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1982-04-22 第96回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十二日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 武部  文君    理事 狩野 明男君 理事 岸田 文武君    理事 中島源太郎君 理事 牧野 隆守君    理事 井上  泉君 理事 小野 信一君    理事 長田 武士君       小澤  潔君    熊川 次男君       長野 祐也君    金子 みつ君       新村 勝雄君    春田 重昭君       中野 寛成君    岩佐 恵美君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       湯川  宏君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         建設大臣官房会         計課長     梶原  拓君  委員外出席者         経済企画庁調整         局国際経済第一         課長      丸茂 明則君         経済企画庁調整         局財政金融課長 宮島 壯太君         経済企画庁調査         局審議官    横溝 雅夫君         文部省体育局学         校給食課長   奥田與志清君         通商産業省産業         政策局調査課長 山本 雅司君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      熊野 英昭君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    野口 昌吾君         通商産業省生活         産業局通商課長 林  昭彦君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      若林  茂君         中小企業庁計画         部振興課長   桑原 茂樹君         建設省都市局都         市計画課長   田村 嘉朗君         建設省住宅局住         宅政策課長   北島 照仁君         日本国有鉄道旅         客局長     須田  寛君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ————————————— 四月十五日  勤労者生活向上に関する請願(小沢一郎君紹  介)(第二一二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 武部文

    武部委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  3. 新村勝雄

    新村委員 物価経済に密接な関係を持っております行政改革は、現在の最大政治的な課題、それからまた国民にとっても最大関心事でありまして、その成功はすべての国民が望んでおるわけであります。私どももまた、もちろんこの行革成功を期待いたしておるわけでありますが、まず、長官行革に対する基本的な考え方について伺いたいわけです。  行革実施すべきである、またその合理的な推進によって財政再建、それから日本経済活力回復するということについては異論がないわけでありますけれども、この行革を進めるに当たっての手続の問題、あるいはこれを取り扱う政府姿勢について伺いたいのですが、この行革を推進しておるのはもちろん政府であり国会であるはずでありますけれども、いま臨調の存在が非常に大きくクローズアップされておりまして、臨調行革のすべてである、あるいはまた、事行革に関連のある政治についてはすべてが臨調待ちということでありますけれども、もともと、日本政治体制なり機構なりというのは憲法規定によって国会国権最高機関である、それから国会信託に基づいてあるいは国民信託に基づいて政府実施をする、これは言うまでもないわけでありますけれども、こういう憲法規定、原則的な問題から言いますと、臨調というのは設置法によってつくられておる単なる諮問機関にすぎないわけであります。基本的には、国会に対しても責任を負うものでもなければ国民に対しても責任を負うものでもないわけでありまして、これは単なる政府諮問機関、こういう立場であります。したがいまして、現在の行財政のある意味では行き詰まりといいますか、国債が本年末には百兆に達するというような財政行き詰まり、これはいままでの政治の厳しい反省の上に立って、どこにむだがあるのか、あるいはどこに冗費があるのかということを政府みずからが厳しく反省をして、政府みずからが行革の基本的な構想をつくり、骨格をつくって、そして、これを国会に諮って実施をするというのが基本的な筋だと思うのです。いまの形でいきますと、何か政府臨調待ちである、あるいはまた臨調にすべてを依存しておるという形でありまして、いわば政府国民に対する最高政治責任を、回避とまでは言わないにしても、そういう形が見られると思うのです。  行革というのは少なくとも現在の政治課題として最高のものでありますから、政府みずからが一番日本政治については知っている、豊かな経験と隅々に至るまでの情報を持っておられるのは政府でありますから、政府みずからの責任国会に対する責任に基づいて政府みずからが行革をやる、最終的にはそういう形になるのでしょうけれども臨調というようなものは単なる諮問機関にすぎないわけでありますから、もう少し政府みずからが陣頭に立って行革をやるんだという姿勢を打ち出すべきではないかと思うのですけれども鈴木内閣の最有力閣僚であられる長官に、ひとつその基本的な問題をまず伺いたいと思います。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 ただいまのお話は、国権最高機関国会である、行政責任政府にある、したがって政府の上に臨調があるという感じの政治はよくない、こういうお話でございますが、政府の方は、政府の上に臨調がある、臨調の指示によって政治が行われる、そのようには考えておりませんで、行政改革については、法律に基づきまして第二臨調をつくってもらって、土光さんに会長になってもらって、その第二臨調から行政改革はかくあるべしという答申をひとつ出してください、その答申が出れば政府はそれをそのとおり実行いたします、そのつもりでひとつ行政改革について思い切った答申をお願いします、こういうことを言っておるわけでありまして、政府の上に臨調がある、こういうことではないと思いますし、そういうことがあっては困るわけでありますから、臨調答申を受けて政府行政改革をやる、こういう筋道だと思っておりますし、現在もそのように進んでおる、私はこう思っております。
  5. 新村勝雄

    新村委員 当然そうあるべきだし、臨調臨調の独自の立場で検討されておると思いますけれども、これはマスコミの取り上げ方もおかしいと思うのですが、何かすべて臨調待ち、また臨調が何か政府国会の上に君臨をしておるというような印象を与えるわけですよ。ですから、臨調答申は尊重すべきだし貴重だと思いますけれども、何よりもよく御存じなのは政府でありますし、現在の行政機構のどこに欠陥があるのか、むだがあるのかということを一番政府はよく御存じであるはずでありますから、政府みずからがいままでの政治反省の上に立って、もちろんいままでの政治のいいところはたくさんありますけれども反省すべき点もあるわけでありますから、その反省の上に立って、みずから行革をやるという姿勢をもう少し国民の前にはっきりしていただきたいということでありまして、これをお願いしたいわけであります。  次に、行革に伴って、行革というのは財政と密接な関係がございまして、いわば財政規模をどの程度にするかということは行革やり方いかんによって決まるわけでありますから、日本経済に大きな影響があるわけです。国民総生産の二十数%を占める財政の収支、これに大きな影響があるわけであります。したがって、行革を徹底的に厳しくやるということになれば、それだけ財政規模は縮小するということで、当然これはデフレ的な作用を日本経済全体に及ぼさざるを得ない、これは避けがたいことだと思いますが、この行革至上命令である、同時にまた、現在の不況を適当なところで抑えて、経済活力を失わないような、あるいはまた日本経済が失速をしないような一方の十分な配慮をしながら、行革を進めていかなければいけないという二つの大きな使命があると思いますね。そういう点からして、行革デフレという関係について長官はどういう御認識を持っていらっしゃるか、これを伺いたいわけであります。  新聞報道等によりますと、あるいはまた、各省においてもこの問題についてはかなり真剣に検討はされておると思いますけれども、たとえば建設省は、これは五十六年当時の試算でありますが、五十七年度における公共投資を前年度並みにした場合には、実質成長率で〇・九%低下するというようなことを試算をされておるようであります。また、経済企画庁におきましてもこの点については御心配になっておるようでありまして、経済企画庁から行政改革景気に与える影響について報告を求めたところが、これに対して経済企画庁側は、行革による歳出カットにより需要は減少し、デフレ効果を発生する、行革デフレ可能性を指摘した。また、行革デフレを埋め合わせるには相当な工夫が必要だ、何らかのこれに対応する対策が必要だということを経企庁御自身もお認めになっておる、ということが報道されておるわけであります。また、財政支出の問題については、仮に一千億の政府支出公共事業であった場合には乗数効果一・三四、したがって千三百四十億程度最終需要が発生する、これは公共事業でありますけれども。したがって、それがマイナスに作用すればマイナス一・三四の最終需要の落ち込みが生ずる。これまた経済企画庁一つ試算であるというふう言われておりますけれども、こういうような行革が直接日本経済デフレ効果を及ぼすことは、経済論から言っても争えない事実だと思いますが、それに対してどういうお考えであるのか。  あるいはまた、この問題については、現在の経済不況、長期にわたる不況でありまして、企画庁では底を打ったというふうにこの前も御説明があったわけでありますけれども、なかなかそれが上向きに転じないというのは、世界経済の不振というようなこともありましょうけれども、同時に、行革デフレがかなり現在の経済の沈滞に作用しているのではないか、こういうことが感ぜられるわけであります。そして、そのためにはこのままでいいのか、このままで行革を進めること、これは最大課題ではありますけれども、このままで他に対応の施策を同時にとらなくていいのかどうか、こういうことをひとつ伺いたいわけであります。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 いろいろなことをお話しになりましたが、まず私どもは、行政改革はあくまで推進しなければならぬと考えておりますが、行政改革財政再建は別の課題だ、こう思っております。実は昨年の年末まではそれが混同されておりまして、行政改革財政再建だ、こういうことで行財政改革という言葉などがずっと使われておったのでございますが、行政管理庁の方で、行政改革財政再建は別の概念である、行政改革財政再建のためにやるのではない、行政改革本来の目的のためにやるのだ、その結果財政再建にある程度貢献をすることも当然あるであろう、しかし行政改革が即財政再建につながって、行政改革をやればあとはすべての条件いかんにかかわらず財政再建ができる、そういうものではありません、こういうことで、三つの概念を区別する必要がある。こういうことを昨年の年末に言い出されまして、政府の方でも、なるほどそれはそのとおりであるということで、現在はこの二つ概念を区別して考えるようになっております。昨年の年末以来のことでございます。  そこで、先ほども、行政改革はどうしてもやり切らなければなりませんが、同時に財政再建もやらなければならぬ。財政再建をやるためには、行政改革はもちろん必要でございますが、それだけでは不十分でありまして、やはりわが国経済の力を回復していく、景気をよくする、それを背景にして政府の期待するような税収も確保できる、こういう前提条件をつくり出すことが必要だ。だから、いま私ども考え方は、行政改革景気回復を並行して成功させる、それが財政再建成功への道である、このように理解をしておるということが一つであります。  行政改革は必要だけれども景気回復は後回しでいいのだ、景気対策はやる必要はない、こういう意見に対しましては、私どもは、本当にそうだろうか、それならば結構だけれども、本当にそういうことで財政再建ができるのだろうか、やはり景気回復行政改革を同時に進める必要があるのではないか、このように私どもはいま考えておるということでございます。  それから、現在の不況についての分析がございましたが、私どもは、現在の不況行政改革によるデフレ効果ということよりも、むしろ基本的には、第二次石油危機の悪い影響世界を全面的に覆い、そしてわが国もその厳しい影響から抜け切らないでいる、こういうところに私は最大背景があるのではないか、こう思っております。  特に、五十六年度経済成長はまだどの見当になるかはわかりませんけれども、昨年の一月から十二月までの暦年経済成長は二・九%成長ということになっておりまして、そういう暦年経済成長から見まして、会計年度としての成長は三%台を確保するということも大変厳しい、したがって、政府の四・一%成長ということはまず不可能であろう、こう思っております。そして、その正確な数字がわかりますのは、六月になれば年度としての成長率が判明すると思います。  そこで、問題点は、五十五年度も三・七%成長になりまして、今回五十六年度が三%弱の成長ということになりますと、二カ年を平均いたしますと三%強という成長率になるわけでございまして、この状態日本の平常な経済の姿なのかどうかということにつきましては、これまで何回か国会議論されてきましたが、私どもは、これが普通の姿ではない、やはり大変悪い状態である、過去二カ年間、五十五年、五十六年は非常に悪い経済状態が続いておるんだ、このように理解をしておるわけであります。ちょうど昭和四十九年と昭和五十年が平均で二%弱の成長が続いておりまして、それは第一次石油危機による影響でありまして、その二%弱という成長は臨時的、一時的なものであって、これが日本の普通の姿ではないということを当時も申しておったのでございますが、五十五年、五十六年の三%強という成長も、これは第二次石油危機影響による一時的な現象であって、これが平常な姿ではない、その背景には第二次石油危機という非常に大きな出来事があって、それがいま全世界に厳しい影響を与えておる、その結果がこうなっておるんだ、こういう理解をしておるところでございます。
  7. 新村勝雄

    新村委員 行政改革財政再建は別だというお話でありまして、これはそのとおりだと思います。そしてまた、そういう概念変更、最初は財政再建行政改革一つのものというふうに打ち出されたような印象をわれわれは受けるのですけれども、そうではないということは、経企庁さんがやはりそういう概念変更をする指導をされてきたと思いますし、それは正しいと思うのです。ですから、そういう意味で、いま言われておるように、予算編成にゼロシーリングを採用すればこれは財政再建になるのだ、あるいはまた、いま伝えられるように、五十八年度マイナスシーリングだというふうなことも伝えられておりますけれどもマイナスシーリング実施をすれば一層行政改革ができるのだ、こういう印象をわれわれは受けるのですけれども、これはそうじゃないと思うのですよ。いま大臣が言われるように、行政政改革行政改革財政再建とは別だということは、財政再建というのは日本経済活力を与えて一層の活気を与えていかなければできないわけであります。行政改革というのは世上よく言われるように予算を圧縮すれば行政改革になるのかということでありますけれども、これは角を矯めて牛を殺すということにもなりかねないわけでありまして、財政再建一つ要素にはなろうかと思いますけれども、これは必ずしも予算を圧縮すること、あるいはマイナスシーリング実施をすることが行政改革のすべてではない、行政改革一つの要因にはなろうというふうにわれわれは考えるわけであります。  そういう意味から言いまして、いま臨調あたりで言っておりますマイナスシーリングを今度は実施政府にさせるのだ、政府の方も、ごもっともです、マイナスシーリング実施をしますというようなことをおっしゃっておるような向きもあるかと思いますけれども、これはそうじゃないですね。財政国民のために政治をやるという基本的な原理の上に立たなければいけないわけですから、そういう機械的な財政再建では国民は困るわけであります。先ほども申し上げましたように、現在の行政機構の中にどこにむだがあるのか、どこに冗費があるのかということは政府がよく御存じでありますから、そのいままでの反省の上に立って、政府みずからが現在の行政機構を一新していくというこういう発想の上に立って、やはり行政改革財政とは別だという立場でひとつやっていただかなければいけないと思うのです。  そういう意味からすると、いま総理は、五十九年度赤字公債脱却至上命令として、あるいはまた政治生命をかけても実施するとおっしゃっておりますけれども、その意気込みはまことに壮とするわけでありますが、そのことだけが財政再建ではないのじゃないか。経済というのは生き物でありますから、常に変化する情勢に対応しながら、五十九年の脱却を目指しながらも、やはり不況対策の必要な手は時々刻々に打っていかなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでありまして、その点、河本長官は、いままで現在の状況に対して有効な手を打つべきだというようなことをしばしば発言をされておるようでありますけれども、そのお考えはどうであるのか、それでもなおかつ、現在のままでずっとあと半年なり一年なりを推移していこうとするのか、この点を伺います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十七年度予算が四月五日に成立をしたばかりでございますが、この予算はゼロシーリングというのが一つ特徴であったと思います。ただし、例外がございまして、この例外防衛費、エネルギー、経済協力科学技術、この分野は国の安全とわが国の将来の発展にかかわる課題でありますから、これは特例として必要な予算はつけましょう、こういう四つの例外を設けながらの基本的にはゼロシーリングというのが五十七年度予算特徴であったと思います。  そこで、五十八年度マイナスシーリングだ、そういう声があるがどうかというお話でありますが、そういうことは新聞でしばしば報道をされますけれども、その出所も不明でありますし、私どもも正式にどこからも聞いておりません。また、政府部内でマイナスシーリングというようなことを議論したこともございませんし、実は私も、どこが出どころかな、こう思っておるのですが、あるいは五十八年度予算編成をいたします場合に、財源という問題に絡んで五十七年度よりも厳しい予算編成が行われる、こういうこともあり得ようかと思いますけれども、これはまだこれから三、三カ月たちまして、五十八年度予算編成は一体どうすべきかということについて幅広い議論をしまして、それから、幾つかの条件を勘案して最終的に決めることでございまして、これは現在の結論ではございません。  それから、行政改革というのは、これは行政機構を効率的に運営をする、そういう仕組みにするということであって、冗費を省くということが行政改革の目標であるべきだ、こういうお話でございますが、それは当然そのとおりだと思います。先ほども申し上げましたように、行政改革財政再建はおのずから違う概念である、これは先ほども申し上げたとおりでございます。
  9. 新村勝雄

    新村委員 五十八年度予算編成構想はこれから論議をされると思いますけれども長官の現在の心境からして、五十八年度予算編成の基本的な考え方はどういうものでしょうか。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 七月には臨調本格答申も出るということにはなっておりますので、これは当然やらなければならぬと思いますので、これは、ある程度五十八年度予算に生かされまして相当な効果が出るであろう、私はこう思っております。  それから、予算編成いたします場合に財源がどうなるかということでございますが、ことしの初め大蔵省国会財政中期展望というものを出しておられますが、それを見ますと、五十八年度予算の見通しとしまして、四十一兆の税収入があるという前提の上に立ってなお三兆三千億要調整額が発生をする、そういう数字が発表されております。四十一兆という税収、なお三兆三千億という要調整額、要調整額というのはそれだけ不足するということだと思うのですが、五十六年度税収は、先般大蔵省の方から、二月までの税収の実績を基礎にして計算をされた結果、三十二兆円という予算に盛られた税収に対して七%ないし八%減、それだけ足らなくなる、こういう報告がなされたばかりでございますが、七%ないし八%足りないということになりますと、これは二十九兆を若干超えた数字になるのではないか、こう思います。もっとも大蔵省の方も、なお未確定要素があるからこれは一つの推測である、推定である、こういう前提条件はついておりますけれども、もしその推測どおりいくならば二十九兆台になるわけでございますから、五十六年度税収に対して五十八年度は、五十七年度は御承知のようについ最近通りました予算で三十六兆六千億ということになっておりますが、五十八年度は四十一兆ということになりますと、十二兆も五十六年度税収よりもふえなければならぬということになりますので、よほどしっかりした経済運営が必要になる、こう思っておりますが、まだこのことについて詰めた議論は一回もしておりませんので、これからの基本方針が一体どうなるのか、そのことについてはこれからの課題だ、このように思います。
  11. 新村勝雄

    新村委員 いまのお話でも五十六年度で二兆数千億、それから五十八年度にも三兆の要調整額、五十七年度もその中間あるいはそれ以上の調整額がこのままでいけば出るというお話ですね。そうなりますと、それに対する財源不足をどういうふうに調整していくか、あるいはまた、その財源を確保できるような経済状況をこれからどうしてつくっていくかということでありますけれども、それについては長官、何か御感想はないですか。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 さしあたって、五十七年度経済をどうすべきかということについていま議論しておるところでございまして、御案内のように三%前後という成長を受けまして、五十七年度は五・二%成長ということを考えておりまして、そのためにはある程度経済の機動的な運営がどうしても必要になります。  そこでさしあたっては、予算に盛られております公共事業、それから地方関係公共事業、これを思い切って上半期に集中執行いたしましてその執行率を七七%台に持っていこう、こういうことを決めました。それと並行いたしまして、ことしは百三十万戸の住宅建設計画が進められておりますが、そのうち約半分が何らかの形で公的資金が入る住宅でございますので、その分についても上半期にできるだけ繰り上げてやってみましょうということで、この四月末から第一回目の募集が始まるわけでございますが、さらに、昨年発生いたしました災害が約一兆ばかりございますが、この八割をことしじゅう、五十七年度中にやり上げてしまおう、そういう方針でこれも進められております。  したがいまして、上半期の事業量は、いま申し上げました繰り上げ執行によりまして、数兆円の事業量が拡大すると思います。したがいまして経済には相当大きな刺激を与える、こう思うのですが、それでは後半どうなるかということでありますが、後半は世界経済回復をする、そして民間の力も出てくるであろう、私どもはこのように考えておりますので、そうならばいいわけでありますけれども、しかし、公共事業責任官庁であります建設省などにおきましては、そんな漠然たることではやりにくい、もし後半わが国経済が予定どおり回復をしないということになりますと、上半期に十九兆円も公共事業を執行して下半期は五兆円しか残らぬではないか、そうなってきますと、どかんと仕事の量が落ち込んでしまって、経済がたちまちのうちにして悪い影響を受けるではないか、だから下半期には万一の場合はきちんと事業量を確保します、そういうことでできるだけ早く明確にしてもらわないと、上半期の繰り上げ発注あるいは繰り上げ消化ということも有効に進めることは不可能だ、だから上半期に有効に仕事をするためにもできるだけ早く下半期の具体策を明らかにしてもらいたい、こういう要請がございます。それからまた、自由民主党の本部におきましても昨日、後半は三兆円の公共事業の追加をすべし、こういう決議がなされたようでございますが、そういう幾つかの動きがあるのですけれども政府全体としましては、下半期どうするかということにつきましては目下検討中でございまして、具体的にどうするかということは決めておりません。  ただ、万一経済状態が悪いという場合にはほうっておくわけにはまいりませんので、何らかの形で必要にして十分な対策は立てないといかぬと思っております。そうしませんと経済成長も予定よりも落ち込んでしまいますし、税収の方も思うようにはかどらない、こういうことになりますので、そういうことのないように一体どうしたらよいかということについて、目下検討しておるというのが現状でございます。
  13. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、いまのお話の、何らかの必要にして十分な措置ということは大体どういうことを考えておりますか。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 具体的な内容は先ほども申し上げましたようにまだ決まっていないのですけれども、もう少し具体的に申し上げますと、民間経済全体の力が依然として弱い、国全体としての最終需要が非常に伸び悩んでおる、こういうときには政府としては必要な量の最終需要をつくり出す、それは五兆になりますか三兆になりますか七兆になりますかわかりませんが、いろいろな形での最終需要政府の方でつくり出す、こういう政策を進めませんと全体としての経済活力が維持できない、こういうことでございます。  それではどういう形で必要な最終需要をつくり出すのかということでございますが、それはまだ結論は出てない、いま相談をしておる最中である、こういうことでございます。
  15. 新村勝雄

    新村委員 財政によらない最終需要の最も早い有効な方法は所得政策じゃないかと思うのです。ところが、政府は別にその先頭には立っていらっしゃらないと思いますけれども、財界では何か、厳しい状況の中だから春闘も抑えるのだ、賃上げも抑えるのだということで、そういう空気が支配的なようでありますけれども、こういう考え方はまさに後ろ向きの考え方でありますし、ことしの賃上げなんかももう少し奮発をすれば日本経済活力にはかなりプラスになったんじゃないかと思うのですが、そういう点、非常に残念でございます。政府が賃上げを指導する、露骨に指導するわけにはいかぬと思いますが、そういう点もひとつ念頭に置いていただきたいと思います。  時間がありませんので次の問題に入りまして、地価の問題でありますが、物価全般としては卸売物価、消費者物価ともに鎮静をいたしております。これについては大変結構なことでありますけれども、その中で地価だけが必ずしも鎮静をしていない、むしろ高騰の傾向が見られるということがあるわけです。  最近国土庁で発表した全国土地公示価格、それに基づく上昇率を見ますと、平均して住宅地が八・三でありますけれども、これは平均でありまして、高いところは二けた台がざらであります。特に大都市圏、東京圏は軒並み二けたであります。それと、国土庁が行った調査というのは必ずしも実勢を反映していないというふうに考えるわけでありまして、たとえばこれは新聞社の調査でありますが、選定の場所をかえておるというのですね。選定地がえをやっておるということは、図的にとは言いませんけれども、こういうことをしますと地価高騰の本当の姿が出ないということが考えられるわけです。  そこで、地価の選定の地点をかえたということも考慮に含めながら、これは新聞社の調査ですけれども、首都圏、武蔵野、小金井、三鷹、国立というようなところを調べてみますと、三年間で宅地は全部二倍以上になっておる、こういう事実があるわけです。こういうことについて、これは大変重大な問題でありまして、物価鎮静の中で地価だけが高騰するということは、いわゆる社会正義の上から言っても許されないことでありますし、土地政策は物価問題の基本に据えられるべき問題でありますので、この点、特に企画庁においても念頭に置いていただきたいわけです。  消費者物価については五十一年以来ずっと一けた、五十一年が九・三、五十二年が八・一、五十三年が三・八、五十四年が三・六というふうに、非常に好調にきておるわけです。五十五年はちょっと上がっておりますが、五十六年も二けたになることはまずない、一けたの下の方だということで非常に結構なわけでありますが、その中で地価だけが上がっておるということは非常に問題であります。  そこで建設省にお伺いしたいのですが、この地価高騰ということは都市計画法の運営と密接な関係があると思うのです。政府においては、都市計画法の抜本的な改正によって、十年くらい前ですか、主要な都市計画法施行地を市街化区域と調整区域とに分けて、それで有効な土地の使用ということを企図されたようでありますけれども、いまや都市計画法が地価上昇の一つの要因をなしているのではないか、こういうことが考えられるわけです。それと同時に、この地価高騰が住宅建設を大きく阻害しているということが言えると思います。  たとえば、地価はいま申し上げたようにかなり急速に上昇しております。これは不況も手伝っておりますけれども不況だけではなくて、これがむしろ不況をつくり出しておるということも言えます。五十二年から五十三年というふうに、逐年住宅建設の戸数が大幅に落ち込んでおるわけですね。五十三年が百五十四万、五十四年が百四十九万、五十五年が百二十六万、五十六年が百十五万というふうに急速に落ち込んでおるわけでありまして、これは不況のために落ち込んでおるということも言えますけれども、また落ち込んでいることが不況をつくっているということも言えるわけでありまして、相互規定的な関係にあると思うのです。そういう関係で、この土地政策がいまやマイナスに作用しているというふうな見方ができるわけでありますけれども、まず大臣からその点についての御見解と、それから、都市計画法がいまや所期の目的を達してない、地価上昇の一つの要因をつくっているのではないかということについての建設省の御見解を伺いたいと思います。
  16. 田村嘉朗

    ○田村説明員 市街化区域、それから調整区域の区域区分、いわゆる線引きの問題につきましては、一昨年、五十五年の九月に私どもから見直しの方針の通達を出したわけでございます。現在住宅宅地供給施策が非常に重要であるということにかんがみまして、適切な見直しを推進するようにという趣旨で出したわけでございます。  その主な内容は、まず第一に、宅地の供給に結びつく計画的な市街地の整備が確実な区域につきましては、これを積極的に市街化区域に編入するということでございます。  それから二番目に、大都市地域等におきまして大規模な住宅地開発事業が実施される場合には、随時この市街化区域に編入するということでございまして、この都市計画の変更につきましては原則としておおむね五年ごとに見直しをするということでございますが、そういうことにかかわらず、具体的な住宅供給、宅地供給のプロジェクトがある場合には、随時都市計画を変更するということでございます。  それから三番目に、逆に市街化区域の中の土地であっても、当分の間営農が継続される等の計画的な市街化の見込みのない土地につきましては、積極的に市街化調整区域に編入する、こういうことが主な内容でございます。  これに基づきまして、一部の都市計画区域につきましては随時変更実施しております。  私どもはこれが効果を上げつつあるというふうに見ておりますし、さらに、多くの都道府県におきましては、この通達に基づきまして、五十七年から八年がピークになると思いますが、本格的な見直し作業が始まりつつあるわけでございます。こういうことによりまして、良好な住宅宅地供給に寄与するのではないかというふうに私どもは期待しております。  さらにつけ加えて申しますと、この一昨年の通達の趣旨がさらに徹底されるような具体的な方策がないかということにつきまして、本年一月に、都市計画中央審議会に建設大臣の方から、線引き制度を中心とした都市整備の具体的な方策ということにつきまして諮問をいたし、御審議いただいているところでございます。住宅宅地の供給と同時に、計画的な町づくり、かつまた、住宅宅地につきましても良好なものが供給されなければならないということがございますので、両方の面から適切な施策を講じられないかということについて検討中であることを申し添えておきます。
  17. 新村勝雄

    新村委員 長官の土地問題についての御見解はいかがでしょうか。
  18. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、ことしは住宅建設百三十万戸という計画をしておりまして、その前提としまして、住宅金融、土地対策、それから中古住宅対策、これが柱になっておるわけでございます。  そのうちの土地問題についての御意見でございますけれども、いま建設省が言われましたようなことも一つの大きな柱になっておりまして、とにかく土地の需給関係を緩和していくことが肝心でございまして、全国的に見まして大体土地が五%ぐらい足りない、それが上昇の原因だ、建設省もそう言っておられます。大都会では一〇%足りない。だから結局五%ないし一〇%足りない土地が出てきますと、需給関係は均衡がとれるわけでありまして、値上がりの要素はなくなる、それ以上出てきますと土地は下がっていく、こういうことになりますので、とにかく五%ないし一〇%、地域によりまして足りない土地をどう有効に供給するかということが最大の土地政策だ、その一環としての線引きの見直し、このように私は理解をしております。
  19. 新村勝雄

    新村委員 都市計画法は、私ども、実際にその現状から見ると、私の住んでいるところは首都圏内のしかも都市化の激しいところでありまして、同時にまた農村部もあるのですけれども、そういうところの経験からすると、現在の都市計画法は所期の目的を余り達していないのじゃないかと、マイナスの面ばかりが目立つわけであります。市街化区域にいたしましても、市街化区域の中には、確かにちょっとした手直しによって宅地化できるところが相当ありますけれども、相当に農地もあるわけです。この農地を政策的に追い出すということ自体は非常な問題があるわけでして、これは政府もよく御存じだと思いますけれども、実際に宅地並み課税をすべきところも現実の状況によってできないところが六割ですね。やっていないところは六割以上ですね。やっているところが三五%ぐらいしかない。あとはもうやろうとしてもできないわけです。というのは、もともとそういうことをすること自体が無理なわけでありまして、そういう点で、市街化区域と調整区域を画然と線引きをして、そうして市街化区域は純化をしていく、純化をしていくということはそこに介在する農地は政策的に追い出していく、こういうことは最初からできない相談なんですね。ところが、そういったことを想定してこの施策が進められたわけでありますけれども、これがいまや所期の目的がなかなか達成できないという状態になっておるわけです。そういうことで、やはり線引きということを一挙に撤廃することはむずかしいとしても、市街化区域と調整区域との差別を再検討すべきではないか。もちろん線引きの再検討は必要でありまして、現在の線引きは必ずしも合理的にできていないわけです。当然この市街化区域に入るべきところで、良好な宅地になるべきところで除外されているところもかなりあるわけです。それから市街化区域についても、既得権を認めるというような形で、市街化になりかかったところは無条件で市街化区域にしているというようなことで、政策的に整然たる市街地をつくるんだという目的でやられているところが、一方では既得権を認める、一方では適地でありながら調整区域になっている、こういう面がかなり目立つわけです。  そこで、いま御答弁のように、ひとつ思い切って市街化区域を拡大をする。それからまた、調整区域についても野放しではなくて、一定の条件のもとに開発を許すという配慮が特に必要ではないかと思うんですね。そういった点について、ひとつ十分御検討をいただきたいと思います。時間がありませんので、その点を特に要望しておきます。  それから次に、国鉄の問題でありますが、簡単に一、二お伺いしたいのですが、国鉄の現状は大変厳しい状況でありまして、国民もひとしく憂いをともにしておるわけですが、これについての基本的な考え方、これは大臣にひとつ伺いたいのですが、日本における総合的な交通政策というものがいままでなかったのではないか。一方には国鉄という基幹的な大量輸送機関があるのですけれども、そしてまた、これは膨大な国費を投じて、時価にすれば数十兆円の大変な国民的な資産を蓄積をしてきたわけですけれども、一方今度は、マイカーを初めとする自動車が物すごい勢いで発展をした。長距離については飛行機が発展をしたということで、国鉄が窮状に立ったわけですね。これは決して国鉄の、若干の経営上の問題はあると思いますけれども、これは基本的には国鉄の責任ではなくて、やはり国の総合的な交通対策が欠落をしていたのではないか、そういうところからこの問題が起こったのではないかというふうにわれわれは見るわけでありますけれども、そういった点で、従来、日本に総合的な交通対策というものがあったのかどうか。あるいはまた、これからそういうものをつくるべきだと思いますけれども、これは経済の観点から、国民経済の観点からつくるべきであると思いますけれども、その点について一言だけ長官の御意見を伺います。
  20. 河本敏夫

    河本国務大臣 十年前から、国の交通の総合体系をつくるべきであるということで、そういう閣僚会議も実はあるのです。しかし、ずっと動いておりません。現時点は、実際は運輸省が中心になりまして総合交通体系を研究しておられるというのが実情でございますが、やはりおっしゃるように、いまは十年前と違いまして非常に交通体系も違っておりますので、国として総合的な交通体系が常に存在しておるということは、これはぜひ必要だ、こう私も思っております。新幹線の問題にしましても、あるいは航空の問題にしましても、すべての問題はそういう総合交通体系の一環としてどうあるべきか、そういう角度からいろいろ議論する、そういう方向に政府の方も努力しなければいかぬ、その点がやや欠落しておった、私はこういう感じがいたします。
  21. 新村勝雄

    新村委員 政府の総合交通政策の欠落ということがやはり国鉄の十八兆円、二十兆円の赤字をつくり出したということも言えるんですよ。そのことは、同時に、国民経済の上からすれば、これは行革の長期にわたる最大の争点、問題点だと思うんですよ。赤字十八兆円というのは、ある意味では政策がつくり出した赤字、国民的な負担ということも言えますから、そういった面で、国民経済の上からの大変な資源のむだが考えられるわけですけれども、こういった点についてはやはり今後の問題として総合的な交通対策、これは、総合的な交通対策をやっていますと言うだけではなくて、やはり各分野の大量交通機関をどう調整するかということ、これまで踏み込んでいかなければ国鉄は救われないのじゃないかと思います。仮に民間委託をしたって、民間へ管理を移したって赤字は出るわけですから、そこに若干の合理化というか、経営形態の変化による節約があったにしても、基本的な問題は解決されないと思います。  たとえば国鉄さんに伺いますが、今度国鉄さんが運賃を上げられますけれども、過去の何年かの実績を見ますと、運賃を上げても経営に対する貢献は、ゼロとは言いませんけれども、その割りには貢献しないわけですね。たとえば旅客運賃ですが、これは五十五年ですが、五十年を一〇〇とした場合に、運賃水準は五十五年で一九九、約二〇〇、倍になっていますね。ところが実収は一七一ということで伴わない。それから、貨物についてはさらにはなはだしいわけでして、運賃水準が五十年に比べて一九一になっています。それに対して貨物の収入は一三七というふうに、運賃を上げても余り収入がふえないということでありまして、運賃の値上げというものがもうそろそろ限界に近づいておる。私鉄に比べても区間によっては国鉄さんの方が倍も高いという区間もあるわけですから、こういう状況も運賃値上げだけでは国鉄は救われないわけです。これらをひとつ検討されなければいけないと思いますし、同時にまた、運賃値上げによってその負担をするのは、国鉄にどうしても乗らなければならない、国鉄に乗らなければほかには交通機関を求めることができない通勤者であるとか、学生であるとか、そういう人たちなのです。運賃を余り上げ過ぎれば、余裕のある人は飛行機に乗ったりマイカーに逃げたりしますから、マイカーにも飛行機にも逃げられないという階層がこの運賃値上げの負担を全面的にかぶるということです。これは政治的に見ても大変問題が多いと思うのです。これは国鉄さんに申し上げてもしようがないので、長官もひとつこういう実態を十分御配慮いただいて、国鉄だけでは解決できない問題であるということで、総合交通体系の上から、あるいは国政を処理する上から国鉄を考えていただかなければ、通勤者であるとか金のない一般大衆、国鉄に乗らなければどうにもならない人たちだけが運賃値上げによって重い負担を負っていくということになりますので、十分御配慮をいただきたいわけですが、この運賃の問題についてちょっと国鉄さんに伺います。
  22. 須田寛

    ○須田説明員 ただいまの運賃水準と収入実績につきましては、先生御指摘のとおりでございます。ただ、いま御指摘いただきました数字の中で、最近、五十三年以降は比較的運賃の値上げ率が低くなっておりますので、お客様の収入実績が比較的運賃改定率に伴いつつある傾向にあることは事実でございます。  私ども、できるだけ運賃改定の幅を小さくいたしますために、先生御指摘がございましたように極力経費の節減合理化に努めますと同時に、改定に際しましていろいろ工夫をさせていただいております。今回の値上げでも制度改正をお願いいたしておりますので、そのようなことをさせていただきまして、極力お客様なり貨物の目減りを小さく、また値上げ幅も小さくするような努力をいたしまして国鉄の財政再建に努めてまいりたい、かように考えておりますので、どうかひとつまた御指導いただきたいと存じます。
  23. 新村勝雄

    新村委員 時間ですから以上で終わります。  通産省からおいでをいただいておるかと思いますが、時間がありませんので、済みませんでした。
  24. 武部文

    武部委員長 井上泉君。
  25. 井上泉

    ○井上(泉)委員 建設省の方は、新村さんの質問で来られておる方と同じ方でありますし、仕事も忙しいことだと思いますので、先にお伺いしておきたいと思います。  新村さんも指摘したように、都市計画法によって線引きをしたことが非常に土地の値上げを来したわけです。そのことが今日住宅建設の障害になっておる。あなたは、そのことについてはよく見直しもやりいろいろやったと言われておるけれども、現実には宅地供給は非常に窮屈になっており、とてもじゃないが庶民が家を建てるということ、宅地を取得するということは大変なことです。そういう意味で、この土地問題というのは、今日の景気回復一つの大きな目玉と言われる住宅建設を促進する上において大事なことだと私は思うのですが、いまとられておる政策で十分だとお考えになっておるのですか。
  26. 田村嘉朗

    ○田村説明員 先ほどの御質問にもお答えしましたように、私どもといたしましては、計画的に優良な開発が行われる場合には積極的に推進するような方向で、市街化区域、調整区域の区分の見直しを進めているわけでございまして、公共団体が本格的にこれに取り組みつつあるという情勢でございますから、その点で十分期待できると思っております。  さらに、現在の制度の運用につきまして、現在市街化区域の中にかなり相当量の農地が残っておるというふうな問題、それから、調整区域の中における開発を認めるに当たっての建設省と農林水産省等との調整の問題、いろいろあるわけでございまして、こういった諸問題に対処して、先生のおっしゃったような面での宅地供給あるいは住宅供給の促進という観点と、計画的な町づくり、良好なストックの住宅宅地を供給していくということは非常に重要なことだと思いますが、そういうことを絡み合わせながら、具体的な方策がないかということをいま審議会で鋭意御審議いただいておりますので、御了承いただきたいと思います。
  27. 井上泉

    ○井上(泉)委員 何かするというとすぐ審議会にお頼りするわけですけれども、あなたたち、すぐれた頭脳を持っておる方が国家公務員として採用されておるわけですから、あなたたち自身が現況から判断をして決定すべきであるのに、それを審議会にすぐお頼りするような形で自分の責任逃れをする、そういうことが往々にして今日の日本政府の官庁にはどこでもありはしないか。何かすると審議会の答申、審議会の答申、こんなことでは宅地供給はできないと私は思います。  いまあなたが言われた市街地の中における宅地についてはいろいろなことを計画されている。ところが、市街地の中にある農地、これは一体今日どれくらいの価格で普通一般に転売されると思っているのですか。平均的な中都市の市街地の中にある農地はどれくらいの金額で売買されておると思っておるのですか。
  28. 田村嘉朗

    ○田村説明員 これは場所、土地柄によりましていろいろだと思いますが、やはりかなり高い値段で取引されているということは私どもも承知しております。
  29. 井上泉

    ○井上(泉)委員 高い値段でと言われるが、たとえば坪三十万というような土地の価格はないですよ。仮に坪三十万という価格で家を建てるとすれば、三十坪なら九百万要るわけです。市街化農地を宅地化していろいろやっても、そこに庶民が家を建てる場合には、とてもじゃないが手の届くような場所じゃない。そういう点でも、宅地をつくるというか、こういう場合には公共宅地というものに対する積極的な対策を打たなければ、市街化農地を宅地化しても、庶民がそれを買い取ってそこで家を建てるということはとてもできない。だから、そういう点からも公共宅地をもっとふやしていくというような対策がとれないものかどうか、そのことをお伺いしたいと思います。
  30. 田村嘉朗

    ○田村説明員 公共的な事業あるいは公的な資金を投入することによりまして、積極的に住宅宅地を供給していくということは大変大事だと考えておりまして、これは私どもだけの所管ではございませんが、建設省全体といたしまして、そういった方向での工夫をこれからさらに進めていかなければならないというふうに思っております。  また、市街化区域内の農地等につきましては、農地所有者自身による住宅宅地、借地方式とかいろいろございますが、いろいろな形での住宅宅地の供給の促進につながる方法といったものも考えてまいりたいと思っております。
  31. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いま日本の平均的なサラリーマンの収入は年収三百万か三百五十万程度と言われておるわけですけれども、それじゃとても家は建てられないでしょう。そういう人たちは坪三十万、四十万の土地を買って家は建てられないでしょう。だから、宅地としての価格の限度はせいぜい坪十万円、これが庶民の限度だと私は思うのです。あなたの月給は幾らか知らないけれども、あなたも五十万も百万も取ってないでしょう。三十万の月給の中で家を建てるなんてとてもじゃないができない、親からもらうか何かしなければ。そういう点から考えて、公共宅地を積極的に設けるような政策をさらに進めていくということと、もう一つは、市街地を離れると、たとえば市街地から十キロ離れた農村地帯へ行くと、これはもう調整区域とかで農地は非常に安いわけです。ところが、そこから工場へ通っておる労働者あるいは勤めておるサラリーマン、そういうところに住んでおる人たちが、持ち家は欲しい、そしてよその地区へも行きたくない、自分の住んでおる部落の中に宅地に適した農地があるから、安いからそれを分けてもらってやりたい、こう思っても、ここは調整区域とかいうようなことで宅地供給ができないのでしょう。だから、これは都市の過密化を防ぐ面でも本当に住居の地方分散ということにもなるし、そういうところで生活をしておる人にはその地域で安い宅地が手に入るわけだから、そういう場合には、無承認でこれを宅地化するということではなしに、地方自治体の権限等によって、地方自治体の農業委員会なりそういう自治体の承認によって、百坪単位の小規模であろうが、いわゆる百坪ぐらいの畑はたくさんあるのですから、百坪ぐらいの農地を宅地にすることについては承諾を与えるというようなことをとるべきであって、その地域で一町とか十町とかいう広い宅地開発をやると、宅地業者、いわゆる土地ブローカーのえさをつくるということだけであって、本当の意味における庶民に対する宅地供給というものにはならぬわけです。そういう意味で、小規模な宅地供給を便ならしむるため、しかもいまの居住地域に必要な宅地を確保するということからも、調整区域であろうとも、そして農家ではなくとも、その農地を宅地化していくということのできるような方法というものを講じて、国民に宅地取得を容易ならしめるような措置をとるということが大事ではないかと思うのですが、どうでしょう。
  32. 田村嘉朗

    ○田村説明員 先生御指摘のとおり、市街化調整区域の中での既存集落あるいは周辺地における土地利用の問題というのは、大変重要な問題でございます。現在の都市計画法では、市街化調整区域内におきましての開発許可につきましては、二十ヘクタール以上の大規模な開発と、それから、農家の二、三男が分家する場合等の市街化の促進のおそれのないものということで、大変厳しい運用がされているわけでございます。  しかし、私どもは、いまおっしゃったような面から考えますと、この調整区域内の既存集落及びその周辺地における土地利用の合理的なあり方ということは、大変重要な問題であると考えておりまして、これを現在の都市計画法の中でどのくらい運用していけるか。また、この問題は同時に、農村集落あるいは農用地の整備という問題とも大変に密接な関係がございますので、農林水産省とも相談申し上げながら、ひとつ重要な問題として、審議会と申し上げますとまたしかられますが、この点については私ども鋭意検討中でございますので、お許しをいただきたいと思います。
  33. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いまおっしゃられるように、調整区域で二十ヘクタールなんという宅地をつくるということは、これは資本のある者でなければできないですよ。あるいは、農協がいわゆる農業法人をつくってやらすというようなことを決めたでしょう。ところが、そういうふうなものではなしに、ぼくは高知県ですけれども、高知県あたりなら、高知市を十キロ離れたところになると、ぼくのところなんかちょうど十キロ離れておるところですが、そういうふうな小規模な宅地化に非常に適切な土地がたくさんあるわけです。あるけれども、そこのところは宅地化できないわけです。そこにおる労働者が、土地を買ってそこへ家を建てたいけれどもできないということで思い悩んでおる。そしていつまでたっても家ができない。そうすると、今度、力のある者、いわゆる土地会社がつくった団地へ行ってそこで家を建てるとかいうことをしなくてはならない。それはやはり、みんなそれぞれ自分の生まれたところで生活をしておれば生まれたところに家を建てたいのが人情ですし、核家族になってきておるわけですから、従来のような五人も六人も一世帯の中に居住するということは少ないのですね。ですからこれは、ここの質疑のやりとりでそのまま終わるということではなしに、ひとつ建設省も本腰を入れて取り組んでもらいたいと思うのですが、いま一度御見解を私は承っておきたいと思います。
  34. 田村嘉朗

    ○田村説明員 その点につきまして、十分前向きに検討さしていただきたいと思います。
  35. 井上泉

    ○井上(泉)委員 では、ひとつまた、その検討の成果というものが建設省の宅地造成、宅地供給の行政の中にどう出てくるのか、私も注意深くそれを見守ってまいりたいと思いますので、きょうはもう私はそれでいいですから、帰って職務に奮励をしてもらいたい。  そこで、新村さんも指摘をされたのですが、行革財政再建は別々ということはそのとおりだと思うのですけれども、けさも行革臨調の加藤第四部会長か何かの話を聞いておりますと、全く、一体これは行革というものによって何をつくろうとしておるのか。たとえば国鉄を北海道、九州、四国、本州というように分けて五万人単位にする、電電を分ける、専売を分ける、特殊法人をつくる、これでは行革でよけいに複雑なものになってしまう。もともと国鉄が一本であるということは、高知県の人間であろうが、東京都の人間であろうが、兵庫県の人間であろうが、国鉄の運賃は一緒にすべきである、等しく日本国民であるということから国鉄というものができておる。それを経営形態を五つにも分けてやるなんていうことは、これはまさに国家統治の方針を誤るものである。そしてまた、特殊法人をつくる、会社をつくるとかいっても、これはわれわれを含めて一般国民が株主になってその会社の運営に参加するわけではない。岸田さんはひょっとしたら、中国地方で、本州で鉄道をつくったら社長、重役になるかもしれないけれども、これはとてもじゃないがそんなものじゃない。また社長をつくり、役員をつくり、そこのところで今度また経営の立つような形で鉄道運賃を決めるとかいうようなことになると、これは一体政治というか政府というものはどこに存在するのか、こういうように私は思うわけですが、こんないまの臨調のやり方というものは、国民の生活を守るためにもけしからぬ、こう思うわけです。ただもう臨調がらみで、鈴木総理も何か、臨調答申が出たら臨調行政改革をやることを至上命令と言っている。行政改革をやって国民へのサービス行政がもっと徹底していければともかくも、これは財界に奉仕するような体制、財界と一緒になっていわゆる国民を収奪するようなやり方だ、こう思うわけです。私は、いまの臨調のこんなやり方というものについてはどうも納得がいかぬ。これは、臨調の土光さんにしても、そしてまたきょうの部会長の加藤氏にしても、みんな生活に困っていない。それで、財界が臨調行革をどうしてもやらなければいかぬ、やらなければいかぬ、こう言う。この人らは生活に困っていないからそんな勝手な放言をしておる、こう言わざるを得ないわけですが、その辺について長官に、鈴木内閣の中でも骨のある政治家として経済運営というものを考えてもらいたい、私はかように思うわけなので、その点、今日の新聞で出されている臨調のことについての長官の見解を私は承っておきたいと思います。
  36. 河本敏夫

    河本国務大臣 臨調の方の作業のスケジュールをお聞きいたしますと、七月に本格答申を出される、このように聞いております。そのために五月中には案をある程度まとめていかなければいかぬということで、いま最後の追い込み作業をやっておられるところだと思います。したがって、一応の案ができるまでにまだ一カ月以上ございますし、一応の案ができましても、それは臨調全体としてどうするかということについてかれこれ二カ月かかっててさらに検討されるということでございますから、毎日のようにいろいろな案が伝えられますけれども、みんな少しずつ違いますので、私どもは、いま臨調の作業がどうなっておるかということにつきましては詳しいことはわかりません。ただ、政府から臨調にお願いしておりますのは、ひとつこの際行政改革を徹底してやりたいから思い切った案をつくってくださいということでございまして、国家百年の大計から考えまして、私は思い切った行政改革の案が出てくることを期待をしております。  しかしながら、もとより大局を考えていろいろ判断をしてもらわなければならぬわけでございますが、土光さんが会長でございますから、大局的な判断も当然加えられまして、すぐれた案が答申として出てくることを期待をしておるというのが現状でございます。
  37. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは、すぐれた答申が出されることを期待をされるということはもっともなことだと思うわけです。  これはきのうの夕刊、けさの朝刊にも出ておるわけですけれども、「経済四団体、自民に申し入れ 建設国債増発に反対 物価高招くだけ」一方においては「財務局長会議 景気回復の足どり遅れる」これは、いま木蝋に景気が沈んで困っておるのですよ。いまのこの臨調の委員の人たちは、自分が生活に困らぬから、何か少々不景気であろうが何であろうが行政改革をやらなければならぬ、こういうことを声高に言っておるわけです。国民の生活を守るという行政最大責任として、政府最大責任としては、こういう業界の申し入れの中で行革をやる、それは自民党が財界とべったりだというふうな世論もあるわけですけれども、私はそういう世論の中で自民党がおったら、今度は自民党がつぶれると思うのです。やはり国民の暮らしを守らなければいかぬ。これを財界が、まだ決まってもないのに、ただ「建設国債増発に反対 物価高招くだけ」一方では「景気回復の足どり遅れる」こういう財界のいわば思い上がった臨調というものによる行政改革姿勢に対しては、私は、政治の場にある者としては断固としてこれを糾明しなければいかぬと思うのです。そういうふうなものに屈服をして、今日の日本経済が、不況の中で一般国民、特に中小企業者に大きなしわ寄せがもたらされて、中小企業者が犠牲を受けるような結果になったら、一体日本はどうなるのか。いま農産物の自由化で、農業団体も農民も非常にやかましく言っておりますし、私も言っておるわけですけれども、何かいまの臨調臨調という中で何もかも押し込んでしまうような動き方というものに対しては、私は、断固としてこれといわば闘うというか、大臣にとっては闘うという言葉は悪いかもしれぬけれども、やはり国民の生活を守るということ、そして、日本経済の今日の不況を克服していくという大前提の上に立って問題に対応してもらいたい、こういうことを要求するわけですけれども大臣の見解を承りたい。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど非常に苦しんでおる分野がたくさんある、こういうお話がございましたが、いま三%前後の経済成長が続いておりまして、景気はきわめて緩やかでありますけれども回復の方向にあるということは事実であります。しかし、余りにも緩やかであるためにひずみが各方面に出てまいりまして、特に中小企業、あるいは構造不況業種、あるいは地域等によりましてきわめて深刻な状態になっております。いいところはいいのです。しかし悪いところは非常に悪い。こういうことになっておりますので、いまの御指摘はそのとおりだと思います。特に中小企業であるとか、地域によっては非常に深刻な状態になっておるということは御指摘のとおりでございます。  私どもは、政治の目標というのは、第一は、国民生活を充実向上させるということだと考えております。第二は、わが国防衛費の負担も少ないわけでございますので、世界経済に貢献できるようなそういう経済活力を維持いたしまして、第三世界の国づくりを助けていく、世界全体の平和の基礎を拡大をしていくということが、世界国家日本としての私は大きな務めであろうと思いますし、いま政府の政策の基本になっております七カ年計画の目標を整理してみましても、大体その二つが目標である、こういうことが書いてございます。私は、その基本的な政治の目標という角度から、すべてのことを判断していく必要があろうと思います。  国民生活の充実向上、それから国際社会に貢献できるような日本、それが政治の目標であって、その他のことはその目標を実現するための手段である、こういうことでございますので、その基本の認識を間違ってはいかぬ、このように思うのでございます。  ただ、当面政府臨調答申に大きく期待をしておりますのは、現在行政機構に相当なむだがございますので、ひとつこの際むだを思い切ってなくしていきたいということで、土光臨調に作業をお願いいたしまして、いま土光臨調もそれを受けて懸命の作業をしていただいておる、こういうことでございますので、その答申を受けまして政府としては効率的な政府づくりをやりたい、こういうことをいま考えておるところでございます。  ただ、行政改革だけがすべてであるということはだれも考えておらぬわけでございまして、もしそういうことで政治が進められるということになりますと、これは景気はどっちでもいいという議論にもなり国民生活は不安定になりますし、それから、税収はがた減りになって財政の再建もできないということでございますから、行政改革はもとよりこれは進めなければなりませんが、同時に景気の維持拡大を図っていきまして、そのことによって国民生活の充実と財政再建も同時に達成できるような、この二つの目標を同時に進めていくことが大事である、私はこのように判断をしておるところであります。
  39. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は長官のそういう方針には賛成をするものですけれども、果たして今日の鈴木内閣長官のそういう識見を受け入れてやるのかどうか、そういうことについては非常に危倶するものであります。そういう点で、何かやると、河本長官が何とか云々とか、次期総理を云々とかというようなことで新聞ざたにされて、真に国民の生活を守り国の前途を考えてやることでも、政治世界ではいろいろな雑音の中でその誠意がいわば茶化される、私はこれは非常に危険な悪い傾向だと思うわけです。  いまの日本財政再建にしても、軍事予算をどんどんふやしていくということが一番大きなガンになるのではないか。  これはかつて日本経済が非常に不況のときに、濱口内閣が緊縮政策をとって行政改革の十大方針を打ち出してやって、そして、ロンドン軍縮条約では軍縮を強く要求をしてやった。その結果が、濱口雄幸先生は殺され、その後、井上準之助大蔵大臣も殺され、あるいは高橋是清大蔵大臣も、軍事予算を削減する中で、これ以上ふやしてはいかぬということで厳しく抵抗してやったが、二・二六で殺された。こういうこともあるわけですが、今日、ただ軍事予算だけがとめどもなく増大をしていくような風潮の中にあるわけだから、そういうことについてもやはり政府の方で、われわれは議員ですからそう大した力はないです、ここで偉そうに長官に質問するだけのことがいわばせめてもの議員としての務め、こう思っておるわけですが、あなたは行政府責任者ですから、あなたの言うことは直ちに日本の国策として生きてくるわけだから、そういう点で私は、今日のたとえば対韓援助、これなんかも、外務大臣なんかは、きのうもいろいろ総枠で四十億ドルぐらいか、こう言うと、そんなことは決まっていない、こう言うて、それでけさの新聞を見てみると、須之部外務次官を韓国へ派遣をして、そして四十億ドルでいかなかったら二億ドル、三億ドルをいわば調整財源のようなものを持たせていくとか、きのうの委員会では四十億ドルというようなことは全く決まっていない、そういう答弁をしながら、けさの新聞を見たら、四十億ドルの上に三億の調整財源を加えて韓国へ行かす。その対韓援助の問題はここで論議するところではないかもしれませんけれども、そういう中で日本の金を使われる。  いま日本の農産物の自由化を求め全面開放を求めてやってきておる、そのことについてこの間、私も新聞紙上で承知をしたことでありますけれども長官が、日本がアメリカの食糧、農産物を買い入れてそれを発展途上国に経済協力として回す、そうすれば貿易摩擦も解消されるではないか、そして日本の農業も守れるではないか、こういうことを言われたのを見て、これはある会の席上で、私は農民の集まった集会の席上でそのこともあいさつの中に入れたわけですが、本当に一体そういうことについて、大臣としては、そこで言うただけでなしに、かなり具体的に、農水省なり外務省なりとの間に、あるいは政府部内でそのことは強く主張しておるのでしょうか。
  40. 河本敏夫

    河本国務大臣 食糧援助の問題につきましては、ことしの国際機関による援助額は九百二十万トンなんです。しかし、九百二十万トンでは非常に少ないわけでありまして、そういう少ない援助では四億五千万の人間が飢餓の状態にあり、しかもその中で五千万人の人間が餓死しておる、これは大変だから何とかすべきではないか、こういう議論は前々からくすぶっておりまして、これは政府部内でも何回か議論はされておるのです。ただ、それじゃ日本だけでその不足しておる食糧を金を出してやるというわけにはまいりませんで、やはりアメリカ、ヨーロッパ、それからOPECの一部、そこへ日本が加わって、そして世界全体としての大事業としてこれを推進していくということでありませんとこれは円滑に動きませんので、やはり日本だけではどうにもならない、こういうことでございますけれども、これは非常に重大な課題でございますので、私も政府部内で機会あるたびにいまお話をしておるのですけれども、急速にそれじゃこれがまとまって動き出す、そういう状態ではまだない、こういうことでございますけれども、これは非常に重大な課題だと思いますので、今後も真剣にこの実現のために努力をしていきたい、こう思っております。
  41. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、鈴木総理がいろいろな発言をするが、臨調の問題にしても、あるいは対韓援助の問題にしても、アメリカの全面的な市場開放の要求に対しても、絶えず変わっておるわけなんです。一つ政治に哲学がない。私のような田舎代議士がそういうことを言うと口幅ったいことになるかもしれぬけれども政治哲学がない。やはり少なくとも、鈴木内閣全体の大臣を見ても、本当に前の濱口内閣当時やあるいは高橋是清、そういうふうな、これも指折り数えられるような人たちにすぎないが、哲学を持って、日本の国を憂え、日本の国の将来を考え、そうして日本の国の今日の現状から考えて、日本はどうあるべきかというような中で、軍事費の問題にしても、対韓援助の問題にしても、アメリカの農産物の輸入要求についても、アメリカの要求の中に余りにも日本政治が動かされておるような、日本の国政が動かされておるようなそういう気がしてならないわけなので、そういう中で、やはり今日日本経済的に非常に成長してきた、その成長した力というものを私は国際社会の中に生かして、そして平和な国際関係をつくっていくということは大事なことであるし、それはせなければならぬ。  そういう点で、いまのアメリカの農産物自由化の全面要求というものは、これはけさのテレビでの「明るい農村」の話ではないけれども、食糧の自給体制をつくらぬような国はこれは九族の破滅だ、こういうふうに言っておるわけですが、そういう民族の破滅も呼びかねないようなそういう自由化の要求に対して、私は、大臣が提唱しておるようなことについて——いまの農産物の自由化による貿易摩擦の解消にしても、十億にも足らぬですから、それほどこれは問題にならぬでしょう、これによってのなには。だから、やはりアメリカが食糧が余って困っておるというなら、日本が輸入をして、これをそういう発展途上国とかあるいは飢餓に瀕した諸国に食糧援助として、それはそれぞれの国との連携もあるんでしょうけれども、やはりそれは経済大国という誇りを持っておる日本がなすべきことであるし、そのことが今日のアメリカとの経済摩擦を解消し、そして農産物の自由化を要求しておることに対しての歯どめにもなると思うわけで、その点はひとつ大臣も信念を持って、これは井川大使じゃないけれども、信念を持って臨んでもらいたい。これ以上日本の農産物の自由化をやるということは、日本農業の破壊になるから無理だ、それなら農産物の輸入をやろうじゃないかというようなことを大臣としては提言をしてもらいたい。まあ大臣はすでにその見解を出されておるのですから、それをやはり日本政府の意思としてこれがまとまるように精いっぱいの努力をしてもらいたい、このことをもう一回要求をしておきたいと思うのです。
  42. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまのお話は専門家に私も調べてもらったんですけれども、とにかく五千万という毎年の餓死者を救うのに、さしあたって三千五百万トンの食糧が必要だ、こういう話でした。先ほども述べましたが、そのうち九百二十万トンは国際機関で援助をしておりますから、もうあと二千五百万トン食糧が確保できればそれは一応餓死を免れる。しかし、それは千五百カロリーくらいの食料を与えるということでありますから、わずかに餓死を免れるという程度であります。しかし、普通の活動をするためには二千三百カロリーくらいが必要だと言われておりますが、そのためにはなお七千万トンの食糧が必要だ、こういうことを専門家は言っておりました。二千五百万トンの食糧を確保するためには約六十億ドルの資金が要る。それから、七千万トンの食糧を確保するためには百六十億ドルばかりの資金が必要である。こういう話も専門家から聞きましたが、いま世界の軍事費はことしは六千億ドルでありますから、世界の軍事費の一%が節約できれば五千万の餓死者が一応救え、三%の軍事費が節約できれば五千万の人が普通の人間として活躍できる、動ける、そういう食糧が確保できるということでありますから、これは世界的な課題としてももう少し真剣に取り上げていいのではないか、私はこのように思います。  それから、それだけの食糧の増産の余力があるかといいますと、これは十分あるそうであります。アメリカを中心として豪州、カナダ等を含めますと、非常に大きな食糧増産の余力があるようでありますが、アメリカ一カ国でももちろん七千万トン、八千万トンという食糧増産の余力はある、そのように専門家から報告を受けております。  したがいまして、私どもが感じますことは、もちろん貿易摩擦を解消するために、日本としてもできるだけのことをやらなければいかぬと私は思うのです。議論をすりかえるようなことをしてはいけない、こう思いますけれども日本としては、自由貿易体制を確保するために市場の開放体制をできるだけやると同時に、いま申し上げましたような議論も並行して進めていく。アメリカも余り細かいことばかり言わないで、もう少し大局的な見地に立って、こういう問題について議論をしてくれるということになると、大変結構だと思います。サミットも開かれますし、総理も、世界的な軍縮、つまり低い水準における軍事力の均衡によって世界の平和を確保すべきではないか、とめどもなく軍拡競争をするというのはよくない、こういう趣旨のことを言われるというように漏れ承っておりますので、私は、こういう議論世界的な規模で展開されることを強く期待しておるというのが現状でございます。
  43. 井上泉

    ○井上(泉)委員 イタリアの大統領がわが国国会で演説をして、千三百万人の子供が餓死しておる、そういう状態政治家としては心を痛める問題である。つまり、そういうことから考えれば、世界の兵器庫は空っぽにしても食糧倉庫はいっぱいにしなければならぬ、これは非常にりっぱな、政治家としての見識のある哲学だと私は思うわけであります。  ここで、いま言われる軍事費を一%減らす、二%減らす、そのことによって生ずる財政力は非常に大きなものがあると思うのです。ここで日本の軍事予算のことを論議はしませんし、そしてまた長官に、対韓援助を四十二億ドルにするとか三億ドルにするということについてどう思うかという見解も尋ねませんけれども、少なくとも私は、日本が韓国に対して四十三億ドルとかいうような積み上げが、いつの間にやら総枠方式のような形で出される。そしてそのことが国会で論議をされて、きのうの外務委員会で外務大臣も、それから木内アジア局長も、総枠方式はとりません、四十億ドルという話がどこから出ておるかわかりません、こんなことを言いながら、新聞がうそを書けばそれはしようがないですけれども、またきょう見てみると、次官を派遣して、それで四十億ドルでいけなかったら、二億、三億の積み上げを認めるような、そうしたら四十二億が三億になることはわかり切ったことで、日本の対韓政策は、日本の自主性から考えても全く問題にならぬ屈辱的な外交姿勢じゃないか、こういうふうに思うわけで、その点はまた外務委員会で指摘をすることにしたいと思うわけです。  私は、今日の不況を打開し、内需を拡大していくということから考えて、いまあなたがとられようとする政策が本当に鈴木内閣の政策として展開されるように、あなたになお一層御奮闘をお願いしたいと思うわけです。大体臨調も、省庁を統廃合するとか、第一部会にしても第二にしても、あるいは第三部会の国と地方団体の関係なんか、そういうような問題で末端の働く人の首を絞める話ばかりが伝わって、それならその人たちはどこへ行くのか。これは生きていかなければならぬ、食っていかなければいかぬ、子供を養っていかなければいかぬ、生活していかなければいかぬ、そういう中で、何か臨調臨調という形で、働いておる人たちを押し込んでいくようなことをやるといことは、国鉄でたるみのあった職員がおったからといって、それをどんどんやる、なるほどそれは何十万もおる職員の中にはあるかもしれないけれども、やはりその中の大多数の者は営々として一生懸命職務に精励しておるのだから、そういう人たちまで含んで押し込んでしまうようないまの臨調姿勢というのは、やはり財界べったり、財界奉仕の姿勢である。本当に国民というものを考えて——彼らは選挙がないんですから、一つ国民のことを考えない。ところが、われわれはそうはいかない。やはり国民のための政治をやらなければいかぬ。大臣もそうです。だから、国民立場に立って行政をやってもらわなければいけないし、国民立場に立って行政改革をやってもらわなければ、国民を痛めつけるような形で行政改革をやり、景気を沈滞させて中小企業を苦しめるような行革というものは、絶対反対をしてやらなければいかぬと思うわけですが、その点いま一度、大臣の国の景気回復についての決意を承って、次の質問に移りたいと思います。
  44. 河本敏夫

    河本国務大臣 景気の現状は、私どもも厳しく認識をしておりますので、こういう状態では困る、こう思っております。  そこで、これまでもたびたびお話をいたしましたが、公共事業と公的住宅、災害復旧事業、これを上半期最大限集中する、技術的に可能な限り最大限集中をいたしまして、下半期に経済全体が力を回復すれば結構でございますが、もし下半期に経済全体が力を回復しない、こういう場合には、公共事業関係の仕事が激減をして、そして大きなマイナス効果が出てまいりますので、何らかの仕事の量を追加しなければならない、最終需要が拡大するようなことを考えていかなければなりません。それは公共事業を追加するのか、あるいは財投を追加するのか、地方財政で何か仕事を始めるのか、あるいは民間資金を活用して何か政府系の機関で仕事を始めるのか、あるいは純粋の民間の活力を引き出すための何らかの手を打つのか、最終需要を引き出すための方法は幾つかあると思うのですが、とにかく最終需要をその場合に引き出さなければならない、拡大しなければならぬというところまでは決まっておるのですけれども、具体的な内容は、ついこの間七七%上半期執行を決めたばかりでございまして、各方面から、もう少し具体的に下半期の経済運営を早く決めてもらわないとやりにくい、こういう意見は出ておりりますけれども、目下、細かい具体的な結論は出ていない。しかし、基本的な考え方では、政府部内で大体合意ができておる、こういうのがいまの段階でございます。
  45. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、もう一つ公共事業関係ですけれども、これが一律平均的に七七%の前倒しということではなしに、地域によって、公共事業の施行というものは景気の落ち込んでおるところには多く配分をするということが大事だと思うのですが、そういう辺の配慮は公共事業関係者に十分要請してあるのでしょうか。
  46. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは、地域によりましては第一次産業と公共事業経済がもっておる、こういう地域も相当ございます。したがいまして、公共事業を進める場合には、当然全国各地の景気の動向等も勘案し、それからあわせて、冬になると仕事ができにくい、こういう地域等もございますし、そういうところに対しては特別の配慮も必要か、こう思いますので、具体的な細かい配慮はそれぞれの官庁で進めていただいておるところでございます。
  47. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、私は直接、物価の問題で物価局長に、以下残された時間でお尋ねしたいと思うわけです。  石油危機のとき、物価が非常に上昇したときに流通機構の問題等がずいぶん討議をされたわけでありますけれども、しかし物価が鎮静してくると、案外流通機構の問題というようなものは余り取り上げないし、そしてまた、流通機構をこういうふうに改善をしたというふうな話も聞かないわけですが、今度エビが非常に高うなったからきのう東京都が放出した。ここのところ物価が安定しておるときに、そういう一つの商品でありますけれども、そして、それが輸入が少のうなったかといえばそうでもないのに、そういうように特定の商品をずっと値上げする。それが関連をして他の物価を引き上げていく、誘発をしていくということにもなりかねないのですが、局長はその現象をどう見るのですか。
  48. 廣江運弘

    廣江政府委員 物価問題を考えますときには、基本的にはやはり、国の中枢的な経済政策、財政金融政策というものが大きなウエートを持ってくるということは論をまたないところでございます。ただ、それだけで物価問題は終わるわけではないわけでございまして、先生が御指摘になりましたようなきめの細かい個別の物価対策を積み重ねることによりまして、国民全体としての、インフレ期待というものを抑えていくというのが非常に大きな政策になろうと思っております。そこで、先生が御指摘になりましたような個別の問題、あるいはそれを取り巻く流通の問題といいますものは、これは常に頭の中に置いて注視をし、その改善を図っていく努力をいたさなければいけないところでございます。  御指摘のありましたエビといったような問題については、エビ自体の種類にもよりますけれども、全国的な場で言いますと、ときにはかなり需要が高まって価格を高騰させるというようなこともございますので、いつも監視をしてそのものの価格を安定させる、上げないような努力をしていく、そうして、先生も御指摘になりましたような、全体の物価上昇への期待を抱かせる、インフレ期待を抱かせるということのないような努力をしないといけないと思います。  特に水産物については、もう一昨年になりますけれども、一昨年から在庫の調査等を中心にいたしまして、先行き見通し等も十分に把握できるような体制で、全体としての価格の安定を図るようにしておるところでございまして、エビあたりも、そうした大きな政策の中の一環としてわれわれは考えておるところでございます。
  49. 井上泉

    ○井上(泉)委員 局長、マグロの俗に言うすしやとろ、これは非常に商いわけです。ところが、マグロをやりよる漁業者はこれはもう不景気で困って、マグロを減船をして、それを共補償で一隻が何千万も負担せにゃいかぬような状態で、値段が合わない。ところが、いざわれわれが口にする場合には、漁業者がとってきた価格の何倍にもはね上がっておるのではないか。買いだめというか、売り惜しみというか、商社の思惑買いでこれが流通機構の中で左右されておる。エビもそれと同じようなことではないか。私は一罰百戒で、こういうふうな流通機構の実態というものにメスを入れる。いまのように特定のエビが問題になって東京都が放出をした、そうやって放出するものがあるところはいいけれども、放出するもののない地域の人は高いエビを食わなければいかぬ。いわば商社はそれを徐々に出していく、それで値段をつり上げていく、こういうふうなことをやっておる、こう言わざるを得ないわけです。私はそういう流れというものについて、もっとこれを抑えておくということが必要じゃないか、こう思うわけです。  きのう私はスーパーでちょっと見たら、ビニールの袋に入れて売っておるピーマンが五個入りで百円です。その百円のものは生産地では大体二十円です。鹿児島県あるいは宮崎県、高知県というようなところはピーマンを東京市場に出しておるが、それは二十円です。それからスイカが二千八百円からもう出ている。見てみるとわが高知のスイカである。その二千八百円のスイカが産地では千円です。これは、それぞれ流通機構には職員もおりますし、いろいろ働いている人もおるから、価値が加わってくるのは当然ですけれども、もっと物価の現状を把握する上において、生産地ではどれくらいかかっておるか、それが消費者にはどれだけになってきておるのか、市場の取引は幾らか、毎月物価指数の報告をいただくわけですが、月例報告の中にそういうふうなことも書かれたらどうか。そういう調査の仕方をしていたら物価の動向は絶えず把握ができると思うのですが、どうでしょう。
  50. 廣江運弘

    廣江政府委員 いろいろ御指摘をいただきまして、ごもっともな御意見だと思います。  先ほど水産物のお話がございまして申し上げましたように、冷凍水産物の価格安定のための調査実施しているところでございまして、在庫調査、それから在庫調査の中の輸入大手の在庫調査、中央卸売業者の在庫調査もやっておりますし、さらに流通情報も、それぞれの地域にわたりまして関係者に渡しているところでございます。  いま先生は、そういう水産物の問題、それから例として生鮮野菜の話をなさったわけでございますが、水産物等については農水省においてそれぞれの調査をいたしておりますし、またがって、いま言われました野菜なら野菜について、生産地から流通過程を経てどういうふうにして一般消費世帯まで至るかという、経路の調査もいたしたことがあると思っております。いま先生は、そういう反省を含めて、実際の水揚げなら水揚げのところの価格は幾らで、中間過程が幾らで、そして末端が幾らかというようなことも対比すると、非常に啓発にもなるし稗益するところ多いのではないかということでございまして、卸売物価とそうしたものも含めまして、いろいろ勉強してまいりたいと思います。
  51. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは簡単にできますよ。者の生産地価格、これは全国一律でなくても、たとえば宮崎なら宮崎でこれだけで出荷している、高知なら高知でこれだけで出荷している、そういう物価の流れというものを国民が承知をするために、まあわれわれも、いま物価が安定をしておる、これはやはり国の政策がよかった、これは河本長官の率いる経済企画庁の政策がよかった、こういうことになるわけでありますし、そうしたら、その安定をしておることについての実際の姿というもの、ああいうふうにエビでも、どんどんつり上げてそして少ないからというて放出をするというようなやり方ではなしに、それから生産農民にしても、市場ではどれくらいの手数料を払う、市場はどれくらい、卸売はどれくらい、ちゃんとわかっておりますから、私は全部のものを調査せよとは言わぬわけですが、毎月送っていただく「最近の物価動向」というこの中に参考的に、これはこうなっている、つまり生鮮食品でナスはどうなっておる、トマトはどうなっておる、あるいは魚で、マグロだのという高級品はそう関係ないですけれども関係ないと言うと関係者にしかられるかもわからぬけれども、普通の一般われわれが食べる大衆魚の動向がどうなっているかというようなことを、物価動向の中でこういうように親切に書いてくれておるのですから、その中にひとつそういうふうなものも入れて、物価の元締めとしての経済企画庁の役所としての国民に奉仕をする姿を示してもらいたい、こういうように思うわけですが、今度からやってくれますか。
  52. 廣江運弘

    廣江政府委員 定期的にあるいは月々に、個別の物品ごとにやれるかどうかということにつきましての自信はございませんが、いろいろ御指示もいただきましたものですから、何か方法があるかどうか、よく検討してみたいと思います。
  53. 井上泉

    ○井上(泉)委員 終わります。
  54. 武部文

    武部委員長 この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  55. 武部文

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長野祐也君。
  56. 長野祐也

    ○長野委員 大臣の御都合で、景気動向あるいは成長率論争などを後に回しまして、数点、その他の問題を先に伺いたいと思います。  まず、本場大圏つむぎ関係につきましては、かねがねいろいろ御苦労をいただいておりますことを感謝申し上げたいと思います。  そこで、第一点として、昭和五十六年度の日韓、日中交渉の経過について御説明をいただきたいと思います。
  57. 林昭彦

    ○林説明員 絹織物の日中、日韓の交渉の状況でございますが、これまで中国、韓国とやりますときに、生糸も含めまして一括して交渉をやってまいっておりますので、昨年度につきましては、そのもう一つ前の五十五年度の生糸の履行問題というのが決着をしておらないということで、最終的に五十五年度が終わりますまでに交渉を妥結するという結果を得られなかったわけでございます。ただ、最近、生糸の履行問題についてもめどが立ちましたので、早急に日中、日輪交渉を再開するという予定にしております。  韓国についてでございますが、これまで三回にわたりまして交渉を行ったわけでございますが、三月に最後の三回目の交渉を行いまして、もう期間が残り一月ということでございましたので、五十六年度と五十七年度を一括してやろうということで、この点につきましては日韓双方の意見が一致したわけでございますが、数量につきましてまだ隔たりがございまして、結局六月の初めにやろうということになっておりますが、ごく最近、韓国から、五月中にもやろうかという申し出がございまして、できればそういうことで早く決着をつけたいと思っております。  それから、中国につきましては、これは年度ではなくて、織物については年間の協定でございますが、昨年、二度交渉いたしましたけれども、これも実は織物についてはそれほど意見の差は大きくはないのですが、最終的にこの織物についても決着がつかない。それから、生糸については大分問題がございましたので、これもできるだけ早くやろうということになっております。  それから、韓国との間では、織物全体の内枠の話といたしまして大島つむぎの問題がございますけれども、これについては従来からの三万六千五百反ということで向こうへ話をしておりまして、これについてまた韓国側の方としては事実上合意をしておるわけでございますけれども、これは一応全体のパッケージの中でございますので、正式にはほかの織物、生糸と一緒に妥結するということになろうかと思いますが、私どもとしては、事実上は合意をしておるというふうに理解をしておるところでございます。
  58. 長野祐也

    ○長野委員 三方六千五百反が、五月中にも行われる新しい交渉で、少しは削減される方向にあると見てよろしいですか。それと、五十六年度の通関の数字がどのくらいになっているか、明らかにしていただきたい。
  59. 林昭彦

    ○林説明員 最初に、五十六年度数字でございますが、絹織物の輸入量二千三百三十三万平米、年度で入っております。これは五十五年度に比べまして一五・六%減ということでございます。このうち、韓国につきましては六百八十二万五千平米ということで、一昨年度に比べまして約五%、五・二%減ということになっております。  それから、この大島つむぎの件でございますが、これは五十六年度につきましては最終的に向こうのビザの通報がないわけでございますけれども、五十六年度については三万六千五百反ということになろうかと思います。五十七年度につきまして、これは今後の交渉ということでございますが、この数字自身がいろいろ問題がございますけれども、このほかに、持ち帰りの問題で、昨年一人当たり三反を二反にしているというようなこと、あるいは表示についての協力ということについては韓国側も相当に誠意を持って対応してくれているというようなことで、削減をできるかどうかということについてはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。
  60. 長野祐也

    ○長野委員 本場大島つむぎに類似する韓国産つむぎにつきましては、二カ国協定におきまして、いまお話があったように、輸入数量が三万六千五百反と取り決められておるわけでありますけれども、現在、二十万反内外の韓国つむぎが流入をしておるという情報があるわけでありまして、政府においては、韓国側に対してそういう協定数量を守らせるとともに、国内のいわゆる輸入業者に対して、協定数量の枠内で輸入がなされるように行政指導の徹底をいままでもしていただいておるわけでありますが、今後この国内業者に対する行政指導をどのようになされていかれるのか、お伺いしたいと思います。
  61. 林昭彦

    ○林説明員 先生御指摘のように、従来から日本側の輸入業者に対しましては、取り決めが三万六千五百反だというようなこと、あるいはこういうことを念頭に置きまして秩序ある輸入取引をやってくれということを指導しておるわけでございますけれども、これはこの前正式に文書で要請をいたしましてから若干日もたっておりますので、今後韓国との交渉を踏まえまして検討いたしまして、再度そういう要請を出すというようなことも考えてまいりたいと思っております。
  62. 長野祐也

    ○長野委員 それは、五月中にそういう協定がまとまれば文書で行政指導するというふうに理解してよろしいですか。
  63. 林昭彦

    ○林説明員 いま実はそこまではっきり決めておるわけではございませんけれども、そういう方向で検討したいと思っております。
  64. 長野祐也

    ○長野委員 もう一つ、技術的な問題として、いわゆる韓国つむぎであるのかどうかという見分け方が技術的に大変むずかしいということが言われていますが、これはその後、研究といいますか、内部検討というのは進んでいるのでしょうか。
  65. 林昭彦

    ○林説明員 これは非常に技術的にむずかしい問題でございますので、私どもの方としても引き続き検討はしておりますが、それと同時に、業界の方にも、税関の段階で簡単に区別できるメルクマールがないかということで検討をお願いしておりまして、協力してやっておりますが、簡単に見分けるというのはむずかしいというところが現状でございます。
  66. 長野祐也

    ○長野委員 これはそれが決め手になると思いますので、ぜひひとつ知恵を出し合ってがんばっていただきたいと思います。  本場大島つむぎは、地場産業といたしましての貢献度も最上位にランクされております。しかし、最近では低成長期とともに不況色に見舞われて、五十五年以降急激にその度を増しまして、売り上げ不況とともに二割減産体制を余儀なくされております。加えて、売り上げ価格の値下がりと生産コストの増加に伴って産地業者の採算が思うようにいかないで、日々その運営に苦慮しているというのが現状でございます。特に、手形サイトの延長と在庫の増加によって資金需要も拡大をしており、金融機関からの借り入れも増加をして利子負担の重荷が加わり、運転資金の手当ても困難を来しているという現状でありますが、今後の事業を進めていく上で、さらにこの不況を乗り越えていくためにも、厳しい財政事情の中ではありますが、私はやはりこの際、思い切った政府当局の援助の手が必要であると思いますし、ここで長期低利資金の設定というものをぜひ御配慮いただけないか。あわせて、大島つむぎ産地の現状をどういうふうに見ておられるのか、その振興策についてもお伺いいたしたいと思います。
  67. 若林茂

    ○若林説明員 大島つむぎの現状でございますが、ただいま先生御指摘のとおり、着物の需要が全体に減っているということと、昨年来の景気の悪さ、こういうことに伴いまして生産が二割ぐらい減っておりますし、在庫も流通段階でかなりふえているというような情報も得ておるわけでございます。それから、価格動向につきましても、いま先生御指摘のとおり、品種によっても異なりますが、最近一万円から一万五千円ぐらい落ちているというふうに聞いているわけでございます。  このような厳しい環境に対しまして、通産省といたしましては、従来から大島つむぎが鹿児島、奄美大島地区の重要な地場産業であるということを認識いたしまして、いろいろ手を打ってきたわけでございますけれども、たとえば伝統的工芸品産業の振興に関する法律、伝産法の指定品目に大島つむぎを指定いたしまして、後継者の育成とか、需要開拓事業とか、いろいろな事業の助成を行ってきたわけでございます。さらに、産地振興法に基づく指定も現在行っているわけでございます。  このようないろいろな施策を使いまして今後とも大島つむぎの振興に努力したいと思っておりますが、先生から御指摘ございました融資につきましては、現在、中小企業庁で県と合同でやっております中小企業体質強化資金助成制度というのがございます。これをできるだけ活用いたしまして需要にこたえていきたいというふうに考えております。  特に新たな制度というのを設定するのは当面むずかしいわけでございますが、このほかに県独自の制度といたしまして、鹿児島につきましては伝統的工芸品産業振興資金というのがございまして、これはかなりの資金量も準備されておりますし、金利も現在六・八%というぐあいに、通常の金利よりは安い制度がございますので、こういうものの活用を当面図って対処してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  68. 長野祐也

    ○長野委員 今日の厳しい財政事情の中ですから、新しい制度をつくるということはむずかしいという答弁を一応理解はできるわけでありますが、大島つむぎの存亡にかかわることでもございますので、私がいまから申し上げるようなことをぜひひとつ今後参考にしていただいて、つむぎの再建のために努力をいただきたいと思います。  大体二十億程度の鹿児島産地向けの総額の中で、十年以内の返済期間、二年の据え置き、無担保、一企業あるいは一人に対する二千万以内の限度、金利三%以内とする、保証人を二人以内とするというような制度を検討していただきたい。  こういうことを申し上げますと大変甘えた要求に聞こえるわけでありますけれども、つむぎの現状ではもうほとんど組合員から揖保をとることはむずかしいわけでありますし、長期低利であれば現在の借金を借りかえするということが可能であり、そこからまた再起のきっかけがつかめるのではないかと思いますので、ぜひ御検討をいただきたいと思うのです。中小企業高度化資金貸付制度の中にありましては、無利息でありますとか、二・七%というような低利の実例もあるわけでありますので、何とかこの窮状に目を開いていただいて、御検討いただきたいと思います。  それから、中小企業体質強化資金であるとか、県の制度の活用を図れということなのですが、私、手元に「制度融資の利用状況」という組合のアンケート調査を持っておりますが、この利用度が低いわけです。したがって、当面新しい制度をつくることはむずかしいということは理解できますので、この現行制度の改善に少し工夫をしていただきたい。つまり、この利用率が低いということはそれなりに理由があるわけで、たとえば利息の問題にしても、あるいは返済期間にしても、あるいは担保保証条件においても、必ずしもいまの制度は大きなメリットがあるとは私には思われない。そういう意味で、今日の大島つむぎの窮状から見まして、もう少し借りやすいメリットのある制度というものについてひとつ積極的に御検討していただくように強く要望して、つむぎの問題を終わりたいと思います。  次に、中小企業の承継税について、この創設についての基本的な考え方を伺いたいと思います。  取引相場のない株式の評価改善につきましては、昭和五十八年度の税制改正において実施をすることができるよう検討するということで党税調での結論が出ているわけでありますが、今後の課題として、第一に、相続財産の約七割が土地でありますから、その相続税負担が過重であることにかんがみて、居住用、事業用土地の課税価額について軽減措置を講じていただきたいこと、もう一つは、個人企業の事業用財産について、これを生前贈与した場合の納税猶予の制度化を検討する、この二点についての見解と、今後の対応についてお伺いいたしたいと思います。
  69. 桑原茂樹

    ○桑原説明員 先生ただいま御指摘がありましたように、最近中小企業者の方から、中小企業が事業を承継する際に相続税の負担が非常に重くなっておる、これを何とかしていただきたいというようなことで、大変強い要望が参っております。  中小企業庁としても、こういう事態でわが国の産業の活力を支える中小企業の円滑な承継が妨げられることになってはいけないということで、実は庁内で検討会をやりまして、その結論に沿って、昨年、五十七年度の税制の改正要求として幾つかの要求をしたところでございます。  内容は、取引相場のない同族法人の株式の評価を改めてもらいたいというのが一つ。もう一つは、個人事業でございますけれども、そういった場合の事業用または居住用の土地の二百平米以下のもの、これについて評価を格段に下げていただきたい、二つの要求をいたしました。  その結果、同族法人の株式評価については、一応五十八年度から実施することができるように検討するという結論になったと理解をいたしております。  それで、個人の事業用または居住用の土地の問題、それから、先生いま御指摘がございましたように、そういう土地等の生前贈与の問題というのもまた問題としては残っておるわけでございますが、こういうものにつきましてはそれぞれいろいろむずかしい点はあろうかと思いますが、通産省といたしましては、中小企業者の意見をよく聞きまして、そういう声が反映されるような形で相続税の問題が取り扱われるように今後とも十分努力していきたい、こういうふうに思っております。
  70. 長野祐也

    ○長野委員 これは中小企業者の長年の悲願でもありますし、大蔵省にも積極的にひとつ対応していただいて、実現に努力をしていただきたいと思います。  次に、電子及び電気修理技術者試験の合格者の免許につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  この制度が昨年から発足をいたしましたが、家電小売者がこの資格を得ることによって、消費者にも十分理解をされ、メリットを受け、資格が生かせるよう、制度の運用を図っていただきたいと思うわけでありますが、この点についての御見解、並びにこの件についてのPR対策が十分行われているかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  71. 野口昌吾

    ○野口説明員 この資格試験制度でございますが、昨年の八月に発足をさせていただきました。私どものねらいは、一般の町にございます小売の電気商の方々の地位の向上と、営業上の基盤の強化ということを非常に願っております。スーパーとか百貨店とか電気専門店など、量販店との競合があって、小売店もこれから非常に真剣な経営姿勢で臨まなければいかぬことは、先生の御案内のとおりでございます。  その一環として、この対策が昨年の八月から発足をしたわけでございますが、直接的なねらいは、まず一つは、通産大臣の認定に係る資格をお持ちいただくことによりまして、小売商の地位の向上を図りたいと思っております。  二番目には、御案内のとおり、家電製品は商品がIC化を進めましてますます多様化、多機能化、複雑化してまいります。非常にむずかしくなります。それに対応できるような技術といいますか、知識なり技能を持たないと、お客さんへの十分な対応ができないということも考えておりますので、そういう意味の技能の向上を図りたいということでございます。  それから、三番目は、小売商の場合、従業員の定着というのが非常に問題だと心得ております。できるだけこういう資格を持ってもらって、自分の仕事に励みを持つことで定着を図りたいと考えております。  それから、これは消費者への対策でございますけれども、しっかりした修理をすること。私ども調査では、大体平均いたしますと日に四件ぐらい修理の案件が持ち込まれます。それをしっかりした修理をすることで消費者からの信頼を得るということが大変重要と心得ますので、そういう意味で、非常に抽象的な議論でございますけれども、私どもは小売商の地位向上のためにこの制度を設けたわけでございます。  同時に、これは消費者サイドにもPRを十分しないといかぬと心得ておりますので、通産省のいろいろな消費者対策の一環としてのPR事業の中、それから、この主体になります家電製品協会、電波技術協会、実際にこの試験に携わります、NHKに委託しておりますけれども、そういう機関をフルに活用いたしましてPRに努めたいと思っております。同時に、店にもステッカーとか看板等を張ってもらうことによりまして、消費者から信頼される小売商ということをぜひ定着させたいと思っております。
  72. 長野祐也

    ○長野委員 今日、ほとんどの職業において国の資格制度があるわけであります。にもかかわらず、危険度が高いと思われる家電取扱業に従事する者、しかも相当程度の高い技術が要求をされるはずの業者に、はっきりした国の資格制度が設けられていないというのはおかしなことでありますので、ぜひ考えていただきたい。  また、家電製品はすべて電気用品取締法に基づいて厳重な検査をして、合格したものだけが市場に出されるわけでありますが、ところがこれが一たん家庭に入って使用され始めますと、取り扱い上、修理等においても何らの法的な規制を受けないという矛盾があるわけであります。これらの点も、ひとつ長期的な課題として御検討をいただきたい。  そして、この試験制度というものができたばかりでありますから、関係者とも十分話し合っていただいて、消費者の安全のために、資格者がメリットのある制度にするように、当面は運用の面で工夫をしていただきたいことを強く要望しておきたいと思います。今後の行政の対応を見て、今後もこの問題を取り上げていきたいと思います。  第四点として、学校給食への米飯導入に基本的に反対するものではないわけでありますが、週二回を超える米飯給食の拡大実施に当たりましては、慎重な配慮がありませんと、学校給食パン指定工場は一段と窮状に立たされる心配があると思うわけでありますが、この点についての御見解を承りたいと思います。
  73. 奥田與志清

    ○奥田説明員 米飯給食は、食事内容の多様化を図り、米飯の正しい食習慣を身につけさせるなど、わが国にふさわしい学校給食を実施したいということで、昭和五十一年度から計画的に推進しているところでございまして、今日ではほとんどの学校でその普及を図っているところでございます。  今後におきましては、米飯給食の定着を図るべく、昭和六十年代の初期におきまして週三回程度の米飯給食を実施することを目標に、当面は地域や学校の実情に応じ、段階的、漸進的に実施の回数を増加していき、昭和六十年度におきましては全国平均で週三・五回程度実施を目標に、その推進を図ることとしているわけでございます。  米飯給食の推進に当たりましては、学校給食現場の理解と協力を得るということはもちろん必要でございますけれども、先生ただいま御指摘のように、委託炊飯を引き受けてくださいます学校給食パン製造業者の協力を得るようにするということが大事でございます。そのために、たとえば委託炊飯の優先的な受託をしていただくとか、あるいはそのための設備整備補助金を用意するとか、あるいは資金貸し付けなど、関係省庁の協力を得まして、今後とも引き続きこれを実施していきたいというふうに考えております。このようにしまして、地域や学校の実情に応じた米飯給食の円滑な実施を図っていきたいと考えているわけでございます。
  74. 長野祐也

    ○長野委員 段階的に進めるという大変慎重な配慮のある御答弁をいただきましたので、そのとおりにお進めいただきたいと思います。  次に、景気動向を初め、六点、大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、時間の関係で三十分ほどしかありませんので、恐縮ですが、御答弁も簡潔にお願い申し上げたいと思います。  率直に言わしていただきますと、河本長官の御努力にもかかわらず、景気回復ははかばかしくありません。特に、ことしに入りましてからの日本経済は、大方の予想と期待に反して、低迷の度合いを深めているように思われます。昨年までは、個人消費、住宅といった内需がふるわなかった中で、輸出が高水準を続けて、何とか成長を支えてきました。ところが、ここに来てその輸出も、円安という好条件にあるにもかかわらず、さま変わりに水準を落としてきております。その分、国内需要を高めることでカバーをするというのが政府の方針であり、また、長官が昨年来主張してこられた経済運営の方向と理解をしております。しかし、問題は、内需もそう急には回復をしないことにあるわけであります。こうした内外需の景気動向を長官はどのようにごらんになっておられるのか、まずお伺いをいたします。
  75. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまの世界経済日本経済状態をどう見るかということでありますが、私どもは、まず世界経済につきましては、戦後最悪の状態にある、このように判断をしております。これは、先進工業国二十四カ国だけで失業者の数がここ二、三年の間に一千万人ふえまして、三千万人に達しておる、こういうことからもおわかりいただけると思います。日本経済も、昭和五十五年から五十六年へかけまして、大体三%成長が続いております。この状態を普通の姿と見るか、異常な状態と見るかということでありますが、私どもは、これは普通の姿ではない、世界経済も最悪の状態にあり、日本経済も第二次石油危機によりまして非常に厳しい影響が出ておりまして、それで成長率が落ち込んでおるのだ、本来の日本の力が十分発揮できる、そういう環境にないというように、現時点を分析をしております。  したがって、一つ一ついろいろ問題点を拾ってまいりますと大変むずかしいことばかり多いのでありますが、根底には、いま言ったような世界全体の経済の流れ、日本全体の経済の現時点における流れ、それを正確に把握することが必要であって、現時点がずっと永久に続くという考え方政府は立っていない、こういうことでございます。
  76. 長野祐也

    ○長野委員 五十六年度実質成長率は、政府の見通しでは四・一%となっておりますが、いまとなっては三%を割り込んだと見る向きがあります。これを長官としてどう見ておられるでしょうか。  また、長官はいろいろいまの景気をよくするための処方せんをお持ちのようでありまして、それは後ほど伺いたいと思いますが、五十七年度の実質成長見通し五・二%を達成することは、私としては至難のわざと思われてならないわけであります。内需が伸びないのは、単に税負担や社会保険料というものがふえて、いわゆる可処分所得がマイナスになったということだけでは必ずしもないのではないかと私は思います。耐久消費財につきましては、自動車、カラーテレビ、さらには住宅についても、いまは一応充足をされております。日本だけでなく、欧米でも同じ傾向があって、幾ら日本の品物がいいからといって、いい気になって輸出を続けていると、その国のメーカーの売り上げにすぐ響いて、いわゆる今日の経済摩擦の種をつくるという状況であります。日本だけひとり突出した成長を続けることにはどこか無理が出てくるのではないだろうかと私は思います。長官としては、日本は欧米と違い高成長が可能とのお考えをお持ちのようでありますけれども、これをめぐって、エコノミスト、経済界の間でも賛否両論があるわけであります。五十七年度のこの五・二%成長可能性を含めて、長官の御見解を伺いたいと思います。
  77. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十六年度経済成長の実績は、六月になりませんとはっきりいたしませんが、大体三%弱になるであろう、こう思っております。五十五年度成長が三・七%でありますから、二年間連続いたしまして三%前後の成長が続く、こういうことであります。  政府見通しは四・一%でございますから、それが落ち込んだ一番の理由は、五十六年度の後半、急速に輸出が落ち込んだということでございます。なぜ輸出が落ち込んだかといいますと、やはり世界経済先ほど申し上げましたように戦後最悪の状態にあって、購買力というものが非常に減少しておる、それが落ち込みの原因だと思います。  それから、もう一つ経済見通しの狂いました背景は、可処分所得がマイナスになったということであります。そのために、消費がふえない、住宅が建たない、中小企業の状態が非常に悪い、したがって、中小企業で想定をしておりました設備投資が予定よりも相当落ち込んでおる、この二つだと思います。貿易の問題と可処分所得の問題。そこで、四・一%が三%弱になった、こういうことだと思うのです。  いまのお話は、いま世界経済全体がゼロ成長とかあるいはマイナス成長になっておる、したがって、日本だけがそれよりも相当高い成長をするということは突出した成長であって、それはむずかしいし、また、そういうことをやるとトラブルのもとになる、こういうことにならないかというお話でございますが、私どもは、先ほども申し上げましたように、現時点の経済は異常な姿であるということをまず認識をしております。そして、世界経済全体も異常な姿でありまして、御案内のように、昭和五十二、三年ごろには、世界経済日本よりも第一次石油危機から比較的早く回復をいたしまして、欧米諸国も四、五%成長が続いておったのであります。それが現在、ゼロ成長またはマイナス成長に落ち込んでおるということでございます。  私は、日本状態と欧米諸国と比べまして、根本的な経済条件が幾多の点で違うということをいつも申しておるのでございますが、一つは、先方は大体一〇%前後あるいはそれ以上のインフレが続いておりますし、わが国は三%台という安定した物価水準になっております。また、失業率も大体一〇%前後のところが多いわけでありますが、日本は二%をちょっと超えたところにございますし、そういうことを背景にいたしまして、国民生活にも幾つかの問題がございますけれども、外国に比べますと安定をしておりまして、労使関係も大変よろしい。金利水準も低い。それから、国債は大量に発行しておりますけれども、これは貯蓄率が高いですから、市中で完全に消化されまして、そのことが原因でインフレは起こっていない、こういうことでございます。  経済の国際競争力は、特に第二次石油危機が起こりましてからの三年間に非常に強化されまして、大部分の分野では世界で一番強い状態になっております。しかも、その差は年々歳々拡大の方向に進んでおります。さらにまた、防衛費の負担等を比較いたしましても、欧米諸国と負担率が非常に違っておる。こういうことを考えますと、基礎的な条件が幾つか違っておりますので、欧米諸国と違う経済運営ができても当然だ、このように私は思います。  欧米諸国と同じ経済運営経済成長にならないとおかしいという議論はたびたび聞くお話でございますが、必ずしもそうではない、日本は幾つかのすぐれた条件を生かして、欧米諸国よりも安定した成長をすることが可能だ、このように判断をいたしております。  ただ、ここで気をつけなければなりませんのは、これが過去二カ年のように輸出貿易によりまして成長がどんどん高まっていくということになりますと、世界各国が不況で苦しんでおる、そこへ日本の商品が流れ込みまして幾つかのトラブルを起こしますから、貿易問題につきましてはよほど気をつける必要があろうかと思います。したがって、わが国は内需中心の成長に持っていく、先ほど申し上げましたような幾つかの有利な経済条件を生かしまして、内需中心の経済成長に持っていくということが、これからの経済政策の一番大事な点でなかろうか、このように判断をいたしております。
  78. 長野祐也

    ○長野委員 五十七年度の五・二%成長の見通しについては、どのようにお考えですか。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十七年度の五・二%成長は、今月から五十七年度が始まっておるわけでございまして、こういう激動期でございますから、こういう激動期には、機敏で、しかも適切な政策を次から次へ打ち出していかなければならぬ、こう思っております。私どもは、これからの適切な経済政策を進めることによりまして、五・二%成長を達成するということは決して不可能なことではない。まだ年度当初、スタートしたばかりの時点におきまして、五・二%成長が達成できないのだというような意見が一部にございますけれども、そういう意見に私はにわかに賛成できない。やはり潜在成長力があるわけでありますから、政策努力を加え、工夫を加えまして、そして、五%成長というのは私どもは安定成長だと思っておりますので、わが国を安定成長路線に定着させる、そういう方向に努力すべきだと思います。第二次石油危機も大体峠を越すのではないか、このように思われますので、これからの工夫と努力によりまして十分可能である。  実は、昨年この見通しをつくります場合にも、政府部内でも非常に議論がございました。ずいぶん長い間掘り下げた議論をいたしました結果、工夫によってこれは可能である、そういう結論に達しまして、この見通しをつくったという経緯がございます。
  80. 長野祐也

    ○長野委員 五・二%は不可能ではなく、十分可能だという御答弁なんですが、先ほど御答弁にあったように、五十六年度が三%弱だということになりますと、当初のスタートから低くなっているわけでありますから、五十七年度の五・二というのは、私はどうも一段とむずかしいのではないかなという気がしてなりません。特に、いま、日本の潜在成長率日本と欧米とは根本的に経済条件が違うのだということについては、私どもも十分理解ができるわけでありますし、その活力を大いに利用することも同感であります。ただ、いずれにしても、いまの内需あるいは輸出を総合的に考えてみて、ヨーロッパよりは高目の安定成長ということを考えていくと、やはりせいぜい高目の三%ぐらいが私は妥当なのではないかなという気がしてならないのでありますが、重ねてこの点をお尋ねいたします。
  81. 河本敏夫

    河本国務大臣 実は、第一次石油危機の直後にも、そういう議論が非常に幅広く日本の国内でも行われたのでございます。四十八年に第一次石油危機が起こりまして、四十九年と五十年、二カ年の平均の成長率は二%弱に落ち込んでしまいました。そこで、わが国経済もせいぜい一、二%見当の成長率しかなくなったのではないか、余り無理することはないではないか、地球は有限だし、余り無理せぬで、一、二%成長で、時と場合によっては生活水準を落としてやるようにしたらどうだ、こういう意見が幅広く行われたのであります。  しかし、私ども政府では、当時いろいろ検討いたしまして、約一カ年をかけましてその問題について議論を重ねてまいりました。その結果、四十九年、五十年が二%弱の成長に落ち込んだのは第一次石油危機による一時的な現象であって、世界全体がそのような状態になってしまう、また、日本がそのような状態になってしまうと即断するのはいかがなものだろうか、経済が安定をすれば、五%前後の成長率が十分可能ではないかということで、五十一年から五十五年までの成長目標を六・三%に設定をしたのでございます。その結果、大体五%台という成長が達成できまして、特に五十四年度は、ほっておきますと六%台の成長は十分達成できる勢いになったのでございますが、特に公共事業などを五十五年度に大幅に繰り延べをするという現在と反対の措置をいたしまして、結局成長率は五%に落ちついた、こういうこともございました。  したがいまして、過去二カ年間の三%前後の成長というのは、やはり第二次石油危機による影響のせいである、世界全体がゼロ成長とか低成長に落ち込んでしまったわけではない、わが国もそのように低成長時代に落ち込んでしまったわけではない、このように判断をいたしておるところでございまして、三%を超える成長は十分可能であって、潜在成長力を最大限に引き出すような経済政策が必要である、このように判断をいたしております。三%成長という現在の姿は異常な姿である、こういう判断でございます。
  82. 長野祐也

    ○長野委員 大臣の答弁のように現実がなりますことを、私も期待をいたしたいと思います。ただ、私があえてこの問題を繰り返し申し上げたのは、国民に期待だけ持たして、昨年もだめだった、ことしもだめだったということになってきますと、大局的に見て、政治に対する信頼を失うおそれがあるのではないか、そういうことを憂慮するからでございます。御健闘を期待いたしたいと思います。  五十七年度税収見通しにつきまして、渡辺大蔵大臣は、予算で見積もった額に達しない可能性が大きいということを言っておられます。これに対して、長官は、最近の講演で、自然増収は予算で見込んだ四兆円を上回り、六兆円にすることも可能だと言っておられます。そうなりますと大変頼もしい限りでありますが、その場合の条件として、追加政策がとられればということも言っておられるようであります。この追加政策というのは、秋口に二兆円程度の建設国債を発行して、公共事業を追加するというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
  83. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十七年度税収年度は、まだ始まっていないのでございます。会計年度は四月から始まっておりますが、税収年度は六月一日、再来月から始まるということでございまして、予算も四月五日に成立したばかりでございまして、その予算税収を早々と、だめだ、こういうように言い切るのはいかがなものか。私は、大蔵大臣が発言をされました内容を正確に知りませんので、何とも言えませんが、そこまで言い切っておられたのかどうか、大変疑問に思っております。  それはそれといたしまして、私が申し上げましたことは、五十五年度税収は、年度当初の税収に比較いたしまして五兆円ふえておるのです。二百四十兆円というGNPの規模で三・七%成長という経済でございましたが、その経済の中から五兆円の自然増収が当初予算に比べて生み出されておる。そういうことを考えますと、五十七年度経済の規模は二百八十兆弱と想定をしておりますので、世界経済回復し、同時に日本経済がその中において軌道に乗り、力を回復するということでありますならば、そして五十五年度経済財政の力を維持することが可能でありますならば、経済の規模が大きくなっておるだけ、六兆とか七兆という税の自然増収を確保するということもあながち不可能なことではない、頭からだめだ、だめだときめつけてしまうのもいかがなものであろうか、これからの努力と工夫次第によって、五十五年度の実績を上げるということはさほどむずかしいことでもない、このような判断から、可能性のことについて申し上げたわけであります。  その可能性が実現するような政策をとるかどうかということは、これからの課題であろう、このように考えております。
  84. 長野祐也

    ○長野委員 時間がありませんので、先に進みたいと思います。  長官は、いま論議されております行政改革と、景気回復による財政再建とは、両立するという考えだと聞いております。建設国債発行による景気刺激というものは、五十九年度までに赤字国債をゼロにするという政策方針には反しないわけでありますが、国債累増要因であることには変わりがありません。経済団体首脳も、昨二十一日に、自民党三役との会合で行革優先を要望しております。私も、この際は行革を最優先し、行革景気回復を同時に達成をする二兎を追う政策はとらない方が賢明なのではないかと考えますが、この点については、大臣の御見解、いかがでしょうか。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま経済回復力が非常に弱っておりますので、幾つかのひずみが出ております。特に中小企業に大きなひずみが出ておりますので、こういう状態は一刻も早く脱却しなければならないということで、先般、公共事業その他政府関係の仕事を上半期に集中執行する、そういうことを決めたばかりでございます。後半、この集中執行が誘い水になりまして日本経済が力を回復すれば、大変いいわけであります。私どもは、回復することを期待しておりますけれども、必ずそうなると言い切るだけの自信はまだございません。  その場合、一体どうなるのか、こういうことになりますと、万一計画どおり回復しないという場合には、何らかの最終需要を追加しないと、経済はがたんと落ち込んでしまいます。何しろ公共事業だけとってみましても、上半期に十九兆円、下半期に五兆円ということでありますから、相当悪い影響が出てくると思います。  もっとも、公共事業というのはGNPの九%でありますから、公共事業だけで景気が左右されるわけではございませんけれども、その場合には、最終需要が拡大されるような政策を考えていかなければならないと思います。最終需要というのは公共事業ばかりではございませんで、たとえば金利を下げることによって民間の設備投資を拡大するというのも、一つの方法だと思います。それから、住宅の追加政策をして住宅政策が拡大をするというのも、一つの方法だと思います。あるいは民間の消費を拡大するための物価政策をさらに強力に進める、物価安定をさらに強力に進めていく、これも一つの方策であろう、このように思います。それからまた、公共事業を追加する、これも一つの方法だと思います。  しかし、公共事業といいましても、建設国債を追加するだけが対策ではございませんで、財投による追加策もございましょう。あるいは民間資金を活用するという方策もあろうかと思います。たとえば、いま石油公団などは各地で石油備蓄基地をつくっておりますが、その大部分の資金は民間資金を活用するということになっておりまして、この石油備蓄基地の建設計画というものは景気に非常に大きな影響を与えております。民間資金による事業量の確保、こういうことも可能だと思います。あるいはまた、地方財政は中央よりも豊かでありますから、単独事業による事業量の拡大ということも考えられると思うのです。ですから、最終需要の追加は即建設国債の増発だ、このようにいまの段階で決めてしまうというのはいかがなものであろうか。  私どもは、そういう場合には最終需要の拡大、追加を図ることが必要だと言っておりますけれども、いま建設国債を二兆出すとか三兆出すとか、そういうことを決めたわけでもございません。ましてや、この追加政策全体の具体的な内容を決めたわけでもございませんで、何らかの追加政策が必要だ、このことを決めておるということでございまして、その内容につきましては、これからの経済の動きを見まして、最も有効な方法で決めたい、このように判断をしておるところでございます。
  86. 長野祐也

    ○長野委員 昨日のこの経済四団体の党三役に対する要望については、どのように受けとめておられますか。
  87. 河本敏夫

    河本国務大臣 私はその新聞の見出しだけしか見ておりませんので、どういう内容のお話があったのか、よく理解しないのですが、ただ、原則的に申し上げますと、行政改革はあくまで成功させなければならないと思うのです。ただし、行政改革をやるのだから、景気対策はどっちになったっていいのだ、後回しでもいい、景気が一時落ち込んでもいいのだ、こういう議論になりますと、これは税収が入ってきませんから、税収が入ってこないばかりか、たとえば昭和五十年度のような例もございまして、前年度に比べて大幅な落ち込みになる、こういう例もございますし、落ち込みというのはマイナスになる場合だってあり得る、こういうことでございますから、これは大変なことになろうかと思うのです。  だから、やはり私どもは、行政改革成功させなければならない、しかし、景気回復も積極的に図っていかなければならない、それをやらないと財政再建もできませんし、国民生活も安定充実することができないということでありますから、その二つの政策を並行して成功させるということが非常に大事だと考えておるのですが、景気なんかどうなったって構わないのだ、まさかこういう議論はなかったと思うのですけれども、もしそういう議論があったとするならば、何ゆえにそういうことになるのかということにつきましてよく意見交換をしてみたい。そして、こういう景気回復とか行政改革という問題は、単に政府だけでできるものではございませんで、やはり民間の方々の協力も得なければなりませんし、理解も得なければなりませんので、国を挙げての大きな課題でありますから、よく意見交換をしまして、そして、最もわが国の発展のためにいいと思う方向を選択したい、このように判断をしております。
  88. 長野祐也

    ○長野委員 六月のベルサイユ・サミットでは、世界経済の再活性化が議題になり、日本に対しては、国際収支、物価面で余裕があるのだから、世界経済の機関車的な役割りを果たしてくれという要請が出てくることが予想されるわけであります。それにこたえるとしますと、従来の財政金融政策を積極化する方向で大幅に転換をしなければならないわけであります。かといって、公定歩合を下げる環境にもありませんし、財政面でのてこ入れは、財源の上でおのずと制約があるわけであります。したがって、この財政再建路線を崩さずに財源を確保するということになりますと、やはり行きつくところ、減税を見合いにした大型間接税の導入以外にないという主張が財政当局あたりから出されておるわけですが、この点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  89. 河本敏夫

    河本国務大臣 ベルサイユ・サミットの議題はまだ決まっておりませんで、きょう、あす第二回目の打合会が開かれております。もう一回打合会がございますので、そこで最終的に議題が決まりますが、多分、現時点における判断から、いまお述べになりましたように、第一の議題は、世界経済の再活性化、それから第二の議題が、自由貿易をどのように守っていくか、こういうことでなかろうかと思います。そのほかに、通貨金融政策、エネルギー政策、南北政策、こういうことが議論になろうかと思いますが、最大課題は、世界経済の再活性化と自由貿易体制の維持、こういうことだと思います。  そこで、わが国といたしましては、その会議日本としてのその主張をしなければなりませんので、日本がそういう主張だけしまして日本としては何もしない、こういうことでは、わが国の主張というものが非常に説得力がございませんから、そういうことを言う以上は、相手がなるほどと思うような対応をして臨むことが日本として必要だ、このようにいま考えております。  さて、そういう場合に、いろいろなことをやるといっても財源がないではないか、だから大型間接税をやるべしという議論が一部にあるが、どうかというお話でございますが、大型間接税はやらないというのが政府基本方針でございますから、私どもは、大型間接税をやらないで何とか現在の難問題を解決していきたい、このように考えております。
  90. 長野祐也

    ○長野委員 そういう方向でぜひお願いを申し上げたいと思います。  最後に、物価は、卸売、消費者両面におきまして、いまのところきわめて落ちついた情勢にあるようであります。この鎮静の背景は、石油価格の落ちつきが大きいと思われるわけであります。この情勢がしばらく続いてくれればいいわけでありますが、長官は、中東情勢がきわめて微妙で、石油価格の先行きが必ずしも楽観を許さないという見解をお持ちだとお聞きしております。中東情勢をどういうふうにごらんになっているか。  さらに、いまの高水準の円安が物価上昇に無縁でないと思われるわけでありますが、今後の物価動向についても、あわせて御見解をお示しいただきたいと思います。
  91. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま世界の一番大きな課題は、先ほど議論になっております第二次石油危機による混乱、これを一刻も早く解決をするということだと思います。あわせまして、各方面から第三次石油危機の危険性も大いにあるということが指摘されておりますので、第三次石油危機を起こさないための幾つかの対応策が必要だ、このように考えております。  中東情勢から判断をいたしまして、第五次中東戦争が起こる危険性はないということは言い切れない状態でございますから、治にいて乱を忘れずといいますか、第三次石油危機を回避するために、石油消費国はどのような対応をすべきかということが非常に大きな課題であると思っておりますけれども、いまの石油の小康状態が直ちに崩れるという情勢にはない。と申しますのは、現在はアメリカとサウジアラビアとの関係が非常にうまくいっておりまして、サウジアラビアが現在の石油政策を急に変えるとは思われません。したがって、よほどのことがあって戦争でも始まれば別でありますけれども、そうでなければ、いまの小康状態はしばらく続くであろう、このように考えております。だから、その面、つまりエネルギーの分野からくる物価上昇要因というものはそう大きくはない、こう思います。  もう一つ御指摘になりました円安という問題につきましては、アメリカが金利を下げてくれますと一遍に円高になるわけでございまして、最近は逆に、日本が金利を上げなさいとか、いろいろなことをヨーロッパあたりでは言っておりますけれども、これは日本経済の認識としてきわめて不正確である、私はこのように判断をしておりますので、そういう議論には同調するつもりはございませんで、円安を修正するためにはアメリカの高金利政策を是正してもらう。幸いにアメリカは物価は安定もいたしましたし、来月中には、財政赤字をどうするかということについて政府と議会の合意もある程度できる、こういう報道もございますので、現在のアメリカの高金利、金融政策を是正することによって、世界経済の再活性化が達成され、同時に、日本の円安が是正されることを私どもは期待をいたしておるというのが現状でございます。
  92. 長野祐也

    ○長野委員 ちょうど時間になりましたので、時間の関係でちょっと舌足らずな点で誤解もあったかと思いますが、景気回復物価の安定で大臣に大変御苦労いただいておりますことについては、私どもも敬意を表しているわけでありまして、今後、国民的な課題である行革財政再建との調和の中でひとつ御検討をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  93. 武部文

    武部委員長 次に、春田重昭君。
  94. 春田重昭

    ○春田委員 最初に、景気の問題についてお伺いしたいと思いますが、質問の流れの上で同僚議員と重複する点がございますけれども、どうかその点は御理解をいただきたいと思います。  日本経済は依然として低迷状態にあるわけでございます。この原因を海外面と国内面の両面でとらえた場合に、経企庁としてはどう分析されておるのか、まずお伺いしたいと思います。
  95. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在の景気が思わしくないという背景が幾つかありますが、大きく分析をいたしますと、世界経済の停滞によりまして貿易が伸び悩んでおるということが一つあろうかと思います。それからもう一つは、可処分所得の伸びが非常に低い。昨年はマイナスでございましたが、現時点でも非常に低い。こういうことのために国内の消費が伸びない。住宅が建たない。その住宅と消費と密接な関係のあります中小企業の状態がよくない。したがって、中小企業の投資が進まない。しかも、それが悪循環を繰り返しておる。この二点に大きな原因があろうと私は分析をいたしております。
  96. 春田重昭

    ○春田委員 今後の経済の見通しでございますけれども、特に世界経済につきましては、せんだって国連の事務局が、依然として後半期も厳しいのじゃないかという見方をしております。また、OECDの発表によりますと、後半にはかなり回復するのじゃないかという見方もあるわけですね。そのように、見方によりまして、依然として後半も厳しいのじゃないか、よくなっていくのじゃないか、それぞれの見方がありますけれども長官はどう分析されておりますか。また、国内景気の先行きの見通しでございますけれども、この辺はどうお見通しになっておるのか。この二点についての御見識をお伺いしたいと思います。
  97. 河本敏夫

    河本国務大臣 最近、国連から経済見通しが発表になりましたが、これは、ことしは回復しないというのじゃないのです。ことしは回復するけれども、その回復力が弱い、こういう報告であります。そして、本格的な回復は来年以降になるであろう、こういうことを言っておるわけであります。現時点は非常に深刻であるという分析をしております。  それから、OECDにつきましては、昨年の十二月には、ことしの後半は相当急速な回復に移るであろう、OECD加盟国平均が三%強の成長、特にフランスとドイツは四%成長、英国は一・五%成長ですが、とにかく二十四カ国が三%強の成長になる、こういう見通しの発表でございますから、これは非常に楽観的な見通しであったわけでございますが、最近もう一回作業をし直しておるようであります。六月にはその作業の結果が発表されると聞いておりますが、現在までの作業によりますと、昨年の六月の回復見通しは若干修正する、回復の大勢は変わらぬけれども、その回復の幅が少しダウンする、こういう結論が出るのではないかというように言われております。  したがいまして、国連の経済報告、それからOECDの、多分六月に発表されるであろうという経済見通しの修正、これは厳しいと私ども考えております。
  98. 春田重昭

    ○春田委員 日本経済というのは、貿易立国という立場上といいますか、宿命にありますので、世界経済に依存する度が非常に強いわけですね。そういう面で、世界経済がどうなるかというのは私たちも非常に関心があるわけでございますけれども長官、この世界経済の好転する条件はどういう点にあるとお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  99. 河本敏夫

    河本国務大臣 これからの一連の国際会議におきましても、世界経済の好転、世界経済の再活性化ということについて議論がいろいろあろうかと思うのです。私は、端的に申しまして、世界経済を再活性化させる、世界景気回復する決め手は何ぞやというと、それはアメリカの高金利の是正である、アメリカの高金利を是正すれば一挙によくなるだろう、このように思います。
  100. 春田重昭

    ○春田委員 国内景気でございますけれども、昨年の十月から十二月期の実質経済成長は、前期に比べて〇・九%のマイナスであったわけでございます。そこで、まだ明確な数字が出てないと思うわけでございますけれども、この一−三月の基調といいますか、大体の推測といいますか、この辺、長官はどのようにお考えになっておりますか。
  101. 河本敏夫

    河本国務大臣 一−三月期はマイナス成長にはならぬ、こう思っております。ただ、その成長率がどの見当かはわかりません。六月の中旬になりませんと、はっきりした数字が出てきませんが、しからば、年度間を通じての成長はどうかということになりますと、第三・四半期までの成長がわかっておりますから、たとえば仮に第四・四半期が一%成長の場合は幾らかとか、あるいは昨年の一−三月が〇・七%成長でありますから、その場合には幾らになるかとか、あるいは一・五%成長の場合には幾らになるかとか、そういう仮定を設けて年度全体の成長率を計算することは可能でございますけれども、現実の数字そのものは六月に明確になる、こういうことでございます。
  102. 春田重昭

    ○春田委員 五十六年の四月から十二月期の成長率は二・五%ないし二・六%と聞いておるわけでございます。そこで、一−三月期が大体六月ぐらいに明確になって、五十六年度全体の成長率が出ると思うわけでございますけれどもマイナスにならないけれどもということは、そうプラスにもならないということじゃないかと私は思うわけですね。そういう点で、先ほどから長官のおっしゃっているように、三%台は非常に無理じゃないか、三%弱じゃないか、こういうような発言をされているわけでございますけれども、三%台を維持しようと思ったら、一−三月期が前期比二・一%の経済成長がなかったたらだめだと言われているわけですね。そういう面で言って、二・一%というのはとてもじゃないが無理だということで、三%弱になっている、こう理解していいわけですか。
  103. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の一月から十二月までの成長率は二・九%であります。これはもう数字が出ております。四月から三月までは先ほど申し上げましたようにまだ不明確である、ただし、三%に達することはなかなか厳しい、そこで、三%弱見当の成長であろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  104. 春田重昭

    ○春田委員 特に、海外需要の中で輸出の増勢が非常に鈍化して、非常に大きな問題となっているわけでございます。特に十月から十二月期におきましては、この輸出が相当落ち込んでいるわけでございます。これは対米を初め対ECに対する貿易摩擦というのが相当大きな問題になっているわけでございますけれども、この貿易摩擦という問題もやはり関連しているとお考えになっておりますか。
  105. 河本敏夫

    河本国務大臣 それはやはり大きく関係しておると思います。
  106. 春田重昭

    ○春田委員 経企庁が出します景気動向には、個人消費は一進一退で回復の方向にある、このようにお述べになっておりますけれども、これはいかなる理由によってそのようになっているのか、お伺いしたいと思うのです。
  107. 横溝雅夫

    ○横溝説明員 現実の数字を申し上げますと、家計調査によりますと、去年十二月の実質消費支出、全世帯、前年同月比マイナス〇・六%、要するに前年を〇・六%下回っておったのでございますが、一月には〇・九%のプラスになっておりまして、マイナスからプラスになったという数字があるわけでございます。それから、全国の百貨店の販売動向を見ましても、十二月が前年に比べて、名目値ですが五・一%ふえたのが、ことしの一月には七・七%ふえたというようなことで、十二月と一月を比べますと、十二月が弱くて一月が伸びが若干高まったということはございます。また、二月になりますと、家計調査はまだ出ておりませんが、百貨店の販売額が五・二%と、一月の七・七%に比べると伸び率がまた下がったというようなことで、一進一退ということなんでございます。  ただ、大きくとらえますと、現金給与総額といいますか、勤労者の所得が前年に比べて五、六%ふえています。他方、ことしに入りましてから、消費者物価の上昇率が三%強というところに上昇率が下がってきております。したがって、実質賃金が約二%程度プラスという状況にことしになってから入ってきておりますので、そういう物価の落ちつきを背景にして、昨年までに比べれば消費の伸び方は、昨年非常に停滞したのに比べればやや回復の方向に入ってきているのではないかと考えている次第でございます。
  108. 春田重昭

    ○春田委員 内需拡大といいますか、個人消費拡大のためには可処分所得がプラスにならなければならないと先ほど長官もおっしゃったわけでございますけれども、この可処分所得については、昨年の六月から十月までがマイナスだったのですね。十一月にプラスになりましたけれども、十二月にまたマイナスに逆戻り。ことしの一月になりますとこれがプラスになったわけでございまして、まさに水平線上を上下行ったり来たりしているわけでございますけれども、二月、三月の可処分所得の行方といいますか、動向ですが、昨年の二月時点ではマイナスになっているわけですね。それがことしの二月、三月にはどういう方向になるかということでございますけれども、この辺は経企庁はどういう見方をされておりますか。
  109. 横溝雅夫

    ○横溝説明員 月別にどういう数字になるかというのは確たる見通しは立っておりませんが、先ほど申し上げましたように、一月の全国勤労者世帯の可処分所得実質三・〇%プラスで、それまでマイナスが比較的多かったのに比べて非常に大きなプラスになったわけでございますが、この状態が二月、三月も続くかどうかというのは、確たる見通しは申し上げにくいところでございますけれども先ほど申し上げましたように、労働省で調べております毎月勤労統計などから考えますと、五、六%程度賃金が伸びておりますので、物価の落ちつきを勘案いたしますと、ある程度の実質可処分所得の増加というのは見込めるのではないかと思います。  もちろん、先生は恐らく所得税等の非消費支出の増加があるではないかということをお考えと思います。確かにその非消費支出の方の伸び率は相対的には高いと思いますけれども、ただ、所得全体に占めるウエートが低うございますから、実質可処分所得としては、そういう物価情勢あるいは賃金の動向から考えますと、プラス基調にあるのではないかと考えます。
  110. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、五十七年度経済成長率でございますが、先ほども質問が出ておりました、五・二%の数字は達成可能かどうかという問題でございます。  五十六年度経済成長率が大体三%弱になるだろうということから推測して、五十七年度は五・二%というのは相当きつい数字じゃないかと私も思うわけでございます。昨日は財界四団体から、五・二%は見直すべきであるという意見も出ておるやに聞いておるわけであります。こういう点からいきまして、確かに五・二%の経済成長をしなかったらそれだけの税収が入ってこない、こういう財政上の問題もあると思うのですけれども、一部の人からは、数字上のつじつま合わせのために五・二%に盛っているのじゃないか、かさ上げしたのじゃないかという批判めいた意見もあるわけでございますけれども長官の御意見をお伺いしたいと思うのです。
  111. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十七年度は今月から始まったばかりであります。そして、私どもは初めから、五十七年度経済はほっておいても五・二%成長が達成できる、そういうことを言っておるわけではございませんで、やはり世界経済日本経済の変化に応じて、機敏で適切で十分ないろんな対応をしていけば、その見当の達成は可能である、そういうことを言っておるわけでございまして、五・二%を達成するかしないかということはこれからの工夫と努力いかんにかかっておる、こう思っております。  先ほども少し述べましたが、実は四十九年と五十年度、第一次石油危機の直後に、二%弱の成長に平均二カ年間落ち込んだ。そのときも、五%とか六%とかいう成長を達成しようということなどはもってのほかである、そんなことはあり得ない、世界全体が低成長時代に入ったのだ、日本もその世界の流れをよく見なければならぬ、こういう議論日本の各方面で非常に強く叫ばれまして、一、二%の低成長時代、それが本当の姿である、こういうことが非常に幅広く議論をされたのであります。しかし、政府は、四十九年、五十年は異常な姿であって、それは一時的な現象である、五十一年度以降は経済運営よろしきを得れば五、六%成長は可能である、そういうことから、五十一年から五十五年までの経済成長目標を六・三%と設定をしまして、ほぼそれを達成してきたところでございます。  今回も、いま御指摘のように三%成長に入っておりますから、もう世の中は三%時代である、したがって、五%成長などというようなことは言わぬで、もう三%に落として何もかもやったらどうだ、こういう議論もございますが、私どもは、この二カ年というものは異常な姿である、世界経済が戦後最悪の状態になっておる、そういう背景における混乱である、したがって、そういう混乱期が永久に続くのだということを考えること自身がおかしいのではないか、このように思っておりまして、第二次石油危機もようやく三年目を迎えておりまして、混乱の峠も越そうかとしておりますので、私どもは、経済に工夫と努力を加えることによりまして五・二%成長というものを達成するために、今後も工夫と努力を重ねたい、このように考えております。
  112. 春田重昭

    ○春田委員 ことしの春闘の相場は一応山場を越したと思うのですが、大体現在までは七%程度の賃上げ率になる公算が強いわけでございます。この七%程度の賃上げは、経済効果でとらえた場合、長官はどう評価されるとお考えになっておりますか。
  113. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在まで判明をいたしました約三百社弱のベースアップを集計してみますと、七・二%という数字が出ております。昨年度、五十五年度物価水準は七・八%、ことし、五十六年度物価水準はまだ最終的にはわかりません、もう少したちませんと年度を通じての水準はわかりませんが、四%前後になるのではないか、こう思っております。物価水準は相当変わりましたので、昨年のベースアップに比べますとある程度充実した内容になっておる、こういう感じもいたしますが、ただ、中小企業のベースアップがまだ決まりませんので、やはり中小企業に働いておる人たちが七割ございますから、この中小企業のベースアップが全体としてどうなるのかということをもう少し見きわめませんと、今回のベースアップがわが国経済にどのような影響を及ぼすかということについての判断は、まだできないと思います。
  114. 春田重昭

    ○春田委員 昨年は大体七・七%の賃上げ率であったわけでございます。消費者物価も大体四%台で、非常に落ちついていたわけでございますけれども、そうした数字にあったにもかかわらず、可処分所得は御案内のとおりマイナスになったわけでございます。そして、個人消費もそう伸びなかったわけでございます。ということは、物価が落ちついても、賃上げが高くとも、消費が伸びるというのはもう昔の神話であって、決していまでは言えない。いわゆる税金や社会保険料の負担額が非常に多いということ、昔に比べれば相当高くなってきているということが言えるのじゃないか、これを示したものじゃないかと私は思うわけでございます。  そういう点で、ことしは物価が相当落ちついているわけでございますけれども、昨年の賃上げ率からすればやはり低いわけでございますから、景気拡大はそう望めないのじゃないかと私も思っているわけでございまして、ここに減税の必要ということが大きくクローズアップされると私は思うのです。  そこで、賃上げが昨年より低かった。確かに企業は悪化している中で七%というのは評価している面もございますけれども、そうしたいわゆる個人消費を伸ばす面からいったならば相当厳しいのじゃないかという見方があるわけでございますので、減税が必要であるという声がまた一段と上がるわけでございます。いま大蔵の小委員会で減税問題については論議がされているわけでございますけれども、この減税問題について長官に御所感をいただきたいと思います。
  115. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年は大企業のベースアップは七・七%でありましたが、中小企業の業態がよくない。そこで、中小企業のベースアップが非常に低かったわけであります。政府は一人当たりの雇用者所得の伸びを七・五%と想定をしておったのでございますが、これが相当大幅に落ち込んでおると思います。最終の数字はまだわかりませんが、相当大幅に落ち込んでおる、このように考えております。ことしは六・九%一人当たりの雇用者所得の伸びを考えておりまして、これが、ベースアップとは直接の関係はありませんが、やはり若干の影響がございますけれども、これとても、先ほど申し上げましたように最終的に中小企業のベースアップがどのようになるかということで決まりますので、全体としての判断はもう少し先にしたい、こう思っております。  そこで、いまお述べになりましたのは、実質可処分所得がふえなければだれも物を買わぬではないか、家も建てない、したがって、景気はよくならぬ、だから、この際減税をやるべし、こういうお話でございますけれども、この減税問題につきましては、政府は一月に政府全体としての統一見解をつくったことは御案内のとおりであります。予算の最終段階まではこの統一見解を基礎にして国会で答弁を繰り返しておりましたが、最終段階で議長の見解が出まして、国会をストップしないで審議を再開しなさい、そして、大蔵委員会の小委員会でこの問題をよく議論しなさい、こういう見解が出まして、政府の方は、わかりました、その小委員会の結論が出ればそれを尊重いたします、こういうことを終始一貫言っておるわけでございます。  したがいまして、小委員会で結論が出ればこれを尊重するというたてまえでございますから、いま私がここで減税問題について意見を言うのは差し控えさせていただきたい、このように思います。
  116. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、五十七年度経済成長は五・二%を政府は立てているわけでございまして、この五・二%を達成するためには、やはり雇用者所得の伸びと減税で可処分所得がプラスにならなかったならば達成しないわけでございますので、私は、長官政府有力閣僚の一人として、強くこの五年間見送りました課税最低限の引き上げを要求しておきたい、こう思っているわけでございます。  第二点といたしまして、やはり現政権の有力閣僚のお一人であります長官に、財政再建の問題で若干質問したいと思います。  総理が公約されております財政再建でございますけれども、いろいろな見方がされているわけでございまして、大方の意見は、財政再建計画は当初どおりいかないのじゃないか、見直すべきじゃないかという意見が出ているわけでございますけれども長官の率直なる御所見をいただきたいと思うのです。
  117. 河本敏夫

    河本国務大臣 財政再建というのは、現在出ております四兆円という赤字国債を五十九年度になくする、これが財政再建の内容であると私どもは承知しております。五十九年までにまだ三カ年ございますから、三年の間にこの四兆円という赤字国債を順次減額していけばよろしい、こういうことでありますので、私は、これからの財政経済政策の進め方によりましてこれは十分可能だ、このように考えております。なるほど五十六年度税収は不足すると言われておりますけれども、五十七年度以降三カ年の財政経済運営よろしきを得れば、私は、四兆円の赤字国債の減額は不可能ではない、このように判断をしております。
  118. 春田重昭

    ○春田委員 長官は、先ほど同僚議員の質問でもお答えになっておりましたけれども、五十七年度税収は大体四兆円の自然増収があるように見ておるわけでございますが、追加財政次第によってはさらに二兆円、六兆円の自然増収があるという御意見もお述べになっておるわけでございますけれども、大蔵大臣は、五十六年が大体一兆五千億から三兆円ぐらいの歳入欠陥があるだろう、この基調は五十七年も続いて、五十七年も相当厳しいという見方をされておりますし、なお五十八年度におきましては、中期財政計画におきましては三兆三千七百億も歳入欠陥が出る、こういう税収の見通しからいけば、五十九年度赤字国債ゼロというのは非常にむずかしいのじゃないかという見方をされているわけでございまして、自民党の中の一部からも見直せという意見が出ているやに聞いているわけでございます。  こうした税収の見通し、また景気の動向といいますか、また臨調でいまいろいろ検討されております歳出の削減合理化、こういった問題は、総論賛成であっても各論で反対、いろいろな意見が出る今日、非常に厳しいのじゃないか、こういう見方もされているわけでございまして、総合判断からすれば、五十九年度赤字国債ゼロというのは、とてもじゃないが不可能であるという意見が非常に強いわけでございます。長官は、そのやり方次第によってはできるし、まだ三年間あるのだからとおっしゃっているわけでございますけれども、本当に自信はおありですか。
  119. 河本敏夫

    河本国務大臣 御承知のように、昭和五十六年の税収は年末に修正をされましたが、約三十二兆を想定しておりまして、それに対しまして七%ないし八%の不足が出るであろうというのが、先般の大蔵省の見通しでございます。そうすると二十九兆台ということになりますが、五十七年はこの四月五日に予算が成立したばかりでありまして、まだ成立してから半月もたっておりません。その予算はもうだめだ、そういうことを言うのはいかがかと私は思うのです。成立した直後ですから、それをむずかしいとか、だめだとか言うのはいかがか、このように思います。大蔵大臣も別な表現をされたのじゃないか、私はこう思うのです。正確な表現は知りませんので、何とも言えません。まさかそういうことを言われたのではない、こう思います。  ただ、三十六兆六千億という税収が予定をされておりますから、これには相当の努力を要することは事実だと思うのです。五十六年度の実績に比べますと七兆以上の税収がふえないといけませんから、やはり相当な規模だと思います。  ただ、五十五年度税収を見ますと、当初予算では、前年度に比べまして約五兆円ふえているわけですね。五十五年度経済というのは三・七%成長である。二百四十兆という規模であった。その経済のときに、この五兆という税の自然増収が、これは年度当初ベースでありますけれども、期待をされた、実現をしたということでありますから、五十七年度経済は二百八十兆という規模でありますので、今後の工夫と努力によって経済が軌道に乗りまして、そして、五十五年度見当の力を維持することができれば、六兆とか七兆とかいう不足といいますか、五十六年度に対してふえなければならぬ税収は、いまの段階で、だめだ、だめだ、こういうことを言い切るのはいかがなものか、まだ相当時間もございますから、これから努力をしていかなければならぬ、また、それは努力いかんによっては実現は可能である、頭から不可能だ、そういうものではない、このように判断をしております。
  120. 春田重昭

    ○春田委員 官房長官は、新聞報道によりますと、六月ぐらいに大体五十六年度税収の見通しは明確になる、こういう時点で歳入欠陥があった場合は、財政再建の計画の見直しもあるやに報道されているわけでございます。長官は、五十七年度税収がどうなるかわからないのだから、いまからそういう見直しは必要じゃないという御意見だと思うのですけれども、五十六年度に三千七百五十億円の赤字国債の追加発行をしているわけですね。これが五十七年度にはどうかということでございますが、一部公共事業を七七%前期に前倒すわけでございますから、後半の息切れによって、いわゆる景気の動向等によっては、追加赤字国債の発行もあり得るやの発言もされているわけでございます。しかし、年度中に赤字国債を発行することは、財政再建の方針に反すると私は思うわけでございますけれども、この点は長官はどうお考えになりますか。
  121. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年末の補正予算で、いまお話のございました四千億弱の赤字国債を発行するということが決まりました。それは、年度当初予定をしておりました税の自然増収四兆四千億ばかりでございますが、それがそこまでは不可能だ、大体四兆円前後しか達成できないだろう、少なくとも四千億見当は不足するであろうということで、四千億の赤字国債が年末に補正予算として発行された、こういうことでございます。  そこで、いまのお話は、しかしながら、さらに五十六年度の最終段階ではとにかく三十二兆の七、八%という不足金が出るのだから、それの赤字国債を追加して発行するということは了承できない、こういうお話だと思いますが、これは年度がもう違っておりますから、五十六年度予算のために赤字国債を五十七年度には発行できない、こういう仕組みになっておるのだそうであります。そういう財政欠陥ができたときには別の仕組みがございまして、その別の仕組みによってそれを一時的に処理する、そういうことになっておりまして、制度として、赤字国債の追加発行というものは、以上申し上げましたような理由によってはあり得ない、このように理解しております。
  122. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんから、この問題はこれで終わりまして、次の問題に移りたいと思います。いずれにいたしましても、鈴木政権の財政再建計画というのは、どうも数字のつじつま合わせみたいになっているような感じがしてならないわけであります。そういう点で、たてまえ論だけじゃなくして、いまこそ国民理解と合意を得て、整合性のある財政再建計画をつくり直すべきである、私はこのように主張しておきます。  次に、第三点目にお聞きしたいのは、貿易摩擦の問題でございます。  対米の問題でございますが、いま各省で摩擦がある問題を経企庁と外務省が取りまとめているわけでございます。五月七日に発表するということでございますが、五月七日までには連休もありますし、いま相田詰めた論議がなされておると私は思っているわけでございますけれども、現時点で、この貿易摩擦第二弾の解消案というか、対策案というのはどこまで進んでいっているのか、お伺いしたいと思うのです。
  123. 河本敏夫

    河本国務大臣 第二弾の貿易摩擦対策をどうするか、いま関係各省において連日のように作業をいたしております。しかし、非常に難航しておることは事実でございます。何しろ相当思い切ったことをやっていこうということでございますから、簡単に合意は得にくいとは思っておりましたけれども、やはり私どもの予想どおり、非常に難航しております。アメリカ側の言うこともどうも理解に苦しむこともございますので、そういうことも難航の背景一つあろうか、こう思うのです。しかし、相手に難癖をつけて市場の開放体制をとらないというのは、これは私はよくない、こう思います。なぜかと言いますと、この問題は日本の大幅黒字から起こってきたわけでありますし、やはり日本は誠意を持ってこの問題を大局的見地から進めていかなければならない、こう私は思っておりますが、鋭意作業を進めておるというのが現段階でございます。
  124. 春田重昭

    ○春田委員 難航している最大の原因は農産物の開放じゃないか、こう私は思うわけでございます。この農産物の開放については、三月九日、十日、日本で日米貿易小委員会が行われたわけでございまして、その後、今月に入りまして、十二、十三日ですか、ワシントンで農産物の作業部会が行われたわけでございますけれども、一日で決裂して、御案内のとおりガットの場で二十二条で協議する、こうなったと聞いておるわけでございます。その後、最近また米側から、ガットの場じゃなくして、再び話し合いしたいという意見もあるやに聞いておるわけでございまして、いま長官がおっしゃったように、アメリカ側の真意というものがわからない、農産物に関しては非常に揺れているという感じを私も持っているわけでございますけれども、アメリカ側のいわゆる真意というのはどこにあるのか、現時点でどうつかんでおられるのか、この辺をお伺いしたいと思うのです。
  125. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカ側の出方は、いまお述べになったとおりでございまして、私どもも、やや言われることがその都度違いますので、どこが正確な考えなのか、実は正確につかみかねております。そこが難航しておる一つ背景でございますけれども、しかし、いま申し上げましたように、相手に難癖ばかりつけて一向やらぬというのは、これはよくないと思うのです。もともとこの問題は日本側の大幅黒字から出てきたことでもありますし、わが国は貿易立国でもありますし、それから、いま保護貿易的な傾向が世界的に出てきておりますから、やはり大局的見地に立って、この農産物に限らず、工業製品その他すべての分野において、日本としてやれることは最大限、積極的にやらなければならぬ、相手に対して常に言いわけと説明ばかりしておるというのでは、評価できる対応ではない、このように思います。
  126. 春田重昭

    ○春田委員 農産物以外のいろいろな摩擦の問題につきましては、通産省においては、先端技術の問題とか、自動車の問題とか、いろいろ前向きの検討がされているやに聞いているわけでございますし、また、大蔵省においても、たばこの販売店が二十五万店ある中でいま二万店しかないので、さらに広げようという前向きの検討もあるやに聞いています。また、保険、サービス面においても、相当自由化しようという意見もあるやに聞いているわけでございます。その他、関税の前倒しや、引き下げ、撤廃、こういう面でも各省が相当努力されているやに聞いているわけでございますけれども、そうした中で農産物だけが非常に、まあこれはアメリカ側も十一月に選挙があるものですから、かなり選挙を意識したそういうむちゃな意見も出ているわけでございます。わが国も、そうした背景があるものですから非常に厳しいと思うのです。長官の選挙区は兵庫五区と聞いておるわけでございますが、丹後牛があるわけでございまして、これも相当地元から反対の意見があると思うのですけれども長官は、やはり大局的見地に立ってこの問題は解消しなくてはいけないとおっしゃっているわけでございます。  この農産物は非常に抵抗が強いわけでございまして、第二弾の中に入れるか入れないか、いまいろいろ意見が分かれて検討中だと思いますけれども長官の個人的な見解、いわゆる大局的見地に立って考えなければならないという御意見からすれば、やはり農産物は第二弾の中に入れなければならないのじゃないかという意見にも私は聞こえるように思うのですけれども長官御自身の御意見はどうでしょうか。
  127. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは相手のあることでございまして、相手の考えておることと全然違うことをやりましても、これはまずい結果にもなりますので、相手の意向も確かめながら、貿易立国日本としての行くべき道を決めていかなければならぬ、こう思います。  そこで、いま申し上げましたように、基本的には市場の開放体制をできるだけ早くつくり上げる、そのために積極的に対応していかなければならぬ、これは基本方針でございます。その基本方針に沿って、相手の出方を見ながら具体化を図っていこうということで、いま政府部内の調整をしておるというのが現状でございます。
  128. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、住宅問題についてお尋ねしておきたいと思います。  施政方針は、五十七年度は内需拡大の大きな柱として住宅百三十万戸を建設する、こうなっているわけでございます。五十六年度住宅着工戸数は、まだ三月の時点が出ておりませんので最終はわかりませんけれども、昨年並みとしても百十四万戸になるだろうと思うのです。そういう点で、五十五年の百二十一万戸からすれば相当落ち込んでいる。昭和四十七年ごろには百八十五万戸ぐらいの着工戸数があったわけでございますけれども、それからしたら格段の落ち込みになっているわけでございます。  そういう意味で、五十七年度は何としてもこの百三十万戸を建設するのだという意気込みで、特に河本長官の意気込みが強かったと私は聞いているわけでございますけれども、百三十万戸建設はもう絶対できるという御自信がおありになるのかどうか、まずお伺いしたいと思うのです。
  129. 北島照仁

    ○北島説明員 五十七年度におきましては、住宅建設を促進するために、住宅金融公庫の融資、財形融資、あるいは年金融資におきまして貸付限度額を引き上げる、あるいは貸付戸数の増大等の措置を講じております。また、まだ最終的には確定しておりませんが、公庫融資のうちの既存住宅金利の引き下げ等も行うということにしております。また、財形融資について新たに利子補給制度の創設を行っております。このように、公的住宅金融につきましてかなり思い切った改善措置を講じております。  また、住宅土地税制につきましても、住宅取得控除の拡充、個人譲渡所得課税の改善、居住用財産の買いかえ、あるいは宅地並み課税の拡充等、大幅な改正を行いまして、宅地供給の促進を図ることとしております。  これに加えまして、これは大蔵省でございますが、民間住宅金融の充実を銀行等に対して御指導していただいている、こういったようにかなりいろいろな面で措置を講じておりまして、こういった政府の施策と、さらに物価の安定その他、的確な経済運営を行っていけば、かなり住宅建設が促進されるものと考えております。
  130. 春田重昭

    ○春田委員 かなり促進されるということでございますけれども、百三十万戸建設するというのは絶対自信がございますか。
  131. 北島照仁

    ○北島説明員 五十四年から五十五年度にかけまして住宅建設が落ち込み、そしてまた、五十六年度においてもさらにそういった状態が続いた。この原因は、第二次オイルショックを契機といたしまして住宅の建築費が高騰した、あるいは地価が上昇したということで、住宅の価格が相当上がったということが一つあり、一方におきまして、住宅ローンの金利が上がったとか、あるいは実質所得が伸び悩んだということで、いわゆる住宅価格と住宅取得能力の間に開きが出たということが大きな原因でございます。  ところが、五十六年度に入りましてからは、住宅建築費の方は安定あるいは横ばいという傾向を示しておりますし、地価の方もかなり安定化してきておる。住宅ローンの金利もかなり下がってきておる。五十七年度に入りましてから、四月に〇・一二下げまして、八・二二まで下がっておりますが、そういった状況が、かなり住宅を取り巻く環境としましては、全体としては改善されつつあるわけでございます。  問題は、先ほどから問題となっておりますが、要するに所得というものがかなりまだ伸び悩んでおるということですが、五十七年度におきましては実質所得の回復が見込まれるという政府全体としての見通しもありますし、それに、所得の方を補完するための公的住宅金融の拡充等を行っておりますので、相当住宅建設は促進される、このように考えておるわけでございます。
  132. 春田重昭

    ○春田委員 確かに、住宅取得希望者の所得と、いわゆる住宅価格の差といいますか、乖離があるから伸びない、これが原因だと思うのですよ。これが五十七年度そう変わるかといったら、そう変わらないと私は見ているのです。  先ほどもベースアップの問題で質問しましたけれども、昨年は七・七%ですね。ことしは最終まだ出ておりませんけれども、昨年よりも下回っておるわけですよ。また、税金等は五年連続の課税最低限がそのままになっておりますから、当然、自然増税になっているわけですね。社会保険料だってふえていっている。ある統計によりますと、昨年の七・七%の賃上げのうち、約六二%がそうした社会保険や税金で取られていっている。したがって、物価上昇を引いたらもう全然残らない。そこへ加えて公共料金等が高くなっていけば、マイナスになるのは当然である。この基調は五十七年度もそう変わってないのです。  また、住宅の建築費用等はそう高くなってないということ、確かに建築用資材等はそう高くなっておりませんけれども、依然として土地が大都市を中心にぐっと上がっていっているわけですよ。だから、この五十六年度のいわゆる住宅建設の状況と五十七年度住宅建設状況というのは、そう変わってない。したがって、私は、百三十万戸というのは一挙に盛り返すことは相当厳しいのじゃないか、ただ単なる看板だけで、看板倒れになるのじゃないかという心配も持っておるわけでございます。この点、住宅建設については長官は非常に見識が広いと聞いているわけでございますけれども河本長官はどうお考えになりますか。
  133. 河本敏夫

    河本国務大臣 所得が急にふえるか、あるいは住宅価格が暴落するか、こういうことになりますと一番いいわけでありますが、そういう状態を急速に期待することは無理だと思います。そこで、今度の政策の一つ住宅金融政策があるということは、いま建設省から御説明がございましたが、たとえば当初数年間、これまで三十年賦で返しておった返済方法を五十年賦にする。それはなぜかといいますと、最初の数年間の所得がふえないから、最初の数年間の返済をうんと減していく、こういうことにしますと、これは所得がふえたと同じことになるわけであります。そのように返済方法にもずいぶん工夫を加えておりますし、それから、公庫と年金のあわせ貸し制度等も相当拡充をしております。最高限が三千六百万までぐらいは借りられるように今回もしております。それから、住宅金融に相当な工夫が加えられておるということ。それから、土地政策を相当しっかりやったつもりでおるのです。  建設省調査では、全国的に宅地が約五%足りない、大都市は一〇%足りない、そこが問題だと言われておりますので、何とか住宅用の土地、宅地の需給関係が緩和しますように、そういう方向に、住宅政策全体、相当思い切った内容にしたつもりでおります。  それから、今回の百三十万戸の内容は、半分が建てかえになっております。建てかえをするのには古い家を売らないといけませんから、古い家を売って建てかえをする場合には、幾ら利益が出てもそれを建てかえに使う場合には無税だ、こういうことで、中古住宅政策にも相当思い切った工夫を加えております。  こういう内容は年末に決まりましたので、民間の経済調査機関は昨年の十一月から十二月の前半までの間に住宅見通しなどを全部出しておられますけれども、一応分析してみますと、この住宅政策は昨年の状態が続くのだ、そういう前提に立って何万戸建つとか建たないとかということを言っておられるのですね。政府の年末に決めました住宅政策は全然考慮の外に置かれておる、これは私は大変遺憾に思っておるのです。そういう点をひとつ評価をしてみてくださいということを言っておるのですけれども、専門の業者はこの点を非常に評価をしていただいておりまして、相当ふえるであろう、転機が来るであろう、こういう評価をしていただいております。  いずれにいたしましても、この月末から第一回目の公営住宅、公庫住宅の募集に入りますので、その結果等を見まして、住宅がどのような方向に動くかという傾向は何とかつかめるのではないか、こう思っておりますし、住宅政策を景気対策の非常に大きな柱に考えておりますから、年度の途中といえども必要ならば幾らでも追加政策を考えていかなければならぬ、こう思っておりますので、建たない、建たない、こういう議論もさることながら、建てるためにはこうしたらどうだというような積極的な御意見がありましたら、ぜひお聞かせいただきたい、このように思います。
  134. 春田重昭

    ○春田委員 確かに、建設省、また住宅金融公庫、前進する政策が出ているわけでございまして、私もそれは評価します。当初五十一万戸を五十四万戸に拡大したり、また、五百五十万の限度額を六百二十万にしたり、また、マンションの購入価格も一千七十万ですか、上げたり、いろいろされておるのは聞いておるわけでございますし、いままで八百万以上の人が七・五%の利子であったのを、二年間だけは一千万までにするとか、いろいろな策が講じられておるわけでございますけれども、一方、むちみたいなものも導入されており、この十月から導入されます二段階金利制、十年までは五・二%であるけれども、十一年目からは財投金利になって七・五になる、こういうむちも導入されておりますし、いままで百平米以下の個人の所有地につきましても住宅公庫の融資がついていたわけでございますけれども、百平米以下はつかない、こういうむちも導入されておるわけでございます。  また、一番肝心かなめなのは土地の問題でございまして、これはかなり思い切ったことをしたと言っておりますけれども、中途半端に終わっておるような感じがするのですね。たとえば宅地並み課税につきましても、五年で見直しという形になっておりますから、十年間の営農の意思のある人については宅地並み課税はかけないけれども、五年で見直すということになれば、六年目に宅地にしても一年間分の税金がつかないということで、抜け穴みたいになっている感もするわけでございます。また、譲渡重課税につきましても、これを十年と区切って見直しておりますし、土地政策でもそう放出できないような政府の案になっておるように感ずるわけでございまして、一番肝心かなめな土地政策が住宅建設に一番大きな問題になりますから、その点が甘いのじゃないかという感じを持つわけでございます。  いずれにいたしましても、五・二%の経済成長のその最大の柱が住宅建設でございますから、そういう点では一層の御努力をしていただきたい、こう思っておるわけでございます。  ちょうど時間が参りましたので、以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  135. 武部文

    武部委員長 次に、中野寛成君。
  136. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 春闘がある程度見通しがついてまいりました。あとは中小零細関係のところが残っているわけですが、おおよそ今日段階の見通しとしては、平均して七%にいかない、大体六・八%か九%というところになっていくのではないだろうかという感じを持つわけでありますが、そういう結果を踏まえまして、あとは、たとえば税負担等についてはもう決まっているわけであります。そういう要素を組み入れての分析の中で、今年度の実質可処分所得は昨年度に比べてどのくらいふえるだろうか、もしくは減るだろうか、その見通しについてはどのようにお考えでしょうか。
  137. 宮島壯太

    ○宮島説明員 実質可処分所得が五十七年度は五十六年度に比べてどうなるかという御質問でございますが、現在、表にあらわれております数字は、毎月総理府が出しております家計調査勤労者世帯の可処分所得の名目、実質ということでございますが、政府の見通しの中では全体の雇用者所得がどうなるかというところで考えておりますので、その点について説明させていただきたいと思います。  政府の見通しの中で、一人当たりの雇用者所得を五十七年度は六・九%というように見ております。五十六年度の実績見込みは六・二%でございますので、この点で〇・七%の増加を見ておりますが、この一人当たり雇用者所得と春闘の賃上げ率との過去の伸びにつきまして見てまいりますと、昭和五十五年度まではそんなに大きな違いはなかったのでございますが、五十六年度につきましては、春闘賃上げ率が七・七%に対して、先ほど申し上げましたように一人当たり雇用者所得の伸びは六・二%ということで、かなりの乖離があったわけでございます。  先ほど、先生の御質問の中でもお話がありましたように、今年度の春闘賃上げ率がまだ全部わかっておるわけでございませんけれども、仮に七%前後とした場合に、一人当たり雇用者所得がどうなるかという点が問題になるのでございますけれども、この春闘の賃上げ率の対象となりますのは、所得の中の所定内給与というところでございまして、これが雇用者所得の約半分程度を占めておりまして、残りの半分は、この春闘の賃上げ率の対象の外である。たとえば残業であるとか、それからボーナスであるとか、そういったものがその他の半分を占めているわけでございます。  したがって、一人当たり雇用者所得がどの程度伸びるかということは、今後わが国経済が内需を中心にして順調な成長を遂げるかどうか、あるいは企業収益がどうなっていくかというところに大きく依存しているわけでございまして、先ほど来、大臣の方から、中小企業がどうなるかというのが一番問題だというような御答弁をなさっておりますけれども、そういった意味で、私どもは、今後の中小企業の状態が上向いていくような、そういう経済政策をぜひとつていかなければいけない、このように考えております。
  138. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 中小企業政策のことは後ほどお聞きしたいと思いますが、昨年は、政府の一人当たり雇用者所得の最初の予測が六・二%、これがいわゆる春闘の結果として、基準が違うかもしれませんが、七・七%、大きな差があったということですが、しかし、それにしても、春闘の結果は七・七%、いわゆる高かったわけですね。よかったわけです。ところが、ことしはこの雇用者所得を六・九%と見ておられるわけですね。そして、これはたまたま数字の上だけは、春闘の結果が六・九%アップという結果がおおよそ出ているわけです。そうしますと、昨年は政府の見通しよりもよかった。ところが今度は、昨年に比べるとこれは悲観的な材料ということに見ざるを得ないわけです。  そういたしますと、たとえば、大変雑な計算の仕方ですが、物価は、政府の言うなら国民に対する公約は四・七%アップ以内に抑えるということですね。税負担は、もう恐らく一%に値するぐらい、一人当たりの雇用者に対する負担はふえるだろうと私は思うのです。それを引きますと、結局、六・九から、物価の四・七、そして税負担一%として五・七、差し引き一・二%しか残らぬ、こういうことになります。可処分所得が一・二%——これで可処分所得たとは一概に言えませんけれども、しかし、少なくとも今日までの例年に比べますと、そういう計算の仕方をしても大変悲観的というふうに見ざるを得ない。そして、その程度のアップでは、国民の生活実感からは決して可処分所得はふえたなんというような実感はない。去年と変わらないとか、場合によって、これからの生活や経済の動向によっては、また可処分所得が減ったという印象を持たれるだろうと思うわけでありますが、そういう国民の生活実感との兼ね合いにおいて、長官はどのように御判断なさいますでしょうか。
  139. 河本敏夫

    河本国務大臣 私どもの計算では、現在まで約三百社弱のベースアップが決まっておりますが、その賃上げは七・二という数字が出ております。これは統計のとり方によりまして差は若干出てくると思います。それに対しまして、雇用者所得の伸びは六・九、こう想定しておるわけです。  昨年は、雇用者の所得の伸びを当初七・五と想定しておりました。大企業中心のベースアップは七・七、こういうことでございましたが、実はこの雇用者所得の伸びが非常に大きく狂いましたのは、中小企業の給与の状態が非常に悪い、それが雇用者所得の伸びを大きく低めた、こういうことだと思います。そこで、実はことしも中小企業の状態がどうなるのか、それが最大の決め手であるということで、いまその動向を注意しておるところでございますが、最終の数字が決着をいたしますのはまだ若干時間がかかる、このように思います。それを見ませんと最終の判断はできませんが、一方で、物価は五十五年度の平均は七・八%、ことし、五十六年度は、もう一カ月もしますと数字が出てくると思いますが、大体四%見当だと思います。  五十七年度につきましては、いま御指摘がございましたように、消費者物価は四・七と想定をしております。現在は三%強の水準で動いておりますが、それをある程度高く見ておりますのは、後半、景気が相当回復するであろう、こういう判断をしておるのでございます。しかしながら、五十六年度も当初は五・五%という物価目標を設定しましたが、最終的には四%平均になりましたので、四・七%という物価水準を一応考えておりますけれども最大限の努力をいたしまして、できるだけ低い水準に安定させたい、こう思っております。私どもも、実質可処分所得がある程度ふえませんと景気がよくなりませんし、国民全体の経済活動も停滞いたしますので、可処分所得がどこまで伸びるか、これはいま最大の関心を持って行方を見守っておるところでございます。
  140. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 少なくとも大企業を中心にした平均よりも、これから先の中小企業関係が上回るということは、私はまず考えられない。そう考えますと、私は、可処分所得というものは、物価の動向にもよりますが、決して楽観を許さない状態だろうと思うわけであります。そういう意味で、結局、いま長官お答えになられましたけれども、消費者物価四・七%の目標値というのは、いまから努力目標として、国民的な望みから言えば、質を高める方、望ましい方にこれを修正して大いに努力をしていくということが必要なのではないかと私は思います。そして、そういうことにこたえられないとすれば、これはそれこそいま大蔵委員会で審議中とはいえ、政府御自身が積極的に減税政策というものも十分考え国会の審議に対応していくということが必要ではないのか。そういうことがありませんと、結局、景気回復そのものだって望まれないことになっていくのではないか。鶏が先か卵が先かという論議になりかねませんけれども、少なくともいわゆる行政サイドが行う政策的な働きがこういう場合にはやはり先に行くということでなければ、効果は上がらないわけでありますから、このようなことについての政府としてのお考えを、長官にもう一度お伺いをしたいと思います。
  141. 河本敏夫

    河本国務大臣 物価につきましては、昨年は五・五%という目標を年初に設定いたしまして、九月末にこれを四・五%に修正をいたしました。実績が四%ということでございますが、もう少し推移を見まして、いま御指摘の判断をしたいと思います。  実はことしの予算編成をいたします場合に、物価政策を最優先する、こういう合意を得ております。物価政策に必要とあらば、予備費は無制限に使っていこう、これまでは与野党の合意で幾ら使うということを決めておりましたが、それは政府としてはよくない、率先して物価政策を重視するという観点に立って、必要な金は予備費から無制限に使うということでなければならぬということで、そういう合意も得ております。したがいまして、もう少し様子を見た上で、物価をさらに低位安定する、そういう方向で一層の努力をしていきたい、こう思います。
  142. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 減税の問題はいかがでしょうか。
  143. 河本敏夫

    河本国務大臣 減税の問題につきましては、大蔵の小委員会におきましていま検討中でございますが、政府はその結論を尊重する、こう言っております。国民経済的視野に立ってこの結論が出ることを私は期待しております。
  144. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 減税問題については、大いにまたこれからその担当委員会等で論じたいと思います。ただ、いま国民的視野に立って結論が出るように期待する旨の長官の御発言がありました。含蓄のあるお言葉だと受けとめさせていただきますし、また、物価の問題についても、数字の上でのいわゆる下方修正が近々あり得るということを示唆されたものというふうに受けとめたいと思いますし、そのことはぜひ積極的に考え、取り組んでいただきたい。再度要請して、次の質問に移りたいと思います。  さて、いま中小企業の問題に触れられたわけでありますが、先般四月九日に発表された、私は第一次景気策だと申し上げているのですが、公共事業の前倒し等の第一次景気対策が中小企業に与える影響をどのように見ておられますか、通産省からでもお聞かせをいただきたいと思います。
  145. 山本雅司

    ○山本説明員 先生御指摘のように、先般四月九日に閣議で、公共投資の前倒しにつきまして七五%以上という決定を見たわけでございます。その決定に際しましては、七七%ぐらいには何とか積み増したいということで現在作業を続けている段階でございます。  これが中小企業にどういう効果があるかという点でございますが、実は中小企業につきましては、一つは官公需の中小企業向けの優先的な発注というのがございます。これは例年やっておりますけれども、何とかことしもできるだけ各省の協力を得て中小企業向けに多く官公需を発注するようにということで、これも現在作業中でございます。したがいまして、公共事業が全般的に前倒しされますれば、それに伴いまして景気もある程度浮揚効果がございますし、また、中小企業に対しても発注の機会が多くなるということで、私どもは期待している段階であります。
  146. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ここに新聞のコピーがあります。「行革景気か」、経団連の皆さんがいろいろな考え方をお持ちだということで、財界首脳はしんぼうを説く、しかし、一線経営者、とりわけ中小企業の皆さんはそうそうしんぼうしていられない、もうしんぼうの限界を超しているというふうに主張していると私は思うのであります。言うならば、財界首脳の皆さんが携わっておられるような大きな企業は、中小企業の方にしわ寄せすることによって自分たちの経営体を守ることはできるでしょう。しんぼうすることもできるでしょう。そして、そういう形で今日まで切り抜けてきたと言っても過言ではない、私はこう思うわけであります。しかしながら、こういう財界首脳の御意見に抑えられて、中小企業出身のこういう諸団体の役員の皆さんも簡単に発言ができない、また、発言してもそれがなかなか取り上げられない、むしろそれが実態だとさえ思うわけであります。  行革に反対はいたしません。私どもも、それこそ第二臨調応援団をもって自任しているわけであります。しかしながら、行革は何のためにやるのか、財政再建は何のためにやるのか、それは結局、政策の選択に弾力性を持たせることを目標としてやるわけであります。言うならば、いまは手段の方が先行して、目的の方が埋没してしまっているということが言えないだろうか。たとえば、昨年の予算審議の際にもわが党から申し上げたことがありますが、赤字財政再建の中で、赤字公債依存五十九年度脱出、これを二、三年延ばしたっていいではないか、むしろ国民生活の方が優先されるべきである、そして、行革とそれとは矛盾するものではない、みずから足を縛って、そして、何とか行革成功させるために、その枠組みを先に決めてやっていこうとするやり方もわからないではありませんけれども、しかし、その場合に目的を忘れてしまっておったのでは、やはり政治としては間違いだと私は思うわけであります。  昨日も、何か財界首脳が自民党三役と懇談して、経済運営を批判した。景気対策には走るな、これは新聞の見出しですから、一概にこの見出しだけでどうこう言えませんけれども、たとえば四月十三日に経団連が「国・地方を通ずる行財政改革の徹底を望む」という文書を出しておられます。その文言の一部分を見ますと、「一時的な景気刺激策では根本解決は望み得ないばかりか、財政の肥大化に拍車をかけ財政再建を更に遅らせることになる。景気をめぐる当面の政策課題については、あくまで個別対策を重視しつつ、行財政改革の枠内で対処すべきものと考える。安易な財政依存を回避し、勇断をもって個別対策を実行することが肝要である。」こう述べられておる。  個別対策、すなわち経団連が望まれる部分だけは勇断をもってやれ、ほかはやるなというふうに、何か皮肉に読めそうな文章であります。私、最初第一回目に読んだときに、何のことだかわからない、えらい矛盾した文章だなと思ったのでありますけれども、このような考え方が出てきていることに対して、長官としてどうお考えでしょうか。
  147. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま、目的と手段を混同するな、こういうお話がございましたが、これはすべてのことに通用する原則だ、このように思います。  そこで、いまの景気状態は、経済回復力が弱いものですから、ひずみとばらつきが非常に目立っておる、こういうことでございます。中小企業の状態が非常に悪い、それから構造不況業種的な業種が若干出てきておる、それから地域によるばらつきが特に最近ひどいように思います。そこで、いまこういうばらつきを直すということと、あわせて景気全体の回復ということが必要になっておるわけでございます。  私どもは、この行政改革はあくまで成功させなければならないと考えております。しかし、財政再建も同時に成功させなければなりませんので、行政改革をやればそれが直ちに財政再建成功に結びつくかといいますと、これは政府部内で昨年の末に概念を整理いたしまして、これは直接結びつくものではない、行政改革成功すれば、それはそれなりにある程度財政再建に貢献するであろう、しかし、即財政再建成功かというと、そうではない、財政再建成功のためには、経済活力回復して、つまり景気がよくなる、そういうことでないと財政再建はできない、だから、行政改革景気回復ということを並行して進めていくということが必要である、そのように政府の方では昨年の末以来意見を一致し、行政改革財政再建は別個のものである、そういう区別をいたしております。  しかし、どうも国全体の中には、まだそういう混乱が残っておるのではないか。行政改革財政再建だ、どうもこういう混乱と誤解があるような感じもいたします。まさか経団連が、行政改革をやるために景気なんかどっちになったって構わぬのだ、そんなことを言われたとは思いませんが、真意のほどは私も直接聞いておりませんから、よく確めてみなければならないと思います。  ただ、いずれにいたしましても、行政改革とか財政再建というようなことは国民的な課題でございまして、政府だけで力んでもどうにもなるものではございません。やはり国全体、国民全体の皆さん方の御理解と御協力を得ないとできないことでございますので、これからの行政改革財政再建景気回復の進め方等につきまして、関係の各方面とこれから積極的に意見交換をしてみたい、そして、効果が上がるような方向にこれから経済政策を持っていきたい、このように考えておるところでございます。
  148. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 いまの長官の御答弁、そのとおりぜひ大いに意見交換もし、実際に具体的な政策として、また長官に積極的にお取り組みをいただくことを私は期待したいと思います。少なくとも国民は、今日の経済に対して大変不安感を強めているわけであります。財政再建経済というもの、また行革というものの間には矛盾はない、むしろ経済回復そのことが財政再建に何よりも大事な問題だ、同時に、それは甘えてはならない、ゆえに、行革は何としても進めなければならない、こういうことだろうと思うのであります。  そこで、経済のことについてなおお尋ねを進めていきたいと思いますが、先般お決めになりました第一次景気策、いわゆる第一回の景気策でありますが、私は、あれだけでは十分な効果を発揮し得ないということはもう常識だと思うのです。しかし、せっかくお決めになられたことです。今日まで幾たびとなく、長官も、今後の推移を見て自後のことを考えるということでございました。  さて、そこで、もう無理だということを前提にしてお尋ねをするようで恐縮ですけれども、これは常識だと思いますから、私はあえてお尋ねをいたします。次の景気策をお考えになる判断基準、そして、その時期というものはいつごろになるのだろうか、やるかやらないか、やらないことも含めて、その判断基準をおやりになるのはいつごろなんだろうか。たとえば、六月にはこの一月から三月にかけてのGNPの結果が出てまいります。また、そのころには五十六年度の歳入欠陥の実数も出てくるかと思います。また、今年度中に景気回復効果を上げる策を講じようと思えば、それは九月にはその具体的な策を実施しなければならないと思います。ゆえに、六月、遅くとも七月初旬にはそのような判断をし、検討をしなければならないと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  149. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまの政府考え方は、公共事業とか公的住宅、災害復旧、これを上半期に技術的に可能な限り最大限に集中してみよう、こういう考え方でございます。それからもう一つは、金融政策を引き続いて機動的に運営する、こういうことも先般決めたところでございます。公共事業は二十四兆、いまの政府の目標からいいますと、上半期に十九兆、下半期に約五兆、こういうことになりまして、その他公的住宅、災害復旧等もございますから、上半期に思い切った繰り上げをいたしますと、それなりにある程度効果が出てくるであろう、こう私は思っております。  いま問題になっておりますのは、皆さんその効果は期待し、評価していただいておるわけです。しかし、経済全体の力が下半期回復すれば、それはそれで結構だ、しかし、回復しない場合には、下半期に仕事がうんと減ってしまうから、下半期の経済はがた落ちになってしまうではないか、一体それをどうするのだ、そのことをできるだけ早くはっきりしないと、上半期公共事業の集中消化といってもこれはなかなかできないのではないか、こういう御意見が非常に強いのでございます。  計画どおり景気回復しない場合には、当然、最終需要全体を必要なだけ拡大するような、そういう政策を展開しなければならないと思います。これは何も公共事業だけではございませんで、幅広く考えていけばいいのだ、私はこう思います。たとえば、民間の設備投資もありましょう、あるいは住宅問題もあろうかと思います。貿易政策もあろうかと思うのです。  それから、公共事業。しかし、何か公共事業といいますと建設国債でなければならぬというような議論もございますが、建設国債で公共事業をやるのも一つの方法でありますけれども、民間資金で公共事業をやるという方法もございます。石油公団なんかは、相当大規模な民間からの借り入れをいたしまして、石油の備蓄基地を進めておるわけでございますし、それから、財投でいろいろな仕事を進めるというのも一つの方法だと思うのです。だから、追加政策即建設国債の増発だ、こういう判断は少し早まっておるのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、すべてを含めまして、いろいろな形でとにかく必要な最終需要を追加するということを考えていきませんと、経済は軌道に乗りませんから、遅くともこの九月までには具体的に必要な予算等を考え出していく、こういうことでなければならぬと思います。  それならば、いつその判断をするのだ、いつからその準備にかかるのかということでございますが、それらのスケジュールとか内容、現時点ではそういうものについては何も決まっていません。ただ、下半期、経済が落ち込まないようにしなければならぬ、その点については合意は完全にできておるのですけれども、具体的な進め方、スケジュールはこれからの課題でございます。
  150. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 結局、効果があるかないか、それを見てからといったって、実際はこれは間に合わないわけですね。効果があるかどうかなんというのは、ことしの年末にならないとわからないかもしれません、また、年度末にならないとわからないかもしれません。ですから、結局、判断基準をどこに置くのかということが、時期の問題とあわせてあると思うのです。どういう状態一つの判断の材料とされるのか。積極的に考えなければというその姿勢はわかりましたが、その判断基準についてはどうお考えなのかをお聞きしたいと思います。
  151. 河本敏夫

    河本国務大臣 いずれにいたしましても、以上申し上げましたようなことを徹底してやりますと、上半期は相当な力が出てくることは事実だと思うのです。では、それ以外に方法があるかといいますと、金融政策しかない。しかし、金融政策は、アメリカがいまのような状態ですとなかなかやりにくいということでありますので、現在とり得る対策といたしましては、以上申し上げましたことに尽きるということでございますので、とにかく、しばらくの間、全力を挙げながらこの点に取り組みまして、もうしばらく様子を見る。  それでは、いつごろの時点で判断をし、どういう判断をするのかということでございますけれども、実は、いつごろの時点で下半期の判断をしたらいいかどうかということにつきましても、まだ結論が出ていないわけです。ついこの間、繰り上げ執行を決めたばかりでございます。そのときも、できるだけ早く下半期の対策考えた方がよろしいという意見は出ておったのですけれども、それに対して、まだ具体的な結論は出ていないということでございます。ただ、これからの最大課題であるということには間違いないと思います。
  152. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 結論は出ていない、また、協議はそこまで進んでいないということですが、長官御自身の御判断はいかがでしょうか。
  153. 河本敏夫

    河本国務大臣 実は、私もまだ判断をしかねておるのです。何しろ予算関連法案もまだ国会で審議をしていただいておる最中でございますし、いつがいいのか、実はまだ結論を出しておりません。  ただ、六月の初め、サミットが三、四日開かれますが、その時点で、最大課題世界経済の再活性化ということだと思います。自由貿易体制を守っていくこと、それと、世界経済活力をどう回復するかということだと思いますが、そこでいろいろ議論が出ると思うのです。一体どうしたらいいか。私どもは、世界経済再活性化のための一番効果的な方法は、アメリカの高金利政策を直してもらうことだ、これを直してもらえば景気はすぐにでも直るであろう、こう思っておるのです。  アメリカは、物価は下がったけれども、赤字が大きいので、もう少し様子を見たいと言っておりますが、五月中には政府と議会の間で、どこまで赤字を減らすのかということについての結論も出ると思います。そして、アメリカ大統領がサミットに来られまして、世界経済の再活性化ということについて意見を開陳されるということになりますと、世界経済の再活性化を一番妨げておる自分のところの金融政策、それについて全然手を打たぬで果たして来られるのであろうかということについても、私どもはいま若干の疑問を持っておるのです。これまでは、物価が下がれば金利は必ず下げます、こういうことを言い続けてこられたわけでありまして、現在は七%そこそこの物価にはなっております。だから、どう考えても余りにも高過ぎるという感じがいたします。  そういうアメリカの金融政策ももう少し見たいと思いますし、いずれにいたしましても、いま判断しましても、仕事の量をふやすのは秋以降のことでございますし、その基本路線はもう決まっておるわけです。必要とあらばとにかく最終需要をふやさなければならぬ、そこまでは決まっておるわけでありますから、そのスケジュールに支障のない形で、世界全体の動きも見ながら判断をしたい、こう思っております。
  154. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そこで、ちょっと関連してお聞きしたいのですが、ここ二、三日、ドルが安くなって、円その他が高くなっている現象が出ておりますが、これは一時的な現象でしょうか。何かの始まりなんでしょうか。どうお考えでしょうか。
  155. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 先生御指摘のように、ごく最近、円がドルに対しましてやや反騰をしております。その原因といたしましては、アメリカの金利がやや下がる傾向を示しております。では、果たしてこれが本格的なアメリカの高金利の是正といいますか、下降の段階に入ったのか、それともやや一時的なあやであるかという点につきましては、それを判断するだけの十分な材料がまだございません。  しかし、最近の動きを見ておりますと、通貨供給量はかなりふえているわけでございますが、毎週発表されて、これがいろいろと波紋を呼んでいることは御承知でございますが、かなりふえたわけでございます。それにもかかわらず、もう余りふえないのではないかという感じが、あるいは観測が、アメリカの金融界の中に広がっているということを聞いております。もしそういうことが事実であるといたしますと、どんどん下がるということはなかなか期待できないかもわかりませんが、ここらあたりで少し下がる方向に入る可能性もある。  もう一つの動きといたしまして、アメリカで問題になっております連邦財政の赤字が大変大きいという問題でございますが、この点につきましても、きのう、きょうの新聞報道等によりますと、大統領が、歳出の削減あるいは所得税の減税は続けるけれども、それ以外の点で若干の増税を受諾するかもしれないというような報道も流れている。これを五月十五日までにはアメリカとして決めなければならないわけでございますが、その時期も迫っておりますので、そういう方向に動き出しつつある、それを反映しているというふうにも考えられます。したがいまして、確たることはわかりませんが、ややそういう気配が感ぜられるということではないかと思います。
  156. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 さて、この五月八日から十三日にかけて、OECDの会議長官は御出席になられるわけですが、最近の報道を見ますと、OECD筋等から、日本のポリシーミックスが本来のあるべき姿とは逆になっているのじゃないか、もっと金利を上げて円高誘導をすべきだ、景気浮揚へは財政拡大もやるべきだという意見が出てきておりますし、これは日本の国内でもそういう意見を言う人もいます。また、少なくともいま金融政策、とりわけ金利を下げるという政策の出番のときではないのだと言う人もいます。いずれにせよ、御出席になられますと、こういうことが関係諸国から意見として恐らく持ち出されてくるだろうというふうにも思うわけであります。長官としては、このような考え方について、私はポリシーミックスを逆転させることについては問題がたくさんあるだろうと思いますし、それだけにまた、やるとしたらよっぽど勇断が必要だということにもなると思います、しかし、この考え方一つ考え方だと思うのでありますが、このことについてどうお考えでしょうか。
  157. 河本敏夫

    河本国務大臣 OECDの事務局あるいはECの事務局等から、いまお述べになりましたような日本経済運営についての二つの意見が出ておるということは事実でございます。経済企画庁の専門家もつい先般ヨーロッパへ参りまして、先方の専門家とそういう意見について十分意見交換をしてまいりました。  先ごろ三極会議日本でございまして、欧米諸国からたくさんの金融経済問題の専門家が日本に来られましたし、また、ヨーロッパの経済財政担当の大臣ども何人か来ておられました。私もそういう方々と意見交換をいたしましたが、やはり同じようなことを言っておられるのです。それで、日本としての考え方をよく説明をいたしました。日本がいま高金利政策をとればどういうことになるか、それはあなた方の考え方は誤解である、こういうことについてずいぶん議論もいたしました。円安を直す唯一有効な方法は、アメリカの高金利政策を修正することである、それ以外のことはだめだ、こういうことを懇々と情理を尽くして説明をいたしましたが、そういう意見は相当根強い、このように思っております。  だから、あるいはOECDの閣僚理事会でも、まだ十分話し合っていない国からはそういう意見が一部出るのではないかと思いますけれども、そういう意見に対しては、日本考え方を十分説明をしたいと思っております。
  158. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 今日まで幾人かの方々にお話しになられた、まだ話してない人にはその会議で話をされるということですが、大体皆さん御納得をされる方向ですか、それとも、これはなお継続して、そういう要望というものが日本に突きつけられ続けるものでしょうか、どう御判断をお持ちでしょうか。
  159. 河本敏夫

    河本国務大臣 納得をした人もありますが、納得をしない人もございまして、どうもやはり日本経済に対する認識が非常に薄いように思うのですね、これまでもOECDの専門家会議などで、日本経済に対するいろいろな勧告がございますが、その場合でも、どうも認識が不十分だ。遠いところから日本経済を見ておるわけでありますから、万やむを得ない点もあろうかと思いますけれども、全部の人が納得して、わかりました、こう言ったわけではございません。
  160. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 たとえば積極財政のあり方だとか、そのようなことについては、ある意味では日本経済がわからないで言うということもありますが、逆に日本国内でも、高金利の方を望む人はいないでしょうけれども、少なくともこういうものの考え方をなるほどと思って聞く人もいるのではないか、単に日本経済のことを知らない人の言う意見だとばかりは言えない部分があるのではないかというふうにも私は思うわけでありますが、くどいようですが、長官御自身のお考えはいかがでしょうか。
  161. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題につきましては、先方は大体こういうことを言っておるのです。日本経済は相当な底力を持っておるではないか、だから、いまの日本経済の現状を考えると、貿易摩擦をなくすために内需を拡大する、こう言っているけれども、有効な手段は、ここ一、二年思い切って財政を拡大をして、そのことによって内需を拡大するより適当な方法はないではないか、だから、ずっとそれをやれというわけではない、一、二年やってみたらどうだ、こういう議論でありますから、これはなるほどと思われる内容もございます。  それで、現在政府がとっております方法は、上半期だけのことでございますけれども上半期に関しては数兆円の財政投資を拡大をしておる、これはそのとおりでございます。ただ、後半どうするかということが決まっておりませんで、現時点は財政投資を思い切って拡大をしておるというのが現状だ、こう思うております。
  162. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これは中小企業に限らないのですが、この経団連が注文をしている中に、不況業種に対する個別対策というものが要求されているわけですね。これは検討を始めたという報道ですから、それが果たして要求されるかどうかは別にいたしまして、しかし、一つ考え方がすでに報道されているわけです。  たとえば、石油化学の場合ですとガット十九条による緊急輸入制限、それから紡績関係は多国間繊維協定による緊急輸入制限、それからフェロアロイですと二次関税率の引き上げ、それから行政指導による輸入適正化、エネルギーコストの上昇問題についての見直し、幾つかのことがこうして報道されているわけであります。また、石油価格についても、原重油関税や石油税の引き下げのほか、石油業法を改正して価格や設備投資に対する政府の介入を制限するとか、石油化学業界が原料を石油系から石炭系に転換する際に開銀融資をつけるなど、いろいろなことが報道では書かれている。  この要求が果たして政府に突きつけられるかどうかは別にして、この報道されているような中身について、政府としてはどうお考えでしょうか、通産省。
  163. 熊野英昭

    ○熊野説明員 ただいまの御指摘のようないわゆる構造不況業種、私ども基礎素材産業と呼んでおりますけれども、これらにつきましては、日本経済の中におきます位置づけ、あるいは産業構造上の位置づけ等、中長期的な観点から検討を進めていく必要がある、こういうふうに考えておりまして、通産省といたしましては、産業構造審議会など各種の審議会等に、この中長期的な対応のあり方の検討をお願いしているところでございます。  しかしながら・同時に、実施し得る政策、とり得べき対策については、これまでも、たとえばアルミにおきます電力コストの低減策でありますとか、あるいは関税上の措置でありますとか、あるいは石油化学におきます原料であるナフサ対策でありますとか、実施し得るものにつきましては逐次実施を進めてきているところでございます。  今後とも、この審議会における中長期的な検討等も踏まえまして、順次必要な施策をとってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  164. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これらの内容を見ますと、いまの財政事情だとか、貿易摩擦だとか、いろいろなことから考えると、ちょっと考えさせられるというものもあるわけでありますけれども、これらの兼ね合わせについてはどのように分析をしておられますか。
  165. 熊野英昭

    ○熊野説明員 経団連が具体的にどういうふうなことをお考えなのか、まだ詳細に伺っておりませんけれども、ただいま先生御指摘のような輸入制限とかそういうことは、現在の状況において大変むずかしいことではないかと思っております。もちろん、基礎素材産業問題を産業構造審議会等で検討する過程におきまして、たとえばダンピングであるとかそういうものに対して、ガット上のルールで対応できるようなものについては対応も検討していかなければいけないというふうな意見は出ておりますけれども、単に輸入がふえたからこれに対して輸入制限をするとか、こういうことは大変むずかしい問題ではないかというふうに考えております。
  166. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 今度は長官にお聞きしますが、先般、日経新聞の「経済教室」に掲載されたボーカス米国上院議員の所見に対する反論というのか、意見として、自民党田中政調会長が日本まる裸論というのを展開されているわけですね。  その中で、先般お尋ねしてお答えをいただいた「河本経済企画庁長官が提唱しておられる来国産穀物等を活用した大規模な食糧援助計画の推進等も面白い構想である。」と大変評価をしておられるわけでありますが、「わが国からすべての関税、輸入制限などを撤廃し、できるなら一種のフリーゾーンにしてしまう構想である。私がこの構想を発表したとき、とりわけ農業団体などから激しい反発の声が起こった。「選挙区の声」——これがが日米を問わず議員の行動にきわめて大きな影響を与えることは事実である。しかし、国の指導的立場にある者にとって、日米関係を良好な状態に保つこともまた重要であり、ときには、勇断を振るって選挙民に理解を求めることが必要である。」というふうに、大変思い切った考え方を展開しておられると思うのであります。  このような考え方について、私は、ある意味では世界じゅうがこういうことを望み、また注目をしている、逆にそうなったら大変だということで、また日本の国内においても各方面から逆の意味で注目されていると思うわけでありますが、世界経済の活性化を目指すために自由貿易堅持をしなければならぬ、そのためにこのまる裸論は貢献するのだ、こうおっしゃっておられますけれども長官の御所見もあわせてお聞かせいただければと思います。
  167. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は見出しを見ただけでございまして、全文を読んでおりませんので何とも言えませんが、五十三年に東京ラウンドが数年ぶりで妥結をいたしましたときには、当時アメリカ、ヨーロッパ、日本経済の競争力を勘案いたしまして、一九八七年までの間にそれぞれの関税率の引き下げをしましょうということで、お互いに合意をした関税率の引き下げ率を決めたのであります。しかし、その直後に第二次石油危機が起こりまして、欧米諸国はインフレに見舞われる。しかも、経済活力が減退をいたしまして、設備投資も非常に減っております。それからの三年の間に、日本経済は私は非常に競争力を拡大したと思うのです。  五十三年当時、先方から要求されたわけじゃございませんけれども、ひとつ自動車の関税率をゼロにしてみよう、こういう思い切ったことをやったことがございます。これは非常に評価をされたのでございまして、その当時は自動車以外に関税率をゼロにできるような商品はありませんでしたけれども、それからの三年間、現時点では関税率をゼロにしてもやっていける工業製品は相当あるのではないか。ましてや、現在の関税率を単なる東京ラウンドで決められた今回の前倒し以上に引き下げても、十分やっていける工業製品はたくさんあると思います。  これからも毎年毎年、日本の競争力は拡大すると思います。と申しますのは、依然として先方はインフレでありますし、設備近代化の投資は進んでおりません。日本の方が投資は進んでおりますし、インフレは非常におさまっておるということでございますから、一年ごとにその差は拡大していく、このように思いますので、事工業製品につきましては、特殊の例外を除きまして、あるいはそういうことも可能になる時代が近く来るのではないか。現時点はどう判断するかは別でございますが、そういう流れにある、こういう感じはいたします。  ただ、しかし、農産品につきましては、日本の事情が違いますので、二、三のものはEC並みの競争力が現在でもあるようでございますけれども、幾つかの制約がありますから、農業については、それだけの力を持つということ、それだけの生産性を高めるということはなかなか大変だ、こう思います。  だから、田中政調会長は、私はよくわかりませんが、さしあたっては工業製品に限定して言われたのではないかと私は見出しを見ながら感じたのでございまして、全文を読んでおりませんから何とも言えませんが、しかし、貿易立国としての日本の将来を展望して、要するに将来は工業製品も農業も、強い工業、強い農業に日本をつくりかえていったらいいのだ、こういう基本的なお考えでございますから、私は、その基本的なお考えに対しましては、なるほどそういう考え方もあるのだな、こういうように見ておったのでございます。
  168. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間が参りましたので、最後の質問にいたします。  大変厳しい話ばかりが横行しているわけですし、現実にも厳しいわけですが、せめてわれわれ将来に対して一つの夢を持ちながら、その方向に向かってみんなで努力していきたいというふうに思うものでございます。  先般、経済審議会の長期展望委員会報告の要旨というのが実は新聞報道されました。「国民所得倍増、米と並ぶ」こういう見出しでございまして、「二〇〇〇年までの展望」ということで記載をされております。まだ要旨が新聞で単に報道されただけでございますから、具体的には触れられないでしょうけれども、しかし、検討されておる経済社会の長期展望の作成作業というのはどのくらい進んでおるのか、その概要をお示しいただければということと、経済成長についての見通し、何%ぐらいの成長を見込んでおられるのか、財政についての展望、また、七カ年計画との整合性、そのようなことについて、ごく簡潔にお答えをいただければありがたいと思います。
  169. 谷村昭一

    ○谷村政府委員 いま御質問のございました点につきましては、昨年は五月に経済審議会に長期展望委員会をつくりまして、その下に六つの小委員会をつくって、現在、検討をしている途中の段階でございますが、二十一世紀に向けて約二十年あるわけでございまして、その間、いろいろな面で大きな変化が考えられるわけでございます。一つは人口の高齢化でございますとか、あるいは資源エネルギーの問題でございますとか、あるいは産業構造の変化の問題ですとか、あるいは人の価値観の大きな変化とか、いろいろな基本的な変化が予想されるわけでございますので、そういう変化に対応して、今後長期的視点からわが国経済社会の課題を検討して、大きな方向づけをしていけたらと思って、現在、作業を進めておるところでございます。  いま具体的に御質問のございました点については、成長率については、内部で長期のモデルをつくりまして、現在、検討をいたしておるさなかでございまして、まだ結論を得ているような状況ではございません。五月末ごろにはそういうことの結論を出したいと考えておるわけでございます。  それから、財政との関係については、これはやはり二十年後の長期の展望でございますので、いまさしあたっての財政再建との関係に直接触れた形で検討いたしておるという形にはいたしておりません。やはりもっと中長期的な、先ほど申し上げましたような構造的な問題についての対処の仕方というようなことで、もちろん公的部門の問題も取り上げておりますが、ストレートに財政再建と絡んでというような形で問題を取り上げておるということではございません。  それから、七カ年計画との関係でございますが、これもいま申し上げましたような趣旨で、一方は政府の正式な計画でございますし、こちらは経済審議会におけるそういう長期的な観点に立った課題の摘出なり対策の方向ということでございますので、ストレートに関係があるということにはなっておりません。  以上でございます。
  170. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ひとつそのできばえのほどを期待をしたいと思います。少なくともこの厳しい情勢の中で、うそを書くわけにはいかないと思いますけれども、ひとつ国民に希望を持たせるような中身であってほしいということを期待しておきたいと思います。  時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  171. 武部文

    武部委員長 次回は、来る二十七日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二分散会