○中路
委員 労働省の方から聞いていきます。ロボットの導入の状況等については後からお聞きをするということでやりたいと思います。
通産省の方から後で御報告があると思いますが、
わが国での産業ロボットの導入は、各国の状況に比べても非常なスピードで導入されてきておるわけです。特に電機産業、自動車産業、神奈川県内にも集中しているわけですが、ここでは、この数年台数も大変多くなってきています。
この問題と関連して、現在、産業ロボットが導入されたり自動化されたことによって、自動車や電気器具製造業などの大企業においてどういう
状態が職場で起きてきているのか、この数カ月、私も直接幾つかの企業の職場について
調査をしてまいりました。少し時間をとりますけれ
ども、最初にその
調査しました現状について
お話をして、それをもとにして
労働省に幾つかお聞きしたいと思うのです。特に、解雇という問題じゃないのですが、非常に
雇用が不安定になって、また労働条件が悪化してきているという状況が出てきているわけなんで、その問題を中心に三つの例で
お話をしたいと思いますが、
一つは小松製作所、もう
一つは日産自動車、あとは三菱自工という、神奈川県内でも代表的な企業です。
建設産業のトップメーカーと言われています小松製作所の場合ですが、いま建設機械からメカトロニクスの方に一大転換を図ろうとしているわけです。最近はロボットの新商品開発を進めていますが、主にダンプ、トラクターをつくっている川崎工場のたとえば油圧機器工作部というところの機械工を見ますと、二年前には約六十名いましたが、自動化等によって現在約四十五人となり、数年後には数人の事実上無人化工場になると言われています。工程に
一つの自動機械が導入されますと、七、八人の要員が二人に減っていくわけです。油圧機器工作部の機械工の場合、主に板金や組み立て工に回されているようで、若干の
労働者がここでも退職をしています。
ここで言えることは、第一段階として、自動機械やロボットの導入によって、同じ工場内に異動するわけですが、
技術を持つ人や熟練工が、
技術や熟練を必ずしも必要としない職場に回される。次の段階として、配転先の職場でも、新入社員が採用され、かわって病弱者や
高齢者あるいは
定年近い人がさらに他の職場に回される。玉突きで追い出されると言われていますけれ
ども、たとえば小松設備とか小松梱包とかいう一〇〇%出資の傍系会社への出向、あるいはKGSという小松ゼネラルサービス、一〇〇%出資の会社に出向させられるわけです。この会社の場合は、植木の手入れやコピー、さらに、ふろ沸かし、それからクラブや売店の管理、全くいままでと別の職種に、好むと好まざるとにかかわらず、事実上配置転換させられているのが
実態です。こういうことによって、小松製作の籍も移されて労働条件も一切変わってしまう。こういうふうに、自動化とロボット導入によって大変不安定な
雇用関係をつくり出している。これは一例でございます。
もう
一つは日産自動車のある工場ですが、この車体部門では、溶接を行う場合に、従来は手打ち式のスポット溶接またはアーク溶接を手動で行っていました。ある職場で、十四名から十五名でその
仕事にかかっていましたが、その後、ロボット十五、六台、マルチウエルダー四台が導入されて、結果として、部品投入と監視に合わせて六名
程度が配置されるにとどまった。すなわち、八名から九名の要員が削減されたわけです。
この八名から九名の削減された要員は溶接の熟練工ですけれ
ども、
年齢も三十代後半から五十過ぎの
労働者ですが、新しく配置されたラインの中での作業のスピードにはとうてい追いつけないわけです。比較的簡単な作業であっても、その経験や
技術がラインスピードによって全く無価値なものになるわけで、部品の組みつけが間に合わなかったために、みずからラインの非常停止ボタンを押すあるいは同僚に非常停止をかけられるということで、オシャカが発生すると責任が問われる。そして、比較的ライン速度に拘束されないサブラインに配置される。このために、基本給の昇給率が査定で落とされたり、特別手当にもはね返っているというふうに
お話を聞きました。
もう
一つの、自動車メーカーの
一つであります三菱自工ですが、ここでも、自動化された工程からの配転先は、非常に過酷な作業や汚い作業場、修理やラインへの部品供給、不良の直しなど、非常に劣悪な周辺作業が多くなっています。
自動車製造業では、自動化された工程から組み立てに回されるのが多くて、多種の車が高速で流れてくるラインで組み立て部品のストックは許されない。高速スピードの中で振動工具を使うわけですから、組み立てに行った
労働者は、指も手も動かなくなって、六割がやめたとも言われています。また、別会社へ配置転換、出向も日常化して、工場内の
一つの工程、
一つの作業がそっくり別会社に移管される。出向扱いとなり、そのまま転籍が強要されますと、同じ工場内にいても、出向扱いになると労働組合の選挙権もなくなるという現状であります。
いま、私は三つの例を、小松製作所と日産自動車のある工場、三菱自工を挙げましたけれ
ども、典型的な
一つの例だと思いますが、こうした大企業における産業用ロボットや自動化が、この導入によって求められている労働安全あるいは衛生向上等の本来の役割りよりも、いま例で
お話ししましたようにもっぱら経済性の追求からのみ導入しているという
実態がありますから、
労働者の
雇用の
状態を非常に不安定にしているわけです。私は、
労働省がこうした産業ロボットの導入や自動化による
雇用への影響についていま現状をどういうふうに認識されているのか、まずお伺いしたいと思います。
〔佐藤(信)
委員長代理退席、
委員長着席〕