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1982-04-21 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十一日(水曜日)委員長の指 名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  減税問題に関する特別小委員       相沢 英之君    大原 一三君       奥野 誠亮君    金子 一平君       倉成  正君    小泉純一郎君       村山 達雄君    山下 元利君       山中 貞則君    沢田  広君       平林  剛君    堀  昌雄君       正木 良明君    竹本 孫一君       正森 成二君    小杉  隆君  減税問題に関する特別小委員長 山中 貞則君 ————————————————————— 昭和五十七年四月二十一日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 和田 耕作君       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       植竹 繁雄君    浦野 烋興君      小此木彦三郎君    亀井 善之君       瓦   力君    北川 石松君       熊川 次男君    笹山 登生君       椎名 素夫君    白川 勝彦君       泰道 三八君    中村喜四郎君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       山中 貞則君    山本 幸雄君       与謝野 馨君    大島  弘君       川本 敏美君    佐藤 観樹君       野口 幸一君    平林  剛君       堀  昌雄君    柴田  弘君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省証券局長 禿河 徹映君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         運輸政務次官  鹿野 道彦君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    小谷善四郎君         外務大臣官房外         務参事官    長谷川和年君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         日本専売公社管         理調整本部職員         部長      丹生 守夫君         日本国有鉄道共         済事務局長   岩崎 雄一君         日本電信電話公         社厚生局長   澤田 道夫君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     北川 石松君   木村武千代君     亀井 善之君   中村正三郎君     植竹 繁雄君   平泉  渉君     瓦   力君   毛利 松平君     浦野 烋興君   森田  一君     泰道 三八君   柳沢 伯夫君     中村喜四郎君   野口 幸一君     川本 敏美君   玉置 一弥君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     倉成  正君   浦野 烋興君     金子 一平君   亀井 善之君     山下 元利君   瓦   力君     奥野 誠亮君   北川 石松君     相沢 英之君   泰道 三八君     森田  一君   中村喜四郎君    小此木彦三郎君   川本 敏美君     野口 幸一君 同日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     村山 達雄君     ————————————— 四月十六日  税制改革に関する請願青山丘紹介)(第二  二四九号)  同(小沢貞孝紹介)(第二二五〇号)  同(大内啓伍紹介)(第二二五一号)  同(岡田正勝紹介)(第二二五二号)  同(春日一幸紹介)(第二二五三号)  同(神田厚紹介)(第二二五四号)  同(塩田晋紹介)(第二二五五号)  同(竹本孫一紹介)(第二二五六号)  同(玉置一弥紹介)(第二二五七号)  同(中井洽紹介)(第二二五八号)  同(中野寛成紹介)(第二二五九号)  同(永末英一紹介)(第二二六〇号)  同(西田八郎紹介)(第二二六一号)  同(林保夫紹介)(第二二六二号)  同(部谷孝之紹介)(第二二六三号)  同(三浦隆紹介)(第二二六四号)  同(宮田早苗紹介)(第二二六五号)  同(横手文雄紹介)(第二二六六号)  同(吉田之久君紹介)(第二二六七号)  同(米沢隆紹介)(第二二六八号)  同(和田一仁紹介)(第二二六九号)  同(和田耕作紹介)(第二二七〇号)  同(渡辺武三紹介)(第二二七一号)  同(渡辺朗紹介)(第二二七二号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の処  遇改善に関する請願沢田広紹介)(第二二  七三号)  医業税制確立に関する請願新村勝雄君紹  介)(第二二七四号)  たばこ塩専売制度存続に関する請願(井出  一太郎君紹介)(第二三一一号)  同(小沢貞孝紹介)(第二三一二号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二三一三号)  同(串原義直紹介)(第二三一四号)  同(倉石忠雄紹介)(第二三一五号)  同(小坂善太郎紹介)(第二三一六号)  同(清水勇紹介)(第二三一七号)  同(下平正一紹介)(第二三一八号)  同(中村茂紹介)(第二三一九号)  同(羽田孜紹介)(第二三二〇号)  同(宮下創平紹介)(第二三二一号) 同月二十一日  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の処  遇改善に関する請願相沢英之紹介)(第二  四三八号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願田邊誠紹介)(  第二四五四号)  大企業優遇税制の改正に関する請願四ツ谷光  子君紹介)(第二四九〇号)   一兆円減税に関する請願正森成二君紹介)  (第二四九一号)  同(前川旦紹介)(第二五三六号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願中島武敏紹介)(第二四九  二号)  塩専売制度存続に関する請願赤城宗徳君紹  介)(第二五三四号)  税制改革に関する請願外二件(長田武士君紹  介)(第二五三五号)  たばこ専売制度存続に関する請願赤城宗徳君  紹介)(第二五三七号)  一兆円所得減税に関する請願枝村要作君紹  介)(第二五七四号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第二五七五号)  医業税制確立に関する請願吉浦忠治君紹  介)(第二五七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五八号)  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第五九号)  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等  共済組合法規定する共済組合が支給する年金  の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等  共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)      ————◇—————
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。渡辺大蔵大臣。     —————————————  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  国際復興開発銀行は、通称世界銀行の名で知られ、開発途上国開発の促進を目的とする国際開発金融機関中心的存在であり、わが国は従来から、開発途上国開発の分野における世界銀行役割り重要性にかんがみ、その活動に積極的に協力してきたところであります。  先般、世界銀行において、今後ますます増大する開発途上国資金需要に応ずるため、総額三百六十五億協定ドル一般増資について、総務会決議が成立いたしました。この増資により、世界銀行融資能力はほぼ倍増され、今後も引き続き開発途上国開発を促進するとともに、世界経済全体の均衡のとれた成長と安定の確保のために貢献することが期待されます。  わが国といたしましては、この増資決議に従い、世界銀行に対して、十六億六千六百七十万協定ドル追加出資を行いたいと考えております。  このため、本法律案により、世界銀行に対する出資額の増額に必要な規定を設けることとし、この法律の成立後、世界銀行に対し、わが国割り当て額を引き受ける旨の通告を行いたいと考えております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。  以上であります。
  4. 森喜朗

    森委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 森喜朗

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  6. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 本法案に関連をいたしまして、三十六回世銀総会におけるクローセン総裁演説とかあるいは総会報告文書、それからもう一つ、先般のカンクン・サミットの糸口をつくりましたいわゆるブラントレポート、その二つを読み合わせてみたわけでありますが、関連をして二つほどお伺いしたいと思います。  まず、世銀機構、体制について、日本としてはどういう対応をするのかという問題でありますが、クローセン総裁演説を読んでみますと、現在、百を超える国から有能な職員が集まっている。上級職員は練達した経営者であり、また技術専門家能力のある献身的な専門家である。総裁ですから、大蔵大臣大蔵省の役人を褒めるように言っております。  同時に、片やブラント報告の方を読んでみますと、幾つかの問題点を実は指摘をしておるわけであります。現在、二千四百名の専門職員がいるけれども、九五%はワシントン本部に勤務をしている。非常に中央集権的な性格を持っている。それは世銀としての業務の統一的なアプローチには役立つと思うけれども、片面では、借入国の問題あるいは途上国状況把握に対する認識を疎くしかねないという懸念を表明いたしております。  その中で、特に私は二つ興味深くブラント報告を読んだのですが、一つは、世銀途上国から広く人材を集めることが必要ではないだろうかという問題であります。これは、ブラントレポートには七八年現在の数字が書いてございますけれども世界銀行、それからIDA、双方六十五名の幹部職員のうち、途上国の代表はわずか十一名にすぎない。これは何もバランスでどちらのサイドという意味ではないということを、有能な人材確保が大前提であるということは、ブラントレポートでも断っておりますけれども、質のよい人材確保するという基準に合致するならば、十分な数の途上国の人をスタッフとして経営陣に採用する、それは今後の世銀に対する途上国の信頼を築くためにも必要ではないだろうかというふうに言っております。私も、そういうことが努力されていいのではないだろうかと思うわけであります。  もう一つは、世銀設立協定規定をされているわけでありますが、地区諮問委員会という問題があります。現在ワシントン本部に非常に中央集権的になっている。業務全体も非常に円滑なようでありますから、練達の士がそこで審査をしたり業務をしたりするということでありましょう。ただ、今回の倍額増資あるいは今後の世銀に要求される多くの問題、途上国からの資金需要も非常に高まっているということを考えますと、各地区自律性と真の分権化を促すということがいろいろな意味で適切なのではないだろうかということをブラントレポート指摘をしているわけであります。  以上二点、私は、もっともなことではないだろうかと思うわけでありますけれども日本理事国の中では大きな役割りを担っている国でありますから、あるいはまた、途上国との関連でもほかの国よりも大きなウエートを持っているわけですから、世銀の今後について積極的に発言をするあるいは提言をするということがあってしかるべきではないだろうかと思いますが、総裁演説ブラントレポート両方を読んでみましてその二点感じましたので、お考えを伺いたい。
  7. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 御指摘二つ文書は大変基本的な文書だと思います。  それで、最初の問題でございますが、現在IDAを含めた世銀に副総裁以上が十九名おります。うち五名が開発途上国出身でございます。さらに、二名の上級総裁のうち一名がパキスタン出身でございます。それから、もう一つの御指摘上級職員でございますが、私どもが今般新たに調査をいたしましたのですが、昨年の六月末現在で局長クラス以上が全部で七十四名おります。LDCがそのうち約二二%の十六人になっております。  それで、ただいま御指摘のような有能な人材という観点開発途上国の問題でございますが、私どもが見ておりますと、自国に職場が狭いというような問題がありまして、開発途上国人たちは比較的優秀な人が多いようでございます。基本的には、地域別職員構成という考え方でなくて、御指摘のような、その人々の素質というようなことで世銀が採用しているやに思いますが、ただいま申し上げましたように、かなりLDCウエートは高いというふうに思います。  それから第二点の、現地のニーズを的確に把握するために世銀協定の五条の十項にあります地区事務所及び地区諮問委員会の問題でございますが、御指摘のように、ブラント委員会報告にも指摘がございます。目下のところは地区事務所地区諮問委員会もございません。ただ、出張所のような駐在かっこうをとっております。  これは幾つかの理由があると思いますが、一つは、世銀ができました後、アジ銀とか中南米銀行とか、そういう地区を担当いたします地域開発金融機関ができたというようなこと。それから、こういう大がかりな組織を設けるよりも、駐在員というようなかっこうでやった方が機動的ではないかということ。現在、二十七の駐在員開発途上国に派遣されております。現実的に弾力的に運用されておるというふうに見ております。
  8. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私が申し上げたのは、人数とかあるいは地域組織とかというような細かな機構上のことでなくて、考え方として、発展途上国いわゆる第三世界、そういう方々の中にも非常に勉強して、非常に情熱を燃やして自分たちの国をりっぱにしようというふうに考えておられる人材、いろいろな話でそういうことも伺うわけでありまして、そういう方々あるいはそういう能力を大いに活用することによって、単に恩恵を受けるのではなくて、みずからの国をみずからどう発展させるかという、いわゆる自助の意識と力量を高めていく、それに先進国が積極的に協力をするということが、言うならば、気持ちとして南北打開の大切なベースであろうと思いますから、特に日本の場合、そういう方向に積極的かつユニークな提言を常になされるように、また、日本職員出資額その他から比較をすると少ないようでありますけれども、積極的に努力をしていただきたいという気持ちであります。  それから、その二つレポートを読んだことに関連をして、もう一つ世銀資金調達の問題に関連をしてお伺いをしたいと思います。  総裁演説を読んでみますと、今回の一般増資によって資金調達能力が拡大をする、しかし全体的には非常に厳しい状況にあって、一つ資金需要が、中国加盟、十億の人の加盟ですから、非常に大きくなるということが総裁演説の冒頭に述べられております。それから、各国の高金利、工業国インフレ圧力緊縮財政などによって資金手当ては困難になっている、あるいはまた資金調達のコストが高くなるので、これは借りる方にどうしても転嫁をしなければならない、そういう意味では、日本とかドイツとかスイスの支援が特に重要である、資金剰余のあるOPECへの支援期待ということも書いてございますが、これは御案内のように最近とみに困難になっているというふうな状況になるわけであります。  その中で、ブラントレポートの方で提言をしているわけでありますけれども、今回の増資だけでは不十分であろう、それをどう改革をしていくのかということについて、世銀は現在貸し付け資本比率一対一に抑えている、現在の業務状況を見ても不履行は一度も生じていない、そういう安定した実績を見れば、一対一ではなくて二対一あるいはそれ以上に引き上げてもリスクは増大しないのではないか、それは十分可能なことであって、途上国の利用可能な資金は著しく増加をするということを述べております。  さらにまた、最近世銀IMF合同開発委員会専門家グループが、これは日本も当然加わっているわけでありますけれども世銀改革についての勧告をまとめているようであります。それによりますと、世銀などの出資で国際的な融資保証機構をつくって民間との協調融資を拡大するとか、あるいは世銀が発行した優良債権売却資金調達をふやすとか、民間資金調達のための世銀による譲渡性証書の発行を検討するとか、いろいろ出されているようであります。  これらのことについて、特にブラントレポート貸し付け資本比率一対一をそう抑えなくていいのではないかというふうな問題ですね。これは資金需要にこたえる能力をどう拡大するのかということと、世銀の運営上の問題があると思いますが、その辺について、もっと前向きに考えてもいいのではないかという気が私はいたしますが、いかがなものか。  もう一つは、クローセン報告の中でも、今後の資金需要に対応して、民間との協力協調が重要であるということを述べられています。それもそうだと思いますが、それに関連をして、八一年版のいわゆる経済協力白書をばらばらと読んでみますと、これは八〇年実績ですか、日本ODAが着実に増加した反面、民間資金による協力金利上昇などの影響で大幅に減って、そのために援助総額が前年に比べまして一〇%強落ち込んでいるということが報告をされております。こういう状況は、またこの二年、三年続いている状態、あるいは今後急速に民間状況が打開できるかとなれば、また見通しもむずかしい。しかし、総額として日本の取り組みが一〇%強ダウンしていくということでは、やはり日本の立場として問題があるのではないだろうか、何らかの手を打つべきではないだろうかというふうに思うわけでありますが、その二点いかがでしょう。
  9. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 最初の問題でございますが、これは、昨年クローセン総裁がまだ総裁に就任する前でございますが、東京で渡辺大蔵大臣とお会いになりまして、そのときにも出ました。それで、大臣との間に議論がございました。  二つ考え方でございますが、一つは、今回の御審議を願っております増資で、世銀が四百億ドル以上の資金を新たに調達できることになると思います。八〇年代の半ばごろまでは、大体開発途上国資金需要に応ずることが可能である、それで、当面は世銀資金量増加のための新たな方策の導入は必要ないのではないかというのが、加盟国あるいは事務当局のコンセンサスでございます。  ところで、いまのブラント委員会レポートにもございます貸し付け資本比率通称ギアリングレシオと言っておりますが、この引き上げの問題とか、御指摘譲渡性証書の利用とか世銀債権売却等の方途につきましては、渡辺大臣との間でお話もあったわけでございますが、きわめて技術的、専門的な領域なので作業部会をつくって検討したらどうだ。それで御指摘のような作業部会をつくりまして、現在検討しております。  これは、たとえばアジ銀の場合は、一対一が一対〇・七五と御承知のようなことになっておりますが、健全性観点から言えば、あんまり大きくしない方がいい、弾力的な運用の面から言えば、この倍率を高めて資金調達能力を上げた方がいい、そこらの現実的な調和の問題だろうと思いますが、いずれにいたしましても、専門家同士の間でさらに現在検討しようというような方向で一応の取りまとめがなされております。  それから第二点の、世銀民間との協調融資をもっと推進すべきではないかという問題でございますが、これも御指摘のとおりでございまして、八〇世銀会計年度、七月から六月でございますが、全部で九十三件ございます。それで世銀IDA融資額が四十八億でございますが、民間の金を合わせまして六十五億ドルになっているというように、だんだんとこういう傾向が増大しております。この場合の利点といたしましては、世銀に蓄積されております長年の国別経験があるわけでございますが、そういう経験民間の方も活用できるというような利点があるわけでございます。それから、開発途上国の方も金がふえるというような利点があるわけでございます。両方利点がございますので、着実に増加していくのではないかと思います。  それから第三点の、わが国ODA伸びに対して民間資金協力伸びが低いがどうかという御指摘でございますが、私どもは、経済協力のあり方といたしまして、御指摘のようなODA以外の民間投融資あるいは技術移転、こういうようなもっと広い角度から、経済援助よりも経済協力というような観点から取り組んでいくべきではないかというような基本的な考え方を持っておりますので、当然のことながら、民間ベース開発途上国に対する協力というようなことは拡大することが好ましいという基本的な考え方を持っております。  さりながら、減っているではないかという点でございますが、民間資金は当然市場原理で動くわけでございまして、昨年の特殊な経済情勢影響を受けましてたまたま減っておりますが、五十六年現在計数を集計中でございますけれども、かなりふえるのではないか。たとえば日本の為銀がやります円建てのシンジケートローンなどで申しますと、大体四割以上がLDC向けになっております。カントリーリスクの問題が反面にございますので、こういう世銀との協調融資というようなかっこうがとれれば、そういう点の問題も軽くなるわけでございまして、御指摘のような方向を目指しておるわけでございます。
  10. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それに関連をいたしまして、政府の方でODA倍増計画関連をして特別円借款制度を設ける。これは、ODA倍増計画を達成するために通常の円借款とは別に特別円借款制度を創設をする、そして中国、韓国などアジア地域中心にというふうなことを聞きますが、その辺はどうなっておりますか。
  11. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 一部新聞にそういうような記事が出たのは承知いたしておりますが、私どもは、そういうことを考えておりません。やはり総合的な観点から一元的にやっていった方がいいのではないかと考えております。
  12. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 日本ODAに関係をして幾つか伺いたいのですが、まず一つは、前から強調されていることでありますけれども日本ODAの量と質が問題になってきたわけであります。いろいろな意味で金額がふえてきているということは私ども承知をいたしておるわけでありますが、日本だけではなくて先進国全体として、言われておりますように第二次国連開発の十年のための国際開発戦略、みんな賛成をして決めたわけであります。そこでは先進国ODAを七〇年代にGNP〇・七%が目標であったのですが、足踏みをいたしているわけであります。また日本の場合を見ても、DAC十七カ国の合計GNPのうち日本が一五・六%を占めている。しかしODAでは一一・八%である。またGNP比率にいたしますと、DAC平均〇・三七%、八二年で〇・三四%になりますか、まだそれを下回っている。また、質の面でそれのメルクマールとなるグラントエレメントについても、八〇年約束ベースでDAC加盟国平均九〇・〇%、日本の場合七四・三%、その後改善をされてきていると思いますが、その時点でDAC加盟国の中で十六位、最低の方というようなことになっているわけでありますが、これらの改善について、昨年あるいは今年度の執行計画などではどのようなことになりますか。
  13. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 お話は、わが国ODAが国際的なレベルに比べてどうであるかということだと思います。  第一点のGNP比〇・七という目標あるいは一%というような目標に対して、現在〇・三二とかそういうことにあるわけでございますが、非常に絶対額では大きいわけでございます。それから伸びがかなり速いというようなこと。私どもの方は、一%達成は留保しておりますけれども、とりあえずはできるだけDACの平均〇・三七当たりを目指しておりまして、昨年一月に決定いたしました倍増計画に沿って着実に増加していくだろうと思います。  そのほか、グラントエレメントの問題とかアンタイの問題とか、国際的な観点からわが国ODAについての優劣の問題がございますが、グラントエレメントは確かにDACの加盟国平均より低い、五十五年度で七四・四ということがございますが、これにつきましても技術援助とか贈与がかなりふえてきております。これも歴史的な由来がありまして、他国の場合には旧宗主国というような関係で、無償的な部分が多かったというようなことがあるわけでございますが、後発国であるわが国の場合、どうしてもそういう関係よりもプロジェクト的なものに重点がいくというようなことで、目下のところはグラントエレメントは低い。あるいはアンタイ、タイドの問題でございますが、これは五十三年を転機にいたしまして、かなり急速にアンタイ化が進んでおりますが、この点は国内経済との関連もございまして、かなりいろいろな観点から考えて進めていく必要があるのではないかというようなことを考えております。
  14. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 二、三日前に新聞を読んでおりまして、ちょっと驚いたのですが、「アルゼンチンに国際協調融資」東京銀行など邦銀三行を含む国際協調融資団は、フォークランド諸島をめぐってイギリスと紛争中のアルゼンチンの電力会社に対して、イギリスの銀行分は各国で肩がわりするということで、二億ドルの協調融資を行うことに合意した。同融資の共同幹事には東京銀行、横浜銀行、安田信託銀行、アメリカその他いろいろな銀行というようなことが書いてありますが、ちょっと私は意外に思ったのです。時が時ですね。とにかく武力衝突にならぬようにみんなで何とかしなくちゃならぬというのが、国連をはじめ全体の置かれている状況だろうと思うのですが、そういう中で、こんな動きを具体的に御承知ですか。
  15. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 その記事に関しましては、ちょっと若干事実が違っておりまして、そのお金を集めるグループがあるわけでございますが、その中の意見調整がなかなかつきませんで、繰り延べられております。したがって、その新聞に報ぜられたような事実はございません。
  16. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、ここで経済協力についてのこの一、二年の日本政府の態度が変わってきたのではないだろうかという感じがしてならないわけであります。  私は、大蔵省、同時に特に外務省に非常に文句があるわけでありますけれども、防衛費の突出などの問題についても、防衛庁以上に外務省の方が強硬に主張する。アメリカと仲よくしていれば、何ぼ戦車がふえても大砲がふえても、どういうことになっていいのだとは言いませんけれども、何かそんなみたいな感じが実はしてならない。  それと兼ね合うわけでありますが、日本経済協力の理念として、これは外務省の非公式報告のようでありますけれども、何か勉強した結果が四項目あるようであります。その第一には、平和国家であり、援助を通じて平和的な国際秩序の構築に貢献する必要があることというのを、四つの経済協力の理念を整理した中の第一項目の中に言っているようでありますが、私は、何か最近の動向を見ますと、政治的軍事的安全保障の肩がわりの方向にこの経済協力の色彩が強まっていくというふうな気がいたします。  それで、ひとつ具体的に伺いたいのですが、三月一日のアメリカ下院外交委員会東アジア・太平洋小委員会にホールドリッジ東アジア・太平洋地域担当国務次官補の証言書が出されております。その証言書の日本の対外援助という項目を読みますと、「日本はまた、たとえそれらの国が日本にとって経済的重要性が比較的少なくとも、西側同盟にとって政治的に重要な国々にかなりの額の援助を供与——しばしば急速に支出——する意思を次第に持ってきた。すぐ思い付く事例としては、エジプト、トルコ、パキスタン、ジャマイカおよび一番最近ではスーダンに対する援助計画がある。日本において今後見込まれる援助動向は、日本自身の利益にかなうとともに米国の目的を支援するものとわれわれは信じている。」幾つかの国の名前もここに挙げてありますけれども、最近のエルサルバドルあるいはカリブ海方面への対応なども顕著なそういう傾向ではないだろうか。  日本の対外援助は、世界の平和あるいは南北の打開、そのために貢献する方向なのか、あるいはアメリカのレーガン政権の言われる方向協力する方向なのか。この証言書に書かれているような方向どおりに日本政府は考えているのでしょうか。
  17. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 私どもの援助の基本的な考え方は、開発途上国の経済発展のための自助努力を支援する、そして、その国々の国民福祉の向上と民生の安定に寄与する、それが世界経済世界平和のために貢献する、そういう基本的な考え方でやっております。そして、ただいまの御指摘のような点でございますが、国際協調というような角度から、その都度ケース・バイ・ケースで対応しておるわけでございます。  たとえば、いま御指摘のエジプトなどの場合には、スエズ運河のしゅんせつ、拡張というのが、昨今急に始まったわけではなくて、かなり前から、ただいま申し上げましたような観点に即したプロジェクトであるということでやってきております。あるいは、御指摘の二、三の紛争国の周りの国の問題がございますが、これは国際協調というような観点、基本的にはただいま申しましたような、それぞれの国の経済発展のための自助努力を支援する、そして、それがその国の国民福祉の向上と民生の安定に寄与する、それが回り回って世界経済世界平和の安定に寄与する、わが国の経済にとってもそれがプラスになる、そういうような考え方でやっております。
  18. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 はっきりお答え願いたいのですが、これはアメリカ大使館から配ってきたものですから、間違いではないと思うのです。日本の対外援助について、アメリカの議会に政府のしかるべき人が証言書として出されたもののコピーと翻訳なんです。  それによりますと、日本は、日本にとって経済的重要性が少なくとも、西側同盟にとって政治的に重要な国々には急速にかつ積極的に援助をする、そうして、その日本の援助はアメリカの目的を支援するものと信じている、こういうことが公式に書いてありますけれども、そのとおり思っているのですか、そうでないと思っているのですか、どっちですか。
  19. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 私どもは、国際協調という観点を考え、短期、長期の問題、そういうような観点から、先ほど申しました基本的な理念でやっているわけでございます。
  20. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ伺いますが、最近IDAの第六次増資問題で、御承知のとおり、レーガン政権は軍事力増強重点で経済協力については大削減だというふうな影響でありましょう、米国の出資のおくれで重大な支障に直面している、それで日本の方も困っているということが報道されております。あるいはまた、アメリカが出資をおくらしているので、十億ドルつなぎ融資で日本とヨーロッパとがアメリカの肩がわりをして、途上国との摩擦を避けるという苦肉の策ですね、これは事実ですか。
  21. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 第二世銀の六次増資でございますが、八〇年の三月に総会の決議で成立したわけでございますが、アメリカの引き受け通告がおくれまして、昨年八月に発効いたしたわけでございます。  それで、全体で三十二億ドルの支出権限、これはカーター政権時代に成立しておるわけでございますが、それをどうやって契約し、ディスバースするかという点で、ただいま伊藤委員指摘のようなアメリカの態度変更があったわけでございます。それで、昨年十月のIMF世銀総会におきまして専門家のグループで議論いたしまして、私どもの職場言葉でプロラタと言うわけでございますが、実際にディスバースする金は相互に同じ率でいくということで一応の決着を見たわけでございます。その後また御指摘のような、金が足りないというような問題が起こりまして、ごく最近時において、また専門家会議を催すというような段取りになっております。  この場合、私どもの基本的な考え方は、国際的な外部経済といいますか、そういうような角度から考えて応分負担というような考え方、そしてもう一つは国際協調という観点、基本的な態度はその二点に基づきまして、肩がわりとかなんとかということでなくて、そういう二つ観点から昨年十月の会合にも臨みまして、どちらかといいますと、世界の全体のために応分負担をすべきではないかという主張をいたしまして、新聞等には報じられておりませんけれども、私どものそういう調整的な発言なり提案によりまして、一応昨年はまとまったというような経緯があるわけでございます。今回最近時に行われる会合におきましても、ただいま申し上げましたような公平負担の考え方、それから国際協調というような考え方で臨もうというふうに考えております。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 苦しい答弁を伺いましたが、いずれにしても、アメリカの方から公式にこんなことがどかどか出てくるわけですから。ODAにしても国民の税金ですからね。そのお金がおよそ理解のいかない形で使われていく。日韓なんというのは典型的なものだと思いますけれども、そういう点をよく考えてもらいたいと思います。要するに、私は、アメリカとの関係、南北との関係を含めて日本がきちんとしたプリンシプルを立てる、内外に明らかにするということを大蔵大臣もちゃんと考えて少しやってもらいたいと私は思います。  それで、あと佐藤委員と交代いたしますので、大臣、これは見識のある大臣の御発言を伺いたいと思うのですが、二つほど伺って終わりたいと思います。  一つは、軍拡と軍縮あるいは南北ということについての考えであります。  鈴木総理のカンクン・サミット前後のいろいろな論文を読んでみますと、いいことを言っているのですね。南北問題は軍縮と並ぶ二十一世紀の最大の課題であると言っております。その言葉は大変ごりっぱな言葉だというふうに私は思っているわけであります。また、前の園田外務大臣の発言を読んでみますと、軍備拡大をしながら途上国を援助することには経済的な制約が伴う、したがって軍縮をやらなければならない、軍縮で浮いた資金経済援助に回すことが必要である。総理、外務大臣として非常にりっぱな発言をなさっているわけであります。  それでは、現実のこの数年間のODAと防衛費の比較をしてみますと、いろいろな比較がありますし、金額の面でもODAの方は九千何百億、片一方は二兆何千億というわけであります。さらにはまた、GNP比の伸び率などを見ましても、ODAの方は八〇年から八二年〇・三四、さっき言った数字で固定をしている。防衛費の方は、御承知のとおり八〇年で〇・九、八一年〇・九一、今年度〇・九三となっているわけであります。こんな傾向で、鈴木総理が言ったような二十一世紀の最大の課題ということに一体ふさわしいのだろうかどうなのだろうか。さらにはまた、この数日来の新聞を読んでみますと、与党自民党の防衛関係部会の方では、防衛費のGNP比一%枠突破もやむなし、政府に近く強く意見書を提出するとか、あるいは総理の発言も新聞でまちまちでありまして、抑えなくちゃならぬ、一%枠内だという報道と、一%枠にはなかなかとどまらぬというふうに示唆したという報道と、いろいろございます。  私は、何も総理と前の園田さんのいい発言の部分だけをとらえて、自民党が全部だめというのじゃなくて、「世界」の今月号の石田博英さんの論文などを読みましたら、非常にいい論文を載せておられました。日本の国際的責任を果たす道は軍拡ではない、当面の具体的選択は経済援助の飛躍的増大しかない、そのために今後の倍増公約に加えてさまざまの具体的努力をしなければならない、自民党の議員の方として非常にりっぱな論文だと思って私は読んだわけでありますが、いろいろな発言も実は与党内でもあるようであります。  しかし、何か五六中業なども七月ごろには国防会議に提出される、シーリングに間に合うようにとかいうふうにもなっているようであります。ODAと軍事費の伸び、片一方をストップしたまま、片一方はどんどん伸びていく、そういう状況が今日の世界において日本が果たすべき方向であろうかどうだろうかということを非常に疑問に思うわけでありますが、その軍事費一%などの問題も含めて、どう思われるのかということ。  それからもう一つ。この後佐藤委員の方から日韓経済協力や対韓援助の問題について集中した質問があると思いますが、私は、この日本の対外援助全体の立場から見た場合に、いろいろな問題があるであろう。一つは、ルール違反をしてはならぬということじゃないだろうか。LDCやLLDCに対する援助とりっぱな中進国である国への援助とは、明らかに国際的にも認められているルールがあるわけでありまして、日本もそのルールに沿った対応をしてきているということに実はなるわけであります。今回の対応を見ますと、全くこれはルール違反ではないだろうか。あるいは、輸銀の金利がどうこういったって、これだってOECDのガイドラインと明らかにかけ離れた内容になろうとしている。あるいはまた、五十七年度のODAの事業予算九千四百億、換算すれば約四十一億ドル、韓国の要求どおり六十か四十か、四十にしたって二〇%を超すだろう。五年間、五で割ってですね。そんなところに重点が行ったら、日本がいまやらなければならないほかの計画は一体どうなるのだろうか、そういう疑問を非常に感ずるわけであります。  それらについて、どうお考えになりますか。及び、さっきも局長との質疑の中で言っていたのですが、やはりアメリカとの関係で誤解をされないような明確なプリンシプルとビジョンを立てて日本はやる、それが国際的にも貢献する道であり、世界からも評価される道ではないだろうか。  最後に、その御見解を伺いたい。
  23. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 軍縮と援助の問題でございますが、本当にそれは、世界の軍事超大国は軍拡競争をやめてもらいたいと私も実は思っているのです。そうなれば、アマゾンの開発とか、パナマ運河とかスエズとか、アフリカの湿原地帯の解消とか、巨大な世界的プロジェクトのとおり、それだけの金があるならば、アメリカにもそれに金を出してもらってやってもらった方がよほどいいのじゃないか、私は実際のところそう思っている。  防衛費の問題については、しかし独立国家ですから、問題は程度問題でしてね。そんな、水素爆弾から原子爆弾から攻撃用の航空母艦からそろえる必要はないが、最小限度必要なものだけは仕方がないのじゃないか。これについても、どれぐらいまでがいいのかということについては、ほかの予算とのバランスというものを常に考えていかなくちゃなりません。防衛費というのも、ただ武器をそろえたから防衛が強くなるというものではありませんので、国民が理解できて協力できる限界というのがあるわけですから、したがって私どもは常に、余り魂の入らない軍隊でもだめなわけですから、それには何といっても国民の総支援体制ができる限度というのが限界ではないか、そういうように考えております。  援助の問題も、これも私どもは、日本のような特殊事情の国でございますから、世界がなくして日本はない、日本の経済は世界の経済へつながっている。私がいつも言っているように、低開発国が自活し、自立し、そして世界の経済に協力できるようになることは、その国にとってもいいことであるし、世界のためにもなることであります。したがって、そういう自助努力のある国に対しては、われわれとしてはできるだけ、全体のバランスももちろん考えなければなりませんが、国際経済協力というものは強化をしていく必要がある。しかしこれも、ややもすると、ただもらえばいいんだというような思想だけでも困るのでありまして、幾らやってもきりのない話ですから。だれか偉い人が言ったのだけれども、爆発的人口をそのままにしておいて、われわれ先進国だけで果たしてわれわれと対等の教育と社会保障を与えることができるかどうか非常に疑問だと言った人がある。これはなかなかむずかしい問題ではありますが、一面の真理をうがっているのじゃないか。  したがって、そういうような点で、ともかく発展途上国方々にもいろいろな面で勉強もしてもらうし、反省もしてもらうし、自助努力にも努めてもらう、そういう両方の意見が一致をして、初めて援助というものは私は実を結ぶんじゃないか、そう思っております。  対韓援助の問題についても、したがって、突拍子もないことを持ってこられましても、それはとうてい受け入れるわけにはいかないわけでございますから、おのずからこれは限界がある。日本と韓国との相接した、歴史的にも経済的にも特別な事情のある国であることは、われわれわかっておりますから、その程度のことは配慮は十分にしたいとは思っておりますが、しかし、極端にかけ離れたことはなかなか応ずるわけにはいかない。われわれとしても、やはりこのルールは大きな筋道において守っていきたい、そう思っております。それは、多少広がったり狭まったりすることはあるけれども方向としてはそのルールは守っていきたい、そう考えております。
  24. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これで交代いたします。
  25. 森喜朗

    森委員長 佐藤観樹君。
  26. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま伊藤委員の方から、世銀の問題については総括的にお話がございましたので、私は、限られた時間でございますので、日韓の経済協力問題にしぼってお伺いをしたいと思うわけであります。  きのうの夕方からけさにかけまして、対韓の経済協力政府案がまとまったということが報道されました。     〔委員長退席、粕谷委員長代理着席〕 中身としましては、円借款が十三億ドル、それから輸銀と市中銀行による協調融資が二十七億ドル、合計四十億ドル、平均をして全体の金利が六%、商品借款はなしということが報じられているのでございますけれども、これは、報道によれば総理自身が政治的な腹は固めた、こういうことでございますので、それは大蔵大臣も腹を固めたということだろうと思うのでありますが、まず、その辺の事実関係から明らかにしていただきたいと思います。
  27. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 事実関係でございますので、私から答弁さしていただきます。  総理の御指示がありまして、ただいま大臣が答弁されましたように、特殊な日本と韓国との関係についてできるだけのことをしようということで、関係省庁の間でかなり長い時間がかかっておりますが韓国と話し合いをしながら検討を進めているところでございます。それで、具体的な新聞に報じられているような案はまだ固まっておりませんが、方向は決着しておる。何せ、これは外交の問題でございます。したがって、詳細について新聞に報じられているようなことがこの段階で決まったというようなことではないということで、関係各省、さらに鋭意作業しておるというのが現段階の状況でございます。
  28. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それでは、ある程度基本的な考え方について少しただしておきたいと思うのでありますけれども、従来、日本経済協力というのは、相手の国から何々をつくりたい、たとえば上水道の整備をしたいあるいは下水道の整備をしたい、医療機械が必要である、こういうような具体的なプロジェクトがありまして、それが幾らかかる、自分の国の方でも調達いたしましょう、しかし経済的にまだ十分でないので、ひとつ日本に援助をしてもらいたい、それじゃ、わが方としては幾らぐらいひとつ御協力をしましょうという形になって、いわば各プロジェクトの積み上げ方式というので、今日まで円借款というのは額が決められてきたと思うのであります。  しかもそれは、全体五年分一括幾らとかそういう形ではなく、国会あるいは日本の予算自体が単年度主義をとっている限りは、約束としては公式的には単年度ということで、今日まで経済協力というのは来たと思います。ただ、たとえば中国に対して、いや、そこは、何と言いましたかな、あのとき福田さんは、心が通じているというのか、そういうような言葉で言ったことはあるにいたしましても、金額として、初めから総額ありきという形でいままでの経済協力は来なかった。経済協力というものは、円借款というのは、原則的には国民の税金でありますから、私は、これはつかみ金的なものでやられるべき性格のものではないと思います。  そういった意味からは、この積み上げ方式あるいは単年度主義は、日韓の経済協力の問題におきましても当然守られるべき経済協力のあり方の大枠ではないかと思いますが、大臣、よろしいですか。
  29. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私もさように考えております。
  30. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ところが、最終どうなるのかわかりませんけれども円借款について韓国側が出してきたプログラムが報道されております。一体、その中身は具体的にどのくらい詰まっているのか。これは外務省でも結構ですし、あるいは経済企画庁でも結構ですが、各プロジェクトというのは、従来のペースでいって日本側が、ここまで詰めたものならばひとつ応じましょうというようなところまで中身が詰まっているのか、あるいは、どうも漏れ伝わるところによりますと、まだその中身自体がきわめてアバウトだという話も伝わってくるのですが、その辺はいかがでございますか。
  31. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は、交渉しておりませんからわかりませんが、アバウトだと思いますね。
  32. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そういうことならば、いま大臣からの答弁がありましたように、これは原則的に積み上げ方式でいくということになってくれば、どうも伝えられるところが、円借款の金額については十三億ドルとかいう。私もずっとこの問題を追っていきますと、大蔵省は、ODA倍増計画からいっても大体十億ドル、外務省は外務省的な配慮があって十五億ドルと言っているということが言われております。十三億ドルというのは、ちょうどその真ん中をとったようなやり方なんですね。政治でありますから、私は、事の性格によっては、そういう場合もあると思います。ただ、いま申しましたように、経済協力というものが、単なるつかみ金で、じゃこれだけ上げますよというような、そういう性格のものであってはならないという観点から言うならば、その十億ドルと十五億ドルの間をとって十三億ドルなどという、そういう事の決着のあり方というのは、私は、これはおかしいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  33. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 基本的な考え方は、ただいま大臣が答弁されましたように、また佐藤委員が御指摘のように、私どもは、積み上げ方式で単年度ということでやっております。韓国の場合も、当然そういう原理原則は曲げられない。韓国側から十一プロジェクトを持ってきております。それで、私ども実務者会談を二月にやったわけでございますが、ただいま大臣からお話がありましたように、アバウトである、こういう資料が欲しい、あるいはフィージビリティースタディーはどうなっているかというようなことを問いかけまして、追加の資料等をもらい、各省で検討しております。  それで第二点の、大蔵省が十億で外務省が十五億で、真ん中をとったというようなことでございますが、DACという国際機関がございますが、対韓援助について、援助というのは当該国の通貨でやるわけで、円であるわけでございますが、DACが計算した数字があるわけでございます。過去五年間においてディスバースをした分が三億ドルばかり、それからコミットベースで四億ドル。鈴木内閣の倍増計画があるわけでございます。したがって、ディスバースでやれば六億、コミットベースでやれば八億、そういうのを原点に据えまして、そして当然のことながら、総枠議論ではなくて積み上げてどうなるかという議論をやっております。ただ、基本的な方向をどうするかという点はお決めいただいた。これは外交問題でございますので、手のうちを明かすというような愚劣なことをやることはないので、目下のところはそういう段階でございます。
  34. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう少し円借款の中身についてお伺いをしておきたいのでありますが、十一プロジェクトありまして、そのうち四つでございますか、いわばこれは借款というようなものでやるのではなくて、輸銀なりあるいは市中銀行も含めた市中金融ベースでやるべきであるというようなことで、除いたものもあると聞いておるわけでありますが、それはそれで当然だと思うのであります。  もう少し確認をしていきたいことは、今度の総枠の話の中に、これは融資ベースの話ということでございますけれども、たとえば液化天然ガス網を整備するとか、釜山の地下鉄等のほかに、これは前から出ていたテーマでありますけれども、京釜新幹線計画など、今後予想されるプロジェクトまで対象を広げて金額をふくらますというようなことも、これは報道でございますが、されているわけでございます。  こういうような形で、国民から見ますと、とにかく数字合わせを、なるべく六十億ドルに近づけよう、こういう感がしてならないわけですね。うがった見方かもしれませんけれども、各種の報道を見ますと、大蔵が十億ドルあるいは融資ベースで二十五億ドルと言うのを、外務省に歩み寄って、円借款の十億ドルを十三億ドル、あるいは融資部分の二十五億ドルを二十七億ドル、これによって合計四十億ドルで、外務省の言う数字とちょうどぴったり合うといううがった見方もあるわけですね。大臣に御確認をいただいたように、あくまでこれは具体的なプロジェクトで、本当に円借款でやるものなのかあるいは融資でやるものなのか。具体的なプロジェクトがはっきりしてわが国の対応があるということであると思いますし、そういった面からいきますれば、今後予想されるプロジェクトというような、アバウトの上にさらにアバウトをかけたようなものは話の対象に入ってこないのじゃないだろうかと私は思うのですが、もちろんそう考えていてよろしいですか。
  35. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 たまたま韓国がことしの一月から五カ年計画をやっておるわけでございます。そして、その中にただいま二、三御指摘があったような事業が入っておる、そういうものを対象にしてくれないか。私どもの方は、佐藤委員の御指摘のように、単年度主義で積み上げで、したがってそういう要請のあった事業について個々に積み上げ計算なりフィージビリティースタディーを検討したい、御指摘のとおりでございます。
  36. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 このことは、具体的な交渉の中で日本の税金を使ってやることでございます。もちろん経済協力というのは、先ほど大臣も話がございましたように、全地球的に非常に重要なことでありますから、私自身も、そのこと自体を否定するわけじゃございませんけれども、ただ、韓国という中進国にそれだけのことをやらなければならぬのかどうなのかという問題は残るわけでございますので、それはまた後で少しお尋ねをしておきたいと思います。  外務省と経済企画庁に確認をしておきたいと思いますけれども、いま大蔵省と詰めましたように、あくまでこれは具体的なテーマに基づいてその総額が決まってくる、当然積み上げ方式でいくべきだということが一点。それから、会計年度の関係もございますから、具体的に約束できるのは総額の問題ではなくて、単年度主義と申しますか、その枠の中でしか当然約束はできないものと思いますが、円借款を扱う経済企画庁あるいは具体的な交渉に当たる外務省のお考えを改めてお伺いをしておきたいと思います。
  37. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  本件対韓経済協力につきまして、昨年の秋以降一貫して申し述べておりますことは、わが国経済協力の基本方針のもとにということでございまして、その中には、当然のことでございますけれども、先生御指摘のようにプロジェクトにのっとって、そのプロジェクトを精査して協力をしていくということと、かつ、コミットメントは年次ベースで行うということが含まれております。
  38. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 先ほどの大蔵省及び外務省からお答えしたとおりに私どもも考えております。
  39. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 結構です。  それで、円借款の問題に少ししぼりたいと思うのでございますけれども、韓国の国民一人当たりのGNPが、ちょっとデータは古いのでありますが、千七百ドルないし千八百ドルというようなことで、それは日本とかアメリカ、北欧あるいはヨーロッパに比べれば、確かに低いことは間違いないわけでありますけれども日本自身、貿易の面でも、たとえば繊維であるとかあるいは鉄鋼などでも、国際市場で争うというようなところまで来ておりますし、あるいは建設業においても、韓国との経済競争が現実に行われているというような国力を持った韓国に対する経済援助というのは、たとえば不幸にして南北に民族が分かれさせられているというような外交的な問題、それに南の方だけ援助をした場合に、一体本当に朝鮮半島の平和のためにプラスになるのかどうなのかという外交的な配慮の問題もあります。  それをやっておりますと大変長くなりますので、限られた時間の中でございますから、そこまでは触れないことにいたしまして、経済協力のあり方として、これからODAを倍増していくという中にあっても、なおかつ発展を続ける韓国に対して、限られた財源の中で、従来のようなシェアで経済協力というものをしていくことが一体正しいのだろうかということについて、大変疑問があるわけであります。  いろいろお立場も違うと思いますので、具体的に韓国にしぼっていいと思いますが、中進国に対する経済援助のあり方、これは経済企画庁あるいは外務省、大蔵省、ひとつこの順序に、基本的な考え方についてちょっとお伺いをしておきたいのです。
  40. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 経済協力が、発展段階がおくれている国の発展を助けていくというところに中心的な目標を置いていることは、先生御指摘のとおりでございます。  それで、韓国でございますけれども、韓国につきましては、確かに先生おっしゃるように、発展途上国の中では比較的所得水準は高いわけでございますけれども、一方では、現在韓国は非常な経済的な困難に直面しておりまして、また他方では、先ほど来話の出ておりましたように、両国の間の関係というものは、歴史上あるいは経済面から考えてもあるいは地理的に考えてもきわめて密接な国である、そういう意味で非常に重要な国であるということもございますので、そういうものを総合的に勘案いたしまして、わが国として、できる範囲の協力をやっていくべきではないかというのが私ども考え方でございます。
  41. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 ただいま経済企画庁の方から御答弁がありましたとおりでございまして、わが国経済協力は主に二つ考え方、つまり相互依存と人道、この二つによって行われておるというふうに了解しております。相互依存につきましては、その相手国との歴史的な関係、経済的な関係等々諸般の関係全般を考慮して行われているわけでございまして、韓国につきましては、先ほど御指摘ございましたように、新しい五カ年計画に現在取り組み、民生の安定と経済社会の開発に取り組んでいる最中でございますし、わが国との歴史的経済的関係等申すまでもないことでございまして、さらに非常に経済的困難に逢着しておりますので、援助需要のある範囲内におきまして、わが国として協力していくということだと存じます。
  42. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 基本的には企画庁、外務省と同じでございますが、さらに若干敷衍いたしますと、世界各国の所得水準が世銀の「アトラス」というのに出ているのでございますが、韓国の七八年が千三百十ドル、最近の韓国銀行の資料によりますと、八一年は千六百三十六ドル。それで、いろいろな国によって考え方がございまして、フランスの場合などは御承知のように千ドル以上の国にウエートが高いわけでございます。日本の場合には、どちらかといいますとASEANを志向しております。したがって、所得水準の低い国が多い。次は、たとえば韓国とかマレーシアが比較的所得水準が高いわけでございますが、わが国との特殊な関係ということで、従来から、こういうような所得水準の比較的高い国に対しても円借をやってきた。蛇足になりますけれども、名目的に千六百三十六ドルといいますと一九七〇年の日本ぐらいのレベルにあるわけです。当然そういう点から援助が要るのか要らないのかという議論がございますが、わが国としては特殊な関係、あるいは韓国はオイルショックでかなりダメージを食らって、おととし非常な凶作があったわけでございます。経済困難というのは事実あるわけでございます。歴史的、地理的、経済的あるいはそういう特殊な観点、そういうようなことを総合判断して円借をしてしかるべきではないかというような態度、方針を持っているわけでございます。
  43. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 しかし、何度かやってまいりました日韓の定期閣僚会議、後で外務省にお伺いしますが、この中でも七八年の九月四日に行われました第十回定期閣僚会議の九というところでありますけれども、必要なところだけ読みますと、「両国の閣僚は、韓国経済の着実かつ継続的な発展に伴い、日韓経済協力民間ベース主体に移行しつつあることにつき共通の認識を深めるとともに、政府ベース協力については、経済、社会基盤施設の整備拡充等、韓国の均衡ある経済、社会発展の為開発が必要とされる分野を中心に、政府間実務者レベルの協議を通じ検討の上、適切な案件につき具体化していくことを再確認した。」  私も、いま韓国経済が直面している経済成長率がマイナス五・六%とかいう状況やら、あるいは貿易収支の問題、失業の問題、こういった問題もわからぬわけではないわけであります。しかし、日本が援助する場合に、過去五、六年を見ましても、円借款の場合には、たとえば七七年が九千三百万ドル、あるいは七八年が一億四百万ドル、七九年が八千三百万ドル、八〇年が八千三百万ドルというようなペースで、そしてこれはだんだんと民間ベースに移行しつつある、また、そういう方向に行くべきではないかということで今日まで来たものが、今度のいわゆる六十億ドル要請については、一挙にいままで積み上げてきたいろいろな会談の中身というのがふいになったというか、落差があるというか、がくっと方向が変わってしまっているわけですね。  私は、短期的な韓国経済のむずかしい状況の問題は若干なりともわかるつもりでありますし、ことしから始まる五カ年計画、この問題も頭に入っているわけでありますけれども日本とて大変財政事情の厳しい中にあって、それなりに社会的世界的な責任を果たしていかなければならぬというときにあって、こういった韓国との経済協力の関係をなるべく民間ベースに移していこうではないかという確認も七八年とはいうもののされ、それ以後、ペースを円借款としては落としてきているという趨勢からいたしますと、経済というものは、世界的な不況の中にあって韓国のみが苦しいわけではないわけでありまして、その問題については後から少しお伺いをさせていただきたいと思いますが、韓国のみこのような形で突出させるということについては、確かに歴史的な、暗い、痛ましい大変な被害を与えてきたことについては私も十分わかっているわけでありますけれども、それはそれとして、請求権の無償、有償ということで形としては片づいているわけでありますから、そういったことから考えていくならば、ここで韓国のみにこういった経済協力を大幅にふやしていくということについては、私は、大変な問題があるのではないかと思うのであります。  ということは、私が基本的に考えているのは、あくまでもっと下の、もっと国民所得の少ないところがたくさんあるわけでありますから、すでにテークオフはできるけれども、いろいろな条件があって、いま局長が言ったような条件で一時的に苦しい状況にあるということで、果たして経済協力というものをこういった形でふやしていくことが政策的に妥当なことであるかということについて、私は大変疑問があるのでございますが、外務省、いかがでございますか。
  44. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先生御指摘のように、七八年の日韓閣僚会議のコミュニケにおきまして、民間ベース主体の趣旨の文言がございます。この民間主体という考え方は、政府ベース経済協力の絶対額を必ずしも減らすということではございませんで、あくまで民間資金とのバランスを考え、そのバランスを民間主体に移行していきたい、そういう考え方をあらわしたものでございます。したがいまして、この考え方は今日でも基本的には変わっていないわけでございます。  ただ、その後に、先生も御指摘になりましたけれども、一九七九年に第二次石油ショックがございまして、韓国経済が非常な困難に逢着したという事実がございます。その観点を踏まえまして、先ほどからるる御説明申し上げておりますとおりに、韓国が経済的な困難に逢着していることが一つ。それから、新しい民生の安定、経済社会の発展のための五カ年計画にことしから入ることが一つということを勘案いたしまして、さらに日韓の歴史的経済的なつながりを考えまして、日本経済協力の基本的な方針のもとに、できるだけ前向きに本件に取り組んでいきたいというのが、もちろん限度があるわけでございますけれども、現在の態度でございます。
  45. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 大変重要なことなんでございますけれども、少し前に進めていきます。  今度言われている中で、金融ベースと申しますか、輸銀の金利はOECDのガイドラインもございまして九・二五ということでございますけれども、いやもっと低くしてくれということで、いろいろな案として、旧金利七・七五でやったらどうだというような話もいろいろと言われているわけでありますが、OECDの中でそういったガイドラインを決めている中で、これから新規に契約するものについて旧金利であるということが果たして世界的に通用することなんでしょうか。また、そういうことをやるおつもりはあるんでしょうか。
  46. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいまのお話にございましたように、昨年の十月十六日にOECDの輸出金利のガイドラインが改定になりまして、わが国は九・二五で一律でいく、よその国は従来どおり低所得、中所得、高所得、五年以下八年未満とか、三段階に分かれておりますが、それぞれ、わが国と違った一〇・五というようなレベルの金利になったわけでございます。  そこで、韓国の問題でございますが、その場合に事前に約束した部分があるわけです。これは必ずしも輸銀の融資に結びつくかどうかはわかりませんが、自分のところにこういうプロジェクトがあるので貸してくれないかという、そういうようなプライアーコミットメント、事前の約束と言っておりますが、その部分は大体旧ガイドラインでいくという国際的なコンセンサスがございます。これは七・五、七・七五、八・〇というようないろいろなものがございますが、おしなべて七・七五のグループが多いわけでございます。それから、新たにやる分は輸銀金利で九・二五、それで市中と協調でございますので、長期のプライムレートがあるわけですが、これを合成いたしますと、大体九・ちょっと出るような感じになりますが、こういうような現状にあるわけです。  それを金融ベース協力ということでお話しのように下げるのかどうかということでございますが、私どもとしては、昨年の十月十六日に日本の基本的な態度を世界に宣明して主張したわけでございますが、非常に苦しいところを自分たちは金利を上げる、だから日本も何とかがまんしてくれないかということでのんだ等のいきさつがございまして、これをさらに下げるというようなことはできない、さらに、ヨーロッパの方は中所得国のグループに韓国を入れるべきだという議論すらあるわけでございます。そういうようなときに、いかに特殊な理由があろうと、全体の総合的な角度から見て、そういうことはできないのではないかという考え方を持っております。
  47. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 一つは、それはどうも韓国との経済協力というと、歴史的に残念ながら大変黒い金が動いたとか、どこまで本当だかわかりませんけれども、絶えずそういうものがつきまとって、非常に不透明な経済援助ではないのかということが残念ながら言われてきたわけであります。  今度の経緯を見ましても、私が冒頭言いましたように、どうも大蔵省と外務省で綱引きをやって、何かその真ん中ぐらいに落ちつかせるような、新聞報道その他は全部そうなっているわけですね。これでやはり国民の税金を使う限りは、私は、国民の皆さん方に納得できる、先ほど大臣も言われたような、援助する方と援助される側とが本当に民生の安定なり生活のアップあるいは経済自体のテークオフをしていこうということにならぬと思うのであります。そういった意味では、やはり一国のみ特別な事情をそれなりに認めるというようなことではなくて、日本の制度の中で筋を通すべきはやはり筋を通すべきだと私は思うのであります。そのことをぜひお願いをしておきたいと思います。  あわせて、商品借款の話でございますけれども、韓国側から商品借款が要請されているようでございます。これは、どこにお答えいただくのが一番適当なのかわかりませんが、いままで日本が商品借款をしてきたというのは、いわば紛争を抱えている国あるいはその隣の国、パキスタンとかあるいは中国とか、しかも一人当たりの国民所得が大変少ない、四百ドル以下とか、一応そういう目安で今日まで商品借款をやってきたわけでございますけれども、こういったところから当てはめてみましても、今度の日韓経済協力の中で商品借款が使われる、行われるという余地はないと私は思うのでございますが、そう考えておいてよろしゅうございますか。
  48. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ちょっと説明をさせていただきますと、商品借款をする場合に二つのケースがございます。  一つは、ジャマイカとかトルコとか、ああいうような多国間の会議をやりまして、債権国会議をやるわけです。そして財政再建計画を出してもらう。そういう場合には商品借款をやる。     〔粕谷委員長代理退席、委員長着席〕 商品借款というのは、どっちかといいますと、一般財政援助になるわけであります。  それから二番目のケースは、お話しのように、非常に所得の低い国、バングラだとかパキスタンとかタンザニアとかスリランカとかいうあたりをいまやっておりますが、御指摘のように所得水準が低くて非常に困っている国、こういうケースがあるわけでございます。  それで、韓国の場合どうであるかということでありますが、いずれのケースにも該当しないのではないかというふうに考えております。
  49. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 外務省、いいですね。そういう見解でよろしいですか。
  50. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 商品借款につきましては、三月十九日、わが方から韓国側に困難であるという趣旨を伝えまして、それに対して先方から、国際収支が非常に困難であるので商品借款をぜひ欲しいという要請が参っております。それをもとに、各省いま検討中であるというふうに了解しておりますけれども、基本的な考え方は、ただいま大蔵省国金局長がお述べになったとおりでございます。
  51. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最後に、大臣に二間だけお伺いしたいのですが、この日韓経済協力の問題は、何か連休中に外務大臣が訪韓をして決着をつけたい、こういうようなことが前々から言われていたわけですね。そうすると、かなり日程的にはきつくなってくるわけでありますけれども、事は財政にかかわる問題でございますので、大蔵大臣のところを経ないで事が決着するわけがないのでありますが、この五月連休にめどをつける、あるいは正確に言えば四月末ぐらいまでにいわば政治的な決着を関係四省庁でつけるということでないと、これはできないと思うのでありますが、そういう時期的なめどというのはどう考えていらっしゃるのでございますか。
  52. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これも私が交渉するわけじゃありませんから、大体それは中身や何かについてはある程度の話が当然ありましょう。だけれども政府としては、なるべく早く決着をさせたいという熱意を待っていることは事実でございます。
  53. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それは、きょうが四月二十一日でございますから、連休中ぐらいに訪韓ということになれば、きょうは水曜日ですから、もう今週末か来週早々ぐらいにはある程度の目安をつけなければいかぬという時間的な設定にはなってくると思うのです。私は、そういうふうにした方がいいとか悪いとかいう問題ではなくて、いま大臣の言われた熱意を持ってというのは、そういう意味も含めてできれば腹をくくりたい。と言っても、いままでの議論のように、いわば下からの積み上げでありますから、そうこれはどこかの相手と話をつけようという、足して二で割る式にいくことではないので、なかなかそうは言ってもむずかしいと思いますが、何かそういう最終的な具体的な時間的限度というのは、大蔵大臣としての頭の中にはあるのでございますか。
  54. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 大蔵大臣は余りあわてる必要はないわけでございまして、それは外務省の方としても、いつまでもぐずぐずしていられないから早くつけたいという気持ちのようでございます。したがって、私は、つくときはつくし、つくんじゃないかと思っております。
  55. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この問題の最後といたしまして、先ほど申しましたように、これはあくまで財政を伴うことであり、国民の税金を使うことでありますから、国民の皆さん方も納得するような経緯で、韓国だけ特別に例外です、特殊な関係ですというだけでは済まない。政治としてのけじめ、姿勢を正して、経済協力をするものはするということをぜひお願いしておきたいと思うのであります。  最後に、先ほど伊藤委員の質問に大臣もちょっと言っていらっしゃいましたけれども、私は、経済協力のあり方として、こういうような具体的な二国間の問題あるいは多国間でやる問題もありますけれども、いま世界不況をどうするか。時間が来ましたから、簡単に結論だけ言って大臣のお考えをお伺いしたいのでありますが、いわばもう一度ケインズ的有効需要政策というものを、単なる一国の中でそれを行うのではなくて、グローバルにひとつ行うべきではないか、これがいまの世界的な不況を脱出する道ではないかという考えを持っている者の一人であるわけであります。  それを具体的に一生懸命やっていらっしゃるところが、株式会社ですが三菱総合研究所の中島正樹さんという、この人はいまは相談役に退いていらっしゃいますが、一生懸命各国を回ってこのことを説いていらっしゃるわけであります。  結論だけ言いますと、軍事費の三%をおのおの拠出をして、大体一プロジェクト百億ドルくらいのプロジェクトをひとつ世界的にやっていこう。ただ、私が一つだけ中島さんと意見が違うのは、中島さんの資金の計画というのは、アメリカ、西ドイツ、日本、カナダなどから毎年合計で五十億ドル、OPEC諸国から五十億ドル、その他先進国から三十億ドル、これで計百三十億ドルでありますけれども、この中にやはりソ連も出してもらわなければいかぬと私は思うのですね。ソ連も三十億ドルか五十億ドルか、額の話は別としても、ソ連もそれを出してもらう。そして、そこでつくった共通の世界的なプロジェクトというのは、戦争が不幸にしてあっても絶対に爆撃してはならぬ、こういう協定をつくらなければいかぬと思うのでありますね。これは仮称でありますけれどもグローバル・インフラストラクチュア・ファンド、世界公共事業基金と呼んでおりますけれども、これに非常に共鳴をする点は、軍縮も非常に重要だけれども、軍縮した結果が具体的に目に見えるようにしようじゃないか、軍縮軍縮と言ってお互いに非常に軍事費を削っていくことは非常に重要だけれども、それは目に見えないのですね。具体的にその成果というものが世界的にあらわれて、それが単なる先進国だけではなくて、それに関係をするところの諸国民にも見える、この発想に私は非常に引かれるものがあったわけであります。  具体的には、たとえばマレーシアのところのクラ地峡という話がかねてからありましたけれども、そういったものをするとか、いま永野さんが一生懸命にやっていらっしゃる第二パナマ運河、これもルートは三つぐらいいろいろと案はあるのでありますが、そういったものをつくるとか、あるいはヒマラヤの雪解けの水を利用して水力発電を大々的にやってインドの工業化の手助けをする、あるいはバングラデシュの工業化、電力化を進めていくとか、あるいは南太平洋の方でひとつ海流発電というのを大々的にやったらどうだろうかとか、米ソ二つの超大国を巻き込んで、あの国の両方をつないでベーリング海峡にダムをつくって、北極海と北太平洋の水を行き来させて北の方を暖かくしようというようなものとか、あるいは砂漠を緑化していくという、まあ一つのプロジェクトに大体百億ドルぐらいかかるというのでありますが、それをひとつ先ほど言ったような形でソ連も含めて各国が拠出をしてやっていくという、こういう広大な勇壮なる発想を一つ持つべきではないのか。  私は、このプランに非常にあこがれ、これをぜひ、残念ながら私どもは野党でありますので、これからいろいろな形で国際会議がございますので、単に国連にこれを預けるというような形でなくて、GIFというようなこういった構想でひとつ事を進めていく。これはそれなりに大変金がかかることでありますが、いま申しましたように、世界の軍事費の三%を削っていけばできる構想でありますので、不可能ではないと思うのであります。ひとつこういう発想を世界に向けて、渡辺大蔵大臣が日ごろの大きな声をますます大きくしてもらうということをお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
  56. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 軍事費の大きさに応じて世界のために貢献する開発資金を出す、たくさん出せば軍事費に金を出す余裕がなくなりますから、私は大変いいことだと思っております。中身を勉強しておりませんので、それ以上のことは申し上げられませんが、よく記憶にとどめておきたいと存じます。
  57. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 終わります。
  58. 森喜朗

    森委員長 柴田弘君。
  59. 柴田弘

    ○柴田委員 私は、最初に、先ほどもお話がありましたが、経済協力の問題、日韓問題につきましてお話をお聞きをしていきたいと思います。  いま、大臣は早期決着ということをおっしゃったわけでありますが、韓国が要求しております六十億ドルの経済協力、これがいよいよ大詰めを迎えておるわけでありまして、漏れ承るところによりますと、五月の連休に外務大臣が訪韓をする、そこで決着をする、こういうことのようでございますが、大蔵省としても、やはりそういった方向へ作業を進めていく決意があるのかどうか、まず最初にお伺いをしていきたいわけであります。
  60. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 わが国経済援助の基本方針のもとで大筋の方向はいただいておりまして、関係各省現在鋭意作業をいたしまして、できるだけ早く結論を出したい、そういうスタンスでございます。
  61. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、外務省、大蔵省中心にいま関係各省で調整を進めておるわけでありますが、韓国側が五年間で六十億ドル要求をしている。これに対して外務省は、総枠で四十億ドル、そのうち円借款を十五億ドル、日本輸出入銀行からの融資を二十五億ドル。一方、大蔵省は、円借款は十億ドルで、これに輸銀と民間資金協力を合わせて三十五億ドル、こういうことですね。  きょうの新聞報道を見てまいりますと、円借款が真ん中をとって十三億ドルですか、それから日本輸出入銀行と市中銀行の融資を加えて四十億ドル、平均金利は六%である、こういうふうに総理の意向によって政府案というものが決定を見たというような報道がなされているわけでありますが、これに対して大蔵省は、余り同意をしていないような方向でありますね。  それで、こういったいろいろな話し合いの中で、一体どういうような具体的な内容で財政当局である大蔵省は決着をしていくのか。いま言った政府案の方向で決着をするのか、あるいはそれ以外の方向で決着をするのか、具体的な内容について承りたいわけです。
  62. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいまも申し上げましたように、基本的な線は決定されております。細部につきまして関係省庁で現在作業をやっております。何せ外交交渉の問題でございますので、現段階では、具体的に申し上げることは差し控えたいと思います。
  63. 柴田弘

    ○柴田委員 外交交渉の問題であるから具体的な問題については答弁することは差し控えたい、決着をしているわけですが、それは公表することは差し控えたい、こういうことなんですね。そうすれば、われわれの理解としては、大体マスコミで報道されているような方向で考えている。具体的な数字はいいわけですが、そういう理解の方向でいいかどうか。それだけ答弁できたら答弁していただきます。
  64. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 間違っているところもありますし、合っているところもあるというようなことでございます。
  65. 柴田弘

    ○柴田委員 玉虫色の答弁でしょうがありませんが、いずれにいたしましても、韓国側は六十億ドルを要求をしているわけですね。これを減額させたり金利の高い輸銀の融資というものについては難色を示しているようなふうに聞いておるわけでありますが、いま決定を見ている内容で韓国側との話し合い、説得の中で決着ができると考えていらっしゃるかどうか、この辺はどうでしょうか。
  66. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 これは、交渉の窓口でございます外務省から答弁をしていただいた方がいいと思います。
  67. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  まず、先ほどから御答弁ございますように、いまだ日本政府としての最終的な態度は固まっていないというふうに了解しております。したがいまして、今後日本政府が態度を決めて、それに基づきまして韓国側と交渉に入っていくわけでございますけれども、今後の情勢はどういうふうになっていくであろうということにつきましては、現段階では、残念でございますけれども、交渉の最中でもございますし、憶測をすることは控えさせていただきたいと存じます。
  68. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣に、この問題について最後にお伺いをしていきますが、早期決着、これを私は決して否定するものではございません。しかし、筋の通らない政治決着は好ましくないというふうに考えております。やはり経済協力の問題は、安全保障絡みでなく、国民的な基盤に立って解決をしていかなければならない、こんなふうに考えておるわけでありまして、韓国が言っております五カ年計画全体に対する協力総枠について保証を得たい、そういった韓国側の要請というものは、私は、理解はできることだと思います。  しかし、日韓関係の再構築というのは、これは申すまでもございませんが、わが国外交の最重要課題であるわけでありまして、日本側の協力の熱意を示すために、経済協力の原則を踏まえて何らかの形で総枠を内示することも必要になってくるであろう、こんなふうにも考えているわけであります。しかし、それはあくまでも明確な資料に基づく積み上げ方式というものを前提にしていかなければならない。資料に基づかない政治判断あるいは政治加算というものは、協力資金の使途について疑惑を生むことになって、再び不明朗な日韓関係というものを生み出す温床になりかねない、こんなふうに考えておるわけでありまして、この日韓の円借款問題解決に向けて、こういったいわゆる国民的な基盤に基づいた決着、解決というものが必要であるというふうに考えるわけでございますが、この辺について、大臣の御決意なり御見解なりをお伺いしていきたいと思います。
  69. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も、経済閣僚会議では韓国に参っていろいろなことを申し上げておりますし、韓国からも代表団が何回か来られました、その方ともかなり長時間にわたってお話をいたしてきました。  私といたしましては、日韓関係の友好の増進ということは必要であることは痛感をいたしております。しかしながら、国柄が違うわけでありますから、物の考え方もかなり違っておることも事実でございます。  そこで私は、もう一遍日韓会談のやり直しみたいな話は、とてもこれはそんなことではだめだ、それからもう一つは、軍事肩がわり的な物の考え方ではだめです、日韓関係は友好になってきておるわけですから、この友好な関係を一層増進させていく、韓国の経済が栄えて韓国がよくなることは、これは日本のためにも非常にいいことですから、できるだけの御協力はいたしましょう、しかしながら、日本の現在の財政事情、こういうこともよく理解をしてもらわなければ困ります、ただ単に貿易の赤字が何十億ドルあったとか言ったって、それは必要があるから買うわけでございますから、そのことだけでその見返りみたいな話もだめでございます、それは今後の問題として、われわれは仲よくやっていかなければならないのですから、お互いの立場を尊重し合ってやっていく必要がある、したがって私としては、法外もないものをこの段階で持ち込んでこられましても、それはうのみにすることはとうていできません、できるだけのことはいたしますから、いま経済情勢は非常に悪い、またいつまでも悪いとは限らぬと私は思っております、世界の経済は動いているわけですから、したがって、積み上げ方式によってまず小さく産んで大きく育てるということの方が一番現実的ではないですかというようなことは申し上げておるわけでありますから、お互いにそういうような理解ができればわれわれも奮発をいたしますし、向こうも考え方を改めていただいて、そうすれば妥結するだろう、私はそう思っております。
  70. 柴田弘

    ○柴田委員 いま大臣から基本的なお考えが示されたわけでありますが、外務省は、この点についてはどうでしょうか。どういう基本的な考え方に乗って交渉を決着をさせるか、この辺はどうでしょうか。
  71. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 本件につきましては、日本経済協力の基本方針のもとに、同時に、韓国は五カ年計画をことしから始めるわけでございますので、それから韓国の経済困難などを勘案しながら韓国に対して協力していくという立場でございますけれども、先ほど大臣が申されました日本の財政の事情等、これは当然日本全体として韓国に対する協力の際に考えていくべきことでございまして、大臣のおっしゃるとおりだと思います。
  72. 柴田弘

    ○柴田委員 次は、関連をしまして、円借款の問題につきまして、いろいろとお聞きをしていきたいと思います。  わが国発展途上国に供与することを約束した円借款総額、これは四一・一%が未消化のまま残っている、このように聞いておりますが、その実態はどうかということであります。昭和三十三年にまずインドに対して円借款の供与を始めましてから昨年の十二月末までに、六十カ岡、四兆三千百一億円の円借款の約束をしたわけでありますが、このうち実際に使われましたのは二兆五千三百七十億円、一兆七千七百三十一億円が未消化、こういったことであるそうでありますが、その実態はいかがでしょうか。
  73. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ただいま引用されました数字はそのとおりでございます。繰り返しになりますが、プレッジの累計が四兆三千百一億、未使用の分が一兆二千百五十九億円でございます。  これはいろいろな段階があるわけでございます。最初政治的な約束をする、それから交換公文とか融資の約束とか、いろいろな段階がございます。それで、すべてが非常におくれているということではございません。いわゆるローンアグリーメントというのを結びまして仕事を始めますが、それぞれ完成までには歳月がある、その間進捗に応じまして実際にお金を支出するというような関係にあるので、マクロ的に見ますと、その比率が三二・四%になっておる、国によりましてかなりでこぼこがございます。  これは基本的には、ただいま申しましたように、日本のみならずどこの国でもある問題でございますが、同時に、能率が悪いという点は否定できません。それで、プロジェクトを採択する場合に、いわゆるフィージビリティースタディーがどこまで煮詰まっているか、それから各省間の協議におきましても、いろいろ御指摘があるように、なかなか調整がはかがいかないというような問題もございます。それで、関係省庁、大体四省庁が中心になっておりますが、そういう点はひとしく認識しておりまして、事前の準備、省庁間の調整の迅速化、同時に先方の問題もあるわけでございます。余り煮詰まっていないものを持ち出してきて、そして約束してどんどんやるけれども、なかなかはかがいかない、こういう問題もございます。そこいらはしょっちゅう課長クラスで会合をやっておりまして、次第次第に、もうかなり前から、関係省庁ひとしくその問題意識は持っておりまして、改善を図りましてだんだんとよくなってきておりますが、いま申しましたような制約条件はあるわけでございます。
  74. 柴田弘

    ○柴田委員 それで、いろいろな未消化の原因というのがあると思います。それについて、この問題をどう処理していくのか、こういう次の問題が出てくるわけでございます。  それで、今後どうしていくかということでありますが、一つは、対象のプロジェクトを厳しくチェックし、消化の見込みの高いものにだけしぼるという問題、この問題についてはどうか。いま一つは、こういった未消化のものについては〇・五%の延滞手数料というものを取る方向大蔵省は検討する、こういうことであるわけでありますが、この辺についての考え方はそのとおりかどうか。そういった点を含めて、この未消化に対する今後の処理についてお伺いをしていきたいわけであります。
  75. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 前段の御指摘でございますが、ただいま申し上げましたように、先方の問題がありまして、これも事前にプロジェクトの内容とか優先順位あるいはフィージビリティースタディー、そういうものの熟度をできるだけ高めてもらう。それから当方は、ただいま申しましたように、それを受け取った後で、できるだけ関係省庁間の検討を早めるというような改善の方途を数年前から協議をしながら、徐々に改善をしておるところでございます。  後段の問題は、世銀とかIDAアジ銀等々がコミットしました残高について、コミットメントフィーというものを取っておるわけでございます。このよしあしの問題があるわけでございますが、一つのアイデアとして、ただいまの未消化分の対策の一つになるのかならないのか。当然後進国の負担になりますので、それとの兼ね合いをどうするか。  私どもの方の財政当局の立場から言いますと、約束したものの全額ではございませんけれども、かなりのものを予算計上する、そうすると、公債を出しているわけですから、当然ただの金ではないわけでございます。七、八%の公債の金利とすれば、その分の何%かはかかっているわけですから、そこいらは、単にこの問題の解決だけではなくて、いろいろな角度から検討しなければならない。まだ方向づけは出ておりません。いろいろな角度の検討をしておるというような段階でございます。
  76. 柴田弘

    ○柴田委員 後段の延滞手数料の問題ですね。いま検討しているということでありますが、これは当然、検討しているという以上は、実施というか実現をめどにして検討している、こういうように理解をしているわけであります。  今度は、しからばいつまでにその結論を出されて、いつから実施されるか、こういうふうになると思いますが、その辺のところはどうでしょうか。
  77. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 現段階では、実施するという方向づけはまだ出ておりません。と申しますのは、後進国の立場に立っても考えてやらなければならないというような問題もございまして、白紙の状態でいろいろな角度からの検討を進めております。これは、関係省庁とはまだ相談する段階にも至っていないわけでございます。
  78. 柴田弘

    ○柴田委員 わかりました。  次は、時間が追ってまいりましたので、政府開発援助、ODAの問題でございますが、この目標の対GNP比〇・七%を達成していない先進国は、この目標を八五年までに、遅くとも八〇年代の後半中には達成するように最善の努力を払うべく規定をされているようであります。  一方、日本はGNP比〇・三四一%で、開発援助委員会諸国の平均が〇・三七%であるわけでありますが、私が思いますのは、やはりこれでは対外的に何を言っても説得力がないのではないか。ですから、〇・七%達成のプロセスというものをきちっとしていかなければならない、私は、こういうふうに思うわけでありますが、このプロセスについては、達成のためにどうお考えになっていらっしゃるか。時間がありませんから、簡単で結構です。
  79. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 わが国の援助がおくれて発足したというような問題がございまして、絶対額ではかなりの水準に行っておりますが、なかなかGNP比率が伸びない。その場合に、GNPの伸びも非常に大きいものですから、分子と分母の関係もございます。  それからもう一つは、ODAが援助の中核ではございますが、私どもは、もっと広い経済協力というような角度から、民間の金とかあるいは技術援助だとか、そういうようなものも含めて考えていかなければいけないのじゃないか、道行きは倍増ということで、とりあえずこの五年間援助を拡大していくというような方途でおるわけでございます。
  80. 柴田弘

    ○柴田委員 倍増ということでありますが、鈴木総理は、一九八一年からの五年間ODAの供与額を七六年−八〇年実績の倍の二百十四億ドル以上にするというODA新中期目標達成ということを国際舞台で約束をなさっているわけであります。しかし実際には、ODA全体の事業規模は五十七年度約九千四百億円ですか、これは前年度に比べて五・八%弱の伸びにとどまっておるわけであります。ですから、この新中期目標を達成するためには年間平均で八・七%の増加が必要になるわけであります。  そこで大臣にお伺いしますが、国際舞台で総理はそういうふうな約束を絶えず続けられているわけでありますが、この財政再建あるいはまたこういった歳入欠陥、厳しい財政の中で果たしてこういった公約の実現というのは可能であるのかどうか。可能とすれば、倍増ということでありますが、どういった決意を持って具体的に対処されるのか、その辺をお伺いをしていきたいわけであります。
  81. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは本当に、一方においては大幅な歳出カットをしなければならない、それから赤字国債からの脱却もしなければならぬ、非常にむずかしい条件がございます。世界の経済はそう急浮上するという状態ではない。  したがって、年次ごとによってはあるいは多少のむらが出てくるかもしれませんが、やはり五カ年間という中期的展望に立てば、一つの国際的な約束と言っても差し支えないわけでございますし、世界あっての日本日本は特に貿易国家としてでも世界の国との友好関係が保たれなければ日本の経済はうまくいかない。そういうような点からしても、国民の理解と協力を求めて、優先的に、多少むらがあっても、できるだけ五カ年間の間では世界に宣言をした国際経済協力は実現をさせていきたいと考えております。
  82. 柴田弘

    ○柴田委員 銀行局長と証券局長済みませんでした。時間がなくなりましたので、貿易摩擦の問題に関連をして金融、証券のことをお尋ねしたい、こう思っておりましたが、また次に譲りましてやらせていただきます。時間が参りましたので、これで終わります。
  83. 森喜朗

  84. 和田耕作

    和田(耕)委員 今回の世界銀行増資協力要請に対して、十六億六千万ドルというかなり多額のお金だと思うのですけれども、それについて、これを承知するということについては私どもも大賛成でございます。今後、日本の国際的な立場から見て、このような問題についてはできるだけの積極的な姿勢が必要だと考えております。  それにつきまして、まず御質問したいことは、これは国連でもそうですし、その他の国際機関でもそうですけれども日本出資額に応じて、そこで働く日本人の職員の数が比較的少ないという問題があると思います。今後も本格的に日本の国際協力が進展するに従って、日本人の職員というものをかなり計画的に訓練をし、そしてこれを供給するという考え方が必要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  85. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 同感でございます。  したがって、クローゼン総裁等にも、日本人幹部の採用あるいは職員等についてももっと採用してもらいたいということはかねて申し上げてございます。世界のいろいろな機構においても同様なことが私は言えるのじゃないか。ただ、日本人の中には、やはり土着をするのはいやだとか、あるいは言葉ですね、言葉の上でどうも非常に堪能でないというようなことの障害があるようでございますが、これは、日本はかなり国際機関には多額の拠出もしておるわけでございますから、今後とも日本人の職員及び幹部の採用については、外務省と一体になって推し進めてまいりたいと私は考えております。
  86. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは、外務省がいろいろなことの中心になると思いますけれども大蔵省にしましても、あるいは通産省その他ほとんど各省にわたりまして、国際機関との接触が出てくると思うのです。これはやはり閣議で、こういう国際機関で働く人員の養成の問題については一度検討してみる必要がありはしないかというふうに私は思うのです。  私が関係しております国際連合の中の人口問題についての機関があるのですけれども、この機関では、日本政府の力の入れ方もそうですが、日本人の職員が積極的に働いているのです。特にアジア関係では、恐らく日本人の職員がいろいろな計画をし実行をしておるというふうに私ども考えておるのですが、やはり今後そのほかの部面でもりっぱに、日本人は有能ですから、いまの言葉の問題やその他の問題をよく承知をして、計画的にそういう人たちの養成について心がけるということが、私は非常に大事なことだと思っておるわけでありまして、この問題についてひとつ大蔵大臣、関係の各省庁に呼びかけて何か調整のとれるような対策をぜひとも考えてほしいと思います。重ねてお伺いをしたいと思います。
  87. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 全体の問題は、御指摘のように外務省の問題だと思いますが、私どもの領域、世界銀行、IMF、アジ銀中南米銀行、アフリカ開発銀行、一次産品とか、こういう国際金融機関を抱えております。  ただいま大臣から答弁がございましたように、大臣からも先方のトップに対して、もっと日本人を採用すべきではないか。それから、私ども事務方はいろいろ考えまして、若いうちに送り込む。そして帰ってくる。さらにまた行く。ツーステップを考えまして、本年も私の局から二人参ります。この場合、政府代表で行きますとだめなわけでございます、事務局に入らなければ。この事務局に入るのが、率直に申して日本の生活水準が高くなって快適であるわけでございます。向こうへ行くと、かなり厳しいわけでございます。語学のハンディ、子弟の教育の問題、それから帰ってきたときの不安、こういうものが現にあるわけでございます。そういう点を、いま申しましたようなツーステップ的に考えまして、積極的に送り出す。先方の機関に対しても、いささか甘えの構造がございますが、日本の特殊な事情を説明いたしまして、永続でなければ採らないということでなくて、ツーステップということでやるのだという了解を求めたりしております。それからアジア開発銀行などの場合には、一年に一回いわゆる人員募集に参ります。その場合には、各省に私どもの方から積極的に紹介しまして、中心は技術関係になりますが、昨年の場合も農林とか建設とかそちらに情報を流しまして、便宜を図ったりしております。全体の問題は、外務、文部、そういうような問題かと思いますが、各省それぞれ、自分の国際機関に対して、私どもと同じような感じを持ってやっていると思います。
  88. 和田耕作

    和田(耕)委員 これはひとつぜひともお願いをいたします。  その次に、今度の法案の附帯決議の中にもあるのですけれども、これは援助を受ける国の立場というものも、いままでよりももっと考えてみる必要があるというふうに思うのですが、そういう観点から日本の対外経済協力の姿勢を見ますと、たとえばその一年だけあるいは具体的なプロジェクトに沿っての援助ということになっておるようですけれども、これはそれなりに、日本のいままでの低い国際的な地位から見て一つ理由があったと思うのですが、このように日本世界の経済大国として開発途上国から特に期待されておる現段階では、余りみずからの経済協力の仕方の枠を決めてしまうということはいかがなものか。ある枠、いまの単年度主義あるいはプロジェクトに従ってという、これは今後とも必要だと思いますよ。しかし、それだけにとらわれるということは、果たして今後の実情に合っておるかどうかということも検討してみる必要があると思うのです。  たとえば、開発途上国の援助を受けたい国々は、大体ほとんどと言っていいほど、三年なり五年なりという計画的な一つ開発計画を持っておると思うのですね。そういう線に沿っての援助ということがほとんど大部分だと思う。早い話が、この半年ほど前に決定した中国への援助という問題を見ても、あれは単年度主義という考えを基本に置いておることはわかるのですけれども、実質的にはかなり何年かの問題を含んでの援助になっている、あたりまえのことなんですね。  こういう問題について、ひとつ今後実情に合わしてもっと機動的な、開発国の実情に応じたような考え方ができるように検討してみることが必要だと思うのですけれども、この点いかがでしょう。
  89. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 開発国の希望するものを優先的に取り上げるということは結構だと思うのです。思いますが、往々にして発展途上国というのは、独裁的な政権が多かったりデモンストレーションが好きだったり、余り基礎調査もやらないものを持ち込んできて、いままではですよ、これはよくあるのですよ。人の国は言いませんが、電気を使う必要のないところへ発電所をつくってみたり、水のないところに製紙工場をつくったり、日本でもそういう失敗の経験がございますからね。それで、逆にそんなことが一部の利権みたいに言われて、それで反日運動の拠点になったりということもございます。  したがって、向こうから申し込んできたから全部うのみにしてしまうというわけにはいかない。援助の効果というものが、日本の国民の貴重な税金で行われるわけでありますから、それは被援助国の経済なり国民全体に本当に役立つというものを選んでやる必要がある。どうしても、若き指導者層といいますか、でっかいことが好きなんですな、本当にデモンストレーション的なことが好きなんです。そういうことを、どうして干渉にならないでよく納得してもらって効果のあるものにするか。そのために、われわれは枠組みでなくてプロジェクトごとと言っている理由一つには、そういうことも実はあるわけでございます。
  90. 和田耕作

    和田(耕)委員 私も、いま大臣がおっしゃるようなことは考える必要があると思います。したがって、プロジェクト別という、あるいは決まりがつくための一年、単年度という考え方をやめる必要はないと思うのですけれども、それを基盤にしてやはり国によってはもっと広い考えができるような、そして実際は長年度の援助であるのに単年度であるような形だけをつくるというようなことが現にあるわけですから、そういう実情に合わせて、もっと大きな気持ち、これはルーズになってはいけません。また、やることが生活のためにならないような政治借款的なものであってもいけません。だけれども、そういうふうにもっとゆとりを持つことが、いまの経済大国日本の対外援助の心構えとしては必要じゃないかということを申し上げておるわけなんです。  そういう点で、私は、きょう日韓の経済協力の問題についてお伺いしたいと思うのです。  新聞の報道によりますと、政府大蔵大臣もがんばっておりましたけれども、これからもがんばっておられるかもわかりませんが、外務省との間で大体の了解点らしいものが出てきたという報道なんですけれども、あれは事実なんでしょうか。
  91. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 報道の中身については、私は保証いたしません。いたしませんが、少なくとも日本の外務省が交渉に当たるわけですから、空手形を切ってくるわけにはいかないのでありまして、やはり財政上の裏づけというものがなければ意味ないわけですから、当然に大蔵省と外務省は話し合いをしているということは事実でございましょう。
  92. 和田耕作

    和田(耕)委員 外務省に、いまの韓国の状態についてお伺いしたいのですが、聞くところによりますと、これは日本もちょうど同じなんですが、昨年の暮れあたりから、韓国の貿易特に輸出が非常にふるわなくなった。特に一−三月はかなりひどい状態だということを聞くのですけれども、この問題について、もしわかっておられればお答えをいただきたい。
  93. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  韓国の経済企画院の発表に基づいてお答えいたしますが、経済企画院の発表した数字によりますと、八一年の貿易収支は輸出が二百九億ドルで、これは前年比二一・四%の増、また輸入は二百四十一億ドル、これは前年比九・七%増ということのようでございます。貿易収支の赤字は三十二億五千万ドルとなりまして、八〇年の四十七億六千万ドルという貿易収支の赤字に比べますと、約十五億ドル程度改善していると承知しております。
  94. 和田耕作

    和田(耕)委員 いま私御質問したのは、去年の暮れから今年の一−三月にかけての輸出の状態なんですが……。
  95. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えします。  失礼しました。最近の数字がまだ手に入っておりませんが、私たちの持っています数字では、ことしの一月の数字は、前年の同時期比九・三%減ということのようでございます。
  96. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 八二年の第一・四半期でございますが、一−三月、三角の四億四千百万ドルでございます。前年同期が十三億六千万ドルと、数字上はこうなっておりますが、向こうの書いておるものを見ますと、御指摘のようなことが出てきております。ぐあいが悪いということが出ております。
  97. 和田耕作

    和田(耕)委員 先月私がソウルへ参ったときも、非常に苦しい状態を、これは数字でなくて、はったりでもなくて、本当に苦しい状態だという話を各関係の責任者の方も話しておりました。  これは、日本の場合でも、昨年の十二月ごろから非常に輸出が落ち込んでおる。これは、もし日本の円がこういうふうに下がっていなければ、私は、もっとひどいんじゃないかと思うのですね。円が下がってきたということを、EC筋は、日本政府は意識的に下げているみたいなことを言っているのもありますけれども、そうでないことは言うまでもありません。また日銀総裁は、円が下がったメリットはないんだ、こう言っておりますけれども、実際は私は、円が下がったメリットは、いま現在現状どおりの輸出減の程度でとめておるのであって、円がもし下がらなかったら、もっとひどい状態だったという感じがするんですね。日本もこの輸出の問題で非常に困っておるわけですが、韓国という国は輸出に依存する量が、かつて十年前の日本と同じように非常に大きいのですね。そういうことで、この数年前の政治的な混乱という問題もあり、非常に困っておられるわけなんです。  と同時に、きょうの昼のニュースで、三十八度線で北と南の軍隊が衝突した、内容はまだ定かでないようですけれども、そういう報道も伝えられておる状態で、私ども日本人が考えている以上に、この三十八度線をめぐる緊張関係というのは続いておるわけなんですね。そして韓国としては、国民所得の相当部分を防備の問題に使っておるという事実があると思います。この問題とすぐ結びつけてしまいますと、韓国の要望である六十億ドルというのは、軍事援助あるいは安全保障上の問題との結びつきのように見えるのですけれども、それはまあそういう面があるかもわかりませんが、しかし実態はそういうものとは離れた形で、韓国のいまの日本に求めておる援助というものは、やはり理解ができる要素があると思うのですね。  具体的にこの十幾つのプロジェクトをはっきり示してきて、そういうプロジェクトに対する援助という問題を受けておる。また、韓国の言い分としては、自由諸国の最先端で、われわれは大変なお金と力を使ってがんばっておるということに対して、少しは見てくれてもいいじゃないかということも、私は無理からぬことだと思うのです。それを理解したからといって、韓国への経済援助がすぐ安全保障上の防衛的なものだというふうに理解することをしなくてもいいじゃないか。日本としては、やはり経済的な援助、韓国の国民に対する援助というふうな意味で理解をしてあげるということもできるし、そうしなければならない、そういうふうな意味から見て、私はできるだけの理解をし、援助をしてあげるということが必要だと思うのです。  そういう面で、韓国は中進国だとか、いろいろなあれがあります。この問題についても、仮に中進国であったとしても、そのときの経済の状態という面を見れば、中進国だからおまえさんはこれだ、あるいは国民所得からいって相当しに上がっているから、あるいは低いから、あるいはうんと下だからというふうに、余りそういう基準にとらわれますと、実情に合わないようなことにもなるわけでありまして、そういう問題について、ひとつぜひとも大蔵省としても考慮をする必要がありはしないか。お隣りの国の韓国というものが不安定な状態に陥るということは、日本にとってはきわめて危ない状態にもなるわけでありまして、その問題について、特にひとつ考慮をいただきたい。  そしてまた、率直に言って、アメリカのレーガンさんとのサミットの問題もあるし、鈴木さんとのトップ会談という問題もありますけれども、アメリカとしては、日本の防衛の努力ということと、そして経済摩擦ということと事実上絡めて考えておることは事実なんです。したがって、日本ができるだけの防衛への努力、日本の国あるいは日本の周辺のことについて努力をしているということが、やはり日本の当面しているいろいろな問題に対して、これを理解してもらう大事なポイントでもあるわけなんです。これは、公式に言うことと実際上のこととは別であって、いろいろな言い方はあると思いますけれども、実際の面から見て、いまの韓国に対する日本側としての姿勢というものは、いろいろな面から私は判断をしていかなければならない。  確かに、いまの六十億ドルという要求の仕方については、前の園田外務大臣がいろいろ言ったような、そういう感じが日本人にはあると思います。私どもも、かなり無理な要求だというふうには思いますけれども、しかし、それはそれとして、いま私いろいろ申し上げたとおりのいろいろな問題を考えながら、この問題をできるだけひとつ前向きに処理をしてもらいたい。これは大蔵大臣としての立場は非常によくわかりますし、そしてまた、大蔵大臣個人としてはこういう問題について非常に高い理解を持っておられると思うのです。思うのですけれども、いろいろな意味から、大所高所からこの問題について、日韓の経済協力、ある程度の理解ができるような状態にぜひとも努力をいただきたい。ただ気持ちだけで結構ですけれども、お答えをいただきたいと思います。
  98. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も、韓国の繁栄と安全、平和ということは日本にとって重大な関係があるということは、よく認識をしているのです。  しかしながら、日本の現在置かれている財政事情ということも考えてもらわなければ困るわけでありまして、韓国でいろいろな建設事業をやるにいたしましても、何でも政府のお金でなければならぬ。日本世界で一番金利が安いわけですから、民間のお金も利用して、要は金に色目はないわけですから、民間の金で利用できるような、私らお手伝いをするわけですから、そういう点は世界で一番安い金利の国の日本の金を利用しない手はないのです。だから、そういうのも含めてひとつやったらいかがですか。  みんな政府政府と、政府ばかりを言われたって、私も、韓国だけ持っているわけじゃないから、実際あっちもこっちも経済援助、外務省だって韓国だけというわけにいかない。われわれ二倍にするという原則がありますが、三倍にするなんということはとてもできないわけですから、その中で政府資金とすれば、発展途上国よりももっと上の韓国にも円借款を認めましょう、これ自体が特例なんですから、それもできるだけの額は考えますと言っておるのであって、韓国だけでシェアをうんと多くしちゃったら、今度たとえば中国はどうするんだ、インドネシアはどうするんだ、どこはどうするんだという話になって、ほかは半分だ、片方は数倍だ、それはできませんよということを言っておるので、決して私はむちゃなことは言ってないつもりなんですがね。要するに、韓国の経済がよくなるようにすればいいんじゃないですかということでございます。
  99. 和田耕作

    和田(耕)委員 伝えられております円借款十三億ドルという線あるいはやり方によっては十五億ドルに近づくかもわからないというような、こういう線で韓国側がそれで理解をするかどうかという見通しは、政府としてはどういうふうに立っておられるのですか。
  100. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 先ほども御質問があったわけでございますが、交渉の窓目が外務省の方なので、外務省からひとつお答えをいただくように……。
  101. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 新聞紙上の報道等でいろいろな数字、憶測記事があることは私も承知しておりますが、まだ韓国との交渉をこれから先に控えている時点でもございますし、あるいは関係省庁の詰めというのもまだ行っている最中でございますので、コメントを差し控えさせていただきたいと思います。
  102. 和田耕作

    和田(耕)委員 それは理解できます。ただ、ぜひともひとつこういう席でお願いしたいことは、私は韓国ロビーでも何でもないのですけれども、韓国という国の存在が自由な日本という国の存在と非常に深いかかわりがあるということをやはり認める必要があるんじゃないかということであります。北朝鮮の問題をどのように見るか。私どもも、北朝鮮とはできるだけ友好関係を持っていく必要があると思うのですけれども、しかし、韓国との比較において、韓国とは特別の関係を持つということをやはり日本としては考える必要かあるのではないか、こういうことを特に感じますので、最後にこれを申し上げて、私の質問を終わることにいたします。
  103. 森喜朗

    森委員長 正森成二君。
  104. 正森成二

    ○正森委員 まず、この法案に関達した問題について伺いたいと思います。  この法案は、国際復興開発銀行といいますか世銀といいますかに対して十六億協定ドル余り出資する権限を認めて、当面はたしかその七・五%分を現金及び国債で出資するということだろうと思いますが、これまでは、通例一〇%というものをまず出資するということになっていたんじゃないのですか。
  105. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 さようでございます。
  106. 正森成二

    ○正森委員 ところが、七・五%になったのについては、アメリカの意向が相当強くなっておる。アメリカは、すでに米州開銀の一般増資が七・五%になっておるということから、アジア開銀の第三次増資も七・五%もしくはそれ以下にするように求めておるというよう言われているのですね。それから、すでに第二世銀に対しては、細かい数字は忘れましたが、三年間でアメリカは三十二億ドル余り出すというようになっていたのを、なかなか出し渋りまして、結局のところ米議会で、四年間で出す、しかもそれは、テールヘビーという言葉を使っておりますが、初めはちょっとずつ出して、後ほど多く出すということなんで、諸外国が非常に困っておるということも出ておるのですね。  これは、外国の中でも日本、欧米はきちんと出さなければいかぬという意向が強いのですが、アメリカだけに、そういう多国間の世銀等を通じるあるいは第二世銀等を通じる融資について、消極意見があるということだろうと思うのですが、それについてどう考えておられるか、承りたいと思います。
  107. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 最初の一〇%と七・五%の点でございますが、これは、実は後進国の方も下げてくれという意見があったわけでございます。結局、この差額というのは資本市場で調達するということになりますが、払い込み資本の意味でございますけれども、当然払い込んだ金は直接貸し付けの財源になる。同時に、世銀という金融機関の信用力の担保になるわけでございますが、これをもとにして資本調達するということで、加盟国間の議論で、コンセンサスとして下げようということになった経緯があるわけです。  それから、IDAの問題とか世銀の問題とかについてアメリカが消極的ではないかという御指摘でございますが、仰せのとおりでございます。これは昨年の九月ごろ、財務省を中心にいたしまして、国際金融機関の問題についての見直しということでまとまったものがございますが、それを見ますと、要するに、自助努力という点と民間経済を重視しようという根本哲学がレーガン政権になって出てきたわけでございます。これ自体は正しいと思うわけでございますが、世界全体のことを考えてどうするかという問題は別途あるわけでございます。  具体的に申せば、第二世銀の場合に、三十二億ドルは前政権でコミットしておる、コミットしたものは必ず出す、ただ、出し方を後ろの方によけいにする、一年延ばす。これはほとほとみんな困ったわけです。それで、昨年十月のIMFの総会のときに寄り寄りまして、さっきも申しましたが、私どもはバードソシェアリング、国際的外部経済みたいな話でございますね、もう一つは国際協調日本はどうしても後進国と縁が深いということで、どちらかと言いますと、後進国の側の立場に立ちまして主要国間にいろいろ説得をいたしまして、いわゆるプロラタ方式ということで、実際に金を払うときにアメリカと一緒にそれをやる、ただし約束は当初の約束でいこうというようなことでセットしたわけでございます。  先ほども御答弁申したように、最近また動きが出てまいりまして、この五月に専門家会議をいたします。その場合私どもは、アメリカの立場に対しては、絶えず全世界のことを考えるべきではないか、われわれの立場はバードソシェアリングだ、肩がわりとかそういうことでなくて正当な負担をみんなでしようじゃないか、同時に、国際協調という角度から日本がかぶらなければいけない場合にはかぶるというような考え方、たとえばアジ銀の場合にソフトファンドの増額があったわけでございますが、これも日本にとって非常に重要な地域をカバーしておる。そこで私どもは、よその国が出したら出そうというようなことで三十二億ドル、若干欠けておりますが、こういうものをまとめた経緯もございます。自分がどんどん出せばいいという問題ではないわけでございます。当然に公平負担をしなければいかぬ。だけれども、同時に、国際協調という角度でできるだけのことをみんなを説得してまとめていくという態度でやっております。
  108. 正森成二

    ○正森委員 いま私が指摘したものだけでなしに、たとえば途上国が非常に望んでおりました一次産品共通基金というものがありますね。  たしか本委員会でも若干審議をしたことがあると思いますが、すずだとか銅だとかいった途上国の輸出産品の価格を安定させる仕組みで一九八〇年に協定ができた。これについても、アメリカ側は実効が期待できないとか称して、だだをこねて協定を批准しないということで、これが発効しないということで途上国が非常に困っているのじゃないですか。
  109. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 昨年の本委員会におきまして、果たしてこれが成り立つのかというような御質問もあったわけでございます。私も大変苦しい答弁をいたしたことがございます。  一年経過いたしまして、批准をした国が四月六日現在で二十六カ国、アメリカは当初からもう入らないわけです。それで協定の発効要件に到達していない。私どもも非常に残念でございまして、先般も渡辺大臣が北アフリカに行かれたときもそういうような話をされたりしまして、後進国側でまだ賛成してない国もあったりしておるわけです。非常にむずかしい問題ではございますけれども、今回発効の年限を一年延ばすということをいたしまして、さらに日本も、これは大平総理からのいわく因縁のあるもので、日本としては、非常に積極的な立場をとったわけです。現在もそういう立場で何とかこれを成立させたい。アメリカは、当初から消極的であったわけでございます。
  110. 正森成二

    ○正森委員 加藤さん、あなたたしか「国際金融」の昨年の十二月一日に「第三十六回世銀・IMF総会について」という論文を書いておられますね。今度審議するに際して、何しろ主管の局長の論文ですから、私も勉強さしていただきました。全部は言わないで拾い読みしますけれども、非常にあなたは大事なことを言っておられると思うんですね、ずいぶん遠慮した表現もありますけれども。  たとえば、その初めの方で、レーガン大統領やリーガン財務長官やヘイグ国務長官が演説をして、アメリカの政策が表明された。それを要約すると「その中心的な考え方は、1「強いアメリカ」を確保するため、政治的・戦略的目的の達成、経済的利益の享受を追求する、2「小さな政府」を目指し、援助の効率化、米国予算の負担軽減、民間資金の活用を図る、3「円助」努力を支援するの三点にあると思われる。」こう書いて、それから後がちょっとほかしてあるんですが、「具体的な例としては、二国間援助について政治的・戦略的目的の達成=長期的には着実な経済発展によるより安全で安定した世界の発展、中期的には米国にとって政治的・戦略的に重要な国の救済、短期的には米国にとって非常に重要であり、かつ緊急の援助を必要としている国に対する迅速な経済援助であり、多数国間援助については国際金融機関の効率化と被援助国に対する卒業理論の推進」、順次卒業していけというんですね。「IDA融資→世銀融資→協調融資民間融資への転換を促進するというものである。」こう書いておられますね。  これは的確な指摘だと思うのですが、いまあなたがおっしゃったこれをもう少しはっきり言っておるのがあるんですね。それは、毎日新聞の五十六年九月二十七日の「混迷の中のIMF・世銀総会」という主張ですが、そこでは、あなたが遠慮されたことをもっとはっきり言っておるんです。こう言っているんです。アメリカはいろいろ渋っているというようなことをいろいろ言いまして、「しかし、それならば代わりに開発資金をふやす方策を考えなければいけないが、ない。それどころか、途上国を敵と味方にわけて援助する方針を打ち出したレーガン米政権は、国際機関に対する援助資金は効果が少ないとして、すでに約束した第二世銀(とくに貧しい途上国にゆるやかな条件で資金を貸しつける)の第六次増資の払いこみさえしぶり、第二世銀を半身不随におちいらせている。先進国の国内経済政策もバラバラだ。米国はゆがんだ高金利政策をとり、その結果、生じたドル高についても不介入政策をとり、欧州諸国に大きな打撃を与えている。米国のこの態度はあきらかにIMF暫定委員会の申し合わせ違反だ。」云々と、こうなっているんですね。  これは、この法案に関係する以外のこともちょっと触れておりますけれども、非常に得手勝手な態度だと言わなければならないんですね。国際協調で第一世銀、特に第二世銀というのは途上国に対して金利なしで貸しましょう、いま私が言いました一次産品基金などというのも、もちろん当初からいろいろ実効を危ぶむ声もありましたけれども考え方としては、第一の窓と第二の窓に分けて、途上国に非常に配慮するというようなことがありましたが、そういうのは、全部おしなべて途上国全体に対して利益を与えるから、こんなものはあかんのだ、その中で、アメリカにとって味方あるいは役に立つ、そういうものと敵とに分けて、そしてマルチラテラルでなしにバイラテラルといいますか、二国間で必要なところへいく。そのためには、そっちに金が要るから、おれはこっちへ出さぬよということで、約束した金は出さぬわ、あるいはテールヘビーで出し渋るわ、あるいは初めから参加しない、こういうような態度は実に問題がある、こう言わなければならないんですね。  同じくあなたの論文で、やっぱりそれについての危惧を表明されているんですね。これも現職の局長だから非常に遠慮しておられますが、眼光紙背に徹して読めば、あなたの御意見はよくわかるので、私とほぼ同じだと思うのですね。あなたはこう書いていますね。  「一九三〇年代のいわゆる貿易戦争が第二次大戦の遠因の一つになったとの反省の下に創設せられたIMF・GATT体制による自由貿易主義は、世界経済の安定と発展に大きな寄与をしてきたが、戦後三十五年の歳月の経過の中で米国経済の絶対的優位の低下、国際通貨制度の固定制からフロート制への移行等の変化に伴い、最近における保護主義的あるいはブロック経済的風潮の抬頭には警戒すべきものがある。」この警戒すべき相手はまさにアメリカですよ、あなたが書いておられないだけで。最近の経済摩擦などを考えると、あなたの言わんとするところはよくわかる。つまり、そういう考え方は一九三〇年代のブロック経済の考え方に近いんで、これは非常に警戒すべきだということを言うているんですけれども、アメリカはますますその方向に突っ走っておるんですね、大臣。これは実に問題であると言わなければなりません。  そのほかに、あなたは、「高金利と為替レートの変動」ということで、アメリカの高金利がいかに途上国に対して金利負担で大きな負担をかけているかということも、遠慮しいしいですが言うているんです。しかし読む人が読めば、加藤国際金融局長が腹の中では実に苦々しいなと思いながらこの論文を書いておることがよくわかるのですね。  大臣、あなたの部下と言ったら失礼ですが補助者の論文を私がいま紹介したのですけれども、恐らく大蔵大臣も同じ御意見だと思いますが、一言御感想なり御見解を承りたいと思います。
  111. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 ちょっとその前に本人から……。  三点申し上げたいと思うのですが、最初のアメリカの国際金融機関に対する政策は、ごく最近公表されておりまして、それをほぼ引用したかっこうでございます。戦略的、商業的とか云々のところでございますね。これは公開されているものでございます。  それから二番目に、アメリカが約束したものも出さないというような御発言がいまございましたが、レーガン政権は、約束したことはやる、ただ、延ばしてくれということでございます。何もアメリカの弁明をする必要はございませんけれども、正確を期するために申し上げたいと思います。  それから三番目は、どこの国でも、私は戦略的な基本方針があると思うわけです。アメリカはアメリカでそういう考え方を持っている。ただ、同時に世界全体のことは考えているというふうに理解しております。
  112. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 大体加藤局長の分析は当たっていると私は思います。  実は国際会議等でも、いま言ったような話は何遍も出ているわけですよ。アメリカに対してはがんがんやっているわけですから。ただ、一々それを公表してないというだけのことで、こんなことは、アメリカはもう各国から責められているというのも事実でございます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 それでは、同僚議員も御質問になりました日韓経済協力について申します。  外務省、佐藤観樹議員も御質問になったんですけれども、そもそも日韓の経済協力というのは民間ベースでいくというのは韓国から言い出したことで、それを日韓閣僚会議で合意したという経緯があるんですね。あなたは御専門家だからもちろんよく御存じでしょうけれども、一九七二年の日韓閣僚会議の共同声明で「韓国側は以上の要請を行なうにあたり、日本からの協力が第三次経済開発五カ年計画の目標である韓国経済の自立達成に寄与するところが大であるとの認識のもとに、同計画が終了する時期においては、日韓経済協力民間ベース協力を主体とする段階に移るであろうとの確信を表明した。」第三次経済開発五カ年計画というのは、一九七六年に大体終わることになっているのですね。それを受けて、一九七三年の共同コミュニケでは、これは双方ともに「日韓経済協力政府ベース協力から民間ベース協力を主体とする段階に移るであろうことに意見の一致をみた。」こうなっておるのですね。  ところが、今度言われているものは、そうじゃなしに、ますます政府関係のものをふやしてくれ。現に資料によりますと、最近は韓国に対する政府ベースの援助というのは大体七千万ドルから八千万ドルの水準でしょう。五十三年二百十億円、五十四年、五十五年、各百九十億円。それが今度のように仮に十三億ドル、五年ということで妥結するとすれば、一年間に二・六億ドルということになれば、一挙に三倍になるんですね。これは、韓国が言い出し日本政府協力した姿勢と全く立場が違ってくることになるんですね。  それからまた、日本政府の対外援助の方針というのは、佐藤観樹議員もお触れになりましたが、GNPの国民一人当たりが大体千ドル以下のところにODAというのを中心に行う、こう言っておるのに、韓国はいまでは千六百ドルを軽く超えているんでしょう。そういうところに対して、かくも異常にふやすというのには、何らかの哲学の変更がなければならないのですね。どういう哲学の変更をしてこういうことをやるのですか、外務省。しかも、大蔵省の強力な反論を押し切ってやろうというのでしょう。その哲学の変更の根拠と内容を言ってください。
  114. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  委員指摘のとおり、第六回、第七回、第十回の日韓定期閣僚会議のコミュニケでは、韓国に対する経済協力の主体が民間ベースに移行するという旨が記載されております。しかし、こういった民間主体という考え方は、日本政府ベース経済協力の絶対額を減らしていくということを必ずしも意味するものではなくて、あくまで民間資金とのバランスを意味しておりまして、そういった観点から相対的なものである。このような考え方自体は、別に哲学の変更ではなく、従来からとってきました政府考え方であると思います。  同時に、現在韓国が新しい五カ年計画に入っているわけですけれども、その際にいろいろな経済的な困難に当面しているということでございまして、そういった事実も考慮しながら、経済協力の基本方針にのっとって、できる限りの協力をするというのが政府の考えでございます。
  115. 正森成二

    ○正森委員 いま、絶対額がふえないということじゃなしにバランスの問題をと言いましたけれども、こんなものあれですからね、五カ年間で絶対額四十億ドルというようにびゅっとふやしているわけでしょう。そして、その中で政府関係もやはりふやしている。外務省なんか、民間なしにせいというようなことさえ言っていたんでしょう。だから、私は余り引用するつもりはなかったけれども、四月十四日の日経に非常にいい記事が載っているのですね。見出しが「蔵相、外務省ペースにカッカ 対韓援助 財政の認識足りぬ」内容は「どこの国の外務省かわからない。早く日本の外務省に戻るべきだ」そして「外務省は”日本”の財政事情に対する認識が甘すぎる」こういうようにあなたがおっしゃって、「外務省ペースで進められている韓国との交渉に怒り心頭といった様子である。」こう書いてあるんですね。これは新聞記事ですから、多少はオーバーに書かれているかもしれませんが、しかし見出しに「外務省ペースにカッカ」と書かれているのは、これは火のないところに煙は立たぬ、恐らく頭から湯気も出ていたんだろうというように思うわけです。  私は、何も大蔵省の見解を全部支持しているわけじゃありませんけれども、少なくともここの点についての大蔵大臣の怒りというのは当然であり、これは日本政府として当然のことだと思うのですね。どこの国の外務省かというように言わなければならぬ点が多々あると思うのです。私は、それについて大蔵大臣がかっかと怒ったわ、それがすぐ冷めたわということでなしに、怒るときには怒り続けてほしいということを希望したいと思うのですが、いかがですか。
  116. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 どうも新聞記事がたくさん出まして、非常にどうかと思うわけでございます。  それで、外交政策の問題でございますので、わが大臣がおっしゃったとは思えないし、いろいろいまの……(正森委員「それは大臣が言わなければ」と呼ぶ)ですから、事実を申し上げるわけでございますが、やはり国論統一で外交政策に当たらなければいかぬと思うわけです。非常に新聞にいろいろ出ることは、全部が正確であるかどうかわからないと思いますが、私どもは、一貫して援助政策のわが国の基本政策のもとに考える、隣国でございますし、非常に重要な国である、そういう総合的な判断でやろうということでやっております。
  117. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 新聞記者の方がそこにたくさんいますが、いろいろなニュアンスで大体こうだ、こう書くこともときどきあるわけです。私は、その記事に対して抗議を申すつもりは毛頭ございませんし、そういうふうにとったんだろうなと思っているだけであります。
  118. 正森成二

    ○正森委員 非常に男らしく発言の精神的なものを認められたと思うのですね。ですから、これ以上は言いませんが、ただ、いろいろな論文にも載っておりますように、たとえば全斗換大統領は日韓議連のメンバーに、韓国が全部共産勢力のもとに入るとすれば、日本への影響も大きい、安全保障面から見ると、日本は韓国と同じ領土にあるとか、あるいは南首相はある代表団に、北東アジアの平和への韓国の貢献に対して日本が反対給付として経済協力してくれるのが望ましい。明白に安保援助の考え方をとっているんですね。これは、わが国の対韓政策あるいは対朝鮮民主主義人民共和国との政策でも、あるいは防衛の点を考える上でもきわめて重大な問題点がある、こういうように言わなければならないんですね。  ですから、私は、大臣がそういう生の言葉を言われたかどうかわかりませんけれども、一体どこの国の外務省かと言われることのないように、大蔵省も外務省と資金面で折衝するときに十分なチェック機能を果たしていただきたいということを要請して、発言を終わりたいと思います。
  119. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  120. 小杉隆

    小杉委員 提出されている法案に関連して、対外経済協力の問題について質問したいと思います。時間の節約上、ちょっと資料を配って質問をしたいと思います。  この表にありますように、日本政府開発援助というのは〇・三四ということで、諸外国と比べてそんなに遜色はないということがわかるわけですけれども、そのほかにいろいろ民間ベース協力がありますから、一概にこれだけを取り上げて比較をすることはできないと思うのですが、私が把握し得た数字で、こういう政府開発援助というものと、それから防衛予算というものを書き出しました。これで見ますと、これは各国は一九七九年度のミリタリーバランスによるものでして、日本のは五十七年度予算ということでございます。  最近わが国に対しまして、貿易摩擦にしてもあるいは防衛努力に対しましても、非常に風当たりが強くなってきている。それは、日本が経済的に発展をして、GNPについても一割を超えるようになったけれども、当然のことながら、その防衛努力とかあるいは海外経済援助というものが十分に行われていないという批判であります。  そこで、まず第一に、私が非常に疑問に思っておりますことは、防衛予算のGNPに対する比率なんです。いまわが国は〇・九%というふうに言われておりますが、しかしGNPに対する比率で、日本はたとえば軍人恩給とかあるいは海上保安庁の予算などは含めておりません。しかし、NATO方式は当然そういうものも含めて防衛費を出しているわけなんで、一番下に書いておきましたように、そういうNATO方式で算出をいたしますと、日本の防衛費というのはGNP対比で一・二%になるということなんです。こういう数字について、いまの算出方法ですと諸外国から過小に見られるということから言うと、この際NATO方式に合わせるべきではないかと私は思うのですが、まず、その辺から聞かせていただきたいと思います。
  121. 窪田弘

    ○窪田政府委員 NATO方式の正確な定義というのは公表されておりませんで、実際にこれがどういうふうなものを足しているかは明らかでございません。先生お示しの表の三兆四千億というのは、予算ベースでは二兆五千八百億で、あと何を足していらっしゃるのかわかりませんが、軍人恩給といいましても、日本の軍人恩給は旧軍人の恩給でございますので、それをそのまま足すのがいいかどうか問題があると思います。それから、海上保安庁の予算も千八百億程度でございまして、この比率を大きく変えるようなものではないと思います。
  122. 小杉隆

    小杉委員 諸外国も当然、軍人恩給というのは継続しているものですから、日本のは旧軍隊だから含めないんだと言いますけれども日本だけが防衛予算の中に軍人恩給とか海上保安庁のようなものを含めないために、諸外国から、何か日本は防衛費が少ないじゃないかという批判があるわけなんで、この辺の数字のとり方というのは、防衛庁とか外務省とか大蔵省で協議をして、国際的に余り非難を受けないような、これは当然国内的には一%の壁を超えたという議論が出てくると思いますけれども、これからのあり方として、NATO方式というものも参考にして検討する余地はないかということを聞きたいわけです。
  123. 窪田弘

    ○窪田政府委員 これは防衛庁その他ともよく相談をして検討いたします。
  124. 小杉隆

    小杉委員 一番右端の数字を見ていただきたいのですが、開発援助と防衛費を足したもののGNP比は、アメリカが五・四七%、イギリスが五・二四%、フランスが四・五二%、西ドイツが三・七三%、それに対しまして日本は一・五四%ということで、三分の一から半分ということでございまして、私は、いま日本の防衛とか貿易に対する風当たりは、やはりこの数字の低さにあると思うのです。  われわれは、やはり憲法の制約とかあるいは非核三原則とか専守防衛ということから、防衛予算を余り過大に計上することはできない。となれば、外国からのそういったいろいろな攻撃を排除していくためには、やはり政府開発援助というものをもっと飛躍的に増大させなければいけないと思うわけです。五年間で倍増させるという目標を立てましたけれども、その倍増の計画というのは具体的には幾らになるのか、そして、将来政府開発援助プラス防衛費が各国並みになれば、いま外国から攻撃されているような非難も防げるのじゃないかというふうに思うわけですが、その辺、どうお考えになっておられるか。
  125. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 率直に申しまして、こういう数字は、絶対的にどうこうということではなくて、相対的な関係だろうと思いますが、一つは歴史的な問題があると思います。  ODAで申しますと、たくさんの植民地を持っておって旧宗主国関係、かなり歴史的な因縁があって、フランスのごときは海外県などという分なんかも入ったりしているわけでございます。私どもも、バイのほかにマルチにかなり重点を置いているというのは、そういう経済的歴史的な関係のない国に対してやる場合に、なかなかバイではやりづらいというようなことで、国際機関に対してかなり積極的に参画しておるというような例もあるわけでございます。  防衛の問題は私の担当でございませんので、ODAに限局いたしますと、そういうような歴史的、地理、政治的な制約がある中でともかく三年間の計画を立て、今度五年間の倍増計画を立てて着実にふえておる。絶対額でもかなり急速にふえているわけでございます。  この二つを足して御議論なさるのも一つの見方だろうと思いますけれども、国際比較の場合どうしても、たとえばレートを、ちょっと私どもでチェックさしていただきますと、かなり円安でおやりいただいたりしておるわけでございます。ODAの場合も、したがって、DACで各国それぞれ文句があるものですから統一的な整理なんかしておる。国際比較の場合なんかは、そういう問題も含めて注意深くやらないと、かなりミスリードをする要素もある。ただ、一つの御見識だろうと思ってお伺いしておりました。
  126. 小杉隆

    小杉委員 これは、決して私がことさらに円安で計算したわけじゃなくて、ミリタリーバランスに基づいて換算をした数字です。もちろん私は素人ですから、また大蔵省でもっと的確な資料があれば出していただきたいと思うのです。  これは、外務省にお伺いした方がいいのかもしれませんが、大蔵大臣として、防衛費をアメリカが要求するような数字でどんどん拡大をしていくということは、いままでの日本の置かれた立場から見ると不可能であると思うのですね。そういう中で、しかし諸外国からの日本に対するいろいろな要求を排除して納得をさせていくためには、防衛費にかわる政府開発援助を増大をさせていくという姿勢がもっともっと必要であり、それを各国に納得させることが必要だと私は思うのです。  いま現実に、四十五億の世界の人口の中で栄養失調になっている餓死寸前の国民が八億を超える、世界の人口の二割を占めているわけです。そしていま先進国、サミット参加国の平均の国民所得は大体八千ドルを超えているのじゃないかと思いますが、まだ二百ドルに満たない国民がアジア、アフリカ、南米諸国に非常に多いということですね。先ほどから韓国の問題が出されておりましたが、私は、日本世界で孤立しないためには、もっと広くそういったアジア、アフリカ、中南米諸国の惨たんたる環境に置かれている国民の立場を考えて、思い切ってこういう政府開発援助をふやす。そしてわれわれは、防衛予算は憲法の制約があり国民の世論もあってできないけれども、こういう面で負けないでやっているのだ、むしろ防衛費と合わせれば各国並みのことをやっているのだということを示せば、世界に対しても十分説得性を持つというふうに私は考えますが、大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  127. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 非常に日本の財政は厳しい状況にありまして、開発援助といえども、これを倍にするということはなかなか大変なんです。それ以上にというようなことは財源の問題との絡みですから、国民の皆さんの理解と協力が得られれば別でございますが、なかなか一挙に得られるということもむずかしい。しかし、われわれは約束しただけのことは少なくとも理解を得て実行したい、そう思っております。
  128. 小杉隆

    小杉委員 大蔵大臣としては、そういう答弁にならざるを得ないと思いますが、やはり長い将来の展望の中でそういう考え方を私はとるべきだというふうに申し上げて質問を終わります。  ありがとうございました。
  129. 森喜朗

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  130. 森喜朗

    森委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  132. 森喜朗

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。沢田広君。
  133. 沢田広

    沢田委員 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して提案の趣旨を御説明申し上げます。  わが国は、世銀に対しまして、出資、融資を通じ、また機関内にあっては理事国として協力してまいりました。また、今般の世銀一般増資にも応じ、出資を行うこととしておりますが、さらに、わが国開発途上国に対する援助に当たりましても、なお一層の努力が必要ではないかと思うのであります。  特に、今日の南北問題は、先進諸国にとっては、友好関係を進める上から緊急にして重要な課題であります。  開発途上国の民生安定のために、先進諸国が途上国の自主独立の立場を尊重しつつ、経済協力に、より格段の努力をしなければならないことは当然のことと考えるものであります。  本決議案は、このような趣旨にのっとり、政府に、より一層の努力を要請しようとするものでありまして、その内容は案文で尽くされておりますので、案文の朗読をもってその説明にかえさせていただきます。     国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配意すべきである。  一、南北問題解決のため、資金協力のほか技術提供を含めて、友好関係の維持発展にさらに努めること。  一、開発援助の効率、効果を一層高めるため、発展途上国の立場を十分尊重しつつ、協力するよう努めること。  一、開発途上国の貿易収支の悪化等に配慮しつつ、国際協調の立場から、民生安定のために一層努めること。  一、国際機関の活動に対して、日本人がより一層の貢献をなし得るよう配慮すること。  以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。
  134. 森喜朗

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本動議のごとく本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。渡辺大蔵大臣
  136. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     —————————————
  137. 森喜朗

    森委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  139. 森喜朗

    森委員長 午後二時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十五分開議
  140. 森喜朗

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより、両案について政府より提案理由説明を求めます。小坂運輸大臣。     —————————————  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等  共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  141. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま議題となりました昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、公共企業体の共済組合が支給しております退職年金等につきまして、別途、本国会で御審議いただいております恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の改善措置にならい年金額を引き上げるとともに、最低保障額の引き上げ等の措置を講じようとするものであります。  次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、公共企業体の共済組合が支給しております退職年金等につきまして、その年金額の算定の基礎となっている俸給を昭和五十六年度の国家公務員の給与の改善内容に準じて増額することにより、本年五月分から年金額を引き上げることといたしております。  この結果、平均で約五%程度年金額が増額されることとなります。  なお、年金額の引き上げに関し、増額後の俸給の額が一定額以上の者に支給する退職年金、減額退職年金または通算退職年金につきましては、昭和五十八年三月分まで、引き上げ額の三分の一の支給を停止することといたしております。  第二に、六十五歳以上の者に係る退職年金等及び殉職年金等の最低保障額につきまして、所要の改善を図ることといたしております。  以上が、この法律案提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  142. 森喜朗

    森委員長 渡辺大蔵大臣。     —————————————  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  143. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま議題となりました昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  この法律案は、国家公務員共済組合法等の規定により支給されている年金につきまして、別途、本国会で御審議いただいております恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の改善措置にならい所要の措置を講ずるとともに、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額の引き上げ等の措置を講じようとするものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、国家公務員共済組合等からの年金の額を改定することであります。  すなわち、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法、旧国家公務員共済組合法及び国家公務員共済組合法に基づく年金につきまして、本年五月分以後、年金額を引き上げることといたしております。  この引き上げにつきましては、恩給における措置にならい、昭和五十六年度の国家公務員の給与の改善内容に準じ、年金額の算定の基礎となっている俸給を増額することにより行うことといたしており、平均で五%程度年金額が改善されることとなります。  なお、年金額の引き上げに関し、増額後の俸給の額が一定額以上の退職年金、減額退職年金及び通算退職年金につきましては、昭和五十八年三月分まで、引き上げ分の三分の一の支給を停止することといたしておりますが、これも恩給における措置にならうものであります。  第二に、公務関係年金及び六十五歳以上の者の受ける退職年金等の最低保障額を、恩給における措置にならい改善することといたしております。  そのほか、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額につきまして、公務員給与の引き上げ等を考慮し、現行の四十二万円を四十四万円に引き上げることとするなど、所要の措置を講ずることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  144. 森喜朗

    森委員長 これにて両案の提案理由説明は終わりました。     —————————————
  145. 森喜朗

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  146. 沢田広

    沢田委員 第一点目に、各共済組合、それから厚生年金、それから国民年金、それぞれ制度発足の経過があるわけでありますが、この前にも若干触れておいたわけでありますが、年金制度の設立の第一条、これは非常に多岐にわたっているわけであります。でありますから、当然、統合化論、これは目的だけでも少なくとも統合を図らなければ、次のステップには行けないのではないかというふうに思うわけです。これから老齢化社会を迎え、成熟度が進行する、こういうような背景を持っていて、この第一条の法文の趣旨をそのまま残しておいて、果たしてそういうステップが踏めるのかどうかという問題になります。  ちなみに申し上げていきますが、国家公務員共済組合法の第一条には、死亡または災害に関する給付、それから相互救済、それから生活の安定と福祉の向上等に寄与する、しかも公務の能率的運営を図る、しかも第二項には、国は健全な運営と発達が図られるよう必要な配慮を行わなければならぬ、こういうふうになっております。地方公務員の方の法律では、福祉の同上のところが福祉事業、こういう規定づけになっております。これも若干、福祉の向上という一般論と福祉事業と規定をしている点との相違というものがまず第一にあるわけです。それから公企体の方では、福利厚生の向上ということと組織業務に関する事項、そして円滑な企業運営に資するということが、いわゆる違う点であります。それから私立学校等の共済組合は、相互扶助事業、それから福利厚生を図り、教育の振興、こういう言葉でくくられております。それから農林の方の共済でも、相互扶助事業、それから福利厚生、事業の円滑な運営、こういう言葉でくくられているわけであります。御承知のとおり、国民年金は、憲法第二十五条第二項に規定する理念、しかも老齢、廃疾、死亡、共同連帯によって国民生活の安定に寄与する、こういうふうに書いてあります。それから厚生年金の方も、老齢、廃疾、死亡、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与する。  これは、全部並べていって、これだけ違いがあるわけなんです。これは、それぞれ法律のできた経緯というものもあったし、時代の背景もあっただろうと思うのでありますが、たとえば災害一つとってみても、入っているのもあれば入ってないものもある。福祉というとらえ方も、違うのもあれば違わないのもある。  そういうことで、きわめて多岐にわたりますこの共済制度の趣旨が、いろいろなところで一本化であるとか統合であるとか言われておりますけれども、言うならば、この法律の第一条の目的がまず理念の統一を図らなければ何事も議論できない段階に来ているのではないのかというふうに思われますが、細かい点についてはいざ知らず、いままで申し述べた点等について、これはそれぞれ関係しますから、大臣ということは申し上げません。これは専門的なものですから、それぞれ担当から、まあ一言で言い尽くせないと思いますけれども、国公と地公、地公は呼んでいませんから、国公、公企、まあ私鉄、農林は関係ないというと怒られますが、厚生なり国民年金との相違、この点をひとつお答えをいただきたい。主体は、結果的には、運輸省ですか国鉄ですか、それと大蔵省という、二人に一応答弁を限定してお答えをいただきたい。
  147. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いま御質問ございましたうち、国家公務員共済組合法とたとえば厚生年金法との差について御説明を申し上げたいと存じます。  目的は、先生いまお読みになったようなことなんでございますが、国家公務員の場合と厚年の場合でございますと、国家公務員の場合は、いわゆる短期給付も取り込んだ形で目的が書かれておる、厚生年金は、そういうふうに長期給付だけの性質のものでございますから、そのように書かれておるという違いがございますほか、国家公務員の場合には、「公務の能率的運営に資する」ということで、公務員制度の一環としてこの共済年金制度があるんだということが書いてあるところでございます。  その辺のところ、確かに違うわけでございますけれども、基本的に、公的年金部分という面では共通した点がある。そこに着目いたしまして、将来に向かって、先生御指摘のように、これまでの長い経緯がございますから、違った点がずいぶんあるわけでございますけれども、徐々に制度の統一化を図っていこうということで、いま鋭意研究させていただいているところでございます。
  148. 沢田広

    沢田委員 では、国鉄の方からお答えください。
  149. 永光洋一

    ○永光政府委員 いま大蔵省の方からお話がありましたが、公共企業体につきましても、従来の経緯から、公共企業体の一環としての共済ということから、福利厚生のみならず、いわゆる公共企業体の円滑な経営に資するという趣旨が入っておるということでございますが、今後の公的年金制度というものをどういうふうに持っていくかという過程におきまして、われわれとしても、やはり公務員等の類似制度の動向等も踏まえまして検討させていただきたいと思っております。
  150. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、いまそれぞれお答えをいただいたわけでありますが、どこが主管庁になるのかと言えば、それぞれの省になるわけですが、窓口は大蔵省ということになるんだろうと思うので、これの法律条文の整理をやってくれるのか、くれないのか、その点、やるとすればいつごろに考えているのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  151. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  法律の第一条目的というのは、つまり目的だけ直せば直るというものではないことは先生よく御承知のとおりでありまして、目的というのは、制度全般を直しまして、その直ったものを見て、目的そのものが同時にまた直ってくるという性質のものでございますから、この目的規定をいじるということは、非常に大きな変革が前提になるわけであります。  したがいまして、いま年金制度の再編ということに着手すべきではないかということで、いろいろなところで御議論がございます。そのためには、具体的にいま大きく分けて八つございます制度をどういうふうな手順で一元化していったらよろしいのか、そのスケジュールといいますか手順といいますか、そういったものをまとめるのが一番大事なことではなかろうかということが言われております。ところで、まだそれは、いま申し上げましたように大事なことではないかと言われている段階でございまして、いつになったらどうなるのかということは、定かにいまここで申し上げられる段階にございません。  総じて申し上げれば、国家公務員共済組合と、いま財政的な危機が取りざたされております国鉄の共済組合と、そのほか公企体の共済組合との問題を一体どうするのだというようなことが現実の問題としていろいろ議論され、また勉強もされておりますが、それが第一ステップになるとすれば、その後今度地方の方の共済組合、これも実際問題言いますと中がいろいろ分かれてございますけれども、その辺の統一を一体どうするのだ、こういう段階になりまして、それから先あるいは共済のグループというのがまず一つになって、そして今度厚年等民間のグループと一緒になるのか、それとも、そこまでの手順を踏まずに民間と共済のグループと一緒になるのか、必ずしもいまそれを明確に申し上げられる段階ではございませんけれども、いまの年金制度にはそれぞれいろいろ問題がございまして、そう長いこと、長いことといいますのは、タームで言いますと二十年ぐらいになるかと思いますが、二十年とか三十年というのはなかなかもたないような感じの計算もあり得るわけでございますから、大事に至らないうちに、それまでの間に現実の問題として統合し、いま先生御指摘のように制度、目的の方も一緒に統一していく、こういうようなことになるのではなかろうかと考えております。
  152. 沢田広

    沢田委員 結果的には二十年ぐらいの経過を要するであろう、こういうことですね。また、その程度の経過を要しなければ、いわゆる激動が大き過ぎる、揺れが大き過ぎるということになるだろうと思うので、その場合は掛金率も統一化しなければならぬということですから、当然その程度の年数は必要になってくる、そういう意味ですね。首を縦に振っておりますから、そういう意味と注釈を加えておきます。  そこで、今度の法案で一カ月分カットしたわけなんですが、基本的な問題として、これは臨調の方からいろいろな意見が出ている。政府は臨調の答申を受け入れますと言っているわけですけれども、基本的に言うと、老後の不安を増幅するような考え方ということは特に避けなければならぬことではないのか。言うならば、公務員であろうと一般の厚生年金であろうと、やめる前に考えていることは、皆さんのように偉いエリートになっていたりなんかすれば別として、ささやかに三十年、三十五年営々として勤めた人は、おれはやめてから幾らもらえるのだ、そのもらえる金額をあてにしながら、そのときの進退を決め、生活設計を立てていくわけなんであります。ですから、本家である日本の国の財政がどうあろうと、そういう、言うならわれわれの先輩の人たちに報いるのに、余り激変を与える要素を加えるべきでない。これは、私は、政党政派を超越して一つの福祉に対する理念にならなければならぬと思っているわけです。老後はこうあるんですと言ったら、やはりそれをある程度維持していく努力をわれわれはしていかなければならぬ。こういうふうに一カ月減らされると、今度二カ月減らされるのか、あるいは、財政が足らなくなったらもっと減額支給されることになるのか、こういう不安を与えるもとになるわけですね。ですからこの点は、土光さんはどういうつもりでこういうものを言い出したか、土光さんだっていつどうなるかわからぬ状態にあるわけなんですから、不安感はなくはないのだろうと思うのですけれども、そういうものを与えないようにするのが政治だと思うのです。  そういう点で、今度一カ月カットされたということは、一カ月は金額にしてみればあるいは痛みを耐えられる程度かわかりませんけれども、与えた不安の大きさというものははかり得べからざるものがあったと思うのですね。今後どうなっていくんだろうか、こういう不安を与えたことは間違いないのでありまして、その点に対する政治的な責任体制がいま問われているのではないのかというふうに思いますが、その点はいかがでありましょうか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  153. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先生おっしゃいます一カ月カットということでございますが、それは例年、ここ数年でございますれば共済年金のスライドは四月から行われるのが通例でございましたが、本年は五月ということでこれをお願い申し上げておる。それを一カ月カットというふうにおっしゃったのだと思いますが、スライドの分でございますから、カットという表現は厳しい表現でございまして、実際問題としてはカットじゃございませんで、上がる分が上がらなかったということで、いままでの分が減っているわけではないのでございます。  そこで、それじゃこの一カ月分は何でやったんだ、来年になったら二カ月おっしゃる意味でカットになるのかということで、大変不安になるじゃないかということでございますが、五十八年度、五十九年度にまた同じように一カ月やるのかあるいは二カ月になるのか、これは確かにわからない面がございます。本年の場合におきましては、御承知のように恩給につきましては、全体の公務員の場合昨年のベースアップでいわゆるボーナスが一部ストップしているというようなこととの兼ね合いでございますとか、臨調の答申で恩給については極力年額改定を抑制するようにということがあったことで一月おくらし、そして厚生年金、国民年金につきましては、本来でございますと物価が五%超えました場合に物価スライドをしろというふうになっておるわけでございますけれども、本年の場合にはどうも五%は超えることはない、四・五%といっておりますが四%そこそこくらいだ、ということになりますと物価スライドしなくていいことになるわけでありますが、そういたしますと、まあ十二カ月カットということになるのかもしれませんが、それを法律で必要なスライドとされている線ではないけれども特に物価スライドをいたしましょう。その場合に、法律に書いてございます物価スライドでございますと、厚生年金で言えば十一月、国民年金で言えば一月というように物価スライドの始期があればいいわけでございますが、それを恩給に合わせましていつも六月にやっているのを七月にやるということで一月遅くはしてあるわけです。それとの兼ね合いがあって、共済年金につきましても一月おくらしているということで、全体的なバランスの問題でございまして、何も共済だけに限ったことではないのであります。  ただ、共済だけに限ったことじゃないといっても、恩給にしろ厚生年金、国民年金にしろ来年はどうなるのだ、こういうこともあるかもしれませんが、そこのところは、こういった厳しい財政事情でございますから、いまここで来年どうなるということをにわかに申し上げられないわけでございますけれども、全体的な財政の事情それから年金をもらって生活をしている人たちの実情と考えまして、本年も、先ほど申し上げましたように、厚生年金の例にありますように本来法律規定に基づいてならば上げなくていいものを上げているということもございますので、その辺のところは、来年の全体的な事情を勘案しながら判断をしてまいりたいと思っております。
  154. 沢田広

    沢田委員 たとえば百二十万と仮定をすれば一カ月十万円でありますね。それのパーセンテージを加えれば五千円、こういうことです。だから金額の問題ではない、要すれば、それに与えられる被害意識といいますか、これは大変なことになったという意識に対する問題をどう解決するかということが問題なんで、その点のお答えは大蔵大臣に聞かなければならないのでしょうけれども、その点は後でまとめてお伺いをいたします。  しかし、いずれにしても、そういう金額の多寡でなく、トータルとして変動要素を与えないようにするということが必要だと思うのです。いまの御答弁はその中身なんですが、中身じゃなくて、そういう立場でひとつやってもらえるかどうかということなんですから、その点はそういう考え方でやるというのか、もっと違った政治圧力が加わることもあり得るわけですが、しかし、そういう考え方で進めるという基本方針は変わりがないということかどうか、その辺もう一回御回答いただきたい。
  155. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 スライドの問題は先生もよく御承知のことと思いますが、スライドカットの問題は、先ほど申し上げましたように、来年はもうしないよということをはっきりは申し上げられないし、来年するよということも申し上げられない、こういうことであります。
  156. 沢田広

    沢田委員 そう言ってないんだけれども、どうも歯車が合わない。  では、厚生年金が物価スライドで四・四%、公企体その他国家公務員は賃金スライドで今年度上昇する、この制度の違いが今日残っているわけですが、これはどちらの方が正しいと思っておられるのか、あるいは、これからどちらの方にすり合わせしようと考えておられるのか、現状のままで二十年ぐらいたってすり合わせをしていかなければならないと考えているのか、この三つのうち、どれを大蔵省として当面考えている方向ですか。
  157. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 御指摘のように、片一方は賃金スライド、片一方は物価スライド、両方合ってなくて一体どうするんだということはよく問題になるわけであります。  年金をもらって生活する人の身になって考えてみますと、物価スライドということが正しいのではないかという意見があろうと思いますし、それから今度全体に年金財政の方のことを考えてみますと、出すのは賃金に幾らの率ということで掛けていくわけですから、原資の方は賃金スライドになっているのだから、給付の方も賃金スライドの方がいいんじゃないか、こういう考え方もあるわけであります。両方理屈としてはあり得るものですから、両方いまそのような形になっておるわけでございますし、特にまた共済の場合におきましては、恩給が賃金スライドとなっているものですから、恩給を引き継いでいる制度として賃金スライドにならざるを得ないというようなこともございます。  それでは、実際賃金スライドと物価スライドとどっちが得なんだという議論もよくあるわけでございますが、長期的に見てみますと、賃金スライドも物価スライドもそう変わりがないというような結果になっているかと思います。  それで、近々どうするつもりかというお尋ねもございましたが、近々の問題としては、当面両方いままでのような姿でいかざるを得ないのではなかろうか。いずれにしろ、年金制度自体が一元化していく過程におきまして、賃金スライドか物価スライドか、両方どちらか一つにそちらの方も一元化してまいらなければいけないことになるかと思いますが、その辺のところの議論はまだ十分尽くしておりません。
  158. 沢田広

    沢田委員 結局はわからない、こういうことなんですが、それなら最初から言ってくれればいいのです。厚生年金と賃金スライド、物価スライド、あるいはどちらの方が得か損かじゃないのです、制度としてどうあるべきか、それがこの法律制定の経緯のあり方だと私は思うのです。  たとえば、公務員とかその他に準ずる者は、国の国民生活の標準といいますか、そういうものとの均衡に合わせて後の老後の生活を営むのだという発想に基づいての賃金スライドだと思うのです。インフレであるとかインフレでないとかの問題はありますが、厚生年金の方は、生活の安定と福祉の向上ということだけで一応割り切っていますから、必ずしも全労働者の平均賃金であるというようなことにこだわるわけじゃなくて、人事院勧告その他がある制度のもとの公務員の生活ということで賃金スライドが用いられている、こういうふうになっておるのだと思うのでありますから、その意味においては、この基本的な第一条が変わってこないと、なかなかすり合わせばできない、こういうことになるのだと思うのです。ですけれども、ではどちらが将来の年金制度としたならばあるべき姿に近づくのかということが今後の問題になると思うので、いま言ったような答えは今度臨調なりあるいは共済研なりから出てくるのかもわかりませんから一応おきますけれども、せめて大蔵省は、その程度のことはみずからの意見としてはこうあるべきだというものを持ってほしいという気がいたします。  恩給が日本年金制度のすべてのルーツなんです。私も、恩給の制度というものはいまどのくらい金が出ているのかということで若干調べさせてもらいました。現在五十七年度では一兆七千二百十九億という形になっております。普通恩給でもらっている者が、一応軍人だけを対象にしますと百十六万人、増加恩給が約五万、傷病年金が約八万、あと遺族の給付で普通扶助が三十四万人、公務扶助が五十五万人、こういう人数になって、合計でいきますと二百二十二万という数字であります。この一兆七千二百十九億という金額と追加費用と合わせて考えてみる必要がある。では果たして全部、国鉄、電電、専売、それから国家公務員、合わせて追加費用分の出してある金額は幾らになりますか。
  159. 永光洋一

    ○永光政府委員 まず三公社の方から述べさせていただきますが、昭和五十五年度の追加費用として国鉄が二千四百三十六億、電電が四百四十一億、専売が百二億、合計で二千九百七十九億でございます。
  160. 沢田広

    沢田委員 国家公務員はどうですか。
  161. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国家公務員が二千四百六十億、それから地方公務員共済が六千二百七十億、先ほどの公企体共済と合わせまして全部で一兆一千七百十億、こういう数字であります。
  162. 沢田広

    沢田委員 この軍人恩給の方は、理由のいかんを問わず一括つぶれたものが復活をしたわけでありますから、その意味においては、文官の方が十四万人ぐらいおりますから、これはささやかな数なんであります。そうしますと、二百二十二万の人たちに一兆七千億出している。一方の年金受給者も大体全体的には二百三、四十万ぐらいですか、国家公務員、三公社五現業合わせてそのぐらいですから、金額にすると、追加費用だけの分でも、本人の分、企業主の負担、それ以外の追加費用は軍人恩給よりもまだ少ない。今日、まだ追加費用が多い、少ないと大蔵省からいろいろおしかりをいただいているのが国鉄なり、専売なり、その他のところなんでありますが、軍人恩給から比べればまだ少ないのじゃないか。軍人恩給もいま減っていっていますが、せめて軍人恩給の分ぐらいの程度は追加費用として出されても間違いがないんじゃないか。これは概括的な計算でありますが、理論的なものも大いに結構でありますから、御説明をいただきたいと思うのであります。追加費用は軍人恩給におおむね見合う程度がバランスのとれた金額になる、概括的に言えばこんなふうになるんじゃなかろうかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  163. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  どうも、軍人恩給と追加費用とは性格が異なるものでございますから、追加費用の額が軍人恩給の額の一種の関数みたいな形で考えられるというわけにはちょっとまいらないのではなかろうかと存じます。
  164. 沢田広

    沢田委員 いま大蔵省が考えているのは、常に現ナマの問題で議論をしているのが多いのですよ。大蔵大臣も、財源があるかないかということで議論をする場合の方が多いのですね。いまは金の方が問題なんです。理論づけがどうの、理屈がどうのということの問題じゃない。問題は、出す分がどうやったら減らせるかというところに大蔵大臣は苦労しているわけです。それが現実ですよ。あとは、極端に言えば、上あごと下あごで理屈をつけているようなものかもしれないので、そこに本当に基本的に一貫した理論があるのかと言えば、問題は、ある程度納得できる条件がそこにあるかどうかだけの問題なんです。  だから、軍人恩給も、掛金がゼロだとは言いませんけれども、わずかでも掛けているけれども、大体似た人数で一兆七千億も支払われている。そういう条件から考えてみれば、一方の全体的な、いわゆる公務員的な公務に準じている職員に追加費用として支払われる金額も、それに見合う程度はある程度やむを得ざる支出の範囲に該当するのではないか。片方は月数計算ですから、一カ月を三カ月にしているのです。皆さんの方は年数計算ですから、年度の途中は切り捨てているのです。片方の軍人恩給は月計算でいっているのです。しかも、一応三カ月ずつ加算をして年金を支給されているのです。細かい点を言えばいろいろあるのですけれども、一応それは別としても、金額的に見たバランスとして見れば、それは見合うべきものじゃないのか。軍人恩給に出される金、片方では、企業体がそれぞれ一五%を負担をしている。厚生年金は国が二〇%負担をしている。国民年金は三分の一を国が負担をしている。国が負担をする割合から見れば、その程度がバランスのとれた見方ということになるのではないのか、こういうふうに私は考えるわけですが、いかがでしょうか。
  165. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いまも申し上げましたように、整理資源といいますか追加費用の方は、過去に恩給期間に勤務をなすった実績と申しますか、そのときの給料、そのときの勤務年限、そういったものから積み上げて出てくるものでありますし、それから軍人恩給につきましては、戦地に軍人さんとしていらしたとかいうようなことで、一定の年限を勤務なすったことから出てくる問題でありまして、その辺のところを積み上げて出てきた総体額が一兆一千億とか一兆六千億とか、それぞれのグループとしてはそういう数字になっておる。  それをさらにもっと大きな見地から見て、両方同じぐらいでいいのかどうかというのは、一つ哲学的な見方かと存じますけれども、同じようなものであっていいかどうかと申しましても、たとえば各共済の方の整理資源が四千億か五千億少ないわけでございますが、同じぐらいまでいいじゃないかといってもそれはそうなるものかならないものかというのは個々の積み上げから出てくるものですから、そうはなかなかまいらない、制度そのものの基本というものがあって出てくる問題である、このように思うわけであります。
  166. 沢田広

    沢田委員 だから、私の言うのは、制度も歴史なりその他は違うでしょうと言うのです。しかし考え方として、国がある分野に負担をするものを考えていったら、これは金を出す方の立場になってみたら、厚生年金に出す分と共済年金に出す分と軍人恩給に出す分とがバランスがとれている方が、国民的に見た目としても印象がいいだろうし、その程度までは許容できる限界じゃないのか。そういう一つのアバウトな見方というものはできるのではないか。年金はどんどん減っていきますから、この私の論理だって、あと二十年、三十年たったならば年金がうんと減ってくるのだが、そのときにいまの私の論をいえば、それじゃそれだけ出さなくて済むのか、こういうことにもなりかねない。  しかし、いま年金が問われている時代であるから、国の財政が厳しいときであるから、おおむねのアバウトな話として見れば、恩給に出ておる分、追加費用で出す分、厚生年金の補助している分あるいは国民年金に出している分、それぞれの分野が均衡がとれることが、いま政治に求められている姿ではないのか、こういう面からいま私は主張しているわけです。あと百年たったら、七十年たったら軍人恩給なんかゼロになってしまうわけですから、なっちゃったときになって、おまえゼロだからこっちもゼロにしていいかといっても、私は、そのときは墓場だから知っちゃいないですけれども、そういうことの議論はないだろうというふうに思うのです。  ですから、政治の現状から見て、アバウトな議論としてそれはおおむね見合うものが筋道じゃなかろうか。余りぎくしゃくした解釈はどうかなという気がするのですが、いかがでしょうか。
  167. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 沢田先生のおっしゃるとおりの面が確かにございます。これからまだ、追加費用といいますか整理資源というか、今後ふえていくわけであります。といいますのは、昭和三十四年に現在の共済組合法に切りかわりましたから、三十四年まで勤務年限のある方々で、まだおやめになっていない方がたくさんおられるわけで、そういう方がこれからおやめになりますと、三十四年までの勤務年限に相当する追加費用というのは、これから現実の問題として出てまいりますから、これがふえてくる。先生おっしゃるように、軍人恩給の方は新しく人の数としてふえてくることはないわけでありまして、あとはだんだん老齢化して亡くなっていく方がふえていく。給付が上がらなければこれは減っていくという道理でございますから、そのときどきで、そのお互いの関係というのは違ってくる。  では、いまのこの時点でどうだということでございますれば、先ほども申し上げましたように、軍人恩給の方が約一兆六千億円程度、それから追加費用の方が一兆二千億円弱ということでございますので、これを先生のおっしゃるように、おおむね同じように見合っているんだというふうに思えないかとおっしゃられれば、それは見方でございますから、それはそのような見方もあり得るかと存じます。
  168. 沢田広

    沢田委員 そういう達観した一つの見方、大蔵省は頭のいい人ばかりいるから、細かいことで積み重ねることばかりが好きなのでありますが、いわゆる国民的な面から見たら、国民年金に出されている分、厚生年金に出されている分あるいは公企体その他に出されている分、それから軍人恩給に出されている分、これは国民の負担としては大体平等にいっているのです、その方が説明しやすいのじゃないですか。細かいことを言えば切りがないくらいに制度の差があるわけですから。  もう一つ私が申し上げたいのは、戦後、役人になんかになったら大変だという時代がありましたね。戦前でもそうですが、いわゆる役場と言われた時分に、あのやろう役場に行っているのか、そうか、あれは能なしだからな、こういうことで、とにかくそういう時代もありました。いまは役場、ああ大したものだ、嫁にやるなら役場の人にやろうか、こういうことになるぐらいになってきた。それを防ぐためにこの年金制度というのが一つ出てきたわけです。  国鉄からお答えをいただきますが、国鉄などの場合はどんどん離職者が出る。鋳物なら鋳物の木型工なんていうのはどんどん鋳物業界に行ってしまう。旋盤なら旋盤も皆行ってしまう。あるいは大工さんなら大工さんも皆行ってしまう。どんどん民間企業に吸い取られてしまう。それじゃどんどん技術者がいなくなってストライキをやっているのと同じようになってしまう、だから防がなくちゃならぬということで、一つには年金制度、加算制度というようなものも生まれてきた。戦争の加算もそうなんですね。外地に行くのは嫌だ、どうせ勤めるのなら内地の方がいい。いや外地に行ったら三倍プラスになるんだ、だからおまえ外地に行けということで、これもあめでつって外地に行かしたわけですね。ですから、そういうときどきの政治の権力者というか政治のやり方の仕組みの中からこういうものが発生しているということは否定できないことだと思うのですよ。  ですから、いま私が申し上げようとしていることは、ちょっとちなみに見ますると、昭和十一年現在のときに、国鉄職員の例をとると二十二万人だった。応召で外地に派遣したのが十八万人、退職消耗が十八万人、採用が五十八万人です。十九年のときには四十四、五万人ですが、今度は復員者が十八万人、退職消耗が三十万人、採用が二十五万人です。二十三年のときには今度はばかっと帰ってきてふえて、六十万人とふくれ上がった。こういう歴史的な長い過程が一つにはひずみをつくり出している要因なんです。  現在だって、だんだん公務員の退職金が減って年金が減っていったら、公務員なんかになるより一流企業に行った方がいい、そうなって、もうなりつつあるわけで、恐らくあと二年くらいたったら、臨調の答申が出てきたら、なっちゃならないよ、絶対に役人なんかにうちのせがれはさせないぞ、あんなところへ行くのはとんでもない話だ、生き血まで吸われてしまう、こういうようなことになっていくのだろうと思うのです。恐らくそういう印象を与えるだろうと思うのです。  ですから、そういう時代時代の背景の中からこういうものがっくられていっているんだということをもう一回考え直してもらわなくちゃならぬのじゃないかという点が一つあるわけです。そういうためにできた一つの制度だという点はいかがですか。これは国鉄と大蔵の方からお考えをお聞かせいただきたい。
  169. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 先ほどおっしゃいましたように、鉄道国有化のときに、職員の引きとめ策として年金制度が適用になったというような経過があるように聞いております。  現在の国鉄年金問題は、もう先生御承知のとおりでございますが、いまお話のありました戦中戦後の大量採用、その当時の人たちがちょうど退職期を迎えておる。このことによる成熟度の増高ということが年金財政を非常に圧迫しておるわけでございまして、われわれとしては、ひたすらその抜本策が講ぜられることを期待しておるわけであります。現在いろいろな機関で御検討されておりますので、国鉄としてあれこれ言う立場でございませんが、できるだけ早く御結論をいただきまして、所要の措置が講ぜられることを期待しておるわけでございます。
  170. 沢田広

    沢田委員 さっきも言ったように、人間というのは都合のいいところだけ取り出して物を言いがちなんですね。ですから、いま臨調が言っていたり大蔵大臣も常日ごろ言う言葉は、当面の経済体制というか体系を整えることにとにかく命がけでやっている、その努力は見上げたものだと思うし、いかなる誹謗中傷にもめげず猪突猛進、これのみにわれ生きがいありという立場でがんばっておられる姿は痛々しいほどよくわかるのであります。また、その気持ちもわからないではないのであります。しかし、それぞれ歴史的な背景というものを無視していくなら、さっき言った論が一つあるわけですね。軍人恩給に黙って出している。これは戦争中骨を折ってくれて御苦労さん。では内地にいた人は骨を折らなかったかという議論もあるわけですよ。内地で死んだ人たちも大ぜいいるのだということもあるわけです。  そういう議論はあるのだが、それはさておき、それにその程度の金が支払われているのだ。これがむだかむだでないかという議論もないのだ。やめたらどうかという議論もあるでしょうけれども、これもやめるということはない。それだからといって、片っ方だけ削っていい、片っ方は残していくのだという、歴史的な過程があるのだ、片っ方はおかしい、お国のために働いてくれたんだから、この程度はやむを得ないのだという理解で、これは出しているのだろうと思う。だとすれば、いま言ったような歴史的な過程というものを全然無視して、現状のつじつま合わせだけがすべての財政運営ではないのじゃないかということが私は出発点にあるから、あえていまの点を申し上げながら、どの点をこれでクロスさせようとしているのか。  歴史的過程は全部ゼロだ、そしていまの財政再建にすべてがかかっているのだから、いままでの恩もへったくれもない、そんなものはもう無視してしまって、いまはつじつまを合わせることがすべてに課せられた使命だというふうに言い切れるのかどうか。これは大蔵大臣、幾らか時間的に余裕があったと思うのですが、まだあとまとめてでもいいですが、ひとつ大蔵省の方から、これはあなたみたいな事務屋からじゃ、こういうアバウトな話というのは似つかわないのだろうと思うのですけれども、大ざっぱな、なたのような話ですが、その点についてはどういうふうにお考えになっておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  171. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 仰せのように大変むずかしいことでございまして、どういうふうにお答え申し上げてよろしいやら困るわけでありますが、おっしゃっておられることは、ごく大ざっぱに言って、軍人恩給に一兆五千数百億、六千億近くのお金を出しているのだから、そのくらいのものを整理資源として出してもおかしくはないじゃないか、それで何も一月カットするというふうなことをせぬでもいいじゃないか、こういうようなことかと思いますけれども総額で軍人恩給の方との議論をするというのは、この場においてはどうも適当ではないのではなかろうか。軍人恩給の方も、言葉で言えば一月カットされていることは事実でありますし、それから文官の方も共済の方もみんな一月分というものについて賃金スライド部分を例年よりおくらせるということでみんなバランスをしている。それぞれ受給者というのは一人一人の個人でございますから、総額そのグループにまとめたところでの議論というのは、どうもこの場でうまくいくのかなという気がいたすわけであります。
  172. 沢田広

    沢田委員 一つ考え方だということは否定しないでしょう。現状の財政再建という立場から見て、もし削るのなら三つとも削るという論もあるでしょうし、そういうふうにアバウトな議論でいけば、いま土光さんのやっているのなんというのは、もうなたで切るのより機械のこぎりで切っているようないまの臨調の答申ですからね。答申が来るのだろうと思うのですが、言うなら、なたとかかみそりとかなんてきめの細かいものじゃないですよ。大なたどころの騒ぎじゃないような切り方なんで、それから見たらいまの私の方のが、まだ小さいなたぐらいに該当するので、国民負担のバランス論から見れば私はより妥当性があると、自分で言っていたのではおかしいですけれども、そう思いますね。  次に、これは参考のために見解をちょっとお伺いするのですが、現在陸軍中将さんが百人いるのです。これはいま普通恩給で大体三百七十万はもらっているのです。少将が二百十七人、これは生きている人ですね、二百八十八万円もらっているんです。もう少し位を下げまして大佐でも二百三十四万円くらいですか。中佐が二百万円くらい、伍長クラスになりますと、これは五十二万円くらい。こういうバランスはいまの恩給制度の中でどのようにお考えになられますか。バランスはとれているとお考えですか。それともこの軍人恩給の制度、まあ大将になるともっと高いのですが、一応お山の大将じゃありませんからそれは省きましたけれども、その点はいまどういうふうに、年金関係に携わっている立場から見て妥当性のあるものだというふうにお考えになっておられますかどうか、お答えいただきたいと思います。
  173. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 それぞれの恩給につきましては、その当時勤務なすっておられましたころの俸給がもとになって、それで計算ができているものでございますから、現在でのバランスというのは、たどってまいりますと往時のバランスが引き続いているわけでございまして、それは、現在のバランスそのものを考えますときには、全く過去のこととかけ離れまして現在のバランスだけを議論するわけにはまいらないということからいたしまして、考え方としては、すべての恩給といいますか、すべての年金といいますか、他制度に共通するやり方でありますので、まあそういうことになるのかなというふうに思います。
  174. 沢田広

    沢田委員 じゃもう一つ、公務扶助料でありますが、これは大将の奥さんになりますが、奥さんがもらっている金は三百七十四万円ですね。中将がもらっている金が三百十四万円であります。兵がもらっているのが百十三万円、兵隊の位で、伍長も同じですが、その程度の金額ですね。これも頭の方から見ると三百七十四万円という公務扶助料というのは大体どういうふうに印象として受けられますか。多いと受けられますか、妥当だと受けられますか。
  175. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  公務扶助料、つまり戦死をなすった方の御遺族に対する年金でございます。これの見方につきましては、実際なかなかむずかしいものがあるかと思っております。  御承知のように、月でいいますと、今度十一万円、十万三千円からたしか十一万円になったかと思いますが、最低保障を受けておられる方は、もうずいぶん、兵から尉官は超えているんじゃないかと思います。もう佐官に近いところまで、はっきりしたことはいま記憶ございませんが、相当いい線まで最低保障額がいっていると思いますので、最低保障分と、それからいまの将官の上の方の方との乖離は大分縮まっていると思います。で、普通の遺族年金で申しますれば本人年金の半分なわけでございますから、月にたとえば十一万円ということは、本人年金で二十二万ということは相当高いわけでありまして、兵の方は全部、それから尉官の上の方まで全部その辺のところで張りついちゃうということは、ある意味ではずいぶん高いんだと思います。  しかし、そうは言っても遺族の方々のお話では、そういうのはいまの平和な時代で生きているあなた方が言えることだ、私どもは赤紙一枚でいやもおうもなく自分の主人をとられて、そのあげくの果てがこういうことなんだ、それを低いとか高いとかあなた方よく言えたものだというようなお話も承るわけでありまして、この辺のところはなかなかむずかしいところかと存じます。
  176. 沢田広

    沢田委員 この問題はこれで終わらせようと思ったのですが、大将や中将や少将に赤紙一枚で行っている人はいないと思うのですね。その点は言葉じりをつかまえるようで恐縮ですが、これは兵隊とか伍長とかというクラスの年金をもらっている人にはその言葉は当たるかと思うのですが、要すれば、まあ少なくとも中佐、大佐ぐらい以上はどうひいき目に見ても赤紙一枚というクラスの人ではない。これはあえてみずから進んで死地に赴いた方もいるでしょうし、自分の信念に殉じた人もいるでしょうが、いずれもそういう人ではないということだけは、これは首を振っておられるから答えは求めませんけれども、そういう論理は対応しないということだけ念を押しておきたいと思うのです。  そこで、話はかわるのでありますが、公務上の障害状況というものはどのように大蔵なり国鉄としては受けとめているのか、これは障害年金というものとの関係というものがあるわけなんでありますが、特にこれは国鉄関係が多いのでありますけれども、専売、それから電電さん、それから国家公務員、いわゆる公務上の傷病の発生状況、一番多いときとあるいは去年あたりの数字、それだけで結構ですから、お示しをいただきたいと思う。
  177. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 古い数字を持ってきておりませんが、最近の傾向を申し上げますと、五十三年の年度内の発生状況でございますが、負傷が三千三百二、疾病が六十三、死亡が十二、合計三千三百七十七でございます。  ついでに五十四年を申し上げます。三千七十五が負傷でございます。疾病が百八十六、死亡が十四、合計三千二百七十五、次第に減りまして、五十五年は、最新の数字でございますが、負傷が二千九百八、疾病が百六、死亡が十一、合計三千二十五というように漸減をいたしております。
  178. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国家公務員共済組合の場合でございますが、五十五年度の新規裁定者を申し上げますと、廃疾年金で十四人、遺族年金で四十五人ということでございます。
  179. 沢田広

    沢田委員 ほかにありますか、専売さん……。調べてなければいいです。調べてあったらお知らせください。
  180. 澤田道夫

    ○澤田説明員 お答え申し上げます。  日本電信電話公社でございますが、昭和五十五年度、これは業務災害も、何と申しますか、赤チンで済むものからいろいろございますが、数として申し上げますと五百六十一件でございます。その五年前の昭和五十一年、これは一千四十七件でございまして、大体五年間で半数ぐらいに減少しております。
  181. 丹生守夫

    ○丹生説明員 専売公社、五十五年度について申し上げますと、三百二十七件、金額にいたしますと二千八百九十五万円ほどでございます。  以上でございます。
  182. 沢田広

    沢田委員 これを千分率といいますか、現職の職員数で案分をしてまいりますと、国鉄あたりでも、四十二万という数字から見れば五くらいの数字になりますね。二千九百ですから六人にいかないですね。もっと少ない人数になりますね。  結果的に、大蔵省としてこれも追加費用の一つの算出の根拠で考えてもらわなければならぬ要素の一つなんであります。いまの数字が示しておりますように、傷病割合というのを、これは国鉄に例をとりますと、一番最高は大正十一年ですね。三万五千八百七十六人として千分率で二一五・六という数字が出ている。これはハンプなりそういうところでけがをする率が高かったわけですね。それから安全運動その他もあって発展したでしょうし、施設も改善をされてきたということで、労災の一般水準よりはまだ高いですけれども、現在のところでは、いま言った二千九百件というのは五十一年あたりから見ると多くなっているのですね。この三千三百件というのも、四十六年なり四十一年あたりから見ると多くなっているのですね。三十六年が六千九百六十五件ですから、そういう件数から見ると、これは障害のとり方にも違いがあるだろうと思いますけれども、五十一年あたりが一番少ないという数字になっていて、それ以後はふえているという状況であります。これは仕事の内容が変わった点もあるのかもわかりませんけれども、いずれにしろ一番多かった時代は、大正十一年の三万五千人、大正七年の三万二千人ということで、いわゆる構造上出てくる障害率、専売さんなんかも、恐らく昔の機械でやっていた当時は多かったのだろうと思うのです。それから電電さんも、昔のような時代にあったときには多かったのだろうと思うのです。  では、一般民間の厚生年金なり労災の方はどうなんだということとの比較は当然しなければなりませんけれども、公務上の傷病の発生率というのは、それぞれの年金なり事業の一つの歴史の足跡である。その足跡である障害率というものが、いまの年金の中で大きなウエートを占めている支出項目になっているのだ。そういう点を考えないで、追加費用の中からもこれは対象から外しているわけですけれども、その点は若干問題があるのではないか。言うならば、労災の平均水準以上の障害、それは枝術の水準でありますから、それを上回るものは当然追加費用の対象にしていくというのが考え方として正しいのではないか、こういう考えがしますが、これは大蔵省から、運輸省もそうですが、どうお考えになられるでしょうか。
  183. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 大蔵省では直接関係のない問題のようでございますので、国鉄または運輸省の方からお聞き取りくださいませ。
  184. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 昭和二十三年七月以前の旧令時代の公務災害につきましては、共済年金の中でこれを見ておりますので、それは追加費用で現在補てんをいたしております。二十三年七月以降につきましては、共済組合には直接関係はございませんで、就業規則に基づきまして国鉄がその支払いに当たっております。
  185. 沢田広

    沢田委員 だから、年金の方で支払わなくとも、いま年金の方の問題で議論はしているのでありますが、国鉄財政の赤だとか、足らないとか足りるという議論をするときに、構造とまでは言いませんが、歴史的な一つの欠損、そういう位置づけはできるのじゃないのか。二十四兆にも達しようという赤字の中で言えば、微々たるものかもわかりません。しかし、微々たるものの積み重ねがそうなっているのですから、それを一つ一つほどいていかなければならぬだろう、こういうふうに思いますが、これは、運輸省としてはどういうふうに御解釈なさっておりますか。
  186. 永光洋一

    ○永光政府委員 事業の遂行上のそういう障害が他の事業に比べて多いという特殊性は、鉄道事業としてある程度あると思います。国鉄にかかわらず私鉄等にもあると思いますが、そういう面での企業の負担というのは、全体の鉄道のコストの中で、わずかではあるけれども、そういうものがあるということは確かでございます。
  187. 沢田広

    沢田委員 わずかというのは、私が遠慮して言っただけであって、実際にわずかじゃないのですから、その点は実数をつかんで物を言ってください。私が言うのと、あなたが言う立場とは違うのですから、その点はなお注意を喚起しておきたいと思うのです。  そこで、各年金制度の積立金の利用状況をこの際お聞きしておきたいと思うのです。国鉄、専売、電電、国家公務員と、それぞれ積立金の利用状況についてお答えをいただきたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 五十五年度末におきます国鉄の積立金は、三千九百十一億円でございます。現在、その運用は省令に基づきまして行っておりますが、その内訳を申し上げますと、いわゆる福祉還元の融資というものに千六百三十二億、約四二%でございますが、使っております。それから鉄道債券の購入に充てます特定運用、これは千二百三億、約三〇%でございます。そのほか一般の有価証券を売買するという、あるいは信託でございますが、これは九百十一億円で二四%でございます。その他投資不動産、これは国鉄の、たとえばアパートなどをつくっておりますが、これを国鉄から年賦で償還をさせる、こういうものでございますが、これは六十三億円、二%でございます。その他としては、いわゆる一般の普通預貯金が七十九億、二%、このような現状になっております。
  189. 澤田道夫

    ○澤田説明員 お答え申し上げます。  日本電信電話公共済組合長期経理の資産の状況でございますが、昭和五十五年度末八千七百五十億円の資産を所有しております。その運用でございますが、有価証券等が約四千二百億円、四八%を占めております。それから投資不動産、これは国鉄同様でございまして、公社職員の入居いたします社宅の建設を行いまして、公社に貸し付けいたしております。これが約千七百億円、一九%、それから長期貸付金、これは電電公社職員の土地の取得でありますとかあるいは住宅の建設、これに用します費用の一部の貸し付けでございますが、これが二千八百五十億、約三三%。  運用につきましては、郵政省令によって共済組合の経理規程がございますが、その中で安全性というものと効率性、これが強調されております。その線に沿って運用をいたしております。
  190. 丹生守夫

    ○丹生説明員 専売共済組合の長期経理積立金、五十五年度について申し上げます。  五十五年度決算時におきまして、積立金は八百四十七億円でございます。この積立金の構成割合でございますけれども、預金が五億円、これは全体の〇・六%でございます。有価証券が四百九十七億円、五八・六%でございまして、このうち特定運用に相当いたします分が二百三十億円でございます。投資不動産等が四十九億円、五・八%でございます。組合員に対します福祉還元としての貸付が二百九十一億円ございまして、これは三四・四%でございます。その他五億円、〇・六%ということになっております。
  191. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国家公務員共済組合の資産運用状況を申し上げます。  五十五年度末でございますが、総額二兆六千三百六十六億円の資産がございまして、そのうち一・七%の四百五十五億円が短期性の預貯金、それから、五六・二%に当たります一兆四千八百十三億円が、資金運用部とかへの預託でございますとか、有価証券等に充てている分でございます。それから、一二・二%に当たります三千二百十億円が不動産等に充てている分でございます。それから、二九・九%に当たります七千八百八十八億円が組合員に貸し付けをしている貸付金等でございます。  以上でございます。
  192. 沢田広

    沢田委員 この点は、また後で時間がありましたら詰めさせていただきます。  最初の問題に戻りますが、企業の円滑なる運営に寄与するということ、これが第一条で示されているそれぞれの年金のスタートのいわゆる法律の精神というものなんでありますが、そこで懲戒減額の実態について、この際お伺いをしておきたいというふうに思います。  いわゆる懲戒減額については、この前の国会におきましても若干一部改善をされましたが、それも含めながら、現在の懲戒減額の対象がどういう取り扱いを受けているか、これも国家公務員、それから国鉄、電電、専売、こういう順序でひとつお答えをいただきたいと思います。わかった方からで結構です。
  193. 森喜朗

    森委員長 わかった方からどうぞ。
  194. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 公企体の共済組合法の二十条に基づきまして、現在運営規則によりまして十分の二から十分の五までの給付制限を行っております。きょう現在の給付制限継続中の者は、合計で百三十九名でございます。
  195. 澤田道夫

    ○澤田説明員 お答え申し上げます。  電電公社共済組合運営規則に基づきまして、禁錮刑以上の刑の執行された場合あるいは懲戒免職の場合等若干の内容はございますが、いずれも百分の二十の支給制限がございます。昭和五十六年十二月現在支給制限の対象になっております者は三十七名でございます。
  196. 丹生守夫

    ○丹生説明員 専売公社の場合は、共済組合運営規則によりまして運用いたしておりますが、現在該当いたしますのは懲戒処分を受けた者の給付制限でございまして、昨年の四月から給付制限の緩和が行われました結果、現在制限されております者は二名ということになっております。
  197. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国家公務員の場合は現在三百七十六人が対象になっております。禁錮以上の刑を執行中の場合には全額支給停止する。それで禁錮以上の刑執行後は百分の二十というようなことがございます。なお、昨年の五月に政令を改正いたしまして、従前は給付制限はずっと無期限でございましたが、それを五カ年間に限定するという緩和措置を講じております。
  198. 沢田広

    沢田委員 いま言われた五年の緩和措置は、ほかの三公社の中で、これは手を挙げてもらった方が早いのですが、いわゆる所得制限の時限で処理しているところとしてないところ、国鉄さんは時限はあるのですか、ないのですか。
  199. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 あります。
  200. 沢田広

    沢田委員 何年ですか。
  201. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 五年です。
  202. 沢田広

    沢田委員 電電さんは。
  203. 澤田道夫

    ○澤田説明員 六十カ月分です。
  204. 沢田広

    沢田委員 やっぱり五年。
  205. 澤田道夫

    ○澤田説明員 五年でございます。
  206. 沢田広

    沢田委員 専売さんは。
  207. 丹生守夫

    ○丹生説明員 六十月。
  208. 森喜朗

    森委員長 委員長が要らないね。発言を求めてお願いをいたします。
  209. 沢田広

    沢田委員 以後、注意をいたします。  そういうことで、この点については、国家公務員の方が窓口になりまして一回全部ぜひ調整をしていただきたい。もし置いておくとするならば、各分野においてケース・バイ・ケースの分野や若干の弾力条項はあるといたしましても、大枠は調整をしていただくようにまず要請をしておきたいと思うのです。  これは、大臣の方に耳の片隅に入れておいてもらいたいのですが、厚生年金の方にはこういうのがないのであります。禁錮刑になろうが、刑務所に入ろうが、年金はついてくる、そういう仕組みになっておるのでありまして、それが国家公務員と三公社五現業と厚生年金、国民年金も同じです。年齢六十五歳になれば、詐欺しようが何やろうが、それはもらえる仕組みになっておるわけです。恩給は禁錮刑を受けるともらえない仕組みになっているわけです。もうこれは八十くらいから六十以上になっているのですから、現実的にはなかなか実在はしないだろうと思いますが、とにかくそうなっております。  要するに懲戒減額について、これも厚生なり共済なりとのバランスというものをある程度とっていく。いまここで一つ一つ詰めばしませんから、一応そういう方向が必要だということだけ頭に入れておいていただいて、窓口をひとつ国家公務員の方に置いてこの調整を図っていただきたい。いかがでしょうか。
  210. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは給付の内容その他のバランスとの関連もございましょうが、私は、筋論としては、退職金が何か悪いことをしてふいになることがあっても、年金はやっぱり半分は自分で掛けた金という問題もございますから、いずれ大改正のときには検討すべき問題だと思います。
  211. 沢田広

    沢田委員 続いて、時間の関係もありますから、遺族の範囲。  この遺族の範囲というのが、要すれば各年金制度でまちまちなんであります。孫を含んでいるのと、それから祖父母が含まれているのがあります。それから入ってないのもあるわけです。この辺も、どれがどれがと一々挙げませんけれども、やはり調整する、日本の家族構成上一応検討してみる段階に来ているのではないか、皆の家族制度の立場から見ると若干いま現実は乖離していますから、一応この点はどちらかに統一をしていくという必要性があるのではないかという気がいたします。その点はいかがお考えになっておられるでしょう。
  212. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  おっしゃいますように、孫が入っているもの、兄弟姉妹が入っているものというようなことで違いが出ております。この問題につきましても、今後、おっしゃるように、家族制度といいますか社会制度といいますか、そういったものの歴史的な変化を踏まえながら考えていくべき問題だと思います。
  213. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、あとは総まとめ的にお伺いをしていきます。  要するに、年金というのは、先ほども若干触れましたけれども、年を取っていく人にとってみれば将来の自分の生活設計の一つの大黒柱になる。ですから、今度のカットがいい悪いの議論は別としまして、そういうふうに変動要素を与えることは精神的な打撃の方がより大きいということの連動があるということを申し上げたわけなんです。財政再建も確かに必要だし、その理解を得られるように努力をしなければならぬことなんでしょうけれども、あとどうなってしまうのだろうか、その不安感を与える方がより精神的な打撃としては厳しいものなんだということをぜひ受けとめていただきたいところなんです。  ですから、いろいろ議論されることは、われわれも議論していくのですからいいのですけれども、財政再建にしても何にしても必要なことであるけれども、それを支えに生きている者にとってみれば、あとどうなるかわからぬという不安感がより自分の生活設計を狂わしていくという一つの要素になる。そういう認識について、基本的には大蔵大臣に、これからニューリーダーとして日本の政治を動かしてもらう立場に立って、そういうものを安直にと言っては悪いですが、簡単に動かしていくということは、やはりやめていかなければならぬことなんだ、それによって支えになって生きているのですから、その支えというものの支柱は失わさせないようにしていかなくちゃならぬ、これは、私はさっきは与野党を超えての政治哲学だということを申し上げたのでありますが、そういう理念は持っていただけるかどうか、ひとつこの点をお答えをいただきたい。
  214. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 それは年金というものは本来そういうものであろう、負担の問題との関係もありますが、ちょいちょいいじるということは好ましくないと思います。
  215. 沢田広

    沢田委員 これは、ぜひそういうことで今後ひとつ処理していただきたいと思っております。  あと、若干細かい問題で申しわけないのでありますが、これは国鉄関係だけのことでありますが、大蔵省の方においても大変御検討いただいていることでありますけれども、障害年金昭和四十一年一月以前の七級の障害者に対する年金の支給についてであります。これは労働協約なり団体交渉なり、あるいはそういうものによって措置していく面もなくはないと思うのでありますが、四十一年の一月以前の者は、そのところで法律で区切られてしまったためにその適用にならない、こういうことでありますから、これは一応検討していただけるかどうか、ひとつお答えをいただいて次に移りますか、若干時間が早いけれども、それで考慮していただけると言えば、これで終わらして、後の方に譲っていきたいと思っております。
  216. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 四十一年の障害年金受給者の範囲の拡大によりまして、一時金であった七級が年金対象ということになったわけでありますが、これは労災保険法及び国家公務員災害補償法の改正に合わせて行ったものでございまして、これらの法律も不遡及、さかのぼらないという原則に基づきまして、それ以前の者については適用されないというのが現状でございます。そういうような実態を踏まえまして、国鉄の災害補償もその制度に合わせておるというのが現状でございまして、先生のお話でございますが、いまの段階で国鉄単独に実施するということはここでちょっとお約束いたしかねる、こういうことでございます。
  217. 沢田広

    沢田委員 だから、そのときによって恩典を受けた人たちがいる、恩典を受けない人がいるということですから、法律的な解釈から見ればそのとおりですが、しかし、軍人恩給のようにあるいは国民年金の再加入問題のように措置した例もなくはないのでありますから、一応、その制度がまるまる一〇〇%横滑りでないにしても、そういう人たちの声を反映できる取り扱いをしていける一時金にするとか、あるいはほかの方法を考えるとかということも、検討材料にはなるのだろうと思うのです。これは不遡及だからだめなんだよ、遡及はしないよ、おまえらあきらめろということだけで割り切るのもいかがなものかというふうに思われるわけです。  しかし、この論は非常に全般的に影響するところも大きいわけでありまして、すべての法律がすべてもとへ戻って適用されるという論理をやっていったら、これは切りがないし、できる話じゃない。そういうことですから、この点は問題は確かにあると思うのですけれども、また一方、それによって不公正だという観念もなしとしない。  そこで、若干そういう点も配慮できる道を見出すように、一時金とかその他の方法を講じていただくようお願いをしながら、その点はひとつ御考慮をしていただきたいというふうに思いますが、その回答を聞いて終わりたいと思います。
  218. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 大変むずかしいお話でございますが、先ほど申しましたように、他の制度とのバランスということもやはり考えざるを得ない問題でございます。そういう意味で非常にむずかしい問題でございますけれども、先生のお話でございますので承っておきます。
  219. 沢田広

    沢田委員 承るじゃ、なおけしからなくなるじゃないですか。まあいいでしょう。
  220. 森喜朗

    森委員長 柴田弘君。
  221. 柴田弘

    ○柴田委員 私は、最初に、年金についての基本的なお考えを大臣にお尋ねをしておきたいわけです。  急速に高齢化社会が到来をする。こういうことで、総理府の調査あるいは民間の福祉社会研究所だので実施されている調査結果を見ましても、現在のお年寄りあるいは中高年層の人たちは、老後の生活費に年金での所得保障を充てようとしているわけです。その中で、現在の公的年金で老後の生活が送れないと答える人は全体の七四・二%にも達しているわけであります。一方では、現在の公的年金制度及び財政面からの矛盾も出ているわけであります。二十一世紀を展望しての安定した年金制度の改善ということがいま急務になっているのではないかと思います。  そこで、わが国年金制度の欠陥といいますか問題点は、一つは、まだまだ年金額がきわめて低いということ、いま一つは、年金権の確保が完全に図られていない、こういった点があるのではないかと思うわけでありますが、現在のこの年金問題についての大臣の御見解、御認識はどういったものであるのか、まずお伺いをしたいわけでございます。
  222. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 年金の必要性、国民の関心度、それは柴田委員がいまおっしゃったことと私も同感でございます。  しかし、年金の一番の問題点は、各種の年金が併存をしており、かなりその中には格差とか不合理なもの等もありまして問題が多いし、それから、どうしても出生が少なくなる、しかも一方は長生き、受給者の数がどんどんふえていくということになりますから、いままでとはかなり違った考え方を持たなければならぬ。一方、国家財政もなかなか容易ではない。高度経済成長の時代がいつ来るかわからない。そういうような問題もありますと、年金制度の合理化、効率化というようなものを含めまして全体的に一遍総ざらいして、安定的年金制度の確立というものが必要ではないかと考えております。
  223. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、具体的にお伺いをしていきたいわけでありますが、昨年末の五十七年度予算編成で決まりました年金改定案では、給付の引き上げ実施時期が例年から一カ月おくれる、こういうことであります。年金生活者にとっては、これはショックな措置と言わざるを得ないのではないかと思います。国家公務員連合で見てまいりますと、これは二十億円の削減にしかすぎないわけです。さらに五十七年度から五十九年度までの三年間、通常の国庫負担金額の四分の一を減額するという措置もとられているわけであります。これは、六十年以降利息をつけて返済するという措置であるわけでありますが、果たしてこの返済が可能であるかどうか、ひとつ返済計画をあわせてお示しをいただきたいと思います。
  224. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  昨年の秋のいわゆる行革法で、年金の国庫負担額につきまして、財政再建期間中四分の一をカットする、そして、そのカット分につきましては、財政再建期間が終了いたしました後適切な措置をとってまいる、こういうことになっておるわけであります。そのときに、繰り返し国会の御審議があったわけでございますが、その金額ばかりでなくて、その金額を繰り入れません間生じます運用収入の減少部分も、後でどうにか適切な措置を講じなければならないのじゃなかろうかという御指摘がございまして、それらを含めまして必ず適切な措置を講ずる、こういうことを国会で申し上げてきているわけでございます。  その場合にまた、計画的にいつから幾ら平たい言葉で言えば返していくのだ、こういうお尋ねもございましたが、それは財政再建期間終了後の財政事情等を勘案しながら再繰り入れをしてまいるわけでございまして、いまの段階でいつから、どのようにという、おっしゃる意味での計画的なということは申し上げかねますということで御了承をいただいておる次第でございます。
  225. 柴田弘

    ○柴田委員 私は、こういった措置、いかに財政再建が大事と申しましても、その必要性というものは認めても、素直にこういった措置については認めるわけにはまいりません。  私どもは、かねがね年金の将来というものを見込みまして、すでに昭和五十一年当時から年金の改善策を提示をいたしてまいりました。すなわち、国民基本年金構想と二階建て年金制度を提唱をしてきたわけでありますが、政府はかねがね、この私ども提案に対しまして検討に値する、こう言っておきながら、一向に改善する様子はないわけであります。これは、また後で質問いたしますが、そういった状況でございます。  そこで、わが国の公的年金制度は、そのいずれの制度においても、その成熟過程の進展の中で財政破綻という問題が徐々に顕在化してまいっております。その代表例が国鉄の共済年金であります。そこで、この国鉄の共済年金の解決策いかんが、いわばわが国の公的年金制度の改善に影響を与えるというふうに考えているわけでありますが、そこで端的にお伺いをしていきますが、国鉄の共済年金について、救済策を含めましてどのような考え方を持っていらっしゃるか、これをまずお聞きをしていきたいわけであります。どうでしょうか。
  226. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答え申し上げます。  国鉄の共済年金につきましては、昭和六十年あるいは六十一年ごろには非常に危機的な状況になるのではなかろうかということで、数年前からいろいろ勉強をしてきておるわけでございますが、五十五年の六月以降共済年金基本問題研究会を大蔵省大臣の私的諮問機関として置きまして、以後二十三回にわたりまして勉強をしてまいっております。なお結論が出ますまでには数カ月かかるかと存じますが、いま申し上げましたように、六十年とか六十一年とかというごく身近な時期に危機が来るといたしますれば、この研究会での検討も早めていただかなければならないし、また、その結果どういう結論を出していただけるかということもございますけれども、それを極力早く現実化いたすように、また国会等にもお願いを申し上げていかねばならないかと存じております。
  227. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、いま御答弁ありましたように、研究会でいろいろ議論をされているわけでありますが、国鉄共済の状況は、いまさら私が申すまでもなく、財源率が一七・七%、そのうち事業主の負担率が一〇・三%ですか、それから組合員の掛金率が七・四%、成熟度が七三八%、収支見通しでは六十年には破綻する、こういったことであります。仮に六十年度以降収支をバランスさせるとすれば、現在でも相当な高水準にありますところの財源率を三倍程度にも引き上げなければならない。ですから、単独ではもはや国鉄共済は年金制度の維持というのは困難になってきておる。  そこで、抜本策が必要になってくるわけでありますが、成立の基盤を共有する国家公務員あるいは公共企業体職員共済組合年金グループの統合一元化の方向が制度の維持を図るために必要になってくる、こう思うわけでありますが、まず国鉄当局としては、これについてどう考えていらっしゃるか、あわせて大蔵省としての対応、お考え方をお示しいただきたい、こう思います。
  228. 岩崎雄一

    ○岩崎説明員 国鉄共済年金の財政状況は、ただいま先生おっしゃったとおりでございます。六十年度以降、単独では財政の維持が困難だ、こういうことで、われわれ担当者としては非常に焦っておるわけでございます。こういう状況を解決するために、ぜひとも速やかな抜本的対策をお願いを申し上げたい。国鉄はお願いする立場でありますから、この場で国鉄の方からあれこれ申し上げるのは差し控えたいと思います。  ただ、五十五年五月に国鉄共済年金財政安定化のための研究会から、これは総裁が諮問をしたわけでありますが、ただいま先生も少しお触れになりましたように、国家公務員、公企体職員グループの共済年金制度の統合一元化を図るべきであるというような御提言をいただいておりますし、先ほど次長からお話もありましたように、大蔵省の研究会においても、いま基本問題が検討されております。国鉄といたしましては、こうした検討を踏まえまして、ひたすら、早く抜本的な対策を講じていただきたい、このように念願をしておるような次第でございます。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
  229. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先ほども申し上げましたように、ただいま研究会で勉強していただいておりますけれども、その研究会で勉強していただいておりますスタンスと申しますのは、年金制度を将来に向かいまして一元化していく一つの過程として国鉄共済年金の問題をどう考えていくんだということでございますし、それから国鉄共済年金の破綻の問題というのは、何も共済、国鉄だけに限った話じゃない、これは全体の年金制度に対する国民の信頼を揺るがす問題につながりかねない問題でありますからして、そういった観点から御検討いただいておりますので、その結果が出ましたときには、私ども全力を挙げてこの実現に努力してまいりたいと思っております。
  230. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、これ以上の答弁は無理かもしれませんが、せっかくの機会ですからお聞きしていきますが、とにかく六十年度にはパンクをせざるを得ない。ですから、その対応といたしましては、単独に考えた場合、第一点として保険料を引き上げるか、第二点として給付を引き下げるか、あるいは国からの補助を大幅にふやすかということなんですね。まさに次長は、将来の一元化の中で国民からの年金というものの信頼感を失ってもいけないから、そういった中で考えていく方向であるという指摘があったわけですが、具体的に、いま国鉄の方から話があったように、研究会のこういった方向で結論を得て、とにかく事態は迫っているわけでありますので、こういうふうにしていきますよという大蔵省考え方というものもあるいは政府考え方というものも、もうそろそろ示すべきときに来ているのではないか、私はこんなふうに思うわけであります。その辺はどうでしょうか。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  231. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先生の御指摘もそのとおりかと存じますが、先ほども申し上げましたように、五十五年の六月からもう二年もいろいろ御議論いただいてきているときでございます。もう少しで結論が出てくるというときに、私どもが私どもの意見はこうでございますと言うとどういうことになるか、研究会として二年間御研究いただきましたものをあだやおろそかにするというわけにもまいらないと存じますので、もう数カ月お待ちいただきたいと存じます。
  232. 柴田弘

    ○柴田委員 それでは、こういう答弁というか、おっしゃったように、まる二年研究会で論議をされている。その研究会での議論の内容もありましょうし、改善の方向性も示されるでしょうし、結論も出るわけですね。その場合、やはり当然六十年の財政破綻というものをなくするような制度改善というものが、もちろんその研究会での結論を尊重しながらやっていかれるのかどうか、これはどうでしょう、答弁できますね。
  233. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 研究会での結論を尊重しながらやってまいりたいと思っております。
  234. 柴田弘

    ○柴田委員 とにかく私は、国鉄を救っていくには統合しかないのではないかというように個人的に思っているわけでありますが、この場合に、やはり政府関係の内部あるいは各省庁との合意、こういったものも必要になってくる、こう思いますね。仮に統合という研究会での結論が出た場合に、そういったいわゆる意見統一なり各省庁とのコンセンサスを得るという問題、この辺についてはどうですか、仮にの場合ですね。その辺はどうでしょうか。
  235. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いま仮にのお話でございますが、そういうことになりましたときに、皆さんのところですぐに大乗的見地に立ちまして賛成をしていただければ問題ないわけでございますが、しかし、あるいは国鉄、どういう案になって出てまいりますかもございますけれども、国鉄のために自分のところが少しでも損するのはいやだというような狭い見地から反対をなさるということだってあり得ると思っております。そういうようなことのないように、研究会での結論を待ちまして、私どもとしては説得に努めてまいりたい、このように思っております。
  236. 柴田弘

    ○柴田委員 次に、これは大臣にお伺いしていきますけれども、鈴木総理は昨年の行革臨時国会で、現在の各制度が持っている特色を残しながら、その上でかさ上げ調整するとかの方法を考えたい、あるいは社会保障制度審議会の提言では基本年金構想を打ち出しているわけです。また厚生省は、現在のこの八つに分かれている年金制度を一元化して危険分散をするしかない、さらに大蔵省の共済年金制度基本問題研究会では国家公務員と三公社を統合するとか、臨調でも同じように統合一元化構想などが出ているようであるわけであります。  私ども公明党としても、すでに先ほども申しましたが、国民年金基本構想、その上に二階建ての年金というものを提唱して、今日まで昭和五十一年以来改善を要求してきたわけでございますが、もうすでに私は、こういった問題については制度面からの一元化、基本年金構想というものにようやく着手をするときを迎えているのではないか、こういうふうに考えているわけでございますが、この辺についての基本的な御見解はどうでしょうか。
  237. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 制度が分立をされておりますから、その中にはいろいろな矛盾もございます。そういうものをならしていくということは大切なことじゃないか。しかしながら、国鉄のようなものをたとえば厚生年金で吸収するとかいいましても、一方はベースが低いとかあるいは片一方は退職時の月給を上げておいてそれをベースにするとか、民間の方は五年間の賃金平均だとかというようなところで吸収するといっても、赤字なものを、しかも給与ベースの高いものを吸収するといってもなかなかむずかしいでしょう。公明党の言っている二階建ての一元化ということについては、どういうことか私詳しくわかりませんが、ただ直感的に言うと、夫婦で七〇%を給付する、六十五歳からと言うんだから、それはいいといたしましても、その差額は税金で補うというようなことが書いてあります。私といたしましては、現行制度を、いま言ったようにいろいろな矛盾があるのをどうして移行をするかという問題と、給付が少し高過ぎないのか、負担が税でそれだけを持てるのかというような点についてまだ理解をいたしておりませんので、それ以上のことは何とも申し上げられませんが、いずれにしても、将来は給付と負担のバランスのとれた安定的な仕組みということが年金にとっては一番大切だから、そういうような点を基礎として引き続き検討をしていきたいと思っております。
  238. 柴田弘

    ○柴田委員 最後に、先ほど大臣もおっしゃいましたように、年金というのは負担と給与のバランスということが大事である、その上に私は、老後の生活保障に対する確固たるレールを敷くべきだというふうに考えます。現在年金を生活の糧にしている人たちが全体の七〇%以上も占めている、こういった事実を見るときに、また一方では個人年金ですとか企業年金、そういったものが商品化され制度化されようとしている、こういった制度を含めて、負担と給付ということももちろん年金制度の根幹であることはよく理解できるわけでありますが、老後の生活基盤を確立し得るという、そういった年金の保障体系というか生活保障というものも進めていかなければならない、こういうふうに考えますし、また一方では老齢化社会という問題、それから就労問題という労働行政の問題との絡みもあるわけなんです。  こういった諸条件をまとめて将来の抜本的な年金体系をつくるべきではないか、こんなふうに考えているわけでありますが、この辺についての御見解、そしてどう具体的に、この給付と負担の均衡化を図っていくということはよくわかりますが、そういった諸問題との絡みもあるわけでございますが、どのような基本的な見解のもとに年金制度の確立ということをなされていかれるのか、これをお聞きをしたいと思います。どうでしょうか。
  239. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 高い給付をするためには高い負担が必要である、すべての国民がどの程度までそれに賛成するかという問題がございます。国がたくさん持てといっても、財源は結局は税金ということになりますから、私は、自由社会においてはそれぞれ人によって生活のやり方が違う、ですから、公的年金というのはおのずから全くこれで十分だというところまではなかなか行けないのじゃないか。しかしながら、老後の生活は何とかできる、それ以上にしたいという者は、付加年金なり任意年金なりそういうものによって、それぞれの人の好みによってやるべきものだろう。年金かけなくても、おれは財産持っているから、その方でいいんだという人も中にはありますからね。そこらの調整をどういうふうにするか大きな問題点ではないか、そう思っております。
  240. 柴田弘

    ○柴田委員 最後に意見、要望を申しますが、私は、いま大臣がおっしゃった負担と給付、これはやはり大原則論ということはよく理解できます。ところが年金を掛けるというのは、老後の生活保障というのが一つのまた条件であるということは間違いないわけでありまして、そういった観点に立って、どうせまた臨調の基本答申もあろうと思います。あるいはまた研究会の提言等もあろうと思います。そういった中で、老後の生活保障というものも十分に意を尽くしてやっていただけると思いますが、そういったことを勘案して、ひとつ抜本的な年金制度の改革、改善という方向へ進めていただきたい、これだけを御要望申し上げまして、御質問を終わります。
  241. 森喜朗

    森委員長 簑輪幸代君。
  242. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今回の法改正は、恩給法における措置にならって年金額の引き上げが行われるというものですけれども、その引き上げ実施時期を例年より一カ月おくらせた。これは明白な福祉の切り捨てというものでありまして、これまで引き上げ実施時期を年々改善してきて、昭和五十年以降四月実施というふうになっておりましたものを今回後退させて五月実施としたということは、昨年来からの臨調路線の具体化であるということで、私は、もう絶対に認められない措置だと申し上げなければなりません。そういう立場で、この実施時期を四月からという修正案を共同提案するという予定になっておりますけれども、ことしの四月実施、また来年度以降もずっと四月実施を守っていく、改悪しないということを強く要求しておきたいと思います。  この際ですので、年金関連し、具体的に一、二指摘し、是正をしていただきたい問題について質問をしたいというふうに思います。  国家公務員に本来賃金職員というのがあるのがおかしいと思うわけですけれども、現実には、各職場で賃金職員というのが非常にたくさん役割りを果たしておりますが、これが任用中断という措置をとりながら事実上共済組合の組合員資格を剥奪している。本来なら、続けて働いているわけですから組合員資格があるべきでもあるにもかかわらず、そういう措置がとられてきているのが現状です。賃金職員の皆さん方は、正職員に比べてきわめて劣悪な労働条件、そしてどうしても一日も早く正職員化してほしいという強い要求があるわけですけれども、一方で、総定員法という枠の中でなかなかこれが実現されない状況にあります。  特に医療の現場では、きのうも質問申し上げましたけれども、この賃金職員が看護婦なども正規のローテーションの中に全部組み込まれておりまして、その賃金職員がなければ病院が回っていかないという事態になっているわけです。現実には一日も休まず仕事を続けているわけですけれども、たてまえ上一日だけ中断するという仕組みをとっている。そういう中で労働組合では、実際に働いていたというその確認書をとるという形で、これを何とかして組合員資格を付与するというふうにできないものかという問題点指摘されているわけです。私はぜひ、本来働く仲間のみんなの助け合いで実施されているこの共済組合法が、こういう仲間の人たちもともに資格を持てるように、この任用中断をやめてそういう方法を講じるべきだと思いますけれども、その点についての御見解を承りたいと思います。
  243. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは非常にむずかしい問題なのです。あなたのおっしゃることはよくわかるのですよ。人情論としては、私は簑輪委員と全く同じであります。  しかし、それを安易に定数繰り入れをやってしまいますと、定数の中へ入れてしまいますと、一つは、人員が膨大にふくれ上がって幾らでもふえてしまう。もう一つは、正規の職員は国家試験なり何なり受けて入ってくるわけですから、試験に受からない人が何年か勤めてみんな定数の中に入るということになると、何のために国家の試験をやるのだという内部の不満が出てくる。しかしながら現実の問題としては、ずっと働いておって一年のうち一カ月くらいはどこかで切るとか半月切るとかといって身分を分けている、賞与も違うということで、人情論としては全く私はわかるのだけれども、そこらのところの整合性の問題もありまして、なかなかうまくいかない。それなら別にランクをつけて、それだけどうしても必要なものだったら定数の中へ入れるようにした方がいいのか。そうすると人間がふえてしまうわけですね。そこらのところの問題がございますから、一概にはまだ結論は出しがたい。人情論としてはよくわかります。
  244. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 定数に繰り入れると人数がふえてしまうというお話ですけれども、現に必要だから採用して役割りを果たしている。試験の問題もおっしゃいましたけれども、看護婦なんかは同じ資格を持っておりまして、たまたま定数がないために賃金職員の立場にあるという問題もあります。単なる人情論としてではなく、この問題を共済組合員資格という点で言うならば、一歩下がって、正職員化しなくても継続して勤務している、任用中断さえしなければ組合員資格は付与されるわけですから、そういう点での是正措置、考慮の余地というものはぜひ探っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  245. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 ただいま大臣から人情論のお話がございましたが、先生おっしゃいますことも、そういった意味において私もよくわかるわけでございます。  ただいまおっしゃっておりますように、ずっと中断をしないでいったらいいじゃないかということは、その意味ではそれでいいのでございますけれども、中断しないで常勤化するということがまさに問題でございますがゆえに、三十六年に常勤化はしないように、中断するようにということで閣議で決まっておるわけでございます。そこのもとの問題がありますものですから、なかなかうまくまいらぬのじゃなかろうかと思います。
  246. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 本来続けて働かなければならない職場の実態があるにもかかわらず、強引に中断するという閣議決定があるわけで、そのこと自体に非常に問題があるというふうに私は思うわけです。国がそういうことをやったのでは、たとえば企業でも、本来続けて雇用しなければならないのにもかかわらず、いわゆる臨時職員というような形で労働条件が低いまま雇用していくという非常に重大な問題もあって、労働省等においては、そういう問題などもできるだけ正職員化しなさいという指導をしている。そのことから考えても、政府がそういうことをするのは非常に問題だろうというふうに思いますので、その点を指摘して、ぜひ今後考え直していただきたいと思っているわけです。  続いて、年金においていろいろな問題がありますけれども、遺族年金における給付率の問題です。これは五〇%ということになっておりまして、たとえば私どもは夫婦で生活する場合には生活できる一定の収入であっても、それが一人になってしまったから半分で生活できるという計算というのはおよそおかしい。現実の実態にマッチしない。だから、少なくともこれは八〇%くらいには上げなければならないのではないかとかねてから主張しているわけですけれども、その辺のところをいろいろ検討されております中でどういう方向になるのか、その辺、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  247. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 おっしゃいますように、遺族年金は原則として五割、それに加算がつきますともうちょっと大きくなるかと思いますが、それをどういうふうに考えたらいいのか、なかなかむずかしゅうございます。いわゆる妻の年金問題というのがございますが、それも、だんなさんが亡くなった後、奥さんが遺族年金をもらえればいいわけですけれども、場合によっては、だんなさんと長年連れ添ったにもかかわらず遺族年金がもらえなくなるようなこともある。そんなことならば、むしろ妻の方は個人の年金に還元してしまったらどうだろうかという意見さえもありますし、それから、現に国民年金ではみんな個人年金になっておりますから、そうなりますと遺族年金の問題はなくなる。  大体、厚生年金にしろ共済年金にしろ、いま世帯年金で構成しているのでそういう問題が起こってくる。それでは、むしろ個人年金にしたらどうなんだ、その方が世界的にはむしろ流れとしてはそっちの方じゃないかというようなことを言われる方もおられるわけでございまして、むしろ個人年金にすれば問題はすっきりするかもしれません。すっきりするかもしれませんが、そのときの給付レベルはどうなるかというと、一対一になりますから、世帯年金の大体半分にならざるを得ないということになると、また五割に戻ってきてしまうということにもなりますので、なかなか、ここのところを八割とか七割とか上げたら問題がすらっと解決するというものでもない。  特にまた、共済年金の場合でございますと、問題でございますのは、妻のそういった要すれば年金の併給調整が不十分でございまして、共働きの方で本人の年金と遺族の年金を同一制度内でもらえるようなことにもなっておりますし、そんな場合に、もしも八割になっておりますと、いまでも一人半分もらえてどうも笑いがとまらないんではないかという不謹慎なことを言う人もいるくらいなものが、今度一・八人分もらえるということはもっとよくなってしまうという、その辺のところもまた穴をふさいでいかなければならないという問題もございまして、全般的にこの遺族年金の問題を一体どう考えるか、おっしゃるように大変むずかしい問題と思っておりますが、そういう問題意識を持って検討をいたしてございます。
  248. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 おっしゃるように、世帯単位でということになります現状のもとでの問題点だと思うのですね。ですから、個人的に年金が一人一人にということになれば解消される。  そういう方向はともかくといたしまして、現実には、いま世帯で遺族年金が出されているこの現状のもとで生きていく、その一・八人分もらうというような人は別といたしまして、現実にこの遺族年金を頼りにして生活している人の実態というものを踏まえたときに、ぜひ八割にすべきだと私どもは言っているわけです。アメリカでも、一人が働いていた夫婦の老齢年金の場合、配偶者給付を含めて一・五人分、そして妻の遺族年金になった場合は一人分ということですから、八割に近いというふうに言えると思うのですね。そういうことば、現状の制度のもとでの改善を私どもは求めておるわけです。  今後の課題の中では、確かに組合員の妻ということになれば現実に夫に生計を維持されて被扶養者扱い、まあ現実そうですけれども、主婦として言えば、独立した主体として加入していないわけですね。だから、加入者たる夫に依存して、その夫を介して反射的な利益を受けるというような関係でありますから、固有の受給権がないという実態にあるわけです。だから、その固有の受給権を持つべきではないかというような論議がずっと行われているわけですけれども、その中で、たとえば夫と離婚してしまった場合には全く受給権がなくなってしまう。離婚の時期によりましては、たとえば六十歳過ぎてから離婚したなんということになれば、国民年金にも入れない、全くの無年金生活というような深刻な事態が起こってくるわけですね。  そういうようなことで、厚生省なんかでは、厚生年金の遺族年金の論議の中でこういうようなことがいろいろ論議されているという報道を承知しているわけですけれども、厚生省、もしおいでになっていましたら、その辺の論議の状況を簡単に教えていただきたいと思います。
  249. 山口剛彦

    ○山口説明員 婦人の年金保障という立場から見ますと、現行の制度に、ただいま御指摘がいろいろありましたように問題点があることは私どもも十分承知をいたしております。そういうことで、いままでも、将来の婦人の年金保障のあり方につきまして、いろいろ御議論もされておるわけでございますけれども、率直に言って、まだ具体的な方向が出てないというのが現状でございます。  ただいまも御議論になりましたように、この問題は、現在の制度が被用者年金については世帯単位で構成されておる、こういう基本的な問題をどうするかという問題もございますし、また、被用者の妻の方々には国民年金に任意加入をされている方が八百万人近くもおられるという、そういう現実の問題でもございますので、大変むずかしい問題でございます。しかし、私どもも、これをこのままほっておくということは決して好ましくないということで、次の改正に向けての審議会での御議論の中でも、最重要課題の一つとしてこの問題を取り上げていただいておりますので、そういった御議論、御意見も十分踏まえまして、私どもといたしましても、婦人の年金保障を充実をするという基本的な立場に立って、この問題に真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  250. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 老後の問題というのは、平均年齢から見ましても、まさに婦人の問題と言っても言い過ぎではないくらい、婦人の老後の問題でこの年金問題は非常に重要なウエートを占めているわけです。  そういう中で、いまおっしゃるように、婦人の年金について改善の方向でいろいろと努力を重ねていただくということのようですけれども、いろいろ見直しの中で、たとえば全体的な見直しをするという体裁をとりながら、従来特別に、たとえば寡婦加算とか遺族年金の母子年金とか、そういうような配慮をしていたものもこの際一緒くたに排除してしまおうというような動きもあるやに聞いていますけれども、それは本末転倒の議論だというふうに私は思うわけです。特に、世界人権宣言の中にも、こういう社会保障の問題を述べているわけなんですけれども、「母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。」と言われているわけですね。従来の、現状を下回るということがないような改善措置をしていただかないといけないというふうに思っております。  そこで、そういう論議をしておられる社会保険審議会がありますね。ここでは、重要な婦人の問題が審議されるにもかかわらず、婦人の委員はゼロという状態でございます。それからもう一つ、国家公務員の共済組合審議会ですか、これも婦人の委員がゼロ、こういう実態でございまして、国民年金審議会がわずかに、十二人のうち一人が婦人、社会保険審議会は、二十七人の委員のうち、ゼロなんですね。こういう実態は、全般的な見直しの中で婦人の影響が大きいということを考えてみますときに、これはゆゆしい事態ではないかと私は受けとめたわけです。  大蔵大臣の所管の範囲、あるいはそうでないところは大蔵大臣の連絡によりまして、ぜひ婦人の委員をこういうところに参加さしていただくように手だてをとっていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  251. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 社会保険審議会の方は、厚生省ないしは厚生大臣のお決めになることでございますと思いますが、厚生省の方からお話を聞いていただけたらありがたいと思います。  国共済の審議会でございますが、おっしゃるように女の委員の方がいらっしゃらないのでございますけれども、何せ委員の全体の数が少のうございまして、一般の委員さんでございますと三人さんしかいないわけであります。でございますので、ちょっといまのところ、女性の委員の方にお願いをするというところまでは至らないのではないか。国家公務員共済の場合でございますと、年金制度の中で女性の問題をどう考えるかということの基本につきましては、厚年の場合とできるだけそろえるようにいたしておりますものですから、むしろ厚生省の方のサイドで、どの程度女性のことを制度の中に取り入れていくかということで問題が解決していくのではなかろうかと思います。
  252. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 厚生省の方だということでお逃げになったわけですけれども、じゃ大蔵省の管轄の範囲ででも、何としてでもやはり入れていただくように、私は強く求めておきたいと思います。男の人ばかりで決めちゃって、その結果は圧倒的多数の婦人に影響を及ぼす。老後の問題で、本当に婦人の方に全部影響が来る、このことを考えてみますと、何としても入れていただかなければならない。強く要求をしておきたい。大臣も頭の中にそのことをぜひ置いておいていただきたいと思うわけです。  次に、国家公務員共済組合法の運用の中であらわれております男女差別の問題を取り上げさせていただきたいと思います。  国家公務員共済組合法の二条で被扶養者というのを決めておりまして、ここでは「主として組合員の収入により生計を維持するものをいう。」というふうに定められております。これを受けた施行令でもって、被扶養者については「一般職の職員の給与に関する法律」「所得税法」それから「健康保険法における被扶養者の認定の取扱いを勘案して、大蔵大臣の定めるところによる。」というふうになっているわけです。それでこの「大蔵大臣」でございますけれども、これを定められた当時のあれで見ますと、昭和三十四年に大蔵大臣が定めた運用方針というのがございます。ここで「「主として組合員の収入により生計を維持する者」に該当しないもの」ということとして掲げられておりますのは、「組合員が他の者と共同して同一人を扶養する場合において、社会通念上、その組合員が主たる扶養者でない者」という規定があるわけです。  平たく言いますと、夫婦共働きで子供などを扶養している場合にどうなのかという問題を論じるわけですね。その子供をどちらの被扶養者として措置していくかという、その問題を大蔵大臣の運用方針ということで定められているわけですね。ここで健康保険法の「被扶養者の認定の取扱いを勘案して、大蔵大臣の定めるところによる。」と前に施行令で申し上げましたように、そういうのがあるからだと思いますけれども、各種共済組合法所管省を含めた社会保険各省連絡協議会というところでもって、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」という文書ができ上がっているわけです。これは昭和四十三年三月、各都道府県民生主管部(局)長あてに通知をされているわけです。  ここで、その取り扱いについて別紙というのがございまして、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」「1 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定にあたっては、家計の実態、社会通念等を総合的に勘案して定めることが必要であるが、具体的には次により処理するものとする。1 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、原則として夫の被扶養者とすること。」、つまり夫婦共働きの場合、まず子供は夫の方につけなさいというのが第一です。二番目に「妻の所得が夫の所得を著しく上廻る場合その他特別の事情がある場合には、妻の被扶養者とすること。」  これを見て、私は、国が定めたものとは思えないひどいことが書いてあると思ったわけですね。それで、時代が時代で、昭和四十三年の大蔵大臣渡辺大蔵大臣の時代ではございませんし、昭和五十年以降、国際婦人年ということで男女差別撤廃に向かって大きな運動が世界で盛り上がって、日本でもそういうことをあらゆる場面で実施していかなければならないということがむしろ常識になりつつある時代とは異なりまして、前近代的と申しましょうか、そういうときでありますから、こういうことになったのかとも思いますけれども、この辺、私はとうてい納得できないものであり、是正すべきであるというふうに思いますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  253. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も法律論は知りませんが、そのころは夫の方が妻よりも所得が高いのが一般的常識だったのじゃないか。したがって、やはり夫の方へつけろと言わなくたって、税金は超過累進税だから、黙っていたって夫の方につけますからね。何でそんなよけいなことを書いたのかよくわかりませんが、歴史を知っている人に説明させます。
  254. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 どちらの親御さんの被扶養者にするのかということは、家計の実態によるというのが一番筋だと思いますが、社会通念もその場合にどういうふうに入ってくるのか、いろいろな条件を総合勘案して決めていくものだと思います。  それで、いま御指摘になりましたように「原則として夫の被扶養者とする」「妻の所得が夫の所得を著しく上廻る場合その他特別の事情がある場合には、妻の被扶養者とすること。」こういうことになっているわけであります。どちらの被扶養者にするかということでございますから、夫にするか、妻にするか、この二つのうちに一つしかないわけでありまして、たまたまこの場合では、夫の方が偉いから、妻の方が偉くないからということでは実はございませんで、事務処理の簡素化の問題として、とにかく一応どちらかに決めておく。それで、実態がそれと違いますれば、実態に合うように個別に処理していく。  それじゃ、すべての場合において実態に即して調べてやったらいいじゃないかというお話もあろうかと思いますが、そういたしますと、事務上の処理というのが相当複雑になりますものですから、一応夫の方の被扶養者ということにいたしまして、後は実態による、こういう考え方でございますので、何とぞ御理解賜りたいと存じます。
  255. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 これは理解できるものではございませんで、即刻是正していただかなければならないものだというふうに思っているわけです。  と申しますのは、夫か妻かどっちかにしなければならないとおっしゃいますが、夫、妻で分けることの問題点を言っているわけで、基準を別に設けて、結果としては、夫か妻か、どっちかにつけなければならないのはあたりまえのことなのです。そして、これを政府がやっているということは、社会通念もあるとおっしゃいましたけれども、このことが一つ問題なのです。家計の実態から言われるならば結構です。社会通念というものは古いものを引きずってきているものでありまして、これを変えていくことが必要だと、男女差別撤廃条約の方で言っているわけです。法律を初めとして、あらゆる慣行までも含めて、このような男女差別をなくしていくことがこの目標になっているわけですね。  そういうときに、先進国だなんて言って先進国首脳会議に出かけていくわけですけれども、その場合に、とにかく一方では、妻だ、夫だなんということで分ける、そういう文言が政府文書としてあるということはあってはならないことです。憲法を初め、配偶者という言葉はありましても、夫だ、妻だなんということをやるのはもってのほかである。そして、その場合に、私がもう一つ申し上げたいことは、婦人の場合、特に共済の掛金については男女差もないし、同じように取られていながら扶養者のときには、そら夫だ、妻だと分けられる、そういう問題も腹が立って仕方がないという婦人の強い声もあります。  それからまた、政府の方がこういうことを言っているということを理由にいたしまして、先日私が岩手銀行の男女差別の問題を取り上げましたときに、銀行当局が言っておりますのは、国の方だって夫を原則とすると言っているんだから、銀行だって男女差別を設けて妻たる行員には家族手当や世帯手当をやらなくて、夫たる行員に支給してどこが悪いとこうくるわけですね。こういうふうにしていろいろ利用されるわけです。まさに政府の不当な処置が引用されていくわけです。  ですから、この際誤解を招かないように、男女をともに同一の組合員として同等の基準でもって判断をしていくように、措置していくように、実態もずいぶん前と変わってきております。そこで、昭和四十三年のこれをいつまでも引きずっているのではなくて、現状に合わせた新しい男女平等の基準をつくっていくという方向を検討していただくように大臣にお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  256. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 なかなかこれは、理屈を言うとそういうものもあるかもしれませんが、そんなに一般の家庭で夫、妻といって差別は余りしてないのではないか。だれそれ夫妻とは言うけれどもだれそれ妻夫というふうに直せとか、外国でもミスター・アンド・ミセスで、ミセス・アンド・ミスターとは余り言わないし、そういうようなところで私としては、原則としてですから、妻の方にしていかぬという意味でもないのではないか。当局の話では、いろいろな違った組合に入っているので、両方につけちゃったりなんかすることがあるという話なんです。ですから、中身をよく検討させていだたいて、弊害があれば直すようにいたしたいと思います。
  257. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 時間がないので終わりますけれども、そんなようなことでは困ります。本当に前向きにやっていだたかないと恥をかくことになります。警告をしておきますし、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
  258. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  259. 小杉隆

    小杉委員 しんがりでございますので、大分用意していた質問も重複しておりますから、ごく簡単にやりたいと思います。  まず最初に伺いたいのは、共済年金の将来がどうなるかということです。いろいろ資料をいだたいたのですが、たとえば一番深刻なのは国鉄ですね。これはもう昭和六十年には収支が赤になりますし、積立金も六十二年にはゼロになってしまうということです。そこで、国鉄と国家公務員、それから一般の厚生年金の将来見通しについて、本当に概略的で結構ですから、見通しをまずお聞かせいただきたいと思います。
  260. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国家公務員共済組合の将来財政の見通しでございますが、昭和五十四年の十月に再計算いたしました際の資料によりますと、五十七年には退職年金の成熟度が四〇%になり、収支の状況は六十六年には、いまの財源率のままでございますと単年度に赤字になり、七十五年には積立金もなくなるというようなことになるようでございます。そういうことでは困りますので、五年ごとに財源率を上げていくということにいたしまして、いま千分の百二十三でありますけれども、それが昭和七十五年に千分の二百三十三ということでいまの倍近くになるということになりましても、昭和七十五年には単年度で赤字になってくる、こういうようなことになるようでございます。
  261. 永光洋一

    ○永光政府委員 国鉄の共済の収支の見通しでございますが、先生御案内のように、六十年には現状の財源率でまいりますと約千億の赤字が出まして、六十二年には積立金がマイナスの二千億を超えるということで、積立金が六十二年にはなくなるという状況になっております。それで、六十一年以降そういう形で収支が非常に悪くなりますので、仮に賦課金で取るというような形にいたしますと、昭和六十二、三年以降財源率は五百を超すというふうな状況でないと収支が償わない、こういうことでございます。
  262. 山口剛彦

    ○山口説明員 厚生年金の将来見通しでございますが、現行制度を前提にいたしますと、二十年後には被保険者は現在の一・二倍でございますが、老齢年金の受給者が四倍になります。給付費も五・四倍になるということで、将来の財政見通しは、現行の制度のままという前提に立ちますと大変厳しいということでございます。仮に、保険料率を五年ごとに一・八%ずつ引き上げていくと仮定いたしました場合に、七十三年には収支残が赤字になる、八十一年には賦課方式に移行せざるを得ないという見通しでございます。
  263. 小杉隆

    小杉委員 先ほど来答弁にありますように、共済年金制度基本問題研究会というのが昭和五十五年六月から二年間の予定で設置されております。これは、ことしの六月ですから間もなく結論が出るわけです。先ほどからその中身については御答弁がないわけですが、もう二年目の大詰めを控えているわけですから、この研究会の中で議論されている主な点を集約してお答えいただきたいのです。  じゃ、ちょっと補足しましょう。質問がちょっと大き過ぎるから集約しますが、たとえば将来の年金の一元化という問題について、いま共済年金と公企体の年金がかかっているわけですが、こういったものをまず一元化して……(私語する者あり)
  264. 森喜朗

    森委員長 静粛に願います。
  265. 小杉隆

    小杉委員 そして将来厚生年金とか国民年金も統一を図るという……(私語する者あり)
  266. 森喜朗

    森委員長 小杉君の質問中ですから、静粛に願います。
  267. 小杉隆

    小杉委員 そういう考え方に立つのか、その辺の議論はこの研究会ではどんなぐあいに展開されているのでしょうか。
  268. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いまおっしゃいましたように、将来年金制度を一元化するという基本的なスタンスに立ちまして、どういうふうに具体的なスケジュールを描いていくかということは大変大事な話でございますが、共済年金基本問題研究会では、厚生年金等を含めまして具体的なスケジュールを描くというわけにはちょっと事柄の性質上いかない。そこで、具体的なスケジュールは描けないけれども、その辺のところを見通しまして、いまの共済グループをどういうふうに持っていくかということについて御検討をいただいているわけでございます。
  269. 小杉隆

    小杉委員 いずれにしても、将来統一化というか一元化に持っていかなければいけないと思うのですね。  それから、たまたま大蔵大臣が厚生大臣をやっておられた昭和五十二年でしたか、加藤紘一氏が年金の官民格差を取り上げられたわけですが、そういう面では最近かなり改善をされてきて格差は減ってきていると思います。将来の統一、一元化ということを踏まえて考えますと、やはりいまのうちにできるだけ制度の中で違っている部分をなくしていくということをしなければいけないと思うのです。  これは、簑輪さんから言うと逆の議論になるかもしれませんが、いま厚生年金の場合に男女の格差というのがあるわけです。一つには、支給開始年齢が、厚生年金の場合、男性が六十歳、女性が五十五歳ということでありますし、もう一つは保険料率です。これは現在男性が一〇・六%、女性は九・〇%ということです。五十七年度はこれを女性の場合九・一%と〇・一%上げてきておりますが、毎年この調子で上げていきますと、昭和七十二年にやっと男女が一緒になるという形になると思うのです。現在あるこういう男女の格差、二つの点についての考え方、これはやはり是正していくべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  270. 山口剛彦

    ○山口説明員 厚生年金につきまして、支給開始年齢、保険料率に男女の格差があることは先生御指摘のとおりでございます。  これにつきましては、従来経緯がございます。厚生年金が発足をいたしましたのが昭和十七年、女子が強制適用になりましたのが十九年、それ以来のことでございますので、現在と大分女子の雇用の状況等が違っておりました。また、国民皆年金体制ではございませんでしたので、女子の方で短期間お勤めになられるという方は掛け捨てになってしまうというようないろいろな事情があって、女子については御指摘のような格差があったわけでございますけれども、現時点で果たしてこれが合理的な差かということになりますと、国民皆年金になった現時点あるいは女子の雇用の実態を考えますと、合理的な格差ではないというふうに私どもも考えておりまして、御指摘がありましたように、保険料率については一挙にというわけにはまいりませんので、徐々に縮めていくという努力をいたしております。さらにそのスピードを速めるということについても努力をしてまいりたいと思いますし、支給開始年齢の問題、全体の問題でもございますけれども、格差を縮めるという方向で私どもも努力をしてまいりたいと思っております。
  271. 小杉隆

    小杉委員 指摘したことは小さなことかもしれませんが、今後の統合一元化ということを考えますと、できるだけこうした格差を埋め不公平をなくしていかなければいけないということを申し上げたいと思います。  そして、いま共済年金については制度についての基本問題研究会が設置されてやっておりますが、やはり将来の受ける国民の側というのは、制度が違っていても受ける給付にそんなに差があっては困るわけで、大蔵省とか厚生省とかその省内だけじゃなくて、横断的な、もう少し将来を展望した基本的な検討をする研究会なりというものを設置する必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  272. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 おっしゃるような議論が昨今非常に強いわけでございまして、先ほど来申し上げております研究会におきましても、先生と全く同じような議論をおっしゃる委員の方がおられます。これから年金が社会的に非常に大きなウエートを持ってくる時代でございますし、何も共済でございますとか厚年でございますとかというような縄張り争いをしないで、みんな一緒になっていい制度にしていくような場というのは必要なのじゃないかなと私どもも思っております。
  273. 小杉隆

    小杉委員 時間が参りましたから終わります。
  274. 森喜朗

    森委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  275. 森喜朗

    森委員長 この際、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、小泉純一郎君外三名より自由民主党提出に係る修正案、及び沢田広君外三名より日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党の四派共同提案に係る修正案がそれぞれ提出され、また、昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案に対し、伊藤茂君外三名より日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党の四派共同提案に係る修正案が提出されております。  この際、両案に対するそれぞれの修正案の提出者より順次趣旨の説明を求めます。中西啓介君。     —————————————  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  276. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、原案において、組合員の掛金及び各種給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額の引き上げの施行期日は「昭和五十七年四月一日」と定められておりますが、すでにその期日を経過いたしておりますので、本修正案は、この施行期日を「公布の日」と改めるとともに、本年四月一日から適用できるよう所要の措置を講じようとするものであります。  案文はお手元に配付してございますので、朗読は省略させていただきます。  以上であります。  何とぞ御賛成くださるようよろしくお願い申し上げます。
  277. 森喜朗

    森委員長 沢田広君。     —————————————  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  278. 沢田広

    沢田委員 ただいま議題になりました昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表して、その提案理由及び内容の概要を申し上げます。  今回政府から提案されました国家公務員の共済年金改定法案は、恩給法等の改正内容に準じて共済年金受給者の年金額を引き上げ、処遇の一層の充実を図るとしておりますが、年金改定の実施時期は、例年より一カ月繰り下げて五月からとされております。  周知のとおり、共済年金改定の実施時期は、昭和四十八年度の十月から順次改善され、五十二年度以降は四月実施が定着してきたのであります。四月実施でも、年金受給者にとっては、現職者の給与改定と比べますと一年おくれて改善されているのが実情なのであります。それをさらに一カ月おくらせようとする政府提案は、これまで進められてきた年金充実の方針転換にほかならないのであります。現在の年金受給者は、国家公務員三十七万人、公共企業体職員三十九万人、合わせて七十六万人でありますが、これらの方々にとっては、処遇の改善よりも福祉の後退となるのであります。  高齢化社会を迎えるに当たっては年金の充実は欠かせませんが、今回の措置はそれに逆行し、老後の不安を一層与えるのみならず、かかる福祉の後退を行うべきではありません。私たちは、このような立場からも共同して修正案を提出するものであります。  修正案の案文はお手元に配付してありますが、その内容は、年金改定の実施時期の五月を一カ月繰り上げ、例年どおり四月から実施しようとするものであります。  以上が修正案提出の理由及び内容でございます。委員各位におかれましては、よろしく御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  279. 森喜朗

    森委員長 伊藤茂君。     —————————————  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等   共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  280. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ただいま議題になりました昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表して、その提案理由及び内容の概要を申し上げます。  今回政府から提案されました公共企業体職員の共済年金改定法案は、恩給法等の改正内容に準じて共済年金受給者の年金額を引き上げ、処遇の一層の充実を図るとしておりますが、年金改定の実施時期は例年より一カ月繰り下げて五月からとされております。  周知のとおり、共済年金改定の実施時期は昭和四十八年度の十月から順次改善され、五十二年度以降は四月実施が定着してきたのであります。四月実施でも、年金受給者にとっては現職者の給与改定と比べますと一年おくれて改善されているのが実情なのであります。それをさらに一カ月おくらせようとする政府提案は、これまで進められてきた年金充実の方針転換にほかならないのであります。現在の年金受給者は国家公務員三十七万人、公共企業体職員三十九万人、合わせて七十六万人でありますが、これらの方々にとっては処遇の改善よりも福祉の後退となるのであります。  高齢化社会を迎えるに当たっては年金の充実は欠かせませんが、今回の措置はそれに逆行し、老人の生活を不安にさせるもので、かかる福祉の後退を行うべきではありません。私たちは、このような立場から共同して修正案を提出するものであります。  修正案の案文はお手元に配付してありますが、その内容年金改定の実施時期の五月を一カ月繰り上げ、例年どおり四月から実施しようとするものであります。  以上が修正案提出の理由及び内容でございます。よろしく御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  281. 森喜朗

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  この際、沢田広君外三名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べ願います。渡辺大蔵大臣
  282. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府として反対であります。     —————————————
  283. 森喜朗

    森委員長 これより両案及び両案に対する各修正案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  初めに、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、沢田広君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  284. 森喜朗

    森委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、小泉純一郎君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  285. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  286. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。  次に、昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、伊藤茂君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  287. 森喜朗

    森委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  288. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  289. 森喜朗

    森委員長 ただいま議決いたしました両案に対し、大原一三君外五名より自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の六派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。沢田広君。
  290. 沢田広

    沢田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  申し上げるまでもなく、国家公務員及び公共企業体職員の共済年金につきましては、従来から、国民の生活水準、国家公務員の給与、物価等の諸事情を総合勘案して年金額の改定が行われ、その実質価値の維持が図られているところであります。  今回、恩給における改善措置にならいまして、退職年金等の年金額の引き上げが行われるところでありますが、なお、年金生活者の現状に顧み、その給付水準及び給付要件等の改善を図る必要があることは言うまでもありません。  とりわけ、高齢化社会が進展し、共済年金の成熟度が進行するに伴い、年金財政の健全性確保に努めることが緊要であると考えられます。  また、国は、社会福祉、社会保障等の増進に努めなければならないことを義務づけられている憲法第二十五条の趣旨を体して、各種年金制度の充実と整合性を図らなければならないものと考えられます。  本附帯決議案は、かかる観点から、政府に一層の努力を要請しようとするものでありまして、以下、案文の朗読によって内容説明にかえさせていただきます。     昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、共済組合制度の充実を図るため、次の事項について、なお一層努力すべきである。  一 共済年金の成熟度の進行に伴い、その財源措置及び制度の充実に努めること。  二 年金制度の充実のため、逐次その統合化について検討を進めるとともに、国の社会福祉に関する使命にかんがみ、各種年金制度の整合性について、更に国民の合意が得られるよう十分検討すること。  以上で趣旨説明を終わります。  何とぞ、御賛同くださるようお願い申し上げます。
  291. 森喜朗

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく両案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、順次これを許します。渡辺大蔵大臣
  293. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  294. 森喜朗

    森委員長 小坂運輸大臣
  295. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま附帯決議のありました事項につきましては、政府といたしまして、御趣旨を体し十分検討いたしたいと思います。     —————————————
  296. 森喜朗

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  298. 森喜朗

    森委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十八分散会      ————◇—————