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1982-02-24 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十四日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 亀井 善之君 理事 戸井田三郎君    理事 渡辺 省一君 理事 新盛 辰雄君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    太田 誠一君       川田 正則君    木村 守男君       岸田 文武君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       保利 耕輔君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    山崎平八郎君       小川 国彦君    串原 義直君       島田 琢郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    日野 市朗君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    樋口 嘉重君         環境庁水質保全         局水質管理課長 長谷川 正君         会計検査院事務         総局第四局審議         官       秋本 勝彦君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 二月二十四日  食糧管理制度拡充に関する陳情書外八件  (第六四号)  漁業用燃油対策に関する陳情書  (第六五号)  チチュウカイミバエの国内侵入阻止対策に関  する陳情書(第六  六号)  林業振興対策に関する陳情書外四件  (第六七  号)  同(第一二五  号)  甘味資源農業振興に関する陳情書外八件  (第六八号)  同外一件  (第一二三号)  圃場整備事業の推進に関する陳情書  (第六九号)  水田利用再編対策に関する陳情書  (第七〇号)  昭和五十七年度農林予算確保に関する陳情書外  二件  (第  七一号)  農畜産物輸入規制に関する陳情書  (第七二号)  同  (第一二四号)  農業改良普及事業拡充強化に関する陳情書外  一件(  第七三号)  マツクイムシ防除対策拡充強化に関する陳情  書(第七四号)  竹島周辺漁業安全操業確保に関する陳情書  (  第七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第三一号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の変更について承認を求めるの件(内閣  提出承認第二号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ――――◇―――――
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 去年の秋、農林省は、食糧輸入に支障を生じた場合わが国栄養水準はどうなるかという試算を公表いたしましたね。そのことは、このまま農業後退自給率低下ということが進んでいくということになると、わが国にとって大変なことだという危機感をも含めて検討試算をし、そして発表した。私は、これは意味の深い、重いものであるという理解をしているのです。大臣の所見を伺いたい。
  4. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 確かにお米だとかあるいは果物、野菜あるいは畜産物等については自給できる要素は非常に大きいのでございますが、大豆あるいは小麦あるいは飼料穀物、特に飼料穀物については非常にむずかしい状況にありますものですから、そういうような報告をしているものと思います。
  5. 串原義直

    串原委員 つまり、だからこれは食糧安保立場から寸時も油断してはいけないんだ、そういう意味も含めて試算し、考えたものである、こういう理解でいいわけでしょう。
  6. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 そのとおりでございます。
  7. 串原義直

    串原委員 わが国世界から求めておりますところの食糧輸入割合、資料を見ると非常に高いですね。詳しく述べる時間はないのですけれども、世界農産物貿易量に対する日本輸入量穀物で一一%、それから大豆で一六・四%、牛肉で八・二%、豚肉も約一〇%ありますね。つまり、四十億人と言われる世界人口の中で、日本人口は一億一千万人、このわが国世界貿易量に占める割合一〇%、総じて一〇%農畜産物輸入しているということは、私はある意味では正常ではないという判断すらしているわけなのであります。世界に飢餓が広がっていると言われる。発展途上国飢えに苦しむ人口というのが六億とも八億とも言われているわけですね。その中で膨大な食糧輸入というものがいつまでも今日のように安定的に許されると判断するほど甘いものであるかどうか。人道上の立場からも日本食糧輸入というものをできるだけ減らすということが、つまり先ほど申し上げました発展途上国飢えを減らしていく、追放していく大きな役割りを果たすのではないか、こう判断しているのですよ。大臣はいかがですか。
  8. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御指摘のように日本食糧の海外への依存は、農林水産物全体で二百九十一億ドルの依存でございますので、非常に大きいものでございます。したがいまして、私たちは、できるだけ自給力の維持、確保のために努力をいたしているわけでございますが、串原さん御承知のように、戦後の生活様式多様化あるいは高度化、それに伴いまして国民の生活様式も非常に多様化しまして、食糧に対しては非常に豊富になりました関係から選択によってそれをするという状況に変わってきたものですから、串原さん御指摘のいわゆる危機感というものが非常に薄れてまいりましたことが大きな原因じゃないだろうか。今後、私たちは、国際社会における食糧が中、長期的に見ていま御指摘のように非常に不安定な状況にございますので、そういうことを念頭に置きながら、新しい角度から食糧安全保障というものを考えていかなければならない時期だ、かように考えます。
  9. 串原義直

    串原委員 私も大臣の意見に賛成なんですよ。先ほど最初の質問を申し上げたように、農林省も油断してはいけないと考えているというので食糧輸入問題に対する試算を発表した。食糧輸入の現状は、つまり日本は余りにも多過ぎるという立場で、これも油断してはいけないということを常に考えていかなければならぬ、こういうことですね。  ところが大臣、そのときに大きな問題が持ち上がったわけですよ。つまり食糧安保立場からも、いま議論されている日米経済摩擦問題というのはその処理を誤りますと後年に大きなツケをもたらすのではないか、私は、こういう内容を含んでいるという心配をしている者の一人です。とりわけ、貿易摩擦解消策農産物自由化していくという方向というのは、どうしても方向としては間違った方向であると言わざるを得ないと思っているのです。きのうも論議がありましたが、仮に農畜産物自由化したとしても、およそ輸入増加の金額は十億ドルである。二百億ドルに上るであろうと言われている日米貿易収支の、アメリカにとっては赤字、日本にとっては黒字になりますが、この解消策には、農畜産物自由化をしてみたところがそれほど大きな役には立たない、こういう判断をせざるを得ないわけなのでありまして、つまり貿易摩擦解消には、工業によってできたものであるので、工業製品との対比で処理をしていくということが筋であろう、私はこう思っているわけなのであります。大臣はこの考え方に同感だと思うのですけれども、いかがでしょう。
  10. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 貿易摩擦解消は、これはわが国の重要な案件でございまして、したがいまして、これの解消のためには、さきに五項目にわたる対外経済対策を決定しまして、その方向をいま検討を進めているわけでございます。  一方、いま串原さん御指摘のように、アメリカとの貿易関係は、特に農産物関係は、穀物で約二千万トン以上輸入している。ですから入超になっているわけでして、日本は非常にいいお客さんなんですね。そういう関係から言いまして、本来は農産物自由化というものは余り問題にすべきものじゃないと私も判断をいたしまして、それをいま閣議でもあるいは対外経済閣僚会議においても主張し、またアメリカあるいはECに対しても私たちは極力その点を主張して、この問題には手を染めないようにしてほしいということを訴えておるのでございます。
  11. 串原義直

    串原委員 これは時間がないからちょっと具体的には触れられませんが、つまり、貿易摩擦解消には農畜産物自由化しても大きな役割りを果たさない、これが一つ。もう一つは、食糧自給率穀物自給率低下を今日もたらしている日本農業、年とともに後退をしてきた。加えてここで自由化をしたならば、日本農業は壊滅的な打撃を受ける。こういうことであるので、安易に農畜産物自由化問題は妥協できない、こういうことの理解でいいわけですね。
  12. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 そのとおりでございます。
  13. 串原義直

    串原委員 だから大臣、私は特に穀物自給率にこだわるわけでありますが、これが原点ですから、ともかく三〇%に落ちたというのは、これは異常な事態だと考えているわけなのであります。  そこで、昨日からも議論をされてきたところでありますが、この際、この貿易摩擦問題と関連をして、担当農林水産大臣としては強い意思を示すべきだと思っている。まさに日本農業を守る食糧安保立場から、言うならば正念場ですね。きのう大臣は、この問題に触れまして、できるだけという表現をつけながら輸入制限品目には手を染めないというふうに終始言われてきましたね。私はもう一歩進めて、これ以上自由化はできません、こういう強い決意をする大事な時期ではないか、こう思っているわけなのであります。明確な姿勢を本委員会で示されるように、改めて私はここで質問をするわけでありますが、大臣いかがですか。
  14. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、経済摩擦解消政府としても非常に重要な課題でございますので、したがいまして、対外経済閣僚会議先ほど申し上げました五項目にわたる対外経済対策を決定してそれを進めておる。その中で、関税率引き下げの前倒しだとかあるいは輸入検査手続緩和等を進めてまいっているわけでございます。加えて、いまお話しのように、アメリカとの輸入関係日本は非常に入超になっているという状況、こういう点を私は極力アメリカあるいはECに訴えまして理解をいただくということが一つ。それから閣議あるいは対外経済閣僚会議においては、農林水産大臣としてはあくまでもこれは阻止したいという考え努力をしております。
  15. 串原義直

    串原委員 いま大臣の言われた方向で、ひとつ腹を据えて取り組んでもらいたい。  そこで、一つ具体的なことに触れますが、コンニャクイモ自由化という声をこのごろ耳にしたのであります。これは、私はどうしても了解ができない。いま大臣が言われたように、二十二品目輸入制限品目については農林大臣としては断固としてがんばる、こういうことですけれども、とりわけこれを取り上げるのは、特殊作目であるからこそ特に留意をすべきだと思っているところであります。自由化されたならば、安い外国産の原料が大量に輸入されまして、山間僻地のきわめて条件の悪い地帯で栽培されている競争力の弱いコンニャクイモでありますだけに、これは壊滅してしまう。それからいま一つは、かと言って地理的条件が悪いので、コンニャクイモ生産農家は他に転作するということができない。そしていま一つは、生産地が東南アジアと言われておりますから、アメリカECとの貿易摩擦解消にはほとんど関係がない作目だと私は理解をしているところであります。これらを考えますと、とりわけ山間僻地農業を守るために大事な作目として自由化をしてはならない、こう考えているものでありますが、大臣はどうお考えになりますか。
  16. 小島和義

    小島政府委員 全くお話しのとおりでございまして、私どももさよう考えております。
  17. 串原義直

    串原委員 大臣農畜産物自由化できないという立場で腹を据えられたわけでありますから、今後具体的に何をどのように取り組んでいくか。つまり、大臣みずからかあるいは関係する責任者が、それぞれの国なり関係国際機関に出かけて行って理解を得るというようなこと。向こうから出てきたときに説明をする、弁解をするということではなくて、出かけて行って解説をし了解を得る等々の、積極的な具体的な行動に出るべきではないのか、その時期なんだよというふうに私は思うが、大臣はどのようにお考えでありますか。
  18. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 確かに、アメリカ関係者がこっちに来たときにそれにこたえるというのじゃなくて、積極的にアメリカに出向いて、農林水産業の全体をよく理解してもらうということがいま一番必要だと思うので、過般も経済局長を特にアメリカに派遣しまして、いろいろ農林水産業実態相手側理解してもらうための会合をできるだけつくっているわけでございます。また、自民党としては江崎使節団の派遣もその一環だと私は考えておりますので、そういう機会をできるだけつくりまして、そしてわが国農林水産業の個々の品目についても理解を求めるようにいたしたい、かように考えています。
  19. 串原義直

    串原委員 私は、農林水産大臣みずからが行動を起こすべき時期だと思っている。いかがでしょう。
  20. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ちょうどいま国会開会中でございましてそういうわけにまいりませんので、機会を見てこれは出向かなければならぬ、こう思います。
  21. 串原義直

    串原委員 国会開会中でありますから、これが終了をするという時期を見て、積極的な行動を起こされることを要望しておきます。  さて、次に移りますけれども、大臣は過日盛岡で、水田減反面積はこれ以上拡大しないという発言をなさった。その後、二月九日の記者会見でもこの盛岡発言を再確認したと聞いているわけであります。私は、この大臣発言を評価したいと思っているわけなのであります。きのうの答弁でも、いままでの水田転作農政緊急避難であった、積極的な新しい農政を進めたいと大臣答弁されましたね。この答弁も私は評価をしたいと思っているのであります。つまり、この発言は、いままでの反省の上に立って積極的な新しい農政を進めたいというのは、新しい立場水田減反政策を見直す、こういうことなんでしょう。いかがですか、大臣
  22. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 水田利用再編対策は、御承知のように五十三年から六十二年まで十カ年間これを実施することに一応なっているわけでございまして、その間に何としても米の過剰、それから土地利用型の農業じゃなく他の転作作物によりまして新しい農業をつくろうというのがこの目標でございますから、私は、一期対策、二期対策と今日まで進めてまいりまして、二期対策は五十八年度でございますから、この二期対策に何か一つ、いわゆる消極的な政策じゃない新しい政策を盛り込むために、活力ある農業をつくるためには五十八年度までに一つ目標を——この水田利用再編対策というものは実態をよく把握して、それで三期対策にはこうしなければならないという新しい方向をつくり上げる必要があろう、こう思いましていろいろ申し上げているわけでございまして、だからといって、この米の需給バランスのとれないまま水田利用再編対策をやめるというわけじゃないのです。むしろ水田利用再編対策を早い機会に完了させて、そして積極的な農業を進めていく必要がある。また、水田利用再編対策考え方をいまかなり農家あるいは団体の方が消極的な考え方で受けとめていますから、私は、水田利用再編対策はむしろこれからの新しい農業の指針なんだ、方向なんだという積極的なやはり取り組み方が必要じゃないかということを含めて申し上げているわけでございますので、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  23. 串原義直

    串原委員 大臣、それは水田転作面積等々のこと、作目も含めて、新しい積極的な農政考えていくということは、従来のレールを若干変えるということなんでしょう。そういう立場に立って考えていく。いままでのレールを変えていくという方向を模索しよう、こういうことなんでしょう。
  24. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 変えるという意味よりも、見直して、いわゆる先ほどお話のありました緊急避難的なものに対策考えていただかないで、もっと集団化し、定着して、これからの農業は、やはりこの水田利用再編対策が向かう方向に進めなければ日本農業というものは活力ある農業になりませんよ、魅力ある農業になりませんよという方向づけを、また内容をつくり上げていかなければならぬと私は思うのです。そういうことを意味しているわけでございますから。
  25. 串原義直

    串原委員 つまり、従来のレールを見直していこうということで、積極的な新しい農政を模索をする、こういうことですね。  そこで、私は、先ほどから議論しております食糧安保立場から、やることは非常に多いわけでありますが、とりわけ水田の持つ潜在的な生産力を保ちまして活用していくということは非常に大事な問題だと思っているわけです。今日は大変広大な面積水田が他の作物に転換されている、この事実を含めまして水田の活用、潜在的生産力保持について新しい立場大臣はどんな施策を講じようとなさっているかをお示し願えませんか。
  26. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この点については非常にむずかしい問題でございますが、まず私は、技術開発を思い切ってしていくことが一番だ、こう考えているのですよ。たとえば、いま林業の面でもあるいは畜産の面でも、農事試験場においてもかなり高度の技術開発を進めております。これを活用することによって新しい局面が開けてくる。一方、農地三法が改定されました関係農地経営規模拡大が可能になってまいりましたので、そういうことをあわせて新しい方向をつくることができる可能性が出てきた、かように考えて差し支えないと思うのでございます。
  27. 串原義直

    串原委員 それと関連しましてえさ米のことでございますが、このえさ米の採用につきまして前の亀岡さんは、非常にむずかしい問題はあるけれども、政治家である農林水産大臣としては、三期水田転作事業が始まるころには何らかの方向づけをしなければならぬと考えていますという答弁を本委員会でなさったことがあります。水田利用の問題、大臣の言われる積極的な農政をつくっていこうとする方向を踏まえて、このえさ米の問題についても思い切った積極的な方向を出すべき時期に来ている。亀岡さんはそう答弁をされたのでございますが、大臣、いかがですか。
  28. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 前大臣はどう答弁されましたかわかりませんけれども、亀岡大臣えさ米についてやはり十分検討してまいらなければならない大きな課題だからということで受け継ぎましたものですから、私も早速試験場へ参りましてえさ米の問題の研究の経過を実際に見てまいりました。一つ品種固定化するには、昔は十五年くらいかかったのだそうですね。最近は技術がいろいろ進歩してまいりましたが、それにしても七、八年くらいはかかる可能性が十分あるわけですね。しかも、定着化しないと非常に災害に弱かったり病虫害にも弱いというような関係もございますので、そういう点はやはりある程度品種定着化固定というものが一番必要だと思うのでございます。しかも普通の稲作とある程度分離できる、見分けできるような形のものでなければならない。色の面でだとか粒の大小等によって、食糧用のお米と見分けできるようなものでもなければいかぬということで、ただいま鋭意検討をいたしているわけでございます。私も研究機関の方々には、できるだけ早い機会えさ米研究はしてくれ、このことは日本農業の新しい道を開く大きな動機、原動力になるのであるから、その点をひとつ努力してくれぬかと私は申し上げたのですが、私の県で藤坂五号というのを田中稔という試験場長がつくった。その前は冷害で大変な東北だったのですけれども、藤坂五号という品種ができたために、東北全体の農業は耐冷的に非常に強い農業になった。これが新しい農業の道を開いてくれた一つ原動力になっているのですから、同じことがえさ米にも言われると思うので、そういう意味で積極的に研究をしてほしいということを申し上げておるのでございますので、今後もえさ米については積極的な研究を進めて、できるだけ早い機会にこれの実現を見たい、こう考えておりますが、先ほど申し上げましたように、品種定着化固定化というのは非常にむずかしいものだ、時間がかかるということだけは御理解いただきたいと思うのでございます。
  29. 串原義直

    串原委員 先ほど大臣答弁されましたように、水田転作農政を二期対策中に大いに検討を加えて、積極的な農業を進めるという立場で新しいものをぜひつくりたい、こう言われましたね。そして水田潜在的生産力を大事にしていこう、こういうことも含めまして、大臣考えていらっしゃる二期対策中に将来の新しい農政方向、この中にどうしてもえさ米は位置づけるべきであろうと考えておるわけでありますけれども、いかがですか。
  30. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 その時期はなかなかむずかしいと思いますけれども、できるだけの努力はしてみたいと思いますが、試験研究の結果を見ないとなかなかその点はむずかしいと私は思うのです。しかし、二期対策といっても、五十八年でございますから、固定した品種ができるか、その点が問題だと思いますので、いま直ちにお答えするわけにはいかぬ状況でございます。
  31. 串原義直

    串原委員 次の問題に移ります。  最近、近畿地方の大手、中小乳業メーカーが一月末一斉に乳価の引き下げ改定申し入れを行ったようであります。ある県酪連の話によりますと、一月二十八日、五十七年四月以降キロ当たり百十八円二十一銭六厘の受乳価格を十円値下げをしてもらいたい、と同時に、一月より三月までのものもそのような措置としてほしいという申し入れがあったというのです。ところが、これは一方的な通告なので応じられないと答弁をしてあります、こういうことでありました。この値下げ攻勢全国各地にわたっているというのでありますけれども、したがって、関係団体は緊急に調査を始める、こういうことも聞いておるわけでありますが、私が判断をいたしますと、これは異常な事態ではないかなと考えているわけなのであります。中にはキロ当たり二十円の値下げを求めてきているメーカーもあると聞ているわけです。近く今年度の畜産物価格を決定しなければならぬというこのときに、この動きというのは、どうも話し合いをしているような節も見える。私は重大な事態としてとらえているわけでありますが、このまことに好ましくないメーカー姿勢に対しまして、担当大臣としてはどんな判断をなさっていらっしゃるか、あるいはこれに対してどんな対応を示そうとなさっているか、御答弁願いたいと思います。
  32. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のございましたように、一月末関西を中心にします、特に中小が多うございますが、そういうような申し入れ生産者団体にいたしておりますことは承知をいたしております。それから、その後におきましても、関係生産者団体の相談を受けておりますし、つい先日はそういうことを申し入れ中小メーカーにも私は会っております。実は、この値下げ問題はいろいろな背景があるわけでございますが、中小メーカーが言っております最大の理由としまして、非常にはっきりと、生産者がもっと安い乳価にも耐えられると思って引き下げを要求しているのかということを聞きますと、そうは申しません。彼らが申しますのは、自分たちは百十八円という建て値で原乳を購入している、しかし自分たちの周辺にとても百十八円の原価で納入されたものと思われないような非常に安値の牛乳が他のメーカー等によって売られている、特にその場合に農協系メーカー等の名前を挙げることが多うございますが、必ずしも農協系メーカーだけではございませんが、そういう安売りの牛乳が周辺にありまして自分たちがなかなかそれと対抗できない、それと対抗するためには自分たちも同じような原価の牛乳を入れてもらわなければ、これら中小メーカーとしては採算がとれないんだということを申しているわけでございます。したがいまして、これは、先生御承知のように、ここ数年の間にいわゆる原乳につきましていわゆる建て値と称せられるものがかなり格差が出てまいってきておりまして、いわゆる建て値をそのまま守っている場合、それから一部についてその他乳価並みといったようなことで、安い原価の生乳で市乳をつくっているものがある。結局同じ品物をつくるのに非常に格差のある原乳を使っているところに最大の問題があるわけでございます。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕 そのことは、実は生産者にとって不利であると同時に、メーカーも決してそういうことを望んでいない。逆に言いますと、そういう安売りのもとをみずからつくることになりますので、生産者、乳業双方につきまして、そのような格差のある原乳を使った市乳製造が行われないように、これは、御承知のように、指定生乳生産者団体につきましては一種の団結の力を認めているわけでございますので、そういう格差のあるものをお互いに使わないようにやっていくような素地、これは、いままでなかなかそれもむずかしかったのは、供給量自身がオーバーいたしておりまして、どうしても需給が不均衡だったわけでございますが、ここ数年の動きとして、だんだん需給均衡に近づきつつある状況でございますので、そういう原料の安い供給というようなことが行われることのないように、そのことが結果的に生産者団体にまた建て値を下げてくれということで参ってきているわけでございますので、そのようなことが実行できるような素地をつくるように、現在非常に回数を重ねまして生産者団体なりあるいはメーカーを指導中でございます。
  33. 串原義直

    串原委員 そこで、私は推移を心配しているのであります。話し合いがこじれていって、どちらかからでも申し出があるということになるならば、酪振法も存在することでもありますので、これは農林水産大臣としては、行動を起こす腰を上げなければならぬ、こう考えるのですけれども、いかがでしょうね。
  34. 石川弘

    石川(弘)政府委員 そもそも建て値がどうであるかということではございませんで、実はそういう建て値を理由にしていろいろ引き下げ等を要求はいたしておりますが、実はその建て値の中の全部ではなくて一部が守られない。要するに一定の水準以下のものが部分的に存在する。これは、いろいろ調べてまいりますと、表は百十八円と言っているけれども、いろいろなリベートをするとか、そういう性質のことが今回のもとでございます。したがいまして、私どもいわゆる調停の手法その他につきましては、そういう建て値水準自身が争われる際に最も出てくる事態でございますけれども、今回の場合はむしろ一部行います値引きというようなことに今度の問題の真の原因があると思っておりますので、そこをなくするようにということを生産者、メーカー双方に指導していくつもりでございますので、現在のところそういう調停というような形になじむような話ではないのではないかと思っております。しかしそういう一部の安売りが結果的に建て値に影響を及ぼすということでございますので、その点については回を重ねまして、これは、先生も御承知のとおり、自県内では比較的守るのですが、他県に原乳を持ち出すときに乱売をやるわけでございますので、その辺のことを生産者団体についてもきつく指導していくつもりでございます。
  35. 串原義直

    串原委員 時間が来ますから、次の問題に移ります。  政府は、昨年基準糸価をキロ当り七百円下げて一万四千円といたしました。そのときの政府の説明というのは、事業団の在庫を減らして需要を伸ばすためにはやむを得ない措置である、こう言ったわけですね。結果はどうでしたか。養蚕農家は大変に減ってしまった。したがって、繭生産も大幅に減産となった。けれども、事業団の在庫はすばらしく減ったというかっこうでもない。加えて需要が伸びるという傾向もまだあらわれてこない。私たちが蚕糸価格論議のときに指摘をしておりましたまさに好ましくない事態で推移している、こういうふうに思うわけであります。去年の値下げという方向での農林省政策というものがよかったとはとてもとても言えないというふうに私は思っているわけです。  今日、養蚕農家が減る、繭生産が減る、事業団の在庫は予想どおりには減っていかない、需要も伸びない、こういうかっこうで来ている現状を大臣はどう考えておりますか。
  36. 小島和義

    小島政府委員 昨年基準糸価を七百円引き下げたわけでありますが、このことのねらいは需要の増進効果、生産を抑制するという効果、さらには、外国と輸入数量の協議をいたします際に日本側の交渉ポジションを有利にするというふうなねらいを持ちまして行ったものでございます。結果的に需給改善が進み、それによって糸価の浮揚と事業団の在庫の減少を図るということでございました。恐らく、当面の基準糸価を選ぶか、長期的見地に立って一元輸入制度を含む糸価安定制度を守るかということで、大変苦しい選択であったと思うわけでありますが、結果的に、予想いたしました時期よりは多少おくれましたけれども、昨年暮れ以降、需給の状態もかなり改善されてきております。本年一月ごろの時点で見ますと、これまで毎年のように下がってまいりました消費量の方もやや横ばいというふうな調子になってきておりますし、事業団の在庫も若干ながら減少を示しておるわけでございます。その意味では、昨年大変苦しい決定をいたしたわけでございますが、その効果は徐々にあらわれつつある、かように考えております。
  37. 串原義直

    串原委員 時間があれば繰り返して大臣に聞きたいところですけれども、時間がないから進めますが、私はその判断は甘いと思っているのですね。そうではないと思っているのですよ。この物価の高騰する中で生産費はいま約一万六千円、そうであるならばどうしても生産費に見合う基準糸価にしないといけない、こう思っているわけですね。ところが、なかなかそこまでいますぐというわけにいかないとするならば、最低昨年下げた七百円をことしは戻していく、つまり一万四千七百円以上にするという姿勢で審議会等に対処すべきではないのか、そうしない限り原料を生産する養蚕農家というのは蚕糸業の前途に望みを持てなくなってしまう、こういうふうに私は憂慮しているところです。これは大臣にひとつ答弁を願いたいわけでありますけれども、この審議会等に対する諮問の仕方等々含めて、どんなふうにお考えですか。
  38. 小島和義

    小島政府委員 五十七生糸年度に適用すべき基準糸価につきましては、現在まだその検討を申し上げる時期ではないわけでございまして、三月末を目途にいたし出して審議会を開催し、生産事情、需給事情などを勘案しまして適正に決定をいたしたい、かように考えております。
  39. 串原義直

    串原委員 そこで、在庫が多い、需要はそうそう伸びていかない、したがって事業団の在庫が少なくとも十万俵以下になるまで輸入をしない、これをきちっとしないとうまくいかないのではないか、こう思う。いかがですか。
  40. 小島和義

    小島政府委員 私どもも願望といたしましては輸入をしたくない、こういう気持ちを持っておるわけでございまして、現に五十五年の四月以降一年八カ月にわたりまして輸入量をストップいたしておるわけでございます。しかしながら、事の是非は別といたしまして、五十五年度分としまして外国と約束いたしましたものもまだ完全に履行していないという状況でございます。現在、すでに五十六年度が終わり近くになっておるわけでございますので、全く約束を履行しないということになりますと国際信義にもとる問題になりますので、五十五年度の協定分を少しずつ履行を始めておる、こういう状況でございます。  なお、国内の苦しい需給事情をよく外国にも説明いたしまして、五十六年度以降の協定数量についてはさらに圧縮を図るべく、強力に交渉しているところでございます。
  41. 串原義直

    串原委員 時間が来ましたから終わります。
  42. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 日野市朗君。
  43. 日野市朗

    ○日野委員 大臣にいままでずっと市場開放の問題、農産物貿易自由化問題については各質問者が聞きましたので大分いろいろお話しになったのですが、やはり事が重大でもありますので私からもこの問題を少し聞かしていただきたいと思います。  私、大臣の所信表明をじっくりと聞かしていただいておりまして、所信表明の中に出てくる自由化問題について触れている言葉が、非常に気になる言葉の使い方をしておられるのですね。まず大臣は冒頭部分で、「調和ある対外経済関係の形成」ということをイの一番に持ってきておられるわけであります。それから市場開放の要請につきましては慎重に対処していく考えであります、こういうふうに述べておられる。そして、きのう以来ずっと大臣答弁しておられるところを伺いますと、これは大臣の心中は非常によく私はわかるような感じがいたします。もうこれ以上農産物についての輸入を拡大すべきではないという心中、これはよく理解できるように思うのであります。しかし、私それと同時に、日本政府としての貿易問題に対処していく対処の仕方、これを考えてみますと、どうも大臣の御心中とは若干うらはらな動きを示しているような感じが実はしてならないのであります。  そこでまず、農水省を率いていかれる大臣として、国際貿易そのものに対してどのような基本的な考え方を持っておられるのかどいう点、これは農水省の基本的な政策を形成する部分であろうと思いますので、その点について……。こういう聞き方はいささか礼を失するかと思いますけれども、まず自由貿易主義、保護主義、相互主義、これらはいましきりに日米経済摩擦日本ECあたりの経済摩擦をめぐってそれぞれの立論の根拠として唱えられているところでありますが、そういった物の考え方について大臣はどういうふうに思っておられるか、基本的なところでございますが、ここらをきちんと押さえておく必要があろうかと思いますので、お伺いをしておきたいと思います。
  44. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農林水産行政は、御承知のように国民の需要の動向に応じて、農業生産の再編成とさらに農業生産力の向上を図って、食糧自給力を維持確保して活力のある農業をつくろう、こういうことで積極的な政策を進めているわけでございますが、それに対して農家あるいは団体の方々も積極的に協力をしてきつつあるわけでございます。その農家、あるいは特に水田利用再編対策というのを例にいたしますというと、かなり厳しい減反政策をお願いして、それも二期対策までにそれぞれが成果を上げてきているわけでございます。こういう農家あるいは団体の方々が対外経済摩擦については非常に関心と不安を抱いているわけでございますから、また影響も非常に大きいという関係から、私は機会あるごとにこの事情を閣内でもあるいは対外経済閣僚会議においても訴えて御理解をいただいており、他の閣僚も、農林水産省の考え方は私らも賛成だという理解を得ていると私は理解をいたしているわけでございます。  しかし、日本経済全体から考えますというと、これは非常に大きい問題でございまして、貿易自由化、保護主義的な貿易を排して貿易自由化を進めることが日本の経済の一つの柱でございます。しかも日本経済は単に日本によってつくられるのではなくて、世界経済の中で運営されなければならないということをも考えますと、対外経済摩擦解消というのは、政府にとっても日本にとっても非常に大きな課題であり、この解消のためには努力をしなければならない背景があるということを御理解願いたいと思うのでございます。
  45. 日野市朗

    ○日野委員 いまこの経済摩擦解消が非常に大きな問題であることは私もよく承知しておりますし、これが単に農水省サイドからだけの発想で問題が解決するものでないことも私はよく知っているわけであります。  しかし、それと同時に、これは、そういうでかい問題の中の一つなんだからということで逃げが許されない問題であることもこれはまた事実でございますね。いま大臣が強調されました積極的な農政、意欲を持っての農業ということは、非常に私もその考え方には賛成でございます。そしてそれと同時に、食糧自給度を向上するという考え方も、これは全く異存のないところなんです。私が非常に危惧いたしますのは、そういう国の大きな問題であり、それに国際的な問題であって大きな問題なんで、これは大きな国益の問題である。だからといって、農水省がその根本としているところを、根本としている国内の農業を保護していく、日本の農村の生産力を上げていく、そういった要請がこれで一歩も二歩も退いてしまうということがないようにしなければならないというふうに私は思うのですね。でありますから、これは対外貿易の収支の全体的なバランスということも考えなければならないわけでございますが、それと同時に、農林水産省独自のきちんとした立場を持つべきだ。つまり通産省サイドあたりがやっている工業製品の輸出、そしてそれをめぐっての経済摩擦、これが非常に大きい、日本貿易収支全体のバランスにとって大事なように、食糧もそれと同じような比重を国政の中に持つべきであると私は考える。ところが、残念ながらそういう観点がいまのところ農水省に欠けていて、それが農水省の弱腰として農民の目に映る、またわれわれ関係者の目に映る、こういうことがないかどうか、私はここは考えてみなければならぬと思うのですね。いかがお考えでしょうか。
  46. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この問題については、日本農業だけではなくして、たとえばECにおいても、いわゆる課徴金制度ですね、支持価格を決めて課徴金を課する、反対に輸出については補助金を課するというEC十カ国の一つの保護政策的なものを持っております。さらに残存輸入品目として、フランスは十九品目、あるいはデンマーク等も五品目を抱えているわけでございまして、アメリカもやはりガットの了解を得たものの、ウエーバー制度によって十三品目ほど保護品目を得ているわけでございますので、そういう点を考えてまいりますというと、私は、日本の二十二品目が必ずしも理解できないものじゃないだろう、こういうように考えておりますし、また対外経済摩擦解消する基本的なものは、何としてもアメリカの高金利政策による景気の低迷、やはりアメリカ経済の再活性化を私たちは望むのですね。さらに日本としては、内需を拡大して貿易の輸出ドライブのかからない経済運営をするということは、これは基本だと思うのです。そういうことを進めることによって、いわゆる農産物への要求というものをできるだけ少なくしていくことが、いま私たちに課せられた課題だと思います。また農林水産業がいま転換しようとしている時期でございますから、その転換期に当たって外圧をできるだけ防ぐ、抑えるということが私の一つの任務でもあろうと思いますので、そういう点はできるだけ私は支えになって日本農業の将来のために努力をしたい、私はこう考えておるのでございます。
  47. 日野市朗

    ○日野委員 その大臣の個人的な覚悟はよくわかるのですよ。私もよく理解いたします。ただ問題なのは、所信表明の中で使われた言葉、それからいまもそういう心情をお述べになりました。よくわかるのです。  ただ、それにもかかわらず、何とかこの外圧を自分の一身で食いとめて防ぎたいということだけでは物事は進まないわけでしょう。やはり日本の国政の中で、農水省は農水省としてこの問題に対処するプリンシプルを持たなければいけないと思うのです。そうしてその都度その都度の言い逃れや何かでこれはまた済む問題でもありません。ですから、きちんとしたプリンシプルをお示しいただきたい。そのためには、貿易上の自由主義をとるのか保護主義をとるのか。それから特に私が気にするのは、相互主義という、場合によっては非常にあいまいに見える考え方、これをそのまま農水省あたりが引き受けて、それによって流されるとするならば、一枚一枚薄皮がはがれるように原則というものはだんだん崩れていくのではないか、そのようなことを心配いたしますので、私は、プリンシプルを聞かしていただきたい、こういうことを言っているわけです。
  48. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  農林水産省もわが国政府の一員でございますが、自由な通商秩序を擁護するという基本原則は、私ども踏まえて行動をしておるつもりでございます。ただ、自由な通商秩序を擁護するという原則は、必ずしも機械的にあらゆる残存輸入制限がなくならなければならぬという蒸留水的概念であるというふうには思っておりませんので、これは先ほど大臣から御説明いたしましたように、自由な通商秩序を擁護するという基本的原則に立脚しておる諸国もそれぞれ輸入数量制限を持っておるわけでありまして、私どもとしては基本的に、生産性の向上を通じて数量制限によって防衛する必要のない強力な農業にするという原則に立って、経過的に残存輸入制限が存続するということは自由な通商秩序を擁護するという見地に背馳するものではないというふうに考えております。  一方、現に保護貿易主義的な潮流は世界的にびまんをしてきておるわけでございますが、これは、いま申し上げました自由な通商秩序を擁護するという見地に立脚しつつ、経過的に輸入制限が存続されておるという事態とは原理的に違うわけでありまして、新しくさまざまな通商上の制約を設けてガット的秩序に基本的に挑戦しようという潮流でありまして、私どもは、政府全体の方針でございますが、そういう保護貿易主義的な潮流にくみするわけにはいかない。それに対しては、そういう潮流がはびこるということに対しては、これを抑制していかなければいけないというふうに考えております。  最近新しく登場いたしました相互主義という概念は、これは論者によっていろいろなニュアンスをもって議論されておりますが、これはもしガット的秩序に反して不公正な輸入制限を行っておる国に対して制裁措置を加える、そういう動機に出るものであれば、これは元来ガットの枠組みで処理をされるべきことであって、特定国の国内立法で対応するというのは正しくないというふうに思います。現にアメリカの議会で問題になっております相互主義立法というのは、まさにこのような特定国の国内立法によって問題に対処していこうというものでありまして、私はこの原理の行き着くところはガットの最恵国主義の原則を崩壊するに至らしめる、その効果においては、表面上の議論は別にいたしまして、保護貿易主義的な志向であって、私どもとしては、こういう考え方が広まるのを防ぐために努力をしていくべきものであるというふうに考えております。
  49. 日野市朗

    ○日野委員 私は、これは農政との関係でそれぞれの物の考え方について伺ったのですが、非常に懇切な御説明をいただいてありがとうございました。  それで、私が伺ったことは、わが国でこれらの品目を残しておく、それをきちんとした政策として、これは政策的と言ってもその場その場、この二十二品目一つずつさらに減っていく。一つずつ減っていくその減り方が、三つ減らせと言ってきたのが一つで済んだから、これは農水省のお手柄だというようなものではあるまいというふうに思いますので、ここのところはいまの懇切な答弁の中からも一つの、特に国内のいろいろな意見に対するきちんとした説明をつける、一つの理屈といいますか理論といいますか、それに導かれる政策としてきちんと位置づけてもらいたいというふうに私は思います。  ただ、私ども、こうやって一連の日本政府の市場開放のプレッシャーに対する対応の仕方を見ておりまして、必ずしも、大臣が昨日来表明された非常に強い大臣の御意向とはどうも一致しないように思うのであります。たとえば昨年の十二月、経済対策閣僚会議対外経済対策、これを打ち出しておりますね。この経済対策閣僚会議に対してどのような基本的な姿勢大臣は臨まれて、どのような主張をなさったのか、いささかインサイドレポート的な報告を求めるかのような感がありますが、大臣の基本的な姿勢をちょっとお述べいただきたいと思います。
  50. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 対外経済閣僚会議においては、私は、先ほど申し上げましたように、いま国内の農業は転換期を迎えている、しかも積極的な政策を進めようとしているときでございますので、しかもそういう積極的に進めている農家あるいは団体の方々は対外経済摩擦解消というものに対しては非常な関心と不安を抱いている、これをやはり解消していかなければ新しい農政というのは確立できません。したがいまして、私たちとしては、もちろん国全体としては貿易自由化あるいは対外経済摩擦解消ということは大きな課題でしょうけれども、農林水産業実態をひとつ理解していただきたいという旨を訴えてまいったわけでございます。また、機会あるごとに私はこの点は率直に訴えて今日まで来ております。  そこで、私はこれからも対外経済摩擦の問題に対して機会あるごとに申し上げたいのは、一つには、先ほど来お話がありましたように、穀物において約二千万トン以上のアメリカからの輸入をしているということですね。それから、農林水産物全体で百二億ドルの輸入額を私たちは受けているということですね。それから一方、国内の農業の事情と、さらに、自由貿易主義をとっているEC自体も、またアメリカですら農業については保護政策的なものをやはりとっているというようなことを機会あるごとに訴えまして、農林水産品目に対して余り手を染めていただきたくないということを訴えてまいりたい、かように私は考えています。単に私が訴えるだけではなくして、いわゆる対外経済対策閣僚会議においてもそういう方向に進むような理解を私は求めていこう、かように考えているわけでございます。農林水産省はこの対外経済摩擦貿易問題については何かどうも弱いというようにいまお話しのようでございますが、確かにそういう点もあるかもしれません。しかし、現状はそういうわけにまいらない状況でございますので、私としては機会あるごとにお話をして、日本として、政府としての考え方を、農林水産業というものは非常に重要なんだ、この残存輸入制限品目を開放することによって大変な打撃を受けるんだというようなことを理解していただくために努力をしたい、こう考えているのでございます。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 いまの答弁を聞いておりますと、これは非常な努力はなさったんだろうということはよくわかります。しかし、先ほど大臣お答えになったように、わが国の閣僚でもずいぶん農水大臣経験者はおるわけでございまして、同じような悩みを味わっていかれた方々ばかりずいぶんおいでになります。顔を思い出すだけでもいっぱいいる。そういう方々がおられて、それでなおかつ、農水省の立場からいえばかなり、まさに苦痛とも言うべき輸入検査手続の改善であるとか輸入制限の緩和、それから関税率引き下げの一律二年繰り上げ実施というような措置をおとりになっている。これは私もよくわかりますよ。アメリカあたりの政府筋、議会筋がいかに強く日本に対してこれらの圧力をかけているかということはよくわかります。しかし、私、こう思うのですがどんなものでしょう。アメリカからの圧力が強いからといってこっちが一歩引き下がるのではだめなのであって、積極的に向こうの議会筋、政府筋、ここに対してこちらの言い分をきちんと話をする。そのためには、単に外交チャンネルばかりではなくて、いろいろな、議員レベルでの交渉、それから大臣が直接向こうに乗り込んでいろいろなところと事態の打開を図る、そういう努力なども必要なことだろうと思います。これはもう決して江崎さんあたりが行ったからといって問題が解決するものではなくて、常時そういう点については接触を保ちながら努力をしていくべきものではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  52. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私の見方でございますけれども、対外経済摩擦解消については、アメリカからの要求がありますというと、その品目についてこうしなければいかぬ、こうしようとかという考え方がいままでどうも個々に出てきたような気がするのです。個々に処理しようという考えがどうもあったような気がするのですよ。  そこで、私は機会あるごとにお話をしている間に、貿易摩擦あるいは貿易自由化はやはり全体で受けとめなければいかぬ、しかも少し中長期的に眺めていかなければいかぬのじゃないかという考えが最近非常に強うなってきていると思うのですよ。そういうことが、総理の発言等にも農林水産への配慮というものとなってあらわれてきているのじゃないかと私は思うのでございます。これは、すぐ転換するというわけにまいりませんけれども、この考え方を変えるというわけにまいりませんけれども、徐々にでも、積極的に私たちが説明をし、理解を得て、貿易全体から対外経済摩擦というものを解消していこうという形をとっていかなければならない。私は、河本経済企画庁長官には、貿易のインバランスを解消するには何としても内需の拡大、これ以外にないんじゃないですか、これをまず進めることが一番でございますよということを常に主張しているのですよ。そこがまた基本でもあるわけなんですから、そういうことを含めて総合的に貿易自由化というものを考えていかなければならない。一部の農林水産業にだけ犠牲を払わすということはやはり好ましい姿じゃない、私はこう思いますので、そういう面に積極的に私たちはPRをしていきたい、こう考えておるのでございます。
  53. 日野市朗

    ○日野委員 何か、こうやって話をしていますと、私と大臣が同じ党のような感じさえしてくるようなわけでありますけれども、この問題についてはきのうあたりの農林水産委員会から農産物輸入自由化阻止の大合唱でございますね。大臣と私と、内需拡大の問題まで含めてそう大きな違いはない。  ところが、これが一歩自民党の中に持ち込まれますと、国際経済対策特別調査会、江崎調査会なんかになりますと、どうもわれわれの考えていることが逆の方に逆の方にといってしまう。これは私、いま大臣首を振っておられますけれども、江崎調査会がいろいろなバリアを取り払う努力をされた、この中には私、農林水産委員会関係者としてみればかなり不快感を表明せざるを得ないというようなところもあるわけでございますね。こういった江崎調査会、これは自民党のことでございますから政府大臣にこれをお伺いするのもいささかちょっとどうかと思いますから、私は、ここの問題は不快感だけを表明しておきたいと思うのです。  しかし、もう一つ、これは非常に強い不快感を表明せざるを得ないのは、三極通商会議がありまして、そこで、安倍通産大臣がさらに輸入制限品目を削減して市場開放を進めなくちゃいかぬのだというようなことを三極通商会議から帰ってこられて発言をされた。私はこういうのを見ておりますと、安倍さんも農林水産には本当は詳しいはずなんだがこういうことを述べておられる。こういうことについしてはどのようにお考えになりますか。これについて賛成ですか反対ですか。何で安倍さんがこういうふうな発言をされるようになったのだとお考えになりますか。
  54. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 三極と言っても、カナダも入りましたから実際には四極でございますが、安倍通産大臣が御出席になる前に各省間の打ち合せがございまして、四極キービスケーンの会議で議論されるべきテーマについては関係各省間で合意をした上で御出発いただきました。  そこでは、農林水産物の問題についてはキービスケーンの会議の論議の対象外であるということは出発前に合意済みでございました。アメリカ、カナダ、ECというほかの三カ国もすべてそれは承知の上でございまして、私どももキービスケーンの会議農林水産物の問題は議論されなかったというふうに承知をいたしております。  ただ、通産大臣といたしましては、通商産業省所管物資でも残存輸入制限品目を抱えておられますから、何をおっしゃったのか、私詳細は承知しておりませんが、わが省の所管事項について介入をなさるような発言をなさったのではないというふうに承知いたしております。
  55. 日野市朗

    ○日野委員 じゃ、この問題については農産物関係ないというふうに伺っておきましょう。後々で関係したり何かしてくると問題がまた出てまいりますが、そのときはそのときとして対処するようにいたしたいというふうに思います。  それと、東京ラウンドで一九八四年以降の牛肉とかオレンジなんかの取り扱いについては八十二年度末に再交渉というふうに決めてあったはずなのが、交渉時期を八二年の十月一日に繰り上げろという要求がアメリカ側から出ていることはもうすでに周知のところでありますが、こういう動きに対してはどのように対処していかれるつもりでしょうか。
  56. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず東京ラウンドの合意でございますが、東京ラウンドで日米間で合意がございますのは、高級牛肉と柑橘でございます。  それで、次の協議の時期につきましては、高級牛肉については一九八二年度末前後、それから柑橘については一九八二年度後半前後ということで合意をいたしております。  それで、十月一日という日付は、昨年十二月の日米貿易委員会の席上アメリカ側が言い出した日にちでございまして、アメリカは、十月一日という日にちは、柑橘については、一九八二年度後半前後ということでございますからどんずばり東京ラウンドの合意どおりである。それから高級牛肉につきましては、一九八二年度末に比べれば六カ月繰り上がるわけでございますが、これは、前後という幅がついているので、その幅の中で読める範囲のできるだけ早い日というつもりであって、別に繰り上げてくれということを言っているつもりではないというふうに説明をいたしております。  私どもといたしましては、東京ラウンドの合意の幅の中で協議をしなければいけないわけでございますが、アメリカ側の希望でさえ十月一日ということでございますので、今後の事態の推移を見ながら、東京ラウンドの合意の幅の中で都合のいい時期を日米協議して決めるということにいたしたいと思っております。
  57. 日野市朗

    ○日野委員 この繰り上げての交渉で、あなたは繰り上げではない、幅があることだからというふうにおっしゃっていますが、牛肉、柑橘については完全自由化というアメリカ側からの要望が出ることは間違いないだろうと思いますね。いかがでございますか。そして、それにはどのように対処なさいますか。
  58. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず、繰り上げでないという話は、アメリカ側がそういうふうに説明しておるということでございまして、私の意見ではございません。  それから、一九八四年度以降の取り扱いが協議の主題になることは当然でございますが、アメリカ側は、協議に臨むに当たっては、一九八四年度以降完全な自由化を要求するという立場で協議に臨むつもりであるということはすでに私どもに通告をいたしております。私どもといたしましては、どう対処するかという具体的な対処方針を決めておるわけではございませんが、少なくとも完全自由化ということは論外であるというふうに考えております。
  59. 日野市朗

    ○日野委員 完全自由化は論外という立場で臨まれるのは当然でございましょう。しかし、ここでもまた一歩寄られる、土俵に一歩詰められるというような感じがするのですが、そういう心配はありませんか。
  60. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 協議をすること自体は東京ラウンドの合意で決めてあるわけでございますから、遅かれ早かれ協議をすること自体は、別に新しい譲歩でも何でもないと思います。  それで、協議に臨んでどういうことになるか、アメリカにもう一歩踏み込まれることになるかというその点は始めてみなければわからないわけでございますが、私どもとしては、国内の肉牛産業なり果樹産業に悪影響を及ぼさないように、十分心して対処いたしたいと思っております。
  61. 日野市朗

    ○日野委員 いま私はここで、これは外交交渉でもありますから、余りとやかく言ってみてもしようがないと思うが、ここでいまの答弁を通じてわかったことは、アメリカ側がこっちに提示をしてきた交渉時期についてはのむという方向、それから、協議をして幾らかのおみやげはアメリカに持たせて帰さざるを得ないという基本的な態度、これは変わりませんね。
  62. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 協議の時期につきましては、東京ラウンドの合意の範囲内で今後決めたいというふうに考えておりまして、いまの段階でのむとものまないとも決めておるわけではございません。  それから、協議が始まった場合おみやげが出るか出ないかということは、いまの段階では何とも申し上げようがございませんが、ともかく完全自由化ということは断るということと、国内産業に悪影響を及ぼさないような対処をするということだけ申し上げておきます。
  63. 日野市朗

    ○日野委員 ここのところを余り細かくやってもしようがないし、あと五分しかありませんので……。  いままでのやりとりをして依然として晴れない疑問点は、やはりアメリカから一歩寄ってこられれば、これにある程度の譲歩ということを常に胸の中に秘めながらいろいろな交渉などもやるという農水省の態度なんだろうというふうに私は思います。私は、このアメリカにおける圧力の根源などもよく知ってはいるので、必ずしも、そのことを強くいまの段階で非難するというようなつもりはございませんけれども、これはやはり国内においてそういうアメリカ輸入圧力にきちんと対処できるような経済体制ができていないということにも問題がある、そのためにはまず内需を拡大しなければならぬというこの大臣の見解は、私も非常に共感するところであります。そして所信の中でも、内需の拡大ということが大事なことだということでうたっておられる。それなりに評価するわけですが、では農水大臣、これは、閣議の中での話というのは外には話せないのだそうでありますけれども、この内需拡大のために農水省サイドとしてどのような努力をなさるおつもりなのか。これはもう農水省ばかりではなくてほかの省庁全部関係することでありますから、農水省だけの意見が通るものではないということを私は十分承知した上で伺うのですが、どういう努力をなさるおつもりであろうか、伺いたいと思います。
  64. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 内需拡大については、先ほど申し上げましたように、これは政府全体として積極的に取り組まなければならない課題でございます。したがいまして、いま考えられるのは、住宅の面で百三十万戸の住宅の建設に努力する。そのほか、やはり金融制度の面その他でできるだけ内需を拡大していこうという考えを持っているわけでございますので、具体的にはいま私は資料を持ち合わせておりませんけれども、政府としてはその方向で積極的に努力をするということでございます。
  65. 日野市朗

    ○日野委員 内需拡大の重要性というのは、まさに現在のわが国の経済情勢の中で、最も重要な部分の一つであります。あえてそれを言葉としても所信表明の中に大臣はお入れになったのですから、やはりそれについてはきちんとした努力をなさらないと、単なる口先だけのこと、リップサービスを提供したんだと言われかねないのではなかろうかというふうに私は思います。  そして、この内需拡大のために、農林水産省サイドとしてもやれること、これはいっぱいあると思います。特に政府として、これは考えてみますと、ことしの後半なんかは、成長率は恐らくマイナスに落ち込むのではないか、マイナス成長になるのではないかというような懸念すら有力に主張、されている現時点で、やはり一兆円減税なんかが必要だと私は思うのですが、大臣、いかがですか。
  66. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 一兆円減税については、これは政府としては、現在の財政再建、財政の現状からいって、なかなか要望に応じることはできないというのが政府としての態度でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  67. 日野市朗

    ○日野委員 時間ですから、これで終わります。  ありがとうございました。
  68. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 田中恒利君。
  69. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林水産大臣の所信表明を中心に、畜産と果樹の問題について御質問いたします。  先ほど来いろいろ自由化の問題について各委員から、特に農林大臣に対する所信のほどをお尋ねがあったわけですが、私ども社会党も、過般の全国大会における特別決議で、この農畜産物自由化については党としても反対の態度を貫くし、国民の合意と世論を高める諸対策を講ずる、こういう特別な決定をいたしております。  先ほど来、各委員の質疑を通して田澤大臣の御心中のほどはよくお伺いしたわけでありますが、しかし現実に農産物自由化という問題が、いまに始まったことではありませんが、わが国農業に今日決定的な打撃を与えておる。農村では、これは保守とか革新とかということでなく、国際競争力の弱いという農業が、なぜこれほど大きく成長した日本の産業、特に重化学工業部門の製品の犠牲にならなければいけないのかということがほぼ一〇〇%共通の認識になっております。そういうものが蓄積しておるわけです。そして今日、日米農産物交渉を中心として、貿易摩擦の問題を契機にして再び残存輸入制限の問題が提起されておるだけに、この問題はかつてない農村、農民、さらに食糧安保のたてまえからいくと、特に食糧自給力向上に関する国会などの決議を受けて政策の基本と関連してみると、やはり大きな瀬戸際に立たされたと私は思うのです。それだけに重大な決意でこの問題に臨んでいただきたいと思うわけでありますが、過般、経済対策閣僚会議貿易摩擦解消についての申し合わせというか決定がなされておりますね。この中の「市場開放対策」の第二項に「輸入制限の緩和」ということで「諸外国の関心品目に留意しつつ、残存輸入制限について、適宜、レビューを行い、その結果を経済対策閣僚会議に報告を行う。」こういう項目があるわけでございますが、この項目をめぐって、すでに農水大臣と通産大臣との間に多少見解の食い違いが表面化しておるわけです。先般来の本委員会の質疑を通して、この「適宜、レビューを行い」、つまり残存輸入制限緩和をめぐって、残存輸入制限品目二十二品目についてはレビューを行わない、やらない、手を染めない、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  70. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず十二月十六日の経済対策閣僚会議におきましては、農林水産大臣から、自給力の向上を基本とする農政姿勢は不変であるということを経済対策閣僚会議としても確認をしておいてほしいという趣旨の発言がなされまして、座長である河本経済企画庁長官からも、そのとおりであるということがございました。  それでただいま田中先生御指摘の「レビュー」は、確かに経済対策閣僚会議の決定事項の中にそういう文言がございます。それで私どもが申しておりますのは、農林水産物につきましては、レビューをするに当たって食糧自給力向上という重大な使命を持っております農業、水産業の健全な発展と調和のとれた形でレビューが行われなければならないというふうに考えておりまして、そういう見地に立つと、レビューをしてみて、その結果自由化できるという結論の出るものはないというふうに考えております。
  71. 田中恒利

    田中(恒)委員 局長、そうしたらもう少し議論しますが、先ほど来のお話を聞くと、たとえば当面の牛肉、オレンジの自由化の問題についても、自由化はしないが枠の拡大については、話し合いの中で考えていくとはおっしゃらないが、やはり何か話し合いの結果によってはという要素があるわけですね。そういう点はどうですか。
  72. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 高級牛肉と柑橘につきましては、協議すること自体は東京ラウンドの約束でございますから、協議はいたします。そのときに枠をどうするかというのは、いまアメリカ側の希望している日取りから申しましても半年以上も前でございますから、私いまの時点でどうこうというふうに申し上げることはできませんが、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、国内の農業に悪影響を及ぼさないように対処をする決意であるということだけ申し上げておきます。
  73. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま農産物に対する国内の需要というのは、あなたのところから出されておるいろいろな資料を見ましても、私ここに持ってきておるけれども、非常に停滞しておりますね。伸びはとどまりましたね。これは日本人の食糧のカロリーで計算したって、この二、三年、大体二千五百カロリーから伸びない。そういう意味で、わが国食糧の総需要というのは大体現状維持的状態であるということは言えると思うのです。そこへ持ってきて外国から入れば、これは当然その分だけ過剰になるのですよ。いまだって従来の蓄積などの関係で過剰傾向ということをまだ完全に脱し切れないと言っておるところへ、また枠を拡大すると過剰になるということはおおよそ判断ができるのです。そういう中で、なお輸入枠というものを拡大しなければいけないという理由はないと思うのですが、これは大臣、どうですか。
  74. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 枠を具体的にどうするかというのは、品目別の需給事情を慎重に検討した上で決心をすべきものであるというふうに考えておりますので、いまの段階で八四年度以降の枠について議論をするというのは、私は尚早に過ぎるのではないかと思っております。
  75. 田中恒利

    田中(恒)委員 それではもう一辺聞きますけれども、国内で各品目について具体的に行政なりあるいは生産者団体などの間で自主調整なり生産調整を進めておるような品目については枠拡大の要素はない、こういうふうに理解していいのですか。
  76. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 何と申しますか、一般論として過剰であればふやせないということはございますが、過剰であるという事態の徴候をいかなる指標によって判断すべきであるかということについては、品目別のことでございますので、一般論としてここでお答えするというのはちょっと無理だと思います。
  77. 田中恒利

    田中(恒)委員 それは一般論じゃないですよ、基本論なんです。ただ、そういういろいろな理屈をつけて、これまでも対外的な食糧輸入というのはふえてきておるのですよ。私はこの自由化問題、この時期にその辺も一遍基本的に洗ってみる必要があると思います。  そこで大臣に、いろいろ問題はたくさんありますが、私はまた別途国会で自由化問題を議論させていただきたいと思っておりますが、いろいろ議論がありましたが、それから歴代農林大臣皆そうでありますが、田澤大臣もなおそうだといま理解をいたしておりますが、相当な決意で臨まれるということはよくわかります。わかりますが、それは言葉でお示しになっただけでは、これまでの経緯からして、われわれも国民も農村の関係者もなかなか理解しないと私は思う。鈴木総理は、行政改革に政治責任をとる、こういうことを明言されまして、この一言は相当大きな重みを持ってきておるわけでありますが、田澤大臣は、この際思い切って、この貿易自由化の問題をめぐってみずからの政治生命をかけてこれに取り組む、こういう決意で臨んでいただくことを要望し、同時にそういう決意でひとつ臨んでいただくかどうか、当委員会を通してひとつ明らかにしていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  78. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 貿易自由化問題については、先ほど来私が申し上げておりますように、非常に強い決意でこの問題の解決に臨みたい、こう考えておるのでございますので、この委員会農林水産大臣がこういう考えを述べたなどと言いますと、またこの問題を処理するための全体にむしろ悪い影響を与えてもいけませんので、その点はひとつ申し上げかねますけれども、農林水産大臣としては最善の努力をしてこれに臨みたい、こう考えておりますので、その点で御理解をいただきたいと思うのでございます。
  79. 田中恒利

    田中(恒)委員 いやそれは、たとえば前の亀岡さんはチチュウカイミバエの問題で、これが入ったらわしの腹切りもんだ、こういうことをこの委員会でも言われておるわけですよ。今度の問題はミバエどころの騒ぎじゃないと私は思うのですよ。まさに一国の食糧を守り、農林行政の最高責任者である大臣はその職をかけてこれには臨んでもらう、こういう姿勢で進むところにおいて活路が開かれる。私はそのことで波紋が起きるという状態じゃないと思う。たとえば今日与党である自由民主党の諸君にしてもほとんどの野党にしても、この問題については政党間でこれ以上の日本に対する食糧輸入はすべきでない。私はほぼ合意は成り立っておると思うのですよ。鈴木総理だって、昨日私はNHKのテレビをずっと見たのですが、食糧についてはそう簡単なものじゃないと言っておったようですが、あの録画でははっきりそういう表明、趣旨は出ておりましたが、見られませんでしたけれども、総理もそんなことを言っておられるわけです。正直言って、これは闘ってもらわなければいけないので、その大臣が、やはりそれこそみずからの進退をかけてこれに取り組む、こういうことをまさにこの委員会を通して全国民に明らかにするということが非常に効果的だと思うのですが、違うでしょうかね。
  80. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この問題については先ほど来もずっと申し上げておりますように、農林水産大臣としては最善を尽くして努力をいたしますから、これは田中委員におかれましてもどうかひとつ御協力をお願いしたい、こう思います。
  81. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは、大臣の所信に関して、いままでなかったその他の点を一、二お伺いいたします。  一つは、日本型食生活の定着ということを最近よく言われ始めてきておるのですが、これは農政審議会の答申で出てきた一つの柱であります。その後の経過を見ましても、あるいは大臣も所信表明で大きく述べられておりますし、われわれもよく聞いたり言ったりするのですけれども、一体日本型食生活の定着というのは具体的には何を示しておるのか、どういうスケジュール、どういう方法でこれを進めていくのか、その手順、その内容はほとんどわからないわけですね。これは柱のわりには、かけ声のわりには中身がさっぱり出てきていない。これについて、所信表明に絡んで、大臣としては、日本型食生活というのはこういう内容でこういう方向でこれを国民の中に定着をさしていく、こういうことについて御説明をいただきたいと思うわけです。
  82. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 日本型食生活というものは、大体お米を中心にしていわゆるカロリーの均等を図ろう、こういうことでございまして、たとえば脂肪が三〇%、それから炭水化物が五八%、たん白が一二%、このカロリーが二千二百カロリーから二千四百カロリーで、この程度をとることが一番健康上よろしい、こう言われているわけなんです。ですから、これを進めてまいるためには、お米、米飯でいきますと、それに見合う副食をとってそれぞれカロリーを確保できるものですから、そういう点では日本型食生活は一番望ましい。私たちは、たとえば若いときはわりと脂肪とたん白質で大体できているのですね、乳児のお乳なんかは脂肪とたん白質でできているのですから。そして、案外炭水化物はほとんどないという状況ですね。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ成人してまいりますと、今度はそれがやや均等したものになる。老齢化してまいりますと、脂肪はほとんど要らない、そして、たん白質もそんなに必要ないけれども、炭水化物をたくさんとった方がいいというようなことで、年齢の差によっても日本型食生活によってその調整ができることが特徴なんですね。でございますから、私はやはり、米飯を中心にしてお魚、牛乳、適当の肉食あるいは野菜等を配合して進めるいわゆる日本型食生活というものは、最も自然食でもあるし、人間の保健上からも栄養の面からも非常に均衡のとれたものでありますので、将来とも日本型食生活を奨励してまいらなければいけない。そのことが同時に米の消費拡大にもなるということでございますので、日本型食生活の奨励をしたい、促進をしたい、かように考えておるのでございます。
  83. 田中恒利

    田中(恒)委員 それはよくわかるのですがね。最近アメリカでも、アメリカ医学会で日本人の寿命がこんなに延びたのは何だということでいろいろ日本の食事についての検討がなされておるし、日本人の医者と向こうの医者との間に米についてのいろいろな研究がなされておることも聞いておりますが、それはよくわかるのですが、やはりそういうものをどういうふうに国民に徹底させていくか。米はだんだん食べなくなってきておるということですね。日本は米が一千万トン、魚が一千万トン、これも世界一。だから、主食が米で副食の中心が魚。それに戦後の日本農業の転換の過程でつくられてきた畜産なり果樹なり蔬菜なり、そういうものがうまく組み立てられて、いま大臣が言われたような含要素分になっておるということなんですね。それをどういうふうに定着させていくのかということなんであります。その仕組みをどうしていくかということが、農林省として、行政として、政策として打ち立てなければいけないことなんで、それがないじゃないかということなんでありますが、その辺に何かポイントはあるのですか。
  84. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  食生活というものは個人個人の嗜好に属する範囲のものでございますので、この定着は非常にむずかしい問題かと考えております。そこで、農政審議会におきましても、日本型食生活の定着という答申が出たわけでございますが、この具体化についてはいろいろ困難があるというところから、さらに専門委員会で詳細に審議をしようということになっておりまして、現在、昨年の十月来、農政審議会に専門委員会を設けまして検討いたしております。近く大体の方向が出てまいるかと思いますけれども、私ども、昭和五十七年度におきましては、現在予算委員会で予算の審議をお願いしておりますが、一千六百万円の予算を計上いたしました。  具体的には日本型食生活を定着をするための方策の検討委員会というものを設けまして、これは学識経験者で構成をいたしまして、その中で食生活の指針であるとか、あるいはメニュー、これはアメリカの農務省でも現在広範に頒布をしておりますけれども、メニューの例であるとか、そういうものを作成してはどうか、あるいはこの食生活の定着のための具体的な推進方策をどのようにするかというようなことを考えております。また、アンケート調査等によりまして、家庭科担当教職員等から、たとえば日本型食生活についてのメニューにどういうものが適当であるか、あるいは食生活の指針としてどういうものがいいかというようなことについても回答を得たいと思っております。またさらに、食生活というのは地域、地域によりまして非常に差のあるものでもございますので、地域別にブロック会議等、検討会議を開きまして、地域の実情もよく取り入れていきたいということを五十七年度において具体化したいと考えております。  全体の方策といたしましては、先ほど申し上げましたように、農政審議会の専門委員会の御報告を待ちまして、さらに推進方策を考えていきたいと考えております。
  85. 田中恒利

    田中(恒)委員 いまお話のあったような状況にとどまっておるということで、かけ声に比べると全くスローガンにとどまっておると私は思うのですね。これだけの大きな農政の基調、大黒柱、千六百万という予算で検討しておるということなのでありまして、これはもう少し本格的に動いていただかなければいけないと思うのです。思い切ってやるならば、これは確かに簡単に一年や二年でできることじゃないと思いますけれども、やはり学校給食制度といったようなものが軸になって、切り開くところを開いていかなければ進まないと思うのです。学校給食をめぐっていろいろな問題がある。たとえば文部省との共管の問題もありましょうし、今日の米飯給食の実態の問題もあります。こういうところに大胆に切り込んでいかなければ、道は開かれてこないと思うのですね。その辺をもっと大きく出してもらわないと、所信表明で、きれいで名前もいいし、受ける方も感じがいいものだから、日本型食生活ということを言えばそれで何だか農政の柱が出ておる、こういうふうに言われたのじゃ、われわれどうも納得いかない、そういうふうに思います。私どももなおいろいろと検討、勉強して、提案をしたいと思います。  それから次に、行革と地域農政関係に絡みまして、大臣の方からもお話がありましたが、千二百十の補助金が六百に統合化、メニュー化をいたしました。これに伴っていまの行政機構で、果たしてこの仕組みで、この補助金が半分になったということで対応できるのかどうか、これに対処するお考えはどういうことなのか。特に大臣の言葉をかりると、「地域の自主性と活力を基盤」とする政策として打ち立てられた新地域農業生産総合振興対策並びに畜産の総合対策、これはことしの農林予算の目玉にしておるわけでありますが、実際にこの二つの政策が地域の自主性、地域の主体性、活力を引き出す政策として生きていくためには、やはり現場に権限と金を与えなければ進まないと私は思うのです。そういうことを基本に置きながら、この予算がうまく動いていくかどうかということは、これからの農政一つのあり方として注目していいところだと私は思うのです。しかし、明治以降長い間組み立てられてきた今日の中央集権型の日本の行政機構の中で、これは完全に消化できるかどうかということを大変心配しておるわけでありますが、この辺につきましてもこの機会に御説明をいただければと思います。
  86. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 具体的には官房長から答弁させますけれども、今回の補助金については、いま御指摘のように統合メニュー形式で進められたわけでございますが、それで新地域農業生産総合振興対策とかあるいは畜産総合対策の形で進めております。これは水田利用再編対策というものをいま進めておるわけでございますが、これとあわせて今後この政策を進めてまいりますということで、新しい農業の姿が出てくると私は思いますので、今後この線をさらに積極的に進めてまいりたいと考えているのでございます。  この間埼玉県の江南村というところへ参りました。そこではいま、これらの補助金を対象にしながら積極的に進めようとしている。現に進めておりましたが、これからも進めようとしておるわけでございます。私は、こういう補助金を本当に有効に活用して、活力ある農村にしていくためには、やはりその地域に指導者がなければいかぬと思うのです。農業がもう限界に来ているからいやだというんじゃなくして、こういう苦しい農業だからわれわれは積極的にやろう、こういう考え方の人が出ておる地域ほど、私は新しい農政の芽生えが出ていると思いますので、今後そういう人的な面をも配慮しながらこの政策を進めてまいりたい、かように考えておるのでございます。  具体的には官房長から説明させます。
  87. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございましたように、新地域農業生産総合振興対策並びに畜産総合対策は、今後の農政を進めていく上におきまして非常に重要なものと考えております。従来、それぞれの畜種あるいは年齢によりましても、いろいろ補助の体系、事業の仕組み等が違っておりますし、また、作物につきましても、作物別にいろいろ事業が分かれ、また補助要綱も違っておるというようなこともございましたので、これをできるだけ統一をいたしまして、各県あるいは市町村ごとに、五年後を目標といたしました総合的な基本方針をつくっていただく、その基本方針に従いまして、それぞれ市町村が自主的な計画を、関係農業者、団体等の意見も聞いて立てていただくわけでございます。また、その際には、従来ややともすると批判がございました農業改良普及員も、この計画づくりに積極的に参加をし、助言し、また指導していくという体制をとることが、まず第一のスタートでございます。  それを受けまして、都道府県あるいは農政局におきましても、窓口担当課あるいは。プロジェクトチーム等をつくりまして、これらの計画を審査をし、また事業が能率的に、重点的にいけるように審査をしていきたいと考えております。したがって、これらの事業実施の段階におきましても、あるいは補助金申請の段階におきましても、補助要綱あるいは事業実施要領等が統一化されますので、地元側の申請手続あるいは事業実施手続等につきましても、非常に簡素化、合理化されることを期待しているわけでございまして、原局におきましても、関係課の連携を密にしながら、できるだけ能率的あるいは迅速にこの事業を実施してまいりたい、かように考えております。
  88. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が余りありませんので、次に移らしていただきます。  三月の末に政府畜産の支持価格が決定をされるわけでありますが、この価格の決定に当たって、すでに昭和五十二年から原料乳価は四年連続据え置きでありまして、実質的にその他の肉畜などについても同じような傾向が見られるわけでありますが、先ほど来お話があったように、農業政策の中でとられるべき内需拡大の具体策というのは、これはいろいろ言いましても、私はやはり価格政策にまつところが多いと思うのです。  大臣の所信表明の項目に価格政策というのがあります。今度の所信表明では、食品産業の振興、育成が、価格政策という項目に結びつけられておりますね。これも実は少し問題があるような認識で聞かし、読ましていただいたわけです。現在、日本の財界がいろいろな農政の提言をしております。従来からやっておりますが、最近の傾向として出てきておるのは焦点が非常に明確でありまして、これは食品産業の視点から見た日本農政のあり方、こういう観点にだんだんしぼられてきております。これは一口で言えば、日本のいわゆる零細農業から生産される食糧のコストが高い、したがって、外国との競争には立ち向かえない、やはり安い食糧、原料を供給してほしい、こういう立場の主張であります。こういう立場と価格政策というものを一緒に、同じ系列に結び合わされますと、私どもは何だか価格政策は、これまでは需要に対応するという表現がなされてきたんですが、これはますます厳しくなるんじゃないか、こういう認識すら抱いておるわけでありますが、これらも含めて三月末の畜産物の価格審議会に臨む政府の基本的な考え方をこの機会にお聞かせをいただきたいと思うわけです。
  89. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私たちは、いま国民の需要の動向に応じて農業の生産性の向上を図ろうとしているわけでございます。したがいまして、その価格の面においても、十分私たちは質の高い農産物をつくらなければいかぬということをまず考えなければいかぬ。そのためには技術の革新を必要とする、また価格の面では、できるだけコストダウンするためにやはり経営規模の拡大を行うというようなことを進めながら全体の農政を進めてきているわけでございます。  さらに畜産のいわゆる乳価の問題でございますけれども、これは生乳の置かれている現状をよく配慮しながら、これから畜産振興審議会の意見をも聞きながら今度決めてまいりたい、こう思いますので、いま申し上げる段階じゃない、こう思います。
  90. 田中恒利

    田中(恒)委員 先ほど串原委員の方から御質問がありましたが、関西を中心に乳業メーカーの、乳価をキロ十円からあるいは二十円に及ぶ大幅な引き下げ通告がなされたという動きが表面化しておるわけですが、これは公取、独禁法に関係をするような形ではないでしょうか。
  91. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ただいま私どもが受け取っておりますのは、関西を中心にしました中小あるいは若干の大手を含めましたメーカーが、それぞれいろいろな形で引き下げの要求をいたしておりますが、何か独禁法で言っておりますような共同の行為というような形とは受け取ってはおりません。
  92. 田中恒利

    田中(恒)委員 独禁法の規制はなかなかいろいろむずかしくなってきて、最近は生産者団体の方も多少これにひっかかったりした出来事が起きておるわけですが、それだけにやり口もなかなか巧妙というか上手になってくるんで、今度の場合も相当の期間を置いてばらばらに通知を出し、その通知も文書というよりも電話でやったり口頭でやったりいろいろな形のようですから、なかなか立証はしにくいと思いますが、いずれにせよ相当大幅な引き下げの動きが出てきておるということ、さらにスーパーの安売り問題ですね、これについても畜産局の方でいろいろ配慮というか対策を立てられたようですが、これはその後どうなっておるのですか。
  93. 石川弘

    石川(弘)政府委員 関西で行われております値下げ要求は、先ほどちょっと申し上げましたように、値段そのものを下げてくれとは言っておりますけれども、むしろ安い原乳を使ったと思われる安い商品がなくなれば、彼らも引き下げの主張の根拠がないわけでございますので、私ども先ほど申し上げましたような形で、同じ市乳に充てられる原乳についてはそんな大きな格差で原乳が供給されないように生産者団体の協調あるいはメーカーの協調ということをいま指導しているわけでございます。  それからもう一点御指摘のスーパーの安売り問題でございますが、安売りが出てまいりました基本的要因は、やはり生乳需給が緩和をしておる。これは単に生乳の世界だけではございませんで、いつでも加工乳の世界から入ってき得るというような形がございまして、一生懸命計画生産に努力していらっしゃるわけでございますが、可能性としてはいつでも生乳の世界に飛び込もうという力がどうしてもあるということが一点でございます。  もう一つは、そういうことが産地間でやはり市乳化しようとする競争となってあらわれてきておる。それからこれは二月にすでに過剰投資等をしないようにということを私どもでお願いしておるわけでございますが、やはり市乳のプラント自身が過剰な設備を持っておりますので、これによる過当競争の可能性があるわけでございます。さらにそれに加えまして、牛乳の世界では後発部隊でございます農協系と商系が相互に大変不信感を持っておりまして、常にその不信感が過当競争に輪をかけている。それからもう一つは、先生いま御指摘のように、牛乳の販売の非常に多くの部分が量販店を経由して行われますことから、その量販店のいわばバイイングパワーといいますか、そういう買い手の力が強力になってきた。大体いま申し上げました四つが安売りの要因ではなかろうかと思います。  第一点の計画生産につきましては、これは生産者団体の協力を得ながら逐次計画生産の、事実上余乳が出ないような形への誘導をいたしております。それから市乳。プラントの抑制につきましては、昨年二月に投資を抑制するようにという通達もやっておりますし、現実にその後そういう新しいプラントができないように抑えているわけでございます。指導で一番力を入れておりますのは、やはり農協プラント、それから各その他の商的プラントの間の不信感が強うございまして、私ども機会あるごとにプラント間のそういう協調が保たれるように、いろいろな形で指導してまいっておるわけでございます。  それから量販店の取引関係の正常化の問題でございますが、これは御承知のように、昨年いわゆる独禁法に触れるような不幸な事件もございまして、その直後公正取引委員会ともよく相談をしまして、昨年十月にいわゆる協調のためのガイドラインというものを示しました。そのガイドラインによりまして、生産者、乳業者、それぞれ秩序を保つようにということをやってきたわけでございますが、残念ながら現段階ではまだそれが完全に効果は上がっていない。そのことが、先ほど申された関西の値引き要求等に広がってきておるわけでございますので、こういうガイドラインの徹底化というようなこと、それから何と申しましても生乳を供給しております生産者の協調、それからその生産者と乳業者間の話し合いをさらに密にしてまいりまして、いま申しましたような同じ商品に充てられる原乳が大きな格差で納入されるということを少しでもなくしていくということが、われわれの指導の中心になろうかと思います。  もう一点、公正取引委員会は、昨年十一月にスーパーの千葉県の二社と神奈川県の一社を不当廉売の疑いがあるものとして取り調べをいたしておりまして、公正取引委員会としましても極端な廉売については今後とも指導していくという立場でございます。
  94. 田中恒利

    田中(恒)委員 局長さん、酪農振興法第二十六条に、「農林水産省に、中央生乳取引調停審議会を置く。」こういうことになっておりますが、私は余りこの審議会は聞いたことがないのですが、これはあるのですか。
  95. 石川弘

    石川(弘)政府委員 四十二年ごろまでは現実にそういう調停の依頼がございまして、その都度調停委員会を設けて調停をしたわけでございますが、その後そういうような形での調停が行われるような要請がございませんので、その後は特段設けておりません。
  96. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは調停の依頼があったごとに置く審議会ですか。
  97. 石川弘

    石川(弘)政府委員 そのとおりでございます。
  98. 田中恒利

    田中(恒)委員 この二十六条の三項には、一番最後の方に「生乳等取引契約に係る紛争の調停に関する重要事項を調査審議する。」こういうふうになっております。これは常時置いておくという性格のものじゃないんですか。
  99. 石川弘

    石川(弘)政府委員 委員会の形はあるわけでございますが、調停の要請がありました都度、調停のための委員を委嘱するという形でございまして、その後そういう形の紛争が出てきておりませんので、現在、委員を委嘱しておるという形はございません。
  100. 田中恒利

    田中(恒)委員 そう言われるのですけれども、私は、乳価の問題の紛争調停というのは実質的に毎年繰り返されておると思うのです。それは局長さん、あなたが一番御存じでしょう。毎年メーカー団体との間に、全乳対を中心にして紛争があって、そして農水省の局長が裏側でいろいろ工作をして、場合によっては、局長案と言っていいのかどうかわからないけれども、案を出している。そういうことを毎年繰り返しているのです。三十何年に一度か二度やって、それからなされていないというところに実は非常に問題があると私は思っておるわけなんですよ。紛争がないんじゃない、調停がないんじゃないので、実質的な形を変えたものが行われているが、こういう正式の機関を活用されていない、そこに一体何があるのかということを考えざるを得ない。これは酪振法できちんと「置く」というように書いておるのです。この条文を見ると、私は、農水省の中には生乳の取引調停審議会というのが置かれて、毎年起きる案件について調査もするし、検討もするし、審議もしていく、こういう性格のものだと思うのです。ところがどうも、何か問題が起きて、それを手続に基づいて県の知事なり関係団体なりから持ってこなければ動かぬ。ここのところに実は問題があると思うし、実は日本の酪農の問題は、御承知のように三分の一は加工乳、三分の二は生乳であります。この生乳の対策というものが今日非常に問題になってき始めておるわけです。これは、昔と違って、加工乳と生乳の見分けがつかなくなっている。地域的にもそれから用途別にも非常にわからなくなってきておる。だから、やはり生乳対策ということに思い切った施策を打たなければいかぬ時期に入ってきたと思うのですよ。不足払い法でもらって不足払いを中心とした、一定の影響力を持った相当強力な施策を打たれておりますけれども、生乳関係はほとんどないものだから、これはほとんどほっておかれておる。そこで、いろいろ流通の形態も変わっていくに従ってスーパーのようなものも出てくるし、あるいは大手も入ってくる。農協や中小や大手やさまざまになっていく。そういうことで混乱をし始めてきていると思うのですよ。ですから、どうしてもこの段階で、生乳のこれらの種の問題についての相当強力な農水省としての指導なりいろいろな動きをしてもらわなければいけない。そのためには、私は、やはり酪振法に基づくこういう審議会といったようなものはきちんと置いて、委員を委嘱してこの機能を最大限に活用していくということが必要だと思うのですけれども、これも含めてわが国の酪農、特に生乳についての行政指導の強化、こういうものを求めたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  101. 石川弘

    石川(弘)政府委員 従来のような、要するに生産者の手取りあるいはメーカーの手取り、末端の市乳の価格も一律指導いたしておりました四十二年以前につきましては、おっしゃるように非常にこういうもので、調停で決めたものが最末端価格まで指導でいくという形でございましたけれども、これは御承知のように、小売価格まで抑え込んでということで、国民生活審議会等でも御批判があり、むしろもう少し自由な競争に任せるべきだということで末端指導というようなことが行われなくなった経緯がございます。  御指摘のように、農民の手取りの三分の二以上のものはこの市乳の世界で得られるわけでございます。そこで、御承知のような指定生乳生産者団体等の組織がある程度強力にメーカーと交渉ができるような仕組みをつくってあるわけでございますが、この市乳の世界はあくまで両者の自由な取引ということが大前提でございます。  ただ、私ども大変残念なのは、現在の混乱状態というのは建て値の水準の問題よりも、むしろ建て値を守らなくて、その建て値を守らないその一部と申しますか、そういう低い価格の原乳が流れている、こういうことにつきましては、こういう調停もさることながら、やはり生産者団体あるいはメーカーがより自覚をしまして、同じ原乳、似たような価格の原乳で牛乳をつくっていくという方に指導する必要があると思っておりますので、御指摘のように私ども、決して市乳の世界で手を抜いているわけじゃございません。むしろ、これから本当に酪農民の所得を確保するためには、この市乳の世界でより適切な形で価格形成ができるようにということでいろいろ指導していきたいと思っております。
  102. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が参りましたのでこれ以上質問することはできませんが、私はあと果樹問題で、特にチチュウカイミバエの問題で御質問する予定にしておりましたけれども、きょうは私はできませんので、あす予算委員会で時間をいただいておりますから、自由化問題と絡んでチチュウカイミバエの問題はやらせていただきたいと思っております。  牛乳の問題はいま局長からお話がありましたが、牛乳全体の流れを行政的にチェックしていく。価格にしても、加工乳それから飲用乳その他いろいろありますね。こういうものが的確にあなたのところでつかまれていないわけですよ。これをつかんでいくような用途別の価格の指導というものを考えなければいけない。かつて農林省は行政指導の価格をつくったけれども、これは公取の方からいろいろあって、いまなくしておりますけれども、やはり今日の乳価、特にこの市乳価格の混迷というのはそういう面もあろうと思います。基本的に生産者団体関係もあります。ありますけれども、やはり農林水産省がもっと大胆に酪農の行政面についての指導を強化していただかないといけない。  私はこの審議会の問題を例にとりましたが、こういう審議会の問題が、法律にあっても十何年、二十年近く全然機能していない。紛争がなければいいですよ。紛争は全国各地で起きているわけです。非常に広域になっております。それだけに、もっときちんとした行政指導を進めてもらうように要望いたしまして、質問を終わります。
  103. 羽田孜

    羽田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  104. 羽田孜

    羽田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  105. 武田一夫

    ○武田委員 田澤農林水産大臣に所信表明をいただきました。農政の基本的な問題、当面抱えている多くの問題につきまして、若干お尋ねをいたします。  ここ五年間の様子を見ていますと、東北から大臣が出たケースがもう三度目でございます。それだけに東北というものの置かれている農業の地位というのは非常に高い、こういうことでありまして、大臣も常々、私は農村出身の議員であるということを自負されておりまして、かなりよく内容を御承知のようでございますので、農家の皆さん方も、大臣の今後の動向につきまして、大変期待をしていると思うわけでありまして、その期待に十分にこたえていただきたいという願いを込めていろいろとお尋ねをするわけでございます。  大臣も所信表明の中で申されていますように、非常に農林水産業を取り巻く情勢はいや増して厳しいというわけであります。内にあっても外にあっても多くの難問を抱えておるわけでありますが、農村出身の大臣としまして、まず第一にお尋ねしたいことは、果たして、この日本農業あるいは農家の現状というものに照らして、これから明るい将来というものが展望できるものかどうか、現状をよく認識した上での大臣の御見解をまずお尋ねしておきたいと思うわけであります。
  106. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 武田委員御指摘のように、いま日本農林水産業の置かれている現状は非常に厳しゅうございます。たとえば対外経済摩擦に見られるごとく、自由化の波が物すごい勢いで押し寄せてきておる。また食糧の需給を見ましても、中長期的に見て非常に不安定な状況にございます。また、国内的には米の過剰、さらに経営規模拡大の渋滞等、また老齢化していく農村社会というような問題も抱えているわけでございまして、そういう中で、私たちは、国民の重要な物資でございます食糧の安定供給、雇用の場の提供、国土、自然の保全等の役割りを果たしてまいらなければならないわけでございまして、それを進めるためには、やはり中長期的な展望に立って農業生産の再編成、農業生産力の向上を図らなければならない。そのためには何としても基盤整備の充実をしてまいらなければならないし、あるいはまた農業技術開発、普及をしてまいらなければなりません。また、幸い農地三法がこの際成立いたしましたので、これを基本として経営規模を思い切って拡大をしていくような方法もとってまいらなければなりません。  いま一つは、農林水産業は、農家、農民にとっては生活の場であると同時に、生産の場でもあるわけでございますので、地域の安定の基盤でございますから、したがいまして、私は、人と人との交わりの温かい社会、しかも活力のある農林水産業でなければならない、かように考えておりまして、こういうときに農林大臣になったということは、私は大変責任が重い。  そこで、私は東北の出身でございますので、岩手県盛岡出身の宮沢賢治、山形県出身の松田甚次郎、この二人、特に宮沢賢治は短い人生をあの東北の冷害あるいは貧困の農村に生涯を打ち込んだ方でございますし、また松田甚次郎さんは、農政に思い切った情熱を燃やしていた方でございます。私は、こういう情熱を持って、熱意を持って、愛情を持って農業に取り組む方を多く育成するという農政がこれから必要であろうと考えますので、そういう姿勢をとりながら今後積極的に農政に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  107. 武田一夫

    ○武田委員 なかなか結構なりっぱな御発言農家の皆さん方は大変希望を持ってその大臣の今後を見守るであろうと私は思うわけです。  そういう中で、大臣があちこちで御発言なさった中で、しかしながら農民にはいま非常に農業に対する意欲が欠けているという面もあるんだ、あるいはまた、そういう農業環境を打開するためには今後大胆な発想のもとに思い切った政策転換等もしなければならぬ、そういうような御発言もございます。あるいはまた、これまで蓄積してきたいろんな資料を大いに活用しまして、そして農政の新しい展開もするべきであるというような発言もございまして、その中身はどういうものかなということを具体的に聞ければと、農業というそういう場におきまして抽象論ではおもしろくありませんし、そういう言葉が出てくる中には、大臣なりにしかるべき何かをお持ちであるのではないか。そういうこれからのお考えを、もしお考えとしてお持ちであれば一つ二つ御披露してもらってもいいんじゃないかな、こう思うのですが、いかがでございましょう。
  108. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 五十七年度予算に当たりましては、まず補助金の問題でございます。これは、補助金制度というものは農林水産行政の面で最も重要な役割りを果たしており、日本の将来の大きな活力になるわけでございますので、この補助金を、思い切ってこれまでのあり方を変えてみた。それは、これまでは各部局でそれぞれに要求をしてきた補助金を統合メニュー化形式によりまして、たとえば新地域農業生産総合振興対策あるいは畜産総合対策に見られるごときメニューをつくりまして、各農家、農民が選択することによって、メニューによって各経営に大きく利用していただこうということが大きな目標でございます。  そして特に私は、最近、短い期間でございますが、各地域を見てみますというと、水田利用再編対策に対して緊急避難的な考え方で、まだ非常に消極的な地域もございますけれども、反面、非常に積極的な姿勢をとっている地域もあるわけでございます。したがいまして、水田利用再編対策はこれからの新しい農業方向づけるものであるから、これに従って、この補助金を活用して新しい農業をつくり上げようという意欲を持っている方々が非常に多いものですから、私はこういう方々を育成、助長することによって新しい日本農業の姿が生まれるもの、こう考えておるのでございます。
  109. 武田一夫

    ○武田委員 いま一つ二つのお考えをお聞きしました。大胆な将来展望が必要であるというのは非常に貴重な言葉だと私は受けとめております。その意味では、いままでできなかった、しかしながらやらなければならない重要な農業の新しい方向への要因ともなるべき幾つかの問題、たとえば、適地適産という一つ政策がいつも言われていながら、なかなかおのおのの思惑があってできない。あるいはまた地域別の役割り分担方式をどうするか、これもしなければいかぬということもわかっていながらできない。それから、日本農業というのは兼業化が一層進んでいる。二種兼業農家が圧倒的に多い、しかも生活的にはいい。オール専業が少なくなっているだけに、専業化にいくべきなのかあるいは二兼農家、いわゆる兼業的なものにいくのかという、その選択はどうするのか。あるいはまた、転作がどんどん進んでいっているようでありますけれども、定着はいまだきちんとしたものにはなっていない。そういうことを考えると、主要農産物の価格保障制度もどうするのかというように、挙げれば重要な課題がたくさんあるわけでありますが、そうした問題に、時間をかげながらで結構ですが、一つ一つ大臣の在任中に方向を明確に打ち出してほしい、これは要望しておきたい、私はこう思うわけでありますが、いかがでありましょうか。
  110. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私は、ただいま申し上げました一つ農政方向を実現するために、まず水田利用再編対策の成果を上げてまいらなければいけない。いわゆる水田再編対策というのは、単に緊急避難的な対策じゃなくして、やはり集団化、定着化して将来の新しい農政方向づけ一つのものであるということ、それを基本にしながら進めてまいらなければいかぬ。そこでそのためには、地域分担等についてはやはりそれを目標にして進めてまいらなければならないと思いますので、まず水田利用再編対策というものを定着化することにいま積極的に取り組もうといたしておるわけでございます。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 私は、今後の将来を考えるときに、農林水産行政というのはいまが非常に大事な時期じゃないか、こういうふうに考えているわけであります。俗な言葉で言えば曲り角農政というか、そのかじ取りをするのが大臣であり、かじの取り方によって日本農業の盛衰も決まるのではないか、そのくらい重要に私は認識しているわけであります。農協の幹部の皆さん方にお会いしましても、やはり農業の今後をよくするために必要なものは政治の力である、国の力に期待するところが相当大きいわけであります。われわれもそれに十分対応できるだけの研究もして体制も整えているんだ、こういうわけでありますから、そのために、今後はそういう方々が安心して乗ってこれるような、具体的にしてしかも希望と勇気を持てるような、そういう施策を提示しながらの農政の展開をしてほしい、こういうように思うわけであります。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕  最近、未来産業としての農業の位置づけというのが非常に注目されております。先ほど大臣技術云々という話もありましたけれども、やはり優秀な人材が投入されない限り未来産業としての農業の発展はない。しかし、残念ながら農業高校の現状を見ましても、農業高校に行くのは選別された一番成績の悪い者だなどというような、学校の中の一つの底辺のような考え方、これは一つの例であります。あるいはまた新規就農者が年々少なくなっている、嫁が来ないので困っているとかいうような、人材が農業に集まってくるような環境がいまだないということを憂えながら、ひとつそういう問題の解決に全力を挙げて取り組んでいただきたいことを重ねてお願いします。  そこで具体的な問題としまして、まず、大臣が一番力を入れていくという水田利用再編対策の定着という問題についてお尋ねいたしたいと思います。  毎年のように、農家の皆さん方も一生懸命農林水産省の目標に対して努力して、いつのときも目標以上の努力で減反をしているわけであります。その努力は大変なものがございます。ところが、昨年の十二月か十一月でしたか、地方農政局長会議の際に全国水田利用再編対策状況が報告になったわけであります。そのときに、全国では確かに目標面積は上回っているけれども、反面、未達成の市町村が二倍にもふえてきた、こういうことが言われているわけでありますが、そのわけ、何でそういう二倍にもふえるような市町村が目標を下回るようになってしまったかということについての原因、理由というものをまずひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  112. 小島和義

    小島政府委員 昭和五十六年度の転作等の実施状況は、全国平均で申しますと目標に対して一〇六%ということでございますが、府県単位で見てまいりましても三府県が未達成ということになっております。また、その未達成の府県及び県としては目標を達成いたしましたところでも、市町村段階まで見ますと、お話のように、全国で百三十三市町村、これは五十五年度が六十三市町村でございますから、大体二倍の市町村が未達成になっております。  この理由はいろいろございまして、一概に申し上げかねるのでございますが、おおむね共通して言えることは、五十六年度から第二期に入りまして目標面積が九万六千ヘクタール増加したというふうなこと。それから飯米農家、第二種兼業農家割合が非常に高いところで稲作志向が非常に強い。それから第三には排水不良田が多いところで転作作物の選定に非常に苦労しておる、そういうふうなところが未達成という状況になっておるようでございます。ただ、これは第一期のときもそうでございましたが、第一期、初年度は百四十四市町村が未達成でございましたが、その後市町村数としては減っていたという経過もございますので、今後の努力によりまして未達成の市町村が出ないように努力をしてまいるつもりでございます。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 いまその理由等もお話がありましたが、毎年毎年面積がふえてくる、当然いま言ったように転作割合の高い地域等が非常に苦慮している、これはわかります。ですから、これから進めていく上においてますますこうした問題が出てくると思うのですが、こういうような地域、聞くところによると、地域も多少偏っているようでありますけれども、そういう地域を今後どのように誘導してきちっと転作の方向に向けていくのかという問題も一つあると思います。それから、農家への割り当てが一段とむずかしくなってくるのじゃないかと思いますね、そういう地域にあっては。それからまた、排水等の整備が非常に行き届いていない湿田地帯が多い、そういう地域ではことのほかに抵抗があるであろう、こういうことも想像されます。転作作物が選べない、そういうことから、農家のやる気の問題も心配になってきます。  さらにもう一つは、そういう方々がやらない反面、今度は、いわゆるいいところにたんぼを持っている方々が、その良質のたんぼをつぶして転作をしなければならぬというような問題が出てくる。こうなりますと、こうした上質田などをつぶすことによる、将来を考えたときに、食糧安全保障という問題と逆行するような傾向になってしまうのではないかという心配もある。  こういういろいろな心配の要素を抱えて、これからまた二期が、三期が、こういうふうに動くわけでありますが、いま申し上げましたような市町村を含めた地域に対して、特に二期の期間中に何を重点的にてこ入れをして、そうした支障のないような転作をしていくというお考えでいるのか、その点についてお尋ねをしたい、こう思います。
  114. 小島和義

    小島政府委員 対策内容はそれぞれの地域の原因に応じまして異なってくるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、第二種兼業農家あるいは飯米農家ということで、米だけならば何とかつくれるけれども、ほかの作物をつくるということになりますと労働力も技術も足りない、こういうところにつきましては、やはり何らかの地縁的なまとまりをもって集団的に対応していくという必要があろうかと思います。第二期対策におきまして、従来の計画加算という制度に加えまして団地化加算という制度を設けまして、特に連担団地を奨励するという体系をつくりましたのも、そういう地域ぐるみのまとまった転作という対応を容易にしようという観点でございます。  それから、圃場条件が悪くて転作ができないというところについては、湿田等においても転作できる作物もございますけれども、一般的には、やはり圃場条件を整備してより転作をしやすくするということが本流であろうと思います。農林予算におきましても、湿田対策のための特別事業、そのほか転作のための条件整備の予算を計上いたしておりまして、そういう予算を重点的に振り向けまして、一日も早く転作できるような圃場の条件に持っていくというふうなことを中心に考えてまいるつもりでございます。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 そういうことは期待していたのですが、現場に行ってみますと、そういう暗渠排水等に対する金のすさまじい少なさに唖然としているわけですね。この間も私が秋田県の方に行ったときに、農家の皆さん方が集まって、そういう暗渠排水等の基盤整備のために金が非常に必要なんだけれども、秋田県でことしわずか百万しか来ないんだということを県の方から説明されて、唖然としているのです。百万で何ができるんだ、こういう話が出てくる。結局は、基盤整備等ができないために、荒らしづくりとか、いわゆる収入と結びつかなくとも構わぬというようなあきらめの中で農家は仕事をしているというのであります。  これは、私の宮城県などを見ましてもそういう事実はたびたび聞くわけでありますから、そういうようなことがある限りは、定着というようなことはもう不可能ではないか。実際問題として、それでは、果たしていままでそういうことによってきちっと水田利用再編対策というものが定着をしまして、それによって軌道に乗って、着々と新しい農業への歩みを進めている地域がどのくらいあって、そういう方々の経営はどういうふうになっているのかというような、そういう実態というものは農林水産省としてはつかんでいるものかどうか。もしつかんでいるとすれば、具体的にこういうものがあるんだというものを二、三示してもらえればありがたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  116. 小島和義

    小島政府委員 転作全体の作物別の内訳などについては統計的に把握をいたしておりますが、具体的に非常にうまくいっているというものについては、事例的な把握にとどまっておるわけでございます。  以下申し上げますのは小麦、大豆の事例でございまして、たとえば五十六年に小麦につきまして非常に成績を上げた、これは福岡県の個人の事例でございますが、小麦につきまして、十アール当たり収量五百六十三キロ、十アール当たりの所得にいたしまして五万円以上のものを上げておる、こういう事例がございます。また集団といたしましては、これは愛和県の事例でございますが、十アール当たりの収量は三百六十一キロで、十アール当たり三万三千円以上の所得を上げている、こういう事例がございます。また大豆につきましても、これは群馬県のある集団の事例でございますが、十アール当たりで二百四十六キロ、所得にいたしまして四万五千円以上の所得を上げている、こういう事例もございますし、年度はちょっと違っておりますが、大豆につきましても五百キロに近い単収を上げているような転作集団も事例がございます。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 そういうようなケースが日本のあちこちに——特にいま出されたものの中には北海道、東北というものが一つも見られていないわけでありますが、農村の中でも農業県と言われるような農業の多いような地域での対応のほどが出てくれば、われわれもまあうまくいっているんじゃなかろうかという一つの指標にはするのですが、いまのそういうケースで言うと、それは、たまたまそういうケースがあったということにしか私はとれない。  それで、やはり農業の重要性というのは、経営の安定という問題、その物をつくった場合に大体米と見合うだけの収入があるかどうか、あるいはそれ以上あるかどうかというような問題、これが一番大事な問題になってくると思うのでありますが、米、小麦、大豆、そういうものの十アール当たりの所得が大体どのくらいになった場合に、まあこれは転作してもいいなという一つの基準、そういうものはちゃんととっていますか、全国的に見て。
  118. 小島和義

    小島政府委員 転作奨励金の水準を決定するに当たりましては、稲作による所得と、特定作物を生産いたしました場合の所得を比較考量いたしまして、特定作物についての奨励金水準を定めておるわけでございまして、第一期のときには、その差が大体七万円ぐらいはある、こういう想定で、転作奨励金の水準、これは計画加算等がついておりますが、七万円というものを決めたわけでございます。その後の経過を見てまいりますと、年による変動はございますけれども、おおむねその格差は縮少する傾向にございまして、最近時点で比較いたしますならば六万円ぐらいであろう、そういうことを前提といたしまして第二期の奨励金水準を決定した、こういう経過でございます。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 いま局長が話されたとおり、大体五十二年から五十四年度、米とあるいは小麦、大豆との差を見てみますと、十アール当たり六万一千円程度です。そのために転作奨励金等を含めた、あるいは計画加算、団地加算等すべて整った場合に七万円ということで、これくらい間違いなく今後も続いていけば、ある程度小麦、大豆等々へ転作しても米と見合うだけの収入があるだろう、こういう見通しができるわけであります。こういうものをもっと安定的にしていくための今後の方向としては、やはり転作奨励金というもの、あるいはまた計画加算、団地加算に対する取り組みというのは非常に重要なかぎを握ってくると思うわけであります。この問題について、今後二期そして三期とあるわけでありますが、今後とも農家の皆さん方が御心配のないような方向で推移していくということは確認しておきたいと思うのですが、この点どうでしょうか。
  120. 小島和義

    小島政府委員 現在の転作奨励金の体系自体ができるだけ内容のよい転作をやった方が有利である、こういう体系になっておるわけでございまして、この第二期の間を通じまして、大臣からしばしば申し上げておりますように、できるだけ定着性の高い転作を広めてまいりまして、その実績を踏まえて三期以降に進む、こういうふうに考えておるわけでございまして、その意味で、ことし、明年というのは大変大事な時期であるというふうに考えておるわけでございます。その奨励金の将来の設計等については、それらの事態を踏まえましてさらに検討していく、こういうことにいたしたいと思います。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 兼業農家が非常に多くて集団化というものが非常にむずかしい地域も多々あるわけでありますが、そういうところに対しては特別何かてこ入れをしなければならぬという対応というものをお持ちであるかどうか、その点いかがでしょうか。
  122. 小島和義

    小島政府委員 これは、先ほども申し上げましたように、稲作の場合には技術の平準化と申しますか、非常に規模の小さいあるいは非常に兼業志向の強い農家でありましても、容易に水稲生産はできるわけでございますけれども、転作物ということになりますと、すべての農家がその生産の労力なり技術なりを持っておるというわけではないわけでございます。その意味で、従来も集団的な転作を強く進めてまいりましたが、この第二期対策におきまして採用いたしました団地化加算というのはさらに一層それを強く推し進めまして、地域で相談をいたしまして、土地の利用、水の管理ということをできるだけまとまって行いまして、より内容の充実した転作ができるように持っていこう、こういう趣旨のあらわれであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 そこで第三期の問題についてちょっとお尋ねしますが、大臣は、第三期対策につきまして目標面積は現在以上はふやさないというような発言とか、今後農家が意欲を持って取り組めるような再編成事業に脱皮したいというような発言をされておるわけでありますが、大臣は、第三期の対策についてどのようにお考えであるか、この場でもう一度しかと承りたいのでありますが、その点についてのお答えをいただきたいと思います。
  124. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 水田利用再編対策の二期対策である程度の定着化、集団化をいたしまして、また一方、米消費拡大という運動を展開いたしまして、米の需要の拡大をすることによって全体の調整を二期対策の間にある程度の目標を、基礎をつくりまして、その上で三期対策を私は考えたい。私は、水田利用再編対策というものはできるだけ早い機会に完了すべき政策であると思いますので、二期対策に基礎的なものをつくり上げて、できたら三期の対策は調整の時期にしたいものだ、こういう考えを持っておるのでございます。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 調整期間にしたい、いわゆる転作の定着化あるいはまた集団化を図るための調整期間であろう、こういうふうに大臣考えていると私は思うのであります。いままでの対策を見ていますと、またそれに対する農家の対応を見ていると、確かに、いまだ緊急避難的な性格が多分にある。農業中心の県ほどそういう傾向が非常に強いということもこれは見られるわけでありますが、二期から三期への方向転換といいますか、そういうはっきりした方向性を示していただくことによる農家の対応も出てくると思うわけであります。そこで三期以後のことを考えるとおかしいのでありますが、何か農協の組合長さんなんかの話を聞きますと、もう第三期対策は必要ないんだという声が半分くらい、この間アンケートを見ていたらあるようでありました。それは、私は、減反が生産意欲の減退やあるいはまた農業の縮小再生産につながるんだという危機意識が非常に強いんだと思うのです。ですから、そういう危機感というものを払拭するためのしかとした対応というものを、この二期の間に早い機会に具体的に示していってほしい。これが、安心して取り組めるというところが私は農業にとって非常に大事な観点だと思いますので、この点を要請しておきたいと思うのであります。  先ほど局長が、転作の定着のためにはそうした条件整備をきちっとしていくという話をされたのでありますが、どうも第二臨調などではまた転作奨励金の問題についていろいろとけちをつけて減額を求めてくるのではないかなどという声も聞かれるわけでありますが、こういうことがあるとすれば、これはえらいことでございますし、こうしたことのないように、私は、大臣もしっかと日本の置かれている農業の重要性を訴えて対応していただきたいと思うのでありますが、そういうことが出ても、大臣としては、既定方針どおり奨励金はきちっと農家の皆さん方が困らないような方向でしていくぞという、こういうことをこの場でひとつ明言してほしいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  126. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 第二臨調のメンバーの方々に対しても私は、いま転換期を迎えた農業実態理解していただいて、その新しい農政をつくるためにはいわゆる転作のための奨励金が必要なんだということを強調して、これまでどおりの形式をとってまいるように努力をいたしたい、かように考えます。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 時間の都合でその程度にして、畜産行政について最後にお尋ねいたします。  まず現在の日本畜産を取り巻く情勢が非常に厳しいということは、御案内のとおり、飼料高、あるいはまた輸入の拡大、そのほかいろいろな要素がございまして、非常に厳しい事態、試練のときを迎えているわけであります。特に牛肉の輸入問題についてはアメリカ等がきわめて強い枠の拡大等を要求している、また要求してくることが予想されるわけでありますが、まずそういう厳しい情勢の中でいま問題になっている貿易摩擦の問題であります。日本畜産行政の今後を考えたときに、この問題は避けて通れない問題であるけれども、大臣が所信表明の中で、残存輸入制限品目には国内農林水産業の健全な発展と調和を図るという基本方針のもとに慎重に対処していく、そういう御発言もございましたが、なぜもっと積極的に、われわれはこの自由化の問題については拒否をするんだという強いそういう主張がなかったのかというそのことを、畜産農家を含めたそういう外国貿易によって圧迫を受けている方々の本当の心からの疑問ではないかと私は思うのであります。自由化を要求しているアメリカも、ヨーロッパにおいても農業は保護しているんだ、なぜ日本が、自由貿易を要求するそういう国々と同じような農業保護国として、しっかと自由化は拒否していくんだということが言えないのだろうかという農家の皆さん方の疑問に対して、大臣はどのようにお考えになっているものか、お聞きしたいのでございます。
  128. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 牛肉、オレンジについては、武田さん御承知のように、東京ラウンドで合意された事項をいま着実に実行しているのでございまして、これは一九八三年度まで合意されているわけでございます。一九八四年度以降の問題につきましてはこの十月以降政府間で話し合うことになっているわけでございまして、その交渉に当たりましては、ただいま武田さん御指摘のような構えで私たちは対応したい、かように考えております。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、時間が来ましたので、ひとつお聞かせ願いたいのでありますが、これは局長にお尋ねいたします。  畜産対策についてでありますけれども、これからの日本はやはり転作と同時に大事なのは畜産行政ではないかと私は思っているわけでございます。畜産立国にすべきであると主張する方もいるわけです。そういうことで、畜産行政というのは非常に重大な問題として真剣に取り組んでいかなければならないと思うわけでありますが、畜産物の価格安定対策、それからコスト低減の誘導を図るための施策という問題、これはどうなっているのかという問題ですね。それに関係して、やはり国際競争力を何としても強くしていく、国際価格に近づけていく努力を一生懸命にしていく、できるならばそれを対等にあるいはそれ以上になってほしいという願いがあるわけであります。その前に、土地の問題が非常にネックになってきている。この問題、どういうふうに対応していかれるかという問題を最後にお聞きしたいと思うのであります。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ただいま先生御指摘のように、畜産物の生産につきまして極力国際的な競争力をつけていくということが大事なことでございまして、御承知のように、土地の制約のございません中小家畜、養豚とか養鶏、その分野につきましてはすでに国際水準と申しますか、ECの水準よりもむしろ有利に展開するぐらいまでいっているわけでございますが、土地の制約がございます大家畜、すなわち酪農なり肉用牛の肥育につきましては、何と申しましてもその土地の制限というのが一つの大きな要素でございまして、それがまさしくいろいろな国境措置が必要な理由でございます。  ただ、酪農等につきましては、御承知のようにEC等に比べまして土地の広がりではむしろ日本の方が制約があるわけでございますが、飼養頭数等はECの規模にすでに接近してきている。肉牛が、どちらとか申しますとまだ規模の面でもEC水準に達していないというのが実情でございます。御指摘のように、こういう大家畜につきましては、土地の広がりが絶対的に必要でございまして、われわれも長期計画等の中で草地の面積を拡大するためにいろいろと施策を続けてきたわけでございますが、なお現在、当初の目的まで達成いたしておりません。土地が奥地化するとか、あるいは土地の権利関係がむずかしいとか、いろいろございますけれども、やはり農地三法その他いろいろな、既耕地に関しても土地の広がりをふやすような政策がだんだん充実してきておりますので、そういう意味で既耕地の有効利用一つでございますし、それから未利用地、特に山間僻地等に見られますような低位利用、肉牛等の場合にこの低位利用地が最も有効かと思いますが、そういうものをさらに広げていく施策をいろいろな形で進めてまいりたいと思っております。  特に、ことしから新しくつくっております畜産総合等の政策におきましては、こういう施策が有機的に組み合わされてやれるようにと考えておりますので、御指摘方向で草地の基盤整備、それから既耕地の利用をさらに拡大するという方向努力したいと思っております。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 草地造成改良面積、地域別造成実績、五十五年、五十四年、これは推定ですが、五十三年まで見ますと、土地改良長期計画が四十八年から五十七年までの十カ年間、四十万ヘクタールの草地を造成するという計画になっておりましたが、これがどうも、たとえば昭和四十八年が二万ですか、四十九年が一万三千ヘクタール、五十年が一万四千、五十一年一万五千、五十二年一万六千、五十三年一万五千と、平均すると最低四万ヘクタールぐらい必要であるけれども半分以下であるということで、これは遅々として進まないですね。こういうところは非常に問題だと私は思うのです。ただ、五十四年、五十五年では想定として三万あるいは三万二千ヘクタールというふうになっていますが、こういう一つの計画すらも、長年にわたって三年、五年ということで来て、いまだにそれが一年たりとも目標面積が実行できないということになると、そういう問題に対して畜産行政の非常に弱い面を見ざるを得ないわけであります。この点、今後どういうふうにしていかれるものか。あるいはまた草地開発あるいは国有林野、河川敷の活用、これも非常に弱いですね。ですから、そういうような問題を一つ一つ解決するいわゆる根本的な土地の拡大の問題について、非常に取り組みが弱かったように思うわけであります。この点をもっと積極的に、ひとつことし、来年、そういう期間の中にいろいろな財政的な問題もあるでしょうけれども、しかしながら、その中で特に大事な問題だけにやはり力を入れるべきだ、こう思うのでありますが、最後にそれに対する対応をお聞きして、私の質問を終わります。
  132. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のとおり、土地改良長期計画によりますと、十年間で四十万ヘクタールというものを想定したわけでございますけれども、開発対象地が奥地化するとか、造成コストが高騰するとか、その後いろいろな開発行為に対する環境問題等が出てまいってきたとか、いろいろな理由がございますけれども、結果的には十七万ヘクタール程度の造成に終わっておるわけでございます。  御指摘のとおり、やはり草地の造成ということは大型家畜の生産性を上げるための絶対の要件でございますのでこれに邁進いたしますとともに、既耕地で水田転換とか、そういう形で飼料作物を導入できるところには極力飼料作物を導入していくというようなことに努めまして、畜産の基盤を強めるという方向でがんばってまいりたいと思っております。
  133. 羽田孜

    羽田委員長 吉浦忠治君。
  134. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣就任以来再三にわたりまして、五十九年度から始まる水田利用再編第三期対策について、同僚の武田議員からも質問ございましたが、転作の定着化または集団化を図る調整期間としたいというように述べられておりまして、減反面積はこれ以上拡大しないというふうに繰り返し述べていられるようなニュアンスを受けるわけであります。農政の最高責任者田澤農林水産大臣でございますので、重ねて発言されますというと、三期対策をももう決まったというふうに受けとめられるおそれがあると思うわけでございます。農水省は、この水田利用再編の三期対策に対して、五十七年度を準備期間として五十八年度に決定する方針というもの、これはまた変わりないだろうと思うのです。その際に、決定される場合には、お米の需給対策状況等を勘案され、また転作の定着度合い等を見通され、また水田面積の壊廃状況等も見られ、単位収穫量の伸び等も考慮しながら、総合的な判断をなさってお決めになるだろうというふうに考えるわけであります。その三期対策は五十八年度に作成されることにはなっているわけですけれども、大臣発言に対して、恐らく後ろにいらっしゃる事務当局関係はあわてておられるんじゃないかと思うわけです。大臣は首振っているけれども、そういうように感ずるわけでございまして、これは恐らく大臣は日ごろの希望を述べたまでというふうにおっしゃるかもしれません。あるいは農民の立場に立って、減反をこれ以上ふやすべきじゃないというふうな、その気持ちを酌んでの発言というふうに私はとりたいわけですけれども、真意のほどはいかがでございますか、お答え願いたい。
  135. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 吉浦委員御承知のように、いま日本農林水産業を取り巻く環境というのは非常に厳しいのです。国際的に見ても、中長期的に食糧の需給というものは非常に不安定でございます。また、国内では米の過剰、経営規模の拡大の渋滞等の問題があるわけでございまして、しかも国内で経済界からもあるいはまた国際的には対外経済摩擦等の自由化の波が非常な勢いで押し寄せてきている、こういう環境の中で日本農業というものを大きく展開させなければならない時期だと私は思うのです。ですから、いままでの——いままでのと言えば失礼でございますが、私の見方としては、いままでの水田利用再編対策の進め方が、ともすれば緊急避難的な対策と見て、それに農家の方も団体の方も取り組んできたような気がする。しかし、それでは、いま日本農業というのはそういう姿ではやはり未来に生きる農業とは言えない。ですから、この際、水田利用再編対策というものを、二期対策の間に一つの新しい日本方向を示すための基礎をつくる大きな政策にしなければならない。そういう意味で、二期対策は非常に重要なんだということを意味するものの発言なんでございますので、三期対策については、二期対策の実情を十分把握して、それを基礎にして新たなる対策考えてまいらなければならないものであろう、こう考えております。
  136. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 六十七万七千ヘクタールという二期対策面積でございますけれども、これは言うに及ばずわが国水田面積の四分の一近い面積でございまして、当然のことながら農家の不安が増していることは間違いないと思うわけでございます。減反が進めば進むほど、生産力の高い上質土壌というものはつぶれるわけでございますから、良質の水田をつぶすということは、先ほど武田議員も言っておりましたように、安全保障に逆行するというふうになるわけでありまして、騒ぐわけではありませんが、ちょうどNHKが「日本条件」というテレビの特別番組を組んでおりまして、その第一回の放送を私ちょうど見る機会がありましたので見ましたが、この「食糧・地球は警告する」という中で、表土の流失、塩害それから水不足というこの三つの点から、豊かな土壌がどんどんと変化していく様子が映されておりました。これはアメリカの例ではありますけれども、これを見た国民の不安というものは、これは少なからず動揺しているというふうに思うわけです。これをわが国においてはどういうふうに、二期対策並びに三期対策も兼ねてこういう食糧の問題等をどのようにお考えなのか、この点をお尋ねいたします。
  137. 小島和義

    小島政府委員 まずNHK特集は、土壌問題を申し上げたいと思いますが、日本の場合には昭和三十四年から二十年ほどかけまして、全国の土壌の状態を把握するための基本調査を行いました。その結果によりますと、日本の場合には、アメリカの場合などとは異なりまして、年間の降雨量がアメリカの倍ぐらいございますし、また水の利用という点におきましても、ほとんどが天然の表面流下水を使っておる。さらに圃場の区画でございますが、日本で最大の畑作地帯と言われております北海道道東部におきましても、その一区画の大きさという点になりますと、アメリカあたりの比ではない。かなり防風林等によって区分されました農地区画の中で営農が行われている。こういう基本的な違いがありますので、アメリカなどで問題になっておりますような表土の流失、塩害あるいは地下水の不足、こういった現象は、一部の地域を除きましてほとんど問題になってないということがわかっておるわけでございます。もちろん、水田はいま申し上げました日本農業の特徴の最たるものでございますから、そういう意味において、土地の保全という点からはきわめて適した農地管理の方法であるわけでございます。  したがいまして、今回行っております水田利用再編対策におきましても、水田水田でなくするということに力点を置いているわけでは決してございませんで、水田の高い生産力をフルに活用いたしまして、米だけはつくれるけれどもほかのものはさっぱりつくれないということでは、日本農業生産力の総合的な強化ということにはならないわけでございますから、米は需要に応じてつくり、残りの水田については日本でもっとつくらなければならない農産物をつくる、こういうことで、全体としての供給力を高めていくということで取り組んでおるわけでございます。
  138. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 食糧問題というのは日本だけの問題じゃなくて、世界的な視野に立って考えるべきだというふうに思うわけでございますが、十年、二十年を目指す展望よりも長期展望が必要ではありますが、世界人口は、二十一世紀には六十数億とも七十億とも言われておるわけでありまして、二十年間で四割もふえることになるわけですから、そうなりますと、地球の耕地は先ほども例を引いたように限界が見えているし、また大きく警告を発しております。このようなときに、日本は米以外の穀物というのはほとんど輸入に頼っているわけであります。つまり、買って物を食べているという、買い食い民族と言うとちょっと言葉が適当ではございませんけれども、そういう状態になっているのが現状でございます。それだけに、世界食糧の影響というものをもろに受けやすい状態になっているのでありますから、これから見て、先ほど申し上げましたように、食糧安全保障という面でどのようにとらえていらっしゃるのか、不安はないのかどうか、どういうふうにお考えなのかお尋ね申し上げます。
  139. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  自給力強化に関します国会の決議がございますように、いま、将来の食糧自給等を見てまいりました場合には非常に不安があるということは事実でございますので、平素から自給力強化のために水田生産力の維持であるとかあるいは基盤整備あるいは農村建設あるいは技術開発等、種々の施策を平素から維持をいたしまして、一たん不測の事態あるいは食糧需給に不安のあります場合には直ちに食糧増産が可能なように、平素から自給力を維持強化していくということに力点を置いておるわけでございます。
  140. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣食糧安全保障の観点から見て、いかがですか。
  141. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 基本的な点はいま官房長からお答えしたわけでございますが、先生御指摘のように、国内で自給できるものはお米、果物、蔬菜、さらに畜産物なんですね。海外に依存しなければならないのは、大豆、、小麦、さらに飼料用穀物でございます。特に飼料用穀物というのは自給力を高めることはなかなかむずかしいのでございます。したがいまして、私たちは、一方では、いま申し上げましたお米初め国内で生産できるものはできるだけ国内で生産する、そういう基本に立って生産性の向上を図ろう、こう考えております。一方では、やはり輸入依存しなければならないものは備蓄をするとかその他の方法で食糧の安全を確保したい、かように考えております。
  142. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ちょっと大臣に何かほかの党から用があるようでございますから、先にお尋ねしておきたいのですが、対外経済摩擦農産物の市場開放という点でございます。  市場開放の要請ということについて、いま盛んにアメリカからあるいはECから日本に——「わが国農産物等の市場はすでに相当開放され、その輸入量は膨大なものとなっていること、また、残された輸入制限品目は、わが国農業の基幹をなす作物、地域的に重要な作物、沿岸漁業等の振興上重要な品目に限られ、自由化がむずかしいものばかりであることから、国内農業、水産業の健全な発展との調和」ということを大臣は所信表明で述べられておりますが、この基本方針のもとにいまの対外経済摩擦を、農産物の市場を守るという点で大臣はどういう決意を持っていらっしゃるか、その決意のほどをお尋ねいたしたい。
  143. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この委員会でこの点については何回かお答えいたしているのでございますが、いま残された残存輸入制限品目については農林水産業の面からいってこれはどうしても自由化することのむずかしい品目だけ残っておるのでございますから、もしそれこれを自由化することは、先ほど来申し上げておりますように、いま新しい農業を進めようとしているこの段階においては、私たちとしては、どうしても自由化は許せない、してはならないものだという考えでただいまこれに対応しているわけでございます。
  144. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 決意のほどはよくわかりましたが、いまアメリカに代表が行っておられて、いろいろな交渉で大変御熱心に要望はされていますけれども、レーガン大統領初めアメリカは強硬に農産物等の輸入拡大については再三再四にわたって要請をされるだろうというふうに思うのです。大臣の決意のほどはよくわかりますけれども、政治というのは強い者よりも弱い者の方へしわ寄せが来るのは当然でありまして、いまの日本経済の中でその風当たりの強いのは何といっても農産物輸入拡大だろうと思うのです。大臣閣議の中でどれほどがんばられても、絶対多数、その数から言えば農林水産大臣一人でございますから、そこへしわ寄せされた場合に、農民なり漁民なりの方々の失望というのはこれは全く、トラクターのデモじゃありませんけれども、あるいは弱い方々の立場に立つ大臣のその決意というものがどこまで持ちこたえられるのかどうかという非常に危惧の念を私は抱いているわけです。再度、くどいようでございますけれども、それに対する決意のほどをもう一度お願いしたい。
  145. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 対外経済摩擦解消については、これは何回もこの委員会で申し上げておりますように、わが国としては非常に重要な課題でございますので、五項目にわたる対外経済対策を決定して、いまそれを検討を進めているわけでございますが、私としましては、対外経済閣僚会議等においてただいま先生御指摘のような農林水産行政の実態を極力訴えて、またECあるいはアメリカ等においても農産物については保護政策をとっておるという実態、さらにはまた対アメリカとの農作物の輸出入については、アメリカの方からの輸入が非常に膨大なものであるというようなこと等を極力主張して理解をいただいて、農林水産行政に有利な環境をつくってまいりたい、かように考えておるわけでございます。しかし、基本的には、貿易のインバランスを解消するということは、何としても内需を拡大して貿易のドライブのかからない経済を進めるということにありますので、そういう点にも思い切った力を注いでこの問題を処理してまいりたい、かように考えておるのでございます。
  146. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 続きまして、食管制度の運用についてお尋ねをいたします。  大臣の所信表明の中に、「国民に対する食料の安定供給を図る上で重要な役割りを果たしている食糧管理制度につきましては、昨年、その制度の基本は維持しつつ、過剰、不足、いかなる需給事情にも的確に対応できるような仕組みとするよう、食糧管理法の改正が行われた」、今後この点適切な運営を図ることにより国民の信頼と支持に基づく恒久的な制度として定着するように努めてまいりたい、こういうふうに述べられているわけでありますが、新しい食管制度が一月十五日から実施をされて約一カ月以上経過をしたわけであります。食糧庁はすでに全国のやみ米業者について、いわゆる不正規米流通退治といいますか、今月から本格的にこの流通退治に乗り出したというふうに言われておりまして、不正規米流通の追放ができるかどうかという、これが新しい食管法を守っていけるかどうかのかぎだろうというふうに思うわけであります。小売でやみ業者が一万四千軒以上ある、こう言われているし、あるいは卸売の業者が二百軒以上もある、こういうふうに言われているわけでありますが、食糧庁は不正規米流通業者をどのようにして押さえられ、また指導され、いつごろまでにこの適切な指導をなさるつもりなのか。あるいはまた食管法の審議の折に、必要ならば警察権を導入するという、警察の力をかりても告発も辞さないという言葉が委員会の席上で述べられているわけであります。これについてどのようなお考えをいま持っていらっしゃるのか、どういう手だてをいま打っていらっしゃるのか、お答え願いたい。
  147. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 不正規流通の防止につきまして、先生御指摘のとおり改正食管法が、守られる食管法として一月十五日から実施になったわけでございます。それに先がけまして、私ども昨年の十月から不正規流通防止対策というものを全国的に実施してまいっております。  まず、販売業者の無許可販売業者、いわゆるやみ屋と言われておるものでございますが、現在食糧事務所、都道府県が一体になりまして一斉の口頭指導を昨年秋からいたしておりまして、リストアップをいたしましたが、その結果の状況を申し上げますと、無許可の卸が、私どものリストに載りましたのが二百四十四、そのうちすでに中止または近く中止が見込まれるものが百四、約四割がそのような口頭指導でやめると見られております。かつ無許可の小売が御指摘のように一万四千四百四十二ございまして、このうち六千九百三十、約五割がすでに中止または中止と見込まれるものになっております。第一回の、私どもはこれをローラー作戦と称しておるのでございますが、これではそういう結果が出ましたが、なお残余には事業継続の意向のあるものあるいは調査時点でまだ不在等で態度未確認というようなものも含まれております。私どもとしましては、なお継続して販売いたします無許可の業者に対しましては今後警告書等の文書による中止指導をまずいたしたい。続いて、なおそれでも継続するものにつきましては文書による再度の指導を行う。さらに悪質なものにつきましては県庁に呼び出しての指導あるいは氏名または名称の公表なりを行う。それでもなお残ります特に悪質なものにつきましては、御指摘のように警察への告発も行うという態度でこの無許可販売業者の整理をいたしたいと私ども考えております。  なお、お話にございませんでしたが、現在の許可業者につきましてもやはり問題はあるわけでございます。不正規流通米の供給源がこうした許可業者から出ている面も無視できないわけでございまして、これらにつきましても、現在、県、食糧事務所が一体となりまして三月末までに業務監査を行う、卸のすべて、小売につきましてはおおむね五%程度を抽出して業務監査をいたしまして、不正規流通に関与した事実が判明した場合には私どもから指導をいたしまして、六月に都道府県知事の許可に切りかわるわけでございますが、その際に、そうした判断を行います重要な判断基準として、こうした実態考えて、私ども、場合によっては許可の取り消しがあり得るという強い姿勢で臨みたいと考えております。  先ほどの無許可販売業者なりにつきましても、第二次ローラー作戦、第三次と重ねまして、六月の許可時点までには私どもこの対策の実効をおさめたい、このように考えております。  なお、集荷業者につきましても、私どものリストで出ましたものは千百五十六無指定の集荷業者等が指摘されておりますが、そのうち約八割ぐらいは直ちにあるいはいずれ中止するということが見込まれておりますが、なお、集荷業者につきましても、同様、無指定のものあるいは指定業者の区別なく私ども厳正に取り締まってまいりたい、このように考えております。
  148. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官が、聞かないうちに全部お答えいただきましたけれども、順番にお尋ねしたいと思っていたところでございますが、まず無許可の業者の場合に卸売が二百四十四軒、小売業者が、業者といっていいかどうかわかりませんが、無許可一万四千四百四十二軒、こういうふうになるわけですが、これはどこでどういうふうに掌握なさって、しかも一カ月の間に、新法令が施行されまして約一カ月以上たちましたが、中止、間もなく中止をするとか中止の予定とかいうふうなことに半数までいってませんが、卸売の方が四三%、小売の方が四八%の方々は中止の指導を聞く、全然聞かないという方について私はお尋ねをしたいわけです。  無許可の販売業者に対して、この方々も言い分があるだろうと思うのです。消費を拡大してきたとか消費者側にたとえば便利であったとか、いままでそれじゃなぜ取り締まってこなかったのかというふうな言い分がいろいろあるだろうと思うのです。当面中止の可能性がないという方に対して警察権の発動等もあり得る、こうおっしゃっていますけれども、いつごろまでにどういう手だてでおやりになろうと考えていらっしゃるのか、きょうは警察の方は私呼んでいませんけれども、長官、どういうふうにお考えですか。
  149. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 ただいまいわゆる無許可のもので現に中止の可能性のないものの御指摘がございました。ただ、この点につきましては地域的にかなり差がありますのと、いま当面中止の可能性についてさらに指導を強めれば中止するというものもあると思います。指導の強化によりましてそうした方向へ私どもが善導したいと思っておりますが、なおそれでも残る部分というのは、先ほど申しました卸の無許可業者との結びつきを持っているようなものがあるわけでございまして、一方ではそうした卸に対する整理とあわせて行わなければならないと考えておりまして、地域的あるいはそれぞれの経過もございまして、具体的な対策はそれぞれの都道府県ごとにかなり違った面があろうかと思いますけれども、私ども最終的には六月の許可時点までにそうしたものを整理いたしたい、このように考えております。  同時に、今後、新しい制度では小売につきましてのブランチ、私ども販売所と申しますが、ブランチの設置なりあるいは新規参入という問題についても積極的に考えてまいりたいと思います。  そうした問題とあわせて、地域の米の需給について実態的に適合できるようなそれぞれの都道府県の考えもございます。それらを詰めまして、地域の需給には混乱を来さないような措置考えていかなくてはならないと思っております。
  150. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 正規業者というのは許可販売業者、こうなるわけですけれども、長官、正規の業者の中に問題もあるのですよ。現に生産者の庭先まで正規の業者が買い付けに行って、それを別なルートから流してしまうという形のものもあるわけです。こういうふうに不正規の方ばかりが問題じゃなくて、いっぱい抜け穴がある。新食管法になったからといってそれが防げるものではないわけです。警察の方は一つもお答えになりませんけれども、警察の力をかりてでもきちっと取り締まるということを成立のときにお約束なさったわけですから、どのような手だてで取り締まりを要請されようというふうにお考えなのか。
  151. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 正規の業者につきましては、先ほども申し上げました業務監査を現在実施しておりまして、三月末までに終わる予定で各都道府県で、またこれは食糧事務所も当然協力して一致して実施しております。  御指摘のように、非常に残念でございますが、事実問題として、正規の業者が正規の米穀につきまして、こうした不正規の流通に関与しているという事実はございます。私どもも二、三の例としてそれは承知いたしておりますが、御指摘のようにそれを警察権の発動によってということよりも、これらの業者はこの六月に許可の切りかえになる、都道府県知事が許可の対象とするわけでございますから、そうした実績なり今後の方針なりを十分見まして、不許可ということも当然あり得るという強い態度で臨まなければならないだろう、またそうした方向で必要な場合には強力な指導をいたしたい、このように私ども考えておるわけでございます。行政的に対処できる道があるというふうに考えております。
  152. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 無許可販売業者の枠というものは許可業者の規制の枠の中には入らないだろうと思うのですが、消費者感情から申しますと無許可も許可業者もないわけなんです。便宜を図ってくださる方々、非常に親切に消費者を守ってくれた方々は、正規か不正規かということに関係なく大変役立ってきたわけですけれども、不正規の中からこの際にぜひ許可業者にかわりたいという希望がある場合に、そういう吸収の方法は全然ないわけですか、御質問します。
  153. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お話は小売の場合かと存じます。先ほども申し上げましたけれども、小売の場合には既存業者がそれぞれ地域の実態に応じてブランチなりを設置できるということ、あるいはそれによりがたい場合には新規参入も私ども認めていく、また新規参入の基準につきましても、従来よりも弾力的に扱うという道は開いておるわけでございます。  それで、御指摘の現在の許可業者の商活動が必ずしも活発でないという点は、私どもも指導上十分反省させなければならないというふうにまず考えております。それから、御指摘のような地域との関係で現に供給しているところにつきましての対応としましては、ブランチとか新規参入とか各種の手段がございますが、やはりこれらは都道府県におきます御判断も重要なものとして考えていかなければならないというふうに思います。同時に、今回のそうした許可に当たりましても、商業調整の機構を各県に設けまして実態に最も合うような流通形態を考え、そうした中で処理してまいりたい、このように指導してまいりたいと私どもは考えております。
  154. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 許可販売業者に対する業務監査について先ほどお答え願いましたけれども、たとえば小売業者六万四千八百十軒の中で業務監査の実施数が八百四十とありますが、業務内容が不適正な業者が百四十一となっておるわけですね、長官。この業務内容が不適正な百四十一の業者に対してどういうような指導とどういうような手だてをこれからやろうとなさるのか。片や不正規なものはそのままにしておいて、そして許可販売業者に対する業務監査もいい加減になおざりにされたならばこれは大変な問題になる。ですから消費者感情からすれば、私が先ほど申したように無許可も許可業者もないわけですから、小売業者、許可業者に対する指導監督というものについてきちっとした手だてを講ずべきだ、こういうふうに思うのですけれども、具体的にどういうふうな指導をなさっているわけですか。
  155. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 ただいま御指摘になりました許可業者の卸なり小売の状況でございますが、これは一月からこの三月までに業務監査をするということで、数字的には現在途中の段階でございますけれども、いま業務内容が不適正というふうに指摘されたものの大部分は、業者として当然完備しなければならない帳簿の不備というようなものが比較的多いのでございます。こうした点は経理なりがはっきりするように、営業者として当然とるべき帳簿等の整備を図るように当然私ども指導はいたすわけでございます。具体的な関与の形は現在のところ余りはっきりした姿はまだ出ておりません。むしろいま途中段階でございますから、これからの特に大消費地の監査の状況の方を私ども関心を持って見守っておるわけでございますが、こうした許可業者が関与するということは私ども非常に重大なことと考えております。私ども六月の許可に至る段階までにこれを十分指導して、さらに指導が徹底できないような悪質なものにつきましては、許可の段階においても重大な決意を持って臨まなければならないだろう、このように考えておる次第でございます。
  156. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので要望だけ申し上げて終わりますけれども、先ほど申しましたように何と言ってもこの新食管法のかぎは、やみ米業者というふうに位置づけていいかどうかわかりませんが、この取り締まりにあるだろうと思います。警察権まで発動して取り締まると明言なさった以上、どちらにしても消費拡大は図らなければいけない、また消費者のそういう要望にこたえなければいけないという面もあるわけですから、十分な監視、監督をなさりながら、新食管法の趣旨を殺さずそれが生かされるように、ますます消費拡大にもつながり、国民の米離れを来たさないように十分な配慮をしてこれに取り組んでいただきたいことを要望いたしまして、質問を終わります。
  157. 羽田孜

    羽田委員長 寺前巖君。
  158. 寺前巖

    ○寺前委員 この間、二十二日の予算委員会でしたか、瀬崎議員が、建設業関係の中におけるところの談合とかあるいは政、官、財の癒着とかいろいろな問題について、ともかく姿勢を改める必要があるということを強調される質問をやっておられました。私、その質問の後でじっくりと資料を読ませていただいておりますと、農林水産の分野においてもメスを入れなければならぬのじゃないかと、この間も出ておったわけですが、感じましたので、どのような対応をその後とっておられるのかということを中心にして少しく聞いてみたいと思います。  まず第一番目の問題は、三井建設の楠修治氏が、東北農政局から五億四千万円の手みやげを持って天下ってきたということが提起されておりました。その内部文書については、昨日三井建設の方で、自分のところの営業報告書であるということを認めておられるようであります。その内部文書、営業報告書の中に出てくる楠氏は、五十四年の四月一日に東北農政局平川農業水利事業所長、そして建設部付になって、その日退官をしておられる。明くる日四月二日には仙台の支店に入社をされて、五十六年の四月一日からは本社の土木営業担当専務付というふうに任務が変わっていっております。三井建設への入社の時期が四月二日だというのに、農水省の大臣承認を受けたのが五十五年の八月二日、入社後一年四カ月だということが明らかにされているわけです。  そこで、人事院に聞きたいわけです。国家公務員法の百三条に照らして、関係する業界にこうやって就職をして、一体事後承認でよかったのかどうか、いままでもそういうことがあったのかどうか、御説明をいただきたいと思います。
  159. 金井八郎

    ○金井政府委員 お答えいたします。  制度を所管しております人事院といたしましては、この営利企業への就職承認につきましては、常日ごろ、通達を発出すると同時に、担当会議等を開きまして、法規違反の事実がないように各省庁に対して指導しておるところでございます。  御指摘の件につきましては、委任分ではございますけれども、まだ詳しい点は私どもも承っておりませんが、やはり承認のないままに営利企業に就職しているというような事情にあるようでございますので、これは制度の面から見ましてはなはだ遺憾なことでございます。過去におきましてもこういう事例はなかったと私どもは承知しておるところでございます。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 百三条に照らして、絶対にあり得ないことだと思うのです。かつてそういうことを聞いたことがないと人事院でおっしゃっているわけですが、それでは農水省としては一体どういうふうにお考えになるのか、幾つかの事実について聞きたいと思います。  大臣は、予算委員会でも質問を受けておられるわけですが、内部文書が会社も認める性格のものになってきた、おみやげつきでこのように天下っていくということについてまずどういうふうにお考えになるのか。  それから、そういう事態が現実に農水省の中にあるとするならば、現に起こっている、今後はこのようなことを起こさせないようにさせるためにはどうしたらいいと思っておられるのか、あるいは、今後もよろしいんだ、こうおっしゃるのか、これが二番目。  第三番目に、いまの公務員法違反の問題です。これは、この人自身の問題は、もう二年済んでしまっている話だから時効だ、本人が言わなくて本人が悪かったんだということでこれを済ませてしまわれるのか。とすると、事後承認を求めて出してきて、承認大臣が与えておった、この事後承認でもって与えるということが許される機構になっているのかどうか。私は、チェックがどうあったんだ、その責任というのは、本人が出さなかったという問題と同時に、機構上も問題があったし、その責任問題が伴ってくると思うのです。これについて明らかにしていただきたい。  そして第四番目に、恐らく本人にすれば、もともと役所の方で世話をしてくれてあすこへ行くのだから、役所から行かせてもらっておるんだから、私は、そんなことは後から言われてみてそうかなと感じられたんじゃないかと、善意に解釈するならば、思います。役所の方が、営利事業のところに二年間はつけてはならないという原則の立場にあってこの制度があるときに、わざわざお世話を関係するところへ持っていく、すなわちおみやげつきだと言われるようなこういうやり方は今後どうするのか。大臣でお答えをいただきたい面と、実務的にお答えになる面とがあると思いますので、まずは大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  161. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、お問い合わせの前提になる幾つかの点について答弁させていただきます。  そのメモによりますと、三井建設の受注の急増というのは楠氏に対する手みやげではないかという趣旨の解釈があるという御指摘があったわけでございます。  私ども、はっきり申し上げますと、国営工事はすべて指名競争入札で適正に行われておりますし、また再就職の事実というものも、必ずしも三井建設一社に限られたわけのものではございませんので、そういうことはおよそ考えられないというふうに理解しております。  宮城氏のメモの真意というのは、実は楠氏というのは、宮城氏と前々から非常に親しい個人的な関係もあったわけでございまして、いわば私どもは、宮城氏が三井建設に楠氏を入社させたことについての社内PRではないかというふうに理解しております。  ただ、いずれにせよいろいろ御指摘の点もあるわけでございまして、そういう意味では、私どももさらに十分事情は調べてまいりたいと思っております。したがって、いいとか悪いとかという問題外の話であろうと私どもは思っております。  なお、公務員法との関係につきましては、官房長からさらに答弁させていただきます。
  162. 角道謙一

    角道政府委員 公務員法との関係につきましてお答えを申し上げます。  本人楠さんが三井建設の仙台支店土木部長代理に就任したのは、いまお話しのとおり昭和五十四年四月二日でございますが、私どもの農政局の方から本省に承認申請が出てまいりましたのは、実は五十五年の四月、一年おくれております。その後、私どもこの審査をいたしまして、八月二日付で農林水産大臣から承認したわけでございますが、その申請書によりますと、就職の日付は承認され次第ということになっておりまして、実は私どもうかつでございましたが、御本人が仙台支店土木部長代理にその五十四年の四月に就職しているという事実を知らなかったわけでございます。したがって、その間約一年の間本人からどういうような申請の手続があったのか、この辺現在農政局を通じまして、また農政局部内におきましても調査を進めているわけでございますが、この辺、公務員法に定めます申請手続等に遺憾があったとすれば、私ども関係者につきまして厳正な処置をとらざるを得ないと考えております。
  163. 寺前巖

    ○寺前委員 いま二人の関係局長さんから発言があったわけですが、大臣はこの件についてどういうふうに思っておられるのか、聞かしていただきたいと思います。
  164. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 瀬崎委員にもさきに申し上げたのでございますが、農林水産省の行っている公共事業は、御承知のように農業水利事業だとか、いわゆる農業土木の仕事をしているわけでございまして、この技術的な専門家がむしろ農林水産省に非常に多いものですから、民間側としてはこのお役所の専門家をぜひ欲しいという希望はありますけれども、天下りのおみやげつきでぜひお願いしたいなどということはちょっとあり得ないと私は思っているのですよ。しかも、三井建設の報告書でございますから、これが直接行政とのつながりがどうなのかということはまだ明らかじゃないのじゃないかと思いますので、そういう点は今後さらに調査をして、もしそれでこういう事実があるといたしますならば厳重なる措置をいたしたい、かように考えております。
  165. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、この前の委員会で資料だけが配付されておりまして中身について討論をされていない問題がありますので、引き続き聞きたいと思うのです。  瀬崎議員の御了解をいただきまして持ってまいりましたので、先ほど関係の人にはお渡しをしておきましたが、その資料3の2です。五十三年二月十三日に宮城氏が営業報告書を出しておられるわけですが、その二月八日のところです。「得意先」は「北陸農政局坂井北部開拓事業所」です。三井のこの「対象工事」を見ますと、「新江導水路第六工区その二」「五十二年度工事は工期中に完了の見込み」と書いてある。要するに福井県の新江導水路の仕事は五十二年度工事については工期中に完了しますよ、こう書いてあるのです。これは関係局長さんに聞きますが、三井建設は五十二年度にこの工事をやっていたわけですね。
  166. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のとおりでございます。
  167. 寺前巖

    ○寺前委員 その下の欄に「五十三年度予定」というのが書いてあります。そこを読みますと、「北陸支部(土地改良建設協会)経由で第一希望坂井北部新江導水路、第二刈谷田川排水幹線、提出済み……」こう書いてある。北陸支部(土地改良建設協会)を経由して、第一希望は坂井北部新江導水路だ、こういうのがこの土地改良建設協会の北陸支部を通じて出してあるのだということが書かれておりますが、五十三年度の坂井北部新江導水路の事業に三井建設はかかわっていましたか。幾らの費用でかかわっていましたか。
  168. 森実孝郎

    森実政府委員 まず坂井北部の導水路の工事でございますが、これは六工事ございまして、それぞれ別の会社が入札しておりますが、そのうちの一工事を三井建設が入札しております。契約年月日は五十三年の十月で、最終の請負金額は一億四千七百八十万でございます。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 その次に、それでは希望をこの土地改良建設協会北陸支部を経由して出すということになっておるのですが、この土地改良建設協会というのは一体だれが会長さんでどんなお方が役員になっておられますか、御説明をいただけますか。
  170. 森実孝郎

    森実政府委員 全国組織といたしまして、いわば公益法人として土地改良建設協会があるわけでございます。御指摘のありました北陸支部というのは、この土地改良建設協会の構成員の北陸に関係する事業者が事実上つくっております下部組織であるように理解しております。  内容は、本部と緊密な連絡のうちに土地改良事業の推進に協力し、会員相互の親睦を図るということを目的にしております。
  171. 寺前巖

    ○寺前委員 会長さんはどなたで、どんな会社の方が役員をやっておられますか。
  172. 森実孝郎

    森実政府委員 役員の固有名詞はちょっとここにございませんが、会社は、、たとえば御指摘がありました五十三年で申しますと、佐藤工業北陸支店、鹿島建設北陸支店、熊谷組北陸支店、五洋建設北陸出張所、清水建設北陸支店、大成建設新潟支店、東急建設北陸支店、国土開発、間組北陸支店、林建設工業、福田組、本間組、前田建設北陸支店、それから真柄建設、りんかい建設金沢営業所等が構成員になっております。これが役員会社でございまして、会員数は五十三年度は九十九社ということになっております。
  173. 寺前巖

    ○寺前委員 北陸支部のお話がございましたが、全国の社団法人土地改良建設協会、そこの役員の会長さんはどなたでしょう。
  174. 森実孝郎

    森実政府委員 前田忠次さんでございましたが、昨日辞任されました。
  175. 寺前巖

    ○寺前委員 建設省関係において、静岡の土工協が問題になりました。公取が調査に入りました。全国的に建設業界関係、土工協のあり方が問題になって、国会でもいま予算委員会で証人を喚問して集中審議をやろうじゃないか。そこまでずいぶん談合問題は話題になったわけです。そこの会長さんはだれか。いまおっしゃるところの前田忠次さんでした。建設省関係の公共事業の中心に談合問題、問題になっているところの組織が前田忠次さんを中心にして問題になって、会長さん、副会長さん去年辞任をしてしまうという事態が起こってきた。いま農水省関係の中におけるところの公共事業、その一部分が天下りの問題が問題になるかと思ったら、一方でいまこの文書にあるように、土地改良建設協会なるものがそこを通じて配分の相談をしているのじゃないかと疑うところの文書が内部から出てきている。そこの会長さんがやはり同じ人だった。昨年の十一月の資料を見ますと、百二十九社、大手全部ざあっと参加しています。そこが調整機能になっているのじゃないだろうか。それじゃ一体定款はどういう定款になっていたのだろう。社団法人ですからこれはちゃんと農水省で指導、監督をしておられると思いますよ。そこではちゃんと書いてある。土地改良事業の情報の収集をやる、官庁に対する建議をやる。読み方によっては、なるほどこうやって情報を集めて、そして意見を申し上げておるのかいな、読み方の話ですけれども。事の事実というのはそういう方向にまさになっているのじゃないだろうか。こういうことになっているとするならば、これは大変な問題だ。建設省においては、チームをつくって三井建設問題をめぐるところの問題で特別の大がかりの調査団をつくって調査に入るということをきょうの新聞で見ましたけれども、これは建設省所管の分野だけではなくして、土地改良建設協会なるものを通じてそのようなことをやっているということの中身がこうやって出てきている以上、農水省においてこの分野についてもメスを入れる必要がある。一体どういうことになっていたんだということについて調査を開始しておられるのかどうか、御説明をいただきたいと思うのです。
  176. 森実孝郎

    森実政府委員 土工協との関係において土地改良建設協会の議論が提起されたわけでございますが、実は私ども土地改良建設協会は、まさに定款に定めているとおり、土地改良事業の施工技術とか安全施工に関する調査研究等を主たる事業内容としておりまして、会員間で技術に関する情報の交換をしている協会というふうに理解しております。また、実際問題として、ほとんどそういう意味においては技術的な問題、技術情報の収集等については役所とも連絡ありますが、御指摘のような入札にかかわるような問題について直接この団体関係を持ったことは私ども聞いておりませんので、そういう御指摘のような懸念は一般的にないものというふうに理解しているわけでございます。しかし、そういう御懸念がございますならば、私どもも十分頭に置きまして、土地改良建設協会の活動状況について十分調査をいたしたいと思っております。  なお、先ほどの会長の辞任の問題でございますが、土工協の会長辞任後、前田会長からこちらの方も会長を辞任したいという申し出が内部においてはあったようでございますが、余り頻繁にも会合をやっていなかったようで、きのう正式に辞任が決まったということのようでございます。
  177. 寺前巖

    ○寺前委員 こんなこと知っているんだったらその活動を許している方がどうかしているということになりますから、それはそういうものとは思っっていないというのはあたりまえだろうと思うのです。  そこで、公取委員会に聞きたいのですが、もしもこのような、いま指摘をいたしましたような文書、内容が記録された時期の一年以内にこっそりと公取の方に送り届けてこられたときには、この土地改良建設協会なり三井建設なりの活動について、公取としてはどういうふうに対応されることになっていたでしょうか。
  178. 樋口嘉重

    ○樋口説明員 お答えいたします。  公正取引委員会といたしましては、従来から、事業者間で話し合いをいたしまして一定の取引分野における競争を実質的に制限するところの受注予定者を決定する行為、いわゆる談合でございますが、それを独占禁止法に違反するものというふうにし規制しているところでございます。具体的なケースについて申し上げることは御容赦いただきたいと思いますが、一般的にはこのような話し合いが行われると思量するに十分な資料がありますれば、審査を開始する端緒としては有効なものではないかというふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  179. 寺前巖

    ○寺前委員 会計検査院にお聞きをしたいのですが、ここに出されている文書を見ると、公正な競争の妨げになっているというふうに私はこの情報自身が指摘をしているというふうに思うのですが、おたくの方ではこういう事実についてどういうふうに対応されることになるでしょうか。
  180. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 お答えいたします。  御承知のように会計検査院は、会計経理を検査いたしましてその適正を期するということを基本的な要務としております。したがいまして、私どもといたしましては、特に工事につきましては計画、積算、設計あるいは施工といったような面につきまして、従来から念入りに検査しているところでございます。また、今後も特に予定価格の積算という点につきましては、十分慎重にさらに厳重に検査をする所存でございます。
  181. 寺前巖

    ○寺前委員 私の聞きたいのは、予決令で公正な競争を妨げる場合には云々というものがあります。そうすると、これが協会を通じて仕事の配分をやって公正な競争を妨げているという疑いを私は持つわけですが、そういう疑いの行為が起こった場合には、それは会計検査院としても遡及してでも調査をしなければいけないことになるんじゃないでしょうか。いかがなものですか。
  182. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 そのような疑いが濃厚な場合といえども、私ども談合というものについて直接検査する力はございませんので、やはりそちらの方の直接の検査をなさるところにそういう検査はお願いしたいというふうに考えるわけでございます。
  183. 寺前巖

    ○寺前委員 いま会計検査院なり公取の話を聞きました。いずれにしても、農水省自身がちゃんと自分の所管のことでもありますから、農水省としては一番責任を持ってこれは対応してもらう必要がある。  そこで、大臣にお答えをいただきたいわけですけれども、要するに、この前の話では天下りの問題、それからそれをめぐってのいろいろ問題がありました。大臣先ほど答弁をいただきました。それから内部的にきちんとした手続上の問題をチェックをしなければならぬという問題も非常に明確になったと思うのです。  今度は、このように莫大な事業をやるところの土地改良の事業をめぐって、土地改良建設協会なりあるいはそこに参加してくるところのこういう会社が、こういうふうに談合をする場にそういうところを使っているということの疑いが内部文書から明確になってきた以上は、私は特別にこの実態の解明のために調査班をつくるとか特別な対応策を行い、特別にこの協会に対するところの監督、調査をやってもらう必要があるんじゃないかと思いますが、その点、大臣いかがなものでしょう。
  184. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 実は建設省でこの談合問題が新聞等に報道されたときに、農林水産省としても次官通達をもって談合等のことはあってはいかぬ、そういう点は厳重に注意してほしいという通達を出しておりまして、今後の入札等については公正な入札を行うようにという旨の次官通達を出して警告を発しておるのでございます。  いま寺前委員から土地改良建設協会の点についてどうも疑いがあるんじゃないかというようなお話でございますが、この点は、将来調査してまいらなければならないと思いますが、その結果によってお話のような、私たち調査も進めてまいらなければいかぬと思いますが、まず、その内容等を調査してみたい、かように考えております。
  185. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合がありますので、次に移りますが、ぜひ徹底した解明を希望いたします。  次に、私は、昨年の暮れに島根県の宍道湖・中海の干拓事業について調査をしてまいりました。この干拓事業をめぐって、私は、事は重大な段階に来ておると思いますので、大臣の所信を聞きたいと思うのです。  というのは、あの中海の干拓事業は、米の増産が急務であった昭和三十八年に着工して、総事業費が七百五十億円、ことし五十七年度以降も二百九十億円の巨費を投じようという大自然の改造計画であるから、これについては特段に慎重を期していただきたいと私は思うのです。ともかく、金がないということがずいぶん話題になっているいまの時世です。このときに莫大な金を注いでいって、そして片一方で農地確保することを行う、片一方で淡水化する。さて、農地の方だって、米はつくるなという方向になってきているときだから、これは一体どうするんじゃという問題が出てくる。一方で淡水化するというこの事業、これが果たして淡水化に成功するかどうか。それは八郎潟や児島湾の事態に見られるように、淡水化してきれいになったというんだったら話は別です。淡水化してひどい話の状況に今日なっていることは天下周知の事実だから、大自然の改造については、自信のない段階のままで、ともかく決まっているんだからといってやるということを強行すると大変なことになる。ところが、中海の締め切りの事態が、当初の計画からいくならば刻々と迫っているから、いま大英断をふるって態度を決めてもらう必要があるということで問題の指摘をしてみたいと私は思うのです。  まず最初に、いただいたところのパンフレットの問題です。私の手元にあります昭和五十五年八月発行の農林水産省、中国四国農政局中海干拓事務所、両者の名前によるところの「中浦水門の操作開始と淡水化」「中海干拓事業」というこのパンフレットの末尾に漫画がかいてある。現況、淡水化したらこうなります、非常にわかりやすい漫画がかいてある。この漫画を見ますと、現状は、汚水が入ってきて、そして海の底はヘドロでひどいことになっていて、燐酸が出ている。     〔委員長退席、渡辺(省)委員長代理着席〕 硫化水素が出て臭くてかなわぬ。臭くてかなわぬと書いてないけれども、硫化水素がぶくぶく出ておる絵がかいてある。そして、プランクトンが発生して赤潮でひどいところになっておって、魚はあっぷあっぷしておるような魚で、それで塩水の中で魚が、かすがほかしてある、こういうような絵がかいてある。淡水化したら、もうヘドロは全くなくなってしまう、プランクトンがある、底生生物、内水面漁業、まことにりっぱなものになってしまう。「淡水化は湖内の生態系を安定させます。」こういう漫画が出ているのです。私、見たときに、これは恐らく島根県の人は怒るだろうと思うのですよ。島根県の中海は赤潮が発生しておって、魚はあっぷあっぷして、あそこの魚は食えたものじゃないぜ、そういう宣伝じゃありませんか、これは。もう下はヘドロでひどいことになっている、あんなところへ行って魚は食いなさんなよ、こういうことでしょうが。国会議員さんの偉い人もようけ島根県から出ておられるんですけれども、一体これを見て冗談じゃないと思わなんだだろうか。私は、これは余りにも淡水化することを強調するために極論を吐いたものである、ばかにしなさんなということを意味している内容だと思いますが、ここに、厳しく自然をぴちっと科学的に分析をするという姿勢が欠けているというその姿があると私は思うのですが、これの発行元の方はいかが所見をお持ちでしょうか。
  186. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいまの御指摘のパンフレットでございますが、確かに漫画化した図面は誤解を招く図面であるということは私どもも感じておりまして、その後のパンフレットからはすでに削除させております。そういう意味では、誤解を招いたことは遺憾だと思っております。  いま御指摘の淡水化の施工の問題につきましては、われわれも慎重な手続と段取りでこれから進めたいと思っておりますので、御理解を賜りたいと思っております。
  187. 寺前巖

    ○寺前委員 それはそうだろうと私も思いますよ。  そこで、次に環境庁にお聞きをしたいのですが、環境を、自然をりっぱに守っていっていただきたいというところから見ると、八郎潟や児島湖の水質は一体どうなっているのだろうか、淡水化する過程の中であの汚れた姿というものは一体どこに問題点があったのだろうか、これについて環境庁の御意見を聞きたいと思うのですが、お見えですか。
  188. 長谷川正

    ○長谷川説明員 お答えします。  海水の出入りを遮断して行う湖沼の淡水化により、水域の閉鎖性がさらに強まり、水質を保全するための条件は一般に厳しくなることが考えられます。こういうことがございますので、環境庁としては、湖沼の淡水化に伴い水質の汚濁が進行することのないように、水質の変化の予測等の調査研究を的確に行い、これに基づき下水道の整備促進等の水質保全対策を十分に行うべきであるということが必要であると考えております。  中海につきましても、淡水化事業によって閉鎖性が増大するという点のほか、湖水の流れや湖水に含まれる酸素量がどうなるかという点などについて総合的に勘案して、水質汚濁が進行することのないように、関係各省と連携を図りつつ、関係の県に対しても十分指導していきたい、こういうふうに考えております。
  189. 寺前巖

    ○寺前委員 鯨岡前大臣が、こういうことを公害特別委員会でおっしゃっていました。「閉めるのには閉めるための準備が要る、」要するに、閉じるためには閉じるなりの準備が要るんだぞ、「いままでの苦い経験から言って。たとえばあの周りにある下水等を完備して、それでもう周りの汚いものが入ってこないというようにしておいてから閉めるんなら順序として間違いありませんが、順序を間違えたらそれはいままでの轍を踏むことになるのではないかと私は心配しているのであります。」この鯨岡発言というのは、環境庁としてはこういう立場をとっておられますか、もう一度確認をしておきたいと思います。
  190. 長谷川正

    ○長谷川説明員 先生おっしゃるとおりでございます。
  191. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、閉めるには閉める順番があるんだということを言っておられるのですが、この場合に閉める順番はどうなっているのか、これについてちょっと農水省に聞きたいと思うのです。  まず、農水省は現在淡水化試行開始はいつやろうとしておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  192. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほどちょっと触れましたが、淡水化の試行の問題につきましては、十分な段取りと準備を経て着手をしたいと思っております。手続なり段取りが進めば、五十七年度には実施したいという考えをとっておりますが、なかなか御指摘のようにいろいろな御議論や問題もあるわけでございます。  そこでまず、学識経験者で構成しております、これは各種の専門家を網羅しておりますが、この委員会検討を進めまして、その意見に基づいて試行計画をつくりまして、両県及び関係市町村の了解を得るという手続を一つとらなければならないと思っております。二番目は、河川法上の所要の手続を完了させなければならないと思っております。さらに最終的には、淡水化の試行と申しますのは、申すまでもなく、塩分濃度を徐々に下げながら湖内の生態系の変化を観察するいわゆるトライアルでございますけれども、試行期間中に仮に異常な事態が生ずれば一時停止の措置を講ずることも当然頭に置いております。こういった計画なり手続をこれから進めたいと思って、現在準備を進めているというところでございます。
  193. 寺前巖

    ○寺前委員 なかなか慎重な方向を打ち出そうとしておられることは結構なことですが、それではちょっと聞いてみたいのですが、さきの環境庁のお話では、閉めるには閉める順番があるので、この下水道がどうなるのかという問題をおっしゃっていました。それでは、あの地域における流域下水道計画というのはどういうふうに進行しているのでしょうか。
  194. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっと流域下水道自体の計画は担当省が違いますもので、私自体にいまここに手持ちの数字は持っておりません。改めて計画数字は出させていただきたいと思いますが、まさに私も、これから最終的なゴールへの到着に当たっては流域下水道の整備がどれぐらい進められるかということが重要な判断要素であることは否定いたしません。そういう意味で、その点は関係各省の意見を十分聞きながら物を進めることが必要であろうと思っております。
  195. 寺前巖

    ○寺前委員 たとえば私の持っている宍道湖流域下水道計画書を見ますと、東部処理計画は、五十六年、去年の四月から一部処理開始で完成は五十九年となっておる。西部処理計画では、五十七年度着工して六十四年完成ということになっておる。計画だけでももっとずっと先なんです。そうすると、農水省自身が淡水化試行開始予定を五十七年度に置いて、本格淡水化開始五十九年度と従来言っておったこの路線というのは、この下水道計画から見ていくと順序を間違えることになりかねない。いや間違ってしまうことになってしまう。対応することができない。ですから五十七年度から始めるということはこの一事を見ただけでも軽々しく言うべき段階にはないということは——先ほど局長さんも従来言っておったのとは違う態度を表明されたように私は思うのだけれども、そうだと思うのです。途中でとめてしまってどうのこうのというお話もありましたけれども、私は、これは一たん汚してしまったら大変なことになる。  特にこの間調査をしてきて私自身が感じた問題ですけれども、淡水化に伴う水管理及び生態変化に関する研究委員会というのがありまして、その第二分科会のプランクトン委員長を務めておられる島根大学の伊達先生という方にお会いをしてまいりました。新聞紙上でもいろいろ論じておられますけれども、淡水化すれば水はきれいになるかどうかについては、いまの調査方法やこれまでのデータからだけで科学的な根拠に基づいた予測をせよと言われてもできない、私にもこの点について非常に強調されました。それからいろいろな学者にも会いました。最近になって海水の浄化作用を強調する見解がずっと出てきておりますが、潮汐が汚濁物質や栄養塩を運び去り酸素を供給するとか、海水がまじって汽水状態にあることがアオコの発生を抑えているとか、こういうような意見が漁民の中からも出るし、学者の中からも出る。ずいぶんいろいろあの問題をめぐって論議が起こります。さらに実証的な問題として、もう少し実証的な新しい方式を、日本で最初にやるんだからやらなければいかぬという意見も出てきます。中にはこういうことを言った人もおります。農業用水にさえ使えなくなろうとしているところの児島湖や八郎潟で一回やってみた上で、それで持ってきたらどうかという意見を言う人もおりました。意見のことですからいろいろあるけれども、この問題は日本で最初にやるということで非常に莫大な金をかけるという面からも、一たんこれをやって成功するという保障を危惧するという意見もある。だから、順序の問題、実証的に処理をするという問題などを含めて、軽々しくやることはできないんではないかということを私はつくづく思ってきました。新しい大臣のこれらの見解、ぜひ聞かせてほしいと思いますので、大臣にお答えをいただきたどい思います。
  196. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっとただいまの御質問内容にも触れる問題でございますが、私ども、実は本格操作と淡水化試行ははっきり区分して認識しております。たとえば塩分濃度の問題等でも、淡水化試行の場合は、トライアルの場合は非常に高い塩素イオン濃度を前提にした操作を考えておるわけでございます。  それで、この試行について、先ほど先生からも御指摘がございました伊達先生にも入っていただいているわけでございますが、委員会でいろいろ御意見を伺ってそれから試行案をつくり、それから関係市町村並びに両県の合意をとり、それからいわゆる河川法の手続を経て試行に着手する、試行の段階でもし問題春あれば、試行はまさにトライアルでございまして、常時生態観察を行うための試行でございますから、観察を続けながら、必要があればまたそれは途中でストップするという考え方をとっているという意味でございまして、確かに非常に新しい内容を持った問題でございます。  特にいままでの干拓と違って、私どもも水質汚濁の問題というのが非常に大きな問題になる。たとえば、初め農業干拓だけで考えたところでも、都市化が進んでくれば汚濁の内容も変わってくるし、それからまた新しく上水に利用したいという動きも出てくることもあるわけでございますから、そういう変化も頭に置かなければならない、そういう社会状況の変化なり社会世論の変化を頭に置きまして、特にこの場合はこの試行につきましても厳格な段取りをとっているという意味であって、本格操作とは意味が違うということは、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  197. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣のこの件に関する所見をひとつお伺いをしたいと思います。
  198. 森実孝郎

    森実政府委員 前々から申し上げましたように、私どもあくまでも本格操作と試行は区別して考えておりますし、工事が完成いたしますのは、いまの予定で考えますと、下水道処理計画が大体完了する時期になるということを実は織り込んでおります。しかし、それは一つの見通しでございますので、その前提の試行の段階を経ると同時に、その試行については慎重な段取り、手続をとっていきたいということを申し上げているわけで、御理解を賜りたいと思います。
  199. 寺前巖

    ○寺前委員 ところで、これは農水省の干拓事業として、淡水化の問題であると同時に一方で干拓をやっているわけです。  そこで、会計検査院にお聞きをしたいのですが、従来から農水省でこういう干拓をやってきているのですが、果たしてこの干拓地が農地としてうまく農業役割りを果たしてきているのかどうか、農業以外への転用は一体どういうことになっているのか、これは会計検査院としてお調べになったことがあるように聞いておりますので、ぜひ説明をしていただきたいと思います。
  200. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 それでは御説明いたします。  昭和五十五年度の決算検査報告におきまして「特に掲記を要すると認めた事項」というアイテムで「国営干拓事業の実施について」という、いわゆる私ども特記事項と言っておりますけれども、そういう検査報告を書いておるわけでございます。  その概要でございますけれども、詳しくは検査報告に載っておることでございますからごく簡単に申し上げますと、国営干拓事業の五十五年度末現在まで、あるいはすでに実施したものあるいは実施中のものといったようなものを見ますと百八十三地区、地区面積で五万二千五百二十八ヘクタールとなっておりまして、事業費では二千五百八十七億余円に上っているわけでございます。それで、今回この百八十三地区につきまして事業の実施、造成地の利用状況などを調査いたしました。  その結果でございますけれども、まず干拓地を造成した後または造成中におきまして、これはいずれも配分前でございますけれども、これを全面的に農業以外の用途に供することとして転用しているもの、いわゆる他転地区と申しますが、こういうものが愛知県の鍋田地区ほか十七地区で、面積は二千六百八十九ヘクタール、事業費相当額で七十六億余円ございました。  それからまた、造成された農地が売り渡しまたは配分されました後に全面的に農業以外の用途に転用されているもの、いわゆる転用地区と申しておりますが、これが千葉県長浦地区ほか十三地区、面積七百八十五ヘクタール、事業費相当額で十九億余円。  それから、五十五年度末現在事業を継続している地区で、工事は完了しておりますが造成した土地の配分が済んでいないもの、いわゆる未配分地区でございますが、山口県の阿知須地区及び王喜地区ほか三地区、面積一千四十九ヘクタール、事業費百二十九億余円、こういうものがございます。  さらに、このほか廃止された地区が十一地区あるいは事業を休止している地区が二地区、それから実施中の地区が四地区というようなことで、これらをすべて合計いたしますと冒頭申し上げました百八十三地区になるわけでございまして、百八十三地区の全容を一応特記事項に掲げたわけでございます。そして、これらは社会経済事情の変化、たとえば工業化とか稲作転換が行われるあるいはオイルショックといったようなそのときどきの環境の変化に起因するところでございますけれども、なお現在実施中のものもございますし、あるいはさらにこれから計画中のものもあるやに聞いております。そういう関係で、こういった過去の経験に照らしまして、優良な農地確保するという大切な事業の実施に当たって、国民的な関心の中で十分いい効果を上げることを期待いたしまして特に掲記する事項として掲げさせていただいているわけでございます。  以上でございます。
  201. 寺前巖

    ○寺前委員 全面的なお話をいただきましたのですが、要するに干拓地が農業以外のものに転用されてしまったり、あるいはペンペン草が生えてどうにもならない状態になっておったりいろいろな状態があるということは、莫大な金を使って国民にとっては非常にもったいないことじゃないか、そういうことのないようにちゃんとせいよ、こういうお話だと思うのです。  この中海周辺の問題についても、私この間見てきたら、すでに三地区が転用されているわけなのです。現在造成中の干拓地のすぐ隣の江島地区というところは四十一ヘクタールありますが、どうなっておるのかと見たら、たった一つ工場があるだけだ。あとはペンペン草がざあっと生えていて広々としたところですよ。わざわざ埋め立て、仕切って海の中に土地をつくったのはいいけれども、魚介類に影響を与えておいて、工場一つでペンペン草が生えておる状態で、えらいことになっておるものだなと見ておったのです。また、安来地区のすぐそばにある安来市の細井湾の干拓を見てきた。現在、造成面積の半分近くの十ヘクタールを、これは農業じゃなくして工業用地に転用しようとしているわけです。だれも希望者がなくなってきて結局転用しなければならぬのかなと思ったら、そうでもないのですね。あんなものは県が転用しないでわしらに分けてくれたらどうか、現地に行くとこう言うのですよ。そうすると、農水省が莫大なお金を使って農地をつくる課題と淡水化という課題で取り組んでおるのだけれども、実際はその農地が使い物にならぬようになってほかへ持っていこうとする。持っていったところがうまくいかぬ、工場がたった一つだということになってもこれまたひどい話だし、農地の方だってどうにも動きがとれぬというようなことになっておったら、これは一体何のために莫大なお金を注いでおるかわからぬということになるのじゃないか。恐らくおたくの方にもこの細井湾の干拓について問題を持ち込まれておると思いますから、県が工場用地として転用しようとしているのだけれども、これに対して一体どういう見解をお持ちになるのか聞かせてくださいな。目的と違うところに使われていくようなことになってもおかしな話だと思うのです。
  202. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、御指摘の地区の問題でございますが、昭和五十四年九月二十八日に個人への増反として十一・八ヘクタール、農業開発公社に対して十三・三ヘクタールを配分したわけでございます。現在、個人の配分地についてはまさに農業利用が行われているわけでございますが、この農業開発公社の配分地については、われわれといたしましては飼料畑としての利用ということを当面の米の需給関係から指導しているわけでございます。他転の動きがあることは仄聞はしておりますが、まだ県からは正式に報告を受けておりません。御指摘の点も頭に置いてよく調べてみたいと思います。  なお、先ほど触れられた幾つかの点について若干補足させていただきますと、確かに戦後四万五千ヘクタールばかりの干拓造成をやりまして、三千ヘクタールが他転されていることは事実でございます。また、それ以外の土地でも他転の可能性がある土地が一部あることは否定いたしません。非常にむずかしい問題として干拓は工事が非常に長期にわたる本質を持っております。また、これはネットでの国土の造成、プラスアルファでございまして、日本の優良な平場の農地というものはこれからも干拓に期待していかなければならない局面があることは事実だろうと思います。一方において、急速な経済成長の中で都市化が進み住宅用地その他への需要が出てきて、完成するころは地域の形状が変わってくるという問題が実はあるわけでございます。そういう意味で、実は私ども率直に申し上げますと、四十年代の後半においてはかなり干拓地の他転が行われたという時代的な違いもございます。  今後の問題といたしましては、われわれもこれから先の変化をよく見込みながら事業に着手すると同時に、また配分に当たっては、配分を受けた農民が現在不当に利得を受くることのないようしかるべき差額徴収措置等もとっておりますし、他転については時価売却という原則で利益を上げている地区もかなりあるわけでございますので、そういう点では国費の乱費にわたらないよう、他転に当たっては歯どめもかけていくということについてはさらにウオッチを強化してまいりたいと思っております。
  203. 寺前巖

    ○寺前委員 ところで、私はこれもつい一週間余り前に見てきたのですが、長崎県へ行ってきたのです。ここはまた二千億の大事業をやろうというのです。これはいま局長さんがおっしゃったけれども、長期にわたる計画だからその間には事情の変化がいろいろありましてと、まさにそういうことになってくると思うのです。事業二千億ですよ。大変なものだ。そして日本一大きなあの干潟をつぶしてしまうというわけでしょう。関係するところはあそこの漁協だけじゃないのですよ。佐賀県、福岡県、熊本県、ずっと関係するのですよ、あの有明湾全体ですから。しかも、諫早湾のところは有明海全体から言うといろいろな役割をしていると思うのですね、あそこの持っている役割りというのが。有明海の子宮だという人もおりますね。生産性の面から見てもあそこは非常に高いところなんだというふうに言う人もありますね。ともかく非常に重要な諫早湾の日本一大きな干潟をつぶして、二千億の事業で、締め切って干拓をしよう、さあ、これ果たしてこのまま遂行するつもりなんだろうか。明らかに、現に関係するところの府県の漁民は了解していませんよ。経済的に見ても了解は簡単にいかぬ。あそこを締め切ることによって与えるところの影響がいろいろあるからだ。そうすると将来あれがどういうことになるだろうか、非常に不安もあるのですね。だから、こういう問題についていま強行をして、農水省がちゃんとこれを干拓しますという事業計画をどんどん進めていく、この緊縮財政をやらなければならない、あるいは予算そのものが歳入欠陥が起こるじゃないかということが論議されておるときに、これだけの大事業をいま打ち出していくことが必要な段階にあるというふうに見ておられるのかどうか。こういうことになってくると、これは政治的な判断の問題ですから、いままでの干拓事業、そしていま中海でそういうことになっている。それでこれからまた大事業。さあ、大臣、初の就任のお話ですから、この大事業問題について御見解を聞かしていただきたいと思います。
  204. 森実孝郎

    森実政府委員 大臣の御答弁の前に、実は大臣の御指摘もあって本年度の予算等についていろいろ手を打っている点もございますので、その間の事情を簡単に御説明させていただきます。  御案内のように、この南総開発の事業は非常に長い歴史的経緯と地元の要望の上に成り立ってきたわけでございますが、単なる干拓だけではなくて、最も水が不足して水のコストの高い長崎における大規模な水源造成という問題にかかわっていることは御案内のとおりでございます。現在諫早湾の漁業問題につきましては諫早湾の十二漁協についての埋め立ての同意は取りつけられておりますが、率直に申しますとまだ周辺地域の漁民、たとえば佐賀県の大浦漁協であるとか島原半島の漁協等の問題については解決しておりません。私どもといたしましても、大臣の強い御指示もありまして、慎重な上にも慎重を期さなければならないということで、はっきり申し上げますと、工事の影響あるいは干陸完了後の影響を受けるということが予測される周辺漁業者の影響の問題については国と佐賀県とが協力して影響調査を行っておりますが、それを基礎として十分話し合いを進めたいということにしております。したがって、工事の着工ということを予算としては要求しておりますけれども、基本的には周辺の関係漁業者の合意を取りつける、影響についての調査を基礎として合意を取りつけるという段取りと、それからもう一つは公有水面埋め立て許可、土地改良法の手続を進めることが当然の前提であることは、実は予算編成の最終時点においても対外的に明らかにしたところでございます。  それからさらに、大臣の強い御指示もありまして、先生がいま御指摘になりましたような事情も頭に置いて十分並行して改めて調査を行う、フィージビリティースタディーを行うという方針を決めまして調査費を計上しております。  その内容はいま詰めておりますが、一つは、やはり長期的に見て深刻な問題でございます長崎の水の需給がどう動いていくか、他の水源コストとの関係でコストがどう比較されるものかということを十分見きわめるということと、それから造成される土地についてはやはり少し長期の視点に立った土地利用の展望と地価の動向等を十分踏まえるということを、調査費を計上して取り組むことにしております。したがって、事業の着工については、いま申し上げた調査の結果を待ちかつ先ほど申し上げた周辺漁業者との合意や諸手続を進めた上で着工する、現実に着手するということで対外的に方針を鮮明にしているところでございます。
  205. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 わが国食糧自給力確保するために、私たちはこれまでもいろいろ進めてまいっているわけでございますが御案内のように、国際的に見て食糧の需給状況は中長期的に見てもかなり不安定の状況にある。しかし、日本の場合は米は確かに過剰でございますけれども、他の面から考えますと必ずしも自給力は完全なものではございません。そういう点から考えますと、経営規模の拡大というものは当然に話題になってくるわけでございます。そういう点を考えてまいりますと、狭い国土の中で耕地を求めるとすればおのずと限界があるわけでございますので、いずれも干拓の事業を起こして経営規模拡大の一助としていくというのは一つの大きな目標なんです。したがいまして、個々の干拓事業なりいま御指摘のいろいろな仕事を完全に効率的に実施するということは私たちの仕事でございますので、御指摘のような不安な状況は排除してできるだけその効果を上げていくというようにしてまいらなければならないと思うのでございます。  特に、長崎の南総については、私、大臣になってから最初にこの問題に取り組んだわけでございますが、総理もこの問題についてはやはり反対があってはいけませんよ、反対のない段階でこの仕事を進めていかなければいけないということでございますので、私は、今回の予算編成に当たっても漁業関係者の反対がないのかというようなことを十分問いただしました。一部にはやはり漁業者の反対がまだありますので、そういう点を十分反対のないような状況にしていただく、またこの南総の事業が本当に効率的に将来とも運営できるのかというようなこともさらに調査を進めなさいというようなこと等をいま念を押しているような状況でございますので、今後そういう点が長崎県からも結果として提出されるだろうと思います。そういう点を配慮しながら今後この事業の発足、進め方を検討してまいりたい、かように考えております。
  206. 寺前巖

    ○寺前委員 莫大なお金をかけて、後はひどいことだけが残るということにならぬように慎重の上にも慎重にぜひ御検討いただきたいと思います。  もう時間があと五分ほどでございますが、最後に一、二問だけお聞きをしておきたいと思います。  この間うちから当委員会においても農産物輸入問題をめぐっていろいろ意見が出ております。私は、大臣に率直にお聞きしたいんです。一月十二日の国際化に対応した農業問題懇談会で、大臣はこれ以上自由化することは不可能だとおっしゃって、これは農業団体の皆さんが非常に大きな、そうかという励ましになっておりましたけれども、この態度については、大臣は信念として不可能だという態度を貫かれるのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  207. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農林水産大臣としてそういう考え方を貫きたい、かように考えております。
  208. 寺前巖

    ○寺前委員 その次に、これは前から問題になっているんですが、東京ラウンドではいついつまでこういうふうに輸入はやりましょうという約束をしている。時期についてはいつ相談をするか、相談する時期までも明確になっている。国際的に協定を結んでいる話なんだから、別な時期に早目に協議しようやないかと言われたってそういうわけにはいかない。国際協定は大事にするんだ、従来農水省はそういう態度を示しておったと思うのですが、この点も貫かれるのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  209. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 そのとおりでございます。
  210. 寺前巖

    ○寺前委員 そうしたら経済閣僚会議ですか、去年の十二月に開かれました「対外経済対策」、この「対外経済対策」の中で「輸入制限の緩和」「諸外国の関心品目に留意しつつ、残存輸入制限について、適宜、レビューを行い、その結果を経済対策閣僚会議に報告を行う。」これは対策閣僚会議なんだから大臣参加しているんでしょう。大臣の意に反することをここで決められた、こういうことになりますか。
  211. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この対外経済閣僚会議においてはそういう問題、五項目の結果という段階で、私の方からは、農林水産業の現状というのはこういうように厳しいから農林水産業の残存輸入制限品目については十分配慮してほしいという旨は私の方でつけ加え、その点を内容に含んだ意味でのことでございますので、そういう点は御理解いただきたい。
  212. 寺前巖

    ○寺前委員 あなた含んでいると言ったって、このこと自身は検討して報告しますということになっているんだ。「レビューを行い、その結果を経済対策閣僚会議に報告を行う。」こうなっておるのだから——もう時間がないですからいいですよ。     〔渡辺(省)委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 農林水産省といたしましては、残存輸入制限品目のレビューに当たりましては、農林水産業の健全な発達と調和のとれた形でレビューを進めていくべきものと考えておりまして、そういう見地からレビューをいたしますと、現在のところ自由化すべきものはないと考えております。
  214. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が参りましたので、最後に一つだけ大臣にお聞きをしたいと思います。  アメリカは牛肉の輸入の制限を法律をつくってやっておる。実際上の制限は自主規制ということで十四カ国にやらしているようです。温州ミカンについて、特定のところだけしか日本に対して売らしていない。ところが日本にはオレンジに対するところの輸入を、全面的に撤廃せいと要求してくる。農業関係で言うとアメリカはちょっと身勝手じゃないだろうか、私はそういうふうに思うのですが、あなたはアメリカの要求に対してどういうふうに思われますか。これを最後の質問にします。
  215. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 残存輸入制限品目の中の特にオレンジ等につきましては、東京ラウンドで合意された事項を現に実行いたしているわけでございますので、今後、政府間での交渉の折には、私たち先ほど来申し上げた態度で臨んでまいりたい。また農林水産業に影響を与えない状況でこれに対応したいと考えておりますので、その点御理解をいただきたいと思います。
  216. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が参りましたので、終わります。
  217. 羽田孜

    羽田委員長 阿部昭吾君。
  218. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣にお尋ねをしたいのでありますが、所信表明演説をお聞きいたしまして、私は田澤大臣と同じように、今日非常に厳しい状況にあります東北の農村に政治運動の基盤を持っておりますわけで、今回同じように厳しい東北農村の現状の上に長いキャリアを持っておられる田澤農林水産大臣が誕生された、非常な期待をしておるわけであります。  ところで、今度の所信表明演説をお聞きして、いまの日本農業、あるいはその農業をどのように展開させていこうとするのか、その大枠はわかりました。だけれども、いまのこの現状をどう変えていこうとするのか。農村の方々に対してどのような希望の道を切り開こうとなさっておるのかということについては、残念ながらいままでのことと余り変わらないなという感じを持たざるを得ないのであります。私のところも厳しいのでありますが、大臣の青森県もまた二年連続の厳しい冷害のもとで非常に険しい状況にある。そういう中で大臣は、この演説のもっと底に——かつて大臣政治家として登場された当時、東北のある雑誌は東北のケネディと論評されておった。今度農林水産省の最高責任者としてこの所信表明を伺った限りでは、どうもいままでのと余り変わらぬなという感じを残念ながら持たざるを得ないのであります。どこをどのように変えようとなさっておられるのか、大臣の本当の気持ち、これをぜひお聞かせいただきたい。
  219. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま農林水産業の置かれている現状というのは非常に厳しいのは阿部委員御承知のとおりでございまして、私たちはその中でやはり新しい農政を求めるために長期の展望に立って農業の再編成を図って、それから生産性の向上を図ろうということを基本にしてこれからの農業を進めようといたしておるわけでございますが、私といたしましては、その一つ一つ内容を密度の濃いものにしたいというのが私の考え方なんです。たとえば水田利用再編対策、ここではいろいろ議論になりましたけれども、この問題を仮に緊急避難的なものとして扱うか、もっと集団化し、定着してこれを進めようとするのかということは、日本の新しい農政をつくるかつくらぬかの境目になるわけでございますので、私は、あらゆる政策は同じかもしれません、一貫して農林水産省の政策は長期的につくられているからそうかもしれませんけれども、田澤農政としては密度の濃いものにいたしたい、こういう考え方でございますので、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  220. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、田澤農政をもっと鮮明にしてほしいと思うのでありますが、御案内のようにゼロシーリングであります。その中で密度の濃いものにしようとおっしゃるのですが、私の見るところ、どうも総花で全部進んでおるわけであります。農林省政策は連綿として続いてきた、それを全部密度を濃くしようといっても、客観情勢、国際情勢も国内の情勢もいろいろな意味で厳しい。その中で密度を濃くしようということになれば、どこかはやはり犠牲にしてどこかに集中するということをやるか何かしなければ、あるいは農業を取り巻く、農村の外回りの状況を徹底的に変えるとか何かやらなければ、密度を濃くしようといっても残念ながらこれは濃くならぬのじゃないか。どこを濃くなさろうとするか。
  221. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私は、いま農家の方々が近代的な農業を進めようとしてその子弟を農林高等学校やらあるいは大学に進めておりますが、しかし、その高校教育を受けた者あるいは大学教育を受けた者が果たして農業に対する考え方がどうなのか、むしろ農業離れをする人をつくり上げているのじゃないだろうかと思うのです。私は、少なくとも農林高等学校に入学する者、農林高等学校をつくった以上は、そこに学んだ者は、厳しい農業の中でも働いてやろう、農業を支えてやろうという人間をつくらなければ真の教育じゃないと思うのです。大学にしても、宮沢賢治、松田甚次郎のような、ああいう短い生涯を零細な東北農業にささげるという情熱的な人材をつくり上げることが私は基本だと思うのです。それが密度の濃い農政につながるものじゃないだろうか、こう思いますので、そういう点から、いわゆる単なる政策を羅列するだけじゃなくして、その政策のどれかの基本をどうつくり上げていくかということに情熱を燃やすことではなかろうかと思うのでございます。
  222. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 われわれの地域の中に何とか農業の未来に対して希望を持とうということで必死にやっておる皆さんは非常に多い。たとえばこれは一つの例でありますが、私のホームグラウンドの地域に四万三千ヘクタールの水田がある。ところが、技術革新がどんどん進んでおりますから、二十年ぐらい前から僕らは、米ばかりやっておってもいかぬぞ、複合経営だ、畜産やりなさいと言ってずいぶん広めました。私の地域は、畜産の柱は養豚だと、二十年前に四万頭ぐらいしかおらなかった養豚をいま二十八万頭ぐらいにした。いろいろな努力をしてやってきましたが、一週間後に養豚農家の危機突破大会が開かれる。軒並み全部いま四苦八苦なんです。こういう状況、あるいは酪農をやっておる皆さんもなかなかうまくいかぬ。果樹をやっておる皆さんも、どこへ行っても市場関係はもう満杯で身動きがつかぬ。東北は雪の制約を受けておりますから蔬菜園芸等々もなかなかそう簡単ではない。その中で必死の努力をみんながやっておる。したがって、私は、密度の濃いことをやろうとおっしゃってくれる気持はわかるのです。しかし、内容はどうするのかということになると、みんな必死になって農業を愛しておる、何とかそこに活路を切り開きたいということなんですが、いまの総花的なことをゼロシーリングの中で全部やろうとしても、残念ながら密度の濃いものは出てこないと私は思うのです。田澤農政、これから何年おやりになるかわかりませんけれども、その間にどこかに一つの風穴をあけてもらう必要があるのではないかと思うのです。教育に力を入れるということはわかりました。これは文部省ともいろいろやり合ってもらわなければいかぬでしょう。それはわかりますけれども、それだけじゃなかなか、いま農業高校を出た皆さんは、農村へ定着するよりもどこかへ行って就職する人たちが現状は圧倒的に多いのです。私は、密度を濃くするというならば、たとえば東北農村、私の地域で二年続きの冷害でやられた、だけれども山間部の町村で肉牛を相当重点を入れておった地域があった、そうするとやはり牛の二十頭か三十頭をやっておる皆さんは、冷害でたんぼがばたばたとやられましても案外力強いのですね。恐らく東北の高冷地帯の農業というのはこれからも冷害で相当やられるだろうと思うのです。だとすると、そういうところは、いまの減反の問題もありますから、政策的にも少し重点的なサポートをやって、冷害型農業から肉牛なら肉牛に転換をさせていく、そういう相当きめの細かなところで一つ一つ風穴をあけていく。田澤農政は、いままでの何とはなしに——私、この演説をお聞きした限りでは、文章としては大変りっぱなんですよ。非の打ちどころがない。だけれども、いままでのところとどこを変えようとなさっておるか、どこにうんと力が入ろうとしておるのかということがちっともこの文章の中では出てこない。それをどうしても聞きたかったわけです。
  223. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 毎度水田利用再編対策の例をとってはなはだ申しわけないと思いますが、過般、岩手県へちょうど参りまして岩手県の方々といろいろ話し合っておりましたら、岩手県の方々はこう話してくれました。水田利用再編対策というのは、単に米の過剰ということを処理するための問題じゃないんだ、もはや新しい農業をつくるための一つの奨励金なんだから、私たちはこれを基本にして思い切った農政をやろうと思うんだが、大臣、どうだ、それは全く私と同じだからぜひやろうじゃないか、そのためには基盤整備が必要ですよ、ですからそれはぜひ頼む、こういうお話です。ですから、新しい農業をやるという意欲と基盤整備事業とが合体して初めて新しい事業ができると思うのです。  ですから、私のいまの所信表明演説は、これは農林省の長期的な展望に立っての政策でございます。しかし、その中身の、内容の濃いものというのはそういう意味で、意欲的にやろうとする人にその事業を与えてやるというところに新しい農政の道が開けるものだ、私はかように考えます。したがいまして、いま中核農家を中心にして経営規模を拡大しよう、兼業農家はできるだけ、これは現にいま必要でございますけれども、将来とも兼業農家というものは徐々になくなっていかなければならない存在だと私は思うのです。しかし、時代はだんだん兼業化しようとしております。あるいは兼業化しておりますけれども、しかし、基本は、専業農家経営規模拡大というのが必要だ。というのは、農家が何代にもわたってこの事業を進めるんだというところに農業の強さがあるのですよ。いまここでちょっともうけてみよう、農業でちょっと仕事をしてみようという薄っぺらな農家経営では、本当の意味での新しい農業が生まれない、定着した農業が生まれないと私は思いますので、やはり親子何代かの経営を進める、そういう農家を育てていかなければ日本農業は安定もしないし、発展もしないと私の経験から考えておりますので、そういう点をきめ細かく考えていくことが密度の高い農政だ、こう申し上げて差し支えないと思うのでございます。
  224. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで大臣、この演説に関する限りは決して密度が高いことを感じないのです。したがって、もう一遍演説をしていただくかどうかは別にして、密度の高いところはここだというのをぜひ一度何点か、いま教育の問題はお伺いいたしました。これとこれとこれはどうしても田澤農政の密度の高いところだ、したがって、全国のやる気のある皆さんは、この密度の高いところに集まって農業の展望を開け、こういうものをぜひひとつ早急に、予算委員会終わって本番審議の始まる前に、田澤農政の密度の高いところはここだというのをぜひお出しいただきたいと思います。それはいいでしょうか。
  225. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 検討して、できるだけやってみます。
  226. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで大臣、いま中核農家ということを言われました。この中核農家と言われる皆さんは、ふえていくのじゃなくて、毎年毎年減少の一途をたどっておるのであります。  そこで、恐らくいま世界の四分の一は飢餓と空腹で苦しんでおる。そうすると、日本工業輸出を盛んにしておりますから、したがって、貿易摩擦その他でいろいろなことをどうやっていくかということで四苦八苦をしておる。ところが、第三世界の皆さんとお会いいたしますと、飢餓と空腹で苦しんでおるのです。農業技術その他も非常に低いのであります。そういう中で、やはりどこかから食べ物が欲しいという国々が第三世界には非常に多い。世界穀物市場で値段をつり上げておる張本人は日本だというのが第三世界の皆さんの非常に冷静な鋭い批判であります。先進国間の貿易摩擦とかなんとかの問題はいろいろやりながら、いろいろになっていくでありましょう。しかし、第三世界との間にどういう連帯を切り開くかということが今後の日本の進路としては重要な問題なんじゃないか。その際に、やはり田澤農政が密度の高いことをひとつやっていただきたいということは、自給力の向上というあれは、どうもあいまいもこたることにしていく、風穴のあかないことにしておる原因だと思うのです。したがって、そんなにイギリス並みとかどこ並みとか一遍でどえらい高い自給率などということを言う必要はない。ないが、やはり自給率として、少なくとも世界全体の中における先進国日本が、もうかることだけどんどんやって、もうからぬ農業食糧生産はどんどん下がっていく、こういうことがやはり世界全体の中で孤立への道だろうと私は思うのです。特に第三世界との連帯という今後の日本の進路を考えると、これはいまから相当注意をしなければいけない、警戒していかなければならない、反省していかなければならない点だと思うのです。そういう意味では、この自給力の向上なんという、あいまいにしないで、高い目標を一遍で掲げる必要はない。自給率をここまで、この期間にこうやって、どうしてもやらなければ、先進国日本の責任は果たしたことにならない。そういう意味で、自給率という角度での日本農政目標というものを確立すべき時期なのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  227. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 日本自給率目標についてはもうすでにできているわけでございまして、それを目標にしていま自給力確保のために努力をいたしているわけでございます。しかしこれからやはり局面がかなり変化してございますので、そういう点は今後もさらに見直して、自給力の強化のために努力をしてまいりたいと考えております。
  228. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 自給率をいまいろいろ農政審その他で言っておるのは、何か希望ある方向に行くんじゃなくて、穀物や何かにしても逆に大変厳しくされていくという感じなんですね。そういう意味では、この自給率の問題で、たとえば日本目標はせめて五〇%に今世紀末まで何とかしようとか、何かないといかぬのじゃないかと思うのですが、そういう意味での見直しをおやりになるお考えなのかどうか。
  229. 角道謙一

    角道政府委員 いま御指摘のございました自給率につきましては、昭和五十五年に閣議決定をいたしました「農産物の需要と生産の長期見通し」におきまして、昭和六十五年度におきます自給率の見通しは掲げておるわけでございます。  たとえば品目別に申し上げますと、米が一〇〇%、小麦につきましては一九%、これは主として国内のめん用になります小麦については全量国内で生産する。あるいは大・裸麦につきましては一七%、大豆につきましては八%、ただしこれは国内の主として豆腐用の大豆、これについてはおおむね三分の二程度を自給するというように、それぞれ品目別の自給率は設けようとして私ども定めているわけでございます。  先ほど指摘ございました、穀物自給率が今後非常に下がっていくのではないか。これは、主としてえさ穀物を外国に依存しております。国内では現在コウリャン、トウモロコシ、その他のソルガム等、いわゆる飼料穀物が非常に生産しにくい、また、したとしましても非常に高価なものになるというところから、もっぱら飼料穀物は外国に依存しているせいでございまして、中小家畜、鶏、豚、こういう畜産物が伸びてまいりますと、どうしても今後えさとしての飼料穀物依存する度合いが高くなる。その結果飼料穀物をひっくるめました全体としての穀物自給率は、確かに、将来六十五年度におきましても私どもは三〇%と考えておりますけれども、食糧用穀物という点から考えますと、現在の大体七二%程度が大体七三%程度までいくのではないかというように私ども目標として持っているわけでございます。
  230. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで一つの私の意見を申し上げたいのでありますが、たとえばいまわれわれの地方農村の中でどういう人たちが一番しっかりした暮らし方をやれるようになってきておるかということになると、先ほどお話しの中核農家じゃないのです。つまり専業農家はいまや東北方面では非常に容易ならざる状態にある。この皆さんがたとえば農協などの中心をなしておるわけです。農協の貯貸率などはどんどん悪化を続けております。農村でどういう皆さんが比較的しっかりし始めておるかということになると、農業じゃないのです。息子がいいところに勤めておる、嫁さんがいいところに勤めておる、こういう皆さんのことを私は第一種安定兼業層、こう呼んでおるのですが、こういう皆さんがわりとしっかりし出して、専業農家と不安定兼業層というのが非常に容易ならざる事態に直面しつつある。特に専業農家、中核農家などというのはいまどんどん落ち込んできておるのです。それが、農協の貯貸率がこの一、二年間急激に悪化をするという状況にあらわれておるのですね。したがって、私は、いま農政審が言っておるあれも、何をなそうとしておるかということになると残念ながらまだまだ鮮明ではないと思っております。自給力向上、自給率は、と言うのですけれども、たとえばえさやその他は全部輸入ですね。そこで、そのえさで生産されたる肉は、これは自給ですね。そういう関係。  そこで、将来第三期減反というのはどこまで行くのか。これを全部水田以外のものに変われと言っても、麦をやる、大豆をやるといっても、膨大な基盤整備をやらなければ簡単にいかないでしょう。そうすると、たとえば一つの提案として、飼料用の稲、相当多収穫品種なども技術的には開発され始めておる。しかも相当早刈りのものも出てきておりますね。これを表作でやる。裏作ではたとえば、われわれの地域でも相当雪の深いところは限界がありますけれども、裏作では飼料用の麦などをやらす。これは夏場と違って裏作麦をやる場合は全部水を引き払っておりますから、その期間はわりとやれるわけであります。その表と裏を組ましてどういう状況になるのかということなどを私どもいま実験的に相当の地域でやっております。農林省は、飼料用稲なんというのはだめと、こう言う。最近、去年の何月ごろかに試験栽培についてある種の風穴があけられた。将来七十万ないし八十万の減反を本当にやろうというならば、蔬菜や園芸をやるとそっちが全部市場パンクですね。それから畜産といっても相当の限界が来始めてきておる。果樹なども限界ですね。そうすると、いまの水田のままでいこうということになると、飼料用の水稲なんというもので相当多収穫のものが出てきている。しかも、それで裏作もやれるということになったら、組み合わしてどういうことになるのかといったようなことも実際問題としては相当検討に値する課題だ。私はいま実験的に方々やってみてそういう実感を得ておるのであります。  農林省は、どういうのか知らぬが、どうも飼料用稲なんというものが広がってきてなんということになると厄介なことになるなという感覚が強いようでありますけれども、農林省の中では特に畜産当局にその傾向が相当強いようであります。私は、日本農業の中では東北なども相当重要な中心的な地域だと思っておるのであります。そこに基盤を持って政治的に今日まで来られた大臣でありますから、先ほどお約束いただきました密度の濃いというところに何点か、ははあ田澤農政、いままで農林省ずっと全部縦割りで延長してきておるものをそのまま踏襲ではなくて、このあたり本当に密度の濃いことをやろうとしておるなということの中に、そんなに全部がらっと一遍に変わるわけにいかないでしょうが、何点かこれだというものをぜひ出していただきたい。  たとえば飼料用稲なんというのも検討に値するテーマではないか。もう一つ言えば、たとえばいま細々としたものはいろいろあるんでありますけれども、五十年たたなければ伐期の来ない山、この山に五十年間投資のできる農山村の皆さんは少ないのであります。若い皆さんは五十年先のことのためになんということをやれる状況にはない。山をやるとすれば、うんと金のかかるのはせいぜい植え込んでから十五年、二十年間ですよ。したがって、山が五十年して伐期が来て皆伐する、そのときに精算払いしてもよろしいという意味で、二十年間の山の経営にうんと金のかかる時期に、この山が五十年後に仮に一億円の生産を生むという場合には、前もって前半の二十年間くらいに五千万くらいを長期低利のもので、伐期のときに精算払いするような枠の資金をうんと拡大するとかなんとかやはり幾つかの——いま農村の青年は農業はみんな崩壊しつつあると思っていますよ。こういう皆さんに本当にある種のやる気を起こさしめるに足るような密度の濃いものをぜひお出しをいただきたい。  まだまだ幾つか提案あるのですけれども、時間が来ましたので、ぜひ大臣から、そういう幾つかの、ああこれが田澤農政のポイントなんだなというものをぜひお出しをいただきたいと思います。
  231. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま転換期を迎えている農林水産業でございますので、それに対応するための積極的な政策を、重点的な政策を打ち出して、農家農民に活力のある経営ができるような仕方をつくり上げたい、かように考えております。
  232. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、本当にありがとうございました。  この施政方針演説にさらに田澤農政はこれだというものは三月いっぱいくらいで大体お出し願えるでしょうか。
  233. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 できるだけ早い機会につくり上げたい、こう考えております。
  234. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 以上で終わります。      ————◇—————
  235. 羽田孜

    羽田委員長 松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。田澤農林水産大臣。     —————————————  松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  236. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  松くい虫防除特別措置法は、松くい虫による異常な被害の終息を図るために、特別防除、すなわち航空機による薬剤防除を、緊急かつ計画的に推進する措置を講ずることを目的として、昭和五十二年に成立いたしました。なお、この法律は、本年度末までの五カ年間の限時法であります。  農林水産省といたしましては、自来、この法律及び森林病害虫等防除法に基づき、特別防除の計画的な実施等の各般の防除対策を講ずることにより、松くい虫による異常な被害の終息を図るために、最大限の努力を続けてきたところであります。  しかしながら、昭和五十三年夏期の高温少雨という異常気象の影響、特別防除の実施面での限界等もあり、その被害は、昭和五十三年度、五十四年度と激甚の度を加え、五十五年度においても、被害材積は約二百十万立方メートルに及んでおります。本年度においても、遺憾ながら、異常な被害が終息する状況にはありません。  このような異常な被害の現状と松林の森林資源としての重要性にかんがみ、今後とも、松くい虫による異常な被害の早急な終息を図り、あわせて、松林の有する森林としての機能を確保していく必要があります。  このため、松くい虫防除特別措置法が、本年三月三十一日に失効するに当たり、これまでの経験も踏まえて、各般にわたる松くい虫の被害対策を緊急かつ総合的に推進するため、所要の改正を行うこととし、また、その期限を五カ年間延長することとして、この法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、法律の題名につきまして、各般にわたる松くい虫の被害対策を緊急かつ総合的に推進するための特別法という趣旨で、松くい虫被害対策特別措置法に改めることとしております。  第二に、従来の特別防除に加え、被害木の伐倒とあわせて破砕、焼却等を行う特別伐倒駆除のほか、樹種転換等を含めた松くい虫の被害対策を計画に基づいて総合的に実施することとしております。  このため、農林水産大臣が定める基本方針及び都道府県知事が定める都道府県実施計画の内容拡充することといたします。また、これに加え、市町村においても松林の所有者等による自主的な被害対策を推進するため、地区実施計画を策定することといたします。  第三に、被害の蔓延している地域において公益的機能の高い松林や被害の拡大を防止する上で重要な松林の防除の徹底を図るため、農林水産大臣または都道府県知事が松林所有者等に対し、特別伐倒駆除の命令を行うことができることとしております。  また、農林水産大臣または都道府県知事が命令にかえて行う特別防除を引き続き実施することとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  237. 羽田孜

    羽田委員長 補足説明を聴取いたします。秋山林野庁長官
  238. 秋山智英

    ○秋山政府委員 松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提案いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明におきまして申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一に、法律の題名及び目的規定の改正について御説明いたします。  今後の松くい虫の被害対策の計画的な実施に当たりましては、特別防除等の防除措置のほか、被害を受けた松林の樹種転換等をもその重要な一環として加え、これらの被害対策を総合的に推進することといたしておりますので、これに伴い法律の題名を改めるとともに、目的規定について松林の有する森林としての機能の確保という観点を加える等の改正を行うこととしております。  第二に、基本方針及び都道府県実施計画の内容拡充であります。  農林水産大臣が定める基本方針におきましては、被害対策内容拡充に対応いたしまして地域の被害状況等に応じた松くい虫の被害対策を総合的に展開するための基本的な指針を定めることとするとともに、特別伐倒駆除、特別防除、樹種転換等についての基本的事項等を定めることとしております。  また、都道府県知事が定める都道府県実施計画につきましても、基本方針に即して松くい虫の被害対策の実施方針、特別伐倒駆除、特別防除、樹種転換等の計画的な実施に関し必要な事項等を定めることとするとともに、新たに市町村が定める地区実施計画の指針となるべき事項を定めることとしております。この場合、保安林その他の公益的機能が高い松林及び被害の拡大を防止する上で重要な松林並びにこれらの松林を含む特別防除の単位となる松林群についは、松くい虫の被害対策の計画的な実施に関し必要な事項を定めることとし、これら以外の松林または松林群については地区実施計画の指針となるべき事項を定めることとしております。  第三に、新たに地区実施計画を策定することであります。  市町村は、都道府県実施計画に基づいて行う公益的機能の高い松林等に係る松くい虫の被害対策と調和を保ちつつ、松林の所有者等による自主的な特別伐倒駆除、特別防除、樹種転換等の被害対策の計画的な実施を推進するため、その対象となる松林の所有者の意見を聞くとともに、都道府県知事と協議して地区実施計画を定めることとしております。  第四に、特別伐倒駆除命令の新設であります。  被害の蔓延している地域における公益的機能の高い松林等についての防除の徹底を図るため、農林水産大臣または都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、公益的機能の高い松林または被害の拡大を防止する上で重要な松林であって被害の程度が高いものにつきまして、その所有者等に特別伐倒駆除を命ずることができることとしております。また、特別伐倒駆除命令の手続代執行等について森林病害虫等防除法の規定を準用することとしております。  以上のほか、地区実施計画を達成するため、松林所有者等は、地区実施計画に即して松くい虫の被害対策を実施するよう努めなければならないものとするとともに、市町村長は、必要に応じ、計画を遵守すべき旨の勧告を行うことができることとし、また、特別伐倒駆除命令に係る損失補償、国の補助等について所要の規定の整備を行っております。  なお、この法律は、昭和六十二年三月三十一日限りその効力を失うことといたしております。  以上をもちまして松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。      ————◇—————
  239. 羽田孜

    羽田委員長 次に、漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。田澤農林水産大臣。     —————————————  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  240. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 漁港整備計画の変更について承認を求めるの件につき、その提案理由を御説明申し上げます。  わが国においては、国民の必要とする動物性たん白質食糧の半ばを水産物に依存しているため、水産業はきわめて重要な役割りを果たしております。この水産業の積極的な振興を図るためには、漁業生産の基盤であり、かつ水産物流通の拠点である漁港の計画的な整備拡充を図ることが基本的な課題となっております。この趣旨から、政府といたしましては、漁港法に基づき、漁港整備計画を定め、国会の御承認を受けて漁港施設の整備を図っているところであります。  現行の漁港整備計画は、昭和五十二年第八十回国会において承認を受けたものでありまして、当時の水産情勢を基礎とし、これに将来の水産業の動向を勘案して定められたものであります。しかしながら、その後における水産業をめぐる国際環境、経済的諸条件は著しく変化いたしております。このため、この計画を実情に即するよう全面的に変更することとし、国会の承認を求めることとした次第であります。  次に、本件の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  今回の漁港整備計画は、漁業と漁港施設との現状を基礎とし、将来における漁業生産の確保、流通機構の改善、漁港の安全性の確保、地域社会の基盤強化等の観点に立って策定いたしました。  計画内容といたしましては、沿岸漁業及び増養殖漁業の振興上重要な漁港、沖合い漁業の根拠地として重要な漁港、遠洋漁業の根拠地として重要な漁港並びに漁場の開発または漁船の避難上特に必要な漁港について、それぞれその整備を図ることとしております。  整備漁港の選定に当たりましては、指定漁港のうち漁業振興上及び地域振興上重要であり、かつ漁港施設の不足度の高いもの、事業効果の大きいもので緊急に整備する必要があるものを採択いたしました。その結果、昭和五十七年度以降六年間に四百八十港の漁港について漁港修築事業を実施することとしております。漁港修築事業の内容といたしましては、それぞれの漁港に適応した外郭施設、係留施設、水域施設、輸送施設、漁港施設用地等を整備することとしております。  なお、以上申し上げました漁港整備計画につきましては、漁港法に基づき、漁港審議会の意見を徴し、妥当であるとの趣旨の答申を得ております。  以上が、本件を提案する理由及びその主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願い申し上げます。
  241. 羽田孜

    羽田委員長 補足説明を聴取いたします。松浦水産庁長官
  242. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 漁港整備計画の変更について承認を求めるの件につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  まず、現行の漁港整備計画の実施状況は、予定しました総事業費八千八百億円のうち昭和五十六年度までに実施済みの事業費は六千三百八十億円で、この進捗率は約七三%となっております。  次に、今回承認をお願いいたしております変更後の漁港整備計画に基づいて整備をしようとしております四百八十港の種類別内訳を申し上げますと、第一種漁港が百二十三港、第二種漁港が二百一港、第三種漁港が七十六港、特定第三種漁港が十一港、第四種漁港が六十九港となっております。これらの漁港を昭和五十七年度以降六年間に総事業費一兆二千億円をもって漁港修築事業により整備することといたしたいと考えている次第であります。  また、現行の漁港整備計画に定められております整備漁港と今回の変更後の漁港整備計画に定められております整備漁港との関連を申し上げますと、現行の漁港整備計画から引き続き変更後の漁港整備計画に取り入れようとするものは、三百二十五港でありまして、新規に採択しようとするものは、百五十五港となっております。  なお、現行の漁港整備計画の整備漁港のうち変更後の漁港整備計画の整備漁港とされていないものが百二十五港ありますが、このうち九十三港につきましては別途漁港改修事業により、三十二港につきましては必要に応じ漁港局部改良事業により整備することといたしております。  さらに、変更後の漁港整備計画に採択されなかったその他の漁港についても、必要に応じ、漁港改修事業または漁港局部改良事業により整備することといたしております。  漁港修築事業に漁港改修事業、漁港局部改良事業を合わせた六年間の総事業費は、調整費等を含め二兆百億円となっております。  以上をもちまして、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件の提案理由の補足説明を終わります。
  243. 羽田孜

    羽田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  244. 羽田孜

    羽田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま趣旨の説明を聴取いたしました松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律案について、参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 羽田孜

    羽田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 羽田孜

    羽田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会      ————◇—————