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1982-02-23 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十三日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 亀井 善之君 理事 戸井田三郎君    理事 渡辺 省一君 理事 新盛 辰雄君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    太田 誠一君       川田 正則君    木村 守男君       岸田 文武君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    保利 耕輔君       三池  信君   三ツ林弥太郎君       山崎平八郎君    小川 国彦君       串原 義直君    島田 琢郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       日野 市朗君    安井 吉典君       神田  厚君    近藤  豊君       寺前  巖君    藤田 スミ君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         食糧庁次長   中山  昇君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第二課長   新藤 恒男君         通商産業省貿易         局輸入課長   横山 太蔵君         建設省都市局都         市計画課長   田村 嘉朗君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     原田  憲君   太田 誠一君     藤尾 正行君 同日  辞任         補欠選任   原田  憲君     上草 義輝君   藤尾 正行君     太田 誠一君 同月十五日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     小渕 恵三君   太田 誠一君     正示啓次郎君   川田 正則君     澁谷 直藏君   岸田 文武君     根本龍太郎君   北口  博君     村山 達雄君 同月十六日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     上草 義輝君   澁谷 直藏君     川田 正則君   正示啓次郎君     太田 誠一君   根本龍太郎君     岸田 文武君   村山 達雄君     北口  博君     ————————————— 二月十日  松くい虫防除特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第三一号)  農用地開発公団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三二号) 同月十三日  漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四二号)  漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整  備計画の変更について承認を求めるの件(内閣  提出承認第二号) 同月十九日  漁業再建整備特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四五号) 同月十七日  蚕糸業振興に関する請願(井出一太郎君紹  介)(第七五〇号)  同(小川平二紹介)(第七五一号)  同(小沢貞孝紹介)(第七五二号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第七五三号)  同(串原義直紹介)(第七五四号)  同(倉石忠雄紹介)(第七五五号)  同(小坂善太郎紹介)(第七五六号)  同(清水勇紹介)(第七五七号)  同(下平正一紹介)(第七五八号)  同(中村茂紹介)(第七五九号)  同(羽田孜紹介)(第七六〇号)  同(林百郎君紹介)(第七六一号)  同(宮下創平紹介)(第七六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村守男君。
  3. 木村守男

    木村(守)委員 まず、農政緊急課題と言われる日米貿易摩擦に関連して、田澤農林大臣にお尋ねしたいと思います。  先立ちまして、私は、田澤農林大臣に対しましては、農家の衆望を担って御就任された実力大臣でありますので、大いなる期待を申し上げ、ぜひともこういう緊急課題あるいはいまなお減反を余儀なくされている農家の実情にかんがみて、できるだけ生産農家を守りながら、そして国家繁栄のために食糧供給安定策確立のために一層の御活躍を祈りたいと思います。たまたま私は田津先生にとりましては学校の後輩であり、先輩後輩関係であり、そしてまた地元青森県の大先輩でもあります。願わくは一層の御活躍を願うわけでもあります。  さて、貿易摩擦の件でありますが、私はこの日米貿易摩擦現況を非常に憂えるわけであります。そこにはわが国自動車産業を初めとするいろいろな問題があることは事実であります。そういう中にあって、なお基本的にはアメリカ側経済的競争力相対的低下高金利政策など、いわゆる経済構造や運営にかかわる基本的な問題が解決されずしては日米貿易摩擦解消にもつながってこないんじゃなかろうか、私はこう思うわけであります。そういう現況にありながらもなお、米議会筋ではいろいろな保護主義的な法案が十数本前後いま出されようとしてきている。そういうところにわが国農林省としてはどう対応していくのか。そこで、二十七品目のうちの二十二品目農畜産品目自由化を迫っているようでありますが、特にその残存輸入品目のうちで牛肉オレンジについては、すでに一九八三年度までの輸入数量合意済みであるはずであります。そういう経過を踏まえてどのように認識され、どのように対応しようとしているのか、お考えをまず伺いたいと思います。
  4. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 対外経済摩擦につきましては、これはわが国にとって非常に重要な案件でございますので、すでに昨年の暮れ、対外経済閣僚会議において五項目にわたる対外経済対策を決定いたしまして、それをいま実施いたしているわけでございますが、特に御承知のように関税率引き下げ前倒し、さらに輸入検査手続緩和等措置をしてまいっておるのでございます。この点についても、農林水産関係者にとってはこれは大変な犠牲なのでございますので、私はこの状況アメリカあるいはECに積極的に話し合いで訴えまして、すなわち、わが国農林水産業状況を理解していただく、また輸入拡大に対する態度を十分理解していただいて、そして今後の、いま木村委員の御指摘になりました残存輸入品目に対して余り影響を与えないように進めてまいりたい。御承知のように、アメリカのこの残存輸入制限品目に対する緩和措置については、非常に強い要求があるんです。ですから、それに対して私たちは何としても日本農林水産業の実態というものを理解していただかなければいけない、かように考えております。  御承知のように、残存輸入品目の二十二品目農林水産関係に非常に大きな影響を与える品目でございますので、これに対してはできるだけ手を染めないようにいたしてまいりたい。また牛肉柑橘につきましては、御承知のように東京ラウンド合意された事項でございまして、これは一九八三年度まですでに決定しておりまして、一九八四年度以降の問題は今後政府間で協議することに相なっているわけでございますが、今後、いま木村委員指摘のような趣旨をも踏まえながら慎重に措置をしてまいりたい、かように考えております。
  5. 木村守男

    木村(守)委員 基本的には、この問題が表面化してきてから田澤大臣におかれてはただいま御答弁願ったような方針を繰り返し述べられ、あらゆる機会にこれを堅持してきていることを多とするわけであります。  そこで、せっかくの機会でありますから、この具体的な農畜産物の問題だけでなく、今回のアメリカを初めとする貿易摩擦についての大臣の受けとめ方はどこにあるのか、そういう本質的な点の御認識をも伺っておきたいと思います。
  6. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 残存輸入制限品目を緩和することによって、貿易インバランス解消にはならないということでございます。したがいまして、このインバランス解消のためには、やはりアメリカ高金利政策によるいわゆる景気の停滞、このアメリカ経済の再活性化というものが非常に必要だと思うのです。このことは日本の私たちにはどうにもなりませんので、日本としてはやはり内需の拡大をして、輸出ドライブのかからない経済政策を進めていくということが必要だと思うのでございます。そういう点が基本だと考えています。
  7. 木村守男

    木村(守)委員 それでは、特に二十二品目のうちで牛肉オレンジについて要請が強いやに聞いておりますが、仮にこの牛肉一つ例にとった場合、これを認めたとすれば、アメリカ側にとってどれくらいの金額になるのか。
  8. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 牛肉オレンジを個々にとりましても、これを仮に緩和した場合に、これからどういう状況になるかということはいま計算するわけにまいりませんけれども、仮に二十二品目を、いま現に関税率引き下げで進めているわけでございますが、この二十二品目が大体十億ドルなんでございます。そういう点から言うと、そんなに高いものになりはしない、こう考えております。
  9. 木村守男

    木村(守)委員 たとえば牛肉自由化したところで飼料の輸入が減っていくというのは、これはもう当然そう予想されるわけであります。そういうようなことで、あるいは果樹をやったところでブラジルという対抗するものがまたそれに問題になってくるだろうし、いろいろな意味で、仮に自由化考えたとしても、アメリカにとっても決して直ちにそれが全面的にプラスだとも思われない。わが国にとってそれがはね返ってくる、こういう現況にもあるようでありますから、ぜひ大臣のこの基本方針は貫いてほしい。  そこで、この自由化を認めるわけにはいかないというその姿勢はいま改めて表明されたので結構なわけでありますが、堅持してほしいわけであります。これは青森県の特産リンゴあるいは各地区のミカン、オレンジに対しても直接影響を与えてくるわけですが、アメリカにとっても大したことではない。六百億以上の日米貿易額に対して、いまの大臣お話からいって二十二品目考えたところで七、八億ドルから十億ドルの問でしょう。こんなことになってくると、実際は貿易摩擦解消にそんなに影響ないのだ、こういう認識お互いに持てるわけであります。  そういう中にあって、翻ってわが国生産農家ということを考えてくると、これはまた長い間の営々とした努力の積み重ねで今日をなしている。そういうことを考えて、なお農家所得の減少が続いているわが国農業現況から考えても、貿易摩擦の名のもとに自由化を迫られているこの問題についてはぜひとも強い姿勢で、政府内の通産当局などで基本的な見解の相違のありようはずがないのだという政府統一見解のもとに、何か昨日総理大臣記者会見で結構な姿勢を示されたことを歓迎するわけでありますが、そういう点でがんばっていただきたいわけであります。  ただ問題は、仮に自由化をしないとしても、関税前倒しあるいは輸入枠拡大、こういうことがずっと続いてきていますね。これはオレンジ一つとってみてもここ数年、五十二年当時から一万五千トン、五十三年には三倍の四万五千トン、五十五年には六万八千トン、こういうことでずっと拡大が続いているわけですよ。しかも、数字を調べてみるとその前からずっと拡大されてきている。そして、アメリカの偉い人かどうかわからぬけれども、どなたか担当の方が来てちょっと会議をやるとまたそれがすぐ拡大されてきたという経緯がある。こういう点を考えてみた場合に、今後この問題についてこういう方向でなし崩しに、歯どめがかからないで——日米貿易小委員会など昨年十二月に行われて、今度は何か三月ごろに予定されているようでありますが、これからのスケジュール等をにらんだ場合そういう懸念がないのかどうか、その点も伺いたいと思います。
  10. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 東京ラウンド合意された事項をいま着実に実行をいたしている状況でございますので、一九八四年度以降の問題につきましてはこれからいろいろ折衝してまいるわけでございまして、私としましては、先ほど来申し上げましたいろいろな機会を通じて日本農林水産業状況を説明し、また日本輸出拡大に対する努力をも理解していただいて、いわゆる残存輸入品日中の農林水産関係品目にはできるだけ手を染めないように、今後も折衝の段階努力をいたしたい、かように考えております。
  11. 木村守男

    木村(守)委員 努力するということは、その目標はあくまでも枠の拡大をしないというふうに理解してよろしいかどうか。
  12. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 できるだけそうしたいと思っております。
  13. 木村守男

    木村(守)委員 いずれにいたしましても、この問題は当面の緊急課題ではあるが、日米両国にとっては今後とも尾を引いていく。いま大臣は、これから八四年度以降八七年までの当面の協議に入るに当たってもその姿勢を堅持するのだ、こういうお話でありますので大いに期待もし、また激励を申し上げておきたい、こう思うわけであります。  今回の農畜産物自由化を迫っている背景には、アメリカ自身努力が国内的に十分でないにかかわらず、アメリカ経済の落ち込み、そして高金利政策をとらざるを得ないという悪循環の中で、やがて今度の秋の十一月の中間選挙を控えているとか、そういう政治的な要因もなしとしないようにも受け取られるわけであります。それだけに私どもは、貿易の問題とは言うものの、農林省としては生産農家あるいは国内経済に与える影響などを考えて、大臣のただいまの御方針をぜひとも堅持してもらいたいことを重ねてお願いしておきたいと思います。  それからいま一つは、そういう過程を経て、なお、その経過次第によってはアメリカECガット提訴考え方向もあり得る、こういうおどしともとれるような意見が出ているやにも伺っております。ただ、いままでガットで問題になったといっても、他の例にとってもアメリカオーストラリアあたりで一件ぐらいですか、実質的に大分複雑になったことがあったようですが、そんなに私は心配しておりませんが、その辺についての動き、見通し、そしてそうなった場合の対応はどのようにしようとするのか、その点も伺っておきたいと思います。
  14. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のように、日本側残存輸入制限の問題をガットに提訴すべしという意見アメリカの一部にあることは事実でございますが、まだ現在の段階アメリカ政府ガット提訴に踏み切ったということではございません。  それで、牛肉柑橘の場合には、御高承のとおり一九八三年度分まで東京ラウンド合意がございますので、東京ラウンド合意存続期間中にこの問題をガットに提訴するということはまずあり得ないことであるというふうに考えます。  それ以外の品目につきましては、ガット提訴という可能性がないわけではございませんが、私どもといたしましては、日本以外にヨーロッパの各国も相当の残存輸入制限を抱えておりますし、また、アメリカ自体がウエーバーを取得しておりますが、十数品目について輸入数量制限を行っているような事態でございますので、そういう中で日本だけがお白州に引き出されてとやかく言われるような筋合いではないという立場で対応してまいりたいと思っております。
  15. 木村守男

    木村(守)委員 時間もありませんので、次に移ります。  この二十日、臨時行政調査会委員懇談会の第一部会梅本部会長筋から出てきた問題として、食管抜本改革論臨調で取りざたされているように報道されております。  御承知のとおり食管法は、昨年、慎重な上にも慎重に審議された上で、現状追認を主とする法改正がなされたばかりであります。そういうところに臨調絡み食管抜本改革論が出てまいりまして、その主たる考え方として、間接統制部分管理という方向意見大勢を占めつつあるようであります。これはきわめて遺憾であります。私ども立場から言うと、たとえ臨調たりとも、こういうことが軽々に議論されるということにさえ不満を持つものであります。この点について、大臣の知る限りの経緯並びにお考えを伺っておきます。
  16. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 第二臨調食管に対するいわゆるニュースが最近新聞等に出ておるのでございますが、具体的にはまだ何ら私の方でもわかりません。したがいまして、今後第二臨調答申を待ってそれに対処しなければならない、かように考えております。
  17. 木村守男

    木村(守)委員 正式には、それは答申を待ってということになるわけでありますが、私は、もっと深刻に農林大臣受けとめるべきじゃなかろうか、こう思うのですよ。少なくとも、責任ある第一部会部会長がそれを明らかにしてきているわけですよ。正式には、それは答申を待ってからというのは正しい。しかしながら、間接統制とか部分管理など抜本改革論意見がもう報道されてきている。部会長が、その意向が内部から大勢を占めてきているということを示された場合、昨年の食管改正のときも、前農林大臣も、食管は堅持する、食管根幹は堅持する、こう言っていますから、この間接統制とか部分管理などを柱とした改革論がもし出た場合はどうするのか。少なくとも、現行食管法根幹は堅持するというそのくらいの決意表明は出していただきたい。
  18. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 御承知のように、食糧は私たち安定供給をしなければならないというのが基本でございますので、それにのっとりまして、さきの国会で新しい食管制度をつくられたわけでございまして、これが一月の十五日から発足しております。その食管制度はあくまでも堅持していかなければいけない、かように考えます。  と申し上げますのは、第一次オイルショック当時、木村委員も御承知のように非常にパニックが起こりましたね。その折に、いわゆるトイレットペーパーだとか洗剤等で非常な恐慌、いわゆるパニックがあったのでございますが、米に対しては国民は非常に不安がなかったということは、管理制度のためなんですよ。ですから、そういう点で、将来とも私は、国民の基礎的な物資であります食糧に対してはあくまでも食管制度を堅持していくという態度を守ってまいりたい、かように考えます。
  19. 木村守男

    木村(守)委員 再びお尋ねします。  具体的に間接統制とか部分管理というその方策は断じてとらない、現行法食管根幹は堅持する、こういうことですか。
  20. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 これは鈴木総理もすでに本会議等で答えておりますとおり、部分管理あるいは間接統制等はしないということでまいります。
  21. 木村守男

    木村(守)委員 結構であります。言いづらいことがあったら、お互い津軽弁でも構いませんから、あとの委員にはわからないことになるから。  それはそれとして、いま一つ田澤大臣水田利用再編対策にかかわる記者会見のことで、あれは生産農家あるいは東北のわれわれの希望するところではあります。しかしながら、いままでの経緯とこれからの厳しい状況考えた場合、果たして、農林大臣みずからが自発的に記者会見生産農家に希望を与えたあれを、今後、二期対策以後、あの考え方で見直してもらえるのかどうか、その真意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  22. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 水田利用再編対策は、御承知のように五十六年度から五十八年度まで、三年間これを実施することになっておるのでございますが、その目標面積は六十七万七千ヘクタールでございますね。今年は、冷害等もございましたので六十一二万一千ヘクタールということで進んでおりますが、これまでの実績は、五十六年度に大きな成果をおさめました関係から、六十六万七千ヘクタールの実績を置いているわけでございます。  そこで、長期目標は六十五年度でございますので、それまでにどういう見通しでこれを進めておるかといいますと、木村委員承知のように、いわゆる米の需要が大体一千万トン程度だろう。したがいまして、それに合わせて作付面積は百九十六万ヘクタールであろう。そういう点からいいますと、生産量は大体一千万トン程度でよろしいのじゃないだろうか。そういう面から、七十六万ヘクタールほどやはり転作をしてまいらなければならないというのが長期見通しなんです。  そこで、私は、農家現状をずっと考えてみますと、また対外経済摩擦等のこういう状況等考えますと、農業近代化というのはどうしても必要だ、そのためには日本農業に意欲的な農政が必要だ、そのためにはどうしても消極的な政策を捨てて新しい日本農政というものを確立しなければいけないという考えを私は昔から持っておるものでございますから、できるだけ早い機会にこの米の需給バランスをとることが当面一番必要であろう。そういう面から言うと、水田利用再編対策というものをできるだけ早い機会に達成して、そうして農家、農民に安心して作付ができるような形を整えたい。それがやはり二期対策にかかっているんじゃないだろうか。いままでは、ともすれば緊急避難的に水田利用再編対策考えてきた。それではいけない、もっと集団的に定着したいわゆる水田利用対策、消極的な意味でなく、新しい農業をこの水田利用再編対策からつくり上げていこうという意欲を持っていただかなければいけないと私は考えまして、地方局長会議においてもこれを述べて、できるだけ二期対策の間にある程度のものをつくり上げることができないかということを申し上げたのでございまして、そのためには、何としても米の消費拡大というものとそれからこの水田利用再編対策実績が一体どうなるのかということが一番の問題なのでございますので、二期対策の間に私たちはできるだけ成果を上げて、三期対策は調整の対策にはいれるならば望ましい姿じゃないだろうかということを申し上げたのでございます。
  23. 木村守男

    木村(守)委員 どうか田澤大臣、自信を持ってがんばっていただきます。  どうもありがとうございました。
  24. 羽田孜

  25. 太田誠一

    太田委員 時間が大分削減されてまいりまして、三分の二ぐらいしかもうありませんので、内容にすぐに入らせていただきます。  いま、わが国農業をめぐって、農業の世界以外からのいろいろな批判もあり、あるいは提言もあるわけでございますけれども、その中に、昨年の第二臨調行財政改革をテーマとする答申が出ているわけでございますけれども、この行政改革という観点からして、まず農林水産大臣基本的なお考えをお伺いしなければならないわけであります。  行政改革理念というのは、いま日本のような自由主義経済をたてまえとする国において、政府が余りにも大きな力を持ち過ぎると民間活力がなくなる、自由主義経済の持っている活力がなくなるということがその理念でありまして、そのためにはまず国民経済全体に占める政府予算の割合を減らさなければならねいという主張が一つ出てくるわけであります。それともう一つは、必ずしもこれは予算の絡む問題ではないけれども政策の体系のあり方行政あり方民間活動に強くくちばしを入れる、手とり足とりでもって民間経済活動に介入をするということが批判をされ、それに対していま答えを求められているわけであります。  そうであれば、農業というものを考えた場合に、これはほかの産業と一律に論ずることはできないわけでありますけれども、少なくともこの考え方から完全に無縁でいられるわけではないわけであります。従来、どちらかといいますと農業者自身の創意と工夫を生かすという観点からは少し保護主義的であり過ぎた、あるいは介入をし過ぎているという指摘があるわけでありますけれども、この点について大臣のお考え方をお伺いしたい。
  26. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 行財政改革については、太田委員承知のように、安い行政を進めていくことが今日の社会、経済情勢の面ではぜひ必要だという意味で、一つは人減らし、金減らし、それから機構減らしということで進められておるわけでございまして、第二臨調の第一次答申は金減らしという面で進められまして、財政という面にかなり大きなウエートを置いていま進められているわけでございます。と同時に、人減らし、機構減らしの面においても農林水産省としてはそれぞれ行政改革の面で協力をいたしております。  そこで、今回の予算編成に当たりましても、私たちは——農林水産省として一番の問題は補助金制度の問題ねんですね。農林水産省としては補助金というものは非常に重要な役割りを果たしているわけでございます。いま御指摘のように農家が自主的に経営を進めていくとするならば、やはり補助政策でもって援助してやるということが一番望ましい姿だと私は思うのでございますので、そういう点では補助金政策というものは非常に重要なんです。ところが、行財政の面で補助金をある程度カットすることが、抑制することが望ましい姿だということが第二臨調から出てきておりますものですから、それに対して私たちは積極的な姿勢でこの補助金を見直していこうということで、今回は統合メニュー形式をとりまして、たとえば新地域農業生産総合振興対策だとか畜産総合対策等に見られるような形の総合的な有機的ないわゆる生産対策を進めてまいるということによって、いままで千二百件ほどの補助金を半分の六百件に削減しましたけれども農家、農民にはそんなに影響を与えないような形、新しい形で私たち行財政改革に対応しているということが実態でございます。
  27. 太田誠一

    太田委員 日本農業以外からの日本農業に対するいろいろな要求の中に、先ほど木村委員から詳細に指摘がありましたような貿易自由化要求といいますか、残存輸入制限の撤廃の要求がアメリカ側から出ているわけであります。木村委員の質問と重複をいたしますが、重ねて確認をいたしますが、アメリカ側から本年十月一日からの協議開始を要求されていると言われております輸入枠拡大について、一九八四年度からの完全自由化の要求に対してはどういうふうに対処されるのか、もう一回簡潔に結論だけお答えいた溶きたい。
  28. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 現在、アメリカ側は、牛肉柑橘につきまして本年十月一日から交渉を開始したいというふうに申しておりますが、まず、交渉の時期につきましては、私ども東京ラウンド合意に即してアメリカ側と協議をして決めたいというふうに思っております。  それから、一九八四年度以降の問題が協議の対象になるわけでございますが、アメリカ側は完全に自由化することを要求するという立場で協議に臨むということをすでに明らかにいたしておりますが、私どもといたしましては、柑橘につきましても牛肉につきましても、わが国農業にとって重大な影響のある作物でございますので、とうてい自由化に応ずるわけにはいかないという立場で協議に当たりたいと考えております。
  29. 太田誠一

    太田委員 わかりました。  先ほどから私が申し上げていることでありますけれども、農民の方々に会うとよく言われることでありますけれども日本農政については長期的なビジョンがないということが指摘をされるわけであります。これは農林水産省の立場からすれば、いやそうではなくてきちんとビジョンは示しているというふうにお答えに必ずなると思います。ただ、われわれから見ましても、もう少し具体的なビジョンあるいは重要度というものをはっきりつけたビジョンというものが提出されてしかるべきだと思うわけであります。  いま、わが国農業については二つの見方が支配をしておりまして、もっぱらそれだけで議論をされている。一つは、いわゆる国際分業論という考え方であります。国際分業論というのは、日本は土地が狭いし賃金が高いから農業の比較優位がないのだ、比較的日本が持っている豊富な生産要素というものは農業に向かないものが多いのだということが指摘をされ、つまり日本農業はもうやめて輸入に頼るべきだという指摘が、主として一部の経済団体からかつて寄せられていたわけであります。もう一つの見方、ビジョン、長期的な展望というのは、いわゆる食糧安全保障論といいますか、日本にとって——日本にとってというよりも世界の国際情勢を見たときに、必ずしも常に平和裏に進んでいるわけではない。もし平和裏に進まない場合に、日本はみずからの力でもって食糧を自給しなければいけない、したがって、少々保護の費用をかけたとしても、何としても、農産物価格がたとえ少々割り高になったとしても守っていかなければいけないというのが食糧安保論であります。  この二つの見方に対して、どちらもこれは悲観的な物の見方ではないか、どちらもこれは日本農業はしょせん国際競争力が持てないものだというふうに判断をしているという意味で悲観論でありまして、悲観論という意味では二つとも同じ見方をしているということが言われるわけであります。  このような悲観論に対して、むしろ第三の立場ともいうべき提言が、昨年の八月に国民経済研究協会から「農業自立戦略の研究」という形でもって提言をされております。そしてまたこれに続いてことしの一月でありますけれども、これは従来は農業の国際分業論にむしろ立っていた経済団体の方から、農業政策について「わが国農業農政の今後のあり方」というふうな提言がなされているわけであります。この第三の見方は、むしろ幼稚産業保護論というものでありまして、幼稚産業保護論というのは、これはいわば経済学上の言葉でありますけれども、当面日本農業が国際競争力を持てないとしても、ある一定期間政府が保護し助成を続けてやれば、十年後あるいは二十年後、三十年後という後には十分な国際競争力を持ち、比較優位を持った産業として成立し得るという見方に立っているわけであります。この幼稚産業保護論によれば、農業というのはアメリカの一九六〇年代の経験によれば、この六〇年代のわずかな期間に単位当たりの収量というのは飛躍的に増加をした。そして、これは農業に関する技術進歩といいますか、技術集約的な農業というのがこの間に開発をされて、そしてまた人的資本の集約というのが集中的にこの期間に行われた。その結果、従来は、日本農業は土地が狭いけれども、一単位の土地当たりの単位収量というのは外国に比べれば非常に高いんだということをわれわれ小学生のときに学校で習った。そして、実際データもそのとおりに示したわけでありますけれども、いまわれわれが一九八〇年代を迎えてみますと、単位当たりの収量というのは必ずしも日本は高くない。むしろトウモロコシや大豆のごときは、トウモロコシの場合はアメリカの単位当たりの収量は日本の二倍になり、そして大豆の場合は日本の一・五倍というふうに、いわゆる労働生産性ではなくて土地生産性そのものが日本アメリカに対して劣ってきたということが指摘をされるわけであります。こういう状況のもととで、それらの経済研究協会などの提言は、ともかく早急に農家の二戸当たりの経営規模を十ヘクタール以上に持っていかなければならないのではないか、十ヘクタール以上に持っていけば何とか国際競争力が持てるということを指摘しているわけであります。  そうであれば、このためにいま日本農政として一体何ができるかということになりますと、三つあると思うのであります。第一に、農地の流動化を進めなければいけない。そしてまた、生来農民が持っております創意と工夫の努力というものを実らせるためには、農地が一つの、たとえば稲作なら稲作しか使えないということであってはならないわけで、農地の汎用化を進めることが必要であるわけであります。そして、農地の流動化、汎用化を進め、その結果として土地の利用権の集積を図っていかなければいけないということは、いまのわが国農政にとっては何よりもまず第一に優先さるべき政策課題であると私は考えるわけであります。  その観点からしますと、これは農林水産省の関係する予算だけではなくて、全体の予算によって縛られて、公共事業の予算の伸び率がゼロにこの三年間抑えられているということが大変な足かせになっているわけであります。公共事業の全体の伸び率をどうこうするというふうな予算の編成の仕方は基本的に間違っていると私は思うわけでありまして、去年の予算編成のときに行われましたゼロシーリング、各省に対して一応の上限を設定するという形でもって、その中は各省の自由裁量に任されるという形がむしろ望ましいわけでありまして、一応全体の予算の総枠に上限を設けて、しかもその中の公共事業と非公共の間の割り振りについてもまた枠を課すということでは、農政の自由裁量の余地というのはほとんどなくなってくるわけでありまして、このような予算編成のあり方そのものが、いま農業政策が新しく前進をしようとするときの足かせになっているということを私は指摘したいわけであります。  そういう観点でもって見まして、その制約の中で、これは農林水産大臣もこれからがんばっていただかなければいけないわけでありますけれども、土地改良長期計画が昭和五十七年、来年度でもって最終年度を迎えようとしている。この第二次土地改良長期計画というものをここでもう一度見直して、もっと積極的な観点から推進をしていかなければいけないと思うわけでありますけれども、このような幼稚産業保護論あるいはもっと前向きの建設的な農政という立場からして、この農業基盤整備という事業についてどのような決意で農林水産大臣は今後取り組んでいかれるか、その御所見をお伺いしたいわけであります。
  30. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 大変貴重な御意見でございまして、農林水産省としては、太田さん御承知のように長期の展望に立ち、国内で生産できるものは極力国内で賄うという基本に立って、国民の需要の動向に応じて農業生産の再編成を図り、さらには農業の生産性の向上を図ってまいる、そして食糧の自給力を確保しようということが基本なのでございます。そのためには、いま太田委員指摘のように、農業技術の開発普及が一番必要だと思うのです。今日、諸外国に対抗できる日本農業を確立するためには、どうしても技術の開発が必要でございます。  過般、アメリカから上院議員の方が何名か参りました。その中のコクランさんという方初め三名の方に私お会いいたしましたが、この方はこう申しておりました。私は、アメリカにおる間は鉱工業生産、特に自動車だとかエレクトロニクスがすばらしいということは理解してきましたが、日本へ参りましていろいろな方々、あるいは各地を視察してみまして、農産物がすばらしいということが初めてわかりましたと言うんですよ。リンゴのすばらしいこと、それからエリザベスというバラ。アメリカではバラが一番好きなんですけれども、あのバラはアメリカではつくれませんと言うのです。ですから、日本の農産物は質的にずっと高うございます、すばらしいものですねと、こういうことですよ。  そこで私は、日本は資源を持たない国でございますが、戦後技術の革新、技術の開発で、今日このような果実をもたらすようになったのだということを説明したわけでございますが、価格の面では確かにアメリカにいま相当の差がありましょう。ECとの関係というのはだんだん近づいてきているわけでございますから、そういう点で、もっと誇りを持って日本農政を進めることが必要だと思います。  いま太田委員から幼稚産業の保護論というのが出ましたが、私はそれが一番正しい進め方だと思います。今後私は、そういう意味では、水田利用再編対策というものは単に消極的な政策じゃないんだ、これを契機に新しい日本農業をつくろうという、もっと積極的な、意欲的な農業に変えていかなければいけない、こう思うのでございます。その意欲的な農業にするための基盤整備というものは当然してまいらなければいけない。  そういう点で、基盤整備はなぜやらなければならないか、この農業をするために、もっとこういう積極的な政策をするために基盤整備が必要なんだ、この政策はもっと大きな力のあるものでありますというと、私も太田さんと一緒に、予算編成のときに政府に思い切って主張できるのでございます。ですから、そういう積極的な、意欲的な農業をつくるように、お互いしてまいらなければならない、かように考えます。私としても、そういう積極的な農業を進めるための政策を今後進めてまいりたいと思いますので、どうぞ御協力を願いたい。  なお、基盤整備については局長から説明させます。
  31. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のございました土地改良長期計画の問題でございますが、ただいま大臣からも申し上げましたように、やはり一つは、土地なり水の資源をどうやって確保していくか。もう一つは、やはり汎用水田化なり高能率な機械化をどう可能にするか。もう一つは、これは公共事業、非公共の事業を通じて一体的な運営が必要になるわけでございます。その上に立って利用権の集積というものをどう進めていくか。さらに農村社会全体にあります生活環境の整備をどう進めるか。こういった視点に立って今後第三次の土地改良長期計画の作業に前向きに取り組んでいかなければならないと思っております。  確かに厳しい財政事情でございます。第二次の土地改良長期計画は、名目ベースでは一応計画量を達成することができましたが、実質的には賃金、物価の増高の中でかなり整備水準がおくれているということは、私は否定できないところだろうと思います。皆さんの、そういった意味での御示唆なりあるいは御支援を頭に置きながら、私どもも前向きに取り組んでまいりたいと思います。
  32. 太田誠一

    太田委員 農林水産大臣の幼稚産業保護という考え方に賛成だという御答弁をいただきまして、大変心強い思いがいたしたわけでございます。  そういう観点からいろいろな施策がなされているわけでありますけれども、最後に、これは御答弁はいただかなくて結構でありますけれども、いま水田利用再編対策で米作の転作が進んでいるわけであります。その転作の後の、農家の方々がいろいろな選択をするわけでありますけれども、野菜、花卉などのハウス栽培に用いられますガラス質のハウスというものに、不動産取得税あるいは固定資産税が家屋並みにかけられるという事態がいろいろな地域で生じているわけであります。これについては、もちろんいまの法体系のもとでは農業用のハウスだけを優遇をして税の減免措置をとるのはむずかしいわけでありますけれども、当面、これは運用についてもう少し転作に協力をした農家の気持ちなり立場なりというものを考えていただくと同時に一将来もしそれが必要であるならば、住宅に対して固定資産税の減免措置がとられていると同じような措置をこのハウス栽培に対してもとっていくような法的な手当てが必要ではないかと思うわけでございます。これはひとつ長期的な課題として御配慮をいただきたいということを最後につけ加えまして、私の質問を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  33. 羽田孜

    羽田委員長 新盛辰雄君。
  34. 新盛辰雄

    ○新盛委員 五十七年度の農政について、大臣の所信表明等で伺ったわけですが、簡単に質問をしながら、お答えの方、的確にお願いをしたいと思います。  まず、ことしの重点目標農政として一体何があるのか。私どもは一昨年食糧の自給自足体制を確立をするために国会決議を行ったのでありますが、この自給力の向上さらには備蓄について一体政府はどういう取り組みをしてきたのか、このことをまずお聞かせをいただきたい。
  35. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今年度の予算編成の重点は、先生承知のように補助金制度にまず思い切った改正を施しまして、先ほど申し上げましたように統合メニュー化形式によりまして積極的なあるいは総合的な生産対策を進めたということが一つでございます。それからもう一つは、中核農家を中心にいたしまして、経営規模の拡大とそれから高能率の生産集団の確立、それからもう一つは、先ほど申し上げましたけれども農業技術の開発、普及と農業の基盤の整備、さらには国民の需要の動向に応じて農業生産の再編成をする、さらに日本型食生活の普及促進をする、さらに心の触れ合う農業社会をつくるということが重点でございます。
  36. 新盛辰雄

    ○新盛委員 心の触れ合うのは結構なことですが、食糧の確保とか自給力の向上というのは一体どういうことがあるのですか。
  37. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 食糧の確保については、一つには、先ほど申し上げましたように、国内で生産できるものは極力国内で賄うというこの基本に立って食糧政策を進めようと考えております。  そこで、わが国で生産できるもの、また、大方自給できるものとしては、お米あるいは果樹、蔬菜、それから畜産物、これは大体日本で自給できるのでございますが、一面、小麦、大豆あるいは飼料穀物等はどうしても海外に依存しなければならないという現状にございますので、こういう点を調整しながら食糧の自給力を確保してまいりたいというのが基本的な考え方でございます。
  38. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先般「わが国農業農政の今後のあり方」こういうことで産業界が農業農政あり方に取り組んでいく理由ということで大々的に経団連の提言がございました。農業過保護論、こうした財界の主張などに対して、農林水産省としては一体どういう受けとめ方をしているか、大臣見解をいただきたいと思います。
  39. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 経団連等の農業に対する考え方は、コストが非常にかかり過ぎはしないか、もっと農業技術の開発によって生産性を向上させなければいけませんという提言なんです。これに対して私たちとしては、確かにそういうことは私たちとしてもしています。しかし、農業は自然を相手の産業でございますので、直ちに生産性向上の成果を求めることは非常にむずかしい。ですから、その間に時間がかかるものでございますからそういう点はやはり理解していただきたい。過保護であると言われますけれども、先ほど申し上げましたように自然を相手の産業でございますので、当然これは保護していかなければならない。これは単に日本だけじゃなくて、EC十カ国においても、アメリカ自体でも、やはりそういう保護的な考え方、保護的な政策はとられているのでございますので、日本においても保護政策はとらざるを得ないということを主張いたしているような次第でございます。
  40. 新盛辰雄

    ○新盛委員 加えて第二臨調方針が、いわゆる農林水産の各部面にわたって先ほどの統合メニュー化の問題を含めて出てきているわけです。十兆円の農業生産額に対して三兆円の国家農業予算を使うというのは大変問題がありはしないかという指摘などとあわせまして、こういうような関係から来るこれからの、後ほども申し上げるいわゆる貿易自由化の問題等々の関係で、ここは毅然として、農林水産省としてビジョンはこれだ、将来の農業はこうなければならない、これを明確にしなければならない時期に来ていると思う。もう遅過ぎるぐらいです。一体これからどうするのかということについて、もう一回お聞かせをいただきたいと思うのです。
  41. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほどお答えいたしましたけれども、私はこれからの農政農業政策はもっと積極的でなければいかぬ、こう考えているのです。たとえばいま私たちが一番力を入れなければならないのは、米の過剰を解消するために水田利用再編対策を進めておりますが、これまで一期対策等に見られる傾向としては、どうも緊急避難的にこの対策をながめてきている、またそういう対応をしてきた。しかし、もう緊急避難的な対応じゃなくして、むしろこの水田利用再編対策を契機に、新しい日本農政をつくろうという意欲ある農業政策が進められなければいかぬ、また農家、農民もそういう形で積極的に対応していただかなければならない時代に入っている、かように考えますものですから、そういうあらゆる政策を消極的な面で見るのでなくして積極的な面で理解していただいて、またそういう形を整えるように農林水産省としてもあらゆる政策を進めてまいることがこれからの農政あり方であろう、かように私は考えております。
  42. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それと関連する減反の問題では、先ほども質問にお答えになっておられたようでありますが、定着した水田利用再編対策、それから一つ農政転換がある、こういうふうにおっしゃられております。第二期対策については六十七万七千ヘクタール、冷害等があるから四万六千ヘクタールぐらいは緩和したと言う。その都度あるいは気候的な天候上の問題、あるいは収益の問題等で変わってくる。ところが実際には、これから後の対策として、減反によって出てくる転作奨励金、これは莫大な金になっているのですね。三千三百八十八億、これはことしだってもう二百億上回ってしまった、こういう状況ですから、統合メニュー化だとか臨調方針による指摘の一番の目がつくところなんですね。こういうこともございますので、もう先ほど御回答がありましたからこれについては触れませんが、農業者の、特に酪農関係の皆さん方の負債処理は一体どうしてくれるのだ。牛を飼えばモーからぬし、さりとて豚を飼えばブーブー、トントンだ、だからといって今度は鶏を飼えば元もケイランなどという、何か風刺があります。こんな調子で、いまもうどうにもならぬそうです。この負債処理を一体どうしてくれるか、端的にお答えいただきたい。
  43. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 ただいま畜産一般の負債についての御質問ございましたが、酪農につきましては、生産が急速に拡大をいたしました過程でやはり装備もそれだけ充実はいたしましたけれども、十分回転しない部分ができてまいりまして、昨年御承知のとおり長期低利、ものによりましては三分五厘、一般的に五分でございますが、償還条件も十五年ないし二十年という非常に長期の資金に借りかえをする制度をやったわけでございます。昨年の十二月に五十六年度分として百六十三億の貸し付けをやりまして、今後五十七年から六十年にかけてさらにその負債の実態を把握しながら借りかえるということを考えております。  その他の問題でございますが、肉牛につきましても、実は昨年、いわゆる負債整理とまではいきませんけれども、やはり条件が必ずしも十分じゃない畜産経営農家につきまして資金制度を設けまして、これは償還期限五年という中期の資金ではございますけれども、一年の据え置きを置きまして一頭当たり肉専につきまして八万円、乳用種につきましては六万円というようなことをやりまして一応の成果を見ていると思っております。  ただ、私どもいろいろ実態を聞いてまいりますと、肉用の肥育の方々なり養豚の方々について、養豚につきましては前年度に養豚のための借りかえ資金を若干用意いたしておりますけれども、それでは十分じゃないというようなお声もあるようでございます。何せこの種の有事の条件の資金でございますので、やはり経営実態も十分把握しながら、真に必要なものについては、いままでもういう対策をとっておりますけれども、その必要な度合いを見ましていろいろこれからの問題としても考えていきたと考えております。
  44. 新盛辰雄

    ○新盛委員 貿易摩擦の問題に触れてまいりたいと思いますが、これも先ほどから質疑が交わされております。結論は、いまアメリカでしきりと議論されている相互主義にかかわる法案提出、まさに江崎代表団、いま四苦八苦この辺の探りを入れておられると思いますけれども日本の市場は閉鎖的だ、そういうふうに言われている筋について、アメリカなりあるいはEC諸国もそうですが、明らかに国境措置をとっております。自国の中でそういう状況、しかも日本に強くそれを求めてきている。二十二の残存輸入品目の、特に農産品でありますが、これはいろいろな言われ方、けさの新聞にも出ておりますし、いまも大臣は決意を述べておられますけれども、通産大臣またその衝に当たる外務大臣など、どうも閣僚の内部において意見の調整ができていないのじゃないかという気がするのです。ずばり聞きますが、一体これからこの問題では東京ラウンドの線をそれ以上拡大することになるのか、あるいは米国との交渉もこれから行われるわけでありますが、どういうふうに堅持するのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  45. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、貿易摩擦解消政府の重要な課題でございますので、政府全体の結論としては、対外経済閣僚会議で結論を出して、そこでもろもろの政策を進めてまいるわけでございまして、すでに五項目にわたる対外経済対策対外経済閣僚会議で決定いたしているわけでございます。  そこで、先ほども先生から御指摘がありましたように、農林水産物全体から見ますというとアメリカの入超が大変なものなんです。でございますから、農産物全体からの相互主義といいますとむしろ私の方がお客さんでございますから、たとえば農林水産物全体ではアメリカからの輸入が百二億ドルでございます。それで、穀物で約二千万トン入っているわけでございますから、いま日本で穀物を入れているのは全部で二千五百万トンから二千六百万トン、その中の約二千万トンをアメリカから輸入しているという状況でございます。でございますから、そういう点から言いますと、アメリカに対しても私たちは物申す点が非常に多いと思うのですね。またEC等については、これは非常に保護政策をとっております。たとえばECでは課徴金制度をとっておりますし、また輸出に対する奨励金を課している。その網の目から出たものを残存輸入制限品目として、フランスなどは十九品目でございますか、デンマークで五品目ほど残存輸入品目があるという状況でございます。また、アメリカ先生承知のようにウエーバー制度によって農産物の保護が行われているという現状等を考えますと、私たちは農産物の残存輸入品目については極力それらの情勢をアメリカに説明し、ECに説明し、また日本の農林水産行政の実態を理解していただいて、できるだけ緩和に手を染めないようにいたしたい、かように考えております。
  46. 新盛辰雄

    ○新盛委員 工業製品の輸出ドライブによってこうした貿易摩擦が起こったのです。そのツケを日本農業に転嫁させようとすることについてはわが党は基本的に反対であり、同時に、貿易優先政策や黒字減らしで、これによって農産物の過剰な輸入、そのうらはらには国内において縮小合理化、メニュー化あるいは減反減産政策を強行する、これはわれわれとしてはどうしても納得ができない。あくまでも残存輸入制限品目である農産品の二十二品目はぜひひとつ守り貫き通してほしい。業界の方からも系統団体が言っているように、もう牛肉にしてもオレンジにしても、すべて現在あります輸入を計画的に漸次削減してほしい。そうでないと国内の自給体制が確立できない、こう言っているわけです。だから、国内農業生産の拡大をするということは、やはり冒頭申し上げた自給力と備蓄、日本農業を守る、その一点に集中していくわけですから、外から見れば過保護じゃないかと言われるかもしれませんが、一体日本農業をどうして守ってくれるんだ、こういうことに帰着をするわけです。大臣、閣僚の内部で政治的決着とか、あるいはこれは鈴木総理が判断をするということになる話だと思うのだけれども、しかしここは農林水産委員会として、農林大臣はここで明確にそのことについては職を賭してとまでは言いませんが、体を張ってひとつやっていただく決意をもう一回聞いて、次に入りたいと思います。
  47. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 残存輸入品目については、農林水産大臣としてはできるだけこれに手を染めないように今後も努力してまいります。
  48. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これは後ほど同僚議員の方からまた追及があると思うのですが、先般のチチュウカイミバエに関する日米の植物検疫専門家会議、ここで合意されたわけですが、どうもながめていて、これもこの委員会で相当激論をやったのです。ところが、通産大臣がレーガン大統領とお会いになって政治的に、経済的にというか、何かその辺でふやふやと形が変わって合意に達せられた緩和措置ではなかろうか。科学的根拠は何一つない、全く迷惑な話でありまして、これは大臣、一体どういう御見解ですか。
  49. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 具体的な内容については局長からお答えさせますが、政治的配慮は全くございません。
  50. 小島和義

    ○小島政府委員 今回の専門家会議は、昨年以降アメリカカリフォルニア州で発生しておりましたミバエの発生状況が、秋以降急速に改善されつつあるという状況を踏まえまして、そろそろ昨年八月以前の状態に戻してくれてもいいのではないか、こういうアメリカからの要請に基づいて行われたものでございます。結果的には、規制緩和の時期につきましては当方の見解でありますように、アメリカの八月に飛び火をいたしましたスタニスラウス郡、ロスアンゼルス郡、その両郡のチチュウカイミバエ絶滅宣言を待ちまして、八月以前の扱いに戻すということで押し切ったわけでございますから、そのことについては何らの配慮が行われておらぬわけでございます。  またレモンにつきましては、レモンそのものがアメリカの実験結果によりましても、一番この虫がっきにくい果物であるということ、それから冬場という発生の非常に鈍い時期であること、また、これまでチチュウカイミバエの発見が行われた郡で生産されたものでないことなどを条件といたしまして、この四月十日までの暫定的な取り扱いを決めたというものでございます。さらにもう一点の船上での冷却処理、こういう技術的な問題について決定をいたしたもので、たまたま安倍大臣の訪米ということと時期が重なりましたものですから大変な誤解を受けておりますが、全く技術的な見地から相談をして決めたものでございます。
  51. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その問題はまた後ほど同僚議員の方から追及があるかと思います。  林業の関係について質問をいたしますが、現下の木材産業の不況、これは大変なことになっております。木材産業の再編成対策など、いろいろと具体的に対策は立てておられるとは思いますが、また新たに第六次の治山事業五カ年計画、そういうことも進められているようであります。これからのこうした林業対策について、造林なりあるいは取り組まれる第六次治山事業もそうでありますが、大臣は一体どういうふうにお考えになっておるのか。例の所信表明演説では、ただ単にこれからの振興政策の一端がうたわれているようでありますが、ひとつ決意をお聞かせをいただきたいと思います。  ついでに、松くい虫の対策については、後刻法律の説明もありましょう、また論議もしますが、全体的にこれまで空散というのが大体主力であった。しかしこれからは、それもやはり残してはいくけれども、伐倒あるいは焼却、そういう防除方法に変わっていかざるを得ない。これは森林のいわゆる害虫防除全般的な問題でありますけれども、松くい虫に限らず、いまからこうした人手がかかる方向へ山を守るという意味で転換をされたというふうにわれわれとしては受けとめていいのかどうか。言うならば、ただ薬をまき散らしてスミチオン、薬会社をもうけさせているだけでは事は済まされない。この際は、やはり山を守るための政策が伐倒、焼却という方向で進んでいく、こういうふうに変わってきたというふうに思われますが、その辺についてどういう背景があるか、お聞かせをいただきたい。
  52. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 森林、林業界の現状は大変な不況の状況でございますのは先生指摘のとおりでございます。それはやはり景気の落ち込みが住宅着工率を大きく下げたということによるものが大きいわけでございまして、また林業の面ではやはり老齢化も非常に大きな影響を与えております。そういうようなことで国内林業活動が非常に停滞いたしております。したがいまして、造林、伐採あるいは間伐等の作業が非常におくれているという状況にございますので、私たちとしては、まず各木材業者のいわゆる不況対策のために林業再編対策のための予算を計上してございますし、また治山五カ年計画も立てましてこれらの対策を進めているというのが現状でございます。  また、この山に対しては何としても思い切った対策考えて進めなければいかぬ。それは資源の不足な日本としては、一つは教育の積み上げによって人材をつくるということと、もう一つは、山に造林することによって資源を得るあるいはまた水資源あるいは治山治水のための大きな役割りを果たすということが私たちのこれからの大きな役割りじゃないだろうか、こう思いますので、そういう点を配慮しながら今後進めてまいりたい。そのためには、やはり林業を中心とした定住ということを十分配慮しながら今後対策を進めてまいらなければならない、かように考えます。  また、松くい虫については、いま先生指摘のように、単に薬剤を散布するというだけにとどまらず、今後は、伐倒、破砕、焼却という点をも考慮した対策を進めなければいかぬ。また、市町村にも参加していただいてその対策考えていただくために、新たに法制化をいま準備しておりまして、近くこの委員会にもお願いしなければならないと思いますので、その折はどうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。  なお、具体的な面については林野庁長官から御説明をさせます。
  53. 新盛辰雄

    ○新盛委員 林野庁長官からお答えをいただく前に、国有林野事業の経営改善計画に基づいて、今般、七営林署の統廃合がすでに昨年の十二月二十五日官報に掲載をされて、三月からこれが一斉に実施される経過になったようであります。これに対して、もちろん地元等の意見を十分にお聞きになったと思うし、当該の労働組合との間の交渉等も続けられたと思いますが、一体この辺の経過についてはどうなっているか。特に、地元からは強い反対の要求がございました。あるいはまたそれにかわる請願などもあったと思いますが、こうしたことに対して、林業対策として、先ほど大臣が決意を申し述べられたその趣旨に沿うならば、当然地元の要求等も入れられなければならないわけでありますが、この七営林署統廃合のことについて、例を大島営林署、特に遠距離の場所にありますだけに、どうされたかを含めて、お答えいただきたいと思います。
  54. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  先生指摘の営林署の統廃合につきましては、国有林野事業の経営改善の一環ということでやってまいっておるところでございます。九月十八日に署名の提示をいたしまして、二十五日に計画説明をいたしまして以来、営林局長、林野庁挙げて、地域の皆さんの御理解をいただくべく努力してまいった次第でございます。  そこで、昨年十二月二十五日に、地元の皆さんの御意向を踏まえまして、当初予定しておりました統廃合の実施期日を一カ月延長いたしまして、五十七年三月一日をもって統廃合をするという告示を行ったところでございます。地元対策等につきましては、以来、営林局を通じまして地元の皆さんといろいろと話し合いをしてまいっておりますが、特に、具体的に申し上げますと、地域の実態に合いますように、地域の振興施策につきましていろいろといま打ち合わせをしておりますし、さらに、統廃合の後の地元サービスの低下を来さないように、営林事務所を必要に応じて設けるというようなことでも対応しています。  特に、先生指摘の大島につきましては、離島でございますので、大島営林事務所につきまして特に代行会計機関を設置いたしまして、従来よりも契約金額等も上げましてこの機能の確保に努めておるところでございますし、また、統廃合によりまして職員の労働条件等につきましても低下を避ける意味で意向を十分聞きながら、三月一日付で配置転換を円滑にしてまいりたい、かように考えて現在進めておるところでございます。  以上でございます。
  55. 新盛辰雄

    ○新盛委員 続いて水産関係に入りたいと思うのですが、御承知のように、各国々の二百海里設定等の規制強化はもう目に余るものがあります。燃油価格は相変わらず上昇の一途をたどっております。魚価は低迷をして、しかも現在では、漁業経営者はもはや経営を維持することができないほどに、負債の残高が生産額を上回っているという状況まで来ております。  遠洋漁業が特にこうした大きな危機的状況をもたらしている一つの問題は、入漁料などをいままでは多額に払っていましたが、ミクロネシアその他、もはや二百海里内では魚をとってはならない、外国船を規制をするという措置に出ておりますし、また、海まき転換だと称して、いま日鰹連等が続けておられるマグロ、カツオなどの減船政策は大変なことであります。例の、減船する側の皆さんは一億五千万の減船補償。ところが今度は、残る人たちも、共補償で三千七百万ぐらいを払わなければならない。残るも地獄、行くも地獄で、これは大変なことになってきた。こういう全体的な状況から見て、もはやこれから、足の長いいわゆる遠洋漁業よりは、つくり育てる漁業へという転換が迫られている状況ですね。  水産業というのは、日本人の動物性たん白供給源の最たるものであります。これは最近、この経費が非常に高くなる、漁業経営は著しく悪化している。融資残高が、昨年の例でいきまして三兆円強で、漁業生産額は二兆九千九百億、約三百五十億円も負債の方が上回っているのです。これは大変なことであります。  しかも今回、予算を見ますと、実は漁業安定資金として、これは融資政策として三百五十億つきました。逆に油対策は、一千億が今度は三百億減らされて七百億であります。いわゆる内部の操作によってできているじゃないか。ただ単に、特定漁業再編のためへの十億が二十億になった。これは、例の海まき転換あるいはそれに伴う減船補償と共補償を含めての措置ではないかと思うのです。こういう融資政策だけが、実は漁業を振興させる唯一の手段か。もはやそうではなくて、抜本的な漁業対策を立てない限り、これから一、二年のうちに、特に、伝統的な一本釣りカツオ漁業などはもうつぶれてしまう。  現に、私は鹿児島だから、枕崎のあの浜では、いまキロ当たり二百円を割っているんだそうです。本来、三百二十円ぐらいなければとても採算がとれない。それが、アメリカへの缶詰の輸出が停滞をしたり、あるいは海まき転換で一網打尽にとってくる過剰生産のためにそうなってきたのか、あるいは調整保管事業が悪かったのか、何にしましても危機的状況であります。これをどういうふうに打開されるのか。さらにつけ加えて、この海まき転換というのは、五隻をつぶして一隻に統合し、いわゆる一カ統と称しておるわけですが、五十四年までは十一隻おったのが、五十五年に十二隻になります。六十隻つぶすのです。五十六年には十隻。五十隻つぶす。そして結局三十三隻がいわゆる四百九十九トン型の大きな船に変わっていくわけです。  一本釣りのカツオ漁業者あるいはマグロの方も、これは当然減船ということになります。ここで働いている漁船員は、マグロの方で三千五百人、カツオの方で九百人、この人たちは即座に職場を失うのであります。どこへ行くのか、離職者の対策について何ら——北転船のときにも議論がありましたが、これからのこうした対策についてどうされるのか、何らの政策も出されていない。こういうふうに、遠洋マグロはえ縄、遠洋カツオ、五十六年、五十七年、百九十九隻も減船になる。他国で何かそんなことが起こっているらしいぐらいの感覚であります。まさに国内の漁業経営者全体にとってみればこれは大変なことでありまして、このことについてはもう一括申し上げましたから、ひとつ随時お答えをいただきたいと思います。
  56. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 具体的な内容については水産庁長官から御説明させますが、基本的な問題だけを申し上げたいと思うのでございます。  いま先生指摘のように、二百海里規制の強化、燃油価格の高騰によりまして、新しい秩序をいま求めなければならない状況にあることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私たちとしては、沿岸漁場の整備を図る、それで、わが国沿岸水域の豊富な水産資源を活用する、そうして育てる漁業を推進してまいらなければならない、こう思います。  一方、遠洋漁場についても、やはり今後も漁業外交を積極的に進めまして、遠洋漁場の確保もしてまいらなければなりません。もちろん燃油価格の高騰が、いま先生指摘のような状況に実態はなっておるわけでございますが、それに対して、消極的な政策でございますけれども、減船対策あるいは燃油価格の高騰等に対してある程度対策を講じてまいっております。基本的には、沿岸漁場の整備を積極的に進めて水産日本としての新しい姿をつくり上げていかなければならない転換の時期でもあろうと思いますが、これをいま直ちに新しい秩序に切りかえることもなかなかむずかしいというのが現状でございます。
  57. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先生幾つかおっしゃいましたので、区分けをしながらお話を申し上げたいと思います。  まず第一に、経営の安定対策でございます。先生指摘のように、漁業の生産額に対しまして負債残高が非常に多くなっているという実情でございまして、しかもその内容を見ますると、最近における燃油の高騰に対しまして魚価が低迷しておるという状況から、各漁業とも皆赤字の状態になっておるということは御指摘のとおりでございます。このために従来から、固定化債務の整理のための漁業経営維持安定資金、あるいは燃油価格の高騰に伴います対応策としての漁業用燃油対策の特別資金、あるいは国際規制の強化に伴いまして、これの対応策といたしまして、国際規制関連経営安定資金といったような諸資金を貸し出してまいったわけでございますが、御指摘のように、このような応急の資金の手当てだけではとうてい対応できないという事態になっておることは事実でございます。  そこで、私ども基本的に考えてみますことは、一つは、生産構造の再編成と申しますか、ただいま大臣もお触れになりましたが、減船をも含んだ基本的な生産構造の再編対策ということを考えなければならない時期になっているのではないかというふうに考えまして、先ほどお触れになりました三百五十億の負債整理資金をこのような生産構造の再編に資するということで、漁業者の間の自主的、計画的な減船計画、あるいは合併等によりますところの経営の合理化というものを推進していきます際における必要な負債整理のための整理資金を今回設けたわけでございます。また、このほかに共補償資金の拡充といったようなこともやっております。また、特定企業生産構造再編推進事業のための二十億の資金も確保し、信用基金制度のファンドの樹立といったような諸般の金融政策をこれに対応させて設けまして、構造的な再編成に備えることを考えたわけでございます。  もとよりこのような制度を進めてまいるわけでございますが、一方におきまして、従来の資金につきましても、これは急遽一挙に返還するわけにはまいりませんので、従来の資金もそれ相応に供給してまいるという考え方でございます。また同時に、このような危機的な経営の状況に対応いたします長期的な政策としましては、やはりコストを下げていくということが非常に重要でございます。さような意味で、省エネの徹底ということの対応策から、金融なりあるいは税制面での省エネの促進ということを図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  次に、やや混同してお聞きいたしましたけれども、お触れになりましたマグロの減船の問題、それから海まきの転換の問題、これを分けて御説明いたします。  まず、マグロの減船でございますが、カツオ・マグロ船につきましては釣獲率がきわめて低下しているし、また世界的な傾向でございますところの二百海里の設定によりまして、漁場も次第に狭まってまいっております。このような中におきまして、何と申しましても先ほどから申しておりますところの生産構造の再編成ということをマグロ・カツオ業界も実施していかなければいかぬという状況になっておりまして、その中でまさに自主的なカツオ・マグロ業界の対応といたしまして、二割の減船を五十六年度及び五十七年度の二カ年間にわたりまして実施していこうということを考えてまいっておるわけでございます。これは全く業界の自主的な動きでございます。  これに対応いたしまして、私どもも共補償の資金の充実だとかあるいは五十七年度につきましては、負債整理資金の充実といったようなことでこれに対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございますけれども、何分にも百六十五隻という大幅の減船をしていくということでございまして、そのための諸般の対策というものが必要になってまいりますので、これに対しましては、政府といたしましてもできるだけの支援をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  特に、お触れになりました漁業の離職者の雇用問題、これは非常に重要な問題であると私どもも思っております。そこで運輸省及び労働省ともすでに協議をいたしておりまして、特に漁業再建整備特別措置法の適用、それから雇用対策法の適用ということを考えておりまして、職業訓練なり就職指導なりあるいは職業転換給付金の支給といったようなことをすでに話し合っております。また特に今回は、離職者の発生を極力少なくするということがやはり基本であろうというふうに考えますので、労使間におきましてこの問題について十分に話し合ってもらって、特に漁船同盟と日鰹連あるいは全漁連の三者の間で、できるだけ離職者を少なくするということで話し合ってもらいたいということで、鋭意指導いたしている次第でございます。  次に、海まきの方でございますが、海まきにつきましては、先生も先ほどお触れになりましたけれども、昭和五十二年までは海まきの増隻は凍結されておりました。ところが近年に至りまして、特に海まきにつきましては周年操業が可能になったという技術的な開発もございましたが、一方、カツオ釣りの漁業につきましては燃油も高騰いたしましたし、また五十三年の大不況がございまして、カツオ釣り漁業の中から、むしろこのような経営不振を打開するためにはどうしても海まきへの転換を一部考えなければならぬという気持ちも出てまいったわけでございます。もとより私どもは、カツオの釣り漁の方を将来ともなくすなどということは考えておりません。それはそれなりに生きていっていただかなければならぬと思っておりますが、やはり世界の大勢というものを考えてまいりますと、アメリカなりあるいは韓国なりで相当の海まきの漁船をつくって太平洋に出しております。したがいまして、このようなことから、私どもとしましては一方で減トンをして転換をしていくということを考えながら、海まきの漁船を三十三隻までふやしていきたいというふうに考えているわけでございます。ただ、この政策は五十七年度まででございまして、それから先は当分の間増隻をするつもりはないのでございます。  以上でございます。
  58. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  59. 羽田孜

    羽田委員長 竹内猛君。
  60. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 田澤農林大臣農政に対する所信に関連して、若干御質問をしたいと思いますが、まず最初に、行政改革農業の位置づけということについて質問します。  ことしは行革も二年目になるわけでありますが、昨年の結果が問われるわけでありまして、それは予算の面で明らかにされていると思います。一般会計が六・二%の伸びを示しておりますが、これはまあ一〇%を割った、国債も二〇%を割ったということで一七・七ということになっておりますけれども、一般会計四十九兆六千八百八億の中で、農林予算が三兆七千十億、これは総額に対して七・四%であり、一般支出に比べても一一・四%となって、五十三年の一一・九から毎年〇・一%ずつ減じている、こういうことになっている。  そこで、一方防衛費の方を見ると、五十三年の一般支出におけるシェアは七・四%、本年は伸び率が七・八、そのシェアは七・九と、二兆五千八百六十一億という形になっている。食糧は国の安全保障である。農業はそれを生産する重要な基盤であるということをしばしばここで決議をし、答弁もされている。にもかかわらず、こういう大きな矛盾というものは、これはどういうふうにお考えになるか、大臣の所見をひとつ伺いたい。
  61. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農林水産の予算についての、防衛あるいはその他の予算から見て全体が低いのじゃないか、どういう考えを持っているんだということでございますが、先ほど申し上げましたように、農林水産省としては、まあ皆さん方からも一番心配されたのは、補助金制度というものは一体どうするのか、これは大きく削減されるのじゃないだろうかという心配があったのでございますが、農林水産省としては、やはり行政にとっては補助金制度というのは、一番いま重要な役割りを果たしてこれまでもきましたし、今後もまた進めてまいらなければならないものでございますから、これに対する考え方をまず貫かなければならないということから、先ほど申し上げましたように、これまでは各部局でそれぞれ要求しておりました補助金を、統合メニュー形式でこれを要求して、千二百件ほどの補助金が六百件に縮小されたのですから、その事態を見ますというと、確かに影響あるように見えますけれども、このことによって決して農業政策の面においてマイナスな点を与えないという点を御理解いただきたい。そのほか、公共事業等についてもそれぞれ適当な措置を施しておるのでございまして、私はいま先生指摘のような表の面だけでそれを農林水産行政のマイナスじゃないかというようなことはちょっと当たらないのじゃないだろうか、内容にわたって御審議いただきますならば、私は十分御理解いただけるものと思いますので、今後ともひとつ御協力を願いたい。
  62. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 せっかくの説明だけれども、なかなか理解ができないですね。というのは、行革とは農業予算をだんだん削る、あるいは社会福祉を削る、教育の費用を削って、そして防衛費をふやすという方向にどうしても集中している傾向がある。これは最近の数年の状況を見てもそうなんです。一般予算の中で農林予算が〇・二%しかふえてない。にもかかわらず、防衛が七・八もふえているということは、これはどうしても考えられないことなんです。本来であれば、まず食糧が確保される、そしてその食糧を生産する基盤が強くなる、そういうことでなければいけない。にもかかわらず、いまの話は確かに一千二百あったものが六百ぐらいに補助金がなりましたが、それはいままで裏表で千二百あったやつを一本のそれにすれば、裏表が一つになれば半分だって結構やれるわけなんだから、それはやはり名称のつけ方であって、その一本の中身がふくらむか細るかということになると、これは細っているという形にしかならない。だからやはり後退だと、こういうふうになる。どうでしょうか。
  63. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 具体的な内容については官房長から説明をさせますけれども食糧の確保の面から言いますと、新しい食管制度基本にしながら、食管会計は決して後退するような形にはできておりませんので、そういう点はひとつ御理解を願いたい、こういうことでございます。
  64. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  ただいま竹内先生からお話しございました予算の伸び率についての御指摘は、そのとおりでございます。しかしながら、五十七年度予算の編成にあたりましては、御承知のように赤字公債は削減はいたしましたけれども、過去に累積されました公債の利払い等が非常に多くございまして、五十七年度におきましては、前年度対比一七・七%、あるいは所得税、法人税、酒税、三税の三二%を地方に対します交付税に当てておりますが、これは法律上必ず交付しておるわけでございまして、この伸びが一四・二%というように、財政の非常に厳しい中におきまして、私ども農林水産関係の所要の予算を確保するために最善の努力をしたわけでございます。  この際、臨時行政調査会におきましては、たとえば公共事業費の前年同の抑制とかあるいは新規事業の抑制あるいは食糧管理、水田再編対策あるいは基盤整備、構造改善事業その他につきましても非常に厳しい合理化あるいは節減の努力を要請されたわけでございますが、私どもこの限られた予算事情の中におきまして、先ほど大臣からお話しございましたように、補助率の一割削減に対しましても、各種の補助金の統合化あるいはメニュー化によりまして、農家あるいは農村の実態に即した、また計画性を持った予算が執行できるということで、これらの予算の不足額あるいは減少額をカバーしていく、そういうような努力をしてきたわけでございます。
  65. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは意見ですけれども食管にしましても、生産者米価を何年も何年も値上げをしない、消費者米価を値上げをするということで食管の問題を始末をしているわけであって、これは政府も大蔵省も痛くもかゆくもない。農民と消費者に責任を持たせただけの話だ。そうでしょう。だから、たとえば五十年のときには食管の赤字は四〇・一あった。今度は二六・七ですか、こういうふうになってきて、それは確かに食管の赤字も減っている、世間からいろいろ言われるけれども。しかしそれは、つまり農民の米価をこうやって何年か抑えたでしょう。去年だって抑えたですね。ことしも値上げをしないような状況だ。そして消費者米価を上げれば、当然それはそうなる。これは意見だから、これ以上のことを言ってもしようがないから、これからの議論。  そこで、大臣、先ほども議論があったけれども農業の過保護論というものがある。財界の大体、労働界の一部、それから学者の中にもそういうことを言うのが出てきている。これに対して、率直に言って大臣はどうお考えか。
  66. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、農業は自然を相手の産業でございますので、やはり生産性の向上あるいはまた農業生産の再編成を進めなさいと言いましても、鉱工業生産のように直ちに切りかえることはできないという性格を持った産業でございますので、やはりある程度の保護をして差し上げないというと、農業は活気ある農業にならないと私は思うのです。しかもこれは、日本の一億の民がすべて鉱工業生産に従事してこの国が成り立つならそれでよろしゅうございますけれども、一億の民は、あるいは鉱工業生産に従事する人、公務員の人、あるいは農業を営む人、中小企業の人、この人たちがすべてこの産業を維持する、経営することによって日本経済が支えられているわけでございますから、日本国民生活は維持されているのでございますから、そういう面からいいますと、私は、あくまでもやはり農業はこの程度の保護は当然して差し上げなければならないもの、かように考えております。
  67. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、先ほどからずいぶん議論になっている問題で、いわゆる自由化の問題がある。これは農林水産省とすればむしろ被害みたいなものなんです、実際の話が。たくさんの穀物を輸入していて、その上にさらに今度は残った部分についての完全な開放をしろ、こう迫っているわけでしょう。通産省の方ではこれに対して、制度的に見てどういうふうにこれを取り扱っていくお考えか、ちょっと通産省から説明をしてもらいたい。
  68. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  通産省全体といたしましての貿易政策は、世界経済の安定的な拡大と自由貿易体制の維持発展を図るためには、世界経済の中で重要な位置を占めておりますわが国輸入拡大のための努力が必要だと考えてはおりますが、先生御質問の農産物の輸入につきましては、関係諸外国との友好関係の維持増進といったことに留意しつつ、その需給動向あるいはわが国農業の健全な発展との調和のとれた形といったようなことが基本的に重要であると考えて対処をしているところでございます。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なお、もう一点お伺いしますけれども、残された部分を仮に輸入するとすれば、金額で幾らくらいになるか。
  70. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  ただいま割り当て制のもとにあります品目を全部自由化したら幾らくらいの輸入になるかという御質問でございますが、輸入自由化しました後の価格体系がどうなるか、それに基づきます需給関係、需要動向がどういうことになるのかといった問題、むずかしい問題がありますので、的確な数字を申し上げるわけにはまいりませんが、御参考までにただいま割り当て制、特に残存輸入制限品目になっておりますものの輸入総額は、大体四十億ドル強でございます。そのうち三十億ドル程度が石炭でございますので、農産物関係は十億ドルをちょっと超える程度のものとなっているのが現状でございます。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 けさほどからも議論があるように、大臣、ひとつ自信を持って輸入は阻止をしてもらいたい。というのは、百九十億ドルの赤字の中で全部やっても十億ドル、これは小さい、小指の先のあかみたいなものですから、そういうものについては断固として国内の農業を守ってもらいたいということと同時に、大事なことは、いま各地で非常に心配しているのは、たとえば落花生でもコンニャクでも、コンニャクはアメリカには関係ありませんが、落花生あるいはトマトに関する問題でも——この前あるところを自由化すると、台湾からたくさん入ってきたという形になっている。そういうものからオレンジ、まだたくさんあります。各地域における特産物だ。技術と土壌それからいわゆる経営能力というものがちゃんと備わっているところであって、米にやや匹敵する、より以上の収入のあるところでそれが存続している。これを自由化してくるとなれば、それはみんなつぶれてしまうということになっては——一方においていま米が生産調整で値が上がらないという段階、畜産物もちょっとこれは怪しいというときに、日本農業は全部だめになってしまうんだからこれだけは絶対にがんばってもらいたいということで、先ほどから、決意ははっきりしている。総理大臣も何かしら決意をしたようですけれども、もう一つ断固として阻止するという決意を明らかにしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  72. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この対外経済摩擦の問題は政府としては非常に重要な問題である、したがいまして、これまでも貿易拡大のためのそれぞれの措置は進めてまいりました。しかし先ほど申し上げましたように、いわゆる関税率引き下げの問題だとかあるいは輸入手続の緩和等措置を講じてまいったわけでございまして、この点を極力アメリカあるいはECに説明をし、そして日本農林水産業の実態を理解していただいて、この残存輸入制限品目にできるだけ触れないように私たちはしてまいりたい。私は閣議等においても、あるいはまた対外経済閣僚会議においても、農林水産大臣としてこの点については積極的に説明をし、そして理解を求めて、今後この点には努力をしてまいりたい、こう考えております。
  73. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはぜひがんばってほしいということを要望し、いまの御発言のようにさらにひとつがんばっていただきたい。  さてそこで、やがて問もなく養蚕の価格、繭の価格を決める時期が来ますけれども、その中身のことは申し上げませんが、この間からの局長等との話の中で、私は一点確認しておきたいことは、価格を決めるときに蚕糸業振興審議会の中に製糸業の労働者の代表を加えてほしいという強い要望がありました。これは話を聞いていると、ごもっともなことだと思う、実際の話が。確かに生産者あるいは消費者、それにそれぞれの専門家——糸をとる労働者というのは各地に組合製糸やそれぞれの製糸がありますから、その代表の意見を聞くということはいろいろな意味で大事なことだから、ぜひそれはやってもらいたい。これについてはいかがでしょうか。
  74. 小島和義

    ○小島政府委員 蚕糸業振興審議会は、生糸の生産、流通、加工、関係する団体、業界が非常に多うございますので、それらの業界の代表をもって構成をいたしておるわけでございますけれども、これまでは一つの業種の中で労使間で見解が分かれるという問題は少のうございました。その意味で経営側の代表が入っておればそれでいいのではないか、こういう考えで運営をしてきたわけでございます。この事情については恐らく今後もそれほど大きく変わることはないのではないかと思いますが、製糸関係の労働者の団体からは前々から御要望もございます。したがいまして、この次の改選時期にはひとつ検討してみたい、かように考えております。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひこれは検討して、前向きに処理をしていただきたいと思います。  そこで、大臣方針の中でもいろいろありましたし、先ほどからのお答えの中にもありましたが、中核農家をつくっていく。中核農家と、わが国農業の中で圧倒的に多い第二種兼業との関係をどういうふうに取り扱われるのか、まずそのことから……。
  76. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  中核農家と申しますのは、農業生産力の発展の担い手となる技術や経営能力にすぐれ、高い生産性と農業所得を上げる、いわば農業を本業としている農家、こういうものでございまして、私ども、今後の農業の発展のための中核になるという意味で、これらの農家を中核農家と申しているわけでございます。しかしながら、中核農家農業生産量に占める割合といいますものは、必ずしも土地利用型農業におきましてはそう多くはないわけでございまして、施設型農業、畜産とか野菜、その他については相当大きなシェアを占めておりますけれども、土地利用型農業におきましては必ずしもそのシェアは大きくないわけでございます。むしろ第二種兼業の方々の占める地位が大きいということもございまして、今後の農業生産の発展を考える上におきましては、中核農家を育成することは無論でありますけれども、そればかりではなしに、やはり兼業農家と中核農家というものが手をつなぎ合うといいますか、地域ごとに組織化をされた形で、中核農家あるいは兼業農家が手を取り合って一つの地域として農業が発展をしていく、そういう方向を私ども考えているわけでございます。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なかなかどうもはっきりその形が浮かんでこないのですが、専業農家が非常に少なくて、しかもそれは北海道、東北方面に多い。そして都市の近郊や関西方面は二種兼業、一種というところで、しかもそれが土地利用型であるよりは、施設、資本を使っての経営で、単収から言えばその兼業の方が上がっているというところに特徴があるわけでしょう。そういうときに、中核農家というものにかなりウエートを置かれて予算も編成をされているようだ。この議論は、これはまあきょうの議論じゃなくて先の方にしますけれども、少し突っ込んだ議論をしないと、どうもはっきりイメージが出てきませんからね。これはまあ時間がありませんから次に移ります。  私どもの方では、そういう関係から、最近の宅地並み課税の問題等々の関連で、宅地並み課税が始まると、都市の周辺が反対と、こうくるわけです。これは何回かいろいろな処置を講じてきたわけですが、この際思い切って、三大都市圏並びにその他の都市的な地域におけるところの市街化地域の中にある農地、これについて何らかの振興法律をつくりたい。言ってみれば、都市農業振興法というような仮称のものをいま考えておるのですが、このことについて、局長の答弁の前に、これは建設省が新都市計画法の中でいろいろ扱っておることでありますから、まず建設省の方から、この土地の扱いについて、かなりの部分がこの市街化区域の中に農地がある、この問題について建設省の方からまずちょっとお伺いしたいと思います。
  78. 田村嘉朗

    ○田村説明員 お答えいたします。  都市計画法が、新しい法律ができまして十四年経過したわけでございますが、この間、市街化区域、それから市街化調整区域に関する都市計画によりまして、都市の無秩序な外延的な拡大を防ぎながら、市街化区域内の計画的整備というものが一定の進展を見てきたと私どもは思っておりますが、一方で、市街化区域内の都市基盤の整備の観点、あるいは大都市圏における宅地需給の観点等からいろいろ問題点が指摘されているわけでございます。特に市街化区域内に農地がなお大量に相当存在しているということは事実でございますし、また、三大都市圏の市街化区域内農地に対する課税の適正化、いわゆる宅地並み課税の新たな措置が実施されることになっております。  このような現状にかんがみまして、良好な市街地の形成を図るための都市整備の具体的な方策について、過日建設大臣から都市計画中央審議会に諮問したところでございまして、農地の問題、都市整備の問題含めましていろいろ御審議をいただこうというふうに考えております。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういう事情のもとで、農林水産省としてはどういうふうに考えられますか。
  80. 森実孝郎

    森実政府委員 問題は、都市農業と市街化区域の農業というものをどういうふうに関連づけて考えるかという問題だろうと一つは思います。確かに都市農業自体は、ただいま農家戸数で言えば一割とか、農地面積で言えば七%というふうに非常に重要な役割りを持っております。地歩を持っておりますし、また野菜とか花卉とか養鶏等については重要な生産比重を持っていることも事実でございます。ただ、市街化区域の農業というのは、実はこの都市農業の中の一部でございまして、私どものいろんな推計では三分の一程度ではないだろうか、こう見ているわけでございます。  そこで二番目に、しからば市街化区域の宅地化がどういうテンポで進んでいるかという問題が一つ問題になるだろうと思います。現在、市街化区域の農地は確かにまだ二十二万ヘクタールぐらいございます。二十一万五千ヘクタール正確に言えばあるわけでございます。現在、宅地になっております農地が年間約一万ヘクタールでございます。実は二十二万の中から、その半分の五千ヘクタールはカバーされている。あとの、五百万ヘクタールを超える膨大な農地から宅地に回っているのはわずか五千ヘクタールであるという実態がありまして、やはり法律、制度の性格の本質だけではなくして、事実として市街化区域の農地が宅地化の一番中心になっているということは、これは私否定できないところだろうと思います。  そこで、やはり現在の制度の枠組みの中で、またそういった実勢の中で、市街化区域の農業をどう考えるかということが私は現実的ではないだろうかと思っておるわけでございます。なかなかそう簡単に一方通行で急速に宅地化される現実でないことは、私も否定いたしません。そういう意味で、一つは、本年、税制の改正で、政府といたしましても、農業長期にわたって継続する意思を有し、また客観的に一定の条件を満たすというものについては、いわゆる実質農地課税という税制の道を開いたわけでございますし、また農林省といたしましても、特に効用が長期に及ぶ施策は別として、野菜対策とかあるいは災害復旧の問題とか病害虫の防除の問題どか、あるいは養鶏等で問題になります立地公害等の問題につきましては、具体的な施策を継続しているのもそういう趣旨でございます。   ただ、御指摘の点はこれからいろいろ勉強さしていただきたいと思いますが、なかなかそう一義的に一つの形として割り切れる実態でないということは御理解を賜りたいと思います。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ここですぐ答えを出すわけにもいきませんでしょうが、先ほどの官房長のお答えの中で、二種兼業の問題もありましたし、それから中核農家の問題もありました。それから建設省としてもこれについては新しい諮問もされているという状態の中で、私どもも、市街化地域の中にある農地というものに対して、やはり情熱を持って農業をやろうという者に対して一定の援助と助成をしていく必要はあるだろうということで、いま取り組んでいるということを申し上げながら次にいきますが、先ほど話がありましたように、大臣は岩手県で……(田澤国務大臣青森県です」と呼ぶ)いや青森県の御出身ですけれども、岩手県でお話しになったんでしょう。だから東北ですから、農業の中心地ですから、あの大臣お話は、あのとおりだとすると大変いい話で、先ほどもちょっと話を聞いたところが、まことに結構な話だと思うんですね。ああいうふうにやってほしいわけだ。つまり調整ができれば減反などという——いままでに土地改良をやり、品種改良をやり、米がとれるようにやってきたわけですよ。農林省の仕事はそれが中心じゃなかったですか。それをいまやめろと言っている。やめなければ今度は補助金をくれない。ペナルティーだと言っておどかしている。まじめな農家ほどこれに反感を持っているのですよ。そうでしょう、世論調査をすると。いま言う二種兼業の方々はほかに収入があるわけだ。農業を一生懸命やろうとする、皆さんが育てようとする者が、これは困ったと言っているわけだ。そこで、大臣の話は結構な話だから、ぜひこの辺で一いままで四年間やった。四年間やって二次に入っておりますが、そのうちの二年間は通常の状態であり、二年間は冷害がありましたね。だからそういう点で、どの地域でこれがうまくいってどの地域がどうだというくらいのトータル、総括くらいはして、一遍これは報告してもらいたいと思うのです。そして、本当に大臣が言ったように一千万トンの米ができれば自給がうまくいくということであるならば、それならば一千万トン以外の農地をどう転用するのか、これが先ほど言う適地適産、その地域における伝統的な生産物に力を入れて、そこに鋭意農家努力をしてもらう。そこにはやはり補助も助成もする、こういうような農政をして、生産者に創意と工夫と意欲を持たせなければいけないと思うのですね。そのような農業を進めてもらいたいと思うけれども、どうですか、大臣
  82. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 水田利用再編対策を進めたのは、先生承知のように、米の過剰という一つの大きな課題を処理するための政策でございまして一これは、将来米の消費がどのくらいになるだろうかという当時の計算からいいますと、昭和六十五年度には一千万トン程度でよろしいのじゃないだろうか。そうなりますと、七十六万ヘクタールやはり転作をしなければならないという一つの計算が出てまいりまして、それにのっとっていま第一次、第二次水田利用再編対策を進めているわけでございますが、私も、いま先生指摘のように、本当に米の需要がどの程度あるのだろうか、将来米消費拡大を進めてまいりまして、どの時点でどれだけの米が必要なのかということをできるだけ早い機会に把握する必要があると思います。それによって、それでは水田利用再編対策をどの程度に押さえる必要があるか。また備蓄もしてまいらなければいけない。この備蓄をどういう幅にするのが適当だろうかというようなことを二期対策の間に、ある程度方向をつけていかなければならないのじゃないだろうか。ただ単に、六十五年度の目標があるからそれにただ沿うて進めていこうというような形では、私は、農家、農民の方も協力していただけないし、団体の方も水田利用再編対策に協力していただけない、こう思いますので、できるだけ早い機会にこの水田利用再編対策事業というものを完了したいためにも、やはり二期対策の間に一つ目標をつくって、そうして一方ではやはり集団化、定着化を図って、そうして新しい農政の基盤をつくらなければいかぬ、こういうように考えて実は岩手県であのような発言をいたしたわけでございますので、今後もその点には十分積極的に政策を進めてまいりたい、私はかように考えております。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひ早い機会に再検討をしてもらいたいと思います。評判が非常に悪いのですから、いまの減反というのは。  そこで、次の問題は、いまの話と関連をいたしまして、米をつくるように基盤整備も土地改良も、いろいろなことをやってきている、品種改良もやってきている。できるのですね。そこで、米しかできないところがある。たとえば茨城県の場合には霞ケ浦の周辺というのはこれはどうしても湿田、だれがやったってそうなんです。それから信濃川の周辺とか、いろいろなところでは、排水をしなければやれないところで——レンコンをたくさんつくればつくれるけれども、そのレンコンばかりというわけにもいかない。そうなると、米以外できないところにやはり割り当てが出てくる。そうすると、これはヨシが生えるかあるいは雑草が生えるかという形になる。そういうところに補助金が出ているというのは、これこそ本当にばかな話だ。だから、そういうところにも稲をつくって、その稲を、大臣もときどきおっしゃられますが、たとえばサイロに入れてえさにする、サイレージ、あるいはえさ用の米をつくってこれをえさに回していく。さらには多収穫米をつくって、これはアルコールに回す、工業用にするとか、こういうような多くの活用の道があるであろうと思うのですね。そういう点で、米の多目的利用というものについてこれはやはりどうしても考えてもらわなければならないと思うのです。  そこで国会においては、自民党の根本龍太郎先生を会長にして、米から酒をとろうじゃないか、こういう議員連盟が党派を超えてできている。これなんかも一つの大きな知恵だと思うのですね。  そこで、きょうは大蔵省見えていると思いますが、米から酒をしぼるということについての隘路として若干あると思うのですね。この隘路があるとすれば何が隘路であるかということについてちょっと説明をしてもらって、これは早急にできるところからやって、なるべく減反などというものは小さくしていく。そして水田を活用していって、今日土地改良でたくさんの金を入れて品種改良をしているんですから、なるべく土地が十分に活用できるようにしていくのがいい政治というものじゃないでしょうかね。ひとつ大蔵省、説明をしてください。
  84. 新藤恒男

    ○新藤説明員 お答えいたします。  米の消費の拡大の観点から、その米を酒造用のためにたくさん使ったらどうかという御指摘でございますけれども、現在のところ大体五十数万トンを酒造米として使っているわけでございます。  いまの酒造の方法といたしましては、純米酒のほか、アルコールを添加したりあるいは糖類を加えたりということで、純米酒以外のものもつくられているわけでありますけれども、端的に申しますと、米の消費をふやすことになりますと、この純米酒以外のものから純米酒に近いものをつくっていく、こういうことになるわけでございますけれども、純米酒ということになりますと、原料の問題で価格が高くなるということもございますし、それから消費者の嗜好も純米酒から、あるいは淡白なアルコール等の添加されたものもございますし、それから急に純米酒に移行するということになりましても、製造者の方の設備とかあるいは技術とか、いろいろと問題があるわけでございます。したがって、急速に酒造米の量をふやすということはむずかしいわけでございますけれども、酒の品質の向上ということにつきましては各企業とも大変努力を重ねているということで、最近の傾向を申し上げますと、アルコールの使用量は逐年減少してきているというふうに聞いているわけでございます。  現状はそういうところでございます。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの答えを足場にしてこれから、これは超党派ですから、酒米の活用については改めて交渉します。  そこで大臣に、いまの点、酒米についての所感をちょっと、大臣としてどうですか。
  86. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 酒にお米を原料とするということは、私としては本当に望むところなのでございますが、いま大蔵省からの答弁にありましたように、いろんなむずかしい点もあるようでございますので、今後この点については検討してまいりたい、かように考えます。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 酒米についてはいまのような話ですけれども、先ほど私が申し上げた米及び稲の多目的利用という問題についてはどうでしょう。
  88. 岸國平

    ○岸政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の米の食糧以外への利用という問題についてでございますが、農林水産省といたしましては、そういったことのためにも、米を基本的には超多収の品種をつくるということが非常に重要であるというふうに考えておりまして、そのために、昭和五十六年度からプロジェクト研究といたしまして、超多収作物の開発と栽培技術の開発ということで研究を実施いたしております。  それからもう一点の、先ほどお話に出ておりました米のアルコール化の件についても、現在のところ、いまの技術でもアルコールにすることは別にできるわけでございますけれども、これを非常に能率的にやるためにはまだ研究すべきことがたくさんございますので、私どもといたしましても現在バイオマス計画というような名前で研究を実施しておりまして、その中で、資源からアルコールを能率的に、低廉な価格でつくるような技術の開発を図っているところでございます。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に一点だけお伺いしますが、今度の国会で農地開発公団の法律を改正して、海外の調査研究をしていこう。このことについて早くもいろいろな誤解がありまして、また日本が海外に手を伸ばして略奪や収奪をするのか、こういうことがありますのいで、その真意及び誤解のないようにひとつ親切な説明をしておいていただきたい。
  90. 森実孝郎

    森実政府委員 今回、提案申し上げて御審議をお願いしております農用地開発公団法の改正の背景をまず申し上げますと、最近、発展途上国で農業開発の問題というのは共通の非常に大きな課題になってきておりまして、わが国に対して技術協力の要請が増大してきております。量的に増大するだけではなくて、非常に大規模、複雑なものについてのアドバイスを求めてきているケースがふえております。  今回の法律改正は、いわば窓口でございます国際協力事業団が相手国政府に要請されて、その国際協力事業団の委託を受けまして農用地開発公団がいわば下請的に、調査団の編成なり、調査の実施なり、さらに事前、事後の情報の整理等を行おうとすることをねらいとした法律改正でございます。したがって、これはあくまでも相手国政府の要請に基づいて、かつ、窓口である国際協力事業団の委託によって実施するものであるということ、二番目は、純粋に農業開発のための技術協力の一環として行うものであるという点でございますので、むしろこれは発展途上諸国の要請を受けとめるべきための仕事として観念しておりまして、御懸念の向きは全くないものと思っております。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 では、これで終わります。
  92. 羽田孜

    羽田委員長 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後直ちに再開いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後三時三十一分開議
  93. 羽田孜

    羽田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。小川国彦君。
  94. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、昭和五十七年度予算とそれに関連してわが国の主要食糧である米の問題について質問をいたしたいと思うわけであります。  最初に、先ほど来の論議の中で、いろいろな農産物輸入の問題というものが非常に焦眉の急の問題として提起されているわけでありますが、最近においては、アメリカのカリフォルニア州あるいはアーカンソー等において大変良質な米が産出される、しかもアメリカ全体で六百万トンぐらいの米の生産になってきていて、農産物のわが国に対する輸出攻勢の中では、米もひとつ日本輸入してもらおうではないか、そういうような話も出ているというようなことを伺うわけでありますが、わが国は、やはり二千年来近く日本民族が誇りとして営々としてつくり上げてきた米というものがあるわけでありまして、そういう意味では、われわれはこの主要食糧としての米を大切にしていかなければならない、こういうふうに考えるわけであります。今回、農林水産大臣に就任された田澤大臣も、やはり産地は東北の、いわば農山漁村に位置するところであって、それだけに米の問題に対してはやはり深い関心なり造詣をお持ちになっていらっしゃる、こういうふうに思うわけでありまして、そういう意味では、米の輸入というような問題が一部にうわさをされているわけでありますが、そういうことに対して、わが国食糧というものを主食は米なりということで維持していくというお考え、そういう点についてどういう御所見を持っていられるか、最初にまず大臣にお伺いしたい。
  95. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 米については当然国内で賄う方向で参りたい、かように考えます。
  96. 小川国彦

    小川(国)委員 外国からの輸入というような話がかりそめにも起こってくる、そういう事態がありました場合には、どういうようなお考え方を持っていかれますか。
  97. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほどお答えいたしたのでございますが、アメリカとの関係は、現在ですら穀物で約二千万トン輸入しているわけでございまして、そういう関係からいいますと、小麦ですらこれ以上輸入することは不可能な状況でございますから、ましてや、日本ではむしろ過剰ぎみのお米を輸入するわけにまいらぬ状況を極力これはアメリカ等に説明をして理解をいただこう、こういう考えでございます。
  98. 小川国彦

    小川(国)委員 そこで私は、先般来いろいろ当委員会でも取り上げてきている問題でございますが、モチ米の輸入の問題についてただしてみたいと思うのです。  昭和五十年以降モチ米の輸入数量はどのぐらい輸入をなすっておられるか、ちょっと五十年以降の輸入数量について御説明をいただきたい。
  99. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 五十年以降のモチ米の輸入量について申し上げます。  このモチ米には、緊急輸入的なものと沖縄におきまして主食等の用途に向けられるものと含めております。五十年が二万トン、五十一年が四千トン、五十二年七万五千八百五十トン、五十三年八千トン、五十四年二千五百トン、五十五年が三万三千トン、このようになっております。五十六年度におきます数字は、二月現在の数字で申し上げますと、輸入量は四万七千五百トン、こういう数字でございます。
  100. 小川国彦

    小川(国)委員 五十六年度、五十七年にかけまして、これからの輸入数量はどのぐらいを予定されておりますか。
  101. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 五十七米穀年度と申しまして、私ども米穀年度の考え方で申し上げますと、五十七米穀年度、昨年の十一月から本年の十月までになるわけですが、いま手当ていたしておりますのは、中国からモチ米三万トン、タイから二万トン、計五万トンの輸入を緊急輸入として予定いたしておりますが、そのほか、先ほど申しました沖縄県におきます主食用等の分も若干ございます。
  102. 小川国彦

    小川(国)委員 これの取扱商社はどこの商社で、何トンぐらいずつ取り扱われるわけでありますか。
  103. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 取扱業者につきましては、いまオファーを出しまして、これからの問題でございまして、特別な予定はいたしておりません。
  104. 小川国彦

    小川(国)委員 中国から輸入予定の三万トンのうち、一万五千トンはすでに発注済みということなんで、それでもなお商社が決まってないのですか。
  105. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 中国から輸出しますのは向こうの公社が輸出しますが、こちらの商社名は、いま私、手元に持っておりません。
  106. 小川国彦

    小川(国)委員 まだ決まっていないと言って、今度は、決まっているじゃないかと言ったら、手元に持っていない。大変ずさんなんじゃないですか。私、きょうはモチ米の輸入問題を質問するということは申し上げてあるのだし、それからあなた、私が最初に聞いたときには、まだ決まっていないと言うんでしょう。だけど、一万五千トン早々に入港してくるものがあるわけなんで、それの商社が決まっていないはずはないと言ったら、手元にないと言う。おかしいじゃないですか。決まっているものはこういう席で明確に答弁していただきたいと思うのですよ。
  107. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 先ほど、四万七千五百トンの五十六年度の数字の中には、一万五千トン分は含んでおります。  それから、私が五万トンと申し上げましたのは、五十七米穀年度内におきます緊急輸入分が五万トンと申し上げたわけでございます。  取扱商社は、私、いま手元に持っておりませんので、わかりません。
  108. 小川国彦

    小川(国)委員長 官だけではなく、きょうは食糧庁の輸入の担当の部課長にも出ていただきたいと申し上げていた。しかも、五十年から五十四年までの輸入実績で見れば、もう商社名というのは明らかに決まっておりまして、それがいま手元になくて答えられないような内容ではないはずなんですよ。それぞれ、中国からはどういう商社が輸入実績を持っている、タイにはどこが持っている、アメリカにはどこが持っている、しかも、取扱商社は限定されているでしょう。当然、いま輸入手続中のものについては、皆さん方は国内の輸入手続は一切そういう商社にお任せになっているのですから、その商社はわかっているのじゃないですか。
  109. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 中国の取扱業者、輸入登録業者としては十三社あるようでございます。これらの社がそれぞれ取り扱うものと思っております。私ども、具体的にいま商社がどれだけ扱うということまで資料を持っておりませんので、御理解いただきたいと思います。
  110. 小川国彦

    小川(国)委員 輸入数量が決まっていて、しかも、もう入管手続の寸前まで来ていて商社が決まっていないというのは大変不誠意ですね。私は直ちに、これからの五万トンの予定、それから五十五年度六万トンを含めて資料として提出を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  111. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 申し上げますけれども、十三社分についての申込数量なりは、いま私どもの手元にございませんので、私の方で調べてみますけれども、営業等の関係提出できない部分があるかもしれませんが、できるだけ御要望に沿うように研究いたします。
  112. 小川国彦

    小川(国)委員 ふざけるんじゃないですよ。食糧庁長官、もうちょっとまじめにやるべきじゃないですか。出せないものがあると言うけれども、私は、五十年から五十四年までの資料を皆さんの方からとっているし、商社名もとっているし、割り当て数量等もとっている。モチ米の輸入商社の取り扱いが物によって出せないものがあるなら、ここではっきり何が出せないと答弁してください。
  113. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 従来、取り扱いにつきましては、それぞれの具体的な商社名を掲げないで、A、B、C等の略称をもちまして資料提出した経過もございます。そうした関係で、私ども直接商社名まで区分して出せるかどうか、これまでの経過もございますので、そうした点を見まして資料を提出いたしたい、このように申し上げておるわけでございます。
  114. 小川国彦

    小川(国)委員 何でその商社名を隠さなければなりませんか。
  115. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 これは従来もお話し申し上げてきた点だと存じますが、営業上の問題あるいは対外的な問題等で資料を提出できない。ただ、御審議の便に供するために、私どもとしてはできるだけA社、B社というような略称をもちまして資料を提出いたしておりますので、そのように扱わせていただきたいと考えております。
  116. 小川国彦

    小川(国)委員 モチ米は、商社の営業上のためにあなた方は輸入をなすっているのですか、だれのために輸入をなすっているのですか。
  117. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 モチ米の輸入政策上の問題と本件の扱いは別だろうと考えております。私ども、国内の米の需給の安定に資するための施策を講ずることは当然でございます。これの輸入先等の問題については、一般的な資料の取り扱いといたしまして、委員会から特別の御要請がある場合は別といたしまして、これまでもそのように資料の提出につきましては略称等で御理解をいただいてきたものと考えておりますので、その扱いについては従来どおりの方針で扱わせていただきたい、このように申し上げておるわけでございます。
  118. 小川国彦

    小川(国)委員 それでは長官に伺いますが、その商社の輸入先の相手はどういうところからお買いになっているのですか。
  119. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 中国におきます、こちらで申し上げますならば事業団等に相当いたします公司でございます。
  120. 小川国彦

    小川(国)委員 中国は商社じゃないのですよ。その商社で取り扱うのは、日本側の入管手続だけ任せるのです。それから、その手数料を払うだけなんですよ。その商社名をやはり対外上、営業上出せないのですか。
  121. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 先ほども申しましたように、私ども御質問は伺っておりましたけれども、そうした具体的な資料をいま持ち合わせておりません。したがいまして、その分についてはお答えいたしかねる。さらに、先生から資料の提出というお話がございました点につきましては、従来の方針に従いまして、私どもとして提出できるものは、御審議の便に即するようにできるだけ資料を提出いたしたい、こう申しておるわけでございます。
  122. 小川国彦

    小川(国)委員 国政の調査権に対して、国会の審議に対して、あなたはまじめじゃないと思うのですよ。国会のこの場だけでは、あなたは通るかもしれません。通るかもしれませんが、私は以下順次質問を申し上げるけれども、いま大臣に私が質問したように日本の米が余っている。そしてまたアメリカあたりでは、日本に米まで売りたい。そういう時世に毎年毎年モチ米の輸入を続けてきている。そういう食糧庁の姿勢というものがいま渡邊食糧庁長官姿勢にあらわれていると思うのですよ。  最初に私が、輸入商社は決まっているのですかと言ったら、決まっていないと言う。今度は、もう輸入数量が決まって、手続中のものについては決まっているでしょうと言ったら、手元にないと言う。その次に、手元にないと言うので、資料として提出するのかと思ったら、従来の慣例で、商社の対外的なこととか営業上のために名前を出せないと言うのです。そうすると、中国の場合は公司であるかもしれないけれども、ほかの場合には、商社がどういうところから幾らで買い付けてきて、日本へ幾らで売っているというのは、国会の審議の対象にならないのですか。
  123. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 この点は、前の委員会でもタイ米の輸入につきまして御質疑があった点かと存じます。タイにおきますFOB価格なりについて、私ども国際相場なりは申し上げられますけれども、タイ国自身の立場から私どもとして、公表しないでもらいたいという希望を持っております取引につきましては、やはり対外的な関係からもお話しできない。ただ、その時点におきます国際相場なりは、私どもとして申し上げて御審議に資するようにいたしたいと思います。企業活動の問題につきましても、そうした意味で企業別の具体名を掲げては資料を提出いたしませんが、先般もそれぞれの略語をもちまして取扱数量等を提出いたしたことはございますので、そのように扱わせていただきたい。  私ども、この点は資料の取り扱いとして申し上げておるわけでございまして、今回の緊急輸入のそもそもの問題は、私どもとしましては、国内におきましてモチ米を自給してまいる基本方針考えておりますが、昨年来の不作等の関係からやむを得ないものとして今回輸入をいたしたわけでございます。そうした基本的な姿勢のもとに今回いたしたわけでございます。資料は、そうした国会提出の従来の私どもの取り扱いに従って、できるだけ御審議の便になるように工夫して提出いたしたい、このように申し上げておるわけでございます。
  124. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと参考に伺いたいのですが、食糧庁長官、私ども国会には略語でしか出せない。それから、物によっては出せないと言うのですが、では、商社がどういうところから買い付けてきたかという実態を掌握されているのは、食糧庁長官と何人の方がその情報を知っていればいいというふうにお考えになっているのですか。食糧庁長官のお答えは、国会には報告しなくてもいいというふうにおっしゃっているわけですね。いままでの慣例上出さないというのですよ。では、出さないならば、その実際のことは、行政上、食糧庁長官と業務部長と担当の輸入課長と係の三人か五人、どれだけの人間がその情報を知っていればいいというふうに御判断なすっているのですか、そこのところを明確に答えてください。
  125. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 私ども、ただいま先生から資料の要求のございました点は、単に国会だけにそうした情報を提供しないと申し上げておるのではございません。一般的に、私どもとしての業務上の問題としてそのように取り扱っておるわけでございます。  本件の扱いを部内ではどのように扱っておるか。いま先生がおっしゃったラインにおきまして第一次的にはいたしておりますけれども、さらに関係する部分、たとえば需給の調整等を図る分野等、あるいは他の部長なりの知っていることは事実ございますけれども、その範囲にとどめております。
  126. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、長官以下何名の方がその事実を承知していればこの問題はそれで済むというふうにお考えになっているのか。何名の方ですか。その部門と課と名前をちょっと挙げてくれませんか。それだけの人がこの事実を知っていればこの問題の解決はそれで済むんだ。さっきあなたは国会だけでないと言っているのですね。ほかに知らせることはどうこう別ですよ。しかし、国会にそういうことを報告しなくてもいいというふうにあなたはお考えになっているのかどうか、そこをひとつ明確に答えてください。国会には提出する義務はない、そういうふうにお考えになっているかどうか、そこをはっきり答えてください。
  127. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 私ども担当の人数をいまにわかに思い出せませんけれども、おおよそ私どもの知る範囲というのは十数名の範囲だろうと思いますが、私どもこれは国会に絶対に出さないと申し上げておるのではございません。御審議の便になるように略称等をもちまして御審議の資料として提出することは決してやぶさかではございません。その程度にいたしていただきたいということをお願いし、かつ従来からそのように扱わしていただいている、このように理解しておるわけでございます。
  128. 小川国彦

    小川(国)委員 国会になぜ略称で提出しなければならないか。国政調査権がそこまで及ばないというふうにあなたはお考えになっているのかどうか。これは私、国会の審議で、いままで何回も、モチ米の問題を五回もやってきている。一番重大な点だから、場合によっては、私はあなたを告訴、告発も含めて、国政調査権の問題だからはっきりさせたいと思っている。あなたはどういう場合にわれわれが委員会で質問しても議員の要求に対しては出さなくていいというふうにお考えになっているのか、そこもはっきり答えてください。一議員の要求の場合には出さないのか。一議員といえども国政調査権について、しかも輸入商社名についてはそのくらいのことを略称、記号にしなければならない役所の必要性というのは私は感じないのですよ。そういうところまで国政調査権から外していくということになると、国会の審議というのは私はまさにむだなことだというふうに思うのです。ですから、私の議員としての立場から、この程度のことの資料請求に対してもあなたは応じないのかどうか。私が一議員の立場から国政調査の上でこれを要求した場合に、あなたは提出しないのかどうか、まず、それに答えてください。
  129. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 ちょっと総括してもう一度御説明いたします。  各委員会等でも、企業別の資料についての資料要求がございます。政府といたしましては極力御要望に沿うように資料を提出いたしておりますが、企業別等のいわゆる実績の公表にかかわりますものは、やはり各企業の営業活動の公開というようなことにもなります。各事項それぞれの理由から公表しない方が妥当ではないかということでこれまで公開、公表しておらない分がございます。しかしながら、先ほど来申し上げますように、御審議に即するよう極力御要望に沿う形で略称等を用いまして資料は提出しておるわけでございますが、どうしてもという場合、これは政府といたしまして委員会の御要請なりで提出するものがございますけれども、私ども政府といたしましてそういう従来からの方針で対処しておるものでございますので、御了承をお願いしたいと思います。
  130. 小川国彦

    小川(国)委員 この問題は私、委員会審議の上で非常に重大な問題だと思うのですよ。私は、この資料はおよその見当はついているけれども、この程度の資料ですらいまのような長官の態度で、これを委員会が容認していくということになると、今後、国政調査権というものは大変な、国政の審議の上で軽い、非常に権威のないものだ。米の輸入の取扱商社名と数量も出せない。しかも公然として国民が不足しているモチ米を輸入する、取り扱っている商社名と数量くらいが、この委員会でも発表できないし、それから資料でも記号でなければ出せないというのですから……。長官、もう一遍聞きますが、これは記号でなければちょっと出せないわけですね。
  131. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 先ほどから申し上げましたように、具体的な商社名では遠慮さしていただきたいと申し上げておるわけでございます。
  132. 小川国彦

    小川(国)委員 いままで私のところに記号でなくて全部出されたのはどういうわけですか。
  133. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 各社別の取り扱い実績なりについては、私どもそういう記号で出しているというふうに従来からの経過は聞いておりますので、そういうものと理解しております。
  134. 小川国彦

    小川(国)委員 あなた方二通り出しているのですよ。素直に商社名を出したものと、ABCDEFGで出したものと二回あるから、あなた方の方混同しているのだけれども、そういう出し方自体がでたらめだと私は言っているわけなんですよ。あるときには商社名を全部書いたものを出しておりながら、もう一方ではそれを記号に変える。なぜそれを変えなければならないのですか。そういう二通りの扱いをしている。そういうところに国政に対して臨む行政庁の態度が非常にふまじめだ。特に渡邊長官のいまの答弁は、与党多数の上に立っているからこれでも通ると思っているかもしれないけれども、私はそういうことは通らない答弁だと思いますよ。二通りやってきているのですよ。私、何なら資料をお見せしますが、あなたはどっちを正しいというふうに考えるのですか。その出したのは間違いだというのですか。それじゃ間違いを犯した人はどうするのですか。二通り出てきているのですよ。追加して言うなら、国政調査に対応する態度がそういう二通りあっていいのか、そんなでたらめなことで国政調査に対応していいのかということをあなたにはっきりしてもらいたいのです。
  135. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 私が承知いたしておりますのは、取扱業者全体の名前については私ども具体的な氏名は御提出したことはございます。それの各社別の実績等の扱いにつきましては従来から略号をもって提出しておる、このように承知しておりますので、いま先生の御指摘のようなことがあるかどうか、私ども後ほどよく調べてみたいと存じます。
  136. 小川国彦

    小川(国)委員 これは大臣にもちょっと申し上げておきたいのですが、私、農林水産省についていろいろこういう割り当て問題、輸入商社問題の資料提供を求めることがしばしばあって、私どもにもいろいろな資料がございますが、水産庁などで輸入商社名と数量をぴしゃっと表で出してきているところもあるのですよ。それからいま申し上げたように記号で出してくるという場合もある。非常に不統一なんですね。そういうことの中で、長官はいま申し上げたような非常に不誠意な、モチ米の輸入というのは非常に重要な問題で、関心があるそういう資料についてすら——委員会でこんなことで大変時間をつぶしているというのはもったいないことだと私思っているのですよ。もっと中身に入らなければいけないのに、そんな簡単な資料のことでそういう非常に不遜な態度で出ている食糧庁長官の行き方というものを、私は、農林水産省の中では非常にふまじめだというふうに受け取っているのですよ。私、水産庁のとった資料、これはお見せしていいのですが、そういうところを非常に率直に出されている。もちろんそういう出されているのは大半がさっと出されている。そういういまの対応というのですか、これは大臣としてどういうふうにお考えになるか。
  137. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま食糧庁長官は、これまでの食糧庁長官としての資料の提出は特に会社名を出さぬということできておりますが、先生の資料提出については今後できるだけその線に沿うように可能なものは提出いたしたい、こう申しておるようでございますので、この点は食糧庁長官にさらに資料をどの程度提出できるか少し検討させていただけませんでしょうか。
  138. 小川国彦

    小川(国)委員 いまの大臣発言について、これは理事会の方でもぜひこういった書類提出についての扱いについて、議員の国政調査権に基づいた審議の協力の姿勢というものをとるような、これはぜひ理事会で指導願いたいと思うのです。よろしゅうございますか。
  139. 羽田孜

    羽田委員長 小川君の申し出につきましては、理事会の際に検討したいと思います。質問をどうぞ続行してください。
  140. 小川国彦

    小川(国)委員 それで私、モチ米の輸入の数量を五十年から五十六年までの間見てまいりますと、二十二万三千トンというモチ米を輸入している。五十六年の、いま長官の答弁だと五十七年度ということですが、またモチ米の輸入量を五万トン、これは減反面積に換算しますと一万四百十七ヘクタールになるわけです。この減反面積は五十六年の減反割り当て量でいきますと、三重県とか高知県、静岡県、岐阜県、こういった県の一県分に相当しますし、あるいは奈良、和歌山とか京都、大阪とかこうした二県分の減反面積に匹敵するくらいの数量を輸入しているわけです。また、過去七年間のモチ米輸入量をこういう同じような計算をすると四万六千四百七十ヘクタールの減反面積に匹敵しまして、五十六年の全国減反面積の六十三万一千二百三十三ヘクタールの約八%、都道府県割り当てでいきますと、近畿六県あるいは北陸四県に相当するくらいのモチ米の輸入をしてきているわけです。いま三百万トンの過剰米を抱えて六十三万一千二百三十三ヘクタールという広大な面積の減反政策を強引に進めている。そういう政府としてのこれに対応する態度というものは非常に無責任ではないのか。一方で三百万トンも米が余り、六十三万ヘクタールも水田再編成という名前で減反を強いている。そういう一方で毎年毎年モチ米の輸入を続けている。もちろんその間には二年置きくらいに、大臣も御承知のように東北六県を襲った冷害、凶作というものが去年、おととしと続いている。しかし、その前二年は豊作である。これからことし、来年はどう展開していくかわからないわけでありますが、少なくとも日本全国の農家がモチ米をつくれる条件は持っているわけで、そうした状況の中で県の一県ないしは二県に相当する部分のモチ米を毎年輸入しているというのは、農民感情から言っても許せない問題なのです。  この問題について私は、国会に出ましてから昭和五十二年十一月十七日、五十五年十一月十一日それから五十五年十一月二十九日には内閣に対する質問趣意書、それから五十六年五月六日には農林水産委員会で、歴代の大臣なり食糧庁長官なりにこのモチ米の輸入はやめるべきだということを要請してきている。さきの大臣であった亀岡高夫農林水産大臣ども、事実は御指摘のとおりです、だれだっていま米を輸入したいと思っているのは一人もいません、しかし冷害が進行して正月のもちが足りないからやむを得ず輸入するのだ、こういうことを言っているわけです。  そういう状況の中でことしから調整保管の制度ができた。十億円の予算が組まれた、こういうことなのですが、現実に二十五万トンという限度数量があって、それよりも上回ったものがあった場合に調整保管の制度は効力を発するということなのですね。ところが限度数量、いわゆるモチ米の必要量という政府が認めている二十五万トンというものはずっとここ数年動いてないのですが、去年、おととし冷害、凶作があるとモチ米は十五万トンか十六万トンくらいしか集まらない。現実には十万トンくらい不足を来している。ですから、これから種まきをして田植えをしてつくるわけなんですから、十万トンくらいのモチ米を政府がきちんと政府の管理の中で——二十五万トンの限度数量にプラス五万トン乗せるか十万トン乗せるか、これだけは調整保管料を政府予算に組んだ中で、倉敷、金利を見ても別途にちゃんと用意しておく、こういう姿勢があれば、いま長官が言った五万トンの輸入を最後にして、もうモチ米の輸入はやめることはできるのじゃないか。  私は五年もこの問題を追求してきている。私、全部議事録を持っておりますが、歴代の長官、大臣、そのときだけはやめたいと思うと言うのですが、繰り返し繰り返ししてきている。この辺で、田澤農林水産大臣の時代に、少なくともこういう全国の農民から見てばかげた食糧庁のこのモチ米輸入というものを断固やめさせる方針を打ち出していただきたい、私はこう思うわけなんですが、この点いかがでございますか。
  141. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 最初に、需給状況等について私の方から申し上げます。  確かにモチ米の変動につきまして私ども万やむを得ない措置として輸入をいたしておりますが、先生指摘のようにすでに過去におきましても二年暴騰、二年逆に暴落するというような繰り返しをモチ米の特徴的な変動としてこれまで重ねてまいりました。今後こうした輸入によらず国内の生産で賄うようにいかに図るべきか、前からも御指摘もございました。私ども、産地におきます団地化あるいは契約生産の方式の徹底等もいたしますけれども、今回、特に来年度につきましての限度数量二十五万トンの配分につきましても県間調整を特別にいたしまして、県ごとに、これまでの枠が硬直的になっておりますものを現実的に弾力的に変動させまして実態に合うように図ると同時に、暴騰の後には暴落するという過去の経緯にもかんがみまして、やはり国内生産を確保するためにはそうしたときの過剰なものを市場隔離する、そして次に暴騰しそうなときに放出するという趣旨をもちまして調整保管制度を五十七年産米から実施したい、こういうことで目下準備を進めておるわけでございまして、調整保管制度のよろしきを得れば安定的なモチ米の需給が図られるもの、このように考えておる次第でございます。
  142. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま水田利用再編対策を進めておりまして、転換作物をどういうものを選定したらよろしいかということで私たちも苦慮しているときに、モチ米を海外に依存するということは大きな矛盾でございます。したがいまして、私たちとしては、もちろんモチ米そのものは需要供給の面でその年度、年度で非常にでこぼこの多いもののようでございますので、そういう点が結局こういう形であらわれたものと思いますから、今後五十七年度から一つの新しい制度を適用するということで調整をするということに相なりますので、今後、極力モチ米を輸入しない形の体制を検討してまいりたい、かように考えます。
  143. 小川国彦

    小川(国)委員 長官と大臣にもう一遍伺いたい。  この調整保管の制度、なるほど十億円、生産者や需要者からも負担を求めてやるのですが、この調整保管を実施して——これから作付するんですよ。それで減反をしないで五万トンなり十万トンなりのモチ米をつくらせることはいま十分可能なんです。それをつくって、その金利、倉敷を政府が見るということをきちっとやっておけば、この秋から輸入をしないで済むのです。いま大臣と長官が真剣に、この調整保管制度をつくった、だからこれを本当に実効あらしめるものにすれば、いまなら作付に間に合うのですよ。これからもみをまく、もみで苗代をつくるのはこれからなんですから。ところが、皆さん方は私のいままでの五回にわたる質問に答えてきた。きょう本当はここに前の食糧庁長官にも出てもらいたいし、中にはまだ農林省の中にいるから私は参考人でみんな来てもらいたいぐらいなんです。いまの大臣と長官が答えたように、調整保管制度をつくります、モチ米の生産団地をつくります、これがうまくいけば輸入しないで済むはずですという答弁は私はもう五回聞いているのです。五回目なんです。しかし、また一年たって大臣や長官がやめちゃったら、それはまた同じ答弁を私はきょうもらったにすぎないのですよ。だから、少なくとも食糧庁長官農林大臣という全国の農民の信頼のもとに行政をやる人が五代もかわった中では、一人ぐらい本当のことをやる人が出てもいいんじゃないか。自民党が幾ら多数であっても、五回も同じことを聞かれて同じ答弁をして、毎年五万トン、十万トン輸入しているというのは、幾ら大自民党の内閣でもみっともなさすぎやしませんか。食糧庁長官大臣もこの辺でひとつ、男らしさと言ってはなんだけれども、やはり農民の代表者であるという立場に立って、調整保管を本当に生かし切って、本当に生かし切る徹底的な議論をすれば、私が農林大臣なら、この秋以降輸入しないで済みますと私は言い得るのです。残念ながら、社会党はまだ内閣をとれないからこうやって同じことを五年も繰り返し言っているわけですが、どうでしょうか、この辺で大臣と長官から、この秋以降輸入は絶対しませんとひとつ言い切ってもらいたい。
  144. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 小川先生の主張によってやっと調整保管制度を来年度から実行することができるようになったわけでございますから、この調整保管制度というものを柱にしながら、今後小川先生の主張のような、できるだけ海外に依存しないようなことをこれから実施するように私は努力をしたい、こう考えます。
  145. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 調整保管制度によりまして需給の安定を図ることによりまして、国内で自給できるような体制にいたしたいと私どもは存じます。  絶対輸入をしたくない、私どももそういう気持ちでございますが、正直申しまして、昨年の予約におきましても、予約段階では二十二万トンの予約を農家からとっておりましたが、実際には自然条件の変動等で二十万トンにも満たなかったという現実がございます。需給調整のこうした措置を、てこを入れることによって生産の安定確保を図りたいと私どもは思います。ただ、自然の影響で万やむを得ないということはあろうかと思いますが、私ども方向としては、極力この調整保管制度を、本年度からスタートするわけでございますが、これを育てまして、需給の安定を図り、国内の自給体制を固めたい、このように考えております。
  146. 小川国彦

    小川(国)委員 念のために私は申し上げておきたいのですが、政府負担で十億、生産者団体で一億、需要者一億、大体十二億の制度で発足する。去年、おととし不作だったからことしは大体豊作になるだろうから、二十五万トンよりオーバーしたら五万トン買いましょう。それから、来年もまた豊作になるだろうから五万トン買いましょう。ただし、それは豊作で政府が決めた限度数量の二十五万トンを超えたら買いましょうということのようです。そうすると、万が一凶作が三年続いたということで、この秋二十五万トンと政府が見込んでいたのがまた十五万トンしかとれなかった、さあまた十万トンは輸入でございますということではならないということなんです。ですから、これだけ減反を、六十三万ヘクタールも課しているんですから、その中の一部でもあなた方の方でモチ米つくってください、これは政府が買い上げます、その調整保管料は政府が持ちますと。二十五万トン超えたらなんというようなことではなくて、万一の場合のことをいまから手を打っておけば十分間に合うということなんですね。仕掛けがしてあるからウサギが来たら転ぶだろう、株を仕掛けてあるから来たら転がってくれるだろうでは、ウサギが来なかったら困るのですよ。豊作が来なかったらだめなんですよ。凶作が続いたときはこの調整保管は無意味に終わってしまう。だからこれをいまから、種まき前から本当に生かし切るという心構えを持ってくださればやめられるんだということをもう一遍念のために申し上げて、くどいようですが、もう一度そういうお考えをもって取り組んでいただけるかどうか。私は、全国の減反にやるせない農民の気持ちから、こういうことを早くやめていただきたいという気持ちで、くどいようですがもう一度質問申し上げるわけです。
  147. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 おっしゃるように、この調整保管制度というのは過剰の際の市場隔離でございます。過剰をどういう点でとらえるかという点になるわけでございますが、二十五万トンというのは、通常の需要でございますと二十五万トンでございます。したがって、通常の需要を超えるような過剰になった場合には、やはり市況自体が相当暴落するおそれがございます。そうした意味で、二十五万トンの限度数量をオーバーする、これは需要に見合っておるわけでございますから、そうした分を市場隔離していこう、こういう考え方で二十五万トンの供給確保という趣旨を貫いてまいりたいと考えておるわけでございまして、もちろんこれが不足したときにはどうするか、調整保管は最初に在庫がない限り機能しないわけでございますが、万が一の場合には輸入ということもあるいはあるかもしれませんが、調整保管によりまして需給の安定を図るように、まず私どもそのような考えでいたしたいと考えております。まず、初年度として本年産からスタートして、この制度をぜひ育てていきたい、このように考えております。
  148. 小川国彦

    小川(国)委員 もうやめようと思ったのですが、どうもいまの話で、万が一の話がまだあるのですね、輸入という話が。だけれども、いまなら問に合うのですよ、何遍も繰り返しますけれども。いまなら田植え前で、三十万トン農家の人につくってくださいと言えば、農家の人は三十万トンつくってくれる。三十五万トンつくってくれと言えばつくってくれる。そのうちの超えた十万トンはことしの十二億の予算を活用して、金利、倉敷を持つとやればできるのです。大臣、どうですか。もう一度最後に大臣に、私は政治家としての決断でこの御判断を伺いたいと思います。
  149. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま食糧庁長官からかなり具体的に答弁をさせたのでございますが、一番心配はオーバーした場合どうするだろうかということもございますので、そういう点をも考えながら、調整保管制度を活用しなければならないところに問題があるわけでございますから、いま長官から答弁させたように、私としても極力この制度を活用して御期待に沿うように努力をいたしたいということで御了承いただきたいと思うのでございます。
  150. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  151. 羽田孜

    羽田委員長 近藤豊君。
  152. 近藤豊

    近藤(豊)委員 最近、日米関係が大変緊迫をしてきております。これは大臣承知のとおり経済摩擦が緊迫の中核ですけれども経済摩擦という面で大臣所管の政府行政分野は言うなれば大株主でありまして、大変関係が深い所管の分野を持っているわけです。  そこで、まず第一に、日米間の貿易バランスあるいは収支のバランスが大変逆調である。昨年は百六十億ドルの対日貿易赤字、アメリカはこれを非常に大きな問題として、現在、議会が沸きかけておる。それからさらに、ことしはこのまま推移すれば二百億ドルを超えるベースで対日赤字がふえる。そこで、昨年暮れ近くになりまして米国から商務長官あるいはブロック代表等が来られたときに、日本に対して穀物備蓄を、米国において倉庫をひとつ持ってやってくれという要求があったということを記憶しております。そして、これに対するわが方の回答は、その当時は前大臣の時代でありましたけれども、否定的回答をしておるはずであります。  いずれにせよ、現在の日米貿易摩擦は、日本の大部分が予想していたよりもずっと早いペースで日米間の関係は悪化をしておりますし、そういう情勢の推移の中で、私は大臣の所管分野のいろいろな問題、つまり大きく分けますと残存輸入制限を撤廃する問題、それから何らかの形で米国に対して外貨収支の改善に役立つような手を差し伸べる問題、これは何らか積極的な手を打たざるを得ない状況になりつつあると思いますけれども、こういうことを考えあわせながら、まず第一に、穀物備蓄を米国において日本が行うという点について、引き続き大臣は否定的な考えを持っておられますか。それとも何とかこれを取り上げて検討を進めるべきだというふうに考えておられるのか、この辺についての御意見をまず承りたいと思います。
  153. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 対外経済摩擦解消という問題は非常に重要な問題でございますので、これの解消についてはすでに対外経済閣僚会議で五項目にわたる対外経済対策を決めまして、いま実施をしておるわけでございます。しかし、その中でも、いま御指摘のように農林水産品目は、今後、アメリカの要求に仮に従うとするならばかなり厳しい面がございますので、私たちは今後できるだけこれに手を染めないにしようというので努力をいたしているわけでございますが、特にいま御指摘のようにアメリカの下院の歳入委員会の小委員長のギボンズ報告というのがございますね。この人の報告を見ますと、まさに先生指摘のような報告なんでございます。私はこの報告を読みますとむしろ日本人として怒り、腹立たしい感じが出てきてならないわけでございまして、私としては米を、食糧の備蓄などをアメリカに依存するということは、ことにお米についてはそういうような関係はいたしたくない。しかし、現にわが国が国内で自給できるものと海外に依存しなければならないものが食糧全体でございます。そういう意味ではやはり小麦だとか大豆だとか飼料穀物等は、これは当然海外に依存しなければならないのでございますから、それは備蓄の形ということよりも全体の食糧の面で調整をする、国内の需給を調整するという形では今後も入れてまいらなければなりませんけれども、大きく日本食糧の備蓄のために、あえてまたそれ以上の穀物を入れるというようなことには、私たちはただいまそういう門は開こうとは思っておりません。
  154. 近藤豊

    近藤(豊)委員 日本が穀物の自給率がもう三割に下がっている。農業基本法制定以来二十年以上たっていまだにこういう事態であり、あるいはいまだにこういう事態というよりも、むしろ自給率がどんどん低下をしているということはきわめて嘆かわしいことだと思います。しかしながら、わが国の食生活が非常に大きな部分、特に飼料の購入という面で米国に依存しているということは紛れもない事実でありまして、いかにその自給率を引き上げようといたしましても、これは一朝一夕にできるものではない。そうしますと、日米関係というものは、現在、食糧を買い付けるという点について非常に日本が優位に立って推移をしてきたわけですけれども、今日から先の時点で、何らかの状況の変化で日本が弱い立場に立たされることもあり得ると思うのです。もっと具体的に申し上げますと、すでに一部にそういう意見も出ておりますけれども、アラブが石油を武器にしてわれわれを苦しめましたように、米国も食糧を武器にしてソ連に対して実は動き出しておるわけです。食糧を武器にして、アフガニスタンの侵略に対して報復をしたりあるいは今度ポーランドについてもそういうことが日程に上ってくる。同じようなことが今度は日本に向けられたらどうなるだろうかという心配をするわけです。そうしますと、現在の日米貿易摩擦の中で、私たちは常に農水産物資は日本農業の特質から何とか守って、そして貿易アンバランスは工業物資の方で解決してくれということを言ってまいりましたけれども、これからはそういうことを言ってはおれない。むしろ日米関係全体が非常に危機的な状態にまで追い込まれるのを避けるためには、ある意味では農業物資についても相当の譲歩をしなければいけない時点が来るということも覚悟しなければいけないんじゃないかと思います。そういう場合にあわてても仕方がありませんから、やはり段階的に幾つかの対策を用意しておく必要があるんじゃないか。そのまず第一に、日本の利益にもなるし、それから日本の国内農業に対してそう大きな影響を与えることもなく、かつ米国に対して相当恩を着せる、恩を着せるというのが悪い言い方であれば、米国が多とする、アプリシエートする、大いに評価をしてくれる一つの方法が穀物備蓄、ある程度の量を米国においてするという米国の要求を受け入れることだと思います。そうした場合に、もちろん不必要に多額の量を米国に備蓄はできませんけれども、ある程度の量の国家備蓄に踏み切ることは、いわゆる農水産省所管の物資について、日米経済関係の上で今後譲歩しなければいけないとしたら、かなり国内的には影響の少ないもの、単に財政的影響という点ではもちろん大きな問題がありますけれども農業者全般に対する影響という点では少ないものだと思うのです。これを、前回の米側の提案に対していわば考慮できません、それはむずかしいと言って断られたことは再考すべきではないか、こういう気がしておるわけです。そういう点では大臣はどういう感触を持っておられるのか、ここをお聞きしたかったわけです。
  155. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 午前中にも申し上げましたけれども、私たちは国内で生産できるものは極力国内で賄うという基本でいわゆる食糧の自給力を維持しようとしておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように国内で自給できるものはもちろんございます。しかし、海外に依存しなければならない食糧もあるわけでございます。ですが、それを調整しながら食糧の安全確保をしてまいっているわけでございまして、だからといってここで備蓄をいたしましょう、アメリカ食糧の備蓄をいたしましょうということは、国内の農家、農民の感情の面からいっても許せないものだと思うのです。私は、食糧はあくまでも国内で生産できるものは極力国内でやるという努力が独立国として必要なんじゃないだろうか、かように考えますので、私たちとしては、もちろん幾らかいま備蓄をしておりますが、それは備蓄のための備蓄じゃなくして、いわゆる国内の食糧の安全供給という面から調整のためのいわゆる海外からの食糧輸入でございますので、そういう点を十分私たちとしては考えながら進めていかなければならないということでございます。  残余についてはちょっと局長から報告をさせます。
  156. 角道謙一

    角道政府委員 大臣の御説明を補足して説明させていただきますが、穀物を海外で備蓄するというような意見は大分前からございます。私どもも再三検討はしてきておりますけれども、四十七、八年の穀物危機のときでございますが、大豆が非常に不作になりまして、国内でどうするかと騒いだ時期がございます。そのときにアメリカの大豆が不足したために、アメリカの国内でも非常に大豆価格が暴騰した。そこでアメリカがとりましたのは大豆の禁輸措置でございます。したがいまして、いま仮に日本アメリカに穀物を備蓄した場合にも、本当にアメリカが不作になった場合、その備蓄分を解除して当然日本に輸出してくれるか、また、日本が必要なときに必ずそういう状態が確保できるかということにつきましては、制度的な保障はないという点が私ども一番問題にしたわけでございます。また、現実にアメリカ、主としてガルフになると思いますけれども、ガルフ経由でこちらへ持ってまいります場合にも輸送には相当期間を要するというようなこともございまして、物理的な輸送状況等考えまして、やはりなかなかこれはむずかしいのではないかということで、アメリカ国内での備蓄につきまして私ども賛成をしていないわけでございます。  なお、昨年ブロック農務長官が参りましたときにお断りしました理由の中には、現在、日本としてはいまの需給事情から見まして相当程度安心できる備蓄もある、また、財政面から見ましても、現在非常に厳しい財政事情でございますので、それだけの財政投下を行う余裕がないということを申し上げまして、一応農務長官には御了解を得たというふうに私ども考えておるわけでございます。
  157. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いまの官房長お話、それからいろいろな国際間の取引の実態から見て、仮にアメリカが禁輸を行った場合に、日本が、たとえば食糧庁なら食糧庁が米国にウエアハウスを持って、倉庫を持って備蓄をしているものを、日本に運び出すことを禁止するということがあるのじゃないか、こういう懸念については、かなり簡単に、両国政府間の覚書を交わせば——事前にその備蓄をする段階でその備蓄についてのいろいろな備蓄倉庫のステータスだとか税金の問題だとか出てくると思います。それは両国政府合意をすれば、そういう禁輸によって現実にわれわれが買ってためてある食糧が動かせないというようなことはあり得ないことだと思います。  それから、輸送状況の問題は、仮に日本のえさの中の大事なメーズが足りなくなってきたというような状況があれば、それは日本の備蓄がありますから二カ月や三カ月はもつわけでありまして、その間に向こう側から船を手配して持ってくることは、輸送日数、航海日数から考えても、これは十分可能なものである。なおかつ、スワップをすることも、これは油と違ってそう簡単にいかないかもしれませんけれども、不可能ではないということから、この間ブロック代表に対してだめだという回答をされたときの理由は余り説得力がない、現実にアメリカ側でもそれを説得力があるものと受け取っていないというふうに私は了解をしております。  ここでわれわれ考えなくてはいけないのは、大臣がおっしゃったように、日本がつくれるもの、今後増産できるもの、それを必要限度を超えてどんどん海外に備蓄するのは農家の増産意欲をそぐものだ、確かにそのとおりだと思います。だけれども日本がどっちみち十分にはできないもの、たとえばメーズ、大豆というようなもの、これは海外に備蓄をするということは決して農家の意欲にマイナスの影響を与えない。それから同時にまた、そうして日本が現在のアメリカの困った状況を解決するのに協力をするということは、将来、たとえば大豆危機のようなことがもう一回再来した場合に、米国が日本側に対する輸出にもっと柔軟に、あるいは日本に対する輸出はこれは別途プラスをつけましょうというような協力的な態度に出てくる一つのきっかけになる。だから、そうした意味で、日米間というのは非常に緊密度を増してきて、そして何とも切っても切れない関係になったところでこういう貿易摩擦が起きているわけですから、これを解決するにはよほどの決意と決断がなくてはできない。そういう意味で、閣僚会議での決定等も拝見しておりますと、まだまだどうもその点で十分な決意とは思えないわけです。あの決定でもって日米間の貿易摩擦が私は解消するとは全然思っておりません。むしろ日米貿易摩擦はますます破局的な様相を強めてきているわけでして、そういうときにある程度長期的な展望を立てて海外備蓄をするぞということができれば、これはこうした事態を解決するのに大変役に立つ。そういう意味でひとつぜひ再考を願いたいと思うのです。  いろいろな問題点がありましょうから検討をしていただくのですが、どうもいま大臣及び官房長から発言のあった内容では、これはアメリカ側としてはせっかく自分たちが頼んでいるのにということで大変失望をする以外の何物でもないという気がいたします。この点、もし私の申し上げた点について別途、官房長あるいは事務局から別の理由について提示があるなら、どうぞしてください。
  158. 角道謙一

    角道政府委員 先生の御提案、確かに重要な問題でございますので、なお私ども検討いたしますけれども、先ほど申し上げましたように、四十七、八年の大豆の輸出禁止措置、これがとられました関係で、私ども種々対策考えまして、大豆の備蓄政策というのはそれから始めたわけでございます。恐らく米国の国内法におきましても、国内で不作で国内需要を満たし切れない場合、あるいは価格が非常に暴騰した場合、なおかつ国内需要を抑えて外国に輸出を許可するかどうか。最近特に穀物を戦略的に使っている状況から見まして、なかなかこの問題についてはアメリカは容易にうんと言うかどうか私ども疑問を持っておりますし、なお、せっかくの御提案でございますので検討はいたしたいと考えております。
  159. 近藤豊

    近藤(豊)委員 もうこれでこの問題は打ち切りますけれども日本政府が買ったものですよ。そして日本政府が借りるなり買うなりした倉庫に置いてあるメーズあるいは大豆あるいは穀物をアメリカが禁輸をしてそして外へ持ち出してはいけないということは、これはちょっとやりにくい問題なんで、むしろその時点で新しく輸出をしてください、日本だけがあなたのところの恒常的な顧客なんだから、だから引き続き日本にだけは例外的に出してくれと言うことはむずかしいかもしれない。しかし、それは日本が買って毎年ためていくものを、あるいはそこで売ったり買ったりは起こるかもしれませんけれども、危機的な不作が起きてその不作の時点でさあそれを持ち出そうというのは、それをまでとめるということは実際上はアメリカ政府としてできないことだと思うのです。もちろんそれは法律的にそういうことになってしまう可能性がありますけれども、それは国家間の問題にもなります。ですからそうしたことはあらかじめの協定で十分回避はできるわけなんで、そのところはどうもちょっとまだ議論として十分熟していない反論であるという気がしてなりません。しかし、一応検討していただくということですし、私も一緒になって勉強いたしますから、この問題はそこで一応打ち切ります。  それから、いまいろいろな品目について二十七の残存輸入制限、それからNTBの幾つかのことで政府で検討しておられます。それから自民党の中でも検討しておられるということを新聞などで漏れ聞いておりますけれども、農水産物資について、たとえばオレンジだとか牛肉だとかあるいは雑豆だとか幾つかの品目が向こう側からの激しい攻撃にさらされているわけですけれども、農水省としては、現在、そうした農水産物資の中の残存輸入制限品目のうちどういうものについて、いますぐでなくても、ある程度将来的に自由化考えるのか、部分的自由化考えるのかあるいは完全な自由化考えるのか、その点についての検討の経緯あるいは基本的な考え方でもいいから提示をしていただきたいと思います。
  160. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 現在、私どもの省の所管物資で残存輸入制限品目二十二品目残っておりますが、これは御高承のとおり長年かかって減らして減らして二十二品目に到達したわけでございまして、現在私どもといたしましては、この二十二品目の中で遠くない将来に自由化可能性があるものはないというふうに考えております。
  161. 近藤豊

    近藤(豊)委員 農水産物資の中では一品目自由化はいたさない、あるいは季節的に輸入をふやしているものについても季節自由化というようなこともしないのだ、そういう言うなれば非常に強硬な姿勢で、そして現在の日米関係の緊迫する中でいろいろな交渉が行われるのですが、とにかく避けて通ってしまおう、こういうかたい姿勢なんだというふうにこれは大臣受けとめてよろしいんでしょうか。
  162. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 現在、私どもアメリカ側との向かい合っている状態は、高級牛肉柑橘につきましては、本年十月一日から交渉と申しますか協議を開始したいというのがアメリカ側のポジションでございまして、それ以外の残存輸入制限品目につきましてはアメリカ側として直ちに協議に入りたいということを申しております。私どもといたしましては、現在抱えております二十二品目の中で、自由化の展望を持ち得るものは現在のところございませんが、しかしながら日本は現在でもアメリカの農産物の最大の顧客でございまして、私どもとしては決して、アメリカ側の農産物の輸出を拡大をしたいという要求に対してかたくなな態度をとっておるつもりはないわけでございまして、アメリカの農産物の貿易上のパートナーを比較いたしますれば、日本アメリカから見て最も望ましい顧客であることは間違いないわけでございまして、そこら辺の事情を条理を尽くして説きながらアメリカ側と対応してまいりたいと思っているわけでございまして、決してかたくなであるというふうには思っておりません。
  163. 近藤豊

    近藤(豊)委員 アメリカ側に対して日本は最大しかも最良の顧客である、これは数字の上で明らかにそうだと思います。しかし非常に注意をしなければいけないことは、現在、アラスカの石油の輸入の問題でいろんなやりとりが行われておると思います。その過程で、向こう側の一部の関係者から出た議論として、石油だけを日本に売るわけにはいかないんだ、日本は何でも農産物でも木材でもいわゆる原料を欲しいだけ持っていく、しかし工業製品についてはNTBをかけたり輸入制限をかけたりしてなかなか持っていかない。工業製品の輸入制限はそうないのですけれどもなかなか買わない。だから原油が欲しいんだったら、アラスカの油が欲しいんだったら、アメリカの製品と何か抱き合わせでなければ売らぬよ、そういうふうにすべきだという議論があります。こうした議論は、いずれ穀物などについても出てくる可能性がある。その場合には、まず手近の農水産物資から抱き合わせて買わなかったら売らぬぞというような議論が出てきかねないわけなんです。御承知のように、アメリカの世論というのは一度沸騰し出すとどちらへ行ってしまうかわからないぐらい非常に激しく変化をする国民性がありますから、現在、上院の公聴会などでどんどん日本に対する不満が噴出をしてきている。そういう中では道理に合わないような、理屈に合わないような反発をしてくる可能性があるわけです。そうした場合に、われわれ国益の面で非常に大きな不利をこうむるかもしれない。したがって、少なくとも私は、柑橘牛肉のように非常にむずかしいものもありますけれども、最初から手のうちをさらけ出す必要もありませんが、段階的に幾つかの案を用意をされて、そうしてアメリカ側を何とか納得させ得る、もうこれでぎりぎり日本の農水省としては努力をしているんだぞということを見せられなければ、今度始まる柑橘類と牛肉の協議の場合でもなかなかこれはむずかしいんではないだろうか、そういうふうに思いますけれども、交渉の当事者としてどうですか。
  164. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先生指摘のとおりに、日本側アメリカからの輸入構造が一次産品に傾斜をしておるという批判アメリカ側に強いことは私どももよく承知をしておりまして、その問題についてアメリカ側を納得させるためには、どうしてもまず通商産業省所管の物資の輸入をふやしていただかなければならないというふうに思います。しかしながら、私どもといたしましても、農林水産省の守備範囲で一次産品に傾斜しがちの輸入構造を是正する努力はしていないわけではないわけでございまして、一番人口に膾炙しておる例を申し上げますと、丸太の輸出を抑えて加工林産物を日本に輸出したいというアメリカの要求にこたえまして、現在、構造用合板の規格をアメリカの要求に合うように改正をするという作業を現に進めているわけでございまして、先生指摘アメリカ側の世論の動向については、私どもも十分敏感に肌で感じておるつもりでございます。  農産物プロパーの分野につきましても、私どもとしてはアメリカ側立場もよくわきまえて交渉した結果、東京ラウンド合意が成立したわけでございまして、これからの協議に当たりましても、自由化をするということは想定をいたしておりませんが、アメリカ側立場に耳を傾けないという態度で終始するつもりはないわけでございまして、そこら辺のところはよく事情をわきまえて対応してまいりたいと思っております。
  165. 近藤豊

    近藤(豊)委員 この次に予想されているアメリカとの協議の対象であるオレンジ牛肉は、最もそうした意味ではアメリカ人がいつも日本に来て値段の差にびっくりする二つの代表的な品目であるわけなんです。もしこうした点に——もちろんいろいろな案を用意して交渉をしていただくわけですけれども、譲歩を余儀なくされていく場合、やはり日本の国内での柑橘農家あるいは畜産農家は大変な量があるわけで、その人たちに大きな影響を与えると思うのです。ですから、あくまでも農水省としては大臣の責任のもとにいろいろな段階を予想をして、その影響をあらかじめ計測をしておいていただきたい。それから、その影響に応じて段階的に輸入量をふやすとか、その輸入量をふやす結果生じる被害についても、今度それを何らかの形で、前向きの形で救済をしていくというような案を幾つも用意、検討をしておいていただきたいと思うわけです。たとえばオレンジ自由化をした場合には、ミカンの農家は、低級ミカンでジュースにしてしまうようなミカンをつくっておるところは大変ヒットされると思います。値段の高い高級なミカンをつくっているところ、たとえば私の出身地などは案外生き延びるかもしれませんけれども、それでも値段を抑えられるでしょうから所得はそこで大いに減っていくと思います。そうした場合に、いまのところはいわゆる温室でつくるミカンは、農水省としてはこれは直接に政策的に推奨する対象としていない。ところが露地のミカンをやっている人たちは、一部を温室でやっているという兼ねてやっている人が多いわけで、露地でつくっているミカンが値段が押し下げられて全体の収入が悪くなるというようなことになりますと、やはり温室のミカンでその足りなくなるところを補うぐらいのことは考えてやらなければいけない。あるいは温室のミカンの方はまま子でございますよということで、露地のミカンだけは何とか政策対象にしても、温室のミカンは知りませんよということでは、実は今後予想されるオレンジ自由化というような、あるいは輸入量の増大という事態の中では、これはいささか片手落ちになるのではないかという気がするのです。そうした点を配慮しながら、きわめて柔軟な、そしていろんな事態に対応できる形でひとつその影響を、インパクトをできるだけ徐々に与えていくような形に工夫をしていただきたいということを要望いたします。  大臣からひとつ、この点についての御所見を伺いたい。
  166. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 残存輸入制限品目につきましては、特にオレンジ牛肉につきましては、先生承知のように東京ラウンド合意された事項をいま着実に実施をいたしておりまして、これは一九八三年度まで一つの決定を見ているわけでございますから、一九八四年度以降の問題につきましては、これからいわゆる協議をするのでございます。したがいまして、私たちは、その問題で政府間の交渉に入る前にできるだけ日本農林水産業状況アメリカによく理解していただく、あるいはまた、これまで進めてまいりました輸入拡大に対する私たち努力も理解していただくということにまず努力をしなければいかぬと思うのですね。  それからもう一つは、やはりアメリカ高金利政策による景気の落ち込みを、これはアメリカはしていただかなければいかぬわけでございますが、これはわれわれの干渉するところじゃございません。しかし、日本としてはやはり内需に力を入れて輸出ドライブのかからぬいわゆる経済運営をするということが一番いま重要な課題じゃないかと思いますので、そういう点をできるだけ日本としては努力をいたしまして、それで、農林水産品目の緩和は農林水産業にとって非常な影響を与えるものですから、できるだけそれには手を染めない。また、これからの交渉に当たっては、こういう点は先生御心配のようなことのないように私たちは環境をつくる、そうして交渉に臨むということにいたしたいと思いますので、いま段階的にこれを考えたらどうだ、こういう品目はこうしたらどうだということは、私はいまそれは考えるべき問題じゃない、かように考えます。
  167. 近藤豊

    近藤(豊)委員 もちろんそういう心構えで交渉に臨んでいただきたいと思いますし、日本経済運営を内需中心でやらなければいかぬということもそのとおりであります。しかし私は大臣考え方が少し違うのは、日米関係の深刻さというものは想像以上に急なリズムで恐らく悪化をしていくだろうと思うのです。そうした場合には、幾ら守ろうと思っても守れなくなることがあるかもしれない。そういう場合のことを何も公開する必要はありませんけれども、農水省の中ではいろいろな場合を想定して、そして対応策について、つまり影響を減殺するような、少なくするような、どうしてもとらなければいけない譲歩策を——譲歩してしまった場合に、その影響をなるべく徐々にするように、緩やかにするような方策についてはもう研究をどんどん始めておいていただきたい、こういう要望であります、ということを申し添えて、私の質問を終わります。
  168. 羽田孜

    羽田委員長 神田厚君。
  169. 神田厚

    ○神田委員 最初に大臣に。  大臣が御就任をなさいまして、農業に対しましてのお考えをいろいろなところで述べられているようでありますが、その中で特に、現在の農政が転換期であるという中でこれに対する対応を考えていかなければならないということを述べておられるようでありますが、農政に取り組む基本的な姿勢について最初にお伺いしたいと思います。
  170. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 国会の決議あるいは農政審議会からの答申を得ました「八〇年代の農政基本方向」あるいは「農産物の需要と生産の長期見通し」等を基本にしながら、長期の展望に立って農業の生産性の向上を図る。その生産性の向上も、国内で生産できるものは極力国内で賄うという基本、そうして国民の需要の動向に応じて農業生産の再編成を図るということが基本的な姿勢でございます。
  171. 神田厚

    ○神田委員 大臣はその中で一心と心が触れ合う農村、こういうものをつくりたいんだということをおっしゃっておりまして、まことに同感でございますが、近年、米の転作問題が出ましてから、転作強化によりまして、さらに集団加算というような方向をとることによりまして農村社会自体がぎくしゃくとして人間関係が非常にまずくなってきているということを私ども身近に感じているわけであります。  そこで、転作問題につきまして、特に大臣は、水田利用再編の三期対策について減反面積をこれ以上広げない、つまり調整の期間としたいんだというようなことを述べられておりますが、この水田再編の今後の見通し、さらに転作問題について、一体大臣が言っておりますことは、つまり第三期対策を調整の期間とするのか、それとも第二期の、これから五十八年度までの間を調整の期間とするのか、その辺のところはどういうふうにお考えですか。
  172. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 水田利用再編対策はいま二期対策に入っているわけでございますが、私は、水田利用再編対策を集団化し定着化しなければいけない。いままではどうも、緊急避難的にこの政策農家の方も団体の方も見詰めてきたようでございますが、そういう時代じゃない、もはやこの水田利用再編対策によって新しい農政をつくらなければいかぬ、意欲的な取り組み方をしていかなければいけない。ですから、第二期対策の間に一体どれくらい定着するだろうかということを五十八年度までにやはりきちっと整理しなければならぬ。一方、米の消費拡大がどの程度まで拡大されるのであろうか、消費の伸びが一体どの程度におさまるのかということも、これから消費拡大ということをわれわれは極力進めながら、大体五十八年度でこの程度の米が必要なんだということをある程度把握しなければいかぬと思うのですね。いままでのは、先生承知のように昭和六十五年度までに米は一千万トン程度ですよ、したがいまして、そのためには七十六万ヘクタールの転作をしなければならないという目標があるわけでございますけれども、これを私はもうちょっと定着させなければいかぬ、こう考えましてお話しをしているのでございまして、私は、五十八年度までに米がどれくらい必要なのかということと、それからいわゆる水田利用再編対策がどの程度定着したかということを二期対策である程度把握したい、その上で三期対策考えていかなければいかぬ、こういうことを申し上げるためにいろいろ新聞等にも発表しているわけでございますので、その点を御理解いただきたいと思うのでございます。
  173. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、五十八年度までにいわゆる二期対策の定着化についての努力をして六十五年度に七十六万ヘクタールの転作が必要だというものについては、三期対策そのものは転作緩和も含めて検討する、考えていく、こういうことでございますか。
  174. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ですから、五十八年度までに水田利用再編対策が定着しなかったという場合、さらに、米の需給関係のために水田利用再編対策をいま少しやらなければいかぬという場合になりますと、それは検討していかなければならないでしょうし、そういう点を五十八年度までに一応の基礎的なものをつくらなければいかぬ、それで、その上に五十九年度以後の水田利用再編対策を進めていかなければならないということを私は申し上げているわけでございます。
  175. 神田厚

    ○神田委員 ちょっと誤解されやすい御答弁かと思うのですが、転作の定着化ということといわゆる三期対策の問題とはちょっと違うかと思うのですね。米の消費拡大のこれから先の見通しやなんかの問題はいいのですが、それは定着化の問題とは直接関係しない問題ですね。ですから、現在集団化あるいは定着化の問題はちょっと足踏み状態だ、すなわち臨調あたりはそういうところを突いて、いつまでも転作奨励金は出せないから定着を図れということを言ってきていることがありますから、あるいは大臣はそういうところを意識をして発言をなさっているのかなという感じもするわけでありますが、いずれにしましても、私は、この転作の問題については五十八年度でこれを見直して第三期対策以降を見直していくというその姿勢はそれなりに必要だと思っております。ですから、それはそのことをやっていただくと同時に、定着化ももちろん必要でありますが、何といいましても、いまおっしゃいましたような形で言いますれば、六十五年度に七十六万ヘクタール転作するという問題は、いまの農家にとりましてきわめて責任が重いといいますか負担が重いといいますか、そういうものになっておりますね。ですから、第三期以降、これはできればひとつ転作緩和の方向で検討していただければと私は思っているのですが、もう一度ひとつ……。
  176. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いまの閣議決定された転作の目標は、六十五年度で七十六万ヘクタールを転作しなければならないという一つ目標があるわけでございますけれども、これについて昭和六十五年度までに何としてでも七十六万ヘクタール進めて、本当にそれまでやらなければならないのかということが一つですね。また、どの程度定着してその目標に近いものになっているかというその努力、それが一つ。それからもう一つは、米の消費拡大によって米の需要が非常に大きくなったということも関連しますから、そのこともあわせて五十八年度までにできるだけ水田利用再編対策の基礎をつくりたい。その上で三期対策をできたら調整の時期にしたいと思いますけれども、どうしても米の需給バランスがとれないという場合には、やはり六十五年度の見通し目標とした水田利用再編対策でございますので、その方向では進めてまいらなければいけませんけれども、私は、できるだけ二期対策である程度見通しをつけたいものだなということを考えているわけでございますので、そういう点はひとつこれから私たちもいろいろ努力をしてそういう方向を見出したい、かように考えているわけでございます。
  177. 神田厚

    ○神田委員 それでは、定着化という問題について、定着化を進めなければならない、ですから現在のままでは定着化が進んでいないという判断を多分お持ちだと思うのです。これはどういうふうにお進めになりますか。
  178. 小島和義

    ○小島政府委員 水田利用再編対策は昭和五十三年度からおおむね十年間の対策ということでございまして、その間に奨励補助金に依存しない転作営農の確立を期する、こういう基本的な考え方で推進をいたしておるわけでございます。しかしながら、実際の農業の姿と申しますのは数百年あるいは数千年にわたりまして灌漑農業と申しますか、これを基本的な体質としてわが国農業は育ってきておるわけでございますから、その中で水田で畑作物をつくっていくという体系を安定的に確立してまいりますことは容易ならざることであるということはおわかりいただけると思います。したがいまして、単に奨励金を出し続けるというだけではなくて、米と他作物との価格の体系を是正していく、あるいは排水条件など土地基盤の条件も汎用が可能なように整備をしていく、さらには畑作物の大部分のものはある程度まとめてつくりますことによりまして省力化も収益性の向上も可能な物が多うございますから、そういう意味でまとまった転作を進めていく、このようなことを総合的に実施をいたしまして、転作農家が次第に奨励金依存から脱却していける素地をつくっていきたいと思っておるわけでございます。で、先ほど大臣が申し上げました第三期を調整の時期にしたい、こういうお話も第二期で足場を固めて第三期で仕上げに向かいたい、こういう御趣旨ではなかろうかと私ども聞いておるわけでございます。
  179. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと奨励金との関係では、転作奨励金に依存することから脱却せよというような声もございますが、現在の状況の中では転作奨励金というのは一つ欠かせない問題になっておりますね、この辺は大臣としてはいわゆる三期対策が進む中におきましても奨励金の存続ということについてはこれを守っていく、こういう姿勢でありますか。
  180. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ですから、二期対策でできるだけ定着化させるということが第一でございますね。それでどうしても定着化あるいは集団化等が希望どおりまいらないという場合には、やはり転作奨励金というものが必要だと思いますので、そういう点は考えていかなければならない、こう思います。
  181. 神田厚

    ○神田委員 それでは次に、これに関連しまして、やはりどうも米の消費拡大をどういうふうに進めるかという問題が一番決め手になりますが、農林水産省におきましてもこの米の用途別価格の問題の検討を始めたと聞いておりますが、これはやはり現在のような需給関係から考えていきますれば、あるいは転作等の問題も含めて考えていきますれば、米の用途別価格の問題というのはひとつどうしても考えていかなければならない問題だと思っておりますが、この点につきましてはどういうふうな目標におきまして用途別価格の問題が検討なされているのか、あるいはいつごろを一つのめどとして一つの案をお出しになるようなおつもりなのか、その点いかがでございますか。
  182. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように転作の作物の選定につきまして、湿田地帯等では適当な転作物が見つからないというところから、最近えさ米等につきまして非常に強い要望が出ております。ただ、えさ米につきましてはまだ収量も十アール大体五百キロぐらいのものでございまして、超多収米のような品種はまだ完全にはできておりません。  そこで、農家の要望にこたえるために現在、飼料米につきましてもそういう新品種、超多収の米ができないかということを検討しているわけでございますが、何分にも飼料米に匹敵する飼料穀物価格が安いものでございますから、それとの関係で飼料米をつくる場合にもこの収益差をどう補てんするかという問題もございます。  また、この飼料米のほかにもアルコール用に米が使えないかとか、あるいは工業用等にももう少し別途の用途はできないかというような問題がございます。ただ問題は、現在、政府が買い入れております米の価格との間に非常に大きな価格差がございますので、この間をどのように補てんするかというところから、一つの方法といたしまして用途別の価格設定ができないかという問題が出てきたわけでございます。これは農政審の答申におきましても、用途別の価格設定ということができないか、十分検討しろという答申がございまして、現在私ども内部で検討を進めておりますけれども、ただ、何分にも米そのものはえさ用にもアルコール用にも工業用にも使えるのでございまして、品質的にそれぞれが用途別に分かれておるというものではございませんので、一方では米穀の流通等につきましては食糧管理法で非常に厳しい規制を課しております。それとの関係で用途別の価格設定をした場合その価格と流通とがうまくかみ合うかどうかという基本的な問題がございますのと、またそれが用途別の価格設定がされた場合、それぞれの農家でどのような生産をし、どのような販売をしていくかというような問題もございまして、この影響するところが非常に大きいわけでございます。農業団体でも、現在の転作実態からながめまして、やはり用途別価格につきましても今後の問題として真剣に取り組むべきではないかという意見が出てまいりまして、現在農業団体におきましてもこの秋を目指して検討を進めております。私ども農政審議会に昨年の十月専門委員会を設けまして、そこでこの問題につきましても現在幅広い観点から検討を進めているところでございますが、まだ最終的な結論を得るに至っておりませんが、現状から見まして、私どもできるだけ早い機会にこの問題について回答を得たいと考えております。
  183. 神田厚

    ○神田委員 御答弁の中にありましたように、農業団体もこの用途別価格の問題についてはかなり積極的に検討しているようでありますが、大臣はこの用途別価格の問題については基本的にどういうお立場をおとりになりますか。用途別価格の導入についてはどういうふうなお考えでございますか。
  184. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま官房長から答弁されたとおり、農政審議会にいま諮問いたしておりますので、この結論を得ていろいろ進めてまいりたいと考えております。
  185. 神田厚

    ○神田委員 ですからやはり転作問題では大臣が定着化を図るということ、それから米の消費拡大をするということ、こういうことを考えていけば、何らか方法がなければだめですね。そういう意味で用途別価格というのは一つの大きな問題ですね。ですからそれについて、農政審の答申ももちろんそうでありますが、個人的に大臣としてどういうふうにお考えですかということです。
  186. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 これは非常にむずかしい問題でございますので、私の私見をいま述べる段階ではないと思いますので、慎重に検討したい、こう考えております。
  187. 神田厚

    ○神田委員 次に、貿易摩擦問題、同僚の近藤議員の方からも御質問申し上げましたが、昨日総理は内閣記者会と懇談をいたしまして、対外経済摩擦問題についてはっきりと、農産物の自由化等のことにつきましては米側の要求をのんでも対米黒字幅を減らすのは七、八億ドルくらいと言われている、そのために日本農家が食うか食われるか大騒ぎになっても困ると述べまして実効性に疑問を投げかけて消極的な姿勢を示した、こういうふうに新聞報道で伝えられております。基本的な鈴木総理のお考えはまさにこの時点におきまして農家、農村にとりまして一つの希望であると思うのでありますが、大臣としてはどういうふうにお考えでありますか。
  188. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 いま私たちは、先ほど申し上げましたように長期の展望に立って農業生産の再編成あるいは農業の生産性の向上を図って食糧の自給率の向上を図ろう、こういう考え、さらに活力のある積極的な農政を確立しようとして努力をしているわけでございまして、農家、農民もこのために非常な努力をいたしておるわけでございます。ところが、残存輸入制限品目等のいわゆる対外経済摩擦というものは、農家にとっては関心が非常に高いし不安の要素を含んだ問題でございますので、私たちとしては、この問題の他のいろいろな要素をアメリカにできるだけ理解をしていただいて、これには手を染めないような形で今後も交渉に当たりたい、かように考えております。
  189. 神田厚

    ○神田委員 安倍通産相が一月二十六日の講演で、不均衡是正は緊急に解決すべきで、政府はタイムスケジュールをつくり農畜産物自由化についてはできるものとできないものを整理して早く外に回答すべきである、パリ・サミット、六月が最終の決着点となる、このように述べておりますが、大体政府方針というふうに私ども理解をしてよろしいと思うのでありますが、同時に、関係省庁問で意見が非常に食い違っているような場合もありますから、今後この問題を詰めていくために関税前倒し引き下げの実施のときのように、農林サイドの意向を無視して進められる傾向が非常に心配であります。したがいまして、総理も二月一日の予算委員会で、自由化問題は全国の農家が十分納得のいくようにやっていきたい、こういうふうに答弁しておりますから、農林サイドの意見が十分に尊重されるような体制づくりというもの、これをやっていただかなければならないと思っておりますが、その点はどういうふうに考えますか。
  190. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 昨年の暮れに対外経済閣僚会議で五項目にわたっての対外経済対策を決定いたしたわけでございます。その中身は、安倍通産大臣が具体的にお話ししたような内容ではないわけでして、大きな項目、大綱を決定したわけでございますので、具体的な問題についてはこれからアメリカとの間にいろいろ交渉を始めることでございますから、私たちとしては、いままで進めましたいわゆる関税率引き下げ前倒しだとか輸入手続の緩和等を非常に苦しい中で決定いたしたのでございますので、こういう点をできるだけアメリカに理解をしていただくあるいはまた、アメリカ日本農林水産業の実情をよく理解をしていただいて環境を整えたいという考えでございます。したがいまして、私は常に閣議においてもあるいは関係閣僚会議においても私の考えを主張して、農林水産行政に大きな影響を与えないような交渉を進めてまいりたい、かように考えております。
  191. 神田厚

    ○神田委員 関連しまして、農林大臣が、対外経済問題で省間の連絡が十分でないとして、農林省が一枚かんだ対外経済摩擦解消対策の窓口をつくれ、こういうふうに発言をしていると聞いておりますが、こういうふうな形で農林省としては各省庁間の取りまとめといいますか、それをやりたいという意向でやっておるわけですか。
  192. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 過般の対外経済閣僚会議で、私はただいま御指摘のような主張をいたしたわけでございまして、内閣として一つの窓口でこれを処理するのが至当だと思いますので、そういう考え方は今後も進めてまいりたい、こう考えております。
  193. 神田厚

    ○神田委員 それから現在、江崎さんを中心としてこの摩擦問題について訪米されておりますね。そういうこととも多少関連があるのですが、農林省所管で二十二品目のうち牛肉オレンジなど全国的に生産されている品目自由化はむずかしいが、落花生とかこういう特定地域の作物はこれから自由化の検討をするというふうに言われて心配をされております。この特定地域の農畜産物自由化の検討の問題については、昭和四十六年に自由化を断行したときに、いわゆる国内摩擦、政治問題が生じたことがございました。こういうふうなことを考えますと、われわれは特定地域の作物の自由化の問題についてもこれは大変問題があるというふうに考えておりますが、その点はどういうふうに考えておりますか。     〔委員長退席、亀井委員長代理着席〕
  194. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 牛肉オレンジについては、先生承知のように東京ラウンド合意された事項でございますので、これは一九八四年度以降の問題についてはこれから協議をするわけでございまして、他の残存輸入制限品目につきましては、これはまたこれとしてもオレンジ同様、牛肉同様農林水産業界に非常に大きな影響を与えるものですから、これに対してもあくまでも手を染めたくない、自由化はしたくないという意向で私たちは進めたいと思っております。
  195. 神田厚

    ○神田委員 次に、自給率問題、自給力強化の問題、これについて御質問を申し上げます。  食糧自給力の向上ということで国会決議までもした大変大きな問題でありますが、しかしながら、自給率の向上の問題については何ら具体的な方策が立てられていない。私は、この際、日本と非常に条件の似通っておりますイギリスが、自給率向上をどういうふうにしてやったかというような問題をちょっと御提言を申し上げて、日本としましても、政治の姿勢が自給率の向上を達成するための決定的な力になるのだということを大臣にお聞きをいただきたいと思うのであります。  イギリスの中で問題になっておりますのはイギリスの食糧自給率の問題で、一九七五年の四月に「わが国資源からの食糧供給」として、イギリス政府が一九八〇年代初頭の農業農政の中期的展望を試みた報告をしております。この中で日本と非常に違いますのは、条件は、戦後のわが国とイギリス農業の違いが食糧自給率の問題にあることでありますが、現在のわが国の自給率がオリジナルカロリー計算で三割程度、イギリスでは穀物七〇%、食肉全体で八二%、ますます広がってきている。人口が稠密で国土の狭い両国の食糧自給率がこれまでに違ってきたのは農業政策の違いだ、こういうふうに断じているわけであります。そしてこの報告において示されていることは、要するに、この報告に当たってイギリス政府は、あらかじめ農業者、労働者、土地所有者、食品加工業者、消費者と討議を重ねて、イギリス農業の諸目標について合意を得る会議を何回もやっている。そしてそこで到達した合意というのは、食糧、飼料の国際価格の高騰によって、一九六〇年代の食糧の低価格の時代に戻りそうがないという認識に立った上で、これは日本と同じような状況です。「イギリス国内における食糧生産の持続的拡大は、今後も国益に沿う、というのが政府見解である。」こういうことをまず表明するのです。あと何項目か表明しておりますが、これは「のびゆく農業」というのに「イギリスの食糧自給政策」として一九七六年に出されております。これを見ていきますと、農業の問題について、つまりこういう時期であるけれども、どういうふうにしたら一番国益に沿うのかということを、労働者も農業者も土地所有者も食品加工業者も、それから消費者も全部入れてやっている。こういう中から、食糧は自分たちの国で自給をある程度確保しなければならないという認識に立って、つまり国民的な合意のもとで食糧政策を打ち出してきたわけです。  ですから、国会が自給力向上の決議をしたその後の対策として、同時に、国民合意の中で自給力向上の問題というのに取り組んでいかなければならない。決議のしっ放しだけではだめだし、そのためには、ただいま、たとえば米価一つをとりましても、生産者米価と消費者米価の問題で生産者と消費者が非常に対立をしている。昔は誇りを持って米をつくっていた農民が、米をつくることに何か後ろめたさを感じている。そして消費者も、米をつくってもらっているというありがたい気持ちを持って食べておったのが、いまは何か不公正の中で米を食っているというような考え方を持っている。こういう基本的な対立もどこかでこれを解消して、国民合意を取りつけていって、食糧政策を確立をするという方向を打ち出さなければならない。残念ながら農政審の答申では、自給率の向上の問題については具体的な提案がなされてない。ですから、私はこの辺で——特に穀物自給率なんかそうでありますが、ここまで落ちてしまった自給率を持っている国は先進国にはないわけでありますから、スイスやその他ありますが、スイスはああいう国家でありますからね。そういうことから考えますと、自給力強化という問題ではなくて、具体的に自給率と言葉を置きかえて政策転換をそこに求めていく、農政の転換をそこに求めていくということをしていかなければならないと思うのでありますが、大臣のお考えをお聞かせください。
  196. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 この委員会で何回か申し上げておりますが、私たちは、食糧自給力の確保のためには国内で生産できるものは極力国内で賄うという基本にのっとって、国民の需要の動向に応じて農業の再編成を図る、農業の生産性を向上するということでございます。問題は、戦後の生活様式の高度化、多様化が食生活の多様化、高度化になりまして一米の需要はだんだん落ち込んでまいりまして、いまお米は過剰の状態にある、ここが日本の自給力確保のために一番大きい問題だと思うのでございますので、ただいま先生指摘の、国会の決議の折、広く国民合意を得るための会議を持つことが私は必要だったと思うのです。この問題については、いわゆる国民の意識革命が必要だと思うのですよ。そういう点で、もうすでに進めていなければならない問題でございますけれども、これからでも遅くないものですから、やはり米を主食としてこれからわが国は進まなければいかぬという国民合意を得て、自給力の維持確保に努めてまいらなければならないと私は考えます。私は、そういう点を柱にしながら今後進めてまいりたいと考えております。
  197. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんのでこれ以上お話ができませんが、すでに農林省等でも統計でわかっておりますように、たとえば米国からの農林水産物の輸入額は毎年増加を続けて、八〇年には百二億ドルになっている。これ以上日本としてさらにそういうものをふやすことができるのかどうかという問題が一つある。ですから、そのことは農林水産省なり農政基本的な方向として、国内でできるものとそうじゃないものというような選別よりも、むしろどこにどの程度のものをどういうふうに自給をしていくかという問題を考えなければならないのではないかと思うのであります。後の機会にこの点の問題についても御提言を申し上げたいと思っております。  その他いろいろ御質問があるのですが、最後に林業の問題で一つ。  林業は、特に木材の問題をめぐりまして非常に問題があります。それで、たとえば一九七九年度は七八年度に比べて約八〇%近い輸入木材を入れたわけですね。そういう関係もありまして、木材の問題が非常に重要な政策の問題になってきておりますが、この辺を一点だけで結構でございますが、林野庁の方からお聞かせいただきたいと思います。
  198. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  先生指摘のとおり、昨年は住宅着工量が非常にダウンして木材の需要量の低下を来し、さらに輸入環境も従来の丸太から製材品に変わってまいっておりまして、需給両面で構造が変化してまいっております。それで、私ども昨年来、当面の緊急対策として不況カルテルの認可とか雇用保険法の適用その他で対応してまいりましたが、現在の状況ではなかなか不十分でございますので、ことしにおいてはさらに——木材産業そのものが昭和四十八年前後の規模でございますので、この際、再編整備して廃棄すべきものは廃棄する、合理化すべきものはするというふうな方法をとると同時に、また一方において輸入材が少なくなってまいりますので、国産材にだんだんと原料供給の形を変えていくための施策をとり、かつは今度需要拡大をするための施策をとりながら、ぜひとも今後の木材振興を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  199. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  200. 亀井善之

    ○亀井委員長代理 次回は、明二十四日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十七分散会