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1982-04-28 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十八日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 戸井田三郎君 理事 渡辺 省一君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 武田 一夫君 理事 稲富 稜人君       上草 義輝君    太田 誠一君       木村 守男君    岸田 文武君       北口  博君    佐藤  隆君       志賀  節君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    丹羽 兵助君       保利 耕輔君   三ツ林弥太郎君       山崎平八郎君    小川 国彦君       串原 義直君    田中 恒利君       竹内  猛君    日野 市朗君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       藤田 スミ君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         農林水産政務次         官       玉沢徳一郎君         農林水産大臣官         房審議官    大坪 敏男君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     藤村 和男君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    森本  修君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常務         理事)     桜井  誠君         参  考  人         (全国農業協同         組合連合会副会         長)      宮崎  貴君         参  考  人         (新潟経済農         業協同組合連合         会顧問)    吉原 静雄君         参  考  人         (国学院大学経         済学部教授)  三輪 昌男君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     木村 俊夫君   太田 誠一君     小坂善太郎君   近藤  豊君     渡辺 武三君   寺前  巖君     三谷 秀治君 同日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     上草 義輝君   小坂善太郎君     太田 誠一君   三谷 秀治君     寺前  巖君 同日  委員渡辺武三君が死去された。 同月二十七日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     小渡 三郎君   太田 誠一君     塚原 俊平君   川田 正則君     長野 祐也君   島田 琢郎君     小林  進君   吉浦 忠治君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   小渡 三郎君     上草 義輝君   塚原 俊平君     太田 誠一君   長野 祐也君     川田 正則君   小林  進君     島田 琢郎君   大久保直彦君     吉浦 忠治君     ————————————— 四月二十八日  オレンジ・果汁・牛肉等自由化阻止等に関す  る請願外二件(越智伊平紹介)(第二六八九  号)  同(田中恒利紹介)(第二七七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第六二号)  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第六三号)      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  農業協同組合法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として農林中央金庫理事長森本修君、全国農業協同組合中央会常務理事桜井誠君、全国農業協同組合連合会会長宮崎貴君新潟経済農業協同組合連合会顧問吉原静雄君、国学院大学経済学部教授三輪昌男君、以上五名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  次に、議事の順序について申し上げますが、森本参考人桜井参考人宮崎参考人吉原参考人三輪参考人順序で、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきお願いいたします。  それでは、森本参考人にお願いいたします。
  3. 森本修

    森本参考人 私、農林中金の森本でございます。  委員長の御指名に従いまして、農協系統金融現状課題といったような点を中心といたしまして私の意見を申し上げまして、御参考に供したいと存じます。  平生、諸先生には農協系統金融のことにつきまして格別の御指導をいただいております。この機会に厚くお礼を申し上げたいと存じます。  まず、系統金融現状でございますが、昭和五十五年度末でわが国農業農村向け貸し出しは約十五兆九千億円となっております。主要な金融機関が各方面に対しまして貸し出しておりますところの総残高は二百四十七兆円ということでございますので、それの六・五%を占めております。それから農業生産額、御案内のように十一兆円でございますから、それの一・四倍強ということになっております。この農業農村向け貸し出しのうちで系統資金がどの程度分担をしておるかと申しますと、八割近い十二兆五千億円ということでございます。また、農林漁業金融公庫農業貸し出しが二兆九千億円ございますが、そのうち系統機関が約七〇%受託しておりますので、それを合わせますと、わが国農業農村向け貸し出しの九〇%がいわば系統金融機関の窓口を通して貸し出されているという状況でございます。  このように農業農村向け貸し出し系統金融機関が積極的に担当してまいったつもりでございますが、近年、低成長経済への移行、農業農村をめぐります諸条件の悪化、そのほか金融機関との競争が激しくなるというような事情によりまして、系統貸し出し伸びは全体的に鈍化の傾向を示しております。その結果、貯貸率貯金に対します貸し出し割合も低下をしてまいりまして、昭和五十五年度末では、農協で約四〇%、信連は約二〇%、金庫でも五〇%程度になっております。  次に、資金調達面について申し上げますと、農協貯金は昨年末で全国で三十兆円の大台に達しました。しかし、資金量伸び鈍化してきておりまして、四十年代の後半が年率で約二〇%伸びておりましたが、最近は、およそその半分の一〇%程度伸びになっております。基本的には、これは経済成長鈍化とかあるいは農業事情変化に伴い農家経済が停とんしておるといったようなことによるところが大きいと思いますが、反面、農協決済業務面での整備が十分いっていない、そうして家計のニーズに総合的にこたえにくい状態になっているということも影響しておるのではないかと思っております。  さらに、農協経営収支面について一言申し上げますと、近年に至りますまでまずまずの状況で推移してまいりました。そして、信用事業農協全体の収支を支えまして、営農なり生活指導事業等の財政的な裏づけとなってきております。しかし、最近は、米の生産調整あるいは二年連続の冷害等によりまして農協販売事業が停とんをしております。その上に、信用事業におきましても、資金量伸び悩み、貸し出し低迷利ざやの縮小などによりまして収支が悪くなってまいりました。他の部門とも総じて不振である。そういったいろんな事情が重なりまして五十五年度の農協全体の収支は三十年ぶりに減益に転ずるというような厳しい状況に直面をしております。  以上が系統金融の大体の状況でございます。  次に、取り巻きます環境について若干申し述べてみますと、組織基盤あるいは金融環境両面において、基調的な変化に直面しておるものと思っております。すなわち、農協組織兼業農家割合が高くなる、あるいは農村社会がいわゆる混住社会になる、組合員高齢化が進むというようなことで、組合員の性格が変化をしてまいります。したがってまた、意識も変わってくるというようなことになってまいりました。その結果、農協事業に対します要請高度化、複雑化しておりまして、系統金融としても、こういった要請に対しまして多様な対応を迫られているという状況でございます。  次に、金融環境でございます。  金融環境は、御案内のように経済金融構造変化の中で金融機関にとりまして大変厳しい状況でございますが、金融政策としても競争原理の導入でありますとか、金利機能の活用というようなことが重視されてまいりまして、金利自由化国際化が進展をしてくる、金融機関の間の競争が激しくなるというような状況でございます。  その間にありまして、御案内のように、昨年の国会銀行法を初めとする金融機関関係法改正が行われまして、各業態間の垣根が弾力化される、あるいは金融機関に対する諸規制が緩和されるというようなことが進んでおります。国民の金融資産に対します選択も多様になってまいりますし、金利選好意識も非常に高まってくるというようなことで、利用者ニーズ対応するために新しい商品が多数開発をされておるというような状況でございます。こういった最近の金融環境変化もとで、農協系統金融機関も厳しい対応を迫られているというのが現状でございます。  系統金融としましても、こういった事態に適切に対応いたしまして、組合員の負託にこたえてまいりたいと思っております。そういった対応あり方基本は、何といっても地域農業確立組合員生活向上、あるいは地域社会発展というような点に力を尽くしますとともに、組合員共同活動強化いたしまして、総合事業経営のより効果的な展開に努めるなど、農協としての独自性発揮十分配慮をしてまいらなければならぬと思っております。  具体的な対応といたしまして、次の三点が当面の課題であろうと思っております。  第一は、系統金融機能整備をいたしまして、利用者に対するサービス強化するということでございます。現在、民間の金融機関においては、御案内のようにオンライン網を完成させまして、貯金ネットサービスでありますとか、公共料金の振替、年金、給与の振り込みなどの業務拡充しております。郵便局においても、オンライン網を着々と整備をいたしまして、新しい仕事を始めようというような状況でございます。農協は、これらのいわゆる決済業務面で他の金融機関に比べて立ちおくれておるというふうに私ども思っておりまして、組合員需要に総合的にこたえるために、貯金全国ネットサービスでありますとか、農協のいわゆる全国銀行内国為替制度への加盟実現というようなことに向けて早急に体制を整えなければならぬ。そのため組織を挙げまして対策に取り組んでいるのが現状でございます。  第二の課題は、運用機能、特に融資面での機能強化することであるというふうに思っております。もとより、系統金融は、組合員営農なり地域農業振興に対しまして、より掘り下げた農業融資面への対応を図っていかなければならぬと思いますし、また、地域住民からの多様な資金需要に適切に対応いたしますために、住宅ローンとか教育ローンなどといった全国統一型の簡便な融資制度拡充にも努力をいたしております。そういうことから、五十四年度以降、全国的な規模で農協融資基盤確立運動というのを展開をしております。また、信連金庫におきましても、こういった事業企画、推進に積極的に支援をする、あるいはみずからも農業関連産業公共貸し出し等、それぞれの組織にふさわしい融資拡充に積極的に取り組んでおりまして、系統段階全体として融資機能強化を進めていこうというようなところでございます。特に、三段階の中で信連貯貸率が最も低く、貸し出しの伸長の必要性が強いということでございます。ところが、会員貸し出しに比例した現行の員外貸出枠もとにおきましては、安定的な融資対応が行いにくい信連も出てきております。そういうところから、融資規制改善措置が必要であろうというふうに思っているわけでございます。  第三の課題は、経営体質改善効率化を進めるということでございまして、先ほど来申し上げておりますように、金利自由化金融機関の間の競争が激しくなるというようなところから、運用面の利回りも相対的に低くなる、利ざやが縮小するというようなことが信用事業に構造的に襲いかかってきております。こういうことが農協組織全体に対しましても非常に大きな影響を及ぼすことになりますので、本年秋に開催を予定しております第十六回の農協大会重点課題といたしまして農協経営刷新強化対策を取り上げることにいたしまして、現在その内容を検討しているところでございます。今後、信用事業面での体質改善強化はもちろんでございますが、系統農協事業全体として効率化を積極的に進めてまいりたいということでございます。  以上、取り急ぎ申し上げましたが、今回の法改正との関連で見ました系統金融現状課題のあらましでございます。  今後、系統金融といたしましては、これらの課題にみずから積極的に取り組みまして、組合員経済農業農村の一層の発展のために寄与してまいりたいと考えております。  これとの関連におきまして、制度面改善を要すると思われる事項につきまして、農協法改正等措置がぜひとも必要であると考えまして、系統の総意としてかねてから要望してまいりました。本委員会に付託されておりますこの法律案は、われわれの要望の趣旨と合致するものと思います。したがって、この法案が今国会でなるべく速やかに成立をいたしますよう切にお願いを申し上げまして、私の意見開陳を終わりたいと存じます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  次に、桜井参考人にお願いいたします。
  5. 桜井誠

    桜井参考人 今回の農協法改正審議関連いたしまして、私の方からは、農協運動課題基本的な方向ということにつきまして意見を申し上げたいと思うわけであります。  まず第一点は、農業農協をめぐります環境は大幅に変化をいたしておりますし、従来の農協対応姿勢ではこれを乗り切っていく、あるいは農協の責務を果たしていくということができないのではないか、非常に重大な時期に差しかかっておるというふうに考えるわけであります。  御承知のとおり、戦後、農協が発足をいたしました際には、質素な事務所の中で、農地改革の後、自作農民中心に、言ってみますと新生の意気に燃えでいたというふうに思うわけでありますが、その後、経営不振に二十四、五年ごろから見舞われまして、再建整備に取りかかってまいりました。この期間も非常に苦闘の時代でございまして、再建整備整備促進が終わりましたのが昭和三十八年であります。その後、高度経済成長の波に乗りまして、農協経営といいますのは、言ってみますと、比較的順調に来た。やや水ぶくれというふうな印象もあるわけでありますけれども、四十九年から低成長になりまして、それなりの影響はこうむってきたわけでありますが、はっきり、五十五年度以降と五十四年度以前では大幅に環境が変わってきたというふうに認識をしなければいけないと思うわけであります。  具体的に申し上げますれば、五十五年の不作の問題もあるわけでありますけれども、低成長影響が非常に深刻になってきております。もちろん、農業生産自体過剰ぎみで、価格自体が非常に低迷をする、農業所得もそれに伴いまして停滞をする、こういう状況の中で、片方、農協をめぐります一般信用事業あるいは共済購買販売、ともに企業との競争が非常に激しいものになってきておる、また、農協収支構造自体も大幅に構造的に変化を来しておる、こういう認識を持たなければいけないというふうに思うわけであります。今回、法改正におきまして為替の取り扱いの問題、全国オンライン化を目指すということも、組合員サービスはもちろんでありますけれども農協一般企業に伍して競争できる体制整備しなければいけないという点を中心にしておるわけでございます。  そういうふうな全般的な構造変化を迎えまして、これから農協は一体どう先に進んでいくかということが基本的な問題になるわけでありますが、先ほど理事長も申し上げましたとおり、全国中央会におきましては、ことしの秋の大会に向けまして、言ってみますと系統自体日本農業をどう持っていくか、その戦略的な基本構想、それに伴います具体的な展開方策、外部から、農政は農業につきまして過保護であるとかいろいろな批判がございますけれども、これに対して自前の構想なり戦略を持たなければいけないんじゃないかということで、この検討を現在進めているところであります。また、農協経営の問題につきましては、言ってみますと社会経済情勢が変わってきておるわけでありますから、これに対応した系統農協経営刷新強化を図らなければいけないということで、この対策検討を現在進めておりまして、ことし秋の十月七日の大会で策定をする、こういう段取りで現在進んでおります。  第二番目に申し上げたいのは、言ってみますと、現在農協に対するいろいろな批判があるわけであります。組合員農協から離れていく、組合員農協離れというふうなことも言われますし、一方では農協の方が組合員から離れているんじゃないかというふうな指摘もございます。農協現状を見まして、一体どこをどう改善をしていくか、その場合の物差しというのがなければいかぬと思うわけでありますが、その物差しというのは、私の考えでは、農協一般企業にない特質を持っておるわけです。その特質がやはり判断の物差しになるというふうに考えております。  しからば、農協一般企業にない特質とはどういうものであるかということでございます。これは先生方すでに御存じでございますけれども、簡単に復習の意味で申し上げさせていただきたいわけでありますが、言ってみますと、自主、自立を前提にいたしました人間連帯相互扶助精神協同組合基本にいたしております。そういう精神もとにいたしまして組合員営農なり生活を守り高める、これを組合員がみんな共同してやっていこうじゃないかというのが基本的に一般企業と異なる精神であります。  さらに、具体的に組織の形態におきましては、協同組合農協組織する人が農協事業施設利用する、また同時に、農協運営に当たる、いわゆる三位一体的な組織者イコール利用者イコール運営者というところが農協のほかの企業にない特質であります。そういう特質を離れて農協事業なり経営あり方は考えられないわけでありまして、これを物差しにいたしまして私どもはいろいろなことを考え、実践をしていかなければいけないと思うわけであります。  具体的な反省といいますか、どういう改善方策、考え方を持たなければいかぬかという点で二、三気のついた点を申し上げたいわけでありますが、一つは、いまの特質に照らしまして組合員主体運営農協はやっているかどうかということであります。先ほど申し上げましたように、農協というのは組合員がみずから組織をし、組合員利用し、組合員運営をする。役員職員運営するというのでなくて組合員自身共同企画をし、方針を立て、組合員自身共同してこれを実践をする、役職員はこれを手助けしていく、事務局的な役割りを果たすというのが本来の役割りではなかろうかというふうに考えておりますし、系統農協が五十二年から進めております協同活動強化運動、これもそういう精神を具体的に発揮をしていこうということでやっておるわけであります。  次に申し上げたいのは、協同組合農協特質にふさわしい農協事業なり経営やり方をやっているかどうかという点でございます。具体的に申し上げますと、組合員によります計画樹立あるいは方針樹立ということを申し上げましたけれども組合員懇談会あるいは組合員組織によります討議、あるいは店舗運営にいたしましても、組合員相談をいたしまして店舗運営、品ぞろえの問題等をやっていく、あるいは施設をつくります場合でも組合員共同相談をして施設計画をつくっていく、こういうのは一般企業、会社ではやっていないことでありまして、そういうものを伸ばしていく。あるいは地域農業振興計画ということにつきまして現在、系統農協が取り組んでおりますけれども、これは一般企業にない、農協がやらなければいけない仕事であります。また、現在進めております一般企業にない委託方式あるいは予約注文共同計算、全利用、これも一般企業にないやり方で、こういうものをさらに徹底をしていくことが必要ではないか。それから、農協自体総合経営をやっておりますので、信用販売購買利用、そういった総合経営特質を生かす事業方式を編み出していかなければいけない。たとえば、自動車供給にいたしましても、自動車供給資金の貸し付け、それから共済自動車の修理、こういったものを一体的に組み合わせて組合員供給をしていくというふうな展開の仕方を深く追求していくことが必要であろうというふうに思っております。  それからその次に、特に協同組合に求められますのは指導機能でありまして、営農指導にいたしましてもあるいは生活指導にいたしましても、教育広報仕事にいたしましても、ただ、信用販売購買利用仕事をやっておればいいというのではなくて、その基礎、前提として指導機能が伴わないと本当の協同組合にならないというふうに私どもは考えておるわけであります。営農指導にいたしましても農業所得の源をつくるという仕事でありますし、生活指導につきましては、組合員健康管理あるいは生きがい対策生活文化人間連帯感を醸成する仕事もこの中に入るわけであります。  また、教育の問題につきましては、組合員役員職員、資質を向上しなければ役員職員自体組合員指導もできないわけでありますから、教育はきわめて大事だというふうに考えております。さらに農協地域におきます一般住民に対するあるいは子弟に対する教育広報仕事もきわめて大事な農協協同組合役割りというふうに考えておるわけであります。  さらに、農協事業展開におきまして、購買におきましてもあるいは金融におきましても指導事業と結びついて展開するところに協同組合特質農協特質があるわけでありまして、たとえば、ある農協におきましては要らない物は買わないようにしましょうというふうな指導購買もやっておりますし、冷蔵庫をあけてから買うようにしましょうとか、あるいは共済にいたしましても、その農家の実態に合わせた生活保障設計に基づいて共済を進めていく、こういうことでなければいけないし、資金を貸す場合も、その貸すことによってつくる施設、これが有効に活用されるという面で指導が伴っていかなければいけないというふうに考えております。要するに、私の言いたいのは、一般企業にない協同組合農協にふさわしい事業経営展開やり方があるはずである。それをもっと系統農協全体として編み出し、工夫をし、推進をしてやっていかなければいけないというふうに考え、全中自体におきましてもそういう方向で現在総合指導を進めておるところであります。  最後に申し上げたいのは、農協役職員は単なるサラリーマンではないんだ、農協運動者である、運動者の気概を持ちましてこれからの農協運動を推進していかなければいけない。運動者とはそも何だということがきわめてむずかしい問題でありますけれども農協運動の目標というのがあるわけでありますので、その目標を達成するために、言ってみますと生きがいを感じ、働きがいを感じて、ただ給料をもらって仕事をすればいいというのではないそういう人間を私ども養成をしていかなければいけないと思っております。  最後に、西暦二〇〇〇年の協同組合ということで、現在世界の協同組合はこの二十年間を生き抜くためにどうしなければいけないかということでいろいろ検討をいたしておるわけでありますが、その問題提起をいたしましたカナダの元中央会の会長レイドローさんがこういうことを言っておりまして、協同組合成長と存続は、協同組合を特徴づける一定の特質をいかに誠実に追求するかにかかっておるということで、まことに至言でございまして、私どもこういう精神で運動を推進してまいりたいというふうに考えるわけであります。  以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げさせていただきました。終わります。(拍手)
  6. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  次に、宮崎参考人にお願いいたします。
  7. 宮崎貴

    宮崎参考人 全農副会長の宮崎と申します。  このような重要な会議参考人として出席をすることは初めてでございまして、ふなれな上に浅学でございますので、よろしく御指導をお願いいた.します。  最初に、申し上げますが、いま貿易摩擦の関係で農畜産物の輸入の自由化、枠の拡大、これらがきわめて大きな問題になっておるわけでございます。この問題は、そのまま実現されますとまさに日本農業の壊滅につながる重大問題でございます。その点に関しましては当委員会先生方が大変な御配慮をいただきまして、つい先日の四月二十二日には当委員会において農畜産物の輸入自由化反対の決議を全会一致で採択をしていただいたということについて、全国の農民は本当に心から感謝をいたしております。どうかこの決議が最後まで通りますよう、先生方の特段の御指導と御配慮をお願いいたします。  それでは、今回の法改正について私の意見を申し上げます。  今回の改正については四項目でございますが、三項目の信用事業関係については先ほど中金の森本理事長さんが詳細申し上げたとおりでございまして、第一点の農協の内国為替取引の員外利用制限の撤廃、二番目の信連融資の員外利用制限の緩和、三番の信連の有価証券払込金の受け入れ等の員外利用制限の緩和、これについては森本理事長さんの申し上げた意見と全く同様でございますので、どうかこの点についてはこの成立を心からお願いするものであります。  次に、連合会の総代の総会外選挙でございます。これについて若干意見を申し上げますが、御承知のように全国連のうち全農と全共連の総代制度は、全中の機関であります総合審議会の慎重な組織討議を踏まえ、その結論に基づきまして、農協全国連直接加入の実現と同時に、この総代制が昭和五十二年に導入されたものであります。その直接加入の目的は、組合員中心とする農協、県連、全国連の意思疎通の緊密化、また、各段階における機能の有機的な連携の強化、これを通じまして組合員農家経済的利益の増大を図るということが最大の目的でございまして、この制度発足以来全国連では年二回の総代会を開催をいたしましてそこに付議する事項を討議をされ、機関決定をいたして事業を進めております。なおそのほかに、年二回の総代会のほかにも常に地区別いわゆるブロック別の総代会議、さらに県別の総代研究会等も開催し、また、個別的に、日常的に総代との話し合い等を行いまして常に組合員の意思が組合、県連を通じて全国連に反映するよう努力をしてまいりました結果、意思疎通は飛践的に向上したものと考えております。  このような重大な目的を持ち、また成果のあります総代制度でございますが、その総代の選挙について、今回の法改正が提案されておるわけでございますが、この点について若干内容を申し上げましてお願いいたします。  現行の農協法では、農協の総代選挙は総会外でも実施ができます。しかし、連合会の総代選挙は総会で行うよう規定されております。したがいまして、現在の選挙のやり方は、総代の地域的なバランスをとるために定款、附属書の総代選挙規程で区域ごとの総代の定数を定めまして、その区域内の正会員が被選挙権を有するということが第一点であります。そして選挙権は、投票の適正を期するために候補者をよく知っている区域内の正会員が投票している、こういう実態でございますが、この場合、実際に四千二百二十四会員がございますが、これが全部一堂に会しまして総会を開催するということはなかなか物理的に困難性がございますので、現状では書面出席がほとんどであるというような現状にございます。したがいまして、連合会におきましても、より適切な総代選挙を実施するために区域ごとに選挙ができますよう農協と同様の措置をいただくことがかねてからの懸案事項でございます。ぜひとも今回の法改正に当たりましては、この実践方をお願いする次第であります。  なお、終わりに、若干系統経済事業運営について、ごく要点を申し上げます。農家経済的地位の向上を図ることが農協の大目的でございますが、そのうち系統経済事業におきましては、特に、組合員営農生活対応した事業展開基本といたしております。  大筋を申し上げますと、農畜産物の生産性と品質の向上、営農生活指導強化、次に、農畜産物の販売力の強化と需給調整機能拡充農業生産、生活資材の安定供給と価格の安定化などの問題について各段階で一致して推進、努力をしている状況でございます。このような中で自主的に改善、工夫を重ねるとともに、改めるべき点を改め、組合員農家と社会から寄せられる負託にこたえていきたいという方針でございます。  なお、先生、また行政機関からも農協運営について、経済事業についても各種の御指導があるわけでございますが、この御指導につきましても、私たちは謙虚な気持ちを持ちまして全中ともども運営の適正化を図っていく所存でございますので、引き続いての御指導をお願いいたします。  以上申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。よろしくお願いをいたします。
  8. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  次に、吉原参考人にお願いいたします。
  9. 吉原静雄

    吉原参考人 吉原でございますが、一昨日事務局の方からお電話で何か出てくるように、こういう御案内を実はいただいたわけでございまして、何の心の準備もございませんし、申し上げることもないわけでございます。その上にまた、私、実は農協関係の現職でございませんで、昨年は新潟経済連の会長を辞任いたしまして、農業協同組合の組合長もこの十七日に退任をさせていただきました。そんなことで、正直のところ、もう現職でございませんし、どういうことになっておるのかよくわからぬまま実は出席をいたしまして、大変恐縮に思っておるわけでございますが、長いこと農協運動に携わりましてもう三十年になりますので、いまほど御三人の方々がそれぞれお話しになり、要望になったことはよく存じておるわけでございます。特に、国会農協法改正の関係、特に、金融の問題、それからいままでお話しのございました全農における総代制の問題こういうことは十分承知をいたしておりますし、御三人がいまお話しになりましたまさにそのとおりだ、こんなふうに実は感じておりますので、諸先生方におかれましても、このことにつきましてはどうぞよろしくお願いを申し上げたい、こう存ずるところでございます。  ただ、せっかくのお招きでございますし、長いこと農協運動に携わってまいりまして、最近の農家の方々が農協離れをしているとか、あるいは農協の方でもう離れていくのじゃないかというようなことがいろいろ言われるわけでございますが、この点につきまして、実際、単協の組合長として組合員に接してまいっておりますと、何かしらん日本の経済成長がちょっと停滞をしているといいますか、そんなような関係もございましょうし、正直のところ、私の地帯では農家の方々の気持ちは沈滞をいたしております。それはいろいろございますけれども、大きく分けますと、減反の問題とそれから食管制度が一体どうなるのだろうか、このことが不安のようでございます。  そこで、いままで長いこと経済成長の中に農家もあったわけでございますから、気持ちの上では常に上を向いて歩いておったわけでございます。しかしながら、私は、こういう時代を迎えてまいりますと、自分をよく知る、自分を知らないでほかのことだけを見ようとしても、これはなかなかうまくいかぬのじゃないかというようなことから先日の総会にもお話をしておるわけでございますが、農家の立場、自分をよく知るということを見詰めた場合にどんなことを考えたらいいのだろうか、こう思いますと、大体農家の方々というのは御承知のように大きい家へ入っております。屋敷も広うございます。しかも都市計画税だとか、農村でございますから評価も低いわけでございまして、あるいは固定資産税だとかそういったものも低うございます。ですから、広い屋敷、大きい家に入って何が不安があるか、家賃もちっとも要らない大きい家へ入ってこんないいことないじゃないか。しかも食べ物はもう余るほど米はあるし、野菜も果物もうんとあるじゃないか。このごろはもうぜいたくして、農協のみそを買うとか、農家でありながら卵を買うとか、野菜を買ってくるなんというのはとんでもないことじゃないか。そんなことはちょっと自分で努力すれば全部自給自足ができる。しかも、これは私の農協のことでございますから、よそにははまるかどうかわかりませんが、平均貯金が七百万円ございます。この貯金はさっぱり減りません。一年間そっくりそのままの状況でございます。あとはどうかといいますと、適当に町へ働きに行くなり、いろいろなことをして働いてくる金で生活をしておるというのが現状でございます。ですから、自分を見詰めた場合、農家はそんなに不安はないはずでございます。ただ、文化生活に浴したいということで一台持っている自動車を三台にしたり、去年買ったばかりの農業機械を、ことし新しいものが出たからすぐ取りかえようということになれば、これは金が要るのは当然でございますけれども、そこのところを自分で見詰めるならば、農村生活というのは決してそんなに不安なものじゃないぞ。  ただ、不安というのは先ほどの転作の問題でございますけれども、これはそのまま野放図に米をつくってしまえば一挙に一千四百万トンができてしまう。これでは余るのが当然なのです。そこで、いやだいやだと言いながらも生産調整というものをお互いやったじゃないか。そうなりますと、恐らくことしは大体一千五、六十万トンの目標になろうかと思いますし、生産調整の結果も平年作であるならその程度、言うなら国民が消費する量も大体その程度だということになれば、恐らく今後、この転作の問題はあってもわずかなものであろう。だからそんなに心配することないよ。  もう一つの心配は、先ほど申し上げましたように食管制度の問題でございますけれども、これは当然国家が国民の食糧というものに責任を持つ以上においては、食管制度はなくならぬ。ちゃんと真ん中に柱が建って、需給が緩和してくれば、多少間接統制だとかいろいろな方向へ向かうだろうし、あるいはどこかに戦争が起きて食糧が来なくなる、あるいはまた天災でも起きれば当然食糧の管理制度は強化されることがあるのであって、常に中心に食管制度があり、右に動き左に動くという程度のことであって、決して食管制度なんというものはなくならぬとおれは思う。そういうことを考えるならばこんなにいい生活はないじゃないか。  しかも、嫁さんが来てくれないという問題を農家の主婦は大いに憂えますけれども、それは自分の心がけが悪いのだ。自分の娘が三人おるのに農家に全然嫁にもやらぬで、全部町やサラリーマンに嫁にやって、自分だけせがれに嫁をもらいたいといったって、それはうまくいかぬよ。三人娘があるならば二人は必ず農家にやるということになれば、自分の息子にも嫁は来るぞ、こういうことを私は不断に組合員の方々と話をしておりますが、私の農協に関しましては、こういうお話をしておりますとみんなにこにこして、うれしい顔をして総会も無事に通ります。  先日、私も長いこと努めましたので、この辺でひとつ新しい人が出てくれよということで組合長も退任させていただきましたけれども、あなたが退任するのは何かさびしいから名誉組合長はどうかということで、どうも近く名誉組合長になるようでございます。経済連の方も昨年退任をさせていただきましたが、動議が出まして名誉会長になれ、こういうことでございます。私も生身でございますし、ここにおられる方々十分御承知のように、かつて全農を切るなんという悪名を天下にとどろかせた手前もございまして、どうも名誉なんということは私の性に合いませんとお断りいたしましたら、まあそういうことを言うな、三十年もやったので何か聞くときがあるから顧問になれということで、肩書きもきっとそんなことになっておると思います。  実はお尋ねいただければ知っていることは申し上げますが、心の準備はないのでございますので、大変恐縮でございますが、この程度で終わらせていただきます。(拍手)
  10. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  次に、三輪参考人にお願いいたします。
  11. 三輪昌男

    三輪参考人 国学院大学の経済学部の教員を努めております三輪でございます。  今回の農協法改正の案につきまして感じておりますことを簡単に述べさせていただきます。  今回の改正の案の全体をなしております信用事業制度の整備改善ですが、これを見ておりますと、現在、農協を取り巻いております環境がいかにも厳しいものであるということを感じさせられます。  二通りの面で厳しさが出ておると思うのでありますが、一つは、内国為替取引、これを員外利用制限の枠外とするという改正案なんであります。この内国為替の取り扱いの事業、これを農協として全面的にやろうということになってきてこの改正案が出てきたわけでありますが、これは他の金融機関——大きく分けますと、一つは民間の諸金融機関、もう一つは郵便貯金でありますが、他の金融機関との競争関係の中で、農協としていやおうなしにやらざるを得ないサービス機能整備である、そういうことで内国為替取り扱いの事業整備強化に取り組み、したがってこの改正をしなければならぬ、こういう段取りになっていると思うのです。この金融機関競争、これは別に農協が事を起こしたわけではないので、農協としてはきわめて受け身の対応の中でやむを得ずといいますか、そういう形でこの問題が出ているのだろうというふうに思います。私、第三者として見ておりまして、そういう意味で、農協としてはきわめて厳しい環境の中に巻き込まれた、それに対するいわばやむを得ざる対応として動きが出ておるし、したがってこの法改正はまたやむを得ざるものであろうというふうに考えます。  それから、信用事業制度の整備改善のもう一つの大きな群れをなしておりますのは、いわゆる信連資金運用、といいましてもいわば余裕金運用ということになると思いますが、その関係で、員外利用の制限を緩和する、そういう内容のものでございます。  これまた、農協を取り巻く環境の厳しさが出ていると私が感じますのは、農協組織事業の基盤、具体的にいいますと組合員営農生活でありますが、これが健全に発展をしておる、農協組織事業の基盤がしっかりしたものでありますれば、そこに当然に農協に蓄積された資金は還元されていく、そういう形で還流するはずであります。ところが、その基盤の弱さが覆いがたくありますので、そこで大きな余裕金が生まれ、それの運用をめぐってさまざまな混乱が生じ、その最大の弱さが信連にこういう改正をお願いせざるを得ない形であらわれてきているということだと思うのですね。この組織事業基盤の弱さといいますか、そういう意味での環境の厳しさという、これまた農協がみずからそれを招いたということではないのであって、大きな日本の経済あるいは社会の構造的な変化の中でそういう事態が起こってきた、農協として言えば、いわば受け身の対応としてこれに対応せざるを得ないということなんだろうと思います。これまた、第三者として見ておりまして、そういうことであるがゆえに、こうした農協法改正というものはまたやむを得ざるものであり、当然なさるべきものであろうという意見を持ちます。  というわけで、厳しい環境の中に巻き込まれたということでありますが、だからといって、単に受け身に対応していればいいというわけではないのであって、農協としてなし得る限り総力を挙げて、この厳しい環境に能動的にといいますか、単に受け身ではなく、積極的に対応していかなければならぬということなんだろうと思います。そこらあたり、この秋に予定されております全国農協大会へ向けて、一つには、農業の再編の展望、それを農協が自主的に描き出そうという形で動きが出ておるわけでありますし、あるいはまた、事業経営整備強化への取り組みを進めようという形で動きが出ている。当然なことだろうと思います。  そういう中で一つ、農協運動として多年の課題として掲げておりますのは、協同活動強化の問題だろうと思います。農業の再建への取り組みにしてもあるいは事業経営整備強化にしましても、いうところの協同活動強化なしにはうまく成功しないことであります。この協同活動強化という言葉であらわされている内容を私なりにとらえてみますと、役職員とそれから組合員と、この一体性を確立強化していくという、そこに最大の内容があるというふうに考えます。どうしても、役職員——常勤の役員または職員は、毎日農協の運動、事業活動に従事しておるわけでありますし、組合員は自分の営農生活を持っておりまして、そういうわけにいかないという、そういう違いがございます。そこで、組合員が運動の主人公であるといいながら、実は役職員主導型になりがちであるという条件もあるわけですね。しかし、それはまずいわけでありまして、本来のあり方としましては、あくまでも組合員が主体となって運営していくということでなければならぬ。そこの現実とそれから理念、あるべき姿と実際のあり方となかなか一致させにくいむずかしさがあるわけでありまして、そこのところを何とか埋めて、いうところの協同活動を強化しようということで動きが出ている。前々回の全国農協大会協同活動強化運動の旗印が掲げられて、第二次の運動がなされ、聞くところによりますと、今度の大会で、さらに第三次としてこれを継続するということでございますが、これまた、当然なことであろう、その成功を期待したいというふうに考えております。  今回の法改正の、連合会の総代の選挙システムの問題、これは組織問題の一つにかかわりますけれども、いわばきわめて技術的な改正の問題だろうというふうに私、考えます。当然にこういう改正がなされてしかるべきだろうというふうに考えます。  以上、意見でございます。(拍手)
  12. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 羽田孜

    羽田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺省一君。
  14. 渡辺省一

    渡辺(省)委員 参考人の諸先生方、きょうは大変御多忙のところ国会においでいただきまして、大変ありがとうございます。  きょうは、農協法改正に伴いまして、いま御意見の開陳がございましたように、農協法改正そのものは、今回まあ四点ばかりにしぼられているわけでございますが、この機会でございますので、農協法改正に伴う環境と申し上げますか、いま置かれている立場等から、少しく、本法の改正に直接関係ございませんけれども関連をしてお伺いをさしていただきたいと思うわけでございます。  森本先生にひとつお伺いしたいのでございますが、最近は、直接的な農村の悩みといいますと、御案内のとおり、経済摩擦に伴う貿易自由化の問題で、将来についての不安を抱えている大変困難な問題が起こってきております。そしてまた、翻って身近な問題では、冷害、災害で大変苦労して、負債を多く抱える、こういう窮状を訴えている昨今でございます。そんな情勢の中で、将来、あるべき農村の姿を描いて指導したいということで、われわれもそういう立場でいろいろと努力をしてきているわけでございますが、特に、補助金を少しく削減して、金融を通じて農村の創意工夫をひとつ引き出してやる、営農意欲を持たしてやる、こんな声も一面には聞かないわけではないわけでございますが、そこで、農協関係の金融と政府の系統金融、政府関係の金融機関との任務の見直しを少しくしてみてはどうか。具体的な事例を申し上げるのは差し控えたいと思いますが、政府関係の金融は長期低利である、それから、農協関係の資金は比較的小回りのきく、生活本位の資金の色彩をもっと強く出して最近の変化する農政に対応する、そんなことが検討できないかというような問題等も聞いているわけでございますが、そういう意味で政府金融機関の任務の見直しと、系統金融との接点、そういうものをもう一遍見直してはどうかという感じがするわけでございますが、この点についてひとつお伺いをしたいわけでございます。  それから、先般来、農政にかかわる三法と言われておる法律が改正されたわけでございまして、この改正に伴って、農地の流動化などがかなり具体的に進みつつあるように聞いております。こういう問題に関連して、地域農業再編成の資金等もできたわけでございますが、これらの資金で十分なことなのかどうなのか。従来ある制度を少しく手直しをする、まあ言いかえますならば、農業金融というのは少しくむずかし過ぎる、細か過ぎる、任務の終わったものもあるのではないかという指摘があるわけでございますが、思い切ったそういう新制度へ旧制度を大きく転換をさせるなどのことが、現業の実務を通じてそういう声をひとつ把握しておるかどうか。それに対して対応するというお考えがもしあれば、この機会に御意見をひとつお伺いさせていただきたいと思います。  それから桜井さんと宮崎さんに、ちょっと関連するわけでございますが、きょう聞くべきテーマでないかもしれませんが、十月の第十六回の農協大会に向けて大変御苦労されておる話も伺っております。  そこで端的にお伺いさせてもらいたいのですが、ことしの乳価をめぐる情勢や、これから農産物価格をいろいろ決定していくというそういうことに立ち向かうわけでございますが、その中で、言い方はちょっと適当ではありませんけれども、どうも機械の問題や、それから肥料の問題やその他飼料の問題等いろいろ具体的な問題があるわけでございますが、そういう問題を通じて価格を上げるということは、昨今の国際情勢その他から言って厳しいことは重々承知しながらみんながんばっているわけでございますが、せめてこういう生産経費が増高しない、逆に言うと低減できる、そういうこと等を経済行為や指導業務の中でもっと具体的に出してもらうならば、われわれはもっと農協中心にして、そしてがんばることができるのだというふうな声が率直に聞かれるわけでございます。  そこで一つの例を申し上げますが、乳価をめぐる価格問題が論議されたときに、飼料等については全部の扱いの四五%ぐらいが全農である。プライスリーダーになれる立場にある一つの農業団体がもっと農村の実態に即して協力してもらいたい、こういう声も実際問題としてあるわけでございますが、そういう営農資材、生産資材を扱っている立場で、そういう機械や飼料や肥料等について十分配慮されてやっているものと思いますけれども、そういうものはひとつ今後の刷新の中でもし具体的に検討していることなど、あるいは政府に対して具体的にこういうことはできぬかというような問題提起がもしあれば、この機会に伺わさせていただいて、今度の農協法改正関連の中で、われわれもひとつ貴重な御意見を聞かしていただいて反映させてみたいものだというふうに思うわけでございますが、ちょっと漠然としておるので非常にお答えしづらいかもしれませんが、お気づきの点だけで結構でございますので、ひとつお伺いをさせていただきたいと思います。特に、中央会と両方でございますので、実務と指導体制というようなことで、関連がもし御理解いただけるなら、お二人の立場からひとつ御意見を伺わせてい・ただきたい、こう思うわけでございます。  それから、三輪先生にちょっとお伺いしたいのでございますが、三輪先生はいま、受動的な立場で今回の農協法改正は、内国為替の問題にしても原材料の問題にしても、必然的に受動的に起こった問題であるというふうにおっしゃられているわけでございますが、それはそのとおりだと思いますが、農業団体やその他が協同活動を通じてもっと積極的に農協法の中で幾つか改正をして、そして業務の円滑な推進を期するためにこういうことについては少し考えるべきである、むしろ前に出て農村の実態をひとつサポートするために法律やその他制度の問題を積極的に見直すべきである。もしそういう観点で問題点があれば、この機会でございますので御意見をお伺いさせていただきたい、こう思うわけでございます。
  15. 羽田孜

    羽田委員長 それでは、順次お答えをいただきます。  森本参考人、お願いいたします。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕
  16. 森本修

    森本参考人 渡辺先生から、農業金融につきましてのやや基本的な点についてのお尋ねがございました。  まず、公庫資金系統資金はどういう分野でどういう関連を持つべきかということでございますが、御案内のように公庫資金は、民間の金融機関では融通することがむずかしい分野を受け持つのだということに法律上なっております。したがって、系統金融を補完するというのが公庫資金の位置づけということであろうと思います。  現実にどういう分担をしておるかということになりますと、御案内のように公庫資金は基盤整備あるいは政策性の強い長期資金といったようなものを分担をしておりますし、系統金融の方は運転資金なり一般的な施設資金というようなものを分担いたしております。ただ、その間に若干の重複がございますので、従来からその重複分についてはなるべく両者の分野を調整すべきであるというような意見が特に系統方面から出てまいりまして、従来そういう方向で努力が行われてまいりました。したがって私も、そういう点についてはなお引き続き検討なり努力を続けるべきものというふうに思っております。  ただ、そういった公庫資金系統資金の関係を、単に従来のような分野調整といったような観点からだけ見ておっていいかどうかということになりますと、私は、むしろ今後、公庫資金なりあるいは系統資金の間にお互いに一体となって協調して融資をするというような考え方をこの際出してこなければならぬのではないかというふうな感じがいたしております。といいますのは一現在御案内のように、農業は非常にむずかしい環境でいろいろな課題を抱えておりますけれども、たとえば、農業生産の再編成をする、あるいは農地の流動化を高めまして経営構造を改善していくというような面、いずれも最近、地域農政とか地域農業確立とかいったような言葉で言われておりますように、地域ぐるみで、その地域にありますところの農家がお互いによく相談をして、農業生産のあり方なり、今後の協業なり中核農家を育てるといったようなことを相談をして、やや地域単位の計画としてやっていかなければならぬ。個々の農家の創意はもちろん必要でありますけれども、そういった仕事が非常に多くなってくるのではないか、それがまた、今後の農業改善の重要なポイントになるのではないかというふうな感じがいたします。したがって、そういった地域における農業再編の計画をやっていきますのにいろいろな資金が要ってくると思うのです。これは一々申し上げませんが、そういった資金を総体として農業金融として受けとめるというような農業金融の仕組みが今後考えていかなければならぬ非常に重要な点ではないかというふうに思っております。そういう総体として受けとめるために、公庫資金なりあるいは系統資金がそれぞれ分担をいたしまして協調して融資をしていくというようなことをぜひ考えていったらいいのではないかと思います。  一つそういった方向に向かっておる資金が、御案内のように、五十六年でしたかにつくられました地域農業再編整備資金といったようなものがございます。これがややそういった発想を取り入れた従来にない一種のユニークな制度資金ではないかと私は思っております。まだ、実績が十分わかっておりませんから実績に基づいて評価をするというところまでいっておりませんけれども、そういったものを改善拡充をしていけば非常に結構なことではないかというふうに思っておりますので、御参考のためにお答えさせていただきます。
  17. 桜井誠

    桜井参考人 農産物の生産費を切り下げるためにどういうふうな対策農協として考えていかなければいかぬか、こういうような御指摘であろうと思います。基本的には、経営規模の拡大をしなければいけないということでございますが、個人経営による規模拡大と集団的な生産組織による規模拡大と両面を私どもは考えていかなければいかぬと思います。農協の内部でいろいろ検討大会に向けましてしておるわけでございますが、私どもとしましては、先行き二割の生産費低減ぐらいを目安にしたいという考え方でございます。このためには土地利用の調整の問題がございますので、農協も積極的に貸し手と借り手が円滑にうまくいくような調整に意欲的に取り組んでいかなければいかぬというふうに考えております。  それからもう一つ、資材関係におきましては購買機能強化の問題でございます。御承知のとおり全農がそれなりの体制整備をしておりますけれども、この力の基礎になりますのは、予約を大量に系統に集めてそれを背景としましてメーカーと交渉するということでございますので、今後の予約注文体制の徹底というのが一つ大事であろうと思っております。  それからもう一点は、特に農機具等の問題につきましては、新品の農機具を次々切りかえるというのではなくて、中古の農機具の利用を十分考えていかなければいかぬわけでありまして、中古の農機具の市場整備というふうなものも大きな課題であろうというふうに思っております。  さらに、ただ単に機械だけの問題ではなくて、これからの問題としては土地、労働力、それから機械等を含みます生産資材を有効活用するために、地域営農集団、こういったものを育成をしていくことがこれからの大きな課題になろうかというふうに考えておりまして、そういう方向で系統農協自体も努力してまいりたいし、政府にも必要な面におきましては要請をしてまいりたいと思っております。
  18. 宮崎貴

    宮崎参考人 御質問のありましたうち、農機それから飼料、肥料について系統農協の考え方、また実施状況を簡潔に報告を申し上げます。  いま申し上げました三つの資材は農業にとりまして最も重要な基幹生産資材であります。したがって、系統農協は三段階ございますが、農家の立場に立った購買体制確立をし実施をいたしております。  若干内容を申し上げます。  まず、農機の問題でございますが、御質問のとおり過去一時的には、常にモデルチェンジをして新品を売りつけるというようなメーカー側の体制もありましたし、また、これは農協だけではございませんで、農協のシェアの方が低いわけでありますから、メーカーの系列販売会社等もそのようなことでいわゆる新機をどんどん売り込むというような時期があったわけでございますが、現在、農業情勢の厳しい中で、われわれといたしましては新しい農機運動の展開を昨年の十二月に決めまして全国の統一運動といたしております。その内容を若干申し上げますと、農機が生産性向上のために大きな役割りを果たしたことは当然でございますが、現在、水田用の機械を中心にほとんど一巡をしておる、こういう現況でございます。したがって、今後の系統農協方針でございますが、すでに導入をしております農機を耐用年数いっぱい使うという運動も強力に展開を始めました。したがって、それに必要な修理整備事業等をさらに強化するということ、さらに中古機の流通を促進する、これを農協、県連、全農が一体となって展開しようということを決めて実施に入っております。さらに、いま言ったようなことを実現するために部品の整備供給体制強化ということも大きな柱であります。なお、新規のものについてはやむを得ない必要なものについて更新を行うという方針でございますので、今後、営農指導の技術体系とあわせた導入を図っていこうということを心がけておりますし、ほかに、先ほども全中の方から申し上げましたが、機械化銀行等の共同利用また、組織的な効率利用、これらを進めていくという考えで運動を展開いたしました。このような新しい体制を備えまして今後運動を展開する、すでに始めておりますが、その成功のために最大の努力をしてまいりたいと存じます。  それから、肥料関係でございますが、これについても全農のシェアが非常に高いわけでございますが、それだけに大きな責任がございます。したがって、われわれといたしましては肥料の量の安定確保そして肥料価格の抑制ということを再重点に体制強化いたしております。  蛇足でございますが、とにかく日本は食糧の自給率が低いけれども、肥料に至っては全然ありません。燐鉱石もすべて輸入、カリの原鉱石もすべて輸入であります。アンモニアの原料も、あるのは空中窒素だけで、石油であります。日本の農業生産に欠くことのできない肥料がほとんど海外に依存しておるということでございますので、われわれといたしましてはとにかく、海外からの原材料の安定確保という点については特に意を用いている次第であります。  若干申し上げますと、燐鉱石につきましては直接アメリカから、みずから開発をして持ってくるというようなことに着手いたしております。その他カリなどについてもカナダから大量に入ってきますし、ソ連からも三〇%入っています。実は、私も全農専務になってびっくりしたのでありますが、いきなりとめられまして、若干在庫があったのでピンチを抜けましたけれども、ソ連に飛びまして、ソ連の鉱工品輸出公団の総裁と直談判いたしまして、修復をして安定的に持ってくるというような努力をいたしております。  そういうことで、これは肥料二法に基づく届け出制、行政指導がございますので、原価決定に当たりましては農水省で詳細に原価、コスト、すべての問題について統計をとっております。したがって、それをもとにわれわれみずからの調査その他あわせましてメーカーと徹底的な交渉をいたしまして、肥料の価格抑制に努力をいたし実現いたしております。  なお、肥料は、海外原料の円相場等の変動がございまして非常に不安定であります。しかし、生産農家につきましてはできる限り安定した価格で供給したいということで、すべて組織の合意をいただきまして年間一本契約で進んでおります。したがって、この間原料の高騰があっても、円が低落して原料が上がってもお互いに保障し合うということで肥料共同購入積立金の制度を新たに発足させまして、全農、経済連、そして農協もこれに加盟いたしまして、現在、その積立金に入りましたので、相当な暴騰等がありましてもそれに対応できるというような体制をいろいろと組みつつある、こういうことであります。  それから飼料につきましても、全農が非常に農家の立場に立って飼料の供給をいたしておりますが、シェアも四〇%弱でございます。したがって、これについても全農の果たす役割りは非常に大きいので、畜産経営の厳しい現状から、量の安定確保については当然でございますが、価格の抑制についても、私たちも徹底的に極力最大の努力をしております。これについても当然農水省の徹底的な指導があるわけでございますから、私たちは、引き上げざるを得ないときにも極力上げ幅を上げないという努力をしてまいりました。また、下げるときにも、なし得る限り引き下げの最大限の努力をしてまいりました。なお、昨年の七月に四千円弱、今年の一月にも五千円弱、この価格の引き下げを行いました。その間にいろいろな円の変動等がございますれば中間でも戻す、われわれは営利を目的としておりませんでそういう性格の団体でございますから、円相場等の上昇によるメリットはその都度戻すということを徹底して実行いたしております。なお、海外原料等もきわめて不安定でございますので、これらの直接輸入についても、現在体制を整えて実現中でございます。  要は、この三つの基幹資材については私たちの責任は非常に大きいので、いま申し上げたような対策で進んでおります。よろしく御指導を賜りたいと存じます。  以上です。
  19. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 この際、参考人に申し上げます。  時間の関係がありますので、答弁は簡潔にお願いいたします。
  20. 三輪昌男

    三輪参考人 今回取り上げられております改正のほかに、現在、農協法のどの部分かを改正することによって農協の積極性を引き出す余地はないのか、こういうお尋ねであったかと思います。  私は、農協法は、農協の活動に対して一つの枠組みを与えるという性格を持った法律だと思います。一方、農協の活動というのは、自主的な、それと同時に社会的な責任も十分に自覚したそういう活動であるべきものだと思うのです。農協の自主的な活動、社会的な責任を十分自覚した自主的な活動を自由に行わせるような枠組みを与えることが農協の積極性を最もよく引き出す道だと考えます。そういう目で現在の法律を見ますと、かなり自由な活動の余地は与えているものであって、現在のところお話の趣旨のような形で問題にすべきことはないのではないか、こういうふうに考えます。
  21. 渡辺省一

    渡辺(省)委員 どうもありがとうございました。
  22. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 小川国彦君。
  23. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最初に、農林中金の森本理事長に、農協金融あり方についてお伺いをしたいというふうに思うわけであります。  昨今の農家経済を見ますと大変な苦境にありまして、大まかに見ましても、五十六年度の平均で水田農家で約百万、普通の畑作農家で二百万、施設園芸の農家で三百万、畜産農家になりますと四百万から五百万、これは全国の一農家当たりの平均ですが、そのぐらいの負債を抱えておる状況にあります。さらに個人の最高を見ると、一千万から数千万という大変な負債を農家が抱えておる状況があるわけでありまして、非常に憂慮にたえない状況だというふうに考えておるわけであります。  本来ならば、農林中金は農民に貸せるあるいは農協なり農業関連事業に金を貸せるということが一番望ましい姿でありますけれども、現実の農家農業経営の姿というものは、いずれの農家を見てもそれぞれ大変な負債を抱えて運営されている状況にあります。そういう意味で金融面から見た農家負債の現況というものをどういうふうにごらんになっているか。これは農業再建の非常に大きな課題であるというふうに考えられますので、中金の最高責任者として全国農業金融の動き方を見ている中で、この辺の農家負債の状況から農家の再建というものをどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、この点を一点承りたいと思うわけです。  それから、農業金融の中で私ども感じますのは、海外の経済協力なんかを見ますと、たとえば、海外における農場の開発輸入であるとか、あるいは農業のいろいろな援助事業であるとかいうところへの貸し付けは五年据え置き二十年償還、金利が二%あるいは三%というような非常に長期、低金利の金が貸し付けられているのですが、日本の農家でも、たとえば、長期的な事業についてはそういう国の援助の中で、これはもちろん農林漁業金融公庫の行うべき仕事でありますが、中金としても、そういった農業金融、長期、低利のものを提供し得る状況というものはどうしたらつくれるのか、こういうこともやはり御検討いただきたい課題だというふうに思うわけであります。その点についてまず御意見を承りたい。
  24. 森本修

    森本参考人 第一点の、農家負債がかなり多くなっておるのではないかということでございますが、ちょっと計数的なことは私持っておりませんが、最近の系統金融にいたしましてもあるいは公庫金融でも自創資金その他が相当出ていますから、御指摘のようにやや後ろ向き資金といいますか負債整理的な資金が多くなってきておるというような感じがいたします。  そこで、特に系統金融について申し上げますと、いろいろと政策的にも畜産等につきましていままで融資をしておったものの滞りがあって、それに対してまた借りかえ資金といいますかそういうふうなものがかなりたくさん出ていくという形になっております。そういう意味では、一つの民間的な金融の循環の中でそういった負債整理的な資金が一体どういうふうに処理されていくのかという点につきましては、いろいろ考えをめぐらさなければいかぬような要素が出てきておるのではないかという気がしております。特に、農業ではございませんが、水産の金融などを見ますと、水産業が非常に苦しいということで系統金融についてもかなり滞りが出る、それに対して保証しておる保証機関がまた大変なことになるということで、農業金融を円滑にやっていく一つの循環なりからくりの中で、そういった非常に苦しい農家に対して円滑に資金を融通していくために、いま言ったような一つの実態をどう整理し改善していくかということは、今後、私どもも考えなければいかぬと思いますし、政策的にもまたいいろお考えを願わなければならぬ点があるのではないかというふうな感じがしております。  第二点の、長期、低利の金を系統あるいは農林中金自体として考えるべきではないかという御質問でございますが、これは御案内のように、公庫資金がそれを担当しておる、また系統におきましても近代化資金がそれを担当しておるという形になっております。ただ、私どもプロパー資金と言っておりますが、そういったもの以外の資金の面でも、たとえば、私どもでは通常の金融以外に系統に対しまして施設、特に共同施設資金融資する場合に、特に重要なものについては金利を安くしておるというようないわば私どもにおける要綱融資のようなものをやっております。また、各地の信連におきましても同様な、重要性の高い長期の資金について低利で貸すというような仕組みも考えておるようでございまして、制度資金と相まって私ども系統のプロパー資金においてもそういった形で、必要な長期資金に対してはできるだけ低利で融通をするという仕組みを今後も研究していかなければならないと思っております。
  25. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それからもう一点、農林中金の森本さんに伺いたいのですが、今回の改正の中では員外貸し出しの枠というものが拡大されていく方向にあるわけでありますが、信連とか単協の貸し出し状況の中で、員外貸し出しが不動産業であるとかあるいは風俗営業にまで貸し出されているという実例があるわけです。本来、農民の預金であり、農業金融でありますから、できるだけ重点は農業金融であって、農民の金が風俗営業にまで貸し出されていくという実態は本当に好ましくないと考えるのでございますが、この点について金融の総元締めの立場からどういうふうな御所見を持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  26. 森本修

    森本参考人 たしか農協の模範定款例によりますと、員外貸し出しは量的な限度もございますけれども、また質的というか、どういうところへ貸すようにしたらいいというような形で出ておりまして、恐らく全国的に見ましても、それぞれの単協におきましてほぼそれと同様の定款のもと運営されておると私は思っております。  それによりますと、員外者に対して風俗営業のような資金を貸すというようなことには実はなっていないと承知をしております。それはそれとしまして、実際の農協運営また、農家資金をいかに運用していくかという際におきましては、もちろん、先生がおっしゃいましたように公序良俗に反するとか、あるいは社会的な批判を浴びるとか、そういうふうな形で資金を運用あるいは貸し付けをするということは農協あり方としても厳に戒めなければならないと私は思います。
  27. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、全農の宮崎副会長にお伺いいたしますが、御承知のように輸入農産物が年々激増してきている。そこへ今日、輸入枠の拡大の問題からさらに撤廃の問題まで起こってきております。これは即農協事業量の減少にもつながっていく。輸入農産物がふえてくれば当然国内農産物の取扱量は減るわけでありますから、それだけ農協事業量も減っていく。ですから、輸入農産物の枠の拡大は農協事業量の減少につながってくる、こういうことで、これは全中さんを中心に活発な自由化反対運動が進められておりますが、事業体としての全農としてはやはりこれに取り組む強い姿勢がなければならない、こう思うのでございますが、その点どういうお考えを持って臨んでおられますか。
  28. 宮崎貴

    宮崎参考人 いまの御質問でございますが、私たちは全中も全農も、またすべての農協団体、その他の農業団体とも一致いたしまして、日本の農業現状から見ればこれ以上の自由化、枠の拡大は絶対に反対だという態度は全く同じでございますから、それを運動してまいります。したがって、自由化されたならばどうするかという仮定の考え方は持っておりません。ただ、現在、われわれとしては日本の農業そのものをいかに体質強化し、コストを下げるかという努力はしなければならないという点は、先ほども全中の桜井常務が言われましたように、現在、系統農協検討を加えておりまして、秋の農協大会には農業振興戦略の具体的展開方策というものが提案されるわけでございまして、これは実はきょうも農業対策委員会検討しております。その内容はまだ確定はしておりませんが、要は、日本の国土の狭い一戸当たりの零細経営の中でいかに分散錯綜性、いわゆる農地が分散され錯綜しているかというようなものについてこれの集積を図る、そして地域中心とした営農集団を育成する、これによって農地の有効利用、高度利用、そしてコストの上昇を抑えるというような問題に取り組もうということが現在の姿勢でございます。  私も畜審の委員をしておりますが、畜審で出された資料によりますと、日本の農産物は何でも高いといいますが、畜産物などでは、鶏卵などでは完全に海外に負けておりません。その他、ECなどと比べますともう七割、八割水準までいっております。ただ、アメリカやニュージーランド、オーストラリアのような広大なところの一戸当たりの経営面積、これらと比べた場合はまだ容易ではございませんが、EC数字にかなり近づいておるという現状でございますから、今後、いま申し上げたような団体もまた、農家も一体となってその農地の有効利用等図るならば、少なくともそう遠い機会ではなくてEC程度の水準になるであろう、また、それの努力をしなければならないというふうには考えます。  それは先の話を言っておるわけでありますが、あと現状としては、われわれはすでに地域営農振興計画を立てまして、できる限り必要なものは必要なだけつくるということを行いまして、需給調整を図りながら農家所得の安定を図るというような運動を続けておりますし、先ほど申し上げた原料の確保等についても努力しておる、かような状況でございます。したがって、政策的にはいますぐすべてを自由化して外国の農業と闘わせるということは全くむちゃな話でございまして、これは絶対に反対であります。  以上です。
  29. 小川国彦

    ○小川(国)委員 全中の桜井さんにお伺いしたいと思います。  いま全農の副会長も述べられたような貿易自由化のあらしというものが日本農業を根底から覆していくおそれがある。これはそれぞれの組織がこれに対して闘っていくという考え方を持っているわけです。  もう一つは、いまの消費体制といいますか自由経済の中で、協同組合主義に基づく農協というものも当然自由競争のあらしの中に置かれているわけでありまして、その中では商業資本との激烈な競争場裏にも置かれている。したがって系統利用というたてまえだけでは、農協経営の維持発展というものはなかなかむずかしいところに来ているのじゃないか。これは従来から主張されている一つの理論でありますが、農協段階制論、いわゆる全国組織と最前線の単協とが直結した形で農協の効率的な運営ができるということも図らなければならないのじゃないか。現実には全国段階から都道府県、それからまたさらに支所があって単協があるということになりますと、四段階になっている状況もあるわけでありまして、こういった農協組織の効率的な制度の改革といいますか、そういう方向をどのようにお考えになっているか。  それからもう一つは、これは働くいろいろな労働団体からの強い要望があるわけです、いま週休二日制というものが。働き過ぎの日本人ということでもう少しゆとりを持った生活をすべきではないか。ところが金融関係の労働者、こういう人たちが週休二日制を実行しようとすると、郵便局があり農協がある。一番問題は農協である。農民の立場からすれば、これはおれたちが三百六十五日真っ黒になって働いている、その組織である農協が日曜日のほかにまた土曜日も休むとは何だ、当然農民のこういう意見もあると思うのですが、やはりこれは日本全体が、もちろん農民も含めて週休二日制くらいのもう少しゆとりを持つ日本の社会というものをわれわれは考えるべきじゃないか。高度成長から安定成長に入った日本というのは、もう少しゆとりを持った働く者の社会というものがつくられなければいけない。そういう意味では、農協の考え方も週休二日に向けて一歩前進するというような体制がつくれないものか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  30. 桜井誠

    桜井参考人 第一の段階制の問題でございますが、三段階か二段階かというのは古くして新しい問題でございますけれども、この問題につきましては明確に将来二段階を目指すべきであるというふうな結論を現在持っておるわけではございません。従来、伝統的に行政とともに産業組合以来農協が現在まで来たということもございますし、実際の事業の仕組みの中で段階別の機能分担を効率的にやっていくという現状の仕組みの中で、さらに改善の余地が相当あるのじゃないかというふうに考えておりますし、単位農協の合併が進展をしてくるということに伴いましてこの問題を将来どう考えていくかというのがあろうかと思いますけれども現状で直ちに二段階の方向が是である、それが一番農協組織あり方として正しいという結論はにわかにつけがたいというふうに思っております。  それから、信用事業の週休二日制の問題につきましては、去る四月十六日に全国中央会理事会におきまして次のような方針を決めて、現在その方針に基づいて進めておるわけであります。それは具体的にはどういうことかといいますと、民間の金融機関郵便局と足並みをそろえまして月一回の土曜、休日を信用事業につきまして実施することを目標に準備を進めていこうじゃないか、そのためには農協なり組合員の理解を得なければいけません。特に、農協の場合は信用事業のほかに販売購買事業、いろいろな共済をやっておるわけでございますので、ほかの金融事業単一の機関とは違いかなりむずかしい問題があろうかと思いますが、そういうむずかしさを農協なり組合員の理解を得て、先ほど言いましたように民間金融機関郵便局が足並みをそろえるということを条件に、前向きに現在組織討議を始める段階になっておるということでございます。
  31. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最後に国学院大学の三輪先生にお伺いしますが、いま、農民の農協離れという傾向が非常に起こってきている。おらが農協という意識が戦後、農協法等の制定の直後には非常にあったわけですが、いまは農協もいろいろな商社なり商店なりそういうものと同列に置いておる。ある場合には機能的、効率的あるいはまた、低価格であれば商社の方に走るという傾向も非常に強くなってきている。そういう意味では、農協体質改善というものもやはり必要なのじゃないかというように考えられるのですが、今後の農協の一つのあり方、そのことについて、こういう短時間では大変むずかしいと思いますが、要約した形でどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  32. 三輪昌男

    三輪参考人 大分前から農協をめぐる議論の中では言われてきている大きな問題であります。一言で農協体質改善とよく言われてきた問題でありますが、結局、毎日農協で働いております役職員とそれから一般組合員と、この結びつきが弱いと農協離れが起こるわけです。農協離れを解決しようとすれば、その結びつきを強めるということを具体的な方策として考え、工夫し、実現していかなければいかぬということになるわけでございます。この組合員農協離れについては、農協役職員の側でかなり深刻な反省がされてきているというふうに思います。私、その辺を資料的に少し、いつごろから始まってどう動いてきたかということを調べたことがございますが、昭和三十年代の半ば前後の時期から自覚が起こりまして、その後二十年の間にずいぶんその点での前進がなされてきておると思います。協同活動強化運動の旗が掲げられてその点がさらに具体化して進められておるわけでありまして、私は私の立場でいろいろな具体的な提案などもしたりしておりますけれども、話が細かくなりますので、ここでは省略させていただきますが、確かに前進はしておるというふうに見ておるということだけ申し上げて終わらしていただきます。
  33. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 松沢俊昭君。
  34. 松沢俊昭

    ○松沢委員 参考人の皆さん、大変忙しいところおいでいただきましてありがとうございました。時間がありませんのでごくかいつまんで御質問申し上げたいと思います。  まず、中金の森本さんに御質問を申し上げたいと思いますが、中金の金、農協の金というのは、言ってみればこれは農民の金なんでありまするから、したがって返す場合におきましてはそれにはやはり利子をつけて返さなければならないという性質のものなんですね。今回の法改正からすると、当然オンラインなどの関係で改正をしなければならぬという面もありますし、それからもう一つは、やはり都市化した地帯におけるところの員外貸し付け、これが余り制限が強いということになりますとなかなかうまく資金運用というものができないじゃないかというようなそういう必然的なところから法改正という問題が起きてきているというように私は考えるわけなんであります。ただ問題は、しかし、農協というのはやはり農民の協同組合なんでありますから、その資金運用の面においてうまくいくようにするということも大事ですけれども、そのことによって農協本来の性格がぼけてくる、また、そういう危険性というものもあると私は思うわけなんでありまして、その辺の絡みというところがやはり非常に問題の大きいところなのじゃないか、こう思うのですが、その点はどのようにこれから運用していかれるということなのか、そのお考えをお聞きしたい、こう思うわけであります。  それからもう一つは、金を貸す、借りるというのはやはり信用事業なんでありますから、借りてもなすところの能力のないものには貸すわけにはいかぬと思うのです。日本全国ずっと農村を回って歩きますと、金を借りてもなすところの能力のない連中がたくさんいるけれども、ここへ投資をすればこの地帯というのは大変りっぱな農村になるのじゃないかというような場所も相当あるわけなんですよ。だけれどもこういう場所に農協系統資金というものをぶち込むわけにはいまの段階としてはいかぬと私は思いますが、しかし、これはやはり将来日本の農村再建のためには考えていかなければならぬところの問題点になるんじゃないか、こんなぐあいに実は思うわけなんです。都会は過密、農村は過疎、こういうことになっているわけですから、その辺のバランスを直すためにも考えなくてはならぬところの問題点なんじゃないか、こう思うのですが、その辺はどうお考えになっておるか、お考えをお聞きしたいと思います。  それから、全農の宮崎さんにお伺いを申し上げたいと思うのですが、はっきり言いますと、全国段階があって県段階があって単協がある、こういう状態になっておりまして、私も農協組合員なんでありますけれども、その下に組合員がいるわけなんです。さっぱり上の方がわからぬわけなんですよ。たとえば、米を取り扱うにいたしましても、どう考えてみても、良質米奨励金というのが、政府から千五百五十円ぐらい一俵についているのではないかとか、あるいはまた、その他取り扱いの金というのがついているのではないかというふうに勘定しても、もっと高く精算してもらわなければならないと農家は思っているわけであります−けれども農家が考えるほどに高く精算をしてもらえないという問題があります。  あるいはまた、えさの問題なんかそうですけれども、国際価格というのは非常に安いと言っているのであります。農協の方で配合飼料をおつくりになっているわけなんですが、要するに、そのシェアというのは一番大きいと思います。しかし、安い安いと言われますけれども、庭先に来るとべらぼうに高くなってしまうわけなんですね。これはどうも農家としてはなかなか理解ができないという面があるわけです。そういう点をもう少しわかりやすく、こういうわけでこうなっているんだ、すぱっとだれでもわかるような、そういう運営の仕方というのはできないものかどうか、これをお伺いしたいと思います。  それから、せっかく新潟県からおいで願ったわけでありますので、吉原さんにお伺い申し上げます。  吉原さんは、非常に長い間農協マンとして、農協指導者としてずっと御活躍になってこられたわけなんです。さっき、全農を切るなんというような前科があるんだからというお話がございましたけれども、私は、必ずしも全農を切るというのは悪いことではないんじゃないか、そこには問題点があるんじゃないか、あったから指摘した、こういうことだと思うのであります。その後、中央から新潟にお帰りになりまして、そして新潟経済連の会長を長くお務めになられまして、最近、顧問になっておられるわけでありますが、いままでの経験から、これからの農協にこういうことを注文するという注文がおありになると思うのですが、あったら、この際披瀝をしていただきたい、こうお願い申し上げるわけなんです。  大体時間が参りましたので、答えだけお聞きしまして、この辺で終わりたいと思います。
  35. 森本修

    森本参考人 第一点の、今回の改正によって農協の性格等に余り混淆を来さぬような制度改正であるべきだし、また、運用であるべきだという御質問、まことにそのとおりでございまして、御案内のように、農協が先ほど言われましたような性格でありますので、農協法も、資金の運用につきましては優先的に会員なり組合員に貸す、次に準組合員に貸す、員外に対してはきわめて制限的な制度ということになっております。これは農協の性格上当然だと思います。  ただ、資金の実態を見ますと、調達と運用に非常にアンバランスが来ておる、恒常的に余裕金が出てきておるというのが、一口に言えば農協資金事情でございます。したがいまして、本来の業務影響のない限り、資金の運用についてある程度緩和をしていくということが、農協信用事業を円滑に持っていくには必要ではないかというふうに私は思っております。といいますのは、最近の資金というのは、単に農協に従来のように零細な資金を預ける、貯金をするという観念以上に、安全で高利、と言ってはちょっとあれですけれども、かなりな利回りで運用してくれというような信託的な預金がふえてきておる。そういうことでありますと、農協としても、農民の需要に応じて相当の利回りで運用するということに努めざるを得ないというのが、最近の信用事業状況ではないかというふうに思います。したがって、本来の事業影響を及ぼさないという限りにおいて、ある程度の特例なり緩和措置を講ずるということは、農民の期待にも沿うゆえんではないかというふうに私は思っておるわけであります。  今回の改正は、そういう観点から見ますと特例的になっておりますし、また、限度につきましても一五%ということで、かなり締め込んだ改正になっております。したがって、農協の本来の性格を曲げるような改正ではもちろんありませんし、私どもも運用に当たっては、先生が言われたような農協の性格を曲げるようなことにならぬようにという御趣旨は十分体しながらやってまいるつもりであります。それが第一点。  それから第二点は、農協資金は元金も金利もつけて農家に返さなければいかぬからどこへでも借すというわけにいかぬだろうが、資金を投ずれば開発される、しかし、当面採算に乗るかどうかわからぬというようなところにも貸すかどうかということをひとつ考えるべきではないかというようなお話であります。もちろん、資金を投じて開発されて、将来その事業が軌道に乗るというようなことであれば結構であります。ただ、先ほど申し上げておりますようなことで、農協資金農家から委託をされた資金でありますから、私どもの心構えとしては、安全で確実な運用をするということに努めなければならぬ、これが役割りだと思っております。したがって、資金をどこへ貸してもいいというわけにはいかない。資金の性質も使途も大事でありますが、また、貸しますところの相手が採算に乗る、したがって金が返ってくるということでないと困るわけでございます。そこいらの点をよく兼ね合いを考えまして、金は生かして使えという言葉がございますから、両者をよくかみ合わして貸し出しの態度を決める法案というふうに思っております。
  36. 宮崎貴

    宮崎参考人 米の問題と飼料の問題でございますので、簡潔に申し上げます。−米は、御案内のように政府米と自主流通米があります。政府米はすべて御案内のような政府の決定であります。そして、自主流通米の助成についても政府で決定いたします。ただ、販売価格は、全農と実需者と協議の上で決定をしておるということでありますから、年によって違います。特に、冷害の昨年あたりはかなりのアップになっておるということでございます。それで、すべて各段階の必要な手数料、それと農家への精算というものは明らかになっています。  具体的に例を申し上げますと、政府米では、農協は一・七%の手数料であります。県連が〇・二%、全農は〇・〇六%であります。自主流通米は農協が平均で二・七%、県連〇・六%、全農が〇・三%、これは全農も販売するために経費がかかりますから、政府米より高くなっている。したがって、政府米の取り扱い手数料でもあるいは全農の自主米の取り扱いでもすべて機関決定をいたします。全農には米穀委員会というような委員会がございまして、あらかじめ審議をしてこれをこの程度というような問題を提起をして論議の上理事会で決定して了解いたします。県連でも農協でもそうであります。したがって、いまおっしゃるところによると、全然御理解いただかなかったということになりますと、その知らせ方に問題があるかと思いますから、今後そういう点は、一番米がはっきりしていますから、十分に理解いただけるように農協段階まで御指導申し上げてわからせるような努力はいたします。内容は明確であります。  それから飼料について、これはいろいろ問題がございますが、飼料価格、これは飼料ばかりではありません、すべての品物について市況価格というのが出ます。ガソリンなどでも物すごく乱売しているようなものも出ます。えさも出ます。しかし、農協としては原価を計算してこれも総会の決議による手数料を掛けて出すという価格でございますから、これも明らかになっておりまして、農協段階でも仕入れ価格の何%という手数料を総会で決めてやりますから、おのずから原料が下がれば下がるようにできています。上がれば上がらざるを得ない。しかし、手数料率は一定であります。すべて総会決議ということになりますから、これも明らかになっております。ただ、高い安いの中で問題になっておりますのは、その品質の問題とかいろいろな内容、われわれは完全配合飼料を基準にしております。二種混もあります。そういう点でいろいろな配合内容ございますけれども、その内容を理解せずにただ単に高い安いと言われる例がかなり多いのが一つ。  それからいま一点は、場合によっては業者がシェアを拡大するために原価を割って一時局所的な安い価格を出すというような、これはえさばかりではありませんで、すべての品目にございます。ですから、われわれは総合的に実態調査してみたところ系統の方が高いというものはありません。したがって、私はその内容の理解を、ただトン当たり幾らというところに問題があると思っています。私自身、実際自分のところは畜産農家であり、畜産にはおこがましいけれどもかなり理解があるつもりです。たとえば、全農の完全配合飼料の場合には、繁殖豚の場合は繁殖能率にどのように影響するか、あるいは疾病抑止にはどのようなものを使っているかあるいは飼料効率をどうするかあるいは肉質をどう改善するかというような、十分に国の研究機関等々のデータを入れまして、十分に検討の上、完全な品質の飼料をつくってやっているのが実態です。こういうことで供給します。したがって、私は、実はそういう御意見がありまして、一昨日自分の農協の畜産農家と会いまして完全に理解をしていただきました。そういう点で、やはり内容の説明・理解等が不足ではなかったかというふうにただいまの御質問で感じますので、品質の内容、価格の計算はこうなっているという点については農協らしいやり方をしておりますから、これもわかるように各段階に説明をするような御指導を申し上げたいと考えますので、よろしくお願いいたします。  以上です。
  37. 吉原静雄

    吉原参考人 先ほども申し上げましたように大変不用意なまま出席いたしておりますので、的確に申し上げられるかどうかわかりませんけれども、おまえ長いこと農協運動をやってきたのだから、これからの農協を何か考えることはないか、こういうお話のように受け取っておるわけでございます。  基本的に申し上げますと、われらの農協という言葉を私どもはしょっちゅう使います。しかし、これは本音とたてまえということがございまして、余り本音を言うとまたおかしくなるわけでございますけれども、私は、日本の農協というのは本来、農民が本当に苦しんでつくり上げた農協でない、こう思っております。これは、終戦後マッカーサーからちょうだいをした農協だ、ですから農家の人たち自身に甘えがある。これは抜け切るにはなかなか容易じゃない。本当に大変苦しむ段階がなければ抜け切るには容易じゃない、こういうふうに基本的に眺めておるわけでございます。  先ほどもお話がございましたように、週休二日制というようなお話もあるわけでございますけれども、実際、農協におりますと週休二日制どころじゃございません。日曜日にもやれよ、おら出稼ぎに行って、行っている先が休むのが日曜日なんだから農協くらいは日曜日やってくれよ、こういうような声もございまして、その辺に大変な矛盾を実は感じておるわけでございます。  さっきも申し上げましたように、与えられた農協ということがあるわけでございますので、農協についていろいろな商社の関係とか購買物資の関係とかでいつもてんびんにかけておる、こういうのが実際でなかろうか、こう思います。しかも、農協におきましてはやはり経営という形が日本の農協にはあるわけでございます。指導機関をやっておりますそれぞれ中央会あるいはまた農協におきましても指導部門、こういったところは大体が形として賦課金制度でやるわけでございますからそう問題ございませんが、購買販売というような流通の問題をやりますと常にてんびんにかけて、自分たちの農協だから結集しよう、われらの農協だという言葉は、正直のところ農協役職員が常にそれを掲げて組合員教育をしたり、自分の意識をそのように持っていこうということでございまして、本当に農家の方々がそこまで徹底的に一〇〇%考えておられるかというとここに問題がございます。ですから、農協運動というのは私は、いつまでもいつまでも続けてやらなければならぬのでないだろうか、こんなふうに実は考えておるわけでございます。これは果樹地帯とか酪農地帯とかそういう特殊のまとまったところの意識はまた別でございましょうけれども、全体的な農協の面から申し上げますと、いまのような形でございます。  いままではいろいろおくれておりましたけれども、やはり日本の経済成長と一緒に一歩、二歩おくれながらも日本の農業農協も進んでまいりました。言うなら、歌の文句じゃございませんが、上を向いて歩こうという形であったろうと思いますけれども、ここへまいりますと、これからの農業農協も足元を見詰めて、自分というものをしっかりと認識した上に立って果たしてこれでいいのか、また真の意味でわれらの農協これでいいのか、本当にもう一遍意識革命をしなければならぬのでないだろうか、こんなふうに実は感じておるわけでございます。  御承知だろうと思いますけれども、いま農家と言いますけれども、昔は百姓でございます。非常に便利な言葉がございまして、自分の都合の悪いときは、おれ百姓だから何にも知りません。一朝損得が絡まってきますと、百姓だからといってばかにするな、こういう言葉がございます。この辺の使い分けが非常にむずかしいのでございますが、農協を眺める他の組合員の方々の考え方も基本的にはどこかにそういうことがございます。ですから、農協はこれだけ体制もできて、全国連にいたしましても県連にいたしましても組織もしっかりできてもう間違いもない、うまくやっているんだろうとはお思いになる農業以外の方々もおいでになりましょうけれども基本的には、まだまだ真の意味の農協運動というものはもう一遍しっかり確保しながら進めていかなければ真の農協にならぬのでないだろうか、こんなふうに実は考えております。大変抽象的でございましたけれども……。
  38. 松沢俊昭

    ○松沢委員 大変ありがとうございました。これで終わります。
  39. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 武田一夫君。
  40. 武田一夫

    ○武田委員 参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。  先ほどいろいろと貴重な御意見を伺いましたが、私は宮城県でございまして、東北六県、農業地帯、いままで非常によく歩いてきたつもりでございますが、そのときどきに農家の皆さん方から私が見聞きしたことの中で、いろいろ不満やら要望なりを聞いてきました。そういうものを、生の声を通して皆さん方の御意見なりお考えなりを伺いたい、こう思う次第でございます。  それで、私は、今後の日本の盛衰というのは農協の農民に対する取り組み方、大きな比重がそこにあるんじゃないかと考えます。そうなりますと農協における、いろいろな組織体の中における人間、いわゆる職員の皆さん方がどれほど日本の農業農家を守り発展させようかという精神の問題が非常に重大になってくるんじゃないか、こう思うわけであります。  そういう点からまず、桜井参考人にお伺いいたしますが、桜井さんはこれからの中央会を背負って立つ方であるとお聞きし、私もそうであろうと思っておる方でございますので、いろいろと今後の農協あり方について勉強なさりあるいはお考えになっていると聞いておりますので、いろいろ際どい話もありますが率直なお考えをお聞かせ願いたいと思います。  一つは、農家に行きますと、農協太り農家は細ると言います。農協が大きくなったのは何のためなんだ、こういう率直な意見を言う農家の方々ほど一生懸命農業をやっておる方であるということを伺って、見まして、私はこういう問題をないがしろにはできないと思うわけであります。農協活動が農家経営の向上あるいは農家の皆さん方の生活の向上等にしっかりと結びついたものであってほしいと私は思うわけでありますが、この点につきましていかがお考えを持ち、そういうものに対して今後どういうふうな対応をなさっていかれるつもりか、まずこの点ひとつお尋ねをいたしたい。  それから、事業は人なりという言葉、これはあらゆるものに共通する大事な言葉だと思います。特に、その指導的な立場にある方々の行き方でずいぶん農協の中身が違っております。地域社会から親しまれ愛される農協もあれば、嫌われておるものもあります。いい子、悪い子、普通の子なんて言うけれども農協にもそういうのがずいぶんございまして、やはり組合長さんや理事さんの姿勢というものが非常に大きなウエートを占めている。ところが、理事の選挙というのがまた批判が大変ございまして、金権買収選挙の原点は理事選挙にあると言われている。これは東北の一部でありますから全国各地とは言えないのでありますが、私もこの目でずいぶん見てきました。これはどうにかならぬものかというのがまじめに農協の姿を考える方々の率直な意見であります。これについてどういうふうに考え、どうしていこうかという、そういう御見解がありましたらお聞かせいただきたい、こう思うわけであります。  もう一つ、農業外の関係活動が非常に活発である。経営主義といいますか営利第一主義というのか、これは全農の宮崎さんにも関係あるわけでありますが、非常に活発である。そのために地域の商工業の皆さん方とのあつれき、そういう不協和がときどき聞かれる。スーパーの問題ガソリンスタンドの問題等々ございますが、こういう地域社会の中における農協の存在というものを、今後どういうふうにしていかなくてはいかぬかという問題についての御意見を伺いたい。  最後に、もう一つお伺いしますが、今後の農協あり方といたしまして、大体いまの農協を見ておりますと、職能組合という原則の中に地域組合的な機能がずいぶん多くなってきたと思うわけでありますが、こういうような両者の性格を併有した姿というものを今後も続けていかなければならないものかどうかという、今後の路線といいますかその性格の面の今後のあり方といいますか、その点についてひとつお尋ねをしたい。  次に宮崎参考人にお願いしたいのでありますが、農協が太っていくため多くの職員さんも抱えております。そうすると、やはり職員さんの給料の問題もありますし、いろいろな設備投資等たくさんありますので、ある程度経営もしっかりしなければいけない、これはわかるわけでありますが、しかしその前に農家生活、家計はどうなんだというところからスタートしてもらいたい。ところが、行ってみますと、農協職員の皆さんはなかなか商売上手ですね。機械を販売するのにも、ただ販売しないで、温泉に連れていく、旅行に連れていくと言って、お互いの農家の皆さん方の心理をよく勉強している方がいるわけで、商売上結構だと思うわけでありますが、機械貧乏と言われている以上は、そういう面で、機械を買わせるだけでいいものかどうか。  それからもう一つは保険がございます。保険の勧誘にも非常に熱心でございまして、何か毎年毎年保険に入っているという、そのために掛金やらあるいは支払い限度なんか全然知らないような中で、大変保険の負担を感じているということもございます。こうしたやり方というのは、その組合の一つの姿勢にもあると思うのですが、今後は相当指導しながら適切な対応をしなければいかぬと思うわけでありますが、いかがお考えでございましょうか。この点をお尋ねをいたしたいと思います。  最後に、農協という組織一般の国民によくわかる、要するに、農協運動というと大体圧力団体であるとか、どうもそういうイメージが余りにも強過ぎまして、たとえば、今回のような貿易摩擦等あるいは輸入の自由化が非常に問題になるときも、周りの一般国民が日本農業を守るためにバックアップしてやろう、その先頭に立って運動している農協の皆さん方と一緒になって地域でもがんばろうという姿勢が余り見えないわけであります。そういう国民的な運動がいつでも展開できるような土壌をつくるための努力が、これから第十六回の農協全国大会を迎えるに当たって大きな課題になろうと思うわけでありますが、この点についてどのようにお考えになっているか、五人の参考人の皆さん方に簡潔にお考えをちょうだいしたいと思うわけであります。よろしくお願いいたします。
  41. 桜井誠

    桜井参考人 第一点の問題は、言ってみますと農協の姿勢の問題ではなかろうかと思っております。  農家農協利用しているのではなくて、農協農家利用しているというふうな面が一部にないわけではないと思うわけでありますが、冒頭で陳述をいたしましたとおり、農協特質は、要するに、組合員がみずから農協をつくり利用運営する、これが一般企業にない基本的な特質でございますので、それを踏まえて事業展開される、経営がされるということでないと本物の農協にならない、協同組合にならないというふうに私は考えておりますし、そういう方向に農協人を育てていかなければいけないと考えております。  それから特に、事業は建物がやっているわけではありませんで人間がすべてやるわけでありますので、人間によりまして組合員から農協が嫌われるあるいは好かれるということになるわけです。もちろんこれは事業展開の仕方にも当然かかわりがあるわけでありますが、そうなりますと、いま選挙の問題が出されたわけでありますけれども、私も時たま実弾の話は聞かないわけではございません。非常に恥ずかしい話だというふうに考えております。この問題につきましては、特に、若い青年の人たちあるいは婦人の人たちが農協のそういう選挙が変なやり方でやられているということについて、一種の粛正と言うと言葉は悪いのですけれども、公明、明朗な選挙に直す、この運動をしなければいけないし、現に一時そういうふうなことがあって、青年部なり婦人部が乗り出して、公正、明朗な選挙をやるように一般組合員もだんだん自覚をして、若い人が理事に切りかわっていくというふうなことも聞いておりますし、これは一挙に簡単に答えが出るわけではございませんけれども、そういう方向で全国農協が取り組めるように努力をしていかなければいけないというふうに思っております。  それから、第三番目の問題でございますが、農協特質というのは、先ほど申し上げましたほかに、営利を目的として事業をやってはならぬというのが農協法にも明記されておりますし、協同組合特質であります。一般的に経営主義あるいは営利主義というふうに批判をされる面もあるわけでありますが、具体的に申し上げますと、営利を目的に事業をやってはならないという点を踏まえて事業展開するとすれば、一つは、投機をしてはいけない、協同組合農協は投機をしてはならない。二番目に、組合員に関係のない事業に手を出す、組合員営農なり生活にかかわる必要なものを実施するということはいいわけでありますけれども、そうでない分野にまで行くとすれば、これは農協協同組合でないというふうに考えておるわけでございます。  これからの協同組合農協の活動としましては、地域の人々との連帯というのが基本的に一番大事なことである。農業農業だけの世界で生きていくということではございませんで、地域の人々と一緒に人間的な連帯感の中で地域社会をよくしていくということが基本的に大事でありますので、不当に地元の中小の商業者を農協が圧迫していくということは、連帯意識の醸成にもなりませんし、今度の店舗の問題におきましても近く農水省の方から農協店舗につきましての行政指導もあろうかと思いますけれども協同組合特質を踏まえながら、地域の人々と連帯して発展をしていくという方向をとっていかなければいかぬというふうに思っております。  第四番目は、これからの農協の性格といいますか組織がどう変わるのか、あるいは変えていかなきゃいかぬのかというような感じのお話であろうかと思いますが、いずれにいたしましても農協組織、基盤が急速に高度成長以来、低成長になりましても変わってきておるわけです。そうなりますと、従来農地でありましたところが宅地、工場用地に切りかわっていく、農業者が減っていくという地帯の農協も当然出てまいります。その場合に、ではその農協は将来、信用組合になるのかあるいは生活協同組合になるのか、こういう問題も当然あるわけでありますけれども、その地域農業者がある、正組合員がおる、農業もやられておる、都市農業として新鮮な農産物を供給しておる、そういう者がある以上農業協同組合としての性格は持ち続けていかなければいけない。場合によりましては准組合員の方が多くなるにいたしましても、農協としての特質を踏まえて事業展開を図っていく必要があろう。ただ、先行きそれでは全然農地がなくなっちゃったという場合の農協対応というふうな問題もあろうかと思いますが、そういう場合に一体どうするか。それは場合によりましてはさらに広域の合併をしていくというふうにも考えられますし、にわかに現在の都市農協信用組合になればよいあるいは信用金庫になればよいというふうには考えていないわけですが、組織基本にかかわる問題でございますので、そう簡単に結論は出ないというふうに思っております。
  42. 宮崎貴

    宮崎参考人 先ほど農機の例を取り上げまして御質問でございますが、農機の扱いについては先ほど基本的に申し上げました。現在は、昨年十二月から全国統一運動として、現在持っている機械を耐用年数いっぱい使おう、そのために修理、整備事業強化する、部品対策強化する、こういう運動を展開しております。なお、農機の更新に当たっては、営農技術、営農指導と一体となった購入を進める、こういう基本方針で運動を展開中であります。  したがって、先ほどの御質問にあったような温泉に招待をしたという話でございますが、全国にそういう点は絶対ないということはないと思いますが、恐らくそれも農協でやらなければ他の業界でやるというので、対抗的な問題もあったというふうにお伺いしています。しかし、基本は入り用なものをとにかく買わせる、しかも耐用年数いっぱい使っていこう、それから中古機の活用も組織的に行う、こういう運動でございますので、今後は売らんかなという姿勢ではなくて、本当に必要なものを農家にあっせんするという精神で具体的に臨んでいきます。  それから、保険、まあ共済の問題についての御質問でございますが、私は、いまは全農ですから専門でございませんけれども、これについてはいろいろな過去の歴史があります。日本の産業組合の発展の過程では、高利貸しから逃れようということで信用事業がまず発展いたしました。次には、肥料、生産資材は硫安や過燐酸ができたけれどもべらぼうにもうけられる、とてもこれではかなわないからみずから共同購入しようということで購入が始まったわけであります。販売品は個々に売っていますと買いたたきがあってどうにもならないということで、共同で高く売ろう、これが産業組合当時の原則であります。その当時、共済がなかったものですから、災害に遭ったあるいは一家の主人が亡くなった、火事になった場合には、すぐに家をとられる、田地を売り渡す、子供を身売りさせるというような悲惨なことがあったので、それを救うためには共済事業がなくてはならないというので血のにじむような努力をしたというのがわれわれの先駆者の歴史であります。それがようやく実現できたのが戦後の農協法でございます。したがって、いまやっていることもあくまでも農家の生命、財産を守るというその本質には変わりはないわけでありまして、それについて、われわれは生活設計というものを指導しています。おたくには田地がどれだけありますから万一の場合にはこれだけの保障額が必要ですよ、あるいは子供が何年ごろ大学に入ります、何年ごろ結婚します、その場合には資金が必要ですよ、ですから生命を保障すると同時に、その資金も蓄積しましょうというような、完全に個々の農家生活設計に立った必要額を示して、それに加入できるような、しかも可処分所得との関係を見ながら無理をしないという基本的な方針で進んでいるのが実態でございます。したがって、さっきの農機でも共済でも農協が拱手傍観して何もしなかったならば、これは一般は農民の生活設計には無関係で勧誘に来ます。かえってその方が危険性がありますから、われわれは農家生活防衛のためにもいま言ったようなことをやっているというのがわれわれの基本的な考えでありますので、御理解を賜りたいと存じます。  それから、一般国民にもっと理解させろ、これはわれわれも歯がゆく思っています。いかにわれわれが主張しても、たとえば、私も幾つか自由化問題で投書をしてみましたけれども、載ったことはありません。農家の意思なんか全部無視で、むしろ一方的な強い圧力のものの方がどんどん載ってくるというのが現実であります。したがって、これはどのような力関係にあるのかわかりませんけれども、われわれ自体が歯がゆいというのは事実でございます。もっとこの日本の食糧の現実を認識してもらいたい。恐らく二〇〇〇年になれば食糧は逼迫するだろうと言われていても、現在、全部日本の農業は壊滅してしまうような自由化論が横行している。したがって、これについての理解をさせろと言っても、われわれは金を出さなければ理解をさせられないのです。一般に報道するにも金をかけて印刷物をつくってばらまかなければだれもやってくれない現実がありまして、非常に歯がゆいわけでございますが、われわれは決してわれわれのエゴで言っているわけでありませんで、農協法にありますように、農協組合員経済的な社会的な地位の向上を図る、いま一つ、広く国民経済発展を期すると書いてあります。ですから、あれは農民のエゴで、自分たちの立場でやっているのではなくて、日本民族に安定かつ豊富に食糧を供給するということも農協の使命であるというふうに感じ取れます。そういう点がなかなか理解せられていないので、いま、全国農業中央会で対外的な正しく国民の理解を得るための広報活動をみずからなすべきだということが取り上げられまして、きょうも農業対策委員会である程度方向が出ておりますけれども、今後、先生方の御指導をいただきながら正しいわれわれの主張、これを理解していただくような運動も積極的に展開する予定になっておりますので、申し上げておきます。  以上です。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 森本修

    森本参考人 ただいま宮崎参考人から言われたのと大体同じでございますが、自由化をめぐります人心の動き、あるいは先ほど言われたような一般の人と農業との連帯感がないというようなこと、私ども最近特に痛感をしております。  こういった非常に、いわば高度工業国家といいますか、そういうふうな段階になりまして、農業なり農村の全体に占める割合も少なくなってくるというようなこと、また、何といいますか、都会の人なり一般の人は、農業なり農民なりというのはかなり遠い存在になってきておるというようなこともあろうかと思います。また、あるいは農業側から一般の人々に対する働きかけといいますか、交流の努力というような点についてもわれわれ反省をしなければならぬ点もあろうかと思います。そういうことでございますので、どうしたら一体農村なり農民の側と一般の消費者なり産業界の方と共通の広場ができるかということを、われわれの側においても真剣に模索し、努力をしていかなければならぬと思います。  先ほども言われましたように、単に農業側のエゴではないんだ、これは国家のためにも、また一般の消費者のためにもわれわれの主張というものが理解される点があるのだということにつきまして、私どもとしてはできるだけひとつそういう人々との交流を深めるというようなことに今後努力をしなければならぬと思っております。
  44. 吉原静雄

    吉原参考人 御質問のございました大部分をお答えがあったようでございますが、一つお答えがまだなかったように思いますのが選挙の問題でございますね。私はこんなふうに思っております。  農村におきまして、実際の実態といたしましてだれが偉いんだというと、まあ県会議員さんなんかは特別偉いんですけれども、次は村長さんとか町長さん、村会議員さんですね。その次が農協と、こうなっておるんですよ。(笑声)いや、実際そうなんです。そこで村会議員にもなれないのが競争するんです。ですけれども、私は常にこういうことを言います。行政の、要するに、町長さんとか市長さん、村会議員さんは、どんなことをおっしゃってもそれは余り責任はないんだよ。自分で間違わなければどんなことがあっても、ああ大変どうも済みませんでしたと言って辞表を出せばそれで終わりなんだよ。農協役員はそんなわけにいかぬぞ。間違いが起きたときは必ず共同責任の立場においてそれを弁償しなければならぬということはしっかりと書いて法律になっておるのですから、そこを認識した場合においては、決してそんな猛烈なばか競争はできるはずがない。こういう説明をいたしますとしゅんといたしまして——まあそれは先生のところは東北だとおっしゃいましたけれども、東北の方々は私のところよりちょっと認識がおくれているんじゃないだろうか、こう私は思います。  以上でございます。
  45. 三輪昌男

    三輪参考人 国民にわかる組織への土壌づくりの問題でございますが、確かに、農協が実際に活動している場面で理解を求めていくということ以外にないんだろうと思うのですけれども、今回の貿易摩擦問題というようなこととの関連で言いますと、日常的な活動の場面以外で活動が必要になってくるわけですね。そういうことで申しますと、いわば一般の人々に向けての広報活動というのが非常に大事な役目を担うんだろうと思うのですが、どうも農協の対外広報活動というのは余り上手でないという印象を私、率直に持っております。ここのところその自覚が出てまいりまして、いろいろ研究してやっておられるようでありまして、その効果を期待したいと思うのでありますが、もう一つ、対外広報のテクニックもさることながら、やはり何を訴えるかというその内容の問題になると思います。  貿易摩擦問題についてかなりいい線の主張がなされておると思いますが、私などから見ておりますと、まだ一歩も二歩も踏み込み方が足りないんではないかという感じを持っています。貿易摩擦の問題は、単に日本農業がどうなるかという問題ではなくて、日本の経済がどういう進路を進むのかという問題なんでありまして、一般の国民の方々、農業と直接関係のない方々もその点真剣に考えなければいかぬはずの問題であります。農業の問題をもろに国民全体で考えなければいかぬ性質を持った問題として投げかけられていると思うのですけれども一般のマスコミや経済ジャーナリズムのレベルでの議論でも、その辺の肝心のところはどうも隠しているような感じを私ども非常に強く持つわけであります。その辺を一番危機を感じておる者、農協もそうだと思うのですけれども、高い理論水準でもって訴えていくということ、これが何より大事なんだろうと思います。
  46. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  47. 羽田孜

    羽田委員長 武田君の質疑はこれで終わります。  次に、神田厚君。
  48. 神田厚

    ○神田委員 参考人の皆様方には大変貴重な御意見をありがとうございました。時間も大変経過をしているようでありますので、簡単に二、三御質問をさせていただきます。  まず最初に、農林中金の森本参考人にお尋ねをいたしたいのであります。  いろいろおっしゃられております中で、特に、今後の課題として系統金融機能強化と、それから運用機能強化の問題、あるいは経営体質改善の問題それぞれ三点につきまして御指摘があったわけであります。今回の改正の中で特にサービスあるいはオンライン、こういうふうなことでこれを改善していこうという方向でありますが、現状におきまして、たとえば、民間なんかとの関係でどういう点がやはり早急に改善をされなければならない点だというように考えておられますか。
  49. 森本修

    森本参考人 金融機関機能は、御案内のように預金を受けて貸し付けをしてということが基本でありますけれども、最近は為替業務というのが金融機関にとっては非常に大きな仕事になってきております。市中金融機関にいたしましても、その他みんなそういう方面にコンピューターを整備をいたしまして、いわば金の送り迎えといいますか、そういうことについての便利さというのを利用者に提供するということが行われておりまして、かなり整備をされている。郵便局の方も、御案内のようにできるだけ早くそういうふうな機能整備をしてサービスに努めたいということになっておりますが、そういう面が農協としてかなり立ちおくれておるのではないかということで、他の金融機関には多少おくれておりますけれども、少なくとも郵便局並みにはおくれない程度のテンポで、全国的にそういった機能をひとつ整備をしていきたいというのが、端的に言いますと私どものいまの考え方であります。
  50. 神田厚

    ○神田委員 さらに経営体質改善段階で、秋に向けまして農協経営刷新の方針というものをお出しになっていくということでありますが、信用事業面での体質強化の方向というのはどういうふうなことでお考えになられておりますか。
  51. 森本修

    森本参考人 何といいましても信用事業、いま非常に苦しいのは、一つは事業量の伸び方が従来のように伸びないということ、それからもう一つはいわゆる利ざやですね、調達と運用の利差というのが非常に少なくなってきているというような点が主なことでございます。したがって、できるだけコストを安くするということが一つであります。したがいまして、たとえば、貯金にしましても最近は相当貯金のコストが上がってくる。最初に申し上げましたように、利用される方の金利に対する意識というのが非常に強くなってまいりましたから、定期性の預金、特に、二年の定期といったようなものがふえてまいっております。そういうことからコストは上がってまいります。しかし、そのままにしておきますと事業としても大変うまくないということで、できるだけコストの安い資金が集まるようにする。それが、先ほど言いましたようないわゆる為替業務等を充実してまいりますと、いろいろな給与の振り込みでありますとか年金が口座の中に入ってくるといったようなことで、安い——私どもいわゆるフローの資金と言っておりますが、そういうものが入ってくるということで、預金のコストをできるだけ上げないように努力をする。また、その上にいろいろな経費がかかりますが、そういった諸経費につきましても、人件費の増高を極力抑えるとか、あるいはいろいろな、全体の運営効率化するとかいうようなことで経費を抑えていくということが第一点であります。  それから、第二点は、運用につきましてもいろいろな運用の仕方がございます。貸し出しをすることもあれば、有価証券に投資をするということもございますし、また系統預金にするということもございますけれども信用事業運営という観点、経営という観点からいきますと、貸し出しが一番安定をして有利な運用ということになるわけであります。金融機関機能を十分果たすという点からいきましても、運営という点からいきましても、できるだけ融資を拡大をしていくということがいいわけでございますので、融資基盤の確立というような運動をしておりますが、そういうことをできるだけ着実に伸ばしていくということでございます。  あと多少補足して申し上げるべきことがございますが、時間の都合等がございますので、主な点だけ申し上げました。
  52. 神田厚

    ○神田委員 桜井参考人にお尋ねをいたしますが、これも同じように十月に向けまして経営刷新強化の策定があるという中で、要するに、日本の農業を戦略的にどういうふうに位置づけるのかという問題が大変大きな問題だと言われておりますが、もうちょっとその辺のところの方向性についてお示しをいただきたいと思います。
  53. 桜井誠

    桜井参考人 現在、日本の農業振興戦略につきまして検討をいたしております。基本的な考え方としましては、コストの引き下げをしなければいけない。このためには、規模拡大によります土地利用調整、ここら辺が一番眼目になろうかと思っておりますし、それから、現在の転作が、言ってみれば一種の限界に来ておりはせぬかということで、米の多用途米の開発をしなければいけないと考えております。  それからもう一つは、先ほども若干申し上げましたけれども、集団的な土地利用を推進する。このためには具体的に地域営農集団、こういうものの造成を図っていきたい。それから、もう一つの基本的な視点といいますか、価格対策の総合性というようなものも認識をしていかなければいかぬだろう。あといろいろな対策を現在検討をいたしておりますが、農協自体といたしましては、特に地域農業振興計画を策定いたしまして、これを組合員みんなで実践をしていこうじゃないかというのが基本になります。それから先ほど申し上げました土地利用の問題につきまして、いままで農協は比較的タッチが弱かったわけでありますが、それに踏み込んでいきたいということでございます。  それからもう一つは、農産物の需給調整、これを五十五年から全国的に協議会もつくりまして、七十三作目ぐらいにつきましての需給調整対策を始めておりますが、五十七年度からは年次の全国生産販売計画をつくりまして、市町村の農協段階から積み上げて調整の必要なものは調整していく、こういうことを現在やっておるところであります。それからもう一つは、加工流通分野に農協も相当進出をしていくということがきわめて大事である。この取り組みを強化しようという方向で現在検討いたしているところであります。
  54. 神田厚

    ○神田委員 もう一点、指導機能の中で営農の問題につきましてお話がありましたが、私ども地域におりましても、農協営農指導というのがともすれば金融やそちらの方の活動に比べるとどうも力が弱いようだということをしみじみと感じるわけでありますが、何といいましてもただいまお話がありましたように、地域農業振興あるいはいろいろな形での農業体質改善をやっていく中で、営農部門の強化というのはきわめて大事なところであるはずでありますから、その辺につきまして中央会として営農指導強化の大方針を掲げていただければと思いますが、その辺はどうでありますか。
  55. 桜井誠

    桜井参考人 冒頭申し上げましたけれども営農指導生活指導ともに信用販売購買共済が一番基礎の仕事であるというふうに考えております。現在の農協営農指導体制を見てみますと、四十年ごろ営農指導員は一万三千二百人でありました。五十五年度末におきましては一万八千七百人ということで人員的にはかなり整備をされてきております。  問題は、この営農指導員がどう活動するかということでございますが、技術の関係につきましては、最近の農家は技術の面でも相当進歩しておりまして、農協営農指導員がもちろん教えることはあるわけでありますけれども、むしろ最近の営農指導役割りといいますのは、地域営農組織化である。それから、それを基礎にして販売計画化をしていくというような点に主力があろうかというふうに考えておるわけでありますが、全中におきましても県の中央会、もちろん経済連も含めまして営農指導体制整備強化というのを一番の大きな柱にして現在取り組みをいたしております。
  56. 神田厚

    ○神田委員 宮崎参考人にお尋ねいたしますが、貿易摩擦等で日本農業自由化、枠拡大等でいろいろと外国からの要求を突きつけられているわけでありますが、全農はたとえば、アメリカのカントリーエレベーターの建設とか、かなり海外における拠点づくりを進めておるようでありますが、その辺の状況、今後の計画等につきまして全体的な展望、簡単で結構ですからお示しをいただきたいと思います。
  57. 宮崎貴

    宮崎参考人 全農は、先ほど申し上げたように重要な基幹生産資材供給の責任があります。そのことは、量の確保と極力低廉な価格で供給するという仕事でございます。いまお尋ねのグレインの関係、いわゆる飼料穀物、この配合飼料の原料は、九割は海外に依存しております。特に、穀物はそのほとんどをアメリカに依存しておるという現状でございまして、今後、日本の畜産経営安定のために、量の安定確保と価格の極力抑制という立場でこの事業を行うということは、直接現地から、施設をもってこちらへ持ってくるということが長期的に非常に大事であります。  そのような立場から、組合員、会員の要望もございましたので、ミシシッピ川の河岸に全農グレインという現地法人をつくりました。これは一億一千万ドルでありますから、円の相場がありますので、二百億を上回る、あの辺では最も高能率、高性能の、しかも安全性の高い施設でございます。特に、アメリカの農業協同組合と提携をして、直接買い付けをするということで進めてございまして、これによって飼料の安定供給ができる、長期にわたって効果を出すということになろうと思います。そういう意味合いで、今年の八月に試験操業を終わりまして、九月以降現実に穀物を搬入できるという体制でございますが、あくまでもこれは日本の畜産経営安定のための手段でございますので、報告をいたします。
  58. 神田厚

    ○神田委員 時間の関係で、吉原、三輪両御参考人には御質問できません。大変失礼でありますが、これで終わらせていただきます。
  59. 羽田孜

    羽田委員長 神田君の質疑は終わりました。  寺前巖君。
  60. 寺前巖

    寺前委員 どうも長時間にわたって、私、最後の質疑者になりますが、ひとつよろしくお願いします。皆さんもお疲れでしょうから、皆さんに聞くことは御遠慮させてもらいたいと思いますので、二、三のお方にだけお聞かせいただいたらありがたいと思います。  まず第一番目は、先ほどからお話しになっておりますが、農協が農民のための農協でなくなるのではないか、現になっているじゃないかという御批判がいろいろ出ておりました。  そこで、森本さんに最初にお聞きしたいのですが、おたくの方でお出しになっております農林金融の実情の八一年版を見てみますと、農林中金の運用残高の推移ですが、系統貸し出しが全体の金融の一三・二%になっている。それから、関連産業貸し出しが二六・一%になっている。関連産業貸し出しの方が倍も多いわけです。そして歴史的に見ますと、四十八年に法改正をされたわけですが、四十八年のときの系統貸し出しの金額が一兆四千六百六十五億円で、五十五年になりますと一兆六千九百十億円、すなわち一・一五倍になっていますが、関連産業の場合には一兆二千九百三十二億円が三兆三千四百八十一億円と、二・五九倍になっている。結局、中金の運用残高が全体として系統貸し出しの方がうんと小さくなっていっている。また、そうさせるような法改正でもあったわけです。こうやって農民の預けたお金が大企業の方にずっと貸し出されるようになっていくわけです。  東洋経済を見てみますと、その預けた金が大企業にどういうふうにいっているのか、一九八〇年版の企業系列総覧というのを見ますと、大企業への融資が一兆二千十一億円になっている。一般金融機関の大和銀行や協和銀行より上回るところの内容に中金はなっていってしまっている。その貸し出し先も水産・農林業、資材関連産業にとどまらず、建設業とか鉄鋼とか電気、海運、商社、スーパー、いろいろな分野に広がっていくわけです。私は、別にそういうところへ貸したらいかぬというわけじゃないのですけれども、しかし、客観的によく考えてみると、豚肉をもうけ本位に国内に大量に買い付けてくるとか、あるいはモチ米の買い占めに手を出すとか、そういうようなことをやった商社やスーパーに金を貸して、その分野の金がどんどんふえていって、そしてそこからまた農民が泣かされる。どうも農林中金のやっていることは、金融業に陥った結果が農民を泣かす結果に発展をさせていくようなことになってしまっているのじゃないか。あるいはまた、北商で有名なかずのこの買い占めの問題にしても、六十億円からの焦げつきを出したというのですか、どうもそういうことを考えると、農林中金の活動のあり方について何かメスを入れてみる、検討してみるということが必要ではないのだろうかということを、漠とした問題提起ではありますが、私がちょっと疑問に感ずる一つです。  それから信連ですが、枠を今度は員外利用の緩和という形で大臣が指定する場合にはやる。さて、信連がそういうことで指定する場合に、方向を一定の要件の場合にしていくのでしょうが、一たん緩和をしてしまうと、要件をどういうふうに決められるかという問題の関係もあるんでしょうが、またもとへ戻すというようなことは簡単にいくものなんだろうか。それから、この信連自身は、中金よりももっと審査体制というのは弱いだろうと思うのですが、中金でさえも焦げつきのような事業が出てくるのですから、どういうことになるだろうか。審査体制においてどういうことが検討されることになるのだろうか、これが二番目です。  三番目に、先ほどお話が出ましたが、公庫と農協資金の問題ですね、公庫資金は五十一年の融資枠を見ますと、四千九百十億円になっている。それが五十六年になると、七千九百七十億円とふえています。一方、農業の近代化資金の方は五十一年以来、四千五百億円でずっととまっている。資金がいっぱい農協分野にたまってきているというのだったら、この公庫資金昭和二十六年に発足しているわけですが、系統資金が不足しているときにできた制度なんで、原資を財投資金を使っているわけですが、この際にこれだけ資金がだぶついてきている段階だったら、もっと農協資金を、財投資金じゃなくして、積極的に使うような公庫資金あり方を何か検討されてもいいのじゃないだろうか、これが三つ目の私のちょっとお聞きしたいことです。  それから四つ目に、こうやって員外利用の枠がだんだん広がってくると、最後は単協になってくると思うのですね。さて、農協はいまでもいろいろ事故が起こるところなんですがね。だから、こういう方向にならざるを得ない道になっていくような感じがするのですが、その点に対する見解をお聞きしたい。  この四点です。  なお、オンライン化に伴って、中央会の桜井さんですか、ちょっとお聞きをしたいのですが、オンライン化すると一番末端の端末機を入れるところではずいぶんお金がかかることになりますからね。そうすると減価償却から、運営資金から、ずいぶんかかる。だから、一定の規模にならなかったらやっていけないということで合併という問題がなされてくる。片方で便利になって、農村へ行くと片方で不便になっていく。合併されてずっと集約されていきますからね。こういうことにならないのか。  そこでお聞きしたいのは、画一的に全農協を参加させるのかどうか。単協を参加させていくことにするのかどうか。それから、何か農林省と大蔵省で一定の国内の自己為替取り扱いの認可基準というのを設けておられますが、前の時期に出されたものだけれども、あのままでいいのかどうか。それから加盟しないところでも母店方式というやり方もあるのだから、もっとそういうことを奨励するというふうにやれないものかどうか。  そして最後に、先ほどもちょっと出たのですが、これに伴って四週五休の問題というのが出てきていますが、労働省の指導方向というのは、金融機関の週休二日制を契機として全体の労働者の週休二日制を実現させるのだという方向を政府の方針として指導方向として決めて、そして金融分野に労働省としてその問題を依頼をしてきていると思うのです。農協として、先ほどのお話を聞いておったらなかなかむずかしい面というのをおっしゃっていましたけれども、全体としてこれを契機としてやっていくんだという方向に積極的にこたえていかれるのかどうか。この部門だけはちょっと二週目の土曜日はやめて、あいた人はほかの分野で仕事してもらいますということでは、政府が言わんとしていることとはちょっと違うと思うのですが、そこはどういうふうにお考えになっているのか、お話をいただきたいと思うのです。  以上です。
  61. 森本修

    森本参考人 まず第一点の農林中金のあり方のようなお話でございましたが、戦後、非常に資金農村で不足しておりましたときには、むしろ農林中金をパイプとして農村に不足する資金を外部から導入しておったというようなことに実はなっております。その後農村農業の方で力がついてまいりまして資金が出てくるというようなことになってまいりまして、農協の方は御案内のように個人を相手にする金融機関であります。個人の資金の流れというのを統計上見ますというと、全体としては資金超過ということで貯蓄の方が多くて使う方が少ないというようなかっこうになっております。したがいまして、通常の状態でありますと、どうもそういうものを相手にしている金融機関資金状況というのは、むしろ貯蓄が多くて貸し出しが少ないというようなことに普通はなるものと思っております。そういうことで、農協資金の関係も、調達に対して貸し出しが少ないというような、つまり、余裕金が恒常的に出てくるというような状態になってきたわけであります。そういうことで、大体農村農家で必要な資金農協段階で賄える、なお余剰が出るというようなことで、信連金庫というふうに積み上がってきておるというのが最近の状況であります。したがいまして、先ほど申し上げましたように、農村でお預かりをする資金というのは、昔のように貯蓄といいますかそういうことよりはむしろ運用というような観念の強い資金になってまいりまして、上部機関としてはそういった資金をお預かりをして、安全でかつ有利に運用をするというような機能が従来にも増して多くなってきたというふうに私どもは思っております。そういうことで、農林中金としては、系統に対して貸し出す金が比率としては少なくなる、外部に対して運用する金が比率としては多くなるというような形になってくるのは現実としてはやむを得ないことではないかというふうに思っております。ただ、御指摘の貸し出し先が大企業に偏っておるではないか、事実、従来の運用はそういうふうなことになっております。大企業といいましてもどこへでも貸せるわけではございませんで、かなり厳重な関連の度合いというようなものが求められておりまして、それによって貸し出しをしておるということでありますから、農林中金として適正な貸し出し先に貸し出しをしておるというふうに思っております。商社等に貸しておるではないかというお話でございますが、商社におきましても農業に必要な飼料でありますとか肥料でありますとかそういった資材を輸入をしておるというような機能を営んでおるわけでありますから、そういう点に着目をして私ども貸し出しをしておるということでございます。なお、近年は、中小中堅企業に対しての貸し出しを促進すべきであるということで、できるだけそういう方々に対しても資金を御活用願うということでやっておりますことを御理解をいただきたいと思います。  それから、第二点は信連でありますが、ちょっと御趣旨がわからなかったのですが、信連の今回の改正はまたもとに戻るのか戻らぬのかというふうにちょっと聞こえたのですが、法律が改正をされてこういうふうな体制になるわけでありますから、法律が改正をされない以上は戻らないことになると思いますが、恐らく傾向としては将来、もとに戻るというようなことはまず実態としてもないのではないかというふうに思います。ただ、先ほどお答えをしましたように、従来の系統金融機関としての信連の性格を曲げるような形の今回の法律改正でもございませんし、また、私ども運用に当たってもさようなことのないように十分注意をしてまいりたいというふうに思っております。  それから審査体制はどうかというお話でございましたが、こういうふうな一つの運用の体制ということになりますと、信連としての貸し付けなりまた、内部牽制組織としての審査部といったような要するに、牽制機能というものを十分整えませんと融資について間違いを起こしやすいということでありますから、そういうことについてできるだけひとつ体制整備し、また、現実に担当をいたします人についても、いろいろな教育なり研修なりというようなこともやっていかなければならぬわけでありますので、私ども中金としても、従来の経験を生かしながら、信連に対してさような面でひとつお手伝いをしていきたいというふうに思っております。  それから三番目の、公庫資金系統資金の関係で、これもちょっと御質問の御趣旨がよくわからなかったのですが、あるいは系統資金を公庫に入れたらというようなお話であったかと思うのですが、私はそういうことではなしに、先ほども申し上げましたように、できるだけ公庫と系統の分野の調整といったようなことに配慮をいたしまして、系統資金ができるだけ農業あるいは農村の方に流れやすく、活用されるように、各方面の御配慮を願えればありがたいのじゃないかというふうに思っております。  それから四番目は、農協融資体制の話であったと思います。  確かに、農協におきまして、従来いろいろ事故を起こしてきたということは、大変申しわけないというふうに思っております。したがいまして、今後、融資をするに当たっても、できるだけ体制整備をして、そういう間違いを起こさないようにしてまいらなければならぬ。そこで、私が先ほど申し上げましたように、融資基盤確立運動ということを二、三年来やってきております。これは単なる融資の促進運動ではございませんで、融資が確実にできるような農協体制整備をしていくということであります。内部におきますところのいろいろな組織なり、また手続なり、そういうことについての完備をするようにしなければなりませんし、また、保証機能融資をいたしました際にもし焦げつきができますれば保証機関が保証をするというような機能も、農協融資を円滑、確実にするための一つの補完的な措置として今後整備をしていくということも、あわせて考えてまいらなければならぬというふうに思っております。
  62. 桜井誠

    桜井参考人 お答え申し上げます。  全銀内為システムへの加盟につきましては、同じ業態のものが一斉に加盟をするということが条件になっておるわけであります。したがいまして、信用事業を行っておる農協が一斉に加盟できる条件整備を全中としては指導してまいりたい。そのために必要な合併も推進をしなければいけないというふうに考えております。  ただ、為替の取り扱いの基準といたしまして一貯金残高十億円以上、信用事業をやる職員が四人以上というふうな条件があるわけでありますけれども、これは四十八年の法改正によって始められたわけでありますが、農協によりましてはちょっときついというふうな農協もあろうかと思います。これらにつきましては、場合によっては条件緩和を政府の方に要請をしてまいりたいというふうにも考えております。  それから、ただいま母店方式のお話もございましたが、母店方式で可能なところにつきましては、そういう方法も考えていく必要があると思っております。  それから、週休二日制の問題でございますが、信用事業につきましては、先ほど申し上げましたとおり全金融機関郵便局も含めまして月一回信用事業の窓口を閉めるということで休暇を職員がとるということで、まあいろいろ問題がありますけれども農協としては努力をしていかなければいかぬじゃないかというふうに考えておるわけでありますが、信用事業以外の購買販売利用、いろいろ部門がございますけれども、そういう仕事も全部その日は休んで閉めてしまうというところに一挙にいけるかというと、先ほど吉原さんから日曜もやれという農民の声も紹介をされたわけでありますが、これは先生がおっしゃるほど簡単な問題ではなかろうというふうに考えております。かなり長い期間を見ますとそういう方向に進んではいくのでありましょうけれども、いま直ちに、じゃあ農協として完全に月一回全職場の窓口を閉める方向でやりますという言明はちょっとできないわけでございます。
  63. 寺前巖

    寺前委員 ありがとうございました。
  64. 羽田孜

    羽田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  こめ際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  65. 羽田孜

    羽田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業協同組合法の一部を改正する法律案及び昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北口博君。
  66. 北口博

    ○北口委員 ただいま委員長から読み上げていただきました農協法の一部改正につきましてただいまから質問を始めたいと思います。  きょうは午前中に農協関係と委員の皆さん方の貴重な質疑応答がありまして、そういう意味では午前中いろいろ質疑が出たかと思いますけれども、私は私なりにまた、農協法の一部改正につきまして質問を始めさせていただきたいと思います。  政務次官お見えでございますけれども、大臣が参議院の都合で後で到着だということでございますから、場合によっては政務次官に、大臣が間に合えば大臣の方に一、二質問を残して、まず最初に農林省の方にお尋ねをしてみたいと思います。  今度の農協法改正でございますが、大別いたしまして大体二つの問題があろうと思っております。一つは、信用事業にかかわる問題、もう一つは、全農と全共の総会における総代の選出の方法についての法律の改正。小さくは四つに分かれておるようでございますが、まず第一番に信用関係のことについてお尋ねをしたいと思っております。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕  その前に、まず、この農協法というのは昭和二十二年にロッチデールの原則を踏まえた協同組合精神もとにして、いわゆる農民のための農業生産力の増進、そして経済的、社会的地位の向上、そのための農民の協同組織をつくっていくということで発足をしたわけでございます。今日に至りますまで、農協もいろいろ変転をきわめてまいりまして、この農業の推移、発展とともに幾多の困難を克服して、今日まで農村地域社会の各般の役割りを果たしてきておるわけであります。しかし、最近の農協情勢、農業情勢はまことに厳しいわけでありまして、この厳しさを乗り越えるために、今回はどうしても改正しなければならぬという法の改正であるわけでございますけれども、むしろこの改正は当然なことでありまして、私は早く成案を得て対処していくべきだと思いまして、基本的には心から賛成の意を表するものであります。  そこで、今度の農協法というのは過去十四回改正がありまして、今回は十五回目の改正になるわけでありますが、まずその第一点についてお尋ねをいたします。  ちょうだいしております提案理由の趣旨説明及びその補足説明の中にもありますが、最近金融機関のオンライン化が急速に発展をしてまいりまして、農協といえども後塵を拝するわけにはいかぬ、いわゆる近代装備を身につけて農民へのサービスまた、社会的、経済的活躍をしていこうということだと思うわけでございますが、オンライン化につきまして、全国の銀行の内国為替制度にまず入ろうということの今回の法律の改正でありますけれども、その加入条件として、農協が一括して加盟すべきだ、こういうことを聞き及んでおるわけでありますけれども、そういうことになりますと、内国の為替業務を扱っていない農協、現在約四百ぐらい扱っていない農協があるわけでありますけれども、その扱いを今後どういうふうに指導されようと考えていらっしゃるのか、さらにまた、内国為替業務をやっておるけれども、オンライン化するために費用も余り高いので、うちはしばらくオンライン化を見送ろうという農協が出た場合に、一体どういうような対応指導をされようとしておるのか、まずこの辺からひとつお尋ねをしていきたいと思います。
  67. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、今回御審議を煩わしております農協法改正の中で、まず、内国為替につきまして員外利用規制の制限を撤廃するということが一項含まれております。これは全銀の内為制度に加盟をするための前提条件を整備するという趣旨のものでございますが、全銀の内為制度に加盟いたします場合には、その全銀の傘の下であらゆる種類の金融機関が一つのネットワークで連結をされるわけでございます。異種金融機関相互間の取引がオンラインで結びつけられるわけであります。そういたしますと、利用者金融機関の窓口でたとえば、何とか銀行の虎ノ門支店で、何とか農協のだれそれさんあてに送金をするという場合に、一々銀行が、受取先の農協が全銀の内為制度に加盟しているか否かということを判断した上で受け付けなければならない。それで、四千五百もございます農協について、一々これは加盟している農協であるかないかということを一覧表のようなものを備えつけておいてチェックをするというのは、実際問題としてとても煩瑣にたえない。それでは金融機関同士のおつきあいとしてとてもまともにいかないという事態がございますので、これは農協に限らず、全銀の内為制度に加盟する以上は、同一業態の金融機関はすべて一括加盟するということでなければ受け付けられないのであるということが約束事になっております。したがいまして農協が加盟をいたします場合にも当然、いやしくも農協であれば全部この制度に加盟しているという状態にならないと都合が悪いわけでございます。  そこで、前回、四十八年に農協法改正いたしましたその際に、内国為替の取り扱いについていろいろ御議論がございまして、内国為替の安全な運営を確保するために内国為替の取扱承認基準というものを定めまして、これに基づいて指導してきたという経緯がございます。現状におきましては、内国為替の取り扱いをやっておりません農協が約九%程度ございます。それで、これについては全銀の内為制度に加盟する前に何らかの手当てをしなければいけないわけでございますが、合併という方法によりまして、従来の承認基準に照らして内国為替が取り扱えるような状態にしていくということも一つの方法ではございますが、農協の合併というのはあくまでも組合員の自主的な判断によって処理をすべきものでございますので、全銀の内為制度に入るために無理無体に合併をする、そういうことをすべき性質のものでもないというふうに思っております。したがいまして、そういう場合には、従来の為替の取扱基準を経過的に緩和する、あるいは、それでもなお処理し切れない農協につきましては、信連が内国為替の事務を代行する、そういうやり方で、無理なく全部の農協がこの制度に加盟できる、そういうやり方にしていきたいというふうに思っております。  それで、オンライン化に伴うコストが相当かかって、負担し切れない農協があるのではないかという御懸念でございますが、一方では、オンライン化に伴います事務の合理化というようなこともございまして、一般論として、負担にたえないような額であるというふうには存じておりませんが、個別事情によってはそういう場合もあろうかと思います。そういう場合につきましては、先ほども申し上げました信連の事務代行等の手法によって、無理のかからない処理の仕方をしていくように指導してまいりたいと思っております。
  68. 北口博

    ○北口委員 大体、私が心配していることにつきましては、指導よろしきを得てやっていくというお話でございましたが、この中で、これは規模によっても違うと思いますが、オンラインを設置する費用は、大体一農協当たり幾らぐらいかかるのかということをちょっとお知らせいただきたいと思います。
  69. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  農林中金の試算によりますと、オンラインの経費が全体といたしまして千六百五十億程度というふうに見込まれておりまして、そのうち、実はすでにかなりの部分は投資済みでございまして、五十六年度末までに、千六百五十一億のうち千二百四十億余はすでに投資が行われているという状態でございます。それで、今後の要投資額が系統段階を通じまして約四百七億程度というふうに農林中金は試算をいたしておりますが、そのうち、単協段階の所要額として二百七十九億という試算を農林中金はいたしております。
  70. 北口博

    ○北口委員 もう、相当設備ができておるようでございますから、これからそんなに、千六百五十一億を使うということでもないようでございますので、農協のきしむこともないと思いますが、余り無理のないようにやっていくことが私は大変大事だと思いますし、ちまたに言われておりますように、オンラインをどうしてもしなければならぬので、ぜひ農協を合併をということだけが先行しますと、かえって農協離れの農民をつくるということになりますから、こういう点では、今後、指導に当たっては特に注意をしてやっていただきたいと思います。  次に、有価証券の取り扱い業務についてでございますが、この補足説明の中に、「地方債その他主務大臣の指定する有価証券に限り、」員外利用制限を取り外すとありますけれども、連合会や組合は、最近地方債の保有が著しく増大してきたというふうに言われております。この問題なんかをいろいろ見てみますと、むしろ信用組合や労働金庫はさきの通常国会で通っておるのに、大事な仕事をやっている農協だけがなぜ今回の改正になって、いままでおくれたのか、ちょっとその原因についてもお聞かせいただきたいと思います。
  71. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先生御指摘のとおり、他の金融機関に比べていささか立ちおくれたことは事実でございますが、実は、他の金融機関につきまして先生御指摘のような改正が行われました段階で、すでに全銀の内為制度に加盟をするという問題も展望されておりましたので、その他の案件と合わせて一括して処理をすることにしてはどうかというふうに当時としては判断をいたしまして、今回の機会まで見送られたということの実情のようでございます。特に、しさいがあってのことではないと承知しております。
  72. 北口博

    ○北口委員 それでは第三点の質問といたしまして、信連資金の運用のことについてでございますが、いま農家から預かっているいわゆる預貯金の額が、農林中金だとか全国共済農協連だとか、そういうところにいろいろな意味で活用されておるわけでございますが、これは一口に三十兆円だと言われております。その資金の安全性や効率性を考えて運用されておるわけでございますけれども、私はこの員外利用というのが、本来、これは農協組合員利用ということと全く農協精神を失わないように運用するということが基本的に一番大事なことでありますが、今回はこの信連の金を、いわゆる二割という員外貸し付けの制限の壁を取り払ってさらに借りてもらおう、農協は貸そう、そういう内容であります。最近、農業情勢や経済情勢が非常に厳しいということから、農協貯金貯貸率というのが非常に悪くなってきております。そこで考えられましたのがこの資金のだぶつく運用の解決策として、この員外利用の制限を今回緩めて、大いにそういう方たちにも使っていただこうという趣旨でありますが、確かに、貯貸率の悪さというのも一般的にはわれわれもわかるわけでございますけれども、ここ五年ばかりの間にどういうような変化で悪くなっておるのか、そしてその主な原因はどういうところにあるのか、こういうことについてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  73. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  最近の信連貯貸率の推移を見ますと、五十年度におきまして五〇・三%、それが五十三年度には二七・六%、昨年度、五十六年度には二三・二%ということで年々低下してきております。  原因はいろいろ考えられるわけでございますが、特に、最近の農業事情を反映いたしまして、農業投資の伸びが停滞をしている。そのために会員である農協への貸し付けがそれにつれて停滞をしているということがございますし、さらに、三段階の中での構造的な問題といたしまして、合併等によりまして、単協段階で相当資金面が充実をしてまいりまして、相当の資金需要が単協独自の資力によって対応可能であるということで、信連に原資を仰いでいたものが単協の段階で自賄いできるようになってきている。そういうことが貸し付けが伸び悩んでいる原因として考えられます。一方、貯金の面におきましては、そういう事情であるにもかかわらず、単協段階でほぼ順調に伸びておりますから、単協段階での貸し付けが伸び悩めば当然信連に上がってくる余資がふくらんでくる。そういう事情で、最近特に、信連段階での貯貸率が低下してきているというふうに見ております。
  74. 北口博

    ○北口委員 したがって、今回の改正によりまして、員外利用の制限を超えて員外貸し付けをやろうという、いわゆる貸し付け要件の緩和措置をやろうということでございます。  ただ、そこで特定の信連についてのみそれを限定的に主務大臣が指定するということになっておるわけでございますが、具体的にどのような条件がそろった信連、それからまた、この特例をどんな基準で適用しようとしておるのか、この辺が条文ではちょっとはっきりしませんから、もう少し具体的に説明をお願いしたいと思います。
  75. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず最初に、特定の信連だけ指定をして、その指定をされた信連について特例を適用するという考え方でございますが、この点につきましては、最近の金融情勢の中で、従来の員外利用規制をそのままの形で遵守せしむることが困難な信連が出てきておることは事実でございますが、しかしながら、何と申しましても協同組合の連合体でございますから、そういう意味では、従来から適用されておりました員外利用規制というのは、通則としては維持されるべきものであるというふうに考えまして、特定の信連に限定して特例措置を行おうとするものでございます。  それで、しからばどういう信連について特例の適用を考えておるかということでございますが、資金の運用状況とかあるいは地区内の農業事業から見て資金の安定的効率的な運用を図るためには、現在の員外利用制限を超えて員外貸し付けを行うことが必要かつ適当なものというものを主務大臣が指定するということでございまして、基本的には、員内貸し出しが相対的に小さくて、しかもふやしようがさしあたりは考えられないというような都市的な信連を念頭に置いているわけでございます。  それで、指定をするに当たりましての具体的な判断の基準といたしましては、現行制度のもとでも員外利用率が相当高くて五分の一という限界に接近してきておる、それで五分の一の限界を突破しそうである、あるいは突破することが確実であるというふうに見込まれる信連のうちで、そういう事態になるということが貯貸率が低いという事態から見て仕方がない、しかも、抱えている会員自体の貯貸率がさらに低い、そういう中で貸し付けの審査体制も充実していて、これならやらしても危なくないだろうというふうに認められる信連を指定するということにいたしたいと考えております。
  76. 北口博

    ○北口委員 いま、局長から都市的、都市の中の信連にそういうことを考えておるということでございますが、いま大体どれぐらいの信連を考えておるという数かなんかわかりますか。
  77. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 確定的なことは申し上げかねますが、二けたになるかならないか、ぎりぎりのところぐらいと思っております。
  78. 北口博

    ○北口委員 私がこの数を聞きましたのは、員外利用ということは金融界でもときたま間違いがあるようなときに、農協さんというのは実は素人が多いわけでありまして、金のことはわからぬでも、次の総会でおれはどうも組合長になろうかなということになって、運動でもすれば農協長になれるわけでありまして、信連の会長にもなってさあ金融をひとつやってみるかということでできるわけであります。そういうようなことで結局、素人の金融業でございますから、一番われわれが心配をしますのは、やはり員外利用の焦げつきですね。これがやはり一番気になるわけでありまして、指定をされるときはいろいろ陣容とかその他安全性ということをよく吟味して指定をされた方がいいのではないかというふうに私は思っております。  そこで、いま申し上げましたように、信用業務がしばしば農協の不正事件として発生も見ておるわけでありますが、今回こういうふうに大幅な員外貸し付けが拡充されるということになりますと、また、不正事件も非常に起こりやすいということが心配されるわけであります。今後、そういういわゆる不正防止の対策についてどういうことを考えてやっていきたいというふうに思っていられるか、ひとつお聞かせいただきたい、こう思います。
  79. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えに入ります前に一言申し上げたいのでございますが、実は現在、信連段階系統外に資金が流出する形態としてはいろいろなものがございます。有価証券という形で流出をするものもございますし、あるいは金融機関貸し付けというような形で流出しておるものもございます。それで相対的な比較論でございますが、最近のような激動する金融情勢のもとにおきましては、たとえば、有価証券運用というようなもめも大変危険の大きい運用形態であるという側面もあるわけでございまして、有価証券運用と員外貸し出しと比べてどっちが危険が大きいか、私どもは率直に申しまして有価証券の運用というのも非常に危険の大きい運用形態であり、現在の信連資金運用の実態から見ますとやや有価証券運用に過大に依存し過ぎておる嫌いがあるように思っております。そういう意味では、員外貸し出しをある程度弾力的に認めるということもむしろ資金の安全かつ効率的な運用に資するものであるというふうに考えております。  そこで、お尋ねの点でございますが、先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、特例を適用されるべき信連を指定するに当たりましては、信連の貸出審査体制をまず何よりも十分に吟味いたしまして、その点について信用の置ける信連を指定をしていくということを基本にいたしたいと思います。しかしながら、それにいたしましても特例が適用されるということになりまして、あわてて員外の新規貸出先を息せき切って開発するということになりますと、とかく危険が伴いますので、法律上は資金量の一五%以内ということでございますが、とりあえずは政令で一〇%という縛りを置こうかと思っております。  それからさらに検査体制の問題でございますが、これは先生御指摘のとおり、私どももまさに検査体制の一層の充実強化を図る必要があるというふうに考えておりまして、現在、毎年度本省、地方農政局、県による検査官の打ち合わせ会議を開催いたしまして検査の重点事項を設定して、これに基づいてそれぞれ分担に応じて適正な検査の実施に努めているところでございます。特に、最近におきましては検査の具体的な実施について信連共済連、資金量の多額な農協につきましては、通常の常例検査に加えまして信用事業の貸付部門あるいは共済事業の財産運用部門等を対象といたしました特別検査を実施することにいたしておりまして、全事業を対象とする検査と特定の事業分野を対象といたします部分検査を組み合わせることによりまして、機動的な検査を実施しているところでございます。また、農協の複雑多様化する事業対応して、検査担当職員の資質の向上を図るために、職員の再教育研修あるいは電算機システムの検査研修等、担当職員教育研修にも十分力を入れているところでございまして、先生御指摘の点は私どもも十分にとめて対応してまいりたいと思っております。
  80. 北口博

    ○北口委員 もう一つの改正でございますが、全農や全共連、こういうところにいま単協が直接加入をする傾向が多いわけでありますが、そのために総代会制を採用するための総代の選出についての簡略化をこの際やっていただきたいという法の改正のようであります。そこで、なぜ最近になって単協が直接全共連に加入するという必要があるのか、説明を聞かないと私は納得できないわけでありまして、それをそういうふうに今後一奨励はしなくても総代が簡単に選ばれて、これは県連の負担金も払うけれども全国連の負担金を払ってもその方がいいのだという方向で何かメリットがあるのかということになると、いままでのいわゆる単協と県連と全国連の三段階という存在が、どうも中間が要らぬのじゃないかというふうにこれからだんだん——もちろん、合理化されれば一番結構でありますけれども、そういうための単協の全国連への直接加入の傾向としてあるのか、いやそうじゃないのだ、単協は単協としてやはり全国連につながった方がいいので入っている、もちろん、すべて県連を通して単協は存在し、そしてまた、これからもより強固に提携していくのだということになりますと、単協としては一体どっちを歩いていったらいいのかという迷いがやや出てくるような気もするわけであります。その辺につきまして、私は、農林省としてもより一層、言うなれば系統利用、その合理的な能率的な方法をちゃんと確立して指導していくべきだと思いますが、ひとつその辺のいきさつや今後の見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  81. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先生がいま御指摘の単協の全国連加入というのが起こりましたのは、たしか昭和五十二年七月に単協の全国連加盟という話が具体化をしてきたように記憶いたしておりますが、いきさつを申しますと、当時、農協の合併に伴いましてかなりの数の大型農協が出現をしてまいりまして、そういう大型農協の協議会などで、県連を経由することなく直接全国連の運営に参加して意見を反映させたい。当時の一部には、直接全国連の事業利用したいという御意向もあったやに承知をいたしておりますが、大部分の御意見は、全国連に直接加入して全国段階運営について単協の声を反映し、系統組織の意思疎通、緊密化ということが大方の御意見であったように思っております。それで、全国連に直接加入制を決めるに当たりましては、そういう大方の御意向を踏まえて、直接加入というのは意思疎通緊密化、全国連の運営に単協の声を反映するということをねらいとするものであって、事業利用関係において県連の段階をぶっ飛ばして二段階の方向を志向するという意味ではない、そういうコンセンサスを踏まえて単協の全国連加盟が実現されたというふうに承知をいたしております。  私の方としても、この種の問題は、元来、系統組織内部の自主的な討議とコンセンサスによって決められるべきものであるというふうに思っておりますが、少なくとも現在の段階では、いま申し上げましたような組織のありようで事業利用関係としては三段階制が維持されておるということで、現状としてはそれでよろしいのではないかというふうに思っております。
  82. 北口博

    ○北口委員 確かに、直接全国段階で物を言えばいいこともあると思いますが、農協が厳しい情勢にありながら屋上屋を重ねるというむだなことをするよりも、たとえば、もうちょっと中間段階の県連の合理化を図っていくとか何かがないと、ただ、いまの状態で県連にも単協が入る、全国連にも入る、それにまた負担金も払っていくということでは余り意味がないように私は思うわけでありまして、本当にやるならやるようにもう少し効率的なあり方をこれから指導してもらえればありがたいというふうに思っております。民主的と言うけれども、民主的といったって、県連というのはちゃんと単協の意向を中央の全国段階に伝える、そしてまた県連段階はそれだけの力を持っておるわけでありますから、本来なら、三段階制を今後も堅持するとおっしゃるなら、私はいまのままでいいような気がするわけでありまして、その辺のことはよほど運用よろしきを得ていかないと、むしろむだなことが多過ぎる、そういうふうに陥らないようにお願いをしたいと思っております。  農林大臣がいま見えましたので、最後になりますけれども、一、二、決意の表明あるいはそんなかた苦しいことでなくて、大臣の所信をお聞かせいただきたいと思っております。  きょうも、実は午前中、連合会関係の参考人委員の皆さん方との間で最近の農協についていろいろな御意見の交換があったわけであります。最近、農協の内からも外からも、と言うと大変大げさになりますが、農協事業運営について、組合員営農中心的な、あるいはまた組合員生活にかかわる重大任務を農協というのは負っておるはずだけれども、どうもそういう従来の農協精神からだんだん農協と農民との距離が遠くなりつつある。たとえば、農協の一部でございますけれども、とにかく農協事業を拡大しようということにばかり一生懸命になって、その近くの非農家住民をやたらと巡回組合員というふうに勧誘して、利益追求だけをやっている。生産指導、さらにまた、農協がいろいろ弱い農民を助けてやらなければならぬ生産投資ということに対して、都市農協あたりは特にそういう傾向がありまして、組合員農協離れという傾向が出ているところが事実あります。そしてまた一部には、商店の全く農業と関係ないところに、繁華街の非常に場所のいいところにわざわざ農協店舗というのを構えておって、そこの地元の小売商店あたりといろいろな摩擦を起こしてやっておる。先ほども申し上げましたが、いわゆる農協がそんな利益追求に走るということは、第二義的にはあっても、力の弱い人たちのために組合をつくってお互いに営農、そしてまた、生活向上を図っていこうという観点からやや離れておるという非難を受ける。この実態を一遍よくお知りいただきたいということが一つでございます。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、農協経営も、従来は本当に組合員サービスに徹したということがありますが、先ほども私がちょっと触れましたけれども、最近員外利用というのができてから、どうも従来の農協精神から、何かもうけるためにはどうしても員外の会員をふやして事業をやった方がいいというようなことに農協が走りがちな傾向が非常にあります。こういうことを非難して、農協のもうけ主義だとか商業主義だとかいうふうに言われることがあるわけでありますが、農協事情もわからぬではありません。こんなに農業事情が厳しいので生産調整をしろとかやられると、購買品とかそういうものもなかなか売れない、肥料、農薬、農業機械も売れないという事態がありますから、たとえば、農協職員のボーナスからいろいろなことを考えていきますと、そっちの方で働いていただくことも当然わかるのですけれども、こういうことをただ見逃しておるといよいよ農協から組合員が離れてしまう。御承知のように組合は加入、脱退が自由でありますから、利益がなければいつでもやめるということになりますと、農協の本来の行き方から本末転倒的な方向に陥ってしまう。いま言われておるような農協栄えて農家が滅ぶという言葉あたりがはやり言葉になるのでは、残念ながら農協は本来の機能発揮してないのではないか、私はこんな心配をしております。したがって、どうぞひとつ本当に組合員ニーズにまず対応する事業運営ということを第一義に考えて、大原則を忘れぬでこれからやってもらいたいと思いますし、大臣もひとつ適切な指導、監督等をときと場合によってはやっていただくような、また、気持ちの中で農民のための農協だという哲学だけは農協も忘れないようにやってもらわなければならない、こういうことにつきまして、ひとつ大臣の所信をお伺いいたしたいと思います。
  83. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 農協は、御承知のように農民の自主的な協同組織として昭和二十二年に発足して以来、わが国農業発展あるいは農民の社会的なあるいはまた経済的な地位の向上のために果たした役割りというのは非常に大きいわけでございまして、これは高く評価しなければならないと思いますが、最近の農業を取り巻く環境というのは非常に厳しゅうございます。また、大きな変化をいたしているわけでございます。すなわち、米を初めとする農産物の需要の不均衡あるいは対外経済摩擦に見られるようないわゆる輸入の圧力というような問題、加えて兼業化、混住化、老齢化という農村社会を取り巻く環境というのは非常に厳しいわけでございます。しかし、その中で新しい農業の芽を育てる基本は何としても農協だと私は思うのでございます。しかしながら、いま御指摘のように、どうも農家のいわゆる営農あるいは生活のための農協でなくして、むしろ営利を追求する農協になってきているということはいま御指摘のとおりだと私思うのでございます。したがいまして、私たちとしては何としても農協本来の精神に立ち返るのはいまをおいてないのじゃないか、こう思うのでございます。幸い、農協の中央会においてもこの点に深く反省をいたして、今後、それらの問題に積極的に取り組む姿勢をいま示しているようでございますので、私たちとしてもその点に十分な指導をしてまいらなければならない、かように考えるのでございます。  特に、農協の新しい農業をつくるための役割りとしては、ある村の新しい農業の芽を育てた農協の例として、農協農家個々の経営診断をしたというのです。ですから、その経営診断によってその農家の人たちは非常に活力を得て新しい農業の道を開いたという例もございますので、そういうように農家の本当の意味の相談に乗ってやる、いま一番苦労している農家、農民の本当の相談相手になってやるということがいま農協役割りでないだろうかと思うのでございます。申し上げるまでもございませんが、農業農家にとっては生産の場であると同時に生活の場でございますから、一つの生産指導が即生活指導につながるのでございますから、そういう意味で活力ある農村をつくるためには農協役割りは非常に大きい。ことに都市近郊農業あり方と、いわゆる農協の今後のあり方等については、いま御指摘のようにもっともっと反省してどういうあり方が一番理想なのかということについても、農林水産省としては強い指導を今後してまいりたい、かように考えております。
  84. 北口博

    ○北口委員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。
  85. 羽田孜

    羽田委員長 次に、竹内猛君。
  86. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案関連をして若干の質問をいたしたいと思います。  まず最初に、三十六年から農協合併助成法に基づいて農協の合併が進められてきた。その後、何回か合併が促進をされてまいりまして、三十五年には一万二千五十ほどの組合が五十二年三月には四千七百六十三の組合になり、当初の四〇%台になりましたが、これは市町村の数からいえば、現在三千二百五十六が市町村の数ですから、一市町村に一組合というわけにはいっていない。私の茨城県においても九十二の市町村の中で百十九の組合があるわけでありますから一市町村一組合ではありませんが、農協合併の長所と短所、このことについての価値判断というか、これはどのようにとらえられていますか。
  87. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先生御指摘のとおり、三十六年当時一万二千もございました総合農協が最近では約四千五百ということで、三八%程度まで減少してまいりました。正組合員数が五百未満の組合も六千八百組合ございましたのが、千五百組合まで減少してまいったわけでございます。それで私どもがこういうふうに農協の合併を推進してまいりましたのは、農業農協をめぐる厳しい諸情勢の変化対応いたしまして、組合員の多様化するニーズにこたえてその機能を果たすためには、合併に伴って農協経営の効率性の発揮経営管理体制強化、あるいは事業経営の基盤を強化するということが必要であり、さらに、これによって技術指導とか生産販売面での共同化、あるいは農業者に対する円滑な資金供給等の機能強化し得るとのそういう期待に立って農協の合併を促進してまいったわけでございます。しかしながら、合併農協現状を見ますと、一部には農協の内部組織経営管理の整備強化が、必ずしも合併に伴う規模拡大に対応して強化が進んでいるとは言えず、合併の効果を十分に発揮するに至っているとは言いがたいという農協も確かにあることは事実でございます。それからまた、合併によって大型化したために農協組合員との間の結合関係がやや希薄化したというような御批判もございます。なお、零細な規模の農協が多数存在をしておりますので、自主的な農協合併は今後とも推進する必要があると考えますが、その際には、従来のこういった反省を踏まえて農協の内部組織と管理運営整備強化に力を入れますとともに、農協組合員との結びつきを維持強化するために、たとえば、作物別の生産組織を育成するとか部落座談会を頻繁に開催するとかあるいは広報紙を発行するとか、いろいろな工夫をして組合員との結びつきが希薄化することのないよう十分留意していく必要があろうと思っております。この点につきましては、当事者たる農協の幹部の皆さんがそのような問題の所在について十分な認識を持って対応してくださることが基本でございますが、私どもといたしましても、それについて適切な指導を加えていきたいと思っております。
  88. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 判断というのは非常にむずかしいと思うのですが、農協の合併とそれから農協が存在する経済情勢の変化というものがあるわけですから、必ずしも合併をしたからよくなるというわけでもないが、問題は、価値判断の基準というものをどこに置いて考えたらいいのかというところが、先ほど参考人意見の中にもありましたが、農協の存在する基準というものは一体何が基準になるのか。これはどういうところを考えたらいいのかという点についてどうでしょうか。
  89. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 私どもは、農協あり方についての価値判断の尺度というのは、何と申しましても基本的には組合員ニーズにいかに有効にこたえていくかということに尽きるのではないかというふうに思っております。その点につきまして、農協の合併の功罪という点を考えてみますと、一面では、農協の合併に伴いまして農協組合員ニーズにこたえる組織的な体制整備を少なくとも行い得る客観的条件を成熟させるという効果は、本来、農協の合併というのは持っているはずでございます。しかしながら、そういう客観的な条件を十分に満たし切っていないという点が一つの問題であるということと同時に、合併に伴って農協が大型化することによりまして、ともすれば組合員との間の親密さの度合いが薄れることによって、組合員ニーズを掘り起こしくみ上げていくという点ではよほど周到な心構えがないと手薄になりがちであるということが、いまの原点から振り返ってみての功罪ではないかというふうに思っております。
  90. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま局長からのお話があったように、合併の結果、これは他の地区はよくわかりませんが、私の県の例を見ると、二つの形に分かれているように思います。一つは、合併によって大型化してどんどん仕事をしていく、これは大型商社のような形で伸びていくところがあり、農民からかなり遠くなっている。ところが、合併しない旧町村ごとに残されている農協がまだ幾つかありますが、この地区では生産農民との関係はかなり密着ですね。そして、そこの特産物について非常に精力的にこれを取り扱っていて、農家との間は親密な関係にある。有名な農協ほど合併をしない、農協に個性を持っているということが言われる。もちろん、それは人間との関係、そのリーダーとの関係がある。つまり、仕事をするためにはりっぱなリーダーがあり、それが信頼されるということも大きな要素だと思うのですね。そういうものが整っていると思いますが、この点について、やはり農協の原則として言われる自主自立、相互協力、協同行動、こういうようなところでお互いに信頼し合って進めるところに農協の将来も発展をする基礎があるのではないかということで、合併というものを今後残された部分について、たとえば、行政単位にあるのが理想的なのか、それともそうではなくて生産地単位、そういうようなところでいくのがいいのか、これは大変むずかしい判断かもしれませんが、今日は郡単位の農協も必要だろうと言う人もある。しかし、旧町村単位に残っているところもあるということからいうと、これからの農協組織的な一つのあり方というものについては、段階問題は先ほど出たけれども、それは抜きにして、合併の方向あるいは行政とのあり方はどういうふうに考えたらいいのか、促進法はありませんけれども、その点についてお答えをいただきたい。
  91. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 竹内先生ただいま御指摘の点につきましては、実は、昭和四十一年に農協合併助成法の一部改正を行いました際に私どもは通達を出したのでございますが、その中で、少なくとも市町村の区域を下らないことを原則とするとともに、今後の社会的、経済的諸条件の進展と相まって云々というふうな書き方をいたしておりまして、農協が一面では、末端で市町村行政と非常に表裏の関係があるということもございますし、それから、農民が結束をする範囲としても行政区画というのは一つの念頭に置いておくべき要素ではございますので、市町村の区域を下らないことを原則としというふうに書いてはございますが、同時に、農業者の自主的な団結の組織であるという側面もあるわけでありますから、農業者が結束し得るような社会的、経済的条件というのがどういうものであるかということを無視して、機械的に行政区画にとらわれるわけにはいかないということでございまして、要は、やはり現場での農業者の団結し得る、結束し得る範囲ということに結局は帰着してしまうのであろうというふうに思っております。
  92. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 機械的に行政単位に合併する必要はないと思いますね。そういう点では今日までの合併の状況というものを再検討して、そしてこれからの指導に当たってもらいたいと思います。  農林省の中に四十八年に農協問題研究会という研究組織ができたと思うのですが、あれは一応結論は出ているのですか。
  93. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先生御指摘の研究会は審議を了しまして、研究会のお示しになった結論を踏まえた指導通達を出すということで締めくくってございます。
  94. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その研究会の結論については私はまだ聞いていないのです。きょうここでということではありませんけれども、いずれかの機会にどういう結論が出ているか伺いたい。きょうは時間がちょっとないような感じがいたします。  そこで問題になることは、農協と政治との関係です。つまり、政経分離でいくのか、あるいは政経一体論をとるのか、政治的中立でいくのかという問題、これは非常にむずかしい話ですから、きょうはここでその話はしない。別な機会にしたいと思います。その指導についてはいずれ改めて議論をしたいと思います。  次に、問題になるのは、これも非常にむずかしい話ですが、農協は、購買においても販売においても、無条件委託あるいは予約の注文というような三原則を持っていますね。この三原則というものは今日まで確実に守られていると思うのか、思わないのか。これも大変むずかしいことですから、ここで直ちに回答をもらう必要がないと思いますが、いずれにしても、農協指導をされるときに一つの基準としてこれは考えてもらいたいことだと思います。  そこで、次の問題は、農協が合併をしていくという形で大型化していく。確かに、職員の給料というものも上げなければならない。本来、利益というものを中心にするのではない、協同行動、相互扶助という形でいくんだということをねらってはいるけれども、しかし、資本主義の社会の中にあって賃上げをする職員を抱えているわけですから、そこで大型化という形になると、勢い総合商社ではないのかと言われるぐらいに世間からは見られるような、そういう華々しい状態も出てきております。本来ならば、土で生産をしたものを集めて、加工して、販売をするということが一番望ましい形であるけれども、それだけではやれない。だから、どうしても金融あるいは保険事業、はなはだしいところは冠婚葬祭、何でもかんでもやってしまう。もうかるところには何でも手を出す。こういう農協になってしまって、一体農協というのは何だということにだんだんなりつつある。この変形的な農協に対する参考人からの話もありました。反省もあったようですが、指導としてはよろしくないと思うのですね。本来の農協の原点に帰る、返すという指導が必要だと思うけれども、これに対してどういう指導をされているか。
  95. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先生御指摘のような現象は、実は二つの側面があるように思っております。  一つは、農協組合員自体の間で非常に兼業化が進んできておって、昔のように大部分の組合員が専業農家であった時代に比べると、組合員自体のニーズが大変多様化している。そして、組合員ニーズ自体が、どちらかというと、農業との関係がやや疎遠なような種類のニーズが相対的に比重を増してきているという問題があると思います。これはこれで客観情勢のしからしむるところで、農協がちょっといかんともなしがたいような問題がないわけではないというふうに思います。  しかしながら、そういう客観情勢であるということに籍口してと申しましょうか、農協の一部に、あるいは相当の部分と言うべきかもしれませんが、農協農業離れ、農民離れという傾向が見られることは、これまた大変遺憾なことでございまして、そういう中で、組合員農業者としてのニーズがとかく相対的に軽視されがちな傾向が見られるということは、私どもも大変憂慮しておるわけでございます。実は、組合員農業者としてのニーズ自体が、御高承のようなむずかしい農業情勢でございますので、それ自体、多様化、複雑化しておるわけでございまして、それに忠実に対応していくということはまた、なかなか容易ならざることでございます。したがいまして、農協役職員というのは単に月給取りではなくて、運動者としての使命感を持って農業者のニーズにこたえていくという姿勢が必要なわけでございますが、この点は、私どもも、農協系統組織に対して従来から繰り返し問題を提起してまいったところでございますが、最近に至りまして系統側におきましても、確かに、そういう問題には正面から対応していかなければいけないという心組みになってまいりまして、本年秋に開催を予定されております第十六回の全国農協大会に向けて、組合員営農生活、両面にわたるニーズに立脚した事業対応事業運営の適正化、販売事業整備強化、あるいは組合員向けの貸し出しをさらに拡充をする方策といったような諸問題につきまして、具体的な方策の検討を進めるという運動に取り組んでいる段階でございます。  私どもといたしましても、せっかく系統組織の中にそういう自覚ある行動が芽生えてきたことは大変結構なことであると思っておりまして、実りのある結論が出るように見守りながら適切な指導を加えていきたいと思っております。
  96. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはぜひ農協が生産農協としての立場に立ち返って、それで土と離れない農協になってもらわなければ、よそから、どこからでも物を買ってきて売って稼いでいるような農協は、本来の農協とは言えないと思うのですね。そういう意味で、この農協に対する運営に十分な指導をしてほしいということを強く要請したいと思うのです。  それから次の問題は、都市農業と言われ、地域農業という言葉でも言われているように、建設省は百三十三万ヘクタールに線を引いて、その中に二十二万ヘクタールほどの農耕地があるはずなんですが、これについては農林水産省は手を出すことができない。建設省にこれは管理されているわけでしょう。私どもはそういうところで行われている農業の価値というものを高く評価するわけです。そこで都市農業振興法という法律を策定しようということで、いまいろいろとがんばっているわけだけれども、これは法律上いろいろむずかしいことがある。あるけれども、これはがんばらなくちゃならないということなんだ。ここで直ちに都市農業についてあれこれ答えを出せと言っても、これもどうも出しにくい話だろうから、答えを求めようとは思うけれども、これも今度の議論の本旨ではないから問題だけを提起しておきますが、この問題についてもぜひ深い関心を払ってもらいたいと思うのですね。  それからその次に、もう一つ問題になることは、先ほどから、農林中金にもどこにも農民の金がかなり集まっている、その金を一体どこへどう使うかという問題について、大企業に出過ぎてはいないかという指摘もあったが、問題は、農家が原料をつくって、加工したものをまた買わされる、こういうことが常に行われている。だからもう少し付加価値というものを生産農民の手に取り戻すことができないか。原料をつくって加工をして農民及び消費者のところにそれを返していく、付加価値の方が倍くらいあるのじゃないですか、生産のものよりも。こういうことについてはどういうような考え方を持つか、これはぜひ答弁をして、すぐできないとしても研究をするとかやろうとかということは言えるはずだから、この点についてはぜひ農林大臣の考えも聞きたいものだな、こう思うのです。
  97. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 農協の設立以来の経緯は竹内委員御承知のように、私が戦後農協に入りまして、それで真っ先に専務になったのですよ。当時は二十四、五歳でございましたけれども、その当時の農協というのは非常に規模の小さいものでございまして、信用利用販売購買、こういう程度のものでございまして、指導部というものもございまして本当に土に親しんだ農協だったと私思います。ですから、農家組合員の個々の財産は、私専務としてほとんどわかっておりました。また、組合員の子供さんを見ただけで、あっ、この子供はあそこのせがれだなということはすぐわかったほどでございます。ですから、それくらい農協の専務なり農協の組合長というものは、その地域の生産はもちろんでございますが、生活そのものの相談相手にならなければいかぬと思うのですよ。ですから、私は幸いにしてその当時二十八歳で県会議員になったのもそのことだと思うのでございますけれども、それも一つの要素じゃなかったかと思うのですが、いずれにしても、その当時の農協と、三十六年の農協合併助成法ができましてから一つの大きな農協ができたわけでございますが、その農協は確かに経営規模のしっかりしたものもありますけれども、大規模になった関係から利益を上げなければいかぬという農協が出てまいりまして、人件費を嫁ぐためには利益を上げなければいかぬということで、農協の一つの新しい姿が出てまいったのじゃないだろうかと私は思うのでございます。  そこで、農協がそういう大きな農協になったといえども、やはり農協本来の自主的な協同組織だということを忘れずにこれからも進まなければいかぬ、だから農林水産省としてもその指導をしてまいらなければならない、私はかように考えます。  また、いまの都市農業についても、私たちは十分そういう点、何をして差し上げるのが一番よろしいのか。いま、地域農業あるいは都市農業というのは、信用共済業務よりやっていないと思うのでございますが、その中でどこに生産の面あるいは利用の面を活用できるかという点をこれから研究してまいらなければならないと思うのでございます。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕  いずれにしましても、いま御指摘のように生産指導というものが常に農協中心でなければならない、農協中心になってやっていただかないと本当の意味での新しい農業は活用できない。しかも、農林水産省の政策は、農協の窓口から農家に伝えることが本当の姿だと私は思いますので、そういう意味では、農協がすばらしい組織になってもらう、自主的で協同組織としてのいい組織になってもらうことを念願いたしますがゆえに、大きな指導をしてまいりたい、こう思います。  特に、消費の問題でございますが、ある村では生産よりも消費しないことが農家経済を維持するのだ、ですからおみそだとかしょうゆだとか、お豆腐から何からすべて自分で生産できるもの、消費財で生産できるものはできるだけ自分でやるということはそれだけ生産と同じ価値を持つものであるという意味で、いま御指摘のように、これからいかに消費財を生産するかという農家にしてまいらなければいけない。私は、その指導等もやはり農協指導していかなければならないと思いますので、そういう点を含めて今後農協指導のために積極的な力を注いでまいりたい、かように考えます。
  98. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ちょっと時間が近づいてきましたが、あと二点だけどうしても質問しておかなければいけないから質問します。いま、大臣の御発言は非常に結構なことで、ひとつ農協精神、農民魂というものを、一つは外圧に向けて貿易の自由化なりああいう次々にうねってくる波を支えてもらわなければならない。国内においては減反などという問題は早く中止をして、えさ用の稲をつくるとかアルコールを取るイモをつくるとか、そうして国内における農作物を、大いに土地を耕して、国内のエネルギーに変えていく。一方は食糧に、一方は工業用のなににしていく、こういうことにぜひお願いしたい、一緒にやらなければいけない、こう思っています。  そこで問題は、文部省見えていると思うけれども教育問題です。農家はみんな農協組合員なわけだ。その子弟は学校に行っているわけだ。ところが、前にも私は質問したけれども、学校の教科書の中には農業協同組合というものは全く見るところもない。虫めがねで見なければ見えないほど農協というものは出てこない。あるいは農業のスペースが、これがどういう役割りをするのか。確かに、農業のことは出ているけれども、愛媛県のミカンが出たりあるいは佐賀県の上場の開拓が出たり北海道が出たりあるいは庄内がちょこっと出たり、大阪あたりに行けば農業の中に滋賀県が出ている。こういうようなことではいけない。農業というのは食糧をできるだけ自給していく、安全保障だという言葉を書くのは大変むずかしいけれども、そういう構えで、土地と水とこういうものを利用して国内において国民の食糧を十分につくっていくんだ、大事な産業なんだという位置づけをしていかなければいけないと思うのです。その場合教科書が、大阪図書出版ですか、それが三四%くらい、一番よく売れているようですが、これの中には比較的出ているけれども、それでも不十分だ。だから文部省は、さきには国有林の問題について山の取り扱いの時間が非常に圧縮されてしまったということで私は文句をつけたが、今度はまた、農業そのものを国の重要な産業から外そうとしているというような意図が見える、これはよくない。こういう点について、これは文部省の方に注文をしたいので、ひとつ答えてもらいたい。  もう一つは、畜産局長見えているから、いま茨城県の緊急の問題として問題になっているのは豚コレラの問題がある。これを私は一カ月前に問題にしようとしたけれども、一カ月前には何とか処置するからしばらく待ってくれないか。一カ月たったらまた全県的にコレラがふえている。こういう状態を黙って見ているわけにいかない。何としても、これは伝染病ですからひとつ指導して撲滅をすると同時に、災害の農家並びに豚をこれから飼おうとする者に対する希望と光を与えてもらわなければ困る。  こういう点についての関係省庁としての指導をしてもらいたい。この二つについてお答えをいただきたい。
  99. 藤村和男

    ○藤村説明員 先生の御質問にお答え申し上げます。  農業協同組合についてでございますが、小中学校で申しますと、小学校の三年の社会科の中に出てまいっております。三年の社会科では、生産品の販売や輸送の面からその地域社会の活動等を取り上げることになっておりまして、ここに小学校の三年の教科書三冊ほど持ってまいったのですが、その中にいずれも例を具体的に挙げまして、「農きょうをたずねて」とか、それから「農業協同組合」として「農家の人びとは、みんなでお金を出し合って、農協をつくってたすけ合っています。」それで、いろいろな販売や流通の面でどういう働きをしているかというような記載がされております。  それから農業についての小学校における記述でございますが、先生御承知のように、小学校の第五学年になりますと日本の産業について学習をすることになっておりまして、取り上げる産業として農業、工業それから漁業といったものを中心に学習することになっているわけでございます。農業についての記述は、小学校の五年の上巻で申しますと、この約三分の二ぐらいを割いてかなり詳細に記述をいたしております。たとえば、ある教科書会社の教科書を見てみますと、「わが国の食料生産」ということで、見出しを申し上げますと、「農家の人々のくらし」、「外国にたよる日本の食料」とか「生産を高めてきたいな作」とか「畑作や畜産(ちくさん)へのとりくみ」とか「農産物の生産を安定させるために」とかというようなこと、それから日本の農業の特徴といったようなこともかなり詳しく書いてあると思っております。まだまだ先生の目から見れば不十分な点があるかもしれませんが、それは私どももいろいろな御意見をちょうだいしまして、なお、さらに改善を図ってまいりたい、かように考えております。
  100. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 茨城県下で発生いたします豚コレラにつきましては、その後、県もそれなりの努力はしたようではございますけれども、残念ながら終えんをいたしておりませんで、昨日もまた発生しておるというような状況でございます。県は、県全体の家畜防疫体制につきまして見直しをすることといたしておりますけれども、国といたしましても、自衛防疫に加えまして、国が家畜伝染病予防法に基づきます検査を県をして行わせるように、新たな体制を組み直してこれに対応しようと思っております。  それから経営農家へのいろいろな対策でございますが、これも県と相談をいたしまして、前向きの資金なりあるいは負債の増加したものにつきましては、肉畜経営の安定資金といったものを活用しまして、経営が順調に回転するように支援をしていくつもりでございます。
  101. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間が超過して大変恐縮ですが、もう一つだけ文部省の方に要求します。  確かに、農協というのはあるのですよ。あるけれども、つまり、農協の理念とかなんとかという問題については、私の見る限りはいまだ余り十分じゃないから、それはやはり研究してもらいたいし、全農家が参加をしているのですから、そのことだけはぜひ要求をする。  それからもう一つは、小学校の五年の教科書を私は全部見ました。見たけれども、米というところに中心があるが、米はいま減反をしている。減反という言葉もどうもよくない、出稼ぎという言葉もどうもよくないということで、これはすでに農業新聞なんかでは問題になっていることだ。そこで、農林水産省が長期計画というものを立てるわけだ。あの長期計画というのは農政審議会の議を経て閣議で決定しているわけでしょう。だから縦割りではないのだ。文部省は文部省だけではなくて、農林水産省は農林水産省だけではなくて、横につながって閣議で決定している以上は、やはり閣議で決定したら、米からこういうふうに変えていくという、その内容もそれに合って変えていかなければ、やがて育っていく子供は非常に迷うから、迷わないようにしてもらわなければ困る。教科書というのは人間をつくることが大事ですから、これは大臣の方でもぜひお願いしたいと思うのですね。やはりリーダー、りっぱな人が農村に生まれて農村へ残らなければいい農業政策もできないし、りっぱな発展もない、こういうふうに思いますから、人づくりの基礎についてお互いに力を入れなければいけないということを私は主張して終わりたいと思います。大変時間を超過して恐縮です。一言だけお言葉をお願いします。
  102. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 確かに、農業の新しい芽を育てるには人づくりが必要でございます。したがいまして、私は、小さい子供さんから農業というもののとうとさ、いわゆる植物の生命を扱う産業であるということの基本をしっかり教えてもらいたいと思うのでございます。  たとえば、いまの教育で私非常に残念なのは、農家の人たちがせっかく自分の農業後継者として育ってもらいたいと思って農業高等学校に入れる。その農業高等学校に入った子供が農業離れになるという教育ならやらない方がいいと私は思っているのですよ。ですから、そういう意味で、本当の意味での農業というものを教えてやる。農業新聞でも取り上げたように、いま文部省からいろいろ御説明いただきまして半ページも使っているというけれども、減反だとか出稼ぎだとかそういうぎらぎらする言葉で教育したならばみんな離れていきますよ。私は、そういうことでなく、もっと土に親しむ、物を生産する、このことをしっかり教えてもらいたい。本当に土から芽が生えて、その芽を育てていく人はだれか、これが農民じゃないだろうかというこの精神を教えていただくこと、何ページも要らぬですよ。一ページあれば結構ですので、そういう教育をしていただきたい、かように考えます。
  103. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。時間を超過して恐縮です。
  104. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 次に、田中恒利君。
  105. 田中恒利

    田中(恒)委員 短い時間ですので何を質問しようかと思っておりましたら、大臣からヒントを与えていただきましたので、若干、大臣と協同組合の問題について意見を交換させていただきたいと思います。  先ほど来農林省は、農協指導に力を入れてやりたい。それは昔の古い経験の上に立って、農民と血の通う人間関係がいまは抜けておるのじゃないかということや、農民に奉仕するために生産営農技術指導といったものをもっと農協はやらなければいけない、これはほかの委員の皆さんもおっしゃったわけですが、私も実は協同組合に長い間お世話になったので、大体似たような気持ちがあるのです。しかし、いま現場で協同組合をやっておる皆さんの中には、気持ちはそうだけれども、どうすればいいのかという具体的なものが明確でない。私は戦後の農協と、たとえば、農林行政の関係をじっと見ておりましても、なかなか団体問題というのはむずかしい。河野さん自体がかつて団体再編成をやったけれども、思うようにいかない。相当強力な農林大臣でも団体問題に手を入れるのはなかなか厄介で、片一方団体側からは自主性というものを非常に強く言われて、余り役所がくちばしを入れることは避けるべきだという意見もありますし、私もまたそんな考えも非常に大きな面だと思うのです。  しかし、今日の現状の中で、いま法改正が出ておりますけれども協同組合というものは、いままで私どももそうでありましたし大臣の農協在任中は特にそうであったと思うのですが、基本的な前提は、組合員というものがまず第一に均質というか同質というか、大体一町なら一町百姓で、米つくって、鶏飼って、牛一匹持っておって、この型でほぼ基盤が同じであった、そこに特に、日本の総合農業というものが全国的に一つの体系を組んでいった、やれた条件があったのですね。それが今日、非常に分解をしたというか多様になって、まず、下が非常に複雑になっておりますから、それだけにどうしたらいいのか。合併農協の問題で組合員農協との間に何か希薄な、組合員はもう農協を他人のように見出した、農協も、ともかく合併農協になれば事業中心で、購買販売金融共済事業、ノルマまでかぶさっちゃってどんどんどんどん事業を拡大しなければやっていけないということになっていきますね。そういうものをしたら、合併農協が、経営管理の中であるいは組合員組織体系の中でどういうふうにしたらいいのかという問題を明らかにしてやらないと、何を一体指導するのだということについて、精神的な一般論なら演説としてはできるわけですけれども、それが果たしていま的確なものが出ておるのかどうか、この辺をはっきりさせなければだめだと思うのです。この点については、協同組合の関係者ももちろんですけれども、行政庁としてももう少し踏み込んで、今日の非常に複雑な多様な状態の中で、特に、合併というものを法律的にも仕上げたような形になっておるわけですね、もう打ち切ったわけですから。その段階で、そうしたら今日の合併農協というものは組合員との関係が希薄になり、事業先行型の経営中心主義に走りつつあるような印象をわれわれ持っておる。それを一体どうすればいいのかということについて行政庁は行政庁としてのお考えをこの際示してもらわなきゃいけないのじゃないかというような気がするのですが、その辺についてはどういうふうにお考えになっておるか、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  106. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 確かに先生御指摘のように、選択的拡大の時期を通じて組合員である農業者の経営も作月別に見ても多様化してきておりますし、それから兼業化の進展の度合いに応じて農業への就労の程度というのも同じ作物の中でもまた多様化してきておる。したがって、兼業の進展に伴って組合員ニーズの中で非農業的な側面の比重が増してくるという問題だけではなくて、農業の内側について見てもさらに組合員ニーズというのは多様化して、常識的に均質的な組合員を念頭に置いて組合を運営していた当時と比べると、非常に複雑な事態に組合の役職員が直面をしているということであろうと思います。それで、それがさらに合併に伴って農協の区域も広域化してくるということになりますと一層事情は厄介になってくるわけであります。そういう中で私どもは考えてみますと、農協という大きなどんぶり一つで、多様化したニーズを抱えている組合員を捕捉していくということはなかなかむずかしいわけでありまして、そこはやはり作目別の組織あるいは集団的生産組織農協との間の連携、そういうことを工夫しながら、それぞれの組合員営農条件のバラエティーに応じた組合員の結集の仕方というのを工夫していく以外には道はないのではあるまいかというふうに思っておるわけであります。それで、必ずしも十分な数ではございませんが、しさいに全国農協を見てみますと、そういう方向での先駆的ないい事例というのは幾つか現に出てきておるわけでございますので、そういう方向を広めていくというのがただいま先生御指摘になった問題への現実的な取り組み方ではあるまいかというふうに考えております。     〔戸井田委員長代理退席、亀井(善)委員     長代理着席〕
  107. 田中恒利

    田中(恒)委員 たとえば、部門別に組合員組織化をして、そこで一定の権限というか、あれの委託というか任せてやっていく、そして組合員意見をぐいぐい吸い上げていく、こういうやり方で進んでおるところもありますね。それが一応いま合併型農協の内部の組織体制、管理システムの一般的な形になっておりますね。しかし、実はいま信連信用事業の問題で、非常に金融情勢が厳しくなってオンライン化とか員外貸し付けの緩和とかいろいろ出ておりますが、私どもも自分の県の農協をずいっと見ておりますと、そういう面では、それを貫くのであれば総合農協ではなくて専門農協の方がより明確で、より組合員と単一目的でずばりつながっておるということであったのですけれども、最近の傾向を見ると、多角的な事業をやって、そこでいろいろいま言われたような部面を活用しておるところの方が経営的にも安定しておるというものが最近の経営分析などの結果からは出ておるわけです。ですから、そういう面では日本の農協というのは、少なくとも末端段階は総合農協といったようなもので多面的にやるべきだ。農業経営だって、かつていわゆる企業農業と言って大型ということでわあっとやったけれども、最近、また少し反省が出ておりますね。それがいいとか悪いとかは別にして、農協の場合はそういう総合的なものの中で全体にある程度専門化させ、一定の経営権とまでいかないが何か権限を移管して、そしてそれを役員会あたりで総合調整をしていく、こういうシステムというものをうまくこなしていく、それが合併農協の中で生かされてくれば効果がもう少し上がるのじゃないか、こういう気がするのですね。そういう点については系統内部の、たとえば、農協中央会の方なんかの方針ともそう変わらないと思うのですけれども、その辺について農林省ももう少し全国のいろいろな事例なんかも集められたり紹介したり、そういうことももっと大胆にやってもいいのじゃないか、それで何か示唆を与えてあげるということも大切なことではなかろうか、こういうふうに思いますから、ぜひお考えいただきたいと思うわけです。  戦後の農協法改正を見てみると、先ほど参考人も言っておりましたが、戦後、一時期一万二、三千農協ができてしまって、いわゆる小さな部落農協のようなものができて、大臣は非常に優秀な経営者であったようだが、当時の経営者というのは、さっき自由民主党の方が言われたが、いまはそれほど素人じゃないと思うが、いまは常勤役員というのは相当マネジメントを持っておりますが、当時は、全くの百姓が入り込んでやったものだから赤字を一斉につくってしまって、整備促進であるとか再建整備であるとか特別措置法であるとか、そういうものをたったつくって再建かけましたね。そして、その上に合併助成法で農協合併をやってきたという歴史があったと思うのです。その中で、私が最初にここに来たころの農協法改正のときに議論したといま記憶しておるわけですが、たしか四十七年か八年ごろに農協の合併を通して、いわゆる農業基本体制の中で農地の構造改善というか、そういう施策の一環として農協の位置づけを政策的にねらった法律改正があった。この中にいわゆる農地信託制度であるとか農事組合法人であるとかあるいは農業協同組合自体が農業を営むことができるあるいは農地の売買をやる、こういう基本的な農業の生産手段に対して協同組合が入り込む、こういう段階があったと思うのですね。実は、私どもはあの構造政策に社会党としては反対をいたしておりましたけれども、しかし、農業の移り変わりの中でこれがどう動くかということは確かに一つの大きな焦点であったと思うのですよ。私どもから言えば、いわゆるいまの総合農協を、いまの流通を中心とした農業協同組合が生産の段階にどれだけ入るのかという示唆をこの法改正の中から結果として受けとめたい、こういう気があの時点で農協関係の有識者というか、学識経験者などの中からも一部あったことは事実です。それが今日どういうふうになってきたか。もう十年近くたってきたわけですが、そういう農業の生産手段、農地という基本的な要素にまで協同組合が入るし、あるいはもっとはっきり言えば農協農業経営を営む、こういう事例は全国にそういう面では余り聞かない、多少はあるようですけれども。そういう面についての評価を農林省としてはどういうふうに立てていらっしゃるか、この機会にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  108. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の農業経営農協による受託等の措置は、基本法制定後、農地の流動化による規模拡大あるいは生産行程について協業を助長する方策ということで設けられたわけでございますが、農協による農業経営の受託は昭和四十五年に制度をつくりましてから五十五年度までに延べ二千四百六十一ヘクタール権利の設定が行われたにとどまっております。それから農地信託につきましては、昭和三十七年に制度が創設されましたが、農協組合員から農地等の貸し付け売り渡し及び売り渡し貸し付けの信託の引き受けを行う事業でございますが、五十五年末までの実績によりますと、延べ面積でございますが、貸付運用信託が五百九十六ヘクタール、それから売り渡し運用信託が四千六百八十一ヘクタール、それから売り渡し貸し付け運用信託が千三百六十ヘクタールということにとどまっております。それから、農事組合法人は、昭和三十七年に制度ができましてから五十五年末においては六千四十法人程度の実績になっております。  それで、これまでの経験に照らしてみますと、まず農業経営受託がこれまで必ずしも十分な成果を上げていない理由は、主として次のようなことではないかと考えられます。  一つは、経営の受委託という権利関係自体が複雑なものでございまして、農用地の出し手側の意識としては、農作業の受委託とかあるいは賃貸借のように当事者間の権利関係がより明確な手法の方が一般に好まれている。それから受け手の農協においても、農作業の受委託の方にむしろ力点を置いてこの経営受託という事業を余り熱心にはやっていないというふうに、そういう事情が理由になっているように思います。  それから信託の場合は、信託という制度自体がわが国では必ずしもなじみの深い制度とは申し上げがたいのでありますが、その上さらに形式的ではあれ所有権を農協に移転しなければならないということもございますし、事務手続が煩わしいというようなことが原因になっているのではないかというふうに思っております。  ただ、農事組合法人につきましては、近年大規模化が顕著に進んでおります酪農とか野菜を中心にいたしまして毎年二、三百くらい増加をしてきておりまして、家族農業経営発展農業の生産性の向上、農業所得の確保というような見地から見て有効な機能発揮してきているように思っております。
  109. 田中恒利

    田中(恒)委員 私もけさほどその資料をいただいて見せていただきましたが、確かに農地の問題は、これは現地へ行ってみると農業委員会などとの事務上のいろいろな問題もあるようです、それほど進んでおりませんが、農事組合法人、これはやはり十倍くらいふえておるわけですね。いろんな方が言われるように、協同組合が生産営農指導の中にどれだけ加わっていくかということが、私は、やはり今日の農協に対する農民の強い期待であるし、われわれもそのことを追求していかなければいけないと思っておるのですが、ただ、現在の協同組合組織現状の中で営農指導員を置いたり、生活指導員を置いて技術相談経営診断をやったり、調査をやったり、そういうことはできますけれども、問題は、本当に農業経営のリスクを一体だれが負担するのか。残念ながら、いまいわゆるいろいろな出来事が起き、価格が暴落し、自由化で外国のものが入る、そしてあるいは災害、そういう農民自体の責任でないような事故についてまで、一切経営の責任は全部いま農民にかぶさってきておるということなんですね。そのリスク負担をやはり協同組合組織で支えられないかどうか。ここはやはり農協が生産過程の中へ入っていくその具体的な内容になっていくと私は思うんですね。  そういうものが、いまの協同組合、長い産業組合以来の流れの中で起きておるものに、ずうたいもなかなか大きゅうなっておるし、しかも、生産活動というのはやはりもっと小さな範囲でないといけませんと思うのです。特に部落というか、改めて私ども農村の部落というものを見直さなければいけない時期になっておるんじゃないか、こういうように考えます。しかもそこは、いま大臣も言われたが、混合社会であって、農民だけではない。生産者、消費者がおる。しかも、農家という家の中、農家であって、農家の中にサラリーマンもおるし、大工さんがおるし、中には商売をやっておる人もおる、こういう形になっておるんですね。しかし、土地は、日本の農村の場合は部落を中心にしてやはり一つの集団のようなものを、一定のたとえば、二十ヘクタールなら二十ヘクタールぐらいの単位のものが形成されておる。こういうところに目を向けて農事組合法人といったようなものをもう少し一遍検討してみて、せっかく協同組合法の中にあるわけですが、こういうものにひとつ焦点を合わして、日本の営農生産活動というものをそういう形の中から盛り上げていくというか、活力を与えていく、こういう方向に向かって一遍検討していただきたいというような気が私個人としてはあるわけであります。  何かやはり連帯の中で、農業の生産のこれは共同化だ——共同化だというといろいろ問題ありますけれども、何か持つべき、支えるべきものを連帯の中で危険負担を分散をさしていくとか、受け持つ分野は何かとか、こういったようなものをその辺に焦点を置いて考えていく必要があるんじゃなかろうか。いまの農事組合法人の形は必ずしもそういうものではないと思います。国が相当補助金など出して施設をつくってやるから、農事法人ならば対象になるといったような形でつくられたものが相当あると思いますけれども、しかし、そうじゃなくて、本格的に、わが国の生産構造の中にそういうものは位置づけられないかどうか、こういう点を私は本気になって一遍検討してみる価値があるんじゃないかと思っているのですが、大臣これはどうでしょうかね。
  110. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 御承知のように、戦前は、いま御指摘のように産業組合と農会というものがあったわけなんですね。それが、戦争中から、戦争の末期から農業会に変わったわけなんですよ。それで、産業組合と農会が一緒になって信用利用販売購買と、さらに指導というものを合わせて、それで一つの農会、農業会というものになりまして、それが戦後、いわゆる農業協同組合に姿を変えたわけでございまして、それから以後、一つの三十年間の歩みを農業協同組合は続けてきているわけでございますが、最近は御承知のように兼業化あるいは混住化、老齢化という大きな一つの問題が農村社会に出てきておりまして、しかし、部落あるいは農村社会を、混住化あるいは兼業化の年ですばらしい農村社会をつくるにはどうしたらよろしいかということでございますが、いま個々にはいわゆる農村のコミュニケーションの場というので、そのモデルの地域を設けてそれなりに成果を上げておりますけれども農村全体が渾然と一体になって、自然のままにそれが動いているかどうかということになると、なかなかいま素直な姿になっていないわけでございますから、私はそれは市町村の総合開発計画農協役割りを結びつけなければいかぬと思うのですね。ですから、私は、できたら農協の規模というものは市町村地域の規模を下らないというあの標準が理想じゃないだろうかと思うのでございまして、市町村が総合開発計画を立て、その中で農協の果たす役割りは何か。しかも、混住化した部落あるいは社会の中で生産する者としない者とが一つの社会をつくっているわけでございますが、農業社会ですから農業を理解してもらう、農業に余剰労働力を提供するというような形でその地域社会あり方をつくり上げていくということが一番必要だ。そのためには市町村の総合開発計画、その中に労働政策もあるいは中小企業対策も社会政策も教育政策もいろいろある中で、農協役割りとその地域社会住民との結びつきをつくり上げていくということがこれからの課題じゃないだろうかと思うので、そういう方向がよろしいのじゃないだろうかと私はいま考えているのでございます。
  111. 田中恒利

    田中(恒)委員 余り時間がなくなりましたが、法律改正の点について一、二お尋ねをしておきます。  一つは、特定信連の員外制限を緩和していくということでありまして、先ほど来その基準になるべき事項は局長の方から御答弁がありましたが、局長が御答弁になったような地域、これは大都市周辺の都市化が非常に進んだところの信連になると思いますが、そういうものはこれからもっとたくさん出てくるんじゃないでしょうか。少なくなるというよりも、わが国の工業化というか経済発展の中で、だんだんそういう信連が大きくなっていくんじゃなかろうかという心配があるわけです。本来五分の一の員外制限というものは一体何を基準にできたのか、あるいは今回総資金量の一五%を一つの上枠にしておりますが、そういうものの基準は一体あるのかどうか。私も実は承知しておりませんが、そういう適正な員外利用制限というのは一体何だという問題も本質的にはあると思うのですよ。農業情勢がぐるりと変わってきているわけです。昔は農業収入、農業所得は七割も八割もあって、兼業が二割、三割。これがいまは逆になってしまっておるわけですから、そういうことになりますと、やはり少なくなるんじゃなくて、そういう信連がだんだん大きくなって、制限が外れていって、先ほど来どなたか指摘されたように、農業協同組合じゃなくて信用組合のようなものに都市近郊の農協はなっていくんじゃないか、こういう不安を持つわけですが、その辺の問題については、わが国農業協同組合の一つの基礎的な原則になっているいわゆる職能というか農業者の協同組織である農業協同組合、こういう原則は貫いて処理をしていくという立場をとられておるのかどうか、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  112. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず私どもとしては、農業協同組合というものの職能と申しますか職域と申しますか、職能別の組織であるという原理、これは放棄すべきものではないというふうに思っております。そういう意味では、農業協同組合というものの根幹にかかわります問題でございますので、今後とも私どもはその原理は維持してまいるつもりでございます。  それで、現在の員外利用制限二割というのは一体どこに由来するかということでございますが、これは長年員外利用制度二割ということにつきまして特段の御批判もなく事態は推移してきたものでございますので、いまになってみますとなぜ二割であったのかということはなかなかむずかしいのでございますが、いろいろ記録を調べてみますと、この農協法の制定に携わられました小倉武一さんの法廷での証言がございまして、それによると、ともかく一応二割にしておこうじゃないかということで二割になったという話でございまして、それをさらにさかのぼりますと、二十二年の農協法制定当時、GHQからそういう示唆があったのであるというふうな関係者の話もございます。それ以上のことはしかとわかりかねるわけでございますが、しかし振り返ってみますと、農業協同組合農業という職域、職能にかかわる組合であるという根本に立ち返って考えてみますと、当然員外者の利用というのは一定の制限のもとに置かれるべきものでございますので、二割ということについて特段都合が悪いことがなければ維持していかれるべきものであるというふうに思っております。御高承のとおり、現在の農協法におきましても、政令で割合自体は特例的な定めとすることができることになっております。  それで、今般御審議を煩わしております特定の信連についての員外利用制限の緩和の問題でございますが、先生御指摘のとおり、確かに、従来の員外利用制限をそのまま維持したのでは不都合が生じそうな信連というのは、今後とも数が増加していくという可能性を私どもも否定しているわけではございません。確かに、そういう可能性はないことはあるまいというふうに思っておりますが、しかし私どもがいま考えておりますのは、さらばと言いまして、一般論といたしまして今回御審議を煩わしておりますような特例的な取り扱いを通則にしてしまうということになるのでは、農業協同組合あり方として根幹にかかわる問題でございますので、さらに慎重な検討を要すると思いますので、現実にそういうことでは不都合が生じている信連があるという事実に着目いたしまして、とりあえず必要な措置について立法上の手当てをお願いしたいという趣旨で御審議を煩わしているものでございます。  しかしながら、この信連資金運用の問題は、員外利用制限というのは実は信連資金運用のある部分についてしか働いておらないわけでございまして、先ほどもちょっと申し上げましたようにあるいは有価証券運用でございますとか、金融機関貸し付けにつきましては現在でも特段の制限なしに系統外部に資金が流出するような制度に現になっておるわけでございますので、特例的な信連に限って今回お願いしているような緩和措置をお願いするということをもって、直ちに農業協同組合の根幹にかかわる改正であるというふうにまでは思うことはないのではないかと思っております。
  113. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が参りましたので、一、二質問をさせてもらいますが、これは御回答は要りませんが、いまお話のありました農協資金運用の中で有価証券の比率が非常に高くなっておる。特に、信連、中金、単協はそれほどでないのですが、非常に高くなっております。これはやはり一定の指導というか、一つ何かないと、このままいくと今度員外貸し付けが出てくるから、そうすると高くなったところはこの関係は多少へっこむかもしれませんが、しかし、ここのところは農協の健全な経営という立場からは考えておかなければいけないのじゃないかと思います。御返事は要りませんが、気をつけておってもらわなければいけないような気がします。  それから、先ほど来参考人にも意見がありましたが、金融機関がいま考えております週休二日制の問題は、一つの流れとしてはそういう方向だと思うのですが、全国農協中央会の方もそういう方向で処理をしていくということのようですが、農林省としてはどういうふうにお考えになっているか、御答弁いただきたい。  それから、これは最後に大臣に私、御要望しておきたいと思うのです。  きょうはいろいろ時間の関係もあって、根本的な議論まではいきませんでしたが、しかし、農業協同組合、この法律の改正も戦後十四回やってきておりますが、特に、昭和三十年代に入ってからの急激な農村変化対応する農協あり方については、私は、一番の根っこがまだ掘り下げられていないと思うのです。やはり産業組合以来、ロッチデール以来の協同組合原則というものがこれは根本ではあると思いますけれども、たとえば、地域といっても、大臣は一町村一農協が最も好ましいと言われるけれども、現実には一郡一農協もたくさん出てきておるし、町村を超えたものも出てきておるわけであります。経済的に見れば、農業協同組合などは団地構造というものを出して、行政を超えて一つの団地として成り立つ、営農圏で農協の単位をという考えもあるわけであります。あるいは一人一票だって、これほど組合員経営基盤の格差が出てまいると、これは合併農協ですら、飼料や肥料を一つの大型の養豚農家なり、養鶏農家なりが三割も四割も一手に握るというような農家も現実出てきておることは事実ですね。そういうものの中で微妙な問題を出してきておると思います。  特に員外利用の制限で問題になってきております職能の問題、農業とは一体何だ、農業者とは一体何だ、農協の定款では三反とか五反とか書いておるけれども、現実には、所得的に見ればわずかなものということになっておる。そういう条件の変化対応する農業協同組合というものについての、各界各層の意見を一遍まとめてみなければいけない時期に来ておるのじゃないかと思うのです。農林省も何度か農協問題に対してのそういう研究会か検討会を持たれたときがあったと思いますが、私は、この段階で本格的にこれらの新しい情勢に対応する協同組合あり方について、行政庁としての明確な考えをまとめることは必要じゃないかという気がしますので、それらの問題を含めて大臣から最後に御答弁をいただいて、終わりたいと思うのです。
  114. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 これまでの農協発展過程等を通じていろいろな問題を御指摘いただきまして、本当にありがとうございます。  御指摘のように、農協は自主的ないわゆる協同組織体でございますので、指導といいましてもあくまでも自主性を侵してはいかぬと思いますけれども、やはりあるべき農協の姿というものを農林水産省としても検討してまいらなければならない時期だと思いますので、この点は今後機会を見て私たちはそういうまとめをしてみたい、かように考えます。
  115. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 週休二日制の問題についてお答えいたします。  週休二日制の問題につきましては、四月十六日、全中の理事会におきまして、農協信用事業についても、週休二日制について民間金融機関郵便局と足並みをそろえて早急に実施することを目標にして、準備を進めるという方針を決定したというふうに承知をいたしております。  私どもといたしましても、金融機関の週休二日制というのはいまや天下の大勢でございますので、農協あり方が天下の大勢に逆らうということであってはやはり都合が悪いというふうに思いますので、全中の理事会の決議に沿って事態が進んでいくことを期待いたしております。
  116. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 吉浦忠治君。
  117. 吉浦忠治

    吉浦委員 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  農林年金制度は昭和三十四年の一月に発足をしておりますが、他の公的年金と違いましてその歴史がまだ浅いし、また成熟度も低いという特殊事情を持っているわけでありますけれども、農林漁業団体という職域年金からいたしまして、被用者集団が小さくて、団体の財政基盤等も弱いわけであります。また、組合員給与が低いというふうな種々の問題を抱えておりますが、年金制度上必ずしも十分ではないという特性を持っておりますけれども、これを農政上どのような位置づけをなさろうとなさっているのか。または、今後の厳しい年金財政問題等を考慮して、どのように対処するおつもりなのか。  また、今度の臨調の第二次答申では、年金制度の一本化という構想が打ち出されそうでありますけれども、この点についてどのようなお考えをお持ちなのか、まずお尋ねをいたします。
  118. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、農林年金制度の農政上の位置づけというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、まず歴史的経過を振り返ってみますと、農林漁業団体の職員がこの制度発足当時、隣近所で比較の対象になるのが市町村の職員でございまして、市町村の職員が受けております待遇に比べて、当時の厚生年金というのは見劣りがするということで、厚生年金から分離独立して、農林漁業団体だけの年金制度を発足させたという経緯がございます。  私どもといたしましては、農林漁業団体が、これは農協につきましても、森林組合につきましても、漁協につきましてもそうでございますが、農林水産業の発展と農林水産業の地位の向上のために非常に重要な役割りを担っておる組織でございまして、この組織仕事をする職員というのは、真にそういう重要な使命にふさわしい、すぐれた資質を持った職員を確保することは、農林水産行政の見地から見ても非常に重要なことであるというふうに考えております。したがいまして、そういう農林漁業団体にすぐれた資質の職員を確保するためには、どうしてもやはりその待遇が適正な水準である必要があるわけでございまして、その一環として、年金につきましても、適切な措置を講ずる必要があるわけでございまして、かような見地から、農林年金という制度は、農政上もきわめて重要な意義を持っているものであるというふうに認識をいたしております。それで、このような農林水産行政上の重要性という見地から見ても、私どもは農林年金というものの意義を高く評価いたしておりまして、そういう意味では、農林年金の職域年金としての特性というのは、なかなか軽々には判断しがたい問題であるというふうに思っております。  したがいまして、年金制度の一元化という議論がございますが、これは私どもが抱えております農林年金につきまして、いま申し上げましたような目的なり沿革なりがあるのと同様に、他の公的年金制度におきましてもそれぞれ固有の目的なり沿革なりをお持ちでございます。それぞれの年金制度ごとの財政事情というのもそれまたそれぞれ事情が異なるわけでございまして、このような事態を踏まえて考えますと、一元化というのは確かに理想論としては耳ざわりはよろしいわけでございますが、一元化を進めるということにつきましては、なお検討を要する点が多いように存じております。というような事情でございますので、当面は、それぞれの制度を所管する各省庁の責任において制度間の不均衡の是正に努めて、公的年金制度が全体として均衡のあるものとして運営されていくように努めるべきではないかと考えております。  それから、最後に、財政問題についてお尋ねがございましたが、これは確かに先生御指摘のように、農林年金の場合には相対的に見ればいまだ成熟度が低い部類になっておるのでございますが、しかしながら、いずれ成熟度も相当の速度で高まることが予想されるわけでございまして、農林年金の財政の健全性を維持するということは私どもとしても非常に困難かつ重要な問題であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、私どもとしては農林年金財政の健全性を確保するためには、給付と負担の関係のあり方を今後どのように考えていくかという問題について真剣に検討しなければならないわけでございますが、この問題は、必ずしも農林年金だけの問題というわけではございませんで、公的年金制度の言うならば共通問題でございますので、政府全体として公的年金制度の財政問題について取り組む一環として、適切に対処してまいりたいと思っております。
  119. 吉浦忠治

    吉浦委員 本年度の制度改正におきまして、例年どおり恩給に準じた改定、こういうふうになっておるわけですけれども、その特徴的なところは既裁定年金の実施時期を一カ月おくらせたことだと思うわけでございまして、退職年金等でも同じでありまして、その基礎給与が一定額以上の者についてその支給を一部停止するという措置をとったわけでありますが、まず、その理由を述べていただきたいと思います。どういう理由でこういうふうな措置をとられたのか。
  120. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先生御指摘のとおり、改定の実施時期を一カ月おくらせたわけでございます。それからまた、改定後の平均標準給与年額が四百十六万二千四百円以上となる者につきましては増加金額の三分の一を五十八年三月分まで支給停止するということにしておりますのは先生御指摘のとおりでございます。これは、厚生年金におきましても、年金額改定の実施時期が従来六月に行われるのが通例でございましたのを、一カ月おくれて七月といたしておる、さらにまた、昭和五十六年度におきまして国家公務員の給与のベースアップについて一定の抑制措置が講ぜられている、こういう厳しい事情の中で、私どもとしては最大限に努力をしてようやく五月の実施を確保したということでございまして、このような措置が講ぜられておりますのは何も農林年金だけではなくて、国家公務員共済制度その他の共済制度についても同様の事情でございますので、やむを得ざることであると考えております。
  121. 吉浦忠治

    吉浦委員 そのやむを得ざることが大変なことでありまして、年金改定の実施時期を後退させたことというのはこれは社会保障制度の後退を意味するわけでありまして、また、共済年金そのものが恩給追従というふうなことも言われているわけですけれども、仮に、改定の実施の時期を一カ月おくらせたことによって給付費というのはどの程度節減されるというふうにお考えでございますか。
  122. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 一カ月おくらせることによる節減額は、給付費としては一億五千四百万円、これで国庫補助金にはね返りますと二千百万円でございます。
  123. 吉浦忠治

    吉浦委員 これだけのことで一カ月おくらせて、そして年金そのものの性格を失うようなことになっては大問題だというふうに私は考えます。ほかのものへ右へならえしているということでありますけれども、来年もまたこういうことになる可能性があると思うのです。いかがですか。
  124. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 来年のことにつきましては、いまの段階で予断にわたることを申し上げる能力は私にはございませんので……。
  125. 吉浦忠治

    吉浦委員 農林年金の財政収支は、昭和四十八年までは収入総額に対する支出総額の割合が三〇%以下の数値で安定的に推移してきたわけでありますけれども、四十九年度以降は、年金者の急増、大幅な給付改善、さらには掛金率等の抑制措置をとったこと等の要因が重なりまして、支出割合が年々高まりまして、その割合は四八・五%の高きに達しているわけであります。以上のことから見てもわかりますように、財政収支と将来の見通しをどのように持っておられるのか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  126. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず、現状を申し上げますと、五十五年度におきまして、年間の掛金収入が九百十億円、それから給付額が七百二十一億円、積立金が六千四百九十九億円というのが現状でございます。  それで今後の年金収支の見通しでございますが、さきに五十四年度末に財政再計算を行ったわけでございますが、その時点での年金財政の将来見通しを申し上げますと、現行の千分の百九という五十六年四月以降実施されております掛金率を据え置きました場合には、昭和六十年度におきまして年間の給付が掛金収入を上回るようになります。それから昭和七十一年度には年間の総支出が総収入を上回るようになりまして、昭和八十一年度には保有資産がゼロになるというそういう見通しでございます。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 吉浦忠治

    吉浦委員 来年のことは答えられないということでしたけれども昭和五十八年度の予算要求として、関係者から本制度の健全運営を図るために十分な国庫補助の確保が要請されておるわけですけれども、政府はこれに対してどのように処していかれようというふうにお考えなのかどうか。
  128. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 農林年金予算の確保につきましては、給付の改善を含め年金制度の円滑な運営を期するため毎年できる限りの努力をしているところでございます。五十八年度予算につきましても、財政事情が一段と厳しさを増すと見込まれますが、所要の予算の確保には努力してまいりたいと思っております。
  129. 吉浦忠治

    吉浦委員 農林年金の標準給与の平均額が昭和五十五年度末で十六万五千二百一円、前年度十五万五千七百二十円でありますが、この対前年度比アップ率が六・一%というふうになっているわけであります。農林年金組合員給与は、従来から国家公務員あるいは他の制度のそれに比べて低いことがしばしば指摘されてきたところでありますけれども、最近における農林年金の標準給与の上昇率は、国家公務員あるいは地方公務員等の上昇率を上回る趨勢にはありますけれども、しかしながら、他の制度のそれと比較してみると、絶対額は依然として低いわけであります。制度的には他の制度の給付水準と比べても遜色のないものの、いわゆる年金の実支給額では他の制度のそれよりも低い、こういうふうになっておりますけれども、この原因はどこにあるというふうにお考えなのか。
  130. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 農林年金年金額を見ますと、他の制度に比較いたしまして低い水準にあるということは事実でございます。  私どもの見るところによりますと、原因としてまず第一に挙げられますのは、退職年金受給者の平均組合員期間が国家公務員や地方公務員に比べて短いという事情がございます。国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合の場合には平均して三十年ございますが、農林年金の場合には二十三年という数字になっております。それからさらに、給与水準については、たとえば私学共済と比べますと、農林年金の対象になります農林漁業団体の職員の勤務地というのは一般に農山漁村部でございまして、私立学校共済組合の対象になっております私立学校というのは大体都市部に位置しておる、そういう立地条件の違いからくる給与の格差ということがもう一つ挙げられると思います。  しかしながら、最近においては農林漁業団体職員の給与水準も逐年改善されてきておりまして、これは先生いま御指摘のとおりでございます。退職者の組合員期間も漸次伸びてきておりますので、これに伴いまして年金額の算定の基礎になる標準給与の水準も高まってきておりまして、最近時点における退職者について比べてみますと、年金額の格差は相当改善されてきておるという実情にございます。
  131. 吉浦忠治

    吉浦委員 次に、行革関連特例法の施行によりまして、昭和五十七年度から昭和五十九年度までの財政再建期間中は一八%の定率補助が四分の一減額されましたけれども、この趣旨と、財政上の問題はないのかどうかということが第一点。  また、財政再建期間終了後においては減額分に適正な利子を付して直ちに返還するよう要請されてきておりますけれども、この点については、すでにかなり論議も交わされており、政府もその方向を明らかにはされておりますが、この返済方法等についてどのようにお考えなのか。この二点をお尋ねをいたします。
  132. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず、先般の臨時国会において御審議を煩わし、成立いたしました行革関連特例法におきましては、五十七年度から五十九年度、いわゆる特例適用期間に限って財政負担の軽減を図る観点から厚生年金、国家公務員共済組合と同様、農林年金に対する国の補助額についても四分の一を減額するということにいたしました。これは、その間しばらく借りておくという趣旨のものでございます。この削減措置によりまして、三年間にわたって減額される国庫補助金額は百五十五億円ということになりますが、農林年金といたしましては五十五年度末で約六千五百億の積立金を保有しておりますので、特例期間経過後の補てんさえよろしきを得れば給付に支障を生ずるということはありません。  減額分の後での繰り入れの問題につきましては、さきの国会において種々御議論のあったところでございますが、大蔵大臣から御答弁がございましたように、適用期間後の繰入措置についてはできる限り速やかに着手する。それから、その際は積立金の運用収入の減額分についても適切な措置を講ずるということは、大蔵大臣からすでに御答弁があったところでございまして、これは私どもとしては政府の統一的見解というふうに理解をしておりますので、この枠組みの中で処理をされる限り農林年金の財政にとっては支障はないものと考えております。
  133. 吉浦忠治

    吉浦委員 厚生年金ではすでに物価自動スライド方式が導入されております。共済年金では、年金額算定方式のうち、通算退職年金方式の定額部分等については物価スライド方式が導入されているわけでありますが、給与比例部分については国家公務員給与の上昇率を年金額の改定指標とすることとしているわけですが、これが毎年の法改正を通じてすでに事実上慣習化して、定着したものとなっているわけであります。したがって、これを前提に法の整備を行って、給与比例部分についても政令によって自動スライドの改定措置がとれるようにすべきではないかというふうに、いつも私申し上げているわけですけれども、この点についてどういうふうにお考えなのか。
  134. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず、厚生年金の場合につきましては、法律改正によりまして勤労者の給与を基準として年金の給付水準を決める。そして決めた後五年間につきまして、年金額の実質価値の目減りを防止するために年金額を機動的に改定する措置として、政令によって消費者物価上昇率にスライドして改定をする、いわゆる自動スライド制がとられておるわけであります。  ところが、農林年金の場合について見ますと、これは共済年金共通の問題でございますが、毎年、人事院勧告に準拠をいたしました国家公務員給与の改定率を指標として年金額を改定してきておるわけでございます。この場合には、国家公務員給与の改定というのは必ずしも物価変動に伴う年金額の目減りを防止するという範囲にとどまるものではないわけでございまして、実質的な改善分を含めて引き上げるということを含み得るものでございます。したがいまして、実質的改善分を含めて引き上げるということを制度的に自動的に保証するルールというのは、いまのところまだ確立をしていないわけであります。それで、こういう年金額の算定方式なり年金額改定の際の指標のとり方の仕組みに、やはり厚生年金の場合と基本的な差異があるというふうに思っております。こういう現状におきましては、やはり年金額の改定措置について国会の御審議をその都度煩わすということも、あながち理由がないわけではないわけでございます。  一方、給付を受ける側から見ますと、国家公務員準拠ということで毎年、法律改正をしていただくということは、しきたりとしては定着をしてきておるわけでございまして、給付を受ける側の立場から見ますと、現在のシステムでも特段の不都合はないということであろうかと存じます。  しかしながら、共済年金制度の年金額の改定につきましても、毎年、法律の審議をいただくということではなくて政令によって措置するということも確かに考え得る方途ではあるわけでございまして、その点は、年金額の算定方式あるいは改定の指標をどうするか等、幅広く検討すべき問題があるように存じますので、共済年金制度共通の問題として検討さしていただくべき問題ではないかと思っております。
  135. 吉浦忠治

    吉浦委員 次は、旧法年金者が主として受けている絶対保障額でございますが、厚生年金に準じて定められる新法年金の最低保障額とも異なっております。そこには恩給準拠の考えから、全体的には低額となっており、さらには年齢区分あるいは組合員期間区分があり、新法年金者とは異なった体系を残しているわけであります。この絶対最低保障額については、事が最低保障額でありますので、せめて新旧区分のない厚生年金並みの最低保障額を適用すべきではないかとの指摘があるわけであります。この改善については政府はどのようにお考えなのか。
  136. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず、絶対最低保障額の引き上げにつきましては、政府といたしましても従来からその改善については努力をしてきたところでございます。この結果、本年度の改正後の新旧の最低保障額を比較してみますと、六十五歳以上の者につきましては旧法の最低保障額、五月の改定の時点での旧法の絶対保障額は、新法の最低保障額は七月に改定されますが、その改定後の新法の最低保障額を四万三千七百円程度上回る、むしろ旧法の絶対最低保障額の方が高くなっております。それから六十五歳末満について見ましても、旧法の絶対最低保障額の新法の最低保障額に対する割合は逐年向上してまいっておりまして、格差は縮小をしておるわけでございます。  こういうふうに最低保障額の新旧格差という問題につきましては、私どもも毎年鋭意改善に努めてきたところでございますが、さらに進めて、もういっそのこと一本化してしまったらどうかということになりますと、これは実は、共済年金制度共通の原則といたしまして、年金額の算定はその給付事由が発生した時点における制度によるということが一つの原則になっております。その意味で、恩給制度に準じて給付が定められております旧法年金に対して制度的に新法年金の最低保障額に一本化するということは、この原則に照らして大変むずかしいということがございます。農林年金につきましては、共済年金グループの一員でございまして、農林年金に限って特に有利な取り扱いをするというわけにはいかないわけでございまして、仮に、旧法年金者に対して新法の最低保障額を適用するということにするとすれば、共済グループに属する各種年金について、恩給も含めて一斉に同様の措置を講じなければいけないということになるわけでございまして、私どもの方につきましてはそれほど該当者が多いわけではございませんが、実は連鎖反応の起こる恩給制度の方につきましては二百四十一万人というような数でございまして、仮に、こういうことをやるということになれば、恩給制度の方ではとてつもない財政問題が生ずるわけでございまして、恩給制度を抱えておられる側のお立場に立って考えてみますと、軽々にこの構想には乗れないというふうにお感じになるのも無理からぬことではないかというふうに思っておるわけでございます。そういう中で農林年金だけ独走するというわけにもいきかねるというのが実情でございますので、御理解賜りたいと思います。
  137. 吉浦忠治

    吉浦委員 最後に大臣にお尋ねをして終わりたいと思います。  農協等のいわゆる農林漁業団体の経営というものが、農林水産業を取り巻く情勢が大変厳しい情勢でございますので、事業の成績等にもかげりが見えているというふうなことで恐らく農協法等の改正が云々されているわけだろうと思いますけれども年金の支給開始年齢の引き上げが行われたことの関連で、加入団体の定年制の延長にも取り組まなければならないという大きな課題があるわけでありますが、この定年制の延長についてどういうふうなお考えを持っていらっしゃるのかお尋ねして終わりたいと思っております。
  138. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 ともかく日本も現在高齢化社会への移行ということが急速に進んでおるわけでございまして、その中で昭和五十四年度には農林年金を含む共済制度共通の問題といたしまして、年金の支給開始年齢を経過期間を設けつつ段階的に引き上げるということになったわけでございます。農林漁業団体といたしましても定年延長についての要請が強まってきておることは紛れもない事実でございます。  農林漁業団体にとりましては、定年の延長を図るということは退職給与引当金の増加等経営負担の増大を伴うわけでございまして、また定年延長に伴います給与体系の見直しが必要になるということもございます。特に、厳しさを増しております経営環境の中で短期間に顕著に実現をしていくということはなかなかむずかしい面がございますが、農林水産省としては、農林漁業団体としても基本的には雇用関係の見直し、改善の一環として適切に対応していくべきものと考えまして、すでに関係局長の通達を発出して定年の延長についての指導をしてきております。農協系統組織におきましても、全国中央会指導もとに県段階で県の中央会が中心になりまして研究会や委員会を設置して、農協における定年延長の問題に取り組んでいるところでございます。私どもとしては早くその成果が出ることを期待して見守っておるということでございます。
  139. 吉浦忠治

    吉浦委員 終わります。
  140. 羽田孜

    羽田委員長 これで吉浦君の質疑は終わります。  次回は、来る五月十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十五分散会