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1982-07-29 第96回国会 衆議院 内閣委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年七月二十九日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 田名部匡省君 理事 山崎  拓君    理事 上田 卓三君 理事 渡部 行雄君    理事 鈴切 康雄君 理事 小沢 貞孝君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    狩野 明男君       亀井 善之君    塚原 俊平君       吹田  愰君    細田 吉藏君       堀内 光雄君    宮崎 茂一君       市川 雄一君    木下敬之助君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)         外務大臣臨時代         理       宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君  出席政府委員         防衛政務次官  堀之内久男君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         国土庁長官官房         防災業務課長  西沢 辰夫君         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         大蔵省主計局給         与課長     西村 吉正君         大蔵省主計局主         計官      小川  是君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     藤村 和男君         農林水産省経済         局金融課長   中島  達君         農林水産省構造         改善局管理課長 日出 英輔君         農林水産省構造         改善局農地業務         課長      河合 正彭君         海上保安庁警備         救難部長    森  孝顕君         郵政省電波監理         局法規課長   加藤 芳隆君         消防庁消防課長 山越 芳男君         会計検査院事務         総局第二局防衛         検査第三課長  別所 正章君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 委員の移動 七月九日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     石原慎太郎君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     上草 義輝君     ――――――――――――― 七月十四日  元日赤救護看護婦に対する恩給法適用等に関す  る請願市川雄一紹介)(第四二八二号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第四二九六号)  同(角屋堅次郎紹介)(第四二九七号)  同(田口一男紹介)(第四二九八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四二九九号)  同(渡部行雄紹介)(第四三〇〇号)  同(愛野興一郎紹介)(第四三五一号)  同(有馬元治紹介)(第四三五二号)  同(今井勇紹介)(第四三五三号)  同(上草義輝紹介)(第四三五四号)  同(江藤隆美紹介)(第四三五五号)  同(川崎二郎紹介)(第四三五六号)  同(木野晴夫紹介)(第四三五七号)  同(田村元紹介)(第四三五八号)  同(塚原俊平紹介)(第四三五九号)  同(戸沢政方紹介)(第四三六〇号)  同(中尾栄一紹介)(第四三六一号)  同(葉梨信行紹介)(第四三六二号)  同(浜田卓二郎紹介)(第四三六三号)  同(船田元紹介)(第四三六四号)  同(牧野隆守紹介)(第四三六五号)  同(矢山有作紹介)(第四三六六号)  同(山下徳夫紹介)(第四三六七号)  同(戸井田三郎紹介)(第四三七六号)  同(森井忠良紹介)(第四三七七号)  同(米沢隆紹介)(第四三七八号)  同(谷垣專一君紹介)(第四三九二号)  同(湯川宏紹介)(第四三九三号)  同(池端清一紹介)(第四三九七号)  同(友納武人紹介)(第四四〇八号)  同(宮崎茂一紹介)(第四四〇九号)  同(金子岩三紹介)(第四四一七号)  元在上海日本大使館嘱託恩給支給に関する請  願(石井一紹介)(第四三五〇号) 同月二十一日  元日赤救護看護婦に対する恩給法適用等に関す  る請願川本敏美紹介)(第四四三四号)  同(菅直人紹介)(第四五〇九号)  同(田名部匡省紹介)(第四五一〇号)  同(栂野泰二紹介)(第四五一一号)  同(倉成正紹介)(第四五二七号)  同(竹内黎一君紹介)(第四五二八号)  同(中野四郎紹介)(第四五二九号)  同(野呂恭一紹介)(第四五四四号)  靖国神社公式参拝実現に関する請願天野光  晴君紹介)(第四五五一号) 同月二十九日  公務員賃金抑制定員削減中止に関する請願  (中路雅弘紹介)(第四五九五号)  同(藤田スミ紹介)(第四五九六号)  昭和五十八年度の恩給等改善に関する請願(井  上普方紹介)(第四六四三号)  元日赤救護看護婦に対する恩給法適用等に関す  る請願枝村要作紹介)(第四六四四号)  同(神田厚紹介)(第四六九九号)  同(狩野明男紹介)(第四七〇六号)  同(八田貞義紹介)(第四七〇七号)  同(竹中修一紹介)(第四七三〇号)  靖団神社公式参拝実現に関する請願澁谷直  藏君紹介)(第四六七四号)  国家公務員労働基本権確立及びスト権回復に  関する請願稲葉誠一紹介)(第四六九五  号)  同(勝間田清一紹介)(第四六九六号)  同(八木昇紹介)(第四六九七号)  同(五十嵐広三紹介)(第四七〇八号)  同(池端清一紹介)(第四七三一号)  重度重複戦傷病者に対する恩給の不均衡是正に  関する請願神田厚紹介)(第四六九八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第二六号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下敬之助君。
  3. 木下敬之助

    木下委員 私は、民社党を代表しまして、本日の議題であります防衛二法に関連して、幾つかの問題について質問をいたします。  まず最初に、このたびの長崎県を中心九州北西部にかつてない大きな被害をもたらした集中豪雨によってとうとい生命を亡くされた方々の御冥福をお祈り申し上げますと同時に、被災者の皆様に対し心からお見舞いを申し上げます。  この大災害の中を自衛隊員の皆さんが捜索、救助作業等に力を尽くされている様子がテレビを通じて全国に報道されておりましたが、雨の中を車では通れないところへ歩いて救助に向かう姿を見て、多くの国民が頼もしいと感じたのではないかと思いました。御苦労さまでございますが、国民の期待を担って、がんばって今後の復旧作業に当たっていただきたいと思います。  まず、この災害につきまして国土庁に、本日までにわかっている被害状況についてどう把握しておられるか、お聞きいたしたいと思います。
  4. 西沢辰夫

    西沢説明員 御説明いたします。  今回の災害、五十七年七月豪雨の二十八日十七時現在でわかっております被害状況を御説明いたします。  被害長崎、熊本、大分佐賀等数県にまたがっておりますが、合計で、死者三百十四、行方不明四十六、負傷者三百四十、家屋全壊流失五百三棟、半壊六百二十七棟、床上浸水一万二千九百九十五棟、その他となってございます。  以上でございます。
  5. 木下敬之助

    木下委員 私は大分の出身で、大分も大変大きな被害を受けているわけですが、大分被害についても把握しておられますか。
  6. 西沢辰夫

    西沢説明員 大分県の被害状況について御説明いたします。  大分県下では、死者八名、このうち七名が竹田市でございます。負傷者十六名、家屋全壊二十四棟、半壊十八棟、床上浸水四百八十二棟等となってございます。
  7. 木下敬之助

    木下委員 以上お聞きいたしましたような大変な被害でございますが、対策についてはどういうふうになさっておられますか。
  8. 西沢辰夫

    西沢説明員 各省庁において被害状況把握し、それぞれ所要の措置を講じておりますが、現在までの大分状況を申し上げますと、電気、水道等もそれぞれ停電あるいは断水個所が出ましたが、現在では供給できるように回復してございます。それから道路関係でございますが、国道につきましても五十七号、二百十号にそれぞれ損壊個所が生じましたけれども、二十五日現在ですべて開通してございます。その他各種災害につきましては、地元地方公共団体準備等を待って災害査定早期に実施するとか復旧事業早期実施を図ることとしてございます。  以上でございます。
  9. 木下敬之助

    木下委員 これからだんだんはっきりして、いろんな対策もまたはっきりしてくると思いますけれども、まずとりあえず激甚災害指定をぜひしてほしいという声があるのでございますが、この点はどういうふうな見通しを持っておられますか。
  10. 西沢辰夫

    西沢説明員 激甚災害指定見通しについてお尋ねでございますが、今次の災害におきまして激甚災害指定指定基準に該当すると見込まれますものは、中小企業関係融資の問題でございます。  御案内のとおり、中小企業関係指定基準は、中小企業関係被害額が、全国中小企業所得推定額の〇・〇六%以上の被害全国で発生しまして、しかも、その一つの県の中小企業関係被害額当該県中小企業所得推定額の二%を超える県が一つ以上生じた場合ということになってございます。今回の場合、後段で申しました条件長崎県の被害が当たるかどうかというところでございまして、これが該当いたしますれば、このたびの災害を全体として激甚災害として、中小企業関係でございますけれども指定ができるということになってございます。  他の公共施設とか農業関係につきましては、現在まだ被害の取りまとめ中でございますので、その被害の結果を待たなければ見通しも立てられないということになってございます。  以上でございます。
  11. 木下敬之助

    木下委員 農林関係や土木の関係についても希望が出ておりますので、今後ともよろしく御検討をお願いいたします。  農林省にお聞きいたしますが、天災融資法の発動を望む声が強いわけですが、これはどういうふうに考えておられますか。
  12. 中島達

    中島説明員 お答えをいたします。  今次の豪雨災害によります農作物関係等被害状況につきましては、まだいろいろ全貌がわかっておりません段階でございまして、目下その把握に鋭意努めている段階でございます。したがいまして、御質問の件につきましては、この調査結果の判明を待ちまして、検討を鋭意いたしたいと思っておるわけでございます。
  13. 木下敬之助

    木下委員 早急によろしくお願いいたします。  農林省に続けてお尋ねいたしますが、やはり希望といたしまして、農地等災害復旧事業に係わる国庫資金利子軽減をお願いしたいという要望が出ておるようでございますが、どのようにお考えでしょうか。
  14. 日出英輔

    日出説明員 御説明申し上げます。  農地等災害復旧事業につきましては、その性格上、特別の高率補助が行われておりますことは先生御案内のとおりでございますが、その補助残について借ります公庫資金につきましては、貸付条件が年利四・六%、それから償還期限が二十五年ということで、各種災害資金の中でもきわめて長期、低利なものになっておるわけです。そこで、他の資金貸付条件などとの関係から見ましても、これ以上の利子軽減措置を講ずる事情にないということは御理解いただけるかと思いますが、ただ、被害を受けました農業者方々がすでに借りておりますような土地改良資金などについて償還が困難になったような場合には、被害者実情とか被災の程度に応じまして、償還条件の緩和ができることになっておるわけでございます。そこで、今次災害につきましては、いま被害状況把握に努めておりますので、その実情に応じまして適切に対処してまいりたいと思っております。
  15. 木下敬之助

    木下委員 農業を取り巻く情勢は非常に厳しくて、特に多額の借金を抱えておる農家が非常に多いわけです。そういったところは、その上に追い打ちをかけられたようなこういう災害に遭って、これを復旧されるためにはお金を借りなければならない、その金利は四・六ではまだまだ不十分で、できれば三・五ぐらいでやっていただきたい、そのぐらいに下げてもらわなければやれないという現状ではないかと思います。どうかよろしく御検討をお願いいたしたいと思います。  もう一点、自作農維持資金枠の拡大については、どのようにお考えでしょうか。
  16. 河合正彭

    河合説明員 お答えいたします。  今回の災害に伴います自作農維持資金の融通につきましては、現在災害被害状況把握に努めているところでございます。この調査結果を待ちまして、被害実情に即し適切に対処してまいる所存でございます。
  17. 木下敬之助

    木下委員 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。  この災害について、先ほども述べましたが、自衛隊救助活動に出動されておる。各地では非常に助かって、ありがたいと思っていると思いますけれども通常の勤務としてやられておる。一体これはどういうふうな基準で、どういう形でやられているのかをお聞かせ願いたいと思います。どういう要請があって出動するのか、それはどこに要請が来れば、どこで判断してどういうふうにするのか、その辺、お聞かせ願いたいと思います。
  18. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛隊災害派遣に関する決まりとしまして、自衛隊法第八十三条というのがございまして、この法律に基づきまして、都道府県知事から要請があった場合に、防衛庁長官もしくはその委任を受けた者、すなわち方面総監であるとか師団長あるいは駐屯地司令等がその災害派遣要請を受けるわけですが、具体的な派遣の規模、内容等につきましては、地元いわゆる県知事さんの方と御相談しながら実際やる、撤収についても同様相談しながら撤収する、こういうような手続になっております。
  19. 木下敬之助

    木下委員 その知事さんと相談する、その相談される側の決定する側は、どういったところのどなたがするわけですか。
  20. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ケースごとに違いますが、駐屯地司令であり、師団長であり、今回の場合は方面総監調整のもとに師団長が管下の部隊を出動させている、こういうことでございます
  21. 木下敬之助

    木下委員 こういう話をお聞きいたしましたのも、私の方の地元の新聞で、ちょっと読んでみます。そんな大きな記事じゃないのですけれども、「自衛隊顔見せだけ 大水害に見舞われた竹田市内復旧作業の応援に二十五日、陸上自衛隊湯布院駐屯地一一二特科大隊隊員約八十人がトラック十数台でかけつけた。午前六時過ぎから市街地を中心に土砂の取り除き作業などをしたが、約四時間後には撤収。「今度は長崎に行くことになりそうだ」とある隊員。手がつけられないほどの被害を受けている市民の間からは「もう帰ったのか。まだ全然片づいていないのに、あんまりだ。ほんの顔見せだけじゃないか」という批判の声も出ていた。」こういう記事になっておるのです。  やはり通常の仕事として自衛隊がこういった作業をする。そんな中で、国民の公平にやっていただいているという理解が得られないとならないと思うのですが、この点どういうふうに考えますか。まず、こういう記事の載った実情等も含めてお答えを願いたいと思います。
  22. 夏目晴雄

    夏目政府委員 御指摘の件は、大分県の竹田市の災害派遣に関することと思われますが、事実関係をまず申し上げますと、大分県の湯布院というところに第三特科群部隊がございます。この部隊に対して二十四日の十七時四十分、大分県知事から自衛隊災害派遣要請が出まして、これに基づきまして駐屯地司令あるいは師団司令部が、県と相談をしながら竹田市に人員八十六名、車両十七両を派遣して、道路復旧作業に従事したわけでございます。  それで、撤収は、道路復旧作業がすべて完成したということで、大分県知事から翌日の二十五日朝の九時に撤収要請が行われたということで撤収なされたのであって、そのまますぐ長崎へ行くというふうなものではなかったというふうな連絡を受けております。
  23. 木下敬之助

    木下委員 現場にいた人にどんな感じだったかというのを聞きましたら、朝自分は七時過ぎに行ったら、もうやっていた。大変御苦労だからひとつジュースでもみんなで出そうじゃないか。あの被災の中でもそういったねぎらいの心をもってジュースを持っていったら、もういなかった、こういう感じなんですね。  いま言われたような手続知事の方から要請があってしたというのは、これは当然そういう形に結末はつけるのでしょうけれども、果たしてそれが、じゃその時点で知事と話し合いがあってしたのかと、こう言われますと、とても私どもそのとおりには受けとめられないわけです。ですから、やはりどこまでもそれは国民理解のいただける、国民の感情を逆なでしない形でやらなければならないというふうに思います。その道路の一部分のそこが開通できればもういいんだ、そういった目標で来るのか、どこまでの作業をするのか。道路等のことについてしかできないのならそれで納得いくでしょうけれども商店街に積もった泥を取り除く作業要請があればするのであれば、やはりそういった泥がまだ残っているところでもう済んだような顔をされても納得できないと思います。この辺の判断と、それは一体どういう指導をしているのか、もうちょっとお聞きをいたしたいと思います。
  24. 夏目晴雄

    夏目政府委員 従来、自衛隊災害派遣につきましては、一番地元とトラブルが起こりますのは撤収の時期でございます。したがいまして、私どもとしましては、常々この撤収については、自衛隊だけの判断でなくて、いわゆる災害派遣要請権者であるところの県知事、そういったところの事務局とも十分調整しながら、納得のいく形で撤収するというふうに指導しているわけでございます。今回においても当然そういうふうな手続がなされておると思いますけれども、いま御指摘のようなことがあれば、十分今後そういうことのないように、県当局からの御要請があれば、別に翌日にすぐ撤収する必要もないわけでございますから、その辺は御相談の余地は十分あると思いますので、今後連絡を密にするよう一層指導したいというふうに思います。
  25. 木下敬之助

    木下委員 いつまでもあれしてもあれですから、最後にもう一問だけ。  要請があって出動するということですけれども災害、特にこういうふうな一度災害がありますね。そうするとその後、またいま台風も近づいているようですけれども、二次的な大きな被害になる可能性もある、こういったものが予測される中で、自主的にやるということはないのですか。
  26. 夏目晴雄

    夏目政府委員 災害が、たとえば台風が近づいているというようなことになりますと、自衛隊としては隊員のいわゆる外出禁止あるいは休暇の取り消しというようなことで、いわゆる災害に対する準備態勢をとることはありますけれども自衛隊だけでもって独自にどこそこへ派遣するというふうなことはとっておりませんで、あくまでも地元要請に基づいて出動するというたてまえでございます。
  27. 木下敬之助

    木下委員 たくさんの地でいろいろな要請が来れば、当然その調整がいろいろ大変だと思いますし、駐屯しているというようなところがその近くにあれば要請も来るでしょうけれども、離れているところもあったりいろいろございまして、大変でしょうけれども国民全体を守るという立場の自衛隊でございますから、公平を期していただきたいと思います。  それでは次に、五六中業に対する質問に入ります前に、今月十三日に明らかになりました自衛隊試験問題漏洩事件についてお尋ねいたしたいと思います。  まず事実関係を明らかにしていただきたいと思います。どこまで究明できたのでしょうか。
  28. 上野隆史

    上野政府委員 お答え申し上げます。  今回の事件は、去る六月三日に某隊員が、昨夜部内の男から五十七年度の幹部候補生試験問題を買わないかという不審電話がございましたと通報したことに端を発しました。その後、警務隊等が捜査いたしまして、概要は現在のところ次のように判明しております。  陸上自衛隊札幌地区病院に勤務いたします一等陸尉稲場と申しますが、この者が五月二十三日に病院当直室からかぎを持ち出しまして、そしてその病院人事班というものが入っております事務室に忍び込みまして鋼鉄製のキャビネットをあけ、本年六月に実施いたします第六十四期一般幹部候補生部内選抜筆記試験の問題、共通一部、ほか職種二部、合計三部を窃取いたしまして、そういう容疑でもって六月二十八日に北部方面警務隊に逮捕されたわけでございます。この者は、七月二十日に札幌地裁に起訴されております。  また、七月十三日には北部方面総監部の二等陸尉、第二八普通科連隊、これは函館にありますが、その二等陸尉、同じく函館二八普通科連隊の三等陸尉、その三名が先ほど申し上げました稲場との共謀による共同正犯ということで逮捕されまして、さらに七月二十日には元二等陸曹札幌地検に逮捕されております。さらに、北部方面総監部付隊の三等陸尉、この者が稲場共謀の上で、昨年の八月初旬ごろに北部方面総監部人事部人事課事務室におきまして、そこにあります三尉候補者試験の問題を二部、これは共通職種各一部でありますが、これを窃取したという容疑で七月二十日に札幌地検に逮捕されました。  現在のところ、いま申し上げましたように逮捕者は全部で六人でございます。一尉が一人、二尉が二人、三尉が二人、それから元二等陸曹が一人でございます。これらの者は、現在身柄を札幌地検に勾留中でございまして、引き続き地方検察庁によります捜査が行われておる段階でございます。  事実関係は以上でございます。
  29. 木下敬之助

    木下委員 この二つ以外というか、それ以前からそういった問題の漏洩があったのではないかというふうに言われているわけですが、そういった点についての調査はどうなっておりますでしょうか。
  30. 上野隆史

    上野政府委員 いま申し上げました者たちの一部供述の中から、そういうような供述は出ております。
  31. 木下敬之助

    木下委員 その供述内容に従った調査のようなものは、もう検察庁の方に任せっきりですか。自衛隊の内部ではやらないのですか。
  32. 上野隆史

    上野政府委員 事件の発生直後に、警務隊はもちろんでございますけれども陸上幕僚監部の中に陸上幕僚副長委員長といたします今回の事故に関します事故調査委員会というものを設けました。そこでもって、そういう過去の試験問題の漏洩に関連する一連の不祥事に関します部内調査というものを現在鋭意進めておるところでございます。
  33. 木下敬之助

    木下委員 その現在わかっている報告はいただけませんか。
  34. 上野隆史

    上野政府委員 これは何もここでお隠しするとかいうようなことではありませんで、現在調査中のことでございます。真相究明のために具体的な内容を現在鋭意調査中のことでございまして、現在のところ具体的にどうだこうだということにつきましては、今日ただいまの段階では御容赦を願いたいと思います。
  35. 木下敬之助

    木下委員 じゃ、検察庁の方の捜査への協力というのは十分できているわけですか。
  36. 上野隆史

    上野政府委員 検察庁とは密接な連携をとりつつ、警務隊を通じてでございますが、やっております。
  37. 木下敬之助

    木下委員 大体その報告等ができるようになるのはいつごろの見通しでございますか。少なくとも、完全決着でなくても、中間の報告ができるようになる時点はいつごろでございますか。
  38. 上野隆史

    上野政府委員 一番最近の時点で逮捕されました者は七月二十日でございます。その前が十三日三名ということでございますが、これは御承知のとおり、刑事訴訟法等の規定によりましてこの者たちを今回の犯罪容疑事実で地方検察庁が裁判所に起訴する最長の時点をとった期間は、おおむね二十日でございます、逮捕の状況によりまして一、二日の違いがございますけれども。したがいまして、七月二十日から数えておおむね二十日後ということになりますと八月の上旬ないし中旬ということになりますが、その時点ではこれらの者の刑事訴追の全容は明らかになるものと期待をしております。したがいましてその時点が、いわば何と申しましょうか、一番時間のかかった時点でございます。われわれといたしましては、その前にでもできるだけ早く防衛庁独自の行政処分、これをやらなければならないということで現在鋭意捜査中でございまして、このことにつきましては折々地方検察庁とも相談をしつつ、と申しますのは、先方の行います刑事訴追に悪い影響を及ぼさないように、まだ検察庁がこれからよく調べようとしているところのものを不十分な情報でもってこちらが先走って公表するというようなことは、捜査のいわば妨害になりますので、真相究明のためにもよくないことでございますので、十分調整をとりつつ、現在部内の行政処分をどうするかということについて検討を進めておる状況でございます。
  39. 木下敬之助

    木下委員 その逮捕された人間はロッカーをあけて窃盗して問題を取っているわけですが、そのほかにも、この問題と一緒のような形で出てきた、何といいますか、一つの例で言いますと、前の日に隊で模擬試験が行われたが、次の日、本番でそっくり同じ問題が出た、満点を取るとかえって不審に思われると思い、一部はわざと違う答えを書いた、こういう元自衛隊員の告白のようなものが新聞で報道されております。こういうふうな形の問題遺漏というのは、いま取り調べられているのと別の問題だと思うのですね。そういう体質というか、そういう試験の組織のある中で行われておる遺漏の問題も一緒になって浮かび上がっておるようですが、この辺の捜査というか調査もその委員会でやっておられるのでしょうか。
  40. 上野隆史

    上野政府委員 委員会で行っております。いろいろな情報が寄せられております。その中にはそういうものも、これは防衛庁に直接いただく情報もありますし、部外のマスコミ等を通じてわれわれが知る情報もございますが、そこらも含めまして関係者すべてにわたって事情を聴取しておるという段階でございます。
  41. 木下敬之助

    木下委員 それの方は、四十日の期限とかそんなもの関係なしに、できるだけ早くまとめて御報告をいただきたいと思うのですが、そっちの方の報告はいつごろいただけるでしょうか。
  42. 上野隆史

    上野政府委員 先ほど申しましたような捜査妨害にならないということも勘案しながら、できるだけ早くということでございます。できますれば今月いっぱいにとも思っておったわけでございますが、もうすでにきょうは木曜日ということで、今月いっぱいというわれわれの努力目標はやや無理かと思います。八月の上中旬、なるべく早くというふうに考えております。
  43. 木下敬之助

    木下委員 もうすでに相当進んでおるのですが、この問題もやはり相当はっきりした問題となって処分者等が出、責任者が出るような状況にいまあるのですか。まだそれも何もお答えできませんか。
  44. 上野隆史

    上野政府委員 相当な処分者は出ると思いますが、問題は、相当なというのがどのくらいの数かということだと思いますけれども、その数につきましてはひとつきょうこの場では御容赦願いたいと思います。
  45. 木下敬之助

    木下委員 それじゃ、最初の稲場中心として行われた現在起訴されつつある問題についてお聞きします。自衛隊としての処分はどんなふうにするのでしょうか。
  46. 上野隆史

    上野政府委員 こういう刑事事件を起こしました者の処分のやり方、これはいろいろ態様ございますが、単純な、背後関係もない、事案が大変突発的であり、かついわば後に尾を引かないというような問題につきましては、起こしました刑事事件内容につきまして直ちに懲戒免職というようなことも当然ございます。ただ今回の場合は、先ほど申し上げました稲場につきましては、やはり今後自衛隊としても行政処分を行うにつきまして十分な調査をする必要があるということなので、起訴された段階におきましていわゆる刑事休職処分にいたしまして、身分はまだ自衛隊に置いております。そこで、本人がいずれ起訴された後におきまして身柄が保釈されましたような場合には、同人を再び防衛庁として追及いたしまして、その背後関係を明確にしたいというふうに考えております。ほかの者につきましても、現在逮捕され、調べられておる者につきましても同じようなことで、この問題はうやむやに終わらせないという方針でございます。  それから逮捕されていない者、漏洩した問題を聞いた、そして試験を受けたというような者につきましても、これは現在鋭意調査を進めておる現状でございます。
  47. 木下敬之助

    木下委員 その保釈中の人を身分を休職のままにしてまたもう一度隊の中で追及するという話を聞きまして、ちょっと、どんな追及のされ方をするのかな、いま国会での証言法の改正とかいろいろ人権的な問題も出ておりますけれども、少し疑問に感ずる点もあります。また機会があればお聞かせ願いたいと思います。  こういった事件の起こった原因をどのように考えておられるか、お答えいただきたいと思います。
  48. 上野隆史

    上野政府委員 そこら辺の原因につきまして、実は先ほど申し上げました事故調査委員会におきましても現在鋭意検討を進めておる状況でございます。いろいろ想像はされるわけでございますけれども、こういう公式の場でもって想像で物を言うことはひとつ控えさせていただきたいと存じます。なぜこういうような事件が起こったのかということにつきまして、現在防衛庁のいわば総力を挙げて検討を進めておるという状況でございます。
  49. 木下敬之助

    木下委員 何もかも検討で、その原因をどう考えるかの検討か、出てきたものをどう発表しようと検討しておるのか、何かちょっと疑わしくなるような感じですね。原因について考えられることは、それは別にこんなものをこれ一つでそれが原因とか私どもも思っていないし、諸悪の根源みたいに、何か一つ出ればそれですべてだというふうには思っておりません。いろいろな背景があると思いますけれども、もう少し、こんなことではなかろうかという、漏らした側のことと受けた側、受験の人たちがどうしてこんな不正をして、その不正の意義をどんなふうに感じていたのだろう。その身分が全く不法な手段によって上がっていった、そうやって自分の現在の地位にあり、その現在の地位で、ある意味では国を守るという重大な任務につくわけですね。ちょっと私どもは想像がつかないのです。やはりその辺は、どういうふうに発表しようかとかいうのじゃなくて、もっと、こういう問題が起こったときにどういうショックを受けたのか。もしあれなら長官、一体こんな問題をどんな原因で漏らしたり、それを受け取ってするようになるのかという、特に長官には、こういう不正な手段で上がっていくという人がいて、しかもうわさによると十五年も前からなんだ。十五年も前からというのが本当だとしたら、相当の人がおられる。その人をあなたは部下として信頼していろいろな活動をしなければならぬ。何か国民に対して割り切れるような長官の御感想というものがあっていいと思うのです。
  50. 上野隆史

    上野政府委員 長官がお答えする前にお答えすることを許していただきたいと思います。  御説明はまだいたしておらなかったかと思いますが、今度の試験問題、漏洩したものは二種類ございます。一つは三十六歳以上の曹の位にある者が受けます三尉候補者試験というものと、三十六歳未満の曹たちが受けます部内幹部候補生試験と二種類ございますが、いずれも昭和二十七年から実施しております。いわば保安隊発足当時から実施しておる試験でございます。そして、従来この種の漏洩事件、しかも金が絡んだというものはございません。今回が初めてでございます。  従来全くこういう事例がなかったかと申しますと、昭和三十年代半ばごろに二件、われわれの現在までの記録を調べましたところ二件ございます。一件は、幹部候補生学校の中で卒業試験をする際に、候補生学校の職員、これは曹でございましたが、それと恐らく友達であったのでございましょう、同じ曹で入校中の者が卒業試験を見せてもらいたい、見せてあげようということで、たまたま試験問題を写しまして、見て、そして受けた。ただ、これはその時点ですぐに発覚いたしまして、本人は原隊へ復帰ということで追い返されております。  それからもう一つは、やはり同じころでございましたけれども、これは尉官が曹の人たちを指導する、日常の生活指導も含めまして服務指導をする大変職務熱心な者がおりまして、この試験をたまたま受ける者たちに、何と申しましょうか、受験準備のためのことも含めまして指導しておったという際に、たまたまその者が試験問題を見る機会がありましたので、その試験問題をかいま見まして、そしてその内容を覚えておって、その本当のごく一部を自分の指導しておる者に漏らしたということがございます。これは直ちに昇任等につながりませんで、そのことはすぐ摸擬試験に同じような、似たような問題が出たということがうわさになりまして、直ちにその者も、大変まじめな男でありましたので自分のしたことを深く反省をして申し出たということで、その者は行政処分、懲戒処分を受けております。  それ以来、絶えてこういう事案はなかったのでございますけれども、最近、この両試験の競争率というものをわれわれ今回の事件を契機にして調べたわけでございますが、倍率は大変高うございます。七、八十倍ということでございまして、合格する者はわずか三、四百名、受ける者は二万人前後というようなことでございます。これは各方面それぞれ特色があると思うのですけれども、今回の事件は北部方面隊だけに限っております。いまのところ、ほかのところで類似な事案が出たということは、現在鋭意捜査を進めておりますが、類似のこういう組織的なものは全く出てきておりません。北部方面隊だけでなぜという感じになるわけでございまして、そこら辺を調べたいわけでございますが、これは各連隊等につきまして状況はまちまちでございますが、やはり部隊によりましては相当長い期間、長い期間と申しましても約二カ月ぐらいでございます、六月試験でありますから、四、五月の二カ月ぐらいにわたりまして熱心な受験者がおいおい集い集まりまして、試験のための、何と申しましょうか予備的な準備というものを念を入れて力を入れてやっている部隊もあります。それから、同じ北部方面隊でもわりに淡泊に、勤務時間外に二時間ぐらい、一週間に一遍ぐらいの摸擬テストというようなところもあります。そこの合格率がどうこうというようなことをいま調べておるところでありますけれども、そういうようなことで、いろいろ受験準備が過熱したからこういうような問題が起こったのではないかということにつきましても、部隊によりまして精粗の差はございますが、いずれにいたしましても相当激甚な試験である。また、そういう一つの目標を与えまして、そしてそれに向上心に燃える若者たちが集い集まって勉強する。この際教養を深めるということは、指導監督に当たる所属長といたしましては必ずしも排除すべき問題でもない。ただ、それが大変過熱をしておる状況に一部の部隊があったということは否めない事実だと思います。  そこら辺で、いろいろ報道にも出ておりますように、大変試験が過熱した、おぼれる者はわらをもつかむ、何回受けても落ちる、いよいよ自分は年齢制限にひっかかりそうだ、周りにも恥ずかしい、いろいろなことで、甘いえさを目の前にぶら下げられてわらをもつかむ心境でそういうような問題を聞いた。それに対して何がしかのお礼といいますか、そういうようなものが動くというような事実があったわけでございます。問題は、その待遇が悪いから、下士官から士官に上がれば待遇が俄然よくなるからとか、あるいは停年がうんと延びるからとかいうようなことと直接結びつくものとは実は思っていないのでございます。これは御質問がありますれば知っておる限り手元の資料でお答えいたしたいと思いますけれども、待遇の面でそう違いはないということであります。ただ幹部になりたい、指揮官の身になってみたい、いわば立身出世、名誉欲といいますか、そういうものだけでこういうものが起こったのかということも実はよくわからない。それもいまいろいろな資料を集めて調査をしておるという段階なのでございまして、そこら辺もひっくるめまして、もう少し調査に時間をかしていただきたいと思います。発表のしぶりがどうこうというようなことを念頭に置いてお答えを渋っておるというようなことは全くないことをひとつ御了解を賜りたいと思います。
  51. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 自衛隊が守っていかなければならないモラルには幾つかございますけれども、その大きなものはやはり規律を守るということだろうと思います。そういう規律が崩れ、また試験というものは公正でなければならない、それがまた破壊をされ、また若干の金銭が動いた、自衛隊員はもっと清廉でなければならないというような幾つかのモラルに反したようなことが起こったわけでございまして、あってはならない、起こしてはならないそういう事件、今回の不祥事、私まことにくやしくて、この無念さをどこにぶつけていいかわからないくらいの思いでおるわけでございます。したがって、自衛隊に寄せていただいております国民の信頼にそのことによっても背いたわけでございまして、大変な不祥事だと考え、まことに遺憾でもございますし、信頼を寄せていただいております国民の皆様方におわびを申し上げる言葉もないぐらいでございます。  しかし、起こった以上は、段々お話を、お答えを申し上げておりますような調査、捜査をしっかり詰めまして、二度と再びこういうことが起こらないように厳正な処分を行うとともに、幹部の登用のあり方、こういうペーパーだけの試験でいいのかどうか、そういうようなことも含めまして幹部の登用のあり方等も十分いい案をつくりまして、二度と再びこういう事案が起こらないように、災いを転じて福となすというようなことで自衛隊の体質の改善のために、また隊員の士気がいささかも阻喪しないような形でこの事案を総括をしてまいりたいと考えております。
  52. 木下敬之助

    木下委員 長官のそのお言葉だけを聞いていると、それはそのとおりのことをおっしゃっているわけですけれども、現実にどうしていいかわからないような無念さを、どうぞこの問題の解決に向けてそちらにぶつけていただきたいと思います。  しかし、いま聞きましたら、原因はちょっと思い当たらないのに近いわけですね。それほど過熱していたとも思えないし、待遇が変わるわけでもないし、名誉があるわけでもない。原因のわかってないところに対策が立てられるでしょうか。どうも長官、お言葉の上では非常に深刻に受けとめておられるようで、何かすぐにでも変えそうに見えますけれども、一体原因も全くわからないでどんな解決がこれからできるのでしょうか。まさか戦争が現実に起こるということは考えていない方が非常に多い。けれども現実にあった場合どうするかということ、それに対応できるかどうかということを常に念頭に置きながら整備していかなければならないときに、私はこういった問題は非常に大きな問題だと思います。  私は昭和十九年の生まれですから、戦争のことは知りません。もちろん体験も何もありませんけれども、聞きますと、やはり末端では上官の命令ということは絶対なんでしょう。これ絶対でなければどうにもならないわけでしょう。違反すればその場で銃殺されても一つも構わないだけの規律で戦闘に当たるわけでしょう。そのときに、その上官の命令に自分の命をかけて、全く自我を捨ててその命令に従えるというのは、やはりその上官に対する信頼が要るわけでしょう。また、上官も部下を使っていくときに、その部下が、何尉とかいろいろな階級がありますが、その階級にふさわしい力を持っていると信じていろいろな指令を出すわけでしょう。その試験に力のない人が通っている可能性がある。これで一体、上も下も本当に命をかけた行動ができるシステムにあるのですか。しかも、待遇も変わるわけでもない、名誉も大したことない。では一体、この自衛隊という組織は何によって上下の力みたいなものが成り立っておるのですか。余りいいかげんにしないで、それだけの無念さがあるのならどうぞ本気で解決する方向に取り組んでいただきたいと思うのですが、ちょっともう一度お答え願いたいと思います。
  53. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘の点、全く同感でございまして、私自身もそういう気持ちで、本当にメスを入れて根本的に自衛隊国民の信頼にこたえられるように、また、自衛隊の使命なり役割りなり責任が国民の信頼に沿うような形で果たされるように、しっかりした対策をつくり上げてまいりたいと思いますが、いま原因等も含めまして鋭意、防衛庁、自衛隊の総力を結集して、またいろいろの知恵を働かして原因等を究明中でございまして、ひとつ若干の御猶予を賜りたいと思います。
  54. 木下敬之助

    木下委員 原因についてその猶予をと言いますけれども、私は、こんな問題というのは、これだけの問題が出て原因が思い当たらないというのはちょっと想像がつきませんね。真の原因、本当に最終的に何だったか、これ一つだとそこまでしぼるのは問題でしょうけれども、受験した人がお金を払ってでもその試験に合格したかったというのは、これはごくあたりまえの感情だと受けとめればいろいろと考えられるのですけれども、なぜそんなことをしたのかわからないに近い。しかも、鋭意調査を進めたり検討しなければなぜそういう行為をしたのかわからないというのに近いお言葉がいまの時点で出るという矛のは、私は納得できかねるのですが、一体その原因というものをどう考えているか、お聞かせ願いたいと思います。
  55. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 いろいろの原因があるということを事務局からもお話を申し上げましたけれども、要は、結局はモラルの低下ということだろうと思います。  それから具体的な問題としては、そういう試験問題を保全する仕方、また保全をすることについての厳正な態度がなかった。結局、盗まれたわけですから、そこが発端でございますから、試験問題をもっと厳正に保管する。そのことについての自衛隊全体としての態度が欠けておったということも一つの原因だろうと思います。
  56. 木下敬之助

    木下委員 長官のお考えは拝聴いたしました。  当局の方で先ほどの中に、原因らしいものは思い当たらないという表現でしか私には聞こえなかったのですが、もう一度考えられる原因についてお答えいただけますか。  それともう一つ、先ほどそんなに停年も変わるわけじゃなし、待遇も変わるわけじゃなし、名誉もそんなにと、こういう表現をされた。このことについて私は非常な疑問を感じている。大したことはない試験だということを言われたわけですか。ちょっとその辺を疑問の解けるようにお話し願いたいと思います。
  57. 上野隆史

    上野政府委員 この試験は大変競争率の高い、激甚な競争率のある大変な試験でございます。そのことを私は軽視して申し上げたつもりはございません。やはり人間である以上、一つの組織に入った以上責任のある地位に立ち、そしてより大きな権限を持ち、そして自分の日ごろ考えます抱負経綸をたとえ限られた場であっても発揮していきたいという気持ち、これは人間の向上心の一つでもございましょうが、それは大変大事なことでもあり、特にこういう自衛隊というような組織においては、それなくしては成らない組織であると思います。したがいまして、幹部になる、昇任のいわば登竜門を何とか突破したいという、そういう向上心に基づきますこの試験があり、それに多くの優秀な者が集まってくる。そこで切磋琢磨をして自分の少しでも高い目標に到達したいというこの気持ち、これは皆、恐らく大半の者が持っておるわけでございます。そして幹部になる。幹部になれば、当然そこでおのずから下士官、曹、士とは違って仕事ができるということでございますから、この試験に受かりたいというその気持ちは、これは皆が持っておると思います。  先ほど待遇のことを申し上げました。私が申し上げたかったことは、では、今度の試験の原因は待遇が格段によくなるからではないか、そういう疑念が当然生ずるわけでございますが、これは物の見方によりますが、数字に出る限り、そうではないのではないかということを一つ申し上げたかったわけでございます。もちろん、幹部と曹、士との間の身分、権限の差は、これは歴然としてございます。  そこで、待遇を申し上げますと、停年まで勤務した場合、現在は准尉の停年も三尉の停年も曹長の停年も同じでございます。五十二歳でございます。来年でしたか、これから一歳延びまして五十三歳になりますけれども、その停年まで勤めて五十二歳でやめた場合の平均の停年の際の号俸、これはいずれも二十八号俸ということになるわけでございますが、俸給月額にいたしまして、准尉の場合に三十二万二千六百円、三尉の場合は三十二万三千八百円、曹長の場合は三十一万六千四百円ということでございます。その差は、多く見るか少なく見るかというのは人によって違うと思いますけれども、まあまあ一万円というほどの差があるかないかというところだと思います。  それから退職金でございますけれども、退職金は、准尉の場合千八百六十万、三尉の場合に千八百七十万、曹長の場合に千八百万ということで、数十万円の差しかないということでございます。いま申し上げておりますのは、最初お断りしましたように平均の号俸でございますので、その点はお含みおきいただきたいと思います。  年金でございますが、准尉も三尉も二百三万……(木下委員「余り差がないのをたくさん聞いても、そこに私の焦点はございませんから」と呼ぶ)ということでございます。  そこで問題は、今回のような事件を起こしたのは、先ほど長官お触れになりましたように、まず試験問題の管理、これが大変ずさんであったということ、これは否めない事実でございます。大体、ロッカーのかぎすらも自分で家に持って帰らない。あるいはそれが普通のロッカーであれば格別、試験問題というような重要なものにつきまして、そのロッカーの管理、保管が大変不十分であったということにつきましては、これはもう弁解の余地がない。  それから、これを起こしました連中が組織的にやっておるということは、これはやや組織的とは言えると思うのです。数名の者が組みまして、共謀共同正犯という、その起訴状にもございますような、そういうことでぐるになってやっておった。ただ、そのグループにこういうようなふらちなことをした者は限られておるようでございます。したがいまして、そういう一部悪質な連中、少数の者、限られた範囲の者が試験問題を持ち出して限られた範囲の者に流しておったということ、その動機の最初のところをいろいろ問いただしてみましたところ、これは今後の供述でいろいろ変わると思いますけれども、最初はやはり自分の身内の者あるいは自分の部下で目をかけておった者が大変苦しんで試験を受けておるから、これは少し教えてやろうかといういわば善意で、もちろんそのときには報酬等も、大きな金額も動いておらなかったようでございますけれども、そういう善意の気持ちでやっておった。これが善意と言えるかどうか大変問題があるところでございますけれども、そういうことで流しておった。それがだんだんとそこになれといいますか、そういうようなものが出てきて、試験問題を今度は無差別に流そうとして、しかもそれで金をもうけようとして、それも相当大きな金額で金をもうけようとして、たちまちつかまったということでありまして、そこら辺で一体何を考えてこんなことをやったのかよくわからないのでありますけれども、大変愚かなことだと思いますけれども、そういう愚かなことをやったとたんにいままでのことが全部発覚したということでございます。  お答えになっているかどうかわかりませんけれども、現在われわれがつかんでおりますところはそういうことでございまして、これが組織的、計画的に長期間にわたって大変金も動いておって、いわばマフィアの組織みたいになっておったというようなことは現在のところ出てきておらないわけでございます。
  58. 木下敬之助

    木下委員 幾つか言いたい点があります。いまの話ではっきりしてきました。そこの試験で准尉と三尉ですか、これには大して待遇に差がない。だけれども、この試験自体は三尉から二、一とずっと上に上がれる一つ試験でしょう。だから、この試験を越えないことにはそれ以上には上がれないわけだから、その差をその一つのところだけの差で見るという、この席だけのためにあなたが答えているなら私は構わないけれども、この試験の重要さをそこにとっているとすれば、あなたのそういう考え自体がこういう事件を引き起こした遠因になりますよ。これは大変重要な試験なわけでしょう。そこだけの待遇の差、待遇だけじゃないあらゆる面から言うて、試験を受けて上がればどこまでも上がっていけるシステムになっているんだという、どこまでもかどうかわかりませんけれども、その中でそれを一段階の差だけで考えるという、そういう考え方自体はやめてもらいたいですね。  この問題は言い出すと切りがないので、あとほかに中業の問題もしたいからいいかげんにしなければならないのですけれども、いま言われたようにこの試験を大したことないと思っている感覚、そういった感覚があれば、当然試験問題の管理も緩んでくる。  それから、いま私が聞いた範囲では、これは大変な試験であるという認識を強く持てば持つほど試験は大変になるかもしれないけれども、そしてそのかわり管理も厳正にやるんだという姿勢、両側からいかなければ解決できないと思います。ですから、その辺を考え方を大いに訂正してもらいたいと思います。これは大変な試験なんだ、その認識がなければ管理も皆緩んでくるんだという、どうかその辺の反省を一言お聞かせいただかないと、私としては質問をしたかいがございません。どうかひとつお答え願いたい。
  59. 上野隆史

    上野政府委員 この試験が大変重要な試験であるということにつきましては、先生のおっしゃるとおり私どもも受けとめております。しかるがゆえにこれだけの激甚な競争率になっておるし、各部隊の長等は何とか昇進者を一人でも多く出したいという気持ちを持ち、それがときにやや過熱した受験準備というような形であらわれてきておるということをとりましても、この試験は大変重要な試験であるという認識におきましては私ども先生と全く同じ考えでございます。  そうでありますからこそ、今後こういう試験の問題の漏洩等につきましては十分に配意いたしますとともに、また余り過熱し過ぎるというような状況は決してよくないことでございます。二万人も受けてその大部分の者が失意の底に沈み、ごく一部の数百名の者が上がれるというようなことは、これは必ずしも適当な試験制度とは思えないということもございますので、そこら辺も含めまして試験制度の改善というような点も含めまして、現在鋭意検討を進めておるところでございます。
  60. 木下敬之助

    木下委員 どうも話の中身がなかなかかみ合わないのですが、別に競争が激しいことが原因だと私は思っていないのです。何ぼ激しくたって、激しい試験もあるし、いろいろあると思います。特にこういう、軍隊とは言わないにしても自衛隊という組織ですから、その中の幹部の試験が幾ら厳正で、またものすごい競争率になろうと私は構わないと思います。ただ、それが大変重要な意味を持っておる試験であるという認識が薄ければ、こんな問題はたくさん起こるだろう。だからその認識を十分改めて、これは大変な試験なんだという気持ちでこの管理に当たるという気持ちを持っていただきたいと思っているわけです。  もう時間で、切りがありませんから最後に、ちょっとこの問題で出ていました批判の中で、身内をかばう、閉鎖的だという声が出ましたですね。捜査や取材に非協力だという声が出ておりましたが、この点はどういうふうに考えますか。
  61. 上野隆史

    上野政府委員 この事件が発生いたしましてから旬日を経ずして報道されまして、その際、私も事件の概要等につきまして記者会見をしたわけでございますが、その際の私どもの説明に対します御批判として、いま先生がおっしゃいましたようなことがあるということは十分承知をいたしております。  私どもの当時の御説明の範囲、中身につきましては、私どもが念頭にありましたことは、これがまだ事件の端緒をつかんだばかりであるということで、その事件内容究明を十分にしなければならない、そのためにはここでその捜査の知り得た断片的な事実を公にすることによりまして、たとえば不正に受けた者たちがそれぞれ通謀し合って、そして証拠隠滅をするといったようなことがあってはならないということから、そういうことを念頭に置きつつ御説明したわけでございますけれども、それが私どものそういう真意が十分に理解されず、説明の不足もあったと思いますけれども、そういう御説明の不十分な点につきましては現在反省しておるわけでございます。ただ、私どもの真意というものはぜひ御理解を賜りたいというように存じておる次第でございます。
  62. 木下敬之助

    木下委員 私もテレビで見ていたのですが、取材に行った人がマイクを出して自衛隊の一般の方にどう思うかという質問をしているようなところに、仕事中ですからとかいって全く取り合わない雰囲気なんです。これは身内意識でみんなそういうふうになるのか、仮にもしかしたら本当に仕事中でだめだったのかもしれませんけれども、私のテレビで見ていた感じでは、ちょっとお話しするぐらいの間のあるようなときでございましたけれども、あんなのを見ているとやはりそういう批判は当たっているという感じを持っておりますので、どうぞ今後はそういうふうに言われることのないよう、国民の信頼を取り返すということを基盤に考えていただきたいと思います。長官も、どうぞ今後ともこの問題については先ほどの御決心  のとおりに活動していただきたいと思います。  それではこの問題は終わりまして、次に五六中業についてお伺いいたします。  防衛庁においては七月二十三日に五六中業をまとめて国防会議に付議され了承されたわけですが、このことは、中業を防衛庁の内部資料といった不明確な扱いでなく、国防会議に諮りシビリアンコントロールを確立せよというわが党の強い主張によって実現したものであり、一歩前進であると評価するものであります。しかし、この中業が国防会議に付議されても参考資料としての性格が変わらないのはなぜなのか、どういった考えでおられるのか、お聞きいたしたいと思います。
  63. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生からも御披露がございましたように、五六中業を防衛庁としてつくりましてそれを国防会議に付議をしたわけでございますけれども、このことは、近年の厳しい国際情勢等を背景としてわが国の防衛力整備に対しまして内外の関心がきわめて強くなってきておりますので、そういうことを背景といたしまして、本質的に防衛庁の部内資料ではあるわけでございますけれども、これに加えまして、シビリアンコントロールという観点からも国防に関する重要事項について審議する機関である国防会議にこれを何らかの形で付議をしておくことが適当であると考えたわけでございます。  なお、五六中業、中期の防衛力整備の見積もりでございますけれども、それを政府計画とした場合は政府としてこれに拘束されることとなりますが、昭和五十一年の「防衛計画の大綱」が決定されて以降は、ずっと政府としてこのような方式をとっておりません。そして、年々必要な決定を行うという、いわゆる単年度方式をとることとしております。このことは、内外情勢等の厳しさ等を考慮し、各年度の具体的内容はそのときどきにおける経済財政事情を勘案し、国の他諸施策との調和を図りつつ、柔軟に決定するのが適当であるということの判断に基づくものでございます。
  64. 木下敬之助

    木下委員 シビリアンコントロールという意味で国防会議に付議した。付議したら、シビリアンコントロールという考え方からすれば、そこで了承されればもう参考資料じゃなくなる、コントロールが効いてくる、こういうふうに思うのですが、シビリアンコントロール、コントロールするというのは、どちらが主体で動かすかがコントロールであって、そこに聞く、シビリアンにちょっとお伺いを立てる、もしくは報告をすることがコントロールだと思ったら間違いじゃないかと思うのですね。ですから、これをシビリアンコントロールという目で眺めれば、国防会議に単なる報告をしただけじゃなくて、報告、了承したのなら、これは政府の決定であり、今度はこちらの方がコントロールする側になるんだというふうにとるのがあたりまえだと思うのですが、どうお考えですか。
  65. 夏目晴雄

    夏目政府委員 五六中業を今回国防会議に付議した、すなわち報告をし了承を求めたという背景には、いま御指摘のように防衛力整備についての内外の関心が非常に高いということ、それからシビリアンコントロールという立場も考えながら、国防会議に報告し了承を得たということになっております。  ただ、その報告、了承を得た場合におきましても、この五六中業というのはあくまでも防衛庁の内部における概算要求等の参考資料であるという、従来われわれがとってきた中期業務見積もりというものの性格を変えないということを前提にしての御報告、御了承を得たというものでございまして、そういう限りにおいては、従来とかく防衛庁内部で勝手につくってひとり歩きし、あるいは対米関係にも使われていたというような御批判に対して、国防会議の皆様に了知していただく、防衛庁としてこうした計画を持っておるんだということについての御理解をいただくという意味で、シビリアンコントロールの立場から申しても一歩も二歩も前進ではなかったかというふうに考えております。
  66. 木下敬之助

    木下委員 その一歩も二歩も前進という言い方をすると、コントロールがないものと考えた上で、ないものと考えて少しずつコントロールしようというのなら、それは一歩も二歩も前進ですよ。でも、シビリアンコントロールするということ、それが確立されているということが前提という見方から見たら、これは退歩ですよ、そういう目で見れば。参考資料であるという性格は変わらない、いままでのように、勝手につくって勝手にしているという批判ではないと言うのなら、これは報告、了承と言うけれども、ただ報告しただけですか。やはり了承したのですか。同時に、議決事項にしていませんですね。これはどうなるのですか。報告だけじゃなくて、ちゃんと了承したわけですか。
  67. 夏目晴雄

    夏目政府委員 国防会議へのかけ方としましては、いろいろな考え方がとられると思います。たとえば報告をするだけで十分ではないかというふうな御意見もあろうかと思いますし、あるいはまた、国防会議で決定をするという手続が必要ではないかというふうな御意見もあろうかと思いますが、私どもは、この五六中業の先ほど来申し上げているような性格にかんがみ、それから従来の経緯等も踏まえますと、報告をし了承を得ることが一番適当ではないかということで報告、了承を得たというのが現実の姿でございます。
  68. 木下敬之助

    木下委員 その了承というものの意味がちょっとわからないんですね。二通りにとれますよ。報告して、その内容をそれでよしと認めたという了承なのか。報告したこと自体を聞いたということをはっきりさせたという了承か。これはどういうことですか。
  69. 夏目晴雄

    夏目政府委員 あくまでも防衛庁の概算要求等の参考資料という形のものを前提にしまして、防衛庁のこうした計画、中期的な見通しに立って、防衛庁としては防衛力整備についてこういうことを考えておるということについて御了承を得たというものでございます。
  70. 木下敬之助

    木下委員 その防衛庁の考えを了承したということですね。報告を了承したのじゃなくて、報告したこと自体をじゃなくて、防衛庁のこういう考えを了承した。国防会議防衛庁の考えを了承した。防衛庁のその考えを了承したということは、やはり決定じゃないですか。政府がそういうふうに決定したというふうにとれるのじゃないですか。議決事項と報告、了承、いま言う意味で、防衛庁の考えを了承したというのとどう違うのですか。
  71. 夏目晴雄

    夏目政府委員 昭和五十一年の「防衛計画の大綱」がつくられる前に、いわゆる一次防から四次防までというふうな、一定の、三年とか五年を区切った防衛力整備計画というものがございましたことは御承知のとおりだと思います。こうした計画につきましては、いずれも国防会議で決定をしました政府としての決定事項でございました。しかし、五十一年にこの「防衛計画の大綱」が定められて、いわゆる防衛力整備の目標というものが明示されましたそれ以後につきましては、こういったものを政府として決める必要はないのではないか、単年度でそのときそのときの財政事情等も考えながら決めていくことがむしろ柔軟性を確保する面でいいのではないかということで、単年度方式に切りかえたわけでございます。  ただ、実際にこの防衛力整備を進める防衛庁の立場から申し上げれば、防衛力整備というのは、相当息の長い、何年間の見通しを持って整備する方がはるかに計画的であり、斉一な整備が図られるわけでございます。そういった意味合いから、防衛庁としては従来から内部の参考資料としてこういった中期業務見積もりという制度をつくっておったわけですが、これが先ほど来の経緯がございまして、国防会議に付議すべきであるということで、報告し了承を得た。  決定とどう違うかということでございますが、これを国防会議で決定いたしますと、政府としてこれを決定したということになります。今回の、報告、了承を得たというのは、あくまでも防衛庁の資料ということで御了承を得たというふうなことであって、政府の決定事項であるか、防衛庁としてのものとして御了承を得たかというふうな違いがあろうかと思います。ただ、この報告し了承を得たという中には、国防会議というのは、もともと国防に関する重要事項というものを審議するのがあそこの仕事でございますから、そういった意味合いから国防会議に付議、報告し了承を得たというのが実態でございます。
  72. 木下敬之助

    木下委員 その辺がシビリアンコントロールに大きくかかわってくると思うのですが、防衛庁の内部の資料であるということを国防会議が認めた、しかしこれは政府の決定ではないんだ。政府の決定ではない防衛庁の何かを、政府の決定ではないけれども国防会議が認める、こういう形でいろんなものが存在していくわけですか。国民にとって防衛庁というのは何ですか。どうもその辺は納得いかないと思います。シビリアンコントロールという前提があるときに、防衛庁の考え、その決定というのは政府が持っているんだ、こう思うのがあたりまえだと思うのですが。
  73. 夏目晴雄

    夏目政府委員 もともとこの中期業務見積もりというのは、再三申し上げるようでございますが、防衛庁が毎年の概算要求あるいは業務計画の作成に資するための参考資料としてつくっておったという経緯がございます。しかしながら、各方面からこの防衛力整備についての関心が非常に強い、国会での御論議もあったということから、これは防衛庁限りでつくっておくことよりも、むしろそういった国防に関する重要事項を審議する国防会議に報告し、防衛庁としてこういった計画を持っているということについて御了承を得ておくことが必要であろうというふうに考えて付議をしたということでございます。
  74. 木下敬之助

    木下委員 納得がいきません。そういうふうな考え方で、その防衛庁の内部資料であるものを国防会議に付せと追及し、また進言してきたわけではないと思います。これを防衛庁の内部の一部の人たちが、どちらかと言うと業務の上とは言いながら有志の人たちがそういう検討をしている。それを、一部でせずに防衛庁全体でしろというふうに指摘したんならば、それはそれで結構ですよ。そうじゃなくて、防衛庁として何か政府と別のところで何かしているような形のものをやめて、防衛庁の中心になるそういう基本的な考え方は政府の決定のものでやるように、こういう考え方がシビリアンコントロールだと思います。そういった意味で私は、こういう報告、了承という中途半端な形でやったということは非常によくないことだと思います。ぜひ議決事項にしていただきたい。もう一度国防会議に付して、議決事項としてこれは政府の考えであるというふうな形でシビリアンコントロールの効くようにしないと、こんな中途半端な形で、政府と違う、政府の認めていないものが防衛庁として公に認められた、こういう前例は私は非常におかしなことになるんじゃないかと思います。
  75. 夏目晴雄

    夏目政府委員 再三お答え申し上げて恐縮でございますが、この中期業務見積もりというものの内容、性格から見て、国防会議で御決定をいただくよりは、報告し了承を得るということがより適切な形であるというふうに私ども考えておりますので、これをまた再び決定をしていただくというふうなことをいま考えておりません。
  76. 木下敬之助

    木下委員 その私どもという言い方をされて、この防衛庁の中の人間、私がそういうふうに考えているというなら結構ですよ、だけれども、私どもと言って防衛庁全体を指したときに、その防衛庁全体が政府と別の考えでそれぞれ存在しているという、これは長官御本人はどうなるんですか。長官御本人は、私どもと言ったときに長官がそれの代表であり、長官は政府の人間であるわけですね。シビリアンコントロールというのは、政府の考えと同じものを持った人が長官として政府の考えでされること、これがシビリアンコントロールだと思います。その辺を履き違えると、長官の位置というのは非常におかしくなると思うのですが……。
  77. 夏目晴雄

    夏目政府委員 決して防衛庁長官あるいは防衛庁と政府の間に食い違いがあったり意見が違うということじゃなくて、防衛庁がそうした計画を持っていることについて国防会議あるいは政府として御了解を得ているということでございまして、その間に乖離というものはないんではないかというふうに考えております。
  78. 木下敬之助

    木下委員 シビリアンコントロールが効いているという感覚で見るならば、これは当然もう政府の決定事項じゃないですか。ですから、あいまいにせずに、決定として国民の前に明らかにされた方がいいんじゃないですか。
  79. 夏目晴雄

    夏目政府委員 別のたとえになりますが、閣議にも、閣議了解であるとか閣議決定であるとか閣議報告とか、いろいろな形式があることは御承知のとおりだと思います。私ども、この国防会議に報告し了承を得たというのは、この中期業務見積もりというものの内容が報告、了承を得ることにふさわしいものである。どうしてかというと、先ほど申しましたように防衛力整備の大綱、大枠というものは、五十一年に定められた「防衛計画の大綱」、これは国防会議、閣議において決定された大綱の枠内で整備をするというものでございますので、そういった点からも報告し了承を得るということが最も適切な手段であったかというふうに思っております。
  80. 木下敬之助

    木下委員 そういう考えでおっても、どうかな、すべて国民の皆さんにはわかりにくいし、特に対外的にもそういう差のようなものがわかっていただけるでしょうか。私は全然わからないのですけれども。  八月末にはハワイ会議が予定されていると私は聞いております。このハワイ会談で、当然この五六中業の中身についても話が出ると思います。アメリカに対してはこの性格についてどう説明するんですか。わかっていただけるんでしょうか。
  81. 夏目晴雄

    夏目政府委員 本年の日米事務レベル協議におきましては、八月の三十、三十一、九月一日と三日間予定をしております。この会議においては、当然日米間における安全保障上の諸問題について広範にいわゆる意見交換というものが行われると思います。そうして、その議題、いま決まっているわけではございませんけれども、当然のことながらこの五六中業の内容についての説明も求められることはあり得ると思います。  ただ私どもは、いま先生の御指摘のあったようにアメリカにわかっていただけるかどうかということでございますが、従来ともこの中期業務見積もりというものの内容、性格については、これはもう五三中業のときからそうでございますが、十分アメリカ側も認識しておりますし、今回もそういったことを踏まえながら十分理解を得るように努めなければならない、こういうふうに考えております。
  82. 木下敬之助

    木下委員 その従来からずっと同じものだと説明していても、米の側から眺めたら、国防会議で報告を了承されたということですね、これで従来と同じものというふうに思えというのが無理だと思います。アメリカから、逆の側から眺めたときに、理解できるような内容なんですか、これ。日本語に十分通じた人もおるでしょうけれども、これを英語で言うのですか。英語でその違いをお教えするのですか、議決事項と報告了承との。そんなものが、同じような表現がアメリカにあるのですか、こんな差のわかってもらえるような。
  83. 夏目晴雄

    夏目政府委員 アメリカ側も、今回の五六中業というものはかつての五三中業と異なって国防会議という場で審議し、了承を得たというふうなことについての御理解は得られると思います。ただその際に私どもとしては、当然のことながらこれが毎年の予算を必ずしも拘束するものではないということを補足説明をしながら、私ども防衛力整備についての考え方、計画体系のあり方についても十分説明する必要はあろうかと思います。
  84. 木下敬之助

    木下委員 説明するというこちら側の姿勢は結構ですけれども理解できるかどうか。理解できなかったときにどういう誤解が生じてくるのか、こういう考え方が私は要ると思います。国際社会の中で当然理解され得る範囲で行動しないと、日本の中だけでは本当の理解じゃないのですよ。私もこれ以上つつけないのは、少数野党だからしようがない。しかしアメリカとの関係は、その意味がわからないだけでは済まされない。いまのように、アメリカに報告するときには、国防会議で了承された、こういうふうに報告すれば、それは議決事項との違いも何もない、当然国防会議で決定したものとアメリカがとるのはあたりまえだろうし、そういう違いが大きくまためぐりめぐって、いろんな経済問題から何からあらゆる問題で日本にはね返ってくるようないまの状況で、そういう誤解を生むような形でしたんじゃ、これは迷惑だと思います。国民は大変な迷惑だと思いますが、どういうふうに考えておるのですか。そんな細かい理解が得られるのですか、こんな問題で。私どももわからないような、日本人が聞いてもどうしてもわからないような問題が。
  85. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私どもとしては精いっぱい理解を得るよう努めなければならないというふうに思います。ただ、先生に申し上げるように、私どもが従来アメリカと折衝した過程においてアメリカは十分わが国の予算制度、計画制度というものも承知しておりますので、全く理解できないんではないかということはない、私どもは誠意を持って内容を説明すればわかっていただけるというふうに信じております。
  86. 木下敬之助

    木下委員 それは、折衝した担当の方とアメリカのあれだけの国民というのは、別だと思います。いまアメリカの国民の間にいろいろな感情がありいろいろな考え方があり、それが大変な誤解に基づくものであっても、日本に対しては大きな政治的圧力となって戻ってくるわけでしょう。私はいまの考えを聞くと、これはアメリカにとっては国防会議の決定であり、政府の決定であり方針ととられる、こういう可能性はあるけれども、極力自分たちの言っているようなその違いを理解させたい、こういう希望的な方針で、はっきりとした了解であれば国防会議の決定であるとアメリカにとられても仕方がないという前提のもとにこういう決定が進んでいる、そういう感じがするのですけれども。どうも防衛庁が、政府の考えではない、内部資料だということでアメリカに当たるのも問題であるし、国民には政府の決定ではないと言いながらも、アメリカには政府の決定であるととられても仕方がないという姿勢で交渉に当たる、これは国民に対して欺瞞であると私は感じますが、どう思いますか。
  87. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私ども、今回の五六中業を説明するに当たって、常に中期業務見積もりの内容とともにこの五六中業というものの性格についても十分御説明し、御理解を得るように努めてまいりました。国防会議においてもそういうことを前提にして御了承をいただいておりますので、アメリカに対してこれがあたかも政府の決定であるかのようなことを申していたずらに誤解を引き起こすようなことは全く考えておりませんし、そういうことをすべきでないことは論をまたないところでございます。
  88. 木下敬之助

    木下委員 意識的にそういうふうにするとは思ってもおりません。しかし、そうアメリカにとられても仕方がないという姿勢でやられるのではないかと思っているわけです。  国民に対して本当のことを言うというのが私たち一番重要な時期であろうかと思います。いま私も選挙区でいろんな人と話をします。その中で勇気を持って防衛の問題を話しかけても、十分乗ってきて話に理解を示してくれます。そのときに、私が政府の姿勢としてお伝えしたいときに、これは一体どっちが政府の本心なのか、こういう問題で非常に困るのです。どうも国防会議内容等細かいことはわかりませんけれども、新聞の報道等で大臣等のお話しになっていることを見ますと、いま国民に本当のことを言ったら理解がいただけない、その理解がいただけないというのは、決定ができないという意味じゃなくて、そういう言い方をすると選挙に影響がある的な感覚でやられたら、国民にとってはかなわないことだと思います。だから、国民に率直にありのままを話して理解を求め、理解が得られなければ国の方針を変えざるを得ない、これはあたりまえです。国民の方が優先でございます。そういう謙虚な姿勢で当たらなければならないのではないかと思います。  そういった意味で、重ねてやはり、こういうあいまいなことはせずに、予算の関係、経済等の関係で必ずしもそれが予算的に実現するかしないかはわからない、これは構いません、それは別の枠がありますから、いま現在はGNP一%という枠があればそれはこちらの方を優先しますということを明言した上で、優先はするけれどもこれは政府としての方針であるということをはっきりさせて、国民にわかりやすく、対外的にもわかりやすく進めていくのが正しいやり方ではないかと思います。この問題はこれ以上言ってももう何も出てこないと思いますから、次に移ります。  念のために、まず確認をさせていただきます。  中業完成時の勢力とは、六十二年度までの取得ベースのものか、調達ベースなのか、この点確認させていただきたいと思います。
  89. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回取りまとめた五六中業の完成時の姿というのは、昭和六十二年、すなわち五六中業の対象期間の最終年度の六十二年に調達すなわち契約したもののベースででき上がっております。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 したがって、実際にオンハンドというか取得ベースで申し上げれば、物によってそれぞれ二年、三年、五年というふうな期間がございますけれども、一番長いもの、たとえばF15、P3Cあるいは艦艇等についてはそれから五年後、すなわち昭和六十六年度の姿になると御理解いただければと思います。
  90. 木下敬之助

    木下委員 六十二年度は調達ベースで、完全な取得はもう少し先になると言いますけれども、中業完成時といえばそういう取得が完全にできてそういう水準が達成されるわけですが、このときに、報告書を読ませていただきますと、表現としてはいろいろありますが、「ほぼ達成の域に到達していると評価され」と書かれておるわけです。ほぼ達成ということは完全ではない。どういうところが完全じゃないのか、お聞かせ願いたいと思います。
  91. 夏目晴雄

    夏目政府委員 あるいはお手元に資料が行っているかと思いますが、私ども「ほぼ達成」と言ったのは、まず「防衛計画の大綱」で御説明いたしますと、この大綱に別表というのがございまして、陸上自衛隊については基幹部隊、自衛官の定数等が書いてあります。海空自衛隊についても基幹部隊の数とそれぞれ航空機、艦艇の数字が書いてございますが、この大綱別表の数字に比較いたしまして五六中業の完成時にどうかといいますと、具体的に申し上げると、陸上対潜機部隊の数が十六個隊に対して十四個隊である、航空機の機数も二百二十機に対して百九十機、潜水艦も一隻足りないというふうなことがございます。それから航空自衛隊につきましては、部隊の数はそれぞれ達しておりますが、実際の作戦用航空機の数が四百三十機に対して約四百機ということで、まだ開きがございます。この点についてまだ完成の域に達していないという分野が若干ございます。ただ、ほかの問題については大綱の別表に定めるところにほぼ達成しているのじゃないかということで、一口に概括的に申し上げればほぼ達成と言えるのじゃないかというふうに申し上げたわけでございます。具体的に申し上げますと、いま言ったような点が足りないということでございます。
  92. 木下敬之助

    木下委員 その水準の達成というのは別表の数字合わせのようなかっこうでの達成、それも達成していないというのはいまわかりましたけれども、そのほかに一応数字の上では船はあるようなかっこうだけれども中の武器等は整備されていない、それでも一応達成。この不足は中には数えずにやろうということですか。
  93. 夏目晴雄

    夏目政府委員 その中身がどうであれ達成というふうなつもりは決してございませんが、一応一番ビジブルな形であらわれるのが大綱の別表との比較であろうということで、いまそれを例示的に申し上げたわけでございますが、そのほかにも、陸上自衛隊については基幹部隊が、たとえば師団数が十二個師団というふうなことが決められておりまして、これは何年も前から十二個師団の体制ができておりますけれども、この中身は相当装備の老朽化もありまして、私どもが本来望むべき師団の能力を発揮し得ない状況にある。そういった意味合いから、戦車、装甲車あるいは対戦車火力等を含めまして更新、近代化に逐年努めていることはもう御承知のとおりだと思います。そういった点は数字に出ておりません。それから継戦能力について申し上げれば、大綱につきましては継戦能力であるとか抗堪性についても十分意を尽くすようになっているわけですが、これらについても、弾薬の備蓄あるいは航空基地、レーダーサイト等の抗堪性、すなわちシェルター等の設置等についてはずいぶんおくれている面がございます。  そういった面をつぶさに観察しますと、全般的に大綱の水準に達成しているかということになりますとなかなか問題点の多いところもございます。その点は、数字として出てくるものではございませんので先ほどの御説明から省略いたしましたが、そういった点も今回の五六中業が完成しましてもまだ十分とは言えないということが実情でございます。
  94. 木下敬之助

    木下委員 どうしてそういう不足なままにしたのか、疑問を感じるわけです。もともと五六中業は大綱達成というのが目標だった。それが大綱達成できないというのがわかっている形でこういうふうに五六中業をつくり上げた。これはどういう考え方によるのでしょうか。
  95. 夏目晴雄

    夏目政府委員 確かに昨年の四月二十八日に、国防会議において今回の五六中業を作成する際の方針的なことについて御了承をいただいております。それに基づきますと、大綱の水準を達成することを基本とするのだということがうたわれていたわけでございます。私どもも、当然のことながら今回の五六中業におきましてはこの大綱の水準を達成することを基本として作業いたしました。しかし一方、GNP一%を当面のめどとするというふうな閣議決定もあるわけでございます。それから、昨今の厳しい財政事情ということも総合的に考えた結果、いま申し上げたようないわゆる未達成の分野を残さざるを得なかった。この一つ一つ個々については、それぞれこういった経費の問題のほかに、生産ラインを経済的に維持する問題、あるいは適切な後継機種が見当たらないために暫時充足を見合わせるというふうな特殊事情もあわせて、そういった未達成の理由になっているということでございます。
  96. 木下敬之助

    木下委員 それで、いまのお答えの中から二つほどお聞きしたいのですが、まずお聞きしますと、中業では大綱は達成できないということがわかった五六中業の計画をつくったということは、これは大綱の達成を先に延ばしたということですか、それとも大綱を見直したということですか。
  97. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私ども今回の五六中業において大綱達成をしたいというふうな気持ちがありましたが、いま申し上げましたような事情から未達成の分野がございます。これは当然のことながら、五六中業以降の段階においてできるだけ早い時期に達成しなければならない、こういうふうに考えております。
  98. 木下敬之助

    木下委員 ということは、大綱の達成の時期が延びた。最初は六十二年度ですか、これまでにということで考えていた、これが延びたということですね。ところが、六十二年度までのこの間に、最初に考えていた脅威以上にいろいろな情勢が厳しくなったという客観情勢を主張されていると思いますね。そういった中で逆に延びるようになった。これは一体いつごろまでに達成できる見通しで今後進むのですか。
  99. 夏目晴雄

    夏目政府委員 何せ五六中業をつい先日つくったばかりでございまして、いま私どもとしては、ここ数年間は全力を挙げてこの五六中業を首尾よく達成することが一番大事なことであろうかというふうに思っております。  そこで、未達成の分についてどうするかということでございますが、少しく具体的に申し上げますと、まず海上自衛隊の対潜哨戒機が約三十機ばかり足りないということを申し上げました。これはこの五六中業期間中における陸上対潜機の減耗が非常に多いということ、百数機の減耗が見込まれております。そうしたものをカバーして現在の百六十四機から百九十機までに回復することには、五三中業その他いままでの予算ベースと比べても相当な努力が必要であるということがおわかりいただけると思います。ただ、そうするためには、現在のたとえばP3Cの生産ラインというものを相当パイプを太くしないと達成できない。しかしそうしてつくれば大綱の数字は達成するということが算術的に出てくるわけでございますが、そうしますと、五六中業期間が終わった後すぐP3Cの生産をしなくてもいいような、たとえば減耗補充だけをすればいいような、すなわちパイプがある一定の太さでいったものが五六中業が終わった翌年から一機、二機という生産パイプになってしまうということが、果たして経済的、合理的と言えるだろうかということも兼ね合わせてそういった数字になっている。したがって、そういうものについては、五六中業の後何年か、そう長い将来でなくて大綱の水準を達成するのは、そう困難な問題ではないのではないかというふうに思っております。  それから航空自衛隊の飛行機の不足につきましても、現在私ども希望としては偵察機を、RF4Eというファントムの戦闘機を偵察機型に改修したものを十三機持っておりますが、一個隊三十機程度は欲しいというのはかねがね考えておったわけでございます。そうしたものを私どもは補充したいのですが、現在世界のどこにもこれに最も適した機種というのは見当たらないというようなことから、やむを得ず充足を見送っているというようなこと。それから潜水艦につきましても今回六隻をお願いしているわけですが、大体潜水艦は毎年一隻ずつ用途廃止になっている。それに比べて毎年一隻つくっていけば大体いいわけですが、こういった六隻をつくることによって、五六中業の対象期間が終わった翌々年か翌年かに除籍を生じない時期が来ます。そうしますと、大綱の十六隻に達するのは五六中業が終わってすぐ一、二年の後になるわけでございます。そういったことを考えますと、どの時期というのは個々のケースによって違いますけれども、私は、いまの五六中業と同じような努力を続けるならばそんなに長い先でなくて達成できるのではないかというふうに思っております。
  100. 木下敬之助

    木下委員 そんなに長い先でないという表現は、何年とかどのくらいとかいう表現で御発言はできませんか。
  101. 夏目晴雄

    夏目政府委員 最初にお断り申し上げたように、五六中業をつくった直後でございまして、まずこれをやることが先決であろう、その後どこまでというふうな計画をまだ具体的に持っておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  102. 木下敬之助

    木下委員 では確認をいたします。  不足のままで五六中業をつくった。これは予算的な意味がある、GNP一%を超すと困る、だから計画としては一%を超さないで済むようなつじつま合わせをしてつくった、こういうふうに思えるわけですね。ということは、現時点で大綱達成よりも一%内という決定を守ること、これを優先しておるということですか。
  103. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私どもとしては今回の五六中業の作成に当たってはまず大綱の水準を達成することが基本であるということを先ほど申し上げましたが、私は、それが一番の一つの大きな命題であったかと思います。ただ、それでは大綱の水準を達成するためにあらゆる制約事項を考えないでつくるのかということになりますと、そうはまいりませんので、そのためには、去る五十一年の閣議の決定、国防会議の決定のGNP一%の問題等もこれは当然のことながら念頭に入れて、そういったものを彼此勘案しながらつくっている。ただ、そのためだけに、一%にこだわったがために先ほど申しましたような未達成の分野ができたのかということになれば、先ほど申した事情がございますので、それとは別にいろいろな事情を含めてああいった形になったというものでございます。
  104. 木下敬之助

    木下委員 あっちをつつけばこっちに逃げ、こっちをつつけばあっちに逃げるようなことはやめてもらいたいのですよ。やはり両方目標であった。大綱の達成も、一%内でやるということも、両方とも決定で進んでいた。やれる間はいいです。やれなくなったら二者択一、どちらを優先するかです。だからこの場合、当然大綱を達成するよりも一%を守るということを優先して判断した、こうとれるのじゃないですか。
  105. 夏目晴雄

    夏目政府委員 どちらが優先かというのはなかなか答えにくい分もあるかと思いますが、私どもは大綱の達成が一番大事だということは先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、それじゃ一%というのは全く念頭になかったかといえば、それはやはり念頭にあった。念頭に入れながら何とかそういった枠内で大綱の達成にぎりぎり行けないだろうかという苦労をしたのが実は今回の五六中業の中身でございまして、その点、われわれの苦衷というか、そういったものがよくにじみ出ているのではないかというふうに自画自賛いたしております。
  106. 木下敬之助

    木下委員 もうそれはそのとおりで、こういう意識があってつくったのじゃないと幾ら言っても、これほどぎりぎりまではつくれないだろうと思っております。しかし、苦労したと言われるけれども、一応大綱に不足するということを承知の上でつくった。達成が眼目でありながら達成できないということを承知の中業をつくったということは、大綱達成を一%の枠によってあきらめた。だから、どちらを優先するかわからないと言うなら、こちらも切った、逆に一%の方もその枠も切った、両方とも超えたときにやっとどちらを優先したとも言えないと言えるので、現在一%を超さないという考えを持っているなら、どこまでも一%内の決定の方が大綱達成よりも優先されたと見るべきじゃないでしょうか。
  107. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほども申し上げましたけれども、今回の大綱水準と若干の隔たりがある分野につきましては、一%云々ということとは別個に、防衛生産技術の技術力の維持ということ、あるいは用地の確保の問題、減耗の状況、耐用命数の問題、そういったものを考えながら最も効率的、合理的なものを考えざるを得なかったということでございまして、大綱の水準に達しなかったすべての元凶は一%であったというふうに私ども必ずしも考えておらないわけでございます。その点、十分御認識をいただきたいと思います。
  108. 木下敬之助

    木下委員 それではお伺いいたします。  このたびできた中業、この中業の達成ということがこれからの目標になると思うのです。その中業の達成と一%内の決定を守っていくということ、これは今後どう考えるわけですか。
  109. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回のこの五六中業は、御承知のように、あくまでも陸海空自衛隊の正面事業を中心にした、いわゆる主な事業を骨子としたものがこの中業の中身でございます。したがって、私ども後方支援関係であるとか人件糧食費の問題とかいうことについて精細な検討なり計算というものをしているわけではございませんことは御承知のとおりでございます。私ども、そういった中でもって正面をいま積算をしてみますと、四兆四千億円から四兆六千億円であろうというふうに見積もっておるわけでございます。それ以外のものについて別に防衛庁として細かな積み上げ等をやっておるわけではございませんので、この段階で、中業をつくったことによってGNP一%の問題が将来どうかということについて、いま答えるのが適切かどうかというふうなことについては問題があろうかというふうに思っております。
  110. 木下敬之助

    木下委員 長官、どういうふうにお考えですか。一%を超えるという可能性が非常に強いと言われているこの五六中業ですね。この五六中業の達成と一%と、どちらが優先するというふうにお考えですか。
  111. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛局長からるるお答えを申し上げたとおりでございまして、いまわれわれとしては、「防衛計画の大綱」の水準も達成する、それから一%の閣議決定も守っていく、その両方を矛盾をさせないようにぎりぎりの努力をしてまいりたいというのが基本方針でございます。
  112. 木下敬之助

    木下委員 しかし、一%を中業が超えない計画であるというのは、経済成長率を五・一%に見ているとか、ずいぶん先ほど自画自賛されたように限界まで検討された結果、逆に言うともう何もかにもがうまくいって最小で済んだときだという感じでつくっておられる。ということは、国民の目から眺めてみたときには、可能性で見ますと、この五六中業をいま長官が言われたほどの熱意で年々達成しようと進んでいくからには必ず近い将来にこの二者択一を迫られる、こういう状況が来るのは火を見るより明らかだと思います。そこの状況のときに、まだ発言の時期でない、これは議論の対象でないという逃げ方をするというのは、国民に対して非常に無責任になると僕は思うのですが、どうですか。
  113. 夏目晴雄

    夏目政府委員 五六中業というのは、あくまでも陸海空自衛隊の正面装備を中心とした主要事業を中身としてつくられているものであるということは先ほど御説明したとおりでございます。しかし、いませっかく先生の御質問でございますから申し上げますか、そのための正面経費は四兆四千億円から四兆六千億円ということを申し上げたわけでございます。それ以外について、防衛庁としてそのしさいな積み上げをやっておるわけではございませんけれども、大まかに参考的に試算したものを申し上げますと、この期間中の防衛関係費の総額は十五兆六千億円から十六兆四千億円ということに相なるわけでございます。一方、GNPの方はどうかといいますと、五十七年度の経済見通しあるいは経済社会七カ年計画のフォローアップ五十六年度の見通し等によるGNPの一%相当額を見ますと、大体十六兆一千億前後であるというふうなことが計算的に出てくるわけです。それを単純に比較いたしますと、期間中の対GNP比は〇・九七から一・〇二であろうというふうに思います。  ただ、ここでお断りしなければならないのは、このGNPも今後の経済事情の動きというものによってどういうふうに変わるかわからない。それから防衛費の方も、先ほど申したように、正面についてはある程度申し上げられますけれども、それ以外のものについてはきわめて概略的な試算である。しかもこれは今後また概算要求等を経て政府の予算が決められていくというふうなプロセスを考えた場合に、いま直ちに一%を超えるかどうかというのを申し上げるのは適当でないのじゃないかというふうに思っているわけでございます。この点、御理解いただけると思います。
  114. 木下敬之助

    木下委員 超えるか超えないかの判断はいまつかない、結構です。しかし、可能性が非常に高い中で、じゃ超えるときが来たらどうするのかという論議を逃げることはないと思います。いましなければこれはいつするかということになりますから、ぜひその点についてもう少し率直な考えを聞かせていただきたいと思います。  中業期間中に防衛費がGNP一%を超えることは、僕らは確実と思うわけです。可能性としては非常に大きいと思います。ですから、この超えた場合にはGNP一%という五十一年度の決定は改定するのか。改定するとすれば、それはいつやるのか。超えることが確実となった時点でやるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  115. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いま政府におきましても経済見通し等についていろいろな思索を交えながらあるべき方向というものを模索しておりまして、別段新しい経済指標が設定されたわけでもございませんので、いま私どもは直ちに将来の経済がどうなるということを仮定して、当然防衛費がGNPの一%を突破するであろうということを申し上げるのはまだいささか時期尚早ではないかというふうに考えております。  ただ、そうなった場合どうかという仮定の議論でありますれば、そのときにはまたいろいろ御審議をし、しかるべき措置考えていただくことが必要になるかもしれませんが、いまそういうことを申し上げる時期ではまだないのではないかというふうに思っております。
  116. 木下敬之助

    木下委員 可能性があるかないかはいま言う必要はありません。それは将来のことですから、未確定で結構です。だからといって、可能性が強いということは認めておられると思うのですが、必ず超えることはなくてもこれだけ可能性が強いと認めておられる中で、そのときどうするのかというのをいま聞くのに答えられないということはないと思うのです。政府の御決定をと言いますけれども、そのときに長官、あなたの御意見としては、いずれその一%を守るのか中業の達成をとるのかどちらか選択を迫られるときが来ると思いますが、そのときにあなたはどちらを重要視するのですか。そう遠くない将来に来ると多くの人が思っているわけです。
  117. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、現在のところGNP一%に関する閣議決定を変更する必要はないものと判断はしておりますけれども、ただこの閣議決定は、その中に文言としてすでに「当面」とあるわけでございまして、したがって、固定的な期限を予定したものではありません。経済状況等先生仰せのいろいろなこと、内外諸情勢の変化に伴いまして、必要があると認められた場合には改めて検討されるべきものであるとは考えております。
  118. 木下敬之助

    木下委員 改めて検討される。それはGNP一%を超えるというのが確実になったとき、検討して決定するのですか。
  119. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私ども具体的にそういったことを前提にして物を考えているわけでございませんので、どういうときというふうにきちっと言われてもなかなかお答えしにくうございますが、いずれにしても、もともとこの一%の問題はいまの大臣の御答弁にありましたような性格のものでございます。そういう必要があったとき、どういう時点においてそれが必要であるというふうに判断されるのか、そういうことも含めて将来の問題ではないかというふうに思っております。
  120. 木下敬之助

    木下委員 その当面一%以内という表現は、守れる間だけ守るのだというふうにもとれますね。ところが、今度の中業を計画するときにはこれは相当に重要視をされて、達成を部分的には少し送ってまでも一%に合うようにしている。こんな時期にいままだそういう言い方をしているというのは、国民に対して非常に無責任だと思います。もっと現実にどういうふうに考えているのか、日本の国防をどういうふうにしようとしているのか、具体的などんな構想を持って、そのためにはどれだけ要るんだからというそういう熱意があってこの中業に取り組んでいるのか、それとも、生活のことを考えるときに一%というのは絶対に譲れない枠だと思いながら、日本の防衛方針はやれる範囲のものでやっていくんだという基本的な考えがあってやっているのか、どっちを重要視するのか。この両方が両立するときはいいですけれども、必ず択一を迫られるときには防衛構想がはっきりしていなければならないと思います。どうもその辺が国民にとってはわかりにくいこときわまりないと思います。こんなことで国民理解が得られると考えているのですか。
  121. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 われわれも一日も早く「防衛計画の大綱」の水準を達成したいというのが防衛庁の基本的な態度、スタンスでございますけれども、また半面、防衛というのは、国民の広範な御理解なり御支持がなければ防衛そのものの終局的な目的も達成できないということもございますので、あくまでも五六中業を着実に実施をし、そしてまた一日も早く「防衛計画の大綱」の水準に近づけたい、達成したいということを基本とはしておりますけれども国民の世論の動向あるいはまた昨今の財政事情等のこともございますので、防衛庁でも自衛隊でもできる限り効率化、合理化等にも創意工夫をこらし、全知全能をしぼってわれわれの計画達成に相努めるとともに、先ほど来申し上げておりますGNP一%に関する閣議決定とも矛盾をしないよう最大限ぎりぎりの努力をして、今般の五六中業の作成へとこぎつけたところでございます。したがいまして、どちらが優先ということも、いろいろ御指摘はございましたけれども、いまのところはわれわれは両方相矛盾することのないような最大限の努力をしてまいりたいと思いますし、現在のところはこのGNP一%に関する閣議決定を変更する必要はないものと判断をしているところでございます。
  122. 木下敬之助

    木下委員 非常にあいまいで、そういう考え方をいまのこの時点になってまだ話し続けているということに国民理解を示すと私は考えられません。もっと率直にいろいろな考え方をされたらいいと思うのです。特に、二つの問題がどちらが優先ということはない、どちらも大事だ、けれども、二者択一のときにどうしていいかわからないに近いような感覚ですね。これは両方とも、そうでなければならないという根拠がどちらも甘いからじゃないですか。中業のこれだけは絶対達成しなければならない、かつて大綱を決定してこれだけは六十二年度までにすると言った。これを非常に大きな使命としてそれまで進んできたとしても、最終的にはあいまいながらも先送りになったり未完成なままであったりする。それは、最初に決定したときの本当の根拠というものが理解されてない、もしくは根拠がはっきりしていなかったということがあいまいにしてくる原因だと思います。  同じように、GNPの一%以内の枠、これを設けるということは私たちは合理性のない発想だといままでも思っておりました。何も枠が要らないという意味ではない。なぜGNPのちょうど一%なのか。〇・九ではなくてなぜ一%なのか、もしくは一・一なのかとか、こういったところには何も合理的な根拠はないと思っています。ですからこの際当然、一%というものが本当に明快な根拠があるのなら二者択一にそんなに困ることはないと思うし、もし根拠がないのなら、その一%を決めた時点と同じ考えでもって、いま現在何か国民理解のいただけるような歯どめのはないのかと探すのがあたりまえだと考えるのですが、この一%の根拠という問題、それから、何かほかに根拠のあるもしくは国民理解のいただける歯どめというものがあり得るのじゃないかということの考えがございましたら、お聞かせ願いたいと思う。
  123. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生の御高見を含めました御指摘にはわれわれとしても耳を傾けざるを得ないことが多々ございますけれども、いずれにしても、「防衛計画の大綱」の水準達成ということもGNPの閣議決定もいずれも重要な重みを持った閣議決定でございますし、われわれとしては現在そういう閣議決定を変更する必要はないものと判断をしております。  それではどういうこれからの根拠によるかということでございますが、それは先ほども申し上げましたように、閣議決定のGNP一%の問題は当面ということでもございますので、今後の経済状況と内外諸情勢の変化に伴い、必要があると認められる場合には改めて検討されるべきものであると考えておるところでございます。
  124. 木下敬之助

    木下委員 閣議決定の重みというのは、その時点における重みだと思います。そうじゃなくて、根拠というのは、何かそのときの根拠の状況とまた変化があったのかないのか、これは別にしても、根拠は根拠ですから、そういうものがはっきりしない。その時点での閣議の重みだけでこんな重大な問題がいつまでも二つの決定にずるずると引きずられて、その中で一番国民にとって大事な防衛問題が論議されていく。私どもは納得できない。もっと基本的な考えがあっていいのじゃないかと思います。  同時に、いま一%の根拠の方を申し上げましたけれども、もう一つ、中業の方は中業の方でやはりこれを仕上げなければならないという根拠があると思うのです。その根拠というのは当然防衛構想だと思います。大綱は幾らか先送りにされたり変更に近いものもあると思いますけれども、いま考えておられる中業を達成しなければならない根拠となる防衛構想、大綱にあらわれてきた防衛構想というのは、一体どんなものですか。これだけの正面装備を調達する以上、具体的な防衛のシナリオがないとは言えないと思います。必ず必要だと思います。実際にはどのようなシナリオで中業を作成したのでございますか。
  125. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今回の五六中業は「防衛計画の大綱」の水準を達成するということが基本でございまして、あくまでもこの大綱の枠内での整備ということがまず第一点でございます。  では、その大綱の枠内で何を目標にしているかということでございますが、その大綱というものは、これは御承知のとおりでございますけれども、限定的小規模の侵略に対処し得るものということ、あわせて警戒態勢であるとか教育訓練態勢であるとか、そういったものにも事欠かないような質の高い、諸外国の軍事技術水準にも対応し得るような質を持った防衛力を持つべきであるというふうな、大綱に規定されておるもろもろの自衛隊の体制についてできるだけ近づけることが必要である、それがまた、いまわれわれとしては平時においても必要最小限度の防衛力ではなかろうかということで、まずここまで到達したいというのが今回の五六中業の発想のもとでございます。
  126. 木下敬之助

    木下委員 国民理解できるような合理的な根拠はないというふうにとれるのですが、結局閣議決定であるということだけの重みしかこの二つの壁というものにはない、国民はそう理解していいのですか。
  127. 夏目晴雄

    夏目政府委員 この「防衛計画の大綱」というのは、今日の世界情勢の中において、平時において必要最小限度のものであるというふうに私ども考えております。少なくともこのくらいのものはできるだけ早く持つ必要があるのではないかというのがこの五六中業の目標でございまして、この点は国民にとっても御理解のいただける線であるというふうに私どもは認識しております。
  128. 木下敬之助

    木下委員 政治ですから、閣議決定、そういったものが重要な壁となっていろいろなものが決定されていく。それはそれで一つの政治のあり方ですけれども国民の目から見たときには、そういう決定が大事だからどうこうというのじゃなくて、なぜその決定に至ったか、その過程がいまもなお生きているかどうかということが国民にとって大事だと思うのです。そういった意味で、いまなされておる論議は国民にとっては非常に離れてしまった、本当の一部の人たちがつじつまをどういうふうにするかとか、そんな問題でなされているとしか国民に映らない、私はこういうふうに警告をいたしたいと思います。  いままた、これだけのものは必要だというのは、国民理解をいただいたという根拠でこの中業を達成しようとしているんだ。これはその時点でございますね。もうずいぶんたちましたいま、いろいろな現実的な脅威というものも出てきた。それにどう対応するのか。基盤的な防衛力の整備でこれだけのものをそろえて、一応体裁をつくって、もしくはこれだけあれば日本としておかしくはないだろうと思われるいろいろなものをそろえて、並べて、そしてそれによって、現実に何かが起こったらその問題にできるだけのことで対処していこうと考えて基盤的に整備されるのと、現実にいろいろな具体的な脅威というものを想定しながら、それにどう対応できるのか、対処能力をどうつけていくのかという、そういった現実的な、国民への率直な理解をいただく態度がないと、これからの防衛力の整備に国民がうんと言うはずはないと私は思うのですよ。  私は、先ほども申しましたけれども、いろいろな方と率直な話し合いをしています。そういった中で、一体どの辺にどういう不安を感じているのかと聞きますときに、やはり役に立つのか立たないのかが全くわからないという感覚が一つあるわけですね。これはやはり現実のものを想定したシナリオがないからそうなるんだと思います。国民理解を得ていこうとしたときに、私は、これだけの正面装備を調達する中で全くシナリオがない、基盤的なものだけで考えているんだというわけにはいかないと思います。現実にシーレーン防衛とか水際防衛とか、またハリネズミとかいろいろな構想のようなものがあって、現実にはこれだけの形で船団護衛をすればいいのじゃないかとかいろいろなことをアメリカも考えているだろうし、私は皆さんも考えておられると思います。今回の中業に、この明らかになった中にいろいろな計画の調達も含まれていると思いますから、どうかもっと具体的にできるものを具体的にしていただきたいと思います。
  129. 夏目晴雄

    夏目政府委員 「防衛計画の大綱」というのは限定小規模侵略に対処し得るものということで整備を進めているというのは、先ほども申し上げたとおりでございます。私どもそういった線に基づいて、現在、装備の更新、近代化、継戦能力その他もろもろの点についての整備充実を図っているわけでございます。  では、これはどういう具体的なシナリオかということでございますが、私ども部内においてはいろいろなことを考えながら、航空自衝隊の防空能力としてはどの程度持たなければならないのかというふうなことをいろいろな科学的な手法を用いたりした勉強はしておりますけれども防衛力全体の問題として申し上げるならば、そういうことをいまここで申し上げるのは適切であるかどうか、むしろ大綱というものを先ほど申し上げたような平時における必要最小限度の防衛力として一日も早く達成することがまず肝要である、まずそこに追いつくことが何よりも大事ではないかということで、その枠内での整備、そのために、その結果今回の五六中業でもって整備される防衛力がどの程度の能力アップにつながるかということをもちろん勉強はしておりますけれども、あくまでも限定小規模の侵略に対処し得る、いま私どもの身近でもって起こり得るとすればそういった侵略ではなかろうか、そういうものを持っておることがまた現在の国際情勢の中で戦争を抑止する機能としても役に立つのではないかというふうに考えて大綱ができているわけです。そういった大綱の水準にできるだけ早く近づきたいということが、今回の五六中業の目標でございます。
  130. 木下敬之助

    木下委員 限定小規模なものに対応できるということです。限定小規模なものというのは具体的にどんなものであり、それに対して、これだけの装備でどういう形の限定的なそういう小規模の争いの中に対応できるように考えているか、もうちょっと明らかにできるものがあるならしてください。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 夏目晴雄

    夏目政府委員 わが国に対する武力侵略というものがもしある場合に、どういうふうな形態、規模で行われるかというのは、なかなか一口で言うのはむずかしい問題だと思います。ただ、私どもがいま考えられるものとしては、侵攻する側がある日、何というか、余り大がかりな準備を要しないでやってくるというふうなものに対しても対処能力がないということでは、世界の防衛力の中に一つの空隙というか、すき間を生ずることによって、安全保障の観点から好ましいことではないのではないか。少なくともそういったものは防止しなければならない。ただしそれ以上のものが絶対ないかというと、これは国際情勢というのはそのときの動きでございますから、何ともいまから予断するわけにいきません。じゃそういうときどうするかということになれば、それは日米安保体制というものを背景にしてそういうものを抑止しているというのが今日の姿であろうと思います。私ども自衛隊としては、そういった日米関係という枠内において、そういうものを背景にしながらわが国として必要最小限度の防衛力を持つ、これが世界の平和安定につながる唯一の道であるというふうに考えておるわけでございます。
  132. 木下敬之助

    木下委員 そういう考えでやられておるということだけはわかりましたけれども国民は、そういう考えでは、一体具体的にどういうことが起こったときにどう対処してくれるんだろう、こういったことは全くイメージとして浮かばないわけです。この全くイメージの浮かばないものにこれだけいろいろ経済的な面で逼迫してきた中で多くを割かれていくということに対して、国民が賛成しないのはあたりまえだと思います。だからといって、じゃ視野を少し別な目で眺めてみたときに、国防というものがそれでいい、こうは思っておりません。私は、一国は国防に対して基本的な考えがあって、そしてその上で具体的なこういったものにこういうふうに対処するんだというシナリオを持って軍備というか自衛力の整備に当たれば、理解をしていただける、こういうように思っております。その構想がないのか、構想を明らかにしようとする姿勢がないのか、どうも一体どちらなんだろうという疑問を私も持ちます。国民も持っているんじゃないかと思います。  また、もう時間もありませんから、いま言われたその日米安保についてもちょっと申し上げますと、小規模の限定的なものをする、それができなくなったら安保、アメリカお願いします、これは日本の敗戦からの、アメリカ軍が駐留していた、まただんだん変わっていった中で日米安保というものができた、日米講和条約もできた、そして現在まで来たという経過を見ればそういう考え方も仕方がないと思いますけれども、いま時代は変わろうとしておる。アメリカもそういった形で、その延長だけじゃない。その延長の考え方を知らないアメリカの国民もずいぶん出てきている中で、対等な関係での日米安保というものを考えなければならないと思うのです。そのためには、われわれが自主的な防衛計画、日本はこうやって防衛するんだという大変大きな防衛の基本の中から、日米安保を自分たちが自主的に選択して、そして日本でできるのはこれだけだ、こういう考え方のもとに本当の防衛構想というものを国民の間でディスカッションできるような空気をつくっていって、本当の国防に対する気持ちというもの、合意をつくっていかなければ、これから先の防衛のいろいろな問題に国民はついていくことができない、私はこういうふうに思います。どうかもっと率直な、フランクな意見交換のできるような状況にしていただきたい、私はそういうふうに思います。  そういった意味で、GNP比一%、これは大した根拠じゃないけれども閣議決定。当面はこれを守るんだ、こういうある意味では内部事情に近いもので、これに合わせて何とか五年間の言い逃れのできそうな中業をつくって、この時点にまで来てもまだ一%がいつ超すかどうかわからないから、それはそのときで、こういう逃げ方をしていたんでは、私はいつまでたっても国民の不信感はぬぐえない。この国民の不信感をぬぐおうという姿勢がなければ、私は国防の本当の体制はできないと思います。ですから長官が、本当に本気で日本を守っていかなければならぬ、いま長官としての職務としてそのための自分のできることの最大限を尽くそうという御姿勢があるのなら、国民に本当に理解してもらえるだけ率直に腹を割って、いまの日本の現状、アメリカとの関係その他、すべて率直に国民に披露して、全部明らかにした上での国民理解をいただくという姿勢を持っていただきたい、こういうふうに思います。  もっと具体的な問題やらずいぶんたくさん問題が余ってしまいましたけれども、もう時間ですから、あと少し、最後に二、三点お聞きして私の質問を終わりといたしたいと思います。中業の中身についてもう少し細かい問題もお尋ねいたしたかったのですが、時間がありません。  それで最後に、装備の調達だけでなく、ソフト面においても自衛隊の欠陥是正を進める必要がある、こういうように考えております。たとえば三自衛隊の統合運用の強化、統幕議長や統幕会議の権限強化の問題等はどう進めるのか、また、日米間の統合運用の欠如、関係法令の不備、こういった点はどういうふうに考えられるのか、お聞かせ願いたい。
  133. 夏目晴雄

    夏目政府委員 有事の際に自衛隊が真に効果的な運用ができるためには、統合運用というのは欠かせないことであろうということは、私も同感でございます。そういう意味合いにおきまして、現在の防衛庁、自衛隊の中におきましては、現在、統合幕僚会議が統合防衛計画というものを作成すると同時に、陸海空の各自衛隊が作成する防衛計画というものを総合調整する機能を持っております。それから、自衛隊が有事において行動する際の指揮命令に関する基本というものは統合幕僚会議の所管することになっておりますし、また、陸海空の間の総合調整を行うこともこれまた当然でございます。そのために、そういった立場というものをより強固にはっきりさせるために、統合演習であるとかいうふうなものを強化しながら、統幕機能というものの改善というものについて毎年研究、演練を重ねておるということは御承知のとおりでございます。  また、統幕の機能強化の一環としまして、日米ガイドラインに基づく研究のための要員であるとか中央指揮所というものを開設するに伴います要員の確保ということを含めまして、統幕会議の機能強化についてはわれわれとしては十分努力をいたしておるところでございまして、先生の御指摘の統合運用の強化というような、五六中業と直接関係のない分野もございますけれども、私ども鋭意努力をしてそうした方向に持っていくようにいろいろ工夫をこらしておるということでございます。
  134. 木下敬之助

    木下委員 海上保安庁の方にもおいでいただいて少しお聞きしたかったのですが、もう時間もありませんので、情報システム、中央指揮システムとかSFシステム等々、連動させて考えるような面に海上保安庁との関係もあると思いますので、どうかそういった統合的な運用を考えていっていただきたいと思います。どうもお待たせしましたけれども質問にはなりませんから、ありがとうございました。  最後に、有事法制研究は中間報告のままたなざらしにされていますが、国会に改正案として提出する気はないのか、どう対応するつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  135. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  有事法制の研究は、御承知のように、五十二年、総理の了解のもとに当時の防衛庁長官の指示により鋭意進めてまいりまして、昨年の四月、国会に対してその中間報告を行ったところでございます。第一分類、第二分類、第三分類と三つの分類に分かれて研究をしてまいりました。第一分類は防衛庁、自衛隊の所管する法令、第二分類はその他の省庁にかかわる法令についての除外規定等、第三分類は国際法関連でございます。現在までのところ、第一分類についてかなりな研究が行われ、現在第二分類、すなわち他省庁の権限にかかわる問題の法令との抵触部分についての除外規定、例外規定等の研究を行っております。  中間報告におきましては、先生御承知のように、たとえば第一分類に関しましては、さっき御質問にございました第二十二条によるところの特別部隊、統合部隊の編成の問題あるいは予備自衛官の招集の問題、これを七十六条防衛出動下令時に行うのでは間に合わないのではないか、七十七条の待機命令の段階で行うのが妥当ではないかという見解を中間報告で示しております。第二分類等につきましては、まだ関係法令たくさんございますので十分な検討を終えておりませんが、私どもといたしましては、これらの法令の運用あるいは解釈によって解決のつく部分と何らかの立法的な措置を講じなければいけない部分との選別を現在やっておるところでございます。これらの法的な不備につきましては、その不備や欠陥を明らかにした段階におきまして、私ども、これを放置しておく気はございません、何らかの形で是正措置をお願いをしたいという希望を持っておりますが、本件は御承知のように国民のコンセンサスあるいは国会の御審議、さらには関係省庁との協議等の問題がございますので、今国会に改正案として出すという考えは持っておりません。近い将来に、皆様の御理解と御協力を得て、自衛隊が有事に際して円滑に行動できるような改善措置をとっていただきたいというのが防衛庁の年来の希望でございます。
  136. 木下敬之助

    木下委員 きょうの報道では、自民党の安全保障調査会もそういった有事法令の作成作業を開始することを決めたというようなことを報道されておりまして、どういう形にしろ、いろいろな意味でこの問題は大変重要な問題となってくると思います。どうか、作業等が進みました中で報告いただけるものがありましたら、できるだけ報告をいただきたい、こういうふうに思います。  大体時間が来ましたので以上をもって終わりますが、最後に二つ、いままでの中で気がついた点で申し上げておきたいと思います。  その一つは、政府と防衛庁との考え、これは一つのものでなければならない。これは、何か防衛庁内部の資料という形、これが国防会議で了承されたというような形、で、いかにも政府の考えであるかのように見える、ある意味では政府の考えじゃないという、こういった考え方の二重になるようなことのないような形で、はっきりとシビリアンコントロールの効いた形でやっていただきたいということであります。  いま一つは、この防衛の問題でいろいろな論議をしましてもどうしても率直に本当のことを教えてもらえない、こういう感じがいたします。予算委員会の論議でいろいろな問題が出ていたときにでも、もっと率直に本当のことを国民に言ったらどうかと思う点が幾つもありました。どうか本当のことを言って国民理解をいただくという姿勢に早く変更して、これは別にタカ派でも何でもないと思います。その上で最終決定は国民にいただくのだ、この姿勢でやっていただきたいと思います。  時間が参りましたので、これで私の質問を終わります。
  137. 石井一

    石井委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  138. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。榊利夫君。
  139. 榊利夫

    ○榊委員 まず、防衛庁長官の方にお尋ねいたします。  昨今、世界各地でいわゆる限定核戦争反対、核兵器廃絶、軍縮の声が草の根から広がっておることも御承知のとおりでありますが、わが国の世論調査でも六、七割の人が軍備増強、防衛費の増強には反対というのが出ております。さきの総理府の世論調査でも、自衛隊を肯定する意見が減少傾向にあるということが出ております。ところが、今回の法案ですが、自衛隊員約二千名、予備自衛官約二千名、合計約四千名をふやす、こういう点では、どこから見ましても軍備増強案であります。  それで質問ですが、この増員案はすでに国家予算に盛り込まれているのでしょうか。
  140. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在法案を提出しているのは五十六年度と五十七年度に必要とする増員でございまして、五十七年度分の予算の中にはこの増員分は当然含まれております。
  141. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、これは当然、もともと出されたのは前でありますけれども、現在まさに国会で審議中である、まだ通過していない。ところが予算だけはもうすでに入っている。これでは、議会制民主主義というたてまえから見ましても法定主義という原理から見ましても、やはり行政先行、独断専行ということを免れないのではないかと思いますけれども、こういう点についてはどういう御認識でしょうか。
  142. 夏目晴雄

    夏目政府委員 当然のことながら、予算案として国会で御審議を受け、成立しているわけでございますので、それと表裏一体になっている二法案につきましてもできるだけ早期に御審議、御成立を願いたいというのが私どもの気持ちでございまして、ただ、予算には組み込まれておりましても、この増員分に関する経費の執行というものは、当然のことながら、しておらないということでございます。
  143. 榊利夫

    ○榊委員 執行しない、これは当然のことです、通ってないのですから。私が問題にしているのは、まだ審議中なのに早々と予算に組み込まれている、これは筋道としておかしい、こういうことです。いままでもしばしばこういうことがありました。しかしこれは、正常な予算案の審議並びにその執行という点から見まして原則的に正しくない。こういうやり方は改めるべきだし、改めてもらいたい。ここで時間はとりませんけれども、そういうことをあらかじめ申し述べておきたいと思うわけであります。その点伊藤長官一言、いまの点、私が言わんとするところはおわかりでしょうか。
  144. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛局長からお答えを申し上げましたとおり、予算は予算として国会の御審議をちょうだいいたし、それと表裏一体をなす法案は別個で御審議いただいて、その両者がともに成立をした場合において予算の執行をするのが従来からのたてまえでございます。
  145. 榊利夫

    ○榊委員 その従来からのたてまえが違っておるということを言っているわけであります。  さて、次に、せっかく宮澤長官においで願っていますので、七月二十三日の国防会議で了承されました五六中業見積もり、五十八年度-六十二年度、これは六十三年以降の後年度負担が二兆一千億から三千億円ありますが、これを除きましても総額が四兆四千億ないし六千億円、こういう非常に巨額のものになっております。P3Cとかあるいはミサイル護衛艦など、いわゆる洋上作戦だとか海上封鎖用と見られる大量の正面装備が組み込まれている、こう見られるわけであります。期間中の防衛費の総額は約十六兆、こう言われておりますが、これは物価上昇によりまして恐らく数兆ふくれるだろう、私はこう思います。  いずれにいたしましても、これによって対GNP比一%という十五年来の枠、この枠突破が確実になっております。防衛庁も先般来、実質成長が四%ならば五十九年度にも一%枠を突破するということを認めておられますが、これは政府として三木内閣以来の方針の変更、つまり政策転換と見られますが、それでよろしいのでございましょうか。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 結論から先に申しますと、昭和五十一年に決定をいたしましたいわゆるGNP一%を超えないという閣議決定は、ただいま変更する必要はないと考えております。
  147. 榊利夫

    ○榊委員 突破させないというこの決定。ところが、実際にいま申し上げましたように、いつの時期かはともかくとしてとにかく突破するだろう、このことはもう認めておられるわけであります。首相自身も認めておられるわけでありますから、これは従来の方針とは違うと見るのが常識だろうと思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたびの五六中業におきましては、いわゆる正面装備については見積もりをいたしておるわけでございますけれども、それ以外の後方経費あるいは人件糧食費等々は詳細な見積もりをいたしたわけではございません。したがいまして、トータルとしてどのぐらいになるかということは必ずしも正確な見積もりを持っておりません。他方で、GNPそのものが流動的でございますことは、榊委員の御承知のとおりでございます。したがいまして、両方の要因からGNPの一%を超えると断定する理由はない。防衛庁長官が国防会議におきまして、必ずしもいまそういうことを前提に考える必要はない、防衛庁としては五十一年の閣議決定と矛盾することのないように最大限の努力をすると言っておられますので、したがいまして先ほどのように申し上げておるわけでございます。
  149. 榊利夫

    ○榊委員 もちろんGNPは流動的です。ところが、防衛費増というのはもう現に出されているわけであります。しかも、分母でありますGNP、これは本五十七年度をとってみましても予想の二百七十七兆円を大幅に割って二百六十兆円台に落ち込むだろう、こう見られているわけであります。そうしますと、いま流動性があるとおっしゃったGNPが来年度、本年度並みでつまり二百六十兆円台でいきましても、今回のシーリングでさえも確実に突破していくわけです。御承知の二兆七千七百六十一億、対前年度比七・三五%増というのが今回のシーリングでありますけれども、結局GNPというのがずっと落ち込んできているわけでありますから、本年度並みで来年いったってそうなる。もちろんこれは可能性の問題でありますけれども、確実に突破という事態になる。しかもそれは、いま私が言った例でいくならば、再来年度ではなくて来年度にも突破の可能性という問題が出てくるわけでありますが、この可能性は否定できないのじゃないでしょうか、いかがでございましょう。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何分にも、分子にも分母にも不確定要因が相当ございますので、政府としてはただいま一%を突破するというふうに断定をする必要はない、五十一年の閣議決定を変えるということは考えておらないわけでございます。
  151. 榊利夫

    ○榊委員 閣議決定をいま変えるつもりはないのだけれども、その分子はもうすでにふえているわけです。このままふえていったとしましても、あるいはこのままの形だったとしましても、その分母の方が落ち込んでいくわけです、落ち込んでいくというのはその増大率が。そうしますと、再来年度どころか来年度さえも確実に一%枠を突破する。これは算術計算で簡単に出てくるわけです。この可能性の問題というのは、閣議決定云々とは違うのです。私は可能性を聞いているのです。この可能性は否定できないのじゃないか。いかがでございましょう。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 可能性と言われますが、蓋然性という意味にそれを解釈いたしますならば、必ずしもそう考える必要はないと思います。
  153. 榊利夫

    ○榊委員 いや、私は可能性で聞いているんで、蓋然性で聞いているのじゃないのです。可能性としては否定できないということなのじゃないでしょうか。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平らな言葉でそういうことがありそうに思うか、ありそうでないと思うかというお尋ねでありますから、ただいまありそうだというふうには考えておりませんと申し上げておるのでございます。
  155. 榊利夫

    ○榊委員 ありそうでない、こう思われ、そう答弁なさっていらっしゃるわけですけれども、しかし事実というものは頑固なもので、今日の経済状況から見ましても、いま述べましたように対GNP一%の枠というものが今回のシーリングのままでまいりましても――いつかということは議論があるでしょう。しかし、私が言いましたようにGNPが本年度でさえこれだけ大幅に割ってきているという前提に立つならば、これまで政府が掲げてきた一%枠を突破するということはもう避けがたいわけです。だからこそ防衛庁も、四%であるならば五十九年度にも一%突破あり得るということも認めざるを得ないわけでありまして、しかし私は、五十九年度どころか、来年度にさえそうなる可能性があるということを強調したいわけであります。そのあたりは官房長官なかなか認められませんけれども、じゃもう一つ、側面からお尋ねいたします。  なるほど鈴木総理大臣といたしましては、国会で何度も鈴木内閣においては防衛費GNP一%以内で抑える、こう答弁されてきているわけであります。約束されているわけであります。その手前これを変えるということはできないだろうと思いますけれども、しかし今回首相みずから防衛費のGNP比一%枠の突破があり得る、こう認めるというわけでありますから、このことについてもう可能性の問題じゃない、あり得る、こう言っておられるわけですから、その前提の上に立ってお尋ねするわけであります。あり得るというのは、これはやはり官房長官、認められるわけでありましよう。
  156. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常にありそうであるか、ありそうでないかということであれば、そういう事態は大いにありそうだというふうにいま考える必要はないと思う、こう申し上げておるわけであります。
  157. 榊利夫

    ○榊委員 大いにかどうかはともかくとして、ありそうだということはお認めになったと思うのですが、ところで首相がそういうふうにお認めになったということは、鈴木内閣においては一%以内に抑える、こういう国会答弁、これは事実じゃなかった、首相の国会での発言というのは言うなれば食言だったということにもなるわけでありますけれども、この点はどういう御認識でしょうか。
  158. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理大臣の申し上げましたのは、まず防衛費の側におきましては、「防衛計画の大綱」をできるだけ早く達成しなければならないという目的を持っておりますけれども、そのときどきの経済、財政事情に対して全く無関係、無縁だというわけのものでもないという事情がございます。それからGNPの側におきましては、これはたびたび申し上げますように、わが国のみならず国際的な要因によりましても変化をいたすものでございますから、ある程度以上の確度を持っては予測し得ない。そういう両方の事情がございますので、したがってこれについてはなかなかはっきりしたことは申しにくい。ただ、努力目標としてGNPの一%を超えない範囲でおさめる、そういう考え方をこの際何も放てきする必要はない、こういうことを申し上げようとしたのだと思います。
  159. 榊利夫

    ○榊委員 それはちょっと違うんですね。突破はあり得る、こうおっしゃっているのですから、これはこれまでの国会答弁あるいは方針と違うということになるわけであります。この点では私は、内閣としての責任は重大で、これからますます問われていくだろうと思うのであります。  長官、十五分という約束でございましたが、もう一つお尋ねしますので、もうちょっとお待ち願いたいと思います。  その前に、防衛庁にもう一つ聞いておきます。  防衛庁としまして、五六中業完成時の防衛力は量的にほぼ大綱に定める防衛力の水準の域に到達している、こういうふうに説明されております。そうしますと、次の五九中業が策定される六十年以前に新しい大綱が練られ、つくられる、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  160. 夏目晴雄

    夏目政府委員 「防衛計画の大綱」の水準をできるだけ早く達成するという目標のもとに、今回五六中業をせっかく作成して国防会議に御報告、了承を得たばかりでございまして、私ども、いまこの五六中業に基づきまして大綱を達成するのが何よりも先決事項であるというふうに考えております。
  161. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、努力をして、いまの言葉をかりますとその大綱の水準に到達する、これは五六中業の完成時にはそこにいっている、こういうわけです。そうしますと、五九中業が策定される六十年以前に新しい大綱を練らざるを得なくなるのじゃないでしょうか、その水準までいっているのですから。そこにとどまっているつもりですか、それならそれでいいわけでありますけれども。でない限り、次の五九中業が策定される六十年以前に新しい大綱をつくっていく、練っていく、こういうことになるのじゃないでしょうか。
  162. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいまも申し上げたとおり、まだ五六中業ができ上がりましても大綱の水準に一部未達成の分野も残っております。こういった分も早急に手当てしなければならないというふうなことを考えておりまして、私ども、いま五六中業、すなわち五十八年度を初年度として昭和六十二年度までに至る五年間において全力投球をすることがまず何よりも一番大事なことであるということを考えておりまして、それ以後の大綱の見直し云々については現在全く考えておりません。
  163. 榊利夫

    ○榊委員 考えていないと言われますけれども、そうならざるを得ない、その点では大綱の見直し必至だということを私は申し述べざるを得ないと思うのであります。その点はなかなかお認めにならないからこれ以上言いませんけれども……。  大蔵省にお尋ねしますけれども、正直に申しまして、現在、国家財政というのは破産寸前にあります。五十六年度が二兆八千八百億円、これは空前の歳入不足です。五十七年度も三兆ないし五兆、五十八年度に至りましては十兆円に上る歳入欠陥が生まれるだろう、そう広く認められております。そう予測されております。しかも、六十年度からは赤字国債の本格的な償還が始まります。こういう状況下において果たして防衛費の連続突出が可能だろうか、あるいは可能だというお考えなのか、この点はどういう判断でしょう。
  164. 小川是

    ○小川説明員 五十八年度のシーリングにつきましては、いま先生のおっしゃたような財政事情のもとで厳しいものがつくられたわけでございます。一方、今後の防衛関係費についての御質問でございますが、五六中業はすでに明らかになっておりますように防衛庁が概算要求等をいたしますときの参考資料であるという性格のものでございます。それは今後におけるシーリングであるとかあるいは予算編成を拘束するという性格のものではございません。毎年のシーリングの設定であるとかあるいは予算編成といいますのは、そのときどきの経済、財政事情であるとかあるいは各種の施策の調和を考えてやっていくわけでございます。したがいまして、重ねて申し上げますが、五六中業があるからといってそのような財政運営が拘束されるというものではないというふうに理解いたしております。
  165. 榊利夫

    ○榊委員 拘束しない、これは当然のことです。したがって削られることもあり得る、こういうことですが、いずれにしましても、いま述べましたような大変厳しい財政状況である。ところで、そういう状況のもとで連続的にいまのままのテンポでふえていくことが財政的に可能だと見られるのかということなんです。それはお答えなかった。
  166. 小川是

    ○小川説明員 財政事情が今後とも引き続き厳しい状況で推移するであろうというふうに私ども考えております。したがいまして、今後の各年度における予算編成におきましては、防衛関係費のみならずほかの経費を含めまして、そのときの財政事情等を勘案して対処していくということでございます。
  167. 榊利夫

    ○榊委員 官房長官、お待たせしていますのでそちらに移ります。  いまの問題と関連してですけれども、政府として世に言われる防衛費の突出を歯どめなしに認めていくという危惧がいろんなところで出ているわけですけれども、歯どめなしの防衛費突出を認めていくというおつもりなのかどうなのか、お尋ねいたします。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国の安全ということはやはり非常に優先度の高い大切なことでございますから、私どもとしては「防衛計画の大綱」をできるだけ早く達成いたしたいと考えております。それはある程度の財政負担になることは事実でございますが、しかし優先度の高い支出であると考えておるわけでございます。もちろん財政、経済と全く無縁に、無関係に何が何でもこれこれの支出をしなければならないというわけにはまいらないと思いますが、財政、経済事情が許す範囲におきまして「防衛計画の大綱」はなるべく早く達成をいたしたい、こう考えております。
  169. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、歯どめは考えていないということでございますか。
  170. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その歯どめは、おのずから毎年毎年の予算編成の中において決定されていくものと思います。
  171. 榊利夫

    ○榊委員 最後にお尋ねいたします。外務大臣代理として一言お尋ねしておきますが、きのう教科書問題で政府が中国政府に公式回答したということが報道されております。  そこで、日中共同声明で、過去日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感している、そして深く反省する旨を明らかにしておる、この認識にいまもいささかの変化もない、こういう趣旨のようでございますが、これは、戦争を通じての重大な損害、つまり侵略戦争の責任を反省しているということだと理解してよろしゅうございますか。
  172. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、先ほど御紹介のありましたように、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについて責任を痛感し深く反省しておる、この文言のとおりでございます。
  173. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、戦争を通じて重大な損害を相手に与えたわけですから、これはやはり戦争が侵略的なものであったということですね。相手からこうやられて損害というのじゃないのだから、戦争によって中国国民に重大な損害を与えたわけですから、その責任を反省しているということだろうと思うのですが、そういうふうに理解するのはまずいのでしょうか。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げました文言は日中共同声明の前文から引用されておりますものでありまして、両国はこの文言で合意をいたしております。
  175. 榊利夫

    ○榊委員 もう引きとめるわけにまいりませんけれども、その責任を感じるのですけれどもやはり侵略戦争、これは歴史的な事実でありますから、この点については率直に認めて反省をする、こういうのが立場でなければならないと思うのであります。  いまアジア諸国からこの問題で非常に抗議、非難、言うなれば四面楚歌的な状況がありますけれども、この点については事の重大性を理解して、過去の侵略戦争については二度とこういうものを繰り返さないという立場をあらゆる点で貫くことが大事だと思うのでありますが、この点について一言だけ御答弁願っておきたいと思います。
  176. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますことは、日中共同声明で両国が合意した文言でございます。それによりまして御理解を願いたいと思います。
  177. 榊利夫

    ○榊委員 その点では日中共同声明の立場を守っていくということだと解しますが、どうもお待たせしました。次に参ります。  次に、いわゆる綱紀の問題で質問いたしますが、陸上自衛隊の昇任試験不正事件が社会問題となっておりますが、現時点で判明した関係者は合計何名でございましょうか、それから、うち逮捕者は何名なのか、それから、この種の事件の再発防止など事後策をどうお考えなのか、この三点についてまずお尋ねいたします。
  178. 上野隆史

    上野政府委員 今回の事件に関します全体の関係者、指揮監督責任等も含めましての関係者は、現在、鋭意調査中の段階でございます。具体的な数字をいま申し上げる段階にはまだ至っておりません。  それから逮捕者でございますが、これはOBの自衛官一名を含めまして六名でございます。  今後のこの種事案の再発防止対策というお尋ねと記憶いたしますが、その件に関しましては、陸上幕僚監部陸上幕僚副長委員長といたします今回の事故に関連いたしましての事故調査委員会を七月十四日に設置いたしまして、その再発防止、それから綱紀、規律の振粛、審査という点を現在鋭意検討中の段階にございます。
  179. 榊利夫

    ○榊委員 具体的にはどういう防止策をお考えですか。
  180. 上野隆史

    上野政府委員 まず、今回の事件の直接的な端緒になりましたのは、試験問題の管理保管がまことにずさんであったということはきわめてはっきりしております。この点を今後どうするかということが一点でございます。  それから、試験制度そのものにつきましても、大変たくさんの応募者の中から合格する者がほんのわずか、二万数千名の応募者の中から合格するのが毎年二、三百名というような、こういういわば過熱した状況の昇任試験制度というものが果たして適当なのかどうか、その過熱の実態はどうか、どうすればそういう過熱と言われる状況を除去できるかといったような試験制度の見直しなども含めまして、検討しておる段階でございます。
  181. 榊利夫

    ○榊委員 ひとつこういう点は厳正に、再びこういうことが起こらないような措置をとってもらいたいと思うのです。  それと関連してですが、伊藤長官、五月六日のいわゆる工業倶楽部でのゆすり、たかり発言で陳謝問題にまで発展いたしましたけれども、その講演の中で、自衛隊は訓練用燃料にも厳しい制約がある、そういうもとで日々努力していると述べたというふうに伝えられております。  ところで、自衛隊の航空機は兵器だと思うのであります。したがって、自衛隊機の使用というのは航空機の使用及びとう乗に関する訓令で厳格に定められていると理解しておりますが、よろしゅうございますか。
  182. 夏目晴雄

    夏目政府委員 たしかそういう訓令によって、いろいろ航空機の使用についての規制というか基準が設けられているというものでございます。
  183. 榊利夫

    ○榊委員 それで、航空機、特にジェット機の場合には、ちょっと飛んでも大変な燃料費がかかるわけであります。そういう点を伊藤長官はおっしゃったのだろうと思うのですが、そのくらい厳しい。  ところで、茨城県の百里基地に置かれている偵察航空隊はどういう目的を持つ部隊でしょうか。それから、所属機の機種、機数、隊員数、これはわかっている限りでお願いいたします。
  184. 夏目晴雄

    夏目政府委員 百里基地にありますところの偵察航空隊は、わが国に侵略、武力侵攻があった場合に、その敵の、相手勢力の空からの偵察を主任務とした偵察航空隊でございまして、装備している機種、機数は、RF4E偵察機十四機、T33という練習機タイプのものが二機、定員は約三百九十名というふうに承知しております。
  185. 榊利夫

    ○榊委員 偵察航空隊というのは、航空総隊司令官の直属部隊であると理解しております。  ここの隊司令の階級は何でございましょう。
  186. 夏目晴雄

    夏目政府委員 隊司令は多分一等空佐だと思います。
  187. 榊利夫

    ○榊委員 航空自衛隊の岐阜基地の岐阜病院の診療科目に歯科はございますか。
  188. 本田正

    ○本田政府委員 岐阜病院の診療科には、歯科はございます。
  189. 榊利夫

    ○榊委員 さて、ここに私は持ってきておりますが、偵察航空隊の隊司令などを含めました汚職、乱脈の問題であります。  まず第一にお聞きしたいのですが、この隊司令のSという方、名前は差し控えておきますが、Sという先ほどお答えになりました一等空佐が、自分の歯の治療のために、自衛隊岐阜病院まで先ほど出てまいりました自衛隊機のT33Aに乗って行っている。一九八〇年十二月八日のことでございます。  百里から岐阜までこのT33Aで飛びますと、燃料代は幾らかかりますか。
  190. 木下博生

    木下政府委員 最近の油の値段で計算いたしまして約九万円でございます。
  191. 榊利夫

    ○榊委員 片道で九万円ですね。往復で十八万円かかると思います。  伊藤長官は、燃料にも厳しい制約がある、こう一方で言われておりますけれども自衛隊幹部が歯の治療のためにこういう高い燃料を使って、飛行機を使って行くということは、許されているのでしょうか。
  192. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 そういうことはないと思いますけれども、許されておりません。
  193. 榊利夫

    ○榊委員 当然私は許されていないと思います。まして、自衛隊機は兵器であります。民間旅客機ではございません。ところが、この幹部がこういう航空機を実際上私的に使う。こういうことは許されていないわけであります。しかも、自衛隊機を使った月日まで示されております。十二月八日。これはひとつ厳重に調べてもらいたいと思います。
  194. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 そういうことはないと信じますけれども調査をいたします。
  195. 榊利夫

    ○榊委員 それから第二番目に、第二のケースですが、このS司令は、埼玉の入間基地で銃剣の大会などがあったとき、入間基地の近くの自宅に泊まってホテルの宿泊料を隊に請求されておる、支払いを受けておられるということでございます。基地内でスポーツ大会なんか開かれた際は、宿泊施設というのは通常は隊舎を利用するというふうに聞いております。この隊舎使用の際あるいはその他公用の宿泊施設を使う際は、旅費法の運用方針第四十六条関係第一項によりまして減額措置をとるということになっていると思いますが、大蔵省、この点は間違いございませんね。減額措置をとりますね。
  196. 西村吉正

    ○西村説明員 旅費法の第四十六条第一項は、特別の事情がある場合には旅費について所要の減額措置を講ずることができる旨定めております。  旅費法運用方針の第四十六条関係第一項では、この趣旨を踏まえまして、正規の旅費を支給しないことができる旅行、たとえば公用の交通機関、宿泊施設等を無料で利用して旅行したため正規の運賃、宿泊料等を必要としない場合などに、旅費の減額調整を行う基準を示しております。
  197. 榊利夫

    ○榊委員 私はいまおっしゃったとおりだと思います。  さて、そういう出張をした、それでそこで泊まった、そういう場合に、ホテル代などの宿泊代を請求しなければいいと思うのですよ。あるいは減額措置をとる。ところが、こういう場合にやはりちゃんと請求している。一等空佐の場合は、そのホテル代なり宿泊代は一回九千九百円というふうに聞いておりますけれども、こういうケースがある。  あるいは三つ目のケースですが、航空機の定期検査、いわゆるIRANですね。偵察航空隊所属の、先ほどお答えになりましたRF4Eファントム、これは二人乗りでありますが、このRF4EファントムのIRANというのは通常どこの工場に出しておりますか。
  198. 木下博生

    木下政府委員 三菱重工の小牧南工場でございます。
  199. 榊利夫

    ○榊委員 間違いございません。名古屋空港の西側にある三菱の航空機組立工場、ここでIRANをやっております。  ところが、ここにIRANに出すRF4E二人乗り、それを取りにいくのに、その際、これまたT33A二機を使って行く。このT33Aに、操縦士の後ろの席にRF4Eのパイロットとナビゲーターがそれぞれ乗って行くわけです、後ろに二人。この二人が今度は帰りにRF4Eファントムを操縦して帰ってくる、こういうことになっておる。日帰りであります。ところが、出張費の方はどうかといいますと、行きは、これは列車を利用したことになっておる。しかも、名古屋で一泊したことにして金も請求されている。推理小説みたいなものです。まさにこれは架空請求です。ちなみに、百里基地と名古屋空港間の列車代というのは、新幹線を含めまして一人一万百十円、二人で二万ちょっとと、こうなります。宿泊料が八千二百円だから、二人でその倍と、こうなります。結局一回のIRAN機の受け取りだけで、二人で四万円余りの架空請求をしているということになるわけであります。  こういうことが行われているということ、御存じでしょうか。あるいは、こういうことが許されるでしょうか。
  200. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  まず、最初にお話がございました自宅に泊まったケースの話でございますが、宿泊料といいますのは、旅行中の夜数に応じて支給されることになっておるわけでございます。したがいまして、たとえば列車の中に宿泊した場合とか、あるいは自宅とか友人宅に宿泊したような場合でも支給できるということになっているわけでございます。  御指摘のありましたように、防衛庁の旅費規則の中で、第十九条に「日当、宿泊料の調整」という規定がございまして、「職員が庁舎の一部等公用の施設に無料で宿泊した場合には、」「宿泊料の額を千六百円とする。」といったような調整規定があることはもちろん事実でございますが、御指摘のケースはこの公用の施設には宿泊していないケースでございまして、したがいまして、一般の宿泊料というものが支給されているということだと思います。  それから、二番目に御指摘になりましたIRANの受領の関係でございますが、具体的にどういうケースを御指摘になっておるのか、私もつまびらかに承知はいたしませんが、自衛隊の航空機を利用して現地に飛んだという場合には、もちろん運賃は支給しない調整規定がございますし、そういったような規定を適用いたしまして、私どもが従来から部内で毎年監査をしております際に適正に執行されているかどうかということは十分調査をしているわけでございまして、その結果を報告を受けたところによりましても、個々のケースに応じてすべて適正に処理をされておるというふうに報告を受けておる次第でございます。
  201. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、ちょっとお尋ねしますが、この件の場合は、自宅に泊まったけれどもホテルの宿泊料を隊に請求、支払いを受けてもいいということですか、ちょっとお尋ねします。
  202. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、旅費法におきまして、宿泊料というものはその夜数に応じて支払うということが法律上も決まっております。そういうことでございますから、旅館等の宿泊施設に泊まった場合だけではなくて、自宅とかあるいは友人宅等に泊まった場合でも、あるいは列車の中で夜を過ごすというような場合でも、この宿泊料というのは支給できるという仕組みになっておるわけでございます。
  203. 榊利夫

    ○榊委員 大蔵省もわざわざ七月十九日に、赤字財政対策と称して全省庁に旅費、物件費の一〇%節約令、これも出しております。  そういう場合に、いま言ったような場合にこの宿泊料を隊に請求、支払いを受ける、こういうことは控えるべきだ、あたりまえのことであります。そういうことをあいまいにしたら重大な問題になっていきますよ。  さらに、IRANの問題ですが、これも先ほど申しましたように、きちっとした日までわかってこういうケースがあるということを言っているわけです。それで、こういったことは許されないんだ、すかっとした態度をとるべきだと思うのですよ。いかがですか。
  204. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、そういった個々のケースに応じまして、飛行機を利用して旅行をしたケースにつきましてはこれは運賃は支給しないということで実行しておるわけでございまして、その点は、この百里の場合も部内の監査等によりまして細かくチェックをしておるわけでございまして、私ども報告を受けているところによりますと、いずれも適正に処理をされておるというふうに聞いておるわけでございます。
  205. 榊利夫

    ○榊委員 適正に処理されていると聞いているけれども、そうでない事実があるということを私言っているのです。調査願いたい。  それから四番目のケースですが、出張などに自衛隊機を使っているというケースがある。  それで、具体的に偵察航空隊のMという一尉の方ですが、約一週間福岡の春日基地に出張した。そういうときもわざわざT33Aで迎えに行くというんですね。自家用車みたいに使っているわけです。ところが、この場合も請求をやる。列車で帰ってきたことにして金を受け取るわけであります。ちなみに、T33Aが百里-春日間を往復飛んだときの燃料費というのは三十六万円であります、往復飛んで。また、春日-百里間の列車代一万九千三百十円、結局一回で、春日から帰ってくるのに三万七千九百三十円使ったことになるわけであります。  こういうふうな出張のやり方、まさか励行されているとは思いませんけれども、いかがでしょう。
  206. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 航空機を利用いたしますのは、業務の必要性ということに基づきまして個々に判定をされるわけでございますが、そういったことで公務の必要上飛行機を利用して旅行した場合には、当該旅行につきましては運賃を支給をしないということが決まっているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、私どもは内部監査等の機会に個々に綿密にそこは調べておるわけでございまして、そういったような不正に受給をしているという事実はないというふうに考えております。
  207. 榊利夫

    ○榊委員 そういう事実がないと言われますけれども、これは調べられたんですか。調べられた上で、ないとおっしゃっているのですか。
  208. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは毎年一回内部監査をやるというのが従来からの扱いでございまして、そういった機会には、こういった旅費の執行につきましても気を配りまして、できる限りの調査をして適正な支給がされているかどうかということはチェックをいたしておるわけでございます。
  209. 榊利夫

    ○榊委員 毎年の監査が行われているということは存じ上げております。ところが、いま申し上げましたようないろいろなケースの不正がある。福岡へ行く。T33Aで迎えに行くということはあり得るでしょう、あるいは何かに便乗するということはあり得るでしょう。しかし、そういう場合にはやはり交通費を請求しない、これが当然のものでなくてはいけないわけであります。ところが、それがやられているか。当然のことがやられていない。  いまこういう四つのケースを述べましたけれども、いま四つ述べたケースで具体的に挙がっている金というのは六十一万円くらいです。これ自衛隊の中の金ですけれども、問題はこういうことが繰り返されている。これはばかにできないわけであります。しかも自衛隊機、これまで自衛隊機の使用については、政治家が不当に利用したとかなんとかかんとか、ずいぶん国会で問題になったことがありますよ。それくらい世論もやはり注目する問題です。ところが、自衛隊の中で政府の人たちが、そういうふうにしてもう勝手に自衛隊機を私的に使う、燃料をむだ遣いする、しかも公金の架空請求をやる、しかもそれを自分に入れておるわけでありますから、結局横領ということになるわけであります。そういうことが自衛隊内で常態化していると見られる節が多いわけであります。いろいろなことが言われる。この際、厳重に全体を調査してほしいと思うのです。そして、襟を正す、間違ったところは直していくということをやってもらいたい、こう思うのであります。その点は約束していただけますか。長官、いかがでしょう。
  210. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のようなことがあってはならないということは全く同感でございまして、従来からそういった点に特に配慮をいたしまして、内部監査等を通じまして旅費の適正な執行に努めてきたわけでございますが、今後とも御指摘のようなことが万一にも起こらないように十分な配慮をいたしてまいりたいと思う次第でございます。
  211. 榊利夫

    ○榊委員 会計検査院、来ていただいていると思いますが、私、いま大変具体的に問題の提起をいたしました。会計検査院としては、この問題をこれまで承知されていたでしょうか。
  212. 別所正章

    ○別所会計検査院説明員 お話の時点まで承知いたしておりませんでした。
  213. 榊利夫

    ○榊委員 この機会にひとつ厳正な調査をやっていただきたいと思います。いかがでしょう。
  214. 別所正章

    ○別所会計検査院説明員 一般的に旅費につきましては従来から留意して十分検査してまいりましたが、御指摘の事態につきましては、今後十分調べていきたいと考えております。
  215. 榊利夫

    ○榊委員 法務省、来ていただいていますか。  私、いま一連の問題を出しましたけれども、結局は公金が請求されている。そして言うなれば公金が費消され、しかも詐取されている。俗っぽい――俗っぽいといいますか、世間の言葉で言えば横領ということになっておるわけであります。というならば、これは明らかに刑事事件ということにもなるわけであります。法務省としてもこの問題をぜひ厳正に調査してもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  216. 飛田清弘

    ○飛田説明員 ただいまいろいろなお話がございまして、また政府側の方からもいろいろな答弁が行われて、そのことを聞いていたわけでございますが、ただいまいろいろな御論議がありました限りにおきましては事実関係が必ずしも明らかになっていないように思いまして、それが犯罪になるのかならないのか、まだ明らかになっていないというふうに考えております。そういうふうな段階において検察権を行使するかどうかということにつきましては、ここではそのことについてお答えすることは差し控えさせていただくのが適当かと思っております。
  217. 榊利夫

    ○榊委員 すぐ調査しますということは法務省の立場としては言えないでしょう。だけれども、いま申し上げたところから見ましてもこれは調査をしなければならないだろう。これは当然のことでありますし、いついつ調査するということは言えないにしましても、調査をしないということも言えないと思うのです。この問題についてはやはりしかるべき目を向けて、そして公正な問題解決に努力する、こういう態度で臨んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 飛田清弘

    ○飛田説明員 犯罪があるかどうかわからない段階で検察当局が捜査をするとかしないとかいうことは言えないわけでございまして、いまこの段階調査をするとかしないとかいうことが言えないことについては先ほど申し上げたとおりでございます。  先ほどからの御論議の中で、当局においてもそれなりの事実関係を御調査なさるとか、あるいは会計検査院御当局においても将来関心を持ってその点も十分見るというようなお答えがあったように伺っておりますけれども、そういうふうなことを通じて犯罪の嫌疑が明らかになった場合に、さてどうするかということになる問題だろうと思っております。
  219. 榊利夫

    ○榊委員 そういうふうにしますと、なおさらのこと、自衛隊でのみずからの手による調査、それから事実を明らかにしてこういう事態が起こらないように措置をとっていくということの責任がますます重くなってくると思うのであります。その点について、最後に長官、いまずっとお聞きになっていらしたと思いますが、長官としてのこういう問題への厳正な態度、ぜひ責任ある御答弁を願いたいと思うのです。
  220. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛というのは、国民の広範な御理解なり御支持なり御協力がなければ防衛の目的は達成できません。したがいまして、いやしくも国民からお預かりをしております税金によって防衛をやっておるわけでございまして、納税者の信頼に背くような行為がないように、予算の執行またはそれに対する監査、いずれも厳しく厳正に対処をして国民の御信頼にこたえたい、かように考えております。
  221. 榊利夫

    ○榊委員 次の問題に移っていきますが、シーレーンの問題ですが、本法案でうたわれているP3Cあるいは護衛艦などの要員増ですね。これはいわゆるシーレーン防衛論と非常に深いかかわりがあると思います。  まず海上保安庁にお尋ねいたしますが、戦後三十七年間、日本の石油タンカーなどが日本の周辺海域でどこかの国の艦船に攻撃されたとか航行を妨害されたとか、こうした事例は幾つぐらいございますか。
  222. 森山武

    ○森説明員 海上保安庁では、日本の領海並びにその周辺海域におきましては、外国の艦船からの日本船舶に対する襲撃等の事件あるいはまた航行妨害事件、こういったものは承知いたしておりません。
  223. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、ほとんどないのです。例外的に言えば、昨年四国沖で日本のタンカーがアメリカの飛行機の標的扱いにされたとか、あるいは日昇丸がアメリカの原子力潜水艦に当て逃げ沈没させられたとか、こういう事件はありますけれども、外国から攻撃されたり航行妨害されたりという事例は非常に少ない、ほとんどない。いま答弁があったとおりであります。  ところで、現在、海上安全の確保というのは海上保安庁法で定めております。その他、国内法及び国際法の非軍事的な体系のもとで船舶交通の安全制度があれこれ設けられている。たとえば世界航行警報システムとか船位通報制度とか、こういったことも近く実施の予定と聞きます。海上交通の安全にとってこういう制度が現実にはかなりの有効性を示していると思うのですが、この点はどういう御認識をなさっておられますか。
  224. 森山武

    ○森説明員 先生御指摘の世界航行警報の関係でございますが、これは世界的に連携を図りながら、それぞれ世界の海域を分割して、それぞれの区域ごとに調整機関国をつくりまして、それでその区域内における航行安全に係るいろいろな事象を周知するというやり方をしておるわけでございますが、当然のことながら、船舶、海事関係者にとっては航行の安全がそれによって保たれるという大きなメリットがあろうかと思います。  なお、第二に御指摘の船位通報制度でございますが、これは私どもとしてはまだ実施いたしておりません。一応現在計画しております内容といたしましては、日本の船位通報海域内を走っております船舶の位置等、これは針路、速力、そういった情報を常時把握しようとすることでございますが、これを実施することによりますメリットと申しますと、そのような海域で発生した海難に対します捜索救難作業が迅速に、しかも容易に実施できる、同時に、医療援助等を要するような海難の場合には速やかにそのような手配ができる、もって船舶の航行安全あるいは捜索救難といった観点からは大きな効果が期待できるのではないか、かように考えております。
  225. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、現在そういうさまざまな海上交通の安全についての仕組みがあって、戦後三十七年間、何とかが撃沈されたとか妨害された例はないということであります。  わが国では貨物船、客船だけで約一万五千隻ある。公海上での日本船舶の安全航海の保障なんといったって、公海自由の原則があります。これは公海に関する条約その他で定められております。さらに、平和な国際環境、そのもとで適切な安全対策がとられればいいのです。ところが、いわゆるシーレーン防衛論。近年、米ソの軍事ブロックの間で非常に軍拡競争が激化しておる。特に一方のアメリカ側から、日米安保条約を盾にしてわが国に対して千海里シーレーン防衛、こういったことが声高に要求されてきていることは周知の事実であります。  お尋ねいたしますが、今度のハワイ協議でもシーレーン防衛問題がテーマになるのでしょうか。
  226. 夏目晴雄

    夏目政府委員 今年の八月末から行われる日米ハワイ協議においてどういうことが議題になるかということにつきましては、現在まだ固まったものもございませんので、具体的に何が議題になるかということは、いま申し上げるような材料の持ち合わせはございません。
  227. 榊利夫

    ○榊委員 新聞等々ではシーレーン防衛問題についていろいろコメントをされておりますけれども、シーレーン防衛問題、議題にならないともまた言えないでしょう。
  228. 夏目晴雄

    夏目政府委員 もともとこの協議は、日米双方が相互の安全保障にとって関心のある事項について隔意なき意見の交換をするという場でございますので、いろいろな議題が出ると思います。そういった中でアメリカ側からシーレーン防衛の話が出るということも、あるいはあり得るかもしれません。
  229. 榊利夫

    ○榊委員 いろいろな問題が議論されるだろう、その中の一つにシーレーン防衛問題があるだろう、こういうことだと思います。  ところで、アメリカ側からは、防衛力増強の問題で、そのためにはまだ足りない、まだ足りないと要求がしつこくされておりますが、このシーレーン防衛の問題に関して言いますと、その当のアメリカが不可能だと認めているのですね。それから、アメリカ自身、この点についてまだ具体的にやっていないというふうに言っているわけでありますが、防衛庁もそういう事実を承知で協議に臨まれるのでしょうか。
  230. 夏目晴雄

    夏目政府委員 このシーレーン防衛、海上交通の安全確保ということについての議論がいろいろあることは承知しておりますが、アメリカの海軍の主たる任務として、海上交通の安全確保ということが大きな任務の一つとして挙げられていることもまた事実でございます。そういった意味合いから、アメリカも、このシーレーン防衛、海上交通の安全確保に非常に関心があるというふうに私どもは思っております。  また、それができるか、できないかについては、およそシーレーン防衛に限らず、何事にもよらず防衛問題については、一〇〇%できるとかできないとかいうことでなくて、そういった機能を持つかどうかについての意義もあろうかと思いますので、一概にできるできないということを議論するのは適当ではないのではないかというふうに考えております。
  231. 榊利夫

    ○榊委員 一概にということじゃなくて、私はしっかとしたアメリカでの証言をもとにして言っているわけであります。  ニクソン政権の国家安全保障会議のスタッフを務めて、現在、国防研究センターの所長をやっているモートン・ハルペリンという人がおります。この人も、昨年、シーレーンなど防護し切れるものではない。それから、最近のアメリカの下院の外交委員会でも、ゲイラー、日本でわりに知られておりますけれども、前に太平洋軍司令官をやった人ですが、シーレーン防衛について米国もまだ具体的にやっていない、こう言っておる。やっていない。それから、米国防省自身が、戦争の際、太平洋の米海軍部隊はアメリカ西岸を防衛し、アラスカ、ハワイまでの海上交通路を維持する、こう言うのです。日本で言うならば、東京湾から太平洋を通って別府までの海上交通、いわば国内交通路です。これを維持する。ハワイ以西の海上交通路は選択的に維持する能力を持つだろう。選択的と、こう言っている。これは八〇年度の国防計画審議の際の答弁であります。責任ある国会答弁です。しかも、当の米第七艦隊自身も空母中心の戦略打撃部隊であって、特定のシーレーンを守る体制をとっていない、こういう事実があるわけでありますね。もちろん、こういう事実を踏まえてやはり日本の防衛庁としてはこの問題を考えてもらわないと、きわめて一方的な要求をそのまま根拠なしに採用する、こういうことにもなるわけであります。アメリカのこういう態度については、どういう認識をお持ちでございますか。
  232. 夏目晴雄

    夏目政府委員 アメリカが海上交通の安全確保についてどういうふうな考え方を持っているかということについて、いまいろいろ御指摘のような御意見が開陳されたわけですが、私どもはアメリカがどうこう言うということでなくて、わが国に対する武力侵攻があった場合に、いまいろいろな対応が考えられるわけですが、その一つの対応として、四面環海のわが国としては、物資その他海外に依存している分野が非常に大きいというふうなことも含めて考えますと、海上交通の安全を確保することは非常に重大な問題ではないか。したがって、周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海里程度のものは防衛できるようなものを持ちたいということで、一つの整備目標として私ども努力しているということでございまして、アメリカの一方的な要請であるとかそういったものを受けて私どもが海上防衛力の充実をやっているわけではないということを申し上げておきます。
  233. 榊利夫

    ○榊委員 アメリカがどうこうじゃないとおっしゃいますけれども、大体太平洋でのシーレーン防衛そのものがナンセンス、虚構、できないこと、しかもアメリカ側がそれについて、言葉を返すようですが、自分の太平洋戦力を日本に補完させるということを公然と言っているわけですね。そう言っているわけです。ワインバーガー国防長官は三月末に日本記者クラブでこう言っている。日本が北西太平洋における海と空の防衛を提供し得る能力を持つことは同地域でのアメリカの戦略的能力及び通常戦力を補足することになる、補完するのだ、こう言っているのですよ。私はそのことを申し上げているのです。日本の立場からすれば、アメリカの戦略にせよ、ソ連の戦略にせよ、われわれにとっては他国のことであります。どちらにも巻き込まれない、いずれかの軍事同盟の片棒を担ぐということはやっぱり真の国益に合わないという認識を持っているのであります。ですから、いまアメリカがどうこうじゃないとおっしゃいますけれども、現にアメリカがこういう態度で臨んでいるということについてはどうでしょう。
  234. 夏目晴雄

    夏目政府委員 アメリカが、有事に日米共同で対処しようという関係にございますから、そういう意味合いから日本の防衛努力について関心を持つことはこれまた当然のことであろうと思います。しかし私どもは、あくまでもわが国の自主的な判断に基づいて、わが国を防衛するために必要な限度においてわが国の領土、領海あるいは周辺の防衛考えて整備をしているということでございまして、アメリカ側の意向がどうであるかということとは直接関係はございません。
  235. 榊利夫

    ○榊委員 実は、鈴木総理大臣もこのシーレーン問題ではアメリカを補完するということを認めているのではないですか。有名な、例の一年前の日米首脳会談の際のナショナルプレスクラブでの演説、あの中でもはっきりと鈴木さんは、米第七艦隊の留守を守るんだ、こう言っている。つまりアメリカ補完であります。周辺数百海里、航路帯では一千海里の海域を分担する、こういう点ではまさに補完の役割りを自認しておられる。この総理発言についてはお認めになりませんか。
  236. 夏目晴雄

    夏目政府委員 鈴木総理の発言については承知しておりますが、要は、わが国が自分の国を守るためにそういった海上防衛力を充実することが結果的にアメリカの第七艦隊もしくはアメリカの海軍の能力に寄与する分野が出てくることは、これは否めない事実であろうというふうに思います。
  237. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、いまいみじくも、自分の国を守る、同時にそれが結果的にアメリカのそれを守る、そういうことになる、こうおっしゃいましたけれども、結局、結果的にであろうとあるいは意識的にであろうと、客観的にアメリカの太平洋における留守を守るのだあるいはそれを補完するのだという総理の言明というのは、やはり消せないわけですね。実際に、アメリカの第七艦隊というのはインド洋、ペルシャ湾海域の安全に当たっている、そういう場合がある、留守になる、そのあとを日本の庭先として守っていくんだ、こういうことであります。  そこで質問いたしますけれども、結局この考え方というのは、特定の海域、これをアメリカと分担して守っていく、言うなれば、この留守になるといういわゆる海域、これは線じゃなくて面、海域、これを意味するわけですね、それを日本が平時から埋めていく、こういう考え方だと思うのでありますが、それはそういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  238. 夏目晴雄

    夏目政府委員 第七艦隊が日本の周辺にあると否とにかかわらず、米側と海域を分担して、日本がこの海域は自分たちがやる、したがってその中における船舶は日本の船のみならず関係各国の船でもみんな守るのだというような意味での海域分担ということは、一切考えておりません。
  239. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃ考えられているのは何ですか。いわゆる機能分担だとか役割り分担だとか、その中でもうちょっと。
  240. 夏目晴雄

    夏目政府委員 わが国は、あくまでもわが国の防衛のために必要な限度において、周辺数百海里、航路帯を設ける場合には千海里というものを目標として防衛力を整備をしている、そのことが先ほども申し上げたように結果的に米海軍に寄与する分野があるいはあるかもしれない、そういうことでございまして、決して海域を分けて日本側の作戦分担海域、アメリカ側の分担海域というふうなことを決めているわけではございません。
  241. 榊利夫

    ○榊委員 これはもうしばしばいままで論議されてきたところですからあえて繰り返しませんけれども、結果的にという限定つきでありますけれどもアメリカのそれに寄与することがある、私はこれは非常に重要な意味を持った答弁だと思っております。  ところで、外務省の栗山条約局長に来ていただいておるのでお尋ねいたしますけれども、あなたは四月二十二日の参議院の外務委員会で、一定の公海の範囲を自衛権の対象として守るということは、これは国際法的にも存在しない概念だというふうに御答弁なすっておられますけれども、これは公海上を自衛の範囲と設定している国はないという意味だと私解釈するのですが、それでよろしゅうございますか。
  242. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先生の御引用になりました私の答弁は、公海上の一定の水域をあたかも自国の領土のように、一般的な表現で言えば、たとえば囲い込みまして、そこに入ってくるものは一切実力をもって排除する、そういうものを自衛権と呼んで国際法上正当化するという考え方はないということを申し上げたものでございます。
  243. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、国際法の現状から見れば、一定の公海の範囲、地理的な範囲、それを、ここはどこどこの国の自衛の範囲だ、アメリカの自衛の範囲だ、日本の自衛の範囲だ、中国の自衛の範囲だ、こういうふうに設定しているところはない。実際問題としてそうじゃないでしょうかね。どうでございますか。
  244. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いわゆる軍事作戦上の概念としての海域分担とか水域分担とかいうような概念は、軍事作戦上のものとしては存在し得るかと思います。これは私、専門家でありませんので承知いたしませんが、たとえばNATOにおきまして、NATOの一部の国は有事の際に一定の水域の作戦を分担する、他の国は他の水域を分担する、そういうような作戦上の海域の分担ということは、これは軍事作戦の一つの態様としてあり得るものかと思います。私が申し上げましたのは、一定の海域をあたかも自国の領土であるかのごとくに観念をして、そこに入ってくるものは一切、たとえば武力攻撃であるというふうにみなして、これを実力をもって排除するというような国際法上の権利は存在しない、そういうことを申し上げた次第でございます。
  245. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、一定の範囲をそういう自衛の範囲として設定をして云々というそういう権利というものは国際法上はないということでございますね。  ところが、ここでの問題は、昨年来いろいろ議論されてきたのですけれども、いわゆる自衛の範囲をどう見るかとか、あるいはこれは能力の問題であってとか等々答弁がありますけれども、少なくとも私はこれまで一年間のこの論議を振り返ってみまして、一千海里の航路帯と言われる特定の海域、それを日本の自衛の範囲として設定をする、こういう見解というものは国際法上の概念としてはあり得ない、認められない、つまり国際法的に認められない主張だということになるわけであります、それを国際的に主張するとするならば。このことは、この一年間の議論を振り返りながら、この機会にやはりはっきりさせておく必要がある。いわゆる一千海里航路帯の防衛云々という議論が広くなされ、また要求もなされ、そしてハワイ協議でもまたその問題が論議をされるだろうというこの時点において、私はそのことをとりわけ強調したいわけであります。  その点で最後に一言質問して、同僚にバトンを引き継ぎたいと思いますけれども、この意味合いでは、鈴木首相の去年の発言がずいぶんいろいろな誤解を含めまして議論があった。私たちは誤解とは思いませんけれども、あったというふうに皆さん方も認められると思います。この機会に、少なくとも地理的な自衛の範囲云々ということについては国際法上はそういうことはあり得ないんだということを私は確認したいわけでございますけれども、私のこういう理解は国際法上間違ってはいないでしょうね。そのことだけをお尋ねしておきたい。
  246. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  私の答弁が誤解を招きますといけませんのでちょっと補足させていただきますが、私が申し上げたことは、どんな国であっても公海上の一定の水域をあたかも自分の領土のように囲い込んで、そこに一切他国が入ってくることはいかぬ、それは実力で排除するのだ、そういうような権利は国際法上どんな国も有しないということを申し上げたわけでありまして、他方、公海上にあります船舶の安全というものは、どこの国でもその船舶の旗国というものが責任を有しておるわけでございまして、そういう公海上の船舶というものに組織的、計画的な武力攻撃が行われた場合に自衛権を行使してその船舶の安全を確保するということは、これは国際法上、先生御承知のように全く適法な行為でございまして、そのような意味での自衛権の行使というものを公海上一定の水域において行うということは、これはもう全く適法な行為でございますので、その点をちょっと明確に区別さしていただきたいと存じます。
  247. 榊利夫

    ○榊委員 私は、いまの答弁を注意深く聞きながら改めて確信したのでありますけれども、領土、領海、領空外に、あるいは領海という、海上という点を限定して言いますけれども、領海外の公海上に特定の海域を自衛の範囲として設定するということは、国際法上はそういうことは権利としてないんだ、このことはいま非常に明らかになったと思うのです。いまの答弁を聞きながらでも私はそうだという確信を深めたわけでありますけれども、このことを再確認して、私は質問を終わらせていただきたいと思います。
  248. 石井一

    石井委員長 次に、中路雅弘君。
  249. 中路雅弘

    中路委員 関連で、若干の時間御質問したいと思います。  最初に、二十三日に国防会議に付議されました五六中業ですが、これについては、いただきましたのが簡単な報告書なんです。前の五三中業の際には詳細な説明もつけた文書をいただきました。最初に、改めてまたこれを論議する際の必要なものですから、五六中業について詳しい説明の文書もあわせて提出していただきたいということをお願いしておきたいと思います。いかがですか。
  250. 夏目晴雄

    夏目政府委員 確かに五三中業のときにはそういった説明資料を提出したことがございますが、何せこの五六中業はできて日の目を見てまだ数日しか出てないというふうな状況でございますので、現在鋭意その説明資料の作成をしておる段階でございます。その段階でまた、提出するなりいろいろ御相談さしていただきたいと思っております。
  251. 中路雅弘

    中路委員 詳しい説明の資料を作成次第ひとつ要請にこたえていきたいというお話ですから、ぜひ五六中業に関するさらに詳細な説明文書をいただきたいということを重ねてお願いしておきたいと思います。  このことについては改めて別な機会に御質問しますが、一点だけ、先ほどの宮澤官房長官の答弁と関連して防衛庁長官にお聞きしておきたいのです。  長官は、政府の方針として一%は超えない、この閣議決定を変更する必要はいまないという答弁だったと思いますが、もちろん、このGNP一%以内ならばいい、いまの戦力の保持を禁じた憲法のたてまえから言えばこういう性質のものではないことは明らかですけれども、GNP一%以内ということは際限のない膨張の歯どめとして政府みずから課した縛りでありますから、この問題は大変重要な問題だと思うのです。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 今度の五六中業は「防衛計画の大綱」の水準をほぼ達成するということを一つの目標にされています。先ほどもお話しのように一%の分母、分子、これからの全体の見積もりもまだ正確な見積もりではないし、GNPが流動的でありますから、しかもこれが一%を今度の計画では突破するということはほぼ確実なわけですが、長官に一問お聞きしますが、その際に、あくまで一%以内を守っていく、従来の方針を変えないということですから、突破するという場合には「防衛計画の大綱」の方を見直しをされますか、それとも「防衛計画の大綱」を優先さして、一%の問題について従来の政府の方針を事実上転換されるのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  252. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 現在のところ、五六中業の実施に際して対GNPの閣議決定を変更する必要はないと判断をしておりますし、またわれわれは、この五六中業を一日も早く達成するようにすることが防衛政策での先決課題であるというふうに考えておりますので、将来どうということについてはまだいま申し上げられる段階ではございません。
  253. 中路雅弘

    中路委員 私がお聞きしているのは、まだ今後の経済成長の見通しということもありますからその際に一%以内ということは突破があり得るということを総理も言っておられるわけですが、その際には、一%以内ということをあくまで守っていくということになれば当然計画の方の見直しということが必要になるわけですね。それの方向を、従来の方向をとられるのか、それとも、「防衛計画の大綱」の水準をあくまでこの五六中業で達成ということを優先するとすればこの一%のいままでの縛りについて変更せざるを得ないという問題ですが、どちらの道をその際はとられるのかということをお聞きしておるのです。
  254. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 五六中業の期間中の防衛関係経費とGNPとの関係をいま見通すことは困難でもございますし、またわれわれの考え方は、防衛力の整備と閣議決定とを矛盾のないようにするということでこの五六中業をつくり上げたわけでございますから、まずそれを達成するということで専念をすることがわれわれの先決課題でございまして、その後どうなるかということにつきましてはまだ申し上げる段階ではないということでございます。
  255. 中路雅弘

    中路委員 後でもう一度、時間があればこの問題をお聞きしたいと思いますが、この報告の中でもう一問。  計画中に正面装備でP3CやF15の新しく配備が出ていますが、その中で、期間中の減耗見込みというのが出ていますね。たとえばP3Cで言いますと三機出ています。だから五六中業の完成時には合計して七十二機になっています。単純に数字で計算すれば七十五機になるわけですが、減耗見込みというのが三機ありますから七十二機になっている。F15で言えば十三機減耗見込みというのが出ていますから、完成時に百三十八機ということになっていますが、この減耗見込みというのはどういうことを言っているのですか。
  256. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私ども、航空機の使用、運航については十分注意してやることは論をまたないわけでございますけれども、何せ飛行機でございますので、万一における事故損耗ということもあるわけでございます。したがって、こういった中期計画をつくる場合に、当然のことながら、その減耗分というものもある程度見越していろいろなことを考えなければならないということで、端的に言えば事故損耗が見込まれる。それで、これは諸外国の同機種の例というようなものを参考にして一応試算してみているということでございます。
  257. 中路雅弘

    中路委員 たとえばF4ファントムの場合に、改修して爆撃装置の問題でこの国会でも前半に問題になりましたね。そうしたたとえば転用、改修ということも、こうした減耗見込みの中に入っているのですか、それは別なんですか。
  258. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いまの改修の分については、減耗見込みの中には計算しておりません。
  259. 中路雅弘

    中路委員 それでは、このP3Cの配備計画と関連して現有のP2J、これはこの五六中業と関連して今後どういう扱いになっていきますか。全部減耗じゃないでしょう。
  260. 夏目晴雄

    夏目政府委員 P2Jは、多分昭和六十年代の後半には全部退役というか用途廃止になるものというふうに記憶しております。
  261. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったのは少し違うのじゃないですか。すでにP2Jは五十六年度末で三機、五十七年度の予算で一機、合計四機は機体を改修するという改良計画が進められているわけですが、いまのお話とは違うのじゃないですか。
  262. 夏目晴雄

    夏目政府委員 P2Jは現在七十五機ございますが、これが昭和六十七年にはゼロになる、こういう計算でございます。
  263. 中路雅弘

    中路委員 そのゼロになっていく中で、いわゆる減耗じゃなくて、いま私がお話ししましたようにすでに四機は新しく改修計画で改良された、目的の違った性格の航空機としてすでに運用が開始されているわけですが、その点は御答弁と違うのじゃないですかということです。
  264. 夏目晴雄

    夏目政府委員 いま先生の御指摘の件は、いわゆるUP2Jということで現在の対潜哨戒機を改良したものだと思いますが、飛行機の寿命としてはそのことによって特段延びるわけではございませんので、これも大体同時期には用途廃止になるものというふうに考えております。
  265. 中路雅弘

    中路委員 いまおっしゃったUP2Jですね。いまは四機ですが、今度五十七年度予算では、業務計画案を見ますと、すでに岩国の五一航空隊に編成されるわけですが、搭載の主要な機器、これはどういうものがありますか。
  266. 木下博生

    木下政府委員 UP2Jの主要な搭載装置でございますけれども、四機についていま搭載中あるいは搭載してしまったものもございますが、一つは標的曳航装置ということでございまして、訓練を支援する目的で現在改修を行っておるわけでございますが、射撃訓練のときに標的となりますスリーブ型の標的を引っ張る装置、それを一つつけるということを考えております。  それから二番目には、電子戦訓練装置ということでございまして、その一つはミサイル・シーカー・シミュレーターということで、ミサイルが艦艇を攻撃します場合の事態を想定いたしまして、そのミサイル防御訓練を支援するために、ミサイルの前に艦艇を攻撃するレーダーを出したりなんかする装置がございますが、それを飛行機の前にくっつけて、それで訓練をするというための装置、それから訓練用の電波妨害装置ということでございまして、艦艇の電波妨害回避訓練を支援する装置でございます。  それから三番目に、一部の機体に考えておりますけれども、電子戦情報収集装置というのをつけまして、艦艇の電子戦能力を評価点検するという目的で、そういう装置をつけるということを考えております。
  267. 中路雅弘

    中路委員 八二年のリムパックにP2J対潜哨戒機八機が参加しておりますが、そのうち五一航空隊から一機参加しているわけですね。これはいまおっしゃった航空機のうちどれですか。わかりますか。
  268. 夏目晴雄

    夏目政府委員 ただいまのUP2Jがリムパックに参加したという事実はございません。
  269. 中路雅弘

    中路委員 先ほど搭載機器についてお聞きしまして、その中で電波妨害装置というのが出ています。簡単に言いますと電波妨害機と言ってもいいわけですが、米軍の場合に、いま安保条約、地位協定によって電波法の特例に関する法律がありますが、訓練にしても、電波妨害をする電波妨害機というのは、自衛隊法上でも認められているわけですか。
  270. 木下博生

    木下政府委員 自衛隊法の百十二条というのがございまして、電波法の適用除外という規定がございます。その第一項では、電波法第百四条の規定にかかわらず、同法の規定のうち、無線局の免許及び検査並びに無線従事者に関するものは、自衛隊がそのレーダー等々を使用する場合には適用しないということになっておりまして、第二項では、長官は、自衛隊が無線設備を使用する場合には、その使用する周波数について郵政大臣の承認を受けなければならないということになっておりますので、こういう装置につきましては郵政省と手続をとりまして周波数の承認をとっているわけでございます。
  271. 中路雅弘

    中路委員 自衛隊法の百十二条というのはレーダーと移動無線機について適用除外ということを言っているわけですが、航空機を改良して電波妨害機をつくるということは、この百十二条の適用除外の中に含まれないと私は思うのです。  郵政省にお聞きしますけれども、電波妨害ですね、いわゆる混信の排除ということを電波法で規定しているわけですが、これは電波法の中でこうした電波妨害の混信、それについては明確に規定をされていますが、郵政省の方からお答えを願いたいと思います。
  272. 加藤芳隆

    ○加藤説明員 お答えいたします。  電波法の規定の中には、他の無線局に対する混信その他の妨害を防止する規定といたしまして第五十六条がございまして、無線局を運用する場合は、他の無線局などの「運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければならない。」というように規定してございます。
  273. 中路雅弘

    中路委員 電波妨害を目的にした航空機、いわば電波妨害機、これはこの電波法に照らして米軍やあるいは自衛隊法百十二条に言われているレーダーや移動無線機、これとは違うわけなので、この点は現在の電波法から言えば問題があると私は思うのですが、いかがですか。
  274. 木下博生

    木下政府委員 電波妨害装置も電波を発射する装置でございますので、自衛隊法百十二条で言います移動体の無線設備というものに該当するわけでございます。したがいまして、郵政大臣の承認をとって、郵政大臣の定める方法によってそういうほかの陸上の無線局や通常の航空機等のレーダー等に影響を与えないような措置を講じておるわけでございます。
  275. 中路雅弘

    中路委員 これは自衛隊法の百十二条からいっても、私は百十二条の各項を読んでみましたけれども、いわゆる陸上自衛隊が持っている小さい移動の無線機、それから固定のレーダーということを言っているわけなんで、電波妨害を目的にしたいわゆる電波妨害機をいまの電波法で自衛隊がこうした改良をやっていくということは、電波法からいっても大変大きい問題があるというふうに考えます。  また、さっきおっしゃった電子戦収集データ機器を積む、これは二機あるわけですが、機体を改修するわけですね。P2Jの乗員の座席も取って油をふやすとか酸素ボンベを大量に積み込むという中で、UP2Jの偵察範囲というのはほぼ倍になるのじゃないかと思うのです。朝鮮半島からウラジオ一帯の航続距離を持つと私は思うのですが、平時の際にもこれだけの航続距離を持って相手の電波をとる、こういうことが可能になってくる航空機ですが、これはどの条文でこうしことは可能なんですか。
  276. 木下博生

    木下政府委員 P2Jを改修します四機のうち二機につきましては、電子戦データ収集機ということで、そのための改修をやるようにしておりますけれども、先生おっしゃいましたように機体の整備をやる、装備をかえるということでございますが、具体的に先生がおっしゃいましたように距離を延ばすかどうかについては、いま手元に資料を持っておりませんのでちょっとお答えしかねます。
  277. 中路雅弘

    中路委員 私の持っている資料をそのままお見せするわけにいきませんけれども、倍以上の航続距離になる。そのために機体の中をうんと、油ももっとふやせるように改修されるという計画なわけですね。防衛庁自身が専守防衛ということを言っている中で、相手の側にはるか偵察に飛んで日常電波をとる、電波を収集するということは、防衛庁自身が言っている自衛隊の任務からいっても大変大きな問題だと私は思いますし、また先ほどの電波妨害機の問題もそうですが、現行法の中でこうした電波妨害機に改修するとか、あるいは電子戦データの収集装置をつけて航続距離を延ばしていくという電波情報のデータ収集機に改造する、これは大変現行法からいっても重要な問題だと思うのです。  いまお話ししました問題について、その機体、特に性能について、改めてこの四機についての搭載システム、そしてその主要な機能について資料で出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  278. 木下博生

    木下政府委員 御要請の点につきましては、検討させた上お答えさせていただきたいと思います。
  279. 中路雅弘

    中路委員 資料が出された段階で改めてこの問題もう一度論議をしたいと思います。  限られた時間の中で私はあと若干緊急に、これは防衛庁長官のところにも要請がたびたび行っている問題ですから御存じだと思いますので、二、三の問題についてお尋ねしたいのですが、一つは厚木航空基地の騒音問題です。これについては、ことしの二月以来もう昼夜の別なく特にミッドウェーの艦載機を中心にして離発着訓練が繰り返されて、神奈川県や周辺の基地の市町村からは防衛庁にもたびたびこの問題についての要請あるいは苦情、抗議が殺到しているだろうと思いますが、私、資料を見ましても、騒音の調査を見ますと最高百二十ホンというのも出ています。かつて施設委員会防衛庁自身が七十ホン以上を対象に申し入れたこともあるそうですが、その七十ホン以上というのをとりますと、多いときは一日三百回も測定されるという異常な状態なわけですが、この現状について、どのようにいま認識されていますか。
  280. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように、厚木基地で空母ミッドウェーの艦載機の夜間着陸訓練が実施されておるというふうに承知いたしております。最近の実情は、ことしの二月の十六日から三月十日までの間に十六日間、四月十二日から四月二十四日までの十日間、最近は六月二十二日から七月二十九日までというふうに訓練が行われているというふうに承知いたしております。使用機種につきましては、艦載機でありますA6、A7、F4、E2C等であるというふうに承知いたしております。  御指摘のように、地元等からも私どもの方にも騒音の問題につきましていろいろ陳情を受けておるところでございます。
  281. 中路雅弘

    中路委員 従来厚木基地の任務は後方支援とか補給、修理が中心になっていましたけれども、訓練のいまの状況から見て、密集した市街地の上空で着艦訓練を行っているということが主要な問題だと思うのです。  これは関係の自治体からも要望が出ています緊急対策としての夜間の飛行の禁止、夕方六時から翌朝八時までと出ていますが、昭和三十八年の九月に日米合同委員会で、この地域についてはその後一部四十年に改正になりましたが、騒音対策についての合意があります。これはもうはるかに破られているわけですし、その後の人口密集の状況も大きな変化が起きているわけですが、現行のこの調停を全面的に見直して、市町村、住民から要望されているこの緊急対策について、着艦訓練の即時禁止という問題もありますが、要望として出されていると思うのですが、どのように対応されるお考えですか。
  282. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように地元からもいろいろ御要望いただいておりますし、私どももいろいろ対策考えていかなくてはいけないということで種々検討いたしておるわけでございますが、当面の措置といたしましては、米側に対しまして訓練の分散等はぜひ考えてもらいたいということを強く申し入れております。  今後の問題等につきましては、さらに地元からのいろいろな陳情等もございますので、そういった点を含めまして検討をさせていただきたいというふうに考えております。
  283. 中路雅弘

    中路委員 先ほどお話ししましたが、この際改めて四十年の現行の協定について見直して、いまの現行、それから住民の要望も踏まえて、日米の間で緊急対策として、特に騒音を中心にして対策を協議していただきたいと思いますが、いかがですか。
  284. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 厚木基地の騒音軽減といいますか、飛行場の運用ということにつきましては、かねがね地元の御要望等もございますし、日米合同委員会の場においても数次にわたって使用条件等をつくっておりますので、今後ともそういう姿勢で臨みたいと思っております。
  285. 中路雅弘

    中路委員 先ほどお話ししましたように緊急対策として具体的な要望が出ているわけですから、この問題についてぜひ日米間で、いまお話しされたように協議をしていただくことをお願いしたいと思うのです。  それから、その要望の中で一つの具体的な対策として、先日、施設庁の方にもいっていると思いますが、基地対策の抜本的改善に関する要望書として、地元の基地対策協議会の中から説明をつけて海上訓練施設の設置というのが出ていますが、この点については御検討されますか。どのようなお考えですか。
  286. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 先生御指摘の海上訓練施設の設置について、地元の方から具体的に外国の例等を御指摘の上御要請がありました。先ほど施設庁長官からも御答弁申し上げましたように、今後はそういった御要請も踏まえて、今後の厚木飛行場の騒音軽減といったようなことで検討していくということでございますので、私どもとしては、御指摘の海上訓練施設についても検討の一環に加えたいと考えております。
  287. 中路雅弘

    中路委員 この厚木の騒音については、いまもう、私のところもそうですが、地元の市役所はパンクしそうなくらいですね。連日住民からの苦情が殺到している。市の職員も対応に困っているわけですが、防衛庁長官のところにも直接要望が何度か出ていると思います。この問題について長官からも一言答弁をお願いしたいと思います。
  288. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私、防衛庁長官としていろいろの大きな課題を抱えておりますけれども、非常に心の痛む問題の最大の問題は厚木の問題でございまして、再三再四御陳情を受けるたびに、できますならばそういう首長等と私自身もかわってあげたいくらいな大変な苦渋の中におりますことを承知しておりまして、いま事務当局からお話がありましたようなことを、当面の対策としては訓練の分散化等、あるいはまた長期的には海上訓練基地のことなども検討一つの課題として加えるというような積極的な姿勢でこの基地の騒音対策には取り組んでまいりたいと思います。というのも、基地と防衛は基地周辺の問題が円満にいきませんと本当の意味での防衛の目的は達せられませんので、そういう観点からも積極的に取り組んでいかなければならない課題と心得ております。
  289. 中路雅弘

    中路委員 次に進みます。  次の問題は、いま全国的にもそうだと思いますが、各米軍基地とその隣接市町村の間で消防相互援助協定の改定が進められていますけれども、神奈川県内の例を取り上げながら幾つか質問をしたいと思います。  その前に、昨年八一年十月十三日の米軍小柴貯油施設六号タンクの爆発の問題ですが、これについてはその後の調査の中で、事故の原因やあるいは被害総額、被害についての解決はどこまでいっているのか、簡潔に御報告いただきたいと思います。
  290. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 災害の原因ということでは、米側が特別に調査班をつくりまして調査を続けておるわけでございます。当然その事故原因については早期に解明したいということで、わが庁としましては米軍に事故原因の早期結論といったようなものについて要望を出しておりました。  本年の三月に米側から中間的といいますか、概略の報告に接しておりますが、その内容につきましては、まだまだ米側のいわゆる調査しているというような内容、原因が最終的に定められたものではないということで、私どもとしては日本側関係機関とも協議いたしまして、米側に具体的な事項について何点かの照会をしております。六月になりまして米側からそういった照会に対しての回答が来ておりますが、現在わが方としましてもそういった米側の回答を検討しているところでございます。なお、照会事項の中には、まだ米側からの回答に接してないのもございます。  大体原因調査状況はそのような状況でございます。
  291. 森山武

    ○森山政府委員 事故補償関係の処理状況についてお答えいたします。  昨日現在で、補償対象件数は全部で四百七十件でございますが、その処理状況といたしましては、支払いを完了したものが件数で四百五十一件、支払い額で約一億一千六百五十万円でございます。そうしますと、支払い未了が十九件になっております。その十九件のうち十七件は現在すでに申請書が局に届いておりまして、局の方で審査中でございますので、これも遠からず支払いの運びになります。したがいまして、現在残っておりますのが、申請書がまだ出てない分ということで二件ございます。ただ、これもすぐ申請書が出る運びになっております。したがいまして、横浜局の方では、事故直後直ちに調査を開始し、これだけ件数が多いのでございますが、たとえばガラスが割れたというのはもう数日の間に支払いするというふうに事故処理を急いでございますし、あと申請書の未処理が二件で、これも間もなく出るということで、全部円満に解決する見通しでございます。
  292. 中路雅弘

    中路委員 この小柴の貯油施設については、私もかつて七六年の八月にこの内閣委員会で、日本にあります米軍の貯油施設の状況をまとめた米軍の内部資料をもとにして、この小柴の貯油施設のタンクはほとんどが戦前の旧日本軍の老朽化した危険なタンクを使用している、タンクの穴あきや裂け目、はげ落ち、こうしたものがあって、高いジェット燃料の貯蔵にそのまま使えるのは二十四基のうちわずか二基だ、あとは大なり小なり大きな修理が必要だという質問をしたこともあります。また予算委員会におきまして、当時久保さんが施設庁長官だったと思いますが、この施設について御質問をして、やはり米軍施設であっても日本の国内法を遵守する義務があるのではないかということを御質問した際に、施設庁長官は、米軍は独自の安全基準をとってやってくれているんだというお話でした。それではその安全基準を知っているのかと言ったら、まだ防衛施設庁は入手していないという答弁をいただいたことがあります。  指摘したような危険な事態は、昨年、爆発が起きたわけですが、当時の消火活動、私の方からお話ししますけれども、これが大変問題があると思うのです。この米軍タンクの事故のときに、横浜の消防は七十四隊二百八十七名、市の消防局の四割近くが出動しています。そして、地元の金沢の消防隊が八隊二百二十四名、合計五百十一名を投入したわけですが、事前に消火栓がどこにあるかも知らされていない、何をやっていいかわからない、火を消すのに何を使用していいかわからない、どう消していいかわからなかったわけですから、結局、横須賀へヘリコプターで消火剤を取りに行く、あるいは水は一キロ離れた川から取水する、そしてようやく消しとめたという事態なんですね。原因の究明も、いまおっしゃったとおりまだ明確でない。危険物がどこにあるか事前にわからないということでは役に立たないわけですし、何が保管されてるかもわからないわけであります。そこへ消防隊員を大量に送り込む。しかも事故の後、現場にも入れない。やっと案内で入ったのが九十七日たってからだ。これでは原因の究明も災害予防ということもできないわけですが、この小柴のタンクの爆発の事故から施設庁なり消防庁、こうしたものの教訓ですね、今後どういう改善をしていかなければいけないというお考えなのか、一言ずつ最初お聞きしたいと私は思うのです。
  293. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 防衛施設庁、米軍に施設を提供しているという立場から申し上げますと、私どもとしましては、日本国内において数多くの米軍施設を、こういった燃料施設以外にも、なお軍事目的のためにいろいろ安全上十分留意しなければならないのを持っておりますので、そういった点につきましては機会あるごとに米側に安全につきまして要請しておりますし、それから、特に小柴の問題が起きましたときには、直ちに米側に今後の安全の確保、それから事故原因の究明といったようなものも申し入れておりますので、今後とも米軍施設の安全については常に注意を喚起していくとともに、私どもとしましても、そういったようなものにつきまして米側との間で今後とも要請を繰り返してまいりたいと思っております。
  294. 山越芳男

    ○山越説明員 先生御指摘がございましたように、現在、地元の消防と米軍との間におきまして相互応援協定が結ばれておるわけでございます。この相互応援協定は、市町村長ないしは消防長と基地の司令官とが締結権者になりまして、消防活動について相互に援助をする、こういったことを目的としております。その協定を適切に運用していくということによりまして火災による被害の軽減を図っていく、ないしは火災の絶滅を期していくということが必要であろうかと思います。御指摘がございましたが、最近の協定におきましては、案内つきの訪問に関する規定が入っている例もございますし、そういったことで、事情がわかればさらに適切に対処できるのではないかというふうに考えております。
  295. 中路雅弘

    中路委員 私は、この対策一つとして、いまおっしゃいました消防援助協定の問題について幾つか質問もし、御意見を述べたいと思うのですが、いまお話がありましたように、米軍基地にかかわる火災や災害時における消防活動については、米軍と基地に隣接する市町村の間に消防援助協定あるいはその運営の手続細目というのが締結されているわけですが、米軍基地と関係自治体の消防協定というのは何らかの法律に基づくものなのか、任意的なものか、あるいはこの協定について消防庁は何らかの指導を行っておられるのかどうか、最初に消防庁にお聞きしたい。
  296. 山越芳男

    ○山越説明員 協定の性格でございますが、これは法令の根拠があるものではございませんで、事実上、市町村長ないしは消防長と基地司令官との間で締結されているものでございます。  それから、協定の締結に当たりましては、それぞれ基地の態様も異なりますし、地元の消防の条件も異なりますので、それぞれの地域の実態に即した協定が締結されることが適当だというふうに考えておりますので、消防庁として、画一的といいますか統一的な指導は行っておりません。ただ、関係の消防機関等から相談がございますれば、消防庁としてもこれに適切に対応しておるということでございます。
  297. 中路雅弘

    中路委員 任意的なものだというお話ですが、しかし、私がいま全国的に、特に神奈川県内の最近の協定をずっと取り寄せてみますと、ほぼ全部同文ですね。そして、いままでは各基地の司令官との間の協定だったのですが、神奈川県内でいいますと全部横須賀基地司令官の連名になってきていますから、米軍の方は統一してそれに対処してきているわけです。最近のでいいますと、横浜市は、協定を五十五年五月に、細目は五十六年二月に改定をしています。さっきの厚木基地のあります綾瀬市は、協定、細目とも五十七年の三月に改定をしておりますし、同じ周辺の大和市、座間市は、現在改定案について交渉中ですが、内容はほぼみんな同文のものになっているわけです。  従来は、いまお話ししましたように各市とそれぞれの隣接基地司令官との間で協定されていたわけですが、いまの改定作業の中では、横須賀の在日米海軍基地司令官の連名の協定になっていますから、これは東京の場合も、時間がありませんから例を挙げませんが、横田の司令官というように大体統一して対処してきていますから、それをもとにして中身について二、三お話ししますが、条文の体裁、いまおっしゃったように対等の扱いになっているわけです。相互援助ということになっていますが、条文を見ますと、たとえば、基地内での日本側の消防活動についていかなる損失、損害、人身傷害や死亡に対しても補償の請求権を放棄するということですね。あるいは援助は無償で提供する、こういうことが明記されています。また、消防活動に莫大な費用がかかってもこれは無償ということですが、相互援助だといっても、小柴の場合をとっても日本側から消防が入ったのは五百十一名ですね。この小柴の基地にいる米軍全部で三十二人ですから、この三十二人の米軍が、横浜市のどこか火災に逆に相互援助で出てくるとか、そういう要請をするとか、そんなことは考えられないわけですね。しかし、形の上は相互援助だということで、事実上全部日本側のこれが費用も、負担もそうですが、さらに、損害や人身傷害が起きてもその補償の請求権を放棄するという中身にもなっていますし、基地内の火災や災害に出動した日本側の消防隊は米軍の消防隊長の指揮下に入るということも義務づけられています。私は、この点で、本来市民の生命や財産を火災や災害から守ることを目的に設けた自治体の消防が外国軍隊の指揮のもとに基地の災害対策防衛に当たるということも、これは事実上有事対象に組み込まれていくということになっていくわけですし、大変問題があると思うのですね。  こうした点は、消防法の諸規定からいってももう全く無視されているわけです。また、重要な立ち入りについてもこれは排除をされています。先ほどおっしゃったように、協定の中を見ますと、各施設の保安上の規制に適合する範囲内でそれぞれの地域における案内訪問を適時行うということだけで、災害上最も重要な個所である燃料の保管のタンクだとかこういうところの検査は一切認めない。だから何が置かれているかわからないわけですから、どういう消防活動をやっていいかわからない。案内訪問という表現で、また地形やせいぜい通路等を説明されるという範囲だと思うんですね。あるいは消火剤、消火の消防器材等は日常的に日本側で準備をするということも義務づけられて明記されているのもあります。私は、この点で大変不平等な、相互援助と言っても事実上は非常に片務的な協定がいま結ばれている。これは当然改めなければならないと思います。特に、米軍基地といえども地位協定十六条ではわが国の法令を尊重する義務を負っているわけですし、また三条では公共の安全を考慮するということがうたわれていますから、当然米軍基地といえども消防法は十分尊重されなければいけないと思うわけです。  さっき消防庁がどういう指導をしているかとお聞きしましたが、消防組織法の二十条を見ますと、消防庁長官は、消防に関する事項について都道府県または市町村に対し、助言、勧告、指導ができるということになっています。消防庁長官の権限で指導することができるわけですが、改定がいま進んでいますこの条文が、私が言いましたように、対等、平等とうたいながら、中身は全くそれに反するような改定が進んでいるわけですが、この点について改めて検討していただくというお考えはありますか。
  298. 山越芳男

    ○山越説明員 先ほども申し上げましたように、協定の性格といたしましては、相互に応援をする。ただ、それぞれ持っている部隊の数が違いますので、先生御指摘のような面が出てくるかと思いますけれども、協定の性格としては相互に応援をするという性格でございます。  なお、かかった費用の問題の御指摘もございましたけれども、御承知と思いますが、援助は無償でございますが、閣議了解がございまして、防衛施設庁の方から出動手当相当額とか、それからかかった薬剤等の、いわゆる消火活動に要した実費が支給されるということで、地元の財政上の配慮がなされている面もございます。  そういったことでございますが、かつて五十一年ごろに全国の基地の状況を調べたことがございますので、また調査することも検討してみたいと思っております。
  299. 中路雅弘

    中路委員 自治体の分を幾らか持つといっても、結局日本側が全部持つことに変わりないわけです。  この問題で、神奈川県議会でも先日論議がありまして、その際に神奈川県の長洲知事がこのように答弁しているのです。米軍との消防協定は大変矛盾したことが行われている。国内法より優先する安保条約、地位協定があるためだが、消防協定の中身の改善については、地元市と協力して改善するようにしたい。解決できない場合については、日米合同委員会で解決してもらうよう、国や米軍に協力を強く要請したいという県知事の答弁がありました。県知事自身も、この市町村がやっている消防協定は大変矛盾したことが行われているということを認めているわけですし、この問題については日米の合同委員会でも解決のために努力してほしいということを国にも要請するということが県知事の議会における答弁でもありますから、ひとつこうした県知事の答弁も踏まえて、いまの消防協定の改善についてぜひ積極的な努力をしていただきたい。現状も実態もよく見ていただきたいと思うのですが、あわせて、これはもう一度消防庁の方と、これは施設庁も関係があるわけですし、小柴にもこういうことが改善という名目で起きているわけですから、ひとつ日米の折衝の中では、防衛庁の方も施設庁の方も努力をしていただきたいと思うのです。両方からひとつ、この神奈川県知事のこうした議会における答弁もあるわけですから、努力していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  300. 山越芳男

    ○山越説明員 基本的には、先ほど申し上げましたように相互に応援をするということでございますので、そういった前提で進めていく面が非常に強かろうと思いますが、神奈川県知事の御発言も御紹介いただきましたので、そういった神奈川県等の意見も聞きながら、検討をさせていただきたいというふうに思います。
  301. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 施設周辺地域の安全にかかわることでございますので、そういった県知事の御要請等あれば、検討してまいりたいと思っております。
  302. 中路雅弘

    中路委員 あと十分余りですから、二点ばかりお聞きしておきたいと思います。  最初の一点目は、問題がちょっと違いますが、東大の農学部の千葉の演習林で、自衛隊が訓練や通行使用をしたという問題で、東大学内を含めて大きい問題になっているわけです。この点で東大当局が出しました「学内広報」あるいは総長の談話等を私は見たのですが、「学内広報」を見ますと、最近、昨年十一月からことし六月にかけての間だけでも、四回にわたって東大の演習林の中で自衛隊のこうした訓練や使用が行われているということです。この東大演習林の使用について、学長の談話ですと、三回は現場の林長が一応許可した。ただ、四回目ですか、六月十二日から十六日にかけての迷彩服を着用し小銃を携帯した空挺部隊のこうした訓練については、現場の申し入れもなかったという談話が出ているわけですが、陸上自衛隊の最近の、昨年十一月からの使用について、どの部隊がどういう具体的な使用を行ったのか、防衛庁の方からひとつ簡単に御説明いただきたい。
  303. 西廣整輝

    西廣政府委員 昨年の十一月来、陸上自衛隊の木更津の業務隊、それから第一ヘリコプター団、空挺団、この三つの部隊が四回、東大農学部の千葉演習林の林道を訓練の際、使用いたしましたけれども、四回のうち二回は文書で許可を得ております。なお、残りの二回につきましては、一回は口頭で、もう一つは空挺団でございますが、従来の慣行によりまして林道を通過するだけということで、黙認により使用してきたということであります。
  304. 中路雅弘

    中路委員 この問題で東大の総長談話というのが出ています。この談話では、要点だけお話ししますと、大学の本来の目的になじまない行為、これを現場で使用を認めたのは間違いだったということで、総長自身が遺憾の意を表明しながら、今後はこの問題について慎重な対処をする、こうした大学の演習林を使わせないようにするという総長の談話が内外に出ています。当然です。これは東大自身が一九六九年の東大闘争と言われる中で確認書が学内でも行われていますが、この確認書の中にも、自衛隊による大学の軍事利用はやらないということが明記されていますから、総長の談話も当然のことですが、この広報によりますと、この問題についても自衛隊の方に東大の方針を伝えて申し入れたということが出ていますが、これについて今後陸上自衛隊防衛庁としてどのように対処されるのか、お聞きしておきたいと思います。
  305. 西廣整輝

    西廣政府委員 いま先生のお話にありましたように、先般、この演習林の管理をしております東大の方から防衛庁に対しまして演習林の使用を自粛してほしいという申し入れがございましたので、防衛庁といたしましては管理者の申し入れを今後尊重してまいりたいというふうに考えております。
  306. 中路雅弘

    中路委員 管理者である東大の意思を尊重するということは、当然これまでのこうした使用は行わないということだと理解しますが、この点はひとつぜひ守っていっていただきたいということを確認しておきたいと思います。  あと一点だけ。これは何度かこの委員会でも御質問している問題ですが、具体的に問題になったことが一つありますので、前回も御質問した問題ですが、改めてお聞きしておきます。  すでに四年来完全に遊休化している、閉鎖状態になっている池子弾薬庫の問題です。これは五十六年度五千万、五十七年度、今度の予算で一億八千万の三浦地域における米軍一千戸以上と言われています住宅建設の調査費ですね、まだ執行されていないと思いますが、ついています。これとの関連でいつも問題になるわけですが、現在この米軍住宅建設の問題、この話はどういうふうになっているのか。それから、遊休化している施設は当然返さなくてはなりませんから、外務大臣も先般委員会で、私の質問で、地元の要望も理解できるので米軍と調整して要望について検討していきたいという答弁もありますが、いま日米の間でこの問題の折衝はどのようになっているのか、最初にお尋ねしたいと思います。
  307. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 この問題については先生から数次にわたる御質問をいただいておりますが、私どもの方はその都度申し上げておりますように、現在弾薬庫としては使用していませんが、資材の保管庫等としても使用しておりますし、米側としては今後とも駐留目的に沿う施設利用を考えているということで、私どもとしましては、地元の御要請につきましてはたびたび米側に要請いたしまして、返還等の可能性等についてはその都度打診しております。
  308. 中路雅弘

    中路委員 住宅建設の問題ですね。話になっています、調査費も出ていますが、いまどうなっているのかということと、いま資材の保管で使っていると言うのだけれども、現地全然見てないでしょう。米軍はだれもいないですよ。あの弾薬庫のかぎは市役所に預けてあるのですよ。全く閉鎖状態なんですよ。そういうでたらめ言ってはいけない。
  309. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 現在米軍の横須賀地区における住宅の必要性並びにその必要性を満たすための建設の要望といいますのは、米海軍が特に家族住宅に不足している、その不足戸数というものは前回も申し上げましたが四けたを超える数である、こういったものを、横須賀の海軍施設内ではすでにかなりの住宅も建っておりますし余地もございませんので、横須賀海軍施設近辺ということで検討を進めております。それで米側としましては、そういった建設用地につきまして池子弾薬庫というのも候補地の一つであるということで、私どもの方もそのように御答弁は申し上げております。  なお、御指摘昭和五十六年度の地形調査等の予算につきましては、先生御指摘のように五十七年度に繰り越しております。それから、五十七年度におきましても一億八千万程度の予算を環境影響調査といったような形で実施する予定としておりますが、現在これらについてはいずれも着手していない状況にございます。  それから、池子弾薬庫の使用状況につきまして御指摘いただきましたが、若干の資材を置いていることと、米軍として管理、修理等も行っているということで、私どもとしては米軍がなお継続して当該弾薬庫の使用を続けたいという意思があるものと考えております。
  310. 中路雅弘

    中路委員 最後に、この問題で、具体的なことでもう一問御質問しておきます。  広大な弾薬庫、ほとんど使用していないことは事実なわけですね。それでお願いしたいのですが、これも国会で一、二度取り上げましてやっと返還になった池子弾薬庫の久木地域ですね、いま中学校、小学校の共同運動場ができています。ただ、この共同運動場は学校から少し離れているわけです。先般も現地教育委員会から要望があったのですが、共同運動場が離れているために使用する際に生徒は住宅の中をずっと回っていくのですが、ただ往復の時間がかかるというだけではなくて、運動具の運搬に車を使わなければいけないというのもありますけれども、たとえば四十五分の運動の時間が事実上三十分以内になってしまって教科もこなせないということなんですね。弾薬庫のへりをわずか通路分だけとれば、共同運動場がそういう不便なしに使えるわけです。一部民有地がありますけれども、これは民有地の地主さんの同意も得ているそうです。ほんのわずかの通路だけですから日米の交渉等で一部返還するか、少し長くかかるようだったら一時使用の形ででもこの問題は解決をしてほしいと思うのですが、ひとつ話し合っていただけませんか。その点だけ最後にお願いしておきます。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  311. 伊藤参午

    伊藤(参)政府委員 久木地区の運動場の点につきましては、確かに地元の御要望も受けまして返還した上で、地元の小中学校で現在御使用になっていると思います。その際は一応のアクセスといいますか通路は確保されているということでの返還であり御使用であったわけですが、その後、先生御指摘のように、より短い通路といいますかそういったものについての御要請がありましたので、横浜防衛施設局から米側に問い合わせましたが、その時点では返還に応じられないという意向が一応示されております。ただ今後は、当庁としましても共同使用等の可能性も含めまして検討してまいりたいと思っております。
  312. 中路雅弘

    中路委員 これで終わりますが、一番最初にお願いしましたように五六中業については改めて詳しい資料を提出いただくということなので、資料が提出をされましてから改めて御質問をしたいというふうに思います。  時間ですので、これで終わらせていただきます。
  313. 石井一

    石井委員長 次に、楢崎弥之助君。
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は冒頭、ただいま重要問題になっております教科書検定、記述変更問題を取り上げたいと思います。この防衛二法審議の際にこの問題を取り上げる意義というものは、私はただ単に中国や韓国側からの批判があったから取り上げるのではなくして、この問題は文部省限りのほんの言葉遣いといったような技術的問題ではない。本問題は、実は最近のこの五六中業に見られる防衛費増強の問題やあるいは靖国神社参拝等の問題、要するに急激な右傾化の方向あるいは軍事大国化、軍国主義化の傾向と重要に絡んだわが国の基本姿勢と申しますか、基本的な認識の問題と申しますか、そういうこと自身を私が感じておりますからこれを冒頭に取り上げるわけであります。  新聞紙上等でも拝見をいたしましたが、中国側に対するわが国の回答は、簡単に言えば、第一項目は戦争責任を痛感して反省しておる、第二項目目は中国側の意向を十分そんたくすると申しますかそういうこと、三番目に検定制度の技術的問題はよく説明をしたいということのようでありますが、本問題に対する基本認識と申しますか基本姿勢は第一項と第二項、そういうことでいいのですか。官房長官にお伺いします。
  315. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま言われましたことは、概してそのようにお考えいただいて結構と存じます。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、同じように、真意をよく説明したいというのもその第一項、第二項のことですか、真意というのは。真意をよく話せばわかっていただけるはずだというような政府首脳のお話がありますけれども、同じように解してよろしゅうございますか。
  317. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もう一つ第三項目がございまして、教科書検定問題の文部省側の問題につきましては、文部省の責任者から直接に御説明申し上げたいということを申しておりまして、これをも含んでおるわけでございます。
  318. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、第三項目目の説明は、いつ、文部省のだれが、中国側のだれにお会いをして説明することになっておるのですか。
  319. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私、直接所管でございませんので非常に詳細には存じておりませんが、私ども考えでは、文部省の責任の局長から、中国側の恐らく公使にと存じますけれども、説明をすることになろうかと思っております。
  320. 藤村和男

    ○藤村説明員 今夜九時に文部省に中国大使館の王暁雲公使を招きまして、文部省初等中等教育局長から御説明申し上げる予定になっております。
  321. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 検定制度のどういう点をどのように説明なさるのか。
  322. 藤村和男

    ○藤村説明員 中国の教科書制度は国定でございます。わが国の場合は検定制度をとっておりまして、著者の創意工夫を生かしながら教科書をつくるという制度になっております。そういった制度の基本的な事柄などにつきまして、私どもの方から御説明を申し上げる予定になっております。
  323. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことはいまさら説明しなくても中国側は十分知っていますよ。問題がどこにあるかという認識が足らないのではないでしょうか。  官房長官にお伺いします。今度の中国側の訂正要求は内政干渉と思われますか。
  324. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうふうに受け取られる向きもあるようでございますけれども、そういうことを申しましても余り建設的な効果がないと私は思います。わが国の教科書の記述について中国側として考えておることを言われたのでございましょうから、それは謙虚に聞けばよろしいのであって、余り内政干渉であるとかいうようなことをとやかく申すことはいかがかな、そういうことを申しましても建設的な効果はないのではないかと私は思っております。
  325. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現に閣僚の中でそういうことを言っている人がいるのです。それがそのままマスコミを通じて伝わっておるわけです。だから、その点の認識を、意味がないとかあるとかでなしに、官房長官はどうお考えかということを聞いておる。
  326. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 閣僚としては、個人の意見を言われたものと私は考えております。
  327. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 官房長官はどうお考えかということを私は聞いておるのであります。どうですか、内政干渉あるいは内政介入というふうに官房長官は思われるのかどうか。思うなら思う、思わないなら思わないとおっしゃればいいのです。
  328. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その問題にどういうお答え方をいたしましても私は建設的な効果がないと思いますのでお答えをいたさない、こう申しておるのであります。
  329. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、この認識は建設的であるとかないとかという問題ではないと思うのです。いいですか。本問題は、まず第一義的には国内問題でありましょう、わが国の教科書問題ですから。しかし、その中で指摘されておる事実は中国に対する侵略の問題。だから単に国内問題ではないのです。この辺はきちんとしておかないと、中国側あるいは韓国側から見れば非常に重要な点ではないでしょうか。まずそういう点を明確にしないと問題の解決にはならないと私は思う。その点を指摘しておきます。  それから、検定課長がどれだけ政府を代表して説明できるのかどうか知らぬが、いままでの新聞紙上で見ますと、いまの答弁もそうですけれども、何か改善意見みたいなことをおっしゃっている。そうなのですか。
  330. 藤村和男

    ○藤村説明員 教科書の原稿本、別名白表紙本とも申しておりますが、それが会社から出てまいったときに私どもの方で審議会にもお諮りしまして、合格本につきましていろいろな意見をつけるわけですが、その意見には二通りの意見がございます。一つは修正意見と申しまして、私どもの方で申し上げました意見の趣旨に従って改善を図っていただかないと教科書として認められないという強い義務的要素を持った意見、それから、改善意見と申しまして、これは私どもの方で御意見を申し上げますが、その内容は参考意見のようなものでございまして、最終的にその意見を聞くか聞かないかは執筆者なり出版社の判断にゆだねる、そういうものを改善意見というふうに称しております。侵略という言葉につけました意見は、先生がおっしゃられましたとおり改善意見でございます。
  331. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは事実に反しますね。五十三年度からのやり方については証言者もあるではないですか。そのことはおくとして、いまのような意見というのは責任逃れなのですね。あたかも政府に責任がなく、文部省には責任がなく、責任があるのは執筆者あるいは教科書会社、その選択なのだから、そういう意味にとれるのですよ。今度の問題でそういう責任逃れが通用すると思いますか。しかも事実に反しますね。実際は修正しなければ許可しないのでしょう。何ぼでも、テレビでも証言者がおったじゃありませんか、教科書会社で。それを変えなくては実際に許可してもらえないから企業としても困ると言っているじゃありませんか。全く責任逃れをしようと思っている。どうなんですか。
  332. 藤村和男

    ○藤村説明員 先生からお話がございました修正意見の例というのは五十三年度の一件が新聞に出ておりましたけれども、これは他の個所につけたものと異なりまして、本文の重要な見出しになる目次のところの表記が統一がとれていなかったために、それらについてできれば統一を図るようにということでつけた意見でございまして、例外的に修正意見をつけたものでございます。  いま問題になっております日本史や世界史の教科書の中で、日中戦争に関する侵略という表現につきましてつけました意見は改善意見でございまして、数字をちょっと申し上げてみますと、日本史を例にとりますと、十冊の教科書が検定をパスしたわけでございますが、私どもがつけました意見は数カ所ございまして、そのうち実際に著者が判断によって侵略という言葉を直したり変えたりしたという例は、日本史の場合ですと一件だけでございます。
  333. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 変えさせたのは事実じゃありませんか、一件であろうと。  それから、これも新聞紙上で知る以外にないのですけれども、何か中国側に誤解があるようだからよく説明すればわかる、聞きようによっては、マスコミの報道だけを通じて中国が物を言っているから中国側に誤解がある、そういう認識ですか、文部省は。
  334. 藤村和男

    ○藤村説明員 私どもといたしましても、中国側がおっしゃいます意見には謙虚に耳を傾けてまいりたいというふうに考えておりますけれども、冒頭にちょっと申し上げましたように、制度の違いとか、それから新聞で報道されている内容等につきましては事実と異なるものもございまして、たとえばことしの検定ではなく数年前のものが記事になっているとか、それからいま学習指導要領が変わりまして新しい教科書をつくっているわけですが、その教科書とそれ以前のまた別の検定を受けました教科書とを比較した例とか、いろいろな例がございますので、そういった点につきまして誤解というふうなことを申し上げた例があるのかもしれないというふうに考えておりますけれども考え方としましては、やはりそれぞれ言い分があるわけでございますので、私どももこういう国際間の件につきましては謙虚に耳を傾けて御意見をじっくりお伺いする、それから私ども考えております事柄あるいは検定制度の基本的な仕組み等につきましてもできるだけ十分な説明をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  335. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 中国側に誤解があるかもしれないということは、その問題いかんによっては大変中国側を侮辱することになるのですよ、あなた方の言葉の使い方として。これはもともと制度の問題じゃないんですよ。事実認識の問題だ。歴史の事実に対してゴカイもハッカイもあるわけないのですよ。それも私は明確にしておきたい。そういうことでは決して説得力はない。  それから次に、侵略という言葉が進出に変わった。なぜ変わったのですか。その理由は何ですか。侵略ということを進出に変えた方が公正で客観的に冷静な記述だとお思いになっていらっしゃるのですか。こう変えたことが公正で客観的に冷静な記述であるという理由を、ここで明確にしてください。
  336. 藤村和男

    ○藤村説明員 歴史の教科書でございますので、比較的近い時代の同じ国の出来事、たとえば十九世紀末におきますところの列強のアジア進出というのがございますが、こういった場合に、中国大陸にイギリス等が入ってきた事件につきましても、教科書の表現におきまして中国への列強の進出という表記をしているのがかなりあるわけでございます。その個所でそういう表現をしておいて、日中戦争になりますと今度は中国への侵略という言葉の使い方をしている。そこで、前のところで進出という言葉を使っているなら、こちらの方も侵略という言葉を改めて、たとえば進出というような表記にしてはどうかという改善意見をつけたものでございます。しかし、例としてそういったことを、調査官が進出という言葉等を使って申し上げたかとも思いますけれども、改善意見を付された結果、実際に侵略という言葉が進出という言葉に変わった例は一件もないわけでございます。
  337. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 文部省の頭の中に、侵略というのはどうも悪い印象を与える、だから進出というふうに変えたというような考えがあるんじゃないですか。その点どうですか。
  338. 藤村和男

    ○藤村説明員 歴史というのは通説に従って書かれるのが原則であると思います。そのように著者に対しても求めているわけでございますが、歴史の記述に当たりましては、できるだけ公平な立場から客観的な表現を用いて書くようにということを求めているわけでございます。言葉の使い方といたしましても、たとえば進出という言葉の方がより客観的な表現ではないかということで、表記の統一がとれていないような場合に御参考までに私どもの方で意見をつけているということでございます。(「その思想が間違っているんだ」と呼ぶ者あり)
  339. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうですね、その思想が悪いのですよ。  東京裁判がありましたね。私は、この裁判については勝者が敗者を裁くという点について批判を持っています。それから量刑の点についても批判がある。ただ、あの判決の中の歴史的な事実は私はあのとおりだと思う。あなた、読んだことありますか。
  340. 藤村和男

    ○藤村説明員 東京裁判につきましては、その概要を読んだだけでございます。
  341. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 概要というのは何ですか。だれが処刑されたとか、そういうことですか。
  342. 藤村和男

    ○藤村説明員 概要を読んだというのは正確でないので訂正させていただきたいと思いますが、私が承知しておりますのは、新聞とか雑誌とか、いろいろなものにその内容等紹介されている程度のものを読んだということでございます。
  343. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 判決の中ではほとんど全部侵略戦争という言葉が使われております。御承知ですか。
  344. 藤村和男

    ○藤村説明員 事実を正確に承知しておりませんが、多分そうなっているんだろうと思います。
  345. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃそれが歴史的な事実じゃないですか。あなたは東京裁判の判決に抵抗するのですか、あるいは事実を曲げようというのですか。何が進出が客観的な事実ですか。  次に、もう一つ挙げておきましょうか。これは官房長官にもぜひお伺いしたいのですけれども、南京大虐殺のところですよ。検定前の記述は、この東京裁判の判決の中の「南京暴虐事件」という内容とほとんど同じです。だから、検定前のこの記述は、この事実から行われておるのではないかと思われるほど、ほとんど一致していますよ。  その前のところでは、「南京占領のさい、日本軍は中国軍民多数を殺害、暴行・略奪・放火をおこない、南京大虐殺として国際的非難をあびた。中国人の犠牲者数は二十万人にのぼるともいわれる」、ここですね、ここがどうなっておるかというと、「中国軍のはげしい抵抗にあい、日本軍の損害も多く、これに激昂した日本軍は、南京占領のさいに多数の中国軍民を虐殺し、国際的な非難をうけた」、こうなっている。変えられましたね。ところが、判決ではどうなっているかというと、「南京暴虐事件」の項です。「一九三七年十二月十三日の朝、松井指揮下の日本軍が南京市にはいったときには、抵抗は一切なくなってみた。日本兵は市内に群がってさまざまな残虐行為を犯した。日本側が市を占領した最初の二、三日の間に、少くとも一万二千人の非戦闘員である中国人男女子供が死亡し、占領後の最初の一ケ月の間に、約二万の強姦事件が市内に発生した。」こうなっています。「男子に対する大量の殺人は、中国兵が軍服を脱ぎ捨てて住民の中に混りこんでみるといふ口実で行はれ、兵役年齢にあった中国人男子二万人は、かうして死んだ。ほかに捕虜三万人以上が殺された。」それから「後日の見積りによれば、日本軍が占領してから最初の六週間に、南京とその周辺で殺害された一般人と捕虜の総数は、二十万人以上であったことが示されてみる。」したがって、検定前のこの「犠牲者数は二十万人にのぼる」というのは、まさにこの判決と一致しているのです。これがその修正後では抜けている。何のためにこういうことをするんですか。  ということは、私はこの東京裁判の判決に批判があることは先ほど申しましたけれども、歴史的事実としては私はこのとおりであると思う。これが国際裁判である東京裁判の判断です。こういう教科書の改ざんというか、修正するということは、一つは東京裁判の判決に対する挑戦でもある、私はそのように思わざるを得ないが、官房長官の御意見はどうでしょうか。
  346. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 文部省が教科書を検定いたしますときに、できるだけ客観的に事実に基づいて書いてほしいという考えで検定をいたしておるのであろうと思います。いま二十万、二万、いろいろな数字をお挙げになりましたけれども、恐らくそういう問題については、どれが客観的に信じられているあるいは証明し得る事実かということを書くことが適当であると文部省は考えているのであろう、私、所管でございませんが、そういうふうに思っております。  いずれにしても、東京裁判でこういうふうに述べられておるということだけでそれが歴史の事実であるというふうに考えてよろしいかどうか。歴史というのはもっと複雑なものだし、もっと長い時間がたたないとわからない部分もあろうと思いますので、にわかにその部分をそう断定することはできるのであろうかどうであろうか、つまびらかにいたしません。
  347. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは官房長官のお考えとしては、東京裁判の判決に対して重大な疑義を呈されておる、そのようにわれわれは受けとらざるを得ない。それは細かいところ、人数で少々の差異はあるかもしれないけれども、その点は私は非常に重大であろうと思います。  そこで、官房長官にお約束している時間がありますから、二問だけにします。一緒に行います。  その第二項目の、謙虚に中国側の意見に耳を傾けるということは、話し合いの結果訂正の余地があるということであるのかどうか。もし全然内容の訂正はもうしないんだという前提のもとに話をされるのか。もしそうであれば、これは中国側の申し入れが訂正要求でありますから、結果的には申し入れを拒否するということになるのですね。ちょっと厳しい言い方ですけれども、これは中国側の申し入れは筋違いなんですよ、こういうことにもなりかねないから、私はこの辺は非常に重要なところであろうと思います。この点が一つ。その話し合いの結果訂正の余地があるのかどうか。  それから、やはりこの日中共同声明の問題もあるし、日中平和友好条約の問題もあるし、その基礎になっているのは、言葉としては先ほどの野党委員質問に官房長官答えられましたけれども、やはり中国に侵略してそして迷惑をかけたんだという一致した日中の認識が基礎になっておる、このように私は思うのですが、その二点を最後にお伺いをしておきます。  そして、官房長官の御認識としては、この問題は私は取り扱いいかんによっては重要な外交問題に発展する、その点を心配するのですけれども、官房長官はそんなことはないんだ、したがって九月の総理の訪中にも影響はない、そういうふうな御認識であるのかどうか。三点について伺います。
  348. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず第一点でございますが、両国間にあれだけ長い不幸な戦争がございました。それについてわが国が考えております考え方、それはまた日中共同声明において両国の合意として表現されておるところでもございますけれども、しかしまた、同じ戦争でも中国から見ましたときにはまたおのずから別の見方、別の体験に基づいたものがあるであろうということは、これは十分考えられることでございます。そのことに基づいて中国側が今度意見を言われたということであろう。とすれば、それはやはり謙虚に耳を傾けるべきことである、こちらから見た景色ばかりが事実の景色であるとは言いがたい、考えられるとは言いがたいということであるかもしれませんので、これは謙虚にやはり聞くべきものは聞くということがわが国の態度であろうと思います。  しかし、次に、それならば教科書を改めるのか、こう言われたかと思いますが、教科書は国定でございませんので、改めるということはもともと政府のなすべき仕事あるいは権限の中にあることではあるまい。政府の与えられた権限の中でこれをどういうふうにするのか、あるいはしないのかということにつきましては、私所管でございませんのでお答えができません。要すれば、何かの機会に文部大臣からお答えをいたすべきことと存じます。  それから第二に、今回の事態をどう考えるかということにつきましては、これはやはりわが国が過去において戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えた、それについて責任を痛感し、深く反省しておるということ、このわが国の反省は日中共同声明で両国が合意をいたしました表現でございます。わが国としても決して軽々しく申しておることではございません。また中国としても、一応合意の表現としてこれを日中共同声明に盛ったということを重視して考えていいのではないかと思っております。  第三の問題につきましては、われわれが誠意を持ってわれわれの考え方を説明することによって、中国側としては一応日本政府の考え方というものをそれとして理解をしてくれる、誠意を持ってそのように努めたいというふうに考えておりまして、総理大臣の訪中について最後にお触れになりましたが、それにつきまして、われわれとして目下誠意を尽くしてこの問題についての説明をする、その努力をいたしたいと考えております。
  349. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 約束の時間が過ぎましたので、官房長官御苦労さんでしたが、これが重要な外交問題に発展しないように、ひとつ慎重に御対処していただきたいと思います。  いま話し合いの結果、謙虚に耳を傾けて聞くべきところは聞く、その結果訂正の必要があるかどうかというのは文部省が判断する、こういう答弁でしたね、聞かれて。文部大臣にでも適当な機会に意見を聞いてくださいというふうに私は聞きましたけれども、その点はどうなんですか、文部省として。
  350. 藤村和男

    ○藤村説明員 私どもが謙虚に耳を傾けまして中国側のおっしゃっていることをよく聞くということをすると同時に、あわせて私どもがどういう制度で教科書の検定をし、どのようなことでこのようなことが起こってきたかなどについて十分話し合いをするということをしてまいりたいと思いますが、おっしゃるような点については現在のところ考えていないわけでございます。
  351. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、全然内容は変えないんだという前提で話されるということであれば、私は説得力はないと思うのですよ。じゃ逆に、国定じゃないから、執筆者なり教科書会社が自主的にまた撤回をしてその内容を訂正する分には構わないのですね。
  352. 藤村和男

    ○藤村説明員 教科書の検定制度と申しますのは、三年が単位になっております。新しい教科書が三年使われますと、その内容の一部を改善してまいりたいという場合には会社から申請が出てまいりまして、また審査をしてその合否を判断するということを行っております。それで、世の中にはこれ以外にもいろんな問題がございますし、内容が陳腐化していく問題とか等ございまして制度の仕組みがそのようになっているわけでございますが、この問題に限らず一般論として言えば、教科書の内容の改善というのはいつの時代でもなされていくべきものであると思いますし、そういった機会に著者側がどういう原稿をつくってくるかはまた著者側の判断でなされるべき事柄である、かように考えております。
  353. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は先のことを聞いているのでありませんで、本問題について、一つは文部省としては内容を変える気はない。あなたは失礼だけれども課長だが、それは文部大臣の意向として承ってよろしいか、それが第一点。  第二点は、本問題についていろいろ本質がわかってますから、執筆者なり教科書会社が自主的に検定を受けたものを撤回して、そして新しく内容を変えて出す。実際問題としては訂正になりますけれども、そういう道は開けておるのですか。
  354. 藤村和男

    ○藤村説明員 私どもといたしましては、先生がおっしゃるような点につきまして文部省としてリーダーシップをとってどうこうする、あるいは検定に当たっての考え方を変えるというようなことは考えておらないわけでございます。
  355. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私ども、与党の皆さんも含めて、この五六中業にも関係するんだけれども、日中の国交正常化のためにずいぶん長い間、亡くなられた先輩も含めて努力を積み重ねて今日に持ってきているのですよ、友好親善の状態に。それがあなたみたいな考えによってもし大問題になったら、あなたどういう責任をとるのです。あなたが文部大臣の御意向をそのまま伝えておるとしたら、私は納得できません。いずれ近々のうちに文部大臣の御意見を聞きたいと思います。  次に、五六中業の問題に移りますけれども、重複は避けます。  四次防後、ずっと防衛力増強の歯どめになっておるものが私は二つあると思うのです。それは五十一年十月に決定された、平和時の防衛力論争を経て決められました基盤的防衛力構想、それが一つ。いま一つは、その一週間後に決められました、つまり五十一年十一月五日に閣議で決められたGNP一%以内という、この二つが私はこれまでの防衛力増強の重要な歯どめであると思う。   〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 歯どめの役を果たしてきた基盤的防衛力構想については、鈴木総理もこれが歯どめだとおっしゃっていますから、そうでしょう。そこで、まず私は基盤的防衛力構想が生まれた歴史と経過についてはっきりしておきたいと思います。  御案内のとおり、昭和四十六年から四十八年にかけて、平和時における防衛力の限界論争をわれわれは何回も展開をいたしました。その経過を明らかにすることは重要であると思います。  まず、四十六年二月一日、衆議院予算委員会で私の質問に対して中曽根長官が答弁をいたしました。どう答弁したか。「社会保障費あるいは公共事業費あるいは教育、科学研究費等の伸長ぶりをよく見まして、それを妨害しない範囲内において防衛力を漸増していく、」だんだん増していく、これが平和時防衛力論争で私が経験した一つの最初の問題でありました。しかし、すでにこの中曽根長官の答弁は、社会保障費や公共事業費あるいは教育、科学研究費等の伸長ぶりをよく見てそれを妨害しない範囲ということは、壊れたでしょう。申すまでもなく五十六年度の防衛予算の伸び率は七・六一ですか、こういうことで、いままでそういうことはなかったのだけれども初めて社会保障費の伸び率七・六〇を上回りました。そして五十七年度では防衛予算の伸び率は七・七五、五十七年度の社会保障費の伸び率は二・八%、今度は大幅に防衛費が社会保障費の伸び率をオーバーした。これもすでに壊れてしまいましたね。  そして今度は、四十八年二月一日に衆議院予算委員会北山質問、これは田中総理が答弁をされました。「今後国際情勢に大きな変化のない限り、防衛庁でまとめたこの案を守ることが、必要かつ妥当と考えております。」この案というのは、四十八年二月一日に防衛庁長官の見解として出された平和時における防衛力という文書であります。それで、この防衛庁長官が出された平和時の防衛力、数量も示された、それを田中総理は、この案を守ることが必要かつ妥当と考える、このように答えられております。  それから翌二月二日には、衆議院予算委員会で公明党の正木質問に対して田中総理は、なおこれを敷衍して、「私が国会の場を通じて国民皆さまに申し上げたのでございますから、私の申し上げた発言どおり」平和時の防衛力を「私は守ってまいりたい、」こういう方へ発展してきた。そしてずっとこの種の発言が続いて、そのときに論争になったのはむしろ、数量が示されたからこれを認めることはそこまでは増強してよろしいということになるのではないかというような意見もありまして、結局は四十八年二月十二日の衆議院予算委員会で田中総理が特に発言を求めて、「二月一日当委員会において防衛庁長官より申し上げた平和時の防衛力についての説明並びにその資料は、この際撤回いたさせます。」こうなった。撤回させたのはそういう論争の後なんです。むしろ平和時の防衛力で示された数量までこれを認めればいく、これは増強になるからということで引っ込めたのです。その辺ははっきりしておかなければいかぬと思うのです。  そうして、そういう経過を踏まえてこの平和時の防衛力限界論争の中で生まれてきたのが、当時の久保局長が原案をつくられた基盤的防衛力構想なんです。だから、この平和時における防衛力と基盤的防衛力構想は非常にうらはらの関係にある、これをまず指摘をしておきたいと思います。そして、その基盤的防衛力構想を基盤にして五十一年十月にさっき言いました「防衛計画の大綱」が決められた。この内容は、防衛構想あるいは防衛哲学としては基盤的防衛力構想である、そして、費用の点では、先ほど言ったとおり五十一年十一月五日の閣議でGNP一%以内、こういうふうになってきたのです。われわれは論争を積み上げてここまで来たのです。  それで、私は防衛庁長官にお伺いしますけれども、今度の五六中業を閣議決定した後の総理の記者団に対する発言の中で、GNPも一%を超えるし、これでは今後歯どめがなくなるのではないかという質問に対して、いや防衛計画大綱があるから歯どめがなくなることはないんだと言われた。このことは、防衛計画大綱を歯どめとして今後とも変えないというふうに私は総理の発言を聞きましたが、長官はこの発言をどのように受けとめられておりますか。
  356. 夏目晴雄

    夏目政府委員 大臣がお答えになる前に一言。  確かに、いま先生がおっしゃられた昭和四十七、八年ごろの平和時の防衛力が発展的に解消して、基盤的防衛力構想、それが「防衛計画の大綱」になったという御指摘は、大体そういうことだと私ども理解しております。  そこで、私ども今回の五六中業をつくりました目標は、あくまでもいま申し上げました「防衛計画の大綱」に速やかに達成するということを基本としておりまして、これは昭和五十一年に国防会議、閣議で決定された「防衛計画の大綱」の枠内での防衛力整備であるということでございますので、私どもとしても現在、「防衛計画の大綱」を目指してやる、それ以上のものをいま考えておらないということを申し上げたいと思います。
  357. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、基盤的防衛力構想は変えない、これでいいですね。
  358. 夏目晴雄

    夏目政府委員 くどいようでございますが、五六中業をいまつくったばかりでございまして、それは「防衛計画の大綱」に少しでも早く達しようという意図に基づいてつくられたものでございまして、それ以上のものをいま考えておりません。
  359. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 後で触れますけれども、五六中業が完成した暁の全部の数量は、平和時の防衛力で示された数量をすでに上回りましたね。さっき言いましたとおり、基盤的防衛力構想は平和時における防衛力の数量とうらはらのはずなんです。ところが数量的にふえましたね。どういうふうにふえたか、ちょっとお伺いしますけれども、五六中業が完成したときの総体として、海上自衛隊は地方隊は何個になるのです。
  360. 夏目晴雄

    夏目政府委員 地方隊の護衛隊は十個隊でございます。
  361. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 航空自衛隊の航空方面隊は何個か。
  362. 夏目晴雄

    夏目政府委員 現在すでにそうなっておりますが、北部、中部、西部の各方面隊に、沖繩にありますところのいわゆる南混団、南西航空混成団、これが現在の体制でございます。
  363. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 航空団は何個ですか。
  364. 夏目晴雄

    夏目政府委員 八個航空団と理解しております。
  365. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 海上自衛隊では護衛隊群は何個になります。
  366. 夏目晴雄

    夏目政府委員 自衛艦隊に所属しますところの護衛隊群は四個隊を現在持っておりますし、この五六中業完成時においても、また大綱の目標としても四個隊ということになっております。
  367. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの御答弁でいきますと、四十八年に示されました平和時における防衛力の数量、海上自衛隊は五個地方隊、こうなっておりましたが、十個地方隊になるのですか。さっきの答弁はそうだったのですね。
  368. 夏目晴雄

    夏目政府委員 地方隊の数は五個隊でございますが、その中にいわゆる護衛隊という単位としては、二個隊ずつ十個隊ということを申し上げたつもりでございます。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではその点は平和時における防衛力の数量と一致しております。ただ、トン数が違いますね。トン数が三十二万トンになるのですよ。この平和時における防衛力の数量は二十五万トンから約二十八万トンになっておりますね。これはふえてますね。それから航空自衛隊、これは平和時における防衛力数量は全部で約八百機になっている。五六中業完成時の機数は八百二十ですから、まあまあそういうところでしょう。ただ、ハンターキラーの部隊は持たないと言われる、これはどうでしょう。
  370. 夏目晴雄

    夏目政府委員 何分古いことでございますので私も正確な記憶はございませんが、たしか四次防というものをつくるときに、現在の四個隊群のほかにいわゆるハンターキラーといいますか、対潜掃討に当たる部隊、護衛隊群を一個持ちたいという希望防衛部内にあったというような記憶がございます。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、平和時における防衛力と関連してのやりとりの中で、結論として、ハンターキラーというような部隊は持たない、そう答弁なさったのです。ところが、まさにいまや対潜作戦というのはもう主流になってきた。だからこの五六中業は、先ほどから質疑のとおり、この平和時における防衛力構想の枠をすでにだんだんはみ出してきている。  で、私が心配するのは、いままでは防衛哲学としては基盤的防衛力構想であったが、もしこれが変革する一すでになし崩し的に変革されつつあるのではないかと私は心配しておるのですけれども、どうもこれまでの防衛庁の動きを見てみますと、つまりソ連の脅威というものを非常に前面に立てられておる。たとえば、今度国防会議にあなた方が出された説明資料の中では、「極東ソ連軍の著しい増強」という言葉がありますね。それから昨年度版の防衛白書においては、極東におけるソ連軍の増強はわが国の安全保障にとって脅威であるというソ連脅威論を前面に立てられる。そうすると、結局ソ連脅威に対応する、そういう思想になってくれば、いわゆる問題の所要防衛力構想に転換するものではないかと私は心配せざるを得ないのです。この点はどうですか。
  372. 夏目晴雄

    夏目政府委員 幾つかの御指摘があったわけでございますが、私ども決してソ連を仮想敵国であるとか対象脅威であるとかということではなくて、客観的な事実として、わが国周辺におけるそうした国々の軍事力の増強あるいは著しく活発と見られるというふうなことを指摘したつもりでございまして、国際情勢が一段と厳しくなっているということの一つの事象として例示したわけでございます。  それから第二点の、所要防衛力への転移を図るのではないかということでございますが、現在、私ども再三申し上げますように、いわゆる基盤防衛力構想というものをとっておる。大綱の水準に達成することが当面われわれに課せられた一番大きな目標であるというふうに理解しておりますので、それ以上のことをいま考えておるということは毛頭ございません。
  373. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただ、客観的には私が心配しておるような事実はあるのですよ。  たとえば、ことしの四月十九日に、元ペンタゴンの顧問であるウィリアム教授が来られて記者会見されて、こういうことを言われております。自衛隊の任務は、世界有事の際、極東ソ連軍の太平洋進出を封じ込めることにある、こうアメリカ側は指摘しているのです。アメリカ側のこの種の指摘はたくさんあります。私はここへ示してもいい。  だから、これからのアメリカ側の要請は、今度の五六中業を見てもわかるとおり、所要防衛力構想に移せという強い要求があると私は思うのですよ。それを防ぎ切れるのかどうか、非常に危惧がある。もしこれを防ぎ切らなかったら、いわゆる基盤的防衛力構想の必要最小限度とかあるいは限定的小規模侵略対処、これが基盤的防衛力構想の一つの柱ですね、こういうものがなくなってしまうのですね。つまり、いままでは専守防衛あるいは水際というか、水際防衛戦略であった。これが、いよいよ基盤的防衛力構想が変革すれば、変質すれば、当然前方防衛戦略に変わらざるを得ない。そういう危惧に対してはどうですか。そういうことはないと言えますか。
  374. 夏目晴雄

    夏目政府委員 具体的な場としまして今年の八月にいわゆるハワイ協議が行われるわけでございまして、その場におきまして日米間においていろいろ防衛をめぐる諸問題についての話し合いが行われるわけでございますけれども、私どもとしては、わが国の防衛力整備の考え方、基本的な方針というものを説明をして御理解をいただくということが一番大事なことであろうというふうに理解しております。
  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私のこの問題に対する結論を憂慮とともに明らかにするとするならば、私は、五六中業は実質的にはすでに基盤防衛力構想から所要防衛力構想に変質しつつある、そう見ざるを得ないのであります。したがって、戦略も水際防衛戦略から前方防衛戦略に変わりつつある。つまり、この五六中業はいわゆる防衛計画大綱見直しの先取りをすでにしておる、こう言わざるを得ないのです。私がこういう結論を持っているのは、以下質疑を通じて明らかにしたいと思います。  次に、もう一つの歯どめであるGNP一%の問題であります。先ほどの民社党の同僚委員質問に対して官房長官が答えておられましたが、何のことかさっぱりわかりませんね。防衛庁長官の方は、当分ということだから、もし一%を超える状態になったらそのときに政治判断をお願いする、こういう答弁をなさいましたね。そうですか。GNP一%の問題です。
  376. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 基本的には、当面GNP一%を超えないことをめどとするという昭和五十一年の閣議決定については現在変える必要はないということで、われわれはその判断のもとに今回の五六中業を作成したのでございます。
  377. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃないでしょう。それはわかっています。もし超えるような事態のときには、これは当分という言葉がついておるから、ある時点でそういう事態が起こったときには政治判断をお願いするとさっき民社党委員質問に答えられたじゃありませんか。
  378. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 当面という言葉があるとおり、将来経済事情等の変更があった場合においては検討されることがあるだろう、そのように考えておりますという意味で申し上げました。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと数字の点をお伺いしておきますけれども、先ほどいろいろ説明があったが、五六中業の正面装備費四兆四千億から四兆六千億、この内訳をはっきりしてください。つまり、五六中業期間中に支払われるのは幾らで、その他は幾ら、この二つでいい。
  380. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほど御答弁申し上げたとおり、この五六中業期間中における正面経費については四兆四千億円から四兆六千億円であるというふうに申し上げました。  このうちの中身を若干分解して申し上げますと、うち既定分、いわゆる五十七年度予算から五六中業に繰り越される分が一兆四千億円、それから新規の分が三兆円から三兆二千億円、そして後年度負担が二兆三千億円から二兆一千億円ぐらい、こういうふうなことが一応の試算として私ども持っております。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、五六中業兵器調達の総額というのは五兆一千億から五兆五千億、そういうことですね。
  382. 夏目晴雄

    夏目政府委員 期間内の新規契約額というのは、大体五兆三千億ぐらいではないかというように見ております。
  383. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここにも非常にわかりにくさがありますね。実際の兵器調達は五兆円何がし。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、あなた方の説明では、正面装備費は四兆四千億から四兆六千億ぐらい。この差というのはわかりにくいですよ。いまのような説明をはっきりしてもらわないとこれはわかりにくい。つまり、考えようによったらばわりと小さく見せかけているんじゃないかというふうに私は思いました、この内訳を調べてみまして。  それで、いいですか、その総額十六兆何がし、これがもし既定の事実として、そして五十七年度の防衛予算二兆五千八百六十一億ですか、それを基底に考えていけば、大体伸び率は六・七から八%程度になる。そこでGNPがどうなるか。これはその七カ年計画の五・一%をとっているのでしょう。これはその見直しがいまから始まりますが、これはこういう数字にはならぬ、四%ぐらいになる。そうすると、だれが計算してみたって、私も計算してみた、マスコミさんも計算している、だれが見たって、GNPの一%という枠を守るためには、GNPが五・一%であって、そして防衛費の伸び率の方は六・七%以下でなくては、だれが計算したって超えます。だから皆さん全部、野党の皆さんが、必ずや五十七年度は――実質GNPは来年六月にはわかりますよ。そうすると、もうほとんど一%近くなる。この二兆五千八百六十一億、これがGNPが二百六十兆になったらどうですか、ほとんど一緒でしょう。二百七十七兆見込んでいるけれども、大体二百六十兆ぐらいになるはずですよ。そうすると、ほとんど五十七年度で一%に近い。だから来年度、再来年度、もう間違いなく、だれが計算したって、そうなるのです。いやこれはやってみなければわかりませんということではないのです。  そこで長官、このGNP一%という枠が過去どういう経過でここに来たか、御存じですか。GNP一%という考え方が出てきたのは一体いつごろですか。
  384. 夏目晴雄

    夏目政府委員 私も必ずしも古いことを的確に記憶しているわけではございませんけれども、たしか昭和三十年代にもすでに、当時は国民所得との比較において防衛費のシェアが二%ぐらい欲しいとかいうふうな議論があったということは記憶があります。それで、今回の一%が昭和五十一年に決められたのは、「防衛計画の大綱」が決められて、しかもその中には経費についての規定というのは何もなかった。それまでの一次防から四次防までの政府決定の計画には、一応経費計画というものがあったわけでございます。そういったものがなかったことに対する御批判、それから当時まだわれわれの防衛予算というのはGNPに対して一%どころか〇・九%そこそこであったということから、一%にはまだ相当の開きがある、何とか一%まではしたい。もちろん一%以下に抑えたいというふうな御意見もあったと思いますが、そういうふうな経緯を経て、あの五十一年の国防会議、閣議の決定がなされたというふうに記憶しております。
  385. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大まかなところはそうです。ところが、その中のやりとりというのは実に重要なやりとりをやって、それが一つ一つ積み重ねられてこの一%以内というのが来たのです。これは簡単に外せるものではないのですよ。いいですか。  一番最初に、おっしゃったとおり三十年代は国民所得でやりました。そして二次防の場合は二%というような論争が行われた。私もいろいろ調べてみた。このGNP一%という言葉が最初に出てきたのは四十三年十一月十二日。まだほかにもあるかもしれませんが、私が調べた限りでは四十三年十一月十二日、衆議院内閣委員会、亡くなられた受田さんの質問に対して増田長官が答えている。どう答えているか。「まず、GNPの一%ぐらいはという感じをいたしております。」ここから始まった。  それから、四十五年九月二十九日、参議院内閣委員会、中曽根答弁です。「大体一%前後ということが、国民経済との関係あるいは他の諸政策との関係を見て、まあまあ妥当な線だ」「そういう一%ということを頭に置いたわけであります。」これが中曽根答弁ですよ。  それから今度は四十七年三月七日の衆議院予算委員会。これは私の質問を例に引いて恐縮ですけれども、江崎長官が私に答弁された。どう答弁されたか。「GNPについては、三次防当時から一つの不文律として」、いいですか、「一つの不文律として、大体GNPの一%以下」こう答弁されておる。それからさらに、従来、三次防においてはGNPの一%以下、大体一%程度ということが一つの標準のような形になっております。こう、だんだん確立していった。そして、それから田中総理の答弁もそれに似たようなことがずっと積み重ねられた。  そして、先ほど申しました四十八年二月一日の防衛庁長官が出された、先ほどの「平和時における防衛力」というあの文書。文書で、正式の文書として出てきた。「「平和時」の防衛力については、憲法上や政策上の制約があるほか、特に、経費がGNPの一パーセントの範囲内で、適切に規制されることを予想し」「無理なく整備されるものでなければならない」。「なければならない」と、ここで初めて文書として出てきたのです。いいですか。  そして、これらの論争を経て五十年九月、これは坂田防衛庁長官が民間人の方々も入れてその長官の諮問機関をつくられた。いわゆる防衛考える会。ここではいろいろ論議して、まとめたやつが出た。ここにどう書いてあるか。ここに本がありますよ。これですよ。ここにどう書いてあるか。いいですか。五十年の九月です。(四)のウというところに「防衛費の物差し」というのがある。「GNPの一パーセント以内」。説明は、「防衛費として、国民の支持が得られる限度は、GNPの一パーセント以内が適当ではないだろうか。現在のように、経済成長が鈍化しているときはもちろんのこと」、いいですか、ここですよ。「現在のように、経済成長が鈍化しているときはもちろんのこと、順調なときでも一パーセントを超えるとなると、国民の共感を得るのはむずかしい」。この結論を坂田長官は高く評価して――いいですか、GNPの分母が変わったらこれは変わるのだというふうな、そういうことじゃないのですよ。長官、よく聞いておってくださいよ。「現在のように、経済成長が鈍化しているときはもちろんのこと、」こうなっているのです。ということは、分母が少なくなれば分子も少なくするということですよ。そして一%以内を守る、これがずっとこの十年来われわれが積み重ねてきた一つの成果なんだ。歯どめなんだ。  それをきょうの答弁は何ですか、あれは。これは超えるかもしれぬが、超えたときはそのとき判断してもらう、そんな簡単な答弁で、いままでの十年間の積み上げというのは一体どうなるのです。どうなるのです、これは。冗談じゃないですよ。  それで私は、ここでもう一つ申し上げたいことがある。どうしてこのGNP一%枠を超えるようになったか。これは、防衛計画大綱の達成時は実は明示されていないのですよ。そうでしょう。どうですか、その点は。
  386. 夏目晴雄

    夏目政府委員 「防衛計画の大綱」の水準を達成をいつまでにということの明示されたものはございませんが、当然のことながら、この「防衛計画の大綱」に盛られた防衛力というものは、平時における必要最小限度の防衛力というふうなものでございますので、私どもとしてはできるだけ早く達成したいということをかねがね申し上げておる次第でございます。
  387. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方はどういうわけか知らぬけれども、無理して早く達成しようとしておる。五三中業だって、一年前倒しをしたでしょう。この期間を短くしようとするから無理が起こるのです。  ところが、その防衛計画大綱の基礎になった基盤的防衛力構想、これのまた基礎になった「平和時における防衛力」、この文書には何と書いてあるか。いいですか、聞いておってくださいよ。「特に、経費がGNPの一パーセントの範囲内で、適切に規制されることを予想し、」これは先ほど言ったが、「無理なく整備されるものでなければならない」。無理しちゃいかぬということをここで言っている。もとをただせば、全部アメリカ側の要求によってこんなに急がれたのではないですか。これをスローダウンすればいいのですよ。何もむずかしいことはない。つまり、分母が少なくなれば分子を少なくする。スローダウンするか、あるいは削減するかですよ。分母が少なくなったときは分子を少なくする。つまり、スローダウンするか、削減するか、そして一%以内を守るか、はっきり答弁してください。
  388. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず第一点にお断りしなければなりませんのは、私どもの五六中業というものは、あくまでも陸海空自衛隊の正面装備を中心にした主要事業での積み上げを行っているというものでございまして、それ以外の後方経費あるいは人件糧食費等についてしさいに積算をしたわけではございません。ただ、先ほど御質問がございましたので、私どものところで試算したもの、仮に大まかに計算したもので十五兆六千億から十六兆四千億ということを申し上げたわけでございますが、この数字自体は、五六中業の正面装備と違った非常に不確定な要素を含んでおるわけでございます。正面自体も二千億の幅を持った計画でございまして、その点、御理解いただけると思うのです。そういうことが第一点。  それから、GNPの伸びにつきましても、現在政府がとっておりますところの経済見通しあるいは経済社会発展計画のフォローアップ見通し等によれば、現在五・一%の伸びが望まれるだろうということがございますけれども、いまそれに対して、私どもが大まかに試算したものでもって一%を超すか超さないかということを短絡的に単純に断言することは、まだ早いのではないかと思っているわけでございます。
  389. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそういうことを聞いていないのです。さっき言ったとおりですよ。防衛考える会の答申にもあるとおり、GNPが低くなったときでも一%は守る、これが国民の共感を得る道だと書いてある。だから、私が聞いているのは、GNP一%以内、これはあくまでも守るか、それを聞いているのです。
  390. 夏目晴雄

    夏目政府委員 先ほどちょっと答弁漏れがございまして……。  先ほどのような考え方でございまして、いま一%の国防会議、閣議決定の線をすぐ変えていただかなければならないと私ども考えておりません。
  391. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことでは歯どめにならないのですよ。  これは総理を呼ばぬとわからぬけれども、分母が変わったら結果としては一%を超えることもあるかもしれない、これは参議院内閣委員会における答弁でしょう。防衛庁長官、この総理答弁の真意は一体何ですか。
  392. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 まず、五六中業の作業は、昨年の国防会議で了承されたときに、この期間内に「防衛計画の大綱」を達成することを基本として作業をすべしという了承のもとに始めたわけでございまして、その目的をぜひ達成したいということでつくり上げたのが今回の五六中業でございます。それとGNP一%というのは、これまた楢崎先生るるお話しいただきましたように、長い間の積み重ね、先輩諸兄の積み重ねの中から出た重要な閣議決定でございます。この両方が矛盾することのないように、最大限の努力ということで今回のお示しを申し上げております五六中業がありまして、その作業の中身も現在のところはこの閣議決定を変更する必要はないという判断のもとにつくり上げたわけでございまして、基本的には、われわれは、このGNP一%の閣議決定は変える必要はないという判断のもとに立っております。  ただ、先ほど来お話しのように、この決定は、その中に「当面」という言葉がありますように、固定的な期限を予定したものではなく、経済状況等内外諸情勢の変化に伴い、必要があると認められる場合には改めて検討されるべきものであるということを考えていることも事実でございますけれども、現在は、われわれはこの五六中業の作業の過程において一%の閣議決定を変える必要はないというふうに判断をしておるところでございます。
  393. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、現在のところというのが、あなた、つくのですよ。  じゃ、質問を変えましょうか。  五六中業期間中においては絶対にGNP一%の枠を超えることはない、もしそういう状態になれば分子を変える、こういうことです、内容的に。これが約束できるかということを聞いているのです。何回も言いますけれども、十年来僕たちがさんざんこの国会を通じて積み上げてきた国民に対する一つの公約なんです。それが一朝にしてここであいまいに、いまのところはとか、そういうことでは私は承服できないです。国民に対しても責任を果たせない。もしあなたがいまのような答弁を繰り返されるのだったら、私はこれから先の質問はできませんよ。総理からはっきりした統一見解を聞きたいですね。何のために十年間やってきたか、この問題について。冗談じゃないですよ。五六中業期間中は絶対にGNP一%を守ります、もしこれが壊れそうなときは分子を変えてでもやります、そう断言できますか。
  394. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 まず第一点は、一%の閣議決定を変える必要はないという判断、これが第一点。  それと、将来の問題をどうかと言われたときに、私は次のことを申し上げたわけでありまして、五六中業に関しては一%を変えることは必要ないというふうにはっきり申し上げておきます。
  395. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし少し念を押しますよ。  必要ないということは、五六中業中に一%の枠は守ります、もし経済情勢で変化が起こるようだったら、分子の方を変えてでも守ります、そういう意味ですか。
  396. 夏目晴雄

    夏目政府委員 大臣もいまお答えになりましたように、私どもは、現在の時点で五十一年の国防会議の決定、閣議の決定をすぐ直していただかなければならないとは思っておりません。ただ、将来のことをいまぎりぎり言われるわけですが、私ども、将来の仮定の問題に対していま直ちにどうこうすべきだというふうな材料もまだございませんので、いまのところはとにかく変える必要はないと思っております。
  397. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、わけのわからぬ将来を言っているんじゃないのですよ。五六中業期間中と言っている。これをどうかと言っているのです。質問の方ははっきりしているのですよ。
  398. 夏目晴雄

    夏目政府委員 そういった趣旨に基づいてぎりぎりの努力をしている、またすべきであるというふうに考えております。
  399. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ああいう答弁では納得できませんね。わからぬじゃないですか。わかりますか、皆さん。わからないでしょう。わからぬということがわかったでしょう。いいですか。これが明確にならないと、われわれは国民に対する責務を果たせないですよ。何のために十年間論争を積み上げてきたのですか。ここを明確にしていただかないと、これから先のシーレーン問題あるいはリムパック問題に進むことができませんよ。絶対できませんよ。審議ができないです、この金額の点が明確にならないと。費用の点が。
  400. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、五六中業は、昨年の国防会議で、この期間中に「防衛計画の大綱」の水準を達成することを基本として作業をすべし、作業をしてよろしいという了承のもとに始めた結果、お示しを申し上げておるような内容のものになっておるわけでございます。また一方、GNPは経済の状況によって変化するものであること等を考慮するならば、この期間中の防衛関係費とGNPとの関係を正確に見通すことはきわめて困難でございます。しかし、われわれといたしましては、五六中業を着実に実施することを基本としながらも、防衛庁内部で、自衛隊内部でできる限りの効率化、合理化等を図って、極力財政負担の経減等にも努めて、先ほど来の、長い間の積み重ねでありますGNP一%に関する閣議決定と矛盾することのないよう最大限ぎりぎりの努力をすることにしておるわけでございまして、現在のところ、昭和五十一年のGNP一%に関する閣議決定を変更する必要はないと判断をしておる、これでぜひ御理解を賜りたいと思います。
  401. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは私の質問に対する答弁じゃないですね。私は明確に、簡単に言っている。五六中業期間中GNP一%の枠は守り通しますと、こう約束できますか。そのことについてイエスかノーだけでいいです。
  402. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 五六中業期間中の防衛関係費とGNPとの関係を正確にいま見通すことはきわめて困難でございますので、今日の時点では、われわれは昭和五十一年のGNP一%に関する閣議決定を変更する必要はないと判断をしておるということで、ぜひぜひ御理解を賜りたいと思います。
  403. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何としても私の質問に答えられないのですね。いいですか、これからのGNPがどうなるかわからぬからということは、裏を返せばGNPいかんによっては一%の枠を超えることもあるかもしれないということじゃないですか。そうじゃないですか、裏を返せば。  私が言っているのは、GNPがどうあろうと、GNPが下がれば分子の方も下げるんだ、そして一%を守ると約束できるかということを聞いている。もし、あなたが約束できないならば、私は総理にここに来てもらって、この点を明確に確約をしてもらいたい。いまのような、現在のところとか努力目標とかいうことじゃだめです、そんなことじゃ。あいまいでだめですよ。
  404. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 一%のことはいまお答え申し上げたとおりでございますけれども、反面、防衛庁なり防衛庁長官としては、五六中業の期間中に「防衛計画の大綱」に定められた大綱の水準を達成する、しなければならないというような努力目標もございますので、それの二つが相矛盾しないようにつくり上げたのが今回の作業でございまして、両方が矛盾しないような形でいまつくり上げた。したがって現在のところ、一%の閣議決定を変える必要はないという判断をしておるということでございます。
  405. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何度質問しても答えていただけませんね。一%以内を守り通します、五六中業期間中は、そう答弁できない限りは、私は先に進めませんね。国防会議議長をひとつ呼んでください。そしてこの点を明確に統一見解として示してもらいたい。重要な点です、これは。だれもが心配している点だ。  私は以下、シーレーンの問題、それからリムパック問題に進みたいのです。シーレーンというのは今後重要な問題になる。それは装備と関係する。装備は費用と関係する。だから、この点が明確にならないと、いま私が言ったシーレーン防衛問題は審議ができないのですよ。だめです。  いいですか、もう一遍言います。  総理は参議院内閣委員会において、分母が変われば結果的に一%を超えることもあるやに聞き取れる――新聞は全部そう書いておる。そういう答弁をなさっておる。私は総理の真意を聞きたい。だめですよ、これは。
  406. 石井一

    石井委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  407. 石井一

    石井委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。     午後五時五十九分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕