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1982-03-18 第96回国会 衆議院 逓信委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月十八日(木曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 水野  清君    理事 加藤常太郎君 理事 畑 英次郎君    理事 吹田  愰君 理事 渡辺 紘三君    理事 阿部未喜男君 理事 鈴木  強君    理事 竹内 勝彦君 理事 西村 章三君       秋田 大助君    鴨田利太郎君       佐藤 守良君    渡海元三郎君       丹羽 雄哉君    長谷川四郎君       早川  崇君    原 健三郎君       福永 健司君    久保  等君       楯 兼次郎君    森中 守義君       米田 東吾君    中井  洽君       藤原ひろ子君    村上  弘君       依田  実君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 箕輪  登君  出席政府委員         郵政政務次官  水平 豊彦君         郵政省郵務局長 魚津 茂晴君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君  委員外出席者         外務省情報文化         局報道課長   寺田 輝介君         大蔵省主計局主         計官      藤井  威君         厚生省社会局更         生課長     板山 賢治君         参  考  人         (日本放送協会         経営委員会委員         長)      吉武  信君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     坂本 朝一君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    中塚 昌胤君         参  考  人         (日本放送協会         技師長専務理         事)      高橋  良君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   山本  博君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   武富  明君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   坂倉 孝一君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     田中 武志君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     海林澣一郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     渡辺 伸一君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     荒井 治郎君         参  考  人         (日本放送協会         経営総務室室         長)      片岡 俊夫君         参  考  人         (日本放送協会         経理局長)   青柳 保夫君         逓信委員会調査         室長      芦田 茂男君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   中井  洽君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     中井  洽君 三月九日  辞任         補欠選任   正木 良明君     大橋 敏雄君 同月十七日  辞任         補欠選任   中井  洽君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   永末 英一君     中井  洽君 同月十八日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     依田  実君     ――――――――――――― 三月九日  放送法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第一号) 同月十七日  日本放送協会昭和五十五年度財産目録、貸借対  照表及び損益計算書 同月一日  電話加入権質に関する臨時特例法期限延長に  関する請願伊藤宗一郎紹介)(第八四一  号)  同(石井一紹介)(第八四二号)  同(小沢一郎紹介)(第八四三号)  同外二件(越智通雄紹介)(第八四四号)  同(金丸信紹介)(第八四五号)  同(川崎二郎紹介)(第八四六号)  同(木部佳昭紹介)(第八四七号)  同(工藤巖紹介)(第八四八号)  同(倉成正紹介)(第八四九号)  同外一件(古賀誠紹介)(第八五〇号)  同(近藤元次紹介)(第八五一号)  同外一件(志賀節紹介)(第八五二号)  同(椎名素夫紹介)(第八五三号)  同(塩川正十郎紹介)(第八五四号)  同(砂田重民紹介)(第八五五号)  同(中尾栄一紹介)(第八五六号)  同(西岡武夫紹介)(第八五七号)  同(浜野剛紹介)(第八五八号)  同(藤波孝生紹介)(第八五九号)  同(藤本孝雄紹介)(第八六〇号)  同(細田吉藏紹介)(第八六一号)  同(前田正男紹介)(第八六二号)  同(松本十郎君外一名紹介)(第八六三号)  同(三塚博紹介)(第八六四号)  同外一件(斎藤実紹介)(第八九一号)  同外十三件(竹内勝彦紹介)(第八九二号)  同外二十件(長谷川四郎紹介)(第八九三  号)  同(田川誠一紹介)(第八九九号)  同(天野公義紹介)(第九〇八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第九〇九号)  同(小野信一紹介)(第九四四号)  同(北山愛郎紹介)(第九四五号)  同(鈴木強紹介)(第九四六号)  同(田邊誠紹介)(第九四七号)  同(原健三郎紹介)(第九四八号)  同(堀昌雄紹介)(第九四九号)  同(山口鶴男紹介)(第九五〇号)  同(藤原ひろ子紹介)(第九五七号)  同外一件(小沢和秋紹介)(第九七四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第九七五号) 同月五日  電話加入権質に関する臨時特例法期限延長に  関する請願外一件(倉成正紹介)(第九九九  号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一〇〇〇号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一〇三八号)  同外一件(阿部文男紹介)(第一一〇九号)  同外十件(越智通雄紹介)(第一一一〇号)  同(川田正則紹介)(第一一一一号)  同(岸田文武紹介)(第一一一二号)  同(北村義和紹介)(第一一一三号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第一一一四号)  同(倉成正紹介)(第一一一五号)  同(三枝三郎紹介)(第一一一六号)  同(地崎宇三郎紹介)(第一一一七号)  同(早川崇紹介)(第一一一八号)  脊髄損傷者に対する郵政行政改善に関する請願  (神田厚紹介)(第一〇八〇号)  同(部谷孝之紹介)(第一〇八一号) 同月十日  電話加入権質に関する臨時特例法期限延長に  関する請願外一件(小林恒人紹介)(第一二  六一号) 同月十五日  電話加入権質に関する臨時特例法期限延長に  関する請願竹内勝彦紹介)(第一四二一  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第一号)      ――――◇―――――
  2. 水野清

    水野委員長 これより会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮り申し上げます。  本件の審査が終了するまで、随時参考人として日本放送協会当局出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 水野清

    水野委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 水野清

    水野委員長 それでは、提案理由説明を求めます。箕輪郵政大臣。     ―――――――――――――  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 箕輪登

    箕輪国務大臣 ただいま議題となりました日本放送協会昭和五十七年度収支予算事業計画及び資金計画提案理由につきまして、御説明申し上げます。  この収支予算事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、郵政大臣意見を付して国会に提出するものであります。  まず、収支予算について、概略を申し上げます。  事業収支におきましては、事業収入は前年度に比べ四十二億六千万円増の二千八百七十二億三千万円、事業支出は前年度に比べ百五十四億円増の二千八百七十二億三千万円となっており、収支均衡を保っております。  資本収支におきましては、テレビジョンラジオ放送網建設放送設備整備などのための建設費として、三百億円を計上いたしております。  また、債務償還に必要な資金不足額を補てんするため、昭和五十五年度及び昭和五十六年度からの繰越金百十一億四千万円のうち、七十六億二千万円を資本収入に計上することにより、収入支出ともに三百八十七億三千万円と均衡を保っております。  なお、この繰越金のうち、残り三十五億二千万円につきましては、翌年度収支の不均衡が生じた場合の支出に充てるため、その使用を繰り延べることといたしております。  次に、事業計画につきましては、その主なものは、テレビジョン放送及びラジオ放送全国普及を図るため、放送網建設を行うとともに、放送衛星について必要な設備整備を進めること、視聴者意向を積極的に受けとめ、公正な報道と豊かな番組を提供すること、受信料負担の公平を期すため、受信料制度周知徹底を図り、受信契約増加受信料の確実な収納に努めること等となっておりますが、これらの実施に当たっては、極力合理的、効率的運営に努めることといたしております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。  郵政大臣といたしましては、これらの収支予算等について、慎重に検討いたしました結果、これをおおむね適当であると認め、お手元に配付されておりますとおりの意見を付することといたした次第であります。  以上のとおりでございますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどお願いいたします。
  6. 水野清

  7. 坂本朝一

    坂本参考人 ただいま議題となっております日本放送協会昭和五十七年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして御説明申し上げます。  協会事業運営は、きわめて厳しい経営環境にありますが、昭和五十七年度は、昭和五十五年度を初年度とする三カ年の経営計画最終年度として、所期の目標を達成することとしております。このため、収入の確保に全力を傾注するとともに、経営全般にわたり、極力業務の合理的、効率的運営を推進しつつ、視聴者意向を積極的に受けとめ、放送全国普及とすぐれた放送実施に努めてまいる所存であります。  次に、昭和五十七年度の主な事業計画について御説明申し上げます。  まず、建設計画につきましては、難視聴地域の解消をより効率的に推進することとして、テレビジョン局建設共同受信施設設置中波放送局の新設、増力及びFM放送局建設などを行うほか、放送衛星についても必要な設備整備を進めることとしております。  また、テレビジョン音声多重放送の拡充に必要な設備整備放送番組充実のための機器の整備を進めるほか、老朽の著しい放送設備の取りかえなどを実施することといたしております。  次に、事業運営計画について申し上げます。  まず、国内放送では、高まる生涯教育への多様な要望にこたえて、幅広く魅力ある番組を編成するとともに、充足感のある特別企画番組を積極的に実施するなど、公共放送使命に徹し、公正な報道と豊かな放送番組の提供に努めることとしております。また、ローカル放送についても、地域特性に即して一層の充実を図ることといたしております。  国際放送においては、放送を通じて国際間の理解と親善に寄与することとし、内外からの要請にこたえて、アジア地域向け放送及び一般向け放送充実刷新し、あわせて受信改善に努めることといたしております。  広報及び営業活動につきましては、地域特性に即したきめ細かい施策により、幅広い視聴者意向を積極的に吸収し、これを事業運営に的確に反映させるとともに、受信料負担の公平を期するため、視聴者生活態様に即した営業活動を積極的に推進して、受信契約増加受信料の確実な収納に努める所存であります。  調査研究につきましては、放送番組放送技術の向上に寄与する調査研究を推進し、その成果を放送に生かすとともに、一般にも公開することといたしております。  以上の事業計画実施に当たりましては、業務全般にわたり効率化を積極的に推進して、経費節減徹底を図ることとし、要員については、事業計画遂行に必要な最小限にとどめ、年度内百六十人の減員を行うこととしております。また、給与につきましては、適正な水準を維持することといたしております。  これらの事業計画に対応する収支予算について申し上げますと、事業収支において、収入総額は二千八百七十二億三千万円、このうち受信料収入については二千八百十一億九千万円を予定しております。これは有料契約総数において五十万件の増加を見込んだものであります。  これに対して、支出は、国内放送費などの事業運営費減価償却費支払い利息など総額二千八百七十二億三千万円で、事業収支において収支均衡を図っております。  なお、昭和五十七年度の財政を安定させるため、昭和五十五年度及び昭和五十六年度から使用を繰り延べることとしている繰越金百十一億四千万円については、このうち七十六億二千万円を本年度債務償還のために使用し、残余の三十五億二千万円を翌年度収支の不均衡が生じた場合の支出に充てるため、その使用を繰り延べることといたしております。  次に、資本収支は、支出において、建設費三百億円、通信・放送衛星機構への出資に三億四千万円、債務償還に八十三億九千万円、総額三百八十七億三千万円を計上し、収入には、これらに対する財源として、減価償却引当金前期繰越金放送債券及び借入金等を合わせて総額三百八十七億三千万円を計上いたしております。  以上、日本放送協会昭和五十七年度収支予算事業計画等につきまして、そのあらましを申し述べましたが、一九八〇年代における公共放送としての果たすべき役割りがますます重要になっていることに思いをいたし、今後の事業運営に当たっては、協会の総力を結集して、協会に課せられた責務遂行に努める所存でございます。委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いいたし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
  8. 水野清

    水野委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。     ―――――――――――――
  9. 水野清

    水野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨田利太郎君。
  10. 鴨田利太郎

    鴨田委員 本日は、NHK昭和五十七年度予算に関する審議でありますので、NHK基本的あり方に関連して幾つかの点について質問するので、率直にお答えをお願いいたします。  近年、われわれの社会生活の中にあって、放送の果たす役割りは、国内的にも国際的にもきわめて大きいものがあります。特に公共放送としてのNHKの果たす役割りはまことに大きなものがあると考えられます。  最近のNHK番組を見ますと、「シルクロード」とか「NHK特集」とか、われわれの期待にこたえる番組が多く、国民の一人として喜ばしく思っておりますが、一方、その経営的側面を見ると、財政的には何年かごとに料金値上げを繰り返し、収支均衡基本構造がある。その上、最近の雑誌でございます。皆さん御存じのとおりの、ここにも持ってきておりますけれども文芸春秋によれば、早い話が労使癒着の体質が指摘されております。昨年来、民放界におきましては、北海道テレビ放送岩沢社長の百四十一億円の使い込み事件、昨年のまた文春におきましては「上田哲NHKの“闇将軍”」三億円の豪邸づくり技術ということで、こういう称号をもらったとかいうことが書いてある。また、ことしの文春を見ますと、UNNラインですか、私にはわからないですが、長沢・中塚上田ラインとあります。こう書いてある。  一体NHKはどうなっておるのか、国民は本当に真意がわからなくなってしまう。こういうことから、私は、この審議に当たりまして、まず初めにそういう点を頭の中に置きながら、ひとつ御質問していきたいと思う次第であります。  まず、昨年より、昨年三月、昭和五十六年度NHK予算を当委員会において承認する際、「協会は、厳しい経営環境を深く認識し、長期的展望に立った経営の在り方について検討」することを附帯決議として求めたが、長期的展望に立った経営あり方の確立こそ、現時点でNHK経営者に最も強く求められていることであると私は思っております。  しかしながら、このようなきわめて困難な重要課題検討する経営陣に一部に伝えられるような経営委員会形骸化執行機関労使癒着などがあったのでは、われわれの期待にとうていこたえられない。  この際、経営委員長会長から、NHK経営陣としての、NHK経営に当たる心構え決意を明確な形でまず初めに伺っておきたいと思う次第であります。
  11. 吉武信

    吉武参考人 お答えいたします。少しのどを痛めておりますから、お聞き苦しい点があったら御容赦を願います。  長期的展望NHK経営をやっていけとおっしゃる御意見は、まことにごもっともなことだと思います。NHKでは、協会の方で長期ビジョン審議会というものをつくりまして、ずっとそういう見地からあらゆる点についての長期的な検討を加えておりました。その報告書がこの間できまして、それによって、なお協会は、協会業務あり方、その基本的な役割り財源の問題、さらに私ども経営委員会あり方にまで入って、いろいろな問題が報告書として出ておりますし、それに関して協会は長期的な計画の策定をやっております。非常にりっぱな報告書でございまして、協会も努力しておりますし、その結果は必ず出てくると私は期待しております。  一体、どういう信条で、決意を持っておまえたちNHK経営に当たっておるかという御質問でございますが、もう何といってもやはり、商業主義でないと言ってはちょっと差しさわりもありましょうけれども、営利を目的としない公共放送機関、よく情報化社会だ、あるいはマスコミ時代だなんて言われますが、この戦後の社会の中でそういう公共性を持った大量の情報伝達機関としての役割りを果たしていく、これがNHK唯一最高使命だと私は理解しております。経営委員会もそういう立場から、できるだけ国民皆さん方の御期待に沿うような公共的な情報伝達国民皆さん方に的確な情報となるたけ早い情報を提供するようにやっていただきたい。経営委員会もそういう方向で協会執行部方たちと協議をいたしております。  以上でございます。
  12. 坂本朝一

    坂本参考人 NHKの基本的な経営の考え方、方針は、いま経営委員長がお話しになったとおりでございまして、私どもも、その経営委員会の御指示、御決定を受けまして、いま経営委員長もお述べになりました会長諮問機関としての長期ビジョン審議会設置いたしまして、あのお顔ぶれの先生方が一年半にわたって、延べ六十回に及ぶ小委員会をお持ちいただいて御献策いただいた。私は本当にNHKなればこそというふうに感謝の気持ちでいっぱいでございます。  問題は、それにどうこたえるかということの一点にかかっているかと思いまして、この一月に御答申をいただいて以来、長期ビジョン検討会議という、私を議長とする全役員による会議を設けまして、その御献策を中心に、視聴者の御要望にこたえ、公共放送使命を果たしていきたいと考えておるわけでございます。  なお、先生のもう一つの御指摘の、NHK労使癒着しているのではないか、そういうことがいろいろな雑誌週刊誌等に指摘されているが、それに対して経営の姿勢はどうかという御質問につきましては、はなはだ残念でございまして、正直言って私どもはさらさらそういうことはございませんし、その多くは伝聞と誤解による報道ということで、そのたびに強く抗議もし訂正も求めておる。今回の文芸春秋の問題にしましても、直ちに抗議に行って、先方も一応抗議を承って検討するということになっておる状況でございますので、何とぞ御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  13. 鴨田利太郎

    鴨田委員 ただいま経営委員長会長から、それぞれNHK経営に対しまして心構えを聞きまして、私は原点に立ち返ってNHK経営基本構造についてひとつ真剣に考えていってもらいたいと思うわけでございます。というのは、経営委員会、これは御承知のとおり法の第十六条によりまして、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」とあります。そして、それに対しまして、そのもとで経営委員方たちNHK最高意思決定機関として収支予算事業計画収支決算並びに放送局設置計画並びに番組基準番組編集基本計画事業の管理及び業務執行に関する規程など、NHK重要事項について議決することとなっておりますが、実際にどのくらいまで経営委員会はその運営にタッチされておるかということを私は承りたいと思うわけであります。経営委員長から……。
  14. 吉武信

    吉武参考人 経営委員会非公開でやっております。余分なことなんですが、けさ私はNHKのニュースを聞いておりましたら、アメリカの下院で、日米関係に関して具体的に日本要求を突きつけるという意見、それがいいという意見、またプライベートにやっていった方が同盟国としてはより効果的ではないかという御意見が出ておりまして、われわれの立場もなるほどそんなふうだなという気を持って聞きました。協会役員会理事会非公開でありますし、これは企業ですから当然そうあるべきだと思いますが、経営委員会国民に対してある程度公開しろという御意見があることは承知しておりますけれども、従来の立場として議論もいたしましてやはり非公開がいいという立場をとってきております。そういう立場経営委員会協会がやっていくということの方が、内輪ですから効果が出るのじゃないかという気がいたしましてその放送を実は聞いたわけでございます。  したがいまして、経営委員会は何しているんだ、基本方針に、放送法に書かれたような職責を完遂しておるかというような御意見が出るのですが、私どもは、それを一々公開していろいろとお答えすることが果たして業務運営に関して効果的であるかどうかということには、ちょっと疑問を実は持っております。  ただ、きょうはせっかくこうしてお呼び出しいただいて御質問をいただいておりますから申し上げますと、基本的には経営委員会は非常に活発に議論をし、活発に諸案件を議決し、そしてその責務を十分に務めておる、抽象的にはですね。世上言われますような形骸化は決してない、こういうふうに信じております。  せっかくの御質問ですから若干具体的に申しますなら、予算の編成、私が委員長に就任して、十一月末ですが、それからほとんど二カ月、一月末までは数回の経営委員会を開き、かつその中では経営委員のみの秘密会を四回くらいやったと私は記憶しております。そこでかんかんがくがく、いろいろな意見を出して、最後には協会に私から数項目の要望を口頭で申し上げております。  そういう関係で、私どもは、私ども経営委員会としての職責はわれわれの置かれた非常勤といういまの状況におきましては、少なくとも相当程度に尽くしておるというように考えております。
  15. 鴨田利太郎

    鴨田委員 いまの委員長意見で、経営委員会が一生懸命なさっておるということが理解できるのでございますけれども、実際に執行しておるのはやはり執行部でありまして、経営委員会方たちの中には、いろいろな仕事を皆さん持っておりますから完全に管理できないのだというふうな声も書いてあります。  それと同時に、関連しまして、最近の例を考えますと、五十四年の五月にNHK基本問題調査会をつくりましたね。そして、発足して十一月にその答申を得まして、次に今度五十五年の七月には前記調査会の答申に沿ってNHK長期ビジョン審議会を発足させておる。そして、本年の一月に明らかにされたNHK長期ビジョン審議会報告書によれば、一九八〇年代のNHK経営について指針となる事項を数多く含んでいるが、この審議会はNHK会長諮問機関なんですね。経営委員会諮問機関じゃない。そうしまして、この審議会はNHK会長諮問機関として設置、その長期ビジョン審議会の答申では具体的な姿が必ずしも明らかになってないように思う。やはりNHK自体が財政の長期的計画を確立し、しっかりした対策を立てるべきである。だけれども、その審議会と経営委員会と何か二つダブって上の指導者がいるような感覚を国民に与えることはまずいと思うのですが、その点についてはどういうお考えなんですか。
  16. 吉武信

    吉武参考人 長期ビジョン審議会経営委員会は、私はダブっていないように理解しております。あれは執行部の方の諮問に答える機関でございまして、いろいろ具体的なものを書いてありますが、経営委員会は御承知のように主として議決機関であり、その決定に関して責任と権限を持っておるという、形の上では最高の議決機関ということになっております。執行部方たちが、協会としてそういう審議会なり何なりで識者のいろいろな意見を聞いて、そして協会運営の資料とされ、参考とされ、それによって運営されるということについて、われわれの立場とそう矛盾しておるようには私は実は考えておりません。
  17. 鴨田利太郎

    鴨田委員 経営委員会の機能がどうも機動的に動かないような気がします。いま委員長がおっしゃったように、しっかり毎日出てやってもらっておるんなら国民もきっと文句はないだろうと思うのだけれども、一々そこに情報伝達が行かないような場合が考えられます。こういう点につきまして、たとえば専任の事務局を設けるというような制度的な強化策が必要だと思うのですけれども、この辺について、郵政大臣どのようにお考えですか。
  18. 箕輪登

    箕輪国務大臣 専任の事務局を経営委員会に置いたらどうか、こういう御趣旨だと存じますが、これは一つの御意見だと思います。ただ、NHKの制度の問題でございますので、制度全般を考えるときに慎重に検討させていただきたい、こう考えるわけでございます。
  19. 鴨田利太郎

    鴨田委員 NHKが世間から疑惑の目で見られないようにするための制度を、しっかりひとつここでつくってもらいたいことを大臣に要望します。  次に、財政関係について質問いたします。  昭和五十六年度も終わろうとしておりますが、今年度予算では受信契約増加目標を五十五万件としております。それで予算を組んでおります。現在までの状況と達成の見通しをお聞きします。五十五万件が果たしてできるかどうかということをお聞きします。
  20. 海林澣一郎

    ○海林参考人 お答え申し上げます。営業担当をしております海林でございます。  いま御質問の今年度の営業の目標ということでございますけれども、五十六年度は目標の数を五十五万増というふうにいたしております。一番新しい確定した数字で申し上げますと、一月の末に集計したもので七九%いっております。これは標準の達成率が八三・三%でございますからそれに接近している。二月の末でございますけれども、まだ確定の数字が出ませんけれども、最終的に私の責任で申し上げれば、五十万前後ということが二月の末の数字になろうというふうにいま予測しております。ただ、三月でございますけれども、三月、四月になりますと、移動世帯と申しますか、引っ越しなどが多くなりまして、このままの伸びでいくかどうかということはきわめて厳しい数字でございます。  しかしながら、営業といたしましては、あるいは経営といたしましては、何としてもこの目標を達成したいということで、全協会的に全力投球をしているということが現在の状況でございます。
  21. 鴨田利太郎

    鴨田委員 いまのでもって大体五十五万件を目標に一生懸命やるんだという努力はわかりますけれども、一方におきましては受信料の不払い者は九十万いるということでございます。このNHKの財政が悪化しておる状況を考えてきますと、受信料制度の信頼を揺るがす重大な問題になってくると思うのですけれども、この不払い者対策としてどういうふうにこれを今後考えるのかということをひとつお尋ねしたいと思います。それでまた不払い者の数の正確ないまの数字を教えてください、私は九十万と言った。
  22. 海林澣一郎

    ○海林参考人 それでは、まず不払いの数字から申し上げます。  五十五年の末でございますけれども、五十五年の末が滞納が九十九万一千件ございました。それで、五十六年になりまして、滞納の数字は上半期と下半期という集計をいたしております、五十六年の九月上半期で九十九万六千、五千件ふえました。しかしながら、たとえば五十二年、五十三年というような時点で考えますと、五万であるとか七万であるというふうな大きな数字でございましたけれども、五十五年以降につきましてはそういった数字でございます。  それで、先生の仰せの滞納の対策でございますけれども、これは多少迂遠なことでございますが、先ほどもちょっと先生からございました「NHK特集」あるいは「シルクロード」であるとか、何といってもいい番組を出して国民の御理解をいなだくということがまず基本であろう。それから、私どもに与えられております、営業といたしましては日夜滞納を減らすための努力をすること、たとえば国会でも毎々申し上げております昭和五十二年から営業の特別対策員というのを設けまして、特に不払いの方のお宅をお訪ねするというようなことをしております。実は去年の十月にそれまでは百四十人だったのでございますけれども、東京、大阪、札幌でございますが、また五十人ふやしまして百九十人の要員で滞納の対策に当たらせる。さらに、大都会の場合などは不在の御家庭が非常に多うございます。そういう御家庭に直接お伺いしてもお会いできないので、文書を出すあるいは夜お電話をするというような諸種の対策を講じている。なかんずく、昨年十一月には視聴者月間というのを設けまして、全協会的に、たとえば名の通ったアナウンサーであるとかそういう者が不払い地区に行って放送の裏話というようなことをお話しして御理解を賜るというような、いまわれわれとしては考えられるあらゆる手を尽くして不払いの対策に当たっているということが現状でございます。
  23. 鴨田利太郎

    鴨田委員 そういうふうに滞納者の対策を一生懸命立てておるという努力はよくわかります。しかし、私がここで言いたいことは、五十七年度予算においても受信料収入の伸びは昨年度に比べて一%台にとどまっている。テレビの普及ももうカラー化がほとんど終わるような状態になっておる。今後大きく伸びることは考えられないわけですね。そうすると、NHKとして今後の受信料収入の伸びをどのように予測してくるのか。頭打ちになってしまう、これの伸びの予測が今度また値上げ問題にまでかかってくるんだから、そのことをちょっとお聞きします。
  24. 海林澣一郎

    ○海林参考人 まず、五十七年の伸びをどう考えているかということでございますが、この計画は、冒頭会長からも申し上げました、五十五年から五十七年度の三年計画の中で考え、来年は五十万伸ばそうということをいま考えております。しかしながら、いま先生がおっしゃいますように、たとえば御承知の五十五年に国勢調査の結果が出まして、五年間で二百二十四万の伸びであった。年平均しますと四十五万の世帯の増でございますので、その以前に比べますと、これから世帯の増というのは鈍化傾向でございます。したがいまして、その四十五万というようなことを一応基準にしながら、われわれとしては新しくふえた世帯からはできるだけ一〇〇%近くいただくということでございますが、単身世帯が全体の世帯のうちの二〇%を占めている、その二〇%の単身世帯の方のテレビの所有率というのは半分くらいであるというような数字もございまして、伸びます世帯数そのまま四十五万が契約いただけるかといいますと、そこまではまいりません。しかし、そう言っていてはいけないのでありまして、その辺のところにこれからの精力を集中していきたいということが現状でございます。
  25. 鴨田利太郎

    鴨田委員 NHKの財政について今後大幅な増収が余り期待できない。国民受信料によって維持されるNHKの基本的性格からいっても、これから人件費、物件費の経費の節減、効率経営の推進は、NHK経営にとって最も基本的な命題であると思います。この点について、まず人件費に関する部分から質問していきたいと思います。  NHKは、要員の効率化計画について、五カ年間に千二百人の効率化を行う、減員をすると言っておりました。それで、五十五年度では百人減員しまして、実際は五十人また増員しております。俗に効率化計画のだましと呼ばれているそうでございますけれども、この際、NHKの要員効率化計画について明確な説明をひとつしてください。
  26. 武富明

    ○武富参考人 お答え申し上げます。  NHK効率化計画でございますが、その中に入ります前に、効率化計画というのは三年計画なり五年計画なり長期の計画をもって立てないと、どうしても実現ができません。これは公務員の減員計画でもあるいは電電公社その他他社の効率化計画でも同様でございます。しかし、一方、増員あるいは業務量の増というものが必ずどの企業にもございますので、それに対応する増要素というものは実は単年度ごとに決まっているというのがどの企業でも通常の形でございます。したがいまして、私ども五十四年から検討を始めまして五十五年から実施したわけでございますけれども、五十五年のときに現行業務について要員を今後五カ年間に七%減らそう、こういう計画を立てたわけでございます。長期計画で千二百という数は決まっていたわけでございます。その千二百というのを実施していくためには、五十五年には百、五十六年には二百、五十七年には三百、五十八、五十九年はそれぞれ三百ずつ、合わせて千二百の効率化をしよう、こういう計画を立てたわけでございます。  しかし、一方、ただいまちょっと私が触れましたように、単年度計画の中で業務量増というものがどうしても出てまいります。それに対応するための増要素というものもまた考えてまいらなければなりません。  そこで、これから実情を御報告申し上げるわけでございますけれども、五十五年度につきましては五十人を減らしました。実際の減員は五十でございます。それから、五十五年度中に業務量増に向けなければいけない人間というのが五十ございます。したがいまして、実減員の五十と業務量増に向かう五十と、これは百名を効率化をすることによって生み出した、こういうことでございます。同様に、五十六年度につきましては、増要素というのは、ローカル放送充実その他を含めまして八十名の増というものがどうしても必要だと私ども考えました。同時に百二十名の減員というのを実現したわけでございます。つまり、百二十名の減と業務量増八十の業務を賄うために、全体では二百の効率化がどうしても必要であった。いま五十六年度最後の段階に来ておりますけれども、この二百というのは完全に達成できる、私はそう考えております。  したがいまして、トータルで申しますと、この二年間に実人員としては百七十名の減員を行いました。今年度末では百七十名の人間が減ることになります。同時に、その間の業務量増というのは百三十どうしても増をしなければならぬ要素があった、こういうことでございますので、効率化は全体でこれまでに三百名に及んでいる、こういうことでございます。  さらに、これから先のことをちょっと触れますれば、五十七年度は増要素というのは、どうしてもこれからローカル放送を強化していかなければいかぬという事情もございます。その他、たとえばいま御報告申し上げましたように、営業関係その他の業務量増というのが必然的に出てまいりますので、この次は百三十名増をいたしたいと考えておりますけれども、同時に百七十名の実減員というのを実現したい、こう考えております。したがいまして、この計画に基づきましては、来年度は三百名の効率化というのをぜひやってまいりたい、こう考えているわけでございます。
  27. 鴨田利太郎

    鴨田委員 効率化を一生懸命やると意見でもっていま発表されたわけでございますけれども、聞くところによりますと、一つの、たとえば羽田のあの墜落事故だとかニュージャパン、羽田の方はまずかったけれども、ニュージャパンの方は手際よくやったと言われておりますが、何か事件が起きると、民放は一班で間に合うのが、NHKだけが一遍に四班ぐらいぱっと集まってくるというふうなことをよく聞かれますし、また言われております。こういう点につきましても、横の連絡も効率的に考えていけば三分の二で十分だと言っておる人も経営委員の中にはおります。でございますので、その点の合理化というものをもっと真剣に考えてもらいたいということを要請するわけでございます。お願いいたします。  それから、次に問題を移します。要員管理に関連して十分考えておかなければならない将来の問題の一つに、職員の退職金の問題があります。  NHKは、昭和三十四年、五年ごろ約二千四百名の職員を採用し、このために十年後には現時点の試算でも三百億円の退職金を支払わなければならないと言われております。このような事実が本当にあるのか、また、その財源についてはどういうような措置をしておるのか、ちょっとお聞きします。
  28. 武富明

    ○武富参考人 お答え申し上げます。  ただいまの先生の何年か後には三百億というお話でございましたけれども、私どもその話というのは、あるいは三十四、五年に大量の採用を行った、それの退職がそのころに当たるという話ではないか、そう思うのでございますけれども、実はこの三十四年と三十五年に、正直に申し上げますれば二千四百人ほど入っております。これは教育テレビその他の必要で入ったわけでございます。しかし、これを採用いたしますときに、私どもといたしましては、中途採用者を含めまして、あるいは高校卒あるいは大卒、それから中途採用者、そういった者をまぜましてこれを採っておりますので、実はこの二千四百名の分布というのは約十年間くらいの幅にずっと広がってございます。したがいまして、これが一遍に退職をするというような状況はございませんので、そのような一度に大量の退職者が出るということは私はないというふうに見通しをいたしております。現在の要員構成の分布を見ましてもその心配はない、私はそう申し上げられると思います。  ただ、先生のおっしゃるとおり、いま大体四百人から五百人の定年退職者を迎えておりますが、これが徐々にふえていくということも確かでございます。したがいまして、制度上退職金は管理費の中に――退職者というのは計算がつくものでございますから、一応管理費の中に計上してございますし、また、不時の退職に備えまして退職引当金というのもこの中に蓄積をいたしておりますので、これらの事態に対しては十分に対応ができるというふうに私考えております。
  29. 鴨田利太郎

    鴨田委員 退職引当金は、いま現在残高は幾らですか。
  30. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  五十五年度決算の時点におきまして、累積が百十八億五千万円でございます。これは賃金の支払の確保等に関する法律というものがございまして、努力値が一応二五%になっておりますけれども、この時点でまいりますと一九・五%まで積み立てているということでございます。
  31. 鴨田利太郎

    鴨田委員 一生懸命働いた人たちが不安のないように、退職金の引当金をほかの方面で取り崩さないようにひとつお願いしたいと思います。  次に、外郭団体についてのお話をお尋ねをいたします。  最近発行されました文藝春秋四月号になかなかいいことが書いてありまして、NHKののれんを利用して多くの外郭団体があり、さまざまな活動をしておると聞いております。それらの団体の名称と、どのような活動をしておるかをお聞きしたいのでございますけれども、細かいことは後でまた資料として提出していただきたいと思いますが、それらの団体の大体の収入支出並びに利益の額についての合計を教えてください。
  32. 渡辺伸一

    渡辺参考人 外部団体の収益、利益率等まとめて申し上げます。いずれも五十五年度で申し上げます。  まず、サービスセンターでございますが、収入が九十四億、そして支出が九十一億ということでございますので、三億三千万ほどの当期利益を上げております。それから、NHKインターナショナルで申しますと、収入が一億六千三百万、支出が一億六千万ということでございまして、三百二十億ほどの利益を上げております。それから、日本放送出版協会でございますが、これは百六十億ほどの収入、それから支出が百五十億でございまして、七億四千百万円ということでございます。それから、美術センターでございますが、これが六十三億二千万の売り上げ、六十二億七千二百万の支出ということで、四千九百万ほどの利益を上げております。それから、NHKプロモートサービスを申し上げますと、これが九億四百万の売り上げ、八億九千五百万の支出ということで、八百九十万ほどでございます。文化センター、これが同様にいたしまして、八百四十万くらいの利益を上げている。概要を申し上げますとそういうことでございます。
  33. 鴨田利太郎

    鴨田委員 大変利益も上がってきているようですけれどもNHKの名前をかりて、そして利益を得ているのです。そうしますと……
  34. 水野清

    水野委員長 ちょっと鴨田委員に申し上げます。渡辺参考人から訂正の申し入れがあります。
  35. 渡辺伸一

    渡辺参考人 申しわけございません。  NHKインターナショナルにつきまして、三百二十二万の利益であるところを間違って申し上げましたので、訂正させていただきます。
  36. 鴨田利太郎

    鴨田委員 それで、NHKのいまの外郭団体というのは、名前をかりて――公共放送またはNHK、そういうふうなのれん、これは長い間国民受信料を払って育ててきたNHKでございます。ですから、NHKに対して国民は絶大な信頼を持っておる。そのNHKの名前をかりて利益を上げておる。この利益を上げておるにつきまして、編集料や原稿料をもっと徴収すべきじゃないかと私は思うのであります。NHKは、このような利益をもっと還元してもらって、そしてそれをNHKの財政の確立にも役立たせるし、また、できることならば視聴者にそれを還元すべきであると考えます。現状の、NHKのテキストを扱う出版協会につきましても、四億三千万円程度の恥ずかしい還元では、何か納得できないのではないかと思うのですけれども、この辺はどうでしょうか。
  37. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  いま先生おっしゃいますように、出版協会で申しますと、五十五年度に出版協会から収納いたしました権料は七億三千万でございまして、いま先生おっしゃったのは五十四年度かと思います。  それで、私どもは、おっしゃるとおり少しでも受信料の軽減を図るようにということで、こういうことから上がります副次収入についてはできるだけ増加を図っているわけでございます。たとえば放送テキストの場合で申し上げますと、確かに放送テキストはだんだん販売部数もふえてまいりましたから、そしてまた、その率も上げてまいりましたので、ただいまではかなりのまとまった金額になっているわけです。ただ、五十一年から五十五年までの五カ年間の収支を見てまいりますと、収入の伸びが頭打ち、そして支出はかなり伸びておりまして、五十一年度の利益率で見ますと、五十五年度はその半分になっているという状況でございます。それに対して、私ども収納いたします金額は二倍以上になっているという状況なものでございますので、やはりテキストは皆さん方に低廉な価格で広く買っていただくという使命もございますので、ここのところは、収支状況等を総体的に見て決めていきたいと思います。現在のところは、かなりの額を取っていると私どもは承知しているわけでございます。
  38. 鴨田利太郎

    鴨田委員 実は私が言うのは、たとえば「シルクロード」のビデオ、あれを二万円で売っていますね。あれを、国民皆さん方がビデオを持ってきまして入れますと、原価二千六百円ですっかり同じものができちゃうわけです。そうすると、それを二万円で売ると、NHKは高いのじゃないか、こういうことを言われるわけです。そこで、ある程度の利益がぐっと出ているのじゃないか、そういうふうな疑問が生まれてくるのは当然だと思うわけでございます。でございますので、私はその質問をしたわけなんです。でございますので、国民の疑惑を招かないような値段で売ってもらうと同時に、利益が出たら、財政再建のためによけいに還元してもらいたい、これをひとつ心からお願いする次第であります。  もう一つ、また文藝春秋なんですけれども国民の疑惑があって本当に困るので、反論すべきところは大いにこれからも反論し、そして正すべきところは正して、わが国の文化の向上と国民生活の充実のために、教育、教養、報道、娯楽の各種番組の強化を図ることがNHKにとっての最も重要な本質的な課題であると私は考えます。この文藝春秋の同じ記事の中で、経営委員会が外郭団体等の調査にこれから乗り出すと書かれておりますが、このことは事実か。事実だとすれば、この外郭団体の調査を今後ともぜひしっかり続けてもらいたい。そしてそれを正確に国民に公開できるようにしてもらいたい。これをお願いいたします。
  39. 吉武信

    吉武参考人 外郭団体の問題は、私どもが直接的に調査する、調べるという立場には実はないのでございます。経営委員会が直接にこれにタッチしていくあるいは調べていくという権限や、具体的に経営委員会がそうやっていくという立場にはないのでございます。やはり協会との関係において、しかも、向こうは独立機関ですから、法人ですから、協会と外郭団体との契約面を通じてこれはやっていくほかはないという状況でございます。  それで、そういう立場協会の方も努力しておられますが、いま御指摘のありましたように、何分世論がやかましい、あるいはいろいろなところにそれが書かれるということはやはり好ましいことではありませんので、そういうことがうわさされるようなことがないようにやっていってもらいたいという希望を持っております。私どものところに経営委員会任命の監事さんがいますから、その監事さんに、ある程度のことができるならひとつ調査してほしいというようなことを申しておりますのが、いまおっしゃるように、経営委員会がその問題に具体的に乗り出したというようなことに伝えられているのではないかと思いますが、これも直接に監事がとやかく、具体的にいろいろ調べていくような立場にはないのでございます。しかし、やはり協会を通じいろいろな立場を利用してある程度調べる、そして経営委員会に報告していただくという順序をとっております。したがいまして、重ねて申しますと、いろいろそういうことを書き立てられたりうわさされるようなことのないように、まあいろいろ誤解もあると思いますが、協会の方で努力していただきたい、いまこういう立場でございます。
  40. 鴨田利太郎

    鴨田委員 いまのでわかりますけれども、外郭団体のいわば細かい資料、その収益の資料を提出していただきたいと思います。  そこで、NHKの最終的な責任は一体だれが持つのだ、この点についてお尋ねしたいと思うのですが、これはだれですか。NHK経営最高の責任者はだれなんですか。株式会社で言えば社長というのはだれなんですか。これをちょっとお聞かせいただきたい。
  41. 坂本朝一

    坂本参考人 放送法規定によれば、NHKを代表いたしますのは会長である、そういう決意で事に当たっておる次第でございます。  ただし、NHK最高意思決定機関として経営委員会の議決によって事は運ばれるのだ。その議決を責任を持って執行をするのはやはり会長である。したがいまして、NHKを代表する最高責任者という御質問であれば、これは私が責任を持つことであろうという認識を持っておる次第でございます。
  42. 鴨田利太郎

    鴨田委員 わかりました。会長、ひとつ責任を持ってやっていただきたいと思います。  それから、国民NHKを見る目は厳しく、第二の国鉄になりかねないという指摘もあります。経営委員長並びに会長は、本当を言えば大変だと思いますが、NHKがそのようなことにならないように、経営の長期的計画を確立して、日々の業務遂行に当たっては、公共放送としての使命を十分発揮することを旨としてもらいたいと私は考えます。  最後に、経営委員長会長から一言ずつその点についての御発言をお願いいたします。
  43. 吉武信

    吉武参考人 ただいまの御忠言、ありがたく拝聴いたします。
  44. 坂本朝一

    坂本参考人 大変温かい御指摘で、私は一層その責任の重さを感ずる次第でございます。またNHKが、何と申しましても、国民期待にこたえるということを私の責任としてやらなければいけないという決意を新たにした次第でございます。
  45. 鴨田利太郎

    鴨田委員 それでは、次に、国際放送について質問いたします。  現在、日米間あるいは日本・EC間におきまして貿易摩擦が大きな問題となっております。この問題は両国間の相互理解の不足に大きな原因があると思います。たとえば、外国のニュースはこっちの方へ二十入ってくるかと思うと、日本のニュースは三から四しか行かないと言われておりますけれども、このような状況の中にあって国際放送の果たす役割りは大きなものがあると思われるので、当面の重要事項として、この点について質問をしたいと思います。  まず初めに、わが国の国際放送の現状と諸外国との比較について伺います。  諸外国の国際放送とわが国の国際放送とは、その規模において大幅な差があると思います。この規模の拡大を今後考えるべきですが、まず諸外国において簡単に受信ができることが先決です。現在のわが国の国際放送受信状況はどうなっておるか、また送信状況はどうなっておるか、これをお聞きします。
  46. 田中眞三郎

    田中参考人 お答え申し上げます。  先生御存じのように、現在国際放送は、十八の区域に向かって一日三十七時間ということで、その使用の言葉は二十一の言語でやっております。そのほか、その中身は、一般放送ということで、これは日本語と英語でやっております。それから、それぞれの地域の特集対象というようなことでは地域別の放送もやっているというような中身になっておりまして、放送の中身は、ニュースが大体四二%ぐらい、それからニュース解説等々が二〇%ぐらい、それからインフォメーション、情報番組というものが三一%ぐらいというような中身で、特に最近は、国際放送の趣旨でございます、海外の在留邦人の方々の理解を助けるニュースあるいは解説といったものについて非常に力を入れておりますし、また、あるいは貿易摩擦等々についても力を入れて放送しているという現状でございます。  こういった放送は、特に五十六年、昨年の十二月に起こりましたポーランドの問題等のときには、ポーランド向けのニュースの放送等は非常に時間枠をふやしまして、向こうにおられる方の正しい正確な日本からのニュースを伝えたという事実もございます。こういった放送につきましては、これも御存じのとおりで、現在KDDの八俣の送信所を借りまして十二の放送機を使って放送しているということでございます。  それで、大体諸外国との比較はどうかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、放送時間でお答え申し上げますと、現在日本国際放送が一週間でやっておりますのは約三百時間ぐらいということになりますので、これは当然ながら、ソビエト、アメリカ、イギリス、西ドイツ、中国等に比べますと、非常にまだ少ない時間になっております。私どもの調べたところでは、大体日本国際放送の週当たりの放送時間では、国別では大体十四、五位というふうに思っております。  こういったことでございますので、私ども今後ともいろいろ送信体制とか、あるいは番組の中身とか、そういったものについではより一層努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  47. 鴨田利太郎

    鴨田委員 いま、大変努力しておるという話を聞きました。私も、実はずっと世界を回ってまいりまして、中南米あたり、それから中近東、これは全然聞こえないんだね。ポルトガルに中継所があると言われておりますけれども、そのほかに中継所をつくらないと、なかなか受信ができないというふうなのが現状であるといいますけれども、これにつきましての将来的な見通しというものはどういうふうに考えておりますか。実際ぐるぐるっと世界じゅうを回ってみればわかりますよ、聞こえないんだから。聞こえるところと聞こえないところがはっきりしちゃって、ポルトガルのところを通ったところは聞こえる。中南米の方はよく聞こえない。それから中近東の方もなかなか聞こえない。この点についてひとつお願いします。
  48. 寺田輝介

    ○寺田説明員 お答え申し上げます。  外務省といたしましては、国際放送関係につきましては直接の所管官庁ではございませんが、まさに先生の御指摘がございましたように、国際放送の持つ重要性、効果性、これは十分認識しておりまして、いわば総合安保の一環として国際放送の重要性を考えているわけでございまして、そのため、私どもといたしましては、可能な範囲でこの国際放送の強化拡充のために協力するという基本姿勢をとっております。  ところで、御質問のございました中継所の問題でございますが、私ども、やはり国際放送を強化するにはいろいろな技術的な側面がございますが、その中で外務省としてどういう点で御協力できるかという点を常々考えております。そこで、実は現在参議院予算委員会で御審議を願っております予算案の中で、主として欧米に向けて調査団を出すという調査費を計上してございます。この予算の使い方、むしろこの調査の目的でございますが、やはり日本国際放送を質的さらに量的に発展させるためにはどういう道が手っ取り早いか、これに外務省としてどういう寄与ができるかという発想に立っておるわけでございまして、かかる意味で、主としてヨーロッパ、これはドイツ、イギリス、フランスを念頭に置いておりまして、こういった国々の国際放送というのはどういうふうに運営されているか、これらの国際放送はどのように有効的に中継所を設置しているのか、そういう点を探るために、ことしの秋に官民合同の調査団を派遣するという計画を有しております。  なお、先生の方から中南米につきまして御言及がございました。この点に関しましては、私どもパナマが一つの有力な地点だということを考えております。これは、先般大使が帰国しまして、パナマにおきます諸問題を話を聞いたところでございまして、私どもとしましても、現在外務省の中で、たとえばパナマに対してどういう問題点があるのかという検討を始めたところでございます。したがいまして、ただいま申し上げたような立場から、さらに国際放送の質的、量的政善強化のために外務省としてもできるだけの協力をさせていただきたいと思っております。
  49. 鴨田利太郎

    鴨田委員 ただいまパナマの話が出てきまして、パナマのロヨ大統領とも私もお話しをしまして、その点はなかなか向こうもよく理解を示しておるようであります。今後、この国際放送放送規模の拡大、番組充実受信状況の改善を行うことにしましても、やはり金がかかってまいります。現在、五十七年度の政府の交付金は約十億円であります。そして、五十六年度に比して総額において若干の増額になっているものの、国際放送経費総額に占める割合は二六・六%から二五%に減少しております。郵政省として、今後の交付金の増額について、これは今後の国際放送が占める役割り、こういうことを考えながら、どういうように考えておりますか、これをひとつお聞きします。
  50. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま国際放送の重要性が強く叫ばれているというところで、その辺のことも考えまして、私どもも、これを抜本的に強化するのにはどういう方法があるかというようなことで、国際交流特別委員会の方でも御審議いただいておる、そういうことで、制度面及び技術的な両面において抜本的な対策が必要であろう、そういうようなことで、現在御審議いただいておる予算案の中でも、郵政省あるいは外務省の方にもついておるそうでございますが、ここらあたりで十分御検討いただいて、従来も努力してまいったわけでございますけれども、やはり先ほど御指摘いただきましたように、二六・六%までいってまた五十四年のベースに戻った、二五%、五十四年よりちょっと低いはずですが、そんなような状況になっておりますので、重要性を幾ら叫んでみても実際が伴わない、そういうことでは困るということで、私どもとしては、そこらあたりについて、制度のあり方あるいは技術的なあり方につきまして基本的な考え方を検討して対策を立てるようにしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  51. 鴨田利太郎

    鴨田委員 最近オーストラリアに私は出張しましたけれども、ちょうどそのときホテル・ニュージャパンの火事と羽田の日航機の事故がありました。われわれは数日おくれて日本の新聞を読んでそれを知ったような状況でございます。今後の国際化時代におきまして、再度申しますけれども国際平和を維持していくためにはどうしても相互理解が必要であります。その点については、やはりその点の方法として施設をしっかりつくり、この新しいマスメディアを利用してどんどん日本理解を深めてまいりたい、そのための予算をしっかりとひとつ大臣には取っていただきたい、私はここに念願するものでございまして、最後に、国際的コミュニケーションの充実強化について、郵政大臣NHK会長、またその所信をひとつお聞きしまして、この質問を終わりたいと思います。
  52. 箕輪登

    箕輪国務大臣 大変御示唆に富んだ御質問であったと思います。御趣旨に沿って一生懸命がんばりたいと思います。
  53. 坂本朝一

    坂本参考人 私も、国際放送充実ということは大きな協会使命の一つであるという認識は十分持っているつもりでございます。特に、最近は、短波による国際放送によっての国際理解とあわせて、やはりテレビ等による国際理解、これを両々相まってやっていくということが一番効果的ではないだろうかという認識に立っておりますので、そういう意味合いにおきましても、やはりNHKが本質的には担当してやるべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  54. 鴨田利太郎

    鴨田委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  55. 水野清

    水野委員長 これにて鴨田利太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部未喜男君。
  56. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 本日は、経営委員長初めNHKの皆さんお忙しい中を御出席をいただきまして、大変御苦労に存じます。  最近NHK放送番組の内容が非常によくなった、そういうことを耳にいたしますし、また、財政の運用に当たりましても、関係の皆さん方が非常に御苦労なさっておることも十分承知をし、皆さんの御労苦に心から敬意を表するものでございますが、それにもかかわらず、先ほど来お話がございましたように、週刊誌のたぐいなどは事あるごとにNHKの問題を取り上げていろいろと論評を加えておるようでございます。マスコミの中でなぜNHKだけがこんなに話題になるのだろうか。小さい子供の間にいじめられっ子という子がありまして初めからいじめられる体質をあれは持っておるわけですけれども、どうもマスコミの中のNHKはそのいじめられっ子的な性格があるのではないか、そういう気さえするのでございますが、もしそうであるならば、いじめられっ子的な体質はみんなで直していかなければならないのではないか。そういう意味合いから、最近週刊誌等のたぐいの話題に取り上げられるNHKの体質について、経営委員長どうお考えか承りたいと思うのでございます。
  57. 吉武信

    吉武参考人 そういういろいろ週刊誌などに書かれるような点は、申すまでもなく非常に遺憾なことでございまして、これはもうぜひ努力して、そういう点があれば直していかなければならないと思います。  ただ、いま、いじめられっ子と、まことに適切な言葉で表現していただきましたけれども、私どもも、どうもNHKに関しては、小さなことと言っては失礼なんですが、そういうことが何かスキャンダルみたいに報じられるということは、実は私などそう感じております。では、ほかの新聞社あるいは民放などで同じようなことはないのかというと、あるように聞く場合も実はあるのです。  どうしてそういうことになるかということは、やはりNHK国民の皆さんの受信料をもって立っている。しかも、国民の皆さんのNHKである、開かれたNHKとして努力していきたいというようなことを言っておるそういう立場が、最近やかましくなっておりますアクセス権その他の問題として、国民の皆さんの意向がどうしてもここに強く出てくるのだというように実は私は解釈をしております。恐らくそういう点が相当な程度にあるのではないか、いじめられかつ宿命的な点があるのじゃないかと思います。  ただし、批判されるような点は、批判にこたえていかなければならない。ただ、そういう宿命的な、いじめられっ子的なところがあるからNHKが弱いとかいろんなことが言われることには私は実は余り賛成いたしません。それに耐えていくところに、NHKが非常に困難な、世界でも例のないような受信料制度によって生きていく、恐らくこれは日本に独特の形として、アメリカの方式がいいのか、イギリスの税金がいいのか、そういう中で、国民受信料によって生きていくということは、これは非常にむずかしいけれども、それに耐えていって、批判の中に努力していく、そういうところに私、将来の五年、十年あるいはそれから先のNHKが生きる道、この社会にあるいはNHKとして情報社会に貢献していく道、生きていく道というものも出てくるのじゃないかと思いまして、一面においては、むしろその批評に耐え、そこに困難な道に耐えていきつつ、かつ本当にこれは必要だと思いますから、NHKの将来の行く末を考えていかなければならない。  そういう点で、私ども、これは恒常的におるわけではありませんが、暫定的にせよNHKに籍を置くわれわれとしても、そういういじめられっ子であってもなお努力していくように、協会の方々とお話し合ってやっていっておる、こういうわけでございます。
  58. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 経営委員長の識見はいただきましたが、郵政大臣、監督官庁の責任者としてはどうお考えですか。
  59. 箕輪登

    箕輪国務大臣 いろいろ、まあいじめられっ子という表現もございますが、やはり何かがあるのかもしれない。大きい、ほかの民放から見て。したがって、大きいものにはやっぱり何か抵抗があるというようなことかな、というようなことも考えておる次第でありまして、何が原因でいじめられっ子になっているのか、もう少し研究してみたいと思います。
  60. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 監督官庁の責任者はそこをちゃんと検討しておいてもらわぬとぐあいが悪いのでございます。次の機会までに十分、体質のどの辺がいじめられっ子になるのか、御検討いただきたいと思います。  責任者の会長はいかがでございますか。
  61. 坂本朝一

    坂本参考人 私がこういうことを言うとまたおしかりを受けるかもしれませんけれどもNHKがやはり何といってもそれだけ国民の皆様から一番御関心をいただいているという、そのことに私としてはまず責任を感じるべきではなかろうかというふうに思っておるわけでございますが、しかし、さればといって、いじめられっ子で何ら反発もしない、反論もしないということでは、私は、やはり逆に世の中の誤解を受けるのではないか。したがいまして、最近は、いかなるささいな記事であろうとも、事実に反するということであるならば、直ちに対応をして、抗議なり何なり、場合によれば訂正を申し込むということをかなり小まめに始めております。中には次号訂正というようなことに応じるところも出てきておるというような状況でございますので、いましばらくその成り行きを御観察いただきたいと思う次第でございます。
  62. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 やはり私は、一つの原因は、お話があったように非常に大きいからということ、一つは、やはり大きい期待を持たれておるということだと思います。その意味から言うならば、先般の羽田沖における航空機の墜落事故で、国民が大きい期待をしているNHKのニュースが民間の報道から一時間も立ちおくれる、そういう状況については、当然これは率直に批判を受くるべきであると思いますし、当時私は直ちにそのことを指摘いたしましたが、いろいろ事情があったようでございます。いまの言葉で言うならばついていなかった、そういう事情もあったようでございますけれども、これはやはり言いわけにはならないのでございまして、そのことをいま一度問い返そうとは思いませんが、今後の対策について何かお話し合いをしたならば、大綱だけで結構ですからお聞かせをお願いたいと思います。
  63. 坂本朝一

    坂本参考人 この点につきましては、この席をおかりして、いろいろ御心配をおかけしたり御指摘をいただいたことを責任者として深くおわび申し上げます。  ただ、やはり二度とこういう事態があってはならないということで、厳しく担当役員以下に指示いたしまして改善することにいたしましたので、もしその具体的な点について説明をせよということであるならば、担当役員をもって答弁させたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  64. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは週刊誌でもかなり詳しく内容を報道してもらっておりますから、いまここでその時間をかける必要はないと思いますけれども、たとえばこの前議論になりましたミニハンディにつきましても、あれはFPUがついていないというふうに聞いておるのですが、そういうものについての対策などはもう考えられたわけですか。
  65. 田中眞三郎

    田中参考人 冒頭、放送を預かる私として、先般のああいった陸上からの映像伝送が大変おくれたことについては申しわけないというふうに思っております。  それで、早速にもあの後、私を長といたします対策委員会を設けまして連日のようにいろいろ協議をいたしました結果、やはり初動態勢をこの際見直して、もっと強化していこうということでございまして、具体的に言いますと、現在報道の方で持っておりますニュース中継車、これがもう少しコンパクトな小型なものにして小回りがきくようにしようということで、そういった種類のものを早速に改装いたしまして、すでに待機しております。いつ何どき事件があっても出動できるような態勢を整えております。  それから、航空機等につきましても、前回のときは、先生言われましたようについていない面もございましたけれども、これについても現有のものにさらにもう一機、映像伝送が送れるような対策もつくったらどうだろうということで、これも部内の検討を続けております。  そういったことで、今後二度と公共放送であるべきNHKがこういった初動態勢の中でのおくれをとらないように、私も心を引き締めてやっていきたいと思っております。そういった意味合いで、前回のニュースのときもある意味では、ニュース報道番組について、当日八時間ほど放送しましたけれども、大変関心が深うございました。こういった皆さん方NHKに対する信頼感、寄せられる期待、信頼感というものがまだまだあるうちに、私どもは二度とこういうことがないようにというふうに心がけて、現在いろいろ全力を挙げてやっている次第でございます。
  66. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 参考までに、その小型の中継車、M2ですか、M2というものを全国に配備できるのですか。かなり金がかかりますからそうはいかないでしょうか。どの範囲に配備できますか。
  67. 田中眞三郎

    田中参考人 現在、いまおっしゃったM2という改装車、小型中継車を東京の報道局に配備しております。それから、それ以下のそれぞれの放送局につきましては、とりあえず現場から映像伝送できるような機材、ミニハンディに四分の三のビデオの再生がすぐできるようなそういった再生機を順次放送局にもこれから配備していきたいというふうに思っております。なお、小型の車両はそれぞれの放送局にございますので、その辺はそれぞれのものを使ってもらいたいというふうに思っております。
  68. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 次に、本論の財政に入るわけでございますが、先ほど来未収受信料の問題については、NHKも非常に力を入れてフクロウ部隊というようなものをつくってお骨折りをいただいておるようですけれども、私はその前に受信契約というものの方が先行しなければならないという見解を持っておるのです。放送法三十二条の示すところは、NHKの電波を受けられる受信機を持った者は「契約をしなければならない。」という強行規定があるはずです。その「契約をしなければならない。」という強行規定が契約に当たってどの程度生かされておるのだろうか。たとえば昭和五十五年度では新しい契約の開拓は三十万台ではないかと思っています、四十万台になったかどうかわかりませんが。しかし五十六年度は五十万台に大体行けそうでしょう。ということは、新規の契約も努力をすればできるということを意味しておると私は思うのです。受信料の未収については大変な力を入れておるけれども、新規の契約についての力の入れ方が十分でないのではないか。その辺にやはり財政運営の基本的な姿勢が問われるのではないかという気がするのですが、三十二条の強行規定についてもう少し契約をふやしていく考えはないのかどうか、見解を承りたいと思います。
  69. 海林澣一郎

    ○海林参考人 お答え申し上げます。  未契約についてでございますけれども先生の御指摘のように昨年に比べてことしの方がよろしい、まずその部分のポイントでございますけれども、御承知のように、五十五年度受信料額の改定をさせていただいたということで、料額改定に伴う受信料の安定収入ということでそちらに非常なウエートをかけたということが、多少契約の方の増に響いたということがございました。ことし、五十六年度におきましてはその辺のところに力点を置いたわけでございますけれども、もう先生御承知のように、世に三百万の未契約があるということで、先生はその部分をもっと積極的に開拓せよという御質問でございますけれども、実は三千万に近づきました受信契約者のうちで大体二百万、実際の五十五年のデータを見ますと、二百四十五万世帯が受信契約者のうちで移動をしておるという数字がございます。したがいまして、私どもといたしましては、積極的に努力しながらその二百四十五万の移動を新しい転居先に移られたときにどうフォローするかということ、この辺がまず大きな眼目じゃないか。したがいまして、非常に具体的なことを申し上げれば、営業特別月間というようなものを設けて、実は全職員に、隣近所に越してきた方があればその方たちの住所について報告してくれというような、こういう席で申し上げるには余りにも具体的過ぎるほどの施策を講じまして、少なくともこの三百万の未契約ということを減らしていきたい。少なくともその二百数十万というものが、そのときは落ちておりますけれども、一カ月、二カ月たてば契約してくださる。その時点でまた引っ越している方がいらっしゃるという、こういう循環をとっております。しかし、そう申し上げながらも、単身世帯、特に大都市におられます単身世帯の方あるいは核世帯の方、この辺になかなかお会いできないというようなことがございますので、この辺にも鋭意力を入れていかなければいけない。  ただ、一つ最終的に、実は五十五年の国勢調査の世帯の伸びは二百二十四万強でございましたけれども、この期間のNHKの世帯契約の増加を調べますと二百四十万とってございます。したがいまして、世帯の伸び以上に契約はとっているということで、ことしにつきましては、先生最初御指摘の五十五に比べまして契約についてはかなりのいい成績になろうというふうに私は考えております。
  70. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 五十五年、五十六年の比較でいま申し上げましたけれども、新規契約を長い目で検討してみますと、六十万、七十万、八十万という新しい契約の目標を持ちながら、力を入れた年には新規契約は伸びておるのです。力を入れなかった年には半分ぐらいしかいってないのですよ。そのことはまだ三百万と言われる未契約の中に、努力をすれば新しく契約できるものがたくさんあるんだということを意味しておると私は思うのです。  そこで、会長、提言ですが、フクロウ部隊なるものをつくって未収の方についてはかなり熱を入れてみたわけですが、私は、まず基本的に契約をとることが先決だ、そこで出来高払いの契約の専任者をつくってみたらどうだろうか。たとえば、民間の保険会社などによくあるのですけれども、一件当たりかなりの手当を出す、特に口座振り込みでもしてくるような契約をとってきてくれれば、仮にそこに五千円、八千円金を出しても、後ずっと全部NHK収入になるわけでございますから、まず不公平はそこから解消していかなければならぬ。そのかわりとれなければNHKの負担はないわけですから、とれたときだけNHKの負担があるが、同時により多くの収入がある。したがって、出来高払い制の契約員というようなものをつくったらどうだろうか。ずっと昔、まだラジオのころに、郵政省の方でやっておったことがあるのです。電波監視員とか何か妙な名前だったのですが、契約せずに勝手にラジオを聞く人間をつかまえて契約をしてもらう、これはまた手当が出るのですよ。やはり妙なもので、手当があるといえば余暇でも出ていって契約をとってくるわけなんです。そういう意味で、いまやられておるサービスセンターを利用しての契約の委託、あるいは職員の皆さんによるあるいは集金人の皆さんによる契約がなかなか伸び悩んでおる、新しい分野を開拓するのに金がかからぬでもうかる方法はないだろうかと考えてみますと、出来高払いの契約の専任者を全国的に配置してみる、そういう構想は成り立たないだろうか。しかも、三百万の未契約を解消するということは、まじめに受信料を払っておる方々に対しても当然やらなければならない義務だと思うので、いろいろ技術的な問題がありましょう、一つの方法としていかがなものでしょうか。
  71. 坂本朝一

    坂本参考人 大変示唆に富んだ御指摘をいただいてありがとうございます。現場で検討いたしますとまたいろいろとプラス・マイナスもあるのかと思いますけれども、率直に言って、やはり検討させていただいたらどうだろうかと考えます。
  72. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 長い目で眺めてNHK経営がうまくいくためには、仮に新しい契約が三百万できれば、私の計算では二百五十億ぐらいの収入になるはずなんです。それだけの収入がもしあれば受信料の値上げなどを考えなくてもやっていけるわけですから、私はまず三十二条の基本的な精神にのっとってひとっここからがんばってもらいたいと思います。  二点目は、長期ビジョンの方にも書かれておりますけれども、いわゆる現行法制の中でも受信機を持っておる人は契約をしなければならぬわけでございますが、NHKは世帯主義をとってきておりますから、一つの世帯に二台受信機があっても一台分しか取らない。私は、最近の社会情勢から受信料のナショナルミニマムというようなものを考えてみて、最低一台は安い料金でみんなが聞ける、それ以上に持つ能力のある方々は二台目以降についても応分の負担をしてもらっていいのではないか。いつまでも世帯主義だけが金科玉条ではないのではないかという気がするわけです。しかし、直ちに二台分取ることがいいかどうか、それは検討の余地がありましょうけれども、あの歳末の助け合い運動さえ精力的におやりになるNHKでございますから、ましてNHK全体の運営のために、いわゆる二台分以降について、私は長期ビジョンの出る五年も前からこのことをずっと申し上げてきたのですけれども、幸か不幸か一向に取り上げてもらえませんが、今度は長期ビジョンの中にこれが入っております。長期ビジョンとなれば権威のあるものでございましょうし、国会の質問というのは大して権威のないものだと私は思っておりますから、いや、NHKが思っているのかもわかりませんけれども、いままで問題にならなかったが、ひとつ今回は問題にしてもらいたい。これはどうですか。
  73. 坂本朝一

    坂本参考人 お言葉ではございますけれども、国会のこの場のお言葉をそう軽視しているという気はさらさらございませんので、その誤解だけはひとつお解きいただきたいと思うわけです。  ただ、確かに台数制の問題、それからカーラジオの問題、いろいろとこの場でも御指摘いただいて、私どももそのたびに検討いたしますとお答えしながら、現在に至っているわけでございますが、多少の問題点といたしましては、放送法の契約の精神が、NHK受信できる施設を設けた者はNHKと契約しなければならないという、そこら辺のところと、いわゆる世帯の台数制というところがどういうふうになじむのかどうか。もちろん非世帯の場合には台数制でいただいておるわけでございますから、そこら辺のところもあわせて検討しながら対応していくべきだろうということで、御指摘のように、たまたまいま長期ビジョシ審議会でも御指摘いただいていることでもございますので、長期ビジョン検討会議の大きなテーマとして検討を始めておる、こういうことでございます。
  74. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 別に議論する気はございませんけれども、もし会長が言うような疑義があるとすれば、世帯単位でやっておるのではない、設備を持ったという観点からいくならば、三台持っても設備じゃないか、こういう言い方からするならば、たとえば阿部未喜男という世帯主が三カ所で持とうとも三つ分取るのは誤りですよ。明らかにいまの方針受信機を中心にして考えられておるはずなんですよ。そうでしょう。それは会長、余り勝手のいいことを言ってもらっては困ると思います。  そこで、そういう思想が実は随所にNHKはあらわれておるのです。いま五十七年度予算検討してみますと、会長の御報告の中でも「財政を安定させるため、」とかいうような言葉が使われておりますけれども、これは簡単に言うならば、この三カ年の財政の見通しは、五十五年、五十六年は値上げをしたので少し余裕ができました、しかし、五十七年単年度では実は百十一億円の赤字でございますということですよ。しかし、前の二年間で少し繰り延べたお金がありますからことしは使います、こうなるわけです、早く言えば。そして、その次にこういう言葉がありましたね。五十八年度に三十五億の繰り越す金がある、これを五十八年度の財政の均衡がとれないときには充当します。冗談じゃありませんよ、だれが見たっていまのままいけば五十八年度に百億を超える赤字が出ることは明らかでしょう。そういうことをなぜもっとわかりやすく言わないのか。これを見る限り何か大変よくいっておるような印象を与えるのです。冒頭、非常に厳しいと言いながらも、これを見る限り、NHKは大層結構に財政の運営ができておるじゃないかという印象を与える。書き方によっては、五十七年度が百十一億円の赤字です、幸い繰り越しがございましたからこれを充当します、しかしそれも三十五億しか残りません、五十八年度には恐らく百億を超す赤字になりましょう、いかがすべきでございましょうかという提案ならば、ああそうかとみんな思うでしょう。これをすらっと読んだら、大層よくいっておるようにしか受け取れない。いまの会長のお言葉と一緒で、聞いておるとなるほどと思われそうなんだけれども、理に合わないのです。こういう書き方ではなくて、私が言うような書き方をすれば、恐らくもっと国民理解視聴者理解が得られるのではないか。これはもう追及する気はございませんが、その内容に間違いがあるというならば言ってください。
  75. 坂本朝一

    坂本参考人 お言葉を返す気はありませんけれども、五十七年の三カ年計画収支とんとんという、そういう考え方を説明して御承認いただいたという中で、繰り越しを努力いたしましたということを申し上げたいというのがやや先に立った嫌いなきにしもあらずでございますが、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  76. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 さてその次に、また体質にかかわる問題ですが、先ほど来出ておりますいわゆる合理化の問題です。われわれ、通常合理化という言葉を使うのですけれどもNHKは非常に独特な言葉がお好きでございまして、文章を見ますと至るところに対応という言葉がごまんと出てくる。長期ビジョン、一回お読みになりましたか。あの中に対応という言葉が幾つあるか御存じですか。特に私が気になるのは、視聴者対応という言葉があるのです。視聴者サービスとなぜ書けないのだろうか。視聴者に対してどうすればいいかということなんですから、視聴者サービスと書いたならばさわりがいいだろうと思うのです、これはちょっと余談になりますけれども。  合理化という言葉、NHKでは効率化という言葉を好んで使われるようでございます。私は、これは合理化だというふうに受けとめておるのですけれども、私の基本的な考え方は、合理化というものは経営にとっても合理的なものであり、またNHKの場合には、視聴者にとってもそれが合理的なものであり、そこで働く労働者にとっても合理的なものであって、初めてそれは合理化であり効率化であると呼ばれる筋のものであり、経営だけに都合のいいものであってはならない、そう思うのです。私ども、ここでいろいろ御意見を申し上げるについては、視聴者の側はもとより、労働者の側についてもいろいろな意見を承ってまいっておりますが、実は、日放労という労働組合が、今回のNHKの言う効率化、合理化について、その計画は納得できるような内容を持つ計画ならば、この御時世、合理化に反対する、効率化に反対するなどということは言わない、こう労働組合の側でも言っているわけですから、したがって、効率化は、あくまでもこの三者が何人が眺めてもなるほど合理的である、だれにとってもいいんだというような内容でなければならない、しわ寄せを一方に押しつけてはならない、そういう姿勢で効率化、合理化に当たってもらわなければならないと思うのですけれども、基本的な考え方はいかがでしょうか。
  77. 坂本朝一

    坂本参考人 言葉遣いの点についてはいろいろ御指摘があろうかと思いますけれども、考え方としては、私は、おっしゃるように、経営にも合理的であり、組合にとってそれがマイナスだということにはならないのではないだろうかというふうに思っております。
  78. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 したがって、ならないのではないだろうかということを経営の側が一方的に決めるのではなくて、ならないかどうか、どうすればみんなが合理的に受け入れられるのかということについて、十分労働の側とも、あるいはまたわれわれの側、いわゆる視聴者を代表する側とも話し合ってその方針を決めていただかないと、経営の一方的な恣意による合理化だということになりかねないので、したがって、いま大丈夫だろうとおっしゃいましたが、大丈夫たらしむるためには、十分労働組合の側、あるいは国会の場でも話し合いをしていただかなければならないと思います。  NHKと言われますと、非常に高い月給をもらって、大層エリートのように一般に言われておるのですが、実はNHKの職員の給与は決して高くないのです。何に比較するかはいろいろありましょう。たとえば国家国務員に比較するのか、地方公務員に比較するのか、公共企業体職員でいくか、私は、やはりこの場合、その成り立ちから見て、同業他社といいますかそういうところから比較をすべきではないか。  参考までに、私は、労働組合の側でつくっておるのですが、全部のマスコミの組合が寄り集まって自分のところの給与をざっくばらんに出し合った資料をここに持ち合わせております。  まず、基本給について見ますと、大学を卒業して三十五歳の方を例にとってみます。新聞社の名前は差しさわりがあるといけませんから申し上げません。必要ならば資料は提出をいたします。三十五歳大卒のNHKの方の基本給部分については二十三万五千八百五十円、こういう数字が出ております。ある新聞社は、一番安いところで二十七万五千二百九十八円。民放の方では、三十万二千、三十万五千、二十八万五千、こういう数字で、まず基本給の中で実に八万近い差が出ておるのです。これがまず一つ問題だと思います。  二点目は、次に年収でこれを眺めてみますと、某新聞社は三十五歳の方が年間四百九十六万の年収になっておる。この場合、NHKが四百二十四万になっていますが、民放の場合には六百八十八万、六百九十万、六百四十万と、実に年収で二百万違いがあります。一体そういう違いはどこから出てくるか。それは次のボーナスも開きがあるわけです、いわゆる年間臨給。家族手当、家族手当と呼ばれるものについても、大体六万から八万の差があるのです。それからボーナスについてはもっと大きいです。八十万から百万の開きが出ておるようでございます。したがって、年間全部をトータルすると、申し上げたように膨大な数字の開きが出ておる。労働条件としてはきわめて悪い。  そこで、先ほど申し上げましたように、効率化と絡んで――私は効率化することは賛成です。ですから、組合の意見も聞きながら十分効率化を図るべきであるが、同時に処遇の問題についても考えてやっていかないと、言われるところの三者が納得できる合理化にならないのではないか、そういう気がするのですが、私の申し上げた数字が間違っているかどうか、これは武富さんの方からひとつ。
  79. 武富明

    ○武富参考人 お答え申し上げます。  ただいまの先生の実情は、私どももなかなか取れない数字でございますけれども、私どもが把握しているところと大きな違いはないように思いました。同業他社と比べました場合低位にあること、これは残念ながら事実でございます。  先生のお考えがございましたけれども、確かに、私ども、ともに働く職員がそれだけの給与を得て後顧の憂えなく仕事ができるような、そういう状況をつくりたいという気持ちは十分にございます。しかしながら、一方、私ども事業の性格から申しまして、先ほど受信料のお話がございましたけれども受信料を払ってくださるのもまた受信者でございまして、この受信者の方々の納得のいく給与でないと、これがまたなかなかいろいろな面にはね返りが来る。一つは、こういう二律背反みたいな間に入りましてわれわれとしては努力をしているわけでございます。  先生のおっしゃるとおり、ただいま経営の状況としては決して明るい状況にはございませんけれども、その中であるいは放送にあるいはその他の面に聴取者サービスをより十分にしていかなければならないという状況の中で、職員の待遇というものもまた非常に重要だということは、私、心にしっかりと置きまして、その中で職員の処遇を考えていってやりたいというふうに考えております。  先生のお話の中に、公務員にそろえるのかあるいは同種他社にそろえるのかという御発言がございましたけれども、願望としては、これから有為な人材を採っていかなければ協会事業というのは成り立っていかないわけでございますから、その意味から言えば同業他社並みにしたいという願望はございますけれども、同時にただいま触れましたような実情もございますので、その辺はわれわれ英知を傾けてできるだけの努力をいたしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  80. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いまも同業他社という言葉もあったのですけれども、確かに、同じような仕事をしておる仲間同士でございますから、そこで非常に処遇が見劣りがするということになれば、意欲も失いかねないでありましょうし、将来にわたっての人材の確保も非常にむずかしくなってくる。そういうことも懸念されますので、やはり公共放送という使命を果たすためには、その職員の処遇についても十分配慮してやっていただきたい。  そこで、私はセットで言うのですけれども、繰り返して言いますが、効率化に伴ってそういう点、いわゆる職員の処遇についても十分御配慮をいただけるような措置がとれるかどうか、会長決意をひとつお伺いしたい。
  81. 坂本朝一

    坂本参考人 言い方があるいはまた短絡するとおしかりがあるかもしれませんけれども、少数精鋭主義、そういう考え方も当然あるわけでございますから、そういう意味で、おっしゃるように両方が満足するような形の方法を考えるべきであろうというのが私の任務ではなかろうかという認識には立っておるつもりでございます。
  82. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 もう一つ、給与に関連をしまして、少し専門的になりますが、私は、NHKの職員の皆さんがいま意欲がないというのではないけれども、意欲を失わしむるような給与の形態があるように思われてならないわけでございます。それは、基本給をお決めになる場合に、一般給、これは年功、年齢に対するものとして平等に行くわけでございますね。もう一つ、職能給というものがございます。これは職務の遂行能力に対応するものとして、一人一人の職員を評価をして差をつけて昇給をさせる、そういう制度になっておるやに承っておりますが、間違いありませんか。
  83. 武富明

    ○武富参考人 お答え申し上げます。  ただいまうちの給与体系につきましては、先生のおっしゃったとおりでございます。基準賃金の中には基本給と世帯手当というのがございましてい世帯手当というのは家族構成に従っていろいろ支給するわけでございます。基本給はさらに二つに分かれておりまして、職能給と年齢給に分かれております。この年齢給につきましては、一年たつごとに、年功と年齢に対して払うものでございますので、これは均一に上がります。しかし、この職能給につきましては、それぞれの能力の発揮度その他につきまして査定をいたす、こういうことになっております。  ちょっと御説明いたしますと、ベアの中でどういうことになるかということなんでございますけれども、ベア自体を査定をしてその職能給を増していくという制度はとっておりません。この職能給は、ベアの中に定期昇給とベアとございまして、定昇の部分でこの職能給というものの差をつけております。それに対しまして、定期昇給をしました後ベアの率を掛けるものですから、ベアの中にごくわずかながら、査定したものに対して倍率を掛けますので若干の要素は入りますけれども、それによって大きな差が出るとは私は考えておりません。
  84. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは評価をして、その人当たりの能力の遂行の度合いを見ながらある程度の差をつけていくということは、一見いいように見えて、実はこれは非常に危険な内容があるわけです。現在、国家公務員にしても地方公務員にしてもあるいは公共企業体職員にしても、そういう方法をとっていないのです。というのは、査定をする人が毎年――定期昇給は毎年あるのです。毎年そこで査定をする管理者がおいでになるわけです。その管理者が本当に公明正大に神かけて間違いのない査定をすればいいが、それでも人間のすることです。ましてや、この管理者に私は評価をされると思えば、仕事をする前にその管理者の機嫌をとるというような人間がなきにしもあらずということになってくるのです。そのために仕事をおっぽり出して機嫌をとった者は給与がうんと上がる、上司の機嫌をとるのが下手な人間は給与が上がらない、そういうおそれが出てくる。私は直接の声として聞いておるのですよ。私はいつも上がるときに人よりも二百円ぐらい少ないと言うのですね。おもしろくないと言う。おもしろくないということは意欲がないということにつながるのです。なぜそういう方法をとらなければならないのだろうか。そう言えば恐らく、では信賞必罰はどうするのか、まじめに働く人間をどう見てやるのか、そういうお話になると思います。当然それは人事管理の上でやらなければならない仕事だと思いますけれども、それを見る方法はないのだろうか。  たとえば、すべて一緒に入った人たちの中から役職につく人が出るはずです。部次長であるとかあるいは主査であるとか、前ならば主管ですか、そういう役職につく。これは全部がつかなければいかぬのです。必ず同期に入った方々の中で、同じ給与の方々の中からでもあるいはもっと若い方方からでも、有能な人をそこのポストに充てていくはずですから、かなり長期的に眺めて評価は必ずできるのです。毎年毎年それぞれの上司によって評価をされて、それなら機嫌をとって少しでも上げてもらった方が得だというようなやり方よりも、まずあたりまえに働いておれば上がっていく。しかし欠格条項は要ります。これだけの条件を満たしていない、一年に二カ月も欠勤した、そういう者は欠格条項で組合との話し合いによって落としていけば、昇給を外していけばいい。そして、あたりまえにまず勤務した者については同じように給与を上げていく。しかし、上の役職につくときにはそこで評価が出てきますよ、これで結構評価はできるはずなんですよ。一人一人に疑心暗鬼を与えてそういう昇給のやり方をするよりも、昇給は一定の条件を満たしておればみんな上げていく。しかし役職につけるときにそこでちゃんとそれぞれ評価をしていく、こういう方法がとれないものだろうか。これは私の意見ですから、当該の組合と協議をして決めてもらわなければならない事項ですが、一部そういう声があったことをお伝えをして、お考えを承っておきたいのです。
  85. 武富明

    ○武富参考人 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御指摘でございますけれども、そういう弊害をなくするためにも、私どもとしては、その考課というのは、直属上司ばかりでなく局長、部長、それから課長という三段階で評価をしておりまして、個人的な偏見によるそういうものというのはできるだけ排除をいたす努力をいたしております。また、それを総括いたしまして、私どもも公平な人事をやる任務に立って、公正を期しているわけでございます。なお、その結果につきましては、本人にフィードバックをいたしまして、何を努力してもらいたいかというような指示をいたしておりますので、私どもといたしましては、その辺では万々公平を期しているつもりでございますけれども、なお先生にそういう御指摘がございましたとしたら、いまの制度をさらに考えまして、いろいろ公平を期さなければいかぬと思いますが、ただ、先生のお言葉の中にあったように、査定要素というもの、これはやはり部分的には残す必要があるのじゃないか。それは残すことによって、先生のおっしゃったようなマイナスも出てまいろうかと思いますが、また逆の、やる気を出す反面というのも出てまいろうと思いますので、これは十分に検討いたしまして、やらしていただきたい、こう思うわけでございます。
  86. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 せっかくのお話ですけれども、本当にその職員の能力なり勤務の態度というものを知っておる人間はそんなにたくさんはいないはずですよ、地方の支局を見れば一番よくわかるわけですから。そこに管理者が何人いますか。それが中央に上がってきて、中央であなたが査定しようたって、その評価はできっこないですよ。そうでしょう。そうすると、特定の人間がかなり恣意的に勝手に評価をするということは免れないのです。しかも、人よりもたくさん上がった人間が喜ぶかというと、これはくすぐったくて、あいつは気に入られておって上がったからと言われるのが嫌だから、これもやらないのです。上がらなかった人もやらない、うんと上がった人もやらない。これでは一向成績の向上にはつながらないのですよ。  それで、私が言った役職につけるときだけの評価でなお無理があるとするならば、もう一つあるのですよ。特別昇給という制度を取り入れるのです。百人のうちの三人とか五人とか、これを組合との間で協議を結んで、だれが見てもなるほどこの期間がんばったという人を、一年ごとに何人かを特別に昇給させていく。そういう制度だって検討すればないことはないはずなんです。私は、NHKの体質というのは、一遍やりかけたことをなかなか変えようとしない、それがNHKの今日いろいろ言われるもとになっておると思うのです。会長、せっかく僕が提案している。どうですか、これは。
  87. 坂本朝一

    坂本参考人 やはり基本的には、私は個人的な成績を評価するという姿勢は経営としてはとるべきではないか、そういう考え方は、お言葉ではございますけれども変えないつもりでございますが、問題は方法論で、先生も別に評価するのを変えろとおっしゃっているわけではなくて、毎年の昇給の査定等について検討するところがあるのじゃないだろうかという御示唆かと思うわけで、いま担当も、そのことも含めて御答弁申し上げたわけでございます。  ただ、最後に、NHKは何を言っても変えようとしないとおっしゃられると、それははなはだ残念で、そういう点についてはかなり私も努力しているつもりでございますから、いましばらくこの席での即答をひとつ御猶予いただきたいと思うわけでございます。
  88. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私の申し上げたことがわかっていただければ、決して評価するなと言うのじゃないのです。ただ、評価の仕方が、一人一人管理職で恣意的にやられるような評価の仕方でなくて、かなり長期的にやるということ、それでもなお足らぬというのなら、労働組合と話をして毎年何人かの特別昇給という制度をつくれば、そこで励みがつくではないか。一人一人上司が評価をして、おまえは百一点、おまえは百点、おまえは九十九点というようなそういう評価はすべきでないのではないか。かなり長期的に見れば何人かの管理職の方々があらかじめちゃんと勤務評価をしたものがあるわけでしょうから、何人もの目で見て昇進のときにそれを生かすとか、あるいはいま申し上げたそういう制度ができるならば特別昇給というようなものについて検討してみるとか、そのくらいのことはやってみたいと思いますと言うぐらいにならなければ、どうもここでは困る、ここでは困るとおっしゃられたのでは、何のために――さっきから言うように、合理的ということは、視聴者を代表するわれわれと、経営を代表する皆さんと、そこで働く仲間の労働者の皆さんとが、なるほどと合意できるものが合理的になるはずなんですから、どうでしょうかね、考え方は。
  89. 坂本朝一

    坂本参考人 まあ同じような御答弁で恐縮ですけれども、基本的に先生のおっしゃる、評価を否定しているのじゃないというそのお考えについては、私も全く同感でございますと申し上げているわけでございまして、問題は方法論ということかと思いますので、その方法論について、いまこの場でこういうふうにやるというふうに考え方を決めろとおっしゃられても、それは御勘弁願いたいということを申し上げているわけでございますから、重ねて御理解賜りたいと思うわけでございます。
  90. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、前向きでそのことも検討してみるというふうに私なりに理解をして、この問題を終わりたいと思います。  さて、NHKでは長い期間をかけて長期ビジョン委員会でいろいろ御検討いただいて、長期ビジョン委員会の膨大な報告がここに出されておるようでございます。  まず、この報告全般を眺めてどういうふうにお感じになっておるのか。これはどちらの責任が大きいのですか、この報告に対する受け入れは。経営委員長の方が責任は大きいのですか、会長の方ですか。
  91. 坂本朝一

    坂本参考人 先ほどもちょっと触れましたように、長期ビジョン審議会の御答申は、六十回ぐらいの小委員会を開いて、それこそかんかんがくがく御講論いただいた結果でございますから、私としては非常に重みを感じておるわけでございます。したがいまして、あの御答申にどう対応するかということを、この一年をかけても十分検討したいというふうに考えておるわけでございます。
  92. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 率直に私は物を言わせてもらいますが、かなりの期間をかけて検討をしていただいたわりには余り目新しいものがないような、いままでわれわれが論議をしてきたそういうものについて、これはこうすべきであるとか、これはこうせよとかというようなものが、どうも見受けられないような気がして、せっかくおやりになったのだが、大したことはないのじゃないか、これは私の個人的な見解ですが、どうお考えですか。
  93. 坂本朝一

    坂本参考人 そこら辺のところは、確かに、答申案を通読いたしますと、先生のような御批判もあるいはあるかなと思わないでもないのでございますけれども、私どもは、実は小委員会並びに、私は総会に毎回出席しておったおけでございますけれども、相当激しい御議論を一つの答申案にまとめるという、そこら辺のところの御苦労と御工夫が先生のおっしゃるようなところになるかなと思うわけで、私も、役員以下小委員会等に列席しておったわけでございますから、これは眼光紙背に徹して酌み取らなきゃいかぬというふうに指示して、いまこの対応を考えているということでございます。
  94. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 非常に膨大な内容があるわけですから、一つ一つについての検討が必要だろうとは思うのですけれども、私は概論的に、せっかく期間をかけてやった割りには大した内容ではないな、そういう気がしてならないのでございますけれども、ひとつ十分検討していただいて、生かせるものについては生かしていただかなければならないと思います。  大臣と政務次官が一緒におらぬことになりましたが、これはできれば交代の方がありがたいと思うのですが、委員長、おばからいを……。
  95. 水野清

    水野委員長 わかりました。
  96. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、事務当局の責任者の電波監理局長おいでになりますが、放送法三十二条で、先般来この国会で問題になりました、一般受信料義務制と言われる、この法案の改正については、今回は見送っていただいたようでございまして、出ておらないようでございますけれども、われわれは、非常にこれは喜ばしいことだと思っております。ありがたいと率直に申し上げますが、出さないようになったいきさつ、お考え、それを事務当局としてのなにがあればお答えいただきたいと思います。
  97. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  御存じのように、五十五年度受信料改定の際にこの放送法第三十二条の支払い義務化の提案が出たかと思いますけれども、そのとき御存じのような経過になっておるわけですが、五十五年の受信料改定後、現時点まででございますけれども収納状況その他につきまして、私ども非常に、料金改定がどのように受信者に響くのかということで関心を持っておったわけでありますが、NHKの調査等を聞いてみましても、比較的順調に推移してまいっておるわけでございます。     〔委員長退席、渡辺(紘)委員長代理着席〕 そうしたことは、やはり視聴者との結びつきに努力したというような面もあろうかと思うわけで、現状その辺考えてみますと、私どもとしましても当分は、NHKの一層の経営努力に期待して、現在の体制といいますか、視聴者理解と信頼の上に立った現在の制度がなお適当ではないかと考えられますので、いましばらくその推移を見守りたいというようなことで、今回は先生御指摘のとおり改正の対象として取り上げなかった次第でございます。
  98. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣、いま放送法三十二条の改正に伴って受信料の、われわれは義務制と呼んだのですけれども、今回は改正から外されておるようで、これは心からお礼を申し上げると、受信者一同になりかわってお礼を申し上げているところでありますが、いまお伺いをしましたら、NHKの大変な努力で、最近は未収についてもかなり収納が上がっておる、あるいは新しい契約についてもかなり努力はできておるような状況だから、したがって今回ば見送ってもうしばらく様子を見たい。ということになりますと、何も受信料を値上げするときにまたこれが出てくるという筋のものではない、NHKの努力いかんにかかっておるのだ、こういう理解になると思うのですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  99. 箕輪登

    箕輪国務大臣 ただいま局長から御答弁したとおり、NHKの最近の、特に五十五年度受信料の改定を行った以降ずっと見ておりますと、収納状況が比較的順調に伸びているように思います。同時に、これを今度の放送法の改正案の中に義務づけを入れるかどうかということについては、前回の経過もございまして、もちろん野党の先生方の御意見もそれとなく聞きました。また与党の先生方意見もそれとなく聞きました。そういう状況なら入れぬ方がよかろうという結論に達したわけでございまして、そういうわけで今回は放送法の改正案の中に入れなかった、こういう経過でございます。
  100. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 実はそれから先を大臣に聞きたい。  入れなかった理由はよく理解ができました。したがって、さらにNHKの努力が続いて受信料収納なり新規契約が進んでいく状況であるならば、今後といえどもことさらにこれを入れる必要はない、そう理解をしてよろしいでしょうか。
  101. 箕輪登

    箕輪国務大臣 よろしゅうございます。
  102. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 わかりました。  いま会長大変な任務を負わされたわけですが、これは本来法改正は郵政省所管の仕事でございますけれども、改正に当たっては当事者であるNHKの御意見というものも十分聴取されておるもの、そういう理解の上に立ってですけれども、私が受信料を義務制にすることに反対する理由は、たった一つなんです。これは、NHKに公平な不偏不党の放送をしてもらいたい、その一言に尽きるのです。それが担保みたいなものだ。法律を改正したって僕は余り変わりはないと思うのです、実際は。変わりはないでしょうが、義務的に押しつけるという考え方でなくて、現行法制の中でNHKの努力によって未収を回収していく、新しい契約をとっていく、もしNHK放送の中に気に入らないような、たとえば右に偏っているとか大変左に偏っているとかいうような場合には、受信料を担保としておきますから納めてくれぬでもいい、とは言わないが、それだけの自信を持ってNHK運営をしておりますと、この信念を持ってNHK運営していただければ、受信料未収の問題も新しい契約の問題も解消できるのではないか、かかってNHKの姿勢であり努力だと、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  103. 坂本朝一

    坂本参考人 私は、やはりこの放送法の精神は、受信者の理解を得て、そして契約してもらって、そして金を払ってもらうという、その理解を得るということが大前提であろう。その意味合いで、いま先生の御指摘の点についてはそのとおりだと思います。ただし、やはりもろ刃の剣みたいなところがございまして、現実に集金その他に当たります立場に立ちますと、なかなか困難な事情もあるのだという、そこら辺のところも御理解いただきたい。したがって、われわれは今回の放送法改正に当たってこの問題に触れなかったということは、そういう点の数字的な一つのデータが出てきているというその努力を私としては皆様方に御理解いただけるのではないだろうか、そういうことでございますが、だからといって安心だなんというわけにはまいらないということも、あわせて御理解賜りたいと思うわけでございます。
  104. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 安心だというのじゃありません。今後あなた方の努力いかんがこの担保としてのその受信料の義務制の問題をどうするかにかかっておりますよ、その決意を聞かせてもらいたいと申し上げたのです。  時間がだんだんないようですから、大蔵省、御出席いただいております。――実は郵政大臣御承知のように、国際放送は、NHKが自前でやらなければならない義務づけられた国際放送と、あなたが命令をしてやらす国際放送がございます。法律では、あなたが命令をしてやらせた国際放送については、国がその費用を負担しなさいとなっておるのですが、これがなかなかむずかしい。先ほどもお話がありましたが、大蔵省というところは、できれば何とか予算を削りたいという一念があるわけですから、何とか削ろうとする。しかし、亡くなられた大平さんが大蔵大臣のときに、そういう性格のものですよということを私が申し上げて、そういう性格のものならば必要な金は出しますと、当時景気もよかったのですが、そういう話もあったわけなんですけれども理解していただいたのだろうと思います。  ことしもゼロシーリングの中で幾らかふやしてもらっておりますから理解はあるのだと思いますけれども、もうここらで、国際放送全体にたとえば三十八億要るならば、その中の政府命令分は何割だ、NHK自前分は何割だ、そう初めから決めておけば、国会の都度こういう議論をする必要がないのではないかということを私は何度も申し上げてきました。それがフィフティー・フィフティーがいいのか、六〇対四〇か、その辺は別ですけれども、そういうものを両者の間で検討して、国際放送のうち命令分が四割なら四割、五割なら五割、そう決めていただくと、もう一々議論せぬでもいいと思うのですが、これについて大臣のお考えと大蔵のお考えを承っておきたいのです。
  105. 箕輪登

    箕輪国務大臣 先生御承知のとおり、この国際放送は大変重要なことだと私は認識をいたしております。特に最近の日本の現況、日本の状態というものを外国が正しく認識している場合もあるだろうし、していない場合もある、そういうことで国際摩擦が起きているわけであります。これからもますますこの国際放送は重要な使命を帯びてくるものと私は考えておるわけであります。     〔渡辺(紘)委員長代理退席、委員長着席〕  五十七年度においては、厳しい財政事情のために補助金などの一律削減の対象とされましたけれども国際放送のいま申し上げた高い重要性にかんがみまして、予算政府原案ではほぼ五十六年度並みの十億四百万円でありますが、五十六年度に比べてわずかではございますけれども、〇・六%増加して計上されたわけでございます。郵政省といたしましては、今後とも国際放送充実強化――私が命令するという命令放送の部分は十億四百万円ではございますけれども、今後ともこれを充実拡充していく方向で努力いたしたい、こう考えておるところでございます。
  106. 藤井威

    ○藤井説明員 国際放送の政府命令部分につきまして、連年厳しい財政事情のもとで充実を図ってきたという努力は御理解いただけておると考えております。今後の話でございますけれども、そういう厳しい財政事情という状況は当分変わる見込みもございませんので、かなりの限度はあると存じますけれども、その中でできる限りの努力は払ってまいりたいというのがわれわれの考えでございます。
  107. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 時間が来ましたから、もう一つだけ、最後ですけれども、実はNHKの重点施策として、社会教育の充実に力を入れる、こうなっておるわけでございますし、長期ビジョンの方でもそのことは取り上げておるようでございますけれども、先般来、私この委員会でくどく議論をしてきたのですが、実は生涯教育の問題については、新しくできた特殊法人の放送大学学園法によって、ここが生涯教育を担当する放送事業者として認可をされるわけでしょう。新しく生涯教育を目的とする放送大学学園ができたのに、いまになってNHKが後を追っかけて生涯教育だというのは、一体どういうわけですか。それほど生涯教育が大事ならば、なぜもっと前の段階で、放送大学学園の設置法が出た段階で、このことについてもっと議論をすべきではなかったのですか。いまになって生涯教育だ。冗談じゃありませんよ。生涯教育を目的とする放送事業者を認可するのでしょう。これを一体会長はどうお考えになっていますか。
  108. 坂本朝一

    坂本参考人 前回もたしか阿部委員から同様のおしかりをいただいた記憶がございますが、放送大学というのは、もちろん生涯教育の役に立つ放送をおやりになるかと思いますけれども、目的は、放送大学でございますから、大学の教科といいますか、そういうレベルの放送ということが主目的であろう。私どもの方は、もう少し幅広い、当然教育テレビの性格の中で許される中で、より一層幅広い生涯教育の役に立つ番組を編成するということは、ある意味では競争の原理にも成り立つことで、私どもとしては間違っていないのではないか。経過的な中でのいろいろな御指摘は御指摘として十分承りますけれども、結果的には私はそうあってしかるべきではないかというふうに考えて指示したわけでございますので、御理解賜りたいと思います。
  109. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それは会長、あなたは不勉強ですよ。放送大学学園設置法の冒頭に何と書いてありますか。これは生涯教育を目的とすると書いてあるのだ。生涯教育を目的としてこれが認可されることになるわけでしょう。そして、その生涯教育の中にたまたま大学を卒業した学位を与えるというのが一つあるだけであって、たとえば大学の講座をやるのに、あなたのところでおやりになる高校の教育課程と大学の教育課程が無関係であって放送大学は成り立つわけがないでしょう。生涯教育というのはそういうものなんですよ。したがって、あの冒頭にある生涯教育をやることを目的としてつくられる、その中に大学という部門がある、そう理解すべきであって、あれは大学のことをやるのです、私の方は生涯教育をやるのですと言うのは、認識の違いもはなはだしいですよ。そういうお考えだからこういうことになってきたのだと私は思うのです。いまのお話、私の方は生涯教育、向こうは大学だという考え方は、訂正しておいてもらわなければ困ります。
  110. 坂本朝一

    坂本参考人 言葉が足らないところがあったらおわびいたしますが、ともかく、総合テレビにおいて報道、教育、娯楽で民間放送と競争をして番組の質を高める、そういう競争の原理から言え、ば、私は当然、放送大学相手にとってこわくなしという自信と確信を持って対応していきたいというふうに考えております。
  111. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それはどちらも国民の負担でやられておるのですよ。おわかりになりますか。向こうは税金でやるのです、国が金を出しますから。大体一千億でしょう。こちらは受信料という形で金を納めておるのです。屋上屋を重ねて、こっちのチャンネルやったら高校、放送大学学園を開いたらこれも高校の教育、同じようなものを放送してもらわなくても国民は結構ですよ。そんなことに力を入れるなら、NHKはもっとほかのところに力を入れる、NHKでなければならない放送があるはずだ。そこを抜きにして、向こうが生涯教育と言ったから後を追っかけて生涯教育、そういう発想が僕は間違っていると言うのだ。ならば、もう生涯教育の問題は、ある程度それを目的としてつくられた放送大学学園にお任せをして、新しい分野において、NHKでなければやれない、そういう発想が浮かばないかと僕は言うのですよ。どうですか。
  112. 坂本朝一

    坂本参考人 またお言葉を返すようで恐縮ですけれども、たまたま、来年度の編成の一つの目玉として、生涯教育という形で教育テレビの番組の設定をいたしましたけれども、いま阿部先生がおっしゃるような分野においてNHKは当然考えていかなければならないということでございますから、それはひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  113. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は少しも誤解していないのです。むしろ会長の方がいろいろ誤解があるようですから、私も勉強させてもらいますが、会長NHKの方でもひとつ御勉強をいただきまして、いま私の申し上げました意見、いわゆる良薬は口に苦しと言いますが、苦いかもわかりませんけれども、私はすべて善意をもって視聴者を代表し、NHKを思い、公共放送の存続を願ってこれまでの質問を申し上げてまいりましたので、行き過ぎがあったらお許しをいただきまして、質問を終わります。
  114. 水野清

    水野委員長 これにて阿部未喜男君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木強君。
  115. 鈴木強

    鈴木(強)委員 最初に、郵政大臣にお伺いをいたします。  大臣は、三月九日の閣議で中国残留孤児の問題が取り上げられた際、中国孤児の肉親捜しに国際テレビ中継の利用を提案されたと聞いておりますが、その提案された内容をひとつ明らかにしていただきたい。
  116. 箕輪登

    箕輪国務大臣 私は、最近のテレビ放送、もちろんNHK、民放含めて見ておりまして、これはどなたに聞いてもそうなんでありますが、最も感動を与えたのが中国の残留孤児と肉親との出会い、そしてまた、肉親と会うことができなくて失意でとにかくさびしそうに帰っていく孤児の方方、それを見ておりまして、さて、さらに肉親に会いたいと申請を出してきている孤児の方がまだ九百人も残っておるということを聞くのであります。そこで、六十人ずつ日本に呼んで果たしてこれから十年あるいは十年以上かかって、その間に肉親の人も年老いて死んでいくでしょうし、これは人道的な問題じゃないかなと思いまして、とにかく現地に行って、いま言う東北地方、昔の満州地方が一番多いんだそうでありますけれども、瀋陽なら瀋陽というところに行って、そしてそこに集まってもらって写してもらって、そしてそれを、あるいはビデオで撮ってきてやる方法もあるでしょうし、あるいは少し金がかかるのかもしれませんけれども、宇宙放送といいましょうか、二元放送で対話をすることもできるでしょうし、そして二元放送でもしやるとすれば、あなたが住んでおったあの町のあそこの街の角にたばこ屋さんがあったかとか、あなたは頭に傷をつけたはずだ、この辺に傷がないかとか、ほくろがどこにあるかとかないとかいうことをやりますと、非常に効率も上がると思うのです。  今回のこの中国孤児の問題は、私は、本当にテレビの効果が、テレビというものがなければこんな効果は出なかった、七〇%も見つかったわけでございますから。そういうことを考えまして、私はテレビ関係者ともちょっと相談したのですけれども、それは可能であるということを聞いたので、実は閣議で発言をいたしました。
  117. 鈴木強

    鈴木(強)委員 私も大臣のお考えになることは全く賛成なんです。ただ、テレビ、ラジオというものを使う場合には、放送法、電波法における、特に公共放送、民間放送それぞれ規制もございます。報道番組に対する介入の問題もあります。ですから、大臣が、いまちょっとある人に聞いたというようなぐあいの、発言の方法はどうかしれませんけれど、それでいきなり閣議に提案されたですね。その閣議の後、十日の日に、NHK会長と浅野民放連会長を呼んであなたは相談されたようですね。ですから、その話をやっぱり事前にこれはしておくべきなんです。  そして、予算委員会であなたが、何か中国東北部、旧満州ですね、瀋陽市、これは旧奉天ですが、ここに放送技術者を派遣し、孤児たちをビデオにおさめ、日本に持ち帰って放映する。衛星中継で現地、日本の二元放送を行い、孤児と肉親と思われる人をテレビ対面させる、こういうことを委員会で答弁されておるわけですね。  ですから、私はここでちょっと言いたかったのは、少なくとも大臣が閣議で発言される際に、民放連、NHK、それぞれの協力体制というものはどうなんだろう、やるについてはどういう方法がいいのかということを直接その事業主体者から伺って、それから提案されることが筋ではなかったかと私は思うのです。特に中国と日本との外交の関係については、これは外務省が担当されるでしょう。先般のNHKで、大変現地へ乗り込んで、現地の養父母の方とお会いした場面も私見ました。これは中国広播事業局とNHKが相当協議をして、厳しい制限もあったようですけれど、中国側の理解を得て取材ができたわけです。ですから、むしろ政府は、そういった今後やることについて相手方が協力をしていただけるような配慮をしつつやらないと、何かこう先走ったような形になると、国際的にもちょっと問題があるし、国内的にもやはり放送事業というものの性格からして私は問題があるように思うのですよ。  ですから、ちょっと取っ違えて早とちりをして、だれかに聞いたのか知りません、それはアイデアというのは非常にいいことですからね。その点はもう私は満腔の敬意を大臣に表しはするのですけれども、これからの事業あり方というのは、とかく番組に対する介入、そういった点も指摘をされるだけに、私は、この手順というものが非常に逆さまになっておったということを指摘して、大臣の所見を承りたい、こう思ってこの問題を取り上げたのです。
  118. 箕輪登

    箕輪国務大臣 先生のおっしゃることはもっともでございます。私も、郵政大臣ではございますが、所管事項といえども放送番組編成等について発言をしてはならないことは十分承知をいたしております。ただ、私が聞いたというのは、技術屋の関係で、技術的には非常に可能であるということを聞いたわけであります。そこで、放送番組に介入する気持ちは私は一つもないのであります。  そこで、閣議で発言したのは以上申し上げたとおりでありますが、技術的には可能であります、政府の取り組みでこれは十年かかるものが一年でできるかもしれません、そういうことを申し上げたわけであります。そして特に、やはり何といっても中華人民共和国の政府の協力や育ての親の協力がなければなりません。そこで、外務大臣にもお願いをし、そうしてまた厚生大臣は、直ちに自分もそれを取り上げてやっていきたいという発言がございまして、しかる後に、私は、翌日に坂本会長にもおいで願ったし、民放の五社の方々にもおいでをいただきまして、決して私は押しつけるものでもないし、また放送番組に私が圧力をかけるということでもございませんということで、お許しをいただきたいのでありますが、御協力をいただけるかどうかしら、閣議で発言をいたしましたが、決して放送番組には私は郵政大臣として介入するつもりはないのです、けれども、こういう趣旨でございますが、中国の受け入れ体制だとかあるいは厚生省の体制だとか、そういうことができるとするならば、技術的にできるかどうか、御協力がいただけるかどうかしらということで、事後になりましたけれども、そのまくら言葉を置いて、それで皆さんが賛成をしてくれた、こういうことでございます。
  119. 鈴木強

    鈴木(強)委員 経過はよくわかりました。  今度の黒竜江省、遼寧省、六十人のうち四十二人の方が肉親に再会できたわけですよ。これは全くもってNHK、民放のテレビの成果である、こう言っても過言でないと思うのですよ。それぞれ番組作成には大変な努力をしてやっておられると私は思うのです。ですから、この場をかりても感謝をしたい気持ちです。大臣とその点は一致しています。  ただ、確かに九百人くらいと現在言われておりますけれども、また一面三千人とも言われているのですね。この人たちが戦後もう三十七年、四十年たちまして祖国に肉親を求めているということが最近になってわかったわけでして、これを一刻も早く促進してやろうということは、これは政治の責任ですよ。ですから、これに対して放送協会あるいは民放が積極的に協力するという態勢は当然持っていると私は思うのですね。  ただ、私が非常に心配したのは、たとえばNHKが録画した放送を見ておりまして、日本に帰る息子に、おまえ帰ってこないのじゃないか、お母さんはあんたを頼りにここまで生きてきたという話をしましたね。そうしたら、お母さん必ず帰ってきます、そうか、それなら行ってらっしゃいというような場面を見ているのです。それから、あの終戦のどさくさに、ここでは言えないようないろいろな関係があるのですよ 顔を見ても会えない親もいると私は思うのですよ。その辺のデリケートな心理もあるわけですから、閣議で出したことは非常に結構ですが、ただ私が心配したのは、放送との関係ですね。この番組との関係が非常に大事ですから、こういう問題は事前に関係者とよく打ち合わせをして、政府としてはこれこれのことをやる、したがって協力をしてほしいと言うのが順序であって、若干勇み足があったことを大臣も認めていただいて、ぜひ残された遺児たちが一日も早く再会できるように全力を尽くしてやってほしい、こう私は願っているわけです。  それで、NHKとしては、この点については会長どうですか、放送局長でもいいですけれども、積極的に協力をしていただけますね。
  120. 坂本朝一

    坂本参考人 大臣もいまおっしゃったように、番組介入というような趣旨では全くないからその点はひとつ誤解のないように聞いてもらいたいという前提がございまして、御説明をいただきました。私どもの方も、そう言うとちょっとあれですけれども、大臣におっしゃられるまでもなく、NHK自身がすでにこのテーマについてはかなり積極的にやっております。したがって、大臣の御提言については賛成でございます。ただ、問題は、それでは具体的にどうやるのかということになりますと、いま鈴木先生がおっしゃったように、やはり相手国側のいろいろなフィーリングもございますから、これは慎重にやらなければいかぬだろう、そういう点について事務レベルでの相談を積み重ねてやりたいということを申し上げて、大臣も、よくわかった、こういうことでお別れしているわけでございますから、私どもの方も、NHKだけじゃなしに民放さんと足並みをそろえてやるべきだろうということで、話はややオーバーな表現になるかもしれませんけれども、オリンピック方式だなと言って浅野さんと多少話をしたわけでございますが、そんなわけで、具体的にはこれからどういうふうにやるかということで、田中放送局長を責任者に命じまして、現在準備を進めている、こういうことでございます。
  121. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大臣、このことにつきましては、ぜひこれから各省庁間の連絡体制を十分整備をしていただき、何か厚生大臣が懇談会ですか、おつくりになったこともちょっと新聞で見ました。したがって、それが一つ。  それから、中国側の協力を取りつける、これは外務省を通じてになると思いますし、またNHKも、ことしですか、やりましたような、相手総局との間でやり得る点はやっていただけると思います。民放等についても、非常にむずかしいですから、いずれにしても外務省の協力を得てこれがうまくやれるような協力体制の取りつけをすることが二つ目です。  それから、テレビの中継については衛星を当然使うと思いますが、技術上の問題を含めて十分に協議をしていただいて、一番効果的なことをやっていただく。そして、民放の場合ですと自主的にやっていただけば一番いいのですけれども、かなりの人を派遣するということになると経費その他の問題がついてくると思うのですよ。ですから、その点を政府がスポンサーになってやるようなことになるのかどうなのか、そういう点までやはり検討しておかなければならないと思うのですね。NHKの場合も、自主的にやれと言っても、規模、計画によりましてはやれる面とやれない面とあると思うのです。ですから、そういうことは今後の問題として十分検討していただいて、何とか大臣の構想が生きてお役に立てるような、日本のテレビの威力を発揮していただくように私は心から願って、大臣の決意をちょっと伺いたい。
  122. 箕輪登

    箕輪国務大臣 鈴木先生おっしゃるとおりでありまして、私はそういう閣議発言をいたしましたが、それに対して厚生大臣並びに外務大臣等からもお話がありまして、そこで直ちに厚生省はその対応を考えたのであります。そして、厚生大臣の私的諮問機関として、中国孤児のこれからの対応を考える諮問機関、ちょっと名前は忘れましたけれども、つくることに決まったわけであります。その中に報道関係者も入るようであります。そういう私的諮問機関の中でいろいろな話し合いが行われていって、いまの技術的な問題あるいは経済的な問題、そういうことが話し合われてちゃんとした案ができるだろうと思うのであります。政府が金を出すのか、民放はどうするのか、NHKはどうするのかという、経済的な問題も含めて話し合いが行われる予定であります。その話し合いがまとまれば、郵政大臣として私が御協力できることについては極力御協力申し上げて、成功することを私は願っておるところでございます。
  123. 鈴木強

    鈴木(強)委員 よくわかりました。私もともに成功を祈って、できるだけのことはしたいと思っております。  それから次に、一九八四年七月に予定をされております次期ロサンゼルスのオリンピック大会のことでございますが、この放送権の問題については、前回モスクワオリンピック大会で苦い汁を吸っておるわけです。幸いにして今回の場合には、NHK、民放連が一体となって放送権の取得についてやるという体制ができまして、まことにこれは喜ばしい次第でございます。  そこで、NHKが従来どおり世話役になりまして、民放連と一緒に相手方と種々協議を進められておると聞いておりますが、あと二年あるわけですけれども、いま現在どの程度まで話し合いが進んでおられるのか。額もモスクワの問題がありましてかなりつり上げられました。したがって、相当な額が放送権料として話に出ているのではないかと思いますので、現状を、把握されている点をぜひここで国民の前に明らかにしておいていただきたい、こう思うわけです。
  124. 田中眞三郎

    田中参考人 ロサンゼルスの放送権につきましては、一昨年十一月に私と民放連の川手報道委員長と一緒に行きまして、第一回の交渉をして今日に至っております。その間、一、二回いろいろ交渉を重ねたわけでありますけれども、残念ながらまだ決着を見ていないというのが現状でございます。その間、ヨーロッパの方では、千九百八十万ドルというわれわれの予想を超える金額ですでに決着を見ておりますし、さらにオーストラリアの方でも、千六十万ドルというこれもわれわれの予想し得ないような高い放送権料で契約が成立しております。世界的に見ましても、すでに残っておりますのは大きいところでは日本というようなことになりますので、現在、私どもと民放連との間でいろいろ協議をしながら、これからどのタイミングで契約をすればいいのかというようなこと、あるいは金額の面等々を含めまして、いま慎重に交渉の打ち合わせをしているという段階でございます。  さらに、一方では、いろいろ準備の都合上、技術的な施設の面等々を含めまして、ロサンゼルスのオリンピック放送に当たりますアメリカのABC放送の方から、そういった具体的な計画案を持ってこいということがございまして、これにつきましては、またNHKと民放連との間で十分話し合いまして、これは放送権料とは別でジャパンプールというものをつくりまして、その中で運営協議会という、一番高い代表のところには私と民放連の川手委員長がなりまして、その下に実施本部というのをつくりまして、その中で事務局がありまして、いろいろロサンゼルスオリンピックの施設、技術面でどういう計画を立てていくのかというようなことを、現在すでにかなり具体化しておりまして、この第一案につきましては、すでにロサンゼルスの方へ行きましてABC放送の方に提案をしているということでございます。それで、向こうの方から、こちらから持っていったこれの第一案について、この程度のものならやれるよという返事が一、二カ月のうちに参りますので、そういったことを一、二回往復してその辺の施設面での決着は見ると思います。そういった意味合いも含めて、放送権料の方も、現在大変な円安になっておりますけれども、その辺のタイミング等も含めながら、十分協議を慎重に重ねながら交渉に当たりたいというふうに思っております。
  125. 鈴木強

    鈴木(強)委員 経過は大体わかりましたが、まだABUの方は決まっておらないわけですね。次の次は韓国でオリンピックが開かれるという予定になっておるわけでして、韓国の立場は非常に微妙だと思うのですけれども、ABUの放送権料の問題が決着した後で様子を見ながらやるというような態度なのかどうなのか。私は、むしろもうここまで来たら、あえてここで示しております何ぼかの金を、公表することはいかがかと思いますので、それはおっしゃっていただかなくてもいいですけれども、やはりできるだけ早目に決着をつけてしまう方が、諸般の情勢からいいのではないかというふうに感ずるのですけれども、その点、田中局長はどう思いますか。
  126. 田中眞三郎

    田中参考人 ABUの方は、いま御指摘のようにまだ交渉にも入っていない状態でございます。これはモスクワのときの放送権料の分が、参加しなかった分についてどの程度まで支払いをするかというモスクワの分がまだ決定しておりませんので、まだロサンゼルスの方の交渉が始まっていないというふうに聞いております。そういった中で、いま御指摘のように為替レートの問題、それから先ほどちょっと申し上げましたヨーロッパの放送連合の問題、オーストラリアの方の放送権料の問題等々、十分参照しながら、私ども先ほど申し上げましたようにこの夏、秋ぐらいまでには施設の方のことも固めなければなりませんので、そういったところを一応の目安にしながら、今後放送権料をひとつまとめていきたいというふうに思っております。
  127. 鈴木強

    鈴木(強)委員 会長、これは民放連の方と幸い一体になってやれることになりました。いま田中さんの報告を聞いていますと、オーストラリアが千六十万ドル、すると約二十四億ちょっとですね。それからEBUが千九百万ですから二千万ドルとして四十八億、えらい高くなったものですね。しかし、やはりいま言った諸般の情勢から考えて、韓国は次期の開催国ですから、正直言ってかなり無理を言われてくるのではないでしょうか。そういうふうな情勢もあるしするので、できるだけひとつ、日本としては安い値段でやるということは当然です、よく相談をされて、ここに一つのサンプルが出ちゃったから、まあこの辺のところじゃないかというふうに僕らも思いますけれども、高いと思うけれども、ひとつ早く決めていただいて体制をつくって、国民期待に沿えるようなオリンピック放送ができるような御配意をやっていただきたいと心から願って、会長の考え方をちょっと伺いたい。
  128. 坂本朝一

    坂本参考人 私も先生のおっしゃるとおり、オリンピックはやはりNHKとしても民放連としても実施したいということで合意しておるわけでございますから、したがって、できるだけそういう点について安く権料を獲得したいということで、それが多少早めればいいのかあるいは遅くする方がいいのか、そこら辺のところは交渉過程を見なければなかなか判断いたしかねますので、その点はひとつお任せいただきたいと思いますが、先生のおっしゃるような御趣旨で妥結したいというふうに考えております。
  129. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大臣が参議院予算委員会の関係で退席をされることになっておりますので、ちょっと質問がしにくいのですけれども、私の質問時間中に帰ってこられそうもないものですから、失礼ですけれども、大臣に先に伺っておきます。  郵政大臣NHKに対する経営あり方その他については、われわれはもうしばしばこの委員会でも指摘をしてまいりました。先般一月八日に長期ビジョン委員会報告書が出まして、これから十年先を見通した経営あり方運営あり方、こういったものが出てまいったわけでございます。私も二度ほど読んでみました。大臣も恐らくごらんになっておると思いますが、この中には、直接経営の中、運営の中に取り入れなければならぬ問題もあります。また従来からの懸案の問題もあります。と同時に、これから法改正等を含めてやらなければならない問題もあるわけでございますね。したがって、そういう点について、主体性がこちらにあるわけですから会長から先に聞いてよかったのですけれども、大臣として、ちょっと中へ入ることは遠慮しますから、この報告書をお読みになりまして、そして、なるほどこういう点もあったとか、こういう点はこうしたらいい、なるほどいい点もあるなあとかいうような、要するにこれは感想みたいなものでいいですわ、それだけちょっと伺いたい。
  130. 箕輪登

    箕輪国務大臣 この報告書は私も読ましていただきました。御承知のとおり、今後十年を展望したNHKの長期ビジョンを取りまとめたものでございますので、そういう観点からNHK経営全般について問題点を指摘し、かつ検討の方向を示唆したものであると私は理解いたしているところでございます。私といたしましては、もちろん現に直面している厳しい財政事情を踏まえて、経営の長期的な安定に資する具体的な方策を見出すべくNHK自身も努力をいたしておりますが、NHKがこの報告書にあるような方向でぜひ実現してほしい、こう願望いたしているところでございます。
  131. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、もう一つ大臣に伺っておきたいのは、この承認を求める件に対して大臣の意見書がついております。これも唐突な結論から言うものですから、これは少し話をしないと大変まずいのです。けれども、やむを得ませんから伺いますが、この中に「五十八年度以降の協会の財政は極めて厳しい事態に立ち至ることが予想される。」というふうにお述べになっておりますね。ここで少しその具体的な点について伺いたかったのですが、私にも大体わかります。  そこで、第二点として、「極力受信者の負担増を来さないよう努めるべきである。」こう述べておられるわけですね。ことしは御承知のようにNHKの五十五年からの三カ年計画の最後でございまして、収支とんとん。しかし、NHKの努力によりまして五十八年度に三十五億の繰り越しができる。思い出せば、五十五年には補正予算が組まれました。ですから、四月いっぱいというのが旧料金でいきましたから、ちょっと計算してみますと約四十五億ぐらい損したわけですね、あのとき一カ月おくれたから。それを合わせると約八十億余の繰越金が出たと見ていいと思うのですよ。これはNHKの大変な節約努力の結果でありまして、これは国民はやはり評価していいと思うのですね。そこで、当初の計画ですとそんな繰越金は出ないと思っておったのですが、それも出ております。大臣としては、受信料の値上げということは主体的にはNHKが考えることですから、これは後で会長に聞きますけれども、ここに言っている負担を来さないということは、料金値上げはだめだよ、こういう趣旨と受け取っていいのでございますか。五十八年度と限定してもいいですけれども、そういうふうに理解していいですか。
  132. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 NHKの財政を見てみますと、収入の大宗を占めますのはもちろん受信料でございます。これを見てみますと、わずか一%台しか期待できないという数値で出てまいっておるわけでございます。一方、支出の方を見てみますとどうか。物価等の上昇に見合う増加あるいはその他避けられないそれが五%ないし六%というような数字が出てくるかと思います。そうしまして、五十五年度の値上げでその後なにしたわけですけれども、五十七年度事業収支を見てみると、収支差金が全然ゼロ、こういうような数字になっておるわけで、したがいまして、五十八年度予算は、前からの繰越金の三十五億円を受け入れることは予定できるわけですけれども、なお赤字を予想せざるを得ないということで、さらにそれ以降の年度はどうなるのだろうか。構造的に赤字になっているのではないか。一段と厳しい状況は数字の上からも指摘を十分されるというようなことで、五十七年度NHK事業運用に当たりましては、このことを十分念頭に置いて、入るをはかって出るを制すと申しますか、言葉をかえて言いますと、そういう考え方に徹して赤字即値上げというような考え方には何とかいかないでほしいというところで、「極力受信者の負担増を来さないよう努め」てほしい、こういう希望を述べたものでございます。
  133. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは会長からよく伺って郵政省の考え方を聞かなければ――全く逆でしたけれども、いまの事情でお許しいただきます。  前段はいま申し上げましたから省略しますけれども、率直に言って、五十八年度協会予算編成に際して三十五億の繰り越しができたものの非常に厳しい情勢ですね。したがって、相当借入金でも考えない限りはもうもたないという事態になっていると思うのですね。  そこで、これから、報告書もありますし、あらゆる努力をしていただくと思いますけれども、五十八年度財源の調達はなかなか無理なように私たち感じます。われわれも一年でも二年でも三年でも値上げがないことを心から期待するし希望します。しかし、率直なことを視聴者の皆さんに知っていただいて、そして、私のNHK、私たちNHKだという間柄に、NHKが姿勢を正すべき点は正してお進みになる。同時に、国民視聴者の皆さんからも理解をしていただくということをよく言わなければいけないのです。そういう点におけるPRが下手だな。われわれ会えばまた国民の皆さんにもこういう状態ですということを話します。いろいろな広報活動を通じて事業の内容というものをよく知ってもらうことが必要ではないかと私は思うのです。そういう意味において、忌憚のない、短い時間ですけれども、値上げしないで本当に済むのかというような点、ちょっと答えておいていただきたい。
  134. 坂本朝一

    坂本参考人 先生のおっしゃるように、赤字になったから値上げだなんということを安易に考えるなんということはもってのほかでございますから、そういう点がわれわれに課せられたテーマだろうという認識は十分持っておるつもりでございます。ただ、構造的に言って、ある時点で受信料の値上げをお願いしなければならないということもやむを得ない点があるのではなかろうかということで、それは挙げて受信者の方の御理解が前提になるだろう。そういう意味で、日常の視聴者対応、こういう言葉を使うとしかられますが、受信者にどうサービスするか、どう向かうかということになろうかと思いますが、そういうことも含めて、私が議長となります長期ビジョン検討会議で具体的に検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  135. 鈴木強

    鈴木(強)委員 長期ビジョン委員会の方へ逃げてしまったのですけれども、長期ビジョン委員会についても、さっき大臣に申し上げたように、直ちにやれる問題、それからさらに検討を加えて実施に移す問題、そして経営委員の皆さんにも十分に理解していただいて決めなければならぬ問題もあると思うのですね。したがって、経営の効率的な努力、合理化、こういった点も含め出費の節約を図っていくという姿勢も必要だと思うのですね。それには労働組合の協力もまた絶対に必要だと私は思います。ですから、長期ビジョン委員会に対してどう対応していくかという、何か聞くところによると検討委員会というのですか、そういうようなものも持たれて具体的に検討していくということですけれども、その長期ビジョン委員会に対する対応委員会というものは、メンバーはここで時間がないからいいとしても、大体いつごろをめどにしてこの答申のやるべきものについては、いまもやられていると思いますけれども、料金の問題についても体系の問題についてもありますし、これから多重放送とかいろいろなものが出てきますね。財源をどう求めていくか、そういう点も含めて、大体どの程度で結論を出していこうというのか。一年半かかって出したこの長期ビジョンに対して、対応委員会というものはいつまでに結論、その方向を出していくのか、それはどうです。
  136. 坂本朝一

    坂本参考人 おっしゃるとおりで、したがって、私を議長とする長期ビジョン検討会議というのは、その扱いますテーマに当然緩急があってしかるべきだということで、総論のところで立ちどまっていたのでは話にならない、こういうことでかなり厳しい指示をいたしまして、緩急をつけて検討しよう、少なくとも急を要するというテーマについては遅くとも夏ぐらいまでの間には協会の一つの姿勢を出すべきだろう、それから、トータルとしては少なくとも最終的には来年の一月にはきちっとした具体的な対策も御報告できるようにすべきだろう、そういうことでいま作業を進めている次第でございます。
  137. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、長期ビジョン委員会の中でトータル的に一月と言うのですけれども、制度改革は別としても、この報告書の内容のかなりの部分が予算関係ということで、予算編成がありますから少なくとも五十八年度予算編成までに、そういう姿勢でなければいかぬと思うのですね。それはそういうふうに理解していいですね。
  138. 坂本朝一

    坂本参考人 要するに、緩急という急の方は少なくとも五十八年度予算の編成に間に合うといいますか、そういうことがなければならないだろうということも含めて申し上げたわけでございます。
  139. 鈴木強

    鈴木(強)委員 率直に答えてください。経営が非常にむずかしい事態にきている、これは郵政大臣も認めているわけですね。ですけれども、僕らは五十八年度やってもらいたくないんだ。それについてはどうですか。まだここで言えぬですか。
  140. 坂本朝一

    坂本参考人 冒頭申し上げましたように、赤字になったら値上げだという安易な姿勢はとれない、そういう大前提でこれに立ち向かおうということでございます。したがって、それが五十八年度どういうことになるのかということをまたこの席で余り放言するのもまことに無責任なことかと思いますので、七月をめどに緩急の急のテーマについてはやるということで御理解賜りたいと思うわけでございます。
  141. 鈴木強

    鈴木(強)委員 この基本報告に述べておる中でこういうのがありますね。大正八年にNHKはできていたんですけれども放送法に基づいて三十年余、NHK国民生活と文化の向上に基本的には寄与してきたことを認めています。「その事業運営の方法に関しても、NHK自ら反省すべき点もある。」しかし、放送番組については「NHKが、優れた技術力を背景に、公正、的確な報道と、豊かで、かつ、よい放送番組の提供」を行ってきたことは多くの国民が認めるところである、こう述べています。続いて今後の問題として、「視聴者も、かつてのように放送の単なる受容者ではなく」、放送の質の要求放送への参加を求めてくる、そしてこういう人たちが主体として登場してくることは間違いないところで、したがって、これまでのNHKの地位を「従来と同じ姿勢のままで維持し続けることは、困雑であると思われる。」こう書いてある。これは非常に大事なところだと私は思います。別に、公共放送としてNHKが存続していくべきであるという点もあります。公正、不偏不党の立場に立ってやるべきだ、こういう点もありますが、若干ここいらの問題については、地位を従来の姿勢のままでということで、組織のことではなくて経営姿勢のことだと思いますけれども、これらの問題は私として非常にひっかかるところです。われわれはあくまでもNHK公共放送としていつまでもやってもらいたいということを願っておるからちょっと心配になるわけでございますけれども、そういう点を含めて、ひとつ今後十分な検討をしていただきたいことをお願いしておきます。  それから、さっき鴨田委員阿部委員が指摘をされておりました週刊誌とか文春の問題ですが、これは会長から事実に反するものあるいは誤解に基づくものについては抗議をし取り消しを要求しておる、こうおっしゃいました。文春とか週刊誌に出ますと、あれはみんなよく読みますよ。私せんだって地下鉄の駅に行って文春をくれといったらもう売り切れてしまっていて、NHKのことが書いてあったから売り切れたのかもしれませんけれども、とにかくよく売れているのだね。あれを読むとみんながあのとおりに思ってしまうのです、受信者は。これは大変なことですよ。会長の言うように、本当に事実に反するものがあるならばぜひ反論してもらいたい。誤解に基づくものがあったら誤解を解くようにもっともっとPRすべきですよ。私はいまここでどの点が抗議をした内容かということを聞く時間がないから、会長、どういうところが問題で抗議を申し込んだのかということを別途ぜひ説明してもらいたい、そして誤解を解かなければだめですよ。
  142. 坂本朝一

    坂本参考人 私も全くあの文芸春秋の記事については憤慨にたえない次第でございます。したがって、翌日直ちに具体的な個所も添えて抗議に行かせたような次第でございます。したがいまして、先生この席でいろいろと具体的に申し上げる時間がないということでございますから、処置したいと思います。
  143. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それで、ここで会長にぜひ肝に銘じてこれからやってもらいたいのは、さっき私も申し上げたように、報告書の中には、経費節減のためにかなり合理化をやれと書いてある。これはそこに働いている労働者のことを考えなければだめですよ。私は全電通の委員長をしてきました。そしてあの合理化政策が完全に成功したのですよ。私は合理化を否定しなかった。自動になる電話を組合員が反対してみたって、これは闘争にならぬですよ。私は、阿部委員がおっしゃったように、NHKの日放労も理屈の通る合理化というものは認めていくと思うのです。そこで、合理化が進むに従って労働条件をよくしてやってほしいのです。そして、無理な職種転換とか配置転換については労使間でよく話し合いをしてやるような仕組みをやってほしい。私はこれを労働協約にしたのです。五つの労働協約を公社と結んで、それによってスムーズにあの仕事をなし遂げたのです。炭労のあの闘いが灰じんに帰してしまったのと比べて、いま対照的に電電の合理化計画というものが評価されているのはそこにある。ですから、今後合理化をやる場合に、日放労とも十分な連絡をとって、基本的には合理化に従ってもらうが、そのかわり首は切らぬ、労働条件は改善していく、こういうものをちゃんとして、それから話し合いをしていただきたい。これはもう非常に基本のことで、時間もありませんから端的にあなたに申し上げておきますが、私の申し上げたような思想で今後合理化の問題については日放労とやっていただけますか。
  144. 坂本朝一

    坂本参考人 効率化のテーマを打ち出したときに、組合と特別紛争処理委員会という形で話し合いをする場を設けておりまして、年度計画のたびに理解を求めるための話し合いをしておるという状況でございます。ただ、残念ながら現状ですべて合意に達しているということではございませんけれども、全く話し合いを拒否するという姿勢ではなしに、そういう場も設けて努力をしておることを申し添えます。
  145. 鈴木強

    鈴木(強)委員 努力をしていることはいいですよ。だから、基本に、いま私が申し上げたような、合理化というものはそれを経営している経営者もメリットがなければだめなんですよ。それから、見ていただく視聴者の方にもメリットがなければだめなんだ。同時に、それを支えている労働者のためにもなければならぬ。三者がよくなるような合理化を模索しなければだめなんですよ。それが労働者に偏りしたり視聴者にしわ寄せされるものは本当の合理化じゃないですよ。そういうものも、やはり時代の趨勢、機器の発達あるでしょう。ですから、私は自分の経験からして、合理化というものはそういうふうにいつも信じてやってきているのです。だから、私の考えている思想的なものを会長が体してやってもらえるかどうかということを私は聞いているのです。従来やってないとは言わないです。これから大変むずかしい時代になってきますから、そういうことを基調にしてぜひ話し合いをしていただきたい、こういうふうに申し上げているのです。
  146. 坂本朝一

    坂本参考人 基本的には、おっしゃるとおりお互いに働くところでございますから、そういう意味で話し合いをしよう、こういうことでございます。
  147. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。  それでは、次に、テレビの難視聴解消についてちょっとお尋ねします。  今度の長期ビジョン審議会報告書の中でも、「NHKは、放送全国普及使命達成のため、長年にわたってテレビジョン難視の解消に努めて」きた、これは認めております。昭和五十八年には放送衛星の打ち上げも予定されておる。金がかかります。そこで、今後NHKによる難視解消対策に要する経費は、あの衛星もNHKが六でしょう、国の方が四。六、四です。そういう金も出さなければならぬ。これも難視聴解消の基本的な一つなんです。したがって、ぜひ私は、きょうは政務次官いらしゃいますけれども、いま各地の民放の難視については、各県の予算で県知事が難視対策を考えてくれるのです。私の山梨県なんかでも、初めてことし予算が計上されました。しかしNHKには無縁のものであります。ですから、地方自治体に対する補助金等もあったり、共聴に対するNHKの補助というものもありますけれども、これから残された難視解消については相当の金がかかるわけですから、ぜひ地方自治体それから国が費用の負担を増額してもらえないものかということがこの報告の中にもあるわけですよね。そういう意味で、五十八年打ち上げに対してすでに金をかなり使っているのですけれども、どうでしょう、政務次官、検討してできるだけそういう方向に持っていっていただけませんかね。
  148. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 難視聴に大変な金がかかるということでございまして、その面から、国の施策といたしまして、初の実用放送衛星BS2については、先生御高承のとおり、もっぱらNHKのテレビの難視解消に充てるということで、国策によります衛星の関係の自主技術の開発に投資すると同時に、実際に解消に役立っているNHKにもしかるべき額を分担していただくということで、分担割合につきましては、国が開発する経費等を勘案して、その利用者たるNHKが六割御負担いただく、そして、国は開発分を担当するというふうなことで、昭和五十八年度及び六十年度の打ち上げに向けて、すでに五十五年から計画的に準備が進められているということでございます。  なお、これは実用衛星でございますので、BS3と申しますか、第二世代の段階になりますと、NHKのほか、その他の利用者も出てこようかと思いますが、基本的に日本の宇宙経費は高過ぎるという批判があることは私どもも十分承知しておるわけでございまして、経費のトータル的な意味での軽減化と信頼性というものを大いに確保すべきだということで、関係の向きにもその辺を訴えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  149. 鈴木強

    鈴木(強)委員 ひとつぜひ努力をしていただきたいと思います。  難視に関連して、実はローカルのことで大変恐縮ですけれども、私の選挙区の山梨は昭和六十一年に国体を開くことになっておりまして、いま甲斐路国体ということで準備を進めておるのですけれども、残念ながら県内に難視世帯が約六千世帯あります。またもう一つは、県が甲府市の寿町というところに県営の県民文化センターというのをつくりまして、いま建設工事をしておりますが、外郭は七分通りできたのじゃないでしょうか。ところが、もうすでにその建物の周辺五百世帯が難視になってしまっているのです。こういう問題がありますが、この事実をNHKは把握されておりますか。把握されておったら、その対策はどういう対策を立てようとするのか。特に六千世帯のうち、サテライトなりあるいは難視共聴によって救済できるのは、五十七年度幾らできるのか。五十七年度、五十八年度、五十九年度計画があったら、ひとつ示してもらいたいのです。
  150. 高橋良

    ○高橋参考人 ただいま鈴木先生の御質問は二つに分かれるのじゃなかろうかと思いますが、まず辺地の難視解消でございます。  先生いま御高承のとおり、残存難視世帯数といたしましては、山梨県の場合には約五千七百世帯でございます。五十五年度末の残存が六千世帯であったわけでございますけれども、五十六年度内の解消見込みが、足和田長浜局の開局によりまして、それを入れまして五百世帯が解消になります。ところが、五十六年度内に宅造がございまして、これで増加する見込みが約二百世帯、このように把握しているわけでございます。したがいまして、五十七年度の山梨県における辺地の難視解消といたしましては、大月市藤崎、それから甲府西地区の二地区につきましては放送局を置く。それから、上野原町桑久保など五地区につきましては、共同受信設備によりまして解消するように考えておる次第でございます。それで、これによります解消世帯数が、放送局二局でもちまして五百二十世帯の解消計画でございます。それから、共同受信施設による解消世帯は、非常に散在しました小さい共聴になってまいりましたものですから、トータルで百二十世帯の解消をするという考え方でおるわけでございます。  それから、ローカル難視の問題もございましたが、これにつきましては北都留、南都留、それから東京都、神奈川県に隣接する山間地域の全くの散在でございます。これは共同受信施設としてもちょっとまとまりにくい散在でございますので、これにつきましては若干高性能のアンテナなどを用いていただきまして、受信指導によって対応してまいりたい、さように考えております。  それからもう一つ、県民ホールの問題でございますけれども、これにつきましては、山梨県県民文化ホール、これの受信障害につきまして、NHKは甲府放送局が山梨県から調査を依頼されまして、昭和五十六年一月の建築前の調査と、それから十二月、躯体が完成した段階での調査をそれぞれ実施いたしました。それで、約五百世帯ということは先生のお話のとおりでございます。この五百世帯の中身は、県民ホールの陰による受信障害の世帯数が三百六十世帯でございます。それから、反射による障害世帯数が百六十世帯というふうに、調査結果を甲府の放送局より山梨県に報告いたしました。この報告をもとにいたしまして、山梨県ではこの障害世帯に対しまして、NHK甲府放送局また東京の民放三波、なお地元の民放二波を再送信しておりますところの有線テレビ放送会社の日本ネットワーク・サービス株式会社に加入するように県が勧奨いたしまして、加入費の六万五千円を県で負担をする、ただし、毎月の維持費は一万二千円でございますが、これを受信者の方に負担していただきたい、このような対策方法で地元に対応しておるというふうにわれわれは聞いております。
  151. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。  なお、五十九年以降、六十一年国体に向けてぜひ――何かありますか。
  152. 高橋良

    ○高橋参考人 大変失礼しました。維持費一万二千円と申し上げたそうでございますが、千二百円の間違いでございます。
  153. 鈴木強

    鈴木(強)委員 五十八、五十九、六十、そういうふうに逐年計画をして、できるだけ六千世帯が解消できるようにお願いしたいと思います。  なお、全国的な難視の状態については、別途ひとつ資料で出していただきたいことをお願いしておきます。  それから、最後に、いま放送法の一部改正法案が提案されておりますが、その中に、「暴風、豪雨、洪水、地震、大規模な火事その他による災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、その発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をするようにしなければならない。」という、今度は災害の場合の放送が義務づけられるようになっておるわけです。これはNHKでは、すでに従来のラジオとテレビの放送にコード信号を付加して、深夜などの放送受信していないときにも自動的に受信機のスイッチが入って情報が聞けるということについてサービスができるようなシステムについて研究をしておるように聞いておりますし、私ども先般視察をしたときに拝見しまして、これは早くやってもらいたいな、こう思っておりましたが、これは法律改正もありますし、すでにもう実験段階に入っておるようにも聞いておるのですけれども、現状はどうか、そしてまた施設費はどうなのか、放送法との関連がありますから、いつでもできる体制なのか、それから施設費はどのくらいか、そういうところで簡単に答えてください。
  154. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  先生に御視察いただいたとおりでございまして、それ以降、電波技術審議会をもちまして、五十五年から郵政大臣の諮問事項といたしまして、この技術基準の決定のための審議が進められておりまして、五十五年度に一部答申が行われたわけでございます。それを簡単に申し上げますと、中波でも短波でもFM、テレビでも共通して使えるような方式であること、それから信号方式、それから信号が耳に聞こえる範囲のそういう信号を使うこと、それから電波妨害に強いシステムであること、それから適用の対象区分をどうするかということについては、一応答申されたわけでございます。  それで、五十六年度に仮の基準をつくりまして、NHK並びに民放がこれの野外実験を実施いたしました。その結果は、緊急警報放送用の専用信号は良好に動作することは確認したわけでございますが、テレビ、ラジオ、御承知のように全国で見た場合には同じ周波数を使っておる放送局があるわけでございます。そこに非常に小さい信号が飛びましても、その緊急警報放送用の受信機が動作をするというようなことが出てまいりましたものですから、このような不要な動作が起きないようにするための技術的な方法があるかどうか、なお、その技術的方法がないとするならば、これを防止するためのデジタルコードというものを入れるかどうかということにつきまして、五十七年度継続審議するということになっております。  なお、最後に、経費でございますけれども、これは技術基準が制定されまして省令改正が行われれば、当然NHKとしては早急に実施しなければならないというふうに考えておりますが、まだ本放送等はいま未定でございますので、ただいま御審議いただいております予算の中では、研究設備整備費の中に二億二千万を計上しております。
  155. 鈴木強

    鈴木(強)委員 最も大事な放送番組の問題について質問する予定でしたが、ちょっと時間が参りましたので終わりたいと思いますが、特に報道、ニュース、生涯教育、学校教育、教養番組、これらの充実については大変な御苦労をいただいております。ひとつさらにいい番組をつくっていただくようにお願いしておきます。  それから、特別企画番組ですけれども、これはなかなか評判がいい。せんだって「シベリア鉄道・九千キロ」ですか、ああいうのも見ました。いろいろ私は毎日新聞の「マイクへ一言」というのをずっと切り抜いて全部持っておるのですけれども、それにも若干、観光的な面だけであって、かつてシベリアでお互いに大変な思い出がある、表立って余り言えないけれども、そういうような点が何か抜けているのではないかということもありました。また、「雄気堂々」というのは、自衛力強化の問題についてもちょっと生臭い、正月早々不吉な感じがした。と思うと、また一面におきましては、小池さんという方は、退職間際の方ですけれども、「中学生日記・さよなら三C」を泣き通しで視聴しました、感慨無量です、こういう番組は非常にいいです。それからまた、「「新日本紀行」最終回に感無量」というのも出ておりまして、これも長崎県の福江島の話で、北の端から南の果てまでずっとスタッフが大変苦労されて取材されて大変よかったというようなお話もございます。  それから、昨年十二月二十九日には、岡本さんが蔵王のスキー場の上空でヘリコプターから写真撮影をしている際、殉職をした事件もあります。まさに記者諸君は命をかけて取材をしておられる。そういう人たちのおかげでわれわれはりっぱな放送が見られるわけです。したがって、岡本君のことについては、いま航空局の方で事故調査をしておるようですけれども、ぜひ万全な体制をとって、残された遺族の方々にも、生活等お困りになることはないと思いますけれども、温かい手を差し伸べてやっていただきたい、私はそんなことも考え、殉職された岡本さんにも心から哀悼の意を表したいと思います。  そういうわけで、大変な御苦労がありますが、NHKが本当に自分のものだというのには、まずもっていい番組を出しでくれる。視聴率なんか余り気にすることはないのです。本当にいいものを出すことが必要ですから、今後とも番組の向上のためにぜひひとつやってもらいたい、それを強く期待して終わります。どうもありがとうございました。
  156. 水野清

    水野委員長 この際、鈴木委員に申し上げます。  先ほどの放送衛星についての電波監理局長の答弁について、水平政務次官から補足したいという申し出がありますので……。
  157. 水平豊彦

    ○水平政府委員 せっかくの水野委員長の御指名でございますので、御答弁申し上げたいと思います。  先ほど田中局長が申し述べましたのは一つの見解であろうと思います。NHKにかわりまして電電公社が準備しております通信衛星におきましても、国と電電公社の分担割合が六〇対四〇でございます。果たしてこの六〇対四〇という開発に要する費用の分担割合というものが適正であるかどうかよくわからないところでございますが、とにかくBS2というのはNHKの二つのチャンネルが周波数帯の中で認められておりまして、いわばNHKを中心とした放送衛星であり、しかも難視聴対策のための放送衛星でありますので、当然NHKにそれだけの分担をしてもらおうというのが一つの背景にあるようでございます。  ただ、BS2は、先生御承知のとおり耐用年数がわずか五年でありますので、やがてもう一回打ち上げなければならぬ。そうなると、BS3を打ち上げますと、昭和六十三年になります。そうなると、BS2が三百五十キロでたしか六百六十億くらいの費用を要したと思うのです。ところが、BS3になってまいりますと、計画は、大体四チャンネルを持っています。国際的に割り当てられましたのは十二ギガヘルツ帯でありますから、八チャンネルございます。それでもまだ四チャンネル余っておるのでございますが、それは今後に課せられた課題といたしまして、とにかく四チャンネルの能力あるBS3でございますから、どういうふうなチャンネルになるかといいますと、一つはNHKの一、一つはNHKの3、もう一つは放送学園大学。そうすると、最後の四番目をどうするかという問題が出てまいります。これに対して民放がどのように出てくるかも一つの課題であろうと思いますが、いずれにいたしましても、オール国費で賄わなければならぬところの放送学園が一チャンネル加わってくるものですから、そのときにひとつ、国の責任といいますか、国の立場というものをBS2の場合よりはさらに踏み込んだ形で配慮しなければいかぬじゃないか。そうなると六〇対四〇が八〇対二〇になるか存じませんが、大臣ともよく連絡をとりまして、先生の御趣旨のように、その時点においてさらに国の責任において積極的な国費の支出を図っていくべきである、このように考えております。
  158. 鈴木強

    鈴木(強)委員 博学高邁な政務次官の御答弁を承りまして、非常にうれしく思います。そういう次官がどんどんとこの委員会に来てくれると、この議院はもっとよくなると思います。どうもありがとうございました。
  159. 水野清

    水野委員長 これにて鈴木強君の質疑は終了いたしました。  午後二時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十分開議
  160. 水野清

    水野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。西村章三君。
  161. 西村章三

    ○西村委員 郵政大臣が参議院の予算委員会審議でまだお見えでないようでございますが、有能な水平政務次官もお見えでございますので、また後ほどお見えになりましたら若干重複してお尋ねを申し上げることになるかもわかりませんけれども、とりあえず質問を進めたいと思います。  まず最初に、NHKにお聞きをしたいのでありますが、受信契約数でございます。これは五十六年度五十五万件の増加を見込んでおられますし、五十七年度も五十万件の予算を立てておられます。しかし、五十五年の実績を見てまいりますと、五十五万件の増加を見込んでおりながら結果は三十一万件弱に終わった、こういう実績があるわけでございます。けさほど来、同僚委員質問によりまして、五十六年度分につきましては、およそそのめどがついて二月の末で五十万くらいは達成可能だろう、こういうことがございました。しかし、依然として厳しいことには間違いがないわけでありますが、今後契約の伸びを長期にわたってどう見ておられるのか。これはもうおのずから限界があることははっきりしておるわけでありますが、ここ数年の伸びの傾向をどうごらんになっておりますか、そのことからお尋ねをしたいと思います。
  162. 海林澣一郎

    ○海林参考人 お答えいたします。  先生のおっしゃいます、五十六年はまず好成績に終わるであろうということでございますが、五十七年以降の予測はという御質問でございます。  実は手元のデータといたしましては、非常に確度の高いものがなかなかございません。その辺で一番確度が高いということで申し上げれば、五十五年に国勢調査がございました。国勢調査の数が出た、その五十五年十月までの五年間の世帯数の伸びが二百四十四万でありました。平均いたしますと、四十五万の年間の伸びであった。この辺がわれわれといたしましては、今後の動態といたしまして、人口の動きその他、増加ということからしての数字ではなかろうか。そうしますと、一応NHKといたしましては、全力を挙げまして新しく伸びた世帯数を契約化するということがまずターゲットになるわけでございます。  しかしながら、この四十五万という数字にいたしましても、たとえば単身世帯、これは全世帯の二〇%が単身世帯という、これも国調の結果でございます。その単身世帯二〇%の中でテレビをお持ちの方がどのくらいいるか。これもなかなかデータがございませんけれども、経済企画庁の調査では大体五〇%ぐらいだ。少し少ないのではないかというようなことで、昨年秋でございますか、東京大学の生協の方で東京大学の学生のテレビの所有を調べたら四三%というのが出てきた。むしろラジオカセットの方を多く持っているというような、これもやはり社会の動きなんだろうと思います。そういうことから勘案いたしますと、いま申し上げました人口、世帯数の増ということを一つの目標にしながら今後の展開を見ていくことが、先生の御質問の今後の契約の増ということのめどではなかろうかというふうに判断しております。
  163. 西村章三

    ○西村委員 いずれにいたしましても、多重放送とかニューメディアの開発をされましても、それは受信機の増に直接つながるものではない。むしろ、いまのお話のように、今後の長期展望を立てますと、立てれば立てるほどその見通しは暗い、こういうことも言い得るわけでございます。そうなりますと、勢い日本放送協会そのものの業務の効率的な運用といいますか、あるいは経費の節減ですか、いわゆる企業努力というものをやらなければならないわけでございますが、この企業努力につきまして、いま提案されております五十七年度予算作成に際してどのような配慮を具体的に加えられたのか、この辺をお尋ねしたいと思います。
  164. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お尋ねの五十七年度の具体的な効率化の項目を申し上げます。  その前に、効率化につきましては毎年、過去もやってまいりましたので、いまから申し上げますことはかなり細かい部門になりますので、あらかじめお話をしたいと思います。(西村委員「大綱だけでいいです」と呼ぶ)  まず絶対額としましては、十四億を節減をいたすつもりでございます。大きく分けますと四項目に分かれますが、一つは、五十六年、五十七年度に予定しております要員の効率化による効果をこの中で九億三千万ほど予定をしております。それから二番目は、技術開発それから改善の成果というのを積極的にこの運用費の中に導入してやるということでございまして、真空管の購入費の減でありますとか、あるいは電力料を減らすとか、さらには真空管の使い方による寿命を延長するとかいうことで、約七千万の節減を見ておるわけでございます。三番目のグループは、業務のやり方の改善でございます。たとえば細かい話でございますが、局舎の補修にいたしましても、早いうちに点検を強化いたしまして細かに修理をしていくということで全体の補修費を浮かすというようなこと、あるいは巡回相談する場合の巡回の仕方をもっと効率的にやるというようなことで考えますものが一億二、三千万ございます。最後に、私ども業務の全般にわたりまして消耗品・刷成費、全般を共通に節約をするという項目で、十四億ということでございます。これをもちまして、五十五年から五十七年まで当初予定しておりました七十億が、これをやりますと三カ年間で九十億になるというふうにもくろんでいるわけでございます。
  165. 西村章三

    ○西村委員 いま、三カ年間で九十億というお話がございました。五十七年度は十四億ということでございますが、五十五年の十一月当委員会で私がその点についての効率化実施計画についてお尋ねをいたしましたときの御答弁は、約三カ年で七十億円を図りたいということであります。その初年度の五十五年が十五億円、そしていま五十七年が十四億円と申されたのでありますが、そうすると若干数字のつじつまが合わぬような気がするのですけれども、この点についてはどうなんですか。
  166. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  この効率化の三カ年間の累計の仕方でございますが、五十五年度年度効率化の実を上げますと、初年度はもとより、二年度、三年度と効果があらわれてくるわけでございますね。三年間の効果を累積して考えているわけでございます。  で、いま申し上げました五十五年度十五億という話があったじゃないかということでございますが、七十億を考えましたときの各年度効率化の強化額につきましては、いま先生おっしゃいますように五十五年度は十五億、五十六年度には八億三千万、五十七年度は約十億を前年度に対して強化していくということでございまして、その累積が七十億ということでございます。そういうことでございまして、私がいま五十七年度に十四億と申し上げましたが、これは予定しました十億に対しましては約四億強化されているということでございます。
  167. 西村章三

    ○西村委員 五十五年の一月に策定をされました五十五年から五十七年に至る三カ年の経営計画につきましては、いわゆる事業支出についての物価上昇率を六%と見込んで、物価上昇率の範囲の中で事業支出を抑制していく、こういう方針が明示をされたわけであります。  御承知のように、物価は比較的に鎮静をいたしておりまして、五十四年が四・八%、五十五年が七・八%でありましたけれども、五十六年の見込みは四・五%、さらに五十七年は四・七%という見通しでございます。当初六%の物価上昇の範囲内にとどめるということから比較をいたしますと、これはかなり差が出てきたということでありますが、この差を、支出のいわゆる圧縮にどのような措置を講じられたのか。
  168. 渡辺伸一

    渡辺参考人 いま先生おっしゃいました支出の圧縮を三カ年計画の総体で三十五億を繰り越したという過程までお話しをした方がよろしいかと思いますけれども、いま先生おっしゃいました三カ年間に予定した物価がそれぞれの年度で違ってまいりました。ときには予定をしたよりも上がった時期もございましたけれども、総体としまして六%で予定をしましたのが五%台で推移いたしました。この物価によりまして見込まれます効果というのを業務の隅々まで反映してまいりまして、三カ年間でまいりますと約三十四億を詰めることができたわけでございます。それを契機にいたしまして節約を一層強めてまいります、あるいは幸いにして予備費が残があったというようなことで、三カ年間では物価の効果も含めまして百四億ほど予定をいたしましたものに対して残すことができたわけでございます。収入の方は、それに対しまして暫定予算で四十四億減る、あるいは数が思うに任せず伸びなかったというようなことで、副次収入の挽回を図りましても、この支出の抑制を上回る百七億当初より減ってしまったわけでございます。したがいまして、差し引き三億足らないという状況になったわけですが、実は五十五年度以降の三カ年計画には、五十四年度の赤字を取り戻すという問題が入っておりまして、この五十四年度の決算結果が三十八億ほど赤字を圧縮できまして、それが五十五年から三カ年間の経営計画の中では借入金の返還というのがそれだけ減ったわけでございますので、その効果を含めて五十七年度計画を終えましたときに三十五億を繰り越すことができたということでございますので、先生おっしゃったその物価の当初見込みより減った分については、確実にここの中に効果として生み出したということでございます。
  169. 西村章三

    ○西村委員 数字的には理解ができるわけでございますが、そうすると、これをパーセンテージに直しますと、事業支出はおよそ三カ年間で平均何%ぐらいの伸びにとどめたということになるのか。さらには、各年度ごとに一体そのパーセンテージはどうだったのか、この点はどうですか。
  170. 渡辺伸一

    渡辺参考人 当初予定いたしました事業支出の各年度の伸びにつきましては、五十五年度が七・七%、五十六年度が七・五%、五十七年度が七・一%という見込みでございました。これに対しまして実施計画が五十五年度が八・八でございまして、五十六年度が八でございましたが、五十七年度は五・九というところで終わったわけでございます。
  171. 西村章三

    ○西村委員 次に、長期ビジョン審議会の調査報告書につきましてお尋ねをいたしますが、率直に申し上げまして、これはけさ方からもお話がございました、第一次、第二次の基本問題調査会の答申、これの延長線上にある、あるいは従来われわれがこの委員会で論議をいたしましたもののあくまで延長線上の域を出ておらないという感じがしてならぬわけでございます。基本問題調査会の方はおよそ半年で約三カ年程度のものを検討なすった。今度は一年半かけて十年間程度のものを答申をされたわけでございます。御苦労についてはよく承知もいたしておりますし、りっぱな見識を持たれた先生方ばかりがおやりになったわけですから、それなりに大きな示唆を得るところもございますけれども、基本的なことにつきましては、受信料の頭打ち、そしてそれが赤字につながって料金改定をしなきゃならぬという、これは受信料の性格そのものとの関連もございますけれども、抜本的な対策というのは何ら明示がなされなかったわけでございます。そういう意味では非常に私ども残念に思っておるのでありますが、この報告書を基本に、とりあえずNHKとしてはこの実施の具体化を、けさほど来会長は、検討会議ですか、これを設けて検討していかれるということでございましたが、協会に対してのいろんな検討項目の課題を与えていること、これも事実でございます。大変非常に多くの内容を持っているわけでございますが、この報告書で、いま申し上げたように抜本的な解決策が明示されておらない。そうすると、今後も、いわゆる赤字、そして受信料の改定、こういうパターンの繰り返しがやむを得ないという一つの結論がここで出ておるのです。これは政府にとりましてもゆゆしき問題でございまして、やがてはいわゆる公共放送そのものの限界という問題にまで発展をしてくるわけでございます。私は、この長期ビジョン審議会期待をいたしておりましたものは、およそこれからの十年ということでありまするけれども、さらに長期にわたって、NHKの将来にわたるあり方、むしろそういう方向での示唆をしてほしかった、こう考えておるのですが、そういう面ではきわめて残念です。しかし、一応こう出てきたものであります。個々の問題は解決がされておらぬということでございまして、政府といたしまして今後この問題をどう考えていかれるのか、あるいはNHK自身として一体どう処理をされていくのか、重大な問題だと思うのです。  私は、過去二回の基本問題調査会、これの答申のときもそうでしたし、あるいは今回のもそうですけれども、いわば第三者機関、なるほど客観的に適正にそれなりの御意見もいただくということも大事でございます。しかし、それ以上に大事なことは、NHK自体が一体将来どうあるべきだということをもっと――いままで携わったいろんな豊富な経験も持っておられます、あるいはNHKの性格そのものも一番よく御存じなんです。NHK自身が将来こうあるべきだというものの検討をなさっておるのですか、会長にお尋ねをしたいと思うのです。  あわせて、これは政務次官、大変恐縮でございますけれどもNHK自身がもっと真剣に、この問題を第三者機関の審議にゆだねることも確かに必要でございましょう、他のいろんな意見を聞くことも大変必要でございますけれどもNHK自身がもっと真剣にこの問題に取り組んでいただく、こういう構えがなければならぬと思うのですが、政府のお考えはいかがでございましょうか。
  172. 水平豊彦

    ○水平政府委員 お答えいたします。  西村先生大変いいところをお尋ねだったと思うのです。きわめて重要なポイントだと思うのです。ただ、問題は、長期ビジョン審議会というのは、将来の、まあ十年後の将来というもののビジョンを描いておられるのでございますから、変転目まぐるしい今日の社会の移り変わりの中で、十年というのが果たして適切であるかどうかということは私はわかりませんけれども、一応十年を単位としてとられたということは、まあ一応それなりの意義がある。  先生の御指摘の、さらに長期にわたってというお言葉がございましたけれども、それはやはり十年のビジョンというものを踏まえて、さらに改善すべき点は改善するという方向の中で長期的なビジョンを打ち立てるべきではないかと思います。私は、むしろ、当面せる財政事情というものをどう切り開いていくかということも、長期ビジョンとは違った、足元の問題として、非常に重要な問題を抱えていると思うのです。したがって、先生御指摘のように、NHKの問題は、だれが何と言ってもNHK自体が一番よく承知をしておると思うのです。ただ、それをどのようにして参考にし、どのようにして社会的に権威づけるかということの一つの目安として、長期ビジョン審議会とかあるいは基本問題調査会とかあるいは経営委員会等で鋭意努力しておられることと思うのです。  郵政省としましては、NHKというものは、放送法の精神にのっとりまして、特殊法人とは言いますけれども放送という特殊な事業をやっておりますので、特別な介入は避けるべきである、たとえて言うならば人事でも、人事が行われました、役員人事が行われましたと、事後報告でございますし、予算につきましても、意見を付して大臣が国会に提出するにとどまっておりますし、いわゆる一般の法律に見られるような監督条項というものもございませんし、いろいろな政令によって制約は受けております、制約は受けておりますけれども、許される範囲内において、私は、先生御指摘の、生きた第一線におけるところのNHKの御意見というものをぜひ私どもとしても拝聴したい、そして差し支えなき範囲内で私どもの方へお出しいただき、できるならば当委員会においても参考書類として出していただいて、先生方からまた真剣にNHK再建のための方策を探っていただくとするならば、こんなありがたいことはないこのような見解を持っております。
  173. 坂本朝一

    坂本参考人 いま先生からNHKがもっと真剣になってというお言葉があって、正直言って私もはなはだショックを受けたわけでございますが、私といたしましては、そういう点を一番真剣に対応すべきであろうという認識に立っておるわけでございます。  先生御指摘の長期ビジョン審議会につきましても、当初、いわゆる二十一世紀まで見通しての長期ビジョンというものを考えるべきではないのだろうかということが、御委嘱する前にわれわれのところでかなり議論されたところでございますけれども、御承知のように、放送の世界の技術革新の激しさと申しますか、技術革新のスピード、そういうことを考えまして、そしてなおかつ経営の安定というようなことを思うと、やはり十年というタームでまずトライすべきだろうということだったものですから、長期ビジョン審議会先生方に一応一九八〇年代を見通してのということでお願いしたわけで、そういう点においてはわれわれもかなり真剣に苦労をしてこの報告書をまとめていただいたというふうに理解しております。  私は、何といっても、この報告書の一番のテーマが、NHKが自主、自立性を堅持して、不偏不党、公正な放送番組国民に編成するという使命のために、いろいろな困難はあろうけれども受信料制度を守るべきであるという一つの御結論が出たということが、私にとっては大変大きな意味というふうに受けとめておるわけでございまして、したがって、いま先生がいろいろ御指摘になった、今後のその点の展開をどうするのかという具体的な問題になって、いまわれわれが真剣に取り組んでいるということを御理解いただきたいと思う次第でございます。
  174. 西村章三

    ○西村委員 政務次官から前向きの御答弁をちょうだいしたわけでございましたが、お言葉を返すようですけれども、今後十年間この長期ビジョン審議会の調査報告書に基づいてやっていくということは、裏を返しますと、言うならば赤字がふえてきて大体三カ年で赤字になるような経営計画になっておる。赤字がふえて、そうするともう受信料改定、このパターンを三回繰り返せばおよそ十年だ、こういうことにも通ずるわけでございまして、現状肯定といいますか、こういうことにもなりかねないわけでございます。  そこで、これは経営委員長にもぜひ尋ねたいと私は思うのですけれども経営委員会というのは最高意思決定機関でございますから、なぜもっとNHKさん自身がこの問題についてより突っ込んだ議論をなすって、今後どうすべきかというものを、一つの方向性を、対外的に発表するとかしないとかは別にいたしまして――往々にして審議会というのは隠れみのになりやすいわけでございます。今度の内容を見てまいりましても、全くそのとおりでございまして、従来の論議の延長線上、しかもそれはほとんどがこういうこともある、こういうこともやり得るというだけの提案にしかすぎない、抜本的な解決策というものは何ら明示がされなかったということでございまして、NHKさん自身がもっとこれを検討される御意思がおありかどうか、経営委員長会長に再度お尋ねしたいと思います。
  175. 吉武信

    吉武参考人 抜本的な改革案と申しましても、これはなかなかむずかしいものではあると思っております。私は、さっきも申しましたように、ビジョシ審議会の答申は現実的にはなかなかよくできておる、そういう判断をして読んだわけでございまして、西村先生がおっしゃるように、三年置きに、あるいはちょっと延びても四年置きに受信料を値上げしなければならない状況は何か打破しなければいかぬじゃないかという意味の御激励となりますと、これは確かに、私どもとしても聞くべき御意見であるし、考えなければならない問題があると思いますけれども、これを一つ一つそれでは何をやるかということになりますと、非常に困難な問題がありますし、それとなく、多重放送なり何なり、ニューメディアなり出てくるたびに、何かひとつ財源の問題その他の問題も考えなければならぬのではないかという話はお互いにしておりますけれども、いま御指摘のように、まだ画期的なあるいはここで抜本的に云々するというような案は実は思いつかない状況でございます。  なお、いろいろ先生方、広い視野、見識を持っていらっしゃいますから、いろいろ教えていただけば、経営委員会でも具体的にそこまでまいりませんけれどもいろいろ議論はしておりますが、私どもなお検討してみたいとは思っております。
  176. 坂本朝一

    坂本参考人 赤字になれば値上げだというパターンが、いまのような形でいけば十年の間に二回か三回あるじゃないかという、はなはだ鋭い御指摘をいただいたわけでございますけれども、私は、値上げをいたしませんなんということをこの席で申し上げるのはそれこそ不遜であろう、しかし、赤字になったら値上げをいたしますからよろしくという言い方も、はなはだ経営努力といいますか経営見識がないじゃないかという、いわば両方の間に立って苦慮しているというのが偽らざる心境でございますけれども、少なくとも、値上げをしないで済ませる努力をどうしたらいいかということを考えるのがわれわれの責任であろうという認識のもとに、いろいろと検討しているというその誠意をひとつ御賢察願いたいと思う次第でございます。
  177. 西村章三

    ○西村委員 確かに、国民公共放送として受信料制度に支えられること、これ一番結構なことだと思うのです。ただ、NHKさん自身がおやりになった世論調査の中にも出ておりますように、現在の受信料は高いのか安いのか、こういう問いに対しまして、こういう結果が出てますね。かなり高いと思うというのが全体の一六%、少し高いと思うというのが二六%、ちょうどよいと思うというのが四二%で、これだけで八四%になる。いわばいま、このところが値上げの限界みたいな感じのものが国民サイドから出されておる。ところが、後々の収支計画あるいは経営計画というものを考えてまいりますと、どうしても赤字に至らざるを得ないわけです。したがって、NHK自身としてこの繰り返しをとめるためには、この繰り返しに歯どめをかけるためにはどうするんだ、しかも受信料制度を支えていくという観点からもっと検討される必要があるということを私は申し上げておるので、検討していただけるのかどうか。NHKでごりっぱな方ばかりそろっておられるのですから、ひとつ、いまの長期ビジョンの検討会議ですか、これももちろん結構でございますが、それ以外に将来のあり方について検討していただけるかどうか、このことをお尋ねしておるわけです。
  178. 坂本朝一

    坂本参考人 いま先生の御指摘になった、世論調査の受信料の高いか安いかということも、私も拝見いたしまして、そういう一般的な認識というものはやはりわれわれも深く受けとめなければならないというふうに考えております。ただ、一方NHKに対する大きな期待も、これもまた別の世論調査で示されておりますので、そういう中で、受信料とのかかわりでどういう経営をしていくかということが、われわれに与えられたテーマだということで、これは本当に真剣に検討しておりますということを御信用いただけないとすれば、私の不徳のいたすところと思わざるを得ないわけでございます。
  179. 西村章三

    ○西村委員 これは政府にもお尋ねをしたいわけでございますが、ただいまの検討機関をつくるということについて、監督官庁としてどのようにお考えでございますか。
  180. 水平豊彦

    ○水平政府委員 NHKみずからの判断によってこれはNHK自体がその限りにおいては判断すべきものだと思います。それを受けてわれわれが判断をしたいと思っておりますが、これは大いに賛成でございます。  先生ただいま御指摘のように、受信料が大半を占めておるのでございますけれども、ほとんど頭打ちになってしまいまして、年々一%くらいの上昇しか見込まれておりません。御案内のとおり、三カ年計画を眺めましてもそういう状況でございますし、片一方では物価上昇に伴って支出がどんどんふえる、こういう絶対的な欠陥に立たされておりますので、本年度はどうやら前年度の繰り越しで保っておるようでございますけれども、五十八年度以降というのは繰越金があってもなおかつ赤字だという予測をされておりますので、非常に心を痛めておる次第でございます。やはり入るをはかって出るを制すという基本的な姿勢に基づいて、NHK御自体の抜本的な解決案というものも望んでおるわけでありまして、そういう意味からのそういう委員会とか調査会というものを設置をされるということを大いに期待を申し上げたい、こういうことでございます。
  181. 西村章三

    ○西村委員 これは大臣がお約束の時間を過ぎましたけれどもまだお見えでございませんで、政務次官にお尋ねを申し上げるしかしようがないわけでございますけれども、ただいま御答弁のありましたように、五十七年度予算につきましては、事業収支がほぼ均衡して、三十五億円を次年度に繰り越すことができた、これは非常に結構だと思うのであります。ただ、この予算に付されました意見書によりますと、「五十八年度以降の協会の財政は極めて厳しい事態に立ち至ることが予想される。」ということでありますが、この意味は、五十八年度はもう赤字転落必至だ、もはや五十八年度は赤字は避けがたい、こういう宣言だと受けとめてよろしゅうございますか。
  182. 水平豊彦

    ○水平政府委員 そのとおりでございます。
  183. 西村章三

    ○西村委員 引き続いてその意見書は、協会に対して、経営努力によって、「極力受信者の負担増を来さないよう努めるべき」だ、こういうことも述べておられるわけであります。これは何年度まで値上げをするなということなんですか。
  184. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ただいまもお話の出ましたように、NHK事業収入の大宗を占めますところの受信料収入の伸びは一%台である。それしか期待できない。一方、事業支出の方は、物価上昇によるほか、増加が避けられない状況にある。五%ないし六%、そういうようなことでございまして、五十七年度事業収支もすでに収支差金がゼロ、こういうような数字になっておりまして、五十八年度に三十五億円の繰越金を予定してもなお赤字が当然予想されるということで、五十七年度NHK事業運営に当たりましては、いま申しましたことを十分念頭に置いて、いまも政務次官も申されましたけれども、入るをはかって出るを制すと申しますか、そういうことに徹して、何とか赤字即値上げという形は踏んでもらいたくない、努力を傾けてほしいという意味での極力受信者の負担増を来さないよう努めてもらいたいということを指摘したところでございます。
  185. 西村章三

    ○西村委員 これは私の質問に明確に答えていないわけですが、五十八年度までは値上げをするな、こういう意味ですか、いま答弁なさったことは。
  186. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 どこでそういう超能力的な解決があるのかと言われますと困りますけれども、ともかくいまの事態におきましてはそのままでいくと赤字必至である。これを何とか努力する方策はないものかというNHKに対する投げかけでもありますと同時に、私どももまた御相談にあずかる面があればその辺を考えてみたい、そういうことでございます。
  187. 西村章三

    ○西村委員 これは本当に困ったことでございまして、それは職員のベースアップもございましょう、あるいは経費の物価の上昇分、これも避けることができないわけです。しかし、そうは言いますものの、NHK御自身も、効率化につきましてはそれを推進するということをずいぶん努力をなすっておられる。われわれも努力につきましてはそれなりに評価をいたしているわけですけれども、問題は、この赤字転落、最終的には受信料の値上げをせざるを得ないというところにたどりついてしまうわけですね。これは避けがたいことなんですよ。さすれば、それで受信料の改定がどこまで視聴者理解を得ることができるのかと言ったら、それにも限界がある。これは当然であります。そうなれば、そう何回も料金改定をするわけにいかない。そうすると、受信料が入ってくる範囲の中でどう賄っていくんだということが一番肝心なわけですよ。それを監督官庁として一体どう眺めておられるのか。あるいはNHK自身にも私は考えてくださいと言うのはその点なわけですね。最終的に赤字になれば料金改定をすればいいのだ、これはきわめて安易でございます。しかし、それは限界があって許されない。しからば、受信料の範囲の中で効率化するにもやはり限界があるでしょう。物価の上昇分だとか、ベースアップだとか、これは避けられない。そうすると、勢いこれから年々やはりふえていくわけです。この悪循環を、受信料制度を支えていく中でどう断ち切るのか。したがって、発想の転換といいますか、やはり入ってくる収入に見合った支出の内容というものをしなければしようがないのじゃないか、こういうことを申し上げでおるわけですね。  私は、そういう意味で、この際思い切って一遍減量経営という形のものをお考えになったらどうかと思いますが、経営委員長会長、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  188. 吉武信

    吉武参考人 結局のところ、いまおっしゃるように、画期的な減量経営か、あるいはめぐりめぐって受信料の値上げをしなければならないかということの選択だと思います。さっきからお伺いしておりますように、国会の先生方の御意見の中にも、やはりある程度の少数精鋭主義――これは会長の言葉でしたけれども、こういう物価はある程度上がっていきます中で全くベースアップを考えないということもなかなかできない問題で、士気にも影響しますし、どうしても組合との交渉というようなものも出てまいりますし、それかと言うて人数を減らすということも、現在効率化というかっこうでやっておられますし、私どもは、効率化しながら片一方で幾らかでもふやすというのはどうもおもしろくないではないか、定年退職者というものをもう少しうまくその時期において処理していったらどうかというようなことを申したりしておりますけれども、現実の問題として、各企業経営というものが人を減らすということは、もう先生方も御承知のようになかなか困難なことだと思うのです。私は非常に効率化もやってほしい、経営も努力してほしい、体質も改善してほしいといろいろなことを経営委員会としては申しておりますけれども、やはりある段階に来ましたならば、副次収入と申しましても、これは現在は本当にわずかしかできません。ビジョン委員会あたりで考えていただいたけれども、結局それでは副次収入で幾ら金が出るかという具体的な検討になりますとなかなか困難であり、結局すっきりした形は――安易に受信料の値上げはいかぬ、いかぬとは申しておりますけれども、何年かたったときにはやはりすっきりした形で受信料というもので国民の皆さんに考えていただいて、国民皆さん方公共放送としてのNHKを守っていただく以外にはないのではないか。私は暫定的にしかいませんけれども、実はそういう気持ちも持っておるのであります。  それは、おまえすぐ受信料の値上げというものを考えているかとおっしゃると、それはめぐりめぐっての話でありまして、それまでには、経営委員会というものはむしろ無責任なように協会の方にお願いしておるわけでございますけれども、画期的な減量政策ということになりますと、それは努力をしなければなりません。なりませんけれども協会に対して本当に努力していただきたいと思いますけれども、やはり具体的なその執行に当たっておる協会としましても、非常に困難な具体的な行動には場合がありましょうし、またNHKの職員諸君の士気ということもございますし、やはり努力はしてもおのずからそこに了解していただかなければならない限界もあるのではないか、私は実はそういうふうに考えております。
  189. 坂本朝一

    坂本参考人 私もしばしば申し上げているように、赤字になったから値上げだというパターンは国民がなかなか理解していただけないということを十分了解し、承知しておるとともに、反面、現在NHKがサービスしております中身というのは長期ビジョン審議会の御答申の中にも評価されている。このサービスは今後といえども維持していくべきであろうという御答申もいただいておりますので、先生のおっしゃるような形ですぐ減量経営だという結論を出さないで、副次収入増加等についてもいま経営委員長お触れになりましたけれども、いろいろそういう工夫をこらしながら、何としても国民期待に沿う放送企業体としての行き方を全うしたいというふうに考えておるわけでございます。
  190. 西村章三

    ○西村委員 残念ながら時間が参りましたけれども、大臣、いま申し上げておりますのは、このまま行きますと受信料にも限界があるということでございまして、受信料に限界があるとするならば、それは料金改定にも非常に大きな隘路になってくる。NHKの将来像というものを考えますと、本当に寒心にたえないわけでございます。  そこで、いろいろといま御要望を申し上げたわけでございますが、最後の決め手は受信料の範囲の中で賄えるこの経営体制というものを考える以外に私は方法はないと思うのですよ。それは番組の強化もやらなければいかぬ、あるいは視聴者意向も十分吸収していかなければいかぬ、あるいは営業努力もせい、さらには国際放送から難視聴の解消に至るまで余りにも盛りだくさんだ。何もかも強化充実することは不可能なんだ。それならば、どこに重点を置いて何を削るか、どこで減量経営を図っていくか、これ以外にはないわけです。いろいろ各論で私は持っておりましたものを質問しようと思いましたけれども、時間がございません。次回の放送法の改正のときに譲りたいと思いますが、要するに、受信料の範囲の中でやっていかなければやがて限界が来る、とのことを強く申して、皆さんの猛省も促したいし、今後の検討もしていただきたいということをお願いしておるわけでございます。  最後に大臣から一言。
  191. 箕輪登

    箕輪国務大臣 NHK経営の問題について大変御心配をいただいて、感謝にたえません。私も同様、今後のNHKの財政、経営、大変心配をいたしております。ただ赤字が出る即値上げということであってはならないと思いますし、赤字の要因になるものをどうやって減らしていくかということも考えていかなければなりません。これは受信料経営を賄うより方法はないわけでありますから、その意味では先生意見は同じでございます。そういう中にあって、一層合理化やその他の方法で、赤字が出てから受信料をすぐ上げるというようなことでない方法でなるべくやっていくのが正しい運営だと私は考えておりますので、一層そういうような経営を望んでおるということを申し上げて答弁にかえさしていただきます。
  192. 西村章三

    ○西村委員 大臣、恐縮でございますが、先ほどもちょっとお尋ねをしたのですが、最後に、今度五十七年度予算書の意見として、引き続いて協会に対して経営努力によって「極力受信者の負担増を来さないよう努めるべきである。」こう述べておられるわけでございますが、五十八年度赤字転落必至という中で何年度まで値上げをさせないかということ、この意味をもう一度最後に答えていただきたいと思います。
  193. 箕輪登

    箕輪国務大臣 五十八年度からは財政が大変厳しくなることは私も承知いたしております。そこで、そういう現実を踏まえてNHK経営者がどのような経営努力をするか、一にかかってそこにあるわけでありますから、経営努力の内容をひとつじっくり聞かしていただいて、その上でなければ、いつまで値上げをしないかという問題についてはいま即座にお答えすることが非常にむずかしいと考えておるところでございます。
  194. 西村章三

    ○西村委員 ちょっと時間が伸びて恐縮でございますが、これは経営努力を最大限にされた上でなおかつ五十八年度は非常に厳しくなるということなんです。大臣がここでさらに、「負担増を来さないよう努めるべきである。」ということは、五十八年度は料金の改定は極力避けたい、こういうことでございますか。
  195. 箕輪登

    箕輪国務大臣 私の気持ちはそのとおりであります。
  196. 西村章三

    ○西村委員 大変御迷惑をかけましたけれども、これで私の質問を終わります。
  197. 水野清

    水野委員長 これにて西村章三君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内勝彦君。
  198. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 最初に、NHKがかねてより努力しておる難視聴解消の問題に関して若干質問をさしていただきます。  いまの話の収納率等を上げていく問題、受信料に頼って経営をしていっておるNHKといたしまして、いまだに見えない辺地難視、あるいはビル陰等の難視、いろいろあるわけでございますので、こういったものを解消して収納率を上げていく以外にないのではないか、こう思う次第でございますので、現在、この難視聴解消がどの程度まで達成できたのか、概略御説明ください。
  199. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  NHKは、テレビの全国普及を図るために、昭和五十六年度末までに中継放送局を含めまして置局によりまして六千六百三十局、さらに共同受信設備一万四百十七施設の設置をとり進めまして、あと残るところ四十四万世帯というのがわれわれの把握しておる難視の残存世帯の見込みでございます。
  200. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今後放送衛星が打ち上げられていきます。そういう中で五十八年度、それは五十九年の二月ですか、放送衛星の打ち上げによってとりあえずはNHKの難視解消、こういう面で放送衛星によって解消していくと解釈されるわけですけれども、まず、放送衛星打ち上げまでにはどの程度まで難視解消というものを考えておるのか、そのプログラムを最初に説明してください。
  201. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  五十七年度におきましては、ただいま先生御指摘のとおり、きょう現在でもテレビの見えない場所がまだ残っておるわけでございます。その五十七年度の解消計画といたしましては、難視解消の要望が強く、しかも経費効率的に世帯のまとまっておる場所を三百地区選びまして、中継放送局としては九十地区、さらに共同受信設備としては二百十地区を解消対象地区といたしまして設置を行いまして、ただいま御審議中の予算の中に建設費十六億を計上いたしまして約二万七千世帯の解消を計画いたしておるわけであります。  さらに、五十八年度におきましては、難視解消地区二百七十地区ほどを選びまして、それで二万世帯の解消を図ることにしますと、残るのは一世帯単価が十五万から三十万円ぐらいの非常に高い解消経費になってまいりますので、この段階に難視解消の手段として放送衛星を取り入れたいという考え方でございます。
  202. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、放送衛星打ち上げ後、これは放送衛星からのものをパラボラアンテナで受けていかなければならない、それの問題を後でちょっとこのアンテナのことも聞いておきたいわけでございますけれども、とりあえず、放送衛星打ち上げ後どういう過程で一〇〇%難視解消になるのですか、それを説明してください。
  203. 高橋良

    ○高橋参考人 ただいま申し上げましたように、残る四十二万世帯というのは、全国に散在している地域でございますので、これにつきましては、先生の御指摘もございました残りの四十二万世帯を地上施策でもって難視解消を運ぼうという図上作戦をやってまいりますと、対象地区数としまして約二万二千施設、さらに建設経費としましては約千三百億から千五百億を要する。さらに、この施設を、現在の六千六百と一万強の共同受信施設とあわせまして維持管理する要員並びに経費を含めますと、財政的には恒常的に非常に大きな負担になると判断したわけでございます。したがいまして、放送衛星によりますと、地上施策よりも効率的に一挙に全国の難視解消が行われるということを判断し、たとえば東京都でございますところの小笠原もまだ見えないわけでございますので、そういう離島、僻地を含めまして、この衛星を使った難視解消を考えたわけでございます。したがいまして、四十二万世帯の各地区におきますところの難視の世帯、そこに衛星の受信機を普及して見ていただきたい、そのように考えているわけでございます。
  204. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 難視解消というのは非常にむずかしいものがございます。私も個々に細かい点幾つも取り上げて、また現地にも行ってみて状況を把握しておるような次第ですけれども、何しろお金もかかる。厳しい中で、しかし国民全般にあまねく放送をしていくという意味では、どうしてもこれに取り組んでいってもらわなければならない。  そこで、全般的にと言っても問題でございますから、またいつものごとく、私、京都におりますので、京都、滋賀でいいです、難視解消の実態、今年度どうなったのか、それから五十七年度計画、わかりましたら説明してください。
  205. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  京都府につきましては、残存難視世帯数が五十六年度末の見込みといたしまして一万四百世帯でございます。五十五年度末の残存難視世帯が一万一千でございましたが、五十六年度内の解消が九百世帯でございます。さらに、五十六年度内に亀岡市周辺においての宅造による難視の増加が三百でございます。したがいまして、合わせて約一万四百世帯が五十六年度末のわれわれの残存難視世帯数というふうに把握したわけでございます。五十七年度の解消の計画といたしましては、舞鶴朝来中、さらに伏見桃山、亀町西山、亀岡、この四地区でもって千八百世帯を解消する計画を持っております。さらに、共同受信施設は福知山市の森垣外十一地区、これによりまして六百世帯の解消を図ろうという計画を持ったわけでございます。  さらに、滋賀県につきましては、現在残存難視世帯が三千八百世帯でございます。五十五年度末の残存難視世帯数が四千世帯でございまして、五十六年度内に解消しました世帯が三百世帯でございます。さらに、年度内に大津の市の周辺でもって宅造による難視の増加をしましたのが百世帯でございますので、合わせまして残存難視世帯数が三千八百世帯と把握しております。五十七年度の滋賀県における難視の解消は、非常にまとまりの少ない地域がたくさん残ってまいりましたので、比較的まとまったところといたしましては、滋賀県西部におきまして百世帯程度にまとまる共同受信施設ができそうであるという判断に立ちましたので、現地局の方で現在その候補地区を調査中だというのが五十七年度計画でございます。
  206. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、放送衛星からの電波をキャッチするパラボラアンテナに関してお伺いしておきます。  これは郵政省としてで結構でございますけれども一般の人たちがこれを受けていくのに価格が非常に負担になるのでは大変でございますし、これはどういう程度まで考えておるのか、まず価格の面。それから、一般の人がより安くよりよいものを供給受容できる、こういう立場で行政指導というものをどう考えておるのか、御説明いただきたいと思います。
  207. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 放送衛星から電波が出ますと、日本本土では一メートル以下のパラボラアンテナで受信できるかと思っておりますが、小笠原島周辺になりますと、多少大きなアンテナを必要とするわけでございますが、まず、放送衛星により難視聴解消を図る場合に、その受信の仕方でございますか、いま申しましたように、一般の家庭で直接に受信する個別受信用としまして、一応本土内直径一メートル以下でよろしいかと思いますが、その小型で簡易なパラボラアンテナとアダプターをつけるというやり方と、五、六世帯一緒になりまして共同で受信するわけですが、いささか大きいパラボラアンテナ、たとえば一・六メートル、そういうアンテナと立体回路をつけましたアダプター、こういうものが付加設備として必要であろうかと思っておりますけれども、その受信用の付加設備の価格でございますが、一応年産十万台程度の普及段階として考えました場合に、最初申しました一メートルのパラボラアンテナですと六ないし八万円程度必要かと思っております。それから、いささか大きい一・六メートル程度のパラボラアンテナの場合には、これも年産十万台程度の普及段階と申しますか、初期の普及段階であろうかと思いますけれども、それで世帯当たり四ないし七万円程度の付加的な費用が必要かと考えておりますが、いずれにいたしましても、衛星から受信するとなりました場合に、受信用の受像機の普及策、これが非常に大事になってまいるわけでございまして、受信者の経費負担の軽減を図るということから、いろいろな関連技術ございますけれども、そこらも十分指導いたしまして低減化を図ってまいりたい。また、どの程度の量産ができるかということが直接価格に響いてまいるわけですけれども、たまたま国際的にも放送衛星の機運にといいますか、日本に引き続いて幾つかの国で計画を予定しておるということも聞いておりますので、その辺の、国内市場のほか国際市場もあわせました量産効果をねらうというようなことで、業界とも相談しながら低減化を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  208. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 大臣、この問題についていま聞いていただいていればわかるとおりですが、今後、量産の面や価格の努力ではどうなっていくかわかりませんけれども、六から八万円だとか、あるいは共同でやったとしても四万円から七万円とか、非常に価格の面で厳しいものですね。そこへきて難視解消のために相当お金をつぎ込んで、いま盛んに努力しておる。そうすると、いままで見えておるところは別にパラボラアンテナをつけなくてもいいんですよ。何も衛星を打ち上げてもらわなくてもいいんですよ。ところが、難視解消という意味で莫大な金を使って放送衛星を打ち上げていく。そうすると、価格の面、いろいろな面で国民に対して不公平な面が生じてきたのでは問題です。  そこで、今後この難視解消を含めて、そして放送衛星という問題、パラボラアンテナもつけていかなければならないという問題を含めて、行政面でのどういう努力をこういう不公平をなくしていくためにやっていくのか、まず大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  209. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先ほどNHKの方からもお話がございましたけれども、かねてから難視対策に努力をつぎ込んでまいったわけでございますが、なお、放送衛星が打ち上がる五十八年度、五十九年二月の時点で、四十数万世帯の難視、辺地難視でございますけれども、これが残るというわけでございます。これを従来方式で解消していく場合に、先ほどNHK技師長は千何百億というような数字も出されたように思いますけれども、それとあわせまして、最近は都市難視というような形で、これは年々ふえておるわけでございますが、五十数万というような世帯も出ておるわけでございます。こうしたものについての対策も含めまして、従来の地上方式で難視解消をするよりも、経済的にも、新しく生まれてまいりました技術の進歩、最先端の衛星放送というものを使うべきであり、そうしないと、経費のことばかりでなく、何年たったら解消できるかというめどがつかないというような面もあるわけでございまして、衛星から打ち出しました場合にも、受像機と申しますか、付加の設備としてやはりそれなりに相当の経費はかかるわけでございますけれども、従来方式ではいつまでたちましても送り届けるめどがつかないというような面があるわけでございます。また、普及につきましては、物品税の免除等の軽減措置等もあわせまして業界の指導を図っていくとともに、何分にも衛星手段によらない以上はどうしても受信の手段がないというどん詰まりの面が相当ございますので、そこらあたりについては、切って捨てるというわけにもまいりませんので、効率が悪いといいますか、ある程度二重投資的な面はやむを得ないというふうに考えている次第でございます。
  210. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 大臣、ちょっと勉強しておいてもらわないといかぬですけれども、どうですか、不公平感、このままいったら相当不公平ですよ。パラボラアンテナをつけるといったら六万から七万、あるいは共同でやったとしても四万から五万、こういうものをどうなくそうと努力するのか。このままほっておきますか。どうやっていきますか。
  211. 箕輪登

    箕輪国務大臣 NHK放送を全国あまねくということを効率的に行おうとすれば、放送衛星を上げる。放送衛星を上げれば、全国あまねく小笠原の離島その他の僻地に至るまで放送の波は行き渡るわけであります。まずそれを考えるべきだということで、全国あまねく皆さんがNHK放送を見れるという施策を考えたわけであろうと私は思うわけであります。その意味では、全国公平にあまねくNHK放送を見ることができるということにはなるのでありますけれども、ただし、従来からそういうパラボラアンテナを使わなくとも見れるところは見れるわけでございます。そこに、NHK放送を見るために各家庭で持ち出す金に不公平ができる。共同使用で見ようとしても四万とか五万とか、あるいは単独で見ようとすれば七万から八万かかる、こういうことでありますが、これは私にはどうしようにもいま知恵がないのであります。ただし、できるだけ量産していただいて低廉な価格にするとか、あるいは月賦であるいは年賦で場所によってはお支払いするとか、そういう知恵を出す以外には、ちょっといま解決の道がないのではないだろうかと思うわけでございます。
  212. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 次の問題に移ります。  NHKにお伺いしますが、去る五十六年十二月二十九日、NHKのカメラマンが、山形市蔵王温泉の取材中にヘリコプターが墜落し、死亡した事件がございました。この件に関して、原因、状況、対策を御説明ください。
  213. 田中眞三郎

    田中参考人 いまお話がありましたように、昨年の十二月二十九日の午後二時四十分ごろでございましたけれども、私どもがチャーターいたしました取材用のヘリコプターが蔵王スキー場で取材中に墜落いたしまして、まことに残念でありましたけれども、仙台放送局の岡本カメラマンが殉職いたしました。NHKの航空取材では初めての出来事でございました。  当日、ちょうど暮れの二十九日でございますので、帰省客の取材を、東北自動車道あるいはいま申し上げました蔵王スキー場といったようなところでの模様を夜のニュース用に撮影をしようということで出かけたものでございまして、当日現地での気象状況は、視界が大体二キロぐらい、それから風が西風で四メートルぐらいという、かなり良好な状況でございました。そして、ちょうどスキー場のゴンドラを撮影するために低空になったときに墜落したということでございます。  事故原因につきましては、現在、運輸省の航空事故調査委員会、それと山形県警が調査に当たっておりまして、詳細な原因判明までには一年ぐらいかかるのじゃないだろうかという見込みでございます。  なお、NHKでは、かねてから新聞協会昭和四十年ごろにまとめました航空取材の際の基本方針をもとにいたしまして、部内用に航空取材についてのいろいろな細々とした注意事項とか基礎知識といったものをパンフレットにしまして、これを各人に一人一人配りまして、安全の徹底を図ってはおりましたけれども、こういう事故が超こったわけでございます。早速にも東京の報道局と仙台放送局とにそれぞれ事故後直ちに事故対策委員会を設けまして、今後の安全対策の徹底ということについていろいろ話し合いをしております。また、航空会社等にも入ってもらいまして、ヘリコプターの機材の一層の改良をするというようなこともいまいろいろ話をし、検討をしている最中でございます。また、仙台放送局では、地元でありましたので、ことし一年を職場安全の年ということで、職員全部が年間を通してとにかく安全対策を徹底しようということで、いまいろいろ活動を行っているところでございます。二度とこういうことがないように、私を初めとして、十分に徹底指示をしたいというふうに思っております。
  214. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 もう一点、次の問題をお伺いします。  昨年私が本委員会におきまして質問をいたしました多摩中継局の設置、多摩丘陵一円に地形難視がございます、この多摩地区及びその周辺の難視を解消するために、この地形難視のための中継局を設置することを検討中だ、こう田中電波監理局長はお答えになっております。多摩地区、現在九千六百世帯ですか、この地形難視がございますが、ニュータウン完成時というのは六十五年だそうでございますけれども、そのときには二万二千八百世帯程度のものになっていく、そういう意味で検討をしておる状況ですということでございました。そして、それに絡んで、いわゆる一般に言われている第二東京タワーというものができたならば、それは副次的に都市難視の一部分が波及的効果として解消していくのではないか、こういうように御説明いただいておりますけれども、この件に関してその後どうなったのか、御説明いただきたいと思います。
  215. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 多摩ニュータウンにおきます難視聴解消につきましての構想、ただいま先生がおっしゃいましたとおりでございます。  その後の進捗状況でございますが、これは先ほどもお話にございましたように、単なる辺地難視のほかに、貴重な電波を使おうということでもあり、また、東京都心におきます都市難視にUHFの電波を使いたいというようねかねてからの要望もございます。そういうようなところで、本来的には辺地難視に対する中継局でございますが、繰り返しますけれども、いま申しましたような都市難視にも役立てたいということで、それなりに関係者が多くなっておるわけでございます。単なる辺地難視でございますれば、放送事業者の限りにおきまして私どもと話をすればそれなりの計画で進むわけでございますけれども、多摩ニュータウンの場合に、多摩の開発公社あるいは建設事業者、あるいは都心における難視、都市難視解消にも役立つ面から建設事業者の方の御協力も得たいということで、関係者の合意につきまして精力的に進めておるわけでございますけれども、最終の段階に来まして、まだいささか調整を要する点があるというふうに聞いておる次第でございます。いましばらく時間をおかしいただきたいということでございます。
  216. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、これは建設費に関してちょっとお伺いしておきますが、いま建設省やあるいは建設業界あるいはNHK、民放各社など協力をしなければならない、こういうことでございますけれども建設費に関して、大体の線はどのようにお考えですか。また、NHKとしてはどの程度の負担になるのか、またNHKとしてはどんなふうに考えておるのか、その面も、最初に郵政省から、その後NHKから御答弁ください。
  217. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 まず、経費負担の考え方でございますが、いわゆる辺地難視の部分を解消するために、本来の中継局ならばどの程度の規模を要するか。簡単に言いますと、多摩の場合、たとえば百ワット、百メートル程度のアンテナでよろしいでしょう。それに加えまして都市難視の解消にも同時に使いたい、その目的のためには、たとえば百ワットで済むものが一キロ程度のものに大きくする必要がある、あるいはタワーも高くする必要がある。その上増し分につきましては、建設事業者なりあるいは建設省なり国の施策あるいは開発部分の多摩ニュータウンなりが負担すべきものだ、こういうふうに考えておる次第でございます。  ただ、考え方としてはそうでございますけれども、では経費は幾らなんだということになりますと、言い分、立場によりまして少しずつ考え方といいますか分担する額についての調整が必要だ、こういうことでございます。
  218. 高橋良

    ○高橋参考人 ただいまの先生のお話に関連いたしまして、NHKの考え方はどうかということにつきましては、先生のお話のとおりにわれわれも把握はしているわけでございます。  それは、多摩丘陵一円の地形難視世帯、この地形難視の解消という考え方につきましては、昭和六十五年ごろを想定いたしますと、約三万世帯の辺地難視世帯が予測できる。これに関連いたしまして、前々から郵政省それから民放連さんとも相談いたしまして、NHKでは多摩地区の開発に伴う辺地難視解消の置局の調査中でございます。  これにつきましては、大体タワーの高さとパワーの大きさによって変わってまいるわけでございますけれども、この三万世帯程度でございましたら、約一億弱くらいというのが辺地難視としての持ち分というふうに考えているわけでございます。これは厳密な調査をしませんと、この価額は決定はしてまいりませんが、現在のところはそれくらいに考えているわけでございます。  考え方の基本といたしましては、資金としては、当然でございますけれども辺地難視解消のための置局建設費NHKとしては負担すべきであるが、都市の受信障害につきましては、電波監理局長の指導要領にもございますように、従来どおり原因者負担によって対処するのが当然ではなかろうかというふうに、考え方としては持っているわけでございます。
  219. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、先ほどの放送衛星の問題と絡んできますが、これはどうでしょうか。放送衛星が打ち上がればNHKとしては難視解消をしていく。多くの費用をつぎ込んで、果たしてこれはむだにならないのかどうなのか。この多摩地区の辺地難視を解消する、この意味は非常によくわかります。そしてまた、それが副次的に東京都下の都市難視を解消する。費用という面で、いまこれだけ非常に厳しい財政の中でこれは問題になっていかないのかどうなのか。この点はどうとらえていますか。
  220. 高橋良

    ○高橋参考人 それでは、NHKの方から先に考え方を申し上げたいと思います。  確かに放送衛星計画というのは多額な経費を要するわけでございますが、これにつきましては、先ほど電監局長の話にもございましたように、現在、年間五十万世帯くらいずつふえておりますところの都市の受信障害対策、これには実験衛星「ゆり」をもってこれが改善に役立つということも実証をしたわけでございます。  さらに、昨年の五十六年度の参議院の附帯決議にもございますように、この放送衛星は難視解消以外にも国民の福祉の増進につながるような有効的活用を図れというような附帯決議もちょうだいしておりますので、その面から各種の実験もやりまして、このような成果をわれわれとしてはつかんだわけでございます。  それは、まず、先ほど申し上げました辺地とか離島における難視聴の解消にも役立つ。それから、これは国土庁の非常災害の実験にも御協力申し上げたわけでございますけれども、非常災害時における放送網の確保。それから、全国各地から現在では、地上でまだ中継もしたこともないというような、たとえば南大東島というようなところからの中継も機動的にできる。それから、全国一円の放送であるたとえばNHKの教育放送のようなものであるならば、現在電電公社から回線を借用しているわけでございますけれども、この回線の代替にもなる。それから、近隣の走っておりますところの船舶移動体のサービス、こういうものにも利用できる。それから、将来、これは外国でも現在検討しておりますところのニューメディアとしての実験、たとえば高品位テレビ放送とか文字放送とか、FMよりも音質がよろしいPCM放送とか、そういうニューメディアに対する実験をやりまして、これの成果も得たわけでございますので、これは難視解消以外に三千万世帯の方にも御利用賜れるわけでございますので、今後、NHKといたしましては、多角的に国民の皆さんのお役に立つような形で考えてまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  221. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 まず、多摩地区は、先ほども申し上げましたように、かなりの辺地難視が当初からあるわけでございますが、この辺の解消については、やはりローカル番組の面もございますし、この程度かたまっております世帯だと、従来どおりの地上方式でやる必要があろうかと考えておるわけで、開発等によりましてできましたニュータウン等々についての処置は、やはり従来どおりこういう方法が必要かと考えております。  また、数年前に決められました国の放送衛星については、当面、NHKの難視聴解消、特に大東島あるいは父島とか母島、その他全然手段のないところと、従来の地上方式ではいつまでたっても――金だけの問題ではなくて、手段的にも、空から放送衛星によらざるを得ないという面、それから同時に、毎年ふえております都市難視にも役立つ、あるいは将来的に見ますと、放送大学に使えば非常に有効だと考えられる空からの放送大学用のチャンネルというようなこと、あるいは国の施策といたしまして、放送衛星技術というものを、国としてそういう波及効果も考えまして必要とするというような観点から進めておると理解しておりますので、ある面で、確かに技術の進歩に伴いましていろいろなものが出てくるわけで、その途中の時点におきましては、二重投資その他早過ぎるあるいは遅過ぎるというような議論の余地の面はどうしても出てまいる。しかしながら、新しい技術の進歩にめぐまれない、享受しにくい辺地等の人には、できる限り早く享受させるという施策もまた必要ではないかと考えておる次第でございます。
  222. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 いま、難視解消の面に関していろいろと質問させていただきましたけれども、聞くところによりますと、そういったものにも関連し、財団法人として難視聴解消の基金をつくろうというような動きがあるやに伺っておりますけれども、どんな状況でございますか。
  223. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 先ほどちょっと触れました都市難視の考え方によるものでございます。御存じのように、近年、大都市においては高層建築物の蝟集等によりまして、原因者を特定することができないいわゆる複合大規模受信障害が発生してまいりまして、これまでのように、多少単純といいますか、原因者負担主義、建造物をつくった方に御負担いただくという原則だけではなかなか特定もしにくいし、また、余りにも及ぶ範囲が広範囲であるというような事例が多くなっておるわけでございます。  いま申されました難視聴解消基金というものは、こうした高層といいますか、受信障害を、建築業界あるいは放送事業者等の関係者の皆さんにお入りいただきまして、何とか解消する方策を見出したいということで、検討の対象になっておるものでございます。  御存じのように、建築業界の方は建築業界の方としての言い分がございますし、また放送事業者の方は、自分たちは従来必要なだけの電界は届けておった、そこへビルができたためにその陰が見えなくなってきた、あるいは反射障害でおかしくなってきたのだとはいうものの、放送事業者もそうしたマーケットを前提として営業をしておる以上、そうした都市化に伴う自然な汚染というもの、環境的な悪化についての責任はどの程度までかは何分申しにくいところでございますけれども、幾分かは責任があるだろう。つまり建築業者、放送事業者相携えまして、そこの中に国も地方公共団体も入って、また受信者個人においても応分の負担はするというような考え方に立たない限り解決はできないというふうに考えておるわけで、その中の一つのアイデアとして、たとえば難視聴解消基金、そうしたものを集める方策はないものかという次第でございます。
  224. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 時間の都合でもう一点お伺いして終わりますが、先ほども質問があったと思いますけれども郵政大臣は、中国残留孤児のことに関連して、今後前向きに――国内においてこれだけ多くの人たちと残留孤児とのあのめぐり会いの状況を、いろいろとテレビの報道等でみんな関心を持って見たと思うのですね。  そこで、大臣、これだけ大ぜいの、聞くところによると、残留孤児の数は数千人以上、相当なものでございます。先日日本へ来た人はそのうち六十人というのですからね。これは期間を見ても、あるいは今後の段取り等をいろいろ考えていっても、物理的に見ても非常に大変なものがあるのじゃないか。その意味では、ぜひNHKあるいは民放の人たちに協力をしていただいて、そして中国と連携をとって、録画撮りをするなり、あるいは国内でそれを放映していくとか、いろいろなものがあるわけでございますけれども、とりあえず、この大臣の発言、物理的に見て、どういう時期にどういうように行って、そしてどの程度まで完璧さを持ってやっていこうという考えなのか、その点をまず大臣からお伺いしておきたいと思います。
  225. 箕輪登

    箕輪国務大臣 私が閣議で中国残留孤児問題をお話をし、今回の肉親の発見率といいましょうか、肉親とめぐり会えた率が、四十二人であります、六十人のうちの四十二人、七〇%、まさにきっぱり七〇%であります。こんなにも確率よくめぐり会えたということは、何といってもやはりテレビがその効果的な役割りを果たしたからだと思うわけであります。  そこで、もしも、テレビ機材などを持って日本から中国に出かけていって、そうして放映したならどうなるだろうか、非常に効率的になるはずであります。日本人の肉親に会いたいといま中国政府に申請を出している人は、それだけで九百人だそうであります。先生おっしゃるとおり、潜在的な人はまだまだいるというお話であります。一説には六千人と言う人もおるし、八千人と言う人もおるのでありますが、名のり出てこない。それは、ちょっと余分な話になりますが、どうも聞いてみますと、育ての親が日本人の赤ちゃんを拾って育てた、あるいは人から依頼を受けて育てた、それで当時の事情から日本人であるということをその子供に教えていない、そういうようなのもたくさんあるようでありますから、もう何千人いるか私にはよくわかりませんけれども、とにかく届け出を出して会いたいと言っている人だけで九百人おる。六十人、六十人と毎年呼んでいっても、たとえば百人ずつ呼んでも九年かかるということであります。年をとった日本人の親なり肉親なりは死んでいなくなってしまいますから、何とか早く効率的に会わせる方法はないのかな、それにはやはりテレビ機材などを現地に持ち込んでやったらどうだろうかということで、閣議の発言になりたわけであります。  翌日、私は、ここにいらっしゃるNHK坂本会長初め民放五社の社長さん方にお集まりをいただきまして、決して私は番組編成に介入するつもりはございませんが、もしもこういうことであるならば御協力をいただけるでしょうかということで、初めて御協力方を要請いたしたのでありますが、NHK会長さん初め民放各社の社長さん方も、それはいいことだ、人道的にもぜひとも御協力申し上げたいという趣旨のお話があったのであります。  その後数日たちまして、閣議で厚生大臣から発言がありました。厚生大臣の発言は、要約いたしますと、厚生省に、いわゆる厚生大臣の私的諮問機関として、中国残留日本人孤児問題懇談会というものをつくることにしたい。おおむねその懇談会は十五人か十六人のメンバーにしたい。有識者、関係団体の代表、報道関係者等で十五ないし十六人の懇談会をつくりたい。もちろんそのほかに関係省庁も参加する。こういうような懇談会構想ができたのであります。そこで、厚生省を中心として中国残留孤児の問題がこれから検討され、その中で報道関係者の方々が自主的な発言もされるでしょうし、どんな方法でやったらいいかということもお話し合いがされるであろうと思うわけであります。簡単に考えますと、中国でビデオテープを撮ってきて日本で放映するという方法もあるでしょうし、あるいはもっと、この間のように、局同士でお話をさせるという方法もあるでしょう。衛星中継二元放送というような形でやる方法もあるでしょうし、そうした技術面についてはこの懇談会の中で話し合われ、また、それにかかる費用その他についても、この懇談会の中で話をされていくものと私は考えるわけであります。そして、郵政省としてまた郵政大臣として御協力のできる面においては、この懇談会の方針に従って御協力を申し上げていきたいと考えているところでございます。
  226. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 それじゃ、もう時間ですので、NHK会長、いまの話、まあ会長ともよく連携をとっておるということでございますし、これはもうみんなが本当に、今回のこの残留孤児の問題で注目をし、こういったみんなが喜んでもらえるような体制をNHKとしてどう対応していくのか、時期の問題もあるだろうし、それから費用の問題もあるだろうし、物理的な問題もあると思いますので、そういう面も含めて、御決意を述べていただきたいと思います。
  227. 坂本朝一

    坂本参考人 NHKといたしましても、当然この問題については積極的に、放送を通じて日中友好にも役立つという意味合いで努力したいというふうに考えておるわけでございますから、その方法はいろいろ出てくるかと思いますけれども、前向きに検討したいと思っておりまして、先ほども申し上げましたように、放送局長田中君を責任者にして、民放とも話し合って体制を整えたいというふうに考えております。
  228. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 終わります。
  229. 水野清

    水野委員長 これにて竹内勝彦君の質疑は終了いたしました。  藤原ひろ子君。
  230. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、NHKの五十七年度予算審議に当たりまして、まず最初に、難視解消問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  一昨年の十一月でした、私は、当委員会におきましてこの問題を取り上げましたときに、京都府の亀岡市における民間放送の難視問題に触れたことがございます。それ以降、私どもの聞いておりますところでは、NHKが亀岡市にある中継局を移転するという計画があり、同時に民間放送の電波も送るというような話が進んでいるというふうにお聞きいたしておりますが、この点につきまして御説明いただきたいと思います。
  231. 高橋良

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  亀岡地区の難視解消をやっておりますところの既設の二局、亀岡局と亀岡南局、これでもって現在までNHKといたしましては約一万三千世帯の難視世帯をカバーしてきたわけでございます。近年になりまして、亀岡地区の南地区におきまして大規模な宅地開発が行われまして、約二千世帯の難視世帯が増加いたしたわけでございます。したがいまして、この難視世帯が増加した分の二千世帯にもう一局を置くか、それとも、場所を移転いたしまして丘陵地に持っていきまして、一局でもってカバーできないか、種々検討したわけでございます。  その結果、NHKといたしましては、三局でカバーするよりも、現在の亀岡中継局を南に約一キロ弱丘陵地に移転してまいりますと、この二千増加いたしました難視世帯も全部カバーできるということがわかったわけでございます。  それで、NHKといたしましては、在阪四社と県域民放一社、計五社とも話をいたしまして、五十七年十一月をめどに同時開局をするという考え方で諸準備を進めておるというのが現状でございます。
  232. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 では次に、私は、文字多重放送に関連いたします、聴覚障害者のための字幕入りテレビ番組実施の問題について質問をいたしたいと思います。  今日の技術革新の目覚ましい中で、テレビが国民生活に大変大きな役割りを果たしているということは、毎回指摘されているとおりでございます。ところが、聴覚障害者の方々は、三十年の長きにわたりまして、このテレビの発展から無関係の状態に置かれてまいりました。私は、どんなことがあっても、一日も早く字幕入りの番組放送されるということを心から望んでいる次第でございます。  最近、文字多重放送や字幕入りの番組放送技術的に可能になったのに合わせまして、放送法が改正されれば字幕入りの放送が可能だ、言いかえますと、字幕入りの番組放送するためには法改正が必要だというふうな主張があるようにも聞いております。私は、法改正前でありましても、実用化試験放送はできるのですから、早く放送するようにしなければならない、こう思うわけです。郵政省は法改正をしないと字幕入りの番組放送はできないという御見解を持っていらっしゃるのでしょうか。
  233. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 文字多重放送のやり方につきましては、現在電波技術審議会におきましても、パターン方式につきましてはすでに答申を得ておりますし、また、非常に文字多重についての情報量も多いという形でのコード伝送方式等についても検討は進められておりますし、また実験局も、NHKあるいはNTVその他につきましても実験放送中でございます。私どもといたしましては、先生御指摘のように実験の形で入るということもよろしいわけですけれども、ここまでまいりますと、私どもとしては法改正をちゃんといたしまして、そのために時間をとるのではなくて、受け皿をつくって推進するという手法がよかろうかと考えまして、今国会にその法改正での受け皿をつくるべく準備中でございます。
  234. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 ただいま電波監理局長おっしゃいましたように、もう四年前に試験的に実施をいたしました音声多重放送と同じように始めるということは可能であるわけです。なぜ私がいまこの放送法改正の問題を出したのかと言いますと、放送法が改正されれば字幕入りテレビ放送実施されるという期待を聴覚障害者の人たちに印象づけるというやり方を郵政省がとっていらっしゃるからなんですね。私は、字幕入り番組実施するためには、法改正よりも先にもっとやらなければならないことがある、こういうふうに考えるわけです。  いま申し上げた問題に入る前にちょっと聞いておきたいのですが、郵政省は、文字多重放送実施で、いまもちょっとおっしゃいましたが、パターン方式かコード方式か、これをめぐりましていろいろ議論があるようですね。コード方式が可能なら初めからそうすべきであるというような有力な意見もあるというふうに聞いております。郵政省としては、いまはもうそんな議論はないんだ、もう放送界としてはパターン方式で一致しているんだというふうに認識をしていらっしゃるのでしょうか。
  235. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 文字多重のやり方につきましては、先ほども申しましたようにパターン伝送方式とコード伝送方式というものがございます。日本の場合、と申しますのは漢字を使う国の場合、パターン伝送方式が非常に有利な面があろうかと思いますけれども、コードにつきましてもまたそれなりの長所がございます。  そこで、現在の時点におきまして早速始めるといたしました場合、私ども、電波技術審議会というところから常に新しい技術の導入の場合には御審議いただいて、その方式に従ってやっておるわけでございますが、パターン伝送方式につきましては、先ほども申しましたように、昨年の三月すでにこれでやってよろしいという方針が出ております。ところが、コード伝送方式につきましても五十五年から御検討いただいているわけでございますけれども、その特徴からいたしまして幾つか問題点がある。伝送の誤り訂正方式等についての検討がなお必要だということで、コード伝送の採用については、まだ、専門家によって多少意見が違いますけれども、二、三年から四、五年先になる、技術検討が先になるというふうな答えも聞いておるわけでございます。  したがいまして、郵政省としましてはそこでどうするのかということでございますけれども、私どもは、いま申しましたような二つの技術検討の推移を見きわめながら、受信者に無用の負担がかからない方式、そういう採用の仕方があるだろう、余りおくれないでと、こういうことでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現時点において技術的にも固まっておりますパターン伝送方式というもので先行いたしまして、コード方式が後ほど導入されても先行したパターン伝送方式と併存するという形、つまり、パターン受信機を買った人が無用の負担増と申しますか、不利益を生じさせないような方式のとり方、そういう形で進んでまいりたい。繰り返しますけれども、なるべく早い機会に文字多重方式の道を開きまして、受信者にとってはどの方式をとりましても不利益にならないようなやり方があるというふうに私ども理解し、また、メーカーの方あるいは技術的な関係の方々にもお聞きしまして、そういう考え方でいけるというふうに聞いておる次第でございます。
  236. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 パターン方式とコード方式が併用されて受信者が不利益をこうむらない、そういう受信者への配慮というものが一番重要かと思いますが、いまの御答弁をよく聞いていると、どちらかというと郵政省はパターン方式の方に肩入れをしておられるようにも聞こえたわけですけれども、ここに私はTBSの「調査情報」三月号を持ってきたのですが、これを読みますと、文字多重放送実施についてNHK、朝日テレビ、東京テレビなど関係者の御意見が出ているわけです。こうおっしゃっております。「一度パターン方式の受信端末を買った受信者がそのことで不利益を蒙らないか、その意味でより慎重であっていいのではないか」という意見、また、「これまで両方がある程度論議されているのに、どうでもパターンで始めるというのは、ただ急いでやるだけのためとしか考えられない」。こういうふうに、関係者はとにかく法改正について疑問を持っておられるというふうに理解をいたします。ですから、たとえ放送法が改正されたとしても、文字多重放送実施する放送関係者の間で十分な検討がなされないままに法律の方が先に進んでいくというようなことはないのか。ましてや、字幕入りテレビ番組実施されるのかどうなのかという点について、私は大変疑問を持つものです。  そこで、お尋ねいたしますが、先日わが党の中島武敏議員が八日の予算委員会の分科会で、字幕入り番組実施を早くやってほしい、見通しを聞かしてくれということで質問いたしました。そのとき郵政省は、早くて一年ちょっと、二年くらいかかるのではないかというふうに答えておられますが、その具体的な根拠と、それが実施される具体的な手順ですね、根拠と手順を御説明いただきたいと思います。
  237. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 文字多重放送が始まりまして皆様のところにお届けするという形では、いろいろ準備、それぞれの関係のところでやるべきことがございます。まず、放送事業者がやろうという実施態勢、どういう形でやるか。あるいは受信機メーカーの方が製造販売をいたしまして、ある程度量産にかけたアダプターと申しますか、それなりの受信用のものが販売される必要があろうかと思います。私ども郵政省の側に任された面におきましては、法でなくても、また行政方針での確立、こういう方法でやろうという郵政省としての態度の、一つの方法が放送法の改正でございます。それで、その改正をいたしまして、もっと細かいことを申しますと、技術基準の制定、あるいは必要ならば関係省令等の改正等を行う必要がある。それが私ども郵政省の務めでございますし、それを実際に行います放送事業者の努力も必要でございましょうし、また、それを受けるためには受信機メーカーの販売体制というものも整う必要がある。そうしたものをそれぞれ考えまして、少し時間を区切り過ぎましたけれども、早くて一年ないし二年ぐらいには何とか実現いたしたいという、私の希望も含めての時間でございます。
  238. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いままで私、郵政省の法改正の説明を聞いてきましたのでは、あすにでも字幕入りの番組放送ができるような印象を受けておりました。しかし、いまのお話では、一体いつから始まるのかよくわからぬな、希望も含めてという御答弁ではよくわからぬなというふうに思うわけなんですね。聴覚障害者の皆さんは、本当に一日も早い放送を心から期待していらっしゃるわけですが、郵政省は、実用試験局としてすぐ始めるという局がもし出てくれば、それは許可をされるのでしょうか。
  239. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ただいまのお尋ねは、実用局としての文字多重放送についての方針はどうかということかと思いますけれども、私どもは、そういう形で放送事業者なりメーカーの方からも早期に実現するようにという御要望も聞いているわけでございますので、それなりに、その方々にはその方々でできる範囲の最大限の努力を払っていただきたいと思いますし、私どもといたしましても、法改正を初めとして諸準備をできる限り急ぎたいという形でございます。あしたと申しましても、そうはまいりませんけれども、非常に可及的速やかに、私どもの責任のある部分についてはどの関係者にも負けないようなスピードでやりたいというのが私のつもりでございます。
  240. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 先日、私どもは郵政省から放送法改正の説明を受けたわけでございます。そのとき、法改正をすればNHKや民放各社に対してそれをてこにいたしまして強力に字幕入りテレビ放送実施を指導できるのだという説明をいただいたわけなんですね。しかし、これは別の言い方をいたしますと、放送事業者は郵政省が指導しないと字幕入り番組はつくらないということを前提にしているともとれる話だというふうに思うのです。  そこで、NHKの方にお尋ねをしたいわけですが、あなた方は法律で決めなければ字幕入りのテレビ番組はおつくりにならないのでしょうか。それとも、放送の持つ公共性にかんがみ、技術的に可能なものは法律で強制されなくてもやれる、やるというお考えがあるのでしょうか。いかがでしょう。
  241. 中塚昌胤

    中塚参考人 NHKはいま画面に文字をダブらせた、そういう放送はやっております。しかし、これはいま提案されております放送法改正案の中で言うテレビの文字多重放送というものではないわけでございます。したがって、NHKといたしましては、この文字多重放送をやるには、NHKが文字多重放送をやるのだという放送法の改正をやっていただかないとできないということでございます。
  242. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 NHKはすでに四年前に、字幕入りテレビ番組実施にはめどがついているという状態はあるわけですね。番組に字幕を入れるために専門家が必要だというふうに先日の分科会で答弁をされているわけなんです。その専門家というのは、どのようなことをする専門家なのか、また、その中ではどの専門家を養成することが一番急がれているのか、その点についてはいかがでしょうか。
  243. 田中眞三郎

    田中参考人 私ども聴力障害者向けのサービスにつきまして、ソフトの面での研究開発については、いま御指摘のように、相当前からいろいろ勉強して取り組んできているわけでございます。そのうち、いま字幕のお話でございますけれども一般番組に文字をスーパーさせる、ダブらせるという方法につきましては、一応テスト版等々もつくりまして現在いろいろな研究、検討を進めておりますけれども、幾つかのむずかしい点がございます。特にむずかしいのは、文字化をする際、その番組の内容をどこまできめ細かく、しかも正確にお伝えできるかということでございます。それからもう一つは、漢字とかながまじっております日本語は、アルファベット等とは違いまして、迅速に文字化しにくい面がございますけれども、これをアルファベットのようにいかに早く迅速に文字化できるかということについての勉強をしているわけでございます。  それからもう一つは、こういったようなことをやっていく上には、設備だとか経費等々もいろいろ必要でございます。こういった問題も検討課題ということで現在やっております。  特に、いま御指摘の専門家につきましては、まず一点は、番組の内容がいかに正確に伝わるかという作業をする専門家が一人必要でございます。それからもう一つは、先ほどもちょっと触れましたように、文字を見やすく、しかも早く機械に打ち込む作業をする人も必要でございます。それで、特に私どもこういった専門家の養成といいますか訓練につきましては、その番組の中身が対談だとかドキュメンタリー、ドラマ等々、多種多様でございますので、どういった番組にはどの程度の内容の文字をスーパーさせればいいのかという点、あるいは私どもの総合放送文化研究所等々ではそういったことを勉強しておりますし、また、文字の打ち込み方の専門家につきましては、私ども技術研究所の方でも、いかに早く文字を放送用の機械に打ち込めるかという問題も、いまいろいろプロジェクトをつくって検討している最中でございまして、この辺につきましては、今後とも解決すべき点がいま申し上げたような点でありますので、その辺もできるだけ早く解決していきたいというふうに思っております。
  244. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私どもは先日NHKの技研を見せていただいたわけです。そのときに、「北から南から」という番組に字幕を入れました「炭焼小屋のアイデア農業」というのがあったわけです。これは試作品として二十分番組だとおっしゃっていたわけですが、字幕入り番組をつくる作業にどれくらいの時間がかかったのですか、御説明いただきたいと思います。
  245. 田中眞三郎

    田中参考人 いま御指摘のように、「にっぽん北から南から」という現在日曜日の午前中に放送しております二十分の番組を選択いたしまして、字幕をつける試作をしたわけでございます。  先ほども申し上げましたように、この試作のねらいは、この番組がアナウンサーによるナレーションだけで非常に単純な構成のものであるというようなこと、あるいは内容も話題を四つ五つ御紹介するようなものであるということ、それから長さが大体二十分ぐらいだというようなことの条件がありましたので、いろいろ先ほど申し上げた私どもの抱えております問題点を解明、洗い出しやすいということで試作をしてみました。  それで、そのときに要した時間でございますが、字幕の要約をつくる、大体下の方で二行のダブりをやるということで、二十分の番組で大体七十四枚ぐらい制作いたしましたけれども、これが大体四時間ぐらい。それから、先ほど言いましたように、文字を機械に打ち込む作業、入力のところが大体六時間から七時間ぐらいかかりました。それから、番組の内容とその字幕とをうまくタイミングを合わせるというので約二時間ぐらい。それから、若干の修正をするというので一時間。大体全部合わせますと十三時間から十四時間ぐらいかけまして、この二十分の番組を一つ字幕スーパー入りのものとして試作したわけでございます。
  246. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 二十分番組という比較的単純な番組の場合でも大変な時間がかかり、それに対して大変な御努力をしていただいているというふうに思うわけです。これがドラマになりますと、もっと大変ですね。  ここに私は「ぶんぶく茶がま」の字幕入りのビデオの要約文を持ってきたわけですが、これは聴力障害者情報文化センター、ここでつくられたものなんです。この童話は、子供たちにいじめられていたタヌキを助けたおじいさんに、そのタヌキが茶がまになって一両で売られて恩返しをするという、なつかしい話ですね。  要約を読みますと、  「たぬきさん ひにかけられたら どうする」  「しんぱい ごむよう うまく にげだすよ」  「こんな たいきん はじめてじゃ」  「ありがたい ありがたい」 こうなっているのですね。これが山部ですけれども、この後、テレビ番組では鐘の音が「ゴーン」と鳴る。「ありがたい ありがたい」「ゴーン」と、こういうわけなんですね。ところが、聞こえないわけですから、この字幕には、ここへお借りしてきましたが、こういうふうに下に二行入れているのですが、その「ゴーン」をどうするかということで、鐘の絵を書いて「ゴーン」と入れてあるわけですね。この擬音は何としても字幕に入れて見せてやりたい、こういうボランティアで制作に参加しておられる難聴児を持つ親の会の皆さん、こういうお母さんたちが強力に主張をして、やっとこれが入ったということなんですね。  字幕入りテレビの番組をつくるポイントというのは、いまもおっしゃいましたように、耳が聞こえないという条件を考えて、難聴者の身になって要約文をつくること、もう一つは原作に忠実であること、この二つが大事だし、これを統一させて行うことが非常に大切だと思うのですね。しかし、非常にむずかしいということですね。まさにこれは専門家でないとできないというふうに思うわけです。  民放各社は、字幕入りテレビ番組実施するために、いま言ったような専門家はどの程度養成していらっしゃるのでしょうか。郵政省御存じでしょうか。
  247. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 放送事業者は、現在、文字多重放送に向けて具体的にどのような体制づくりと申しますか準備をしているのかということかと思いますけれども、先ほども先生おっしゃいましたように、NHKは五十三年の十月から東京及び大阪において多重の実験局を始めておりますし、朝日放送も五十三年の十一月から大阪において実験をやっております。また、日本テレビ放送網につきましても、五十六年の十二月からその種の準備のためあるいは技術的実験のために現在いろいろの検討を進めておるわけですが、放送番組をどうするか、放送技術それから受信者の態様など、各分野について総合的な検討を進めておるというふうに伺っておるわけでございますけれども、いまもお話の出ましたように、これは放送事業者がおやりに去る努力もいろんな面で非常な協力が必要であるというふうに考えておる次第でございます。
  248. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私がお尋ねしたのに対する答えがちょっと外れているのですが、とにかく、郵政省は、各民放はこの文字多重の準備はしているけれども、要は、いま言ったような専門家の用意はしているかどうかはわからない、つかんでおられないということがはっきりしたと思うのですね。  私は、先ほども言いましたが、原作や台本を要約する専門家を早くそして大ぜい養成しないと、幾ら法律改正をしましても、字幕入りの番組放送されないというふうに思うのです。  そこで、NHKにお尋ねしますが、NHKとしては、これの養成計画とこの字幕入り番組放送するための体制はどのようにつくっていらっしゃるか。  それから、もう一点、NHKはいつから字幕入り番組放送ができるのか、する予定であるのか。ちょっと時間がありませんので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  249. 田中眞三郎

    田中参考人 先ほども申し上げましたように、私どもプロジェクトをつくりまして、この字幕をつくるべきいろいろ問題点を洗い出しながら現在作業を進めている、研究開発を進めているということでございます。  専門家の養成につきましても、私どもの方では、長い間「聴力障害者の時間」というようなことで放送等もやっておりまして、そういった方についての連携もございますので、そういった方々の御意見も入れながら、現在この研究開発をやっておりまして、この専門家等につきましても、先ほど申し上げましたようなテスト版等の制作を、今後もまた制作の面でつくりながら習熟をしていきたいというふうに思っております。
  250. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、一昨年の十月に、やはりこの難聴者向けのビデオライブラリーのことにつきまして質問をしたことがあるのですが、ことしになりまして、本格的に事業をやっておられる聴力障害者情報文化センター、それと京都には聴言センターというのがあるのですが、ここに行きまして、どのようにしてビデオをつくっているのかということを教えていただいたわけです。皆さんが一番ここで苦労をしておられましたのは、先ほども言いましたように、原作や台本、これをどう要約するのかということですね。これはビデオライブラリーだけの話ではなくて、放送の場合も同じだというふうに私は思いました。だから、私は、放送事業者はこのビデオライブラリーをやっているところから急いで学ぶ必要があるだろう、いまNHK皆さん方の御意見も聞いてとおっしゃいましたが、非常にそれは大事だというふうに思うのですね。それと、もう一つ、字幕入り番組がつくられるまでの期間はもちろんのこと、それ以降であっても、このビデオライブラリーを発展させていくということが大変大切だというふうに思うのです。  そこで、厚生省にお尋ねをしたいのですが、いま厚生省は聴覚障害者の施策の一環として、ビデオの十種類を十本、これを百本分、字幕入りの番組の委託費を措置をしていらっしゃるようにお見受けいたします。今後は、厚生省として、この字幕入りの番組の委託本数をもっとふやすとともに、要約の専門家を制度的に養成していくということが大変大切だというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  251. 板山賢治

    ○板山説明員 御指摘のとおり、全国三十六万人に上ります聴覚障害者のために、五十六年度からビデオライブラリー、このカセットテープの作成、貸し出しの予算を実現をいたしました。この額は約五百万円ほどでありますが、これから毎年これを計上することによりまして、いまおっしゃいましたように百本ほどずつ制作を続けていってほしいと思っていますが、これは具体的には全日本聾唖連盟に委託をいたしまして、先ほどお話のありました社会福祉法人の聴力障害者情報文化センターが制作に当たる。これにつきましてはNHK社会教育部のプロデューサーの皆さん方が大変協力をしてくださいまして、いまむずかしい技術的な問題も解決しながら前進をしておりますので、この成果を見ながら、御指摘のようにだんだん充実をしていきたい、このように思っております。
  252. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 放送した番組に字幕を入れる事業をしているのは、全国で東京と京都と神奈川、この三カ所にあるわけですね。ところが、この字幕を入れるためにもう一つ大変障害がございます。それは番組の著作権の問題なんですね。  そこで、NHKにお尋ねをしたいわけですが、NHKが著作権を持っていらっしゃる番組については、これらの事業体に無料で使用できるように協力するというふうなことはできないものでしょうか。
  253. 田中眞三郎

    田中参考人 いまもお話がありましたように、私どもも、NHKで制作いたしました番組を聴力障害者情報文化センターの方に十四番組、百十本提供しております。「面白ゼミナール」とかあるいは「NHK特集」といったようなものがその中に入っているわけでございます。  それで、お尋ねの著作権の問題でありますけれども番組を複製して利用するということになりますと、放送とは別に、いまのお話のように著作権の処理を必要とするということになりますけれども、私どもNHKといたしましては、番組制作者としてのNHKの著作権に関する限り、NHKは現在無償で、先ほど言いましたように百十本の番組を聴力障害者情報文化センターの方に協力しております。しかし、番組に関係いたします作家あるいは出演者等々、部外の方々の権利に関しましては、原則として文化センター側で処理に当たっていただきたいということになっております。
  254. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いまおっしゃった「面白ゼミナール」を見ました高度難聴の十一歳の女の子が非常に喜んだというはがきが来ておりますので、ちょっと急いで御紹介をしたいと思います。  ちょっと前を省きます。「ワー出た!分る分かる」と画面に吸い込まれて居りました。そして「お母さん、私、物知りになるわね」子供の顔が目が輝いてました。自分で分る楽しさ、ある時は声を出して笑い、又、自信を持って出題の間にと答えて居りました。親子の会話も内容に触れた話し合いとなりました。今迄情報不足から真の楽しさが分らなかったのですね。まるで乾いた土に雨がしみ込んでいくようでした。私も子供の楽しげな様子を見て感激の一時でした。 これを見せていただいて、私自身も大変感動をいたしました。  それと同時に、このように字幕入りのビデオライブラリーの事業というのは、NHKが積極的にこたえていけばより発展すると思いますし、事業体としても障害者の要求にこたえる道が大きく開けるのだということを、このはがきを見て確信をいたしました。また、それだけでなくて、字幕入りテレビの放送の発展にも役立つのだというふうに思ったわけで、今後とも私は一層の努力をお願いをしたいと思うのです。  そこで、最後に、郵政大臣にお尋ねをしたいわけですが、私は一昨年の十月に当委員会でこのビデオライブラリーの問題を取り上げましたときに、聴覚障害者のビデオの郵送料の問題、優遇措置を検討していただきたいということをお願いをしたわけです。  大臣にぜひ知っていただきたいのですが、いまのテレビではその恩恵に浴さない聴覚障害者、この方たちは、高い郵送料を払いながら字幕入りビデオでテレビを見ておられるわけです。視覚障害者の方には幸いにきちんと優遇措置がされているわけですね。これは大変結構なことだと思うのですが、視覚障害者にこういう優遇措置をするのであるならば、聴覚障害者にも同じように優遇措置をすべきではないか、私はこれはぜひ必要だというふうに思うのですね。  この質問に対して、一昨年は、郵政省は、将来の問題として考えさせてほしいという答弁をいただいたわけですけれども、いまこのように放送法を改正しようと、急いで専門家をつくらなければならぬ、こういう困難をしておられ、このような喜びを持って耳の聞こえない人たちがいま本当に生き生きとし始めた、これに対する貢献は非常に大きいと思うのですが、ぜひ今度は将来でなく現実の問題として、この時期に至って具体的な措置に入ってもらいたい、具体的に検討していただきたい。聴覚障害者にビデオ郵送料の優遇措置について大臣の御答弁をお願いをしたいと思います。
  255. 魚津茂晴

    ○魚津政府委員 先生のお話にもございましたのですが、現在の郵便法の中での身体障害者に対する料金の優遇措置といたしましては、点字印刷物、それから録音物、これを無料にしている、それから一方重度身障者の書籍小包については半額にしている、こういう優遇措置になっているわけでございます。そこの基本的な私どもの趣旨といたしましては、そのような方々が知識とかあるいは娯楽を得るというためには、どうしても郵便に頼らざるを得ないということから来る点に着目をして現在の優遇措置ができているわけでございます。ところが、いま先生いろいろと御意見おっしゃったわけでございますが、耳の不自由な方は一般の図書というものの活用ができる、難聴の方がそういうかっこうで日常的には用が達し得るというような点は、若干この視力障害者の措置と違った事情があるのではないかということで、目下のところは、せっかくの御提言、御要請でございますが、考えてないわけでございます。  ただ、先生のお話にございましたように、確かに五十五年の十月に、将来の課題ということで承っておきますという答弁を郵政省がしているわけでございますので、引き続いて、そういう意味では社会の動きあるいは外国法制等の動きも見ながら、いまの時点でもなお将来の宿題として預からせていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
  256. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 一般図書が読める、用が足せるのだというのは余りにも冷たい御答弁だなというふうに私は思います。その聴覚障害者の方々は、このビテオを借りるのに――一般の人はそんなものを郵送料を出してわざわざ借りることをしないわけですね。ぜひこれを見たいということで、一般に三十年、私たちはテレビやラジオの恩恵に浴してきたわけですが、それが浴せない中でいまこういう字幕入りができてきた。そうすると、そこに郵送料が要るわけですから、法律が以前につくられた段階とは世の中の状態、趨勢が違ってきているわけですね。だから、将来の問題として検討するのではなく、急いで検討に入っていただきたい。それこそあしたからこの法改正をしたら聴覚障害者もわかるのですよみたいな宣伝が先ではなしに、もっとそういう本当にできていくときにはどうなのかということを、やはり温かい配慮と実態でもって進めていただきたい。あと、ぜひ大臣からお答えをいただきたいわけですが、私は、きょうこの字幕入りの番組放送についてお尋ねした中で、放送法の改正をやらなくても字幕入り放送はできる。したがって、この字幕入り番組放送するために急いで法改正をする必要はないのではないかというふうに思います。また、多重放送の文字多重の方式についても、現在放送界の中でまだ一致していないという点があるならば、法律改正を急ぐということには大変疑問があるなというふうに思うわけですが、それは私の強い指摘として聞いていただいて、最後に大臣から、先ほどの聴覚障害者用の郵送料の優遇措置について急いで検討していただきたいということですが、いかがでしょうか。
  257. 箕輪登

    箕輪国務大臣 ただいま担当局長がお答えしたとおり、昨年国会において、また今回も同じような御提案があったそうでありますが、昨年の国会は私は知りませんが、だだいまの局長答弁を聞いておりますと、将来の問題として預からしていただく、きょうの答弁もそのような答弁でありましだが、私は将来の問題として検討させますからというお返事を申し上げたいと思います。
  258. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、将来の問題を近い将来ということでぜひお願いいたします。終わります。
  259. 水野清

    水野委員長 これにて藤原ひろ子君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十四日午前九時四十五分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会