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1982-05-12 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十二日(水曜日)     午後一時三十二分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 戸井田三郎君 理事 渡辺 省一君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君       麻生 太郎君    上草 義輝君       川田 正則君    木村 守男君       岸田 文武君    北川 石松君       北口  博君    北村 義和君       近藤 元次君    佐藤  隆君       志賀  節君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    塚原 俊平君       橋口  隆君    保利 耕輔君       三池  信君   三ツ林弥太郎君       粟山  明君    山崎平八郎君       小川 国彦君    串原 義直君       沢田  広君    島田 琢郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    日野 市朗君       神田  厚君    寺前  巖君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      篠沢 恭助君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         農林水産省経済         局農業協同組合         課長      古賀 正浩君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     麻生 太郎君   近藤 元次君     粟山  明君   菅波  茂君     北川 石松君   田名部匡省君     塚原 俊平君   丹羽 兵助君     橋口  隆君   日野 市朗君     野坂 浩賢君   安井 吉典君     沢田  広君   藤田 スミ君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     太田 誠一君   北川 石松君     菅波  茂君   塚原 俊平君     田名部匡省君   橋口  隆君     丹羽 兵助君   粟山  明君     近藤 元次君   沢田  広君     安井 吉典君   野坂 浩賢君     日野 市朗君   瀬崎 博義君     藤田 スミ君     ――――――――――――― 五月七日  オレンジ・果汁・牛肉等自由化阻止等に関す  る請願塩崎潤紹介)(第二八二二号)  同(田中恒利紹介)(第二八五一号)  同外十六件(越智伊平紹介)(第二八七四  号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第二九一四号)  農産物輸入自由化枠拡大阻止等に関する請  願(北口博紹介)(第二八五〇号)  畜産経営安定強化に関する請願(林百郎君紹  介)(第二九一二号)  農産物輸入規制に関する請願(林百郎君紹  介)(第二九一三号) 同月十日  農畜産物輸入自由化及び枠拡大反対等に関す  る請願寺前巖紹介)(第三〇九七号)  同(藤田スミ紹介)(第三〇九八号)  農水産物輸入自由化反対等に関する請願(林  百郎君紹介)(第三〇九九号) 同月十二日  日本農業発展に関する請願齋藤邦吉君紹  介)(第三三一二号)  農水産物輸入自由化反対等に関する請願(寺  前巖君紹介)(第三三六八号)  同外一件(野間友一紹介)(第三三六九号)  同外二件(林百郎君紹介)(第三三七〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十日  木材業不況対策等に関する陳情書外二件  (第一九二号)  都市地域における農業確立に関する陳情書  (第一九三号)  農林業危機打開に関する陳情書外二件  (第一九四号)  農業基本政策確立に関する陳情書外二件  (第一九五号)  チチュウカイミバエの侵入防止対策強化に関  する陳情書  (第  一九六号)  果樹政策要求の実現に関する陳情書外一件  (第一九七号)  食糧自給率向上等に関する陳情書外四件  (第一九八号)  食糧管理制度強化等に関する陳情書外二件  (第一九九号)  農業用土地改良施設管理拡充強化に関する陳  情書  (第二〇〇号)  地方自治体の林地取得事業融資制度等の創設に  関する陳情書  (第二〇一  号)  飼料米転作奨励補助金交付に関する陳情書  (第  二〇二号)  水田利用再編第二期対策に関する陳情書  (第二〇三号)  サトウキビ最低生産者価格引き上げ等に関する  陳情書  (第二〇四号)  岐阜県中津川営林署の存続に関する陳情書  (第二〇五号)  農畜産物輸入自由化反対等に関する陳情書外  五十三件  (第二〇六号)  畜産酪農経営改善強化に関する陳情書外十  二件(第  二〇七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第六二号)  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第六三号)      ――――◇―――――
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  農業協同組合法の一部を改正する法律案及び昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田委員 農協法並びに農林年金法改正に当たりまして、農協中心にして若干私の考え方を述べさせていただきながら、大臣の御見解をこの際伺いたい、こう思います。  農協法改正というものは何度かやられているわけでありますが、戦後できました協同組合法というのは大変大事な目的をもって制定され、その後、戦後の混乱期から、農業あり方も含めて組合自身が果たした役割りは少なからざるものがあったという評価はできると思うのであります。たまたま農基法農政の出発に当たって、農協の本来持っております目的というものがさらに補強され、組合員である農家期待にこたえるべき農業協同組合全国にも相当活動を活発に始めるという時期になったと思うのです。  こうした一連の経過を振り返ってみますと、農業協同組合というのはあくまでも農民の、つまり組合員の負託にこたえ、その経営発展向上、そして安定化、また生活をしっかり支えるよりどころとしてこれからもその目的から逸脱することはできない、そういうものであろうと思うのです。  ところが最近、こうした厳しい情勢を迎えてまいりますと、農協本来の姿勢というものがやや変わってきているのではないか。そのときどきの社会情勢に押し流されていくことは必ずしも農協本来の目的に合致し得ない、こういう悩みがあることは私もよくわかるのでありますけれども、しかし、あくまでも農民社会的な立場農協を通して明確にされるということも含めて、農協の果たす役割りというのは大変重要になってきている、こういうふうに思うのです。今度の改正に当たりましては、やや環境変化に伴う対応としてやむを得ない、こういう改正であることを私も認めたいと思うのです。  ただ、気になりますのは、全国同じような傾向を持っているとは言えませんが、農協によっては信用事業が肥大化する、あるいは共済事業に集中をする、こういうような形になって、極端なことを言えば、金貸し農協ではないかなどというふうな批判も生まれている。これは本来の農協目的あるいは設立の趣旨からいいますといかがなものかという感じを持つ農協も二、三見受けられる、こういう意見に対して私もやや肯定的に農協を見ている部面もございます。ですから、こうした批判にしっかりこたえるためには、農協本来の使命をしっかり自覚しながら、農協のあるべき姿というのは一体何なのかということを真剣に追求し、探求をしていかなくてはいけないのではないか。  そういたしますと、行政指導責任を持っております農林省にも農業協同組合のあるべき姿といったものの青写真といいますか、そうした農協像というものをしっかり行政立場にも持っていていただきませんと指導が十分できない、こういうことになりかねません。この辺のあるべき農協像というものについて大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか、そのことをまずお尋ねしてみたいと思います。
  4. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、戦前は農業指導については農会が、あるいは信用あるいは利用販売については産業組合がその役割りを果たしてまいったのでございますが、戦時中農業会ができまして、その後、戦後になりまして、自主的な協同組織として二十二年にいまの農協ができたわけでございまして、自来、日本社会経済の大変な変遷の中で革命的なまでのいわゆる農業改革改正を進めながら農家経営に大きな貢献をしてきたことは御案内のとおりでございます。  しかし、最近の農協状況は、ともすれば組合員営農だとか生活からかけ離れた利益中心にした経営というものがどうも目立ってきたような状況にございます。しかしながら、現在の農業の置かれている環境というのは、先生承知のようにいわゆる兼業化混住化さらにまた老齢化という非常に厳しい環境にあるわけでございまして、その中で新しい農業をどうつくらなければならないかということは大きな課題なのでございますから、まず、営農計画というものを思い切って指導してやるぐらいの農協の力が必要であろう。また、それに伴いまして信用あるいは利用販売その他の部門を集中して運営することが農協のこれからのあるべき姿じゃないだろうか、こう私は思います。いま、農協が秋の大会を目指して一つ改革案の構想をお持ちのようでございますから、私はそれに大きな期待を抱いているのでございます。農林水産省としましても、農協はあくまでも自主的な協同組織でございますので、農林水産省がそれに余りにも食い込み、指導をするということは避けなければなりませんけれども、できるだけ健全な組織体としての指導は今後もいたしてまいりたい、かように考えております。
  5. 島田琢郎

    島田委員 大臣のおっしゃった点は私も同感でございます。  ただ、余り指導に深入りするということは避けたいとお考えの点は、私は受け取りがたい面がございます。というのは、やはり行政指導ということによってずいぶん大きく農協運営そのものにもプラスする面があるわけであります。それは、余り細々したことまで言うということは、これは干渉でありますからいけませんが、あるべき農協像というものをしっかり大臣が描いておられて、それに近づけていく努力を一面してもらうということは大変大事なことであります。  大臣のお考えになっている点はよくわかりましたが、しかし、産業組合精神と言われた時代から農協共存共栄ということを旗印にして、地域社会の大事な構成員としての役割りを果たす、こういうことも大事な目的一つであったはずであります。少なくとも組合員の中から農協に対する不信威が生まれるというようなことは、これはまさに悲劇でありまして、そういう声が出てこないように、農協運営に当たる理事者あるいは職員は真剣にこの農協運動に徹していかなくてはならない、こういうふうに思うわけであります。  私も実は農協運動に携わり、経営にも参加をしてまいった一人でございます。たまたまいろいろな方とお話をする中で、いま大臣がおっしゃったように、やはりあくまでも農家経営中心にして、なおそれに必要な信用事業とか共済事業というものが付随して行われていく、こういう主従の関係というものは損なうべきではないという考えを私も強く持ちながら単協経営参加をしてまいったのでありますが、三十六年の農基法農政以来、地域社会、特に農村地帯における離農が激しく行われることによって環境に大きな変化が起こってきて、農協が果たしていかなければならない役割りというのはますます重大になってきた、こう考えるのです。  そのときに、私は理事者の一人としてこんなことを言ったことがあるのであります。農協の、たとえば購買事業ということに限定して申し上げますと、農協が貴金属やあるいはテレビだとかステレオだとか嫁さんの衣装とかあるいは婿さんの貸し衣装まで手がけていく、これはいかがなものか。地域社会構成員の一員であるとすれば、その町にはモチモチ屋でそれぞれの専門の店舗を構えた業者もいらっしゃる。共存共栄ということを旗印にして進めてきた農協運動という立場から言えば、やや邪道に過ぎる面もあるのではないか。本来の農協運動原点に戻って農家が必要な最小限度資材あるいは衣類の範囲に限定すべきだという主張をしたことがございます。しかし、今日ではそればかり言うていたのではなかなか農協全体の運営がスムーズにいかないという面なども社会環境変化に伴って起こってきているということは十分私も理解できるのでありますけれども、そういう節度ある農協運営購買事業だけをいま例に挙げましたが、資材なんかでももっと安く、そして生産コストを引き下げることができるようなところに力点を置いた農協運営あるいは農協運動が進められていくべきではないか、こんなことを私は主張したことがあるわけであります。  先ほど、端的な言葉で金貸し農協というような声さえ聞かれるということを言いましたけれども、そこにもやはり一定の節度というものがあって、金融業金融業としての持ち場といいますか持ち分といいますか、そういうものがあるわけでありますから、農協としてはやはり一定限度をわきまえておかないと地域社会構成員といいますか、地域社会にあって混乱を巻き起こす元凶になりかねないなどということになりますれば、社会的な立場から言っても大変強い指弾を受けるのは避けられない、こういう事態が場所によっては起こっているということは大変遺憾なことだと私は思っているのです。幸い、先日の参考人の御意見の中でも、この秋に、いま大臣がおっしゃったような農協のあるべき姿を見直すという作業に取り組むということでありますから、これらのいわゆる青写真を描く段階で、大臣の構想されております農協像が鮮明になりますような、そういう行政指導を私は望みたい、こう思うのです。この点はいかがですか。
  6. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように混住化あるいはまた兼業化あるいは老齢化という大変な社会なのですね。ですから、農業協同組合の中で兼業農家を一体どう扱うのか。それから混住しています。単にその集落が農業を営んでいる住民だけじゃないという状況。あるいは老齢化している。こういう中で農協の果たす役割りというのは非常に複雑だと思うのです。そういう中で、何としても農業をどう営むか。さらに魅力のある農業にしていく。しかも後継者をその中で育てていく仕事も私は農協の大きな役割りだと思うのです。ですから、そういうためには、やはりその地域農業は何を中心にしてどういう経営をすることが一番農業の振興につながるかということを基本的に研究をして目標を立てて、その目標に向かって経営指導していくというのでなければならないと思うのです。それにつながって信用なり利用なりあるいは販売なり加工なりというものの事業が行われなければいけないものだ、私はこう思います。  私もかつて、大学を卒業して間もなく、二十四、五歳のころ、農協の専務をやりまして、しばらく経営をしてみましたけれども、いまとはかなり時代が違いますけれども、あの当時は、利益を得たらその利益をいかにサービスの面で会員に還元するかということを中心農協経営を進めた記憶があるわけでございますが、いま、時代は違うといえども、私は、あくまでも得た利益はすべて組合員に還元するという気持ち農協運営をしていかなければならないのではないだろうか、かように考えておるのでございます。したがいまして、私は、やはり各単協はもちろんでございますが、中央会においても、日本農業はこういう悪い環境にあるが、具体的に地域地域営農をどう進めたらよろしいかということを診断する機関でなければならない、よきお医者さんでなければならないと考えるわけです。そういう気持ち農家の方と取り組むことによって、農協離れもなくなってくるし、それから混住化している非常に複雑な農業社会も素直に融和した社会になるのではないか、こう思いますので、そういうあり方を、私は秋のいわゆる農協大会の結果がそうあるべきだと期待をいたしているのでございます。
  7. 島田琢郎

    島田委員 まさにおっしゃるとおりでありますが、実態はなかなかその辺の区分といいますか、明確に役割りというものが分担されていない。これは社会的な影響というものがあってなかなかそうなり切れない、こういうものがあると思うのであります。しかし、私はやはり本来、原点に返った農協運動というものがあってしかるべきだ、それだけでは踏み外すべきではない。ところが、先ほども農民農協離れが起こっているというようなことも大変憂うるべきことだ、こういうことを申し上げたのでありますが、特に、系統農協について政経分離という立場で県には中央会があり、経済連がある。そのほか信連とかあるいは共済連とかいろいろございますが、特にいま、農家指導も徹底すべきだ、こういうお話がございましたが、本来、県中央会という性格は、あるいは任務というのは、指導連としての役割りを担っている、こう思うのですね。ですから、そういう意味で言えば、単に単協会員とする組織ということであってはいけないわけで、単協指導すると同時に、やはりそこを通じて組合員個々経営指導生活指導にも当たっていくという分野も大変大事な責任としてあると思うのです。  特に私は、指導連としての役割り考えますときには、あくまでも厳正中立を守って、単協のあるべき姿から逸脱しないように、こういうことを厳重に監視する機関であってほしいし、そのことに徹してもらいたい、こう思っているのでありますが、どうも近ごろは厳正中立のところが崩れているという感じをこれは一般組合員も強く持っているわけです。この辺のところはやはり農林省としても強く指導されるべきではないか。また、経済連経済連経済分野を文字どおり担当いたしておりまして、その面から農家の福利の増進を図っていく、こういう役割り連合会として負っているわけであります。  このように、それぞれの分野の持っております機能とかあるいは運営によります持ち分というものが明確になっていると思うのですが、その辺が最近はどうも錯綜しがちだ、混乱しがちだ、そういうことが上に行けば行くほど農家との距離が遠くなって、一体これが農民のためにある連合会なのかというふうな疑念を持つに至りますと、これは農協離れを起こす原因にも大きくなっていくわけであります。この辺の指導はぜひひとつおやりいただくべきではないか、こう思うのです。あくまでも自主的に農協運営はなされるべきだというたてまえはわかるにしても、もう一度原点に返った農協活動農協運動というものが進められていくべきだという考えを私は強く持っております。幸いことしは一生懸命に農協のあるべき姿を農協自身が自主的に探求をされるという年に当たっているようでございますから、その面も含めてぜひひとつ御指導をされてしかるべきではないかと思っていますが、いかがですか。
  8. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 島田先生の御指摘は、私ども立場から見ましても一々ごもっともなことでございまして、私どもとしては、農業協同組合自主性を損なうような強権的介入は控えなければなりませんが、農協に対して言うべきことは率直に助言指導するという態度は私どもとしてもいささかも変わるところはございませんので、ただいま先生の御指摘の点につきましては十分心をいたしまして指導に当たりたいと思っております。
  9. 島田琢郎

    島田委員 そっけない局長の答弁でがっかりしてしまうんだけれども、確かに自主性を損ねてはいけません。それは大原則でありますから、大臣も繰り返しおっしゃっている点は私も理解はいたしております。ただ、大事な時期ですから、変な方向に流れていくということがないように行政立場助言指導に当たるというのは大変効率もいいのではないか、こう思うのです。なかなか自分のことは自分ではわからぬものであります。俗におか目八目というくらいでありますから、そういう点、せっかく大臣がお考えになった青写真があるので、そこにやはり近づけていく、あるいはその目的を達成できる、そういう農協本来の姿というものをしっかり助言指導されるということに私は期待を持ちたいのでございます。  さて、農協合併の問題でございますが、昭和三十六年でありますか、農協合併助成法というのができまして、自来四度か五度延長されて合併促進に寄与する、こういうことであったと思うのであります。これはことしの三月で切れたわけでありますが、この間、この促進法がどんな効果を生んでいるか、また、問題点は何かないか、今後どういう方向農協合併の問題をお考えになっているか、この辺のところをまとめてお聞きをしたいのであります。  私はこういう質問をなぜするかといいますと、御承知でもありますが、今回二カ年間の延長の前に一度一年間切れたわけであります。そのときに議員立法でわれわれはこの合併助成法をもう一遍復活させました。果たして合併という問題は組合員にとってプラスかマイナスかという点についての正確な見通しがないままに合併助成法だけをひとり歩きさせてはいけない、こういう主張をここでもしたわけであります。ですから、本当にそれが効果があるという立場に立ってこの法律が運用されていかないと、せっかく立法府のわれわれがここに精魂を入れて、期待を込めて再度これを成立させたという経過からいいますと、やはりその目的にきちっと沿っていてもらっているかどうかという点については精査をしておかなければならない責任がわれわれ議員にはあるわけであります。この辺のところをひとつお聞かせいただきたい、こう思います。  なおつけ加えて、時間の関係がありますからついでにお答えをいただきますが、今後のあり方として、単純に単協だけを寄せ集めて大きくするというだけが能ではない。たとえば、経済圏といったようなものを考えますと、隣接する農協というのはやや経済圏を同じくする、そういうところが多いわけであります。ですから、そういう意味ではこの一つ事業体単協が持ち寄っていわゆる経済活動を行うというふうなことも含めて、やはり今後の農協運営プラスになるという方向を模索をしていくということも非常に大事なことではないか。しかし、これは私がこういうことを申し上げなくても、進んでいるところではすでにこういう手法を取り入れてかなり成功している事例もあるわけであります。ですから、こういう点を含めて、特に、農産物販売事業なんというのは広域化あるいは経済圏の一体化といったようなものが農協事業を進めていく上で大変大事な要素になりますので、こういう点についての指導もやはり進めていくべきではないかという主張を私は持っているのであります。この点はいかがですか。
  10. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 農協合併助成法は三十六年に制定されまして以来、五回にわたる延長措置が講ぜられまして、その間、合併参加した組合は本年三月現在で約一万組合合併した組合が二千四百四十になるということでございます。  それで、農協合併の功罪をどう考えるかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、農協といえども効率的な経営を行い、充実した経営管理体制を確立していくためには、やはりそれなりの経営規模というものが必要であるわけでありまして、余りにも規模が零細な農協というのは、そういう意味で不都合な点があるわけでありますから、そういう農協合併をすることによりまして、各般の組合員のニーズにこたえるためのきちんとした経営管理体制を確立していくための一つの客観的条件の成熟を促す効果を持つということは、これは確かに期待できる点でありまして、現実に、合併された農協の事例を見てもその点は必ずしも当たっていないわけではありません。しかしながら、同時に、そのような適正な経営規模になっていくということの効果が果たして現実に組合員のニーズにこたえる現実の活動として十分に発揮されているかということになりますと、率直に申しまして必ずしも十分にその効果が発揮されているとは認めがたい例も間々あるわけでございます。特に、私どもが気にしておりますのは、合併に伴って農協経営規模が大型化することによりまして、農協組合員との関係がともすれば疎遠になるということが間々見られまして、そういう中で農協の執行部は組会員のニーズをくみ上げていくということがややなおざりになるという傾向が見られるという点は私どもも心配をいたしておる点でございます。  私どもといたしましては、今後とも合併した農協合併に伴う適正な経営規模の効果を十全に発揮し得るように指導していかなければいけないと思っておりますし、それからまた、なお零細な規模の農協がかなり残っておるわけでございますから、合併助成法延長するということまでは考えておりませんが、今後とも合併をしていく必要性のあるケースというのは相当あるというふうに思っております。  しかしながら、従来の経験に照らしますと、農協合併というのは必ずしも無条件に万能薬的効果があるわけではございませんので、先ほど先生の御指摘になりました合併という以外のスケールメリットの発揮の仕方の新しい方策というのも私は十分に模索をしていくべき一つ分野であろうというふうに思っております。
  11. 島田琢郎

    島田委員 時間がないものですから、言いたいことは三分の一も五分の一も言えないのでありますが、後ほどまた同僚議員がこの問題の点について質疑をされるようでありますから、先へ進みます。  この際、農林年金についてもお尋ねをしておきます。  財政再建期間中凍結されております国庫補助ですね。どうも財政再建が怪しくなってまいりました。これは大臣、当時の約束は、利子をつけて必ず返してもらう。当初のこの見通しといまも変わっていませんか。
  12. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私は、この合併法の成立の折にちょうど国会対策委員長をやっておりまして、これは必ず実現するからということでの約束をいたした記憶もございますし、また、政府としても一応お借りしたお金でございますので、三年間に利子をつけてお返ししましょう、こういうことになりますので、どうぞひとつそれは実現しなければならない、かように考えております。
  13. 島田琢郎

    島田委員 大丈夫ですね。
  14. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 大丈夫です。
  15. 島田琢郎

    島田委員 そこでこの際、退職年金なんですけれども、これは新旧の最低保障額の格差がなかなか直りません。私どもも、農林年金というのは新旧があるものですからわかりづらくて困る。そういうことは別にしまして、退職年金の最低保障額の格差というのはかなり前からこの是正が言われております。今回の改正に当たってもまた、これはどうも明確になりません。ぜひひとつこの格差を是正してもらいたいと思うのですけれども、これはいかがですか。
  16. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  農林年金の旧法、新法の最低保障額の相違というのは、これは実は大変古い問題で歴史のある問題でございますが、三十九年の十月に行われました大幅な制度改正の以前のものと以後のものとの間の段差ということは、農林年金の特殊事情ではございませんで、国家公務員共済その他いわゆる共済グループに属するものの共通に抱えておる問題でございます。それで、これはそれぞれ退職時点の制度によって決めるのがルールであるというふうな理屈の世界だけの話ではなくて、新法、旧法の最低保障額を一本化するということになりますと、恩給の関係者などにもその効果が及ぶわけでございまして、大変膨大な金額が動くことになるわけでございますので、農林年金単独の問題としてこの問題をどうするということはなかなか提起しにくい問題であるという事情がございます。  それでそういう事情でございますが、私どもといたしましては、旧法、新法の格差ということに無関心でいたわけではございませんで、私どもとしても、旧法の最低保障額をできるだけ新法に近づけていくという努力は従来から引き続きやってきておるわけでございまして、その結果、六十五歳以上の場合にはすでに旧法の最低保障額が逆に新法を上回るというところまで来ておるわけでございますので、一本化せよという御主張について、前向きにお答えできないことは残念でございますが、私どもとしては問題の所在は十分認識をして、格差問題について改善の方向でできるだけ努力してきているという実績はお認めいただけるものと思っております。
  17. 島田琢郎

    島田委員 あと一分少々しかありませんが、後は専門の野坂さんもいらっしゃるから譲りますが、定年制の問題と雇用条件の改善というのもまた大事な課題の一つになっています。農協のあるべき姿を追求していく場合に、大事な職員の活躍というのはこれは基礎になる問題でありますから、こうした身分保障という問題については真剣に取り組まなければならない問題だと思います。一ころと違って、大分他産業との格差は縮まってまいりましたけれども、依然農協で働く職員の身分は必ずしも万全とは言えない。こういう点について真剣に取り組んでいただきたいと思いますが、時間がもうないのです、一分しかありませんから、その範囲でお答えをいただきたい。
  18. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 御趣旨を体して精いっぱい指導に当たりたいと思います。
  19. 羽田孜

    羽田委員長 島田君の質疑はこれで終わりました。  次に、松沢俊昭君。
  20. 松沢俊昭

    ○松沢委員 まず私は、時間がありませんですけれども、簡単に農協法とそれから年金と二つの問題につきまして、御質問を申し上げたいと思います。  農協運営の問題につきましては、いろいろといま農村そのものの構造が変わったということからして問題が出てきている。今回の農協法改正にいたしましても、状況が変わっているからそれにこたえていかなければならぬじゃないかというそういう意味での改正だと私は思っているわけなんであります。しかし、員外貸し付けの枠というものを拡大をしていった場合、農協本来の使命から逸脱するところのおそれなきにしもあらずという、その辺は心配な面もあるわけなんであります。  そこで、いろいろ批判が出ておりますが、これもある新聞に「“病める農協” 自民がメス 組織を全面見直し 小委設置 夏までに改革案」こういう見出しで内容が載っておるわけです。確かに自民党の内部の方の御指摘、ごもっともな点がたくさんあります。たとえば、役員のボス化の問題とかあるいは組合員のニーズにこたえていない事業をやっている。不明朗な貸し付け、むだな要員など、あるいはまたスーパーマーケットと変わらない。こういう批判というのが出ておりますので、これは改善していった方がいいじゃないか、こういうお考えが出るのもこれは当然だと思うのです。ですけれども農協というのはやはり組合員農協なんでありまするから、権力政党や権力というものが下手に声を出して注文をつけるということになりますと、これは権力機関の従属組織ということになりかねないのじゃないかと思うのです。  それで、農協法というのができるまでの前夜、いろんなことがございました。私もこの改正案が出ましたので、当時を振り返っていろいろ農協の歴史をひもといてみましたのですけれども、あの当時、アメリカの総司令部がございまして、それで昭和二十三年の十二月二十一日に農民組織十六原則、そういうものの宣言ということを実はやっておるわけなんですね。そういう経過をたどりながら、いままで農業会という戦争遂行のための政府の教育機関というものを変えて、そして民主的な農協運営というものを図っていこう、そういうところから農協というのは出発してまいったわけなんでありまするが、そういう点からすると、いま余り注文をつけると、また昔に戻る危険性というのが出てくる可能性があるんじゃないかという実は心配をいたしておるわけなんであります。この点、田澤大臣は若くして農協の役員をおやりになってこられましたのですが、民主的運営というものと権力の干渉、介入というものとの関係というのをどのように整理していったらいいとお考えになっておるか、お伺いしたいと思うのです。
  21. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど島田委員にもお答えいたしたのでございますが、いま松沢委員指摘のように、戦前は指導部面は農会というのがやりました。それから信用だとか利用販売等は産業組合というかなり力の強い、反産運動が起きるほどの強いいわゆる経済組織だったわけです。それを戦時中に農業会というのになりまして、やや国家がある程度指導してつくった機関なんです。その後、御指摘のように二十二年に自主的な協同組織として農協が発足したわけでございますので、それからいわゆる民主的な運営がずっと進められてきたわけですよ。  ところが、最近、御承知のように米の過剰の問題とかを含めて農産物の需給関係というのは非常に複雑になってきた。さらに、われわれの生活様式もかなり変わってきた。それが同時に、農村社会にもその波が押し寄せていっておるものでございますから、兼業化だとかあるいは混住化だとか老齢化といういわゆる農村社会の面にもそういう現象が起きてきているわけでございまして、そういう中で、しからば農協のあるべき姿をどうしなければならないかということがいま大きな話題になっていると思うのですよ。  そこで、私は、自民党と言わずに社会党、公明、民社の各党とも、これに対してある程度こういう青写真があるよということは示してやってよろしいのじゃないだろうか、こう思うのです。決して中へ入るんじゃなくして、こういうりっぱな青写真をまず使ってみてはどうですか、こういうようにすることは、私は、決して民主的なあるいは自主的な協同組織を阻害するものじゃないだろう、こう思うのでございます。むしろそういう青写真をみんなで示して、そしてがんばりなさいよ農協さん、こういうことの方が私は、農家農民プラスになるのじゃないだろうか、こう思います。自民党は何かいま、小委員会等をつくりまして農協のあるべき姿を検討しておられるようです。恐らく社会党におかれてもそういう検討はなされておるだろうと思うのでございます。お互い新しい時代における農協のあるべき姿は何なのか、かくなければならないという青写真はつくって差し支えないのじゃないだろうか、こう思いますので、そういうことはもっと積極的に進めてもよろしい。ただ、それを受け取る農家農民はどういう態度でそれに対応するかということはまた別問題だと思います。私は、そういう意味であるべき姿を示すことがこれからの農協にとってマイナスじゃない、むしろプラスになるのじゃないだろうか、かように考えます。
  22. 松沢俊昭

    ○松沢委員 確かに大臣の言われるとおりいろいろな問題が発生しております。そういう点で、どうも農協、ちょっとどうかしているじゃないかということで、いろいろと注文がましいことを私たちもよく言うわけなんであります。しかし、いま青写真をお互いに示してやってくれたらどうか、その方が農協発展のためになるのじゃないか、こういうお話でございますけれども、この小委員会の設置の問題につきましてはこういうのも入っているのですよ。さっき申し上げましたのは私たちみんな賛成なんでありますけれども農協職員には社会党、共産党がふえて自民党の票田がなくなったから改革しなければならぬというような、ここまでいきますと、これは権力等の干渉ということになるのじゃないか、こう私は心配するわけなのであります。これは昔に戻ってしまう。こういうのはやはり厳に慎んでいかなければならぬところの問題だと思いますが、これは大臣どうお考えになっているか、お伺いしたい。  それともう一つの問題は、もりと組合員意見を出して、農協の民主的運営を自主的にやっていけばいいじゃないか、こういうことでありますけれども意見というのもなかなか出てこないのでありまして、そういうところからいろいろな弊害というものも出てくるわけなのであります。そしてまた、幹部の方も、単協の役員の皆さん、県連の役員の皆さん、全国連の役員の皆さん、こういろいろありますが、私考えてみますと、農協はたとえば、米なんかの取り扱いの場合におきましては集荷業者、これは農民ではないのですね。農民を相手にするところの米を集荷する業者だ。その業者の許可を大臣からもらっている。これは一つの例なのでありますけれども、こういうぐあいに認許可権というものをたくさん政府からもらっているというようなことからいたしまして、たとえば、いま水田再編対策事業をおやりになっておられますけれども農協行政機関でないのだから、そういう政府のおやりになるところの行政の片棒を担ぐわけにはまいりませんよ、知らないという態度をとるということになりますと、これほど減反達成率というやつが上がってこないと私は思うのですね。こういうのはどういうことかというと、やはり認許可権というのを政府からもらっている、だから政府に刃向かったならばいろいろな弊害が出てくるというようなことからいたしまして、そこで政府、行政機関の補助的な役割りを果たす。こういうことからして民主的団体というところの性格が薄れてきているのじゃないか、こういう面も私は指摘しておかなければならぬのじゃないかと思うのです。  そこで、たまたまひもといてみましたところが、総司令部の方に出しました農民組織十六原則、この一番最後のところに「(農民組合) 日本労働組合に関する諸原則は必要な修正を加えた上、農民組合にも適用されるべきである。」こういう一項目というのがあるのですよ。つまり、政党だとか権力から完全に独立したところの、一つの認許可権というようなものは全然要らない農民組合というものをもう一方に総司令部の方では考えておったのじゃないか。たまたまこれが実現されないままに今日まで来ている。そこでいまこういう農協法の問題について私たちがいろいろなことを言う、政府がいろいろなことをやれば権力の干渉じゃないか、そういう危険性が出てくるわけなんだが、そういう農民組織というものがきちっとできておって、それがいろいろと農協に対するところの注文なんかがやれるというようなシステムになれば、これは農協について自民党の小委員会あるいは党内の方々が指摘されておられる、また私たちも同様に指摘しているような弊害というのは、農民の手によって順々に芽を摘んでいくということができるのじゃないか。  そういう意味からすると、農民組合法なんというものを政府の方でお考えになる必要というのはないのだろうか。それはまた、いま中央会というのがございますけれども、農政活動も相当やっておりますね。あれはもと指導連というようなことを言っておりましたのですが、農協経営指導するのと、農政部門と、それから農協そのものを批判するところのものが一緒になったそういう農民組合的なもの、こういうものを大臣はお考えになっておられるかどうか。私は、その方がいいんじゃないかと思っているのですが、どうでしょうか。
  23. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 まず、農協への政党の干渉でございますが、私は、農協に対しては政党の色彩の入らないようにすべきだ、こう思いますので、そういう点は一応申し上げておきます。  さらに、いま農民組合お話がございましたが、私は、農協経営というのは単協が主体だと思うのです。合併等の問題もいまお話がありましたけれども、どういう規模の協同組合が一番理想なのかというのは、協同組合員経営生活の面から考えてやるべきものだ、こう思うのです。ですから、大きい規模でやった方が出資金がたくさん集まるとか、そういう面では経営が非常によろしい、しかしそのためにはサービスの面ではいろいろな施設がかかりますよ、こういうバランスをとりながら単協を一体どうするのか。単位農協が単位でございます。  私がかつて専務をやった時代、私の地帯は水田単作地帯でございますので、養豚をやったのです。豚は生肉でも出せませんものですから、ハムに加工しようというので、アルプスハムという協同組合の工場をつくりました。そこでハムをつくりながら、その間、鶏その他自分で飼育したものは全部薫製にする措置もしてやる。販売もする。同時に、農家のすべての畜産物をただで薫製にもしてやる。こういうすばらしい経営を私はやったことがあるのですよ。そうしますと、もう村の役場自体も、いや総合農政的な経営をしなければいかぬとか、協同組合中心にしてあとは総合農政を私たちはつくろうじゃないかという意気込み、ファイトが出てくるのです。そうしますと、おのずと組合員がおれの組合だという意識になりまして、もう協同組合にいろんな方が暇さえあれば遊びにきちゃって、たばこを吸うのに組合へ行って吸った方がおもしろいというので、私の周りに農家の方がたくさん集まって、今度は何をやるんだ、これをやってみたらどうだというような提案、それから、いろいろなことを聞く。これが私は、本来の農協の姿だと思うのですよ。  ですから、そういう姿にいたしますというと、村の中学校も農業に対する教育をしてくださいますよ。いま、中学校の教育は中央と似たような教育をずっと進めておるものですから、経済的な面だけを考え農業というものを見詰めますものですから、どうも農協離れの教育が多いので、末は、こんな農業なんかやるよりは、お嬢さんならサラリーマンの嫁さんになった方がいいとか、息子なら、どうせサラリーマンになりたいというような考え方を植えつけるのですよ。私は、そういうことよりも、本当に農協単協をどう育てるか、その地域農業をどうやるかということに思い切った努力をしてさえいきますならば、りっぱにその村の、その町の、その市のすばらしい農協ができて、会員全体がこの農業に一本になって努力する機関になろうと思うのです。そうなりますというと、あえて農民組合というものを、屋上屋をつくる必要がない、私はこう思うわけでございますので、農協本来の姿に立ち返るということがいま一番してやらなければいけない仕事だと私は思うのでございます。
  24. 松沢俊昭

    ○松沢委員 なかなか経験豊富な大臣からお話をお聞きして感心しました。しかし、農民のための農協になるために皆さんが努力しておられるわけだけれども、なかなかなっていかぬというところに一つ悩みがありますので、もう少し新しい角度から農民組合法というものをつくって、そして改革していった方がいいじゃないかと私は考えて、おりますけれども、この辺は大臣と若干違っておるわけなんであります。  そこで、あと五分しかございませんで、年金の方もちょっとお伺いしたいと思います。  行革特例法の審議の際におきまして、私も連合委員会で質疑に立ったわけなんでありますけれども、いわゆるその年金の政府からの補助、助成というものを三年間四分の一カットする。この四分の一カットという場合、いろいろ議論する中で、当時の亀岡農林大臣は、これは政府にその四分の一、三年間貸すんだ、そして返すときにおいては金利をつけて返してもらうんですよ、それは大蔵大臣とちゃんと約束しているんだから御心配ございません、こういう話でありました。それから、渡辺大蔵大臣は大蔵大臣で、借りたものは利子をつけて返しますよ、だから年金運営に支障が起きないように十分われわれは配慮してやっていくんだ、こういうことで、この両大臣とも、貸したと言い、借りたとこう言っておるわけなんであります。  そうすると、この年金の四分の一カットの問題は、年金とそれから政府の間で債権債務の関係が生じた、こういうぐあいに理解して差し支えないのか。これは、大蔵大臣きょうおいでになりませんで、大蔵省の方からも来ておられるのですが、大蔵省の見解も聞いて、大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  25. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 お答えいたします。  いわゆる行革関連特例法の第七条でございますが、先生承知のとおり、第一に、特例期間中の繰り入れの特例措置が書いてあります。そしてその二つ目には、政府に対しまして特例適用期間経過後における差額分の繰り入れなどの責務をはっきりと明定しているというふうに思うわけでございます。  この政府の責務とされております事後措置についてでございますが、繰り入れの期間、方式などのことは、法律に書いてもございますとおり、年金財政の安定を損なわない範囲で国の財政状況を勘案しながら決定していけ、こういうふうな定め方になっておるわけでございます。したがいまして、純法律的に申しますと、繰り入れの具体的な細目まで確定するという形になっておりませんものでございますから、これにつきましては、厳密な意味での債務というふうには申せない形になっているというふうに考えております。この点は、法制局長官からも臨時国会におきましてそのような御返事を申し上げたわけでございます。  ただ常識的な意味で、借りる、返すという議論は行われていることは私どもも十分承知しておりますし、いずれにいたしましても、この点につきましてはただいま先生もおっしゃいましたように、減額分の繰り入れのほか、積立金運用収入の減収分、こういうものを含めまして必ず適切な措置を講ずるということであろうかと思います。この点は臨時国会以来、明確にお答えを申し上げてきている問題であると考えるわけでございます。
  26. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 農林水産省といたしましても、ただいまの大蔵省の答弁と同様に考えております。
  27. 松沢俊昭

    ○松沢委員 利息の方は、これもちゃんとつけて返すというふうに答弁が行われているわけなんです。ただ、その利息の問題につきましても、七分にするか、五分にするか、三分にするかといろいろありますけれども、運用利回りはそのときどきの変化があるだろうからと、こういうお話でありますが、これは複利計算で返すのが妥当だと思いますが、その点は、返してもらう方と返す方と、どう考えているのか、この点もはっきりしてもらいたいと思います。
  28. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 先に大蔵省の方からお答えさしていただきます。  利息につきましても、必ず適切に措置するという旨たびたび申し上げてきたわけでございますが、その計算方法につきましては、具体的に詳しくこうしようという検討にまだ入っていないわけでございます。いずれにいたしましても、年金財政の安定を損なうことのないように法律の趣旨に即して考えていかなければならぬ、その点については関係省間でよく相談をしていかなければならぬ。大蔵省にとりますと、農林省のみならず、ほかにも関係省もいろいろございますし、いろいろと協議をしてまいる問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  29. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  この問題は、行革特例法によりまして四分の一カットが行われました年金の共通問題でございますので、私どもと大蔵省との関係だけでどうこうというふうには処理しかねる問題でございますが、私どもといたしましては、得べかりし金利収入はめんどうを見てもらわなければならないという態度でこの協議に当たりたいと思っております。
  30. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これで終わりますけれども大臣、どうでしょうかね、これは亀岡大臣が大分あれして、絶対に心配のないようにしてやるというのだが、これは複利計算で返してもらうというのが、貸した方では当然な理屈ということになると思うのですが、大臣、どうお考えになりますか。
  31. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま大蔵省からの答弁のとおり、計算等についてはまだ入っていないということでございます。したがいまして、いまのところ、農林年金財政の安定を損なうことのないようにしたいということでございますので、これを信頼していただきたい、こう思います。
  32. 松沢俊昭

    ○松沢委員 以上で終わりますけれども農協問題いろいろ出ておりますが、特に、民主的ということを重点にして監督指導をやってもらいたいということと、年金というのは、もうこの年金だけでございませんで、大変前途険しい面がございますので、その点を十分考えてやっていただきたいということをお願いして、終わります。
  33. 羽田孜

    羽田委員長 松沢君の質疑は終わりました。  次に、串原義直君。
  34. 串原義直

    ○串原委員 私は、農林年金改正法案につきまして伺います。  いま、わが国の公的年金制度について、それぞれの機関で研究、検討が進められております。そして、ことし七月をめどに出されるであろう第二次臨時行政調査会の第二次答申では、大きな改革を具体的に求めてくるものと予想されます。ことに最近では、財政的な行き詰まりを来した公共企業体年金の併合構想、さらには各種年金の一元化構想が検討されるなど、いよいよ具体的になってまいりました。その中にあって農林省としては、年金制度の将来はどうあるべきか、公的年金の中に農林年金をどう位置づけるべきか、検討願っておられると思いますが、その見解を承りたい。
  35. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  確かに、年金制度につきまして純理論的に考察をいたしますと、あるいは公的年金制度の一元化が望ましいという結論に到達するのかもしれないわけでございますが、現実に存在する各種の年金制度は、それぞれ独自の沿革、目的及びいろいろ違った財政事情などを抱えているわけでございまして、具体的な問題として、公的年金制度を一元化するかどうかということになりますと、なお検討を要する点が多々あるように存じます。具体的に私どもが所管をしております農林年金につきましても、かつて、少なくとも市町村職員並みの待遇は確保したいという農協職員の切なる願望にこたえて厚生年金から独立をしたというような経緯のある制度でございますので、必ずしも純理論だけでは割り切れない問題があるように思っております。  それで、私どもといたしましては、とりあえずの問題といたしましては、やはり現行どおり、それぞれの職域年金について所管各省が横断的な比較をよく念頭に置きながら、それぞれ責任を持って運営をしていくという対処をしていくことが現実的なことではあるまいかと思っております。
  36. 串原義直

    ○串原委員 一元化ということは現実的にはなかなかむずかしい、つまり、農林年金はいささか特殊な内容を持っているので、その特殊な内容を生かしながら当面は運用していく、こういう方向が望ましいと思うということですか。
  37. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 望ましいという言葉を使うほど自信を持って申し上げられるかどうかわかりませんが、現実の問題としては、農林年金独自の運用を続けていかざるを得ないというふうに考えております。
  38. 串原義直

    ○串原委員 年金問題について大変議論が高まっているわけです。この際その立場考えまして、農林省は農林年金の研究、検討の機関を設置すべきではないか、私はこう思う。その中から、農林水産省としての方針、農林年金に対する理論というようなものを改めて確立していくべきではないのか、こう私は判断をいたします。いかがですか。
  39. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 現在、御高承のとおり、大蔵大臣の私的諮問機関として、年金制度に関する諮問機関が設けられておりまして、そこで年金制度について各般の議論が行われておるわけでございますが、農林年金自体にとりましても、農林年金独自の問題というのはやはりあるわけでございまして、特に、財政問題、将来にわたる給付の改善と掛金の関係をどう考えていくか、あるいはいま先生指摘のございます公的年金一元化問題について、農林年金立場から見ていかに判断すべきものであるか、そういう問題領域が幾つか思い浮かぶわけでございます。それで、このような問題について、いずれしかるべき時期には、各方面の御意見を承りながら研究、検討していく、そういう場をつくる必要も生じてくるものというふうには考えております。
  40. 串原義直

    ○串原委員 私は、いま言われたように、大蔵省の諮問機関の答えが出てくるという時期も踏まえて、その時期が余り遠くないという判断を実はするわけなんですけれども、いま、しかるべき機関のようなものをつくって考えていかなきゃならぬのじゃないか、検討していかなきゃならぬのじゃないかという御答弁でございましたが、いまのところそれはいつごろそういう機関をつくるということになるのか、お答え願います。
  41. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 私どもはいまのところ、大蔵省で行っております検討の結論が出た段階で、それを見た上で考えてみたいというふうに思っているのが率直な心境でございます。
  42. 串原義直

    ○串原委員 大蔵省の諮問機関の答えは、発足しておよそ二年間ということであったと私は記憶をするのです。そうすると、五十七年度末ごろに答申がなされるということだったと思います。そうであるならば、今年度末ごろというふうに判断をしておいていいわけですか。
  43. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 大蔵省の方の研究の進捗状況及びいつごろ結論を出すかということについて、私どもとして責任を持ったお答えをし得る立場にはございませんが、おおよそいま先生お話しのような時期であるというふうに伺っておりますので、そういうことであれば、その時期には大蔵省の方の研究の結果を検討させていただいて、それなりの判断をしなければならない時期になろうというふうに思っております。
  44. 串原義直

    ○串原委員 そうしますと、およそ五十七年度末ごろというふうに考えていいわけだと思いますが、そのころに農林省考えられる何らかの機関は、つまり、農林年金には公務員共済、国民年金にあります審議会というようなものはない、したがっていま言われたように、農林年金には職域色が強いというようなことも踏まえて、加入者、団体等々いろいろな立場意見を述べられる機会を持てるような機関、こういうものをその際はお考えになるというふうに理解していいわけですか。
  45. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 何しろ現在、行政改革がかまびすしく議論をされておる段階でございますので、いわゆる格式張った審議会というようなものをつくり得る事態ではないと思います。むしろ、そういうことよりも、現実にこの問題について関心をお持ちの皆さん、専門的知識をお持ちの皆さん方の御意見を肩に力を入れずに聞かせていただけるような場を考えてみたいと思っております。
  46. 串原義直

    ○串原委員 先ほども質疑がなされましたけれども年金会計に対する定率補助四分の一削減をされました。金額はおおよそ四十四億円程度と考えていますけれども、それは三年間経過したならば必ず返しますよ、こういう答弁を大臣は先ほどなされました。これは一括昭和六十年にはお返しになるわけですか。
  47. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 この問題は、先般の行革国会でも議論になった点でございますが、繰り入れの方法、一括であるとか分割であるとか、その点につきましてはまだ政府部内で態度の決定を見ておりませんので、一括繰り入れができるかどうかという点についてはいまお答えいたしかねる状態でございます。
  48. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この点については必ず着手はいたしますので、その方法等についてはこれからいろいろ進めてまいりたいと考えています。
  49. 串原義直

    ○串原委員 大臣に伺おうと思っていたのですけれども、いま大臣が御答弁になったように、具体的にこういうかっこうで返済いたしますということを決めるのはいつ決めるのですか。
  50. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 第一回分の繰り入れをいつどうするかということは、少なくとも財政期間経過後直ちに決めなければいけないと考えています。
  51. 串原義直

    ○串原委員 そういたしますと、返済の方法、あえて簡単に言葉遣いを返済と申し上げますが、返済の方法は三年経過後でないとどうするか決まりません、こういうことですか。
  52. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 第二項に基づく繰り入れ措置も、やはり一般会計の歳出予算に計上すべきものでありますから、そういう意味ではそれが歳出予算に計上される年度は財政期間終了後の直近、次の年度ということになるわけでございますから、その時期まで少なくとも正式には決まらないということになると思っております。
  53. 串原義直

    ○串原委員 その減額分については返済のときに利息をつけて返します、こういうふうに先ほども大臣御答弁になりました。そこで、先ほども若干質疑がございましたが、いま一度私は確認したいのですけれども、返すとき利率についてはどのようにお考えになっているか。
  54. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  財政期間中の金融情勢がいかなるもので、その段階で得べかりし利益というのは、現実にはどの程度の利回りが得られることになるかというのは、率直に申し上げてその時期になってみなければわからないわけでございますが、いずれ第二項に基づく繰り入れ措置をとる段階では、財政期間中にどの程度の運用利回りが期待し得たものであろうかということは結果が出ておるわけでございますから、それを踏まえて、得べかりし金利収入は補てんをしてもらうという原則で大蔵省と協議に当たりたいと考えております。
  55. 串原義直

    ○串原委員 時間がありませんから詳しくはここで触れるわけにいきませんが、私の手元にある資料によりますと、農林年金の積立金運用利率はここ数年間七・五、六%というところでずっと推移しているようであります。したがいまして、いま御答弁のように得べかりし金利収入は補てんしてもらわなければならぬという立場に立ちますならば、農林年金の積立金運用利率過去数年間の平均ぐらいは当然である、私としてはこう判断するわけでありますが、そういう理解でいいですか。
  56. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、財政再建期間中、要するに、四分の一の削減が影響を受ける期間、その期間の金利情勢がどういうものであるかということにつきまして私はいまのところ予言をできませんが、得べかりし金利は確保したいと考えております。  ただ、一つの留保をつけさせていただきますならば、先ほどもお答えいたしましたように、この問題は四分の一削減を受けた各種年金制度の共通問題でございますので、農林年金の場合の運用利回りがこうだからこうだとやれるかどうかという点については、率直に申し上げまして事態はいささか不透明であるように思っております。
  57. 串原義直

    ○串原委員 いま言われた答弁、農林年金の場合はいささか立場が違ってよろしいのではないか。得べかりし金利収入を確保したいということになりますならば、農林年金会計の積立金運用利率というものが補てんされて当然だと思うのであります。このことを明確にしておく必要があるのではないか、このところが大切なところだ、私はこう思っているわけなのであります。したがいまして、財政再建期間中の三年間にするか、あるいはもう少しさかのぼって五年間にするかということはそのときの判断に立つでしょうけれども、私は、原則は農林年金の積立金運用利率に準拠すべきだ、こう考えるのですが、いかがなものでしょう。
  58. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 その点は先ほど申し上げましたように、現実に繰り入れ措置が決まる時期が大分先のことでございますので、先生のいまの御意見は私どももよく理解し得るところでございますが、そこの点まで踏み込んだお答えをするのは私どもとしてはちょっと尚早のように感じますので、そこの点は、先生の御意見はよくわかりましたというところまででとめさせていただきたいと思います。
  59. 串原義直

    ○串原委員 大臣が繰り返しというほど明確に、定率補助の減額部分については財政再建後利子をつけて返します、こういうふうに御答弁なさっているわけでありますので、これは厳密に債権だという判断、言葉遣いができるかどうかはちょっと迷いますけれども、農林年金側から見るならば未収金であることは間違いない、未収金という判断は正しい、こういう理解をしていいと思いますが、大臣、いかがですか。
  60. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この問題は、その計算等も支払いの方法等もいま具体的に詰めておりませんけれども、農林年金財政の安定を損なわないという当初の考え方にのっとって、いま先生の御指摘になったような点を私たちも十分踏まえながらこれに対応したいと思うのでございます。しかも、財政再建法を進めるに当たっての各党の申し合わせ等もございますので、そういう点をも踏まえながら、私は、抽象的ではございますけれども年金財政の安定を損なわないというこのことをお互い忠実に守っていかなければならないのではないか、こう思うのでございます。
  61. 串原義直

    ○串原委員 したがいまして、これは私としては未収金と考えていい、農林年金会計側から見るならばそう判断してもいいというふうに考えているのでございまするけれども、この農林年金の経理の処理上、未収金というかっこうで取り扱うのか、計上されていきますのかどうか、その辺の取り扱いはどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕
  62. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 未収金と申しますのは、債権の未回収額を貸借対照表上の借方に計上するというものでございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、私どもとしては、この金額につきましては国と農林年金との間に債権債務関係が存在するというふうには考えておりませんので、したがいまして、貸借対照表上未収金として計上することを相当とするものではないというふうに考えております。
  63. 串原義直

    ○串原委員 今回のこの法律案改正は、既裁定年金改定中心であります。その実施の時期を一カ月繰り下げる、こういうふうになっているわけでありますけれども、その理由を明確に示してもらいたいと思います。
  64. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 農林年金年金額の改定の実施時期につきましては、昭和五十二年度以降毎年四月に改定することを例としてまいったわけでございますが、本年につきましては、厚生年金等につきましても物価スライドによる年金額の改定の実施時期を、従来六月にしておりましたものを七月にずらすということをいたしました。それからさらに、公務員の給与の改善につきましても、人事院勧告との対比におきまして実質的にかなりの抑制措置が講ぜられたという事態もございます。また、もっと大きく申しますと、このような措置をとることをやむを得ざる事態に追い込んだような財政事情の例年にない逼迫ということもございます。このような事情がございましたので、予算の編成の過程におきまして、財政当局からは実施時期を七月に繰り延ばすべしという御主張が大変強かったのでございますが、私どもとしては早期実施について粘り強く折衝をした結果、大臣折衝まで持ち込んで、ようやく五月実施を確保したという経緯でございます。
  65. 串原義直

    ○串原委員 それはつまり、役所の中のやりとり、話し合いというかっこうで、この辺で話し合いをしようということで決着をしたというふうに受け取れるわけですね。つまり、年金受給者の立場に立つ、権利、生活を守ってやる、こういう立場に立つということでないように思うのですよ。私の立場から申し上げますならば、明確に遺憾な処置であった、こう思うのですね。ある役所からこういうふうに言われて、七月にしてもらいたいという話だったけれども、なかなかそれじゃうまくないので、お話をしていて、この辺で話を決着したというふうに受け取れる答弁でした。まさに私は、この年金制度というのは、権利、生活を守るという視点に立たなきゃいかぬ、こう思うのですね。その立場に立って、いま御答弁になったようなかっこう、いかがですか、うまくないなという感じをお持ちになりませんか。私は、このことは役所内部の話し合いだけでなくて、常に該当する受給者、国民の生活、権利を守る、その立場をどうしても尊重するというのが優先しなければならぬ、こう思います。いかがでしょう。
  66. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 ただいまお答えいたしましたことは、実はいきさつであると同時に、今回の措置がやむを得ざる措置であったということの説明でもあるというふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、この種の問題は、言うなれば各種制度間の一種のバランス論でございまして、それで従来から農林年金改定の幅にいたしましても、時期にいたしましても、国家公務員の給与ということが一つの尺度であったわけでございます。それで、そういたしますと、国家公務員の給与につきまして、必ずしも給与の改定が人事院勧告どおりには実施されなかったということが一方にあるわけでございますから、逆に言えば、農林年金の方だけが一切無傷で従来どおりのしきたりどおり処理されるということは、かえって国家公務員と農林年金との間で従来存在していたバランスが修正されるという効果を生ずるわけであります。また、厚生年金と農林年金との間にも、従来のしきたり上の一種のバランスがあるわけでございまして、厚生年金が一カ月おくれたということとのバランスがどうかということもあるわけでございます。ですから、そういう意味では農林年金の問題を単独に取り出して考えますと、あるいは従来四月改定を例としておりましたものが、一カ月おくらされるということは許しがたいことであるというふうにも考えられるわけでございますが、一方、国家公務員給与なりあるいは厚生年金なりというものとのバランスを考えてみますと、その中ではやはりこういう事態でございますので、各種制度間にある種の痛みの分かち合いということがあることもまたやむを得ざるところではないかというふうに考えておるわけでございます。
  67. 串原義直

    ○串原委員 農林年金の場合、ほかの年金、共済制度に比べまして、最低保障額適用者が多いと言われているわけであります。従来からしばしば指摘をされてきたところでありますけれども、せめて新法、旧法、新旧区分のない厚生年金並みの最低保障額にすべきだという意見に対しまして、農林水産省はその改善策をどのように進めてこられましたか、あるいは進めていく考えですか、お答え願います。
  68. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、農林年金の場合に最低保障額適用者が非常に多いということは先生指摘のとおりでございまして、特に、旧法年金の場合で申しますと、退職年金受給者の九〇・四%が最低保障額の適用を受けておるという現実でございます。ただ、これは一面では、旧法の最低保障額の改善に努力をすればするほど最低保障額の適用の範囲が広まるという効果もあるわけでございますから、そういう意味では旧法の場合、最低保障額適用者が多いということは、一面では最低保障額の改善がかなり進んだ成果であるというふうにもお認めいただけるのではないかと思います。  それで、旧法の最低保障額を新法の最低保障額に接近させる努力をいかようにしておるかということでございますが、ちなみに五十四年度、これは六十五歳未満の場合でございますが、五十四年度を一〇〇といたしますと、五十五年度で新法の場合は七・九%アップ、それが旧法の場合は八・二%アップ。五十六年度では、新法の一二・九%アップに対して旧法の一一五・八、それから五十七年度、今回御審議賜っております改善措置が行われました暁には、旧法の最低保障額は六十五歳未満の場合五十四年度に対比いたしまして二二・二%、新法が一七・四%ということになります。このように従来から旧法の最低保障額の引き上げ幅の方を大きくしてまいっておりまして、先ほどもちょっと申し上げましたように六十五歳以上ではもうすでに逆転する域にまで達しておるわけでございますが、今後とも引き続き旧法の最低保障額の引き上げに努力して、格差の解消というところにはなかなか急にはまいりませんが、少なくとも格差を縮小していくことについて引き続き努力をしてまいりたいと思っております。
  69. 串原義直

    ○串原委員 その努力の経過は私は認めますけれども、厚生年金並みの最低保障額にすべきだという意見がしばしばあったわけですね。これに対してはいかがでしょうか。
  70. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  厚生年金並みという御議論は、一つは、厚生年金の場合には新旧格差という問題がございませんので、新旧格差がないという意味で厚生年金並みにせよという御主張は、結局、新旧一本化問題に帰着するのであろうというふうに思われます。  それで、実は新旧一本化問題というのは、それぞれの制度がそれぞれの給付事由が生じた時点において適用されるべき制度が決まってくるという約束事の問題と、もう一つは一本化するということを考えました場合に、これは当然恩給自体及び恩給制度に準じて給付が定められております旧法年金全体の共通問題になってしまうという問題がございます。それで、私どもはことに致命的であるというのは、恩給自体及び恩給をベースにして定められております旧法年金一般の問題になるということに伴いまして、新旧の一本化が大変膨大な財政支出を伴うものであって、ひとり農林年金サイドの主張によって決められるようなものではないというところが、実は御主張のような議論の実現可能性という点につきまして最大の障害になる要素であるというふうに思っております。
  71. 串原義直

    ○串原委員 年金制度が受給者の皆さんの期待にこたえるということは、つまり、年金会計が健全でなければならぬ、ここが一番基盤だというふうに思うのでございます。  そこで、今日、各種年金の財政健全化が問題になっているところでありますけれども、農林年金の場合、現行の掛金率千分の百九で試算をいたしますと、昭和六十年には給付支出が掛金収入を上回る、それから昭和七十一年には収支が逆転をする、昭和八十一年には積立金ゼロになるというような厳しい見通しが明らかにされているところであります。この事実の上に立って政府、農林水産省は、農林年金会計の財政健全化のためにどう対処されようとなさっていますか、お答え願います。
  72. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 農林年金の総給付額が最近著しく増大をしてきておりまして、人口の老齢化、成熟率の進行等に伴って給付額の急速な増大を続けるというふうに予想されております。したがいまして、この結果、年金財政が悪化するということの見通しについては、ただいま串原先生指摘のとおりでございます。このような状況のもとにおきましては、現行の給付水準を維持するにいたしましても、組合員の負担を相当ふやすことが余儀なくされるというふうに推定をされております。したがいまして、将来にわたる年金財政の健全性を確保しつつこの制度を円滑に運用をしていくためには、やはり給付と掛金の関係あり方についていかように物事を考えていくかということを真剣に検討する必要があるというふうに思っております。  この問題は、ひとり農林年金に限りませんで、公的年金制度全般に通ずる共通問題で、まず最初に、国鉄共済のようなところから問題が顕在化してきておるわけでございますが、いずれにいたしましても、公的年金制度の共通問題でございますので、政府全体としてよく検討していく必要があるというふうに思っております。
  73. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたからこれで終わることにいたしますけれども、最後に、私が御質問申し上げました点は、また改めた機会に議論を深めてまいりたいと思っているところですけれども、一番最初に私が質問、指摘をいたしましたように、年金全体の立場に立って検討しなければならぬ重要な時期にあると思う。とりわけ特殊性が深いといいますか多い農林年金の場合は、より具体的な検討が必要になってきているのではないか、こう考えますだけに、しかるべき時期に年金の検討、研究をされる機関もつくりたいというお答えでありましたから、そういう機関等々も通じてより一層検討を深められて、農林年金会計の健全化のために努力を願うことを最後にお願いをし、期待をして終わることにいたします。
  74. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、野坂浩賢君。
  75. 野坂浩賢

    野坂委員 先ほど同僚議員から質疑がございました農林年金の問題にしぼって、特に、田澤農林大臣中心にして質疑を進めたい、こういうふうに考えております。  御案内のように、第二次臨調は全体的な分野にわたって議論を続けておりますが、七月に本答申が出る前に部会の方針は最近のうちに出る、こういう情勢にあります。その内容は、年金制度については三段階で統合したい、こう言っております。まず、国鉄共済を電電、専売、国家公務員共済と統合、二番目には、これに厚生年金、地方公務員共済を加えた被用者年金間で統合、三段階としては国民年金を含めた全体で統合、こういう三段階で提案をしております。そして当面、年金業務の社会保険庁への一元化、こういう提言をすることはおおむね間違いないだろうと言われております。さらに、経済審議会の長期展望委員会では、国庫負担は現状また、展望として無理であろう、したがって給付水準を下げていくか、二番目は、保険料を引き上げるか、こういうことを提言をしました。第二次臨調も大まかそういうことを申し上げましたが、臨調の第一部会の報告案の要旨の中では、やはり支給開始年齢の引き上げと弾力化、保険料の引き上げ等により制度の運営の安定を図る、こういうのが部会の要旨として決められておるようであります。  田澤農林大臣は政府閣僚の中にあって、農林年金あるいは農業年金をつかさどっておる責任ある立場にあります。全体の年金から見て、いまの臨調の方針、具体的には、特に、答弁に重点を入れていただきたいのは、業務の保険庁一元化は社説等でも問題になっておりますが、これらについて閣僚としてどのようにお考えになるのか、その点をまず聞きたい。
  76. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 年金問題については、大変重大な問題をはらんでおるのでございまして、したがいまして、私は農林年金はもちろんでございますが、全体の運営をよりよいものにするためには、やはり一元化を促進することであろうと思うのでございます。しかし、先ほど来お答えしておりますように、沿革だとか目的だとか、あるいは財政等がそれぞれ異なるものでございますから、いま直ちにそれを一元化するということは容易じゃない。したがいまして、それぞれの年金の不均衡を是正して、それに近づけていくという努力をいま、いたしていかなければならない状況じゃないだろうかと思うのでございます。  ことに、年金の一番の問題は、国鉄のいわゆる共済年金がもう一番大きい話題になっているわけでございまして、それだけじゃなくして、農林年金においても六十五年にはかなり厳しい状況に置かれておるわけでございますので、私たちとしては年金制度そのものを根本的に見直すことを考えていかなければならない非常に重大な時期に来ている、こう思います。
  77. 野坂浩賢

    野坂委員 いま田澤大臣お話しになった年金問題については重大な時期に直面をしておる、こういう点については確認をしておきます。  さらに、社説等で問題になっておりますあるいは臨調で問題になっております業務の一元化論、これについて農林年金としてはどういう考え方を持っておるか、それについて。
  78. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  業務の一元化が話題になっておりますその一元化されるべき各年金制度の業務の実態を見てみますと、実は、各年金制度が使用しているコンピューターも違う、それからいろんなデータの集計の様式も違う、あるいは給付の裁定、支払い等の業務処理の手順などもそれぞれ独自の手法がございまして、そういう点がいかにハーモナイズされるかということを抜きにして、どこかにやっと一元化しさえすればおのずとメリットが生ずるというものではないように思っております。したがって、そういういろんな食い違いをどうするかという問題がなかなかややこしい問題で、それを抜きにして一元化ということはメリットが乏しいのではないかというふうに思っております。  それからもう一つは、それぞれの年金制度ごとに、長年それぞれの沿革のもとにこの種の業務を処理してきた職員というものを現実に抱えておるわけでございまして、一元化できるからといって、あしたから首にしてしまうというわけにいくものでもございません。そういう意味ももう一つ、さらにメリットの発現を妨げる要素であるというふうに思っております。  それから、しからば、そういう事態であるにもかかわらず一元化を強行するとしても、それによって公的年金制度の統合化を促進するという効果があるかということになりますと、これは、やはり私どもは大変懐疑的にならざるを得ない。一元化という問題を議論するのであれば、やはり年金制度の一元化から議論をしてかかるべきものであって、業務の一元化から議論を始めるということについては私どもとしては慎重な態度をとらざるを得ないというふうに思っております。
  79. 野坂浩賢

    野坂委員 いま局長お話しになったように、言うならば、加入とか脱退とか年金の裁定とか送金の方法とか、非常にややこしい問題が出てくるというのは御指摘のとおりだろうと思うのです。しかし、そういう方向で検討せよというかっこうが出てくる、それに農林年金としてはどう対応するかということは、いま大臣お話しになったようにもう迫られておるというふうに位置づけをしていかなければならぬだろう、こういうふうに思いますね。特に、臨調でもあるいは各種委員会あるいは経済審議会の長期展望委員会、こういうところでは、年金の給付の引き下げとか掛金率の引き上げとか、こういう意見が出ておる。農林年金でも厚生年金でも。まあ農林年金は修正率が七七・五だ、厚生年金は五五だ、女性の場合は三三だ、こういうことになっておる。後代負担がだんだんふえてくるという結果になっておるわけですね。  そういたしますと、いまのわれわれのような年寄りと言うとちょっとぐあい悪いのですけれども、若い諸君たちは、自分たちが年金を受給するような時代になってくれば果たして年金がもらえるのかどうか、これだけの高い掛金を払ってもらえるのかどうかという心配があるだろうと思うのですね。そういう点については現在の給付水準を落とさない、こういうふうにでも言わなければ喜んで掛金をかけてこない、やめていこう、こういう結果になるんではなかろうかなあということを心配するわけですが、いわゆる閣僚として政府を代表して田澤農林大臣は、給付水準を落とすことはない、こういうことは断言できるか、答弁をいただきたい。
  80. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 やはり現行年金制度を実施している段階においては、現行の制度を常に継続していくということが年金の信頼を得ることになろうと思いますので、そういう点については現行制度をそのまま運用する段階では、やはり給付率についてもあるいは掛金についても現行を守っていくということに努めていかなければならないと思います。ただ、そのためにはやはりどういう形のものに公的年金をすべきかということについては、私たちはもっともっと積極的に勉強していかなければならない時代である、こう考えます。
  81. 野坂浩賢

    野坂委員 水準は落とさないしこれからも勉強していかなければならぬということはよくわかりますが、いままでの質問者の中でもお話があったように今度はスライドを一カ月ずらすわけですね。四月を五月、物価の場合、六月を七月にずらしていく。いままで、昭和四十四年以降ということがこの法案に出ておりますが、この年金の実施時期は十一月だったのですね。四十五年は十月にした。四十六年も十月、四十八年が十月、四十九年が九月、五十年が八月、五十一年が七月、五十二年以降四月になっているのですね。だんだん国民の要望、受給者の期待、そういうものに政府はこたえて十一月から漸次十月、九月、八月、七月、四月、こうやったのですね。だから掛金をかけておっても大丈夫だ、おれたちももらえるんだ、私たちもいただけるんだ、こういう考え方に立ってきた。ところが、その臨調の動向あるいは経済審議会の長期展望委員会の提言、あらゆる場所において年金は危機である、これは大臣も認められた。そういう中で、四月を五月にするということは、むしろ逆行してきたのですね。いままでとは違った方向を歩み始めた。だから若い人たちは心配する、掛金を掛ける人たちは心配する、加入者たちは不安を覚え、不信感を持つ、こういう結果になって、年金そのもの自体が揺らぐという情勢だ。これはいままでの動向と違った方向を歩み始めたということを私は心配するわけですが、大臣は全く御心配はございませんか。
  82. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、一カ月おくらせたという問題につきましては、私どもといたしましては、もちろん財政事情もございますが、それと並んで、先ほども御答弁申し上げましたように、厚生年金あるいは国家公務員の給与というようなものとのバランスから見ても、やむを得ざる措置とお認めいただけるものではないかというふうに考えています。  それで、このような措置が年金の受給者あるいは将来受給者たるべき者の年金制度に対する信頼を揺るがすことになるかどうかということでございますが、これは、私どもといたしましては、農林年金の場合、国家公務員の給与にスライドをしていくという原則が今回の措置によって揺るがされたというふうには思いませんので、そういう意味では、国家公務員の給与にスライドして給付が改善されていくという期待感を裏切るという事態には至っておらないというふうに思っております。  それで、私どもといたしましては、年金関係者の間に先生指摘のような不安がないというふうには思っておりませんが、その不安のよって来るゆえんは、やはりこれから高齢化社会に向かっていく中で、給付と掛金との間の均衡状態というものを、いまのままの事態では長期にわたって維持しがたいのではないかという認識が広まっていることに由来するものでありまして、それはそれとしてそういう事態に対してどう対処するかという対策を検討していくということによって、そういう不安が発生することを防いでいくより仕方がないことではないかというふうに思っております。
  83. 野坂浩賢

    野坂委員 局長さんのお話は、財政の厳しい情勢、臨調も財政面だけからの統合論を言っておるわけですから、国家公務員を横目でにらんで、あるいは恩給の状況というものに合わせて、こういうことを集約をしてあなたの答弁は物を言っている。  そうすると、独自性とか農林年金の財政の安定、まあ農林年金の財政というのは非常に厳しいということは私もよく知っております。不足支払い準備金は約二兆円近いということも承知しておる。しかし、国鉄のように六十年にパンクするという状態かというと、あなた方の指導もいいけれども、いわゆる管掌者の運用、そういうものを含めて、まず八十一年までは五%ずつスライドして掛金がいままでどおりであっても、これが破産をするというようなことはない。そういう情勢を踏まえるならば、国民の信頼にこたえるということは私は必要だと思う。  ちなみに、あなたに聞いてみますけれども、この一カ月間ずらすことによって大体どのくらい財政が助かるのですか。
  84. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 二千百万円でございます。
  85. 野坂浩賢

    野坂委員 二千百万円でいわゆる加入者の動揺を来すようなことはしないで、整々としてやったらいいのじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。それで、あなたの二千百万円というのは四月から五月で、六月から七月のあれだと千九百万ですからね、補助金は。しかし、農林年金の年間の給付金額というのはどのぐらいですか。
  86. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 一億五千四百万円でございます。
  87. 野坂浩賢

    野坂委員 局長さん、あなたはよく勉強されておりますけれども、一億五千四百万円というのは一カ月間のずれを言うのでしょう。
  88. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 いまの一億五千四百万は、確かに先生のおっしゃるとおりでございます。御無礼いたしました。  元来、例年どおり四月に実施いたしました場合の恩給関係、これが十六億六千八百万円かかるべきところを、一カ月ずらしたために十五億一千四百万円になりまして、差額が一億五千四百万円ということでございます。  それからもう一つ、スライドの関係を六月実施の分を七月実施にずらしまして、これが本来ならば十一億三千万円かかるべかりしところを十億百万円で、差額が一億二千九百万円浮くということでございます。それで合計で給付費といたしまして二億八千三百万円の節約になるということでございます。どうも御無礼いたしました。
  89. 野坂浩賢

    野坂委員 年間の給付費は幾らですか。
  90. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 ちょっと農協課長に答弁させますので、よろしくお願いいたします。
  91. 古賀正浩

    ○古賀説明員 一月おくれ、五月実施の場合で、引き上げ額合計で十五億一千四百万でございます。
  92. 野坂浩賢

    野坂委員 全受給者の年間の給付金額を聞いておるのですよ。
  93. 古賀正浩

    ○古賀説明員 失礼いたしました。九百七十億でございます。
  94. 野坂浩賢

    野坂委員 九百七十億に対して二億円というのは約〇・二%ですね。その程度のことはやれぬものですかな、大臣。いや事務当局ではなしに、政治問題だから大臣に聞いておるのだ。
  95. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 僭越でございますが、お答えさせていただきます。  実は、一カ月ずらしというのは、農林年金独自の問題であると申しますよりも、むしろ各種年金制度の共通問題として一カ月ずらすことやむを得ずという結論になったわけでございまして、農林年金の節約額自体は確かにこのような重大な判断を左右するには零細な金額であろうと存じますが、判断のよって来りますゆえんのものが、各種年金制度共通の判断でございますので、それはそれでやむを得ざることではないかと思ったわけでございます。
  96. 野坂浩賢

    野坂委員 大臣に伺いますが、基本的に農林年金というのは自主性がありますか、自主性がありませんか。
  97. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御案内のように、厚生年金から分離してこの年金を独自の立場で進めておるので、自主性はもちろんございますが、他の年金との関係というものは常に守ってまいらなければいかぬということも御理解いただきたいと思うのです。
  98. 野坂浩賢

    野坂委員 自主性があるようでないようなお話をいただいて、よくわかりません。国対委員長ペースのお話ではちょっと困るのですけれども自主性があるという主たる立場に立って物事を考えていかなければならぬ。したがって、私どもはこの一カ月繰り下げ実施については納得ができません。了解ができない。この点についてははっきり申し上げておかなければならぬ、こういうふうに思います。  そこで、先ほど大臣は、年金は当面危機状態に入ってきた、もう国鉄はパンクする、農林年金もいつかはそういう状態になる、したがって、われわれについては十分な検討が必要だということであります。しかし、あなたのところの年金は、経済局長主管のもとに、農協課長もいらっしゃるけれども、農林年金をつかさどっておる職員は、よく整理合理化徹底をしまして、四人でやっておりますね。なかなか大変なものです。自主性があるといっても、ここではやれますけれども、内容的にはむずかしい、こういうふうに判断せざるを得ない、私はそう思っております。大臣に後から付言して答弁をいただきますけれども、そういう状況だ。いまはそういう状況であるから、広く年金意見を求める時期に来ておる、このことは大臣もお認めになったのですね。各種の審議会等を見てまいりますと、国家公務員には共済組合審議会というのがあります、地方公務員にも同じく審議会がある、共済年金基本問題研究会というのも大蔵大臣の諮問機関としてある、社会保障制度審議会というのが厚生省にある、社会保険審議会というのもある、国民年金審議会がある、各年金がみんな全部持っておるのです。そして、年金の危機の状態が来たから、いまこれに対応していかなければならぬということで作業しておるというのが現状ですよ。五十七年の末に危機が来るなんというそんなとろいことじゃないのです、ほかは。だから、独自性を持ち、年金の中に農林年金をどう位置づけをするか。昭和三十三年に厚生年金から脱皮した農林年金をどう育成強化するかということになれば、この加入者や給付者やそれを管掌しておる機関や、そういう人たちが物を言って、われわれの年金をどう守るかということを考えていかなければ、われわれはこれからの対応ができない、こういうふうに私は思っておるわけです。それについては農林大臣はどうお考えでしょう。
  99. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農林水産省としても、農林年金については、先ほど来申し上げておりますように非常に危機的な状況にございますから、将来、これに対する対策は、やはり特に検討してまいらなければならないと思います。と同時に、いま第二臨調初めいろいろな機関がそれぞれ年金そのものに対するいわゆる考え方をそれぞれ表現しておりますので、そういう点をも十分参考にしながら、私たちのこれからの年金に対する研究等のあり方、進め方を検討してまいりたい、かように考えております。
  100. 野坂浩賢

    野坂委員 これから研究の仕方、進め方を考える。これから研究をするということだったら、大蔵省が出てしまってからやっても意味がないのですよ。いまやらなければならぬわけですね。あなたはいまやるというふうな理解ですよね。それなれば、加入者や給付者や管掌者が公式の場で見解表明する場をつくる、こういうことですか。
  101. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先生指摘のように、年金の加入者、受給者等の意見を、先ほどもちょっと申し上げましたが、格式張らずにお話を伺えるような場をいずれはつくりたいと思っております。
  102. 野坂浩賢

    野坂委員 いままで、たしか今村局長のころだったと思うのですが、話し合いをしまして、経済局長の諮問機関をつくった。このごろは開店休業であります。睡眠、冬眠状態。これだけ重大な時期でありますからね、大臣、たとえば、農林年金法の中に法制化をして審議会をつくる。しかし、恐らく経済局長以下古賀農協課長等は、審議会は、法律的につくるはいいけれども、いまの合理化の時代で、なかなかむずかしいのだという意見があるいはあるかもしらぬ。私はこれが望ましい、公式な場で公的な見解を述べる唯一の場だと思っておるのです。しかし、百歩譲って、できない場合は、田澤農林大臣の、いわゆる大蔵大臣がやっておるような研究機関を早期につくって、そしてこれに対応しなければおくれていきますよ。そうしないと、自主性はなくて、みんな横目で見て、あそこがやってきたから乗りましょう、これが四人で勉強した最大の知恵ですよ。いままでみんなそうなんですから、だから、それをやりますかということを政治家である農林大臣としてはどうお考えだろうか、こういうふうに思います。農林年金農業年金を守るために、みずから勉強して、そういう管掌者や給付者や加入者の意向というものを公的に述べてもらいながら、それをもって政府閣僚の中で年金に対する見解を、哲学的な見解を述べながら、われわれの位置づけをしていく、こういうことになるのが当然の筋道ですよというふうに私は考えますが、いかがですか。
  103. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 審議会については、いま先生指摘のように、これはなかなかむずかしい問題だと思いますので、いま御指摘のように、大臣の私的機関を設けて意見を聞いたらどうだという提案については私も賛成でございます。したがいまして、これは、時期をいつにするかという問題はちょっといま申し上げられませんけれども、私は、できるだけその線に沿うてこの問題は努力をしてみたい、かように考えます。
  104. 野坂浩賢

    野坂委員 早期に開設をしていただくようにお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  105. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 できるだけ努力をいたします。
  106. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは次、同僚議員からいろいろとお話があった補助金四分の一カット問題、これは、この間の秋の行革でいろいろ言われておる。先ほど同僚議員からの質疑でこういうお話がありましたね。年金財政の安定を損なわないようにということや、三年たったら返します、来年のことを言うと鬼が笑いますけれども、本気で三年後の話をしなければならぬが、農林大臣としては、三年たったら全部返してもらうという考え方ですか。
  107. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 特例適用期間後繰り入れには直ちに着手してもらいたいと思っておりますし、直ちに着手することについては大蔵省も了承しておりますが、一括で繰り入れるか、何年間かにわたって分割して繰り入れるかということについては今後、協議を要するところであると思います。
  108. 野坂浩賢

    野坂委員 その場合、先ほども議員からお話がありましたが、見積利息の話で、大きな話をしながら細かい話で申しわけないですけれども、それは、農林省としてはどういう利息をお考えになっておりますか。相手に任せますか。
  109. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 四分の一カットなかりせば得べかりし金利収入は確保したい、そういう考え方で折衝いたしたいと考えております。
  110. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、厚生年金は大体全部資金運用部の方に出しておるわけですね。それから公務員共済は積立金の三〇%を出しておるわけですね。わが方は、農林年金は預託しない代償として積立金の増加額の三分の一を政府保証債取得に回すことにされておるわけです。そうすると、それはたとえば、五十五年度末の政府保証債は全体の一八・六%ですよ。運用利回りというのは、いわゆるあなた方がなかりせばと言う前提に立ってやると、農林年金の運用利回りで計算する、こういうことになりますか。
  111. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 農林年金の運用利回りで計算をした額を繰り入れてもらうように話をしたいと思っております。
  112. 野坂浩賢

    野坂委員 大蔵省はおりますか。——いま、農林省は農林年金の運用利回りで計算をしてもらうのだという見解でありますが、大蔵省もそのとおりだとお考えでありますか。
  113. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 御質問の積立金の運用収入の減収分、これを算定してまいりますに当たりましては、先生おっしゃいますように積立金の運用利回りというものが一つの目安であろうというふうにいま思っておるわけであります。もちろん、運用利回りはそのときどきでいろいろ変わるわけでございますので、どの利率という数字で申し上げることはいまはできないわけでございますが、目安としては私ども当面そういうふうに考えております。いずれにいたしましても、各年金間のバランスや何かも絡んでおりますので、実態に即しまして関係省庁と御相談申し上げながら、年金財政の安定を損なわないようにという趣旨で考えてまいりたいというふうに考えております。
  114. 野坂浩賢

    野坂委員 問題なのはその辺ですよ。年金財政の安定を損なわないようにというところに落とし穴があるわけですね、あなた方が考えている逃げ場がある。そうではなしに、農林省が言っておるのは、もしこの補助金が削られなかったら、たとえば、三年間で百五十五億ですね、百五十五億を農林年金が運用するとどういうことになっておるかといいますと、大体一八・六%は組合員の掛金その他に回して、団体貸し付けや他経理貸し付けや証券の貸し付けを一一・四%やったわけです。厚生年金は住宅貸し付けは四%しかやっていません。そういう意味で、ずっとやっておりますが、あなたのところの大蔵省の補助金は過去五十一年から参酌をしますとほとんど有価証券に回しておるわけですね。五十一年度が八・三、五十二年度が八・三、五十三年度が八・一、五十四年度が七・八五、五十五年度が七・九五九、こういう運用利回りをやっておるわけです。それを全部ひっくるめますというと五十五年度は七・七、五十四年度が七・五、こういう運用利回りになります。  それで、あなたのお話の中では厚生年金やあるいは公務員共済の運用利回りというものは、大蔵省の資金運用部に入ってまいりますから、大蔵省の主体的な条件で決まるわけです。この農林年金というのは職域年金でありますから、いわゆる各団体からの補助金やあるいは利差益というようなものまでも四割は農林年金の中に入れていかなければ将来の財政安定が図られない、こういう立場に立っております。だから、経済局長が言うように、この補助金削除がなかりせば運用利回りがこういうことになってきますという農林年金の運用利回りで計算してもらうのが当然だ、こう言っておるわけです。だから、その点は前提だけれども、厚生年金や公務員共済の関係でやるということになると、利息というものは非常に開きが出てくるというわけですね。  私が計算をした範囲で言いますと、たとえば、五・五%は、この計算をされるというと百六十七・三億円ですけれども、八%になると百七十三億円ですよ。こういう計算をしますと、約五億八千万違うんですね。だから、その点についてはちゃんとこっちの農林年金の運用利回りで計算するということだけははっきりしてもらわぬと、将来ああじゃ、こうじゃなんといって問題になったら、年金の財政に一円でも欠ければそれだけ財政の安定を損ないますから——かつて経済局長は、一円でも福祉に影響すればそうだ、一円でもマイナスになればそれだけ損なうことは間違いないわけですから、その点については年金についての運用利回りだ、こういうふうにはっきりしてもらいたい。いかがですか。
  115. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 いわゆる行革関連特例法におきましてはそれぞれの年金ごとに条文を設けまして、四分の一カット、それからまた、それに対します事後措置の問題について規定しております。行革関連特例法の第七条に「農林漁業団体職員共済組合に対する国の補助額の特例」ということが書いてございまして、その第二項では農林年金財政の安定が損なわれることのないようということを一応特記しておるわけでございます。その点は私ども法律の趣旨というものを十分それぞれ考えながら対応していかなければならないと思うわけでございます。
  116. 野坂浩賢

    野坂委員 農林省にお尋ねしますが、そうすると、年金財政が損なわれないように、先ほど言いましたように、運用利回りの利子の取り方は三年間で五億から六億違うのですね。これが五年間にもなったら何十億になってくるわけですよ。それは数字でお示しをすればこういうことになりますよ。たとえば、五年間据え置きというと、八%なら二百六十四億ということになります。そうすると、膨大な金額になりますね。年金財政の安定を損ないますか、損ないませんか、どうですか。
  117. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 四分の一カットによって影響を受ける運用益の問題につきましては、その処理を誤れば年金財政に影響があることは疑いのないところだと思います。
  118. 野坂浩賢

    野坂委員 そうすると、年金財政は運用利回りでいかなければならぬというお答えであります。農林省はそういうふうに答えておりますが、大蔵省はそれを肯定しますか。
  119. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げたことでございますけれども、私どもといたしましても積立金の運用利回りというものを一つの重要な目安として考えてまいりたい。農林省の方からその段階におきましていろいろ御相談があろうし、こちらからも御相談をするわけでございますけれども、その中では運用利回りを一つの目安として考えていくことは当然であろうと考えております。
  120. 野坂浩賢

    野坂委員 大変いい答弁でした。農林年金財政の安定のために農林年金が運用する利回りで計算をする、こういう大蔵省の見解であります。したがいまして、その方向で進めていただきたいと思います。  最後に、農林大臣にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、いままでのスライドの方式はほとんど公務員給与の引き上げに対応した自動的なスライドであったわけでございます。自動的に行っております。これについては多く議論をする時間がありませんが、その方向で検討すべきだ。過去の実績、これからの展望そして公務員に横にらみということを考えるならば当然自動的なスライド方式、こういうことがいままでもやられてきたし、今後もやられるであろう、こういうふうに考えておりますが、そのとおりに進めていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  121. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 そういう方向で努力をいたしたいと考えております。
  122. 野坂浩賢

    野坂委員 以上で私の質疑を二分間残してやめます。大変どうもありがとうございました。
  123. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、武田一夫君。
  124. 武田一夫

    ○武田委員 私は、農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして数点御質問申し上げます。  まず最初に、大臣にお尋ねいたします。  私は、日本農業というものを考えたときに、国がいろいろと対応なさるのは当然のことながら、農業団体として大きな組織力を持ち、非常に団結のかたい農協という一つの大きな団体の活動といいますか運用というものを非常に重要視している一人でありますが、いろいろ長い歴史の中で、その本来の役目といいますか使命もどうかすると忘れられがちであるという批判等もあります。ことし第十六回の全国農協大会もございまして、農協としましてもいろいろといままであったそうした非難やらあるいは不備を改めながら、次の新しい時代に船出をしようとしていることを伺っているわけであります。大臣としまして、いまの農協の現状をどのように認識をなさいまして、今後、いかなる方向にいかなる姿で農協が歩むことが日本農業にとって好ましいものである、そういうような方向というものにつきましての御見解あるいはお考えがございましたら、まず最初にお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。
  125. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 島田委員にお答えいたしたのでございますが、御承知のように昭和二十二年に自主的な協同組織として農協が発足しまして、戦後の非常に変化の大きい社会経済情勢の中で農業を支えてきた役割りというのは非常に大きかったのでございます。ところが最近、御承知のように兼業化だとかあるいは混住化老齢化が農村社会を大きく襲うている現状でございまして、そういう中で農協役割りというのは非常に大きいと思うのです。ところが、最近の農業の現状を見ますと、どうも組合員営農だとかあるいは生活からかけ離れたいわゆる経営の面が見られるのでして、単に収益を目的とした事業が非常に多いということでございます。私は、少なくともいま農業全体が非常に厳しい環境に置かれているときでございますだけに、自主的な協同組織としての農業協同組合が率先してこの厳しい農業の現状を打開して、農家農民に明るい期待と希望を与えるのが農業協同組合役割りだ、こう考えます。したがいまして、この農業の置かれている現状をよく分析し、認識をして、そこで各農家経営を診断してやる、そういうやはり親切があってよろしいのじゃないだろうか。そしてやはり農家農民が本当にこれから農業をやったらすばらしい農業ができるなという期待を抱けるような農村、農業にして差し上げなければならない、その役割りを持っているのが農協組織だと私は思うのです。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕  かつて、反産運動が起きるほどの産業組合活動というものはやはりすばらしかったと私は思うのです。また、指導の面では農会というものがございましたが、この役割りもまた非常に大きかった。また、海外では、ブラジルは確かに国の財政は非常に緊迫しておりますけれども、コチア農業というものがあの大きなブラジルの農業を支える基本になっているのを見ますと、私は、それなりに農協役割りはいま一番重大であろう、こう思うのでございますので、秋の大会の成果を期待いたしているような状況でございます。
  126. 武田一夫

    ○武田委員 大臣から一つ方向というものをお話しありましたが、私は、それはそのとおり、同感でございます。  ただ、その中身の中で私いつも思うのでありますが、やはりこの間も参考人の皆さんが来たときに、何の事業でも人が大切なんだ、事業は人なりということがあるではないか、こういうことでありますから、そういう大きな団体になればなるほど、上に立つ指導的な方々の資質の問題、これは大事だと思うわけであります。しかしながら、残念ながら、非常にいい組合長さんを中心とした組合を歩きますと当然それなりの結果は出ているわけでありますが、そうでないものも多々あるわけであります。その中で、特に私が気がつくのは、どうも理事さんの問題。いわゆる理事、この問題がある。ところで、その理事を選ぶ選挙がかなりひんしゅくを買っている。日本のいわゆる金権選挙の原点はこの農協理事の選挙にあるなどと言われることもしばしばでありまして、やはりこれは各農協等の、あるいは組合農家の皆さん方の意識のこともあるでありましょうけれども、こうした面のもっと徹底した指導、これがやはり必要じゃないかというふうに思うのでありますが、この一点だけまず大臣にちょっとお聞きしておきたい。これが改まると、やはりいい人、選ばれるべき人が選ばれる、出たい人よりも出したい人ということを言われますが、そういう体質が農協全体の中にしかと定着すれば、そこから農協全体の向上もあるのではないかというふうに考えておるわけでありまして、この点について大臣考えをひとつお聞きしておきたいと思います。
  127. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 協同組合理事の選任については、私は、市町村の選挙全体を見まして、協同組合理事の選挙というものは農業に専念する人を選択するための方法としてはまあいい方じゃないかと思うのでございます。しかしながら、最近の社会全体の問題でございますけれども、選ばれた理事の方がやはり農業に対して本当に取り組む姿勢があるかどうかの問題が一番大きいと私は思うのですね。理事に選ばれた、そういう人はすばらしい、しかし、農業に対してどれくらいの熱意、情熱を持っているかということじゃないかと思うのですね。  私が農協に勤めておった時代というのは、ちょうど戦後で、これから新しい農業を進めなければいかぬという時代でございましたので、零細でございましたけれども、みんな素っ裸になってひとつやってみようじゃないかという考えがございましたので、かなり熱心な理事もございました。私は、そういう一つ社会全体の農業に取り組む姿勢というものがいま非常に冷えておるものですから、それが大きな原因になって、理事の方々も能力のある人はたくさんおるのですけれども、何か情熱だとかそういう点に欠くる点があるのじゃないだろうか、こう見ておるのでございます。
  128. 武田一夫

    ○武田委員 結局、自覚の問題と言えばそれまでですけれども、国が大きな影響力を持っている一つの団体でございますし、向こうの団体も国に大きな影響力を持っている団体でございますし、その行動といいますか活動は、国民がよく注目しているわけですね。特に、米価運動とかそういうものに出てまいりますし、そのときにその組合が本当に日本農業発展のために、農民のためにがんばっているんだという姿勢が国民に本当に理解してもらってないところに、いろいろな問題が出てきたときに孤立的なそういう状況をつくってしまうということを思うときに、これは農協というのは一つの団体で、自主的にこれからも一層発展をしていかなければならないという前提条件はあるにしても、注意すべきものはきちっと指導、注意して、世の模範となる——これはマンモスですから、世界一と言ってもいいぐらいマンモスな統率力のある、しかも金を持っている団体でありますから、これがよくなっていく、これは日本にとってもわれわれ国民にとっても相当な影響力がある、私はそう思うわけでありまして、今後、そういう面の指導には十分なる対応をしてほしい、こういうことを要求というかお願いをしておきたい。  そこでもう一つ農協さんについていろいろと聞かれるのは、先ほど営利に走り過ぎるという、これも一つの大きな批判を受けている。また、組合員自体もそういう行き方に不満を持っている。それが組合離れをしているという一つの原因でもありますが、どうしても農外関連事業へ突っ走るというか盛んに手を出しているということです。これがしばしば地域社会、特に、商工業者に相当影響を与えている。いろいろな業種、いま問題になっているのはスーパーですか、これが一つ問題になっております。それから最近は、冠婚葬祭まで入り込んできまして、そういう業者さんが困っている。こうなりますと、分野調整法というものがあるわけでありますが、何かそうしたものでトラブルを未然に防止するような対応をしておかなければ、いかに農協さんが地域社会発展のために貢献するとかいうようなことを掲げていたとしても、これは単なる空論になってしまう、こういうふうに思うわけでありまして、こうした地域社会の中における調和ある発展も必要だろう。そういう意味で、そうした農外関連の事業についてのある程度の規制といいますか、あるいはそういうものに対する制約というものも考えるべきじゃないかなと思うのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えをなさっているわけでございますか、ひとつお尋ねをしたいと思います。
  129. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のございましたような農協事業運営あり方が、地域の中小商業者との間の摩擦を起こしがちであるという点につきましては、私どもも同様の趣旨の話をいろいろなルートから耳にいたしておりますので、かねてから心を痛めておったところでございます。それで、従来から地域における事業の協調に配慮した事業運営を行うように数次にわたり通達を出したりして指導をしてきたところでございます。これは一面では、最近のように組合員自体の兼業化あるいは地域社会混住化が進んでまいりますと、こういう摩擦が起こるということはある意味では摩擦が起こりやすい素地が十分あるわけでございまして、幾ら注意してもなかなか根絶しにくいということで実は困っておりますが、私どももその点は鋭意指導しておるところでございます。  その中で特に、問題になっておりますのは、いわゆる農協スーパーと申しますか、農協の購買店舗の問題がございます。この問題につきましては、どうもさらにもう一層踏み込んだ積極的な規制措置が必要であるというふうに考えまして、実は先月二十三日に新しく通達を出しました。農協の自主的な規制措置とあわせて、少なくとも当分の間は五百平米を超える農協店舗については出店を自粛させる。それからそれ以下のものにつきましても農協の系統組織の内部に購買店舗委員会を設置して、その策定する自主基準に基づいて農協の店舗設置計画の審査、指導、店舗の運営指導等を行わせる。それから一定の規模、五百平米以下で都道府県知事が定める規模を超える店舗については行政庁の審査、指導を経た上で出店をするとすればさせる、そういうことを骨子といたしました通達を最近出しまして、農協スーパーをめぐる地域の中小商業者との間の紛争はこれで大幅に事態が改善されるものというふうに期待いたしておりますが、それ以外の分野につきましても十分注意深く見守って指導強化を要する場合には適切に措置をしてまいりたいというふうに思っております。
  130. 武田一夫

    ○武田委員 これは重要な問題でありますから、指導の徹底と、そうしたトラブルを未然に防止するような対応を逐次徹底しながら作業を進めてほしいなと私はお願い申し上げます。  次に、農協における信用事業の拡充ということでありますが、この問題について、一つは他の金融機関との競合関係が強まっていくのではないかという心配はないかどうかという問題と、とりわけ信連にかかわる員外貸し付けの緩和措置ということが農協の姿勢をいわゆる組合員のための農協という本来の使命から離脱させる方向へ、そういう傾向の助長にならないかという心配、この点についてはどういうふうにお考えになっておるか、その点についての御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  131. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、今回の員外貸し出しの規制緩和措置でございますが、これは、あくまでも従来からございました員外規制を維持しながら、ごく限られた特例的な信連について新しい緩和された規制措置を適用しようとするものでございます。したがいまして、まず、今回の規制緩和措置というのは決して一般論ではなくて、特定の信連に限る特例的な取り扱いであるということを申し上げておきたいと思います。  それで、特例的な取り扱いを受けることになります特定の信連というのはしからばどういう信連であるかと申しますと、これはまず会員たる単協の資金事情あるいは地域内の農業事情から見て、会員たる単協組合員の資金需要を充足するという面から見れば、もう単協の段階で十分対応できておって、信連が員外の貸し出しを伸ばそうとしても何としても出る幕がないというふうに見られる信連、そういう信連を指定をすることにいたしたいというふうに考えておりますので、今回の特例措置の適用を受けます信連につきましても、かりそめにも員内の資金需要があるにもかかわらず、それをないがしろにして員外に資金を回すという傾向を助長することは万々ないと確信をいたしております。  また、そういう信連につきましても御高承のとおり、有価証券運用とかあるいは金融機関貸し出しという形ではすでに何らの制限なく員外に資金が流出しておる実態でございますので、今回の特例措置の適用によりまして、そのような信連につきまして資金運用の均衡的、効率的運用を確保するということは期待しておりますが、員外への資金の流出を積極的に助長するという効果は持たない、どちらかと言えば中立的な措置であるというふうに考えているわけでございます。  それから、中小金融機関との関係でございますが、以上申し述べましたような考え方で信連を指定するわけでございますので、どちらかと申しますと信連が地域社会の金融界におきましてほとんど大きな比重を占めないような、どちらかと言うと都市的な信連が主として指定をされるわけでございますので、そういう地域の中小金融の世界におきましてはしょせんその信連の影響力というのも限られたものでございまして、その結果、他の中小金融機関が競争上不利な地位に立たされ迷惑をこうむるということは考えられないというふうに思っております。この点は私どもだけの独善的な判断ではございませんで、中小金融機関を所管しております大蔵省銀行局とも十分相談をいたしながら運用してまいりたいと思っておりますので、御心配には及ばないと思っております。
  132. 武田一夫

    ○武田委員 それで、特例措置の適用を受ける具体的などういうところのどういう地域ということは、いまのところで予想されるのは大体どういうところでしょうか。
  133. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 まだ何分法律を御審議賜っておる最中でございますから、具体的に県の名前を挙げるというようなことは差し控えさしていただきたいと存じますが、少なくとも員外貸し付けの現状が、現行制度の員外貸し付けの上限ぎりぎりまで接近していってパンク寸前であるというような状態にあるということ、それから現行の枠組みの中では非常に貯貸率が低い、それからもう一つ単協の段階までおろしてみてもやはり貯貸率が低い、そこで、その上にさらに貸し付けの審査体制が充実をしていて、員外の世界へ出ていって貸し出し業務をやっても万々間違いない、そういう以上申し述べましたような要件を具備している信連を総合的に勘案をして指定をするということにしたいと考えておりますが、県名を挙げることは差し控えさしていただきますが、数としては二けたになるかならないか、ぎりぎりぐらいと思っております。
  134. 武田一夫

    ○武田委員 貸付枠は上限一五%拡大ですね。これはすぐ一気にやるものか、あるいはまたその地域によって段階的に何%か決めてやるものか、その状況はどういうふうにいくのか。それはどうなんですか。
  135. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  法律上は一五%までの一応の枠を規定をしておいていただきまして、さしあたりは政令で一〇%ということに縛りたいと思っております。
  136. 武田一夫

    ○武田委員 特例措置の適用というのが必要がなくなった場合はこうしたものが解除するものかどうか、その処置はどういうふうに考えていますか。
  137. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 御指摘のとおり、特例措置の適用を相当とする事態が解消するという信連が生じますれば、特例の適用は解除されるべきものである。と申しますのは、本則に戻るべきものであるというふうに考えております。
  138. 武田一夫

    ○武田委員 ところで、私よくわからないのですが、員外、員内ということですね。員内というのはわかるのですが、員外というのは、どういうものを指して員外と言うのか、これをちょっと説明してもらいたいのです。
  139. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  端的に申しますと、員外というのは員内にあらざるものが員外ということなんでございますけれども、実態的には、信連の模範定款例で員外貸し出しの対象としては次のように定めております。一つは、「農業発展に寄与すると認められる事業等を行なう法人」二つには、「地区内に住居を有する農業者」これについては貯金担保ということで、こういうものを員外貸し出しの事例として模範定款例に定めております。現在のところ、各信連とも模範定款例で定められているとおりの定款を定めておるというふうに承知しておりますので、現実に行われます員外貸し出しはこの範囲で行われるものと理解をいたしております。
  140. 武田一夫

    ○武田委員 農林中金でも員外貸し出しをやっていますね。信連でもやる。両方とも員外というものの定義は、農林中金であろうと信連であろうと同じなんですか、それとも別なんですか。員外というもの定義、具体的なものは……。
  141. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  農林中金の場合には、農協法の員内に相当いたします概念といたしまして所属団体という概念がございます。それで、信連を含めて農協の場合と農林中金の場合とで違いますのは、農協の場合でございますと、員内を相手にして仕事をするのが農協の本来業務でございます。ところが農林中金の場合には、先般、御審議を賜りました中金法の改正によりまして、関連産業貸し出しという分野、所属団体貨し付けではございませんが、農林中金にとっては本来業務であるという法律上の位置づけになっております。ですから、そういう意味では所属団体という概念と員内という概念はほぼ類似した概念でございますけれども農協の場合には員内が本来業務であるという位置づけであるのに対して、農林中金の場合には、所属団体以外であっても関連産業向けの貸し出しは本来業務として取り扱われておるという点に相違はございます。
  142. 武田一夫

    ○武田委員 それで最後に、員外貸し付けの基準といいますか、これはどういうふうになっているのか。なぜかというと、どういう職業にでも貸すものかどうか、その点でちょっと心配な点もあるわけです。ですから、その基準というものをちょっと聞いておきたいと思うのです。
  143. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先ほど前段の御質問にお答えする際に申し上げたのでございますが、模範定款例で「農業発展に寄与すると認められる事業等を行なう法人」と書いてございますので、その模範定款例が現実に信連の員外貸し出しを規制する枠組みになるということでございます。
  144. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので……。これからオンライン化、いわゆる一般の金融機関並みの対応が普及していくわけでありますが、そうすると犯罪の中でコンピューターによる諸般の金融関係の事件も発生しているわけでありますが、信連はいままでそうした金銭的な事故はなかったということでありますが、単協なんか見ているとずいぶんありまして、大変御心配、御苦労しているわけであります。今後こうしたものを未然に防止する対応というのを十分しなくてはいかぬ。それだけに為替の仕事等々をいろいろとやる、専門的な知識等も要求される、またチェック体制とかそういう対応も十分になされていかなければいかぬではないか、こういうふうに思うのでありますが、そういう点では、この対応は十分になされている、こういうふうに見ているわけか。心配なところはいろいろと事前にしかるべき手を打たなくてはいかぬと思いますので、金の関係ある、しかも員外貸し出しという問題が中心になってきますだけに心配をしておるわけでありますが、そうした心配のないような対応をしてほしい、こう思うわけでございまして、その点の対応についてお尋ねをしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  145. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 オンライン化に伴いまして農協においても一般金融機関に見られるような不詳事件が発生する危惧は確かにあるわけでございまして、系統農協におきましてはそのような危険を防止するために現在、次のような措置を講じておるところでございます。  一つは、農協の為替業務の取り扱いの開始に当たりましては、まず事前に農協の実務担当者に対する研修を周到に実施することにいたしております。この研修を受けた実務担当者を農協の為替取扱店舗ごとに必ず複数名配置するということにしております。  さらに、今回全銀の内為制度に加盟するために準備を進めておる段階でございますが、それに加えて全銀の内為制度加入のための準備の一環といたしまして、為替担当者の研修を一層強化するとともに、農協系統独自でこれらの者のうちから為替取扱実績が一年以上あって中金及び信連の所定の実務研修を受けた者について、為替実務専門員というものの認定制度を設けておりまして、それが為替の取扱実務の中心となって円滑な運営を図るということにしております。  ちなみに、この為替実務専門員制度は五十四年度から実施された制度でございますが、五十六年度末までにすでに八千名が認定を受けておりまして、今後二年の間に認定済みの人間の数を二万二千名にする。それによって各店舗ごとに最低二名ずつはこの認定を受けた者を配置するということを予定しております。  それからさらにそのほか、一般金融機関と同様に、内部における相互牽制システム等についての研究開発を進めて、万遺憾なきを期してまいるという決意でおると承知しております。
  146. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  147. 羽田孜

    羽田委員長 神田厚君。
  148. 神田厚

    ○神田委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  まず最初に、この法案の一つの大きな項目であります農協全国銀行内国為替制度への加入の問題、それから内国為替の員外利用の規制撤廃の問題につきまして、現在内国為替未取り扱いの農協が相当数残っているわけでありますが、これを解消して全農協の一括加入が一体可能なのかどうかという問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。
  149. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  全銀の内為制度に加入をいたします場合には、これは業態ごと一括加入ということでございますので、農協が加盟するときには全部の農協が加盟しなければならない、これは先生指摘のとおりでございます。これは内為制度がオンライン化されることに伴います技術的な要請でございますので、この点は受けて対応せざるを得ないということでございます。  それで、農協の内為の取り扱いの実態でございますが、先般、御審議を賜りました四十八年改正の際の当委員会での御議論もいろいろ踏まえまして、その安全な運営を確保するために内国為替取り扱いの承認基準というものを銀行局長と私の方との連名で四十八年に出してございまして、それに基づいて指導しているところでございますが、残念ながら現在、承認基準に達しておらないために為替取り扱いを行っておらない農協が三百九十七ございます。  それで、これを解消するという課題があるわけでございますが、私どもといたしましては内国為替業務の安全確実な事務処理の確保には十分配意しながら、とは申しましても、最近、内国為替業務にかなり習熟してきているという実情も考慮いたしまして内国為替取引承認基準の緩和を検討いたしますとともに、その際、体制の弱い農協につきましては、当面信連が内国為替の所要の事務を代行するという措置も併用いたしまして、内為制度に加入できるように、全農協が一斉にそろって加入できるような条件整備を指導していきたい、こういうふうに思っております。
  150. 神田厚

    ○神田委員 これはオンライン業務ということになるわけでありますが、オンライン業務は専門知識を非常に多く要求することでありますが、いろいろ国内でもほかの金融機関等でかなり事故が出ている関係もございまして、この事故防止対策その他についてどういうふうにお考えでありますか。
  151. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおりの危惧は確かにあるわけでございまして、現在、系統農協がこれに対処して講じております措置というのはおおよそ次のようなものでございます。  一つは、為替業務の取り扱いを開始する前に実務担当者に対する研修を実施いたしまして、それで為替の取扱店舗ごとに必ず複数名の研修終了者を配置するということにしております。これは四十八年農協法改正以来そういうことでやってきておるわけでございますが、今回さらに、全銀の内為制度に加入するために中金と信連の所定の実務研修を受けた者で、為替取扱実績が一年以上ある者を対象にして、為替実務専門員認定制度というものを設けております。これによって認定を受けた為替実務専門員が、現在のところ約八千名でございますが、これを二年間に二万二千名養成いたしまして、最低限、各店舗に二名ずつはこういう認定済みの実務担当者を配置するということにいたしたい。それに加えて、もちろん一般金融機関の常識でございますが、内部牽制組織等の研究開発を進めて遺憾なきを期していきたいということでやっておるようでございます。私どもも十分そういうものを受けて進めてまいりたいと思っております。
  152. 神田厚

    ○神田委員 また、この制度につきましては、漁協はこの内国為替制度への加盟をしておらないようでありますが、なぜ漁業協同組合全国銀行内国為替制度への加入をしないのでありましょうか。
  153. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  現在、農協で内国為替取引を行っておらない農協が三百九十幾つというふうに先ほど申し上げましたが、これは約八%ぐらいでございまして、農協の場合ですと九二%はすでに内国為替取引を行っておるわけでございますが、一方、漁協の場合には約一八%が内国為替取引を扱っておるという現状でございまして、先ほど申し上げましたように、この全銀の内為制度というのは、業態ごと一括加入ということでございますので、漁協がこれに加入するためには漁協全体が入らなければいけないということでございますから、漁協での内国為替取引の普及率がこのように低い状態ではとても目標が高過ぎて、現在のところ全銀の内為制度に加入するという展望をいま直ちには持ち得ないという状態にいるわけでございます。それで、業態ごと一括加入というのは、これは全銀の内為制度の中で、漁協が為替取引を何とかやっているかやっていないかということを識別することはまず無理でございますので、業態一括加入という要件はちょっと外しようがないと思われますので、残念ながらいまのところ漁協についてはその可能性がないという実情でございます。
  154. 神田厚

    ○神田委員 次に、この改正案の中の大きな項目であります信連の員外利用制限の緩和の問題につきまして二、三お尋ねをしたいと思うのであります。  最初に、この資金の運用状況、地区内の農業事情などから見て、現行の員外利用を超えて貸し付けを行うことが必要かつ適当であるものとして大臣の指定するものという規定がございますが、これは具体的にはいかなる信連を指すのでありましょうか。
  155. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず第一に、現在の員外貸し出し規制のもうほぼ天井まで近づいてしまっておるということが一つ必要であると思います。それからもう一つは、貯貸率が非常に低い、その当該信連自体について低いというだけではなくて、その信連の会員たる単協についてもおしなべて貯貸率が低いということがもう一つの要件として必要だと思っております。それで、そういう信連につきましては、一般的に員外貸し出しを多少緩和してでも貯貸率を引き上げて均衡のとれた資金運用にする道を開いてやることが必要なのでありますが、さりとて農業以外の世界に乗り出すわけでございますから、貸し出しの審査体制が充実しておるということがもう一つの大事な要件であろうと思っております。  そういう要件を満たしておるかどうかということを総合的に判断をして指定をいたしたいというふうに思っております。
  156. 神田厚

    ○神田委員 次に、信連の員外利用制限につきまして、貸付枠の上限は一五%というふうに言っておりますけれども、一五%とした理由はどういうことでございますか。
  157. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 これは、何と申しますか、この一五%というのは資金量の一五%ということでございまして、現行の員外貸し出しの規制のように、員内貸し出しの規模にリンクして決めるというやり方をしていないところがまず第一の特徴でございます。この点は、先ほどの特例適用信連の指定をするときの基準について御説明を申し上げましたように、員内の貸し出しを伸ばそうにも伸ばしようがない、会員たる単協も資金ポジションがよ過ぎるような状態であるというところに着目して指定をするわけでございますから、そういう信連につきましては、員内貸し出しというのは伸ばそうとしても伸ばしようがないということでございますから、員外貸し出しにつきまして員内の貸出量にリンクして決めるというわけにはいかない、それで資金量に着目をするということでございます。  それから、しからばその場合の一五%ということについての考え方でございますが、これはいろいろな考え方がございます。一つは、現在の信連が集めてきておる資金の性格から見ますと、相当程度は員外からの資金をそういう信連の場合については流入をしておるわけでございます。だから員外からの資金量が相当流入をしているという現実に着目して、員外から流入している資金の割合との関係で、員外向けがどの程度まで許容されるかという考え方が一つございます。そういうめどとして一五%ということを位置づけることもできますし、それからもう一つは、協同組合型の組織であります金融機関の中で、今度御審議を賜っております特例措置のようなタイプの員外利用制限を課しておる例としては、全国信用金庫連合会の例がございます。それとの横並びということを考えますと、全国信用金庫連合会の員外貸し出しの規制というのは、これがやはり資金量の一五%ということになっております。ですから、そういう先例の踏襲と、それから資金の調達面での員外の程度とのバランス論、そういうふうにお考えをいただいてよろしいのではないかと思います。
  158. 神田厚

    ○神田委員 信連の今回の措置が他の中小金融機関等に影響を及ぼすのではないかというふうなことが言われて、心配もされているようでありますが、この点についてはどうでございますか。
  159. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 この点は、まず最初に申し上げておきたいと思いますのは、今回の特例措置が適用になります信連というのは、限られた特定の信連でございまして、一般的にこういう事態が起こるわけではございません。  それで先ほど御質問がございましたように、特例が適用される信連につきましても、資金量の一五%以内という制約がかかっておりますし、さらに、実際問題といたしましては、とりあえず政令で一〇%ということに規定をすることにいたしております。したがいまして、今回の特例措置によって員外貸し出しを伸ばす信連というのは、中小金融機関との関係でも信連がそれほど大きなインパクトを持つはずのあり得ないような都市的な地帯につきまして、かつ、資金量の一〇%以内というごくささやかな範囲でこういう事態が起こるわけでございますので、まず、そういう意味で中小金融機関への影響ということを御心配いただくには及ばないのではないかというふうに思っております。  さらに、つけ加えますれば、先ほどちょっと触れさせていただきましたように、模範定款例に従いまして「農業発展に寄与すると認められる事業等を行なう法人」という限定もございますので、業種的に見ましても無制限にのさばっていくわけではないということがございます。  さらに、この話を実際に運用いたしていきます場合には、中小金融機関に対する行政を所管しております大蔵省銀行局とも十分御相談をしながら取り進めてまいることにいたしておりますので、御心配のないように処理し得るものと確信をいたしております。
  160. 神田厚

    ○神田委員 今回のこの信連の員外枠の緩和措置の効果がどのようになるのか、信用事業としてどういうふうなこれから先の見通しが持てるのか、この点はいかがでありますか。
  161. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 私どもといたしましては、今回、員外貸付枠が拡大をされたからと申しまして、それによって直ちに員外貸し付けがストレートに枠がふえた分だけ容易に拡大をするという事態ではあるまいというふうに思っております。信連にとりましては相当程度新しい取引分野でございますし、各種金融機関の間で相当激しい競争もございます。したがいまして、枠の拡大によって自動的にメリットが得られるというものではございませんが、仮に、その資金量の一五%というのを限度いっぱい活用するということが行われた場合にどういう事態が起こるかということを員外貸付割合のランクの高い上位十の信連について見ますと、その効果によりまして現行二四・二%である貯貸率が三六・二%まで高まる効果があるという、これは仮設例に基づく計算でございますが、そういう計算結果になっております。これを通じまして、このような信連におきます資金運用の形態が有価証券運用に過度に依存するというような不健全な資金運用の状態から脱却できることを期待しておるわけでございます。
  162. 神田厚

    ○神田委員 この特例措置の適用が必要がなくなった場合にはどうするかという問題が一つ残っております。指定を解除する方向をとるのか、一体どういうふうな形にするのでありますか。
  163. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 その必要がなくなれば解除すべきものと考えております。そのように処理したいと思います。
  164. 神田厚

    ○神田委員 さらに、員外貸し付けの対象としてはどのようなものを指導していくのか。農協設立の趣旨に照らして、農業関連産業等に重点を置くべきだと思うのであります。いろいろとまたこれらのことについても問題の指摘がされているのでありますが、この員外貸し付けの対象について明確にひとつお答えをいただきたい。
  165. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  模範定款例に定めております「農業発展に寄与すると認められる事業等を行なう法人」ということで、今度お認めいただくことになれば、その員外貸出枠を利用してもらいたいと思っております。
  166. 神田厚

    ○神田委員 次に、この法律改正案の三番目の柱でありますが、有価証券の払込金の受け入れ等の取り扱いについて員外利用制限を外すということにしているわけでありますが、地方債のほかにどのような有価証券を指定するのでありますか。
  167. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 今回御審議をいただいておりますこの改正は、農協地域社会の中で、地域社会の中でのおつき合いとして地方債を相当現に引き受けている、そういう実態を踏まえて、地方債を相当引き受けておるにもかかわらず元利支払い等の業務が行えないという不自然な事態を解消したい、そういう考えでこういう改正の御審議をお願いしておるわけでございます。したがいまして、現在のところ、地方債以外の有価証券を指定するということは考えておりません。今後、将来の問題として、地域社会の中でのおつき合いとして保有することが相当と認められるような有価証券について、追加して指定することあり得べしとは思っておりますが、現在、具体的にどういうものということは念頭にございません。当分指定するつもりはございません。
  168. 神田厚

    ○神田委員 系統の余裕資金の運用の中で大きな比重を占める有価証券の投資には、常に大変危険が伴うわけであります。いろいろ各地方におきましても問題が起きているようでありますけれども、有価証券保有の適正化を期するために、政府としてはいかなる指導監督を行うつもりでありますか。
  169. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、系統の有価証券運用の実態でございますが、昨年末現在で、単協段階で約二兆円、信連の段階で約六兆七千億という水準に達しておりまして、貯金に対する割合から申しますと単協段階で約七%、信連の段階で約三五%ということになっております。  有価証券運用の内蔵いたしておりますリスクについては、ただいま先生指摘のとおり、私どもも気にしておるところでございます。したがいまして、財務処理基準令に基づきまして運用できる有価証券の種類をまず限定をいたしております。現在、国債、地方債、金融債、特別法人債等一定のものに限ることにいたしておりまして、社債、株式等の運用額は六カ月以上の定期性貯金額の百分の十五以内という制限を課しております。  それからさらに、最近、多額の評価損が発生したという経験にかんがみまして、五十六年の二月及び六月の二回にわたりまして、一つは、「事務処理体制の整備、内部けん制機能および監事監査の強化等を図ること。」それから「安全・確実性の面から農協においては着地取引は行わないこと」にする。それから「有価証券の取得・処分の方法についての自主的な点検の実施」をする、こういうことについて指導通達を出したところでございます。しかしながら、こういうことだけで必ずしも十分な対応というわけにはまいらないわけでございまして、今回御審議をいただいておりますようなことを通じまして、有価証券運用に過度に依存する運用体質を直していくということがやはり基本ではないかというふうに考えておりまして、それが今回の法律改正につきまして御審議をお願いしておる一つの有力な理由でございます。
  170. 神田厚

    ○神田委員 ちょっとこの法案と関係ないのですが、大臣にお聞きをいたしたいのであります。  今回、全中が発表した八〇年代日本農業の課題と農協対策、これは大変多くのいろいろな新しい問題も含んでいるようでありますが、政府としてはこれをどのように評価をし、さらに農政の中におきましてどういうふうにこれを位置づけていくのか、その点について大臣の方の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  171. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま中央会で検討されております問題について、私たちは高く評価をいたしております。今後、これがどのような結論を得るのか、大きな期待を持っているわけでございまして、いま非常に厳しい農業の現状でございますので、すばらしい結論が得られますことを期待いたしているというのが実態でございます。
  172. 神田厚

    ○神田委員 もう一点、法案とは関係ないのでありますが、農協運営につきまして、農協スーパーに関して員外利用と地元業者との調整についていろいろ問題も起きているようでありますが、政府としての指導方針はどういうふうになっておるのでありましょうか。
  173. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先生指摘の点は、私どもといたしましても大変頭の痛い分野でございまして、員外利用の規制を徹底するために、組合員証を発行して点検させるとか、いろいろなことを従来から言ってまいったわけでございますが、そういうことだけでなかなか農協スーパーをめぐる地元中小商業者との間の紛争がうまく処理できないということでございますので、先月、思い切って農協の購買店舗の出店規制を行うことにいたしまして、少なくとも五百平米以上の売り場面積を有する農協店舗については当面出店を自粛させるということにいたしました。それ以下の規模の購買店舗につきましても、地方自治体もかんだ調整と協議の手続を決める趣旨の通達を発出いたしまして、それによって農協の購買店舗の出店計画自体を抑制調整するということによって地元中小商業者との間の紛争を解決していきたいというふうに思っております。
  174. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  175. 羽田孜

    羽田委員長 神田君の質疑は終わりました。  次に、寺前巖君。
  176. 寺前巖

    寺前委員 年金から先に聞きます。聞きたいことは四点あります。順次お聞きをしますのでお答えをいただきたいと思います。  まず第一番目は、年金というものは年がいったら、障害者になったらいまさら働けと言ってもどうにもならないんだから、そのときにそれで生活をすることができるようにあってほしいというのが国民の年金に対する希望であります。また、これは長年にわたって論議されてきたところです。ところが、今回出された法案を見ますと、金の値打ちが変わってきているときに、せっかくスライドでもってその水準に戻してあげなければならないという立場に立っておったスライド方式を、実はおくらすという形になって出てきております。もともと給与が決まった時期と現在の年金のスライドの時期を考えると、一年は違うものです。本来言うならば、もっと接近させるべきものを逆に遠のかせるということは、これは私は年金の基本にかかわる問題だから容認することはできません。ですから、はっきりこの点では今度出されている法律については反対するということを端的に指摘をせざるを得ません。  そこでお聞きします。いま出されている法案は一時的な処置なのか、必ず改善をしてスライドの実施時期をもっと短かくするように方向づけていくのか、どっちの態度をとられるのかお聞きをしたいと思います。
  177. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  今回、御審議を賜っております法律案は、ことしの五月に行います改定について御審議を賜っておるわけでございまして、将来の方向につきましてはいま何ともお答えを申し上げる用意がございませんので、その点はお許しをいただきたいと思います。
  178. 寺前巖

    寺前委員 大臣に聞きます。  年金というのは政治の非常に大きな位置を占める性格のものです。将来どうなるかわからぬというようなことで、そんな無責任な態度で一時期の法律を見ることはできない性格のものです。ですから、総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会というところでは、長期の展望に立ったところの総理大臣に対する答申を出しているところであります。昭和四十九年一月二十八日の社会保障制度審議会の答申に「国民年金の保険料については、昨年答申したとおりである。また、さきの建議の趣旨に沿い、年金スライド制はそのタイムラグの短縮をはかるとともに、インフレーション下における特別な財源調達の工夫とその社会保障各分野に対する適正な配分について、この際早急に検討すべきである。」というふうに前からそういうことについては将来展望に立って常に追求をしてきたのであります。特に、昭和五十二年十二月十九日の制度審におけるところの建議というのはもっと端的にこう言っております。「六十五歳に達して以後どれだけの年金が確実に給付されるかは、老後の生活安定のための必須条件である。その意味では、年金は所得保障のためのものだと言わなければならない。」ちゃんとこういうふうに長年にわたって総理大臣の諮問機関であるところでは、長期展望に立って個々の法律についても検討をし、毎年答申を出してきたものです。  大臣、どうですか。そういう展望のもとにおいて、いま二つの動きがあるわけです。社会保障制度審議会は食える年金でなければだめなんだ、明確にそれを打ち出すべきだ、そのためには短縮してスライドをやっていかなければだめだ、こう言っているわけです。  ところが、一方で臨調の方ではどう言っていますか。臨調の第一次答申を見ると、「支給開始年齢の段階的引上げ等給付の内容と水準を基本的に見直し、保険料を段階的に引き上げる等、年金制度の抜本的な改正を検討し、早急な実施を図る。」こちらでは内容の水準を下げるという方向が具体的に出てきているし、それがいまの法案となって出てきているわけでしょう。ですから私は、一時的なのか将来の展望に立つのか、これは基本問題だからはっきりしなさい、長年にわたって、総理大臣の諮問機関でははっきりと所得保障として位置づけなさい、こう言っているのです。あなたはどっちの立場をとるべきだというふうにお考えになりますか。
  179. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 年金についての将来の問題については、ただいま御指摘のようにいろいろな機関で提案があるわけでございまして、したがいまして、私たちとしては将来の年金あり方についてはやはり今後一元化をするということを基本としながら、十分これから検討をしていかなければならない問題である。また、いま年金の抱えている課題というものは非常に大きいと思うのですよ。したがいまして、私たちとしては極力年金に対する安定姿勢、安全性というものを確保するために今後とも努力をしてまいりたい、かように考えているのでございまして、今回の法案についてはいま局長から答弁させたような理由によるものでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  180. 寺前巖

    寺前委員 基本的に、率直に指摘さしてもらいます。年金というのは老後の問題、障害者の問題、それは非常に大きな政治の問題です。それですべてを期待を持つ、政治があってよかったなあと言える性格のものです。中途半端な態度ではこの問題は許されない問題だ。私はあえてもう一度強く、生きる問題として生活を守る問題としてもっと真剣に考えていただきたいということを強調したいと思います。  第二番目に、昨年、農林年金法改正によって遺族の範囲の見直しの問題が出ました。それまでは組合員期間が十年以上である者の配偶者については無条件に遺族年金が出ました。しかし、組合員期間十年未満と同じように、十年以上である者の配偶者についても死亡した者との生計維持関係が必要だというふうに去年の法改正で変わったわけです。いままでならば当然遺族年金をもらえていた人が、遺族年金の受給資格がなくなるという事例が新しくここ一年の間に生まれてきたわけです。  私のところに来ている手紙の中にこういうのがあります。ことしの三月に農協に勤続二十五年の女性の職員が亡くなられました。四十四歳です。遺族を見るとお子さんが二人、十六歳と十二歳、入院中のおばあさん、そして農協に勤めておられる御主人です。ところが、この御主人の年収というのが二百四十万強。そうすると、奥さんよりもだんなさんがたくさん収入があった。それが二百四十万強になっている。ですから、あなたはせっかくですけれどもお渡しするわけにはいきませんということになってくるわけです。奥さんと共稼ぎによって一家の生計を確立しておったものです。その奥さんが亡くなっている。奥さんは万一のことを考え年金というのをずっとかけてこられた。ところが途端に奥さんが亡くなって、収入が入らないだけではありません、遺族年金もまた入らないという事態になってくるわけです。これは家庭にとっては非常に深刻な問題だと言わなければならぬ。地方公務員共済の場合には、昭和五十六年でいうならば、だんなさんが五百四万までの収入の人だったらそういう場合でもめんどう見ましょうということになっておる。ことしの法律の成立によると、五百二十八万までよろしいということになっている。そうすると、農林年金との間には二倍の差がついておる。私は年収において五百二十八万といったって、それはそのくらいのめんどうを見なかったならば、夫婦共稼ぎで一家をなしている以上は、だめだろうと思うのです。同じように共済の制度でありながら、何でこういう配慮ができないのだろうか。二百四十万という金額を決めた時期はいつなんだ、昭和四十八年というずっと前の時期ではありませんか。これだけの期間、同じ二百四十万のままでなぜ据え置いておかなければならないのか。私はひどい話だなと遺族の立場に立つならば強く感ずるものです。これが一点です。  もう一点は、奥さんが亡くなられて、いまのところはだんなさんの収入があるかもしらないけれども、数年たったらやめてしまうという事態になったときには、一層深刻になるのじゃないでしょうか。とするならば、その数年たった先に収入ががたんと落ちてくる段階のことを計算することも、また一方で考えなければいかぬのじゃないだろうか。私は、そういう問題について、認定基準の運用という皆さんが出しておられる基準の内容を見せていただきました。第三条の一の(3)では「組合員の所得を超える所得を有する者でも、組合員の所得を超える所得を将来も継続して得られるという心証の得られない者」また(5)では「組合員又は組合員であった者が死亡した当時において、二百四十万円程度以上の恒常的な収入を有すると認められる者以外の者」は受給資格があるとされている。この項を考えてみたら、運用の仕方によっては十分に配慮してめんどうを見ることができるというふうに思うのですが、たとえば、このだんなさんが三年たったらやめるということになったらどうなるのか、四年たったらどうなるのか、五年たったらどうなるのか、それはその人の家財道具一切、全体の財産を見て検討するというのか、そこはどういうふうにこの運用がされていくのだろうか。  私は、せっかくの年金期待をかけているところの多くの勤労者の立場考えるならば、最大限の運用というのはどういうふうになされるのかということを第二番目にお聞きをしたいと思うのです。まずそれだけやってもらいましょう。
  181. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、認定基準によりますと、例の所得の比較問題でございますが、「組合員の所得を超える所得を将来も継続して得られるという心証の得られない者」というふうに書いてございます。ですから、現状において組合員の所得を超えているからといって、機械的にだめだということになるようにはなっておらないわけであります。だから、将来も継続して得られるという心証がなければ救済をし得るわけでございます。  それからさらに、二百四十万円の問題につきましても、「二百四十万円程度以上の恒常的な収入を有すると認められる者以外の者」ということでございますので、恒常的な収入というのが何であるかということの解釈問題として救済し得る余地はあるわけでございます。その点は先生の御指摘のとおりであろうと思います。  それから、二百四十万円という金額が地方公務員の場合と比べて不均衡がある、あるいは決めてからずいぶん年数がたっておるではないかという御指摘の点につきましては、私どもも、地方公務員の場合と金額が異なる、あるいは決めてから若干の年数がたっておるということは、先生指摘のとおりだと思います。現在の段階において二百四十万円というのが果たして最善の数字であるかどうかということについては、研究をする余地のある問題であるというふうに思っております。
  182. 寺前巖

    寺前委員 言いたいことがありますが、次に移ります。  次に、全共連が七月からスタートを予定しておられるところの適格退職年金制度についてお聞きをいたします。  これは一番大きな問題は、企業年金の場合と同じように、インフレによるところの目減りをどうしてくれるのだという問題に私はなるだろうというふうに思います。この適格退職年金制度に、そういう意味ではスライド制という問題は考えないのかどうかというのが一つです。  それから二番目に、年金資金を運用をして運用利益差というものが生まれてきます。この運用利益差というものを目減り防止の財源として有効に使っていくというわけにはいかないのだろうか。これが二番目です。  それから三番目に、その適格退職年金制度ですが、一時金の選択とそうでない年金と二つの問題が出てくると思うのです。そこで、その選択は自由にできるのかどうか。  この三点についてまずはお聞きをしたいと思います。
  183. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず最初に、適格年金が物価スライド制を有するや否や、有しないとすれば物価スライド制を導入することができないかどうかという第一のお尋ねでございますが、この点につきましては、現在の適格年金は物価スライド制をとっておりません。それで、物価スライド制を導入しようといたしますと、現在の設計より相当な掛金負担の加重が予想される、あるいは長期的な物価変動の織り込み方というのは設計上きわめてむずかしい、そういう問題がございまして、現在の適格年金には物価スライド制はとっておりません。これは必ずしも全共連がやります適格年金だけの特殊事情ということではございませんで、信託、生保が扱っております適格年金につきましても同様に物価スライド制というのは現在のところ行われておらないわけでございます。  それから、年金の資金を運用した場合の利差益の使い方がどうなっておるかという問題でございますが、この運用益のうち、まず予定利率五・五%相当分については、これは設計に基づいて積立金に充当されております。これを超える利差益につきましては、まず過去勤務債務に係る積立金に充当することにいたしております。それで、過去勤務債務に係る積立金に充当して残余があります場合には、これは契約者たる農協に割り戻しをしております。この割り戻された金額につきましては、これは特段の使い道の限定はございませんので、契約者たる農協がそうしていいというふうに考えれば、それを掛金に充当して年金額の増額を図ることは可能でございます。ですから、そういう意味では、物価スライドの効果を十全に持つかどうかはわかりませんが、物価上昇分の何がしかはこういう方法で補てんをするということは、その気になれば可能でございます。  それから、一時金との選択制の問題でございますが、まず、退職年金の支給要件が満たされない場合、これは当然一時金しかないわけでございまして、選択ということではございません。選択という問題が起こりますのは、退職年金の支給要件を満たしている場合であっても、受給者の選択によって一時金の方がいいと言えば一時金になるという場合でございますが、これは、次のような場合は申し出により一時金が選択し得ることになっております。  一つは、災害でございます。それからもう一つは、重疾病あるいは重度の心身障害または死亡、それから、住宅の取得、それから、生計を一にする親族の婚姻または進学、債務の弁済、その他前各号に準ずる事実というのがあれば一時金を選択し得ることになっております。したがいまして、無条件に一時金を選択し得るということではございませんが、まとまった金が要りそうな原因として目ぼしいものは、一応選択一時金を選択し得る可能性のケースとしては網羅しているように思っております。
  184. 寺前巖

    寺前委員 それで、厚生年金の場合であったら、その基金制度の意思決定機関として代議員会というのを設けて、そして事業主と加入者の代表によってその意見を反映して運営をやっておるということが行われていますが、この適格退職年金制度においては、そういう意思決定機関というのが編成されるのですか、いかがなものですか。
  185. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 厚生年金の場合に代議員会という制度があるのは先生の御指摘のとおりでございますが、これは従業員の保険料負担があって、それで厚生年金保険の一部を代行しているという性格がございますので代議員会が設けられている、そういう事情であるというふうに承知をしております。それで、適格退職年金共済の場合にはこのような公的年金としての性格がないということで、このような仕組みをとるということにはなってないわけでございますが、ただ、年金の問題は農協職員の労働条件の重要な構成要素でございますので、現実には、いかなる年金が支給されるかということにつきましては、農協は就業規則の中にこれを記載しておるわけです。それで、労働基準法によりまして就業規則の記載事項というのは、その前に当然従業員の意見を十分聴取しなければならないということになっておりますので、そういう意味で、従業員の意見を述べる機会というのは保証されておりますし、それからさらに、就業規則の記載事項でございますから、農協労働者がこれに不満があれば団体交渉を通じて労働協約を締結するという形で意見を使用者側に突きつけていくというルートはあるわけでございます。
  186. 寺前巖

    寺前委員 直接的な運営に対する意見を吐く場を検討されてもいいのじゃないかと思いますが、それはおいておきます。  最後に年金分野で、せっかく年金のことですので、厚生省お見えでごさいましょうか。——現在の厚生年金の場合には、初診時から五年以内に障害等級に該当しないと障害年金が受けられないということになります。ところが、これでは現状に合わないという問題がいろいろ出てきます。慢性肝炎とか腎炎とかあるいはリューマチとか、目でいえば緑内障とか、慢性病の病気にかかって進行していく場合、相当時間がたってから障害が進んでくるというような問題が出てくると思うのです。それが五年以内ということになってくると、少しそこでは矛盾が起こってくる。しかも、それだけではなくして、国民年金や共済の場合とそれぞれの取り扱いが違っていいと思うのです。こういうことを考えると、実態に合うようにもっと統一的な改善方向を打ち出されるべきではないだろうかというふうに思うのですが、どういうふうな見解を持っておられるのか、どういう作業をしておられるのか、お教えをいただきたいと思います。
  187. 山口剛彦

    ○山口説明員 御指摘いただきましたように、厚生年金の事後重症制度、これは昭和五十一年の制度改正によって導入されたものでございますが、御指摘ありましたように、これによりまして進行性の傷病等についても障害給付が支給されるというような点で、大変改善が図られたわけでございます。  この制度を導入いたしましたときになぜ五年に限ったのかということにつきましては、いまさら申し上げるまでもありませんが、厚生年金、民間の労働者の方々の相互扶助の考え方によります社会保険システムをとっておりますので、その保険事故であります傷病が加入期間中に発生したものかどうかということが非常に大きな要因になるわけでございます。したがいまして、これを判断する材料といたしまして、現行の制度の中では医師法でカルテの所持保存義務が五年ということで定められておりますので、そういった点も考慮いたしまして五年という期限を切っておるわけでございます。  御指摘は、この五年というものを撤廃すべきではないかということでございますが、御指摘いただきました問題点があるということは私どもも十分認識をいたしております。また、実際の運用面におきましても、その廃疾を認定すべき日におきましてその時点だけを厳密に見るということではなくて、一年くらい先までも実際の考慮の判断に入れるとかいろいろ工夫をしているわけでございますけれども、まだ救済し切れないケースがあるということは私どもも十分認識をいたしております。先ほど申し上げましたような原則等考えますと大変むずかしい問題ではございますけれども、慎重に検討をさせていただきたいと思っております。
  188. 寺前巖

    寺前委員 時間の都合がございますので、年金に関する問題はこれで終わります。  次に、農協法関係する問題について移りたいと思います。どうもありがとうございました。  まず第一番目に、昭和四十八年の改正で農林中金がどういうふうに活動しているかという問題について、私は気になるわけです。系統貸し出しが、四十八年を見ますと一兆四千六百六十五億円であったものが、五十五年になると一兆六千九百十億円と一・一五倍に農林中金の貸し出しの数字が出ています。関連産業に対する貸し出しを見ますと、一兆二千九百三十二億円が三兆三千四百八十一億円と二・五九倍になっている。農林中金の資金運用全体の中に占める割合は系統貸し出しが一三・二%で、関連産業への貸し出しが二六・一%とどんどんそちらの方が倍の位置を占めるようになってしまった。法改正というものが、結局、本来の業務をどんどん変えていく性格になっている。しかも、これだけの関連産業への貸し出しをやっている金融機関といえば大和銀行、ここの国会の中にもありますが、ああいう銀行よりも上回って、そうして東海銀行や太陽神戸銀行などに匹敵する金額になってきているわけです、その大手の企業に対する融資の金額がですね。建設業とか、鉄鋼とか、電気、海運、商社、スーパー、あらゆる分野に、資料を見せてもらいますと、ずっと広まっていくわけですね。結局、農民から集めたお金がそういう大手産業の金融の資金になっている。別に私は商社やスーパーを悪く言うわけじゃないのですけれども、豚肉の大量輸入をやって国内価格を暴落させたあのスーパーや、あるいはモチ米の買い占めに手を出して問題になった商社があります。農民利益に相反するようなことをやるところにともかく金融ということで金が回っていって、結果的に、農民が泣かされるというような活動になっているというのはやはり否めない事実だと思うのです。こういうことを考えると、私は、農林中金が法改正によって系統への貸し出しよりもそういうところの方が大きくなってきているという実態というのは、何か改善をしなかったら農民のための農協農民のための農林中金ということにならないのではないんだろうか、今日、農林中金の問題をめぐってそのことを反省すべきではないかと思うのですが、この点どういうふうにお考えになるでしょうか。
  189. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  確かに、農林中金の資金運用の中で、関連産業貸し出しが大きな比重を占めるに至っておりますことは御指摘のとおりでございます。ただ、この関連産業融資というのは、農林中金の所属団体でございます農林漁業者を直接または間接の構成員とする団体に対する融資を行った後で、余った資金の運用の一形態として、どうせ余ってどこかへ貸すのであれば、農林水産業の発展を図る見地から、その必要とする事業を営む法人に貸すことにする方が得策である、そういう趣旨でやっておる仕事でございまして、農林水産業の発展自体が農林漁業生産に必要とする資材とかあるいは農林水産物の加工、販売等の事業と大きく相互依存関係があるわけでございますから、所属団体に貸した残りの金の使い道としては有意義な融資先であるというふうに考えております。それで、農林中金といたしましては、貸す以上はやはり安全、確実な運用を図るということは預金者の負託にこたえるという意味でも当然のことでございまして、安全、確実な運用ということは結果的に大企業の比率が高くなるということもやむを得ないことではないかというふうに思っております。  それで、商社とかスーパーに融資をしておるではないかという点でございますが、これらの商社とかスーパーもあるいは生産資材あるいは農水産物の取り扱いという意味で関連産業法人として融資をしているわけでありまして、いま申し上げましたような関連産業融資に対する位置づけの中で、商社やスーパーに対する貸し出しもやっておるわけでございます。それで、このような商社、スーパーの行動が農林水産業者の利益に必ずしもそぐわないような行動をとっている場合があるではないかという御指摘でございますが、これは必ずしも農林中金の融資があるからそういう行動をやっているというわけのものでもございませんで、むしろ農林中金のように農林水産業者が組織しております金融機関から融資が行われているということが、商社とかスーパーの行動が農林水産業者の不利益にわたるような方向に向かうことにいささかなりとも制肘的効果がありこそすれ促進的な効果があるということはまずあるまいというふうに思っております。
  190. 寺前巖

    寺前委員 まあ金が残っておるのだから貸してもうけたらいいじゃないかという発想になっていくと、農民のためのわざわざのこういう金融機関をつくってきた、こういう事業を許してきた意図というものの性格が変わっていくのではないか。しかも、いまもおっしゃいましたけれども、たとえばかずのこの買い占めで一躍有名になった北商というようなものを考えてみたときに、金が残っているから貸してやって、それでしかも焦げつきまでつくられてたまったものじゃないというようなことを考えると、この六十億からの焦げつきをやったああいう資金の貸し付けというのはどうだったのだろうか。私は、全体としても農林中金の貸し付けの業務の節度のあるやり方というのは研究する必要があるように思うわけです。  そこへ持ってきて今度は、信連に対するところの法の改正です。ここではその員外利用の大幅な緩和という問題が出てくるわけですが、やはりこれもその延長線上になっていくのではないのだろうか。どういう要件でもって員外利用の大幅緩和をする信連というものを指定していくのでしょうか。一たん指定してしまったならば、それは永久に緩和信連ということになっていくのでしょうか。要件をきちんと明示しておかなかったならば、結局農林中金の歩んだ道と一緒になっていくのじゃないか。加えて、この信連という場合になってくると、今度はその内部の体制において貸し出し審査体制というのが弱体の体制であるだけに、私は、新しいまた一層の問題が出てくるのではないかと思うのですが、その要件、どういう時期になったらどういうふうな措置をとるのか、やめるのはどういう時期だとか、あるいはそういう貸し出し審査体制についてはどういうふうに改善をされるのか、お答えをいただきたいと思います。
  191. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、員外貸し出しの特例を適用すべき信連の指定についての考え方でございますが、私ども考えておりますのは、現行の員外貸し出し規制の枠の天井につかえそうになっている信連でなければこれを指定する意味がないわけでございますから、まず、そういう信連であることが一つの要件になると思います。それからもう一つは、今回の措置のねらいが異常な貯貸率の低さという形で信連の資金運用の状態が不健全になっておるということを是正をするということがねらいでございますので、貯貸率が低いということがもう一つの要件であろうと思っております。それからもう一つは、貯貸率が低いからといって、会員たる単協に貸そうと思えばまだ貸し出しを伸ばす余裕が十分あるのに、安易に員外貸し出しに依存して貯貸率を引き上げよう、こういう企てを容認するためにこの特例を適用すべきものではございませんので、これは会員たる単協に貸そうと思っても貸し出しを伸ばす余地がないということを見きわめる必要がもう一つございます。そういう意味で、会員たる単協の貯貸率も低い、会員たる単協自体が資金ポジションがよ過ぎて信連に借りに来るということが考えられないということがもう一つの要件であろうと思っております。それから、先ほど来先生指摘の貸し出しの審査体制が充実をしておるということがさらに要件として加えられるべきであると考えております。  こういう条件を具備いたしました信連を指定することにいたしたいというふうに考えておりますが、一たん指定されたからといってその地位に安住してもらっていいというつもりは毛頭ございませんで、これらの前提条件の少なくとも一部が欠落されるような事態になりますれば、指定は解除さるべきものであるというふうに考えております。  それで、今回御審議を賜っておりますこのような特例措置が、中金法改正の先例にかんがみて、信連の農業離れ、農民離れの傾向をさらに助長するのではないかという御心配についてでございますが、実は、現在でも信連の資金運用につきましては、有価証券運用でございますとかあるいは金融機関貸し出しという運用形態につきましては一切制限がございません。そういう意味では、信連では現行法のもとにおきましても、相当の資金量が現に員外に流出をしておるわけでございます。それで私どもは、現行法のもとでは信連から員外に資金が流出する場合の形態が有価証券運用に異常に偏っておるということが、信連の資金運用を非常に不健全なものにしておるというふうに認識をしておりまして、そういう事態を是正するためには、今回御審議を賜っておりますような法律改正が必要であるというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、私ども考えておりますのは、系統資金の外部への流出を助長するということをねらいとしているわけではございませんで、流出の形態が有価証券運用という特定の流出の形態に奇形的に偏っておるために、信連の資金運用が非常に不健全、いびつな形になっておることを是正したいということがねらいでございまして、私どもとしては、系統資金の系統外への流出を助長するということは考えていないわけでございます。もちろん、員外貸し出しが行われれば、それが必ず有価証券運用に向けられておった資金が振りかわるだけであって、員外への流出を助長する効果は全く持たないかというと、そう断言できるわけではございませんけれども、私どもの意図しておりますところはいま申し上げたようなことでございます。
  192. 寺前巖

    寺前委員 私は、農民から集めたお金を積極的に農業振興のために使っていくところにこの業務の重要な使命があったと思うのです。そういう点からどんどん離れていく方向ということを心配するわけですが、そういうことを考えてみると、公庫資金というのは農林漁業金融公庫というのがありますが、財投から原資を入れて運営しています。この公庫資金というのは、系統資金が不足しておった昭和二十六年に発足しているわけですが、今日ではこの系統資金がだぶついているという事情下になっているのだから、積極的に農林漁業金融公庫資金にこれらの金を使っていくということを研究してみたらどうなんだろうか。  公庫資金は、五十一年で融資枠が四千九百十億円から五十六年七千九百七十億円とうんとふえています。ところが、農業近代化資金の方は五十一年以来四千五百億円です。考えてみると、農林漁業金融公庫資金の枠というのはずっと出超になっているのだから、積極的に使うことを考えるということは大事なことじゃないか。ところが現実は、これをやろうと思うと公庫法の二十四条を改正しなければならぬということになる。積極的にそういうところにメスを入れていくということをなぜ考えないのだろう。あるいは、農業近代化資金と公庫資金の分野調整をして、近代化資金の枠を拡大する。たとえば、両資金にダブっているところの家畜の導入資金、施設資金などは、近代化資金の金利を下げて償還期間を長くするなどということを前提に近代化資金が分担をする。何かそういうふうに調整をやって積極的な役割りを担っていく、そういうようなことこそもっとやらなかったならば、イージーに、金が残っているのだから貸すのだということでは、農協という組織がいろいろな意味において問われてくる結果になってくるのだろうというふうに私は思うわけです。その点どういうふうに考えられますか。
  193. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいまの寺前先生の御指摘はまことにごもっともな問題提起であると思います。それで、いろいろ考えてみるべき問題があるわけでございますが、まず一つは、農林漁業金融公庫に系統資金を活用することはできないかという問題でございます。実は、農林漁業金融公庫の資金の主力をなしますのは、土地改良でございますとか林道でございますとか造林でございますとか基盤整備関係の資金で、大変償還期間の長いものでございます。それで、農協系統の場合には確かに資金は量的には大変だぶついておるわけでございますが、そういう基盤整備型の投資に充当し得るほど長期間固定をしていい、そういう性質の資金であるかどうかということにつきましてはいささか問題なしとしない点がございます。その点が公庫が受け持っております融資対象の分野の大変ユニークな点でございまして、その点、系統資金をそのような使い道に充当する場合の適格性ということについてちょっと問題があるように存じます。  それからもう一つは、農協系統それぞれやせても枯れても金融機関でございますので、農業者の資金需要があるということであれば、農林漁業金融公庫を迂回して資金を御用立てするということではなくて、直接融資をするというのが金融機関としてあるべき姿勢ではないかと思います。そういう意味におきましては、農業近代化資金をさらに拡充をして、現在、農林漁業金融公庫に向けられておるような資金需要のうちの幾らかでも農業近代化資金の方へシフトさせるということについては、私どもも研究をしてみるべき必要があると存じます。  ただ、現在融資対象になっております個々の施設の名前を見まして、農林漁業金融公庫と近代化資金とで重複しておるではないかという御指摘がございますが、この点につきましては全国津々浦々の農協の資金ポジションというのはそれぞれいろいろ落差がございますので、ところによっては必ずしも長期資金とは言えないようなものでも、農協が十全には対応し切れないというような分野もあるわけでございまして、そういうところは品目のリストから言えば公庫資金と近代化資金とがダブっているように見えますけれども、逆に言いますと、ある程度ダブらせておかないと落ちこぼれが生じかねないということがございますので、なかなかようかんを切ったようには整理しにくいわけでございますが、近代化資金の拡充にさらに努めるべきであるという点については、御指摘ごもっともに存じますので、研究させていただきたいと思います。
  194. 寺前巖

    寺前委員 私は、こういうやり方をしていったら次には単協という問題が出てくるんではないだろうかというように思うのです。単協も緩和という方向に行かざるを得ないということになりませんか。どういうことになります。
  195. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 まず、先生指摘のような事態が仮に到来するといたしますと、恐らくわが国の農業協同組合制度の根幹にかかわるような大問題でございまして、私どもとしては絶対そういう事態を招来させてはいけないと思っておるわけでございます。幸いにして現在、単協の段階では員外利用規制の上限につかえそうになっている単協というものはごく例外、ほとんど皆無といってもよろしゅうございますし、何しろ、何と申しましても直接農民と向かい合って農業者の資金需要を直接受けて立つ立場にいるのが単協でございますので、先生指摘のような事態に立ち至るということは万々あるまいと思っておりますが、同時に、そういう事態を招来することが絶対あってはいけないというふうに私どもも決意をしております。
  196. 寺前巖

    寺前委員 時間が余りありませんので、私は、最後に三つの問題点についてお答えをいただきたいと思うのです。  一つはオンライン化の問題です。オンライン化の問題について、全国農協全銀内為制度加盟推進本部というところが、「農協の全銀内為制度加盟にかかる組織の整備方針」というのを読みますと「農協合併が完了することが、農協の全銀内為制度加盟を実現するうえでのキーポイントと考えられる。」と書いてある。農林省は、合併をしないことにはオンライン化できないのだ、だからオンライン化するためには、逆に言うたら合併させるのだという方針をとっておられる方に対してどういうふうにお考えになっているのか。これがオンラインの一点です。  オンラインの第二点は、これは県名を挙げるのはどうかと思いますが、たとえば、滋賀県の農協中央会連合会が出しておられる「全銀内為替制度加盟について」という文書を見ますと、ここでは「全銀内為替制度では農協であれば全農協が、信用組合であればすべての信用組合が、同時一斉に加盟することを条件にしています。農協によって加盟したり、加盟しなかったりは認められません。業態の同時一斉加盟が全銀内為制度加盟に欠かせない条件です」とまで、ともかく全部入れ、入らなんだらだめなんだ、こういうふうに言い切っているのです。そういうものなのだろうか。これがオンライン化に伴うところの二番目です。  オンライン化に伴うところの三番目は、昭和四十八年に自己為替取り扱い認可基準というのを大蔵省銀行局長と農水省の経済局長のお名前で通達を出しておられますが、これではかなり厳しい認可基準になるのだけれども、これは緩和をしなかったらいけないのじゃないでしょうか。  第四番目に、これのオンライン化をすることによって莫大な金がかかる。小さい農協においていろいろな問題が起こってくる。それを強引に進めて合併させていくというやり方ではなくして、母店方式というのもありますよ、そういう指導をされるべきではないのだろうか。  オンラインについて、この四点についてお答えをいただきたいというのが一つです。  それからもう一つの問題は、これと同時に、金融機関が週休二日という問題を出しています。週休二日をやろうというのだったら、全銀協の方で言っていますが、半年間の準備をやらなかったらできないということを言っているわけです。いまの体制で来年の四月から実施をするということを可能にするのかどうか、それがオンラインに関係する問題として出てきます。  そしてもう一つは、店を閉めるということになったら、そこの人をよそへ持っていって働かさなければならぬだろうという意見を言う人がおります。しかし、労働省の指導方向というのは、週休二日というのは時間短縮を目的とするのだということをわざわざ通達で関係知事さんの方へ出しています。農林省はその立場をとられるのかどうか。これらについて一括してお答えをいただきたいと思うのです。
  197. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず最初にオンラインについて四つのお尋ねがございましたが、まず業態ごと一括加盟という点からお答えをさせていただきます。  業態ごと一括加盟というのは、オンライン化に伴いまして為替を引き受ける場合に、何とか県何とか村農業協同組合は全銀の内為制度に加入しているかどうかということを一々台帳をひもといて調べた上でお引き受けをするというのでは、そういう繁雑な仕事をすべての金融機関にお願いすることはできないわけでございまして、農協と名がつけば全部入っている、信用金庫と名がつけば全部入っているということでなければこの制度にはのせられない、そういう事情がございますので、これは私どももやむを得ざることであろうというふうに思っております。  しからば、これと四十八年に制定いたしました内国為替取り扱いの承認基準との関係についてでございます。そういうことでございますので、業態ごと一括ということでございますから、全部の農協が一斉につき合わなければいけないわけでございますが、その中で四十八年通達をそのまま存置しようとすれば、無理やりに貯金額が十億円以上になるように合併しなければいけないとかそういう問題が起こってくるわけでございます。それで私どもといたしましては、農協合併というのはオンラインのために合併をするなんということは邪道でございまして、その利害得失を組合員の皆さん方が冷静に比較考量された上で、合併の当否をお決めいただくべきものであるというふうに存じますので、そのためには四十八年通達は緩和する必要があるというふうに考えております。緩和の中の一つの形態としては、弱小の単協につきましては当面、為替業務のうちのいろいろな事務を信連が代行するというような便法も取り入れまして、すべての農協が無理なく内国為替を扱い得るようにしていきたいというふうに考えております。したがいまして、合併というのも一つの処理の形態ではあり得ようかと思いますが、本末を転倒してオンラインのために合併することを指導していただくのは農林水産省としてははなはだ不本意に存じておりまして、むしろそういうやむを得ざる場合には、四十八年通達の緩和によって信連代行等も含めて対処してまいりたいというふうに考えております。  それから週休二日制の問題でございますが、週休二日制の問題につきましては準備期間が要ることは御指摘のとおりでございます。私ども承知しておりますところでは、全国農協中央会では単協レベルでの組合員の合意を得ることを前提にして、来年の三月までに週休二日制に切りかえるためのコンセンサスづくりを実現することを努力目標にして、せっかく努力中であるというふうに承知をいたしておりますので、その方向で結実することを私ども期待をしております。  それから週休二日制に伴う労働条件の変更をめぐる先生の御心配の点でございますが、私どもといたしましても、週休二日制というのは当然労働条件向上の方向に向かっての週休二日制ということでなければならないということでございますので、細部の処理の仕方につきましては、これは労使間の交渉でお決めいただくことでございますから、私どもは立ち入ることは控えますが、方向としてはそのような方向であるべきものであるというふうに心得ております。
  198. 寺前巖

    寺前委員 お約束の時間が来ましたが、一問だけ大臣に最後にお願いしたいと思います。  先ほどから私申し上げておりましたように、農林中金とかあるいは今度の信連の緩和の問題などが出てくると、全体として農協の存在というものがおかしなことにならないだろうか。私は、そういう危惧から今度の法案に対しては反対をするものです。しかし、同時に農協という分野については、まだまだいろいろな分野考えてみる必要があると私は思うのです。たとえば、農林省の統計情報部の資料を見ても、昭和五十四年度の農業就業人口は六百七十三万人ですが、そのうち四百二十一万人、すなわち六二・三%が婦人だ、こういうのです。ところが組合員の中の婦人というのは八%です。働いているのは過半数が婦人でありながら、組合員になっているのはたった八%。まして組合の役員に進出をしているのは〇・〇三%です。一般の団体の場合だったら御婦人は〇・三%まで進出しているという。農協の場合に限ってこれだけおくれているのだ。僕は、婦人の地位の向上のためにも、積極的な活動を農水省としてはやらなければいけないというふうに思うのです。そういうことから考えるならば、全国で婦人の農協組合員が一〇%以下というところが二十九県ある。婦人役員についても、全国平均にいっていないところがこれだけある。ちゃんと調べて、そして具体的に改善計画を農水省として指導していくということをやっていく必要があると思いますが、御所見を聞いて、終わります。
  199. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農村における婦人の役割りというのは非常に大きいと思うのでございます。したがいまして、それが農協活動に与える影響も非常に大きいわけでございまして、いま御指摘の問題等については、それぞれ自主的な団体でございますから、私たちとしても、極力そういう線に沿うて指導はいたしますものの、やはり農協農協として自主的な共同組織でございますので、そういう点はおのずと農協の中から出てこなければならない問題だ、私はかように考えております。
  200. 羽田孜

    羽田委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  201. 羽田孜

    羽田委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、農業協同組合法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  農業協同組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  202. 羽田孜

    羽田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  203. 羽田孜

    羽田委員長 この際、本案に対し、渡辺省一君外四名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。田中恒利君。
  204. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合を代表して、農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   わが国農業をめぐる内外の厳しい諸情勢に対処し、農業の新たな展望と、その振興を図るため、農協組織の果たす役割はますます重要となつてきている。   このような重大な使命に応え、その責務を全うするため、農協組織としては、最近における社会経済環境組織基盤の変化に積極的に対応し、組合員への最大奉仕という農業協同組合本来の目的に即した組織事業運営の展開を通じ、協同組合としての特性を発揮すべきことが求められている。   よつて、政府は本法改正を機に左記事項に留意しつつ農協組織がその本来の使命を達成できるよう適切な指導、監督を行い、その運営の健全かつ適正を期すよう努めるべきである。        記  一 農協連合会を通じ、執行体制の整備と責任体制の確立を図るとともに、農業生産の拡大強化に力を注ぎ、協同活動を強化して、営農生活指導を軸におく農協組織事業の展開に努めること。  二 農協連合会農業経営の拡大発展を基盤におく経営強化し、信用共済事業に依存している経営体質を改め、各種事業の有機的連携を確立して、事業運用の効率化、経営の刷新強化を図ること。    特に、農産物販売事業については、地域農業の再編に対応し、組合員期待に応えられるようその販売機能の拡充に努めること。  三 金融機能については、系統信用事業の効率化・コスト低減を図り、組合員営農生活面の資金需要に積極的に対応すること。    なお、金融機関のオンライン体制の拡充に即応し、事務処理体制に万全を期するとともに、信連の員外融資については、地域還元を基本とし、かつ、融資の健全性に十分配慮した運用を確保すること。    また、週休二日制については、農協においても他の金融機関の動向に即し円滑な導入を図ること。  四 地域社会との調和を図り、組合員中心事業運営を徹底するため、員外利用制限の規定を遵守させ、購買店の設置・運営の改善、さらには協同会社の設立・運営について適正な措置を講ずるとともに、一部農協事業運営に関する内外からの批判については指導の徹底を図り、これを払拭すること。  五 農協連合会の健全運営を維持するため、内部監査体制の整備充実を図るとともに、行政庁による検査の充実を図ること。  六 今後の農業、農村の変化を展望しつつ、都市農協の将来のあり方について、長期的課題として取り組むこと。   右決議する。  以上の附帯決議の内容につきましては、委員会の審議を通じ、委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明を省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  205. 羽田孜

    羽田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  渡辺省一君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  206. 羽田孜

    羽田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、田澤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田澤農林水産大臣
  207. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力いたしてまいりたいと存じます。     —————————————
  208. 羽田孜

    羽田委員長 次に、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について議事を進めます。  この際、本案に対し、亀井善之君提出の修正案並びに串原義直君外四名から、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合共同提出の修正案が、それぞれ提出されております。  両修正案について、提出者から、順次趣旨の説明を求めます。亀井善之君。     —————————————  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  209. 亀井善之

    ○亀井(善)委員 私は、自由民主党を代表して、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  修正案は、お手元に配付したとおりでありますが、技術的な条文でございますので朗読を省略し、以下、修正点を簡単に申し上げます。  修正内容は、原案において、「昭和五十七年五月一日」と定めている施行期日について、すでにその期日が経過しておりますので、これを「公布の日」に改めるとともに、原案において、昭和五十七年四月一日施行となっている掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の改定に関する規定について、「施行」を「適用」に改め、これに伴う必要な経過措置の整備を行おうとするものであります。  以上が、修正案の趣旨及び内容であります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  210. 羽田孜

    羽田委員長 次に、串原義直君。     —————————————  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  211. 串原義直

    ○串原委員 ただいま議題となりました昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合を代表して、その提案理由及び内容につきまして御説明申し上げます。  今回、政府から提案されました農林漁業団体職員共済年金改定案は、恩給法、国家公務員、公共企業体職員年金改定に準じて共済年金受給者の年金額の引き上げ、処遇の一層の充実を図るとしておりますが、年金改定の実施時期は例年より一カ月繰り下げて五月からとされております。  周知のとおり、共済年金改定の実施時期は、昭和四十八年度の十月から順次改善され、五十二年度以降は四月実施が定着してきているのであります。四月実施でも年金受給者にとりましては、現職者の給与改定と比べますと一年おくれて改善されているのが実情なのであります。それをさらに一カ月おくらせようとする政府の提案は、これまで進めてきた年金充実の方針転換にほかならないのであります。現在の農林年金受給者は十万五千五百余人でありますが、これらの人々にとっては処遇の改善よりも福祉の後退となるのであります。  高齢化社会を迎えるに当たって年金の充実は欠かせませんが、今回の措置はそれに逆行し老人の生活を不安にさせるもので、かかる福祉の後退を行うべきではありません。私たちは、このような立場から修正案を提出するものであります。  修正案の案文はお手元に配付してありますが、その内容は、年金改定の実施時期の五月を一カ月繰り上げ、例年どおり四月から実施しようとするものであります。  以上が修正案提出の理由と内容であります。  委員におかれましては、よろしく御賛成いただきますようお願い申し上げます。(拍手)
  212. 羽田孜

    羽田委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、串原義直君外四名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣意見があればお述べいただきたいと存じます。田澤農林水産大臣
  213. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては反対であります。     —————————————
  214. 羽田孜

    羽田委員長 両修正案に対して別段御発言もないようでありますので、原案並びに両修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、採決に入ります。  まず、串原義直君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 羽田孜

    羽田委員長 起立少数。よって、串原義直君外四名提出の修正案は否決されました。  次に、亀井善之君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  216. 羽田孜

    羽田委員長 起立多数。よって、亀井善之君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  217. 羽田孜

    羽田委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  218. 羽田孜

    羽田委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。亀井善之君。
  219. 亀井善之

    ○亀井(善)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合を代表して、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本制度の健全かつ円滑な運営を図るため、左記事項に検討を加え、その実現を期すべきである。         記  一 本制度の給付水準を維持、向上させるとともに増大する不足財源に対処するため、その財政基盤の強化に努めること。    なお、昭和五十七年度から同五十九年度までの間減額されることとなつた国庫補助額については、財政再建期間終了後すみやかに適正な利子を付して、その減額分の補てんを行うこと。  二 既裁定年金の改善については、公務員給与の引上げに対応した自動スライド制の導入を検討すること。  三 退職年金等の最低保障額の新・旧格差の是正に努めるとともに遺族年金の給付の改善を検討すること。  四 農林漁業団体の経営基盤の強化に努めるとともに、これら団体職員の定年制の延長等雇用条件の改善が図られるよう適切な指導を行うこと。   右決議する。  以上の附帯決議案の内容につきましては、委員会の審議を通じ委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  220. 羽田孜

    羽田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井義之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  221. 羽田孜

    羽田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、田澤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田澤農林水産大臣
  222. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  223. 羽田孜

    羽田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 羽田孜

    羽田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  225. 羽田孜

    羽田委員長 次回は、明十三日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十六分散会      ————◇—————