○宮地
政府委員 お尋ねの大学入試改善に関する決議、御
指摘のように五十二年十一月十六日に行われておりますが、これは、背景といたしましては入試問題に関する小
委員会がこの文教
委員会に設置されまして、そこで
審議をされ、その結果を取りまとめられたものでございます。
項目としては、全体的に六点について
指摘がございます。まず、それらについて概括的に御説明し、さらに細部にわたってまた御説明いたしたいと思います。
この決議におきましては、まず第一に、共通一次試験の実施時期について最善の配慮をすること、第二点として、いわゆる二段階選抜の実施を避けること、第三点として、二次試験について受験生の過重な負担にならないようにすることなどの六点にわたって
指摘されているわけでございます。
文部省といたしましては、この決議の趣旨を十分尊重し、共通一次試験の実施が決定されて以来、大学入試方法改善経費を配分する等、必要な措置を講ずるとともに、国立大学協会、大学入試センター及び各国立大学にも種々検討を願ってきたところでございます。
その結果、まず共通一次試験の時期でございますけれ
ども、高等学校における教育への影響も配慮いたしまして、当初予定いたしておりましたのは十二月下旬というようなことで
議論がされていたわけでございますけれ
ども、それを、実施に当たりましては最大限におくらせることといたしまして、一月中旬というところに繰り下げて実施をすることにしたわけでございます。そして、次のいわゆる二段階選抜についてでございますけれ
ども、これは徐々にではございますが実施大学が減少してきているというのが現状でございます。そして、各大学の二次試験についても科目数が減少し、それにかわりまして面接、小論文、実技試験などを課する等、選抜方法に工夫が行われたことによりまして、この改革については一定の成果が上がったもの、かように
考えております。
しかしながら、なお現状必ずしも十分ではないというぐあいに私
どもも認識いたしております。そして、この新しい入試の実施結果については、四回の経験を踏まえたということでもございますので、今後とも各大学においていままでの実施の経験を生かした改善が図られることを私
どもとしても期待をしておりますし、また、
文部省といたしましても入試改善
会議等で今後の改善についても
関係者にお集まりいただいて
議論をしていただいているというのが現状でございます。
なお、さらに御
指摘の点で、なるだけ細かく説明をというお話でございますので、さらに補足して申し上げますと、その問題点は、
一つには、実施時期についてはいま概括御説明をした点でございますけれ
ども、たとえば大学側において入学時期を変更させるなどの措置も含めた最善の配慮をすべきであるというようなことが
指摘をされているわけでございますが、この点につていは、たとえば次のような問題点がございましてなお慎重な検討を要するかと
考えております。それは、
一つには高校卒業から大学入学までの期間の、その青年をどのように扱うかという点が
一つ問題がございます。それから第二点として、高校卒業者の進学と就職の時期との関連がやはり
関係が出てくるわけでございます。それから
一つには、大学卒業までの期間がそれだけ長くなることになりまして、それに伴う家計の負担などをどう
考えればいいかというような問題がございます。さらに、たとえば具体的に、四月から九月に入学時期を移すというようなことになりますと、私立大学の場合については、その間の問題として、空白期間についての財政的な影響をどう
考えるかというようなことがございますし、ほかにも、たとえば入学時期を統一的にずらすということについては、たとえば会計年度とのずれをどのように調整するかというような問題がございまして、入学時期の変更ということについては、これらの点についてなお十分慎重な配慮が必要なわけでございます。
なお、現在、学校教育法施行規則の七十二条二項では「大学は、特別の必要があり、かつ、教育上支障がないときは、」いわゆる学年について、学年の途中において学期の区分に従って、学生を入学させるという措置は、具体的には、たとえば九月入学というような形で帰国子女でございますとか、そういうような者については具体的に実施はしているわけでございますけれ
ども、統一的な入学時期の変更ということについては、いま申し上げたような点について問題点があるわけでございます。したがって、この点は、私
ども今後ともなお慎重に検討を進めさせていただきたい、かように
考えております。
それから、第二点で御説明しました二段階選抜の問題でございますけれ
ども、これらについては、
先ほども申し上げましたように、ごくわずかではございますが、減ってきている傾向にはございますが、なお現実には、たとえば五十七年度の場合で申し上げますと、実際に二段階選抜をするということをあらかじめ決めておりました大学が三十二大学八十九学部で、実際に実施をしました大学としては十三大学二十五学部というような状況になっております。これらの点については、なお今後とも努力をいたしたい、かように
考えております。
なお、いわゆる二段階選抜というのは、たとえば募集定員の三倍で切るとか、あるいは東大で申し上げますと、二・八倍ないし三倍で切るというような形で実施をしているところが多いわけでございますが、中には、たとえば京都大学の法学部のように、四百点以上という点数で切る場合もあるわけでございます。
なお、関連して申し上げますと、推薦入学を実施する大学は現実問題としては増加の傾向にございまして、たとえば五十七年度の推薦入学を実施しております国立大学で申しますと、五十四大学八十九学部というような状況になっております。ちなみに、これは五十四年度では四十六大学七十五学部でありましたものが、そういうぐあいに順次ふえてきているというのが現状でございます。
さらに、面接、小論文を課する大学も増加する傾向にございまして、国立大学の場合、五十四年度で二十七大学三十三学部でございましたものが、五十七年度では三十四大学四十六学部というような状況になってきております。小論文も同様でございます。
それから第三点の、二次試験が過重な負担とならないように学力検査科目の減少などに努めるという点でございますが、二次試験において学力検査を課さない大学学部の状況は、全体的にはふえてきておるような状況でございます。五十四年度の国立の場合、四十四大学六十六学部でございましたものが四十六大学七十一学部というような状況になってきております。
なお、平均的な二次試験における受験科目の状況でございますが、これは共通一次実施前ですと、国立が七ないし八科目でございましたが、五十四年度からは、共通一次実施後の二次試験の科目の平均でございますが、国立の場合、五十四年度が二・九科目でありましたものが、五十七年度二・八科目というような状況になっておりまして、これはほぼ横ばいというような状況にございます。この点では、たとえば東大の二次試験の科目がまだ大変多いではないかというような御
指摘もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、全体的な状況としては、ただいま申し上げたような状況にございます。これらの点もなお今後努力を重ねてまいりたいと思います。
それから第四点の、受験生に受験の機会を確保するため、二次募集方式を実施するという点でございますが、定員を留保して二次募集を行っております大学学部等の状況でございますけれ
ども、国立の場合、五十四年度は四大学五学部でございましたものが、五十七年度では十七大学二十学部ということで、それらの点は相当進捗を見ているということが言えるかと思うわけでございます。
第五点でございますが、共通一次試験への私立大学の参加実現について努力をするという問題点でございますけれ
ども、私
ども、もちろんこの大学入学者選抜の改善というのは、国公私立大学を通じて全体として
考えるべきものと思っておりまして、私立大学に対しても呼びかけをいたしておるわけでございますが、具体的には五十七年度入試から産業医科大学がこれに参加するという点が改善を見た一点でございます。しかしながら、まだ参加の問題についてはいろいろ私学側の
意見として、たとえば試験科目のあり方や実施時期その他、なお検討調整を要する点が多々あるわけでございまして、これらは今後とも私立大学側とも十分話し合いを進めていく必要があろうか、かように
考えております。
それから第六点で言われております、共通一次試験の実施と大学入試制度の改善について広く国民の理解を求めて、受験準備の過熱防止に努力するということ、これは、御
指摘のことは当然のことでございまして、私
どもも、
先ほど申しましたように、入試改善
会議というようなところで
関係者にお集まりいただいて、いろいろ
議論もいただいているわけでございますが、入試の改善については、単に大学入試の問題だけではなくて、全般的にやはり学歴偏重の社会的風潮というものがまず是正されることが必要であり、そして各大学がそれぞれ特色のある充実整備を図るということも必要なわけでございます。それらが全体的な施策として行われることが必要ではないか、かように
考えております。
入試に関する問題では以上でございます。