○
山原委員 文部省も参画をされておるわけでございます。そして、入学までに、ほったらかしをするのではなくて、早期に発見をして、早期に治療をする、あるいは義務教育に準じた、入学までの国と自治体における教育ということ、これは非常に要求されておると思います。
私はいろいろお聞きしたのですが、たとえばイギリスの場合は、二歳より
文部省が教育をするということになっておりますが、二歳以前にやりなさいという勧告が出ております。それからアメリカの場合には、三歳から二十一歳まで、これは義務教育ということで、州によりましてばらばらであるけれ
ども、義務教育の対象としておると聞いております。西ドイツの場合は、乳幼児期における、発見してすぐ教育をせよという意見書も出ておるようであります。フランスあるいはイタリアの場合も、大体就学前乳幼児対策というのを強化すべきであるというふうな意見が全体として出ておるように思います。日本の場合は
文部省も行動計画の策定に参加をされておるということでありますが、しかし、実態としてはかなり放置されておるのが実情じゃないかと思います。
それで私は、乳幼児健診のいわゆる滋賀県の大津方式というのがございまして、これがかなり大きな脚光を浴びておるということを聞きまして、それはどんなことをしておるのかお伺いしたわけであります。これは乳幼児健診と障害乳幼児対策の大津方式と呼んでおられるそうでありますが、大津の場合は人口が二十万で、年間の出生数が、三千二百人から三千三百人赤ちゃんが生まれるそうです。そして一〇〇%健診が過去八年間ないし十年間行われてきておるそうでございますが、ここの特徴は、保健所がそれぞれのところでやるのではなくて、自治体が単位となってやっておるところに特徴があるように思います。そして、三千二百人ないし三千三百人の毎年出生する赤ちゃんの健診を行いました場合に、大体二五%の人が育児上の
相談事項を持っておるそうです。これは健診の場でお母さん方が
相談をするわけですね。未熟児の問題とか育児上の問題とか、あるいはその他の問題があるわけです。一〇%の人は継続した
相談をし、検診の必要な人だということが数字上出ております。そして障害児として治療あるいはリハビリの必要なものが年間二ないし三%あるそうです。大体年間七十名から八十名の障害児が発見をされるということですね。そして、それが大体十年間繰り返して一〇〇%の健診をやっておりますと、それが定着して、予算算定の基礎もできるそうであります。この健診に来ない人については訪問して一〇〇%にするということも聞いております。
こういうふうに経験を積んでまいりますと、ずいぶん成果が上がるものでございまして、それまではなかなか実態がつかめないとかあるいは対策の方法がないとか、あるいは母親がそこまで認識が高まっていないとか、あるいは住民全体にそこまでの意識が盛り上がっていないというようなことで、大体放置されているということだそうです。
ところが、この中で非常に大きな経験としては、健診を受けまして、発見をされて、治療が始まると同時に教育が行われる。教育の始まりというのを障害発見と同時にやる。これは国際障害者権利宣言にもあるところでございます。
それで、いま
初中局長は、この問題につきまして関心を持っておられるという
お話でございましたが、
文部省としましても、教育の始まりというものについて一定の見識を示される必要があるのではないかというふうに思うのです。なぜそんなことを申し上げるかといいますと、この大津の場合には、こういうやり方でかなり大きな成果を上げておられるからであります。今年の四月、七十数名の障害児が発見された、そのうちに脳性麻痺の子供さんが十人おります。そのうちの七名は脳性麻痺単独の症状、三名は合併症、脳性麻痺とあるいは引きつけ、てんかんというようなものが複合して体の中にあるわけですが、この単独の脳性麻痺の子供は、七名とも全員正常に歩けるようになったそうです。とにかく障害を生まれてから六カ月の間に発見しまして、そして訓練を始める、そして親に対しても
取り扱いその他、教育の問題として総合的に対応が検討されます。そうしますと、正しい歩行ができるようになるというのですね。歩くという問題は非常に重要な問題でして、ほうっておきますと、だんだん悪くなる、歩けなくなる、麻痺がひどくなる、こういう
状態でございますが、歩けないということは、
自分が不幸せであるばかりでなく、言葉も不自由になるということだそうでございまして、歩けることは大変なことだそうであります。
この点で、たとえば動けない人というのは、一生で大体五千万円のお金が要るそうでありますけれ
ども、動けるということになりますと、本人も非常に負担が軽減されますし、家族、本人あるいは自治体におきましても負担が軽減される。そういう面から見ましても、これは、本人の幸せであるばかりでなく、大きな影響力を持っているわけです。それで、生まれてから最初の一、二年の間に現代の科学とヒューマニズムの光を当てるかどうかということに、特に脳性麻痺の問題の解決の初動があるということが言われております。訓練すれば脳性麻痺の姿は変わる、これは世界リハビリ協会の宣言の中にも出ておるわけでありますが、大津の場合は少なくともそれが立証された。早期発見をし、治療に取り組み、そして教育が同時に行われるということでございまして、その点では、この成果が立証された一つの例ではないかと思います。
この大津の
先ほど申しました脳性麻痺だけの赤ちゃんの場合は、赤ん坊のときから訓練して、そして幼稚園あるいは保育園に入り、友だちの中で教育を受け、そして両親も教育を受けまして、そういう総合的な対応の仕方によりましてこの七名の子供は全員普通学級に入って、現在教育を受けておる。いわゆる治ったわけですね。あと三人のうち一人は、歩き方が悪いけれ
ども歩ける。それから二人は合併症のためにまだ十分に歩けないのだそうですが、それはなぜかといいますと、その二人のうち一人は三歳から訓練を始めたそうです。一人は五歳から訓練が始まったそうです。そうしますと、その訓練に取りかかるのが遅いわけですね。それがこういうふうに、一方は完全に歩ける、正常に歩ける、一方は歩けないという差が生まれてくるそうでございまして、乳幼児の前半、すなわち四カ月、六カ月の健診と指導が非常に重要になってきたということが報告をされておるわけであります。
長い経験を申し上げて大変恐縮でありますが、とにかく現在三歳児あるいは一歳半で早期発見をするという認識が厚生省などにもあるわけでございますけれ
ども、それでは遅い。一歳半とか三歳児の健診のときには、生まれたときの健診の積み重ねが確認をされるためのものでなければならぬ、こういう
主張を、この経験を通じてされております。
それからもう一つは、一歳から二歳児のときにいわゆる子殺し、親子心中が一番多いのだそうです。これは日本福祉大学の大泉先生の統計によりますと、六〇年代の十年間で、障害に苦しみ、自殺をした人の五割がこの一歳から二歳児を抱えた親子の心中、子殺しということになってあらわれておるそうでございます。どうしてそんなことになるのですかと私が聞きましたら、赤ちゃんのときはお母さんは抱いて病院に行ったり、いろいろすることができますけれ
ども、一、二歳になってくると次第に重くもなってまいります。つまり、この子供たちの将来に対して親は展望を持つことができないから、ほとんどの親が、川辺を歩いたり、鉄道のそばを歩いた経験を持つというのですね。話をし、
相談をするところもないというようなことでそういう
状態に置かれまして、心中をしたり、あるいは子供を殺したりするということが出てくる、こういう報告を伺いまして、私は一面的な見方ではありませんけれ
ども、これは重要なことを示唆しておるのだということを痛切に感じたわけであります。
したがっていまこういう一〇〇%乳幼児、赤ちゃんを漏れなく健診して、発見して、訓練していくという、教育と治療とを同時に行っていくという体制は、全国そうたくさんはないと思います。少なくとも各県一つ当たり、大体適
正規模の人口を持つ都市におきましてそういう典型的なそういう施設あるいは制度が自治体によって生まれましたら、ずいぶん子供たちは助かるばかりか、親も助かるのではなかろうかというふうなことを感じたわけでございますが、これについて、率直に言いまして、厚生省の方にも来ていただいたのですが、やはりここまで徹底した経験を積んでおりませんし、いろいろやっていますやっていますということをおっしゃるのですが、健診にしても、三歳あるいは一歳半というところで健診をする、それで事足りるでしょうというお
考えがあるように聞いたわけです。
それから教育の面でも、やはり乳幼児からの教育ということに、いまは小中学校、義務教育その他、目はそっちへ向いて、とにかくこれは何とかしなければいかぬという、山積するような問題がありますから無理からぬことではありますけれ
ども、しかしここへ少なくとも、厚生省もそうですが、きょうは厚生省呼んでおりません、
文部省も目をつけていただいて、そして二十一世紀に向けて、日本の子供たちが本当に漏れなく大事にされていくという方向を持つべきではないかという
意味で、あえてここで時間をとりまして長々と申し上げたわけでございますが、この点で、
文部大臣に対しましても、私の言ったことは実際に聞き取りと、そして出されておる資料を見て申し上げておりますので、正確を欠く面があるかもしれませんけれ
ども、ほぼ間違いはなかろうと思います。一つの自治体においてこれだけの努力がなされておるということを
考えますと、これは
文部省としても、きょうは
公立幼稚園の改善の問題で議員立法で提案をされておる段階でございますから、ここのところへも
文部省としては関心も持ち、また検討を進めていくというお
考えをぜひ持っていただきたいと思うのでありますが、その点について
文部大臣にお伺いしたいと思うのです。
その前に、きょうは
中西さんがずっと御
答弁されておりますので、社会党の文教部会長であります
湯山先生もおいでになりますが、私のこの話をお聞きになりまして何か感ずることがありましたら先にちょっと御
見解を伺って、それから
文部大臣の
見解を伺いまして、私の
質問を終わりたいと思います。