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長谷川参考人 漁特法の一部
改正につきまして
参考人として御
意見を申し上げます。
イカ釣り漁業につきましては、現在、
収支採算が非常に悪いために
日本の
漁業の中では
経営の
内容の一番悪い
漁業であるというふうに言われておるわけでございますが、今度の
漁特法の
改正によりまして
特別償却を認める。ところが、こういう
経営の
内容の悪い
漁業でございますので、これを直ちに適用するというわけにはまいらないのじゃないかと思うのでございます。この
恩典を受ける隻数はきわめて少ないのじゃないかと思うのでございます。しかし、
イカ釣り漁業もいつまでもこういう
状態であってはならない。そこで、どういうふうにしたならばこの
漁特法の
特別償却の
恩典を受けられるようになるかというその
対策等について少し御
意見を申し上げたいと思うわけでございます。
イカ釣り漁業は、五十五年度におきましては非常に豊漁でございまして、またその上に
輸入が相当増加いたしました。その結果、在庫が非常に多くなりましたために、
魚価が前年度に比べまして約半値に暴落したわけでございます。その結果
漁業者は、
燃油高の
魚価安ということで非常に
経営が苦しくなりまして、
倒産も相当出たような
状況でございます。ところが、五十六年になりましたら、その
反対に今度は非常に
凶漁でございまして、
日本海方面におきましては、
沖合いの温度が低かったために前年度の五五%
程度しか水揚げが上げられないというふうな
状況でございました。また、海外におきましても
イカ漁業の
生産が非常に少なかった、こういう
状況でございましたので急に在庫が減りまして、昨年の秋口から
魚価がだんだんと上がってまいりまして、暮れには相当の高値を示したわけでございます。ことしに移りましてから少し
魚価は下がりましたけれ
ども、前年の値段の大体七、八割の価格を維持しておるようなわけでございます。こういうようなところから、本年は何とか期待ができるのじゃないか、私はかように思っておるわけでございます。
このように
イカ釣り漁業は不況でございますが、これは
イカ釣り漁業の不況ということだけで済む問題ではないのでございまして、御承知のように
イカ釣り漁業は隻数が非常に多い、そして地区の
漁業協同組合と非常に密接な関係を持っております。ということは、
燃油資金あるいは資材の
資金等は、銀行よりもむしろ地区の
漁業協同組合から融資を受けておる額が多いのでございます。そうしますと、
イカ釣り漁業が衰微いたしますと、勢いそのしわ寄せが地区の
漁業協同組合に移っていく、
漁業協同組合の財務
内容はきわめて
悪化する、現在そういうふうな
状態になりつつあるわけでございます。つまり、
イカ釣り漁業は、他の系統
組織の財務
内容にまで大きな影響を及ぼしておる、これが
イカ釣り漁業の
実態でございます。その点、私非常に責任を感じておるのでございますが、何とかしてこの
イカ釣り漁業が回復すれば、地区の
漁業協同組合の財務
内容もよくなるのだからということで現在いろいろ
努力しておるわけでございます。
これには、それでは一体どうしたらいいかという点がありますが、第一番目には、
イカ漁業というものは
生産構造が非常に多様でございます。まず、大手の会社のトロール
漁業がございます。これが海外において相当多量のイカをとって
日本へ運んでおります。それから底びき網
漁業におきましても、イカを相当混獲しております。また、この三、四年急に盛んになってまいりましたが、イカ流し網
漁業というものができてきまして、これが相当の水揚げを上げております。そのほかに、従来からの
イカ釣り漁業、これも大型、中型、小型というふうに分かれておりまして、私が
会長をやっております中型
漁業というのは三十トンから百トン未満の船でございます。このほかに百トン以上五百トン未満の大型
漁業がございます。それから三十トン未満の小型
イカ釣り漁業がございます。この小型
イカ釣り漁業は、現在のところ、隻数にいたしますと大体三万五千隻
程度はあるというふうに推定されております。中型の三十トン三百トンのイカ釣り船は、昨年の初めの承認隻数におきましては大体二千隻、百トン以上は二百隻というふうな
状況でございます。
こういうふうに分かれておりますけれ
ども、三十トン未満は、現在のところ、一部の県におきましては県知事の許可制になって隻数を
規制しておりますが、大部分の県では海区調整
委員の指示によるとか、あるいは全然自由
漁業として放任されておるというふうな
状況でございます。したがって、この三十トン未満のイカ釣り船をそのままの
状態で野放しにしておきましたのでは、中型以上のわれわれがいかに
減船等の
措置を講じて自粛いたしましても、どんどん小型船がふえていくというのではこれは何にもならないわけでございます。
そこで、まず、
イカ漁業の体制を整備するという
意味におきまして、私
どもは、かねがね三十トン未満の小型船の
制度化ということを
水産庁に
お願いしておるわけでございます。三十トン未満の船三万五千隻全部というわけにはとてもまいりませんので、少なくとも十トン以上三十トン未満の船につきましては知事の許可制にしていただく、そしてこの隻数の増加を
規制していただきたい、また漁期等の
規制も中型以上の
イカ釣り漁業と同じように考えていただきたい、
イカ釣り漁業の体制をまず整備していただきたいということが
一つでございます。
それからもう
一つは、私
どもの中型は昨年の初めにおきましては約二千隻と申し上げましたが、これが五十六年の一年間におきまして約七百五十隻
減船されております。これは従来のいわゆる共補償による計画的な
減船ではございません。
イカ釣り漁業はもうだめだというので、イカ流し網
漁業に転換したものが大体三百七十隻ございます。そして残りの三百八十隻は廃業した業者でございます。こういうふうに、
イカ釣り漁業はもうだめだということで七百五十隻の多数の船が他の
漁業に転換し、あるいはまたみずから廃業していったというふうな
状況でございまして、五十七年の大臣承認隻数は、まだ
水産庁から承認書が交付されておりませんけれ
ども、恐らく二千隻から千二百五十隻
程度には減少しておるのじゃないか、かように思うわけでございます。私といたしましては、少なくともこの千二百五十隻というものは今後
イカ釣り漁業に腰を据えていただいて、じっくり
イカ釣り漁業の振興を考えてもらわなければならぬ人たちだ、かように存じております。
そこで、何とかしてこの中
型漁船、残存しました千二百五十隻の
漁業者の
経営が立ち直るように、その
一つとしまして直接影響が一番大きいと思われますのは、いわゆる集魚灯でございます。この
イカ釣り漁業におきましては、全燃料の約四〇%
程度が集魚灯のために
消費されておるわけでございます。従来の集魚灯というのは白熱灯でございますが、この電力
消費量というものは、大体全燃料の四〇%前後というふうに言われておるわけでございます。こういうふうに非常に燃料をたくさん使う集魚灯でございますので、私
どもは、第一次のオイルショック以来、何とかしてこれを自主
規制しようじゃないかということでトン数階層別にソケット数を限定しまして、そして、使用する白熱灯も三キロワット以下のものを使いなさいというふうにして、
一つのめどを立てましてそれを
指導してまいったわけでございます。それからもう六、七年たつわけでございまして、だんだん
効果は出ておりますけれ
ども、この集魚灯というものは幾ら光力がなくてはいかぬというものではございません。他の船と並んだ場合に、他の船よりも明るければそこへよけい集まってくるというふうな
状況でございますので、自然にそこに過当競争が出てくる。あの船よりもうちは少し明るくしよう、あれよりも明るく、それでだんだん大きくなっていったというのが
現状でございます。それをわれわれは、そんなに光力を使う必要はないんだから、この
程度下げなさいということで
規制を設けてやったのでございますが、遺憾ながら、これは自主
規制である、罰則もございません、業者の良心に任してやる。最近、燃料がこういうふうに高くなってまいりましたので、業者の方も、うん、なるほど、こんなにむだ遣いをしてはいかぬなということで、だんだんわれわれの
規制した数値に近づきつつはございます。ところが、昨年あたりから放電管方式の集魚灯が技術
開発されたわけでございます。これによりますと、これは業者の話でございますが、いろいろ種類はありますが、従来の燃料の大体四分の一で済みますということを言っておるわけでございます。早速それをつけた
漁業者もおります。そういう人の話を聞いてみますと、少なくとも七〇%前後の燃料の節約にはなるようだということを言っております。燃料の節約がそういうふうにできることはわかりましたが、ただ遺憾ながら、その光力はどの
程度でいいのか、あるいはそれが漁獲にどういう影響を与えるか、それがまだわかっておりません。
そこで、先般来、
水産庁等の御
指導を受けまして集魚灯の技術
開発研究
委員会をつくりまして、大学の先生、試験場の先生等を交えまして、あるいはすでにそういう省エネ集魚灯をつけておる業者等を集めまして、今後その点につきましてできるだけ早い期間に結論を出していこう、こう思うのでございます。そこでこの結論が出ましたならば、私
ども中型の
沖合いイカ釣り漁業は現在、構造
改善業種に指定されておりますが、その構造
改善の基本方針の
一つにぜひひとつ加えていただきたい、かように思うわけでございます。
現在、省エネといたしましては、省エネ漁船の建造、取得あるいは省エネ機関につきましては構造
改善の計画に載っておりますが、
先ほども申しましたように、
イカ釣り漁業は現在不振をきわめておりますために、新しい船をつくるなんという人は、現在のところ年にまあ一、二隻しかありません。また、省エネエンジンといいましてもすぐ
開発されるわけではございません。いま目の前に業者が欲しいと言っているのは、この省エネの集魚灯でございます。ぜひこれを構造
改善計画の基本方針の一環に加えていただきまして、この融資につきまして低利の
資金を公庫から借りられるようにしていただきたいということでございます。九十九トンの船でございますと、一隻当たり現在のところ大体一千七、八百万で足りるわけでございます。ぜひひとつこの融資を構造
改善においてめんどうを見ていただきたいということでございます。
それから第三番目は、私
どもの
漁業は太平洋の北海道並びに三陸方面を主体にいたします。それからまた、
日本海を主体にいたした
漁業でございますが、私
どもがいつも頭を抱えておりますのは朝鮮の問題でございます。御承知のように、朝鮮が五十二年の八月から二百海里法をしきまして、豆満江の国境から三十八度線に向かって直線を引きまして、さらにその先に五十海里の線を平行に引きまして、それをもって軍事警戒ラインとしたわけでございます。その外に経済水域というものを設けまして
日本漁船の入域を認めてやろうということになったわけでございます。その広大な軍事警戒ラインの中にこそ本当の朝鮮の
資源はあるわけでございますが、われわれは遺憾ながらその軍警ラインの外側でしか
操業できない。現在その外側において
操業できておりますものは、
イカ釣り漁業と
日本海のマス
漁業とカニかご
漁業、この三種類の
漁業でございます。また、五十二年の二百海里法がしかれます前は、西海岸においても
イカ釣り漁業、フグの延べ
繩漁業あるいは以西底引き
漁業が
操業しておったのでございますが、西海岸の方は完全にシャットアウトされてしまったわけでございます。ですから、現在は東海岸の経済水域におきましてこのイカとマスとカニの
操業ができております。
ところが、これが暫定協定でございまして、しかも国交がないために、私
どもが日朝議員連盟の御
支援のもとに向こうに参りまして、民間同士の話し合いによって二カ年ずつの延長でやっておるわけでございます。ことしの六月でちょうどその期限が切れます。ことしあたりは何か
一つ向こうから相当な
条件が出るのじゃないか、ことしは相当の
条件闘争になるのじゃないかという心配があるわけでございます。一昨年の交渉のときには、向こうから相互主義によりまして
日本の漁船を入れるかわりに朝鮮の船も入れてくれ、これは毎回言っておるわけでございますが、私
どもはそれはできません。ただ、
日本の二百海里の
法律がありますから、その
法律に従って
政府が許可すれば、私
どもが入れてもらっておるその
業種につきましてはおいでになることもよろしいと思います。それはわれわれが入れてもらっているのだから、われわれはわれわれの業者を納得させることはできますが、他の
業種について朝鮮の船が太平洋の真ん中でサバをとる、イワシをとるといっても、それは私
どもはオーケーとは言えませんということで拒否しておるわけでございますが、そのかわりに、それじゃバーター
制度を設けてくれ、自分らのとった魚をあなた方買いなさい、そしてその代金でもってわれわれの欲しい資材を送ってください、そうしてくれれば漁船乗り入れの相互主義にかわるものとして認めようということを前回の
会議では言われました。私
ども、それは
一つの貿易でございますが、われわれは零細な
生産者団体であるからしてすぐそれにオーケーするわけにはいきません、ことにあなた方の欲しいのはスケソウダラでございましょう、スケソウダラは
日本においては非
自由化品目、IQ品目になっておりますから、これは私
どもがすぐ、はい買いましょうと言うわけにはいきません、まず第一番にIQの枠をつくってもらわなければならぬ、これがまた非常にむずかしい、そして
生産者が貿易に手を出してもなかなかむずかしいので、これは貿易の専門の商社に代行してもらわなければなりません。そういういろいろな問題がございますから、われわれは
実現に
努力いたしますから、今回はひとつ次回まで
検討させてくださいという
条件のもとに帰ってきておるわけでございます。
そういうようないきさつからしますと、ことしの
会議におきましては相当な
条件が出てくる、スケソウダラの買い取りのために枠をつくれというふうな
条件が出てくると思います。そういう点につきましてひとつ
政府の方も、また諸
先生方にも御
支援をいただきたい、かように思うわけでございます。
これで私の
意見を閉じさせていただきたいと思います。ありがとうございました。