○玉生政府
委員 昭和五十七年度
文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
昭和五十七年度の
文部省所管予算につきましては、いわゆるゼロシーリングの
もとに、臨時行政
調査会の第一次答申を尊重しつつ編成いたしたところでありますが、文教は国政の
基本であるとの認識に立ち、
教育、
学術、
文化の諸
施策について予算の確保に努めたところであります。
文部省所管の一般会計予算額は四兆五千八百四十八億三千四百万円、
国立学校特別会計の予算額は一兆四千七百四十一億三千万円でありまして、その純計額は、五兆二百二十億四千四百万円となっております。
この純計額を
昭和五十六年度の当初予算額と比較いたしますと千六百八十億八千四百万円の増額となり、その増加率は三・五%となっております。また、
文部省所管の一般会計予算額の増加率は二・六%となっております。
以下、
昭和五十七年度予算における主要な事項について御説明申し上げます。
第一は、
初等中等教育の
充実に関する経費であります。
まず、義務
教育諸
学校の
学級編制及び
教職員定数につきましては、
昭和五十五年度から第五次
改善計画が発足したところでありますが、
昭和五十七年度におきましては、臨時行政
調査会の第一次答申及び行革関連特例法の
趣旨を踏まえて、この
改善計画の第三年次分として、いわゆる自然増と合わせて九千三百四十二人の増員に係る経費を計上いたしております。
また、教職員の
資質の
向上を図るため、新規採用
教員等研修、免許外教科担任
教員研修、
教員の海外派遣、
教育研究グループ
補助、
教育研究団体への
助成等、
各種研修を引き続き
実施することといたしております。
次に、小
学校及び中
学校における新
教育課程の
実施状況について、
昭和五十六年を初年度として四カ年にわたり総合的に
調査研究を行い、将来の
教育課程や
学習指導
方法の
改善に資することといたしておりますが、
昭和五十七年度におきましても引き続き
調査研究を進めることといたしております。
生徒指導の
充実強化につきましては、
学校、
家庭及び
地域社会が一体となった生徒指導
推進体制の強化を図るため、新たに中
学校生徒指導
推進会議を開催することとしたほか、カウンセリング技術指導講座を
拡充するとともに、引き続き生徒指導
推進校の指定等を
実施することとし、さらに、人間性豊かな
児童生徒の
育成に資するため、新たに勤労生産
学習研究推進校の指定を行うこととしております。
義務教育教科書の無償給与につきましては、引き続きこれを
推進することとし、定価の改定など所要の経費を計上いたしております。
幼児
教育につきましては、特に私立
幼稚園園児の保護者の経済的な負担の軽減を図るため、
幼稚園就園奨励費
補助について保育料等の減免限度額を引き上げることとしたほか、引き続き
幼稚園施設の
整備を図ることといたしております。
特殊教育につきましては、重度・重複障害児のための介助職員の増員を図るとともに、
心身障害児の適正就学の
推進等を行うことといたしております。
学校給食につきましては、魅力ある
学校給食を目指して、
学校給食施設、設備の
整備充実を図ることといたしております。
また、
児童生徒等の健康の保持
増進に資することとするため、
日本学校安全会と
日本学校給食会とを統合して
日本学校健康会を設立するとともに、健康診断、交通安全
教育の
充実を図ることといたしております。
次に、
公立学校施設につきましては、校舎等建物の新増改築事業について必要な事業量の確保と
補助単価の引き上げを図るとともに、
危険建物改築
補助基準の千点引き上げ
措置の継続、国庫
補助対象経費の非木造建物の解体撤去費への拡大、たくましく心豊かな
児童生徒の
育成を図るための屋外
教育環境整備に対する国庫
補助制度の創設、
小中学校クラブハウスに対する国庫
補助の
拡充等を行うこととし、これらに要する経費として四千八百三十七億円を計上いたしております。
以上のほか、要保護・準要保護
児童生徒援助の
充実、
地域改善対策としての
教育の
振興、定時制及び通信
教育の
振興、理科
教育及び産業
教育の
充実、英語
教育の
振興等、各般の
施策につきましても所要の経費を計上いたしております。
第二は、
高等教育の
整備充実に関する経費であります。
まず、放送
大学につきましては、昨年七月、その設置主体となる放送
大学学園を設立いたしましたが、
昭和五十七年度は、
昭和六十年四月の学生受け入れに向けて諸準備を進め、広く国
公私立大学との連携協力の
もとに、放送を効果的に活用した
大学教育の
実施を
推進することといたしております。
次に、
国立大学の
整備につきましては、従来から進めております
大学・学部の
創設準備等を引き続き行うほか、地方における
国立大学を中心に
教育研究上緊急なものについて学科等の
整備充実を図ることとし、
大学学部及び短期
大学の学生入学定員を五百九十人増員することといたしております。
大学院につきましては、島根医科
大学に新たに
大学院を設置するほか、
研究科、専攻の新設等により、七百四十三人の入学定員増を行うことといたしております。
また、附属病院につきましては、新たに岡山
大学及び長崎
大学の歯学部に病院を創設するほか、既設の附属病院についても救急部の新設等その
充実を図ることといたしております。
なお、
国立大学の授業料につきましては、諸般の情勢を総合的に勘案し、
昭和五十七年度にこれを改定することといたしております。
次に、
公立大学の
助成につきましては、医科
大学、看護
大学等の
経常費補助等について、引き続き
充実に努めることといたしております。
さらに、
育英奨学事業につきましては、日本育英会の学資貸与について、
大学院の貸与人員を増員するとともに、政府貸付金八百七十三億円と返還金とを合わせて千百三億円の学資貸与事業を行うことといたしております。
第三は、
学術の
振興に関する経費であります。
まず、
大学等を中心とする
学術研究の基盤を強化
充実するため、
研究設備その他
研究条件の
整備に努めるとともに、独創的、先駆的な
研究を
推進するための
科学研究費について引き続き
拡充を図ることとし、
昭和五十六年度に対して二十二億円増の三百八十億円を計上いたしております。
次に、重要
基礎研究につきましては、核融合など
エネルギー関連科学を初め
加速器科学、宇宙・地球環境の解明などの
研究を計画的に
推進するとともに、九州
大学の温泉治療学
研究所を改組し、生体防御医学
研究所を設置するなど生命科学の
研究についてもこれを
推進することとし、これらに要する経費として五百二十九億円を計上いたしております。
また、国の内外を通ずる
学術協力、交流につきましても各般の
施策を進めることといたしております。
第四は、
私学助成に関する経費であります。
まず、私立の
大学等に対する
経常費補助につきましては、臨時行政
調査会の第一次答申もあり、配分
方法をより効率的なものに
改善することとして、
昭和五十六年度と同額の二千八百三十五億円を計上いたしております。
また、私立の
高等学校から
幼稚園までの経常費
助成を行う都道府県に対する
補助につきましては、私立
高等学校の生徒数の急減の対応する等のため、
昭和五十六年度に対して二十億円増の八百五億円を計上いたしております。
日本
私学振興財団の貸付事業につきましては、政府出資金二十億円を計上するとともに、財政投融資資金からの借入金四百七十四億円を計上し、自己調達金と合わせて
昭和五十六年度と同額の八百五億円の貸付額を予定いたしております。
また、
専修学校につきましては、
教員の研修事業等に対する
補助を引き続き行うほか、新たに
専修学校に国費留学生を受け入れることとし、専修
学校教育の一層の
振興を図ることといたしております。
第五は、
社会教育の
振興に関する経費であります。
まず、
地域における
社会教育活動展開の拠点となる
公立社会教育施設の
整備につきましては、
補助単価を
改善するとともに、図書館について
補助対象館数を増加することとし、これらの
施策に要する経費として百五十三億円を計上いたしております。
また、
社会教育において重要な
役割りを果たしている
社会教育指導者につきましては、派遣
社会教育主事の給与費の
補助について、これを
改善することとし、
指導者層の
充実に努めることといたしております。
さらに、
社会教育活動の
振興につきましては、新たに生涯
教育推進事業を
実施するなど
社会教育の幅広い展開を図ることとして所要の経費を計上いたしております。
次に、
青少年の健全
育成に資するため、
青少年関係団体に対する
補助を
充実するほか、計画的な設置を進めております
国立少年自然の家につきまして、岡山県賀陽町に第七番目の少年自然の家を設置することとし、所要の経費を計上いたしております。
第六は、
体育、
スポーツの
振興に関する経費であります。
国民の
体力つくりと
スポーツの普及
振興につきましては、広く
体育、
スポーツ施設の
整備を進めるため、
社会体育施設、
学校体育施設についてその
充実を図ることとし、これらに要する経費として二百二十九億円を計上いたしております。
また、
学校体育につきましては、格技等の
指導者の
資質向上、人材の確保などに努め、格技指導
推進校に対する
補助の
拡充を図るほか、
学校体育大会の
補助についても引き続き所要の経費を計上いたしております。
さらに、
体力つくり
推進校や少年、高齢者を対象とした生涯
スポーツ推進事業など
家庭、
学校、
地域における
体力つくり事業の
充実を図り、たくましい
青少年の
育成と明るく活力ある
地域社会の形成に資することといたしております。
以上のほか、日本
体育協会の行う
国際競技力向上事業や海外
スポーツ技術協力事業に対し引き続き
補助を行うとともに、
国民体育大会の
助成等各般の
施策につきましても所要の経費を計上いたしております。
第七は、芸術
文化の
振興と
文化財保護の
充実に関する経費であります。
まず、
地域社会における
文化の
振興につきましては、こども芸術劇場、
青少年芸術劇場移動芸術祭等各般の
施策について、引き続き所要の経費を計上してその
促進を図ることといたしております。
また、芸術
文化創造の援助等につきましては、芸術関係団体の創作活動に対する
補助、芸術家研修、芸術祭について引き続き所要の経費を計上するとともに、新たに中国引き揚げ者に対する日本語教材を作成するための経費を計上いたしております。
次に、
文化財保護につきましては、
国民の貴重な
文化遺産の保存、活用を図るため、国宝、重要
文化財等の
保存整備、
埋蔵文化財の発掘
調査、史跡の
整備、公有化を進め、また、伝統芸能等の保存伝承を図るほか、天然記念物の食害対策を
充実することといたしております。
また、
文化施設の
整備につきましては、
地域社会における
文化振興の拠点となる
文化会館や歴史民俗資料館等の地方
文化施設の
整備を引き続き行うとともに、
国立文化施設について、
国立能楽堂、
国立文楽劇場の建設工事を進めるほか、第二
国立劇場についても用地購入等に要する経費を計上するなど、その
設立準備を
推進することといたしております。
第八は、
教育、
学術、
文化の国際協力の
推進に関する経費であります。
まず、主として
発展途上国への協力を
促進するため、国費留学生の新規受け入れを大幅に増員するとともに、各国の需要に応じて
高等専門学校、
専修学校への受け入れを
実現するなど、留学生の受け入れ体制を
整備するほか、ユネスコを通じた
教育協力等を
推進することといたしております。
また、海外子女
教育につきましては、日本人
学校の
増設、派遣
教員の増員、教材の
整備等を行うとともに、帰国子女受け入れ体制の
整備を行うことといたしております。なお、新たに、海外子女
教育に関する
施策立案の
基礎とするため、総合的な実態
調査を
実施することといたしております。
次に、
学術の国際協力を
推進するため、日本
学術振興会が行う
研究者交流事業、
発展途上国との
学術交流事業を
充実するとともに、日米科学技術協力事業、中国との
学術協力事業等の
推進を図ることといたしております。
以上、
昭和五十七年度の
文部省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。何とぞよろしく御
審議くださいますようお願い申し上げます。