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1982-04-15 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月十五日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 戸井田三郎君    理事 新盛 辰雄君 理事 稲富 稜人君       太田 誠一君    川田 正則君       木村 守男君    岸田 文武君       北口  博君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    丹羽 兵助君       保利 耕輔君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    山崎平八郎君       小川 国彦君    串原 義直君       島田 琢郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    永井 孝信君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    石原健太郎君  出席政府委員         農林水産政務次         官       玉沢徳一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君  委員外出席者         農林水産省経済         局国際部長   塚田  実君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   森  整治君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     永井 孝信君   阿部 昭吾君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     日野 市朗君   石原健太郎君     阿部 昭吾君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田委員 ことしもまたわれわれの期待に反するような乳価畜産物の据え置きという事態になりまして、きわめて遺憾だ、私はこう思っているわけであります。諸般情勢はもういまさら言うまでもありません。さらに、経営再建農家がふえていくであろう、こういう予測がされている現地事情は、まあ、きょう足りない時間の中でるる言うわけにもいきませんが、しかし、そういう状況が打開できない中で酪農乳業をめぐります情勢というのが大変気になるところであります。私どもは、昨年と違ってことしは非常に乳製品をめぐる市況というのは好調に推移しているのではないかと思う。そういう意味では、酪農家の減益、減収に対して乳業は増益、増収だ、こういう状況のもとにあり、今後の見通しの中でもそういう状況でいけるのではないかという私の指摘に対しまして、やや肯定しながらも、今後の天候とか諸般経済上の動きとか、外国乳製品の問題などもいろいろこれあり、必ずしも楽観できる状況にはないけれども、昨年よりはいいだろうということを局長も肯定をされたわけであります。  そういう中にあって、私ども非常に心配していましたのは、事業団在庫という問題が新たな提議のもとにことしの需給表の中に持ち込まれてまいりました。これの動きがどういうふうになっていくのだろうかという点は、十分に議論をしないままに今日推移しておりましたから私は大変気にしておりました。そういう中で、今回一定量の公売を行うことになったようでありまして、一昨日、この公売が行われたということでございます。  きょうはお忙しい中、森事業団理事長にもおいでいただきまして、大変ありがとうございました。現地は、いろいろな意味で大変これを注目しております。というのは、前段で申し上げましたように大変経営が苦しくなっておりますから、ちょっとしたことにもきわめて敏感になっております。これが乳製品相場に対してどういう影響をもたらしていくのか、それが悪い影響になってまいりますと、それはまた生産地のところにも響いてくる、こういう相関関係にあることは言うまでもないことでありますから、神経質になるのはしごく当然、こういうふうに思いますが、私も先般選挙区に帰りますと、自由化の問題とこの行われました乳製品公売の問題に大変意見が集中しておりました。時あたかも外圧もこれあり、日本の乳製品一つのターゲットになっていることは間違いない。そういたしますと、国内における荷動きというのが国外にも影響をもたらしていく、こういうことになりかねませんから、きょうはそういう点を中心にして、生産者もあるいは乳業者も、そしてまた国民の皆さん方もこうした大事な食糧の一つであります牛乳、乳製品が今後どうなっていくのかという点について一定方向性が見つけられれば大変幸いである、私はこういう立場で、わずかな時間でありますけれども質問をいたしたい、こう思っておるところです。  前段少し長くなりましたけれども……。したがって、今回の公売を行いました目的についてこの際伺っておきたい、こう思います。
  4. 石川弘

    石川(弘)政府委員 前回御審議の際にも申し上げたわけでございますが、全体の事情としましては、昨年大変問題にいたしておりました市中在庫というものが減少してまいりまして、私ども考えております市中通常在庫水準を下回るようなところまで来た。ただ、残念ながら御承知のように事業団在庫がかなり膨大なものが引き続き存在しますために、せっかく価格が回復してまいりましたけれども、御承知のように脱粉につきましてせいぜい一〇二とか一〇三の線、バターにつきましては一〇〇の線で動かないという状況にございました。したがいまして、この制度を健全に運用いたしますためにはやはり事業団在庫というもの、これは市中在庫のような通常何が正常在庫だというような水準が具体的にあるわけではございませんけれども、やはり現在の在庫状態は端的に言いまして過剰な状態、それが圧迫要因になるということではいけないわけでありまして、そういう意味では事業団在庫というものはある程度もう少し身軽にしたいというのが一方にございます。しかし、先生もいま御指摘のように、事業団在庫を身軽にするということだけで事柄をやりますと、たとえばせっかく回復してきた市況悪影響を与えるのじゃないか。その辺を双方勘案しながら事情を見ていたわけでございますが、御承知のように昨年の生産、特に、北海道におきます災害等影響しまして生産がそれほど大きく積み上がってこなかった。結果的には、いまから始まります需要期、普通この需要期につきましては、ここ数年の動きを見ましても、生産されるものと需要との間では、若干需要の方が大きいという事態が現にございますので、こういう時期に適当な分量について放出をしていきましても値を崩さない可能性もあるのではないか、たまたまそういうことでバランスを見ておりましたところ、市中について若干の数量が、端的に申しますと、通常在庫を下回っているような分量については受け入れられる可能性があるのではないか、そういうことを見計らいまして、ただ、何せ五年間放出をいたしておりませんでしたので、一種の試みとしまして非常に少量のものを放出をして、それで値を落とすことなく市中に吸収されれば、若干そういう考え方でもう少し荷を減らしていけるのではないか、そういう考え方のもとに立ちまして十三日に公売をいたしたわけでございます。
  5. 島田琢郎

    島田委員 今回の競売に付された量はどれぐらいですか。
  6. 石川弘

    石川(弘)政府委員 バター七百五十トン、脱粉一千トンでございます。
  7. 島田琢郎

    島田委員 この数量の判定といいますか、その数量を出そうとした根拠は何ですか。
  8. 石川弘

    石川(弘)政府委員 バター、脱粉につきまして、市中通常在庫というものはおおむね二カ月分程度と私ども考えておりましたが、現在それを下回っております。その下回っております数量のまず半分ぐらいをめどにと思って数量を設定したわけでございますが、ただ、先ほど申しましたように、何せ五年間公売をとめておりましたものをやるものでございますから、たとえその半分といえども影響が少し強過ぎてはいけないと考えまして、その半分と想定しました数量のなお二分の一という考え方で、市中在庫と、私ども通常在庫と想定しておりますものとの差額の四分の一を今回放出したわけでございます。
  9. 島田琢郎

    島田委員 数量的に判断をする段階ではかなり市況観測という意味合いを持っていたのではないかと考えられるのですが、その点はいかがですか。
  10. 石川弘

    石川(弘)政府委員 市況も見たいわけでございますし、もう一つは、そうかといいまして数量を多くしますと、ある意味では初めての試みでございますので、冷やしてはいかぬと思いましたし、それから、逆に余り少な過ぎてもこれまた競争が殺到するのではないかと、両方判断に迷うところがございまして、したがいまして、私が申しました量の市中通常在庫と思われるものの差額の二分の一について一回目の放出で無理なく吸収されれば、さらにほぼ同量のものを二回目に放出するということを腹に置きました上で、先生も御指摘のような、市況動きを若干見たいということで放出したわけでございます。
  11. 島田琢郎

    島田委員 かなり観測気球的な公売という色彩も持っていた、こういうことでございますが、事業団理事長においでいただいておりますから、この際改めて、適正在庫というのは一体どれぐらいを適正と考えているのか、この辺のところをひとつ伺っておきたいと思います。
  12. 森整治

    森参考人 端的に申しまして適正在庫というのは、そういう言葉がいいかどうか、私はまず用語にちょっと戸迷うのですが、いずれにせよ事業団として持っていた方がいい在庫量というふうに考えますと、過去の放出事例等から見まして、約一月分ぐらいが適当ではなかろうかというふうに考えておるわけでありまして、たとえば、バターで申しますと五千トン、脱脂粉乳で申しますと一万トン程度、これを一応のめどとして考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  13. 島田琢郎

    島田委員 適正在庫というか通常在庫というか、この定義は、いまのお話によると定義として位置づけるということは問題がありそうだ、しかし、常識的に考えますと一カ月分ぐらいということなんですか、私は昨年、あなたとこの問題について議論をしたことがございます。  私はこういう提案をしたのです。民間在庫は大変問題で、それが正常に回っていかない、つまり、売りさばかれていかないという現況を考えると、事業団にある在庫もやがては問題になる、これは法に基づいていろいろな回転をやったり売り渡しをしたりするわけですけれども、しかしいずれにしても、数年にまたがる大変な在庫量を抱えてきたということは大変なことだから、時ちょうどニュージーランドから、輸入について調製食用脂が大変問題になっていたときだった。したがって、特別販売のようなかっこうで事業団からバター放出してはどうか、あるいは脱脂粉乳も含めてやってはどうかということを提起したことがございます。しかし、そのとき理事長は、いまのお話とは違って、現在抱えているものは、あなたが言うほど事業団在庫は過剰だという認識に私は立っておりません、このくらいのものを持っているのはそう不正常だという感じではないということを明確におっしゃった。私ども提案というのはバターの安売りということを言ったから、それにお答えになる形で、それはどうもうまくないということの反論であったかとも思いますけれども、それは事業団在庫というものについての適正な量とは幾らぐらいを考えればいいのかという点に視点を置いた私の問題提起であったわけであります。しかし、特売をやるということになれば、いまの法律ではできないわけでありますから、法律をつくってやらなければならぬという煩わしさもありまして、恐らくそういう考えのもとに否定をされたのだ、こう思うのですが、当時、昨年のことですけれども、私は認識としては、そうした事業団在庫というのはそれほど重いものではないというふうに考えていいんだな、実はこう思っておったのであります。  ところが、ことしになりますと、民間在庫がなくなったら、今度は事業団在庫の方が問題だと、こっちの方に大変大きなウエートをかけて、石川局長も盛んにこのことを前面に押し立てて、私に言わせれば、乳価抑制のための詭弁とも思えるような発言が繰り返しなされた。一年足らずにしてこういうふうに大きく変わるものかなあと私は考えていたのであります。果たして一月を、事業団として持っておる適正な在庫通常数量として考えていいのかどうかという議論は、相当幾つかのファクターを入れてみて考えないと、答えとしてはまだはっきり出ない問題だろうと思うのであります。しかし、政府側としては、今回の需給計画の中に、明らかに一カ月分という数量を除く数量、これは適正を欠く在庫だとして定義づけをいたしてまいりました。そうすると、今後ともこういう考え方一定考え方として定義づけられていくというふうに考えられるのでありますけれども事業団としては、いまおっしゃった一カ月分を固定して定義考えて、運営の上に差し支えがないとお考えになっているかどうか、この際お聞きしておきたい。
  14. 森整治

    森参考人 ちょっと長くなるかもしれませんが、先生が先ほど述べられました、私が去年でございますか先生お話ししたことは、定かに覚えておりませんが、私はこういう理解をしておりました。  おととしになりますか、事業団が、これ以上買ってももう交換して品物管理していくわけにまいらないということで、買い入れを中止したわけでございます。それほど異常な過剰生産事態になりまして、恐らく法律が予定していた以上の事態になったと考えていいんではないだろうか、そこで過剰在庫民間に持ってもらって、民間に対して利子補給をするという措置をとったわけでございます。逆に申しますと、通常状況で回っている限りの事業団在庫というものは、安いときに買って高くなったらそれを放出する、こういう考え方で仕組まれておるわけでございますから、先生に申し上げるのは恐縮ですけれども、そういう立場から言いますと事業団在庫そのものはまた市況時価悪影響を及ぼさないように売らなければいかぬし、そういうふうに管理されるべきものでございますから、それはそれとして別に考えていいのではないかと私は思っておったわけでございます。それにつきましていろいろえさで使ったらとか外国に出したらとか、先生のいろいろな御提案もございました。そういう論議がございましたけれども、私は、基本的には事業団が持っているいまの在庫というのは、法律本来の姿で回していくのが一番正しいのじゃないか、またそれで結構売る時期があるいは来るのではなかろうかということまで実は私、申し上げたこともあるかと思います。そういうような考え方で申し上げましたので、いまの、事業団が持っていた方が一番いいという在庫というのは、一カ月程度ということにつきましては今後ともそういう考え方に変わりはないと思っておるわけでございます。
  15. 島田琢郎

    島田委員 観測販売という立場に立てば、法律上の問題としてどういう法律根拠に基づくかということが私は一つ議論になると思うのであります。いまおっしゃっているように、在庫放出をする場合には指定乳製品価格安定上位価格を超えて騰貴したりあるいは騰貴するおそれがあるという場合に行われるわけでありますが、その方法としても一般競争入札随契と両方あるわけであります。さらにまた、省令等に基づきまして、一定の量を超えるに至ったときあるいは一定の期間を超えるに至ったときこれを販売をするのだ、こういうふうに法律上は規定づけられているわけであります。そのほかに、特別売り渡しという方法が法四十二条によって行われる場合があるわけでございますが、今回は、どの法律根拠に基づいて七百五十トン、一千トンの販売が行われたということになるのですか。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 事業団が持っておりますボリュームが一カ月を超える分量を持っておるわけでございまして、それを超えるということの条件に当てはまっておりますので販売をしたわけでございます。
  17. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、四十二条に基づきます省令第八条に基づいて今回の販売が行われた、こういう理解でいいということですか。
  18. 森整治

    森参考人 ただいまのは暫定法で処理いたしておりまして、同じ規定でございますけれども条文の方は十七条でございます。いま先生が言われました一般売り渡しというのは十六条に書いてあります。不足払い法暫定法でございまして、十七条の方はいわゆる管理上の理由で売り渡すという規定でございます。一年たって長期に保管した場合だとか、いま局長が申し上げましたように一カ月分を超えて持っている場合だとか、そういう場合には特別に売り渡せる、その場合は時価悪影響を及ぼさないような方法で売りなさい、こう書いてありまして、今回は、とりあえず管理上の理由による売り渡しというたてまえをとったわけでございます。
  19. 島田琢郎

    島田委員 そこで、今回の競売の結果はどういうふうに出たのですか。
  20. 森整治

    森参考人 七百五十トンのバターの方は三倍の申し込みがございました。それから脱脂粉乳の千トンの方については約四倍の申し込みがございました。したがいまして、私ども意外に思いましたが、落札価格は二月の時点の市況を上回る、そういう結果となったわけでございます。
  21. 島田琢郎

    島田委員 かなり市況を上回ったという御報告であります。三倍、四倍というお話でありますが、何社が入札をして落札は何社か。そのうち最も高いのは安指価格をどの程度上回っているのか、あるいは低いのはどれぐらいだったのか。
  22. 森整治

    森参考人 バターについては、申し込み社数は二十二社ですが、実際に入札に参加いたしましたのは二十一社、それから落札の社は五社でございます。それから脱脂粉乳は、実際に入札に参加したのは二十三社、それから落札したのが八社でございます。  価格については、平均で一〇二から一〇三程度と一応申し上げておきますが、上なり下なりということについては、今後、近くさらに入札を実行したいと考えておりますので、価格のずばりのお答えはこの際ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  23. 島田琢郎

    島田委員 入札価格というのは一つ市況を観測する上で大変大事な要素になります。そしてまた同時に、落札した価格あるいは行き先というのも大変関心を持たなければならないわけであります。  というのは、私は三月の質問を申し上げたときの議論の重要なポイントになっておりましたのがこういう点でありますから、この際、差し支えなければ、最高額を入れたのはどこの会社で最低と言われるのはどこなのか、安指価格以下になっているのはどういうところか、これが明らかにされれば私はしてほしいと思うのであります。いま、今後のこともあるのでそこのところは明らかにするのはまずいというお話がありました。私は必ずしもそうとも思っていないのですが、それは明らかにすることはできないのですか。
  24. 森整治

    森参考人 価格についてはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、いま先生の御質問に関連して落札状況を御参考までに申し上げたいと思います。  バターについては五社でございますが、各社いろいろ考え方があるようでございます。比較的生産量の多いメーカーは、今回は余りそう高い値段をつけて買うまでには至っていない。逆に、生産量が少ないメーカーは、事業団放出いたしました自社の、たとえば、A社バター放出いたしますと、A社の分が何トンとこうあるわけでございます。それに対して約二倍半の量を買っているということは、他社のものまで相当買い込んでいるという会社が三社あります。それから、自分のところのものは必ず自分のところで取ったという会社もございます。ですから、いろいろな出方で、いろいろ乳製品市場シェアに応じた買い入れ事業団はしていると思いますけれども、それに応じた買い方はされていないというのが今回の特徴であろう。要するに、自分のところのものをそのまま買うという会社もあるし、それ以上の分を手当てして買うというところもあるし、自分のところのものは逆に言えば人のところにどんどん渡していた、取らなかったという会社もあったということで、会社経営の姿勢なりいまの市況見方等々いろいろ複雑な要素があると思いますが、一応結果的にはそういうことになっております。
  25. 島田琢郎

    島田委員 ところで、明らかにできない点があるということでありますが、バターの最高値幾らだったですか。脱脂粉乳幾らですか。価格的に明示できないとしても、安指価格幾ら上回ったかというのは大体出るのではないですか。
  26. 森整治

    森参考人 法律上、安定指標価格一〇〇に対しまして、政令で一〇四%を超えまた超えるおそれがあるときには売らなければいけないという一般売りの原則がございますが、その一〇四%あるいはそれを若干上回る程度の応札の価格はございます。それが最高でございます。
  27. 島田琢郎

    島田委員 脱粉も同じですか。
  28. 森整治

    森参考人 同じでございます。
  29. 島田琢郎

    島田委員 入札に参加した人たちはそれなりにそろばんをはじいて入札をされますね、これは常識だと思うのです。そろばんをはじかぬでめっぽうな高値をつけたり安値をつけたりするということはあり得ないわけであります。したがって、常識的なことを言えば、お売りになった品物キャッシュですね。それを引き取った会社は今後どういうふうに販売していくかわかりませんが、恐らくこれもいまの経済状況のもとではキャッシュで取引ができるというような状況にはないだろうと私は思います。そうするとそのサイトはかなり長いものになっているなどということだってあり得る。こうなりますと、落札価格上乗せ分がその引き取ったものの販売価格、こういうことになっていくわけでありますから、いまおっしゃるように一〇四というのをかなり高いものとして考えるなら、その上にさらに諸経費上積みしてですから、これは市況に対しても大変影響をもたらす価格になるだろう。これは高く売るということが喜ばしい場合とそうでない場合と両方ありますね、それが今後、引き続き公売に付していく場合に大事な考え方の基本になるわけでありますから。  そういたしますと、今後の市況というものを考えますと、仮に、最も高い値段で引き取ったという品物中心にして考えれば、今後の市況というものはどういうふうになっていくのかの見通し政府としてはお持ちになっておられるかどうか、その辺はいかがです。
  30. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に申し上げましたとおり、今回は、若干その数量等も抑えて試して売っておるわけでございますので、今回の結果だけで先行きまで見通すのは大変むずかしいのではないかと実は思っております。先ほど理事長からのお答えにもありましたように、これがすべて市中の最末端まで流れていくというものではございませんで、実は、自社がそのまま製品用に使うというような品物もございます。そういうこともございまして、私ども今度やりましたもの、さらに追加して行われるものの値動きというようなものを慎重に判断しなければ、先行きについて余り的確なお答えがしかねる状態に実はあるわけでございます。  ただ、私どもが心配しておりましたように、たとえば、バターが一〇〇の水準から全く動かないというのがずっと続いてきたわけでございますが、それが一つ壁が外れたということについては需給の面について若干明るい方向に来ているのではないか、そういう見通しをいたしております。特に、現在出しておりますものはいわば需要期に向かっていくものでございますので、これは昨年の例を見ましても、御承知のように非常に夏の天候等に左右されまして、原料製品等も急速に出たりあるいは冷夏等の場合には急速にしぼむというような状況がございますので、これからそういう続けて行います放出等も含めまして、先行きを見きわめた上でそれ以降の行動を考えたいと思っております。
  31. 島田琢郎

    島田委員 結果はどうだったのかということの中で非常に大事なのは、市場なり市況なりの観測ということが大事な今回の目的の一つとして位置づけられているのではないか。そういたしますと、今回一回だけで一〇〇%見通すことはむずかしいというのは私は理解はできるのです。しかし、冒頭でちょっと申し上げましたように、これが今後の動きの中で、単に市況とか市場の範囲にとどまらないで、海外的にも国内的にも大変大きく影響をもたらしてきますから、今回おやりになった結果の分析が正しく行われないと市況に大変大きな悪影響を及ぼすということだってあり得る。こういうことを考えますと、その辺の結果を踏まえた分析というものがかなり精密でなくてはいけない、こういう立場でいまお聞きをしているのであります。ですから、乳製品そのものが、一つ乳業をめぐります相場づくりとして果たす役割りも十分取り入れて観測をしなければならぬ。こういうことになりますと、あなたがお考えになっている相場に対して点数をつければどれぐらいの結果だったと判断ができるのですか。
  32. 石川弘

    石川(弘)政府委員 実は、事業団放出しましたものがどのような価格で売れるかということも一つの問題でありますと同時に、現に、各メーカーがつくっております製品をどの程度の建て値で売っていけるかということが重要だと思っております。実は、こういう入札結果等を見ますと、メーカー等もずっと建て値を据え置いてきたわけでございますけれども、そういう建て値を改定できるほどの需給状況と見るかどうかということがこの次のわれわれとして判断を要するところでございます。  問題は、バター等の場合は、御承知のように最末端まで参りますと相当競争の激しい商品でございまして、たとえば、マーガリンとの競争とかいろいろなことがございまして、卸の段階でいま先生指摘のように若干安定指標価格を上回る価格で引き取った、したがって、それが市況としてずっと最後まで通ればかなりの水準まで上がるはずでございますけれども、そういう自社製品をある程度のシェアを保ちながら安定的に流していこうとするメーカーといたしまして、単に事業団入札価格がある程度高い水準に出たということだけでみずからの建て値を改定できるかどうか、このあたりが、私が先ほど申しましたようにこれからしばらく様子をみなければいけないところではないかと思うのです。  ただ、私も若干楽観的な感じで見ておりましたのは、少なくともいままでかなり需給のバランスがとれてきたと思うにもかかわらず、安定指標価格の天井と申しますか、一〇〇の水準にひっついたまま全く動かなかったということについて初めて、量も少ないというようなこともあろうとは思いますが、それを超えるという応札の動きが出たということはやはり注目すべきことでございますので、いま私が申し上げましたような諸点を精密に分析しながら、したがいまして、事業団入札価格動き一つの指標でございますし、それから先生も御指摘のように、末端でそういう価格が浸透していくのかどうか、途中で消えてしまうようなことではまだ本当にバランスがとれたとは言いづらいわけでございますが、そういう末端価格影響を及ぼすぐらいまでいけるかどうか、それから、そのことが各メーカーの建て値にどう影響してくるか、この三つを分析しながら、御指摘のようにこれは高く売れれば売れるだけいいという性質の制度ではございませんので、その辺のことを慎重に見ながら判断をしていくつもりでございます。
  33. 島田琢郎

    島田委員 その建て値とは一体どれぐらいに考えているのですか。
  34. 石川弘

    石川(弘)政府委員 一ポンド五百七十円というような建て値をとっている会社がございますが、それはいまの安定指標価格で言いますと一〇一の水準でございます。ですから、一〇一ぐらいのものの水準で何とか売っていこうとしているのがあれでございますが、これはあくまで建て値でございますから、個別の取引については、いろいろな取引の条件等によって価格設定が違っているはずでございます。
  35. 島田琢郎

    島田委員 建て値が安指対比一〇一ということになれば、今回落札した平均価格というのはかなり高い水準ですね。では、完全に建て値は実現していると見ていいわけですね。建て値と落札価格がストレートに連動するものではないということは、会社事情によって違うのですから、私はその辺の理解を持ちながらも、しかし、バターで一〇三を超え、脱脂粉乳で一〇五に近いところで平均価格が出たということは、あなたのお考えになっている目標を達成したばかりか、オーバーをしたと理解していいのではないか。そうすると、その辺の観測はかなり正確にできるのではないですか。
  36. 森整治

    森参考人 先生最高価格はどのくらいかという御質問でございましたので、先ほど一〇四またはそれを上回る価格が出ておりますということを申し上げたわけです。全体から申しますとこれはわずかでございます。もちろん、最高と最低がございまして、あたりまえの話なので恐縮でございますけれども、平均的には一〇二なり一〇三という程度のもので、上に分布しているそのわずかなものにそういうものがあったということでございます。これは、まさに競争入札でございますから、どうしても欲しいという方がいるわけでございます。ですから、ともかく相当気張って取った値段であろうというふうに思います。したがいまして、その額はそう相場に影響するようなものではないと私は思います。ですから、平均的な価格が若干一〇〇を上回って出ていることも事実でございますから、今後、議論すべき価格がその辺であろうというふうに私ども判断しているわけです。
  37. 島田琢郎

    島田委員 それでは改めて聞きますけれども、先ほどの私の受け取り方が間違っているとすれば理解が違ってまいりますから……。  先ほど私がお尋ねしたのは、今回の落札価格の平均は安定指標価格に対してどれだけだったのか、バター脱脂粉乳、それから最高落札価格バター、脱粉それぞれ幾らだったのか、こういうふうに私は聞いているのです。そうすると、いまのお話ですと、最高のところが平均だみたいなお話ですけれども、数字的にはそうなんですか。
  38. 森整治

    森参考人 落札価格にモードがございまして、一番高いのが一〇四を超えておる。それから下の方は大体一〇〇よりちょっと上で、平均的に申しますと、一〇二%ないし一〇三%の水準が一番平均的な量として多い入札価格でありますというふうにお答えをいたします。
  39. 島田琢郎

    島田委員 一〇三と一〇二の間ばかりなんというそんな平均価格があるんでしょうか。平均価格で出せばぴしゃっと出るのじゃありませんか。私が承知しておりますのは、もどかしいから申し上げますけれども、平均価格で、バターについては一〇三・二である、それから脱粉は一〇四・八であるという数字なんですよ。この数字は間違いなんですか。それから、バター最高は一〇四・八である。脱粉の最高は一〇六であるというふうに私は理解をしているのですが、この数字は間違いだということですか。
  40. 森整治

    森参考人 私の手元にございます数字では、先生が御指摘のようになっております。
  41. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、いま理事長のおっしゃったのはおかしいじゃないですか。お話の中にありましたように、平均価格に近いところに買ったところが大半で、高いところで買ったのは量的には少なかったから、全体の市況に及ぼす影響ということになれば、そんなに大きく影響はしないと思うという御説明はわかるんですよ。わかりますけれども、私は基本の数字が違っているから、大体建て値というのはどれぐらいを考えているのかという私の質問に対して、一〇一ぐらいを理想としているお話だから、それから言えば、それは量の問題はあるにせよ、最高のところは一〇四・八がバターだし、脱粉なら一〇六ということになれば、えらい高いものじゃないですか。ですから、それは即市場観測の場合に、かなり品物が品薄になっているということが反映されている、常識的にはそう考えますね。恣意的に思惑でばっと買って、これから何とかしてやろうという人も中にはいるかもしれないけれども、みんなそろばんをはじきますから、この上にさらに経費が二、三%かかるのではないですかと、事業団から買っていって、自分のところに置いておいて、売り込んで、最終的にお金が回収されるところまでのサイトを考えますと、そういうことをきちっとそろばんにおいて入札されるはずなんですね。そうすると、非常識的な価格入札されるということは普通では考えられぬことだから、それだけ市況を反映していると観測できるのではないか、観測材料として十分それが成り立つのではないですか。こういうことを前段でずっと論理的に並べてきたのでありますけれども、どうも皆さんの御説明は、私のこうした論理立った質問に対して、論理立ったお答えにはなっていないと私は思うので、重ねてここのところを筋立てて御説明願わないと、私はわからなくなってしまったということであります。
  42. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私、先ほど建て値の一〇一と申しましたのは、それが理想形で一〇一の一%ぐらい建て値を上げたいというつもりで申し上げたのではございませんで、実は、昨年の十月ごろから、大手のメーカー安定指標価格一〇一ぐらいを建て値と称していろいろと販売をやっておりますけれども、現実に形成されております価格は、先生承知のように、ちょうど一〇〇のところでとどまって動いていなかった、そういう意味の建て値を申し上げたわけでございます。  それから、いま先生指摘の、入札したものはそれを上回る水準のものが相当出たではないか、だから、そういう人たちは多分もっと高く売れるだろうという前提で買い取っているはずだから、市況は相当タイトになって物が高く、最末端まで値が通るような条件になっているのではないかという御指摘だと思いますが、私、先ほど申しましたように、事業団公売に付しました量が比較的少量でございまして、しかも、それが先生おっしゃいますように全部が最末端まで流れる品物では実はございませんで、自社が買い取りまして自社の加工原料にするというものが実は相当あるわけでございます。ですから、そういう自社の製品製造のための原料と考えました場合に、最末端におっしゃるような金利とかいろいろな手数料を加えて通ると思って全部買っているということは必ずしも言えない。しかし、その水準がいままでのように一〇〇にひっつかなかったことは一つ明るい材料であるということを申し上げたわけでございますが、もう一つ考えなければいけないのは、そういうものを買い取って、これは事業団から買ったものを人に売る話でございますが、それと同時に、毎日毎日生産されております現実の自社製品の建て値を上げられると判断して、現実に上げてきているという状況にはまだなっていないわけでございます。ですから、そこが一番の問題点でございまして、自社製品の価格を上げられる、結果的に建て値を上げるということができ、またこれも、その建て値を上げたということと最末端までその価格が浸透できるかどうかという間にはもう一つ実は関門がございますが、そういうことができるかどうかという判断がもう一つ要るということ。それから、先ほど申しましたように、試し売り的性格がございますので、事業団放出をさらにやりました場合にそういうような条件、今回の入札で得られましたようなことがもう一度あるいはそういう形で通るかどうか、このあたりを全部見きわめて判断をしたいということを申し上げたわけでございます。したがいまして、今回の入札価格だけですべての市況状況判断して、これならば相当な水準でいけるのだと判断するには、まだ若干われわれとして考えるべきことが残っているということでございまして、一般論として、その十月から二月までずっとありました状況よりよくなっているということは私も理解をいたしておりますが、たとえば、いまの出ました入札水準のところまで建て値が上がってくるだろうとか、そういう判断をするには、まだより深い検討が必要ではないかと思っております。
  43. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、今後なるべく早い時期に今回と同量程度のものをもう一遍やりたいということがお考えとして示されたわけでありますけれども、これはいつごろおやりになって、その二回目で、いままだ十分判断できない点はフォローできますか。
  44. 石川弘

    石川(弘)政府委員 近々そういうことをやりました上で、もう一つ、先ほどから何度も申し上げておりますように、メーカー自社製品について建て値を改定するかどうかというあたりが、これからの判断の重要なポイントであろうと思っております。
  45. 島田琢郎

    島田委員 それはもう一遍ぐらいでおやめになるという考えですか、まだ継続してやるという考えですか。
  46. 石川弘

    石川(弘)政府委員 需要期がしばらく続くわけでございまして、その間における生産状況等も見きわめなければいけないと思っております。たとえば、暑い夏が続いて、去年と同じように相当製品が出ていくという事態になれば、ある程度放出を続ける必要はあろうと思いますし、冷夏のような、まあ望みたくないわけでございますが、そういう事態になれば、市況というものを考えて、これは売らなければならぬというしろものではございませんですから、むしろ事業団在庫して、価格がマイナスに働かないようにという配慮も要ろうかと思います。
  47. 島田琢郎

    島田委員 私は今回はこれでやめておきますが、非常に心配なのが、事業団放出に伴って市況悪影響を及ぼし、それがひいては生産地のところにまでリスクとして影響を及ぼすということ、これはあってはならぬことであります。したがって、本委員会として委員会決議をもってこの事業団在庫の処理に当たって慎重を期すべしとの意見をつけてあるのは、そういう重大な意味を持つわけでございます。  かたがたもう一つ、冒頭で私申し上げましたように海外からの圧力が強まっている。牛肉だ、乳製品だ、いろいろなことを言われております。したがって、国内で事業団にも在庫が払底してきたなんというようなことになりますれば、それを一つ理由にして海外からの攻撃が一層強まるということが十分予測されるわけであります。  こうした一連の海外、国内における状況を的確に判断をしながらこれを操作してまいりませんと重大な問題を引き起こしかねないということを心配しながら、今回の競売に対します考え方なりやり方、あるいは今後の考え方なりをただしてきたわけであります。本日のこうしたやりとりを十分踏まえていただいて、過ちのない方向で運営がされますように心から私は期待をしたいと思います。  これ以上のことは、時間が参りましたから、また必要があれば次回に譲らせていただくことにして、これで終わりたいと思います。
  48. 羽田孜

  49. 永井孝信

    永井委員 農水省が全国で進めております農業振興の問題について、具体的な中身について一つ、二つ聞いてみたいと思うのであります。  まず一つは、国営の灌漑排水事業が各地で行われているわけであります。その中で兵庫県八千代町に糀屋ダムというのがいま建設をされているわけでありますが、この問題について具体的にお聞きをいたします。  まずその一つは、この糀屋ダムは国営灌漑排水事業ということで施行されているわけでありますが、この計画をなされたのが昭和三十七年であります。そしてこの国の計画が決定をしてから、その受け皿として加古川西部土地改良組合というものが結成をされたわけでありますが、そこで具体的にこの計画の実施が進められることになりまして、四十二年から工事が着工されているわけであります。当初、計画では四十九年に完工することになっておったわけでありますが、現在の説明では、昭和六十二年までかかるというふうに説明がされているわけであります。この国営灌漑排水事業というものは、当然何十年先のことを見通して施行されるのでありましょうけれども、しかし、この灌漑排水事業の完成を当初の計画時点から待っておった地元の立場からすると、なぜこんなにおくれるのかという問題がまず一つあります。この工事のおくれはなぜなのかということを、まず最初にお聞きをしておきたいと思います。
  50. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように加古川西部地区の工期がおくれてきていることは、私どもも大変残念に思っております。当初の予定工期は、これはあくまでも計画だったわけでございますが、四十八年ということを予定しておりましたのが、現在では五十九年ぐらいまでかかるだろうと見ております。  これは一つは、御案内のように水源地に係る用地の補償交渉が大変難航をきわめてやっとめどをつけたという状況であること、二番目は、下流の水利権者との調整に長時間を要したということ、こういったことがございますし、それから率直に申しまして昭和五十三、四年以降、特にこの数年間、やはり国の財政事情等で公共事業の予算は全体として圧縮されておりますし、一方、第一次の石油ショック以降、いわゆるPWの改訂と私ども申しておりますけれども、労務費、資材費等が増高したという事情があって、予算の制約のもとで実は全体として各事業とも工期がおくれてきている、こういう事情があるわけでございます。
  51. 永井孝信

    永井委員 それではお聞きいたしますが、この国営灌漑排水事業としてダムの建設を進めている個所は全国でどのぐらいあるのですか。あるいはその全国のダムの工事がどの程度の工期をいま必要としているのですか。
  52. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  全国のダム工事の地区数は正確にはちょっといま持っておりませんが、約二十地区ぐらいだろうと思います。全体といたしましては、私、率直に申し上げますが、工期はかなりおくれてきておりますが、特に、加古川西部がおくれが目立っているということは否定いたしません。
  53. 永井孝信

    永井委員 このおくれた原因は、いまいろいろ言われているわけでありますが、たとえば、この工事のおくれの中に、用地買収あるいは地元との合意がなかなか形成されなかったというお話があるわけでありますが、一つは、農業政策の基本にかかわる問題として、いわばその場その場の場当たり的なことがあったのではないかという気がしてならぬわけであります。たとえば、このダムのために住宅を失うあるいは自分の持っている耕地を失うという農家の方もずいぶん出ているわけでありますが、一つ特徴的なことを申し上げてみますと、このダムの建設のために四十二戸の家が水没をすることになって立ち退きをしたわけですね。もちろん、これは計画当初から、農水省の努力があって四十二戸の用地買収については比較的スムーズにいったかのように見えておりますけれども、しかしこの四十二戸の家がどういう家だったか、これは農水省御存じですか。
  54. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいま御指摘の四十二戸の内容については、ちょっといま手元に資料を持っておりませんので、調べまして後刻御答弁させていただきます。
  55. 永井孝信

    永井委員 ダムを構築するために一つの村が水没をする、その水没をした人たちがどういう環境に置かれておったかということは、日常的にやはり行政の側が把握をしておかなくてはいけない問題ではないかという気がするのですね。私の方から申し上げますと、この四十二戸という家は、その大半、ほとんどが実は戦時中に満蒙開拓義勇軍として満州に派遣されて命からがら引き揚げてきた人たちなんですよ。その人たちが国と県の指導によってこの土地に入植をした。そうしてこの荒れ地の開墾に携わったわけですよ。ようやくその自分の耕した田畑が一人前に通用するといいますか、一人前の畑やたんぼに変わった時点で、今度はダムにするから立ち退け、こういう問題なんですね。まさに日本の農業政策の場当たり的なものがここに私は集中しておるような気がしてならぬわけであります。そういうことからこの用地買収の問題もかなり時間がかかったし、感情的な問題ももつれてきたということも一つの原因です。これがまず一つ。  もう一つは、御承知のことと思いますが、このダムは水をためるのに自然流水をそのまま取り込んで水をためることができないダムなんですね。だから山を一つ越えた加古川水系の杉原川というところからポンプアップをして水をためる、そういう計画になっているわけです。そうしてその水が農業用水に使われたとしても、その水が排水されるときはかなり下流に行かないとその水が川に流れ込まないということでありますから、いわば流域変更のダムという、全国でもきわめて例を見ないダムなんですね。そうしますと、その加古川水系の水に頼って暮らしている農家の人、あるいはいろんな自治体の上水もそうでありますが、あらゆる大きな影響を受けるわけですね、流域変更であるがために。したがって下流との合意もできない、こういう問題があってなかなか合意ができなかったということがあるわけですね。これも計画段階から農水省がもっと緻密にこの問題を事前に調査をして対処をしておれば、もう少し早く工期が完成したのではないかと思うのでありますけれども、このダムの建設がおくれてきたという大きな理由の中に、行政側の姿勢の問題が問われてもやむを得ないんではないか、こういう気がするわけでありますが、これはどうでございますか。
  56. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のようにいろいろ交錯した事情がございます。まず一つは、中町関係の事情で申し上げますと、実はちょっと先生指摘で四十二戸とおっしゃったのですが、私ども徳畑部落の関係は三十七戸、こう思っております、なおよく調べますが。徳畑部落の関係で、実はダムの水没交渉が非常に紛糾したということは御案内のとおりでございます。残留者五戸が、実はいわゆる移住者の残存農地の譲り受けを希望した、国はそれに対してあっせんを約束した経過があった。ところがその後、いわゆるダムの水没地区の補償全権委任団というものが形成されまして、いわば最初の五軒の方とこの方との関係でなかなか交錯した事情が四十四年の十二月以来続いてきたという経過があったわけでございます。これにつきましては、最終的には徳畑裁判という裁判になったわけでございますが、五十四年の七月に裁判所から和解勧告が出されまして、五十六年の六月に訴えの取り下げの意思表示があり、五十六年の十一月二十六日に訴えの取り下げが行われまして、話し合いが一応現時点ではついたというところに来ております。  それからなお、野間川水系の取水問題でございますが、これにつきましては、四十二年以来八千代町と協定を締結しまして、事業を推進することとしていたわけでございますが、御案内のように生活用水がすべて野間川、大和川に依存しているという事情があること、それから谷地田の灌漑問題に対する懸念、もう一つは、自分の地域における水資源の開発期待というものが地元にかなりあったものでございまして、反対期成同盟が結成されて、取水計画に反対した経過があったことは事実でございます。これにつきましては、五十七年の三月に県と町の協力を得まして取水に伴う減水補償等を行うということで合意を得ております。  その意味で、五十七年度においては多くの問題が解決されあるいは近く解決されるめどをつけておりまして、今後は、事業の促進を本格的に図れる状況であろうというふうに考えております。
  57. 永井孝信

    永井委員 どういう理由があったにせよ、その理由が正当か不当かということはさておきまして、当初の計画が、四十二年に着工して四十九年に完成ということで地元に説明がされて、受益地域の農民の方々にも同意を得た。こういう経過からすると、いま私は、これは現地調査に行ってきたのでありますが、現地調査でわかったところによると、完成は六十二年の予定である、十三年おくれるわけですね。国の事業が計画してから十三年も遅延をするというところにまず大きな問題がある。あるいは細かい問題でありますが、水没の家の数についても、現地へ行って私が調べてきたんですよ。本省の把握しておる数字と数字が違いますね。それほど現地の実情と本省の関係ではパイプが詰まっているんではないか、こういう気がしてなりません。  そこで、私は具体的な問題として聞くのでありますが、当初の計画説明では受益面積が四千八百五十ヘクタール、これは間違いないですね。その中身は旧田補水、従来からあるたんぼに対する補水ですね、これが四千百二十ヘクタール、畑が三百八十四ヘクタール、そうして未墾地を開拓する畑、これが三百四十六ヘクタールというふうに当初の計画では言われているわけであります。そうして、この事業と並行して水田が二千五百ヘクタール、畑が三百五十三ヘクタールの区画整理、基盤整備が行われているわけですね。総計この四千八百五十ヘクタールに対する水の供給とあわせて、工業用水が日量三万トンということで実は計画されているわけでありますが、これに間違いございませんか。
  58. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっと聞き取りにくかった点があったのでございますが、御指摘のとおりだろうと思います。
  59. 永井孝信

    永井委員 この工費の中身については、これは法定で定められておるわけでありますが、国が五六・八%の負担、県が二一・六%、そうして地元が二一・六%、こういうふうになっているわけですね。いいですか、最初のこの計画段階の総工費が五十億七千三百万円、国から提示されました中身は総工費が五十億七千三百万円。この時点で、農家に対して合意を得るために説明をされたのは、農家の負担分は、細かい数字を挙げて恐縮でありますが、十アール当たり元金が一万七千九百四十一円、金利が八千十四円、合わせて二万五千九百五十五円、こういうことで地元に対して説明がされたわけであります。私は、地元の農家の方や農会の役員の方々、たくさんの人に集まっていただいて、いろんな懇談をして説明を聞いてきたわけでありますが、この計画段階のときには、水が十分に確保できるなら、まず一つがそれですね。二つ目は、国のやることだから間違いないだろう。三つ目は、将来の農業経営考えた場合に、その程度、いわゆる二万五千九百五十五円程度の負担ならまあ何とかやっていけるだろうということで、いわば軽い気持ちで国のやることに対して全面的な信頼を置いて同意したというふうに言われているわけです。  ところが現状はどうか。ちょっとこれは数字を挙げて説明したいと思うのでありますが、農振法による農地の線引きが途中で行われました。そうして、この工事にかかった直後に建設省が進めました中国縦貫高速道路が建設されました。そうして、最も大きな問題は、当初の計画説明の段階で、未墾地を開拓するという予定地三百四十六ヘクタール、この三百四十六ヘクタールのうち、実に二百三十ヘクタールというのが新たに開発事業として目的変更されてしまったわけですね。この未墾地の開拓というのは、県も積極的に進めてきた、国も計画の中にそれを織り込んで進めてきた。ところが、この開発事業というのはほとんど県が中心になって進めてきました。一つはレクリエーションセンター、工業用団地、住宅団地、こういうことで、本来、このダムをつくるときの大きな目的であったはずの未墾地の開拓予定地が、二百三十ヘクタールも目的変更がされてしまった。合計して、全部で三百三十六ヘクタールが転用になってしまったわけですね。現状で申し上げますとそうなっている。  さらに、問題点ばかり先に申し上げますが、問題は、水田利用の再編成対策として、九百六十九ヘクタールが減反政策のために米をつくらなくなってしまった。工期のおくれから、いままで、昭和四十二年から昭和五十六年度までの間にこれだけの大きな変化が起きてきたわけですね。これは、片方では農業の振興を図るために未墾地を開拓する、旧田補水を行うということから、このダムを農家の負担も求めて建設をすると言っておきながら、片方で、いわゆるこの減反政策がどんどんふえてくる。全体の二四%に相当するのですよ、受益面積の予定地の二四%。そうして、片方で開拓予定地が目的変更で他のところに転用されてしまう。これは一体どういうことなんですか、農業政策の基本のあり方として。その基本のあり方について簡単に説明してくれますか。
  60. 森実孝郎

    森実政府委員 いろんな面からの御指摘があったわけでございますが、まず、事実なり、その経過について簡単に申し上げます。  まず第一は、総事業費の変更内容でございます。当初約五十五億の総事業費が、現時点で物価修正しますと二百四十六億になっているということは事実でございます。このうち二五%は、たとえば、ダムの掘削によるダムの岩盤の掘削量がふえたとか、あるいは東幹線をトンネルタイプに変更したというふうな設計変更も二五%ございますが、七五%は自然増、つまり賃金、物価の上昇によるものでございます。  これについてはいろいろ御議論もございますが、私ども、やはり全体として賃金、物価が上がって公共事業の単価が上がっていることは全地区共通の問題でございます。そういう意味で、この問題はどの事業地区につきましても当然の変化として受けとめていただいているわけでございます。ただ、御指摘のように、工期がおくれたためにその影響の出方が大きいということは否定できないだろうと思います。  それから次に、農地の転用の問題でございます。御指摘のように、縦貫道路ができた、さらに、住宅建設が進んだという背景のもとで、四十年代の後半に急速にこの地域の都市化、混住化が進んだことは事実でございます。この結果、農地開発予定地における転用が四十四ヘクタール、それから灌漑排水の受益地における転用が二百九十二ヘクタール、合わせて、先生指摘のように三百三十六ヘクタールの転用。全体としては、大体受益面積が一割程度減ったという事実がございます。これは実は、他の地区の国営地区でもなかなかむずかしい問題になっている点でございますが、特に混住化が進んでいる地区においては、どうしても転用が多目的のために進んでくるということは一定の限度以上抑え切れない実態があるわけでございまして、この方々の分については、転用決済金ということで譲渡所得を得ておられますので、土地改良区に転用決済金を払っていただいて、結局、土地改良区から退出していただいているという形の処理が行われております。これは一般の例でございます。  それから三番目に転作率でございますが、五十六年度の転作率は、先生指摘のような数字で、二六%に当たるわけでございます。これは私ども、いわば普遍的と申しますか、稲作転換対策全体の受けとめ方の問題だろうと思っておりまして、特にここで例外的に問題になる問題というふうには思っておりません。  御案内のように、この事業は四十二年の事業発足当時において水田用水の不足状況、畑地灌漑の必要性ということを背景にして事業の計画が行われ、採択が行われたわけでございますが、やはり基本的には、いわば農業の高度化を図っていこうという考えのもとで予定されたものでございまして、米価の価格の問題とか稲作転換の問題等で所得の低迷等の現象はあるわけでございますが、それなりに、事業の完了を通じまして、私どもは、用排水が分離されて水のコントロールが自由な新しい農業をつくる条件は整備されてくるものと思っております。
  61. 永井孝信

    永井委員 いまの御答弁の中で、たとえば物価の上昇、いろんなコストの変化によって当然資金計画が変わってくる、それだけで片づけられたんじゃ、たまったものじゃないですね。仮に、当初の予定どおり昭和四十九年までに完工するように集中的に予算の裏づけを行っておけばいままで工期も延びなかったし、あるいは資金の増額ということもいまのような状況にならなかったはずなんですね。  もう一つは、そのことが結果的に、後で申し上げますが、農家の負担に大きくのしかかってくるという事実、これはもう覆うべくもない実態なんですね。加えて、いまの日本の農業政策というのは、片方でこういうふうに農業の基盤整備をやるとか農業の近代化を図るとか言いながら、片方では減反政策を強要してくる。対外的な貿易の問題もあるんでありましょうけれども、結果的に農民にすべてのしわ寄せを持ってきていると言っても過言ではないのじゃないか、私はそういうふうに一つ考えるわけであります。  たとえば、工期が延びた間に農家の動向がどう変わったかと申し上げておきますと、この計画が発足した当時、全体の四千八百五十ヘクタールという受益面積を持つその農家ですね、この農家の方、専業農家が全体の七・九%、第一種の農家が三八・三%、第二種が五三・八%、こういう内訳でありました。相次ぐ減反政策がどんどん拡大されていったこともあるのでありましょう、あるいは生活が苦しいということもあるのでしょう。農業では食っていけないということも結果として出てまいります。そういうことから専業農家が三・五%に減少している。第一種の農家がわずか四・七%に減少している。三八・三%から四・七%に減少しているのですよ。そうして第二種の農家が九一・八%にふくれ上がっている。これは何も自分の暮らしがこのことによって豊かになるということだけでこうなったのではなくて、農業に頼れないという、私の口から言えば農業政策の不在が結果的にこういうことにさせてしまったのではないか、こう思うわけであります。そうして、先ほども申し上げたように、現在工事全体としてはまだ三分の二程度しか進捗していない。こういう状況から考えると、このダムが完工するまでにさらに農業のあり方というものは変わってくるだろう。そうすると、一体ダムのあり方として、事業として成立するのか、これについて明確にお答えを願いたいと思います。
  62. 森実孝郎

    森実政府委員 冒頭に、先ほど御質問ございましたダム地区の数を、ちょっと手元に資料がございませんで不正確に申し上げましたので訂正させていただきます。  内地全体で七十六地区ございます国営地区のうち、三十四地区がダムにかかわりある地区でございます。  それから第二に、この地域の農業を取り巻く諸情勢の変化という問題をどう考えるかという問題が一つあると思います。御案内のように、縦貫道路の開発が進み、ある程度工業化も行われ、住宅団地の造成も県の誘致策の中で進んできた。確かに農業自体のむずかしさということもあるでございましょうが、先ほどの数字にもありますように、かなり大きな農地転用、宅地化あるいは工場用地化ということが行われた背景もあり、また同時に、農家の皆さんにも安定兼業機会というものがどんどん生まれてきた。そういう意味においては通勤兼業農家が非常にふえている地区であり、それだけに農業問題のむずかしさがあるということは私も事実だろうと思います。  さて、これからの問題でございますが、私ども先ほど申し上げましたように、全体の公共事業の予算が抑制されている中で、一方においては賃金、物価が上がるということで継続地区の残年数が年々延びてきたということは事実でございます。これを何とかしなければならぬということは私どもも非常に痛感しております。その意味では、本年からある程度決心をいたしまして、まず、新規の採択を極力抑えるという方針をとりまして、実は新規採択の地区数は従来五地区とか七地区とっているのをことしは内地は二地区にとどめる、採択事業量では四割程度にとどめるという思い切った手を打ったわけでございます。これだけで私は、実は先生おっしゃるようにすぐ問題が解決するとは思いません。なるべく継続事業の促進を図りつつ新規を抑えるという姿勢を土地改良事業全体について当分続けていかないとなかなか効果は出てこないと思いますが、大臣の強い御指示もありまして、この方針を農林省としてはまず続けていきたい、それによって全体の状況の改善を図りたいと思います。  二番目は、継続地区の重点実施のための予算の配分でございます。本年度は、実は土地改良の予算は据え置きだったわけでございますが、国営灌排については私もこの問題があることを考えまして、実は国営灌排事業だけは、わずかといえばわずかでございますが、二%予算枠をふやしたという経過があるわけでございます。二%国営灌排をふやすというのはほかの事業を前年対比で三角にするということでございますから、実はなかなか大変だったという経過があるわけでございますが、とにかく継続地区の残年量の多い国営それから県営の灌排にウエートを置くという措置をとったつもりでございます。  私ども、これからの予算の執行の問題に当たりましては、予算の確保を図るということは当然でございますが、できるだけ問題の多い、また、そのために工期のおくれている地区に重点配分ということを考えたい。そういう意味では、私いま、断定的なことは申しかねますが、たとえば、調整枠の充当それからいわゆる調整費の支出、さらに、これはどうなるかわかりませんけれども、これからの予算をめぐる諸情勢の中でそういった特別に追加できる可能性が出てくれば、その追加できる予算枠の充当等については、こういった問題のある幾つかの国営の地区には重点的配分を行ってまいるように努力したいと思っているわけでございます。
  63. 永井孝信

    永井委員 資金が二%特別に配慮されたその御努力は私も評価いたしますけれども、しかし、工期が十三年も延びるという現状をこのまま放置しておくと、政府がいま進めようとしている行財政改革の中に盛り込まれているように、有効な国費の使用という面からいくと問題が残るのではないか。だらだら工事をやっているうちに農業のあり方は変わってしまう。事業として当初から計画しておったような効果を求めることができなくなっていく。それは私は行政の責任だと思うのですね。そこへもってきてそのしわ寄せが農家にかかってくる。  このことを具体的に申し上げてみたいと思うのですが、たとえば用地買収一つにしても、このダムの水没地域の農家に対する補償がやっと片づいた直後に中国縦貫道路の建設が始まった。ダムの建設に伴う用地買収は農水省がやる、中国縦貫道路の用地買収は建設省がやる、大変な買い上げ額の差があったわけですよ。建設省の方は金がたくさんあるのか知らぬが、思い切った金で買い上げる。だから早く道路がつく。ダムの方はなかなか渋って金を出さない。同じ政府なのに一体どういうことなのかということで、再補償要求が出てきたという経緯もあるくらい農水の方は財布のひもをかたくしているわけですよ。財布のひもをかたくすることは、結果的に工事の進捗にも大きな影響を及ぼす、ということになればこれは一つ問題ではないのかということをまず指摘をしておきたいと思います。  もう一つは、この工期の延びによってどれだけ農家が負担を受けるか。時間がだんだんなくなってきますのでちょっと走りますけれども、当初の計画が、いまも答弁にありましたように四十二年には予算が五十四億円程度、五十一年には、農家の方を集めて百五十五億かかります、そのうち六十六億円分は完了して残りは八十九億円です、だからひとつ御協力をください、こういう説明があった。そうして、一年間の予算を執行したときにどういう説明があったか。五十二年になると、その一年間で十五億円分の工事を遂行した、こう言っているのでありますが、残工事は百八億円だ、こう説明する。予算をつぎ込んで、翌年になったら残工事が金額的にもだんだんふえていく。全くわけのわからぬ算術計算になっているわけですね。五十六年度に説明を受けたときには、いま言われましたように二百四十六億円の総工費だ、そのうち百六十億円分は済んでいる、残りの分についても積極的にこれから投資をしていく、六十二年完工予定だ。そうなると農家に対する負担が、いいですか、聞いておいてくださいよ、農水省の説明によると元金が十アール当たり十万二千円、貨幣価値が変わったといっても当初の計画では元金が一万七千九百四十一円、これが現在の時点では十万二千円、金利を含めると十六万二千七百円の負担になります、こういう説明なんですよ。これでは一体農家は負担し切れるのかという問題が出てくる。  たとえば、このダムの特徴を申し上げますと、直接田畑に灌漑用水として水を入れるのではなく、この地域はもともと川の少ないところでございますから、ため池が六百を超えてある。そのため池をこのダムの計画は利用するのですよ。ダムから幹線水路を引いて、そこから先は団体営としてさらに農民に負担がかかってくるのです、いま言っている金額以上に。団体営の末端水路をつくってため池に水を入れて、そこからもとの水路を使って田畑に水を供給するわけです。そうすると、新しいダムをつくってもらっても、いままで持っているため池や水路の維持、補修管理というものは従来どおり農家は必要になってくるわけですね。その上にダムの分が振りかかってくるわけですよ。ため池の堤防一つ改修するにしても何千万、何億という金がかかる場合がある。現にいま、二億ほど金をかけてため池の改修工事をやっている地域がありますが、これは従来どおりなんですよ。その上にこのダムの負担分がかかってくる。それが金利を含めて当初の二万五千九百円程度の金が現在の時点で十六万二千七百円。これが実際完工したときにはどれだけふくれ上がってくるのだろうか、こういう危惧を農民は持ってあたりまえでしょう。この金額の問題まだ言います。このダムが完成した暁にはトン当たり十二円の管理費を求めているわけです。米をつくるのに、原価計算からすればトン当たり大体四円か五円が限度ではないかと言われている。米価の審議のときには農民の要求を抑えてでも米価は低く算定をしていこうとする。これだけ負担を受ける農民の立場がそういう場合にも反映できるのか、あるいはいま局長が言われているように貨幣価値が変わった、コストが変わってきた、いろいろな状況の変化があったとしても、現実にはその間に受益面積がこれだけ減ってきて、いわゆる第一種から第二種への兼業農家の転換というものはずいぶん進んできたという現状の中で、このような負担を農民に求めるというあり方が本来ノーマルなものなのかどうなのか、お答えいただきたいと思います。
  64. 森実孝郎

    森実政府委員 基本的には、私ども制度の本旨からいってもまた実態からいっても、賃金、物価の上昇による公共事業費の増加分については、負担として受けとめていただかざるを得ないものと思っております。最近はようやく落ちつきまして、年率で六、七%の賃金、物価の改定になっておりますが、御案内のようにオイルショック以降の高い年は三割も四割も年間に賃金、物価の改定が行われたということは事実でございます。しかし、それは日本の全体の経済体系の変化でございまして、農家の収入なり所得も、いろいろな見方はありますが、全体としてノミナルには膨張してきているという問題だろうと思います。その意味ではやはりノミナルな負担の増とリアルな問題とは仕分けして考えてみる必要があるだろうと思っております。  それからなお、いろいろな価格考える場合や農業政策を考える場合、当然公租公課の負担という問題は織り込まれるわけでございまして、これはそのときそのときの時点の実績を織り込んで見ているところでございます。問題は、この地区が補修工事等が難航したことと、予算の制約等もあって工期がおくれたという御指摘についてはまことに残念だと思っておりまして、これにつきましては先ほど申し上げましたように、今後、とにかく工期の促進を図るための特段の配慮を払うことによって、できるだけ皆さんの理解を得る努力をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  65. 永井孝信

    永井委員 こういう状況の中で、負担は負担として持ってもらわざるを得ない、それでは血の通った行政とは言えないと思うのです。工事がおくれたこと、資金が当初の計画よりも大幅にふくれ上がってきたこと、工期が延びたためにさらに金利が重なってくること、これは農民の責任ですか、局長。一言で答えてください。
  66. 森実孝郎

    森実政府委員 私ども土地改良事業を採択しますときに、これは全地区に共通の問題でございますが、いわば計画変更は賃金、物価の改定分については行わないということで、これは皆さんに基本的に合意を得ていただいて事業を採択している経過がございます。先生が御指摘のように、何が農民の責任かどうかということを議論されますとむずかしい点もあると思いますが、十数年の間にそういう環境も大きく変わったということは事実だろうと思いますし、だれの責任とかこうという問題ではないのではないかと私は思っております。
  67. 永井孝信

    永井委員 環境が変わったというのは工期が延びたために環境が変わってきたことが一つ。国の農業政策が大きく変わったわけでしょう。米をつくれつくれと言った時代から、米をつくるなと言う時代に変わってきた。それは政策的に変えてきたわけでしょう。この基本をまず踏まえてもらいたい。  もう一つは、最前私が質問の中で申し上げましたけれども、開発事業にしても、当初の未墾地を開拓する予定地を目的変更で他に転用してしまった。転用してしまったために、団体営で工事をしなくてはならぬ地域がふえてくるわけですよ。これまた農民の肩に振りかかってくるわけです。農家の方からすれば、この間もたくさんの人に集まっていただいたところで異口同音出てきたのですが、米をつくるなと言う、水は買えと言う、水が高くなってくるとしんぼうせいと言う、そんなことで通るのかという話が率直に出てくるわけですよ。これに政治がどうこたえてやるかという問題が一つあります。  もう一つは、このダムの中に日量三万トンの工業用水を予定しているわけです。これは西脇市というところに売却する予定だったわけです。ところが西脇市は、当初の予定よりも工期がどんどんおくれてきたものですから極端に言えば待ち切れない、だからその水はもう要らないと言い出した。だから、この工水の三万トン分をもらうために負担をすべき金を、やむなくいま兵庫県が肩がわりをしているわけです。この兵庫県の肩がわりしているものが、結果的に一体だれのところにくるのかということも大きな問題として残されている。  さらに、この工水と農水の関係でありますが、費用の分担は農水が八四%、工水が二八%ということになっている。工水は御承知のように通産省の管轄であります、農水は農水省。水の使用量からいくと、工水がざっと千百万トン、農水が千三百万トン、ほとんど二分の一ずつなんです。そうして農水だけが八四%の高負担を求められる。これが結果的に、農民に大きなしわ寄せになってきているのじゃないか。したがって、この工水と農水の費用分担のあり方についてもこのままでよいのか、再検討の余地はないのか、そうして農民に対する過酷な負担を軽減する方策を政府考えることができないのか、この二つについてお答えいただきたいと思います。
  68. 森実孝郎

    森実政府委員 最初の転用問題に絡む一連の問題の御質問でございますが、私、先ほども申し上げましたように、混住化現象が進んでいる地域、特に、近畿地方等においてはなかなかむずかしい問題になっていることは私否定いたしません。第二種兼業農家、特に、通勤兼業農家の皆さんが土地改良事業自体に非常に消極的な姿勢をとらざるを得ない事情があってそういうことがある。さらに、農地の転用が行われる。こういう場合は、先ほど申し上げましたように転用決済金という形で離脱する方から決済金を取っておりますけれども、それだけではなかなか解決のつかない問題があるということを私どもも痛感しております。こういった混住化現象の進んだ地域における土地改良事業の進め方という問題として、私どももこれから真剣に取り組んでいかなければならない問題だろうと思いますが、かたがた、そのために農業に非常に積極的な意欲を持った方々の希望を取り上げることができないということになりましても問題はまた農業政策上残るわけでございまして、県、市町村等の協力を得ながらどういうふうにその実施の方式を調整していくかが大きな問題だろうと思います。  次に、工業用水と農業用水の負担割合でございます。これにつきましては先生一つの例として、水量割りの例を御指摘ございました。これは年間の通水量で見る見方、灌漑期の通水量で見る見方、いろいろな見方があるだろうと思います。この現在の費用の負担割合はいわゆる便益法による比率、超過便益法による比率によって他の例と同じように当時決定した方式でございます。ただ、この問題をこれからどう考えるかということについては、一回決めたアロケーションはそれぞれの立場があってなかなか変更できないことも一般でございますが、たとえば、水の利用計画が基本的に変更になる場合とか、特に、水の利用について新規参入が発生した場合、さらにアロケーションの算出の基礎になっている諸要素の変動がある場合については、双方で変更協議を行うことも私どもは可能だと思っております。もう少し様子を見まして、本件についてはこれから計画変更の作業を進めなければなりませんので、その計画変更作業の中でこういう条件があるかどうかをよく見きわめまして、県その他等とも、アロケーションの変更の可能性について一回協議、検討することは、場合によっては必要ではないかと思っているわけでございます。
  69. 永井孝信

    永井委員 時間が参りましたので、最後に、大臣がいらっしゃいませんので政務次官に、これからの取り組みについて、時間が短いために十分なことは言えませんけれども、決意を含めて私はお伺いをしたいと思うのであります。  いろいろな事情があったにしても、結局この工事が計画どおり進まなかった。地元の人にすれば、土地の買い上げ一つとってみても、建設省と農水省の買い上げ価格に大きな差があるという不信感がある。そして計画当時から比べると、減反政策がどんどん進められてきて、水を買うための負担はおまえらしろよ、工期がおくれたから金額がふくれ上がってきたけれどもしんぼうしろよ、片一方で米をつくるなよ、一体、農民は死ねと言うのかという率直な、不信感というよりも怒りに燃えた気持ちを持っているわけですね。こういう状況の中で、いままでのやりとりを聞いておって次官としてもわかったと思うのでありますが、この工期がおくれたのは、これはいろいろなことを言ってみてもあくまで国の責任なんだから、やるならこれを一日も早く完成させるということ。もう一つは、工期が延びたために必要以上に農民に負担をかけてきたことの軽減策をどうするか。そうして、農業政策で減反政策と基盤整備、基盤整備でも、農民が、これと別に十アール当たり七十万円程度負担するのですよ。そういう状況考えると、片方で基盤整備を進めるわ、未墾地を開拓しろという計画は途中で変更になったけれども、片方でそういう政策は持っているわ、この政策の乖離ですね、矛盾といいますか、こういうものをこのまま放置しておったのでは、これから農業政策はうまくいかないだろうという前提に立って、その農民の不信感を除去するために、もう一度繰り返しますが、農民負担の軽減あるいは工水と農水の負担割合の再検討、そうして工期の短縮、これらについて、今後、何とか善処するという立場で、ひとつ政務次官の立場からお答えいただけませんか。
  70. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 本事業が、いままでの諸般事情によって完成がおくれてきたということは、きわめて遺憾なことだと思うわけでございます。したがいまして、今後のことでございますが、できるだけ予算を確保いたしまして、早期の実現を目指して努力をするというのが第一点であります。  それからさらに、農業用水と工業用水の関係につきましては、今後、もし事情の変更等がございましたならば、いままでの比率の経過等を見まして、変更をする場合におきましては検討する必要がある。  それからさらに、地元の軽減の問題につきましては、いままでも償還期限の延長等にいろいろ努めてまいったところでございますが、今後、地元の負担の軽減を何とか図るためにも、地元の県当局とも協議をいたしまして軽減の努力を進めてまいりたい、こういうふうに存ずる次第でございます。
  71. 永井孝信

    永井委員 農民の期待にこたえて農業が成り立つように、そういう立場での積極的な農業政策の推進と、きょう具体的に提示しましたダム問題についても対処していただくことをもう一度重ねて要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  72. 羽田孜

    羽田委員長 小川国彦君。
  73. 小川国彦

    ○小川(国)委員 加古川西部土地改良区の事業の問題につきましては、いま、同僚の永井議員から、短時間の中にきわめて要点を尽くして質疑をされたわけでありますが、私も、社会党の調査団としまして現地に行ってまいりました立場から、この問題をもう少し詰めさしていただきたいと思います。  いま答弁の中で出てまいりました超過便益の比率方式、これは現状の状況から見て、当然改められる状況に来ているのではないか。水の使用状況を想定いたしますと、農業用水の千三百万トンに対して工業用水が千百万トン、いわば六対四、工業用水の方も四の比率を占めてきている数字が想定されるわけです。現在、この工業用水の問題については、工場立地の問題等も踏まえて兵庫県がこれを立てかえているようでございますけれども、さらにまた、加古川流域においては上水道、下水道の今後の需要増が見込まれる。下水道等においても五十万人の下水道計画があって、当然また水の需要が出てくる。そういう観点から見ますと、アロケーションの変化が予想されるわけであります。そういう点について、政府の方としては、工業用水との負担割合については、計画変更の場合はどこと話し合いを行われることになるか、このアロケーションの変更についてどういう関係団体と協議を進めることになるか、その辺をまず伺いたい。
  74. 森実孝郎

    森実政府委員 この地区のアロケーションにつきましては、四十七年三月に協定がなされております。これは先ほども申し上げましたように、便益比率によって算定をしたということでございます。  ただ、いま先生指摘のように、新しく上水道等の事業が地元に生まれてきて、そういう議論が出てきているという話は私どもも仄聞しておりますが、まだ正式には協議はありません。しかし、この問題は、具体的にはアロケーションの変更を考える場合の一つの重要な誘因になるものと私ども考えております。  そういう意味で、これは県当局等とも十分相談いたしまして、水利用計画の変更を伴うような内容のものであれば、その変更についても検討してみたいと思っております。十分地元の県と相談をしていきたいと思っております。
  75. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま局長の方は下水道の問題にだけ触れられましたが、工業用水の負担割合についても、年間を通して使用するのは、工業用水の方が年間を通して使用される。量も一千百万トン、農業用水と二百万トンしか違わないわけでありますから、それに対して農業用水側の負担が八六・三、工業用水側の負担が一三・七、どう考えてもこの比率方式について工業用水の問題との検討もなされなければならないと思いますが、いかがですか。
  76. 森実孝郎

    森実政府委員 現在の水利用計画では、灌漑期におきましては農水が八五・七%、工業用水が一四・三%、非灌漑期では農業用水が六二%、工業用水が三八%。それから最大取水量で見ますと、農業用水が九一・八%、工業用水が八・二%という数字になっているわけでございます。こういった数字を基礎といたしまして便益比率で決めたという経過があるわけであります。私、先ほど、一回決めましたアロケーションを改定するということは、基本的な条件の変更がない以上は基本的にむずかしいだろう、一般的にはそういう状況があるけれども、しかし、基本的な水利用計画が変更になる場合については、見直すという余地はあるのではないかということを申し上げたわけでございます。そういう意味におきまして、いわば上水道問題が新しく出てくることは、この水利用計画を見直し、したがって、アロケーションを見直すための重要な誘因になるのではないだろうか。その際に、いろいろ先生からも御指摘がございましたように、アロケーション方式についてもいろいろな方式があるわけでございますので、そういった点も頭に置きまして検討させていただきたいと思います。そういう意味では上水道問題が一つの重要な誘因になるだろうけれども、その場合は水利用計画全体を頭に置いて、アロケーションの仕方についても当然検討は及ぶというふうに御理解いただきたいと思います。
  77. 小川国彦

    ○小川(国)委員 先ほどの永井議員の指摘のように、まず第一は、この工事は完成時期より十三年問も遅延している。それから全体が仕上がりますのに、二十年を超えるダムと土地改良事業というのはないのですね。  先ほど、ダムの完成まで平均的にどのくらいかかっているかという年数の報告がございましたかしら。
  78. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  実は、土地改良用事業の中で、ダム地区がわりあいに補償問題その他で紛糾しまして工期が長くなることはもう避けられないところでございます。一般の土地改良事業というのはいわば……(小川(国)委員「平均的な年数で答えてくれればいいですよ」と呼ぶ)平均的な年数で申しますと、国営の灌排事業は、大体十五、六年ぐらいというところが、現状の数字ではじきますと分布としては一番大きいわけでございます。
  79. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それから見ますと、四十二年から六十二年の完成というと二十年ですね。六十二年も私、怪しいと思うのですよ。非常に長過ぎる。これは用地買収の進め方もかなり気長にやってきている。そういう意味で私は、農林省にかなり重大な遅延の責任があると思うのですよ。しかし、あなた方は全国一律の補助率があるからそれを変えることはできない、こういうことでいって、遅延の責任については一体どういう責任をとられるのかという問題があるのです。これはいま永井議員が指摘しましたが、それは今後また、われわれもただしていきたいと思いますが、その責任の上に立って考えてみれば、いかにして農民負担を軽減するかということをあなた方が考えなければならない時点に来ている。そういうことならば、工業用水と農水の負担割合の決め方というものはかなり古い時期の決め方であって、最近の決め方としてはあなた方の決めた状況からかなり変化をしてきている。  千葉県などの例を申し上げますと、ダムの水源の開発費は県が負担しておって、農民に負担をさせてないのですね。もっと言うならば、最近、千葉県でも県営ダムをかなりつくっておりますが、五年か、どんなにかかっても十年で仕上げているのですよ。二十年かかってどうも怪しいというのはないですよ、いま局長さん十五年と言いましたけれどもね。二十年を超えるであろうというのは異常な事態であって、こういう状況の中でふえていく負担金を農民に転嫁して、そのままかけていっていいということは許されないと思うのです。ですから、この加古川流域の総合的な水利用計画というものをもう一度あなた方の方も現地調査——先ほどから聞いてみると不十分のように思いますから、ダムによる水没戸数とか移転農家の数も何かちょっと違っておるようでありますから、そういう点からして現地をしっかり調査なすって、ともかく総合的な水利用計画というものの中から、現状においてどういう負担割合を求めていくのが正しいか、兵庫県という自治体にどういう負担を求めるのがいいか、工業用水、上水道、下水道の利用をどう想定してアロケーションを考え直したらいいか、その調査に早速かかっていただきたい、私はこういうふうに思いますが、その点はいかがですか。
  80. 森実孝郎

    森実政府委員 いろいろな点で御指摘があったわけでございますが、ちょっと先ほどの地区の問題を報告させていただきます。徳畑部落が五戸残って全体で三十七戸、移転するのは三十二戸、それから新田が十戸で、合わせて四十七戸、残留するのを除けば四十二戸という数字を先ほど御指摘があったのだろうと思います。そういう意味で、私ども、徳畑部落だけで申し上げたものですから、数字が食い違ったことを申し上げます。  なかなかむずかしい問題について御指摘があったわけでございますが、私どもも計画変更手続を補償その他のめどがついたところでこれからしっかり進めなければならない時期に来ていると思います。その場合、先生指摘のようにやはり特殊事情があっておくれたことは事実でございますが、農民の皆さんからかなりいろいろな不満もあるし、またそれはそれなりに理解できる点もあるわけでございます。その意味ではアロケーションの問題をどう考えていくか、特に、水利用計画に変更がある場合、それを経費としてどう考えるかという問題があることは事実だろうと思います。  それからもう一つは、いま先生千葉県の例を御指摘になったわけでございますが、ダムの負担をどう持つかということは、国の補助率というのは統一的に決まっておりますが、自治体の負担というのはかなり昨今の情勢の中でいろいろな幅があるわけでございます。そういう意味においては、負担問題についてアロケーションの問題も踏まえながらどう考えていただくかということは県としても私は、いろいろ考えていただかなければならない問題があるだろうと思います。そういう意味で、御指摘を受けましたので、私どもこの際、私もここは確かに問題地区であることは否定いたしませんので、京都の農政局を通じまして、少しきちっとした現時点での調査概況の把握をもう一回改めてさせたいと思います。その上に立ってデータも整備いたしまして、私どものそれなりの判断も持ちまして県から事情を聴取し、いろいろ相談もしたいと思います。時間をいただきたいと思います。     〔委員長退席、加藤(紘)委員長代理着席〕
  81. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は次に、先般の委員会におきまして問題になりました畜産局長の答弁の問題について質問をいたしたいと思います。  去る四月八日の農林水産委員会において私が、中央競馬会福祉財団の問題について二十二億円に上る福祉補助金が馬主協会中心に配分されている、特に、政治家の馬主協会長の福岡県の選挙区などでは、馬主協会長が政治家であるというところに非常に偏って予算が配分されている、そういうような不公正な配分を正すべきじゃないか、こういう質問をいたしたわけであります。その際に、そういうことの問題点というのも、農水省の方に補助先の住所、代表者名の入った全国都道府県別の毎年度の補助金配分一覧表、そういうものすらできていないからだ、こういう指摘をしたわけです。このときに石川弘畜産局長は、この議事録の、私、写しを見ましたところが、当日の委員会では、その資料がある、こういうことを大変自信を持って答弁をされたのです。したがって、私は、その資料が当然石川局長、農水省の手元にある、こういうことで、その資料を委員会終了後提示を願ったわけであります。そうしましたら、二十分間にわたってあると言われた資料が、最終的には持っていない、こういう答弁でございまして、私は、その点で非常に重大な問題だというふうに考えるわけです。  この委員会の席上で私はもう一度確認したいと思いますが、私が質問の中で、「福岡県の一区、二区、三区の人にきょうの質問の内容を発表したらみんな腹を立てて怒ると思いますよ。そんな補助金があったのか、われわれ知らなかった、馬主会の会長さんが代議士さんであれば、その選挙区はこんなに膨大な福祉の補助金予算は行くけれども、馬主会の政治家のいないところはこんなにみじめになるのか、福祉の補助金の配分もこんなにひどい格差が出るのかということが出てくる。福岡県の問題だけじゃないですよ。馬主の政治家は全国におる、そういうところには私はこういう実態があると思う。調べ上げたいと思ったけれども」ということで、ちょっと中間を略しますが、「あなた方の方、厚生省も農林省も仕事がでたらめで、「五十五年度施設助成金割当」、財団法人中央競馬福祉財団、」それは参考のために、こういうものでございますが、「これは厚生省と農水省が共管でつくった財団だというのだけれども、この一つ一つの」この表の中にですね、「保育園の所在地の住所が入ってない、代表者名も入ってないのですよ。恐らく、皆さんの方では、これの補助金配分の都道府県別の実態表なんて持ってないと思いますよ。都道府県別に補助金分けた実態表、ありますか。それだけちょっと聞きましょう。」こういう私の質問に対して石川政府委員は、「毎年度事業を行いましたのを確認をしましたものを福祉財団の方で把握をいたしております。報告書の形で、どういう金を出し、どういう形でどういう施設をやったかというようなものを確認書を取って取りまとめて持っております。」まず、こういう答弁をされたのですが、この「取りまとめて持っております。」ということなんですが、これは石川局長に伺いますが、取りまとめて、物はあったのでございますか。
  82. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私がお答えしました中で、「確認書を取って取りまとめて持っております。」と申し上げましたのは、個々の確認書、これは領収証とか写真とかついたものを福祉財団が持っているということでございまして、それを何らかの形で一覧表のような形にしたものは持っておりませんでした。
  83. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、まずここのところで、私の方で指摘したまとめたものは持ってなかった、こういうことでございますね。
  84. 石川弘

    石川(弘)政府委員 お見せしたとおりの一つ一つの、何と申しますか、報告書でございまして、取りまとめた表のようなものではございません。
  85. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ですから、まずこの「取りまとめて持っております。」という答弁は誤りですね。
  86. 石川弘

    石川(弘)政府委員 表のような姿のようなものを想定してお聞き取りになられたことにつきましては申しわけないと思っております。
  87. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に私がまた、局長さんもまたさきの食糧庁長官と同じ間違った答弁をしているんじゃないか、全国の都道府県から申請書が出ている、しかしその全国の都道府県にどういうふうに配分されたかという一覧表は持っているのですかと、こういうふうに伺ったときに、石川政府委員は「持っております。」とこういう答弁をしているのですが、これは「持っております。」という答弁は過ちで、持っていなかった、こういうことでございますね。
  88. 石川弘

    石川(弘)政府委員 まことに失礼なことを申し上げたと思いますが、私、九州の馬主会のものを持っておりまして、それをもって「持っております。」と申し上げましたが、先生の御質問の趣旨は、全国のそういう一覧のものという御趣旨でございましたので、私の答弁は間違っておりました。
  89. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それで私が「どこに持っておりますか。」と言ったら、「現物ここにございます。」と言って上げたのですが、それは全国都道府県の一覧のものではなかったわけですね。
  90. 石川弘

    石川(弘)政府委員 九州の馬主会につきまして整理をしたものを持っておったわけでございまして、全国のものではございませんでした。
  91. 小川国彦

    ○小川(国)委員 「じゃ、いつおつくりになりました。」と言いましたら、「各年度終了後でございます。」こういうふうに答えておりますが、この点はいかがでございますか。
  92. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私、五十一年から五十五年度までにつくりました表を持っておりましたのでそういうお答えをいたしましたけれども、これは各年度一つ一つつくったということではございませんで、先生の御指摘があった際に、私どもの方でつくった表でございました。
  93. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうしますと、結局、あなたの方で一覧表をつくったものが、まとめたものがあるかと言ったら、ある、まとめてある、それから持っている。それからどこにあるかと言ったらここにある。それから今度五年分いつおつくりになったと言ったら、毎年まとめたものを持っていると言うのですね。ところが、その前に私が局長に再三言っていますのは、全国都道府県から出た申請書があるけれども、それをまとめた一覧表というのはないんじゃないかということを二回も繰り返して言っているのですよね。全国のものは、ここにお示ししているたとえば「昭和五十四年度施設助成金割当 昭和五十四年十一月二日」下に「財団法人中央競馬社会福祉財団」これが全国のものなんですよね。これの中に代表者名もなければ住所氏名もない。このものですらずさんではないかと私は言っているわけですよ。ところがあなたは、私が全国都道府県のと繰り返して言っているのに、福岡県の資料を示して、福岡県のものをここに持っている、あなたはここでそう言ったのですよ。福岡県のという説明は一つもないのです、そのときは。そうじゃなくて、ここに私は資料を持っている、五年分を持っている。で、いつつくったと言ったら毎年度末につくっている、こういうふうに答弁しているんだ。しかも、その前段に私がずっと質疑をしてきましたことは、あなた方の助成金割り当てが非常にずさんである。馬主会中心で、馬主会を通して申請のあったものが六割いってしまっている。しかも競馬場のある自治体に偏っている。全国都道府県に均てんに、公正にいくためにはきちんとした帳簿が、一覧表がなければいかぬじゃないか、そういう意味で言ってきたものに対して、あなたはこの委員会で、あると言うのです。私は委員の皆さんにも大変申しわけなかったけれども、二十分も時間を超過して質問をしたんですよ。その間あなたは最後までその資料はあると言い切って委員会を終わらしたんですよね。これは私は非常に重大な問題だというふうに思うのですよ。少なくとも虚偽の答弁を二十分間にわたって続けて、そして委員会を終わらせた。その後でそのものがありませんということでは、私は国会を欺瞞したことであって、とうていこれは許すことのできない問題だというように思っているんですよ。その点についてあなたどういうふうにその責任をお感じになっておりますか。
  94. 石川弘

    石川(弘)政府委員 その答弁の次に、先生から福岡のことじゃないんだぞという御指摘がありまして、ようやく私、全国の資料である、全国の資料のお話をなさっていると気づきまして、その後に、印刷物にしたそういうものはないということを最後に申し上げているわけでございますが、結果的には先生おっしゃるように、最後の答弁のところで火がつくまで私、あると申し上げて、そういう先生の御指摘と違った答弁を実はいたしておりました。先生から御指摘がありまして、まことに申しわけないと思っております。今後そういうことのないように、みずから厳重に戒めていくつもりでございます。
  95. 小川国彦

    ○小川(国)委員 あなたのそういったでたらめな答弁、ふまじめな答弁というのは、四月八日の今回だけではないのですよ。ずっとさかのぼってそういう問題が続いてある。  二月の二十五日の予算委員会で、五十七年度予算編成で中央競馬会に特別国庫納付を求める件について田澤農林大臣に質問をしましたところ、大臣が答弁をされないうちに石川局長が出てきて答弁しようとした。しかも、内容は大臣が答弁できる範囲のことを聞いているのに、大臣を無視して答弁席に着いたんです。このときに、五十七年二月二十五日です、「いつもあなたは出てくるんだよね。私は農林大臣に質問しているのだ。閣僚は引き継ぎをやったばかりだから、新大臣がそういう話を、さっき大蔵大臣は農林大臣の方と相談をした、こう言っている。あなたは農林大臣じゃないのだからちょっと下がってもらって、農林大臣が受けたかどうか。この前も大臣に聞いて、しかも大臣が答弁できる範囲のことを聞いているのに出てくるんだ。国会の審議にそういうことは許されないのですよ。下がってください。」こういうふうに言っているんですよ。これは二月二十五日です。このときに私は田澤農林水産大臣に質問をしているんですよ。ところが、あなたは答弁席に出てきて、私が制止したからやっと戻りましたようなものの、このときにもやはりこういうことを指摘されているんですが、これはいかがですか。こういう態度はどういうふうにお考えになっておりますか。
  96. 石川弘

    石川(弘)政府委員 予算編成におけるプロセスのお話でございまして、私が数字等を承知をいたしておりましたので発言を求めたわけでございますが、先生からそういうお話がございまして、大臣の御発言後にお話をしたわけでございます。
  97. 小川国彦

    ○小川(国)委員 結果としてはそうなりましたけれどもね、あなたは大臣の前に席をふさいでしまったんですよ。しかも、そのときは答弁は、田澤国務大臣が、「前の大臣の事実関係でございますので、はなはだ失礼でございますが、畜産局長から答弁させますから、御了承いただきます。」これであなたが答弁に出てきて当然なんですよ。これを私が指摘しなかったら、あなたはしゃしゃり出てそのまま強引に答弁をなすったと思うのですよ。私が議事録にこういうことが残るような指摘をしたからあなたはようやく引っ込んだけれども、そういう議会の中で大臣に質問しているのに局長が出てくるというのは、これも大変失礼な話なんです。局長の言動としてというか、行動としては許されない点だと思うのですよ。それは一回じゃないのです。  五十六年の十一月十二日の農林水産委員会で、中央競馬会の子会社のもうけ過ぎ、天下り役員の高給与改善について、亀岡農林水産大臣に質疑のところ、石川畜産局長が尋ねられていないのに勝手に答弁席に立ち、大臣より先に答弁、しかも内容においても、天下り役員の給与は中央競馬会時代の六、七割に落としていると答弁しているが、これも現実には福祉財団の専務理事が年俸千百三十万円とか、畜産近代化リース協会の専務が千四十二万円と、あなたが言うように中央競馬会の役員の六、七割どころか、対等、互角以上の給与をもらっている。これも間違った答弁をしている。間違った答弁をしているだけじゃなくて、このときにもやはりあなたが農林大臣より先に答弁席に立ってしまったんです。  ですから、ここのときにも議事録に残ったのですが、「こういう子会社経営の問題について、農林省として実質的な監督指導はどういうふうに取り組んでこられたのか、」「農林大臣に質問しているのですよ。この間も私が大臣に質問したときにあなた答弁に出たのだけれども、これは農林大臣に見解を伺って、足りないところをあなたが補足するのはわかるのです。」「大臣に答弁をしていただいて、そして足りないところを補足するところがあれば局長が出てきて答弁する、それが常識なんですから、そういうふうにやってもらいたい。」こういうことを五十六年十一月十二日の農林水産委員会で私は言っているのです。ところが、あなたは大臣を押しのけて、答弁が石川政府委員というふうになって、答弁に出てきているのですよ。このときもこういう指摘をしているのですね。大臣に答弁を求めているのに、あなたが押しのけてこういう軽視をやっているのです。  それから、まだあるのですよ。五十六年の十月二十一日行財政改革特別委員会、中央競馬会の中継放送のあり方について、大蔵大臣、農林水産大臣、厚生大臣、自治大臣、この四大臣に見解を求め、答弁を求めたのです。ところが、石川弘畜産局長が勝手に答弁席に立って答弁をしまして、四大臣の答弁を求めさせないというやり方をした。これもはっきり記録に残っているわけなんです。  五十六年十月二十一日の行財政改革に関する特別委員会で、私が、「せっかく大蔵大臣から農林大臣、厚生大臣、自治大臣とおいでいただいているのですが、博識な大臣が多いと思うのですが、この野球の中継放送、」「そのテレビ会社の放映料というのは、たとえばテレビ会社が球団に払っているのか、球団がテレビ会社に払っているのか、その辺、御存じの大臣おりますか。」こういうふうに聞いているのですよ。私は、大臣の常識として、こういうことは、野球中継の場合などでも皆テレビ会社が球団にお金を払っている、ですから競馬会も、テレビ会社が競馬会にお金を払うのが当然なんだ、その常識論をただそうということで四人の大臣に質問をしているのに、また答弁は石川政府委員、こういうことになっているのですよ。あなたは四人の大臣の答弁もかわってやるというような大変な権力の持ち主なんです。  こういう態度がたび重なってきたことが、この間四月八日の委員会でものまで挙げて、虚偽のものを挙げて、そのものがあるという虚偽の答弁を二十分間も続けたということになってくると思うのですよ。私は、これは勘違いでは許されない問題だと思うのですね。私はあなたに、こういう重要な国会の審議の場で、再三にわたって許されない言動があり、しかも一時間余にわたる委員会の審議の中の、最終の重大なポイントのところの事実を、虚偽の答弁で二十分間も押しまくったあなたの非常識な行動というのは許されないと思う。私は、あなたに農林水産省の畜産局長をおやめになっていただきたいと思うのです。そのぐらいの重大な責任があると思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  98. 石川弘

    石川(弘)政府委員 国会での先生の御質問に対しまして、先ほど申し上げましたとおり、最終的に、九州のことじゃなくて、全国のことだということで私もわかりまして、持っておりませんということを申し上げておりますが、その間にわたりまして、大変先生に御迷惑をかける答弁をいたしておりまして、まことに申しわけないと思っております。  畜産局長をやめろというお話でございますが、私自身としては自粛自戒をして、これからきちっと仕事をしていくつもりでございますが、畜産局長をやめて責任をとるという考えはございません。
  99. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、民主主義の政治を求めていく中で、議会制の民主主義というものが一番重大な、国民の生活を守る政治のあり方としては、議会政治を大切にしていくということが一番大切だと思う。そういう中では、国会における答弁というのはやはりまじめに、真剣にやらなければならないことだと思うのです。そういう中で、あなたが二十分間にわたって虚偽の事実をずっと申し立ててきた。しかも、それ以前において、いつも議会のルールというものを無視して、国会の審議の中では、最高責任者に答弁を求めるというのは当然なんで、足りないところがあればあなた方が補足するのは当然だけれども、そういうルールも再三にわたって破ってきている。あなたのそういうルール無視は、きょうはたまたま私が指摘していますが、同僚の多数の議員からも、石川局長の議会に臨む態度はきわめて不見識だという批判が非常に強いのですよ。そういう声が強いからこそ、私は具体的事実を挙げて言っているのですが、あなたが、私の指摘した中央競馬会の福祉財団の問題で、不公正だという事実をいろいろ挙げてきて、なぜ不公正かというのはそういうものさえつくってないからだという指摘に対して、それがあるということになれば、私がずっと指摘してきたことに対して、そういうものがつくってあるということで、あなたのやってきた立場はずっと正しかったということになるのですよ、そういうことになる。しかし、そのことが真実であれば、あなたの言ってきたことは全部正しいですよ。だけれども、あなたの言ってきたことが、最後のところがうそであって、虚偽の答弁であったら、その前ずっと言ってきたあなたのことを信ずることができますか、そういうことになると思うのですよ。  それから、四月八日の会議をここでもう一度繰り返すわけにはいかないですよ。四月八日の、一時間にわたって真剣に行われた審議の中で、最終の、あなた方のこういう初歩的なことさえやっていないという私の指摘に対して、あなたはやってあると言い切った。しかも、二十分追及した中で、その間ずっとそう言い切った、ものまで挙げた、期日まで言った、期日は言わないけれども、毎年度末につくっている。しかも、こういうりっぱな製本になったものが毎年毎年あるのです、さっき名前は申し上げましたから。そういうものをあなた見てもいないですよ。見てないんでしょう。見ていれば、これの中に代表者名も入っていないということもわかるでしょうし、住所も入っていないということもわかるでしょう。見てないんでしょう。いかがですか。
  100. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私は、そういうものをお出ししたことは知っております。ですから、そういうものがあることも知っておったわけでございます。問題は、私が間違って御答弁しましたのは、先生から再三の資料要求がございまして、福岡県下の福祉施設について実在しないものがあるのではないかという御指摘がございまして、私どもの資料提出で、住所、氏名等をお書きして出したということを印象づけられておりまして、そういう意味で住所、氏名も先生の方へお届けしてあるはずだという答弁をしたわけでございます。そこで、先生が福岡のことを言っているのじゃないと言われて、初めて全体のそういうものであるということがわかりまして、そういう印刷物はございませんとお答えしたわけでございます。  したがいまして、私はこれは言いわけになりますから、これ以上申し上げるあれはないのですが、その御指摘があるまで福岡の問題に関する資料であると思っておりまして御答弁を申し上げ、結果的に、先生が最初から全国にそういうものがあるかとお聞きになっていることはこれは議事録ではっきりわかっておりますので、その間、最後にそういう印刷物はないということを私がお答えしますまでの間は、先生のお問いに対して正確に答えてないということを深く反省をいたしております。
  101. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、これはいまのような勘違いということで許されないと思うのです。その全国都道府県の一覧表が——厚生省も農林省もその日はおったわけですね。厚生省の社会局長もおった、あなたもおった。そういう中で、この問題についてあなた方は協議もしてきている、きちんとやってきている、こういうことを言っているわけで、そこで全国の、全国のと言って追及の経過はあなたも御存じのように何回も全国のと言っているのですよ。それを最後まで自分は福岡と思っていたというのでは、やはりあなたの能力自体が私は疑われると思うのですよ。私の言っていることが理解できないのだから。再三にわたって、全国の、全国のやつはないでしょうと言っているのに、あなたは福岡のやつをもって、あるあると言ってきたんだと言う。それは勘違いで済まされない。国会の答弁者としての資質と能力を疑われる問題だと私は思うのですよ。  それから、あなたは一番最後になって気がついたと言うのですが、あなたが一番最後になって言われていることもまだこれは真実ではないのですよ。石川政府委員が「印刷物にしたようなものはないようでございます、そういういまお持ちのようなものは。」こういうふうに言っているのですよ。それでは印刷物にしないものはあるのかというと、それもないのですよ。そのとおりですね。
  102. 石川弘

    石川(弘)政府委員 そこでも正確にお答えするとすれば、その印刷物云々ということじゃなくて、全国のそういうものはないとお答えすべきだったといま思っておりますが、私は、その申し上げたときには、すでに先生が全国のそういうものがあるかないかという御指摘だとわかりましたので、そういう性質のものはないとお答えしたつもりでございます。ただ、全国とか、そういうことを言っておりませんので、先生のお問いに対しては正確に答えてないということになろうかと思います。
  103. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いろいろな問題点をずっと細かく挙げれば切りはないわけでありますが、この問題について大臣には御報告なさいましたか。
  104. 石川弘

    石川(弘)政府委員 事の経緯につきまして大臣に御報告しました。大臣からは、今後このような過ちを犯すことのないようにという御注意をいただいております。
  105. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次官は、この問題の経緯についてお聞きになっておりますか。
  106. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 概要についてお聞きいたしております。
  107. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次官、私がいまずっと指摘した問題点ですね。この国会の神聖な議場の中で真剣に討議をしている内容について、二十分間にもわたって虚偽の答弁をし続けた。しかも、委員会が終ってからそのものがないということの連絡も、私がしてからしてくるというように、私がそのものを見せてほしいと言わなかったら恐らく皆さんの方はそのまま通り抜けたのだろうと思うのですよ。私は、そういうようなものはあるはずがないという確信を持っていましたから、委員会終了後その現物を見せてほしいということをお願いしたのはたしか数時間後ですよ。その数時間後、私が見せてほしいという依頼をしてから初めてそのものがないということが返ってきたのですよ。私がそのものを見せてほしいと言わなかったら、そのまま押し通してしまったのじゃないかというふうにも思うのです。私は、そういう議会に臨む態度というものはとても許せるものではない。さっき私がおやめになっていただきたいと言うのは、これだけ国会を侮辱した行為はない、こういうふうに考えているからなんです。次官は、それについてどういう御見解をお持ちになっていますか。
  108. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 国会は国権の最高機関でございまして、国会における審議というものは最も大事なものであり、民主主義というものを通じまして国民の皆さんにその議論というものを聞いていただくことは国の重要な施策を遂行していくという上におきましてきわめて重要なものであると思います。したがいまして、行政の立場といたしましては、この国会におきましての答弁、また説明等、これは十二分に意を尽くして行うべきものと考えておるわけでございまして、そういう点での注意を怠ってはならない、このように考えておる次第でございます。
  109. 小川国彦

    ○小川(国)委員 議事録の写し、私が質問しそれから局長が答弁をした四月八日の質疑の経過、これはまだ正式な印刷したものができ上がっておりませんが、このコピーはごらんになりましたか。
  110. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 まだ見ておりません。
  111. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この正確な内容を御存じない次官にこの見解を求めても、ただいまの見解では私は納得しないというのは、先ほど経過を御存じということですけれども、この質疑の議事録、これは記録部にお願いをして暫定的にとらしていただいたものですが、この経過をお読みにならないと、この重大な局長の過失の問題点についてはおわかりいただけないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  112. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 問題の性質につきましては、ただいま先生からいろいろ御質問し、また畜産局長からもお答えしました経過につきましてはわかったわけでございます。したがいまして、一応畜産局長といたしましても、間違いにつきましては認識をいたしましてこれは十分反省をする、また事実についても明確に資料を提出する、こういうことでお答えをいたしたわけでございますので、これにつきましてはこれ以上のことはないかと思うわけでございます。
  113. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次官、ちょっと勘違いしておられるので、資料の提出を私は求めているのじゃないのですよ。いま資料を提出すると答弁されましたが。(玉沢政府委員「何ですか、ちょっとよくわからないのですが」と呼ぶ)ちょっとこれ以上、時間も参りましたから次官にお聞きしても無理だと思うのですよ。あなたは経過を聞いていると言うのですけれども、質疑の議事録のやつをごらんになってないでこの委員会の質疑だけで実態を把握するのは御無理だと思います。ですから、これについてはあなたの方でこれから、きょうの質疑の経過を含めそれから議事録の質疑の経過もごらんになっていただいて、大臣と御協議をなすって、この問題に対してどういうふうに責任をおとりになるのか、そういうふうな検討をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  114. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 御指摘のとおりにいたします。
  115. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最後に、私は申し上げておきたいと思いますが、先ほど来申し上げましたように、議会制民主主義というものは非常に大事なものであって、その中でわれわれが国政の審議をする一分一分というものは、国民の生命、財産、生活の基本に関する問題を討議をしていくわけであって、私は、その一分間は国民の税金にすれば数千万円、数億に匹敵するあるいは金銭にかえることのできない重要な国会は質疑の場であって、その場においての審議というものはお互いまじめに真剣に取り組まなければならないことだ、こういうふうに考えております。議会制の発達したアメリカなどで石川畜産局長のような問題があったら、私は即時解雇か罷免の問題だろうと思うのですよ。それだけ議会に臨む態度というものはお互いに厳然たるものがなければならないというふうに思うのです。私は、これまで一貫して石川畜産局長の議会における言動、行動を見てまいりました。議会ルールの軽視、それから今日における言動の重大な責任、私はこの問題を農水省がしっかりかみしめて、当委員会に対してもあるいけ私に対しても、この問題に対する処置の最終的な明確な、国民の立場で納得できる責任をおとりになることを要求して質問を終わりたいと思います。
  116. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員長代理 以上で小川国彦君の質疑は終わります。  続いて、藤田スミ君。
  117. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 きょうは競馬の問題でお伺いをしていきたいと思います。  まず、競馬に使用される馬の事故見舞金問題なんですが、中央競馬会で競走馬に使用される馬が事故で死亡したり競走馬で使えなくなった場合に、中央競馬馬主相互会から事故見舞金が出ているわけなんですが、あそこからの支払い金が近年大幅にふえてきているというふうに思います。今年度は五十九億円という数字になっておりますが、なぜ支払い金が近年これほどふえてきたとお考えなんでしょうか。
  118. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、最近、事故見舞金の支出がふえてまいっておりますが、いろいろ事故見舞金を出します基準を設けてやっておるわけでございますが、結果的にそれに該当するもの、事故がふえてきているというのがそういう結果を生んでいるのではなかろうかと思っております。そういう基準、どういう場合にどういう金を出すかというような基準等も若干改定もいたしておりますので、そのことが金額がかさむというような要因にもなっていようかと思いますが、結果的にそういう事故見舞金の支出はふえております。
  119. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 中央競馬会の職員と調教師や馬主の間で一部乱用があるというようなことが言われているわけですが、不正支給についてはどういう指導をしていらっしゃいますか。
  120. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ちょっと先生の御質問あれなんですが、事故見舞金の不正支給という御趣旨でございますか。——私ども、一応そういう事故見舞金の支出に該当する要件を決めておりますので、それに該当したもの以外には支給してはならない、もしそういうことがあればそれは是正すべきだと考えております。
  121. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 実は、私のところにもその不正支給の例が持ち込まれているわけなんです。馬の名前はグリーンフレンドといいます。この馬主の息子さんにもお会いしてみたのですが、この競馬会でグリーンフレンドに対する見舞金支給、これの診断書を見せていただきました。これは競馬会で見せていただいたのです。その診断書では美浦のトレセン山本剛という診療課長の診断で両前管骨骨膜炎という病気になっているわけですね。そういう診断がつけられているわけです。ところが馬主の息子さんの方は、美浦のトレセンの中野診療所長の診断で腰のふらつきであるという病名を受けているわけです。しかも馬主の息子さんは、グリーンフレンドが美浦のトレーニングセンターで診察を受けたのは五十六年の六月、登録する前日の一泊だけで、それ以外は美浦に行ったことないというんです。このときはもちろん健康だと言われまして登録をしたわけですが、同じ年の十月、腰がふらついているというのでN調教師と相談した結果、もう使いものにならないといって登録を抹消したというわけです。ところがその馬主に見舞金支給規程別表一の十四号に適用されたということで、中央競馬馬主相互会から七十五万円の見舞金が送られてきました。十四号には「競馬会の施設内において発生した四肢その他の故障により競争の用に供することができなくなった場合」とこういうふうにあるわけなんですが、適用されたということなんです。馬主はこの規定の内容をよく知りませんから受け取っていたわけなんですが、先ほども言ったように診断書と事実が食い違っている。それから診断医も違うわけですね。馬は登録をして以来美浦のセンターには行っていないで牧場にいたというわけなんです。だから施設内にいなかったわけなんですね。調教師と診療所長の相談でこういう問題が処理されていったんでしょうけれども、ずいぶんいいかげんだなということで、このお金を受け取られた馬主の方がむしろこの問題に対してこういうことがあっては困るということを言っていらっしゃるぐらいなんですがね。こういう問題は氷山の一角だというふうに言われているわけです。したがって、不正支給についてはもっと厳しい態度で指導していかなければならないのじゃないでしょうか。
  122. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生いま御指摘の件につきましては、競馬会に調査を命じておりまして、実は、昨夜もいろいろと調査をしたわけでございますが、いま先生指摘の担当の獣医さんと連絡が十分ついておりませんので、いま、この問題について最終的な私どもお答えを少し控えさせていただきたいと思います。事実をはっきりつかみました上で先生指摘のようなもし不適正な事実がございますれば、中央競馬会を通じまして適切な措置をとるつもりでございます。
  123. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最近こういうふうな見舞金支給の額がふえてきたことに対して、安易に適用されるものの対象がふえたんだという姿勢では困るわけでして、ぜひこの問題はもちろんですが、しかしもっと厳しい姿勢で当たっていくように指導を強化していただきたいと思います。  もう一つ、軽種馬の流通の問題で聞きたいのですが、六月に入りますと各地で軽種馬の市が開かれることになっております。特にこの馬房の需給状況を背景にしまして、調教師が流通の主導権を握っている、そういう事実が、これもその筋では公然の秘密にささやかれているわけです。私は、ここに日本軽種馬協会、これは参議院議員の大石武一先生が会長を務めていらっしゃるんでしょう、ここが発行しました「日本軽種馬生産情報」というのを持っていますが、ここに昨年の八月十日なんですが、こんなふうに例が書かれているのです。「ある牧場に一人の調教師がやってきて、一頭の当歳仔に目を留めた。千五百万円で売りたいという牧場主の希望をきくと、調教師は「不景気で馬主もなかなか金を出さないから、八百万ぐらいでどうかね」と言った。牧場主は農協の借金のことを考えた。調教師に礼金も出さねばならず、安過ぎるとは思ったが、即金が欲しかった。八百万で即金ということで商談がまとまった。調教師はこの話をある馬主に持ちかけ、「クラシック路線に乗りそうな馬がいるんですが、生産者は二千万と言っています。借金で困っているらしく、千百万まで値引きさせ、そのうち三百万は別途の金ということで手を打ちました」と言って、三百万円を用意させた。再び牧場へ現れた調教師は八百万円の小切手を差し出し、「その中から礼金を貰っては気の毒だから、馬主さんに三百万の別途の金を用意させた。領収証は千百万円のを出してくれんか」と言った。牧場主は、結局調教師の言うままにするはかなかった。」結局、取引に際して調教師が金を受け取っているという例がこの新聞で「読者の声」ということで出されているわけです。これまでも、中央競馬会も「競走馬の取引に関する要綱」を出して指導されているというふうに聞いていますが、これにはどういうふうに、こういう問題についてはしてはならないという指導が書かれているわけですか。
  124. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま御指摘の「競走馬の取引に関する要綱」というのが定められておりまして、それを制定いたしましたのは、売買あるいは入厩等につきまして、軽種馬の取引を明朗化し、かつ公正化するというためにつくられたものでございます。そういう取引に関する要綱の中では、「馬主が馬を取引するに際しての調教師の行為は、当該馬主に対する馬選定上の見地からの助言的あるいは技術的行為に限る」ということを言っておりまして、そういう金銭取引として何か差額を取るといったようなことは禁止をしているわけでございます。
  125. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういうことでしょう。この要綱には、「調教師は実費相当と認められる金品をこえるものを受領しないこと。」と、はっきりとこういうふうに言われているのに、生産者や専門家の中では、さっきも言ったように公然の秘密だ、こういうことが相当行われていると言われているんです。しかも、非常にたちが悪いことに、生産組合の役員までが絡んでいるということなんですね。事実、私のところにも三件、何という調教師が、いつ、どこで、幾ら受け取って、あるいは幾ら要求したかというようなことまで持ち込まれてきています。ただ、これは六月の市が済むまではあえて表に出してもらっては困るという訴えもついていますので、ここでは差し控えますけれども、しかし、六月の市を前にして、こういうようなことはもう絶対やってはならないということで、調教師や生産組合に対してもっと強い指導をやっていかなければならないと思いますが、この点はどういうふうになされていくお考えですか。
  126. 石川弘

    石川(弘)政府委員 要綱を遵守させますための指導は今後も回を重ねてやっていくつもりでございます。  それから、一つは、そういうことを実質的に抑える手法といたしまして、これは要綱の(4)にも記載してあるわけでございますけれども、馬名登録をいたします際に、当該馬の取引に関する契約書を提出させる、そこでそういう書面になったものを見ることによりまして、そういう間の——いまおっしゃったように書面をまた偽造してくるという手があるわけでございまして、そのチェックが必要なわけでございますが、そういうものをチェックするというようなことを通じまして、そういう不公正なことがないようにということを、さらに競馬会を指導して行わせるつもりでございます。
  127. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 体質的な問題があるというふうに思うのです。だから、こういうふうな問題がもう公然の秘密だということで言われているんだというふうに思うわけです。だから、個々の問題を言っているわけじゃないんですね。それだけにやはり、もっと毅然とした姿勢で取り組んでいってもらわなければなりませんので、その点は厳しく要求をしておきたいと思います。  次に、競馬の公正確保の問題なんですが、あのロッキードで揺れていた五十一年にも、参議院で児玉譽士夫と競馬関係の問題が取り上げられて、その審議の中で暴力団との関係も指摘されました。ところが、最近、薬物問題で、先日も大井と船橋、両競馬場で薬物不正の事件で暴力団の幹部が逮捕されたということが報道されております。昔から、とかく競馬と暴力団との関係というのは非常に不明朗なところがある、つきまとっていると言われているわけなんです。  ここでお聞きしますが、最近の薬物件数並びに、その馬主を登録する際に暴力団との関係については当然チェックされていると思いますが、どのようになされているのか、お伺いをしたいと思います。
  128. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に、禁止薬物の摘出の状況お答えいたしますと、昭和五十六年度でございますが、中央競馬で三件、地方競馬で二十四件、合計二十七件が禁止薬物検出をいたしました馬でございます。  それから、暴力団等との問題で、馬主の資格、要するに、馬主になりますときにどういうチェックをしているかというお問いでございますが、中央競馬会の馬主となりますためには、申請者が競馬法十三条第二項に定める欠格要件に該当しないということが、もちろんこれは法律上決められておりますので、必要でございます。そういうことから、競馬の公正を害するおそれのない者ということでチェックをすることにいたしております。このために、競馬会におきましては、申請者につきましてその人物なり職業等を競馬保安協会を通じまして調査をいたしております。さらに、学識経験者等十五名で構成されます馬主登録審査委員会に諮問をいたしまして、その調査、審議を経まして馬主登録を行うという手続をとっております。  このように、競馬会におきましては可能な限り綿密な調査を行いまして、馬主の適格でないと認められる者について馬主登録を拒否するということをやっておりますが、今後も、こういう考え方に基づきまして、公正を確保するための指導をしてまいりたいと思っております。
  129. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大変厳しいチェックが行われているというふうにお伺いをしたわけですが、どうなんですか、昭和四十二年から五十二年の一月まで、中山馬主協会の会長を務めて、そして五十二年の二月から五十五年の四月まで中央競馬馬主協会連合会の会長を務めた方、小川乕三さんですね、もうお亡くなりになったのですが、この人は、競走馬を扱う株式会社ハーバーの役員も務めておられます。つまり、馬の世界では常にトップの座ですね。中央競馬馬主協会連合会の会長ですから、まさに一番王座におられた方なんですがね。この方は、関東の暴力団関係者が代表取締役をしている株式会社芳邑、この会社の住所はいまも暴力団の事務所と同じ住所なんです、この会社の監査役に名を連ねていらっしゃったわけです。亡くなられておりますのでやめさせよと言ってもしようがない話ですが、今後のこともありますから私は言っているのですが、ここに謄本を持っているのです。謄本を見ましたら、株式会社芳邑ということで取締役が稲川一二三さん、それからそのほか取締役に萩原吉太郎さん、児玉譽士夫さん、永田雅一さん、そして監査役に小川乕三さん、こうなっています。中山馬主協会会長になられた四十二年の四月から七カ月たった四十二年の十一月に監査役におさまっているのですよ。これは馬主の資格にかかわることではなかったのでしょうか。
  130. 石川弘

    石川(弘)政府委員 小川さんの件につきまして、先生いまお調べになったような事実がございました。実はこの方は昭和二十三年以来ずっと馬主という形で競馬に参画しておられまして、その間競馬の公正を害するといったような面での問題は特になかったと実は聞いております。こういう特定の法人なら法人のどういう地位を占めるかというようなことで、いま、先生指摘のようないろんな関係者との間の関係が密だと見るかどうかというような判断の問題でございますが、実は私どものいままで聞いておりますところによりますれば、当初馬主になられて以来競馬の問題で競馬の公正を害するといったようなことのなかった方ではないかというような報告を受けております。
  131. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私も、この人を公正を欠くような行為があったなんて少しも言ってないわけです。だけれども、ずっと以前から競馬に関係しておられて、その世界で非常に功労のあった方だということです。それで、暴力団とこういうかかわりがあった方が、しかも中央競馬会の馬主協会の連合会会長を務めていらっしゃるのでは、さっき厳しいチェックをするとおっしゃったそういうことが果たして実際にやれるんだろうかと首をかしげたくなりますので申し上げているわけです。しかも、この芳邑という会社の役員に児玉譽士夫も名を連ねているわけですね。だから、警察庁も児玉譽士夫と競馬の関係について相当調査もされておられるわけですし、問題の小川乕三さんがそのときこういう会社に一緒に名を連ねていたということを競馬保安協会が知らなかったとは言えないんじゃないか。知っていて過去からのずっと経緯でそういうことはとても言えないということで押し黙っていたのかどうか。私は、こういうことは後々どれだけこういう暴力団の世界ときちっとけじめをつけて立っていくかという点で非常に大事な問題だと思いますので、もう一度この点は本当に競馬保安協会が知らなかったのかどうか、ぜひ調査をしていただきたいというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  132. 石川弘

    石川(弘)政府委員 競馬保安協会が知っておりましたかどうかということを私はいまの時点でわかっておりませんので、競馬保安協会にただしてみたいと思います。
  133. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 以後、こういうようなことは絶対に起こらないようにすると約束していただけますか。何ぼ過去に経緯があっても——つまり、このときはたまたま児玉譽士夫の問題が出まして、そのルートからも十分把握できた問題をこういうあいまいな形で、しかも一番トップでしょう。馬主協会連合会の会長という一番トップのところにおられる方がこういう絡みを持っていたというのでは話にならないというふうに思うわけです。ギャンブルの世界というのは必ずこういう問題がつきまとって、暴力団は食い物にしていくと思います。ぜひ厳重にチェックをしていただく、そうしてこういう問題が起こらないようにしていくということをぜひお約束をしていただきたいわけです。
  134. 石川弘

    石川(弘)政府委員 競馬の公正を確保いたしますために、馬主あるいは競馬関係者にそういう暴力団等との関係がないようにこれからもきつく指導していくつもりでございます。
  135. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 当然公正に対処すべきものと考えておるわけでございます。     〔加藤(紘)委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  137. 羽田孜

  138. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 初めに、五十六年度も三兆七千億円を超す農林予算というものを使っておりながら食糧の自給率は横ばいでなかなか向上していかない。農林省ではこの点はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  139. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  農林省といたしましては、国内で供給できるものにつきましては生産性を高めながら極力自給していくという方向におきまして現在の農政を進めておるわけでございますが、特に、穀物につきましては食用とえさ用がございまして、私ども主食用の穀物につきましては米を中心に国内での自給力を高めているということをやっておりますけれども、反面、えさ用の穀物につきましては、トウモロコシ等海外から安い飼料穀物が自由に入ってくるということがございます。特に、畜産業については、近年食生活の高度化あるいは西欧化に伴いまして畜産物消費がふえていくということもございまして、畜産の伸展に伴いましてえさ用の穀物の輸入がふえてくるということがございまして、残念ながら飼料穀物につきましては自給率はほとんどゼロに近い状況でございます。私ども、今後とも大家畜につきましてはできるだけ自給飼料というものを供与しながら、国内におきましても飼料全体としての自給率を高めていきたいという方向で努力をしているところでございます。
  140. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 飼料用の穀物が多いからという御説明もあったのですけれども、主食用穀物の自給率というものを見ましたときに、五十年が六九%、五十五年の概算も六九%、主食用の穀物は全く伸びてないわけですね。三十五年度は八九%でしたから、ずいぶん減っていると考えられるわけですね。
  141. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  先生承知のように、日本人の食生活自体につきましても大分変動がございまして、従来米を中心の主食の生活がだんだん麦製品というものに変わってきている、また、米自体につきましても国民の消費が大分落ちてきている、また農村部におきましても米の消費が落ちてきているというような事情がございまして、全般的には米の需給事情も悪くなっているということが一つございます。ただ、五十五年、五十六年につきましては二年重なる冷害がございまして、この関係もあって自給率に若干変化を来しているわけでございます。私どもといたしましては今後の食生活の変動も踏まえながら、現在の主食用の穀物自給率は今後とも維持をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  142. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 私がなぜこういうことを申し上げるかといいますと、一般の消費者とか商業活動をやっているような方たちは、いまの日本の農政は非常に農家の保護が強過ぎる、農家の資金は非常に安いのがあるし、補助金なんかも優遇されている、そういうことを言うわけです。一方、生産者の方から見ますと、生産調整が長年にわたって続けられている、これは牛乳もミカンも米もそうなんでしょうけれども、そして価格は四年も五年も据え置かれてきている。農家にとっても非常に苦しい立場に置かれている。そうしますと、せっかく農林省が毎年三兆数千億円も使いながら、何か農家の方からも消費者の方からも余り喜ばれていないのじゃないか、もっと何か適正な使われ方の方向考えられるのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  143. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘のように、最近特に、所得の伸びが停滞をしてきている、また物価との関係を見ましても、近年は実質消費の伸びが非常に少なくなっているということがございまして、それを反映して食糧についての需要も大体停滞をしてきている。また、長期的に見ましても今後とも摂取カロリーは二千五百カロリー程度のもので横ばいをしている状況でございますので、こういう中でできるだけ農業所得を確保していくあるいは消費者の価格に対する関心度を満足させていくというようなことを考えますと、やはり農業自体としては生産性を高めていくということに基本的なものがなければならないと考えております。  ただ農業の場合は、生産性を高めますには基盤整備であるとか、技術の開発であるとか、また技術の普及とか非常に長い努力の要るものでございますので、工業のように一朝一夕で能率を上げるということもいたしかねますので、私どもは長い目で国際競争力を高めていく、生産性を上げていくという方向に農政の中心を置いているわけでございます。
  144. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 生産性を高めることが大切で、そのための基盤整備ということで、いまおっしゃられたように相当多額のものが使われておるわけです。戦後の日本の農政を見てみますと、最初は開拓事業にずいぶん力を入れられ、その後は、現在も続いているでしょうけれども干拓事業、後は草地造成事業とか国営の農地開発事業、いろいろなさっているわけです。  私去年でしたか、災害対策の方で四国の、カン畑が冷害にやられたということで見に行ってまいりましたけれども、物すごい寒風の当たる山のようなところを全部はぎまして、そこにミカンを栽培されている。そういう光景を見ますと、事前の調査とか地元の打ち合わせといったものが余り十分でなくて、畑はつくったけれども結果的に生産は上げられない、そういうところが多いのじゃないか。また、現地の農家の方などのお話を聞きますと、農林省のやる仕事は工事業者に工事をばらまくためにやっているような感じもする、こんな意見を言う人もいるわけでありますけれども、そういう点、今後もっと考えるべき点が多いのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  145. 角道謙一

    角道政府委員 農林省の事業は、全般的に見まして受益農家の要望を前提にいたしまして、そこから事業を採択するという仕組みをとっております。したがいまして、いま先生指摘のような事例、あるとすれば非常に残念でございますが、私ども今後とも事業の採択あるいは事業の計画につきましては無論受益農家の意向を十分に反映をさせていく。ただ、これが今後の農政の方向に合致することは無論前提でございますけれども、そういう方向におきまして地元農家の意見は十分反映させていきたいと考えております。  それから、先ほどカロリーの点で摂取カロリー二千五百と申しましたが、供給カロリーの誤りでございますので、訂正させていただきたいと思います。
  146. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 生産性を高め、また基盤整備をやっていくということの背景には、そこで専業的に農業に携わる人を育成していきたいというお考えもあるのじゃないかと思いますけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。
  147. 角道謙一

    角道政府委員 今後とも農業生産を安定的に、また、国民の需要に応じて伸ばしていくということのためには、やはり中核になる農家、これは必ずしも専業とは私ども申しませんけれども、技術力あるいは将来への展望を持った、また経営能力もある農家を中心に据えていくことが必要かと考えております。ただ、しかし、現在、土地利用型農業を見ましても、約半数近くの農地は兼業農家が所有しておりますし、特に、稲作土地なんかにつきましては四十数%のシェアを兼業農家が持っておるという実態から見まして、兼業農家も農業生産の上におきましては無視することはできないわけでございますし、また、社会経済的に見ましても兼業農家の方々、これは農村におきまして非常に重要な社会的な地位を占めているということもございますし、今後の農業生産を進めていくには中核農家だけではなしに、兼業農家も取り込みまして一つの地域全体としての農業生産力を高めていくという方向に私ども考えているところでございます。
  148. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 中核と兼業と両方というようなお考えのようですけれども、そうしますと、力こぶはどっちに入っていくわけですか。
  149. 角道謙一

    角道政府委員 主として私どもは中核農家の育成というものを中心には考えておりますけれども、先ほど申し上げたような問題もございますし、兼業農家の地位というものも考えますと、どちらにウエートを置くと、なかなかそう一概には申し上げにくいわけでございます。やはり地域全体としての農業生産を高めていく。たとえば、北海道におきましては専業的なものあるいは中核的なものが多うございますけれども、都市近郊に参りました場合には必ずしも専業農家だけで農業をやっていくことはできないわけでございますので、やはり農業というのは地域、地域の実情に即した、また社会構造に即した形で地域自体の農業の発展を図っていくということが必要かと考えております。
  150. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 地域の実情に即した農業というふうな考えで進めていきますと、全国で一律的に減反やっているようないまの政策というのはまるきり反する政策じゃないのでしょうか。
  151. 角道謙一

    角道政府委員 これは先ほど事業の採択の段階でも申し上げたわけでございますが、やはり国には国の基本的な農政の方向がございます。水田利用再編の場合、いま先生指摘のとおり、地域、地域でそれぞれ米が一番有利だという形で米をつくられますと、現在の需給事情を見ましても供給過剰で私ども非常に困っているところでございますが、こういう状態が拍車をかけられるという点がございますので、地域に即した農業といいましてもやはり基本的には私ども考えておりますような、全国的な農産物の需給の実態に即したという大きな枠の中で地域農政を考えていくというような点は先生の御指摘のとおりだと思います。
  152. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 全国的な需給の実態に即したというお考えではありますけれども、米をつくる場合に、いまこれほど交通手段が発達している時代ですから、何も全国でつくらなくちゃならないとか、そういう考えは持たなくたっていいと思うのです。それで米しかつくれないようなところはどんどん米をつくる、それからまた米以外のものをつくっても十分生産性を上げられて農家として成り立っていけるというような場所ではほかの作物に転換していくことを推し進めていくという方向こそ、生産性の向上に一番つながるのじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  153. 小島和義

    ○小島政府委員 転作の問題は、米の需給事情を改善するという観点から見まして、全国の米づくり農家の方にそれぞれ負担をしていただくという性格のものでありまして、特定の地域が全くこれに協力しないということでは済まない問題であると考えておるわけでございます。ただ、地域別にそれぞれ事情が異なっておりまして、作物のそれぞれの適正の問題もございますし、圃場の条件もございます。また、そこでとれます米の質の問題も絡んでまいるわけであります。したがいまして、転作等の目標配分に当たりましては、そういったいろいろな要素を十分加味いたしまして、目標の割合としては各都道府県別にかなりな差を設けて配分をし、その目標に従って各地域で御協力をいただいておる、こういう状況でございまして、御趣旨のようなことは、ただいまの水田利用再編対策においても十分反映している、かように考えておるわけでございます。
  154. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 農政には基本的方向があるとか、農業の生産性を高めるための農政なんだ、こういうことを長年おっしゃっておりながら、食糧の自給率はなかなか上がっていかない。そして、農家にとっても消費者にとっても何かと苦情が出したくなる農政だ。じゃ、中核農家を育成するのか兼業農家かと質問すれば、これはまた両方なんだ。確かに、日本全体の農業を考えなければならない、あるいは農家全体のことを考えなければならないので、むずかしい面もあるかとは思いますけれども、もう少し方向がはっきり打ち出されてもいいのじゃないか、こんなふうに考えるわけであります。  それで、中核農家を育成していくためには、やはり中核農業に携わる人が農業再生産をやっていけるような農産物の価格になっていかなければならないとも考えるのですけれども、四年も五年も米価がほとんど据え置かれたままといういまの状況、そして一方では、物価、人件費、交通費、税金、あらゆるものが上がっていく中で、中核の米作農家あるいは酪農専業農家、こういう人たちの生活というものは、農外所得がそう上がるわけでもなし、苦しくなる一方なわけであります。そうした専業農家をどうするかということを考えた場合に、いまの価格のあり方でいいものかどうか、この辺私は疑問を感じておるのでありますけれども、農林省ではどういうふうにお考えになっておりましょうか。
  155. 角道謙一

    角道政府委員 価格政策につきましては、従来、高度成長期には主として農家の所得確保という機能が非常に重視されてきたわけでございますけれども、最近のように食糧消費につきましても一応停滞が見られる、また、将来を展望いたしましてもそう大きな期待はできないという状況におきましては、やはり価格政策に所得付与的な効果を期待するというのが非常に困難かと考えております。そこで、先ほど申し上げましたように、消費者の方からも安い安定的な価格での食糧供給ということを要望されておりますが、こういうことを前提にいたしますと、やはり今後の価格政策のあり方というものは、需給調整機能あるいは価格変動を防止するという機能に重点を置いたものということにならざるを得ないかと考えておりますし、そういう方向中心に私ども考えるわけでございますが、ただ過渡的には、やはりいま先生言われましたような、農家の所得確保、特に、中核農家というものを念頭に置いた価格政策運用ということも並行して考えていく必要があるというふうに考えております。
  156. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それで、いま過渡期かもしれませんが、ここ二、三年の間どういうふうにされていくお考えですか。
  157. 角道謙一

    角道政府委員 具体的な価格決定につきましては、毎年毎年の需給事情は変動がやはり農作物の常としてございますので、そういうものを見ながら毎年毎年適正に、先ほど申し上げました方向に従って決定をしていきたいと考えております。
  158. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 過去三、四年見ましても、どうも生産者の側から見ればまことに適正でないように見られるわけでありますので、確かに日本の食糧は高いんだというような声もありますし、消費者にとれば安いにこしたことはないかもしれませんけれども、私は、地方の出身で、東京にきょうだい、親戚がおりまして、米を十キロ買うときに、三千幾らだか四千幾らでしたかあれですけれども、とにかく米を買うとき高いと思うかと聞きますと、高いと思うと言う人は一人もいないわけですね。私は食糧とかなんとかそういったものの価格というのは、その国々によって、国の成り立ち、歴史によってそれぞれのものがあってしかるべきじゃないかと思うのです。たとえば、香港とかアラビアあたりに行けば、水一杯飲むのにもお金を払わなくてはならないという状況もあるわけですし、必ずしも日本の食糧が高いばかりじゃなくて、たとえば、電気なんかだって、外国に比べれば四倍も五倍も高くなっているわけであります。それで、なぜ農産物だけが高いと言われるのかわかりませんけれども、世界各国の食生活、食糧に使っている家計の中に占める比率なんかを見ましても、日本はイギリスとかフランスなんかよりははるかに低くなっております。こういったことで、農林省が日本の食糧は高いんだとお思いになる必要はないと思うのでありますけれども……。
  159. 角道謙一

    角道政府委員 御指摘のとおり、それぞれの国の物価というのは、その国の資源なり労働あるいは資本のあり方によって決まっていくものでございますから、私どもとしましては、現在の国内の農産物の価格というものは一応均衡のとれたものと考えております。また、先ほど先生指摘のように、エンゲル係数をとりましても先進国とそう差異はないという点で、私どもそう高いとは考えておりませんけれども、反面、これだけ各国の経済が発達をし、また産業、農業というものがそれぞれの国で発達をし、それが相互に貿易という形で各国間で依存をしてくるという状況になってまいりますと、農産物につきましてもやはり生産優位のところではたくさんこれをつくって外国に輸出をしたいというような点がございまして、そこで特にいま外国から、外国農産物との比較におきましてわが国の農産物価格が高いという点は批判を受けているわけでございます。  これにつきましては、私ども、日本の土地価格、農地価格というものが外国に比べましても非常に高い、また農業労働者あるいはその他工業労働力を見ましても各国に比べて非常に多いというようないろいろな事情考えながら、やはり現在の農産物価格につきましてはその国、日本なら日本なりの事情のもとにあるということも外国の方にはよく御理解をいただきたいというように考えておるわけでございます。
  160. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 「農業の動向に関する年次報告」、まあ農業白書というのですか、こういったものとか日ごろの農林省のお話などを伺っておりますと、農家戸数がだんだん減って、農地が集約化されてくる、あるいは農業に従事する人間が少なくなっていくことを何か歓迎されているように私どもには受け取れるのですけれども、農家が農業をやめて工業に携われば、工場で働いて工業製品を生産するわけですから、これはまた輸出なり何なり、国内市場だけで賄えなければ輸出するほかないわけで、これ以上日本の工業化が進んでいけば、いまおっしゃった貿易に対する圧力といったものはよけい増してくるのじゃないかというようなことが考えられます。また、日本が外国のいわゆる先進国と言われているああいった停滞した状況に陥らずに何とかがんばっていられるのも、農村の活力があり、うんと景気のいいときは工場に出て働く、景気が悪くなれば家に引っ込んで、収入は多少落ちても農業でがんばっていく、こういったスポンジ的な役割りも果たしているのじゃないかと考えられるわけであります。それで、日本の農家の数はなるべく減らない方がいいのじゃないかと私は考えていますけれども、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  161. 角道謙一

    角道政府委員 いま先生お話にございました農業あるいは農村の役割りにつきましては、私ども大体そういう方向だと考えております。  ただ、これからの農業を見ていった場合、それぞれの農家におきましても、技術水準が高まっていく、あるいは反当収量も上がるというようなことになってまいりますと、生産力としては一方でふえてまいりますが、反面、消費はそれに伴ってふえていかない限りは需給のアンバランスがやはり出てまいりますので、この点につきましては、生産性の向上に従う需要の拡大ということがなければ農業全体として見ますといろいろ問題が出ると私たちとしては考えるわけであります。  もう一つの問題といたしまして、私ども、農村はやはり先ほど言われましたような、ただ農業生産力を担っているというだけではなしに、一面、兼業農家は他産業従事という形で、またレイオフ等がありましたときに自分の土地で生活が営めるということもございまして、景気変動の一つのバッファーのような役割りを果たしているという御指摘もそのとおりでございます。ただ、私ども将来を考えてまいります場合、農業あるいは他産業というものがバランスのとれた形で伸びていくということが必要だと考えております。ただ、農業は、生産性が上がっていく、そこで生産力が上がるだけ他産業に労働力を配置していけばいいというようなものではございませんので、また専業農家、兼業農家というものは現に農村で農業中心に生活を営んでいるという実態と、それから、今後の日本経済全体の発展を考えていく場合、農業あるいは製造業その他の工業、あるいは第三次産業というものが一応バランスがとれた形で伸びるということが大変必要だと私ども考えております。
  162. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それから次に、最近、新聞を開くたびに、見出しに牛肉とかオレンジの輸入枠の拡大あるいは自由化というようなことが大きく出ておるわけでありますが、私、この前、アメリカから来たマクドナルドさんという方にお会いして一時間半ぐらいいろいろお話を聞いたのですけれども、その間に牛肉とかオレンジという言葉は一度も出てこなかったわけなんでありますけれども、実際に新聞に報道されているようにアメリカはそれを摩擦解消の第一の目標に掲げて日本に迫っているのですか。
  163. 塚田実

    ○塚田説明員 お答えいたします。  牛肉、オレンジについての自由化要求につきましては、実はこの前の東京ラウンドのときにおいてもアメリカは主張したわけでございます。今日の経済摩擦の中で、米側の対日要求は非常に範囲の広い、日本経済全般にわたる要求を行ってきておりまして、その中に農産物が入っているわけですが、その中にオレンジ、牛肉が位置づけられているというふうに私ども考えております。
  164. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それで、それに対する取り組みはどうされていこうとしているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  165. 塚田実

    ○塚田説明員 農産物の分野でも米国からの要求はいろいろあります。オレンジ、牛肉につきましては、私どもは現在、わが国の果樹それから畜産業は非常にむずかしい事情にありますし、また、これらのものはわが国の農業の基幹をなすものでございますから、オレンジ、牛肉の自由化要請には応ずることはできないわけであります。私ども、機会をとらえて米側にこの事情を説明してきておりまして、理解を求めてきているところでございますが、今後ともこういう態度で適切に対処してまいりたいと考えております。
  166. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 貿易摩擦の解決というのは、いまや国民的な課題といいますか、たとえば、政府においても、通産省だけで何とかすればいいとか外務省だけで何とかすればいいという問題ではないというふうに思われます。それで、農林省も、ただ拡大は嫌だ嫌だと言うだけではちょっと解決の方向には向かっていかないのではないかと思われるので、その代案として何かお考えをお持ちなんでしょうか。それとも、まあオレンジと牛肉さえここでストップさせればいいんだというお考えなのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  167. 塚田実

    ○塚田説明員 現在の日米経済摩擦の根源は何にあるかというふうに私ども考えているわけですが、私ども考えでは、米国の経済の不況、一千万人に上る失業者、実質経済成長率がゼロに近い、二けたインフレ、ここにあるわけでございまして、こういう大きな問題がある以上、摩擦解消というような抜本的な対策を日本として考えるわけにはいかない事情にあるのではないかと思います。せいぜい鎮静化する方策を考えられるだけというふうに私ども考えております。  そこで、農産物の分野について日米間でいろいろ議論しておりますが、私ども、現在自由化してない品目二十二ありますけれども、その品目いずれもなかなかむずかしい事情にあります。しかし、他方米側の要求は、自由化以外の問題でも検査手続の問題とかその他関税の問題とかいろいろございます。私どもは、できないものはできないわけでございまして、できるものにつきましてはできるだけ前向きに検討していきたいというふうに考えております。
  168. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 時間ですから終わりますけれども、つい最近河本構想とかいいまして、アメリカやカナダの余った穀物を各国が資金を出し合って買い取って後進国に援助しろ、こんな案もあるようですし、またいまライセンス生産をしている戦闘機とか、そういうものも、国内でもある程度つくるんでしょうけれども、なるべく外国から買おうという声も出ているようであります。農林省としましても、私は、牛肉やオレンジは何としてもこれ以上輸入してもらいたくないと思いますので、そういった方向でほかの解決方法が可能になるような努力をしていただきたい、こう思います。  質問終わります。ありがとうございました。
  169. 羽田孜

    羽田委員長 次回は、来る二十日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会