運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-02-16 第96回国会 衆議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

share
  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月十六日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中山 利生君    理事 工藤  巖君 理事 宮下 創平君    理事 安田 貴六君 理事 佐藤 敬治君    理事 松本 幸男君 理事 大橋 敏雄君    理事 青山  丘君       池田  淳君    臼井日出男君       小澤  潔君    片岡 清一君       北川 石松君    久野 忠治君       左藤  恵君    竹中 修一君       地崎宇三郎君    中村 弘海君       五十嵐広三君    小川 省吾君       細谷 治嘉君    部谷 孝之君       岩佐 恵美君    田島  衞君  出席政府委員         建設省住宅局参         事官      松谷蒼一郎君         自治政務次官  谷  洋一君         消防庁長官   石見 隆三君  委員外出席者         警察庁刑事局審         議官      大堀太千男君         運輸大臣官房観         光部整備課長  高橋 克彦君         消防庁技術監理         官       渡辺 彰夫君         地方行政委員会         調査室長    岡田 純夫君     ————————————— 委員の異動 二月十日  辞任         補欠選任   岩佐 恵美君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     岩佐 恵美君 同月十二日  辞任         補欠選任   池田  淳君     藤尾 正行君   武田 一夫君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   藤尾 正行君     池田  淳君   矢野 絢也君     武田 一夫君     ————————————— 二月十二日  高校増設のため地方税財政制度改善に関する請  願(粕谷茂紹介)(第五〇六号)  同(高沢寅男紹介)(第五七四号)  同(菅直人紹介)(第六三三号)  市街化区域内農地宅地並み課税撤廃に関する  請願(高沢寅男紹介)(第六一六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  消防に関する件(ホテルニュージャパン火災  事故)      ————◇—————
  2. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 これより会議を開きます。  消防に関する件について調査を進めます。  ホテルニュージャパン火災事故に関する問題について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。臼井日出男君。
  3. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 私は、去る二月八日未明に発生いたしましたホテルニュージャパン火災に関連をいたしまして、自由民主党を代表して幾つかの質問をさせていただきたいと存じます。  質問に先立ちまして、当日あの火災の中で御逝去をされました犠牲者の皆さんに、心からの哀悼の意をささげるものでございます。またさらに、当日罹災され、あるいは負傷された多くの方々に対しても、心からのお見舞いを申し上げる次第でございます。特に、本日の審議を通じまして、今後二度とこのような災害の起こることのないような、関係諸官庁の徹底した指導あるいは経営者の自覚、施設整備充実、社員の訓練、そうしたもろもろのことを含めまして、十分な処置が今後とられるように心から希望をするものでございます。  さて、私も去る十一日に、当地方行政委員会現場視察の一員として現場を見てまいりました。新聞、テレビ等でもって、その状況については非常に生々しく報道されておりましたので、自分でもその惨状というものは理解をしておったつもりでございますけれども、実際に現場に参りまして、九階、十階のあの状況を見たときに、ああいうビル火災の恐ろしさ、そういうものを肌身に感じて、きわめて恐ろしく感じたわけでございます。当日の状況というのは、ごらんになった先生方よく理解いただけると思いますが、まさに瓦れきの山というのが適切でございます。そして、火の正直さと申しますか、火というものは、欠陥があればほんの小さな穴からもどんどん移ってしまうというふうな状況を視察させていただいたわけでございます。  最近の都市火災というものは、建物の高層化あるいは深層化複雑化、そういったものに比例をいたしまして、また内装材有害ガス発生等により、一度発生をいたしますと、人命の救助にきわめて困難な状況というものが現出をしつつあるわけでございます。加えまして、コンビナートの火災、あるいはかなり近い将来大規模地震というものが予想もされているような状況にあっては、消防行政の重みというものは年々増している状況でございます。  さて、現在審議をされております昭和五十七年度の予算案財政再建という至上命題、そうした前にありまして、一般会計の中でもゼロシーリングという枠の中での努力がされているということは、私も十分に承知をしているところでございます。しかし、だからといって、私ども国民の大切な身体、生命、財産、そういうものを預かる消防行政というものの予算が安易に削られるというようなことがあっては、私は決してならないと思うのでございます。  昭和五十七年度消防関係予算案合計額というものは二百七億二千六百八十一万二千円でございます。これを五十六年度と比較してみますと九二・五%というふうに、七・五%の減額になっているのでございます。そしてその内容を見てみますと、本年度消防予算合計の約七〇%というものは、消防施設等整備費補助になっているのでございます。実はこの七〇%というものは、消防予算のきわめて根幹に属するものでございますけれども、この状況を見てみますと、施設整備等補助費、これがすべて補助金であるというふうなことでございますので、実に消防予算の七〇%を占めるものが、臨調答申の一割カットという原則に当てはめられまして、一割減額をされているわけでございます。  果たしてこうした態度でもって、ますます近代化をしなければいけない、しかもお金がかかる、こういう消防行政にあって将来ともやっていけるのかどうか、はなはだ疑問に思うわけでございます。こういった点について、政府の責任ある回答をまずお願いしたいと思います。
  4. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 五十七年度一般会計予算の中での消防関係費につきましての御質問であったわけでございますが、ただいまお示しにございましたように、一般会計予算につきましては、概算要求段階から、臨調の第一次答申を受けまして補助金原則一〇%一律削減という方針がとられてまいったわけでございます。しかし、ただいまお話にもございましたように、最近におきます消防行政重要性ということにかんがみましていろいろと国庫当局と接触をいたしまして、最終的には二百七億余りの予算と相なったわけであります。これは、五十六年度に比しまして七・五%減に相なっておるわけであります。  しかしこの中で、とりわけ消防庁関係の主なものは、いまお話にございましたように補助金であります。補助金につきましては、そういう中で私ども一律一〇%削減を八%の削減にとどめるということでの了解をいただきまして、概算要求をいたしましたところ、全額要求どおり認められたということに相なっておるわけであります。  しかし、全額要求どおり認められたとは申しましても、ただいま申し上げましたように、昨年に比しますれば八%の減ということに相なっておるわけでございまして、私どもこの予算は、市町村消防機関が緊急に必要といたしましておりますはしご車あるいはまたコミュニティー防災センターあるいはまた市町村消防無線、こういうところに重点的に配分をしてまいりたいと考えておるわけでありまして、私どもといたしましては各消防機関に対しまして、限られた予算、限られた人員の中で今後効率的に消防行政を進めてまいりますように強く指導いたしますとともに、ただいま申し上げましたように、予算配分につきましても、その点市町村に大きな御迷惑をかけないように十分配慮してまいりたいというふうに考えておるわけであります。  なお、五十七年度の予算案におきましては、都市建築物危険度の評価に関する調査と、その他新たな課題に対応いたしますための調査研究費新規で約七千八百七十万円ほど認められておるわけであります。私ども、現在抱えております各般の問題点がございます。この新規調査研究費を十分活用いたしまして、これからの防災対策の一層の推進に努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  5. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 消防組織法によれば、地域防災市町村の責任でもってやるように定められているわけでございます。したがいまして、国としてしてやれることというのは、お金を出すあるいは総合的な判断の中で行政をやる、そういうことに限られているわけでございます。したがって、予算等補助金で出すのは当然でございまして、消防予算の七〇%という大きなものを占める補助金、こういうものを今後も財政再建の中とはいえ、一律カットということでやることは非常に大きな問題もありますし、また、消防行政を直接担当する市町村職員に対する影響というものはきわめて大きいと思うのでございます。  五十八年度の予算におきましても、同じようなゼロシーリングあるいはマイナスシーリングというような話もございますけれども、非常に財政も厳しい折でございますけれども、こういう予算に対してはぜひとも過度の減額のないような御努力をお願いいたしたいと思うわけでございます。  それと同時に、あわせて御質問申し上げたいのは、こうした消防行政予算、非常に機械化をされたり、近代化をされたりしつつある。もうはしごも、いまのような四十メーターそこそこはしごではどうか、あるいはそれ以上の高層になった場合には果たしてどうなるかということを考えますと、消防予算を今後どういうふうに確保していったらいいだろうかという問題も、きわめて考える必要があるだろうと思うわけでございます。こういった点について、何か将来展望としてのお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  6. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 御指摘のように、災害、とりわけ都市におきます火災は、建築物高層化でございますとか、あるいはまた地下街の増加でございますとか、そのほか、石油を初めといたしまするいろんな危険物の蓄積などございまして、火災態様も大規模化あるいは複雑化してまいってきております。これに対しまして、消防機関といたしましては、もちろんこのような新しい情勢に対応できる消防力というものの充実を図ってまいらなければならないわけであります。  その第一点は、やはり何と申しましても、資機材の整備ということを努めてまいらなければならぬと私は思っております。ただいまお話にもございましたように、はしご車化学車、その他新しい事態に対応できる新しい機材の開発、それと同時に、それを使いこなせるだけの消防職員技術訓練というものを進めてまいらなければならないというふうに考えておるわけであります。  と同時にもう一つは、地域におきますそれぞれの自主防災組織、それぞれの地域は市民の方々それぞれが自分らの地域自分らでまず守っていただくというお考えのもとに、地域自主防災組織の確立ということをあわせて進めてまいりたいと考えておるわけであります。  と同時に、そのようなことを今後進めますにつきましての五十八年度以降予算の確保につきましては、せっかくの努力を重ねてまいりたいと存じておるところでございます。
  7. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 決意のほどを伺わせていただきました。ぜひとも御努力のほどをお願い申し上げます。特にこの整備費補助というものは、ポンプ車とか化学車あるいははしご車、そういったものがこの中で賄われているわけでございますので、特にお願いを申しておきたいと思います。  ホテルニュージャパン火災に対しての問題でございますけれども行政指導各種段階がございますけれども立入検査指導書交付、そして昭和五十六年九月十一日措置命令に至るまで、型の上では一応それぞれの配慮がなされていると見られるわけでございます。しかし、五十二年度以降四回にもわたって指導書を交付している、またホテル側改修計画を実に七度も出しているんだ、しかもそれもほとんど実質的な改修というのはされていない、そしてかなり長い期間というものが流れてしまっている、そういうことを考えますと、まずこの措置命令を出すまでの期間、もうちょっと何とか短縮できなかったのだろうか。それがあれば今回の災害というものもあるいは防げたのかもしれない。それが私はきわめて残念でならないのでございます。  私はぜひともこういう点について、今後のこともございますので、消防庁のこの点に関する反省点があったらお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 今回のホテルニュージャパン火災につきまして、ただいまお話のございましたように、東京消防庁といたしましては、昭和五十二年以降四回の文書警告を発しております。あるいはまた、年二回の立入検査も実施し、そのほか機会あるごとに関係者を呼びまして、設備改善あるいはまた日ごろの維持管理等について指導を重ねてまいったわけであります。と同時に、会社の、ホテルの方からも、数度にわたりまして改修計画等が出されておりまして、消防機関としては、現行法令の中でそれ相応の努力はしてまいったとは思うわけでございますけれども、しかし、このような事故発生いたしました現時点におきましては、結果的には私は、ただいま先生お話にございましたように、余りにもその期間が長過ぎたではないかという御批判は、厳しく受けとめなければならぬだろうと考えておるところでございます。  今後と申しますか、これまでも私どもといたしましては、旅館、ホテル防災安全対策につきましては、日ごろのホテル側維持管理について指導し、あわせて悪質な違反者に対しましては厳しい措置をとるように指導を重ねてまいったわけでございますけれども、結果的にはこのようなことに相なりましたことは、まことに遺憾と存じておるところでございます。  今後、さらに従来の指導を強めますとともに、このような悪質、違法な建築物に対しましては、ちゅうちょすることなく法に基づきます措置命令あるいはまた公表、さらには告発というような一連の厳正な手続をとるように強く指導してまいりたいと考えておるわけでありまして、このことは去る二月十日にも重ねて各消防機関にも示達をいたしたところであります。  いずれにいたしましても、今回の火災反省の上に立ちまして、二度と再びこのような事故が起こることのないように、各消防機関に対しましては格段の指導を強めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  9. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 特に、措置命令に至るまでの指導書、この段階でもっと適切な措置がとられるべきでございますけれども、なかなか法的な強制力がないということで、どうも経営者側も安易に考えがちだと私は思っておるのです。したがって、ぜひともこういう点で何とかもう少し強い措置がとれないんだろうかということを御検討いただきたいと思うのでございます。  消防法の第五条を見てみますと、伝家の宝刀と言われる、いわゆる強制措置とも言われる条文があるわけでございます。この本文だけを私は見ますと、このホテルニュージャパンについても当然適用が可能じゃないか。具体的に言いますと、実際に九階、十階、あの二階を使用禁止というふうな措置でも可能なんじゃないだろうかと私は考えておるわけでございます。こういう点について、なぜこの五条というきわめて強い執行力を持った条文がありながら、これが        かつて一度も使用されておらないのか、そういうふうな状況について御見解を承りたい。そして、私はこの条文運用にもかなり問題があるのではないかと考えておるわけでございますが、お答えいただきたいと思います。
  10. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいま御質問にございました消防法五条に、特定の構成要件に該当いたしました場合には使用停止をかける、現地の消防長または消防署長使用停止命令をかけることができるという規定があることは事実でございます。この第五条にもございますように、防火対象物の位置、構造、または設備状況につきまして火災の予防上必要であり、または火災発生したならば人命に危険があると認めた場合という規定となっておるわけであります。  今回、東京消防庁措置といたしましては、スプリンクラーの未設置という明らかな事実関係に着目をいたしまして、まず行政手続としては文書による警告を発し、そしてまた、その結果を踏まえての十七条の四の規定によります措置命令をかけ、それが達成できなかったときには、公表あるいはまた告発という一連行政手続考えて是正を図ろうとしたわけでございます。しかし、結果的にはその手続自身が非常に時間がかかり、しかもさほどの実効が上がっていない、いち早くその五条適用すべきでなかったかという御意見だと存ずるわけであります。  ただいま申し上げましたように、東京消防庁といたしましては、そのような一連行政手続を踏んだ上でという判断をいたしましたことが、結果的にはよかったか悪かったか、これは大きな問題が残るところであろうと存じております。  と同時に、御案内のとおり、この五条規定自身が、従来からの解釈といたしまして一般抽象的な火災危険性では足らないのでありまして、差しかかった具体的な火災危険性が存在する場合に発動し得る規定であるという法解釈が、制定当時からなされてきたわけでございます。そうなってまいりますと、今回の場合、果たしてこの五条適用でき得るかどうか、スプリンクラーの未設置という事実関係に着目して五条適用することができるかどうかということに対しての東京消防庁判断もあったのだろうと思うのであります。  いま先生からも御指摘ございましたように、この五条解釈あるいは運用というのはやはり問題が残されているわけでございまして、今後、私どもはこの五条解釈と申しますか、とりわけこの運用につきまして十分検討いたしてまいりたい。と同時に、この五条は決して飾り物ではないわけでありまして、悪質、しかもただいま申し上げましたような五条構成要件に該当する場合には発動することも当然あり得るということを前提にいたしまして、この運用について検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  11. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 死亡者を三十二人も出すような大きな災害適用できなくて、果たしてどんな状況でもって適用できるのか、非常に疑問に思うわけでございますけれども、こういう問題についてもぜひともさらに御検討いただきたいというふうに思います。  特に消防法第四十二条、措置命令に従わなかった場合、六カ月以下の懲役または二十万円以下の罰金というふうに定められているわけでございますけれども、私もこれはきわめて軽い、二十万なら私でも何とかなるだろう、そういうふうな感じがして、果たしてこんな程度の罰則でもって大きな事故を防げるかどうか、そういうようなこともきわめて疑問でございます。また、先ほどの第五条条文にいたしましても、かつてまだ一度も発令をされたことがないというふうにも伺っております。こういうものも含めて、将来法の罰則強化あるいは改正、そういったものをお考えの意思があるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  12. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいまお話にございましたように、措置命令違反に対しましては二十万円以下の罰金あるいはまた六カ月以下の懲役という刑罰を設けておるわけであります。一定の法規違反に対しましてどのような罰則が量刑として適当なのかということにつきましては、いろいろ議論があろうかと思っております。私どもは、罰則を重くするということが今後のこのような火災防止につながるといたしますれば、これは大いにひとつ検討すべき事柄だろうと存じております。  ただその場合、やはり消防法全体の体系の中での罰則の重さ軽さというものが、バランスというものがございますことと同時に、あわせまして他の法律によりましても、それぞれ各種行政法規には措置命令違反に対しまして罰則規定を設けております。やはり、これとのバランスということもあろうかと存じております。この辺になってまいりますと、私どもだけの判断ではまいりませんで、行政法規全体のバランスとなりますれば、これはまた関係法務省庁ともお話を申し上げなければならない問題もあるわけであります。  ただいま申し上げましたような観点での罰則のあり方ということにつきましては、今後検討いたしたいと存じております。と同時に、罰則強化ももちろん一つ検討課題ではありますが、ただいま前段申し上げましたように、この五条を何とかして有効に活用し得る道、運用するべき方法というものをあわせて検討してまいりたいというふうに当面は考えておる次第でございます。
  13. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 まあ規則によって縛るということは、これはそれだけでいい面ばかりではございませんけれども、やはりこういうものは一罰百戒というふうなこともきわめて大きな意義があると思いますので、御検討いただきたいと思うのでございます。  戦後の火災による大事故、これは枚挙にいとまがないわけでございますけれども、特に四十四年二月の磐光ホテル火災、四十七年五月の大阪千日ビル火災、四十八年十一月の熊本の大洋デパート火災、そして五十五年十一月の川治プリンスホテル火災、こういったもので数多くの犠牲者を出しておりますし、その都度、貴重な経験もいろいろな面でもって得ているはずでございますけれども、一向に火災がなくなってまいらない。今回のホテルニュージャパンの大惨事というものを見ておりますと、どうも今後ともこういった火災というものはなくならないのじゃないだろうか、そういう危惧さえ感じる最近でございます。  消防法というものは、先般の火災を教訓といたしまして四十九年に法の改正がされたわけでございます。しかし、消防法と非常に関係の多い建築基準法改正は、当時起案されたけれどもいろいろな事情でもって成立することがなかった、五十一年にはとうとうあきらめてしまった、そうして、現在は建築物防災対策要綱というものでもって補っているというふうに聞いているわけでございます。この当時、法律として出そうと思っていた法案内容を現在行っている建築物防災対策要綱でカバーできているのかどうか、その点についてお聞きをいたしたいと思います。
  14. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 お答え申し上げます。  いま先生から御指摘がありましたように、四十七年、四十八年とデパート火災が続きまして、百人を超える死者が発生したわけでございます。したがいまして、建築基準法法体系といたしましては、遡及適用はそれまでやってなかったわけでございますが、遡及適用考えるべきではないかという意見もありまして、次の通常国会法案を提出したわけでございますが、中身について種々国会において検討されました結果、技術的な基準において非常に未整備な部分があるというようなことで修正になりまして、その既存不適格の建築物についての遡及適用についてはさらに検討するということになったわけでございます。  その後、建設省の中に学識経験者関係行政機関及び関係業界団体の代表から成ります既存建築物避難施設整備対策懇談会を設けまして、この問題についていろんな方面から慎重に検討いたしました。その結果、既存建築物はその後数がふえるわけではない、次第に減少していくということ、それから既存建築物態様が非常に多種多様な形態をしておりまして、それに対して一律の技術的基準をもって対応するということは非常にむずかしい、むしろ行政指導をもってこういった多種多様な形態については対応していった方がより有効であるというような観点から、ただいま先生の御指摘になりましたように、建築物防災対策指導要綱を整えまして、それに基づいて昭和五十四年から行政指導を行うこととしたわけでございます。  その結果、現在千二百九十件余の既存建築物について指導を行っておりますが、ホテル、旅館等につきましては五十八年度中に改修を命ずるということにしておりまして、現在その改修を実施中でございますが、すでに改修したものが、ホテル、旅館等につきましては半分に及んでおります。その後も改修の計画のあるもの、あるいは工事中のもの等がございまして、所期の目的を達成すべく努力中でございます。
  15. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 この問題についてももっと質問をいたしたいわけでございますが、質問時間も限られておりますので、この問題についてもぜひともさらに御研究をいただきたいというふうにお願いをいたしまして、次の質問に移らせていただきます。  今回のホテルニュージャパン火災が大きな犠牲を出すに至った原因、これを突き詰めてまいりますと、一から十まで人災と言っても過言ではない、それほどいろいろな問題点が多くあるわけでございます。建物の欠陥は言うに及ばず、スプリンクラーの未設置あるいは防火区画もなかった、防火加工のカーテンも使われていない、法で定められた避難訓練も実施されていなかった、火災感知器も、火点では正しい反応を示していながらそれを処理する方でもってオフになっておった、防火扉がじゅうたんにひっかかって開閉できなかった、非常ベルもだめだった、放送装置も壊れていたりあるいはテープが入っていなかったりしている、しかも従業員はその操作の方法も知らなかった、初期消火もだめだ、避難誘導もできない、こういうまさにこれでもか、これでもか、これでも死なないのかと言わんばかりのていたらくでございます。  こういうことを考えてまいりますと、この責任は、一現場の支配人あるいは防火管理者、そういった者の責任だけでもって当然済まされるものではないというふうに私は考えるわけでございます。当局では、こういった問題について一体どのような姿勢でもって追及をしていくのか、あるいは具体的にどういうふうな刑事責任が発生を予測されるのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  16. 大堀説明員(大堀太千男)

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  一般にホテル火災における捜査につきましては、まず出火場所、出火原因あるいは出火行為者を解明をいたしまして、出火原因が放火である場合あるいは失火である場合、行為者について捜査をすることになります。  次に、火災により死傷者が出たような場合におきましては、火災発生時におけるホテルの管理者あるいは従業員の宿泊者等に対する避難誘導に手落ちがあったかなかったかどうかを捜査をいたしまして、また手落ちがあったような場合には、その手落ちが法律上の過失致死傷罪に該当するか否かを捜査することになるわけでございます。  ホテルの管理者につきましては、当然平素における従業員に対する避難誘導及び消火訓練に手落ちがなかったかどうか、あるいは消火栓、スプリンクラー等消火設備設置管理に手落ちがなかったかどうか、あるいは防火扉等の防火設備設置管理に手落ちがなかったかどうか、あるいはまた非常階段等避難設備設置管理に手落ちがなかったかどうか、あるいは火災報知機、警報器等、警報装置の設置管理に手落ちがなかったかどうかについて捜査をいたしまして、もし手落ちがあったような場合には、その手落ちが法律上の過失に該当するかどうか捜査をすることになるわけでございます。  今回のホテルニュージャパン火災につきましても、出火原因あるいは出火行為者あるいは火災発生時における避難誘導の適否の問題、あるいは消火設備等の設置管理に手落ちがなかったかどうか、あるいは平素における避難誘導訓練に手落ちがなかったかなどを重点に、現在現場の検証、ホテルの防火責任者、従業員及び火災当時の宿泊客等について取り調べを行うなど捜査を進めておる状況でございまして、今後十分捜査を遂げてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 近々、横井社長を呼んで事情聴取をするというふうな話も新聞等で聞いているわけでございます。過去の磐光ホテル火災とかあるいは川治プリンスホテル火災、こういったものの責任追及は、死者、負傷者等を多く出したわりには余り適切な追及というものがされているとは思えない面もあるのでございます。どうかこの後に、国民が本当に納得のいくような追及、厳しい、しかも正しい追及というものを期得をいたす次第でございます。  今回のホテルニュージャパン火災の特徴の一つとして、観光のために来日をした外国人被害者の死傷がきわめて大きいというのが特徴の一つだろうと私は思うのです。  その中では、新聞等に出ておりますけれども、国際観光ホテルという看板を信用したのだ、だからあのホテルに泊まった、そういうふうな指摘をして、これは国の責任であるというふうな追及の姿勢を持っている人もいるというふうに聞いているわけでございます。この死亡者に対する補償、国税庁では税金の滞納でもって土地も差し押さえたという状況の中では、なかなか今後むずかしい面があるのじゃないか、ひいては国際問題にも発展しかねないというふうに思うのでございます。この国際観光ホテルというのは一体何なのかという問題もございますけれども、当局としては、こういった海外から来られた方々に対する補償あるいは国の責任について今後どういうふうにお考えになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  18. 高橋説明員(高橋克彦)

    ○高橋説明員 御説明申し上げます。  ただいまの御質問でございますが、国際観光ホテル整備法は旅館業法の営業許可を受けて営業しているものの中から、客室の広さあるいは客室に備えつけてある施設等が外客の接遇に適切であるというものについて登録しているものでございます。したがいまして、国際観光ホテル整備法の登録を受けているホテル、旅館に対します防災上あるいは建築上の問題につきましては、一般の旅館と同じような建築基準法消防法適用がございますので、ホテル整備法の登録を受けているということで、このような損害賠償の問題が特に国に多く発生するというふうには私ども考えておりません。  以上でございます。
  19. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 きょうは谷政務次官もおいででございますので、そういう点についてはよくお聞きをいただきたいと思うわけでございますが、これはいわゆる法律上の責任とは別に、やはり国際上の日本政府の責任というのがどうしても出てくるのじゃないだろうか、国がお金で返してやるということではなくて国の信用問題、それも含まれておりますので、ぜひとも政府としては格別の配慮といいますか、対策を今後お考えをいただきたいというふうに考えるわけでございます。谷政務次官には最後に御発言をいただきたいと思いますので、そのときにはそういうものを含めてひとつお答えをいただければ幸いでございます。  特に、これから日本においてはますます観光も盛んになるだろう、外国人がホテルに泊まる場合も非常に多くなってくると思うのでございます。そういった場合に、日本人だけに通用する避難誘導の方法ではなかなか責任を十分に果たし得ない、そういうふうに考えるわけでございます。新聞によりますと、日本人のボーイが何か大声で叫んでおった、しかしそれは外人には通じなかった、むしろ何かわめいておったということで事態の緊迫さというものが外人に反映をして、かえって被害を大きくしたのじゃないかというふうなことさえ言われているわけでございます。こういった点についても、ぜひとも何らかの法改正をお考えいただきたいというふうに考えるわけでございます。  非常に時間も詰まってまいりましたので、最後の御質問をさせていただきたいと思います。  去る五十五年十一月二十一日に私はこの地方行政委員会でもって、消防に従事している方々のいわゆる賞じゅつ金について御質問をさせていただきました。ちょうどあのときは静岡の事故の後でございまして、浅間山荘以来警察官に対しては特別賞じゅつ金というものが適用されている、こういった問題について、弾が飛んで来る、飛んで来ないの違いがあるだけで、火災というものはきわめて大きな危険を伴うものであるので、消防官にも当然これは適用すべきである、そしてこれを制度化する意思はないのか、そういうふうな御質問をさせていただきましたけれども、その後一体どういうふうになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  20. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 賞じゅつ金につきましては、いまお話ございましたように消防関係にもあるわけでございまして、最高額千三百万円ということに相なっております。消防職員あるいは消防団員、火災現場等におきましては自分の生命を賭して仕事をいたしておるわけであります。やはり賞じゅつの問題あるいはまた公務災害補償の問題その他につきましても、私ども今後ともできるだけの努力はしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  21. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 この賞じゅつ金の額も一千三百万円、長い間頭打ちでもって改正をされてきておりません。また、特別賞じゅつ金の二百万円についても、静岡の事故以来あちこちで恐らく死亡されている方もおられると思いますけれども、殉職に差別はないと私は思いますので、公平に適用されるようにひとつ運用をお願いしたいと思います。  以上、非常に短い時間でございましたので散漫な質問でございましたけれども、私は、これからのホテル火災というものは、ホテルニュージャパンの形の場合はむしろ古い形の火災ではないだろうか、これからは高層化あるいは深層化、密閉化、そうした中できわめて多くの死者を出すような環境というものができつつあると思うのでございます。こういった消防行政の重大性について、最後にぜひとも谷政務次官から決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  22. 谷政府委員(谷洋一)

    ○谷政府委員 お答えを申し上げたいと思います。  今回のニュージャパン火災につきましては大変遺憾な、残念なことでございました。特に、多数の犠牲者を出しましたことはまことに遺憾なことで、今後こういう火災を絶対に出さない、二度と繰り返さないということにつきまして万全の策をしたいと考えております。  先ほど御質問のございました国際観光ホテルあるいはホテル協会加入、そういう国際的な情勢を背景にいたしまして、そういうものを含めまして、私どもは各省庁と改めて十分な縦横の連携を保ち、そして毅然たる態度でこれから立ち向かっていきたいと考えております。特に、違反等の問題につきましては早期にその摘出をいたしまして、そして早く解決するように努力をしたいと考えておるわけでございます。  そういう決意で今後やることを申し上げまして、私の決意といたしたいと思います。
  23. 臼井委員(臼井日出男)

    臼井委員 終わります。
  24. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 佐藤敬治君。
  25. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 最初にお願いをいたしておきますが、たった四十分しかございません。だから、短く、わかるような御答弁をお願いしたいと思います。  私は、今度の火災に対処するために、まず第一に、このホテルニュージャパン火災で亡くなられた三十二名、この方々の冥福を祈るためにも二度と再びこのような惨事を起こさない、こういう覚悟でこれから当たっていかなければいけない、こう思いますけれども、政務次官おいででありますので、いま決意を聞きましたが、もう一遍ひとつ決意のほどをお伺いします。
  26. 谷政府委員(谷洋一)

    ○谷政府委員 お答え申し上げたいと思います。  先ほど申し上げましたように、私どもはかかる事態を二度と繰り返さないということを念頭に置きまして、それぞれの法規の改正等にも取り組み、そして各省庁との関連を密にしていく、そして国際関係等につきましても信用を得るような状態に持っていきたい、こう考えておるわけでございます。特に、先ほど申し上げました建築基準法関係消防法関係等、十分縦横の関連を保つということが必要だろうと思っております。  そういうことで、私どもはこの不退転の決意で今後やることを表明したいと思います。
  27. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 まことにりっぱな決意でありまして、ぜひひとつそのとおりやっていただきたいと思います。私も大賛成ですけれども、ちょっと苦言を申し上げなければならないのは非常に残念であります。  いまも話がありましたが、私は、これまでに発生した、多くの死傷者を出した代表的な例を拾い上げて、その議事録を全部読んでみました。一つは四十三年十一月の有馬温泉池之坊満月城旅館、それから二つ目は四十四年の福島県の磐光ホテル、三番目は千日デパート、その次は大洋デパート、それからおととしの川治プリンス、その前に静岡のゴールデン街がありますね。これの議事録を取り寄せて全部読んでみました。驚いたことに、ほとんど同じ質問をみんながやって、そして同じ答えを当局が答えておるのです。これはもう、ここにありますから後で見てください、全く同じことを質問して全く同じことを答えている。  一番最初に発生したのが昭和四十三年です。いま五十七年ですから、十何年たっておるのですね。私の前に質問した方々に対する答弁、あるいはまた前に説明を受けたいろいろな火災の原因、現況、こういうものを聞きましても、全く状況は変わらない。いま決意のほどを聞きました。そして歴代の消防庁長官からも、もう火災は起こさない、一生懸命そういう強調をして、決意のほどは何遍も聞きましたけれども、残念ながら決意を表明したしりから、次から次と火災発生しておるのです。  しかも、それが別の状況じゃなくて全く同じ状況なんですね。共通して指摘されるのは、煙による死者が非常に多いということです。これはもう全部に指摘されている。今回も指摘されている。それから避難誘導が不適切だ、訓練が全く行き届いてないということ。それから防火設備が不備である。これは建築基準法消防法との矛盾、ギャップ、これが何ぼやっても埋められないで、いつまでたってもこの問題が介在しておる。そして最後には、せっかく指導しておきながら事後措置を何もやってないのです。これ全部に共通しておる。今回の火災にも、まさにこれがそのとおり当てはまっておるのです。  こうなってきますと何か条件反射みたいなもので、あなた方が大丈夫だと言うと火事が起きる、大丈夫だと言うと火事が起きる、また大丈夫だと言うとまた火事が起きる。またあなた方、大丈夫だと言っていますから、ぴんとくるのは、また起きるだろうという条件反射なのです。この条件反射をどうして断ち切るか。大丈夫だと言いながら、五回も六回も七回も悲惨な事故が起きている。  これをどうして断ち切るかということで、今回のホテルニュージャパンの火事に際して私どもが、いま政務次官が言われたように不退転の決意でもって取り組まなければいけない。いままでは決意、決意と言って、決意をやっているけれども、何もやっていないのです。ここのところが、私が冒頭に、一体どういうつもりで今度のあれに取り組むのか、その決意を聞いた理由でございます。  たとえば、川治の火事それから今回の火事、これは非常によく似ているのですね。全く、川治プリンスという名前とホテルニュージャパンという名前と、その名前だけかえれば同じ質問しても通用するぐらい似ているのです。あれから一年三カ月たっています。あのとき私も質問しました。あのとき指摘された事項が何一つ達成されてない。火事を起こした人は悪い。横井さんという人は非常に批判されている。しかし、それはそれとして、こういう長い間、問題点がはっきりと指摘されておりながら放置されてきた。特に、川治プリンスはついこの間の話なんです。それで指摘されたものが何にも改善されないで、再び今回のホテルニュージャパンの火事を起こしている。これはまさに行政の責任以外の何物でもない、私はこう思いますけれども消防庁長官、どうです。
  28. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいま御指摘がございましたように、過去十年間の火災を見てまいりましても、四十七年五月の大阪千日ビル火災あるいは四十八年十一月の熊本の大洋デパート火災、さらには一昨年の川治プリンスホテル火災、さらには今回というふうに、過去十年の中でも四回このような大きな事故発生をいたしておるわけでありまして、私どもまことに遺憾に存じておるわけであります。  ただいま先生からも御指摘がございましたように、これらの火災を通じていろいろその大災害に至った原因等を分析をし、対策を講じてまいったわけでございますけれども、結果的にはこのような火災がなお後を絶たないということは、やはりどこかに問題があるということは事実だろうと思うわけでございます。  一つには、先ほどもお話ございましたように、ホテルあるいは旅館におきます防火施設の不十分ということ、これは一つあろうかと思っております。もう一つは、それに対しまするホテル、旅館側の日ごろの維持管理というものが不十分であるという場合、さらには当日の避難誘導あるいは初期消火が十分でない。と同時に、これらをひっくるめまして、最終的にこれに対する事後の措置をどのようにとるかということかと存ずるわけであります。  このような過去の火災の例を踏まえまして、消防行政といたしましては、その都度消防法改正をやる、あるいはまた消防法施行令の改正をやりまして、スプリンクラーあるいは火災警報装置を遡及適用してつけるというようなことをやりましたり、あるいはまた表示、公表制度を設けましたり、さらには年二回の査察を徹底するというようなこともいろいろ重ねてまいったわけでございますけれども、なおこのような結果になったことは、繰り返し申し上げるようでございますが、まことに残念至極なことなのでございます。  今後、私どもといたしましては、このような事故を踏まえて、これまでやってまいりましたことをもう一度再点検をいたしまして、これまでのやり方について反省を加えるべきところは率直に反省を加えまして、各消防機関指導をさらに強めてまいりたいと思っております。と同時に、旅館、ホテルのような不特定多数の人が出入りいたしまする施設につきましては、防災、安全ということが最大の重要課題であるということをよく認識をしていただくように、消防機関から関係ホテル、旅館等につきまして理解を願い、そして万全の措置をとってもらうということと並行しながら、いま申しましたような消防機関の今後のちゅうちょなき、しかも厳しい適切な対応ということを重ねてまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  29. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 このニュージャパンでは、新聞等で伝えられておりますように極端な人減らし、これが行われておるわけです。  そこで私はお伺いしたいのですが、ニュージャパン、当夜は野田資材部長をチーフにして十人いた、ガードマンが五人夜勤しておる、こういうふうに書いておりますが、実際にはどのくらいおったのですか。
  30. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 お答えを申し上げます。  東京消防庁の方の調査によりますれば、発災時の従業員数は八名ということになっております。そのほかガードマンが五名、委託ガードマンでありますが、警備員が五名、それからいろんなテナントが入っておりますので、そこの従業員が宿直をしておったということで、これが十八名、合わせまして三十一名という報告を受けておるところでございます。
  31. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 テナントの十八名なんというのは問題にならぬ。従業員の八名、これが本命なんですが、従業員の八名が、仮眠をしておって四人しか実際には従事していない、こういうことですね。  それからもう一つお伺いするが、ガードマン、五人いたと言いますけれども、このガードマンは深夜十一時から朝の五時三十分まで、これは社長命令でもって客室のパトロールを禁止されておった。こうなりますと、三階から上はだれもいない。まさに無人のホテルなんですね。三千人収容できる、ここにだれもいない、そして火災が起きる、こういうようなことでありますので、全く、何というか、もう無防備というか手放しの無防備、こういうふうに私どもは思わざるを得ないわけです。  そこで、今回続けざまにニュージャパンと日航の墜落事故が起きました。あれを二つ続けざまに見て、私はこう思いました。ニュージャパン経営者の横井さん、これも、足りないことはわかっている、不備なこともわかっている、直せと再三言われても一向にこれを無視してああいう災害を起こしている。日航も、聞くところによると機長が精神異常だ。精神異常であることがわかっていながら飛行機を操縦さしておる。こんな、人命軽視もはなはだしい。まさに人命軽視もはなはだしいのです。こういうような経営者の態度、こういうものが事故の最大の原因ではないか。  日航でもあるいはホテルニュージャパンでも、お客さんが死んでいるのです。どちらも死んでしまってから、これから気をつけますと言ってももう遅い。生き返ってこないのです。経営者の精神状態というものが一番大切だ、私はこういうふうに思います。  そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、この間、日曜日、テレビを見ておりました。そしたら、湘南のところに横井さんが所有しているホテルが二つある。そのホテルもまことにニュージャパンと同じようで、危険な状態にあると言われております。そして、あそこの所轄の消防の予防課長か署長かがテレビでインタビューされておった。何でそれを取り締まらないかと言ったら、こう言っています。向こうは紳士だから紳士としてつき合っている、だからゆっくりしているのだ、こういう答弁をしているのです。  ところが、先ほどから私が申し上げておりますように、ニュージャパン、四回も勧告を受けても一向にやろうとしない。そして命令して——あなた方の命令は、命令を出してから一年間も猶予がある。最初に勧告をして、命令の一年間、これを加えますと、驚いたことに四年か何年ありますよ。危ないと言ってから四年ぐらいも放置しておいて、一体これはどういうことなんです。危ないと言ってから四年も放置しているのですよ。こんなばかな怠慢なことがありますか。  いま、紳士だと言いました。本当に紳士で、どんどんやっている人はいるのです。スプリンクラーもつけて、いろいろなことをやっている人はいるのですよ。ところが、紳士でない人もいる。何遍やっても知らぬ顔している人がいる。こういう人は、紳士の扱いをしないでずばりとやらなければ、いつまでたったって災害なくならぬのですよ。そう思いませんか、消防庁長官
  32. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいま先生指摘のとおりでありまして、消防機関の指示命令あるいはまた措置命令に的確に反応されまして、消防機関の指示どおりやっていられる旅館、ホテルもあるわけであります。しかし、ニュージャパンの場合には、たび重なる警告もいわば無視されております。そういう状況でありまして、私どもといたしましては、今後、このような悪質なと申しますか、そのようなホテル、旅館に対しましては、ちゅうちょすることなく措置をとるべきだというふうに強く考えております。  各消防機関に対しましても、そのことを改めて指示をいたしたわけでありまして、いま申しましたように、のんべんだらりと指示のしっ放しというのは、私は行政措置としては最もいけないだろうと思っております。結果的に、消防機関東京消防庁としては、警告をいたしますとちょっと工事が始まる、始まってやがてまた見に行くと工事がとまっておる、また警告する、またやり出すというようなことで、いわばかなりの日数がかかったことは事実であります。  消防機関は、それぞれ努力をしたとは存じておりますけれども、しかし、結果的にはこのようなことに相なりましたことは、やはりそれだけの問題があったことは事実でありまして、余り長過ぎたではないかという御批判は、私ども、謙虚にそして厳しく受けとめておるわけでございます。いま申しましたように、こういう悪質なものに対しましては、容赦なくしかるべき法による措置をとるということを、今後とも強く指導してまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  33. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 麹町消防署が五十二年から四回にわたって改善勧告を出し、昨年八月二十日に署長みずから直接横井社長に申し入れた。それでも改善しないので、九月十一日には勧告を命令に変えた。これは本当に、いま話しましたように二年半かかった。さらに、命令を出してから一年の猶予。三年半ですね、まさに四年なんです。こういうようなゆっくりもいいところを紳士扱いにして、いまにやるだろう、いまにやるだろうといって何もやらないうちに火事を出す。しかも、それを何回も繰り返しているのです。  さっきも申し上げましたとおり、川治プリンスのときもそうなんですよ。八項目を勧告しておきながら、一年も何もしていない。その間、査察にも行ってなければ何もやっていないのです。そうして、ああいう火事になって四十何人死んでいる。今回も、三年も四年も放置しておいて火事を出して、これからやりますと言う。これからやりますと言ったって、またやらないに決まっているのです。  だから、私は、その問題で具体的に勧告しますけれども、欠陥ホテルに対して一回改善勧告を出す、それでやらなかったならば間を置かないで警告を出す、それでやらなかったならば間を置かないで命令を出す、命令したら直ちに営業を停止する、そうして改善をきちっとしたら再び営業を認めればいいのです。それくらいの厳しさ——あなた方の、建築基準法が遡及しないから、基準法が決めていないのをわれわれは強制的にやれないという歯切れの悪さは、私もそれは認めます。後でそれを言いますけれども、認めますが、そのために猶予を置かなければいけないと言うけれども、三年半というこの猶予は余り長過ぎる。  欠陥のあるホテル、いつ災害が起きるかわからないようなホテルを三年半も放置しておくなんて、そんなばかな話はないのです。そんなばかな話はない。猶予をつけるにしても長過ぎるから、せめて一年ぐらいで勧告を出し、半年ぐらいで警告を出し、それでもやらなかったならば直ちに命令を出して、命令を出したらば営業を停止させる、これぐらいのことをやらなくて、どうしてああいう欠陥ホテル災害を防ぐことができますか。やる意思はありますか。
  34. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 旅館、ホテルにつきましては、昨年五月に発足をいたしました表示、公表制度に基づきまして、全国消防機関が昨年から一斉調査を行っておるところであります。  この表示、公表制度は、御案内のとおり二十四の項目、六十五の点検個所につきまして一斉査察を行いまして、「適」マークを交付するかしないかということを確認をしていま実施をしておるところでございます。この査察結果を踏まえまして各消防機関は、各旅館、ホテルのそのような消火設備状況、あるいは日ごろの維持管理の状態等が十分承知できておると、私ども理解をしております。  問題は、これを今後行政措置にどう生かしていくかというところだと存ずるわけでございます。その中には聞きますところ、いわば軽微な法律違反であります部分とかなり重大な法律違反というのがいろいろまじっておるわけであります。実態に応じましてどのような措置をとるかということは、一律にはなかなか指示いたしかねるわけでございますけれども、ただいま先生から御指摘がございましたように、三年も四年もかかるというのは常識から見ても長いではないかという御批判は当然だろうと思っております。  私ども、一年がいいか、半年がいいか、二年がいいか、それぞれ実態がございますけれども、できるだけこのような悪質違法な事態が放置されませんように徹底した措置をとることを、地方公共団体、それぞれの消防機関に対しまして強く指導してまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  35. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 その「適」マークなんですが、この前の川治火災のとき、私が何かそういうことをやるべきじゃないかと質問をして、その結果こういうのができてきて非常に私も感謝しておるのですけれども、この「適」マークをつけたところとつけないところと、一体営業上どういうような現実的な差があるか、それを調べたことありますか。
  36. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、昨年五月から発足をいたしまして、幸い東京消防庁は一応去年の九月に完了いたしたわけでありますけれども、なお地方の消防機関におきましては、ただいままだ調査中というところもあるわけであります。したがいまして、最終的にまだ全国的にこの作業が終わったという段階ではございません。と同時に、まだ実施をいたしまして日が浅うございますので、このような「適」マークの効果がどのように出てきたかということを分析、追跡調査をいたす段階にはまだ来ておりませんので、私どもそのような調査をいたしたことはございません。  ただ一般的には、やはり「適」マークというものを住民の方々に周知徹底をするということがぜひ必要だろうと思っております。少なくとも、一般の国民の方々が旅館を選ばれます際に、部屋の設備あるいは料金とか、さらには交通の便利というようなことをいろいろお考えになって選ばれる際に、ぜひこの「適」マークがあるかないかを御確認願うということをやっていただきたいというように非常に強く存じておるわけでありまして、このこともあわせて、今後この「適」マークの趣旨につきまして、それぞれ地方公共団体におきますPRを強化してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  37. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 「適」マークをつけておる方が利益があるかということじゃなくて、「適」マークをつけてないところでも何の痛痒も感じてないということなんだ。だから公表しろ、マークを見ない人は何もわからないじゃないか、公表しろという公表の要求が出てくるのです。私は、あっちこっちのホテルを二、三見てみました。どこにつけておるか、あなたは知っていますか。
  38. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 私どもといたしましては、あの「適」マークをどこへつけろという指示はいたしておりませんけれども、できるだけと申しますか、可能な限り宿泊者の見やすいところにつけてくださいということを指導しております。したがいまして、現在は、玄関につけておるところ、それからフロントの受付の後ろにつけておるところ、これが非常に多いのが実態でございます。
  39. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 大体フロントの後ろにつけてあるのですね。フロントの後ろに大きなのがつけてある。ところが、あれはだれも何も関心を払って見ておらないです。(「不適マーク」と呼ぶ者あり)いま、不適マークという発言がありましたけれども、まさにそのとおりでありまして、宿泊する人が欲しいのは、これが適だというのじゃなくて、これは不適だ、ここは危ないぞという、このところを教えてほしいのです。それが、ここはいいぞとやっている。  しかし、ホテルはみんないいと思っているのですよ。これは論理学で言うところの矛盾対当と反対対当みたいなもので、ゼロから始まってプラスの方へ行く。全部安全だ、しかし「適」マークを持っていればもっと安全だ、一点が十点ぐらいだ、こういう一つのレベルにはなるかもしれませんけれども、大体がホテルというものは安全だ、こう思っているのです。その中に「適」マークをつけてもだれも何も関心を持たない。欲しいのは、ゼロを基準にしてこっちがプラスに「適」マークをつけたならば、こっちは反対に危ないぞとマル危のマークをつけてやらなければ、本当の意味で「適」マークというものが活用されてこない。  いまは「適」マークをつけても何の実効も及ぼしていないのではないか、私はそういうふうに思っておりまして、ぜひひとつこれを公表する制度にしなければいけないと思っておりますが、どうです、いままで公表制度というものをやらなかったけれども、敢然としてやる意思がありますか。
  40. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 「適」マークにつきましては、ただいま申し上げましたように、旅館の表に表示をいたしておるわけであります。私どもは各消防機関にPRをいたしてもらいます際に、ただ「適」マークだよと言うだけではなくして、旅館にお泊まりになる方は日時とかあるいはその料金を確認するとか、電話なり何なりで予約をなさるはずであります。その予約をなさるとき、おたくの旅館は「適」マークがありますかということを必ず一言うけ加えて予約をしていただくということを願いたいという、具体の指導までしたいというふうに存じておるわけであります。  そこで、不適の旅館、いわば「適」マークの交付を受けていない旅館につきましては、ただいま申し上げましたように非常に軽微なものからかなり問題の多いものまで区々であります。これを一律に公表といいますことは、果たして実態としていかがなものかという疑問を私ども持つわけであります。  先般も御質問がございましたように、約九百数十の旅館、ホテルの中で、まだ「適」マークの交付されてないのが三百余りございます。これにつきましては、いま申しましたように非常に内容が区々でございますので、いま東京消防庁の方でできるだけ「適」マークがもらえるように指導あるいは警告を発しまして、改装、改造をさせておりますが、なおどうしても「適」マークがもらえないというものにつきましては、整理をいたしまして委員会にお出しすることに東京消防庁としてはしたいというふうに申しておりますので、この点につきましては御報告を申し上げたいと存ずるわけでありますが、直ちに「適」マークがないからといってそれを一斉に公表するということにつきましては、若干いま申しましたような観点からの問題点が残されておりますので、むしろ、お言葉を返すようでございますが、お泊まりになる方は、逆に「適」マークがあるかどうかということをぜひ確認願いたいということを、国民の皆さんにお願いをいたしたい次第でございます。
  41. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 時間がないのでどんどん進みます。  あなた方そういう歯切れの悪いことを言っているけれども、なぜ歯切れの悪いことを言うか、これはあなたが一番御承知だと思いますけれども公表すると、法律の建築の違反でもないのになぜ公表した、おれのところの営業妨害だ、お客さんが来なくなったじゃないか、賠償しろ、こういう問題が出てくるから、あなた方これを公表できないのです。これは後からの建築基準法の問題とも絡んできますけれども法律にないものをやろうとするからみんな手ぬるくなっていく。  しかし、ここに全国消防協会で発行している「ほのお」という本があります。この本の中に木下健治という弁護士さんが、「既存特定防火対象物に対する消防設備等の設置義務と憲法第二十九条」という問題で論文を書いている。これにはこう書いてある。憲法第二十九条の財産権、これを侵してはならないということ、一方では公共の福祉ということ、これとの兼ね合いで、バランスの問題なんですね。ちょうど新幹線と同じなんだ。新幹線は沿線の人に迷惑をかけているけれども、公共のあれだからということでそれを認めない、がまんしろということになっておるのですけれども、これと全く同じような状態で、一方では財産権を侵害することは許さないという憲法の問題と、今度それじゃ公共の福祉という問題をどういうふうに考えるかということで、ここに論文が書いてあるのです。  「財産権の行使も、憲法第十二条、第十三条によって公共の福祉の制限に服すると考えられる」、だから大丈夫だ、こういうようなことを言っている。しかし、これでもなおかつ大丈夫でないとするならば裁判所の判例がある、こういうふうに書きまして、そして、「公共の福祉に適合するかぎり」これは大丈夫、やってもいいじゃないか、こういうふうに書かれてある。ここのところが、いままでの連続したいろいろな火災のときは、公共の福祉がむしろ下に立って、低く立って、財産権の侵害ということが非常に高く掲げられておる。しかし、次から次とこういう問題が起きてきて、死者が出る、けが人が出る、こういうことになってきますと、公共の福祉の比重というものがだんだん高くなってきて、いまや公共の福祉の方が比重がうんと高くなっているのではないか。  私はいま新幹線と住民の話をしましたけれども、新幹線の場合とは非常に大きな差があるのですね。新幹線の場合は、個人の財産に新幹線が被害を与えている。個人が被害者なんです。ところがこの欠陥ホテルの場合は、ホテルすなわち個人の財産権が、泊まり客すなわち公共の福祉に対して害を与えている。被害を与えている。新幹線の場合は個人が被害者だけれども、このホテルの場合は個人が加害者なんです。したがって、ホテルの財産権よりも公共の福祉、すなわち泊まり客の安全というものが明らかに優先されなければならないと思うのです。  そういう意味でいままでのような、法律に決められていないことをわれわれは強制的にやるんだ、だから遠慮しなければいけない、そうして三年半も待ったり、あるいはまたいまのような「適」マークをつけないところを欠陥ホテルだといって公表もできない、こういうような遅疑逡巡というものをどこかでぶった切らなければ、いつまでたってもこういう状態が直らないと私は思うのですけれども、いかがですか。
  42. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 いまお示しにございましたように、公共の福祉と個人の財産権の保護ということ、これは大変むずかしい問題だろうと存じております。私どもは、やはりそれぞれケース・バイ・ケースであろうかと存じておりますけれども、しかし、少なくとも今回のホテルニュージャパン火災の結果を見ました限り、このような問題につきましては、私どもは何としても公共の福祉と申しますか、それぞれのお泊まりになっておる方々の命といいますもの、これは何物にもかえがたいものだと存じております。もちろん私どもは、いまお示しにありましたような問題点は、そのような立場で理解し、受けとめておるところでございます。今後、私どもといたしましては、もちろん消防機関としては消防法違反の問題それから先ほどお話ありました建築基準法の問題等々もあるわけであります。それはそれなりに苦労をしておると存じますけれども、やはり何と申しましてもこのような大きな事故が起こったことは事実であります。今後、先ほどからも申しておりますようにこのような違法な、しかも悪質と見られます建築物に対しましては、ちゅうちょすることなく厳しい手を打つということを重ねてやってまいりたいというふうに強く感じておるところでありまして、またこのことを地方公共団体に対しまして先般も通達をし、今後とも引き続き強く要請をしてまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  43. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 時間がないので進みますけれども訓練の問題です。  五十四年五月二十八日、横井さんがあそこのホテルを引き受けてから、訓練というものを去年の秋にたった一度、昼に、しかも形式的にしかやっておらぬのです。これは川治でも今度のニュージャパンでも、設備が非常に不備だ。しかし、かすかにある設備、これさえも使った形跡も全然なければ、使うこともだれも全く知らない。支配人もだれも一つも知らないのです。幾ら設備があって、あなた方、設備に「適」マークをつけているのですが、幾ら設備に「適」マークをつけたって、それを使うのは人なんです。人の訓練ができてなければ「適」マークなんてやられない。  特に、夜間の訓練というものは非常に大事なんです。昼間はある程度人がいる。夜間は、先ほど言ったように無人のホテルなんです。こういうような状態で放置されておるということは、これは惨事が起きるのはあたりまえの話で、夜間訓練というものは必ずやらなければいけない。ところが、どこを探してみても、夜間訓練をやらなければいけないという消防法規定がないのです。どこかありますか、この夜間の訓練。一番危ないと思うのです。寝入りばなをやられる、今度のあれみたの火災の結果を見ました場合、ただいまお示しにございましたように消火、防火設備が不十分であった、これは隠すべくもない事実であります。と同時に、日ごろの訓練がほとんど行われていなかったということも事実であります。  御案内のとおり消防法の第八条の規定によりますれば、旅館、ホテル等の防火管理者に対しましては消防計画をつくれということを義務づけておりまして、この消防計画の中には避難訓練に関することも策定するということは当然でありまして、このことを地元消防機関に届けなければならないということに相なっておるわけであります。  また、消防法の施行令では、消防計画の中に年二回必ず避難訓練を実施すべきであるということも規定をされておるわけであります。結局、これは実施されておらなかったわけでありますけれども、一応法制度上は整備をされておるわけであります。  ただ、夜間の訓練を実施すべきであるという規定はございませんが、夜は宿泊客が皆休むわけでありますから、夜間の災害時におきます訓練も含まれなければならないことは当然なんだろうと思っております。各消防機関がこのようなホテル、旅館からの消防計画を受け付けます際に、当然そのことも含めて、夜間の防火管理体制はどうなっているかということもチェックをしている状況であります。  なお、今回の「適」マークにつきましては、先ほど申しましたように二十四項目の事柄を点検いたしますが、その中には単なると申しますか、設備だけではなくして、日ごろの訓練等もその判定項目の中に入れておりますことをつけ加えさせていただきたいと思います。
  44. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 時間になりましたからちょっと時間をもらいたいのですけれども、先ほども話がありましたように、四十九年に建築基準法改正するとき、非常に金がかかる、しかも工事をする間商売は休まなければいけないというので業者の非常に強い反対があって、とうとう必要な事項を削除して、修正して取ってしまった。この問題がいまの災害に非常に尾を引いている。御承知のとおりです。  これを補うために、建設省は要綱を出してやっているけれども、さっぱり実効が上がっておらない。法律じゃないから強制力がないから、だれも言うことを聞かない。その間隙をついて火災発生する。こういうことをいままで繰り返してきておるわけです。そして、先ほどから申し上げておりますように、消防庁がすぐ営業停止もできない、二年も三年も猶予を与える。公表するといっても公表できない。われわれは基準法に違反してないんだから、おまえらなぜ公表する、営業妨害じゃないかといってとっちめられるものだから、それも公表できない。この最大の原因は、建築基準法が四十九年改正以前の古い既存の建物に遡及できないというところにあるのです。  この問題が根底に介在しておるので、消防も歯切れが悪いし、みんな歯切れが悪くて、これはいつまでたっても災害を再び繰り返す元凶だと私は思うのです。どうしてもこの災害を、特に一番危ない既存の建物から災害を除去するためには、この建築基準法を再改正しなければいけない、そういう意思が建設省ありますか。
  45. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 建築基準法建築物に関する安全等のことを定めた法律でございますが、建築物の性格上、既存のものにさかのぼってこれを改善させるということが非常にむずかしい状況にあります。したがいまして、建築基準法法体系としては、既存のものには遡及しないということで法律が成り立っております。  次に、しかしながら、こういったいろいろの災害がありまして、これに対して何らかの措置既存建築物についても行う必要がある。そのためには、どういった形でこれの改修指導していったらいいかということにつきましては、昭和五十二年から五十三年にかけまして既存建築物避難施設整備対策懇談会を設けまして、学識経験者関係省庁等の御協力を得まして、その技術的な基準を十分に練ったわけでございます。その技術的な基準に従いまして現在防災改修指導を行っておりますが、ホテル、旅館等につきましては対象となっております二百六十五件のうち、約半分が改修済みとなっております。また、未改修のものにつきましても、工事中のものが十七件、計画の提出のものが六十二件となっておりまして、改修の予定であります五十八年度じゅうには、何とか全部改修をしたいというように考えております。
  46. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 五十八年というのは来年ですよ。来年までこの残ったものを全部完全に改修させる自信あるの、もう一遍伺いましょう。
  47. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 現在、特定行政庁に指示いたしまして、その改修を十分に行うよう指導しております。何とか、すべての旅館、ホテルについて改修が実行できるように努めてまいりたいと思っております。
  48. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 その言葉を忘れないようにしていただきたい。もう一遍火事が起きたら、今度あなた辞職ものですよ。  いま、新聞を見ても何を見ても、遡及するために基準法の法改正が必要だということは、もう衆目の一致するところなんです。これを改正しなければどうにもならぬ。ここに消防庁長官いますけれども消防庁もそう思っているんです。歯がゆくてしょうがない。あなた方もそれは必要であることを認めて、法でできないから通達を出してやっている。しかし、強制力を持たないから、言うことを聞かない人がいて、そして惨事か繰り返し行われておるのです。  これはなぜ改正できないか。一にかかって業者の圧力なんです。金がかかる、さらにもって、工事中商売は休まなければいけない、だから、できないと。紳士はやっていますよ。紳士でない人がやっているホテルから火事か出る。宿泊人、いわば国民を危険にさらしてまで、あなた方建設省は業者の利益を守らなければいけないのか、こう私どもは言いたくなるんです。もう一回聞きますけれども、この建築基準法改正案を提出する意思はないですか。
  49. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 さきに申し上げましたように、現在、改修を実施しております建物については、比較的改修の効果も上がっておると思います。しかしながら、今後ともにその改修強化に努めてまいりたい。それによって、建築物が非常に多種多様でございますから、一律の法的規制よりも行政指導による方がより効果的ではないかというように考えております。
  50. 佐藤(敬)委員(佐藤敬治)

    ○佐藤(敬)委員 もう全く、そういう御答弁をやっていると、また火事が起きますよ。だから、私は、あなたでなくて局長に出てきてくれと言ったら、局長は事務屋だからわかりません、じゃ、大臣出てきてくれと言ったら、大臣は何もわかりませんからわかりません、そして、あなたを出してよこした。私は、そういう技術的なことを聞いているんじゃないんですよ。こういうことをやる意思があるかという政治的な答弁を聞きたかったんだ。きょうはたった四十分しかなくて、どうも意を尽くさないであれですが、またそのうちに時間をとってみっちりやりますから、ひとつよく勉強しておいてください。  終わります。
  51. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 青山丘君。
  52. 青山委員(青山丘)

    ○青山委員 政務次官、消防庁、この二月八日未明にホテルニュージャパン火災が起きました。三十二名の死者を出すという大変痛ましい火災事故でありますが、翌日、実は九日の日に私、この委員会で若干質問をいたしております。したがって、きょうは、私からは一、二点だけ質問をさしていただきたいと思います。  消防庁から出されております資料の中に、「指導書交付」のところに「昭和五十二年以降四回指導書を交付し、ホテル側昭和五十二年以降改修計画を」これは七回と書いてあるのと八回と書いてあるのと両方ありますが、正確にはどうも八回のようですが、「八回提出している。」何回も改修計画書を出せばいい、回数を多く出せばいいというものじゃありませんで、それだけまた、回数が多く出たということは、同時にそれだけ信憑性がない。何回も警告しなければならなかった。また、何回も改修計画を出してきた。しかし、その実はほとんど成果を上げていない。  一体このホテル経営者は、本当に改修をする意思があったのかどうか、改修をするというふうな印象を持っておられたかどうか、まず聞いておきたい。それから、この改修計画内容についてわかっていましたらお答えください。
  53. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいまお示しにございましたように、消防機関からは四回指導警告書を出しまして、最終的には去年の九月に措置命令を発したわけであります。その間、ホテル側から八回にわたりまして報告書を出してきておるというのが実態であります。いまお示しにございましたように、とにかく長い時間をかけまして警告をしたり報告書をとったりというのは、いささか時間がかかり過ぎたではないかという御批判は私はあろうかと存じております。  内容でありますが、内容につきましては、順番に申し上げますと、最初指導書を出しましたのは五十二年二月二十八日でありまして、署長から当時の藤山社長に対しまして、スプリンクラー等の設備につきましての設置内容としておるものであります。その次は、五十四年三月三十一日でありますが、今度は署長から同じく藤山社長に対しまして、スプリンクラー等の設置期限が、この日がもう猶予期限、法適用の最後の日でありますので、これの設置についての趣旨徹底を図っておるわけであります。それからその次は、一年たった五十五年二月十六日でありますが、今度は署長から、この間に社長はかわっておりますので、横井社長に対しまして防災計画をさらに進めろ、それから新しい計画を、かなりおくれておりますので、出せということを申しております。それから五十五年八月になりまして、遡及の設備に関しまする具体的な設置計画の樹立を要請をしております。これも署長から横井社長にいたしております。  それから、改善の報告書でありますが、目下出ておりますのは、最初は五十二年五月二十八日であります。それから、日付をまずずっと申し上げますと、五十三年四月二十五日、五十四年三月十六日、五十四年三月二十八日、五十四年五月一日、五十五年八月二十五日、五十六年六月三日、五十六年十月二十二日ということに相なっております。この八回にわたりまする報告書を出すにつきましては、前段申し上げましたように年二回の査察、あるいは機会あるごとの警告によりまして、このように一応計画を出してまいったわけであります。しかし、先ほど先生も御指摘ありましたように、内容的には見るべき進捗をいたしておりません。  そこで、最終的に出してまいりました——この五十六年十月二十二日に、ホテル側からいわば今日までの最後的な文書回答を得ておるわけでありますが、これにつきましては、地元の東京消防庁といたしましては、消防法に基づきます措置命令後の回答でございますのでというのが一点であります。措置命令を五十六年の九月に出しておりますので、措置命令の後の回答でありますこと、それから施工予定の業者の見積もりをやったり打ち合わせをやったりしておりますことから見まして、この五十六年十月二十二日の回答書につきましては、東京消防庁としては、かなり実現性が高いという感触を得ていたというふうに私ども承知をいたしておるわけであります。
  54. 青山委員(青山丘)

    ○青山委員 消防法改正昭和四十九年、先ほども触れておられましたが、昭和五十四年三月三十一日までに旅館、ホテル等はスプリンクラー等の消防設備設置することを義務づけている。ですから、本来ならば、五十四年三月三十一日までに設置されておらなければならなかったはずであります。四十九年に法改正になっていますから、本来ならば四十九年以降は、スプリンクラー等の設置の方向に取り組んでもらっておらなければならなかった。にもかかわらず、五十四年三月三十一日までに設置されなかった。まず一つ、このことが重要なことだと思います。  それからまた、二年間は、指導書が交付はされておりますが、その間、改修計画なるものを提出していた。その改修計画が八回出されている。その実、ほとんど成果を上げていないということは、改修計画指導書に対する回答を小出しにしていて時間稼ぎをしていた、このホテル側の姿勢に消防署が乗ってしまっていた、まことに残念だと私は思うのです。措置命令が出されたのが五十六年の九月十一日ですか、これまでほとんどやる意思がなかった。いま、その後はやる意思があったと消防庁は受けとめておられるようですが、措置命令が出されるまではほとんどその意思がなかった。ちなみに、何回も改修計画書が出されてきていたけれども、それは全くほごにも等しかったという結論が出ていることは御承知のとおりです。  昨年の三月三十一日、株式会社ホテルニュージャパンが大蔵省に出している有価証券報告書によりますと、「第四 設備状況 一、設備」で、いろいろ設備状況が報告されております。その二に「設備の新設・拡充若しくは改修等の計画 該当事項はありません。」と書いてあるのです。これは、昭和五十五年一月一日から五十五年十二月三十一日までの報告書であります。それは、昨年の三月三十一日付で大蔵省に出されている報告書です。経営側は「設備の新設・拡充若しくは改修等の計画該当事項はありません。」と書いてあるのです。  消防行政に対して、防災意識が全く欠如しておるという一言だけでは済まされない。三十二名のとうとい命が先日の火災で失われている。全く痛ましい。そして、消防活動に当たられた消防士諸君、あの活動の状況を聞いてみると、それは献身的に消防活動に当たられた。しかし問題は、消防行政経営者防災意識が全くない、消防法違反じゃないか、こういう声がほうはいとして出てきておる。この経営者の責任は重大です。消防庁及び警察庁、御見解はいかがですか。
  55. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 先ほども申し上げましたように、このホテルにつきましては八回にわたりまして改修計画を出してきております。その都度、若干の工事を進めてまたとめるというふうなやり方であったようでありまして、また指導書を出す、改修計画がまた出るというようなことの繰り返しであったようであります。この点につきましては、もちろんそれぞれの時期、時期に応じまして、地元東京消防庁としては、何とかしてこの設備をつけさせようということに努力をしておったようでありますけれども、ただそれなるがゆえに、ただいま申し上げましたように余りにも時間がかかり過ぎたという御批判は当然あろうかと存じております。現に、設置期日が過ぎました五十四年四月一日から見ましてももう二年何カ月、約三年近い日時がたつわけであります。  この間、いま申し上げましたように東京消防庁としての対応がまことに緩かったという御批判は、私ども厳しく謙虚に受けとめなければならないと存じております。今後は、このようなことが再び起こることがあってはならないわけでありまして、このような結果も踏まえまして、今後の十七条の四の適用あるいはまた五条適用等につきまして厳しい運営をいたしてまいりますように十分検討し、それぞれの消防機関を強く指導してまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  56. 大堀説明員(大堀太千男)

    ○大堀説明員 お答えいたします。  各種防災施設、防火施設の設置、管理等の不備について、ホテル管理者側の責任の追及につきましても鋭意現在捜査を進めておりまして、御指摘のようなスプリンクラーの消火設備の不備というようなことにつきましても現在捜査をし、一部明らかになっておるところでございまして、今後ともこれらに関する捜査を遂げ、刑事責任の有無について明らかにしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  57. 青山委員(青山丘)

    ○青山委員 消防庁、謙虚に消防行政に対する反省を述べていただいたこと、一定の評価をしておりますが、ホテル経営者に対する消防法義務違反だと私は思うのです。その責任はどのように追及していかれるのか、お尋ねします。
  58. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 私どもといたしましては、ホテル側につきましては、もちろんのことながら被害者に対する民事上の賠償責任は発生するものであろうと思っております。と同時に、刑事責任につきましては、現在警察庁の方で捜査をされておるわけであります。もちろん、私どもいわば門外漢の一般常識論でありますが、民事責任、刑事責任は当然問われるべき事案ではないだろうかというふうに、私、個人的には感じております。
  59. 青山委員(青山丘)

    ○青山委員 終わります。
  60. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 部谷孝之君。
  61. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 去る二月八日未明に発生いたしましたホテルニュージャパン火災は、死亡者数三十二名、負傷者三十四名を出すという大惨事になったのでありまして、これらの犠牲者の中で死亡された方には御冥福を祈りたいと思いますし、また負傷者の方々にはお見舞いを申し上げたいと思います。  先ほどから当局はいろいろと厳しい追及を受けておられるわけでありますが、私は冒頭、しかしああした大変な惨事の中で六十六名のとうとい人命を救助された消防職員の皆さんの果敢な活動に対しましては、まず労をねぎらいたい、このように思うわけであります。  しかしながら、四十四年の磐光ホテルあるいはまた最近起こりました川治プリンス等々、そうした旅館、ホテルの大惨事というものが過去しばしば起こっておるわけでありますが、国際都市東京の中心部で、しかも最も近代的で安全であると信じ切っておった、そういうホテルニュージャパンという高層ホテル火災が起きたということは、これはまた社会的に与える衝撃もきわめて大きいものがある、このように思うわけであります。  ホテルニュージャパンは、三階以上はスプリンクラー設置されなかったほか、数々の指摘されたような欠陥を持ち、いわば起こるべくして起こった人災である、こういうふうに言わなければならないと思うのですが、まず五十五年十一月に起こりましたあの川治プリンスホテル、この火災の教訓というものは一体どのように生かされてきたのか、まずお尋ねをいたします。
  62. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 川治プリンスホテル火災の原因といいますものは、いろいろな要素が重なっておったわけでありますが、一つには、消防設備がまことに不備であったということ、ないしはそれに対します日ごろの維持管理がこれまた非常にまずいということ、さらにはまた、火災発生時におきます避難誘導というものに対しましての手落ちがあったのではないか、まああったということが大きな問題であったわけであります。  この川治プリンスホテル火災の直後に、私どもといたしましては、全国の消防機関に対しまして、旅館、ホテルの一斉点検をお願いいたしたわけであります。その結果を踏まえまして、実は昨年の一月に、各消防機関に対しましては、消防設備等の設置あるいは維持管理について一段と努力をしてほしいこと、二番目は、旅館、ホテルにおきます日ごろの防火管理体制あるいはまた発災時におきます避難誘導等についての指導強化してほしいということ、三番目には、不備事項の是正については、警告の出しっ放しではなしに、適切なる指導をしながら、そして最終的には悪質なものに対しましては措置命令を発する、あるいはまた告発をするというような厳重な措置をとる、この三点を柱にいたしました通達を出しまして、ここずっと一年余り、いろいろと指導を続けてまいったわけであります。  さらにまた、先ほどから御議論に出ておりましたように、昨年五月からは、旅館、ホテルにつきまして表示、公表制度というものを設けまして、すべての旅館、ホテルにつきまして二十四項目、六十五カ所の点検を行いまして、これに合格したものには「適」のマークを交付する、なお、不適格な旅館につきましては、措置命令後、それが是正されない場合には公表するという、いわゆる表示と公表の制度を兼ね合って発足させるというようなことで、いろいろと手を打ってまいったわけであります。これまでもいろいろ努力はしてまいり、あるいはまたそれぞれの消防機関努力をしたと存じますけれども、しかし、結果的には御案内のように、二月八日にはホテルニュージャパンにおきましてあのような大火が発生したわけであります。  今後は、いま申しましたように、これまで積み重ねてまいりましたいろいろな行政努力をさらに一段と強めて、このような事故が二度と起こりませんように、いろいろな面での措置を講じてまいりたい。とりわけ、悪質な違反建築物に対しましては、厳正な措置をとるということを厳しく指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  63. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 一月二十四日、七省庁で協議されました了解事項あるいは防火対象物に係る表示、公表制度等の内容にいろいろ質疑したいこともありますが、それはちょっと後に回しまして、消防法十七条の四の違反、これは六カ月以下、二十万円以下ということになっておりますが、この程度の罰則ではこたえないと私は思います。  特に、いま問題の横井社長は、戦時中の軍需産業あるいは戦後の糸へんブーム、そうしたものによって巨万の富を築いたと言われ、また白木屋の乗っ取り騒動だとか、あるいは東京住宅生協事件だとか、あるいは安藤組の襲撃事件等々、大変そういう意味で有名になった方でありますが、こうした経歴の方がそうしたきわめて薄い罰則ということではさらに強制力が働いてこないと思うのですが、そうした罰則強化というものを考えておられるかどうか、お尋ねします。
  64. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 罰則につきましては、いまお示しのございましたように、十七条の四の措置命令に従わないときには六カ月以下の懲役ということに相なっております。法体系全体といたしまして、行政官庁の発しまする措置命令に違反しました場合六カ月の懲役というのは、全体のバランスから見れば決してそれほど軽い刑罰ではないという感じであります。と同時に、一般的、常識的に考えまして六カ月の懲役というのは、これまたそれほど軽いものでもないという感じもするわけでありますけれども、しかしそれは先生お示しにございましたように、相手によりけりということだろうと思うわけであります。  したがいまして、私ども、この六カ月が軽いか重いかということを、これはいろいろ相手があるわけでありますけれども、そういうこととは別にいたしまして、この消防法体系全体の中でこの刑罰というものが適正妥当かどうか。あるいはまた、いま申し上げましたように各種他の法律によります行政措置命令違反に対して、どの程度の罰則が科せられておるかというものとのバランス等々もあろうかと存じております。私どもといたしまして、一律にこの六カ月という刑を長くすること自身につきまして、まだ確たる自信を持っておりません。今後いろいろな方面からの、角度からの、全体としての検討はいたしてまいりたいと存じております。  私は、まあ率直に申し上げますれば、もちろん刑を重くするというのも一つの手だてではあろうかと存じておりますけれども、やはりそれよりも何と申しましてもこのような旅館、ホテルといいますものは、申し上げるまでもなく不特定多数の方の命を預かる仕事であります。やはり経営者としてのモラルというのが、これはまず第一だろうと思うわけであります。と同時に、あわせまして消防機関指導ということも、やはり大きなウエートを持っておるだろうというふうに理解をいたしております。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、そのような観点から全体の中でいろいろと今後研究をしてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  65. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 強制力が弱いと言われておる消防法の中で、唯一の強い条項が第五条であることは申すまでもないところなんですが、こうした五条適用の範囲にこのホテルニュージャパンは入らないのかどうか、その点いかがでしょうか。
  66. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 火災発生いたします前のニュージャパンの状態が五条構成要件に該当しておったかどうかというのは、これはちょっと直ちに結論はむずかしいと思うのでございますけれども、一般論として申し上げますれば、消防法五条によります使用の停止といいますものは、あの法文にございますように、消防長または消防署長防火対象物の位置、構造あるいは設備状況につきまして、火災の予防上必要であり、または火災発生したならば人命に危険があると認めた場合に適用されるという法文になっておるわけであります。  今回、東京消防庁におきましては、東京消防庁として最終的に設備設置させたいということに力点を置いておりまして、それはスプリンクラーなり防火壁であったわけでありますが、そのような消防施設の未設置という事実関係をとらまえまして、まず消防法の中での行政手続としては警告を出す、あるいはまた十七条の四の規定による措置命令をかける、それによって従わない場合には公表あるいは告発というような手続を踏むというところから入っていこうとしたわけであります。したがいまして、一つ行政手続としてそのような方向から入ろうとしたわけでありますけれども、それが実は結論から申せば、いわば失敗に終わったと言わざるを得ないと思うわけであります。  したがいまして、東京消防庁のこのような行政手続が果たして妥当であったかどうかということは、これはいろいろ御批判が残ろうかと思っております。結果としては失敗であったではないかというただいま申し上げましたような御批判もございましょう、あるいはまた行政措置としてはこの方法が、いわば消防機関としては旅館、ホテルの営業許可権者ではないわけでありますから、このような直ちに営業停止措置命令というような手を次から次へと打つということに対する逆な意味での御批判もまたあったかと存ずるのであります。しかし、最終的にはあのような火災になって多くの人命が失われたということを踏まえますれば、またおのずと答えも出てくるかと思うわけであります。  いずれにいたしましても、このように東京消防庁考えておりましたことは事実であります。と同時に、この五条自体が立法当時から抽象的な一般的な火災危険性だけではだめなのであって、差しかかった具体的な火災危険性が存在する場合に適用されるという法解釈になっておるわけであります。もちろん、そのような法解釈というものは一つ解釈として成り立っておるわけでございますが、今後その運用につきましては、私ども今回の結果も踏まえまして、この五条の発動すべき条件というものにつきまして十分検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  67. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 五条条文を見ますと、「人命に危険であると認める場合には」こうした五条適用措置ができる、こうなっておるわけですね。結果的に人命があれだけ失われるということはそうした危険があったということでありまして、そのことを消防長あるいは消防署長が認めなかったということになるわけで、いまいみじくも失敗であったという、あれは反省だと思うのですが、そういうふうに私受け取りたいと思います。  そこで、そういう反省もされておるけれども、同時にもう一点問題のありますのは、いまの五条条文のただし書きの問題であろうと思うわけであります。ただし書きがあるばかりに第五条は死文化しておるのではないか、こういうふうに思います。ただし書きは私は削除すべきである、こういうふうに思います。伝家の宝刀を抜かないのではなくて抜けないのだ、こういうふうに思うわけでございますが、御見解はいかがでしょうか。
  68. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 五条のただし書きがございます。これは非常にむずかしい規定なんでございまして、一応いろいろ意見はあるわけでございますけれども、これまでの有権的な解釈といたしましては、五条につきましては、建築物その他の工作物について許可あるいは認可を与えたときの状態が存続しておる限り適用されるということなんであります。この場合は、あくまで許可または認可の際の状態を前提にしておるということの解釈になっております。したがいまして、許可を受けた時点では、あの建築構造等につきましてはいわゆる適合なんであります。現時点におきまして、あの時点からは構造は変わっていないわけでありまして、その時点で適法に建築の許可をもらった建物であるということでございます。  したがいまして、この辺の扱いにつきまして、五条解釈とそのただし書きというものとを今後どのように考えていくかというのは、これからの一つ運用上の問題であろうと思っております。ただ、その五条のただし書きは解釈が非常にむずかしゅうございまして、いま申しましたように、建物の許可または認可が与えられたときの状態が存続しておるときに限って適用されるんだということに相なっておりますことをお答えさしていただく次第でございます。
  69. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 だから、ただし書きは私は削除すべきであるという提案をしておるわけでございまして、ひとつ御検討いただきたいと思います。  次に、俗に言うところの「適」マークの問題でありますが、ホテルニュージャパンに宿泊いたします客はだれもそんな欠陥ホテルだとは思ってもみなかっただろうと思うのですが、そういう形で、いわば宿泊客の目をふさいでおったということはきわめて重大だと思います。そういうことで、先ほどから不適格なホテルの名前を公表したらどうかという御議論がございました。当然そうしたことが、五条による措置命令にも匹敵するほどの効果があると私は思うのです。  そういう御議論の中で、なかなかむずかしいというふうなお話でございますが、不適格なホテル公表することがむずかしいということであるならば、防災管理上適合した旅館、ホテルを利用者に知らせるために消防庁がはっきりとした一つ基準をつくって、そしてたとえば国鉄の列車時刻表あるいはまたホテル協会の会員一覧表、そういうものに基準の適否を表示していくということを考える必要があるのではないか、利用者の立場に立つ措置である、そういうふうに思うわけでありまして、国鉄列車時刻表を発行しておる、たとえば弘済会だとかあるいはホテル協会だとか、そういうところへそうした協力を求めていくことが非常に効果的だと思うのですが、そうした御意思はございませんか。
  70. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 私ども、昨年五月から発足をいたしました旅館、ホテルの「適」マーク制度を、国民の方々にどうして知っていただくかということに実は大変腐心をしておるところでございます。機会あるごとにテレビでありますとかあるいはラジオでありますとか、いろいろな政府の広報機関、広報の場を通じていろいろ広報し、とりわけ各市町村並びに各市町村消防機関の方でそのことを、それぞれの地域方々にPRをしていただくということをかねがねお願いをしておるわけであります。それぞれの市町村におきましても、いろいろと努力をいたしておるわけでありますけれども、率直に申しましてなかなか関心を持っていただけないということなのであります。  それで、私どもは、今後それぞれの市町村を通じまして、何とかして地域方々にこの「適」マークの意味するところを十分御理解をいただきまして、旅館、ホテルを選ばれる際の一つの目安に使っていただきたいということをお願いをしておるわけであります。と同時に、今後、私ども、率直に申しまして国民の方々が旅館、ホテルを選ばれます際に、いま申しましたように旅館、ホテルの予約をなさるという際には、必ずおたくの旅館は「適」マークがあるかということを一言電話で聞いていただくということ、その一声で結構でありますから、何とかしてそれをやっていただけぬかということを考えておるわけであります。  なお、いろいろ先ほどお話がありましたように、時刻表でありますとかあるいはその他のものにつきましてこの「適」マークを表示するということは、私は結構なことだと思っております。ただ、問題は、去年の五月から発足をいたしましてまだ各消防機関全部出そろっておりません。東京消防庁なんかは、実は昨年の秋に完了いたしております。なおしかし、この火災以後さらに一斉点検をやりかえておりますので、若干の遺漏は生じると存じますけれども、このようにもうでき上がったところ、それからまだいま一生懸命やっておるところ、いろいろであります。この辺取り扱いが余りにも区々になりますれば、これまた不公平と申しますか不均衡なことにもなります。  私ども、この「適」マーク制度ができ上がりました段階におきまして七省庁連絡会議というのを持っております、そこの議題に供しまして関係省庁とも十分御相談をしてみたいというふうに、どのようなお取り扱いをなされますか存じませんけれども、十分に御相談をしてみたいというふうに考えておるところでございます。
  71. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 積極的な御意思があるようでありますので、ある程度その調査が出てきた段階でひとつみごとな実行をやっていただくように期待をいたします。  それからもう一つ。「適」マークというのは一種類なんですけれども、その「適」マークを表示する内容については必ずしも画一されたものではない、Aクラス、Bクラス、Cクラスというふうに、「適」マークに適合する施設ではあるけれども段階があるのではないかというふうに私は思うわけです。防災上適格度の非常に高いところ、中ぐらいのところ、低いところ。われわれ外国に旅行いたしますときに、外国の旅館に星が五つついたり四つついたり三つついたり、そういうことでわれわれは大体その旅館のクラスを判断するわけでありますが、私は「適」マークについてもそういうふうなランクづけが必要である、そして利用者がランクによって、自分は少々料金は高いけれども安全度の高いAクラスへ泊まろう、いまちょっと手元不如意だから自分で十分気をつけてBクラスへ泊まろうというふうな選択が必要になってくるんではないかと私は思うのですが、そういうふうなお考えはございませんか。
  72. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 「適」マークにランクをつけてはどうかという御意見と拝聴いたしたわけでございます。実は、この「適」マーク制度を発足させますまで相当長い時間をかけまして内部検討を重ね、あるいは部外の御意見等も承って、去年の五月にまとめて実施をしたわけであります。その検討の中でも、ABCのランクをつけてはどうかという意見もあったことは事実であります。しかし、この「適」マークで期待しておりますものは、少なくとも消防法上適合した施設を備えているということが条件であります。あるいはまた、その施設についての日ごろの維持管理、避難訓練等が法の手続に従ってなされておるという、いわばソフト面、ハード面、両面から消防法上適合しておるという趣旨でございますので、そこでABCをつけますと、少し法律違反をやっておるのはCとか、完全にやってないのはAとか、そうすると少し法律違反をやっておるのを認めるのかということになりまして、これはどうも法律を守ることにABCはないではないだろうか、結果的にはイエスかノーか以外に手がないと考えまして、このような制度をとったわけでございます。  したがいまして、私ども、先ほどいろいろお示しございましたように、ホテルの家具、調度品でありますとか規模とかによってABCをつけるということ、これは当然可能だと存じますけれども法律に適合しておるかどうか、防災上危険があるかないかについてABCをつけることは適当ではないんじゃないだろうかという結論に達して、このようなことにいたした次第でございます。御了解賜りたいと思うわけであります。
  73. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 きわめて限られた時間でありますので、まだ運輸省にも建設省にもお尋ねしたい事項があったんですが、最後に建設省に一、二点お尋ねしたいと思うのです。  まず、ホテルニュージャパンは二度にわたって増築を行っておりますけれども、これは建築基準法上の違反があったのかなかったのか、端的に御答弁を願います。
  74. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 お答え申し上げます。  ホテルニュージャパンは、昭和三十三年の三月に建築確認を受けて建設されております。その後数回にわたりまして増築が行われておりますが、その時点におきましてはその当時の建築基準法に適合していた、したがいまして確認をしております。ただ、その後ホテルニュージャパンの内部において確認申請なしに改修とか増改築があったかどうか、それらについては現在調査を東京都に指示しておるところでございます。
  75. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 それから、基準法上は客室と客室の間の隔壁、これは防火壁にしなければならないのかどうか、その点どうですか。
  76. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 旅館、ホテル等につきましては、防火上主要な間仕切りにつきましては耐火構造または防火構造にしなければならないという規定がございます。その場合、ホテル等の防火上主要な間仕切りにつきましては、通常、数室単位でそれを区画するところを防火上主要な間仕切り区画というように考えております。したがいまして、ホテルニュージャパンにおきまして、全室がすべて防火構造で隔壁がつくられていなかったとすれば、それは建築基準法上の違反ではないかというように考えておりますが、現在、それにつきましても調査中でございます。
  77. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 基準法上、千五百平米ごとの防火壁が必要だというふうになっておるのですが、その条件は満たしておったのですか。
  78. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 千五百平米ごとの防火区画につきましては、確認時において適合しているということで確認をしております。  ただ、防火戸は、鉄製の防火戸を備えることになっておりますが、その防火戸が火災時に十分に作動をして閉鎖されたかどうか、その点については若干疑義の点があると思っております。
  79. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 私どもも、先日現地の現場を見させていただいたわけですが、この延焼しております実態を見ますと隔壁に木を使ってある。特に、窓際三十センチのところに木部がある。これが防火上、木を使ってなければこうした大惨事にはならなかっただろうというふうにわれわれも思いますし、そのような指摘がされておるわけです。  そこで、一つは、見たところ全部三十センチがあいておるわけですね。三十センチが全部あいておるということは、千五百平米ごとの防火隔壁になっておったかどうかという疑問がきわめて強く出てくるわけです。その疑問はどうなのかということが一点。  それから、そうした木部があったことによって被害をきわめて大きくしたわけでございますが、そうしたことに対して、つまり仮に千五百平米ごとの隔壁がちゃんとあったとしても、こうした個々の客室の間に木部が使ってあったということが被害を大きくしたという、そういう教訓としてそのことをどのようにとらえておられるのか、そうした問題を防災観点からどのように生かしていこうとせられるか、その点の御見解を伺いまして私の質問を終わります。
  80. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 千五百平米以内ごとに防火区画をしなければならないわけでございます。その場合、その千五百平米の床面積を超えて防火区画がなされてなかったとしますと、それは建築基準法規定に適合してないということになると思います。これについては東京都に指示して調査中でございます。  それから、ただいま先生の御質問になりました隔壁について、十分それを耐火性能あるいは防火性能のある構造とすべきかどうかという点につきましては、当然消防法との関係のとり合いのところがあると思います。スプリンクラーが十分に措置されていれば、そこまで、各客室ごとに全部隔壁を防耐火構造にする必要はないのではないかというように考えられます。ある一定面積、すなわち百平米なり二百平米なりごとに区画をしていってそれで差し支えないかとは思いますが、今回の火災の重大な惨事にかんがみまして、これらの点につきましても、防火上主要な間仕切り壁をかなり厳重に強化して運営をしていくべきではないかとも考えられます。今後、十分に検討してまいりたいと思います。
  81. 部谷委員(部谷孝之)

    部谷委員 終わります。
  82. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  83. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
  84. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 私も、午前中に引き続きまして、ホテルニュージャパン火災に関連して若干質問いたしたいと思います。  先般、当委員会現場を視察させていただきましたが、行ってみて、なるほどこれでは起こるべくして起きた災害だ、まさに人災だなと直感したわけでございます。スプリンクラーの、あるいは防火区画の未設置に始まりまして、警報器のスイッチ操作を警備員が知らなかったという問題だとか、あるいは救助袋の設置場所を、あるにはあったのだけれどもお客さんが知っていなかった、それがまた避難装置あるいはその見取り図の中に入っていなかったとか、あるいはまた非常用の館内放送のテープデッキが、二台あるうちの一台が故障していて、故障していない一台の方にはそれこそテープが入っていなかった、全くお粗末そのものという内容であったわけでございます。  この安全管理のでたらめぶりといいますか、一体この責任はどこにいくのだろうか、おいおいとこれはいまからお尋ねしていくわけでございますが、私は二度とこういう事故を起こさないためには、まず防災査察が大事だと思うのですね。恐らくこれも消防庁は、年に二回は義務づけられて行っているはずです。建設省もやっていると思いますが、そういう点どうなっているか、まずお聞きしたいと思います。
  85. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 今回のホテルニュージャパン火災につきましては、結果といたしましてあのような大事に至りまして、消防といたしましては、いろいろ反省すべき問題点もあるというふうに私ども考えております。  いま申されました査察につきましては、ホテルにつきましては、消防機関といたしましては年二回定期の査察を行い、不備事項あるいは不適正な事項がありますれば、その都度指導し、警告をしておるというのが実態でございます。
  86. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 建設省はどうなんですか。
  87. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 建設省といたしましては、建築基準法の執行を行っております特定行政庁に対して、建築物防災指導週間、年二回ございますが、その二回について重点をしぼりまして査察を行うよう指導しております。
  88. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 これは消防庁建設省と時を同じゅうしてやるということではなくて、別々に行っているわけですね。
  89. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 原則として一緒にやらなきやならないという規定は別にございません。実態を申し上げますれば、それぞれ別個な立場で、別にやっております。ただ、結果は状況に応じてお互い連絡をし合っておるというのが実態であります。  なお、たとえば川治プリンスホテル以後、旅館、ホテルの一斉査察を行いましたが、あの際は両者共同でやったということもございます。
  90. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 いま、毎年二回は建設省消防庁も行っているわけでございますが、行うのは必ずしも一緒ではない、やったこともあるけれども、必ずしも一緒ではないんだ、そして、やった結果は状況に応じては連絡し合うという話ですけれども、私は当然、年に二回程度なんですから、お互いに、それが終わった段階でその結果を、状況に応じてではなくて、必ず連絡をし合うというふうに決めるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  91. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ごもっともな御指摘だと存じます。私ども今後、七省庁連絡会議を持っておりますので、その場で建設省とも十分お話し合いを申し上げ、そのような方向で対処できますように努力をしてまいりたい。あるいはまた、その結果を踏まえまして、それぞれ消防機関には必要に応じましてそのことを指導する、あるいは視察をするという手だても講じてまいりたいというふうに存ずる次第でございます。
  92. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 いま、七省庁の連絡会議があるのでそこで連絡し合っていくということでございますので、これはやはり記録にとどめていくぐらいに重視をしていただきたいと思います。  そこで、査察をやりますね。その結果、この対象物は不適である、こうなったときに後はどうやるのですか。
  93. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 消防といたしましては、年二回の防火対象物の査察の結果、消防法上不適合あるいは違法な部分がございますれば、その都度口頭あるいは文書等によりまして、当該施設の管理者あるいは権原者に対しまして、警告、指示を発するというようなことをいたしてまいってきております。  なお、昨年五月から発足をいたしました表示、公表制度に基づきます作業をただいま進めておるわけでございますが、その中におきまして、違法あるいは悪質な対象物に対しましては措置命令を発するということ、そしてまた、措置命令に従わない場合には公表あるいは告発手続をとるということを厳しく実行するようにという指導もいたしておるところでございます。
  94. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 要するに、不適だという場合は、警告ないしは勧告、その内容を勧告していくわけですね。当然私は、ここが悪いからこう改善しなさい、このような指摘をしながら勧告がなされると思うのですね。そして、その計画書が出るか出ないかが一つの大きな問題点だと思うわけでございますが、その勧告に従わない場合さらに措置命令がなされる、こういうことですね。これは間違いないですね。
  95. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 警告あるいは指導をいたしました場合、警告指導のしっ放しでは困るのでありまして、いま御指摘がございましたように、警告指導内容を具体的にいたしますと同時に、それを今後ホテルあるいは旅館側がどう改修をしていくのかという改修計画書等も徴しております。と同時に、いまお話がございましたように、そのような警告指導を無視するないしは実行しないという場合には、措置命令をかけるという手だてを講じておるわけであります。
  96. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 建設省の場合はどうなるのですか。要するに、消防庁の方は法律に従って、それに照らしながら不適あるいは適というのを決めていくわけですけれども建設省の場合、こうして査察をやるのですけれども、不適と思われるところに対してはどうするのですか。
  97. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 一斉査察の結果、適当でないものがありました場合には、ただいまの長官のお答えどおり、建設省といたしましても、特定行政庁を通じましてその改修を指示するということになります。  で、適合してない部分が、既存不適格の場合と法に違反している場合と両方あろうかと思いますが、違反している場合につきましては違反の措置命令を最終的には出す、そういうことでございます。
  98. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 ちょっと理解しにくいわけでございますが、では、たとえばこういうことを具体的に聞いてみたいと思うのです。  いま言うように、勧告をした、そしてその改善計画が出た、それでも思わしくいかない、ついにこれは措置命令を出したということになるわけでございますが、たとえば、今回東京都内のホテルを見たときに、三分の一は「適」マークが与えられていないところがあるということでしたね。いわゆる不適格なホテル、これに対しては、私は直ちに措置命令を出すべきではないか、こう思うのです。なぜならば、措置命令を出して、それはもう期限つきですから、その期限内に実行しなかった場合にこれは公表するというようなことになっているようでございます。ですから、措置命令というものが基本になると私は思うのですよ、本当の意味で改善させるかさせないかという段階になれば。私は、まずいまの、たとえば三分の一不適格なホテルがあるということですから、これにすべて措置命令をかけるべきだ、一応こう思うわけですが、いかがですか。
  99. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 御指摘のように、東京消防庁管内で対象になります旅館、ホテルの中で、まだ三分の一余りが「適」マークを交付をされておりません。この交付をされていない旅館、ホテルにつきまして、直ちに措置命令をかけてはどうかという御質問であったかと存ずるわけでありますけれども、その「適」マークを交付されていない中身と申しますか、理由がいろいろあろうかと存じております。  一つは、消防法違反の状態になっておるということだと思うのであります。消防法違反の状態になっておりますれば、まず第一段階として、消防法違反の状態を解消いたしますように消防設備設置警告し、指導する。そして、なおまだそれが実効が上がらない、あるいはまた大変悪質であるという場合には、私はちゅうちょすることなく、十七条の四の規定によって措置命令をかけるということは当然だろうと思っております。  ただ、「適」マークを交付されていない旅館、ホテルの中で、先ほど建設省から御答弁がございましたように、建築基準法既存不適格になっております分につきましては、これは、消防庁といたしましては直ちに措置命令をかけることは法体系上できないわけでありまして、建設省の方で、それぞれそのような状態が解消されますようにいろいろ努力をしていただいておると承っておるところであります。
  100. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 いまの話では、消防庁所管の内容については措置命令はかけられるのですね。たとえばホテルニュージャパン措置命令は何をしろと出したのですか。
  101. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 スプリンクラー設置が未設置であるということで措置命令をかけたわけであります。
  102. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 建設省に聞きますが、今度現場を見ましたら構造上にも大変な問題が見えたわけですけれども、それでは建設省としてはこういう措置命令等は出せないわけですか。
  103. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 ホテルニュージャパンの場合につきましては、細部については現在東京都に指示いたしまして調査中でございますが、ニュージャパンか建築の場合の確認申請時点、すなわち昭和三十三年の時点におきましては、当時の建築基準法には適合していたということで確認をおろしております。以後増築がございましたが、その増築時点におきましても、その当時の建築基準法には適合しているということで確認をおろしておるわけであります。  ただ、その後昭和四十四年に大きな改正がありまして、防火関係規定については強化されております。それで、現在の建築基準法規定には適合していない部分がございます。それらにつきましては既存不適格ということで、建築基準法上違反ということではございませんが、五十四年に出しました建築物防災対策要綱に基づきまして不適格な部分の改修を命ずるという段階でございます。そのためには防災改修計画書の提出を命じまして、その防災改修計画によって、現地に行きまして、不適合な点、不都合な点があるかを十分調べました後に防災改修指導する、こういうことにしていたわけでございます。
  104. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 実は、先ほどもお話があったのですが、昭和五十六年五月十五日に「防火対象物にかかる表示、公表制度の実施について」という通知が出ております。この表示基準を見ますと、たとえば「防火管理等」は八項目、「消防設備等」は九項目、「建築構造等」は三項目、そのほか全部合わせますと二十四項目にわたって、該当の有無そして判定の適・不適という項目が実は一覧表で示されているわけですね。この一つでも不適があれば、これは「適」マークは出せないと私は思うわけです。  それから「建築構造等」という中に「建築構造」「防火区画」「階段」と三つに大きく項目が立てられておりまして、その詳細別項で詳しく出ているわけですけれども、この五十六年五月十五日の消防庁次長の都道府県知事にあてた表示、公表制度の基準に照らしていきますと、このホテルニュージャパンは、完全に先ほど言ったような欠陥ホテルですから、これは十分いま言った措置命令を出せる状況にあると私は思うのです。それを手控えているというのはどういうわけだろうか。うっかりしていたのか、それとも、こういう状態はまだ出せないのだということなのか、その辺ちょっとわかりやすく説明してくれませんか。
  105. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 火災直前のホテルニュージャパンの施設あるいは管理運営の状況は、まさにお話にありましたように措置命令が発し得る状態にあったと存じております。また、それなるがゆえに、昨年九月に東京消防庁措置命令をかけたわけであります。と同時に、あわせまして当然のことながら、「適」マークの交付もいたしていなかったわけであります。といたしますれば、五十四年にこのスプリンクラー設置を義務づけるという法律適用されまして以後、措置命令が発せられました去年の九月までの間、東京消防庁としては余りにも長過ぎたではないか、あるいはまた怠けておったのではないかというただいまの御指摘であったと思うのであります。
  106. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 そうではなくて、いま私が指摘したとおりに、これは「適」マークが与えられなかったわけです。ところが、この基準でいくと、構造上も問題があったはずですから、私はこの建築構造の立場からも措置命令が出るべきだと思うのです。いまスプリンクラー等には措置命令を出した。建築構造の方は出てないわけでしょう。これはどうなんですか。
  107. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 建築構造につきましては、先ほど建設省から御答弁がございましたように、このホテルは法改正以前の建物でありますので、既存不適格ということになっておるわけであります。簡単に申せば、構造につきまして現行法上は適合はしてない。もっと極端な言い方をすれば違反と申しますか、適合していない。しかし、建築基準法改正以前の建物でありますから、それについては適合は遡及されてない関係上、こういうものを既存不適格というふうに建設省では呼んでおられるわけであります。したがいまして、突き詰めて申しますれば、これは既存の、不適格ではありますけれども直ちに違法というものでは建築基準法上言えない状況にあるわけでありますから、これにつきまして消防機関措置命令をかけるということはできないわけでございます。
  108. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 そうしますと、これは問題です、以前の基準では適合だけれども、現在の状況から見たらとてもこれは問題だぞと思われるものについては、いつからそれは区切られるのですか。
  109. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 その建物が建築着工をいたします時点で、その当時の建築基準法規定に適合していれば、それは法律上は適合状況にあるわけです。その後法改正が行われまして、改正されました現在の法規定に不適合なもの、法律上は違反ではございませんが不適合なものを既存不適格建築物と言っておりますが、それらにつきましても、当然現在の状況防災上危険があると思われますものにつきましては、昭和五十四年に建築物防災対策指導要綱を策定いたしまして、その防災対策要綱によりまして一斉に査察をし、防災改修の指示を行う。すべての建築物というのは大変な数になりますから、そのうち特殊建築物にしぼりまして、デパート、劇場、映画館等につきましては五十六年度中に防災改修を行う。それからホテル、旅館等につきましては五十八年度中までに防災改修を実施するように、行政指導をもって改修指示を行ったところでございます。
  110. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 そういうことになれば、建築構造上のいまの適・不適の項目の中身については、これはいまホテル等は五十八年まではやむを得ない、措置命令を出せる状況にないということになるわけですか。
  111. 松谷政府委員(松谷蒼一郎)

    松谷政府委員 もちろん建築基準法上の違反がございましたら、それは建築基準法第九条に基づいて違反の措置命令が出されますし、また基準法上の違反がなくても保安上著しく危険であるというように認められたものにつきましては、建築基準法の第十条に基づいて改善命令が出されるということになっております。
  112. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 これは結果的にそうわかるわけですが、今度のホテルニュージャパンの構造は非常によろしくないですね。部屋から部屋に火が当然走っていくような構造ですね。建築基準法上著しく不適ですよ。真剣な査察がなされていれば、これは当然措置命令が出されていたと私は思いますね、いまのあなたの答弁からいけば。そういう意味からいけば、これまでは怠慢であった。もっとしっかり、査察をするならするらしく、特に建築構造上の立場から的確な査察をしていただきたいことを強く要望しておきます。よろしいですね。  それから、消防庁にお聞きしますが、四十九年でしたか、消防法改正で五十四年四月一日までにこういうものを整備しなさいという附則三号、四号というのが出ておりますね。スプリンクラー等々を必ず設置しなさいと法律で決められたわけでございますが、これは五十四年四月一日までにですよ。ホテルニュージャパンはどうだったか、お尋ねします。
  113. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 昭和四十九年の消防法改正と申しますのは、御案内のとおり、スプリンクラー既存の建物にまでさかのぼってすべて特定防火対象物にはつけるという大きな改正が行われたわけであります。その附則の三号、四号でありますが、四十九年に施行された法律ではございますが、何分にも既存の建物、旅館、ホテルにすべてスプリンクラーをつけるというようなことになりますと、相当大きな資金も要りましょうし、あるいは時間的余裕も要るものでありますから、四十九年のいまの改正は一応五年以内、いわば五年の猶予期間を置いたわけでありますから、五十四年三月三十一日が期限ということをこの三号、四号は掲げておるわけであります。
  114. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 いま言われるとおり、昭和四十九年から五年間も猶予期間を置いたわけですね。しかも、これは法律ですよ。そして、五年たってホテルニュージャパンを見たときにスプリンクラーはついてなかったですね、一部はついていましたけれども。これは法律違反じゃないですか、どうでしょう。
  115. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、この法律の施行期限がホテル、旅館につきましては五十四年三月三十一日でありますから、三月三十一日現在では、スプリンクラーホテルニュージャパンは未設置でございました。その限りにおきましては、法律違反ということは言えると存じます。
  116. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 そういう法律違反の対象物に対してはどう対処していくのですか。
  117. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 五年間の猶予期間があったわけでございますから、大方の旅館、ホテルは、この猶予期間中にスプリンクラー設置あるいはまた屋内消火栓の設置、その他必要とする消防、防火設備を設けたわけでございます。ただ、ホテルニュージャパンにつきましては、この時点で未設置でございました。したがいまして、東京消防庁といたしましては、その後、とにかくこのホテルにこのような防火施設をつけさせるということに消防機関としては力を入れたわけでありまして、いろいろ口頭によります指導、あるいはまた年二回の査察の際にはこのことを強く要請をし、さらには、さかのぼりまして昭和五十二年以降四度にわたりまして、スプリンクラー設置その他防災設備の完備を文書によって指導警告してまいったわけであります。  その都度、もちろんホテル側といたしましては改修計画を出すとか、あるいはまた若干の工事を進めるとかいろいろやってまいったわけであります。しかし途中で中断する、ないしは計画どおりいかない、そこでまた警告書を出すというようなことの繰り返しで、今日に至ったわけでございます。  最終的にいま申しましたように、四度の文書によります警告書を出し、ホテル側からも改修計画を出してきたわけでありますけれども、実施の内容はきわめて不備である、あるいはまた所期の申し入れどおり進んでいないということで、実は東京消防庁といたしましては、昨年九月に最後に措置命令をかけたということになっておるわけでございます。したがいまして、措置命令内容は、いま申しましたように、スプリンクラー設置ということを主な内容にいたしております。
  118. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 いいですか、五年間の猶予をもって、その期限に法律違反していた事実がわかっているわけですよね。しかも改善勧告は、消防庁は五十二年からやっているわけでしょう。そのとき、あなたは消防庁長官じゃないけれども消防庁としては五十二年からもうすでに勧告していたわけですから、法律違反だということははっきりしているんですから、そのときに措置命令を出すべきではなかったかと私は思うのです。しかも、五十四年から二年以上も猶予を置いているわけですね。これは甘いですよ。  政務次官、あなたはずいぶんいま考え込んでいらっしゃいますけれども、どうなんですか。こんな悠長なことだから、こんな大災害に入っていくのだと私は思うのですよ。これは行政責任も重大ですよ。そう思いますけれども、あなたはどう思いますか。
  119. 谷政府委員(谷洋一)

    ○谷政府委員 いま御指摘のとおりでございまして、今回の事件、不幸な事件でございますけれども、振り返ってみますと、ニュージャパンの社長の方におきまして、しばしば勧告をする、それに対しまして本当に少しずつと申しますか、ちょびちょびとやるようなやり方で、まことに消防当局……
  120. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 ちょっと、時間がもったいないから……。  いいですか、四十九年に消防法改正がなされて、スプリンクラー等こうこうつけなさいよ、それは五十四年の四月一日までですよと法律で規制しているのです。そしてそのときに、これは法律違反という結果が出ているわけです、ホテルニュージャパンの場合。だから私は、その前の五十二年からもう勧告しているんだから、しかも法律違反とはっきりしているんだから、そういうのには措置命令を直ちに出すべきじゃなかったかと思うのです。  これがその後二年間も猶予を与えて、五十六年にやっと措置命令が出ているわけですよ。五十七年九月十一日ということで一年間の猶予を与えておりますから、そういう意味からいけば、ホテルニュージャパンは今度は法律違反ではない、公表される立場ではない状況の中で、まだ作業が進められていたというわけですね。これが法律違反であるという、五十四年四月に措置命令が出ていたならば、これは完全に二重の責任を問われるところだったわけです。だから、こうして法律違反までしているようなところに温情的な指示とか対策は困る、もっと厳しくやるべきである、私はこう言っているのです。
  121. 谷政府委員(谷洋一)

    ○谷政府委員 御指摘のとおりでございまして、ニュージャパンの場合、勧告あるいは最後の命令を出しましたにつきましては、七回、八回にわたって向こうもこういうふうな状況であるということを言っておったわけでございます。そしてそれを少しずつやってきた、そこに東京消防庁としてのいままでの甘さがあったというふうなこともわれわれ反省しておるわけでございます。今後につきましては、東京消防庁とも十分連絡をとり、また厳重な立場でやっていきたいと思っております。
  122. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 少しずつやろうとたくさんやろうと、いわゆる指示された期限内にやらなければ、これは違反者なんですから、もう手厳しくやらなければだめですよ。  時間がたっていきますので次に移りますけれども、五十六年の五月には「防火対象物にかかる表示、公表制度」というのができまして、先ほど申し上げましたように二十四項目にわたって調査内容が示されているわけですけれども、今回のホテルニュージャパンをその基準に照らして採点した場合、二十四項目中に、適・不適の二つに分けた場合は、幾つが適で幾つが不適であったか、掌握されていますか。
  123. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 お答えいたします。  東京消防庁が行いました「適」マーク交付のためのホテルニュージャパンの査察の結果の詳細につきましては、私どもまだ承知をいたしておりません。ただ、報告として聞いておりますのは、ホテルニュージャパンにはもちろんスプリンクラーがない、それから防火管理体制自身がきわめて不備である、あるいは建築構造上の問題があるという、かなり問題が指摘をされておったことは事実であります。
  124. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 これは当然、いまの基準項目で査察がなされていると私は思います。ですから、これは後刻で結構ですから、参考にしたいので、その査察されたときの、いまの二十四項目についての内容の資料をいただきたいことを要望しておきます。これはできますね、いただけますね。
  125. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 東京消防庁とよく連絡をとりまして、御報告申し上げたいと存じます。
  126. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 話は変わりますけれども防災避難訓練のことでございますが、これも法律で義務づけられていると思います。この実行の仕方、訓練のあり方ですが、これは単なるそこの防火対象物関係の管理責任者がその責任のもとに行っていけばいいのか、それとも行政庁と連絡をとって、きょうは訓練いたします、立ち会ってくださいというような姿でなされるのか、その点はどうでしょうか。
  127. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 特定防火対象物の管理につきましては、法八条によりまして防火管理者というものを設けなければならなくなっております。一応この防火管理者といいますのが、その意味での責任者になろうかと思っております。これはまた、地元消防機関に届けなければならないという規定も設けてございます。あわせまして、防火計画を策定する、あるいは避難訓練を行う等のことが義務づけられております。  このような中で、ホテル、旅館等で防火訓練を行います場合には、もちろんのことながら防火管理者一人がやっても意味がないのでありまして、日ごろの防火、消火施設の維持管理、あるいはまた火災発生時におきます避難誘導、初期消火、あるいは消防機関への通報というようなことを訓練内容にしなければならないわけであります。  それで、それぞれの消防機関におきましても、訓練と申しましても、いま申しましたように平時における訓練、あるいは災害時における訓練等を強く要請をしてまいってきておるわけであります。規模にもよりますが、ホテル、旅館等でもちろんその計画に従って独自におやりなることも結構でありますし、状況に応じて消防機関にいろんな指導をしてほしいということが御要請がございますれば、消防署の方から専門家が出ていろいろ御指導申し上げるということも十分可能であります。それぞれの状況に応じて対応いたしておるわけであります。
  128. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 私が希望したいことになると思いますが、要するにそうした管理者が責任者になって防災訓練をやった。それで、一方的にその人がやったと報告すればそれで済むのか、必ず行政機関の第三者的な人がそれを実際やったかやらなかったかをチェックするようになっているのか。もしそれがあいまいならば、私はこれは必ずチェックするように、そうすれば今回のホテルニュージャパンみたいに、防火訓練は前はやったことがあるけれども最近なされてなかったなんて、こういうことにはならぬと思うのですけれども、いかがですか。
  129. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 消防法令によりまして、特定防火対象物におきましては、年二回以上訓練を実施しなければならないということになっておりますと同時に、防火管理者は避難訓練を実施します場合には、あらかじめその旨を消防機関に通報しなければならないということになっておりまして、必ず通報してからやるということになっております。その際、消防機関判断に応じまして、個々に具体の指導をいたす場合もございましょうし、あるいはまたホテルの方から指導に来てほしいという御要請がございますれば専門家が出るということも、その場の状況に応じて適宜やっておるわけであります。いずれにしても、通報はしなければならないという規定にしてございます。
  130. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 それじゃ、ホテルニュージャパンは、今回訓練をやりますと通知が来なかったわけですね。もし来ていれば立ち合ったのだと思うのですね。こういう措置命令まで受けるようなところですから、当然連絡があれば、通知があれば、立ち会うぐらいのことはなさると思うのですけれども、これはどういうものなんですかね。
  131. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ホテルニュージャパンでは昨年の秋避難訓練を実施したということを、私ども東京消防庁から報告は受けておりますけれども、その際、法令に基づきます事前の通報があったのかどうか、あるいはまた消防に対しますそういう要請があったのかどうか、その辺は詳細調査をいたしておりません。
  132. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 それは非常に大事な問題だと私は思いますので、これはきょうでなくて結構ですから、確認した上で、特にそういう勧告をしているような対象物については、そういう通知があったときは必ず行政の方から責任者が立ち会うというように決めてもらいたいと思うのですけれども、いかがですか。
  133. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 御趣旨はよく理解をいたします。今後そういう方向で指導してまいりたいと存じております。
  134. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 運輸省の方来ていますか。  国際観光ホテル整備法に基づく政府登録ホテル、これはいわゆる表示がなされているわけですから、政府登録ホテルということが。利用する側から見れば非常に安心感といいますか、信頼感を持たれるホテルだと思われますね。今度のホテルニュージャパンはまさに欠陥ホテルであったわけでございますが、ここも運輸大臣が許可した政府登録のホテルであったわけですね。確認したいと思います。
  135. 高橋説明員(高橋克彦)

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。  ホテルニュージャパンは、国際観光ホテル整備法の規定により運輸大臣の登録を受けたホテルでございます。
  136. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 これは新聞で見たのですけれども、今度の災害を見て、国際観光ホテル整備法に基づくホテルに対して総点検をやる、そして不備なもの、不適格なものは取り消しをする、こうありますが、それは間違いありませんか。
  137. 高橋説明員(高橋克彦)

    ○高橋説明員 運輸省は総点検の結果、消防、建築両当局から改善命令あるいは措置命令が出されておりますにもかかわらず、改善の見込みがないというふうに認められるものに対しましては、登録の取り消しを含めまして所要の措置を講ずることといたしたいと考えております。
  138. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 昭和五十六年一月二十四日に、大火災があった後で七省庁の連絡会議が開かれまして、その中に運輸省も当然入っておるわけでございますが、総点検等をやっていく旨の内容があるし、またそういう不適格なものについては取り消しをやる。いまさら申し上げるまでもないわけでございますが、ことさら運輸省がそういうことに乗り出すというのではなくて、五十六年一月二十四日の了解事項の中にそれはもうはっきりしているわけですね。その後、五十六年一月二十四日の連絡協議会以後、実際に総点検をなさったのかどうか、お尋ねします。
  139. 高橋説明員(高橋克彦)

    ○高橋説明員 川治プリンスホテル事故の直後、運輸省は、所管いたします登録ホテル、旅館に対しまして指示をいたしまして、一斉に自主点検をさせております。
  140. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 その結果どうだったのですか。いつやったのですか。
  141. 高橋説明員(高橋克彦)

    ○高橋説明員 運輸省が総点検を指示いたしましたのは十二月でございます。
  142. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 その総点検した結果はどうだったのですかと聞いているのです。
  143. 高橋説明員(高橋克彦)

    ○高橋説明員 総点検の結果はおおむね良好でございます。一部、消防当局あるいは建築当局の方から法令に適合しないということでもって指摘を受けているという点検表を提出したホテルもございました。
  144. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 大体持ち時間が迫ってきたのですけれども、あと一、二問よろしくお願いしておきます。  消防庁建設省に、これは要望になりますが、国際観光ホテルは、まず消防庁のいわゆる基準に適合したところ、建設省からよろしいというサインが出て、初めて運輸大臣が登録ホテルにするわけですから、総点検するもしないもまず消防庁建設省がその基礎になるわけですから、この点しっかり連絡をとり合って、万遺憾のなきようにお願いしたいと思います。  では、おのおの答弁だけ聞きましょう。
  145. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 私ども、昨年五月から実施いたしております表示、公表制度によります「適」マークというのは、先ほどもお話がございましたように二十四項目、六十五カ所につきまして、相当厳しい点検をいたしております。この「適」マーク交付の旅館、ホテルと申しますのは現在の消防法上あるいは防災上、防火上少なくとも適合しておるという、いわば言葉は悪うございますが、お墨つきだろうと私は考えております。したがいまして、今後運輸省の方におかれまして、国際観光ホテルの登録をされます際にこれを十分活用いただきますことは、私どもはもちろん結構なことだと思っております。十分連絡をとりたいと思っております。
  146. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 そのお墨つきが欠陥ホテルであったわけですから、この実態を見て行政上いろいろと改善する問題があろうかと思いますから、連絡協議会で真剣に協議をしていただきたいことを要望しておきます。  最後に、消防庁にもっと消防施設の整備に力を入れなさいと言いたいところです。  その一つは、「消防施設整備状況」というものを私、取り寄せました。これは五十三年四月現在の内容でございますけれども、たとえばはしご自動車あるいは化学消防ポンプ車というのはその充足率がきわめて悪い。救急車は九七・一%でまあまあですけれども、化学消防ポンプ車などは五二・七%ですよ。はしご自動車などは五五・四%。今回、はしご消防車の活躍が目覚ましいものがあったと私は思うわけでございますが、特に都市などでは重要な消防施設だと思います。もっともっとこういうものが充足できるように力を入れていただきたいのです。  これは消防庁長官としては、当然そのとおりですと思っているでしょうが、たとえば昭和四十三年の有馬温泉の火災事故以来入湯税という目的税が設けられましたね。この入湯税の使い方は、環境衛生あるいは観光、消防、鉱泉源という四つの項目にわたって使っていいことになっているわけでございますが、たとえば別府市あるいは熱海市あるいは箱根町等々、私ずっと調べてみた。過去五年間ぐらい見たのですけれども、その入湯税の中で一番使われているのは環境衛生、それから観光、そして消防になるときわめて低い。たとえば別府市などは、五十一年から二年、三年、四年、五年と見ていきますと、わずかに一八%、次が五・六%、一一・五%、一一・八%、一二・九%、九・九%というような内容ですね。あるいは熱海市も、五十一年、五十二年、五十三年、五十四年、五十五年と見ていくと、六%、一一・四%、九・七%、一四・二%、九・八%、非常に消極的ですね。  あるいは消防費決算と交付税の使われ方を見ましても、基準財政需要額に満たない状況での内容でございまして、何か消防ということになるとちょっと軽視されているような感じがしてならないのですが、これに対して消防庁長官考えと政務次官の考えを聞いて終わりたいと思います。
  147. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 このような火災発生を防止し、あるいはまた火災を鎮圧いたしますためには、消防力充実強化というのは一つの大変大きな要素だろうと存じております。私どもといたしましては、従来からこの点につきましていろいろと国庫当局あるいは自治省財政当局にお願いもしてまいったわけでございまして、国庫補助金の確保あるいはまた交付税措置等につきましてもいろいろと努力をいたしてまいったわけであります。  本年度におきましては、補助金につきましては昨年に比べまして若干の減を見ておりますけれどもはしご車あるいはコミュニティー防災センター、さらにはまた市町村消防無線というような市町村消防機関の御要望の高い、緊急度の高いところに重点的に配分をしてまいりたいと存じております。また、五十七年度の交付税措置につきましても、単位費用の増等見込まれております。さらにまた、五十七年度消防職員、常備化も含めまして約一千名弱、九百七十九名の増員も認められたということであります。  私ども、これで十二分であるとはさらさら考えておりません。しかし、何分にも厳しい財政状況の中ではございますが、限られた人員、限られたお金の中で最大の効率を発揮いたしますように、各消防機関に対しましては格段の努力をお願いいたしますと同時に、引き続きまして国サイドにおきます財源の確保に努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  148. 谷政府委員(谷洋一)

    ○谷政府委員 ただいまは、私どもの立場から申しますと大変結構な御指摘を受けましてありがたいと思っております。火災発生原因にいたしましても非常に多様化してまいりましたし、またその原因は、化学消防等の問題につきまして考えてみましても非常に多岐にわたってまいったと思っております。そういう時代に即応した消防体制というものをしくにつきましては、やはり消防予算が増加することが必要だということを常々考えておりまして、御指摘のとおりでございます。これからも力いっぱい、がんばっていきたいと思っております。
  149. 大橋委員(大橋敏雄)

    ○大橋委員 終わります。
  150. 中山委員長(中山利生)

  151. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 九日の質疑に続きまして、本日もホテルニュージャパンの問題について伺いたいと思いますが、すぐに本題に入りたいと存じます。  まず、警察庁に伺いますけれどもホテルニュージャパンの放送設備の一部が故障していたというわけでございますけれどもホテル側はこれを事前に知っておった、修理費が八百万円かかるのでそのまま放置をしていた、そういう情報が入っているわけでございますけれども、この点について御存じかどうか、伺いたいと思います。
  152. 大堀説明員(大堀太千男)

    ○大堀説明員 現在までの捜査の状況でございますと、放送設備あるいは警報設備関係の検証の結果でございますが、自動火災報知設備につきましては、地下を含む各階に設置をされておりまして、受信盤が一階の警備員室に設けられておりますけれども、警報スイッチが停止状態となっておりました。各階の非常ベルは、各スイッチを手動でオンの状態にしてなければ鳴動しない状態になっていた模様であります。  また、放送設備につきましては、三階の放送室に本体が設置をされておりまして、一階防災センター室にリモコン装置がございましたが、テープレコーダー二台のうち一つは故障、他の一方はテープが入っていない状態で、いずれも機能しない状態であったわけでございます。  なお、その他の放送といたしましては、第一発見者の供述によりますと、マイクによって火災発生の告知をした、このように供述をしておりますが、現在までの捜査では、これを聞いたという者の供述は得られておらない状況でございます。  なお、先生指摘の、この種放送設備の不備について事前に管理者あるいは従業員がどの程度知っておったか知らなかったかという詳細については、まだ警視庁から報告をいただいておりませんので、御答弁は控えさせていただきたいと思います。  以上でございます。
  153. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 もしこの場合、知っていて、そしてこれを修理していなかったということになると、どういう刑事罰になるのでしょうか。
  154. 大堀説明員(大堀太千男)

    ○大堀説明員 お答えいたします。  この種の火災事件の場合の刑法上の責任につきましては、通常、業務上過失致死傷罪というものが該当するわけでありますが、それぞれのたとえば避難誘導の役割りを持っておる者あるいはホテルの管理者あるいは防火責任者等が防火設備設置をしておったかどうか、あるいはその維持管理が十分であったかどうか、あるいは避難誘導訓練に十分であったかどうかというような点を捜査しなければならないわけでございまして、すでに現在までのところ、各種防災設備等に不備があったということが考えられますが、これらにつきましては、なお今後の捜査によりまして刑事責任の有無について明らかにしてまいりたい、かように考えております。
  155. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 厳重に捜査を要望をいたしたいと思います。  次に、ホテルニュージャパンが麹町消防署に提出をした消防計画について伺いたいと思います。  消防計画には、ホテル側の防火管理についての何らかの規定があるのでしょうか。
  156. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 お答えいたします。  ホテルニュージャパンが所轄消防署に出しておりました防火管理規程というものはございます。
  157. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 この規定ホテル側の防火対策委員会、そういったものが設けられることになっていたのでしょうか。
  158. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ホテル側が作成をし、消防機関に提出をいたしました防火計画の中には、防火対策委員会という組織を設けることに相なっております。
  159. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 この委員会は、通常どの程度の頻度で会合を開くことになっていたんでしょうか。
  160. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 規定上は、毎月一回を標準とするという規定を設けておるようでございますが、現実にどの程度の回数開かれましたか不明でございます。確認いたしておりません。
  161. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 この委員会そのものは、実際には設けられていたのでしょうか。
  162. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 現実にこの委員会設置され、どのようなことが審議されたかということは、私どもまだ詳細承知をいたしておりません。
  163. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 消防設備等の点検は行うことに計画上なっていたのでしょうか。そしてまた、実際にそれが行われていたのでしょうか。
  164. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 消防計画では、消防設備等の点検を行うということは規定をいたしております。実際に行われておりましたかどうかということにつきましても、残念ながら詳細まだ把握いたしておりませんが、一部の設備については点検が実施されておったというふうに聞いております。
  165. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 その一部というのは具体的にどういうものでしょうか。たとえば防火扉とか非常ベルとかあるいは消火栓とか、そういうものについてはどうだったんでしょうか。
  166. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 具体的にどこかということは、東京消防庁の方からの報告でございますのでまだ承知をいたしておりませんが、規定上はそれぞれの、たとえば消防用に供する警報装置でありますとか、防火水槽でありますとか、あるいはまた避難通路の状況等でありますとか、そういうものを一カ月一回あるいは物によっては六カ月一回というような規定を設けて、これでやるということにこの計画上はなっておったわけであります。
  167. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 消火、通報、避難などは計画上どの程度の頻度で実施されることになっていて——これは先ほどの答弁の中で年二回ということが言われていますが、そういうことだったのかどうか。それと、実際にはそれがどういうふうに行われていたのか、その点について伺いたいと思います。
  168. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 訓練は、法令によりまして年二回実施しなければならないということに相なっておるわけでありますが、五十五年度につきましては、このような訓練をした実績がございません。五十六年度秋に一回実施をしたという報告を受けております。
  169. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 火元責任者名簿は、何年何月現在のものがつけられていたのでしょうか。
  170. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 火元責任者は、五十一年十月二十三日に、その日付で受理しております。
  171. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 自衛消防隊の組織については、何年何月現在のものだったんでしょうか。
  172. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ホテルの自衛消防隊の組織につきましても、同じく五十一年十月二十三日現在のものでございます。
  173. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 この火元責任者名簿ですけれども、五十一年というとかなり前のものであるわけですけれども、当然横井社長就任以前のものであるわけですが、こうした計画を変更する、そういう届け出義務というのがあるはずだと思うのです。消防法の施行規則三条に消防計画変更の義務づけがあると思いますけれども、いかがでしょうか。
  174. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 御指摘のとおり、ございます。
  175. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 いままで私が問題を提起してきたことというのは、大事な消防計画につきまして、結局ホテル側が提出をした消防計画は形だけのもの、全くほこりをかぶった内容のもの、これは緊急体制あるいは現状ですらそのままどこにも通用することができない、そういうものであったわけです。恐らく多くのホテル消防計画の場合も同じような対応が行われているのではないか、そういう危惧を抱くわけですけれども、形式を整えた書類だけ提出すればそれでいいんだ、消防署はそのチェックもしなくていいんだ、そういうことで果たしていいのかどうか、その点についての見解を伺いたいと思います。
  176. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 御指摘のとおり、火元責任者あるいは自衛消防隊の組織等につきまして、五十一年、いまから振り返りますればかなり古いもので、そのままで受理をしておったということは適切ではないと存じます。やはり単なる届け出文書ではございませんので、その実体が備わってなければ意味がないわけでありまして、結論的には私はこういうような扱いというのは、まだ東京消防庁の方がなぜこういうことでやったかということの釈明なり説明は受けておりませんけれども、いわば一般常識的に考えまして余りにも古いではないか、これで十分機能するのかと問われますれば、私はやはりこのままでは若干不適切な部分があるのではないかというふうに感じざるを得ないわけでございます。
  177. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 査察時に消防計画を参照して指導されていたら、防災組織面については厳しく問題点指摘できたはずだというふうに思います。  新聞報道によると、これは二月十三日付の毎日の夕刊ですけれども東京消防庁火災当夜の当直だった従業員に対して事情聴取をされ、その結果として消火栓や救助袋の存在がわからなかった、各自が何をすべきかわからなかった、支配人から火災のときの心得などの教育も受けていなかった、そういう証言を得られたということですが、この責任がその支配人にだけ帰する、そういうことにはならないのじゃないかというふうに私ども思いますけれども、どうでしょうか。
  178. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 私ども、新聞記事につきましての事実関係を確認はいたしておりませんけれども、そういうことも言われておりますことは事実であります。日ごろの防火管理体制とあわせまして、火災発生時におきます避難誘導あるいはまた初期消火ということは、当然防火計画の中で規定されております事項でありますと同時に、当直従業員が実際にそれができるものでなければ意味がないわけでございます。そのような意味におきまして、当直の従業員がそのような操作ができなかったということは、日ごろの訓練不足あるいはそれに対する消防機関の対応の不適切さというものがあったのではないだろうかというふうに反省をいたしておるところでございます。
  179. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 麹町消防署長は、ホテル側に対する二度目の文書による指導の中で、五十四年三月三十一日付のものですけれども人命安全のための強化策として通報連絡、避難誘導、初期消火対策等、具体的かつ実効ある体制の再確立を求められているわけです。同時にまた、自衛消防隊員及び全従業員に対する教育訓練も求められている。これは事実でしょうね。
  180. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 当時、五十四年三月三十一日付で麹町消防署長ホテルニュージャパンの社長に対しまして、そういうことを文書で求めましたことは事実でございます。なお、これに対しまして、当時の社長でございます藤山氏から回答の文書を受理しておるということでございます。
  181. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 それ以降、火災発生まで二年十カ月が経過をしているわけですけれども、具体的かつ実効ある体制の再確立、これは一体なされたのか、なぜ守られないものを放置するという結果になってしまったのか、その辺はどうなんでしょうか。
  182. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 当時、麹町消防署長文書ホテルニュージャパンの藤山社長に対しましてそういうことを求めたこと、ないしはその求めた文書内容は、私きわめて適切であったと思っております。ただ問題は、いま御指摘ございましたように、それが後十分フォローされてない、追跡されてないというところに問題があったと存じております。これは結果的には、私はやはりその辺の詰めというものが甘かったのではないかということを感ずるわけでありますが、その後引き続き消防といたしましては、なかなかその文書どおりには、額面どおりにはなってなかったわけでありますけれども、また口頭あるいは文書警告をし、さらには措置命令を発するというような措置をとってまいった次第でございます。
  183. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 しかし、その後の文書指導では、この点については全く触れられていなかったのではないですか。
  184. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 五十四年三月にいまお示しのございました文書を出して以後、五十五年二月、五十五年八月と、地元消防署長から交代をいたしました横井社長に警告指導文書を発しておりますが、その内容は先ほどの文書の中身を具体化をしたと申しますか、そういう趣旨だろうと存じますが、防災改修の促進についての新計画を立てなさいということ、あるいはまた遡及設備に対しまする具体的な設置計画の樹立を要請しておるところでございます。
  185. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 スプリンクラー設置については、確かにたび重なる指導をされたと思いますけれども、いま言ったようないわゆるソフト面ですね、体制の再確立だとかあるいは自衛消防隊員及び全従業員に対する教育訓練、こういうものについて触れるということを再度行った事実があるのですか。
  186. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 文書で指示をいたしましたのはスプリンクラー設置を中心にして申しておりますが、しばしば、機会あるごとにこのホテルに対しまして地元消防といたしましては、口頭で注意をし、指示をし、あるいは警告をし、さらにはまた年二回の査察におきましてそのことは指摘をしてまいったというふうに聞いております。
  187. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 スプリンクラー設置については確かにたび重なる指導もなされ、その都度、ホテル側の先ほどから議論になっているちょびちょびと小出しにされた改修作戦に消防署側が乗せられたということで、営業停止にまで踏み切ることができなかった、そういうことがあったということが議論されているわけで、このことは別に議論をするとしても、いまの消防計画あるいはこれによる防災組織、これについては具体的かつ実効ある体制の確立を早期に、期限を切って求めなければならないのに、ホテル側のサボタージュを許してきた。そういう意味では、私は、行政指導責任というのは非常に大きいのだというふうに指摘をしたいと思うのです。  一月二十七日と二十八日の二日間、ニュージャパン火災発生する十日前ですけれども、麹町消防、丸の内消防、赤坂消防、京橋消防、この四つの消防の八個中隊が、二十七日に二十五名、二十八日に五十一名、ニュージャパンに出向かれたということを聞いていますけれども、これは事実でしょうか。
  188. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 東京消防庁に問い合わせましたところ、一月二十七日には二十八名、一月二十八日には五十一名、計七十九名がホテルニュージャパンに出向いておるという報告を受けております。
  189. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 この査察の目的は何であったのですか。
  190. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 東京消防庁からの報告では、七十九名は警防視察に参ったということであります。
  191. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 このときにホテル側に対して、防災上の問題点、それを注意、指摘をしたのですか。
  192. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 このときに、ホテルに対しましていろいろな指示をしたかどうかということはまだ詳細承知をいたしておりませんが、何分にも警防視察でございますので、御案内のとおり、高層建築物あるいは地下街の火災発生いたしました場合の消火活動を行う上で必要とする情報を個々の消防隊員が確知をする、確認をするということを目的にした査察でございますので、建物の周囲の水利の状況でありますとか、建物内の消防活動上の必要な施設のあり場所でありますとか、その他階段の状況でありますとか、こういうものの視察を行ったというふうに承知をしております。
  193. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 報道等で明らかになっているように、ニュージャパンは放送設備が故障している、これは先ほど警察の方からも報告があったわけです。それから感知器のスイッチオフ、これもありました。それからじゅうたんがひっかかって防火扉が閉まらない、あるいはけさほどから言われているように、防火扉が古くなってうまく作動しない、あるいは避難訓練がやられていないなど、たくさんの問題点が明らかになっているわけです。それが事件直前とも言える十日前の査察、しかも七十九人も行って延べ二日間もかけて、一体何をやったのか。何の指摘もされていない。これは私は明らかに消防署側の姿勢の問題だ、行政上の問題だというふうに思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  194. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 これは、ただいま申し上げましたように、警防視察を行っております。したがいまして、その際には当然そういうことが発覚すれば指示をしあるいは警告をするというのは適切な措置だと存じております。ただ、申し上げましたようにこれは警防視察でございますので、具体的に申しますれば消防職員の中で警防業務に従事する者、たとえばポンプ車に乗りますとかはしご車に乗りますとか、こういう者が主体になって行っておるわけでありまして、いわば予防査察要員ではございませんので、その辺の、視察なり査察の目的が違っておったものでございますので、そちらの方は注意しなかったということではないかと存ずるわけであります。
  195. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 消防法第八条第一項に言う防火管理に関するホテル側責任者は、横井社長あるいは幡野支配人いずれに当たるのでしょうか。
  196. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 法八条に言います防火管理者といたしましては、ホテル側としては幡野支配人を指名をして届け出をいたしております。私どもと申しますか、東京消防庁としても、幡野支配人が防火管理者であるという認識を持っております。
  197. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 しかし、責任者というふうになりますと、これは八条上のいわゆる責任ある立場というのは幡野支配人ということになるのでしょうか。
  198. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 今回の事故を契機といたしまして、民事上の責任あるいは刑事上の責任を問われるのはだれかという問題とも絡むわけでありますが、その辺は、警察なりそれぞれ専門の方でお取り扱いいただく問題でございますが、いまお話がありましたように、幡野氏は少なくとも消防法八条に言う防火管理者として定められておったということであります。したがいまして、責任がどちらかということ、これはまたそれぞれの別個の機関で御調査をいただく問題だろうと思っております。
  199. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 防火管理に関する管理上の義務不履行、この第八条でそれが問われることになることは明らかだと思いますけれども、この場合に罪は構成をされるのでしょうか。
  200. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 第八条は、ごらんのとおり、一項から四項までがございますが、それぞれの規定に従いましてそれぞれの罪則規定が設けられております。三項につきましての違反は四十三条の一項によりまして「三月以下の懲役又は十万円以下の罰金」、四項違反につきましては「六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金」ということになっております。
  201. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 八条の四項では、八条一項の義務が履行されない場合の消防署長の命令権を規定しているわけです。したがって、麹町消防署は八条四項の命令を発することができたし、またしなければならなかったのではないかというふうに思うわけですけれども、その点、もしこの命令に従わなければ、四十二条で六カ月以下の懲役または二十万円以下の罰金、これが科せられる、そういう仕組みになっていると思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  202. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 四項違反に対しましては、お示しのように、四十二条第一項第一号の規定によりまして、懲役刑あるいは罰金刑が科せられるということに相なっております。
  203. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 先ほどから議論になっていますスプリンクラー設置にかかわる命令、これは昨年の九月十一日にようやく出されたわけですけれども、これは法的根拠は第十七条の四によって行われた。これは議論がされたところですけれども、私がいま問題にしているのは、八条四項による命令を出す必要が消防署側にあったのではないか、それにもかかわらずそれを行わないできたのではないか、そのことを言っているわけですけれども、いかがでしょうか。
  204. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ここの八条の四項にございますように、一項の規定によります義務解怠がありました場合に必要な措置命令を発することができるということに相なっております。したがいまして、今回のホテルニュージャパンのもろもろのいわば手落ちと申しますか、不備事項が八条一項に該当いたしておるものでございますれば、当然措置命令はかけ得るということでございますが、結論から申しますれば、東京消防庁といたしましてはこの八条四項の措置命令はかけていなかったということでございます。
  205. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 スプリンクラー設置の場合は、消防署がホテル側の引き延ばし作戦に引っかかった、そういう責任があるわけですけれども、この八条関係の防火管理、これは主として従業員の組織化に関することであるわけですから、莫大な資金が要るわけでも何でもありません。たとえホテル側が大幅な人員削減の合理化を行おうとも、その時点、時点に応じた組織体制が確立をされるよう指導、命令をしなければならないはずだと思うのです。  私は、ここに「防火」という雑誌がありますが、その一部を紹介したいと思います。「防火管理責任」という論文を神戸市の消防局査察課長の森本宏氏が書かれておられますけれども、ここでこういう指摘があります。「病院や旅館・ホテルでは、一定の夜間宿直人員が確保されていなければ、万が一出火の際宿泊者や入院患者の救出はおそらく不可能でしょう。このような防火管理状況では、決して適正に管理が行われているとは何人といえども認め難いのですから、防火管理適正化措置命令(八条四項)により、必要な人員の確保を命じることは可能と思われますし、また消防として命じなければならないと思うのです。さらに夜間の宿直人員が極端に少ないような場合には、使用の禁止等(五条)の措置考えられるはずです。」そして、ここで非常に問題だと思うのは、「特に応用範囲が広いと思われる八条四項の防火管理適正化措置命令は、まったく陽の目をみていないといっても差支えないと思います。なぜなら消防白書(五十五年版)にも五条の命令件数二十九件、十七条の四の命令件数四百十件はあっても、八条四項による命令はまったく記載されていないのですから。」そういう指摘があるわけです。これはまさに消防側がやってできることをやらないでいた、そういうことを指し示していると思うのですけれども、たとえば昭和五十六年十月、ホテルの従業員が消防計画の人員表を消防署に持っていきました。それをどうして受け取らなかったのですか。
  206. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ただいま御指摘にございました事実につきましては、ちょっと私ども承知いたしておりません。
  207. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 よく調べていただきたいと思うのです。私は、東京消防庁に直接伺いましてこのことを聞いてきているのですけれども、その点ちょっと、長官じゃなくて、どなたか知っておられないでしょうか。
  208. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ちょっと係官も具体の中身を承知いたしておらないわけでございますので、早急に東京消防庁の方と連絡をとりまして確認をいたしたいと存じます。
  209. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 これは私が聞いたところでは、手書きで非常にいいかげんな計画だったので、それは受け取らなかったんだ、五十六年の十月時点で受け取らなかったということだったわけですけれども、それを受け取らないで突っ返したままにしておいた、そこに私は大きな問題があるというふうに思うのです。  もちろん、こういうホテル側の管理責任というのはあるわけですけれども消防署側が、やらなければならない、そういうものを命令もしないで放置をしておいて、結果としてホテル側の罪を免れさせる、しかも被害を大きくしてしまう、そういうことを招いてしまう、このことは大変重要な問題だというふうに思います。消防署はなぜ消防計画をそのままチェックもしないで、また計画変更もさせなかったのか、この点について私は今後の問題もありますので、厳重に調査をして、今後こういう場合にどういう対処をしていかれるのか、その点について伺っておきたいと思います。
  210. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 少なくともホテルニュージャパン火災の後、私どもいろんな事情を伺いました限りにおきましては、八条一項違反の事態があったのではないかという疑いと申しますか、懸念を十分持つわけであります。それにもかかわらず、なぜ四条を発動しなかったのかということにつきましては、東京消防庁の方と今後いろいろまた問題点を整理し、検討し、分析していく中で詰めてまいりたいと思っております。  ただ今後におきましては、やはり先ほどの十七条の四と同じでありまして、八条一項の条件に該当しました場合には、悪質なものにつきましては当然四項の適用は可能なのでありますから、この点につきましても厳しい措置をとるように指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  211. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 これはきちっと八条四項の問題を解明して、そして行政責任というものを認めた上で対処をしていかないと、結局、もともと消防計画がずさんであるから、八条四項の消防計画に従って行われていないと認める場合であるか否かすら消防は大体確認できないことにもなってしまう。そうすると、もう消防法が一体あるのかないのかということ、その存在そのものも問われることになってしまうわけです。そういう点で、今後きちんと消防署が法を守っているかいないかということについて厳しくチェックをして、そして麹町署の法運用に問題がなかったのかどうか、そのことを究明していくべきだというふうに思うわけです。きょうは大臣もお見えでありませんので、この点、ぜひ大臣にも伝えていただいて、最後までのきちんとした対応をお願いしたいと思うのですけれども、政務次官のお考えを伺いたいと思います。
  212. 谷政府委員(谷洋一)

    ○谷政府委員 ただいま御指摘になりました問題につきましては、世耕大臣に十分お伝えしたいと思います。
  213. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 もう一点だけ伺っておきたいと思いますけれどもスプリンクラー設置をされていなかったことについて伺いたいと思います。  四十九年改正で、スプリンクラー遡及適用が義務づけられ、猶予期間が五十四年三月三十一日までとされたわけですが、麹町消防署はこれに対して、五十二年二月二十八日に文書で、期限までにスプリンクラーの全館設置指導しているわけですけれども、この時点では、期限まで残された期間はもう二年しかなかったわけですね。五年の猶予期間を設けたのに、運用では三年間を空費していた、こういうことになるわけですけれども指導上に問題があったのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  214. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 四十九年に法律改正をされまして五十四年までの施工期間があったわけでありますから、五年の間にスプリンクラーが完全につけられるというのが本来だろうと存じております。その間、東京消防庁が個々具体にどのような措置をこのニュージャパンにとってまいりましたか、私ども詳細ちょっと存じない向きがあるのでありますけれども、具体的には文書でもって五十二年に出したというのが、いわば公式な文書としては初めてであります。スプリンクラーでありますから、設置にかなりの経費なりあるいは日にちがかかるということは事実でありますから、その辺を十分勘案しながら東京消防庁としては個々具体の指導をしたと存じますけれども、いま申しましたように、結論的には、文書が出ましたのは五十二年でございます。
  215. 岩佐委員(岩佐恵美)

    岩佐委員 先ほどからも議論されているところで、最後に私は、二回の当委員会での質問を通じてつくづく思いますのは、やはり消防署がホテル側となれ合わないで、きちんとした姿勢をとって、きちんとした体制をしていく必要がある、このことを非常に痛感をするわけですね。五条の問題にしても、それからきょう指摘をしました八条四項の問題にいたしましても、あるいはいま言ったような、なぜこういう重要な問題について、遡及適用が切れる、そういう二年前にちょこっと言う、文書で出すということではなくて、きちんとすぐに文書で出すなり、あるいはそれを守らなければ何度も文書で出していくというようなことでやられるということが必要だと思うのです。  それから、前委員会でも指摘をしましたように、査察についても、事前に通告をしてから査察をするということではなくて、やはり立入査察というものを臨機応変にどんどんやっていただく、そういうことがなければこのような事故は防げないということを指摘をしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  216. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 田島衞君。
  217. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 今回のホテルニュージャパン火災に対する問題については、いろいろと各党の議員さんから御質問があったことだろうと思いますから、私はできるだけ重複を避けるような意味で伺ってみたいと思います。  その要点は、どんなささいなことにもそこから学ぶべき経験がある。いわんや高層建築物火災、そして大変大きな災害発生した火災からは、学ぶべき多くのことがあるはずだと思うのです。その学んだものは、必ず新しい将来に生かされていなければならないはずだと思うので、そういう意味で若干伺ってみたいと思うのです。  よく一つ事故が起こると、その後に早速一斉点検や何かがある。そのこと自体が何か泥縄のような感じがする。本当は点検というものは、事前にしょっちゅう定期的に行われていて、それが生きていなければいけないのですけれども、何かがあるとあわてて一斉に点検して、ぐあいの悪いところは何百何十カ所あるとかなんとか言うている。  そういう行政の姿勢そのものにも大いに反省をしなければならないものがあると思うのですが、とりあえず、この前の川治の大きな火災による災害があったわけですけれども、それから大分時間がたっている、そして今回またホテルニュージャパン火災があった、こういう高層建築物の異常災害の過去の経験の中から消防庁は一体何を学ばれたのか、主なところだけぽんぽんと聞かせてもらいたいと思うのです。
  218. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 過去にこのような大きな災害が何件か発生いたしておりまして、その原因、結果等を分析いたしておるわけでありますけれども、いろいろの理由が相重なっておることは事実でありまして、一つの理由だけではないことは御案内のとおりであります。  やはりいろいろあるわけでありますけれども一つは防火、消火設備が不備であったということは、これは動かすことのできない問題だと思っております。  と同時に、二番目は、日ごろの管理者、防火管理体制というものがこれまた不備であったという点が、二番目に挙げられようかと存じております。  それから三番目には、火災発生いたしました場合の建物側の宿泊客あるいはお客に対しまする避難誘導あるいはまた初期消火あるいは消防機関に対しまする連絡通報、こういうような非常の際の初動がまずかったという点が直接的な原因になっておるかと思うわけであります。  なおそのほか、やはり旅館、ホテルあるいはデパートというような不特定多数の人の出入りをするあるいは預かるというところにおきます経営者のモラルと申しますか、その責任の重大さということを十分自覚をしていただきたいという問題もありましょう。あるいはまた、旅館、ホテル等では宿泊される方がいざというときにどうするかというようなことも、ひとつ日ごろからいろいろお考えいただきたいということもございましょう。いろいろ問題はありますけれども、大きく申しまして前段申し上げました三つ、とりわけ四番目に申しました管理者の道義と申しますか、モラルの問題というものも大きな問題だろうと考えておるところでございます。(「大切なことを一つ忘れている」と呼ぶ者あり)
  219. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 私は、いまの長官のお答えを聞いておって、後ろの方で先輩の声がありますけれども、一番大事なことを一つ忘れているんじゃないかなと思う。それは、いまのお話を聞いていると、全部ホテル側の責任。じゃホテル側の責任以外には何にもないのか。私はあえて、行政側の責任がどうだ、だれをどうしろなんてそんなことを言うつもりはありません、ありませんけれども消防庁としては、まず一番先に行政そのもののやり方に何か不備がなかったかなと考えるのが一番大事なことだと思うのですよ。それがなかったら、ただホテル側に、おまえらちゃんとやっているのか、やっているのかと言うだけだったら、いつまでたっても同じような災害は次々に起こるし、いつまでたってもこの対策というのはとられていかないと思うのです。  私は、行政側の責任がどこにあって、だからその責任をとれとかなんとかは言いません。そんな責めるつもりじゃない。責めるんじゃなくて、やはりその責任というものは、まずみずからの責任を、どこかに足らないところはなかったかな、過ちがなかったかなと思うような覚悟を持ってしないと、物事というものは、特にこういう重大な問題についての打開策はできていかないと思うのです。そういう点で、行政そのものの責任というのは何もありませんか。
  220. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 お示しのように、行政側といたしまして、今回あるいは過去の大火につきまして反省すべき部分は多々あろうかと存じております。今回の火災につきましても、措置命令の出し方あるいは警告書の出し方が手ぬるい、あるいはまた時間がかかり過ぎたではないかという、いろいろな御批判もあるわけであります。消防機関といたしましては、このような御批判につきましては謙虚に、そして厳しく受けとめ、今後の対策の樹立のために万全を期していく必要は当然あろうかと存じております。
  221. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 長官、現にホテル側設備が不備だとか管理体制が悪いとかと言うでしょう。だけれども、そういうことを指導監督しているのは消防庁ですからね。だから、ホテル側設備が悪い、防火体制がだめだ、防火管理者の訓練が行き届いていないと言ったら、じゃ何でもっとちゃんとやらせないんだということになるでしょう。そんなことは子供だって、そういうふうにちゃんと次々に類推していく。問題は、行政側がそういう面でも、やはり少し指導監督が甘過ぎたなとかなんとかいうことを反省するところから、道は一歩開いていくと思うのですよ。そこのところをぜひ考えていただきたいと思うのです。別に責める気じゃなくて、やはり問題というのは、一つのことがあったら、それは生かされていかなければいけない。生かすためには、人のことを言うんじゃなくて、自分の責任は全うされたかなということを考えるところから始まっていかなければだめだと思うのです。  それから次に、今度も大変な死者が出ているわけですけれども、前回の川治の場合にもさんざんそのことで消防庁とやり合ったのですが、一体高層建築物の死者、負傷者もそうでしょうけれども特に死者、亡くなった方の直接の死因は火なのか煙なのかどっちか、ちょっとそのことについてお答えいただきたい。
  222. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 これは、それぞれの機関におきまして調査をされました結果を伺ったわけでありますが、三十二名亡くなられた中で一酸化炭素中毒によります方が十三名、骨折等によります方が十二名、火傷が七名という報告を受けております。
  223. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 その骨折の方でも、飛びおりたり何かして骨折ということもあるでしょう。その飛びおりた理由が一体火なのか煙なのかわかりませんけれども、直接というといまのようなお答えになるでしょう。  そこで、警視庁側の調査、警察庁ですか、どちらでもいいんですけれども、警察側の調査による直接の死因というのは同じような見解でしょうか。
  224. 大堀説明員(大堀太千男)

    ○大堀説明員 お答え申し上げます。  検死及び解剖の結果によりますと、一酸化炭素中毒死十三名、骨折死、これは頭蓋骨、骨盤等の骨折死が九名、内臓破裂死が三名、火傷死が七名ということでございます。
  225. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 たとえばその頭蓋骨骨折等の亡くなった方も、せっぱ詰まって飛びおりたり何かして亡くなったわけで、別におもしろくて飛びおりたわけじゃない。結局、火に攻められたか煙に攻められたと思うのですが、いまのお答えを聞いても、最近の火事、火災による被害、特に高層建築物によるところの死者が多いということの原因の大きなものに、やはり煙があると思うのですよ。新建材を多用している。したがってその新建材が燃え出すと、出てくる煙というのは、単なる煙で息苦しいのじゃなくて、言うならば毒ガスに類するもの、これによってほとんど失神してしまう。その失神して倒れた人がそのまま焼かれれば、それは焼け死んだということになるのでしょうけれども、本来、火傷によって死ぬ前に煙でもう失神状態になっている場合が非常に多いはずだと思う。  川治の例というのはもう古くなっているから、はっきりデータが出ているのでしょうけれども、川治のときには煙、直接死、その区別はどのぐらいの人数になっているか、これは通告していないから、そこにデータがなければなくてもいいです。だけれども、こういう高層建築物火災の件についてはわかっているはずだと思うので、もしわかったら聞かしてください。
  226. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 川治の場合でございますが、一酸化炭素中毒死で亡くなられた方が四十四名、その他が一名ということでございます。
  227. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 その例からするとなおさら顕著に、私が申し上げたようなことが立証されるわけです。  さてそこで、そういう高層建築物火災の場合には煙に対する対策が非常に大事だなということを、消防庁は本当に学ばれたのか、それとも、それほどに感じていないのか、その点はどうでしょうか。
  228. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 いまお示しがございましたように、火災によって亡くなられる方という中に、火災態様にもよるわけでありますが、やはり中毒死という方がかなりあることは事実であります。ニュージャパンの場合にも、先ほど御報告申し上げましたように、三十二名中十三名の方が一酸化炭素中毒という結果が出ているわけでありまして、火災の場合に煙からどうして逃れるかというのは、やはり防災上の大きな問題点であろうというふうに私ども認識をしております。
  229. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 その煙による大量の死者を出した川治の火災以来、煙について特別な対策をどのように立てられたか、聞かせてもらいたいと思います。
  230. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 川治のホテル以後、特に煙によります被害というものにどのように対応するかということでいろいろ検討を進めてまいったわけでありますが、空気呼吸器あるいは防煙マスクなどの基準の作成につきまして検討を進めてまいりました。その結果、昭和五十五年十一月十七日に「火災避難用保護具等に関する基準等について」というものを消防庁で策定をいたしまして、火災予防運動期間中でありますとか、その他あらゆる機会を通じまして、この防煙用の器具の普及を図ってまいっておるところでございます。
  231. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 器具の普及を図っているというくらいじゃ、過去における死者のデータから学んだところに対するいまの対応としてはちょっと甘過ぎるんじゃないですか。この前、その川治のホテル火災のときにも、当時の消防庁長官とさんざんやり合ったんですよ。まず煙対策だ、煙に対して安心して——逃げるにしても、たとえば従業員が客を誘導するにしても、自分が煙に巻かれちゃっていたのではどうにもならぬ。だから、一時的にも煙に対して安心して対応できるような、言うならばマスク類のようなものを一日も早く開発してそれを備えつけさせることの方が先だということを、さんざん議論したんですよ。そのときにもスプリンクラーの話が出た。  ところが、スプリンクラーというのは、うんと金がかかるのでしょう。だから、新設のホテル、旅館等に義務づける場合には、初めから配管をすればそれほどでもないけれども、もうすでに建っているものに途中からやれと言ったって、金がかかるし、それをやるには大変な期間ホテルを休業してやらなければならぬ。だから、ホテル側の怠慢もあるし、ずるもあるだろうけれども、なかなか金がかかるし、期間がかかるし、その間休まなければならぬということもあるから大変なんですよ、別にホテルに味方をするわけじゃないけれども。だれがその立場に立ったって、大変なものは大変、金のかかるものはかかるわけです。  だったら、そんなスプリンクラーがどれほどの効力があるかわかりませんけれども、いままでの過去の経験の中でどのくらいスプリンクラー様々が火災に対して大変な威力を発揮してくれた事実があるか知らぬけれども、そんなものに金をかけたり、そんなものを義務づけて、義務を守らぬで、また守らぬやつをびっしり守らせることもできないでいるよりは、むしろ古かろうと新しくできたものだろうと、その差がなしに同じような費用でできる防煙マスクみたいなものの備えつけを義務づける、できれば各客室に一個ずつ、あるいは廊下の要所要所にちゃんと備えつける、従業員にはちゃんと持たせる。いつでもそれを持ってとりあえず煙の恐怖から逃れて、それぞれの責任が果たせるようにするだけでも、うんと違うと思う。ところが、なかなかそれをやろうとしないのはなぜなのか、まことに理解に苦しむわけなんです。  スプリンクラーをつけさせる、それもちゃんとつけてくれるならいいけれども、なかなか守らないような、スプリンクラースプリンクラーと一生懸命何かの一つ覚えのように言っているのが、本当に行政効果を上げられるのか、それとももっと金のかからぬ、しかも新旧の差のない、相手方が同じような費用でできるところのそういう防煙マスク類を備えつけさせることの方が有効なのか、いまだに結論出ませんかな。
  232. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 ホテルあるいは一般のビルにおきます防災対策といたしまして、一つは、いまお話がございましたようにスプリンクラーでございますとか、あるいはまた消火栓あるいはまた火災報知機というような、火災発生に至りますまでの間の防火あるいは防災設備とあわせまして、火災発生しました後の避難をする際のいろいろな設備、装置というものとに分け、しかもこれを総合的に考えてまいらなければならないだろうというふうに存ずるわけであります。  防煙マスクにつきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、五十五年の暮れに一応の防煙マスクあるいはまた空気呼吸器の基準というものを専門家の手によってつくっていただきましてこれを制定いたしまして、ただいまこの普及をできるだけ進めていこうということをやっておるわけであります。  ただ、いま御指摘がございましたように、ビルあるいはホテル等におきましていざ火災が出たときに、やはり煙からいかにして逃れるかというのも一つの大きなテーマであります。そこで、私どもといたしましては、たとえばビル等におきましては自衛消防隊というものをそれぞれ組織をいたしておるわけでございますけれども、自衛消防隊にこのような防煙マスクを必ず持たせるというようなことにしてはいかがとか、いろいろなやり方があろうと存じております。  いずれにいたしましても、私どもいろいろ検討は進めてまいったわけでありますけれども、実は去年の九月から私の方に防火管理体制研究委員会というものを設けまして、ビルの防火管理体制をどうするのか、火災を出さぬための対策、出た後の対策、この二つを含めましてビルの防火管理体制研究委員会というもので専門家にお集まり願ってせっかく研究、勉強をしていただいておる最中であります。この防火管理体制研究委員会でいろいろな分科会に分かれて研究していただいておりますので、いま申されましたような火災発生時におきます防煙マスクをどのように位置づけ、どのように設けていくかということにつきましても、今後そのようなシステム全体の中でひとつ十分御検討願い、結論を得たいというふうに存じておるところでございます。
  233. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 やらないよりいまやっていることはいいと思いますけれども、ただ、いまのお話を聞いていると実にのどかなんですよ。幸いにしていままでどこにもそんな高層建築物火災なんか日本ではないというならば、そのくらいの話でも聞けますけれども、身近な過去に川治の例がある。そういう大きな災害の例があっていまなお、お話を聞いていると本当にこういう異常火災災害の責任というのはホテル側だけなのかなという気がしないでもない。ほかの質問者に対する長官の答えの中に、いずれにしても二度と再びかかる災害が起こらないように努力するとかという答えがあったように聞いたんですけれども、それは言葉で言うのは簡単ですけれども、実際にはそれは大変なことです。恐らくいまの体制のままだったら、二度と再びどころか、三度でも四度でも五度でも同じような火災による災害が起きると思いますよ。起きたその日からすぐ適切な措置をどんどんとるようにしなかったらこれは次々に起こる。  何という名前をつけていいかわからぬけれども、防煙対策のマスクというのですか、そういうものを何でそんなにのんびりやってなきやならないのか。それの設備を義務づけることなんて簡単でしょう。それだったらホテル側がどんなにけちったって、それまで設備しないなんということは言わせずに済むはずだと思うのです。消防庁にしたって、猶予期間何年なんて言う必要はない。猶予期間なしでだってできるはずだと思うのです。猶予期間なしで、しかも必ずその効果はあり得るだろうと思うことを、なぜのんびりしてやらないで、実際上効果がどれだけあるかわからぬ、しかもなかなかやれやれと言っても守られないスプリンクラースプリンクラーで、よほどスプリンクラーにほれ込んでいるみたいですけれども、もう少し行政なんというのは現実のものだから生きたやり方はできませんかね。
  234. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 私ども、防煙マスクというのは、これは火災発生時に大いに一つの避難器具として効果のあるものであろうということは、一般的にはよく理解いたすわけであります。ただ、いま全国の建物に一斉にそういうマスクを置かせること自体、これはもう少し検討しなければならない問題もあろうと私ども思っております。ビル全体としてどのような防火管理体制をとるのかということから入りたいというような気持ちもございまして、ただいま申し上げましたような研究会を設けまして、せっかく専門の先生方努力をいただいておるところでございますので、できるだけ早くこの結論を得て、対策を立てたいというふうに存じておるところでございます。
  235. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 それじゃ納得できないんですよ。現に長官が御自分で、いずれにしてでも二度と再びこのような災害の起こらないようにと言って、さっきだれかの質問に答弁したのでしょう。そんなまごまごしたら、二度と再びどころで済まないじゃないですか。何回も言うとおり、私はだれの責任がどうだ、だからおまえは責任をとれのとらぬのという話をしているんじゃない。何とかして、次に起こった場合には、ああさすがにうんとよくなったな、よくこれだけの被害で食いとめたというようになったらいいなと思うから、一生懸命下手な話をしているわけなんです。  もう少し真剣に取り組んでくださいよ。何で研究会をやらなきやならぬのか。それでは、スプリンクラーというものを義務づけたら、ちゅうちょなく猶予期間なくちゃんとホテル側が取りつけるようにするにはどうしたらいいかという研究をやっているのですか。とにかく長い時間はもう聞きませんけれども、きょうあたりは何とか結論を出してください。やる気があるのかないのか。本当に人命をとうといと思っているのかどうなのか。最近の火災、特に高層建築の火災、できることから、とりあえず煙対策のやれることからどんどんやらなきやならぬという腹を持っているのか持っていないのか。
  236. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 火災の予防あるいは防災につきましては、できるものから速やかにこれを実施に移していくということは、私ども当然だろうと存じております。御指摘のございました防煙マスクにつきましては、専門家の検討によりますればまだ技術的に若干検討しなければならない問題点もございます。と同時に、重ねての答弁で恐縮でございますが、いま申しましたように、ビル全体の防災あるいは防火ということをどうするかという問題の中で、この防煙マスクにつきましても十分検討をさせていただきたい、しかもできるだけ速やかに答えをいただきますように委員先生方にもお願いをして、一刻も早くこの結論を得て対応してまいりたいというふうに存じているところでございます。
  237. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 消防庁のかわいい部下の職員、特に火災のときに第一線で飛び込んでいく人たち、煙の中へは何をつけて飛び込んでいくのですか。何もつけずに煙へすいすい飛び込んでいくのですか。どうしているのですか。
  238. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 状況に応じまして、空気呼吸器を装着して活動しております。
  239. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 何でかわいい部下には、研究もしないでつけさせているのですか。
  240. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 きわめて専門技術的でございますが、空気呼吸器と通常防煙マスクとは性能等も若干違うようであります。と同時に、かなり技術訓練をして彼らは装着しているというふうな状況もあるわけでございます。
  241. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 一番消防庁のかわいい職員の人たちのことだから、大丈夫ちゃんと有効に使えると思うからつけさしているのでしょう。そうしたら、一般のホテルにだってそれをちゃんと義務づけることができないわけはないでしょう。別にそのホテルの人たちでは、とても技術的にむずかしいというほど高度の技術を必要とする装着物ではないでしょう。消防署員がそのマスクをつけるのにどれだけ訓練するのですか。
  242. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 技術監理官から御答弁をお許しいただきたいと存じます。
  243. 渡辺説明員(渡辺彰夫)

    ○渡辺説明員 ただいまの件についてお答え申し上げます。  煙が充満したところにおける活動、ここに先生指摘のとおりに一酸化炭素を初めいわゆる有毒ガスの問題が一つございます。二番目に、物が燃えるということに伴いまして酸素の不足という問題がございます。したがいまして、専門の職員におきましては、空気を圧縮してそれをボンベに入れたものを持っているのが現状でございます。  それで、このような空気呼吸保護具の場合に一つの大きい問題点といいますのは、顔面にうまく完全に密閉状況で装着できるかどうかというような問題が一つ技術的にございます。いわゆる標準的な顔面を決定いたしましても、二、三〇%の人が完全に合わないでマスクと顔面の間から漏れるというような問題があり、この問題の解決のためにいま専門家がいろいろと努力しておるのが現状でございます。  なおまた、高層建築物における火事のときには、呼吸の保護だけではなくて人間の皮膚等、いわゆる熱傷に対する保護も同時に考えないと、一般的に現実の火災に遭われた方の避難等のお話等を伺いましても、煙以外に高温、余りにも熱過ぎるために廊下に出れないというケースもあることにかんがみまして、いわゆる熱傷の保護の問題、そういったような若干の技術的問題を現在検討しておるというのが実情でございます。
  244. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 一応御説明を聞いたのですけれども、残念ながらそれでは理解できない。たとえば消防署員のように、長時間救助、消火活動に当たるというなら、それはよっぽどフィットした、ぴしゃっと顔に合ったものでなければいけないでしょうし、だから各人がそれぞれにちゃんと合ったものを持っていなければいけないでしょうけれども、応急の場合に使えるぐらいのものは、すき間から少しぐらい入ろうと入るまいと、全然入っちゃうよりいいじゃないですか。  だから、理屈でなしに、たとえ完全なものでなくても、ないよりはこの程度のものならいいなというものは考えられなくはないはずだ。どこかに隘路があるのか、それをやりにくくしている理由があるのかわかりませんけれども、あったらむしろそっちの方が、実はこういう理由があってそういうことをやらせにくいのですよということがあるなら、それを聞かしてもらった方がまだ参考になる。そうでなくて、いままでのように、いや技術的にこうだとか訓練が必要だとか顔に合うとか合わぬとかという話じゃ、さっぱり理解ができない。専門にやらせるわけじゃないですから。  たとえば、酸素の補給に対して小さいボンベでもしょわせなければならぬ、そういうものならそういうもので、そのホテルにちゃんと防火責任者というものを指導して置かせる、置かした者には定期的に地元の消防署へでも呼びつけて訓練させる、そのときにちゃんとマスクの使用方法なんかも訓練すれば、大丈夫使えるじゃないですか。一般応急用には、たとえば飛行機に積んであるものだって、お客さんどんな顔つきですかと別に聞いてやっているわけではないのでしょう。ちょっと、ぱあっとやるだけじゃないですか。それでも応急的には間に合うじゃないですか。  もう時間がありませんからそれ以上聞きませんけれども、何しろ長官が御みずから、いずれにしても二度と再びこのような災害が起きないようにすると言った。それをそのままで聞いていたってしようがないから、少しは前に向いて、これだけ前進したな、今度は幾らかいいかなと安心できるような答えを聞いてやめたいと思っているのですが、長官からもう一回、もう少しその気になってやってもらえませんか。それこそ長官じゃないけれども二度と再びこんな災害があったら困るからない方がいいけれども、この次あったときに、なるほどこの火災の規模の割りには死傷者は少なかったな、よかったなというような結論が出るように、どんなことあったってやってやろうという決意のほどを聞かせてもらえませんか。  今度のホテルニュージャパンだって、火元が九階だからよかった。あれがたとえば五階以下の低いところで、上へじわじわ煙で攻められたら大変な死傷者が出たと思いますよ。もうそれを考えただけだってぞっとする。だからひとつ何とか、もうこれで聞きませんから、長官、幾らか私がよかったなと思って終われるような返事を聞かせてください。研究はだめですよ。早いところやらなきやならない。
  245. 石見政府委員(石見隆三)

    石見政府委員 技術的な問題も若干、技術監理官から御答弁申し上げましたように残されておるようであります。せっかく検討いたしまして、早い結論を得るように努力をいたしたいと存じております。
  246. 田島委員(田島衞)

    ○田島委員 終わります。
  247. 中山委員長(中山利生)

    中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十五分散会