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加藤(隆)
政府委員 最初に、円高誘導というようなことでございますが、どうも固定制のときとフロートのときと根本的に違うという点がなかなか御理解いただけない。
固定制の場合には、各国が基準のレートを高く掲げまして、それで、たとえばいままででございますと、〇・七五の上下で介入の義務がある。それができなく
なりますとギブアップで切り上げ、切り下げというようなことをやる。ところが、フロートに
なりますと全く上下青天で、売り買いでレートが決まっていくということになるわけであります。その場合に、
自分の方の
理由だけではなくて、外側の
理由からも動くということでございます。
そういうことで、
円安操作というようなこととか円高誘導というのは、そう手品のようにできるんじゃなくて、基本的にはやはり
自分の国のサイドでできることはファンダメンタルズをしっかりしていくということが基本でありまして、あと、
幾つかの軽微なる措置というのはあり得るわけでございますが、基本的には自国の
経済をしっかりする、そうして為替
政策として
幾つかのことがございますが、同時に、国際協調というようなことで相互に安定化を図るという、
三つぐらいの分野があるわけでございます。
それから、貿易摩擦の問題でございます。
貿易が
伸びるという問題がございますが、先ほど申しましたように、貿易収支だけを見ると二百億からの黒でございますが、貿易外は構造的に百五十億、百四十億ドルの赤になっておる。だから、貿易の問題を議論する場合には、貿易収支と貿易外を
考えるべきであると思うわけです。たとえば
アメリカの五十六年は、貿易収支が二百八十億の赤でございますが、貿易外は三百五十億の黒である、経常収支は約七十億の黒になっておるわけです。そういうことでございますので、まず、貿易摩擦を
考える場合に、貿易収支だけで論ずるのはどうもおかしいのじゃないか。
その次は、貿易摩擦を論ずる場合に、レートだけで議論するのはおかしいのじゃないか。たとえば
円安に
なりましても、輸出の増にはね返るにはか
なりおくれるという問題がございます。現在の
円安は即時に輸出増には結びつきません。もう
一つは、世界の
景気が後退局面にありますと、レートの
意味というのはか
なり小さく
なります。それから、貿易摩擦などがありますと、どうしても貿易活動が阻害されるというような問題があります。したがって、他の
条件が等しければ、何カ月かのラグを持って輸出が
伸び、輸入が阻害されるという効果は経験的にあったわけでございますけれ
ども、いつもそうであるのかどうかということと、タイムラグがあるという問題があります。
それから、成長率との絡みでございますが、フロート以降八年間を分析しますと、交易
条件というとらまえ方、これは数量一定という
前提がございますので、交易
条件というとらまえ方をするのが正しいかどうか、具体的にはいろいろな要素が絡みますので……。レートとGNPとの
関係ということで
考えますと、御
指摘のように、確かにわが国の場合は円高の方がGNPの実質増は大きいように思います。ただ理論的には、レートが下がると名目GNPは上がるという
関係にあることはまた事実であります。実質が問題であるとすれば、レートが高い方が一般的にはGNPが高くなる、こういう
関係にありますから、実質成長率云々ということとレートという問題を
考える場合に、ストレートにレートと五・二%の成長を結びつけるのではなくて、いま申しましたようないろいろな
条件のもとにおいて
考える必要があるかと思います。
第三点の、投機的
傾向が強いという御
指摘でございますが、五十六年で見ますと、東京の外為市場の銀行間取引は約一兆ドルあります。これはスポット、直物が半分、先物
なり裁定取引が半分ぐらいあります。それから、銀行と顧客との取引で見ますと約五千億ドル、そのうち半分が貿易
関係でございます。三番目には、海外から東京市場につながってきた金額を見ますと、一兆八千億ドルあるわけです。したがって、いま申しましたように、貿易関連の為替取引のウエートというのは極度に小さい。
そうすると、その他は何であるかということになるわけですが、先ほ
ども申しましたように、資本取引が非常に大きく動いておる。これは、
金利差と
金利水準が絶えず変動しているというようなことから、そういうことになってきたと思うわけでございます。これを投機と
考えるかどうか、ヘッジと投機との差でございますが、この境界というのはなかなか見定めがたいわけでございますけれ
ども、理論的には、投機というのはどちらかというと安定作用を持っているというふうに言われております。したがって、裁定取引
なり先物取引
なり投機的取引
なり、そういうものをひっくるめましていまの
柴田委員の御
指摘の投機的
傾向というふうに
考えた場合に、そういうような取引は大きくなってきております。
以上の三点の御
質問で、しからば
円安問題についてどう
考えるかという御
指摘でございますが、先ほど申しましたように、レートの決定
要因は
国内要因と海外
要因がある。
国内要因の方は、
日本経済の運営をしっかりやっていく、
日本のマーケットに対するコンフィデンスを高めるようなことを
考えていく。海外は、もっぱら目下のところは
アメリカの
金利でございますので、
アメリカの
金利の
動向をウォッチしていく。そして為替
政策、これは
経済政策全般が絡むわけでございますが、具体的に為替
政策に限定してする場合には、マーケットの乱高下に対しては適切な介入をやる、そういうような
考え方でやっておるわけでございます。