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河本国務大臣 国債の
発行が非常にふえましたのは石油危機が起こってからでございます。御
案内のように昭和四十八年に石油危機が起こりまして、四十九年以降
日本経済が非常に深刻な
状態になりました。
民間の
活力が失われて
経済が停滞をいたしまして、特に昭和五十年などは前年に比べて税収が二割も落ち込む、こういう惨たんたる
状態になってしまったのであります。
そこで、
民間経済の
活力が
回復するのを待っておったのでは
日本経済が立ち直るのはいつのことかわかりませんので、やはり思い切って財政の力によって
日本経済を立て直そうということで公債の
発行を非常にふやした、こういうことだと思うのです。その結果、
日本経済は
世界で一番深刻な
影響が出ておったと私は思うのですけれ
ども、幸いに五十三年ごろから一応立ち直ってきた、このように思っております。
なるほどそういうことで財政の負担はふえたのでありますが、
日本経済が立ち直った結果、相当大規模な税の自然増収が
確保される、そういう力も出てきたと思うのです。と申しますのは、昭和五十四年に昭和五十年代後半の新七カ年
計画をつくりましたが、そのときには、税収はそんなにふえぬだろう、せいぜい毎年七、八千億ずつくらいしかふえぬのではないか、そうなってくると相当大規模な新しい税というものをつくらないと
日本の財政というものはやっていけないということで、御
案内のように七年
計画には一般
消費税を昭和五十五年から始めるということが織り込んであったのでございます。しかしながら、幸いに
経済の力も
回復をしまして、税の自然増収もそんなに、七、八千億とかそういうことではないのではないか、もっとふえるのではないか、そうなってくると一般
消費税をあわててすぐ
計画どおりスタートさせるという必要はないではないか、こういうことからこれが見送りになったということも御
案内のとおりであります。
なるほど財政の負担は相当かかりましたけれ
ども、しかしその結果、数兆円という大規模な税の自然増収が初めて
日本経済から生まれるようになった、そういう力が蓄えられたということ。
それともう
一つは、第一次石油危機がようやく昭和五十三年になりまして一応おさまりましたそのやさきに、今度第二次石油危機が起こりまして、
日本の
経済が健康体になっておったということもございまして、第二次石油危機の場合には他の国と比べますと非常に順調な対応ができた、こう思っております。第一次石油危機のときには、
経済が病的な
状態になっておりまして、
インフレ体質であったところへ危機が起こったものですから、一遍にいわゆる狂乱
物価、こういう
状態になった。しかしながら、昭和五十四年からの第二次危機に対しましては比較的順調に対応できたというのも、やはり財政が非常に大きな役割りを果たしてきた、こう思っておるのです。
だから一概に、国旗の残高が非常にふえたことに対しまして何か罪悪のように言う人がありますけれ
ども、私はそうは
考えておりません。財政の果たした役割りは非常に大きい、しかも建設的であった、このように評価をしておりますし、それからまた、国債の残高が大きいということは、それだけでそんなに心配することはないと私は思うのです。やはり総合的な
経済力がその国ではどうなっておるのか、それからまた、毎年どの見当の
国民の貯蓄がふえておるのか、国債を
発行してもクラウディングアウトが起こるのか起こらないのか、こういう総合的な
観点から国債というものを見ていかなければならぬ、こう思っております。
いま
アメリカが、相当大規模な財政の赤字のためにいつまでたっても金利が下がらない。
物価は安定しておるのに金利が下がらないというのは、結局
国民の貯蓄が非常に少なくて財政の赤字を消化し切れない、そこでクラウディングアウトという
現象が起こるのではなかろうか。こういう点から、
金融政策が
世界全体に悪い
影響を及ぼすような高金利になっておる、こういうことだと思うのです。
日本の場合は、
アメリカの
経済に比べますと半分以下でありますけれ
ども、しかしながら貯蓄率が向こうに比べて非常に高いということのために、相当大規模な国債を出しましても産業資金の
供給も順調に行われる、国債の償還も順調に行われるということでありますから、金額の多寡だけでその国の国債残高が健全であるか不健全であるかということの判断にはならない。果たして国債というものに対して国が償還能力を持っておるのかどうか、そしてこれが
インフレを起こさないで消化できておるのかどうか、こういう点から総合的に判断をしなければならない、こう私は思っております。だから、国債残高が多いという面からだけ
考えますと大変不健全なようにも
考えられますし、そういう
議論もあるのですが、必ずしもそうではない、もう少し見方もあるのではないかという
議論もございまして、なかなか一概に断定できないのではないかと思っております。