運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-10-14 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十月十四日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 戸井田三郎君 理事 新盛 辰雄君    理事 稲富 稜人君       上草 義輝君    太田 誠一君       木村 守男君    岸田 文武君       北村 義和君    佐藤  隆君       志賀  節君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    丹羽 兵助君       保利 耕輔君    山崎平八郎君       小川 国彦君    島田 琢郎君       日野 市朗君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    木下敬之助君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  委員外出席者         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省食品         流通局長    渡邊 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         通商産業省貿易         局輸入課長   藤沢  修君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 八月二十日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     木村 武雄君   太田 誠一君     齋藤 邦吉君   川田 正則君     園田  直君   寺前  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     上草 義輝君   齋藤 邦吉君     太田 誠一君   園田  直君     川田 正則君   不破 哲三君     寺前  巖君 十月十四日  辞任         補欠選任   神田  厚君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     神田  厚君     ————————————— 八月二十日  一、農林水産業振興に関する件  二、農林水産物に関する件  三、農林水産業団体に関する件  四、農林水産金融に関する件  五、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(昭和五十七年産  畑作物価格問題等)      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  てん菜てん菜糖、芋、でん粉及び大豆をめぐる最近の情勢について政府から説明を聴取いたします。渡邊食品流通局長
  3. 渡邊文雄

    渡邊説明員 それでは、お手元に御配付申し上げております「てん菜及びてん菜糖関係資料」と「いもでん粉関係資料」につきまして、最近の事情につきまして簡単に御報告を申し上げたいと思います。  「てん菜及びてん菜糖関係資料」の一ページをお開きいただきたいと思いますが、そこに載っておりますのが砂糖全体の需給でございます。左の端にございます総需要量をごらんいただきますとわかりますように、総需要量は減ってきております。別途、国内産糖でございますが、てん菜糖増加傾向にあります。甘蔗糖につきましては、鹿児島、沖繩とも年によりまして差はございますが、ほぼ横ばい状態でございます。右の方の欄にございますように、輸入実績は、そういった総需要動向を反映いたしまして、あるいは国産糖増加傾向を反映いたしまして、減少傾向にございます。一人当たり消費量も同様でございます。一般的に言いまして、消費者甘味離れのより一層の進行、それから異性化糖増加に伴います砂糖消費減ということがこの表にあらわれておるわけでございます。  次に、国際糖価状況でございますが、二ページをお開きいただきますと、四十九年の十一月に六百五十ポンドまで上がりましたものが、その後、五十二年、五十三年と百ポンド前後でまいりまして、五十五年の秋にまた四百ポンド近くまで暴騰をいたしまして、現時点では八十六ポンドということで、大暴落の状態になっております。背景は、大増産と世界的な景気低迷に基づく消費の停滞ということでございます。  三ページには、その傾向を受けまして、国内産糖の国内におきます糖価動向が載っておりますが、いずれもここ数カ月かなり下落をしております。これは、国際糖価下落のほかに、四月以降のいわゆる特例法の廃止に伴います各精糖メーカーの競争の激化というものが若干背景にあるわけでございます。  それから四ページでございますが、てん菜及びてん菜糖生産実績でございます。作付面積につきましては、御案内のように大変増加傾向をたどってきております。今年産は、昨年よりも若干面積減少いたしたわけでありますが、ヘクタール当たり収量が大増産でございまして、ビート生産量といたしましては、三百七十四万トンということで史上最高になっておるわけでございます。  それから五ページに、てん菜糖最低生産者価格及びてん菜糖事業団買い入れ価格等が載ってございます。  それから六ページでございますが、てん菜生産費推移でございます。一番右の欄にございますトン当たり第二次生産費でございますが、昨年、五十五から五十六にかけまして大変ふえておりますのは、昨年の単収が災害関係で非常に少なかったということの反映であるわけでございます。  それから、七ページに関係予算、八ページにパリティの月別の指数が載っておりますが、省略をさせていただきます。  それから次に、「いもでん粉関係資料」につきまして御説明を申し上げます。  一ページをお開きいただきたいと思いますが、カンショと春植えバレイショ生産状況が載っております。カンショ作付面積全国で六万数千町歩ということで横ばいでございますが、このうち南九州におきますカンショが主としてでん粉に使われるということでございます。春植えのバレイショにつきましても、北海道の春植えバレイショの五割前後のものがでん粉に向くということでございまして、北海道作付面積も六万数千町歩ということで、ほぼ横ばいになってきております。  それから、芋からできますでん粉ないしはトウモロコシからできますスターチ等でん粉生産実績が二ページに載っております。カンショでん粉につきましては、最近数年十万トンでほぼ横ばいでございます。バレイショでん粉につきましては、年によって豊凶の差がございます。五十六年は十九万七千トンというふうに大分減ってきておりますが、本年産は、芋の豊作状況からいきまして二十数万トンになることが予想されております。コーンスターチは百三十万トン前後で推移してきております。  それから三ページに、でん粉の全体的な需給が載っております。五十六年欄の供給の欄をごらんいただきますと、百八十九万四千トンというのが全体量の供給量でございまして、カンショでん粉が十一万。それからバレイショでん粉が約二十五万。生産は十九万でございますが、数年前に余剰でん粉を食管で買いまして、それがまだ残っておりますので、それを五万五千トン払い下げるということを含めまして二十五万トンの供給になります。コーンスターチが約百四十万トン。それの需要先別の表が下に載っております。細かいことは、五十六でん粉年度につきましてはまだこれからでございますが、トータルでいいますと、糖化用が百十五万九千トンということで、過半は、でいております。それ以外に水産練り製品化工でん粉グルソ等に使われておるわけでございます。  一つだけごらんいただきたいと思いますが、「水あめ・ぶどう糖・異性化糖」の欄の五十四、五十五、五十六の計の欄をごらんいただきますと、五十四から五十五にかけて増加しております。五十五から五十六にかけてはほぼ横ばいでございますが、これがちょうど異性化糖需要動向を反映したものであろうかと思います。  次に、四ページのでん粉価格でございますが、バレイショでん粉が十八、九万円、コーンスターチが十万円前後ということでここ数年推移をしておるわけでございます。  それから原料基準価格でん粉価格カンショ平切り干しの政府買い入れ基準価格等が五ページに表として載ってございます。  それから六ページに原料用カンショ生産費、それから七ページに原料用バレイショ生産費が載っております。  最後に、八ページに価格対策生産対策関係予算、九ページにパリティ関係数字が載っておりますので、お目通しをいただきたいと思います。  以上で終わります。
  4. 羽田孜

  5. 小島和義

    小島説明員 大豆関係資料につきまして御説明申し上げます。  第一ページに全国年次別生産状況資料がございますが、昨年、北海道は不作でありましたにかかわらず、全国といたしましては久方ぶりに二十万トンの大台を回復いたしております。本年は、北海道では作付面積がやや減少都府県ではやや増加をいたしておりまして、差し引き作付面積は若干の減になっておりますが、後ほど申し上げますように、全国的に収量が良好でございますので、生産数量としては昨年を大きく上回るものというふうに見ております。  二ページでございますが、作付面積でございますけれども、北海道田畑とも減少、これは昨年非常に値がよかった雑豆に置きかわったということの影響によるものと思われます。都府県は、田作を中心に引き続き若干の増加を示しております。  三ページが主要県作柄予想でございまして、北海道の百九十六キロを初めといたしまして、都府県におきましても軒並み作況指数は一〇〇を上回っておる状況でございます。  四ページに作柄概況につきましてのことしの経過を文章で書いておりますが、特に西日本方面では若干当初の寡雨のために発芽が悪かったり、あるいは低温寡照があったわけでございますが、その後の天候によりまして西日本も大体作柄が平年を上回る、こういう状況でございます。  五ページでございますが、大豆の全体の需給状況でございまして、御承知のように、小麦などと並びまして全体の中に占めております自給率というのは決して高いものでございませんが、この表の需要欄にございます食品用、ここには五十七年見込みといたしまして七十九万トンと出ておりますが、このうちの納豆、豆腐等のいわゆる狭い意味食品用需要が大体五十八万トンほどございますので、それに対しまして国産出回り量が十六万三千トン、三割弱というふうな見通しに相なっております。  それから六ページでございますが、輸入大豆の最近の値動き並びに国産大豆販売価格が出ておりますが、最近の円安傾向にもかかわりませず、世界的に価格が低落をいたしておりますことの関係もありまして、輸入価格の方はそれほど高くなく推移をいたしております。国産の方も、本年の見込みといたしましては一俵当たり六千円ぐらいの見込み流通経費がございますから、農家手取りとしてはこれから約二千円ぐらい引いた四千円ぐらいの手取り平均ということになるわけでございます。  七ページが基準価格推移でございまして、御承知のように、近年生産振興奨励補助金がつきましたり、それを価格の中に組み入れたりいたしてございますが、その全体としての手取りをあらわす表でございます。  それから八ページが五十六年産生産費推移でございまして、これは畑作だけについての調査でございますけれども、昨年の作柄等を反映いたしまして、十アール当たり及び六十キログラム当たりともかなりな上昇を示しております。  それから九ページは交付金交付実績でございまして、最近の生産数量増加、出回り量の増加を反映いたしまして、交付金対象数量増加をいたしております。また、輸入物との値幅と申しますか、基準価格販売価格との値幅増加ぎみでございますものですから、五十六年度の実績において百二十八億円、五十七年度の予想としては百六十三億円ぐらいの交付見込みと相なっております。  最後の十ページでございますが、最近の大豆生産振興対策関係予算の概要を掲載いたしておりますので、ごらんいただきたいと存じます。
  6. 羽田孜

  7. 羽田孜

    羽田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  8. 島田琢郎

    島田委員 まず大臣に、北海道農家経済がどういう状況にあるか、どのように把握されているか、お伺いいたしたい。
  9. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ちょうど二十日ほど前でございますが、機会がありましたので、北海道農業を、ごく一部でございますけれども、視察することができたのでございますが、そういう現地の視察をも含めて、また五十六年度のいわゆる北海道農業所得現状等から見まして、非常に厳しい状況にある。ことに昨年の災害がもたらした影響というものは非常に大きいのでございますので、今後、北海道酪農も含めて畑作農業のあり方というものは、私たちはもっと真剣に取り組んでまいらなければいけない、かように考えております。
  10. 島田琢郎

    島田委員 その大事な畑作一二品の行政価格決定のときをいま迎えたわけであります。私は、北海道農業実態が、いま大臣がおっしゃったような状況にあることが正確に把握されているならば、やはり政府がお決めになるこの畑作三品の価格は、せめてそれなりに北海道農家経済を立て直すことに十分役立たしめなければならない、こういうふうに考えるのですが、この点についてはいかがですか。
  11. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 北海道畑作農業の中で冷害に強いてん菜位置づけというのは非常に大きいわけでございますので、てん菜の今回の生産者価格決定当たりましては、私たちは、もちろんパリティ指数基準としながら、物価その他の経済事情を配慮して決定するわけでございますが、それと同時に、他のいわゆる畑作農産物価格のバランスだとか、もちろん経済事情財政事情等を配慮しながら総合的に決定しなければなりませんけれども、北海道てん菜が再生産できるようなことをも配慮しながら今後決定いたしたい、かように考えております。
  12. 島田琢郎

    島田委員 そこで、北海道農業というのは、だれがどう言おうと、これは日本の大事な食糧の主要なる生産基地であるということには間違いないわけです。全国的に見ても、北海道が果たしていかなければならない経済的な役割りも含めて考えますと、非常に大きい。北海道農業の持っている役割りというのは、そうした経済をやはり引っ張っていく上でも大変重要な基幹産業である。その農業が、昨年の湿害、冷害があったにせよ、ここ近年、数年に限定してみると物すごい落ち込みでありまして、大臣の御認識はどの程度なのか、私は改めて後ほどお聞きしますけれども、この六月の末に農林省発表されました農業所得、これは三年ぶりに、全国ベースで言いますと一・九%増加した。これは大変喜ばしいことだと思うのです。  ところが、同じことしの発表で、北海道農家経済がどうなっているのかというのが、これまた農林統計情報部から八月の末に発表になりました。それを見ますと、農業所得において二二・四%もこれは落ち込んでいる。農外所得に大きく依存することができない北海道でありますが、その農外所得も四・五%落ち込んだ。締めて、農家所得が、これらを平均しても一六・四%も落ち込んだということであります。当然、農家の総所得も約八%の落ち込みを見る。こういうことでありますから、北海道農家がどんな苦しみの状況に置かれているかということは、この数字によっても明らかなわけです。  これは、全国そうなっているというのであれば、ある程度北海道としてもがまんしなければならぬでしょうが、他府県は一・九%上がっているのに、北海道はいま申し上げましたような数字で大変落ち込んでいる。これは、もうこれ以上もたないというところまでいっていると言っていいのではないか。  それで、先ほど作物間の均衡を頭に置きながらということも一つの要素である、こうおっしゃったのでありますが、私は、きょうは主としてビートについて論議をしてまいりたいと思うのです。北海道にとって、ビートはまた農業の大事な主要作物である。いわんや畑作においては、ローテーションを進めていく上での欠かすことのできない重要な作物である。それが昨年まで大変面積がふえてきまして、六十五年見通しのところまで近づいてきたので、こんなに面積がふえたのではこれは大変だ、政府も盛んにそういうことをおっしゃった。しかし、農家自身十分北海道畑作農業はいかにあるべきかという基本のところをやはりわきまえておりました。ことしはそうした自律神経が正常に働いたといいますか、北海道農家のいわゆる常識というものが示されたわけでありますが、面積的には四千ヘクタール他の作物へ移行という状態になりました。これは大変な努力だと私は思うのです。  ただ、いま作柄が、この春以降の天気の良好な推移によりまして非常に恵まれました。単収も、いま食品流通局長から状況報告があったとおり。これは大変うれしいことであります。したがって、ややもしますと、こんなによく作物ができた年は生産性が上がったのだ、こういうことや、あるいはたくさんとれたときは少し値段も下げるのが、なんというようなことを言い出しますと、待ってましたとばかり世論もそれに迎合するという空気の傾向の中にありますから、価格を論ずる場合には、単純に、短期的にあるいは短絡的に物を考えて決めるということはできないという原則がやや崩れがちになる今日の環境のもとに置かれているだけに、大臣北海道農業日本農業位置づけからいって大事だとお考えになるならば、やはり長期展望に立って、北海道畑作経営が、酪農とか畜産とかあるいは稲作とかいうものと同じように、日本農業の先駆的な役割りを果たしていけるような構えに立って、北海道農業というものをしっかり基本から考え直さなければいけないのではないか。  そういう意味で、私は、北海道が残念ながらそういう役割りを果たし得るようないまの経済状況にないということを指摘して、その点の認識を同じくするということをまず出発点にして、最後畑作三品の行政価格決定に取り組んでもらいたいと考えたから少し長いお話をしたのでありますが、私の申し上げた点と大臣の現在お持ちになっている認識には大きく差がないでありましょうか、どうですか。
  13. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 北海道は、確かに全国平均から見ますと、五十六年度の農業所得が下がっているという実態はただいま御指摘のとおりでございます。しかし、私は、北海道へ行ってみまして、稲作農家もあるいはまた畑作農家の方も酪農農家の方も、非常に苦労の中に意欲的に農業をやろうという気魄を受けとめてまいりました。したがいまして、せっかくこういうように努力しようとする農家、農民に対して、私たちは新しい、いま御指摘のような長期の計画を立ててこれに対応しておこたえしていかなければならないという感じを深めたのでございます。  そこで、過般、農政審議会から八〇年代の農政方向の推進という報告書をいただいたのでございますが、これによりますと、中核農家中心として経営規模を拡大し、あるいは基盤整備を行い、技術開発普及をする、そして少なくともEC並み農産物価格を目標にして生産性の向上を図るべきだという報告を受けたわけでございます。  私は、新しい農業方向はまず北海道農業から始まるものじゃないだろうか、あの意欲といい、その環境といい、そういうような感じを受けたのでございます。今後、農政審報告に沿うた新しい農政をつくるには、北海道に多くの期待をし、そのための政策を進めてまいらなければいかぬということを、私、かたく信じておるのでございますので、今後、それらの対策は五十八年度予算等を含めて進めてまいりたい、かように考えております。
  14. 島田琢郎

    島田委員 認識が同じかという私の問いに対して御説明をいただきました中では、やや認識を同じくしてない部分があるようであります。  そこで、もう少し申し上げておきます。  実は、畑作単一経営のところでこの三年間に収支の状況がどのようになっているかを調べてみました。五十六年の分はまだ統計上もしっかりした数字発表になっておりませんから、五十三、五十四、五十五年の三カ年間で比較をしてみました。  確かにおっしゃるように、経営規模は拡大いたしました。畑作部分でありますが、五十三年には一一・八五ヘクタールでありましたものが五十四年には十三ヘクタールとなり、五十五年には一三・五ヘクタールと、これまたふえてまいりました。経営規模は拡大されました。同時にまた、いまおっしゃったように、北海道農家は非常にまじめに、勤勉にこれに取り組んできました。これに対する労働時間も、五十三年は三千四百時間でありましたものが五十五年は三千五百五十五時間と、面積がふえた分、勤勉に取り組んだということが数字的にも明らかにされています。粗収益も、面積がふえた分だけふえました。五十三年には八百五十六万円でありましたものが、五十五年には一千百五十一万円に伸びました。しかし、残念ながら経費が大変大幅にふえた、ここが問題であります。五十三年に四百四十五万円であったものが、五十五年には六百五十万円と経費増になりました。したがって、農業所得が大幅に落ち込むという結果になりました。五十三年には四八%であったものが五十五年には四五%と、年々大変大きなパーセンテージで落ち込むということになりました。  ここが、冒頭私が申しましたように、北海道農家経済大変苦境に追い込まれつつあるということを裏書きするものだ、こう思うのです。したがって、政策的に行政価格を分担されておられる限り、その分野においてはフォローするという行政姿勢が必要である。その点で、大臣北海道農家大変勤勉でまじめによくやっている、こういう評価をしながらも、それだけ一生懸命やりながらも、実は年々所得が落ち込んできて経営が苦しくなり、生活が追い込まれているという実態にいまあるんだ、こういうことでございます。したがって、そこのところの認識が私と一緒でありませんと、これからお決めになる価格に反映しないのであります。  私がいま申し上げましたこの数字は、私が捏造したものではございません。もちろん農林統計によりました数字を寄せ集めて比較をいたしたものであります。農林省がお認めになっている数字であります。  こういう状態を放置しておけば、恐らく五十六年、五十七年とますます農家所得は落ち込んできて、それをカバーするために農外に出れるかというと、北海道は出れません。こういう不況の状態でありますから、出かせぎするということは年々門戸を閉ざされて、拡大の道などはほとんど北海道にはないのであります。そうしますと、ビートづくりで生きていく以外にない。芋をつくって経営を維持する以外にない。豆もつくって、しっかりわが農場を守る以外にない。だとすると、ここにしっかりした行政の、誠意ある、農家努力にこたえる姿勢が出てきませんと、北海道農家はつぶれてしまいますよ。北海道農家がつぶれれば日本農業はもうだめになる、私はそう断定しても言い過ぎじゃない、こう思うのです。それだけに、ことしは大変恵まれたよい年であったということを前提にしながらも、行政はこの農家努力一つにはこたえるという姿勢が必要ですし、それがやがては将来に展望を持ついわゆる北海道農業経営ということにつながっていくわけであります。大事なことしの価格決定であります。たくさんとれたときはおざなりに価格決めてやればいいというしろものでないということは、この北海道農家経営実態から見て御認識をいただけると私は思うのです。いかがですか。
  15. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 確かに農業にとって、農政にとって、価格の持つ役割りというのは非常に大きいのでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、今年度のてん菜生産者価格決定するに当たっても、パリティ指数基本としてのもろもろの条件を勘案しながら適正に決めよう、こう思っているわけでございます。しかし、その価格も確かに重要でございますが、同時に、先ほど御指摘のありましたように、長期的な展望に立っての構造政策というものを私たちはやはりもっと考えて、構造政策についてもっと投資をしていくことが、これからの農業を安定した腰の強い農業にしていくのじゃないだろうかと思いますので、もちろん価格政策についても十分な考慮をいたしますものの、構造政策の面でも私たちは十分な配慮をして腰の強い農政にしてまいりたい、かように考えておるのでございます。
  16. 島田琢郎

    島田委員 構造政策、構造政策とおっしゃいますが、私がいま申し上げた点で御理解がいただいていないようであります。農林省おっしゃるように、構造改善のイロハと言われる経営拡大にも取り組んだのです。二ヘクタールからのここ三年間における経営拡大をやったんです。しかし、やったら所得が落ち込んだじゃないですか。構造政策、構造政策ともうばかの一つ覚えみたいに政府はおっしゃいますけれども、それがどんな結果をもたらしているかということは、このわずか三年間の数字で明らかじゃないですか。私はそれが言いたくて、先ほど数字を細かに挙げたのであります。  しかも、農業の純生産部分で、それでは生産性がどのように高まっているのかということを見てみましたら、労働の分野においては、確かに十時間当たりで見ましても、五十三年には一万二千五百円でありましたのが五十五年には一万五千円と、労働の生産性は高まりました。まじめにやったからであります。ところが、土地と特に固定資本においては大変回転率が悪い。これで構造政策一本やりが正しいと言えるかどうか。たとえば千円当たりの固定資本で見ますと、五十三年は一千九十二円でありましたものが五十五年には八百七十八円と、非常に効率の悪いものになっているのです。経営の規模を拡大しました。まじめに一生懸命労働も投下しました。しかし、大事な資本の回転率はこのとおりであります。つまり、投下資本の回収というのは、農業経営というものの持っております体質からいいましても、そんなに簡単に短時間で回収できるものでないということであります。  そうだとしますと、その回収を早める手だては何かといえば、やはり大事なのは価格ではないですか。価格がどうあるかによってこの回転率が高まってまいります。投下した労働に対する報酬が正当に得られます。それは経営を維持し、生活を守ることができるということになるのであります。北海道農家経済がこんなに落ち込むということを引き上げていく作用でいま大事なのは価格だということが言える、私はこう思うのです。  この点の御認識が、どうも私と大臣とでは違うようであります。あなたは、親分がやめられたからといって動転しているのじゃありますまいな。まともに私の話を聞いていただきたい。現職の農林大臣である限りは責任があるのであります。しかも、あなたの手で最後畑作三品の価格決定が行われるでしょう。これは農家にとっては、あなた自身が依然生殺与奪の権を持っているということなんでありますから、無責任にお考えいただいては困ると私は思う。ぜひ真剣にひとつお聞き願いたい。  そこで、長いやりとりをしておりますと時間だけ過ぎ去っていきますから、さて、それじゃてん菜はことしの場合どうか。すでにパリティ決めるというお考えでありますから、パリティが一体幾らかというのは大変重要な価格算定の基本になるわけです。一・五三%と説明されております。そうすると、一体どれくらいになるのかというのもおよそ見当のつく話であります。ところが、昨年、一昨年から生産性向上反映方式というまことにわけのわからぬ方式を持ち出してまいりまして、まじめな北海道農家努力に水をかけるような価格決定が行われてまいりました。私はきわめて遺憾だと思う。昨年なんか大変なことでした。それでも四・六%上げたんだからありがたく思え、こう言われておりますが、ちっともありがたくないばかりか、ますます大変な状態に追い込むという結果にしかならなかった。ことしは物価がそれだけ総合パリティにおいても下がったということをこの数字があらわしているのでありますが、私は、この際、統計について大変深い疑問を持っておる一人であります。  おとりになっている統計が誤っていると申し上げているのではありません。統計情報部が出されました数字は、これはあらゆるデータをもとにして出されたのでありますから、信憑性のきわめて高いものだというふうに理解するのが常識というものでありましょう。しかし、政治は、それだけで進めていっては現場の農家の感覚と狂う場合があります。物価も同じであります。総理府は物価はいま上がっていない、こう言って説明しても、買い物かごを下げてお店に買いに行っている奥さん方の生活実感としては、ちっとも下がっていない、こうおっしゃる。だとすれば、政治はどこに尺度を当てて進めていくべきか。統計なのか、国民生活の実感のところに目安、目標を置いて対策を進めていくのか、どっちをとるのか、これが政治の大事な進め方だと私は思う。幾ら物価は下がった、農業用諸資材もこのように下がっております、こう言ったって、実際手に持って農薬をまき、肥料をまき、農機具を使う農家にしてみればちっとも下がっていないという実感がある限り、それをフォローしてやるのが政治というものではないでしょうか。奥さん方の物価高に対する生活感覚を鎮静化させていくというのが政治ではないか。統計統計だ、統計数字がこうなっていると言ったって、国民生活は大変だというのにそこのところにちっとも目を向けようとしなかったら、これは政治ではない。これと同じことが農家の場合にも言えるのではないか。しかし、この論議をやりますと時間が長くなりますから、そういう大事な政治の姿勢というものがそこにあるべきではないかという点だけ、きょうは指摘しておきたいのであります。  さて、いろいろ巷間伝わっております話によりますと、昨年と同じ生産性向上反映方式をとろうというお考えのようであります。私は、ことしはそれをおやめ願いたい。なぜなら、ことしは、先ほども申し上げましたように大変天気がよかった。農家努力もありました。先ほど局長の御報告によって明らかなように、珍しく史上最高収量をいまやてん菜は得ようといたしております。すでに収穫が始まっております。砂糖も大変糖分がよいものであるというのが一般的な常識でありましょう。ことしは、水ビートだなんて幾ら言ったってそんなものは通らぬ話でありまして、現実にいいビートができました。砂糖のたくさんだまったビートがいま圃場から掘り出されつつあります。だとしたら、農業の食糧政策の大事なもう一つの柱は、よいものをつくったら正当に買い上げる、あるいは正当に価格が保証されるというのが常識でしょう。いいものがとれた、値段は下げる、これは私は社会通念の上から言えば常識に反すると思うのであります。せめて一・五三%というパリティが正常に農家のふところに入ってくる、価格に反映するということが大事である。そしてまた、ことしはそれができる年だと私は断定いたしております。  食品流通局当局の現在までの作業のお進めの段階の経過を御説明願えれば、この際伺っておきたい、こう思います。
  17. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先生ただいま御指摘のように、昨年の価格決定におきましても、パリティ数字がそのまま手取り価格数字のアップにつながらなかったというふうに相なっておるわけであります。御案内のように、ビートにつきましては、買い上げ基準価格のほかに、過去の七、八年前からの経緯で、増産対策その他のことも考えまして、奨励金というものがかなりの幅でついております。それも、その後の価格決定の過程で一部分が本体価格の中に入り、一部分が別枠奨励金として存在する。それから、その別枠奨励金につきましても、一部は企業が負担するが、一部は場合によっては国が負担することあるべしというような形でここ数年間推移をしてきておるわけであります。昨年におきましても、パリティ自体は、パリティ分を本体価格にはもちろん乗じて、計算の過程ではそういう過程があるわけでありますが、奨励金を含めた手取り全体といたしましては、最近におきます単収の増加傾向あるいは反当の投下労働時間の減少傾向、際立って生産性が向上しているということを勘案いたしまして、奨励金の方を操作をいたしまして、手取り価格水準としましてはパリティとイコールにならなかったというのは御指摘のとおりでございます。  先ほどからお話のございますように、一つだけぜひ御理解いただきたいのでありますが、ビートは大事な作物であります。私も、従来ずっとビートの増産につきましては、むしろ強く北海道に慫慂してきたわけでございますが、ここ数年間の増加傾向は余りにもそのテンポが速過ぎまして、増産されました精糖が正常な価格で市場で流通をしないという現象が一昨年から現出をいたしまして、別途、そのことがビートの不足払いの財源の一部を負担をしていただいております輸入糖の精製糖メーカーの収益の減にもつながるという現象が生じてまいりまして、そこら辺につきまして北海道生産農家の御理解を得るべく、ここ半年ばかり、作付面積につきましては、六十五年の目標はもちろんわれわれは責任を持つつもりではあるけれども、ビートが正常な価格で売れるテンポに応じて増産をしてほしいということを強くアピールをしてまいったわけであります。幸いに農家の御協力を得られまして、ことしは面積につきまして若干の修正が行われたわけでありますが、反面、単収が非常にふえまして、恐らく史上最高の産糖量になるのではないかというふうに考えておるわけであります。  価格の話に戻りますが、そういった場合に、そういったことも考えまして、それから生産性向上の動きというものもさらに進んでいるということも考えまして、それから価格の中には本体価格、奨励金、あるいは繰り入れられた奨励金分があるというようなことも、全体を考えまして、目下慎重に検討中でございまして、まだ具体的にこういたしたいということを申し上げる段階に至っていない点につきましては御理解いただきたいと思っております。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕
  18. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、必ずしも昨年方式をとるという考えではないというふうに理解していいのですね。
  19. 渡邊文雄

    渡邊説明員 昨年と同じ方式をとるということも含めまして、まだこれから、きょう、あしたとかけまして、財政当局と最終的な詰めをいたしたいというふうに考えております。
  20. 島田琢郎

    島田委員 私は、昨年方式をとらないでもいい年であると先ほど前提を置いてお話をいたしました。そのことを少し説明します。  その前に、大臣、コスト合理化、これは農家ばかりじゃない。いま日本全体に求められておりますね。農家もそのらち外ではありません。私どもも鋭意安い物を供給するという努力を続けなければならないということであります。残念ながらいま資本主義社会であります。そうなりますと、一層農産物の生産コストの低減、つまりコスト合理化を図るという前提は、何といったって生産性向上利益というものが出てまいります。農家努力をした、それをいま召し上げようという話でありますけれども、しかし、本来それは再投資していかなければならないのです。次の生産性向上に向けて再投資すべきものであります。そうでしょう。私の経済論理は間違っていない、こう思うのです。これを追加投資するということによって、次のコスト低減に向けていく原資になるわけですね。それを生産性が向上したからといって取り上げてしまったら、どうやって再投資するのですか。それはまさに、農家はもう生産性向上、つまりコスト低減をやらなくてもいい、コスト合理化はもういいよと言うのと同じ結果になるのです。農業経営一つの企業であります。そうだとすれば、毎年上がってくる余剰金を外部留保するわけにはいきません。自分たちが一生懸命働いて、天候にも恵まれて、幸いにも生産性が上がった。これはどうしてもそこに保留しておかなければいけません。それは次に投資をして、コストの低減、コスト合理化に向けていかなければならない資本になるわけであります。  ですから、去年方式というのはいかに不当なものかということを私は申し上げたい。それをことしもまた同じようにとるのだとしたら、農家はもうこれ以上合理化せぬでいいよ、こういうことを政府みずから言ったと同じことになるのです。私のこの経済理論には反論がありますか。
  21. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先生も十分御案内だろうと思いますが、輸入糖からできます国内の流通量が国内の砂糖需要の過半を占めているわけでありまして、その輸入糖のコスト、価格の方が、現時点におきましては、ビートからとれますビート糖よりもはるかに低いわけでありまして、輸入糖業者に御協力をいただきまして、多額の調整金をちょうだいいたしまして、その不足財源に充てておるわけであります。さらに、それでも足りない部分を一般会計から補てんをしておるわけでありまして、そういったことを考えれば、生産性向上分が、確かに先生御指摘のように、次期作の生産性向上に再投資されるという改定が望ましいことはもちろんでございますが、そういう意味で他の分野からの援助をいただいているという限りにおきましては、生産性向上の一部か全部か、そのときの事情によっても変わろうかと思いますが、相当部分を製品のコスト価格の低減の方に用いるということも、これまた大事なことではないかと思うわけであります。
  22. 島田琢郎

    島田委員 それはおかしい。それは私どもだってかつて批判のあったこともあります。前年対比で二〇%、三〇%という値上げを要求して一生懸命手を挙げました。しかし、いまそんなことを農家も言っていないです。合理化に一生懸命努力しているわけです。いま私どもが求めているのは、せめて物財費の値上がり分をフォローしてもらいたい、それが一・五三%だというのならば、それは正確に価格に反映してもらいたい、それが再投資の部分として私どもぜひ保留したい部分です、こう言っているので、とんでもない法外な要求なんか一つもしてないじゃありませんか。その分までも召し上げようというのなら、これは悪代官だ。一千年の昔から一つも変わっていない。農家は生かさず殺さずという思想から一歩も出ていない。一生懸命努力をしたら努力に報いるというのが政治じゃないですか。しかも、それがことしはできる年だと私は断定している。  たとえば、私は仮の試算をここに置きました。昨年の原料価格一万九千九百二十円、これは農家手取りでありません。それにことし織り込み奨励金を含めて私は計算しておりますが、一・五三%とすれば原料代は二万二百二十四円、こういうことになるわけであります。外枠になっております奨励金五百五十円を足し、ことしの集荷、製造経費がどの程度の水準になるかはまだこれからの話ですから、昨年の実績をここに置いてみました。そういたしますと一万五千五百八十三円で、全体のトータルで三万六千三百五十七円になるわけであります。昨年と同額の糖価といまの段階では考えておかなくてはなりませんが、二十五万四千五百円の糖価ということを一応仮定にしておいて計算いたしますと、実は歩どまりが幾らというのがここに出てきます。  冒頭で私申し上げましたように、ことしは恵まれました。恐らく糖分もそんなに悪くはないというふうに私は見ております。この歩どまりがどう動くかによって、糖価と、それから前段申し上げました原料価格あるいは製造コスト、集荷コストにはね返っていくか、それを据え置くならば糖価が下げられる方に作用するかの両方を持っていますね。これは計算上、方式としてはあたりまえのことであります。私は何も法律から逸脱したことを申し上げているのではありません。法律によって計算いたしますとそういうことになるのであります。財政財政とおっしゃるが、財政の、あるいは決められております要求の枠から決して大幅に出るような交付金額にはならないと私は思います。そうしますと、財政上にもわれわれは節約で協力することになる。一・五三%のパリティアップは織り込み奨励金に掛けていったって十分ことしはカバーできるし、フォローできる。それだけではない、財政もそういう点では不当な負担にならないで済む年である。だから、私は断定して申し上げているわけであります。  つまり、一言で言えば、てん菜の品質というものがよいか悪いかによって、つまり、歩どまりがいいか悪いか、ロスがどの程度でおさめられるかという問題はもう一つ外枠にありますけれども、これが正常に機能していくということであれば高く買うことはできる。理論上ではなくて、計算上でも実際上でもできますな。できるのです。つまり、パリティ上昇と外枠奨励金がことしは織り込める年なんです。それでなおかつ糖価を上げないで済む。みんないいじゃありませんか。悪代官の名をほしいままに、せっかく汗水流して稼いだ農民から召し上げるようなふらちなことをしないで済む。農林省ようやった、こういう年になり、糖価も上げないで済むということになれば、消費者からも国民の皆さんからも歓迎される。これがことしの実態なんです。よい年に恵まれたという結果がこうなってあらわれてきているのです。  私の仮に置きました試算どおりに一回はじいてみてください。私の言わんとしていることの意味と結果がおわかりになるはずであります。そうだとすれば、もうあさって、やのあさってまで待たなくたって、皆さんの御要求を十分満たしますということが、大臣、この席でお答えできるはずであります。経済事情その他もろもろのことを参酌しているというお話もありました。臨調からもいろんなことを言われている。これもあります。しかし、それらに対してもことしは何ら抗弁することなく十分理解が求められる年である。ビートに限って言えば、私はそのことが言えると思います。  時間がなくなりましたから、ついでにお答えを願っておきますが、横並び方式と盛んにおっしゃって、昨年も生産性向上算式をおとりになった。奨励金部分で操作をしました。しかし、バレイショについて、奨励金もないのに一体どうやってこれを生産性向上分を差し引いたのか、私は理解に苦しむ。決まっちゃった後でちょびっといちゃもんをつけましたが、ことし改めて昨年方式は不当だったことを、バレイショなんかは特に言えるのではないかということを私は指摘しておきたい。  余り時間がありませんから、短くお答えを願いたいが、私のいま提起いたしました仮の計算は正当なものだと思いますが、いかがです。
  23. 渡邊文雄

    渡邊説明員 ビートの原料大根から製品ができるまでの過程におきまして、一番製品の価格影響を及ぼしますものは、御指摘のように歩どまりでございます。ただ、原料価格決定の中に歩どまりとの関係を持ち込みますと大変むずかしい議論に波及するおそれがありまして、私どもはかつてそういう議論をしたことはないわけであります。  先生計算のように、ある種の歩どまりを想定すれば、おっしゃったような結果が計算上出てくることは確かでございますが、反面、では逆に歩どまりが悪いということが予想される年には原料価格を引き下げてもいいのかという議論を誘発しないで、その前段だけの議論で全部通すということはなかなか至難のわざだろうと私は思います。したがいまして、歩どまり、先生おっしゃったようなことを一応の仮定を置いて計算すれば、結果としての数字は得られるかもしれませんが、できればその絡みは外して、原料価格は原料価格、製品価格は製品価格としておく、特に歩どまりは単年度の現象として処理をしたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。  それから、バレイショの昨年の価格決定との絡みでの御指摘があったわけでございますが、確かにバレイショ価格にはかつて奨励金をつけた時期もありましたが、現在ついておるわけではありません。しかし、生産性の向上の姿というものはバレイショの場合も同様強くあるわけでございまして、農家手取り水準の価格水準としてのバランスをとるということで、昨年はあのような措置をいたしたわけであります。  特に、私、念頭にありますものは、ビートバレイショというのは広大な北海道におきます畑作地帯の輪作体系の中に完全に組み入れられているわけでありまして、ビート価格がどうであれ、反当の労働時間がどのようにバレイショの場合になるかというようなことをすべて勘案をいたしまして、今年度どういう輪作体系、作付体系にするかという農家の選択はいろんな要素で行われるのだろうと思います。必ずしも絶対額としての価格水準がイコールでなければならないという意味で私ども他の作物価格水準との均衡ということを申し上げているわけではない点につきましては、御理解をいただきたいと思います。
  24. 島田琢郎

    島田委員 砂糖がたくさん詰まり、そしてよいビートができたというならば、正当な価格評価をすべきだ、このことは絶対私は譲れません。でなければ、水ビートをつくってもいいということになるのじゃないですか。時代逆行でしょう。砂糖なんかどうでもいいわい、太ったでっかいビートをつくっていれば済むんだ、こういう時代ではないでしょう。農家もそのことを知っています。だから、いいビートをつくったときにはいい価格がきちっと保証されるものだという原則がそこに確立されていなければ、経営はむちゃくちゃになってしまいます。そのことは譲るわけにはまいりません。  時間が来ましたからそれ以上のことを申し上げることはできませんが、最後にちょっと、済みませんけれども、雑豆の問題について時間を一、二分いただきたいのであります。通産省から担当の輸入課長がお見えでございますし、きょうは大臣もお見えですから、いままで何回かお話もしてまいりましたものを御認識賜って、ぜひしっかりした対策をお組みいただきたい。小島農蚕園芸局長もお見えでございますから、この点はぜひ触れさせていただきたい。  というのは、雑豆の発券にかかわる問題であり、同時にまた、雑豆の自由化にかかわる問題でございます。  ことしはまた、豆も恵まれた年になりました。小豆と菜豆を入れまして、一口に言っておよそ百八十万俵、これは国内需要のおおよそ五〇%に相当する分でございます。しかし、通産省は農林省と協議の上、上期発券、下期発券という方式で雑豆の輸入をやるわけであります。IQ制をとっておりますが、しかし、いま北海道ではどんどん脱穀され、俵詰めされ、市場に送り出されております。一五%ほど現在出荷が終わっているそうでありますが、心配されるのは、この間まで値段が一定の水準にあったものが、いまどんどん値下がりしてきている。これから最盛出回り期を迎えればどこまで下がるかわからないという不安が産地では深まっています。そういうときに下期の発券が行われるなんということになりますれば、これに追い打ちをかけて大暴落、話にならない状態に陥ってしまいます。ここは政府のきわめて重要な配慮、対応を必要とする時期であります。  結論を急ぎますが、下期の発券はこの際ゼロにすべきだ、国内出回りの分でユーザーに十分期待できるだけの対応ができる、私はそう考えています。この際、下期発券は見送るという考え方を鮮明にしていただきたいと要求するのですが、いかがですか。
  25. 小島和義

    小島説明員 雑豆全体で申しますと、ことしは大体十五万トンぐらいの生産が見込まれておりまして、出回り量ということになりますと、それから幾分減った数量というふうになろうと思います。これに対しまして、年間の消費量は大体二十五万トン前後、こういうふうに見ておりますので、年間通して輸入が必要ないという需給事情にはないことはお察しいただけると思います。  問題は、それを下期並びに上期においてどう配分するかとか、あるいはまた豆の種類別の輸入量をどう見るか、これは在庫の問題にも絡んでまいりますので、その辺については慎重の上にも慎重を期して、上期、検討してまいるつもりでございます。  また、お話がございました雑豆の自由化の問題につきましては、かねてより大臣お答え申し上げておりますとおり、こういう大事な品目につきまして自由化は行わないという方針をもって臨むつもりでおります。
  26. 島田琢郎

    島田委員 時間が超過して大変恐縮でした。食い足りない論議に終わりました。これはまた後ほどじかにお話をさせていただいて、ぜひ農家の期待する価格が実現できますように、大臣最後の置きみやげでひとつ御努力をいただくことを心からお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  27. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、安井吉典君。
  28. 安井吉典

    ○安井委員 私の持ち時間は十五分ですから、とても深く入ったお尋ねはできません。  まず、畑作に対する政策の問題でありますが、水田に比べてきわめておくれているという事実は明らかです。農業政策というと何か水田のための政策だけみたいな感じがする今日の状況の中で、主要な作物については生産目標を設定するとか国産や輸入を含む需給計画をしっかり立てて輸入を規制するとか、そういう基本的な問題が必要ではないかと思います。しかし、短い時間ではとても議論し切れませんので、少なくも価格政策の問題をやはり明らかにすべきだということをきょうは申し上げたいわけです。とりわけ、臨時行政調査会の答申の中でも価格政策の問題に触れております、特に昨年の第一次答申において。それから、今度の農政審議会報告価格政策を述べているわけであります。しかし、どれを見ても何か一つ食いが足りないような感じを受けるわけであります。主要農作物価格体系の整備ということも、転作の問題に絡んでちょっと書いてあるというだけにしかすぎないわけです。  そこで、これはぜひ大臣に伺いたいわけでありますが、先ほども構造政策を重点にしたいというお考えをはっきりお述べになったわけであり、構造政策のおくれを取り戻すことは私はわかるわけでありますけれども、しかし、価格政策については、そんなのは後回しだということでは困るのではないかと思います。相対的にコストを下げるとか、あるいは外国並みの価格にするとか、そういうようなことを言っても、現実に農家所得水準をどうするのかという観点が欠落していてはどうにもならないわけです。特に、臨調の第一次答申などにはこう書いてありますね。「各種農産物の価格支持については、国際価格を考慮し、需給事情生産性向上の状況等を反映した価格水準及び対象数量を設定する。」生産費所得補償をするとかパリティ計算だとか、そんなことは何もないわけですよ。もしこのとおりやるとすれば、いままでの農林水産省が進めてきた農業政策がまるっきり変わってしまうのじゃないですかね。  しかし、農政審報告の中の資料を見ても、消費者物価の推移では全体的に五十一年から五十六年まで一三一・七%、三一%ぐらい全体の物価が上がっているわけですけれども、食料の値上がりは一二六・〇%ですからね。いかに今日までの価格政策で食料の方が抑えられてきているか。非食料の方は一二五%ですから、一〇%以上も上がっているのです。食料だけが抑えられてきているということが農政審のこの中にはっきり書いてありますよ。  ですから、そういう中で一体どうするのか。臨調の言うとおり、これは今後国際価格決めていくのですか、今度の畑作三品を含めてですね。私は、そういうことになれば、現在の農産物価格支持に関する、米価を初め全体的な法律を全部変えていかなければならぬのじゃないかと思いますよ。そういう基本的な考え方について、ひとつ明確にしていただきたい。
  29. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 価格政策の問題でございますけれども、先ほど私は、基本的に価格政策は尊重されなければいかぬ、しかし、これから新しい農林水産業をつくり出すためにはやはり構造政策というものも非常に重要であるということを申し上げたのでございますので、そういう前提をひとつ御理解いただきたいと思うのでございます。  さらに、第一次答申ですね、いま安井委員から御指摘がありましたように、国際価格を考慮して、需給事情あるいは生産性向上の状況等を反映して価格の水準あるいは対象数量を設定するというこの考え方。それから、農水省の価格の政策については、いま御指摘がありましたように、一昨年の農政審の答申が示している「農産物価格政策の方向」というのがございます。第一は、農産物価格の過度の変動を防止すること。第二は、価格の持つ需給調整機能を重視すること。第三番目は、農業所得の確保を図る場合には、中核農家に焦点を合わせていくことを長期的な目標とすること。第四番目に、生産性の向上の成果をできるだけ消費者にも及ぼしていくこと。第五番目に、内外価格差に配慮していくことというような指示を受けておりまして、これをできるだけ適正に運営してまいりたいと考えているわけでございますので、先ほど申し上げました第一次答申とはそんなに矛盾したものではない、こう思っておるわけでございます。  ただ、私たちは、これからの日本農業のあり方は、もっと積極的な農業を進める、また、中核農家中心として経営規模を拡大し、あるいは基盤整備ができ、あるいは技術開発普及が進められて非常に意欲的な農業になるためには、やはり何としても魅力を感ずるような農業にしてまいらなければならないと思いますので、したがいまして、日本農業の未来はどうあらねばならないかということを考えますと、私は、もちろん輸入を極力抑えると同時に、輸出産業としての日本農業というものをも目標にしながら進んでいかなければならないと思うのですね。したがいまして、私は、北海道農業役割りというのはそういう意味で非常に大きいと思います。価格政策はこの輸出産業としての農業位置づけをするために大きな役割りを果たすと思いますので、それは大きく尊重してまいりますけれども、輸出産業としての農業をつくるためにはやはり構造政策は必要じゃないだろうか、われわれはもっとそういう点に配慮していかなければならないのじゃないだろうかということを私は考えておるのでございますので、その点も御理解をいただきたい、こう思うのでございます。
  30. 安井吉典

    ○安井委員 結局、私の質問に対する答弁になっていないということがわかったような気がするわけです。それは輸出産業になるようになるのも結構ですけれども、いまのビートが五年や十年の間に輸出できますか。大臣、それだけの自信がおありなんですか。あるいはいま問題になっている大豆にしても、あるいはジャガイモやカンショにしても。ですから、そういう幻想だけを振りまいて、それは財界の言葉どおりなんです。幻想だけを振りまいて、そんなことを言っているうちに現実の農家はみんなつぶれてしまうということになってしまうのではないかと思います。少なくもいま一生懸命にやっている農民が、将来はもちろん、来年の経営に力が入るだけの価格の保証がなければ、十年先、二十年先、百年先は明るいよと言ったって決して農民の利益にはならないということになるのではないかと私は思います。幻想倒れで、いま価格を上げないための口実に、将来はよくなるんだよという旗をちらちら見せるというだけにしかすぎないような気がしてならぬわけですね。  では、少なくもこのことだけは明らかにしていただきたい。いまのような臨調や農政審の答申あるいはいまの大臣のお答えの中で、現行の各種の農畜産物の価格安定の諸施策がありますが、その法令の改正はやらないでいくのですね。この点を明らかにしてください。
  31. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 もちろんそういう方向で進みます。
  32. 安井吉典

    ○安井委員 大変大きな問題ですから、これはまた別な機会に譲ります。  肝心の当面の問題への質問時間がもうなくなってしまいましたけれども、てん菜にしても芋でん粉にしても大豆にしても、さっき島田委員とのやりとりを聞いていますと、生産性の向上というようなものをかなり大きな要素に考えていくということであります。生産性の向上、それはことしのおてんとうさまのせいもあります。これは間違いありません。天の恵みももちろんありますけれども、それだけ上げるための農民の努力、特にそれが農機具や農薬や肥料や、そういう大きな支出になって、あるいはそれが借金のまま残っている、そういう形になっているわけですからね。それの方は知りませんよということだけで、メリットを全部奪ってしまうというようなことは、私は許せないのではないかと思います。基本的には来年の生産がうまくいくような、そういう仕組みの中で価格決められていかなければいかぬ。少なくもパリティ指数という法律の規定もあるわけですから、それの尊重だけでもすべきではないですかね。それでなければ、だれだってこれは納得できませんよ。どうですか。
  33. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先ほども大臣から御答弁申し上げておりますように、価格決定当たりましては、パリティ指数基準として、物価その他の経済事情を参酌して定める最低生産者価格に、御案内のように奨励金を交付するという形でビート生産者価格の確保を図っておるわけでございまして、その他の参酌事項といたしましては、他の畑作物との価格決定のバランスとか、特に最近におきます経済事情等も十分念頭に置かざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  34. 安井吉典

    ○安井委員 伝わっているところでは、いまのような財政状況やその他一般の状況の中でこれは据え置きなんだ、麦も据え置いたからこれも全部畑作は据え置きなんだ。もう最初から答えが出ているといううわさもあります。あるいは大蔵省は、いや現在よりももっと下げろという主張をして農水省をおたおたさせているという報道もあります。どうなんですか。いままで島田委員の議論の中でいろいろな問題が尽きていると思いますけれども、そんなのは別にして、据え置こうということで初めから作業を始めているんじゃないですか。どうなんですか。
  35. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先ほども申し上げましたように、現時点におきまして具体的にこうだという方針はまだ決まっておらないわけでありまして、きょうからあしたにかけまして財政当局とも最後の詰めをいたしまして最終的な答えを得たいという段階である点は御理解をいただきたいと思います。
  36. 安井吉典

    ○安井委員 これ以上のお答えはきょうの段階では出ないのかもしれないから、さらにまた具体的なお話し合いで詰めていきたいと思いますが、少なくともビート価格について、奨励金がありますけれども、奨励金を基本価格の中に全部入れ込むというぐらいの作業、これぐらいはできないわけはないと思うのですが、どうですか。
  37. 渡邊文雄

    渡邊説明員 御案内のように、てん菜の奨励金が、価格本体とは別に、過去におきまして収益性の大幅な低下とかあるいは作付面積が激減したというようなことがございまして、四十九年以降臨時的に設けられておるのは御指摘のとおりでございます。  一方、最近におきますてん菜生産性等の動向を見ますと、単収あるいは労働生産性等もかなり上がっておりますし、面積につきましても五十二年産以降大幅に増加している。また、先ほど申し上げましたが、製品としてできますてん菜糖が急激に増産されまして、その砂糖の市価維持に大変苦慮したこともあるというようなことがございますので、奨励金を設けた時代と情勢はかなり変わっておるのではないかというふうに思うわけであります。別途、この奨励金につきましては、御指摘のように、二分の一が砂糖価格の中に具体化されておるわけでありますが、残額につきまして種々議論がございまして、本体価格の中に入れるか、あるいは砂糖の値段の中に何らかの形で入れるかという議論が前々からあることは私も十分承知をいたしております。そのことにつきましては、私も十分念頭に置いて現在も議論を続けている段階だということを御報告申し上げておきます。
  38. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにしても、この奨励金を入れてしまえというのは毎年の議論なのであります。また、これによって手取り価格が上がるということには別にならないわけです、現在でもあるものをただ入れてしまうだけですから。しかし、それでもいろいろな角度から一安心ということにもなるわけですよ。せめてこれだけはどんなことがあってもこのたびはぜひ実現をしてほしいと思います。大臣、どうですか。
  39. 渡邊文雄

    渡邊説明員 本体価格の中に入るのか、ビート価格の中に入るのか、砂糖の値段の中に入るのか、いろいろ議論もありますし、対応の仕方もあるわけでありますが、御指摘の点は私も念頭に置いてさらに努力をいたしたいというふうに考えております。
  40. 安井吉典

    ○安井委員 これで終わりますが、いずれにしても、農民の要求はあくまで、少なくも限界地の生産費を補償するくらいな価格にしてほしいということ、それはこれから価格を検討していただく原点だと思います。そのことを目標に御努力を願いたいと思います。  終わります。
  41. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、新盛辰雄君。
  42. 新盛辰雄

    ○新盛委員 私の質問時間は非常に短いので、特に畑作物価格決定が重要な段階に来ておりますので、南九州畑作物の問題で質問をしたいと思うのです。  冒頭に、大臣の見解をぜひ伺っておきたいのですが、御承知のように、火山灰、特殊な土壌にいままで歴史的な経過を経て努力をしてきておりますカンショ生産のあり方ですね、これは畑作基幹作物として特に重要視されているカンショでございます。これについて、巷間伝えられるところによると、横ばい状態であるし、価格を上げるわけにはいかぬ、あるいはまた場合によっては大蔵省の財政的危機の中で埋没してしまう、引き下げという話も出ているようであります。この価格決定について大臣としてはどういう御見解を持っておられるのか、まず聞かせていただきたい。
  43. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 五十七年度のカンショ生産者価格決定につきましては、パリティ指数基本にしながら、物価その他の経済事情を十分配慮しながら決定するわけでございますが、その際に、他の畑作目の価格とのバランスだとか、もちろん財政事情等をも配慮して総合的に決定したい、かように考えております。
  44. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この価格算定問題に入る前に、まず、カンショでん粉の過去三カ年の需給状況、五十七年産見込みについても、一応作付面積六万五千七百ヘクタールの中でこれからの取り扱いをお決めになるのですが、この需給状況はどうなっておりますか。甘でんはコーンスターチとの抱き合わせで全量を完全に消化しているというようなことも言われておるのでありますが、この点についてひとつ内容をお知らせいただきたい。
  45. 渡邊文雄

    渡邊説明員 でん粉需給事情でございますが、五十六年産国産の芋でん粉生産量は、御指摘のように、カンショでん粉が十一万一千トン、その前の年が十万二千トンでございますから、それに比べますと九千トン増ということになっております。それからバレイショでん粉が十九万七千トンで、その前の年の二十六万七千トンに比べますと、昨年水害等がございましたし、それから生食用にかなり回ったということもございまして、七万トンばかり減りまして、約三十万八千トンという合計数字になるわけであります。  これに対しまして、需要先でございますが、国産でん粉需要先は、固有用としましては、いま申しました三十万八千トンのうち十五万一千トンがバレイショでん粉として消化されるにすぎないわけでございまして、残りの十五万七千トン、これはカンショでん粉は全量、バレイショでん粉が四万六千トンでございますが、これにつきましては、関税割り当て制度の運用によりまして、無税のトウモロコシから製造されるコーンスターチとの抱き合わせ販売という形でその需要先を確保しておるわけであります。  その際、異性化糖の増産に伴うでん粉需要の増大というものはあるにいたしましても、五十六年産バレイショが不作で大幅に落ち込んだことから、五十六でん粉年度において政府所有バレイショでん粉を放出したわけでありまして、ことしさらに馬でんがかなり大幅に増産されるというようなことに相なれば、やはりでん粉需要先の確保にはかなりの苦労があるのではないかというふうに考えております。  五十七年産につきまして若干数字について申し上げますと、現在のところの私どもの推定としましては、甘でんが前年とほぼ同様の十万五千トン程度ではないかと思います。馬でんは、昨年に比べまして八、九万トンふえまして二十七万五千トン、大幅な増産に相なるわけでありまして、ただいま申しましたように、抱き合わせ販売による需要量も、異性化糖需要が一服しており、横ばい状態だと思いますので、でん粉全量の消化にはかなり努力が要るのではないかと私どもは心配をしておるわけであります。  以上でございます。
  46. 新盛辰雄

    ○新盛委員 カンショでん粉消費量というのは年々微増しているということなんですが、その消費の大勢の中では、異性化糖の伸びによる増も大きいわけです。この結果、政府の在庫も、五十六年度五万五千トン、これは全量放出をして、いま手持ち在庫としてはゼロ、こういうことになっていると思うのです。そうしたことから、カンショでん粉生産はこれからが期待できるのじゃないかと思うのですが、政府見通しとしてはどういうことになりますか。
  47. 渡邊文雄

    渡邊説明員 でん粉全体につきましては、御承知のように、数年前に二年続きで十数万トンのでん粉を買わざるを得なかったわけです。その在庫が、その後の異性化糖の伸びないし国産でん粉生産状況等によりまして徐々にはけてまいりました。特に、昨年北海道の馬でんが大幅に減産になったということもございまして、ついせんだってをもちまして在庫は全部売り終わったわけでございます。その点は御指摘のとおりであります。  反面、これから一年間を考えますと、先ほど申しましたように、北海道バレイショでん粉が前年より数万トン、恐らく七、八万トンふえると思います。その関係で、でん粉の全量消化は現時点においては私は大変心配をしているわけでありまして、そのような中では、カンショでん粉のこれ以上の増産というのは、現実問題としてなかなか期待し得ないというのが現実ではなかろうかと思っております。
  48. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これから期待できないということなんでしょうけれども、逆に生産者側の方から見れば、年々この作付面積も拡大をしてきていますね。ここ二、三年の間でも微増ではございますが、これから先伸びていく、そうした意味では明るい見通しができるのじゃないか。生産者にしてみれば、価格の問題は別にして、これからこうしたことの畑作振興の面でも役立つという理解をするのじゃないかと思うのです。その状況が、これからの問題として、パリティをもって生産費を十分に加味していただく、そうした面の励みになってくると思うのですが、どうなんですか。
  49. 渡邊文雄

    渡邊説明員 カンショ作付面積全体といたしましては、先ほども資料に基づきまして御報告をいたしましたように、ここ数年微増傾向にございます。このふえておりますのは、主として生食用でございまして、でん粉原料用のカンショといたしましては、私どもも、でん粉需要動向からいたしまして、でん原用カンショの作付、あるいはバレイショも同様でございますが、これにつきましては極力現状の範囲内にとどめるようにお願いを申し上げておる次第でございます。
  50. 新盛辰雄

    ○新盛委員 買い入れ基準価格の算定についていまから入りますが、加工経費の取り扱いについてです。  まず、でん粉基準価格の加工経費部分の過去三年間の経緯を見ましても、物価上昇等によって引き上げる部分というのは、これまで大変金額的には少ないんですけれども、反映をしてきているんじゃないか、そう思われるのでありますが、甘味資源作物の国内自給率向上を図るためにも、昭和五十七年度原料用のカンショ価格、これは生産者が意欲を持って再生産できるような価格が望ましい、これはもう系統団体からも強く要求が出されているところですし、仮にカンショの十アール当たりの家族労働報酬、これはもう大体水稲と同じような水準までに来ているようであります。こうしたことから見て、最近こうして上向きになっている、微増の傾向ではありますが、財政的に逼迫をしている理由だけでこの価格について抑えられていくということは、これは問題がありはしないか。仮に風袋込み一俵当たり三十七・五キロ、この価格生産費のカバー率としてどういうふうにいま推移しているのか。私どもの調べでは、五十三年度の九八・九%から五十五年度には九一・八%に生産費カバー率は落ち込んでいる、こう見ているのですが、そうした面から見て、五十四年から五十六年産原料用のカンショの一俵当たり五十七年度の評価がえ生産費として農林水産省で試算された面でも千八百八十円、こうなっておるのにかかわらず、取引指導価格は一千三百六十円、こういうことで非常に生産費が上回ってきておるという状況、これを一体どういうふうに見ておられるのか、お答えいただきたいと思うのです。
  51. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先生御案内のように、カンショ最低生産者価格と申しますか、基準価格のほかに、昨年であれば三百二十円という奨励金が別枠でついておるわけであります。したがいまして、農家手取りといたしましては、基準価格の千四十円に三百二十円を足しました千三百六十円というのが手取り価格でございまして、手取り価格の方で生産費比較いたしますと、従来の生産費を上回っておるということは確かに言えるわけであります。  ちなみに数字を申し上げますと、これは一俵当たりでございませんでトン当たりになっております。大変恐縮でございますが、トン当たりで言いますと、五十六年が生産費が三万三千六百円に対して三万六千二百六十七円ということになっております。五十五年であれば、三万三千九百七十三円に対しまして三万五千三百三十三円が指導価格農家手取り価格でございます。その前の年、その前の年も同様に、指導価格農家手取り価格水準で生産費比較しますれば^若干ではございますが生産費を上回っておるという結果に相なっております。
  52. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これは現実の問題として、加工経費などを含めるこれまでのパリティを含めて徐々には上げてきているけれども、この五十七年産についてはもはや横ばいだから、あるいは現実的にはそういう生産費の方が上回っているという状況になっているにかかわらず、ただ頭から抑え込んでしまう。これだけでは理屈が通らないと思うのですね。先ほどからやりとりを聞いておりますと、全力を挙げて現状を説明して大蔵省の理解を得たい、詰めをしたいと言われるが、これは今夜から明日決まるのでしょう。ただ感触でどうもむずかしいということだけではいけないのですね。現実の問題として実態はこうなっておりますよということなんですから、一体どうしてくれますか。上げてくれますか、農林省
  53. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先ほどから申し上げておりますように、通常の予算要求でございますと、予算要求額というものがありまして、それを通すか何割カットするかというような議論になるわけでありますが、価格は、財政当局の負担が関係するという意味におきまして、財政当局と協議をする形でやってきておるわけであります。昨日までの段階ではまだ資料の読み方あるいは議論の段階でございまして、本日から具体的に私どもの方も周囲の情勢を見ながら具体的にファイナルな議論に入るわけでございまして、まだいまのところ御指摘のように据え置きで農水省自体が決めているとか決めてないとかという段階ではないということは御理解いただきたいと思います。
  54. 新盛辰雄

    ○新盛委員 五十六年度で原料基準価格は一千四十円、そして業者が持つ二十円、国庫で負担されるのは三百円、現実問題として二・六%昨年は上げたのですね。ことしはパリティで見ても一・五三%、去年の例から見てどの程度になるだろうかと推測して計算はできるのですが、ただ、財政的な面で非常に抑えられる、こういう理屈をおっしゃっていますが、現実、国庫負担の個所が増大をしていく。当然、基準価格は上がっていかざるを得ないわけですから、その辺のところをどういうふうに見ておられるのか。また、業界の方の負担割合は、これまで大体五十五年以降二十九円、二十円となっていますが、さらにこれから金額的な面の負担はどういうふうに減少措置をとるのか増大措置をとるのか、この辺も明確にしていただきたいと思うのです。
  55. 渡邊文雄

    渡邊説明員 先生十分御承知だろうとは思いますが、農家手取りの中に、原料基準価格のほかに別途指導価格というものを四十九年以降行っておりまして、指導価格で原料代が農家に支払われるわけでありますが、その中ででん粉価格に吸収できるものとでき得ないものと二つに分けまして、そのでき得ない部分が財政負担ということに相なっておるわけであります。それが昨年で言いますと三百円あるわけです。一昨年も三百円でございますが、過去数年前までは八十円というような時期もあったわけでありますが、その後、農家手取りの確保を図る意味でその部分がだんだんふえてまいりまして、現在、三百円に上がっているわけであります。その結果、財政負担が五十年の六億円程度から現在三十三億円までふえてきておるわけでありまして、財政当局と議論する過程でも問題になっておるのは、この増加が現在のマイナスシーリングの中でいかがなものかということが議論の対象になっていることは事実でございます。
  56. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今度は内容に入りますが、具体的にこのでん粉工場の排水処理基準があり、これまで、五十三年から五十六年の間は政府の方で何らかの補助をしていたわけですね。ところが、一般排水基準の適用を受けることになってこれが省略をされて以降、各工場の排水処理経費というのは非常に増大をしてきているわけです。現実に、これまでのこの排水処理経費は三十三億、千百万俵の基準になるのだそうでありますが、総投資額が、二十五農協で三十工場、こういうことでこれは義務づけられてしまったものですから、この増加はきわめて従来にないものになっているわけです。ここのところが、今度の算定で、生産者の電力料金とか設備の償却とか金利とか、こういう問題等あわせて十分に実態を把握して適正価格決めるということになると思いますが、この点のいわゆる経費増加は製造コストにかぶってくるわけです。だから、このことについて、あなた方の方はどの程度のコストがかぶってくるかというのも見込んでおられると思いますが、これはどうなのですか。
  57. 渡邊文雄

    渡邊説明員 御指摘のように、昨年の六月から排水基準が適用になったわけであります。御案内のように、昭和四十六年から適用されるべきものを、五年、五年と二回にわたりまして期間を延ばしてきていただきまして、その間に政府としても若干の助成を行いまして排水が適正に行われるような設備投資をしていただいて、昨年の六月から適用になり、昨年産でん粉から工場が動いているというのが大部分の姿ではないかと思うわけであります。したがいまして、そういったでん粉の製品の買い入れ価格を算定する場合には、その加工経費の算定に当たりまして、極力そういった実態を反映したコストのアップを見込むというのは、これは当然だろうということで、実態調査等も行い、所要の物価修正等も行いながら適正に算定をしたわけでございます。  そんなことで、昨年も、初年度ではございましたが、比較的物価水準の落ちついているさなかではございましたが、カンショでん粉の製造経費につきましては一〇%以上、一〇・七%のアップをいたしたわけでありまして、排水基準の適用に伴う排水処理のためにかかり増しになる経費は十分に見込んだと私ども思っております。今年の価格決定当たりましても、その後設備が増強された分あるいは御指摘のような電気代その他のランニングコスト分につきましても、一部データのない部分もあるわけでありますが、理論的なものも含めまして団体からも強い御要望がございます。私ども、実態調査の結果等を踏まえまして、どの水準にこの排水経費を見るかあるいは電気代等を見るかということにつきましていま鋭意検討中であるわけでありますが、できるだけ客観的に実態を反映した適正な加工経費にするようにさらに努力をいたしたいと思っております。
  58. 新盛辰雄

    ○新盛委員 局長、その実態はもう把握されているわけでしょう。だから、加味するかどうかじゃなくて、加味していくんだということをここではっきり言ってくださいよ。
  59. 渡邊文雄

    渡邊説明員 一部未確定な要素があるというふうに私申しましたのは、細かい話になって恐縮でございますが、さらに臭気をなくすために、二回目の機械を通して、エアレ一ターというのですか、そういうものを動かすための、何時間動かすかというようなことが調査結果としてはないわけでありまして、一部そういう不確定なものをどういう理論的な要素で入れるかという点が残っているわけでございますが、御指摘の点は、私、十分念頭に置いておるつもりでございます。
  60. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それはそうでしょうが、時間がないから中身は言わないけれども、あるのですよ。だから、これはこれから価格決定される中で十分配慮してもらうということで前に進みますが、これだけは言っておきたいと思うのです。  農林水産省の方で実態調査をされた、その結果が、五十七年度カンショでん粉トン当たり加工費は今度は四万九千二百七十三円ですね。現行価格に対して一三九・六%の大幅なアップになっているのですよ。中でも、排水処理経費が一万三百三十五円、こういうことでございますから、でん粉工場経営者の非常な負担になっていることは事実ですね。だから、この点は現実の問題ですから、先ほど局長も言っておられますように、五十七年度産のカンショでん粉価格は、原料代、運賃、袋、通常加工費、排水処理経費、金利、保管料、副産物収入などの事実を明確に把握をして、もうしておられるとは思いますが、ぜひ加味していただいて、これからのカンショでん粉価格の問題もひとつ配慮願いたいと思います。  最後に、でん粉工場の悪臭防止でございますが、最近では経済効率の高い技術開発が相当進んでいるというふうに聞いております。関係団体からも強い要望があるわけでありますが、これについて今後の取り組み、方針を明らかにしていただきたいと思います。  実は、悪臭防止対策では最近の環境基準その他いろいろございまして、地域住民からの強い要求も出ているわけですね。わが県、鹿児島県ですが、昭和五十五年度で、県単の事業として、でん粉工場悪臭防止対策試験実施事業として事業費を二百万円、県の補助率が二分の一なんですが、ビニールで被覆をする、いわゆる覆ってにおいを防止するとか、あるいは悪臭防止実験のためにいろいろな手だてをやっているのですね。ところが、ビニールを買うにしてもなかなか高いのですよ。一平米当たり二千三百十円、この経費は実に大変なものなんですね。やはり非常に財政的に大変だから、これは本当は国の事業として、環境を含めた、あるいは地域住民の保護のためになされるべき性質のものである。だから、簡易低廉なコストの悪臭防止技術を、そういう意味では農林水産技術会議あたりは前向きに取り組んでいらっしゃるとは思うのですが、その点について今後の政府の方針、そしてまた現実の問題としてどういうふうに消化をしていくかということについてお答えをいただきたいと思うのです。
  61. 岸國平

    ○岸説明員 カンショでん粉工場の排水処理に伴います臭気問題が大変顕在化しておるということにつきましては、御指摘のとおりであるというふうに認識いたしておりまして、この防止のためには現在いろいろな手だてが講じられているわけでございますが、やはり将来的には現在とられている方法よりもさらに進んだ手だてを考えていかなければいけないというふうに考えております。  このために、私ども研究を担当している者といたしましても、この問題についての研究も進めておりまして、当面の臭気防止対策技術につきましては、地元の鹿児島県農業試験場におきまして、主に用水量の減量あるいは活性汚泥の活用、そういう面についての研究を進めておりまして、一部実用化されているところでございます。  一方、国の食品総合研究所におきましても、この問題に関連いたします基礎的な研究を鋭意進めておるところでございまして、特にこれはカンショだけではございませんが、でん粉処理の場合の排水の中のたん白を取り除くということが最も悪臭防止に役に立つという認識に立ちまして、そのたん白を除去する手段として、特に膜処理の技術を今後開発していかなければいけない。それを実用にしていくことが最もいい方法であろうということで、その点について鋭意基礎的な分野での試験研究を進めているところでございます。  また、この研究に関連いたしましては、国の研究者を鹿児島県の農業試験場に派遣いたしまして、指導助言をいたしましたり、また、鹿児島県から研究者の研修を受け入れるというようなことで、現に一緒になって技術開発に努めているところでございます。  今後とも、これらの試験研究につきましては、いままでの成果を踏まえまして、さらに一層効果的な技術の開発に努めてまいりたい、そのように考えております。
  62. 新盛辰雄

    ○新盛委員 もう時間が来ましたので、最後に、関税割り当て制度の延長は継続をされますか、それともどう考えていますか。それだけ一言。イエスかノーか。
  63. 渡邊文雄

    渡邊説明員 現在行っております関税割り当て制度がなければ国内産のでん粉の消化はできないわけでございますので、私ども、その実態を踏まえまして、今後ともその適正な運用に努めてまいるつもりでございます。
  64. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうもありがとうございました。
  65. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、木下敬之助君。
  66. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、まず最初に、輸入自由化、枠拡大についてお聞きいたしたいと思います。  近々に日米農産物交渉が本格化されると聞いておるのですが、この問題に対して政府のお考えをお聞きいたしたいと思います。  私は、日米交渉の基本的視点は日米双方の農業の発展に置かなければならないと考えておるのですが、仮に農産物を自由化したとしても、競争力の面で、牛肉はオーストラリア、オレンジジュースはブラジル、ピーナッツは中国、トマト加工品は台湾、そういったところが優位にあって、決して米国農業に利益をもたらすわけではないと考えますし、どこの国でも農業の国境保護措置は講じていると思うのです。こういった事情を米国側によく説得すべきであると思うのですが、政府の対米交渉に関する基本姿勢をお聞きいたしたいと思います。
  67. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 木下委員承知のように、九月三十日に日米定期協議が行われましたし、十月一日には米通商代表部との協議も行われたわけでございますが、その会議を通じて見ますと、農産物の自由化の要請がアメリカから非常に強いという現実の中で、二十日からハワイでの牛肉、オレンジを含めての農産物交渉が始められるわけでございます。  私たちとしましては、これまでもとってまいりました態度を、さらに積極的に粘り強く交渉を進めてまいりたいと思っておるのでございます。と申し上げますのは、牛肉、オレンジを含めて残存輸入制限二十二品目は、御承知のようにわが国の基幹をなす品目でもあり、地域の重要品目でもございますので、したがいまして、いま直ちにこれは自由化するわけにまいらない、こう思いますので、農林水産省を窓口として、責任を持ってこの自由化を阻止するための交渉を進めてまいりたいと思うのでございます。  したがいまして、わが国の農業実態、いまお話しした実態、それからただいま御指摘のありましたようないわゆる市場開放のわれわれの態度等をも説明をする、さらには、開放したからといって必ずしもアメリカの農業に直接利益をもたらすものでもないということ、あるいはまた、日本の農産物の需要というものは必ずしもいま上昇しているのではない、むしろ停滞ぎみにあるのだというような状況等をよく説明をして理解を得よう。アメリカはどうも私たち日本農業実態あるいは市場開放の状況あるいはその他のただいま御指摘になった状況等を余り理解をしていない面がまだまだあるようでございますので、そういう点は親切に丁寧に積極的に説明をし、理解を得て、自由化に手を染めないような対策を進めてまいりたい、かように考えております。
  68. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうふうに考えたときに、米国のいまの真意みたいなものがどういうところにあるのか、余りはっきりしない面もあるのです。ある意味では選挙のためにそういったゼスチュアが必要ではなかったかとか、そういった声も聞かれますけれども、私は、米国というのは非常に合理的な国民の国だというふうに考えておりますので、日本の実情、情に訴えてどうこうというのではなく、はっきりと合理的に、日本はこうこうこういう政策のもとにいまできないのだという明確な方針で臨んでいただきたい、こういうふうに思っております。  米国の輸出圧力の最大の背景といったものは、日本の貿易収支の黒字減らしにあるというふうにはちょっと考えられない。二十二品目すべて自由化したところで数億ドル程度でございますから。私は、米国農業の不振が一番の背景であろうというふうに考えております。金利、資材の高騰に加えて、いま豊作でかえって市況の低迷が重なっているのではないか。いま三〇年代以来の不振という、こういう米国農業の不振を打開するために日本側が何をなし得るか、こういったことを考えていかなければならないのではないかと思います。  その一つ、二つを考えてみたのですが、発展途上国への米国産農産物の援助拡大、こういったことや、国際的食糧事情悪化に対するために国際的備蓄機構の創設等の方策を強力に推進することができないか、こういうふうに思うのですが、政府はどういうふうにお考えでしょうか。
  69. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 発展途上国への経済協力はこれまでも進めておるのでございますので、その中にいわゆる余剰農産物の扱いというものは今後十分考えられると思います。  もう一つは、やはり国際機構としていわゆる食糧の備蓄機構をつくるということは、私は非常に理想的な物の考え方だと思います。現にOECD等においても、世界の食糧の危機を打開するためには、市場メカニズムではこれは処理できないのだ、したがいまして、何らかの国際的な機関が必要であろうということが言われておりますので、そういう意味では備蓄の機関というものは必要であろうと思いますけれども、現在の国際経済状況ではなかなかむずかしい状況にあるということでございますので、私たちも機会あるごとにこの点は主張して、その実現を期すように努力をしなければならないと思いますが、なかなかむずかしい問題である、こう思います。
  70. 木下敬之助

    ○木下委員 その備蓄機構のむずかしさについては、相当長い目で見なければできないということは私も理解しておりますが、最初に申し上げました米国産農産物を発展途上国の経済援助に使う、こういった問題は大臣から前向きな御答弁をいまいただきましたけれども、早速近々の会議の中に具体的にそんなものが入るわけですか。
  71. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 日本が食糧援助規約に基づいて実施しております食糧援助の中で、五十六年度実績で見ますと、全体として輸送費を除いた本体分で百十五億ほどの食糧援助を行ったわけでございます。日本米が主力でございますが、第三国産の農産物も使用いたしまして、そのうち米国産の小麦を五十六年度で十億円ほど充当いたしました。五十七年度におきましては、これを三倍にふやして、三十億円は米国産の小麦を充当するということを計画いたしておりまして、その意向はすでに米側に伝えてございます。
  72. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、この問題の最後に、確認の意味もありまして、日本の輸入自由化はしない、枠の拡大もしない、こういうのは、経済的安全保障の観点から、わが国の農業が国際競争に耐えるようになるまでの間はしないのだ、こういった点を明確にするべきじゃないかと思うのですが、どうお考えですか。
  73. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 お話しのとおりでございまして、私たちは国際競争に対応できる日本農業の確立のためにいま努力をいたしておるわけでございまして、御承知のように、過般農政審から報告書が出されました。その報告書は、中核農家中心として経営規模を拡大するとか、基盤整備をするとか、技術開発をして、そして少なくともEC並み農産物価格を維持できるような農業をつくりなさい、そのためには生産性を思い切って向上しなければいけませんよという御報告でございますので、それを基本としながら、対外競争に対応できるような農業をつくりたい、かように考えているわけでございまして、これが実現するまでは、やはり日本農業の維持、振興のために、私たちはあくまでも自由化を阻止していかなければならない、こういう考えでおります。
  74. 木下敬之助

    ○木下委員 対米交渉に臨む御決意をお聞きいたしまして、安心いたしました。ありがとうございます。  それでは、畑作物価格等について御質問をいたしたいと思います。  食糧の総合的自給率の向上を農政基本目標に置いて、中でも大豆などの戦略作物が重視されてきていると思いますが、価格支持政策等において作物間のアンバランスが是正されていない、こういうふうに考えるのですが、財政事情が厳しいときであるからこそ、なおさら大豆などに重点を置いた価格支持政策が必要なのではないか、こう思うのですが、どうお考えでしょうか。
  75. 角道謙一

    角道説明員 お答え申し上げます。  農産物の価格政策につきましては、一昨年、農政審議会から「八〇年代の農政基本方向」におきまして、農産物価格政策の方向が示されております。これによりますと、農産物価格の過度の変動の防止、あるいは農産物価格の持つ需給調整機能を重視するとか、あるいは所得確保を図るという場合にも中核農家に焦点を合わせていくということを長期的な目標にするとか、また生産性向上の成果をできるだけ消費者に及ぼすとか、あるいは内外価格差に配慮するということを旨として運用しろということを言われておりまして、私どもはこういう方向価格政策を運用したいと考えております。  いま具体的に畑作物のお話があったわけでございますが、現在の日本人の食糧摂取といいますのは、大体最近の供給ベースで一日一人当たり二千五百カロリー、これが今後も大体この水準で続いていくだろうというように考えられますと、消費量としてはそうふえない。また、今後の日本経済成長を見てまいりましても、従来の高度成長から安定成長にかわっていくという意味で、消費支出につきましてもそう大きな伸びは期待できないという状況から見ますと、今後、農産物価格に高い上昇率を期待するということは非常に無理だと考えております。その意味で、現在、畑作物、特に大豆なんかにつきましても、外国との格差も非常に大きいというような点から見ますと、いま御指摘畑作物につきましては、むしろ今後の構造政策あるいは生産政策というものを通じて振興していくのが妥当ではないかというように考えております。  具体的な畑作物価格決定当たりましては、畑作物全般の価格のバランスであるとか、また財政事情とか、そういう問題につきましても考慮しながら適切に決定してまいりたいというように考えております。
  76. 木下敬之助

    ○木下委員 その構造改善等についてはまた後ほど触れますけれども、特に大豆、これは日本人の食生活に本当にこれほど密接なものはないと思います。また、そういった意味で、戦略物資とかいろいろ言う以前に、食糧安全保障とかそういった目で眺めたときに、大豆日本人との大変深い関係というものを十分認識の上、価格支持政策においてもその点を重視した政策をとっていただきたいと思います。何しろ方針を明確にして、これをつくれば将来ともやっていける、こういった確信あるものをつくりたいというのが農民の要求だと思いますので、相当長期的なはっきりした方針を持ってやっていただきたいと思います。  畑作物価格は、パリティ指数及び生産性の向上その他の経済事情をしんしゃくして決定することになっておるようですが、五十七年度のパリティ指数は一・五三%アップ、このように認識しておりますが、生産性向上による修正は何%と見込んでおるのでしょうか。
  77. 渡邊文雄

    渡邊説明員 今回決めたいと思っております畑作物関係価格につきましては、毎回申しておりますように、パリティ指数基準としながら、物価その他の経済事情あるいは他の畑作物関係等を見ながら決めてまいりたいと思っているわけでございます。  御指摘の、パリティは一・五三%上がっているわけでありますが、生産性向上云々というような場合にどれくらいかということでございますが、今回の価格決定につきましては、他の作物の関連とか生産性向上の度合いを現在慎重に検討しておる段階でございまして、まだどれだけどうするということを決めておるわけではございません。御指摘の、もし仮に生産性向上分を何か調整するとしましても、具体的な数字に至るまで私どもの考えが進んでおるわけではございませんので、御容赦をいただきたいと思います。
  78. 木下敬之助

    ○木下委員 現状はそういうことでしょうけれども、生産性向上による修正をどのくらいにするのかというのは、本来ならば生産性の向上が本当にどれだけあったのかという純粋な数字の上の論議で、それを踏まえてそのほかのしんしゃくすべきものはまたほかの事情で入れなければならない。それが一緒になって、ごちゃまぜになって最終的に価格に合わせたような修正をされるのじゃないか、そういう感じを持っている方が多いのですね。そういった意味で、いまの農家政府の政策やいろいろなものに対する不信の最たるものは、本当に公正な形で一つずつ筋を通しながら詰めていっているような感じを受けない、だから何を言ってもどうしたってこういうふうにしかならぬのだ、そういう感じ農家の方が持ってきているということを私ども実際に接触して実感するのです。私どもでさえ、この席でもこの程度のところまでしか話し合いができない中で、一般農家の方がその辺に不信を持ったとしてもあたりまえでございますから、どういう形で自分たちのつくっているものの価格決定されているのだということがわかるようにやっていただきたい、かように思います。  次に、昭和六十五年の農作物長期見通しというのに、大豆作付面積二十一万ヘクタール、単収二百二キロ、生産量四十二万トンとあるようですが、五十七年度の予想は、主産県では十一万ヘクタール、単収百五十キロ、生産量十七万トン、全体の推定で十五万ヘクタールで二十一万トンぐらい、こう聞いております。これは大変な伸びを期待しておるわけで、七年間ですか、そのくらいで六十五年見通しを達成するには、この計画を裏づける財政、生産対策が必要であると考えます。政府は、適地適作の地域分担方式を確立する考えがあるのでしょうか。
  79. 小島和義

    小島説明員 大豆生産見込みにつきましては、将来、六十五年の食品用大豆の半分以上を自給するというふうな想定に立ちまして、いま御指摘のような生産見通しを立てておるわけでございます。現在までのところ、単収の伸びはきわめて遅々たるものでございますけれども、多少上向きの傾向を示しておりますし、現に、この転作大豆中心といたしました一部の県におきましてはすでに二百キロ水準に到達しておるという県も出てきております。北海道は御承知のように本年でも百九十六キロというようなことで、二百キロ台に迫っておるわけでございますので、こういう見通しが達成できないということはないというふうに考えております。作付面積につきましては、今後の転作はどうなるかという問題も絡んでまいりますので、その辺によって全体の収量は決まってぐるだろうと思っております。  それから、地域分担方式でございますけれども、農業におきましてはいかなる作物であれ適地適作ということが基本でございますが、全国的にそれをどのように分担関係を明らかにするかということになりますと、いろいろむずかしい問題が出てまいります。過去におきましても、昭和四十四年、五十二年におきまして、それぞれ地域分担の指標を農林省発表したことがございますが、これは大体主要農業生産地域につきまして作物別の面積を配分をするというかっこうのガイドラインであったわけでございます。そういうものもそれとして意味はあるわけでございますけれども、単に作物別の面積を地域別に配分をするというだけでは、そこで描かれますところの実際の農業像というものが立体感をもって浮かんでこないという問題もございまして、私どもの今後の検討課題といたしましては、主要な農業生産地域別に作物の構成がどういうことになっていくのか、そこで営まれるところの農業経営経営像と申しますか、農業構造と申しますか、そういうものがどういうものとして描けるのかということをあわせて考えてみたらいいんではないか、そういうことで地方農政局に作業をお願いしている過程にあるわけでございます。
  80. 木下敬之助

    ○木下委員 そういったいろんな点の財政的裏づけというのは、どういうふうに考えておりますか。
  81. 小島和義

    小島説明員 作物関係生産予算と申しますか、作物生産関係あります予算につきましては、本年、新地域農業生産総合振興対策ということで、従来縦割りに実施されておりましたいろいろな作物関係予算を統合メニュー化いたしまして一本化を図っておるわけでございます。その中におきまして、大豆関係につきましては、麦、大豆生産総合振興対策ということで、本年の場合で申しますと合わせて三百億ぐらいの予算を計上いたしておるわけでございまして、大豆の新しい生産技術の普及確立のためにこれらの予算が十分活用されるようになっておるわけでございます。
  82. 木下敬之助

    ○木下委員 長期展望のある、一貫性のある農政をお願いいたしたいと思います。  大豆生産拡大には、優良品種の研究開発、栽培技術の改良普及など技術革新が課題であると考えますが、現在の試験研究体制において、大豆についてのスタッフ、予算はどれくらい確保されているのか、現状と今後の見通しについてお尋ねいたしたい。
  83. 岸國平

    ○岸説明員 現在、大豆生産拡大を図るということは非常に農政上の重要な課題であるということはもちろんでございまして、それを図っていく上におきまして、品種の改良とかあるいは安定多収技術の確立というのが非常に重要であるというふうに認識いたしておりまして、現在、鋭意その研究に取り組んでおるところでございまして、品種改良の試験につきましては、北海道、東北、九州の各地域農業試験場、それから国が委託をいたしまして北海道、長野の指定試験、そういったところで新品種の開発に取り組んでおります。  それからまた、栽培技術の開発あるいは収穫調整技術の開発、そういった研究につきましては、いろんな形でプロジェクト研究を組んでおりまして、これも現在進行しているところでございます。  こういった研究に関しまして、五十七年度現在で研究者数あるいは予算がどうなっているかということでございますが、研究者数につきましては、国が直接のものと、それから国が委託をいたしまして指定試験を行っておりますものと、両方合わせまして、大豆研究に直接専門的に従事している研究者数は三十八名、補助金を含めまして直接的な研究費は約三億円というところでございますが、ただ、大豆の研究につきましては、このほかに、土壌、肥料の研究でありますとか、あるいは大豆の場合に特に重要な害虫の防除の研究でありますとか、そういったところに直接間接関連をいたしております研究者数はこのまた二倍、あるいは数え方によっては数倍にもなるわけでございまして、予算につきましても、三億円と申しましたけれども、そういった間接関連のものまで含めますとかなりのものになっているのが現状でございます。  大豆の研究は、先ほどの御指摘にもございましたように、今後とも大変重要だと考えておりますので、研究スタッフの面でもまた予算の面でも今後とも努力を続けていきたい、そういうふうに考えております。
  84. 木下敬之助

    ○木下委員 じみなようで大変効果の大きい問題だと思っております。特に財政事情の厳しい中で、こういったところには重点的に力を注いでいただきたいと思います。  時間もありませんので、あと一つ、そういった畑作物振興のかぎの一つがその研究開発体制の整備であると思いますが、その一つの方策として、民間の研究開発能力を活用するという見地から、通産省ではたしか民間の研究開発に補助金を出していると思いますけれども、民間の研究開発に補助金を交付するということを検討してはどうかと思うのです。
  85. 岸國平

    ○岸説明員 ただいま御指摘の民間の研究開発能力の活用という点でございますが、御案内のように、農業におきましては、研究開発といいましても、ほかの工業分野の他産業と異なりまして、農業を実際に営んでおります農家の場合の研究開発能力というのは非常に限られておるというようなことから、原則的には国あるいは県の研究機関で主に取り組んでおるというのが現状でございます。  ただ、御指摘の民間の研究開発能力を活用するという点につきましては、当然これは大変重要な問題だと考えておりますので、現在もできる限りの努力はいたしておりますけれども、今後ともその面について検討し努力をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  86. 木下敬之助

    ○木下委員 技術研究というのは、品種の改良や、それからほかにも、でん粉工場排水処理施設等で悪臭があるとか、省エネルギー型でやるんだとか、また、別にはシスト線虫の蔓延を防ぐための防除問題とか、いろんなことがありますので、どうか十分な技術革新を目指してやっていただきたいと思います。そして、先ほどの問題で、やっぱり民間に補助金を出すという姿勢はぜひ持っていただきたいと思います。  時間が参りましたので、総合的自給率の向上というこの基本に立った明確な長期展望を持った価格支持政策と技術開発政策を望んで、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  87. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、藤田スミ君。
  88. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私でもう質問が終わりますので、よろしくお願いいたします。  最初に、五十七年度産のこの畑作物価格問題についてお伺いをしたいわけです。  先ほどからのお話を聞いておりましても、私は端的にお尋ねしたいなと思うのですが、大臣は、価格政策の持つ意味は大変重要だけれども、長期展望に立っての構造政策にも配慮して、そこに投資をしていくことで腰の強い農業を育成していきたい、こういうことをおっしゃいましたね。これは、端的に言えば、だから価格を据え置くという、そういうことなんでしょうか。  それから、一部の報道でも、政府は現在の財政事情や製品の過剰などを理由にして抑制する方針であるというふうに伝えられておりますけれども、端的に言ってどうなんでしょう。
  89. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農業振興を図るためには、価格政策の重要性というのは、これはこれまでもそういう意味でずっととってきているわけでございます。  しかし、一方、転換期を迎えている日本農業に対して、やはり構造的な面も十分配慮していかなければ新しい農業が確立できないのじゃないだろうかということなんですね。  たとえば、世界全体の農業は、いまその国の気候風土に合った作目を研究開発して、それに投資して新しい農業をつくろうとしているわけでございまして、アメリカでいいますと、アメリカはトウモロコシあるいは大豆等が非常にアメリカの気候風土に合うんですね。したがいまして、トウモロコシの研究開発の結果、いま十アール当たり七百九十キロ、トウモロコシが生産される、こう言われていますね。これは世界一でございます。そういうように、農業もいわゆる先端技術産業並みの研究開発投資をすることによって、やはり農業の新しい道が開かれると思うんですよ。  したがいまして、私たちもやはり日本の気候風土に合う作物は何なのか、もちろんそれはお米であり、麦でございますね。その次はやはり大豆等じゃないだろうかと私考えているわけでございまして、いま木下委員から大豆に対するいろいろな質問がございましたが、私たちとしてはただいまお答えしたような研究開発を進めているわけでございますけれども、やはり日本の一番気候風土に合ったものを研究開発して、それに思い切った投資をするということによって日本農業の新しい姿をつくり上げようということもこの際思い切って考えていかなければならない時代に入っているんじゃないだろうかということで、いわゆる構造政策の問題をも取り上げているということでございますので、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  90. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 現状、私はそういう今後の農業の発展のためにも一番大事な問題は、やっぱり生産意欲、これが一番大事な問題だと思うのです。そこから創意も出てくるでしょう。  しかし、現実にこの畑作物価格、たとえばサトウキビの問題ですね。私はこの前の委員会でもこの問題に触れていますけれども、沖繩県のサトウキビの価格、この生産費が五十六年で二万三千七百二十七円、それに対して手取り額は二万一千四百十円、つまりマイナス二千三百十七円というのがトン当たりいわば損をするという形になっているわけです。これではなかなか生産意欲というものが出てこないわけですね。大臣は、先ほど、あわせて日本農業は将来輸出産業として発展させていきたいんだと言われましたけれども、現実はもう国内の自給率でさえ、砂糖にしてもでん粉にしても大豆にしてもいずれも低いわけですから、まずそこから引き上げていくとしたら、私は少なくともいまこういう過剰の問題などは価格抑制の理由にもならないし、また、その自給率を本当に向上させていくというのなら、やっぱり増産意欲の出る価格決め方、そこでは、本当に譲れない話だと思いますが、少なくともパリティ価格を最低にして、それ以上の価格の引き上げにいま努力を示されないと、幾らいろいろ将来のことですばらしい構想を持って夢を打ち出しても、なかなかそれに現実には皆さん乗ってきにくいということになるんじゃなかろうかというふうに思うわけです。  そういう点では、現状を踏まえて価格決定をしていただきたい。大臣の本当のお気持ちはどうなんですか。そこのところだけ聞かせていただきたいと思います。
  91. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私は、最近機会を見ては各地の農業状況を見て歩いているのですけれども、農家の方々と接触しますと、もう農業はだめなんだ、これ以上やってもだめなんだという人が非常に多いんですね。意欲的にやろう、この産業をもっとすばらしいものにしようという、活力のある農業を目指して努力している人というのは非常に少ないんですよ。しかし、一部では非常にすばらしい生産性を上げている方がございます。  この間、岡山で国定という人にお会いしました。この人は、お米の生産性を非常に上げている。生産コストの安い米をどうつくるかということ。それから竹本さんという人、これは石川県の方です。この方も、お米の生産コストをどこまで下げることができるかということを考えながらいわゆる農業を営んでおります。  また、岡山に大豆生産している方がございまして、この方も大豆に対する非常な取り組み方で生産性を上げているんです。いま局長から、全国で十アール当たり二百キログラムとるのが目標だと言いましたが、その方は四百キログラムをもうすでに生産しておる。そういう方もおられるわけですよ。  ですから、そういう方のいろんな、それは点でございますから、それを線にして、面にして、新しい農業をつくるということがわれわれの目標なんです。しかし、現状でしからばそれにすぐ到達するのかといえば、なかなかそうはまいりませんので、日本のいまの置かれている農業の制約を排除するためには、やはり価格政策というものを維持していかなければならない、尊重していかなければならないというこの考え方は変わりはないわけでございますけれども、それだけではこれからの新しい農業は私は望めないのじゃないだろうかということを申し上げておるのでございます。したがいまして、非常に意欲のない方々にはやはり大きい望みを与えて、日本農業は単に単純労働産業じゃなくして頭脳産業なんだ、したがいまして、頭脳を使って優秀な人に農業に従事していただいて、若いエネルギーを入れて、そしていわゆる輸出産業にまで発展させる努力をしていこうじゃないかということをみんなで話し合い、みんなでそのことを考えていきますならば、魅力ある農業になってくる。そのことによっていわゆる中核農家ができ、その中核農家中心にして経営規模が拡大される。そして圃場が整備される。そして技術革新が行われていく、私はこう考えますのでそういうことを申し上げているのでございますので、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  92. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、大方の農民の方が現実の生活に意欲をなくしているというこの責任は、大臣、もっと痛みとして受けとめていただきたい。自民党の農業政策がそういうふうに農民の意欲を失わせているんだど私は言いたいわけです。  もう一つは、大きな望みを農民に示されることに私は反対するわけではありません。大いに希望の持てる農業を示すことは大事です。しかし、そのためには、そのはしごを外して星だけ見せるようなやり方じゃなしに、現実、この価格問題でも、これで食っていけるという安心、そこから一つずつはしごを登ってその望みに到達していくんじゃないでしょうか。  そのことを申し上げて、私は、重ねて、今回のこの価格決定については、少なくともパリティ価格を最低の基準にして、それ以上に積極的に農民の要求にこたえることを要望して、次に移りたいと思うのです。  農民の不安の問題なんですが、せんだって、私のところに北海道畑作農家の代表の皆さんがお見えになりました。北海道農民連盟の代表の皆さんです。その皆さんが訴えられることには、畑作農業の将来に大きな不安を持っているというのです。何に一番持っているか。それは畑作物の輸入拡大にあるのだということを訴えておられました。  そこで、この問題についてお伺いをしたいわけです。  五月の日米農産物交渉で合意に達しなかった六品目の中の一つ雑豆については、北海道は小豆が八割、インゲンマメが九割、そこまで国内生産のシェアを占めているわけですが、畑作地帯の輪作体系の確立という点では、豆類は麦類、バレイショてん菜と合わせて四本柱の一つになっているわけです。四つのバランスという点で、かつては麦、特に小麦増産を進めてきたわけですが、近年は豆類の方が減少してきた。だから、五十七年産については、北海道庁も生産目標を決めて豆類の増産を指導されているわけです。十分御承知のことだと思いますが、その指導の効果もあって、五十七年産畑作の麦類、バレイショてん菜、豆類の作付面積のシェアは、麦類では二六%、バレイショでは二六・六%、てん菜では二四・四%、豆類では二二・九%というふうに大体バランスもとれてきたわけです。  ところで、こういう状態のもとで雑豆について自由化の問題がいままた出てきているわけなんですけれども、自由化はもちろんですが、枠の拡大についても行うべきではない、これは畑作農家全体の切実な要求でもございます。そこで、私はこの御答弁は農蚕園芸局長にお願いをしたいわけです。いかがでしょうか。
  93. 小島和義

    小島説明員 現在ある種の農産物、たとえばオレンジのようなものにつきましては、東京ラウンドの合意に基づきまして昭和五十五年から五十八年までの枠組みがなされておりまして、毎年枠が多少ずつ増加する、こういう約束がございます。  ただ、雑豆につきましては、御承知のように毎年の作柄変動が非常に著しいものでございまして、昨年、一昨年のように国内が大変不作でございまして、物価鎮静という観点から大量な輸入割り当てをいたしましたときもございますれば、本年のように、北海道面積の上でも単収の上でも非常に作柄がよろしゅうございまして、そういう状況を踏まえて輸入数量を縮小的に運用しなければならない、こういう時期もございます。したがいまして、輸入割り当て量の拡大というものを国内の需給というものと無関係に約束をするということのむずかしい物資でございます。そういうことを十分踏まえまして、今後の輸入割り当て制度の運用に当たるつもりでございます。
  94. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 次に、二十日からハワイで牛肉、オレンジの交渉が行われるわけです。先ほども同様の質問が出ておりましたけれども、この席で六品目の問題についても協議をされることになっているわけですが、大臣は、六日の金沢市での記者会見でも、先ほどの御答弁と同じように、貿易の自由化を進めないという従来の態度は守っていくけれども、残存品目については、とりわけ日本農業の基幹であって、地方の主要品目でもあるので自由化は阻止する、こういうふうに述べられたということが報道されております。先ほども自由化に手を染めないような対応をしていきたいということをはっきりおっしゃられました。  佐野局長の方も、六月二十二日の委員会の質問で、私に、終始一貫、即刻はもとより、段階的であろうとめどであろうと、自由化という話は一切論外であるという立場で対処してまいりたい、十月以降もそういう態度で交渉に当たりたいと考えております、こういう御答弁であったわけです。  そこで、私は確認をしておきたいわけです。こういう態度に変わりはないのか。それは、オレンジや牛肉あるいは雑豆などについてはもちろんなんですが、オレンジの季節自由化についても同様の態度を将来においても絶対に守っていくということでいいのかどうか、私は確認をしておきたいと思うのです。
  95. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 二十日から行われます牛肉、オレンジを含めての農産物日米交渉に当たっては、ただいま御指摘のありましたような態度で私たちは臨みたい、かように考えております。
  96. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは、枠拡大についてお伺いをしたいわけです。  佐野局長は、九月二十八日、日米農産物協議への出発に先立っての記者会見で、六品目の輸入枠拡大についてはいまのところ日本側が譲歩する考えはないというふうに述べて向こうへいらっしゃいましたね。そうでした。それで今度帰ってこられたときの記者会見では、大きな苦痛なく譲れるものは譲るべきだ、こういうふうに伝えられているわけです。  この点について私は大きな不安を感ずるわけなんですが、考えてみますと、アメリカの方は、当委員会でもしばしば指摘されていた点なんですが、みずからは保護貿易主義を非常に強めておりまして、十三のウエーバー品目はもとよりですが、ことしに入って砂糖も大幅に輸入枠を削減するといったようなことや、それからオーストラリアからの牛肉の輸入増加に対して、食肉輸入法に基づいてこの輸入制限措置の検討をしていくのだというようなことを言っておるわけで、大変身勝手なことだというふうに考えます。  そこで、私は、枠の拡大についても、政府がこれまでとってきたように、アメリカの方から圧力を加えられれば譲歩していく、こういうやり方はもうやめなければいけない、その点では六品目、牛肉、オレンジについても枠の拡大はしないという態度を貫いていただきたいというふうに考えるわけですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  97. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 枠の拡大の問題については、第一弾対策において、あるいはまた第二弾対策において、それぞれ対策を進めてまいったわけでございますが、今後、枠の拡大についてもこれ以上拡大する余地は非常に少のうございますので、非常にむずかしい問題でございますので、枠の拡大についても極力現状維持のために努力をしたい、かように考えています。
  98. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 きょうは時間がありませんのでこれで終わりますが、極力ということではなしに、日本農業のために絶対にその態度を堅持して、がんばっていっていただきたい。お疲れでしょうが、佐野局長、よろしくお願いをいたします。  その次に、砂糖価格安定等に関する法律が改正されて以降、輸入糖は三月の十万六千トンから四月の三十万二千トン、五、六月でもほぼ同じような数字になっておりますが、いずれにしても非常に急増いたしました。  こうした状況の中で、業界間の過当競争が激化して、そういうしわ寄せがずっと、そこで働く従業員の解雇、こういった問題になって出てきているわけなんです。この問題、こうした最近の現状について農水省はどういうふうに把握をしていらっしゃるかという点を、一点お聞きをしたいと思います。
  99. 渡邊文雄

    渡邊説明員 ことしの春に糖価安定法の一部を改正する際にも御指摘があり、御答弁申し上げたわけでございますが、五十二年に特例法をつくったときも同様でありましたように、法律制度が変わります際に駆け込み輸入というものがありまして、特例法をつくった際も法律の具体的な効果が発生するまでの間に駆け込み輸入のために数カ月を費やした記憶がございます。今回もそういったことがないようにできるだけ指導はいたしたいと思いますが、十分十全を期すことはなかなか至難のわざでございますが、努力をいたしますという御答弁を申し上げた次第でございます。  御指摘のように、四、五、六にかけまして、特に法律が施行されるまでの間の十二、三日の間の、駆け込み輸入と言っていいかどうかは別といたしまして、輸入が急増したことは御指摘のとおりでございまして、そういったことで四月−六月期の三カ月間で通常の年の半年分近いものを売り戻してしまったということに相なったわけでございます。その後三カ月間はその過剰在庫を前提にした溶糖量を守るように強く指導しておりまして、業界もそれなりの対応はしておるわけでございますが、価格水準はごく最近かなり上向いてきたとはいうものの、依然として低迷状態にあることは御承知のとおりであります。  そのことと、最近新聞等でも話題になっておりますいわゆるリファイナーの一部におきます構造改善の動きというものは、私は直接関係があるというふうには考えておりません。  たとえば明治製糖の場合も神戸精糖の場合もあるいは大日本製糖の場合も、特例法期間中から構想が練られ、行われたものの延長線上にあるものと私は受けとめておるわけでございます。それは、五十二年に特例法をつくりますときに、この委員会でも構造改善に十分取り組むようにという御指摘があったわけでございますし、現実には特例法期間中はなかなかその具体的な構造改善の進捗はなかったわけでありますが、各経営ごとにそれなりの準備を進め、いま私が申し上げましたような数社につきましては、その動きが昨年の特例法の最終段階から、昨年の秋ごろから徐々に具体化してきた、その一連の動きではないかと私は考えておるわけでございます。
  100. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 北九州の戸畑区にあります明治製糖の戸畑工場の閉鎖問題というのは、もう内容は十分御承知のことだと思います。わが党の三浦議員と小沢議員が農水省に対してその指導を求めていることも御承知のことだと思いますが、その後一体どういうふうな対応をしていただいているのか、これが一点です。  時間がありませんのでまとめますが、この十月六日に会社側は全労働者に希望退職募集の書類を郵送するということになりました。そして、労働者側は、明治製糖の再建を求めて、解雇は許さないという要求を掲げて交渉しているわけです。  ところで、問題は、明治製糖の社長は一年余り前に三菱商事の方からかわってこられて、そして三菱商事の方からかわってこられた社長あるいは二、三の役員の方が事実上実権を持ってこの明治製糖を采配しているわけですね。したがって、組合の方も当然三菱商事と話し合いをしたいといったようなことも申し入れているのですが、なかなか円滑に話し合いが進まないという問題が出てきております。こういう問題についてどう指導していただけるのか。  三つ目は、こういう工場閉鎖の問題が起こりますと、当然のことですが、それが単にそこの企業の労働者だけではなしに、関連企業、とりわけ陸送など、そういう面でほとんどそこの企業の人と同じように貢献してきたような人たちが路頭にほうり出されていくわけです。こういう問題についても、深刻な労使問題が出てきております。非常に大きな影響がいま次々に出てきております。特に申し入れをしておりますので、明治製糖の戸畑工場の閉鎖の問題についてどういうふうに指導をしておられるのか、お伺いをしておきたいわけです。
  101. 渡邊文雄

    渡邊説明員 最近におきます砂糖需要動向は、先生も十分御承知だと思います。異性化糖の大増産、国民の甘味離れ等によりまして、一人当たり砂糖消費は激減をいたしております。その関係で、現在、各精製糖メーカーの操業度はおしなべて五割水準に落ちておるわけでございます。そういったことが予想されたものですから、特例法期間中になるべくいわゆる体質改善と申しますか、構造改善をするようにという御指導もいろいろ申し上げたわけですが、なかなか実現に至らずに今日に至っているわけであります。ただいま先生から御指摘のあったことの事実は私どもよく承知をいたしておりますし、会社からも事情報告は受けておるわけであります。  私どもの基本的な態度は、前にも申し上げておるわけでありますが、基本的には個別企業の労使の問題でございますので、私どもが具体的に中に入るということはいかがなものかということでございますが、一方、御心配の向きからいろいろ御指摘がございます。それにつきましては、その都度私ども会社の方にもその旨を伝え、できるだけ労使間の話し合いをするようにという指導は十分申し上げているつもりでございますし、今後ともその方針で進んでまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、戸畑の場合には関連企業にまで累が及ぶような話も承っておりますが、こういうふうになりますとまさに企業間の商売、営業上の話でもございますので、そこまでは私ども率直に申しましてなかなか手が入りにくいということではな  いかと思っております。
  102. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 これで終わりますが、この法改正にあわせてこの委員会でも附帯決議をつけておりますね。これは全会一致で承認されたものです。この附帯決議の中には、「精糖業界の体質改善については、経営の多角化等に対する各般の措置を講じ、関係商社、企業の努力を助長するとともに、雇用の安定、労働条件の改善等についての業界段階における労使の話合いが円滑に行われるよう指導すること。」という項目が入れられております。これに基づいて労使が円満に話し合いをし、こういう問題がたくさん起こってきておりますので、精力的に指導を強めていっていただきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。  どうもありがとうございました。      ————◇—————
  103. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 この際、お諮りいたします。  先般、各地の農林水産業の実情を調査するため委員を派遣いたしました。  派遣委員からの報告書は本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は本号末尾に掲載〕
  105. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会      ————◇—————