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1982-03-30 第96回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月三十日(火曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 山崎  拓君    理事 上田 卓三君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君       有馬 元治君    上草 義輝君       亀井 善之君    塚原 俊平君       吹田  愰君    細田 吉藏君       岩垂寿喜男君    上原 康助君       鈴切 康雄君    木下敬之助君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田邉 國男君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房管理室長   海老原義彦君         内閣総理大臣官         房総務審議官  柳川 成顕君         総理府恩給局長 島村 史郎君         青少年対策本部         次長      浦山 太郎君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     福田 昭昌君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         厚生省援護局庶         務課長     岸本 正裕君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   榊  利夫君     渡辺  貢君 同日  辞任         補欠選任   渡辺  貢君     榊  利夫君 同月三十日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   鈴切 康雄君     坂井 弘一君     ――――――――――――― 三月二十六日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第二六号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)  行政事務簡素合理化に伴う関係法律整理及  び適用対象消滅等による法律廃止に関する  法律案内閣提出第七二号) 同月二十九日  公務員賃金抑制定員削減中止に関する請願  (藤田スミ紹介)(第一六九九号)  国民生活を守る制度の後退する行政改革反対に  関する請願渡辺貢紹介)(第一七〇〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三六号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。田邉総理府総務長官。     ―――――――――――――  恩給法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 田邉國男

    田邉国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額増額するとともに、戦没者遺族傷病者等処遇改善措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の一層の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額増額であります。  これは、昭和五十六年度における公務員給与改善基礎として、昭和五十七年五月から恩給年額増額しようとするものであります。また、公務関係扶助料最低保障額傷病恩給基本年額等については、同年八月からさらに増額を行い、公務扶助料については遺族加算を含み年額百三十二万円を保障することといたしております。  その第二点は、普通恩給等最低保障額増額であります。  これは、長期在職老齢者に係る普通恩給最低保障額昭和五十七年五月から七十九万二百円に引き上げ、その他の普通恩給及び普通扶助料最低保障額についてもこれに準じて引き上げるほか、さらに、同年八月からは長期在職者に係る普通扶助料最低保障額を五十二万円に引き上げ、その他の普通扶助料最低保障額についてもこれに準じて引き上げることといたしております。  以上のほか、扶養加給増額等所要改善を行うことといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 石井一

    石井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 石井一

    石井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  6. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初に総理府総務長官にお尋ねいたしますが、今度提出されました恩給法の一部改正法案については、どの部分が一番重点的に配慮されたのか、その経緯についてお聞かせ願いたいと思います。
  7. 田邉國男

    田邉国務大臣 お答えをいたします。  昭和五十七年度における恩給改善措置は、例年にない厳しい財政事情のもとで、公務員給与抑制措置臨調答申を勘案しつつ、第一に経済情勢の変化に伴いまして年金恩給実質価値を維持するため、公務員給与改善基礎として恩給年額増額することといたしました。  第二には、戦没者遺族支給する公務扶助料傷病者恩給改善をいたしまして、これらの者に対する国家保障の一層の充実を図ることといたしました。  こういう基本的な考え方のもとに、この趣旨にのっとって所要措置を講ずることといたしております。
  8. 島村史郎

    島村政府委員 いま大臣が申されたとおりでございますが、その趣旨を受けましてさらに若干数字的な御説明をいたしますと、まず仮定俸給引き上げでございますが、これにつきましては百二十八万円以上の仮定俸給の方に対しましては四・五%プラス一万二千八百円ということでベースアップを行っております。それから、百二十八万円未満の方につきましては五・五%のベースアップ実施をいたしております。  それから最低保障額引き上げでございますが、これにつきましては、普通扶助料につきまして現行年額六十万七千円を六十四万まで寡婦加算を含めましてかさ上げをいたしまして、この倍率が五・四%ということでございます。  また、公務扶助料につきましては、現行月額十万三千円でございますが、これを十一万円まで上げまして、これの増加率が六・八%ということでございます。  なお、傷病恩給につきましては、この公務扶助料に準じましてそれぞれ増額を行いまして、六・三%から七・二%の範囲においてそれぞれの増額を行ったものでございます。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは長官、非常に厳しい財政情勢というものの拘束の方が強かったのか、あるいは、恩給改善をぜひしなければならない、そこで恩給のあり方として当然このような方法でこれだけのことは改善しなければならない、こういうふうに考えたときに、そのどちらのウエートが大きかったか、その辺お聞かせ願いたいと思うのです。
  10. 島村史郎

    島村政府委員 現在の状況下におきましては、臨調答申もございますように、非常な国民的要望が一方ではございます。しかし他方では、恩給受給者のことを考えまして、これらの方々が非常に高年齢であるというようなことを考えますればそれなりの対応をしなければいけないということで、私どもとしては、両方のことを考えて措置をしたというふうに考えております。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 このことはまた後で若干議論したいと思います。  そこで恩給仮定俸給、これは公務員の総給与基準として決められたのかどうか、仮に総給与基準として決めた場合はどのくらいの開きが出るのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 島村史郎

    島村政府委員 現在の恩給仮定俸給は、本俸基準にして考えておるわけでございます。先生のおっしゃいますのは、本俸だけではなくしていわゆる手当まで含めて仮定俸給を考えたらどうか、こういう御趣旨かと思いますが、その場合に、本俸に諸手当を含めて仮定俸給を考えるというときに二つ方法があるのではないかというように考えられるのです。一つ仮定俸給そのものに諸手当を入れるという考え方と、それからもう一つは、諸手当を含めた総給与額伸び率で考えるという、この二つ考え方があるかと思うのですが、私どもとしましては、前段の、恩給に諸手当を含むということは、実はこれはもう明治以来ずっと本俸だけでやっているということで、これは非常にむずかしい話ではないかというふうに考えるわけです。  それからもう一つの、諸手当を含めた率で考えたらどうか、こういう考え方があるかと思いますが、これにつきましては、それがいいかどうかというのは、そのときどきの経済情勢等にかんがみまして必ずしも一律には言えないのではないかというふうに考えます。いままでの例を見ましても、そういう諸手当を含めた額で率を計算しても、本俸でなにした方が高いというときもあるわけでございまして、必ずしもそれは一律には言えないのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いろいろな一つの流れというものがあることは承知しておりますが、しかしこの恩給法の第二条ノ二というものは大体公務員給与水準とこの恩給との間の格差をなるべく生じさせないように配慮された条文だと思いますけれども、そういう観点から申しますと、やはり旧弊にこだわらないでどんどん新しいものを考えて、そうしてその均衡を図るというのが非常に重要じゃないか、こう思いますので、その点についてはひとついかがなものでしょうか。
  14. 島村史郎

    島村政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思いまして、この恩給法の二条ノ二を読みましても、ここには、年金たる恩給の額については国民生活水準あるいは国家公務員給与、物価その他の諸事情に著しき変動が生じた場合において適当な措置をしろ、こういうふうなことが書いてございます。そういう意味において、私どももいろいろな立場から総合的に判断をしてまいる必要があるかと思いますが、現段階のこの経済情勢から申しますと、昭和四十八年から公務員給与のベースを用いてベースアップをやっておるわけでございますが、現代のような安定経済の中においては、公務員給与ベースアップの率を用いてやるのは現段階では妥当なものではないかというふうに私は現在は考えておるわけでございます。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、第九十四国会で改正されたときの政府から出された案というのは、五十六年の四月分から引き上げられたわけでございます。ところが、今度出された案は、五十七年の五月分から引き上げられることになっているわけです。一体この一カ月おくれたということはどういう理由によるものでしょうか。こんな簡単に、そのときそのときの都合によって一カ月おくらせたり三カ月おくらせたりできる筋合いのものなんでしょうか。その辺ひとつお伺いしたいと思います。
  16. 島村史郎

    島村政府委員 昨年は先生のおっしゃるとおりに実は四月からベースアップを行っておりまして、私ども昭和五十二年からそういうふうな四月からのベースアップをやっておるわけでございますが、五十七年度につきましては、先生も御承知のとおり、五十七年度の恩給費増額につきましては何らかの抑制措置を講じろ、こういう臨調答申が実はございました。そういう臨調答申を受け、さらに国家公務員給与につきましても、これがボーナス分につきましてはベースアップを行わないという決定が実はされたわけでございます。  そういう意味も含めまして、私ども臨調答申を尊重し、あるいは国家公務員のそういう給与が若干抑制されているということを勘案いたしまして、四月から五月ということで、五十七年度においてはやむを得ない措置として一応そういう措置をとらしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 恩給で十分食っていけるほどの金額を支給しているならば、若干がまんしろということも話はわかります。しかし、総じて下級兵隊の方はとても恩給だけでなど食っていけない。これは現状に照らして明白だと思います。そういう者に対して、あの臨調が言ったからこれはひとつ抑制しなければならない、こういう思想がどこから生まれてくるのかと私は思うのです。本当にあり余るほどの人ならばそこは抑制しろと言われてもいいけれども、いまそれ以上に上げていただいても食っていけないような実態の中で、抑制しろ。そしてそれはただ一カ月の抑制だけで終わっているわけじゃないのです。実質公務員と比べると、公務員は四月にさかのぼってもらえるわけですから、ここで今度は一年の差がついておる。厳密に言うと、五十七年度からは一年一カ月のおくれの支給ということになるわけですよ。そうすると、この損失分はどういうふうに考えておられるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  18. 島村史郎

    島村政府委員 私どもも一カ月おくらせるということは必ずしも本意ではございませんが、しかしながら、現在のそういう臨調答申あるいは厳しい財政状態等を考えますと、そういう恩給受給者気持ちもわかりますけれども、しかし一方ではそういう社会的情勢としてそういう問題がございますので、その辺をいろいろ勘案して今回一カ月おくらせ、こういうふうに考えておるわけでございまして、その辺は御了承をお願い申し上げたいというふうに考えます。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは了承してくれと言われても、そういう筋合いのものではないと思うのですが、ただ問題は、このことについては去る第九十四国会附帯決議があるんですね。そして特に一年おくれをなくすように、さらに、各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること、こういうことが決議されているわけです。これは当然、大臣が尊重しますということを委員会に誓ったわけですから、それに即した一つの回答が次の国会では出てこなければならないんじゃないか、こういうふうに私は思うのですが、こういうものに対する誠意は全然見られない。それどころか、逆に一カ月おくらせられて、そして実質臨調の言うままになって、この恩給法第二条ノ二の精神というものは完全に踏みにじられたという感がするわけでございますが、こういうことでは本当に皆さんの自主性というものを私は疑わざるを得ないわけです。いかに両方を考えたと言われても、実際は臨調の方をよけい考えて、そして恩給を守る立場の方を軽く見た、こういうふうに評価されても仕方がないじゃないか、こう思いますが、その点はいかがでしょうか。これはひとつ大臣からお伺いしましょう。
  20. 田邉國男

    田邉国務大臣 ただいま局長から答弁をいたしたわけでございますが、私といたしましても、恩給改善実施の時期の一本化というものはかねてから強い要望があることは十分承知をいたしております。また、事務簡素化という観点から見ましても望ましいものであると考えておりますけれども、一方におきましては種々の制約もございますので、今後、改善に当たりましては、これらの点を総合的に勘案をいたしまして対処をしてまいりたいと考えております。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、ただいまの長官お答えは前向きに諸般の問題について検討する、こういうふうに受け取っていいわけですね。
  22. 田邉國男

    田邉国務大臣 いまお答えを申し上げましたように、諸般のいろいろの状況等もございますので、私ども十分この点を勘案いたしまして対応をしてまいりたい、こう考えております。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その対応というのはどうなんですか、前向きに対応するのと、そして対応はしてみたがどうにもならないという、初めからある結論を見ていてここだけの言い逃れの対応なのか、その辺はどんなものなんですか。
  24. 田邉國男

    田邉国務大臣 五十七年度は御承知のとおりの対応になりましたけれども、五十八年度につきましては、この問題につきましてはできるだけ前向きに対応をしてまいるつもりでございます。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 非常に誠意のある御答弁をいただいてありがとうございました。  それでは次に移りますが、かつて代用教員をやられた方あるいは雇用員として学校などに奉職された方の勤務年限恩給期間通算してはどうか、こういう問題ですが、これは先生方と同じ仕事をしておられたわけですから、ただ形式上の身分が違うだけで、給与体系でも皆その中から支払われておったし、これは当然勤務年限というものを恩給期間に繰り入れるべきじゃないか、通算すべきじゃないか、こういうふうに私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  26. 島村史郎

    島村政府委員 恩給法の規定によりますと、恩給というものは官吏または軍人というふうに一定身分を持った者に対して、要するにその人が退職した場合に支給するというふうに考えておるわけでございまして、結局、一定身分を持っているかどうかというのが実は非常に大きな一つの法のたてまえ上の原則になっておるわけでございます。代用教員というのはそういう官吏ではございませんで、普通これを雇用人というふうに実は私ども考えておるわけでございます。  恩給法のたてまえから明治以来この雇用人に対しては恩給を支払っていないというのが原則になっておりまして、非常にむずかしい、またそういうふうに措置するのが現在適当ではないのでございますが、しかし、戦前の小学校に置きました用人でございます要するに代用教員で特別の事情がある場合には、準教員として、職務を代行する者として採用され、教職にあってその勤務の形態や任用条件正教員補助者として正教員とは著しく異なっておるわけですけれども、結局そういう正教員たる免許状を有しておってそういう代用教員をやっておったという者については、私どもは救済の措置をとっておるというのが実は現状でございます。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 資格ということでは法律のたてまえはいたし方ないわけですが、ただ私が考えるのは、学校先生という同じ教壇に立って同じように生徒を教えて、そして同じような精神学校に奉職している、こういう者が資格だけで区別されていくということにどうもすっきりしないものがあるわけです。だから、そういう場合は何か別な法律を一部改正するかあるいは何らかの措置実態に合わせて救済する方法はないだろうか、こういうふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  28. 島村史郎

    島村政府委員 これはもう非常にむずかしい問題でございまして、何回も申しますように、要するに恩給法が大正十二年にできましてからそういうことでずっときておるわけでございます。  そういうことで一つ資格というものが非常に重要な恩給法上の基本原則でございまして、先生がおっしゃられるようなことも私ども気持ちとしては実はわかるわけでございますけれども、現段階におきましてはこれはなかなかむずかしい問題であるというふうに考えます。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この通算の問題については次にも出てきますので、総体的に論じてまいりたいと思います。  そこで、これは何回かやられた経緯がありますけれども、いまだ実現されておりませんのでさらに取り上げるわけでございますが、かつて軍人軍属等公務勤務されておった人々の勤務年限通算年金通則法を改正して通算すべきだと私は思うのでございますが、これについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  30. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 先生お尋ねの問題につきましてはこれまでもしばしば御指摘をいただいておりますので、私どももその問題の経緯趣旨十分承知をしておるつもりでございますけれども、ただいま御指摘のように通算年金制度対象にいたしまして年金支給をするということになりますと、現在の制度ではそれぞれの制度から通算年金を出すということになりますので、御指摘期間についてどこの制度から年金を出すかという問題になるわけでございますが、それを国民年金あるいは厚生年金制度によってそういう期間に対する給付もしたらどうかという御指摘といたしますと、これも私どもしばしば申し上げている点でございますが、厚生年金国民年金といういわば一般的な社会保障制度のもとで、しかも保険料を拠出していただいて給付をするという社会保険システムをとっておりますので、一定身分関係にある方だけを特別な扱いをするということはどうしても年金制度にはなじまないということでたびたび申し上げていることでございますけれども、そういう御答弁を申し上げざるを得ないというふうに考えております。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、いま実施されている公務員共済年金は、これは拠出制じゃないのでしょうか。
  32. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 確かに、公務員共済制度におきましては先生指摘軍歴期間通算をいたしております。これは、公務員共済制度恩給制度をそのまま引き継いだ恩給制度後身制度であるということで、通算といいますかそのまま引き継いでいるというふうに私どももお聞きをしておるわけでございます。  同じようなことは、たとえば厚生年金前身制度であります旧厚生年金制度、これが二十九年に現在の新しい制度になっておりますけれども、古い厚生年金制度を私ども厚生年金保険法でそのまま引き継いでいるということと同様の考え方によるものであるというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私の聞いているのは、公務員共済年金もこれは拠出制でやっているんじゃないか、国民年金厚生年金と同じような拠出制で、それを一つの基金として運用しているのではないか、こういうことを聞いているのですよ。
  34. 島村史郎

    島村政府委員 これは大蔵省の所管でございますけれども、これは先生のおっしゃるとおりでございます。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 少し勝手過ぎるんじゃないですか。自分たちの入っておる公務員共済年金には軍歴を全部通算して、そうして今度民間の方にはそれはとても制度上できない、こういう理屈が通るのでしょうか。  それじゃ、なぜ戦前法律を戦後の共済組合ができたときに引き継ぐことができたのですか。これは一たん中断しているのですよ。大日本帝国と民主日本国とではまるっきり違うのですよ。都合のいいときには引き継いで、都合の悪いのはそれは引き継ぐことができないという理屈が、国民の前で通りますか。敗戦のときにもうすでにこのことは終わっているのですよ。しかもその間、連合軍最高司令官からは廃止命令が出ているじゃないですか。それを自分たちが勝手につないでおいて、そして今度民間の方はつなげない、国民の前にこんな理屈通ると思いますか。この点はどうですか。
  36. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 先生指摘でございますけれども、私ども厚生省立場といたしますと、厚生年金国民年金、申し上げるまでもなくサラリーマンあるいは自営業者農民等方々のための制度でございますので、私どもは基本的にはそういう方々立場から私ども考え方を申し上げているわけでございまして、決して私ども公務員立場だけを云々してということではございません。厚生年金国民年金は一般的な方々に協力をしていただいて初めて成り立っておる制度でございますので、仮に特定の身分を持っておりました短期の公務員期間というものだけを持別な取り扱いをするということになりますと、それじゃ年金制度が発足する前にサラリーマンであった期間はどうするのか、あるいは軍属、準軍属として御苦労いただいた期間はどうするのかという、かえってサラリーマンなり農民の方々から見たら不公平が出てくるということで、御指摘の点はよくわかりますけれども厚生年金国民年金年金制度の中でその御要請におこたえすることは大変むずかしいということを申し上げているわけでございます。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大変おもしろい論理を聞きました。これは農民や一般から見たらかえって不公平だというふうに映ると言うが、不公平だと映っているからこうして私たちは代表して政府に迫っているのですよ。いまの方が不公平なんですよ。それをやってなぜ逆にかえって不公平になるのですか。どうもその論理がわかりませんね。  しかも、公務員共済年金というのは、同じように拠出制で運用しているのでしょう。そうしたら、これに軍歴通算したら、かつての分までこの中から出すことになるんじゃないですか。そんなこと、どこにつなごうが同じでしょう。もしそのつなぎ男が悪かったら、それは政府で責任をとればいいのですよ。問題は、法のもとに平等であるというその実感を国民にどう与えるかが政治のかなめなんだ。それをあなた方は、どれほどいままで陳情や議員連盟からそのことを言われておるかわからない、しかるに、一言半句これを変えようとしないという態度は、一体これはどういうわけですか。  私は、いままでの経緯をここで読み上げてみます。これは、かつて総務長官三原朝雄氏と軍歴通算議員連盟が会見したときの報告です。   八月九日午后五時総理府において議連を代表し、小林副会長、武藤事務局長、川俣健二郎代議士、貝沼理事が三原朝雄総務長官と面会し約一時間に亘り軍歴通算問題につき会談をしました。   その結果を報告します。   三原長官 現在総理府には、戦争に関係する事案とした これは、ちょっと語句が間違っておるかもしれませんが、そのとおりに読みます。  (1)日赤看護婦と陸海軍看護婦に関する慰労金の  (2)シベリア抑留者に関する救済の問題  (3)軍歴通算議員連盟に関する問題  (4)特務機関要員に関する問題  (5)満洲開拓青年義勇隊に関する問題  (6)一般空襲による戦災者補償の問題  (7)在外邦人財産補償の問題など七つの率案が持ち込まれている。そのいづれについても何簿かの結論を出さなければならぬと苦労しているが、順序としては先づ「日赤の看護婦」と「軍歴通算問題」を何んとかしなければならぬと思い、部下官僚に指示しているが、役人のサボタージュで仲々進捗せぬのが実状である。  (1)先づ日赤の看護婦の慰労金の件であるが、これは大臣自身が委員会で公式に約束したことでもあり、五十五年度の国家予算で調査費をつけるよう厳命した。   私としては陸海軍従軍看護婦も日赤看護婦と同様に扱うものと考えているが、現在、官僚が抵抗して事が運ばぬというのが実状である。役人は日赤の看護婦は徴用であり、陸海軍看護婦は自らの希望で雇われたものであるから、従軍の性格も違っており、同一に扱うわけには行かぬ、然も調査費をつけることは実現を前提とするものだから、調査費もつけるわけに行かぬと、大胆に対して反論しているのである。 こういうことなんです。これだって、できないできないと言って、いまできているんじゃないですか。  (2)軍歴通算議員連盟の要求に対しても、三木、福田両首相が前向きに措置することを約束しており、大臣としても、その要求は当然と考えているので、しばしば官僚に対して、その具体化を指示している。即ち「同じ軍隊で生活していたものが、一方はその期間年金通算され、一方は通算されぬというのは誰が考えても不公平である。君達自身もそう思うだろう、然らばこの不公平を救済するために、何等かの方法を講じなければならぬ、五十五年度予算に改めて調査費をつけるか、さもなければ、この種の問題を一切整理をするため、総理府長官の下に審議会を設置するか、そのいずれかを考えよ」と厳命している。然るに今日まで役人は、なしのつぶてで、何等の回答も持ってこない。これは大臣に対する徹底的な抵抗姿勢とみなければならぬ。   以上がいつわらぬ現在の状況であるというのが大臣の回答でありました。 こういうふうに言われておるわけです。中間を省略してもっと読みますと、その後で、  役人はこういう戦後処理を全部採用すると国家の総予算の二割もこれに割かなければならぬから不可能だといっているが、実際の腹は近く解散もあるし、大臣もかわってしまうので、このまま抵抗しておればよいと考えているかも知れぬが、私としては在職中に何等か芽を出しておくようにするから信頼してくれ こういうふうに言われておるんですよ。  そうすると、総理大臣以下各大臣のこの意思というものを全く無視して、言ってみれば国民の意思を無視して、そして官僚だけの法解釈によってこれに対してサボタージュをしておる、こう言われても仕方ないんじゃないですか。これについてはどう思いますか。
  38. 田邉國男

    田邉国務大臣 いま軍歴通算の問題でございますが、これまでも国会でいろいろ論議をされたところでございまして、かつての総務長官から民間の有識者にお願いをいたしまして、その意見を伺うということにしたわけでございます。それが、いまお話がございましたように、昭和五十五年の九月以来八回に及んで会議が開かれております軍歴問題研究会合ということで、一人一人の学識経験者からの意見を聴取しておる、・こういう状況でございます。  この問題は御指摘がございましたように、恩給制度共済組合制度、それから厚生年金、そしてまた国民年金制度に関連する大変むずかしい問題でもございます。有識者の方々から順次意見を伺っておるわけでございますが、相当深い論議をお願いいたしておりまして、私どももできるだけ早く結論を出して、そしてこの問題の解決を図りたい、こう考えておる次第でございます。したがいまして、現在その進行過程でございますが、できるだけ早い時期にこの問題の結論を私どもは出していきたい、こう考えております。  以上です。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで念を押しておきますが、これは三原長官だけでもないのですよ。総務長官小渕恵三氏も同じようなことを言って「当時の三原長官に申し入れをしたことは自分も記憶しており、今でもその気持ちにかわりはない。」ということで確認してある。こういう大臣同士が確認し合ったものを一官僚が知らぬふりで通せるのかという、これは本当に日本の一番悪い官僚国家の側面を私は暴露したと思うのですよ。大臣の権限というものをもっと権威あるものにしていただきたい。  何も法律がなければ、新しく実態に合うものをつくればいいのです。そのためにこうして立法府が国会を開いてやっているわけです。それを既成の法律にとらわれて全く融通のきかない、そして自分よがりな解釈ばかりをしておったのでは、国民がやりきれませんよ。ここで、これについては大臣からひとつ確たる御返答をお願いします。
  40. 田邉國男

    田邉国務大臣 いまお答えをいたしましたように、この問題につきましては大変いろいろ論議のあるところでございまして、私もこの軍歴問題の研究会合というもの、この各一人一人の御意見をできるだけ早く聞きまして、そして結論を出していきたい、こう考えております。  この点につきましてはいろいろと御指摘がございましたけれども厚生年金また共済組合制度、いろいろの問題を討議されておる、先生方も大変に深い論議であって、この問題は大変にむずかしい問題だということだけは、私どもも報告を聞いております。したがいまして、いま御指摘がございましたように、なるべく早く結論を出すような配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこでお伺いしますが、これは事務的な問題ですけれども、いわゆる軍歴通算ですね、国家公務員共済年金の中に、あるいは地方公務員も同じですが、その共済年金軍歴通算された場合、その通算分のお金はどこからどういうふうに出されるのですか。その処理の仕方をお伺いしたいと思います。
  42. 島村史郎

    島村政府委員 これは大蔵省の所管でございますが、一応整理資源ということで国庫から出ることになっております。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ほかの国民年金厚生年金で、同じ方法でできませんか。
  44. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 たびたび同じことで恐縮でございますけれども厚生年金国民年金の一般の被保険者の方から見ますと、どうしてそういう特別な期間をお持ちの方だけにそういう措置を講ずるのかということについては、コンセンサスを得ることがなかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、そちらの方は大臣が別途対策を講じるというお話ですからそれといたしまして、この恩給が一時廃止されて、それからまた二十八年に復活するわけですが、この間の取り扱いはどうなっているでしょうか。
  46. 島村史郎

    島村政府委員 二十八年に復活するまでは傷病恩給以外の者については全部停止になっております。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その期間通算には入らないのですか。
  48. 島村史郎

    島村政府委員 結局終戦直後から二十八年までは、これは何と申しますか支給が停止されたということでございまして、軍隊の方であれば昭和二十年の八月十五日で大体復員しておられるわけですから、これは勤務年限とは直接関係はない話でございます。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから私は都合のいい解釈をしていると言うのですよ。日本は負けたのですよ。大日本帝国はあの八月十五日になくなったのですよ。だから、戦前を否定する意味でそういうものについて最高司令官の指示があったのじゃないですか。しかも、サンフランシスコ条約が発効するまでの期間というものは国際法的に日本の主権は完全には回復されていないのですよ。そうすると、その期間というものは、独立国家としての本来の意味での軍人に対する法律というものは全く存在しないと解釈すべきでしょう。存在しないのに期間だけが通算されるというのはおかしいんじゃないですか。  私はこれは中断していると思うのですよ。皆さんの解釈をずっと見ていると、戦前にこうだったから戦後もこうあるべきだという解釈なんですよ。皆さんの頭の中ではまさに大日本帝国はそのまま延長されているのだ。ここで完全にストップしているのですよ。だから、戦前のものは一切切り捨てるなら切り捨ててしまえば国民は何とも言わないのです。自分たちのものだけをつないできたから、それじゃおれのものもつないでくれと言っているのですよ。その感覚がわかりませんかね。そこを説明してください、空白期間を。
  50. 島村史郎

    島村政府委員 いま私が申しましたように、結局戦争中から二十年の八月で大体兵役は終わっているわけでございます。シベリアから帰った人はその帰られた時点まででございまして、要するに二十年から二十八年まではそういう兵役はないわけでございますから、したがって、それは期間に算入するということはないというふうにいま申し上げたわけでございます。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いや、兵役はないからでなくて、これは最高司令官から支給を停止しなさいという指示があったでしょう。だからこれは兵役に関係ないじゃないですか。そういう資格者がいてもこれはだめですよ。しかしそのほかは許されているのです。一部の傷病者恩給というのはそのまま許されているのですよ。これはなぜ許されたかというと、傷病者はもう働く手段も何もないだろう、また戦争被害者としてこれは国際的にも当然救済しなければならぬという思想が中にあるはずなんですよ。ところがそうでないぴんぴんした軍人は、言ってみれば侵略戦争の一員ですよ。そういう思想が最高司令官の中にはあったということを見なくてはならないのです。  日本はサンフランシスコ条約によって初めて新日本が誕生したのですよ。それを昔の自分たちに勝手のいいものだけ持ってきてくっつけて、国民が納得しますか。そういうことをするなら、同じようなケースで一般の国民にもやりなさいと言っているのです。やれるじゃないですか、いま厚生省の先生は大変むずかしいことを言っているけれども。  しかも、日赤の看護婦と陸海軍の従軍看護婦を当時皆さんが何と言ったか。先ほども読んだように、片っ方は徴用であるから仕方ないけれども一方は志願だからできませんと断ってきたんじゃないですか。ところが、これも政治的な力と世論に押されて結局措置した。その措置の仕方はどうかというと、特殊な事情にかんがみとなっている。戦後の処理じゃないのですよ。戦後処理と言うと大変なものに波及するから、それを恐れて特殊な事情ということで逃げておる。本当にもう口先三寸でどうにでもしようというのがあなた方の考え方じゃないのですか。私どもから言ったら、戦争に関係あるものを戦争の後でやることは皆戦後処理ですよ。そういう言葉でごまかしても国民の本当の心はごまかせないのです。これについてはどう思いますか。
  52. 島村史郎

    島村政府委員 先ほど私は昭和二十年から二十八年の間の恩給とそれから兵役の問題を申し上げたのですが、私ども先生の言わんとせられておる趣旨がちょっとよくわかりませんので……。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私が言っているのは、いわゆる独立国としてでなかった占領下の日本において恩給法が機能を停止された、そのことによって、そういう期間通算するというのはどういう法律のたてまえによって通算できるのかというのですよ。全然法体系が違うでしょう、帝国憲法と平和憲法。そういう中でこの問題を考えていかないと、これは、スムーズに皆さんが結びつけたような筋合いのものではないということなんですよ。だから、結びつけないなら全部切るか、結びつけるならば、理屈は言わないからほかの方も同じようにやりなさいというのです。そこで、この期間というものについての法的見解を示しなさいというのです。
  54. 島村史郎

    島村政府委員 その期間通算をしてないわけです。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それを通算しないなら前につながらないじゃないですか。どうして前につながるのですか。その分は働いていたでしょう、それも考えなければ。
  56. 島村史郎

    島村政府委員 何回も申しますように、要するに、昭和二十年で兵役は終わっておるわけですから、それ以降は恩給公務員としての資格はないわけです。ですから、たとえば文官についてはずっと勤めておりますからそれはいいわけですけれども軍人についてはそれで終わっているわけですから、要するに勤めてないわけです。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)委員 具体的に言うとこういうことです。恩給がついた兵隊が二十一年に復員をしてきて、二十二年に今度は役場に勤めた、そうすると当然恩給をもらう資格があるわけですね。ところが、たまたま最高司令官の指示でそれがもらえない。そしてずっと勤めて、二十八年に今度恩給法が復活した。そうしたときに、この二十二年から二十八年まで勤めた期間というものは、総体として通算されているのじゃないかということなんです。その点はどうなんですか。
  58. 島村史郎

    島村政府委員 そういう場合は通算されております。
  59. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから私はおかしいと言うのです。こればかりやっていると時間があれですからなんですが、結局、その停止期間、空白というものは、これはまさに日本が占領下であって、完全な独立国家としての機能を果たしていない、そういうものを独立国家後の法律によってつなぎ合わせることに不合理を感じるということなんですよ。
  60. 島村史郎

    島村政府委員 これは、二十八年に復活しましたときに、いままでは軍人で、それからは文官で平和国家ということで勤務しておるわけでございまして、それは、その復活の当時に恩給法特例審議会というのがございまして、そこでいろいろ議論の上、これにつきましては通算を認めておるわけでございます。
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題は、さっき長官の方から前向きで検討するという約束をいただいておりますから、これ以上はやめることにいたします。  そこで、これも九十四国会で取り上げたのですが、私はどうしても納得できないのです。どうも私の性分で、納得できないとできるまでやりたい性格ですので、お許しを願いたいと思います。  「恩給のしくみ」というパンフレットを出されておりますが、十ページの表2に「加算年一覧表」というのがあります。ここで戦地戦務加算と海外抑留加算というものがあるのですが、この海外抑留加算というのは、捕虜として国際法に庇護された抑留生活をした方々と、全く国際法、ジュネーブ条約やその他の戦時法規を無視した取り扱いを受けた、しかも気候的にもあるいは生活の内容においても全く違う、こういう者を一律に考えておるということがどうしても私は腑に落ちないのです。これは実態に合わせて――実態といっても一人一人皆違うのを、それまでやれとは私は言いません。たとえば、シベリアの抑留者とそれから南方の抑留者とどういうものであったか、あるいは中国に抑留された方々と比較した場合にどういうふうにその違いがあるかということを当然検討すべきじゃないでしょうか。そういうものが全く検討されないままに一律にこういうものを適用されておるところに、不満というものがいま爆発寸前にまでなってきているのですよ。全抑協のあの運動を見てごらんなさい、大変な運動ですよ。それはなぜかというと、こういういろいろな面で非常に不公平で、そして手落ちがたくさんあるというふうに感じておるからにほかならないと思うわけでございます。この点についてはいかがでしょうか。
  62. 島村史郎

    島村政府委員 私も実は終戦時に満州におりましたものですから、先生のお気持ちはよくわかるのでございますが、この加算の考え方は、職務加算と地域加算というふうに、先生承知のように二つの種類に分かれます。  地域加算につきましては、大きく分けて三つあるのじゃないかと思うのですが、戦地加算と擾乱地加算、それから不健康地加算、こういうことでございます。  それで、抑留者の抑留加算をどういうものにしていくかということで、これは昭和四十年につくったのでございますが、いろいろその当時検討をいたしました結果、戦地というのは一カ月について三カ月、擾乱地が一カ月について二カ月、それから不健康地が一カ月に対して一カ月、こういうことでございますが、戦地でもない、擾乱地でもないというので、これを不健康地というような考え方で、それだけではございませんが、そういうことで実は加算を考えたというふうに思いますけれども、この問題は、私ども今後いろいろ勉強をしてまいりたいというふうに考えます。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、捕虜取り扱いの問題について記録は外務省にありますし、それから、今度ハバロフスクなりその他の日本人墓地を見られるとわかりますが、戦場以上に死者がいるのですからね。この実態をよく把握してください。そして、零下四十度以下になるところだってたくさんあるのですよ。それは鉄砲の弾が飛んでくる以上に苦しいですよ、そういう中に生活するということは。鉄砲の弾というのは大したことないんだ、あんなのは当たらなければどうということはないのだから。そういうものをもろもろ今度はよく考えていただいて、ぜひひとつ善処していただきたい。まあひとつ大臣誠意ある答弁を御期待申し上げますから、よろしくお願いします。
  64. 田邉國男

    田邉国務大臣 この問題につきましては、いろいろ論議のあるところでございます。つきましては、この問題十分ひとつ検討をさしていただきたいと思います。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に移ります。  現在、外国特殊法人及び外国特殊機関で、通算指定になっていない分は大体どのくらいあるでしょうか。
  66. 島村史郎

    島村政府委員 約二百ぐらいあるのではないかと思います。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この約二百に対して今後どのような対処の仕方をなされるおつもりか、その内容を少しお聞かせ願いたいと思います。
  68. 島村史郎

    島村政府委員 外国特殊法人の問題につきましては、これは私ども何回も実は検討をしてまいりまして、いまおっしゃいましたように非常に数が多いわけでございます。  そういう問題につきまして、私どもは、そのいろいろな法人ができました沿革あるいは性格、それから業務の内容、それから人事の交流というところが要するに政府職員といろいろ制度的に交流があったかどうか、あるいは事業の内容につきましても公的な仕事であったかどうかということをいろいろ検討をいたしまして、現在、約二十一、二の特殊法人につきましては要するに通算というものを考えておりますし、それから戸二十ばかりの法人につきましてはいわゆる関与法人ということで実は考えておるわけでございます。したがって、私どもがいろいろ検討した結果は、現在通算をしておりますこれらの機関について大体これで終わっているのではないかというのが私どもの基本的な認識でございますが、なお、関与法人につきましてはさらに検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に移りますが、これは現在大変な問題になっております。かつて日本国籍を持っておられた台湾の方が、旧日本軍人あるいは軍属として受けたいろいろな損害について、あるいは処遇について、一方では訴訟等もされまして、地裁判決が出たようですが、これらの問題は、法律の分野で考えると判決のとおりと言わざるを得ないわけです。しかし、法律というのはまことに冷酷なもので、ただ論理の追求という形の中で、論理の組み合わせの範疇からはみ出るとどうしても救済されないというのが通例であります。しかし、これをこのまま放置するわけにはまいらぬと思うわけでございます。現実にある悲劇を、法律がないからそのまま見過ごしていいのかということになりますと、これは日本の国の信用にもかかわるし、また国際的な人道問題にも発展していくものと思うわけです。  私はやはり、法律でカバーできないところは政治の力でこれを解決するのがわれわれ政治家の任務じゃなかろうか。そういう点で、いまこの議員連盟ができていろいろと解決策を考えております。あるいは議員立法でその足らない部分を埋めていこうじゃないかという議論もありますし、いろいろまた政治的な解決方法を考えようじゃないかという議論もあるようですが、問題は、議員の方からいろいろとやられて初めて腰を上げるのでなくて、やはり政府の方からも積極的にこの国際問題の処理を何とかしなければならないという、そういう意欲を対外的にはっきりさせるのが一つの大きな任務じゃなかろうか、こんなふうに私は考えるわけでございますが、これに対してどのようにお考えになっておられるか、長官にお尋ねいたします。  また、これは外務省もかかわっておりますので、外務省の今日までのいろいろな手だての講じ方等についてもお話し願いたいと思います。
  70. 田邉國男

    田邉国務大臣 お答えをいたします。  台湾人で元日本兵の戦死者また傷病者の問題につきまして、実は過日裁判の結果が出ております。これは法治国である日本の裁判でございまして、しかも、いま日華条約というものがなくなり、日中友好条約ということになってしまいまして、台湾の元日本兵、当時におきましては蒋介石との間に、いわばこの兵隊に行った方々軍人としての給与の問題、そしてまた日本の、日本人の台湾における財産権の問題、こういう問題の相互の解決を図るべく実はやっておりましたけれども昭和四十七年に日中国交回復ができたためにそれが中断をされるということに相なったわけでございます。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕 まことに残念なことではございますが、今日までこの問題に解決を見ておりません。したがいまして、私ども、この日台相互間の全般的な財産、それから請求権問題との関連などにつきましてはどう対応するかということ、解決が大変困難をきわめております。  また国会では、この旧台湾日本兵の問題に対しては立法問題云々の声も聞いております。私どもは、手をこまねいているわけではございませんが、国際間の問題でもございますので、慎重に対応をしてまいりたい、そして、この問題が解決できるかどうか、大変困難な問題であるということを認識しながら対応をしていきたいと考えております。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外務省はどうですか。――それでは外務省でないところ、今度は厚生省援護局にお願いしますが、厚生省援護局では、戦時中未払いの俸給を、昭和二十八年ごろから三十年ごろまでの間に八千九十二万五千八百九十円を供託したと言われております。そしてその供託の対象人員は六万一千二百六十二名だということでございますが、このお金を六万一千二百六十二名で割ると、平均にして千円そこそこの、ちょっと出たほどの額になるかと思うのですが、これは戦前の計算、元金に利息計算した金だろうと思います。それをそのまま、これを受け取れというのは、私は余りにもひど過ぎると思うのですが、この辺についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  72. 森山喜久雄

    ○森山説明員 先生ただいまおっしゃいましたとおりでございまして、これは一人頭に直しますと千三百円ぐらいになるわけでございます。これは法律の規定に基づきまして、昭和二十六年から二十九年ごろにかけて供託をしたわけでございまして、当時のベースのお金でございます。  先生おっしゃいましたように、これをこのままいまお支払いしても全然問題の解決にはならないというふうにわれわれも考えておりますが、それならこれをどうするかという問題があるわけでございますが、これはほかにも、郵政省関係の軍事郵便貯金とかその他のいろいろな債務履行の問題がございますので、各省間でよく相談をいたしまして、どういうふうにするのか、今後検討したいと思っております。
  73. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは大変むずかしい問題で、各省庁間だけでもなかなかむずかしいくらいの問題だろうと思います。  そこで、当時の軍事郵便貯金というのはいまどの得度あるわけですか。それをひとつ元金と法定利子に分けて、どのくらいになっているか。これは外務省あたりで把握していると思いますが、お聞かせ願いたいと思うのです。――ああ、外務省来ていないな。  それでは、仮にこの台湾問題で補償金を出そうじゃないか、こういうような方向に行った場合に、その対象人員はどのくらいに踏んでおられますか。
  74. 森山喜久雄

    ○森山説明員 これは厚生省が所管しております資料で出した数字でございますが、台湾籍の旧軍人軍属の数は二十万七千百八十三でございます。このうち生きてお帰りになった方が十七万六千八百七十九でございます。それから亡くなられた方が三万三百四名でございます。ですから、補償ということになりますと、恐らく亡くなられた方の御遺族とか、それからけがをされた方ということになるのかと思いますが、残念ながら傷病者の方の数はちょっと私の方ではつかんでおりません、申しわけございませんけれども。亡くなられた方は三万三百四ということになります。
  75. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、そうすると、いよいよ問題が具体化した場合にはどこで調べることになるのですか、所管のところは。
  76. 森山喜久雄

    ○森山説明員 これは、旧軍関係の仕事でございますので、厚生省になるのじゃないかと考えております。
  77. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは厚生省関係になるだろうとおっしゃられたが、そうだとすると、戦後三十六年経過しているのにそれがいまだにわからないというようなことではちょっと困るのじゃないかと思いますね。やはりそういうものは、少なくとも資料くらいはきちっとそろえるくらいの積極的な態度が必要じゃないか。すぐに補償に対応するかしないかというのは、これは大きな国政の問題ですから、そういうこととは別に、やはりその所管のところでは具体的な資料の作成にもっと積極性を持つべきじゃないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  78. 森山喜久雄

    ○森山説明員 おっしゃられるとおりでございまして、ただ、死亡者の方につきましては、まだ中国との国交ができない前でございますけれども、台湾政府との間に死亡者名簿の交換をいたしまして、約二万三千人については双方で確認し合っております。  資料の整備でございますが、残念ながら傷病者の方については資料がございませんので、これはちょっと調べるとなりますといろいろ向こうの方と連絡をしてやらなければいかぬと思いますが、死没者の方につきましてはある程度のものはできておるというかっこうでございます。
  79. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは一応前に進んでおきます。  これは長官にお伺いしますが、戦後処理問題の検討経費として今度五百万円が計上されたようでございます。これは総理府総務長官の私的諮問機関として有識者による懇談会を設け、戦後処理問題を検討しようとするものであるとされておりますが、そのとおりでございますか。
  80. 石川周

    ○石川(周)政府委員 五十七年度予算に戦後処理問題懇談会検討経費五百万円が計上され、予算としてお願いしていることは御指摘のとおりでございます。これは総理府総務長官の私的な諮問機関といたしまして、民間有識者によります懇談会を設けまして、戦後処理問題をどのように考えたらよいかということにつきまして検討をしていただこうとするものでございます。
  81. 渡部行雄

    渡部(行)委員 設置の時期はいつごろになる御予定ですか。
  82. 石川周

    ○石川(周)政府委員 五十七年度予算が成立いたしました後、できるだけ速やかにその準備に着手いたしたいと考えております。
  83. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これの調査検討の対象になる案件は、大体どんなものでしょうか。
  84. 石川周

    ○石川(周)政府委員 この懇談会は、ただいま申し上げましたように戦後処理問題という問題についてどのように考えるべきかということの検討をお願いする予定にいたしております。したがいまして、具体的な内容といたしましてどのような御議論が懇談会であるのか、これは私ども御検討をお願いする立場といたしまして、いろいろ注文をつけることは差し控えるべきであろうと思います。いろいろな問題が懇談会の先生方の御希望で勉強されることになるであろうと考えております。
  85. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、問題はメンバーの検討任せということになると思いますが、そうなってくると、このメンバーの選定というのが非常に重要になってくるわけです。この人たちがどういうふうに戦後処理問題について考えているかというのは、これはあらかじめ聞けばわかるようなもので、それが戦後処理はすでに終わっておるんだ、多かれ少なかれ戦争被害というものは国民がこれを受忍しなければならないというような考え方の人を集めると、戦後処理はすでに終わったという総理府との取り決めのだめ押しになるだけになってしまいます。  そこで、問題は長官の腹なんです。長官が本当に、戦後処理問題はいろいろとある、現実にあるのだ、政治上の取り決めとかそういうものは別にして、このあるものを前向きで検討して国民に納得のいく結論を出さなければならない、こういうふうに考えてやろうとしておられるのかどうか、その辺の所信のほどを明らかにしていただきたいと思います。
  86. 田邉國男

    田邉国務大臣 ただいまの戦後処理の懇談会でございますが、私といたしましては、戦後処理につきましては昭和四十二年、政府、与党の間で戦後処理に関する一切の問題、処置は終わったということを言っておるわけでございますが、戦後三十六年を経た今日、なお一部にいろいろの強い要望があるということ、その認識の上に立って私ども民間有識者の公正な検討の場を設けたい。それには、総理府総務長官の私的諮問機関として、戦後処理の問題をどう考えておられるか、いかに考えるべきか、これを検討、調査をしていただく、こういうことでございまして、私どもがかくかくしかじかであるというようなことを暗示を与えたり、また意見を言うことは差し控えるべきである、学識経験者の皆さんに意見をいろいろとお述べいただく。われわれに尋ねられれば、尋ねることに対してわれわれの資料は提供はいたしますけれども、私どもがこうあるべきだというような意見を言うことは差し控えるべきであると思います。したがいまして、この戦後処理の懇談会におきまして結論が出ましたらできるだけそれを尊重をしていく、私どもはこういう考え方でございます。
  87. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、あなた自身は全然指導性というものは持たないということですね。しかし、少なくとも戦後処理問題懇談会を組織しよう、私的機関であろうとなかろうとそういうものを持とうとする心の奥底には、戦後処理問題が終わっていないという認識があるからじゃないですか。もし本当に終わっているというならば、わざわざ国民の税金を五百万円も使ってそんなものを持つ必要ないでしょう。あなたの心理状態をよく分析すると、終わっていないのだ、まだ戦後処理というものはもやもやしているんだという認識があることは事実でしょう。
  88. 田邉國男

    田邉国務大臣 先ほども申し上げましたように、政府といたしましては、戦没者遺族また戦傷病者に対して一連の援護措置というものは講じてまいりました。したがいまして、やはり戦後処理は終わったという判断に立っておるわけでございますが、しかし、戦後三十六年を経た現時点におきましても、一部に強いいろいろの要望がございます。私どもはそういう要望を謙虚に踏まえて、総理府にこの懇談会を設けるということを考え、そして貴重な予算の中から五百万を計上した、この心情を御理解いただければ大変に幸せだと私は思っております。
  89. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは非常に注意しなければならないことは、かつて原爆基本問題懇談会というものができまして、民意の力をかりて実際は被爆者の要求をけっぽってしまった、こういう歴史的経緯があるのですよ。だから今回、多くの戦後処理問題を抱える人たちからの要請、圧力、こういうものが出てきておりますので、政府でこれを押しつぶすと政治的な問題となり、選挙に響いてくるから、この辺でひとつこれは民の声だという名のもとにこれを押しつぶすという危険性は果たしてないのかどうか、その辺が非常に危険視されるわけでございます。その辺について長官の積極的な御答弁をひとつお願いしたいと思うのです。
  90. 田邉國男

    田邉国務大臣 先ほどから申し上げましたように、この懇談会がどういう結論を出すかということにつきましてはいまから予測をすることはできないわけでございます。私どもは、この懇談会の結論が出ましたらそれを尊重していくというたてまえに立って進んでまいる考えであります。
  91. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただ、ある何人か集めて戦後の問題について話してくれ、結論が出る、それを尊重します、これでは全く大臣としての指導性が私は疑わしいのですよ。少なくともあなたは政治家であり、この問題に関する最高の責任者なんです。だから、いまの事情はこれこれこういうふうになって、一応われわれは法的にはこういう最高裁の判決、カナダ判決を踏まえながら政治的には党の中でこういう申し合わせはしたけれども、なおかつ現実はこういう問題がこれほどたくさんあるんだ。台湾問題にしたってしかりでしょう。戦争に絡む問題は皆戦後問題ですよ。そういうことを言うことを恐れないで堂々と言って、この問題をどうすれば最も不公平なしに解決できるのか、国民全体が納得できるコンセンサスを見つけてくれ、こういうふうにあなたが議題を与えてこそ、本当に真剣に討議ができるのじゃないかと私は思うのです。その議題も与えないで、ただあなた方の言ったとおりにやりますよでは、これは大臣の指導性は全くゼロですよ。その辺についてのお考えをお聞かせ願いたい。
  92. 石川周

    ○石川(周)政府委員 御質問が懇談会の運営の事務的な面に及びましたので、大臣の前に若干事務的に御説明させていただきたいと存じます。  懇談会の運営は、お願いをする懇談会の先生方のお気持ち次第、その運営によるわけでございますけれども、通常考えられますことは、政府考え方も当然聞かれましょうし、いままでの経緯も聞かれましょうし、それからそういう問題につきましていろいろ御議論もある方々のヒヤリングといいますか御意見も承りましょうし、そうしたものを全体として勉強されて、その上で持っておられる良識によってどう御判断されるか、それが懇談会の皆様方の通常のやり方ではないかと思っております。したがいまして、先生指摘のようないろいろな意見がある、いろいろなものを取り上げて議論すべきだということにつきましては、恐らくお願いする先生方も十分認識をした上で御議論されることになるのだろうと思います。そういう民間有識者による公正な検討の場というふうに私どもは理解いたしておる次第でございます。
  93. 田邉國男

    田邉国務大臣 いまお話がございましたようなそういう懇談会でございますので、公平な、また公正な結論が出てくるであろう、それを私どもは期待をいたしております。
  94. 渡部行雄

    渡部(行)委員 本当に公正なメンバーで公正な議論を期待いたします。  それでは、外務省の方がおいでになりましたから、また若干戻って御質問申し上げます。  現在、台湾人にして旧日本軍人あるいは軍属として徴用なり戦場に駆り立てられて日本のために命を捨てたり負傷したり、いろいろと協力された方々に対しての補償問題が具体的な問題に上がっているわけでございます。その他、この出時の俸給とか軍事郵便貯金とかそういうものもありますが、これら諸問題について外務省はどのような処理方針を持っておられるのか、その辺についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  95. 木内昭胤

    ○木内政府委員 お答えいたします。  本来であるならば、サンフランシスコ条約を受けて、現在は失効いたしております日華平和条約の規定に基づきまして、日本政府と台湾当局との間の特別取り決めによりまして処理されるはずであったわけでございますが、御承知のとおり台湾との関係というのは私的な関係になってしまいましたので、そういう方法による救済の道は閉ざされておるわけでございます。したがいまして、実際問題としては個々にその台湾の方々との関係で処理に当たるほかないわけでございます。  そのうち、御承知のとおり、遺憾ながら戦時補償の問題は、先般の裁判の結果に見られましたとおり、実定法上補償の道がないという裁判所のお考えが披瀝されたわけでございます。  他方、軍事郵便貯金等につきましては、物価スライド制の問題が解決を見ないまま依然として係争中であるというふうに心得ております。
  96. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題は、中華人民共和国とのかかわり合い、あるいは現在の台湾政府との問題、それから直接の被害者との問題、こういうふうに非常に複雑になっておるようでございますが、いよいよ話し合いの対象として考えておられるのはどの程度の人員の方、あるいはどういう種類、たとえば戦死とか戦傷とか、どこまで含むか、そういうものについてのお考えはどうでございましょうか。
  97. 木内昭胤

    ○木内政府委員 台湾の関係の方々の人数は、おおよそのところ二十万名の方々、かように承知いたしております。
  98. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは大体厚生省が示した戦死者、負傷者を合わせた数だと思いますが、実際問題として取り上げるには、議員連盟ができて、議員連盟の方では法律上はどうしようもないからひとつ立法措置かあるいは別な政治的な折衝によって何とか解決してはどうかという話がいま進行しているわけなんですが、私が言いたいのは、そういう議員間の努力もさることながら、やはりその直接の責任者である政府が、この国際的な人道の立場、人間同士の正義感の立場、そして日本の国際的信用、こういうものを考えてもっと積極的な取り組みを考えるべきじゃないか、こういうふうに思うわけですが、その点はどうでしょうか。
  99. 木内昭胤

    ○木内政府委員 委員指摘のとおりでございまして、私どもとしましては、たとえ実定法上解決の道が閉ざされておりましても、人道上の問題からあるいは国際信用の面から誠意を持って検討しなければならないというのはおっしゃられるとおりでございます。外務省としましては、現実には直接台湾の当局者との関係の道がございませんので、交流協会を通じまして亜東関係協会、これは台湾の交流協会に対応する機関でございますが、この機関を通じまして本件の問題について打診ないしは相談をいたしております。
  100. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題を進める上で、中華人民共和国の了解は得ておるのでしょうか。
  101. 木内昭胤

    ○木内政府委員 中華人民共和国当局者の了解は得ておりませんが、事柄の性質上、御相談申し上げてもそれが大きな障害になるというふうには考えておりません。
  102. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外務省アジア局長はこれで終わります。  そこで次に移りますが、今度は抑留問題についてお伺いいたします。  特にシベリア抑留、これがずっと問題になってきておるのは御承知のとおりでございます。そこで、国際的に見て同じ境遇の国があるとするならば、その国のやっていることが日本でやれないはずはないだろうと私は思うのです。やはりこういう抑留者問題等に対する措置というのは、国際的な影響があり、またそのバランスをとるというのが非常に重要ではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、日本はまだ大した措置もしておりませんけれども、西ドイツは実によくこの措置をしておられる。ひとつその内容を御披露してみますと、  1. 関連法    元戦争捕虜に対する損失補償は、一九五四年一月三十日公布の「戦争捕虜補償法(仮訳)」(一九七九年十月二十九日第七次改正)により保証されている。  2. 受給資格者   1 上記の法によれば「一九四七年一月一日以降に帰還し、捕虜の法的定義に適うドイツ人」が損失補償に対する法的請求権を有する。   2 その他の元捕虜等に対する補償は、「元捕虜援護基金(仮訳)」により実施されている。  「3.補償額」これはたくさんありますので読みません。こうして補償額が一々計算されております。  4. 元捕虜援護基金による補償   1該当者     戦争捕虜補償法の第四次改正(一九六九年七月二十二日)により設立された本基金は、元捕虜(ドイツ人とは限定せず、また一九四七年一月一日以前に帰還した者を含む)及び死亡した元捕虜の未亡人に対し、裁量的補償を行うことができる。   2補償内容    A.困窮状態に対する一時金の給付     〇最高額 八、〇〇〇マルク     〇必要に応じ繰り返し給付される。    B.住宅貸付     〇最高額 三〇、〇〇〇マルク     〇年間五%ずつの分割返済、無利子。    C.経済的基盤の確立と安定のための貸付     〇最高額 四〇、〇〇〇マルク     〇貸付を受けた日より三年間返済据置、じ後十年以内に完済。年利三%    D.その他奨励して然るべきと思われる職業上乃至社会的目的を有した計画に対する貸付     〇最高額 二〇、〇〇〇マルク     〇返済条件はCに同じ。    E.軍務及び捕虜であったために生じた法的年金保険に係る様々な不利益に対する調整金の給付     〇月額三〇-六〇マルク      (一九八一年以降五〇-八〇マルクに増額)を該当者の収入に応じそれぞれ給付  5 その他   戦争捕虜補償法に基づき、軍務及び捕虜抑留期間は、年金保険料を納付していたものと見なされる。従って、同期間は法定年金請求権が生ずるに必要な年金保険料最低納付期間、即ち、待機期間(仮訳)として配慮される。 こういうふうにして、西ドイツの場合は捕虜に対して手厚い対策を講じておられるわけでございます。  こういうものが国際的にいろいろあるわけで、そのほかアメリカにも捕虜に対する対策がありますし、イタリーでもなされておるわけでございます。このような国際的な対応の仕方というものをごらんになって、外務省は日本の捕虜に対する対処の仕方をどういうふうにお考えになっておられるか、お伺いいたします。
  103. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 西独を初め諸外国のこの問題に関する立法については、私どももかねがね注目してこれを研究しております。しかし、戦争の終わるときの形態、その後の抑留者に対する援助等は、国情にかかわる面も多分にあろうかと思っております。  日本の場合には、日本として恩給法や戦傷病者戦没者遺族等援護法、こういう法律がございまして、この法律を適用することによって抑留者、戦没者、戦傷者に対する補償を進めていくという方法で現在まで来ている、かように了解しております。
  104. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それで、西ドイツと比べて均衡がとれていると思いますか。
  105. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 西ドイツの場合は、御案内のとおり、特にソ連との戦争において多数の死傷者、多数の難民が生じたわけでございます。ドイツ政府がこれに対して非常に手厚い保護を与えているということは、御指摘のとおりでございます。ただ、金額的あるいは量的に、西ドイツの場合と日本の場合とがどの程度差があるかという点については、まだ十分な検討をしておりません。
  106. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これほど重大な問題になって、いま政府が自民党との約束で一応戦後処理は終わったと言っていながら、なおかつ今度は戦後処理問題懇談会を組織しなければならない、こういう段階にあって、国際的にそのケースを全然考えようともしない、比べもしない。一体ほかの国で、同じような敗戦国があるのに、その国はどんな処置をしたのかということも調べないでどうして戦後処理が終わったなどということが言われますか。これは怠慢じゃないですか。初めからやる気がないからそういうことで口を濁して、木で鼻をくくったようなことを言っておられると思うのですよ。私は、そういう非人道的な考え方には絶対に賛成できません。むしろ積極的に、あの国でもこれをやっておる、この国でもやっておる、うちの方はもっとやらなくちゃならないな、こうなるのが本当の人道的な立場でしょう、弱い者を救済する立場でしょう。  しかも、日本の財力はどうですか。カナダ判決が出たときの日本の経済力と今日の経済力とではまるっきり違うのですよ。いま世界二番目の金持ち国と言われているのじゃないですか。国際収支等では世界一でしょう。そういう立場にある日本の国が、国のために一生懸命、命がけでやった者に対してそのしりぬぐいもできないで、そうして、関係のないというとなんですけれども、韓国に対する援助協力などには物すごい金をつぎ込んで、そういうことばっかりやっていて、どうして国民政府のやり方に――なるほど、おれたちはこういう仕打ちを受けても、政府誠意をもってやっているのだからがまんしなくちゃならぬという気持ちにならせなくちゃならないと思うのですよ。その誠意政府が見せるべきだと私は思うのです。その点はいかがでしょうか。
  107. 田邉國男

    田邉国務大臣 先ほどから渡部委員のお話を伺っておりまして、私どもも、戦後の処理は終わった、しかし戦後三十七年を経過して、今日なお国民の中から強い要望が出ておるこの問題にはやはり謙虚に取り組まなければならない、こういうことで今回、戦後処理問題に関する総理府の予算として五百万の予算計上をいたしまして、戦後処理はいかにあるべきか、考えるべきか、こういうことで実は有識者の意見を聞く、そのための私的諮問機関をつくり、そしていろいろの問題を検討をしていただくことに相なると思います。  したがいまして、この戦後処理に対していかに考えるべきかの懇談会を設けるべく、いま手順を整えておるわけでございますから、この懇談会の結論につきましては、私ども誠意をもってその意見を尊重してまいる、先ほどから申し上げておるとおりでございます。その点、ひとつ理解をいただきたい、こう考える次第であります。
  108. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひひとつ、誠意をもってお願いいたします。万が一にも、戦後処理問題は終わったというあの自民党内の約束、政府との約束事が邪魔になってどうすることもできない場合は、日赤看護婦や陸海軍従軍看護婦の場合に取り扱ったように、特殊なケースとしてこれを取り上げていただきたい。これは万が一の場合ですよ。そうすれば、できないはずがないのです。問題は、やる気があるかないかですから、これだけはひとつよろしくお願いいたします。一言……。
  109. 田邉國男

    田邉国務大臣 先ほどから申し上げたとおりでございまして、私どもはこの諮問機関でございます懇談会がいろいろの角度から検討をしてくださる、こう考えております。もちろん、その懇談会の結論につきましては、私どもは十分意見を尊重して対応してまいる考えでございます。
  110. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外務省の方はお帰りください。どうもありがとうございました。  今度は、青少年対策本部及び文部省にお伺いいたします。  最近、青少年の暴力事件や犯罪の多発等を見てまいりますと、この非行化の状況というのはまことに目に余るものがあるわけでございます。これは原因を検討するといろいろあると思いますが、私は大別して、まず社会環境、そして家庭環境、学校教育、大体この三つの問題が出てくると思います。そこで、このような非行化の原因をどのように分析しておられるのか、担当のところからお答えを願いたいと思います。
  111. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 最近の青少年非行の増加は、御指摘のとおりまことに憂慮にたえない状況でございます。  若干、実態の方を申し上げますと、昭和五十六年に検挙、補導された少年の非行件数が十八万四千九百二人ということになっておりまして、少年人口千人当たりの人口比で申しますと十八・六人ということで、一時低下したときに比べますと大体倍以上というようなことにもなっておるわけでございまして、戦後第三のピークという形になっておるわけでございます。  低年齢化ということがその特徴の一つでございまして、中学生による非行が三七・五%と少年非行の中で一番大きな割合を占めておりまして、高校生の非行の方は次いで三五・六%という形になっておるわけでございます。そのほかにシンナー、覚せい剤等薬物乱用少年の問題あるいは校内暴力事件、特に教師に対する校内暴力事件が増加しているということになっておるわけでございます。  これら少年非行の原因につきましては、私ども先生と基本的には同じ考えを持っているわけでございまして、家庭におきましては、子供のしつけのあり方なりあるいは子供の進路をめぐる問題があろうかと存じます。さらに、学校では、学習への取り組みの問題、それから生徒間の交友関係等の問題があろうかと存じます。さらに地域社会におきましては、問題のあるいろいろな雑誌、その他マスコミのいわゆる有害環境問題といったようなものがございまして、これが子供自身の耐性の欠如といったような資質上の問題と絡み合って非行が生じてきているのではないか、かように考えている次第でございます。
  112. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まことに申しわけありませんが、先ほど答弁が、当時おられなくてできなかったので、改めて一つだけお願いいたします。  台湾人の旧軍人の軍事郵便貯金の加入口座数。できれば、元金がどのくらいで利息がどのくらいになっておるのか、わかればで結構ですが、お願いします。
  113. 森山喜久雄

    ○森山説明員 郵政省に電話をかけまして聞いたわけでございますが、台湾在籍の軍事郵便貯金加入者は、約六万口座でございます。  それから、五十六年三月末現在の元利合計は、一億八千六百万円だそうでございます。この元金と利息がいまちょっと急には出ないので、トータルでございます。
  114. 渡部行雄

    渡部(行)委員 はい、結構です。どうもありがとうございました。あと結構ですから。  それでは続けます。  そこで、特に家庭内暴力について考えられるものは何かというと、やはり小さいときにかぎっ子で育ったとか、あるいはそういう中で両親の愛情に飢えた子供、また受験勉強でがみがみ両親からやられて、自分自身に大変な焦りがあるところにまたそういう外からの圧力があって、結局それに耐えかねて爆発する、反発する。そのほか家庭を包む土地的な、地域的な環境の問題、こういうものが非常に大きく子供の心に作用しているのではないだろうか。  特に、暴力学校というのは都会に多く、田舎には少ないわけです。なぜだろうか。私が思うに、都会では、灰色のコンクリートの中で生活を続けておると、どうしてもそこに人間の温かみ、情味というものが失われて機械人間のようになりがちであり、発作的なかんしゃく持ちになりがちになるのは当然ではなかろうかと思うわけです。やはり自然の中に溶け込んで育ってきた人たちには、何とも言えない温かみ、そういう雰囲気を持っている人が多いのではないか。そうしてまいりますと、やはり都市計画の中でもそういう住環境というものを本気になって考える必要があるのではないだろうか。あるいはかぎっ子の家庭にあっては、もはやかぎっ子の家庭だと知ったときから、そこには絶えず目を光らせて、先生方がいろいろな対策を講じる、そういう子供たちはなるべく多くの友達がいるような環境で育てるように工夫する、何か親にかわる愛情をそこに与えてやる、そういう処置がきめ細かに考えられないと、この家庭内環境の改善というのはむずかしいのではないだろうか、こう思いますが、この点はいかがでしょうか。
  115. 浦山太郎

    ○浦山政府委員 基本的な考え方につきましては、まさに先生指摘のとおりであるというように私どもも考えておるわけでございまして、やはりこの非行の背景となります一つの要因と申しますか、そういったものとして都市化の進展あるいは少子家庭といいますか、一人っ子が多くなったり二人っ子が多くなったり、昔とかなり違って、親の愛情は行き届きますけれども、その愛情がときには行き過ぎて子供の発達課題を阻害するようなことにもなりかねない。あるいはコンクリートの中におさまっておりますために、自然の土の上での生活というのがどうしても不足をしてまいる。したがって、そこでテレビの影響等もございまして、情緒に欠ける人間もときには出てまいるというようなことがあるわけであります。  こういったことにつきましては、教育関係あるいは青少年団体活動その他を通じまして、できるだけ自然に親しむ形での子供の育成というものが一番基本ではないかということで、国及び地方公共団体を通じまして、そのような施策に力を入れているところがかなり多いというのが現状でございます。
  116. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで私は、次に校内暴力の問題を取り上げたいと思うのですが、この校内暴力というのは一体なぜ起こるだろうか。なぜあの年端もいかぬ子供たちが大人に反抗するでしょうか。しかも、先生という、本来ならば最も尊敬しなければならないそれに対して反抗するだろうか。こういうふうに考えてみますと、私は教育という問題を通して先生自身の威信が失われているのではないだろうか、そして、先生らしく生徒に振る舞おうとするそのこと自体が、生徒には耐え切れない圧力に感じられるのではないだろうか。それはなぜか。  それはつまり、学校に入ると、甲も乙も一緒に教えるわけです。しかも、それにはそれぞれ能力の差があるわけで、できる子供もおれば、できない子供もおる。本来、できない子供をなくすることに重点を置くのが教育だと思うんですけれども、現在の教育は、できる子供を大切にする方向に力が注がれている。そうして、ろくな基本もやらないうちに、今度は二年生になり三年生になっていく。そうして六年になって私立中学校、有名校を受けるとなると、大変な受験勉強をしなければならない。そうすると、基礎ができていないところに、その一流の中学に行ける能力を短時間に取得しなければどうすることもできない。その焦りと、それに対する家庭のこの受験一点張りのやり方、そして学校先生自身が、うちの学校から有名校にどれだけ生徒を送ったかというところに照準を当てて教育をやっておる。こういうことに能力の十分でない子供たちはもう耐えられなくなって、その荷物を背負い切れなくなって爆発していく者が多いんじゃないでしょうか。  中学にしてしかりです。中学に入ると、ほとんど中学の全課程が受験勉強という課程に変質してしまう。もはやここは教育の場ではなくて、そういう競争の場に変化するわけでございます。そういう中では、隣の友達に友情をかけるどころか、隣の友達と競争しなければならない。こういう環境の中で教育というものが破壊されていくと私は思うわけでございますが、そういう点については一体どのようにお考えなんですか。その点をお聞かせ願いたいと思います。
  117. 福田昭昌

    ○福田説明員 校内暴力の原因、背景については先ほどお話が出ておりますが、文部省といたしましても、この背景はやはり社会、家庭、学校それぞれのあり方、また生徒自身が幼少期から形成されてきました意識、性格、そういったものが複雑に絡んでおるというふうに考えております。  この校内暴力の事例につきまして、文部省が各都道府県から顕著なものにつきまして二百十三件ほど集めまして具体的に分析をいたしたわけですが、これによりますと、事件を起こした生徒は、自己顕示欲が強い、あるいは自制心、忍耐力に欠ける、学習意欲が乏しく、以前から怠学や喫煙などの問題行動のある場合が多い、また非行集団とのつながりを持っている者が多いというのが一つでございます。また、家庭におきます親の養育態度が放任、甘やかし、過保護であり、家庭におけるしつけや教育が十分でないという特徴が見られるわけでございます。  また、校内暴力が発生しております地域は、住宅化に伴う新しい住民の流入により、住民間の連帯感に欠け、地域に対する愛着に欠けていることが多い。また、学校におきましても、指導につきまして教師間に足並みの乱れがあったり、生徒に対する理解が十分でなく、注意の仕方が生徒の心情を無視したものがあった場合が見られるといったようなことがこの分析の結果からは出ておるわけでございます。  この背景には、もちろん社会におきますいろいろな風潮というものが生徒に与えている影響もあろうかと思いますので、文部省としてのこの校内暴力についての基本的な考え方は、学校教育また社会教育、家庭教育といったものが一体となってそれぞれの教育機能を発揮していくということを基本に据えておるわけでございます。ただいま学校におきます教育指導のことが指摘をされたわけでございますが、これらの子供たちすべてが学力が低いというわけではございませんが、その多くが学力が低いということも事実でございます。したがって、こういう子供たちが学校におきまして充実した生活を送れるようにするということが非常に大切であろうかと思います。  文部省におきましては、先般と申しますか、中学校は五十六年度から新しい学習指導要領によりまして新しい教育課程が進んでおるわけでございますが、この考え方は、従来知育をどうしても偏重しがちであるということに対して、徳育、体育というものを重視しよう、こういう考え方で知徳体の調和のとれた子供を育成するということを基本に据えまして、一つは、教育内容というものをいま御指摘ありましたように基礎、基本というものに精選をする、そして基本をしっかり身につけさせるというような教育内容にいたしておるわけでございます。  また、従来の授業時間を削減いたしまして、その生じたゆとりの時間を、学校におきまして子供たちが、興味、関心のある、あるいは集団的な活動、そういったもろもろの活動に学校が創意工夫をこらして取り組むことができるようにいたしておるわけでございます。これは五十六年度から、小学校は五十五年からでございますが、新しくいま進めつつあるわけでございますが、基本的にはそういう考え方で、子供たちに学校生活を充実したものとして送れるようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  118. 渡部行雄

    渡部(行)委員 たしかビスマルクの「その国を卜せんと欲せばまず青年を卜せよ」という有名な言葉があるのです。私は、いま日本が本気になって青少年の教育に当たらなかったら、幾ら軍備をやったって日本の国の独立なんかかち取ることはできないと思うのですよ。また、日本の安全なんか守れっこないですよ。未来を背負って立つ青少年がこのように犯罪を犯し非行化していくということに、なぜもっと本気にならないでしょうか。第一、教育の思想というものは、どういう思想によって支えられているのか、支配されているのか、それを私は聞きたいんです。  たとえば環境が人間の意識をつくっていくのか、人間の意識が環境をつくっていくのか、この辺の一つの認識は、どういうふうに認識しておられるのですか。
  119. 福田昭昌

    ○福田説明員 人間を取り巻く環境があるわけでございますから、そういうもろもろの環境が人間に与える影響というものももちろんこれは否定できないわけでございますが、また教育というものは、そういう環境に負けない人間をつくっていくということもまた教育の基本的な考え方であろうかと思います。
  120. 渡部行雄

    渡部(行)委員 環境に負けない人間ができるならば問題はないんですよ。精神教育を一生懸命やれば環境に負けない人間ができるかというと、できないのです。人間は環境に支配されて、環境から学ぶのですよ。そして一たびその環境の矛盾を感じたときに、その矛盾を解決する一つ考え方がそこに生まれてくるんです。その考え方が次の環境を変えていくのです、逆に。この連鎖的な繰り返しが私は一つの発展法則だと思うのですよ。だから、もっと教育というものを思想的にとらえて、いまの発展段階はどういう発展過程にあるのかということを十分認識した上で対処しないと、それは全く当て外れな対処の仕方をするようになってしまうのではないか。  たとえば千葉県の流山中央高校の校長先生が自殺されました。これは対応の仕方にも非常に問題があったと思うのです。すでにその機を逸しておる。そして教育の対応というものは、集団に対する対応は特にそうでありますが、校長以下全教職員あるいはその他の父兄、社会人も含めたそういう中でぶつかっていかなければこういうものの解決はむずかしいと思うわけです。それを個人的な良心で何とかやろうとして、教育の中でも教育者の中でも孤立していく。これは基本的な教育の実態を思想的段階でのとらえ方ができていないから、このような悲劇が生まれるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。  特に、この学校暴力は大変な方向にどんどん深化しておりますので、この辺で全精力を傾けてあるいは社会全体の力ででも何とかここで食いとめる決意が文部省側に必要ではないか、そのためにはあらゆる環境の整備、たとえば学級の生徒数にしましても、先生の定員にいたしましても、そういう問題を早急に考えていかないと、やがてますます荒れ狂う中、高校ができてくるのではないかと私は憂えるものであります。時間も余りありませんから、まずそういう基本問題をただして、教育とは一体何ぞや、この原点に立ち返ってもう一度考えていただきたい。  よく、教育とは人間の持つ能力と可能性を開発することである、こういう名文句で答える人がおりますが、それはだれでもわかるのです。われわれはそういう理想を直ちに考えるよりは、いかにして理想に近づくか、そういう可能性を引き出すための手だては何なのか、どういう手段を通してそういう教育の実態にしていくのか、この現実的な手段と方法が何よりも大事ではないか、こういうふうに思うわけでございますが、その点等も含めてお答えを願いたいと思います。
  121. 福田昭昌

    ○福田説明員 教育の基本というお話がございましたが、学校教育の基本は、教育基本法にございますが、個人の創意、自主性あるいは社会連帯といったものを大切にして、知、徳、体のバランスのとれた国民を育成するということを基本にいたしておるわけでございます。  現在、校内暴力等非行の問題につきましては、基本的な考え方としましては、児童生徒が学校教育に不適応を生じて問題行動に走ることがないように、学校におきます授業あるいはホームルーム、クラブ活動、進路指導、そういったものを適切に行うという配慮が一つ大事なことであろうと思います。  また二番目には、教師が児童生徒に対する理解を深めまして、いまお話がありましたように学校の全教師が一体となって足並みをそろえまして生徒指導に取り組むことが非常に大切であると考えております。また、ささいな暴力行為がありましてもそれを看過せずに、非は非とする毅然たる態度で生徒指導に当たることが肝要であろうかと思います。  三つ目には、学校学校だけで生きていっているわけではございませんので、家庭あるいは地域社会、そういったものと一体となって現在の問題に取り組むことが必要であると考えております。先般来、各都道府県等いろいろな機会にこの趣旨につきましては徹底を図っておるところでございますが、また文部省といたしましても、たとえば先ほどお話がありました学校、家庭、社会が一体となって地域ぐるみで取り組むといったような事業も新たに五十六年度から進めておるわけでございます。  そういうことでもう一点つけ加えますれば、教育の基本は教師にあるわけでございますので、この教師の資質なり意欲なりを高めていくということ、また技術的な意味での生徒指導の技術あるいはあり方、そういったものの研修といったようなものもいろいろと進めておるところでございますし、また来年度も新たにそういう計画も立てておるところでございます。そういうことで、総合的にいろいろな手だてをとりながら進めていかなければならないと考えております。
  122. 渡部行雄

    渡部(行)委員 本当はまだまだゆっくり議論したいところでございますが、時間が来たようですのでこれで終わります。どうもありがとうございました。
  123. 石井一

    石井委員長 次に、鈴切康雄君。
  124. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総務長官は、きょうは参議院で日切れ法案の採決があるということで、五十分にはここをお立ちになるというお話でありますが、その間時間の許す限り総務長官にお伺いしてまいりたいと思っております。  私がきょうぜひやりたいなと思っている問題は、先般戦没者追悼の日ということの報告書が出されましたのでその問題と、中国残留日本人孤児、旧日赤及び旧陸軍海軍従軍看護婦の問題、戦後処理、それから法案ということになろうかと思いますが、総務長官がおいでになるときにお聞きしてまいりたいと思っているのは、かつて中山総務長官が、戦没者を追悼することについてどういう形が将来にわたって適当なのかを改めて検討する必要があるという判断に立って、有識者による懇談会を開いて検討してもらいたい、そういうようなお話があって懇談会が持たれ、去る三月二十五日に総務長官に報告書が提出されました。それに基づいて政府は今後どういう手順で報告書の内容実施しようとされているのか、政府のお考え方をまずお伺いいたします。
  125. 田邉國男

    田邉国務大臣 戦没者を追悼し平和を祈念する日の問題でございますが、昨年の八月でございますか追悼懇を設け、約九回にわたりましていろいろとフリートーキングをされ、いわばどういう方向でどういう答申をするかということでずいぶん御苦心された結果「戦没者を追悼し平和を祈念する日」という形の答申をいただいたわけでございます。この懇談会から提出をされました報告書によりまして、やがて閣議決定によって制定されることが適当であると実は言われておりますので、私どももこの趣旨を十分踏まえまして必要な措置をとってまいりたい、こう考えておるわけでございます。  また、閣議を求めるに当たりましては、総理府の主管大臣としての内閣総理大臣とこの日に行う全国戦没者追悼式の主管大臣である厚生大臣と共同請議という形をとってこの日をとり行う、こういうことでございまして、八月の十五日、毎年閣議においてその日を決め、行われておりましたわけでございますから、今後はその日に基づきまして昨年どおりにやっていくという方向でこれを閣議に諮りたい、かように考えております。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 報告書には、この戦没者を追悼し平和を祈念する日の制定手続については、いま総務長官から御答弁がありました閣議決定が適当であるというふうに考えられる、こういうふうに言われておりますが、そこでどういう手順を踏んで、いつ閣議決定されるのか。また、八月十五日を祝日とされるのか、あるいはしないとするならばどういう意義づけをされるのか。さらに、従来から全国戦没者追悼式を開催してきましたけれども、この全国戦没者追悼式の行事形態というものが変わってしまうのか、どういうふうにお考えになっていましょうか。
  127. 石川周

    ○石川(周)政府委員 懇談会の報告書の内容にわたる御質問でございますので、私から御説明させていただきます。  報告書によりますと、この戦没者を追悼し平和を祈念する日の意義といたしましては「政府が先の大戦において亡くなられた方々を追悼し平和を祈念するための日を新たに設けることは適切な措置であるという結論に達した。」という結論的な部分がございます。簡略に申し上げれば、そこの部分が戦没者を追悼し平和を祈念する日の趣旨になろうかと存じます。  また、手続といたしましては、今後適当なときに、ただいま大臣から御説明申し上げましたように閣議請議を行いまして閣議決定をいたすということに相なろうかと存じます。  また、全国戦没者追悼式の式様式についての御質問がございましたが、報告書では「毎年八月十五日に実施してきた全国戦没者追悼式を今後も従来どおり続けていくことを要望する。」というふうに指摘されているところでございます。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の質問に御答弁がないようでありますけれども、聞くところによりますと実はきょうあたり閣議決定をするというようなことも言われておったのですが、なぜ現在閣議決定がおくれているのか、また、いつごろその閣議決定をされるのか、そういうことについて、報告書が出されている以上はもういろいろと検討されていると思いますね。それから祝日にするのかしないのかという問題等もあるわけですから、その点についてはどういうふうにお考えになっているのか。それは総務長官にお伺いした方がいいですね。
  129. 田邉國男

    田邉国務大臣 この戦没者を追悼し平和を祈念する日は、これを祝日とするということはあり得ないわけでございます。なお、現在政府与党でございます自民党において検討しておるというのが実態であろうと思います。その問題が済みますれば、私どもはできるだけ早く閣議にかけ、そしてこれを決定したい、こう考えております。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 終戦記念日は、戦後今日まで三十六年間にわたり、慣習で呼ばれてきた名称とはいえ、国民の中に広く、深く定着をしております。報告書にも「次の諸点を考慮する必要があると考える。」として、「基本的には、個々人の心の問題であることに政府が深く留意すること、」としており、第二に、「様々な意見が存在することに配慮しつつ、国民の大多数が素直に受け入れられるようなものにすること、」としています。この点は非常に重要な点であります。特に留意する必要があると思います。  となると、国が戦没者を追悼し平和を祈念する日を公式に八月十五日に設定するということは、憲法第二十条の「信教の自由」または「何人も、宗教上の行鳥、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」及び第十九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という点に抵触するおそれがある、こういうふうにも考えられるわけであります。なかなかそこのところは微妙な問題であるわけでありますが、だからそういうことで閣議決定が大変におくれるということも考えられるでしょうし、場合によっては、もうすでに定着したそういう問題であるがゆえにわざわざ閣議決定をする必要はないのじゃないか、こういう国民的な意見もあるわけでありますが、その点はどうお考えでしょうか。
  131. 石川周

    ○石川(周)政府委員 閣議決定の手順がおくれているというようなことは私ども感じておりません。事務的には懇談会から報告書をいただきまして各省に連絡をし、各省でもそれぞれ対応をしていくだけの準備が必要でございましょうし、私ども率直に申し上げまして、早くても四月の声を聞き、あるいは半ば、下旬ごろということも考えられましょうし、通常の事務手続であちこちに連絡を申し上げながら閣議決定の手続を進めているという感じでございまして、確かに本日閣議決定云云というような報道が一部にあったことは事実でございますけれども、私どもそういうことを申し上げたことは全くございませんし、予定としてもそういうことは組んだ記憶がございません。通常の事務といたしまして各省と連絡をとりながら閣議決定の手続を進めさせていただいているということでございます。  それから、定着したものだから閣議決定はいまさら必要ないではないかという、それは確かに御意見かとは存じますけれども、私どもといたしましては、懇談会の答申として閣議決定により戦没者を追悼し平和を祈念する日を制定することがよろしいということの考え方を踏まえまして、その方向で必要な措置をとってまいりたいと考えている次第でございます。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、報告書を見た限りにおいてば、「次の諸点を考慮する必要がある」のだ、「基本的には、個々人の心の問題であることに政府が深く留意すること、」第二は「様々な意見が存在することに配慮しつつ、国民の大多数が素直に受け入れられるようなものにすること、」ということでございますから、このところは御存じのとおりいろいろの考え方があるということを考えたときに、あえて政府はこれを公式な日というふうな形で閣議決定をするということについては、これは明らかに一方的な一つの方向に加担をするという形になるわけでありますが、それとは反対な意見もあるということに対してはどういうふうにお考えでしょうか。
  133. 石川周

    ○石川(周)政府委員 報告書は、そういう二つの基本的な留意点を踏まえながら閣議決定によりそういう日を設けることが適切であるという判断を下しておりますし、それが民間有識者の見識、御答申であろうと私どもは理解しております。したがいまして、二つの基本的な留意点と閣議決定とは相矛盾するものではなくて、その中で求められる一番適切な措置というふうに理解いたしております。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では、八月十五日を公式の日として決定するためにできるだけ早く閣議決定をする、それについては四月の上旬、少なくとも四月のうちには閣議決定する、こういうことですか。
  135. 石川周

    ○石川(周)政府委員 事務的にはできるだけ速やかに閣議決定をいたしたいということで手続を進めている段階でございます。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、事務的にどれだけの時間がかかって、いつごろ閣議決定がなされるのかということは一つの大きな問題でしょう。あなたも事務屋さんなんだから、事務屋さんであればどれくらいの見通しがあるかぐらいはわかるでしょう。
  137. 石川周

    ○石川(周)政府委員 いまのところ、特別の支障がない限り四月の中旬中にはという感じでおります。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦没者の追悼の日の制定問題については、実は自民党が昨年の七月、靖国神社公式参拝の実現とセットで働きかけたという経緯があるだけに、この日を閣議決定するということになりますと、これはもう公式な日というふうになることであり、公式な日に総理大臣が、全国の戦没者追悼が武道館であった後、少なくとも総理大臣の肩書きで今度は靖国神社に参拝をするということになりますと、これは公式参拝の疑いが非常に強くなるわけでありますけれども、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  139. 味村治

    ○味村政府委員 従来から政府は、公式参拝というのは公務員が公の資格で神社に参拝することをいう、このように考えておるわけでございます。そういたしまして、閣僚が靖国神社に参拝されますことにつきましては憲法上問題があるという考えでございまして、従来から閣僚が靖国神社に公式参拝されるということは差し控えるということが政府の一貫した方針でございまして、この方針は今後も変わらないというように考える次第でございます。  このたびの答申にございます日が、仮に閣議決定によりまして定められましても、そのことによりまして直ちに、従前私的な参拝として行われておりましたものが公式参拝となるということにはならないと存じます。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公式な日に首相とかあるいは閣僚が、幾ら私的に参拝するのだといっても、やはり公人の公式参拝の疑いがぬぐい切れないものが出てくるわけです。そこで従来から靖国神社問題で問われている公人、私人の境目のあいまいさですね、これをよりあいまいなものにしてしまうのじゃないかという危惧を国民が非常に持っているわけでありますけれども、法制局としては公私の区別をより明確に説明すべきじゃないだろうか。あなたの方で意外と中途半端な答弁しかしていないのでこの問題はいつまでも尾を引くわけですから、そういう点について法制局としての明確な見解をお伺いします。
  141. 味村治

    ○味村政府委員 公人としての立場なのか私人としての立場なのかという問題につきましては、国会におきましていろいろ御議論がございまして、政府といたしましては昭和五十三年十月十七日の官房長官の御答弁によりまして措置しているわけでございます。  これは御存じでございましょうから読み上げるのを差し控えたいと存じますが、要するに、公的参拝として一番はっきりしておるのは、政府が閣議決定によりまして参拝をしようというようなことを決めるとかいう場合が一番はっきりしている場合でございまして、あと、仮に国費をもって玉ぐし料を支出するというようなことになりますれば、これは公式でないというわけにはまいらないというふうに考えている次第でございます。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、これは靖国神社問題の一環として、公人、私人の境目というものを非常にあいまいにしている、そういうふうに私どもは言わざるを得ないわけです。この問題については、個人の思想の自由とか、あるいは宗教の言うならば自由という問題から考えますと、それぞれの立場において八月十五日を一つの契機として平和を願う、またあるいは追悼をおのおのの考え方によってやるということですでに定着してきているものですから、その定着してきているものに対して、あえて八月十五日を公式の日というふうな形にするということについては問題があるのではないか、そのようなことを私どもは提案をしてまいりたいと思っております。  それでは、総務長官がちょっと参議院の方に行っておられますので、法案の中身について、これはそこにおられます担当の局長で十分に御答弁いただける問題でございますから、法案について質問をいたしたいと思います。  五十七年度の恩給改善、これについてはすでに恩給法の一部改正等が提案されてきておりますけれども、その改善概要改善の基本的な考え方をまずお伺いいたします。
  143. 島村史郎

    島村政府委員 昭和五十七年度におきます恩給改善措置は、ことしは例年にない非常に厳しい財政状況でございましたし、また臨調答申も出ておりますので、その辺非常に厳しい状態でございましたが、今回、私どもは大体二つの点にポイントを置きまして改善を行ったつもりでございます。  一つは、経済事情の変動に伴います恩給実質価値を維持するための、公務員給与ベースアップ基準にいたしまして恩給年額増額したこと、それからもう一つは、戦没者遺族支給いたします公務扶助料傷病者恩給改善いたしまして、これらの者に対します国家補償の一層の充実を図るという、この二点で私どもは考えたわけでございます。  これを具体的に申し上げますと、まず第一点の恩給年額増額につきましては、仮定俸給引き上げが一番大きな問題でございますので、百二十八万円以上の方に対しましては四・五%プラス一万二千八百円という率で増額をいたし、百二十八万円未満の方に対しましては五・五%の率で増額をいたしたわけでございます。  それから、公務関係、傷病関係のこれらの方々に対しましては、最低保障額というものをそれぞれ増額をいたしまして、公務扶助料につきましては現行月額十万三千円を月額十一万円まで増額をし、また傷病恩給につきましては、この公務扶助料に準じまして、それぞれ六・三%ないし七・二%の割合で恩給年額増額を図ったのでございます。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十七年度の予算を見てみますと、恩給費として一兆七千二百五十億円という予算が組まれているわけでありますが、この予算に対して、恩給種別、すなわち普通恩給あるいは傷病恩給それから扶助料、傷病者遺族特別年金、こういう縦分けによって、受給者の数とか金額、割合はどういうふうなことになっておりましょうか、御説明いただきたいと思います。
  145. 島村史郎

    島村政府委員 五十七年度予算におきます恩給種別の受給者数と金額及び割合でございますが、まず受給者数について申し上げますと、総数が二百三十七万人でございます。そのうち普通恩給を受給いたします者が百二十一万八千人で、全体の五一・四%を占めております。傷病恩給が十二万七千人で五・四%、それから扶助料が百一万五千人で四二・八%、傷病者遺族特別年金、これが一万人でございまして、〇・四%を占めております。  また、恩給費の額でまいりますと、総額が一兆七千二百十九億円でございますが、普通恩給が五千七百六億円でございまして全体の三三・一%、それから傷病恩給が千九百五億円でございまして一一・一%、扶助料が九千五百七十七億円でございまして五五・六%、傷病者遺族特別年金が三十一億円でございまして〇・二%の割合を占めております。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の改正案は、従来四月から実施されてきたものが五月から実施ということになっております。四月実施を一カ月繰り延べて五月に実施をした、これは大変に重要な問題だと私は思うわけでありますけれども、なぜ一カ月繰り延べたというか値切ったというか、そういう形になったのでしょうか。
  147. 島村史郎

    島村政府委員 五十七年度につきましては、非常にむずかしい財政状況でございますし、それに一つ臨調答申がございます。臨調答申におきまして、昭和五十七年度においては恩給費増額を極力抑制をすべきである、こういう意見が実は出されておりまして、私どももそういう臨調答申を尊重しなければいけない、こういうことが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、公務員給与につきましても人事院勧告に対しましてある程度の抑制措置が講ぜられまして、ボーナスにつきましてはそのベースアップ分が凍結という抑制措置が実はとられておるわけでございます。そういう意味におきまして、この臨調答申につきましてもある程度その精神を私どもも考える必要があるのではないかということで、いろいろ勘案をいたしました結果が、五十七年度については一カ月おくれにせざるを得ない、こういう考え方で現在おるわけでございます。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御存じのとおり、公務員給与民間のベースの比較に基づいて人事院勧告が出され、それを完全実施するということは政府に課せられた一つの使命であると言われているわけです。公務員については御存じのとおり四月実施、それでも、完全とは言えないにしても四月実施ということが昨年はなされたわけですね。ところが声の弱い方についてはこのように一カ月繰り延べして五月ということになってしまう。これでは財政が厳しいからやむを得ないじゃ済まされない問題があろうかというふうに私は思う。  先ほどもお話がありましたように、現在恩給受給者は二百三十七万人いるわけでありますけれども、そのうち恩給だけで生活をしているという人は何名ぐらいいるのですか。
  149. 島村史郎

    島村政府委員 私ども、その数字は必ずしも正確につかんではおりませんが、私どもが家計調査等で見ておるところによりますと、大体八割ぐらいの方は恩給年金一緒にこれが主要な所得源泉であるという世帯がございますけれども、そういうところにつきましてはほとんどが恩給年金というものを併合して所得になっておるということでございまして、私は恩給だけの方はわりあい少ないのではないかと考えております。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 家計調査によって八割ぐらいが年金恩給との併用によって生活をされているんだということなんですけれども、では、まるきり恩給だけで生活をされている方がないかといえば、そうではないわけでしょう。こういう方には、生活的にはこういう問題は非常に響いてくるわけですね。だから、少なくとも恩給局あるいはこういうふうな総理府の関係等においては正確にこういう実態等を調べる必要があるだろう。今後ただ単に推測的なことだけでは済まされない問題になってくるのじゃないかと思うのですが、その点について、八割はこれとこれとの併用だから大体うまくやっているんだろうというのではなくして、恩給だけで生活せざるを得ないという人だっているわけですから、そういう人たちに思いをはせた施策をしなければならぬわけです。ただ単にだろうということだけでは済まされないということについては、どうお考えでしょうか。
  151. 島村史郎

    島村政府委員 私どももこの辺はさらに十分検討は進めてまいりたいと考えます。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の恩給法の改正案で一番問題となるのは、実施時期を一カ月おくらしたことだと思います。五十二年の八十国会附帯決議で「現職公務員給与より一年の遅れがあるので、遅れをなくすよう特段の配慮をすること。」というふうに決められ、五十二年の四月より実施をして今日まできております。それでなくても実際には公務員とは一年のおくれがあるわけです。不完全実施みたいなかっこうでずっと続いてきたことについて、言うならば五十二年の附帯決議によって特段の配慮をする必要があるということで五十二年の四月より実施をして今日に至ったという経緯がある。本当にやっと定着をしてきたものを今回財政事情のためとはいえおくらせることについては、附帯決議を積み重ねて定着した慣習を崩すものであり、実施時期を一カ月とはいえおくらせたということは、前にようやっとこれだけの問題の解決をしたことを簡単に後ずさりしてしまったというように思えてならないわけであります。  それで、ことしは本当にやむを得ないということであるとするならば、それじゃ来年度以降は恩給実施時期を従来どおり四月から実施する考えがあるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  153. 島村史郎

    島村政府委員 私ども臨調答申をずっと読みましても、恩給費につきましては、要するに五十七年度というふうに限定をされて実は書かれておるのでございます。したがいまして、私どもも、五十七年度についてはそういう臨調答申もあり、いろいろのことを考えて四月を五月にいたしたわけでございますが、五十八年度につきましては、私どもは、いろいろの問題があるかと思いますけれども先生の御指摘のように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうことで少なくともよき慣例が簡単に後退してしまった。それに基づいて恩給受給者の中においては大変に生活が圧迫されているというような方々もおられるわけでありますから、臨調答申を尊重するということであれば、五十七年度ということに対してのただし書きが一応書いてあるわけですから、五十八年度はぜひ恩給受給者気持ちを察して、これを前向きに検討してもらいたい、こういうふうに思います。  それで、公務員給与の管理職員のベースアップが据え置きされたことに対応して、その仮定俸給恩給の六十六号俸としたことは、実はそれは給与からいいますと何等級何号俸に当たるのでしょうか、この点についてはどうですか。
  155. 島村史郎

    島村政府委員 大体三等級の二十号俸に当たると私どもは解釈しております。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これについては、その六十六号俸以上の人は恩給増額はあるけれども増額分の三分の一をカットするということになっていますね。その点についてはどうですか。
  157. 島村史郎

    島村政府委員 要するに、今回の公務員の二等級以上につきましてベースアップが全部凍結をされておるわけでございます。そういう精神からいきまして、ある程度恩給につきましても何らかの措置をすべきではないかという考え方がございまして、しかしこれは二等級以上全部というわけにもまいらないということ、それからもう一つは、国家公務員の場合につきましてはベースアップ分を全額凍結でございますけれども、そういうわけにはいかないということで、現在の恩給受給者実態を考え、それを三分の一にとどめたということでございます。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 臨調の第一次答申は、「昭和五十七年度においては、恩給費の増加を極力抑制し、新規の個別改善は行わない。」そのようになっておりますが、普通恩給、それから普通扶助料、それから公務扶助料等の政策的上積みに対して個別改善になるのではないかという意見もあるようでございますが、その点どのように政府の方ではお考えになっておりましょうか。
  159. 島村史郎

    島村政府委員 臨調の方で言っておられます「新規の個別改善」という解釈でございますが、私どもはこの新規の個別改善ということにつきましては、要するに新規の制度的な改善は行わないという解釈を実はとっておるのでございます。そのために、外国政府職員の通算でございますとかそういうものは、要するに制度的な改善に当たるのではなかろうかということでおるわけでございますが、いま先生が御指摘になりました公務扶助料最低保障額引き上げというものについては必ずしも当たらないのではないかというふうに私ども解釈しておりますし、またそういう傷病恩給でございますとか公務扶助料を受けておられる遺家族の方々のことを考えますと、やはり政府としても国家補償の一部としてそういうことをちゃんとやるべきではないかという考え方から今回そういうふうな上積みをいたしておるわけでございます。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 となりますと、五十二年度以降毎年行われておりますベアの一環である、だからこれは決して個別改善ではない、こういうふうにお考えであるということでしょうかね。
  161. 島村史郎

    島村政府委員 先生の御指摘のように考えております。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから政策的な積み上げが傷病恩給においては、昨年との比較から見ますと、昨年は一項症が八万円であったのが、ことしは一、二項症三万円というふうになっておりますね。これはいわゆる臨調答申を考慮した結果こういうふうになったのだというふうにお考えになっておりますか、それとは別なお考えでしょうか。もし別なお考えであるとするならば、明確にお答え願いたい。
  163. 島村史郎

    島村政府委員 これは別に臨調の影響でそういうふうにしたというふうには私どもは考えておりませんで、傷病恩給改善につきましては、いろいろいままで従来とも改善をしてまいりましたけれども、結局公務扶助料最低保障額の引き上け、そういうものとの均衡を考慮いたしまして、そして加算をしてきておるのでございます。  この上積み分につきましては、いま申されましたように、八万円と三万円という差が出てきておりますけれども、これはこのほかに要するに公務員給与ベースアップ分というものがございまして、これは去年は低くてことしは高かったわけでございます。したがってそういうものを含めて考えますと、昨年は二十四万七千円、ことしは二十三万五千円ということで、総額としてはそれほどの開きはないというふうに考えております。したがって先生指摘のように、臨調答申によってこういう措置をとったということではございません。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回一兆七千二百五十億円というのが恩給費なんですが、五十七年度の一般会計に占める恩給費の割合というのはどのようなパーセントになっておりましょうか。また、今後における恩給受給者数の推移というものはどういうふうになっていくとお考えでしょうか。
  165. 島村史郎

    島村政府委員 五十七年度の恩給費の歳出に占める割合でございますが、大ざっぱに言いまして三・五%でございます。正確に申し上げますと三・四七%ということでございます。  それから将来の恩給受給者数の推計でございますが、これは要するに恩給受給者がだんだんと死亡されます。死亡されて失権をしてまいりますので、それがどのくらい死亡されていくか、これがなかなか推計がむずかしいわけでございますけれども、現段階で私どもが推計いたしておりますのは、昭和六十五年度に約百九十四万人、それから七十五年度に約百二十五万人というぐらいではなかろうかというふうに現在推計しておるのが現状でございます。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この恩給受給者数の推移というものは、常にやはり恩給局としては考慮に入れなければならない問題だと思っております。  いま六十五年は百九十四万人で、七十五年は百二十五万人だというふうにあなたがおっしゃったわけでありますけれども、高齢化社会が進んでまいりますと、当初予想された進行の予測よりスピードがダウンをしてきているんじゃないだろうかというふうに思うわけですけれども恩給局としては、こういうことを設定されたのといまと、それなりの傾向としては、またこれからの問題としてはどういうふうにこれをお考えになっておられるか。
  167. 島村史郎

    島村政府委員 恩給受給者の推計につきましては、現在死亡表を使っておりまして、現在のところは御承知のように零歳の方の平均寿命が男ですと七十二歳、女ですと七十八歳くらいでございます。しかし、現在恩給を受給しておられる方の平均年齢は六十五歳くらいでございまして、六十五歳くらいの方ですと普通のゼロ歳の平均よりもさらに長生きされるということでございます。したがいまして、普通の死亡率よりは若干低い死亡率になっておるわけでございますが、私どももそういうふうにいろいろ計算をしておるわけでございます。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十七年度の恩給ベースアップは五十六年度の現職公務員給与改善基礎として行うこととしておりますけれども実施時期については実は一カ月繰り延べたということで問題があるにしても、ベースアップ後の恩給水準と公務員給与の水準とを比較するとこれは同水準にあるというふうにお考えになっているのか、それとも恩給をいただいている方は公務員方々より大変に割食っているんだというふうにお考えになっているのか、その点についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
  169. 島村史郎

    島村政府委員 私どもは、いろいろ恩給の金額を決めますときにも、現在の国家公務員給与の俸給表を分析いたしまして一定の数式によって実は計算をいたしております。それにその率を実は掛けておりますので、現在の国家公務員給与体系とそう変わらないというふうに考えております。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六十六号俸以上の者に給する普通恩給については、管理職の給与改定の見送りに関連して、五十八年三月までの増額分の三分の一を停止することとなっておりますけれども、このような停止措置は、行革関連特例法の財政再建期間の三年間にわたる可能性があるのか、あるいはこれは一年でそのままにしようというふうにお考えになっているのか、その点について、来年度の問題についてはどうお考えでしょうか。
  171. 島村史郎

    島村政府委員 さっきも申し上げましたように、臨調答申で五十七年度の恩給費についてはというふうに書いてございますし、これも今後の、五十八年度の予算の編成状況を見なければわかりませんが、私どもとしてはこれは単年度限りのものにしたいというふうに考えておるわけでございます。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは単年度限りということにしませんと、臨調答申は五十七年度ということに限っての抑制措置になっているわけですから、ぜひそういうような形にしていただきたいなと思っております。  実は、昭和四十四年度の恩給改善の際にもこのような停止措置がなされたわけでありますけれども、四十四年度の停止措置内容はどのようなものであったのか、また今度五十七年度の停止措置ということでございますが、その内容についてはどこがどう違うのか、その点を明らかにしてください。
  173. 島村史郎

    島村政府委員 昭和四十四年の停止措置は、これは全く財政事情によって停止をされたものでございまして、昭和四十四年度につきましては十月からベースアップが行われておりますが、六十五歳未満の者で、傷病者それから妻子を除く者につきましては、昭和四十四年の十二月までベースアップ分の三分の一を停止をしたというのが現状でございます。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 恩給の問題については細かいところをまた聞きたいわけでありますけれども、一応公務員の一般職は御存じのとおり四月から実施をされているのに対して恩給は五月と、一カ月おくらすということは、恩給受給者にとってゆゆしき問題であろう、恩給を含め各種年金受給者はそのことによって生活が大きく圧迫され不公正が拡大されるのではないかというふうに私は思うわけでありますが、いま恩給局長が言ったように、今回は例の臨調答申に基づいて五十七年度の抑制に対するところの一つ措置であったということでありますから、来年はぜひ四月の実施をしていただきたいものと要望をいたしておきます。  恩給の方はそれぐらいにして、総務長官がおいでになりましたので、これは総務長官並びに厚生省とも関係があると思いますが、中国の残留日本人孤児について御質問を申し上げます。  先般来日をいたしました中国残留日本人孤児の問題について、テレビによって放映をされた。そのテレビによって放映されたことによりまして肉親と会うことができて大変に喜びに打ちふるえているという画像が映し出された。また反面、せっかく日本に来たけれども肉親に会うことはできなくて、そして帰らざるを得なかったという、悲喜こもごもの状況が映し出された。その肉親にしてみるならばもう耐えられないような思い、私どもははたから見て、テレビを見まして大変に泣かされるような場面があったということは総務長官も同様だと私は思うわけでありますが、政府としても残留孤児に対する対応充実をもっと積極的にやるべきであると私は思いますが、いままで政府が取り組んでこられた実績はどうなっているのか、その点についての御説明をお願いしたいと思います。
  175. 岸本正裕

    ○岸本説明員 中国残留孤児の肉親捜しにつきましては、これが本格化いたしましたのは昭和四十七年九月の日中の国交正常化以降のことでございますが、その四十七年当初から五十年ころにかけましては、厚生省の援護局の保管資料を中心といたしまして、関係者の協力により調査を進めてきたわけでございます。その後、マスコミの協力を得て公開調査ということで、非常に手がかりの少ない人につきまして新聞等に掲載をしていただきましていろいろな肉親からの反応を待つという調査を進めました。  かなりの成果を上げたわけでございますけれども昭和五十五年度からは孤児を日本にお招きいたしまして、マスコミの協力、民間団体の協力、それから関係省庁の協力のもとに肉親捜しを始めたわけでございます。これは、先般五十六年度分として第二回目の調査をいたしたわけでございます。  いままでの累計を申し上げますと、孤児から身元調査依頼がございました数が今月、三月の二十六日現在で千四百八人でございます。そのうち、いま申し上げましたいろいろな方法で肉親の解明をいたしましたのが五百三十八名でございます。したがいまして、現在調査中のものが八百七十名残っているわけでございます。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三月九日の閣議で箕輪郵政大臣が、中国残留孤児については民法テレビなどから積極的な協力姿勢が伝えられている、六千人とか八千人と言われている残留孤児の撮影班を中国に派遣し、各孤児の体の特色あるいは記憶などを撮り日本で放映すれば効果的な家族捜しができる、従来のペーズでは十年かかる旨の発言をしたことが報道されておりますが、今後の政府の取り組み方についての方針はどのようになっているでしょうか。  これは、百二十人ずつやりますと実際に十年かかってしまうというふうに言われているわけでありますけれども、いまこの時期においては、御存じのとおり肉親といってももう相当な年配になっているわけでありますし、孤児といっても実際にはもう三十七以上の方々ばかりでございます。となりますと、一年一年記憶、あるいはせっかくお会いできたものの、もう一年早かったならばといって結局お会いできなかったという例も出てくるわけでございます。ですから、それは全く人道的にも許されない問題であるわけでございますから、このペースを少なくとももう少し速くしなければならないという基本的な考え方が私はあるわけであります。これについて、このままほうっておけば十年でありますけれども政府としてはどういうようにこの問題に対処しようとされておるのでしょうか。
  177. 岸本正裕

    ○岸本説明員 いまお答え申し上げましたように、現在調査中の者は八百七十名でございますが、このほかに、まだ当局に対しまして調査の依頼をしていない方々、いわゆる潜在孤児の数でございますが、これがどのくらいいるかということにつきましては、正確な数字はどなたも把握ができないわけでございます。私どもといたしましてもこれらの方々の申し出を待ちたい、こう思っているわけでございますが、一つ推定する場合の目安といたしましては、終戦直後に引き揚げされましたときに、肉親から、未帰還者として中国に自分の肉親を残してきた、こういう方々につきまして届け出をしていただいているわけでございます。そのときの届け出をされた方々のいわゆる未帰還者のうちで、当時の年齢で十三歳未満の者は約三千四百人に上っているわけでございます。こういう方々の消息が現在どうなのかはっきりわからないわけでございますけれども、潜在孤児を考える場合の一応の目安にはなるのではないかというふうに考えているわけでございます。  そこで、今後の調査の促進方策についての御質問でございますけれども、五十七年度はもう間近でございますが、訪日の孤児の数を六十人から百二十人に倍増させたい。それから、いま先生もおっしゃいましたようにテレビで放映されましたり新聞紙上でいろいろな報道をされますと、国民の関心を呼びまして、肉親の方々がわが子ではないかということで面会においでになるケースが非常にふえているわけでございます。そういうことを考えますと、私どもは、厚生省の職員を中国へ派遣いたしまして、いろいろと孤児の方々から手がかりになる資料を聞き取り調査をしたり、またビデオテープに撮って、いろいろ成人した現在のしぐさ、表情、こういうものを映像に撮りまして、国内でまたマスコミの協力を得て広く広報していただきたい、こういうふうに考えております。こういうことでいわゆる手がかりの充実ということを図りますと、訪日孤児の百二十名と相まちましていろいろと調査の促進が図られるのではないかというふうに期待をしているわけでございます。  しかし、この問題は何分にも中国政府の絶大な御協力を得ませんと一歩も進まないという問題でございます。私どもといたしましても、こういう問題につきましていま日本政府が考えていることを中国政府によく御理解いただき、また一層の御協力を得るように外務省を通じてお願いしていきたいというふうに考えております。  なお、現在厚生大臣の私的諮問機関といたしましていわゆる孤児問題懇談会を設置いたしまして、広く各界の方々の御意見を聞きながらこの問題の早急な解決策を考えていきたいというふうに考えている次第でございます。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま五十七年度は百二十名だということでございましたけれども、百二十名で進めていきますと十年かかってしまうということです。十年かかってしまうと肉親がほとんど亡くなってしまうわけですね。あるいは記憶が薄らいでしまうという問題があるわけです。実際にはこのままほうっておくわけにはいかないわけです。ですから、肉親調査の年次計画の策定ということをこの際やはり強力に、少なくも何年間の間、三、四年の間なら三、四年の間に徹底してやるんだというような策定をしながら、あらゆる角度から孤児の肉親を捜すというふうにしていかなければならないんじゃないだろうかというふうに私は思うのです。厚生省の方としては、中国の主要都市に専門家を置いて、そしてこれも常駐させながら調査をしていくというふうなお話でございますけれども、それはそれで私も結構な話だというふうに思うわけでありますが、年次計画を策定するということについてはどういうふうにお考えになっていましょうか。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 岸本正裕

    ○岸本説明員 先生おっしゃいますように、私どももこれはできるだけ早急に解決をしたいというふうに考えております。したがいまして、年次計画をつくり、その計画の線に沿って解決をしていくべきだというふうに考えている次第でございます。  いま申し上げましたように、百二十人を呼び寄せるということのほかに、厚生省の職員が中国へ渡りまして孤児と直接面接し、いろいろなデータをそろえて帰ってくる、それを全国の関係者、国民の皆様に御披露いたしましてこの解決策を進めていきたい、こう考えているわけでございまして、そういたしますと、単に百二十名ということでなくもっと促進されるとは思っているわけでございます。先ほども申し上げましたけれども、これは私どもできるだけ早く、たとえば三、四年の間にやりたいという気持ちはやまやまでございますけれども、中国政府側の御協力も得ませんと一方的にわが方だけの計画では成り立たないわけでございますので、その辺もよく話し合いを進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 肉親捜しに関連して、孤児の方々もぜひ日本に来たいということの熱情から、自分としてもかなり私費を使いながら日本の方へ来るやに聞いております。全部が全部私費だとは申し上げませんけれども、公費の部分がかなりあるにしてもやはり私費も使わなければならないということで、お会いできた方は非常に喜んで、長い間に自分が働きながら返すということもできるでしょうけれども、お会いできなかった方は本当に借金だけが残るというような形になるでしょうし、働いたお金の蓄積等を使わなければならないということになりますが、この問題について、孤児を初め配偶者あるいは子供、養い親等の帰国の旅費とかあるいは肉親捜しの旅費等は、全額公費で解決を図るようにしなければならないんじゃないだろうか。  かつて旧日本兵が生存しているとかあるいは生存しているのではないかという場合においては、その救出のために莫大な公費を使って捜索したという経緯も実はあるわけです。それであるならは、当然戦争の犠牲者としてのこれらの問題についても、国として個人負担というものについてできるだけ公費で何らかの形でしてあけるということが望ましいと私は思うのですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  181. 岸本正裕

    ○岸本説明員 孤児の肉親捜しにつきましては、旅費、宿泊費その他一切の必要な経費につきまして国費で負担をしているところでございます。そのほか、幸いにして肉親がわかった方々につきまして、いつの時点かで本邦へ引き揚けていらっしゃるという場合の引き揚けの経費につきましても、全額国費で負担しているところでございます。  ただ、孤児の肉親捜しで、今回も訪日されました孤児の方々いろいろとお金を工面して持ってこられたということも聞くわけでございますけれども、いろいろとおみやけなど買いたいということで、そういうものに使おうと思って持ってこられたのではないかというふうに思います。こちらでの滞在に必要な経費はすべて負担をしているわけでございます。  御承知のことと存じますけれども、この孤児の肉親捜し調査が大きく報道されまして、人々の高い関心を呼びまして非常に多くの番付金が集められまして、今回、私どもといたしましては、孤児がお帰りになるまでに全国の方々から寄せられましたお金を頭割りにいたしまして一人当たり二十万円ということでお配りをいたしたわけでございます。そういうものでいろいろとお好みのおみやけなどを買っていたようでございますけれども、そういうことも全体として見てみまして、個人負担というものはほとんどなかったのではないかというふうに考えているわけでございます。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 個人負担についてはそういう配慮が必要であるということを私は申し上けたいわけであります。  中国孤児と年金との関係についてでありますけれども、昨年の国連難民条約加入に伴って、日本に住居を有している者については国籍の有無に関係なく国民年金に加入できるようになったわけでありますが、現行制度では、六十歳までに二十五年間の保険料納入期間がなければ老齢年金の受給資格を得ることはできないわけです。このために、実際には中国孤児の場合は三十五歳を越えているわけでございまして、日本に帰国しても全員が国民年金対象から外され、無年金者となってしまうわけであります。なかなか言葉が通じないということで就職の困難さに加えて、将来の年金受給もできないということになれは、非常に生活が脅かされることも明白であろうと私は思うわけであります。  そこで、帰国した中国孤児等に対して特例納付なりあるいは特別な経過措置を講ずるような救済措置が必要であるというふうに私は思うわけでありますが、厚生省としてはどのようにお考えでしょうか。
  183. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 ただいま御指摘の点につきましては、先生お述べになりましたように、難民条約の加入に伴いまして国民年金を日本に居住される方々すべてに御加入をいただくということになりまして、そのために、これも御指摘がありましたように、三十五歳以上の方が入られましても年金に結びつかないというケースが出てまいることは、御指摘のとおりでございます。  中国孤児の方につきましてもそういうケースがあろうかと思います。この点につきましては、難民条約等関係の整備法御審議のときにいろいろ問題点として御審議をいただいたわけですけれども、結果的には、何らの特例措置も講じないままそういう適用をするということになったわけでございます。したがいまして、現時点でも、おっしゃるように中国孤児に限らず、新たに国民年金が適用されます在日韓国人の方々あるいは外国の生活が長い日本人の方々、同じような問題があるわけでございますけれども年金制度としてはこれで特例措置を設けるということはなかなか困難な問題でございます。二十五年の資格期間を問うておりますので、これを一定の方たちだけに資格期間を短縮するという措置は、年金制度としてはなかなかとりにくい。  ただ、御指摘のように、現在の年金制度から国民年金と言われながら漏れていく方々がおられるわけでございますので、これは中国孤児対策ということだけじゃなくて、全体の無年金者をどうするのかという総合的な問題の一環として、今後の検討課題にさせていただきたいというふうに考えております。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまお話がありましたように、要するに三十七歳以上の方々については、実際にはもう国民年金には入れないような状態になるわけですから、そうなりますと救いようがないわけですね。現実の問題としてこれから中国孤児の帰還という問題が出てきたときにこれをどうするかと言えば、特例措置も何もないということで救いようがないということではこれは法律の整備が非常に不備であると言わざるを得ないわけですから、そういう点について前向きに検討するつもりがあるのかどうかという問題についてあなたはどうお考えですか。
  185. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 御指摘の点は、確かに現在の年金制度の問題点でございます。中国孤児の方に限らず、先ほども申し上げましたけれども、日本人で長く海外に居住をされてお戻りになられる方も同じようなケースがあるわけでございますので、そういう者を全体としてどう対応していくかという問題は、私どもも真剣に取り組まなければならない課題だというふうに認識をいたしております。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはぜひやっていただかないと、問題が残ると私は思います。  日本人孤児を養育してくれた中国人の養い親に対するわが国政府としての感謝の意をあらわすということは、私は重要な問題ではないかと思います。それについては、鈴木総理がこの秋に訪中する際に、養父母に対する感謝の意を中国政府首脳を通じて伝えたいというふうにお答えになっておりますけれども、しかしそれは単なる儀礼的な謝意に終わるのか、あるいはまた具体的に養い親に何らかの形によってこの問題については十分におこたえしようというふうに考えておられるのか。儀礼的であるとするならば何をか言わんやでございますけれども、その点については政府としてはどういうふうにお考えになっていましょうか。
  187. 田邉國男

    田邉国務大臣 ただいまの問題でございますが、総理がこの秋訪中するということになれは、当然中国の日本人孤児の問題につきまして中国政府との話し合いをなさると思います。鈴木内閣は愛情ある施策を展開しておる際でございますので、この問題につきましては必ずその成果が上がるような対応をしてまいる、そう私は判断をいたしております。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総務長官も国務大臣でありますから、一言だけ中国の日本人孤児についてお伺いしますけれども、先ほども厚生省の方からお話がありましたように、あらゆる角度からこの施策を推進していきたい、それで、できるだけ早くということでありますが、比較的に数字というものは争えないものでありまして、五十七年度は百二十名ということでありますし、そういうことからいいますと十年かかるだろうと言われておりますね。となりますと、こちらの親の方のよわいもかなりになってまいりますし、向こうの方も記憶が薄れてしまうという状態の中にあって、肉親捜しというのはなかなかむずかしい状況になるように私は判断するわけでありますけれども、総務長官はこの問題について、あなたも鈴木内閣の国務大臣としてどういうふうにこれを推進していこうとお思いになっておられるのか、また、この問題に対して総務長官としての御所見をお伺いしましょう。
  189. 田邉國男

    田邉国務大臣 中国の日本人遺児、孤児の問題につきましては、確かに御指摘のように、あと十年もたちますと養父母も大変な老齢化をされてしまう、そういうことでございますから、先ほど厚生省からもお話がございましたように、私どもはこの十年を五年あるいは四年というように短縮をいたしまして、そしていま郵政省もこの問題に対しては積極的に、NHKを初め民間放送、全面的な協力をするというお話でございますので、この対応につきましては、私どもも内閣を挙げてこの問題が早期によき結果をもたらすような対応をしてまいる考えでございます。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、話が別のところへまいります。  旧日赤及び旧陸海軍の従軍看護婦については、御存じのとおり慰労給付金ということで支給が決まりまして、現実支給されておりますけれども、これらの方々は実際に戦地において、現在恩給をいただいておる方々と同じような条件のもとに御苦労をされた方々ばかりでございます。そこで、附帯決議の中においてもその増額を検討するということを決めたわけでございますけれども恩給法に準ずるということになりますと増額をしていくかっこうになりますが、恩給の上昇率に基づいてこの問題を取り扱おうとするのか、あるいは物価にスライドして増額を図ろうとされておるのか。附帯決議国会でなされた以上、何らかの検討がされなければならない問題だと私は思うわけでありますけれども、この旧日赤及び旧陸海軍従軍看護婦についての慰労給付金についてはどういうふうな検討がなされているのでしょうか。
  191. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 旧日本赤十字社救護看護婦、それから旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金の問題でございますが、ただいま先生お示しのとおり、女性の身でありながら、軍の命令などによりまして戦地あるいは事変地に派遣されまして戦時衛生勤務に従事した、非常に御苦労をかけた、こういった特殊な事情を考慮いたしまして日本赤十字社がこの慰労給付金を支給することとしたものでございます。  そういった経緯から考えまして、また国会附帯決議もございましたので検討いたしておりますが、どうもこれによって所得を保障するというようないわゆる年金的な性格の給付とは言えないのではないか。恩給とか厚生年金とかあるいは共済年金とか、老後の所得保障として見るような性格の年金とこの慰労給付金は異なりまして、いろいろ御苦労をかけたということに対して慰労を申し上げる、こういう性格のものではないかというふうに考えられるわけでございます。  このような慰労給付金の基本的性格があるわけでございますので、慰労給付金の額を改定するということはなかなかむずかしい問題でございまして、現在考えておりません。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 考えていませんというふうにすぽんと言われると、これを聞いている方々は何と情けないことであるというふうにお感じになるでしょう。確かに財政事情が厳しいということもあろうかと私は思いますけれども、慰労給付金というのは一時金であって、一つは毎年毎年予算を組まなければならないということですから、政府考え方によってはいつ切られるかわからないという不安定要素が残ってしまうわけです。  しかし、内閣委員会においても長い間この問題が論議された上において慰労給付金というものがつけられるということになった。そういう経緯にかんがみまして、このいわゆる慰労給付金を途中で打ち切るなどということは万が一にもない、私は、実はここで審議をしている一人として、いままでの経緯を踏まえてそう思っているわけでありますけれども、総務長官としては、今後充実をしていくことはあってもこれを打ち切るようなことはない、そのようにお考えになっているのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  193. 田邉國男

    田邉国務大臣 旧日本赤十字救護看護婦及び旧陸海軍の従軍看護婦に対する慰労給付金の問題でございますが、女性の身でありながら戦地、事変地に赴いて、長年にわたり御労苦を願ったわけでございます。その労に報いるために特に措置をしたものでございます。  私どもは、附帯決議の御趣旨もございますので、今後とも、この趣旨を踏まえまして途中で打ち切ることのないよう努力をしてまいりたい、かように考えております。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こういう方々は年々歳々お年をとっていかれるわけでございますし、対象者も順次減っていく状態であるわけでありますから、せっかくこれだけの制度ができた以上、これを充実をしてあげようというのが血も涙もある政治じゃないかというふうに私は思います。万が一にも打ち切るなどということがありますとそれこそ大変だと私は思うわけであります。  旧陸海軍の看護婦さんたちの中では、共済組合に入っていた方々は、外地に勤務する段階において共済組合を自然脱会されており、各種公的年金にはいま現在通算されておらないのが現状ですね。この際、政府としては、国民年金とか厚生年金通算できるような措置を講ずる必要があるだろう、それによってそういう方々を少しでも救ってあげる、拾ってあげることが必要ではないかと思うのですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  195. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 陸軍共済組合等いわゆる旧令共済組合につきましては、厚生年金保険制度が発足をいたしましたときにすでに先行して実施をされておりましたので厚生年金は適用除外というたてまえをとってきたわけでございますけれども、終戦によりましてその母体たる機関が消滅をしたということで廃止をされたわけです。この期間をどうするかということでございますけれども、もし共済組合なかりせば厚生年金の適用を当然していい方たちでございますし、また社会保険方式をとって拠出もしていただいておった方でございますから、厚生年金としては特例中の特例ということでその旧令共済期間についても特別の措置をしているという現状でございます。  ただ、先生いま御指摘の外地に参りました期間につきましては、共済組合の組合員の期間でもございませんし、また拠出もしていただいてないということでございますので、年金制度の中でそれをさらに特例ということで見るということにはちょっと無理があろうかと考えております。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦後処理費の問題でございますけれども昭和四十二年に引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律ができまして、政府と自民党との申し合わせ事項を閣議決定して戦後処理は終わったということになっておりますけれども、実は新聞報道によりますと、総理府と大蔵省との折衝によって戦後処理問題懇談会検討経費として五百万円計上されたというように報道されておりますが、この五百万円という経費はどのように活用されようとしておるのか、またどういう構想のもとに経費が計上されたのか、その点についての御説明を願いたい。
  197. 石川周

    ○石川(周)政府委員 政府といたしましては、これまで戦没者遺族、戦傷病者等につきまして一連の援護等の措置を講じてきたところでございまして、御指摘昭和四十二年の政府・与党間の了解に基づきまして戦後処理に関する一切の措置は終結しているので、新たな給付金等の特別な措置を講ずることは適当でないと考えております。ただ、一方におきまして戦後処理問題につきましては、戦後三十六年を経た現時点におきまして一部に所要措置を図るべきであるとする強い御要望がございますので、民間有識者による公正な検討の場を設け、これらの戦後処理という問題をどのように考えるべきかを検討することが必要である、こう考えるに至ったものでございます。  御指摘の戦後処理問題懇談会検討経費五百万円は、この懇談会の検討に要するものといたしまして総理府予算に計上され、御審議をお願いしているところでございまして、その内容会議費、謝金等でございます。  懇談会をどのように運営していくかということにつきましては、五十七年度予算の執行の問題でございますので、予算が成立いたしましてからその準備に着手いたしたいと考えております。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦後処理の問題については、この当内閣委員会におきましても戦後処理の小委員会等が持たれながらいろいろと検討されているわけでありますから、やはり戦後処理の問題というものについて不公正であってはならないというふうに私は思います。  戦後処理の問題についてその検討費が計上されたということは、政府の四十二年の方針を変えたのかなというふうに私どもは思えてならないわけでありますけれども、その点はどうなんでしょうか。
  199. 石川周

    ○石川(周)政府委員 ただいま御説明申し上げましたとおり、政府の方針を変えたのか、政府の考えはどうなのかというふうにお尋ねでございますれば、昭和四十二年の了解事項に基づきまして一切の措置は終結しており、現時点で戦後処理問題の見直しを行うことは適当でないと考えているとお答えせざるを得ないわけでございます。  ただ先ほども申し上げましたとおり、政府のそういう考えに対しまして一部に強い御要望がございますので、御指摘のような民間有識者による公正な検討の場を設けて、この問題をどのように考えるべきかを検討していただくということにした次第でございます。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の質問時間が参ったようでありますが、最後に、いまお話がありましたように政府は了解事項の方針を変えていない、しかし民間のやはり公正な場を設けていろいろと広く検討してもらおう、こういうことで今回の五百万円の検討費が組まれたというわけでありますけれども、これは恐らく、いろいろ懇談会等においてそれぞれ検討された上において何らか答申みたいなものが出された場合、その答申内容によって政府としての方針は変えざるを得ない、このように判断してよろしゅうございましょうか。
  201. 石川周

    ○石川(周)政府委員 懇談会の御答申がどのようなものであるのか、私どもただいま現在におきまして想定したりすることは差し控えたいと存じます。ただ懇談会の答申は、できるだけこれを尊重していかなければならないと考えております。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私、ちょうど時間になりましたので、質問を終了させていただきます。御苦労さまでした。
  203. 石井一

    石井委員長 次回は、来る四月一日木曜日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会      ――――◇―――――