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1982-03-19 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月十九日(金曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 戸井田三郎君 理事 渡辺 省一君    理事 新盛 辰雄君 理事 武田 一夫君       上草 義輝君    太田 誠一君       川田 正則君    岸田 文武君       北川 石松君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       高橋 辰夫君    丹羽 兵助君       保利 耕輔君   三ツ林弥太郎君       山崎平八郎君    小川 国彦君       串原 義直君    島田 琢郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       日野 市朗君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    小沢 貞孝君       近藤  豊君    林  百郎君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         農林水産大臣官         房審議官    船曳 哲郎君         自治省財政局地         方債課長    森  繁一君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   木村 守男君     中村喜四郎君   佐藤  隆君     塚原 俊平君   菅波  茂君     北川 石松君   神田  厚君     小沢 貞孝君   寺前  巖君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     菅波  茂君   塚原 俊平君     佐藤  隆君   中村喜四郎君     木村 守男君   小沢 貞孝君     神田  厚君     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画変更について承認を求めるの件(内閣  提出、承認第二号)  農林水産業振興に関する件(畜産問題等)      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画変更について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  3. 新盛辰雄

    新盛委員 漁港法第十七条第三項の規定に基づく漁港整備計画変更承認についてこれから論議をいたしますが、まず、最近の漁業をめぐる情勢、二百海里時代の定着等による日本近海漁場重要性というのは申し上げるまでもないことですが、こうした情勢の中で、今度、新しく第七次計画が新規に発足をすることになるわけであります。その趣旨については、今日の情勢の中では当然の成り行きかとは思いますが、まず、こうした策定に当たられました政府としては、この計画の将来の見通し、そして策定に至りました経過について、簡潔に説明を願いたい。  さらに、今回の計画重点は一体どこに置いているのか。第一種、第二種漁港強化していく整備計画立てるなどの面で重点が置かれているのかどうか、御説明を願います。
  4. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お答えを申し上げます。  わが国漁業生産は、委員も御案内のとおり、戦後沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へということで拡大してまいりまして、生産加工技術革新等とも相まちまして、また同時に、国民所得の向上による水産物需要の増という背景も踏まえまして、順調に発展してまいったわけでございます。四十七年には一千万トンを超える生産量になりまして、その後もおおむね一千万トンを超える水準で推移していることは事実でございます。  しかしながら、最近における漁業を取り巻く環境がきわめて厳しくなっていることは委員も御承知のとおりでございまして、特に二百海里海洋秩序のもとにおきますところの諸外国の規制強化あるいは遠洋漁業の停滞、さらには燃油価格高騰等によりますところの漁業経営の悪化というような事情が発生してまいっておるわけでございます。  このような背景を踏まえまして、新計画立てるに当たりましての目標年次でございます六十二年のわが国水産業漁業部門展望いたしながらこの計画策定したわけでございますが、私ども認識といたしましては、まず遠洋漁業でございますけれども、これは海洋秩序定着あるいは外交努力によりまして、各国の二百海里内の漁獲割り当て量確保には最善の努力を尽くしてまいったわけでございまして、最近に至りまして、この遠洋漁業生産量はある程度まで安定をいたしております。しかしながら、予断を許さないというのが現在の情勢でございます。  また、沖合い漁業につきましては、特に三百万トンを超えるイワシ資源につきましては、これは将来いろいろな変動もあろうかというふうに感ずるわけでございまして、イワシ、サバあるいはアジといったようなものが中心でございます沖合い漁業につきましては、今後、その資源動向には注意する必要があるものの、おおむね現状程度生産量で推移していくのではないかというふうに考えておるわけでございます。  さらに、最も重要な分野沿岸漁業でございまして、つくる漁業というようなことと相まちまして、その生産量養殖業を含めまして沿整計画あるいは栽培漁業、サケ・マス放流事業等の推移の効果があらわれまして、これは増加に向かうというように考えておるわけでございます。  トータルといたしましての水産業の総体は、おおむね現状と同水準あるいはこれを若干上回る生産力は持っておるというように考えておるわけでございます。  このような考え方のもとに今回の計画立ててまいったわけでございますが、第七次の漁港計画におきましては、第六次に比べまして沿岸沖合い漁業振興のための整備沿岸漁船勢力の急激な増加に対応した整備沿岸沖合い漁業の進展に伴う漁港への陸揚げ量増加に対応した整備及び漁船安全性確保のための避難港の整備といったような点に重点を置いておりまして、先ほど先生も御指摘になりました、特に第一種漁港及び第二種漁港整備重点を置いた次第でございます。  事業費のベースで見ますると、第一種、第二種の漁港につきましては、第六次が五九・四%でございましたが、これを六四・三%まで引き上げるような内容といたしております。
  5. 新盛辰雄

    新盛委員 いま、第一種、第二種を重点に置いて計画をされたというふうに御説明がありました。今年度の予算措置から見まして二兆百億という計画規模になっているわけでして、漁港修築事業は四百八十港、漁港改修事業が八百七十、こうした漁港局部改良事業を含めた総計が一兆八千五百億、こういう全体規模になっています。したがって、これらの進捗状況というのが一番気になるところでありまして、これまでの計画期間について若干触れておきますが、第三次計画をお立てになったころは八年間、第四次の場合には五年間、第五次の場合には五年間、第六次六年間。しかし、この計画期間を見てみますと、それなりにこれはその都度国会承認を受けるわけです。安易に承認をしているわけではございませんが、この期間が一年ずつ短縮される、言うならば、計画がそのとおり進捗していかない。これはいろいろな原因があると思いますが、この期間を短縮して計画がその都度変更されているということでありまして、これは最近の漁業環境が非常に急激に変化しているということもあるのでしょうが、そればかりではないのじゃないか。だから、この辺について国会承認を受ける以上、計画というのは実際の面とそごがあってはならない、こう思うのであります。この点についてどういうふうに考えておられますか。
  6. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに委員指摘のように、漁港整備計画計画期間が定められまして、これは第三次の漁港整備計画からでございますが、三次八年、四次、五次が五年、六次六年という計画期間でやってまいったわけでございます。しかし、これらの漁港整備計画がいずれも当初立案した内容を完全に実施いたす以前に改定されたということは、確かに御指摘のとおりでございます。  その理由ということになるわけでございますが、これはやはり五年前あるいは六年前という時点でいろいろと考えてまいりまして、英知は尽くしたつもりでおりましても、その後の経済事情変化あるいは漁業情勢変化といったようなことから、どうしても国会の御承認を得なければならないこういう重要な計画につきまして、完全な実施前に改定をお願いするということに相なってきているわけでございます。一例を申しますと、たとえば、第一次、第二次のオイルショック、これは五次、六次の計画に影響してまいりましたし、また二百海里への突入といったことは五次計画に非常に大きな影響を及ぼしたということでございまして、さような理由から早期改定計画に移行するということに相なったというふうに考えておるわけでございます。  ただ、既往におきます整備計画が、全体としては期間前に改定されるということがございましたけれども、個別的に見ますとやはり相当数完成港はあるわけでございまして、また未完成港につきましても、実施された施設につきましてはそれなり整備の度合いに応じた部分的な使用の効果というものは出ておるわけでございます。したがいまして、その投資効果が無になるということは漁港の場合にはないということは御了解願えるのじゃないかというふうに思います。  また、改定計画に当たりまして、未完成の個所につきましては事業を途中で打ち切るものではございませんで、あくまでも残事業につきまして再検討の上、次計画に引き継いでいくということは当然のことでございます。その時点その時点で慎重に考えたつもりでございますが、確かに先生指摘のように、計画を常に事前に改定してまいったという事情があるわけでございまして、水産業見通しあるいは今後の経済情勢等につきまして、過去の状況も踏まえまして計画立案の際にこれを十分に考え、その見通しを定めましてそれに対応した内容にしていくことが必要であると考えまして、今回の場合にはぜひこれは改定なしに進めるように一生懸命考えてきたつもりでございます。
  7. 新盛辰雄

    新盛委員 六年間の漁港整備計画ですから、当然、漁業の全体的環境変化、いま厳しく変わる、そういう状況ですから、六年間というのはちょっと長過ぎるのではないか。当初は五年間でずっときておったのです。現実、そうなっているのです。だから、見通し立てられるのかどうかという面では少しずさんじゃないか。これからの展望ということをあわせまして要望しておきますが、この六年間という形をこれからも踏襲するおつもりかどうか。これは情勢によって変わるのでしょうが、少なくとも短期間の中で有効適切に整備を急ぐ、こういうことをぜひひとつこれから力点を置いていただきたいと思います。  計画目標になりますが、この整備状況の指標で係船岸充足率というのが御存じのようにあるのです。この面では六次計画ではその比率が二%上がったにすぎないのでありますが、これはどういうことでこうなっているのか。第七次計画でその充足率を五〇%としていることもあります。この辺もまた問題でありまして、後ほど申し上げるのですが、いずれにしましても、どうも計画をお立てになることは、ただ総額的に二兆百億という金を何か第七次計画展望としてバラ色の夢を与えて、実際にはそうはいかない、この仕組み、仕掛けが、いまの行革呼びかけの大変厳しい時期にむだじゃないか、もっときちっとしたものを出すべきじゃないかという意見もあるわけです。その御見解をひとつお伺いします。
  8. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに新計画期間を六年とすることが、当初のいろいろな見込みというものとの食い違いを生ずるもとになるので長過ぎるのではないかという御意見だろうというふうに思うわけでございますが、今回の新計画を六年にいたしました事情を申し上げますと、やはり最近における漁業をめぐる情勢の急激な変化に対応いたしまして、緊急かつ計画的に整備を図る必要がある漁港につきまして、実は事業量積み上げをやっておるわけでございます。この積み上げ事業量はぜひ実施いたしたいということで計画規模策定いたしまして、これに対しまして一定期間内にこれを逐次実施するということを考えてまいりますと、どうしても六年間程度期間が要るというふうに考えたわけでございます。  いま一つは、経済計画との整合性でございまして、やはりこの積み上げ事業量というものを前提にいたしまして、経済計画整合性を図りながら国全体の公共投資との整合性というものも考えてやってまいりまして、六年間ということにいたしたわけでございます。長期計画につきましては、将来についてできるだけ長期見通し立てた上でこれをつくるという必要性がございますし、その意味では余りに計画期間が短過ぎるということでは安定性を欠くということでございますが、また一方、計画に基づく事業効果ができるだけ早期に発現する必要があるということを考えますると、計画期間が長過ぎますと将来展望にも誤差を生ずるということから、計画と実態とが合わなくなるという、ただいま先生指摘の問題が発生すると思うのでございます。  このような意味で、長短いずれにも偏しない適切な期間ということで、私ども一応六年ということを考えたわけでございますが、先生の御指摘でもございますので、今後第七次の計画を執行いたしていきます過程におきまして、十分これを検討してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  9. 新盛辰雄

    新盛委員 大臣にお伺いしますが、いま長官お答えになったように、漁港整備計画によってできていくその目標がいずれにしても達成されない状況、毎年毎年そうでございまして、そういう達成されないことをこのまま放置するというわけにはいきませんが、少なくとも、これは四十四年から四十八年の第四次計画では二二%、ちょっと飛んで第六次計画では三二%、それから第七次計画では三四%、これが計画開始時におけるいわゆる進捗率ということになるわけです。こういう形で充足率を持っていくという、これは非常に問題がありはしないか。だから、こういうところに、整備計画の今日に至る——いろいろな経緯はありましても、これはやはり漁業を取り巻く情勢に対応し得ないじゃないかという、こういう不信感漁民が持つこともあり得るわけですね。このことについて、今後どういうふうに指導されようとされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  10. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま安定経済のもとで、しかもまた行財政改革という一つの大きな課題を抱えての第七次漁港整備計画でございますが、これは新盛委員承知のように、新経済社会七カ年計画の中で公共事業全体は二百四十兆円でございますけれども、その後、経済動向変化等によりまして、六十年までの投資額を百九十兆円に見て、それを基礎にして第七次漁港整備計画はつくられたわけでございますので、したがいまして、行財政の非常に厳しい中といえども、そういう長期展望に立って作成された計画でございますので、私たちとしてはそういう一つ政府全体の長期展望に立っての計画であるということを軸にして、今後この計画達成努力をしていきたい、かように考えております。
  11. 新盛辰雄

    新盛委員 次に、非常に厳しい財政状況の中でこれだけの莫大な予算をもってして達成をさせようというのでありますが、この予算確保というのは国、地方を含めまして大変なことだろうと思いますが、展望としてどうお考えですか、まずお聞かせをいただきます。
  12. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お答えを申し上げます。  新しい漁港整備計画は、先ほどからるる申し上げておりますように、わが国水産業をめぐります非常に厳しい情勢に対応いたしまして、是が非でもこれだけの計画は実現したいということで策定をいたしておるわけでございまして、また、ただいま大臣からも御答弁ございましたように、国全体の経済計画とも整合性を持ちながらこれを策定していくわけでございますけれども、確かに先生おっしゃいますように、非常に厳しい財政再建期間というものを前提にいたしますと、なかなかその進捗率がうまく運ぶかどうかという財政面での制約というものを御懸念になるということは当然のことだろうというふうに思います。しかしながら、振り返って考えてみますと、漁港は、いろいろな公共事業がございますけれども社会資本の中でも整備水準が低い段階にございますし、また、その整備につきましては、特に生活に密着した事業である、あるいは経済的な波及効果、これは実は土地をほとんど要しませんので、用地費その他が非常に低いわけでございます。さような意味で、他の公共事業に比べまして非常に経済効果投資効果が大きいという点もございます。それから、ただいま申しましたような用地費あるいは補償費というものの割合が小さい、そのために効率的な事業が可能だという事情がございますので、財政再建期間の中にございましても、公共事業のうちでなお一層重点的な投資を図るべき分野であるということが主張できるというふうに考えます。  また、過去におきましても相当高い伸び率で伸びてまいりまして、ことしはこのような厳しい財政事情でございますので、その伸び率はほぼ前年同ということでございましたけれども、全体として考えますと、先ほどのような重点投資を図るべき分野ということで十分に主張ができるというふうに考えておりますので、行財政期間もあわせ考えながら、この六年間に完全な事業実施ができるように予算確保を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  13. 新盛辰雄

    新盛委員 最近の不況の中で公共事業前倒しということなども政府は積極的にお考えのようであります。こういう面では、この漁港整備計画前倒しというようなことも、促進をする意味も含めて考えていく必要もあるのじゃないか。もちろん、この計画達成のために、五十八年度以降の予算確保でありますけれども、実際にこういう進捗状況でございますから、積極的な決意を持ってやっていただいた方がいいのじゃないかと思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  14. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま水産業の置かれている環境というのは非常に厳しい。しかも、この中で水産物価格の安定、それから水産業振興するといたしますと、生産流通基盤であり、あるいはまた漁村等地域社会生活基盤である漁港整備というのは水産業振興基盤でございますので、そういう意味では、新しい秩序が確立されつつあるこの段階で、この整備が一番基本だと思いますので、私はこの点をあらゆる機会に強く主張いたしまして、いま新盛委員主張のような線をできるだけつくるように努力をいたしたいと考えております。
  15. 新盛辰雄

    新盛委員 最後に、この沿岸漁場漁港を含めまして整備開発を進めていかれる場合多くの問題があります。今度は、五十七年度を初年度で第二次沿岸漁場整備開発計画が発足することになっているのです。それらは漁業基盤整備のためにやる事業でありますが、これも六カ年計画になっておりますけれども、こうした関係とミックスをさせまして、そして栽培漁業あるいは水産物流通加工拠点総合整備事業あるいは新沿岸漁業構造改善事業など、いわゆる新沿構でありますが、こうしたものを総合的にひとつこの基盤整備ということでおやりになった方がいいのではないかというふうにも思うのであります。そのことの方針附帯決議の中でも申し上げておくわけでありますけれども、前向きにおやりになるかどうかをぜひひとつお聞かせをいただいて終わりたいと思います。
  16. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 その点につきましてはまさに先生指摘のとおりだと思います。昨今のつくる漁業ということを考えてまいりますと、どうしても第二次の沿岸漁場整備開発計画というものを策定して沿岸漁業振興しなければならぬという考え方を持っておりまして、このために漁港沿整とはまさに車の両輪であるという考え方に立ちまして、実は、計画期間も同じ期間として定めまして第二次の沿整計画策定をすることにしているわけでございます。そのようなことから、当然沿整計画に沿いました形で漁港整備にも当たっていくということで私ども考えておるわけでございます。  また、先生の御指摘になりました沿構事業あるいは水産物流通加工拠点総合整備事業、こういったものとの関連、連携でございますけれども漁港が防波堤あるいは荷さばき所あるいは補給施設といったような各種施設総合体であるということに着目いたしますと、漁港施設のうちの基本施設、たとえば道路であるとか用地であるとか岸壁だとか、こういう基本施設につきましては当然漁港整備事業整備をしていくわけでございますけれども、この上物に当たる冷蔵庫あるいは荷さばき所あるいは給油施設といった陸上施設水産物流通加工拠点総合整備事業でこれをやっていく、あるいは沿岸漁業構造改善事業でやっていくということになるわけでございまして、これらがともに整合性を持って整備が進められていくということが基本的な方針でございます。特に、県の段階で十分にこれは討議していただいて、これらの整備計画が地域的に整備をいたす際の整合性を持ち得るように私ども指導をいたしているところでございます。
  17. 新盛辰雄

    新盛委員 終わります。
  18. 羽田孜

  19. 日野市朗

    日野委員 私ども、各浜を歩きますと、どこに参りましても一様にまず訴えられますことは漁港整備であります。それだけ漁民漁港整備については非常に熱心に取り組んでおりますし、また、その熱意にはやはり国としてきちんとこたえていかなければならない筋合いのものであろうかというふうに思います。特に、最近の漁業環境変化といいますかそういう点を見ますと、これからの漁業の置かれている環境というものは厳しいものになってくるということの指摘はますますこれからきちんと受けとめていかなければならないところであろうと思うのですが、私は、そこいらの基本的な認識については水産庁と私どもとの間にそうさしたる大きな違いはないかと存じます。しかし、いまの答弁を聞いておりまして、そういう厳しさということの指摘は一様にはしておりますけれども、そういう厳しさの中から日本水産業がどのような方向に活路を求めていかなければならないのか。また、国民動物性たん白資源確保ということからいいますと、さらに近くで、つまり第一種、第二種というような漁港を使っての漁業というものがこれから重要視されなければならないだろうというふうに思います。この点についてはどのようにお考えでありましょうか。まず、その考え方を伺っておきましょう。
  20. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま日野委員指摘のように、水産業国民動物性たん白を安定的に供給するという重要な役割りを果たしているわけでございまして、しかし、その環境は非常に厳しいのですね、いわゆる二百海里規制強化あるいは燃油価格高騰等。そういう中で、私たちは何としても水産物価格の安定あるいは水産振興を図らなければいけない。そのためにはどうしてもわが国周辺水域水産資源を維持、培養する、そして積極的な活用をしていくというために、沖合いあるいは沿岸漁業振興を図るということが必要でございます。  一方、何としても漁業外交を強力に推進することによって遠洋漁場確保もいたしてまいらなければいけない。この二つを進めてまいらなければならぬわけでございますけれども、最近の新しい秩序は、つくり育てる漁業というものに重点を置いていかなければならないのじゃないだろうか、こう考えられますので、そういう点に配慮しながら漁港整備を進めていくという方向で私たちはこれからまいりたい、かように考えております。
  21. 日野市朗

    日野委員 動物性たん白資源確保ということから言ってまさに大臣の見解は妥当なものであろうと思いますが、もう一つ遠洋等の漁業がこれからどんどん縮小されてくるという趨勢はにわかに改善しがたいところがあるであろうと思います。まず、その点についての見通しをひとつ伺っておきたいと同時に、そういう趨勢が続きますと、どうしても遠くまで行く船に乗っていた漁船員なんかが労働する場を奪われまして、勢いこれは自分の出身であった浜に帰ってきて、そこらで自分の生計を考えるというような問題もあろうかと思いますが、これらについてはどのようにお考えですか。
  22. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 まず遠洋漁業見通しでございますが、確かにかつて四百万トン台を誇っておりましたわが国遠洋漁業は、二百海里の規制のもとにおきまして異常に外国の規制が厳しくなってきております。現在二百海里をしいている国はすでに約九十カ国に上っておりまして、この規制は非常にきついものがございます。しかしながらただいま大臣もおっしゃられましたように、漁業外交を強力に展開することによりまして二百数十万トン台は何とか確保いたしておりまして、この点につきましては最近はやや相対的に安定しているという状況でございます。  しかしながら、率直に申しまして今後の世界各国の動きを考えてみますると、たとえば、アメリカにおける漁業規制強化、こういったものは予断を許さないものがございますし、また、先般のソ連との交渉におきましてもいろいろむずかしい問題が提起されておりまして、私ども全力を挙げて漁場確保に当たるつもりでございますが、その将来は楽観的に物を考えてはいけないというふうに考えておる次第でございます。さような角度から申しまして、第一種、第二種漁港といったような沿岸を中心にした漁港につきましての整備計画重点にやっていきたいというふうに考えておるわけでございまして、この第七次の計画におきましてもさような考え方を持っております。  先ほどちょっと御説明申し上げたかったわけでございますが、岸壁の充足率、これを先ほど新盛委員が御指摘になりましたけれども、この充足率が余り上がらなかった原因の一つは、第六次の計画で非常に漁船数が増加したということがございます。このもとは、二百海里の施行に伴いまして遠洋漁業の乗組員が地元に帰りまして自営をするということから沿岸漁船がふえたということも一つの原因でございます。したがいまして、日野委員の御指摘のような事態というものは今後とも生ずるというふうに考えなければならぬというふうに考えておりまして、さようなことも頭に入れまして第七次の計画をつくっているということでございます。
  23. 日野市朗

    日野委員 いま基本的な認識について伺ったわけでありますが、この漁港整備計画、今度で第七次を数えることになるわけでございますけれども、いささかマンネリの感があるのではないかという感じも私はするわけでございます。それが整備計画全体、中身ばかりではなくて、たとえば形の上にも見られるような感じが実はいたします。  第六次の整備計画を読んでみて、それから第七次の整備計画の文章を読んでみて、ここにもマンネリがあらわれているなという感じが私はいたします。漁港整備計画の前文がございますね。これはほとんど第六次と同じ文章でございます。第六次では「新しい海洋秩序の時代を迎え」というふうに言っていたのでありますが、それが第七次には「水産業をめぐる国際環境経済的諸条件等の著しい変化に対処して」こう置きかえられている。あとのところは全部全く判こで押したように同じなんであります。これは新しい海洋法時代を迎えるという時期に策定された第六次計画と、それからこの第七次計画ではかなり内容は変わってきていようかと思います。単に新しい海洋秩序の時代を迎えたということからさらに、遠洋からだんだん押されて、もうたん白資源日本周辺の海域に求めなければならないというような状況、また多くの労働力を吸収していた大型漁船による遠洋漁業がだんだん押し込められて、地方の本当に小型の漁船で自営をせざるを得ないというような状況、こういう状況は本来であればこの漁港整備計画の中に状況認識としてやはりきちんとうたわれた方がよいのではないかと思います。これは単に精神的なものとしてとらえるのではなくて、そのことがどのような計画に基づいて第七次漁港整備計画策定されているのかというようなことを一般に知らしめることになりますし、そういうことをきちんと書くということも国の覚悟として、水産庁の覚悟として必要なことではなかろうか、そんなふうな感じがいたしますので、そこいらについて一工夫あってしかるべきではないかと思いますので伺います。
  24. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに、漁港整備計画の前文が第六次、第七次とさほど変わりはないではないかという御指摘はそのとおりでございますが、私どもとしましては、漁港という息の長い事業につきまして六次、七次の間で基本的な大きな川の流れはそれほど変わらなかったんじゃないかというふうに考えているわけでございますけれども、むしろその計画内容につきまして、先ほどから申し上げておりますように沿岸重点ということを入れまして第一種、第二種に重点を置きながらその方向を決めていったという経過でございます。しかしながら、確かに先生指摘のように、この計画の中にもっとその気分と申しますか、方向、方針を盛り込むべきだというお考えもごもっともでございますので、今後の計画につきましてはこのような文言につきましても十分に吟味をしてみたいと考えている次第でございます。
  25. 日野市朗

    日野委員 この内容から見れば事業個所もふえたようであります。ただ、いかにも、私、先ほどマンネリという言葉を使わしていただいたのでありますが、先ほど長官新盛委員の質問に対しお答えになっていたように、漁港という部分は社会資本の中でも最もおくれている部分であるということは争えない事実であろうかというふうに思うわけです。こういうところで認識が一致するのはどうもはなはだ残念なんでありますが、私もそうだと思うわけでありまして、そのことは漁民全体の認識にもなっているのではなかろうかというふうにも考えるところでございます。しかも基本的な認識で、これからの沿岸周辺海域における漁業の重要さ、そのための漁港の重要さということ、これは強調しておられました。  しかし、私残念に思いますことは、確かに事業個所数においてはかなりの増加があったところでございます。しかし、それを裏づける予算的な措置がどうであったかということを見てみますと、事業の量としては大体一三四%ぐらいになっているのですか、しかしそれに見合う予算の方はどうであったかということで五十六年度と五十七年度の関係の予算を見てみますと、これはむしろ減っている、こういう事情が見られるわけでございまして、ここいらがどうも実際に言っておられることと実現した予算額から見られるこれからの見通しということとかなりの違和感を持って受けとめざるを得ない感じがするのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  26. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに昭和五十七年度のただいま御提案申し上げておる予算を見ますると、これにつきましては、減ってはおりませんが一〇〇・〇四という状況でございます。ほかの公共事業を全部ごらんになっていただきますと、行財政改革ということのもとで、財政的に非常に厳しいゼロシーリングのもとでの公共事業予算を組まなきゃならなかったかということが御理解いただけるわけでございます。確かに、五十七年度は財政再建ということが一つの大きな予算のテーマになっておったわけでございまして、さような単年度をごらんになっていただきますとそういうことでございますが、先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては漁港がまだまだ社会資本として十分に資本の投下がなされていないという点とか、あるいはその事業の効率というものから考えてみてもこれにもっと重点的に配分を行ってもらってもいいという気持ちを持っております。また、過去の事例から申しましても三〇%、四〇%台の伸びを示した年もたくさんあるわけでございまして、私どもの今後の努力、そしてまた財政再建との関連をどう考えていくかということにかかってまいると思います。しかしながら、先生指摘のように、この事業の完全達成のためには五十七年度から先の予算の獲得というものが非常に重要になってまいるわけでございまして、先ほど大臣からもその御決意を御表明なさった次第でございますので、さような方針のもとに私どもとしましては最大の努力を尽くしてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  27. 日野市朗

    日野委員 これは、単に水産庁を責めるだけでは物事は解決しないことは私もよく存じております。ただ、これは国の政策の優先順位ということをやはり考えてみなくちゃいかぬだろうと思うのですね。私いまここで防衛費突出などということを大上段に振りかぶるつもりは毛頭ございません。しかしながら、食糧をきちんと確保していくということは国の政策順位からいったら非常に高い水準の問題であろうかというふうに思うわけでございます。私としてはこれはもっとがんばってもらいたい。これは単に漁港ばかりではなく、農産物の自由化についてもそれから食管の問題についてもがんばってもらいたいことばかりなんでございますけれども、先ほどからの基本認識では一致しているわけです。この漁港整備、特に一種、二種の整備必要性、これについては非常に大事だということの基本認識では一致している。しかし、具体的な予算という形で、政策の実現という形で見てみますと、国の政策全体としてみますと、これは単に口先だけのサービスがなされて実行が伴ってはいないのではないかというような感じがいたしますし、こういう第七次計画を見て、そしてこの予算を見る漁民なんかの目には、いささか不信感も漂うのではなかろうかというような感じがいたしますので、これはもう一度がんばってもらいたいという私の思いをも込めてこれからの覚悟のほどをひとつお聞かせいただきたいというふうに思います。
  28. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほども新盛委員お答えいたしたのでございますが、この七次計画は新経済社会七カ年計画を基礎にしてつくられたものでございまして、したがいまして、政府全体の長期計画を基礎としたものでございますから、私たちは、それなりにこの計画実施に当たっては、いま、御指摘の点を踏まえながら積極的な姿勢で実行に当たってまいりたい、こう考えているわけでございます。ことに長期計画は議会の承認を得るというのは漁業のみなさんですね。ですからそれだけ水産日本といいましょうか、やはり水産資源による日本経済のあり方というもの、日本経済全体に与える影響というものは非常に大きいのが水産業なんだということを意味すると思いますので、今後もその点は変わりはないと思うのですね。したがいまして、そういう重要な位置づけを持つ産業でございますので、いま日野委員御心配の点は私たちも十分心して、今後、実行の面で十分なる努力をいたしたい、かように考えております。
  29. 日野市朗

    日野委員 それから、私この漁業整備計画を第六次と比較してみて、若干の疑問点がありますので解明をいただきたいのですが、第六次に比べて第七次を策定するその時期は、従来よりもますます第一種、第二種、特にそこいらの漁港整備計画必要性というものは増していくというふうに思うわけでございます。ところが第六次と比べてみますと、第六次と第五次の間で事業量は第六次の方が倍くらいになっているわけでございますね。しかし第七次になってかなり急速に上げ幅を下げてまいったといいますか、わずかに一・三、四倍くらいの比率になっている。ここいらを見ますと、どうも非常に残念な気がするわけであります。これは国の財政の困窮化というような事情はあったにしても、いままで大臣長官が述べられた漁業現状に対する認識というものと整備計画にあらわれてきた、そこに表現された具現化された認識というものとの間にかなり大幅な食い違いがあるような感じがしてなりません。ここらはひとつ御解明いただきたいと思います。
  30. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに、第六次の計画は一兆四千五百億、第五次の計画が七千五百億だったと思いますけれども、これに比べまして全体の事業費が五次から六次へは一・九倍になっている。ところが今次第七次の計画は二兆一百億でございますから、第六次からの伸び率で計算いたしますと、一・四倍ということになっているというこの数字を直接対比なすっての御見解、御印象であると私思うわけでございますが、実は第五次の計画の場合は五年でございました。第六次の計画が初めて六カ年の計画へと移ったわけでございます。したがいまして、計画期間が伸びたということがございまして、直接の対比はちょっとむずかしいという理由がございます。仮にこれを五年の計画ということでならしますと、大体一・四七倍ということになっておりますので、決してダウンさせたわけではございません。  それから同時に、今次計画目標となる整備水準でございますが、これは第六次当時の状況に比較いたしまして大幅に増加しました漁船勢力に対しましても十分考えまして、先ほどの係船岸充足率も五〇%というところに持っていきたいというふうに考えておりますので、内容はかなり濃いものであるというふうに御理解いただきたいというふうに考える次第でございます。
  31. 日野市朗

    日野委員 これはいずれにしてもかなり大幅なペースダウンがあったと思わざるを得ないわけでございますね。いま長官、六年を五年に引き直してみればというような話がございましたけれども、ただかなり大幅にペースが落ちざるを得ないんではないかというような感じを持たざるを得ないわけです。それにこれからのインフレの状況ということも考えてみなければならないであろうと思いますし、そうしますと、これはかなりペースは落ちるというふうに思うわけで、現在の計画がまたどんどん具体的な実行の段階でさらにペースが落ちないようにしなければならない。現在の計画は最低の計画としてきちんと守るという覚悟が要請されるところであろうと思います。いかがでしょう。
  32. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 繰り返すようでございますが、計画あるいは事業量自体としては決してペースダウンをいたしておらないと私どもは思っておりますけれども、問題はやはり先生がただいま後段で御指摘になりましたように、われわれが十分な予算確保が将来できないというようなことから実際の進捗率が落ちてくるということが非常に懸念される点でございます。また、インフレの問題その他もあろうかと思います。  そこで、先ほども新盛委員に御答弁申し上げておりましたように、毎回毎回年次の改定完成の前にやりながらやっていくというようなことは決して適当なことではないというふうに考えておるわけでございまして、先ほどの大臣の御決意の御表明もございましたように、これは基本的にはやはり国全体の経済計画にマッチしてつくったものでございますから、その実現というものは当然これを完成しなければならぬということが政府の責務であるというふうに考えておりますので、今後の予算財政的な問題等も含めまして、これからこれが完成に向かって十分に努力をしなければならぬというふうに考えている次第でございます。
  33. 日野市朗

    日野委員 いまお覚悟のほどは伺ったわけですが、これは国の予算の問題もございますし、これと両輪をなしていく地方自治体の負担というものも考えなければなりません。ところが、これからはこういう事業に対して地方債を認めないというような国の方針が出されているというようなことでありますけれども、こういう事業を執行していく上で国、地方ともかなり大幅な金の負担が要ることでございまして、国の方は伺いましたから、これから地方の方にどのような配慮をなさるおつもりであろうか、伺います。
  34. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 この事業実施するに当たりまして地方の負担、これを考えますことは非常に重要な問題であることは御指摘のとおりでございます。昭和五十六年度の漁港整備事業に対しまするところの地方の負担額でございますが、全体で二千二百八億だったと思いますけれども、そのうちで都道府県の負担分が四百七十一億、それから市町村分が百九十七億、合わせて六百六十八億を地方公共団体によって負担をしていただくということになっておるわけでございます。  また、五十七年につきましては、予算の面で考えてみますると、事業全体が二千二百三十五億でございまして、そのうちで四百九十九億が都道府県、市町村が百九十五億、地方負担計で六百九十四億ということになっております。  そこで、漁港整備事業につきましては、地方負担の財源といたしまして従来から自主財源、これが第一でございます。第二は地方交付税、第三は地方債、この三つによりまして賄ってまいってきたわけでございますが、地方公共団体の税収等もだんだん減少しておりますし、また交付税財源でございます法人税等の減収もございまして、昭和五十一年度から昭和五十六年度までの臨時の財源対策ということで起債が認められまして、多くの部分が実は起債に頼っているわけでございます。ところが、この起債の充当率が五十一年から五十四年は九五%でございましたが、五十五年が七五%、五十六年度が六〇%とそれぞれ落ちてまいってきております。ただ、このような起債枠の減額に伴う対策はすでに講じてきておりまして、その一部につきまして地方交付税の増額措置がとられてきておるわけでございます。そのようなことを自治省から聞いております。  五十七年度は、先生ただいま御指摘になりましたように、確かにいわゆる財源対策債の起債枠の解消という問題がございまして、これは確かに重要な問題でございますが、私ども自治省と折衝いたしまして、いろいろ話を聞いておるところによりますと、一つは地方税制の改正による増収措置、それから第二は地方交付税の増額措置、これを講じようということでございまして、さらに影響緩和措置といたしまして、五十七年度に限りまして起債枠につきましては所要の措置をとるということを言っております。したがいまして、五十七年度は、さらに折衝を重ねますが、地方自治体に御迷惑がかからないように措置をしてまいりたいというように考えております。  これは当面の問題でございますが、第七次漁港整備計画の六年間は、地方の負担の問題はもちろん常に考えていかなければならない問題でございますので、自治省と緊密な連絡を保ちながら事業の推進に努めてまいるというつもりでございます。
  35. 日野市朗

    日野委員 この財源の確保については、自治省のしりをしっかりたたいて、万遺漏なきを期していただきたい、こういうことを要望申し上げておきます。  それから、本計画についてはいろいろささやかれるところが多うございまして、人によっては、これは政治家の票集めのかっこうの道具であるとか、そんなことまで言う人もおります。これはやはり整備計画に入れる港にどういうものを入れるのかということの基準をきっちりと明示しておく必要があろうかと思います。要らぬ揣摩憶測を避けるためにも、ぜひともここできちんとした基準、これを伺っておきたいと思います。
  36. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 私ども漁港整備、特に漁港の採択なりあるいは事業費を配分いたします際には、きわめて厳正公正にやっておるつもりでございますけれども、特に基準の問題がこのような疑惑と申しますか、疑いを避けるために非常に重要だというふうに考えます。  そこで、私どもといたしましては、特に陸揚げ量、利用漁船漁業従事者等につきまして客観的な一定の基準をつくっておりまして、これに基づきましてなるべく多くの漁港を取り上げるということも重要でございますけれども、一方ではやはり効率的な資金の使用ということも考えまして、公平にかつ重点的に漁港を採択し、また事業費をつけていくということを考えておるわけでございまして、このような基準に合格しないものにつきましては採択をしないという方針で実は動いておるわけでございます。  また、漁船の避難上必要なものにつきましても、これは一島に一漁港しかないというようなものについての配慮もしなければならぬわけでございますが、これは漁港の立地条件といったようなものも基準といたしまして考えておる次第でございます。  それから、もう一つ非常に重要なことは、やはり私どものところで全国的な基準をつくりまして、これに公正な選択なり配分なりを行っていくということと同時に、また都道府県の意見を十分聞いておくということが重要であるというふうに考えておりまして、今回の漁港整備に当たりましても、都道府県の漁港管理者を通じまして現地の実情を十分把握しまして、特に公平感が失われるといったようなことがないように配慮しているという次第でございます。
  37. 日野市朗

    日野委員 では、時間ですからこれで終わりますが、長官は今度訪ソされて日ソ漁業条約の任に当たられるとのことですが、御健闘を祈ります。
  38. 羽田孜

    羽田委員長 武田一夫君。
  39. 武田一夫

    ○武田委員 いま、日本の国は、水産業界は非常に厳しい環境に置かれております。燃料の高騰あるいは魚価の低迷あるいはまた後継者が非常に足らないとかいうような問題、それにまたこうした中にあって漁港が不備なところがかなり多いというようなこと、大変問題がありまして、どちらかというと、こうした水産業に対する取り組みというのは今後非常に重要な課題の一つになってくるであろうと私は思っております。  特に、水産業というのは日本の食糧産業の中の一つの大きな柱でございますから、その漁業生産基盤である、そしてまた水産物流通の拠点である漁港、さらに、地域社会の中心的な役割りを果たす漁港整備促進については、国は万全の対応をしてほしい、こういうふうに私も強く要望するわけでございますが、以下、私は二点お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一点は、今回第七次の計画がスタートするわけでありますけれども、国家財政が非常に厳しいという中での新計画でありますが、やはりそういう中にあっても、完全に計画どおり実施するということが、私は、何よりも漁民に対する大きな一つの課題だと思うわけでありまして、いままでの経過から見ますと、この点は特にひとつ御留意をいただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、そのための必要な予算確保、これは最大限の努力をしていただきたい、こういうように思います。第七次の計画が間違いなくこの期間の中で完全に実施できるのだという確約をこの場でしてほしいと思うのでありますが、その点についての御回答をひとついただきたいと思います。
  40. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほども新盛委員あるいは日野委員にもお答えいたしたのでございますが、この七次漁港整長期計画につきましては、御承知のように、国の新経済社会七カ年計画を基礎として策定されたものでございまして、したがいまして、国の長期的な展望に立って策定されたものでございます。しかも、漁港整備の計画につきましては国会承認を得るということにも相なっておりますので、そういう点は、私たちとしては、いま御指摘のような点を十分配慮しながら、今後最善の努力をしてまいりたい、かように考えます。
  41. 武田一夫

    ○武田委員 これまでのこの計画をずっと見てまいりますと、計画期間、たとえば第三次が八年間、第四次が五年間、第五次五年、第六次六年、こういうようになっています。しかしながらその途中で、たとえば第三次のときは六年目、四次は四年目、五次も四年目、今回も五年目ということで早目早目とまた新しく次の計画に移っているということでありますが、その過程で、進捗度が非常に悪いケースが多いわけです。全体的に見まして、昭和五十六年度が名目で七二%だ、こう言っているのですが、このときは物価上昇と経済状況によりまして、修正をすると五〇%ぐらいまで落ちるのではないかということですから、相当スローダウンしておりますね。こういうことが毎年のように、計画のたびごとにあるものですから、中には、私の地元の場合なんかを見ますと、昭和四十年に着工しまして、それが五十六年までかかる。ですから三次、四次、五次、六次までいっている。実に延々十六年間です。あるいは三十九年に着工して五十四年に完成、十五年間、これもやはり三次、四次、五次、六次というふうに余りにも長いわけですね。  そこで、いろいろとそこには事情があるのでしょうが、それは漁港が、船の隻数をふやすとか、あるいは大きくしなければいけないとかいうようなことがあるのでしょうが、しかしながら、それならそれなり予算をもっと多くつけて、こうした三次、四次、五次、六次などと長くいくというようなことは、今後の計画の中では極力阻止していかなければいけない。特に、四百八十港の中で、今回三百二十五が継続でいくわけでしょう。百五十五が新規ですね。ですからこの継続の場合などは、いつになったら船がそこに入っていけて、そこで生活できるんだということで、特に若い連中なんかは大変心配をしている。そのうちにあきらめていなくなるというのです。船はつくったんだけれども、たとえば三次で終わりと思って計画に合わせてつくるでしょう。ところがまた延びる、その船も使えないでほっておく、そういうこともあるわけですので、この進捗度の問題については特に厳重に守って、この期間の中で行っていくんだ、そういう姿勢を予算の面等においてもはっきりと打ち出してほしいと私は思うのです。これはいかがです。
  42. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに、継続の形で非常に長く延びていくという例もございますし、その意味漁港整備計画漁民の方々の期待どおりになかなかいかないという御不満があるということも私存じております。  基本的に申し上げまして、まず進捗率計画のとおりに合わせていくということが何といっても重要なことでございまして、そのためには先ほどから大臣も御決意を御表明なすっておられますとおりに、やはり予算措置財政措置を十分に考えて、そしてわれわれも最大の努力を払って、この七次の計画においてはその計画のとおりに実施をしていくということで最善の努力を尽くさなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  ただ、継続漁港につきましてはいろいろな継続の場合がございまして、実は技術的な面から、たとえば、砂がたまって、またそこを排除しながら次をやっていくといったようなケースもございます。そのような意味で若干長い期間がかかるというようなケースもございます。  それから、いま一つちょっと申し上げておきたいと思いますのは、漁港は橋などと違いまして、部分的につくりましてもそれなり効果はあるわけでございます。さような意味で、漁港はやや細切れにつくっているということもございますけれども、それはできるだけ早く完成したいと思いますが、つくっていけばそれなり投資効果があるという意味で、全部できなければなかなかこれが利用できないというような話ではないというふうに私は考えている次第でございます。
  43. 武田一夫

    ○武田委員 だけれども、そういうものもあるのでしょうが、実際問題全部つくらないと入ってこれないというのも私のところにも従来あるのですからね。そういう砂の問題等は私たちも知っておりますけれども、技術的にむずかしいならむずかしいなりの対応を、ほかと違った条件があるわけですから、そういうところにはそれなりのきちっとした予算的措置をしないといつまでたっても、恐らくこれは延びてしまう。この点は事情をよく知っていただきたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、計画の中でやるとすれば、前半の三年間というのは財政再建ということで厳しいということになると、あとの三年間でその分をカバーするだけのものが果たして予算的な面できちっと確保できるかというのも、これもまた相当深刻な問題であるし、当事者にしてみますと、これは重大な関心事であります。大体これは残りの三年でこれをやろうとすると、三〇%近い予算の伸びは覚悟しなければいけないということになるのです。これは先のことだから見通しはわからぬというようなことを言えばそれまでですが、そうは言ってもらっても計画ですから実際困るわけです。この点の見通しはどういうふうにとらえているのでしょうか。
  44. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに、武田委員指摘のように、もしも財政再建期間の三年間ということで、その間全然漁港の配分が変わらないということを前提にいたしまして、かつ行財政事情からゼロシーリングの状態がずっと続いていくというようなことで予算の伸びがないという状態を想定いたしますと、残りの三年間に一三一%の進捗をしていかなければならぬということは計算上出てまいるわけでございます。しかしながら、私が先ほども答弁申し上げましたように、漁港の場合には資本の投下というものが必ずしもほかの公共事業に比べて非常に多いというわけじゃない、また投資効果というものも漁港の場合には非常に高いんだということを申し上げたわけでございますが、さような点を考えまして、漁港につきましてはできるだけ重点的に公共事業の中で配分してもらうということを考えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  残り三年間の中でとおっしゃられますが、その中で最善の努力を尽くすということだろうと思います。その場合に、過去においての予算伸び率でございますが、四十六年、四十七年、四十八年、五十二、五十三というような年について見てみますと、大体二五、六%から多いときは四〇%ぐらいに漁港予算は伸びておるわけでございまして、さような意味で決して過去に三〇%台の伸び率がなかったということはございません。したがいまして、そのような漁港の特性というものに着目いたしまして、特に重点配分をしていただきながらこの計画を実現するということで最善の力を尽くしたいというふうに考えている次第でございます。
  45. 武田一夫

    ○武田委員 そういう過去の実績は承っておきますが、それにふさわしいような対応、努力を、水産庁としても全力を挙げてやって、この計画達成に遺憾なきょうお願いしたい、こういうふうに思います。  そこで、先ほども地方負担の問題が出たのですが、確かに、町長さんあるいは市長さんなんかは、地方での負担というものは大変だということを訴えておられるわけです。これは過去にあった例ですが、国は予算をつけたんだけれども町の方で予算がとれないために勘弁してくれ、それで延ばしたケースがあるわけです。これは漁港ではないのですがね。海岸の整備のために、それで延ばしたんだけれども、そのうちそこはしょっちゅう洪水が来まして、今度はかえって早くしてくれと言ってきたわけです。要するに、財政的な問題はいつもそういうことで苦慮しているわけです。ですからやはりそれにふさわしい地方が財政的な措置ができるような配慮もしなくてはいけないということも、これは指摘されているとおりでございますけれども、これはどうも、財政再建期間における五十七年度からの地方債の発行は認めないとかいうような問題、これは非常に心配の種である。そういうことを考えると、どうしてもこの計画水産庁計画するとおりに行うとするならば、市町村長、自治体のそういう問題もあわせて検討しながらパックアップしてやるようにしなければ、これは幾ら水産庁努力してもいかぬことでありますから、この点の対応がもっと重要だと思うのです。この点につきまして、不足する財源の補てん措置、これにどのようにこれから手を打っていくかという問題、この問題を聞いて私は質問を終わります。
  46. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 先ほど日野委員が冒頭におっしゃられましたように、実は地方に参りますと漁港の需要というものは非常に強うございます。私が出張いたしましても、ほとんどの御陳情は漁港でございます。したがいまして、恐らく市町村長も漁港の負担につきましては、相当無理をいたしましても地方の負担をつけておいでになるというふうに思うわけでございまして、漁港の場合には、恐らく地方負担ができなくてこれが進捗できなかったということはまれなケースであろうとは思いますけれども、やはり地方負担が非常に大変であるということは私ども十分認識をいたしております。したがいまして、今後とも自治省と十分に協議をいたしまして、市町村の負担、県の負担、これにつきましては対策を十分に講じてまいらなければならぬというふうに考えておる次第でございます。先ほども日野委員の御質問にお答えいたしましたように、五十七年度におきましては、いわゆる行財政の改革から財源対策債の起債枠の解消ということが言われているわけでございますけれども、地方税制の改正による増収措置、それから地方交付税の増額、さらに影響緩和措置として五十七年度限り起債枠については所要の措置を講ずるということを聞いておるわけでございまして、私どもこの点につきましては、その資金の調達に遺憾のないように十分自治省とは交渉してまいり、また、計画期間内におきましても、市町村長、都道府県知事の皆様方に御迷惑のかからないように、十分に地方財政当局と話をしてまいるつもりでございます。
  47. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、大臣に決意を聞きたいのですが、今回の場合は特に必要な漁港について、緊急に整備する必要のあるものを選択した、四百八十だということでありますから、私が最初お願いしたようなことに対するいまと地方の実情を踏まえた対応、特に、この第七次計画では、いままではいろいろ期間的なずれもあって御苦労をかけたけれども、ひとつ第七次からはそうしたことがなきよう取り計らいつつ、水産業に対する取り組みはかくあるべきだという一つのしっかりとした方向性を、この漁港整備という問題を一つの契機として、今後の進み方として私は要望したいのですが、大臣としてのお考えをひとつ最後に聞いて、質問を終わります。
  48. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 水産業環境が、御承知のように上百海里規制強化だとか燃油価格高騰等で大きく新しい秩序が生まれつつあるわけでございますので、そういう意味では、漁港整備を含めて沿岸漁場整備等を総合的に判断してこれからの水産業全体の振興のための基盤をつくらなきゃならぬと思いますので、そういう意味では、この第七次計画あるいは第二次計画というものは非常に重要なものであろうと思いますので、これを基礎にして、いま武田委員指摘のような線を貫くように努力をいたしたいと考えております。
  49. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  50. 羽田孜

    羽田委員長 藤田スミ君。
  51. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 きょう私は、ここに「第三十三回全国漁港大会決議」というのを持っているわけです。先ほどからの大臣の御発言からも、御理解が深いなというふうには思いますけれども、最初に、せっかくの機会でございますので、この決議に答えていただきたいわけです。つまり、この決議は、第六次漁港整備計画はその進捗度が七二%にすぎなかったということに遺憾の意を表しながら、今日、「水産業をとりまく諸情勢は、二〇〇カイリ国際規則による海外漁業環境悪化、増養殖漁業の推進をはじめとする沿岸漁業振興等、六次計画発足当時に比べ、著しく変化している。従って、漁港整備も、これら水産業情勢変化に即応するよう計画変更する必要がある」、漁業及び漁村の健全な発展のためには、漁港整備漁業集落の環境を総合的に整備することが緊要である、こういうふうに訴えております。せっかくでございますので、ひとつ大臣にこの場で、こういう訴えに対して御答弁をお願いいたします。
  52. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 私が最初にお答えを申し上げます。  第三十三回の全国漁港大会の御決議、ただいま先生お読みになりましたとおりでございまして、この大会には亀岡前大臣も御出席しておられましたし、また私も参りました。各党からも代表の方がおいでになったというふうに記憶しております。この大会におきます大変熱気にあふれた御決議でございましたが、これをもとにいたしまして実は第七次の計画をつくったということでございます。第七次の計画は、御案内のように、大変行財政の厳しい中でございましたけれども、これが実現方に努力をいたしましたのも、この漁港大会の決議を一つの踏み台としてというふうにお考えになっていただきたいと思う次第でございます。
  53. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 漁港役割りというのは、いま先生指摘のように、やはり漁業生産あるいは流通基盤であり、あるいはまた漁村等地域社会生活基盤でもございますので、水産業振興の面では非常に大きい役割りを果たすわけでございますので、いまの漁港大会での決議を十分尊重して私たちは今後水産振興のために努力をしてまいりたい。そのための漁港整備については十分この長期計画を基礎にして努力をしてまいりたいと考えております。
  54. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この決議をもとにして第七次整備計画を組んでくださった、こういうことで、計画規模は一・三四倍というふうに確かにふやされております。しかしスタートの予算というのは前年度とほとんど同額でございました。計画を完全達成していくためには、どうしても五十八年度以降毎年、私の計算では対前年度比一三%増の予算を組んでいかなければこの計画予算面では達成できない。けれども、五十九年までは、これは国の財政再建期間ということでゼロベースになってしまうわけですね。こういうことになっていきますと、後年度の方で相当この予算を引き伸ばしていってもらっても今度の計画が完全に達成できるのかどうか。やはり第六次計画の進捗度七二%程度、いやもっとこれを下回ってしまうような結果になりはしないだろうかという心配が当然出てくるわけでございます。予算の年次計画は持っていらっしゃるのかどうか、そういう心配に対してまずどういうふうにお考えか、お答えいただきたいと思います。
  55. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに、御指摘のように、仮に五十七年から五十九年の間のいわゆる財政再建期間の伸びがゼロということを前提にいたしまして計算をいたしますと、後半の三年間におきまして毎年三一%の増をしていかなければならぬ、そういう計算が出てまいるわけでございます。もちろん、予算は単年度主義でございますから、将来までの計画をわれわれは持っているわけじゃございませんが、やはりその年次、年次におきまして最善の努力を尽くしていく以外にはないだろうと思います。  ただ、先ほどから御答弁申し上げておりますように、一つは、漁港の場合には他の公共事業に比べましてまだまだ投資の度合いが遅いということがございます。したがって、われわれの方が進捗率をよけいにしてほしいという要望がきくという点がございますし、また非常に投資効果の大きい分野でもあるという漁港一つの特性がございます。さような点を十分に今後力説をいたしまして、公共予算の配分の中で、将来この予算伸び率を完全な計画実施のために間に合うような形で処置をしてまいりたいと思っておりまして、またそのような過去の伸び率もあったということを申し上げた次第でございまして、先ほど大臣からも御決意の表明がございましたとおりでございます。そのような方向に向かって最善の努力を尽くしたいというふうに考えている次第でございます。
  56. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 完全達成努力をしていただきたいわけですが、この計画規模の拡大によって、地方自治体の補助残事業費、これも当然拡大をしていくわけです。したがって、これまではこれに対して財源対策債で見てきたわけですけれども、五十七年度からはその発行が認められておりません。  そこでお伺いしたいわけですが、きょうは自治省にお願いをしておりますが、これまでの漁港整備で地方自治体に対してどれだけの財源対策債が認められてきたのか。
  57. 森繁一

    ○森説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、五十七年度は財源対策債を廃止したわけでございます。少し詳しく申し上げますと、この財源対策債と申しますのは、地方財政の収支が不足いたしましたために、その財源を補う意味で起債の増発をいたしましたものを財源対策債、こう呼んでおるわけでございますが、五十七年度の地方財政の収支は、五十六年度までと異なりまして、単年度といたしましては地方財政の収支が均衡するということに相なったわけでございます。そのために、財源対策債による措置というのが必要なくなったわけでございます。  そこで、これまで財源対策債を充てておりました事業に係る地方負担額がどうなるかということでございますが、これは御承知のように地方交付税の算定の基礎となります基準財政需要額の算定の中にカウントいたしまして、全体的にはこういう事業の執行に支障のないような財源措置が講じられておるわけでございます。ただ、そうはいいましても、これまで起債がありました事業が一挙に起債がなくなりますと、ややともいたしますと事業の執行に支障が生ずる、そういうおそれもありますので、五十七年度は特別に、いわば調整分といたしまして、激変緩和的な意味で調整枠の起債を措置いたしておりますので、この起債の枠を活用することによりまして、現実に市町村等を中心といたしました事業の運営に支障が生ずることのないような措置を講じておりますので、御了解いただきたいと思います。
  58. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう一回聞いておきたいのですが、五十五年度はたしか漁港整備のために財源対策債から一一・六五%の手当てがされていたというふうに私は理解しておりますが、その数字には間違いございませんね。
  59. 森繁一

    ○森説明員 お示しの一一・五%という数字ですか、私いま資料を持ち合わせておりませんが、全体的に申し上げますと、漁港を含めました財源対策債の全体の数字が五十六年度は六千九百億円ございました。五十五年度は一兆三百億円ございました。これが五十七年度はゼロになるわけでありますが、少なくともこの五十六年度の、全体で六千九百億円ベースの財源対策債に係る需要額というのは、先ほど申しましたように交付税の基準財政需要額に算入をいたしますし、それからさらに、それとは別に調整的に起債の枠を設けておりますので、それを執行することによりまして市町村の財政運営に支障がないような措置を講じたいと思っております。
  60. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういうふうにおっしゃるわけなんですが、私は、数字の上ではまだ心配なわけです。それは、五十五年度の数字で見ましたら、財源対策債一兆三百億円の中で、この漁港整備関係に対しては千二百億円、一一・六五%の手当てがありました。これから割り出しますと、五十六年は六千九百億円の財源対策債に対して、同率でいけば七百億円ぐらいの手当てがあったはずだ。ところが、さっきその激変緩和措置として一般公共事業の中に、私がお聞きした数字では千二百五十億円の起債を充てている、これは全体の話です。だから、その全体の中からいままでどおり漁港整備の方に一一・何がしかの分を割り当てていただいたとして、これは百三十億円にしかなりません。そうしますと、五十六年は恐らく七百億円ぐらいになってくるだろうと予想されますが、この起債が今度は百三十億というふうにしぼられてしまうわけですね。そうすると、その差額が五百七十億円、これが地方交付税の方で算定していくから大丈夫だということなんでしょうけれども、そういうことで本当に大丈夫なんだろうか。先ほどもお話にありましたけれども、せっかく国の方で予算をつけてもらっても、結局、地方の方が財政難から負担に耐えかねて計画をちょっと延ばしてくれ、事件が起こってから、事件というのですか、そういう被害が起こってからまたやってくれというような、そういうぐあいの悪いことがあっては困りますので、そこのところを自治省も十分御理解をいただいて、先ほどからもこれは非常に大事な計画なんだということも強調されておりますので、お聞きだと思いますけれども、そこのところを十分御配慮いただけるのかどうかということをお伺いしているわけです。
  61. 森繁一

    ○森説明員 お示しの五十五年度と五十六年度の数字が若干食い違うじゃないかというお話が初めにございましたけれども、これは実は五十五年度の起債の充当率が七五%、五十六年度がこれは六〇%ということになっております。言うなれば、百事業がありますと、その二割五分は交付税で見て、七割五分は起債で見る、こういう仕組みでございまして、五十六年度は起債充当率が六〇%になったわけでありますから、百ありますと、四十は交付税で見て、六十は起債で見る、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、五十七年度は先ほど申しましたように、百をまるまる交付税で見る、こういうことに相なります。  ただ、百をまるまる交付税で見るとはいいましても、地方団体、特に、市町村によりましては財政規模がきわめて小さいところがございますので、いろいろ支障が出てくると困りますので、それとは別枠で千二百五十億の調整枠ということで事業の円滑な執行を図ろうということでございまして、全体的に見ますと、私ども考えておりますのは、特に、市町村におきましてはこういう措置を講ずることによって、漁港事業を初め事業の円滑な執行に支障はないもの、こういうふうに理解をいたしております。
  62. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 地方自治体に財政負担を強いることなく、この計画が周辺の環境整備とあわせて総合的な解決で完全達成を図るように御努力を、自治省の方も御理解をいただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  ところで、先ほどのお話にもありましたように、今度のこの漁港整備計画の中で特に、第一種、第二種に重点を置いた計画の推進を図っていきたいということでございます。私はそれに特別に異論はございませんけれども、しかし、取りこぼしのところで非常に立ちおくれたところがたくさんございます。そこのところはきめ細かくやっていただきたいという願いを込めて、実は、これは大阪の一番南にございます小島港というものの図面を持ってまいりました。船が手こぎのころからこの港はちっとも変わってないわけです。だんだん背後にございます家庭から家庭用の雑排水が流れてまいりまして、合成洗剤のおかげで汚れているわけです。そうしまして、この中にしか生けすがつくれませんので、その生けすの魚が、せっかくとってきて入れておいても死ぬのです。ことしの二月ですから、ずいぶん寒い時期なのに死んでいるのです。せっかく苦労してとってきた魚が死んでは話にも何もなりません。おまけに、ここが低いものですから高波がここへ入ってまいりまして、そうしてここの中で船がぶつかり合いをしまして、すぐに故障が起こってしまいます。船が大きくなって狭くなっている、高波が来る、したがって、台風のときには遠くの方まで避難いたしますので、そのために漁が二日も三日もできないといったような非常に不都合な状態が出てきております。  何とかこういうふうな漁港に対して排水の整備をするとか、あるいは地元ではここも一文字の突堤をつくってほしいんだとか、防潮堤をつくってほしいんだとかいうような要求が出ておりますが、こういうようなきめ細かな問題にも御配慮をいただきたいということを最後にお伺いをしたいと思います。
  63. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 私ども、先ほどから申し上げておりますように、第一種、第二種の漁港を中心にしまして、きめ細かく地方の要望も聞きまして措置をいたしているわけでございますが、ただいま藤田先生から特定の漁港の改修につきまして、これは改修事業だと思うのでございますけれども、御要望があったわけでございますけれども、特定の改修事業、実は、改修事業は全部で約八百七十港ほど予定をしておりますが、それで採択するかどうかというようなことでございますと、実は、ここにいらっしゃる先生方どなたも皆御質問なさりたいと思うのでございます。したがいまして、その点は御遠慮させていただきまして、当該小島漁港につきましては私ども地元から聞いております。したがいまして、大阪府とも十分相談をいたしまして決定をいたすということだけ申し上げましてお許しをいただきたいと思います。
  64. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので終わります。  ありがとうございました。
  65. 羽田孜

    羽田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  66. 羽田孜

    羽田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画変更について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  67. 羽田孜

    羽田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  68. 羽田孜

    羽田委員長 この際、本件に対し、渡辺省一君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。渡辺省一君。
  69. 渡辺省一

    ○渡辺(省)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、ただいま議決されました漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画変更について承認を求めるの件に対する附帯決議につき、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画変更について承認を求めるの件に対する附帯決議(案)   我が国水産業は、漁業燃油価格の高騰、二百海里海洋秩序定着等厳しい環境の中にあつて極めて困難な事態にある。   よつて政府は、かかる状況に対処し、水産業を食料産業として確立するため、漁業生産基盤であり、水産物流通の拠点であり、更に、地域社会生活の中心的役割を果たす漁港整備促進につき左記事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。           記  一 国家財政が逼迫している中にあっての新計画の発足にかんがみ、その完全達成のために必要な予算確保につき最大限の努力を尽くすこと。  二 計画規模の拡大に伴い地方負担が増大することにかんがみ、事業の円滑な実施に支障を来さないよう地方交付税の確保等に万全を期すること。  三 沿岸漁業等の重要性が一層増大していることにかんがみ、新計画実施に当たつては、期を同じくして策定される第二次沿岸漁場整備開発計画との関連にも十分配慮しつつ効率的推進を図ること。    右決議する。  以上の附帯決議の趣旨につきましては、すでに質疑の過程で十分論議されており、委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ御賛同賜りますようお願いを申し上げます。
  70. 羽田孜

    羽田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  渡辺省一君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  71. 羽田孜

    羽田委員長 起立総員。よって、本件に対し附帯決議を付すことに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、田澤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田澤農林水産大臣
  72. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後、極力努力をいたしてまいります。     —————————————
  73. 羽田孜

    羽田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 羽田孜

    羽田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  75. 羽田孜

    羽田委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  76. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上草義輝君。
  77. 上草義輝

    上草委員 昭和五十七年度の酪農畜産物価格の決定に関しまして、諸般の情勢と農林水産省の方針考え方について若干の質問をいたしたいと存じます。  過去、四年連続据え置きになってまいりました乳価でありますが、実に五年間も同価格で抑制されてきているわけであります。いまや酪農民の窮状もその極に達していると思うのでありますが、最近における酪農経営の困難な事情について農林水産省はどのように把握をしておられるか、まずお尋ねをしたいと思います。
  78. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 酪農の現状は、いま先生指摘のように非常に厳しい。それは先生承知のように、昭和五十一年から五十三年までが七%ないし八%の成長を見たのでございますが、五十四年に成長が鈍化してまいりまして、その後、私たち計画生産を進めているわけでございます。ちょうど五十一年から五十三年までの成長期にかなりの投資が行われた、そのことがその後の鈍化によりまして大きな負担になっているということでございまして、私たちは、これから計画的に生産を進めてまいりまして、これまでの七%あるいは八%の成長は見込まれませんけれども、少なくとも二%前後の成長を維持しながら畜産農家の育成を図ってまいりたい、かように考えているわけでございます。
  79. 上草義輝

    上草委員 昨年十二月から貸し付けの始まりました酪農経営負債整理資金の現状と今後の進め方についてお尋ねいたします。
  80. 船曳哲郎

    船曳説明員 酪農をめぐります厳しい情勢にかんがみまして、五十六年度に新たに先生お話しのございました畜産振興事業団の指定助成対象事業によりまして長期、低利の酪農経営負債整理資金の融通を行ったところでございます。  その貸付額は約百六十三億円。北海道が百四十六億円で、内地の二十四府県が合わせて十七億円、合計約百六十三億円でございまして、対象戸数は三千三百五十九戸、うち北海道が三千百十四戸、二十四府県が二百四十五戸ということになっております。今後とも、六十年次までの間、毎年次経営改善安定計画の見直しを行った上で負債整理に必要な資金を貸し付けますとともに、総合的な経営指導を通じまして経営合理化の自助努力と経営の改善安定を促進してまいりたい、このように考えております。
  81. 上草義輝

    上草委員 そこで、生乳の需給はかなり改善されてきていると思うのでありますが、現在の乳製品の市中在庫の動向、これをひとつ正確にお答えいただきたいと思います。
  82. 船曳哲郎

    船曳説明員 五十四年度から需給調整対策といたしまして飲用牛乳の消費拡大事業、それから生産者団体によります生乳の自主的な計画生産が行われまして、その効果の浸透もございまして、生乳生産量伸び率は鈍化いたしております。五十五年度には、過去からの累積在庫を別にすれば、単年度需給はほぼ均衡化したというふうに考えております。五十六年度は夏の好天候によりまして、飲用牛乳の消費の増大、それからアイスクリーム、還元乳等の消費の増大といったこともございまして、民間乳製品在庫が減少し、乳製品価格も次第に回復してきてございます。  お尋ねの民間乳製品在庫でございますが、二月末の状況の悉皆調査の結果によりますと、バターは八千トン台、脱脂粉乳は一万八千トン台という結果を得てございます。この調査結果につきましては現在関係者に照会を行いまして、その実態に合致するかどうか確認中でございます。いずれにせよ、民間在庫はすでにほぼ正常化した、このように考えております。
  83. 上草義輝

    上草委員 いま飲用乳の安売りの問題が出ているわけでありますが、この価格の乱高下の問題、これを正常化させるためにどのような対策を考えておられるか、お答えいただきたいと思います。
  84. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 実は、その飲用乳が非常に安く売られているということが私ども大変心配でございます。一番の問題点ではなかろうかと思っておりますが、要因として考えられますのは、生乳全体の需給がかつては大変緩和基調であった。最近、おかげさまで全体の需給はかなりいいところへ来ているのではないかと思うのですが、これが飲用と加工との間で、用途別と申しますか、そういう面でまだ必ずしもしっくりいっていないということがあろうかと思います。そういうことが助長されますのは、一つは産地間において非常に市乳化競争が強い。県内では比較的うまく需給がバランスしても、たとえば大都市圏等へお互いに売り合うというような形での産地間の市乳化競争。  それからもう一つ、プラントが能力としては若干大きうございます。そういうプラント間の過剰競争がございますが、この場合に、特に、乳業の場合には商系と農協系という二つの系統、商系の中でも大きなもの、小さなもの、いろいろ系統がございまして、その間の不信感というものが市乳化競争に拍車をかけているのではないか。  それからもう一つは、かねがね問題になっております量販店との取引関係。私ども、非常に大事な食品でございます牛乳がいわば目玉商品化することは非常に問題だと思っておりますが、大量販売をいたしますスーパー等におきまして依然として目玉商品として取り扱っておる、こういうようなことが市乳価格を安定させない大きな原因と考えております。  私ども、そういうことをいたしますために、まず第一に、総量のコントロールといたしましては御承知のような計画生産をお願いしているということ、これはある意味では着実に進んできていると思います。それからもう一つは、消費を伸ばすという意味で、全体の消費拡大対策をいたしております。これは御承知のように、学校給食だとかあるいはその他の助成事業の中で妊産婦とか老人のための牛乳の安売りというようなこともやっているわけでございます。それから、先ほど申しました飲用牛乳の施設がそもそも多いのではないかという点につきましては、現在におきまして、施設の新増設を抑制いたします。それから農協プラントあるいは中小といったものについては、その組織化を図るというようなことをいたしております。それから、量販店との取引関係でございますが、これは御承知のようにいろいろ問題がございましたが、昨年十月に公正取引委員会等とも御相談の上、いわゆるガイドラインというものを引きまして、これによって量販店との取引関係を正常化していくということを進めているわけでございます。  こういう項目にわたってやってきているわけでございますが、現段階で、それでは安売りというようなことが完全に好転したかと申しますと、まだいろいろと問題があるということで、特に、生産者間の協調、それから生産者と乳業メーカーとの話し合いをいたしまして、生乳取引をもう少し正常化していただきたい。要するに、一定の基準価格で取引されるものと非常に安く売られるものとがございます。こういうものの格差をなくしていくというようなことを生産者あるいはメーカーと話し合いながらやっていくということ。それから、スーパーの極端な安売りにつきましては、これは公取は実は二件ばかり検査、摘発もいたしておりますが、そういうことを通じまして極端な安売りというのは抑えていく、こういうようなことを逐一やっておりまして、徐々にではございますがそういう効果が上がりつつある。ただし、実はこれは粘り強く今後も指導していかなければならない分野だと考えております。
  85. 上草義輝

    上草委員 時間がありませんので、駆け足で。  そこで、乳価の算定試算についてでありますが、諸物価が高騰し続けている、あるいは生産諸資材の高騰が続く中で、一部に今回もまた据え置きというような報道がされているわけでありますけれども、こういうことでは酪農民と政府との信頼関係というのは全く存在しなくなってしまうのではないかということをあえて心配いたしております。昨年、一昨年、二年続きの冷災害に見舞われました北海道、たとえば、この冷災害による自給飼料の減収の問題、細かく申し上げる時間がありませんが、こういったことについての配慮も試算の算定要素の中に当然入れるべきである、われわれはこう考えるわけでありますが、この辺をぜひ吸収して考えていただきたい。この点についていかがでしょうか。
  86. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 乳価の算定につきましては、所要の算定方式を使いまして、最近時点における各要素を入れて、現在、算定の作業を急いでいるところでございます。  先生指摘のように、北海道につきましては、この二年間続けてそういう災害があったということ、農業経営上大変なマイナス要因であったということは十分承知をいたしております。算定方式の中では、過去におきますそういうものを特別何か算定に入れるというための要素というのは実はないわけでございますけれども、観念的に言いますれば、単位当たりの生産性が下がってくるとかあるいは経費が増高してくるといったような意味で、全く算定の要素の中に入らないということではございません。ただ、災害を補てんするという意味で何かプラスをするということは乳価算定上はできないわけでございますけれども、そういう農家の経済事情等につきましてはわれわれも十分関心がございます。そういうことを頭に置きながら、現在出てきております各種の算定要素なり、特に、経営関係の経費、これは御承知のようにいろいろな要因がございますけれども、たとえば片側に労働費等の上がる部分がある。それから子牛の代金が下がってきている、そういう部分もありますが、逆に購入飼料が五十六年あたりは非常に高うございましたが、そういうものは下がってくる要素とか、各いろいろな要素を現在慎重に詰めておる段階でございます。
  87. 上草義輝

    上草委員 そこで田澤農林水産大臣、いま内外ともに輸入の自由化であるとかあるいは枠の拡大というようなことでいろいろな圧力が加えられている中に、わが国の酪農の将来を基本的にどう考えておられるのか、その基本的な所信をお聞きしたいと思います。
  88. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、私たちは過去の五十一年から五十三年までのいわゆる成長時代、それから五十四年以降の成長の鈍化した時代、そして五十一年から五十三年までの投資が大きな負担になっている、この状態はそれなりに処理してまいらなければいけませんけれども、やはり五十四年以来の計画生産によりまして、これはもちろん、生産者の御協力をいただかなければなりませんけれども、それによって、これまでのように六%ないし七%の成長を見込めると予想することはできませんけれども、少なくとも二%前後の成長を維持していける酪農産業を確立してまいりたい、かように考えております。
  89. 上草義輝

    上草委員 牛肉の自由化要求に対するいろいろな声が出ているわけでありますが、この点にいかに対応するのか。また、わが国の牛肉の価格の対外比というのは決して高いものだとも思わないのでありますが、畜産局長、この辺についてどう考えておられるか、お尋ねします。
  90. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 牛肉の国際価格でございますが、非常に物が違っておりますし比較しにくいのですが、大変粗っぽく申しますと、最も安いと思われます豪州との関係では、これは卸売価格で対比いたしまして大体日本の三分の一かと思います。それから、その次がアメリカ等のグループでございますが、こういう国と日本の牛肉価格では、日本が大体二倍、要するに向こうが半分の値段。それから、日本よりも国土の面では若干恵まれていると思いますが、やはり土地の広がりに制限のありますECに含まれます諸国家群との間では、卸価格で大体向こうが三割程度安いのではないか。これは五、六年前と比べますと、EC諸国家と日本の間でも、日本の二分の一ぐらいの価格だったわけでございますが、国際価格は逐次上昇をしてまいっています中で、日本価格につきましては、生産性の向上、農家の方々の御努力等がございまして余り値上がり幅が大きゅうございません。ここ四、五年の間の消費者物価の値上がりの高さよりも、御承知のように、食料品の価格の値上がりの幅が低いわけでございますが、その中でも肉類が一番低うございまして、牛肉がたしか二〇%前後の上がりでございます。豚、鶏ははるかに低いわけでございますが、そういう形で最近は、まだまだそういう意味でECと全く同じとは申せませんが、ECの価格水準を大体目指していけるところに近づいてきていると考えております。
  91. 上草義輝

    上草委員 肉用牛肥育経営の負債の実態を細かくお聞きしたいわけでありますが、もう時間がありませんので、これらの経営安定のための資金対策もぜひ講じていただきたい。強く要望をいたしておきます。  いずれにしましても、本年の乳価、畜産物価格決定に当たりましては、生産者の皆様方の心情は先ほど私が申し上げましたとおりでございます。ぜひともこの辺の心情をお酌み取りいただきまして、何といいましても五年間価格がそのままに来ているという、もうこれ以上耐えられないぎりぎりのところにいま来ているわけでございまして、この辺を十分踏んまえて農林水産大臣の御決断をお願いしたい、かように申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  92. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 島田琢郎君。
  93. 島田琢郎

    ○島田委員 いま与党の委員からも、据え置きはもうことしはだめだよ、こういう趣旨の御発言があった。どうも政府の最近の傾向を見ていますと、ルールを破って、審議会の意見も聞かない前から、早くもローラーをかけるようにことしもまた据え置きだなどということを言い出しているのでありますが、一体この乳価、畜産物の価格決定に当たってのルールというものはきちっと守られているのかどうか、非常に私は不信感を持つのです。物は、厳しい情勢になればなるほどいろいろな方面に影響を及ぼしていくのでありますから、そういう点はルールをしっかり守るということであってもらわなければならないと、私は冒頭に注文をつけておきたいのであります。  さて、現状認識から言えば、いまお話にありましたように、酪農家の経営の状態というのは破局の事態に向かっている、こう言っても言い過ぎでない。あるいは畜産農家もそれ以上の状態にいまなっている。この現状認識をまず前提にしっかり確認しておかなくてはならない大事な点ではないか。私のこの認識に対して異論がありますか。
  94. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 全体の流れで申しますと、昭和五十四年ごろまでは御承知のように、五十年代、いわば畜産危機を乗り越えまして、価格相当程度上がった、いろいろな資本装備も進んできた、それから特に五十二、三年ごろはえさも非常に安かったということで、まあ一般論として申しますと、生産調整をしてまいりました初めの五十四年のころまでは、比較的順調にかつ伸び方も大きく来たと思っております。  五十四年のいわば計画生産時点を契機にいたしまして、経営面で申しますれば、生産自身を計画生産をしてくるわけでございますから、生産の総量自体が抑えられぎみに来たというのは御承知のとおりでございます。もう一つ、そういう抑えぎみにせざるを得なかったということは、酪農製品の価格なりあるいは市中の飲用牛乳の価格が、その時点を契機にして大きく低落をしてまいりました。したがいまして、御承知のような政府の保証価格ということだけではなくて、農民がそれに非常に多く頼っております市乳によります手取りも下がってきた。  そこで御承知のように、そういう時点で五十五、五十六年にかけまして、えさの価格なりそういうものが上がってくる。特に、北海道の場合は、五十五、五十六、連年の災害等がございまして、自給飼料についてもマイナス要因があったということで、私は、五十四年から五十五年、五十六年にかけましては、一般的に酪農の置かれている経営条件は悪くなってきている。その中でも特に北海道につきましては、そういう冷害があったという部分がかなり大きくマイナスになっている、そういう認識でございます。
  95. 島田琢郎

    ○島田委員 そういう認識のもとで考えますならば、昨年の保証価格が決定される段階においても、いま局長から説明のあったような諸般の情勢というものを踏まえた上で算式を変えるというふうなこともおやりになった。特に、昨年の酪農部会で情勢分析を報告していますが、その中でも特に強調していた点は、いまお話にあった需給事情というものが大変困難な状況のもとに置かれているということが述べられているわけであります。決まったことをいま繰り返しても始まらぬということを言われるかもしれませんが、そういう意味ではいまのようなお考えはことしも踏襲するというふうに考えていますか。需給事情というものも十分算式の中へ考えとして盛り込みたい、こういうふうに理解していいのかどうか、もう一遍確かめたい。
  96. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 昨年の場合に需給事情と言いました中には、一番明示的に需給事情としてあらわれておりましたのが、御承知の乳製品の過剰でございます。乳製品の過剰につきましては、単に事業団が相当な在庫を持つというだけではなくて、市中に非常に多くの在庫があった、このことが圧迫要因となりまして、御承知のように、昭和五十二年以来安定指標価格を常に下回る価格でしか売れてこなかった、それが一番大きい要因でございました。それからもう一つ、そのときには余り明示的に申し上げておりませんが、市中におきまして市中の乳価を維持できない、これは市中における生乳全体が過剰であったのではないかと思います。その点につきましては、先ほど審議官からお答えをいたしました中にもございましたように、酪農製品、いわゆる指定乳製品の市中在庫につきましては正常化の方向をたどってきている、これはある意味では明るい見通しのできるところでございます。なお、事業団在庫が相当ございますことが圧迫要因となりまして、安定指標価格水準が本格的に回復してないという事情はございますが、少なくとも市中の在庫につきまして好転しているという事情は違ってきております。  ただもう一点、市乳の世界につきましては、先ほど申しましたように、これは全体の量のバランスの問題のほかにいろいろな要素がございまして、どうも結果的には、量は消化されておりますが建て値を維持できないという面で、これは量の過剰と言う方がいいのか、あるいは取引その他の点に問題があると言うのか、論議のあるところではございますが、この面についてはなお問題が基本的に解決されるまでには至っていない、そういう認識でございます。
  97. 島田琢郎

    ○島田委員 僕は、この際だから言っておきますが、民間在庫が大変心配されるような状況のもとに置かれているというのが、詰めて言えば昨年の大変大きないわゆる算定方式改悪の要因となっていた。しかし、保証価格が決定した途端に、民間在庫の数量把握に問題があったという点が露呈してきた。この点はことしはきちっと、昨年われわれはその点についてはもう終わった後だったということもあり、文句だけは言ったけれども、具体的には価格に修正がなされるというところまではやれなかった。ことしはその分もちゃんと入れるということではないと私は承知できないのですが、これはどうです。
  98. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 昨年の算定につきまして大変御迷惑をかけましたことを反省いたしておりまして、今年は、先ほども申し上げましたように、二月末をもちまして全数調査をいたしまして、単に、われわれの全数調査ということで審議会等にいきなりおかけしました場合にいろいろ御議論があってはなにかと思っておりますので、全数調査をしました数字等につきまして関係者、これは生産者団体も含めまして関係者の感触等も伺いながら、これは何と申しましても市中にあるものをつかまえることでございますので、若干つかまえにくいということもございますので、そういう感触も伺いながら市中の在庫水準については誤解がないようにしていきたいと思っております。  ただ問題は、せっかく市中在庫が減少しつつあるのにもかかわらず価格水準としてあらわれます安定指標価格が、バターにつきまして暮れのころに一〇〇の水準を達しておりますけれども、それ以上上がってこない、脱脂粉乳等につきましては一〇〇を若干超えたわけでございますが、政府が売り戻しができます一〇四の手前へ来ましたままとまっている、これが現在の需給の状況を若干あらわしているのではないか、そういう考え方をいたしております。
  99. 島田琢郎

    ○島田委員 しつこいようだけれども、本当は間違った資料のもとでつくられた算定方式であり、その結果出てきた保証価格なんだから、これは済みませんでしたでは本当は済まない話なんです。そこを今後改めるから勘弁してくれと言って昨年は逃れられたのですね。しかし、それは価格に転嫁されているということが言えるのだから、その分もことしはやはり取り戻してもらわなければ困る。この気持ちを含めて算定方式に取り組むことができるかどうかということをやってもらわなければならぬということをいま申し上げたのです。時間が限られている中でありますから、後ほどその問題にもかかわります部分がまた出てきますから、先へ進みます。  さて、先ほど、生産事情の悪化の点については一部認める、こういうことでありましたから、この点については改めて聞きませんが、ただ、経過的に振り返っておかなくてはならない大事な点が一つあります。  それぞれ仕事をやる上では、酪農家もやはり企業の一つであります。そうすると、交易的な条件というものが一つの目安になり、そこが経営がどう悪化していったかの一つのバロメーターになるわけですね。その点について、どういうここ数年の経過があったのか、数字を挙げて御説明をいただきたいと思うのですが、五十二年の現在据え置かれている乳価のところからで結構です。
  100. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 手元にありますのが五十年を一〇〇にしました指標でございますので、それで御説明をいたします。  経営の交易条件をあらわします場合に、畜産の場合えさの比重が大きいものですから、一般にえさの価格と製品価格を比べる交易条件指数というのがございます。これは食肉あたりには一番ぴったりした資料でございますが、酪農の場合、御承知のようにそれ以外の要素も相当ございますので、これだけでは判断できませんが、この生乳価格と配合飼料価格とのバランスで見た交易条件で申しますと、昭和五十年を一〇〇で見ました交易条件では、えさが大変安うございました五十三年ころでは一二八という指数が出ております。配合飼料が値上がりになってまいりまして、しかも、先ほど申しましたこの五十三年とか四年あたりをピークに、牛乳の手取りが下がってくるわけでございますが、特に、市乳なんかが低迷をしました五十五年で見ますと、先ほど一二八と申しました指数は一〇五でございます。そういうぐあいに、相当程度この交易条件指数は悪い数字になっております。  それからもう一つ生産性の要素としましては、御承知のように片一方では生産性向上、多頭飼育とか機械化とかいうことがございますので、そういうもので見るという見方があるわけでございます。これは指数の動き方自身もございますし、それからそういう場合に、たとえば他の作目との間でどうバランスするかというような見方もあるわけでございますが、一日当たりの家族労働報酬なんというものが一つの指標になろうかと思います。これは御承知のように、たとえば、いま申しました五十三年というような水準で見ますと、全国で一日当たりの家族労働報酬が八千二百円台ぐらいでございます。こういうものは、たとえば、当時これをやります水稲で見ますと、六千八百円台というような数字がございます。家族労働報酬で見る限りにおきましては、五十五年も合理化が進んでいるという面で八千二百円のところが八千九百円台に上がりまして、逆に水稲あたりは、若干米価が抑えられていることもございまして五千円を割るような数字がございまして、そういう面では他の作目に比べました場合に、それほど劣っていないという数字も出る場合もございます。  ただ、北海道の場合を申しますと、北海道のその他作物というのは、比較的パリティーで上げてきているものが多うございますので、他の畑作物、小麦とかバレイショといったものの方に、若干数字的に有利なものが出ているような状態でございます。
  101. 島田琢郎

    ○島田委員 特に、二つのオイルショックをくぐり抜けてきた、こういう中で指数的に比較をしてみまして、第一次オイルショックのときには、牛乳もそれなりにカバーされているといいますか、大体整合的に取り扱われている。それは数字が端的にあらわしているわけであります。  第一次オイルショックといえば、四十七年から五十一年の間になるわけでありますが、この間で見ますと、たとえば卸売物価指数が一六五・四、消費者物価指数が一七〇、農村の関係でいいますれば、農産物の総合的な面でいえば一八四・七、生産資材では一七五・五、牛乳は一八七・八、配合飼料が一八四・六、こういうふうに数字的なあらわれた結果によれば大体整合性を持っている。  ところが、第二次オイルショックになりますと、これが大変変わってきました。卸売物価指数一二七・九、消費者物価指数が一一三、農村の関係でいうと、農産物の総合で一〇七・九と落ちてまいりました。逆に生産資材一一八・三、牛乳はどうかというと九八・三なんです。大変な違いになってまいります。配合飼料はむしろ逆に一二五・八。そうすると、ひとり牛乳だけが大変な状態になった。それがフォローできない状態に置かれたままになっている。これが交易条件の一つの目安になるでしょう。いま全国ベースでお話がございましたし、配合飼料の問題もございましたが、北海道で言いますと、北海道は保証乳価の大多数を占める地域であります。ここの酪農の条件というのは、大変重要な点でございますから数字を挙げて申し上げておきますが、お話しのように、五十年を一〇〇として交易条件指数というものがどう動いたかといいますと、五十一年で一〇八・九、五十二年は一一七・五、五十三年は一三七・八、五十四年は一一五・三、ここまではまあまあであります。ところが、五十五年になりますと九八・六と落ち込んできた。昨年は九四・六であります。昨年よりは少しいいというふうな見方もありますが、恐らくそんなに大きな違いではない。交易条件はまさにこういうふうに落ち込んでいる。これではとても酪農経営が維持できるはずがないということになります。  そこで、私はそういう点を考えますと、まず第一には、酪農家の経営をどう維持発展させていくかという大事な政治判断が迫られているのがことしだ、こういう認識前提にしっかり持っておきませんと、保証乳価の決定にわれわれが大変期待するようなものが出てこないということになりかねない。だから私は、一つ生産事情、いわゆる生産環境というのがどういうふうな状況にあるかという認識を畜産局なり政府はどうお持ちなのかということを聞いたわけであります。  ところで、先ほど需給の均衡ということを念頭に置いて昨年も据え置いた、そのためには算定方式を改悪した、こういうことでありますから、ことしはもう一つ需給事情がどうなっているのかという点を精細に調査をしてみなければなりません。局長からは、先ほども私の質問の中ですでに需給事情の一部について触れられている。しかし、それをもう少し細かく分析をしてみたいと思うのですが、一昨年とは違った需給事情がある。つまり、よい状況のもとにいま置かれている、こういう判断をしていいと私は思っています。それは一つには、生乳生産量の伸びが著しく鈍化をしたということもありますが、しかし昨年の夏の天気回りなども好影響をもたらして、飲用は着実に伸びてきた。それと生乳、特に加工原料乳地帯における生産が、酪農家の皆さんの血のにじむような生産調整という厳しい対応の中から、結果的には乳製品に仕向けられるものが減少した、こういうことも一つあると思います。しかし、全体的にはアイスクリームだとかヨーグルトなどというその他乳製品と言われるような需要が、これまた幸いに強含みで推移をしている。これは需給事情の好転と見ていいだろうと私は思うのです。それと、最も大事な民間の在庫は底をついた、これは大変大きな要因として考えていっていいものであります。その上加えてチーズに対する嗜好性が高まった。それを受けて生産の拡大の動きがこれまた顕著になっている。  こうやって数え上げてまいりますと、需給事情はまさに大好転の兆しのもとに置かれている、すでに好転している、こう考えれば昨年方式をそのまま採用するという理屈は出てこない、私はこう見るのですが、いかがですか。
  102. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 最初に先生指摘の第一次ショック、第二次ショックの見方でございますが、先生指摘のように、一次ショックのときはみんな物の値段にかぶせてしまえということで、最終的には製品価格にかぶせられたわけでございます。かぶせた結果が大変な生産の増強を生みながら、実は、消費がそれほど伸びなくなった、その結果、せっかく価格転嫁はできたのでございますが、価格転嫁した品物がよけいつくられたけれども、それが最終消費につながらなかった。その結果が、残念ながら御承知のような乳製品あるいは市乳の市場においても生産を抑制的に扱わなければ最終消費者の口に入れてもらえなかった。そこが一次ショックの場合の利点でありましたと同時に、私どもとしては反省せざるを得なかった点でございます。  結局、第二次ショックと言われています最近の中で、物の値段が上がってくる。農家の方も一生懸命合理的に生産したものを、合理的に生産したものならばそれなりの値段で消費してもらいたいわけでございますが、結果的には、乳製品は安定指標価格を下回ったり、市乳に至りましては五十三年をピークにして、平均的に言いましてもかなりの程度の値下がりをしている。そのことが回り回って農家の方の所得を上げないような仕組みにしてしまっている。こういう仕組みを定着いたしますれば、いかに農家の方が一生懸命生産されても、そのものが市中の消費として最終消費者がそれを受け入れてくれないという形では大変なことになるわけでございまして、そこが生産調整に御協力いただいて、結果的には、量をコントロールして値段をようやく最近の時点で、いまから四、五年前の水準のところまで取り戻しつつあるというのが現状ではなかろうかと思います。御指摘の数字のように、そういう中で交易条件はどうしても悪く出てまいります。それはやはりそういうことをして価格を取り戻す条件をいまつくっているということではなかろうかと思っております。  それから、いま先生がおっしゃいました五十六年度における市乳、五十六年から五十七年にかけて、生乳なりあるいはそういう酪農製品の需給をどう見るかということでございますが、私も先ほど申し上げましたように、事柄は明るい方向へ向かっているという認識では先生と同様でございます。ただ、本来、明るい方向に向かってきているのであればもう少し——たとえば、安定指標価格の面で、安定指標価格がバターが一〇〇のままとまって動かない。これなんかにつきましても、先ほどの消費者との関係がございます。特にバター等の場合、競合いたしますマーガリン等の競合商品がございまして、需給がタイトになってきたからといってむちゃな値上げをすればまた売れなくなってしまうのではないかというおそれがあるとか、先生が先ほどおっしゃいました乳製品の中でいま最も伸びておりますソフトな製品、ソフトチーズもそうですし、それからヨーグルトのような製品も伸びているわけでございますが、こういうものとて非常に価格に敏感な商品です。たとえば、最近御承知のように、牛肉、豚肉の消費の場合でもそうなんですが、値段が強含みになりますと消費が停滞してしまう。値段が安定的になると消費が伸びるというようなぐあいで、われわれの胃袋の二千五百カロリーの限界の中でいろいろと商品が代替しますものですから、需要が強含みになったということが即価格に全面的に転嫁できないというところが、最近における最大の悩みでございます。しかし、先生いま御指摘のように、この数年間の非常に条件の悪かった時代に比べますれば、乳製品——市乳はまだそこまでは申し上げられませんが、乳製品については条件が比較的改善されつつあるのではないかという気持ちでございます。  それから、そういうことから考えれば、五十五年の算式じゃない算式で算定すべきではないかという御提言でございます。これにつきましては、まだ私ども算定方式を最終的に定めて計算をいたしておるわけではございませんが、あの算定方式の中でいろいろ可変的要素がありますものは、御承知のように労働費をどう評価するかとかあるいは自分の資本利子をどう評価するとかあるいは自己の所有地をどう評価するか、いわば、いずれも現実に払われている金額ではございませんけれども、それを他のたとえば、労働費でございますと工場の労賃と評価がえをする、自己の資本利子につきましては一体どれくらいの利回りを考えたらいいかということで評価がえをするという手法のところが、先生の御指摘の可変的な部分でございます。こういう問題につきましては、全体のあの法律に定めております生乳の需要とかあるいは生産状況その他の経済状況を勘案しろと言っております。それから、酪農生産の合理化を促進するような考え方で算定しろと法律で命じておるわけでございますから、そういう法律の定めております範囲の中でどういう数字を使うかということにつきまして、これは私どもも案をつくりますし、そういうことについて畜産振興審議会で御意見をいただいて、そういう御意見を尊重しながら、そういう御意見を聞きながら、私どもの算定を進めていくというのが基本的な態度でございます。
  103. 島田琢郎

    ○島田委員 私どもは、第二次オイルショックのときに、いま局長からお話のあったように需給事情等が非常に大きな重圧になっているという事実の前に、高いえさを承知でも使い、その上さらに低乳価のもとでいわゆる生産調整というそれこそ厳しい問題にも対処してきた。これは実に涙ぐましい努力だ。押しつけられても押しつけられてもそれに踏み耐えながら何とか経営を維持したい、こうやってこの苦難のところを切り抜けてきたわけです。いま、私は過去のことをこうやって申し上げているのは、やはりそういう置かれている厳しい条件のもとで苦難に耐えてきたその気持ちが政府にわからなければ、ことしの乳価もわれわれの期待するようなものにならないのではないかというふうに私は考えて、そこの認識を共通にしておかないといけない、こう思って、置かれている状況の分析に長い時間をかけたのであります。  いま、後段で法律のもとにおける諸般の事情を十分勘案しながらこれから作業にかかりたい、こういうことでありますが、いまやりとりをいたしました点は、ひとつ正確に鉛筆の先にあらわれるようにしてもらいたい、こう思っていますが、重ねて私は、昨年とは状況が変わっているということは明らかになりました、だとすると、昨年の方式はもうとらないということは言えると思うのです。つまり、交易条件が大変悪化をしている、また経営経済の状態、つまり、生産の状態はこれまたきわめて窮迫の状態を告げている。その上、あきらめて先の見通しを失ったわれわれの仲間が、これまた急速度で脱落しつつある。日本酪農の大事な根幹を守ることさえできないという状況にいま置かれているというふうに、私は集約していいと思うのです。そこをやはりことしは踏み耐えなければならぬ。それを一方的に生産者にだけ押しつけるようなことは、もうとてもできる条件にはない。ですから、私は全面、価格に転嫁しろという要求を生産者の皆さん方はしているのではないと思う。たとえば、具体的にいま要求が出されております保証価格は九十八円五十四銭であります。これは実に最低の要求だ、こう受けとめていい。こうなりますと、いまのいろいろやりとりをいたしました点を十分頭に置くならば、相当程度価格に取り込むことができる、私はこういうふうに認識をしておりますが、この点をもう一度確かめながら次に移っていきたい、こう思います。
  104. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私が申し上げております事情——先生と全く同じような感じで見ている場所とか、あるいは先生のおっしゃっている意味は私はわかりますが、たとえば、乳製品の需給事情といったような場合に、先生は量が減ったということをもって、私も好転しておると申し上げておりますが、それが端的にあらわれて、それが価格にとおっしゃいますが、私ども考えでは、そういうものは本来、最終的には安定指標価格の回復という姿であらわれるべきではなかろうかとか、そういう意味で若干ニュアンスが違って同じ問題をとらえている点があろうかと思います。私ども算定方式を使います場合に、去年たとえば、市中の乳製品が余っているということだけで算定方式をどうこうしているわけではございませんで、先ほど申しました法律に定めますいろいろな諸条件というものを勘案して、いろいろな算定方式あるいは算定方式の中にとります数値というものを考えておりますので、私は先ほど法律の規定に基づきましてやると申し上げておりますが、そういうものの考え方につきましては、私ども原案をつくり、審議会の中で御批判をいただきながら御決定をいただくということでございますので、市中の在庫が減ったことが即、算定方式を変えるというように直結されるものではないことだけを申し加えさせていただきたいと思います。
  105. 島田琢郎

    ○島田委員 もちろん、私は、民間在庫の問題が昨年の算定方式を変えたすべてだなどとは言っておりません。しかし、これは相当高いウエートで考えられていたことは紛れもない事実なんです。そういう点を改めて私は強く申し上げておきたい。  さて、そこで保証価格が決められていく中に、もう一つ基準取引価格という問題がございます。これは昨年の算定方式の中におけるいわゆる安定指標価格の低迷とかあるいは在庫の問題とかいろいろあって、この基準取引価格という問題についての取り扱いというのは私どもにとっては大変不満ながらも容認せざるを得なかったという経過が一つあるわけであります。ところが、ことしはあなたもおっしゃっているように、在庫調整は進んだ。引き合いもかなり強まっている。安定指標価格は、あなた流に言えば、復元した、こう言うのでありますが、私はこの先の見通しからいって、かなり安定指標価格を上回る水準でいける、こういうふうに見通しています。そうすると、やはり基準取引価格というものについても検討を加えなければならないときにあると私は考えます。とりわけ、いままでお互いに供給をする側に立っている酪農家とそれから乳業メーカー、これは国民に対して供給をするという立場に立っているという点では共通でありますから、こういう点ではお互いが困ったときにはやはり助け合うといいますか、十分の理解を示し合うということが必要だという点で私は異論を唱えるつもりはありません。しかし、先ほど来の議論で明らかなように、乳製品をめぐります状況というのは一ころとは非常に違った状況のもとに置かれている。よい方向だと考えていい。ところが生産の酪農家のところは悪化の一途をたどっている。こういうことになりますれば、とうに理解し合って消費者に対する供給を行おうとしても不公平感が出てまいります。これでは、政策的な立場から考えますればきわめて不公平、こうなるわけでありますから、この辺の整合性をきちっと求めていくというのも私は行政や政治の責任だと考えています。特に、従来も多少問題になっていたのでありますが、基準取引価格を決めますときの安定指標価格の対象になっております指定乳製品の場合の製造あるいは販売、それらの標準的費用というのは、これは政府の手元で計算されるわけであります。  この調査の仕組みについて、私、この際、聞いておきたいのですが、生産者の場合は生産費調査、農家を指定いたしましてその数字を集めて生産費をはじき出しています。この製造コストを初めとするこうした企業のサイドにおける調査というのは、どんな手法でおやりになっているのですか。
  106. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 いまの御質問に答えさせていただきますが、ちょっと補足させていただきたいのですが、私どもは、事業団在庫というのは大変な重圧と考えておりますので、市中のことだけで乳製品市況はなかなか論じにくいということを若干つけ加えさせていただきます。  もう一つ、いま御質問がありました加工販売経費等の調べ方でございますが、これは御承知のように私ども全国の乳業工場を調べております。これは乳製品生産費調査という調査でございます。全国の乳製品工場百数十の中から大体五十七を抽出いたしておりまして、これは無作為抽出でやるわけでございますが、そういう工場の調査結果を見まして、その中でいろいろな調査のために必要なことをいたします。  たとえば、いろいろな経費その他のものについてとんでもなく高いと思うようなものをいろいろチェックする仕方がございまして、たとえば、一定の水準を大きく振れるもの、これはワンシグマで押さえるわけですが、そういう異常値修正をしたりあるいは乳製品の生産額が余り小さいものが出てきますと、それはまた当てになりませんからそういうのを落とすとか、あるいは一般管理費あたりは大工場、中小分けまして、その中の一番小さい経費をとるとか、いろいろな調査の約束事がございまして、大変厳しい形での内容審査をいたしております。こういうもので出しました数字を使いながら算定をするわけでございます。
  107. 島田琢郎

    ○島田委員 全国五十七とおっしゃったが、地域的にはどうなっていますか。——時間が大事ですから、この際、委員長に要求をしたいのですが、いまの資料を詳細にわたってひとつ当委員会に提出されることを望みたいと思います。私のいまの要求の方を先行させてください。出せるか出せないか。
  108. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 資料につきましては公表を控えるという前提で調査をいたしておりますので、資料について概括的なことは御説明をいたしますが、資料として提出することは控えさせていただきたいと思います。
  109. 島田琢郎

    ○島田委員 それは法律にあるんですか、出してはいけないという。
  110. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私も詳しく調べておりませんが、私どもが法律に基づいて調査を禁止していられるという趣旨ではないかと思います。
  111. 島田琢郎

    ○島田委員 それなら委員長からぜひ督励してください。
  112. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 この種のものを、逆に言いまして法律上強制できる権能がございませんければ、公表を前提にすると言えば調査ができないわけでございます。したがいまして、法律権限に基づいて何か調査をするという権限を与えられない場合に、結果的に協力を得られない。そうすることが運営をかえってまずくするということもございますので、私どもそういう調査というものは十分信憑性を持ちますように、調査をそのまま使うわけではなくて、先ほど申しましたようにそういうものをさらにわれわれが査定をするわけでございますから、そこは何かうその報告をうのみにしてやっているという性質のものではございません。
  113. 島田琢郎

    ○島田委員 無礼なことを言わぬでください。私はうそだとは言っていません。失敬ではないですか。  ただ私は、この調査に当たっての一つの疑問は、御承知のように法律に基づいてこの保証価格が決定される生産費調査の地域は、かつては一道六県であったものがいまは一道、北海道だけになっているのです。ところが、いまお話にあったように、製造の方は全国ベースで調べている。これでは不整合ではないか、こういう疑念を持っています。私は何も、あなた方がおとりになっている中身をうそだとか本当だとかと言っていません。うそか本当かを精査したいから資料の提出を求めているのであります。無礼な発言は慎んでほしい。委員長から重ねて注意と督促をしてください。
  114. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 本件の資料の問題につきましては、後日、理事会におきまして協議をさせていただきたいと思います。
  115. 島田琢郎

    ○島田委員 それでは、私がいま後段で触れました調査のあり方について不整合だと思うがという点についてどうお考えですか。
  116. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 加工販売経費をとる場合に、先生の御指摘は北海道なら北海道が原料乳地域だからそこだけをとれという御趣旨だろうかと思います。そういうことをいたしました場合に問題になりますのは、再生産を——御承知のように、保証価格の方は加工原料乳地域の生乳の再生産確保することを旨として定めろということを書いてございます。再生産確保することを旨としてという趣旨の中で、御承知のように、その八割がすでに北海道に集中をしてきているということからここを使ってやっているわけでございます。  一方、基準取引価格は、安定指標価格から製造加工費を引いたものでございますが、これについては制度上全国どの地域でもその価格で引き取らなければならない、それ以外の、それ未満の価格で取引をしてはいけないということを定めている法律でございますから、これは全国どこの場合でもその価格で引き取れということになると、いまおっしゃいましたように、大変生産性が高いと申しますか能率的なところだけでやりまして、みんなこの能率にならえと言われましてもならいようがないわけでございます。御承知のように、内地のように非常に季節的稼働をするようなものにそれを強いるということになれば、逆に余乳の引き取りを拒否される条件になろうかと思います。私どもそういう意味で現在、そういう方式をとっているわけでございますが、もし先生指摘のような方法を万が一とるといたしますれば、北海道におけるそういう原料乳の見方をすると同時に、内地に別途いまよりもさらに高額な製造加工経費を認めてやるという手法以外にはございません。どちらが得策かということについてはなお検討の要があろうかと思いますが、御承知のように、保証価格と基準価格のとり方は別個の要素で決めることになっておりますから、たとえば、保証価格についても、あるいは加工経費につきましても二分してとるような方法をとりましたとしても、それが直ちに保証価格の引き上げに働いたり、あるいは財政負担の軽減あるいは増高に働くかどうかは一概には申し上げられないところでございます。
  117. 島田琢郎

    ○島田委員 それは政府政府なりの一つの見方というのがあるんでありましょうけれども、非常に純粋に物を考えれば、その点は変だなという感じを持ちます。ですから私は、それに正確に答える意味でも余り資料を隠し立てしない方がいいんではないか、こう思って先ほど資料の提出を求めたのであります。  さて、乳業をめぐります情勢は大変好転しているのではないか。たとえば最近の主要メーカーの決算内容が新聞等でも次々と明らかになっています。そういう分析の上に立つならば、確かに、一ころの苦しい状態が続いていたということについては、これは数字も明らかに示していますからわかるのでありますけれども、特に昨年と比較をしてことしの場合、というよりは、正確に言いますればおととしと昨年の比較ということになりますが、私は、相当乳業の状態は軒並みにと言っていいほど好転している、こういうふうに見ているのですが、この点は畜産局としてはどう分析をされておられるか、まずそこを聞きたい。
  118. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 乳業メーカー全体の経営の動きでございますが、遠くさかのぼれば、この加工原料乳の不足払い制度ができます以前におきましては、実はメーカーの利潤率というのはいまよりかなり高い水準を走ってきたことは御承知のとおりでございます。その後、こういう不足払いの制度の中で利潤率は、一般論として申しますと、食品産業の中ではむしろ低い部類で推移をしてまいりました。特に、五十三年あたり以降酪農経営にもいろんな問題が出てきますと同時に、乳業メーカーにとっても、たとえば、乳製品が安定指標価格で売れるはずだという前提でつくりながら、実際の販売価格はこれを下回るとか、あるいは市乳におきまして取引条件が低下するというようなことから、いわばどん底に近づいたわけでございます。しかしながら、いま先生が御指摘になりましたように、五十五年の冷夏というのが一番悪い時期ではございましたけれども、昨年は幸いにしまして好天になりまして、生乳についてもある程度回復をする。それから在庫をしておりました乳製品価格は上昇をしてくる。上昇したといいましても、安定指標価格を超えたわけではございませんが、上昇をしてくる。あるいは夏場のアイスクリーム等二次製品が特に売れたというようなこともございまして、昨年の上期、ことしといいますか、一昨年と昨年上期の対比におきましては、御指摘のようなかなり内容的に改善がうかがわれるような姿になってきていると考えております。
  119. 島田琢郎

    ○島田委員 それをもう少し詳しく見てみますと、A社は、ABC社と呼称しますが、A社は経常利益率、五十二年のときの数字は二・四%です。五十三年は二・五二、五十四年は確かに大分下がりまして一・二二、五十五年もやや同じような水準であります。五十五年に入りまして上期は確かに横ばいで一・二のところの水準にありますが、昨年の四月から九月の上期に入りますと、二・〇、これは五十二年の水準になっているのであります。そうすると、私は、乳製品市況も安定指標価格に近づきあるいは一部超えている、これは五十二年の水準に回復したと見ていいと思う。  B社で見てまいりますと、B社は、五十二年に〇・二八、五十三年は〇・九四、大変苦しい状態が続いているようであります。ところが、昨年の上期に入りますと一・二、これもまさに五十二年の水準に回復しているどころか、これをオーバーするという状態になっています。  C社はどうか。五十一年が一・八〇です。その後、大体一・二七、一・八二、一・一一、一・三九とやや横ばいの感じになっていますが、このC社もまた昨年の上期では二・一、これは五十二年水準を超えるという状態にある。  それは詰まるところ、乳製品の市況も五十二年の水準に達した、回復したということになりますれば、C社のごときはかなりの増益になっていると見て差し支えない。ちなみに五十三年の基準取引価格は現在の一銭差であります。  そう考えてまいりますと、乳業は支払い能力を持っていた、持っている。五十二年のときには持っていたわけです。しかし、現在の水準が五十二年水準に達しているということになりますれば、これは払える能力は十分ある、こういうふうに見ていいでしょう。その後コストの上昇とか合理化をしてきたとか、いろんな要素がそれぞれ入ってまいりますが、私は、乳業にはかなり支払い余力があると見ていい、こう結論をつけているのであります。いずれも二%台に回復をしている。あなたがおっしゃっているような大変困った状態にあるなどという認識はかなりずれたものになるんではないですか。
  120. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 先生のおっしゃいます支払い能力というのと、それから私どもが制度で考えております保証価格と基準価格、こういうものとの間に若干の問題があろうかと思います。  いま先生指摘のように、五十二年当時、乳業各社は、政府が保証価格を決め、あるいは基準価格を決めまして、その間に不足払いをいたしますもののほかに、乳業メーカー独自のものとして対酪農民との関係でいろんな支払いをしているという事実はございました。そういうことから、乳業メーカーが経営的に大変困難の中でそういうものを整理をしていったというような経緯も私は承知をいたしております。  私どもがいま価格の問題で考えなければならないのは、いわば保証価格、農民が合理的な酪農経営を続けながら再生産確保するのに必要な乳価水準は何かということと、それから安定指標価格をどう見て、その安定指標価格から合理的な製造販売経費を差し引いた額、いわば基準価格水準をいかにするか、この二点がわれわれに課せられた価格の決定の要素でございます。メーカーの支払い能力が大変高ければ、逆に言いまして、メーカーが何か合理的なことをやることによって支払い能力が大変高まる。たとえば、製造経費を半減して——まあそういうことはないことでございますけれども、製造経費を極端に下げられるような開発が行われて、それによって基準価格を引き上げられるとすれば、それは一方においては不足払いをすべき額が縮まるという場合もあろうかと思います。私どもは、そういうメーカーの製造販売経費がいかにあるか、あるいは安定指標価格がいかに動く可能性があるかということも含めて基準価格を算定し、かつ片っ方では再生確保といったような面での保証価格をどう決めるか、それに不足する部分については不足払いの単価をどう決めるかという考え方で整理をしているわけでございます。
  121. 島田琢郎

    ○島田委員 飛躍しないでください。私は、補給金を削る話をしておるのじゃありません。  もう一つ、いま支払い能力という問題がありました。そういう点で言えば、確かに五十二年当時はクーラーステーションの運営費とか乳質改善奨励金とかいったような、つまり俗っぽく言うゴミカワと称するものがかなりメーカーサイドから生産者に出されていた。これは取引諸条件に属するものであります。ちなみに、五十二年は、総額にしておよそ八十二億円が支出されている。ところが、五十三年には四十億に下がり、五十四年は十九億に減らされ、五十五年以降は全くゼロであります。私は五十二年水準に回復したということを申し上げましたが、だとすれば、いまは当時出されていた八十二億の金を支払うだけの余力がある、そこに回復したと見ていいのではないか、こう考えているのです。それは法律的に決められているそれぞれの価格というものがあって、あとは生産者とメーカーとの間の話し合いでやる話だから、おれの方は知らぬ話だ、こう言われればそれまでであります。しかし、私は前段で五十二年の水準に回復しているではないかということを指摘いたしました。だとすれば、メーカーサイドはそれにこたえ得るだけの余力がこれまた同時に回復したと見ていいのではないか、こういうことを指摘したいのです。どうですか。
  122. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 最終の利益率その他におきまして好転をしたという事実から、先生は対酪農民との関係もその当時まで回復できるのではないかという御指摘かと思いますが、これは私どもで何とも申し上げにくい事情がございます。メーカーの一部には、たとえば、こういうものは酪農の部門で本当に出している利益ではないのだということを言う人もいます。これは全部本当だと思っておりませんけれども、御承知のように、特に指定乳製品の世界だけで申しますと、いまメーカーの売り上げの約四分の一でございます。もちろん二次製品のようなアイスクリームとかいろいろなものをやっておりますから、そういうものの利益も当然あるわけでございます。これから先のそういうメーカーと酪農民との関係につきましては、御承知のようにいまの法律の中では、指定生乳生産者団体という団体がメーカーとの間で価格交渉をするという権能を認めておるわけでございますから、そういうものの中でいままでも行われてきておることでございますし、逆に言いまして、そういう取引条件というものは需給の事情を反映いたしますから、過剰なときほどそういうことを要求する立場が弱く、ある程度需給が均衡してまいりますれば、そういう立場が生産サイドに強くなるということもあろうかと思います。
  123. 島田琢郎

    ○島田委員 さきごろ、つまり、日付で言いますと三月五日に、日本経済新聞が乳業大手三社の五十七年三月期決算、つまり、五十六年度の下期の決算予想を発表いたしております。  それによりますと、要約して申し上げますが、A社は、原料用乳製品は堅調に推移した。アイスクリーム、市乳もまずまずである、まだ決算が済んでいませんが。また、工場の集約化、借入金大幅減額などが大変大きく寄与している。したがって、経常利益は大幅に回復した。B社はどうか。クリープや紙容器入りジュースがきわめて順調に売り上げが伸びてきた。ただし、牛乳や乳飲料は伸び悩むという悩みが打ち明けられています。しかし、金利負担が相当程度軽減され、原材料もかなり安定的に推移をした。したがって、このB社もまた経常利益は大幅増である。C社はどうか。ここはヨーグルトが大変大きなシェアを占めておりますが、実にヨーグルトは四割増収しました。アイスクリーム、チーズは二けたに伸びました。ただし、ここも牛乳は競争激化で伸び悩むという側面を抱えている。しかも、こういう中から経常利益は過去最高になるという予想を立てているんですね。これは国民の目に触れる新聞に発表されているのであって、私は何も観測や予測や私見を交えて申し上げているのではありません。また、権威ある日本経済新聞が発表しているということは、これを正確に受けとめていいと思うのです。  こう考えてまいりますと、一つの問題が出てきます。確かに、局長が先ほどのお話の中で触れていた飲用乳という問題があることは、各社とも悩みとして抱えているということは一つ問題としてあるようであります。しかし、各社が飲用乳で伸び悩んだにもかかわらず、大幅増益である。こうなってまいりますれば、答えははっきりしている。何でもうけたか、乳製品以外にはないと思うのです。だとすれば、基準取引価格の算定に当たっての重要な要素としてこれは考えていっていい、こういうふうに筋立て考えてまいりますと、結論はそこにいくのじゃありませんか。どうもあなたの見方というのは、私をして言わしめれば、いささか偏見に過ぎる、こう思うのですが……。
  124. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 先生いまお読みになりました新聞の中でも、たとえばジュースだとかアイスクリーム、アイスクリームといいますのは指定乳製品をまた使いました御承知のように二次製品でございます。ですから、乳業の人の愚痴みたいな話を聞きますと、自分たちが持っている部分、といいますのは牛乳とそれからわが方が問題にしておりますバター、脱脂粉乳といった指定乳製品のところだけをやるよりも、それから先の脱粉を使ってアイスクリームをつくるとか、そういうところでもうけられて、どうも本来の基本であります乳業を持っているところの方が利益率が低いというのはまことに残念だというのは、そういうような感情が入っているのだと思います。一ころ乳業会社が脱乳業なんというようなことを言いましたものの中には、何となく根っこの本当に大事なところを持っているものよりも、それから先の二次加工のところに力を入れている人たちの方が利益が大きいということに対する乳業各社の不満が出ていたのだろうと思います。  したがいまして、私は、先生おっしゃいますように、そういうところでもうけが出ているのなら、たとえば脱粉を使ってやるようなアイスクリームがうんと売れるというのならば、脱粉の値段がほどほどに回復してもらわなければ困る。脱粉というのは安いほどいいというわけにもいかぬという意味で、先ほどから安定指標価格の回復の兆しというものがいまようやく一〇〇の水準に来た、それが何とか伸びるような、あるいは安定指標価格をある程度突破してくれるような需給状況をつくり出さなければいかぬのではないかということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、たとえばよく鉄道運賃のようなときに、デパートでもうけて鉄道で損してというような話がございますから、そういう総合経営の中で、ただ、乳製品会社といいますものはそんなとっぴなものをやっているわけじゃなくて、脱粉を使ったアイスクリームとか何かをつくるという意味では非常に関連が深いように思いますけれども、われわれが政策的にカバーしておりますものは生乳の生産それから指定乳製品の生産という部門でございます。ここで何とか利潤がある程度安定的に出るようになれば、これは生産者との関係においてもプラスに働く。そういう状態を早くつくり出すことがやはりこの酪農問題に対する答えになるのではないか。もう一つ先の方のところはだんだん明るいものが見えたというのであれば、そういう明るいものが見えてくるものの原料を供給しているところにやはり明るさを取り戻す、それはある程度時間がかかるかもしれませんが、そういうところへだんだん来ているのではないか。そのときに、こちらの方で大いに利潤があるよ、それを全部吐き出せというようなことが直ちに言えるかどうか。私は率直に言いまして、よくなることは結構だという大前提でございまして、よくなるのはおかしいと言っているわけじゃないのですが、よくなったということと、それから市乳の価格回復とかそれから酪農製品あるいはその上の二次製品の価格がほどほどになるということについては、やはりそれなりの需給関係を均衡させる努力とか、たとえば、市乳の世界ではもう少し秩序ある販売を行うとか、そういう努力が必要であろうと思っております。
  125. 島田琢郎

    ○島田委員 確かに、いまおっしゃった脱脂粉乳が、かつて脱脂乳やあるいは生乳が使われていたその他乳製品の分野に進出しているというのは、私も見逃すことのできぬ大事な点だと思います。それはいまどのくらいの数字になっているのですか、おおよそ予測としては。
  126. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 全体の量が動いておりますけれども、四十七年ごろにはその他乳によってつくられる製品は大体五十万トンぐらいありました。現在は約三十万トンぐらいでございます。
  127. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、単純計算でいけば二十万トンくらいそういうふうな形で使われている、こう見ていいわけですね。先ほど全部よこせというような話はちょっとむちゃくちゃじゃないかというお話があったが、私は何も全部くれと言っておりませんよ。分配を公正にということが大前提でありまして、要求乳価だってそこを十分考えて要求しているのです。百円に達していないのですから。酪農家の実感乳価で言えば、こんな状態になっているのだからせめて百円という三けたの乳価は欲しいという気持ちがあると思います。ですから間違ってもらっては困るのですが、もうけた分全部吐き出せ、そんなむちゃくちゃなことを言っているわけではありません。軍配を持って行司役に立っているのが政府でありますから、やはりそこのところの分配について公正に判断をすべきではないのか。  さてそこで、最後になりましたが、限度数量の問題について触れておきたいと思います。  百九十三万トン、いまのような状態でいきますと、先ほどのように飲用乳、市乳のところが大変投げ売りといいますか、むちゃくちゃな販売が行われている、この無秩序な状態というのはいつまでも放置するわけにはいかない。しかし、これは幾らそんなことをやめろ、けしからぬと言ったって、私は直らぬと思う。結論から言いますと、やはり加工原料乳のところのコックを締め過ぎるとそういう結果になる。つまり、牛乳というのは同じように白いものでありますから、その分配関係というのは非常に神経を使っていかなければならぬ点です。  そういう点を見てまいりますと、私は問題があるように思います。それはたとえば、需給の見通しでありますけれども、昨年の需給見通しは、政府はどんな見通しを飲用乳の方に出しましたか、加工乳の方に出しましたか。
  128. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 昨年出しました見通しでございますが、飲用の計で需要四百十五万トン、供給四百十五万トンという見通しを出しております。乳製品の計で、需要二百二十三万四千トン、供給二百十五万トンということになっております。そのほか自家用が、需要、消費とも十三万トン、十三万トンでございます。
  129. 島田琢郎

    ○島田委員 実績として考えるならば、加工乳で言えば、二百二十三万四千トンのほかに在庫取り崩しという量が加算されていかないと正確ではありませんね。それでは、五十六年度の飲用と加工の実績はどうなっていますか。
  130. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 最終的には締めておりませんが、いまの需要の数字に十八万トンぐらいのものが足されるものではなかろうかと思います。
  131. 島田琢郎

    ○島田委員 中酪が同じような生産計画立てていますね。これは五十六年度はまだ終わっておりませんから、いまおっしゃるように見通しを含めてになりますが、飲用は四百十四万八千七百トンという計画目標立てました。実績もややこれに近い数字であります。それに対して加工の方は、計画で二百三十五万九千四百トン、これには在庫取り崩し七万六千四百トンが含まれますが、実績では二百三十万七千三百トン、これには在庫取り崩し量を含んでおりませんが、申し上げましたとおり加工乳では五万トンの差が出るわけであります。私は、計画と実績の比較で言うなら、中酪の計画はかなり正確に近いものである、ところが政府の方は計画と実績にずいぶん誤差が出ている、こういうふうに見通されるのであります。つまり実績だけ見ても、畜産局の見通しというのは七万三千トン下回っていますし、それに在庫取り崩し量等を足していきますと、大幅に下回る過小見通しを行っているということがこの数字では明らかです。そこに、牛乳は飲用も加工も含めて全般を見通しながら、その配分についてかなり正確なものでないと、ダンピング、投げ売りあるいは乱売のような状態が生まれてくる原因が一つあるのではないか。つまり加工乳の方を余りしぼり過ぎますと飲用乳になだれを打つという現象が当然起こってきます。そうなりますれば、それは生のものですから、加工して一定期間貯蔵できるというものでないから、何としてもなりふり構わずでも売っていかなければならぬ、こういうことになると私は思う。それをけしからぬなんとだけ言ったっておさまるものではない。根っこのところをきちっと直さなかったら、こういう現象はこれから先も続いていくと私は見ていますが、どうですか。
  132. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 先生のおっしゃいますように、用途別の需要に合った計画生産をするということが一番大事だと思います。私ども、加工原料乳の不足払いの対象になりますものを極端に、たとえば、需要があるにもかかわらず押さえ込むというようなことは全く必要がないんだと思うのです。問題は、そういう需要オーバーをしてやりましたのが、残念ながらこの数年間の大変不幸な経験、結局、加工原料乳不足払いの対象になりました乳製品をどんどん積み上げて過剰状態にして乳製品の価格を低落させてしまって、それがなかなか農家手取りも上げられないような条件をつくり出したということでございますから、私どもは、乳製品需要がありながらそれを無理にとめて生乳に回すというようなことをするつもりはございません。ただ、そういうことを考えます場合に、先ほど先生も御指摘になりましたとおり、たまたまそういう指定乳製品が暴落していたということもあったかと思いますけれども、乳製品に経由しなくても使用できるような分野までその財政負担のかかるところへ行ってしまったということについてはいささか問題があろうかと思います。したがいまして、私どもとすれば乳製品に回って、しかもそれが適正に需要に結びついて積み上がることがないという分野というものはそういう対象にしていきたいと思っておりますけれども、それについていま申し上げたような事情もございますので、われわれはなるべくそれが適切に算定し、実行できるようにやっていきたいと思います。ただ残念ながら、御承知のように非常に夏場の好天といったような自然条件で相当程度動く商品であることも事実でございますので、そういうことも頭に置きながら極力そういう計画と実際の供給量がバランスとれるように、そういう意味でやっていくつもりでございます。
  133. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、先ほどもちょっと五十七年、つまり、ことしのこれからの動向についての見通しを述べました。恐らく乳製品の分野では不足基調、それどころかさらに高まっていくという感じがいたします。特定乳製品の分野で言えば、事業団在庫という問題が一つあることはさっきお話に出たとおりであります。それは民間のところが詰まってくれば事業団、放出せざるを得ない、こういう状況に相なります。しかし一面、アイスクリーム、ヨーグルトなどの問題も需要が増大するという傾向にありますから、これはあなたがおっしゃっているように行政の責任においてやはり正規のルートに戻していくという努力は払ってもらわなければなりません。が、その上にチーズの増産、これは北海道においてはチーズに大変関心が高まってまいりました。これは消費を背景に持っているということでありますが、これはソフトばかりじゃなくてハードまで含めて増産に向かう傾向がいま強まりつつある。ここでまたぞろ擬装乳製品のたぐいのものの輸入なんということが出てくればこれはだめでありますが、ここのところが節度よく行われれば私は、少なくとも百九十三万トンの限度数量は据え置きしないで増量していく可能性を持っている、こう思うのです。  それからもう一つ、昨年は酪農家の負債が大変問題になり、負債整理対策に政府も手をつけました。これから五年にわたって再建農家は死にもの狂いのまさに骨身を削る努力が重ねられていくわけでありますが、昨年、初年度に当たって天災と言われる台風や冷湿害の被害を大変受けて、しょっぱなから出ばなをくじかれるような思いをさせられている。こうした再建農家が再建し得る手だては一つしかありません。つまり、五%にしろ三・五%にしろ毎日子を生み孫を生んでいくのです。一刻も早く何とかしなくてはならぬ。そして生産の拡大以外に生き残る、再建できる道はない。もちろん、そればかりではありませんが、乳価を抑えられ、生産調整で乳しぼれず、天災を受けて腰くだけになるような思いをさせられる。まさに酪農家はいま三重苦、四重苦の中に苦しんでいるわけです。生産を拡大して何とか期待にこたえるような、一刻も早い経営の再建を図っていきたいという気持ちにこたえる意味でも、ことしは百九十三万トンの限度数量を据え置くべきではない。据え置かないでいける条件が生まれているし、飲用乳との分野の調整を図っていくということがもう一つ必要だとすれば、この際、少なくとも二百万トン台に乗せていくぐらいの思い切った措置をとらなければいけないのではないか、またとれる、私はその見通しを持っているんでありますが、いかがですか。
  134. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 限度数量の問題につきましては、いろいろな情勢変化もございます。ただ、申し上げておきたいのは、私ども何としても指定乳製品の価格が、正常なと申しますか安定指標価格を中心にわれわれの気持ちとすれば若干上回る方向で推移するようにやりたいわけでございます。これには乳製品の需給を均衡させる必要があるわけでございまして、先生も御指摘のように、市中在庫は正常化をいたしておりますけれども、まだ事業団在庫脱粉四・四カ月分、バターの一・二カ月分というものがございます。こういうものも極力早く身を軽くしまして、そういう需給事情の面が安定指標価格の面にもあらわれるようなことをつくり出す必要があると思っておりますので、そういうようなことも頭に置きながら限度数量につきまして適正を期して審議会におかけをしたいと思っております。
  135. 島田琢郎

    ○島田委員 あと一分か二分のところでありますが、きょうは大臣にお立ちいただかないで主として局長とやりとりをいたしました。しかし、質疑をしっかりお耳にとめていただいたものと思います。私は重ねて、今日的な苦境を打開するその期待が政府に寄せられており、とりわけ時あたかも農林大臣に御就任になった田澤大臣に対する期待というものは大きいわけです。勇断を持って今日的なこの厳しい状況を打開する取り組みを私は求めたいわけでありますが、ぜひことしは乳価を据え置くようなそういう非情なことだけは避けてほしい。限度数量も応分の上積みをして日本酪農の将来、百年の大計に重大な誤りを犯すようなことがあってはならぬ、こんな気持ちを含めてこの一時間半質疑をさせてもらったのであります。お考えを最後に聞かせていただいて、あるいはぜひ私の期待にあるいは酪農民の期待にこたえていただくという決意を込めて最後に御発言をお願いして、私の質問を終わりたい、こう思います。
  136. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど来畜産局長と島田委員の論議の内容をつぶさに拝聴いたしておりまして、酪農生産者の現状といったもの、よう理解できるわけでございます。私も、昭和五十四年以来の成長の鈍化が酪農生産者に大きな負担を与えている、そういう意味で、五十四年以来いわゆる計画生産で酪農の将来の基盤をつくるために努力をいたしているわけでございますが、そのためには、これまで五十一年から五十三年までにいろいろ資本投下した面がかなり大きな負担になっていると思いますので、そういう不況の面については、また災害をも受けたという点等もございますので、そういう点については私たちは極力配慮をして、今後行政を進めてまいりたいと考えております。  また、限度数量あるいは価格問題については、近く畜産振興審議会の意見をも聞いて——ただいま畜産局長からいろいろな要素を説明いたしましたが、これらの問題が恐らく畜産振興審議会で論議されることでございましょう。畜産振興審議会の意見を聞いて、適正に価格を決定してまいりたいと考えておりますので、その点御了承いただきたいと思います。
  137. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 武田一夫君。
  138. 武田一夫

    ○武田委員 最近、日本の農業をめぐる情勢、ことに厳しいわけでありますが、畜産酪農に対する厳しさというのはひとしお、これはもうひしひしと感ずるわけでございます。畜産物が生産調整を余儀なくされている中での輸入の増大あるいはまた最近のいわゆる自由化の問題、しかも畜産酪農農家の経営が非常に大変である、借財をたくさん抱えている、いろいろとその状況指摘しますと、深刻さというのは一番ここのところにあるのじゃないかというように思うわけでありまして、そういうときに、畜産物の価格をどうするかというような問題は非常に大きな関心事でもありますし、また今後の畜産酪農に対する政府の、そして田澤大臣の姿勢というのはどうなんだということは相当強い関心を持って見ているわけでありますが、いろいろと前に質問のあった方々の話をお聞きになりながら、今後、ひとつどうするかということを検討していただきたいということ、たくさんございますが、時間の都合で、私は三点ほど質問しておきたい、こういうふうに思います。  まず一つは、対日貿易の収支の不均衡是正を理由とする海外からの農畜産市場開放の要求の問題でありますが、大臣も、再三にわたって国内農業を守る立場から絶対受けるわけにはいかぬ、こういうふうに言っているわけでありまして、その決意は、農林水産省として、日本の国としての大きな決意として今後強く保持していただきたい、こういうふうに思うわけです。そこで、国内農畜産物の需給のアンバランスに配慮し、擬装乳製品の輸入規制などを再三にわたってしかとやるべきである、そして安易な輸入政策は行うべきじゃない、われわれは毎度のように主張しまして、今回もすでに、最近、大臣にこの点も申し入れをしていろいろと御注文申し上げたわけでございますが、この擬装乳制品の問題、それから豚肉の輸入の問題、この問題はどうも心配でしようがないのです。これは、そうした国内の農産物の需給のアンバランスに配慮した方向での輸入規制というものにしかと手を打っているかどうか、間違いなくそういう方向で来ているんだ、こう言えるかどうか、その点まずお答えをいただきたいと思うのです。
  139. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘の擬装乳製品だとかあるいは豚肉の輸入の問題でございますが、まず、擬装乳製品の問題につきましては、これはまあ、たとえば、その国で流通させないものが日本に入ってくるというような問題、非常に問題があったわけでございます。そこで、まず乳製品全体で申しましても、私ども国内の需給に影響を及ぼさないという範囲内で極力抑制的にやっているわけでございまして、乳製品全体の輸入量で申しますと、五十六年度は対前年比で八%ばかり減少をいたしております。特に、畜産振興事業団が一元輸入をいたします品目につきましては、すでに四年間輸入の停止をいたしておりますし、その他の割り当て品目につきましても、大変抑制的な運用をいたしております。  現在、輸入いたしておりますものは、御承知のような非常に安価な輸入品を供給する必要がある、これは典型的なは飼料用の脱粉等でございます。それから国内では生産できないもの、たとえば、乳糖とかカゼインでございますが、あるいは国内生産が必ずしも十分でない、ナチュラルチーズといったようなものに限っております。それから調製食用脂につきましては、本年度から事前確認制をとりまして、実需者あるいは輸入業者の自粛指導あるいは輸出国の自主規制によりまして輸入の抑制を行っておりまして、対前年比で約一五%減少をいたしております。ココア調整品につきましては、若干増加をいたしておりますが、これは他に転用ができないとはいうものの、われわれといたしましては輸入業者なりあるいは需要者と抑制をするということで約束をいたしておりますので、さらに指導を強めるつもりでございます。豚肉につきましては、御承知のように昨年年央に、前の年以来若干豚肉の国内価格が高かったというようなこともございまして、思惑輸入のような形で行われました。その結果、昨年十月ごろから基準価格を割るという不幸な事態がございまして、需要者、生産者それから流通業者ともども、輸入を後ろに繰り延ばすというようなことをやりまして、年を越えましてから比較的順調に回復しまして、現在、中心価格程度で動いております。豚肉につきましては、そういうぐあいに自由化商品でございますので、国内価格を極端に引き上げるようなことをやりますと逆に輸入攻勢をかけられるということで、安定的な価格に推移するよう生産者ともども協力して価格の安定に努めるつもりでございます。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 貿易摩擦の解消につきましては、政府としては非常に重要な案件でございますので、武田委員承知のように、昨年の暮れ対外経済閣僚会議を開きまして五項目にわたる対外経済対策を決めまして、それにのっとっていまいろいろ作業を進めているわけでございますが、特に、農林水産業にとって非常に厳しい中に、関税率の三年間の前倒しを行いました。また輸入検査手続の六十七品目の緩和も行って、これを基本にしながらわが国農林水産業の実態あるいは貿易拡大の姿勢をアメリカあるいはECによく説明をする、それで理解を得るということで努力をいたしているわけです。そのさなかに、ちょうど九日と十日に日米の貿易小委員会が開かれまして、これは事務レベルの会議でございますけれども、その中で、確かに、アメリカは農産物の市場開放というものの要求は強うございました。しかし、私たちは、農産物の二十二制限品目については農業の基幹作物であるし、また、各地域の重要品目でございますので、これを拡大するわけにとてもいかないという主張をいたしてまいりました。アメリカは、農産物の市場開放に対する要求というのは非常に強うございますけれども基本的には、やはり日米間の農産物の市場開放は良好である。特に、日本はアメリカのいいお客さんでございます。この市場開放については、単に、日本だけに要求しているのではなくしてECに対しても強く要請をしておるのでございまして、来月にもECとの協議を始めたいということでございます。したがいまして、私たちは、いま牛肉の問題とオレンジの問題は、武田委員承知のように、東京ラウンドでもうすでに一九八三年までは決定しているわけでございまして、一九八四年以降の規定を取り決めしなければならないわけでございますので、一九八二年の十月の適当な時期にこの協議を始めよう、話し合いをしようということにいたしました。他の残存品目、特に、乳製品としては、ミルク、クリーム、これは生鮮でございますが、それから無糖練乳あるいはプロセスチーズ等、その他のいわゆる残存品目につきましては作業部会を開きまして、そこで話し合いを進める。作業部会を開いたからといって、この残存輸入品目を了承したということではありません。アメリカには非常に聞きにくいことでしょうけれども、あくまでも私たちは私たち主張をいたしましょう。さらにまた、各国の市場開放の比率、度合いというものをよく比較検討していただかなければいけないというようなことを私たちはこれからできるだけ主張してまいりますから、その点は十分ひとつ感情的にならないでこの作業部会を進めてほしいということをいま申し上げて、その一応の日程はできたわけでございますので、私たちは、今後も日本の農林水産行政の実態、それから輸入拡大に対する私たちのこれまでの態度等をよう説明して、そして日本の農畜産物の置かれている厳しい現状に対してできるだけ影響のないような条件をつくってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  141. 武田一夫

    ○武田委員 次に、ことしの昭和五十七年度の畜産物価格の問題につきまして、これは生産農家の所得補償と畜産物の再生産確保できる水準で決定することということが主張の中でいつもあるわけであります。いつも思うのですが、家族労働賃金ですか、この評価が非常にないがしろにされているようである、何かただ働きだという声が非常に強い。こういうことも考えまして、ことしは特に、加工原料乳は五十二年以来据え置きであるということを考えましたときに、今回、団体で要求されているようなものはもうぎりぎりどうしてものんでもらわなければならない、これは生活権にかかわる重大な問題である、この問題をひとつ真剣に前向きに検討していただきたい、こういうふうに私は思うわけであります。  それからもう一つ、加工原料乳の限度数量の枠の拡大、いま百九十三万トンですか、この問題につきましてもこの際、しかと生産農家の生活、経営の安定ということの中できちっと考えてもらわなければならない問題だというふうに思っておるわけでありますが、この点についてどういうふうに考えていられるか。  それからもう一つ、加工原料乳の価格決定に設けられている不足払い制度の問題です。この制度の見直し云々という話とか仕組みの問題にちょっと手を入れるべきではないかとかというようなことも聞くのでありますが、そういうことを当局としてお考えになっているのかどうか。そして、いまミルクボード構想ということが言われているのですが、この点についてどういうことを考えるか、この点をひとつ簡潔にお答えをいただきたいというふうに思うのです。
  142. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 最初に、お尋ねの乳価算定の場合の労働費の評価でございますが、御指摘のように片一方の飼育管理労働につきまして他産業、製造業の賃金と評価がえをしている、それに対して自給飼料生産の労賃につきましては農村物価賃金でやっているというところでございますが、これは御承知のように、実際かかっていないものをどう評価がえするかという問題でございまして、酪農におきます飼育管理労働というのは、いわば工場労働のように年中無休でかつ拘束されまして工場で働くような労働というようなことでこの評価がえをしているわけでございますが、えさをつくります労働自身は、普通の農作業というような観点で現在の農畜産物の生産費調査の一般ルールで算定をしているということでございます。この算定方法の基本自身は、現状においても特に変える必要はないのではないかと思っております。  それから、その次の限度数量でございますが、限度数量につきましては、片一方で市中の乳製品が解消しつつあるといういい条件もございますが、事業団が脱粉で四・四カ月、それからバター一・二カ月分という過剰在庫をまだ持っておりまして、その結果、安定指標価格はようやくバターについて一〇〇、脱脂粉乳について一〇三弱のところにとまっているということは、物の需給とすればまだ厳しい条件ではないか、去年のように市中に満ちあふれているという条件はなくなったことは事実でございますが、なおかつ、そういう条件も頭に置いて限度数量を決めるべきことと考えておりますので、審議会の御意見を聞きながら適正に決定していきたいと思っております。  その次に、現在の加工原料乳不足払いについては何か制度的に行き詰まっているのではないかなという御指摘でございますが、端的に申しまして、当初、不足払い制度ができましたときには、少なくとも生乳生産と申しますか市乳の生産のところで生産調整を行う必要があるというような事態は想定していなかったように思います。要するに加工原料乳を温存しておくことによって、将来、市乳の需要がどんどん伸びてきたらその加工原料乳地帯から市乳を供給しよう、したがって加工原料乳をつくるよりも市乳の方に入れば有利に決まっているという前提で、いわば市乳には流れ込み自由という前提で制度が組まれておりますものですから、御承知のように、需給がタイトなときは大変運用がしやすいわけでございますが、現在のように需給に若干の余裕があるときには生産調整をしてみたり、あるいは加工原料乳不足払いの水準なんかの動かし方についてもいろいろな御論議があるように、大変むずかしい条件が一つあると思います。ただ、それをもちまして直ちに基本的なものを組み直さなければいかぬというところまでは割り切っておりませんで、現在の制度の運用につきましていろいろ改善を加えながらやっていくのが適当ではないかということで、若干の検討をいたすことを用意いたしますけれども、そういう何か抜本的組みかえというようなところまで現在考えてはおりません。  それから、最後に御指摘のミルクボード問題でございますが、ミルクボードといっておりますのは、御承知のように、現在市乳の販売について生産者団体間で大変乱れがございまして、現行法でも指定生乳生産者団体の一元販売という機能を与えておるわけでございますが、自分の都道府県内での一元販売についてはそれほど問題がございませんが、地域を越えます販売の調整につきまして大変弱体であるというような批判もあるわけでございます。そういうことをとらえまして生産者団体の方で中央酪農会議等を中心に現在ミルクボードなるものの構想もございます。これは、ただ何か若干名前を変えてやればうまくいくということではありませんで、実に複雑なこういう流通機構の中にどんな団体を置くか、これは現在の農業協同組合のような組織との関係もございますので、さらに慎重に検討する必要のある問題だと思っております。
  143. 武田一夫

    ○武田委員 時間の都合でそのくらいにして、最後に、畜産、酪農の経営安定のための金融対策ですが、この充実を期さなければならないということで、昨年来特にいろいろと御苦労なさっているようであります。  そこで、われわれももう昨年冬に現地を見たときに、特に、北海道中標津、別海等ああいうところを見て大規模な畜産酪農家を見ましたときに、相当予想以上の借財を抱えている。その借財を返すためにまた借財をつくっているというようなことで、中には無計画的に金を借りているというような傾向もある、また貸すような傾向もあった。中小企業などではとても想像できないようなそういう経営の状況であるということを指摘しまして、しかと指導しながら救済しなくてはいかぬということで何回もお話をしていたわけでありますが、その後、いろいろと手を打っていただいているようであります。  一つは酪農経営負債整理資金ですね。これはやはりもっと枠をふやすべきではないかという気がするわけです。それからもう一つ、それに肉用牛経営安定資金ですか、これは期間五年、五%ですか、二百五十億用意したら二百四十億利用している。利用度合いはかなり高いです。ですから、今後のそういう肉用牛の生産農家等への対応としましては、もっと長期なものにしてあげて、無理のない中でもっと多く活用できるようにしてやる方がいいのではないかという気がしてならぬのです。  そういうことでわれわれも、経営難に陥っているそういう酪農あるいは畜産農家のために長期、低利の金融措置を講じながら再建不可能な農家にとっては、特に特別立法による救済措置をすべきであるというような要請もこの間しているわけでありますが、この金融対策についていま二つの問題を具体的に挙げましたけれども、今後、どういうふうに取り組んでいくかということをひとつお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  144. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 最初にお尋ねの、去年の暮れからやっております負債整理でございますが、これにつきましては御承知のように一定の枠、三百億の枠を設定しまして、初年度では百六十億程度のものを出しておりますが、これは毎年、毎年経営を見直しながら真に借りかえを必要とする資金を貸していくという制度でございます。現在、まだ枠の余裕を後ろに若干持っておりますものですから、各道府県の資金事情というもの、それから現在における経営の状況等を判断しながら今後貸し増しをしていくということで最善を尽くしたいと思っております。  それからもう一つ指摘の肉畜問題でございますが、これはかつて要するに素畜が高い、それからえさ代もなかなか容易じゃないということで、経営が安定的に回転しないということもございまして五分、五年という資金を貸しております。最近におきましてそういうものの中から若干、固定化負債的なものがあるという御指摘もございまして、いろいろ実態を調査いたしております。酪農と若干違いますところは、施設資金といいますよりも素畜なりえさ代のような回転型の資金の滞りでございまして、そういう意味から酪農と全く同じような政策には若干なじまぬと思いますが、現状を十分把握しまして価格決定の際等にいろいろとそれらのためにどういう対策をやったらいいかというようなことも検討させていただきたいと思っております。
  145. 武田一夫

    ○武田委員 酪農経営負債整理資金、これは酪農経営安定資金というのが二百億の枠で、百十四億を使っている。これは長期のものに走ったために百十四億くらいでとまっているのだということを伺っておりますから、いま、局長が話したように今後こういう状況をよく適切につかまえながら対応してほしい、こう思います。その点をひとつしっかりとお願いしたいと思います。私は時間が五分ばかり余りましたがこれで終わりますが、どうか非常に厳しい情勢に置かれている皆さん方でございますから、特に、今回の価格決定を前にした当局の取り組み姿勢というのは、今後の日本の畜産、酪農家の将来の大きな盛衰といいますか、それにもかかわるような時期である、そういうときであるということを銘記しまして、十分なる対応をしていただきたいことを要望いたしまして質問を終わります。
  146. 羽田孜

    羽田委員長 林百郎君。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 まず最初に、価格問題に入る前に田澤農水大臣にお聞きしたいのです。  一月に行われたアメリカの代表と日本の代表との間の貿易小委員会での会合でアメリカ側はどういうことを言い、それに対して田澤さんは直接そこに出席したかどうか、あるいはどういうことを日本政府としては考えているということをお言いになりましたか、ちょっとここで報告してくれませんか。
  148. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この点については、私、直接この会議に出ませんものでしたから、経済局長から御報告させます。
  149. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  三月九日、十日、両日にわたりまして日米貿易小委員会がございました。農業の分野でいろいろな話題がございましたが、一番重大な問題といたしましては牛肉、柑橘を含む残存輸入制限の問題が議論されました。アメリカ側が提案をいたしましたのは、残存輸入制限の問題について協議をするためのワーキンググループを設置したいという問題と、それから牛肉及び柑橘についての協議を本年の十月一日までに開始をしたいということを申しまして、あわせてこれらの協議に当たって、アメリカ側としては残存輸入制限の撤廃を求めるという立場で協議に臨むという意図を表明いたしました。私どもといたしましては、まず一般論といたしまして、アメリカ側とこれらの問題について突っ込んだ話し合いをすることは日本側から見ても必要であると思いまして、残存輸入制限の問題を協議するワーキンググループを設置することには合意いたしました。  それから残存輸入制限の問題につきましては、先般の東京ラウンドの合意の中で次の協議の時期が定められておりますので、十月一日までに始めるというアメリカ側の主張は、私どもから見ますと東京ラウンドの合意に比べて早過ぎると思いましたので、かわりに、十月中の双方にとって都合のいい時期から協議を始めることにしたいという対案を示しました。これで、協議の手順につきましては日米間に合意を見たわけでございます。  その際、日本側といたしましては残存輸入制限のワーキンググループの設置につきましても、あるいは牛肉、柑橘の協議の時期につきましてもいずれもこういうことで合意するが、自由化ができるというふうに考えて協議に臨むのではない、むしろ、残存輸入制限が存続しても、双方にとって受諾可能な解決を探求することはできると思って協議に臨むのである、その点はくれぐれも誤解のないようにということをアメリカに伝えてございます。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、ワーキンググループというのは、別に日本の農産物の残存の輸入制限をすべてなくすのだとかそういうことでやるということじゃないのですね。  そしてまた、新聞の報ずるところによると、新東京ラウンドを提唱するということも出ておりますけれども、これについてはどうなんですか。農林大臣、どうですか。自民党の中でそういう声があるのですか。二階堂氏とか田中六助氏……。
  151. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 九日、十日の日米の貿易小委員会の事情は、いま局長から説明させたような状況でございまして、私たちは、これまでも残存輸入制限品目二十二品目につきましては、これは日本農業の基幹品目である、それからもう一つは地域の重要品目であるから、これ以上はできるだけ手を染めたくないという考えをアメリカに主張しているわけでございます。  そこで、農産物についての日程は一応過般の貿易小委員会で双方の話し合いがつきまして、いわゆる牛肉、オレンジについては東京ラウンドである程度合意された線に沿って、十月の双方の適当な時期に話し合いを始めましょう。それから、他の品目については作業部会で話し合いをしよう。その作業部会の内容については、いま経済局長から話があった内容でございまして、あくまでも残存輸入制限品目というものを開放する意味でやるんじゃないんだ、お互いの主張主張し合おうじゃないですかということでやっているわけでございまして、今後も私たちは、アメリカとの間にいろいろな誤解がございますから、この誤解を解くための話し合いの機会をできるだけ持っていきたい。  たとえば、農産物について言いますと、農林水産品目全体で百二億ドルほど向こうから入っているわけです。それから、穀物で言いますと二千三百万トンほど入っているわけでございます。日本のお米の生産の約倍をアメリカから輸入しているというような状況でございますので、アメリカにとっては日本はいいお客さんなんですよ。また、アメリカの牛肉の需要というものは五百三万トンぐらいなんです。それに対してアメリカの生産は七百四十万トンほどでございます。しかも、七十万トンほどをオーストラリアその他から輸入しているという現実もあるわけでございますので、なぜ私たちの方に牛肉を輸出しなければならないかということなど、いろいろな問題があるわけでございます。  しかもまた、アメリカも農産物については、ガットでの了解を得たものを十三品目ほど、いわゆる残存輸入制限品目的な性格のものを持っている。ことにECなどというものは、支持価格によって課徴金を課しているとかあるいは輸出に対する奨励金を出しているというように、かなり諸外国とも農産物に対する保護主義的なものをとっておりますので、私たちはそういう意味をできるだけアメリカあるいはECに説明したい、そして理解を得たい、こういう考えでいるわけでございます。  なお、新東京ラウンドの話題がずいぶん出ておりますけれども、それはまだ対外経済閣僚会議においても閣議においても決定されたことではございませんので、それはまだ政府としての考え、方向ではございません。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど私は小委員会を一月と言ったが、三月が正確のようです。  それで、私は、これは大臣の見解を聞きたいのですが、アメリカ自身だってまだ制限品目を十三持っているわけですね。ECのフランスなんか十九も持っているわけです。日本は二十二とか二十七とか言っていますね。その辺は大臣に正確に答弁してもらいたいのですが、アメリカが日本へ農産物のことについて高飛車に、いやそんなもの全部外して自由にするんだと言って、属国に物を言うような言い方で言ってくるのはどういうわけなんですか。自民党の政府が腰が弱いからですか。
  153. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 アメリカでの考え方といいましょうか、貿易のインバランスを解消するのが即農産物の市場開放だという直線的な論理が、アメリカの政治家の中に一つの観念としていろいろ植えつけられているということは事実なんですね。しからば、農産物の市場開放をすることによって貿易のインバランスが解消するのかといえば、必ずしもそうじゃないのだというようなことでございますので、私は、経済問題よりも何か政治的な大きな問題として扱われているような気がしてならないわけでございます。これは一方的に私の見方でございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 何か政治的な大きな要因というのをあなたから聞きたいので、あなたが「何か」と言われればこっちはなおわからなくなる。何だとお考えになるのですか。言えないなら言えないで……。いや、大臣に聞いている。
  155. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 私どもがアメリカ側と接触をいたしまして感じますことは、一つは、現在、アメリカ側自体が大変経済的に苦況の中にあるわけでございまして、第二次世界大戦以降空前と言われるような失業と、一九八三会計年度の予算におきましても約一千億を超える赤字が出る、そういう事態の中で、現在のレーガン政権としては、レーガン政権の経済政策に対する国民の信任をいかにして回復するかということを躍起になって考えておりまして、その中の一つの手法として日本との貿易問題を大きく取り上げてやかましく議論してくる、そういう関係が根底にあるように思います。それで、その中でアメリカが議論をします際に、向こう側から見ますと、日本側が得意とする商品についてはアメリカのマーケットに日本の商品が自由に入ってくるのに、逆にアメリカ側が得意とする商品が日本へ入っていこうとするといろいろな障害がある。だから、ちょうど将棋で申しますと、アメリカは飛車、角を外して将棋を打ってで日本は全部のこまをそろえて将棋を打っている、そういうふうに見えると申しますか、アメリカ側から見ると見えるのであるということがアメリカの議論の仕方のベースになっているように思っております。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、将棋をよく知らないからあなたが将棋の例などを出してここで言われてもちょっとわからないのですが、しかし、大臣、こうじゃないですかね。日本からは自動車だとか家電だとか鉄鋼だとか、こういうものが集中豪雨のようにどんどんアメリカへ行き、それからヨーロッパへも行く、ECへも。何もそれだけでアメリカであれだけの失業者が出たわけじゃないのですけれども、それで日本の国では二百億ドル前後の出超になる。これと絡んで農産物がことごとにアメリカから集中的に攻撃される。だから、日本経済全体を見直して、それはそういう近代工業も大事かもしれないけれども、同時に、農業だっていざというときにこのままで太平洋で何か起きた場合には大変なことになってしまうわけですね。だから、あなたは自民党の閣僚ですから私言いたいのですが、自民党の経済政策自体も少し考え直す必要があるのじゃないですか。そうやってドルさえ稼いでくるものは補助金も出す、設備投資もしてやる、その仕返しが農業の方にきて、農業の方は第二種兼業がうんとふえてくるとか後継者はなくなってしまうとか、今度はこっちの方は農業がアメリカの失業者と同じような惨たんたる状態になっているわけです。そういう問題を全体に考え直して、あなた、私から聞いたと言ってはまずいかもしれないけれども、閣議でもそういう意見を思い切って言ってみてはどうですか。
  157. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 わが国経済は、自由貿易を基本として経済を運営してまいらなければならないのでございますから、そういう点では常に自由貿易主義をとり、むしろ閉鎖的な考え方をしてはいけない、これは基本なのでございまして、その中でアメリカで言ういわゆる百八十億ドルの赤字が出て失業者がアメリカの経済に出てきている。これに対する一つの問題として対外経済摩擦問題が出ているわけですから、この問題を一体どうするかということを私たちはいま考えなければならない。特に、私としては、農産物のあり方、農林水産業の立場というものをこういう中でどう支えていくかということを私の立場からいま考えていかなければならないことでして、全体的にあなたとの違いはそういうことでございますので、そういう点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 わかったようなわからないような答弁なのですけれども、私、農協の全国中央会の資料をもらったのですが、EC諸国にだって共通農業政策に基づく課徴金制度がありますね。これは厳格に言えばガットに関係してきますが、アメリカも国内法により輸入制限品目が十三品目ある。どこの国だって農業の保護政策をやらないという国はないのです。あなたはヨーロッパへ行ったでしょうけれども日本みたいに転作でたんぼが草ぼうぼうになって、後、大豆などまいているけれども、大豆だか草だかわからないような状態、こんな狭い日本の国で大事な土地をあんなむだ遣いをしている国なんてないですよ。私は、自民党の農業政策がもっと日本の農業を守る方向へ積極的に手を打つべきだと思うのです。田澤さんなんかは議運の委員長などをおやりになって他党との関係がありますから、あなたが農林大臣のときにそういう思い切った日本農業の政策の転換、そして農水省には若い意欲に燃えた人たちもいるでしょうから、こういう人たちが、農業問題の指数と言えばダウンするような指数ばかり出てきたら意気が上がらないわけですよね。これは百年の計を考える場合にもっと積極的に考え、そして農業に携わっている人々に張り合いを持たせるような方向にいくべきだと思いますが、その点はお考えになっていますか。
  159. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 対外経済摩擦の解消の面で、私もいま林さんがお話しになりました一つの姿勢で農林大臣としてこの問題に取り組んでいるわけでございますが、いま対外経済摩擦の問題というのは農家あるいは団体が非常に大きな関心を持っている。それは同時に、非常な不安なんですね。いま私たちは新しい農業をつくるための転換として水田利用再編対策という非常にむずかしい政策を農家あるいは団体にお願いしている。これの実現を本当にお願いするためには、やはり背景である対外摩擦の問題等きちっと私たちが支えてやらなければ、本当に新農林水産省を農家、農民が信頼していただけない、こう思いますので、そういう意味ではこの問題には熱心に積極的に取り組んでいかなければならない。そのためには、アメリカの農業保護政策というのは一体どうなのかあるいはECにおける保護政策はどういうものかということを私たちはよく調査をして、その面から日本の二十二残存品目というものはどういう位置づけをするかということを主張していかなければならないと思いますので、いま御指摘のようにアメリカもガットの中でも十三品目、その他州ごとにいろいろ違いますから、それぞれの保護的な規制を設けております。またECにおいてもEC域内でいわゆる課徴金を課しておりまして、それは農産物の九〇%をカバーしているんですよ。さらにそれから漏れた分を残存輸入制限品目にしているわけでございまして、フランスは十九品目、それからデンマークは五品目、その他になっているわけでございますから、それだけ非常に農産物に対しては保護政策をとっています。これは何さま自然を相手のことでございますから、農業の生産性を上げようと言っても直ちに鉱工業生産のように生産性が上がってまいらない関係もございますので、それぞれの国がそれぞれの状況に応じて保護政策をとっている、こういう度合い、こういう点等も私たちは常にアメリカあるいはECに主張して、この残存輸入制限品目にはできるだけ手を染めないような状態にしていきたいというのが私たちのただいまの考え方でございます。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので、二問。  本来なら、きょうは価格を質問をする日だったのですが、つい貿易の関係の方に行ってしまったのですが、一つは、豚肉にしても牛肉にしてもヒレ物等におきましても、それから牛乳もそうですけれども、これはみんな農民の実質的な所得が五十一年ごろから比べてマイナスになっているわけですね。五十一年に比べて豚肉が一四・三%、牛肉が五・三%マイナス。それから牛乳が一キログラム百二円二十銭が百円五十銭になっています。こういうふうに農産物の価格指数が実質的にはずっと下がってきているのですから、価格政策を農林省は近くお決めになると思うのですが、これはやはり補ってやらないと、据え置き、下がりっ放しというんでは、今度は農民の方が張り合いがなくなるのじゃないかと思いますので、この点をぜひひとつ引き上げて、その後のマイナスを補うような生産者への政策価格を決めてもらいたいというのが一つ。  それから、これは現に長野県で行っているのですけれども、畜産経営安定資金ですか、これはそれに似たような制度が国にもあるようですけれども、これを約二十億、県と中央会と当該市町村等が出して、一定の貸し付けをし、それから年に八億ぐらい利子補給をしているのですけれども、こういうような酪農経営の負債の整理の資金をやはり国の方も考えてみるべきではなかろうか、あるいは考えておられて現にこういう制度があるのかもしれませんけれども、そうだったらそれをさらに強化することが必要ではないかというように思うわけです。  御承知のとおり、畜産をやっていきますと、最近では固定資産やいろいろでみんな借金が一千万以上にもなりますから、そうすると、そこがつぶれてしまえば貸し出した農協も同時につぶれるというような重大な事態が連鎖的に起きる可能性がありますので、こういうような酪農経営の負債整理資金あるいは借入金の金利の補てん、こういうような制度についてお考えになっているかどうか、この点、最後に大臣、答えてください。
  161. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御承知のように畜産一般につきまして五十年度あたりからむしろ拡大型に大変生産が伸びてきておりまして、価格が比較的安定的に推移しておりますのは、生産の合理化の中で余り価格転嫁をしないで農家の手取りも上げていくということで順調に出てきたわけでございますが、先ほど大臣から申し上げておりますように、特に酪農等につきましてはその伸びるテンポが早過ぎたために需要が必ずしもそれについていかなくなった。したがって、生産は伸びる力はありますけれども、物がよけい供給されて価格が下がる、酪農はその一つの典型でございます。ほかの肉用牛、養豚等につきましては若干の上下変動はございますが、農家所得についてはむしろ安定的拡大の傾向の中にあったのですが、これも伸び率が抑えられるものですから、生産も極力計画生産をして価格を維持していくという方向で動いているわけでございます。  酪農については、先ほど来申し上げましたように、特に五十五年、五十六年あたりでは農家所得についても対前年比でマイナスの要因も出ておりますので、いろいろな施策を追加的にやる必要があると思っておりまして、いま御指摘の資金制度についても、昨年、酪農の負債整理のための特別の資金をつくりまして、金利は一般には五%、特別の場合は三・五%、償還期限も十五年ないし二十年という非常に長期の低利資金をつくりまして、資金枠三百億を予定して、昨年すでに百六十三億の貸し出しを行っております。  御指摘の長野の事例等については、そういう酪農以外にも肉用牛生産だとか養豚についてもそういうのが独自に必要ではないかということでおやりになっているというお話も聞いております。先ほど来申し上げましたように、肉用牛についても五%で五年という資金を貸しておりますけれども、それらのものの一部に、そういう資金だけではやりにくいというようなお話も若干ございまして、私ども内容をいろいろ検討いたしておるところでございます。
  162. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 五十七年度の畜産物あるいは乳価の決定につきましては、近く畜産振興審議会の意見を聞いて適正な価格を決定したい、かように考えております。
  163. 羽田孜

    羽田委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会