対しまして、国が犯罪被害者等給付金を支給するといういわゆる犯罪被害者給付制度というものが、昭和五十六年一月一日から実施されております。  ところで、昭和五十七年二月二十二日現在までの運用状況を申し上げますと、六十一件、百九名につきまして裁定が行われております。このほか三件、三人につきましては仮給付金の決定が行われております。この両方合わせまして、総額で三億六百四十万千六百八十二円、これだけの給付金が支給されております。これが第一番目の質問でございます。  それから、最後の方の遺児に対する救援と申しますか、こういう関係でございますが、財団法人犯罪被害者救援基金におきましては、昨年の五月の設立以来犯罪被害遺児等の奨学に必要な基金約十六億円の形成を目標に募集活動を行ってまいりまして、目標額の募金を達成いたしました。そして、本年一月に当初の奨学生といたしまして三百一名の採用を決定し、昨年十月分から奨学金約三百七十五万円を支給しているところでございます。  以上でございます。
  158. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次にお伺いしたいと思いますのは、先ほど来問題になりました少年非行の問題でありますが、これをできれば小学校、中学校、高等学校の程度に分けて、実情はどうなっておるのか、そしてその対策はどうかということについてお答えください。
  159. 石瀬博

    ○石瀬説明員 ここ数年少年非行が非常に激増いたしておりまして、刑法規定している犯罪に該当しあるいはそれに触れて警察が補導いたしました数字というのは、昨年の数字でいきますと二十五万二千八百八人ということで、一昨年に比較しますと一四・九%の増になっております。いま申しましたその数字の大体八割が小学生、中学生、高校生ということでございまして、参考までに数字を申し上げますと、高校生が六万五千八百十名、中学生が一番多うございまして十一万六千九百七十二名、小学生が二万二百二十二名、こういうことでございます。昨年の状況を見ますと、特に中学生の増加が激しゅうございまして、前年に比較しまして二九・八%の増加、こういうことになっております。  非行の中身を見ますと、数多くのものが、万引きとか自転車、オートバイの窃盗あるいは占有離脱物横領といった、私どもいわゆる遊び型非行と言っておるわけでございますが、規範意識のない子供たちが、ちょっとした動機で簡単な手段で万引きをやったり自転車やオートバイを盗んだり、こういうことでございますが、他方また中学生の非行を見ますと、先ほど来いろいろお話しになっておりますような通り魔事件あるいはまた校内暴力といったような非常に社会問題となるような大きな事件が起きている、こういうことでございます。  この非行対策についてでございますけれども、少年非行の背景、原因というのは非常に複雑でございますので、これが特効薬という決め手は必ずしもないわけでございますが、いまほど申しました小学生、中学生、高校生につきましては、生活のかなりの部分を学校で過ごしておりますし、学校は何といいましても教育の場でございますので、学校、教育委員会とよく連携をとりながら、学校の中における子供たちの規範意識を高めるための努力をお願いしたり、あるいはまた校長以下教職員の方が一体になって生徒指導に当たってもらう、非行とか不良行為の初期の段階で封じ込めてもらうというようなことをお願い申し上げているという状況でございます。  以上でございます。
  160. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、これはうわさでありますけれども、最近特に非行が低年齢化してまいりまして、中学生の非行というのがすごいというのですね。これは私の先に立ちました各委員の皆さん方の中にも、口こもごもに出てきた問題でありますが、まさに聞くにたえない、見るにたえないような惨状であります。  ある校長先生なんかの話を聞いてみますと、これは高等学校の先生ですが、いや、全くまいりますね、いまの義務教育では何を教えているのだろうか、実際に受け入れて困ってしまう。それで、極端な例でございましょうけれども、ABCのアルファベットもよう言わない、掛け算の九九もわからない、それで暴力だけはすばらしく強いというようなことで、先生をへとも思わぬというような状態であり、全くどうやって指導したらいいのだろうか、中学校では一体何を教えていたのだろうかという感じさえいたしますというようなことを、私も再々聞いたことがあります。  それから、これはどなたと言いません、名誉にかかわったらいけませんのでお名前も伏せて、ただこういうちまたの声があるというので、大臣に所感をお伺いしたいと思うのでありますが、中学校の生徒が非行化してすごい暴力をふるうというようなことは、学校によってはそれらの仲間に入っておらぬと無事ではおれぬというような状態に置かれておるということは、結局は甘えではないか。子供は本心からそんなに悪いものじゃない。だから甘えがあるのであって、その一番大きな甘えは何かといったら、何ということはない、義務教育だわい。どんな悪いことをしても退校処分になることはない、それだけが唯一のよりどころのように思われる、したがって中学校というものを義務教育制度から一遍考え直してみたらどうかというような意見すら、ちまたのあちこちから聞こえてまいります。  私は、日本の六・三・三制度というものがいろいろな角度から批判されることはまことに結構なことだと思いますが、私自身、まだ党の意見も固まっておりませんから意見は申し上げませんけれども、この方面では非常に卓越した見識を持っていらっしゃる大臣でございますので、いまの中学校の生徒の非行化を防止する、簡単に言ったら根絶できるというような一番大きな対策としては、義務教育制度の見直しということが非常に強力なパンチになりはせぬか、決め手にならぬかというような町の無責任な発言がございますが、このことについて大臣はどう思われますか、お考えを聞かせてください。
  161. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどもどなたかの御質問に答えたわけでございますが、私、十年前に文部大臣をいたしまして大学紛争に直面をいたしました。それで、あのようなエリートの集まりと言われる東大においてなぜ教師と学生とが憎み合わなければならないのか、あるいはまた学生同士があのように幾派にも分かれまして暴力ざたをやらなければならないのかということを考えましたところが、これは単に大学だけの問題じゃない。学生だけの問題じゃない。先ほども申し上げましたように、確かにこの学生に対応する大学当局のあり方に一つ問題はある。  しかし、この大学の学生たちが、過去に小学校、中学校、高等学校を経て大学に入ってきた。ところが、ちょうどあの大学紛争が起こりましたときの年齢を考えてみますと、私の子供も同じでございますけれども、終戦直後生まれました。その小学校のときはどうかというと、教育施設は十分ではない、青空教室であるというようなこと、あるいは中学に行ってもそれが続く、高等学校にも続く。やっと大学に入って、大学は全く別な天地、自由なところだと思っておったところが、いま申し上げました状況であるということで失望しておる。  私がその当時申しましたのは、この学生たちだけに罪があるのじゃない、社会の問題だ、あるいはまた高等学校、中学校、小学校における入学試験制度の問題でもあると思う。ただペーパーテストだけでその人の、人間の一生を決めてしまう。そして小学校、中学校でも、そのペーパーテスト、数学ができない、国語ができないとなりますと、おまえはもうだめだ、そうすると父兄もそう思うし、一般社会もそう思うし、先生もそう思う。これならば、非行少年にならざるを得ない環境があるのじゃないか。少なくとも学校教育というものは、もう少し人間性を培う全人的教育というものを大事にするという——確かに知識を覚えるということも大切なことなのだけれども、むしろ下学年、小学校の段階あるいは幼児教育の段階においては、情緒性あるいは芸術性、創造性、そういうものを、そしてまた社会も学校の先生も父兄も、あなたはこのペーパーテストはだめだったけれどもなかなかいい子なんだよと言う、そういう認め方があってしかるべきじゃないだろうかという気が私はいたしておるわけでございます。  そういうことでございまして、ことしの総理演説の中におきましても、この小学校の問題、中学校の問題、つまり学校教育の問題と同時に、家庭、社会そしてむしろ幼児教育から改めていかなければならない、そしてそのために一番の問題は、やはり家庭の父親や母親の役割り、そしてそれが物質文明が進んできたためにお金さえあればというようなことで、しつけとかなんとかいうものが十分でない。本当の心あるりっぱなお母さんというのは、ただ甘やかすことだけが愛情ある教育じゃないので、場合によってはしかりつける、たしなめるあるいは自分をコントロールする力を与える、そういう役割りというものがお母さんにもお父さんにもなければならない。甘やかすだけじゃない、むしろ慈悲という言葉があるのが家庭——藤樹先生が勉強に行って帰ってこられて、本当にああかわいそうと思われたのだけれども、そのときに、あなたは何のために帰ってきたと言って雪の朝追い返した、あの親心じゃないか。それが真の意味の慈悲のある心なので、これが親であり、母親であるし、また教師でなければならぬ。そこには一面の非情さというものがなければならぬ。  私は、今日、自己コントロールということが非常に大事なものだと思います。その自己コントロールの、抑制のきかない、言うなら、人間に与えられた特権とも言うべきコンピューターシステムを訓練しないために、戦後ああいうようないろいろの問題が出てきておるのじゃないだろうかというふうに思います。  非常にむずかしい問題で、時間のかかる問題ではございますけれども、基本的にはそういうところにある。試験制度も考えなければならない、あるいは学校制度も考えなければならない。しかし、根本はいま先生が御指摘のように、余りにも甘やかし過ぎたというところにある。甘やかすといいますか、厳しくやるということは悪いことだというような風潮が戦後にございました。何でもかんでも自由、そこの間違いがあるのじゃないか。その点はやっぱり西欧諸国においては、自由というものについての基本的な考え方あるいは歴史的な所産でもございますし、それには一面のきちんとした理性や自己コントロールというものが伴って初めての自由ということではなかろうかというふうに思います。  何かわけのわからぬことを申し上げましたけれども、私の率直な気持ちを申し上げました。
  162. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 さすがに前文部大臣という感がいたします。非常に高邁な御意見を申し述べて、しかも率直におっしゃっていただきまして、私も大変喜んでおります。ぜひとも、学校もそれから社会もそして親も、みんなが一丸となっていま立ち直らなければ、これは大変なことになるという時代でございますので、そういうときに大臣の御意見が表明されたことは非常に意義があると私は思っておるのであります。  さて、時間があと二分しかございませんので、最後に一つだけお答えをいただきたいと思います。  先ほど来私は、法治国家とは何か、法律とは何か、あるいは権利を守られておるとは、権利とは何かというようなつまらぬような質問をさせていただきましたが、それもこれもいま具体的に私が質問をしていきましたことに関係のあることでございまして、一つの問題にしぼって申し上げますと、たとえば覚せい剤を使われたその人たちが町の中にうようよしておるために、ある日突然、何でもない無事の人が被害を受ける、あるいは命を奪われる、あるいは孤児になる、こういう出来事が近年ぐんぐんふえてきておる。全く国民の素朴な声から言えば、政府は何であんなものをほっておくんだろうかというのが、正直な声だと私は思いますよ。  そういうことに対して、どうもこの刑法改正の問題にいたしましても、何かしらんどんどん日にちがたって、大変な問題ですから日にちがかかることはわかりますけれども、何かいまのようなスピードでやっておると十年ぐらいかかるのじゃないかという気持ちを国民は持っておるのであります。この刑法改正の問題につきまして、特に覚せい剤の中毒者の問題に関連しての刑法改正の問題については大臣はどういう覚悟を持っていらっしゃるか、その点だけ、一言で結構であります、最後に御回答いただいて、私の質問を終わらしていただきます。
  163. 坂田道太

    坂田国務大臣 刑法全面改正の問題については先ほどお答えをしましたとおりでございますけれども、いまの覚せい剤等による外的要因による精神障害者犯罪ということにつきましては、先生のおっしゃるとおりに、もちろん、これが精神障害という病気によるものではございます、そして治療あるいは社会復帰ということをやらなければならないわけでございますけれども、しかし、それによって起こる殺人あるいはあのような通り魔ということを考えましたときに、ただそれだけでいいのか。  先ほど来お話がございますように、日航の問題にしてもあるいはホテル・ニュージャパンの問題にいたしましても、その被害者になった者の立場を考えれば、あるいはその被害者は恐らく怒りを持つでございましょうし、これを何としてくれるというような気持ちを持つでございましょうし、不満を持つでございましょうし、一体国は何をしておるんだということなんで、私はやはり、法秩序維持という役目を持っておるわが法務省といたしましては、これに対応する何らかの措置を考えるべきであると思う。  厚生省は厚生省としての患者の治療あるいはその回復、改善等について開放的な制度でおとりになっても結構だけれども、しかし、それだけでこのような通り魔的な犯罪、つまり社会防衛の意味における国民の側の、国民一人一人の生命というものが守られるだろうかということを考えました場合に、こういうふうに覚せい剤がどんどん使われてくるこの状況におきましては、やはりここに治療処分というような刑法上の制度を設けるということが社会の要請にこたえるゆえんじゃないか。これは決して日本だけの問題じゃない、諸外国においてもそうなんで、やはりこういうようなことに対しては、むしろ西欧は逆に、市民の防衛ということからこういう処分制度というものを設けてきておるというふうにわれわれは伺っておるわけでございまして、むしろ日本においてはその点が欠落しているんじゃないだろうかというような気がしてなりません。一方において、治療あるいは改善ということについては、厚生省のそういう方針に従ってやっていただく、同時に、ここはきちんと刑事政策上の治療処分という、まあ保安処分と申し上げてもいいのかもしれませんが、そういう形をとらないと、国民の生命も自由も守ることはできないと私は思うのです。  日本が比較的に治安はよろしい。たとえばニューヨークに行きましても、女の一人歩きなんというのはもう夜はできない。日本はそれは一応できておる。しかし、こういうものが頻発いたしますると、そういうわけにはいかなくなる。というならば、やはりこれに対する刑事政策上の治療処分というものが制度化されるということが、国民権利保全することにもつながりますし、秩序を維持するという法務省一つ役目を果たすことになるんじゃないか。そういうことを何もしないということは、むしろ国民から関わるべき課題ではないだろうかということでございまして、私は真剣にこの問題と取り組んでおります。でき得べくんば、ひとつ今国会にも上程したいというふうに思いまして、非才ながら努力をいたしておる次第でございます。
  164. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、大変ありがとうございました。率直な非常にわかりやすい、熱情のあふれる御回答をいただいて大変喜んでおるものであります。何と申しましても、法律があっても、被害者の人権よりは加害者の人権が重んじられておるんじゃないかと思われるような錯覚を与えるような今日の状態は、私ははなはだ遺憾であります。やはり善良な国民がその生命、財産が安全に守られていくような世の中でなかったら、何が法治国家か、何が法律か、私はその思いが強いのであります。大臣と全く同じ考えであります。  どうぞひとつ大ぜいの国民の諸君が安心して生活ができるように、一日も早く作業を急いでいただきますように心から希望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  165. 羽田野忠文

    羽田野委員長 次回は、明二十四日水曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会      ————◇—————