○正森
委員 加藤さん、あなたたしか「国際金融」の昨年の十二月一日に「第三十六回
世銀・IMF
総会について」という論文を書いておられますね。今度
審議するに際して、何しろ主管の
局長の論文ですから、私も勉強さしていただきました。全部は言わないで拾い読みしますけれ
ども、非常にあなたは大事なことを言っておられると思うんですね、ずいぶん遠慮した表現もありますけれ
ども。
たとえば、その初めの方で、レーガン大統領やリーガン財務長官やヘイグ国務長官が
演説をして、アメリカの政策が表明された。それを要約すると「その
中心的な
考え方は、1「強いアメリカ」を
確保するため、政治的・戦略的目的の達成、経済的利益の享受を追求する、2「小さな
政府」を目指し、援助の効率化、米国予算の負担軽減、
民間資金の活用を図る、3「円助」努力を
支援するの三点にあると思われる。」こう書いて、それから後がちょっとほかしてあるんですが、「具体的な例としては、二国間援助について政治的・戦略的目的の達成=長期的には着実な経済発展によるより安全で安定した
世界の発展、中期的には米国にとって政治的・戦略的に重要な国の救済、短期的には米国にとって非常に重要であり、かつ緊急の援助を必要としている国に対する迅速な
経済援助であり、多数国間援助については国際金融機関の効率化と被援助国に対する卒業理論の推進」、順次卒業していけというんですね。「
IDA融資→
世銀融資→
協調融資→
民間融資への転換を促進するというものである。」こう書いておられますね。
これは的確な
指摘だと思うのですが、いまあなたがおっしゃったこれをもう少しはっきり言っておるのがあるんですね。それは、毎日新聞の五十六年九月二十七日の「混迷の中のIMF・
世銀総会」という主張ですが、そこでは、あなたが遠慮されたことをもっとはっきり言っておるんです。こう言っているんです。アメリカはいろいろ渋っているというようなことをいろいろ言いまして、「しかし、それならば代わりに
開発資金をふやす方策を考えなければいけないが、ない。それどころか、
途上国を敵と味方にわけて援助する方針を打ち出したレーガン米政権は、国際機関に対する援助
資金は効果が少ないとして、すでに約束した第二
世銀(とくに貧しい
途上国にゆるやかな条件で
資金を貸しつける)の第六次
増資の払いこみさえしぶり、第二
世銀を半身不随におちいらせている。
先進国の国内経済政策もバラバラだ。米国はゆがんだ高金利政策をとり、その結果、生じたドル高についても不介入政策をとり、欧州諸国に大きな打撃を与えている。米国のこの態度はあきらかにIMF暫定
委員会の申し合わせ違反だ。」云々と、こうなっているんですね。
これは、この法案に関係する以外のこともちょっと触れておりますけれ
ども、非常に得手勝手な態度だと言わなければならないんですね。国際
協調で第一
世銀、特に第二
世銀というのは
途上国に対して金利なしで貸しましょう、いま私が言いました一次産品基金などというのも、もちろん当初からいろいろ実効を危ぶむ声もありましたけれ
ども、
考え方としては、第一の窓と第二の窓に分けて、
途上国に非常に配慮するというようなことがありましたが、そういうのは、全部おしなべて
途上国全体に対して利益を与えるから、こんなものはあかんのだ、その中で、アメリカにとって味方あるいは役に立つ、そういうものと敵とに分けて、そしてマルチラテラルでなしにバイラテラルといいますか、二国間で必要なところへいく。そのためには、そっちに金が要るから、おれはこっちへ出さぬよということで、約束した金は出さぬわ、あるいはテールヘビーで出し渋るわ、あるいは初めから参加しない、こういうような態度は実に問題がある、こう言わなければならないんですね。
同じくあなたの論文で、やっぱりそれについての危惧を表明されているんですね。これも現職の
局長だから非常に遠慮しておられますが、眼光紙背に徹して読めば、あなたの御意見はよくわかるので、私とほぼ同じだと思うのですね。あなたはこう書いていますね。
「一九三〇年代のいわゆる貿易戦争が第二次大戦の遠因の
一つになったとの反省の下に創設せられたIMF・GATT体制による自由貿易主義は、
世界経済の安定と発展に大きな寄与をしてきたが、戦後三十五年の歳月の経過の中で米国経済の絶対的優位の低下、国際通貨制度の固定制からフロート制への移行等の変化に伴い、最近における保護主義的あるいはブロック経済的風潮の抬頭には警戒すべきものがある。」この警戒すべき相手はまさにアメリカですよ、あなたが書いておられないだけで。最近の経済摩擦などを考えると、あなたの言わんとするところはよくわかる。つまり、そういう
考え方は一九三〇年代のブロック経済の
考え方に近いんで、これは非常に警戒すべきだということを言うているんですけれ
ども、アメリカはますますその
方向に突っ走っておるんですね、
大臣。これは実に問題であると言わなければなりません。
そのほかに、あなたは、「高金利と為替レートの変動」ということで、アメリカの高金利がいかに
途上国に対して金利負担で大きな負担をかけているかということも、遠慮しいしいですが言うているんです。しかし読む人が読めば、
加藤国際金融
局長が腹の中では実に苦々しいなと思いながらこの論文を書いておることがよくわかるのですね。
大臣、あなたの部下と言ったら失礼ですが補助者の論文を私がいま
紹介したのですけれ
ども、恐らく
大蔵大臣も同じ御意見だと思いますが、一言御感想なり御見解を承りたいと思います。